JP2015055719A - 反射望遠鏡 - Google Patents

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Abstract

【課題】 大気分散補正機能を有し、視野角が大きい状態で天体を良好に観察することができる反射望遠鏡を得ること。【解決手段】 結像作用を有する反射鏡と、反射鏡で結像する像を補正する補正光学系と、補正光学系を介した像を光電変換する撮像素子とを有する反射望遠鏡であって、補正光学系は正レンズと負レンズよりなり、光軸に対して垂直方向の成分を持つ方向に移動する複合レンズを有しており、複合レンズを構成する正レンズと負レンズの材料の屈折率の差は0.5%以上あり、反射望遠鏡は、複合レンズの駆動量を検知する検知手段と、検知手段によって検知された複合レンズの駆動量から撮像素子の光軸に対する傾き補正量を演算する演算手段と、演算手段によって算出された補正量から複合レンズの移動量と撮像素子の光軸に対する傾き量を駆動制御する制御手段とを有すること。【選択図】 図1

Description

本発明は、結像作用を有する反射鏡と、反射鏡の結像性能を補正する補正光学系と、撮像素子を有し、広視野で天体観察を良好に行うことができる反射望遠鏡に関する。
天体観察に用いられる反射望遠鏡は口径が大きいほど観測する天体の分解能が高くなるため、遠方の天体を高分解能で観測するためには大口径であることが必要となる。天体観測において、天頂以外の観測では大気分散に起因して、星像に光の波長によるずれが生ずる。そのため星像がぼけて、大口径の反射望遠鏡を使用しても本来の分解能が得られない場合がある。本出願人は、このような大気分散を補正する収差補正系を備えた天体望遠鏡(反射望遠鏡)を提案している(特許文献1)。
特許文献1に開示されている収差補正系では、天体望遠鏡の一部を構成する主鏡(反射鏡)の焦点位置の近傍に配置し、主鏡の持つ収差及び大気分散を補正する。これにより、例えば主鏡と副鏡とを組み合わせたカセグレン型の反射望遠鏡で天体観測する場合に比べて、明るく広視野、かつ高分解能で天体観察ができるようにしている。
特許文献1の天体望遠鏡では、互いに波長分散の異なる材料で構成された一対のレンズで構成された複合レンズを備える収差補正系において、該複合レンズを光軸に対して垂直方向に移動させることにより、大気分散の補正を行っている。これにより、レンズ系全体の小型化を達成しつつ、主鏡の収差補正と大気分散による色収差の補正の双方を良好に補正している。大気分散補正用の複合レンズ(以下、Atmospheric Dispersion Corrector あるいはADCとも呼ぶ)に使用する材料としては、屈折率がほぼ同じで分散だけが異なる材料を選ぶのが好ましい。
そうすることによって、中心となる波長では複合レンズ(ADC)は平板ガラスと光学的に等価になり、移動しても他の収差に影響を与えるおそれが無くなる。複合レンズ(ADC)が比較的小型の場合は、複合レンズ(ADC)に使用できる材料は比較的上記要求を満足できるものがある。例えば特許文献1の実施例で用いている複合レンズに使用されている材料の組合せでは、屈折率の差が約0.5%以内である。
特許文献1の収差補正系を用いた天体望遠鏡の視野角(観察視野角)の直径は0.5°である。近年、天体望遠鏡の更なるサーベイ能力の向上が望まれており、そのために収差補正系の更なる広視野化が求められている。本出願人は視野角を1.5°〜1.9°にまで広角化して、且つ良好な星像を実現し得る主焦点補正光学系(収差補正系)を用いた反射望遠鏡を提案している(特許文献2,3,4)。
特開平06−230274号公報 特開2009−036976号公報 特開2009−223019号公報 特開2010−091597号公報
本発明者らの研究によれば、視野角を1.5°以上にまで広画角化して、且つ良好な星像を観察するためには、収差補正系(以下「主焦点補正光学系」ともいう。)を構成する各単レンズおよび複合レンズの直径を大きくする必要があることがわかった。複合レンズが大型になると、材料の製造難度が高まるため、使用できる材料の種類が限られてしまう。この結果、複合レンズを構成する2つの材料の屈折率の差が0.5%以内で波長分散だけが異なるような材料の組み合わせを得ることが困難となる。
特許文献2および特許文献3に開示されている主焦点補正光学系では、このような材料の制約を克服して光学配置の工夫で高い結像性能を実現している。いま、材料の屈折率に少なからぬ差がある2つの材料よりなるレンズの組み合わせより複合レンズを構成したとする。
このとき、複合レンズの移動により大気分散による色収差は補正されるが、少なからず収差劣化も生じる。すなわち、天頂付近の天体を撮影する場合は非常に良好な分解能で撮影できる。しかしながら、天体の高度角(離角)変化に追従して複合レンズの移動量を変えていくと、収差劣化により天頂付近よりも分解能が低下してしまう。
特許文献1乃至3の実施例では光学パラメータを最適化することにより、複合レンズの移動量が大きい場合でも収差劣化が許容範囲内に収まるように構成している。しかしながら、更なる分解能の向上を図るためには複合レンズの移動量が大きい場合でも収差劣化を小さくすることが重要になってくる。
本発明は、大気分散補正機能を有し、視野角が大きい状態で天体を良好に観察することができる反射望遠鏡の提供を目的とする。
本発明の反射望遠鏡は、結像作用を有する反射鏡と、該反射鏡で結像する像を補正する補正光学系と、該補正光学系を介した像を光電変換する撮像素子とを有する反射望遠鏡であって、前記補正光学系は正レンズと負レンズよりなり、光軸に対して垂直方向の成分を持つ方向に移動する複合レンズを有しており、前記複合レンズを構成する正レンズと負レンズの材料の屈折率の差は0.5%以上あり、前記反射望遠鏡は、前記複合レンズの駆動量を検知する検知手段と、前記検知手段によって検知された複合レンズの駆動量から前記撮像素子の光軸に対する傾き補正量を演算する演算手段と、該演算手段によって算出された補正量から前記複合レンズの移動量と前記撮像素子の光軸に対する傾き量を駆動制御する制御手段と、を有することを特徴としている。
本発明によれば、星像のシャープさを維持しつつ大気分散補正効果を発揮することができるため、大気分散補正機能を有し、大きな視野角での天体観測ができる反射望遠鏡が得られる。
実施例1の反射望遠鏡の光学配置の説明図である。 実施例1の反射望遠鏡に用いられる主焦点補正光学系の構成を示す説明図である。 実施例1の反射望遠鏡の縦収差図である。 実施例1の反射望遠鏡の横収差図である。 実施例1の反射望遠鏡において複合レンズの移動による収差劣化を補正するための構成を示す概念図である。 実施例1において複合レンズを駆動していない天頂方向の観測状態での結像性能を示したエンサークルドエネルギー図である。 実施例1において複合レンズを最大に駆動している天頂離角60度方向の観測状態での結像性能を示したエンサークルドエネルギー図である。 実施例1において複合レンズを最大に駆動している天頂離角60度方向の観測状態で、撮像素子の傾きを補正した後の結像性能を示したエンサークルドエネルギー図である。
以下、図面を用いて本発明の反射望遠鏡の実施例について説明する。本発明の反射望遠鏡は、結像作用を有する反射鏡と、反射鏡で結像する像を補正する補正光学系(主焦点補正光学系)と、結像した像を光電変換する(電気信号に変換する)撮像素子を有する。補正光学系は互いに材料の屈折率が0.5%以上異なる正レンズと負レンズよりなり、光軸に対して垂直方向の成分を持つ方向に移動する複合レンズを有している。
反射望遠鏡は、複合レンズの駆動量を検知する検知手段と、検知手段によって検知された複合レンズの駆動量から撮像素子の光軸に対する傾きの補正量を算出する演算手段を有する。更に、演算手段によって算出された補正量から複合レンズの移動量と撮像素子の傾き量を駆動制御する制御手段と、を有する。複合レンズの移動量に応じて撮像素子の傾き量を変えている。
複合レンズはリニアモーター等の駆動手段で移動し、撮像素子はピエゾアクチュエータ等を用いた傾き駆動手段で駆動している。反射望遠鏡で観察する天体の天頂からの離角を天頂離角検知手段で検出し、その検出結果に基づいて又は外部の入力手段からの入力信号(離角信号)に応じて複合レンズの移動量が決定される。複合レンズを移動することによって生ずる像面の傾きを微調整するために撮像素子の傾きを調整する。これによって画面全体における光学性能を良好に維持している。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1の補正光学系を有する反射望遠鏡の光学配置の説明図である。図2は、図1の補正光学系の拡大説明図である。
図1において、1は反射望遠鏡である。M1は結像作用のある主鏡、100は補正光学系である。主鏡M1は、凹形状の回転双曲面(反射鏡)よりなっている。補正光学系100は、主鏡M1の焦点の近傍に配置され、主鏡M1によって発生する収差を補正する。天体からの光束は、図中右方から主鏡M1に入射し、主鏡M1で反射したあとに補正光学系100を介して撮像素子(撮像手段)3が配置される撮像面C1に結像する。
2は補正光学系100の一部を構成する複合レンズA1を光軸に対して垂直方向に移動させるADC駆動手段である。4は反射望遠鏡1の天頂からの離角を検出する天頂離角検出手段である。
図2に示した補正光学系100の構成について説明する。補正光学系100は、レンズL11〜レンズL15、複合レンズA1を有している。レンズL11〜レンズL15の5枚のレンズの形状を最適化している。
具体的には、補正光学系は、主鏡M1側から撮像面C1側に向かって順に、第1レンズL11、第2レンズL12、2枚の単レンズからなる大気分散補正用(大気色分散の補正用)の複合レンズ(ADC)A1を有する。更に第3レンズL13、第4レンズL14、第5レンズL15、と配置されている。天体からやってきた光は主鏡M1で反射されたあと、補正光学系100の第1レンズL11、第2レンズL12、複合レンズ(A1)、第3レンズL13、第4レンズL14、第5レンズL15を順に通過したあと、撮像手段3の撮像面C1に天体の像を結像する。
これにより補正光学系100は視野角1.6度の範囲内で良好に収差を補正しているが、大型化を避けるために有効視野角は1.5度として有効径を決定している。F1は透過波長帯域を選択するためのフィルタとCCDデュワーの窓材の厚みに相当する平行平面板である。
複合レンズA1は大気分散を補正するため、互いに屈折率と分散の異なる材料よりなる負レンズA11と正レンズA12の2つのレンズより構成されている。アクチュエータ(駆動手段)(移動機構)2により複合レンズA1を光軸に対し直交する方向の成分を持つように(図の矢印方向)に移動させることにより、大気分散による色ずれを補正する。複合レンズA1は、屈折率が互いに0.5%以上異なり、互いに分散の異なる材料よりなる一対のレンズA11,A12を、接合又は光軸方向に僅かの空気間隔(空気層)を隔てて隣接配置して構成している。
具体的には、レンズ(第1レンズ)A11を構成する材料(商品名BSL7Y)の屈折率ndが1.51633、アッベ数νdが64.2である。また、レンズ(第2レンズ)A12を構成する材料(商品名PBL1Y)の屈折率ndが1.54814、アッベ数νdが45.8である。このときレンズA11とレンズA12の材料の屈折率の比は
1.51633/1.54814=0.979
である。即ち屈折率は互いに2.1%異なっている。
本実施例の複合レンズA1は、材料の屈折率が互いに0.5%以上(好ましくは5%以下)異なる正レンズ(レンズA12)と負レンズ(レンズA11)を光軸方向に隣接配置して構成されている。これらの材料を組み合せ、しかも対向するレンズ面に同程度(曲率半径で±5%以内の差)の曲率を持たせている。即ち、レンズA11とレンズA12の対向するレンズ面の曲率半径を各々Rp、Rnとするとき、
0.95<Rn/Rp<1.05
の条件式を満足するようにしている。
これにより、複合レンズA1を光軸に対して直交する方向に移動させて大気分散の補正を行う場合に、必要な量の色収差を発生させている。なお、屈折率ndはd線(587.6nm)に対する屈折率である。アッベ数νdは以下によって定義される。
νd=(nd−1)/(nF−nC)
但し、nd:d線(587.6nm)に対する屈折率
nF:F線(486.1nm)に対する屈折率
nC:C線(656.3nm)に対する屈折率
また、レンズA11は物体側(主鏡M1側)の面が平面、レンズA12は撮像面(CI)側のレンズ面が平面となっている。すなわち、複合レンズA1の光入射面と光出射面は共に平面となっている。
これにより、単色光線に対しては、複合レンズA1を光軸に対して直交する方向に移動させたときの効果は単純な平板ガラスを移動させた場合と大差無くなり、単色収差の変化を小さく保っている。
次に、表1に反射望遠鏡1の実施例1の数値データを示す。表中の面番号は天体側から光束の進行順に各面に付した番号である。iは天体からの面の順序を示す。Riは各面の曲率半径、diは第i面と第(i+1)面との間の間隔を示す。R1は主鏡、R2〜R15は補正光学系100の面である。
材料には、石英(SILICA)と商品名BSL7Y,PBL1Yの2種類の材料を用いている。詳細には、石英(SILICA)は屈折率ndが1.45846、アッベ数νdが67.8である。材料BSL7Yは屈折率ndが1.51633、アッベ数νdが64.2である。材料PBL1Yは屈折率ndが1.54814、アッベ数νdが45.8である。実施例中の材料名は(株)オハラのガラス名を使用したが、他の同等品を使用してもよい。
本実施例の補正光学系100は5つの非球面を有する。非球面形状は、光軸方向にz軸、光軸と垂直方向にh軸、光の進行方向を正とし、Rを近軸曲率半径、kを円錐定数、A〜Gを4次〜16次の非球面係数としたとき
なる式で表わしている。また、表1においてfは主鏡M1と補正光学系100の合成焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは全画角(視野角)(度)を表す。なお、本実施例では、補正光学系100を含む反射望遠鏡1が天体観測に適した高山に設置されることを想定して、気温0℃、気圧600mbarの環境で良好な結像性能が得られるよう光学諸値を調整している。
(表1)
f = 18320mm FNO = 2.23 2ω= 1.5°
面番号 曲率半径R 面間隔d 材質 有効径
1(主鏡) 30000.0000(非球面) 13455.0000 8200.0
2 760.0000 98.0000 SILICA 820.0
3 1375.1117(非球面) 372.4491 804.5
4 -3535.0517(非球面) 46.0000 BSL7Y 615.5
5 656.2499 317.9915 573.4
6(ADC) ∞ 40.0000 BSL7Y 609.5
7(ADC) 1058.0000 3.0000 607.8
8(ADC) 1040.0000 82.0000 PBL1Y 608.9
9(ADC) ∞ 274.2607 607.6
10 -840.0002(非球面) 40.0000 PBL1Y 551.9
11 9800.0000 90.0000 567.9
12 480.0000(非球面) 102.0000 BSL7Y 627.3
13 4021.7590 100.0000 624.3
14 4176.7484 88.0000 SILICA 616.5
15 -1272.8223(非球面) 118.5964 613.5
16(Filter) ∞ 58.0000 SILICA 525.0
17(Filter) ∞ 15.0000 504.2
18 撮像面 ∞ --- --- 496.2
(非球面)
面 k A (4次) B(6次) C(8次)
1 -1.00835 0.00000 0.00000 0.00000

D(10次) E(12次) F(14次) G(16次)
0.00000 0.00000 0.00000 0.00000

面 k A (4次) B(6次) C(8次)
3 0.00000 -1.5010E-10 -7.8810E-17 -7.3909E-22

D(10次) E(12次) F(14次) G(16次)
1.0128E-26 -7.1216E-32 2.6165E-37 -3.8976E-43

面 k A (4次) B(6次) C(8次)
4 0.00000 6.8480E-11 5.6166E-16 -1.3924E-20

D(10次) E(12次) F(14次) G(16次)
3.3242E-25 -4.3715E-30 2.9654E-35 -8.1533E-41

面 k A (4次) B(6次) C(8次)
10 0.00000 2.7685E-09 -4.8556E-14 7.1761E-19

D(10次) E(12次) F(14次) G(16次)
-1.0764E-23 1.1874E-28 -7.9838E-34 2.3936E-39


面 k A (4次) B(6次) C(8次)
12 0.00000 -4.3555E-09 3.6359E-14 -5.9513E-19

D(10次) E(12次) F(14次) G(16次)
7.6588E-24 -7.1941E-29 3.9428E-34 -9.5434E-40

面 k A (4次) B(6次) C(8次)
15 0.00000 -1.0647E-09 3.3778E-15 -1.1026E-19

D(10次) E(12次) F(14次) G(16次)
2.2824E-24 -2.7430E-29 1.7558E-34 -4.8219E-40
図3,図4は、実施例1の反射望遠鏡1の収差図である。図3が縦収差図であり、図4が横収差図である。収差図から明らかなように、本実施例の主焦点補正光学系100を用いた反射望遠鏡1は、大気分散補正機能を有しつつ1.5度の視野角全域にわたって星像直径がRMS0.3秒角以内の良好な結像性能を有する。
実施例1の反射望遠鏡においては、観測したい天体が天頂方向にある場合には大気分散がの影響が無いので複合レンズA1を移動する必要はない。天頂方向からの離角を検出する天頂離角検出手段4によって検出された天体が、天頂方向から60度の方向(離角角度60度)にある場合に複合レンズA1の移動量が最大の約22mmとなる。
本実施例において天頂離角検出手段4を用いずに入力手段より外部から天頂離角を入力し、その値に基づいて複合レンズA1を駆動しても良い。
複合レンズA1を光軸に対して約22mm移動した場合でも収差は比較的良好に保たれているが、複合レンズA1を移動しない天頂方向での観測時と比べるとコマ収差および像面の倒れによる結像性能が低下する。これは複合レンズA1を構成するレンズA11とレンズA12の材料の組み合わせが必ずしも理想的ではなく、屈折率に差があることが原因である。主焦点補正光学系100の視野角を1.5度以上に大きくしようとすると必然的に複合レンズA1のサイズも非常に大きくなり、実施例1の反射望遠鏡1では有効径が600mmを超えるサイズとなっている。
これほどの大きいサイズの光学材料は製造が難しく、現実的には使用できる材料の種類が厳しく制約されてしまう。従って、現実には屈折率がほぼ同じで波長分散だけが異なるような理想的な光学材料の組み合わせを選択できないという制約の中で反射望遠鏡1を構成することが避けられない。そこで本実施例の反射望遠鏡1では、この複合レンズA1の移動によって発生する収差劣化による影響を補正する手段を設けている。
図5は本実施例の収差劣化を補正する手段を有する補正光学系100の要部概略図である。図5は複合レンズA1の移動による収差劣化を補正するための構成を示している。図5においてS1は複合レンズA1の光軸に対し垂直方向の成分に関する駆動量を検知する検知手段である。S2は検知手段S1によって検知された複合レンズA1の駆動量から撮像素子3の傾き補正量を算出する演算手段である。S3は、演算手段S2によって算出された補正量から撮像素子3の傾き角を変える制御手段である。S4は制御手段S3からの制御信号に基づいて撮像素子3を傾ける傾き駆動手段である。
以下に本実施例の動作について説明する。反射望遠鏡1が天頂から離れた方向にある天体を観測する際、目標天体の天頂離角に応じて複合レンズA1(ADC)の光軸に対する差異的な駆動量が決定される。天頂離角に対応する複合レンズA1の光軸に対する最適駆動量は、光学設計値から計算された数値テーブルあるいは数式の形で用意されている。複合レンズA1を駆動するための駆動手段(ADC駆動手段)2には検知手段S1が組み込まれており、複合レンズA1がどれだけ移動したかを検知する。
駆動手段2は検知手段S1と別々に構成されていても良い。駆動手段2を組み込む検知手段S1としては、光電スケール方式あるいは干渉方式のエンコーダ等が使用できる。なお、駆動手段2の駆動精度が十分に良いと考えられる場合には、複合レンズA1の駆動量指示値をそのまま検知結果としても良い。
次に補正量を演算する演算手段S2は、検知手段S1によって検知された複合レンズA1の移動量から予測される各画角での収差発生量を算出する。ここでいう収差発生量には画角によるフォーカス変動の成分も含んでいる。複合レンズA1の移動量と収差発生量の関係は光学設計パラメータから光線追跡により計算されるが、実際には予め計算しておいた結果を数値テーブルあるいは近似式の形で用意しておけば良い。
演算手段S2には、撮像素子3の駆動に対する収差変化の敏感度テーブルが予め用意されている。この敏感度テーブルを用いて、予測される収差の影響を全画角に渡って最も低減できる撮像素子3の光軸に対する傾き補正量を最適化演算により算出する。
次に撮像素子3の傾きを制御する制御手段S3は、演算手段S2によって決定された補正量の分だけ主焦点補正光学系100と撮像素子3との相対的な傾きが変更されるように、複合レンズA1の移動と同期して傾き駆動手段(アクチュエータ)S4を駆動させる。以上の手順により、複合レンズA1の移動に伴う収差劣化の影響を低減して天体観測を行っている。
図6に本実施例の反射望遠鏡で天頂方向の天体を観測する際、すなわち複合レンズA1を駆動していない状態でのエンサークルドエネルギー図を示す。計算波長は波長570nm〜670nmを透過する赤色フィルタを使って観測した場合としている。横軸は天体からの光束が撮像面C1上に集光するスポット半径をミクロン単位で示している。縦軸はそのスポット半径に包含される光エネルギーの比率を示している。
複数描かれているカーブは各々異なる画角におけるエンサークルドエネルギーを示している。図中に縦に描かれている点線は、最も良くない画角において80%のエネルギーを包含するスポット半径を示しており、結像性能の評価の目安としている。
図7は本実施例の主焦点補正光学系100で想定している最も大きな天頂離角60°に位置する天体を観測する際のエンサークルドエネルギー図である。この場合に大気分散の影響が最大となり、大気分散を補正するために複合レンズA1の駆動量も最大の約22mmとなる。図6と比較して分かるように、複合レンズA1の駆動によって少なからずコマ収差と像面傾きが発生し、結像性能が低下している。それでも複合レンズA1を駆動しない場合、すなわち大気分散の影響を補正しない場合と比べれば大幅に高い結像性能が得られている。
図8は天頂離角60°に位置する天体を観測する際に本発明を適用した結果のエンサークルドエネルギー図である。複合レンズA1の駆動による像面傾きとコマ収差を補正するために、主焦点補正光学系100に対して撮像素子3の傾きを約11秒(0.003°)だけ傾けている。これにより、複合レンズA1が駆動される方向の画角とその反対方向の画角における収差の非対称性が改善され、図8に示されるように最も良くない画角においても結像性能が向上している。
本実施例では波長570nm〜670nmを透過する赤色フィルタで観測する場合に最適化して撮像素子3の傾きを補正しているが、使用するフィルタ波長ごとに補正量を個別に設定することも可能である。
以上のように本実施例によれば、屈折率に0.5%以上の差がある2種類の材料で複合レンズを構成した場合でも星像のシャープさを損なうことなく大気分散補正効果を発揮することができる。このため、大気分散補正機能を有しつつ従来に比して視野角の大きな主焦点での高分解能な観測ができる反射望遠鏡が得られる。
以上述べた実施例では、視野角1.5°の例について説明したが、視野角はこの値に限らず実施可能である。例えば、視野角が1.2°や2.0°など、異なる視野角についても本発明を適用することができる。
また、上記の実施例においては、複合レンズA1として、光入射側と光出射側の面が平面または曲率半径の大きな球面である複合レンズA1を用いて光軸に対して直交する成分を持つ方向に複合レンズA1を移動させて大気分散を補正する例を示した。
しかし、これ以外の構成の複合レンズA1を用いても良い。例えば、特許文献1に記載されているように、両端面が同心球面形状である複合レンズを用いて、その曲率中心を回転中心として複合レンズを回転させて大気分散を補正する方式を用いてもよい。
M1 主鏡 100 補正光学系 L11 第1レンズ
L12 第2レンズ L13 第3レンズ L14 第4レンズ
L15 第5レンズ A1 複合レンズ(ADC)
A11 複合レンズを構成する第1レンズ
A12 複合レンズを構成する第2レンズ
F1 平行平面板 C1 撮像素子面 S1 ADC駆動量検知手段
S2 傾き補正量演算手段 S3 傾き制御手段 S4 傾き駆動手段
1 反射望遠鏡 2 ADC駆動手段 3 撮像手段
4 天頂離角検出手段

Claims (6)

  1. 結像作用を有する反射鏡と、該反射鏡で結像する像を補正する補正光学系と、該補正光学系を介した像を光電変換する撮像素子とを有する反射望遠鏡であって、
    前記補正光学系は正レンズと負レンズよりなり、光軸に対して垂直方向の成分を持つ方向に移動する複合レンズを有しており、
    前記複合レンズを構成する正レンズと負レンズの材料の屈折率の差は0.5%以上あり、
    前記反射望遠鏡は、前記複合レンズの駆動量を検知する検知手段と、前記検知手段によって検知された複合レンズの駆動量から前記撮像素子の光軸に対する傾き補正量を演算する演算手段と、該演算手段によって算出された補正量から前記複合レンズの移動量と前記撮像素子の光軸に対する傾き量を駆動制御する制御手段と、を有することを特徴とする反射望遠鏡。
  2. 前記複合レンズの正レンズと負レンズの材料の屈折率の差は5%以下であり、前記正レンズと前記負レンズは光軸方向に隣接配置して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射望遠鏡。
  3. 前記複合レンズの光入射側の面と光出射側の面は平面であることを特徴とする請求項1又は2の反射望遠鏡。
  4. 前記複合レンズの正レンズと負レンズは大気色分散を補正するために分散の異なる材料からなり、接合又は空気層を介して隣接配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項の反射望遠鏡。
  5. 前記複合レンズの正レンズと負レンズの対向するレンズ面の曲率半径を各々Rp、Rnとするとき、
    0.95<Rn/Rp<1.05
    なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項の反射望遠鏡。
  6. 天頂からの離角を検出する天頂離角検出手段を有し、該天頂離角検出手段からの検出結果に基づいて前記複合レンズを移動させる駆動手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項の反射望遠鏡。
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