JP2509361B2 - PbSe微粒子分散ガラスの製造方法 - Google Patents

PbSe微粒子分散ガラスの製造方法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、非線形光電子材料もしくは赤外透過フィル
ターガラス用材料として好適な微粒子分散ガラスの製造
方法に係り、特に、微粒子としてPbSeを分散させてなる
PbSe微粒子分散ガラスの製造方法に関する。
[従来の技術] 1983年に、大きさ100Å程度のCdSxSey(x+y=1)
半導体微粒子をマトリックスガラス中に分散させてなる
シャープカット・フィルターガラスにおいて3次の非線
形特性が測定され[J.Opt.Soc.Am.Vol.73,No.5,p647〜6
53(1983)]て以来、微粒子分散ガラスは、光スイッチ
や光コンピューター用等の非線形光電子材料として注目
を集めている。このような微粒子分散ガラスにおいて
は、量子閉じ込め効果によるエネルギーバンドの離散化
が観測され、バンド充満効果もしくは励起子閉じ込め効
果により3次の非線形特性が増大すると解釈されている
[例えば、『光学 第19巻第1号』(1990年1月)10〜
16ページ]。
既に、CdSxSey(x+y=1)微粒子分散ガラスの
他、Mn酸化物微粒子分散ガラス、Auコロイド分散ガラス
等においても、3次の非線形特性が測定されている
[『固体物理 第24巻第11号』(1989年11月)883〜890
ページ]。
このような微粒子分散ガラスは、従来より適用されて
いる溶融法の他、スパッター法、分子スタッフィング
法、ゾル−ゲル法等により製造することが可能である。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、従来の微粒子分散ガラスを非線形光電
子材料という観点からみた場合、非線形光電子材料とし
て適用できる波長領域の長波長側の限界は1.1μm未満
であり、光通信や光情報処理に使用される1.3μm帯や
1.5μm帯の波長を含む1.1μm以上の波長領域において
非線形光電子材料として適用できる微粒子分散ガラスの
報告例はない。
また、非線形光電子材料を得るという観点から従来の
微粒子分散ガラスの製造方法をみた場合、スパッター法
では薄膜体の微粒子分散ガラスしか得られず形状の自由
度に欠けるという難点があり、分子スタッフィング法お
よびゾル−ゲル法では得られる微粒子分散ガラスに細孔
やOH基が残存しやすいために光透過特性が悪いという難
点があり、従来の溶融法ではガラス融液を得る際の微粒
子成分の揮発が著しく(特に、微粒子として半導体を分
散させる場合)同等の非線形特性を有する微粒子分散ガ
ラスを再現性よく製造することが困難であるという難点
があった。
したがって本発明の目的は、1.1μm以上の波長領域
において非線形光電子材料として適用できる微粒子分散
ガラスを高い形状の自由度の下に再現性よく製造するこ
とができる、PbSe微粒子分散ガラスの製造方法を提供す
ることにある。
[課題を解決するための手段] 本発明は、上記目的を達成するためになされたもので
あり、本発明のPbSe微粒子分散ガラスの製造方法は、マ
トリックスとなる多成分ガラスの原料として、ガラスの
出発原料となる酸化物、原料加熱中に熱分解して酸化物
になる水酸化物、原料加熱中に熱分解して酸化物になる
炭酸塩、およびガラスからなる群より選択される少なく
とも1種の化合物を用い、PbSe微粒子の原料としてPbSe
の構成元素を含む1種または複数種の物質を用いて、前
記マトリックスとなる多成分ガラスの原料と前記PbSe微
粒子の原料とを含有する混合物を600〜1600℃の温度ま
で加熱してガラス融液とし、このガラス融液をPbSe微粒
子が析出する温度で熱処理した後、または前記ガラス融
液を冷却して得たガラスをPbSe微粒子が析出する温度で
熱処理した後に冷却することを特徴とするものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のPbSe微粒子分散ガラスの製造方法において
は、マトリックスとなる多成分ガラスの原料として、ガ
ラスの出発原料となる酸化物、原料加熱中に熱分解して
酸化物になる水酸化物、原料加熱中に熱分解して酸化物
になる炭酸塩、およびガラスからなる群より選択される
少なくとも1種の化合物を用いる。なお、ここでいう原
料加熱中に熱分解するとは、原料を加熱したときにガラ
ス融液となるまでに熱分解することを意味する。
本発明のPbSe微粒子分散ガラスの製造方法において、
マトリックスとなる多成分ガラスの原料を上記のように
限定する理由は、次のとおりである。
すなわち、PbSeの粉末状試薬を大気中もしくは窒素、
ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で加熱して
も、600℃よりも高い温度において重量減少が起きる。
この重量減少は、PbSe中のSeが酸化されて沸点の低いSe
酸化物が生成し、このSe酸化物が揮発することに起因し
ている。このため、ガラス融液を得る際の加熱雰囲気と
して酸化雰囲気を用いたり、あるいは不活性ガス雰囲気
を用いた場合でも、マトリックスとなる多成分ガラスの
原料として酸化能力の大きい硝酸塩、例えばNaNO3、KNO
3や塩化物例えばNaCl、KCl等を用いると、PbSe微粒子の
原料中に含まれるSeの相当量が酸化されてSe成分の揮発
が促進され、ガラス融液中のSe濃度が急激に減少してほ
ぼ残存量が0になる。
これに対し、マトリックスとなる多成分ガラスの原料
として、ガラスの出発原料となる酸化物、原料加熱中に
熱分解して酸化物になる水酸化物、原料加熱中に熱分解
して酸化物になる炭酸塩、およびガラスからなる群より
選択される少なくとも1種の化合物を用いると、PbSe微
粒子の原料中に含まれるSeの酸化が抑制されて、Se成分
の揮発を低く抑えることができるからである。マトリッ
クスとなる多成分ガラスの原料として、ガラスの出発原
料となる酸化物、600℃以下の温度で熱分解して酸化物
になる水酸化物、600℃以下の温度で熱分解して酸化物
になる炭酸塩、およびガラスからなる群より選択される
少なくとも1種の化合物を用いた場合には、PbSe微粒子
の原料中に含まれるSeの酸化を防止することができ、Se
成分の揮発を抑止できるため、特に好ましい。
本発明のPbSe微粒子分散ガラスの製造方法において用
いる、マトリックスとなる多成分ガラスの原料のうち、
ガラスの出発原料となる酸化物としては、B2O3、SiO2
GeO2、ZnO等、ガラスの出発原料として通常使用される
酸化物を挙げることができる。原料加熱中に熱分解して
酸化物になる水酸化物としてはB(OH)に相当するH3
BO3、Ca(OH)、Zn(OH)、Al(OH)、Cd(OH)
等を挙げることができる。これらの水酸化物のうち熱
分解温度が600℃以下である水酸化物としては、H3BO
3(熱分解温度:300℃)、Ca(OH)(熱分解温度:580
℃)、Zn(OH)(熱分解温度:125℃)等が挙げられ
る。また、原料加熱中に熱分解して酸化物になる炭酸塩
としては、ZnCO3、CdCO3、PbCO3、K2CO3、Na2CO3等を挙
げることができる。これらの炭酸塩のうち熱分解温度が
600℃以下である炭酸塩としては、ZnCO3(熱分解温度:1
50℃)、CdCO3(熱分解温度:350℃)、PbCO3(熱分解温
度:315℃)等が挙げられる。
マトリックスとなる多成分ガラスの原料の種類および
その組成は、目的とする微粒子分散ガラスの特性に応じ
て、適宜選択される。
また、本発明のPbSe微粒子分散ガラスの製造方法にお
いては、PbSeの原料として、PbSeの構成元素を含む1種
または複数種の物質を用いる。
PbSeの構成元素を含む1種の物質としては、PbSe、Pb
Se2、PbSeO4等を挙げることができる。また、PbSeの構
成元素を含む複数種の物質としては、Pbを含む物質(Pb
単体、PbO、PbCO3、PbSe、PbSe2、PbSeO4等)の少なく
とも1種とSeを含む物質(Se単体、ZnSe、Na2Se、BaSeO
4、PbSe、PbSe2、PbSeO4等)の少なくとも1種との混合
物を挙げることができる。PbSeの原料の種類およびその
組成は、目的とする微粒子分散ガラスの特性に応じて、
適宜選択される。
本発明のPbSe微粒子分散ガラスの製造方法において
は、上述したマトリックスとなる多成分ガラスの原料と
PbSeの原料とからなる混合物を600〜1600℃の温度まで
加熱してガラス融液とする。上記混合物を600〜1600℃
の温度まで加熱してガラス融液とする理由は、600℃未
満の温度では、PbSe微粒子の構成元素をイオン化させて
マトリックスガラス中に均一に溶解させることが困難に
なるからであり、1600℃を超える温度では、PbSeの原料
自体の揮発またはPbSeの構成元素の揮発が多くなり、Pb
Se微粒子を均一に分散させたPbSe微粒子分散ガラスを得
ることが困難になるからである。上記混合物を800〜150
0℃の温度まで加熱してガラス融液とした場合には、PbS
e微粒子の構成元素をイオン化させてマトリックスガラ
ス中に均一に溶解させることができ、かつPbSeの原料自
体の揮発およびPbSeの構成元素の揮発が少ないために、
特に好ましい。
本発明のPbSe微粒子分散ガラスの製造方法において
は、上述のようにして得たガラス融液をPbSe微粒子が析
出する温度で熱処理した後、または上記ガラス融液を冷
却して得たガラスをPbSe微粒子が析出する温度で熱処理
した後に冷却して、PbSe微粒子分散ガラスを得る。
ガラス融液に熱処理を施してPbSe微粒子を析出させる
際の熱処理温度は、PbSe微粒子が析出する温度であれば
特に限定されないが、特に好ましくはガラスの粘度が10
4〜1025ポイズとなる温度である。また、上記ガラス融
液を冷却して得たガラスに熱処理を施してPbSe微粒子を
析出させる際の熱処理温度も、PbSe微粒子が析出する温
度であれば特に限定されないが、特に好ましくはガラス
の粘度が1010〜1020ポイズとなる温度である。このと
き、PbSe微粒子の原料の使用量、熱処理温度および処理
時間を適宜選択することにより、析出するPbSe微粒子の
濃度および粒径を再現性よく制御することができる。
このような熱処理によりPbSe微粒子を析出させた後、
冷却することにより、粒径が概ね1000Å以下であるPbSe
微粒子が分散したPbSe微粒子分散ガラスが得られる。
本発明のPbSe微粒子分散ガラスの製造方法において
は、PbSe微粒子の原料中に含まれるSeの酸化が抑制され
てガラス融液からのSe成分の揮発が低く抑えられるた
め、PbSe微粒子を均一に、かつ再現性よく析出させるこ
とができる。また溶融法に基づくため、種々の形状のPb
Se微粒子分散ガラスを得ることができる。
PbSe微粒子分散ガラスの光吸収特性は、PbSe微粒子の
粒径や濃度により異なるが、光吸収のピーク波長は、最
も短波長側にあるものでも0.6μm程であるため、本発
明のPbSe微粒子分散ガラスの製造方法により得られるPb
Se微粒子分散ガラスは、可視光領域からPbSeバルク結晶
のエネルギーギャップに相当する4.7μmまでの波長領
域において、非線形光電子材料として適用することがで
きる。
さらに、PbSe微粒子分散ガラスの吸収端の波長は、Pb
Se微粒子の粒径により、0.7〜4.7μmまで変えることが
でき、そのときの透過率(厚さ2mmの試料の場合)は85
〜95%と高いため、赤外透過フィルターガラス用材料と
しても適用することができる。
[実施例] 以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1 マトリックスとなる多成分ガラスの原料として、38.7
重量部のB2O3試薬と45.4重量部のZnO試薬を、また、PbS
e微粒子の原料として15.9重量部のPbSe試薬をそれぞれ
用い、これらを混合して得た混合物を耐火物ルツボに入
れ大気中で1200℃まで加熱し、この温度で1時間保持し
てガラス融液を得た。
次に、このようにして得られたガラス融液をアルミ板
上にキャスティングして冷却した後、室温まで徐冷し
て、PbSe成分を含むガラスを得た。
次いで、このPbSe成分を含むガラスを550℃の温度で
2時間熱処理してPbSe微粒子を析出させた後、このガラ
スを室温まで徐冷して、PbSe微粒子分散ガラスを得た。
なお、このPbSe微粒子分散ガラスのマトリックスガラス
の組成は、50B2O3−50ZnO(数値はmol%を意味する。以
下同じ。)であった。
このようにして得られたPbSe微粒子分散ガラス中のPb
Se成分の濃度を化学分析により求めたところ、15.6wt%
であった。このPbSe成分の濃度は、上記混合物中に占め
るPbSeの原料の割合とほぼ同等であり、ガラス溶解プロ
セス中のPbSe成分の揮発損失は少なかった。
また得られたPbSe微粒子分散ガラスをX線回折法を用
いて測定したところ、PbSe結晶の回折ピークがみとめら
れ、この回折ピークからシェーラー解析式[例えば、
『カリティ X線回折要論』アグネ社(昭和51年・第15
版)101ページ)を用いてPbSe微粒子の大きさを求めた
ところ、表−1に示すように、平均粒径(d)は29Åで
あった。
また、得られたPbSe微粒子分散ガラスを0.1mmの厚さ
に光学研磨し、その光吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、第1図中に実線で示すように、同図中に破線で示す
シャープカット・フィルターガラス[商品名:Y52、HOYA
株式会社製、χ(3)=5×10-9esu(ただし、λ=0.5
32μm)]の光吸収曲線と同様にピークが認められた。
このときのピーク波長(λp)およびピーク吸収係数
(Ap)は、表−1に示すように、それぞれ、1.3μm、3
00cm-1であった。また吸収端は1.7μmであった。
このように、ガラス中に分散しているPbSe微粒子にお
いて、量子閉じ込め効果が確認された。また、ピーク波
長(λp)における吸収係数(Ap)が前述のシャープカ
ット・フィルターガラスの値(Ap=100cm-1)に比べ大
きいことから、このPbSe微粒子分散ガラスは1.5μm帯
の波長領域において大きな非線形特性を有するようにな
る。
実施例2〜5 PbSe成分を含むガラスの熱処理条件(熱処理温度:T
(℃)、熱処理時間:t(時間)を以下のように設定した
以外は実施例1と同様にして、実施例2〜5のPbSe微粒
子分散ガラスを得た。
・実施例2 T=580℃、t=2時間 ・実施例3 T=535℃、t=2時間 ・実施例4 T=520℃、t=2時間 ・実施例5 T=500℃、t=12時間 このようにして得られた実施例2〜5の各PbSe微粒子
分散ガラスの光吸収特性を実施例1と同様にして測定し
たところ、いずれのPbSe微粒子分散ガラスにおいても、
実施例1で得られたPbSe微粒子分散ガラスと同様に、ピ
ークを有する光吸収曲線が確認された。
なお、各PbSe微粒子ガラスにおけるPbSe微粒子の平均
粒径(d)、ピーク波長(λp)および吸収係数(Ap)
を一括して、表−1に示す。
実施例6 析出させるPbSe微粒子の原料として10.0重量部のPbSe
試薬と1.6重量部のSe試薬および4.6重量部のPbO試薬を
それぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、PbSe微粒
子分散ガラスを得た。
このようにして得られたPbSe微粒子分散ガラス中のPb
Se成分の濃度を実施例1と同様にして分析したところ、
15.1wt%であった。
また、このPbSe微粒子分散ガラスの光吸収特性を実施
例1と同様にして測定したところ、実施例1で得られた
PbSe微粒子分散ガラスと同様に、ピークを有する光吸収
曲線が確認された。
なお、得られたPbSe微粒子分散ガラスにおけるPbSe微
粒子の平均粒径(d)、ピーク波長(λp)およびピー
ク吸収係数(Ap)を表−1に示す。
実施例7 マトリックスとなる多成分ガラスの原料として、37.1
重量部のB2O3試薬と43.4重量部のZnO試薬を、また、PbS
e微粒子の原料として19.5重量部のPbSe試薬をそれぞれ
用い、これらを混合して得た混合物を耐火物ルツボに入
れ窒素雰囲気中で1150℃まで加熱し、この温度で1.5時
間保持してガラス融液とした以外は実施例1と同様にし
て、PbSe微粒子分散ガラスを得た。
このようにして得られたPbSe微粒子分散ガラス中のPb
Se成分の濃度を実施例1と同様にして分析したところ、
18.9wt%であった。
また、このPbSe微粒子分散ガラスの光吸収特性を実施
例1と同様にして測定したところ、実施例1で得られた
PbSe微粒子分散ガラスと同様に、ピークを有する光吸収
曲線が確認された。
なお、得られたPbSe微粒子分散ガラスにおけるPbSe微
粒子の平均粒径(d)、ピーク波長(λp)およびピー
ク吸収係数(Ap)を表−1に示す。
実施例8 マトリックスとなる多成分ガラスの原料として、66.0
重量部のH3BO3試薬と66.8重量部のZnCO2試薬とを用いた
以外は実施例1と同様にして、PbSe微粒子分散ガラス
(マトリックスガラスの組成は、50B2O3−50ZnO)を得
た。
このようにして得られたPbSe微粒子分散ガラス中のPb
Se成分の濃度を実施例1と同様にして分析したところ、
14.0wt%であった。
また、このPbSe微粒子分散ガラスの光吸収特性を実施
例1と同様にして測定したところ、実施例1で得られた
PbSe微粒子分散ガラスと同様に、ピークを有する光吸収
曲線が確認された。
なお、得られたPbSe微粒子分散ガラスにおけるPbSe微
粒子の平均粒径(d)、ピーク波長(λp)およびピー
ク吸収係数(Ap)を表−1に示す。
実施例9 実施例1と同様にしてガラス融液を得た後、このガラ
ス融液をあらかじめ550℃の温度に保持したステンレス
板の上に薄板状にキャスティングし、続けて550℃の温
度で2時間熱処理してPbSe微粒子を析出させた後、この
ガラスを室温まで徐冷して、PbSe微粒子分散ガラスを得
た。
このようにして得られたPbSe微粒子分散ガラス中のPb
Se成分の濃度を実施例1と同様にして分析したところ、
15.0wt%であった。
また、このPbSe微粒子分散ガラスの光吸収特性を実施
例1と同様にして測定したところ、実施例1で得られた
PbSe微粒子分散ガラスと同様に、ピークを有する光吸収
曲線が確認された。
なお、得られたPbSe微粒子分散ガラスにおけるPbSe微
粒子の平均粒径(d)、ピーク波長(λp)およびピー
ク吸収係数(Ap)を表−1に示す。
比較例1 マトリックスとなる多成分ガラスの原料として、B2O3
試薬38.7重量部と、本発明の限定外の原料であるZn(NO
3硝酸塩試薬105.7重量部とを用いた以外は実施例1
と同様にして得たガラス融液を、実施例1と同様にアル
ミ板上にキャスティングして冷却した後、室温まで徐冷
して、ガラスを得た。
この後、このガラスに実施例1と同様の熱処理を施し
たが、着色などの光吸収特性上の変化はなく、PbSe微粒
子の生成は認められなかった。
なお、熱処理後のガラス中のSe成分の濃度を化学分析
により求めたところ、分析限界の0.05wt%未満であっ
た。このことより、ガラス融液を得る際にほぼ全量のSe
成分が揮発損失したことが明らかになった。
比較例2 マトリックスとなる多成分ガラスの原料として、B2O3
試薬38.7重量部と、本発明の限定外の原料であるZnCl2
塩化物試薬76.0重量部とを用いた以外は実施例1と同様
にして得たガラス融液を、実施例1と同様にアルミ板上
にキャスティングして冷却した後、室温まで徐冷して、
ガラスを得た。
この後、このガラスに実施例1と同様の熱処理を施し
たが、着色などの光吸収特性上の変化はなく、PbSe微粒
子の生成は認められなかった。
なお、熱処理後のガラス中のSe成分の濃度を化学分析
により求めたところ、比較例1と同様に分析限界の0.05
wt%未満であった。このことにより、ガラス融液を得る
際にほぼ全量のSe成分が揮発損失したことが明らかにな
った。
比較例3 マトリックスとなるガラスの原料とPbSe微粒子の原料
とを含有する混合物を耐火物ルツボに入れ、大気中で本
発明の限定外の温度である1650℃まで加熱した以外は実
施例1と同様にして得たガラス融液を、実施例1と同様
にアルミ板上にキャスティングして冷却した後、室温ま
で徐冷して、ガラスを得た。
この後、このガラスに実施例1と同様の熱処理を施し
たが、着色などの光吸収特性上の変化はなく、PbSe微粒
子の生成は認められなかった。
なお、熱処理後のガラス中のSe成分の濃度を化学分析
により求めたところ、分析限界の0.05wt%未満であっ
た。このことにより、ガラス融液を得る際にほぼ全量の
Se成分が揮発損失したことが明らかになった。
[発明の効果] 以上説明したように、本発明のPbSe微粒子分散ガラス
の製造方法によれば、溶融法に基づき、ガラス融液を得
る際のPbSe成分の揮発を抑止することができるため、Pb
Se微粒子分散ガラスを高い形状の自由度の下に再現性よ
く製造することができる。
したがって本発明によれば、光通信や光情報処理に使
用される1.3μm帯や1.5μm帯の波長を含む1.1μm以
上の波長領域に適用できる非線形光電子材料、あるいは
赤外透過フィルターガラス用材料として好適なPbSe微粒
子分散ガラスを、安定供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例1で得られたPbSe微粒子分散ガ
ラスの光吸収曲線を示すグラフである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】マトリックスとなる多成分ガラスの原料と
    して、ガラスの出発原料となる酸化物、原料加熱中に熱
    分解して酸化物になる水酸化物、原料加熱中に熱分解し
    て酸化物になる炭酸塩、およびガラスからなる群より選
    択される少なくとも1種の化合物を用い、PbSe微粒子の
    原料としてPbSeの構成元素を含む1種または複数種の物
    質を用いて、前記マトリックスとなるガラスの原料と前
    記PbSe微粒子の原料とを含有する混合物を600〜1600℃
    の温度まで加熱してガラス融液とし、このガラス融液を
    PbSe微粒子が析出する温度で熱処理した後、または前記
    ガラス融液を冷却して得たガラスをPbSe微粒子が析出す
    る温度で熱処理した後に冷却することを特徴とするPbSe
    微粒子分散ガラスの製造方法。
  2. 【請求項2】マトリックスとなる多成分ガラスの原料と
    して、ガラスの出発原料となる酸化物、600℃以下の温
    度で熱分解して酸化物になる水酸化物、600℃以下の温
    度で熱分解して酸化物になる炭酸塩、およびガラスから
    なる群より選択される少なくとも1種の化合物を用い
    る、請求項(1)記載のPbSe微粒子分散ガラスの製造方
    法。
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