JP2506318B2 - p−グアニジノ安息香酸フェニルエステル誘導体を含有する医薬品 - Google Patents

p−グアニジノ安息香酸フェニルエステル誘導体を含有する医薬品

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JP2506318B2
JP2506318B2 JP6329399A JP32939994A JP2506318B2 JP 2506318 B2 JP2506318 B2 JP 2506318B2 JP 6329399 A JP6329399 A JP 6329399A JP 32939994 A JP32939994 A JP 32939994A JP 2506318 B2 JP2506318 B2 JP 2506318B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、p−グアニジノ安息香
酸誘導体を含有する医薬品に関する。さらに詳しく言え
ば、一般式(IB)
【化3】 (式中、すべての記号は後記と同じ意味を表わす。)で
示されるp−グアニジノ安息香酸フェニルエステル誘導
体を有効成分として含有するエラスターゼ阻害剤に関す
る。
【0002】
【発明の背景】好中球から放出されるライソゾーム水解
酵素群は、微生物あるいは炎症等による組織の損傷に対
する生体防御反応に重要な働きをしている。ライソゾー
ム酵素群の中で、アズール顆粒に局在する中性セリンプ
ロテインナーゼに属するエラスターゼおよびカテプシン
Gは主に結合組織分解の役割をしている。特に、エラス
ターゼは肺組織等の弾性維持のため直接機能しているエ
ラスチンの架橋構造や蛋白の疎水性部位を切断して弾性
結合組織を分解する[J. Cell. Biol., 40, 366(196
9)]。さらにエラスターゼはエラスチンのみならず、コ
ラーゲン線維の架橋領域をも選択的に分解する[J. Bio
chem., 84, 559 (1978)]ほか、プロテオグリカン等の
組織構造蛋白にも作用する[J. Clin. Invest., 57, 61
5 (1976)]など結合組織代謝において中心的な役割を演
じている。
【0003】生体において、エラスターゼはセリン酵素
に共通の阻害因子、α1−プロテインナーゼインヒビタ
ー(α1−PI)によって不活性化されるが、酵素−阻
害因子系のバランスに乱れが生じたとき、組織破壊性の
症状が出現する[Schweiz, Med. Wshr., 114, 895 (198
4)]。
【0004】正常組織におけるエラスチンの代謝回転は
非常に遅い[Endocrinology, 120,92 (1978)]が肺気腫
[Am. Rev. Respir. Dis., 110, 254 (1974)]をはじ
め、アテローム性動脈硬化[Lab. Invest., 22, 228 (1
970)]あるいはリウマチ性関節炎[in Neutral Proteas
es of Human Polymorphonuclear Leukocytes, Urbanand
Schwarzenberg, Baltimore-Munich (1978), 390頁]等
の種々の病的条件下ではエラスチン分解の異常亢進がみ
られ、エラスターゼと疾患との関係が注目されている
[感染・炎症・免疫,13, 13 (1983)]。
【0005】
【従来の技術】以上のような背景のもとに、最近エラス
ターゼ阻害剤の研究開発がさかんに行なわれており、種
々のエラスターゼ阻害物質が提案され、特許出願されて
いるが、本発明のようなグアニジノ安息香酸誘導体から
なるエラスターゼ阻害物質は今まで全く知られていな
い。一方、従来よりp−グアニジノ安息香酸の種々のエ
ステルが知られている。例えば、
【0006】(1)特公昭54-40534号明細書には、式
【化4】 で示される化合物が開示され、
【0007】(2)特開昭50-4038号明細書には、一般
【化5】 (式中、Raは芳香族基を示し、上記芳香族基は低級ア
ルキル基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシル
基、カルボキシ低級アルキル基、カルボエトキシ低級ア
ルキル基、低級アルコキシ基、アシルアミド基あるいは
カルバモイル基で置換されていてもよい。)(関連箇所
のみ抜粋)で示される化合物が開示され、
【0008】(3)特公昭57-35870号明細書には、一般
【化6】 (式中、Zaは炭素−炭素共有結合、メチレン基、エチ
レン基およびビニレン基よりなる群から選択される基を
表わす。)で示される化合物が開示され、
【0009】(4)特開昭55-55154号明細書には、一般
【化7】 (式中、Zbはメチレン基、エチレン基またはビニレン
基を表わし、Rbは、低級アルキル基を表わす。)で示
される化合物が開示され、
【0010】(5)西独公開特許第3005580号明細書に
は、一般式
【化8】 (式中、Zcはスルフォニル基またはZd−COで表わさ
れる基を示し、Zdは単結合、メチレン、エチレンまた
はビニレンを表わし、Rcおよび/またはRdは水素また
はアルキルを表わす。)で示される化合物が開示され、
【0011】(6)西独公開特許第1905813号明細書に
は、一般式
【化9】 (式中、Reおよび/またはRfは水素、アルキル、アリ
ール、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルア
ミノ、アルコキシ、カルボキシ、カルボアルコキシまた
はハロゲンを表わし、lはゼロまたは1を表わす。)で
示される化合物が開示されている。
【0012】(7)USP第4,423,069号明細書には、
一般式
【化10】 [式中、Rgはハロゲン、トリハロメチル、ニトリル
基、ホルミル基、ORi ,CORi,COORi,CON
2またはCONRjk(式中、Ri、RjまたはRkは炭
素数1〜8のアルキル基を表わす。)を表わし、Rh
水素または記号Rgで記される基を表わす。]で示され
る化合物またはその塩を投与する受胎阻害方法が開示さ
れ、
【0013】(8)特開昭61-43151号明細書には、一般
【化11】 (式中、Rlは水素、ニトリル基またはエーテル基を表
わし、Rmは、水素、エーテル基、エステル基またはカ
ルバモイル基を表わし、RlとRmが同時に水素を取る場
合は除く。)で示される化合物またはその塩を含有する
アクロシン抑制剤が開示されている。
【0014】しかしながら、上記(1)〜(6)の明細
書中においては、これらの化合物はすべてトリプシンや
プラスミンを阻害する作用を有しているので、急性膵炎
の治療や抗プラスミン剤として出血性疾患に有用である
ことが記載されているだけであり、同じく上記(7)お
よび(8)の明細書中における化合物はすべて受精時に
重要な酵素であるアクロシン等を抑制する作用を有して
いるので、受胎阻害方法や受精阻害剤として有用である
ことが記載されているだけである。
【0015】これらの化合物のエラスターゼ阻害作用に
ついては全く触れられていないし、作用の有無を確認し
たという報告も今まで全くなされていない。
【0016】エラスターゼはトリプシンやプラスミンと
同じセリンプロテインナーゼに属するが(以後、エラス
ターゼと区別するために、トリプシンやプラスミンを
「他のセリンプロテインナーゼ」と記載する。)、これ
らとは酵素蛋白的性質や基質特異性の点で大きく異な
り、従って、エラスターゼは他のセリンプロテインナー
ゼとは本質的には全く別種の酵素群であると考える方が
好ましく、それらの阻害剤を開発する場合にも全く異な
った観点から考えるべきである。すなわち、エラスター
ゼ、特にヒト好中球エラスターゼは分子量約 30,000[B
iochem. J., 155, 255 (1976)]の、等電点がpH8.77
〜9.15の範囲内[Anal. Biochem., 90, 481 (1978)]に
ある塩基性糖蛋白["Protein Degradation in Health a
nd Disease",D. Evered およびJ. Whelan 編, 51頁,
Excerpta Medica, Amsterdam (1980)]であり、他のセ
リンプロテインナーゼとは酵素蛋白的性質が異なってい
る。さらに基質特異性においてもエラスターゼは主にア
ラニン残基のC末端側で切断するエンドペプチターゼで
あり、この点でも他のセリンプロテインナーゼとは異な
る。このように両者は根本的に異なるものであるから、
エラスターゼの阻害物質を他のセリンプロテインナーゼ
阻害剤から類推することは全く不可能なことである。
【0017】
【発明の目的】本発明者らはこれらの知見に基づき、従
来のエラスターゼ阻害剤とは全く異なった化学構造を有
するエラスターゼ阻害剤を見出すべく鋭意研究を重ねた
結果、今回、意外にも他のセリンプロテインナーゼ阻害
物質として知られていたある種のp−グアニジノ安息香
酸フェニルエステル誘導体がエラスターゼ阻害作用を有
していることを見出し本発明を完成した。他のセリンプ
ロテインナーゼ阻害物質がエラスターゼ阻害作用を併せ
もっていることは今回実験によって初めて確認されたこ
とであって、それまでは全く予想されないことであっ
た。
【0018】
【発明の構成】本発明は、一般式(IB)
【化12】
【0019】(式中、R2は(i) 水素原子、(ii) 炭素
数1〜4のアルキル基、(iii) 炭素数1〜4のアルコキ
シ基、(iv) 炭素数2〜5のアルコキシメチル基、(v)
式COOR3(式中、R3は水素原子または炭素数1〜4
のアルキル基を表わす。)で示される基、(vi) 式CH2
COOR3(式中、R3は前記と同じ意味を表わす。)で
示される基、(vii) 式CH=CH−COOR3(式中、
3は前記と同じ意味を表わす。)で示される基、
【0020】(viii) ハロゲン原子、(ix) トリフルオロ
メチル基、(x) 式COR4(式中、R4は炭素数1〜4
のアルキル基、フェニル基、グアニジノフェニル基、シ
クロペンチルメチル基またはシクロヘキシルメチル基を
表わす。)で示される基、(xi) 式OCOR4(式中、R
4は前記と同じ意味を表わす。)で示される基、(xii)
式CH2OCOR4(式中、R4は前記と同じ意味を表わ
す。)で示される基、(xiii) 式SO24(式中、R4
前記と同じ意味を表わす。)で示される基、(xiv) 式O
SO24(式中、R4は前記と同じ意味を表わす。)で
示される基、
【0021】(xv) 式CONR56(式中、R5およびR
6はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアル
キル基、フェニル基、ベンジル基、ピリジル基を表わす
か、あるいはR5、R6およびそれらの結合している窒素
原子が一緒になってピロリジニル基、ピペリジノ基、ま
たはモルホリノ基を表わす。)で示される基、(xvi) 式
OCONR56(式中、R5およびR6は前記と同じ意味
を表わす。)で示される基、(xvii) 式SO2NR5
6(式中、R5およびR6は前記と同じ意味を表わす。)
で示される基、(xviii) 式
【化13】 (式中、R5およびR6は前記と同じ意味を表わす。)で
示される基、
【0022】(xix) 式NHSO27(式中、R7は炭素
数1〜4のアルキル基またはフェニル基を表わす。)で
示される基、(xx) ニトロ基、(xxi) 水酸基、(xxii) ヒ
ドロキシメチル基、(xxiii) グアニジノ基、(xxiv) ベ
ンジルオキシ基、(xxv) グアニジノフェニルチオメチル
基、(xxvi) モルホリノスルホニルフェノキシメチル
基、(xxvii) ピリジルオキシメチル基または(xxviii)
(1,1−ジオキソチアゾル−3−イル)カルボニル基
を表わし、nは1〜5の整数を表わし、かつnが2以上
の整数を表わす場合、それぞれのR2は互いに同じであ
ってもよいしまたは異なっていてもよい。)で示される
p−グアニジノ安息香酸フェニルエステル誘導体、およ
びその酸付加塩を有効成分として含有するエラスターゼ
阻害剤に関するものである。
【0023】特許請求の範囲を含む本明細書において、
単に“アルキル基”と示される場合、それは直鎖または
分枝鎖のアルキル基を意味するものとする。一般式(I
B)においてR2で表わされるアルキル基、およびR2
表わされるアルコキシ基中のアルキル部分、および
3、R4、R5、R6およびR7で表わされるアルキル基
としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル基および
それらの異性体が挙げられ、いずれの基も好ましい。一
般式(IB)において、R2で表わされるハロゲン原子
としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子が挙げ
られ、いずれの基も好ましい。一般式(IB)におい
て、R2で表わされる基としては(i)から(xxviii)で示
されるいずれの基も好ましい。
【0024】一般式(IB)で示される化合物の酸付加
塩は、非毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な
酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨ
ウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩の如き無機酸
塩、または酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、ク
エン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、
ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチ
オン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩の如き有機酸
塩が挙げられる。
【0025】一般式(IB)で示されるすべての化合物
は公知の方法により製造することができる。例えば、一
般式(II)
【化14】 (式中、Xはハロゲン原子を表わす。)で示される化合
物の酸付加塩と一般式(III)
【化15】 (式中、R2およびnは前記と同じ意味を表わす。)で
示される化合物を反応させることにより製造される。
【0026】上記反応はハロゲン化水素を副生する縮合
反応であるから、反応を促進するため脱ハロゲン化水素
剤を存在させるのが有利である。かかる脱ハロゲン化水
素剤としては第三級有機アミン、所望によっては金属重
炭酸塩等の無機塩基を使用することができる。第三級有
機アミンとしては脂肪族または芳香族または複素環式ア
ミン、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、
ジメチルアニリン、ピリジン等が使用される。なかでも
ピリジンは反応成分の溶媒としても作用するので特に好
ましい。また無機塩基としては、例えば重炭酸ソーダ、
炭酸ソーダ、苛性ソーダ等が使用される。
【0027】溶媒としては、例えばベンゼン、トルエ
ン、テトラヒドロフラン、ピリジン等が使用でき、前述
した如くピリジンは脱ハロゲン化水素剤としても作用す
るので特に好ましいものである。
【0028】反応は比較的早く進行するので室温、所望
によっては少し冷却して行なってもよく、一般には0℃
から室温で行なうとよい。反応時間は使用する反応温度
によって変化するが、一般には30分〜4時間、好まし
くは30分〜2.5時間で十分である。
【0029】反応を実施するにあたっては、上記原料化
合物(III)を溶媒、好ましくはピリジンに溶解し、こ
の溶液に原料化合物(II)を加えるとよい。原料化合物
(II)はピリジンを溶媒としたときに溶解せず、したが
って反応は不均一系となるが、反応の進行に従って目的
生成物がピリジンに溶解するので、究極的には均一溶液
を形成する。ピリジン以外の溶媒を使用した場合必ずし
も均一系とはならないが、不均一系のままでも反応を行
なうことができる。
【0030】目的生成物はハロゲン化水素との塩の形で
生成する。この目的生成物を分解するにあたっては、使
用した溶媒によっては濃縮し、あるいは濃縮せずに重炭
酸ナトリウムを加えて、生成物を炭酸塩にすると結晶と
して析出する。特に溶媒としてピリジンを用いたときに
は蒸発濃縮せずにそのまま炭酸塩にすることによって結
晶が析出する。勿論、目的生成物は溶媒を蒸発乾固して
も得られるが、上記の如く結晶析出せしめる方が精製さ
れた純度の高いものが得られるので好ましい。
【0031】このようにして得られた化合物(IB)
は、更に所望により、公知の方法によって前記した適当
な酸付加塩に変換することができる。また、上記の塩に
変換する過程で結晶として析出しない場合には、シリカ
ゲル等を用いたカラムクロマトグラフィにより精製する
ことができる。
【0032】上記反応で使用する原料化合物(II)はp
−グアニジノ安息香酸をチオニルクロライドと反応させ
る普通の方法で製造できる。この場合、生成する原料化
合物(II)はハロゲン化水素塩、特に塩酸塩である。原
料化合物(II)はp−グアニジノ安息香酸から酸ハライ
ド(II)を生成する際に副生するハロゲン化水素の塩と
して得られ、これをこのまま用いる方が有利である。一
般式(III)で示される化合物は公知の化合物である
か、あるいは公知の方法により容易に製造することがで
きる。
【0033】さらに一般式(IB)で示される化合物の
うちR2の中の少なくともひとつがカルボキシル基を表
わす化合物、すなわち、一般式(IB−a)
【化16】 (式中、R2aはR2で示される基のうちカルボキシル基
を除く基を表わし、pは1〜5の範囲内での整数を表わ
し、qは0または1〜4の範囲内での整数を表わす。)
で示される化合物は、一般式(IV)
【化17】 (式中、記号φはフェニル基を表わし、その他の記号は
前記と同じ意味を表わす。)で示される化合物を脱ベン
ジル化反応に付すことにより得られる。かかる脱ベンジ
ル化反応は不活性ガス(例えば、アルゴン、窒素等)雰
囲気中、例えば、無水の臭化水素−酢酸溶液を用いて行
なわれる。温度は一般的には0〜50℃で、好ましくは
室温で行なうのがよい。
【0034】また、化合物(IV)は前記一般式(II)で
示される化合物の酸付加塩と一般式(V)
【化18】 (式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)で
示される化合物をエステル化反応に付すことによって得
られる。この反応は前述の記載と同様にして行なう。
【0035】また、化合物(V)は一般式(VI)
【化19】 (式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)で
示される化合物をベンジル化反応に付すことにより得る
ことができる。ベンジル化反応は公知の方法によって行
なわれる。一般式(VI)で示される化合物は公知化合物
であるか、あるいは公知の方法により容易に製造するこ
とができる。
【0036】一般式(IB)で示される化合物のうちR
2の中の少なくともひとつがヒドロキシメチル基を表わ
す化合物、すなわち一般式(IB−b)
【化20】 (式中、R2bはR2で示される基のうちヒドロキシメチ
ル基を除く基を表わし、rは1〜5の範囲内での整数を
表わし、sは0または1〜4の範囲内での整数を表わ
し、r+sは1〜5の範囲内での整数を表わし、その他
の記号は前記と同じ意味を表わす。)で示される化合物
は、一般式(VII)
【化21】 (式中、THPは2−テトラヒドロピラニル基を表わ
し、その他の記号は前記と同じ意味を表わす。)で示さ
れる化合物を、脱THP化反応に付すことにより得られ
る。かかる脱THP化反応は、例えば、酢酸、プロピオ
ン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸の如き有機酸
の水溶液(好ましくは酢酸)または塩酸、硫酸の如き無
機酸の水溶液中、好適には水と混和しうる有機溶媒、例
えばメタノールまたは1,2−ジメトキシエタン、ジオ
キサンもしくはテトラヒドロフランの如きエーテル類存
在下、室温から75℃の温度(好ましくは37℃以上の
温度)で行なうとよい。
【0037】また、化合物(VII)は、一般式(II)で
示される化合物の酸不加塩と一般式(VIII)
【化22】 (式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)で
示される化合物をエステル化反応に付すことにより得ら
れる。かかる反応は前述の記載と同様にして行なう。
【0038】式(VIII)で示される化合物は、一般式
(IX)
【化23】 (式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)で
示される化合物を脱ベンジル化反応に付すことにより得
られる。かかる脱ベンジル化反応は、例えば、水素ガス
雰囲気下、触媒としてパラジウム−炭素を用いて酢酸エ
チル、エタノールおよびベンゼン等を使用して、一般に
は0〜40℃の温度で(好ましくは常温で)行なわれ
る。式(IX)で示される化合物は公知の化合物である
か、または公知の方法によって得ることができる。
【0039】さらに、一般式(IB)で示される化合物
のうち、一般式(IB−c)
【化24】
【0040】(式中、R2cは(i) 水素原子、(ii) 炭素
数1〜4のアルキル基、(iii) 炭素数1〜4のアルコキ
シ基、(iv) 炭素数2〜5のアルコキシメチル基、(v)
式COOR3(式中、R3は前記と同じ意味を表わす。)
で示される基、(vi) 式CH2COOR3(式中、R3は前
記と同じ意味を表わす。)で示される基、
【0041】(vii) ハロゲン原子、(viii) トリフルオ
ロメチル基、(ix) 式COR4(式中、R4は前記と同じ
意味を表わす。)で示される基、(x) 式OCOR4(式
中、R4は前記と同じ意味を表わす。)で示される基、
(xi) 式CH2OCOR4(式中、R4は前記と同じ意味を
表わす。)で示される基、(xii) 式SO24(式中、R
4は前記と同じ意味を表わす。)で示される基、(xiii)
式OSO24(式中、R4は前記と同じ意味を表わ
す。)で示される基、
【0042】(xiv) 式CONR56(式中、R5および
6は前記と同じ意味を表わす。)で示される基、(xv)
式OCONR56(式中、R5およびR6は前記と同じ意
味を表わす。)で示される基、(xvi) 式SO25
6(式中、R5およびR6は前記と同じ意味を表わす。)
で示される基、(xvii) 式
【化25】 (式中、R5およびR6は前記と同じ意味を表わす。)で
示される基、
【0043】(xviii) 式NHSO27(式中、R7は前
記と同じ意味を表わす。)で示される基、(xix) 水酸
基、(xx) ヒドロキシメチル基、(xxi) グアニジノ基、
(xxii) ベンジルオキシ基、(xxiii) グアニジノフェニ
ルチオメチル基、(xxiv) モルホリノスルホニルフェノ
キシメチル基、(xxv) ピリジルオキシメチル基または(x
xvi) (1,1−ジオキソチアゾル−3−イル)カルボ
ニル基を表わし、n'は1〜5の整数を表わし、かつn'
が2以上の整数を表わす場合、それぞれのR2cは互いに
同じであってもよいし、または異なっていてもよい。)
で示される化合物は、
【0044】一般式(X)
【化26】 (式中、R2cおよびn'は前記と同じ意味を表わす。)
で示される化合物と、式(XI)
【化27】NH2−CN (XI) で示されるシアナミドを反応させることによっても製造
することができる。
【0045】上記反応は原料化合物(X)を水またはメ
タノール、エタノール、テトラヒドロフランのような不
活性有機溶媒、あるいは水とアルコールとの混合溶媒中
に加え、化合物(X)と等モル量または過剰の鉱酸、例
えば塩酸、硫酸の存在下で過剰の式(XI)の化合物を加
え、室温から反応混合物の還流温度で15分から2時間
反応させることにより行なわれる。生成した目的化合物
は、先の方法と同様にして単離、精製され、また所望に
より酸付加塩に変換される。上記反応で使用する原料化
合物(X)は、相当するp−ニトロ安息香酸フェニルエ
ステル化合物をエタノール等の低級アルカノールに溶か
し、常温常圧下または加温加圧下にパラジウム炭素、パ
ラジウム黒、二酸化白金、ニッケル等の水素化触媒の存
在下に接触還元することによって容易に製造することが
できる。もう一方の原料であるシアナミド(XI)は公知
化合物である。
【0046】
【発明の効果】本発明に係る一般式(IB)で示される
p−グアニジノ安息香酸フェニルエステル誘導体、およ
びその酸付加塩は、エラスターゼ阻害作用を有するの
で、哺乳動物、特にヒトにおけるエラスターゼによるエ
ラスチン分解、コラーゲン線維の分解および/またはプ
ロテオグリカン分解の異常亢進に起因する疾患の治療お
よび/または予防に有用である。そのような疾患として
は、肺気腫、アテローム性動脈硬化およびリウマチ性関
節炎等が挙げられる。
【0047】エラスターゼに対する阻害作用 本発明化合物のエラスターゼ阻害作用は以下に述べるス
クリーニング系により確認された。
【0048】(i)実験方法 ヒト好中球エラスターゼを用いて、Biethらの方法[Bio
chem. Med., 75, 350(1974)]を基本としたわずかな変
法によって行なった。すなわち、好中球エラスターゼに
比較的特異性の高い合成基質[サクシニル−アラニル−
プロリル−アラニル−p−ニトロアニリド(Suc-Ala-Pr
o-Ala-pNA、ペプチド研究所製造)]を用いた吸光度法
である。1mM Suc-Ala-Pro-Ala-pNA(N−メチルピリ
ドンで100mMに溶解し、その100分の1量を反応
混液に加えた。)、0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.
0)、0.2M塩化ナトリウム水溶液、種々の濃度の検体液
および酵素液からなる反応混液1mlを37℃で30分
間インキュベートした。反応液に50%酢酸100μl
を加えて反応を停止した後、遊離したp−ニトロアニリ
ドを405nmの吸光度で測定し、次式によって阻害率
を求めた。
【0049】阻害率(%)=(1−(検体値−ブランク
値)/(コントロール値−ブランク値)×100
【0050】(ii)結果 結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
【表8】
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】1)本化合物は特開昭50-4038号明細書の実
施例4に記載された化合物である。 2)薬物濃度が50μg/mlであるときの阻害%を示
す。
【0062】実験結果より、本発明に係る化合物はエラ
スターゼ阻害作用を有することが確認された。さらに本
発明に係る化合物の毒性は十分に低いものであり、医薬
品として十分安全に使用できることが確認された。例え
ば、マウスを用いた静脈内投与による急性毒性試験にお
いて、一般式(IB)における(R2nが2,5−ジク
ロロ、水素原子、3−クロロ−5−ヒドロキシ、3−ク
ロロ−5−エタンスルホニルオキシおよび3−クロロ−
4−(N,N−ジエチルスルフアモイル)を表わす化合
物のLD50値はともに50〜150mg/Kgの範囲内であ
った。従って、本発明化合物は哺乳動物、特にヒトにお
けるエラスターゼによるエラスチン等の蛋白の分解の異
常亢進に起因する疾患の治療および/または予防に有用
であることが確認された。
【0063】一般式(IB)で示される化合物およびそ
の酸付加塩を上記の目的で用いるには通常全身的あるい
は局所的に、経口または非経口で投与される。投与量は
年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等に
より異なるが、通常成人ひとり当り、1回につき50mg
〜500mgの範囲で1日1回から数回経口投与される
か、あるいは成人ひとり当り、1回につき10mg〜20
0mgの範囲で1日1回から数回非経口投与(好ましくは
静脈内投与)される。もちろん前記したように、投与量
は種々の条件で変動するので、上記投与量範囲より少な
い量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場
合もある。
【0064】本発明による経口投与のための固体組成物
としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。このよう
な固体組成物においては、ひとつまたはそれ以上の活性
物質が、少なくともひとつの不活性な希釈剤、例えば乳
糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセル
ロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロ
リドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと混合され
る。組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添
加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑
剤、繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤、ラ
クトースのような安定化剤、グルタミン酸またはアスパ
ラギン酸のような溶解補助剤を含有していてもよい。錠
剤または丸剤は必要により白糖、ゼラチン、ヒドロキシ
プロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロ
ースフタレートなどの胃溶性あるいは腸溶性物質のフィ
ルムで被膜してもよいし、また2以上の層で被膜しても
よい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプ
セルも包含される。経口投与のための液体組成物は、薬
剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ
剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性
な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成
物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助
剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していても
よい。経口投与のためのその他の組成物としては、ひと
つまたはそれ以上の活性物質を含み、それ自体公知の方
法により処方されるスプレー剤が含まれる。この組成物
は不活性な希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような
安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナト
リウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸を含有し
てもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば米国特許第
2868691号および同第3095355号明細書に詳しく記載され
ている。
【0065】本発明による非経口投与のための注射剤と
しては、無菌の水性または非水性の溶液剤、懸濁剤、乳
濁剤を包含する。水性の溶液剤、懸濁剤としては、例え
ば注射用蒸留水および生理食塩水が含まれる。非水性の
溶液剤、懸濁剤としては、例えばプロピレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物
油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート
80等がある。このような組成物は、さらに防腐剤、湿
潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えば、ラクトー
ス)、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギ
ン酸)のような補助剤を含んでいてもよい。これらは例
えばバクテリア保留フィルターを通すろ過、殺菌剤の配
合または照射によって無菌化される。これらはまた無菌
の固体組成物を製造し、使用前に無菌水または無菌の注
射用溶媒に溶解して使用することもできる。非経口投与
のためのその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以
上の活性物質を含み、それ自体公知の方法により処方さ
れる外用液剤、軟膏のような塗布剤、直腸内投与のため
の坐剤および腟内投与のためのペッサリー等が含まれ
る。
【0066】
【実施例】以下、参考例および実施例により本発明を詳
述するが、本発明はこれらの例に限定されるものではな
い。なお例中の「IR」は「赤外吸収スペクトル」を表
わし、特別の記載がない場合には、KBr法で測定して
いる。また表中の「メシル酸塩」は「メタンスルホン酸
塩」を意味する。
【0067】参考例1 p−グアニジノ安息香酸3,5−ジクロロフェニルエス
テル・メタンスルホン酸塩
【化28】
【0068】p−グアニジノベンゾイルクロライド塩酸
塩(西独特許第3005580号明細書および米国特許第42834
18号明細書のそれぞれの実施例1に記載の方法により製
造した。)700mg、3,5−ジクロロフェノール4
90mgおよびピリジン10mlの混合物を氷冷下で3
0分間かきまぜた。反応混合物にジエチルエーテルを加
えてデカンテーションし、得られた上澄液に飽和炭酸水
素ナトリウム水溶液を加えて目的物の炭酸塩を得た。得
られた結晶を水およびアセトンで順次洗浄し真空乾燥し
た。結晶をエタノールに懸濁させ、メタンスルホン酸0.
124mgを加え、析出した結晶を真空乾燥して次の物性
値を有する標題化合物(白色結晶)506mgを得た。 融点:232〜234℃; IR値:ν 3340, 3150, 1730, 1680, 1620, 1600, 15
70, 1550, 1410, 1260,1200, 1170, 1090, 1060, 1040
cm-1
【0069】以下、参考例1と同様にして、p−グアニ
ジノベンゾイルクロライド塩酸塩と相当するフェノール
化合物を用いて、表2に示す化合物を得た。
【化29】
【0070】
【表11】
【0071】
【表12】
【0072】
【表13】
【0073】
【表14】
【0074】
【表15】
【0075】
【表16】
【0076】
【表17】
【0077】
【表18】
【0078】
【表19】
【0079】
【表20】
【0080】
【表21】
【0081】
【表22】
【0082】
【表23】
【0083】
【表24】
【0084】
【表25】
【0085】
【表26】
【0086】
【表27】
【0087】
【表28】
【0088】
【表29】
【0089】
【表30】
【0090】
【表31】
【0091】
【表32】
【0092】
【表33】
【0093】
【表34】
【0094】
【表35】
【0095】参考例124 p−グアニジノ安息香酸3−カルボキシ−2−クロロフ
ェニルエステル・臭化水素酸塩
【化30】
【0096】3−カルボキシ−2−クロロフェノール7
00mgに1規定水酸化ナトリウム4mlを加えた後、
減圧濃縮して相当するナトリウム塩を得た。ナトリウム
塩をヘキサメチルホスホルアミド20mlに溶かし、ベ
ンジルブロマイド0.58mlを加え一夜撹拌した。反応混
合物をジエチルエーテルで希釈し、水および飽和食塩水
で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し
た。残留物とp−グアニジノベンゾイルクロライド塩酸
塩(特開昭55-115865号明細書および米国特許第4283418
号明細書のそれぞれの実施例1に記載の方法により製造
した。)1gを、ピリジン中氷水浴中で15分間撹拌し
た。反応混合物にジエチルエーテルを加え、デカンテー
ションし、不溶性の残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶
液を加えて結晶をろ過し、さらに水およびアセトンで順
次洗浄し真空乾燥した。得られた結晶200mgを、ア
ルゴン雰囲気中、30%臭化水素−酢酸約5mlを加え
室温で3時間撹拌した。反応混合液にジエチルエーテル
を加えて析出した結晶をさらにジエチルエーテルで洗
い、真空乾燥して次の物性値を有する標題化合物(黄色
粉末)192mgを得た。 融点:220〜227℃。
【0097】以下、参考例124と同様にして表3に示
す物性値を有する参考例125と参考例126の化合物
を得た。
【表36】
【0098】参考例127 p−グアニジノ安息香酸3−クロロ−5−ヒドロキシメ
チルフェニルエステル・酢酸塩
【化31】
【0099】3−クロロ−5−ヒドロキシ安息香酸1.97
0gをジメチルホルムアミド30mlに溶解し、水素化
ナトリウム601mgを加えて、10分間室温で撹拌し
た。反応液に、臭化ベンジル4.288gを加えて、室温で
2時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル30mlを加
えた後、数回水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して
減圧濃縮した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロ
マトグラフィー(溶出溶媒、ヘキサン:酢酸エチル=1
0:1)で精製して、次の物性値を有する3−クロロ−
5−ベンジルオキシ安息香酸ベンジルエステル3.61gを
得た。 TLC(ヘキサン:酢酸エチル=10:1):Rf 0.
26。
【0100】ベンジル体3.61gをテトラヒドロフラン5
0mlに溶かして、リチウムアルミニウムハイドライド
579mgを加え、室温で2時間反応させた。反応混合
液に、酢酸エチルを加えて、過剰の試薬を分解して、1
規定水酸化ナトリウム水溶液中に注ぎ込んだ。反応混合
液をジエチルエーテルで抽出した後、抽出液を無水硫酸
マグネシウムで乾燥して減圧濃縮し、残留物をシリカゲ
ルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒、ジクロロメタ
ン)で精製して、次の物性値を有する3−クロロ−5−
ベンジルオキシベンジルアルコール1.502gを得た。 TLC(クロロホルム:メタノール=10:1):Rf
0.69。
【0101】アルコール体1.502gをジクロロメタン2
0mlに溶かして、ジヒドロピラン655mgと触媒量
のp−トルエンスルホン酸を加えて、室温で1時間反応
させた。反応混合液に少量のピリジンを加えて水洗し、
さらに濃縮した。得られた残留物をシリカゲルカラムク
ロマトグラフィー(溶出溶媒、ヘキサン:酢酸エチル=
10:1)で精製して、次の物性値を有する3−クロロ
−5−ベンジルオキシベンジルアルコール−O−(2−
テトラヒドロピラニル)エーテル1.83gを得た。 TLC(ヘキサン:酢酸エチル=10:1):Rf 0.
20。
【0102】得られたベンジル体996mgを酢酸エチ
ル7mlに溶かして10%パラジウム炭素を触媒にし
て、常温、常圧、水素雰囲気下で脱ベンジル化した。3
時間後に反応を終了し、得られた粗製物をシリカゲルカ
ラムクロマトグラフィー(溶出溶媒、ヘキサン:酢酸エ
チル=5:1)で精製して、次の物性値を有する3−ク
ロロ−5−(2−テトラヒドロピラニルオキシメチル)
フェノール274mgを得た。 TLC(ヘキサン:酢酸エチル=5:3):Rf 0.2
4。
【0103】フェノール体274mgをピリジン3ml
に溶解して、p−グアニジノベンゾイルクロライド塩酸
塩396mgを加え、室温で2時間反応した。反応混合
液にジエチルエーテル20mlを加え、析出物をろ取し
た。析出物を更にジエチルエーテルで洗浄した。不溶性
の残渣に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて生成した炭
酸塩をろ別した。粗炭酸塩は60%酢酸3mlに溶かし
て37℃で2時間反応させた。減圧下で酢酸を留去した
後、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶
出溶媒、クロロホルム:メタノール:酢酸=10:2:
1)で精製し、次の物性値を有する標題化合物100m
gを得た。 TLC(クロロホルム:メタノール:酢酸=10:2:
1):Rf 0.26; NMR(CD3OD):δ 8.2(2H,d,J=8Hz),7.42(2H,d,J=8H
z),7.30(1H,bs),7.16(2H,bs),4.64(2H,s)。
【0104】参考例128 p−グアニジノ安息香酸3−クロロ−5−(4−モルホ
リノスルホニル)フェノキシメチルフェニルエステル・
酢酸塩
【化32】
【0105】3−クロロ−5−ヒドロキシ安息香酸40
4mgをジクロロメタン10mlに溶かして、さらにジ
ヒドロピラン256mgを加えた。触媒量のp−トルエ
ンスルホン酸塩を加えて、室温で1時間反応させた。反
応混合液に少量のピリジンを加え、さらに水洗し、無水
硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して相当する(2
−テトラヒドロピラニル)エーテルを得た。得られた粗
製物は精製することなく、次の反応に用いた。すなわ
ち、粗製物をテトラヒドロフラン10mlに溶かして氷
水浴中で冷却し、この混液中にリチウムアルミニウムハ
イドライド133mgを加え、撹拌した。反応温度を室
温まで上昇させ1時間反応後、反応混合液に酢酸エチル
を加えて過剰の試薬を分解した。反応混合液を1規定水
酸化ナトリウム20ml中に注ぎこんで、その混合液を
酢酸エチルで抽出し、減圧濃縮し、残留物をシリカゲル
カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒、ヘキサン:酢酸
エチル=5:2)で精製して、次の物性値を有する3−
クロロ−5−(テトラヒドロピラニルオキシ)ベンジル
アルコール541mgを得た。 TLC(ヘキサン:酢酸エチル=5:3):Rf 0.
5。
【0106】得られたアルコール体484mgをジクロ
ロメタン10mlに溶かした。この混合液にトリエチル
アミン242mgを加えて、氷水浴中で冷却し、さらに
メタンスルホニルクロリド273mgを滴下した。反応
温度を室温まで上昇させた後、水洗し、無水硫酸マグネ
シウムで乾燥し、減圧濃縮し、相当するメシレートを得
た。得られた粗製物は精製することなく次の反応に用い
た。p−モルホリノスルホニルフェノール460mg
を、テトラヒドロフラン7mlとヘキサメチルホスホル
アミド1mlとの混合溶液に溶かした。この混合物に水
素化ナトリウム57.6mgを加えて、10分間撹拌した。
次いで、上で得られたメシレートをこの反応液に加え室
温で1時間反応した。反応混合液に水を加えて、酢酸エ
チルで抽出し、水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥
し、減圧濃縮した。得られた粗製物をメタノール5ml
とテトラヒドロフラン5mlの混合溶媒に溶かし、さら
にp−トルエンスルホン酸50mgを加えて室温で2時
間反応させ溶媒を留去し、残留物をシリカゲルカラムク
ロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:3)で
精製して次の物性値を有する3−クロロ−5−(4−モ
ルホリノスルホニル)フェノキシメチルフェノール22
8mgを得た。 TLC(ヘキサン:酢酸エチル=5:3):Rf 0.1
8。
【0107】フェノール体228mgと、p−グアニジ
ノベンゾイルクロライド塩酸塩207mgとピリジン3
mlを用いて、参考例1と同様にエステル化した。生成
物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒、
酢酸エチル:酢酸:水=400:100:30)で精製
して次の物性値を有する標題化合物150mgを得た。 TLC(クロロホルム:メタノール:酢酸=10:2:
1):Rf 0.7; IR:ν 3600〜2500, 1720, 1680, 1560, 1400, 1330
cm-1
【0108】参考例129 p−グアニジノ安息香酸3−メトキシ−5−(4−モル
ホリノスルホニル)フェノキシメチルフェニルエステル
・酢酸塩
【化33】
【0109】参考例128に記載と同様の製法により、
次の物性値を有する標題化合物(白色粉末)を得た。 TLC(酢酸エチル:酢酸:水=400:100:3
0):Rf 0.72; IR:ν 3600〜2500, 1720, 1680, 1590, 1400, 1340
cm-1
【0110】実施例1 p−グアニジノ安息香酸3−クロロ−5−ヒドロキシフ
ェニルエステル・メタンスルホン酸塩(参考例1で製造
した)10g、繊維素グリコール酸カルシウム(崩壊
剤)400mg、ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)
200mgおよび微細晶セルロース 9.4gを常法により
混合し、打錠して、一錠中に100mgの活性成分を含
有する錠剤100錠を得た。
【0111】実施例2 p−グアニジノ安息香酸3−クロロ−5−ヒドロキシフ
ェニルエステル・メタンスルホン酸塩(参考例1で製造
した)1gをエタノール10mlに溶かし、バクテリア
保留フィルターをとおして殺菌し、5ml容量アンプル
当り0.5mlずつ入れることにより、アンプル当り50
mgの薬物が含まれるようにし、アンプルを封管した。
アンプルの内容物は適当な容量の希釈液、例えばpH8.
6のトリス塩酸緩衝液で2.5mlに希釈して注射剤として
用いられる。
【0112】実施例3 p−グアニジノ安息香酸3−クロロ−5−エタンスルホ
ニルオキシフェニルエステル・メタンスルホン酸塩(参
考例1で製造した)10g、繊維素グリコール酸カルシ
ウム(崩壊剤)400mg、ステアリン酸マグネシウム
(潤滑剤)200mgおよび微細晶セルロース9.4gを
常法により混合し、打錠して、一錠中に100mgの活
性成分を含有する錠剤100錠を得た。
【0113】実施例4 p−グアニジノ安息香酸3−クロロ−5−エタンスルホ
ニルオキシフェニルエステル・メタンスルホン酸塩(参
考例1で製造した)1gを、エタノール10mlに溶か
し、バクテリア保留フィルターをとおして殺菌し、5m
l容量アンプル当り0.5mlずつ入れることにより、ア
ンプル当り50mgの薬物が含まれるようにし、アンプ
ルを封管した。アンプルの内容物は適当な容量の希釈
液、例えばpH6.8のトリス塩酸緩衝液で2.5mlに希釈
して注射剤として用いられる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C07D 295/22 C07D 295/22 A

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(IB) 【化1】 (式中、R2は(i) 水素原子、(ii) 炭素数1〜4のア
    ルキル基、(iii) 炭素数1〜4のアルコキシ基、(iv)
    炭素数2〜5のアルコキシメチル基、(v) 式COOR3
    (式中、R3は水素原子または炭素数1〜4のアルキル
    基を表わす。)で示される基、(vi) 式CH2COOR3
    (式中、R3は前記と同じ意味を表わす。)で示される
    基、(vii) 式CH=CH−COOR3(式中、R3は前記
    と同じ意味を表わす。)で示される基、(viii) ハロゲ
    ン原子、(ix) トリフルオロメチル基、(x) 式COR4
    (式中、R4は炭素数1〜4のアルキル基、フェニル
    基、グアニジノフェニル基、シクロペンチルメチル基ま
    たはシクロヘキシルメチル基を表わす。)で示される
    基、(xi) 式OCOR4(式中、R4は前記と同じ意味を
    表わす。)で示される基、(xii) 式CH2OCOR4(式
    中、R4は前記と同じ意味を表わす。)で示される基、
    (xiii) 式SO24(式中、R4は前記と同じ意味を表わ
    す。)で示される基、(xiv) 式OSO24(式中、R4
    は前記と同じ意味を表わす。)で示される基、(xv) 式
    CONR56(式中、R5およびR6はそれぞれ独立し
    て、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル
    基、ベンジル基、ピリジル基を表わすか、あるいは
    5、R6およびそれらの結合している窒素原子が一緒に
    なってピロリジニル基、ピペリジノ基、またはモルホリ
    ノ基を表わす。)で示される基、(xvi) 式OCONR5
    6(式中、R5およびR6は前記と同じ意味を表わ
    す。)で示される基、(xvii) 式SO2NR56(式中、
    5およびR6は前記と同じ意味を表わす。)で示される
    基、(xviii) 式 【化2】 (式中、R5およびR6は前記と同じ意味を表わす。)で
    示される基、(xix) 式NHSO27(式中、R7は炭素
    数1〜4のアルキル基またはフェニル基を表わす。)で
    示される基、(xx) ニトロ基、(xxi) 水酸基、(xxii) ヒ
    ドロキシメチル基、(xxiii) グアニジノ基、(xxiv) ベ
    ンジルオキシ基、(xxv) グアニジノフェニルチオメチル
    基、(xxvi) モルホリノスルホニルフェノキシメチル
    基、(xxvii) ピリジルオキシメチル基または(xxviii)
    (1,1−ジオキソチアゾル−3−イル)カルボニル基
    を表わし、nは1〜5の整数を表わし、かつnが2以上
    の整数を表わす場合、それぞれのR2は互いに同じであ
    ってもよいしまたは異なっていてもよい。)で示される
    p−グアニジノ安息香酸フェニルエステル誘導体、また
    はその酸付加塩を有効成分として含有するエラスターゼ
    阻害剤。
JP6329399A 1985-11-12 1994-12-02 p−グアニジノ安息香酸フェニルエステル誘導体を含有する医薬品 Expired - Lifetime JP2506318B2 (ja)

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