JP2024532537A - 真核生物における遺伝暗号の拡張のための新規アミノアシルtRNA合成酵素変異体 - Google Patents

真核生物における遺伝暗号の拡張のための新規アミノアシルtRNA合成酵素変異体 Download PDF

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Abstract

本発明は、改良された新規アミノアシルtRNA合成酵素変異体に関し、遺伝暗号の拡張に有用である。本発明はまた、対応するコード配列およびそのコード配列を含む真核細胞株に関する。本発明はまた、新規アミノアシルtRNA合成酵素変異体によって組み込まれた1つ以上の非天然アミノ酸残基を含む目的のタンパク質(POI)を調製する方法に関する。本発明はまた、ポリペプチド結合体(polypeptide conjugate)を調製する方法に関し、該方法では本発明のアミノアシルtRNA合成酵素変異体によって生成されたPOIを、1つ以上の結合相手分子と反応させる。最後に、本発明は、1つ以上の非天然アミノ酸残基を含むこのPOIを調製するために必要な構成要素を含むキットに関する。

Description

本発明は、改良された新規アミノアシルtRNA合成酵素変異体に関し、遺伝暗号の拡張に有用である。本発明はまた、対応するコード配列およびそのコード配列を含む真核細胞株に関する。本発明はまた、新規アミノアシルtRNA合成酵素変異体によって組み込まれた1つ以上の非天然アミノ酸残基を含む目的のタンパク質(POI)を調製する方法に関する。本発明はまた、ポリペプチド結合体(polypeptide conjugate)を調製する方法に関し、該方法では本発明のアミノアシルtRNA合成酵素変異体によって生成されたPOIを、1つ以上の結合相手分子と反応させる。最後に、本発明は、1つ以上の非天然アミノ酸残基を含むこのPOIを調製するために必要な構成要素を含むキットに関する。
遺伝暗号の拡張(GCE)は、非標準アミノ酸(ncAA)を部位特異的にタンパク質に組み込むための汎用性の高いツールである。これらのncAAは、タンパク質の蛍光標識または毒性ペイロードの抗体との結合(conjugation)など、タンパク質工学に用いることができる。翻訳中にncAAをタンパク質に組み込むために、ncAAを認識でき、そうでなければ宿主生物と直交する特殊なアミノアシルtRNA合成酵素/tRNA(aaRS/tRNA)対が必要である。
現在、このようなaaRS/tRNA対がいくつか知られており、例えばMethanosarcina mazei、Methanosarcina barkeri、またはMethanomethylophilus alvusなどの古細菌由来のPylRS/tRNAPylがある。PylRS合成酵素には結合部位があり、本来はピロリジンを認識する。この結合部位に特定のアミノ酸を連鎖させることにより、様々なncAAをこの合成酵素に認識させることができる。
一方、PylRS/tRNAPyl対と組み合わせて使用できるncAAは200を超えて存在する。
ncAAの特定の群には、H-Lys(Boc)-OH(「Boc」)、シクロオクチン-リジン(「SCO」)、ビシクロ[6.1.0]ノニン-リジン(「BCN」)、トランス-シクロオクト-2-エン-リジン(「TCOA」)およびトランス-シクロオクト-4-エン-リジン(「TCO-E」)が含まれ、例えば、非特許文献1に記載されている。テトラジンとクリックケミストリーを介して反応するこれらのncAAは、この反応が非常に速く、生体直交型であるため、非常に興味深い。
PylRSの結合ポケットにある2つのアミノ酸は、このような嵩高いアミノ酸の組み込みを容易にするために重要であることがよく知られている。Methanosarcina mazeiのPylRSを参照して、以下の配列位置を変更した:嵩高いアミノ酸を組み込むことができるように、チロシン306をアラニン(Y306A)に変更する必要があり、さらにチロシン384をフェニルアラニン(Y384F)に変異させる必要があった。結果として、PylRS変異型PylRSAFが得られた。様々なncAAの組み込み効率は、非常に低いものから高いものまで様々である。特にTCO-EというncAAは、PylRSAFにあまり受け入れられない。
特許文献1には、M.mazei由来の変異型ピロリジルtRNA合成酵素が開示されている。特に、一重変異体Y306AおよびY384F、ならびに306位および384位の対応する二重変異体がそこに記載されている。さらに、二重変異体L309AおよびC348Aもそこに記載されている。前記変異体はBocをアミノアシル化できることが報告されている。
特許文献2には、M.mazei由来の改変されたアミノアシルtRNA合成酵素を適用して非天然タンパク質を生産する方法が記載されている。以下の置換の少なくとも1つを含む:A302F、Y306A、L309A、N346S、C348V/IおよびY384F。
特許文献3には、BCN基を含むアミノ酸を、それをコードする直交コドンと、L301V、L305I、Y306F、L309AおよびC348Fから選択される変異を含むM.mazei由来の直交PylRS合成酵素を用いて、ポリペプチドに組み込む方法が記載されている。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、POIのアミノ酸配列への嵩高いncAAの(特に、トランス-シクロオクト-2-エン-リジン(「TCOA」)、トランス-シクロオクト-4-エン-リジン(「TCO-E」)およびH-Lys(Boc)-OH(「Boc」)およびそれらの組み合わせから選択されるncAA残基の)、(特に先行技術の変異型PylRSAFと比較して)改良された組み込みを示す新規アミノアシルtRNA合成酵素の提供に関する。
欧州特許出願EP-A-2192185 欧州特許出願EP-A-2221370 欧州特許出願EP-A-2804872
Reinkemeier et al.,Eur J Chem(2021)27(19)6094-6099
上述の課題は、驚くべきことに、先行技術の合成酵素PylRSAFの特定の重要な位置の系統的変異、および得られた変異体の特定の位置において引き続いて逆変異を行うことによって解決することができる。
本発明者らは、20個の可能なアミノ酸のいずれかに5つの位置を変異させた親遺伝子Methanosarcina mazei由来のPylRSAFを使用してライブラリー選択を行った。この遺伝子ライブラリーは、ポジティブとネガティブの反復スクリーニングで選択された。このスクリーニングの結果、本発明者らは、PylRS AF A1、PylRS AF B11、PylRS AF C11、PylRS AF G3およびPylRS AF H12と呼ぶ、2つまたは3つのアミノ酸残基がさらに変異したPylRSAF合成酵素のいくつかの変異体を得ることができた。Y306AとY384Fの変異が嵩高いncAAの組み込みに本当に重要かどうかを調べるため、PylRS AF A1変異体において、部位特異的変異誘発によってこれらのアミノ酸を元のアミノ酸に戻した。したがって、新しい変異体はY306AとY384Fの変異を含まず、PylRS A1と呼ばれる。Y306AとY384Fの変異を含まない変異体がさらに調製された。これは306M 309M 348Aの変異を有し、PylRS MMAと呼ばれる(表1)。
Figure 2024532537000001
これらの新しいPylRS変異体は、蛍光フローサイトメトリー(FFC)によって蛍光レポーターを利用してHEK293T細胞で試験した。レポーターは緑色蛍光タンパク質(GFP)と融合した赤外蛍光タンパク質(iRFP)を含み、Y39の位置にアンバー終止コドンを有し、iRFP-GFPY39TAGと呼ばれる。新しい変異体はすべて、今回試験した両方のncAAを組み込むことができた。さらに、TCO-Eを用いた場合、すべての新しい変異体はPylRSAFと比較してより強い緑シグナルを示す。さらに驚くべきことに、PylRSAFのY306AとY384Fの変異は、嵩高いncAAsの組み込みに実際には重要ではないことが観察された。特に、新しい「非AF」変異型PylRS A1は、既知のPylRS AF変異体と比較して、嵩高いncAAsに対してより優れた合成酵素となる変異を含む。
PylRS A1と同様に、さらに「非AF」変異体、すなわちPylRS B11、PylRS C11、PylRS G3およびPylRS H12が提供された(表2参照)。
Figure 2024532537000002
本発明に従って使用される以下のプラスミドのプラスミドマップが示されている:レポータープラスミドpCI-iRFP-EGFPY39TAG-6His(配列番号97)(図1A;上図)。プラスミドpCMV-NES-PylRSAF-U6tRNArv(配列番号98)(図1A;下図)。プラスミド、pBK-PylRSWT(配列番号99)(図1B;上図)。プラスミドpREP-PylT(配列番号100)(図1B;下図)。プラスミドpYOBB2-PylT(配列番号101)(図1C;上図)およびpALS-sfGFPN150TAG-MbPyl-tRNA(配列番号102)(図1C;下図)。 様々なncAAを使用した様々なPylRS変異体(PylRS AF、PylRS AF A1、PylRS AF B11、PylRS AF C11、PylRS AF G3、およびPylRS AF H12)のFFC実験のデータを示す。特に、TCOA(図2A)およびTCO-E(図2B)を組み込む能力を示す。図2Cは、ncAA非存在下での発現プロファイルを示す。 この図は、様々なPylRS変異体であるPylRS AF、PylRS AF A1、PylRS A1、およびPylRS MMAのFFC分析によって得られたデータを棒グラフで示す。TCO-E(図3A)、TCOA(図3B)、およびBoc(図3C)を組み込む能力を示す。上段の各棒グラフは、それぞれFFCによって得られた平均GFPシグナルを平均iRFPシグナルで割った比率を示しており、これは組み込み効率を反映する。中央の各棒グラフは、それぞれ同じデータを示しているが、100μM ncAAを用いたPylRS AF変異体で観察された比率に正規化したものである。下段の棒グラフは、それぞれ平均GFP/平均iRFPの比を、所望のncAA濃度でPylRS AF変異体について得られた平均GFP/平均iRFPの比に対して正規化したものである。これらの棒グラフは、PylRS AFと比較して、各変異体の組み込み効率がどれだけ高いかを示す。 様々な古細菌PylRSタンパク質の配列アラインメントを示す。 嵩高いncAAシクロオクチン-リジン(SCO)の様々な濃度における変異型PylRS A1の組み込み効率を評価したFFCデータを示す。
[発明の詳細な説明]
A.略語
Bps=塩基対
BCN=2-アミノ-6-(9-ビオシクロ[6.1.0]ノナ-4-イニルメトキシカルボニルアミノ)ヘキサノイド酸
BOC=2-アミノ-6-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ヘキサン酸;実施例では、「BOC」は特に(2S)-2-アミノ-6-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ヘキサン酸=Boc-L-Lys-OH=N-α-tert-ブチルオキシカルボニル-L-リジンを指す。
Cm=クロラムフェニコール
CMV=サイトメガロウイルス
Crm1=染色体領域維持1、カリオフェリンエクスポーチン1としても知られる。
DH10B=大腸菌株F-mcrA Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC)φ80lacZΔM15 ΔlacX74 recA1 endA1 araD139 Δ(ara-leu)7697 galU galK λ-rpsL(Str)nupG
dsRNA=二本鎖 RNA
dSTORM=直接確率的光学再構築顕微鏡法
E.coli BL21(DE3)AI=大腸菌株BFompT gal dcm lon hsdS(r )λ(DE3[lacI lacUV5-T7p07 ind1 sam7 nin5])[malBK-12(λ)araB::T7RNAP-tetA
FBS=ウシ胎児血清
GCE=遺伝暗号の拡張
GFP=緑色蛍光タンパク質
sfGFP=スーパーフォルダー緑色蛍光タンパク質
IPTG=イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド
iRFP=赤外蛍光タンパク質
Kan=カナマイシン
ncAA=非標準アミノ酸
NES=核外搬出シグナル
NLS=核局在化シグナル
NNK=飽和変異誘発に使用される特定の種類の縮重コード
O-tRNA=直交tRNA
O-RS=直交RS
PAINT=ナノスケールトポグラフィにおけるイメージングのための点集積
PBS=リン酸緩衝食塩水
POI=目的のポリペプチド、
pRS=原核生物RS
ptRNA=原核生物tRNA
ptRNA-リボザイム=ptRNAと少なくとも1つのリボザイムを含む原核生物RNA分子
PylRS=ピロリジルtRNA合成酵素
PylRSAF=アミノ酸置換Y306A及びY384Fを含む変異型M.mazeiピロリジルtRNA合成酵素
RP-HPLC=逆相高速液体クロマトグラフィー
RS=アミノアシルtRNA合成酵素
RT=室温
SCO=2-アミノ-6-(シクロオクト-2-イン-1-イルオキシカルボニルアミノ)ヘキサン酸
Figure 2024532537000003
SOC=形質転換培地(例:0.5%酵母エキス;2%トリプトン;10mM NaCl、2.5mM KCl;10mM MgCl;10mM MgSO;20mMグルコース)
SPAAC=(銅フリー)歪み促進逆アルキン-アジド環状付加反応
SPIEDAC=(銅フリー)歪み促進逆電子要請型Diels-Alder環状付加反応
SRM=超解像顕微鏡法
SV40=サル空胞ウイルス40
T7RNAP=T7 RNAポリメラーゼ
TCO-E=トランス-シクロオクト-4-エン-L-リジン
Figure 2024532537000004
TCOA=トランス-シクロオクト-2-エン-L-リジン
Figure 2024532537000005
Tet=テトラサイクリン
tetR=テトラサイクリンリプレッサー
tetO=テトラサイクリンオペレーター
tRNAPyl=野生型または改変型PylRSによってピロリジンでアシル化されることができるtRNAである。ncAAをPOIに部位特異的に組み込むために、好ましくはセレクターコドンの逆相補体であるアンチコドンを有する。(実施例で用いたtRNAPylでは、アンチコドンはCUAである。)
UNAA=非天然アミノ酸、ncAAと同義語。
U6プロモーター=哺乳動物細胞において、通常U6 RNA(小核RNA)の発現を制御するプロモーター
B.定義
本明細書中で別途に定義されない限り、本発明に関して使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。用語の意味及び範囲は明確であるべきである。しかしながら潜在的な多義性がある場合、本明細書に規定される定義はあらゆる辞書又は外部の定義よりも優先される。さらに、状況による別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。
ピロリジルtRNA合成酵素(PylRS)はアミノアシルtRNA合成酵素(RS)である。RSは、tRNAをアミノ酸又はアミノ酸類似体でアシル化できる酵素である。適切には、本発明のPylRSは酵素的に活性であり、すなわちtRNA(tRNAPyl)を特定のアミノ酸又はアミノ酸類似体、好ましくはUNAA又はその塩でアシル化することができる。
本明細書で使用される「古細菌ピロリジルtRNA合成酵素」(「古細菌PylRS」と略される)という用語は、少なくともPylRSアミノ酸配列のセグメント又は全PylRSアミノ酸配列が、古細菌由来の天然PylRSのアミノ酸配列又はその天然PylRSの酵素的に活性なフラグメント(断片)のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は100%の配列同一性を有するPylRSを意味する。
本発明のPylRSは、変異型古細菌PylRS、又はその酵素的に活性なフラグメントを含むことができる。
通常、「変異型古細菌PylRS」または「変異した古細菌PylRS」は、1つ以上のアミノ酸残基の付加、置換及び/又は欠失を含む点で、対応する野生型PylRSとは異なる。好ましくは、これらは、PylRS安定性を改善し、PylRS基質特異性を改変し、及び/又はPylRS酵素活性を増強する修飾である。特に好ましい「変異型古細菌PylRS」または「変異した古細菌PylRS」については、本明細書中で以下に詳述する。
用語「核外搬出シグナル」(「NES」と略される)は、それを含むポリペプチド(本発明のNES含有PylRS等)が真核細胞の核から搬出されるように指示できるアミノ酸配列を意味する。該搬出は、大部分がCrm1(染色体領域維持1;カリオフェリンエクスポーチン1としても知られる)によって媒介されると考えられている。NESは当技術分野において公知である。例えば、データベースValidNES(http://validness.ym.edu.tw/)は、実験的に検証されたNES含有タンパク質の配列情報を提供する。さらに、例えばNESbase1.0(www.cbs.dtu.dk/databased/NESbase-1.0/;Le Cour et al.,Nucl Acids Res 31(1),2003参照)等のNESデータベースや、NES予測のためのツール、例えばNetNES(www.cbs.dtu.dk/services/NetNES/;La Cour et al.,Protein Eng Des Sel 17(6):527-536,2004参照)、NESpredictor(NetNES,http://www.cbs.dtu.dk/;Fu et al.,Nucl Acids Res 41:D338-D343,2013;La Cour et al.,Protein Eng Des Sel 17(6):527-536,2004参照)及びNESsential(ValidNESと組み合わせたウェブインターフェース)が一般に向けて利用可能である。疎水性のロイシンに富むNESが最も一般的であり、現在までに最もよく特徴がわかっているNESのグループを示す。疎水性ロイシンに富むNESは、3又は4個の疎水性残基を有する非保存的モチーフである。これらのNESの多くは、保存されたアミノ酸配列パターンLxxLxL(配列番号111)又はLxxxLxL(配列番号112)を含む。なお、各Lはロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン及びメチオニンのアミノ酸残基から独立して選択される。また各xは、任意のアミノ酸から独立して選択される(La Cour et al.,Protein Eng Des Sel 17(6):527-536,2004参照)。
用語「核局在化シグナル」(「NLS」と略され、当技術分野では「核局在化配列」とも呼ばれる)は、それを含むポリペプチド(例えば、野生型古細菌PylRS)を真核細胞の核に取り込むように指示できるアミノ酸配列を意味する。前記輸送は、核膜孔を通って移動する複合体を形成するための、NLS含有ポリペプチドのインポーチン(カリオフェリンとしても知られる)への結合によって媒介されると考えられている。NLSは当技術分野で公知である。多数のNLSデータベース及びNLS予測のためのツールが一般に向けて利用可能である。例えば、NLSdb(Nair et al.,Nucl Acids Res 31(1),2003参照),cNLS Mapper(www.nls-mapper.aib.keio.ac.jp;Kosugi et al.,Proc Natl Acad Sci USA.106(25):10171-10176,2009;Kosugi et al.,J Biol Chem 284(1):478-485,2009参照),SeqNLS(Lin et al.,PLoS One 8(10):e76864,2013参照)及びNucPred(www.sbc.su.se/~maccallr/nucpred/;Branmeier et al.,Bioinformatics 23(9):1159-60,2007参照)である。
上記で定義した本発明の変異型古細菌PylRSは、変異体が由来する前記天然PylRSに任意に存在するNLSを除去することによって、および/または少なくとも1つのNESを導入することによって、さらに改変することができる。天然PylRS中のNLSは、例えばcNLSマッパー等の既知のNLS検出ツールを用いて同定できる。
古細菌PylRSまたはその変異体からのNLSの除去及び/又は古細菌PylRSまたはその変異体へのNESの導入は、真核細胞で発現したときにこのように改変されたポリペプチドの局在化を変化させること、特に真核細胞の核内のポリペプチドの蓄積を回避又は減少させることができる。したがって、真核細胞において発現する本発明のPylRS変異体の局在化は、それが(依然として)NLSを含み、そしてNESを欠くという点で本発明のPylRS変異体とは異なるPylRSまたはPylRS変異体と比較して変化することができる。
本発明の古細菌PylRSがNESを含むが(依然として)NLSを含む場合は、NESの強度がNLSを無効にし、真核細胞の核内のPylRSの蓄積を妨げるようにNESが選択されることが好ましい。
本発明のPylRSを得るための、野生型又は変異型PylRSからのNLSの除去及び/又は野生型又は変異型PylRSへのNESの導入は、PylRS酵素活性を無効にはしない。好ましくは、PylRS酵素活性は基本的に同じレベルに維持される。すなわち、本発明のPylRSは、対応する野生型又は変異型PylRSの酵素活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%を有する。
NESは、NESが動作するように本発明のPylRSまたは変異型PylRS内に適切に配置される。例えば、NESは、野生型又は変異型古細菌PylRSのC末端(例えば、最後のアミノ酸残基のC末端)又はN末端(例えば、アミノ酸残基1、N末端メチオニン、及びアミノ酸残基2の間)に結合することができる。
NESの組み込みおよび/またはNLS配列の欠失によって改変された変異したPylRSを開示するWO2018/06948の開示は、本明細書中で明示的に参照され、参照により組み込まれる。
本発明のPylRS変異体はtRNAPyl/PylRS(変異体)対で使用される。なお、PylRS変異体は、好ましくはUNAA又はその塩で、tRNAPylをアシル化することができる。
特に指示のない限り、本明細書で使用される「tRNAPyl」は、本発明のPylRS変異体によって(本質的に選択的に、特に選択的に)アシル化できるtRNAを意味する。本発明の状況において、本明細書に記載のtRNAPylは、ピロリジンを用いてPylRSによってアシル化することができる野生型tRNA、又はそのtRNAの変異体、例えば古細菌由来の、例えばメタノサルキナ属(例えばM.mazei若しくはM.barkeri)由来の、野生型もしくは変異型tRNAであってもよい。UNAAのPOIへの部位特異的組み込みのために本発明のPylRSと共に使用されるtRNAPylに含まれるアンチコドンは、適切には、セレクターコドンの逆相補体である。特定の実施形態では、tRNAPylのアンチコドンはアンバー終止コドンの逆相補体である。例えば、プロテオーム標識化(Elliott et al.,Nat Biotechnol 32(5):465-472,2014)等の他の用途では、本発明のPylRSと共に使用されるtRNAPylに含まれるアンチコドンは、真核細胞の内因性tRNAによって認識されるコドンであってもよい。
本明細書で使用される「セレクターコドン」という用語は、翻訳過程中にtRNAPylに認識される(すなわち結合する)コドンであって、真核細胞の内因性tRNAには認識されないコドンを意味する。またこの用語は、例えばDNAプラスミド等、メッセンジャーRNA(mRNA)ではないポリヌクレオチドのポリペプチドをコードする配列中の対応するコドンにも使用される。好ましくは、セレクターコドンは、天然の真核細胞において少量のコドンである。tRNAPylのアンチコドンは、mRNA中のセレクターコドンに結合し、そうしてUNAAを前記mRNAによってコードされるポリペプチドの成長鎖に部位特異的に組み込む。既知の64個の遺伝的コドン(トリプレット)は、20個のアミノ酸及び3個の終止コドンをコードする。翻訳の終結には終止コドン1個のみが必要なので、他の2個は原則として非タンパク質原性アミノ酸をコードするために使用できる。例えば、アンバーコドン、UAGは、非天然アミノ酸の取り込みを指示するin vitro及びin vivo翻訳系において、セレクターコドンとしてうまく使用されいる。本発明の方法で利用されるセレクターコドンは、使用される翻訳系のタンパク質生合成機構の遺伝的コドンのフレームワークを拡張する。具体的には、セレクターコドンには、これらには限定されないが、終止コドン(例えばアンバー(UAG)、オーカー(UAA)及びオパール(UGA)コドン)等のナンセンスコドン;3個を超える塩基から成るコドン(例えば、4塩基コドン);並びに天然又は非天然の塩基対に由来するコドンが含まれる。所定の系について、セレクターコドンは天然の3塩基コドン(すなわち天然トリプレット)のうちの1つを含むこともできる。このとき内因性の翻訳系(例えば、該天然トリプレットを認識するtRNAを欠いている系又は該天然のトリプレットがレアコドンである系)は、前記天然トリプレットを使用しない(又は、ほとんど使用しない)。
所定の翻訳系(例えば、真核細胞)において、終止コドン、4塩基コドン又はレアコドン等を介して読めるように、mRNAの読みを変更させる組換えtRNAは、サプレッサーtRNAと呼ばれる。セレクターコドンとして働く終止コドン(例えばアンバーコドン)の抑制効率は、(アミノアシル化)tRNAPyl(サプレッサーtRNAとして作用する)と、終止コドンに結合してリボソームから成長するポリペプチド鎖の放出を開始する放出因子(例えばRF1)との間の競合に依存する。したがって、終止コドンのそのような抑制効率は、放出因子-(例えば、RF1-)欠損株を用いて増加させることができる。
「目的のポリペプチド」又は「POI」をコードするポリヌクレオチド配列は、1つ以上、例えば2つ以上、3つ以上等のコドン(例えばセレクターコドン)を含むことができる。それらは、tRNAPylに含まれるアンチコドンの逆相補体である。POIをコードするポリヌクレオチド配列を生成するために、従来の部位特異的変異誘発を使用して、前記コドンをポリヌクレオチド配列の目的の部位に導入することができる。
本発明のPylRSとtRNAPylは直交性であることが好ましい。
本明細書で使用される「直交」という用語は、目的の翻訳系(例えば、本明細書に記載のPOIの発現に使用される真核細胞)によって低い効率で使用される分子(例えば、直交tRNA及び/又は直交RS)を意味する。「直交」とは、不能又は効率の低下を意味する。例えば、目的の翻訳系の内因性RS又は内因性tRNAとそれぞれ作用する直交tRNA又は直交RSの効率が、20%未満、10%未満、5%未満、又は例えば1%未満である。
したがって、本発明の特定の実施形態では、本発明の真核細胞の任意の内在性RSは、内在性RSによる内在性tRNAのアシル化と比較した場合、低い効率又はゼロの効率で(直交)tRNAPylのアシル化を触媒する。例えば、20%未満の効率、10%未満の効率、5%未満の効率、又は1%未満の効率である。あるいは又はさらに、本発明の(直交)PylRSは、細胞の内因性RSによるtRNAPylのアシル化と比較して、本発明の真核細胞の任意の内因性tRNAを低い効率又はゼロの効率でアシル化する。例えば、20%未満の効率、10%未満の効率、5%未満の効率、又は1%未満の効率である。
別段の指示がない限り、本明細書で使用される「内因性tRNA」及び「内因性アミノアシルtRNA合成酵素」(「内因性RS」)という用語は、それぞれ本発明の状況で使用される本発明のPylRSとtRNAPylを導入する前に最終的に翻訳系として使用される細胞に存在するtRNA及びRSをそれぞれ意味する。
用語「翻訳系」は、一般に、成長するポリペプチド鎖(タンパク質)中に天然アミノ酸を取り込むために必要な一組の構成要素を意味する。翻訳系の構成要素としては、例えば、リボソーム、tRNA、アミノアシルtRNA合成酵素(RS)、mRNA等を含むことができる。翻訳系は、前記構成要素、細胞抽出物及び生細胞(例えば、生きている真核細胞)の人工混合物を含む。
本発明に従ってPOIを作製するために使用するPylRSとtRNAPylの対は、好ましくは、POIを作製するために使用する真核細胞において、tRNAPylが本発明のPylRSによってUNAA又はその塩(UNAA)で選択的にアシル化されるという点で直交性である。適切には、前記真核細胞において、直交対は、前記細胞がUNAAアシル化tRNAPylを使用してUNAA残基をPOIの成長中のポリペプチド鎖に組み込むように機能する。組み込みは部位特異的方法で起こり、例えば、tRNAPylは、POIをコードするmRNA中のコドン(例えば、アンバー終止コドン等のセレクターコドン)を認識する。
本明細書で使用される場合、用語「選択的にアシル化される」は、真核細胞の内因性tRNA又はアミノ酸と比較して、PylRSがtRNAPylをUNAAでアシル化する効率が、例えば、約50%の効率、約70%の効率、約75%の効率、約85%の効率、約90%の効率、約95%の効率、又は約99%以上の効率を意味する。UNAAはその後、tRNAPylに含まれるアンチコドンの逆相補体である、特定のコドン(例えば、セレクターコドン)について、高い正確性(例えば約75%を超える、約80%を超える、約90%を超える、約95%を超える、又は約99%以上の効率)で成長中のポリペプチド鎖に組み込まれまる。
本発明によるPOIの作製に適したtRNAPyl/PylRS対は、変異型tRNA及びPylRSのライブラリから、例えばライブラリスクリーニングの結果に基づき選択することができる。そのような選択は、例えばWO02/085923及びWO02/06075に記載のtRNA/RS対を進化させる既知の方法と同様に実施できる。本発明のtRNAPyl/PylRS対を生成するために、野生型又は(依然として)核局在化シグナルを含み、NESを欠く変異型の古細菌PylRSから開始し、適切なtRNAPyl/PylRS対を同定する前又は同定した後に、核局在化シグナルを除去し、及び/又は、NESを導入することができる。
本明細書で使用される用語「非天然アミノ酸」(「UNAA」と略される)は、20個の標準アミノ酸の1つ又はセレノシステイン又はピロリシンではないアミノ酸を意味する。またこの用語は、アミノ酸類似体を意味する。例えば、アミノ酸とは異なり、α-アミノ基がヒドロキシル基及び/又はカルボン酸官能基で置換され、エステルを形成する化合物である。ポリペプチドに翻訳的に組み込まれた場合、前記アミノ酸類似体は、20個の標準アミノ酸又はセレノシステイン又はピロリジンに対応するアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を生じる。翻訳系(真核細胞等)において、アミノ酸類似体であるUNAA(カルボン酸官能基が式-C(O)-O-Rのエステルを形成している)が、ポリペプチドの作製に使用される場合、Rは原位置で、例えば酵素的に、POIに組み込まれる前の翻訳系において除去されると考えられる。したがって、Rは、UNAA又はその塩を本発明のPylRSによって認識及び処理される形態に変換する翻訳システムの能力と両立するように適切に選択される。
本発明の方法及びキットに有用なUNAAは、先行技術に記載されている(例えば、Liu et al.,Annu Rev Biochem 83:379-408,2010;Lemke,ChemBioChem 15:1691-1694,2014を参照のこと)。
本明細書で使用する場合、「宿主細胞」または「形質転換細胞」という用語は、少なくとも1つの核酸分子、例えば、所望のタンパク質または核酸配列をコードする組換え遺伝子を保持するように改変された細胞(または生物)を指し、転写により、本明細書に記載のように使用するためのポリペプチドが得られる。宿主細胞は、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞などの原核細胞または真核細胞である。宿主細胞は、宿主細胞の核または細胞小器官ゲノムに組み込まれた組換え遺伝子を含んでいてもよい。あるいは、宿主は染色体外に組換え遺伝子を含んでいてもよい。
特定の生物または細胞は、それが自然にPOIを産生する場合、または自然には前記POIを産生しないが、前記POIを産生するように形質転換される場合、「POIを産生することができる」ことを意味する。
本明細書で使用される「精製された」、「実質的に精製された」および「単離された」という用語は、本発明の化合物がその天然の状態で通常結合している他の異なる化合物を含まず、「精製された」、「実質的に精製された」および「単離された」対象が、所定のサンプルの質量の少なくとも0.5重量%、1重量%、5重量%、10重量%、もしくは20重量%、または少なくとも50重量%もしくは75重量%を占める状態を指す。一実施形態において、これらの用語は、所定のサンプルを質量の少なくとも95、96、97、98、99または100%含む本発明の化合物を指す。本明細書で使用される場合、核酸またはタンパク質に言及する場合の「精製された」、「実質的に精製された」および「単離された」という用語は、例えば原核生物環境または真核生物環境、例えば細菌細胞もしくは真菌細胞または哺乳動物生物などの、特にヒトの体内で天然に生じるものとは異なる精製または濃縮の状態も指す。(1)他の関連する構造または化合物からの精製、または(2)前記原核生物環境または真核生物環境において通常関連しない構造または化合物との関連付けを含む、天然に生じる精製または濃縮の程度を超えるものは「単離された」の意味の範囲内である。本明細書に記載の核酸もしくはタンパク質、あるいは核酸もしくはタンパク質の種類は、当業者に公知の様々な方法およびプロセスに従って、単離することもできるし、あるいは自然界では通常結合しない構造もしくは化合物と結合させることもできる。
本明細書に提供される説明および添付の特許請求の範囲の文脈において、「または」の使用は、別段の記載がない限り、「および/または」を意味する。
同様に、「含む(comprise、comprises)」、「含有する(「include、includes」)」および「含んでいる(including)」は互いに置き換え可能であり、限定することを意図したものではない。
さらに、様々な実施形態の説明で「含む(compriseing)」という用語が使用される場合、当業者であれば、いくつかの具体例において、実施例は「本質的に~からなる」または「からなる」という用語を使用して代替的に実施形態を説明できることを理解するであろう。
用語「約」は、記載された値の±25%、特に±15%、±10%、より具体的には±5%、±2%または±1%の潜在的変動を示す。
「実質的に」という用語は、約80~100%の値の範囲(例えば85~99.9%、特に90~99.9%、より特に95~99.9%、または98~99.9%、および特に99~99.9%など)を表す。
「主に」とは、50%を超える範囲、例えば51~100%の範囲、特に75~99.9%の範囲、より特に85~98.5%、例えば95~99%の割合を指す。
本開示が、様々な程度の優先度の特徴、パラメータ、およびそれらの範囲(一般的な、明示的に好ましくない特徴、パラメータ、およびそれらの範囲を含む)に言及する場合、特に明記しない限り、そのような特徴、パラメータ、および範囲の2つ以上の任意の組み合わせは、それぞれの優先度に関係なく、本明細書の開示に包含される。
本明細書に記載される特定の酵素または酵素変異体について観察される「基質の利用のための改善された活性」という用語は、基準酵素、特に変異していない親酵素と比較して観察される利用の改善、または前記利用の改善を示す変異体に含まれる変異の数および/または種類に関して異なる酵素変異体と比較して観察される利用の改善を指す。利用率の変化を表すための好適な非限定的パラメータは、例えばモル%のように%で表される基質濃度の減少、または例えばモル%のように%で表される生成物濃度の増加である。この文脈において好ましい「基質」は、本明細書で言及されるUNAAである
C.本発明の特定の態様および実施形態
本発明は、以下の態様およびその特定の実施形態に関する:
本発明の第1態様は、改変された古細菌ピロリジルtRNA合成酵素(PylRS)に関し、この改変された古細菌ピロリジルtRNA合成酵素(PylRS)は、配列モチーフM1およびM3の組み合わせまたはセットを含み;特に、M1は前記改変された古細菌PylRのアミノ酸配列のN末端に近く、M3はC末端に近く;任意に、M2、M4、M5およびM6から選択される少なくとも1つのさらなる配列モチーフが組み合わされ、かつPylRS活性を保持する;
ここで、
M1、M2、M3、M4、M5およびM6は、改変されたPylRSのアミノ酸配列内において前記順序で配置され、M1が、前記改変された古細菌PylRSのアミノ酸配列のN末端に最も近く、M6がC末端に最も近く、かつ以下の配列を含む(それぞれ、N末端→C末端の順序の順に示す)。
M1:LRPMXAXL(Y/M)X(M/V/C)R(配列番号1)
配列番号56(すなわち、M.mazeiのPylRS野生型)のアミノ酸残基297~310に類似する。
M2:HLXEFTMXNX(G/A)X1112G(配列番号2)
配列番号56(すなわち、M.mazeiのPylRS野生型)のアミノ酸残基338~351に類似する。
M3:VYX1314TX15D(配列番号3)
配列番号56(すなわち、M.mazeiのPylRS野生型)のアミノ酸残基383~389に類似する。
M4:SX161718GP(R/I/N)X2021D(配列番号4)
配列番号56(すなわち、M.mazeiのPylRS野生型)のアミノ酸残基399~408に類似する。
M5:X2223(I/V)X2526PW(配列番号5)
配列番号56(すなわち、M.mazeiのPylRS野生型)のアミノ酸残基411~417に類似する。
M6:G(A/L/I)GFGLERLL(配列番号6)
配列番号56(すなわち、M.mazeiのPylRS野生型)のアミノ酸残基419~428に類似する(ここで、アミノ酸残基X~X26は、互いに独立して、天然アミノ酸残基から選択される)。
これらの保存モチーフM1~M6の各々は少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、酵素の基質ポケットの形成に関与すると想定される。
隣接する2つのモチーフを連結する各介在配列モチーフ、ならびにN末端配列およびC末端配列を形成する配列モチーフは、他の野生型または先行技術の古細菌PylRSのそれぞれの配列部分に由来していてもよい。図4として添付した配列アラインメントによって示されるように、介在部分配列またはN末端部分配列もしくはC末端部分配列のそれぞれは、例えば配列番号58、60、62、64および66などの他の古細菌PylRSから容易に誘導することができるが、これらに限定されるものではない。このような配列アラインメント、または異なる古細菌起源の少なくとも1つのさらなるPylRS配列による任意の類似のアラインメントの補足に基づき、このような保存性の低い部分は合成酵素活性に影響を及ぼさないか、または有意な影響を及ぼさないと考えられるので、それぞれのさらなる改変された配列モチーフを容易に導くことができる。
前記改変された古細菌PylRSの特定の実施形態において、残基X~X26は、互いに独立して、以下の意味を有する:
は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にLまたはHを表し;
は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にPまたはMを表し;
は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にN、TまたはVを表し;
は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にN、S、TまたはYを表し;
は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にL、MまたはWを表し;
は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にEまたはNを表し;
は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にVまたはLを表し;
は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にFまたはLを表し;
11は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にQ、DまたはEを表し;
12は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にMまたはLを表し;
13は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にG、KまたはVを表し;
14は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にD、EまたはNを表し;
15は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にL、IまたはVを表し;
16は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にAまたはGを表し;
17は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にAまたはVを表し;
18は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にVまたはMを表し;
20は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にP、S、Y、FまたはVを表し;
21は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にLまたはMを表し;
22は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にWまたはHを表し;
23は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にG、DまたはEを表し;
25は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にD、H、FまたはNを表し;
26は、天然アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、特にK、EまたはDを表す。
前記第1態様のさらなる特定の実施形態において、配列モチーフM1、M3およびM2;またはM1、M3、M2およびM4;またはM1、M3、M2、M4およびM5;またはM1、M3、M2、M4およびM6;またはM1、M3、M2、M4、M5およびM6の組み合わせまたはセットを含む、改変された古細菌PylRSが提供される。
前記第1態様のさらなる特定の実施形態において、改変された古細菌PylRSが提供され、このPylRSは、Methanosarcina属、Methanosarcinaceae属、Methanomethylophilus属、Desulfitobacterium属、およびCandidatus Methanoplasma属、特にMethanosarcinaの古細菌に由来する親PylRSに由来する。
前記第1態様のさらなる特定の実施形態において、改変された古細菌PylRSが提供され、このPylRSは、Methanosarcina mazei種(配列番号56)、Methanosarcina barkeri種(配列番号58)、Methanosarcinaceae archaeon種(配列番号60)、Methanomethylophilus alvus種(配列番号62)、Desulfitobacterium hafniense種(配列番号64)およびCandidatus Methanoplasma termitum種(配列番号66)、特にMethanosarcina mazei(配列番号56)種の古細菌に由来する親PylRSに由来する。
前記第1態様のさらなる特定の実施形態において、改変された古細菌PylRSが提供され、このPylRSは、配列番号56、58、60、62、64および66から選択されるアミノ酸配列(特に配列番号56)を有する親PylRS、またはその機能的変異体もしくはフラグメントに由来する。それは、ピロリジルtRNA合成酵素活性を保持し、配列番号56、58、60、62、64および66から選択されるアミノ酸配列を有する天然ピロリジルtRNA合成酵素に対して、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%などの少なくとも60%の配列同一性を有する。この改変された古細菌PylRSは、改変された配列モチーフM1およびM3の組み合わせを含み;任意に、それぞれ上記で定義されたM2、M4、M5およびM6から選択される少なくとも1つのさらなる配列モチーフと組み合わされる。
配列番号56、58、60、62、64および66から選択されるアミノ酸配列を有する親PylRSの機能的変異体またはフラグメントは、例えば図4に示されているようなそれぞれの配列アラインメントから容易に誘導することができる。それは酵素機能にとって重要なM1からM6などの配列モチーフ、ならびに配列変化を比較的受けやすい中間または末端配列部分、およびその結果としての例えば保存的アミノ酸置換などの配列変異に関する情報を提供する。
前記第1態様のさらなる特定の実施形態において、改変された古細菌PylRSが提供され、そこでは上記の各々のモチーフの組み合わせまたはセット内の他のモチーフから独立して、以下の通りとなる:
a)上記配列モチーフM1は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000006
b)上記配列モチーフM2は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000007
c)上記配列モチーフM3は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000008
d)上記配列モチーフM4は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000009
e)上記配列モチーフM5は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000010
f)上記配列モチーフM6は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000011
前記第1態様のさらなる特定の実施形態において、改変された古細菌PylRSが提供され、そこでは以下の通りとなる:
a)上記配列モチーフM1は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000012
b)上記配列モチーフM2は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000013
c)上記配列モチーフM3は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000014
d)上記配列モチーフM4は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000015
e)上記配列モチーフM5は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000016
f)上記配列モチーフM6は、以下の配列から選択される:
Figure 2024532537000017
さらなる特定の実施形態によれば、以下の配列モチーフの組み合わせまたはセットが提供され、これらは以下の群(1)~(5)の1つから選択される:
(1)M1,M3およびM2:
M1a,M3aおよびM2a;M1b,M3bおよびM2b;M1c,M3cおよびM2c;M1d,M3dおよびM2d;M1e,M3eおよびM2e;M1f,M3fおよびM2f;
M1a,M3aおよびM2a;M1b,M3bおよびM2b;M1c,M3cおよびM2c;M1d,M3dおよびM2d;M1e,M3eおよびM2e;M1f,M3fおよびM2f
(2)M1,M3,M2およびM4:
M1a,M3a,M2aおよびM4a;M1b,M3b,M2bおよびM4b;M1c,M3c,M2cおよびM4c;M1d,M3d,M2dおよびM4d;M1e,M3e,M2eおよびM4e;M1f,M3f,M2fおよびM4f;
M1a,M3a,M2aおよびM4a;M1b,M3b,M2bおよびM4b;M1c,M3c,M2cおよびM4c;M1d,M3d,M2dおよびM4d;M1e,M3e,M2eおよびM4e;M1f,M3f,M2fおよびM4f
(3)M1,M3,M2,M4およびM5:
M1a,M3a,M2a,M4aおよびM5a;M1b,M3b,M2b,M4bおよびM5b;M1c,M3c,M2c,M4cおよびM5c;M1d,M3d,M2d,M4dおよびM5d;M1e,M3e,M2e,M4eおよびM5e;M1f,M3f,M2f,M4fおよびM5f;
M1a,M3a,M2a,M4aおよびM5a;M1b,M3b,M2b,M4bおよびM5b;M1c,M3c,M2cM4cおよびM5c;M1d,M3d,M2d,M4dおよびM5d;M1e,M3e,M2e,M4eおよびM5e;M1f,M3f,M2f,M4fおよびM5f
(4)M1,M3,M2,M4およびM6:
M1a,M3a,M2a,M4aおよびM6a;M1b,M3b,M2b,M4bおよびM6b;M1c,M3c,M2c,M4cおよびM6c;M1d,M3d,M2d,M4dおよびM6d;M1e,M3e,M2e,M4eおよびM6e;M1f,M3f,M2f,M4fおよびM6f;
M1a,M3a,M2a,M4aおよびM6a;M1b,M3b,M2b,M4bおよびM6b;M1c,M3c,M2c,M4cおよびM6c;M1d,M3d,M2d,M4dおよびM6d;M1e,M3e,M2e,M4eおよびM6e;M1f,M3f,M2f,M4fおよびM6f
(5)M1,M3,M2,M4,M5およびM6:
M1a,M3a,M2a,M4a,M5aおよびM6a;M1b,M3b,M2b,M4b,M5bおよびM6b;M1c,M3c,M2c,M4c,M5cおよびM6c;M1d,M3d,M2d,M4d,M5dおよびM6d;M1e,M3e,M2e,M4e,M5eおよびM6e;M1f,M3f,M2f,M4f,M5fおよびM6f;
M1a,M3a,M2a,M4a,M5aおよびM6a;M1b,M3b,M2b,M4b,M5bおよびM6b;M1c,M3c,M2c,M4c,M5cおよびM6c;M1d,M3d,M2d,M4d,M5dおよびM6d;M1e,M3e,M2e,M4e,M5eおよびM6e;M1f,M3f,M2f,M4f,M5fおよびM6f
前記第1態様のさらなる特定の実施形態では、配列モチーフM1a、M2a、M3a、M4a、M5aおよびM6aの組み合わせを含む改変された古細菌PylRSが提供される。前記タイプのPylRS変異体の非限定的な例は、PylRS A1(配列番号70)である。
前記第1態様のさらなる特定の実施形態では、配列モチーフM1a、M2a、M3a、M4a、M5aおよびM6aの組み合わせを含む改変された古細菌PylRSが提供される。前記タイプのPylRS変異体の非限定的な例は、PylRS MMA(配列番号72)である。
前記第1態様のさらなる特定の実施形態において、改変された古細菌PylRSが提供され、これは以下の通りである:
a)配列番号70のアミノ酸配列を含むPylRS A1;または配列番号70に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する;あるいは、
b)配列番号72のアミノ酸配列を含むPylRS MMA;または配列番号72に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する;あるいは、
c)配列番号82のアミノ酸配列を含むPylRS B11;または配列番号82に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する;
d)配列番号84のアミノ酸配列を含むPylRS C11;または配列番号84に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する;
e)配列番号86のアミノ酸配列を含むPylRS G3;または配列番号86に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する;
f)配列番号88のアミノ酸配列を含むPylRS H12;または配列番号88に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する。
前記第1態様のさらなる特定の実施態様において、PylRS活性を保持する機能的融合タンパク質であって、PylRS活性を有する少なくとも1つの第1タンパク質部分と、第1タンパク質に共有結合した同一または異なる機能性を有する第2タンパク質部分を含む、改変された古細菌PylRSが提供される。
前記第1態様のさらなる特定の実施形態では、以下の機能的特徴の少なくとも1つを示す改変された古細菌PylRSが提供される:
a)非標準アミノ酸(ncAA)またはその塩に対する改変された基質プロファイル。
b)変異型PylRS AF(配列番号68)とそれぞれ比較して、特にTCO-E、TCOAおよびBocまたはその塩から選択される少なくとも1つの嵩高いncAAの改善された利用。
c)変異型PylRS AF A1(配列番号108)とそれぞれ比較して、特にTCOAおよびBocまたはその塩から選択される少なくとも1つの嵩高いncAAの改善された利用。
前記第1態様のさらに特定の実施形態では、以下の機能的特徴の少なくとも1つを示す改変された古細菌PylRSが提供される。
a)変異型PylRS AF(配列番号68)とそれぞれ比較して、TCO-E、TCOAおよびBocまたはその塩から選択される少なくとも1つの嵩高いncAAの改善された利用。
b)変異型PylRS AF A1(配列番号108)とそれぞれ比較して、TCOAおよびBocまたはその塩から選択される少なくとも1つの嵩高いncAAの改善された利用。
このような要件を満たすPylRS変異体の非限定的な例として、PylRS A1(配列番号70)を挙げることができる。
前記第1態様のさらに特定の実施形態では、少なくとも以下の機能的特徴を示す改変された古細菌PylRSが提供される:
変異型PylRS AF(配列番号108)と比較して、嵩高いncAAのTCO-Eまたはその塩の改善された利用。
このような要件を満たすPylRS変異体の非限定的な例として、PylRS MMA(配列番号72)を挙げることができる。
前記第1態様のさらなる特定の実施形態では、核外搬出シグナル(NES)をさらに含む改変された古細菌PylRSが提供される。NESシグナル配列は、本明細書で上記したようによく知られている。このような既知の配列の各々は、前記配列を本発明のPylRS変異体配列と組み合わせるための候補として考えられる。NESは、PylRS活性に悪影響を及ぼさない限り、PylRS配列のN末端またはC末端の任意の配列位置に挿入または付加することができる。「N末端またはC末端に付加する」とは、NESがPylRS変異体配列の最初のアミノ酸または最後のアミノ酸に付加されてもよいし、酵素N末端またはC末端のそれぞれの末端アミノ酸残基30、20、10または5に対応する配列部分の任意の配列位置に挿入されてもよいことを意味する。
特に、前記NESは、配列番号54のアミノ酸配列を含み、これは、特に酵素のN末端に付加される。
本発明のNES修飾PylRS変異体の非限定的な例は、配列番号78、80、90、92、94および96から選択されるアミノ酸配列;または配列番号78、80、90、92、94および96に対してそれぞれ少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ前記NESモチーフを保持する。
前記第1態様のさらなる特定の実施形態において、改変された古細菌PylRSが提供され、これは以下のものである:
a)配列番号78のアミノ酸配列を含むNES PylRS A1;または配列番号70に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する;あるいは、
b)配列番号80のアミノ酸配列を含むNES PylRS MMA;または配列番号72に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する;あるいは、
c)配列番号90のアミノ酸配列を含むNES PylRS B11;または配列番号82に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する;
d)配列番号92のアミノ酸配列を含むNES PylRS C11;または配列番号84に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する;
e)配列番号94のアミノ酸配列を含むNES PylRS G3;または配列番号86に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する;
f)配列番号96のアミノ酸配列を含むNES PylRS H12;または配列番号88に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;好ましくは、上記表2に示されるアミノ酸残基のそれぞれのパターンを保持する。
本発明の第2態様は、前記第1態様に従って上記で定義した改変された古細菌ピロリジルtRNA合成酵素または機能的フラグメントの少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列;ならびに対応する相補的ポリヌクレオチド;ならびに上記ポリヌクレオチドのいずれかと本明細書で定義したストリンジェントな条件下でハイブリダイズするそれらのフラグメントを含む、改変された、特に組換えポリヌクレオチドまたは核酸に関する。
コードポリヌクレオチドの特に非限定的な例は、配列番号69、71、77、79、81、83、85、87、89、91、93および95から選択されるヌクレオチド配列、または配列番号69、71、77、79、81、83、85、87、89、91、93および95から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも60%、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、依然として本発明の機能的PylRS変異体をコードする。
さらなる例として、配列番号7~53による上記のモチーフのいずれかをコードする核酸配列、またはそのモチーフの少なくとも1つを含むPylRS変異体をコードする核酸配列、またはより具体的には、上記に開示したそのモチーフの組み合わせを挙げることができる。
特定の実施形態では、前記ポリヌクレオチドは、tRNAPyl(配列番号113、場合により末端CCAトリプレットを含まない)をさらにコードし、当該tRNAPylは、上記で定義したように、コードされる本発明の前記ピロリジルtRNA合成酵素変異体によってアシル化されうるtRNAである。
前記第2態様のさらなる特定の実施形態では、本発明の前記PylRS変異体をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドおよび前記tRNAPylをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチドの組み合わせが提供される。
さらなる特定の実施形態では、tRNAPylのアンチコドンは、終止コドン、4塩基コドンおよびレアコドンから選択されるコドンの逆相補体である。
本発明のポリヌクレオチド、ならびに本発明の文脈において使用されるtRNAPylおよび/またはPOIをコードするポリヌクレオチドは、好ましくは、発現カセットなどの発現系である。
本発明はまた、真核細胞をトランスフェクトし、コードされたPylRS変異体、tRNAPylおよび/またはPOIをそれぞれ前記細胞中で発現させるのに適したベクターも提供する。
特にそのようなベクターは、上記で定義した組換え発現系を含む発現ベクター;または上記核酸の1つまたはその逆相補体である;あるいは、
本発明の発現ベクターは、原核生物ベクター、ウイルスベクター、真核生物ベクター、またはプラスミドである。
本発明の第3態様は、以下を含む真核細胞に関する:
(a)上記第1態様のピロリジルtRNA合成酵素変異体の少なくとも1つをコードするポリヌクレオチド配列、および
(b)(a)の配列によってコードされるピロリジルtRNA合成酵素変異体によってアシル化されうるtRNA、またはそのようなtRNAをコードするポリヌクレオチド配列。
特に、前記真核細胞は哺乳動物細胞である。
本発明は特に、本発明のPylRS変異体を発現することができる哺乳動物細胞を提供する。特に、本発明は、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組み合わせを含む哺乳動物細胞であって、前記ポリヌクレオチドが本発明のPylRS変異体およびtRNAPylをコードし、tRNAPylがPylRSによってアシル化(好ましくは選択的に)されうるtRNAである、哺乳動物細胞を提供する。好都合には、本発明の哺乳動物細胞はtRNAPylと本発明のPylRS変異体の両方を発現することができ、ここでPylRS変異体はtRNAPylをアミノ酸、例えばUNAAで(好ましくは選択的に)アシル化することができる。
本発明の第4態様は、1つ以上の非天然アミノ酸残基を含むPOIを調製するための方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
(a)以下を含む真核細胞を提供する工程
(i)上記第1態様のピロリジルtRNA合成酵素変異体;
(ii)tRNA(tRNAPyl);
(iii)非天然アミノ酸またはその塩;および
(iv)POIをコードするポリヌクレオチドであって、非天然アミノ酸残基によって占有されるPOIの任意の位置が、tRNAPylに含まれるアンチコドンの逆相補体であるコドンによってコードされる、ポリヌクレオチド;
ここで、ピロリジルtRNA合成酵素変異体(i)は、tRNAPyl(ii)を非天然アミノ酸または塩(iii)でアシル化することができる;ならびに、
(b)真核細胞によるポリヌクレオチド(iv)の翻訳を可能にし、それによってPOIを産生する工程。
本発明の第5態様は、以下を含むポリペプチド結合体の調製方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
(a)第4態様による方法を使用して、1つ以上の非天然アミノ酸残基を含むPOIを調製する工程;および
(b)結合相手分子がPOIの非天然アミノ酸残基に共有結合するように、POIを1つ以上の結合相手分子と反応させる工程。
特定の実施形態において、そのアミノ酸配列に少なくとも1つのncAAが組み込まれた本発明のPOIは、「標的化剤」を形成するために利用される。
この標的化剤の第一の目的は、特定の「標的」との共有結合または非共有結合の形成である。標的化剤の第二の目的は、「ペイロード分子(payload molecule)」の前記標的への標的化された輸送である。前記第二の目的を達成するために、POIは少なくとも一つのペイロード分子と(可逆的または不可逆的に)結合しなければならない。この目的のために、前記POIは、前記少なくとも1つのncAAを導入することによって官能化されなければならない。前記少なくとも1つのncAAを有する官能化POIは、その後、前記ncAA残基を介したバイオ結合により、前記少なくとも1つのペイロード分子に連結されうる。前記ncAAはペイロード分子と反応性を有し、そしてペイロード分子はPOIの前記ncAA残基と反応性を有する対応する部位を保有する。こうして得られたバイオ結合体(bioconjugate)、すなわち標的化剤は、ペイロード分子を意図する標的に移動させる。
これに限定されるものではないが、POIに組み込むncAAの特定の例は、本明細書で言及する嵩高いncAAである。より詳細には、そのような残基は、TCOA、TCO-E、Boc、およびSCOまたはそれらの塩である。このようなncAAとのバイオ結合に適したPOIの適切な種類、潜在的標的、潜在的ペイロードおよび潜在的反応基の特定の非限定的な例を以下に記載する。
特に、POIは免疫グロブリン、特に抗体分子、より具体的にはモノクローナル抗体またはその機能的抗原結合誘導体(functional antigen binding derivative)もしくはフラグメントであり、そのアミノ酸配列中に少なくとも1つのncAAを有する。
別の特定の実施形態では、前記標的は腫瘍関連標的であり、ペイロード分子は抗腫瘍剤である。
本発明の第6態様は、本明細書に記載されるUNAA残基含有POIまたはその結合体を調製する方法に使用できるキットに関する。
このようなキットは、少なくとも1つの非天然アミノ酸、またはその塩;および/または本発明の第2態様に従って上記で定義されたポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組み合わせ、または本発明の第3態様に従った真核細胞を含むことができる。ここでコードされた古細菌PylRSは、tRNAPylを非天然アミノ酸またはその塩でアシル化することができる。
例えば、そのキットは、本発明のPylRS変異体をコードするポリヌクレオチドまたはそのPylRSを発現することができる真核細胞を含み、さらに、前記PylRSによって触媒される反応においてtRNAをアシル化するために使用できる少なくとも1つの非天然アミノ酸またはその塩を含む。
本明細書で言及する本発明のPylRSの特定のアミノ酸配列を以下に示す。
本発明のPylRS変異体の配列の特定の例:
NES配列は二重下線で示す。
変異は太字と下線で示す;野生型配列(配列番号56)に対する変異位置の番号付与。
本発明の特定のPylRS変異体は、M.mazei野生型PylRS、またはその酵素学的に活性なフラグメントから誘導可能である。
野生型M.mazei PylRSのアミノ酸配列は配列番号56に記載されている。
Figure 2024532537000018
以下のPylRS変異体の配列では、NES配列は二重の下線で示す。変異アミノ酸残基は太字と下線で示す。
Figure 2024532537000019
Figure 2024532537000020
Figure 2024532537000021
Figure 2024532537000022
D.追加の実施形態
1.本発明のポリペプチド
この文脈において、以下の定義が適用される:
本明細書に記載されるポリペプチドの「機能的変異体」には、以下に定義される当該ポリペプチドの「機能的等価体」が含まれる。
本明細書に記載される「酵素」「タンパク質」または「ポリペプチド」は、天然または組み換えによって産生された酵素、タンパク質またはポリペプチドであってもよく、それは野生型の酵素、タンパク質もしくはポリペプチドであってもよいし、適切な変異によって、またはHis-タグを含む配列のようなC末端および/またはN末端のアミノ酸配列の延長によって、遺伝的に修飾されていてもよい。酵素、タンパク質またはポリペプチドは、基本的に細胞性、例えばタンパク質の不純物と混合することができるが、特に純粋な形である。適切な検出方法は、例えば以下の実験セクションに記載されているか、または文献から知られている。
「純粋な形の」または「純粋な」もしくは「実質的に純粋な」酵素、タンパク質またはポリペプチドは、タンパク質を検出する通常の方法(例えばビウレット法またはLowryらによるタンパク質検出)によって測定され、本発明に従って、全タンパク質含量に対して80を超える、特に90を超える、特に95を超える、および極めて特別に99wt%を超える純度を有する酵素、タンパク質またはポリペプチドとして理解される(R.K.Scopes,Protein Purification,Springer Verlag,New York,Heidelberg,Berlin(1982)の記載を参照)。
「タンパク質原性」アミノ酸は、特に以下を含む(1文字コード):G、A、V、L、I、F、P、M、W、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、RおよびH。
「ポリペプチド」または「ペプチド」という一般的な用語は、互換的に使用されることがあり、約10から最大1,000残基を含む連続したペプチド結合したアミノ酸残基の天然または合成の直鎖または配列を指す。30残基までの短い鎖のポリペプチドは「オリゴペプチド」とも呼ばれる。
「タンパク質」という用語は、1つ以上のポリペプチドからなる高分子構造を指す。ポリペプチドのアミノ酸配列は、タンパク質の「一次構造」を表す。アミノ酸配列はまた、ポリペプチド鎖内に形成されるαヘリックス構造やβシート構造などの特殊な構造要素の形成によって、タンパク質の「二次構造」をあらかじめ決定する。このような複数の二次構造要素の配置が、タンパク質の「三次構造」または空間配置を定義する。タンパク質が複数のポリペプチド鎖を含む場合、前記鎖は空間的に配置され、タンパク質の「四次構造」を形成する。タンパク質の正しい空間的配置または「折り畳み」は、タンパク質の機能の前提条件である。変性またはアンフォールディングはタンパク質の機能を破壊する。このような破壊が可逆的であれば、タンパク質の機能は再折り畳みによって回復する可能性がある。
本明細書で言及される典型的なタンパク質機能は「酵素機能」である。すなわち、タンパク質は基質、例えば化合物に対して生体触媒として作用し、前記基質の生成物への変換を触媒する。酵素は、基質特異性および/または生成物特異性が高くても低くてもよい。
したがって、特定の「活性」を有するとして本明細書で言及される「ポリペプチド」は、例えば特定の酵素活性などの示された活性を示す正しく折り畳まれたタンパク質を暗黙的に指す。
したがって、特に断りのない限り、「ポリペプチド」という用語は、「タンパク質」および「酵素」という用語も含む。
同様に、「ポリペプチドフラグメント」という用語は、「タンパク質フラグメント」および「酵素フラグメント」という用語を含む。
「単離されたポリペプチド」という用語は、当技術分野で公知の任意の方法または方法の組み合わせによって自然環境から除去されたアミノ酸配列を指し、組換え法、生化学的方法、合成法が含まれる。
本発明はまた、本明細書に具体的に記載されるポリペプチドの「機能的等価体」(「類似体(アナログ)」または「機能的変異体」とも称される)に関する。
例えば、「機能的等価体」とは、酵素的NHase活性を決定するために使用される試験において、本明細書に具体的に記載されるポリペプチドの活性と比べて、少なくとも1~10%、または少なくとも20%、または少なくとも50%、または少なくとも75%、または少なくとも90%高いまたは低い活性を示すポリペプチドを指す。
本発明によれば「機能的等価体」は、本明細書に記載されたアミノ酸配列の少なくとも1つの配列位置において具体的に記載されたものとは異なるアミノ酸を有するが、それにもかかわらず、例えば酵素活性などの前述の生物学的活性の1つを有する特定の変異体も包含する。したがって「機能的等価体」は、1個以上、例えば1~20個、特に1~15個または5~10個のアミノ酸の付加、置換、特に保存的置換、欠失および/または逆位によって得られる変異体を含み、この記載された変化は、本発明による特性プロファイルを有する変異体をもたらすことを条件に、任意の配列位置で起こりうる。機能的等価性は、特に、活性パターンが変異体と未変化のポリペプチドとの間で定性的に一致する場合、すなわち、例えば、同じアゴニストまたはアンタゴニストまたは基質との相互作用が、しかしながら異なる速度で観察される場合(すなわち、EC50値またはIC50値または現在の技術分野で好適な任意の他のパラメータによって表される場合)にも提供される。適切な(保存的な)アミノ酸置換の例を以下の表3に示す:
Figure 2024532537000023
上記の意味での「機能的等価体」はまた、本明細書に記載のポリペプチドの「前駆体」、ならびにポリペプチドの「機能的誘導体」および「塩」である。
その場合、「前駆体」は、所望の生物学的活性を有するかまたは有さないポリペプチドの天然または合成前駆体である。
「塩」という表現は、カルボキシル基の塩および本発明によるタンパク質分子のアミノ基の酸付加塩を意味する。カルボキシル基の塩は、公知の方法で製造することができ、無機塩、例えばナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、鉄塩および亜鉛塩、ならびに有機塩基、例えばアミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ピペリジンとの塩を含む。酸付加塩、例えば塩酸または硫酸等の無機酸との塩、酢酸またはシュウ酸等の有機酸との塩も本発明の対象である。
本発明によるポリペプチドの「機能的誘導体」はまた、公知の技術を使用して、機能性アミノ酸側基またはそのN末端もしくはC末端で製造することができる。このような誘導体は、例えば、カルボン酸基の脂肪族エステル、アンモニアまたは第一級もしくは第二級アミンとの反応により得られるカルボン酸基のアミド;アシル基との反応により生成される遊離アミノ基のN-アシル誘導体;またはアシル基との反応により生成される遊離ヒドロキシル基のO-アシル誘導体を含む。
「機能的等価体」には、天然変異体と同様に、他の生物から得ることができるポリペプチドも当然に含まれる。例えば、相同配列領域の領域は配列比較によって確立することができ、等価ポリペプチドは本発明の具体的なパラメータに基づいて決定することができる。
「機能的等価体」はまた、本発明によるポリペプチドの個々のドメインまたは配列モチーフ等の「フラグメント」、または所望の生物学的機能を示しても示さなくてもよいN末端およびC末端切断型を含む。特に、このような「フラグメント」は、所望の生物学的機能を少なくとも定性的に保持する。
さらに「機能的等価体」は、本明細書中に記載されるポリペプチド配列の1つ、またはそれに由来する機能的等価体と、機能的N末端またはC末端結合における(すなわち、融合タンパク質部分の相互機能を実質的に損なうことなく)少なくとも1つのさらなる、機能的に異なる、異種配列を有する融合タンパク質である。これらの異種配列の非限定的な例は、例えばシグナルペプチド、ヒスチジンアンカーまたは酵素である。
本発明に従って含まれる「機能的等価体」は、具体的に開示されたポリペプチドに対するホモログである。これらは具体的に開示されたアミノ酸配列の1つに対して、少なくとも50、55%、または60%、特に少なくとも75%、より特に少なくとも80または85%、例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%の相同性(または同一性)を有し、PearsonおよびLipman(Proc.Natl.Acad,Sci.(USA)85(8),1988,2444-2448)のアルゴリズムにより算出される。本発明による相同ポリペプチドの、百分率で表される相同性または同一性は、特に、本明細書に具体的に記載されるアミノ酸配列の1つの全長に基づくアミノ酸残基の百分率で表される同一性を意味する。
百分率で表される同一性データは、BLASTアライメント、アルゴリズムblastp(タンパク質-タンパク質BLAST)を利用して、または本明細書で以下に規定されるClustal設定を適用することによっても決定することができる。
タンパク質のグリコシル化の可能性がある場合、本発明による「機能的等価体」は、脱グリコシル化形態またはグリコシル化形態の本明細書に記載のポリペプチド、ならびにグリコシル化パターンを変化させることによって得ることができる改変された形態を含む。
本発明によるポリペプチドの機能的等価体またはホモログは、変異誘発、例えば点変異、タンパク質の長鎖化もしくは短鎖化によって、または以下にさらに詳細に記載するように、産生することができる。
本発明によるポリペプチドの機能的等価体またはホモログは、変異体の組み合わせのデータベース、例えば短縮変異体をスクリーニングすることによって同定することができる。例えば、タンパク質の変異体の多様なデータベースは、核酸レベルでの組み合わせの変異誘発、例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素ライゲーションによって作成することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的ホモログのデータベースを作成するために使用できる方法は非常に多い。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動DNA合成装置で行うことができ、合成遺伝子はその後、適切な発現ベクターにライゲーションすることができる。縮重ゲノムを使用することにより、所望の潜在的タンパク質配列のセットをコードする混合物中のすべての配列を供給することが可能になる。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は当業者に周知である。
先行技術において、点変異または短縮によって作られた組み合わせのデータベースの遺伝子産物のスクリーニングのための、および選択された特性を有する遺伝子産物についてのcDNAライブラリーのスクリーニングのための、いくつかの技術が知られている。これらの技術は、本発明によるホモログの組み合わせの変異誘発によって産生された遺伝子バンクの迅速なスクリーニングに適応することができる。ハイスループット解析に基づく大規模な遺伝子バンクのスクリーニングに最も頻繁に使用される技術は、複製可能な発現ベクターにおける遺伝子バンクのクローニング、得られたベクターデータベースを用いた適切な細胞の形質転換、および所望の活性が検出されるとその産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離が容易になる条件下での組み合わせ遺伝子の発現を含む。再帰的アンサンブル変異誘発(REM)は、データベース内の機能的変異体の頻度を高める技術であり、ホモログを同定するためにスクリーニング試験と組み合わせて使用できる。
本発明のポリペプチドは、本発明の酵素の活性部分配列、例えば、触媒ドメインまたは活性部位を含む全ての活性形態を含む。1つの態様において、本発明は、以下に規定される触媒ドメインまたは活性部位を提供する。1つの態様において、本発明は、例えばPfam(http://pfam.wustl.edu/hmmsearch.shtml)または同等のデータベースの使用により予測される活性部位ドメインを含むか、またはそれらからなるペプチドまたはポリペプチドを提供する。Pfamは、多くの一般的なタンパク質ファミリーをカバーする多重配列アラインメントと隠れマルコフモデルの大規模なコレクションである。[Pfamタンパク質ファミリーのデータベース(A.Bateman,E.Birney,L.Cerruti,R.Durbin,L.Etwiller,S.R.Eddy,S.Griffiths-Jones,K.L.Howe,M.Marshall,and E.L.L.Sonnhammer,Nucleic Acids Research,30(1):276-280,2002)]同等のデータベースは、例えばInterProおよびSMARTデータベース(http://www.ebi.ac.uk/interpro/scan.html,http://smart.embl-heidelberg.de/)である。
本発明はまた、所望の活性を有する「ポリペプチド変異体」を包含する。この変異型のポリペプチドは、特定の配列番号によって参照される特定の、特に天然のアミノ酸配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、前記配列番号に対して少なくとも1つの置換修飾を含むアミノ酸配列から選択される。
2.核酸と構築物
2.1 核酸
この文脈において、以下の定義が適用される:
「核酸配列」、「核酸」、「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの配列という意味で互換的に使用される。核酸配列は、任意の長さの一本鎖または二本鎖のデオキシリボヌクレオチド、またはリボヌクレオチドであってよく、遺伝子のコード配列および非コード配列、エクソン、イントロン、センスおよびアンチセンスの相補配列、ゲノムDNA、cDNA、miRNA、siRNA、mRNA、rRNA、tRNA、組換え核酸配列、単離され精製された天然DNAおよび/またはRNA配列、合成DNAおよびRNA配列、フラグメント、プライマーおよび核酸プローブを含む。当業者は、RNAの核酸配列はDNA配列と同一であるが、チミン(T)がウラシル(U)に置き換えられているという違いがあることを認識している。「ヌクレオチド配列」という用語はまた、別個のフラグメントの形態で、またはより大きな核酸の成分として、ポリヌクレオチド分子またはオリゴヌクレオチド分子を含むものとして理解されるべきである。
「単離された核酸」または「単離された核酸配列」は、核酸または核酸配列が天然に存在する環境とは異なる環境にある核酸または核酸配列に関し、汚染する内因性物質を実質的に含まないものを包含することができる。
核酸に適用される本明細書で使用する「天然」という用語は、自然界の生物の細胞内に見出され、実験室でヒトによって意図的に改変されていない核酸を指す。
ポリヌクレオチドまたは核酸配列の「フラグメント」は、本明細書における実施形態のポリヌクレオチドの、特に少なくとも15bp、少なくとも30bp、少なくとも40bp、少なくとも50bpおよび/または少なくとも60bpの長さの連続ヌクレオチドを指す。特に、ポリヌクレオチドのフラグメントは、本明細書における実施形態のポリヌクレオチドの少なくとも25個、より特に少なくとも50個、より特に少なくとも75個、より特に少なくとも100個、より特に少なくとも150個、より特に少なくとも200個、より特に少なくとも300個、より特に少なくとも400個、より特に少なくとも500個、より特に少なくとも600個、より特に少なくとも700個、より特に少なくとも800個、より特に少なくとも900個、より特に少なくとも1000個の連続したヌクレオチドを含む。限定されるものではないが、本明細書のポリヌクレオチドのフラグメントは、PCRプライマーとして、および/またはプローブとして、あるいはアンチセンス遺伝子サイレンシングまたはRNAiのために使用することができる。
本明細書で使用する場合、「ハイブリダイゼーション」または特定の条件下でハイブリダイズするという用語は、互いに有意に同一または相同なヌクレオチド配列が互いに結合したままであるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を記述することを意図している。その条件は、少なくとも約70%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、90%、または95%同一である配列が、互いに結合したままとすることができる。低ストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、および高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の定義を以下に示す。適切なハイブリダイゼーション条件も、Ausubelら(1995,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,sections 2,4,and 6)に例示されているように、当業者であれば最小限の実験で選択することができる。さらに、ストリンジェンシー条件は、Sambrookら(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Press,chapters 7,9,and 11)に記載されている。
「組換え核酸配列」とは、実験室的手法(例えば、分子クローニング)を用いて、複数の供給源から遺伝物質を集め、天然には存在せず、生物学的生物には存在しない核酸配列を作成または改変することによって生じる核酸配列のことである。
「組換えDNA技術」とは、例えば「Laboratory Manuals edited by Weigel and Glazebrook,2002,Cold Spring Harbor Lab Press」および「Sambrook et al.,1989,Cold Spring Harbor,NY,Cold Spring Harbor Laboratory Press」に記載されている組換え核酸配列を調製する分子生物学的手順をいう。
「遺伝子」という用語は、細胞内でRNA分子、例えばmRNAに転写され、適切な調節領域、例えばプロモーターに作動可能に連結された領域を含むDNA配列を意味する。したがって、遺伝子は、プロモーター、例えば翻訳開始に関与する配列を含む5’リーダー配列、cDNAまたはゲノムDNAのコード領域、イントロン、エクソン、および/または例えば転写終結部位を含む3’非翻訳配列など、いくつかの作動可能に連結された配列を含むことができる。
「ポリシストロン性」は、同じ核酸分子内で複数のポリペプチドを別々にコードすることができる核酸分子、特にmRNAをいう。
「キメラ遺伝子」とは、ある種において自然界では通常見られない任意の遺伝子、特に、自然界では互いに関連しない核酸配列の1つ以上の部分が存在する遺伝子を指す。例えば、プロモーターは転写領域の一部または全部、あるいは別の調節領域と自然界では関連していない。「キメラ遺伝子」という用語は、プロモーターまたは転写調節配列が、1つ以上のコード配列、またはアンチセンス、すなわちセンス鎖の逆相補体、または逆反復配列(センスおよびアンチセンス、これによりRNA転写物は転写時に二本鎖RNAを形成する)に作動可能に連結された発現構築物を含むと理解される。「キメラ遺伝子」という用語には、新規遺伝子を産生するために1つ以上のコード配列の一部を組み合わせて得られた遺伝子も含まれる。
「3’UTR」または「3’非翻訳配列」(「3’非翻訳領域」または「3’末端」とも呼ばれる)は、遺伝子のコード配列の下流に見出される核酸配列を指し、例えば、転写終結部位と(すべてではないがほとんどの真核生物のmRNAで)AAUAAAまたはその変異体などのポリアデニル化シグナルを含む。転写終結後、mRNA転写物はポリアデニル化シグナルの下流で切断され、細胞質などの翻訳部位へのmRNAの輸送に関与するポリ(A)テールが付加されることがある。
「プライマー」という用語は、鋳型核酸配列にハイブリダイズし、鋳型に相補的な核酸配列の重合に使用される短い核酸配列を指す。
「選択可能マーカー」という用語は、発現時に選択可能マーカーを含む細胞を選択するために使用されうる任意の遺伝子を指す。選択可能マーカーの例を以下に示す。当業者は、様々な抗生物質、殺菌剤、栄養補助剤または除草剤選択可能マーカーが様々な標的種に適用可能であることを知るであろう。
本発明はまた、本明細書において定義されるポリペプチドをコードする核酸配列に関する。
特に、本発明はまた、例えば人工ヌクレオチドアナログを用いて得ることができる、上記のポリペプチドの1つおよびそれらの機能的等価体をコードする核酸配列(一本鎖および二本鎖DNAならびにRNA配列、例えばcDNA、ゲノムDNAおよびmRNA)に関する。
本発明は、本発明によるポリペプチドまたはその生物学的に活性なセグメントをコードする単離された核酸分子、および本発明によるコード核酸を同定または増幅するための例えばハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして使用することができる核酸フラグメントの両方に関する。
本発明はまた、本明細書中に具体的に開示される配列に対してある程度の「同一性」を有する核酸に関する。2つの核酸間の「同一性」とは、いずれの場合も核酸の全長にわたるヌクレオチドの同一性を意味する。
2つのヌクレオチド配列(ペプチド配列またはアミノ酸配列も同様)間の「同一性」はヌクレオチド残基の数、またはこれらの2つの配列のアラインメントを作成したときに2つの配列で同一であるヌクレオチド残基(またはアミノ酸残基)の数の関数である。同一残基は、アラインメントの所定の位置において2つの配列で同一である残基として定義される。本明細書で使用する配列同一性の百分率は、2つの配列間で同一の残基の数を取得し、それを最短配列の残基の総数で割って100を乗じることにより、最適アラインメントから計算される。最適アラインメントは、同一性の百分率が可能な限り高いアラインメントである。最適なアラインメントを得るために、アラインメントの1つ以上の位置で、一方または両方の配列にギャップが導入されることがある。これらのギャップは、配列同一性の百分率を計算する際に、非同一残基として考慮される。アミノ酸配列または核酸配列の同一性の百分率を決定する目的のためのアラインメントは、コンピュータプログラム、例えばワールドワイドウェブで利用可能な一般に利用可能なコンピュータプログラムなどを用いて様々な方法で達成することができる。
特に、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)ウェブサイト(ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/bl2seq/wblast2.cgi)から入手可能な、デフォルトパラメータに設定されたBLASTプログラム(Tatiana et al,FEMS Microbiol Lett.,1999,174:247-250,1999)を使用して、タンパク質または核酸配列の最適なアラインメントを取得し、配列同一性の百分率を計算することができる。
別の例では、同一性は、Informax社(米国)のVector NTI Suite 7.1プログラムにより、以下の設定でClustal法(Higgins DG,Sharp PM.(1989))を用いて計算することができる:
Figure 2024532537000024
Figure 2024532537000025
あるいは、Chennaら(2003)のウェブページ:http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.html#と下記設定に従って、同一性を判断することができる。
Figure 2024532537000026
本明細書中に記載のすべての核酸配列(一本鎖及び二本鎖DNA及びRNA配列、例えばcDNA及びmRNA)は、ヌクレオチド構築ブロックからの化学合成によって、例えば二重らせんの個別のオーバーラップする相補的核酸構築ブロックのフラグメント縮合によって公知の方法で製造することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホアミダイト法(Voet,Voet,第2版,Wiley Press,New York,第896-897頁)によって公知の方法で実施することができる。DNAポリメラーゼのKlenowフラグメント及びライゲーション反応並びに一般的クローニング技術を用いる合成オリゴヌクレオチドの蓄積及びギャップの穴埋めは、Sambrookら(1989)(下記参照)に記載されている。
本発明による核酸分子は、さらにコード遺伝子領域の3’及び/又は5’末端由来の非翻訳配列を含むことができる。
本発明はさらに、具体的に記載されたヌクレオチド配列又はそのセグメントに相補的な核酸分子に関する。
本発明によるヌクレオチド配列は、他の細胞型及び生物中の相同配列の同定及び/又はクローニングに使用できるプローブ及びプライマーの製造を可能にする。そのようなプローブ又はプライマーは、通常、本発明による核酸配列のセンス鎖又は対応するアンチセンス鎖の少なくとも約12、特に少なくとも約25、例えば約40、50又は75個の連続するヌクレオチドに対して、「ストリンジェントな」条件下(本明細書では別の場所で定義する)でハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含む。
「相同な」配列には、オルソログ又はパラロガス配列が含まれる。系統学的方法、配列類似性及びハイブリダイゼーション方法を含むオルソログ又はパラログを同定する方法は、当技術分野で知られており、本明細書に記載される。
「パラログ」は、類似の配列と類似の機能を持つ2つ以上の遺伝子を生じさせる遺伝子重複から生じる。パラログは通常、近縁の植物種内の遺伝子の重複によって形成され、集団で存在する。パラログは、ペアワイズBlast解析を使用して、又はCLUSTALなどのプログラムを用いた遺伝子ファミリーの系統解析により、類似した遺伝子群から検出される。パラログでは、関連遺伝子内の配列に特徴的で、遺伝子の機能が類似しているコンセンサス配列が同定されることがある。
「オルソログ」又はオルソロガス配列は、共通の祖先に由来する種に見られるため、互いに類似した配列である。例えば、共通の祖先を持つ植物種には、類似した配列と機能を持つ多くの酵素が含まれていることが知られている。当業者は、例えば、CLUSTAL又はBLASTプログラムを使用して、1つの種の遺伝子ファミリーについて多遺伝子樹を構築することにより、オルソログ配列を同定し、その機能を予測することができる。相同配列間で類似した機能を特定又は確認する方法は、植物又は微生物などの宿主細胞又は生物で、関連ポリペプチドを過剰発現又は欠損(ノックアウト/ノックダウン)した場合の転写プロファイルを比較することによる。当業者は、50%を超える共通の制御された転写産物、又は70%を超える共通の制御された転写産物、又は90%を超える共通の制御された転写産物を有する同様の転写プロファイルを有する遺伝子が同様の機能を有することを理解するであろう。本明細書の配列のホモログ(相同体)、パラログ、オルソログ及び他の任意の変異体は、宿主細胞、植物などの生物又は微生物に本発明の酵素を産生させることにより、同様に機能することが期待される。
用語「選択マーカー」とは、発現時に、選択マーカーを含む細胞を選択することができる任意の遺伝子を指す。選択マーカーの例を以下に記載する。当業者は、異なる抗生物質、殺真菌薬、栄養要求性又は除草剤の選択マーカーが異なる標的種に適用可能であることを知るであろう。
本発明による核酸分子は、分子生物学の標準的技術及び本発明に従って提供される配列情報を用いて回収することができる。例えば、cDNAは、具体的に開示される完全配列の1つ又はそのセグメントをハイブリダイゼーションプローブとして使用し、かつ(例えばSambrook(1989)に記載される)標準的ハイブリダイゼーション技術を使用して、好適なcDNAライブラリーから単離することができる。
さらに、開示された配列の1つ又はそのセグメントを含む核酸分子は、この配列に基づいて構築されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応によって単離することができる。このようにして増幅された核酸は、好適なベクター中にクローニングすることができ、DNA配列決定によって特徴づけることができる。本発明によるオリゴヌクレオチドはまた、標準的な合成方法、例えば自動DNA合成機を用いて生成することができる。
本発明による核酸配列又はその誘導体、ホモログ(相同体)又はこれらの配列の一部は、例えばゲノム又はcDNAライブラリーを介して他の細菌から通常のハイブリダイゼーション技術又はPCR技術によって単離することができる。これらのDNA配列は、標準的な条件下で、本発明による配列とハイブリダイズする。
「ハイブリダイズ」とは、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドが標準的な条件下でほぼ相補的な配列に結合する能力を意味し、一方、これらの条件において非相補的パートナー間の非特異的結合は生じない。これに関して、配列は90~100%相補的でありうる。互いに特異的に結合できる相補的配列の特性は、例えばノーザンブロッティングもしくはサザンブロッティングにおいて、又はPCRもしくはRT-PCRでのプライマー結合において利用される。
保存領域の短いオリゴヌクレオチドはハイブリダイゼーションに好都合に使用される。しかし、本発明による核酸のより長いフラグメント又は完全配列をハイブリダイゼーションに使用することも可能である。これらの「標準条件」は、使用される核酸(オリゴヌクレオチド、より長いフラグメント又は完全配列)に応じて、又はハイブリダイゼーションに使用される核酸のタイプ(DNA又はRNA)に応じて変わる。例えば、DNA:DNAハイブリッドの融解温度は同じ長さのDNA:RNAハイブリッドの融解温度より約10℃低い。
例えば、具体的な核酸に応じて、標準条件とは、0.1~5xSSC(1XSSC=0.15M NaCl、15mMクエン酸ナトリウム、pH7.2)の範囲の濃度を有する水性緩衝液中で、又はさらに50%ホルムアミドの存在下での、42~58℃の温度を意味し、例えば5xSSC中42℃、50%ホルムアミドである。有利には、DNA:DNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は0.1xSSC及び約20℃~45℃、好ましくは約30℃~45℃の温度である。DNA:RNAハイブリッドの場合、ハイブリダイゼーション条件は、有利には、0.1xSSC及び約30℃~55℃の温度、特に約45℃~55℃の温度である。ハイブリダイゼーションのためのこれらの記載された温度は、ホルムアミドの非存在下で長さが約100ヌクレオチドでかつG+C含量が50%である核酸の融解温度計算値の例である。DNAハイブリダイゼーションの実験条件は、関連する遺伝学の教科書、例えばSambrookら(1989)に記載されており、例えば核酸の長さ、ハイブリッドの種類又はG+C含量に応じて当業者に公知の式を使用して算出することができる。当業者は以下の教科書からハイブリダイゼーションに関するさらなる情報を得ることができる:Ausubelら(編)(1985);Brown(編)(1991)。
「ハイブリダイゼーション」は、特に、ストリンジェントな条件下で実施することができる。このようなハイブリダイゼーション条件は、例えば、Sambrook(1989)、又はCurrent Protocols in Molecu-lar Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6に記載されている。
本明細書で使用する場合、特定の条件下でのハイブリダイゼーション又は特定の条件下でハイブリダイズするという用語は、互いに有意に同一又は相同なヌクレオチド配列が互いに結合したままとなるハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を説明することを意図している。条件は、少なくとも約70%、例えば少なくとも約80%、及び例えば少なくとも約85%、90%、又は95%同一である配列が、互いに結合したままであるものであってもよい。低ストリンジェンシー、中程度、及び高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の定義は本明細書に記載されている。
適切なハイブリダイゼーション条件は、Ausubelら(1995,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,sections2,4,及び6)に例示されているように、最小限の実験で当業者が選択することができる。さらに、ストリンジェンシー条件は、Sambrookら(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Press,chapters7,9,及び11)に記載されている。
本明細書で使用する、低ストリンジェンシーの定義された条件は以下の通りである。35%ホルムアミド、5XSSC、50mMのTris-HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.1% PVP、0.1%のフィコール、1%のBSA及び500μg/mlの変性サケ精子DNAを含有する溶液中40℃で6時間、DNA含有フィルターを前処理する。同じ溶液中でハイブリダイゼーションを行うが、以下のように変更する:0.02%のPVP、0.02%のフィコール、0.2%のBSA、100μg/mlのサケ精子DNA、10%(wt/vol)硫酸デキストラン及び5~20X10の32P標識プローブを使用する。ハイブリダイゼーション混合物中40℃で18~20時間フィルターをインキュベートし、次いで、2XSSC、25mMのTris-HCl(pH7.4)、5mMのEDTA及び0.1%のSDSを含む溶液中55℃で1.5時間洗浄する。洗浄液を新しい溶液と置換した後、60℃でさらに1.5時間インキュベートする。フィルターをブロット乾燥し、オートラジオグラフィにかける。
本明細書で使用する、中程度のストリンジェンシーの定義された条件は以下の通りである。DNA含有フィルターを、35%のホルムアミド、5×SSC、50mMのTris-HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.1%のPVP、0.1%のフィコール、1%のBSA及び500μg/mlの変性サケ精子DNAを含有する溶液中で、50℃で7時間前処理する。ハイブリダイゼーションは、同じ溶液中で以下の変更を加えて実施する:0.02%のPVP、0.02%のフィコール、0.2%のBSA、100μg/mlのサケ精子DNA、10%(wt/vol)硫酸デキストラン及び5~20×10の32P標識プローブを使用する。フィルターをハイブリダイゼーション混合物中で、30時間50℃でインキュベートし、次いで2×SSC、25mMのTris-HCl(pH7.4)、5mMのEDTA及び0.1%のSDSを含有する溶液中で、55℃で1.5時間洗浄する。洗浄溶液を新しい溶液と取り替え、60℃でさらに1.5時間インキュベートする。フィルターをブロット乾燥し、オートラジオグラフィにかける。
本明細書で使用する、高ストリンジェンシーの定義された条件は以下の通りである。DNA含有フィルターのプレハイブリダイゼーションを、6×SSC、50mMのTris-HCl(pH7.5)、1mMのEDTA、0.02%のPVP、0.02%のフィコール、0.02%のBSA及び500μg/mlの変性サケ精子DNAで構成される緩衝液中で、65℃で8時間からオーバーナイトで実施する。フィルターを、100μg/mlの変性サケ精子DNA及び5~20×10cpmの32P標識されたプローブを含有するプレハイブリダイゼーション混合物中で、65℃で48時間ハイブリダイズさせる。フィルターの洗浄は、2×SSC、0.01%のPVP、0.01%のフィコール及び0.01%のBSAを含有する溶液中で、37℃で1時間実施する。これに引き続き0.1×SSC中で、50℃で45分間洗浄する。
上記の条件が不適切な場合(例えば、種間ハイブリダイゼーションに使用される場合)、当技術分野で周知の(例えば、種間ハイブリダイゼーションに使用される)低、中、高ストリンジェンシーの他の条件を用いてもよい。
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列の検出キットは、ポリペプチドをコードする核酸配列に特異的なプライマー及び/又はプローブ、並びにプライマー及び/又はプローブを使用して試料中のポリペプチドをコードする核酸配列を検出するための関連プロトコルを含んでいてもよい。このような検出キットは、植物、生物、微生物又は細胞が改変されているかどうか、すなわち、ポリペプチドをコードする配列で形質転換されているかどうかを判定するために使用することができる。
本明細書の実施形態による変異型DNA配列の機能を試験するために、目的の配列を、選択可能又はスクリーニング可能なマーカー遺伝子に作動可能に連結し、前記レポーター遺伝子の発現を一過性発現アッセイで、例えば、微生物又はプロトプラストを用いて又は安定に形質転換した植物において試験する。
また本発明は、具体的に開示された又は誘導可能な核酸配列の誘導体にも関する。
したがって、本発明によるさらなる核酸配列は、本明細書に具体的に開示された配列に由来することができる。また1つ又は数個(例えば1~10個)のヌクレオチドの1つ以上の、例えば1~20個、特に1~15又は5~10個の付加、置換、挿入又は欠失によってそれとは異なることができ、さらに所望の特性プロファイルを有するポリペプチドをコードすることができる。
また本発明は、いわゆるサイレント変異を含む核酸配列、又は具体的な配列と比較して、特定の元の生物もしくは宿主生物のコドン使用に従って改変された核酸配列も包含する。
本発明の特定の実施形態によれば、そのヌクレオチド配列を特定の発現系に適合させるために、変異核酸核酸を調製することができる。例えば、細菌発現系は、アミノ酸が特定のコドンによってコードされる場合、より効率的にポリペプチドを発現することが知られている。遺伝暗号の縮重により、複数のコドンが同じアミノ酸配列をコードする場合があり、複数の核酸配列が同じタンパク質又はポリペプチドをコードする場合がある。これら全てのDNA配列は、本明細書の実施形態に包含される。必要に応じて、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸配列は、宿主細胞における発現を増加させるために最適化され得る。例えば、本明細書の実施形態の核酸は、発現を改善するために宿主に特有のコドンを用いて合成することができる。
また本発明は、本明細書に記載された配列の天然に存在する変異体、例えばスプライシング変異体又は対立遺伝子変異体を包含する。
対立遺伝子変異体は、配列範囲全体にわたって、アミノ酸誘導体のレベルで少なくとも60%の相同性、具体的には少なくとも80%の相同性、かなり具体的には少なくとも90%の相同性を有することができる(アミノ酸レベルでの相同性に関しては、ポリペプチドに関しての上記の詳細を参照のこと)。有利には、相同性は配列の部分的な領域でより高くなり得る。
また本発明は、保存的ヌクレオチド置換(すなわち、その結果、問題のアミノ酸が同じ電荷、サイズ、極性及び/又は溶解度のアミノ酸で置き換えられる)により得ることができる配列にも関する。
本発明はまた、配列多型によって具体的に開示された核酸に由来する分子にも関する。このような遺伝子多型は、異なる集団からの細胞内、又は自然の対立遺伝子変異により集団内に存在し得る。また、対立遺伝子変異には、機能的等価体が含まれる場合がある。これらの自然変異は、通常、遺伝子のヌクレオチド配列に1~5%の差異を生じさせる。前記多型は、本明細書に開示されるポリペプタイドのアミノ酸配列に変化をもたらすことがある。また、対立遺伝子変異体は、機能的等価体を含むことができる。
さらに誘導体はまた、本発明による核酸配列のホモログ(相同体)、例えば動物、植物、真菌又は細菌のホモログ(相同体)、短縮配列、コード及び非コードDNA配列の一本鎖DNA又はRNAであると理解されるであろう。例えば、ホモログ(相同体)は、DNAレベルにおいて、本明細書に具体的に開示される配列で与えられるDNA領域全体にわたって少なくとも40%、具体的には60%、特に具体的には70%、かなり具体的には80%の相同性を有する。
さらに誘導体は、例えば、プロモーターとの融合体であると理解される。記載されたヌクレオチド配列に付加されるプロモーターは、プロモーターの機能性又は有効性を損なうことなく、少なくとも1つのヌクレオチド交換、少なくとも1つの挿入、逆位及び/又は欠失によって改変することが可能である。さらに、プロモーターの有効性は、それらの配列を変更することによって増大させることができ、又は異なる属の生物であっても、より効果的なプロモーターと完全に交換することができる。
2.2.本発明のポリペプチドを発現させるための構築物
この文脈では以下の定義が適用される:
「遺伝子の発現」には、「異種発現」及び「過剰発現」が含まれ、遺伝子の転写及びmRNAのタンパク質への翻訳が含まれる。過剰発現とは、トランスジェニック細胞又は生物におけるmRNA、ポリペプチド及び/又は酵素活性のレベルによって測定される遺伝子産物の産生が、同様の遺伝的背景を有する非形質転換細胞又は生物における産生のレベルを超えることをいう。
本明細書で使用する「発現ベクター」とは、外来又は外因性DNAを宿主細胞に送達するために、分子生物学的方法及び組換えDNA技術を用いて設計された核酸分子を意味する。発現ベクターは、通常、ヌクレオチド配列の適切な転写に必要な配列を含む。コード領域は、通常、目的のタンパク質をコードするが、RNA、例えば、アンチセンスRNA、siRNAなどをコードすることもできる。
本明細書で使用する「発現ベクター」は、ウイルスベクター、バクテリオファージ及びプラスミドを含むがこれらに限定されない、任意の直鎖状又は環状の組換えベクターを含む。当業者は、発現系に応じて適切なベクターを選択することが可能である。一実施形態では、発現ベクターは、転写プロモーター、オペレーターもしくはエンハンサー、又はmRNAリボソーム結合部位などの転写、翻訳、開始及び終結を制御する少なくとも1つの「調節配列」に作動可能に連結した本明細書の実施形態の核酸を含み、任意に、少なくとも1つの選択マーカーを含む。ヌクレオチド配列は、調節配列が本明細書の実施形態の核酸に機能的に関連する場合、「作動可能に連結」している。
本明細書で使用する「発現系」は、所定の発現宿主のin vivo又はin vitroで、1つの発現又は2つ以上のポリペプチドの同時発現に必要な核酸分子の任意の組み合わせを包含する。それぞれのコード配列は、単一の核酸分子、又は例えば複数のクローニング部位を含むベクター等のベクター、又はポリシストロン性核酸のいずれかに位置していてもよいし、2つ以上の物理的に異なるベクターに分布していてもよい。特定の例として、プロモーター配列、1つ以上のオペレーター配列、及び本明細書に記載される酵素をそれぞれコードする1つ以上の構造遺伝子を含むオペロンを挙げることができる。
本明細書で使用される場合、用語「増幅する」及び「増幅」は、以下に詳細に説明するように、自然に発現した核酸の組換えを生成又は検出するための任意の適切な増幅方法の使用を意味する。例えば、本発明は、in vivo、ex vivo又はin vitroで、本発明の自然に発現した核酸(例えば、ゲノムDNA又はmRNA)又は組換え核酸(例えば、cDNA)を増幅するための(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、PCRによる)方法及び試薬(例えば、特異的な縮重オリゴヌクレオチドプライマー対、オリゴdTプライマー)を提供する。
「調節配列」とは、本明細書の実施形態に係る核酸配列の発現レベルを決定する核酸配列であって、調節配列に作動可能に連結された核酸配列の転写速度を調節することが可能な核酸配列をいう。調節配列は、プロモーター、エンハンサー、転写因子、プロモーター要素などを含む。
「プロモーター」、「プロモーター活性を有する核酸」又は「プロモーター配列」は、本発明に従って、転写されるべき核酸に機能的に連結されたとき、前記核酸の転写を調節する核酸を意味すると理解される。「プロモーター」は特に、RNAポリメラーゼに対する結合部位及び適切な転写に必要な他の因子を提供することによって、コード配列の発現を制御する核酸配列をいう。他の因子には、これらに限定されないが、転写因子結合部位、リプレッサー及びアクチベータータンパク質結合部位が含まれる。プロモーターという用語の意味には、「プロモーター調節配列」という用語も含まれる。プロモーター調節配列は、関連するコード核酸配列の転写、RNAプロセシング又は安定性に影響を与える可能性がある上流及び下流の要素を含むことができる。プロモーターには、天然由来の配列と合成配列が含まれる。コード核酸配列は、通常、転写開始部位を起点とする転写の方向に関して、プロモーターの下流に位置する。
この文脈では、「機能的」又は「作動的」連結は、例えば、核酸の1つと調節配列との連続的な配置を意味すると理解される。例えば、プロモーター活性を有する配列、及び転写される核酸配列の配列、及び任意にさらなる調節要素、例えば核酸の転写を確実にする核酸配列、例えばターミネーターは、調節要素の各々が核酸配列の転写時にその機能を果たすことができるように連結される。これは必ずしも化学的な意味での直接的な結合を必要としない。遺伝的制御配列、例えばエンハンサー配列は、より離れた位置から、又は他のDNA分子からでさえ、標的配列に対してその機能を発揮することができる。好ましい配置は、転写される核酸配列がプロモーター配列の後ろ(すなわち、3’末端)に配置され、2つの配列が共有結合されるものである。プロモーター配列と組換え発現させる核酸配列の間の距離は、200塩基対未満、又は100塩基対未満、又は50塩基対未満とすることができる。
プロモーターとターミネーターに加え、他の調節要素の例として、標的配列、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、選択マーカー、増幅シグナル、複製起点などを挙げることができる。好適な調節配列は、例えば、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。
用語「構成的プロモーター」とは、作動可能に連結された核酸配列の継続的な転写を可能にする非制御的プロモーターのことである。
本明細書で使用する場合、「作動可能に連結された」という用語は、機能的関係にあるポリヌクレオチド要素の連結をいう。核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係にある場合「作動可能に連結される」。例えば、プロモーター、又はむしろ転写調節配列は、それがコード配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されているとは、連結されているDNA配列が通常連続していることを意味する。プロモーター配列に関連するヌクレオチド配列は、形質転換される植物に関して相同性又は非相同性の起源のものであってよい。また、配列は、全体的に又は部分的に合成されているものでもよい。起源に関わらず、プロモーター配列に関連する核酸配列は、本明細書の実施形態のポリペプチドに結合した後、それが連結されるプロモーター特性に従って発現されるか又は発現抑制される。関連する核酸は、生物全体において常に発現又は抑制されることが望まれるタンパク質をコードしてもよく、あるいは、特定の時間に又は特定の組織、細胞、又は細胞区画において発現又は抑制されることが望まれるタンパク質をコードしてもよい。このようなヌクレオチド配列は、特に、それによって改変又は形質転換された宿主細胞又は宿主生物に対して所望の表現型形質を付与するタンパク質をコードする。より具体的には、関連するヌクレオチド配列は、細胞又は生物において本明細書で定義される目的の生成物の生成をもたらす。特に、ヌクレオチド配列は、本明細書で定義される酵素活性を有するポリペプチドをコードする。
本明細書で上述したヌクレオチド配列は、「発現カセット」の一部であってもよい。用語「発現カセット」と「発現構築物」は、同義的に使用される。(特に組換え)発現構築物は、本発明によるポリペプチドをコードし、調節核酸配列の遺伝的制御下にあるヌクレオチド配列を含む。
本発明に従って適用される方法において、発現カセットは「発現ベクター」、特に組換え発現ベクターの一部であってもよい。
「発現ユニット」とは、本発明によれば、本明細書で定義されるプロモーターを含み、発現される核酸又は遺伝子と機能的に結合した後、前記核酸又は前記遺伝子の発現、すなわち転写及び翻訳を調節する発現活性を有する核酸を意味すると理解される。したがって、これに関連して「調節核酸配列」とも呼ばれる。プロモーターに加えて、他の調節要素、例えばエンハンサーもまた存在し得る。
「発現カセット」又は「発現構築物」は、本発明に従って、発現させる核酸又は発現させる遺伝子に機能的に連結された発現ユニットを意味すると理解される。したがって、発現ユニットとは対照的に、発現カセットは、転写及び翻訳を制御する核酸配列だけでなく、転写及び翻訳の結果としてタンパク質として発現されるべき核酸配列も含む。
「発現」又は「過剰発現」という用語は、本発明の文脈では、対応するDNAによってコードされる微生物における1つ以上のポリペプチドの細胞内活性の生成又は増加を説明する。この目的のために、例えば、生物に遺伝子を導入すること、既存の遺伝子を他の遺伝子で置換すること、遺伝子のコピー数を増やすこと、強力なプロモーターを用いること、又は高い活性を有する対応するポリペプチドをコードする遺伝子を用いることが可能であり、任意に、これらの手段を組み合わせることも可能である。
特に、本発明によるその構築物は、それぞれのコード配列の5’-上流のプロモーター及び3’-下流のターミネーター配列、及び任意に他の通常の調節要素を含み、それぞれの場合にコード配列と作動的に連結している。
本発明による核酸構築物は、特に、例えば本明細書に記載されているアミノ酸関連の配列番号に由来するポリペプチドをコードする配列、又はその逆相補体、又はその誘導体及び相同体を含み、有利には遺伝子発現を制御、例えば増加させるために、1つ以上の調節シグナルと作動的又は機能的に連結されている。
これらの調節配列に加えて、これらの配列の自然調節が実際の構造遺伝子の前にまだ存在してもよく、任意に自然調節がスイッチオフされ、遺伝子の発現が増強されるように遺伝的に変更されていてもよい。しかし核酸構築物は、より単純な構造であってもよく、すなわち、コード配列の前に追加の調節シグナルが挿入されておらず、その調節を伴う自然のプロモーターが除去されていない場合である。代わりに、自然の調節配列を変異させて、調節がもはや行われず、遺伝子発現量が増加するようにする。
好ましい核酸構築物は、有利には、プロモーターと機能的に連結している1つ以上の既述の「エンハンサー」配列も含み、これらの配列は、核酸配列の強化された発現を可能にする。DNA配列の3’末端には、さらなる調節要素又はターミネーターなどの有利な配列が挿入されていてもよい。本発明による核酸の1つ以上のコピーが、構築物中に存在してもよい。構築物には、栄養要求性又は抗生物質耐性を補完する遺伝子などの他のマーカーが、構築物を選択するために任意に存在してもよい。
好適な調節配列の例は、プロモーター、例えばcos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacI、T7、T5、T3、gal、trc、ara、rhaP(rhaPBAD)SP6、lambda-P、又はlambda-Pプロモーターに存在し、これらは有利にはグラム陰性菌で採用される。さらに有利な調節配列は、例えば、グラム陽性菌のプロモーターであるamy及びSPO2、酵母又は真菌のプロモーターであるADC1、MFalpha、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADHに存在する。人工プロモーターを用いて調節することもできる。
宿主生物での発現のために、核酸構築物は、有利には、例えば、プラスミド又はファージなどのベクターに挿入され、宿主における遺伝子の最適な発現を可能にする。ベクターとは、プラスミド及びファージに加えて、当業者に知られている他のすべてのベクター、すなわち、SV40、CMV、バキュロウイルス及びアデノウイルスなどのウイルス、トランスポゾン、IS要素、ファスミド、コスミド及び線状もしくは環状のDNA又は人工染色体を意味すると理解される。これらのベクターは、宿主生物において自律的に複製することができ、それ以外に染色体上で複製することもできる。これらのベクターは、本発明をさらに発展させたものである。バイナリベクター又はcpo組み込み型ベクターも適用可能である。
好適なプラスミドは、例えば、大腸菌のpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223-3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11もしくはpBdCI、ストレプトマイセス属のpIJ101、pIJ364、pIJ702もしくはpIJ361、バシラス属のpUB110、pC194もしくはpBD214、コリネバクテリウム属のpSA77もしくはpAJ667、真菌のpALS1、pIL2もしくはpBB116、酵母の2alphaM、pAG-1、YEp6、YEp13もしくはpEMBLYe23、又は植物のpLGV23、pGHlac、pBIN19、pAK2004もしくはpDH51にある。上述したプラスミドは、可能なプラスミドのごく一部である。さらなるプラスミドは、当業者に周知であり、例えば、書籍「Cloning Vectors」(Eds.Pouwels P.H.et al.Elsevier,Amsterdam-New York-Oxford,1985,ISBN 0 444 904018)に記載されている。
ベクターのさらなる発展として、本発明による核酸構築物又は本発明による核酸を含むベクターは、有利には、線状DNAの形態で微生物に導入され、異種又は相同組換えを介して宿主生物のゲノムに組み込まれることもできる。この線状DNAは、プラスミドなどの線状化ベクターからなることも、又は本発明による核酸構築物又は核酸のみからなることもできる。
生物における異種遺伝子の最適な発現のために、生物で使用される特定の「コドン使用頻度」に合うように核酸配列を変更することが有利である。この「コドン使用頻度」は、問題になっている生物の他の既知の遺伝子をコンピュータで評価することによって、容易に決定することができる。
本発明による発現カセットは、適切なプロモーターを、適切なコードヌクレオチド配列及びターミネーター又はポリアデニル化シグナルに融合させることによって作製される。この目的のために、例えば、T.Maniatis,E.F.Fritsch and J.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989)、及び、T.J.Silhavy,M.L.Berman and L.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1984)、及び、Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience(1987)に記載されている慣習的な組換え技術及びクローニング技術が使用される。
適切な宿主生物で発現させるために、組換え核酸構築物又は遺伝子構築物は、有利には、宿主における遺伝子の最適な発現を可能にする宿主特異的ベクターに挿入される。ベクターは当業者に周知であり、例えば、「cloning vectors」(Pouwels P.H.et al.,Ed.,Elsevier,Amsterdam-New York-Oxford,1985)に見出すことができる。
本明細書の実施形態の代替的な実施形態は、宿主細胞において「遺伝子発現を変化させる」方法を提供する。例えば、本明細書の実施形態のポリヌクレオチドは、宿主細胞又は宿主生物において、特定の状況で(例えば、特定の温度又は培養条件への曝露時に)増強又は過剰発現又は誘導され得る。
本明細書で提供されるポリヌクレオチドの発現が変化すると、変化した生物と対照又は野生型の生物とで異なる発現パターンである異所性発現が生じることもある。発現の変化は、本明細書の実施形態のポリペプチドと外因性もしくは内因性のモジュレーターとの相互作用から、又はポリペプチドの化学的修飾の結果として生じる。この用語はまた、本明細書の実施形態のポリヌクレオチドの変化した発現パターンが、検出レベル未満に変化しているか、又は活性が完全に抑制されていることを指す。
一実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチド又は変異型ポリペプチドをコードする単離、組換え又は合成ポリヌクレオチドもまた、本明細書で提供される。
一実施形態では、いくつかのポリペプチドをコードする核酸配列は、特に異なるプロモーターの制御下で、単一の宿主において共発現する。別の実施形態では、いくつかのポリペプチドをコードする核酸配列は、単一の形質転換ベクター上に存在するか、又は別個のベクターを使用して同時に共形質転換され、両方のキメラ遺伝子を含む形質転換体を選択することができる。同様に、1つのポリペプチドをコードする遺伝子は、他のキメラ遺伝子と共に、単一の植物、細胞、微生物又は生物で発現することができる。
3.本発明に適用される宿主
文脈に応じて、用語「宿主」は、野生型の宿主又は遺伝子改変された組換え宿主、又はその両方を意味することができる。
原則として、すべての原核生物又は真核生物は、本発明による核酸又は核酸構築物の宿主又は組換え宿主生物として考慮することができる。
本発明によるベクターを用いて、例えば本発明による少なくとも1つのベクターで形質転換され、本発明によるポリペプチドの生産に使用することができる原核生物または真核生物の組換え宿主を産生することができる。有利には、上記の本発明による組換え構築物は、適切な宿主系に導入されて発現する。当業者に知られている特に一般的なクローニング法及びトランスフェクション法、例えば、共沈、プロトプラスト融合、電気穿孔、レトロウイルストランスフェクションなどを用いて、記載される核酸をそれぞれの発現系で発現させる。適切な系は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,F.Ausubel et al.,Ed.,Wiley Interscience,New York 1997、又はSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に記載されている。
例えば、細菌などの微生物が宿主生物として使用される。例えば、グラム陽性又はグラム陰性の細菌が使用され、好ましくは、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、リゾビウム科(Rhizobiaceae)、ストレプトマイセス科(Streptomycetaceae)、レンサ球菌科(Streptococcaceae)又はノカルディア科(Nocardiaceae)の細菌、特に好ましくは、エシェリキア属(Escherichia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ノカルディア属(Nocardia)、バークホルデリア属(Burkholderia)、サルモネラ属(Salmonella)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、クロストリジウム属(Clostridium)又はロドコッカス属(Rhodococcus)の細菌が使用される。大腸菌(Escherichia coli)属及び種が非常に好ましい。有利には、サッカロミセス科(Saccharomyces)又はピキア科(Pichia)などの酵母も好適な宿主である。
あるいは、真核細胞を宿主として用いてもよい。本発明の真核細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞および植物細胞から選択できるが、これらに限定されない。本発明の真核細胞は、個々の細胞として存在してもよいし、組織の一部(例えば、(培養)組織、器官または生物全体の細胞)であってもよい。
植物全体又は植物細胞を天然又は組換え宿主として利用することもできる。非限定的な例として、以下の植物又はそれに由来する細胞を挙げることができる:タバコ属(Nicotiana)、特にベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)及びタバコ(Nicotiana tabacum)並びにシロイヌナズナ属(Arabidopsis)、特にアラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)。
昆虫細胞の特に非限定的な例は、Sf21、Sf9およびHigh Five細胞である。哺乳動物細胞の特に非限定的な例は、HEK293、HEK293T、HEK293F、CHO、CHO-S、COS、HeLa細胞である。
宿主生物に応じて、本発明による方法で使用される生物は、当業者に知られている方法で増殖又は培養される。培養は、バッチ式、半バッチ式又は連続的に行うことができる。栄養素は、発酵の開始時に存在させてもよいし、後から半連続的又は連続的に供給してもよい。これについても以下で詳しく説明する。
4.1つ以上のUNAAを含むPOIとその調製
4.1 POI
本発明のPOIは、一般に、少なくとも1つのncAAと本発明のピロリジルtRNA合成酵素と上記tRNAPylの存在下で、上記の任意の適切な宿主細胞系または無細胞発現系において組み換えによって生産できる任意の形態のポリペプチドまたはタンパク質分子に関する。
特定の実施形態において、POIは「標的化剤」として形成するために利用される。
この標的化剤の第一の目的は、特定の「標的」との共有結合または非共有結合の形成である。標的化剤の第二の目的は、「ペイロード分子(payload molecule)」の前記標的への標的化された輸送である。前記第二の目的を達成するために、POIは少なくとも一つのペイロード分子と(可逆的または不可逆的に)結合しなければならない。この目的のために、前記POIは、前記少なくとも1つのncAAを導入することによって官能化されなければならない。前記少なくとも1つのncAAを有する官能化POIは、その後、前記ncAA残基を介したバイオ結合により、前記少なくとも1つのペイロード分子に連結されうる。前記ncAAはペイロード分子と反応性を有し、そしてペイロード分子はPOIの前記少なくとも1つのncAA残基と反応性を有する対応する部位を保有する。こうして得られたバイオ結合体(bioconjugate)、すなわち標的化剤は、ペイロード分子を意図する標的に移動させる。
例えば、「標的」は、生物、組織または細胞の中および/または上に存在する任意の分子であってもよい。このような標的は、特定の生物、組織または細胞に対して非特異的であっても特異的であってもよい。標的には、細胞表面標的、例えばレセプター(受容体)、糖タンパク質、糖鎖、炭水化物;構造タンパク質、例えばアミロイド斑;間質中などにある豊富な細胞外標的、成長因子、プロテアーゼなどの細胞外マトリックス標的;細胞内標的、例えばゴルジ体の表面、ミトコンドリアの表面、RNA、DNA、酵素、細胞シグナル伝達経路の構成成分;および/または異物、例えばウイルス、細菌、真菌、酵母などの病原体またはその一部が含まれる。
標的の例には、その存在または発現レベルが特定の組織または細胞型と相関する、またはその発現レベルが特定の疾患において上方制御または下方制御されるタンパク質などの化合物が含まれる。
特に、そのような標的は(内在化または非内在化)受容体などのタンパク質である。
標的は、ヒトまたは動物の体内、あるいは病原体または寄生虫上の任意の適切な標的から選択することができる。
好適な標的の非限定的な例としては、以下を含む群が挙げられるが、これらには限定されない:細胞膜および細胞壁などの細胞成分、細胞膜レセプターなどのレセプター、ゴルジ体またはミトコンドリアなどの細胞内構造、酵素、レセプター、DNA、RNA、ウイルスまたはウイルス粒子、マクロファージ、腫瘍関連マクロファージ、抗体、タンパク質、炭水化物、単糖、多糖、サイトカイン、ホルモン、ステロイド、ソマトスタチン受容体、モノアミン酸化酵素、ムスカリン受容体、心筋交感神経系、ロイコトリエン受容体、例えば、白血球上のロイコトリエン受容体、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)、葉酸受容体、アポトーシスマーカー、(抗)血管新生マーカー、ガストリン受容体、ドーパミン作動性系、セロトニン作動性系、GABA作動性系、アドレナリン作動性系、コリン作動性系、オピオイド受容体、GPIIb/IIIa受容体およびその他の血栓関連受容体、フィブリン、カルシトニン受容体、タフチン受容体、P糖タンパク質、ニューロテンシン受容体、神経ペプチド受容体、サブスタンスP受容体、NK受容体、CCK受容体、シグマ受容体、インターロイキン受容体、単純ヘルペスウイルスチロシンキナーゼ、ヒトチロシンキナーゼ、インテグリン受容体、フィブロネクチンターゲット、AOC3、ALK、AXL、C242、CA-125、CCL11、CCR5、CD2、CD3、CD4、CD5、CD15、CA15-3、CD18、CD19、CA19-9、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD28、CD30、CD31、CD33、CD37、CD38、CD40、CD41、CD44v6、CD45、CD51、CD52、CD54、CD56、CD62E、CD62P、CD62L、CD70、CD72、CD74、CD79-B、CD80、CD105、CD125、CD138、CD141、CD147、CD152、CD154、CD174、CD227、CD326、CD340、VEGF/EGFおよびVEGF/EGF受容体、VEGF-A、VEGFR2、VEGFR1、TAG72、CEA、MUC1、MUC16、GPNMB、PSMA、クリプト、テナシンC、メラノコルチン-1受容体、G250、HLA DR、ED-B、TMEFF2、EphB2、EphB4、EphA2、FAP、メソセリン、GD2、GD3、CAIX、5T4、クランピング因子、CTLA-4、CXCR2、FGFRl、FGFR2、FGFR3、FGFR4、NaPi2b、NOTCHl、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、ErbB2、ErbB3、EpCAM、FLT3、HGF、HER2、HER3、HMI24、ICAM、ICOS-L、IGF-1受容体、TRPV1、CFTR、gdNMB、CA9、c-KIT、c-MET、ACE、APP、アドレナリン受容体β2、クローディン3、RON、RORl、PD-Ll、PD-L2、B7-H3、B7-H4、IL-2受容体、IL-4受容体、IL-13受容体、インテグリン、IFN-α、IFN-γ、IgE、IGF-1受容体、IL-1、IL-4、IL-5、IL-6、IL-12、IL-13、IL-22、IL-23、インターフェロン受容体、ITGB2(CD18)、LFA-1(CDl la)、L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、ムチン、ミオスタチン、NCA-90、NGF、PDGFRα、前立腺がん細胞、緑膿菌、狂犬病、RANKL、呼吸器合胞体ウイルス、アカゲザル因子、SLAMF7、スフィンゴシン-1-リン酸、TGF-1、TGFβ2、TGFβ、TNFα、TRAIL-R1、TRAIL-R2、CTAA16.88、ビメンチン、MMP2、MMP9、MMP14などのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、LDLレセプター、エンドグリン、ポリシアル酸およびそれに対応するレクチン。フィブロネクチンの標的の例としては、フィブロネクチンの交互スプライシングされたエクストラドメインA(ED-A)およびエクストラドメインB(ED-B)が挙げられる。間質における標的の非限定的な例は、V.Hofmeister,D.Schrama,J.C.Becker,Cancer Immun.;Immunother.2008,57,1に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
より詳細には、上記の標的の(特異的な)標的化を可能にするために、標的化剤は、ncAA官能化ペプチド配列を含む化合物を含むことができる。このような化合物としては、抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、抗体(フラグメント)融合体(例えば、二特異性および三特異性mAbフラグメントまたは誘導体)、タンパク質、ペプチド、例えば、オクトレオチドおよび誘導体、VIP、MSH、LHRH、走化性ペプチド、ボンベシン、エラスチン、ペプチド模倣体、受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、サイトカイン、ホルモン、ステロイド、毒素などが挙げられるが、これらに限定されない。
特定の態様によれば、標的は受容体であり、標的への特異的結合が可能な標的化剤が採用される。適切な標的化剤としては、これらに限定されないが、そのような受容体のリガンドまたは受容体に依然として結合するその一部、例えば、受容体結合タンパク質リガンドの場合には、受容体結合ペプチドが挙げられる。
タンパク質性の標的化剤の他の例としては、インスリン、トランスフェリン、フィブリノーゲン-γフラグメント、トロンボスポンジン、クローディン、アポリポタンパク質E、例えばABY-025などのアフィボディ分子、アンキリンリピートタンパク質、アンキリン様リピートタンパク質、インターフェロン、例えばα、β、γインターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、コロニー刺激因子、タンパク質増殖因子、例えば腫瘍増殖因子、例えばα、β腫瘍増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、uPAR標的化タンパク質、アポリポタンパク質、LDL、アネキシンV、エンドスタチン、およびアンジオスタチンが挙げられる。
標的化剤に使用される抗体などのペプチド分子の例としては、LHRH受容体標的化ペプチド、EC-1ペプチド、RGDペプチド、HER2標的化ペプチド、PSMA標的化ペプチド、ソマトスタチン標的化ペプチド、ボンベシンが挙げられる。標的化剤の他の例としては、アンチカリンなどのリポカリンが挙げられる。
ある特定の実施形態では、Affibodies(商標)とマルチマーおよび誘導体を用いる。
ある特定の実施形態では、抗体は標的化剤を形成するために使用される。IgG抗体に由来する抗体または免疫グロブリンは、本発明における使用に特に適しているが、任意のクラスまたはサブクラスからの免疫グロブリンも選択することができ、例えば、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEが挙げられる。好適には、免疫グロブリンは、これらには限定されないが、以下を挙げることができる:IgGサブクラス(IgG1、2、3および4)を含むクラスIgG、または抗原上の特異的エピトープに特異的に結合することができるクラスIgMの免疫グロブリン。抗体は、天然由来または組換え由来の無傷の免疫グロブリンであってもよく、無傷の免疫グロブリンの免疫反応性部分であってもよい。抗体は、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ラクダ化シングルドメイン抗体、組換え抗体、抗イディオタイプ抗体、多特異性抗体、抗体フラグメント、例えばFv、VHH、Fab、F(ab)2、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、単鎖可変フラグメント抗体(scFv)、タンデム/ビスscFv、Fc、pFc’、scFv-Fc、ジスルフィドFv(dsFv)、BiTE抗体などの二特異性抗体(bc-scFv)、三特異性抗体誘導体、例えばトリボディ、ラクダ抗体、ミニボディ、ナノボディ、表面化抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、シングルドメイン抗体(sdAb、Nanobody(商標)としても知られる)、キメラ抗体、少なくとも1つのヒト定常領域を含むキメラ抗体、二重アフィニティーリターゲティングタンパク質(DART(商標))などの二重アフィニティー抗体、および二価または多価の一本鎖可変フラグメントなどの多量体およびその誘導体(例えば、ジ-scFv、トリ-scFv)、(ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、トリボディ、テトラボディなどを含むがこれらには限定されない)、ならびに多価抗体などの様々な形態で存在することができる。[Trends in Biotechnology 2015,33,2,65]、[Trends Biotechnol.2012,30,575-582]、および[Cane.Gen.Prot.2013 10,1-18]、および[BioDrugs 2014,28,331-343]を参照し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
「抗体フラグメント」とは、免疫グロブリンの可変領域のうち、標的に結合する少なくとも一部、すなわち抗原結合領域を指す。
他の実施形態では、限定はされないが、アフィマー、アンチカリン、アビマー、アルファボディ、アフィボディ、DARPins、ならびにマルチマーおよびそれらの誘導体などの抗体模倣物を標的化剤として使用する。[Trends in Biotechnology 2015,33,2,65]を参照し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
疑義を避けるために、本発明の文脈において、用語「抗体」は、別段の指定がない限り、この段落に概説される抗体の変異体、フラグメント、誘導体、融合体、類似体及び模倣体の全てを含むことを意味する。
好ましい実施形態において、標的化剤は、抗体および抗体フラグメント、フラグメント融合体、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣体などの抗体誘導体から誘導される薬剤から選択される。
別の好ましい実施形態では、標的化剤は、抗体フラグメント、フラグメント融合体、およびFcドメインを含まない他の抗体誘導体から誘導される薬剤から選択される。
本発明のncAA修飾POIを形成するためにさらに修飾される抗体分子の典型的な非限定的例は、生物学的に、特に薬理学的に活性な抗体分子から選択される。非限定的な例は、以下の群から選択される:トラスツズマブ(trastuzumab)、ベバシズマブ(bevacizumab)、セツキシマブ(cetuximab)、パニツムマブ(panitumumab)、イピリムマブ(ipilimumab)、リツキシマブ(rituximab)、アレムツズマブ(alemtuzumab)、オファツムマブ(ofatumumab)、ゲムツズマブ(gemtuzumab)、ブレンツキシマブ(brentuximab)、イブリツモマブ(ibritumomab)、トシツモマブ(tositumomab)、ペルツズマブ(pertuzumab)、アデカツムマブ(adecatumumab)、IGN101、INA01ラベツズマブ(labetuzumab)、hua33、ペムツモマブ(pemtumomab)、オレゴボマブ(oregovomab)、ミンレツモマブ(minretumomab)(CC49)、cG250、J591、MOv-18、ファルレツズマブ(farletuzumab)(MORAb-003)、3F8、ch14,18、KW-2871、hu3S193、lgN31 1、IM-2C6、CDP-791、エタラシズマブ(etaracizumab)、ボロシキマブ(volociximab)、ニモツズマブ(nimotuzumab)、MM-121、AMG 102、METMAB、SCH 900105、AVE1642、IMC-A12、MK-0646、R1507、CP 751871、KB004、III A4、マパツムマブ(mapatumumab)、HGS-ETR2、CS-1008、デノスマブ(denosumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、F19、81 C6、ピナツズマブ(pinatuzumab)、リファツズマブ(lifastuzumab)、グレンバツムマブ(glembatumumab)、コルツキシマブ(coltuximab)、ロルボツズマブ(lorvotuzumab)、インダツキシマブ(indatuximab)、抗PSMA、MLN-0264、ABT-414、ミラツズマブ(milatuzumab)、ラムシルマブ(ramucirumab)、アバゴボマブ(abagovomab)、アビツズマブ(abituzumab)、アデカツムマブ(adecatumumab)、アフツズマブ(afutuzumab)、アルツモマブ・ペンテテート(altumomab pentetate)、アマツキシマブ(amatuximab)、アナツモマブ(anatumomab)、アネツマブ(anetumab)、アポリズマブ(apolizumab)、アークツモマブ(arcitumomab)、アスクリンバクマブ(ascrinvacumab)、アテゾリズマブ(atezolizumab)、バビツキシマブ(bavituximab)、ベクツモマブ(bectumomab)、ベリムマブ(belimumab)、ビバツズマブ(bivatuzumab)、ブロンチクツズマブ(brontictuzumab)、カントツズマブ(cantuzumab)、カプロマブ(capromab)、カツマキソマブ(catumaxomab)、シタツズマブ(citatuzumab)、シクスツムマブ(cixutumumab)、クリバツズマブ(clivatuzumab)、コドリツズマブ(codrituzumab)、コナツムマブ(conatumumab)、ダセツズマブ(dacetuzumab)、ダロツズマブ(dallotuzumab)、ダラツムマブ(daratumumab)、デムシズマブ(demcizumab)、デニンツズマブ(denintuzumab)、デパツキシズマブ(depatuxizumab)、デルロツキシマブ(derlotuximab)、デツモマブ(detumomab)、ジヌツキシマブ(dinutuximab)、ドロジツマブ(drozitumab)、デュリゴツマブ(duligotumab)、デュルバルマブ(durvalumab)、デュシギツマブ(dusigitumab)、エクロメキシマブ(ecromeximab)、エドレコロマブ(edrecolomab)、エルゲムツマブ(elgemtumab)、エマクツズマブ(emactuzumab)、エナバツズマブ(enavatuzumab)、エミベツズマブ(emibetuzumab)、エンフォルツマブ(enfortumab)、エノブリツズマブ(enoblituzumab)、エンシツキシマブ(ensituximab)、エプラツズマブ(epratuzumab)、エルツマキソマブ(ertumaxomab)、エタラシズマブ(etaracizumab)、ファーレツズマブ(farletuzumab)、フィクラツズマブ(ficlatuzumab)、フィギツムマブ(figitumumab)、フランボツマブ(flanvotumab)、フツキシマブ(futuximab)、ガリキシマブ(galiximab)、ガニツマブ(ganitumab)、イクルクマブ(icrucumab)、イゴボマブ(igovomab)、イマルマブ(imalumab)、イムガツズマブ(imgatuzumab)、インドゥサツマブ(indusatumab)、イネビリズマブ(inebilizumab)、インテツムマブ(intetumumab)、イラツムマブ(iratumumab)、イサツキシマブ(isatuximab)、レキサツズマブ(lexatuzumab)、リロトマブ(lilotomab)、リンツズマブ(lintuzumab)、リリルマブ(lirilumab)、ルカツムマブ(lucatumumab)、ルムレツズマブ(lumretuzumab)、マルゲツキシマブ(margetuximab)、マツズマブ(matuzumab)、ミルベツキシマブ(mirvetuximab)、ミツモマブ(mitumomab)、モガムリズマブ(mogamulizumab)、モクセツモマブ(moxetumomab)、ナコロマブ(nacolomab)、ナプツモマブ(naptumomab)、ナルナツマブ(narnatumab)、ネシツムマブ(necitumumab)、ネスバキュマブ(nesvacumab)、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ニボルマブ(nivolumab)、ノフェツモマブ(nofetumomab)、オビヌツズマブ(obinutuzumab)、オカラツズマブ(ocaratuzumab)、オファツムマブ(ofatumumab)、オララツマブ(olaratumab)、オナルツズマブ(onartuzumab)、オンツキシズマブ(ontuxizumab)、オポルツズマブ(oportuzumab)、オレゴボマブ(oregovomab)、オトレルツズマブ(otlertuzumab)、パンコマブ(pankomab)、パルサツズマブ(parsatuzumab)、パソツキズマブ(pasotuxizumab)、パトリツマブ(patritumab)、ペンブロリズマブ(pembrolizumab)、ペムツモマブ(pemtumomab)、ピディリズマブ(pidilizumab)、ピンツモマブ(pintumomab)、ポラツズマブ(polatuzumab)、プリツムマブ(pritumumab)、キリズマブ(quilizumab)、ラコツモマブ(racotumomab)、ラムシルマブ(ramucirumab)、リロツムマブ(rilotumumab)、ロバツムマブ(robatumumab)、サシツズマブ(sacituzumab)、サマリズマブ(samalizumab)、サツモマブ(satumomab)、セリバンツマブ(seribantumab)、シルツキシマブ(siltuximab)、ソフィツズマブ(sofituzumab)、タカツズマブ(tacatuzumab)、タプリツモマブ(taplitumomab)、タレックスツマブ(tarextumab)、テナツモマブ(tenatumomab)、テプロツムマブ(teprotumumab)、テツロマブ(tetulomab)、チシリムマブ(ticilimumab)、チガツズマブ(tigatuzumab)、トシツモマブ(tositumomab)、トベツマブ(tovetumab)、トレメリムマブ(tremelimumab)、ツコツズマブ(tucotuzumab)、ウブリツキシマブ(ublituximab)、ウロクプルマブ(ulocuplumab)、ウレルマブ(urelumab)、ウトミルマブ(utomilumab)、バダスツキシマブ(vadastuximab)、バンドルツズマブ(vandortuzumab)、バンティクツマブ(vantictumab)、バヌシズマブ(vanucizumab)、バリルマブ(varlilumab)、ベルツズマブ(veltuzumab)、ベセンクマブ(vesencumab)、ボロシキシマブ(volociximab)、ボルセツズマブ(vorsetuzumab)、ボツムマブ(votumumab)、ザルツムマブ(zalutumumab)、ザツキシマ(zatuxima)、それらの組み合わせおよび誘導体、ならびにCAI 25、CAI 5-3、CAI 9-9、L6、Lewis Y、Lewis X、αフェトプロテイン、CA 242、胎盤アルカリホスファターゼ、前立腺特異抗原、前立腺特異膜抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、上皮成長因子、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、MAGE-4、トランスフェリン受容体、p97、MUCI、CEA、gplOO、MARTI、IL-2受容体、CD20、CD52、CD33、CD22、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、CD38、CD40、ムチン、P21、MPG、およびNeu癌遺伝子産物を標的とする他のモノクローナル抗体。
本発明のさらなる特定の実施形態によれば、標的および標的化剤は、癌、炎症、感染、心血管疾患、例えば血栓、アテローム性動脈硬化病変、低酸素部位、例えば脳卒中、腫瘍、心血管障害、脳障害、アポトーシス、血管新生、臓器、レポーター遺伝子/酵素などの組織または疾患の特異的または増大した標的化をもたらすように選択される。これは、組織特異的、細胞特異的、疾患特異的発現をもつ標的を選択することによって達成できる。
一例として、標的化剤は、ある細胞集団に対して、細胞表面受容体または抗原などの細胞表面分子と特異的に結合または複合化する。標的化剤が受容体と特異的に結合または複合化した後、薬剤は細胞内に侵入する。
本明細書で使用されるように、細胞表面分子、細胞外マトリックス標的、または別の標的について「特異的に結合または複合体化」または「標的化」する標的化剤は、分子間力を介して標的と優先的に会合する。例えば、リガンドは、約50nM未満、約5nM未満、または約500pM未満の解離定数(KdまたはKD)を有する標的と優先的に会合できる。
4.2 POIの作製
1以上のUNAA残基を含むPOIは、真核細胞を用いて本発明に従って作製することができる。該真核細胞は、作製されるPOIのUNAA残基に対応する少なくとも1つの非天然アミノ酸又はその塩を含む(例えば、供給される)。該真核細胞はさらに以下を含む:
(i)本発明のPylRS及びtRNAPyl(PylRSは、好ましくは選択的に、tRNAPylをUNAA又はその塩でアシル化することができる);及び、
(ii)POAをコードするポリヌクレオチド(UNAA残基に占められるPOIの任意の位置が、tRNAPylのアンチコドンの逆相補体であるコドン、例えばセレクターコドンにコードされている)。
該真核細胞は、POIをコードするポリヌクレオチド(ii)の翻訳をできるように培養され、それによりPOIを産生する。
本発明の方法に従ってPOIを作製するために、工程(b)の翻訳は、真核細胞を好適な条件下で、好ましくはUNAA又はその塩の存在下で(例えば、UNAA又はその塩を含有する培地中で)、細胞のリボソームにおける翻訳を可能とするのに適した時間の間、培養することにより達成できる。POIをコードするポリヌクレオチド(また場合により、PylRS、tRNAPyl)に応じて、例えばアラビノース、イソプロピル β-D-チオガラクトシド(IPTG)又はテトラサイクリン等の転写を誘導する化合物を添加することによって発現を誘導することが必要となりうる。POIをコードする(そして、tRNAPylに含まれるアンチコドンの逆相補体である1つ以上のコドンを含む)mRNAは、リボソームと結合する。次いで、それぞれのアミノアシルtRNAが認識(結合)するコドンがコードする位置に、アミノ酸及びUNAAが段階的に結合することによりポリペプチドが形成される。この結果、UNAAは、tRNAPylに含まれるアンチコドンの逆相補体であるコドンがコードする位置で、POIに組み込まれる。
真核細胞は、細胞によるPylRSの発現を可能にする本発明のPylRSをコードするポリヌクレオチド配列を含むことができる。同様に、tRNAPylは、細胞に含まれるtRNAPylをコードするポリヌクレオチド配列に基づいて、真核細胞によって産生することができる。PylRSをコードするポリヌクレオチド配列及びtRNAPylをコードするポリヌクレオチド配列は、同じポリヌクレオチド又は別々のポリヌクレオチドのいずれかに位置することができる。
したがって、一実施形態において、本発明は、1つ以上のUNAA残基を含むPOIの作製方法を提供し、該方法は下記工程を含む:
(a)以下をコードするポリヌクレオチド配列を含む真核細胞を提供する工程:
-本発明の少なくとも1つのPylRS;
-PylRSによりアシル化できる少なくとも1つのtRNA(tRNAPyl);及び、
-少なくとも1つのPOI(UNAA残基に占められるPOIの任意の位置が、tRNAPylのアンチコドンの逆相補体であるコドンによりコードされている);並びに、
(b)UNAA又はその塩の存在下で、真核細胞によるポリヌクレオチド配列の翻訳を可能にし、それによりPylRS、tRNAPyl及びPOIを産生する工程。
本明細書に記載の1つ以上の非天然アミノ酸残基を含むPOIを作製するために使用される真核細胞は、PylRS、tRNAPyl及びPOIをコードするポリヌクレオチド配列を真核(宿主)細胞に導入することによって産生できる。前記ポリヌクレオチド配列は、同じポリヌクレオチド上又は別々のポリヌクレオチド上に位置することができ、(例えば、ウイルス媒介遺伝子送達、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション等を使用するなど)当技術分野において公知の方法によって細胞に導入することができる。
翻訳後、本発明に従って作製されたPOIは、当技術分野において一般的に知られている手順に従って、部分的に又は実質的に均一になるまで、任意に回収及び精製することができる。POIが培地に分泌されない限り、回収は通常、細胞破壊を必要とする。細胞破壊の方法は当技術分野において周知であり、例えば超音波(ultrasound)処理による物理的破壊、(例えば、フレンチプレスを用いた)液体剪断破壊、機械的方法(例えばブレンダーもしくは粉砕機を利用するもの)又は、凍結融解サイクル、並びに、脂質-脂質、タンパク質-タンパク質及び/又はタンパク質-脂質の相互作用を破壊する薬剤(洗剤等)を用いた化学的溶解、並びに、物理的破壊技術と化学的溶解の組み合わせを挙げることができる。細胞溶解物又は培地からポリペプチドを精製するための標準的な手順もまた当技術分野で周知である。例えば、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸又は塩基抽出、カラムクロマトグラフィー、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を挙げることができる。タンパク質リフォールディング工程は、必要に応じて、正しく折り畳まれた成熟タンパク質を作製する際に用いることができる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、アフィニティークロマトグラフィー又は他の適切な方法は、高純度が望まれる最終精製工程において使用することができる。本発明のポリペプチドに対して作製された抗体は、精製試薬として、すなわちポリペプチドの親和性に基づく精製に使用することができる。様々な精製/タンパク質折り畳み法が当技術分野において周知である。例えば、Scopes,Protein Purification,Springer,Berlin(1993);Deutscher,Methods in Enzymology Vol.182:Guide to Protein Purification,Academic Press(1990);及び本明細書中に引用する参考文献に記載のものが挙げられる。
すでに述べたように、当業者は、合成、発現及び/又は精製の後、ポリペプチドが関連するポリペプチドの所望の立体構造とは異なる立体構造を有する場合があることを認識するであろう。例えば、原核細胞系により産生されるポリペプチドは、しばしばカオトロピック剤への曝露により最適化され、適切な折り畳みを達成する。例えばE.coli由来の溶解物からの精製中に、発現したポリペプチドは、必要に応じて変性され、次いで復元される。これは、例えばグアニジンHCl等のカオトロピック剤の中にタンパク質を可溶化することにより達成される。一般に、発現したポリペプチドを変性及び破壊し、次いでポリペプチドを好ましい立体構造にリフォールディングすることが時には望ましい。例えば、グアニジン、尿素、DTT、DTE及び/又はシャペロニンを目的の翻訳産物に添加することができる。タンパク質を還元、変性及び復元する方法は当業者に周知である。ポリペプチドは、例えば酸化型グルタチオン及びL-アルギニンを含有するレドックス緩衝液中でリフォールディングすることができる。
5.ペイロード分子
一般的に使用されるペイロード分子は、生理活性化合物、標識剤、およびキレート剤から選択することができる。以下にその非限定的な例を示す。
5.1 生物活性化合物
生物活性化合物は、これに限定されるものではないが、以下を含む:
本発明に従って適用可能な生物活性化合物としては、有機低分子薬物、ステロイド、脂質、タンパク質、アプタマー、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖、ならびにペプチド、ペプトイド、アミノ酸、ヌクレオチド、オリゴまたはポリヌクレオチド、ヌクレオシド、DNA、RNA、毒素、糖鎖および免疫グロブリンが挙げられるが、これに限定されない。
本発明の実施に使用することができる生物活性化合物の例示的な分類には、これに限定はされないが、以下が含まれる:ホルモン、細胞毒素、抗増殖/抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、抗生物質、サイトカイン、抗炎症剤、降圧剤、化学感作剤、光感作剤および放射線感作剤、抗エイズ物質、抗ウイルス剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、酵素阻害剤、抗パーキンソン病剤、神経毒、チャネル遮断剤、細胞成長阻害剤および抗接着分子を含む細胞外マトリックス相互作用調節剤、DNA、RNAまたはタンパク質合成阻害剤、ステロイド系および非ステロイド系抗炎症剤、抗血管新生因子、抗アルツハイマー病剤。
いくつかの実施形態において、生物活性化合物は、低~中分子量化合物(例えば、約200~5000Da、約200~約1500Da、好ましくは約300~約1000Da)である。
例示的な細胞毒性薬剤は、特に癌治療に使用されるものである。このような薬剤には、一般に、DNA損傷剤、抗代謝物、天然物およびその類似体、ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤およびチミジル酸合成酵素阻害剤などの酵素阻害剤、DNA結合剤、DNAアルキル化剤、放射線増感剤、DNAインターカレーター、DNA切断剤、微小管安定化および不安定化剤、トポイソメラーゼ阻害剤が含まれる。例えば、白金系薬剤、アントラサイクリン系薬剤、ビンカ系薬剤、マイトマイシン系、ブレオマイシン系、細胞毒性ヌクレオシド系、タキサン系薬、レキシトロプシン系、プテリジン系薬剤、ジイネン系、ポドフィロトキシン系、ドラスタチン系、メイタンシノイド系、分化誘導剤、タキソール系などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの分類の特に有用なものとしては、例えば、オーリスタチン、メイタンシン、メイタンシノイド、カリキアミシン、ダクチノマイシン、デュオカルマイシン、CC1065およびその類似体、カンプトテシンおよびその類似体、SN-38およびその類似体;DXd、ツブリシンM、クリプトフィシン、ピロロベンゾジアゼピンおよびピロロベンゾジアゼピン二量体(PBD)、ピリジノベンゾジアゼピン(PDD)およびインドリノベンゾジアゼピン(IBD)(参照:US20210206763A1)、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5-フルオロウラシル、DNA小溝結合剤、6-メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、メルファラン、ロイロシン、ロイロシデイン、アクチノマイシン、アントラサイクリン(ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、PNU-159682(参照:US10288745B2)およびその類似体、マイトマイシンC、マイトマイシンA、カミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン、ポドフィロトキシンおよび;ポドフィロトキシン誘導体、例えば、エトポシドまたはリン酸エトポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、タキソール、タキソテール、レチノイン酸、酪酸、N8-アセチルスペルミジン、スタウロスポリン、コルヒチン、カンプトテシン、エスペラマイシン、エネジインおよびそれらの類似体、ヘミアスタリンおよびその類似体が挙げられる。
他の例示的な薬物分類は、血管新生阻害剤、細胞周期進行阻害剤、P13K/m-TOR/ACT経路阻害剤、MAPKシグナル伝達経路阻害剤、キナーゼ阻害剤、タンパク質シャペロン阻害剤、HDAC阻害剤、PARP阻害剤、Wnt/ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、RNAポリメラーゼ阻害剤、およびタンパク質分解剤である(参照:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acschembio.0c00285)。
オーリスタチンの例としては、ドラスタチン10、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、オーリスタチンF、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、オーリスタチンFヒドロキシプロピルアミド(AF HPA)、オーリスタチンFフェニレンジアミン(AFP)、モノメチルオーリスタチンD(MMAD)、オーリスタチンPE、オーリスタチンEB、オーリスタチンEFP、オーリスタチンTPおよびオーリスタチンAQが挙げられる。また適切なオーリスタチンは、米国特許公開第2003/0083263号、同第2011/0020343号、および同第2011/0070248号;PCT出願公開WO09/117531号、同WO2005/081711号、同WO04/010957号;同WO02/088172号、および同WO01/24763号、ならびに米国特許第7,498,298号;同第6,884,869号;同第6,323,315号;同第6,239,104号;同第6,124,431号;同第6,034,065号;同第5,780,588号;同第5,767,237号;同第5,665,860号;同第5,663,149号;同第5,635,483号;同第5,599,902号;同第5,554,725号;同第5,530,097号;同第5,521,284号;同第5,504,191号;同第5,410,024号;同第5,138,036号;同第5,076,973号;同第4,986,988号;同第4,978,744号;同第4,879,278号;同第4,879,278号;同第4,816,444号;および、同第4,486,414号に記載され、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
例示的な薬物には、ドラスタチンとその類似体が含まれ、以下が挙げられる:ドラスタチンA(米国特許第4,486,414号)、ドラスタチンB(米国特許第4,486,414号)、ドラスタチン10(米国特許第4,486,444号、同第5,410,024号、同第5,504,191号、同第5,521,284号、同第5,530,097号、同第5,599,902号、同第5,635,483号、同第5,663,149号、同第5,665,860号、同第5,780,588号、同第6,034,065号、同第6,323,315号)、ドラスタチン13(米国特許第4,986,988号)、ドラスタチン14(米国特許第5,138,036号)、ドラスタチン15(米国特許第4,879,278号)、ドラスタチン16(米国特許第6,239,104号)、ドラスタチン17(米国特許第6,239,104号)、およびドラスタチン18(米国特許第6,239,104号)。各特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
例示的なメイタンシン、DM-1およびDM-4などのメイタンシノイド、またはメイタンシノールおよびメイタンシノール類似体を含むメイタンシノイド類似体は、米国特許第4,424,219号;同第4,256,746号;同第4,294,757号;同第4,307,016号;同第4,313,946号;同第4,315,929号;同第4,331,598号;同第4,361,650号;同第4,362,663号;同第4,364,866号;同第4,450,254号;同第4,322,348号;同第4,371,533号;同第5,208,020号;同第5,416,064号;同第5,475,092号;同第5,585,499号;同第5,846,545号;同第6,333,410号;同第6,441,163号;同第6,716,821号および同第7,276,497号に記載されている。
他の例には、メルタンシンおよびアンサミトシンが含まれる。ピロロベンゾジアゼピン(PBD)には、明示的に二量体および類似体が含まれ、[Denny,Exp.Opin.Ther.Patents,10(4):459-474(2000)],[Hartley et al.,Expert Opin Investig Drugs.2011,20(6):733-44],[Antonow et al.,Chem Rev.2011,111(4),2815-64]に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。
カリケアミシンには、例えば、エネジイン、エスペラマイシン、および米国特許第5,714,586号および第5,739,116号に記載されているものが含まれる。
デュオカルマイシンおよび類似体の例としては、CC1065、デュオカルマイシンSA、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンBl、デュオカルマイシンB2、デュオカルマイシンCI、デュオカルマイシンC2、デュオカルマイシンD、DU-86、KW-2189、アドゼレシン、ビゼレシン、カルゼレシン、セコアドゼレシンが挙げられる。他の例としては、例えば、米国特許第5,070,092号;同第5,101,092号;同第5,187,186号;同第5,475,092号;同第5,595,499号;同第5,846,545号;同第6,534,660号;同第6,548,530号;同第6,586,618号;同第6,660,742号;同第6,756,397号;同第7,049,316号;同第7,553,816号;同第8,815,226号;US20150104407;2014年5月2日出願の61/988,011および2014年6月11日出願の62/010,972に記載のものが挙げられる。これらの各開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。
例示的なビンカアルカロイドとしては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびナベルビン、ならびに米国特許公開第2002/0103136号および同第2010/0305149号、ならびに米国特許第7,303,749号に開示されているものが挙げられる。これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
例示的なエポチロン化合物としては、エポチロンA、B、C、D、EおよびF、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。適切なエポチロン化合物およびその誘導体は、例えば、米国特許第6,956,036号;同第6,989,450号;同第6,121,029号;同第6,117,659号;同第6,096,757号;同第6,043,372号;同第5,969,145号;および同第5,886,026号;ならびにWO97/19086;WO98/08849;WO98/22461;WO98/25929;WO98/38192;WO99/01124;WO99/02514;WO99/03848;WO99/07692;WO99/27890;およびWO99/28324に記載されている。これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
例示的なクリプトフィシン化合物は、米国特許第6,680,311号および同第6,747,021号に記載されている。これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
例示的な白金化合物としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、イプロプラチン、オルマプラチン、テトラプラチンが挙げられる。
例示的なDNA結合剤またはアルキル化剤としては、CC-1065およびその類似体、アントラサイクリン、カリキアミシン、ダクチノマイシン、ミトロマイシン、ピロロベンゾジアゼピンなどが挙げられる。
例示的な微小管安定化剤および不安定化剤としては、パクリタキセル、ドセタキセル、テセタキセルおよびカルバジタキセルなどのタキサン化合物;メイタンシノイド、オーリスタチンおよびその類似体、ビンカアルカロイド誘導体、エポチロンおよびクリプトフィシンなどが挙げられる。
例示的なトポイソメラーゼ阻害剤としては、例えば、CPT-11、SN-38、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、ルビテカン、ギマテカン、カレニテシン、シラテカン、ルルトテカン、エキサテカン、DXd、ジフロメトテカン、ベロテカン、ルルトテカンおよびS39625などの、カンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体、カンプトテシン類似体および非天然カンプトテシンが挙げられる。本発明において使用できる他のカンプトテシン化合物としては、例えば、J.Med.Chem.,29:2358-2363(1986);J.Med.Chem.,23:554(1980);J.Med.Chem.,30:1774(1987)に記載されているものが挙げられる。
血管新生阻害剤には、これらに限定されないが、MetAP2阻害剤、VEGF阻害剤、PIGF阻害剤、VGFR阻害剤、PDGFR阻害剤、MetAP2阻害剤が含まれる。例示的なVGFR阻害剤およびPDGFR阻害剤としては、ソラフェニブ、スニチニブおよびバタラニブが挙げられる。例示的なMetAP2阻害剤としては、フマギロール類似体、すなわちフマギリンコア構造を含む化合物が挙げられる。
例示的な細胞周期進行阻害剤としては、例えばBMS-387032およびPD0332991などのCDK阻害剤;例えばAZD7762などのRhoキナーゼ阻害剤;例えばAZD1152、MLN8054およびMLN8237などのオーロラキナーゼ阻害剤;例えばBI2536、BI6727、GSK461364、ON-01910などのPLK阻害剤;および例えばSB743921、SB715992、MK-0731、AZD8477、AZ3146、ARRY-520などのKSP阻害剤が挙げられる。
例示的なP13K/m-TOR/ACTシグナル伝達経路阻害剤としては、ホスホイノシチド3-キナーゼ(P13K)阻害剤、GSK-3阻害剤、ATM阻害剤、DNA-PK阻害剤およびPDK-1阻害剤が挙げられる。
例示的なP13キナーゼは、米国特許第6,608,053号に開示されており、BEZ235、BGT226、BKM120、CAL263、デメトキシビリジン、GDC-0941、GSK615、IC87114、LY294002、パロミド529、ペリホシン、PF-04691502、PX-866、SAR245408、SAR245409、SF1126、ワートマニン、XL147およびXL765が挙げられる。
例示的なAKT阻害剤としては、AT7867が挙げられるが、これには限定されない。
例示的なMAPKシグナル伝達経路阻害剤としては、MEK、Ras、JNK、B-Rafおよびp38 MAPK阻害剤が挙げられる。
例示的なMEK阻害剤は、米国特許第7,517,944号に開示されており、GDC-;0973、GSKl 120212、MSC1936369B、AS703026、R05126766およびR04987655、PD0325901、AZD6244、AZD8330およびGDC-0973が挙げられる。
例示的なB-raf阻害剤としては、CDC-0879、PLX-4032、およびSB590885が挙げられる。
例示的なB p38 MAPK阻害剤としては、BIRB796、LY2228820およびSB202190が挙げられる。例示的な受容体チロシンキナーゼ阻害剤としては、これらに限定されないが、AEE788(NVP-AEE 788)、BIBW2992(アファチニブ)、ラパチニブ、エルロチニブ(タルセバ)、ゲフィチニブ(イレッサ)、AP24534(ポナチニブ)、ABT-869(リニファニブ)、AZD2171、CHR-258(ドビチニブ)、スニチニブ(スーテント)、ソラフェニブ(ネクサバール)、およびバタリニブが挙げられる。
例示的なタンパク質シャペロン阻害剤には、HSP90阻害剤が含まれる。例示的な阻害剤としては、17AAG誘導体、BIIB021、BIIB028、SNX-5422、NVP-AUY-922およびKW-2478が挙げられる。
例示的なHDAC阻害剤としては、ベリノスタット(PXD101)、CUDC-101、ドロキシノスタット、ITF2357(ジビノスタット、ガビノスタット)、JNJ-26481585、LAQ824(NVP-LAQ824、ダシノスタット)、LBH-589(パノビノスタット)、MC1568、MGCD0103(モセチノスタット)、MS-275(エンチノスタット)、PCI-24781、ピロキサミド(NSC 696085)、SB939、トリコスタチンAおよびボリノスタット(SAHA)が挙げられる。例示的なPARP阻害剤としては、イニパリブ(BSI 201)、オラパリブ(AZD-2281)、ABT-888(ベリパリブ)、AG014699、CEP9722、MK 4827、KU-0059436(AZD2281)、LT-673、3-アミノベンズアミド、A-966492、およびAZD2461が挙げられる。
例示的なWnt/ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤としては、ビスモデギブ、シクロパミン、およびXAV-939が挙げられる。
例示的なRNAポリメラーゼ阻害剤としては、アマトキシン類が挙げられる。例示的なアマトキシンには、α-アマニチン、β-アマニチン、γ-アマニチン、eta-アマニチン、アマヌリン、アマヌリン酸、アマニサミド、アマノン、およびプロアマヌリンが挙げられる。
例示的なサイトカインとしては、IL-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-21、TNFが挙げられる。特定の薬剤の非限定的な例として、オーリスタチン、メイタンシノイド、PBD、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリンを挙げることができる。
別の実施形態では、上記の2つ以上の異なる薬剤の組み合わせが使用される。
別の実施形態によれば、生物活性化合物は、1つ以上の天然および/または非天然の、タンパク質原性および/または非タンパク質原性アミノ酸残基を含む任意の合成または天然化合物、例えば特にオリゴまたはポリペプチドまたはタンパク質から選択できる。
この化合物の特定のグループは、例えば抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、抗体(フラグメント)融合体(例えば二特異性および三特異性mAbフラグメントまたは誘導体)、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、例えばヒト抗体、ヒト化抗体、マウス抗体またはキメラ抗体などの免疫グロブリン分子を含む。
本発明で使用する抗体の典型的な非限定的な例は、生物学的に、特に薬理学的に活性な抗体分子から選択される。非限定的な例は、以下の群から選択される:トラスツズマブ(trastuzumab)、ベバシズマブ(bevacizumab)、セツキシマブ(cetuximab)、パニツムマブ(panitumumab)、イピリムマブ(ipilimumab)、リツキシマブ(rituximab)、アレムツズマブ(alemtuzumab)、オファツムマブ(ofatumumab)、ゲムツズマブ(gemtuzumab)、ブレンツキシマブ(brentuximab)、イブリツモマブ(ibritumomab)、トシツモマブ(tositumomab)、ペルツズマブ(pertuzumab)、アデカツムマブ(adecatumumab)、IGN101、INA01ラベツズマブ(labetuzumab)、hua33、ペムツモマブ(pemtumomab)、オレゴボマブ(oregovomab)、ミンレツモマブ(minretumomab)(CC49)、cG250、J591、MOv-18、ファルレツズマブ(farletuzumab)(MORAb-003)、3F8、ch14,18、KW-2871、hu3S193、lgN31 1、IM-2C6、CDP-791、エタラシズマブ(etaracizumab)、ボロシキマブ(volociximab)、ニモツズマブ(nimotuzumab)、MM-121、AMG 102、METMAB、SCH 900105、AVE1642、IMC-A12、MK-0646、R1507、CP 751871、KB004、III A4、マパツムマブ(mapatumumab)、HGS-ETR2、CS-1008、デノスマブ(denosumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、F19、81 C6、ピナツズマブ(pinatuzumab)、リファツズマブ(lifastuzumab)、グレンバツムマブ(glembatumumab)、コルツキシマブ(coltuximab)、ロルボツズマブ(lorvotuzumab)、インダツキシマブ(indatuximab)、抗PSMA、MLN-0264、ABT-414、ミラツズマブ(milatuzumab)、ラムシルマブ(ramucirumab)、アバゴボマブ(abagovomab)、アビツズマブ(abituzumab)、アデカツムマブ(adecatumumab)、アフツズマブ(afutuzumab)、アルツモマブ・ペンテテート(altumomab pentetate)、アマツキシマブ(amatuximab)、アナツモマブ(anatumomab)、アネツマブ(anetumab)、アポリズマブ(apolizumab)、アークツモマブ(arcitumomab)、アスクリンバクマブ(ascrinvacumab)、アテゾリズマブ(atezolizumab)、バビツキシマブ(bavituximab)、ベクツモマブ(bectumomab)、ベリムマブ(belimumab)、ビバツズマブ(bivatuzumab)、ブロンチクツズマブ(brontictuzumab)、カントツズマブ(cantuzumab)、カプロマブ(capromab)、カツマキソマブ(catumaxomab)、シタツズマブ(citatuzumab)、シクスツムマブ(cixutumumab)、クリバツズマブ(clivatuzumab)、コドリツズマブ(codrituzumab)、コナツムマブ(conatumumab)、ダセツズマブ(dacetuzumab)、ダロツズマブ(dallotuzumab)、ダラツムマブ(daratumumab)、デムシズマブ(demcizumab)、デニンツズマブ(denintuzumab)、デパツキシズマブ(depatuxizumab)、デルロツキシマブ(derlotuximab)、デツモマブ(detumomab)、ジヌツキシマブ(dinutuximab)、ドロジツマブ(drozitumab)、デュリゴツマブ(duligotumab)、デュルバルマブ(durvalumab)、デュシギツマブ(dusigitumab)、エクロメキシマブ(ecromeximab)、エドレコロマブ(edrecolomab)、エルゲムツマブ(elgemtumab)、エマクツズマブ(emactuzumab)、エナバツズマブ(enavatuzumab)、エミベツズマブ(emibetuzumab)、エンフォルツマブ(enfortumab)、エノブリツズマブ(enoblituzumab)、エンシツキシマブ(ensituximab)、エプラツズマブ(epratuzumab)、エルツマキソマブ(ertumaxomab)、エタラシズマブ(etaracizumab)、ファーレツズマブ(farletuzumab)、フィクラツズマブ(ficlatuzumab)、フィギツムマブ(figitumumab)、フランボツマブ(flanvotumab)、フツキシマブ(futuximab)、ガリキシマブ(galiximab)、ガニツマブ(ganitumab)、イクルクマブ(icrucumab)、イゴボマブ(igovomab)、イマルマブ(imalumab)、イムガツズマブ(imgatuzumab)、インドゥサツマブ(indusatumab)、イネビリズマブ(inebilizumab)、インテツムマブ(intetumumab)、イラツムマブ(iratumumab)、イサツキシマブ(isatuximab)、レキサツズマブ(lexatuzumab)、リロトマブ(lilotomab)、リンツズマブ(lintuzumab)、リリルマブ(lirilumab)、ルカツムマブ(lucatumumab)、ルムレツズマブ(lumretuzumab)、マルゲツキシマブ(margetuximab)、マツズマブ(matuzumab)、ミルベツキシマブ(mirvetuximab)、ミツモマブ(mitumomab)、モガムリズマブ(mogamulizumab)、モクセツモマブ(moxetumomab)、ナコロマブ(nacolomab)、ナプツモマブ(naptumomab)、ナルナツマブ(narnatumab)、ネシツムマブ(necitumumab)、ネスバキュマブ(nesvacumab)、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ニボルマブ(nivolumab)、ノフェツモマブ(nofetumomab)、オビヌツズマブ(obinutuzumab)、オカラツズマブ(ocaratuzumab)、オファツムマブ(ofatumumab)、オララツマブ(olaratumab)、オナルツズマブ(onartuzumab)、オンツキシズマブ(ontuxizumab)、オポルツズマブ(oportuzumab)、オレゴボマブ(oregovomab)、オトレルツズマブ(otlertuzumab)、パンコマブ(pankomab)、パルサツズマブ(parsatuzumab)、パソツキズマブ(pasotuxizumab)、パトリツマブ(patritumab)、ペンブロリズマブ(pembrolizumab)、ペムツモマブ(pemtumomab)、ピディリズマブ(pidilizumab)、ピンツモマブ(pintumomab)、ポラツズマブ(polatuzumab)、プリツムマブ(pritumumab)、キリズマブ(quilizumab)、ラコツモマブ(racotumomab)、ラムシルマブ(ramucirumab)、リロツムマブ(rilotumumab)、ロバツムマブ(robatumumab)、サシツズマブ(sacituzumab)、サマリズマブ(samalizumab)、サツモマブ(satumomab)、セリバンツマブ(seribantumab)、シルツキシマブ(siltuximab)、ソフィツズマブ(sofituzumab)、タカツズマブ(tacatuzumab)、タプリツモマブ(taplitumomab)、タレックスツマブ(tarextumab)、テナツモマブ(tenatumomab)、テプロツムマブ(teprotumumab)、テツロマブ(tetulomab)、チシリムマブ(ticilimumab)、チガツズマブ(tigatuzumab)、トシツモマブ(tositumomab)、トベツマブ(tovetumab)、トレメリムマブ(tremelimumab)、ツコツズマブ(tucotuzumab)、ウブリツキシマブ(ublituximab)、ウロクプルマブ(ulocuplumab)、ウレルマブ(urelumab)、ウトミルマブ(utomilumab)、バダスツキシマブ(vadastuximab)、バンドルツズマブ(vandortuzumab)、バンティクツマブ(vantictumab)、バヌシズマブ(vanucizumab)、バリルマブ(varlilumab)、ベルツズマブ(veltuzumab)、ベセンクマブ(vesencumab)、ボロシキシマブ(volociximab)、ボルセツズマブ(vorsetuzumab)、ボツムマブ(votumumab)、ザルツムマブ(zalutumumab)、ザツキシマ(zatuxima)、それらの組み合わせおよび誘導体、ならびにCAI 25、CAI 5-3、CAI 9-9、L6、Lewis Y、Lewis X、αフェトプロテイン、CA 242、胎盤アルカリホスファターゼ、前立腺特異抗原、前立腺特異膜抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、上皮成長因子、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、MAGE-4、トランスフェリン受容体、p97、MUCI、CEA、gplOO、MARTI、IL-2受容体、CD20、CD52、CD33、CD22、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、CD38、CD40、ムチン、P21、MPG、およびNeu癌遺伝子産物を標的とする他のモノクローナル抗体。
5.2 標識剤
本発明に従って使用することができる標識剤は、テトラジン部分の反応性を阻害しない、当技術分野で公知の任意のタイプの標識を含むことができる。
本発明の標識としては、これらに限定されないが、以下を挙げることができる:色素(例えば蛍光、ルミネセンス、又はリン光色素、例えばダンシル、クマリン、フルオレセイン、アクリジン、ローダミン、シリコンローダミン、BODIPY、またはシアニン色素)、発色団(例えばフィトクロム、フィコビリン、ビリルビンなど)、放射性標識(例えば、水素、フッ素、炭素、リン、硫黄、ヨウ素の放射性形態、例えば、トリチウム、フッ素-18、炭素-11、炭素-14、リン-32、リン-33、硫黄-33、硫黄-35、ヨウ素-123、またはヨウ素-125)、MRI感受性スピン標識、アフィニティタグ(例えば、ビオチン、His-タグ、Flag-タグ、strep-タグ、糖、脂質、ステロール、PEG-リンカー、ベンジルグアニン、ベンジルシトシン、または補因子)、ポリエチレングリコール基(例えば、分枝状PEG、直鎖状PEG、分子量の異なるPEGなど)、光架橋剤(p-アジドヨードアセトアニリドなど)、NMRプローブ、X線プローブ、pHプローブ、IRプローブ、樹脂、固体支持体。
いくつかの実施形態において、例示的な色素は、スペクトルの近赤外領域で蛍光を発するNIR造影剤を含むことができる。例示的な近赤外蛍光色素分子は、約630~1000nmの間、例えば、約630~800nmの間、約800~900nmの間、約900~1000nmの間、約680~750nmの間、約750~800nmの間、約800~850nmの間、約850~900nmの間、約900~950nmの間、または約950~1000nmの間の発光波長(例えば、ピーク発光波長)を有する色素および他の蛍光色素分子を含むことができる。1000nmを超える発光波長(例えば、ピーク発光波長)を有する蛍光色素分子もまた、本明細書に記載される方法において使用することができる。
いくつかの実施形態において、例示的な蛍光色素分子には、7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸(AMCA)、TEXAS RED(商標)(Molecular Probes,Inc.;ユージーン、オレゴン州)、5(6)-カルボキシ-X-ローダミン、リサミンローダミンB、5(6)-カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン-5-イソチオシアネート(FITC)、7-ジエチルアミノクマリン-3-カルボン酸、テトラメチルローダミン-5(6)-イソチオシアネート、5(6)-カルボキシテトラメチルローダミン、7-ヒドロキシクマリン-3-カルボン酸、6-[フルオレセイン-5(6)-カルボキサミド]ヘキサン酸、N-(4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4aジアザ-3-インダセンプロピオン酸、エオシン-5-イソチオシアネート、エリスロシン-5-イソチオシアネート、およびCASCADE(商標)ブルーアセチルアジド(Molecular Probes,Inc.,ユージーン、オレゴン州)およびATTO色素が含まれる。
さらに、177-ルテチウム、89-ジルコニウム、131-ヨード、68-ガリウム、99m テクネチウム、225-アクチニウム、213-ビスムト、90-イトリウム、212-鉛などの標識剤がある。
5.3 キレート剤
一般的に適用可能なキレート剤とその略称の一覧を以下に示す。その対応する塩も適用可能である。
アセチルアセトン(ACAC)、エチレンジアミン(EN)、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(AEEA)、ジエチレントリアミン(DIEN)、イミノジアセテート(IDA)、トリエチレンテトラミン(TRIEN)、トリアミノトリエチルアミン、ニトリロ三酢酸(NTA)およびNaNTAまたはFeNTAなどのその塩、エチレンジアミノトリアセテート(TED)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびNaEDTAおよびCaNaEDTAなどのその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、シュウ酸塩(OX)、酒石酸塩(TART)、クエン酸塩(CIT)、ジメチルグリオキシム(DMG)、8-ヒドロキシキノリン、2,2’-ビピリジン(BPY)、1,10-フェナントロリン(PHEN)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、サリチル酸ナトリウム、メトキシサリチル酸塩、英国抗ルイサイトまたは2,3-ジメルカプロール(BAL)、メソ-2,3-ジメルカプトコハク酸(DMSA);微生物によって分泌されるシデロフォア、例えば、ストレプトミセス属によって産生されるデスフェリオキサミンまたはデフェロキサミンB、別名Deferral(ノバルティス);デフェロキサミン(DFO)、ストレプトミセス・ピロサス(Streptomyces pilosus)が分泌するトリヒドロキサム酸;クルクミノイドならびに3-ヒドロキシムギネ酸および2’-デオキシムギネ酸等のムギネ酸誘導体などの植物化学物質;イブプロフェンなどの合成キレート剤;ヒドロキサメートデスフェラルおよびヒドロキシピリジノンデフェリプロンなどのカテコール、ヒドロキサメート、およびヒドロキシピリジノンの誘導体;デフェリプロン(L1または1,2-ジメチル-3-ヒドロキシピリド-4-オン);β-β-ジメチルシステインまたは3-メルカプト-D-バリンであるD-ペニシラミン(DPAまたはD-PEN);テトラエチレンテトラアミン(TETA)またはトリエンチンおよびその2つの主要代謝物N-アセチルトリエチレンテトラミン(MAT)およびN,N10-ジアセチルトリエチレンテトラミン(DAT);ヒドロキシキノリン;8-ヒドロキシキノリンのハロゲン化誘導体であるクリオキノール;ならびに、5,7-ジクロロ-2-[(ジメチルアミノ)メチル]キノリン-8-オール(PBT2)
6 UNAA
本発明の方法及びキットに有用なUNAAは、先行技術に記載されている(例えば、Liu et al.,Annu Rev Biochem 83:379-408,2010;Lemke,ChemBioChem 15:1691-1694,2014を参照のこと)。
UNAAは、他の分子(本明細書では「結合相手分子」という)の適切な基(本明細書では「ドッキング基」という)との反応を促進する基(本明細書では「標識基」という)を有することができ、それにより結合相手分子はUNAAに共有結合する。標識基を有するUNAAがPOIに翻訳的に組み込まれた場合、標識基はPOIの一部となる。したがって、本発明の方法に従って作製されたPOIは、1つ以上の結合相手分子と反応させることができ、それにより、結合相手分子はPOIの非天然アミノ酸残基(の標識基)に共有結合する。この結合反応は、POIを発現する細胞又は組織内のPOIのin situカップリング、又は単離されたもしくは部分的に単離されたPOIの部位特異的結合に使用することができる。
標識基と(結合相手分子の)ドッキング基の組み合わせについて、特に有用な選択肢は、金属フリークリック反応により反応できるものである。このようなクリック反応としては、歪み促進逆電子要請型Diels-Alder環状付加反応(SPIEDAC;例えば、Devaraj et al.,Angew Chem Int Ed Engl 2009,48:7013参照)、並びに、歪のあるシクロアルキニル基、又は、アミノ基で置換された三重結合が結合していない環原子を1つ以上有する歪のあるシクロアルキニル類似体基と、アジド、ニトリルオキシド、ニトロン及びジアゾカルボニル試薬との環状付加反応(例えば、Sanders et al.,J Am Chem Soc 2010,133:949;Agard et al.,J Am Chem Soc 2004,126:15046参照)、例えば、歪み促進アルキン-アジド環状付加反応(SPAAC)を挙げることができる。このようなクリック反応は、POIのUNAA標識基とカップリング相手分子の適切な基との超高速二重直交型共有結合部位特異的カップリングを可能にする。
上記のクリック反応を介して反応できるドッキング基及び標識基の対は当技術分野において公知である。ドッキング基を含む適切なUNAAの例としては、これらには限定されないが、例えばWO2012/104422及びWO2015/107064に記載のUNAAが挙げられる。
(結合相手分子に含まれる)ドッキング基と(POIのUNAA残基に含まれる)標識基の特定の適切な対の例としては、これらには限定されないが、以下を挙げることができる:
(a)アジド基、ニトリルオキシド官能基(すなわち、式で表される基、ニトロン官能基又はジアゾカルボニル基)から選択される基を含む(又は本質的にそれから成る)ドッキング基と、任意に置換された歪のあるアルキニル基を含む(又は本質的にそれから成る)標識基との組み合わせ(これらの基は、銅フリー歪み促進アルキン-アジド環状付加反応(SPAAC)において共有結合的に反応することができる);
(b)任意に置換された歪のあるアルキニル基を含む(又は本質的にそれから成る)ドッキング基と、アジド基、ニトリルオキシド官能基から選択される基を含む(又は本質的になる)標識基との組み合わせ(これらの基は、銅フリー歪み促進アルキン-アジド環状付加反応(SPAAC)において共有結合的に反応することができる);
(c)任意に置換された歪のあるアルキニル基、任意に置換された歪のあるアルケニル基及びノルボルネニル基から選択される基を含む(又は本質的にそれから成る)ドッキング基と、任意に置換されたテトラアルキニル基を含む(又は本質的にそれから成る)標識基との組み合わせ(これらの基は、銅フリー歪み促進逆電子要請型Diels-Alder環状付加反応(SPIEDAC)において共有結合的に反応することができる);
(d)任意に置換されたテトラジニル基を含む(または本質的にそれから成る)ドッキング基と、任意に置換された歪のあるアルキニル基、任意に置換された歪のあるアルケニル基及びノルボルネニル基から選択される基を含む(又は本質的にそれから成る)標識基との組み合わせ(これらの基は、銅フリー歪み促進逆電子要請型Diels-Alder環状付加反応(SPIEDAC)において共有結合的に反応することができる)。
任意に置換された歪のあるアルキニル基としては、これらには限定されないが、任意に置換されたtrans-シクロオクテニル基(例えば、WO2012/104422及びWO2015/107064に記載のもの)が挙げられる。任意に置換された歪のあるアルケニル基としては、これらには限定されないが、任意に置換されたシクロオクチニル基(例えば、WO2012/104422及びWO2015/107064に記載のもの)が挙げられる。任意に置換されたテトラジニル基としては、これらには限定されないが、WO2012/104422及びWO2015/107064に記載のものが挙げられる。
アジド基は式-Nの基である。
ニトロン官能基は、式-C(R)=N(R)-Oの基である。式中、R及びRは有機残基、例えば本明細書に記載のC-C-アルキルから独立して選択される残基である。
ジアゾカルボニル基は、式-C(O)-CH=Nの基である。
ニトリルオキシド官能基は、式-C≡N-O又は好ましくは、式-C=N(R)-Oの基である。式中、Rは有機残基、例えば本明細書に記載のC-C-アルキルから独立して選択される残基である。
シクロオクチニルは、環構造中に8個の炭素原子及び1個の三重結合を有する不飽和脂環式基である。
「trans-シクロオクテニル」は、環構造中に8個の炭素原子及びトランス配置の1個の二重結合を有する不飽和脂環式基である。
「テトラジニル」は、4個の窒素環原子及び2個の炭素環原子を有する6員単環式芳香族基である。
特に指示のない限り、用語「置換された」は、基が1、2又は3個、特に1又は2個の置換基で置換されていることを意味する。特定の実施形態において、これらの置換基は、水素、ハロゲン、C-C-アルキル,(RO)P(O)O-C-C-アルキル,(RO)P(O)-C-C-アルキル,CF,CN,ヒドロキシル,C-C-アルコキシ,-O-CF,C-C-アルケノキシ,C-C-アルカノイルオキシ,C-C-アルキルアミノカルボニルオキシ又はC-C-アルキルチオ,C-C-アルキルアミノ,ジ-(C-C-アルキル)アミノ,C-C-アルケニルアミノ,N-C-C-アルケニル-N-C-C-アルキル-アミノ及びジ-(C-C-アルケニル)アミノ(式中、R及びRは独立して水素もしくはC-C-アルカノイルオキシメチルである)から独立して選択することができる。
ハロゲンという用語は、いずれの場合も、フッ素、臭素、塩素又はヨウ素基、特にフッ素基を意味する。
-C-アルキルは、1~4個、特に1~3個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。例としては、メチル並びにエチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチル及びtert-ブチル等のC-C-アルキルが挙げられる。
-C-アルケニルは、2、3、4又は5個の炭素原子を有する単一不飽和炭化水素基である。例としては、ビニル,アリル(2-プロペン-1-イル),1-プロペン-1-イル,2-プロペン-2-イル,メタリル(2-メチルプロパ-2-エン-1-イル),1-メチルプロパ-2-エン-1-イル,2-ブテン-1-イル,3-ブテン-1-イル,2-ペンテン-1-イル,3-ペンテン-1-イル,4-ペンテン-1-イル,1-メチルブタ-2-エン-1-イル及び2-エチルプロパ-2-エン-1-イルが挙げられる。
-C-アルコキシは、式R-O-の基である。式中、Rは本明細書で定義されるC-C-アルキル基である。
-C-アルケノキシは、式R-O-の基である。式中、Rは本明細書で定義されるC-C-アルケニルである。
-C-アルカノイルオキシは、式R-C(O)-O-の基である。式中、Rは本明細書で定義されるC-C-アルキルである。
-C-アルキルアミノカルボニルオキシは、式R-NH-C(O)-O-の基である。式中、Rは本明細書で定義されるC-C-アルキルである。
-C-アルキルチオは、式R-S-の基である。式中、Rは本明細書で定義されるC-C-アルキルである。
-C-アルキルアミノは、式R-NH-の基である。式中、Rは本明細書で定義されるC-C-アルキルである。
ジ-(C-C-アルキル)アミノは、式R-N(R)-の基である。式中、R及びRは、独立して本明細書で定義されるC-C-アルキルである。
-C-アルケニルアミノは、式R-NH-の基である。式中、Rは本明細書で定義されるC-C-アルケニルである。
N-C-C-アルケニル-N-C-C-アルキルアミノは、式R-N(R)-の基である。式中、Rは本明細書で定義されるC-C-アルケニルであり、RはC-C-アルキルである。
ジ-(C-C-アルケニル)アミノは、式R-N(R)-の基である。式中、R及びRは、独立して本明細書で定義されるC-C-アルケニルである。
-C-アルカノイルオキシメチルは、式R-C(O)-O-CH-の基である。式中、Rは本明細書で定義されるC-C-アルキルである。
本発明の状況で使用されるUNAAは、それらの塩の形で使用することができる。本明細書に記載のUNAAの塩は、酸又は塩基付加塩、特に生理学的に許容される酸又は塩基との付加塩を意味する。生理学的に許容される酸付加塩は、塩基型のUNAAを適切な有機酸又は無機酸で処理することによって形成できる。酸性プロトンを含有するUNAAは、適切な有機及び無機塩基で処理することによってそれらの無毒性の金属又はアミン付加塩の形態に変換できる。また本発明の文脈で記載されているUNAA及びその塩は、それらの水和物及び溶媒付加形態、例えば、水和物、アルコラート等をも含む。
生理学的に許容される酸又は塩基は、特に、UNAA残基を有するPOIの作製に使用される翻訳系により許容されるものである。例えば、生きた真核細胞に対して実質的に非毒性である。
本発明の状況において有用なUNAA及びその塩は、当技術分野において周知であり、例えば本明細書に引用した様々な刊行物に記載の方法と同様に作製することができる。
カップリング相手分子の性質は使用目的に依存する。例えば、POIは、イメージング法に適した分子と結合していてもよく、又は生物活性分子と結合して官能化されていてもよい。例えば、ドッキング基に加えて、カップリング相手分子は、これらには限定されないが、下記から選択される基を有することができる:色素(例えば、ダンシル、クマリン、フルオレセイン、アクリジン、ローダミン、シリコンローダミン、BODIPY又はシアニン色素等の蛍光色素、発光色素又は燐光色素);試薬と接触して蛍光を発することができる分子;発色団(例えば、フィトクロム、フィコビリン、ビリルビン等);放射性標識(例えば、水素、フッ素、炭素、リン、硫黄又はヨウ素の放射性形態、例えば、トリチウム、18F,11C,14C,32P,33P,33S,35S,11In,125I,123I,131I,212B,90Y又は186Rh等);MRI感受性スピン標識;親和性タグ(例えば、ビオチン、Hisタグ、Flagタグ、Strepタグ、糖、脂質、ステロール、PEGリンカー、ベンジルグアニン、ベンジルシトシン又は補助因子);ポリエチレングリコール基(例えば、分岐状PEG、線状PEG、様々な分子量のPEG等);光架橋剤(p-アジドヨードアセトアニリド等);NMRプローブ;X線プローブ;pHプローブ;IRプローブ;樹脂;固体支持体及び生物活性化合物(例えば、合成薬)。適切な生物活性化合物としては、これらには限定されないが、細胞傷害性化合物(例えば、癌化学療法化合物)、抗ウイルス化合物、生物学的応答調節剤(例えば、ホルモン、ケモカイン、サイトカイン、インターロイキン等)、微小管作用薬、ホルモン調節剤及びステロイド化合物等が挙げられる。有用なカップリング相手分子の具体例としては、これらには限定されないが、受容体/リガンド対の構成要素、抗体/抗原対の構成要素、レクチン/炭水化物対の構成要素、酵素/基質対の構成要素、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、及び、ジゴキシン/抗ジゴキシンが挙げられる。
特に、本明細書に記載のクリック反応により、結合相手分子(のドッキング基)にin situで共有結合する特定のUNAA残基(の標識基)の能力は、POIを発現する真核細胞内又は組織内でそのUNAA残基を有するPOIを検出するために、そしてPOIの分布と結末を研究するために使用できる。具体的には、真核細胞における発現によってPOIを作製するための本発明の方法は、細胞又はその細胞の組織内のPOIを検出するために超解像顕微鏡法(SRM)と組み合わせることができる。いくつかのSRM法が当技術分野において公知であり、本発明の真核細胞によって発現されるPOIを検出するためにクリックケミストリーを利用するように適合させることができる。そのSRM法の具体例としては、DNA-PAINT(ナノスケールトポグラフィにおけるイメージングのためのDNA点集積(DNA point accumulation);例えば、Jungmann et al.,Nat Methods 11:313-318,2014に記載)、dSTORM(直接確率的光学再構築顕微鏡法)及びSTED(誘導放出抑制)顕微鏡法が挙げられる。
以下の実施例は、単なる例示であり、本明細書に記載された実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。
本明細書で提供される開示を検討した後、当業者に直ちに明らかになる多数の可能な変形も、本発明の範囲に含まれる。
実験部分
別段の記載がない限り、本発明の文脈で実施されるクローニング工程、例えば制限切断、アガロースゲル電気泳動、DNAフラグメントの精製、ニトロセルロース及びナイロンメンブレンへの核酸の転写、DNAフラグメントの連結、微生物の形質転換、微生物の培養、ファージの増殖、および組み換えDNAの配列分析は、特に断りのない限り、例えば前掲のSambrookら(1989)に記載のように周知の技術を適用して実施される。
A.材料と方法
化学製品
TCO-E、TCOAおよびSCOはSiChem(SIRIUS FINE CHEMICALS,SICHEM GMBH,ドイツ)から購入した。
ε-tert-ブチルオキシカルボニル-L-リジン(Boc)はIris Biotech GmbH(ドイツ)から購入した。
細胞培養
HEK293T細胞(ATCC CRL-3216)は、10%FBS(Sigma-Aldrich F7524)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich P0781)、1%L-グルタミン(Sigma-Aldrich G7513)、および1%ピルビン酸ナトリウム(Life Technologies 11360)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco 41965-039)で培養した。細胞は、37℃、5% COで培養し、20継代まで2~3日ごとに分割した。HEK293T細胞を24ウェルプレート(Nunclon Delta Surface ThermoFisher SCIENTIFIC)に細胞密度220.000個/ml、500μl/ウェルで播種した。細胞はトランスフェクションの16時間前に播種した。トランスフェクションには、フェノールレッドを含まないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco 11880-028)を用い、トランスフェクション試薬としてポリエチレンイミン(PEI、Sigma 408727)を1mg/mlの濃度で使用した。
大腸菌:ElectroMAX(商標)DH10B FmcrA Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC) Φ80lacZΔM15 ΔlacX74 recA1 endA1 araD139Δ(ara,leu)7697 galU galK λrpsL nupG(ThermoFisher Scientific,カタログ番号:18290015)
培地
2xYT培地は自社で調製した。
SOC培地は自社で調製した。
構築物のクローニング
哺乳動物細胞における発現のために、先に公表されたように、図1Aの上図に示したレポータープラスミドpCI-iRFP-EGFPY39TAG-6His(配列番号97)を使用した(Nikic,I.et al.Debugging Eukaryotic Genetic Code Expansion for Site-Specific Click-PAINT Super-Resolution Microscopy.Angew.Chemie-Int.Ed.55,16172-16176(2016))。
プラスミドpCMV-NES-PylRSAF-U6tRNArv(配列番号98)は、それぞれY306AおよびY384F変異とN末端NESシグナルを含むMethanosarcina mazei由来のPylRS tRNA-合成酵素(Mm PylRSAF)、ならびにU6プロモーターシグナルおよびMethanosarcina mazei tRNAPyl遺伝子からなる逆方向のtRNA発現カセットを担持している(図1Aの下図)。
合成酵素の進化のために、PylRS遺伝子は、Ryan Mehlからの寄贈品であるpBKプラスミドにクローニングされた(Cooley,R.B.et al.Structural Basis of Improved Second-Generation 3-Nitro-tyrosine tRNA Synthetases.Biochemistry 53,1916-1924(2014))。最初に、制限部位NdeIおよびPstIを使用して、PylRS遺伝子のbps870~875にBglII部位を導入した後、Methanosarcina mazei PylRSWTをpBKプラスミドにクローニングし、カナマイシン耐性カセット(Kan)を含むpBK-PylRSWTプラスミド(配列番号99)を得た(図1Bの上図)。さらに、BglII部位をPstIとともに使用して、PylRSWT合成酵素のこの部分を置換することにより、PylRS遺伝子ライブラリーをこのプラスミドに配置した。
合成酵素の進化に使用したプラスミドpREP-PylT(配列番号100)(図1Bの下図)、pYOBB2-PylT(配列番号101)およびpALS-sfGFPN150TAG-MbPyl-tRNA(配列番号102)(それぞれ図1Cの上図および下図)は、Ryan Mehl labからの寄贈品であった(Cooley,R.B.et al.Structural Basis of Improved Second-Generation 3-Nitro-tyrosine tRNA Synthetases.Biochemistry 53,1916-1924(2014);Porter,J.J.et al.Genetically Encoded Protein Tyrosine Nitration in Mammalian Cells.ACS Chem.Biol.14,1328-1336(2019))。
合成酵素の選択手順により抽出したPylRS合成酵素変異体AF A1、AF B11、AF C11、AF G3、およびAF H12をpBKプラスミドからクローニングし、BglIIおよびPstIで消化した後、pCMV-NES-PylRSAF-U6tRNArvに挿入した。PylRSAFの対応するヌクレオチドを置換した。
部位特異的変異誘発
Y306AおよびY384F変異を欠く合成酵素変異体を得るために、これらのアミノ酸を部位特異的変異誘発によって306Yおよび384Yに戻し、2段階のクローニングによってPylRS変異体A1を得た。プライマーPylRS A306Y fw(5’aatctttataactatatgcgcaaactggaccgtgc 3’)(配列番号103)およびPylRS A306Y rv(5’atagttataaagatttggtgctagcatagggcgc 3’)(配列番号104)、ならびにプライマー対PylRS F384Y fw(5’atggtgtatggcgacaccctggatgtcatg 3’)(配列番号105)およびPylRS F384Y rv(5’tgtcgccatacaccatacagctgtcgcccac 3’)( 配列番号106)を使用した。
B.実施例
実施例1:TCO-Eを組み込むためのPylRS合成酵素の進化
Methanosarcina mazei PylRSAF変異体(Y306A、Y384F)に基づくNNK合成ライブラリーをGenScript Biotech Corp.に発注した。このライブラリーでは、20個のアミノ酸のいずれかを含むように5つの部位(L305、L309、C348、I405およびW417)が変異している。これらの位置から2つの終止コドンが除外されるため、5つの部位のそれぞれに32のバリアントが考えられ、ライブラリーサイズは3.3×10となる。このライブラリーを選択プラスミドpBK-PylRSWTにクローニングし、PylRSの結合ポケットをライブラリー遺伝子で置換し、pBK-PylRSlibを得た。選択用pREP-PylTを大腸菌DH10B細胞に形質転換し、高コンピテントなエレクトロコンピテント細胞を新たに調製した。テトラサイクリン(Tet)を添加したLB培地を用いてOD600が0.5になるまで細胞を増殖させた。細胞を回収した後、10%グリセロールで洗浄した。各回収工程の後に細胞を再懸濁させるために、回収ボトルを振って、ピペッティングの工程を避けて、細胞を静かに混合する必要がある。洗浄工程を2回繰り返し、最終的に細胞をできるだけ少量(1mlの10%グリセロールで1リットル発現させる場合)採取し、分注した。
100ngのpBK-PylRSlibを、1mmキュベット中でエレクトロポレーションにより50μlのDH10B(pREP-PylT)細胞に形質転換し、800μlのSOC培地を直接加えた。この工程を10回繰り返し、細胞を50mlの振盪フラスコに入れ、37℃、200rpmで1時間振盪し、インキュベートした。形質転換後のライブラリーのカバレッジを推定するため、TetとKanを含むLB-寒天プレートを調製し、細胞懸濁液10μlを用いて連続希釈(1:10~1:10)を行った。各LB-寒天プレートに100μlの希釈液をプレーティングし、37℃のインキュベーターで一晩培養した。残りの10mlの形質転換混合液を、抗生物質としてTetとKanを含む500mlの2xYT培地に加え、37℃で一晩振盪培養した。ライブラリーのカバレッジを推定するために、1:10プレート上のコロニー45個をカウントした。この結果、ライブラリーサイズの140倍のカバレッジが得られた。
翌日、細胞を500mlの新鮮な2xYT培地(Tet、Kan)で1:100に希釈し、OD600が1になるまで増殖させた(通常2~4時間かかる)。最初のポジティブセレクション(正の選択)のために、1mMのTCO-Eと60μg/mlのクロラムフェニコール(Cm)、Tet、Kanを含むLB-寒天プレート(150mmシャーレ)を10枚用意した。対照として、Cmを含まないプレートを1枚、同様に調製した。プレートは無菌条件下で調製し、乾燥するまで冷却した。
セレクションを開始するため、培養液100μlを150mmの各LB-寒天培地プレートにプレーティングし、ガラスビーズで広げ、炎の横で乾燥させた。プレートを37℃で一晩、ただし16時間を超えない範囲で培養した。得られたコロニーを、1プレートあたり5mlの2xYT培地を有するプレートから、セルスクレーパーを用いて掻き取った。全10プレートの細胞懸濁液を50mlの三角フラスコにプールし、37℃で1時間振盪した。ライブラリープラスミドを単離するために、まずMiniprep Kit(Invitrogen)でDNAを抽出し、続いてゲル抽出を行った。そこでDNAを1%アガロースゲルにロードし、最も低いバンドを切断した。DNAはゲル抽出キット(Invitrogen)で単離した。ネガティブセレクション(負の選択)用のプラスミド、pYOBB2-PylT(2つのアンバー部位(Gln2とAsp44)を有するバルナーゼ遺伝子を含む)を、DH10B細胞に形質転換し、上記のようにエレクトロコンピテント細胞を調製した。10ngのゲル抽出ライブラリープラスミドを、50μlの新しく調製したDH10B(pYOBB2-PylT)細胞に形質転換し、エレクトロポレーション後に800μlのSOC培地を用いて、14mlの試験管中で37℃、200rpmで振とうしながら1時間かけて回収した。培養時間の間にネガティブセレクション用のプレートを準備した。150mmシャーレ6枚にLB-寒天培地(うち3枚はバルナーゼ発現を誘導するため0.2%アラビノースを含む)をキャストした。すべて、50μg/mlのKan(pBK-PylRSlibプラスミド)と33μg/mlのCm(pYOBB2-PylTプラスミド)を含む。
100μlの純粋細胞、および100μlの1:10希釈液と1:100希釈液を、それぞれ2枚のプレート(1枚はアラビノース入り、もう1枚はアラビノースなし)にプレーティングした。プレートを炎の隣で乾燥させた後、37℃のインキュベーターで一晩培養した。プレートからコロニーを掻き取り、上記の方法でDNAを抽出した。ポジティブセレクションをもう一度繰り返し、10ngのゲル抽出したライブラリープラスミドを50μlのDH10B(pREP-PylT)に形質転換し、800μlのSOC培地で、37℃で1時間振盪して回収した。今回は、33μg/ml Cm(Kan、Tet)と1mM TCO-Eを含む15mm LB-寒天プレート3枚と、TCO-Eを含まない対照プレート1枚のみを選択に用いた。100μlの細胞懸濁液をプレーティングし、37℃で一晩培養した。生き残ったコロニーをプレートから掻き取り、1%アガロースゲルからライブラリープラスミドを抽出した。
残りのPylRS変異体のアンバー抑制効率を調べるため、スーパーフォルダーGFP(sfGFP)に基づく発現試験を行った。そこで、ライブラリーDNAを、N150位にアンバー部位を持つsfGFPをコードするプラスミドpALS-sfGFPN150TAG-MbPyl-tRNAと、Methanosarcina barkeri由来のtRNAPylともにDH10B細胞に形質転換した。対照として、PylRSWTをコードするpBK-PylRSプラスミドとPylRSAFをコードするプラスミドも、pALS-sfGFPN150TAG-MbPyl-tRNA(配列番号102)プラスミドと共形質転換した。形質転換体をSOC培地で1時間回収し、様々な量(50、100および200μl)を、1mMのTCO-Eを含み、ncAAを含まない自動誘導最小培地プレート(Kan、Tet)にプレーティングした。コロニーを37℃で24時間増殖させ、必要に応じてさらに24時間室温に置いた。
緑のコロニーを選択し、各ウェルに480μlの非誘導最小培地を含む96ウェルプレートで一晩培養した。対照(PylRSWTとPylRSAF)も選択し、この96ウェルプレートで培養した。翌日、96ウエルプレートを2枚用意し、各ウエルに480μlの自動誘導最小培地を入れ、1枚は1mM TCO-Eを入れたプレート、もう1枚は入れないプレートとした。それぞれの一晩培養液20μlを、新しい96ウェルプレートの対応するウェルにピペッティングし、37℃で24時間、250rpmで振盪培養した。sfGFP発現を蛍光測定(BIOTEK Synergy 2 Microplate Reader)で解析した。そのため、1ウェルあたり180μlの水を含む96ウェルプレートを用意し、そこに20μlのsfGFP発現培養液を対応するウェルにピペッティングした。各発現のOD600の違いを補正するために、600nmでの光学密度スキャンも行った(150μlの水+50μlの発現培養)。
非誘導最小培地を入れた96ウェルプレートから、目的の各ウェルをさらに分析することができる。例えば、PylRS変異体のDNAを配列決定のために抽出し、さらにサブクローニングすることができる。
このようにして、PylRS合成酵素変異体AF A1、AF B11、AF C11、AF G3およびAF H12が同定された。
実施例2:様々な合成酵素変異体の組み込み効率の推定
実施例1で得られたこれらの新しい新規のPylRS変異体を、蛍光フローサイトメトリー(FFC)による蛍光レポーターを用いてHEK293T細胞で試験した。レポーターは、強化した緑色蛍光タンパク質(EGFP)を融合した赤外蛍光タンパク質(iRFP)を含み、Y39の位置にアンバー終止コドンを持ち、iRFP-EGFPY39TAGと呼ばれる。それぞれの新しいPylRS変異体の組み込み効率を解析するために、様々なncAAと様々な量のncAAを用いた一過性トランスフェクションを行った。
トランスフェクトした細胞はiRFPを発現することができ、FFCプロットの縦軸にシグナルを示す。PylRS変異体が対応するncAA(この場合はTCOAまたはTCO-E)でtRNAをチャージできる場合、横軸にEGFP発現に起因する緑色のシグナルも観察される。
iRFPとEGFPのシグナルは、トランスフェクションの24時間後に測定した。したがって、HEK293T細胞はトランスフェクションの16時間前に24ウェルプレートに播種した。2プラスミドのトランスフェクションには、1ウェルあたり1μgの全DNAを用いた。このDNAを、フェノールレッドを含まないDMEM培地50μlと混合し、3μlのPEIを加えた。10秒間のボルテックスと短い遠心工程の後、DNA混合物をフード内で15分間インキュベートし、その後ウェルに滴下した。マスターミックスは、適切なときにすべてのウェルに調製した。4時間のインキュベーション後、培地を吸引し、様々な濃度のncAAを添加した新鮮な培地を加えた。ncAAの濃度は250μMであった。20時間の培養後、フローサイトメーター装置(LSRFortessa(商標)、BD Biosciences)を用いてiRFPおよびEGFPシグナルを解析した。全てのncAAsのストック溶液は、前述の通り調製した(Nikic,I.,Kang,J.H.,Girona,G.E.,Aramburu,I.V.& Lemke,E.A.Labeling proteins on live mammalian cells using click chemistry.Nat.Protoc.10,780-791(2015)).
様々なncAAを用いたこれらの発現試験の結果を図2に示す。すべての新しい変異体は、今回試験したTCOA(図2A)およびTCO-E(図2B)を取り込むことができる。さらに、TCO-Eを使用した場合、すべての新しい変異体はPylRSAFと比較してより高いグリーンシグナルを示した。図2CはncAA非存在下での発現プロファイルを示す。
実施例3:嵩高いncAAの組み込みに対する変異Y306AとY384Fの重要性の評価
変異Y306AとY384Fが嵩高いncAAsの取り込みに本当に重要かどうかを調べるために、PylRS AF A1変異体について、部位特異的変異誘発によってこれらのアミノ酸を元のアミノ酸残基に戻した。したがって、新しい変異体はY306AとY384F変異を含まず、PylRS A1と呼ばれる。
FFC試験は、PylRS A1、PylRS AF、PylRS AF A1、およびPylRS MMAの変異体を用いて、TCOA、TCO-E、さらにBocを用いて行った。PylRS MMAは、変異306M 309M 348Aを有する。図3は、FFCによって得られたデータを、使用した様々なncAAについて棒グラフにしたものである。上段の棒グラフは、FFCで得られた平均GFPシグナルを平均iRFPシグナルで割った比を示しており、これは組み込み効率を反映している。中段の棒グラフは同じデータを示しているが、100μM ncAAを用いたPylRS AF変異体で観察された比率で正規化している。下段の棒グラフは、平均GFP/平均iRFPの比率を、PylRS AF変異体について所望のncAA濃度で得られた平均GFP/平均iRFPの比率に対して正規化したものである。これらの棒グラフは、PylRS AFと比較して、各変異体の組み込み効率がどの程度高いかを示している。
すべての変異体(PylRS A1も同様)は嵩高いncAAを取り込むことができる。Y306AとY384Fは常に嵩高いncAAを組み込むための重要な変異であることが知られていたため、この発見は予想外であり、当技術分野にとって新しいものである。図3Aは、4つの異なるPylRS変異体を用いたTCO-Eの組み込みを示す。PylRS A1とPylRS AF A1を用いた場合、最も高い組み込み効率が得られるが、PylRS AFを用いた場合はそうではない。図3Bでは、TCOAをncAAとして用いたFFCデータにより、組み込み効率を示す。この場合、PylRS A1が最良の組み込みを示している。図3CはBocの組み込みのデータを示す。ここでもPylRS A1が、最も高い組み込み効率を達成できる。
TCO-Eの場合、使用濃度に依存してPylRS A1はPylRS AFよりも最大30倍優れており、TCOAの組み込みの場合、PylRS A1は使用するncAA濃度とは無関係に1.2倍高い効率を示す。また、Bocの場合、PylRS A1はPylRS AFと比較して4.5倍まで高い組み込み効率を示す。
要約すると、新規の変異型PylRS A1は、すでに知られているPylRS AF変異体と比較して、嵩高いncAAsに対してより優れた合成酵素となる変異を含んでおり、これは文献からは予想外であった。
まとめると、新規の変異型PylRS MMAは、PylRS AFと比較して、TCO-Eの組み込み効率が最大10倍高い。
本明細書で相互参照されているあらゆる文書の内容は、参照により組み込まれる。
実施例4:新規変異型PylRS A1によるシクロオクチン-リジン(SCO)の組み込み効率の評価
新規変異型PylRS A1による別のncAAの組み込み効率を試験するために、HEK293T細胞を用いて組み込みアッセイを行った。この細胞を、レポータープラスミドpCI-iRFP-EGFPY39TAG-6His(配列番号97)と共に、対応するtRNAPyl遺伝子も含むNES-PylRS A1を含むプラスミドで共トランスフェクトした。細胞のトランスフェクションの4時間後に、15.625μMから500μMの範囲で様々な濃度のSCOを増殖培地に添加した。20時間のインキュベーション後、iRFPとEGFPのシグナルをフローサイトメーター装置(LSRFortessa(商標)、BD Biosciences)を用いて上記の通り解析した。対応するFFCプロットを図5に示す。新しい変異体A1は、SCOを効率的に組み込むことができる。
上記の本明細書で相互参照した文書の内容は、参照により組み込まれる。
配列一覧
このリストは、本発明の一般的な開示の一部とみなされる。
Figure 2024532537000027
Figure 2024532537000028
Figure 2024532537000029
Figure 2024532537000030
Figure 2024532537000031
Figure 2024532537000032

Claims (20)

  1. 改変された古細菌ピロリジルtRNA合成酵素(PylRS)であって、
    改変された配列モチーフM1およびM3の組み合わせを含み;任意に、M2、M4、M5およびM6から選択される少なくとも1つのさらなる配列モチーフが組み合わされ、かつPylRS活性を保持する、改変された古細菌PylRS;
    ここで、M1、M2、M3、M4、M5およびM6は、改変されたPylRSのアミノ酸配列内において前記順序で配置され、M1が配列のN末端に最も近く、M6が配列のC末端に最も近く、かつ以下の配列を含む:
    M1:LRPMXAXL(Y/M)X(M/V/C)R(配列番号1)
    M2:HLXEFTMXNX(G/A)X1112G(配列番号2)
    M3:VYX1314TX15D(配列番号3)
    M4:SX161718GP(R/I/N)X2021D(配列番号4)
    M5:X2223(I/V)X2526PW(配列番号5)
    M6:G(A/L/I)GFGLERLL(配列番号6)
    ここで、アミノ酸残基X~X26は、互いに独立して、天然アミノ酸残基から選択される。
  2. 配列モチーフM1、M3およびM2;またはM1、M3、M2およびM4;またはM1、M3、M2、M4およびM5および/またはM6の組み合わせを含む、請求項1に記載の改変された古細菌PylRS。
  3. Methanosarcina属、Methanosarcinaceae属、Methanomethylophilus属、Desulfitobacterium属、およびCandidatus Methanoplasma属の古細菌に由来する親PylRSに由来する、特に、Methanosarcina mazeii種(配列番号56)、Methanosarcina barkeri種(配列番号58)、Methanosarcinaceae archaeon種(配列番号60)、Methanomethylophilus alvus種(配列番号62)、Desulfitobacterium hafniense種(配列番号64)およびCandidatus Methanoplasma termitum種(配列番号66)の古細菌に由来する親PylRSに由来する、請求項1または2に記載の改変された古細菌PylRS。
  4. 配列番号56、58、60、62、64および66から選択されるアミノ酸配列を有する親PylRS、またはその機能的変異体もしくはフラグメントに由来し、ピロリジルtRNA合成酵素活性を保持し、天然ピロリジルtRNA合成酵素に対して少なくとも60%の配列同一性を有する、改変された古細菌PylRSであって、
    改変された配列モチーフM1およびM3の組み合わせを含み;任意に、それぞれ請求項1で定義されたM2、M4、M5およびM6から選択される少なくとも1つのさらなる配列モチーフと組み合わされる、請求項1~3のいずれか一項に記載の改変された古細菌PylRS。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の改変された古細菌PylRSであって、
    a)配列モチーフM1が以下の配列から選択され:
    Figure 2024532537000033
    b)配列モチーフM2が以下の配列から選択され:
    Figure 2024532537000034
    c)配列モチーフM3が以下の配列から選択され:
    Figure 2024532537000035
    d)配列モチーフM4が以下の配列から選択され:
    Figure 2024532537000036
    e)配列モチーフM5が以下の配列から選択され:
    Figure 2024532537000037
    f)配列モチーフM6が以下の配列から選択される:
    Figure 2024532537000038
    改変された古細菌PylRS。
  6. 請求項1~4のいずれか一項に記載の改変された古細菌PylRSであって、
    a)配列モチーフM1が以下の配列から選択され:
    Figure 2024532537000039
    b)配列モチーフM2が以下の配列から選択され:
    Figure 2024532537000040
    c)配列モチーフM3が以下の配列から選択され:
    Figure 2024532537000041
    d)配列モチーフM4が以下の配列から選択され:
    Figure 2024532537000042
    e)配列モチーフM5が以下の配列から選択され:
    Figure 2024532537000043
    f)配列モチーフM6が以下の配列から選択される:
    Figure 2024532537000044
    改変された古細菌PylRS。
  7. 配列モチーフM1a、M2a、M3a、M4a、M5aおよびM6aの組み合わせを含む請求項5に記載の改変された古細菌PylRS、または配列モチーフM1a、M2a、M3a、M4a、M5aおよびM6aの組み合わせを含む請求項6に記載の改変された古細菌PylRS。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の改変された古細菌PylRSであって、
    a)配列番号70のアミノ酸配列を含むPylRS A1;または配列番号70に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;あるいは、
    b)配列番号72のアミノ酸配列を含むPylRS MMA;または配列番号72に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;あるいは、
    c)配列番号82のアミノ酸配列を含むPylRS B11;または配列番号82に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;あるいは、
    d)配列番号84のアミノ酸配列を含むPylRS C11;または配列番号84に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;あるいは、
    e)配列番号86のアミノ酸配列を含むPylRS G3;または配列番号86に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;あるいは、
    f)配列番号88のアミノ酸配列を含むPylRS H12;または配列番号88に対して少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列;またはPylRS活性を保持するその機能的フラグメント;
    である改変された古細菌PylRS。
  9. 以下の機能的特徴の少なくとも1つを示す、請求項1~8のいずれか一項に記載の改変された古細菌PylRS:
    a)非標準アミノ酸(ncAA)に対する改変された基質プロファイル;
    b)変異型PylRS AF(配列番号68)とそれぞれ比較して、特にTCO-E、TCOAおよびBocから選択される少なくとも1つの嵩高いncAAの改善された利用;
    c)変異型PylRS AF A1(配列番号108)とそれぞれ比較して、特にTCOAおよびBocから選択される少なくとも1つの嵩高いncAAの改善された利用。
  10. 以下の機能的特徴の少なくとも1つを示す、請求項8のa)に記載の改変された古細菌PylRS:
    a)変異型PylRS AF(配列番号68)とそれぞれ比較して、TCO-E、TCOAおよびBocから選択される少なくとも1つの嵩高いncAAの改善された利用;
    b)変異型PylRS AF A1(配列番号108)とそれぞれ比較して、TCOAおよびBocから選択される少なくとも1つの嵩高いncAAの改善された利用。
  11. 少なくとも以下の機能的特徴を示す、請求項8のb)に記載の改変された古細菌PylRS:
    変異型PylRS AF(配列番号68)と比較して、嵩高いncAAであるTCO-Eの改善された利用。
  12. 核外搬出シグナル(NES)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の改変された古細菌PylRS。
  13. 請求項1~12のいずれか一項に記載の改変された古細菌ピロリジルtRNA合成酵素をコードする改変されたポリヌクレオチド。
  14. tRNAPylをさらにコードする請求項13に記載のポリヌクレオチドであって、
    前記tRNAPylが、請求項13に記載のポリヌクレオチドにコードされるピロリジルtRNA合成酵素によってアシル化されうるtRNAであるか、または請求項1~12のいずれか一項に定義されるtRNAである、ポリヌクレオチド。
  15. 請求項13に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドと、請求項14に記載のtRNAPylをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチドの組み合わせ。
  16. tRNAPylのアンチコドンが、終止コドン、4塩基コドンおよびレアコドンから選択されるコドンの逆相補体である、請求項14記載のポリヌクレオチドまたは請求項15記載のポリヌクレオチドの組合せ。
  17. 以下を含む真核細胞、特に哺乳動物細胞:
    (a)請求項1~12のいずれか一項に記載のピロリジルtRNA合成酵素をコードするポリヌクレオチド配列、および
    (b)(a)の配列によってコードされるピロリジルtRNA合成酵素によってアシル化されうるtRNA、またはそのtRNAをコードするポリヌクレオチド配列。
  18. 1つ以上の非天然アミノ酸残基を含む目的のタンパク質(POI)を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
    (a)以下を含む真核細胞を提供する工程
    (i)請求項1~12のいずれか一項に記載のピロリジルtRNA合成酵素;
    (ii)tRNA(tRNAPyl);
    (iii)非天然アミノ酸またはその塩;および
    (iv)POIをコードするポリヌクレオチドであって、非天然アミノ酸残基によって占有されるPOIの任意の位置が、tRNAPylに含まれるアンチコドンの逆相補体であるコドンによってコードされる、ポリヌクレオチド;
    ここで、ピロリジルtRNA合成酵素(i)は、tRNAPyl(ii)を非天然アミノ酸または塩(iii)でアシル化することができる;ならびに、
    (b)真核細胞によるポリヌクレオチド(iv)の翻訳を可能にし、それによってPOIを産生する工程。
  19. ポリペプチド結合体を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
    (a)請求項18に記載の方法を使用して、1つ以上の非天然アミノ酸残基を含むPOIを調製する工程;および
    (b)結合相手分子がPOIの非天然アミノ酸残基に共有結合するように、POIを1つ以上の結合相手分子と反応させる工程。
  20. 少なくとも1つの非天然アミノ酸またはその塩と、以下を含むキット:
    (a)請求項13、14もしくは16のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド;または
    (b)請求項15または16に記載のポリヌクレオチドの組み合わせ;または
    (c)請求項17に記載の真核細胞;
    ここで、古細菌ピロリジルtRNA合成酵素は、tRNAPylを非天然アミノ酸またはその塩でアシル化することができる。
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