JP2024525795A - Cldn6陽性癌を治療するための、cldn6およびcd3結合要素をコードする薬剤 - Google Patents

Cldn6陽性癌を治療するための、cldn6およびcd3結合要素をコードする薬剤 Download PDF

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本発明は、一般に、少なくともCD3およびCLDN6への結合について二重特異性である、すなわち、少なくともCD3およびCLDN6に結合することができる結合剤に関する。具体的には、本発明は、対象の癌の治療または予防に使用し得るこれらの結合剤をコードするRNAに関する。

Description

癌は世界的に2番目に多い死因であり、2020年には1000万人の死亡の原因であると推定された。一般に、生殖細胞および一部のカルチノイド腫瘍などのいくつかの例外を除いて、固形腫瘍が転移すると、5年生存率が25%を超えることはまれである。
化学療法、放射線療法、手術、および標的療法などの従来の治療法の改良ならびに免疫療法の最近の進歩により、進行性固形腫瘍を有する患者の転帰が改善されている。ここ数年で、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)は、複数の癌型、主に固形腫瘍を有する患者の治療のためのいくつかの免疫チェックポイント阻害剤を承認した。これらの承認は、癌治療の状況を劇的に変化させた。
転移癌または局所進行癌における予後不良は、さらなる治療アプローチの必要性を強調する。そのようなアプローチの1つは、有望なモダリティを有する絶えず進化している分野である標的療法のアプローチである。
CLDN6は、上皮細胞シートおよび内皮細胞シートにおける頂端タイトジャンクション複合体の形成に関与するテトラスパニン膜タンパク質(PfamデータベースID:PF00822)のPMP-22/EMP/MP20/クローディンスーパーファミリーに属し、細胞極性の維持に重要な役割を果たす(Krause G.et al.,Biochim Biophys Acta.2008;1778(3):631-645)。重要なことに、クローディンタンパク質の発現は細胞のタイトジャンクションに限定され、標準的な生理学的条件下でのイオン輸送にのみ利用可能である(Krause G.et al.,Biochim Biophys Acta.2008;1778(3):631-645)。さもなければ、CLDN6のインビボ機能については他にほとんど知られていない。
CLDN6は、そのN末端およびC末端が細胞質内に伸びる4つの膜貫通ヘリックスを有する。CLDN6の短いN末端配列の後には、大きな細胞外ループ(EL1)、短い細胞内ループ、第2の細胞外ループ(EL2)、およびC末端細胞質尾部が続く(Colegio O.R.et al.,Am J Physiol Cell Physiol.2002;283(1):C142-C147)。
CLDN6のアイソフォームはこれまで同定されていない(Lal-Nag M.et al.,Genome Biol.2009;10(8):235)。クローディンファミリーメンバーのCLDN3、CLDN4およびCLDN9は、CLDN6と配列相同性を共有する。CLDN3およびCLDN4は、一般に、肺、肝臓、乳房、膵臓、腎臓および腸の正常な上皮細胞で発現される(Kwon M.et al.,Int J Mol Sci.2013;14(9):18148-18180)。CLDN9発現は大部分の正常組織では存在しない;しかしながら、ヒトにおけるCLDN9遺伝子切断と聴覚障害との関連が報告されているように(Sineni C.et al.,Human genetics 2019;138(10):1071-1075)、マウス内耳の蝸牛および前庭部におけるCLDN9発現が報告されている(Kitajiri S.I.et al.,Hear Res.2004;187(1-2):25-34;Nakano Y.et al.,PLoS Genet.2009;5(8):e1000610)。
癌胎児性タンパク質CLDN6は、胚性幹細胞においてほぼ排他的に発現され、次いで神経または心臓系統への分化中に急速に下方制御され、胎盤以外の正常な成体組織では発現されない(Assou S.et al.,Stem Cells.2007;25(4):961-973;Ben-David U.et al.,Nat Commun.2013;4:1992;Reinhard K.et al.,Science.2020;367(6476):446-453)。CLDN6は、精巣癌、卵巣癌、子宮内膜癌および肺癌を含む様々なヒト癌タイプで発現される。代表的な試験は、全ての組織学的サブタイプの精巣癌の約93%が、染色強度≧2+によって定義される、CLDN6に対して非常に陽性に染色されることを示した。さらに、卵巣癌の56%がCLDN6に対して陽性に染色され、このうち20~25%が50%を超える腫瘍細胞において高い(≧2+)細胞膜染色を示した。原発性卵巣癌と比較して、CLDN6陽性試料の頻度は転移病変で有意に増加し(72%;データは示していない)、CLDN6発現を疾患進行と関連付けた。子宮内膜癌の23%および肺癌の11%がCLDN6に対して陽性に染色され、このうちそれぞれ10~15%および2~5%が≧2+の染色強度を示した。
Krause G.et al.,Biochim Biophys Acta.2008;1778(3):631-645 Colegio O.R.et al.,Am J Physiol Cell Physiol.2002;283(1):C142-C147 Lal-Nag M.et al.,Genome Biol.2009;10(8):235 Kwon M.et al.,Int J Mol Sci.2013;14(9):18148-18180 Sineni C.et al.,Human genetics 2019;138(10):1071-1075 Kitajiri S.I.et al.,Hear Res.2004;187(1-2):25-34 Nakano Y.et al.,PLoS Genet.2009;5(8):e1000610 Assou S.et al.,Stem Cells.2007;25(4):961-973 Ben-David U.et al.,Nat Commun.2013;4:1992 Reinhard K.et al.,Science.2020;367(6476):446-453
本発明の目的は、CLDN6陽性癌疾患の治療のための新規な薬剤および方法を提供することであった。
いくつかの実施形態では、本発明の根底にある問題の解決策は、患者の細胞によって発現されるRNAを投与して、癌細胞によって発現されるCLDN6に特異的な2つの結合ドメインと、T細胞によって発現されるCD3に特異的な結合ドメインとを含む結合剤を形成するポリペプチド鎖を発現させ、したがって癌細胞に対するT細胞の細胞傷害効果を標的化することを可能にするという概念に基づく。
本発明は、一般に、少なくともCD3およびCLDN6への結合について二重特異性である、すなわち、少なくともCD3およびCLDN6に結合することができる結合剤に関する。具体的には、本発明は、対象の癌の治療または予防に使用し得るこれらの結合剤をコードするRNAに関する。特に、本明細書に開示される結合剤をコードするRNAは、CD3およびCLDN6を標的化するための結合剤を(適切な標的細胞によるRNAの発現後に)提供するために投与され得る。
したがって、本明細書に記載の医薬組成物は、レシピエントの細胞に入るとそれぞれのコードされたポリペプチドに翻訳され得る一本鎖RNAを活性成分として含み得る。結合剤をコードする配列に加えて、RNAは、安定性および翻訳効率に関してRNAの最大有効性のために最適化された1つ以上の構造要素(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)尾部)を含み得る。いくつかの実施形態では、RNAはこれらの要素の全てを含む。
本明細書に記載のRNAをタンパク質および/または脂質、好ましくは脂質と複合体化して、投与のためのRNA粒子を生成し得る。異なるRNAを一緒に複合体化してもよく、またはタンパク質および/もしくは脂質と別々に複合体化して、投与のためのRNA粒子を生成してもよい。
一態様では、本発明は、
(i)CD3に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CD3))、CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CLDN6))およびCLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CLDN6))を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1のRNA;ならびに
(ii)CD3に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CD3))、CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CLDN6))およびCLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CLDN6))を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2のRNA
を含む組成物または医薬製剤を提供する。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は第2のポリペプチド鎖と相互作用して、CD3に特異性を有する結合ドメインおよびCLDN6に特異性を有する2つの結合ドメインを形成する。
いくつかの実施形態では、
第1のポリペプチド鎖のVH(CD3)と第2のポリペプチド鎖のVL(CD3)とが相互作用して、CD3に特異性を有する結合ドメインを形成し、
第1のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成し、
第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成する。
一態様では、本発明は、
(i)可変領域VH(CD3)、可変領域VH(CLDN6)および可変領域VL(CLDN6)を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1のRNA;ならびに
(ii)可変領域VL(CD3)、可変領域VH(CLDN6)および可変領域VL(CLDN6)を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2のRNA
を含み、第1のポリペプチド鎖のVH(CD3)と第2のポリペプチド鎖のVL(CD3)とが相互作用して、CD3に特異性を有する結合ドメインを形成し、
第1のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成し、
第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成する、
組成物または医薬製剤を提供する。
いくつかの実施形態では、第1および第2のポリペプチド鎖は、免疫グロブリンまたはその機能的変異体に由来する重鎖の定常領域1(CH1)と、免疫グロブリンまたはその機能的変異体に由来する軽鎖の定常領域(CL)とを含む。
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンはIgG1である。
いくつかの実施形態では、IgG1はヒトIgG1である。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖上のVH、VL、およびCH1は、
VH(CD3)-CH1-VH(CLDN6)-VL(CLDN6)、または
VH(CD3)-CH1-VL(CLDN6)-VH(CLDN6)
の順序でN末端からC末端へと配置される。
いくつかの実施形態では、CH1は、ペプチドリンカーによってVH(CLDN6)またはVL(CLDN6)に接続されている。一実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列SGPGGGRS(GS)またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖上のVH、VL、およびCLは、
VL(CD3)-CL-VH(CLDN6)-VL(CLDN6)、または
VL(CD3)-CL-VL(CLDN6)-VH(CLDN6)
の順序でN末端からC末端へと配置される。
いくつかの実施形態では、CLは、ペプチドリンカーによってVH(CLDN6)またはVL(CLDN6)に接続されている。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列DVPGGSまたはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)およびVL(CLDN6)は、ペプチドリンカーによって互いに接続されている。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列(GS)またはその機能的変異体を含み、xは、2、3、4、5または6である。一実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列(GS)またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖上のCH1は、第2のポリペプチド鎖上のCLと相互作用する。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、アミノ酸配列GYTFTRYTまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列INPSRGYTまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列ARYYDDHYSLDYまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、アミノ酸配列GYTFTRYTまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列INPSRGYTまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列ARYYDDHYCLDYまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CD3)は、アミノ酸配列SSVSYまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列DTSまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列QQWSSNPLTまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)は、アミノ酸配列GYSFTGYTまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列INPYNGGTまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列ARDYGFVLDYまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびにCDR1に対して+15の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびにCDR2に対して-3の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、または80%の同一性を有する配列、ならびに配列番号4の449位に対応する位置のセリン残基を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、アミノ酸配列SSVSYまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列STSまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列QQRSNYPPWTまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに好ましくはCDR1に対して+15の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)および/またはCDR2に対して-3の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)を含む。
いくつかの実施形態では、
VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、
VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、
VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、および/または
VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドの少なくとも1つは、コドン最適化されたコード配列および/またはそのG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によってコードされ、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は、好ましくはコードされたアミノ酸配列の配列を変化させない。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドのそれぞれは、コドン最適化されたコード配列および/または野生型コード配列と比較してそのG/C含有量が増加しているコード配列によってコードされ、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は、好ましくはコードされたアミノ酸配列の配列を変化させない。
いくつかの実施形態では、RNAは、ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。そのような場合、好ましくは、RNA中の各ウリジンまたは本質的に各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドが存在する。
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAは、5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含む。
いくつかの実施形態では、各RNAは、5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAは、配列番号8のヌクレオチド配列、または配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む。
いくつかの実施形態では、各RNAは、配列番号8のヌクレオチド配列、または配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAは、配列番号9のヌクレオチド配列、または配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む。
いくつかの実施形態では、各RNAは、配列番号9のヌクレオチド配列、または配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAはポリA配列を含む。
いくつかの実施形態では、各RNAはポリA配列を含む。
いくつかの実施形態では、ポリA配列は少なくとも100個のヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、ポリA配列は、配列番号10のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる。
いくつかの実施形態では、
(i)第1のRNAと第2のRNAとは、約1.75:1~約1.25:1、もしくは約1.5:1~約1.25:1、もしくは好ましくは約1.5:1の(w/w)比であり;ならびに/または
(ii)第1のRNAおよび第2のRNAは、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み;ならびに/または
(iii)第1のRNAおよび第2のRNAは、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)、および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択され;ならびに/または
(iv)第1のRNAおよび第2のRNAは、5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含み;ならびに/または
(v)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号8のヌクレオチド配列、もしくは配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含み;ならびに/または
(vi)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号9のヌクレオチド配列、もしくは配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含み;ならびに/または
(vii)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリA尾部を含む。
いくつかの実施形態では、
(i)第1のRNAと第2のRNAとは、約1.75:1~約1.25:1、または約1.5:1~約1.25:1、または好ましくは約1.5:1の(w/w)比であり;
(ii)第1のRNAおよび第2のRNAは、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み、修飾ヌクレオシドはN1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)であり;
(iii)第1のRNAおよび第2のRNAは、5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含み;
(iv)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号8のヌクレオチド配列を含む5’UTRを含み;
(v)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号9のヌクレオチド配列を含む3’UTRを含み;ならびに
(vi)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリA尾部を含む。
いくつかの実施形態では、
(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸配列、もしくは配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または
(ii)第1のRNAは、配列番号5のヌクレオチド配列、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、
(i)第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸配列、もしくは配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または
(ii)第2のRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列、もしくは配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
一態様では、本発明は、
(i)配列番号4のアミノ酸配列、または配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1のRNA;および
(ii)配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2のRNA
を含む組成物または医薬製剤を提供する。
全ての態様のいくつかの実施形態では、第1のRNAは、配列番号5のヌクレオチド配列、または配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
全ての態様のいくつかの実施形態では、第2のRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
一態様では、本発明は、配列番号35のヌクレオチド配列、もしくは配列番号35のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む第1のRNA、および/または配列番号36のヌクレオチド配列、もしくは配列番号36のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む第2のRNAを含む組成物または医薬製剤を提供する。
一態様では、本発明は、配列番号5のヌクレオチド配列を含む第1のRNA、および配列番号7のヌクレオチド配列を含む第2のRNAを含む組成物または医薬製剤であって、第1のRNAと第2のRNAとが約1.5:1の第1のRNA対第2のRNAの(w/w)比で存在する、組成物または医薬製剤を提供する。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAはmRNAである。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAは、液体として製剤化されるか、固体として製剤化されるか、またはそれらの組合せである。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAは、注射用に製剤化されているか、または製剤化されることになっている。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAは、静脈内投与用に製剤化されているか、または製剤化されることになっている。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAは粒子として製剤化されているか、または製剤化されることになっている。
いくつかの実施形態では、粒子は脂質ナノ粒子(LNP)である。
いくつかの実施形態では、LNP粒子は、((3-ヒドロキシプロピル)アザンジイル)ビス(ノナン-9,1-ジイル)ビス(2-ブチルオクタノエート)、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、およびコレステロールを含む。
全ての態様のいくつかの実施形態では、組成物または医薬製剤は医薬組成物である。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む。
全ての態様のいくつかの実施形態では、組成物または医薬製剤はキットである。
いくつかの実施形態では、RNAおよび任意で粒子形成成分は、別々のバイアル内にある。
いくつかの実施形態では、組成物または医薬製剤は、癌を治療または予防するための組成物または医薬製剤の使用説明書をさらに含む。
一態様では、本発明は、医薬用途のための本明細書に記載の組成物または医薬製剤を提供する。
いくつかの実施形態では、医薬用途は、疾患または障害の治療的または予防的処置を含む。
いくつかの実施形態では、疾患または障害の治療的または予防的処置は、癌を治療または予防することを含む。
いくつかの実施形態では、疾患または障害の治療的または予防的処置は、さらなる療法を投与することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、さらなる療法は、(i)腫瘍を摘出、切除、または減量する手術、(ii)放射線療法、および(iii)化学療法からなる群より選択される1つ以上を含む。
いくつかの実施形態では、さらなる療法は、さらなる治療薬を投与することを含む。
いくつかの実施形態では、さらなる治療薬は抗癌治療薬を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物または医薬製剤は、ヒトへの投与用である。
一態様では、本発明は、対象における癌を治療する方法であって、
(i)CD3に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CD3))、CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CLDN6))およびCLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CLDN6))を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1のRNA;ならびに
(ii)CD3に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CD3))、CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CLDN6))およびCLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CLDN6))を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2のRNA
を対象に投与することを含む方法を提供する。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は第2のポリペプチド鎖と相互作用して、CD3に特異性を有する結合ドメインおよびCLDN6に特異性を有する2つの結合ドメインを形成する。
いくつかの実施形態では、
第1のポリペプチド鎖のVH(CD3)と第2のポリペプチド鎖のVL(CD3)とが相互作用して、CD3に特異性を有する結合ドメインを形成し、
第1のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成し、
第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成する。
一態様では、本発明は、対象における癌を治療する方法であって、
(i)可変領域VH(CD3)、可変領域VH(CLDN6)および可変領域VL(CLDN6)を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1のRNA;ならびに
(ii)可変領域VL(CD3)、可変領域VH(CLDN6)および可変領域VL(CLDN6)を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2のRNA
を対象に投与することを含み、第1のポリペプチド鎖のVH(CD3)と第2のポリペプチド鎖のVL(CD3)とが相互作用して、CD3に特異性を有する結合ドメインを形成し、
第1のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成し、
第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成する、方法を提供する。
いくつかの実施形態では、第1および第2のポリペプチド鎖は、免疫グロブリンまたはその機能的変異体に由来する重鎖の定常領域1(CH1)と、免疫グロブリンまたはその機能的変異体に由来する軽鎖の定常領域(CL)とを含む。
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンはIgG1である。
いくつかの実施形態では、IgG1はヒトIgG1である。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖上のVH、VL、およびCH1は、
VH(CD3)-CH1-VH(CLDN6)-VL(CLDN6)、または
VH(CD3)-CH1-VL(CLDN6)-VH(CLDN6)
の順序でN末端からC末端へと配置される。
いくつかの実施形態では、CH1は、ペプチドリンカーによってVH(CLDN6)またはVL(CLDN6)に接続されている。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列SGPGGGRS(GS)またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖上のVH、VL、およびCLは、
VL(CD3)-CL-VH(CLDN6)-VL(CLDN6)、または
VL(CD3)-CL-VL(CLDN6)-VH(CLDN6)
の順序でN末端からC末端へと配置される。
いくつかの実施形態では、CLは、ペプチドリンカーによってVH(CLDN6)またはVL(CLDN6)に接続されている。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列DVPGGSまたはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)およびVL(CLDN6)は、ペプチドリンカーによって互いに接続されている。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列(GS)またはその機能的変異体を含み、xは、2、3、4、5または6である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列(GS)またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖上のCH1は、第2のポリペプチド鎖上のCLと相互作用する。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、アミノ酸配列GYTFTRYTまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列INPSRGYTまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列ARYYDDHYSLDYまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、アミノ酸配列GYTFTRYTまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列INPSRGYTまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列ARYYDDHYCLDYまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CD3)は、アミノ酸配列SSVSYまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列DTSまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列QQWSSNPLTまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)は、アミノ酸配列GYSFTGYTまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列INPYNGGTまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列ARDYGFVLDYまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびにCDR1に対して+15の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびにCDR2に対して-3の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、または80%の同一性を有する配列、ならびに配列番号4の449位に対応する位置のセリン残基を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、アミノ酸配列SSVSYまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列STSまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列QQRSNYPPWTまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに好ましくはCDR1に対して+15の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)および/またはCDR2に対して-3の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)を含む。
いくつかの実施形態では、
VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、
VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、
VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、および/または
VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドの少なくとも1つは、コドン最適化されたコード配列および/またはそのG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によってコードされ、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は、好ましくはコードされたアミノ酸配列の配列を変化させない。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドのそれぞれは、コドン最適化されたコード配列および/または野生型コード配列と比較してそのG/C含有量が増加しているコード配列によってコードされ、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は、好ましくはコードされたアミノ酸配列の配列を変化させない。
いくつかの実施形態では、RNAは、ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。そのような場合、好ましくは、RNA中の各ウリジンまたは本質的に各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドが存在する。
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択される。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAは、5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含む。
いくつかの実施形態では、各RNAは、5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAは、配列番号8のヌクレオチド配列、または配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む。
いくつかの実施形態では、各RNAは、配列番号8のヌクレオチド配列、または配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAは、配列番号9のヌクレオチド配列、または配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む。
いくつかの実施形態では、各RNAは、配列番号9のヌクレオチド配列、または配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRNAはポリA配列を含む。
いくつかの実施形態では、各RNAはポリA配列を含む。
いくつかの実施形態では、ポリA配列は少なくとも100個のヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、ポリA配列は、配列番号10のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる。
いくつかの実施形態では、
(i)第1のRNAと第2のRNAとは、約1.75:1~約1.25:1、もしくは約1.5:1~約1.25:1、もしくは好ましくは約1.5:1の(w/w)比であり;ならびに/または
(ii)第1のRNAおよび第2のRNAは、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み;ならびに/または
(iii)第1のRNAおよび第2のRNAは、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)、および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択され;ならびに/または
(iv)第1のRNAおよび第2のRNAは、5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含み;ならびに/または
(v)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号8のヌクレオチド配列、もしくは配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含み;ならびに/または
(vi)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号9のヌクレオチド配列、もしくは配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含み;ならびに/または
(vii)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリA尾部を含む。
いくつかの実施形態では、
(i)第1のRNAと第2のRNAとは、約1.75:1~約1.25:1、または約1.5:1~約1.25:1、または好ましくは約1.5:1の(w/w)比であり;
(ii)第1のRNAおよび第2のRNAは、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み、修飾ヌクレオシドはN1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)であり;
(iii)第1のRNAおよび第2のRNAは、5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含み;
(iv)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号8のヌクレオチド配列を含む5’UTRを含み;
(v)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号9のヌクレオチド配列を含む3’UTRを含み;ならびに
(vi)第1のRNAおよび第2のRNAは、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリA尾部を含む。
いくつかの実施形態では、
(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸配列、もしくは配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または
(ii)第1のRNAは、配列番号5のヌクレオチド配列、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、
(i)第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸配列、もしくは配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または
(ii)第2のRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列、もしくは配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
一態様では、本発明は、対象における癌を治療する方法であって、
(i)配列番号4のアミノ酸配列、または配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1のRNA;および
(ii)配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2のRNA
を対象に投与することを含む方法を提供する。
全ての態様のいくつかの実施形態では、第1のRNAは、配列番号5のヌクレオチド配列、または配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
全ての態様のいくつかの実施形態では、第2のRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
一態様では、本発明は、対象における癌を治療する方法であって、配列番号35のヌクレオチド配列、もしくは配列番号35のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む第1のRNA、および/または配列番号36のヌクレオチド配列、もしくは配列番号36のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む第2のRNAを対象に投与することを含む方法を提供する。
一態様では、本発明は、対象における癌を治療する方法であって、配列番号5のヌクレオチド配列を含む第1のRNAおよび配列番号7のヌクレオチド配列を含む第2のRNAを対象に投与することを含み、第1のRNAと第2のRNAとが約1.5:1の第1のRNA対第2のRNAの(w/w)比で投与される、方法を提供する。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAはmRNAである。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAは、液体として製剤化されるか、固体として製剤化されるか、またはそれらの組合せである。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAは注射によって投与される。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAは週に1回投与される。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAは静脈内投与によって投与される。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAは粒子として製剤化される。
いくつかの実施形態では、粒子は脂質ナノ粒子(LNP)である。
いくつかの実施形態では、LNP粒子は、((3-ヒドロキシプロピル)アザンジイル)ビス(ノナン-9,1-ジイル)ビス(2-ブチルオクタノエート)、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、およびコレステロールを含む。
全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAは医薬組成物に製剤化される。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む。
全ての態様のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、さらなる療法を投与することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、さらなる療法は、(i)腫瘍を摘出、切除、または減量する手術、(ii)放射線療法、および(iii)化学療法からなる群より選択される1つ以上を含む。
いくつかの実施形態では、さらなる療法は、さらなる治療薬を投与することを含む。
いくつかの実施形態では、さらなる治療薬は抗癌治療薬を含む。
全ての態様のいくつかの実施形態では、対象はヒトである。
全ての態様のいくつかの実施形態では、癌はCLDN6陽性癌である。
一態様では、本発明は、本明細書に記載の方法で使用するための本明細書に記載の組成物または医薬製剤を提供する。
一態様では、本発明は、本明細書に記載の方法で使用するための本明細書に記載の薬剤または組成物に関する。
RNA原薬BNT142の一般構造 5’キャップ(本明細書では「キャップ1」)、5’-UTRおよび3’-UTRを有するRNA原薬の一般構造の概略図。 C=定常重鎖ドメイン;C=定常軽鎖ドメイン;DS=原薬;L=リンカー;m=メッセンジャ;Sec=分泌シグナルペプチド配列;ポリ(A)=ポリアデニン尾部;RNA=リボ核酸;UTR=非翻訳領域;V=可変重鎖ドメイン;V=可変軽鎖ドメイン。 RiboMab02.1はヒトCD3およびCLDN6に特異的に結合し、密接に関連するCLDN3、4および9または非ヒト霊長動物CD3へのオフターゲット結合を示さない。 RiboMab02.1の標的結合を、APC標識ヤギ抗マウスIgG(重鎖および軽鎖[H+L])二次抗体を使用したフローサイトメトリ結合アッセイによって決定した。細胞を最初にシングレットについてゲーティングし、続いて生存リンパ球(PBMC)または生存HEK-293T-17細胞についてゲーティングした。10μg/mLの濃度でHEK-293T-17上清中のRiboMab02.1を使用した。示されているように、カニクイザルまたはヒトPBMCおよびルシフェラーゼを安定に発現するHEK-293T-17形質導入体(HEK-293T-17_モック)、CLDN3、4、6または9は、標的細胞として機能した。垂直な点線は、染色されていない集団のピーク位置を示す。 APC=アロフィコシアニン;CLDN=クローディン;HEK=ヒト胎児腎臓;PBMC=末梢血単核細胞。 マウスにおいて発現されるRiboMab02.1は、複数のPBMCドナーに関してインビトロで用量依存的かつ標的特異的な腫瘍細胞溶解を媒介する 8人の健常ドナー由来のヒトPBMCをルシフェラーゼ発現腫瘍細胞と共培養した。CLDN6陽性PA-1(A)またはOV-90(B)細胞株を標的細胞として使用し、標的特異性について対照するためにCLDN6陰性MDA-MB-231(A、B)細胞株を使用した。20:1のエフェクタ対標的細胞比を有する384ウェルプレートフォーマットでアッセイを実施した。生存腫瘍細胞の生物発光を読み出しとして測定した。腫瘍細胞死滅の具体的な溶解パーセンテージを示す。RiboMab02.1含有マウス血清を段階希釈し(10倍、10個の点;範囲:5.0×10-7~500ng/mL)、共培養物に添加し、続いて(A)PA-1細胞と共に24時間または(B)OV-90細胞と共に48時間インキュベートした。各線は、個々のドナーのPBMC試料による腫瘍細胞溶解を表す。エラーバーは、平均値(技術的三連)の標準偏差(SD)を示す。 CDLN=クローディン;EC50=最大半量有効濃度、PBMC=末梢血単核細胞。 RiboMab02.1は用量依存性および標的依存性T細胞増殖を誘導する 3人の健常ドナー由来のCFSE標識ヒトPBMCを、12ウェル培養プレートフォーマットで、CLDN6陽性PA-1およびOV-90標的細胞、またはCLDN6陰性であるが対照TAA陽性NUGC-4ならびに標的陰性MDA-MB-231対照細胞と共培養した。10:1のエフェクタ対標的細胞比を適用した。さらに、標的細胞を含まない(-)PBMCを別途に含めた。100および1ng/mLのRiboMab02.1(5つのカラムの各ブロックの1番目および2番目のカラム)または対照RiboMab(5つのカラムの各ブロックの3番目および4番目のカラム)含有HEK-293T-17上清を、示されているように共培養物に添加した。OKT3抗体(抗ヒトCD3;黒色の棒)は、標的非依存性CD3駆動T細胞増殖の陽性対照として機能した。72時間のインキュベーション後、増殖中のT細胞のパーセンテージをフローサイトメトリによって分析した。エラーバーは、3人全てのドナーの平均値の標準偏差(SD)を示す。 CFSE=カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル;PBMC=末梢血単核細胞;w/o=含まない。 RiboMab02.1は、高濃度で低い標的非依存性効果で、用量依存的なT細胞活性化を媒介する 3人の健常ドナー由来のヒトPBMC(エフェクタ細胞)を、CLDN6陽性PA-1細胞(標的細胞)の存在下および非存在下で、10:1のエフェクタ対標的細胞比で培養した。RiboMab02.1含有マウス血清を、アッセイに使用する前に段階希釈した(10倍、10個の点;範囲:4.0×10-6~4,000ng/mL)。48時間の共インキュベーションの後、T細胞のフローサイトメトリ分析のために、細胞を抗CD5、抗CD69および抗CD25抗体で染色した。Luc_RNA-LNP処置マウス由来の模擬血清とインキュベートした試料に対して正規化した総T細胞活性化をここに示す。活性化T細胞のパーセンテージを、各個々のドナー(左)および3人全てのドナーについて平均(右)として示す。塗りつぶされた記号は標的細胞を含む値を表し、黒色の白抜き記号は標的細胞を含まない値を表す。エラーバーは、平均(技術的三連[ドナーごと、左のパネル]または生物学的反復[ドナー全体、右のパネル])の標準偏差(SD)を示す。 EC50=最大半量有効濃度;w/o=含まない。 (図6)BNT142処置は、腫瘍へのT細胞再指向によってPBMCヒト化NSGマウスにおける進行した異種移植腫瘍を排除する OV-90細胞の進行したSC腫瘍異種移植片(処置開始時の平均腫瘍体積=100mm)を担持するNSGマウスに、エフェクタ細胞としてヒトPBMCをIP注射によって移植した。腫瘍体積をデジタルキャリパーで1週間に2回測定した。マウスを、0.1もしくは1μgのBNT142、または標的と無関係なRiboMabトリボディをコードする1μgのRNA-LNP(標的特異性についての陰性対照)、1μgのLuc_RNA-LNP、100μgの組換え精製CD3x(CLDN6)トリボディ参照タンパク質またはビヒクル対照としてのDPBS(生理食塩水)の5回のIVボーラス注射で週に1回処置した。 (図6A)処置スケジュール。 指定された時点での個々のマウスの腫瘍体積。 試験開始時にそれぞれ13~14匹のマウスを含み、最後のデータ点で最低5匹のマウスを含む群当たりの腫瘍体積中央値の概要。垂直な点線は、試験/対照項目のIV投与の時点を表す。全ての群からの4匹のマウス(0.1μgのBNT142群からは5匹のマウス)を38日目に安楽死させて、エクスビボアッセイのための試料を得た。 抗ヒトCD3抗体を使用する免疫組織化学(IHC)染色によって決定された異種移植組織1mm当たりのCD3陽性細胞の数。3回目の処置の72時間後(38日目)に腫瘍異種移植片を解剖した。水平な線は平均値を表す(n=4~5)。 抗ヒトCLDN6抗体を使用したIHC染色によって決定された、それぞれの試験群および対照群からのマウスの腫瘍異種移植片におけるCLDN6陽性細胞のパーセンテージ。腫瘍異種移植片を、試験の経過にわたって異なる時点で解剖した。水平な線は平均値を表す(n=8~10)。 3回目の処置の72時間後(38日目)に安楽死させたBNT142処置マウスおよび対照マウス由来のOV-90腫瘍異種移植片におけるヒトCD3(上のパネル)およびCLDN6(下のパネル)染色の代表的なIHC写真。赤褐色染色(白黒図では暗色)は陽性IHCシグナルを示し、青紫色領域は陽性染色がないことを示す(陰性IHCシグナル)。スケールバーの長さはパネルに示す通りである(BNT142および参照タンパク質群:1,000μm;陰性対照/Luc_RNA-LNPおよび生理食塩水群:2,000μm)。 CD=分化のクラスタ;CLDN=クローディン;ctrl=対照;IP=腹腔内;IV=静脈内;LNP=脂質ナノ粒子;Luc=ルシフェラーゼをコードする;neg=陰性;NSG=NOD.Cg-Prkdscid IL2rgtm1Wjl/SzJ;PBMC=末梢血単核細胞;RNA=リボ核酸;SC=皮下。 RiboMab02.1は、用量依存的かつ標的依存的にヒトサイトカインを誘導する 特注したマルチプレックスELISAキットを用いて、異なる濃度のRiboMab02.1によって駆動されるヒトサイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-6、IL-2、IL-10およびIL-1β)産生を決定するために、T細胞活性化アッセイ(上記の図5を参照)からの細胞培養上清を使用した。各ドナーのサイトカイン濃度値(技術的三連の平均)を示す。塗りつぶされた記号は標的細胞を含む値を表し、白抜きの記号は標的細胞を含まない値を表す。 IFN=インターフェロン;IL=インターロイキン;TNF=腫瘍壊死因子;w/o=含まない。 BNT142処置は、PBMCヒト化NSGマウスにおいてヒトサイトカイン放出を誘導しない 皮下異種移植腫瘍を担持するNSG/PBMCマウス(上記の図6を参照)由来の血清を、0.1もしくは1μgのBNT142、標的特異性について対照するための標的と無関係なRiboMabトリボディをコードする1μgのRNA-LNP(陰性対照)、1μgのLuc_RNA-LNP対照または100μgのCD3x(CLDN6)トリボディ参照タンパク質を用いた3回目の注射の6時間後および72時間後にさらに評価した。1μgのBNT142を投与したさらなる非腫瘍担持(腫瘍なし)群を含めた。(A)6時間目(n=8)および72時間目(n=4)の時点でマルチプレックスELISAによって決定されたマウス血清中のヒトサイトカイン(IFN-γ、IL-6、IL-2、IL-10、TNF-αおよびIL-1β)の濃度。データを、それぞれの時点の生理食塩水投与動物に対して正規化した。水平な線は中央値を示す。対応のない試料および対応のある試料を、それぞれマン・ホイットニーU検定またはウィルコクソンの符号順位検定を用いて比較した。(B)コードされた治療用抗体RiboMab02.1の血清濃度。水平な線は平均値を示す。 ***、p=0.0002;ctrl=対照;h=時間;IFN=インターフェロン;IL=インターロイキン;LNP=脂質ナノ粒子;Luc=ルシフェラーゼをコードする;neg.=陰性;ns=有意ではない;RNA=リボ核酸;TNF=腫瘍壊死因子;w/o=なし。 インビボでのLNP製剤化mRNAの肝臓標的化 Balb/cJRjマウスに、LNP製剤化ホタルルシフェラーゼmRNAの単回IV注射を行った。投与の6、24、48、72および144時間後に生物発光を観測した。(A)投与の6時間後に撮影した画像を、(左)伏臥位の個々のマウスについて(n=5)ならびに(右)動物No.1および2の単一器官について示す。(B)ルシフェラーゼシグナル(光子/秒)の定量化を全ての分析時点について示す(n=5または3、平均)。 IV=静脈内;LN=リンパ節;LNP=脂質ナノ粒子。 BNT142によってコードされたRiboMab02.1はインビボで効率的に発現される 雌Balb/cJRjマウス(n=3)に、マウス当たり30μgのBNT142のIVボーラス注射を行った。血清を投与の2時間後および6時間後に採取した。(A)ELISAによる血清中のRiboMab02.1濃度の定量化。水平な線は平均値を表す。(B)緩衝液またはスパイクインBalb/cJRj血清中のRiboMab02.1含有血清および参照タンパク質(モノマー、HMW)のウェスタンブロット分析を非還元条件下で分析した。合計で、血清タンパク質精製工程後にレーン当たり60ngのタンパク質を負荷した。未処置マウス由来の血清を対照として使用した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ヒトIgG Fd抗体を使用してウェスタンブロットを行った。 Ab=抗体;ctrl=対照;Fd=検出可能な断片;HMW=高分子量;HPI=注射後の時間;ID=識別番号;IgG=免疫グロブリンガンマ;kDa=キロダルトン;MW=分子量。 マウスへの反復BNT142投与による持続可能なRiboMab02.1曝露および用量依存性抗薬物抗体応答 雌Balb/cJRjマウス(n=4)に、対照として10もしくは30μgのBNT142または30μgのLuc_RNA-LNPを週に1回、水平な点線によって示されている時点での合計5回投与のためにIV注射した。ベースライン(0時間目)、各BNT142または生理食塩水の投与の6時間後(6、174、342、510および678時間目)ならびに24時間前(144、312、480および648時間目)に、それぞれマウスから血液を採取した。最初のBNT142/生理食塩水投与の816時間後に最終採血を行った。血清RiboMab02.1濃度をELISAによって決定した。エラーバーは、平均値の標準偏差(SD)を示す。 LNP=脂質ナノ粒子;Luc=ルシフェラーゼ;RNA=リボ核酸。 BNT142のIV注射後のカニクイザルにおけるRiboMab02.1曝露 BNT142投与コホートおよび生理食塩水対照群はそれぞれ3匹のカニクイザルを含み、それらから血液を採取して、ELISAによってRiboMab02.1濃度を評価するための血清を調製した。エラーバーは、平均値(技術的三連)の標準偏差(SD)を示す。 RiboMab02.1は高度にモノマー性であり、マウスにおいて代替リード構造候補物RiboMab_712/711 C53Wよりも低いADA応答を誘導する 雌Balb/cJRjに、RiboMab02.1またはRiboMab_712/711またはルシフェラーゼ(対照)をコードする30μgのRNA-LNPをIV注射した。(A)注射の6時間後に血清をサンプリングした。50ngの精製タンパク質参照(モノマーおよびHMW参照)をマウス血清にスパイクした。未処置(モック)、ルシフェラーゼRNA注射(対照)またはRiboMab RNA注射マウスの5μL血清およびスパイクした参照をMelon G精製に供し、非還元条件下で、4~15%Criterionゲル上で分離した。HRP結合ヤギ抗ヒトIgG Fd抗体を用いてウェスタンブロット分析を行った。1群当たり1匹の代表的なマウスの試料を示す。(B)ADA分析のために、示されている時点で血清をサンプリングした。血清試料を、サンドイッチELISAアッセイによって抗RiboMab ADA含有量について分析した。ADA応答(黒色の線)を、経時的にRiboMabタンパク質濃度(灰色の点線)に対してプロットしている。RiboMab_712/711 C53W変異体(上)およびRiboMab02.1(下)を示す。エラーバーは、平均値の標準偏差を示す(n=4)。 Ab=抗体;ADA=抗薬物抗体;C53S/W=抗CLDN6 VL部分の53位でのシステインからセリン/トリプトファンへの置換;Fd=フラグメントディフィカルト;HMW=高分子量;IgG=免疫グロブリンG;kDa=キロダルトン;MW=分子量;RU=相対単位。 RiboMab02.1をコードする原薬中間体のHC:LC重量比は、RiboMab02.1の発現効率およびモノマー含有量に影響を及ぼす HEK-293T-17細胞に、それぞれRiboMab02.1重鎖(HC)および軽鎖(LC)をコードする2つのRiboMab02.1コード原薬中間体(RNA)の示されている重量(w/w)比でエレクトロポレーションした。細胞培養上清(SN)をトランスフェクションの48時間後に回収した。(A)非還元条件下でのRiboMab02.1含有SNおよび参照タンパク質(モノマー、HMW)のウェスタンブロット分析。トランスフェクトされていない細胞からのSNを陰性対照(模擬SN)として使用した。ウェスタンブロットを、検出のためにHRP結合ヤギ抗ヒトカッパ軽鎖(1:500)抗体およびIgG Fd(1:2,000)抗体の組合せを使用して行った。(B)2つの独立した実験からの技術的二連のSN試料中の平均RiboMab02.1濃度をELISAによって分析した。エラーバーは、平均値の標準偏差(SD)を示す。 Ab=抗体;Fd=検出可能な断片;HC=重鎖コードRNA;HMW=高分子量;IgG=免疫グロブリンガンマ;kDa=キロダルトン;MW=分子量;LC=軽鎖コードRNA;LMW=低分子量;RNA=リボ核酸;SN=上清。
配列の説明
以下の表は、本明細書で参照される特定の配列のリストを提供する。
Figure 2024525795000001
Figure 2024525795000002
Figure 2024525795000003
Figure 2024525795000004
Figure 2024525795000005
Figure 2024525795000006
Figure 2024525795000007
Figure 2024525795000008
本開示を以下で詳細に説明するが、この開示は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
好ましくは、本明細書で使用される用語は、“A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)”,H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように定義される。
本開示の実施は、特に指示されない限り、当分野の文献(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989を参照)で説明されている化学、生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。
以下において、本開示の要素を説明する。これらの要素を特定の実施形態と共に列挙するが、それらは、さらなる実施形態を創出するために任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に説明される例および実施形態は、本開示を明示的に記載される実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明示的に記載される実施形態を任意の数の開示される要素と組み合わせた実施形態を開示し、包含すると理解されるべきである。さらに、記述される全ての要素の任意の並び替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、この説明によって開示されていると見なされるべきである。
本明細書で使用される場合、関心対象の1つ以上の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、記載された基準値と類似の値を指す。一般に、文脈内で精通する当業者は、その文脈において「約」または「およそ」によって包含される関連する分散度を理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、言及された値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満内の値の範囲を包含し得る。
本開示を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される「1つの」および「その」という用語ならびに同様の言及は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に入る各々別個の値を個別に言及することの簡略方法として機能することが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個々の値は、本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本開示をよりよく説明することを意図しており、特許請求の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本開示の実施に不可欠な特許請求されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
特に明記されない限り、「含む」という用語は、本明細書の文脈において、「含む」によって導入されたリストのメンバーに加えて、さらなるメンバーが任意に存在し得ることを示すために使用される。しかしながら、「含む」という用語は、さらなるメンバーが存在しない可能性を包含することが本開示の特定の実施形態として企図され、すなわち、この実施形態の目的のためには、「含む」は、「からなる」または「から本質的になる」の意味を有すると理解されるべきである。
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される各資料(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、説明書などを含む)は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本開示がそのような開示に先行する権利を有しなかったことの承認と解釈されるべきではない。
定義
以下において、本開示の全ての態様に適用される定義を提供する。以下の用語は、特に指示されない限り、以下の意味を有する。定義されていない用語は、それらの技術分野で広く認められている意味を有する。
本明細書で使用される「低減する」、「減少させる」、「阻害する」または「損なう」などの用語は、好ましくは少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%またはさらにそれ以上のレベルの全体的な低下または全体的な低下を生じさせる能力に関する。これらの用語には、完全なまたは本質的に完全な阻害、すなわちゼロまたは本質的にゼロへの低減が含まれる。
「増加させる」、「増強する」または「超える」などの用語は、好ましくは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、またはさらにそれ以上の増加または増強に関する。
本開示によれば、「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合によって互いに連結された約2個以上、約3個以上、約4個以上、約6個以上、約8個以上、約10個以上、約13個以上、約16個以上、約20個以上、および最大約50個、約100個または約150個までの連続するアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」または「ポリペプチド」という用語は、大きなペプチド、特に少なくとも約150個のアミノ酸を有するペプチドを指すが、「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書では通常同義語として使用される。
アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)に関して、「断片」は、アミノ酸配列の一部、すなわちN末端および/またはC末端で短縮されたアミノ酸配列である配列に関する。C末端で短縮された断片(N末端断片)は、例えば、オープンリーディングフレームの3’末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。N末端で短縮された断片(C末端断片)は、例えば、トランケートされたオープンリーディングフレームが翻訳を開始するように働く開始コドンを含む限り、オープンリーディングフレームの5’末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。アミノ酸配列の断片は、例えば、アミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。アミノ酸配列の断片は、好ましくは、アミノ酸配列からの少なくとも6個、特に少なくとも8個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含む。
本明細書における「変異体」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。親アミノ酸配列は、天然もしくは野生型(WT)アミノ酸配列であり得るか、または野生型アミノ酸配列の改変形態であり得る。好ましくは、変異体アミノ酸配列は、親アミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾、例えば、親と比較して1~約20個のアミノ酸修飾、好ましくは1~約10個または1~約5個のアミノ酸修飾を有する。
本明細書における「野生型」または「WT」または「天然」とは、対立遺伝子変異を含む、自然界で見出されるアミノ酸配列を意味する。野生型アミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質は、意図的に改変されていないアミノ酸配列を有する。
本開示の目的のために、アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。「変異体」という用語は、全ての突然変異体、スプライス変異体、翻訳後修飾変異体、立体配座変異体、アイソフォーム変異体、対立遺伝子変異体、種変異体、および種ホモログ、特に天然に存在するものを含む。「変異体」という用語は、特にアミノ酸配列の断片を含む。
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列中に単一または2つ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1個以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、得られた産物の適切なスクリーニングを伴うランダムな挿入も可能である。アミノ酸付加変異体は、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合物を含む。アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失は、タンパク質の任意の位置にあってよい。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。アミノ酸置換変異体は、配列中の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なタンパク質もしくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列内の位置にある修飾、および/またはアミノ酸を類似の特性を有する他のアミノ酸で置き換えることが好ましい。いくつかの実施形態では、ペプチドおよびタンパク質変異体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、その側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換を含む。天然に存在するアミノ酸は、一般に4つのファミリー:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸に分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。いくつかの実施形態では、保存的アミノ酸置換は、以下の群内の置換を含む:
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、トレオニン;
リジン、アルギニン;および
フェニルアラニン、チロシン。
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体(例えば、機能的変異体)であるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%であるアミノ酸領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20個、少なくとも約40個、少なくとも約60個、少なくとも約80個、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のアミノ酸、いくつかの実施形態では連続するアミノ酸について与えられる。いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最良の配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を使用して行うことができる。
「配列類似性」は、同一であるか、または保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸のパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。
「%同一」、「同一性%」という用語または同様の用語は、特に、比較される配列間の最適なアラインメントにおいて同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージを指すことが意図されている。前記パーセンテージは純粋に統計的であり、2つの配列間の差は、比較される配列の全長にわたってランダムに分布していてもよいが、必ずしもそうではない。2つの配列の比較は、通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアラインメント後に、セグメントまたは「比較ウィンドウ」に関して配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアラインメントは、手動で、またはSmith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所相同性アルゴリズムを用いて、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444の類似性検索アルゴリズムを用いて、もしくは前記アルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)を援用して実施し得る。いくつかの実施形態では、2つの配列の同一性パーセントは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(United States National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のウェブサイト(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch&BLAST_SPEC=blast2seq&LINK_LOC=align2seq)で入手可能なBLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを使用して決定される。いくつかの実施形態では、NCBIウェブサイトのBLASTNアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメータは、以下を含む:(i)10に設定された期待閾値;(ii)28に設定されたワードサイズ;(iii)0に設定されたクエリ範囲内の最大一致;(iv)1、-2に設定された一致/不一致スコア;(v)線形に設定されたギャップコスト;および(vi)使用されている低複雑度領域のフィルタ。いくつかの実施形態では、NCBIウェブサイトのBLASTPアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメータは、以下を含む:(i)10に設定された期待閾値;(ii)3に設定されたワードサイズ;(iii)0に設定されたクエリ範囲内の最大一致;(iv)BLOSUM62に設定されたマトリックス;(v)存在:11、拡張:1に設定されたギャップコスト;および(vi)条件付き組成スコアマトリックス調整。
同一性パーセントは、比較する配列が一致する同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数(例えば、参照配列中の位置の数)で除して、この結果に100を乗じることによって得られる。
いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%である領域について与えられる。例えば、参照核酸配列が200個のヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のヌクレオチド、いくつかの実施形態では連続するヌクレオチドについて与えられる。いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照配列の全長について与えられる。
相同なアミノ酸配列は、本開示によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98または少なくとも99%の同一性を示す。
本明細書に記載のアミノ酸配列変異体は、例えば組換えDNA操作により、当業者によって容易に調製され得る。置換、付加、挿入または欠失を有するペプチドまたはタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al.(1989)に詳細に記載されている。さらに、本明細書に記載のペプチドおよびアミノ酸変異体は、例えば固相合成および類似の方法などによる公知のペプチド合成技術を用いて容易に調製され得る。
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)の断片または変異体は、好ましくは「機能的断片」または「機能的変異体」である。アミノ酸配列の「機能的断片」または「機能的変異体」という用語は、それが由来するアミノ酸配列のものと同一または類似の1つ以上の機能特性を示す、すなわち機能的に等価である任意の断片または変異体に関する。結合剤の配列に関して、1つの特定の機能は、断片または変異体が由来するアミノ酸配列によって示される1つ以上の結合活性である。本明細書で使用される「機能的断片」または「機能的変異体」という用語は、特に、親分子または配列のアミノ酸配列と比較して1つ以上のアミノ酸によって変化しており、かつ親分子または配列の機能の1つ以上を依然として果たす、例えば標的分子に結合することができるアミノ酸配列を含む変異体分子または配列を指す。いくつかの実施形態では、親分子または配列のアミノ酸配列の改変は、分子または配列の特徴に有意に影響を及ぼさないかまたは変化させない。異なる実施形態では、機能的断片または機能的変異体の機能は、低減され得るが、依然として有意に存在し得、例えば、機能的変異体の結合は、親分子または配列の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%であり得る。しかしながら、他の実施形態では、機能的断片または機能的変異体の結合は、親分子または配列と比較して増強され得る。
指定されたアミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)に「由来する」アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)は、最初のアミノ酸配列の起源を指す。好ましくは、特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列またはその断片と同一、本質的に同一または相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列の変異体またはその断片であり得る。例えば、本明細書での使用に適した配列は、天然配列の望ましい活性を保持しながら、それらが由来する天然に存在する配列または天然配列とは配列が異なるように改変され得ることが当業者に理解されるであろう。
例えば、本発明の結合剤のポリペプチド鎖のVH、VL、CH1およびCLドメインのアミノ酸配列は、免疫グロブリンのVH、VL、CH1およびCLドメインのアミノ酸配列に由来し得るが、それらが由来するドメインと比較して変化していてもよい。例えば、本発明によれば、免疫グロブリンに由来するVHまたはVLは、それが由来するそれぞれのVHもしくはVLのアミノ酸配列と同一であり得るアミノ酸配列を含むか、またはそれぞれの親VHもしくはVLの配列と比較して1つ以上のアミノ酸位置が異なり得る。例えば、本発明の結合剤のVHドメインは、それが由来するVHドメインのアミノ酸配列と比較して、1つ以上のアミノ酸挿入、アミノ酸付加、アミノ酸欠失および/またはアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含み得る。例えば、本発明の結合剤のVLドメインは、それが由来するVLドメインのアミノ酸配列と比較して、1つ以上のアミノ酸挿入、アミノ酸付加、アミノ酸欠失および/またはアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、親VHまたはVLのアミノ酸配列の機能的変異体であるアミノ酸配列を有するVHまたはVLは、例えば結合特異性、結合強度などの点で、親VHまたはVLのアミノ酸配列と同じまたは本質的に同じ機能を提供する。しかしながら、当業者が認識するように、いくつかの実施形態では、親分子のアミノ酸配列と比較して変化した特性を有する、例えばVHまたはVLのアミノ酸配列の機能的変異体を提供することも好ましい場合がある。同じ考慮事項が、例えばCDRのアミノ酸配列、ならびに他のアミノ酸配列、例えばCH1および/またはCLドメインのアミノ酸配列にも適用される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCH1およびCL配列の変異体は、相互作用する能力、例えば互いに結合する能力を有する。
本明細書で使用される場合、「説明資料」または「説明書」は、本発明の組成物および方法の有用性を伝えるために使用することができる刊行物、記録、図、または任意の他の表現媒体を含む。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の組成物を含む容器に貼付されてもよく、または組成物を含む容器と共に出荷されてもよい。あるいは、説明資料と組成物が受領者によって協働して使用されることを意図して、説明資料は容器とは別に出荷されてもよい。
「単離された」は、天然状態から改変されたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。
本発明の文脈における「組換え」という用語は、「遺伝子操作を介して作製された」ことを意味する。好ましくは、本発明の文脈における組換え核酸などの「組換え物」は、天然には存在しない。
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、物体が自然界で見出され得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人によって意図的に改変されていないペプチドまたは核酸は、天然に存在する。
本明細書で使用される「生理学的pH」は、約7.35~約7.45のpHを指し、平均は約7.40である。
「遺伝子改変」または単に「改変」という用語は、核酸による細胞のトランスフェクションを含む。「トランスフェクション」という用語は、細胞への核酸、特にRNAの導入に関する。本発明の目的のために、「トランスフェクション」という用語はまた、細胞への核酸の導入またはそのような細胞による核酸の取り込みを含み、細胞は、対象、例えば患者に存在し得る。したがって、本発明によれば、本明細書に記載の核酸のトランスフェクションのための細胞は、インビトロまたはインビボで存在することができ、例えば、細胞は患者の器官、組織および/または生物の一部を形成することができる。本発明によれば、トランスフェクションは一過性または安定であり得る。トランスフェクションのいくつかの用途では、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性にのみ発現されれば十分である。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。トランスフェクションプロセスで導入された核酸は、通常、核ゲノムに組み込まれないので、外来核酸は有糸分裂によって希釈されるかまたは分解される。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞は、希釈率を大幅に低下させる。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞およびその娘細胞のゲノムに残ることが望ましい場合は、安定なトランスフェクションが起こらなければならない。そのような安定なトランスフェクションは、トランスフェクションのためにウイルスベースのシステムまたはトランスポゾンベースのシステムを使用することによって達成することができる。一般に、抗原をコードする核酸は、細胞に一過性にトランスフェクトされる。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。
クローディン6(CLDN6)
クローディンは、タイトジャンクションの最も重要な成分であるタンパク質のファミリーであり、タイトジャンクションにおいて上皮細胞間の細胞間隙における分子の流れを制御する細胞間隙バリアを確立する。クローディンは、N末端およびC末端の両方が細胞質に位置する、膜を4回横切る膜貫通タンパク質であるEL1またはECL1と呼ばれる第1の細胞外ループは平均53個のアミノ酸からなり、EL2またはECL2と呼ばれる第2の細胞外ループは約24個のアミノ酸からなる。
「クローディン6」または「CLDN6」という用語は、好ましくはヒトCLDN6、特に、配列表の配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列または前記アミノ酸配列の変異体を含む、好ましくはそれからなるタンパク質に関する。CLDN6の第1の細胞外ループは、好ましくは配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸28~80または29~81、より好ましくはアミノ酸28~76を含む。CLDN6の第2の細胞外ループは、好ましくは配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸138~160、好ましくはアミノ酸141~159、より好ましくはアミノ酸145~157を含む。前記第1および第2の細胞外ループは、好ましくはCLDN6の細胞外部分を形成する。
CLDN6は様々な起源の腫瘍で発現され、CLDN6を発現する唯一の成体正常組織は胎盤である。
CLDN6は、例えば、卵巣癌、肺癌、精巣癌、子宮内膜癌、胃癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、黒色腫、頭頸部癌、肉腫、胆管癌、腎細胞癌、および膀胱癌において発現することが見出されている。CLDN6は、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌腫、ファロピウス管癌腹膜癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌または非扁平上皮型の非小細胞肺癌(NSCLC)、胃癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形性腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱の癌、特に移行上皮癌および乳頭状癌、腎臓癌、特に淡明細胞型腎細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎児性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および精巣胎児性癌、子宮癌、奇形癌または胎児性癌など胚細胞腫瘍、特に精巣の胚細胞腫瘍、ならびにそれらの転移形態の予防および/または治療のための特に好ましい標的である。いくつかの実施形態では、CLDN6発現に関連する癌疾患は、卵巣癌、肺癌、転移性卵巣癌および転移性肺癌からなる群より選択される。好ましくは、卵巣癌は癌腫または腺癌である。好ましくは、肺癌は癌腫または腺癌であり、好ましくは細気管支癌腫または細気管支腺癌などの細気管支癌である。
本明細書で使用される場合、「CLDN6陽性癌」という用語は、好ましくは前記癌細胞の表面にCLDN6を発現する癌細胞が関与する癌に関する。
本発明によれば、CLDN6は、発現レベルが胎盤細胞または胎盤組織における発現と比較して低い場合、細胞において実質的に発現されない。好ましくは、発現レベルは、胎盤細胞または胎盤組織における発現の10%未満、好ましくは5%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%または0.05%未満であるかまたはさらに低い。好ましくは、CLDN6は、発現レベルが胎盤以外の非癌性組織における発現レベルを2倍以下、好ましくは1.5倍以下だけ上回り、好ましくは前記非癌性組織における発現レベルを超えない場合、細胞において実質的に発現されない。好ましくは、CLDN6は、発現レベルが検出限界未満である場合、および/または発現レベルが細胞に添加されたCLDN6特異的抗体による結合を可能にするには低すぎる場合、細胞において実質的に発現されない。
本発明によれば、CLDN6は、発現レベルが胎盤以外の非癌性組織における発現レベルを、好ましくは2倍超、好ましくは10倍超、100倍超、1,000倍超、または10,000倍超上回る場合、細胞において発現される。好ましくは、CLDN6は、発現レベルが検出限界を超える場合、および/または発現レベルが細胞に添加されたCLDN6特異的抗体による結合を可能にするのに十分高い場合、細胞において発現される。好ましくは、細胞において発現されるCLDN6は、前記細胞の表面上で発現または露出される。
分化クラスタ3(CD3)
本明細書に記載の結合剤の第2の標的分子はCD3(分化クラスタ3)である。
CD3複合体は、T細胞特異的抗原である。T細胞特異的抗原は、T細胞の表面上の抗原である。
CD3複合体は、多分子T細胞受容体(TCR)複合体の一部として成熟ヒトT細胞、胸腺細胞およびナチュラルキラー細胞のサブセット上に発現される抗原を表す。T細胞共受容体はタンパク質複合体であり、4つの異なる鎖から構成される。哺乳動物では、複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、および2つのCD3ε鎖を含む。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として公知の分子およびζ鎖と会合して、Tリンパ球において活性化シグナルを生成する。TCR、ζ鎖、およびCD3分子は、一緒にTCR複合体を構成する。
ヒトCD3イプシロンは、GenBankアクセッション番号NM_000733に示されており、配列番号3を含む。ヒトCD3ガンマは、GenBankアクセッション番号NM_000073に示されている。ヒトCD3デルタは、GenBankアクセッション番号NM_000732に示されている。CD3は、TCRのシグナル伝達を担う。Lin and Weiss,Journal of Cell Science 114,243-244(2001)に記載されているように、MHC提示特異的抗原エピトープの結合によるTCR複合体の活性化は、Srcファミリーキナーゼによる免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化をもたらし、Ca2+放出を含むT細胞活性化をもたらすさらなるキナーゼの動員を誘発する。例えば、固定化抗CD3抗体によるT細胞上のCD3のクラスタリングは、T細胞受容体の係合と同様のT細胞活性化をもたらすが、そのクローンの典型的な特異性とは無関係である
本明細書で使用される場合、「CD3」は、ヒトCD3を含み、多分子T細胞受容体複合体の一部としてヒトT細胞上に発現される抗原を表す。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤は、CD3のイプシロン鎖を認識し、特に、CD3イプシロンの最初の27個のN末端アミノ酸またはこの27個のアミノ酸のストレッチの機能的断片に対応するエピトープを認識する。
結合剤
本開示は、少なくともCD3のエピトープおよびCLDN6のエピトープに結合することができる二重特異性三価結合剤などの結合剤を記載する。結合剤は、少なくとも3つの結合ドメインを含み、第1の結合ドメインはCD3に結合することができ、第2および第3の結合ドメインはCLDN6に結合することができ、第2および第3の結合ドメインはCLDN6の同じまたは異なるエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤の第2および第3の結合ドメインは、CLDN6の同じエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、第2および第3の結合ドメインの配列は、同一または本質的に同一である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤は組換え分子である。
「エピトープ」という用語は、結合剤によって認識されるCD3および/またはCLDN6などの分子または抗原の一部または断片を指す。例えば、エピトープは、抗体または任意の他の結合タンパク質によって認識され得る。エピトープは、抗原の連続部分または不連続部分を含み得、約5~約100、例えば約5~約50、より好ましくは約8~約30、最も好ましくは約8~約25アミノ酸長であり得、例えば、エピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、約10~約25アミノ酸の長さである。「エピトープ」という用語は、構造エピトープを含む。
「免疫グロブリン」という用語は、2対のポリペプチド鎖、1対の軽(L)低分子量鎖および1対の重(H)鎖からなり、4つ全てがジスルフィド結合によって相互接続されている、構造的に関連する糖タンパク質のクラスを指す。免疫グロブリンの構造は十分に特徴付けられている。例えば、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照。簡潔には、各重鎖は、典型的には重鎖可変領域(本明細書ではVまたはVHと略す)および重鎖定常領域(本明細書ではCまたはCHと略す)から構成される。重鎖定常領域は、典型的にはCH1、CH2、およびCH3の3つのドメインから構成される。ヒンジ領域は、重鎖のCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域であり、非常に柔軟である。ヒンジ領域内のジスルフィド結合は、IgG分子内の2つの重鎖間の相互作用の一部である。各軽鎖は、典型的には軽鎖可変領域(本明細書ではVまたはVLと略す)および軽鎖定常領域(本明細書ではCまたはCLと略す)から構成される。軽鎖定常領域は、典型的には1つのドメイン、CLで構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性の領域(または配列および/もしくは構造的に定義されたループの形態が超可変であり得る超可変領域)にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、典型的には、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRおよび4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196,901-917(1987)も参照のこと)。特に明記されない限り、または文脈と矛盾しない限り、本発明における定常領域のアミノ酸位置への言及は、EUナンバリングに従う(Edelman et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.1969 May;63(1):78-85;Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition.1991 NIH Publication No.91-3242)。一般に、本明細書に記載のCDRはKabatによって定義される。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンは抗体である。
本明細書全体を通して、重鎖(HC)または軽鎖(LC)への言及は、必ずしも重鎖全体(HC)または軽鎖(LC)の存在を意味するのではなく、少なくとも重鎖(HC)または軽鎖(LC)の関連するまたは特徴的な部分の存在を示すための省略表現として使用される。例えば、(Fab)-(scFv)2ベースの二重特異性抗体が2本の鎖を有し、一方が親免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)およびscFvを含み、他方の鎖が親免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)およびscFvを含む場合、2本の鎖はそれぞれ重鎖(HC)および軽鎖(LC)と呼ばれ得る。これは、実際にはどちらの鎖も重鎖または軽鎖を含まず、両方の鎖がscFvを含む場合でも当てはまり得、両方が親重鎖および親軽鎖に由来する要素を含むことを意味する。
本発明の文脈における「抗体」(Ab)という用語は、抗原に結合する、好ましくは特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそれらのいずれかの誘導体を指す。いくつかの実施形態では、結合は、少なくとも約30分間、少なくとも約45分間、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日間以上など、または任意の他の関連する機能的に定義された期間(例えば抗原への抗体結合に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強および/もしくは調節するのに十分な時間)などの、有意な期間の半減期を有する典型的な生理学的条件下で起こる。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。本明細書で使用される「抗原結合領域」、「結合領域」または「結合ドメイン」という用語は、抗原と相互作用し、典型的にはVH領域とVL領域の両方を含む領域またはドメインを指す。本明細書で使用される場合の抗体という用語は、単一特異性抗体だけでなく、複数、例えば2つ以上、例えば3つ以上の異なる抗原結合領域を含む多重特異性抗体も含む。抗体(Ab)の定常領域は、免疫系の様々な細胞(エフェクタ細胞など)および補体活性化の古典的経路における第1成分であるC1qなどの補体系の成分を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。上記のように、本明細書で使用される抗体という用語は、特に明記されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、抗原結合断片である、すなわち抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片、および抗体誘導体、すなわち抗体に由来する構築物を含む。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実施され得ることが示されている。「抗体」という用語に包含される抗原結合断片の例としては、(i)Fab’もしくはFab断片、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片、または国際公開第2007059782号(Genmab)に記載されている一価抗体;(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインから本質的になるFv断片、(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体とも呼ばれる(Holt et al;Trends Biotechnol.2003 Nov;21(11):484-90)dAb断片(Ward et al.,Nature 341,544-546(1989));(vi)ラクダ科動物またはナノボディ分子(Revets et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan;(1):111-24)ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を用いて、VL領域とVH領域とが対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖抗体または一本鎖Fv(scFv)として公知であり、例えば、Bird et al.,Science 242,423-426(1988)およびHuston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)を参照)としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーによって連結され得る。そのような一本鎖抗体は、特に明記されない限り、または文脈によって明確に指示されない限り、抗体という用語に包含される。そのような断片は一般に抗体の意味の範囲内に含まれるが、それらは、集合的におよびそれぞれ独立して本発明の固有の特徴であり、異なる生物学的特性および有用性を示す。本発明の文脈におけるこれらおよび他の有用な抗体断片、ならびにそのような断片の二重特異性フォーマットを本明細書でさらに論じる。抗体という用語は、特に明記されない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体およびヒト化抗体などの抗体様ポリペプチド、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組換え技術などの任意の公知の技術によって提供される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体断片(抗原結合断片)も含むことも理解されるべきである。
「一本鎖Fv」または「scFv」という語句は、従来の二本鎖抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(VHおよびVL)が結合して一本鎖を形成している抗体を指す。任意で、適切な折り畳みおよび活性結合部位の創出を可能にするために、リンカー(通常はペプチド)が2本の鎖の間に挿入される。
抗体は、任意のアイソタイプを有することができる。本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)を指す。特定のアイソタイプ、例えばIgG1が本明細書で言及される場合、この用語は、特定のアイソタイプ配列、例えば特定のIgG1配列に限定されないが、抗体が他のアイソタイプよりもそのアイソタイプ、例えばIgG1に配列が近いことを示すために使用される。したがって、例えば本発明のIgG1抗体は、定常領域の変異を含む、天然に存在するIgG1抗体の配列変異体であり得る。
様々な実施形態では、抗体は、IgG1抗体、より具体的にはIgG1カッパもしくはIgG1ラムダアイソタイプ(すなわちIgG1κ、IgG1λ)、IgG2a抗体(例えばIgG2aκ、IgG2aλ)、IgG2b抗体(例えばIgG2bκ、IgG2bλ)、IgG3抗体(例えばIgG3κ、IgG3λ)またはIgG4抗体(例えばIgG4κ、IgG4λ)である。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を指す。ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合されたヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニックマウスなどのトランスジェニックまたはトランスクロモソーマル非ヒト動物から得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生され得る。
本明細書で使用される「キメラ抗体」という用語は、可変領域が非ヒト種に由来し(例えばげっ歯動物に由来)、定常領域がヒトなどの異なる種に由来する抗体を指す。治療用途のためのキメラモノクローナル抗体は、抗体免疫原性を低下させるために開発されている。キメラ抗体の文脈で使用される「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の両方のCDRおよびフレームワーク領域を含む領域を指す。キメラ抗体は、Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning:A laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,Ch.15に記載されているような標準的なDNA技術を使用することによって作製され得る。キメラ抗体は、遺伝子操作された、または酵素的に操作された組換え抗体であり得る。キメラ抗体を作製することは当業者の知識の範囲内であり、したがって、本発明によるキメラ抗体の作製は、本明細書に記載される以外の方法によって行われ得る。
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含むように改変された非ヒト可変ドメインとを含む、遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を相同なヒトアクセプタフレームワーク領域(FR)に移植することによって達成され得る(国際公開第92/22653号および欧州特許第0629240号を参照)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に再構成するために、親抗体(すなわち非ヒト抗体)からのフレームワーク残基のヒトフレームワーク領域への置換(復帰突然変異)が必要とされ得る。構造相同性モデリングは、抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域内のアミノ酸残基を同定するのに役立ち得る。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に、任意で非ヒトアミノ酸配列への1つ以上のアミノ酸復帰突然変異を含むヒトフレームワーク領域と、完全ヒト定常領域とを含み得る。任意で、必ずしも復帰突然変異ではないさらなるアミノ酸修飾を適用して、親和性および生化学的特性などの好ましい特徴を有するヒト化抗体が得られ得る。
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を指す。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。しかしながら、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウスまたはラットなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。ヒトモノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体法、例えばKohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む、様々な技術によって作製することができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順が原則として好ましいが、モノクローナル抗体を作製するための他の技術、例えば、Bリンパ球のウイルスもしくは発癌性形質転換、またはヒト抗体遺伝子のライブラリを用いるファージディスプレイ技術を使用することができる。ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための適切な動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は非常によく確立された手順である。免疫化プロトコルおよび融合のために免疫化された脾細胞を単離するための技術は、当技術分野で公知である。融合パートナー(例えばマウス骨髄腫細胞)および融合手順も公知である。したがって、ヒトモノクローナル抗体は、例えば、マウス系またはラット系ではなくヒト免疫系の一部を担持するトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルマウスまたはラットを使用して作製することができる。したがって、いくつかの実施形態では、ヒト抗体は、動物免疫グロブリン配列の代わりにヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を担持する、マウスまたはラットなどのトランスジェニック動物から得られる。そのような実施形態では、抗体は、動物に導入されたヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来するが、最終的な抗体配列は、前記ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列が内因性動物抗体機構による体細胞超変異および親和性成熟によってさらに修飾された結果であり、例えばMendez et al.1997 Nat Genet.15(2):146-56を参照。
抗体に関連して使用される場合の「完全長」という用語は、抗体が断片ではないが、自然界でそのアイソタイプについて通常見出される特定のアイソタイプのドメイン、例えばIgG1抗体のVH、CH1、CH2、CH3、ヒンジ、VLおよびCLドメインの全てを含むことを示す。
本明細書で使用される場合、文脈と矛盾しない限り、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖の2つのFc配列からなる抗体領域を指し、前記Fc配列は、少なくともヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。
本明細書で使用される場合、所定の抗原またはエピトープへの結合剤、例えば抗体の結合に関連して「結合する」または「結合することができる」という用語は、典型的には、例えば、バイオレイヤー干渉法(BLI)を使用して決定した場合、抗原をリガンドとし、結合剤を分析物として使用するBIAcore 3000装置での表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して決定した場合、または標的(CLDN6)発現細胞を「リガンド」として使用する水晶振動子マイクロバランスシステムを使用して決定した場合、約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、または約10-11Mもしくはさらにそれ以下のKに対応する親和性での結合を指す。いくつかの実施形態では、結合剤は、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)への結合に対するその親和性よりも少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性がより低い程度量は結合剤のKに依存するので、結合剤のKが非常に低い(すなわち、結合剤が非常に特異的である)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも低い程度は、少なくとも10,000倍であり得る。
本明細書で使用される「k」(秒-1)という用語は、特定の結合剤-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値は、koff値とも呼ばれる。
本明細書で使用される「K」(M)という用語は、特定の結合剤-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。
本発明はまた、本明細書に記載のVL領域、VH領域、または1つ以上のCDRの機能的変異体を含む結合剤を想定する。結合剤に関連して使用されるVL、VH、またはCDRの機能的変異体は、依然として、結合剤が「参照」または「親」結合剤の親和性および/または特異性/選択性の少なくともかなりの割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%以上)を保持することを可能にし、場合によっては、そのような結合剤は、親結合剤よりも高い親和性、選択性および/または特異性に関連し得る。
そのような機能的変異体は、典型的には、親配列に対する有意な配列同一性を保持する。
例示的な変異体には、主に保存的置換によって親配列のVH領域および/またはVL領域および/またはCDR領域とは異なるものが含まれる;例えば、変異体における置換の最大10個、例えば9、8、7、6、5、4、3、2または1個は保存的アミノ酸残基置換である。
VL領域もしくはVH領域などの本明細書に記載の配列、またはVL領域もしくはVH領域などの本明細書に記載の配列とある程度の相同性もしくは同一性を有する配列の機能的変異体は、好ましくは非CDR配列の改変または変異を含むが、CDR配列は、好ましくは不変のままである。
本明細書に記載の重鎖可変領域配列および/または軽鎖可変領域配列の変異体を含む結合剤、例えば、本明細書に記載のCDRにおける改変および/またはある程度の同一性を含む結合剤は、別の結合剤、例えば、本明細書に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む結合剤と、抗原、例えばCD3および/もしくはCLDN6への結合について競合し得るか、または別の結合剤、例えば、本明細書に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む結合剤の抗原に対する特異性を有し得る。
本明細書で使用される「特異性」という用語は、文脈と矛盾しない限り、以下の意味を有することが意図されている。2つの結合剤は、同じ抗原および同じエピトープに結合する場合、「同じ特異性」を有する。
「競合する」および「競合」という用語は、同じ抗原に対する第1の結合剤と第2の結合剤との間の競合を指し得る。標的抗原への結合についての抗体などの結合剤の競合を試験する方法は、当業者に周知である。そのような方法の一例は、例えばELISAとしてまたはフローサイトメトリによって実施され得る、いわゆる交差競合アッセイである。あるいは、バイオレイヤー干渉法を用いて競合を決定してもよい。
標的抗原への結合について競合する結合剤は、抗原上の異なるエピトープに結合することができ、エピトープは互いに非常に近接しているので、一方のエピトープに結合する第1の結合剤は、他方のエピトープへの第2の結合剤の結合を妨げる。しかしながら、他の状況では、2つの異なる結合剤が抗原上の同じエピトープに結合することができ、競合結合アッセイにおいて結合について競合する。同じエピトープに結合するそのような結合剤は、本明細書では同じ特異性を有すると見なされる。したがって、いくつかの実施形態では、同じエピトープに結合する結合剤は、標的分子上の同じアミノ酸に結合すると見なされる。結合剤が標的抗原上の同じエピトープに結合することは、当業者に公知の標準的なアラニンスキャニング実験または抗体-抗原結晶化実験によって決定され得る。好ましくは、異なるエピトープに結合する結合剤または結合ドメインは、それらのそれぞれのエピトープへの結合について互いに競合していない。
上記のように、様々な形式の抗体が当技術分野で記載されている。本発明の結合剤は、原則として、任意のアイソタイプの抗体の配列を含むことができる。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域カッパまたはラムダのいずれかを使用し得る。いくつかの実施形態では、CH1およびCLなどの本明細書に記載の結合剤の配列は、IgG1アイソタイプの抗体、例えばIgG1,κ抗体に由来する。
好ましくは、抗原結合領域またはドメインの各々は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、前記可変領域は各々、3つのCDR配列、それぞれCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに4つのフレームワーク配列、それぞれFR1、FR2、FR3およびFR4を含む。さらに、好ましくは、本明細書に記載の結合剤は、重鎖定常領域(CH)および軽鎖定常領域(CL)を含む。
本発明の文脈における「結合剤」という用語は、1つ以上の所望の抗原、例えばCD3およびCLDN6に結合することができる任意の薬剤を指す。「結合剤」という用語は、抗体、抗体断片、または任意の他の結合タンパク質、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、結合タンパク質は、FabおよびscFvなどの抗体断片を含む。
天然に存在する抗体は、一般に単一特異性であり、すなわちそれらは単一の抗原に結合する。本発明は、T細胞などの細胞傷害性細胞(CD3受容体に係合することによって)および癌細胞などの標的細胞(CLDN6に係合することによって)に結合する結合剤を提供する。そのような結合剤は、少なくとも二重特異性または多重特異性、例えば三重特異性、四重特異性などである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤は、2つの異なる抗体の断片から構成される人工タンパク質である(2つの異なる抗体の前記断片は3つの結合ドメインを形成する)。
本発明によれば、二重特異性結合剤、特に二重特異性タンパク質は、2つの異なる結合特異性を有し、したがって2つのエピトープに結合し得る分子である。特に、本明細書で使用される「二重特異性結合剤」という用語は、3つの抗原結合部位、すなわち、第1のエピトープに親和性を有する第1の結合部位、ならびに第1のエピトープとは異なる第2のエピトープに結合親和性を有する第2および第3の結合部位を含む抗体由来の分子を含む。
本発明の文脈における「二重特異性」という用語は、異なるエピトープ、特に異なる抗原上の異なるエピトープ、例えばCD3およびCLDN6に結合する2つの異なる抗原結合領域を含む薬剤を指す。
「多重特異性結合剤」は、3つ以上の異なる結合特異性を有する分子である。
いくつかの実施形態では、CD3およびCLDN6に結合する本明細書に記載の結合剤は、少なくとも三価である。本明細書で使用される場合、「原子価の」、「原子価」、「価数」、またはそれらの他の文法的変形は、結合剤中の抗原結合部位または結合ドメインの数を意味する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤は、CD3に対する少なくとも1つの抗原結合部位または結合ドメイン、およびCLDN6に対する少なくとも2つの抗原結合部位または結合ドメインを有する。同じ抗原に結合する抗原結合部位は、同じエピトープまたは異なるエピトープを認識し得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤は、Fab-scFv構築物の形式であり、すなわち、CD3に特異的なFab断片には、Fab断片の定常領域のC末端にCLDN6に特異的な2つのscFv断片が提供される。いくつかの実施形態では、結合剤は、好ましくはジスルフィド架橋によって一緒に結合された2つのポリペプチド鎖で構成される二量体であり、第1のポリペプチドは、CH1ポリペプチド鎖を介してさらなるVHドメインに連結されたscFvを含み、第2のポリペプチドは、CLポリペプチド鎖を介してさらなるVLドメインに連結されたscFvを含む。ジスルフィド架橋は、好ましくは、CH1中のCys残基とCL中のCys残基との間に形成され、その結果、第1のポリペプチドのさらなるVHは、抗原結合配置で第2のポリペプチドのさらなるVLと会合し、その結果、結合剤は全体として3つの抗原結合ドメインを含む。したがって、いくつかの実施形態では、結合剤は、ヘテロ二量体化することができ、そのときにscFv結合ドメインが組み込まれる(好ましくはFd/LのC末端に)Fab断片の重鎖(Fd断片)および軽鎖(L)を含む。いくつかの実施形態では、scFv部分のVHドメインとVLドメインはペプチドリンカーによって接続されており、および/またはFab鎖とscFvはペプチドリンカーによって接続されている。いくつかの実施形態では、scFv部分のVHドメインとVLドメインは、アミノ酸配列(GS)を含むペプチドリンカーによって接続されており、xは2、3、4、5または6である。いくつかの実施形態では、Fab鎖とscFvは、アミノ酸配列SGPGRS(GS)またはDVPGSを含むペプチドリンカーによって接続されている。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列SGPGRS(GS)を含むリンカーは、scFv結合ドメインをFd断片に接続し、アミノ酸配列DVPGSを含むリンカーは、scFv結合ドメインをL断片に接続する。いくつかの実施形態では、scFv部分はCLDN6に結合し、Fab部分はCD3に結合する。
「リンカー」という用語は、2つの異なる機能単位(例えば抗原結合部分)を結合するのに役立つ任意の手段を指す。リンカーの種類には、化学的リンカーおよびポリペプチドリンカーが含まれるが、これらに限定されない。ポリペプチドリンカーの配列は限定されない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドリンカーは、好ましくは非免疫原性で、柔軟であり、例えばセリンおよびグリシン配列を含むものである。特定の構築物に依存して、リンカーは長くても短くてもよい。
いくつかの実施形態では、VH-VLまたはVL-VH scFvドメインを形成するためにVHドメインとVLドメインとを接続するリンカーは、好ましくは、グリシン-セリンペプチドリンカーなどの柔軟なペプチドリンカーを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列(GS)を含み、xは、2、3、4、5または6である。いくつかの実施形態では、VH-VL配向でVHドメインおよびVLドメインを含むscFvドメインの場合、リンカーはアミノ酸配列(GS)を含む。いくつかの実施形態では、VL-VH配向でVHドメインおよびVLドメインを含むscFvドメインの場合、リンカーはアミノ酸配列(GS)を含む。
いくつかの実施形態では、scFvドメインとFdドメインとを接続するリンカーは、好ましくはCH1のC末端に、アミノ酸配列DVPGSまたはSGPGRS(GS)、好ましくはSGPGRS(GS)を含む。いくつかの実施形態では、scFvドメインとLドメインとを接続するリンカーは、好ましくはCLのC末端に、好ましくはアミノ酸配列DVPGSまたはSGPGRS(GS)、好ましくはDVPGSを含む。
結合剤はまた、N末端分泌シグナルなどの分子の分泌を促進するためのアミノ酸配列、および/または分子の結合、精製もしくは検出を容易にする1つ以上のエピトープタグを含み得る。
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の結合剤のポリペプチド鎖の各々は、シグナルペプチドを含む。
そのようなシグナルペプチドは、典型的には約15~30アミノ酸の長さを示し、好ましくはポリペプチド鎖のN末端に位置する配列であるが、これに限定されない。本明細書で定義されるシグナルペプチドは、好ましくは、例えばRNAによってコードされる1つ以上のポリペプチド鎖を、定義された細胞区画、好ましくは細胞表面、小胞体(ER)またはエンドソーム-リソソーム区画に輸送することを可能にする。
本明細書で定義されるシグナルペプチド配列には、免疫グロブリンのシグナルペプチド配列、例えば免疫グロブリン重鎖可変領域のシグナルペプチド配列または免疫グロブリン軽鎖可変領域のシグナルペプチド配列が含まれるが、これらに限定されず、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンであり得る。いくつかの実施形態では、シグナルペプチド配列は、MHC分子、例えばMHCクラスI分子のシグナルペプチド配列であり、MHC分子はヒトMHC分子(HLA分子)であり得る。
いくつかの実施形態では、分泌シグナルは、分泌経路の十分な通過および/または結合剤もしくはそのポリペプチド鎖の細胞外環境への分泌を可能にするシグナル配列(例えば、配列番号4のアミノ酸1~26を含むアミノ酸配列)である。いくつかの実施形態では、分泌シグナル配列は切断可能であり、成熟結合剤から除去される。いくつかの実施形態では、分泌シグナル配列は、結合剤が産生される細胞または生物に関して選択される。
さらなる実施形態では、本明細書に記載の結合剤は、サイトカイン、免疫抑制剤、および/または免疫刺激分子などの1つ以上の治療部分に連結またはコンジュゲートされる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤は、第1の結合ドメインを含むFab抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤は、第1の結合ドメインを含むFab抗体断片に共有結合的に連結された第2および第3の結合ドメインを含む2つのscFv抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、結合剤は、Fab抗体断片の各鎖のC末端に共有結合的に連結されたscFv抗体断片を含む。
本明細書に記載の結合剤のCH1およびCL配列は、それぞれ、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むがこれらに限定されない任意のアイソタイプのものであり得、1つ以上の突然変異または修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、CH1およびCL配列のそれぞれは、IgG1アイソタイプのものであるかまたはIgG1アイソタイプに由来し、任意で1つ以上の突然変異または修飾を有する。
本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤は、完全長抗体を含まない。本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤は、抗体のCH2ドメインおよびCH3ドメインを含まない。本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤は、Fc領域を含まない。本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤は、エフェクタ機能を発揮することができるFc配列を含まない。
本発明の文脈における「エフェクタ機能」という用語は、例えば、腫瘍細胞などの疾患細胞の死滅、または腫瘍の播種および転移の阻害を含む腫瘍増殖の阻害および/もしくは腫瘍発生の阻害をもたらす免疫系の成分によって媒介される任意の機能を含む。好ましくは、本発明の文脈におけるエフェクタ機能は、T細胞媒介エフェクタ機能である。そのような機能は、ADCC、ADCPまたはCDCを含む。
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、細胞傷害性顆粒の内容物の放出または細胞死誘導分子の発現を特徴とする、非食作用プロセスを介した細胞傷害性エフェクタ細胞による抗体被覆標的細胞の死滅である。ADCCは、同じく標的を溶解するが他の細胞を必要としない免疫補体系とは無関係である。ADCCは、標的結合抗体(IgGまたはIgAまたはIgEクラスに属する)と、免疫グロブリン(Ig)のFc領域に結合するエフェクタ細胞表面上に存在する糖タンパク質である特定のFc受容体(FcR)との相互作用によって引き起こされる。ADCCを媒介するエフェクタ細胞には、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、好中球、好酸球および樹状細胞が含まれる。ADCCは、その有効性が多くのパラメータ(標的細胞の表面上の抗原の密度および安定性;抗体親和性およびFcR結合親和性)に依存する迅速なエフェクタ機構である。治療用抗体に最も使用されているIgGサブクラスであるヒトIgG1が関与するADCCは、そのFc部分のグリコシル化プロファイルおよびFcγ受容体の多型に高度に依存する。
抗体依存性細胞食作用(ADCP)は、多くの抗体療法の重要な作用機序の1つである。これは、抗体が、そのFcドメインを食細胞上の特異的受容体に接続し、食作用を誘発することによって、結合した標的を排除する高度に調節されたプロセスとして定義される。ADCCとは異なり、ADCPは、FcγRIIa、FcγRIおよびFcγRIIIaを介して、単球、マクロファージ、好中球および樹状細胞によって媒介され得、そのうちのマクロファージ上のFcγRIIa(CD32a)が主要な経路である。
補体依存性細胞傷害(CDC)は、抗体によって誘導され得る別の細胞死滅方法である。IgMは、補体活性化のための最も有効なアイソタイプである。IgG1およびIgG3も、両方とも古典的補体活性化経路を介してCDCを誘導するのに非常に有効である。好ましくは、このカスケードにおいて、抗原抗体複合体の形成は、IgG分子などの関与する抗体分子のC2ドメイン上にごく近接した複数のC1q結合部位の露出をもたらす(C1qは補体C1の3つのサブコンポーネントの1つである)。好ましくは、これらの露出されたC1q結合部位は、それまでの低親和性のC1q-IgG相互作用を高アビディティのものに変換し、一連の他の補体タンパク質が関与する事象のカスケードを誘発し、エフェクタ細胞走化性/活性化物質C3aおよびC5aのタンパク質分解性放出をもたらす。好ましくは、補体カスケードは、細胞内および細胞外への水および溶質の自由な通過を促進する細胞膜の孔を作り出す、膜侵襲複合体の形成で終了する。
いくつかの実施形態では、結合剤は、CD3に特異性を有する結合ドメインおよびCLDN6に特異性を有する2つの結合ドメインを形成する2つのポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、2つのポリペプチド鎖は、2つのRNA分子によってコードされる。いくつかの実施形態では、結合剤は、2つのポリペプチド鎖で構成される二量体であり、第1のポリペプチドは、免疫グロブリンの重鎖の定常領域1(CH1)を介してさらなるVHドメインに連結されたCLDN6に特異的なscFvを含み、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンの軽鎖の定常領域(CL)を介してさらなるVLドメインに連結されたCLDN6に特異的なscFvを含む。いくつかの実施形態では、2つのポリペプチド鎖は、ジスルフィド架橋によって共に結合される。ジスルフィド架橋は、好ましくは、CH1ドメイン中のCys残基とCLドメイン中のCys残基との間に形成され、その結果、第1のポリペプチドのさらなるVHドメインは、CD3結合配置で第2のポリペプチドのさらなるVLドメインと会合し、その結果、結合剤は全体として3つの抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD3に特異的な結合ドメインはFab断片に含まれ、CLDN6に特異的な結合ドメインはそれぞれscFvに含まれる。いくつかの実施形態では、Fab断片の各鎖は1つのscFvに連結されており、scFvは、好ましくはFab断片のC末端に連結されている。本発明によれば、scFv部分のVHドメインとVLドメインは、好ましくはアミノ酸配列(GS)を含むペプチドリンカーなどのペプチドリンカーによって接続されており、Fab鎖とscFvは、好ましくはアミノ酸配列SGPGRS(GS)またはDVPGSを含むペプチドリンカーなどのペプチドリンカーによって接続されている。
いくつかの実施形態では、結合剤は、(i)CD3に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CD3))、CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来するVH(VH(CLDN6))、およびCLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CLDN6))を含む第1のポリペプチド鎖;ならびに(ii)CD3に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CD3))、CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来するVH(VH(CLDN6))およびCLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CLDN6))を含む第2のポリペプチド鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、第2のポリペプチド鎖と相互作用して結合剤を形成する。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖のVH(CD3)と第2のポリペプチド鎖のVL(CD3)は相互作用して、CD3に特異性を有する結合ドメインを形成する。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)は相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成する。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)は相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成する。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリペプチド鎖は、免疫グロブリンまたはその機能的変異体に由来する重鎖の定常領域1(CH1)と、免疫グロブリンまたはその機能的変異体に由来する軽鎖の定常領域(CL)とを含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンはIgG1である。いくつかの実施形態では、IgG1はヒトIgG1である。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖上のVH、VL、およびCH1は、
VH(CD3)-CH1-VH(CLDN6)-VL(CLDN6)、または
VH(CD3)-CH1-VL(CLDN6)-VH(CLDN6)
の順序でN末端からC末端へと配置される。
いくつかの実施形態では、CH1は、ペプチドリンカーによってVH(CLDN6)またはVL(CLDN6)に接続されている。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列SGPGGGRS(GS)またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖上のVH、VL、およびCLは、
VL(CD3)-CL-VH(CLDN6)-VL(CLDN6)、または
VL(CD3)-CL-VL(CLDN6)-VH(CLDN6)
の順序でN末端からC末端へと配置される。
いくつかの実施形態では、CLは、ペプチドリンカーによってVH(CLDN6)またはVL(CLDN6)に接続されている。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列DVPGGSまたはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)およびVL(CLDN6)は、ペプチドリンカーによって互いに接続されている。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列(GS)またはその機能的変異体を含み、xは、2、3、4、5または6である。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列(GS)またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖上のCH1は、第2のポリペプチド鎖上のCLと相互作用する。
いくつかの実施形態では、CH1は、配列番号4のアミノ酸146~248のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、CLは、配列番号6のアミノ酸133~239のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3(それぞれ配列番号18、19および20)を含む。いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、アミノ酸配列GYTFTRYTまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列INPSRGYTまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列ARYYDDHYSLDYまたはARYYDDHYCLDYまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3(それぞれ配列番号22、23および24)を含む。いくつかの実施形態では、VL(CD3)は、アミノ酸配列SSVSYまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列DTSまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列QQWSSNPLTまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3(それぞれ配列番号25、26および27)を含む。いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)は、アミノ酸配列GYSFTGYTまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列INPYNGGTまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列ARDYGFVLDYまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3(それぞれ配列番号28、29および30)を含む。いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、アミノ酸配列SSVSYまたはその機能的変異体を含むCDR1、アミノ酸配列STSまたはその機能的変異体を含むCDR2、およびアミノ酸配列QQRSNYPPWTまたはその機能的変異体を含むCDR3を含む。いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびにCDR1に対して+15の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)を含む。いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびにCDR2に対して-3の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)を含む。いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、または80%の同一性を有する配列、ならびに配列番号4の449位に対応する位置のセリン残基を含む。いくつかの実施形態では、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む。
CDR1に対して+15の位置のセリン残基とは、CDR1の末端から数えて15番目のアミノ酸位置がセリン残基であることを意味する。CDR2に対して-3の位置のセリン残基とは、CDR2の開始前の3番目のアミノ酸がセリンであることを意味する。これらは、例えば、以下(NからCへ):XXXXX-Y14-SおよびS-Y-ZZZによってそれぞれ表すことができ、XはCDR1アミノ酸を表し、YはCDR間の介在アミノ酸を表し、Sはセリン残基を表し、ZはCDR2アミノ酸を表す。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、VL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、好ましくはVL(CLDN6)は、CDR1に対して+15の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)および/またはCDR2に対して-3の位置のセリン残基(配列番号4の449位に対応する)を含む。
いくつかの実施形態では、VH(CD3)は、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、VL(CD3)は、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、VH(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、および/またはVL(CLDN6)は、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸27~510のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸27~510のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号4のアミノ酸27~510のアミノ酸配列もしくは配列番号4のアミノ酸27~510のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸27~510のアミノ酸配列を含む。
これらおよび他の実施形態では、第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド132~1583のヌクレオチド配列、配列番号5のヌクレオチド132~1583のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号5のヌクレオチド132~1583のヌクレオチド配列もしくは配列番号5のヌクレオチド132~1583のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド132~1583のヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸27~489のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸27~489のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号6のアミノ酸27~489のアミノ酸配列もしくは配列番号6のアミノ酸27~489のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸27~489のアミノ酸配列を含む。
これらおよび他の実施形態では、第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号7のヌクレオチド132~1520のヌクレオチド配列、配列番号7のヌクレオチド132~1520のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド132~1520のヌクレオチド配列もしくは配列番号7のヌクレオチド132~1520のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号7のヌクレオチド132~1520のヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸27~510のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸27~510のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号4のアミノ酸27~510のアミノ酸配列もしくは配列番号4のアミノ酸27~510のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含み、および(ii)第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸27~489のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸27~489のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号6のアミノ酸27~489のアミノ酸配列もしくは配列番号6のアミノ酸27~489のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸27~510のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸27~489のアミノ酸配列を含む。
これらおよび他の実施形態では、(i)第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド132~1583のヌクレオチド配列、配列番号5のヌクレオチド132~1583のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号5のヌクレオチド132~1583のヌクレオチド配列もしくは配列番号5のヌクレオチド132~1583のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含み、および(ii)第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号7のヌクレオチド132~1520のヌクレオチド配列、配列番号7のヌクレオチド132~1520のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド132~1520のヌクレオチド配列もしくは配列番号7のヌクレオチド132~1520のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド132~1583のヌクレオチド配列を含み、第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号7のヌクレオチド132~1520のヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態によれば、シグナルペプチドは、直接またはリンカーを介して、本明細書に記載のポリペプチド鎖に融合される。したがって、いくつかの実施形態では、シグナルペプチドは、上記のアミノ酸配列に融合される。
いくつかの実施形態では、シグナル配列は、配列番号4のアミノ酸1~26のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸1~26のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号4のアミノ酸1~26のアミノ酸配列もしくは配列番号4のアミノ酸1~26のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、シグナル配列は、配列番号4のアミノ酸1~26のアミノ酸配列を含む。
これらおよび他の実施形態では、シグナル配列(i)をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド54~131のヌクレオチド配列、配列番号5のヌクレオチド54~131のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号5のヌクレオチド54~131のヌクレオチド配列もしくは配列番号5のヌクレオチド54~131のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、シグナル配列をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド54~131のヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号4のアミノ酸配列もしくは配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。
これらおよび他の実施形態では、第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド54~1583のヌクレオチド配列、配列番号5のヌクレオチド54~1583のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号5のヌクレオチド54~1583のヌクレオチド配列もしくは配列番号5のヌクレオチド54~1583のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド54~1583のヌクレオチド配列を含む。
さらなる実施形態では、第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド配列、配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号5のヌクレオチド配列もしくは配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号6のアミノ酸配列もしくは配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸配列を含む。
これらおよび他の実施形態では、第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号7のヌクレオチド54~1520のヌクレオチド配列、配列番号7のヌクレオチド54~1520のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド54~1520のヌクレオチド配列もしくは配列番号7のヌクレオチド54~1520のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号7のヌクレオチド54~1520のヌクレオチド配列を含む。
さらなる実施形態では、第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列、配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド配列もしくは配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、(i)第1のポリペプチド鎖は、配列番号4のアミノ酸配列、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号4のアミノ酸配列もしくは配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含み、および(ii)第2のポリペプチド鎖は、配列番号6のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号6のアミノ酸配列もしくは配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は配列番号4のアミノ酸配列を含み、第2のポリペプチド鎖は配列番号6のアミノ酸配列を含む。
これらおよび他の実施形態では、(i)第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド54~1583のヌクレオチド配列、配列番号5のヌクレオチド54~1583のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号5のヌクレオチド54~1583のヌクレオチド配列もしくは配列番号5のヌクレオチド54~1583のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含み、および(ii)第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号7のヌクレオチド54~1520のヌクレオチド配列、配列番号7のヌクレオチド54~1520のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド54~1520のヌクレオチド配列もしくは配列番号7のヌクレオチド54~1520のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド54~1583のヌクレオチド配列を含み、第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号7のヌクレオチド54~1520のヌクレオチド配列を含む。
さらなる実施形態では、(i)第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号5のヌクレオチド配列、配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号5のヌクレオチド配列もしくは配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含み、および(ii)第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列、配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド配列もしくは配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の機能的断片を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖をコードするRNAは配列番号5のヌクレオチド配列を含み、第2のポリペプチド鎖をコードするRNAは配列番号7のヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、結合剤は、CLDN6の細胞外ドメインに結合する。いくつかの実施形態では、結合剤は、生細胞の表面に存在するCLDN6の天然エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、結合剤は、CLDN6の第1の細胞外ループに結合する。
本明細書に記載の結合剤は、CLDN6に特異的である、すなわち、CLDN6に結合する能力、すなわち、CLDN6に存在するエピトープ、好ましくはCLDN6の細胞外ドメイン、特に第1の細胞外ループ、好ましくはCLDN6のアミノ酸位置28~76もしくは29~81、または第2の細胞外ループ、好ましくはCLDN6のアミノ酸位置141~159内に位置するエピトープに結合する能力を有する。いくつかの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する薬剤は、CLDN9上には存在しないCLDN6上のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する薬剤は、CLDN4および/またはCLDN3上には存在しないCLDN6上のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する薬剤は、CLDN6以外のクローディンタンパク質上には存在しないCLDN6上のエピトープに結合する。
いくつかの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する薬剤は、好ましくはCLDN6に結合するがCLDN9には結合せず、好ましくはCLDN4および/またはCLDN3には結合しない。いくつかの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する薬剤は、細胞表面に発現されたCLDN6に結合する。いくつかの実施形態では、CLDN6に結合する能力を有する薬剤は、生細胞の表面に存在するCLDN6の天然エピトープに結合する。
「細胞表面に発現された」または「細胞表面と会合した」という用語は、抗原などの分子が細胞の原形質膜と会合して位置し、分子の少なくとも一部が前記細胞の細胞外空間に面しており、例えば細胞の外側に位置する抗体によって前記細胞の外側からアクセス可能であることを意味する。これに関連して、一部とは、好ましくは少なくとも4個、好ましくは少なくとも8個、好ましくは少なくとも12個、より好ましくは少なくとも20個のアミノ酸である。会合は、直接的であっても間接的であってもよい。例えば、会合は、1つ以上の膜貫通ドメイン、1つ以上の脂質アンカーによるものであってもよく、または他の任意のタンパク質、脂質、サッカリド、もしくは細胞の原形質膜の外葉に見出され得る他の構造との相互作用によるものであってもよい。例えば、細胞の表面と会合する分子は、細胞外部分を有する膜貫通タンパク質であってもよく、または膜貫通タンパク質である別のタンパク質と相互作用することによって細胞の表面と会合するタンパク質であってもよい。
「細胞表面」または「細胞の表面」は、当技術分野におけるその通常の意味に従って使用され、したがって、タンパク質および他の分子による結合にアクセス可能な細胞の外側を含む。抗原は、細胞の表面に位置し、例えば細胞に添加された抗原特異的抗体による結合にアクセス可能である場合、前記細胞の表面に発現される。
本発明の文脈における「細胞外部分」または「エキソドメイン」という用語は、細胞の細胞外空間に面しており、好ましくは、例えば細胞の外側に位置する抗体などの分子に結合することによって、前記細胞の外側からアクセス可能であるタンパク質などの分子の一部を指す。好ましくは、この用語は、1つ以上の細胞外ループもしくはドメインまたはその断片を指す。
核酸
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子および化学合成された分子などのDNAおよびRNAを含むことが意図されている。核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。RNAは、インビトロ転写されたRNA(IVT RNA)または合成RNAを含む。本発明によれば、ポリヌクレオチドは、好ましくは単離されている。
核酸は、ベクターに含まれ得る。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、プラスミドベクター、コスミドベクター、ラムダファージなどのファージベクター、レトロウイルス、アデノウイルスもしくはバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、または細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)もしくはP1人工染色体(PAC)などの人工染色体ベクターを含む、当業者に公知の任意のベクターを含む。前記ベクターは、発現ベクターおよびクローニングベクターを含む。発現ベクターは、プラスミドおよびウイルスベクターを含み、一般に、所望のコード配列および特定の宿主生物(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫もしくは哺乳動物)またはインビトロ発現系における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切なDNA配列を含む。クローニングベクターは、一般に、特定の所望のDNA断片を操作および増幅するために使用され、所望のDNA断片の発現に必要な機能的配列を欠いていてもよい。
本発明の全ての態様のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤、例えば二重特異性または多重特異性結合剤をコードするRNAは、処置された対象の細胞(例えば肝細胞)で発現されて結合剤を提供する。
本明細書に記載の核酸は、組換えおよび/または単離された分子であり得る。
本開示では、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施形態では、RNAは、リボヌクレオチド残基の全部または大部分を含む。本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを指す。RNAは、限定されないが、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAを包含する。そのような改変は、内部RNAヌクレオチドへの、またはRNAの末端(一方もしくは両方)への非ヌクレオチド物質の付加を指し得る。本明細書では、RNA中のヌクレオチドが、化学合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドであり得ることも企図される。本開示では、これらの改変されたRNAは、天然に存在するRNAの類似体と見なされる。
本開示のいくつかの実施形態では、RNAは、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNA転写物に関連するメッセンジャRNA(mRNA)である。当技術分野で確立されているように、mRNAは、一般に、5’非翻訳領域(5’-UTR)、ペプチドコード領域および3’非翻訳領域(3’-UTR)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、インビトロ転写または化学合成によって生成される。いくつかの実施形態では、mRNAは、DNA鋳型を使用するインビトロ転写によって生成され、ここで、DNAは、デオキシリボヌクレオチドを含む核酸を指す。
本開示のいくつかの実施形態では、RNAは、「レプリコンRNA」または単に「レプリコン」、特に「自己複製RNA」または「自己増幅RNA」である。特に好ましい一実施形態では、レプリコンまたは自己複製RNAは、ssRNAウイルス、特にアルファウイルスなどのプラス鎖ssRNAウイルスに由来するか、またはそれに由来する要素を含む。アルファウイルスは、プラス鎖RNAウイルスの典型的な代表例である。アルファウイルスは、感染細胞の細胞質で複製する(アルファウイルスの生活環の総説については、Jose et al.,Future Microbiol.,2009,vol.4,pp.837-856を参照)。多くのアルファウイルスの全ゲノム長は、典型的には11,000~12,000ヌクレオチドの範囲であり、ゲノムRNAは、典型的には5’キャップおよび3’ポリ(A)尾部を有する。アルファウイルスのゲノムは、非構造タンパク質(ウイルスRNAの転写、修飾および複製ならびにタンパク質修飾に関与する)および構造タンパク質(ウイルス粒子を形成する)をコードする。典型的には、ゲノム中に2つのオープンリーディングフレーム(ORF)が存在する。4つの非構造タンパク質(nsP1~nsP4)は、典型的には、ゲノムの5’末端付近から始まる第1のORFによって一緒にコードされ、一方アルファウイルスの構造タンパク質は、第1のORFの下流に見出され、ゲノムの3’末端付近に延びる第2のORFによって一緒にコードされる。典型的には、第1のORFは第2のORFよりも大きく、比率はおよそ2:1である。アルファウイルスに感染した細胞では、非構造タンパク質をコードする核酸配列のみがゲノムRNAから翻訳され、一方構造タンパク質をコードする遺伝情報は、真核生物のメッセンジャRNA(mRNA;Gould et al.,2010,Antiviral Res.,vol.87,pp.111-124)に類似したRNA分子であるサブゲノム転写物から翻訳可能である。感染後、すなわちウイルス生活環の初期段階に、(+)鎖ゲノムRNAは、非構造ポリタンパク質(nsP1234)をコードするオープンリーディングフレームの翻訳のためにメッセンジャRNAのように直接作用する。アルファウイルス由来のベクターは、外来遺伝情報を標的細胞または標的生物に送達するために提案されている。単純なアプローチでは、アルファウイルス構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを、目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームによって置き換える。アルファウイルスに基づくトランス複製系は、2つの別個の核酸分子上のアルファウイルスヌクレオチド配列要素に依存する:一方の核酸分子はウイルスレプリカーゼをコードし、他方の核酸分子はトランスで前記レプリカーゼによって複製されることができる(したがってトランス複製系という名称)。トランス複製は、所与の宿主細胞中にこれらの核酸分子の両方が存在することを必要とする。トランスでレプリカーゼによって複製され得る核酸分子は、アルファウイルスレプリカーゼによる認識およびRNA合成を可能にするために特定のアルファウイルス配列要素を含まなければならない。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNAは修飾ヌクレオシドを有し得る。いくつかの実施形態では、RNAは、少なくとも1つの(例えば全ての)ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
本明細書で使用される「ウラシル」という用語は、RNAの核酸中に存在し得る核酸塩基の1つを表す。ウラシルの構造は:
Figure 2024525795000009
である。
本明細書で使用される「ウリジン」という用語は、RNA中に存在し得るヌクレオシドの1つを表す。ウリジンの構造は:
Figure 2024525795000010
である。
UTP(ウリジン5’-三リン酸)は、以下の構造:
Figure 2024525795000011
を有する。
プソイドUTP(プソイドウリジン5’-三リン酸)は、以下の構造:
Figure 2024525795000012
を有する。
「プソイドウリジン」は、ウリジンの異性体である修飾ヌクレオシドの一例であり、ウラシルは、窒素-炭素グリコシド結合の代わりに炭素-炭素結合を介してペントース環に結合している。
別の例示的な修飾ヌクレオシドはN1-メチルプソイドウリジン(m1Ψ)であり、これは、構造:
Figure 2024525795000013
を有する。
N1-メチルプソイドUTPは、以下の構造:
Figure 2024525795000014
を有する。
別の例示的な修飾ヌクレオシドは5-メチルウリジン(m5U)であり、これは、構造:
Figure 2024525795000015
を有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA中の1つ以上のウリジンは、修飾ヌクレオシドで置き換えられる。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは修飾ウリジンである。
いくつかの実施形態では、RNAは、少なくとも1つのウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、RNAは、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択される。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドはプソイドウリジン(ψ)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドはN1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは5-メチルウリジン(m5U)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、2種類以上の修飾ヌクレオシドを含んでもよく、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択される。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)およびN1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)および5-メチルウリジン(m5U)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)を含む。
いくつかの実施形態では、RNA中の1つ以上、例えば全てのウリジンを置換する修飾ヌクレオシドは、3-メチルウリジン(mU)、5-メトキシウリジン(moU)、5-アザウリジン、6-アザウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオウリジン(sU)、4-チオウリジン(sU)、4-チオプソイドウリジン、2-チオプソイドウリジン、5-ヒドロキシウリジン(hoU)、5-アミノアリルウリジン、5-ハロウリジン(例えば5-ヨードウリジンもしくは5-ブロモウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmoU)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmoU)、5-カルボキシメチルウリジン(cmU)、1-カルボキシメチルプソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chmU)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchmU)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcmU)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン(mcmU)、5-アミノメチル-2-チオウリジン(nmU)、5-メチルアミノメチルウリジン(mnmU)、1-エチルプソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン(mnmU)、5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン(mnmseU)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncmU)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnmU)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン(cmnmU)、5-プロピニルウリジン、1-プロピニルプソイドウリジン、5-タウリノメチルウリジン(τmU)、1-タウリノメチルプソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオプソイドウリジン)、5-メチル-2-チオウリジン(mU)、1-メチル-4-チオプソイドウリジン(mΨ)、4-チオ-1-メチルプソイドウリジン、3-メチルプソイドウリジン(mΨ)、2-チオ-1-メチルプソイドウリジン、1-メチル-1-デアザプソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザプソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチルジヒドロウリジン(mD)、2-チオジヒドロウリジン、2-チオジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオウリジン、4-メトキシプソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオプソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acpU)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acpΨ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inmU)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオウリジン(inmU)、α-チオウリジン、2’-O-メチルウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチルウリジン(mUm)、2’-O-メチルプソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2’-O-メチルウリジン(sUm)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン(mcmUm)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン(ncmUm)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチルウリジン(cmnmUm)、3,2’-O-ジメチルウリジン(mUm)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチルウリジン(inmUm)、1-チオウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジン、または当技術分野で公知の任意の他の修飾ウリジンのいずれか1つ以上であり得る。
いくつかの実施形態では、RNAは、他の修飾ヌクレオシドを含むか、またはさらなる修飾ヌクレオシド、例えば修飾シチジンを含む。例えば、いくつかの実施形態では、RNAにおいて、シチジンを5-メチルシチジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。いくつかの実施形態では、RNAは、5-メチルシチジンと、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)から選択される1つ以上とを含む。いくつかの実施形態では、RNAは、5-メチルシチジンおよびN1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、各シチジンの代わりに5-メチルシチジンを含み、各ウリジンの代わりにN1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)を含む。
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは5’キャップを含む。いくつかの実施形態では、本開示のRNAは、キャップされていない5’-三リン酸を有さない。いくつかの実施形態では、RNAは、5’キャップ類似体によって修飾され得る。「5’キャップ」という用語は、mRNA分子の5’末端に見出される構造を指し、一般に、5’-5’三リン酸結合を介してmRNAに接続されたグアノシンヌクレオチドからなる。いくつかの実施形態では、このグアノシンは7位でメチル化されている。RNAに5’キャップまたは5’キャップ類似体を提供することは、5’キャップがRNA鎖に共転写的に発現されるインビトロ転写によって達成され得るか、またはキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに結合され得る。
いくつかの実施形態では、RNAのためのビルディングブロックキャップは、m 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApG(時にm 7,3’OG(5’)ppp(5’)m2’-OApGとも呼ばれる)であり、これは、以下の構造:
Figure 2024525795000016
を有する。
以下は、RNAおよびm 7,3’OG(5’)ppp(5’)m2’-OApGを含む例示的なキャップ1 RNAである:
Figure 2024525795000017
以下は、別の例示的なキャップ1 RNA(キャップ類似体なし)である:
Figure 2024525795000018
いくつかの実施形態では、RNAは、いくつかの実施形態では、構造:
Figure 2024525795000019
を有するキャップ類似体アンチリバースキャップ(ARCAキャップ(m 7,3`OG(5’)ppp(5’)G))を使用して、「キャップ0」構造で修飾される。
以下は、RNAおよびm 7,3’OG(5’)ppp(5’)Gを含む例示的なキャップ0 RNAである:
Figure 2024525795000020
いくつかの実施形態では、「キャップ0」構造は、構造:
Figure 2024525795000021
を有するキャップ類似体ベータ-S-ARCA(m 7,2’OG(5’)ppSp(5’)G)を使用して生成される。
以下は、ベータ-S-ARCA(m 7,2’OG(5’)ppSp(5’)G)およびRNAを含む例示的なキャップ0 RNAである:
Figure 2024525795000022
ベータ-S-ARCAの「D1」ジアステレオマーまたは「ベータ-S-ARCA(D1)」は、ベータ-S-ARCAのD2ジアステレオマー(ベータ-S-ARCA(D2))と比較してHPLCカラムで最初に溶出し、したがってより短い保持時間を示すベータ-S-ARCAのジアステレオマーである(参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2011/015347号を参照)。
特に好ましいキャップは、m 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA配列(例えば配列番号5および/または7)は、m 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGでキャップされる。いくつかの実施形態では、キャップのApGは、本明細書に記載のRNA配列の2つの5’ヌクレオチドに対応する。
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは、5’-UTRおよび/または3’-UTRを含む。「非翻訳領域」または「UTR」という用語は、転写されるがアミノ酸配列に翻訳されないDNA分子内の領域、またはmRNA分子などのRNA分子内の対応する領域に関する。非翻訳領域(UTR)は、オープンリーディングフレームの5’側(上流)(5’-UTR)および/またはオープンリーディングフレームの3’側(下流)(3’-UTR)に存在し得る。5’-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の開始コドンの上流の5’末端に位置する。5’-UTRは5’キャップ(存在する場合)の下流にあり、例えば5’キャップに直接隣接している。3’-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の終止コドンの下流の3’末端に位置するが、「3’-UTR」という用語は、好ましくはポリ(A)配列を含まない。したがって、3’-UTRはポリ(A)配列(存在する場合)の上流にあり、例えばポリ(A)配列に直接隣接している。
いくつかの実施形態では、RNAは、配列番号8のヌクレオチド配列、または配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’-UTRを含む。
いくつかの実施形態では、RNAは、配列番号9のヌクレオチド配列、または配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’-UTRを含む。
特に好ましい5’-UTRは、配列番号8のヌクレオチド配列を含む。特に好ましい3’-UTRは、配列番号9のヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは、3’-ポリ(A)配列を含む。
本発明で使用される場合、「ポリ(A)配列」または「ポリA尾部」という用語は、典型的にはRNA分子の3’末端に位置するアデニル酸残基の連続的または断続的な配列を指す。ポリ(A)配列は当業者に公知であり、本明細書に記載のRNAの3’UTRに後続し得る。連続的なポリ(A)配列は、連続するアデニル酸残基を特徴とする。自然界では、連続的なポリ(A)配列が典型的である。本明細書に開示されるRNAは、転写後に鋳型非依存性RNAポリメラーゼによってRNAの遊離3’末端に結合されたポリ(A)配列、またはDNAによってコードされ、鋳型依存性RNAポリメラーゼによって転写されたポリ(A)配列を有し得る。
約120個のAヌクレオチドのポリ(A)配列は、トランスフェクトされた真核細胞におけるRNAのレベル、およびポリ(A)配列の上流(5’側)に存在するオープンリーディングフレームから翻訳されるタンパク質のレベルに有益な影響を及ぼすことが実証されている(Holtkamp et al.,2006,Blood,vol.108,pp.4009-4017)。
ポリ(A)配列は任意の長さであり得る。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのAヌクレオチド、特に約120個のAヌクレオチドを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。これに関連して、「から本質的になる」は、ポリ(A)配列中のほとんどのヌクレオチド、典型的にはポリ(A)配列中のヌクレオチドの数の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%がAヌクレオチドであるが、残りのヌクレオチドが、Uヌクレオチド(ウリジル酸)、Gヌクレオチド(グアニル酸)、またはCヌクレオチド(シチジル酸)などのAヌクレオチド以外のヌクレオチドであることを許容することを意味する。これに関連して、「からなる」は、ポリ(A)配列中の全てのヌクレオチド、すなわちポリ(A)配列中のヌクレオチドの数の100%がAヌクレオチドであることを意味する。「Aヌクレオチド」または「A」という用語は、アデニル酸を指す。
いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は、コード鎖に相補的な鎖中に反復dTヌクレオチド(デオキシチミジル酸)を含むDNA鋳型に基づいて、RNA転写中、例えばインビトロ転写RNAの調製中に結合される。ポリ(A)配列をコードするDNA配列(コード鎖)は、ポリ(A)カセットと呼ばれる。
いくつかの実施形態では、DNAのコード鎖に存在するポリ(A)カセットは、本質的にdAヌクレオチドからなるが、4つのヌクレオチド(dA、dC、dG、およびdT)のランダムな配列によって中断されている。そのようなランダムな配列は、5~50、10~30、または10~20ヌクレオチド長であり得る。そのようなカセットは、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/005324 A1号に開示されている。国際公開第2016/005324 A1号に開示されている任意のポリ(A)カセットを本発明で使用し得る。本質的にdAヌクレオチドからなるが、4つのヌクレオチド(dA、dC、dG、dT)が均等に分布し、例えば5~50ヌクレオチドの長さを有するランダムな配列によって中断されているポリ(A)カセットは、DNAレベルでは、大腸菌(E.coli)におけるプラスミドDNAの持続的な増殖を示し、RNAレベルでは、RNAの安定性および翻訳効率を支持することに関して有益な特性と依然として関連している。その結果として、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA分子に含まれるポリ(A)配列は、本質的にAヌクレオチドからなるが、4つのヌクレオチド(A、C、G、U)のランダムな配列によって中断されている。そのようなランダムな配列は、5~50、10~30、または10~20ヌクレオチド長であり得る。
いくつかの実施形態では、Aヌクレオチド以外のヌクレオチドは、その3’末端でポリ(A)配列に隣接していない、すなわち、ポリ(A)配列は、A以外のヌクレオチドによってその3’末端でマスクされていないか、または後続されていない。
いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は、本質的に、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのヌクレオチドからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのヌクレオチドからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は少なくとも100個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は約150個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は約120個のヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、RNAは、配列番号10のヌクレオチド配列、または配列番号10のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリ(A)配列を含む。
特に好ましいポリ(A)配列は、配列番号10のヌクレオチド配列を含む。
本開示によれば、結合剤は、好ましくは、RNAを投与されている対象の細胞に入るとそれぞれのタンパク質に翻訳される一本鎖5’キャップmRNAとして投与される。好ましくは、RNAは、安定性および翻訳効率に関するRNAの最大の有効性のために最適化された構造要素(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)配列)を含む。
いくつかの実施形態では、m 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGをRNAの5’-末端の特異的キャッピング構造として利用する。いくつかの実施形態では、5’-UTR配列は、ヒトαグロビンmRNAに由来し、任意で、翻訳効率を高めるために最適化された「コザック配列」を有する。いくつかの実施形態では、「スプリットのアミノ末端エンハンサ」(AES)mRNA(Fと呼ばれる)およびミトコンドリアコード12SリボソームRNA(Iと呼ばれる)に由来する2つの配列要素(FI要素)の組合せをコード配列とポリ(A)配列との間に配置して、より高い最大タンパク質レベルおよびmRNAの長期持続性を確実にする。これらは、RNAの安定性を付与し、総タンパク質発現を増強する配列のエクスビボ選択プロセスによって同定された(参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2017/060314号を参照)。いくつかの実施形態では、30個のアデノシン残基のストレッチと、それに続く10個のヌクレオチドリンカー配列および別の70個のアデノシン残基からなる、110ヌクレオチド長と測定されるポリ(A)配列が使用される。このポリ(A)配列は、RNAの安定性および翻訳効率を高めるように設計された。
本発明の全ての態様のいくつかの実施形態では、結合剤をコードするRNAは、処置された対象の細胞、例えば肝細胞で発現されて結合剤を提供する。本発明の全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAは、対象の細胞で一過性に発現される。本発明の全ての態様のいくつかの実施形態では、RNAはインビトロ転写RNAである。本発明の全ての態様のいくつかの実施形態では、結合剤の発現は細胞外空間内である、すなわち、結合剤は分泌される。本発明の全ての態様のいくつかの実施形態では、結合剤の発現は血流中である。
本開示の文脈において、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写されるプロセスに関する。その後、RNAはペプチドまたはタンパク質に翻訳され得る。
本発明によれば、「転写」という用語は「インビトロ転写」を含み、「インビトロ転写」という用語は、RNA、特にmRNAが、好ましくは適切な細胞抽出物を使用して、無細胞系においてインビトロで合成されるプロセスに関する。好ましくは、クローニングベクターが転写物の生成に適用される。これらのクローニングベクターは、一般に転写ベクターと呼ばれ、本発明によれば「ベクター」という用語に包含される。本発明によれば、本発明で使用されるRNAは、好ましくはインビトロ転写RNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られ得る。転写を制御するためのプロモータは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモータであり得る。RNAポリメラーゼの特定の例は、T7、T3、およびSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは、本発明によるインビトロ転写は、T7またはSP6プロモータによって制御される。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することによって得られ得る。cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。
RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、mRNAの鎖がペプチドまたはタンパク質を作製するようにアミノ酸の配列のアセンブリを指示する、細胞のリボソームにおけるプロセスに関する。
いくつかの実施形態では、例えばRNA脂質粒子として製剤化された本明細書に記載のRNAの投与(例えば静脈内投与)後、RNAの少なくとも一部が標的細胞(例えば肝細胞)に送達される。いくつかの実施形態では、RNAの少なくとも一部が標的細胞のサイトゾルに送達される。いくつかの実施形態では、RNAは、標的細胞によって翻訳されて、それがコードするペプチドまたはタンパク質を産生する。したがって、本開示はまた、本明細書に記載のRNA粒子を対象に投与することを含む、対象の標的細胞にRNAを送達するための方法に関する。いくつかの実施形態では、RNAは、標的細胞のサイトゾルに送達される。いくつかの実施形態では、RNAは、標的細胞によって翻訳されて、RNAによってコードされたペプチドまたはタンパク質を産生する。
「コードする」は、定義されたヌクレオチドの配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または定義されたアミノ酸の配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列の固有の特性、およびそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、ある遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物系においてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると呼ばれ得る。
いくつかの実施形態では、本発明に従って投与される結合剤をコードするRNAは、非免疫原性である。
本明細書で使用される「非免疫原性RNA」という用語は、例えば哺乳動物への投与時に免疫系による応答を誘導しないか、または非免疫原性RNAを非免疫原性にする修飾および処理に供されていないという点においてのみ異なる同じRNAによって誘導されるよりも弱い応答を誘導する、すなわち標準RNA(stdRNA)によって誘導されるよりも弱い応答を誘導するRNAを指す。好ましい一実施形態では、本明細書において修飾RNA(modRNA)とも呼ばれる非免疫原性RNAは、自然免疫受容体のRNA媒介活性化を抑制する修飾ヌクレオシドをRNAに組み込み、二本鎖RNA(dsRNA)を除去することによって非免疫原性にされる。
修飾ヌクレオシドの組み込みによって非免疫原性RNAを非免疫原性にするために、RNAの免疫原性を低下させるまたは抑制する限り、任意の修飾ヌクレオシドを使用し得る。自然免疫受容体のRNA媒介活性化を抑制する修飾ヌクレオシドが特に好ましい。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換を含む。いくつかの実施形態では、修飾核酸塩基は修飾ウラシルである。いくつかの実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、3-メチル-ウリジン(mU)、5-メトキシ-ウリジン(moU)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(sU)、4-チオ-ウリジン(sU)、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(hoU)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmoU)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmoU)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cmU)、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chmU)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchmU)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcmU)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcmU)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nmU)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnmU)、1-エチル-プソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnmU)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnmseU)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncmU)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnmU)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnmU)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τmU)、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(mU)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(mΨ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(mΨ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(mD)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acpU)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acpΨ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inmU)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inmU)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(mUm)、2’-O-メチル-プソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(sUm)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcmUm)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncmUm)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnmUm)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(mUm)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inmUm)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、および5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群より選択される。特に好ましい一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)または5-メチルウリジン(m5U)、特にN1-メチルプソイドウリジンである。
いくつかの実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換は、ウリジンの少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の置換を含む。
例えばT7 RNAポリメラーゼを使用したインビトロ転写(IVT)によるmRNAの合成中に、酵素の通常とは異なる活性のために、二本鎖RNA(dsRNA)を含む有意な量の異常な産物が産生される。dsRNAは炎症性サイトカインを誘導し、エフェクタ酵素を活性化してタンパク質合成の阻害をもたらす。dsRNAは、例えば、非多孔質または多孔質C-18ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)マトリックスを使用するイオン対逆相HPLCによって、IVT RNAなどのRNAから除去することができる。あるいは、ssRNAではなくdsRNAを特異的に加水分解し、それによってIVT RNA調製物からdsRNA夾雑物を除去する大腸菌RNaseIIIを用いた酵素ベースの方法を使用することができる。さらに、セルロース材料を使用することによってdsRNAをssRNAから分離することができる。いくつかの実施形態では、RNA調製物をセルロース材料と接触させ、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、かつssRNAのセルロース材料への結合を許容しない条件下で、ssRNAをセルロース材料から分離する。
「除去する」または「除去」は、この用語が本明細書で使用される場合、dsRNAなどの第2の物質の集団の近傍から分離されている、非免疫原性RNAなどの第1の物質の集団の特徴を指し、ここで、第1の物質の集団は必ずしも第2の物質を欠くわけではなく、第2の物質の集団は必ずしも第1の物質を欠くわけではない。しかしながら、第2の物質の集団の除去を特徴とする第1の物質の集団は、第1の物質と第2の物質との分離されていない混合物と比較して、第2の物質の含有量が測定可能に低い。
いくつかの実施形態では、非免疫原性RNAからのdsRNAの除去は、非免疫原性RNA組成物中のRNAの10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.3%未満、0.1%未満、または0.01%未満がdsRNAであるようなdsRNAの除去を含む。いくつかの実施形態では、非免疫原性RNAは、dsRNAを含まないか、または本質的に含まない。いくつかの実施形態では、非免疫原性RNA組成物は、一本鎖ヌクレオシド修飾RNAの精製調製物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、一本鎖ヌクレオシド修飾RNAの精製調製物は、二本鎖RNA(dsRNA)を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、精製調製物は、他の全ての核酸分子(DNA、dsRNAなど)と比較して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または少なくとも99.9%の一本鎖ヌクレオシド修飾RNAである。
いくつかの実施形態では、非免疫原性RNAは、同じ配列を有する標準RNAよりも効率的に細胞内で翻訳される。いくつかの実施形態では、翻訳は、その非修飾対応物と比較して2倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は3倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は4倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は5倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は6倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は7倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は8倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は9倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は10倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は15倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は20倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は50倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は100倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は200倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は500倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は1,000倍増強される。いくつかの実施形態では、翻訳は2,000倍増強される。いくつかの実施形態では、倍数は10~1,000倍である。いくつかの実施形態では、倍数は10~100倍である。いくつかの実施形態では、倍数は10~200倍である。いくつかの実施形態では、倍数は10~300倍である。いくつかの実施形態では、倍数は10~500倍である。いくつかの実施形態では、倍数は20~1,000倍である。いくつかの実施形態では、倍数は30~1,000倍である。いくつかの実施形態では、倍数は50~1,000倍である。いくつかの実施形態では、倍数は100~1,000倍である。いくつかの実施形態では、倍数は200~1,000倍である。いくつかの実施形態では、翻訳は、任意の他の有意な量または量の範囲だけ増強される。
いくつかの実施形態では、非免疫原性RNAは、同じ配列を有する標準RNAよりも有意に低い自然免疫原性を示す。いくつかの実施形態では、非免疫原性RNAは、その非修飾対応物よりも2倍低い自然免疫応答を示す。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は3倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は4倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は5倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は6倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は7倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は8倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は9倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は10倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は15倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は20倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は50倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は100倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は200倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は500倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は1,000倍低下する。いくつかの実施形態では、自然免疫原性は2,000倍低下する。
「有意に低い自然免疫原性を示す」という用語は、自然免疫原性の検出可能な低下を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、検出可能な自然免疫応答を誘発することなく有効量の非免疫原性RNAを投与することができるような低下を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、非免疫原性RNAによってコードされるタンパク質の産生を検出可能に減少させるのに十分な自然免疫応答を誘発することなく非免疫原性RNAを繰り返し投与することができるような低下を指す。いくつかの実施形態では、低下は、非免疫原性RNAによってコードされるタンパク質の検出可能な産生を排除するのに十分な自然免疫応答を誘発することなく非免疫原性RNAを繰り返し投与することができるようなものである。
「免疫原性」は、RNAなどの異物がヒトまたは他の動物の体内で免疫応答を引き起こす能力である。自然免疫系は、比較的非特異的で即時的な免疫系の成分である。これは、適応免疫系と共に、脊椎動物免疫系の2つの主要成分のうちの1つである。
本明細書で使用される場合、「内因性」は、生物、細胞、組織または系からの、またはそれらの内部で産生される任意の物質を指す。
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織または系から導入されるか、またはそれらの外部で産生される任意の物質を指す。
本明細書で使用される「発現」という用語は、特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
本明細書で使用される場合、「連結された」、「融合された」、または「融合」という用語は、互換的に使用される。これらの用語は、2つ以上の要素または成分またはドメインの結合を指す。
コドン最適化/G/C含有量の増加
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の結合剤のアミノ酸配列は、コドン最適化されたコード配列および/またはそのG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によってコードされる。これはまた、コード配列の1つ以上の配列領域がコドン最適化されており、および/または野生型コード配列の対応する配列領域と比較してG/C含有量が増加している実施形態を含む。いくつかの実施形態では、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は、好ましくはコードされるアミノ酸配列の配列を変化させない。
「コドン最適化された」という用語は、好ましくは核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を改変することなく、宿主生物の典型的なコドン使用頻度を反映するための核酸分子のコード領域中のコドンの改変を指す。本発明の文脈内で、コード領域は、好ましくは、本明細書に記載のRNA分子を使用して治療される対象における最適な発現のためにコドン最適化される。コドン最適化は、翻訳効率が、細胞におけるtRNAの出現の異なる頻度によっても決定されるという所見に基づく。したがって、RNAの配列は、頻繁に生じるtRNAが利用可能であるコドンが「コドン」の代わりに挿入されるように改変され得る。希少
本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNAのコード領域のグアノシン/シトシン(G/C)含有量は、野生型RNAの対応するコード配列のG/C含有量と比較して増加しており、RNAによってコードされるアミノ酸配列は、好ましくは野生型RNAによってコードされるアミノ酸配列と比較して改変されていない。RNA配列のこの改変は、翻訳される任意のRNA領域の配列がそのmRNAの効率的な翻訳のために重要であるという事実に基づく。G(グアノシン)/C(シトシン)含有量が増加した配列は、A(アデノシン)/U(ウラシル)含有量が増加した配列よりも安定である。いくつかのコドンが全く同じアミノ酸をコードする(いわゆる遺伝暗号の縮重)という事実に関して、安定性のために最も好ましいコドンを決定することができる(いわゆる代替コドン使用頻度)。RNAによってコードされるアミノ酸に応じて、その野生型配列と比較して、RNA配列の修飾には様々な可能性がある。特に、Aおよび/またはUヌクレオチドを含むコドンは、これらのコドンを、同じアミノ酸をコードするがAおよび/もしくはUを含まないかまたはより低い含有量のAおよび/もしくはUヌクレオチドを含む他のコドンで置換することによって改変することができる。
様々な実施形態では、本明細書に記載のRNAのコード領域のG/C含有量は、野生型RNAのコード領域のG/C含有量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、またはさらにそれ以上増加している。
核酸含有粒子
結合剤をコードするRNAなどの本明細書に記載の核酸は、粒子として製剤化されて投与され得る。
本開示の文脈において、「粒子」という用語は、分子または分子複合体によって形成される構造化された実体に関する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の粒子はナノ粒子である。「ナノ粒子」という用語は、粒子の3つの外形寸法全てがナノスケール、すなわち、少なくとも約1nmおよび約1,000nm未満であるナノサイズ粒子に関する。好ましくは、粒子のサイズはその直径である。
いくつかの実施形態では、核酸粒子は2種類以上の核酸分子を含み、核酸分子の分子パラメータは、モル質量または基本的な構造要素、例えば分子構造、キャッピング、コード領域もしくは他の特徴に関するように、互いに類似し得るかまたは異なり得る。
RNA、例えば第1のRNAおよび第2のRNAを含む粒子製剤では、各RNA種を個々の粒子製剤として別々に製剤化することが可能である。その場合、個々の粒子製剤はそれぞれ1つのRNA種を含む。個々の粒子製剤は、別個の実体として、例えば別個の容器中に存在し得る。そのような製剤は、粒子形成剤と一緒に各RNA種を別々に(典型的にはそれぞれRNA含有溶液の形態で)提供し、それにより粒子の形成を可能にすることによって得ることができる。それぞれの粒子は、粒子が形成されるときに提供される特定のRNA種のみを含む(個々の粒子製剤)。いくつかの実施形態では、医薬組成物などの組成物は、複数の個々の粒子製剤を含む。それぞれの医薬組成物は、混合粒子製剤と呼ばれる。本発明による混合粒子製剤は、個々の粒子製剤を別々に形成し、続いて個々の粒子製剤を混合する工程によって得ることができる。混合する工程により、RNA含有粒子の混合集団を含む製剤を得ることができる。個々の粒子集団は、個々の粒子製剤の混合集団を含む1つの容器に一緒に存在し得る。あるいは、医薬組成物の全てのRNA種を組み合わせた粒子製剤として一緒に製剤化することが可能である。そのような製剤は、粒子形成剤と共に全てのRNA種の組合せ製剤(典型的には組合せ溶液)を提供し、それにより粒子の形成を可能にすることによって得ることができる。混合粒子製剤とは対照的に、組合せ粒子製剤は、典型的には複数のRNA種を含む粒子を含む。組合せ粒子組成物では、異なるRNA種が、典型的には単一の粒子中に一緒に存在する。
「核酸粒子」を使用して、目的の標的部位(例えば細胞、組織、器官など)に核酸を送達することができる。核酸粒子は、核酸および少なくとも1つの粒子形成成分、例えば、少なくとも1つのカチオン性もしくはカチオンにイオン化可能な脂質もしくは脂質様物質、プロタミンなどの少なくとも1つのカチオン性ポリマー、またはそれらの混合物から形成され得る。ポリマーおよび脂質などの正に帯電した分子と負に帯電した核酸との間の静電相互作用は、粒子形成に関与する。これは、核酸粒子の複合体化および自発的形成をもたらす。いかなる理論にも拘束されることを意図するものではないが、カチオン性もしくはカチオンにイオン化可能な脂質もしくは脂質様物質および/またはカチオン性ポリマーは、核酸と一緒になって凝集体を形成し、この凝集はコロイド的に安定な粒子をもたらすと考えられる。核酸粒子には、脂質ナノ粒子(LNP)ベースおよびリポプレックス(LPX)ベースの製剤が含まれる。
本明細書で使用される「コロイド」という用語は、分散した粒子が沈降しない均一な混合物の一種に関する。混合物中の不溶性粒子は微視的であり、粒径は1~1,000ナノメートルである。混合物は、コロイドまたはコロイド懸濁液と呼ばれ得る。「コロイド」という用語は、混合物中の粒子のみを指し、懸濁液全体を指すのではない場合がある。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の粒子は、カチオン性もしくはカチオンにイオン化可能な脂質もしくは脂質様物質以外の少なくとも1つの脂質もしくは脂質様物質、カチオン性ポリマー以外の少なくとも1つのポリマー、またはそれらの混合物をさらに含む。
本明細書に記載の核酸粒子は、いくつかの実施形態では、約30nm~約1,000nm、約50nm~約800nm、約70nm~約600nm、約90nm~約400nm、または約100nm~約300nmの範囲の平均直径を有し得る。
「平均直径」という用語は、長さの次元を有するいわゆるZ平均、および無次元である多分散指数(PI)を結果として提供する、いわゆるキュムラントアルゴリズムを使用したデータ分析を伴う動的レーザ光散乱(DLS)によって測定される粒子の平均流体力学的直径を指す(Koppel,D.,J.Chem.Phys.57,1972,pp 4814-4820,ISO 13321)。ここで、粒子の「平均直径」、「直径」または「サイズ」は、このZ平均の値と同義で使用される。
本明細書に記載の核酸粒子は、約0.5未満、約0.4未満、約0.3未満、または約0.2以下の多分散指数を示し得る。例として、核酸粒子は、約0.1~約0.3または約0.2~約0.3の範囲の多分散指数を示し得る。
「多分散指数」は、好ましくは、「平均直径」の定義で言及されているように、いわゆるキュムラント解析による動的光散乱測定に基づいて計算される。特定の前提条件下では、これは、ナノ粒子の集合体のサイズ分布の尺度と見なすことができる。
N/P比は、脂質中の窒素基対核酸、例えばRNA中のリン酸基の数の比を与える。窒素原子(pHに依存する)は通常正に帯電し、リン酸基は負に帯電するので、これは電荷比と相関する。電荷平衡が存在する場合、N/P比はpHに依存する。正に帯電したナノ粒子はトランスフェクションに有利であると考えられているので、脂質製剤は、4より大きく12までのN/P比で形成されることが多い。その場合、RNAはナノ粒子に完全に結合していると見なされる。
様々な種類の核酸含有粒子が微粒子形態の核酸の送達に適することが以前に記載されている(例えばKaczmarek,J.C.et al.,2017,Genome Medicine 9,60)。非ウイルス核酸送達ビヒクルの場合、核酸のナノ粒子封入は、核酸を分解から物理的に保護し、特定の化学的性質に応じて、細胞取り込みおよびエンドソーム脱出を助けることができる。
本開示は、核酸、少なくとも1つのカチオン性もしくはカチオンにイオン化可能な脂質もしくは脂質様物質、および/または核酸と会合して核酸粒子を形成する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む粒子、ならびにそのような粒子を含む組成物を記載する。核酸粒子は、非共有結合相互作用によって様々な形態で粒子に複合体化される核酸を含み得る。本明細書に記載の粒子は、ウイルス粒子、特に感染性ウイルス粒子ではない、すなわち、それらは細胞にウイルス感染することができない。
適切なカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質およびカチオン性ポリマーは、核酸粒子を形成するものであり、「粒子形成成分」または「粒子形成剤」という用語に含まれる。「粒子形成成分」または「粒子形成剤」という用語は、核酸と会合して核酸粒子を形成する任意の成分に関する。そのような成分には、核酸粒子の一部であり得る任意の成分が含まれる。
カチオン性ポリマー
ポリマーは、それらの高度な化学的柔軟性を考慮して、ナノ粒子ベースの送達のために一般的に使用される材料である。典型的には、カチオン性ポリマーは、負に帯電した核酸をナノ粒子に静電的に凝縮するために使用される。これらの正に帯電した基は、多くの場合、5.5~7.5のpH範囲でプロトン化の状態を変化させるアミンからなり、エンドソーム破裂をもたらすイオンの不均衡につながると考えられる。ポリ-L-リジン、ポリアミドアミン、プロタミンおよびポリエチレンイミンなどのポリマー、ならびにキトサンなどの天然に存在するポリマーは全て核酸送達に適用されており、本明細書におけるカチオン性ポリマーとして適している。さらに、一部の研究者は、特に核酸送達のためのポリマーを合成した。ポリ(β-アミノエステル)は、特に、その合成の容易さと生分解性のために核酸送達において広く使用されている。そのような合成ポリマーは、本明細書におけるカチオン性ポリマーとしても適している。
本明細書で使用される「ポリマー」は、その通常の意味、すなわち、共有結合によって連結された1つ以上の繰り返し単位(モノマー)を含む分子構造体という意味を与えられる。繰り返し単位は、全て同一であってもよく、または場合によっては、ポリマー内に2種類以上の繰り返し単位が存在してもよい。場合によっては、ポリマーは生物学的に誘導される、すなわちタンパク質などの生体高分子である。場合によっては、さらなる部分、例えば本明細書に記載されるような標的化部分もポリマー中に存在し得る。
2種類以上の繰り返し単位がポリマー内に存在する場合、そのポリマーは「コポリマー」であると言われる。本明細書で使用されるポリマーはコポリマーであり得ることが理解されるべきである。コポリマーを形成する繰り返し単位は、任意の方法で配置され得る。例えば、繰り返し単位は、ランダムな順序で、交互の順序で、または「ブロック」コポリマーとして、すなわちそれぞれが第1の繰り返し単位(例えば第1のブロック)を含む1つ以上の領域、およびそれぞれが第2の繰り返し単位(例えば第2のブロック)を含む1つ以上の領域、等を含むように配置され得る。ブロックコポリマーは、2つ(ジブロックコポリマー)、3つ(トリブロックコポリマー)、またはそれ以上の数の異なるブロックを有することができる。
いくつかの実施形態では、ポリマーは生体適合性である。生体適合性ポリマーは、典型的には中程度の濃度で有意な細胞死をもたらさないポリマーである。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーは生分解性であり、すなわち、ポリマーは、体内などの生理学的環境内で、化学的および/または生物学的に分解することができる。
いくつかの実施形態では、ポリマーは、プロタミンまたはポリアルキレンイミン、特にプロタミンであり得る。
「プロタミン」という用語は、アルギニンに富み、(魚のような)様々な動物の精子細胞中で体細胞ヒストンの代わりに特にDNAと会合して見出される、比較的低分子量の様々な強塩基性タンパク質のいずれかを指す。特に、「プロタミン」という用語は、強塩基性で、水に可溶性であり、熱によって凝固せず、加水分解時に主にアルギニンを生成する、魚の精子中に見出されるタンパク質を指す。精製形態では、それらは、インスリンの長時間作用型製剤において、ヘパリンの抗凝固作用を中和するために使用される。
本開示によれば、本明細書で使用される「プロタミン」という用語は、天然源または生物源から得られるまたはそれに由来する任意のプロタミンアミノ酸配列およびその断片、および前記アミノ酸配列またはその断片の多量体形態、ならびに人工の、特定の目的のために特別に設計された、天然源または生物源から単離することができない(合成された)ポリペプチドを含むことが意図されている。
いくつかの実施形態では、ポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミンおよび/またはポリプロピレンイミン、好ましくはポリエチレンイミンを含む。好ましいポリアルキレンイミンはポリエチレンイミン(PEI)である。PEIの平均分子量は、好ましくは0.75×10~10Da、好ましくは1,000~10Da、より好ましくは10,000~40,000Da、より好ましくは15,000~30,000Da、さらにより好ましくは20,000~25,000Daである。
本開示によれば、直鎖状ポリエチレンイミン(PEI)などの直鎖状ポリアルキレンイミンが好ましい。
本明細書での使用が企図されるカチオン性ポリマー(ポリカチオン性ポリマーを含む)には、核酸に静電的に結合することができる任意のカチオン性ポリマーが含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書での使用が企図されるカチオン性ポリマーは、例えば核酸と複合体を形成することによって、または核酸が封入もしくはカプセル化されている小胞を形成することによって、核酸が会合することができる任意のカチオン性ポリマーを含む。
本明細書に記載の粒子はまた、カチオン性ポリマー以外のポリマー、すなわち非カチオン性ポリマーおよび/またはアニオン性ポリマーを含み得る。集合的に、アニオン性および中性ポリマーは、本明細書では非カチオン性ポリマーと呼ばれる。
脂質および脂質様物質
「脂質」および「脂質様物質」という用語は、本明細書では、1つ以上の疎水性部分または基、および任意で1つ以上の親水性部分または基も含む分子として広く定義される。疎水性部分および親水性部分を含む分子はまた、しばしば両親媒性物質として示される。脂質は、通常、水に難溶性である。水性環境では、両親媒性の性質は、分子が組織化された構造体と様々な相とに自己集合することを可能にする。それらの相の1つは、それらが水性環境で小胞、多層/単層リポソーム、または膜中に存在する場合、脂質二重層からなる。疎水性は、長鎖飽和および不飽和脂肪族炭化水素基、ならびに1つ以上の芳香族、脂環式、または複素環式基で置換されたそのような基を含むがこれらに限定されない無極性基を含むことによって付与され得る。親水性基は、極性基および/または荷電基を含み得、炭水化物、リン酸基、カルボン酸基、硫酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、および他の同様の基を含む。
本明細書で使用される場合、「両親媒性」という用語は、極性部分と非極性部分の両方を有する分子を指す。多くの場合、両親媒性化合物は、長い疎水性尾部に結合した極性頭部を有する。いくつかの実施形態では、極性部分は水に可溶性であるが、非極性部分は水に不溶性である。さらに、極性部分は、形式正電荷または形式負電荷のいずれを有していてもよい。あるいは、極性部分は、形式正電荷と形式負電荷の両方を有してもよく、双性イオンまたは内部塩であってもよい。本開示の目的のために、両親媒性化合物は、1つ以上の天然または非天然脂質および脂質様化合物であり得るが、これらに限定されない。
「脂質様物質」、「脂質様化合物」または「脂質様分子」という用語は、構造的および/または機能的に脂質に関連するが、厳密な意味で脂質とは見なされ得ない物質、特に両親媒性物質に関する。例えば、この用語は、水性環境で小胞、多層/単層リポソーム、または膜中に存在する場合に両親媒性層を形成することができる化合物を含み、界面活性剤、または親水性部分と疎水性部分の両方を有する合成化合物を含む。一般的に言えば、この用語は、脂質の構造と類似していても類似していなくてもよい、異なる構造組織を有する親水性部分と疎水性部分とを含む分子を指す。細胞膜への自発的な組み込みが可能な脂質様化合物の例としては、合成機能-スペーサ-脂質構築物(FSL)、合成機能-スペーサ-ステロール構築物(FSS)、および人工両親媒性分子などの機能性脂質構築物が挙げられる。脂質は一般に円筒形である。2つのアルキル鎖が占める面積は、極性頭部基が占める面積と同様である。脂質はモノマーとしての溶解度が低く、水不溶性の平面二重層に凝集する傾向がある。従来の界面活性剤モノマーは、一般に円錐形である。親水性頭部基は、直鎖アルキル鎖よりも多くの分子空間を占める傾向がある。界面活性剤は、水溶性の球状または楕円状ミセルに凝集する傾向がある。脂質はまた、界面活性剤と同じ一般構造-極性親水性頭部基および非極性疎水性尾部-を有するが、脂質は、モノマーの形状、溶液中で形成される凝集体の種類、および凝集に必要な濃度範囲において界面活性剤とは異なる。本明細書で使用される場合、「脂質」という用語は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、脂質および脂質様物質の両方を包含すると解釈されるべきである。
両親媒性層に含まれ得る両親媒性化合物の具体的な例としては、リン脂質、アミノ脂質およびスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、両親媒性化合物は脂質である。「脂質」という用語は、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性であることを特徴とする有機化合物の群を指す。一般に、脂質は、8つのカテゴリ:脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、ポリケチド(ケトアシルサブユニットの縮合に由来する)、ステロール脂質およびプレノール脂質(イソプレンサブユニットの縮合に由来する)に分けられ得る。「脂質」という用語は時に脂肪の同義語として使用されるが、脂肪はトリグリセリドと呼ばれる脂質のサブグループである。脂質はまた、脂肪酸およびその誘導体(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、およびリン脂質を含む)などの分子、ならびにコレステロールなどのステロール含有代謝物を包含する。
脂肪酸、または脂肪酸残基は、末端がカルボン酸基である炭化水素鎖からなる多様な分子の群である;この配置は、分子に、極性の親水性末端と水に不溶性の非極性の疎水性末端とを付与する。典型的には4~24炭素長である炭素鎖は、飽和であっても不飽和であってもよく、酸素、ハロゲン、窒素、および硫黄を含む官能基に結合していてもよい。脂肪酸が二重結合を含む場合、シスまたはトランス幾何異性のいずれかの可能性があり、これは分子の立体配置に有意に影響を及ぼす。シス二重結合は脂肪酸鎖を屈曲させ、これは、鎖中のより多くの二重結合と組み合わされる影響である。脂肪酸カテゴリにおける他の主要な脂質クラスは、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドである。
グリセロ脂質は、一置換、二置換、および三置換グリセロールから構成され、最もよく知られているのは、トリグリセリドと呼ばれるグリセロールの脂肪酸トリエステルである。「トリアシルグリセロール」という語は、「トリグリセリド」と同義に使用されることがある。これらの化合物では、グリセロールの3つのヒドロキシル基はそれぞれ、典型的には異なる脂肪酸によってエステル化されている。グリセロ脂質のさらなるサブクラスは、グリコシド結合を介してグリセロールに結合した1つ以上の糖残基の存在を特徴とするグリコシルグリセロールによって代表される。
グリセロリン脂質は、エステル結合によって2つの脂肪酸由来の「尾部」に、およびリン酸エステル結合によって1つの「頭部」基に結合したグリセロールコアを含む両親媒性分子(疎水性領域と親水性領域の両方を含む)である。通常リン脂質と呼ばれる(スフィンゴミエリンもリン脂質として分類されるが)グリセロリン脂質の例は、ホスファチジルコリン(PC、GPChoまたはレシチンとしても公知)、ホスファチジルエタノールアミン(PEまたはGPEtn)およびホスファチジルセリン(PSまたはGPSer)である。
スフィンゴ脂質は、スフィンゴイド塩基骨格という共通の構造的特徴を共有する化合物の複雑なファミリーである。哺乳動物における主要なスフィンゴイド塩基は、一般にスフィンゴシンと呼ばれる。セラミド(N-アシル-スフィンゴイド塩基)は、アミド結合脂肪酸を有するスフィンゴイド塩基誘導体の主要なサブクラスである。脂肪酸は、典型的には、16~26個の炭素原子の鎖長を有する飽和または一不飽和である。哺乳動物の主要なスフィンゴリン脂質はスフィンゴミエリン(セラミドホスホコリン)であるが、昆虫は主にセラミドホスホエタノールアミンを含有し、真菌はフィトセラミドホスホイノシトールおよびマンノース含有頭部基を有する。スフィンゴ糖脂質は、グリコシド結合を介してスフィンゴイド塩基に結合した1つ以上の糖残基から構成される分子の多様なファミリーである。これらの例は、セレブロシドおよびガングリオシドなどの単純なおよび複雑なスフィンゴ糖脂質である。
コレステロールおよびその誘導体、またはトコフェロールおよびその誘導体などのステロール脂質は、グリセロリン脂質およびスフィンゴミエリンと共に膜脂質の重要な成分である。
サッカロ脂質は、脂肪酸が糖骨格に直接連結され、膜二重層と適合性である構造を形成する化合物を表す。サッカロ脂質では、単糖が、グリセロ脂質およびグリセロリン脂質に存在するグリセロール骨格の代わりになる。最もよく知られているサッカロ脂質は、グラム陰性菌のリポ多糖のリピドA成分のアシル化グルコサミン前駆体である。典型的なリピドA分子は、7本もの脂肪アシル鎖で誘導体化されている、グルコサミンの二糖である。大腸菌での増殖に必要な最小限のリポ多糖は、2つの3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソン酸(Kdo)残基でグリコシル化されたグルコサミンのヘキサアシル化二糖である、Kdo2-リピドAである。
ポリケチドは、古典的な酵素、ならびに脂肪酸シンターゼと機構的特徴を共有する反復およびマルチモジュール酵素によるアセチルおよびプロピオニルサブユニットの重合によって合成される。それらは、動物、植物、細菌、真菌および海洋源からの多数の二次代謝物および天然産物を含み、大きな構造的多様性を有する。多くのポリケチドは、その骨格がグリコシル化、メチル化、ヒドロキシル化、酸化、または他のプロセスによってさらに修飾されることが多い環状分子である。
本開示によれば、脂質および脂質様物質は、カチオン性、アニオン性または中性であり得る。中性脂質または脂質様物質は、選択されたpHで非荷電または中性の双性イオン形態で存在する。
カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質
本明細書に記載の核酸粒子は、粒子形成剤として少なくとも1つのカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質を含み得る。本明細書での使用が企図されるカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、核酸に静電的に結合することができる任意のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書での使用が企図されるカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、例えば核酸と複合体を形成することによって、または核酸が封入もしくはカプセル化されている小胞を形成することによって、核酸と会合することができる。
本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」または「カチオン性脂質様物質」は、正味の正電荷を有する脂質または脂質様物質を指す。カチオン性脂質または脂質様物質は、静電相互作用によって負に帯電した核酸に結合する。一般に、カチオン性脂質は、ステロール、アシル鎖、ジアシルまたはそれ以上のアシル鎖などの親油性部分を有し、脂質の頭部基は、典型的には正電荷を担持する。
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質または脂質様物質は、特定のpH、特に酸性pHでのみ正味の正電荷を有するが、好ましくは正味の正電荷を有さず、好ましくは電荷を有さず、すなわち、生理学的pHなどの異なる、好ましくはより高いpHでは中性である。このイオン化可能な挙動は、生理学的pHでカチオン性のままである粒子と比較して、エンドソーム脱出を助け、毒性を低減することによって有効性を高めると考えられる。
本開示の目的のために、そのような「カチオンにイオン化可能な」脂質または脂質様物質は、状況と矛盾しない限り、「カチオン性脂質または脂質様物質」という用語に含まれる。
いくつかの実施形態では、カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、正に帯電しているかまたはプロトン化することができる少なくとも1つの窒素原子(N)を含む頭部基を含む。
カチオン性脂質の例としては、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシプロピルアミン(DODMA)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、2,3-ジ(テトラデコキシ)プロピル-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアザニウム(DMRIE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC)、l,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、および2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-l-プロパナミウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-1-(シス、シス-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-1-(シス、シス-9’,12’-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、2,3-ジリノレオイルオキシ-N,N-ジメチルプロピルアミン(DLinDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、1,2-ジリノレオイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinCDAP)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-XTC2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(DMRIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(シス-9-テトラデセニルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(GAP-DMORIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(GAP-DLRIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(GAP-DMRIE)、N-(2-アミノエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(βAE-DMRIE)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA)、1,2-ジミリストイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DMDAP)、1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DPDAP)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、2,3-ビス(ドデシルオキシ)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アモニウムブロミド(DLRIE)、N-(2-アミノエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)プロパン-1-アミニウムブロミド(DMORIE)、ジ((Z)-ノン-2-エン-1-イル)8,8’-((((2(ジメチルアミノ)エチル)チオ)カルボニル)アザンジイル)ジオクタノエート(ATX)、N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)プロパン-1-アミン(DLDMA)、N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)プロパン-1-アミン(DMDMA)、ジ((Z)-ノン-2-エン-1-イル)-9-((4-(ジメチルアミノブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)、N-ドデシル-3-((2-ドデシルカルバモイル-エチル)-{2-[(2-ドデシルカルバモイル-エチル)-2-{(2-ドデシルカルバモイル-エチル)-[2-(2-ドデシルカルバモイル-エチルアミノ)エチル]-アミノ}-エチルアミノ)プロピオンアミド(リピドイド98N12-5)、1-[2-[ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ]エチル-[2-[4-[2-[ビス(2ヒドロキシドデシル)アミノ]エチル]ピペラジン-1-イル]エチル]アミノ]ドデカン-2-オール(リピドイドC12-200)が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約10モル%~約100モル%、約20モル%~約100モル%、約30モル%~約100モル%、約40モル%~約100モル%、または約50モル%~約100モル%を構成し得る。
さらなる脂質または脂質様物質
本明細書に記載の粒子はまた、カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質以外の脂質または脂質様物質、すなわち非カチオン性脂質または脂質様物質(非カチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質を含む)を含み得る。集合的に、アニオン性および中性脂質または脂質様物質は、本明細書では非カチオン性脂質または脂質様物質と呼ばれる。イオン化可能/カチオン性脂質または脂質様物質に加えて、コレステロールおよび脂質などの他の疎水性部分の添加によって核酸粒子の製剤を最適化することにより、粒子の安定性および核酸送達の有効性を高め得る。
核酸粒子の全体的な電荷に影響を及ぼしても及ぼさなくてもよいさらなる脂質または脂質様物質を組み込み得る。いくつかの実施形態では、さらなる脂質または脂質様物質は、非カチオン性脂質または脂質様物質である。非カチオン性脂質は、例えば、1つ以上のアニオン性脂質および/または中性脂質を含み得る。本明細書で使用される場合、「アニオン性脂質」は、選択されたpHで負に帯電している任意の脂質を指す。本明細書で使用される場合、「中性脂質」は、選択されたpHで非荷電または中性の双性イオン形態で存在するいくつかの脂質種のいずれかを指す。好ましい実施形態では、さらなる脂質は、以下の中性脂質成分、例えば中性脂質成分:(1)リン脂質;(2)コレステロールもしくはその誘導体;または(3)リン脂質とコレステロールもしくはその誘導体との混合物の1つを含む。コレステロール誘導体の例としては、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、トコフェロールおよびそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
使用することができる特定のリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリンまたはスフィンゴミエリンが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなリン脂質としては、特に、ジアシルホスファチジルコリン、例えばジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)およびホスファチジルエタノールアミン、特にジアシルホスファチジルエタノールアミン、例えばジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジラウロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジフィタノイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPyPE)、およびさらに様々な疎水性鎖を有するホスファチジルエタノールアミン脂質が挙げられる。
特定の好ましい実施形態では、さらなる脂質は、DSPC、またはDSPCとコレステロールである。
いくつかの実施形態では、核酸粒子は、カチオン性脂質とさらなる脂質の両方を含む。
理論に拘束されることを望むものではないが、少なくとも1つのさらなる脂質の量と比較した少なくとも1つのカチオン性脂質の量は、電荷、粒径、安定性、組織選択性、および核酸の生物活性などの重要な核酸粒子特性に影響を及ぼし得る。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質対少なくとも1つのさらなる脂質のモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、または約3:1~約1:1である。
いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質、特に中性脂質(例えば1つ以上のリン脂質および/またはコレステロール)は、粒子中に存在する総脂質の約0モル%~約90モル%、約0モル%~約80モル%、約0モル%~約70モル%、約0モル%~約60モル%、または約0モル%~約50モル%を構成し得る。
ポリマーコンジュゲート脂質
いくつかの実施形態では、粒子は、少なくとも1つのポリマーコンジュゲート脂質を含み得る。ポリマーコンジュゲート脂質は、典型的には、脂質部分と、それにコンジュゲートされたポリマー部分とを含む分子である。いくつかの実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質は、本明細書ではペグ化脂質またはPEG脂質とも呼ばれる、PEGコンジュゲート脂質である。
いくつかの実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質は、疎水性脂質層を遮蔽する保護親水性層を形成することによって脂質粒子を立体的に安定化するように設計される。いくつかの実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質は、そのような脂質粒子がインビボで投与される場合、血清タンパク質とのその会合および/または結果として生じる細網内皮系による取り込みを減少させることができる。
様々なPEGコンジュゲート脂質が当技術分野で公知であり、ペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、例えば1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGコハク酸ジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、例えば4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、またはPEGジアルコキシプロピルカルバメート、例えばω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメートもしくは2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ωメトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメートなどが含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、粒子は、その各々の内容全体が本明細書に記載の目的のために参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2017/075531号および国際公開第2018/081480号に記載されているような1つ以上のPEGコンジュゲート脂質またはペグ化脂質を含み得る。
リポプレックス粒子
本開示のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNAは、RNAリポプレックス粒子中に存在し得る。
リポプレックス(LPX)は、一般に、予め形成されたカチオン性脂質リポソームをアニオン性RNAと混合することによって形成される静電複合体である。形成されたリポプレックスは、リポソーム構造からコンパクトなRNA-リポプレックスへの変換に起因して生じる分子の異なる内部配置を有する。これらの製剤は、一般に、核酸の封入が不十分であり、核酸の捕捉が不完全であることを特徴とする。
リポソームは、水性コアを取り囲む単層または多層リン脂質二重層を含む球状小胞である。それらは、極性頭部(親水性)基および非極性尾部(疎水性)基を有する材料から調製される。これらの基間の相互作用は、小胞の形成を誘導する。核酸の送達のために設計されたリポソームを製剤化するのに使用されるカチオン性脂質は、本質的に両親媒性であり、グリセロールを介して炭化水素鎖またはコレステロール誘導体に連結された正電荷(カチオン性)アミン頭部基からなる。
正に帯電したリポソームは、一般に、DOTMAなどのカチオン性脂質、およびDOPEなどのさらなる脂質を使用して合成され得る。いくつかの実施形態では、RNAリポプレックス粒子はナノ粒子である。
いくつかの実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、カチオン性脂質とさらなる脂質の両方を含む。例示的な実施形態では、カチオン性脂質はDOTMAであり、さらなる脂質はDOPEである。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質対少なくとも1つのさらなる脂質のモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、または約3:1~約1:1である。特定の実施形態では、モル比は、約3:1、約2.75:1、約2.5:1、約2.25:1、約2:1、約1.75:1、約1.5:1、約1.25:1、または約1:1であり得る。例示的な実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質対少なくとも1つのさらなる脂質のモル比は、約2:1である。
本明細書に記載のRNAリポプレックス粒子は、いくつかの実施形態では、約200nm~約1000nm、約200nm~約800nm、約250nm~約700nm、約400nm~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。特定の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、約475nm、約500nm、約525nm、約550nm、約575nm、約600nm、約625nm、約650nm、約700nm、約725nm、約750nm、約775nm、約800nm、約825nm、約850nm、約875nm、約900nm、約925nm、約950nm、約975nm、または約1000nmの平均直径を有する。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約250nm~約700nmの範囲の平均直径を有する。別の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約300nm~約500nmの範囲の平均直径を有する。例示的な実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約400nmの平均直径を有する。
RNAリポプレックス粒子は、脂質のエタノール溶液を水または適切な水相に注入することによって得られ得るリポソームを使用して調製され得る。いくつかの実施形態では、水相は酸性pHを有する。いくつかの実施形態では、水相は、例えば約5mMの量の酢酸を含む。リポソームは、リポソームをRNAと混合することによってRNAリポプレックス粒子を調製するために使用され得る。
いくつかの実施形態では、リポソームおよびRNAリポプレックス粒子は、少なくとも1つのカチオン性脂質および少なくとも1つのさらなる脂質を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。いくつかの実施形態では、リポソームおよびRNAリポプレックス粒子は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)および1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。
脂質ナノ粒子(LNP)
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNAは、脂質ナノ粒子(LNP)の形態で存在する。LNPは、1つ以上の核酸分子が結合している、または1つ以上の核酸分子が封入されている粒子を形成することができる任意の脂質を含み得る。
LNPは、典型的には、4つの成分:イオン化可能なカチオン性脂質、リン脂質などの中性脂質、コレステロールなどのステロイド、およびPEG脂質などのポリマーコンジュゲート脂質を含む。LNPは、エタノールに溶解した脂質を水性緩衝液中で核酸と混合することによって調製され得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA LNPにおいて、mRNAは、LNPの中心コアを占めるイオン化可能な脂質によって結合される。PEG脂質は、リン脂質と共にLNPの表面を形成する。いくつかの実施形態では、表面は二重層を含む。いくつかの実施形態では、荷電形態および非荷電形態のコレステロールおよびイオン化可能な脂質は、LNP全体に分布し得る。
いくつかの実施形態では、LNPは、1つ以上のカチオン性脂質および1つ以上の安定化脂質を含む。安定化脂質は、中性脂質およびペグ化脂質を含む。
いくつかの実施形態では、LNPは、カチオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質、および脂質ナノ粒子内に封入された、または脂質ナノ粒子と会合したRNAを含む。
いくつかの実施形態では、LNPは、40~55モル%、40~50モル%、41~50モル%、42~50モル%、43~50モル%、44~50モル%、45~50モル%、46~50モル%、46~49モル%、または約47もしくは48モル%のカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約46.0、46.1、46.2、46.3、46.4、46.5、46.6、46.7、46.8、46.9、47.0、47.1、47.2、47.3、47.4、47.5、47.6、47.7、47.8、47.9、48.0、48.1、48.2、48.3、48.4、48.5、48.6、48.7、48.8、48.9、または49モル%のカチオン性脂質を含む。
いくつかの実施形態では、中性脂質は、5~15モル%、7~13モル%、または9~11モル%の範囲の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、中性脂質は、約10モル%の濃度で存在する。
いくつかの実施形態では、ステロイドは、30~50モル%、35~45モル%または38~43モル%の範囲の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、ステロイドは、約41モル%の濃度で存在する。
いくつかの実施形態では、LNPは、1~10モル%、1~5モル%、または1~2.5モル%のポリマーコンジュゲート脂質を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質は、約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2.0モル%の濃度で存在する。
いくつかの実施形態では、LNPは、45~50モル%のカチオン性脂質;5~15モル%の中性脂質;35~45モル%のステロイド;1~5モル%のポリマーコンジュゲート脂質;および脂質ナノ粒子内に封入された、または脂質ナノ粒子と会合したRNAを含む。
いくつかの実施形態では、モルパーセントは、脂質ナノ粒子中に存在する脂質の総モルに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、モルパーセントは、脂質ナノ粒子中に存在するカチオン性脂質、中性脂質、ステロイドおよびポリマーコンジュゲート脂質の総モルに基づいて決定される。
いくつかの実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、DOPG、DPPG、POPE、DPPE、DMPE、DSPE、およびSMからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、中性脂質はDSPCである。
いくつかの実施形態では、ステロイドはコレステロールである。
いくつかの実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質はペグ化脂質である。いくつかの実施形態では、ペグ化脂質は、以下の構造:
Figure 2024525795000023
またはその薬学的に許容される塩、互変異性体もしくは立体異性体を有し、ここで、
12およびR13は、それぞれ独立して、10~30個の炭素原子を含む直鎖または分岐の飽和または不飽和アルキル鎖であり、アルキル鎖は、1つ以上のエステル結合によって中断されていてもよく、wは、30~60の範囲の平均値を有する。いくつかの実施形態では、R12およびR13は、それぞれ独立して、12~16個の炭素原子を含む直鎖の飽和アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、wは、40~55の範囲の平均値を有する。いくつかの実施形態では、平均wは約45である。いくつかの実施形態では、R12およびR13は、それぞれ独立して、約14個の炭素原子を含む直鎖の飽和アルキル鎖であり、wは約45の平均値を有する。
いくつかの実施形態では、ペグ化脂質は、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミドであるか、またはそれを含む。
いくつかの実施形態では、LNPのカチオン性脂質成分は、式(III):
Figure 2024525795000024
の構造、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体を有し、ここで、
またはLの一方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-または-NRC(=O)O-であり、LまたはLの他方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)O-、-S(O)-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRC(=O)-、-C(=O)NR-、NRC(=O)NR-、-OC(=O)NR-または-NRC(=O)O-または直接結合であり;
またはGは、それぞれ独立して、置換されていないC-C12アルキレンまたはC-C12アルケニレンであり;
は、C-C24アルキレン、C-C24アルケニレン、C-Cシクロアルキレン、C-Cシクロアルケニレンであり;
は、HまたはC-C12アルキルであり;
およびRは、それぞれ独立して、C-C24アルキルまたはC-C24アルケニルであり;
は、H、OR、CN、-C(=O)OR、-OC(=O)Rまたは-NRC(=O)Rであり;
はC-C12アルキルであり;
は、HまたはC-Cアルキルであり;ならびに
xは、0、1または2である。
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、脂質は、以下の構造(IIIA)または(IIIB):
Figure 2024525795000025
または
Figure 2024525795000026
の1つを有し、ここで、
Aは、3~8員のシクロアルキルまたはシクロアルキレン環であり;
は、各存在において、独立してH、OHまたはC-C24アルキルであり;
nは、1~15の範囲の整数である。
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、脂質は構造(IIIA)を有し、他の実施形態では、脂質は構造(IIIB)を有する。
式(III)の他の実施形態では、脂質は、以下の構造(IIIC)または(IIID):
Figure 2024525795000027
または
Figure 2024525795000028
の1つを有し、ここで、yおよびzは、それぞれ独立して、1~12の範囲の整数である。
式(III)の前述の実施形態のいずれかでは、LまたはLの一方は-O(C=O)-である。例えば、いくつかの実施形態では、LおよびLの各々は-O(C=O)-である。前述のいずれかのいくつかの異なる実施形態では、LおよびLは、それぞれ独立して、-(C=O)O-または-O(C=O)-である。例えば、いくつかの実施形態では、LおよびLの各々は-(C=O)O-である。
式(III)のいくつかの異なる実施形態では、脂質は、以下の構造(IIIE)または(IIIF):
Figure 2024525795000029
または
Figure 2024525795000030
の1つを有する。
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、脂質は、以下の構造(IIIG)、(IIIH)、(IIII)、または(IIIJ):
Figure 2024525795000031
Figure 2024525795000032
Figure 2024525795000033
または
Figure 2024525795000034
のうちの1つを有する。
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、nは、2~12、例えば2~8または2~4の範囲の整数である。例えば、いくつかの実施形態では、nは、3、4、5または6である。いくつかの実施形態では、nは3である。いくつかの実施形態では、nは4である。いくつかの実施形態では、nは5である。いくつかの実施形態では、nは6である。
式(III)の前述の実施形態のいくつかの他の実施形態では、yおよびzは、それぞれ独立して、2~10の範囲の整数である。例えば、いくつかの実施形態では、yおよびzは、それぞれ独立して、4~9または4~6の範囲の整数である。
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、R6はHである。前述の実施形態の他の実施形態では、R6はC1-C24アルキルである。他の実施形態では、RはOHである。
式(III)のいくつかの実施形態では、Gは非置換である。他の実施形態では、G3は置換されている。様々な異なる実施形態では、Gは、直鎖C-C24アルキレンまたは直鎖C-C24アルケニレンである。
式(III)のいくつかの他の前述の実施形態では、RもしくはR、またはその両方がC-C24アルケニルである。例えば、いくつかの実施形態では、RおよびRは、それぞれ独立して、以下の構造:
Figure 2024525795000035
を有し、ここで、
7aおよびR7bは、各存在において、独立してHまたはC-C12アルキルであり;ならびに
aは2~12の整数であり、
ここで、R7a、R7bおよびaはそれぞれ、RおよびRがそれぞれ独立して6~20個の炭素原子を含むように選択される。例えば、いくつかの実施形態では、aは、5~9または8~12の範囲の整数である。
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、R7aの少なくとも1つの存在はHである。例えば、いくつかの実施形態では、R7aは、各存在においてHである。前述の実施形態の他の異なる実施形態では、R7bの少なくとも1つの存在はC-Cアルキルである。例えば、いくつかの実施形態では、C-Cアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルまたはn-オクチルである。
式(III)の異なる実施形態では、RもしくはR、またはその両方が、以下の構造:
Figure 2024525795000036
の1つを有する。
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、Rは、OH、CN、-C(=O)OR、-OC(=O)Rまたは-NHC(=O)Rである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルまたはエチルである。
様々な異なる実施形態では、式(III)のカチオン性脂質は、以下の表に示される構造の1つを有する。
式(III)の代表的な化合物。
Figure 2024525795000037
Figure 2024525795000038
Figure 2024525795000039
Figure 2024525795000040
Figure 2024525795000041
Figure 2024525795000042
Figure 2024525795000043
Figure 2024525795000044
様々な脂質(例えば、カチオン性脂質、中性脂質およびポリマーコンジュゲート脂質を含む)が当技術分野で公知であり、本明細書では、脂質ナノ粒子、例えば特定の細胞型(例えば肝細胞)を標的とする脂質ナノ粒子を形成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物に含まれるカチオン性脂質は、((3-ヒドロキシプロピル)アザンジイル)ビス(ノナン-9,1-ジイル)ビス(2-ブチルオクタノエート)またはその誘導体であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物に含まれる中性脂質は、リン脂質またはその誘導体(例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPSC))および/またはコレステロールであり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物に含まれるポリマーコンジュゲート脂質は、PEGコンジュゲート脂質(例えば、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミドまたはその誘導体)であり得る。
いくつかの実施形態では、LNPは、式(III)の脂質、RNA、中性脂質、ステロイドおよびペグ化脂質を含む。いくつかの実施形態では、式(III)の脂質は化合物III-45である。いくつかの実施形態では、中性脂質はDSPCである。いくつかの実施形態では、ステロイドはコレステロールである。いくつかの実施形態では、ペグ化脂質はALC-0159である。
ALC-0159:
Figure 2024525795000045
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、LNP中に約45~約50モル%の量で存在する。いくつかの実施形態では、中性脂質は、LNP中に約5~約15モル%の量で存在する。いくつかの実施形態では、ステロイドは、LNP中に約35~約45モルパーセントの量で存在する。いくつかの実施形態では、ペグ化脂質は、LNP中に約1~約5モル%の量で存在する。
いくつかの実施形態では、LNPは、約45~約50モル%の量の化合物III-45、約5~約15モル%の量のDSPC、約35~約45モル%の量のコレステロール、および約1~約5モル%の量のALC-0159を含む。
いくつかの実施形態では、LNPは、約47または48モル%の量の化合物III-45、約10モル%の量のDSPC、約41モル%の量のコレステロール、および約1.6または1.7モル%の量のALC-0159を含む。
N/P値は、好ましくは少なくとも約4である。いくつかの実施形態では、N/P値は、4~20、4~12、4~10、4~8、または5~7の範囲である。いくつかの実施形態では、N/P値は約6である。
投与されるRNAの実施形態
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物または医療用調製物は、第1のポリペプチド鎖をコードするRNAおよび第2のポリペプチド鎖をコードするRNAを含み、前記第1および第2のポリペプチド鎖は、互いに相互作用して本明細書に記載の結合剤を形成する。同様に、本明細書に記載の方法は、そのようなRNAの投与を含む。いくつかの実施形態では、RNAはインビトロ転写RNAである。
いくつかの実施形態では、RNAはヌクレオシド修飾mRNA(modRNA)である。いくつかの実施形態では、ヌクレオシド修飾メッセンジャRNA(modRNA)原薬の活性成分は、細胞、例えば肝細胞に入ると翻訳される一本鎖mRNAである。いくつかの実施形態では、modRNAは、RNAの最大有効性のために最適化された共通の構造要素(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)尾部)を含む。いくつかの実施形態では、modRNAは、ウリジンの代わりに1-メチルプソイドウリジンを含む。いくつかの実施形態では、5’キャップ構造は、m 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGである。いくつかの実施形態では、5’-UTRおよび3’-UTRは、それぞれ、配列番号8のヌクレオチド配列および配列番号9のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリ(A)尾部は配列番号10の配列を含む。いくつかの実施形態では、インビトロ転写反応中に生成されたdsRNA夾雑物を減少させるために、さらなる精製工程をmodRNAに適用する。
第1のRNAおよび第2のRNAのいくつかの実施形態を以下に記載する。その要素を説明するときに使用される特定の用語は、以下の意味を有する:
5’UTR:翻訳効率を高めるための最適化された「コザック配列」を有するヒトαグロビンmRNAの5’-UTR配列。
sec:secは、新生ポリペプチド鎖の小胞体への移行を誘導する、分泌シグナルペプチド(sec)に対応する。
3’UTR:3’-UTRは、「スプリットのアミノ末端エンハンサ」(AES)mRNA(Fと呼ばれる)およびミトコンドリアコード12SリボソームRNA(Iと呼ばれる)に由来する2つの配列要素の組合せである。これらは、RNAの安定性を付与し、総タンパク質発現を増強する配列のエクスビボ選択プロセスによって同定された。
ポリA:30個のアデノシン残基のストレッチ、それに続く10個のヌクレオチドのリンカー配列、ならびに樹状細胞におけるRNAの安定性および翻訳効率を高めるように設計された別の70個のアデノシン残基からなる、110ヌクレオチド長と測定されるポリ(A)尾部。
VH(aCD3):CD3に特異性を有する免疫グロブリンの重鎖の可変領域
VL(aCD3):CD3に特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖の可変領域
CH1:免疫グロブリンの重鎖の定常領域1
CL:免疫グロブリンの軽鎖の定常領域
VH(aCLDN6):CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンの重鎖の可変領域
VL(aCLDN6):CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンの軽鎖の可変領域
RBP022.1(配列番号4;配列番号5)-「第1のRNA」の実施形態
キャップ1(m 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApG)-5’UTR-sec-VH(aCD3)-CH1-VH(aCLDN6)-VL(aCLDN6)-3UTR-ポリA
RBP021.1(配列番号6;配列番号7)-「第2のRNA」の実施形態
キャップ1(m 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApG)-5’UTR-sec-VL(aCD3)-CL-VH(aCLDN6)-VL(aCLDN6)-3’UTR-ポリA
RBP022.1およびRBP021.1のヌクレオチド配列
ヌクレオチド配列は、太字で表示される個々の配列要素で示されている。さらに、翻訳されたタンパク質の配列は、コードヌクレオチド配列の下にイタリック体で示されている(*=終止コドン)。
Figure 2024525795000046
Figure 2024525795000047
Figure 2024525795000048
Figure 2024525795000049
Figure 2024525795000050
Figure 2024525795000051
Figure 2024525795000052
Figure 2024525795000053
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第1のRNAは、配列番号5のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第2のRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列を含む。
本明細書に記載のRNAは、好ましくは脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化される。いくつかの実施形態では、LNPは、カチオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質、およびRNAを含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質はALC-0366であり、中性脂質はDSPCであり、ステロイドはコレステロールであり、ポリマーコンジュゲート脂質はALC-0159である。好ましい投与方法は静脈内投与である。
いくつかの実施形態では、製剤は、以下に示す成分を含む:
Figure 2024525795000054
いくつかの実施形態では、製剤は、以下に示す成分を、好ましくは以下に示す割合または濃度で含む:
Figure 2024525795000055
ALC-0366、((3-ヒドロキシプロピル)アザンジイル)ビス(ノナン-9,1-ジイル)ビス(2-ブチルオクタノエート);
ALC-0159、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド;
DSPC=1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;DS=原薬;Ph.Eur.=ヨーロッパ薬局方;q.s.=必要量(十分であり得る量);USP-NF=米国薬局方および国民医薬品集
いくつかの実施形態では、mRNA対総脂質の比(N/P)は、6.0~6.5、例えば約6.0または約6.3である。
医薬組成物
本明細書に記載の薬剤は、医薬組成物または医薬品で投与されてもよく、任意の適切な医薬組成物の形態で投与されてもよい。
医薬組成物が本明細書に記載の第1のRNAおよび第2のRNAを含むいくつかの実施形態では、そのような第1のRNAおよび第2のRNAは、約3:1~約1:3のモル比で、またはいくつかの実施形態では約2:1~約1:2のモル比で、またはいくつかの実施形態では約1.5:1~約1:1.5のモル比で存在し得る。いくつかの実施形態では、そのような第1のRNAおよび第2のRNAは、約3:1~約1:1のモル比で、またはいくつかの実施形態では約2:1~約1:1のモル比で、またはいくつかの実施形態では約1.5:1のモル比で存在し得る。
医薬組成物が本明細書に記載の第1のRNAおよび第2のRNAを含むいくつかの実施形態では、そのような第1のRNAおよび第2のRNAは、約3:1~約1:3の重量(w/w)比で、またはいくつかの実施形態では約2:1~約1:2の(w/w)比で、またはいくつかの実施形態では約1.5:1~約1:1.5の(w/w)比で存在し得る。いくつかの実施形態では、そのような第1のRNAおよび第2のRNAは、約3:1~約1:1の(w/w)比で、またはいくつかの実施形態では約2:1~約1:1の(w/w)比で、またはいくつかの実施形態では約1.75:1~約1.25:1の(w/w)比で、またはいくつかの実施形態では約1.75:1~約1.5:1の(w/w)比で、またはいくつかの実施形態では約1.5:1~約1.25:1の(w/w)比で、またはいくつかの好ましい実施形態では約1.5:1の(w/w)比で存在し得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、対象における癌を治療するための組成物である。
本発明の全ての態様のいくつかの実施形態では、結合剤をコードするRNAなどの本明細書に記載の成分は、薬学的に許容される担体を含み得、任意で1つ以上のアジュバント、安定剤などを含み得る医薬組成物で投与され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、治療的または予防的処置のため、例えば癌を治療または予防にするのに使用するためのものである。
「医薬組成物」という用語は、治療上有効な薬剤を、好ましくは薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と共に含む製剤に関する。上記医薬組成物は、前記医薬組成物を対象に投与することによって疾患または障害を治療する、予防する、またはその重症度を低下させるのに有用である。医薬組成物は、当技術分野では医薬製剤としても公知である。
本開示による医薬組成物は、一般に、「薬学的有効量」および「薬学的に許容される調製物」で適用される。
「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
「薬学的有効量」または「治療有効量」という用語は、単独でまたはさらなる用量と共に所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅らせること、特に疾患の進行を中断するまたは逆転させることを含む。疾患の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の予防であり得る。本明細書に記載の組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズおよび体重を含む患者の個々のパラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路ならびに同様の因子に依存する。したがって、本明細書に記載の組成物の投与される用量は、そのような様々なパラメータに依存し得る。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(または異なる、より局所的な投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用し得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物の各用量または累積用量は、CLDN6標的化結合剤をコードするRNAを0.05μg/kg以上の量、例えば0.05μg/kg~5mg/kg、または0.05μg/kg~500μg/kg、または0.5μg/kg~500μg/kg、または1μg/kg~50μg/kg、または5μg/kg~150μg/kg、または15μg/kg~150μg/kgの範囲内の量で含み得、ここで、kgは治療される対象の体重kgを指す。当業者には明らかなように、本明細書に開示される結合剤は、それぞれが別個のRNAによってコードされる2つのポリペプチドを含むので、示される量は、第1および第2のポリペプチド鎖をコードするRNAの累積量に関する。好ましくは、各用量または累積用量は、5μg/kg~150μg/kg、または15μg/kg~150μg/kgの総量で第1および第2のポリペプチド鎖をコードするRNAの混合物を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、CLDN6に対する結合剤をコードする本明細書に記載のRNA(例えばmRNA)を送達して、約0.05ng/mL以上の結合剤のレベル(例えば血漿レベルおよび/または組織レベル)を達成するために投与される。
いくつかの実施形態では、投与は単回用量のみを含み得る。いくつかの実施形態では、投与は、固定数の用量の適用を含み得る。いくつかの実施形態では、投与は、間欠的(例えば、時間的に分離された複数の用量)および/または周期的(例えば、共通の期間によって分離された個々の用量)投与である投与を含み得る。いくつかの実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間の連続投与(例えば灌流)を含み得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、CLDN6陽性癌、例えばCLDN6陽性固形腫瘍に罹患している対象に、少なくとも1回以上(例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、またはそれ以上を含む)の投与サイクルで投与される。いくつかの実施形態では、各投与サイクルは、3週間の投与サイクルであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、投与サイクル当たり少なくとも1回の投与で投与される。いくつかの実施形態では、投与サイクルは、投与の設定された数および/またはパターンの投与を含む;いくつかの実施形態では、投与サイクルは、例えば特定の期間にわたって、ならびに任意で、例えば設定された間隔(1つ以上)でおよび/または設定されたパターンに従って投与され得る複数回投与を介して、設定された累積用量を投与することを含む。
当業者は、癌治療薬がしばしば投与サイクルで投与されることを認識している。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、1回以上の投与サイクルで投与される。
いくつかの実施形態では、1回の投与サイクルは、少なくとも3日間以上(例えば、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも16日間、少なくとも17日間、少なくとも18日間、少なくとも19日間、少なくとも20日間、少なくとも21日間、少なくとも22日間、少なくとも23日間、少なくとも24日間、少なくとも25日間、少なくとも26日間、少なくとも27日間、少なくとも28日間、少なくとも29日間、少なくとも30日間を含む)である。
いくつかの実施形態では、1回の投与サイクルは、例えば、用量がサイクル内で毎日投与され得る、または用量がサイクル内で2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごとに投与され得るなどのパターンに従った、複数回投与を含み得る。
いくつかの実施形態では、複数サイクルが投与され得る。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも2サイクル(例えば、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも5サイクル、少なくとも6サイクル、少なくとも7サイクル、少なくとも8サイクル、少なくとも9サイクル、少なくとも10サイクル、またはそれ以上を含む)を投与することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも3~8回の投与サイクルが投与され得る。
いくつかの実施形態では、サイクル間に「休薬期間」が存在し得る;いくつかの実施形態では、サイクル間に休薬期間が存在しなくてもよい。いくつかの実施形態では、サイクル間に休薬期間が存在する場合もあり、休薬期間が存在しない場合もある。
本開示の医薬組成物は、塩、緩衝剤、防腐剤および任意で他の治療薬を含有し得る。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含む。
本開示の医薬組成物で使用するための適切な防腐剤には、限定されないが、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールが含まれる。
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、本開示の医薬組成物中に存在し得るが、活性成分ではない物質を指す。賦形剤の例としては、限定されないが、担体、結合剤、希釈剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤または着色剤が挙げられる。
「希釈剤」という用語は、希釈するおよび/または希薄にする薬剤に関する。さらに、「希釈剤」という用語は、流体、液体または固体の懸濁液および/または混合媒体のいずれか1つ以上を含む。適切な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロールおよび水が挙げられる。
「担体」という用語は、医薬組成物の投与を容易にする、増強するまたは可能にするために活性成分が組み合わされる、天然、合成、有機、無機であり得る成分を指す。本明細書で使用される担体は、対象への投与に適した1つ以上の適合性の固体もしくは液体充填剤、希釈剤または封入物質であり得る。適切な担体としては、限定されないが、滅菌水、リンゲル、乳酸リンゲル、滅菌塩化ナトリウム溶液、等張食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は等張食塩水を含む。
治療的使用のための薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R Gennaro edit.1985)に記載されている。
医薬担体、賦形剤または希釈剤は、意図される投与経路および標準的な製薬慣行に関して選択することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、いくつかの実施形態では、特定の条件下でそのような組成物の安定性を高め得る1つ以上の添加剤をさらに含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、いくつかの実施形態では1つ以上の塩(例えばナトリウム塩)を含み得る凍結保護剤(例えばスクロース)および/または水性緩衝液をさらに含み得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内、動脈内、皮下、皮内または筋肉内に投与され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、局所投与または全身投与用に製剤化される。全身投与は、消化管を介した吸収を含む経腸投与、または非経口投与を含み得る。本明細書で使用される場合、「非経口投与」は、静脈内注射などによる、消化管を介する以外の任意の方法での投与を指す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、全身投与用、例えば静脈内投与用に製剤化される。
本明細書で使用される「同時投与」という用語は、異なる化合物または組成物が同じ患者に投与されるプロセスを意味する。異なる化合物または組成物は、同時に、本質的に同時に、または連続的に投与され得る。
本明細書に記載の薬剤および治療の効果
本明細書に記載の治療は、標的細胞上に免疫エフェクタ機能、例えばT細胞媒介エフェクタ機能をもたらし得、これは標的細胞の死滅をもたらし得る。いくつかの実施形態では、本発明の文脈におけるエフェクタ機能は、細胞傷害性CD4+および/またはCD8+リンパ球(CTL)の活性化、ならびに標的細胞、すなわち、例えばアポトーシスまたはパーフォリン媒介アポトーシスおよび細胞溶解を介した抗原、すなわちCLDN6の発現を特徴とする細胞の排除、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生、ならびに抗原発現標的細胞の特異的細胞傷害を含む。
活性化されると、細胞傷害性リンパ球は標的細胞の破壊を引き起こし得る。例えば、細胞傷害性T細胞は、以下の手段のいずれかまたは両方によって標的細胞の破壊を引き起こし得る。まず、活性化すると、T細胞は、パーフォリン、グランザイム、およびグラニュライシンなどの細胞毒を放出する。パーフォリンおよびグラニュライシンは標的細胞に細孔を作り、グランザイムは細胞に進入し、細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導する細胞質のカスパーゼカスケードを引き起こす。第2に、アポトーシスは、T細胞と標的細胞との間のFas-Fasリガンド相互作用を介して誘導され得る。
いくつかの実施形態では、癌細胞によって発現されるCLDN6に特異的な2つの結合ドメインおよびT細胞によって発現されるCD3に特異的な結合ドメインを含む本明細書に記載の結合剤は、CD3を発現するT細胞の細胞傷害効果を、CLDN6を発現する癌細胞に標的化する。いくつかの実施形態では、T細胞上のCD3への結合剤の結合は、T細胞の増殖および/または活性化をもたらす。いくつかの実施形態では、T細胞は、細胞傷害性因子、例えばパーフォリンおよびグランザイムを放出し、癌細胞の細胞溶解およびアポトーシスを開始させる。いくつかの実施形態では、結合剤は、CLDN6を発現する癌細胞に対するT細胞媒介性細胞傷害を誘導する。いくつかの実施形態では、結合剤は、本明細書に記載の免疫エフェクタ機能を誘発する。いくつかの実施形態では、前記免疫エフェクタ機能は、その表面に腫瘍関連抗原CLDN6を担持する細胞に向けられる。
いくつかの実施形態では、癌細胞(1つ以上)は、膀胱癌、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌または非扁平上皮型の非小細胞肺癌(NSCLC)、胃癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎臓癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎児性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および胎児性精巣癌、子宮癌、奇形癌または胎児性癌などの胚細胞腫瘍、特に精巣の胚細胞腫瘍、ならびにその転移形態からなる群より選択される癌に由来する。
本明細書で使用される場合、「免疫応答」は、抗原または抗原を発現する細胞に対する統合された身体応答を指し、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を指す。免疫系は、最も重要な自然免疫系と、それぞれが体液性成分および細胞性成分を含む脊椎動物の獲得免疫系または適応免疫系とに分けられる。
「細胞媒介性免疫」、「細胞性免疫」、「細胞性免疫応答」、または同様の用語は、抗原の発現を特徴とする、特にクラスIまたはクラスII MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞に対する細胞応答を含むことが意図されている。細胞応答は、免疫エフェクタ細胞、特に「ヘルパー」または「キラー」のいずれかとして働くT細胞またはTリンパ球と呼ばれる細胞に関する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも呼ばれる)は、免疫応答を調節することによって中心的な役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞とも呼ばれる)は、ウイルス感染細胞などの疾患細胞を死滅させ、さらなる疾患細胞の産生を防止する。
本発明の文脈における「免疫エフェクタ細胞」または「免疫反応性細胞」という用語は、免疫反応中にエフェクタ機能を発揮する細胞に関する。例えば、免疫エフェクタ細胞は、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、および樹状細胞を含む。好ましくは、本発明の文脈において、「免疫エフェクタ細胞」は、T細胞、好ましくはCD4+および/またはCD8+T細胞、最も好ましくはCD8+T細胞である。本発明によれば、「免疫エフェクタ細胞」という用語はまた、適切な刺激で免疫細胞(T細胞、特にTヘルパー細胞、または細胞溶解性T細胞など)に成熟することができる細胞を含む。免疫エフェクタ細胞は、CD34+造血幹細胞、未成熟および成熟T細胞ならびに未成熟および成熟B細胞を含む。T細胞前駆体の細胞溶解性T細胞への分化は、抗原に曝露された場合、免疫系のクローン選択に類似する。
「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、本明細書では互換的に使用され、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL)を含むが、これらに限定されない。
T細胞は、リンパ球として公知の白血球の群に属し、細胞性免疫において中心的な役割を果たす。これらは、T細胞受容体(TCR)と呼ばれるこれらの細胞表面上の特別な受容体の存在によって、B細胞およびナチュラルキラー細胞などの他のリンパ球型と区別することができる。胸腺は、T細胞の成熟に関与する主要な器官である。T細胞のいくつかの異なるサブセットが発見されており、それぞれが異なる機能を有する。
Tヘルパー細胞は、数ある機能の中でも特に、B細胞の形質細胞への成熟ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む免疫学的プロセスにおいて他の白血球を補助する。これらの細胞は、その表面にCD4糖タンパク質を発現するので、CD4+T細胞としても公知である。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面に発現されるMHCクラスII分子によってペプチド抗原と共に提示された場合に活性化される。活性化されると、これらは速やかに分裂し、能動免疫応答を調節または補助するサイトカインと呼ばれる小さなタンパク質を分泌する。
細胞傷害性T細胞は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊し、移植拒絶反応にも関与する。これらの細胞は、その表面にCD8糖タンパク質を発現するので、CD8+T細胞としても公知である。これらの細胞は、身体のほぼあらゆる細胞の表面に存在する、MHCクラスIに関連する抗原に結合することによってそれらの標的を認識する。
T細胞の大部分は、いくつかのタンパク質の複合体として存在するT細胞受容体(TCR)を有する。T細胞のTCRは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合し、標的細胞の表面に提示される免疫原性ペプチド(エピトープ)と相互作用することができる。TCRの特異的結合は、T細胞内のシグナルカスケードを誘発し、増殖および成熟エフェクタT細胞への分化をもたらす。実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体アルファおよびベータ(TCRαおよびTCRβ)遺伝子から産生され、α-TCR鎖およびβ-TCR鎖と呼ばれる2つの別個のペプチド鎖から構成される。γδ T細胞(ガンマデルタT細胞)は、その表面に異なるT細胞受容体(TCR)を有するT細胞の小さなサブセットである。しかし、γδ T細胞では、TCRは1本のγ鎖と1本のδ鎖で構成される。このT細胞の群は、αβ T細胞よりもはるかにまれである(全T細胞の2%)。
「体液性免疫」または「体液性免疫応答」は、分泌抗体、補体タンパク質、および特定の抗菌ペプチドなどの細胞外液に見出される高分子によって媒介される免疫の態様である。これは、細胞媒介性免疫とは対照的である。抗体が関与するその態様は、しばしば抗体媒介性免疫と呼ばれる。
「マクロファージ」という用語は、単球の分化によって産生される食細胞のサブグループを指す。炎症、免疫サイトカインまたは微生物産物によって活性化されるマクロファージは、マクロファージ内の外来病原体を、病原体の分解をもたらす加水分解および酸化攻撃によって非特異的に貪食し、死滅させる。分解されたタンパク質由来のペプチドは、マクロファージ細胞表面に提示され、そこでT細胞によって認識され得、B細胞表面の抗体と直接相互作用して、T細胞およびB細胞の活性化ならびに免疫応答のさらなる刺激をもたらすことができる。マクロファージは抗原提示細胞のクラスに属する。いくつかの実施形態では、マクロファージは脾臓マクロファージである。
「樹状細胞」(DC)という用語は、抗原提示細胞のクラスに属する食細胞の別のサブタイプを指す。いくつかの実施形態では、樹状細胞は、造血骨髄前駆細胞に由来する。これらの前駆細胞は、最初に未成熟な樹状細胞に変わる。これらの未成熟細胞は、高い食作用活性と低いT細胞活性化能とを特徴とする。未成熟な樹状細胞は、ウイルスおよび細菌などの病原体について周囲環境を絶えずサンプリングする。それらは、提示可能な抗原と接触すると、活性化されて成熟樹状細胞となり、脾臓またはリンパ節に移動し始める。未成熟樹状細胞は病原体を貪食し、それらのタンパク質を小さな断片に分解し、成熟すると、MHC分子を使用してそれらの細胞表面にそれらの断片を提示する。同時に、それらは、CD80、CD86およびCD40などのT細胞活性化における共受容体として機能する細胞表面受容体を上方制御し、T細胞を活性化するそれらの能力を大幅に増強する。それらはまた、樹状細胞が血流を通って脾臓に、またはリンパ系を通ってリンパ節に移動するように誘導する走化性受容体であるCCR7を上方制御する。ここで、それらは抗原提示細胞として働き、非抗原特異的共刺激シグナルと共に抗原を提示することによってヘルパーT細胞およびキラーT細胞ならびにB細胞を活性化する。したがって、樹状細胞は、T細胞またはB細胞に関連する免疫応答を能動的に誘導することができる。いくつかの実施形態では、樹状細胞は脾臓樹状細胞である。
「抗原提示細胞」(APC)という用語は、少なくとも1つの抗原または抗原断片をその細胞表面上に(またはその細胞表面で)表示、獲得、および/または提示することができる様々な細胞の1つである。抗原提示細胞は、プロフェッショナル抗原提示細胞と非プロフェッショナル抗原提示細胞とに区別することができる。
「プロフェッショナル抗原提示細胞」という用語は、ナイーブT細胞との相互作用に必要な主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCクラスII)分子を構成的に発現する抗原提示細胞に関する。T細胞が抗原提示細胞の膜上のMHCクラスII分子複合体と相互作用する場合、抗原提示細胞は、T細胞の活性化を誘導する共刺激分子を産生する。プロフェッショナル抗原提示細胞は、樹状細胞およびマクロファージを含む。
「非プロフェッショナル抗原提示細胞」という用語は、MHCクラスII分子を構成的に発現しないが、インターフェロンガンマなどの特定のサイトカインによる刺激を受けると発現する抗原提示細胞に関する。例示的な非プロフェッショナル抗原提示細胞としては、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵臓ベータ細胞または血管内皮細胞が挙げられる。
「抗原プロセシング」は、抗原の、前記抗原の断片であるプロセシング産物への分解(例えばタンパク質のペプチドへの分解)、および抗原提示細胞などの細胞による特異的T細胞への提示のためのMHC分子とこれらの断片の1つ以上との会合(例えば結合による)を指す。
本明細書で使用される「活性化」または「刺激」は、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されたT細胞などの免疫エフェクタ細胞の状態を指す。活性化はまた、シグナル伝達経路の開始、サイトカイン産生の誘導、および検出可能なエフェクタ機能に関連し得る。「活性化免疫エフェクタ細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を受けている免疫エフェクタ細胞を指す。
「プライミング」という用語は、T細胞などの免疫エフェクタ細胞がその特異的抗原と最初に接触し、エフェクタT細胞などのエフェクタ細胞への分化を引き起こすプロセスを指す。
「クローン拡大」または「拡大」という用語は、特定の実体が増加するプロセスを指す。本開示の文脈において、この用語は、好ましくは、免疫エフェクタ細胞が刺激され、増殖し、特定の免疫エフェクタ細胞が増幅される免疫学的応答に関連して使用される。好ましくは、クローン拡大は免疫エフェクタ細胞の分化をもたらす。
治療
本発明は、対象において、本明細書に記載の疾患または障害、特にCLDN6陽性癌などのCLDN6の発現に関連する疾患を治療または予防するための方法および薬剤を提供する。本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の結合剤をコードするRNAを含む有効量の組成物を投与することを含み得る。
抗原に言及する場合の「発現に関連する疾患」という用語は、抗原に関係する任意の疾患、例えば抗原の存在を特徴とする疾患を指す。抗原は、腫瘍関連抗原、例えばCLDN6などの疾患関連抗原であり得る。いくつかの実施形態では、抗原の発現に関連する疾患は、好ましくは細胞表面に抗原を発現する細胞が関与する疾患である。
本発明の治療化合物または治療組成物は、疾患もしくは障害に罹患しているか、または疾患もしくは障害を発症するリスクがある(もしくは発症しやすい)対象に、予防的に(すなわち、疾患または障害を予防するために)または治療的に(すなわち、疾患または障害を治療するために)投与され得る。そのような対象は、標準的な臨床方法を用いて同定され得る。本発明の文脈において、予防的投与は、疾患または障害が予防されるか、あるいはその進行が遅延されるように、疾患の明白な臨床症状の発現の前に行われる。医学の分野の文脈において、「予防する」という用語は、疾患による死亡または罹患の負担を軽減する任意の活性を包含する。予防は、一次、二次および三次予防レベルで行うことができる。一次予防は疾患の発症を回避するが、二次および三次レベルの予防は、機能を回復させ、疾患関連合併症を減少させることによって、疾患の進行および症状の出現を予防すること、ならびに既に確立された疾患の悪影響を減少させることを目的とした活動を包含する。
いくつかの実施形態では、本発明の薬剤または組成物の投与は、単回投与によって実施され得るか、または複数回投与によってブーストされ得る。
「疾患」という用語は、個体の身体に影響を及ぼす異常な状態を指す。疾患はしばしば、特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、感染症などの外部源に由来する因子によって引き起こされ得るか、または自己免疫疾患などの内部機能不全によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」はしばしば、罹患した個体に疼痛、機能不全、窮迫、社会的問題、もしくは死亡を引き起こす、または個体と接触するものに対して同様の問題を引き起こす状態を指すためにより広く使用される。このより広い意味では、疾患は時に、損傷、身体障害、障害、症候群、感染、孤立した症状、逸脱した挙動、ならびに構造および機能の非定型の変化を含む場合があるが、他の状況および他の目的では、これらは区別可能なカテゴリと見なされ得る。多くの疾患を患い、それらと共に生活することは、人生観および人格を変える可能性があるため、疾患は通常、身体的だけでなく感情的にも個体に影響を及ぼす。
本明細書で使用される場合、「疾患」という用語は、癌、特に本明細書に記載の癌の形態を含む。本明細書における癌または癌の特定の形態への言及は、その癌転移も含む。いくつかの実施形態では、本出願に従って治療される疾患は、CLDN6を発現する細胞に関連する。
「CLDN6を発現する細胞に関連する疾患」または同様の表現は、本発明によれば、CLDN6が疾患組織または器官の細胞で発現されることを意味する。いくつかの実施形態では、疾患組織または器官の細胞におけるCLDN6の発現は、健康な組織または器官における状態と比較して増加している。増加は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1,000%、少なくとも10,000%またはさらにそれ以上の増加を指す。いくつかの実施形態では、発現は罹患組織でのみ見出され、健常組織での発現は抑制されている。本発明によれば、CLDN6を発現する細胞に関連する疾患には、癌疾患が含まれる。さらに、本発明によれば、癌疾患は、好ましくは、癌細胞がCLDN6を発現するものである。
本明細書で使用される場合、「癌疾患」または「癌」は、異常に制御された細胞成長、増殖、分化、接着、および/または遊走を特徴とする疾患を含む。「腫瘍細胞」とは、急速で制御されない細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常細胞を意味する。好ましくは、「癌疾患」は、CLDN6を発現する細胞を特徴とし、癌細胞はCLDN6を発現する。CLDN6を発現する細胞は、好ましくは癌細胞、好ましくは本明細書に記載の癌の癌細胞である。
本発明による「癌」という用語には、白血病、セミノーマ、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸癌、肝臓癌、結腸癌、胃癌、腸癌、頭頸部癌、消化器癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、鼻咽喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌、ならびにそれらの転移が含まれる。それらの例は、肺癌腫、乳房癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、腎細胞癌腫、子宮頸癌腫、または上記の癌型もしくは腫瘍の転移である。本発明による癌という用語は、癌転移も含む。
本発明によれば、「癌腫」は、上皮細胞に由来する悪性腫瘍である。この群は、乳癌、前立腺癌、肺癌および結腸癌の一般的な形態を含む、最も一般的な癌である。
「腺癌」は、腺組織に由来する癌である。この組織はまた、上皮組織として知られるより大きな組織カテゴリの一部である。上皮組織には、皮膚、腺、ならびに体腔および身体の器官の内側を覆う様々な他の組織が含まれる。上皮は、発生学的には外胚葉、内胚葉および中胚葉に由来する。腺癌として分類されるために、細胞は、分泌特性を有する限り、必ずしも腺の一部である必要はない。この形態の癌腫は、ヒトを含む一部の高等哺乳動物で発生し得る。十分に分化した腺癌は、それらが由来する腺組織に類似する傾向があるが、十分に分化していないものはその傾向がない場合もある。生検から細胞を染色することによって、病理学者は、腫瘍が腺癌であるかまたは何らかの他の種類の癌であるかを決定する。腺癌は、体内の腺の遍在性のために、身体の多くの組織で発生し得る。各腺は同じ物質を分泌していない可能性があるが、細胞への外分泌機能がある限り、腺と見なされ、したがってその悪性形態は腺癌と命名される。悪性腺癌は他の組織に浸潤し、転移するのに十分な時間があれば転移することが多い。卵巣腺癌は、最も一般的な種類の卵巣癌である。これには、漿液性および粘液性腺癌、明細胞腺癌ならびに類内膜腺癌が含まれる。
「転移」とは、癌細胞がその元の部位から身体の別の部分に広がることを意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発性腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、体腔および血管に入るための内皮基底膜の貫通、次いで血液によって輸送された後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位における新しい腫瘍の成長は血管新生に依存する。腫瘍転移は、腫瘍細胞または成分が残存し、転移能を発現し得るので、原発性腫瘍の除去後でさえもしばしば起こる。いくつかの実施形態では、本発明による「転移」という用語は、原発性腫瘍および所属リンパ節系から離れた転移に関する「遠隔転移」に関する。いくつかの実施形態では、本発明による「転移」という用語は、リンパ節転移に関する。本発明の治療を用いて治療可能な転移の1つの特定の形態は、原発部位として胃癌に由来する転移である。好ましい実施形態では、そのような胃癌転移は、クルーケンベルグ腫瘍、腹膜転移および/またはリンパ節転移である。
本明細書で使用される場合、「切除不能腫瘍」という用語は、典型的には、健全な医学的判断に従って、腫瘍が手術によって安全に(例えば、対象に過度の害を与えることなく)除去することができないことを示すと考えられる1つ以上の特徴によって特徴付けられる腫瘍、および/または適格な医療専門家が、腫瘍除去の対象に対するリスクがそのような除去に関連する利益を上回ると判断した腫瘍を指す。いくつかの実施形態では、切除不能腫瘍は、必須の器官もしくは組織(再建可能でない可能性がある血管を含む)に関与し、かつ/もしくはその中に成長した腫瘍、ならびに/または1つ以上の他の重要なもしくは必須の器官および/もしくは組織(血管を含む)に対する損傷の不当な危険性を伴わずに外科的に容易にアクセスすることができない場所にある腫瘍を指す。いくつかの実施形態では、腫瘍の「切除不能性」は、マージン陰性(R0)切除を達成する可能性を指す。膵臓癌に関連して、上腸間膜動脈(SMA)または腹腔動脈などの腫瘍による大血管のエンケースメント、門脈閉塞、および腹腔または傍大動脈リンパ節症の存在が、一般に、R0手術を不可能にする所見として認められている。当業者は、腫瘍が切除不能であるか否かを決定するパラメータを理解するであろう。
「標的細胞」とは、癌細胞などの望ましくない細胞を意味する。好ましい実施形態では、標的細胞はCLDN6を発現する。
いくつかの実施形態では、CLDN6陽性癌は、CLDN6陽性の進行性固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、CLDN6陽性癌は、特に臨床的利益を与える可能性が高い利用可能な標準治療がない、進行性/転移性CLDN6陽性卵巣癌、非扁平上皮型の非小細胞肺癌(NSCLC)、子宮内膜癌および精巣癌からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、CLDN6陽性癌は、まれな腫瘍および未知の原発性の癌を含む、特定不能(NOS)腫瘍を含む。そのような癌は、CLDN6発現について試験することができる。
いくつかの実施形態では、CLDN6陽性癌は、膀胱癌、卵巣癌、特に卵巣腺癌および卵巣奇形癌、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌、特に扁平上皮肺癌および腺癌または非扁平上皮型の非小細胞肺癌(NSCLC)、胃癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、特に基底細胞癌および扁平上皮癌、悪性黒色腫、頭頸部癌、特に悪性多形腺腫、肉腫、特に滑膜肉腫および癌肉腫、胆管癌、膀胱癌、特に移行上皮癌および乳頭癌、腎臓癌、特に腎明細胞癌および乳頭状腎細胞癌を含む腎細胞癌、結腸癌、回腸の癌を含む小腸癌、特に小腸腺癌および回腸の腺癌、精巣胎児性癌、胎盤絨毛癌、子宮頸癌、精巣癌、特に精巣セミノーマ、精巣奇形腫および胎児性精巣癌、子宮癌、奇形癌または胎児性癌などの胚細胞腫瘍、特に精巣の胚細胞腫瘍、ならびにその転移形態からなる群より選択される。
本文脈において、「治療」、「治療する」または「治療介入」という用語は、疾患または障害などの状態と闘うことを目的とした対象の管理およびケアに関する。この用語は、症状もしくは合併症を緩和するため、疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を緩和もしくは軽減するため、ならびに/または疾患、障害もしくは状態を治癒もしくは排除するため、ならびに状態を予防するための治療上有効な化合物の投与などの、対象が罹患している所与の状態に対するあらゆる範囲の治療を含むことが意図されており、予防は、疾患、状態または障害と闘うことを目的とした個体の管理およびケアとして理解されるべきであり、症状または合併症の発症を防止するための活性化合物の投与を含む。
「治療的処置」という用語は、個体の健康状態を改善する、および/または寿命を延長する(増加させる)任意の治療に関する。前記治療は、個体における疾患を排除し得る、個体における疾患の発症を停止もしくは遅延させ得る、個体における疾患の発症を阻害もしくは遅延させ得る、個体における症状の頻度もしくは重症度を低下させ得る、および/または現在疾患を有しているかもしくは以前に有していたことがある個体における再発を減少させ得る。
「予防的処置」または「予防処置」という用語は、個体において疾患が発生するのを防ぐことを意図した任意の治療に関する。「予防的処置」または「予防処置」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
「個体」および「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらは、疾患または障害に罹患し得るかまたは罹患しやすいが、疾患または障害を有していても有していなくてもよいヒトまたは別の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマもしくは霊長動物)を指す。多くの実施形態では、個体はヒトである。特に明記されない限り、「個体」および「対象」という用語は特定の年齢を示すものではなく、したがって成人、高齢者、小児、および新生児を包含する。本開示の実施形態では、「個体」または「対象」は「患者」である。
「患者」という用語は、治療のための個体または対象、特に疾患個体または対象を意味する。
本明細書で参照される文書および試験の引用は、前述のいずれかが関連する先行技術であることの承認として意図されていない。これらの文書の内容に関する全ての記述は、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の内容の正確さに関するいかなる承認も構成しない。
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作成および使用することを可能にするために提示される。特定の装置、技術および用途の説明は、例としてのみ提供される。本明細書に記載される例に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、様々な実施形態の精神および範囲から逸脱することなく他の例および用途に適用され得る。したがって、様々な実施形態は、本明細書に記載され、示される例に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲と一致する範囲を与えられるべきである。
実施例1:BNT142の物理的、化学的および薬学的特性。
原薬
BNT142原薬は、CLDN6およびCD3に対する抗原結合断片(Fab)-(scFv)ベースの二重特異性抗体-またはトリボディ-の重鎖(HC)および軽鎖(LC)をコードするRNA混合物であり、以下、RiboMab02.1と称する。RiboMab02.1は、CLDN6およびCD3イプシロン(ε)鎖の立体構造エピトープを認識する。原薬の活性成分は、それぞれのタンパク質サブユニットに翻訳され、標的細胞において完全二重特異性抗体を形成する2つの一本鎖の5’キャップおよびN1-メチルプソイドウリジン修飾RNAの混合物である。図1は、インビトロRNA転写のための鋳型として使用される線状化プラスミドデオキシリボ核酸(DNA)のそれぞれのヌクレオチド配列によって決定される、タンパク質コードRNAの一般構造の概略図を示す。HCおよびLCをコードする配列に加えて、各RNAは、安定性および翻訳効率に関して最大有効性のために最適化された共通の構造要素(5’キャップ、5’-非翻訳領域[UTR]、3’-UTR、およびポリ[A]尾部)を含む。
製剤
製剤の説明
製剤は、IV投与用の水性緩衝液中の滅菌RNA-LNP分散液である。製剤の製造は、特殊な脂質成分で構成されるナノスケール脂質粒子へのRNAの封入を含む。LNPに製剤化されると、RNA原薬は血清中での分解から保護される。LNP製剤は、エンドソーム区画から細胞サイトゾルへのRNAの脱出を可能にし、そこでRNAは機能性タンパク質への翻訳に利用可能となる。BNT142製剤の組成を表2に示す。
Figure 2024525795000056
ALC-0366、((3-ヒドロキシプロピル)アザンジイル)ビス(ノナン-9,1-ジイル)ビス(2-ブチルオクタノエート);
ALC-0159、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド;
DSPC=1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;DS=原薬;Ph.Eur.=ヨーロッパ薬局方;q.s.=必要量(十分であり得る量);USP-NF=米国薬局方および国民医薬品集
製剤のpHおよび重量オスモル濃度は、典型的には、それぞれpH6.9~7.9および425~625mOsmol/kgの範囲である。動的光散乱(DLS)によって測定されるLNP粒径は、約50~100nmの範囲であり、多分散指数は0.2以下である。製剤の粒径は、標的組織に到達するその能力、その薬物負荷能力、および製品安全性を最適化するように選択されている。
標的細胞によって取り込まれると、重鎖および軽鎖をコードするRNAは、それぞれのタンパク質に翻訳され、折り畳まれ、組み立てられて完全二重特異性抗体を形成し、その後分泌される。抗体は、細胞傷害性T細胞を腫瘍細胞に動員することによってCLDN6を発現する腫瘍細胞に特異的に作用し、標的依存性ポリクローナルT細胞活性化および腫瘍細胞溶解を誘導するために全身的に利用可能である。
BNT142製剤は、RNA-LNPとして製剤化された1mg/mLのRNA(第1のRNAと第2のRNAの両方を1.5:1の重量比で含む)を含有する単回使用ガラスバイアル中の注射用凍結濃縮懸濁液として提供される。解凍後、製剤を市販の等張NaCl溶液(0.9%)で希釈し、インラインフィルタで濾過する。IMPは、IV投与によって患者に投与される。
実施例2:非臨床試験
BNT142非臨床パッケージは、RiboMab02.1の概念実証を確立し、作用機構を評価する一次PD試験、ならびにオフターゲットプロファイリングを予測し、RiboMab02.1による非特異的T細胞活性化およびサイトカイン放出を調べる二次PD試験を含む。さらに、RiboMab02.1のCLDN6結合部分の組織交差反応性をGLP準拠試験で検討した。BNT142は技術的にはその範囲内にないが、医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonization)(ICH)ガイドラインS6、S7A/BおよびS9、ならびにCD3結合T細胞エンゲージャに関するFDA勧告に従った。
製剤(RNA-LNP)の安全面を評価する場合に、上記のガイドラインも考慮した。ここで、安全性薬理学および(免疫)毒性試験ではプラットフォームアプローチを使用している。以前に実証されたように、RNAプラットフォームおよび使用されるLNPに固有の安全面は、RNAの配列または長さとはほとんど無関係であり、むしろRNAおよび/またはLNPの用量および種類に依存する。このため、RNA-LNPプラットフォーム試験として、安全性薬理の読み出しを含む単回投与およびGLP準拠反復投与毒性試験を実施した。これらのインビボ試験に免疫毒性の読み出しを含めることに加えて、製剤媒介免疫毒性もインビトロで対処した。
PK試験は、製品の異なる面に対処する。第1に、コードされたRiboMab02.1のPKプロファイルを異なる種において特徴付け、BNT142の用量曝露を解明した。第2に、代用RNAを使用して、LNPの生体内分布およびタンパク質発現などのプラットフォーム特性に対処した。さらに、ALC-0366およびALC-0159の代謝を、この脂質の血漿および肝臓PKプロファイルも特徴付ける試験からのラット血漿、尿、糞便および肝臓試料においてインビトロで評価し、ALC-0159についてはインビボでも評価した。
2.1 非臨床薬理学
一次薬力学
一次PD試験は、BNT142原薬のタンパク質への翻訳およびその治療標的であるヒトCD3およびCLDN6に関連するコードされた二重特異性タンパク質RiboMab02.1の所望の作用機構などの効果を調べるインビトロおよびインビボ試験である。
RiboMab02.1はヒトCD3および癌胎児抗原CLDN6に特異的に結合する
CLDN6およびヒトCD3に対するRiboMab02.1の標的特異性を決定するために、BNT142でトランスフェクションされたHEK-293T-17産生細胞において発現されるRiboMab02.1を含有する細胞培養上清を使用して、フローサイトメトリ結合アッセイを行った。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をRiboMab02.1 CD3結合アームの標的細胞として使用し、カニクイザル由来PBMCを種対照として使用した。安定なタンパク質発現のためにCLDN6を形質導入したHEK-293T-17細胞を、2つのRiboMab02.1 CLDN6結合アームの標的細胞として使用した。密接に関連するクローディンCLDN3、CLDN4およびCLDN9に対するRiboMab02.1の交差反応性を評価するために、それぞれがCLDN分子の1つを異種発現するHEK-293T-17安定形質導入体へのRiboMab02.1の結合を試験した。RiboMab02.1はCLDN6に特異的に結合し、CLDN3、CLDN4またはCLDN9には結合しなかった。同様に、ヒトCD3のみがRiboMab02.1によって認識され、サルCD3は認識されなかった(図2)。
インビボ産生RiboMab02.1は用量依存的かつ標的特異的な腫瘍細胞溶解を媒介する
BNT142を投与したBalb/cJRjマウスにおいて産生されたRiboMab02.1の生物活性を、T細胞媒介細胞傷害性アッセイにおいて細胞傷害能を分析することによってエクスビボで評価した。ルシフェラーゼ発現細胞株を使用して、生物発光に基づく細胞傷害性アッセイを行った。CLDN6陽性ヒト卵巣癌細胞株PA-1およびOV-90は、標的依存性溶解効率を決定するのに役立ち、一方、標的陰性ヒト乳癌細胞株MDA-MB-231を陰性対照として使用して、標的特異的溶解を確認した。ヒトT細胞応答のドナー依存性の不均一性を反映するために、8人の異なる健常ドナー由来のヒトPBMCをエフェクタ細胞として使用した。標的陽性細胞株の倍加時間に従って、PA-1含有アッセイを24時間、OV-90含有アッセイを48時間インキュベートした。それに応じて対照をインキュベートした。Balb/cJRjマウスにおいて産生されたRiboMab02.1は、標的特異的かつ用量依存的な細胞傷害性を効率的に媒介し、EC50値は、ドナーPBMCの活性に依存して、PA-1細胞については0.004~0.200ng/mL(0.04~2.00pM)、OV-90細胞については0.07~2.07ng/mL(0.7~20.7pM)(それぞれ図3AおよびB)の範囲であった。
RiboMab02.1含有マウス血清は、CLDN6陰性MDA-MB-231細胞株で標的非依存性(非特異的)溶解を誘導しなかった(図3)。
インビトロ発現RiboMab02.1は用量依存的かつ標的特異的なT細胞増殖をもたらす
HEK-293T-17産生細胞をBNT142または対照RiboMabコードRNAでトランスフェクトした。RiboMab02.1または対照RiboMab(無関係なTAAに特異的)を含有する上清を被験物質として使用した。2つの濃度(100または1ng/mL)のRiboMab含有上清を、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)標識ヒトPBMCと標的陽性または陰性細胞との共培養物に添加した。PA-1またはOV-90をCLDN6陽性細胞として使用し、MDA-MB-231を標的陰性細胞として使用した。CLDN6陰性NUGC-4細胞(無関係なTAAを発現する)および標的細胞の非存在下のPBMCをさらなる特異性対照として含めた。3人の健常ドナー由来のPBMCをこのアッセイで比較した。72時間のインキュベーション後、T細胞をフローサイトメトリによって分析して、標的依存性増殖を判定した。PA-1細胞の存在下では、およそ58±2%および44±7%のT細胞増殖が、それぞれ100ng/mLおよび1ng/mLのRiboMab02.1によって誘導され、OV-90細胞では、24±3%および2±3%のT細胞増殖が誘導された(図4)。対照的に、RiboMab02.1によって駆動されるT細胞増殖は、NUGC-4細胞またはMDA-MB-231細胞と共培養したPBMCにおいても、標的細胞の非存在下においても見られなかった(図4)。T細胞活性化の陽性対照として使用したヒトCD3特異的抗体OKT3は、標的細胞の存在下および非存在下で強力な活性化をもたらした。
RiboMab02.1は、EC50をはるかに上回る用量でのみ標的非依存性T細胞活性化を誘発する
RiboMab02.1の標的特異的生物活性の範囲を決定するために、主要な作用機構としてのT細胞活性化を読み出しとして使用した。RiboMab02.1含有試料および模擬血清試料を、BNT142またはルシフェラーゼをコードするRNA-LNP(Luc_RNA-LNP;模擬)のいずれかを投与されたマウスから得た。3人の健常ドナー由来のヒトPBMCをエフェクタ細胞として使用した。血清試料を、4,000ng/mLで開始して段階希釈し(10倍、10個の点)、単独でまたはCLDN6陽性PA-1標的細胞と一緒に10:1のエフェクタ対標的細胞比で培養したPBMCに添加した。48時間のインキュベーション後、T細胞を、それぞれ初期活性化マーカCD69および後期活性化マーカCD25の表面発現についてフローサイトメトリによって分析した。40ng/mL RiboMab02.1まで、ドナーのいずれからのPBMCにおいてもオフターゲットT細胞活性化は見られなかった。400および4,000ng/mLの2つの最も高いRiboMab02.1濃度は、それぞれ2~6%および6~19%のオフターゲットT細胞活性化(バックグラウンドレベルを超える)をもたらした(図5、左)。3人のドナー全ての平均EC50値(図5、右)は、標的細胞の存在下で0.026ng/mL(0.3pM)と決定された。OKT3陽性対照は、標的細胞ありおよび標的細胞なしで>50%のT細胞活性化をもたらした(データは示していない)。T細胞上のCD69の上方制御はCD25の上方制御よりも高かった;CD25陽性細胞は、ほとんど排他的にCD69二重陽性であり、初期活性化状態を指し示した(データは示していない)。
結論として、RiboMab02.1は、EC50値の1,500倍を超える濃度までT細胞の標的依存性活性化を媒介する。
静脈内投与されたBNT142は、腫瘍へのT細胞の再指向によってマウスにおける異種移植腫瘍排除を媒介する
インビボでのBNT142の抗腫瘍効果を決定するために、CLDN6陽性ヒト卵巣癌(OV-90)異種移植マウスモデルを使用した。手短に述べると、免疫不全の雄および雌のNOD.Cg-Prkdscid IL2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスに、ヒトOV-90卵巣癌細胞を皮下(SC)接種した。確立された腫瘍(平均サイズ≧30mm)を有するマウスに、健常ドナー由来のヒトPBMCを腹腔内(IP)に移植した(得られたマウスモデルをNSG/PBMCと注釈付けた)。7日後、BNT142または対照項目の5回の毎週の単回IVボーラス注射を含む処置レジメンを開始した。BNT142を、マウス1匹当たり0.1または1μg(約0.004および0.04mg/kg)の用量で投与した。標的特異性対照として、無関係なTAA×CD3結合トリボディタンパク質をコードする1μgの対照RNA-LNPを適用した。ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、生理食塩水)単独および1μgのLuc_RNA-LNPを陰性対照として使用し、組換え精製CD3x(CLDN6)トリボディ参照タンパク質(100μg/動物、約4mg/kg)を陽性対照として使用した(図6A)。
腫瘍体積は、2回目の処置後に1μgのBNT142で縮小し始め、3回目の処置後に0.1μgのBNT142または100μgの参照タンパク質で縮小し始めた。実験終了まで、着実な低下が維持された(図6B、C)。陰性対照のいずれも、概して、腫瘍体積の減少を示さなかった。
群当たり4匹のマウス(0.1μgのBNT142群についてのみ5匹のマウス)を3回目の注射の72時間後に安楽死させて、異種移植腫瘍における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を評価した。平均して、0.1および1μgのBNT142で処置されたマウスにおいて、それぞれ1,310および1,797TIL/mmの異種移植腫瘍組織が認められた(図6DおよびF)。参照タンパク質処置は、平均1,542TIL/mmの腫瘍組織をもたらしたが、陰性対照群は、139~410TIL/mmの腫瘍組織を示した。腫瘍組織中のCLDN6陽性細胞の割合を、OV-90接種後38日目以後の異なる時点で数匹のマウスについて分析した。CLDN6陽性細胞の最も低いパーセンテージ(腫瘍細胞死滅/排除の増加を示す)は、1μgのBNT142、続いて参照タンパク質および0.1μgのBNT142で処置したマウス由来の腫瘍異種移植片において見出された(図6EおよびF)。
まとめると、BNT142処置群および参照タンパク質処置群のマウスは、陰性対照群とは対照的に、異種移植腫瘍におけるより高いT細胞浸潤およびより低いCLDN6陽性と同時に、有意な腫瘍減少を示した。
副次的薬力学
二次PD試験は、その治療標的CLDN6に関連しないコードされた二重特異性タンパク質RiboMab02.1の作用機構および効果を調べるインビトロおよびインビボ試験として定義される。
RiboMab02.1は、インビトロでヒト炎症促進性サイトカインの標的依存的放出を誘導する
オンターゲットサイトカイン放出およびオフターゲットサイトカイン放出のRiboMab02.1依存的誘導を調べるために、T細胞活性化アッセイから得られた細胞培養上清を分析した。ヒト炎症促進性サイトカインのIFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-10およびTNF-αのレベルを、特注のマルチプレックスELISAキットを使用して測定した。RiboMab02.1は、標的細胞の存在下で用量依存的およびドナー依存的に全てのサイトカインの放出を誘導した。1人のドナーおよび最高濃度のRiboMab02.1で見られたIL-6の低い誘導を除いて、CLDN6陽性PA-1標的細胞の非存在下ではサイトカイン誘導は観察されなかった(図7)。陽性対照OKT3は、標的細胞の存在下および非存在下でサイトカイン放出を誘導したが、模擬血清(Luc_RNA-LNP投与マウス由来)はサイトカイン産生を誘導しなかった(データは示していない)。
PBMCヒト化マウスへのBNT142のインビボ投与はヒト炎症促進性サイトカイン放出を誘導しない
ヒト炎症促進性サイトカインIFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-10およびTNF-αを、3回目のBNT142投与の6時間後および72時間後に得られたOV-90ヒト異種移植腫瘍担持NSG/PBMCマウスの血清試料において測定した(上記参照)。腫瘍を有さないNSG/PBMCマウスのさらなる群を1μgのBNT142で処置した。サイトカイン誘導は、評価したいずれの時点でもBNT142処置群または対照群では見られなかったが(図8A)、参照タンパク質群のマウスは、6時間の時点で6つ全てのサイトカインの一過性であるが有意な上昇を示した。データを、それぞれの時点で生理食塩水対照群で得られた値に対して正規化した。活性薬物RiboMab02.1(1μgのBNT142によってコードされる)および参照タンパク質の全身アベイラビリティは同等であった(図8B)。
GLP準拠組織交差反応性試験
RiboMab02.1の潜在的な非特異的結合を調べるために、3つの濃度(10、5、1μg/mL)で親キメラIgG抗体IMAB206-C46S(同一の抗CLDN6 CDRを共有する)を使用した完全ヒト組織交差反応性(TCR)試験をGLPに従って行った。分析した成人正常ヒト組織(FDA 1997)および所見を表3に要約する。
Figure 2024525795000057
簡単に述べると、全ての試験された組織のうちで、副腎および胎盤の絨毛の内分泌細胞のみが、適用された被験物質の3つ全ての濃度で1/3のドナーにおいて陽性に染色された。膜染色は検出できず、観察された結合は全て細胞質性であった。細胞質結合は、細胞区画が切片化プロセスによって人工的に露出され、被験物質のアクセスを可能にしていることによってのみ可能である。この状況はインビボでは起こらず、したがって細胞質結合は関連性があるとは考えられない。他の交差反応性または非特異的結合は観察されなかった。
オフターゲット結合アッセイ(非GLP)
RiboMab02.1の潜在的な非特異的標的を調べるために、トリボディ参照タンパク質(RiboMab02.1と同一配列)を用いた細胞マイクロアレイスクリーニングを行った。371個のヘテロ二量体を含む、6,239個の異なる全長ヒト原形質膜タンパク質および細胞表面係留ヒト分泌タンパク質を個別に過剰発現する、固定されたヒトHEK293細胞に対する結合について、トリボディをスクリーニングした。
トリボディ参照タンパク質は、CD3δまたはCD3γのいずれかとCLDN6とのヘテロ二量体として発現された場合、その一次標的CD3εとの特異的相互作用を示した。これにもかかわらず、CLDN9とのさらなる弱いオフターゲット相互作用が観察された。他の結合は観察されなかった。
安全性薬理学
ICHガイドラインS7Aは、安全性薬理試験のコアバッテリーがヒト曝露前に医薬品に対して実施されるべきであることを示している。中枢神経系(CNS)および呼吸器系に対する最大約5mg/kgのRNA-LNPの潜在的な影響を、マウスで実施されたGLP準拠反復投与毒性試験の一部として評価した。さらに、心血管安全性エンドポイント(血圧、心拍数および心電図パラメータ)に対する最大0.15mg/kgのBNT142の影響を、カニクイザルにおける非GLP試験で評価した。マウス試験では、空のLNPで処置した対照アームを含めた。
呼吸器安全性
RNA-LNPの呼吸器安全性を、Balb/cマウスにおいて実施されたGLP準拠反復投与毒性試験に含まれるサテライト動物で評価した。4回の毎週の注射を投与し、2回目および4回目の注射の4時間後および24時間後に全身プレチスモグラフィを実施した。
マウスを、それぞれ4匹の雄および4匹の雌を含む4つの群に割り当てた。第1群および第2群は対照群であり、生理食塩水(第1群)およびRNAを含まないが約5mg/kg群と同等の脂質含有量を有する空のLNP(第2群)を投与した。処置群には、約1.5mg/kg(第3群)および約5mg/kg(第4群)の用量のRNA-LNPを投与した。プレチスモグラフィは、被験物質に関連する効果を明らかにしなかった。
CNS安全性
RNA-LNPによって誘導される神経学的影響、行動的影響および自律神経系への影響を、GLPに従ってBalb/cマウスにおいて2つの用量レベル(約1.5mg/kgおよび約5mg/kg)で検討した。
この試験は、呼吸器安全性試験で使用したのと同じ動物(同じRNA-LNP用量群および対照群)で実施した。40個の神経薬理学的パラメータに対するRNA-LNPの影響を、最初の投与の前および48時間後、ならびに4回目の投与の前および48時間後に検査した。
雄動物において、約5mg/kgの最初の投与後に後肢握力の被験物質関連の一過性の低下が認められた(約-37%)。この作用は、同じ群の雌動物でも見られた(約-4%)。4回目の投与の前後で後肢握力に被験物質に関連する差が観察されなかったため、低下は可逆的であった。試験した全ての時点で前肢握力の変化は見られず、筋肉または坐骨神経の肉眼的または顕微鏡的変化は検出されず、後肢握力の一過性の低下が筋肉または神経損傷によって引き起こされたのではないことを示した。他の被験物質関連の影響は観察されなかった。
心血管安全性
BNT142投与の潜在的な心血管作用の調査は、カニクイザルにおける非GLP PK試験および忍容性試験に含まれている。
この試験では、カニクイザルを、それぞれ3匹の雌動物を含む4つの群に割り当てた。第1群には生理食塩水を投与し、第2、第3および第4群にはそれぞれ0.015、0.05および0.15mg/kgの用量のBNT142を1回投与した。血圧測定を、処置の開始前ならびに動物への投与の6時間後および24時間後に実施した。末梢動脈収縮期および拡張期血圧ならびに結果として得られた平均血圧は、被験物質処置動物において正常な生理学的限界内であった。さらに、投与前に開始して投与後少なくとも20時間まで、心電図(ECG)を記録した。この期間には、心拍数ならびにECGの定量的および定性的パラメータは、BNT142の投与によって影響されなかった。
非臨床薬理学-結論
一次および二次インビトロならびにインビボPD試験において、BNT142によってコードされるRiboMab02.1は、用量依存的および標的依存的な作用機構を示した。EC50(26pg/mL)の1,500倍を超えるRiboMab02.1濃度によるインビトロでの非特異的T細胞活性化の開始は、広い治療域を指し示している。
RiboMab02.1の安全性を、非特異的結合の同定をもたらさなかったGLP準拠組織交差反応性試験(同一の抗CLDN6 CDRを有する代用IgGを使用)において最初に試験した。RiboMab02.1参照タンパク質を使用したその後の細胞マイクロアレイ試験では、CLDN6に密接に関連するCLDN9に対してのみ弱いオフターゲット結合が観察された。内耳のタイトジャンクションでの発現を除いて、大部分の正常組織からのCLDN9発現は存在しないので、望ましくないオフターゲット効果は予想されない。
まとめると、RiboMab02.1がCLDN6およびCD3以外の標的に結合する可能性は低いと考えられる。
安全性薬理評価は、心血管パラメータ(カニクイザル)または呼吸器パラメータ(マウス)に影響を及ぼさないことを明らかにした。マウスにおける約5mg/kgのRNA-LNPの最初の投与の48時間後に、後肢握力の一時的な低下が観察された。この作用は一過性であり、その後の3回のRNA-LNP投与後には検出されなかった。組織の病理学的検査中に神経学的異常または筋肉の異常は見出されず、これらの作用が神経毒性とは異なることを示唆した。
まとめると、これらのデータは、BNT142によってコードされるRiboMab02.1が、インビボおよびインビトロの両方で非臨床モデルにおいて標的限定性であり、生物学的に活性であることを示唆している。最大0.15mg/kgおよびそれを超える用量の予想される臨床用量範囲をカバーする、最大約5mg/kgのRNA-LNPの用量で、マウスの生理学的機能に対する被験物質媒介作用は観察されていない。
2.2 非臨床薬物動態試験
BNT142のPKは2つの部分に分けることができる。最初に、IV注射後、RNA-LNPは全身に分布し、RNAカーゴを意図される標的器官である肝臓に送達する。第2に、LNPによってトランスフェクトされた肝細胞は、RNAを翻訳し、コードされたタンパク質RiboMab02.1を全身循環に分泌する。
第1の部分を評価するために、マウスの異なる器官における放射性標識されたLNPの生体内分布を分析した。第2の部分の評価のために、LNPに製剤化されたホタルルシフェラーゼをコードする修飾RNAを利用して、インビボで翻訳されたRNAの肝臓標的化および動態を評価した。さらに、単回IV投与後のマウスおよびカニクイザル(NHPモデル)において、分泌されたRiboMab02.1のインビボPKプロファイルを特徴付けた。
LNPにおけるPEG脂質賦形剤(ALC-0159)のPKプロファイリングおよびALC-0159の代謝の評価を、インビボおよびインビトロで評価した。インビボでは、ALC-0159は血漿から肝臓に速やかに分布するが、ALC-0159の代謝はインビトロおよびインビボでゆっくり起こるようである。ALC-0159は、それぞれエステル官能基およびアミド官能基の加水分解代謝によって代謝され、この加水分解代謝は、評価した全ての試験種(マウス、ラット、サル、ヒト)にわたって観察される。尿中に検出可能な脂質の排泄はなかったが、糞便中に未変化で排泄された用量の割合は、ALC-0159について約50%であった。アミノ脂質ALC-0366の安定性を、インビトロ代謝試験を使用して評価した。ALC-0366は、全ての種において、肝ミクロソーム、S9画分では120分、肝細胞では240分にわたって安定であった。
分布
インビボでのLNPの生体内分布を、BNT142と同じLNP製剤を有するが異なるRNAを含むRNA-LNPを使用して検討した。放射性標識RNA-LNPをマウスにIV投与した。マウス組織におけるLNP分布を、液体シンチレーション分光法によって定量化した。LNPの器官標的化およびその後のルシフェラーゼをコードするmRNAの発現を、生物発光イメージングによって検討した。
放射性標識LNPの分布
LNPの組織分布プロファイルを、1mg/kg(RNA含有量に基づく)の単回IVボーラス注射後のCD-1マウス(n=4/性/時点)において調べた。この試験のために、RNA含有LNPを、交換不可能な非代謝性脂質マーカである[H]-コレステリルヘキサデシルエーテル([H]-CHE)で標識して、脂質粒子の分布を観測した。マウスを安楽死させ、血液、血漿および組織を投与の0.083時間後(5分後)、0.25時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後、8時間後および24時間後に回収した。全ての試料の放射能を標準的な液体シンチレーションカウントによって決定し、得られた値を使用して、様々な組織における総脂質当量(lipideq)濃度および注射用量のパーセンテージを計算した。
LNPは、マウスの血液および血漿中で、血液/血漿濃度の急速な初期低下とそれに続くゆっくりした排出期という二相性動態を示した。同様の血液/血漿濃度-時間プロファイルが雄マウスおよび雌マウスで観察された。組織へのLNPの分布は一般に迅速であり、ピークレベルが注射後4時間より早くほとんどの組織で起こるか、またはプラトーが達成された。肝臓が主要な分布器官であり、注射の4時間後の雄マウスおよび雌マウスについて平均濃度はそれぞれ282および355μg lipideq/g組織であり、これは注射用量の約70%~74%であった。LNPはまた、投与の4時間後までに脾臓にも分布し、投与の4時間後に61.7~77.1μg lipideq/g組織(注射用量の0.84%~1.15%)のレベルをもたらした。他の組織では、最小限の分布が観察されたか、または分布が観察されなかった。この試験は、LNP分布の主要器官を同定するために実施され、投与されたLNPの総質量バランスを考慮しなかった。
要約すると、LNPは、急速に主として肝臓に分布する。
インビボで翻訳されたRNAの肝臓標的化および動態
インビボ翻訳されたmRNAの肝臓標的化および動態を評価するために、LNPと共に製剤化されたホタルルシフェラーゼをコードする修飾mRNAを用いてタンパク質発現の生体内分布を評価した。IV投与後、ルシフェラーゼタンパク質は、主に肝臓に位置する高い生物発光シグナルを有する時間依存的翻訳を示した(図9)。二次分布器官として、脾臓は、肝臓と比較して10倍低い生物発光シグナルを示した。わずかなルミネセンスシグナルが心臓、肺、腎臓およびリンパ節で検出された。
脂質賦形剤(ALC-0159)の薬物動態
BNT142は、ナノ粒子中にPEG脂質賦形剤ALC-0159を含有する。1.96mgのALC-0159/kgの同様の脂質組成(異なるアミノ脂質)を有するLNPに製剤化されたルシフェラーゼをコードするRNAのWistar Hanラットへの単回IV投与後、ALC-0159の血漿濃度は急速に低下し、初期t1/2値は1.72時間であった。次いで、ALC-0159は、72.7時間の最終排出t1/2で血漿から除去された。肝臓に分布する脂質用量の推定パーセントは約20%であった。
RiboMab02.1のインビボ薬物動態
RiboMab02.1は、マウスにおけるBNT142の投与後に効率的に翻訳され、構築され、分泌される
以下の試験は、インビボ(Balb/cJRjマウス)でのBNT142の取り込み後のRiboMab02.1の翻訳、構築および分泌を確認する。分泌されたRiboMab02.1を含有する血清を、30μgのBNT142の単回IV投与の2時間後および6時間後に採取した。血清をELISA(図10A)およびウェスタンブロット(図10B)によって分析し、完全に構築された構造的に安定な(単量体)RiboMab02.1のインビボでの生成を確認した。
マウスにおけるBNT142の反復投与PK試験
BNT142の毎週の投与によってRiboMab02.1の全身レベルが持続可能であるかどうかを評価するために、Balb/cJRjマウスにおいて反復投与PK試験を行った。処置群は、毎週の間隔で10もしくは30μgのBNT142(それぞれ約0.4および1.2mg/kg)または30μgのLuc_RNA-LNPの5回のIVボーラス注射を受けた。各BNT142投与の6時間後(tmax)および24時間前(最後の検出可能濃度[Ctrough])に動物から採取した血液から血清試料を調製した。時点は、それぞれ最初のBNT142またはLuc-RNA-LNP対照注射の6、174、342、510および678時間後(Cmax)または144、312、480および648時間後(Ctrough)に対応する。最後の血液試料を最初の注射の816時間後(34日後)に採取した。ELISAによって決定した場合、それぞれ10μgおよび30μgのBNT142による最後の注射の6時間後に、最大7.4μg/mLおよび46μg/mLのRiboMab02.1ピークレベル(Cmax)に到達した。抗体濃度は各注射の7日以内に急速に低下し、Ctrough値はCmax値よりも約130倍低かった。重要なことに、いずれかのBNT142用量のその後の注射の間に、RiboMab02.1翻訳の喪失は観察されなかった(図11)。
カニクイザルにおけるBNT142の単回投与PK試験
単回投与PK試験を、1群当たり3匹の動物を用いて雌カニクイザルで実施した。処置群は、予想される臨床用量範囲(0.150、0.05および0.015mg/kg)をカバーするBNT142または対照としての生理食塩水の単回IVボーラス投与を受けた。用量曝露を評価するために、異なる時点(注射の0、1、3、6、12、24、48、72、168および336時間後)で採取した血清試料において、RiboMab02.1の濃度をELISAによって分析した。RiboMab02.1ピーク濃度(Cmax)は、全ての群においてBNT142投与の6時間後(tmaxの中央値)に達成された(平均値[tmaxの中央値]:0.015mg/kg群=7.3ng/mL;0.050mg/kg群=27.5ng/mL;0.150mg/kg群=155.0ng/mL)。RiboMab02.1レベルは、0.015mg/kg群ではBNT142投与の3時間後から最大72時間後まで、0.15mg/kgおよび0.05mg/kg群では最大168時間(7日間)まで検出可能であった(図12および表4)。RiboMab02.1の有効半減期は、27~37時間であると決定された。しかしながら、2つのより低い用量群におけるRiboMab02.1半減期の決定は、ELISA定量化法の0.1ng/mLの定量化下限(LLOQ)のために制限された。生理食塩水対照試料中またはBNT142投与の336時間(14日間)後では、シグナルは検出されなかった(検出はLLOQによって潜在的に制限された)。個々の動物のPKパラメータおよび平均値/中央値を表4に要約する。
要約すると、3つのBNT142用量は全て、カニクイザルにおいて生物学的に活性なRiboMab02.1の治療範囲内の力価をもたらし、Cmaxの中央値は注射の6時間後であった。RiboMab02.1濃度の個体間変動が観察され、Cmaxにおいて、それぞれ最低用量群で2~7倍、中間用量群で1~2倍および最高用量群で2倍の差が認められた。
Figure 2024525795000058
a.MRT0~inf(薬物平均滞留時間0~無限大)を使用して、有効t1/2を計算した。
b.tmaxおよびtlastの中央値。
max=最大観察濃度;Ctrough=最後の検出可能な濃度;h=時間;n=数;N/A=該当せず;NC=算出不能;NR=報告なし(決定係数が0.8未満であった);SD=標準偏差;t=時間;t1/2=半減期;tlast=最後の測定可能な濃度の時間;tmax=観察された最大濃度までの時間。
代謝および排泄
N1-メチルプソイドウリジン修飾mRNAを含むRNAは、細胞RNaseによる分解に感受性であり、核酸代謝に供される。ヌクレオチド代謝は細胞内で連続的に起こり、ヌクレオシドは分解され、排泄されるかまたはヌクレオチド合成のために再利用される。
LNP製剤中の賦形剤として使用される4つの脂質のうちで、2つは天然に存在し(コレステロールおよびDSPC)、それらの内因性対応物と同様に代謝および排泄される。非天然脂質(ALC-0366およびALC-0159)の代謝および排泄をインビトロで検討し、ALC-0159の場合はインビボでも検討した。
マウス、ラット、サル、およびヒトの肝ミクロソーム、S9画分、および肝細胞において、ALC-0366(アミノ脂質)のインビトロ代謝安定性を評価した。ALC-0366は、全ての種および試験系において、肝ミクロソーム(残存ALC-0366>89%)およびS9画分(残存ALC-0366>88%)では120分間にわたって安定であり、肝細胞(残存ALC-0366>94%)では240分間にわたって安定であった。
ALC-0159の代謝を、全てマウス、ラット、サルおよびヒト由来の血液、肝臓S9画分および肝細胞を使用してインビトロで、ならびにPK試験からのラット血漿、尿、糞便および肝臓においてエクスビボで調べた。これらの試験は、ALC-0159がアミド結合加水分解によって比較的ゆっくりと代謝され、N,N-ジテトラデシルアミンを生じることを決定した。この加水分解代謝は、評価した種全体で観察された。
ラットPK試験では、RNA-LNPのIV投与後、尿中にALC-0159の検出可能な排泄はなかった。しかし、約50%のALC-0159が糞便中に未変化で排泄された。
非臨床薬物動態および代謝-要約および結論
BNT142のPKは、2つの部分に分けることができる。
・BNT142のPK:IV注射後、RNA-LNPは4時間以内に全身に分布し、RNAカーゴを意図される標的器官である肝臓に送達する。
・BNT142にコードされた二重特異性抗体RiboMab02.1のPK:肝細胞への送達後、RNAが翻訳され、コードされたRiboMab02.1タンパク質が循環中に放出される。
最初の部分を調べるために、放射性標識脂質を含有するLNPを用いてマウスにおいて生体内分布試験を実施した。LNPの分布は一般に急速であり、ピークレベルは、注射後4時間より早くほとんどの組織で達成された。肝臓が主要な分布器官であり、LNPのごく一部が分布した脾臓がこれに続き、他の組織への分布は最小限であるか、または全く観察されなかった。肝臓における標的化RNA翻訳は、マウスにおけるLNP製剤化ルシフェラーゼ(Luc)コードRNAの投与後のインビボイメージングによって示された。注射後144時間まで肝臓でLuc翻訳(生物発光)が観察されたが、脾臓は10倍低いシグナル強度を示した。
ラットIV PK試験では、この2週間の試験中、PEG脂質(ALC-0159)の濃度は血漿中で約8,000倍低下した。血漿中の見かけの終末相t1/2は、ALC-0159については72.7時間であり、これは、最初にLNPを血漿に取り込んで排出した組織からの脂質の再分布を表している可能性が高く、糞便中ではほとんど未変化であった。インビトロでは、ALC-0159はアミド官能基の加水分解代謝によってゆっくり代謝されたが、非天然アミノ脂質(ALC-0366)のインビトロ代謝試験は、全ての種および試験系において安定性を示した。
BNT142にコードされた二重特異性抗体RiboMab02.1のPKパラメータを、血清中の翻訳されたRiboMab02.1の定量化を介して、マウスにおける反復投与試験およびNHPにおける単回投与試験によって決定した。
用量依存性RiboMab02.1血清濃度は、BNT142を毎週投与したマウスにおいて検出可能であった。30μg(約1.2mg/kg)用量コホートにおける5回目の投与後に46μg/mLのCmaxに達し、RiboMab02.1曝露回復が確認された。
NHPにおける単回投与PK試験において、RiboMab02.1は用量依存的発現を示し、投与の6時間後にtmax中央値(マウスにおいて観察された)および0.15mg/kgのBNT142(試験した最高用量)による投与後に155ng/mLの平均Cmaxを示した。RiboMab02.1は、投与7日後の試験終了までNHPにおいて検出可能であった。
要約すると、マウスおよびNHPにおけるPKデータは、RiboMab02.1のBNT142用量比例的ではなく、BNT142用量依存的曝露を示した。ピークRiboMab02.1濃度は投与の6時間後に達成され、その後低下した。RiboMab02.1の非臨床有効半減期は27~37時間であるので、ヒト身体からの抗体の完全なクリアランスは、およそ5半減期(約135~185時間または6~8日間)で起こると予想される。したがって、毎週の投与は、週1回の臨床治療間隔全体にわたって生物学的活性を付与するRiboMab02.1血漿レベルの維持を支援する。
2.3 毒性学
RNA-LNP媒介作用を評価する非臨床(免疫)毒性プログラムは、ヒト細胞および血液成分を使用するインビトロ試験、ならびにマウスおよびカニクイザルにおけるインビボ試験を含むプラットフォームアプローチを使用した。
マウスにおける非GLP単回投与毒性試験では、4mg/kgまでのRNA-LNPの用量が忍容された。
所見には、最小限の肝損傷および軽度の炎症反応と一致して、臨床所見(立毛および脱水)、最小体重減少および体重増加遅延、肝臓トランスアミナーゼのわずかな上昇、脾臓重量の増加および肝臓への最小から軽度の混合白血球浸潤が含まれた。全ての作用は28日以内に可逆的であった。
反復投与毒性試験では、最大約5mg/kgのRNA-LNP用量がマウスにおいて忍容された。試験の所見には、摂餌量のわずかな減少、全白血球の一過性減少、ならびに一過性のアルカリホスファターゼおよび肝酵素の上昇が含まれた。さらに、5mg/kgの用量での肝臓における可逆的な顕微鏡的変化、ならびに脾臓における髄外造血および動脈周囲リンパ鞘のリンパ過形成に加えて、腎臓および肝臓重量の増加が認められ、これは脾臓重量の増加にも関連していた。これらの変化は改善し、ほとんどの場合、2週間の回復期間後に完全に回復した。
最大0.15mg/kgのBNT142の単回投与を試験するNHPにおける非GLP PK/忍容性試験では、いずれのパラメータにも変化は観察されなかった。
免疫毒性評価では、約1.5mg/kgおよび約5mg/kgのRNA-LNPは、マウスにおいて投与の6時間後にサイトカイン(IFN-α、IFN-γ、IL-6およびTNF-α)の一過性上昇を誘導し、これは反復投与後にはあまり顕著ではなかった。最大0.15mg/kgの単回投与後、カニクイザルにおいてインビボでBNT142誘導サイトカイン上昇は観察されなかった。ヒト全血を使用したインビトロ試験では、≧4μg/mL(≧0.32mg/kgのヒト等価用量)の濃度のBNT142は、IFN-γ、IL-1β-、IL-2、IL-6、IL-8およびTNF-αの分泌を誘導した。補体系のRNA-LNP活性化は、40μg/mL(3.2mg/kgのヒト等価用量)までの濃度についてはインビトロで観察されなかった。
RiboMab02.1の安全性試験のための関連種の選択
ICH S6(R1)によれば、関連種は、被験物質が薬理学的に活性である種である。RiboMab02.1二重特異性抗体の薬理学的活性は、それぞれの種のT細胞上のCD3受容体の結合および腫瘍標的エピトープ(CLDN6)の発現を必要とする。しかしながら、RiboMab02.1の抗CD3部分は、ヒト霊長動物以外の他の種のCD3に対して交差反応性ではない。
RiboMab02.1の安全性プロファイルを十分に捕捉するのに適した試験種がないので、抗体について動物における安全性試験は行わなかった。代わりに、CLDN6親抗体IMAB206-C46SまたはRiboMab02.1と同一の組換え参照タンパク質のいずれかを使用して、上記のインビトロ安全性試験を行った。
RNA-LNP製剤の非臨床安全性評価
RNA-LNP安全性試験のいくつかでは、BNT142と同一のLNP脂質組成を有するが異なるRNAを含む製剤を使用した。RNAの配列または長さの違いは、RNA-LNP媒介の安全性プロファイルに大きな影響を及ぼすとは予想されないので、結果は、BNT142のRNA-LNP媒介毒性を代表すると考えられる。このプラットフォーム毒性評価アプローチは、以前に受け入れられている。
単回投与毒性
非GLP単回用量毒性試験を雄および雌のCD-1マウスにおいて実施した。この試験は、1~4mg/kgの用量のRNA-LNPの潜在的な毒性を特徴付け、RNA-LNPの毒性をそれぞれの対照物質(すなわち空のLNP)と比較することによってLNP媒介毒性を同定し、4週間の観察期間(29日目に終了)後のRNA-LNPの可逆性、進行および/または潜在的な遅延効果を評価した。
マウスは、1日目にRNA-LNPまたは対照物質(生理食塩水または空のLNP)の単回IV投与を受けた。動物を3日目(主動物)または29日目(回復動物)に安楽死させた。試験エンドポイントには、死亡率、臨床所見、体重変化、臨床病理学、剖検所見、臓器重量および組織病理学(肝臓、脾臓および胃)が含まれた。
最大4mg/kgのRNA-LNPの単回投与が、雄および雌のCD-1マウスにおいて忍容された。所見には、臨床所見(立毛および脱水)、最小体重減少および体重増加遅延が含まれた。3日目に、最小の肝損傷および軽度の炎症反応と一致して、肝臓トランスアミナーゼ(アラニントランスアミナーゼ[ALT]および/またはアスパラギン酸トランスアミナーゼ[AST])のわずかな上昇、脾臓重量の増加、4mg/kgを投与された1匹の雌における肝臓の蒼白化、ならびに肝臓への最小限の混合白血球浸潤が検出可能であった。性別による所見の差はなかった。全ての作用は、29日目に完全または部分的な回復の証拠を示し、肝臓への混合白血球浸潤によって実証され、軽度の炎症反応の持続的な消散を示した。
反復投与毒性
LNPおよびRNA媒介毒性を評価するGLP準拠プラットフォーム反復投与毒性試験を、雄および雌のBalb/cJRjマウスにおいて実施した。この試験は、約1.5および約5mg/kgの4回の毎週のRNA-LNP投与の潜在的な毒性を特徴付け、RNA-LNPの毒性をそれぞれの対照物質(すなわち空のLNP)と比較することによってLNP媒介毒性を同定し、2週間の観察期間後のRNA-LNPの可逆性、進行および/または潜在的な遅延効果を評価した。試験したRNA-LNP用量(最大約5mg/kg)は、予想臨床用量(0.00005mg/kg~0.15mg/kg)を30倍~30,000倍上回る。GLP準拠マウス毒性試験では、最高用量(約5mg/kgに相当する100μg/動物)を、IV送達され得る最大実現可能体積および濃度に基づく最大実現可能用量と見なした。
RNA-LNPの4回の毎週のIV注射による処置は、マウスにおいて30および100μg/動物(それぞれ約1.5および約5mg/kg)の用量で忍容された。高用量群では、動物は一過性の摂餌量減少を示した(雄では-8.2%、雌では-13.6%)。しかしながら、摂餌量のこれらの変化は、付随する体重減少をもたらさなかった。処置期間中または回復期間中に死亡は観察されなかった。
血液学的パラメータを、主試験動物については3回目の投与の24時間後(試験16日目)、回復動物については最後の処置の1週間後(試験30日目)に評価した。30μg(約1.5mg/kg)または100μg(約5mg/kg)のRNA-LNPによる処置は、試験16日目に全白血球の減少をもたらした(雄ではそれぞれ-59%または-62%、雌ではそれぞれ-67%または-74%)。これは主にリンパ球の有意な減少によるものであった(雄ではそれぞれ-67%または-72%、雌ではそれぞれ-74%または-79%)。
空のLNPで処置した動物についても、白血球(雄では-24.1%、雌では-37.4%)およびリンパ球(雄では-37.2%、雌では-48.7%)の絶対数の減少が認められた。回復動物では、血液学的パラメータの被験物質に関連する差は見出されず、全ての変化が可逆的であったことを示した。
臨床化学を、最後の投与の24時間後(試験23日目)および回復期間の終了時(試験37日目)に評価した。試験23日目に30μg(約1.5mg/kg)で処置した雌マウスにおいて、肝酵素ALT(+51%)、AST(+45%)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(+69%)の完全に可逆的な上昇が観察された。生化学的パラメータについての他の被験物質関連の差は、この用量群では認められなかった。高用量(100μg、約5mg/kgのRNA-LNP)では、処置した雌において肝酵素(ALT、AST)およびLDHの上昇が観察された(それぞれ+8,170%、+4,992%および+2,787%)。空のLNPで処置した雌でも、肝酵素活性(ALT、AST)およびLDHの上昇が認められた(+274%、+44%および+40%)。さらに、アルカリホスファターゼ(ALP)については、この群の両性(雄+39%、雌+93%)で上昇が観察された。レベルは回復期間を通して低下したが、試験終了時に依然として実験室正常値を超えて上昇していた(雄+19%、雌+21%)。
さらに、試験23日目に、グロブリン濃度が雄(+31%)および雌(+36%)について上昇した。したがって、アルブミン/グロブリン比の減少が雄(-15%)および雌(-21%)について認められた。これらの変化は、回復期間の終了時にはおさまっていた。
4回目の投与からおよそ24時間後の試験23日目に、主試験動物を解剖した。全ての回復動物の剖検を試験37日目に実施した。主試験の終了時に、両用量群の一部の雌動物において脾臓が拡大していた。この作用は、脾臓重量の増加に関連していた(雄では+68%、雌では+99%)。さらに、剖検により、どちらも100μgを投与された、1匹の雌については肝臓の蒼白化、別の1匹の雌については平滑な表面を有する部分的な肝臓の蒼白化が明らかになった。この高用量群では、両性において、肝臓重量(雄では+17%、雌では+34%)および腎臓重量(雄では+15%、雌では+18%)の増加も認められた。回復中、脾臓および肝臓の重量に対する影響は完全には補償されなかったが、他の全ての影響はおさまっていた。
組織病理学的変化は、主試験の終了時に雌の肝臓においてのみ見出された(細胞質変化、単核炎症細胞浸潤物、多核巨細胞および壊死)。これらの所見は、回復期間後、1匹を除く全ての雌において完全に可逆的であった。雌の脾臓における完全に可逆的な病理組織学的所見は、低用量群および高用量群の両方で観察され、これらは髄外造血、うっ血、色素沈着および動脈周囲リンパ鞘のリンパ過形成を含んでいた。いずれの時点でも、雄動物では組織病理学的観察は行わなかった。
カニクイザルにおけるBNT142の単回投与薬物動態および忍容性試験
この試験の目的は、カニクイザルへの単回用量IV投与後のBNT142のPKおよび忍容性の情報を得ることであった。
IVボーラス注射によるBNT142の単回投与は、サルにおいて最大0.15mg/kgの用量で忍容された。早期死亡、臨床所見または体重、体温、血圧、眼科学、聴覚検査、心血管評価、臨床病理パラメータ(血液学、凝固、臨床化学および尿検査)もしくはBNT142の投与に関連するサイトカインの変化はなかった。
免疫毒性試験
免疫毒性学的パラメータを、2つの独立した試験(以下に記載)において、ならびにマウスにおけるGLP準拠反復投与毒性試験およびNHPにおける単回投与PK試験の一部として評価した。マウスでは、最初の投与の6、24および48時間後(試験1、2および3日目)ならびに3回目の投与の6、24および48時間後(試験15、16および17日目)にサイトカイン分析を実施した。IFN-α、IFN-γ、IL-6およびTNF-αは、試験1日目および試験15日目に両方の用量群(約1.5mg/kgおよび約5mg/kg)の雄および雌動物において、投与後6時間で一過性に上昇した。反復投与後(試験15日目)、上昇の程度はより小さかった。IL-6およびTNF-αのレベルは投与後24時間までに完全に低下したが、IFN-αおよびIFN-γのレベルは投与後48時間までにベースラインに戻った。IL-1β、IL-2、IL-10またはIL-12p70の上昇は、いずれの群においても観察されなかった。NHPでは、試験したサイトカインのいずれにおいても、0.15mg/kgまでの投与の6、24または48時間後に被験物質関連のサイトカインの上昇は観察されなかった。全身免疫毒性を示す臨床徴候は観察されなかった。
ヒト血清のインビトロ補体活性化
インビトロでヒト補体を活性化する製剤の可能性を、予想される臨床曝露をカバーする0.04~40μg/mL(約0.003~約3.2mg/kgの用量を代表する)のRNA-LNP濃度での正常ヒト血清とのインキュベーションによって評価した。RNA-LNPとのインキュベーション後、補体活性化は観察されなかった。
BNT142による全血サイトカイン放出
炎症促進性サイトカイン(IFN-α、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、IL-12p70、IP-10およびTNF-α)の分泌を、BNT142の全血とのインキュベーション後に評価した。試験した希釈範囲(0.0625~64μg/ml)は、製剤の予想される濃度(0.005~5.12mg/kgの用量に相当)を代表し、それを上回る。被験物質関連のサイトカイン分泌は、2μg/mL(0.16mg/kgのヒト等価用量)の濃度まで検出できなかった。それを超えると、BNT142は、≧4μg/mL(≧0.32mg/kgのヒト等価用量)の濃度でIL-1β、IL-6、IL-8の分泌を誘導し、≧32μg/mL(≧2.56mg/kgのヒト等価用量)の濃度でIFN-γ、IL-2、TNF-αの分泌を誘導した。
毒性学-結論
BNT142の毒性評価を2つの部分に分けた-一方の部分は、この化合物が活性であろう薬理学的に関連する種がないため、コードされた抗体RiboMab02.1の安全性をインビトロで評価した。その代わりに、RNA-LNPをいくつかのインビボおよびインビトロ試験で試験し、それらのいくつかは、同一の種類の修飾mRNAを有するが異なる配列を有する(例えばルシフェラーゼをコードする)代用物を使用した。このアプローチは、他の場合に信頼できることが証明されている。
RNA-LNPの安全性は、マウスおよびサルにおける3つのインビボ毒性/忍容性試験で評価されている。予想される上限臨床用量範囲のBNT142(0.015~0.15mg/kg)では、NHP忍容性試験においてRNA-LNP関連作用は観察されなかったが、マウスにおけるより高い単回または複数回用量のRNA-LNP(1~5mg/kg)は、主に用量依存的に、臨床病理パラメータ、臓器重量および組織病理学的変化に対する影響をもたらした。これらの作用は、しばしば雌動物においてのみ存在するか、またはより顕著であった。
両性において、約1.5または約5mg/kgのRNA-LNPの反復投与後、リンパ球数(したがって白血球数)が減少し、グロブリン濃度が上昇した。2mg/kg(雌)および4mg/kg(両性)の単回投与は、最小のALTおよびAST上昇を誘導し、これらは、約1.5mg/kgまたは約5mg/kgのRNA-LNPのいずれかの複数回投与を受けた雌において反復投与後により顕著であり、LDH上昇と共に観察された。したがって、これらの作用は、肝臓組織病理学における最小から軽度(単回投与)または最小から顕著(反復投与)の変化(細胞質変化、単核炎症細胞浸潤物、多核巨細胞および壊死)に関連していた。約1.5mg/kgまたは約5mg/kgのRNA-LNPを繰り返し投与された雌の脾臓において、うっ血、髄外造血、動脈周囲鞘のリンパ過形成または色素沈着などの顕微鏡的変化も見られた。肝臓、脾臓および腎臓の重量増加が雄および雌動物で観察されたが、他の組織病理学的観察は行わなかった。記載された作用の大部分は、両用量群で依然としてわずかに上昇したALPレベル、およびより高い用量(単回投与として約4mg/kgまたは4回の連続投与として約5mg/kg)で処置した雌におけるいくつかの病理学的変化を除いて、2~3週間以内に完全に可逆的であり、回復の終了時までに改善を示した。
インビトロでのRNA-LNPの免疫毒性学的評価は、約3.2mg/kgのヒト等価用量までヒト補体の活性化を示さなかったが、0.3mg/kg以上のヒト等価用量では製剤濃度依存的サイトカイン放出を示した。これらの所見を裏付けて、GLP毒性試験においてマウスに約1.5または約5mg/kgのRNA-LNPを投与した後に可逆的なサイトカイン上昇が見られたが、サイトカイン上昇の程度は反復投与後により低かった。NHP忍容性試験では、0.015~0.15mg/kgのBNT142という上限臨床用量範囲の単回投与後にサイトカイン上昇は見られなかった。
要約すると、上記で論じた非臨床毒性結果に基づいて、0.00005mg/kg(0.05μg/kg)のヒト初回用量は合理的に安全であると考えられるが、ヒトにおいてRiboMab02.1の薬理学的に関連する曝露をもたらすと予想される。
実施例3:インビボ発現されたRiboMab02.1は高度にモノマー性であり、マウスにおいて代替リード構造候補物RiboMab_712/711 C53Wよりも低いADA応答を誘導する
親抗CLDN6 VL(IMGTナンバリングによる53位(C53)のVL(CLDN6))中の遊離システインは、RiboMab02.1ではセリンに(C53S)(それぞれ、配列番号5および7のmRNA配列によってコードされる配列番号4および6)、またはRiboMab_712/711ではトリプトファンに(C53W)(それぞれ、配列番号32および34のmRNA配列によってコードされる配列番号31および33)置換されている。親抗CLDN6 VLの53位は、配列番号4および31の配列における449位に対応し、配列番号6および33の配列における428位に対応する。これはまた、VL(CLDN6)のCDR1に対して+15の位置および/またはVL(CLDN6)のCDR2に対して-3の位置に対応する。
リード構造変異体をコードする両方のCD3x(CLDN6)を、タンパク質凝集およびRiboMab特異的抗薬物抗体(ADA)の誘導に関してマウスにおいて比較した。
4匹の雌Balb/cJRjマウスに、マウス当たり30μgのRNA-LNP(約1.4mg/kg)のIV単回用量を投与した。血清を、投与前ならびに投与後6、24、48、96、168、216、265および528時間(0.25~22日間)にサンプリングした。
注射の6時間後に得られた血清試料を、非還元条件下でのウェスタンブロット分析によって分析した(図13A;各群のマウス#4の代表的なウェスタンブロット画像)。等体積のMelon G精製血清を使用した。C53W置換を有するRiboMab_712/711は、それらの発現レベルと比較して、C53S変異体(RiboMab02.1)よりも高い量のHMW種の産生をもたらした。RiboMab02.1のHMWは、インビボではほとんど検出できなかった。薬物HMW形成はしばしば免疫原性の増加と相関するので、これは重要な違いである。
マウス血清中の抗RiboMab02.1および抗RiboMab_712/711薬物抗体(ADA)を、Gyros Protein Technologies AB製のGyros xPand(商標)XPA1025 ELISA装置を使用して決定した。サンドイッチイムノアッセイを、Gyrolab Bioaffy 200 CDで処理した。
抗RiboMab ADAを、100μg/mLのビオチン化薬物抗体を使用して捕捉した。血清ADAレベルを、Fc断片特異的抗体である25nMのAlexa Fluor 647結合AffiniPureヤギ抗マウスIgGを用いて検出した。200-3W-002-A法を用いてデータを生成し、Gyrolab Evaluatorソフトウェアを用いて結果を分析した。
陽性ADA応答を浮動小数点に従って決定した。したがって、陰性血清(採血前)の応答および式、正規化係数(NF)+平均陰性対照(NC)を使用してカットポイントを計算した。
NF=陰性試料のX*SD;X=1.645;SD=陰性血清(採血前)の標準偏差;NC=3つの陰性対照(プール陰性血清)。
データ(図13B)は、RiboMab02.1のより高い単量体含有量(図13A)と一致して、RiboMab_712/711と比較してマウスにおけるRiboMab02.1のより低い免疫原性能を示す。免疫原性は発現レベルと密接には相関しないので、より低い免疫原性は発現レベルの差によって説明することができない。
結論として、両方のRiboMab02.1配列におけるようなセリンによる遊離システインC53の置換は、RiboMab_712/711の両方の配列におけるようなトリプトファンへの置換と比較して、より低いレベルのHMW形成およびADA誘導をもたらした。
実施例4:RiboMab02.1をコードする原薬中間体の1.5:1のHC:LC重量比は、高度にモノマー性のRiboMab02.1の効率的な発現をもたらす
HEK-293T-17産生細胞を、1:1、1.25:1、1.5:1、1.75:1、2:1、2.25:1、2.5:1および2.75:1のHC:LC重量比でHCおよびLCをコードする原薬中間体(RNA)を用いたエレクトロポレーションによってトランスフェクトした(総RNA濃度:100μg/mL RNA;総体積:250μL)。この実施例で使用されるHCおよびLCをコードする原薬中間体(RNA)(それぞれ配列番号5および7)は、配列番号4および6のRiboMab02.1の2つのポリペプチドをコードする。2つのポリペプチドは、それぞれ、CD3を標的とする親抗体の重鎖および軽鎖に由来する可変領域を含むので、本明細書ではHCおよびLCと呼ばれる。RiboMab02.1のポリペプチドはどちらも、抗体の完全な重鎖または軽鎖を含まない。
細胞培養上清(SN)試料をトランスフェクションの48時間後にウェスタンブロット(WB)およびELISA分析に供した(図14)。
WB分析(図14A)のために、SN試料をタンパク質変性のために熱処理し、続いて非還元条件下でSDS-PAGEを行った。参照トリボディタンパク質の2つの調製物を陽性対照として使用した:一方は0.23%の高分子量(HMW;モノマー参照)種を含有し、他方は96.5%のHMW(HMW参照)種を含有した。次いで、SDS-PAGEによって分離されたタンパク質バンドをニトロセルロース膜にブロットし、それぞれカッパ軽鎖またはIgG Fd領域を標的とする2つのHRP結合ヤギ抗ヒト検出抗体の組合せとインキュベートした。この後、ブロットした膜を化学発光試薬で発色させ、4秒間曝露した。その後、画像をソフトウェアによって分析して、個々のバンドのシグナル強度およびパーセンテージ割合を定量化した(表5)。低分子量(LMW)種を特徴とする遊離LC形態は、試験した全てのSN試料で一貫して低かった。モノマー含有量は全体的に高く(>90%)、HMW種-主に200kDaのHC二量体-は、試験したHC:LC RNA比にわたって2.4%~9.1%で変化した。
サンドイッチイムノアッセイによるRiboMab02.1定量化のために、2つの独立した実験からの技術的二連のSN試料を、捕捉および検出のためにそれぞれビオチン化またはAlexaFlour647結合ヤギ抗マウスIgG抗体を使用するGyros xPand(商標)XPA1025 ELISA装置を用いて分析した。アッセイは、Gyrolab Bioaffy 20 HC CDで実施した。Gyrolab huIgG-High Titer法v2を用いてデータを生成し、Gyrolab Evaluatorソフトウェアを使用して結果を評価した。
結果(図14B)は、HCをコードするRNAの含有量がELISAによって検出された単量体RiboMabの量と逆相関したことを示す。したがって、1.25:1および1.5:1のHC:LC RNA比は、SNにおいて最も高いRiboMab濃度(約3.5μg/mL)をもたらし、2.75:1のHC:LC比は、用量依存的に、最も低い量のRiboMab02.1(約2.0μg/mL)をもたらした。1.5:1のHC:LC RNA比は最も好ましいRiboMab02.1収量対HMW含有量を示したので、RiboMab02.1をコードする原薬および製剤の下流開発のためにこれを選択した(表5)。
Figure 2024525795000059
さらなる開発のために選択したHC:LC RNA比を太字で示す。LC=軽鎖;LMW=低分子量;HC=重鎖;HMW=高分子量;SD=標準偏差

Claims (126)

  1. (i)CD3に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CD3))、CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CLDN6))およびCLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CLDN6))を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1のRNA;ならびに
    (ii)CD3に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CD3))、CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CLDN6))およびCLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CLDN6))を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2のRNA
    を含む組成物または医薬製剤。
  2. 前記第1のポリペプチド鎖が前記第2のポリペプチド鎖と相互作用して、CD3に特異性を有する結合ドメインおよびCLDN6に特異性を有する2つの結合ドメインを形成する、請求項1に記載の組成物または医薬製剤。
  3. 前記第1のポリペプチド鎖のVH(CD3)と前記第2のポリペプチド鎖のVL(CD3)とが相互作用して、CD3に特異性を有する結合ドメインを形成し、
    前記第1のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成し、および
    前記第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成する、
    請求項1または2に記載の組成物または医薬製剤。
  4. 前記第1および第2のポリペプチド鎖が、免疫グロブリンまたはその機能的変異体に由来する重鎖の定常領域1(CH1)と、免疫グロブリンまたはその機能的変異体に由来する軽鎖の定常領域(CL)とを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  5. 前記免疫グロブリンがIgG1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  6. 前記IgG1がヒトIgG1である、請求項5に記載の組成物または医薬製剤。
  7. 前記第1のポリペプチド鎖上のVH、VL、およびCH1が、
    VH(CD3)-CH1-VH(CLDN6)-VL(CLDN6)、または
    VH(CD3)-CH1-VL(CLDN6)-VH(CLDN6)
    の順序でN末端からC末端へと配置されている、請求項4~6のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  8. 前記CH1が、ペプチドリンカーによって前記VH(CLDN6)またはVL(CLDN6)に接続されている、請求項4~7のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  9. 前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列SGPGGGRS(GS)またはその機能的変異体を含む、請求項8に記載の組成物または医薬製剤。
  10. 前記第2のポリペプチド鎖上のVH、VL、およびCLが、
    VL(CD3)-CL-VH(CLDN6)-VL(CLDN6)、または
    VL(CD3)-CL-VL(CLDN6)-VH(CLDN6)
    の順序でN末端からC末端へと配置されている、請求項4~9のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  11. 前記CLがペプチドリンカーによって前記VH(CLDN6)またはVL(CLDN6)に接続されている、請求項4~10のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  12. 前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列DVPGGSまたはその機能的変異体を含む、請求項11に記載の組成物または医薬製剤。
  13. 前記VH(CLDN6)および前記VL(CLDN6)がペプチドリンカーによって互いに接続されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  14. 前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列(GS)またはその機能的変異体を含み、xが2、3、4、5または6である、請求項13に記載の組成物または医薬製剤。
  15. 前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列(GS)またはその機能的変異体を含む、請求項14に記載の組成物または医薬製剤。
  16. 前記第1のポリペプチド鎖上のCH1が前記第2のポリペプチド鎖上のCLと相互作用する、請求項4~15のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  17. 前記VH(CD3)が、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  18. 前記VL(CD3)が、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  19. 前記VH(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  20. 前記VL(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに好ましくはCDR1に対して+15の位置のセリン残基および/またはCDR2に対して-3の位置のセリン残基を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  21. 前記VH(CD3)が、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、前記VL(CD3)が、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、前記VH(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、前記VL(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、ならびに好ましくは前記VL(CLDN6)が、CDR1に対して+15の位置のセリン残基および/またはCDR2に対して-3の位置のセリン残基を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  22. 前記VH(CD3)が、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、
    前記VL(CD3)が、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、
    前記VH(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、および/または
    前記VL(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含む、
    請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  23. 前記第1のポリペプチド鎖が、配列番号4のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  24. 前記第2のポリペプチド鎖が、配列番号6のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  25. 前記第1のポリペプチド鎖が、配列番号4のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含み、前記第2のポリペプチド鎖が、配列番号6のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  26. 前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチドの少なくとも1つが、コドン最適化されたコード配列、および/またはそのG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によってコードされ、前記コドン最適化および/または前記G/C含有量の増加が、好ましくは前記コードされたアミノ酸配列の配列を変化させない、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  27. 前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチドのそれぞれが、コドン最適化されたコード配列、および/またはそのG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によってコードされ、前記コドン最適化および/または前記G/C含有量の増加が、好ましくは前記コードされたアミノ酸配列の配列を変化させない、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  28. 前記RNAがウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  29. 前記修飾ヌクレオシドが、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)から選択される、請求項28に記載の組成物または医薬製剤。
  30. 少なくとも1つのRNAが5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  31. 各RNAが5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  32. 少なくとも1つのRNAが、配列番号8のヌクレオチド配列、または配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  33. 各RNAが、配列番号8のヌクレオチド配列、または配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  34. 少なくとも1つのRNAが、配列番号9のヌクレオチド配列、または配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  35. 各RNAが、配列番号9のヌクレオチド配列、または配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  36. 少なくとも1つのRNAがポリA配列を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  37. 各RNAがポリA配列を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  38. 前記ポリA配列が少なくとも100個のヌクレオチドを含む、請求項36または37に記載の組成物または医薬製剤。
  39. 前記ポリA配列が、配列番号10のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる、請求項36~38のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  40. (i)前記第1のRNAと前記第2のRNAとが、約1.75:1~約1.25:1、もしくは約1.5:1~約1.25:1、もしくは好ましくは約1.5:1の(w/w)比であり;ならびに/または
    (ii)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み;ならびに/または
    (iii)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み、前記修飾ヌクレオシドが、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)、および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択され;ならびに/または
    (iv)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含み;ならびに/または
    (v)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、配列番号8のヌクレオチド配列、もしくは配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含み;ならびに/または
    (vi)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、配列番号9のヌクレオチド配列、もしくは配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含み;ならびに/または
    (vii)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリA尾部を含む、
    請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  41. (i)前記第1のポリペプチド鎖が、配列番号4のアミノ酸配列、もしくは配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;および/または
    (ii)前記第1のRNAが、配列番号5のヌクレオチド配列、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、
    請求項1~40のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  42. (i)前記第2のポリペプチド鎖が、配列番号6のアミノ酸配列、もしくは配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;および/または
    (ii)前記第2のRNAが、配列番号7のヌクレオチド配列、もしくは配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、
    請求項1~41のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  43. (i)配列番号4のアミノ酸配列、または配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1のRNA;および
    (ii)配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2のRNA
    を含む組成物または医薬製剤。
  44. 前記第1のRNAが、配列番号5のヌクレオチド配列、または配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  45. 前記第2のRNAが、配列番号7のヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  46. 前記RNAがmRNAである、請求項1~45のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  47. 前記RNAが、液体として製剤化されるか、固体として製剤化されるか、またはそれらの組合せである、請求項1~46のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  48. 前記RNAが注射用に製剤化されているか、または製剤化されることになっている、請求項1~47のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  49. 前記RNAが静脈内投与用に製剤化されているか、または製剤化されることになっている、請求項1~48のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  50. 前記RNAが粒子として製剤化されているか、または製剤化されることになっている、請求項1~49のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  51. 前記粒子が脂質ナノ粒子(LNP)である、請求項50に記載の組成物または医薬製剤。
  52. 前記LNP粒子が、((3-ヒドロキシプロピル)アザンジイル)ビス(ノナン-9,1-ジイル)ビス(2-ブチルオクタノエート)、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、およびコレステロールを含む、請求項51に記載の組成物または医薬製剤。
  53. 前記第1および第2のポリペプチドをコードする、好ましくは0.05μg/kg以上、または0.05μg/kg~5mg/kg、または0.05μg/kg~500μg/kg、または0.5μg/kg~500μg/kg、または1μg/kg~50μg/kg、または5μg/kg~150μg/kg、または15μg/kg~150μg/kgの用量のRNAを含み、kgが治療される対象の体重kgを指す、医薬組成物である、請求項1~52のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  54. 前記医薬組成物が、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む、請求項53に記載の組成物または医薬製剤。
  55. 前記医薬製剤がキットである、請求項1~52のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  56. 前記RNAおよび任意で前記粒子形成成分が別々のバイアル内にある、請求項55に記載の組成物または医薬製剤。
  57. 癌を治療または予防するための組成物または医薬製剤の使用説明書をさらに含む、請求項55または56に記載の組成物または医薬製剤。
  58. 医薬用途のための、請求項1~57のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  59. 前記医薬用途が、疾患または障害の治療的または予防的処置を含む、請求項58に記載の組成物または医薬製剤。
  60. 疾患または障害の前記治療的または予防的処置が、癌を治療または予防することを含む、請求項59に記載の組成物または医薬製剤。
  61. 疾患または障害の前記治療的または予防的処置が、さらなる療法を投与することをさらに含む、請求項59または60のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  62. 前記さらなる療法が、(i)腫瘍を摘出、切除、または減量する手術、(ii)放射線療法、および(iii)化学療法からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項62に記載の組成物または医薬製剤。
  63. 前記さらなる療法が、さらなる治療薬を投与することを含む、請求項62に記載の組成物または医薬製剤。
  64. 前記さらなる治療薬が抗癌治療薬を含む、請求項63に記載の組成物または医薬製剤。
  65. ヒトへの投与用である、請求項1~64のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
  66. 対象における癌を治療する方法であって、
    (i)CD3に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CD3))、CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CLDN6))およびCLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CLDN6))を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1のRNA;ならびに
    (ii)CD3に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CD3))、CLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する重鎖の可変領域(VH)(VH(CLDN6))およびCLDN6に特異性を有する免疫グロブリンに由来する軽鎖の可変領域(VL)(VL(CLDN6))を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2のRNA
    を前記対象に投与することを含む、方法。
  67. 前記第1のポリペプチド鎖が前記第2のポリペプチド鎖と相互作用して、CD3に特異性を有する結合ドメインおよびCLDN6に特異性を有する2つの結合ドメインを形成する、請求項66に記載の方法。
  68. 前記第1のポリペプチド鎖のVH(CD3)と前記第2のポリペプチド鎖のVL(CD3)とが相互作用して、CD3に特異性を有する結合ドメインを形成し、
    前記第1のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成し、
    前記第2のポリペプチド鎖のVH(CLDN6)とVL(CLDN6)とが相互作用して、CLDN6に特異性を有する結合ドメインを形成する、
    請求項66または67に記載の方法。
  69. 前記第1および第2のポリペプチド鎖が、免疫グロブリンまたはその機能的変異体に由来する重鎖の定常領域1(CH1)と、免疫グロブリンまたはその機能的変異体に由来する軽鎖の定常領域(CL)とを含む、請求項66~68のいずれか一項に記載の方法。
  70. 前記免疫グロブリンがIgG1である、請求項66~69のいずれか一項に記載の方法。
  71. 前記IgG1がヒトIgG1である、請求項70に記載の方法。
  72. 前記第1のポリペプチド鎖上のVH、VL、およびCH1が、
    VH(CD3)-CH1-VH(CLDN6)-VL(CLDN6)、または
    VH(CD3)-CH1-VL(CLDN6)-VH(CLDN6)
    の順序でN末端からC末端へと配置されている、請求項69~71のいずれか一項に記載の方法。
  73. 前記CH1が、ペプチドリンカーによって前記VH(CLDN6)またはVL(CLDN6)に接続されている、請求項69~72のいずれか一項に記載の方法。
  74. 前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列SGPGGGRS(GS)またはその機能的変異体を含む、請求項73に記載の方法。
  75. 前記第2のポリペプチド鎖上のVH、VL、およびCLが、
    VL(CD3)-CL-VH(CLDN6)-VL(CLDN6)、または
    VL(CD3)-CL-VL(CLDN6)-VH(CLDN6)
    の順序でN末端からC末端へと配置されている、請求項69~74のいずれか一項に記載の方法。
  76. 前記CLが、ペプチドリンカーによって前記VH(CLDN6)またはVL(CLDN6)に接続されている、請求項69~75のいずれか一項に記載の方法。
  77. 前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列DVPGGSまたはその機能的変異体を含む、請求項76に記載の方法。
  78. 前記VH(CLDN6)および前記VL(CLDN6)がペプチドリンカーによって互いに接続されている、請求項66~77のいずれか一項に記載の方法。
  79. 前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列(GS)またはその機能的変異体を含み、xが2、3、4、5または6である、請求項78に記載の方法。
  80. 前記ペプチドリンカーが、アミノ酸配列(GS)またはその機能的変異体を含む、請求項79に記載の方法。
  81. 前記第1のポリペプチド鎖上のCH1が前記第2のポリペプチド鎖上のCLと相互作用する、請求項69~80のいずれか一項に記載の方法。
  82. 前記VH(CD3)が、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項66~81のいずれか一項に記載の方法。
  83. 前記VL(CD3)が、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項66~82のいずれか一項に記載の方法。
  84. 前記VH(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含む、請求項66~83のいずれか一項に記載の方法。
  85. 前記VL(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに好ましくはCDR1に対して+15の位置のセリン残基および/またはCDR2に対して-3の位置のセリン残基を含む、請求項66~84のいずれか一項に記載の方法。
  86. 前記VH(CD3)が、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、前記VL(CD3)が、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、前記VH(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、前記VL(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列のCDR1、CDR2およびCDR3を含み、ならびに好ましくは前記VL(CLDN6)が、CDR1に対して+15の位置のセリン残基および/またはCDR2に対して-3の位置のセリン残基を含む、請求項66~85のいずれか一項に記載の方法。
  87. 前記VH(CD3)が、配列番号4のアミノ酸27~145のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、
    前記VL(CD3)が、配列番号6のアミノ酸27~132のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、
    前記VH(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸267~383のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含み、および/または
    前記VL(CLDN6)が、配列番号4のアミノ酸404~510のアミノ酸配列もしくはその機能的変異体を含む、
    請求項66~86のいずれか一項に記載の方法。
  88. 前記第1のポリペプチド鎖が、配列番号4のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む、請求項66~87のいずれか一項に記載の方法。
  89. 前記第2のポリペプチド鎖が、配列番号6のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む、請求項66~88のいずれか一項に記載の方法。
  90. 前記第1のポリペプチド鎖が配列番号4のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含み、前記第2のポリペプチド鎖が配列番号6のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む、請求項66~89のいずれか一項に記載の方法。
  91. 前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチドの少なくとも1つが、コドン最適化されたコード配列、および/またはそのG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によってコードされ、前記コドン最適化および/または前記G/C含有量の増加が、好ましくは前記コードされたアミノ酸配列の配列を変化させない、請求項66~90のいずれか一項に記載の方法。
  92. 前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチドのそれぞれが、コドン最適化されたコード配列、および/またはそのG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によってコードされ、前記コドン最適化および/または前記G/C含有量の増加が、好ましくは前記コードされたアミノ酸配列の配列を変化させない、請求項66~91のいずれか一項に記載の方法。
  93. 前記RNAがウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む、請求項66~92のいずれか一項に記載の方法。
  94. 前記修飾ヌクレオシドが、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)、および5-メチルウリジン(m5U)から選択される、請求項93に記載の方法。
  95. 少なくとも1つのRNAが5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含む、請求項66~94のいずれか一項に記載の方法。
  96. 各RNAが5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含む、請求項66~95のいずれか一項に記載の方法。
  97. 少なくとも1つのRNAが、配列番号8のヌクレオチド配列、または配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む、請求項66~96のいずれか一項に記載の方法。
  98. 各RNAが、配列番号8のヌクレオチド配列、または配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含む、請求項66~97のいずれか一項に記載の方法。
  99. 少なくとも1つのRNAが、配列番号9のヌクレオチド配列、または配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む、請求項66~98のいずれか一項に記載の方法。
  100. 各RNAが、配列番号9のヌクレオチド配列、または配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含む、請求項66~99のいずれか一項に記載の方法。
  101. 少なくとも1つのRNAがポリA配列を含む、請求項66~100のいずれか一項に記載の方法。
  102. 各RNAがポリA配列を含む、請求項66~101のいずれか一項に記載の方法。
  103. 前記ポリA配列が少なくとも100個のヌクレオチドを含む、請求項101または102に記載の方法。
  104. 前記ポリA配列が、配列番号10のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる、請求項101~103のいずれか一項に記載の方法。
  105. (i)前記第1のRNAと前記第2のRNAとが、約1.75:1~約1.25:1、もしくは約1.5:1~約1.25:1、もしくは好ましくは約1.5:1の(w/w)比であり;ならびに/または
    (ii)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み;ならびに/または
    (iii)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含み、前記修飾ヌクレオシドが、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)、および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択され;ならびに/または
    (iv)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含み;ならびに/または
    (v)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、配列番号8のヌクレオチド配列、もしくは配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’UTRを含み;ならびに/または
    (vi)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、配列番号9のヌクレオチド配列、もしくは配列番号9のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’UTRを含み;ならびに/または
    (vii)前記第1のRNAおよび前記第2のRNAが、配列番号10のヌクレオチド配列を含むポリA尾部を含む、
    請求項66~104のいずれか一項に記載の方法。
  106. (i)前記第1のポリペプチド鎖が、配列番号4のアミノ酸配列、もしくは配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;および/または
    (ii)前記第1のRNAが、配列番号5のヌクレオチド配列、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、
    請求項66~105のいずれか一項に記載の方法。
  107. (i)前記第2のポリペプチド鎖が、配列番号6のアミノ酸配列、もしくは配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;および/または
    (ii)前記第2のRNAが、配列番号7のヌクレオチド配列、もしくは配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、
    請求項66~106のいずれか一項に記載の方法。
  108. 対象における癌を治療する方法であって、
    (i)配列番号4のアミノ酸配列、または配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖をコードする第1のRNA;および
    (ii)配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖をコードする第2のRNA
    を前記対象に投与することを含む、方法。
  109. 前記第1のRNAが、配列番号5のヌクレオチド配列、または配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項66~108のいずれか一項に記載の方法。
  110. 前記第2のRNAが、配列番号7のヌクレオチド配列、または配列番号7のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項66~109のいずれか一項に記載の方法。
  111. 前記RNAがmRNAである、請求項66~110のいずれか一項に記載の方法。
  112. 前記RNAが、液体として製剤化されるか、固体として製剤化されるか、またはそれらの組合せである、請求項66~111のいずれか一項に記載の方法。
  113. 前記RNAが注射によって、好ましくは週に1回投与される、請求項66~112のいずれか一項に記載の方法。
  114. 前記RNAが静脈内投与によって投与される、請求項66~113のいずれか一項に記載の方法。
  115. 前記RNAが粒子として製剤化される、請求項66~114のいずれか一項に記載の方法。
  116. 前記粒子が脂質ナノ粒子(LNP)である、請求項115に記載の方法。
  117. 前記LNP粒子が、((3-ヒドロキシプロピル)アザンジイル)ビス(ノナン-9,1-ジイル)ビス(2-ブチルオクタノエート)、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、およびコレステロールを含む、請求項116に記載の方法。
  118. 前記RNAが医薬組成物に製剤化され、前記医薬組成物が、前記第1および第2のポリペプチドをコードする、好ましくは0.05μg/kg以上、または0.05μg/kg~5mg/kg、または0.05μg/kg~500μg/kg、または0.5μg/kg~500μg/kg、または1μg/kg~50μg/kg、または5μg/kg~150μg/kg、または15μg/kg~150μg/kgの用量のRNAを含み、kgが治療される対象の体重kgを指す、請求項66~117のいずれか一項に記載の方法。
  119. 前記医薬組成物が、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤をさらに含む、請求項118に記載の方法。
  120. さらなる療法を投与することをさらに含む、請求項66~119のいずれか一項に記載の方法。
  121. 前記さらなる療法が、(i)腫瘍を摘出、切除、または減量する手術、(ii)放射線療法、および(iii)化学療法からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項120に記載の方法。
  122. 前記さらなる療法が、さらなる治療薬を投与することを含む、請求項121に記載の方法。
  123. 前記さらなる治療薬が抗癌治療薬を含む、請求項122に記載の方法。
  124. 前記対象がヒトである、請求項66~123のいずれか一項に記載の方法。
  125. 前記癌がCLDN6陽性癌である、請求項66~124のいずれか一項に記載の方法。
  126. 請求項66~125のいずれか一項に記載の方法において使用するための、請求項1~65のいずれか一項に記載の組成物または医薬製剤。
JP2024502029A 2021-07-15 2022-07-13 Cldn6陽性癌を治療するための、cldn6およびcd3結合要素をコードする薬剤 Pending JP2024525795A (ja)

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