JP2024524974A - ナンセンス変異依存rna分解機構に基づく病態及び疾患の処置のためのアンチセンスオリゴマー - Google Patents

ナンセンス変異依存rna分解機構に基づく病態及び疾患の処置のためのアンチセンスオリゴマー

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遺伝子における選択的スプライシング事象は、異常な又は低減したタンパク質発現をもたらし得る非生産的mRNA転写物をもたらす可能性があり、遺伝子における選択的スプライシング事象を標的とすることができる治療剤は、患者において機能性タンパク質の発現レベルを調節する、及び/又は異常なタンパク質発現を阻害することができる。そのような治療剤は、タンパク質の欠損によって引き起こされる病態又は疾患を処置するために使用することができる。
【選択図】図1

Description

相互参照
[001]本願は、その全体が本明細書に援用される、2021年6月21日に提出された米国仮特許出願第63/212,981号の利益を主張する。
[002]遺伝子における選択的スプライシング事象は、異常な又は低減したタンパク質発現をもたらし得る非生産的mRNA転写物をもたらす可能性があり、遺伝子における選択的スプライシング事象を標的とすることができる治療剤は、患者において機能性タンパク質の発現レベルを調節する、及び/又は異常なタンパク質発現を阻害することができる。そのような治療剤は、タンパク質欠損によって引き起こされる病態又は疾患を処置するために使用することができる。
[003]Chung Jansen症候群(CHUJANS)としても公知のPHIP関連障害は、乳児期から明らかな全般的発達遅延、知的発達障害又は学習困難、行動異常、異形特徴、及び肥満を特徴とする。その表現型及びさらなる特徴の重症度は多様である。CHUJANSは、プレクストリン相同ドメイン相互作用タンパク質(PHIP)遺伝子の変化によって引き起こされる珍しい病態である。この遺伝子は、脳及び神経系の発生に関連するいくつかの過程において重要な役割を果たす。PHIP遺伝子はまた、神経組織においてインスリンを制御することにも関与する。今日まで、PHIP関連障害が糖尿病を引き起こすことは知られていないが、この障害を有する人々は、糖尿病の危険因子である過体重となる増加した危険がある。最も一般的な徴候及び症状としては、軽度から重度の学習上の問題、行動上の問題、及び過体重となる傾向が挙げられる。PHIP関連障害は、常染色体優性病態である。PHIP関連障害を有する多くの人々は、軽度から重度の知的障害を有する。知的障害を有しなかった、PHIP関連障害を有する人々は、発話の問題、幼児期における全般的発達遅延、及び学習上の問題を有することが多い。現在、PHIP関連障害患者のための承認された疾患修飾処置は存在せず、そのような処置に対する必要性が存在する。
[004]標的遺伝子から転写されかつナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソン(NMDエクソン)を含むmRNA前駆体を有する細胞において標的タンパク質の発現を調節する方法であって、薬剤又は薬剤をコードするベクターを細胞に接触させ、それによって薬剤がmRNA前駆体からのNMDエクソンのスプライシングを調節し、それにより、mRNA前駆体からプロセシングされるプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、そして細胞内で標的タンパク質の発現を調節することを含み、標的遺伝子はPHIP遺伝子である、方法が本明細書で提供される。
[005]一部の態様では、薬剤は、(a)mRNA前駆体の標的化部分に結合するか、(b)NMDエクソンのスプライシングに関与する因子の結合を調節するか、又は(a)及び(b)の組合せである。
[006]一部の態様では、薬剤は、NMDエクソンのスプライシングに関与する因子の、標的化部分の領域への結合に干渉する。
[007]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分はNMDエクソンの近位にある。
[008]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、NMDエクソンの5’末端の、最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流にある。
[009]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、NMDエクソンの5’末端の、少なくとも約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約10ヌクレオチド、約5ヌクレオチド、約4ヌクレオチド、約2ヌクレオチド、約1ヌクレオチド上流にある。
[010]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、NMDエクソンの3’末端の、最大約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流にある。
[011]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、NMDエクソンの3’末端の、少なくとも約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約10ヌクレオチド、約5ヌクレオチド、約4ヌクレオチド、約2ヌクレオチド、約1ヌクレオチド下流にある。
[012]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004373の、最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流にある。
[013]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004373の、約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流にある。
[014]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004436の、最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流にある。
[015]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004436の、約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流にある。
[016]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、mRNA前駆体の2つのカノニカルな(canonical)エクソン領域の間のイントロン領域に位置し、イントロン領域はNMDエクソンを含有する。
[017]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、NMDエクソンと少なくとも部分的に重複する。
[018]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、NMDエクソンの上流又は下流のイントロンと少なくとも部分的に重複する。
[019]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、5’NMDエクソン-イントロン接合部又は3’NMDエクソン-イントロン接合部を含む。
[020]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分はNMDエクソン内にある。
[021]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、NMDエクソンの約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個、又はそれより多い連続するヌクレオチドを含む。
[022]一部の態様では、NMDエクソンは、(a)配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも90%、若しくは100%の配列同一性を有するイントロン型(intronic)配列内にある、及び/又は(b)配列番号3に対して少なくとも80%、少なくとも90%、若しくは100%の配列同一性を有する配列を含む。
[023]一部の態様では、NMDエクソンは配列番号3の配列を含む。
[024]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436内にある。
[025]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436の上流又は下流にある。
[026]一部の態様では、mRNA前駆体の標的化部分は、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436のエクソン-イントロン接合部を含む。
[027]一部の態様では、プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質は、全長PHIPタンパク質又は野生型PHIPタンパク質である。
[028]一部の態様では、プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質は、機能性PHIPタンパク質である。
[029]一部の態様では、プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質は、野生型PHIPタンパク質と比較して少なくとも部分的に機能性である。
[030]一部の態様では、プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質は、全長野生型PHIPタンパク質と比較して少なくとも部分的に機能性である。
[031]一部の態様では、プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質は、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436によってコードされるアミノ酸配列を欠くPHIPタンパク質である。
[032]一部の態様では、方法は、mRNA前駆体からのNMDエクソンの排除を促進する。
[033]一部の態様では、薬剤と接触させた細胞におけるmRNA前駆体からのNMDエクソンの排除は、薬剤が存在しない場合と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加する。
[034]一部の態様では、方法は、細胞においてプロセシングされたmRNAのレベルの増加をもたらす。
[035]一部の態様では、薬剤と接触させた細胞におけるプロセシングされたmRNAのレベルは、薬剤が存在しない場合と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加する。
[036]一部の態様では、方法は、細胞において標的タンパク質の発現の増加をもたらす。
[037]一部の態様では、薬剤と接触させた細胞においてプロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質のレベルは、薬剤が存在しない場合と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加する。
[038]一部の態様では、薬剤は、配列番号4~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む。
[039]一部の態様では、薬剤は遺伝子編集分子をさらに含む。
[040]一部の態様では、遺伝子編集分子はCRISPR-Cas9を含む。
[041]一部の態様では、薬剤がアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーが、ホスホロチオエート連結又はホスホロジアミデート連結を含む骨格修飾を含む。
[042]一部の態様では、薬剤はアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル部分、2’-フルオロ部分、2’-NMA部分、又は2’-O-メトキシエチル部分を含む。
[043]一部の態様では、薬剤がアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーが少なくとも1つの修飾糖部分を含む。
[044]一部の態様では、各糖部分は修飾糖部分である。
[045]一部の態様では、薬剤がアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーが、8~50核酸塩基、8~40核酸塩基、8~35核酸塩基、8~30核酸塩基、8~25核酸塩基、8~20核酸塩基、8~15核酸塩基、9~50核酸塩基、9~40核酸塩基、9~35核酸塩基、9~30核酸塩基、9~25核酸塩基、9~20核酸塩基、9~15核酸塩基、10~50核酸塩基、10~40核酸塩基、10~35核酸塩基、10~30核酸塩基、10~25核酸塩基、10~20核酸塩基、10~15核酸塩基、11~50核酸塩基、11~40核酸塩基、11~35核酸塩基、11~30核酸塩基、11~25核酸塩基、11~20核酸塩基、11~15核酸塩基、12~50核酸塩基、12~40核酸塩基、12~35核酸塩基、12~30核酸塩基、12~25核酸塩基、12~20核酸塩基、又は12~15核酸塩基から成る。
[046]一部の態様では、方法は、薬剤をコードするベクターを細胞に接触させることを含み、ベクターはウイルスベクターである。
[047]一部の態様では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ウイルスベクター、又はレトロウイルスベクターを含む。
[048]一部の態様では、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む。
[049]一部の態様では、薬剤は修飾snRNAを含む。
[050]一部の態様では、修飾ヒトsnRNAは修飾U1 snRNAである。
[051]一部の態様では、修飾ヒトsnRNAは修飾U7 snRNAである。
[052]一部の態様では、修飾ヒトsnRNAの1本鎖ヌクレオチド配列の一部分は、mRNA前駆体の標的化部分に結合する配列を含む。
[053]一部の態様では、方法は、修飾snRNAをコードするベクターを細胞に接触させることを含む。
[054]一部の態様では、方法は、標的タンパク質のmRNAレベル又は発現レベルを評価することをさらに含む。
[055]一部の態様では、薬剤は治療剤である。
[056]本明細書に記載される治療剤又は本明細書に記載される治療剤をコードするベクターと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物も本明細書で提供される。
[057]治療剤又は治療剤をコードするベクターと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物であって、治療剤が、配列番号4~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む、前記医薬組成物も本明細書で提供される。
[058]一部の態様では、治療剤は、配列番号55~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む。
[059]一部の態様では、医薬組成物は、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、又は静脈内注射用に製剤化される。
[060]一部の態様では、医薬組成物は、髄腔内注射又は脳脊髄内注射用に製剤化される。
[061]一部の態様では、医薬組成物は第2の治療剤をさらに含む。
[062]一部の態様では、第2の治療剤は低分子を含む。
[063]一部の態様では、第2の治療剤はアンチセンスオリゴマーを含む。
[064]一部の態様では、第2の治療剤はイントロン保持を是正する。
[065]配列番号4~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む組成物であって、アンチセンスオリゴマーは、骨格修飾、糖部分修飾、又はそれらの組合せを含む、前記組成物も本明細書で提供される。
[066]アンチセンスオリゴマーを含むポリヌクレオチドをコードするウイルスベクターを含む組成物であって、アンチセンスオリゴマーが、配列番号4~180から成る群より選択される配列からなる、前記組成物も本明細書で提供される。
[067]一部の態様では、ポリヌクレオチドは修飾snRNAをさらに含む。
[068]一部の態様では、修飾ヒトsnRNAは修飾U1 snRNAである。
[069]一部の態様では、修飾ヒトsnRNAは修飾U7 snRNAである。
[070]一部の態様では、アンチセンスオリゴマーは、配列番号55~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%の配列同一性を有する。
[071]疾患若しくは病態を処置すること又は疾患若しくは病態を発生する可能性を低下させることを必要とする対象の細胞内で標的タンパク質の発現を調節することによって、対象において疾患若しくは病態を処置するか又は疾患若しくは病態を発生する可能性を低下させる方法であって、対象の細胞に本明細書に記載される医薬組成物を接触させることを含む、前記方法も本明細書で提供される。
[072]一部の態様では、疾患又は病態は、PHIP遺伝子における機能喪失型変異に関連する。
[073]一部の態様では、疾患又は病態は、PHIP遺伝子のハプロ不全に関連し、対象は、機能性PHIPタンパク質をコードする第1のアレル、及びPHIPタンパク質が産生されないか若しくは低減したレベルで産生される第2のアレル、又は非機能性PHIPタンパク質若しくは部分的に機能性PHIPタンパク質をコードする第2のアレルを有する。
[074]一部の態様では、疾患又は病態は知的障害疾患又は病態を含む。
[075]一部の態様では、疾患又は病態は、Chung-Jansen症候群(CHUJANS)、常染色体優性障害、知的障害、発話遅延、不安、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、攻撃行動(aggression)、顔面異形、カフェオレ斑、PHIPハプロ不全によって引き起こされる過体重症候群、発達遅延、肥満、又は異形症を含む。
[076]一部の態様では、疾患又は病態はChung-Jansen症候群を含む。
[077]一部の態様では、疾患又は病態は知的障害を含む。
[078]一部の態様では、疾患又は病態はPHIP遺伝子の常染色体劣性変異に関連し、対象は、(i)PHIPタンパク質が産生されないか、若しくは野生型アレルと比較して低減したレベルで産生される、又は(ii)産生されるPHIPタンパク質が非機能性であるか、若しくは野生型アレルと比較して部分的に機能性である、第1のアレル、及び(iii)PHIPタンパク質が野生型アレルと比較して低減したレベルで産生され、産生されるPHIPタンパク質が野生型アレルと比較して少なくとも部分的に機能性である、又は(iv)産生されるPHIPタンパク質が野生型アレルと比較して部分的に機能性である、第2のアレルを有する。
[079]一部の態様では、対象はヒトである。
[080]一部の態様では、対象は非ヒト動物である。
[081]一部の態様では、対象は胎児、胚、又は小児である。
[082]一部の態様では、細胞はエクスビボである。
[083]一部の態様では、医薬組成物は、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、又は静脈内注射によって投与される。
[084]一部の態様では、医薬組成物は、髄腔内注射又は脳脊髄内注射によって投与される。
[085]一部の態様では、方法は疾患又は病態を処置する。
[086]標的遺伝子から転写されかつナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソン(NMDエクソン)を含むmRNA前駆体からのNMDエクソンのスプライシングを調節し、それにより、mRNA前駆体からプロセシングされるプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、そしてmRNA前駆体を有する細胞内で標的タンパク質の発現を調節する薬剤又は該薬剤をコードするベクターを含む組成物であって、標的遺伝子はPHIP遺伝子である、前記組成物も本明細書で提供される。
[087]標的遺伝子から転写されかつナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソン(NMDエクソン)を含むmRNA前駆体からのNMDエクソンのスプライシングを調節し、それにより、mRNA前駆体からプロセシングされるプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、そして疾患又は病態の処置を必要とする対象の細胞において標的タンパク質の発現を調節することによって、対象において疾患又は病態を処置する薬剤又は該薬剤をコードするベクターを含む組成物であって、標的遺伝子はPHIP遺伝子である、前記組成物も本明細書で提供される。
[088]本明細書に記載される組成物と、薬学的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクルとを含む医薬組成物も本明細書で提供される。
[089]一部の態様では、標的タンパク質はプレクストリン相同ドメイン相互作用タンパク質(PHIP)である。
援用
[090]本明細書において言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、個々の各刊行物、特許、又は特許出願が援用されることが具体的かつ個別的に指示される場合と同程度に、本明細書に援用される。
図面の簡単な説明
[091]本開示の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に記載される。本開示の特徴及び利点のより良好な理解は、本開示の原理が利用される例証的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することによって得られるだろう。
[092]図1A~1Bは、ナンセンス変異依存mRNA分解機構誘導エクソンを含有する標的mRNA(NMDエクソンmRNA)、及び全長標的タンパク質又は機能性RNAの発現を増加させる、ナンセンス変異依存mRNA分解機構誘導エクソンの治療剤媒介排除の概略図である。図1Aは、核及び細胞質区画に分けられた細胞を示す。核において、標的遺伝子のmRNA前駆体転写物はスプライシングを受けてmRNAを生成し、このmRNAは、細胞質へ輸送され標的タンパク質に翻訳される。この標的遺伝子に関して、mRNAの一部の画分は、細胞質において分解されるナンセンス変異依存mRNA分解機構誘導エクソンを含有し(NMDエクソン含有成熟mRNA)、したがって標的タンパク質産生をもたらさない。図1Bは、核及び細胞質区画に分けられた同じ細胞の1例を示す。治療剤、例えばアンチセンスオリゴマー(ASO)を用いる処理は、ナンセンス変異依存mRNA分解機構誘導エクソンの排除を促進し、生産的mRNAの増加をもたらし、次に、生産的mRNAはより高いレベルの標的タンパク質に翻訳される。 [093]図2は、ナンセンス変異依存分解機構(NMD)によって分解された非生産的mRNA転写物をもたらすPHIP遺伝子において同定された新規なNMDエクソン包含事象(エクソンX)の例示的な概略図を示す。 [094]図3は、陰の付いた部分及び上部の黒色棒によって示されるNMD誘導エクソン包含事象(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)を含有するPHIP遺伝子における領域のUCSCゲノムブラウザスナップショットを示す(エクソンは長方形であり、イントロンは矢頭を有する線である)。RNA配列決定は、シクロヘキシミド(CHX)又はDMSO対照を用いて処理したヒト神経系前駆細胞(ReN)及びヒトアストロサイトに由来する。 [095]図4Aは、HEK293、SK-N-AS、及びReN VM細胞株におけるピューロマイシン又はシクロヘキシミド処理を介したNMD誘導エクソンの確認を示す。水処理(H)、DMSO処理(D)、ピューロマイシン処理(P)、又はシクロヘキシミド処理(C)細胞に由来する総RNAを使用するRT-PCR分析により、PHIP遺伝子のNMD誘導エクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)に対応するバンドの存在を確認した。 [096]図4Bは、U87細胞株及びアストロサイトにおけるピューロマイシン又はシクロヘキシミド処理を介したNMD誘導エクソンの確認を示す。水処理(H)、DMSO処理(D)、ピューロマイシン処理(P)、又はシクロヘキシミド処理(C)細胞に由来する総RNAを使用するRT-PCR分析により、PHIP遺伝子のNMD誘導エクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)に対応するバンドの存在を確認した。 [097]図4Cは、マウス胚性線維芽細胞におけるピューロマイシン又はシクロヘキシミド処理を介したNMD誘導エクソンの確認を示す。水処理(H)、DMSO処理(D)、ピューロマイシン処理(P)、又はシクロヘキシミド処理(C)細胞に由来する総RNAを使用するRT-PCR分析により、PHIP遺伝子のNMD誘導エクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)に対応するバンドの存在を確認した。 [098]図5は、非ヒト霊長類におけるNMDエクソン事象(15X)の保存を示す。 [099]図6は、PHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)領域周辺における例示的なASO歩行を示す。PHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)領域周辺に関して、3’スプライス部位の上流の配列、3’スプライス部位を横断する配列、エクソン15x、5’スプライス部位を横断する配列、及び5’スプライス部位の下流の配列を標的として実施したASO歩行のグラフィック表示を示す。ASOは、1度に5ヌクレオチド、又はエクソンの始端若しくは終端とスプライス部位領域を横断する隣接ASOとの間では3ヌクレオチド移動することによってこれらの領域を網羅するように設計した。 [100]図7は、シクロヘキシミドの存在下において3μMの適応のASOをヌクレオフェクトしたReN VM細胞におけるTaqman RT-qPCR(生産的mRNA変化倍数に関して)及びRT-PCR(非生産的mRNA変化倍数に関して)によって評価したPHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373 79004436)領域ASO歩行を示す。対照遺伝子と比べたPHIP生産的mRNA産物のゲル画像及び変化倍数のグラフをプロットする。 [101]図8は、シクロヘキシミドの非存在下において3μMの適応のASOをヌクレオフェクトしたReN細胞におけるTaqman RT-qPCRによって評価したPHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373 79004436)領域ASO歩行を示す。対照遺伝子と比べた、ゲル画像、並びにPHIP非生産的mRNA産物の%、カノニカルなPHIP mRNAの変化倍数、及び総PHIP mRNAの変化倍数のグラフをプロットする。 [102]図9は、シクロヘキシミドの存在下において120nMの適応のASOをトランスフェクトしたHEK293細胞におけるTaqman RT-qPCRによって評価したPHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373 79004436)領域ASO歩行を示す。対照遺伝子と比べたPHIP生産的mRNA産物のゲル画像及び変化倍数のグラフをプロットする。 [103]図10A~10Dは、シクロヘキシミドの非存在下において120nMの適応のASOをトランスフェクトしたHEK293細胞におけるTaqman RT-qPCRによって評価したPHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373 79004436)領域ASO歩行を示す。対照遺伝子と比べた、ゲル画像(図10A~10C)、並びにPHIP非生産的mRNA産物の%、カノニカルなPHIP mRNAの変化倍数、及び総PHIP mRNAの変化倍数のグラフ(図10D)をプロットする。 図10A~10Dは、シクロヘキシミドの非存在下において120nMの適応のASOをトランスフェクトしたHEK293細胞におけるTaqman RT-qPCRによって評価したPHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373 79004436)領域ASO歩行を示す。対照遺伝子と比べた、ゲル画像(図10A~10C)、並びにPHIP非生産的mRNA産物の%、カノニカルなPHIP mRNAの変化倍数、及び総PHIP mRNAの変化倍数のグラフ(図10D)をプロットする。 図10A~10Dは、シクロヘキシミドの非存在下において120nMの適応のASOをトランスフェクトしたHEK293細胞におけるTaqman RT-qPCRによって評価したPHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373 79004436)領域ASO歩行を示す。対照遺伝子と比べた、ゲル画像(図10A~10C)、並びにPHIP非生産的mRNA産物の%、カノニカルなPHIP mRNAの変化倍数、及び総PHIP mRNAの変化倍数のグラフ(図10D)をプロットする。 図10A~10Dは、シクロヘキシミドの非存在下において120nMの適応のASOをトランスフェクトしたHEK293細胞におけるTaqman RT-qPCRによって評価したPHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373 79004436)領域ASO歩行を示す。対照遺伝子と比べた、ゲル画像(図10A~10C)、並びにPHIP非生産的mRNA産物の%、カノニカルなPHIP mRNAの変化倍数、及び総PHIP mRNAの変化倍数のグラフ(図10D)をプロットする。 [104]図11は、PHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)領域周辺における例示的なASOマイクロ歩行を示す。 [105]図12は、シクロヘキシミドの存在下において3μMの適応のASOをヌクレオフェクトしたReN細胞におけるTaqman RT-qPCRによって評価したPHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)領域ASOマイクロ歩行を示す。対照遺伝子と比べたPHIP生産的mRNA産物のゲル画像及び変化倍数のグラフをプロットする。 [106]図13は、シクロヘキシミドの存在下において120nMの適応のASOをトランスフェクトしたHEK293細胞におけるTaqman RT-qPCRによって評価したPHIPエクソン15x(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)領域ASOマイクロ歩行を示す。対照遺伝子と比べたPHIP生産的mRNA産物のゲル画像及び変化倍数のグラフをプロットする。 [107]図14Aは、異なる濃度の例示的なASOによるPHIP mRNA前駆体からのエクソン15xのスプライシングの調節を実証するゲル画像を示す。図14Bは、異なる濃度の例示的なASOを用いる処理に応答した、カノニカルなPHIP mRNAの量の変化倍数及び非生産的PHIP mRNAの量の変化の定量化をまとめる棒グラフである。 [108]図15A及び15Bは、例示的なASO(IVS14X:-3、IVS14X-Ex15XX:7、Ex15X:19、及びEx15X:23)がPHIPタンパク質レベルの増加を引き起こしたことを実証する。図15Aは、異なる処理条件下におけるPHIPタンパク質のウェスタンブロッティング画像を示し、図15Bは、異なる処理に応答したPHIPタンパク質レベルの変化の定量化をまとめる棒グラフである。 [109]図16A~16Dは、ヌクレオフェクションを介した例示的なASOを用いる処理が、エクソン15xを有する非生産的PHIP転写物の量の減少(図16B)と、エクソン15及びエクソン16(カノニカル;図16C)並びにエクソン35及びエクソン36(GE;図16D)にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって示されるエクソン15xを有しないPHIP転写物の量の増加とをもたらしたことを実証する。図16Aは、異なる処理条件下におけるRT-PCR増幅産物のゲル画像を示す。 図16A~16Dは、ヌクレオフェクションを介した例示的なASOを用いる処理が、エクソン15xを有する非生産的PHIP転写物の量の減少(図16B)と、エクソン15及びエクソン16(カノニカル;図16C)並びにエクソン35及びエクソン36(GE;図16D)にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって示されるエクソン15xを有しないPHIP転写物の量の増加とをもたらしたことを実証する。図16Aは、異なる処理条件下におけるRT-PCR増幅産物のゲル画像を示す。 図16A~16Dは、ヌクレオフェクションを介した例示的なASOを用いる処理が、エクソン15xを有する非生産的PHIP転写物の量の減少(図16B)と、エクソン15及びエクソン16(カノニカル;図16C)並びにエクソン35及びエクソン36(GE;図16D)にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって示されるエクソン15xを有しないPHIP転写物の量の増加とをもたらしたことを実証する。図16Aは、異なる処理条件下におけるRT-PCR増幅産物のゲル画像を示す。 図16A~16Dは、ヌクレオフェクションを介した例示的なASOを用いる処理が、エクソン15xを有する非生産的PHIP転写物の量の減少(図16B)と、エクソン15及びエクソン16(カノニカル;図16C)並びにエクソン35及びエクソン36(GE;図16D)にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって示されるエクソン15xを有しないPHIP転写物の量の増加とをもたらしたことを実証する。図16Aは、異なる処理条件下におけるRT-PCR増幅産物のゲル画像を示す。 [110]図17A~17Dは、自由取込みを介した例示的なASOを用いる処理が、エクソン15xを有する非生産的PHIP転写物の量の減少(図17B)と、エクソン15及びエクソン16(カノニカル;図17C)並びにエクソン35及びエクソン36(GE;図17D)にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって示されるエクソン15xを有しないPHIP転写物の量の増加とをもたらしたことを実証する。図17Aは、異なる処理条件下におけるRT-PCR増幅産物のゲル画像を示す。 図17A~17Dは、自由取込みを介した例示的なASOを用いる処理が、エクソン15xを有する非生産的PHIP転写物の量の減少(図17B)と、エクソン15及びエクソン16(カノニカル;図17C)並びにエクソン35及びエクソン36(GE;図17D)にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって示されるエクソン15xを有しないPHIP転写物の量の増加とをもたらしたことを実証する。図17Aは、異なる処理条件下におけるRT-PCR増幅産物のゲル画像を示す。 図17A~17Dは、自由取込みを介した例示的なASOを用いる処理が、エクソン15xを有する非生産的PHIP転写物の量の減少(図17B)と、エクソン15及びエクソン16(カノニカル;図17C)並びにエクソン35及びエクソン36(GE;図17D)にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって示されるエクソン15xを有しないPHIP転写物の量の増加とをもたらしたことを実証する。図17Aは、異なる処理条件下におけるRT-PCR増幅産物のゲル画像を示す。 図17A~17Dは、自由取込みを介した例示的なASOを用いる処理が、エクソン15xを有する非生産的PHIP転写物の量の減少(図17B)と、エクソン15及びエクソン16(カノニカル;図17C)並びにエクソン35及びエクソン36(GE;図17D)にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって示されるエクソン15xを有しないPHIP転写物の量の増加とをもたらしたことを実証する。図17Aは、異なる処理条件下におけるRT-PCR増幅産物のゲル画像を示す。
[111](プレクストリン相同相互作用タンパク質)PHIP遺伝子における選択的スプライシング事象は、異常な又は低減したタンパク質発現をもたらし得る非生産的mRNA転写物をもたらす可能性があり、PHIP遺伝子における選択的スプライシング事象を標的とすることができる治療剤は、Chung Jansen症候群(CHUJANS)患者において機能性タンパク質の発現レベルを調節する、及び/又は異常なタンパク質発現を阻害することができる。そのような治療剤は、PHIPタンパク質欠損によって引き起こされる病態を処置するために使用することができる。
[112]非生産的mRNA転写物をもたらす可能性がある選択的スプライシング事象の1つは、ナンセンス変異依存mRNA分解機構を誘導し得る、mRNA転写物への追加のエクソンの包含である。本開示は、PHIPの選択的スプライシングを調節して、タンパク質をコードする成熟mRNA、したがって、翻訳された機能性PHIPタンパク質の産生を増加させるための組成物及び方法を提供する。これらの組成物及び方法は、エクソンスキッピング、例えば偽エクソンスキッピングを引き起こし、PHIP mRNA前駆体の構成的スプライシングを促進することができるアンチセンスオリゴマー(ASO)を含む。様々な実施形態では、機能性PHIPタンパク質を、本開示の方法を使用して増加させて、PHIPタンパク質欠損によって引き起こされる病態を処置することができる。
mRNAスプライシング
[113]RNA配列における介在配列又はイントロンは、スプライソソームと称される、大きく、高度に動的なRNA-タンパク質複合体によって除去され、スプライソソームは、1次転写物と、核内低分子RNA(snRNA)と、多数のタンパク質との間の複雑な相互作用を調整する。スプライソソームは、その都度各イントロン上に規則正しく集合し、U1 snRNAによる5’スプライス部位(5’ss)又はU2経路による3’スプライス部位(3’ss)の認識から開始し、U2経路では、U2補助因子(U2AF)が3’ss領域に結合して、U2が分岐点配列(BPS)に結合することを容易にする。U2AFは、ポリピリミジントラクト(PPT)に結合するU2AF2によってコードされる65kDのサブユニット(U2AF65)、及び3‘ssにおいて高度に保存されたAGジヌクレオチドと相互作用し、U2AF65結合を安定化させる、U2AF1によってコードされる35kDのサブユニット(U2AF35)から構成される安定なヘテロ2量体である。正確なスプライシングは、BPS/PPTユニット及び3’ss/5’ssに加えて、イントロン又はエクソンスプライシングエンハンサー若しくはサイレンサーとして公知の、スプライス部位認識を活性化又は抑制する補助配列又は構造を必要とする。これらのエレメントは、同じ配列を有するが本来の部位よりも10倍多い、高等真核生物のゲノムにおける非常に過剰な潜在的又は偽部位の中から、真のスプライス部位が認識されることを可能にする。エレメントはしばしば制御機能を有するが、その活性化又は抑制の厳密な機構は、十分に理解されていない。
[114]スプライスするか否かの決定は、最も明確なスプライシングシグナルでさえ時折誤ってスプライスすることがあるように、典型的には、決定的な過程というよりはむしろ確率的な過程としてモデル化することができる。しかしながら、通常の条件下では、mRNA前駆体スプライシングは驚くほど高い忠実度で行われる。これは、部分的には、隣接するシス作用性補助エクソン及びイントロンのスプライシング制御エレメント(ESR又はISR)の活性に起因すると考えられる。典型的には、これらの機能的エレメントは、スプライシングを刺激又は阻害する能力に基づいて、それぞれエクソン又はイントロンスプライシングエンハンサー(ESE又はISE)又はサイレンサー(ESS又はISS)のいずれかに分類される。現在、一部の補助的なシス作用性エレメントはスプライソソーム集合の動力学、例えばU1 snRNPと5’ssとの間における複合体の布置に影響を及ぼすことによって作用し得るという証拠が存在するが、多くのエレメントはトランス作用性RNA結合タンパク質(RBP)と協調的に機能するという可能性は、非常に高いように思われる。例えば、RBPのセリン及びアルギニンが豊富なファミリー(SRタンパク質)は、エクソンを規定することにおいて重要な役割を有するタンパク質の保存されたファミリーである。SRタンパク質は、プレスプライソソームの成分を隣接するスプライス部位に動員することによって、又はその近傍においてESSの効果を弱めることによってエクソン認識を促進する。ESSの抑制効果は、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)ファミリーのメンバーによって媒介されることがあり、コアスプライシング因子の隣接するスプライス部位への動員を変更させることができる。サイレンサーエレメントは、スプライシング制御における役割に加えて、エクソンの典型的な間隔を有するが機能的なオープンリーディングフレームを有しない数組のデコイイントロンスプライス部位である偽エクソンの抑制における役割を有することが示唆される。ESE及びESSは、それらの同族のトランス作用性RBPと共に、mRNAがその前駆体から組み立てられる方法、場所、及び時を指定する1組のスプライシング統御因子における重要な成分の代表である。
[115]選択的スプライシングは、単一の遺伝子から転写される単一の1次mRNA転写物からプロセシングされる成熟mRNA転写物の複数のアイソフォーム、及びその結果として生じる、複数の成熟mRNAアイソフォームの少なくとも一部から翻訳される複数のタンパク質を結果的にもたらし得る、遺伝子発現の間の制御された過程である。この過程において、遺伝子の特定のエクソンは、その遺伝子から産生される最終的なプロセシングされたmRNAに含まれている場合も、そこから排除されている場合もある。その結果、選択的にスプライスされたmRNAから翻訳されたタンパク質は、それらのアミノ酸配列、及び場合によっては、それらの生物学的機能における差を含有し得る。
[116]エクソン-イントロン境界を示す配列は、ヒト遺伝子内に高頻度で生じ得る、様々な強さの縮重したシグナルである。多エクソン遺伝子では、異なる対のスプライス部位が多くの異なる組合せで互いに連結して、単一の遺伝子から多種多様な転写物を作り出すことができる。これは一般的に選択的mRNA前駆体スプライシングと称される。選択的スプライシングによって産生される大半のmRNAアイソフォームは、核から輸送され、機能性ポリペプチドに翻訳されることができるが、単一の遺伝子に由来する異なるmRNAアイソフォームは、その翻訳効率に大きくばらつきがあることがある。エクソン接合部複合体の少なくとも50bp上流に未成熟終止コドン(PTC)を有するそれらのmRNAアイソフォームは、ナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)経路による分解の標的となる可能性が高い。伝統的な(BPS/PPT/3’ss/5’ss)及び補助的なスプライシングモチーフにおける変異は、異常なスプライシング、例えばエクソンスキッピング、又は潜在的(又は偽)エクソン包含若しくはスプライス部位活性化を引き起こし、ヒトの罹患率及び死亡率の重大な一因となることがある。異常なスプライシングパターンと選択的スプライシングパターンはいずれも、エクソン及びイントロンにおける天然のDNAバリアントによって影響を及ぼされ得る。
[117]エクソン-イントロン境界がコドンの3つの位置のいずれかで生じ得ることを考慮すると、選択的スプライシング事象のサブセットのみがカノニカルなオープンリーディングフレームを維持することができることは明らかである。例えば、3で割り切れるエクソンのみが、リーディングフレームの一切の変更なしに、スキップされるか、又はmRNAに包含されることができる。適合性のあるフェーズを有しないスプライシング事象は、フレームシフトを誘導し得る。下流の事象によって取り消されない限り、フレームシフトは確実に1つ又は複数のPTCをもたらし、おそらくNMDによるその後の分解を結果的にもたらすだろう。NMDは、PTCを含有するmRNAを除外する翻訳連動機構(translation-coupled mechanism)である。NMDは、全ての真核生物に存在する監視経路として機能することができる。NMDは、未成熟停止コドンを含有するmRNA転写物を除外することによって、遺伝子発現における失敗を減らすことができる。これらの異常なmRNAの翻訳は、場合によっては、生じたタンパク質の有害な機能獲得型又はドミナントネガティブ活性をもたらし得る。NMDは、PTCを有する転写物だけでなく、多くの内在性の遺伝子から発現した幅広いmRNAアイソフォームも標的とし、このことは、NMDが細胞における定常状態のRNAレベルの微細な調整と大まかな調整の両方を駆動する主要制御因子であることを示唆する。
[118]NMD誘導エクソン(「NIE」又は「NMDエクソン」)は、エクソン、又はイントロン内の領域である偽エクソンであり、成熟RNA転写物に包含される場合、NMD経路を活性化することができる。構成的スプライシング事象では、NMDエクソンを含有するイントロンは通例切り出されるが、選択的又は異常なスプライシング事象の間には、イントロン又はその部分(例えばNMDエクソン)は保持されることがある。そのようなNMDエクソンを含有する成熟mRNA転写物は、NMD経路を誘導するフレームシフトのために、非生産的であり得る。成熟RNA転写物へのNMDエクソンの包含は、遺伝子発現を下方制御し得る。NMDエクソンを含有するmRNA転写物は、本開示において、「NIE含有mRNA」又は「NMDエクソンmRNA」と称される場合がある。
[119]潜在的(又は偽スプライス部位)は、真のスプライス部位と同じスプライシング認識配列を有するが、スプライシング反応において使用されない。それらはヒトゲノムにおける真のスプライス部位よりも10倍多く、通常は、今のところ十分に理解されていない分子機構によって抑制される。潜在的5’スプライス部位は、コンセンサスなNNN/GUNNNN又はNNN/GCNNNNを有し、ここで、Nは任意のヌクレオチドであり、/Nはエクソン-イントロン境界である。潜在的3’スプライス部位は、コンセンサスなNAG/Nを有する。それらの活性化は、それらを本来のスプライス部位の最適なコンセンサス、すなわち、それぞれ、MAG/GURAGU及びYAG/Gにより類似させる周囲のヌクレオチドによって正に影響を及ぼされ、ここで、MはC又はAであり、RはG又はAであり、YはC又はUである。
[120]スプライス部位及びその制御配列は、当業者であれば、例えばKralovicova、J.及びVorechovsky、I.(2007)Global control of aberrant splice site activation by auxiliary splicing sequences:evidence for a gradient in exon and intron definition。Nucleic Acids Res.、35、6399~6413頁に列挙されている公的に利用可能な好適なアルゴリズムを使用して容易に同定することができる。
[121]潜在的スプライス部位又はスプライシング制御配列は、U2AF等のRNA結合タンパク質に関して、NMDエクソンのスプライス部位と競合し得る。一部の実施形態では、薬剤は、潜在的スプライス部位又はスプライシング制御配列に結合して、RNA結合タンパク質の結合を妨げ、それによりNMDエクソンスプライス部位へのRNA結合タンパク質の結合を有利にし得る。
[122]一部の実施形態では、潜在的スプライス部位は、NMDエクソンの5’又は3’スプライス部位を含まない場合がある。一部の実施形態では、潜在的スプライス部位は、NMDエクソン5’スプライス部位の少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、又は少なくとも200ヌクレオチド上流であり得る。一部の実施形態では、潜在的スプライス部位は、NMDエクソン3’スプライス部位の少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド下流であり得る。
標的転写物
[123]一部の実施形態では、本開示の方法及び組成物は、PHIP遺伝子から転写されたmRNA前駆体におけるNMDエクソンの存在を活用する。機能性成熟PHIP mRNAを産生する、同定されたPHIP NMDエクソンmRNA前駆体種のスプライシングは、NMDエクソンのエクソンスキッピングを刺激するASO等の薬剤を使用して誘導することができる。エクソンスキッピングの誘導は、NMD経路の阻害をもたらすことができる。生じた成熟PHIP mRNAは、通常はNMD経路を活性化させることなく翻訳され、それにより患者の細胞内でPHIPタンパク質の量を増加させ、PHIP欠損に関連する病態又は疾患、例えばChung-Jansen症候群(CHUJANS)、常染色体優性障害、知的障害、発話遅延、不安、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、攻撃行動、顔面異形、カフェオレ斑、PHIPハプロ不全によって引き起こされる過体重症候群、発達遅延、肥満、又は異形症の症状を軽減することができる。
[124]一部の実施形態では、本明細書に開示される方法又は組成物を使用して処置又は改善することができる疾患又は病態は、治療剤が標的とする標的タンパク質(遺伝子)に直接的には関連しない。一部の実施形態では、本明細書で提供される治療剤は、疾患又は病態に直接的には関連しないタンパク質(遺伝子)を標的とし得るが、標的タンパク質(遺伝子)の発現の調節は、疾患又は病態を処置又は改善することができる。
[125]様々な実施形態では、本開示は、PHIP mRNA前駆体転写物を標的として、スプライシング又はタンパク質発現レベルを調節することができる治療剤を提供する。治療剤は、低分子、ポリヌクレオチド、又はポリペプチドであり得る。一部の実施形態では、治療剤はASOである。PHIP mRNA前駆体の様々な領域又は配列が、治療剤、例えばASOによって標的化され得る。一部の実施形態では、ASOは、NMDエクソンを含有するPHIP mRNA前駆体転写物を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体転写物のNMDエクソン内の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体転写物のNMDエクソンの5’末端(3’ss)から上流(又は5’側)の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体転写物のNMDエクソンの3’末端(5’ss)から下流(又は3’側)の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体転写物のNMDエクソンの5’末端に隣り合うイントロン内の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体転写物のNMDエクソンの3’末端と隣り合うイントロン内の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体転写物のNMDエクソン-イントロン境界を含む配列を標的とする。NMDエクソン-イントロン境界は、イントロン配列とNMDエクソン領域との接合部を指す場合がある。イントロン配列は、NMDエクソンの5’末端又はNMDエクソンの3’末端と隣り合っていてもよい。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体転写物のエクソン内の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体転写物のイントロン内の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、イントロンの一部分とPHIP mRNA前駆体転写物のエクソンの一部分との両方を含む配列を標的とする。
[126]一部の実施形態では、ASOは、NMDエクソンの5’末端から約4~約300ヌクレオチド上流(又は5’側)の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、NMDエクソン領域の5’末端から約1~約20ヌクレオチド、約20~約50ヌクレオチド、約50~約100ヌクレオチド、約100~約150ヌクレオチド、約150~約200ヌクレオチド、約200~約250ヌクレオチド、又は約250~約300ヌクレオチド上流(又は5’側)の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、NMDエクソンの5’末端から300ヌクレオチド超上流の配列を標的としてもよい。一部の実施形態では、ASOは、NMDエクソンの3’末端から約4~約300ヌクレオチド下流(又は3’側)の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、NMDエクソンの3’末端から約1~約20ヌクレオチド、約20~約50ヌクレオチド、約50~約100ヌクレオチド、約100~約150ヌクレオチド、約150~約200ヌクレオチド、約200~約250ヌクレオチド、又は約250~約300ヌクレオチド下流の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、NMDエクソンの3’末端から300ヌクレオチド超下流の配列を標的とする。
[127]一部の実施形態では、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体転写物は、配列番号1に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる。一部の実施形態では、PHIP NMDエクソンmRNA前駆体転写物は、配列番号3に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む。
[128]一部の実施形態では、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体転写物(又はNMDエクソンmRNA)は、配列番号3に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体転写物(又はNMDエクソンmRNA)は、配列番号3に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。一部の実施形態では、NMDエクソンmRNAの標的化部分は、配列番号3の少なくとも8個の連続的な核酸を含む領域に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む。
[129]一部の実施形態では、ASOは、NIEエクソン15を含むPHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体のNIEエクソン15(エクソン15x)を含むPHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体のエクソン15xを標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)を標的とする。
[130]一部の実施形態では、ASOは、PHIPのエクソン15xであるPHIPのエクソン15xの5’末端から約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流(又は5’側)の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIPのGRCh38/hg38:chr6 79004373から約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流(又は5’側)の配列を標的とする。
[131]一部の実施形態では、ASOは、PHIPのエクソン15xの5’末端から最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流(又は5’側)の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIPのGRCh38/hg38:chr6 79004373から最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流(又は5’側)の配列を標的とする。
[132]一部の実施形態では、ASOは、PHIPのエクソン15xの3’末端から約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流(又は3’側)の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIPのGRCh38/hg38:chr6 79004436から約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流(又は3’側)の配列を標的とする。
[133]一部の実施形態では、ASOは、PHIPのエクソン15xの3’末端から最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流(又は3’側)の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIPのGRCh38/hg38:chr6 79004436から最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流(又は3’側)の配列を標的とする。
[134]一部の実施形態では、ASOは、配列番号3に記載のNMDエクソンmRNAの標的化部分に対して相補的な配列を有する。
[135]一部の実施形態では、ASOは、NMDエクソンの5’末端から上流の配列を標的とする。例えば、NMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436))の5’末端から上流の配列を標的とするASOは、配列番号3に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列を含むことができる。
[136]一部の実施形態では、ASOは、エクソン-イントロン境界(又は接合部)を含有する配列を標的とする。例えば、エクソン-イントロン境界を含有する配列を標的とするASOは、配列番号3の少なくとも8個の連続的な核酸に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、又は100%相補的(complimentary)である配列を含むことができる。一部の実施形態では、ASOは、NMDエクソンの3’末端から下流の配列を標的とする。例えば、NMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x)の3’末端から下流の配列を標的とするASOは、配列番号3、又は配列番号3の少なくとも8個の連続的な核酸に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列を含むことができる。例えば、NMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436))の3’末端から下流の配列を標的とするASOは、配列番号3、又は配列番号3の少なくとも8個の連続的な核酸に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列を含むことができる。一部の実施形態では、ASOは、NMDエクソン内の配列を標的とする。
[137]一部の実施形態では、ASOは、エクソン15を含むPHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体のエクソン15x、NIEエクソン16を含むPHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体のNIEエクソン15xを標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体のエクソン15xの5’末端から下流(又は3’側)の配列を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体のエクソン15xの3’末端から上流(又は5’側)の配列を標的とする。
[138]一部の実施形態では、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分は、イントロン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、又は39にある。一部の実施形態では、NMDエクソンmRNA前駆体の標的化部分に対するASOのハイブリダイゼーションは、イントロン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、又は39内の少なくとも1個のNMDエクソンのエクソンスキッピングをもたらし、その後にPHIPタンパク質産生を増加させる。一部の実施形態では、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分は、PHIPのイントロン15にある。一部の実施形態では、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分は、PHIPのイントロン(GRCh38/hg38:chr6 79003858~79015082)である。
[139]一部の実施形態では、本開示の方法及び組成物は、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の偽エクソンのエクソンスキッピングを誘導することによってPHIPの発現を増加させるために使用される。一部の実施形態では、偽エクソンは、イントロン1~39のいずれかの内部の配列である。一部の実施形態では、偽エクソンは、イントロン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、又は39のいずれかの内部の配列である。一部の実施形態では、偽エクソンは、PHIPイントロン又はその一部分であり得る。一部の実施形態では、偽エクソンはPHIPのイントロン15内にある。一部の実施形態では、偽エクソンは、PHIPのイントロン(GRCh38/hg38:chr6 79003858 79015082)内にある。
[140]一部の実施形態では、PHIP mRNA前駆体転写物は、配列番号1に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる。一部の実施形態では、PHIP mRNA前駆体転写物は、配列番号3に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む。
[141]一部の実施形態では、PHIP mRNA前駆体転写物(又はNMDエクソンmRNA)は、配列番号3に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、PHIP mRNA前駆体転写物(又はNMDエクソンmRNA)は、配列番号3に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列によってコードされる。一部の実施形態では、PHIP mRNA前駆体の標的化部分は、配列番号3の少なくとも8個の連続的な核酸を含む領域に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列を含む。
[142]一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体のエクソン15を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体のエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79015081 79015216)を標的とする。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体のエクソン16を標的とし、ASOは、PHIP mRNA前駆体のエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79003729 79003858)を標的とする。
[143]一部の実施形態では、ASOは、配列番号3に記載のNMDエクソンmRNAの標的化部分に対して相補的な配列を有する。
タンパク質発現
[144]一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、機能性PHIPタンパク質又はRNAの産生を増加させるために使用される。本明細書で使用する場合、「機能性」という用語は、処置される病態又は疾患、例えば、Chung-Jansen症候群のいずれか1つ以上の症状を除外するのに必要なPHIPタンパク質又はRNAの活性又は機能の量を指す。一部の実施形態では、方法は、部分的に機能性PHIPタンパク質又はRNAの産生を増加させるために使用される。本明細書で使用する場合、「部分的に機能性」という用語は、疾患又は病態のいずれか1つ以上の症状を除外又は防止するのに必要な活性又は機能の量よりも少ない、PHIPタンパク質又はRNAの活性又は機能の任意の量を指す。一部の実施形態では、部分的に機能性タンパク質又はRNAは、完全機能性タンパク質又はRNAと比べて少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%低い活性を有し得る。
[145]一部の実施形態では、方法は、PHIP mRNA前駆体を有する対象の細胞によるPHIPタンパク質の発現を増加させる方法であり、対象は、PHIPタンパク質の活性の欠損量によって引き起こされた疾患又は病態、例えば、Chung-Jansen症候群を有し、PHIPタンパク質の欠損量は、PHIPタンパク質のハプロ不全によって引き起こされる。そのような実施形態では、対象は、機能性PHIPタンパク質をコードする第1のアレル、及びPHIPタンパク質が産生されない第2のアレルを有する。別のそのような実施形態では、対象は、機能性PHIPタンパク質をコードする第1のアレル、及び非機能性PHIPタンパク質をコードする第2のアレルを有する。別のそのような実施形態では、対象は、機能性PHIPタンパク質をコードする第1のアレル、及び部分的に機能性PHIPタンパク質をコードする第2のアレルを有する。これらの実施形態のいずれかにおいて、アンチセンスオリゴマーは、第2のアレルから転写されたPHIP mRNA前駆体の標的化部分に結合し、それによりmRNA前駆体からの偽エクソンのエクソンスキッピングを誘導し、機能性PHIPタンパク質をコードする成熟mRNAのレベルの増加、及び対象の細胞におけるPHIPタンパク質の発現の増加を引き起こす。
[146]一部の実施形態では、方法は、PHIP mRNA前駆体を有する対象の細胞によるPHIPタンパク質の発現を増加させる方法であり、対象は、PHIPタンパク質の活性の欠損量によって引き起こされた疾患又は病態を有し、PHIPタンパク質の欠損量は、常染色体劣性遺伝によって引き起こされる。
[147]一部の実施形態では、方法は、PHIP mRNA前駆体を有する対象の細胞によるPHIPタンパク質の発現を増加させる方法であり、対象は、PHIPタンパク質の活性の欠損量によって引き起こされた疾患又は病態、例えば、Chung-Jansen症候群を有し、PHIPタンパク質の欠損量は、常染色体優性遺伝によって引き起こされる。
[148]関連する実施形態では、方法は、ASOを使用して、タンパク質又は機能性RNAの発現を増加させる方法である。一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体を有する対象の細胞内でPHIPタンパク質の発現を増加させるために使用することができ、対象は、PHIPタンパク質の量又は機能における欠損、例えば、Chung-Jansen症候群を有する。
[149]一部の実施形態では、疾患又は病態の原因となるタンパク質をコードするmRNA前駆体転写物は、本明細書に記載される薬剤、例えばオリゴヌクレオチドによって標的とされる。場合によっては、それは、本明細書に記載される薬剤、例えばオリゴヌクレオチドによって標的とされるNMDエクソン含有mRNA前駆体転写物である。一部の実施形態では、疾患の原因とならないタンパク質をコードするNMDエクソン含有mRNA前駆体転写物は、ASOによって標的とされる。例えば、特定の経路における第1のタンパク質の変異又は欠損の結果である疾患は、第2のタンパク質をコードするmRNA前駆体を標的とし、それにより第2のタンパク質の産生を増加させることによって改善し得る。一部の実施形態では、第2のタンパク質の機能は、第1のタンパク質の変異又は欠損(これは疾患又は病態の原因となる)を補償することができる。
[150]一部の実施形態では、対象は、(a)(i)PHIPタンパク質が、野生型アレルからの産生と比較して低減したレベルで産生される、(ii)PHIPタンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して低減した機能を有する形態で産生される、又は(iii)PHIPタンパク質若しくは機能性RNAが産生されない、第1の変異アレル、及び(b)(i)PHIPタンパク質が、野生型アレルからの産生と比較して低減したレベルで産生される、(ii)PHIPタンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して低減した機能を有する形態で産生される、又は(iii)PHIPタンパク質が産生されない、第2の変異アレルを有し、NMDエクソン含有mRNA前駆体は、第1のアレル及び/又は第2のアレルから転写される。これらの実施形態では、ASOは、第1のアレル又は第2のアレルから転写されたNMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に結合し、それによりNMDエクソン含有mRNA前駆体からの偽エクソンのエクソンスキッピングを誘導し、PHIPタンパク質をコードするmRNAのレベルの増加、及び対象の細胞内で標的タンパク質又は機能性RNAの発現の増加を引き起こす。これらの実施形態では、NMDエクソン含有mRNA前駆体からの偽エクソンのエクソンスキッピングの結果として生じる発現レベルの増加を有する標的タンパク質又は機能性RNAは、同等の野生型タンパク質と比較して低減した機能(部分的に機能性)を有するか、又は同等の野生型タンパク質と比較して完全な機能(完全機能性)を有する形態であり得る。
[151]一部の実施形態では、PHIPタンパク質をコードするmRNAのレベルは、対照細胞、例えば、アンチセンスオリゴマーを用いて処理されない細胞、又はPHIP mRNA前駆体の標的化部分に結合しないアンチセンスオリゴマーを用いて処理される細胞において産生されるPHIPタンパク質をコードするmRNAの量と比較した場合、1.1~10倍増加する。
[152]一部の実施形態では、本開示の方法を使用して処置される対象は、1つのアレルから部分的に機能性PHIPタンパク質を発現し、部分的に機能性PHIPタンパク質は、フレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、又は部分的遺伝子欠失によって引き起こされ得る。一部の実施形態では、本開示の方法を使用して処置される対象は、1つのアレルから非機能性PHIPタンパク質を発現し、非機能性PHIPタンパク質は、1つのアレルにおけるフレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、部分的遺伝子欠失によって引き起こされ得る。一部の実施形態では、本開示の方法を使用して処置される対象は、1つのアレルにおけるPHIP全遺伝子欠失を有する。
エクソン包含
[153]本明細書で使用する場合、「NMDエクソン含有mRNA前駆体」は、少なくとも1個の偽エクソンを含有するmRNA前駆体転写物である。選択的又は異常なスプライシングは、成熟mRNA転写物への少なくとも1個の偽エクソンの包含をもたらすことができる。「成熟mRNA」及び「完全スプライスmRNA」という用語は、本明細書では交換可能に使用されて、完全にプロセシングされたmRNAを表す。少なくとも1個の偽エクソンの包含は、非生産的mRNAとなり、成熟mRNAのNMDをもたらし得る。NMDエクソン含有成熟mRNAは、時折異常なタンパク質発現をもたらす場合がある。
[154]一部の実施形態では、包含偽エクソン(included pseudo-exon)は、細胞内で標的タンパク質をコードする遺伝子から転写されたNMDエクソン含有mRNA前駆体の集団において最も大量に存在する偽エクソンである。一部の実施形態では、包含偽エクソンは、細胞内で標的タンパク質をコードする遺伝子から転写されたNMDエクソン含有mRNA前駆体の集団において最も大量に存在する偽エクソンであり、NMDエクソン含有mRNA前駆体の集団は、2個以上の包含偽エクソンを含む。一部の実施形態では、標的タンパク質をコードするNMDエクソン含有mRNA前駆体の集団において最も大量に存在する偽エクソンを標的にするアンチセンスオリゴマーは、アンチセンスオリゴマーが標的にするか又は結合する偽エクソンを含む、集団における1個又は2個以上の偽エクソンのエクソンスキッピングを誘導する。一部の実施形態では、標的化領域は、PHIPタンパク質をコードするNMDエクソン含有mRNA前駆体において最も大量に存在する偽エクソンである偽エクソンにある。
[155]エクソン包含の程度は、エクソン包含率、例えば、所与の偽エクソンが包含されている転写物の百分率として表現することができる。簡潔に述べれば、エクソン包含%は、エクソン包含を有するRNA転写物の量の、エクソン包含を有するRNA転写物の量の平均とエクソン排除を有するRNA転写物の量の平均との合計に対する百分率として算出することができる。
[156]一部の実施形態では、包含偽エクソンは、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、又は少なくとも約50%の包含率という決定に基づいて、包含偽エクソンとして同定されるエクソンである。実施形態では、包含偽エクソンは、約5%~約100%、約5%~約95%、約5%~約90%、約5%~約85%、約5%~約80%、約5%~約75%、約5%~約70%、約5%~約65%、約5%~約60%、約5%~約55%、約5%~約50%、約5%~約45%、約5%~約40%、約5%~約35%、約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約20%、約5%~約15%、約10%~約100%、約10%~約95%、約10%~約90%、約10%~約85%、約10%~約80%、約10%~約75%、約10%~約70%、約10%~約65%、約10%~約60%、約10%~約55%、約10%~約50%、約10%~約45%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、約15%~約100%、約15%~約95%、約15%~約90%、約15%~約85%、約15%~約80%、約15%~約75%、約15%~約70%、約15%~約65%、約15%~約60%、約15%~約55%、約15%~約50%、約15%~約45%、約15%~約40%、約15%~約35%、約15%~約30%、約15%~約25%、約20%~約100%、約20%~約95%、約20%~約90%、約20%~約85%、約20%~約80%、約20%~約75%、約20%~約70%、約20%~約65%、約20%~約60%、約20%~約55%、約20%~約50%、約20%~約45%、約20%~約40%、約20%~約35%、約20%~約30%、約25%~約100%、約25%~約95%、約25%~約90%、約25%~約85%、約25%~約80%、約25%~約75%、約25%~約70%、約25%~約65%、約25%~約60%、約25%~約55%、約25%~約50%、約25%~約45%、約25%~約40%、又は約25%~約35%の包含率という決定に基づいて、包含偽エクソンとして同定されるエクソンである。ENCODEデータ(例えば、Tilgnerら、2012、「Deep sequencing of subcellular RNA fractions shows splicing to be predominantly co-transcriptional in the human genome but inefficient for lncRNAs」、Genome Research 22(9):1616~25頁に記載されている)は、エクソン包含の同定を補佐するために使用することができる。
[157]一部の実施形態では、細胞を、PHIP mRNA前駆体転写物の標的化部分に対して相補的であるASOと接触させることは、ASOの非存在/処理の非存在下における細胞によって産生されるタンパク質の量と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又は1000%の、産生されるPHIPタンパク質の量の増加をもたらす。一部の実施形態では、アンチセンスオリゴマーを接触させた細胞によって産生されるPHIPタンパク質の総量は、対照化合物によって産生される標的タンパク質の量と比較して、約20%~約300%、約50%~約300%、約100%~約300%、約150%~約300%、約20%~約50%、約20%~約100%、約20%~約150%、約20%~約200%、約20%~約250%、約50%~約100%、約50%~約150%、約50%~約200%、約50%~約250%、約100%~約150%、約100%~約200%、約100%~約250%、約150%~約200%、約150%~約250%、約200%~約250%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、又は少なくとも約300%増加する。一部の実施形態では、アンチセンスオリゴマーを接触させた細胞によって産生されるPHIPタンパク質の総量は、対照化合物によって産生される標的タンパク質の量と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加する。対照化合物は、例えば、mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的でないオリゴヌクレオチドであり得る。
[158]一部の実施形態では、細胞を、PHIP mRNA前駆体転写物の標的化部分に対して相補的であるASOと接触させることは、標的タンパク質をコードする成熟mRNAを含むPHIPをコードするmRNAの量の増加をもたらす。一部の実施形態では、PHIPタンパク質をコードするmRNA、又はPHIPタンパク質をコードする成熟mRNAの量は、ASOの非存在/処理の非存在下における細胞によって産生されるタンパク質の量と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500、又は1000%増加する。一部の実施形態では、PHIPタンパク質をコードするmRNA、又はアンチセンスオリゴマーを接触させた細胞において産生されるPHIPタンパク質をコードする成熟mRNAの総量は、未処理細胞、例えば、未処理細胞又は対照化合物を用いて処理された細胞において産生される成熟RNAの量と比較して、約20%~約300%、約50%~約300%、約100%~約300%、約150%~約300%、約20%~約50%、約20%~約100%、約20%~約150%、約20%~約200%、約20%~約250%、約50%~約100%、約50%~約150%、約50%~約200%、約50%~約250%、約100%~約150%、約100%~約200%、約100%~約250%、約150%~約200%、約150%~約250%、約200%~約250%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、又は少なくとも約300%増加する。一部の実施形態では、PHIPタンパク質をコードするmRNA、又はアンチセンスオリゴマーを接触させた細胞において産生されるPHIPタンパク質をコードする成熟mRNAの総量は、未処理細胞、例えば、未処理細胞又は対照化合物を用いて処理された細胞において産生される成熟RNAの量と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加する。対照化合物は、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的でないオリゴヌクレオチドであり得る。
[159]NMDエクソンは任意の長さであり得る。一部の実施形態では、NMDエクソンはイントロンの完全な配列を含み、その場合、それはイントロン保持と称することができる。一部の実施形態では、NMDエクソンはイントロンの一部分であり得る。一部の実施形態では、NMDエクソンは、5’ss配列を含むイントロンの5’末端部分であり得る。一部の実施形態では、NMDエクソンは、3’ss配列を含むイントロンの3’末端部分であり得る。一部の実施形態では、NMDエクソンは、5’ss配列の包含を伴わないイントロン内の一部分であり得る。一部の実施形態では、NMDエクソンは、3’ss配列の包含を伴わないイントロン内の一部分であり得る。一部の実施形態では、NMDエクソンは、5’ss又は3’ss配列のいずれかの包含も伴わないイントロン内の一部分であり得る。一部の実施形態では、NMDエクソンは、5ヌクレオチド~10ヌクレオチド長、10ヌクレオチド~15ヌクレオチド長、15ヌクレオチド~20ヌクレオチド長、20ヌクレオチド~25ヌクレオチド長、25ヌクレオチド~30ヌクレオチド長、30ヌクレオチド~35ヌクレオチド長、35ヌクレオチド~40ヌクレオチド長、40ヌクレオチド~45ヌクレオチド長、45ヌクレオチド~50ヌクレオチド長、50ヌクレオチド~55ヌクレオチド長、55ヌクレオチド~60ヌクレオチド長、60ヌクレオチド~65ヌクレオチド長、65ヌクレオチド~70ヌクレオチド長、70ヌクレオチド~75ヌクレオチド長、75ヌクレオチド~80ヌクレオチド長、80ヌクレオチド~85ヌクレオチド長、85ヌクレオチド~90ヌクレオチド長、90ヌクレオチド~95ヌクレオチド長、又は95ヌクレオチド~100ヌクレオチド長であり得る。一部の実施形態では、NMDエクソンは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも40ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも60ヌクレオチド、少なくとも70ヌクレオチド、少なくとも80ヌクレオチド長、少なくとも90ヌクレオチド、又は少なくとも100ヌクレオチド長であり得る。一部の実施形態では、NMDエクソンは、100~200ヌクレオチド長、200~300ヌクレオチド長、300~400ヌクレオチド長、400~500ヌクレオチド長、500~600ヌクレオチド長、600~700ヌクレオチド長、700~800ヌクレオチド長、800~900ヌクレオチド長、900~1,000ヌクレオチド長であり得る。一部の実施形態では、NMDエクソンは1,000ヌクレオチド長より長くてもよい。
[160]偽エクソンの包含は、フレームシフト、及び成熟mRNA転写物への未成熟終止コドン(PIC)の導入をもたらし、転写物をNMDの標的にし得る。NMDエクソンを含有する成熟mRNA転写物は、タンパク質発現をもたらさない非生産的mRNA転写物であり得る。PICは、NMDエクソンの下流の任意の位置に存在することができる。一部の実施形態では、PICは、NMDエクソンの下流の任意のエクソンに存在することができる。一部の実施形態では、PICは、NMDエクソン内に存在することができる。例えば、PHIP遺伝子によってコードされるmRNA転写物へのPHIPのエクソン15xの包含は、PICをmRNA転写物に誘導し得る。例えば、PHIPによってコードされるmRNA転写物へのPHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)の包含。
治療剤
[161]本開示の様々な実施形態では、PHIPのタンパク質発現レベルを調節する治療剤を含む組成物及び方法が提供される。一部の実施形態では、PHIP mRNA前駆体の選択的スプライシングを調節する組成物及び方法が本明細書で提供される。一部の実施形態では、PHIP mRNA前駆体のスプライシングにおいてエクソンスキッピングを誘導する、例えば、PHIP mRNA前駆体のスプライシングの間に偽エクソンのスキッピングを誘導する組成物及び方法が本明細書で提供される。他の実施形態では、治療剤は、エクソンの包含を誘導してタンパク質発現レベルを減少させるために使用してもよい。
[162]本明細書に開示される治療剤は、NIE抑制剤であり得る。治療剤はポリ核酸ポリマーを含んでもよい。
[163]本開示の一態様によれば、機能性PHIPタンパク質欠損に関連する病態又は疾患を処置又は防止する方法であって、NIE抑制剤を対象に投与して機能性PHIPタンパク質のレベルを増加させることを含み、薬剤が、mRNA前駆体転写物の領域に結合して成熟転写物へのNMDエクソンの包含を減少させる、前記方法が本明細書で提供される。例えば、機能性PHIPタンパク質欠損に関連する病態を処置又は防止する方法であって、NIE抑制剤を対象に投与して機能性PHIPタンパク質のレベルを増加させることを含み、薬剤が、mRNA前駆体転写物のNMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x)を含有するイントロンの領域、又は同じイントロンにおけるNMDエクソン活性化制御配列に結合する、前記方法が本明細書で提供される。例えば、機能性PHIPタンパク質欠損に関連する病態を処置又は防止する方法であって、NIE抑制剤を対象に投与して機能性PHIPタンパク質のレベルを増加させることを含み、薬剤が、mRNA前駆体転写物のNMDエクソンを含有するイントロン(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436))の領域、又は同じイントロンにおけるNMDエクソン活性化制御配列に結合する、前記方法が本明細書で提供される。
[164]成熟mRNAへのNMDエクソン包含を低減させることについて言及する場合、低減は、完全、例えば100%であっても、部分的であってもよい。低減は臨床的に有意であってもよい。低減/是正は、処置を有しない対象におけるNMDエクソン包含のレベルと比べたものであっても、同様の対象の集団におけるNMDエクソン包含の量と比べたものであってもよい。低減/是正は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも10%少ないNMDエクソン包含であり得る。低減は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも20%少ないNMDエクソン包含であり得る。低減は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも40%少ないNMDエクソン包含であり得る。低減は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも50%少ないNMDエクソン包含であり得る。低減は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも60%少ないNMDエクソン包含であり得る。低減は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも80%少ないNMDエクソン包含であり得る。低減は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも90%少ないNMDエクソン包含であり得る。
[165]活性PHIPタンパク質レベルを増加させることについて言及する場合、増加は臨床的に有意であってもよい。増加は、処置を有しない対象における活性PHIPタンパク質のレベルと比べたものであっても、同様の対象の集団における活性PHIPタンパク質の量と比べたものであってもよい。増加は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも10%多い活性PHIPタンパク質であり得る。増加は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも20%多い活性PHIPタンパク質であり得る。増加は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも40%多い活性PHIPタンパク質であり得る。増加は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも50%多い活性PHIPタンパク質であり得る。増加は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも80%多い活性PHIPタンパク質であり得る。増加は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも100%多い活性PHIPタンパク質であり得る。増加は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも200%多い活性PHIPタンパク質であり得る。増加は、平均的な対象、又は処置前の対象と比べて少なくとも500%多い活性PHIPタンパク質であり得る。
[166]NIE抑制剤がポリ核酸ポリマーを含む実施形態では、ポリ核酸ポリマーは約50ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約45ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約40ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約35ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約30ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約24ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約25ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約20ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約19ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約18ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約17ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約16ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約15ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約14ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約13ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約12ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約11ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約10ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約10~約50ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約10~約45ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約10~約40ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約10~約35ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約10~約30ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約10~約25ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約10~約20ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約15~約25ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約15~約30ヌクレオチド長であり得る。ポリ核酸ポリマーは約12~約30ヌクレオチド長であり得る。
[167]ポリ核酸ポリマーの配列は、mRNA転写物、例えば部分的にプロセシングされたmRNA転写物の標的配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%相補的であり得る。ポリ核酸ポリマーの配列は、mRNA前駆体転写物の標的配列に対して100%相補的であってもよい。
[168]ポリ核酸ポリマーの配列は、mRNA前駆体転写物の標的配列に対して4つ以下のミスマッチを有してもよい。ポリ核酸ポリマーの配列は、mRNA前駆体転写物の標的配列に対して3つ以下のミスマッチを有してもよい。ポリ核酸ポリマーの配列は、mRNA前駆体転写物の標的配列に対して2つ以下のミスマッチを有してもよい。ポリ核酸ポリマーの配列は、mRNA前駆体転写物の標的配列に対して1つ以下のミスマッチを有してもよい。ポリ核酸ポリマーの配列は、mRNA前駆体転写物の標的配列に対してミスマッチを有しなくてもよい。
[169]ポリ核酸ポリマーは、mRNA前駆体転写物の標的配列に特異的にハイブリダイズし得る。例えば、ポリ核酸ポリマーは、mRNA前駆体転写物の標的配列に対して91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%の配列相補性を有し得る。ハイブリダイゼーションは、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で行われ得る。
[170]ポリ核酸ポリマーは、配列番号2~5から成る群より選択される配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を有する配列を含む。ポリ核酸ポリマーは、配列番号3に対して100%の配列同一性を有する配列を含み得る。
[171]ポリ核酸ポリマー配列について言及する場合、当業者は、1つ以上の置換が許容されてもよく、任意選択で2つの置換が配列において許容されてもよく、置換は、ポリ核酸ポリマー配列が、標的配列にハイブリダイズする能力、又は、置換が標的配列にある場合は、標的配列として認識される能力を維持するようなものであることを理解するだろう。配列同一性の基準は、標準/初期パラメーターを使用するBLAST配列アラインメントによって決定してもよい。例えば、配列は、99%の同一性を有し、なおも本開示に従って機能することができる。他の実施形態では、配列は、98%の同一性を有し、なおも本開示に従って機能することができる。別の実施形態では、配列は、95%の同一性を有し、なおも本開示に従って機能することができる。別の実施形態では、配列は、90%の同一性を有し、なおも本開示に従って機能することができる。
アンチセンスオリゴマー
[172]PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に結合することによってエクソンスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴマーを含む組成物が本明細書で提供される。本明細書で使用する場合、「ASO」及び「アンチセンスオリゴマー」という用語は、交換可能に使用され、ワトソン・クリック塩基対形成又はゆらぎ塩基対形成(G-U)によって標的核酸(例えば、PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体)配列にハイブリダイズする核酸塩基を含むポリヌクレオチド等のオリゴマーを指す。ASOは、標的配列に対して相補的な厳密な配列又は非常に高い相補性(near complementarity)(例えば、標的配列に結合するのに十分で、スプライス部位でのスプライシングを増強する相補性)を有し得る。ASOは、標的核酸(例えば、mRNA前駆体転写物の標的化部分)に結合(ハイブリダイズ)し、生理的条件下でハイブリダイズしたままでいるように設計される。典型的には、ASOは、意図された(標的化)核酸配列以外の部位にハイブリダイズする場合、限られた数の、標的核酸ではない配列(標的核酸以外の少数の部位)にハイブリダイズする。ASOの設計は、ASOが他の部位に結合し、「オフターゲット」効果を引き起こす可能性が限定されるように、ゲノム又は細胞のmRNA前駆体若しくはトランスクリプトーム中の他の場所における、mRNA前駆体転写物の標的化部分の核酸配列又は十分に類似した核酸配列の存在を考慮に入れることができる。当技術分野で公知の(例えば、本明細書に援用される、「Reducing Nonsense-Mediated mRNA Decay」という名称の、WO2015/035091として公開されているPCT/US2014/054151における)任意のアンチセンスオリゴマーは、本明細書に記載される方法を実施するために使用することができる。
[173]一部の実施形態では、ASOは、標的核酸又はPHIP mRNA前駆体、例えば、NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に「特異的にハイブリダイズする」又は「特異的」である。典型的には、そのようなハイブリダイゼーションは、37℃より実質的に高い、好ましくは少なくとも50℃、典型的には60℃~およそ90℃のTで行われる。そのようなハイブリダイゼーションは、好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に相当する。所与のイオン強度及びpHで、Tは、標的配列の50%が相補的なオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする温度である。
[174]オリゴマー、例えばオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションが2本の1本鎖ポリヌクレオチド間で、逆平行配置で行われる場合、互いに「相補的」である。2本鎖ポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションが第1のポリヌクレオチドの鎖の一方と第2のポリヌクレオチドとの間で行われ得る場合、別のポリヌクレオチドに対して「相補的」であり得る。相補性(1本のポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドと相補的である程度)は、一般に許容される塩基対形成則に従って、互いに水素結合を形成することが予期される対向する鎖における塩基の割合(例えば、百分率)の点から定量化可能である。アンチセンスオリゴマー(ASO)の配列は、ハイブリダイズする標的核酸の配列に対して100%相補的である必要はない。ある特定の実施形態では、ASOは、標的にする標的核酸配列内の標的領域に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列相補性を含むことができる。例えば、オリゴマー化合物の20個の核酸塩基のうち18個が標的領域に対して相補的である、したがって特異的にハイブリダイズし得るASOであれば、90%の相補性を表す。この例において、残りの非相補的な核酸塩基は、一緒にクラスター形成していても相補的な核酸塩基が間に散在していてもよく、互いに対しても相補的な核酸塩基に対しても連続的である必要はない。標的核酸の領域とのASOの相補%は、当技術分野で公知のBLASTプログラム(基本的局所アラインメント検索ツール)及びPowerBLASTプログラム(Altschulら、J.Mol.Biol.、1990、215、403~410ページ、Zhang及びMadden、Genome Res.、1997、7、649~656頁)を使用して慣例的に決定することができる。
[175]ASOは標的配列における全ての核酸塩基にハイブリダイズする必要はなく、ASOがハイブリダイズする核酸塩基は連続的であっても非連続的であってもよい。ASOは、介在又は隣接するセグメントがハイブリダイゼーション事象(例えば、ループ構造又はヘアピン構造が形成され得る)に関与しないように、mRNA前駆体転写物の1つ以上のセグメントにわたってハイブリダイズしてもよい。ある特定の実施形態では、ASOは、標的mRNA前駆体転写物における非連続的な核酸塩基にハイブリダイズする。例えば、ASOは、ASOがハイブリダイズしない1個以上の核酸塩基によって分離している、mRNA前駆体転写物における核酸塩基にハイブリダイズすることができる。
[176]本明細書に記載されるASOは、PHIP mRNA前駆体、例えば、NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的部分に存在する核酸塩基に対して相補的である核酸塩基を含む。ASOという用語には、オリゴヌクレオチド、及び標的mRNAの相補的な核酸塩基にハイブリダイズすることができる核酸塩基を含むが、糖部分、例えばペプチド核酸(PNA)を含まない任意の他のオリゴマー分子が含まれる。ASOは、天然に存在するヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、修飾ヌクレオチド、又は先行するものの2つ若しくは3つの任意の組合せを含んでもよい。「天然に存在するヌクレオチド」という用語には、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドが含まれる。「修飾ヌクレオチド」という用語には、修飾若しくは置換糖基を有する、及び/又は修飾骨格を有するヌクレオチドが含まれる。一部の実施形態では、ASOの全てのヌクレオチドは修飾ヌクレオチドである。本明細書に記載される方法及び組成物と適合性があるASO又はASOの成分の化学修飾は、当業者に明白であり得、例えば、その全体が本明細書に援用される、米国特許第8,258,109B2号、米国特許第5,656,612号、米国特許公開第2012/0190728号、並びにDias及びStein、Mol.Cancer Ther.2002、347~355頁に見出され得る。
[177]ASOの1個以上の核酸塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシル等の任意の天然に存在する非修飾核酸塩基であっても、標的mRNA前駆体に存在する核酸塩基と水素結合することができるほど十分に非修飾核酸塩基に類似した任意の合成若しくは修飾核酸塩基であってもよい。修飾核酸塩基の例としては、限定されないが、ヒポキサンチン、キサンチン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、及び5-ヒドロキシメチルシトシン(hydroxymethoylcytosine)が挙げられる。
[178]本明細書に記載されるASOはまた、オリゴマーの成分を接続する骨格構造も含む。「骨格構造」及び「オリゴマー連結」という用語は、交換可能に使用することができ、ASOのモノマー間の接続を指す。天然に存在するオリゴヌクレオチドにおいて、骨格は、オリゴマーの糖部分を接続する3’-5’ホスホジエステル連結を含む。本明細書に記載されるASOの骨格構造又はオリゴマー連結としては、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニラデート、及びホスホロアミデート等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、LaPlancheら、Nucleic Acids Res.14:9081ページ(1986);Stecら、J.Am.Chem.Soc.106:6077ページ(1984)、Steinら、Nucleic Acids Res.16:3209ページ(1988)、Zonら、Anti-Cancer Drug Design 6:539ページ(1991);Zonら、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、87~108頁(F.Eckstein編、Oxford University Press、Oxford England(1991));Stecら、米国特許第5,151,510号;Uhlmann及びPeyman、Chemical Reviews 90:543(1990)を参照のこと。一部の実施形態では、ASOの骨格構造は、リンを含有せず、むしろ、例えば、ペプチド核酸(PNA)、又はカルバメート、アミド、並びに直鎖状及び環式炭化水素基が挙げられる連結基にペプチド結合を含有する。一部の実施形態では、骨格修飾はホスホロチオエート連結である。一部の実施形態では、骨格修飾はホスホロアミデート連結である。
[179]一部の実施形態では、ASO骨格のリンヌクレオチド間連結(phosphorus internucleotide linkage)の各々における立体化学はランダムである。一部の実施形態では、ASO骨格のリンヌクレオチド間連結の各々における立体化学は統御されており、ランダムではない。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0194610号、「Methods for the Synthesis of Functionalized Nucleic Acids」は、核酸オリゴマー中の各リン原子におけるキラリティーの掌性を独立して選択するための方法を記載している。一部の実施形態では、本明細書で表5及び6に記載される任意のASOが挙げられるがこれらに限定されない、本開示の方法において使用されるASOは、ランダムではないリンヌクレオチド間連結を有するASOを含む。一部の実施形態では、本開示の方法において使用される組成物は、純粋なジアステレオマーのASOを含む。一部の実施形態では、本開示の方法において使用される組成物は、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、約100%、約90%~約100%、約91%~約100%、約92%~約100%、約93%~約100%、約94%~約100%、約95%~約100%、約96%~約100%、約97%~約100%、約98%~約100%、又は約99%~約100%のジアステレオマー純度を有するASOを含む。
[180]一部の実施形態では、ASOは、そのリンヌクレオチド間連結においてRp及びSp配置のランダムではない混合物を有する。例えば、Rp及びSpの混合は、アンチセンスオリゴヌクレオチドにおいて、良好な活性とヌクレアーゼ安定性との間の均衡を達成するために必要とされることが示唆されている(本明細書に援用される、Wanら、2014、「Synthesis, biophysical properties and biological activity of second generation antisense oligonucleotides containing chiral phosphorothioate linkages」、Nucleic Acids Research 42(22):13456~13468頁)。一部の実施形態では、本明細書で配列番号3に記載される任意のASOが挙げられるがこれらに限定されない、本開示の方法において使用されるASOは、約5~100%のRp、少なくとも約5%のRp、少なくとも約10%のRp、少なくとも約15%のRp、少なくとも約20%のRp、少なくとも約25%のRp、少なくとも約30%のRp、少なくとも約35%のRp、少なくとも約40%のRp、少なくとも約45%のRp、少なくとも約50%のRp、少なくとも約55%のRp、少なくとも約60%のRp、少なくとも約65%のRp、少なくとも約70%のRp、少なくとも約75%のRp、少なくとも約80%のRp、少なくとも約85%のRp、少なくとも約90%のRp、若しくは少なくとも約95%のRpとその残りのSp、又は約100%のRpを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される任意のASOが挙げられるがこれらに限定されない、本開示の方法において使用されるASOは、配列番号3のいずれか1つの少なくとも8個の連続的な核酸を含む領域に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列を含み、約10%~約100%のRp、約15%~約100%のRp、約20%~約100%のRp、約25%~約100%のRp、約30%~約100%のRp、約35%~約100%のRp、約40%~約100%のRp、約45%~約100%のRp、約50%~約100%のRp、約55%~約100%のRp、約60%~約100%のRp、約65%~約100%のRp、約70%~約100%のRp、約75%~約100%のRp、約80%~約100%のRp、約85%~約100%のRp、約90%~約100%のRp、又は約95%~約100%のRp、約20%~約80%のRp、約25%~約75%のRp、約30%~約70%のRp、約40%~約60%のRp、又は約45%~約55%のRpとその残りのSpを含む。
[181]一部の実施形態では、本明細書に記載される任意のASOが挙げられるがこれらに限定されない、本開示の方法において使用されるASOは、配列番号3の少なくとも8個の連続的な核酸を含む領域に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列を含み、約5~100%のSp、少なくとも約5%のSp、少なくとも約10%のSp、少なくとも約15%のSp、少なくとも約20%のSp、少なくとも約25%のSp、少なくとも約30%のSp、少なくとも約35%のSp、少なくとも約40%のSp、少なくとも約45%のSp、少なくとも約50%のSp、少なくとも約55%のSp、少なくとも約60%のSp、少なくとも約65%のSp、少なくとも約70%のSp、少なくとも約75%のSp、少なくとも約80%のSp、少なくとも約85%のSp、少なくとも約90%のSp、若しくは少なくとも約95%のSpとその残りのRp、又は約100%のSpを含む。実施形態では、本明細書で記載される任意のASOが挙げられるがこれらに限定されない、本開示の方法において使用されるASOは、配列番号3の少なくとも8個の連続的な核酸を含む領域に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を有する配列を含み、約10%~約100%のSp、約15%~約100%のSp、約20%~約100%のSp、約25%~約100%のSp、約30%~約100%のSp、約35%~約100%のSp、約40%~約100%のSp、約45%~約100%のSp、約50%~約100%のSp、約55%~約100%のSp、約60%~約100%のSp、約65%~約100%のSp、約70%~約100%のSp、約75%~約100%のSp、約80%~約100%のSp、約85%~約100%のSp、約90%~約100%のSp、又は約95%~約100%のSp、約20%~約80%のSp、約25%~約75%のSp、約30%~約70%のSp、約40%~約60%のSp、又は約45%~約55%のSpとその残りのRpを含む。
[182]本明細書に記載される任意のASOは、天然に存在するヌクレオチドに存在するような、リボース若しくはデオキシリボースを含む糖部分、又はモルホリン環を含む、修飾糖部分若しくは糖類似体を含有してもよい。修飾糖部分の非限定的な例としては、2’置換基、例えば2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’MOE)、2’-O-アミノエチル、2’F;2’-NMA部分;N3’→P5’ホスホロアミデート、2’ジメチルアミノオキシエトキシ、2’ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’-グアニジニウム(guanidinidium)、2’-O-グアニジニウムエチル、カルバメート修飾糖、及び2環式修飾糖が挙げられる。本明細書で使用する場合、「2’-NMA」は、リボシル糖部分の2’-OH基に代わる-O-CH-C(=O)-NH-CH基を意味し得る。「2’-NMA糖部分」又は「2’-NMA部分」は、リボシル糖部分の2’-OH基の代わりに2’-O-CH-C(=O)-NH-CH基を有する糖部分である。別段の指示がない限り、2’-NMA糖部分はβ-D配置である。「NMA」は、O-N-メチルアセトアミドを意味し得る。一部の実施形態では、糖部分修飾は、2’-O-Me、2’F、2’-NMA、及び2’MOEから選択される。一部の実施形態では、糖部分修飾は、例えばロックド核酸(LNA)における追加の架橋結合である。一部の実施形態では、糖類似体は、モルホリン環、例えばホスホロジアミデートモルホリノ(PMO)を含有する。一部の実施形態では、糖部分は、リボフラノシル(ribofuransyl)又は2’デオキシリボフラノシル(deoxyribofuransyl)修飾を含む。一部の実施形態では、糖部分は、2’4’-拘束2’O-メチルオキシエチル(cMOE)修飾を含む。一部の実施形態では、糖部分は、cEt 2’,4’拘束2’-OエチルBNA修飾を含む。一部の実施形態では、糖部分は、トリシクロDNA(tcDNA)修飾を含む。一部の実施形態では、糖部分は、エチレン核酸(ENA)修飾を含む。一部の実施形態では、糖部分は、MCE修飾を含む。修飾は当技術分野で公知であり、文献、例えば、この目的のために参照によって本明細書に組み込まれる、Jarverら、2014、「A Chemical View of Oligonucleotides for Exon Skipping and Related Drug Applications」、Nucleic Acid Therapeutics 24(1):37~47頁に記載されている。
[183]一部の実施形態では、ASOの各モノマーは同様に修飾され、例えば、ASOの骨格の各連結がホスホロチオエート連結を含むか、又は各リボース糖部分が2’-O-メチル修飾を含む。ASOのモノマー成分の各々に存在するそのような修飾は、「均一修飾」と称される。一部の例において、異なる修飾の組合せが所望されてもよく、例えば、ASOは、ホスホロジアミデート連結とモルホリン環(モルホリノ)を含む糖部分との組合せを含んでもよい。ASOへの異なる修飾の組合せは、「混合修飾」又は「混合化学」と称される。
[184]一部の実施形態では、ASOは、1つ以上の骨格修飾を含む。一部の実施形態では、ASOは、1つ以上の糖部分修飾を含む。一部の実施形態では、ASOは、1つ以上の骨格修飾、及び1つ以上の糖部分修飾を含む。一部の実施形態では、ASOは、2’MOE修飾及びホスホロチオエート骨格を含む。一部の実施形態では、ASOは、ホスホロジアミデートモルホリノ(PMO)を含む。一部の実施形態では、ASOは、ペプチド核酸(PNA)を含む。本明細書に記載されるASOのいずれか、又はASOの任意の成分(例えば、核酸塩基、糖部分、骨格)は、ASOの所望の特性若しくは活性を達成するため、又はASOの望ましくない特性若しくは活性を低減させるために修飾されてもよい。例えば、ASO又は任意のASOの1つ以上の成分は、mRNA前駆体転写物の標的配列に対する結合親和性を増強するため、任意の非標的配列への結合を低減させるため、細胞のヌクレアーゼ(すなわちRNアーゼH)による分解を低減させるため、細胞内及び/若しくは細胞の核内へのASOの取込みを向上させるため、ASOの薬物動態若しくは薬力学を変更するため、並びに/又はASOの半減期を調節するために修飾されてもよい。
[185]一部の実施形態では、ASOは、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)ホスホロチオエート修飾ヌクレオチドで構成される。そのようなヌクレオチドで構成されるASOは、本明細書に開示される方法にとりわけよく適しており、そのような修飾を有するオリゴマーは、ヌクレアーゼ分解に対する著しく増強された抵抗性及び増加したバイオアベイラビリティを有し、これにより、例えば本明細書に記載される一部の実施形態における経口送達に好適なものになることが示されている。例えば、Gearyら、J Pharmacol Exp Ther.2001;296(3):890~7頁、Gearyら、J Pharmacol Exp Ther.2001;296(3):898~904頁を参照のこと。
[186]ASOを合成する方法は、当業者に公知である。代替的に又は付加的に、ASOは商業的供給業者から入手してもよい。
[187]別段の定めのない限り、1本鎖核酸(例えば、mRNA前駆体転写物、オリゴヌクレオチド、ASO等)配列の左手末端は5’末端であり、1本鎖又は2本鎖核酸配列の左手方向は5’方向と称される。同様に、核酸配列(1本鎖又は2本鎖)の右手末端又は方向は、3’末端又は方向である。一般に、核酸中の基準点に対して5’側にある領域又は配列は「上流」と称され、核酸中の基準点に対して3’側にある領域又は配列は「下流」と称される。一般に、mRNAの5’方向又は末端は、開始又は出発コドンが位置する場所であり、3’末端又は方向は、終止コドンが位置する場所である。一部の態様では、核酸中の基準点の上流にあるヌクレオチドは負の数によって明示されてもよく、基準点の下流にあるヌクレオチドは正の数によって明示されてもよい。例えば、基準点(例えば、mRNAにおけるエクソン-エクソン接合部)は「ゼロ」部位として明示されてもよく、その際、基準点に直に隣接する上流のヌクレオチドは「マイナス1」、例えば「-1」と明示され、基準点に直に隣接する下流のヌクレオチドは「プラス1」、例えば「+1」と明示される。
[188]一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体における包含エクソンの5’スプライス部位(又はNMDエクソンの3’末端)の下流(3’方向)(例えば、5’スプライス部位に対して正の数によって明示される方向)にある、PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的である(及び結合する)。一部の実施形態では、ASOは、包含エクソンの5’スプライス部位(又は3’末端)に対して約+1~約+500の領域内にあるPHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的である。一部の実施形態では、ASOは、包含エクソンの5’スプライス部位(又は3’末端)に対して+6~+40,000のヌクレオチドの領域内にあるPHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的であり得る。一部の態様では、ASOは、包含エクソンの5’スプライス部位(又は3’末端)に対して約+1~約+40,000、約+1~約+30,000、約+1~約+20,000、約+1~約+15,000、約+1~約+10,000、約+1~約+5,000、約+1~約+4,000、約+1~約+3,000、約+1~約+2,000、約+1~約+1,000、約+1~約+500、約+1~約+490、約+1~約+480、約+1~約+470、約+1~約+460、約+1~約+450、約+1~約+440、約+1~約+430、約+1~約+420、約+1~約+410、約+1~約+400、約+1~約+390、約+1~約+380、約+1~約+370、約+1~約+360、約+1~約+350、約+1~約+340、約+1~約+330、約+1~約+320、約+1~約+310、約+1~約+300、約+1~約+290、約+1~約+280、約+1~約+270、約+1~約+260、約+1~約+250、約+1~約+240、約+1~約+230、約+1~約+220、約+1~約+210、約+1~約+200、約+1~約+190、約+1~約+180、約+1~約+170、約+1~約+160、約+1~約+150、約+1~約+140、約+1~約+130、約+1~約+120、約+1~約+110、約+1~約+100、約+1~約+90、約+1~約+80、約+1~約+70、約+1~約+60、約+1~約+50、約+1~約+40、約+1~約+30、又は約+1~約+20の領域内にある標的化部分に対して相補的である。一部の態様では、ASOは、包含エクソンの5’スプライス部位(又は3’末端)に対して約+1~約+100、約+100~約+200、約+200~約+300、約+300~約+400、又は約+400~約+500の領域内にある標的化部分に対して相補的である。
[189]一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体における包含エクソンの5’スプライス部位(又は3’末端)の上流(5’方向)(例えば、5’スプライス部位に対して負の数によって明示される方向)にある、PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的である(又は結合する)。一部の実施形態では、ASOは、包含エクソンの5’スプライス部位(又は3’末端)に対して約-4~約-270の領域内にある、PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的である。一部の実施形態では、ASOは、包含エクソンの5’スプライス部位(又は3’末端)に対して-1~-40,000のヌクレオチドの領域内にある、PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的であり得る。一部の態様では、ASOは、包含エクソンの5’スプライス部位(又は3’末端)に対して約-1~約-40,000、約-1~約-30,000、約-1~約-20,000、約-1~約-15,000、約-1~約-10,000、約-1~約-5,000、約-1~約-4,000、約-1~約-3,000、約-1~約-2,000、約-1~約-1,000、約-1~約-500、約-1~約-490、約-1~約-480、約-1~約-470、約-1~約-460、約-1~約-450、約-1~約-440、約-1~約-430、約-1~約-420、約-1~約-410、約-1~約-400、約-1~約-390、約-1~約-380、約-1~約-370、約-1~約-360、約-1~約-350、約-1~約-340、約-1~約-330、約-1~約-320、約-1~約-310、約-1~約-300、約-1~約-290、約-1~約-280、約-1~約-270、約-1~約-260、約-1~約-250、約-1~約-240、約-1~約-230、約-1~約-220、約-1~約-210、約-1~約-200、約-1~約-190、約-1~約-180、約-1~約-170、約-1~約-160、約-1~約-150、約-1~約-140、約-1~約-130、約-1~約-120、約-1~約-110、約-1~約-100、約-1~約-90、約-1~約-80、約-1~約-70、約-1~約-60、約-1~約-50、約-1~約-40、約-1~約-30、又は約-1~約-20の領域内にある標的化部分に対して相補的である。
[190]一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体における包含エクソンの3’スプライス部位(又は5’末端)の上流(5’方向)(例えば、負の数によって明示される方向)にある、PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的である。一部の実施形態では、ASOは、包含エクソンの3’スプライス部位(又は5’末端)に対して約-1~約-500の領域内にある、PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的である。一部の実施形態では、ASOは、包含エクソンの3’スプライス部位に対して-1~-40,000の領域内にあるPHIP mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的である。一部の態様では、ASOは、包含エクソンの3’スプライス部位に対して約-1~約-40,000、約-1~約-30,000、-1~約-20,000、約-1~約-15,000、約-1~約-10,000、約-1~約-5,000、約-1~約-4,000、約-1~約-3,000、約-1~約-2,000、約-1~約-1,000、約-1~約-500、約-1~約-490、約-1~約-480、約-1~約-470、約-1~約-460、約-1~約-450、約-1~約-440、約-1~約-430、約-1~約-420、約-1~約-410、約-1~約-400、約-1~約-390、約-1~約-380、約-1~約-370、約-1~約-360、約-1~約-350、約-1~約-340、約-1~約-330、約-1~約-320、約-1~約-310、約-1~約-300、約-1~約-290、約-1~約-280、約-1~約-270、約-1~約-260、約-1~約-250、約-1~約-240、約-1~約-230、約-1~約-220、約-1~約-210、約-1~約-200、約-1~約-190、約-1~約-180、約-1~約-170、約-1~約-160、約-1~約-150、約-1~約-140、約-1~約-130、約-1~約-120、約-1~約-110、約-1~約-100、約-1~約-90、約-1~約-80、約-1~約-70、約-1~約-60、約-1~約-50、約-1~約-40、約-1~約-30、又は約-1~約-20の領域内にある標的化部分に対して相補的である。一部の態様では、ASOは、包含エクソンの3’スプライス部位に対して約-1~約-100、約-100~約-200、約-200~約-300、約-300~約-400、又は約-400~約-500の領域内にある標的化部分に対して相補的である。
[191]一部の実施形態では、ASOは、PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体における包含エクソンの3’スプライス部位(5’末端)の下流(3’方向)(例えば、正の数によって明示される方向)にある、PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的である。一部の実施形態では、ASOは、包含エクソンの3’スプライス部位に対して約+1~約+40,000の領域内にあるPHIP mRNA前駆体の標的化部分に対して相補的である。一部の態様では、ASOは、包含エクソンの3’スプライス部位に対して約+1~約+40,000、約+1~約+30,000、約+1~約+20,000、約+1~約+15,000、約+1~約+10,000、約+1~約+5,000、約+1~約+4,000、約+1~約+3,000、約+1~約+2,000、約+1~約+1,000、約+1~約+500、約+1~約+490、約+1~約+480、約+1~約+470、約+1~約+460、約+1~約+450、約+1~約+440、約+1~約+430、約+1~約+420、約+1~約+410、約+1~約+400、約+1~約+390、約+1~約+380、約+1~約+370、約+1~約+360、約+1~約+350、約+1~約+340、約+1~約+330、約+1~約+320、約+1~約+310、約+1~約+300、約+1~約+290、約+1~約+280、約+1~約+270、約+1~約+260、約+1~約+250、約+1~約+240、約+1~約+230、約+1~約+220、約+1~約+210、約+1~約+200、約+1~約+190、約+1~約+180、約+1~約+170、約+1~約+160、約+1~約+150、約+1~約+140、約+1~約+130、約+1~約+120、約+1~約+110、約+1~約+100、約+1~約+90、約+1~約+80、約+1~約+70、約+1~約+60、約+1~約+50、約+1~約+40、約+1~約+30、又は約+1~約+20、又は約+1~約+10の領域内にある標的化部分に対して相補的である。
[192]一部の実施形態では、PHIP mRNA前駆体、例えば、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分は、包含エクソンの5’スプライス部位(3’末端)に対して+100から包含エクソンの3’スプライス部位(5’末端)に対して-100の領域内にある。一部の実施形態では、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的化部分はNMDエクソン内にある。一部の実施形態では、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の標的部分は、偽エクソンとイントロンとの境界を含む。
[193]ASOは、特異的結合及びスプライシングの効果的な増強に好適な任意の長さであり得る。一部の実施形態では、ASOは、8~50核酸塩基からなる。例えば、ASOは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、40、45、又は50核酸塩基長であり得る。一部の実施形態では、ASOは、50核酸塩基超から成る。一部の実施形態では、ASOは、8~50核酸塩基、8~40核酸塩基、8~35核酸塩基、8~30核酸塩基、8~25核酸塩基、8~20核酸塩基、8~15核酸塩基、9~50核酸塩基、9~40核酸塩基、9~35核酸塩基、9~30核酸塩基、9~25核酸塩基、9~20核酸塩基、9~15核酸塩基、10~50核酸塩基、10~40核酸塩基、10~35核酸塩基、10~30核酸塩基、10~25核酸塩基、10~20核酸塩基、10~15核酸塩基、11~50核酸塩基、11~40核酸塩基、11~35核酸塩基、11~30核酸塩基、11~25核酸塩基、11~20核酸塩基、11~15核酸塩基、12~50核酸塩基、12~40核酸塩基、12~35核酸塩基、12~30核酸塩基、12~25核酸塩基、12~20核酸塩基、12~15核酸塩基、13~50核酸塩基、13~40核酸塩基、13~35核酸塩基、13~30核酸塩基、13~25核酸塩基、13~20核酸塩基、14~50核酸塩基、14~40核酸塩基、14~35核酸塩基、14~30核酸塩基、14~25核酸塩基、14~20核酸塩基、15~50核酸塩基、15~40核酸塩基、15~35核酸塩基、15~30核酸塩基、15~25核酸塩基、15~20核酸塩基、20~50核酸塩基、20~40核酸塩基、20~35核酸塩基、20~30核酸塩基、20~25核酸塩基、25~50核酸塩基、25~40核酸塩基、25~35核酸塩基、又は25~30核酸塩基長である。一部の実施形態では、ASOは18ヌクレオチド長である。一部の実施形態では、ASOは15ヌクレオチド長である。一部の実施形態では、ASOは25ヌクレオチド長である。
[194]一部の実施形態では、異なる化学的性質を有するが、mRNA前駆体、例えば、NMDエクソン含有mRNA前駆体の同じ標的化部分に対して相補的な2種以上のASOが使用される。一部の実施形態では、mRNA前駆体、例えば、NMDエクソン含有mRNA前駆体の異なる標的化部分に対して相補的である2種以上のASOが使用される。
[195]一部の実施形態では、本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の部分又はコンジュゲート、例えば、オリゴヌクレオチドの活性又は細胞の取込みを増強する、標的とする部分又は他のコンジュゲートに化学的に連結する。そのような部分としては、例えば、コレステロール部分、コレステリル部分としての脂質部分、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオール若しくはウンデシル残基、ポリアミン若しくはポリエチレングリコール鎖、又はアダマンタン酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。親油性部分を含むオリゴヌクレオチド、及び調製方法は、公開文献に記載されている。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、例えばN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-Ac-グルコサミン(GluNAc)、若しくはマンノース(例えば、マンノース-6-ホスフェート)、脂質、又はポリ炭化水素化合物が挙げられるがこれらに限定されない部分とコンジュゲートする。コンジュゲートは、当技術分野で理解され、文献に記載されているように、例えばリンカーを使用して、糖、塩基、又はリン酸基のいくつかの位置のいずれかにおいて、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む任意のヌクレオチドの1個以上に連結することができる。リンカーとしては、2価又は3価の分枝リンカーを挙げることができる。実施形態では、コンジュゲートは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端に結合される。オリゴヌクレオチドコンジュゲートを調製する方法は、例えば、本明細書に援用される米国特許第8,450,467号、「Carbohydrate conjugates as delivery agents for oligonucleotides」に記載されている。
[196]一部の実施形態では、ASOによって標的とされる核酸は、細胞、例えば真核細胞において発現するPHIP mRNA前駆体、例えば、NMDエクソン含有mRNA前駆体である。一部の実施形態では、「細胞」という用語は細胞の集団を指す場合がある。一部の実施形態では、細胞は対象内にある。一部の実施形態では、細胞は対象から単離される。一部の実施形態では、細胞はエクスビボである。一部の実施形態では、細胞は、病態又は疾患関連細胞又は細胞株である。一部の実施形態では、細胞はインビトロ(例えば、細胞培養物中)である。
医薬組成物
[197]記載される組成物の、及び記載される方法のいずれかにおける使用のための薬剤、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物又は製剤は、医薬業界において周知かつ公開文献に記載されている従来の技法に従って調製することができる。実施形態では、対象を処置するための医薬組成物又は製剤は、本明細書に記載されるような有効量の任意のアンチセンスオリゴマー、又は薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、水和物、又はエステルを含む。アンチセンスオリゴマーを含む医薬製剤は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体をさらに含んでもよい。
[198]薬学的に許容される塩は、過度の毒性、刺激作用、アレルギー応答等を伴わないためにヒト及び下等動物の組織との接触における使用に好適であり、妥当な利益/危険比に相当する。(例えば、この目的のために本明細書に援用されるS.M.Bergeら、J.Pharmaceutical Sciences、66:1~19頁(1977)を参照のこと。塩は、化合物の最終単離及び精製の間にin situで、又は遊離塩基形態を好適な有機酸と反応させることによって別個に調製することができる。薬学的に許容される非毒性酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、及び過塩素酸等の無機酸、又は酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、若しくはマロン酸等の有機酸を用いて、あるいはイオン交換等の他の文書化された方法論を使用することによって形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。さらなる薬学的に許容される塩としては、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、及びアリールスルホン酸塩等の対イオンを使用して形成された、非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。
[199]一部の実施形態では、組成物は、これらに限定されないが、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、液体シロップ剤、軟ゲル、坐剤、及び浣腸剤等の多くの可能な剤形のいずれかに製剤化される。実施形態では、組成物は、水性、非水性、又は混合媒体中の懸濁剤として製剤化される。水性懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランを含む、懸濁剤の粘度を増加させる物質をさらに含有してもよい。懸濁剤はまた、安定剤を含有してもよい。実施形態では、本開示の医薬製剤又は組成物としては、溶液、エマルション、マイクロエマルション、泡状物、又はリポソーム含有製剤(例えば、カチオン性又は非カチオン性リポソーム)が挙げられるが、これらに限定されない。
[200]本明細書に記載される医薬組成物又は製剤は、適宜、当業者に周知又は公開文献に記載されている、1種以上の浸透増強剤、担体、賦形剤、又は他の活性若しくは不活性成分を含んでもよい。実施形態では、リポソームとしては、立体的に安定化したリポソーム、例えば、1種以上の特殊化した脂質を含むリポソームも挙げられる。これらの特殊化した脂質は、増強した循環寿命を有するリポソームを結果的にもたらす。実施形態では、立体的に安定化したリポソームは、1種以上の糖脂質を含むか、又は1種以上の親水性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)部分を用いて誘導体化される。一部の実施形態では、界面活性剤が医薬製剤又は組成物に含まれる。薬物生成物、製剤、及びエマルションにおける界面活性剤の使用は、当技術分野で周知である。実施形態では、本開示は、浸透増強剤を用いて、アンチセンスオリゴヌクレオチドの効率的な送達をもたらす、例えば、細胞膜を越える拡散を助ける、及び/又は親油性の薬物の透過性を増強させる。一部の実施形態では、浸透増強剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、又は非キレート非界面活性剤である。
[201]一部の実施形態では、医薬製剤は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、別の薬物又は治療剤と組み合わせて投与される。
併用療法
[202]一部の実施形態では、本開示に開示されるASOは、1種以上のさらなる治療剤と組み合わせて使用することができる。一部の実施形態では、1種以上のさらなる治療剤は低分子を含むことができる。例えば、1種以上のさらなる治療剤は、その全体が本明細書に援用される、WO2016128343A1、WO2017053982A1、WO2016196386A1、WO201428459A1、WO201524876A2、WO2013119916A2、及びWO2014209841A2に記載されている低分子を含むことができる。一部の実施形態では、1種以上のさらなる治療剤は、イントロン保持を是正するために使用することができるASOを含む。
対象の処置
[203]本明細書で提供される組成物のいずれも、個体に投与することができる。「個体」は、「対象」又は「患者」と交換可能に使用することができる。個体は、哺乳動物、例えば、ヒト、又は非ヒト霊長類、げっ歯類、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ロバ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、若しくはヒツジ等の動物であり得る。実施形態では、個体はヒトである。実施形態では、個体は胎児、胚、又は小児である。他の実施形態では、個体は別の真核性生物、例えば植物であり得る。一部の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、細胞にエクスビボで投与される。
[204]一部の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、疾患又は障害を処置する方法として個体に投与される。一部の実施形態では、個体は、遺伝子疾患、例えば本明細書に記載される疾患のいずれかを有する。一部の実施形態では、個体は、疾患、例えば本明細書に記載される疾患のいずれかを有する危険がある。一部の実施形態では、個体は、不十分な量のタンパク質又はタンパク質の不十分な活性によって引き起こされる疾患又は障害を有する増加した危険がある。個体が不十分な量のタンパク質又はタンパク質の不十分な活性によって引き起こされる疾患又は障害を有する「増加した危険がある」場合、方法は防止又は予防的処置を伴う。例えば、個体は、疾患の家族歴のために、そのような疾患又は障害を有する増加した危険がある場合がある。典型的には、そのような疾患又は障害を有する増加した危険がある個体は、予防的処置から(例えば、疾患又は障害の発症又は進行を防止するか、又は遅延させることによって)恩恵を受ける。実施形態では、胎児は、子宮内で、例えば、ASO組成物を胎児に直接的に又は間接的に(例えば母親を介して)投与することによって処置される。
[205]場合によっては、主題の医薬組成物及び方法は、PHIP欠損に関連する病態又は疾患の処置に適用可能である。場合によっては、主題の医薬組成物及び方法は、Chung-Jansen症候群(CHUJANS)、常染色体優性障害、知的障害、発話遅延、不安、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、攻撃行動、顔面異形、カフェオレ斑、PHIPハプロ不全によって引き起こされる過体重症候群、発達遅延、肥満、又は異形症の処置に適用可能である。
[206]場合によっては、治療剤は、オリゴヌクレオチドを含む。場合によっては、治療剤は、標的ペプチド配列をコードするmRNA前駆体の標的化領域に結合するオリゴヌクレオチドを発現するベクター、例えばウイルスベクターを含む。本明細書で提供される方法は、薬剤、例えばオリゴヌクレオチドをコードするベクターを細胞に接触させることに適合させることができ、その結果、薬剤は、細胞におけるmRNA前駆体に結合し、mRNA前駆体のプロセシングを調節する。場合によっては、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、又は任意の適用可能なウイルスベクターを含む。場合によっては、治療剤は、非効率的な翻訳領域をコードする遺伝子領域が欠失されるように標的ペプチド配列をコードする遺伝子を修飾するように構成されている遺伝子編集ツールを含む。場合によっては、遺伝子編集ツールは、CRISPR-Cas9、TALEN、ジンクフィンガー、又は他の適用可能な技術に基づく遺伝子編集のためのベクター、例えばウイルスベクターを含む。
[207]本開示のASOの好適な投与経路は、ASOの送達が所望される細胞型に応じて変えてもよい。本開示のASOは、患者に非経口的に、例えば、硝子体内注射、髄腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、又は静脈内注射によって投与され得る。
[208]実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、血液脳関門を越える対象のアンチセンスオリゴヌクレオチドの浸透を促進することができる1種以上の薬剤と共に、当技術分野で公知の任意の方法によって投与される。例えば、筋肉組織の運動ニューロンへのアデノウイルスベクターの投与による薬剤の送達は、本明細書に援用される米国特許第6,632,427号、「Adenoviral-vector-mediated gene transfer into medullary motor neurons」に記載されている。脳、例えば、線条体、視床、海馬、又は黒質へのベクターの直接の送達は、例えば、本明細書に援用される米国特許第6,756,523号、「Adenovirus vectors for the transfer of foreign genes into cells of the central nervous system particularly in brain」に記載されている。
[209]一部の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、望ましい医薬的又は薬力学的特性を提供する薬剤と連結又はコンジュゲートされる。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、血液脳関門を越える浸透又は運搬を促進する、当技術分野で公知の物質、例えばトランスフェリン受容体に対する抗体とカップリングされる。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ウイルスベクターと連結して、例えば、アンチセンス化合物をより効果的にするか、又は血液脳関門を越える運搬を増加させる。複数の実施形態では、浸透圧による血液脳関門破壊は、糖、例えば、メソエリスリトール、キシリトール、D(+)ガラクトース、D(+)ラクトース、D(+)キシロース、ダルシトール、ミオイノシトール、L(-)フルクトース、D(-)マンニトール、D(+)グルコース、D(+)アラビノース、D(-)アラビノース、セロビオース、D(+)マルトース、D(+)ラフィノース、L(+)ラムノース、D(+)メリビオース、D(-)リボース、アドニトール、D(+)アラビトール、L(-)アラビトール、D(+)フコース、L(-)フコース、D(-)リキソース、L(+)リキソース、及びL(-)リキソース、又はアミノ酸、例えば、グルタミン、リシン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、バリン、及びタウリンの注入によって補助される。血液脳関門浸透を増強させるための方法及び材料は、例えば、各々が本明細書に援用される、米国特許第9,193,969号、「Compositions and methods for selective delivery of oligonucleotide molecules to specific neuron types」、米国特許第4,866,042号、「Method for the delivery of genetic material across the blood brain barrier」、米国特許第6,294,520号、「Material for passage through the blood-brain barrier」、及び米国特許第6,936,589号「Parenteral delivery systems」に記載されている。
[210]場合によっては、治療剤は、修飾snRNA、例えば修飾ヒトsnRNAを含む。場合によっては、治療剤は、修飾snRNAをコードするベクター、例えばウイルスベクターを含む。一部の実施形態では、修飾snRNAは修飾U1 snRNAである(例えば、Alanisら、Human Molecular Genetics、2012、第21巻、第11号2389~2398頁を参照のこと)。一部の実施形態では、修飾snRNAは修飾U7 snRNAである(例えば、Gadgilら、J Gene Med.2021;23:e3321を参照のこと)。一部の実施形態では、修飾snRNAは、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体にハイブリダイズする1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾されている。一部の実施形態では、修飾snRNAは、本明細書に開示されるASOの1つ又は2つ以上の配列を含む1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾されている。一部の実施形態では、修飾snRNAは、変異を有するPHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の配列にハイブリダイズする1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾されている。一部の実施形態では、修飾snRNAは、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の2つ以上の標的領域にハイブリダイズする2つ以上の配列を含む1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾されている。例えば、修飾snRNAは、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の少なくとも8個の連続的な核酸にハイブリダイズする1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。一部の実施形態では、修飾snRNAは、本明細書に開示されるPHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の任意の標的領域にハイブリダイズする1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾されている。一部の実施形態では、修飾snRNAは、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の2つ以上の標的領域にハイブリダイズする2つ以上の配列を含む1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾されている。例えば、修飾snRNAは、mRNA前駆体転写物のNMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)))を含有するイントロンの1つ若しくは2つ以上の配列、又は同じイントロンにおけるNMDエクソン活性化制御配列にハイブリダイズする1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。例えば、修飾snRNAは、NMDエクソン内の領域又はNMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)))の上流若しくは下流の領域にハイブリダイズする1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。一部の実施形態では、修飾snRNAは、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体にハイブリダイズする1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾されている5’領域を有する。
[211]例えば、修飾snRNAは、NMDエクソン及びNMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)))の上流のイントロンと重複する領域にハイブリダイズする1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。例えば、修飾snRNAは、NMDエクソン及びNMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)))の下流のイントロンと重複する領域にハイブリダイズする1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。
[212]例えば、修飾snRNAは、NMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)))の下流にあるイントロン配列に対して相補的である1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。例えば、修飾snRNAは、NMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)))の上流又は下流にあるイントロン配列の3’スプライス部位に対して相補的である1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。例えば、修飾snRNAは、NMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)))の下流にあるイントロン配列の5’スプライス部位に対して相補的である1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。
[213]例えば、修飾snRNAは、NMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)))の上流にあるイントロン配列に対して相補的である1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。例えば、修飾snRNAは、NMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)))の上流にあるイントロン配列のスプライス部位に対して相補的である1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。例えば、修飾snRNAは、NMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)))の上流にあるイントロン配列の3’スプライス部位に対して相補的である1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。例えば、修飾snRNAは、NMDエクソン(例えば、PHIPのエクソン15x(例えば、PHIPのエクソン(GRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436)))の上流にあるイントロン配列の5’スプライス部位に対して相補的である1本鎖ヌクレオチド配列を含むように修飾することができる。
[214]一部の実施形態では、方法及び組成物を使用して処置される対象は、状態の向上に関して、当技術分野で公知かつ記載されている任意の方法を使用して評価される。
エクソンスキッピングを誘導するさらなるASOを同定する方法
[215]PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体のエクソンスキッピング誘導するASOを同定又は決定するための方法も、本開示の範囲内である。例えば、方法は、PHIP NMDエクソン含有mRNA前駆体の偽エクソンスキッピング誘導するASOを同定又は決定することを含むことができる。mRNA前駆体の標的領域内の異なるヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするASOは、標的イントロンのスプライシングの速度及び/又は範囲を向上させるASOを同定又は決定するためにスクリーニングされてもよい。一部の実施形態では、ASOは、スプライシングリプレッサー/サイレンサーの結合部位を遮断又は干渉してもよい。当技術分野で公知の任意の方法は、エクソンの標的領域にハイブリダイズした場合に所望の効果(例えば、偽エクソンスキッピング、タンパク質又は機能性RNA産生)を結果的にもたらすASOを同定(決定)するために使用してもよい。これらの方法は、包含エクソン又は非包含エクソンと隣り合うイントロンにおける標的化領域に結合することによって包含エクソンのエクソンスキッピングを誘導するASOを同定するためにも使用することができる。使用され得る方法の1例は以下に提供される。
[216]ASO「歩行」と称される1ラウンドのスクリーニングは、mRNA前駆体の標的領域にハイブリダイズするように設計されたASOを使用して実施してもよい。例えば、ASO歩行に使用されるASOは、包含エクソンの3’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド上流(例えば、標的/包含エクソンの上流に位置するエクソンの配列の一部分)から標的/包含エクソンの3’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド下流まで、及び/又は包含エクソンの5’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド上流から標的/包含エクソンの5’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド下流(例えば、標的/包含エクソンの下流に位置するエクソンの配列の一部分)まで、5ヌクレオチドごとにタイリングすることができる。例えば、15ヌクレオチド長の第1のASOは、標的/包含エクソンの3’スプライス部位に対して+6~+20のヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするように設計されてもよい。第2のASOは、標的/包含エクソンの3’スプライス部位に対して+11~+25のヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするように設計されてもよい。ASOは、mRNA前駆体の標的領域にまたがるようなものとして設計される。実施形態では、ASOはより綿密に、例えば、1、2、3、又は4ヌクレオチドごとにタイリングすることができる。さらに、ASOは、5’スプライス部位の100ヌクレオチド下流から3’スプライス部位の100ヌクレオチド上流までタイリングすることができる。一部の実施形態では、ASOは、3’スプライス部位の約1,160ヌクレオチド上流から5’スプライス部位の約500ヌクレオチド下流までタイリングすることができる。一部の実施形態では、ASOは、3’スプライス部位の約500ヌクレオチド上流から3’スプライス部位の約1,920ヌクレオチド下流までタイリングすることができる。
[217]1種以上のASO、又は対照ASO(標的領域にハイブリダイズすることが予期されていない配列であるスクランブル配列を有するASO)は、例えばトランスフェクションによって、標的mRNA前駆体(例えば、本明細書に記載されるNMDエクソン含有mRNA前駆体)を発現する疾患関連細胞株へ送達される。各々のASOのエクソンスキッピング効果は、当技術分野で公知の任意の方法によって、例えばスプライス接合部にまたがるプライマーを使用する逆転写(RT)-PCRによって、実施例2に記載されるように評価してもよい。ASO処理細胞における、包含エクソンを含有する(例えばNMDエクソンの隣り合うエクソンを含む)領域にまたがるプライマーを使用して産生された、対照ASO処理細胞と比較してより長いRT-PCR産物の低減又は非存在は、標的NMDエクソンのスプライシングが増強されたことを指し示す。一部の実施形態では、エクソンスキッピング効率(又はNMDエクソンを含有するイントロンをスプライスするスプライシング効率)、スプライスされたmRNA前駆体のスプライスされていないmRNA前駆体に対する比、スプライシングの速度、又はスプライシングの範囲は、本明細書に記載されるASOを使用して向上させ得る。標的mRNA前駆体によってコードされるタンパク質又は機能性RNAの量もまた、各ASOが所望の効果を達成したか(例えば、機能性タンパク質産生を増強したか)否かを決定するために評価することができる。タンパク質産生を評価及び/又は定量化するための当技術分野で公知の任意の方法、例えばウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、及びELISAが使用され得る。
[218]ASO「マイクロ歩行」と称される第2ラウンドのスクリーニングは、mRNA前駆体の標的領域にハイブリダイズするように設計されたASOを使用して実施してもよい。ASOマイクロ歩行に使用されるASOは、ASOとハイブリダイズした場合にエクソンスキッピング(又はNMDエクソンの増強されたスプライシング)を結果的にもたらすmRNA前駆体のヌクレオチド酸配列をさらに改良するために、1ヌクレオチドごとにタイリングされる。
[219]標的イントロンのスプライシングを促進するASOによって規定された領域は、1ヌクレオチドステップの間隔で並べられたASOを伴うASO「マイクロ歩行」、及びより長い、典型的には18~25ヌクレオチドのASOによって、より詳細に探索される。
[220]上でASO歩行に関して記載されたように、ASOマイクロ歩行は、1種以上のASO、又は対照ASO(標的領域にハイブリダイズすることが予期されない配列であるスクランブル配列を有するASO)を、例えばトランスフェクションによって、標的mRNA前駆体を発現する疾患関連細胞株へ送達することによって実施される。各々のASOのスプライシング誘導効果は、当技術分野で公知の任意の方法によって、例えばNMDエクソンにまたがるプライマーを使用する逆転写(RT)-PCRによって、本明細書に記載されるように評価してもよい(例えば実施例2を参照のこと)。ASO処理細胞における、NMDエクソンにまたがるプライマーを使用して産生された、対照ASO処理細胞におけるものと比較してより長いRT-PCR産物の低減又は非存在は、エクソンスキッピング(又はNMDエクソンを含有する標的イントロンのスプライシング)が増強されたことを指し示す。一部の実施形態では、エクソンスキッピング効率(又はNMDエクソンを含有するイントロンをスプライスするスプライシング効率)、スプライスされたmRNA前駆体のスプライスされていないmRNA前駆体に対する比、スプライシングの速度、又はスプライシングの範囲は、本明細書に記載されるASOを使用して向上させ得る。標的mRNA前駆体によってコードされるタンパク質又は機能性RNAの量もまた、各ASOが所望の効果を達成したか(例えば、機能性タンパク質産生を増強したか)否かを決定するために評価することができる。タンパク質産生を評価及び/又は定量化するための当技術分野で公知の任意の方法、例えばウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、及びELISAが使用され得る。
[221]mRNA前駆体の領域にハイブリダイズした場合にエクソンスキッピング(又はNMDエクソンを含有するイントロンの増強されたスプライシング)及び増加したタンパク質産生を結果的にもたらすASOは、動物モデル、例えば、全長ヒト遺伝子がノックインされたトランスジェニックマウスモデル、又は疾患のヒト化マウスモデルを使用して、インビボで試験してもよい。ASOの好適な投与経路は、疾患、及び/又はASOの送達が所望される細胞型に応じて変えてもよい。ASOは、例えば、硝子体内注射、髄腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、又は静脈内注射によって投与され得る。投与後、モデル動物の細胞、組織、及び/又は器官は、ASO処置の効果を決定するために、例えば当技術分野で公知かつ本明細書に記載されている方法によってスプライシング(例えば、効率、速度、範囲)及びタンパク質産生を評価することによって、評価することができる。動物モデルはまた、疾患又は疾患重症度の任意の表現型又は行動指標にもなり得る。
[222]NMD阻害剤、例えば、シクロヘキシミドの存在下においてNMD誘導エクソンを同定又は認証する方法も本開示の範囲内である。例示的な方法は、実施例3に提供される。
具体的な実施形態
実施形態1。 標的遺伝子から転写され、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソン(NMDエクソン)を含むmRNA前駆体を有する細胞において標的タンパク質の発現を調節する方法であって、薬剤又は薬剤をコードするベクターを細胞に接触させ、それによって薬剤がmRNA前駆体からのNMDエクソンのスプライシングを調節し、それにより、mRNA前駆体からプロセシングされるプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、そして細胞において標的タンパク質の発現を調節することを含み、標的遺伝子はPHIP遺伝子である、前記方法。
実施形態2。 薬剤が、
a.mRNA前駆体の標的化部分に結合するか、
b.NMDエクソンのスプライシングに関与する因子の結合を調節するか、又は
c.(a)及び(b)の組合せである、
実施形態1に記載の方法。
実施形態3。 薬剤が、NMDエクソンのスプライシングに関与する因子の、標的化部分の領域への結合に干渉する、実施形態2に記載の方法。
実施形態4。 mRNA前駆体の標的化部分がNMDエクソンの近位にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態5。 mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの5’末端の、最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態6。 mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの5’末端の、少なくとも約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約10ヌクレオチド、約5ヌクレオチド、約4ヌクレオチド、約2ヌクレオチド、約1ヌクレオチド上流にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態7。 mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの3’末端の、最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態8。 mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの3’末端の、少なくとも約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約10ヌクレオチド、約5ヌクレオチド、約4ヌクレオチド、約2ヌクレオチド、約1ヌクレオチド下流にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態9。 mRNA前駆体の標的化部分が、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004373の、最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態10。 mRNA前駆体の標的化部分が、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004373の、約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態11。 mRNA前駆体の標的化部分が、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004436の、最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態12。 mRNA前駆体の標的化部分が、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004436の、約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態13。 mRNA前駆体の標的化部分が、mRNA前駆体の2つのカノニカルなエクソン領域の間のイントロン領域に位置し、イントロン領域がNMDエクソンを含有する、実施形態2に記載の方法。
実施形態14。 mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンと少なくとも部分的に重複する、実施形態2に記載の方法。
実施形態15。 mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの上流又は下流のイントロンと少なくとも部分的に重複する、実施形態2に記載の方法。
実施形態16。 mRNA前駆体の標的化部分が、5’NMDエクソン-イントロン接合部又は3’NMDエクソン-イントロン接合部を含む、実施形態2に記載の方法。
実施形態17。 mRNA前駆体の標的化部分がNMDエクソン内にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態18。 mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個、又はそれより多い連続するヌクレオチドを含む、実施形態2に記載の方法。
実施形態19。 NMDエクソンが、(a)配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも90%、若しくは100%の配列同一性を有するイントロン配列内にある、及び/又は(b)配列番号3に対して少なくとも80%、少なくとも90%、若しくは100%の配列同一性を有する配列を含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
実施形態20。 NMDエクソンが配列番号3の配列を含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
実施形態21。 mRNA前駆体の標的化部分が、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436内にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態22。 mRNA前駆体の標的化部分が、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436の上流又は下流にある、実施形態2に記載の方法。
実施形態23。 mRNA前駆体の標的化部分が、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436のエクソン-イントロン接合部を含む、実施形態2に記載の方法。
実施形態24。 プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質が、全長PHIPタンパク質又は野生型PHIPタンパク質である、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
実施形態25。 プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質が、機能性PHIPタンパク質である、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
実施形態26。 プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質が、野生型PHIPタンパク質と比較して少なくとも部分的に機能性である、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
実施形態27。 プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質が、全長野生型PHIPタンパク質と比較して少なくとも部分的に機能性である、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
実施形態28。 プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質が、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436によってコードされるアミノ酸配列を欠くPHIPタンパク質である、実施形態1~23又は25~27のいずれか1つに記載の方法。
実施形態29。 mRNA前駆体からのNMDエクソンの排除を促進する、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
実施形態30。 薬剤と接触させた細胞におけるmRNA前駆体からのNMDエクソンの排除が、薬剤が存在しない場合と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加する、実施形態29に記載の方法。
実施形態31。 細胞においてプロセシングされたmRNAのレベルの増加をもたらす、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
実施形態32。 薬剤と接触させた細胞におけるプロセシングされたmRNAのレベルが、薬剤が存在しない場合と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加する、実施形態31に記載の方法。
実施形態33。 細胞において標的タンパク質の発現の増加をもたらす、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
実施形態34。 薬剤と接触させた細胞におけるプロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質のレベルが、薬剤が存在しない場合と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加する、実施形態33に記載の方法。
実施形態35。 薬剤が、配列番号4~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
実施形態36。 薬剤が遺伝子編集分子をさらに含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
実施形態37。 遺伝子編集分子がCRISPR-Cas9を含む、実施形態36に記載の方法。
実施形態38。 薬剤がアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーが、ホスホロチオエート連結又はホスホロジアミデート連結を含む骨格修飾を含む、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
実施形態39。 薬剤がアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーが、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル部分、2’-フルオロ部分、2’-NMA部分、又は2’-O-メトキシエチル部分を含む、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
実施形態40。 薬剤がアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーが少なくとも1つの修飾糖部分を含む、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
実施形態41。 各糖部分が修飾糖部分である、実施形態40に記載の方法。
実施形態42。 薬剤がアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーが、8~50核酸塩基、8~40核酸塩基、8~35核酸塩基、8~30核酸塩基、8~25核酸塩基、8~20核酸塩基、8~15核酸塩基、9~50核酸塩基、9~40核酸塩基、9~35核酸塩基、9~30核酸塩基、9~25核酸塩基、9~20核酸塩基、9~15核酸塩基、10~50核酸塩基、10~40核酸塩基、10~35核酸塩基、10~30核酸塩基、10~25核酸塩基、10~20核酸塩基、10~15核酸塩基、11~50核酸塩基、11~40核酸塩基、11~35核酸塩基、11~30核酸塩基、11~25核酸塩基、11~20核酸塩基、11~15核酸塩基、12~50核酸塩基、12~40核酸塩基、12~35核酸塩基、12~30核酸塩基、12~25核酸塩基、12~20核酸塩基、又は12~15核酸塩基から成る、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態43。 薬剤をコードするベクターを細胞に接触させることを含み、ベクターがウイルスベクターである、実施形態1に記載の方法。
実施形態44。 ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ウイルスベクター、又はレトロウイルスベクターを含む、実施形態43に記載の方法。
実施形態45。 ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む、実施形態43に記載の方法。
実施形態46。 薬剤が修飾snRNAを含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態47。 修飾ヒトsnRNAが修飾U1 snRNAである、実施形態46に記載の方法。
実施形態48。 修飾ヒトsnRNAが修飾U7 snRNAである、実施形態46に記載の方法。
実施形態49。 修飾ヒトsnRNAの1本鎖ヌクレオチド配列の一部分が、mRNA前駆体の標的化部分に結合する配列を含む、実施形態46に記載の方法。
実施形態50。 修飾snRNAをコードするベクターを細胞に接触させることを含む、実施形態46~49のいずれか1つに記載の方法。
実施形態51。 標的タンパク質のmRNAレベル又は発現レベルを評価することをさらに含む、実施形態1~50のいずれか1つに記載の方法。
実施形態52。 薬剤が治療剤である、実施形態1~51のいずれか1つに記載の方法。
実施形態53。 実施形態52に記載の治療剤又は実施形態52に記載の治療剤をコードするベクターと、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
実施形態54。 治療剤又は治療剤をコードするベクターと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物であって、治療剤が、配列番号4~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む、前記医薬組成物。
実施形態55。 治療剤が、配列番号55~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む、実施形態54に記載の医薬組成物。
実施形態56。 脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、又は静脈内注射用に製剤化される、実施形態53~55のいずれか1つに記載の医薬組成物。
実施形態57。 髄腔内注射又は脳脊髄内注射用に製剤化される、実施形態53~55のいずれか1つに記載の医薬組成物。
実施形態58。 第2の治療剤をさらに含む、実施形態53~57のいずれか1つに記載の医薬組成物。
実施形態59。 第2の治療剤が低分子を含む、実施形態58に記載の医薬組成物。
実施形態60。 第2の治療剤がアンチセンスオリゴマーを含む、実施形態58に記載の医薬組成物。
実施形態61。 第2の治療剤がイントロン保持を是正する、実施形態58に記載の医薬組成物。
実施形態62。 配列番号4~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む組成物であって、アンチセンスオリゴマーが、骨格修飾、糖部分修飾、又はそれらの組合せを含む、前記組成物。
実施形態63。 アンチセンスオリゴマーを含むポリヌクレオチドをコードするウイルスベクターを含む組成物であって、アンチセンスオリゴマーが、配列番号4~180から成る群より選択される配列からなる、前記組成物。
実施形態64。 ポリヌクレオチドが修飾snRNAをさらに含む、実施形態63に記載の組成物。
実施形態65。 修飾ヒトsnRNAが修飾U1 snRNAである、実施形態64に記載の組成物。
実施形態66。 修飾ヒトsnRNAが修飾U7 snRNAである、実施形態64に記載の組成物。
実施形態67。 アンチセンスオリゴマーが、配列番号55~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%の配列同一性を有する、実施形態62又は63に記載の組成物。
実施形態68。 疾患若しくは病態を処置すること又は疾患若しくは病態を発生する可能性を低下させることを必要とする対象の細胞内で標的タンパク質の発現を調節することによって、対象において疾患若しくは病態を処置するか又は疾患若しくは病態を発生する可能性を低下させる方法であって、対象の細胞に実施形態53~61のいずれか1つに記載の医薬組成物を接触させることを含む、前記方法。
実施形態69。 疾患又は病態が、PHIP遺伝子における機能喪失型変異に関連する、実施形態68に記載の方法。
実施形態70。 疾患又は病態が、PHIP遺伝子のハプロ不全に関連し、対象が、機能性PHIPタンパク質をコードする第1のアレル、及びPHIPタンパク質が産生されないか若しくは低減したレベルで産生される第2のアレル、又は非機能性PHIPタンパク質若しくは部分的に機能性PHIPタンパク質をコードする第2のアレルを有する、実施形態68又は69に記載の方法。
実施形態71。 疾患又は病態が知的障害疾患又は病態を含む、実施形態68~70のいずれか1つに記載の方法。
実施形態72。 疾患又は病態が、Chung-Jansen症候群(CHUJANS)、常染色体優性障害、知的障害、発話遅延、不安、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、攻撃行動、顔面異形、カフェオレ斑、PHIPハプロ不全によって引き起こされる過体重症候群、発達遅延、肥満、又は異形症を含む、実施形態68~70のいずれか1つに記載の方法。
実施形態73。 疾患又は病態がChung-Jansen症候群を含む、実施形態68~70のいずれか1つに記載の方法。
実施形態74。 疾患又は病態が知的障害を含む、実施形態68~70のいずれか1つに記載の方法。
実施形態75。 疾患又は病態がPHIP遺伝子の常染色体劣性変異に関連し、対象が、
(i)PHIPタンパク質が産生されないか、若しくは野生型アレルと比較して低減したレベルで産生される、又は
(ii)産生されるPHIPタンパク質が非機能性であるか、若しくは野生型アレルと比較して部分的に機能性である、
第1のアレル、及び
(iii)PHIPタンパク質が野生型アレルと比較して低減したレベルで産生され、産生されるPHIPタンパク質が野生型アレルと比較して少なくとも部分的に機能性である、又は
(iv)産生されるPHIPタンパク質が野生型アレルと比較して部分的に機能性である、
第2のアレル、
を有する、実施形態68又は69に記載の方法。
実施形態79。 対象がヒトである、実施形態68~76のいずれか1つに記載の方法。
実施形態80。 対象が非ヒト動物である、実施形態68~76のいずれか1つに記載の方法。
実施形態81。 対象が胎児、胚、又は小児である、実施形態68~76のいずれか1つに記載の方法。
実施形態82。 細胞がエクスビボである、実施形態68~76のいずれか1つに記載の方法。
実施形態83。 医薬組成物が、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、又は静脈内注射によって投与される、実施形態68~76のいずれか1つに記載の方法。
実施形態84。 医薬組成物が、髄腔内注射又は脳脊髄内注射によって投与される、実施形態68~76のいずれか1つに記載の方法。
実施形態85。 疾患又は病態を処置する、実施形態68~76のいずれか1つに記載の方法。
実施形態86。 標的遺伝子から転写されかつナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソン(NMDエクソン)を含むmRNA前駆体からのNMDエクソンのスプライシングを調節し、それにより、mRNA前駆体からプロセシングされるプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、そしてmRNA前駆体を有する細胞において標的タンパク質の発現を調節する薬剤又は該薬剤をコードするベクターを含む組成物であって、標的遺伝子がPHIP遺伝子である、前記組成物。
実施形態87。 標的遺伝子から転写されかつナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソン(NMDエクソン)を含むmRNA前駆体からのNMDエクソンのスプライシングを調節し、それにより、mRNA前駆体からプロセシングされるプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、そして疾患又は病態の処置を必要とする対象の細胞において標的タンパク質の発現を調節することによって、対象において疾患又は病態を処置する薬剤又は該薬剤をコードするベクターを含む組成物であって、標的遺伝子がPHIP遺伝子である、前記組成物。
実施形態88。 実施形態84又は85に記載の組成物と、薬学的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクルとを含む、医薬組成物。
実施形態89。 標的タンパク質がプレクストリン相同ドメイン相互作用タンパク質(PHIP)である、実施形態1~88のいずれか1つに記載の方法又は組成物又は医薬組成物。
[223]本開示は以下の実施例によってより具体的に例証されるだろう。しかしながら、本開示はこれらの実施例によっていかなる形でも限定されないことが理解されるべきである。
実施例1: 配列決定を使用するRNAseqによる、転写物におけるNMD誘導エクソン包含事象の同定
[224]全トランスクリプトームショットガン配列決定を、RNA配列決定を使用して実行して、本明細書に記載される遺伝子によって産生された転写物のスナップショットを明らかにし、NMDエクソン包含事象を同定した。この目的のために、シクロヘキシミド(CHX)又はDMSO対照を用いて処理したヒト神経系前駆細胞(ReN)及びヒトアストロサイトの核及び細胞質画分に由来するポリA RNAを単離し、cDNAライブラリーを、IlluminaのTruSeqストランドmRNAライブラリー調製キットを使用して構築する。ライブラリーをペアエンド配列決定し、ヒトゲノム(2017年12月、GRCh38/hg38アセンブリ)にマッピングされる100ヌクレオチドの読取りを結果として得る。図3は、PHIP遺伝子における例示的なナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)誘導エクソンの同定を示す。
[225]例示的な遺伝子及びイントロン配列を表1にまとめる(配列番号は、遺伝子番号によって表される、対応するヌクレオチド配列を指し示す)。例示的なイントロンの配列を表2にまとめる。PHIPタンパク質配列を表3に提供する。表4、5及び6は、本開示のPHIPアンチセンスオリゴマーの配列を列挙する。
実施例2: シクロヘキシミド/ピューロマイシン/DMSO処理を介したNMDエクソンの確認
[226]水(H)、DMSO処理(D)、又はピューロマイシン(P)、若しくはシクロヘキシミド処理(C)したヒト胎児腎臓細胞(HEK293)、ヒト神経芽細胞(SK-N-AS)、及びヒト神経系前駆細胞(ReN)に由来する総RNA、並びにPHIP遺伝子のエクソン15及び16におけるプライマーを使用するRT-PCR分析を使用して、NMD誘導エクソンに対応するバンドの存在を確認した。バンドの密度測定分析を実施して、総転写物のNMDエクソン包含%を算出した。NMDを阻害するための、シクロヘキシミド又はピューロマイシンを用いる細胞の処理は、NMD誘導エクソンに対応する産物の増加をもたらすことができる。図4Aは、HEK、SK-N-AS、及びReN VM細胞それぞれにおいてDMSO、シクロヘキシミド、又はピューロマイシン処理を使用した、PHIP遺伝子転写物における例示的なNMDエクソンの確認を示す。U87細胞及びアストロサイトを、シクロヘキシミド(C)、ピューロマイシン(P)、又はDMSO(D)を用いて同様に処理した。PHIP遺伝子のエクソン15及び16におけるプライマーを使用して、NMD誘導エクソンに対応するバンドの存在を確認した。U87細胞及びアストロサイトに関する結果を図4Bに示す。
[227]同様の結果が、水(H2O)、DMSO、シクロヘキシミド(CHX)、及びピューロマイシンを用いて処理したマウス胚性線維芽(MEF)細胞において見出された。4つの異なる増幅サイクル(26、29、32、及び35)を示す。NMDエクソン15x包含は、図4Cに示すように、MEF細胞において保存されていることが見出された。
実施例3: PHIP NMD事象は非ヒト霊長類において保存される
[228]RNAを、カニクイザル(Macaca fascicularis)の指し示された脳領域から抽出した。cDNAを生成し、目的の産物を、エクソン15における順方向プライマー及びエクソン16における逆方向プライマーを使用するPCRによって増幅した。2つの異なる増幅サイクル(28及び31)を図5に示す。
実施例4: NMDエクソン領域ASO歩行
[229]ASO歩行を、NMDエクソン領域に関して、3’スプライス部位の直ぐ上流の配列、3’スプライス部位を横断する配列、NMDエクソン、5’スプライス部位を横断する配列、及び5’スプライス部位の下流の配列を標的とし、PS骨格の2’-MOE ASOを使用して実施した。ASOは、3ヌクレオチド離した最後の3’スプライス部位ASOと最初のエクソンASO、及び最後のエクソンASOと最初の5’スプライス部位ASOを除いて一度に5ヌクレオチド移動することによって、これらの領域を網羅するように設計した。図6は、例示的なPHIP NMDエクソン領域に関するASO歩行を示す。
[230]ASOの表示は以下の通りに説明することができる:IVS14X=NMDエクソンの直前のカノニカルなエクソン(カノニカルなエクソン15)の後ろのカノニカルなイントロン(カノニカルなイントロン15)のイントロン型配列部分。Ex15X=NMDエクソン(カノニカルなイントロン15内)。IVS15X=NMDエクソンの直後かつNMDエクソンの直後のカノニカルなエクソン(カノニカルなエクソン16)の前のカノニカルなイントロン(カノニカルなイントロン15)のイントロン型配列部分。ASO歩行については、上記の名称を参照のこと。IVS14X及びEx15Xにまたがるか又はEx15X及びIVS15XにまたがるASOは、「XX」として表示されることに留意されたい。完全にEx15Xの内部にあるASOは「XX」として表示されない。
実施例5: RT-PCRによって評価したNMDエクソン領域ASO歩行
[231]ASO歩行配列をRT-PCR及びTaqMan qPCRによって評価した。処理された対照ASO(「模擬」又は「-」)、又は以下の表4に示すPHIP NMDエクソン領域を標的とする2’-MOE ASOを、HEK293細胞にLipofectamine RNAiMaxを使用してトランスフェクトしたか、又はReN細胞にヌクレオフェクトした。PHIP非生産的mRNA(RT-PCR)及び生産的mRNA(TaqMan)に対応する産物を定量化し、内部対照に対して正規化し、対照と比べた変化倍数をプロットした。図7は、ReN細胞における例示的なNMDエクソン領域に対する様々な例示的なASO歩行の、RT-PCR及びTaqMan qPCRを介した評価を示す。PHIP mRNAの量の測定を、エクソン15及びエクソン16にまたがるプローブを使用するTaqman qPCR、並びにエクソン15及びエクソン16におけるプライマーを使用するRT-PCRによって、3時間のシクロヘキシミド処理後の、3uMの例示的なASOを用いた処理の24時間後の細胞に対して実行した。
[232]図8は、PHIP mRNAの量の測定を示す。分析を、エクソン15及びエクソン16(カノニカル)並びにエクソン35及びエクソン36(GE)にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって、シクロヘキシミド処理の非存在下における、3μMの少数の例示的なASOを用いた処理の24時間後のReN細胞に対して実行した。様々なASOが、カノニカル及び総(GE)PHIP mRNAの産生を増加させ、産生される非生産的mRNAの量を減少させた。
[233]図9は、HEK293細胞における例示的なNMDエクソン領域に対する様々な例示的なASO歩行の、RT-PCR及びTaqMan qPCRを介した評価を示す。PHIP mRNAの量の測定を、エクソン15及びエクソン16にまたがるプローブを使用するTaqman qPCR、並びにエクソン15及びエクソン16におけるプライマーを使用するRT-PCRによって、3時間のシクロヘキシミド処理後の、120nMの例示的なASOを用いた処理の24時間後の細胞に対して実行した。
[234]図10A~10Dは、例示的なNMDエクソン領域15xに対するRT-PCR及びTaqMan qPCRを介した少数の例示的なASOの評価を示す。PHIP mRNAの量の測定を、シクロヘキシミドの非存在下における、80nMの例示的なASOを用いた処理の24時間後の細胞に対して実行した。図に示すように、様々なASOが、カノニカルなPHIP mRNA及び総PHIP mRNAの産生を増加させ、産生される非生産的mRNAの量を減少させた。
実施例6: RT-PCR及びRT-qPCRによって評価したNMDエクソン領域ASOマイクロ歩行
[235]図11は、例示的なPHIP NMDエクソン領域に関するASOマイクロ歩行を示す。ASOマイクロ歩行配列(エクソン15xを横断する)をRT-PCRによって評価した。細胞に、処理された対照ASO(SMN)、又は以下の表5に記載される、PHIP NMDエクソン領域を標的とする2’-MOE ASOをトランスフェクトした。NMDエクソン包含及び全長に対応する産物を定量化し、NMDエクソン包含%をプロットした。図12は、ReN細胞における例示的なNMDエクソン領域に対する様々な例示的なASO歩行の評価を示す。PHIP mRNAの量の測定を、エクソン15及びエクソン16にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって、3時間のシクロヘキシミド処理後の、3uMの例示的なASOのトランスフェクションの24時間後のReN細胞に対して実行した(図12)。
[236]図13は、HEK293細胞における例示的なNMDエクソン領域に対する様々な例示的なASO歩行の評価を示す。PHIP mRNAの量の測定を、エクソン15及びエクソン16にまたがるプローブを使用するTaqman qPCR、並びにエクソン15及びエクソン16におけるプライマーを使用するRT-PCRによって、シクロヘキシミドを用いた3時間の処理後の、120nMの例示的なASOのトランスフェクションの24時間後のHEK293細胞に対して実行した(図10)。
[237]以下の表6は、さらなる例示的なPHIP NMDエクソン領域ASOマイクロ歩行配列(エクソン15xを横断する)を提供する。
実施例7: 用量反応評価
[238]本開示の一部の実施形態によるいくつかの例示的なASOの用量反応関係を調査する実験を実施した。
[239]ある実験では、ReN VM細胞に異なる濃度のASOをヌクレオフェクトし、次いでこの細胞をシクロヘキシミドの存在下において24時間培養した後、細胞におけるNMDエクソン(15x)のスプライシングを調査するRT-PCR分析のために回収した。図14A及び14Bに示すように、対照ASO(「模擬」)、SMN mRNAを標的とするASO(「SMN」)、又は例示的なASO、例えば「IVS14X:-3」(配列番号58)、「IVS14X-Ex15XX:7」(配列番号67)、「Ex15X:19」(配列番号95)、若しくは「Ex15X:23」(配列番号99)を、それぞれ0.33μM、1μM、又は3μMで用いて、細胞を処理した。24時間後、細胞をRT-PCR分析のために回収した。エクソン15及びエクソン16を標的とするプライマーをRT-PCR反応のために使用し、増幅結果を図14Aに示すように可視化し、ここで、下側のバンドはエクソン15xを有しないmRNA転写物(「カノニカルなPHIP mRNA」)に由来し、上側のバンドはエクソン15xを有するmRNA転写物(「非生産的PHIP mRNA」)に由来した。異なる処理に応答したカノニカルなPHIP mRNAの量の変化及び非生産的PHIP mRNAの量の変化の定量化を図14B(「模擬」条件下におけるそれぞれの量によって正規化した)にまとめる。試験された全ての例示的なPHIP ASOに関して、それらが高濃度で適用されるほど、より多くのカノニカルなPHIP転写物及びより少ない非生産的PHIP転写物が観察された。
[240]別の実験では、ReN VM細胞に3μMの様々なASOをヌクレオフェクトし、この細胞を72時間培養した後、細胞におけるPHIPタンパク質レベルを調査するJESSアッセイのために回収した。図15Aは、2回の反復のウェスタンブロッティング画像を示し、図15Bは、試験された全ての例示的なASO(IVS14X:-3、IVS14X-Ex15XX:7、Ex15X:19、及びEx15X:23)が、模擬条件と比較してPHIPタンパク質レベルの増加を引き起こしたが、SMN対照は引き起こさなかったことを実証するプロットを示す。
実施例8: 例示的なASOによるスプライシングの調節
[241]この実施例は、本開示の一部の実施形態による例示的なASOによる、PHIP mRNA前駆体からのNMDエクソン15xのスプライシングの調節を実証したさらなる実験を例示する。
[242]ある実験では、ReN VM細胞に3μMのASOをヌクレオフェクトし、この細胞をシクロヘキシミドの非存在下において24時間培養した後、RT-PCR分析のために回収した。具体的には、細胞に、表7に列挙した例示的なASOのうちの1つ又は対照ASO(「模擬」)若しくはSMN ASOを、全て3μMにおいてヌクレオフェクトした。24時間後、細胞をRT-PCR(図16A~16B)又はRT-qPCR(図16C~16D)のために回収した。図16B~16Dに示すように、例示的なASOは、エクソン15xを有する非生産的PHIP転写物の量の減少(図16B)と、エクソン15及びエクソン16(カノニカル;図16C)並びにエクソン35及びエクソン36(GE;図16D)にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって示されるエクソン15xを有しないPHIP転写物の量の増加とをもたらした。
[243]別の実験では、ASOをReN VM細胞の培養培地に、自由取込みのために60μMにおいて添加し、次いで、細胞を3D条件及びシクロヘキシミドの非存在下において3日間培養した後、RT-PCR分析のために回収した。具体的には、表7に列挙した例示的なASOのうちの1つ、又は対照ASO(「模擬」)若しくはSMN ASOを、全て3μMにおいて用いて、細胞を処理した。24時間後、細胞をRT-PCR(図17A)又はRT-qPCR(図17B~17D)のために回収した。図17B~17Dに示すように、例示的なASOは、エクソン15xを有する非生産的PHIP転写物の量の減少(図17B)と、エクソン15及びエクソン16(カノニカル;図17C)並びにエクソン35及びエクソン36(GE;図17D)にまたがるプローブを使用するTaqman qPCRによって示されるエクソン15xを有しないPHIP転写物の量の増加とをもたらした。
[244]本開示の好ましい実施形態が本明細書に示され、記載されたが、そのような実施形態は例としてのみ提供されているということは、当業者には明らかであろう。今や数多くの変形、変更、及び代用が、本開示から逸脱することなく当業者には思い浮かぶであろう。本開示の実施形態の様々な代替が本開示を実施する際に用いられてもよいことが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は本開示の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造、並びにそれらの均等物はそれによって網羅されることが意図される。

Claims (86)

  1. 標的遺伝子から転写され、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソン(NMDエクソン)を含むmRNA前駆体を有する細胞において標的タンパク質の発現を調節する方法であって、薬剤又は薬剤をコードするベクターを細胞に接触させ、それによって薬剤がmRNA前駆体からのNMDエクソンのスプライシングを調節し、それにより、mRNA前駆体からプロセシングされるプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、そして細胞において標的タンパク質の発現を調節することを含み、標的遺伝子はPHIP遺伝子である、前記方法。
  2. 薬剤が、
    (a)mRNA前駆体の標的化部分に結合するか、
    (b)NMDエクソンのスプライシングに関与する因子の結合を調節するか、又は
    (c)(a)及び(b)の組合せである、
    請求項1に記載の方法。
  3. 薬剤が、NMDエクソンのスプライシングに関与する因子の、標的化部分の領域への結合に干渉する、請求項2に記載の方法。
  4. mRNA前駆体の標的化部分がNMDエクソンの近位にある、請求項2に記載の方法。
  5. mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの5’末端の、最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流にある、請求項2に記載の方法。
  6. mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの5’末端の、少なくとも約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約10ヌクレオチド、約5ヌクレオチド、約4ヌクレオチド、約2ヌクレオチド、約1ヌクレオチド上流にある、請求項2に記載の方法。
  7. mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの3’末端の、最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流にある、請求項2に記載の方法。
  8. mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの3’末端の、少なくとも約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約40ヌクレオチド、約30ヌクレオチド、約20ヌクレオチド、約10ヌクレオチド、約5ヌクレオチド、約4ヌクレオチド、約2ヌクレオチド、約1ヌクレオチド下流にある、請求項2に記載の方法。
  9. mRNA前駆体の標的化部分が、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004373の、最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流にある、請求項2に記載の方法。
  10. mRNA前駆体の標的化部分が、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004373の、約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド上流にある、請求項2に記載の方法。
  11. mRNA前駆体の標的化部分が、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004436の、最大で約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流にある、請求項2に記載の方法。
  12. mRNA前駆体の標的化部分が、ゲノム部位GRCh38/hg38:chr6 79004436の、約1500ヌクレオチド、約1000ヌクレオチド、約800ヌクレオチド、約700ヌクレオチド、約600ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約80ヌクレオチド、約70ヌクレオチド、約60ヌクレオチド、約50ヌクレオチド下流にある、請求項2に記載の方法。
  13. mRNA前駆体の標的化部分が、mRNA前駆体の2つのカノニカルなエクソン領域の間のイントロン領域に位置し、イントロン領域がNMDエクソンを含有する、請求項2に記載の方法。
  14. mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンと少なくとも部分的に重複する、請求項2に記載の方法。
  15. mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの上流又は下流のイントロンと少なくとも部分的に重複する、請求項2に記載の方法。
  16. mRNA前駆体の標的化部分が、5’NMDエクソン-イントロン接合部又は3’NMDエクソン-イントロン接合部を含む、請求項2に記載の方法。
  17. mRNA前駆体の標的化部分がNMDエクソン内にある、請求項2に記載の方法。
  18. mRNA前駆体の標的化部分が、NMDエクソンの約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個、又はそれより多い連続するヌクレオチドを含む、請求項2に記載の方法。
  19. NMDエクソンが、(a)配列番号2に対して少なくとも80%、少なくとも90%、若しくは100%の配列同一性を有するイントロン配列内にある、及び/又は(b)配列番号3に対して少なくとも80%、少なくとも90%、若しくは100%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1に記載の方法。
  20. NMDエクソンが配列番号3の配列を含む、請求項1に記載の方法。
  21. mRNA前駆体の標的化部分が、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436内にある、請求項2に記載の方法。
  22. mRNA前駆体の標的化部分が、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436の上流又は下流にある、請求項2に記載の方法。
  23. mRNA前駆体の標的化部分が、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436のエクソン-イントロン接合部を含む、請求項2に記載の方法。
  24. プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質が、全長PHIPタンパク質又は野生型PHIPタンパク質である、請求項1に記載の方法。
  25. プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質が、機能性PHIPタンパク質である、請求項1に記載の方法。
  26. プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質が、野生型PHIPタンパク質と比較して少なくとも部分的に機能性である、請求項1に記載の方法。
  27. プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質が、全長野生型PHIPタンパク質と比較して少なくとも部分的に機能性である、請求項1に記載の方法。
  28. プロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質が、ナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソンGRCh38/hg38:chr6 79004373~79004436によってコードされるアミノ酸配列を欠くPHIPタンパク質である、請求項1に記載の方法。
  29. mRNA前駆体からのNMDエクソンの排除を促進する、請求項1に記載の方法。
  30. 薬剤と接触させた細胞におけるmRNA前駆体からのNMDエクソンの排除が、薬剤が存在しない場合と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加する、請求項29に記載の方法。
  31. 細胞においてプロセシングされたmRNAのレベルの増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
  32. 薬剤と接触させた細胞におけるプロセシングされたmRNAのレベルが、薬剤が存在しない場合と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加する、請求項31に記載の方法。
  33. 細胞において標的タンパク質の発現の増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
  34. 薬剤と接触させた細胞におけるプロセシングされたmRNAから発現する標的タンパク質のレベルが、薬剤が存在しない場合と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍増加する、請求項33に記載の方法。
  35. 薬剤が、配列番号4~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む、請求項1に記載の方法。
  36. 薬剤が遺伝子編集分子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  37. 遺伝子編集分子がCRISPR-Cas9を含む、請求項36に記載の方法。
  38. 薬剤がアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーが、ホスホロチオエート連結又はホスホロジアミデート連結を含む骨格修飾を含む、請求項1に記載の方法。
  39. 薬剤がアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーが、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル部分、2’-フルオロ部分、2’-NMA部分、又は2’-O-メトキシエチル部分を含む、請求項1に記載の方法。
  40. 薬剤がアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーが少なくとも1つの修飾糖部分を含む、請求項1に記載の方法。
  41. 各糖部分が修飾糖部分である、請求項40に記載の方法。
  42. 薬剤がアンチセンスオリゴマー(ASO)であり、アンチセンスオリゴマーが、8~50核酸塩基、8~40核酸塩基、8~35核酸塩基、8~30核酸塩基、8~25核酸塩基、8~20核酸塩基、8~15核酸塩基、9~50核酸塩基、9~40核酸塩基、9~35核酸塩基、9~30核酸塩基、9~25核酸塩基、9~20核酸塩基、9~15核酸塩基、10~50核酸塩基、10~40核酸塩基、10~35核酸塩基、10~30核酸塩基、10~25核酸塩基、10~20核酸塩基、10~15核酸塩基、11~50核酸塩基、11~40核酸塩基、11~35核酸塩基、11~30核酸塩基、11~25核酸塩基、11~20核酸塩基、11~15核酸塩基、12~50核酸塩基、12~40核酸塩基、12~35核酸塩基、12~30核酸塩基、12~25核酸塩基、12~20核酸塩基、又は12~15核酸塩基から成る、請求項1に記載の方法。
  43. 薬剤をコードするベクターを細胞に接触させることを含み、ベクターがウイルスベクターである、請求項1に記載の方法。
  44. ウイルスベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ウイルスベクター、又はレトロウイルスベクターを含む、請求項43に記載の方法。
  45. ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む、請求項43に記載の方法。
  46. 薬剤が修飾snRNAを含む、請求項1に記載の方法。
  47. 修飾ヒトsnRNAが修飾U1 snRNAである、請求項46に記載の方法。
  48. 修飾ヒトsnRNAが修飾U7 snRNAである、請求項46に記載の方法。
  49. 修飾ヒトsnRNAの1本鎖ヌクレオチド配列の一部分が、mRNA前駆体の標的化部分に結合する配列を含む、請求項46に記載の方法。
  50. 修飾snRNAをコードするベクターを細胞に接触させることを含む、請求項46に記載の方法。
  51. 標的タンパク質のmRNAレベル又は発現レベルを評価することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  52. 薬剤が治療剤である、請求項1に記載の方法。
  53. 請求項52に記載の治療剤又は請求項52に記載の治療剤をコードするベクターと、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
  54. 治療剤又は治療剤をコードするベクターと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物であって、治療剤が、配列番号4~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む、前記医薬組成物。
  55. 治療剤が、配列番号55~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む、請求項54に記載の医薬組成物。
  56. 脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、又は静脈内注射用に製剤化される、請求項53に記載の医薬組成物。
  57. 髄腔内注射又は脳脊髄内注射用に製剤化される、請求項53に記載の医薬組成物。
  58. 第2の治療剤をさらに含む、請求項53に記載の医薬組成物。
  59. 第2の治療剤が低分子を含む、請求項58に記載の医薬組成物。
  60. 第2の治療剤がアンチセンスオリゴマーを含む、請求項58に記載の医薬組成物。
  61. 第2の治療剤がイントロン保持を是正する、請求項58に記載の医薬組成物。
  62. 配列番号4~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアンチセンスオリゴマーを含む組成物であって、アンチセンスオリゴマーは、骨格修飾、糖部分修飾、又はそれらの組合せを含む、前記組成物。
  63. アンチセンスオリゴマーを含むポリヌクレオチドをコードするウイルスベクターを含む組成物であって、アンチセンスオリゴマーは、配列番号4~180から成る群より選択される配列から成る、前記組成物。
  64. ポリヌクレオチドが修飾snRNAをさらに含む、請求項63に記載の組成物。
  65. 修飾ヒトsnRNAが修飾U1 snRNAである、請求項64に記載の組成物。
  66. 修飾ヒトsnRNAが修飾U7 snRNAである、請求項64に記載の組成物。
  67. アンチセンスオリゴマーが、配列番号55~180から成る群より選択される配列に対して少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%の配列同一性を有する、請求項62又は63に記載の組成物。
  68. 疾患若しくは病態を処置すること又は疾患若しくは病態を発生する可能性を低下させることを必要とする対象の細胞内で標的タンパク質の発現を調節することによって、対象において疾患若しくは病態を処置するか又は疾患若しくは病態を発生する可能性を低下させる方法であって、対象の細胞に請求項53~61のいずれか1項に記載の医薬組成物を接触させることを含む、前記方法。
  69. 疾患又は病態が、PHIP遺伝子における機能喪失型変異に関連する、請求項68に記載の方法。
  70. 疾患又は病態が、PHIP遺伝子のハプロ不全に関連し、対象が、機能性PHIPタンパク質をコードする第1のアレル、及びPHIPタンパク質が産生されないか若しくは低減したレベルで産生される第2のアレル、又は非機能性PHIPタンパク質若しくは部分的に機能性PHIPタンパク質をコードする第2のアレルを有する、請求項68又は69に記載の方法。
  71. 疾患又は病態が知的障害疾患又は病態を含む、請求項68に記載の方法。
  72. 疾患又は病態が、Chung-Jansen症候群(CHUJANS)、常染色体優性障害、知的障害、発話遅延、不安、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、攻撃行動、顔面異形、カフェオレ斑、PHIPハプロ不全によって引き起こされる過体重症候群、発達遅延、肥満、又は異形症を含む、請求項68に記載の方法。
  73. 疾患又は病態がChung-Jansen症候群を含む、請求項68に記載の方法。
  74. 疾患又は病態が知的障害を含む、請求項68に記載の方法。
  75. 疾患又は病態がPHIP遺伝子の常染色体劣性変異に関連し、対象が、
    (i)PHIPタンパク質が産生されないか、若しくは野生型アレルと比較して低減したレベルで産生される、又は
    (ii)産生されるPHIPタンパク質が非機能性であるか、若しくは野生型アレルと比較して部分的に機能性である、
    第1のアレル、及び
    (iii)PHIPタンパク質が野生型アレルと比較して低減したレベルで産生され、産生されるPHIPタンパク質が野生型アレルと比較して少なくとも部分的に機能性である、又は
    (iv)産生されるPHIPタンパク質が野生型アレルと比較して部分的に機能性である、
    第2のアレル、
    を有する、請求項68に記載の方法。
  76. 対象がヒトである、請求項68に記載の方法。
  77. 対象が非ヒト動物である、請求項68に記載の方法。
  78. 対象が胎児、胚、又は小児である、請求項68に記載の方法。
  79. 細胞がエクスビボである、請求項68に記載の方法。
  80. 医薬組成物が、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、経口投与、滑膜注射、硝子体内投与、網膜下注射、局所適用、移植、又は静脈内注射によって投与される、請求項68に記載の方法。
  81. 医薬組成物が、髄腔内注射又は脳脊髄内注射によって投与される、請求項68に記載の方法。
  82. 疾患又は病態を処置する、請求項68に記載の方法。
  83. 標的遺伝子から転写されかつナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソン(NMDエクソン)を含むmRNA前駆体からのNMDエクソンのスプライシングを調節し、それにより、mRNA前駆体からプロセシングされるプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、そしてmRNA前駆体を有する細胞において標的タンパク質の発現を調節する薬剤又は該薬剤をコードするベクターを含む組成物であって、標的遺伝子がPHIP遺伝子である、前記組成物。
  84. 標的遺伝子から転写されかつナンセンス変異依存RNA分解機構誘導エクソン(NMDエクソン)を含むmRNA前駆体からのNMDエクソンのスプライシングを調節し、それにより、mRNA前駆体からプロセシングされるプロセシングされたmRNAのレベルを調節し、そして疾患又は病態の処置を必要とする対象の細胞において標的タンパク質の発現を調節することによって、対象において疾患又は病態を処置する薬剤又は該薬剤をコードするベクターを含む組成物であって、標的遺伝子がPHIP遺伝子である、前記組成物。
  85. 請求項83又は84に記載の組成物と、薬学的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクルとを含む、医薬組成物。
  86. 標的タンパク質がプレクストリン相同ドメイン相互作用タンパク質(PHIP)である、請求項1~85のいずれか1項に記載の方法又は組成物又は医薬組成物。
JP2023578922A 2021-06-21 2022-06-21 ナンセンス変異依存rna分解機構に基づく病態及び疾患の処置のためのアンチセンスオリゴマー Pending JP2024524974A (ja)

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