JP2024524626A - 操作された寡能性幹細胞から分化した細胞を含む食料品 - Google Patents

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Abstract

本発明は、食品バイオテクノロジーの分野に属する。より詳細には、本発明は、いわゆる実験室培養肉に関する。本発明は、食料品を生産する方法であって、インビトロ分化非ヒト動物細胞を加工するステップを含み、前記インビトロ分化非ヒト動物細胞が少なくとも1種の寡能性幹細胞(OSC)に由来し、前記少なくとも1種のOSCが、少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている、方法に関する。本発明はまた、前記食料品、及び前記食料品を生産するのに有用なOSCに関する。【選択図】図10

Description

本発明は、食品生産の分野に関し、より特には、インビトロで培養した非ヒト動物細胞に基づく、改良された食料品を生産する方法に関する。本発明はまた、少なくとも1種の系列指定因子(specifier)遺伝子又はそれらの組合せが安定的に不活性化されている特定の寡能性幹細胞(Oligopotent Stem Cells)(OSC)に関する。
世界人口は、主に中低所得国の人口増加により、2050年には97億人に達すると予想されている(国連、2019)。この増加は、消費者のライフスタイルの変化及び生活水準の向上とともに、地球レベルでの家畜管理に世界的な圧迫を与えている。2010年~2050年に、肉製品の消費量は、発展途上国では2倍超になり、世界全体では73%超になると予測されている(FAO、2011)。かかる増加による環境的(汚染と天然資源の管理の観点から)及び地政学的影響に対処するには、代替的な環境上持続可能な肉生産様式が急務となっている。集約型畜産は、これらの目標を達成するものではなく、また、食品の品質及び動物福祉の両方の問題が引き起こされ、多くの社会で懸念の的となってきている。インビトロで生産された肉は、持続可能な消費を望む人及び/又は動物福祉に懸念を持つ人にとって、屠殺された動物からの肉に代わる現実的な選択肢となる。
いわゆるインビトロ肉又は実験室培養肉(lab-grown meat)を生産するための1つの戦略は、動物からの組織サンプルから得られる筋肉幹細胞を培養して筋肉線維を生産することである。この戦略では、筋肉幹細胞のインビトロ増殖能力の制限及び系列の限定のため、適切な生産量に達する可能性は低く、また、筋肉から派生する食品製品しか得ることができないであろう。更に、天然の肉は、脂肪細胞、筋肉、神経、内皮細胞がほんの数例として含まれる様々な細胞型で構成され、単なる骨格筋細胞の塊では、細胞内含有量、構造及び質感を再現するのにはほど遠い。
別の戦略は、多能性幹細胞(PSC)から開始することである。これらの細胞は、食料品生産に有益な2つの基本的な特性を保持している。第1の特性は自己複製能力であり、これにより、細胞はインビトロで無限に拡大し、そのため、生産の規模を拡大できる。第2の特性は多能性であり、これは、あらゆる成熟細胞型(皮膚、肺、膵臓、肝臓、胃腸管及び尿生殖路、腎臓、骨、筋肉、心臓、血管)へ分化する能力を指す。したがって、PSCの使用は、生理学的対応物の細胞組成を大部分模倣する肉ベース又は加工肉の食品製品の工学に有用なあらゆる細胞型を得る可能性を提供する。WO2020/104650は、血清及び増殖因子の必要性が低いか又は全くない鳥類の胚性幹細胞を大量に生成するための方法、並びにこれらの細胞の食料品生産への使用を開示しているが、いかなる分化ステップも含まれていない。特定のシグナル伝達の合図がない場合、これらの細胞の3D培養では、いわゆる胚様体が形成され、該胚様体は3種の胚性胚葉の派生細胞を呈する分化細胞の不均一な塊からできている細胞凝集体であり、これらのそれぞれの量又は質(すなわち、分化レベル及び細胞多様性)を制御する手段は存在しない。したがって、このアプローチは、特定の分化細胞型又はその混合物の大量生産には適していない。WO2021/048325は、食品製品の原料としての鳥類の幹細胞の使用を開示しているが、幹細胞又は寡能性幹細胞のインビトロ分化によって得た細胞の使用は記載していない。
系列コミットメントは、系列特異的な転写因子(系列指定因子)のセットによって、遺伝子レベルで組織化されるが、該セットは、下流の標的遺伝子の大規模なセットを直接的又は間接的に活性化及び/又は抑制して、特定の器官の特定の細胞型への特定の発生プログラムを実行するのに関与する。いくつかの例では、培養条件(支持体、せん断応力・・・)が、分化過程に寄与し得る。多能性細胞から出発して、PSCの特定の分化細胞型への分化を駆動するために、2つの主要な戦略が当技術分野で考えられている。第1の戦略は、「指向性分化」として知られ、多能性細胞を特定の外部シグナル伝達の合図に供することを含む、多ステップの培養プロトコールに存し、該シグナル伝達の合図は、所望の最終的な細胞型に応じて規定の時点で培養培地に添加又は除去される分子などであり、細胞が自然の分化過程で供される一連のシグナルによるものである。有利なことに、これは細胞の遺伝子改変を必要としないが、しかし、この戦略の主な欠点は、やや面倒なプロセスと、異なる時点で特定の発生経路を活性化又は阻害するのに使用される高価な組換え増殖因子、サイトカイン、ホルモン、又は他の小分子化合物の使用とである。第2の戦略は(すなわち「強制分化」)、多能性細胞を、これらの細胞が所望の転写因子を構成的に、又は特定の誘導シグナルによって発現又は過剰発現するように遺伝子改変することに存する。しかしながら、この方法は、外来遺伝物質(導入遺伝子)を細胞のゲノムに挿入することを意味し、この導入遺伝子は、細胞の数世代にわたって所望の分化特性を維持するために、細胞の数世代にわたって安定的に発現するか、又は誘導可能であり続ける必要がある。安定性及び遺伝子再配列の問題に加えて、導入遺伝子の誘導又は細胞のゲノム内でのそれらの維持では、細胞は、食品の生産、特にヒトの消費のための食品の生産を考えると望ましくない抗生物質及び/若しくは化学物質、又はいずれかの他の選択手段若しくは誘導手段に曝露されることを意味する可能性がある。培養肉のこれらの戦略と現在の課題は、Postら(2020)によって最近概説されている。WO2015/066377は、誘導可能な筋原性転写因子の導入遺伝子を発現するように改変されている、家畜から派生する細胞系から骨格筋細胞を生産することに関する。いくつかの例では、細胞はまた、骨格筋細胞への分化の誘導に切り替える前に細胞を大量生産するための多能性遺伝子の誘導発現を可能にする追加の導入遺伝子を用いて遺伝子改変される。WO2018/227016は、細胞培養食品製品を生産することを目的としたシステム及び方法に関する。WO2015/066377と同様に、WO2018/227016はまた、多能性因子及び分化因子の導入遺伝子の一過性及び逐次的発現のために遺伝子操作された細胞を記載している。しかしながら、これらの細胞の遺伝的安定性に関連する上述の欠点に加えて、遺伝子組換え物質を用いた食料品が更に直面しなければならないのは、遺伝子操作された物質、特に外来遺伝物質を含む遺伝子操作された物質に消費者が消極的であることである。
将来における世界の食糧供給という課題と、動物福祉への関心の高まりとを直視すると、依然として、インビトロ(培養)肉は貴重な解決策である。それにもかかわらず、インビトロ分化非ヒト動物細胞型に基づいた費用対効果の高い(例えば、より少ない組換え増殖因子、サイトカインホルモン、小化合物、又は抗生物質を使用)、従来の肉製品の構造特性及び官能特性に近づく、肉食料品を生産する方法が依然として必要とされている。
本発明者らは、実験室培養肉を生産するのに有用な非ヒト寡能性幹細胞(OSC)をセットアップできた。OSCは、制限された数の細胞系列へ分化する能力を保持する自己複製幹細胞である。これらの細胞は、食料品生産に見合うだけの収量で増殖させることができる。細胞は、組換え分子を用いないで又は当技術分野の方法よりも安価な組換え分子を用いて分化され、このことは、特に有利な点である。次に、OSCは、食料品に変換するか又は組み込まれ、これらのOSCは、少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。
したがって、本発明は、食料品を生産する方法であって、インビトロ分化非ヒト動物細胞を加工するステップを含み、前記インビトロ分化非ヒト動物細胞が少なくとも1種のOSCに由来し、前記少なくとも1種のOSCが少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている、方法に関する。
前記方法は、インビトロ分化非ヒト動物細胞を加工するステップの前に、前記インビトロ分化非ヒト動物細胞を生産するステップであって、
- 少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている少なくとも1種のOSCを増幅させるステップ、
- 任意に、前記増幅されたOSCを胚様体として培養するステップ、又は
- 任意に、前記OSCを分化させるステップ
を含むステップを更に含み得る。
これにより、目的の細胞を食料品生産に十分な速度で得、それによって、前記実験室培養ベースの食料品の費用を更に下げることができる。前記方法の特定の実施形態では、少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている少なくとも1種のOSCを増幅させるステップの前に、少なくとも1種の挿入及び/又は欠失を遺伝子編集システムを用いて生成させることにより、PSC又は複能性若しくは全能性細胞において少なくとも1種の系列指定因子遺伝子を安定して不活性化することによって、前記少なくとも1種のOSCを得るステップ。これにより、外因性遺伝物質が挿入されていない細胞を生成し、それによって、例えば消費者から脅威とみなされることもある外来遺伝物質を組み込んだ従来の遺伝子改変生物(GMO)と比較してより安全でより安定したアプローチを提供することができる。
有利なことに、前記OSCは、多くの生物から入手可能な多種多様なPSCから生成できる。したがって、本方法の特定の実施形態では、前記PSCは、非ヒト動物からの人工PSC(iPSC)、胚性幹細胞(ESC)、核移植ESC(ntESC)から選択される。これらはまた、非ヒト動物由来の複能性又は全能性細胞から生成できる。また、前記PSC又は複能性若しくは全能性細胞は、非ヒト脊椎動物、例えば、家畜、魚類、鳥類;昆虫;甲殻類、例えば、小エビ、エビ、カニ、ザリガニ、及び/又はロブスター;軟体動物、例えば、タコ、イカ、コウイカ、ホタテガイ、カタツムリに由来し、それによって、多種多様な実験室培養食料品の生産への道が開かれ得る。
驚くべきことに、強制分化の制御は、細胞を1種又は複数の系列指定因子遺伝子の過剰発現によって分化経路に強制的に関与させる代わりに、特定の系列指定因子遺伝子の不活性化による他の分化経路の欠損の促進を介しても可能であることを本発明者らは発見した。したがって、本方法の特定の実施形態では、少なくとも1種のOSCは、少なくとも1種の神経外胚葉(NE)、中内胚葉(MED)、中胚葉(MD)、若しくは内胚葉(ED)系列指定因子遺伝子又はそれらの組合せの発現が不活性化されている。特定の実施形態では、前記少なくとも1種のNE、MED、MD、又はED系列指定因子遺伝子は、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3、ZIC1、TBXT、TBX6、MSGN1、KLF6、FOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、HNF4A、GSC、MIXL1及びEOMES又はそれらの組合せから選択される。遺伝子の不活性化の更なる特定の組合せにより、OSCは分化能力がより更に限定されて、特定の細胞系列の費用対効果の高い生産が可能となる。また、より特定の実施形態では、OSCは、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現及び少なくとも1種のMD系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されており、それによって、ED限定OSCが提供される。本方法の別の特定の実施形態では、前記OSCは、肝臓特異的であり、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現、少なくとも1種のMD系列指定因子遺伝子の発現、及びED細胞の非肝臓前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。本方法の別の特定の実施形態では、前記OSCは、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現及び少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。本方法の更なる特定の実施形態では、前記OSCは、骨格筋特異的であり、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現、少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子の発現、及びMD細胞の非骨格筋前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。本方法の別の特定の実施形態では、前記OSCは、心臓特異的であり、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現、少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子の発現、及びMD細胞の非心臓前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。本方法の別の特定の実施形態では、前記OSCは、脂肪細胞特異的であり、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現、少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子の発現、及びMD細胞の非脂肪細胞の前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子が不活性化されている。本方法の別の特定の実施形態では、前記OSCは、皮膚(ケラチノサイト)特異的であり、少なくとも1種のMED系列指定因子遺伝子の発現(若しくは少なくとも1種のMD系列指定因子及び少なくとも1種のED系列指定因子)、並びに/又はNE細胞の非皮膚前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。
更に、食料品を生産する方法では、少なくとも1種のOSCは、骨格筋、心臓、肝細胞、線維芽細胞、赤血球、ケラチノサイト、若しくは脂肪細胞特異的OSC、又はそれらの組合せであり、これにより、家畜からの肉(派生)製品の組成及び官能特性を模倣する複雑な食料品を再現することが可能となる。
本発明の別の目的は、NE、MD、ED又はMED系列指定因子遺伝子の群から選択される少なくとも2種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている非ヒトOSCに関する。
本発明の更なる目的は、少なくとも1種の非ヒト動物細胞を含む食料品であって、NE、MED、MD、又はED系列指定因子遺伝子の群から選択される少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が少なくとも1種の挿入及び/又は欠失を遺伝子編集システムを用いて生成させることにより不活性化されている、食料品に関する。この食料品は、世界の食糧供給への高まる懸念に対して価値ある持続可能な解決策を提供すると同時に、現在の実験室培養肉の欠点を示さない(例えば、高い費用、低収量、又はGMOに対しては、遺伝的不安定性、外来DNAの伝播リスク)。
脊椎動物における神経外胚葉(NE)、中内胚葉(MED)、中胚葉(MD)及び内胚葉(ED)系列又は細胞型へのPSCの分化経路の図である。1:NE系列への分化を支配する遺伝子のセット;2:MED系列への分化を支配する遺伝子のセット;3:MED系列細胞からED系列細胞への分化を支配する遺伝子のセット;4:MED系列細胞からMD系列細胞への分化を支配する遺伝子のセット;5、6、7:それぞれ後期NE、ED及びMD系列細胞への分化を支配する遺伝子のセット。 初期系列(NE、MD、ED)限定寡能性幹細胞(OSC)を得るための遺伝子編集戦略の図である。OSCは、いくつかの分化経路が系列指定因子遺伝子の特異的不活性化、又はそれらの組合せによって妨げられる自己複製幹細胞である。A)MD限定OSCを得るための本発明による遺伝子編集戦略の例:少なくとも1種のNE及び少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子が不活性化されている。B)NE限定OSCを得るための本発明による遺伝子編集戦略の例:少なくとも1種のED l及び少なくとも1種のMD系列指定因子遺伝子の遺伝子が不活性化されている。C)NE限定OSCを得るための本発明による代替の遺伝子編集戦略の例:少なくとも1種のMED系列指定因子遺伝子が不活性化されている。D)ED限定OSCを得るための本発明による遺伝子編集戦略の例:少なくとも1種のMD及び少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の遺伝子が不活性化されている。系列指定因子ノックアウト(ko)の生成順序は、単に示しただけにすぎないものである。図1及び3)中の進入禁止標識は、OSCにおける系列指定因子koによって妨げられる分化経路を示す。EDMD OSC:分化能力が、ED、MD系列及びその派生細胞に限定されるOSC。NEMD OSC:分化能力が、NE、MD系列及びその派生細胞に限定されるOSC。NEED OSC:分化能力が、NE、ED系列及びその派生細胞に限定されるOSC。NE OSC:分化能力が、NE系列及びその派生細胞に限定されるOSC。MD OSC:分化能力が、MD系列及びその派生細胞に限定されるOSC。ED OSC:分化能力が、ED系列及びその派生細胞に限定されるOSC。 後期系列限定OSCを得るための遺伝子編集戦略の例の図であり、例えば、例は以下のようである:A)皮膚OSC:いくつかのNE非皮膚遺伝子指定因子がNE OSCにおけるノックアウト(ko)によって不活性化される;B)肝臓OSC:いくつかのED非肝臓組織遺伝子の指定因子がED OSCにおけるkoによって不活性化される;又はC)心臓OSC:いくつかのMD非心臓組織遺伝子指定因子がMD OSCにおけるkoによって不活性化される。進入禁止標識は、OSCにおいて妨げられる又は妨害される分化経路を示す。koの生成順序は、単に示しただけにすぎないものである。 オルソロガス系列指定因子遺伝子におけるCRISPR編集された挿入及び欠失(インデル)の%の図であり、これらインデルは、編集されたOSCクローン系を生成するのに使用するヒトiPSC(A)及びアヒルESC(B)プールにおいて検出される。sgRNA(Single guide RNA)。 野生型ヒトiPSC(hiPSC)の多系列胚様体(EB)分化の図である。A)哺乳類WTC-11 iPSCから得られたEBの画像。白色バー:200μm。B)EB分化の7日目(D7)でのEBの寸法。C)分化の0日目(D0)及びD7の時点での、逆転写後のリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)によって得られた多能性(PL)、NE、ED、MD及びMED系列特異的転写産物を定量することによって得られた、系列分布の円グラフ。 単一の系列指定因子遺伝子の遺伝子不活性化からもたらされる系列分化バイアスを示す編集されたNEMD、NE、EDMD及びNEEDヒトOSC(hOSC)と比較した野生型hiPSCの14日目のEB分化能力の図である。 単一の系列指定因子遺伝子の遺伝子不活性化からもたらされるケラチノサイト分化バイアスを示すNE及びEDMD hOSCと比較した野生型hiPSCの11日目のケラチノサイト指向性分化能力の図である。柱は、0日目の時点での、野生型対照遺伝子の発現と比較した、ケラチノサイト分化の11日目の時点での、qRT-PCRによって得られた2種のPL遺伝子(NANOG、OCT4)、1種のNE遺伝子(PAX6)、及び2種のケラチノサイト(K)遺伝子(TP63、KRT14)の転写産物を定量することによって得られた、発現倍率変化を表す。 単一のオルソロガス系列指定因子遺伝子の遺伝子不活性化からもたらされる系列分化バイアスを示す編集されたNEMD、EDMD及びNEEDアヒルOSC(dOSC)と比較した野生型dESCの12日目のEB分化能力の図である。分化の12日目の時点での、qRT-PCRによって得られたアヒルPL、NE、ED、及びMD系列特異的転写産物を定量することによって得られた、系列分布の円グラフ。 2種のオルソロガス系列指定因子遺伝子:Pax6(NE)及びGsc(MED)の同時遺伝子不活性化からもたらされる皮膚分化バイアスを示すケラチノサイトdOSCと比較した野生型dESCの16日目のケラチノサイト指向性分化能力の図である。柱は、0日目の時点での、野生型対照遺伝子の発現と比較した、2種のPL遺伝子(Nanog、Oct4)、2種のNE遺伝子(En1、Otx2)、及び2種のK遺伝子(Tp63、Krt14)のqRT-PCR定量によって得られた、発現倍率変化を表す。 OSCを使用した食料品を生産する方法の一実施形態の例の図である。
本発明は、とりわけ、少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されているOSCに由来したインビトロ分化非ヒト動物細胞を含む食料品を生産する方法に関する。実際、本発明者らは、初期及び/又は後期分化ステップでPSC、複能性細胞又は全能性細胞の分化能を限定することによって食料品関連細胞型への分化バイアスを導入することで、未改変PSCよりもより効率的でより均質に分化し、外因性因子の必要量が少ないOSCを得られることを見出した。これは、前記PSCにおける初期及び/又は後期関連系列指定因子遺伝子の安定的な不活性化によって得られる。更に、前記OSCは、外因性遺伝物質を含まず、系列指定因子遺伝子の強制異所性発現のために操作された遺伝子組換えPSC系よりも安定な細胞系を構成する。
定義
本明細書で使用する場合、「多能性幹細胞」(PSC)は、分裂による自己複製する能力、並びに3種の一次生殖細胞層(すなわち、ED、NE、及びMD)及びそれらの派生細胞へ発達する能力を有する細胞に関する。脊椎動物では、出生時にその動物を構成するほぼ全ての細胞型は、哺乳類の胚盤胞段階着床前胚の場合は内部細胞塊(ICM)又は卵生脊椎動物(鳥類、爬虫類、両生類、魚類)の場合は胚盤葉(BDM)と呼ばれる一過性の多能性細胞のサブセットに由来する。哺乳類ICM細胞の単離及び培養は、自己複製及び多能性能力を示す胚性幹細胞(ESC)系を生成することを可能とする(Evans及びKaufman、1981、Thomsonら、1998)。同様に、BDM細胞はまた、初期卵生脊椎動物胚から容易に単離して、多能性ESC系を作製できる。PSCの代替的な供給源は、体細胞における多能性関連転写因子の異所性発現(いわゆる人工PSC若しくはiPSCの生成、例えば、Takahashi及びYamanaka、2006参照)又は体細胞核の除核卵母細胞への注入で得られたクローン胚からのntESC生成(Campbellら、1996)のいずれかによるリプログラミング過程を経た動物体細胞組織である。近年、ESC、iPSC及びntESC系は、食料品生産に関連する広範囲の脊椎動物の種から派生することに成功している。また、本明細書で使用する場合、多能性幹細胞(PSC)という用語は、食品生産に関連するあらゆる脊椎動物からのあらゆるESC、ntESC、iPSC、若しくはICMから単離された割球、又はそれらの組合せであって、3種の胚性胚葉の派生細胞を形成する能力を保持しているものを指す。したがって、本発明に適したPSCは、非ヒト動物細胞である。
適切なPSCは、ヒト又は動物の栄養摂取において一般的に消費されるあらゆる動物種に由来するPSCを包含する。いくつかの例では、いずれにしても本発明により前記動物を犠牲にすることが避けられるため、適切なPSCはまた、例えば、経済的な懸念、文化的習慣又は種の希少性のために別の方法ではヒト又は動物の栄養摂取のための肉の供給源としてはみなされないであろうあらゆる動物種を含むことができる。また、前記種は、あらゆる非ヒト脊椎動物、昆虫、甲殻類又は軟体動物、特に、ヒト又は動物の栄養摂取で一般的に消費されるものを含む。「軟体動物」は、より特には、タコ、イカ、コウイカ、ホタテガイ又はカタツムリを指すが、これらに限定されない。「昆虫」は、より特には、カブトムシ(又は甲虫目の他の昆虫)、チョウ又はガ(又は鱗翅目の他の昆虫)、アリ、スズメバチ又はミツバチ(又は膜翅目の他の昆虫)、バッタ、イナゴ又はコオロギ(又は直翅目の他の昆虫)、セミ、ヨコバイ又はウンカ(又は半翅目の他の昆虫)を指すが、これらに限定されない。「甲殻類」は、より特には、小エビ、エビ、カニ、ザリガニ、又はロブスターを指すが、これらに限定されない。「非ヒト脊椎動物」は、あらゆる非ヒト哺乳類、魚類、両生類、爬虫類又は鳥類、より特には、ヒト又は動物の栄養摂取で一般的に消費されるものを含む。また、特に好ましい鳥類は、肉又は卵が消費されるものであり;更により特には、前記鳥類は、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウ、ハト、ウズラ、ひなバト又は更にはキジ、エミュー、ハクチョウ、ダチョウ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、及びヒクイドリから選択されるが、これらに限定されない家禽である。特に好ましい哺乳類は、その肉のために飼育された家畜、例えば、バイソン、シカ、カンガルー、ウマ、ロバ、畜牛、コブウシ、ヤク、バッファロー、ヒツジ、ヤギ、トナカイ、ブタ、イノシシ、ウサギ、モルモット、ラマである。非常に特定の実施形態では、PSCは、ウサギ、モルモット、ウシ、ヒトコブラクダ、ヤギ、ウマ、ブタ、ニワトリ、アヒル、ゴウシュウマダイ、ヨーロピアンシーバス、大西洋タラ及びターボットから選択される脊椎動物のいずれかに由来する。
「寡能性幹細胞」(OSC)は、PSCのように無限に自己複製する能力を保持する、少数の細胞型へ分化するように方向付けられた前駆細胞として定義される。本発明による食料品を生産するために使用されるOSCは、分化能力が特定の胚性胚葉、器官前駆細胞及び/又は特定の組織に限定されている、上で定義されるPSCから派生する。したがって、MD特異的OSCは、分化能力がMD系列の細胞に限定される、又は少なくともそれへのバイアスが強くかかっているOSCであり、該細胞は、前記MD特異的OSCの分化によって得られる細胞のより大きな部分、又は更には大部分を構成する。換言すれば、前記細胞は、PSCと比較して、NE及び/又はED系列の細胞へと分化する能力を失っているか、又はそれへ分化する傾向が低い。また、ED特異的OSCは、分化能力がED系列の細胞に限定される、又は少なくともそれへのバイアスが強くかかっているOSCであり、該細胞は、前記ED特異的OSCの分化によって得られる細胞のより大きな部分、又は更には大部分を構成する。換言すれば、前記細胞は、PSCと比較して、NE及び/又はMD系列の細胞へと分化する能力を失っているか、又はそれへ分化する傾向が低い。また、NE特異的OSCは、分化能力がNE系列の細胞に限定される、又は少なくともそれへのバイアスが強くかかっているOSCであり、該細胞は、前記NE特異的OSCの分化によって得られる細胞のより大きな部分、又は更には大部分を構成する。換言すれば、前記OSCは、PSCと比較して、MD及び/又はED系列から選択される細胞系列へと分化する能力を失っているか、又はそれへ分化する傾向が低い。上述したように、OSCは初期系列細胞型への分化に限定され得;OSCはまた、特定の器官の細胞へ優先的に分化するように分化能力が限定され得:例えば、肝臓特異的OSC(又は肝臓OSC)は、分化能力が肝臓細胞又はその前駆細胞に限定されるOSCであり;骨格筋特異的OSC(又は骨格筋OSC)は、分化能力が骨格筋細胞又はその前駆細胞に限定されるOSCであり;心臓特異的OSC(又は心臓OSC)は、分化能力が心臓細胞又はその前駆細胞に限定されるOSCであり;皮膚特異的OSC(又は皮膚OSC)は、分化能力がケラチノサイト又はその前駆細胞に限定されるOSCであり;脂肪細胞特異的OSC(又は脂肪OSC)は、分化能力が脂肪細胞の細胞又はその前駆細胞に限定されるOSCである。当然の帰結として、単一又は少数の系列に限定される本発明のOSCは、同じ分化プロトコールに供した非改変幹細胞と比較して、いずれかの分化プロトコール(例えば、EB又は指向性分化)に供した場合に、前記系列の細胞が少なくとも有意に富む細胞集団へ分化するOSCを指す。好ましい実施形態では、前記集団は、同じ分化プロトコールに供した非改変幹細胞と比較して、前記系列の細胞が少なくとも10%、20%、30%、40%、又は更には少なくとも50%増加する。前記系列は、当技術分野で知られているいずれかの方法によって、例えば、転写(qRT-PCR若しくはいずれかのRNA定量方法)又は翻訳レベル(いずれかのタンパク質定量方法若しくは細胞選別方法)で分化系列に対するマーカー遺伝子の発現を定量することによって決めることができる。
MD、ED及び外胚葉は、初期胚の3種の一次胚葉である。MEDは、MD又はED細胞へ分化する組織層の細胞を指す。MD系列の細胞は、心臓及び骨格筋細胞、平滑筋細胞、非上皮血液細胞並びに腎臓細胞を含む。また、MD特異的OSCは、心臓及び/若しくは骨格筋細胞、平滑筋細胞、非上皮血液細胞並びに/又は腎臓細胞への分化へのバイアスがかかっている。EDは、分化して、内部の裏打ち、消化腺及び上皮を形成する(例えば、胃腸管及び気道、肝臓、膵臓など)。また、ED特異的OSCは、例えば、消化管又は気道、及び肝臓などの上皮細胞へのバイアスがかかっている。外胚葉は分化して、上皮(表皮)組織(例えば、皮膚、口の裏打ち、肛門、鼻孔、汗腺、髪及び爪、並びに歯のエナメル質)と、神経組織(中枢神経系及び末梢神経)とを形成する。外胚葉はNEから派生し、これは、上で述べたように神経系及び上皮/表皮組織の発生における第1のステップである。また、表皮特異的OSCは、皮膚細胞又は鱗屑細胞へのバイアスがかかっており、より好ましくは、皮膚細胞及び神経外胚葉特異的OSCは、神経細胞及び上皮/表皮細胞である外胚葉系列へのバイアスがかかっている。
本明細書で使用する場合、用語「系列指定因子遺伝子」は、特定の発生プログラムを実行するいくつかの下流の標的遺伝子のセットを直接的又は間接的に活性化又は抑制するのに関与する転写因子をコードする遺伝子を指す。胚発生の様々な段階への進行は、組織間、細胞間相互作用及び周辺の組織/細胞から分泌される可溶性シグナル分子(例えば、増殖因子)の活性によって引き起こされるこれらの発生マスター遺伝子の組織化された活性化に依存している。注目すべきことに、胚発生を支配する遺伝経路及び形態形成機構が高レベルに保存されていることが魚類からヒトの脊椎動物で観察されている。実際、脊椎動物の体制の一般的な構成、器官、細胞型は非常に類似している。また、脊椎動物、軟体動物、昆虫及び甲殻類の種は全て、三胚葉性であり、このことは、これらの種は全て外胚葉、MD及びEDを含み、これらの種でOSCを生成することが可能であることを意味することに留意されたい。したがって、系列指定因子遺伝子に対するオルソログは、食料品関連種に存在し、例えば、Ensembl(<http://www.ensembl.org/index.html>)のようなゲノムデータベースで容易に検索できる。また、表1~4又はこの文献全体に列挙されている系列指定因子遺伝子は、H.サピエンス(H.sapiens)における名前に従って示しているが、あらゆる食料品関連種におけるいずれかのオルソログ遺伝子を指すと意図される。特定の実施形態では、「系列指定因子遺伝子」に対するオルソログは、H.サピエンスでの対応するタンパク質とそのアミノ酸配列において、配列が少なくとも30%、好ましくは30%超、好ましくは31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、又は更に39%の相同性を共有するタンパク質をコードし、好ましくは、前記配列は、少なくとも40%、好ましくは40%超、好ましくは41%、より好ましくは42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、更により好ましくは49%の相同性を共有し、好ましくは、前記配列は、少なくとも50%、好ましくは50%超、好ましくは51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、更により好ましくは59%の相同性を共有し、好ましくは、前記配列は、少なくとも60%、好ましくは60%超、好ましくは61%、62%、より好ましくは63%、64%、65%、66%、67%、68%、更により好ましくは69%の相同性を共有し、好ましくは、前記配列は、少なくとも70%、好ましくは70%超、好ましくは71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、更により好ましくは79%の相同性を共有し、好ましくは、前記配列は、少なくとも80%、好ましくは80%超、好ましくは81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、更により好ましくは89%の相同性を共有し、好ましくは、前記配列は、少なくとも90%、好ましくは90%超、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、更により好ましくは99%超の相同性を共有する。別の特定の実施形態では、「系列指定因子遺伝子」に対するオルソログは、H.サピエンスでの対応するタンパク質の機能性ドメインとそのアミノ酸配列において、配列が少なくとも50%、好ましくは50%超、好ましくは51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、更により好ましくは59%の相同性を共有するタンパク質をコードし、好ましくは、前記配列は、少なくとも60%、好ましくは60%超、好ましくは61%、62%、より好ましくは63%、64%、65%、66%、67%、68%、更により好ましくは69%の相同性を共有し、好ましくは、前記配列は、少なくとも70%、少なくとも70%の相同性、好ましくは70%超、好ましくは71%、より好ましくは72%、73%、74%、75%、76%、77%、77%、79%、更により好ましくは80%超、好ましくは81%、より好ましくは82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、更により好ましくは100%の相同性を共有する。
Figure 2024524626000002
Figure 2024524626000003
Figure 2024524626000004
Figure 2024524626000005

「に限定される」又は「へのバイアスがかかっている」という用語は、OSCに関連する場合、互換的に使用され、前記OSCは、より効率的に、均一に、主に及び/又は自発的に、特定の系列又は分化段階へ分化することを意味する。
「インビトロ肉」、「実験室培養肉」、「合成肉」という用語は、本明細書では互換的に使用され、再構成されたか又はされていない、本明細書に記載のOSCの培養、分化及び/又は加工から得られる細胞、細胞塊、組織を指す。
「食料品」は、細かく刻むこと、乾燥、調理、仕上げ、水で戻すこと、漬込み又は燻しに適合した、分化OSCの加工から得られるあらゆる生鮮製品、乾燥製品、凍結製品、粉末、ペースト、押出し成形品、液状製品又は固形製品を包含する。「食料品」はまた、例えば、スープ、ソース、シチュー、トッピング、調味料、ソーセージ、挽き肉、肉だんご、ナゲット、スプレッド、パテ、ピューレ、飲料又はシェーク、すり身、バー、ビスケット、乾燥顆粒、錠剤、カプセル、粉末として定義される食品製品も包含する。特定の実施形態では、食料品はまた、例えば、食品サプリメントとして使用されるシェーク、粉末、バーも含む。
寡能性幹細胞
本発明者らは、少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されているPSC、複能性又は全能性細胞が、未改変PSC、複能性又は全能性細胞に対してインビトロでより効率的に、より均質に及び/又はより少ない外因性因子の必要性で分化する寡能性幹細胞(OSC)をもたらし、それによってインビトロ分化非ヒト動物細胞を含む食料品を生産するために有利なツールを構成することを発見した。
系列指定因子遺伝子の差次的な活性化は、一次胚葉、次に特定の分化細胞型への特定の発生プログラムを実行する下流の標的遺伝子の大規模なセットを直接的又は間接的に活性化/抑制するのに関与する。系列指定因子遺伝子は、転写因子の系列指定因子遺伝子セット1の発現がNEを指定するのに対して系列指定因子遺伝子セット2がMED(すなわちMD及びED)を指定するなどの器官形成が完了するまでの遺伝的スイッチを構成する(図1)。
したがって、本発明の一目的は、初期胚性胚葉(ED、MD、MED及びNE)のうちの1種の細胞を指定及び分化するのに必要な少なくとも1種の初期系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されているOSCに関する。より特には、前記目的は、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3、ZIC1、TBXT、TBX6、MSGN1、KLF6、FOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、HNF4A、GSC、MIXL1及びEOMES又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されているOSCに関する。更に特には、前記目的は、PAX6、SOX1、TBXT、TBX6、FOXA2、SOX17、GSC、MIXL1及びEOMES又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されているOSCに関する。本発明のより特定の目的は、ED、MD、MED又はNE系列指定因子遺伝子の群から選択される少なくとも2種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されているOSCである。その点において、前記目的は、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3、ZIC1、TBXT、TBX6、MSGN1、KLF6、FOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、HNF4A、GSC、MIXL1及びEOMESから選択される少なくとも2種の遺伝子の発現が不活性化されているOSCに関する。
一実施形態では、前記OSCは、少なくとも1種の初期NE系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。特定の実施形態では、前記少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子は、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3及びZIC1、又はそれらの組合せから選択される。得られたOSCは、有利なことに、MD及び/又はED系列の細胞への分化に限定される。
別の実施形態では、前記OSCは、少なくとも1種の初期MD系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。特定の実施形態では、前記少なくとも1種のMD系列指定因子遺伝子は、TBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6、又はそれらの組合せから選択される。得られたOSCは、有利なことに、NE及び/又はED系列の細胞への分化に限定される。
別の実施形態では、前記OSCは、少なくとも1種の初期ED系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。更により特定の実施形態では、前記少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子は、FOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、及びHNF4A、又はそれらの組合せから選択される。得られたOSCは、有利なことに、NE及び/又はMD系列の細胞への分化に限定される。
更なる実施形態では、前記OSCは、少なくとも1種のMED系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。更により特定の実施形態では、前記少なくとも1種のMED系列指定因子遺伝子は、GSC、MIXL1若しくはEOMES、又はそれらの組合せから選択される。得られたOSCは、有利なことに、NE系列の細胞への分化に限定される。
NE系列に限定される又はそれへのバイアスがかかっているOSC:
特定の実施形態では、前記OSCは、少なくとも1種のMED系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。更により特定の実施形態では、前記少なくとも1種のMED系列指定因子遺伝子は、GSC、MIXL1及びEOMES、又はそれらの組合せから選択される。より特定の実施形態では、前記OSCは、GSC、MIXL1及びEOMESの発現が不活性化されている。少なくとも1種のMED系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されているこれらのOSCは、有利なことに、NE系列の細胞への分化に限定される。より特定の実施形態では、OSCは、少なくとも1種のMED系列指定因子遺伝子及び少なくとも1種の後期神経系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。前記OSCは、有利なことに、表皮(皮膚)系列に限定される、又はそれへのバイアスがかかっている。より特定の実施形態では、表皮系列に限定される前記OSCにおいて、発現が不活性化されている少なくとも1種のMED系列指定因子遺伝子は、GSC、MIXL1及びEOMES、又はそれらの組合せから選択される。非常に特定の実施形態では、表皮系列に限定される前記OSCは、GSC、MIXL1及びEOMESの発現が不活性化されている。別の特定の実施形態では、表皮(皮膚)系列に限定される前記OSCにおいて、発現が不活性化されている少なくとも1種の神経系列指定因子遺伝子は、NEUROD2、SOX10、PAX3及びPAX6、又はそれらの組合せから選択される。したがって、特定の実施形態では、表皮系列OSCに限定される前記OSCは、GSC、MIXL1及びEOMESから選択される少なくとも1種の遺伝子並びにNEUROD2、SOX10、PAX3及びPAX6から選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。非常に特定の実施形態では、表皮系列に限定される前記OSCは、NEUROD2、SOX10、PAX3及びPAX6の発現が不活性化されている。更なる特定の実施形態では、表皮(皮膚)系列に限定される前記OSCは、GSC、MIXL1、EOMES、NEUROD2、SOX10、PAX3及びPAX6の発現が不活性化されている。
別の特定の実施形態では、前記OSCは、少なくとも1種の初期MD系列指定因子遺伝子及び少なくとも1種の初期ED系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。次いで、前記OSCはまた、NE系列に限定される、又はそれへのバイアスがかかっている。少なくとも1種の後期神経系列の発現が更に不活性化され、それによって、前記OSCは、有利なことに、表皮(皮膚)系列に限定され得る、又はそれへのバイアスがかかり得る。より特定の実施形態では、表皮系列に限定される前記OSCにおいて、発現が不活性化されている少なくとも1種の初期MD系列指定因子遺伝子は、TBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6、又はそれらの組合せから選択される。更なる特定の実施形態では、表皮系列に限定される前記OSCは、TBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6の発現が不活性化されている。別の特定の実施形態では、表皮系列に限定される前記OSCにおいて、発現が不活性化されている少なくとも1種の初期ED系列指定因子遺伝子は、FOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、及びHNF4A、又はそれらの組合せから選択される。更なる特定の実施形態では、表皮系列に限定される前記OSCは、FOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、及びHNF4Aの発現が不活性化されている。別の特定の実施形態では、表皮(皮膚)系列に限定される前記OSCにおいて、発現が不活性化されている少なくとも1種の神経系列指定因子遺伝子は、NEUROD2、SOX10、PAX3及びPAX6、又はそれらの組合せから選択される。非常に特定の実施形態では、表皮系列に限定される前記OSCは、NEUROD2、SOX10及びPAX3の発現が不活性化されている。更なる特定の実施形態では、表皮系列に限定される前記OSCは、NEUROD2、SOX10、PAX6及びPAX3の発現が不活性化されている。更により特定の実施形態では、表皮(皮膚)系列に限定される前記OSCは、TBXT、TBX6、MSGN1、KLF6、FOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、HNF4A、NEUROD2、SOX10及びPAX3の発現が不活性化されている。別の特定の実施形態では、表皮(皮膚)系列に限定される前記OSCは、TBXT、TBX6、MSGN1、KLF6、FOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、HNF4A、NEUROD2、SOX10、PAX6及びPAX3の発現が不活性化されている。
別の特定の実施形態では、表皮(皮膚)系列に限定されるOSCは、少なくとも1種の神経系列指定因子が不活性化されているOSCであり得る。より特定の実施形態では、前記神経系列指定因子は、NEUROD2、SOX10、PAX6及びPAX3、又はそれらの組合せから選択される。
実際、NE系列又は表皮系列に限定される又はそれへのバイアスがかかっている前記OSCは、自然にNE又は表皮系列細胞へ分化する傾向があり、したがって、NE又は表皮系列の細胞への細胞分化を促進するための特定の因子の必要性が少ない(通常のインビトロ分化プロトコールにおけるよりも)又は必要性がなく、このことは、これらの細胞を使用して食料品を生産することを考えたとき特に有利である。一実施形態では、前記NE系列若しくは表皮系列に限定される又はそれへのバイアスがかかっているOSCは、NE又は表皮系列の細胞へ分化するための外因性因子の必要量が1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9、1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/100、1/1000減少するか、又は必要ですらない。
ED系列に限定される又はそれへのバイアスがかかっているOSC:
特定の実施形態では、前記OSCは、少なくとも1種の初期NE系列指定因子遺伝子の発現及び少なくとも1種のMD系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。前記OSCは、有利なことに、ED系列に限定される、又はそれへのバイアスがかかっている。より特定の実施形態では、ED系列に限定される前記OSCにおいて、発現が不活性化されている少なくとも1種の初期NE系列指定因子遺伝子は、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3及びZIC1、又はそれらの組合せから選択される。更により特定の実施形態では、ED系列に限定される前記OSCは、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3及びZIC1の発現が不活性化されている。別の特定の実施形態では、ED系列に限定される前記OSCにおいて、発現が不活性化されている少なくとも1種のMD系列指定因子は、TBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6、又はそれらの組合せから選択される。更により特定の実施形態では、ED系列に限定される前記OSCは、TBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6の発現が不活性化されている。更なる特定の実施形態では、ED系列に限定される前記OSCは、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3及びZIC1、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の初期NE系列指定因子遺伝子の発現、並びにTBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種のMD系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。非常に特定の実施形態では、ED系列に限定される前記OSCは、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3、ZIC1、TBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6の発現が不活性化されている。ED系列に限定される好ましいOSCは、少なくともPAX6の発現、並びにTBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。ED系列に限定される別の好ましいOSCは、少なくともSOX1の発現、並びにTBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。ED系列に限定される別の好ましいOSCは、少なくともZNF521の発現、並びにTBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。ED系列に限定される別の好ましいOSCは、少なくともSOX2の発現、並びにTBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6から選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。ED系列に限定される別の好ましいOSCは、少なくともSOX3の発現、並びにTBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。ED系列に限定される別の好ましいOSCは、少なくともZIC1の発現、並びにTBXT、TBX6、MSGN1及びKLF6、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。
ED系列に限定される前記OSCは、ED細胞への分化に、ED特異的因子の必要性が少ない(通常のインビトロ分化プロトコールにおけるよりも)又は必要性がなく、このことは、これらの細胞を使用して食料品を生産することを考えたとき特に有利である。特に、ED系列に限定される前記OSCは、特定の分化細胞、例えば、初期胚体外ED、心臓誘導ED、肝臓、膵臓、中腸及び後腸、幽門、十二指腸、膵臓、前方前腸ED、肺、甲状腺、胸腺、中/後腸、腸上皮細胞、又は原則としていずれかの他のED派生系列への分化へのバイアスがかかっている。
特定の実施形態では、上記のようなED系列に限定されるOSCは、SOX7、GATA4、GATA5、GATA6、PDX1、NKX2.1、FOXN1及びCDX2、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が更に不活性化されている。
非常に特定の実施形態では、段落0033~0034(paragraphs [0045-0046])のいずれかに記載されるED系列に限定されるOSCは、ED細胞の非肝臓系列細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が更に不活性化されている。更により特定の実施形態では、前記少なくとも1種の遺伝子は、SOX7、GATA4、GATA5、GATA6、PDX1、NKX2.1、FOXN1及びCDX2又はそれらの組合せから選択される。更なる特定の実施形態では、ED系列に限定される前記OSCは、SOX7の発現と、GATA4、GATA5及びGATA6又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現とが不活性化されており、それによって、肝細胞への分化に限定されるOSCが提供される。更なる特定の実施形態では、ED系列に限定される前記OSCは、少なくともSOX7の発現と、PDX1、NKX2.1、FOXN1及びCDX2、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現とが不活性化されており、それによって、肝細胞への分化に限定されるOSCが提供される。更なる特定の実施形態では、ED系列に限定される前記OSCは、SOX7、GATA4、GATA5、GATA6、FOXA3、PDX1、NKX2.1、FOXN1及びCDX2の発現が不活性化されており、それによって、肝細胞への分化に限定されるOSCが提供される。
別の特定の実施形態では、肝細胞への分化に限定されるOSCは、ED細胞の非肝臓系列細胞の神経系列指定因子への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子が不活性化されているOSCであり得る。より特定の実施形態では、前記少なくとも1種の遺伝子は、SOX7、GATA4、GATA5、GATA6、PDX1、NKX2.1、FOXN1及びCDX2又はそれらの組合せから選択される。
MD系列に限定される又はそれへのバイアスがかかっているOSC:
別の特定の実施形態では、前記OSCは、少なくとも1種の初期NE系列指定因子遺伝子の発現及び少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。前記OSCは、有利なことに、MD系列に限定される、又はそれへのバイアスがかかっている。より特定の実施形態では、前記MD系列に限定されるOSCにおいて、発現が不活性化されている少なくとも1種の初期NE系列指定因子遺伝子は、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3及びZIC1、又はそれらの組合せから選択される。更により特定の実施形態では、MD系列に限定される前記OSCは、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3及びZIC1の発現が不活性化されている。別の特定の実施形態では、MD系列に限定される前記OSCにおいて、発現が不活性化されている少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子は、FOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、及びHNF4A、又はそれらの組合せから選択される。更により特定の実施形態では、MD系列に限定される前記OSCは、FOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、及びHNF4Aの発現が不活性化されている。別の特定の実施形態では、MD系列に限定される前記OSCは、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3及びZIC1、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の初期NE系列指定因子遺伝子の発現、並びにFOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、及びHNF4A、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。MD系列に限定される好ましいOSCは、少なくともPAX6の発現、並びにFOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17及びHNF4A、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。MD系列に限定される別の好ましいOSCは、少なくともSOX1の発現、並びにFOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17及びHNF4A、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。MD系列に限定される別の好ましいOSCは、少なくともZNF521の発現、並びにFOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17及びHNF4A、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。MD系列に限定される別の好ましいOSCは、少なくともSOX2の発現、並びにFOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17及びHNF4A、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。MD系列に限定される別の好ましいOSCは、少なくともSOX3の発現、並びにFOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17及びHNF4A、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。MD系列に限定される別の好ましいOSCは、少なくともZIC1の発現、並びにFOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17及びHNF4A、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている。
前記MD系列に限定されるOSCは、MD細胞への分化に、MD特異的因子の必要性が少ない(通常のインビトロ分化プロトコールにおけるよりも)又は必要性がなく、このことは、これらの細胞を使用して食料品を生産することを考えたとき特に有利である。特に、MD系列に限定される前記OSCは、特定の分化細胞、例えば、内皮系列、腎臓系列、造血系列(例えば、赤血球として)、骨格筋系列(骨格筋細胞として)、心臓系列(心筋細胞として)、骨系列、軟骨系列、脂肪系列(脂肪細胞として)、線維芽細胞系列の細胞への分化へのバイアスがかかっている。
特定の実施形態では、上記のようなMD系列に限定されるOSCは、SOX18、OSR1、EYA1、RUNX1、TAL1、MESP1、NKX2.5、ISL1、PAX7、MYOD1、MYF5、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、SOX9、PPARG、及びCEBPA、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が更に不活性化されている。
別の特定の実施形態では、段落0038~0039(paragraphs [0049-0050])に記載されるMD系列に限定される前記OSCが、MD細胞の非心臓前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されていることによって、心筋細胞への分化に限定される又はそれへの分化へのバイアスがかかっている心臓特異的OSCが提供される。更により特定の実施形態では、前記心臓特異的OSCが、SOX18、OSR1、EYA1、RUNX1、TAL1、PAX7、MYOD1、MYF5、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、SOX9、PPARG、及びCEBPA、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されていることによって、心筋細胞への分化に限定される又はそれへの分化へのバイアスがかかっているOSCが提供される。更なる特定の実施形態では、MD系列に限定される前記OSCが、SOX18、OSR1、EYA1、RUNX1、TAL1、PAX7、MYOD1、MYF5、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、SOX9、PPARG、及びCEBPAの発現が不活性化されている心臓特異的OSCであることによって、心筋細胞への分化に限定される又はそれへの分化へのバイアスがかかっているOSCが提供される。
別の特定の実施形態では、心筋細胞への分化に限定されるOSCは、SOX18、OSR1、EYA1、RUNX1、TAL1、PAX7、MYOD1、MYF5、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、SOX9、PPARG、及びCEBPAから選択される少なくとも1種の遺伝子が不活性化されているOSCであり得る。
別の特定の実施形態では、段落[0049~0050]に記載されるMD系列に限定される前記OSCが、MD細胞の非骨格筋前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されていることによって、骨格筋細胞又はその前駆細胞への分化に限定される又はそれへの分化へのバイアスがかかっている骨格筋特異的OSCが提供される。より特定の実施形態では、MD系列に限定される前記OSCが、SOX18、OSR1、EYA1、RUNX1、TAL1、MESP1、NKX2.5、ISL1、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、SOX9、PPARG、及びCEBPA、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されていることによって、骨格筋細胞又はその前駆細胞への分化に限定される又はそれへの分化へのバイアスがかかっているOSCが提供される。更により特定の実施形態では、MD系列に限定される前記OSCが、SOX18、OSR1、EYA1、RUNX1、TAL1、MESP1、NKX2.5、ISL1、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、SOX9、PPARG、及びCEBPAの発現が不活性化されていることによって、骨格筋細胞又はその前駆細胞への分化に限定される又はそれへの分化へのバイアスがかかっているOSCが提供される。
別の特定の実施形態では、骨格筋細胞への分化に限定されるOSCは、SOX18、OSR1、EYA1、RUNX1、TAL1、MESP1、NKX2.5、ISL1、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、SOX9、PPARG、及びCEBPAから選択される少なくとも1種の遺伝子が不活性化されているOSCであり得る。
別の特定の実施形態では、段落[0049~0050]に記載されるMD系列に限定される前記OSCが、MD細胞の非脂肪細胞の前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されていることによって、脂肪細胞への分化に限定される又はそれへの分化へのバイアスがかかっている脂肪細胞特異的OSCが提供される。より特定の実施形態では、MD系列に限定される又はそれへのバイアスがかかっている前記OSCが、SOX18、OSR1、EYA1、RUNX1、TAL1、MESP1、NKX2.5、ISL1、PAX7、MYOD1、MYF5、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、及びSOX9、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されていることによって、脂肪細胞への分化に限定される又はそれへの分化へのバイアスがかかっているOSCが提供される。更により特定の実施形態では、ED系列に限定される前記OSCが、SOX18、OSR1、EYA1、RUNX1、TAL1、MESP1、NKX2.5、ISL1、PAX7、MYOD1、MYF5、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、及びSOX9の発現が不活性化されていることによって、脂肪細胞への分化に限定される又はそれへの分化へのバイアスがかかっているOSCが提供される。
別の特定の実施形態では、脂肪細胞への分化に限定されるOSCは、SOX18、OSR1、EYA1、RUNX1、TAL1、MESP1、NKX2.5、ISL1、PAX7、MYOD1、MYF5、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、及びSOX9から選択される少なくとも1種の遺伝子が不活性化されているOSCであり得る。
別の特定の実施形態では、段落[0049~0050]に記載されるMD系列に限定される前記OSCが、MD細胞の非造血前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されていることによって、造血細胞への分化に限定される又はそれへの分化へのバイアスがかかっている造血細胞特異的OSCが提供される。より特定の実施形態では、MD系列に限定される前記OSCが、SOX18、OSR1、EYA1、MESP1、NKX2.5、ISL1、PAX7、MYOD1、MYF5、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、SOX9、PPARG、及びCEBPA、又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されていることによって、造血細胞への分化に限定される又はそれへの分化へのバイアスがかかっているOSCが提供される。更により特定の実施形態では、MD系列に限定される前記OSCは、SOX18、OSR1、EYA1、MESP1、NKX2.5、ISL1、PAX7、MYOD1、MYF5、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、SOX9、PPARG、及びCEBPAの発現が不活性化されており、それによって、造血細胞への分化に限定されるOSCが提供される。
別の特定の実施形態では、造血細胞への分化に限定されるOSCは、SOX18、OSR1、EYA1、MESP1、NKX2.5、ISL1、PAX7、MYOD1、MYF5、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、SOX9、PPARG、及びCEBPAから選択される少なくとも1種の遺伝子が不活性化されているOSCであり得る。
別の特定の実施形態では、本発明によるOSCは、SOX18、OSR1、EYA1、RUNX1、TAL1、MESP1、NKX2.5、ISL1、PAX7、MYOD、MYF5、RUNX2、KLF2、MSX2、PAX9、NKX3.2、SOX8、SOX9、PPARG(PPARγ)、CEBPA、GATA4、GATA5、GATA6、PDX1、NKX2.1、FOXN1、CDX2、NEUROD2、SOX10、PAX3及びPAX6から選択される少なくとも1種の遺伝子、好ましくは2種の遺伝子の発現が不活性化されている。
食料品を生産する方法
幹細胞は、移植治療、再生医療、及び組織工学の分野で有益なツールと考えられている。幹細胞をインビトロでの肉の生産に使用することは、持続可能性だけでなく動物福祉の観点からも、動物に由来する肉に代わるものと考えられている。いずれにしても、この技術はいまだその揺籃期にあり、高価な組換え分化因子及び多数の増殖培地を可能な限り使用せずに、量を十分に増やした後に所望の細胞型又はその前駆細胞に満足のいく収量で分化することができる安定な細胞の使用が必要とされている。本発明者らは、上記のようなOSCは、インビトロ肉の生産及びそれから派生する食料品に特に適していることを発見した。
したがって、本発明の1つの目的は、少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている少なくとも1種のOSCに由来したインビトロ分化非ヒト動物細胞を加工するステップを含む食料品を生産する方法に関する。
実際、当技術分野で開発された戦略のほとんどは、系列指定因子遺伝子を発現する誘導可能な導入遺伝子を幹細胞に組み込んで、強制発現させ、前記導入遺伝子に支配される系列への分化を引き起こすことに存する。かかる戦略により、導入遺伝子を持つ遺伝子改変された細胞が得られるが、該導入遺伝子は、制御された発現が時間の経過とともに失われる可能性があり(主に進行性のエピジェネティックなサイレンシングによって引き起こされる)、ヒトの健康に有害な可能性がある世界中のいくつかの食糧庁によって禁止されている抗生物質及び化学物質のような誘導物質の使用を必要とする。以下に説明するように、本発明のOSCは導入遺伝子の挿入を全く含まず、これは、遺伝的安定性及び食品産業での使用の安全性の点で特に有利である。
少なくとも1種のOSCに由来するインビトロ分化非ヒト動物細胞を加工するステップは、前記細胞を収集すること、任意に、細胞を洗浄する(又はすすぐ)こと、前記細胞を他の食品原料と混合すること、及び/又は通常の消費形態で食料品を提供することを含み得る。収集することは、例えば、細胞培養の容量及び条件、細胞の特徴、収集した細胞の想定される用途に応じて、例えば、遠心分離、ろ過若しくは沈殿(すなわち、凝集、沈降若しくはデカンテーション)、又はそれらの組合せといった細胞培養懸濁液から細胞を回収する当技術分野で知られているいずれかの方法によって行うことができる。例えば、細胞の沈殿は、細胞懸濁液にカルシウム塩を添加することによって実施できる。カルシウム塩は、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコノ乳酸カルシウム、リン酸カルシウムからなる群から選択され得るが、これらに限定されない。好ましくは、塩化カルシウムが使用される。塩化カルシウムの最終濃度は、10~500mg/L、好ましくは50~300mg/L、より好ましくは50mg/Lの範囲である。別の例では、培養容量が適合する限り、細胞培養物は、例えば、生細胞が次の加工するステップを必要とするか否か、又は後で加工する細胞の所望の圧縮性に合わせた好都合な速度で遠心分離できる。任意に、収集した細胞は、例えば、新鮮な培地や生理食塩水を用いて洗浄又はすすいだ後に再遠心分離することができる。残余の培養培地配合物を減少又は除去するのに適した他のあらゆる手段を代替的又は追加的に使用できる(例えば、ろ過、透析、沈殿・・・)。
好ましくは、前記通常の消費形態は、従来の肉又は肉ベース製品(すなわち、飼育された動物からの肉を含み、培養細胞からの肉を含まない)の外見及び/又は更には官能特性を模倣する。その点において、前記食料品は、飼われた動物からの特定の組織を模倣する相対比である、本明細書に記載のいくつかのOSCの混合物又はこれらのOSCからの分化細胞の混合物に基づくことができる。例えば、前記食料品は、脂肪細胞、骨格筋細胞、皮膚細胞(ケラチノサイト)、神経細胞及び/又は軟骨細胞の特定の混合物を、例えば、牛肉又は鳥肉の特定のカットのものに対応する相対比で含み得る。したがって、好ましくは、本発明による食料品は、OSC若しくはこれらのOSCからの分化細胞及び/又はその抽出物を含むが、換言すれば、細胞は、無傷の未分化及び/若しくは分化OSC;並びに/又は破壊された未分化及び/若しくは分化OSCであり得る。
加工するステップは、食料品の総質量に対して少なくとも1質量%の、培養OSC、若しくはこれらのOSCからの分化細胞及び/又はその細胞抽出物を、混ぜることを含み得る。好ましくは、食料品の総質量に対して少なくとも2質量%の、培養OSC、若しくはこれらのOSCからの分化細胞及び/又はその細胞抽出物を、他の原料に混合する。より好ましくは、食料品の総質量に対して少なくとも5%の、培養OSC、若しくはこれらのOSCからの分化細胞及び/又はその細胞抽出物を、他の原料に混合する。更により好ましくは、食料品の総質量に対して少なくとも10質量%の、培養OSC、若しくはこれらのOSCからの分化細胞及び/又はその細胞抽出物を、他の原料に混合する。前記質量は、好ましくは湿食料品質量である。
好ましくは、加工するステップの間に、食料品の総質量に対して99質量%以下の、培養OSC、若しくはこれらのOSCからの分化細胞及び/又はその細胞抽出物を、他の原料に混合する。より好ましくは、加工するステップの間に、食料品の総質量に対して95質量%以下の、OSC、若しくはこれらのOSCからの分化細胞及び/又はその細胞抽出物を、他の原料に混合する。更により好ましくは、加工するステップの間に、80質量%以下の、OSC、若しくはこれらのOSCからの分化細胞及び/又はその細胞抽出物を、他の原料に混合する。質量は、好ましくは湿食料品質量である。
例えば、食料品は、食料品の総湿質量に対して、培養OSC、若しくは分化OSC及び/又はその細胞抽出物を、1質量%~100質量%、好ましくは1質量%~99質量%、更には2質量%~95質量%、5質量%~90質量%、好ましくは10質量%~80質量%、より好ましくは20質量%~70質量%、又は更により好ましくは30質量%~60質量%含む。
好ましくは、食料品に組み込まれる細胞は、本発明のOSCの分化からもたらされる;前記細胞は、いずれかの分化段階、すなわち、中間分化段階又は後期分化段階であり得る。中間分化段階にある細胞は、少なくとも1種の更なる分化ステップが可能な細胞である。図1に図示されるような中間分化段階にある細胞は、例えば、MD、ED、外胚葉型の細胞、外胚葉神経板、神経堤、神経管若しくは表皮の細胞、前腸、中腸、後腸、尿生殖路前駆体細胞、間葉型細胞、中皮型細胞、非上皮血液細胞、体腔細胞、中間MD型細胞、脊索型細胞、沿軸MD型細胞、又は側板MD型細胞のようなED系列の前駆体細胞に対応し得る。後期分化段階にある細胞は、図1に列挙されているいずれかの型の細胞であり得る。
特定の実施形態では、加工するステップは、食料品の総湿質量に対して、肝細胞を少なくとも1質量%、好ましくは肝細胞を少なくとも2質量%、より好ましくは肝細胞を少なくとも5質量%、更により好ましくは肝細胞を少なくとも10質量%混ぜることを含み得、前記肝細胞は、上で述べたようにOSCに由来する。好ましくは、加工するステップは、食料品の総湿質量に対して、肝細胞を99質量%以下、より好ましくは肝細胞を95質量%以下、更により好ましくは肝細胞を90質量%以下混ぜることを含み得、前記肝細胞は、上で述べたようにOSCに由来する。前記加工するステップは、食品原料を混ぜて調理するステップを含み得、その結果、実施例の項に記載されるフォアグラのようなアヒルレバーパテがもたらされる。
特定の実施形態では、加工するステップは、食料品の総湿質量に対して、上記のような少なくとも1種のOSCの分化からもたらされる、筋細胞(例えば、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞)を少なくとも1質量%混ぜること、好ましくは筋細胞を少なくとも2質量%、より好ましくは筋細胞を少なくとも5質量%、更により好ましくは筋細胞を少なくとも10質量%混ぜることを含み得る。好ましくは、得られた食料品は、食料品の総湿質量に対して、筋細胞を99質量%以下、より好ましくは筋細胞を95質量%以下、更により好ましくは筋細胞を90質量%以下含む。例えば、食料品は、食料品の総湿質量に対して、筋細胞を1質量%~100質量%、好ましくは筋細胞を1質量%~99質量%、より好ましくは筋細胞を2質量%~95質量%、更により好ましくは筋細胞を5質量%~90質量%含む。
別の特定の実施形態では、加工するステップは、食料品の総湿質量に対して、上記のような少なくとも1種のOSCの分化から生じる、ケラチノサイトを少なくとも1質量%混ぜること、好ましくはケラチノサイトを少なくとも2質量%、より好ましくはケラチノサイトを少なくとも5質量%、更により好ましくはケラチノサイトを少なくとも10質量%混ぜることを含み得る。好ましくは、得られた食料品は、食料品の総湿質量に対して、ケラチノサイトを99質量%以下、より好ましくはケラチノサイトを95質量%以下、更により好ましくはケラチノサイトを90質量%以下含む。例えば、食料品は、食料品の総湿質量に対して、ケラチノサイトを1質量%~100質量%、好ましくはケラチノサイトを1質量%~99質量%、より好ましくはケラチノサイトを2質量%~95質量%、更により好ましくはケラチノサイトを5質量%~90質量%含む。
動物由来の細胞は、屠殺された動物から得られる従来の肉製品の官能特性に近づけるのに最も適切な配合物である。実際、植物又は真菌由来の細胞又はタンパク質は、屠殺された動物から得られる従来の肉製品(特にその風味)を模倣するのに、はるかに多くの変換ステップ及び添加物成分を必要とする肉の代替品であり、動物性の従来の食品を食べる消費者の味覚経験を満足に再現できないことが多い。本発明によるOSCは、動物由来であり、それ故に屠殺された動物からの動物組織の最も近い対応物であり、従来の肉製品と比較してより低い環境フットプリントで使用でき、競争力のある収量を提供し、外来DNAを呈さないため、この需要を満たす。この実施形態に限定されるものではないが、上述したように、加工するステップは、屠殺された動物に由来する原料を組み込んだ食料品のような細胞組成の食料品を得るために、様々な分化系列の細胞を混ぜることを含み、それによって、消費者に改善された官能体験をもたらし得る。例えば、1片の牛肉の外見、質感、及び/又は風味に可能な限り近づけるために、神経細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、造血細胞、脂肪細胞は、動物に由来する1片の肉に関して当技術分野で知られている割合と類似の割合で一緒に混ぜることができる。また、異なる分化系列の細胞を、食料品中で結合している様々な特定の層又は部分の下に配置すること(例えば、ケラチノサイト及び/又は脂肪細胞の層が上にある肉の層として)も、一緒に混合して均質混合物とすることもできる。
OSC、若しくはこれらのOSCからの分化細胞及び/又はそれらの抽出物と混合する他の食品原料としては、調味料、風味剤、質感付与剤(texturizer)、着色料、保存料、若しくはあらゆる他の食品原料(植物材料、食用植物脂肪など・・・)又はそれらの組合せを少なくとも挙げることができる。
調味料は、例えば、塩;コショウ;ニンニク又はワケギ;ローズマリー、セージ、ミント、オレガノ、パセリ、タイム、ゲッケイジュの葉、クローブ、バジル、チャイブ、マヨラナ、ナツメグ、カルダモン、チリ、シナモン、ウイキョウ、コロハ、ショウガ、サフラン、バニラ及びコリアンダーを含む、香りの良いハーブ及び/若しくは香辛料;ワイン、強酒精(spirituous)、コニャック、アルマニャック、ポートワイン、ピノー・デ・シャラント、ラム、ウイスキー、カルヴァ、ポモー・ド・ノルマンディー、ジュランソン、ソーテルヌ、パシュランを含む、アルコール飲料;又はあらゆるそれらの組合せから選択することができる。
食用植物脂肪は、調理のために一般的に使用されている植物油、例えば、キャノーラ油、ヒマシ油、ヤシ油、アマニ油、アランブラキア油、オリーブ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ラッカセイ油、イリッペ油、綿実油、シア油、パーム油、アボカド油、ベニバナ油、ゴマ油、レモン油、ブドウ種油、マカダミア油、アーモンド油、サル油、コカム油、又はマンゴー油、又はそれらの組合せから選択することができる。
風味剤は、例えば、風味増強剤、甘味料又はあらゆるそれらの組合せから選択することができる。
質感付与剤は、例えば、増量剤若しくは増粘剤、乾燥剤、硬化剤又はあらゆるそれらの組合せから選択することができる。
保存料は、例えば、抗菌剤、pH調整剤、又はあらゆるそれらの組合せから選択することができる。
着色料は、食品に使用するのに適したものである必要があり;例えば、天然の着色料、例えば、カロテン、トマト、ビート、又はその混合物から選択することができる。
加工するステップは、当業者によく知られているいずれかの手段によって行うことができる。かかる加工ステップの非限定的例は、前記分化細胞及び/又はこれらの分化細胞から抽出した成分(例えば、タンパク質)を対象とした、固めること、加圧、加熱、乾燥、凍結乾燥、凍結、煮ること、調理、燻し、照射、均質化、加圧下調理、成形、投与、缶詰化、低温殺菌、押出し及び/又は包装である。
加工するステップはまた以下の質感付与手法の使用も含むことができる:例えば、分化細胞又はそのあらゆる派生細胞若しくは抽出物(タンパク質分画、脂肪分画など)のいずれかに適用される湿式スピニング、3D印刷、エレクトロスピニング、押出し、浸漬、液体噴霧、乾式噴霧、噴霧乾燥、インクジェット適用など。
したがって、これらを使用して、所望の稠性、質感及び外見を呈する最終製品を生産することができる。有利なことに、前記質感付与手法は、食料品において、屠殺された動物に由来する1片の肉の外見をより正確に再現するために3次元に組織化された(層の下、挿入)又は単に一緒に混合した様々な型の細胞を含む複雑な食料品を提供するのに使用できる。例えば、使用する際には、様々なインクを用いることができ、各インクは、様々な型の分化OSC(例えば、内皮細胞、脂肪細胞、骨格筋及び/又はケラチノサイト)を含み、前記OSCは、例えば、上で説明したように他の食品原料と混合されて肉製品を再現する。
いくつかの例では、分化細胞はまた、特定の成分に富む培地で特定の条件下で更に培養して、ヒトの健康又は動物の食事に有益な改善された食料品を提供することもできる。かかる成分は、例えば、必須微量元素、ミネラル、コビタミン、必須脂肪酸、必須アミノ酸、酵素、抗酸化剤など・・・であり得るが、これらに限定されない。他の例では、分化細胞は、特定の食品製品又は高級食品製品を生産するために、特定の条件下で培養できる。この点において、飽和パルミチン酸及び/又は一価不飽和オレイン酸のような脂肪酸に富む培地中で肝細胞を培養することで、用量依存的に脂肪症が誘導されることが当技術分野で知られている(Moravcovaら、2015)。脂肪症は、肝細胞におけるトリグリセリド及び脂肪酸の蓄積であり、フォアグラ高級食品で観察される。また、特定の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1種のOSCに由来する肝細胞からのフォアグラの生産方法に関し、前記肝細胞を、トリグリセリド及び/又は脂肪酸が前記肝細胞に蓄積するように、脂肪症を促進する条件下、例えば、脂肪酸に富む培地中で培養する。
好ましくは、細胞は、以下を得るために加工される:生鮮製品、乾燥製品、凍結製品、粉末、ペースト、押出し成形品、固体又は液体からなる群から選択される形態の食料品、任意に、細かく刻むこと、調理、仕上げ、水で戻すこと、漬込み又は燻しを行った又はそれに適合した製品。食料品製品は、加工食品製品として、例えば、スープ、ソース、トッピング、調味料、シチュー、ソーセージ、挽き肉、肉だんご、ナゲット、スプレッド、パテ、ピューレ、飲料、又はシェーク、すり身、ビスケット、乾燥顆粒、錠剤、カプセル、粉末として、定義されるように加工できる。
特定の実施形態では、前記方法は、インビトロ分化非ヒト動物細胞を加工するステップの前に、前記インビトロ分化非ヒト動物細胞を生産するステップであって、
- 少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている少なくとも1種のOSCを増幅させるステップ、
- 任意に、前記増幅されたOSCを胚様体として培養するステップ、又は
- 任意に、前記OSCを特定の細胞型へ分化させるステップ
を含むステップを含む。
OSCは、無限に分裂する能力を保持している改変PSCであり、この能力は、高収量の細胞を必要とする合成肉製品の分野において、特に興味を持たれており、増殖する能力を失っている又はそれが限定されている分化細胞では得ることができないことを理解されたい。OSCは、自己複製することができ、所望の細胞密度が得られる場合、適切なシグナル伝達に曝露されると分化できる。
少なくとも1種のOSCを増幅させるステップは、当業者からよく知られたいずれかの方法を用いて未分化OSCを培養することで行うことができる。哺乳類及び他の脊椎動物細胞に対して、培養培地は市販されており、当業者からよく知られている。甲殻類細胞の増殖のための更なる例示の培地は、WO2020/149791に見出される。また、昆虫細胞のための培養培地もRoselloら(2013)に見出される。例えば、未分化OSCの拡大は、マトリックス依存性の表面付着二次元(2D)培養において、従来の皿又はフラスコを使用して、培養皿を増やすか、又は多層フラスコの使用によって達成できる。或いは、OSCは、三次元(3D)マトリックス依存性の培養における増殖、又は計装撹拌槽バイオリアクター(instrumented stirred tank bioreactors)における「自由浮遊」懸濁培養としての増殖又は足場依存性OSCに利用可能な表面積を拡大する「浮遊表面」を提供するマイクロキャリアを使用しての増殖に適合させることができる(Serraら、2012;Kroppら、2017)。
或いは、増幅ステップは、当業者からよく知られているいずれかの方法を使用して、少なくとも1種のOSCが制限される細胞系列及び所望の分化細胞型に応じて実行できる。例えば、現在、Chengら(2012)に記載されているように、自己複製するEDにコミットされた幹細胞系を樹立することが可能である。このアプローチはまた、ED限定OSCに適用可能であり、複数の培養皿若しくは多層フラスコを使用して2Dで、又はマトリックス依存性培養若しくは計装撹拌槽バイオリアクターを使用して3Dでスケーラブルである。ED限定又は、例えば、肝臓限定OSCに適用可能な別のアプローチが、Akbariら(2019)に記載されており、これにより、PSC派生肝臓オルガノイドの長期の拡大(最大1年)が可能となる。Akbariらのアプローチはまた、MDにコミットされたOSCに適用できる。かかるMD前駆細胞培養物はまた、2D又は3D培養条件で更に増幅できる。或いは、MD限定又は心臓限定OSCは、Chenら(2014)、Kempfら(2016)又はVahdatら(2019)によって教示されているように懸濁3D培養で増幅できる。同様に、ヒトiPSC派生骨格筋細胞の大規模な拡大が、記述されており(Van der Walら、2018)、MD限定又は骨格筋限定OSCに適用することに成功できている。これらの方法は、あらゆる食料品関連細胞型(例えば、線維芽細胞、赤血球、又は脂肪細胞)を増幅させるのに容易に適応可能である。
前記増幅されたOSCから胚様体を生成させる任意のステップは、細胞が増殖している支持体から細胞を剥離すること、及び細胞を3D懸濁培養で増殖させることを含む。細胞凝集体は、増殖用培地中で多能性を維持するシグナル伝達分子を除去すると、3種の胚性胚葉の子孫へ自発的に分化する。野生型PSCから生成させた胚様体の細胞組成及び遺伝子発現シグネチャーは、3種の胚性胚葉への分化能力を定量するためのアッセイとして一般的に使用されている。上記のようなOSCは、非改変PSCから派生する胚様体と比較するとEB分化培養条件下、より均質な培養分化細胞の塊(すなわち、特定の系列の細胞に富む)を得られると期待されるため、EBを生成させるのに特に有利である。更に、EB培養は、バイオリアクターで効率的にスケールアップできる。特定の実施形態では、上記のようなOSCからできているEBから得られる分化細胞の塊は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、更により好ましくは少なくとも50%、前記OSCに関連する型の特定の細胞系列に富む。一例として、MD系列に限定されるOSCからできているEBからの培養分化細胞の塊は、その分化能にバイアスがかかっていないPSCからできているEBから得られる分化細胞と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、更により好ましくは少なくとも50%、MD系列の細胞に富む。また、別の例では、ED系列に限定されるOSCからできているEBからの培養分化細胞の塊は、その分化能にバイアスがかかっていないPSCからできているEBから得られる分化細胞と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、更により好ましくは少なくとも50%、ED系列の細胞に富み;更に別の例では、NE系列に限定されるOSCからできているEBからの培養分化細胞の塊は、その分化能にバイアスがかかっていないPSCからできているEBから得られる分化細胞と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、更により好ましくは少なくとも50%、NE系列の細胞に富む。
いくつかの例では、本発明によるOSCのより効率的な分化又は更なる分化ステップを引き起こす又は行うことによって、細胞塊を組織/器官特異的細胞で富む状態にするために、更なる細胞分化ステップを特定の培養条件、パターン付き足場及び/又は分化因子とのインキュベーションによって適用できる。これらのステップは当業者によく知られており、所望の細胞型に応じて変わる。他の例では、初期系列に限定されるOSCは、そのまま加工して食料品を生産できる。
特定の実施形態では、本発明の方法は、PSCにおける少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の安定的な不活性化によって前記少なくとも1種のOSCを得る先行ステップを含む。あらゆる自己複製全能性幹細胞(TSC)、PSC、又は複能性幹細胞(MSC)を、本発明によるOSCを生産するのに使用できる。例示的な非限定的例は、始原生殖細胞(PGC)、雌生殖系幹細胞(FGSC)、精原幹細胞(SSC)、胚性生殖細胞(EGC)、ESC、iPSC、ntESC及び複能性幹細胞である。ESCは、リプログラミングによるいずれの外因性の転写操作も必要としないため、脊椎動物由来のOSCを得るのに特に好ましい。卵生脊椎動物からのESCは、BDM細胞として初期胚から容易に単離して多能性ESC系を作製できるため、より特に好ましい。OSCのいずれか、次いで、それから派生する食料品を生産するために、鳥類のESCが特に好ましく、アヒルESC系が更により特に好ましい。
より特定の実施形態では、前記少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現の安定的な不活性化は、
- 前記遺伝子のコード配列のリーディングフレームを破壊すること、及び/又は
- 前記遺伝子の発現に必要なシス調節エレメントを不活性化すること、
- 前記遺伝子の発現に必要なトランス調節エレメントを不活性化することによって得られる。
少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の機能の不活性化は、典型的には、前記遺伝子のコード配列のリーディングフレームを破壊することによる前記遺伝子のノックアウトによって達成される。或いは、少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現の不活性化は、典型的には、前記遺伝子の発現に必要なプロモーター及び/又はエンハンサー配列の一部又は全体を欠失させることによって達成される。本発明の食料品生産方法では、少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の不活性化は、細胞の増幅ステップの間、安定に保たれることが重要である。したがって、遺伝子のコード配列(CDS)を破壊する小さな挿入又は欠失(インデル)を、又はいくつかの例では、前記遺伝子又は前記遺伝子の発現を制御するプロモーター及び/若しくはエンハンサー配列の大部分又は全体を除去する大きな欠失を、外来遺伝物質の導入なしに、更に、選択手段なしに生成させることが特に適切である。また、系列指定因子遺伝子にインデルを生成させるのが、遺伝子が下流の必須過程に関与若しくはそれを制御しているために望ましくない、又は標的遺伝子の構造的若しくは他の特徴のために可能ですらない場合、シス調節エレメント(エンハンサー、サイレンサー、組織特異的調節エレメント)又は標的遺伝子の発現を調節するトランス調節エレメント(転写因子、マイクロRNA、長鎖ノンコーディングRNA)を安定的に不活性化することが特に有利である。
本発明の方法に使用されるOSCを生成するのに、上で述べたようなインデルノックアウトを可能にするあらゆるゲノム編集技術が適している。かかるゲノム編集技術は当業者によく知られている(例えば、Bennettら、2020で概説されている)。いわゆるプログラム可能なヌクレアーゼに基づく技術は、現在広く使用されており、本発明の方法で使用されるOSCを生成するのに特に適しており、該ヌクレアーゼとしては、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN(Transcription activator-like effector nuclease)又はクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/CRISPR関連ヌクレアーゼ(例えば、Cas 9のような)が挙げられるが、これらに限定されない。更に、その結果、OSCは、例えば、選択マーカー又は統合ベクターのような外来DNAを含まず、培養中に選択手段を必要とせず、より安全なGMOと考えられる(外来DNAの伝播リスクがない)。また、本発明の方法の特定の実施形態では、少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の安定的な不活性化は、遺伝子編集システムを用いて少なくとも1種のインデルを前記遺伝子に生成させることを含み、該遺伝子編集システムは、好ましくは、CRISPR/Cas9、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、例えば、MAD7、及び/又はメガヌクレアーゼのような操作されたヌクレアーゼ、更により好ましくはCRISPR/Cas9から選択されるプログラム可能なヌクレアーゼから選択される。
本発明の方法の一実施形態では、少なくとも1種のOSCは、少なくとも1種のNE(例えば、表1の遺伝子を参照)、MED(例えば、表3の遺伝子を参照)、MD(例えば、表4の遺伝子を参照)若しくはED(例えば、表2の遺伝子を参照)系列指定因子遺伝子又はそれらの組合せの発現が不活性化されている。適切なOSCは、前の項に記載されている。
本発明の方法の特定の実施形態では、前記OSCは、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現及び少なくとも1種のMD系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。実際、これらのOSCは、ED系列の細胞への分化に限定され、したがって、食料品配合物として貴重なED系列のインビトロ分化細胞を提供する。本発明者らは、これらのOSCは、単一の食料品関連細胞型を産生するために、器官指定因子ノックアウトを更に導入して特定の細胞型への分化能力を更に限定することによってその分化能力を更に特化させることができることを見出した(上記の「寡能性幹細胞」部分及び例えば、表2の遺伝子参照)。したがって、本発明の方法のより特定の実施形態では、前記OSCは、肝臓特異的であり、NE系列指定因子遺伝子の少なくとも1種の遺伝子の発現、MD系列指定因子遺伝子の少なくとも1種の遺伝子の発現、及びED細胞の非肝臓前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子(上記の「寡能性幹細胞」部分、及び例えば、表2の非肝細胞関連遺伝子を参照)の発現が不活性化されている。
本発明の方法の別の特定の実施形態では、前記OSCは、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現及び少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。これらのOSCは、MD系列の細胞への分化に限定され、したがって、食料品配合物として貴重なMD系列のインビトロ分化細胞を提供する。前記OSCは、単一の食料品関連細胞型を産生するために、器官指定因子ノックアウトを更に導入して特定の細胞型へのその分化能力を更に限定することによってその分化能力を更に特化させることができる。例えば、非常に特定の実施形態では、MD系列に制限される前記OSCは、MD細胞の非心臓前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が更に不活性化されており(上記の「寡能性幹細胞」の部分及び例えば、表4を参照)、したがって、前記OSCは心臓特異的である。別の非常に特定の実施形態では、前記OSCは、骨格筋特異的であり、したがって、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現、ED系列指定因子遺伝子の少なくとも1種の遺伝子の発現、及びMD細胞の非骨格筋前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子(上記の「寡能性幹細胞」部分、及び例えば、表4の非骨格筋関連遺伝子を参照)の発現が不活性化されている。更なる特定の実施形態では、前記OSCは、脂肪細胞特異的であり、したがって、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現、ED系列指定因子遺伝子の少なくとも1種の遺伝子の発現、及びMD細胞の非脂肪細胞の前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子(上記の「寡能性幹細胞」部分、及び例えば、表4の非脂肪細胞関連遺伝子を参照)の発現が不活性化されている。
本発明の方法の特定の実施形態では、前記少なくとも1種のOSCは、OSCに関して前の項で記載されているもののうちのいずれかである。特に好ましい実施形態では、前記少なくとも1種のOSCは、アヒルESCから派生する。
したがって、本発明の食料品生産方法の別の実施形態では、少なくとも1種のOSCは、骨格筋、心臓、肝細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、赤血球、若しくは脂肪細胞特異的OSC、又はそれらの組合せから選択される。より特定の実施形態では、前記少なくとも1種のOSCは、組合せである。実際、本発明の方法の増幅させる、培養する及び/又は分化させるステップのいずれかで異なるOSCを混ぜることは、生きた動物に由来する器官の細胞組成により近い、密接に入り組んだ異なる細胞型からできている分化細胞の塊を得ることを可能とし、したがって、従来の食料品とのその類似性に関して食料品を改善し、したがって、消費者の官能体験を改善する。もちろん、本発明による食料品を生産する方法において、分化細胞はまた、加工するステップの間に混ぜることもできる。また、本発明の方法の一実施形態では、インビトロ分化非ヒト動物細胞は、筋細胞、皮膚細胞、血液細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、若しくは肝細胞、又はそれらの混合から選択される。
食料品
本発明の方法の実行により生産される食料品は、生きた動物から得られる肉製品の消費に代わるものである。これらの食料品は、世界人口の増加、生活水準の上昇、天然資源の不足、及びまた農業、より特には集約農業に関連する環境問題を解決する持続可能な方法となる。更に、西洋社会の人々の間では、動物福祉及び集約農業の欠点に対する関心が高まっている。
それにもかかわらず、インビトロ肉の生産は、依然として拡張性要件及び高い生産費用に直面している。本発明の方法は、当技術分野のインビトロ肉よりも安い費用及び/又は安全な方法で分化細胞の拡張可能な生産を可能とする。したがって、本発明の一目的は、本発明の方法によりその実施形態のいずれかにおいて上で述べたように得ることができる食料品に関する。
したがって、本発明の一目的は、少なくとも1種の非ヒト動物細胞を含む食料品に関し、前記少なくとも1種の非ヒト動物細胞は、NE(例えば、表1に列挙した遺伝子のオルソログ)、MD(例えば、表4に列挙した遺伝子のオルソログ)、ED(例えば、表2に列挙した遺伝子のオルソログ)若しくはMED(例えば、表3に列挙した遺伝子のオルソログ)系列指定因子遺伝子、又はこれらの混合の群から選択される少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。
本発明の特定の目的は、少なくとも1種の非ヒト動物細胞を含む食料品に関し、前記少なくとも1種の非ヒト動物細胞は、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている。特定の実施形態では、前記食料品は、
- 少なくとも1種のMD系列指定因子遺伝子、又は
- 少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子
の発現が不活性化されている少なくとも1種の非ヒト動物細胞を含む。
当業者は、前記食料品に対して、従来の肉組織(筋肉若しくは屑肉)又は肉ベース製品の外見及び/又はまた官能特性を模倣する通常の消費形態を付与する方法を知っているであろう。食料品製品は、加工食品製品、特に、スープ、シチュー、ソーセージ、挽き肉、コールドカット、スプレッド、パテ、ピューレ、すり身、ビスケット、乾燥顆粒、錠剤、カプセル、粉末、パスタ、ピザ、サンドイッチ又はナゲットに組み込むように加工できる。
しかし、従来通りに飼育された動物から得られる肉ベース製品を模倣することを目的とする場合、同じ動物に由来するOSCを使用することが考えられ得る。例えば、フォアグラを生産することを目的とする場合、ガチョウ又はアヒルに由来するOSCが好ましいと推測できる。別の実施形態では、牛ヒレ肉を生産することを目的とする場合、ウシに由来するOSCが好ましいと推測できる。いずれにしても、異なる種、科、目又は綱に由来する細胞の使用が考えられ得る。
本発明は以下の非限定的な実施例で更に説明する。
以下の略称を使用している:
- qRT-PCR:定量的逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応
- PL:多能性の
- NE:神経外胚葉
- MED:中内胚葉
- MD:中胚葉
- ED:内胚葉
- インデル:挿入又は欠失
- fs:フレームシフト
- if:インフレーム
- CRISPR/Cas9:化膿連鎖球菌のII型のクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連システム
- gRNA:2種のRNA分子:DNA標的配列(プロトスペーサー)に対する20ヌクレオチドの相同性によりCas9ヌクレアーゼに標的特異性を与えるcrRNA、及びCas9結合足場として機能するtracrRNAで構成されるガイドRNA
- sgRNA:crRNA及びtracrRNAの機能を保持した単一のRNA分子で構成される合成gRNA
- RNP:リボ核タンパク質
- ROCKi:Rhoキナーゼ阻害剤
- EBd:胚様体分化
- Dd:指向性分化
- dESC:アヒル胚性幹細胞
- ntESC:核移植ESC
- OSC:寡能性幹細胞。分化能力が限定された自己複製幹細胞
- EDMD OSC:分化能力が、ED、MD系列及びその派生細胞に限定される自己複製OSC
- NEMD OSC:分化能力が、NE、MD系列及びその派生細胞に限定される自己複製OSC
- NEED OSC:分化能力が、NE、ED系列及びその派生細胞に限定される自己複製OSC
- NE OSC:分化能力が、NE系列及びその派生細胞に限定される自己複製OSC
- MD OSC:分化能力が、MD系列及びその派生細胞に限定される自己複製OSC
- ED OSC:分化能力が、ED系列及びその派生細胞に限定される自己複製OSC
- ケラチノサイトOSC:分化能力が、表皮系列に限定される自己複製NE OSC
- 肝臓OSC:分化能力が、肝臓系列に限定される自己複製ED OSC
- 内皮OSC:分化能力が、内皮系列に限定される自己複製MD OSC
- 血液OSC:分化能力が、血液系列に限定される自己複製MD OSC
- 心臓OSC:分化能力が、心臓系列に限定される自己複製MD OSC
- 筋肉OSC:分化能力が、骨格筋系列に限定される自己複製MD OSC
- 骨OSC:分化能力が、骨系列に限定される自己複製MD OSC
- 軟骨OSC:分化能力が、軟骨系列に限定される自己複製MD OSC
- 脂肪OSC:分化能力が、脂肪系列に限定される自己複製MD OSC
- RT°:室温
- WT:野生型
(実施例I)
哺乳類OSCの生成-PSCにおける標的系列指定因子遺伝子の不活性化
I. hiPSCにおける初期NE、MED、MD及びEN系列指定因子の候補遺伝子の不活性化によるEDMD、NEMD、NEED、NE、ED、MD OSCの生成
WTC-11ヒトiPSC(Coriell GM25256)は、エピソーマルベクターを使用して健常男性皮膚線維芽細胞の非統合的リプログラミングによって生成される商業的に十分に特徴付けられたiPSCである。
A. 細胞品質アッセイ
遺伝子編集の前に、未分化及び分化(EB)WTC-11 iPSCは、表5に列挙した遺伝子に特異的なプライマーを使用して、PL、NE、MED、MD、ED特異的遺伝子の発現プロファイル及び転写因子マーカーの発現プロファイルの制御を行った。
B. CRISPR/Cas 9ヌクレアーゼキット及びgRNAスクリーニング
CRISPR/Cas9は、標的遺伝子のコード配列にfsインデルを導入し、それによって標的遺伝子をノックアウトするために現在最も広く使用されているプログラム可能なヌクレアーゼである。これは、インビボと、脊椎動物、無脊椎動物及び植物を含む複数の種の培養細胞との両方で機能することが証明されている(Kim及びKim、2014)。多数の市販の既製のCRISPRCas9キットが入手可能である。
CRISPR/Cas9の構成要素の標的細胞への送達は、通常、Amaxa nucleofection(Lonza)、エレクトロポレーション又はリポフェクションによって達成される。WTC-11 iPSCの編集では、Integrated DNA Technologies(IDT)からのAlt-R(登録商標)crRNAs,tracrRNA and S.p. HiFi Cas9 Nuclease V3を、InvitrogenからのLipofectamine(商標)CRISPRMAX(商標)Cas9 Transfection Reagentと複合体を形成させて使用した。
gRNAの設計
系列指定因子遺伝子のゲノム及びコード配列は、ウェブベースのゲノムブラウザ(例えば、<http://www.ensembl.org/>、<http://genome.ucsc.edu/、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/genome>)からダウンロードし、配列解析ソフトウェア(例えば、MacVector、SnapGene)に保存する。可能な限り、各転写因子のアイソフォーム、エクソン及び機能性ドメインが同定され、アノテーションされている。転写因子のDNA結合ドメインのすぐ上流のエクソン配列の200~300ヌクレオチドを、gRNA設計ツール(<https://en.wikipedia.org/wiki/CRISPR/Cas_Tools>)でクエリ配列として使用する。遺伝子毎に、オンターゲット予測活性が最も高くかつオフターゲット予測活性が最も低い3種の最高ランクのgRNAを、WTC-11 iPSCにおける更なる機能試験用に選択する。
gRNAスクリーニング
各遺伝子を標的とする最も活性の高いgRNAを同定するため、全てのgRNA/Cas9リボ核タンパク質(RNP)複合体を、CRISPRMAXプロトコールに従ってLipofectamine CRISPRMAX Transfection Reagentを使用して、WTC-11 iPSCに別々にトランスフェクトする。トランスフェクションの4~5日後、細胞を各ウェルから回収し、DNAをDNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen)を使用して精製する。各標的では、座位TIDE/ICEオリゴペアは、gRNA標的部位に隣接する500~700のゲノム配列を増幅するように設計される。座位特異的PCR増幅産物は、NucleoSpin Gel and PCR Clean upカラム(Macherey-Nagel)を使用して精製する。各生成物は、内部TIDE/ICEシークエンシングオリゴを使用したサンガーシークエンシング(Genewiz)に送られる。サンガー配列ABIファイルは、次に、各gRNAの切断部位で生じる小さなインデルを定量することができるTIDE(<https://tide.nki.nl/>)又はICE synthego(https://www.synthego.com/products/bioinformatics/crispr-analysis)ソフトウェアを使用して、解析する。
C. EDMD、NEMD、NEED OSCクローン系の生成
gRNA/Cas9 RNP複合体のトランスフェクション
WTC-11 hiPSCは、最も効果的なgRNAでトランスフェクトする。WTC-11細胞は、単一細胞であり、これは、TripleE Express(ThermoFisher)を使用して解離し、10μMのROCKi(Y-27632、STEMCELL Technologies)を添加したE8培養培地(ThermoFisher)に再懸濁し、Countess automated cell counter(Life Technologies)で計数する。15×105細胞の10プールは、ビトロネクチン(VTN-N、ThermoFisher)コート12ウェル培養皿において、製造元のガイドラインに従ってLipofectamine CRISPRMAXを使用して対応するRNP複合体でトランスフェクトする。トランスフェクションの12~24時間後、培地はROCKiを含まないE8に交換する。次いで、培地は、細胞がトランスフェクションから完全に回復するまで(4~5日間)、毎日交換する。図4Aに示すように、全ての試験した候補系列指定因子遺伝子においてインデルを生成させ得ることが見出される。
CRISPR編集hPSCのクローンの拡大
各々のトランスフェクトされたプールは、単一細胞であり、これは、TripleE Expressを使用して解離し、10μMのROCKiを添加したE8に再懸濁し、Countess automated cell counterで計数し、10μMのROCKiを添加したE8を含む100mmVTNコート培養皿中で3つの異なる密度(50、100及び250細胞/cm2)で播種する。トランスフェクションの12~24時間後、培地はROCKiを含まないE8に交換する。次に、培地を明瞭なコロニーが出現するまで(7~10日間)、2日おきに交換する。
各々のトランスフェクトされたgRNAでは、約500μm超の直径を有する96コロニーは、EVOS FL picking microscope(Life Technologies)下でP200ピペットチップを使用して手動で取り、V底96ウェル皿の個々のウェルに移す。コロニーは、マルチチャンネルピペットを使用してV底皿で上下に10回ピペッティングすることによって手動でばらばらにし、続いて、E8培地を含むVTNコート96ウェル培養皿に移す。培地を、明瞭なコロニーが出現するまで(約7日間)、2日おきに交換する。
この段階で、各プレートの2つの複製の生成を、EDTAを使用してコロニーを穏やかに解離すること及び解離した各ウェルを2つのVTNコート96ウェル複製培養皿の対応するウェルに再プレーティングすることによって行う。96ウェルの複製はE8中で60~80%コンフルエントになるまで培養し、この段階で、一方の複製は、EDTAによる解離及びPSC Cryopreservation Kit(ThermoFisher)での再懸濁後、-80℃で凍結するが、もう一方の複製は、DNeasy 96 Blood and Tissue Kit(Qiagen)を使用したゲノムDNA抽出に用いる。
CRISPR編集クローンの座位特異的MiSeqシークエンシング
座位特異的Illumina MiSeqオリゴを、各gRNA切断部位の周囲の150~200のゲノム領域を増幅するために設計する。各座位特異的MiSeqオリゴペアを、対応座位を標的とするgRNAで編集したDNAを含む96ウェルプレートの、Herculase II Fusion DNA Polymerase(Agilent)を用いたMiSeq PCR I増幅(15サイクル)に使用する。PCR I産物は、ヌクレアーゼ不含H2Oで10倍に希釈し、1μlを、各座位特異的ゲノム増幅産物に隣接する全長インデックス付き(1~96)Illuminaアダプターを生成させるオリゴを用いたMiSeq PCR II増幅(20サイクル)に使用する。各編集では、96のバーコード付きPCRをプールし、2%ゲル上で短時間泳動してプライマー二量体を除去し、NucleoSpin Gel and PCR Clean upカラムを使用して精製し、ヌクレアーゼ不含H2Oで溶出する。各PCRプールを、Qubit(ThermoFisher)を使用して定量し、等モル量の各PCRプールを1本のチューブに混合し、ヌクレアーゼ不含H2Oで希釈して10nMの最終プールライブラリーを生成する。ライブラリーの品質管理とMiSeqの実行は、MiSeq Reagent Kit v3(600サイクル)(Illumina)を使用してGenewiz(https://www.genewiz.com)によって実施される。
MiSeqで配列決定されたCRISPR編集クローンのCRISPResso2分析
インデックス1~96に対応するトリミングされたMiSeqシークエンシングFastQファイルは、Genewizから取得し、各クローンの2つの対立遺伝子の配列は、CRISPResso2アプリ(<https://hub.docker.com/r/pinellolab/crispresso2/>)を使用して同定し、特徴付ける。野生型、ヘテロ接合体、トランスヘテロ接合体及びホモ接合体のfsインデル又はfiインデルを持つクローンは、更なる増幅及び保存のためにラベルされる。
CRISPR編集クローンの増幅及び保存
凍結したクローンを含む96ウェル複製プレートは、-80℃から取り出し、すぐに37℃で解凍し、300gで3分間遠心分離する。凍結培地は、プレートをはじき、すぐに、RevitaCell Supplement 1x(ThermoFisher)を含む100μlのE8培地を添加することによって除去する。再懸濁した細胞は、VTNコート96ウェル培養皿に移し、一晩増殖させる。プレーティングの12~24時間後、培地はRevitaCell Supplementを含まないE8に交換する。次いで、培地は、細胞が凍結から完全に回復するまで(7日間)、毎日交換する。可能な限り、3種の(WT/WT)野生型対照クローン、3種の(FS/WT)ヘテロ接合体クローン及び3種の(FS/FS)トランスヘテロ接合体クローン又はホモ接合体クローンは、24ウェル皿中のE8で拡大し、次に、EDTAを解離剤として使用して、6ウェル皿中で拡大する。IF/IF、IF/FS又はIF/WTクローンもまた、利用可能であれば拡大した。可能であれば、各系の3~6つのクライオバイアルをバンキング及び長期保存のために窒素中で凍結保存する。
D. NE、ED、MD OSCクローン系の生成
EDMD、NEMD、NEED OSCクローン系の分化バイアスを野生型対照系と比較して定量した後(下記参照)、EDMDへの最も高い分化バイアスを示すEDMD OSC系の1種、NEMDへの最も高い分化バイアスを示すNEMD OSC系の1種、及びNEEDへの最も高い分化バイアスを示すNEED OSC系の1種が選択される。
NE OSCの生成
分化能力がNE系列及びその派生細胞に限定されるOSCの生成は、上で述べたようにCRISPR/Cas9技術を使用して実施する。
3種の代替アプローチを適用する:
1. 3種のMED系列指定因子を標的とする9種のgRNAをPSCにトランスフェクトすること、
2. 最良のNEMD系を生成するのに使用される最良のED gRNAを最良のNEED OSC系にトランスフェクトすること、
3. 最良のNEED系を生成するのに使用される最良のMD gRNAを最良のNEMD OSC系にトランスフェクトすること。
ED OSCの生成
分化能力がED系列及びその派生細胞に限定されるOSCの生成は、上で述べたようにCRISPR/Cas9技術を使用して実施する。
2種の代替アプローチを適用する:
1. 最良のEDMD系を生成するのに使用される最良のNE gRNAを最良のNEED OSC系にトランスフェクトすること、
2. 最良のNEED系を生成するのに使用される最良のMD gRNAを最良のEDMD OSC系にトランスフェクトすること。
MD OSCの生成
分化能力がMD系列及びその派生細胞に限定されるOSCの生成は、上で述べたようにCRISPR/Cas9技術を使用して実施する。
2種の代替アプローチを適用する:
1. 最良のEDMD系を生成するのに使用される最良のNE gRNAを最良のNEMD OSC系にトランスフェクトすること、
2. 最良のNEMD系を生成するのに使用される最良のED gRNAを最良のEDMD OSC系にトランスフェクトすること。
同じ編集及び遺伝子型決定アプローチを、EDMD、NEMD、NEED OSCクローン系(上記のパートC.参照)の生成に関して使用する。
II. PSC及び系列限定OSCの分化能力の評価
A. 多能性アッセイ
このアッセイによって、未分化PSC又はEDMD、NEMD、NEED、NE、ED、MD OSCの多能性状態を、未分化PSC又はOSCにおいて初期PL、NE、MED、MD、ED遺伝子の発現と、初期PL、NE、MD、ED細胞のパーセンテージとを定量することで調べることができる。
PSC又はOSCは、VTNコート6ウェル培養皿上でE8培地中で2継代増殖する。約75%コンフルエントのウェルは、PBSで2回洗浄し、Accutaseで解離し、PBSに再懸濁する。細胞は、Countess automated cell counterで計数し、1×106細胞アリコートをペレット化する。PBSを除去し、細胞ペレットを、TaqMan hPSC Scorecard Panel分析のために500μlのトリゾール試薬(ThermoFisher)に再懸濁するか(項IV参照)、又はフローサイトメトリー分析のために1mLの氷冷FACSバッファー(PBS中の2%FBS)に再懸濁する(項E参照)。
B. EB分化アッセイ
このアッセイによって、低ストリンジェンシーな分化アプローチを使用する場合のPSC又はEDMD、NEMD、NEED、NE、ED、MD OSCの分化能力を、EB分化PSC又はOSCにおいて初期PL、NE、MED、MD、ED遺伝子の発現と初期PL、NE、MD、ED細胞のパーセンテージとを定量することを通して調べることができる。
EB培養のための例示的なプロトコール1
PSC又はOSCは、VTNコート60mm培養皿上でE8培地中で2継代増殖する。約80~85%コンフルエントの皿を、PBSで2回洗浄し、コラゲナーゼIV(ThermoFisher)で5~10分間処理する。次いで、コラゲナーゼを除去し、細胞を5mlのDMEM/F-12(ThermoFisher)で洗浄する。細胞に、4ng/mlのbFGF(R&D Systems)を添加した3mlのEB培地(GlutaMAXを添加したDMEM F-12;KnockOut血清代替物、MEM非必須アミノ酸溶液、及び2-メルカプトエタノール)を添加する。コロニーは、注意深く剥離し、5ml血清用ピペットを使用して回収する。コロニー懸濁液は、15mlコニカルチューブに移し、5~7分間放置して沈降させる。上清を注意深く除去し、コロニーを、bFGFを有するEB培地3mlに再懸濁する。この3mlは、bFGFを有するEB培地2mlを含む非TC処理60mm皿に移す。皿をインキュベーターに一晩置く。翌日、皿の内容物は、15mlコニカルチューブに移し、5~10分間放置して沈降させる。上清を除去し、EBを、bFGFを有さないEB培地3mlに再懸濁する(D0)。この3mlのEB懸濁液は、bFGFを有さないEB培地2mlを含む新規の60mm非TC処理皿に移す。7日間又は14日間の培養後、EBを分析のため収集する。PBSで2回洗浄後、EBは、Accutaseで解離し、PBSに再懸濁する。細胞は、Countess automated cell counterで計数し、1×106細胞アリコートをペレット化する。PBSを除去し、細胞ペレットを、TaqMan hPSC Scorecard Panel分析のために500μlのトリゾール試薬(ThermoFisher)に再懸濁するか(項D参照)、又はフローサイトメトリー分析のために1mlの氷冷FACSバッファー(PBS中の2%FBS)に再懸濁する(項E参照)。
EB培養のための代替的な実験プロトコール
未分化hiPSC(WTC-11)及びOSCは、継代し、10μMのROCK阻害剤(Ri)Y-27632で24h処理する。培地を交換し、細胞をEssential 8完全培地(Gibco)でもう1日置く。実験当日、細胞は、0.5mMのPBS-EDTAを使用して単一細胞に解離し、37μmのセルストレーナーでろ過し、計数する。2.5×106細胞を、24ウェルAgrewell400プレート(STEMCELL Technologies)の各ウェルに移し、10μMのRiを含むEssential 8培地で24hの間インキュベートする。翌日、EBは、6ウェル超低付着性プレートに移し、Essential 6 EB培地(Gibco)で14日間インキュベートする。7日間又は14日間の培養後、EBを分析のため収集する。PBSで2回洗浄後、EBは、Accutaseで解離し、PBSに再懸濁する。細胞は、Countess automated cell counterで計数し、1×106細胞アリコートをペレット化する。PBSを除去し、細胞ペレットを、TaqMan hPSC Scorecard Panel(Thermofisher)分析のために500μlのトリゾール試薬(ThermoFisher)に再懸濁するか(項D参照)、又はフローサイトメトリー分析のために1mlの氷冷FACSバッファー(PBS中の2%FBS)に再懸濁する(項E参照)。
C. 指向性分化アッセイ
このアッセイによって、高ストリンジェンシーな指向性分化アプローチを使用する場合のPSC又はEDMD、NEMD、NEED、NE、ED、MD OSCの後期系列分化能力を、指向性分化PSC又はOSCにおいて後期NE、MD、ED遺伝子の発現と後期NE、MD、ED細胞のパーセンテージとを定量することを通して調べることができる。
後期NE系列を生成するNEED、NEMD及びNE OSCの能力をアッセイするために、TP63+表皮前駆細胞への指向性分化用プロトコールが使用される(Zhongら、2020)。
PSC又はOSCは、VTNコート6ウェル培養皿上でE8培地中で継代する。約30%コンフルエントになったときに(0日目=d0)、E8を分化培地(DMEM/F12、L-アスコルビン酸、セレニウム、トランスフェリン、インスリン、1×化学的に定義された脂質濃縮物)に切り替える。d0~8日目(d8)まで、細胞は、分化培地中で以下の処理:d0~6(10μMのSB431542);d1~6(5μMのCHIR99021);d1~8(10ng/mlのBMP4(R&D));d4~8(5μMのDAPT(Tocris 2634)で培養する。この段階(d8)で、細胞は、PBSで2回洗浄し、TrypLE Selectで解離し、PBSに再懸濁する。細胞は、Countess automated cell counterで計数し、1×106細胞アリコートをペレット化する。PBSを除去し、細胞ペレットを、フローサイトメトリー分析のために1mLの氷冷FACSバッファー(PBS中の2%FBS)に再懸濁する(下記の項E参照)。
NE OSCがケラチノサイトを生成する能力をアッセイするために、NE OSCは、200000細胞/ウェルで6ウェルプレートにプレーティングし、E8培地中で3日間培養し、次に分化培地(DKSFM(Defined Keratinocyte Serum Free Medium)、1μMのレチノイン酸、25ng/mLのBMP4)に4日間切り替える。4日目から11日目まで、培地は、DKSFMと2~3日毎に交換する。14日目から25日目まで、培地は、CnT-07に切り替え、2~3日毎に交換した。データは、下記の項Dに説明するように2-ΔΔCT法に従って分析した(図7にD11段階の培養からのデータが示されている)。
後期ED系列を生成するNEED、EDMD及びED OSCの能力をアッセイするために、初期PDX1+膵臓前駆細胞への指向性分化用プロトコールが使用される(Leeら、2019)。
PSC又はOSCは、VTNコート6ウェル培養皿上でE8培地中で65k~100k細胞/cm2にて継代する。約80~90%コンフルエントになったときに、膵臓分化が開始される(d0)。胚体内胚葉(DE)は、100ng/mlのアクチビンA(PeproTech、120-14E)を用いた3日間の処理、5mMのGSK-3阻害剤、CHIR-99021(Stemgent、04-0004)を用いた1日目の処理、並びに0.5mMのCHIR-99021を用いた2日目の処理によって誘導される。0.25mMのL-アスコルビン酸(Sigma-Aldrich、A4544)及び50ng/mlのFGF7(R&D、251-KG)の2日間の処理の後、前腸(FG)段階が生じる。PDX1+初期膵臓前駆細胞は、0.25mMのL-アスコルビン酸、50ng/mlのFGF7、250nMのヘッジホッグ阻害剤、SANT-1(Sigma、S4572)、1mMのレチノイン酸(Sigma、R2625)、100nMのBMP阻害剤、LDN-193189(Stemgent、04-0019)、及び200nMのPKC活性化剤であるTPB(EMD Millipore、565740)を2日間添加することによって生成させる。この段階(d7)で、細胞は、PBSで2回洗浄し、TrypLE Selectで解離し、PBSに再懸濁する。細胞は、Countess automated cell counterで計数し、1×106細胞アリコートをペレット化する。PBSを除去し、細胞ペレットを、フローサイトメトリー分析のために1mlの氷冷FACSバッファー(PBS中の2%FBS)に再懸濁する(下記の項E参照)。
後期MD系列を生成するNEMD、EDMD及びMD OSCの能力をアッセイするために、ISL1+心臓前駆細胞への指向性分化用プロトコールが使用された(Balafanら、2020)。
PSC又はOSCは、VTNコート6ウェル培養皿上でE8培地中で継代する。約75%コンフルエントになったときに、コロニーは、0.5mMのEDTAを使用して解離した単一細胞とし、VTNコート6ウェル皿上で10μMのROCKiを添加したE8培地中で2.4×104細胞/cm2にて播種する。24h後、培地を、ROCKiを有さないE8に交換し、その後、毎日交換する。60~70%コンフルエントになったときに(2~3日間)、細胞は、インスリンを含まないB27(Thermo Fisher Scientific)を添加したRPMI 1640(Thermo Fisher Scientific)中の6μMのCHIR99021(Tocris Bioscience)で処理する(d0)。24h後(d1)、CHIR99021を含む培地は、インスリンを含まないRPMI-B27のみと交換する。48時間後(d3)、細胞は、インスリンを含まないRPMI-B27で希釈した5μMのIWP2(Tocris Bioscience)で処理する。48時間後(d5)、培地は、新たに調製したインスリンを含まないRPMI-B27と交換する。48時間後(d7)、細胞は、PBSで2回洗浄し、TrypLE Selectで解離し、PBSに再懸濁する。細胞は、Countess automated cell counterで計数し、1×106細胞アリコートをペレット化する。PBSを除去し、細胞ペレットを、フローサイトメトリー分析のために1mLの氷冷FACSバッファー(PBS中の2%FBS)に再懸濁する(項E参照)。
D. TaqMan hPSC Scorecard Panelを使用した初期PL、MED、NE、MD、ED遺伝子の発現のプロファイリング
各TaqMan hPSC Scorecard Panelアッセイでは、500μlのトリゾールに再懸濁した1×106未分化、EB分化、指向性分化PSC又はOSC(上記の項A~C参照)を使用する。
全mRNAは、製造元のガイドラインに従って有機相分離によって精製する。cDNAは、供給元のプロトコールに従ってHigh-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystem)を使用して500ngのmRNAを逆転写して生成する。
次に、PL、NE、MED、MD、ED特異的遺伝子のmRNAレベルを、TaqMan(商標)hPSC Scorecard(商標)Kit(Applied Biosystem)を使用して定量する。この事前に設計されたTaqManパネルは、9種のPL、6種のMED、26種のED、22種のMD及び22種のNE遺伝子を含む85種の系列特異的遺伝子の発現を定量する(下記の表5参照。ヒト三系列TaqMan hPSC Scorecard Panel)。これらの85種の遺伝子の発現プロファイルに基づいて、各系に対して分化スコアがTaqman Scorecard Panel(<https://apps.thermofisher.com/hPSCscorecard/home.html>)に関連するソフトウェアを使用して割り出される。このスコアは、未分化又は分化条件下での、系の3胚葉への分化能力を反映している。
Figure 2024524626000006
ケラチノサイト指向性分化アッセイ(上記の項C)では、cDNAは、NANOG、OCT4、PAX6、TP63及びKRT14用のTaqManプローブ(Thermofisher、TaqMan(商標)hPSC Scorecard(商標)Kit、ref A15872)を使用して分析する。GAPDH又はACTINは、内部標準として増幅される。データは2-ΔΔCT法に従って分析する。
E. フローサイトメトリーによる初期及び後期PL、NE、MD及びED細胞集団の定量
1mlの氷冷FACSバッファー(PBS中の2%のFBS)に再懸濁した1×106単一細胞アリコートは、死細胞を生きた細胞から識別するために、適切なLIVEDEAD Fixable Dead Cell Stain(Thermo Fisher Scientific)を用いてRT°で10分間インキュベートする。細胞をFACSバッファーで2回洗浄する。固定及び透過処理を、製造元のガイドラインに従ってBD Cytofix/Cytoperm Fixation/Permeabilization Kit(BD Biosciences)を使用して実施する。固定及び透過処理した細胞は、300μlのBD Perm/Washバッファー中に回収し、以下のように混合した6本の別々のチューブに分注する:チューブ1(50μlのBD Perm/Washバッファー);チューブ2(50μlのBD Perm/Washバッファー+コンジュゲート抗体1のアイソタイプ対照);チューブ3(50μlのBD Perm/Washバッファー+コンジュゲート抗体2のアイソタイプ対照);チューブ4(50μlのBD Perm/Washバッファー+コンジュゲート抗体1);チューブ5(50μlのBD Perm/Washバッファー+コンジュゲート抗体2);チューブ6(50μlのBD Perm/Washバッファー+コンジュゲート抗体1+コンジュゲート抗体2)。下記の表6(ヒト三系列フローサイトメトリーパネル)に、これらの実験に使用する抗体を列挙する。各サンプルは、RT°で30分間インキュベートする。インキュベーション後、サンプルは、1mLのFACSバッファーで3回洗浄し、300μlのFACSバッファーに再懸濁し、40μmセルストレーナーを通し、フローサイトメトリー分析まで氷上で保存する。各サンプルでは、20kのイベントを、MACSQuant Xフローサイトメーター(Miltenyi Biotec)で捕捉し、FlowJo Xで分析する。生存率の制御は、LIVE/DEAD(商標)Fixable Far Red Dead Cell Stain Kit,for 633 or 635 nm excitation(# L34974、ThermoFisher Scientific)を用いて実施する。
Figure 2024524626000007


Figure 2024524626000008


Figure 2024524626000009


Figure 2024524626000010

III. PSCにおける後期NE、ED、MD系列指定因子の候補遺伝子の不活性化によるケラチノサイトOSCの生成
ケラチノサイトOSCは、WTC-11 hiPSCから操作されたNE OSCにおける遺伝子編集によって生成する。
NE OSCのケラチノサイト(皮膚)系列への分化能力を限定するために、3種の後期神経系列指定因子遺伝子(NEUROD2、SOX10、PAX3)を選択して不活性化する。
gRNAの設計、スクリーニング、NE OSCでのトランスフェクション、及びクローン系の生成は、上記のパートIに記載されるように実施する。
各標的遺伝子のケラチノサイト系列は、分化効率を、上記のパートIIに記載されるTp63+表皮前駆細胞への指向性分化を使用して未改変PSC、NE OSC(WT/WT;FS/WT;FS/FS;FS/IF)及びケラチノサイトOSC(WT/WT;FS/WT;FS/FS;FS/IF)の間で比較する。
IV. 結果
A. WTC-11 hiPSCでのEB分化アッセイ
WTC-11 hiPSCは、EB培養条件でEBを形成し、bFGFなしでの培養の7日目(D7)に直径20μmに達することができる。予想されるように、0日目(D0)では、遺伝子の発現への寄与の約98.85%が多能性遺伝子によるものである(上で述べたTaqMan hPSC Scorecard Panelを使用して決めた)。MED系列遺伝子からの寄与は非常に小さく(0.98%)、ED、MD又はNE遺伝子からの寄与は更に少ない(0.01~0.04%の範囲)(図5)。
培養のD7では、bFGFなしでEB培地中で、hiPSC細胞はED、NE及びMD系列へと効率的に分化する。遺伝子の発現への寄与の2.66%のみが多能性マーカーによるものであるのに対して、ED、MD及びNE遺伝子の遺伝子の発現への寄与はそれぞれ24.99%、28.12%及び39.91%に達する。この段階では、MED系列遺伝子は、遺伝子の発現の4.31%しか寄与しない(図5及び表7に要約)。培養のD14(図6)では、ED、MD及びNE遺伝子の遺伝子の発現への寄与はそれぞれ、38.00%、14.00%及び37.00%に達する。
Figure 2024524626000011
B. hiPSCからの初期系列限定OSC
MD限定OSCについての表8、NE限定OSCについての表9、又はED限定OSCについての表10、又は図6に示すように、系列限定OSCから得られるEBは、他の型と比較してMD、NE、及びED初期系列細胞に顕著に富む。結果は、下記の表8~10にまとめられており、また、図6にも示されている。
Figure 2024524626000012

Figure 2024524626000013
Figure 2024524626000014

したがって、WTC-11 hiPSCにおける系列指定因子遺伝子の少なくとも1種又は組合せの遺伝子編集によるkoによって、系列限定OSCの生成が可能となり、それによってかかるアプローチが哺乳類でも実行可能であることが示される。実際、図6に示すように、MIXL1、GSC又はEOMESのいずれかの不活性化は、NE系列の細胞に顕著に富む(1.5~最大2.2倍の増加)OSCを発生する胚様体(EB)をもたらすが、一方、多能性細胞並びにME、ED及びMED系列の細胞は、対照に比べて顕著に減少する。同様に、ED系列の遺伝子が不活性化されたとき、EBの細胞系列組成における顕著なバイアスが観察される(例えば、SOX17、NE細胞の2.0倍の増加)。
初期NE系列の細胞への分化を支配する1種の遺伝子の不活性化(例えば、PAX6)により、MED系列の細胞に富むようになる(6.3倍超の増加)が、一方、初期MEDへの分化を支配する1種の遺伝子の不活性化(例えば、TBXT)により、NE系列(最大1.8倍の増加)及びED系列(最大1.3倍の増加)の細胞に富む胚様体が生じる。
C. ケラチノサイトへの指向性分化
MED又は初期NE系列指定因子遺伝子が不活性化されているいくつかのクローンOSCの指向性分化の結果(FS/WT;FS/IF;FS/FS、図7)は、ケラチノサイトのマーカー遺伝子として通常考えられるTP63及び/又はKRT14遺伝子の発現が対照に対して野生型細胞と比較して大幅に増加することを示す。
(実施例II)
アヒルESCからのOSCの生成
分化能力が限定されたOSCの操作が、食料品生産に関連する非哺乳類種に一般的に適用できるか示すために、アヒルOSCは、アヒルESC(dESC)における遺伝子編集によって生成する。
dESCは、内部で産みたての卵から単離し、未分化及びdESC分化EBにおけるPL、NE、MED、MD、ED遺伝子の発現のqRT-PCR分析によって品質管理した後に遺伝子編集を行った。
I. アヒルESCにおける系列指定因子の候補遺伝子の不活性化によるアヒルOSCの生成
下記の表12に、本研究で使用したヒト遺伝子に対するアヒルオルソログの一覧表を示す。
Figure 2024524626000015
A. 初期系列指定因子候補遺伝子の選択、及びゲノム操作プラットフォーム
予想されるように、3種のMEDアヒルオルソログのタンパク質ドメイン並びにFOXA2、PAX6、SOX1及びTBX6は、ヒトの種と鳥類の種との間でよく保存されている。アヒル遺伝子のノックアウトを生成するために、実施例Iに記載のアプローチは、アヒルESCにおいて、候補遺伝子のオープンリーディングフレームにfsインデルをCRISPR/Cas9編集によって生成させることを目的として使用する。
gRNAの設計
選択した系列指定因子遺伝子のゲノム及びコード配列は、ウェブベースのゲノムブラウザからダウンロードし、実施例Iに記載される配列解析ソフトウェアに保存する。転写因子のDNA結合ドメインのすぐ上流のエクソン配列の200~300ヌクレオチドを、CRISPOR gRNA設計ツール(<http://crispor.tefor.net/>)でクエリとして使用する。このgRNA設計ツールは、アヒル(アナス・プラティリンコス(Anas platyrhynchos))を含む複数の無脊椎動物及び脊椎動物の種にわたるgRNAを設計及び分析する場合の選択肢となる。遺伝子毎に、オンターゲット予測活性が最も高くかつオフターゲット予測活性が最も低い3種の最高ランクのgRNAを、アヒルESCにおける更なる機能試験用に選択する。
gRNAスクリーニング
各アヒル遺伝子を標的とする最も活性の高いgRNAを同定するため、9種のアヒルMED gRNAを実施例Iに記載されるようにトランスフェクトし、特定のgRNAでトランスフェクトした細胞のプールからのゲノムDNAを分析する。各標的では、座位TIDE/ICEオリゴペアは、gRNA標的部位に隣接する500~700のゲノム配列を増幅するように設計される。座位特異的PCR増幅産物は、NucleoSpin Gel and PCR Clean upカラム(Macherey-Nagel)を使用して精製する。各生成物は、内部TIDE/ICEシークエンシングオリゴを使用したサンガーシークエンシング(Genewiz)に送られる。サンガー配列ABIファイルは、次に、各gRNAの切断部位で生じる小さなインデルを定量することができるTIDE(<https://tide.nki.nl/>)又はICE synthego(https://www.synthego.com/products/bioinformatics/crispr-analysis)ソフトウェアを使用して、解析する。
アヒルOSCクローン系の生成
gRNA/Cas9 RNP複合体のトランスフェクション
アヒルESCは、dESC培地(ウシ胎児血清(Gibco)及びLIF(Gibco)を添加したDMEM/F12培養培地(ThermoFisher))中で培養し、0.25%のトリプシン-EDTA(Gibco)を使用して継代する以外は、実施例Iと同じである。図4Bに示すように、全ての試験した遺伝子においてヒトWTC-11細胞クローンよりも更に高い効率でインデルを生成させることが可能であった。
CRISPR編集dESCのクローンの拡大
アヒルESCは、dESC培地で培養し、0.25%のトリプシン-EDTAを用いて継代する以外は、実施例Iと同じである。
CRISPR編集クローンの座位特異的MiSeqシークエンシング
座位特異的アヒルIllumina MiSeqオリゴを、各gRNA切断部位の周囲の150~200のゲノム領域を増幅するために設計する。各座位特異的MiSeqオリゴペアを、対応座位を標的とするgRNAで編集したDNAを含む96ウェルプレートの、Herculase II Fusion DNA Polymerase(Agilent)を用いたMiSeq PCR I増幅(15サイクル)に使用する。アプローチは、それ以外は、実施例Iと同じである。
MiSeqで配列決定されたCRISPR編集クローンのCRISPResso2分析
CRISPResso2分析は、実施例Iで説明したように実施する。
CRISPR編集クローンの増幅及び保存
このステップは、実施例Iと同様に実施する。
B. アヒルPSC及びOSCの分化能力の評価
多能性アッセイ
このアッセイによって、未分化アヒルESC又はNE OSCの多能性状態を、初期PL、NE、MED、MD、ED遺伝子の発現を定量することで調べることができる。アヒルESC又はNE OSCは、ゼラチンコート6ウェル培養皿上でdESC培地中で2継代増殖する。約75%コンフルエントのウェルは、PBSで2回洗浄し、0.25%のトリプシン-EDTAで解離し、PBSに再懸濁する。細胞をCountess automated cell counterで計数し、1×106細胞アリコートを収集する。PBSを除去し、細胞ペレットを、qRT-PCR分析のために500μlのトリゾール試薬(ThermoFisher)に再懸濁する。約150bpの増幅産物を増幅するプライマー、好ましくは選択した遺伝子マーカーのエクソン-エクソンジャンクションにおけるものは、当技術分野でよく知られているように設計する。Powertrack SYBR Green master mix(Applied Biosystems)を、リアルタイムPCR装置(QuantStudio、ThermoFisher)を使用してPCR関連シグナルを定量するのに使用する。
EB分化アッセイ
このアッセイによって、低ストリンジェンシーな分化アプローチを使用する場合のアヒルESC又はアヒルNE OSCの分化能力を、初期PL、NE、MED、MD、ED遺伝子の発現を定量することを通して調べることができる。プロトコールは、実施例Iとほぼ同じであり、簡潔に述べれば、未分化アヒルESC及びOSCを80%コンフルエンシーになるまで培養した。細胞は、酵素で解離し、計数し、超低付着性(ULA)において、ESC培地(GlutaMAXを含まないDMEM/F-12、10%のFBS、1.4%のグルタミン、1.2%のピルビン酸、1.2%のNEAA、0.2%の2-メルカプトエタノール、10ng/μlのhLIF、1.15ng/μlのIL6、1.15ng/μlのIL6R、1.15ng/μlのhSCF、5.75ng/μlのiGF1)中に500000細胞/ウェルでプレーティングし、インキュベーターに1日間戻した。翌日、凝集体を15mLファルコンチューブに移し、室温で5~10分間重力により沈降させた。上清を除去し、細胞を6mLのEB培地(GlutaMAXを含むDMEM/F-12、20%のKnock-Out血清代替物、1%のMEM非必須アミノ酸、0.1%の2-メルカプトエタノール)を使用して再懸濁し、超低付着性(ULA)6ウェル皿に移した。培地は、2日毎に新鮮なEB培地に12日間交換した。
12日間の培養後、EBを分析のため収集する。PBSで2回洗浄後、EBは、Accutaseで解離し、PBSに再懸濁する。細胞は、Countess automated cell counterで計数し、1×106細胞アリコートをペレット化する。PBSを除去し、細胞ペレットを、qRT-PCRによる分析のために500μlのトリゾール試薬(ThermoFisher)に再懸濁する。分化能力バイアスは、対照未改変dESCから派生する分化細胞とアヒルNE OSCから派生する分化細胞との間のシグナル倍率変化を計算することによって決定する。
EB分化のための代替プロトコール
AggreWell(商標)400 24ウェル培養プレート(StemCell technologies)をAnti-Adherence Rinsing Solution(StemCell technologies)で前処理し、マイクロウェル内に存在する気泡を遠心分離により除去する。接着培養において、細胞は、室温で5分間TrypLE(商標)(Thermo Fisher)消化して解離させ、AggreWell(商標)400培養プレートに播種する。6×105細胞の細胞懸濁液を各ウェルに播種する(500細胞/マイクロウェル)。細胞は、これらの条件で、37℃及び5%のCO2にて24時間インキュベートする。このインキュベーション後、小さな凝集体が形成される。この凝集体をULAプレートに移し(1ウェルの内容物を6ウェルプレートの1ウェルに移す)、培地をEB培地(下記の組成)に変える。この時点から、細胞を37℃、125rpm及び5%CO2でインキュベートする。培地を2日毎に交換し、各時点でQCR分析のために1つのP6の内容物を回収する。
アヒルケラチノサイト指向性分化
未分化アヒルESC及びOSCは、6ウェルプレートにおいて、10,000細胞/ウェルでプレーティングし、ESC培地(GlutaMAXを含まないDMEM/F-12、10%のFBS、1.4%のグルタミン、1.2%のピルビン酸、1.2%のNEAA、0.2%の2-メルカプトエタノール、10ng/μlのhLIF、1.15ng/μlのIL6、1.15ng/μlのIL6R、1.15ng/μlのhSCF、5.75ng/μlのiGF1)中で3日間培養し、次に、分化培地(DKSFM(Defined Keratinocyte Serum Free Medium)、50μMのレチノイン酸、25ng/mLのBMP4)に1日間切り替える。1日目から16日目まで、培地は、DKSFM(Defined Keratinocyte Serum Free Medium)と2~3日毎に交換する。
全RNAを0日目及び16日目に生成した細胞ペレットから抽出する。逆転写のステップ後、cDNAは、表12に列挙されている遺伝子の典拠を用いることから設計を開始した各遺伝子マーカーのエクソン-エクソンジャンクションにまたがる特異的プライマーを使用してqRT-PCRによって分析する。SYBRグリーンを、リアルタイムPCRの間にDNA分子の定量を可能とするDNA結合蛍光色素として使用する。
II. 結果
A. dOSCでのEB分化アッセイ
hiPSCの場合と同様に、未改変dESCの場合、7日間又は12日間の培養後、ED、NE、及びMD細胞は、EBの細胞の大部分を構成することが見出される。また、NE限定OSC(GSC、MIXL1又はEOMESのアヒル遺伝子オルソログのいずれかが不活性化(示されていない))からできているEBにおいてNE系列の細胞が顕著に富んでいることが見出される。図8に示すように、非不活性化系列経路細胞(non-inactivated lineage pathway cells)に顕著に富むアヒル胚様体が、アヒルESCにおける初期ED、初期NE又は初期MD遺伝子の不活性化によりもたらされる。例えば:
- NEMD及びNEED dOSCに由来するEBにおいて、NE細胞は、EB細胞集団の大部分を占め、非改変dESCから得られるEBと比較して最大1.43倍富んでおり、
- NEMD及びEDMD dOSCに由来するEBにおいて、MD細胞集団もまた、非改変dESCから得られるEBと比較して最大2.26倍増加することが見出され、
- EDMD dOSCに由来するEBにおいて、ED細胞集団もまた、非改変dESCから得られるEBと比較して最大1.65倍増加することが見出される。
逆に、不活性化系列経路に対応する細胞の集団の減少が、例えば、以下のように観察される:
- NEED dOSCに由来するEBにおいて、ED又はMD細胞集団は、非改変dESCから得られるEBと比較して最大1/3.6減少することが見出され、
- EDMD dOSCに由来するEBにおいて、NE細胞集団は、非改変dESCから得られるEBと比較して1/1.55減少することが見出される。
B. NE OSCのケラチノサイトへの指向性分化
2種の異なる二重ko NE OSCクローン系(Pax6(FS/WT);Gsc(FS/FS)及びPax6(FS/FS);Gsc(FS/FS))のケラチノサイトへの分化能力を、上で述べたように指向性分化を使用して試験する(図10)。2種のクローンは、ケラチノサイトのマーカーとして当技術分野でみなされているKrt14の発現が対照と比較して顕著に増加していることが示される。前記クローンは、逆に、NEマーカー遺伝子及びPL遺伝子の発現が減少していることが示される。
(実施例III)
分化OSCの加工
アヒルパテ
アヒルパテの調製のために、OSC派生筋細胞及びOSC派生脂肪細胞の細胞を、300gでの遠心分離によって別々に収集する。細胞集団は、組み合わせ(60%の筋細胞及び40%の脂肪細胞)、適量のタマネギ、ニンニク、ワケギ、タイム、パセリ及びローレルとブレンドする。次に、この混合物を、ダイズレシチン、小麦粉、コニャック、塩及びコショウと混合する。調製物は、水を満たしたテリーヌ皿に置き、60~200℃、好ましくは160℃で5~90分間、好ましくは45分間焼く。
OSC派生筋細胞及びOSC派生脂肪細胞は、上で述べたように得たOSCから得られる。別々のバイオリアクターに播種し、5日間増幅させた後、前記OSCは、次に、分化誘導し、300gでの遠心分離によって別々に収集する。
アヒルレバーパテ
アヒルレバーパテの生産のために、OSC派生肝細胞は、ED系列へのバイアスがかかっているOSCから得る。バイオリアクターに播種し、5%CO2を用いて37℃で5日間増幅した後、前記OSCは、10ng/mLのBMP4及び20ng/mLのHGFサイトカインを使用して、更に胚体ED細胞へと分化させ、更には成熟肝細胞へと分化させる。次いで、前記肝細胞は、脂質過負荷条件下で培養して、脂肪症を達成する(RA Moravcovaら、2015)。
次いで、得られた成熟脂肪肝細胞は、収集し、遠心分離によって処理して培養培地を除去し、任意に、少なくとも1回の洗浄/遠心分離のサイクルを細胞に適用して培養培地を除去する。上清を除去して細胞のペレットを残す。
次いで収集した脂肪肝細胞は、他の食品原料(表13、アヒルレバーパテ組成物の例)と共に更に加工してアヒルレバーパテを生産する。
Figure 2024524626000016

脂肪肝細胞は、業界基準の高せん断混合又は分散技術を使用して、植物脂肪及び残りの全ての食品原料と約15℃の温度にて5000RPMで10分間混合する。
この調製物を、瓶に注ぎ、次に、70℃(水浴)で5~10分間調理し、冷却した後、4℃で保存する。これにより、フォアグラ様製品がもたらされる。
牛肉様製品
牛肉の胚性幹細胞は、上で述べたように遺伝子操作して、MD系列へのバイアスがかかっているOSCを得る。前記OSCは、バイオリアクターにおいて牛肉OSCに適した基本培地中に播種し、5%CO2を用いて37℃で5日間増幅した後、更にDE細胞へと分化させ、更にはウシ骨格筋細胞へと分化させる。
次いで、細胞バイオマスは、収集し、1,500g(4℃)で10分間遠心分離によって処理して、細胞残屑及び培養培地を除去し、任意に、少なくとも1回の洗浄/遠心分離のサイクルを適用する。得られた細胞は、業界基準の高せん断混合又は分散技術を用いて、様々な食品原料、例えば、塩、コショウ、砂糖、質感付与剤、着色料、香辛料と15℃にて5000RPMで約10分間混合する。これらの食品原料は、中間細胞ベース調製物の総質量に対して0.1~5質量%という少量で細胞に添加する。
最終食品製品を後処理するために、中間細胞ベース調製物をベースにしたインク及び脱臭植物脂肪、例えば、精製ヤシ油をベースにしたインクの両方を使用して3D印刷の追加ステップを実施して、適切な外見、質感を更に提供し、従来のホールカットの1片の牛肉の口当たりを模倣する。次いで、印刷された食料品は冷却され、真空下でプラスチック袋に包装される。最終的に包装された食料品は、フライパンで焼くなどの更なる消費前のステップまで4℃で保存する。
参考文献
Figure 2024524626000017

Figure 2024524626000018

Claims (15)

  1. 食料品を生産する方法であって、インビトロ分化非ヒト動物細胞を加工するステップを含み、前記インビトロ分化非ヒト動物細胞が少なくとも1種の寡能性幹細胞(OSC)に由来し、前記少なくとも1種のOSCは、少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている、方法。
  2. インビトロ分化非ヒト動物細胞を加工するステップの前に、前記インビトロ分化非ヒト動物細胞を生産するステップであって、
    - 少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている少なくとも1種のOSCを増幅させるステップ、
    - 任意に、前記増幅されたOSCを胚様体として培養するステップ、又は
    - 任意に、前記OSCを分化させるステップ
    を含むステップを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている少なくとも1種のOSCを増幅させるステップの前に、遺伝子編集システムを用いて少なくとも1種の挿入及び/又は欠失を生成させることにより、多能性幹細胞(PSC)又は複能性若しくは全能性細胞において少なくとも1種の系列指定因子遺伝子を安定して不活性化することによって、前記少なくとも1種のOSCを得るステップを含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記PSC又は複能性若しくは全能性細胞は、非ヒト脊椎動物、例えば、家畜、魚類、鳥類;昆虫;甲殻類、例えば、小エビ、エビ、カニ、ザリガニ、及び/又はロブスター;軟体動物、例えば、タコ、イカ、コウイカ、ホタテガイ、カタツムリに由来する、請求項3に記載の方法。
  5. 前記PSCが、非ヒト動物起源からの人工PSC(iPSC)、胚性幹細胞(ESC)、核移植ESC(ntESC)から選択される、請求項3に記載の方法。
  6. 前記OSCは、PAX6、SOX1、ZNF521、SOX2、SOX3、ZIC1、TBXT、TBX6、MSGN1、KLF6、FOXA1、FOXA2、FOXA3、SOX17、HNF4A、GSC、MIXL1及びEOMES又はそれらの組合せから選択される少なくとも1種の神経外胚葉(NE)、中胚葉(MD)、内胚葉(ED)又は中内胚葉(MED)系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている、請求項1に記載の方法。
  7. 前記OSCは、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現及び少なくとも1種のMD系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている、請求項6に記載の方法。
  8. 前記OSCは、肝臓特異的であり、NE系列指定因子遺伝子の少なくとも1種の遺伝子の発現、MD系列指定因子遺伝子の少なくとも1種の遺伝子の発現、及びED細胞の非肝臓前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている、請求項6に記載の方法。
  9. 前記OSCは、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現及び少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されている、請求項6に記載の方法。
  10. 前記OSCは、骨格筋特異的であり、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現、ED系列指定因子遺伝子の少なくとも1種の遺伝子の発現、及びMD細胞の非骨格筋前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている、請求項6に記載の方法。
  11. 前記OSCは、心臓特異的であり、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現、少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子の発現、及びMD細胞の非心臓前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子の発現が不活性化されている、請求項6に記載の方法。
  12. 前記OSCは、脂肪細胞特異的であり、少なくとも1種のNE系列指定因子遺伝子の発現、少なくとも1種のED系列指定因子遺伝子の発現、及びMD細胞の非脂肪細胞の前駆細胞への分化を支配する少なくとも1種の遺伝子が不活性化されている、請求項6に記載の方法。
  13. 少なくとも1種のOSCが、骨格筋、心臓、肝細胞、線維芽細胞、赤血球、ケラチノサイト、若しくは脂肪細胞特異的OSC、又はそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
  14. NE、MD、ED又はMED系列指定因子遺伝子の群から選択される少なくとも2種の系列指定因子遺伝子の発現が不活性化されていることを特徴とする、非ヒトOSC。
  15. 少なくとも1種の非ヒト動物細胞を含む食料品であって、NE、MD、ED又はMED系列指定因子遺伝子の群から選択される少なくとも1種の系列指定因子遺伝子の発現が、遺伝子編集システムを用いて少なくとも1種の挿入及び/又は欠失を生成させることにより不活性化されている、食料品。
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