JP2024520817A - 電気めっきされたクロム層の明度l*を調節するための方法 - Google Patents

電気めっきされたクロム層の明度l*を調節するための方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、電気めっきされたクロム層の、詳細には、暗色の電気めっきされたクロム層の明度L*を調節するための方法に関する。方法は、コロイド粒子及び/又はそれらの凝集体を含む水性三価クロム電気めっき浴、並びにそれらを完全に又は部分的に除去し、任意選択でコロイド粒子を加える工程を含む。

Description

本発明は、電気めっきされたクロム層の、詳細には、暗色の電気めっきされたクロム層の明度L*を調節するための方法に関する。方法は、コロイド粒子及び/又はそれらの凝集体を含む水性三価クロム電気めっき浴、並びにそれらを完全に又は部分的に除去し、任意選択でコロイド粒子を加える工程を含む。
クロム層のまさに始まりから、暗色クロム層への高い関心が見られた。更に暗色の六価クロム層に始まり、今日の焦点は、より高い環境受容性に起因して三価クロム層に大きくシフトした。
典型的には、各クロム層、具体的には暗色クロム層は、L*a*b*色空間系を基準とする色値によって特徴付けられる。L*値が明度(又は明るさとも呼ばれることがある)を定義する一方で、a*及びb*値は、それぞれのクロム層の色を定義する。L*値100が拡散白色を定義する一方で、L*値0は濃い黒である。a*及びb*の値は正及び負であり得、a*値は緑色(負)及び赤色(正)を表し、一方でb*値は青色(負)及び黄色(正)を表す。0であるa*及びb*の組み合わせは、無彩色の灰色を表し、L*値が小さくなるほど(50以下等の)濃い無彩色の黒色となる。
それぞれの水性三価クロム電気めっき浴の化学組成及び/又はその析出パラメーターに応じて、多少変化する値を有する非常に多様なL*a*b*値が生成される。これらの変化がより顕著であるほど、2つの電気めっきされたクロム層間の光学的差異はより明白となる。
残念なことに、多くの場合において、2つの電気めっきされたクロム層間の明白な光学的差異は許容されない。多くの場合において、これは、生産においてそのようなわずかではあるが明白な光学的差異が得られることが非常に多いため、その特定の化学的性質を有するプロセスは、別のプロセスと容易に交換できないことを意味する。
電気めっきされたクロム層の明度及び色をそれぞれ調節する最初の試みは、既に公知である。
例えば、WO 2017/053655 A1は、暗色Cr(III)めっきのための柔軟な色調節に言及し、活性炭フィルターを通して浴をろ過することによって調節される濃度を有する硫黄含有化合物を含む電気めっき浴を開示している。しかしながら、そのような試みには、除去が十分に特異的ではなく、浴中にとどまるべき他の化合物も除去されるという欠点がある。更に、そのような硫黄含有化合物は容易に再利用することができず、多くの場合失われ、これはコスト面から許容されない。加えて、様々な化合物が活性炭フィルターによって影響を受けるため、残存する化合物の濃度は多くの場合、明確ではなく、それらを正確に決定するために高度な分析が必要とされる。
US 2012/312694 A1は、コロイドシリカの分散体を含む水性酸性三価クロム電解質に言及する。しかしながら、US'694は、柔軟な又は可逆的な色調節については言及していない。
US 2019/301038 A1は、黒色三価クロム層を沈殿させるように構成された電気めっき浴であって、ナノダイヤモンド及びチオシアン酸イオンを含む電気めっき浴に言及する。しかしながら、US'038も、柔軟な又は可逆的な色調節については言及していない。
US 2013/213813 A1は、三価クロム析出物の色を調節し制御する方法に言及する。しかしながら、US'813は、コロイド粒子の除去については言及していない。
したがって、電気めっきされたクロム層の明度及び色をそれぞれ調節し/適合させる、向上された方法を提供する需要が継続的にある。
WO 2017/053655 A1 US 2012/312694 A1 US 2019/301038 A1 US 2013/213813 A1
ほとんどすべての水性三価クロム電気めっき浴が有機化合物を含むため、そのような有機化合物の濃度、最も好ましくは暗い色を主として付けるものと色付けに関与しないもの両方の濃度に影響を及ぼすことなく明度L*を効果的に調節するための方法を提供することが本発明の主目的である。
可逆的で取り扱い容易な調節を可能にする方法を提供することが本発明の更なる目的であった。
光学的差異が少なくとも最小化されるか又は完全に回避されさえするように、明度を別の電気めっきされたクロム層の明度に容易に調和させるために、ある特定の明度を微調整することを可能にする方法を提供することも本発明の目的であった。
これらの目的は、本発明によって、即ち、電気めっきされたクロム層の明度L*を調節するための方法であって、
(a)基材を用意する工程と、
(b)
(i)三価クロムイオンと、
(ii)前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤と、
(iii)コロイド粒子及び/又はそれらの凝集体と、
(iv)+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する1種又は1種より多くの硫黄含有化合物と
を含む水性三価クロム電気めっき浴を用意する工程と、
(c)前記電気めっき浴と基材を接触させ、電流を印加して、L*a*b*色空間系に従う明るさの値L1*を有する基材上にクロム層を電解析出させる工程と、
(d)処理された水性三価クロム電気めっき浴が、
(d1)前記コロイド粒子及び/又は前記それらの凝集体を完全に又は部分的に除去する工程、
及び任意選択で、
(d2)コロイド粒子を加える工程
によって生じるように、工程(c)から得られる水性三価クロム電気めっき浴を処理する工程と、
(e)処理された水性三価クロム電気めっき浴と別の基材を接触させ、電流を印加して、L*a*b*色空間系に従う明るさの値L2*を有する別の基材上にクロム層を電解析出させる工程と
を含み、
L2*がL1*より高いか又はより低い、
方法によって解決される。
実施例の項において下記に示されるように、本発明は、わずかに異なるL*値への適合をうまく可能にする。これにより、区別ができない明度を達成するための調和が可能となる。
好ましくは、本発明の方法は、主として装飾的な電気めっきされたクロム層に言及する。
本発明の方法の工程(a)において、基材が用意される。
好ましいのは、基材が非金属基材を含む、好ましくはプラスチック基材を含む、本発明の方法である。
好ましいのは、非金属基材、好ましくはプラスチック基材が、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、それらの混合物、及び/又はそれらの複合体;好ましくは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、それらの混合物、及び/又はそれらの複合体を含む、本発明の方法である。そのようなプラスチック基材は多くの場合、自動車部品等の装飾的な用途において、具体的にはABS及びABS-PCにおいて使用される。
好ましいのは、基材、好ましくは非金属基材、より好ましくはプラスチック基材が、少なくとも1つの金属層を含む(最も好ましくは追加で)、本発明の方法である。好ましくは、少なくとも1つの金属層は、銅若しくは銅合金層、及び/又はニッケル若しくはニッケル合金層を含む。
好ましいのは、工程(a)後且つ工程(c)前、
(a1)基材を前処理する工程、好ましくは基材を清浄にする工程、最も好ましくは脱脂する工程及び/又は基材を酸洗いする工程
を含む本発明の方法である。
好ましくは、脱脂する工程は電解脱脂する工程を含む。
好ましくは、酸洗いする工程は、酸、好ましくは無機酸と接触させる工程を含む。
工程(a1)は好ましくは、水すすぎが後に続く。
本発明の方法の工程(b)において、前記水性三価クロム電気めっき浴が用意される。
前記電気めっき浴は水を含み、電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは少なくとも55vol.-%以上が、より好ましくは65vol.-%以上、更により好ましくは75vol.-%以上、なお更により好ましくは85vol.-%以上、なおもより好ましくは90vol.-%以上、最も好ましくは95vol.-%以上が、水である。最も好ましくは、水は唯一の溶媒である。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、好ましくは1.5から5.0までの、より好ましくは2.1から4.6までの、更により好ましくは2.4から4.2までの、なおより好ましくは2.7から3.8までの、最も好ましくは3.0から3.5までのpH範囲を有する酸性である、本発明の方法である。pHは好ましくは、塩酸、硫酸、アンモニア、水酸化カリウム、及び/又は水酸化ナトリウムで調節される。
水性三価クロム電気めっき浴は、(i)三価クロムイオンを含む。
好ましいのは、前記電気めっき浴において、三価クロムイオンが、電気めっき浴の全体積基準で、5g/Lから35g/Lまでの、好ましくは6g/Lから32g/Lまでの、より好ましくは7g/Lから29g/Lまでの、更により好ましくは8g/Lから26g/Lまでの、なお更により好ましくは9g/Lから23g/Lまでの、最も好ましくは10g/Lから22g/Lまでの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。
好ましくは、三価クロムイオンは、三価クロム塩由来、好ましくは無機クロム塩及び/又は有機クロム塩由来、最も好ましくは無機クロム塩由来である。好ましい無機クロム塩は、塩化物及び/又は硫酸アニオン、好ましくは硫酸アニオンを含む。非常に好ましい無機クロム塩は、塩基性硫酸クロムである。好ましい有機クロム塩は、カルボン酸アニオン、好ましくはギ酸、酢酸、リンゴ酸、及び/又はシュウ酸アニオンを含む。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴において、三価クロムイオンが任意選択の鉄イオン(鉄イオンに関して、これは任意選択であるがいくつかの場合において好ましく、下記の文章を参照されたい)と一緒に、水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、水性三価クロム電気めっき浴中のすべての遷移金属イオンの80mol-%以上、好ましくは90mol-%以上、より好ましくは93mol-%以上、更により好ましくは96mol-%以上、最も好ましくは98mol-%以上を表す、本発明の方法である。
水性三価クロム電気めっき浴は、(ii)前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤を含む。
そのような化合物は、溶液中に三価クロムイオンを保持する。好ましくは、1種又は1種より多くの錯化剤は(iv)の化合物ではなく、したがって好ましくは(iv)とは異なる。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴において、1種又は1種より多くの錯化剤は、有機酸及び/又はそれらの塩、好ましくは有機カルボン酸及び/又はそれらの塩、最も好ましくは1、2、又は3個のカルボキシル基を含む有機カルボン酸及び/又はそれらの塩を含む、本発明の方法である。
有機カルボン酸及び/又はそれらの塩(好ましくは1、2、又は3個のカルボキシル基を含む有機カルボン酸及び/又はそれらの塩も)は、好ましくは置換基で置換されている又は非置換である。好ましい置換基は、アミノ基及び/又はヒドロキシル基を含む。好ましくは、置換基は、SH部分及び/又はSCN部分を含まない。
より好ましくは、有機カルボン酸及び/又はそれらの塩(好ましくは1、2、又は3個のカルボキシル基を含む有機カルボン酸及び/又はそれらの塩も)は、アミノカルボン酸(好ましくはアルファ-アミノカルボン酸)、ヒドロキシルカルボン酸、及び/又はそれらの塩を含む。好ましい(アルファ-)アミノカルボン酸は、グリシン、アスパラギン酸、及び/又はそれらの塩を含む。好ましくは、アミノカルボン酸(好ましくはそれぞれアルファ-アミノカルボン酸)は、(iv)に従う化合物ではない、より好ましくは硫黄含有アミノカルボン酸ではない(好ましくはそれぞれ硫黄含有アルファ-アミノカルボン酸ではない)、最も好ましくはメチオニンではない。1種又は1種より多くの錯化剤が、(iv)とは別個であることが特に好ましい。
より好ましいのは、1種又は1種より多くの錯化剤が、ギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン、アスパラギン酸、及び/又はそれらの塩、好ましくはギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、及び/又はそれらの塩、より好ましくはギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、及び/又はそれらの塩、更により好ましくはギ酸、酢酸、及び/又はそれらの塩、最も好ましくはギ酸及び/又はそれらの塩を含む、本発明の方法である。
好ましいのは、1種又は1種より多くの錯化剤が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、5g/Lから200g/Lまでの範囲の、好ましくは8g/Lから150g/Lまでの範囲の、より好ましくは10g/Lから100g/Lまでの範囲の、更により好ましくは12g/Lから75g/Lまでの、なお更により好ましくは15g/Lから50g/Lまでの範囲の、最も好ましくは20g/Lから35g/Lまでの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。
水性三価クロム電気めっき浴は、(iii)コロイド粒子及び/又はそれらの凝集体を含む。
好ましくは、水性三価クロム電気めっき浴は、少なくとも前記コロイド粒子を含む。これは、それらの凝集体を伴うか又は伴わないかのいずれかを意味する。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、コロイド懸濁液である、本発明の方法である。これは、前記コロイド粒子の存在に起因している。
好ましいのは、コロイド粒子が、ケイ素、アルミニウム、及び炭素、好ましくはケイ素及びアルミニウムからなる群から選択される1種又は1種より多くの化学元素を含む、最も好ましくはコロイド粒子が化学元素アルミニウムを含む、本発明の方法である。
一般に好ましいのは、コロイド粒子が、ナノ粒子を含む、好ましくはナノ粒子である、本発明の方法である。好ましくは、コロイド粒子は、1000nm未満の、好ましくは500nm未満の粒径を有し、より好ましくは少なくとも90%のコロイド粒子が500nm未満の粒径を有し、最も好ましくは少なくとも90%のコロイド粒子が150nm未満の粒径を有する。
好ましいのは、前記コロイド粒子が、ナノ粒子を含む、好ましくはナノ粒子である、本発明の方法である。
好ましいのは、前記コロイド粒子が、体積基準で、100nm以下の、好ましくは80nm以下の、より好ましくは60nm以下の、更により好ましくは50nm以下の、最も好ましくは40nm以下の、非常に最も好ましくは30nm以下の、更に最も好ましくは25nm以下の平均粒子径D50を有する、本発明の方法である。
より好ましいのは、前記コロイド粒子が、100nm以下の、好ましくは80nm以下の、より好ましくは60nm以下の、更により好ましくは50nm以下の、最も好ましくは40nm以下の、非常に最も好ましくは30nm以下の、更に最も好ましくは20nm以下の粒径を有する少なくとも粒子を含む、本発明の方法である。最も好ましくは、100nmの粒径を超過しない。
好ましいのは、化学元素ケイ素を含むコロイド粒子が、シリカを含む、好ましくはシリカコロイド粒子である、本発明の方法である。
好ましいのは、化学元素アルミニウムを含むコロイド粒子が、酸化アルミニウムを含む、好ましくは酸化アルミニウムコロイド粒子である、本発明の方法である。
最も好ましいのは、前記コロイド粒子が、酸化アルミニウムを含む、好ましくは酸化アルミニウムコロイド粒子である、本発明の方法である。
好ましいのは、化学元素炭素を含むコロイド粒子が、ナノダイヤモンドを含む、好ましくはナノダイヤモンドコロイド粒子である、本発明の方法である。
好ましいのは、工程(b)において又は工程(d2)後、前記コロイド粒子が、それぞれの水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、0.05g/Lから100g/Lまでの、好ましくは0.1g/Lから80g/Lまでの、より好ましくは0.25g/Lから60g/Lまでの、更により好ましくは0.5g/Lから45g/Lまでの、最も好ましくは0.75g/Lから35g/Lまでの、更に最も好ましくは1g/Lから20g/Lまでの範囲の全量で存在する、本発明の方法である。
水性三価クロム電気めっき浴は、(iv)、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する1種又は1種より多くの硫黄含有化合物を含む。好ましくは、それらの酸、塩、アイソフォーム、及びベタインが含まれる。しかしながら、硫酸アニオンは、(iv)に属するものと考えられない。
いくつかの場合において、前記1種又は1種より多くの硫黄含有化合物が二価硫黄原子を含む本発明の方法が好ましい。
一般に好ましいのは、工程(b)において、水性三価クロム電気めっき浴が、前記電気めっき浴の全体積基準で、1mmol/Lから1150mmol/Lまでの、好ましくは16mmol/Lから900mmol/Lまでの、より好ましくは30mmol/Lから800mmol/Lまでの、更により好ましくは70mmol/Lから700mmol/Lまでの、最も好ましくは110mmol/Lから595mmol/Lまでの範囲の全濃度で(iv)を含む、本発明の方法である。これは好ましくは、工程(d)において得られる処理された水性三価クロム電気めっき浴に同様に該当する。
いくつかの場合において、好ましいのは、(iv)が、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する少なくとも1種の無機硫黄含有化合物を含む、本発明の方法である。しかしながら、他の場合において、(iv)が、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する少なくとも1種の有機硫黄含有化合物を含む、本発明の方法が好ましい。
好ましいのは、(iv)が、チオシアン酸アニオンを含む、本発明の方法である。本発明の文脈において、チオシアン酸アニオン(即ち、SCN-)は、無機であると考えられ、チオシアネート部分を含む有機化合物は、有機チオシアネートであると考えられる。好ましくは、チオシアン酸アニオンは、チオシアネート塩(例えば、カリウム、ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム)を通して、又はチオシアン酸を通して存在する。
特に好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴において、チオシアン酸アニオンが、電気めっき浴の全体積基準で、1mmol/Lから400mmol/Lまでの、好ましくは3mmol/Lから350mmol/Lまでの、より好ましくは5mmol/Lから300mmol/Lまでの、更により好ましくは8mmol/Lから250mmol/Lまでの、なお更により好ましくは12mmol/Lから200mmol/Lまでの、最も好ましくは15mmol/Lから180mmol/Lまでの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。これは好ましくは、工程(d)において得られる処理された水性三価クロム電気めっき浴に同様に該当する。
好ましいのは、(iv)が、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有し追加的に窒素原子を含む、好ましくは追加的にアミノ基を含む硫黄含有化合物を少なくとも含む、より好ましくは(iv)が、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有するアミノ酸を少なくとも含む、最も好ましくは(iv)が、少なくともメチオニンを含む、本発明の方法である。
好ましくは、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有するアミノ酸は、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有するアルファ-アミノ酸、最も好ましくは+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有するタンパク質原性アミノ酸を含む。最も好ましくは、これはメチオニン及びシステインを含む。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴において、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有し追加的に窒素原子を含む少なくとも1種の硫黄含有化合物(好ましくは少なくとも、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有するアミノ酸、より好ましくは前記アルファ-アミノ酸)が、電気めっき浴の全体積基準で、10mmol/Lから550mmol/Lまでの、好ましくは30mmol/Lから480mmol/Lまでの、より好ましくは60mmol/Lから410mmol/Lまでの、更により好ましくは80mmol/Lから350mmol/Lまでの、なお更により好ましくは100mmol/Lから280mmol/Lまでの、最も好ましくは130mmol/Lから200mmol/Lまでの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。これは好ましくは、工程(d)において得られる処理された水性三価クロム電気めっき浴に同様に該当する。
特に好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、
- +5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する無機硫黄含有化合物、好ましくはチオシアン酸アニオン、
及び/又は(好ましくは及び)
- +5以下の酸化数を有する硫黄原子を有し追加的に窒素原子を含む硫黄含有化合物、好ましくは+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有するアミノ酸、最も好ましくはメチオニン
を含む、本発明の方法である。
したがって、いくつかの場合において、水性三価クロム電気めっき浴が、(iv)の2種又は2種より多くの化合物、最も好ましくはチオシアン酸アニオン及びメチオニンを含む、本発明の方法が好ましい。
いくつかの場合において、水性三価クロム電気めっき浴が、以下の化合物:
(1)2-(2-ヒドロキシ-エチルスルファニル)-エタノール、
(2)チアゾリジン-2-カルボン酸、
(3)チオジグリコールエトキシレート、
(4)2-アミノ-3-エチルスルファニル-プロピオン酸、
(5)3-(3-ヒドロキシ-プロピルスルファニル)-プロパン-1-オール、
(6)2-アミノ-3-カルボキシメチルスルファニル-プロピオン酸、
(7)2-アミノ-4-メチルスルファニル-ブタン-1-オール、
(8)2-アミノ-4-メチルスルファニル-酪酸、
(9)2-アミノ-4-エチルスルファニル-酪酸、
(10)3-カルバムイミドイルスルファニル-プロパン-1-スルホン酸、
(11)3-カルバムイミドイルスルファニル-プロピオン酸、
(12)チオモルホリン、
(13)2-[2-(2-ヒドロキシ-エチルスルファニル)-エチルスルファニル]-エタノール、
(14)4,5-ジヒドロ-チアゾール-2-イルアミン、
(15)チオシアン酸、
(16)2-アミノ-4-メタンスルフィニル-酪酸、
(17)1,1-ジオキソ-1,2-ジヒドロ-1ラムダ*6*-ベンゾ[d]イソチアゾール-3-オン、
(18)プロパ-2-イン-1-スルホン酸、
(19)メタンスルフィニルメタン、
(20)2-(1,1,3-トリオキソ-1,3-ジヒドロ-1ラムダ*6*-ベンゾ[d]イソチアゾール-2-イル)-エタンスルホン酸
(その塩を含む)のうちの1種又は1種より多くを含む、本発明の方法が更により好ましい。
好ましくは、水性三価クロム電気めっき浴は、更なる化合物を含むか、又は好ましくは、以下に概説されるような特定の化合物を含有しない。
好ましいのは、工程(b)において、好ましくは追加的に工程(e)において、水性三価クロム電気めっき浴が、前記電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは0.1mmol/Lから10mmol/Lまでの、好ましくは0.4mmol/Lから8mmol/Lまでの、より好ましくは0.8mmol/Lから6mmol/Lまでの、更により好ましくは1.2mmol/Lから4mmol/Lまでの、最も好ましくは1.5mmol/Lから2.5mmol/Lまでの範囲の濃度でFe(II)イオンを更に含む、本発明の方法である。
好ましいのは、Fe(II)イオンの前記濃度が、処理された水性三価クロム電気めっき浴に同様に該当する、本発明の方法である。最も好ましくは、一般に、別段に記載がない限り、水性三価クロム電気めっき浴(ある特定の化合物又はイオン等)に関して与えられる濃度は、(iii)を除く、工程(d)後に得られる処理された水性三価クロム電気めっき浴に同様に該当する。多くの場合において、前記Fe(II)イオンは、電気めっきの性能に肯定的な影響を及ぼす。更に、いくつかの場合において、クロム層は鉄を含むことが好ましい。
好ましいのは、工程(b)において、好ましくは追加的に工程(e)において、水性三価クロム電気めっき浴が、前記電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは0.2mol/Lから1.3mol/Lまでの、より好ましくは0.3mol/Lから1.1mol/Lまでの、更により好ましくは0.4mol/Lから1.0mol/Lまでの、なお更により好ましくは0.5mol/Lから0.9mol/Lまでの、最も好ましくは0.6mol/Lから0.8mol/Lまでの範囲の濃度で硫酸アニオンを更に含む、本発明の方法である。好ましくは、硫酸イオンは、三価クロムイオンの供給源、例えば塩基性硫酸クロムに起因して存在する。硫酸イオンは、前記電気めっき浴の導電性に優れて寄与する。
一般に、本発明の文脈において、好ましくは追加的に工程(e)において、とは、好ましくは、それが、工程(e)において利用される処理された水性三価クロム電気めっき浴に同様に該当することを意味する。
好ましいのは、工程(b)において、好ましくは追加的に工程(e)において、水性三価クロム電気めっき浴が、ハロゲンアニオンを、前記電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは0.1mol/Lから6mol/Lまでの範囲の全濃度で、より好ましくは0.5mol/Lから5mol/Lまでの、更により好ましくは1mol/Lから4.5mol/Lまでの、なお更により好ましくは1.5mol/Lから4.2mol/Lまでの、最も好ましくは2mol/Lから3.9mol/Lまでの範囲の全濃度でハロゲンアニオンを更に含む、本発明の方法である。
より好ましいのは、ハロゲンアニオンが、前記電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは0.5mol/Lから5mol/Lまでの、より好ましくは0.8mol/Lから4.7mol/Lまでの、更により好ましくは1.3mol/Lから4.5mol/Lまでの、なお更により好ましくは1.8mol/Lから4mol/Lまでの、最も好ましくは2.3mol/Lから3.7mol/Lまでの範囲の全濃度で塩化物アニオンを含む、本発明の方法である。塩化物イオンは、好ましくは塩化物塩及び/又は塩酸由来であり、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化クロム(少なくともすべての塩化物イオンの一部として)、及び/又はそれらの混合物由来である。典型的には、塩化物イオンは、導電性塩のアニオンとして存在する。非常に好ましい導電性塩は、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムであり、塩化アンモニウムが最も好ましい。
好ましいのは、工程(b)において、好ましくは追加的に工程(e)において、ハロゲンアニオンは、臭化物アニオンを含む、本発明の方法である。臭化物イオンは典型的に、望ましくない六価クロム種のアノード形成を回避する。好ましくは、臭化物イオンは、水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、3g/Lから20g/Lまでの範囲の、好ましくは4g/Lから18g/Lまでの範囲の、より好ましくは5g/Lから16g/Lまでの範囲の、更により好ましくは6g/Lから14g/Lまでの範囲の、最も好ましくは7g/Lから12g/Lまでの範囲の濃度を有する。臭化物イオンは、好ましくは臭化物塩由来であり、好ましくは臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化アンモニウム、及び/又はそれらの混合物由来である。好ましくは、硫酸イオンが水性三価クロム電気めっき浴において利用される場合、臭化物イオンも存在する。
好ましいのは、工程(b)において、及び好ましくは追加的に工程(e)において、水性三価クロム電気めっき浴がアンモニウムイオンを更に含む、本発明の方法である。
好ましいのは、工程(b)において、好ましくは追加的に工程(e)において、水性三価クロム電気めっき浴が、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物を更に含む、本発明の方法である。最も好ましくは、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物は、(ii)とは別個である(即ち、異なる)。これは好ましくは、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物がカルボン酸を含まない、好ましくは有機酸を含まないことを意味する。
多くの場合において、水性三価クロム電気めっき浴において、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物が、ホウ素含有化合物、好ましくはホウ酸及び/又はボレート、最も好ましくはホウ酸を含む、本発明の方法が好ましい。好ましいボレートはホウ酸ナトリウムである。
一般に好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴において、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、30g/Lから250g/Lまでの範囲の、好ましくは35g/Lから200g/Lまでの範囲の、より好ましくは40g/Lから150g/Lまでの範囲の、更により好ましくは45g/Lから100g/Lまでの範囲の、最も好ましくは50g/Lから75g/Lまでの範囲の全濃度を有する、本発明の方法である。これは、更により好ましくは前記ホウ素含有化合物に、なお更により好ましくは前記ボレートと一緒の前記ホウ酸に、最も好ましくは前記ホウ酸に該当する。最も好ましくは、1種又は1種より多くのpH緩衝化合物は、ホウ酸を含むがボレートは含まない。したがって、最も好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、好ましくは35g/Lから90g/Lまでの、好ましくは40g/Lから80g/Lまでの、より好ましくは50g/Lから70g/Lまでの、最も好ましくは56g/Lから66g/Lまでの範囲の全量濃度でホウ酸を含む、本発明の方法である。
しかしながら、いくつかの他の場合において、水性三価クロム電気めっき浴は、別個のpH緩衝化合物を明示的に含まない。どちらかと言えば、前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤は、三価クロムイオンのための錯化剤としてのみ働くのではなく、追加的にpH緩衝化合物として働くような量で存在し、そのように選択される。本発明の文脈において、これはあまり好ましくないが可能である。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴は、亜鉛を含むイオン及び/又は化合物を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。好ましくは、クロム層は、亜鉛を実質的に含まない、好ましくは含まない。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が化成処理組成物ではない、本発明の方法である。換言すると、水性三価クロム電気めっき浴は、化成被覆に、及び/又は亜鉛若しくは亜鉛合金層への適用に好適ではない。なお更に換言すると、本発明の方法は化成被覆法ではない。
好ましいのは、基材が、亜鉛及び亜鉛合金層を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、フッ化イオンを、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。好ましくは、クロム層は、フッ素を実質的に含まない、好ましくは含まない。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、リン酸アニオンを、実質的に含まない、好ましくは含まない、より好ましくは亜リン酸含有化合物を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。好ましくは、クロム層は、亜リン酸を実質的に含まない、好ましくは含まない。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、亜硫酸アニオンを、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、酸化数+6を有するクロムを含む化合物を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。したがって、前記電気めっき浴は、六価クロムを、実質的に含まない、好ましくは含まない。これは具体的には、六価クロムは、少なくとも意図的には水性三価クロム電気めっき浴に加えられないことを意味する。
いくつかの場合において、好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴は、コバルトを含むイオン及び/又は化合物を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。好ましくは、クロム層は、コバルトを、実質的に含まない、好ましくは含まない。しかしながら、他の場合において、水性三価クロム電気めっき浴が、コバルトを含むイオン及び/又は化合物を含む、本発明の方法が好ましい。好ましくは、クロム層はコバルトを含む。コバルトは、環境的に疑問の余地があるが、いくつかの場合において暗色化効果を与える。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、可溶性アルミニウム化合物(それらの塩を含む)を実質的に含まない、好ましくは含まない、好ましくは溶解したアルミニウムイオンを含まない、本発明の方法である。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、ニッケルイオンを、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。いくつかの場合において、最大150ppmまでの典型的なNi汚染が観察され、これは基本的に許容され、したがってニッケルイオンを実質的に含まないと考えられる。したがって、いくつかの場合において、ニッケルイオンは、水性三価クロム電気めっき浴の全質量基準で、0ppmから200ppmまでの、好ましくは1ppmから150ppmまでの、最も好ましくは2ppmから100ppmまでの範囲の濃度を有することが好ましい。しかしながら、最も好ましくは、水性三価クロム電気めっき浴はニッケルを含まない。
環境的に疑問の余地があるニッケル及びコバルト種を回避することが一般に好ましい。これにより一般に、廃水処理及び浴の処分の複雑さが減少する。加えて、ニッケルもコバルトも一般に、暗い色調を得るために必要とされない。
好ましいのは、水性三価クロム電気めっき浴が、スルファミン酸及びそれらの塩を、実質的に含まない、好ましくは含まない、本発明の方法である。
本発明の方法の工程(c)において、基材は水性三価クロム電気めっき浴と接触され、前記クロム層が基材上に電解析出されるように電流が印加される。
好ましいのは、工程(c)における、好ましくは追加的に工程(e)における電流が、好ましくは3A/dm2から30A/dm2までの、より好ましくは4A/dm2から25A/dm2までの、更により好ましくは5A/dm2から20A/dm2までの、最も好ましくは6A/dm2から18A/dm2までの範囲の直流である、本発明の方法である。
好ましいのは、工程(c)において、好ましくは追加的に工程(e)において、少なくとも1つのアノードが利用される、本発明の方法である。少なくとも1つのアノードは好ましくは、グラファイトアノード、貴金属アノード、及び混合金属酸化物アノード(MMO)からなる群から選択される。
好ましい貴金属アノードは、白金めっきチタンアノード及び/又は白金アノードを含む。
好ましい混合金属酸化物アノードは、酸化白金被覆チタンアノード及び/又は酸化イリジウム被覆チタンアノードを含む。
好ましいのは、工程(c)において、好ましくは追加的に(e)において電解析出されるクロム層が、0.05μmから1μmまでの、好ましくは0.1μmから0.8μmまでの、より好ましくは0.125μmから0.6μmまでの、最も好ましくは0.15μmから0.5μmまでの範囲の層厚さを有する、本発明の方法である。
好ましいのは、工程(c)において、好ましくは追加的に(e)において接触させる工程が、1分~20分間、好ましくは2分~15分間、より好ましくは3分から10分まで行われる、本発明の方法である。
好ましいのは、工程(c)において、好ましくは追加的に(e)において接触させる工程が、20℃から60℃までの、好ましくは25℃から52℃までの、より好ましくは30℃から45℃までの範囲の温度で行われる、本発明の方法である。
本発明の方法の工程(c)において、クロム層は、基材上に電解析出され(即ち、それは電気めっきされたクロム層である)、L*a*b*色空間系に従う、明るさの値L1*を有する。
好ましいのは、電気めっきされたクロム層が暗色、好ましくは黒色である、本発明の方法である。これは、それが、暗色又は黒色の、電気めっきされたクロム層であることを意味する。これは一般に、好ましくは工程(e)において得られる電気めっきされたクロム層にも該当する。
好ましいのは、L1*が55以下、好ましくは53以下、より好ましくは51以下、更により好ましくは50以下、最も好ましくは49以下である、本発明の方法である。
好ましいのは、工程(c)において得られる電気めっきされたクロム層が、好ましくは-1.5から+3までの範囲の、好ましくは-1から+2.5までの範囲の、最も好ましくは-0.5から+2までの範囲のa1*値を有する、本発明の方法である。好ましくは、a1*値は少なくとも正である。
好ましいのは、工程(c)において得られる電気めっきされたクロム層が、L*a*b*色空間系に従うb1*値を有する、本発明の方法である。
好ましいのは、b1*が、+4から+7までの、好ましくは+4.5から+6.5までの範囲である、本発明の方法である。
好ましいのは、工程(c)の前の、少なくとも1つの金属又は金属合金層を析出させるための少なくとも1つの金属めっき工程、最も好ましくは少なくとも1つのニッケル又はニッケル合金層を析出させるための少なくとも1つのニッケルめっき工程を更に含む、本発明の方法である。多くの場合において、好ましくは、2つ又は更には3つのそのような金属めっき工程が関与する。
最も好ましくは、少なくとも1つのニッケル又はニッケル合金層は、少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は(好ましくは又は)少なくとも1つのサテンニッケル層、最も好ましくは少なくとも1つの光沢ニッケル層を含む。
より好ましいのは、少なくとも1つのニッケル又はニッケル合金層が、少なくとも1つの半光沢ニッケル層、好ましくは前記少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層に加えて少なくとも1つの半光沢ニッケル層を含む、本発明の方法である。好ましくは、少なくとも1つの半光沢ニッケル層は任意選択である。最も好ましくは、前記少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層の前に、少なくとも1つの半光沢ニッケル層が析出される(適用される場合)。
また、好ましいのは、少なくとも1つのニッケル又はニッケル合金層が、少なくとも1つのMPSニッケル層、好ましくは前記少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層に加えて少なくとも1つのMPSニッケル層、最も好ましくは前記少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は前記少なくとも1つのサテンニッケル層並びに更に前記少なくとも1つの半光沢ニッケル層に加えて少なくとも1つのMPSニッケル層を含む、本発明の方法である。本発明の文脈において、MPSは、MPSニッケル層が非導電性微小粒子を含むことを表し、非導電性微小粒子は、後に続くクロム層において、好ましくは暗色クロム層において、微小孔を生じる。少なくとも1つのMPSニッケル層は好ましくは任意選択である。
いくつかの場合において、MPSニッケル層が、クロム層、好ましくは暗色クロム層と隣り合う、本発明の方法が好ましい。
他の場合において、クロム層、好ましくは暗色クロム層が少なくとも1つの光沢ニッケル層及び/又は少なくとも1つのサテンニッケル層と隣り合い、これは多くの場合において好ましく、最も好ましくは少なくとも1つの光沢ニッケル層との組み合わせにおいてである、本発明の方法が好ましい。
好ましくは、クロム層、より好ましくは暗色クロム層は、層スタックの一部である。
本発明の方法の工程(d)において、処理された水性三価クロム電気めっき浴が生じるように、工程(c)から得られる水性三価クロム電気めっき浴が処理される。処理は、
(d1)前記コロイド粒子及び/又は前記それらの凝集体を完全に又は部分的に除去する工程、
及び任意選択で、
(d2)コロイド粒子を加える工程
を含む。
いくつかの場合において、工程(d1)及び工程(d2)を含む、本発明の方法が好ましい。換言すると、工程(d2)は任意選択ではなく、むしろ実際に行われる。
本発明の方法において工程(d)は必須の工程である。工程(d)の主な目標は、明るさの値L1*をわずかに変化させるために、コロイド粒子及びそれらの凝集体(凝集体が形成される場合)の全体の含有量を変えることである。
好ましくは、工程(d1)は、様々な程度で行われ、除去は完全であるか又は部分的である。明るさの必要とされる適合を達成するために、除去の程度はL1*への望ましい効果に依存する(更なる詳細は以下の実施例を参照されたい)。
したがって、本発明の方法は好ましくは、明度L*を、好ましくは、±10単位の、好ましくは±7単位のL*の範囲内に調節するための方法である。これは、最も好ましくはL1*を基準とする。
以下の実施例において示されるように、工程(d)を行うことによってb*1も変化し得るが、これは必ずしも常にそうではない。したがって、好ましいのは、明度L1*だけではなく、最も好ましくは上述で定義されるとおりにb1*に関して定義される範囲内でb1*を調節することによって追加的に色も調節される、本発明の方法である。
工程(d1)において、前記コロイド粒子及び/又は前記凝集体は除去される。好ましいのは、工程(d1)において、ろ過、遠心分離、及び/又は沈降、最も好ましくはろ過によって除去する工程が行われる、本発明の方法である。
最も好ましくは、除去する工程は、好ましくは、粒子のみを、好ましくはコロイド粒子を除去するのに十分である、機械的除去を含む。
好ましくは、ろ過は、好ましくは機械的ろ過のための、フィルター膜を利用する。
より好ましくは、ろ過は、紙フィルターを利用する。
いくつかの場合において、ろ過が活性炭を利用しない、本発明の方法が好ましい。粒子は典型的に高い効率で除去されるが、多くの場合において、活性炭は有機化合物も結合する(したがって除去する)ことが独自の実験により示されており、これは本来望ましくない。
工程(d1)を行うことによって、典型的に、後に続くめっき工程において明るさは少なくともわずかに増大している(実施例を参照されたい)。
本発明の方法の工程(d2)において、コロイド粒子が加えられる。好ましくは、工程(d2)は様々な程度で行われ、添加は、明るさの変更が望ましい/必要とされる範囲で様々であってもよい(更なる詳細は以下の実施例を参照されたい)。最も重要なことには、工程(d2)は、工程(d1)において行われる除去に依存する。例えば、工程(d1)において除去されるコロイド粒子及び/又は凝集体が多すぎた場合、そのような望ましくない減少は工程(d2)において補うことができ、したがって、望ましい明るさを達成することができる。しかしながら、経験的観察によって、工程(d1)において行われる除去の程度が明確に定義される場合、工程(d2)を行う必要はないことがある。
いくつかの場合において、工程(d2)において加えられるコロイド粒子は、例えば、先の工程(d1)のうちの1つにおいて行われる、少なくとも部分的に、工程(d1)において除去されるものである、本発明の方法が好ましい。それに対して、他の場合において、加えられるコロイド粒子は、新しい/新鮮なコロイド粒子であることが好ましい。
いくつかの場合において、工程(d2)において加えられるコロイド粒子は、工程(d1)において除去されるものと同じ種類である(例えば同じ粒径等)、最も好ましくは同じ化学的性質及び同じ種類である、本発明の方法が好ましい。換言すると、工程(d2)において加えられるコロイド粒子は、工程(b)において用意される水性三価クロム電気めっき浴において存在するコロイド粒子に相当する。しかしながら、いくつかの場合において、好ましくは、種類及び/又は化学的性質は、工程(d1)において除去されたものとは異なり、したがって、工程(b)において用意される水性三価クロム電気めっき浴において存在することは、除外されない。
好ましくは、工程(d2)において加えられるコロイド粒子は、混合、好ましくは撹拌及び/又はかき混ぜ下で、加えられる。
工程(d1)、及び任意選択で(d2)の結果として、処理された水性三価クロム電気めっき浴が得られる。
本発明の方法の工程(e)において、L*a*b*色空間系に従う明るさの値L2*を有する別の基材上にクロム層が電解析出されるように、別の基材は、処理された水性三価クロム電気めっき浴と接触され、電流が印加される。典型的には、工程(e)において得られる明るさは、工程(c)において得られる明るさとは異なる。
好ましくは、工程(c)について上述されるものは、工程(e)に同様に適用される。最も好ましくは、工程(e)は、析出パラメーターについて、工程(c)の繰り返しである。
好ましいのは、L2*がL1*より高い、本発明の方法である。これは典型的に、工程(d1)が行われた後に予想される結果である。
より好ましいのは、L2*が、55より大きい、好ましくは53より大きい、より好ましくは51より大きい、更により好ましくは50より大きい、最も好ましくは49より大きい、本発明の方法である。多くの場合において、暗色/黒色の電解析出されたクロム層は典型的に、49から55より下までの範囲の明るさL*を有する。したがって、例えば別の三価クロム電気めっき浴から析出されるクロム層の明るさに適合させるために、明るさの微調整を可能にする利用可能な手段を有することは非常に望ましい。
好ましいのは、工程(e)において得られる電気めっきされたクロム層が、好ましくは-1.5から+3までの範囲の、好ましくは-1から+2.5までの範囲の、最も好ましくは-0.5から+2までの範囲のa2*値を有する、本発明の方法である。好ましくは、a2*値は少なくとも正である。
好ましいのは、工程(e)において得られる電気めっきされたクロム層が、L*a*b*色空間系に従うb2*値を有する、本発明の方法である。好ましくは、b2*は、最も好ましくはL2*がL1*より高い場合、b1*より低い。
以下の実施例において、本明細書において特許請求の範囲で定義されるような本発明の範囲を限定することなく本発明の趣旨が更に例示される。
(a)基材を用意する工程:
以下の実施例のために、主として、銅層を上に有するプラスチック基材を模倣するために、基材として銅パネル(100mm×70mm)を使用した。
第1の工程において、室温(RT)でUniclean(登録商標)279(Atotech社の製品)100g/Lで電解脱脂することによって、基材を清浄にした。その後、10vol.-%のH2SO4で銅パネルを酸洗いし、その次に水ですすいだ。
第2の工程において、清浄にし、すすいだ基材をニッケルめっきに供して、銅パネルの上に光沢ニッケル層を得た(パラメーター:4A/dm2で10分;UniBrite 2002、Atotech社の製品)。
(b)水性三価クロム電気めっき浴を用意する工程
以下の水性三価クロム電気めっき浴を使用した。
128g/Lの塩基性硫酸クロム
46g/Lのギ酸
60g/Lのホウ酸
12g/Lの臭化アンモニウム
100g/Lの塩化アンモニウム
110g/Lの塩化カリウム
25g/Lのメチオニン
2g/Lのチオシアン酸カリウム
3ml/Lの酸化アルミニウムナノ粒子分散体、40%、D50=25nm(NANOBYK-3603、BYK-Chemie GmbH社)
2mmol/LのFe(II)イオン
最終pH値は3.5であった。
(c)前記電気めっき浴と基材を接触させる工程
グラファイトアノード、及びカソードとして取り付けた基材を有するハルセル中で電気めっきを行った。5Aの電流を3分間、水性三価クロム電気めっき浴に印加し、浴の温度は約35℃であった。かき混ぜを空気かき混ぜ(air agitation)によって達成した。
結果として、ニッケルをめっきされた銅パネルの上に、それぞれの暗色の電気めっきされたクロム層を析出させた。その後、暗色の電気めっきされたクロム層を有する基材を水ですすいで、L*a*b*色空間系に従うL*a*b*値を決定した(Konica Minolta社CM-700 D分光光度計;CIE標準光源D65及び10°標準観測者)。校正は白黒基準で行った。典型的に高電流密度測定点として公知である、左縁端部から1cm、下縁端部から2cmに位置特定した領域で色を決定した(左縁端部はアノードに向いている)。このようにして、L1*を得た。
得られた値を下記のTable 1(表1)に要約する。
(d)水性三価クロム電気めっき浴をろ過する工程
工程(c)において利用される水性三価クロム電気めっき浴を、基本的にすべてのナノ粒子が除去されるようにWhatmanフィルター(グレード597)で2回ろ過した。
(e)別の基材を、ろ過した電気めっき浴と接触させる工程
別の基材、しかし上述の工程(a)において定義されるようなものを用いて、工程(c)に関して上述のとおりに電気めっきを繰り返し、行った。
工程(c)において上述のとおり、色の決定を繰り返した。このようにして、L2*を得た。
その次に、新鮮なコロイド粒子を有する水性三価クロム電気めっき浴を得るために、めっきが終わった後、ナノ粒子の新しい一部(3ml/L)を、工程(e)において利用した水性三価クロム電気めっき浴に加えた。
その後、なお別の基材を用いていわゆる「2回目の実行(second run)」において、工程(c)~(e)を繰り返した。
Table 1(表1)に示すように、本発明の方法は、電気めっきされたクロム層の、具体的には暗色の電気めっきされたクロム層の明度L*を調節するのに好適である。
上述の実施例は、コロイド粒子及びそれらの生じ得る凝集体の完全な除去を基本的に含む。したがって、Table 1(表1)に示すL*、a*、及びb*の最大及び最小値は、これらの値の全体的な、起こり得るシフトを基本的に表す。しかしながら、例えば水性三価クロム電気めっき浴の体積を部分的にのみろ過することによって、部分的な除去をすると、得られる変化はあまり劇的ではない(データは図示せず)。
これにより、特定の明度を満たすために、明度L*を適合的に調節することが可能となる。そのような適合的な調節は、異なる製品バッチからの明度を調和させることに、又は第1の製品の明度を第2の製品の明度と調和させるが、非常に類似の全体的な明度を提供することに有利である。これは、それらの個別の除去によって得られる(iii)の割り当てられた量を利用することによって達成することができる。
Table 1(表1)は、a*及びb*値は、「2回目の実行」においてうまく回復できることを更に示す。
一方でTable 1(表1)は、コロイドナノ粒子を除去すると、明度L*は著しく増大することを示す。他方で、コロイド粒子が再度加えられると、初期値は基本的に回復することができる。このようにして、本発明の方法は、可逆的な調節を提供する。
これは、本発明の方法は、異なる明度値を得ることができるように、前記コロイド粒子を用いたり用いなかったりする水性三価クロム電気めっき浴の使用を可能にすることを意味する。これは、個別の明度のための異なる特定の電気めっき浴がもはや必要とされないため、利点である。その代わりに、わずかに異なる明度のために単一の電気めっき浴を使用することができる。

Claims (15)

  1. 電気めっきされたクロム層の明度L*を調節するための方法であって、
    (a)基材を用意する工程と、
    (b)
    (i)三価クロムイオンと、
    (ii)前記三価クロムイオンのための1種又は1種より多くの錯化剤と、
    (iii)コロイド粒子及び/又はそれらの凝集体と、
    (iv)+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有する1種又は1種より多くの硫黄含有化合物と
    を含む水性三価クロム電気めっき浴を用意する工程と、
    (c)前記電気めっき浴と前記基材を接触させ、電流を印加して、L*a*b*色空間系に従う明るさの値L1*を有する前記基材上にクロム層を電解析出させる工程と、
    (d)工程(c)から得られる前記水性三価クロム電気めっき浴を処理して、 (d1)前記コロイド粒子及び/又は前記それらの凝集体を完全に又は部分的に除去すること、
    及び任意選択で、
    (d2)コロイド粒子を加えること
    によって、処理された水性三価クロム電気めっき浴が生じる工程と、
    (e)前記処理された水性三価クロム電気めっき浴と別の基材を接触させ、電流を印加して、L*a*b*色空間系に従う明るさの値L2*を有する前記別の基材上にクロム層を電解析出させる工程と
    を含み、
    L2*がL1*より高いか又はより低い、
    方法。
  2. 前記コロイド粒子が、ケイ素、アルミニウム、及び炭素、好ましくはケイ素及びアルミニウムからなる群から選択される1種又は1種より多くの化学元素を含む、最も好ましくは前記コロイド粒子が化学元素アルミニウムを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記コロイド粒子が、ナノ粒子を含む、好ましくはナノ粒子である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記コロイド粒子が、少なくとも、100nm以下の、好ましくは80nm以下の、より好ましくは60nm以下の、更により好ましくは50nm以下の、最も好ましくは40nm以下の、非常に最も好ましくは30nm以下の、更に最も好ましくは20nm以下の粒径を有する粒子を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 化学元素ケイ素を含む前記コロイド粒子が、シリカを含む、好ましくはシリカコロイド粒子である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 化学元素アルミニウムを含む前記コロイド粒子が、酸化アルミニウムを含む、好ましくは酸化アルミニウムコロイド粒子である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 化学元素炭素を含む前記コロイド粒子が、ナノダイヤモンドを含む、好ましくはナノダイヤモンドコロイド粒子である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 工程(b)において又は工程(d2)後、前記コロイド粒子が、それぞれの水性三価クロム電気めっき浴の全体積基準で、0.05g/Lから100g/Lまでの、好ましくは0.1g/Lから80g/Lまでの、より好ましくは0.25g/Lから60g/Lまでの、更により好ましくは0.5g/Lから45g/Lまでの、最も好ましくは0.75g/Lから35g/Lまでの、更に最も好ましくは1g/Lから20g/Lまでの範囲の全量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. (iv)が、チオシアン酸アニオンを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. (iv)が、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有し追加的に窒素原子を含む、好ましくは追加的にアミノ基を含む硫黄含有化合物を少なくとも含む、より好ましくは(iv)が、+5以下の酸化数を有する硫黄原子を有するアミノ酸を少なくとも含む、最も好ましくは(iv)が、少なくともメチオニンを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. L1*が55以下、好ましくは53以下、より好ましくは51以下、更により好ましくは50以下、最も好ましくは49以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 工程(d1)及び工程(d2)を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 工程(d1)において、ろ過、遠心分離、及び/又は沈降によって除去が行われる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. L2*がL1*より高い、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. L2*が、55より大きい、好ましくは53より大きい、より好ましくは51より大きい、更により好ましくは50より大きい、最も好ましくは49より大きい、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
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