JP2024517784A - スペソリマブを産生するための方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、抗IL-36R抗体のスペソリマブを産生するための方法に関する。より具体的には、本発明は、低下した銅濃度及び上昇した鉄濃度の存在下で、フェッドバッチ培養で、無血清細胞培養培地を用いて、スペソリマブを産生する方法に関する。加えて、本発明は、低レベルの塩基性種のスペソリマブ及び/又は高マンノース構造を有する低レベルのスペソリマブ種を含む組成物に関する。

Description

発明の分野
本発明は、抗IL-36受容体抗体のスペソリマブを産生するための方法に関する。より具体的には、本発明は、低下した銅濃度及び上昇した鉄濃度の存在下において、フェッドバッチ培養で無血清細胞培養培地を用いてスペソリマブを産生する方法に関する。加えて、本発明は、低レベルの塩基性種のスペソリマブ及び/又は高マンノース構造を有する低レベルのスペソリマブ種を含む組成物に関する。
背景
組換えモノクローナル抗体(mAb)は、哺乳動物細胞培養物中で一般的に発現される。収集された抗体は、荷電及びサイズなどの特性の異なる産物の変異体を含有し、これは産物の不均一性とも呼ばれる。不均一性の主な発生源は、細胞培養中に起こる翻訳後修飾及び分解である。抗体は典型的には、数工程のろ過及びクロマトグラフィーによって精製される。しかしながら、下流の処理を通して全ての不均一性を除去することは実践的ではない。それ故、細胞培養工程中に起こる修飾及び分解は、最終産物の品質に対して最も重大な影響を及ぼす。翻訳後修飾に起因する不均一性は、モノクローナル抗体の産物の品質、安全性及び有効性に対して影響を及ぼし得る。主な品質特性は、グリコシル化、荷電変異体(塩基性及び酸性の種、例えば酸化された種、脱アミド化された種、並びにC末端及びN末端の修飾された種)、凝集物、及び低分子量種(LMV)を含む。翻訳後修飾及び他の修飾を含む、上流プロセスは、抗体の産物の特徴に対して強い影響を及ぼし、これらは、個々の抗体及び細胞株の間で変動し得る。バイオ医薬品の生産のために最も広く使用されている細胞株は当初、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)から誘導され、現在の大半の組換えモノクローナル抗体はフェッドバッチ培養物中で産生される。
抗IL-36受容体(IL-36R)抗体のスペソリマブは、IL-36リガンドにより媒介されるシグナル伝達を低減又は遮断し、そしてこのようなシグナル伝達に関連した疾患又は容態の処置に有用である。
インターロイキン36(IL-36)は、炎症誘発効果を有するIL-1ファミリー内のサイトカインの一群である。IL-36ファミリーには4つのメンバー、すなわちIL-36α(IL-1F6)、IL-36β(IL-1F8)、IL-36γ(IL-1F9)及びIL-36Ra(IL-1F5)が存在し、これらは全て、IL-36受容体(以前にはIL-1Rrp2と称される)に結合し、IL-1RAcPとヘテロ二量体を形成すする。IL-36受容体リガンドは、多くの疾患容態に関与し、抗IL-36受容体抗体のスペソリマブは、炎症疾患及び自己免疫疾患、例えば炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UD)、アトピー性皮膚炎(AtD)、掌蹠膿疱症(PPP)、及び汎発型嚢胞性乾癬(GPP)の処置に有効である。
細胞培養培地及びプロセスの工程、例えば温度及び播種密度などを含む、上流プロセス及びパラメーターは、抗体の産物の特徴に対して強い影響を及ぼす。細胞培養培地は、それらの天然を起源とするものとは対照的に、技術的なシステムで懸濁液中で培養される哺乳動物細胞の複雑な栄養の必要条件を満たさなければならない。
細胞培養培地は大半が、エネルギー源、例えば炭水化物又はアミノ酸、脂質、ビタミン、微量元素、塩、増殖因子、ポリアミン、及び非栄養成分、例えば緩衝液、界面活性剤、又は消泡剤からなる。フェッドバッチ培養で使用される培地は、2つの亜群に分類され得る:プロセス培地(P培地)又は基礎培地及びフィード培地(F培地)。基礎培地は、初期濃度で全必須成分を含有し、これは接種のために使用される。フィード培地は大半が、培養プロセス中に高濃度で栄養分を提供する。したがって、細胞培養培地は、多くの異なる化合物の複雑な組成物であり、改善された増殖、生産性、又は産物の品質をもたらす化合物を同定することは難題である。CHO細胞培養物中の微量金属は、乳酸の消費、エネルギー代謝、生産性及び産物の品質を含む、最適なモノクローナル抗体の生産性及び品質に必要な多種多様な細胞内及び細胞外機能を促進する。細胞培養培地中で一般的に使用される微量金属は、鉄、銅、亜鉛、及びマンガンであり、これらには伝統的に、ウシ胎仔血清が添加されており、ロット間のばらつきは、変動する結果をもたらす。化学組成の規定された培地では、微量元素及び栄養分は規定の濃度で供給され、微量金属のあらゆる欠乏又は過剰は、細胞培養の成績、例えば細胞増殖又は生存率、並びに、生産性及び産物の品質に影響を及ぼし得る。例えば、亜鉛の欠乏は、哺乳動物細胞の早期の死滅を誘発することが昔から知られている。マグネシウム及びカルシウムの欠乏はCHO細胞においてアポトーシスを誘発することが示され、銅の欠乏は、CHO細胞において乳酸の代謝に影響を及ぼすことが示されている(Graham R. J., Bhatia H., Yoon S., Biotechnology and Bioengineering, 2019, 116: 3446-3456)。更に、過剰の銅は、モノクローナル抗体の生産性の増加を示したが、塩基性荷電変異体の増加も示したことが報告されている。したがって、収率に著しく影響を及ぼすことなく、産物の品質を改善するために培養条件を更に改善する必要性が依然としてある。
発明の概要
本発明では、本発明者らは、特定の産物の特徴、例えば少ない塩基性の種及び低レベルのマンノース5構造を有する種などを有する抗体をもたらす、抗体のスペソリマブのための効率的かつ有効な産生プロセスを可能とする方法を提供する。
したがって、本発明は、(a)(i)細胞を培養培地中に播種する工程;及び(ii)細胞培養物中の細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、培養培地中で細胞を培養する工程を含む、無血清細胞培養培地中でフェッドバッチ培養を使用して、抗体のスペソリマブをコードする核酸を含むCHO細胞を培養する工程であって、ここで、Cu2+は、0.35~1.2μMで、鉄は1500μM以上で、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日以内に培養培地に添加される、工程;(b)抗体のスペソリマブを含む細胞培養上清を収集する工程;及び(c)場合により、細胞培養上清から抗体のスペソリマブを精製する工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブを産生するための方法を提供する。好ましくは、Cu2+は及び鉄は、工程(i)における播種前に及び/又は播種後1日以内に培養培地に添加される。1つの実施態様では、Cu2+及び/又は鉄は、1つ以上のボーラスの添加として又は連続的に培養培地に添加される。1つ以上のボーラスの添加は、Cu2+及び/又は鉄を基礎培地と共に与える工程を含む。特定の実施態様では、抗体のスペソリマブをコードする核酸は、CHOゲノムに安定に組み込まれる。該方法は、細胞にフィード培地をフィードする工程を含む。特定の実施態様では、フィード培地は、培養0日目から3日目まで、好ましくは1日目から開始して3日目まで、より好ましくは1日目から2日目まで、更により好ましくは1日目に添加される。本発明の方法では、培養培地中における上昇した鉄濃度及び/又は低下した銅濃度は、減少した塩基性ピーク群(BPG)%を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす。特定の好ましい実施態様では、本発明に記載の方法によって産生された抗体のスペソリマブは、7.5%以下のBPGを有する。
前記方法は更に、播種密度を適応させる工程を含み得る。特定の実施態様では、工程(a)における播種密度は、0.7×10個の細胞/ml以上、好ましくは0.7×10個の細胞/mlから1.5×10個の細胞/ml、より好ましくは0.8×10個の細胞/mlから1.5×10個の細胞/ml、更により好ましくは0.9×10個の細胞/mlから1.3×10個の細胞/mlである。増加した播種密度は、減少したBPG%及び/又はMan5構造%を有する、抗体のスペソリマブの産生をもたらす。該方法は更に、培養温度及び/又は溶存酸素濃度を適応させる工程を含み得、ここでの上昇した培養温度及び/又は減少した溶存酸素(DO)は、減少したBPG%及び/又はMan5構造%を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす。特定の実施態様では、細胞は、細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、36.0℃から37.5℃で培養され、及び/又は、ここでの該培養物中の溶存酸素濃度は、30~60%の範囲内に維持される。特定の実施態様では、抗体のスペソリマブは、5%未満のMan5構造、好ましくは4%未満のMan5構造、より好ましくは3%未満のMan5構造、及び/又は7.5%以下のBPG、好ましくは7%以下のBPG、より好ましくは6.5%以下のBPG、更により好ましくは6%以下のBPG、7%以下のBPG、好ましくは6%以下のBPGを有する。
任意のCHO細胞を、本発明に記載の方法に使用してもよいが、例示的なCHO細胞はCHO-K1細胞及びCHO-DG44細胞である。
別の態様では、(a)(i)細胞を培養培地に0.7×10個の細胞/mlの細胞密度で播種する工程;及び(ii)細胞培養物中の細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、培養培地中で細胞を培養する工程を含む、無血清細胞培養培地中でフェッドバッチ培養を使用して、抗体のスペソリマブをコードする核酸を含むCHO細胞を培養する工程であって、ここで場合により、Cu2+は、0.35~1.2μMで、鉄は1500μM以上で、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日以内に培養培地に添加される、工程;(b)抗体のスペソリマブを含む細胞培養上清を収集する工程;及び(c)場合により、細胞培養上清から抗体のスペソリマブを精製する工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブを産生するための方法が提供される。
本発明は更に、(a)7.5%以下のBPG、好ましくは7%以下のBPG、より好ましくは6.5%以下のBPG、更により好ましくは6%以下のBPG;及び/又は(b)5%未満のMan5構造、好ましくは4%未満のMan5構造、より好ましくは3%未満のMan5構造;及び/又は(c)3%未満の重鎖(HC)のリジン糖化変異体を有し、並びに/或いは、リジンK38(HC)及びK67(HC)は糖化されておらず、K23(HC)における糖化は0.3%未満である、抗体のスペソリマブを含む組成物に関する。
本発明は更に、抗体のスペソリマブを含む組成物に関し、ここでの抗体のスペソリマブは、本発明に記載の方法によって得られる。
抗体のスペソリマブを含む組成物は、収集細胞培養液(HCCF)、親和性捕捉プール、薬物物質又は薬物製品、好ましくは薬物物質又は薬物製品であり得る。好ましくは、該組成物は、7.5%未満のBPG及び/又は5%未満のMan5構造を有する、抗体のスペソリマブを含む薬物製品である。特定の実施態様では、該組成物中の抗体のスペソリマブは、6%以下の重鎖(HC)のリジン糖化変異体を含み、並びに/或いはリジンK38(HC)及びK67(HC)は糖化されておらず、K23(HC)における糖化は0.3%以下である。
本発明は更に、3%以下の重鎖(HC)のリジン糖化変異体を有している抗体のスペソリマブを含む組成物を提供し、並びに/或いは、ここでのリジンK38(HC)及びK67(HC)は糖化されておらず、K23(HC)における糖化は0.3%以下である。
図1は、実施例の実験計画法(DoE)アプローチに記載のような、産物の品質に対する、変動する鉄濃度(μM)及び変動するCu2+濃度(μM)の効果を示す。(A)は、等高線プロットとしての、Cu2+及び鉄についての、強陽イオン交換HPLCクロマトグラフィー(HP-SCX)によって測定されるような、BPG(%)に対する変動する鉄及び銅の濃度の効果を示す。 (B)は、一因子プロットとしての、強陽イオン交換HPLCクロマトグラフィー(HP-SCX)によって測定されるような、BPG(%)に対する変動する銅の濃度の効果を示す。 (C)は、一因子プロットとしての、強陽イオン交換HPLCクロマトグラフィー(HP-SCX)によって測定されるような、BPG(%)に対する変動する鉄濃度の効果を示す。一因子プロットにおける点線は、95%信頼区間を示す。 更に、等高線プロットとしての、(D)産物の濃度(mg/L)、 (E)IVC(積算生細胞密度)(1×10個の細胞/h/mL)及び (F)生存率(%)に対する、変動する鉄及び銅の濃度の効果が示されている。 図2は、実施例の実験計画法(DoE)アプローチに記載のような、産物の品質に対する、変動する播種密度(1×10個の細胞/ml、因子1)、培養温度(℃、因子2)、溶存酸素(DO%、因子3)及びフィード速度(mL/L/日、因子4)の効果を示す。(A)等高線プロットとしての、強陽イオン交換HPLCクロマトグラフィー(HP-SCX)によって測定されるような、BPG(%)に対する変動する培養温度及び播種密度の効果が示されている。 (B)一因子プロットとしての、強陽イオン交換HPLCクロマトグラフィー(HP-SCX)によって測定されるような、BPG(%)に対する変動する播種密度の効果が示されている。 (C)一因子プロットとしての、強陽イオン交換HPLCクロマトグラフィー(HP-SCX)によって測定されるような、BPG(%)に対する変動する培養温度の効果が示されている。 (D)Man5構造に対する一因子プロットとしての変動する播種細胞密度の効果が示されている(オリゴマップピーク3(%))。 (E)Man5構造に対する一因子プロットとしての変動する培養温度の効果が示されている(オリゴマップピーク3(%))。一因子プロットにおける点線は、95%信頼区間を示す。 更に、等高線プロットとしての、(F)産物の濃度(力価、mg/L)、 (G)積算生細胞密度(1×10個の細胞/h/mL)及び (H)生存率(%)に対する、変動する鉄及び播種密度の効果が示されている。 図3は、実施例の実験計画法(DoE)アプローチに記載のような、変動する播種密度(1×10個の細胞/ml、因子1)、培養温度(℃、因子2)、溶存酸素(DO%、因子3)及びフィード速度(mL/L/日、因子4)の効果を示す。(A)強陽イオン交換HPLCクロマトグラフィー(HP-SCX)によって測定されるような、BPG(%)に対する、一因子プロットの変動する溶存酸素濃度の効果が示されている。 (B)Man5構造に対する一因子プロットの変動する溶存酸素濃度の効果が示されている(オリゴマップピーク3(%))。 (C)産物の濃度(力価、mg/L)に対する一因子プロットの変動する溶存酸素濃度の効果が示されている。 (D)積算生細胞密度(1×10個の細胞/h/mL)に対する一因子プロットの変動する溶存酸素濃度の効果が示されている。一因子プロットにおける点線は、95%信頼区間を示す。 図4は、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)を使用したスペソリマブの不均一性プロファイルを示す。(A)酸性ピーク及び塩基性ピークの注釈と共に、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)のクロマトグラフィープロファイルが示されている。 (B)拡大スケールで(A)と同様に、同じ陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)のクロマトグラフィープロファイルが示されている。 (C)重ね合わせとしての異なる単一の酸性ピークの画分から回集されたCEXクロマトグラムが示されている。 図5は、蛍光による検出と共に、HILIC(親水性相互作用液体クロマトグラフィー)-UHPLC(超高速液体クロマトグラフィー)を使用した、スペソリマブの代表的なオリゴ糖パターンを示す。ピーク1~6で標識された主なオリゴマップピークが示されている;ピーク1=A1FG0(非シアル化-非ガラクトシル化コア-フコシル化された一鎖);ピーク2=A2FG0(非シアル化-非ガラクトシル化コア-フコシル化された二鎖)、ピーク3=Man5ペンタマンノースコア、ピーク4=A2FG1(非シアル化-モノガラクトシル化コア-フコシル化された二鎖)、ピーク5=A2FG1(非シアル化-モノガラクトシル化コア-フコシル化された二鎖)、ピーク6=A2FG2(非シアル化-ジガラクトシル化コア-フコシル化された二鎖)。x軸は、クロマトグラムの積分範囲(分)を示し、y軸は電圧信号としての蛍光を示す。
詳細な説明
一般的な実施態様「含む」又は「含まれる」は、より具体的な実施態様である「からなる」を包含する。更に、単数形及び複数形は限定する意味で使用されない。
本明細書において使用する「細胞培養培地」又は「培養培地」という用語は、最小限の必須栄養分及び成分、例えばビタミン、微量元素、塩、バルク塩、アミノ酸、脂質、炭水化物を、好ましくは緩衝化された培地中に含む、哺乳動物細胞を培養するための培地である。典型的には、哺乳動物細胞用の細胞培養培地は、ほぼ中性のpH、例えば約6.5から約7.5、好ましくは約6.8から約7.3、より好ましくは約7のpHを有する。このような細胞培養培地の非限定的な例としては、HamのF12培地(シグマ社、ダイゼンホーフェン、ドイツ)、RPMI-1640培地(シグマ社)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;シグマ社)、最小必須培地(MEM;シグマ社)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM;シグマ社)、CD-CHO培地(インビトロジェン社、カールスバッド、CA州)、CHO-S培地(インビトロジェン社)、無血清CHO培地(シグマ社)、及びタンパク質非含有CHO培地(シグマ社)など並びに様々な業者の専売特許培地、例えば国際公開第2016/156476号に開示されたもの(その全内容が参照により本明細書に援用される)のような、市販の培地が挙げられる。細胞培養培地は、基礎細胞培養培地であってもよい。細胞培養培地はまた、フィード培地及び/又は添加剤が添加されている、基礎細胞培養培地であってもよい。細胞培養培地はまた、該細胞が発酵槽又はバイオリアクター中で培養される場合、発酵ブロスと称されてもよい。
「細胞培養」又は「細胞培養物」という用語は、全スケールでの(例えばマイクロタイタープレートから大スケールの工業用バイオリアクターまで、すなわちmL未満のスケールから10,000Lを超えるスケールまで)、全ての異なるプロセスモードでの(例えばバッチ培養、フェッドバッチ培養、灌流培養、連続培養)、全てのプロセス制御モードでの(例えば制御されていないシステム、完全に自動化されたシステム、及び例えばpH、温度、酸素含量の制御を伴う制御されたシステム)、全種類の発酵システムでの(例えば単回使用システム、ステンレス鋼システム、ガラス製品のシステム)、細胞培養及び発酵プロセスを含む。本発明によると、細胞培養物は哺乳動物細胞培養物であり、かつフェッドバッチ培養物である。好ましい実施態様では、細胞培養物は、10Lを超える、1,000Lを超える、5000Lを超える、より好ましくは10,000Lを超える容量の細胞培養物である。
本明細書において使用する「フェッドバッチ」という用語は、細胞に、栄養分を含有しているフィード培地が連続的に又は周期的にフィードされる、細胞培養物に関する。フィーディングは、0日目の細胞培養開始後すぐに開始され得るか、又はより典型的には培養開始から1日後、2日後、若しくは3日後に開始され得る。フィーディングは、予め設定された計画に従い得、例えば隔日、2日間毎に、3日間毎になどである。或いは、培養は、細胞増殖、栄養分、又は毒性副産物についてモニタリングされ得、フィーディングは、それに応じて調整され得る。一般的には、以下のパラメーターが、しばしば毎日決定され、これは生細胞の濃度、産物の濃度(力価)、及びいくつかの代謝物、例えばグルコース、pH、乳酸塩、モル浸透圧濃度(塩含量の尺度)、及びアンモニウム(増殖速度に負の影響を及ぼし、生バイオマスを低減させる、増殖阻害物質)を網羅する。バッチ培養物(フィーディングを伴わない培養物)と比較して、より高い産物の力価が、フェッドバッチモードで達成され得る。典型的には、フェッドバッチ培養は何らかの時点で停止され、細胞及び/又は培地は収集され、関心対象の産物、例えば抗体のスペソリマブが、単離及び/又は精製される。フェッドバッチプロセスは典型的には、約2~3週間、例えば約10~24日間、約12から21日間、約12日間から18日間、好ましくは約12~16日間維持される。
本明細書において使用する「基礎培地」又は「基礎細胞培養培地」という用語は、以下に定義されているような哺乳動物細胞を培養するための細胞培養培地である。それは、細胞が細胞培養操作開始時から培養され、別の培地への添加剤として使用されないが、様々な成分が培地に添加されていてもよい、培地を指す。基礎培地は基剤としての役目を果たし、これに、場合により更なる添加剤(又は補助剤)及び/又はフィード培地が培養中、すなわち細胞培養培地を生じる細胞培養操作中に添加されてもよい。基礎細胞培養培地は、細胞培養プロセス開始時から提供される。一般的には、基礎細胞培養培地は、栄養分、例えば炭素源、アミノ酸、ビタミン、バルク塩(例えば塩化ナトリウム又は塩化カリウム)、様々な微量元素(例えば鉄、銅、亜鉛、及びマンガン)、pH緩衝液、脂質、及びグルコースを提供する。主なバルク塩は通常、基礎培地のみに提供され、細胞培養物中で約280~350ミリオスモル/kgの最終モル浸透圧濃度を超えてはならず、よって細胞培養物は、妥当な浸透圧ストレスで成長及び増殖することができる。
本明細書において使用する「フィード」又は「フィード培地」という用語は、哺乳動物細胞の培養物においてフィードとして使用される、栄養分の濃縮物/濃縮された栄養組成物に関する。それは、細胞培養物の希釈度を最小限にするために「濃縮されたフィード培地」として提供され、典型的にはフィード培地は、培養開始容量(CSV、0日目の開始容量を意味する)に基づいて、10~50ml/L/日、好ましくは15~45ml/L/日、より好ましくは20~35ml/L/日で容器中に提供される。これは、培養開始容量の約1~5%、好ましくは約1.5~4.5%、より好ましくは約2~3%の1日1回の添加に相当する。高密度播種又は超高密度播種を使用する培養物では、より速いフィーディング速度、例えば10~50ml/L/日、15~45ml/L/日、又は25~45ml/L/日などが有益であり得る。これは、培養開始容量の約1~5%、好ましくは約1.5~4.5%、又は約2.5~4.5%の1日1回の添加に相当する。フィーディング速度は、フィーディング期間中の平均フィーディング速度と理解されるべきである。フィード培地は典型的には、より高い濃度の、基礎細胞培養培地の全ての成分ではないが大半の成分を有する。一般的には、フィード培地は、細胞培養中に消費される栄養分、例えばアミノ酸及び炭水化物を代用するが、塩及び緩衝液は、重要性がより低く、一般的に基礎培地と共に提供される。また微量元素も典型的には、主に基礎培地と共に提供され、フィード培地中にも存在し得る。フィード培地は典型的には、(基礎)細胞培養培地/発酵ブロスにフェッドバッチモードで添加される。基礎培地に(繰り返し又は連続的に)添加されるフィード培地は、細胞培養培地をもたらす。フィードは、連続的な添加若しくはボーラスの添加のような異なるモードで、又は灌流に関連した技術(ケモスタット又はハイブリッド灌流システム)を介して添加されてもよい。好ましくは、フィード培地は1日1回添加されるが、より高頻度に、例えば1日2回、又はより低頻度に、例えば2日間に1回添加されてもよい。より好ましくは、フィード培地は、連続的に添加される。栄養分の添加は一般的には、培養中(すなわち0日目以後)に実施される。基礎培地とは対照的に、フィード培地は典型的には、主要なバルク塩(例えばNaCl、KCl、NaHCO、MgSO、Ca(NO)などの「高モル浸透圧濃度の活性な化合物」を除いて、基礎培地と類似した全ての成分を提供する、高度に濃縮された栄養溶液(例えば6倍超)からなる。典型的には、減少したバルク塩を有さない又は有する、6倍濃縮液又はそれよりも高い基礎培地は、細胞培養物中のモル浸透圧濃度を約270~550ミリオスモル/kg、好ましくは約280~450ミリオスモル/kg、より好ましくは約280~350ミリオスモル/kgに維持するために、化合物の良好な溶解性及び十分に低いモル浸透圧濃度(例えば270~1500ミリオスモル/kg、好ましくは310~800ミリオスモル/kg)を維持する。フィード培地は、1つの完全なフィード培地として添加されても、又は、細胞培養物に別々に添加するための1つ以上のフィード補助剤を含んでいてもよい。1つ以上のフィード補助剤の使用は、定期的なフィーディング及びグルコースの添加(これもまた、それ故、別々のフィードとして少なくとも提供される)ではしばしば実施されるような要求に応じたフィーディングなどの、異なるフィーディング計画に因り必要であり得る。1つ以上のフィード補助剤の使用はまた、特定の化合物の低い溶解度、特定の化合物の異なるpHにおける溶解度、及び/又はフィード培地中の高濃度の化合物の相互作用に因り、必要であり得る。
本明細書において使用する「フィード補助剤」という用語は、栄養分の濃縮物に関し、これは、使用前にフィード培地に添加され得るか、或いは、フィード培地から基礎培地及び/又は細胞培養培地に別々に添加され得る。したがって、化合物は、フィード培地若しくはフィード補助剤と共に提供され得るか、又は、化合物は、フィード培地及びフィード補助剤と共に提供され得る。例えば、システインは、2種のフィードの戦略において、フィード培地及びフィード補助剤と共に添加され得る。フィード培地として、「フィード補助剤」は、細胞培養物の希釈を回避するために濃縮物として提供される。
細胞培養培地、すなわち基礎培地及び/又はフィード培地のどちらも好ましくは、無血清で、化学組成が規定されているか、又は化学組成が規定されかつタンパク質非含有である。本明細書において使用する「無血清培地」は、動物起源の血清を含有していない、インビトロ細胞培養のための細胞培養培地を指す。これが好ましいのは、血清が、ウイルスなどの該動物に由来する混入物を含有している可能性があり、そして血清は化学組成が明確ではなく、バッチ毎に異なるからである。本発明に記載の基礎培地及びフィード培地は無血清である。
本明細書において使用する「化学組成の規定された培地」という用語は、インビトロ細胞培養に適した細胞培養培地を指し、ここでの全ての成分は既知である。より具体的には、それは、動物の血清又は植物、酵母若しくは動物の加水分解物などのあらゆる補助剤を含んでいない。それは、全ての成分が分析され、その正確な組成が知られ、再現性をもって調製することができる場合にのみ、加水分解物を含んでいてもよい。本発明に記載の基礎培地及びフィード培地は好ましくは、化学組成が規定されている。化学組成の規定された培地は更に、組換えタンパク質、例えば組換え増殖因子、特にインシュリン又はインシュリン様増殖因子(IGF)を含み得る。
本明細書において使用する「タンパク質非含有培地」は、培養される予定の細胞によって産生されるタンパク質を除いて、タンパク質を全く含まない、インビトロ細胞培養のための細胞培養培地を指し、ここでのタンパク質は、任意の長さのポリペプチドを指すが、単一のアミノ酸、ジペプチド、又はトリペプチドは除外する。具体的には、増殖因子、例えばインシュリン及びインシュリン様成長因子(IGF)は培地中に存在していない。好ましくは、本発明に記載の基礎培地及びフィード培地は、化学組成が規定され、タンパク質非含有である。
本明細書において使用する「培地(medium)プラットフォーム」又は「培地(media)プラットフォーム」という用語は、基礎細胞培養培地(これは細胞培養プロセス開始時から提供される)及びフィード培地(これは培養中に基礎細胞培養培地に添加される)からなる。場合により更なる添加剤、例えばグルコースが、細胞培養プロセス中に添加されてもよい。フィード培地は、任意の種類のフェッドバッチプロセスモードで供給され得る(例えばフィード速度を変更しながら連続的に、又はボーラスフィードの添加として)。
「生命力」及び「生存率」という用語は同義語として使用され、自動顕微鏡細胞計数に基づいたセデックス装置(ロシュダイアグノスティクス社、マンハイム)を用いた、例えばトリパンブルー排除法などの、当技術分野において既知である方法によって決定されるような細胞培養物中の生細胞%を指す。しかしながら、生細胞のエネルギー代謝を反映するために使用される、蛍光法(例えばヨウ化プロピジウムに基づく)、熱量測定法、又は酵素法などの、生存率の決定のための多くの他の方法、例えば、LDH乳酸デヒドロゲナーゼ又は特定のテトラゾリウム塩、例えばアラマーブルー、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)又はTTC(テトラゾリウムクロリド)を使用する方法も存在する。
「ポリペプチド」又は「タンパク質」又は「産物」又は「タンパク質産物」又は「アミノ酸残基配列」という用語は、同義語として使用される。これらの用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマー、好ましくは本発明の脈絡ではモノクローナル抗体、更により好ましくはモノクローナル抗体のスペソリマブを指す。これらの用語はまた、グリコシル化、糖化、アセチル化、リン酸化、酸化、アミド化、又はタンパク質プロセシングを含むがこれらに限定されない、反応を通して翻訳後修飾されている、タンパク質又は抗体も含む。
本明細書において使用する「コードする」及び「をコードする」という用語は、ポリマー巨大分子内の情報を使用して第一の分子とは異なる第二の分子の産生を指令する任意のプロセスを広く指す。第二の分子は、第一の分子の化学的性質とは異なる、化学構造を有していてもよい。例えば、いくつかの態様では、「コードする」という用語は、半保存的DNA複製プロセスを表し、二本鎖DNA分子の中の1本の鎖は、DNA依存性DNAポリメラーゼにより新規に合成される相補的姉妹鎖をコードするための鋳型として使用される。他の態様では、DNA分子は、RNA分子を(例えば、DNA依存性RNAポリメラーゼ酵素を使用する転写プロセスによって)コードし得る。また、RNA分子は、翻訳プロセスのように、ポリペプチドをコードし得る。翻訳プロセスを説明するために使用される場合、「コードする」という用語はまた、アミノ酸をコードする三塩基コドンまで拡大解釈される。いくつかの態様では、RNA分子は、例えばRNA依存性DNAポリメラーゼを取り込む逆転写プロセスによって、DNA分子をコードし得る。別の態様では、DNA分子はポリペプチドをコードし得、ここではその場合に使用されるような「コードする」は、転写プロセス及び翻訳プロセスの両方を取り込むことが理解される。本発明の脈絡では、「抗体のスペソリマブをコードする核酸」という用語は、抗体のスペソリマブのアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわち重鎖及び軽鎖をコードするDNA分子又は配列を指す。好ましくは、抗体のスペソリマブをコードする核酸は、CHO細胞のゲノム内に安定に組み込まれる。
本明細書において使用する「スペソリマブ」という用語は、CAS登録番号2097104-58-8の下で登録された、INN名のスペソリマブを有する、ヒト化モノクローナルIgG1抗IL-36R抗体を指す。スペソリマブは、以下の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を有する:
重鎖(HC)アミノ酸配列:
Figure 2024517784000001
軽鎖(LC)アミノ酸配列:
Figure 2024517784000002
重鎖可変(VH)アミノ酸配列:
Figure 2024517784000003
軽鎖可変(LC)アミノ酸配列:
Figure 2024517784000004
本明細書において使用する「抗体のスペソリマブ」という用語は、好ましくは本発明の方法によって、CHO細胞培養物中で産生された抗体のスペソリマブを指し、したがって、特定の程度の変異体の不均一性を有する多数の抗体分子を指す。それ故、当業者は、それが、様々なスペソリマブ種の混合物、例えばグリコシル化変異体、荷電変異体、及び糖化変異体又は種を含む、様々な翻訳後修飾を含むものを指すことを理解する。
本明細書において使用する「播種」という用語は、CHO細胞などの哺乳動物細胞の試料を回集し、それらを、増殖に必要な栄養分を含有している培地に入れる工程を指す。典型的には、哺乳動物細胞を、増殖又は産生のための基礎培地に入れる。この工程はまた、接種とも呼ばれ得る。哺乳動物細胞は、様々な播種密度で基礎培地に接種され得る。本明細書に言及されているように、「通常の播種」という用語は、約0.7×10個の細胞/mlから約1×10個の細胞/mlの標準的な播種密度を指し、「高度な播種」という用語は、1×10個の細胞/ml超から約4×10個の細胞/mlの播種密度を指し、「超高度な播種」という用語は、4×10個の細胞/ml超から約20×10個の細胞/ml又は更にはそれ以上、好ましくは約6×10個の細胞/mlから約15×10個の細胞/ml、より好ましくは8×10個の細胞/mlから約12×10個の細胞/mlの播種密度を指す。本発明によると、CHO細胞は好ましくは、0.7×10個の細胞/ml以上で播種される。特定の実施態様では、CHO細胞は、0.7×10個の細胞/mlから約2×10個の細胞/ml、好ましくは0.7×10個の細胞/mlから約1.5×10個の細胞/ml、より好ましくは0.8×10個の細胞/mlから約1.5×10個の細胞/ml、更により好ましくは0.9×10個の細胞/mlから約1.3×10個の細胞/mlで播種される。
鉄は、(i)微量元素としての及び(ii)トランスフェリン代用物としての(例えば鉄キレート物としての鉄)、哺乳動物細胞培養培地中の必須成分である。トランスフェリンは典型的には血漿に由来し、部分的に鉄で飽和されているヒトトランスフェリンの凍結乾燥粉末として供給され得る。トランスフェリンは、相同なN末端及びC末端に鉄結合性ドメインを有する糖タンパク質であり、ラクトフェリン、メラノトランスフェリン及びオボトランスフェリンを含む、いくつかの他の鉄結合性タンパク質に関連している。トランスフェリンは、動物細胞培養物における用途のために市販されている(例えばシグマアルドリッチ社、CAS番号11096-37-0)。細胞培養培地中でトランスフェリン代用品として使用される、数多くの鉄化合物が存在する。これらはII/III型で、様々な塩として、及び水和形/脱水和形として存在する。例は、リン酸鉄(III)、ピロリン酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、塩化鉄(III)、乳酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)、クエン酸アンモニウム鉄(III)、鉄-デキストラン、クエン酸(III)コリン、又はエチレンジアミンテトラ酢酸鉄ナトリウム塩であるがこれらに限定されない。好ましい鉄源は、ピロリン酸鉄(Fe(P2O)、クエン酸鉄アンモニウム((NH[Fe(C])、クエン酸鉄(CFeO)、クエン酸鉄コリン(C3357Fe24)、硝酸鉄(Fe(NO)、リン酸鉄(FePO)、硫酸鉄(FeSO)、及び塩化鉄(FeCl)であるがそれらに限定されない。
本明細書において使用する「クエン酸鉄コリン」という用語は、クエン酸鉄コリン複合体を形成する、CAS番号1336-80-7に該当する、クエン酸鉄コリンという化合物に関する。使用される類義語は、例えば、クエン酸鉄コリネート、クエン酸鉄コリン、クエン酸コリン、クエン酸鉄(III)コリン、クエン酸コリン鉄、クエン酸トリコリン、クエン酸コリン鉄、2-ヒドロキシエチル-トリメチル-アンモニウム、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボキシレートである。この化合物は、鉄担体として、基礎培地及びフィード培地の両方に添加され得る。2:3:3のモル比の鉄:コリン:クエン酸塩を有するクエン酸鉄コリン(クエン酸鉄コリン、CAS番号1336-80-7、5%結晶水分含量に因り分子量Mw=991.5g/mol+/-49.57g/mol、約10.2~12.4%の鉄含量を有する鉄複合体、鉄:コリン:クエン酸塩のモル比が2:3:3、分子式C3357Fe24)は、例えば、Dr. Paul Lohmann GmbH KGから入手できる。しかしながら、他の適切なクエン酸鉄コリン構造は、鉄濃度に基づいて等モル量で、例えば1:1:1の比の鉄:コリン:クエン酸塩、分子量Mw=348.11g/mol又は(2):3:3の比の(鉄):コリン:クエン酸塩、分子量Mw=501.61g/mol、C214710(鉄を含まない総和の式)で使用されてもよい。クエン酸鉄コリンはまた、鉄源(例えば塩化鉄)とコリン源(例えば塩化コリン)とクエン酸塩源(例えばクエン酸ナトリウム)、又はコリン源とクエン酸鉄を、好ましくは上記のようなクエン酸鉄コリンで提供されたような比で含む、別々の化合物として提供されてもよい。
哺乳動物細胞を培養するための細胞培養培地は、アミノ酸及び炭水化物及び成分、例えばビタミン、微量元素、塩、バルク塩、及び脂質又は脂質前駆体を、好ましくは緩衝化された培地中に含む、必須栄養分を含む。また、増殖因子、例えば組換えインシュリン様増殖因子(IGF)又は組換えインシュリンを、基礎細胞培養培地又はフィード培地に添加してもよい。したがって、特定の実施態様では、基礎細胞培養培地及び/又はフィード培地は、IGF又は組換えインシュリンの存在を除いて、化学組成が規定され、タンパク質非含有である。
本明細書において使用する「アミノ酸」という用語は、普遍的な遺伝子コードによってコードされる20の天然アミノ酸、典型的にはL型(すなわち、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、及びL-バリン)を指す。アミノ酸(例えばグルタミン及び/又はチロシン)は、好ましくはL-アラニン(L-ala-x)又はL-グリシンの伸長物(L-gly-x)、例えばグリシル-グルタミン及びアラニル-グルタミンを含有している、安定性及び/又は溶解性の増加した、ジペプチドとして提供されてもよい。更に、システインはまた、L-シスチンとして提供されてもよい。本明細書において使用する「アミノ酸」という用語は、全ての異なるその塩、例えば(以下に限定されないが)L-アルギニン一塩酸塩、L-アスパラギン一水和物、L-システイン塩酸塩一水和物、L-シスチン二塩酸塩、L-ヒスチジン一塩酸塩二水和物、L-リジン一塩酸塩及びヒドロキシルL-プロリン、L-チロシン二ナトリウム脱水和物を包含する。溶解度、モル浸透圧濃度、安定性、純度などの特徴が損なわれない限り、アミノ酸の正確な形態は、本発明にとって重要ではない。典型的にはかつ好ましくは、L-アルギニンはL-アルギニン×HClとして使用され、L-アスパラギンはL-アスパラギン×HOとして使用され、L-システインはL-システイン×HCl×HOとして使用され、L-シスチンはL-シスチン×2HClとして使用され、L-ヒスチジンはL-ヒスチジン×HCl×HOとして使用され、L-チロシンはL-チロシン×2Na×2HOとして使用され、ここでの各々の好ましいアミノ酸形は、他とは独立して、又は一緒に、又は任意のその組合せで選択され得る。また関連したアミノ酸の1つ又は2つを含むジペプチドも包含される。例えば、L-グルタミンは、保存中又は長期培養中の安定性向上及びアンモニウムの生成の低減のために、L-アラニル-L-グルタミンなどの、ジペプチドの形態で細胞培養培地に添加されることが多い。
本明細書において使用する「培地中の全てのアミノ酸」又は「アミノ酸総含量」という用語は、mMで上記に定義されているような「アミノ酸」の総和を指す。ジペプチドでは、各アミノ酸は別々に計数され、よって、1mMのアラニル-グルタミンは、1mMのL-アラニン及び1mMのL-グルタミン(モル比1:1)として計数される。同様に、L-シスチンでは、各システインは別々に計数され、よって1mMのL-シスチンは2mMのL-システイン(モル比1:2)として計数される。典型的には、濃縮フィード培地中のアミノ酸総含量は、基礎細胞培養培地と比較して、約5~20倍、好ましくは約7~15倍、より好ましくは約10倍以上である。本発明に記載の基礎培地のアミノ酸総含量は、約25~150mM、好ましくは約30~130mM、より好ましくは約35~120mM、更により好ましくは約40~100mMであり得る。フィード培地のアミノ酸総含量は、約100~1000mM、好ましくは約200~900mM、より好ましくは約300~800mM、更により好ましくは約400~700mMであり得る。L-オルニチン、ヒドロキシルL-プロリン、又はその代謝物、例えばタウリンなどの、普遍的遺伝子コードによって直接コードされていない他のアミノ酸も更に、基礎細胞培養培地又はフィード培地中に存在し得るが、これらは、アミノ酸総含量において計数されない。
適切なビタミンの非限定的な例は、ビオチン(B7)、パントテン酸カルシウム、シアノコバラミン(B12)、葉酸、ミオイノシトール、ナイアシンアミド(B3)、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン(B2)及び/又はチアミン(B1)である。微量元素の非限定的な例は、モリブデン、バナジウム、銅、ニッケル、セレナイト、ケイ酸塩及び亜鉛であり、微量元素の例示的な入手原は、モリブデン酸アンモニウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸銅、硫酸ニッケル、亜セレン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム及び硫酸亜鉛、及び/又は塩化亜鉛である。脂質前駆体の非限定的な例は、塩化コリン、エタノールアミン、グリセロール、イノシトール、リノール酸、脂肪酸、リン脂質、又はコレステロール関連化合物である。
更に、塩は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、及び/又は塩化ナトリウムであり得るがそれらに限定されない。塩の1つの機能は、培地中のモル浸透圧濃度を調整することである。好ましくは、基礎細胞培養培地のモル浸透圧濃度は、典型的には280~350ミリオスモル/kgの間の至適範囲を超えない。典型的には、濃縮フィード培地のモル浸透圧濃度は、2000ミリオスモル/kg未満、好ましくは1500ミリオスモル/kg未満、より好ましくは1000ミリオスモル/kg未満である。フィード培地のモル浸透圧濃度はより高くあってもよいが、添加時に細胞培養物中のモル浸透圧濃度が、270~550ミリオスモル/kg、好ましくは280~450ミリオスモル/kg、より好ましくは280~350ミリオスモル/kgの至適範囲を超えて増加すべきではない。
好ましくは、フィード培地は、低減した又は低い塩含量を有する。低減した又は低い塩含量は、例えば、約100mM以下、好ましくは約50mM以下(例えば塩化ナトリウムを含まず、及び低減した濃度の塩化カリウムを有するフィード培地)の塩総濃度を意味する。モル浸透圧濃度に対する最も重要な寄与因子は、ナトリウムイオン、塩化物イオン、及び重炭酸塩、並びにグルコース及び他の炭素源、例えばアミノ酸である。更に、一般的なフェッドバッチプロセスでは、フィード培地は、培養期間中に培養容量を最小限にするために濃縮される必要がある。バイオリアクターのサイズは実際に、培養開始容量の僅か約35%(30~40%)又は培養開始容量の約45%(40~50%)のフィード総用量しか可能としない、フィーディング制約を引き起こし得る。
炭水化物は、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ショ糖、又はグルコサミンなどであり得るが、これらに限定されない。これらの炭水化物は、基礎細胞培養培地及び/又はフィード培地に直接添加されても、或いは、細胞培養物に別々に添加されてもよい。他のエネルギー源は、ピルビン酸ナトリウムを含むがこれらに限定されない。
哺乳動物細胞は、中性pHで、例えば約pH6.5から約pH7.5、好ましくは約pH6.6から約pH7.3、より好ましくはpH約7で培養されるべきである。したがって、緩衝剤が、基礎細胞培養培地に添加されるべきである。フィード培地では、pHは、フィード培地の添加が、細胞培養物のpHをこの範囲外にしない限り、該範囲よりわずかに外れていてもよい。なぜなら、フィード培地は濃縮物として添加されるからである。フィード培地のpHの好ましい範囲は、約6から約8である。適切な緩衝剤としては、HEPES、リン酸緩衝液(例えばリン酸カリウム一塩基性及びリン酸カリウム二塩基性及び/又はリン酸ナトリウム二塩基性無水和物及びリン酸ナトリウム一塩基性)、フェノールレッド、重炭酸ナトリウム、及び/又は炭酸水素ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。
一般的には、フィード培地は、アミノ酸及び炭水化物などの、細胞培養中に消費される栄養分を含むが、塩及び緩衝液はあまり重要ではない。それ故、いくつかの塩は、フィード培地から完全に省略されてもよい。
基礎細胞培養培地及び/又はフィード培地は、細胞培養の時間経過中、細胞の特異的な必要条件及び哺乳動物細胞培養物の代謝上の必要性を満たすべきである。換言すれば、それは(i)哺乳動物細胞の細胞特異的な必要性を、(ii)細胞培養系において、(iii)培養操作のライフサイクルを通じて(これは約10~20日間)満たす。培養物中の哺乳動物細胞は、細胞培養プロセスの異なる期間において、異なる栄養上の必要条件を有する。
細胞培養物は更に、スケールアップ手順における一連の接種に必要とされる、細胞増殖を含み得る。例えば、培養のスケールは、セルバンクの解凍物(mLのスケール)から生産スケール(10,000Lを超えるスケール)まで段階的に増加させる。各N-x段階における増殖が良好であればあるほど(N段階は最終生産スケールを意味し、N-xは、通常バッチモードで最終生産段階の前の細胞増殖段階を意味する)、次の段階へのより迅速かつより良好な移行が起こり得る。具体的には、より良好な細胞増殖及びより高い生細胞濃度は、N-x培養が、低減した操作回数で(したがってより迅速に)実施され得ることを可能とする。より良好な細胞増殖及びより高い生細胞濃度はまた、改善された移行をもたらし、その結果、全体的に改善された成績がもたらされる。例えば、特定のN-x段階が、特定の接種細胞密度で接種されるべきであり、生細胞濃度が高い場合、比較的少ない容量の細胞培養物が、ある段階から次の段階へと移行される必要がある(培養開始容量(CSV)あたりの接種容量の移行はスプリット比として定義され、通常1:5から1:20が一般的である)。このことは、同時に、低減した容量の「使用済」細胞培養培地しか、ある段階から次の段階へと移行されず、最大容量の「新規」培地を次の段階に添加することができることを意味する(一定の培養全容量)。このことはまた、最終N段階において改善された全体的な細胞培養の成績(例えば増加した産物の力価)をもたらす。
殆どの細胞培養物では、主要炭素のための理想的ではない栄養組成物は、オーバーフロー代謝に因り決定され得る。このことは、主要炭素源のグルコースが、非効率的に利用され、このことにより、例えば乳酸などの有機酸の増加の原因となることを意味する。上昇したレベルの乳酸は、6.65未満へのpHの低下の原因となり、これは培養培地の緩衝能及びしたがって培養物の生存率に負の影響を及ぼすだろう。このような理由のために、培養雰囲気における二酸化炭素濃度は、培養培地中の酸レベルを最小限にするために、指数関数増殖期の開始時に低減されている。
抗体のスペソリマブは、下流プロセスにおいて、他の組換えタンパク質、宿主細胞タンパク質、及び混入物から精製される。様々な精製段階において得られた及び/又は分析された試料はまた、インプロセスコントロール(IPC)試料又はプロセス中間体とも称される。収集は典型的には、例えば収集された細胞培養液を産生するための、遠心分離及び/又はろ過を含む。更なるプロセス工程は、抗体のスペソリマブを混入物から分離するための、アフィニティクロマトグラフィー、特にプロテインAカラムクロマトグラフィーを含み得る。更なるプロセス工程は、ウイルスを不活化するための酸処理、好ましくは酸処理後の、デプスろ過による産物プールの清澄化を含むことにより、宿主細胞由来タンパク質及びDNAなどの細胞混入物を除去し得る。更なるプロセス工程は、この順序で又は個々の場合において適切であり得るような任意の他の順序で、以下を含み得る:混入している細胞成分を更に除去するための、イオン交換クロマトグラフィー、特に陰イオン交換クロマトグラフィー、及び/又は、凝集物などの産物に関連した混入物を除去するための陽イオン交換クロマトグラフィー。更に、好ましくは以下のプロセス工程は、それぞれ、ウイルスを更に除去するためのナノろ過、並びに、組換えタンパク質を濃縮しかつ緩衝液を交換するための限外ろ過及び透析ろ過を含み得る。
例えばプロテインAカラム、酸処理、デプスろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー後に、収集された細胞培養液(HCCF)から精製された抗体のスペソリマブを含む試料はまた、「精製された抗体産物プール」とも称され得る。精製された抗体産物プールは更に精製され得、賦形剤と共に製剤化されてもよいが、賦形剤と共に製剤化される必要はない。したがって、精製された抗体産物プールは、薬物物質と同一であり得るが、しかしまた異なる濃度で及び/又は異なる緩衝系中に存在し得る。
本明細書において使用する「収集された細胞培養液(HCCF)」という用語は、収集された組換えタンパク質、本発明の場合では抗体のスペソリマブを含む液体を指す。典型的には、産生のために使用される宿主細胞は、ポリペプチドを細胞培養培地中に分泌するように工学操作され、したがって細胞培養上清が収集されるだろう。しかしながら、理論的には、細胞は、収集前に溶解されてもよい。収集は、収集された細胞培養液を産生するための遠心分離及び/又はろ過を含む。したがって、収集された細胞培養液はまた、清澄化された収集された細胞培養液とも称され得る。それは、生細胞を含有しておらず、細胞片及び細胞成分は除去されている。典型的には、それは、清澄化された細胞培養上清を指し、ここでの清澄化されたとは、遠心分離又はろ過を意味し、好ましくは例えば0.1μmのフィルターを用いたろ過による。HCCFは、いくつかの実施態様では、清澄化されたHCCFである。追加の又は代替的な実施態様では、HCCFは、約1.8g/Lから約5g/Lの抗体のスペソリマブ、好ましくは約2.0g/Lから約5.0g/Lの抗体のスペソリマブ、より好ましくは約2.5g/Lから約4.5g/Lの抗体のスペソリマブを含む。本発明に記載の方法は、20kgを超える、若しくは更には30kgを超えるスペソリマブを含むHCCFについての、及び/又は、2,000L以上の発酵槽、好ましくは12,000L以上の発酵槽からのHCCFについての、大スケール精製法である。
本明細書において使用する「産物のプール」という用語は、プロセス工程の終了時に、産物、すなわち抗体のスペソリマブを含む溶液を指す。それ故、「産物のプール」という用語は、「抗体を含む産物のプール」という用語の同義語として使用される。これは、それが産物の主要な画分を含有している限り、溶出液であっても、素通り画分であっても、又はろ液であってもよい。それ故、「産物プール試料」という用語は、特に本発明の方法に記載の方法工程の1つの後に、抗体のスペソリマブを含む、溶液の試料を指す。
抗体のスペソリマブは、CHO細胞株において大スケールで、すなわち12,000L以上のスケールで産生される。HCCFの力価は、約1.8g/Lから約5g/Lである。したがって、本発明に記載のプロセスは、20kgを超える、又は更には30kgを超えるスペソリマブを含む、精製用の出発物質(HCCF)を提供する。
本明細書において使用する「混入している」又は「混入物」という用語は、所望ではない及び/又は目的ではない物質、例えば宿主細胞タンパク質、宿主細胞DNA及び/又は加水分解活性を有する少なくとも1つのタンパク質若しくは物質の存在を指す。
「薬物物質(DS)」という用語は、賦形剤と共に製剤化された活性医薬成分(API)を指す。APIは、APIの送達を支援する賦形剤とは対照的に、体内で治療効果を有する。生物学的療法剤の場合、賦形剤と共に製剤化されたAPIは典型的には、薬物製品とも称される、最終剤形で使用される少なくとも最高濃縮率の濃度の最終製剤緩衝液中のAPIを意味する。
本明細書において使用するDPとも略称される「薬物製品」という用語は、薬物物質の最終的に市販される剤形、例えば錠剤若しくはカプセル剤、又は生物学的製剤の場合には典型的には、バイアル若しくはシリンジなどの適切な容器中の注射溶液を指す。薬物製品はまた、凍結乾燥剤形であってもよい。スペソリマブは、ガラスバイアル中に60mg/mlで、又はガラスシリンジ中に150mg/mLで水性製剤として提供される。
抗体は典型的には、免疫グロブリン重鎖のCH2ドメインのAsn297(IgG)に付着したオリゴ糖を有する。これらのオリゴ糖の大半は、二鎖構造を有する。このことは、それらが、末端GlcNAc残基に任意選択のFuc(α1-6)結合を有するコア構造(Man(α1-4)GlcNAc(β1-4)GlcNAc→Asn)と、コア構造の末端マンノースに接続された2つの外部アーム(Gal(β1-4)GlcNAc(β1-2)Man(α1-6)→Man及びGal(β1-4)GlcNAc(β1-2)Man(α1-3)→Man;末端ガラクトース(Gal)残基は任意選択である)(Man=マンノース、GlcNAc=N-アセチルグルコース、Gal=ガラクトース、Fuc=フコース)を有することを意味する。各々の外部アームにおける末端ガラクトースは任意選択であり、その結果、G(0)、G(1)及びG(2)アイソフォームが生じ、G(2)アイソフォームは、オリゴ糖構造の外部アームの各々の上に末端ガラクトース残基を有し、G(1)アイソフォームは、(α1-6)又は(α1-3)結合した外部アームのいずれかの上だけに末端ガラクトース残基を有し、G(0)アイソフォームは、どちらの外部アーム上にもガラクトース残基を全く有さない。
「Man5構造」すなわち「マンノース5糖構造」という用語は、本明細書において同義語として使用され、5個のマンノース残基と2個のN-アセチルグルコースコア残基を含むか又はからなり、三鎖構造を形成している、ポリペプチドのAsn残基に連結されたオリゴマンノース構造を指す。
抗体などのポリペプチドへの糖構造の導入は、翻訳後修飾である。不完全なグリコシル化のために、あらゆる細胞が、異なる糖構造を含むグリコシル化パターン又はプロファイルを有する、ポリペプチド、例えば抗体を発現している。総和又は個々の糖構造は、グリコシル化パターン又はプロファイルと呼ばれる。精製されたスペソリマブ又はプロテインAプールのオリゴ糖は、放出されたオリゴ糖を2-アミノピリジンを用いて標識し、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC-HPLC)、好ましくは親水性相互作用超高速液体クロマトグラフィー(HILIC-UPLC)を使用した分析によって決定され得る。クロマトグラフィープロファイルは、6つの主なピークを示し、その中のピーク3はMan5ピーク(図5)であり、これは(オリゴマップピーク3)とも呼ばれる。本明細書において使用する「Man5構造%」という用語は、総和ピーク面積に対する相対的ピーク面積%(ピーク3)を指す。
本明細書において使用する「約」という用語は、明記された数値の10%の変動を指し、例えば、約50%は、45~55%の変動を有する。
本発明は、(a)(i)細胞を培養培地中に播種する工程;及び(ii)細胞培養物中の細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、培養培地中で細胞を培養する工程を含む、無血清細胞培養培地中でフェッドバッチ培養を使用して、抗体のスペソリマブをコードする核酸を含むCHO細胞を培養する工程であって、ここで、銅(II)(Cu2+)は、0.35~1.2μMで、鉄は1,500μM以上で、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日以内に培養培地に添加される、工程;(b)抗体のスペソリマブを含む細胞培養上清を収集する工程;及び(c)場合により、細胞培養上清から抗体のスペソリマブを精製する工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブを産生するための方法を提供する。好ましくは、Cu2+及び鉄は、工程(i)で播種する前に及び/又は播種後1日以内に培養培地に添加され、より好ましくはCu2+及び鉄は、工程(i)で播種する前に又は接種時(すなわち細胞播種時)に培養培地に添加される。1つの実施態様では、Cu2+及び/又は鉄は、1つ以上のボーラスの添加として、又は連続的に、培養培地に添加される。1つ以上のボーラスの添加は、Cu2+及び/又は鉄を基礎培地と共に提供する工程を含む。したがって、特定の実施態様では、工程(i)は、Cu2+を0.35~1.2μMで、鉄を1,500μM以上で含む、基礎培地中に細胞を播種する工程を含む。工程(i)の培養培地はまた、基礎培地とも称され得る。
銅は、0.35~1.2μMで培養培地に、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日若しくは1日以内に培養培地に添加される。当業者は、銅を培養培地に添加する手段は無関係であり、工程(i)で細胞を播種する前の添加は、銅が、工程(i)に記載の培養培地に存在しているか若しくは一部であること、及び/又は、工程(i)の播種の前に混合準備のできた培養培地への銅含有補助剤の添加を含むことを理解する。好ましい実施態様では、Cu2+は、0.4~1.0μM、より好ましくは0.5~0.8μMで、工程(i)の細胞を播種する前に及び/又は播種後2日以内に、好ましくは1日以内に培養培地に添加される。銅(II)は典型的には、CuSO又はCuClを含むがこれらに限定されない、塩又はその水和物、適切な塩として提供される。好ましくは、銅はCuSOとして提供される。
鉄は、1,500μM以上で、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日若しくは1日以内に培養培地に添加される。当業者は、鉄を培養培地に添加する手段は無関係であり、工程(i)で細胞を播種する前の添加は、鉄が、工程(i)に記載の培養培地に存在しているか若しくは一部であること、及び/又は、工程(i)の播種の前に混合準備のできた培養培地への鉄含有補助剤の添加を含むことを理解する。好ましい実施態様では、鉄は、2,000μM以上、より好ましくは2,500μM又は3000μM又はそれ以上で添加される。鉄は、最大10,000μMまで、好ましくは5,000μMまで添加されてもよいが、典型的には、主に高い鉄濃度の存在下における培地成分の溶解性及び沈降に因り、しかしまた、非常に高い濃度の鉄の毒性問題の可能性に因っても、より低い濃度が使用される。したがって、特定の実施態様では、鉄濃度は、1,500μM~10,000μM、2,000μM~10,000μM、2,500μM~10,000μM、又は3,000μM~10,000μM、好ましくは1,500μM~5,000μM、2,000μM~5,000μM、2,500μM~5,000μM、又は3,000μM~5,000μMである。鉄は典型的には、鉄ピロリン酸塩(Fe(P)、クエン酸鉄アンモニウム((NH[Fe(C])、クエン酸鉄(CFeO)、クエン酸鉄コリン、硝酸鉄(III)、リン酸鉄、硫酸鉄、及び塩化鉄であるがこれらに限定されない、適切な鉄源に由来する、塩として及び/又はキレートで提供される。好ましい鉄源は、クエン酸鉄、クエン酸鉄コリン、及び塩化鉄である。更なる適した鉄源は当技術分野において公知であり、当業者は、特定のキレート剤、例えばクエン酸塩及び/又はコリンの添加が、細胞による鉄の取り込みを増加させ得、該キレート剤は鉄源に別々に添加されてもよいことを知っているだろう。
本発明の脈絡において、銅及び鉄は増殖期開始時に、すなわち播種前及び/又は播種後2日若しくは1日以内に特定の濃度で添加(及び/又は存在)することが重要であり、一方、培養中の、特に産生期中の銅及び鉄の濃度はあまり重要ではない。特に、PBG及びMan5含量に対する銅の減少及び鉄の増加の相乗作用に因り、更なる減少が達成され得るか、又は同程度の減少が、僅かにより高い銅濃度で達成され得、これにより、あまりに低い銅濃度の負の作用は回避される。
特定の実施態様では、抗体のスペソリマブをコードする核酸は、CHOゲノムに安定に組み込まれる。CHO細胞に抗体をトランスフェクト又は形質導入し、抗体産生クローンを選択するための方法は、当技術分野において公知である。
本発明に記載の方法は、細胞にフィード培地にフィードする工程を含む。特定の実施態様では、フィード培地は、培養0日目から開始して3日目まで添加され、好ましくは1日目から開始して3日目まで、より好ましくは1日目から開始して2日目まで、更により好ましくは1日目に開始される。必須ではないが、フィード培地は更に、Cu2+イオンを含み得る。例えば、フィード培地に、1日1回、15nM未満、12nM未満、10nM未満、好ましくは1日1回7nM未満、より好ましくは1日1回6nM未満のCu2+イオンが添加され得る。フィード培地は更に鉄イオンを含み得る。例えば、フィード培地には、最大100μMまでの鉄が1日1回、好ましくは最大50μM、40μM、30μM又は20μMの鉄が1日1回添加され得る。フィード培地は更に、特定の濃度でCu2+及び鉄イオンを含み得る。本発明の方法に使用されるフィード培地は、基礎細胞培養培地中で培養された細胞に添加される予定であり、ここで(a)フィード培地は、培養開始容量に基づいて、約10~50ml/L/日で、好ましくは20~35ml/L/日で添加され、(b)フィード培地は、0、1、2又は3日目に開始して添加され、並びに/或いは(c)フィード培地は連続的に、又はボーラスとして1日数回、1日2回、1日1回、2日毎に1回、若しくは3日毎に1回添加される。
本発明の方法では、培養培地中の上昇した鉄濃度及び/又は減少した銅濃度は、減少したBPG%を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす。「減少したBPG%」という用語は、本発明の脈絡において、いずれかが本発明の方法に記載の範囲内である、より低い鉄濃度及び/又はより高い銅濃度を使用した同じ方法によって抗体のスペソリマブが産生された場合と比較したもの、或いは、特定の範囲より低い鉄濃度及び/又は特定の特許請求された範囲より高い銅濃度を使用した同じ方法と比較したものと理解されるべきである。特定の好ましい実施態様では、本発明に記載の方法によって産生された抗体のスペソリマブは、7.5%以下のBPG、好ましくは7%以下のBPG、より好ましくは6.5%以下のBPG、更により好ましくは6%以下のBPGを有する。本発明によると、鉄濃度を漸増すると、BPG%は減少し、それ故、他の態様に因り更に減少させることができない、僅かにより高い銅濃度を補い得る。
したがって、本発明はまた、(a)(i)細胞を培養培地中に播種する工程;及び(ii)細胞培養物中の細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、培養培地中で細胞を培養する工程(ここでのBPG%は、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日以内に、培養培地に与えられたCu2+濃度を減少させかつ鉄濃度を上昇させることによって低減し、ここでの培養培地に与えられた銅濃度は、0.35~1.2μMであり、培養培地に与えられた鉄濃度は1500μM又はそれ以上である);(b)抗体のスペソリマブを含む、細胞培養上清を収集する工程;及び(c)場合により、細胞培養上清から抗体のスペソリマブを精製する工程を含む、抗体のスペソリマブのBPG%を低減させるための方法に関する。好ましくは、Cu2+及び鉄は、工程(i)における播種前に及び/又は播種後1日以内に培養培地に添加され、より好ましくはCu2+及び鉄は、工程(i)における播種前に又は接種時(すなわち細胞播種時)に培養培地に添加される。1つの実施態様では、Cu2+及び/又は鉄は、1つ以上のボーラスの添加として又は連続的に培養培地に添加される。1つ以上のボーラスの添加は、Cu2+及び/又は鉄を、基礎培地と共に提供する工程を含む。したがって、特定の実施態様では、工程(i)は、0.35~1.2μMでCu2+を含み、1500μM又はそれ以上で鉄を含む、基礎培地中に細胞を播種する工程を含む。「減少したBPG%」という用語は、本発明の脈絡において、いずれかかが本発明の方法に記載の範囲内である、より低い鉄濃度及び/又はより高い銅濃度を使用した同じ方法によって、抗体のスペソリマブが産生された場合と比較したもの、或いは、特定の範囲より低い鉄濃度及び/又は特定の特許請求された範囲より高い銅濃度を使用した同じ方法と比較したものと理解されるべきである。特定の好ましい実施態様では、本発明に記載の方法によって産生される抗体のスペソリマブは、7.5%以下のBPG、好ましくは7%以下のBPG、より好ましくは6.5%以下のBPG、更により好ましくは6%以下のBPGを有する。
本明細書において使用する「塩基性ピーク群(BPG)%」という用語は、スペソリマブのプロファイルのHPLCクロマトグラムにおいて、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって決定されるような、総和ピーク面積に対する相対的ピーク面積%を指す(全抗体の相対的%)。「BPG」という用語はまた、抗体のスペソリマブの塩基性種又は塩基性変異体も指し得る。
BPGは、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX HPLC)を使用して決定され得る。より具体的には、ここでは塩基性種は、スペソリマブのプロファイルのHPLCクロマトグラムにおいてメインピークより後に溶出するピークに相当する。1つの実施態様では、HPLCクロマトグラムは、10mMのMOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸、4-モルホリンプロパンスルホン酸)(pH7.6)の第一の移動相と、10mMのMOPS、100mMの塩化カリウム(pH7.6)の第二の移動相を使用して作成され、ここでのHPLCクロマトグラムは、280nmでの検出を使用して作成される。
BPGのレベルは主に、上流プロセスによって決定され、下流プロセスによって殆ど影響を受けない。したがって、スペソリマブのHCCF中のBPG%は、薬物物質中のBPG%に類似している。これは、例えば高分子量種(HMW)又は低分子量種(LMW)とは対照的であり、これは典型的には下流プロセスにおいては低減している。
本発明に記載の方法は更に、播種密度を採用する工程を含み得る。増加した播種密度は、減少したBPG%及び/又はMan5構造%を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす。したがって、特定の実施態様では、工程(a)における播種密度は、0.7×10個の細胞/ml以上、好ましくは0.7×10個の細胞/mlから1.5×10個の細胞/ml、より好ましくは0.8×10個の細胞/mlから1.5×10個の細胞/ml、更により好ましくは0.9×10個の細胞/mlから1.3×10個の細胞/mlである。「減少したBPG%及び/又はMan5構造%」という用語は、本発明の脈絡において、いずれかが本発明の方法に記載の範囲内である、より低い播種密度を使用した同じ方法によって抗体のスペソリマブが産生される場合と比較したもの、或いは、特定の範囲内より低い播種密度を使用した同じ方法と比較したものとして理解されるべきである。
本発明に記載の方法は更に、培養温度を採用する工程を含み得る。特定の実施態様では、細胞は、細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、36.0℃~37.5℃で培養される。好ましくは、培養温度は、36.0℃~37.3℃、又は36.5℃~37.0℃の範囲内である。該方法はまた、溶存酸素(DO)濃度を採用する工程も含み得る。特定の実施態様では、該培養物中の溶存酸素(DO)濃度は、30~60%の範囲内に、好ましくは40~55%の範囲内に、より好ましくは40~45%の範囲内に維持される。上昇した培養温度及び/又は減少した溶存酸素は、減少したBPG%及び/又は減少したMan5構造%を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす。「減少したBPG%及び/又は減少したMan5構造%」という用語は、この脈絡において、いずれかが本発明の方法に記載の特許請求された範囲内の、より低い培養温度及び/又はより高い溶存酸素濃度を使用した同じ方法によって抗体のスペソリマブが産生された場合と比較したもの、或いは、特定の範囲内より低い培養温度又は特定の範囲を超える溶存酸素濃度を使用した同じ方法と比較したものと理解されるべきである。特定の実施態様では、抗体のスペソリマブは、5%未満のMan5構造、好ましくは4%未満のMan5構造、より好ましくは3%未満のMan5構造、及び/又は7.5%以下のBPG、好ましくは7%以下のBPG、より好ましくは6.5%以下のBPG、更により好ましくは6%以下のBPGを有する。培養温度はまた、使用される細胞株にも依存し得る。例えば、CHO-K1細胞は、CHO-DG44と比較してより低い温度(例えば33~36℃)で至適培養温度を有する傾向があり、至適培養温度は、約36.0~37.5℃、好ましくは36.5~37.℃である。
本明細書において使用する「Man5構造%」という用語は、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC-HPLC)、好ましくは親水性相互作用超高速液体クロマトグラフィー(HILIC-UPLC)によって決定されるような、全てのグリコシル化ピークの総面積又は合計面積に対する、マンノース-5ピーク面積%(ピーク3)(図5)を指す。Man5構造は、ピーク3のピーク面積%によって示される。
高マンノース構造、特にMan5構造は、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)、好ましくは親水性相互作用超高速液体クロマトグラフィー(HILIC-UPLC)を使用して決定され得る。1つの実施態様では、Man5画分は、N-グリコシダーゼF(PNGaseF)を用いた酵素的オリゴ糖の遊離及びHILIC-UPLCを使用した2-アミノベンズアミド(2-AB)標識後に決定される。
BPGレベルと同じように、高マンノースのレベル、特にMan5構造のレベルは主に、上流プロセスによって決定され、下流プロセスによってほんの僅かしか影響を受けない。したがって、スペソリマブのHCCFにおけるMan5構造%は、薬物物質におけるMan5構造%と類似している。これは、例えば、高分子量種(HMW)又は低分子量種(LMW)とは対照的であり、これは典型的には下流プロセスにおいては低減している。
本発明の方法に使用される哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えばCHO-K1細胞、CHO-DG44細胞、DuxB11細胞、又はCHO GS欠損細胞であり、好ましくは該細胞はCHO-DG44細胞又はCHO-K1細胞である。効率的な細胞株の発生プロセスを可能とするCHO細胞は、それぞれメチオニンスルホキシミン(MSX)又はメトトレキサートを用いた選択を容易にするために、グルタミンシンターゼ(GS)ノックアウト及び/又はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)ノックアウトなどにより、代謝的に工学操作されている。本発明に記載の方法に使用されるCHO細胞としては、CHO-K1細胞、CHO-DXB11細胞(CHO-DUKX細胞又はDuxB11細胞とも称される)、CHO-DUKX B1細胞、CHO-S細胞、CHO-DG44細胞、及びCHOグルタミンシンターゼ(GS)欠損細胞、又はこのような細胞株のいずれかの誘導体/子孫が挙げられる。好ましいのは、CHO-DG44細胞株、CHO-DUKX細胞株、CHO-K1細胞株、CHO-S細胞株、及びCHO-DG44 GS欠損細胞株であり、特に好ましいのはCHO-DG44細胞及びCHO-K1細胞であり、更により好ましいのはCHO-DG44細胞である。本発明によると、CHO細胞は、懸濁細胞として培養される。本発明の培地と一緒に使用することのできる、哺乳動物細胞の非限定的な例が、表1に要約されている。
Figure 2024517784000005
前記のCHO産生細胞は、優先的には、細胞の増殖を可能とする条件下で培養される。更に、該CHO産生細胞は、優先的には、抗体のスペソリマブの発現に好ましい条件下で培養される。その後、抗体のスペソリマブは、細胞及び/又は細胞培養上清から単離される。好ましくは、抗体のスペソリマブは、分泌されたポリペプチドとして、培養培地から回収される。
抗体のスペソリマブは、下流プロセスにおいて、HCCF、他の組換えタンパク質、宿主細胞タンパク質、及び混入物から精製される。様々な精製工程で得られた及び/又は分析された試料は、インプロセスコントロール(IPC)試料及び/又はプロセス中間体とも称される。収集は典型的には、例えば収集された細胞培養液を産生するための、遠心分離及び/又はろ過を含む。したがって、収集された細胞培養液は、清澄化された収集された細胞培養液とも称され得る。それは、生細胞を含有しておらず、細胞片並びに大半の細胞成分は除去されている。清澄化されたとは典型的には、遠心分離又はろ過、好ましくはろ過を意味する。更なるプロセス工程は、抗体のスペソリマブを混入物から分離するための、アフィニティクロマトグラフィー、特にプロテインAカラムクロマトグラフィーを含み得る。更なるプロセス工程は、ウイルスを不活化するための酸処理、好ましくは酸処理後の、デプスろ過による産物プールの清澄化を含むことにより、宿主細胞由来タンパク質及びDNAなどの細胞混入物を除去し得る。更なるプロセス工程は、この順序で又は個々の場合において適切であり得るような任意の他の順序で、以下を含み得る:混入している細胞成分を更に除去するための、イオン交換クロマトグラフィー、特に陰イオン交換クロマトグラフィー、及び/又は、凝集物などの産物に関連した混入物を除去するための陽イオン交換クロマトグラフィー。更に、好ましくは以下のプロセス工程は、それぞれ、ウイルスを更に除去するためのナノろ過、並びに、組換えタンパク質を濃縮しそして緩衝液を交換するための限外ろ過及び透析ろ過を含み得る。
例えばプロテインAカラム、酸処理、デプスろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー、及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー後にHCCFから精製される、抗体のスペソリマブを含む試料は、「精製された抗体産物プール」とも称され得る。精製された抗体産物プールは更に精製され得、賦形剤と共に製剤化され得るが、賦形剤と共に製剤化される必要はない。したがって、精製された抗体産物プールは、薬物物質と同一であり得るが、異なる濃度で及び/又は異なる緩衝系にも存在し得る。
別の態様では、(a)(i)細胞を培養培地に0.7×10個の細胞/ml以上の細胞密度で播種する工程;及び(ii)細胞培養物中の細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、培養培地中で細胞を培養する工程を含む、無血清細胞培養培地中でフェッドバッチ培養を使用して、抗体のスペソリマブをコードする核酸を含むCHO細胞を培養する工程であって、ここで場合により、Cu2+が、0.35~1.2μMで、鉄は1500μM以上で、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日以内に培養培地に添加される、工程;(b)抗体のスペソリマブを含む細胞培養上清を収集する工程;及び(c)場合により、細胞培養上清から抗体のスペソリマブを精製する工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブを産生するための方法が提供される。増加した播種密度は、減少したBPG%及び/又はMan5構造%を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす。特定の実施態様では、工程(a)における播種密度は、0.7×10個の細胞/mlから1.5×10個の細胞/ml、より好ましくは0.8×10個の細胞/mlから1.5×10個の細胞/ml、更により好ましくは0.9×10個の細胞/mlから1.3×10個の細胞/mlである。「減少したBPG%及び/又はMan5構造%」という用語は、この脈絡において、場合によりいずれかが本発明の方法に記載の範囲内の、より低い播種密度を使用した同じ方法によって抗体のスペソリマブが産生されるのと比較したもの、或いは、特定の範囲より低い播種密度を使用した同じ方法と比較したもの、及び場合によりいずれかが本発明の方法に記載の範囲内にあるより低い鉄濃度及び/又はより高い銅濃度を使用した同じ方法と比較したもの、或いは特定の範囲より低い鉄濃度及び/又は特定の特許請求された範囲を超えた銅濃度を使用した同じ方法と比較したものと理解されるべきである。以前の態様に関しての実施態様及び修飾又は開示は、この態様に記載の方法に同様に適用される。培養温度の漸増は更に、BPG及び/又はMan5構造を減少させ得る。正確な培養温度は、使用されるCHO細胞に依存し得、好ましくは36.0℃~37.5℃であるが、他のCHO細胞については33~36℃であってもよい。また、溶存酸素の漸減(溶存酸素を30~60%に維持しつつ)は更に、BPG及び/又はMan5構造を減少させ得る。したがって、特定の実施態様では、上昇した培養温度及び/又は減少した溶存酸素は、減少したBPG%及び/又はMan5構造%を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす。好ましい実施態様では、産生された抗体のスペソリマブは、5%未満のMan5構造、好ましくは4%未満のMan5構造、より好ましくは3%未満のMan5構造、及び/又は7.5%以下のBPG、好ましくは6.5%以下のBPGを有する。
別の態様では、本発明は、抗体のスペソリマブを含む組成物を提供し、ここでの抗体のスペソリマブは、本発明に記載の方法によって得られる。特定の実施態様では、該組成物は、(a)7.5%以下のBPG、好ましくは7%以下のBPG、より好ましくは6.5%以下のBPG、更により好ましくは6%以下のBPG、7%未満のBPG、好ましくは6%未満のBPG;及び/又は(b)5%未満のMan5構造、好ましくは4%未満のMan5構造、より好ましくは3%未満のMan5構造、好ましくは2%未満のMan5構造を有する、抗体のスペソリマブを含む。該組成物は、収集細胞培養液(HCCF)、親和性捕捉ツール、薬物物質、又は薬物製品であり得る。好ましくは、該組成物は、薬物物質又は薬物製品である。
更に別の態様では、(a)7.5%以下のBPG、好ましくは7%以下のBPG、より好ましくは6.5%以下のBPG、更により好ましくは6%以下のBPG;及び/又は(b)5%未満のMan5構造、好ましくは4%未満のMan5構造、より好ましくは3%未満のMan5構造、好ましくは2%未満のMan5構造を有する、抗体のスペソリマブを含む組成物が提供される。該組成物は、収集細胞培養液(HCCF)、親和性捕捉ツール、薬物物質、又は薬物製品であり得る。好ましくは、該組成物は、薬物物質又は薬物製品である。
本発明に記載の組成物中の抗体のスペソリマブは更に、低い全体的な糖化によって特徴付けられ得、特に重要なリジン、すなわち抗体のCDR(相補性決定領域)に近いリジン、例えばCDRの3アミノ酸以内には、糖化を全く含んでいない。したがって、1つの実施態様では、抗体のスペソリマブは、6%以下の重鎖(HC)のリジン糖化変異体、好ましくは3%以下のHCのリジン糖化変異体を有し、並びに/或いは、重鎖(HC)のリジンK38及びK67は、糖化されておらず、K23における糖化は0.3%以下である。特定の実施態様では、抗体のスペソリマブは更に、2%以下の軽鎖(LC)のリジン糖化変異体、好ましくは1%以下の軽鎖(LC)のリジン糖化変異体を有する。結果として得られた軽鎖及び脱グリコシル化重鎖は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって分離され、ESI(エレクトロスプレー法) Q-TOF(四重極飛行時間) MS(質量分析)(Xevo G2 Q-TOF)によってオンラインで分析される。タンパク質サブユニット及び対応するグルコース付加物(1Mのグルコース付加=162Da)が分析され、取得されたデータは、MaxEnt(商標)アルゴリズムを使用して解読される。
本明細書において使用する「重鎖のリジン糖化変異体%」という用語は、全重鎖(糖化された重鎖及び糖化されていない重鎖)に対する糖化重鎖(重鎖+グルコース)の比率を指す。本明細書において使用する「軽鎖のリジン糖化変異体%」という用語は、全軽鎖(糖化された軽鎖及び糖化されていない軽鎖)に対する糖化軽鎖(軽鎖+グルコース)の比率を指す。軽鎖及び/又は重鎖のリジン糖化変異体及び非糖化変異体は、減少した及び脱グリコシル化された(例えばN-グリコシダーゼF処理された)軽鎖及び重鎖の、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)による分離及びESI Q-TOF MSによる分析によって決定され得る。
単一のリジンの糖化は、スペソリマブの変性及びヨード酢酸によるアルキル化後に、キモトリプシンで消化されたペプチドにおいて、逆相液体クロマトグラフィー(LC-MS)及びESI-MS(エレクトロスプレー法-質量分析法)によって分析され得る。糖化ペプチドの相対量は、野生型ペプチド及びグルコース付加物(+162Da)を有するペプチドの抽出されたイオンクロマトグラムに基づいて定量される。
本明細書において、6%以下の重鎖のリジン糖化変異体、好ましくは3%以下の重鎖のリジン糖化変異体を含む抗体のスペソリマブを含む組成物も提供され、並びに/或いは、ここでのリジンK38(重鎖)及びK67(重鎖)は糖化されておらず、K23(重鎖)における糖化は0.3%以下である。特定の実施態様では、抗体のスペソリマブは更に、2%以下の軽鎖(LC)のリジン糖化変異体、好ましくは1%以下の軽鎖(LC)のリジン糖化変異体を有する。
本明細書において、APGの亜画分1%未満のAP4及び4%未満のAP3画分、特に1%未満のAP4及び1%未満のAP3b画分を含む、抗体のスペソリマブを含む組成物も提供される。
上記の観点から、本発明はまた、以下の項目も包含することが理解される:
1.(a)(i)細胞を培養培地中に播種する工程、及び
(ii)細胞培養物中の細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、培養培地中で細胞を培養する工程
を含む、無血清細胞培養培地中でフェッドバッチ培養を使用して、抗体のスペソリマブをコードする核酸を含むCHO細胞を培養する工程であって、
ここで、Cu2+は、0.35~1.2μMで、鉄は1500μM以上で、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日以内に培養培地に添加される、工程;
(b)抗体のスペソリマブを含む細胞培養上清を収集する工程;及び
(c)場合により、細胞培養上清から抗体のスペソリマブを精製する工程
を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブを産生するための方法。
2.(a)(i)細胞を培養培地中に播種する工程、及び
(ii)細胞培養物中の細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、培養培地中で細胞を培養する工程(ここでのBPG%は、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日以内に、培養培地に与えられたCu2+濃度を減少させかつ鉄濃度を上昇させることによって低減し、好ましくはここでの培養培地に与えられた銅濃度は、0.35~1.2μMであり、培養培地に与えられた鉄濃度は1500μM又はそれ以上である);
(b)抗体のスペソリマブを含む、細胞培養上清を収集する工程;及び
(c)場合により、細胞培養上清から抗体のスペソリマブを精製する工程
を含む、抗体のスペソリマブのBPG%を低減させるための方法。
3.Cu2+及び鉄は工程(i)における播種前に及び/又は播種後1日以内に培養培地に添加される、項目1又は2の方法。
4.Cu2+及び鉄は、1つ以上のボーラスの添加として又は連続的に培養培地に添加される、項目1~3のいずれか一項の方法。
5.抗体のスペソリマブをコードする核酸は、CHOゲノムに安定に組み込まれる、先行する項目のいずれか一項の方法。
6.フィード培地は、培養0日目から開始して3日目まで添加される、先行する項目のいずれか一項の方法。
7.場合により、フィード培地には、1日1回15nM未満のCu2+及び/又は最大100μMまでの鉄が添加される、先行する項目のいずれか一項の方法。
8.培養培地中の上昇した鉄濃度及び/又は減少した銅濃度は、減少したBPG%を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす、先行する項目のいずれか一項の方法。
9.抗体のスペソリマブは、7.5%以下のBPG、好ましくは7%以下のBPG、より好ましくは6.5%以下のBPG、更により好ましくは6%以下のBPGを有する、先行する項目のいずれか一項の方法。
10.BPGは、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX HPLC)を使用して決定される、項目8の方法。
11.工程(a)における播種密度は0.7×10個の細胞/ml以上、好ましくは0.7×10個の細胞/mlから1.5×10個の細胞/ml、より好ましくは0.8×10個の細胞/mlから1.5×10個の細胞/ml、更により好ましくは0.9×10個の細胞/mlから1.3×10個の細胞/mlである、先行する項目のいずれか一項の方法。
12.(a)(i)細胞を培養培地に0.7×10個の細胞/mlの細胞密度で播種する工程、及び
(ii)細胞培養物中の細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、培養培地中で細胞を培養する工程
を含む、無血清細胞培養培地中でフェッドバッチ培養を使用して、抗体のスペソリマブをコードする核酸を含むCHO細胞を培養する工程であって、
ここで場合により、Cu2+は、0.35~1.2μMで、鉄は1500μM以上で、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日以内に培養培地に添加される、工程;
(b)抗体のスペソリマブを含む細胞培養上清を収集する工程;及び
(c)場合により、細胞培養上清から抗体のスペソリマブを精製する工程
を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブを産生するための方法。
13.増加した播種密度は、減少したBPG%及び/又はMan5構造%を有する、抗体のスペソリマブの産生をもたらす、先行する項目のいずれか一項の方法。
14.細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、細胞を36.0℃から37.5℃で培養し、及び/又は、該培養物中の溶存酸素(DO)濃度は30~60%の範囲内に維持される、先行する項目のいずれか一項の方法。
15.上昇した培養温度及び/又は減少した溶存酸素は、減少したBPG%及び/又はMan5構造%を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす、先行する項目のいずれか一項の方法。
16.抗体のスペソリマブは、5%未満のMan5構造、好ましくは4%未満のMan5構造、より好ましくは3%未満のMan5構造、及び/又は7.5%以下のBPG、好ましくは6.5%以下のBPGを有する、先行する項目のいずれか一項の方法。
17.CHO細胞は、CHO-K1細胞又はCHO-DG44細胞である、先行する項目のいずれか一項の方法。
18.(a)7.5%以下のBPG、好ましくは7%以下のBPG、より好ましくは6.5%以下のBPG、更により好ましくは6%以下のBPG;及び/又は
(b)5%未満のMan5構造、好ましくは4%未満のMan5構造、より好ましくは3%未満のMan5構造
を有する抗体のスペソリマブを含む、組成物。
19.抗体のスペソリマブを含む組成物であって、抗体のスペソリマブは、項目1~17のいずれか一項に記載の方法によって得られる、組成物。
20.前記組成物は、収集された細胞培養液(HCCF)、親和性捕捉プール、薬物物質又は薬物製品、好ましくは薬物物質又は薬物製品である、項目18又は19の組成物。
21.前記組成物は、7.5%未満のBPG及び/又は5%未満のMan5構造%を有する抗体のスペソリマブを含む薬物製品である、項目18~20のいずれか一項の組成物。
22.抗体のスペソリマブは、6%以下の重鎖(HC)のリジン糖化変異体を含み、並びに/或いは、リジンK38(重鎖)及びK67(重鎖)は糖化されておらず、K23(重鎖)における糖化は0.3%以下である、項目18~21のいずれか一項の組成物。
23.6%以下の重鎖(HC)のリジン糖化変異体を含み、並びに/或いは、リジンK38(重鎖)及びK67(重鎖)は糖化されておらず、K23(重鎖)における糖化は0.3%以下である、抗体のスペソリマブを含む、組成物。
24.APGの亜画分1%未満のAP4及び4%未満のAP3画分、特に1%未満のAP4及び1%未満のAP3b画分を含む、抗体のスペソリマブを含む、組成物。
細胞株
CHO細胞株(CHO-DG44)を、無血清培地条件に適応させ、更にDNAを用いてトランスフェクトし、組換えモノクローナル抗体のスペソリマブを産生した。具体的には、無血清培地に独立して適応させた、BI HEX(ベーリンガーインゲルハイムHigh Expression)CHO-DG44由来CHO細胞株(HEX IIと命名)を使用した。これらの細胞は、DHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)欠損であり、メトトレキサートを選択マーカーとして使用した。
分析法
細胞濃度及び細胞の生存率は、CEDEX Hires(バージョン2.2.3)自動細胞分析機器(ロシュダイアグノスティクス社、マンハイム、ドイツ)を使用して、トリパンブルー排除法によって決定された。培地中で産生された組換えモノクローナル抗体の濃度は、光度測定法に基づいた、Konelab60i(サーモサイエンティフィック社、ドライアイヒ、ドイツ)分析機器によって定量された。Konelab60i機器はまた、細胞培養上清中のグルコース、乳酸(乳酸塩)、グルタミン、グルタミン酸塩、及びアンモニウムなどの代謝物の定量のためにも使用された。モル浸透圧濃度のプロファイルは、オズモマットオート装置(Gonotec社、ベルリン、ドイツ)によって分析された。この方法は、特定の溶液の凝固点降下凍結点に基づき、これは、溶解している粒子の量に比例する。溶存二酸化炭素pCO2、溶存酸素pO2、及びpHは、1日1回、Rapidlab 248/348血液ガス分析機器(シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティクス社、エシュボルン、ドイツ)を用いて決定された。これらの機器及び必要とされる方法は当技術分野において周知であり、プロセスのモニタリング及び制御のために、バイオ医薬品のプロセス開発及び製造において使用されている。
バッチモード及びフェッドバッチモード
抗体の産生のために、典型的にはフェッドバッチプロセスが、最終生産段階において使用されるが、バッチ培養は主に、最終生産段階の前の細胞増殖段階において実施される。一連のバッチ培養は、細胞増殖中の種子トレインとも称され、このことは、各増殖工程における細胞が、より大きな培養容量を有する培養容器へと移行されることを意味する。最終生産段階におけるバッチプロセスは一般的に、高い生産性をもたらさず、それ故、組換えタンパク質の製造には稀にしか使用されない。フェッドバッチプロセスでは、濃縮されたフィード培地が、培養中に、栄養分の補充のために新鮮な培地と共に補うために添加される。これらのプロセスは、より高い生産性を達成し、それ故、主に組換えタンパク質の産生に使用される。バッチモードとは対照的に、濃縮フィード培地の添加による栄養分の補充もまた、乳酸塩又はアンモニウムなどの望ましくない代謝副産物による、細胞増殖の阻害を低減する。典型的には、フェッドバッチプロセスは、攪拌タンクの最大容量よりもはるかに小さな容量で開始され、よって、濃縮された栄養溶液が、バイオリアクターの培養時間におよび添加され得る。フェッドバッチ培養は、14日間実施された。
バイオリアクターでの培養
バイオリアクター実験は、最大15mlの容量を有する制御された48ミニ-バイオリアクターシステム(ambr15バイオリアクターシステム)で又は250mlの名目上の容量を有する制御された24ミニ-バイオリアクターシステム(ambr250バイオリアクターシステム)で、専売特許の基礎培地及びフィード培地を使用して実施された。完全に制御されたバイオリアクターは、フェッドバッチモードで実施された。濃縮されたフィード溶液は、フィードポンプによって、1日目以降の培養から、33ml/L/日のフィーディング速度で連続的に添加されたか、又は指示された通り実験において変更された(培養開始容量に基づいて)。播種密度は、1.0×10個の細胞/mlに設定されたか、又は指示されたように実験において変更された。溶存酸素濃度は、60%に保持されたか、又は指示されたように実験において変更された。より長い時間枠におよぶ細胞の増殖は、表現型の安定性を確実にするために、細胞増殖及び培養物分割のための標準的なシードトレインプロトコールに従った。この手順は、様々な時点における、異なる実験設定間の比較を確実にする。標準的なプロセス形式は、7.10~6.95(+/-0.25)のpH範囲、及び48ミニバイオリアクターシステムにおける1000~1150rpmの一定の攪拌速度、及び24ミニバイオリアクターシステムにおける614rpmの一定の攪拌速度からなる。温度は、36.5℃に維持されたか又は実験中に変更された。培養期間中に実際のグルコース濃度を2~4g/lに維持するために、グルコースが要求に応じてフィードされた。上記のような分析法を使用して、主要な培養パラメーター、例えば細胞数、細胞生存率、及び主要な炭素代謝物の濃度を決定して、理想的な栄養分の供給を細胞培養物に提供した。バイオリアクターシステムにおいて、pH及びpO2をオンラインでモニタリングした。オフラインのプロセスパラメーター及び設定点は、例えばpH制御、栄養フィードの添加、温度制御、攪拌、及びガス補給などをモニタリングするために、自動閉ループ系を使用した制御用ソフトウェアによって完全に制御された。この培養プロセスは、最大2,000及び12,000Lまで成功裏にスケールアップすることができ、そして成功裏にスケールアップされている。
荷電変異体の検出
陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX HPLC)は、それらの電荷に応じた、タンパク質及びタンパク質個体群の分離を可能とし、一方、勾配における塩含量は、一定pHで増加する。それらの官能基及びそれらの微小不均一性に因り、タンパク質は、陽性荷電又は陰性荷電のいずれかを有し得る。CEX HPLCは、これらのpH依存性荷電を使用して、異なるタンパク質/タンパク質修飾の分離を促進する。
移動相Aにおいて約1mg/mLの抗体濃度を含む試料を調製し、勾配溶離を用いたHPLCシステム、温度制御オートサンプラー、及びHPLCカラムMAbPac SCX-10、4×250nm、10μmを使用した紫外線検出器を使用して分析された。HPLCクロマトグラムは、10mMのMOPS(3―(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸、4-モルホリンプロパンスルホン酸)(pH7.6)の第一移動相(溶出液A)及び10mMのMOPS、100mMの塩化カリウム(pH7.6)の第二の移動相(溶出液B)を使用して作成される。溶出は、0.8mL/分の流速で40分間の線型勾配で15%から85%の溶出液Aを流すことによって実施された。検出は、280nmの波長の紫外線検出器で実施された。
APG(酸性ピーク群)、メインピーク及びBPG(塩基性ピーク群)を、連続基線を使用した分割によって分離した。積分範囲は約2分後に開始され、約44分後に終了する。酸性ピーク群は更に、メインピークから以下の順で溶出する、7つの亜種に分離され得る。以下の保持時間におけるAP1(a、b、c)、AP2、AP3(a、b)及びAP4(表2)。単一のピークの積分は、以下の保持時間を使用することによって分割され、一方、メインピークは参照ピークである。積分は、図4A~Bで示される参照クロマトグラムに従って実施された。
Figure 2024517784000006
グリコシル化変異体の検出
分析試料及び参照標準物質を、デュプリケートで、1つの試料あたり0.2mgのタンパク質を使用して調製した。オリゴ糖は、PNGaseF(NEB P0704L、製造業者の説明書に従う)を用いて試料/参照標準物質から酵素的に遊離され、製造業者の説明書に従って2-アミノベンズアミド(2-AB(Ludger;LT-KAB-A2)を用いて標識された。精製水をブランク対照として使用し、試料/参照標準物質と平行して調製した。標識されたオリゴ糖は、HILICカラム(Glycan BEHアミドカラム、130Å、1.7μm、2.1×150mm)を用いたUPLC(例えばNexera,Fa、島津社)及び蛍光検出器(FLD)を使用して分析された。この方法を使用して、オリゴ糖プロファイル(オリゴマップ)を決定し、スペソリマブ薬物物質又はプロテインAプールのオリゴ糖構造を定量した。N-グリカンの遊離及び2-AB標識後、アリコートを、アミノプロピルカートリッジ(例えばSepPak;ウォーターズ社;真空チャンバー又は自動固相抽出システムを使用したWAT020840)を使用して精製した。溶出された画分を蒸発器を使用して乾燥し、80μlに再懸濁し、その後、0.7mL/分の流速及び波長FL検出器(励起波長330nm;発光波長420nm)、移動相A(0.05Mのアンモニウムフォーマット、pH4.5/50%アセトニトリル(ACN))及び移動相B:アセトニトリルHPLC等級(ACN))を以下の勾配で使用してHPLC分析を行なった。溶出は、25分間の線型勾配で50%から80%の溶出液Aを流すことによって実施された。
参照標準物質及び試料のクロマトグラムの積分範囲は約4から20分である。保持時間は、使用する装置及び移動相に応じて僅かに変動する。ピーク3の相対ピーク面積(図5、(オリゴマップピーク3)とも称される)は、以下の式に従って計算される。

ピークx=1、2、3、4、5又は6
絶対ピーク面積=全ての積分されたピーク面積の総和
1回の注入に由来する全ピークに対する相対ピーク面積は、ピークの総和と称される(絶対ピーク面積)。ピーク3は、高マンノース(Man5)構造を含む。
実施例1:BPG及び高マンノースに対する鉄及び銅の影響
細胞培養の成績及び産物の品質パラメーター(酸性及び塩基性荷電変異体(酸性ピーク群(APG)及び塩基性ピーク群(BPG))並びに高マンノース種を含む)に対する、様々な濃度の鉄及び銅の効果並びにそれらの相互作用を、実験計画法(DOE)アプローチで調べた。DOE研究は、複数のインプット因子の変更を可能とし、様々なアウトプットパラメーターに対するそれらの複合した効果及び単独の効果を決定する、データの収集及び分析のためのツールである。したがって、この種の研究は、プロセス内の複数のインプットのレベルを同時に変更することによって、プロセス内の複数の因子の相互作用を同定することができる。
完全自動化された15mLのミニ-バイオリアクター中の24個の培養実験は、上記のようなプロセス条件を用いて実施された。細胞を、基礎培地中に1.0×10個の細胞/mlで播種した。基礎培地中の鉄濃度は、鉄源としてクエン酸鉄コリン(Dr.Paul Lohmann GmbH KG)を使用して、1.4~6.0mMで変動させた。クエン酸鉄コリン(0.7、1.4、2.1及び3.0g/Lのクエン酸鉄コリン)を、滅菌ろ過前に、5.8μMの鉄(硝酸鉄及び硫酸鉄)を含む培地製剤に直接加えた。銅は、CuSOとして提供され、0.36~1.71μMの間で変動させた。追加の銅溶液(CuSO)は、接種前にバイオリアクターに0.139μMのCuSOを含む基礎培地に直接、滅菌後に添加して補充された。1.13mMの鉄(クエン酸鉄コリンとして提供;565μM)及び0.43mMのCuSOを含むフィード培地が、1日1回、30ml/L/日で添加された。
統計ソフトウェア一式(Design Expert、Stat Ease社)を用いて評価されたアウトプットパラメーターは、スペソリマブの産物の力価、積分された生細胞密度、14日目の生存率、及び産物の品質パラメーター、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)によって測定されたAPG、BPG、並びにHILIC UHPLCによって決定されたマンノース5構造を通して示される高マンノース種であった(表3)。
Figure 2024517784000008
図1A~Fに示される結果は、最も低いBPGが、高い鉄濃度及び低い銅濃度を用いて到達することを実証する(図1A、B及びC)。同様に、より高い鉄濃度及びより低い銅濃度は、力価(図1D)、生細胞密度(図1E)及び生存率(図1F)にとって有益であるようである。
実施例2:BPG及び高マンノースに対するプロセスパラメーターの影響
細胞培養プロセスパラメーター播種細胞密度、培養温度及び溶存酸素濃度を、実験計画法アプローチにおいて評価することにより、産物の品質パラメーターであるBPG及び高マンノース種に対するそれらの影響を調査した。播種細胞密度は、50万から150万個の細胞/mlで、温度は35℃から38℃まで変動し、バイオリアクター中の溶存酸素濃度は、40から最大80%まで変動し、フィード速度は、1日あたり培養開始容量に基づいて1Lあたり、29.7から最大36.3mLまで変動した。24個の平行した操作が、フェッドバッチモードで14日間、完全自動化24ミニ-バイオリアクターシステム中で実施された。他の培養パラメーター及び分析法は上記のように実施された。統計ソフトウェア一式(Design Expert、Stat Ease社)を用いて評価されたアウトプットパラメーターは、スペソリマブの産物の力価、積分された生細胞の密度、14日目の生存率、及び産物の品質のパラメーターであるCEXによって測定されたAPG、BPG、並びにHILIC-UHPLCによって決定された高マンノース5の種であった(表4)。
Figure 2024517784000009
図2A~Hに示される結果は、最も少ないBPGは、高い播種密度及びより高い温度で達成され(図2A、B及びC)、最も少ない高マンノース(5Man)構造は同様に、高い播種密度及び低い温度で達成される(図2D及びE)ことを実証する。同様に、力価(図2F)及び生細胞密度(図2G)は、高い播種密度及びより高い培養温度と共に増加する。14日間の培養後の生存率は、高い播種密度及びより高い培養温度で僅かに減少するようであるが(図2H)、これは力価に負の影響を及ぼさないようである。図3A~Dに示される結果は、溶存酸素の減少も、BPG(図3A)、高マンノース構造(図3B)、力価(図3C)、及び生細胞密度(図3D)に対して有益な効果を及ぼすことを実証する。
実施例3:IL36及び胎児性Fc受容体の様々な異型遺伝子変異体への結合(APG/BPG)
スペソリマブのために回収されたCEX画分の効力を決定するために、IL36受容体への結合(表面プラズモン共鳴法)及びIL36受容体のバイオアッセイが実施された(表5)。
単離されたCEXの画分の大半は、薬物物質の入手源材料の効力と同等な効力を示す。低下した効力が、大半の酸性画分AP4に観察され、より低い程度で、酸性画分AP3bに観察された(同じことが胎児性Fc受容体との結合について該当する(表面プラズモン共鳴法))。両方の画分及び特に画分AP4が、かなり不明瞭なプロファイルを示し(図4A及びB)、1%未満という相対的に少ない量を有する(表5)。
同様に、最も塩基性の高い画分BP3もまた、1.5%未満の相対的に少ない量と共に(表5)、かなり不明瞭な溶出プロファイルを示す(表4A及びB)。IL36受容体との結合内の(表面プラズモン共鳴法)この画分は、減少した回収率を示し、このことは、プロテインA/Gセンサーチップへの減少した結合を意味し、これは図4Cに示されるこの画分内で観察されたオリゴマーの増加に一致する。
Figure 2024517784000010
BPGの種
塩基性ピーク群は、とりわけ、異なるN末端及びC末端の荷電変異体を含む。観察されるN末端荷電変異体は、N末端ピロ-グルタミンの代わりに、N末端グルタミンを含有しているスペソリマブである(画分BP2では軽鎖のN末端上に主に観察されるが、画分BP1ではより低い頻度で、重鎖のN末端に観察される)。更に、重鎖のN末端に追加のアミノ酸VHSを含有しているスペソリマブは、画分BP3において強化されている(N末端シグナルペプチドの残り)。観察されるC末端荷電変異体は、一方(画分BP1)又は両方(画分BP3)の重鎖のC末端に追加のリジンを含有しているスペソリマブである。更に、一方(画分BP1)又は両方(画分BP3)の重鎖のC末端にプロリンアミドを含有しているスペソリマブが強化されている(C末端グリシンの除去及び隣接するプロリンのアミド化によって生成)。
APGの種
酸性ピーク群は、とりわけ、N-アセチルノイラミン酸(NANA)を含有しているN-グリカンを有するスペソリマブ、及び/又は、N386+N391+N392(重鎖)に脱アミド化を有するスペソリマブを含む。更に、1本の軽鎖を欠失しているスペソリマブからなると推定される断片の中程度の強化が、より酸性のピーク内に観察される。
実施例4:リジン糖化変異体
糖化は、様々な種類の共有結合的な付加物の形成の結果であり、ここでのグルコースは、リジン残基又はN末端のいずれかの一級アミンと反応し得、結果として、酸性変異体が形成され得る。スペソリマブの糖化は、上流製造中に起こる。なぜなら、グルコースが培養培地に含有されているからである。糖化種は、細胞培養物中で生成され得、収集時にそこで、細胞及びスペソリマブ分子は、より高いヘキソースレベルに曝される。還元性の糖は、下流製造プロセスにおいては全く適用されないが、医薬製剤、すなわち薬物製品中に存在又は形成され得る。
リジン残基の糖化の受け易さは、溶媒の近付き易さ(三次構造)及びその側鎖の化学的環境(一次構造及び二次構造)によって決定される。IgGでは、糖化の大半は、30個を超えるリジン残基上に分布する(Miller AK, Hambly DM, Kerwin BA, Treuheit MJ, Gadgil HS, Journal of Pharmaceutical Sciences, 2011, 100(7): 2543-2550)。スペソリマブは、糖化を受け得る、軽鎖に11個のリジン残基(LC;配列番号2)及び重鎖に33個のリジン残基(HC;配列番号1)を有する。重鎖のCDRの近くには3個のリジン残基が存在するので(重要である可能性のあるリジン:HC-K23、K38、K67;配列番号1)、糖化は、抗体の有効性/効力にとって重要であり得る。
LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)を用いた相対的な定量を介した糖化の総和(減少)
LC-MSを用いて、減少した糖化の総和の相対的な定量を決定するために、1mg/mLに希釈されたスペソリマブの100μLの試料を、1μL(1U/μL)のN-グルコシダーゼ(ロシュPO11365193001又は均等物)を用いて処理し、N結合オリゴ糖を除去し、その後、1μLの1Mのジチオトレイトールを用いて還元した。還元は、57℃で20分間実施される。結果として得られた軽鎖及び脱グリコシル化された重鎖は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって分離され、オンラインでESI Q-TOF MSによって分析される(Xevo G2 Q-TOF)。タンパク質サブユニット及び対応するグルコース付加物(1Mのグルコース付加=162Da)を分析し、取得したスペクトルは、MaxEnt(商標)アルゴリズムを使用して解析される(表6)。
Figure 2024517784000011
LC-MSを用いた相対的な定量(単一の糖化部位)
LC-MSを用いた単一の糖化部位の相対的定量化を決定するために、試料を変性させ、緩衝液を、トリスグアニジウム塩酸塩緩衝液(7Mのグアニジウム塩酸塩/100mMのトリス/HClを用いて1mg/mLに試料を希釈、pH8.3)に交換し、ジチオトレイトール(DTT、最終濃度:10mM)を用いて57℃で20分間かけて還元し、ヨード酢酸(IAA、最終濃度:10mM)を用いて暗闇で室温で20分間かけてアルキル化した。その後、反応を、50mMのジチオトレイトールの添加によりクエンチした。還元及びアルキル化後、試料を再度、100mMの重炭酸アンモニウム緩衝液と交換し、界面活性剤の存在下においてキモトリプシンを使用して酵素的に消化した。反応を、ギ酸(1:120、容量:容量)の添加によって、37℃で30分後に停止する。ペプチドを、逆相液体クロマトグラフィーによって分離し、ESI(エレクトロスプレーイオン化法)-MS(質量分析)によって分析する。糖化ペプチドの相対量は、野生型ペプチド及びグルコース付加物(+162Da)を有するペプチドの抽出されたイオンクロマトグラムに基づいて定量される(表7)。
Figure 2024517784000012
重鎖及び軽鎖についての糖化リジン変異体は、それぞれ3%以下及び1%以下という低いレベルであるが、検出可能であり(表6)、典型的には、組換えIgGについて文献では5~15%というより低い範囲内に見られる(Eon-Duval A et al, J Pharm Sci., 2012, 101(10): 3604-3618)。更に驚くべきことには、重要な残基上の糖化は、検出限界未満であるか、又はK23については0.3%未満であることが判明した(表7、重要な残基は、太文字で強調されている)。
本発明の特定の態様及び実施態様が記載されているが、これらは例としてのみ提示され、本発明の範囲を限定することを意図しない。実際に、本明細書に記載の新規な方法及びシステムが、その精神から逸脱することなく、多種多様な他の形態で具現化され得る。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本発明の範囲及び精神内に該当するようなこのような形態又は改変物を包含することを意図している。
本開示に引用された全ての特許及び/又は刊行物(雑誌記事を含む)は、参照により本明細書に明確に援用される。

Claims (16)

  1. (a)(i)細胞を培養培地中に播種する工程、及び
    (ii)細胞培養物中の細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、培養培地中で細胞を培養する工程
    を含む、無血清細胞培養培地中でフェッドバッチ培養を使用して、抗体のスペソリマブをコードする核酸を含むCHO細胞を培養する工程であって、
    ここで、Cu2+は、0.35~1.2μMで、鉄は1500μM以上で、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日以内に培養培地に添加される、工程;
    (b)抗体のスペソリマブを含む細胞培養上清を収集する工程;及び
    (c)場合により、細胞培養上清から抗体のスペソリマブを精製する工程
    を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブを産生するための方法。
  2. Cu2+及び鉄が、工程(i)における播種前に及び/又は播種後1日以内に培養培地に添加される、請求項1記載の方法。
  3. 培養培地中の上昇した鉄濃度及び/又は低下した銅濃度が、減少した塩基性ピーク群%(BPG%)を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす、請求項1又は2記載の方法。
  4. 抗体のスペソリマブが、7.5%以下のBPG、好ましくは7%以下のBPG、より好ましくは6.5%以下のBPG、更により好ましくは6%以下のBPGを有する、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
  5. 工程(a)における播種密度が、0.7×10個の細胞/ml以上、好ましくは0.7×10個の細胞/mlから1.5×10個の細胞/ml、より好ましくは0.8×10個の細胞/mlから1.5×10個の細胞/ml、更により好ましくは0.9×10個の細胞/mlから1.3×10個の細胞/mlである、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
  6. (a)(i)細胞を培養培地に0.7×10個の細胞/ml以上の細胞密度で播種する工程、及び
    (ii)細胞培養物中の細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、培養培地中で細胞を培養する工程
    を含む、無血清細胞培養培地中でフェッドバッチ培養を使用して、抗体のスペソリマブをコードする核酸を含むCHO細胞を培養する工程であって、
    ここで場合により、Cu2+は、0.35~1.2μMで、鉄は1500μM以上で、工程(i)で細胞を播種する前に及び/又は播種後2日以内に培養培地に添加される、工程;
    (b)抗体のスペソリマブを含む細胞培養上清を収集する工程;及び
    (c)場合により、細胞培養上清から抗体のスペソリマブを精製する工程
    を含む、細胞培養物中で抗体のスペソリマブを産生するための方法。
  7. 上昇した播種密度が、減少した塩基性ピーク群%(BPG%)及び/又はMan5構造%を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
  8. 細胞にフィード培地をフィードする工程を含む、抗体のスペソリマブの産生を可能とする条件下で、細胞が36.0℃から37.5℃で培養され、及び/又は、該培養物中の溶存酸素(DO)濃度が30~60%の範囲内で維持される、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
  9. 上昇した培養温度及び/又は減少した溶存酸素が、減少したBPG%及び/又はMan5構造%を有する抗体のスペソリマブの産生をもたらす、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
  10. 抗体のスペソリマブが、5%未満のMan5構造、好ましくは4%未満のMan5構造、より好ましくは3%未満のMan5構造、及び/又は7.5%以下のBPG、好ましくは6.5%以下のBPGを有する、先行する請求項のいずれか一項記載の方法。
  11. (a)7.5%以下のBPG、好ましくは7%以下のBPG、より好ましくは6.5%以下のBPG、更により好ましくは6%以下のBPG;及び/又は
    (b)5%未満のMan5構造、好ましくは4%未満のMan5構造、より好ましくは3%未満のMan5構造
    を有する抗体のスペソリマブを含む、組成物。
  12. 抗体のスペソリマブを含む組成物であって、抗体のスペソリマブが、請求項1~10のいずれか一項記載の方法によって得られる、組成物。
  13. 前記組成物が、7.5%未満のBPG及び/又は5%未満のMan5構造を有する、抗体4のスペソリマブを含む薬物製品である、請求項11又は12記載の組成物。
  14. 抗体のスペソリマブが、6%以下の重鎖(HC)のリジン糖化変異体を含み、並びに/或いは、リジンK38(HC)及びK67(HC)が糖化されておらず、K23(HC)における糖化が0.3%以下である、請求項11~13のいずれか一項記載の組成物。
  15. 6%以下の重鎖(HC)のリジン糖化変異体を含み、並びに/或いは、リジンK38(HC)及びK67(HC)は糖化されておらず、K23(HC)における糖化は0.3%以下である、抗体のスペソリマブを含む、組成物。
  16. 酸性ピーク群(APG)の亜画分1%未満のAP4及び4%未満のAP3画分、特に1%未満のAP4及び1%未満のAP3b画分を含む、抗体のスペソリマブを含む、組成物。
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