JP2024509123A - 合成リボ核酸(rna)からのタンパク質発現を向上させる組換え発現構築物 - Google Patents

合成リボ核酸(rna)からのタンパク質発現を向上させる組換え発現構築物 Download PDF

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Abstract

本発明は、合成mRNAの5’および/または3’非翻訳領域(UTR)における翻訳促進エレメントを用いて細胞におけるタンパク質発現を向上させることに関する。5’UTRは、プロモーター、ミニエンハンサー配列、およびコザック配列を含み、3’UTRは、スペーサー、ステムループ構造、および、任意で、ポリアデニンテールを含む。本発明の合成5’UTRおよび3’UTRはタンパク質発現を向上させるものであり、いくつかの例では、修飾ヌクレオチド、マイクロRNA部位、または免疫回避因子を有しない。

Description

関連出願の参照
本願は、2021年2月25日に出願された米国特許仮出願番号63/153,877に基づく優先権を主張するものであり、参照によりその全内容を本願明細書に含むものである。
配列表の参照
本願に添付されている配列表は、紙面の代わりにテキストフォーマットで提供されており、これにより本願明細書に参照により含まれるものである。本配列表を含むテキストファイルのファイル名は、P183-0010PCT_ST25.txtである。テキストファイルは、26.9KBであり、2022年2月24日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されるものである。
本開示は、コード配列に隣接して人工的な5’および/または3’非翻訳領域(UTR)を有する組換え発現構築物を提供する。該5’UTRは、プロモーター、ミニエンハンサー配列、およびコザック配列を含み、該3’UTRは、スペーサー、ステムループ構造、および、任意でポリアデニンテールを含む。該人工的な5’および3’UTRはタンパク質の発現を向上させ、いくつかの実施例では、修飾ヌクレオチド、マイクロRNA部位、または免疫回避因子を含まずに構成されている。
タンパク質発現に影響を及ぼすための従来既存の方法にはいくつかの課題がある。例えば、宿主細胞のゲノムDNAへの外来デオキシリボ核酸(DNA)の導入はある頻度で行うことができるが、この導入は宿主細胞のゲノムDNAの変異および/または損傷を生ずる。または、細胞に導入されたこの様な外来DNAは、(外来DNAが染色体に導入されているかどうかに関わらず)娘細胞や子孫細胞に受け継がれる。また、デリバリーが適切になされ、宿主ゲノムに損傷や導入が生じなかったとしても、DNA鎖からコードされたタンパク質が産生されるまでに複数のステップが必要となる。細胞内に入れば、DNAは細胞核に取り込まれ、そこでRNAに転写される。そして、DNAから転写されたRNAは、細胞質に入り、そこでタンパク質に翻訳される。トランスフェクションされたDNAから産生されたタンパク質までこのような複数の処理ステップがあるので機能性タンパク質が実際に産生されるまでの遅延時間につながり、また各ステップにおいてエラーや細胞への損傷が生じる可能性がある。また、トランスフェクションされたDNAが発現しない、または、所望の用途に必要とされる合理的な効率や濃度で発現しない場合もあるので、細胞においてタンパク質の発現量を所望のものとするのが困難な場合がある。これは、DNAを初代細胞や組換え細胞株に導入する際に特に問題になりうる。
また、メッセンジャーRNA(mRNA)は、細胞の短期組換えを実現する可能性について研究されている。mRNAを可逆的遺伝子治療のひとつとして使用することの利点として、一過性発現や非形質転換性が挙げられる。mRNAは発現のために核に入る必要がなく、また、宿主ゲノムには導入されないので、腫瘍形成のリスクがない。mRNAで実現可能なトランスフェクション効率は相対的に高く、多くの細胞タイプで90%超になるので、トランスフェクションされた細胞に対して選別を行う必要がない。
mRNA治療薬の分野やmRNAワクチンの分野では近年大きな発展が見られるが、これらの分野ではmRNAを使用したタンパク質の発現量の向上のためにさらなる研究がまだ必要とされている。
本開示の目的は、コードされたタンパク質の発現量を向上させる組換えリボ核酸(例えば、mRNA)を提供することである。
本開示のその他の目的は、コードされたタンパク質の発現量を向上させる最小配列を提供することである。
上記目的を達成するため、本開示は、エンコードされたタンパク質の発現量を向上させる、特定の組換え発現構築物(Engineered Expression Construct: EEC)を提供する。本発明のEECは、コード配列に隣接して人工的な5’および/または3’非翻訳領域(UTR)を有する。該5’UTRは、プロモーター、ミニエンハンサー配列(本明細書では、CAUACUCA)、およびコザック配列を含み、該3’UTRは、スペーサー、ステムループ構造、および、任意でポリアデニンテール(ポリAテール)を含む。いくつかの実施例では、該5’UTRは、開始コドンに作動可能に連結されて、機能セグメントを形成する構成である。また、本明細書に記載のいくつかの実施例では、該3’UTRは、終止コドンを含む構成として記載されている。
該組換え5’UTRに関し、いくつかの実施例では、プロモーターはバクテリオファージT7プロモーターに由来し、配列GGGAGAを有する。いくつかの実施例では、コザック配列はGCCRCCを含み、式中、RはAまたはGである。また、コザック配列は、開始コドンに作動可能に連結され、配列GCCRCC-開始(例えば、GCCRCCAUG)を形成するものであってもよい。
該5’UTRの特定の実施形態は、5’から3’までの間に、ミニT7プロモーターと、ミニエンハンサー配列(本明細書では、CAUACUCA)と、コザック配列とを含み、GGGAGACAUACUCAGCCACC(配列番号2)またはGGGAGACAUACUCAGCCGCC(配列番号3)となる。開始コドンを追加すると、GGGAGACAUACUCAGCCACCAUG(配列番号38)およびGGGAGACAUACUCAGCCGCCAUG(配列番号39)となる。
いくつかの実施例では、これら最小5’UTRのヌクレオチドの数は30個未満である。いくつかの実施例では、これら最小5’UTRのヌクレオチドの数は20個または23個である。
該組換え3’UTRに関し、いくつかの実施例では、スペーサーは[N1-3]AUAまたは[N1-3]AAAを有する。より具体的な実施例では、スペーサーはUGCAUAまたはUGCAAAを有する。例示的なステムループ構造は、CCUCおよびGAGGなどの配列をハイブリダイズして形成されている。いくつかの実施例では、ハイブリダイゼーション配列間に形成されている該ループ構造は、ヌクレオチドを7個~15個有する構成である。ループセグメントの配列は、例えば、UAACGGUCUU(配列番号34)を有する。3’UTR配列の一部として含まれている場合、終止コドンの例としてはUAA、UAG、およびUGAが挙げられる。
いくつかの実施例では、これら最小3’UTRのヌクレオチドの数が30個未満である。
該ステムループに関して、該ステムループ配列の順番に関わらず本明細書において開示するEECにおいてタンパク質発現の向上が観察され、重要なのは二次構造であり、必ずしも5’から3’方向の配列ではないと示している。該組換え3’UTRは、さらにポリAテールを含んでいてもよい。
一態様において、本開示は、翻訳対象のタンパク質を哺乳類細胞においてコードするコード配列を含むインビトロ合成RNAを含むEECであって、該インビトロ合成RNAは、配列CAUACUCAを有する5’UTRを含む構成であるEECを提供する。
一態様において、本開示は、翻訳対象のタンパク質を哺乳類細胞においてコードするコード配列を含むインビトロ合成RNAを含むEECであって、該インビトロ合成RNAは、配列番号2または配列番号3を有する5’UTRを含む構成であるEECを提供する。また、該5’UTRは、開始コドンを備えて配列番号38または配列番号39となってもよい。
一態様において、本開示は、配列番号4、5、6、7、8、または9を有する3’UTRを含むEECを提供する。
一態様において、本開示は、配列番号10、11、または12を有する3’UTRを含むEECを提供する。
一態様において、本開示は、配列番号13、14、15、16、17、18、19、20または21を有する3’UTRを含むEECを提供する。
各配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および21は、ポリAテールを含むように構成されていてもよい。
一態様において、本開示は、翻訳対象のタンパク質を哺乳類細胞においてコードするコード配列を含むインビトロ合成RNAを含むEECであって、該インビトロ合成RNAは、配列CAUACUCAを有する5’UTRと、配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および/または21を有する3’UTRを含むように構成されているEECを提供する。
一態様において、本開示は、翻訳対象のタンパク質を哺乳類細胞においてコードするコード配列を含むインビトロ合成RNAを含むEECであって、該インビトロ合成RNAは、配列番号2または配列番号3を有する5’UTRと、配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および/または21を有する3’UTRを含むように構成されているEECを提供する。
一態様において、本開示は、翻訳対象のタンパク質を哺乳類細胞においてコードするコード配列を含むインビトロ合成RNAを含むEECであって、該インビトロ合成RNAは、配列番号38または配列番号39を有する5’UTRと、配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20および/または21を有する3’UTRを含むように構成されているEECを提供する。
いくつかの特定の実施形態において、本明細書に開示されているEECは、修飾ヌクレオチドを含まない。いくつかの特定の実施形態において、本明細書に開示されているEECは、マイクロRNA結合部位を含まない。いくつかの特定の実施形態において、本明細書に開示されているEECは、修飾ヌクレオチドを含まず、マイクロRNA結合部位を含まない。
開示されているEECにおいて、該組換え5’および3’UTRは、オープンリーディングフレーム内のコード配列に隣接している。本開示において提供されているデータは、トランスフェクションの形態に関わらず、さまざまな細胞の種類(例えば、リンパ系細胞、接着性および浮遊性の胎児腎細胞など)において、緑色蛍光タンパク質(GFP)、インターロイキン2(IL-2)、およびPOU5F1(OCT3/4)の発現が向上したことを示している。
本明細書において開示されているEECは、多数の様々な目的のためにさまざまなタンパク質の発現を向上させるのに利用可能である。目的の例としては、治療薬やワクチンにおける使用が挙げられる。
図面の中にはカラーにするとより理解しやすくなり得る図面もある。出願人は、図のカラーバージョンが原出願の一部として提出されたものと見做しており、後の手続きにおいてカラーバージョンを提出する権利を保留する。
図1は、インビボにおいてタンパク質の発現を向上するように設計されたEECの概略を示す。EECは、タンパク質の発現を向上させるために、その中にいくつかのモジュールを含んでいる。5’UTR内に位置するモジュールは、プロモーター(例えば、T7プロモーターヘキサマー)を示すモジュール1(「M1」)、本願の翻訳エンハンサー(後述するCAUACUCA)を示すモジュール2(「M2」)、コザックコンセンサス配列であるモジュール3(「M3」)という3つのモジュールに分けられている。また、ここに例示する3’UTRも、終止コドン、スペーサー、およびステムループセグメントを含む3つのセグメントに分けられている。また、ポリAテールを含んでいてもよい。
図2は、フローサイトメトリーヒストグラムであり、x軸にGFP強度(FL1-H)を示し、y軸に細胞数を示す。EXPI293細胞のトランスフェクションを、後述するように、本願発明に関わる5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)の配列を含み、そのオープンリーディングフレーム(配列番号55および56参照)内にGFPコード配列を有するEECの量を漸増して行った。図に示すように、GFPシグナルは、トランスフェクションから24時間後に0.4pmol(100ng)の時に飽和に達した。
図3Aおよび図3Bはフローサイトメトリーヒストグラムであり、トランスフェクションから3時間後(図3A)およびトランスフェクションから24時間後(図3B)におけるGFPコードEECの5’UTR変異体について、x軸にGFP強度(FL1-H)を示し、y軸に細胞数を示す。また、フローサイトメトリー実験の結果を棒グラフとして示す。EXPI293細胞のトランスフェクションを、等モル量の、RNAなし(陰性対称)、5’UTRなしのmRNA、5’UTRのみを有するM1およびM3モジュール、および5’UTRを有するM1、M2、M3モジュール(配列番号2)などのGFPをコードするEECの5’UTR変異体にて行った。
図4Aおよび図4Bはフローサイトメトリーヒストグラムであり、トランスフェクションから3時間後(図4A)およびトランスフェクションから24時間後(図4B)におけるGFPをコードするEECの5’UTRや3’UTRの変異体について、x軸にGFP強度(FL1-H)を示し、y軸に細胞数を示す。また、フローサイトメトリー実験の結果を棒グラフとして示す。EXPI293細胞のトランスフェクションを、以下のような等モル量のGFPコードEECの5’UTR変異体にて行った。(i)RNAなし(陰性対称);(ii)3’UTRのみを有するmRNA(転写を可能にするUTRの基本形であるGGGAGAAUG(ORF)は有するが、5’UTRがなく3’UTRを有するUGCAUACCUCUAACGGUCUUGAGG(配列番号10)またはUAAUGCAUACCUCUAACGGUCUUGAGG(配列番号13));(iii)5’UTRに追加で3’UTRを有するM3のみ(UAAUGCAUACCUCUAACGGUCUUGAGG(配列番号13)を5’UTRとし、GGGAGAGCCACCAUG(ORF)(配列番号63)を3’UTRとしたもの)、および;(iv)5’UTR(配列番号2)と3’UTRを有するM1、M2、およびM3(配列番号10)である。全長の5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)を有するEECで処理された細胞が最も高いGFP強度を示している。
図5は、本明細書において開示するEECを用いて発現された3種類のタンパク質を示す図であり、細胞質、細胞小器官(つまり、核コンパートメント)および細胞外コンパートメント(つまり、二次タンパク質)における目標としたタンパク質発現を示す。
図6A~図6Cに、GFPタンパク質を発現するHEK293細胞を示す。図6Aは、GFP(x軸)を示すフローサイトメトリーグラフであり、HEK293細胞にトランスフェクションされたGFPコードEECの量の漸増と共に生じた検出の変化を示す(「mRNAなし」と標されたパネルにはGFPコードEECのmRNAはなく、その他のパネルでは、各パネルのタイトルにて示すように、GFPコードEECのmRNAの量を0.2pmol、GFPコードEECのmRNAの量を0.4pmol、GFPコードEECのmRNAの量を1.0pmol、GFPコードEECのmRNAの量を2.0pmol、およびGFPコードEECのmRNAの量を4.0pmolとしている)。図6Bは、図6Aのフローサイトメトリーグラフからの結果をチャートとして示したものであり、GFPコードEECの投与量の漸増量に対するGFP陽性細胞のパーセンテージの増加量という形で示す。図6Bのチャートにおいて、GFP陽性であるHEK293細胞のパーセンテージをy軸に示し、GFPコードEECのmRNAの量をx軸に示す。このように、図6Bは、GFPコードEECのmRNAの増加に対するGFP陽性細胞のパーセンテージの増加を示す。図6Cは、図6Aのフローサイトメトリーグラフからの結果をチャートとして示したものであり、GFP発現に対して陽性である細胞におけるGFPコードEECのトランスフェクション量の増加に比例するメジアンGFP強度の増加量という形で示したものである。図6Cにおいて、GFPを発現した細胞からのメジアンGFP強度はy軸に示され(FLI-H)、GFPコードEECのmRNAの量をx軸に示す。このように、図6Cは、GFPコードEECのmRNAの増加に比例するメジアンGFP強度の増加を示す。
図7A~図7Cは、GFPコードEEC変異体とのトランスフェクション後のGFPタンパク質を発現するHEK293細胞を示す図である。図7Aは、0.4pmolのGFPコードEEC変異体とトランスフェクションした細胞をGFP強度(x軸)と重ねたヒストグラムである。図7Bは、図7Aと同様の図であり、細胞を、1pmolのGFPコードEEC変異体とトランスフェクションさせた場合を示す。図7Cは、等モル量のGFPコードEEC変異体(n=2)とトランスフェクションしたHEK293細胞のメジアンGFP強度の棒グラフである。変異体としては、5’UTRのみ(配列番号2)、3’UTRのみ(図4Bの説明において詳細に記載)、5’ UTRおよび3’UTR(配列番号2および配列番号10、図4Bの説明において詳細に記載)、コザックのみ、そしてコザックと3’UTR(配列番号10)というものを用いた。
図8Aおよび図8Bは、GFPコードEEC変異体とトランスフェクションした後の、GFPタンパク質を発現するJurkat(T)リンパ球を示す図である。図8Aはフローサイトメトリーグラフであり、GFPコードEEC各種(全長の5’UTR(配列番号2)と3’UTR(配列番号10))とトランスフェクションさせた各細胞群におけるGFP陽性Jurkat細胞の量を示す。図8Bはフローサイトメトリーヒストグラムであり、GFPコードEECである5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)のEEC構築物各種とトランスフェクションされた各細胞群におけるGFP陽性Jurkat細胞の量を示す。図8Aにおけるフローサイトメトリーグラフの結果を折れ線グラフとして示し、全長の5’UTR(配列番号2)や3’UTR(配列番号10)を有する、漸増量のGFPコードEECとトランスフェクションされたGFP陽性Jurkat細胞のパーセンテージを示す。図8Bのフローサイトメトリー実験の結果を棒グラフとして示し、8pmolのGFPコードEEC変異体(n=2)とトランスフェクションされたJurkat細胞のGFP強度とパーセンテージを示す。データは、UTRなし、コザックのみ、5’のみ、3’のみ、5’と3’、およびコザックと3’という変異体についてのものである。これらの変異体において使用した配列の詳細については、図4Bと図7Cの説明を参照されたい。
図9Aおよび図9Cに、UTR変異体を有するGFPコードEECをエレクトロポレーションしてから24時間後のJurkat(T)リンパ球におけるGFP発現量を示す。図9Aはヒストグラムの典型例を示し、4pmolの各GFPコードEEC変異体を用いてトランスフェクションしたJurkat細胞のGFP強度とパーセンテージをヒストグラムとして示す。図9Bはヒストグラムの典型例を示し、8pmolの各GFPコードEEC変異体とトランスフェクションしたJurkat細胞のGFP強度とパーセンテージをヒストグラムとして示す。図9Cは棒グラフであり、図9Aおよび図9Bに示すGFPコードEEC変異体を4および8pmol有するリンパ球のメジアンGFP強度(実験数=2)を示す。
図10A~図10Cに、UTR変異体を有するGFPコードEECをリンパ球にエレクトロポレーションしてから24時間後に、GFPタンパク質を発現するRajiリンパ球をフローサイトメトリー分析した典型的な実験を示す。図10Aは、4pmolのGFPコードEEC変異体とトランスフェクションされたRajiリンパ球のGFP強度とパーセンテージのグラフである。図10Bは、8pmolのGFPコードEEC変異体とトランスフェクションされたRajiリンパ球のGFP強度とパーセンテージのグラフである。図10Cは、図10Aおよび図10Bに示す実験(実験数=2)のメジアンGFP強度を示す棒グラフであり、4pmolおよび8pmolの各GFPコードEEC変異体とトランスフェクションされたRajiリンパ球のGFP強度を示す。データは、UTRなし、コザックのみ、5’のみ(配列番号2)、3’のみ(配列番号10)、5’と3’((配列番号2)および(配列番号10))、およびコザックと3’(配列番号10)という変異体についてのものである。
図11Aおよび図11Bは、本明細書に開示する5’および3’UTR変異体を有するhOCT3/4コードEECとトランスフェクションされてから24時間後のHEK293細胞におけるhOCT3/4タンパク質の発現を示す。図11Aは、漸増量の(全長の5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)を有する)hOCT3/4コードEECとトランスフェクションされたhOCT3/4陽性HEK293細胞のhOCT3/4の強度量とパーセンテージを示す典型的なフローサイトメトリー実験の結果を示す。図11Bは、UTR変異体を有する1.2pmolのhOCT3/4とトランスフェクションされたhOCT3/4陽性細胞のhOCT3/4強度とパーセンテージを示す典型的なフローサイトメトリー実験の結果を示す。図11Aのフローサイトメトリー実験の結果を折れ線として示す。図11Bに示す棒グラフは、RNAがない場合と比較したUTR変異体を使ったUTR変異体を有するhOCT3/4の量を示す実験(実験数=2)の結果の中央値の棒グラフである。
図12Aおよび図12Bに、本明細書に開示する5’および3’UTR変異体を有するhIL2コードEECをトランスフェクションしてから24時間後におけるHEK293細胞からのhIL2タンパク質の発現(ELISAにて測定)を示す。図12Aは、(全長の5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)を有する)hIL2コードEECの投与量の漸増に対するELISAシグナルの吸光度(@450nm)の増加を示すグラフである。図12Bは、各UTR変異体((配列番号2)および(配列番号10))を有するhIL2コードEECの0.5pmolをトランスフェクションされたHEK293細胞からのhIL2の量を示す棒グラフである。
図13A~図13Cは、全長の5’UTR(配列番号2)および3’UTR変異体(配列番号10、11、および12)を有するGFPコードEECとトランスフェクションさせた後のHEK293細胞におけるGFPタンパク質の発現を示す。図13Aは3’UTRの配列を示す。図13Bは、1から2pmolの各EECとトランスフェクションしてから24時間後の本GFP陽性HEK293細胞(フローサイトメトリーによるイベント数/細胞数10,000を基準とする)を示す。図13Cは、図13Aに示す3’UTRの変異体A,BおよびCを有する、1から2pmolのGFPコードEECとトランスフェクションされたHEK293細胞の(2回の別々の実験からの)メジアンGFP強度を示す棒グラフである。
図14は、組換えOct4のmRNA構築物とのトランスフェクションにおけるヒト包皮線維芽細胞におけるOct4の発現を示す(UOは、非修飾mRNA Oct4であり、UMDは、非修飾mRNA MyoD-Oct4であり、PUOは修飾mRNA Oct4であり、PUMDは修飾mRNA MyoD-Oct4である)。
図15は、EGFP、Oct4およびIL2について、インビトロ合成RNAを産生するためのcDNA構築物や、それにより得られた合成RNA構築物などの本開示を支持するその他の配列(配列番号55~60)を示す。
治療薬、ワクチンとしてのRNAの使用、および/またはその他インビトロおよびインビボ両方での細胞におけるタンパク質発現の組換えにおけるRNAの使用において顕著な科学的進歩がなされている。解決するべき大きな課題のひとつに、所定の結果を得るためにタンパク質の発現量を十分高くすることがある。この課題を解決し、対象タンパク質の発現を向上させてmRNAをさまざまな臨床面で利用できるようにするためにいくつかの試みがなされている。そのような研究は、例えば、米国特許US20060247195号(出願日:2006年6月8日、譲受人:Ribostem Limited社、現状:放棄)米国特許10,772,975号(出願日:2011年5月12日、譲受人:モデルナ社、現状:発行済)、PCT出願PCT/EP2008/01059号(出願日:2008年12月12日、公開番号:WO2009077134、譲受人:BioNTech AG社)、PCT出願PCT/EP2008/03033号(出願日:2008年4月16日、公開番号:WO2009127230、譲受人:Curevac GMBH社)、PCT出願PCT/US2016/069079号(出願日:2016年12月29日、譲受人:Cellular Reprogramming, Inc.社)、PCT出願PCT/US2019/037069号(出願日:2019年6月13日、譲受人:Cellular Reprogramming, Inc.社)などに開示されている。
遺伝子の非翻訳領域(UTR)は転写されるが、翻訳されない領域である。一般に、5’UTRは、転写開始部位から開始コドンまで続く部分で、開始コドンは含まない。一方、3’UTRは、終止コドンの後から始まり転写終結シグナルまで続く。メッセンジャーRNA(mRNA)は、リボソームをリクルートし、翻訳を開始し、それによりタンパク質の発現を向上させるものであると分かっているUTRを含む。前述のように、開始コドンや終止コドンは一般にはUTRの一部として考えられていないが、本開示では、これらのセグメントは機能セグメントを形成するUTRとして指定された配列内に含まれることがある。
UTRが核酸分子の安定性やその結果である翻訳やタンパク質の発現において制御的な役割を担っていることを示す証拠が増えている。UTR内の配列は原核生物と真核生物とで異なっている。例えば、バクテリアにおけるシャイン・ダルガノコンセンサス配列(5'-AGGAGGU-3')はリボソームをリクルートし、哺乳類細胞においてRNAコザックコンセンサス配列(5’-GCCRCCRUGG-3’)は開始コドン(AUG)を含み、翻訳開始イベントを促進する。
コザックコンセンサス配列における「R」は、アデノシンまたはグアノシンを示す。コザックコンセンサス配列の-3位置は翻訳開始を促進し、全体として、コザック配列は開始コドンの適切な認識位置について翻訳開始複合体を停止させると思われる。コザックコンセンサス配列自体は、リボソームのスキャンニングや翻訳の開始を促進することができるが、ヒトトランスクリプトーム内の多量タンパク質と関連するその他のUTRを分析した。研究によれば、上記比較的多量のタンパク質は、染色体やリボソームに関連するタンパク質などの遺伝子情報処理に関係していた(Beckら, The quantitative proteome of a human cell line. Mol. Syst. Biol.(2011), doi:10.1038/msb.2011.82; Liebermeisterら, Visual account of protein investment in cellular functions. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. (2014), doi:10.1073/pnas.1314810111)。例えば、高発現されたリボソーム関連タンパク質(RPLs/RPSs)の5’UTRのアライメントにより、5’末端オリゴピリミジントラック(つまり、5’TOP)またはC/Uが現れているのが示された(Lavallee-Adamら, Functional 5’ UTR motif discovery with LESMoN: Local enrichment of sequence motifs in biological networks. Nucleic Acids Res. (2017), doi:10.1093/nar/gkx751; Yoshihamaら, The human ribosomal protein genes: Sequencing and comparative analysis of 73 genes. Genome Res. (2002), doi:10.1101/gr.214202; Cardinaliら, La protein is associated with terminal oligopyrimidine mRNAs in actively translating polysomes. J. Biol. Chem. (2003), doi:10.1074/jbc.M300722200; Pichon ら, RNA Binding Protein/RNA Element Interactions and the Control of Translation. Curr. Protein Pept. Sci. (2012), doi:10.2174/13892031280161947)。一般に、5’TOP配列は、開始コドンの近くに位置し、転写(つまり、RNAの合成)や転写物の翻訳において重要である。
特定のターゲット臓器の高発現遺伝子に典型的に見られる特徴を遺伝子組換えすることで、コード配列のタンパク質発現を向上させることができる。例えば、アルブミン、血清アミロイドA、アポリポプロテインA/B/E、トランスフェリン、α‐フェトプロテイン、エリスロポエチン、または第VIII因子などの肝臓発現mRNAの5’UTRを導入して、肝細胞株や肝臓においてコード配列の発現を向上させることができる。同様に、別の組織に特異的なmRNAからの5’UTRを使用してその組織における発現を向上することも、筋肉(MyoD、ミオシン、ミオグロビン、ミオゲニン、ヘルクリン)、内皮細胞(Tie-1、CD36)、骨髄系細胞(C/EBP、AML1、G-CSF、GM-CSF、CD11b、MSR、Fr-1、i-NOS)、白血球(CD45、CD18)、脂肪組織(CD36、GLUT4、ACRP30、アディポネクチン)や肺上皮細胞(SP-A/B/C/D)などについて可能である。
しかし、UTRは、その長さが百個単位、千個単位のヌクレオチド(nts)になることもある。mRNAを治療薬やワクチンにおいて使用するには、最小/最適なUTRを探すことが、細胞における所望のタンパク質発現の向上のために好ましい。いくつかの実施例では、本明細書に開示する組換え発現構築物(EEC)は、最小UTR(minUT)を有するように設計されたものである。つまり、該EECは、意図する用途において高い発現量を実現可能な最小限の5’および/または3’UTRを有するように設計されたものである。
よって、ある態様によれば、本開示は、顕著にタンパク質の発現を向上させる最小UTRを提供する。いくつかの実施例において、本開示は20個から23個のヌクレオチドを有する5’UTRを提供する。いくつかの実施例において、本開示は、任意のポリAテールを含むか否かにより、27個または67個のヌクレオチドを有する3’UTRを提供する。合わせた場合、5’および3’UTRの組み合わせのいくつかの実施例は、47個から50個のヌクレオチド、または87個から90個のヌクレオチドを含む。これらのサイズ的な特徴は、特に治療薬および/またはワクチンの用途において有益である。
いくつかの態様によれば、minUTsを構築するために、本開示は、インビトロでのmRNAの産生や、インビボでのタンパク質の産生に必要な構成を含んでいる。インビトロでのmRNAの産生のために、本開示はT7バクテリオファージ(T7P)からのRNAポリメラーゼの使用を採用した。T7Pは、特定のDNA二重らせん配列(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’(配列番号45))に結合し、グアノシン(プロモーターの最後のG、下線)を最初のリボ核酸として導入するRNA合成を開始する。この結合配列の後には、一般に、ペンタマー(5’-GGAGA-3’)が続く。ペンタマーは、転写複合体を安定させ、T7PクリアランスやRNAポリマーの延長を促進するものである。
特定の実施形態では、5’UTRは、プロモーター、ミニエンハンサー配列(ここでは、CAUACUCA)、および、切断型のコザック配列(GCCRCC)などのコザック配列を含んでいる。特定の実施形態では、5’UTRは、機能セグメントを形成するように、任意で開始コドンに作動可能に連結したものでもあると記載されている。
特定の実施形態では、5’UTR内での使用のために最小プロモーターが選択されている。最小プロモーターは、自身では遺伝子発現を促す活性は有しないが、近位の促進エレメントに連結すると活性化して遺伝子発現を促すことができる。最小プロモーターの例としては、minBglobin、minCMV、Sacl制限部位が除去されたminCMV、minRho、Sacl制限部位が除去されたminRho、Hsp68最小プロモーター(proHSP68)などが挙げられる。特定の実施形態において、最小プロモーターは最小T7プロモーター(miniT7プロモーター)を含む。
開示する5’UTRの一例としては、本願のミニエンハンサー配列(CAUACUCA)を含む。ミニエンハンサー配列は、20個から23個のヌクレオチド(開始コドンをUTRの一部として指定するかによる)を有する最小5’UTRを産生するように最小プロモーター(例えば、T7)とコザックコンセンサス配列の間に配置されてもよい。一般に、真核生物の翻訳はAUGコドンにより開始されるが、他の開始コドンを含んでもよい。また、哺乳類細胞はCUGコドンをデコードするロイシルtRNAを利用してアミノ酸のロイシンで翻訳を開始することができ、ミトコンドリアゲノムはヒトにおいてはAUAやAUUを使用する。これらの成分や例示的な5’UTRを表1に示す。
Figure 2024509123000002
いくつかの実施例では、5’UTRは、キャップされている。例えば、真核生物のmRNAは、逆位の7-メチルグアノシンを5’トリホスフェートに付加することで、グアニリル化されている(つまり、m7GpppN(Nは、当該mRNAの最初の塩基を示す))。m7GpppN、つまり、mRNAの5’キャップ構造は、核の搬出に関連し、mRNA翻訳能力に関するmRNAキャップ結合タンパク質(Cap Binding Protein;CBP)と結合する。
また、mRNAの1位および2位のヌクレオチドのリボース糖は、任意で、2’-酸素(2’O)位置にてメチル化(つまり、CH3基の付加)されていてもよい。1位と2位のヌクレオチドがメチル化されていないmRNAを、Cap0(つまり、m7GpppN)と称し、1位と2位のヌクレオチドにおける2’Oでのメチル化をそれぞれCap1(つまり、m7GpppNm)およびCap2(つまり、m7GpppNmNm)と称する。さらに、1位の5’ヌクレオチドがアデノシンの場合、さらに6位の窒素(6N)位置にてメチル化されていてもよく(つまり、m7Gpppm6A)、あるいは、修飾Cap0(m7Gpppm6A)、または、修飾Cap1(つまり、m7Gpppm6Am)、または、修飾Cap2(つまり、m7Gpppm6AmNm)を形成してもよい。
RNAのグアニリル化、つまりCap0(つまり、m7GpppN)の付加は、ワクシニアウイルスキャッピング酵素(VCE)を用いて酵素的にインビトロで(つまり、RNA合成の後に)行ってもよい。さらに、Cap1構造およびCap2構造の形成は、mRNA 2’-O-メチルトランスフェラーゼおよびS-アデノシルメチオニン(SAM)の付加を介して酵素的に行ってもよい。または、Cap構造は、アンチリバースキャップアナログ(ARCA)を導入して、インビトロで共転写により付加してもよい。ARCAは、キャップの3’-酸素(3’O)においてメチル化され(m73’OmGpppN)、キャップ構造の導入が正しい向きで行われるようにする。本願において、上記のキャップ構造はいずれも最終的なEEC mRNA産生物のために使用されていてもよい。
特定の実施形態では、5’UTRをコード配列に作動可能に連結している。本明細書において、「作動可能に連結」とは、ヌクレオチド発現制御配列(例えば、プロモーター配列やUTR)と他のヌクレオチド配列との間に形成され、それにより制御配列による他のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳が可能になり、行われるようになる機能的な結合を意味する。
また、本開示は、開示する5’UTRと任意で共に使用される3’UTRを提供する。本明細書に示すように、開示する5’UTRと開示する3’UTRとを組み合わせると、開示する5’UTRのみ、または開示する3’UTRのみを使用した場合と比較して、タンパク質発現を大幅に向上させたEECを得ることができる。
3’UTRには、アデノシン配列とウリジン配列が埋め込まれていることが知られている。これらAUリッチシグネチャーは、高率のターンオーバーを有する遺伝子において特に広く見られる。その配列特徴と機能的性質に基づいて、AUリッチエレメント(ARE)は、3つのクラスに分類することができる。クラスIのAREは、Uリッチ領域内にAUUUAモチーフのコピーがいくつか分散して含有されている。C-MycおよびMyoDは、クラスIのAREを含んでいる。クラスIIのAREは、2つ以上の重複したUUAUUUA(U/A)(U/A)九量体を有している。
前述したように、開示する3’UTRは、スペーサー、ステムループ構造、および、任意でポリアデニンテール(ポリAテール)を含む。また、本明細書に開示するいくつかの実施例において、3’UTRは任意で終止コドンに連結されていると記載されている。
終止コドンの例としては、UAA、UGA、およびUAGなどが挙げられる。
スペーサーの例としては、[N1-3]AUAや、または[N1-3]AAA(例えば、UGCAUA、UGCAAA、UGAAA、GCAUA、UAAA、およびGAUA)(式中、NはA、G、C、T、またはUなどの任意のヌクレオチドである)が挙げられる。下付きの番号はヌクレオチドの数を示す。例えば、[N1-3]は、ヌクレオチドを1個、2個、または3個含み、N、NN、またはNNNの意味である。
ステムループ(SL)は、ヘアピンまたはヘアピンループとも称され、3’UTR内にて発現量が高い転写産物の特徴である。SLは、相補的ヌクレオチドが二重らせん(つまり、ステム)としてペアとなり、時に他の配列により介在されてループを形成している特異的な二次構造である。SLにより示される二次構造の具体例としては、ステムと、ヘアピンループとも呼ばれる(末端)ループを含む連続する核酸配列を含み、ステムは2つの隣接する全体または一部において相補的な配列エレメントにより形成されており、該隣接する相補的な配列エレメントは、短い配列(例えば、3個~10個のヌクレオチド)に介在されてSL構造のループを形成しているようなものが挙げられる。2つの隣接する全体または一部において相補的な配列エレメントを、例えば、SLエレメントステム1およびステム2と称す場合がある。SLは、この2つの隣接する全体または一部において逆相補的な配列エレメント(例えば、SLエレメントステム1およびステム2)がお互いと塩基ペアを形成し、二重鎖の核酸配列を構成しているが、末端においてはペアになっておらず、SLエレメントステム1およびステム2の間に介在する短い配列によりループが形成されているものである。よって、ひとつのSLには2つのステム(ステム1およびステム2)が含まれる。この2つのステムは、核酸分子の二次構造レベルでは、お互いと塩基ペアを形成し、核酸分子の一次構造レベルでは、ステム1またはステム2の一部ではない短い配列により介在されている。図にすると、SLの二次的描写は、棒付きキャンディー状の構造に似ている。ステムループ構造を形成するには、二つ折りになってペアとなった二重鎖を形成することができる配列が必要であり、ステム1とステム2によりこの二重鎖が形成される。ペアとなったSLエレメントの安定性は、典型的には、長さ、つまり、ステム2のヌクレオチドと塩基対(好ましくは、標準的な塩基対、より好ましくはワトソン-クリック型塩基対)を形成できるステム1のヌクレオチドの数に対する、ステム2のヌクレオチドとそのような塩基対を形成できないステム1のヌクレオチドの数(ミスマッチやバルジ)により決まる。本発明によれば、最適なループ長さは、3個から10個のヌクレオチド、より好ましくは4個から7個のヌクレオチド、例えば、4個のヌクレオチド、5個のヌクレオチド、6個のヌクレオチド、または7個のヌクレオチドなどである。ある核酸配列がSLを形成するものであれば、対応する相補的な核酸配列も典型的にはSLを形成するものである。SLは、典型的には、一本鎖RNA分子により形成される。特定の実施形態では、SL長さは、少なくとも7個のヌクレオチド、少なくとも8個のヌクレオチド、少なくとも9個のヌクレオチド、少なくとも10個のヌクレオチド、少なくとも11個のヌクレオチド、少なくとも12個のヌクレオチド、少なくとも13個のヌクレオチド、少なくとも14個のヌクレオチド、少なくとも15個のヌクレオチド、少なくとも16個のヌクレオチド、少なくとも17個のヌクレオチド、少なくとも18個のヌクレオチド、少なくとも19個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチド長である。
SLは、高率で発現した転写産物(例えば、ヒストンなどの多量な細胞タンパク質をコードするもの)の3’UTR内に存在しており、そこで、ポリアデニンテールに関わらず翻訳を促進している(Gallieら、The histone 3′-terminal stem-loop is necessary for translation in Chinese hamster ovary cells(Nucleic Acids Res. (1996), doi:10.1093/nar/24.10.1954))。ヒストンの3’UTRステムコンセンサスは、6個の塩基対である点に特徴があり、そのうち2つがG-C対、3つがピリミジン-プリン(Y-R)対、そして1つがA-U対であり、ループは4個のリボ核酸を有し、そのうち2つがウリジン(U)、1つがプリン(Y)、そして、1つがリボヌクレオチド(N)である(Gallieら、The histone 3′-terminal stem-loop is necessary for translation in Chinese hamster ovary cells. (Nucleic Acids Res. (1996), doi:10.1093/nar/24.10.1954; Tanら, Structure of histone mRNA stem-loop, human stem-loop binding protein, and 3′hExo teRNAry complex. Science (80). (2013), doi:10.1126/science.1228705; Battle & Doudna, The stem-loop binding protein forms a highly stable and specific complex with the 3′ stem-loop of histone mRNAs. RNA (2001), doi:10.1017/S1355838201001820))。
SLは、複製依存のmRNAの安定性/プロセッシング/代謝/翻訳についてステムループ結合タンパク質(SLBP)と関連している。構造的な証拠によれば、SLの塩基におけるグアノシン核酸(G7)において、SLBPがSLと直接接触している(Tanら, Structure of histone mRNA stem-loop, human stem-loop binding protein, and 3′hExo teRNAry complex. Science (80). (2013), doi:10.1126/science.1228705; Battle & Doudna, The stem-loop binding protein forms a highly stable and specific complex with the 3′ stem-loop of histone mRNAs. RNA (2001), doi:10.1017/S1355838201001820)。さらに、ステムに隣接するアデノシン、より具体的には、上流のAAAがSLBPの結合や機能に影響する(Battle & Doudna, The stem-loop binding protein forms a highly stable and specific complex with the 3′ stem-loop of histone mRNAs. RNA (2001), doi:10.1017/S1355838201001820; William & Marzluff, The sequence of the stem and flanking sequences at the 3′ end of histone mRNA are critical determinants for the binding of the stem-loop binding protein. Nucleic Acids Res. (1995), doi:10.1093/nar/23.4.654)。また、3’UTRは、翻訳能力を向上させる一方で、タンパク質コード転写産物を安定させる役目も有する。いくつかの実施形態によれば、本開示は、複数のアデノシンなどの隣接するスペーサー配列を有する配列(UAACGGUCUU(配列番号34))により介在されたG-C対の3つのグループというSLの構成を導入する合成SLの設計を提供し、SLBP結合およびmRNA翻訳を向上させる。
特に、EECに使用されるステムループは、配列の向きに依存しない点、a)CCUCおよびGAGGを含む構成、b)GAGGおよびCCUCを含む構成、c)AAACCUCおよびGAGGを含む構成、そしてd)AAAGAGGおよびCCUCを含む構成であってもよい点が重要である。さらに、(CCUCおよびGAGGが塩基対をなす)ステムの2本のアーム間の距離は、ループを形成するために十分な長さである必要がある。特定の実施形態では、ステムループは、a)RRRRおよびYYYY、b)RYRRおよびYRYY、c)RRYRおよびYYRY、d)RRRYおよびYYYR、e)RYYRおよびYRRY、f)RRYYおよびYYRR、g)YYRRおよびRRYY、h)YYYRおよびRRRY、またはi)RYYYおよびYRRR(式中、Rはプリン(AまたはG)であり、Yはピリミジン(例えば、UまたはC))などの相補的な配列を含んでいる構成であってもよい。
ある実施形態によれば、該2本のアーム間のヌクレオチドの数は、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上の個数であってもよい。ステムループの該2本のアーム間の長さの好ましい実施形態は、7個以上のヌクレオチドである。いくつかの実施例では、SLのループセグメントは、UAACGGUCUU(配列番号34)を含む。特定の実施形態によれば、SL配列は、GAUGCCCCAUUCACGAGUAGUGGGUAUU(配列番号64)、 GGCACCCUGCGCAGGUGAUGCAGGUGCC(配列番号65)、GUUCGCUCGGUCAGGAGAGCUGACGGAC(配列番号66)、 UCUUACAGUGGCAUGUGACCGUUUAAGG(配列番号67)、 CGCGGCGCAUGCACGUGACAUGCCUGCG(配列番号68)、 CGGUCCCGUGGCAAGAGUCUAUGGAUUG(配列番号69)、 AUGUUCGGCUCCAAGAGCGAGUUGAUAU(配列番号70)、 CGAUUCGGGCACAUGUGCUGUCUGAUUG(配列番号71)、 GUAUUCUGAUGCACGUGCCAUCAAGUAC(配列番号72)、または UUGAGCAGGAUCAAGUGCAUUCUUUCAA(配列番号73)を含む。特定の実施形態によれば、SL配列は、RRYRYYYYRYYYRYRRRYRRYRRRYRYY(配列番号74)、RRYRYYYYRYRYRRRYRRYRYRRRYRYY(SEQ ID NO: 75)、RYYYRYYYRRYYRRRRRRRYYRRYRRRY(配列番号76)、YYYYRYRRYRRYRYRYRRYYRYYYRRRR(配列番号77)、YRYRRYRYRYRYRYRYRRYRYRYYYRYR(配列番号78)、YRRYYYYRYRRYRRRRRYYYRYRRRYYR(配列番号79)、RYRYYYRRYYYYRRRRRYRRRYYRRYRY(配列番号80)、YRRYYYRRRYRYRYRYRYYRYYYRRYYR(配列番号81)、RYRYYYYRRYRYRYRYRYYRYYRRRYRY(配列番号82)またはYYRRRYRRRRYYRRRYRYRYYYYYYYRR(配列番号83)(式中、Rはプリン(AまたはG)でありYはピリミジン(例えば、UまたはC))を含む。その他のSLモチーフの例については、Gorodkinら(Nucleic Acids Research 29(10):2135-2144, 2001)を参照されたい。
任意のポリAテール
天然RNAプロセシングでは、アデニンヌクレオチド(ポリAテール)の長鎖がmRNA分子などのポリヌクレオチドに付加され、安定性を向上させることがある。転写直後に、転写産物の3’末端が切断され、3’水酸基を遊離させる。そして、ポリAポリメラーゼがアデニンヌクレオチドの鎖をRNAに付加する。このプロセスはポリアデニル化と呼ばれるものであり、例えば100個から250個の残基長さのポリAテールを付加する。インビトロのRNA合成では、ポリAテールをDNAテンプレート上にコード化したものをインビトロ転写プロセスにおいて導入する。
いくつかの実施例において、ポリAテールは、0個から500個の範囲のヌクレオチド長さである(例えば、0個、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、120個、140個、160個、180個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、または500個のヌクレオチド長)。いくつかの実施例では、40ヌクレオチド長のポリAテールを使用する。長さは、ポリA結合タンパク質の結合の単位で、またはその関数として表記することも可能である。そのような実施形態において、ポリAテールは、ポリA結合タンパク質の4つのモノマー、ポリA結合タンパク質の3つのモノマー、ポリA結合タンパク質の2つのモノマー、またはポリA結合タンパク質の1つのモノマーと結合するために十分な長さである。ポリA結合タンパク質モノマーは、38個のヌクレオチドの配列に結合する。
3’UTRの前記の記載に基づき、本明細書に開示する3’UTR構築物は、1つ以上のスペーサー(例えば、[N1-3]AUA、[N1-3]AAA、UGCAUAまたはUGCAAAなど)、ステムループのハイブリダイゼーション配列(例えば、CCUCやGAGGなど)、ステムループのループセグメント(例えば、[N 7-15 ]、UAACGGUCUU(配列番号34)など)、および/または、任意でポリAテールを含んでいる。終止コドンが3’UTRの一部とされている場合は、終止コドンの例としては、UAA、UGA、およびUAGが挙げられる。これらの成分に基づく3’UTR構築物の例を表2に示す。
Figure 2024509123000003
特定の実施形態において、5’UTR(または3’UTR)に他の非UTR配列を導入した構成であってもよい。例えば、イントロン配列またはイントロン配列の一部をこれらの領域に導入した構成であってもよい。イントロン配列の導入により、タンパク質の発現やmRNA量をさらに向上させ得る。
開示する5’および3’UTRを使用したEEC構造
開示する5’UTRおよび3’UTRの遺伝子組換え配列は、本明細書に開示するように、任意のコード配列に隣接して使用されると、さまざまなタンパク質のタンパク質発現を向上するために有用なEECを形成するために使用できる。これらタンパク質の例としては、本明細書に開示するように、緑色蛍光タンパク質(GFP)、インターロイキン2(IL-2)、およびPOU5F1(OCT3/4)などが挙げられる。また、これら発明に関する5’UTR配列および3’UTR配列は、トランスフェクションの態様に関わらず、リンパ系細胞、接着性および浮遊性の胎児腎細胞などのさまざまな細胞タイプで同様に作用することを証明する。
図1に、本開示の典型的なEECを示す。いくつかの実施例では、「EEC」とは、1以上のタンパク質をコードするコード配列であって、そこにコード化されているタンパク質の翻訳を可能にするために十分な構造的および/または化学的構成を保持しているコード配列に隣接して本明細書に開示する5’および/または3’UTRを有するポリ核酸転写産物を指す。
図1に示すように、図示されているEECは、第1フランキング領域と第2フランキング領域とに隣接されているオープンリーディングフレーム内にある連結されたヌクレオチドからなるコード配列を含む。このコード配列は、タンパク質をコードするRNA配列を含む。このタンパク質は、シグナル配列領域によりコードされた1以上のシグナル配列を5’末端において含む構成であってもよい。第1フランキング領域は、1つ以上の完全または不完全な5’UTR配列を含む、連結されたヌクレオチドからなる領域を含む構成であってもよい。また、第1フランキング領域は、5’末端キャップを含む構成であってもよい。コード配列の5’末端と第1フランキング領域とを連結しているのは、第1機能セグメントである。従来、この機能セグメントは開始コドンを含む構成である。または、機能セグメントは、開始コドンを含む任意の翻訳開始配列またはシグナルを含む構成であってもよい。
第1フランキング領域は、5’UTR内に位置するモジュールを含む構成であってもよい。この第1フランキング領域は、最小プロモーター(例えば、T7プロモーターヘキサマー)を示すモジュール1(「M1」)、本願の翻訳エンハンサー(後述するCAUACUCA)を示すモジュール2(「M2」)、コザックコンセンサス配列であるモジュール3(「M3」)という3つのモジュールに分けられた構成であってもよい。T7プロモーターヘキサマーは、T7ポリメラーゼプロモーターの一部であり、つまり、T7バクテリオファージの所定のプロモーターの転写に関連し、それを誘起する、本技術分野において公知のプロモーターの所定の種類であるT7クラスIIIプロモーターの一部である。より具体的には、T7プロモーターヘキサマーは、完全な配列(5’-TAATACGACTCACTATAGGGAGA-3’(配列番号31))を有し、グアノシンを1位のリボ核酸として導入するRNA合成を開始する。コザックコンセンサスとは、コザックコンセンサス配列(5’-GCCRCCATGG-3’(配列番号30)、式中「R」は、アデノシンまたはグアノシンを示す)を示す。
第2フランキング領域は、1つ以上の完全または不完全な3’UTRを含む、連結されたヌクレオチドからなる領域を含む構成であってもよい。また、フランキング領域は、3’テーリング配列(例えば、ポリAテール)を含む構成であってもよい。また、3’UTRは、終止コドン、スペーサー、ステムループセグメントなどの3つのセグメントに分けられた構成であってもよい。
コード配列の3’末端と第2フランキング領域とを連結しているのは第2機能セグメントである。従来、この機能セグメントは終止コドンを含む構成である。または、機能セグメントは、終止コドンを含む任意の翻訳開始配列またはシグナル含む構成であってもよい。本開示によれば、複数の連続する終止コドンを使用した構成としてもよい。
概して、EECのコード配列の最短の長さは、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、またはデカペプチドをコードするために十分な核酸配列の長さであってもよい。その他の実施形態において、この長さは、2から30個のアミノ酸のペプチド、例えば、5から30個、10から30個、2から25個、5から25個、10から25個、または10から20個のアミノ酸のペプチドをコードするために十分な長さとしてもよい。この長さは、少なくとも11個、12個、13個、14個、15個、17個、20個、25個、もしくは30個のアミノ酸のペプチド、または40個以下のアミノ酸からなるペプチド、例えば、35個以下、30個以下、25個以下、20個以下、17個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、もしくは10個以下のアミノ酸からなるペプチドをコードするために十分な長さとしてもよい。ポリヌクレオチド配列がコードすることができるジペプチドの例としては、カルノシンおよびアンセリンが挙げられる。
概して、コード配列の長さは、ヌクレオチド30個を超える長さである(例えば、少なくとも35個、40個、45個、50個、55個、60個、70個、80個、90個、100個、120個、140個、160個、180個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、600個、700個、800個、900個、1,000個、1,100個、1,200個、1,300個、1,400個、1,500個、1,600個、1,700個、1,800個、1,900個、2,000個、2,500個、および3,000個、4,000個、5,000個、6,000個、7,000個、8,000個、9,000個、10,000個、20,000個、30,000個、40,000個、50,000個、60,000個、70,000個、80,000個、90,000個またはこれらを超える数の、または100,000個以下のヌクレオチド長)。
いくつかの実施形態では、EECは、30個から100,000個のヌクレオチドを含む(例えば、30個から50個、30個から100個、30個から250個、30個から500個、30個から1,000個、30個から1,500個、30個から3,000個、30個から5,000個、30個から7,000個、30個から10,000、30個から25,000個、30個から50,000個、30個から70,000個、100個から250個、100個から500個、100個から1,000個、100個から1,500個、100個から3,000個、100個から5,000個、100個から7,000個、100個から10,000個、100個から25,000個、100個から50,000個、100個から70,000個、100個から100,000個、500個から1,000個、500個から1,500個、500個から2,000個、500個から3,000個、500個から5,000個、500個から7,000個、500個から10,000個、500個から25,000個、500個から50,000個、500個から70,000個、500個から100,000個、1,000個から1,500個、1,000個から2,000個、1,000個から3,000個、1,000個から5,000個、1,000個から7,000個、1,000個から10,000個、1,000個から25,000個、1,000個から50,000個、1,000個から70,000個、1,000個から100,000個、1,500個から3,000個、1,500個から5,000個、1,500個から7,000個、1,500個から10,000個、1,500個から25,000個、1,500個から50,000個、1,500個から70,000個、1,500個から100,000個、2,000個から3,000個、2,000個から5,000個、2,000個から7,000個、2,000個から10,000個、2,000個から25,000個、2,000個から50,000個、2,000個から70,000個、および2,000個から100,000個)。
本開示によれば、第1および第2フランキング領域は、それぞれ独立して5個から100個のヌクレオチド長の範囲であってもよい(例えば、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99個、または100個のヌクレオチド長)。
本開示によれば、キャップ領域は、キャップまたは、キャップを形成する一連のヌクレオチドを含む構成であってもよい。本実施形態では、キャップ領域は、1個~10個のヌクレオチドを有する長さであってもよく、例えば、2個から9個、3個から8個、4個から7個、1個から5個、5個から10個、または少なくとも2個、または10個以下のヌクレオチドを有する長さであってもよい。いくつかの実施形態では、キャップは設けられていない。
本開示によれば、第1または第2機能セグメントは、3個~40個の範囲のヌクレオチド長であってもよく、例えば、5個から30個、10個から20個、15個、または少なくとも4個、または30個以下のヌクレオチド長であってもよく、開始および/または終止コドンの他に、シグナル配列および/または制限配列を1つ以上含む構成であってもよい。
トランスフェクションされたIVT-RNAの高発現化や発現の延長を達成するために、IVT-RNAを安定化しようとさまざまな改良がこれまでに試みられてきた。RNAトランスフェクションに基づく戦略は細胞におけるペプチドやタンパク質の発現においては成功を収めたものの、RNAの安定性や、コード化したペプチドやタンパク質の発現の維持、RNAの細胞毒性などに関する問題が残っている。例えば、外来性の一本鎖RNAは、哺乳類細胞において防御機構を活性化することが知られている。
いくつかの研究グループによれば、防御機構が活性化されているために、細胞にトランスフェクションされたIVT-RNAからのタンパク質発現量を十分に高いものとするためには、mRNA転写産物は、修飾ヌクレオチド(例えば、発行済みの米国特許9,750,824号(出願日: 2012年8月4日、譲受人:ペンシルベニア大学)を参照)を含むか、または、免疫回避因子を含むタンパク質またはIVT-RNAの形態であるその他の試薬(例えば、発行済みの米国特許10,207,009号(出願日:2015年5月7日、譲受人: BioNTech社)を参照)を含む必要があると提案している。これらの免疫回避因子は、細胞免疫応答を弱めるタンパク質をコードするウイルス遺伝子を含み、この免疫回避タンパク質は、例えば、細胞外IFN(例えば、ワクシニアウイルスからのB18R)によりIFN受容体の結合を妨害する、細胞内IFNシグナリング(例えば、ワクシニアウイルスからのE3とK3の両方)を阻害する、またはその両方の機能を行う(例えば、インフルエンザからのNS1)(Liuら, Sci Rep 9: 11972, 2019)ことなどで細胞免疫応答を弱める。特定の実施形態において、免疫回避タンパク質は、B18R、E3、K3、NS1、またはORF8(SARS-CoV2からのもの)を含む。
本開示の態様は、活性化した防御機構の克服を、修飾ヌクレオチド、マイクロRNA、または免疫回避因子などを用いるのではなく、二次および三次構造をmRNA転写産物に導入することで行うように設計されたものである。他の実施形態によれば、特定の実施形態は修飾ヌクレオチドやマイクロRNAを使用せずにタンパク質発現の向上を行う。さらに他の実施形態によれば、細胞にトランスフェクションされたIVT-RNAからの翻訳の延長やその他の目的のために修飾ヌクレオチドやマイクロRNAを使用しない。
いくつかの実施例では、EECは、マイクロRNA結合部位および/または修飾NTPを、5’UTRにおいて、3’UTRにおいて、5’UTRと3’UTRにおいて、またはEEC全体において含まない。
マイクロRNA(miRNA)は、19個から25個のヌクレオチド長の非コード性RNAであって、核酸分子の3’UTRに結合し、核酸分子の安定性の低下、または翻訳の阻害を行うことで遺伝子発現を抑制するものである。いくつかの実施例において、EECは、公知のマイクロRNA標的配列、マイクロRNA配列、またはマイクロRNAシードを含まない構成である。
マイクロRNAシードは、成熟マイクロRNAの2から8位の領域の配列であり、miRNA標的配列に対して完全にワトソン・クリック相補性を有する配列である。
いくつかの実施例では、本開示のEECは、修飾NTPを特に含まずに設計されている。修飾NTPとは、それに結合する追加の化学基を有して、その化学構造が修飾されているものである。これら修飾NTPの例としては、シュードウリジン、メチルシュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、メチルウリジン(m5U)、5-メトキシウリジン(mo5U)、および2-チオウリジン(s2U)などが挙げられる。5’キャップは、NTPを修飾するものではない。
いくつかの実施例では、EECは、メッセンジャーRNA(mRNA)を含む。本明細書において、「メッセンジャーRNA」(mRNA)とは、タンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、翻訳されてインビトロ、インビボ、インサイチュ、またはエクスビボでコード化タンパク質を産生することができる任意のポリヌクレオチドを意味する。
EECは、タンパク質またはその断片をコードする。「タンパク質」とは、多くの場合ペプチド結合によってお互いに連結されたアミノ酸残基(天然または非天然)のポリマーを意味する。この用語は、あらゆるサイズ、構造、または機能のポリペプチドおよびペプチドを包含する。コード化されたタンパク質は50個のアミノ酸より小さい場合があるが、そのようなタンパク質はペプチドと称される。タンパク質がペプチドの場合、少なくとも2つの結合したアミノ酸を有する。タンパク質は、自然に発生するタンパク質、合成タンパク質、ホモログ、オーソログ、パラログ、断片、組換えタンパク質、融合タンパク質、そしてその他にもそれらの均等物、変異体、類似体を包含する。タンパク質は、ひとつのタンパク質であってもよく、二量体、三量体、四量体などの多分子複合体であってもよい。また、単鎖のタンパク質や、抗体やインスリンのような複数鎖のタンパク質も包含し、会合または結合していてもよい。典型的には、複数鎖のタンパク質においてジスルフィド結合が見られる。また、タンパク質という用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する自然に発生するアミノ酸の人工の化学的類似体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
「タンパク質変異体」という用語は、天然または参照配列と比較してそのアミノ酸配列が異なっているタンパク質を意味する。アミノ酸配列変異体は、天然または参照配列と比較して、アミノ酸配列において所定の位置で置換、欠失、および/または挿入を有するものであってもよい。一般的には、変異体は、天然または参照配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有し、好ましくは、天然または参照配列に対して少なくとも80%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有する。
EECは、生物製剤、抗体、ワクチン、治療薬用のタンパク質もしくはペプチド、細胞透過性ペプチド、分泌タンパク質、原形質膜タンパク質、細胞質もしくは細胞骨格タンパク質、細胞内膜結合タンパク質、核タンパク質、ヒト疾患関連タンパク質、標的部位、または治療薬的効用がまだ特定されていないものの研究や発見の分野において有用なヒトゲノムによりコードされるタンパク質を包含するいくつかの標的カテゴリーのいずれかから選択されたタンパク質をコードするものであってもよい。具体的なタンパク質は、これらのカテゴリーの1つ以上に該当するものであってもよい。
いくつかの実施形態において、特定のタンパク質をコードする特定の配列が使用される。これらの特定のタンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、インターロイキン2(IL-2)、およびPOU5F1つまりOCT3/4(図15を参照)などが挙げられる。GFPは、光に曝されると明るい緑色の蛍光を発するタンパク質である。ヒトPOU5F1つまりOCT3/4(ここでは、hOCT4)は、幹細胞のリプログラミングや維持に重要である主要な核転写因子である。IL-2は、免疫システムにおけるサイトカインシグナル分子の一種であるインターロイキンのひとつである。これは、白血球の活動を制御する15.5から16 kDaのタンパク質である。IL-2は、細菌感染に対する身体の自然応答の一部であり、異物(「非自己」)と「自己」とを判別する。IL-2は、リンパ球において発現されるIL-2受容体に結合することでその効果を奏する。IL-2の主要源は、活性化されたCD4+T細胞と活性化されたCD8+T細胞である。
本明細書に開示するEECは、1つ以上の生物製剤をコードするものであってもよい。「生物製剤」には、疾病や病状の治療、治癒、緩和、予防、または診断において使用されるタンパク質を含む。生物製剤の例としては、アレルゲン抽出物(例えば、アレルギー注射および試験用)、血液成分、遺伝子治療用製品、移植用のヒト組織または細胞産物、ワクチン、モノクローナル抗体、サイトカイン、成長因子、酵素、血栓溶解剤、免疫調節因子、その他などが挙げられる。
抗体
本明細書に開示するEECは、1つ以上の抗体またはその断片をコードするものであってもよい。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、および単鎖分子)、ならびに抗体断片を含む。「免疫グロブリン(Ig)」という用語は、本明細書において「抗体」と同義に使用される。本明細書において、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られる抗体、すなわち、少量かもしれないが、自然発生した変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)など以外は同一である集団を含む個々の抗体を指す。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して指向する。
本明細書におけるモノクローナル抗体の例としては「キメラ」抗体(免疫グロブリン)および、そのような抗体の断片などが、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、具体的に挙げられる。「キメラ」抗体(免疫グロブリン)は、その重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一もしくは相同であり、その重鎖および/または軽鎖の残りの部分が、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一もしくは相同である抗体である。本明細書におけるキメラ抗体の例としては、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿等)由来の可変ドメイン抗原結合配列と、ヒト定常領域配列とを含む「霊長類化」抗体が挙げられる。
「抗体断片」の例としては、インタクト抗体の一部、好ましくは、インタクト抗体の抗原結合および/または可変領域などが挙げられる。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ;線形抗体;ナノボディ;単鎖抗体分子;および抗体断片から形成された多特異性抗体などが挙げられる。
免疫グロブリンの5つのクラス、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMはいずれも、それぞれ、α、δ、ε、γ、μとして示される重鎖などを含むコード配列によってコードされるものであってもよい。また、γやμといったサブクラスをコードするポリヌクレオチド配列も例として挙げられる。よって、抗体のサブクラスのいずれも部分的または全体的にコードされるものであってもよく、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2などが例として挙げられる。
特定の実施形態において、本明細書に開示するEECは、モノクローナル抗体および/またはそのバリアントをコードするものであってもよい。また、抗体のバリアントの例としては、置換バリアント、保存的アミノ酸置換、挿入バリアント、欠失バリアント、および/または共有結合誘導体が挙げられる。特定の実施形態において、本明細書に開示するEECは、免疫グロブリンFc領域をコードするものであってもよい。その他の実施形態において、EECは、免疫グロブリンFc領域のバリアントをコードするものであってもよい。非限定的な一例として、EECは、免疫グロブリンFc領域のバリアントを有する抗体をコードするものであってもよい。
特定の実施形態は、抗SARS-Cov2抗体、抗SARS抗体、抗RSV抗体、抗HIV抗体、抗デングウイルス抗体、抗百日咳菌抗体、抗C型肝炎抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗パラインフルエンザウイルス抗体、抗メタニューモウイルス(MPV)抗体、抗サイトメガロウイルス抗体、抗エプスタイン・バールウイルス抗体、抗単純ヘルペスウイルス抗体、抗クロストリジウム・ディフィシル毒素抗体、または、抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体をコードするものである。
公知の抗RSV抗体の例としては、パリビズマブ(palivizumab)、米国特許9,403,900号に記載されているもの、AB1128(MILLIPORE社製)およびab20745(ABCAM社製)が挙げられる。
公知の抗HIV抗体の一例としては、gp41に結合する広域中和抗体である10E8が挙げられる。VRC01もgp120のCD4結合部位に結合する広域中和抗体である。他の抗HIV抗体の例としては、ab18633および39/5.4A(ABCAM社製)およびH81E(THERMOFISHER社製)などが挙げられる。
抗デングウイルス抗体の例としては、antibody 55 (米国20170233460号に記載)、antibody DB2-3(米国特許8,637,035号に記載)、およびab155042 およびab80914(両方ともABCAM社製)などが挙げられる。
抗百日咳菌抗体の一例としては、米国特許9,512,204号に記載されているものがある。
抗C型肝炎抗体の例としては、MAB8694(MILLIPORE社製)およびC7-50(ABCAM社製)などが挙げられる。
抗インフルエンザウイルス抗体は、米国特許9,469,685号に記載されており、例としてC102(THERMOFISHER社製)などが挙げられる。
抗MPV抗体の一例としては、MPE8が挙げられる。
抗サイトメガロウイルス抗体(CMV)の例としては、MCMV5322A、MCMV3068A、LJP538、およびLJP539などが挙げられる。また、例えば、Dengら, Antimicrobial Agents and Chemotherapy 62(2) e01108-17 (Feb. 2018); およびDoleら, Antimicrobial Agents and Chemotherapy 60(5) 2881-2887 (2016年5月)を参照されたい。
抗単純ヘルペスウイルス(HSV)抗体の例としては、HSV8-NおよびMB66が挙げられる。
抗クロストリジウム・ディフィシル毒素抗体の例としては、アクトクスマブ(actoxumab)およびベズロトクスマブ(bezlotoxumab)が挙げられる。また、例えば、Wilcoxら, N Engl J Med 376(4) 305-317 (2017)を参照されたい。
多数のその他の抗体配列が利用可能であり、本開示の教示の範囲において使用可能であることは、当業者が知るところである。市販の抗体についての配列情報は、ドラッグバンク(DrugBank)のデータベース、CAS Registry、および/またはRSCB蛋白質構造データバンク(RSCB protein Data Bank)などで参照できるであろう。
ワクチン
本明細書に開示するEECは、1つ以上のワクチンをコードするものであってもよい。本明細書において、「ワクチン」とは、免疫応答を刺激して疾病または感染の原因となる特定の病原体や感染性因子、および/またはその発症に必要な特定の病原体や感染性因子に対する獲得免疫を生成し、その病原体や感染性因子に対する免疫を向上させる組成物を意味する。例えば、ワクチンは、免疫システムを特定の抗原に対して予め暴露することで、その抗原に対して応答する免疫システムを産生する製剤である。病原性抗原は、インタクトだが非感染性の形態の病原体(例えば、熱殺菌されたもの)でもよい。また、抗原は、病原体のタンパク質やタンパク質断片、または異常な細胞タイプ(例えば、感染した細胞またはがん細胞)により発現されたタンパク質やタンパク質断片であってもよい。免疫システムが、事前の暴露後に抗原を認識すると、長期の免疫記憶につながり、それによりもし再度抗原に暴露した場合に免疫システムが即座に効果的に効力ある応答を行うことができる。
例えば、ウイルスワクチン抗原は、アデノウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ハンタウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、オルソミクソウイルス、レトロウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、海綿状ウイルス、またはトガウイルスを由来とするものであってもよい。特定の実施形態において、ワクチン抗原は、CMV、EBV、インフルエンザウイルス、A型、B型、またはC型肝炎、単純ヘルペス、HIV、インフルエンザ、日本脳炎、麻疹、ポリオ、狂犬病、RS、風疹、天然痘、水痘・帯状疱疹、ウエストナイル熱、および/またはジカ熱などのウイルスにより発現されたペプチドを含む。
全病原体を由来とするワクチン抗原の例としては、経口生ポリオワクチン(OPV)に使用される弱毒化ポリオウイルスや不活化ポリオワクチンに使用される殺菌ポリオワクチンなどが挙げられる。
その他の具体的な例としては: SARS-CoV-02ワクチン抗原の例としてスパイクタンパク質やその断片(例えば、受容体結合ドメイン(RBD))などが挙げられ;CMVワクチン抗原の例として外被糖タンパク質BおよびCMV pp65などが挙げられ;EBVワクチン抗原の例としてEBV EBNAI、EBV P18、およびEBV P23などが挙げられ;肝炎ワクチン抗原の例としてB型肝炎ウイルスのS、M、Lタンパク質、B型肝炎ウイルスのpre-S抗原、HBCAG DELTA、HBV HBE、C型肝炎ウイルスRNA、HCV NS3およびHCV NS4などが挙げられ;単純ヘルペスワクチン抗原の例として最初期タンパク質および糖タンパク質などが挙げられ;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ワクチン抗原の例として、HIV gp32、HIV gp41、HIV gp120、HIV gp160、HIV P17/24、HIV P24、HIV P55 GAG、HIV P66 POL、HIV TAT、HIV GP36などのgag、pol、およびenv遺伝子、Nefタンパク質、および逆転写酵素などが挙げられ;ヒトパピローマウイルス(HPV)のウイルス抗原の例としてL1タンパク質などが挙げられ;インフルエンザウイルス抗原の例としてヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼなどが挙げられ;日本脳炎ワクチン抗原の例として、タンパク質E、M-E、M-E-NS1、NS1、NS1-NS2A、および80%Eなどが挙げられ;マラリアワクチン抗原の例として、プラスモジウムタンパク質サーカムスポロゾイト(CSP)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、およびフルクトース二リン酸アルドラーゼなどが挙げられ;麻疹ワクチン抗原の例として、麻疹ウイルス融合タンパク質などが挙げられ;狂犬病ウイルス抗原の例として、狂犬病糖タンパク質や狂犬病核タンパク質などが挙げられ;RSワクチン抗原として、RSV融合タンパク質やM2タンパク質などが挙げられ;ロタウイルスワクチン抗原の例として、VP7scなどが挙げられ;風疹ワクチン抗原の例として、タンパク質E1およびE2などが挙げられ;水痘帯状疱疹ウイルス抗原の例として、gplやgpllが挙げられ:ジカ熱ワクチン抗原の例として、Eタンパク質のプレメンブレン、エンベロープ(E)、ドメイン(III)や非構造タンパク質1~5などが挙げられる。
その他のウイルス抗原配列の具体的な例としては、Nef (66-97): (VGFPVTPQVPLRPMTYKAAVDLSHFLKEKGGL(配列番号 48)); Nef (116-145): (HTQGYFPDWQNYTPGPGVRYPLTFGWLYKL(配列番号 49)); Gag p17 (17-35): (EKIRLRPGGKKKYKLKHIV(配列番号 50)); Gag p17-p24 (253-284): (NPPIPVGEIYKRWIILGLNKIVRMYSPTSILD(配列番号 51)); Pol 325-355(RT 158-188): (AIFQSSMTKILEPFRKQNPDIVIYQYMDDLY(配列番号 52)); CSP central repeat region: (NANPNANPNANPNANPNANP(配列番号 53)); およびE タンパク質ドメインIII:
(AFTFTKIPAETLHTVTEVQYAGTDGPCKVPAQMAVDMQTLTPVGRLITANPVITEGTENSKMMLELDPPFGDSYIVIGVGE(配列番号 54))などが挙げられる。ウイルス抗原のその他の例については、Fundamental Virology, 第2版, eds. Fields, B. N. and Knipe, D. M.(Raven Press, New York, 1991)を参照されたい。
特定の実施形態において、ワクチン抗原は細菌感染に関わる細胞により発現されたものである。細菌の例としては、炭疽菌、グラム陰性桿菌、クラミジア菌、ジフテリア菌、ヘモフィルス・インフルエンザ菌、ヘリコバクター・ピロリ菌、結核菌、百日咳毒素、肺炎球菌、リケッチア、ブドウ球菌、レンサ球菌、および破傷風菌などが挙げられる。
細菌ワクチン抗原の具体的な例としては、炭疽菌ワクチン抗原の例として、炭疽菌の防御抗原などが挙げられ;グラム陰性桿菌ワクチン抗原の例として、リポ多糖類が挙げられ;ヘモフィルス・インフルエンザワクチン抗原の例としては、きょう膜多糖類が挙げられ;ジフテリアワクチン抗原の例として、ジフテリア毒素が挙げられ;結核菌ワクチン抗原の例として、ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30kDaの分泌タンパク質やantigen 85Aなどが挙げられ;百日咳毒素ワクチン抗原の例として、ヘマグルチニン、パータクチン、FIM2、FIM3、およびアデニル酸シクラーゼなどが挙げられ;肺炎球菌ワクチン抗原の例として、肺炎球菌溶血素(pneumolysin)および肺炎球菌きょう膜多糖類、リケッチアワクチン抗体の例としては、rompAが挙げられ;レンサ球菌ワクチン抗原の例としては、Mタンパク質が挙げられ;破傷風ワクチン抗原の例としては、破傷風毒素が挙げられる。
特定の実施形態において、ワクチン抗原は、多剤耐性の「スーパーバグ」に由来するものである。スーパーバグの例としては、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridium difficile)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae;大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター属(Enterobacter spp.)など)が挙げられる。
また、ワクチン抗原は、がん細胞により特異的かつ優先的に発現されたタンパク質を含んで、がんと闘う免疫システムを活性化させるように構成されていてもよい。がん抗体の例としては、A33; BAGE; B細胞成熟抗原 (BCMA); Bcl-2; β-カテニン; CA19-9; CA125; 炭酸脱水素酵素(carboxy-anhydrase)-IX (CAIX); CD5; CD19; CD20; CD21; CD22; CD24; CD33; CD37; CD45; CD123; CD133; CEA; c-Met; CS-1; サイクリンB1; DAGE; EBNA; EGFR;エフリンB2; エストロゲン受容体; FAP; フェリチン; 葉酸結合タンパク質; GAGE; G250; GD-2; GM2; gp75, gp100 (Pmel 17); HER-2/neu; HPV E6; HPV E7; Ki-67; L1-CAM; LRP; MAGE; MART; メソセリン; MUC; MUM-1-B; myc; NYESO-1; p53, PRAME; プロゲステロン受容体; PSA; PSCA; PSMA; ras; RORl; サバイビン; SV40 T; テネイシン; TSTA チロシナーゼ; VEGF; およびWT1などが挙げられる。
RNAワクチンの使用は、DNAワクチンの潜在的なリスクを回避するための魅力的な代替案を提供する。DNAの場合と同じように、RNAを細胞に移入させることで、インビボで細胞性および液性の両方の免疫応答を誘起することができる。特に、インビトロ転写RNA(IVT-RNA)を用いる免疫治療について両方法の異なる戦略が試みられ、どちらもさまざまな動物モデルにおいて良好な実験結果が得られている。RNAをさまざまな免疫経路により直接患者に注射するか、もしくは、IVT-RNAを、公知のトランスフェクション方法を用いて細胞にインビトロでトランスフェクションし、トランスフェクションされた細胞を患者に投与する。例えば、RNAを翻訳して、細胞表面のMHC分子に発現したタンパク質とし、免疫応答を得てもよい。
治療用タンパク質とは、細胞により発現されると、既存の症状や疾病を治療するタンパク質を意味する。「治療」とは、タンパク質の発現が、既存の症状または疾病の原因を緩和する、および/または症状または疾病の副作用(例えば、痛み、炎症、うっ血、疲労、発熱、寒気など)を緩和することを意味する。
細胞透過性タンパク質
本明細書に開示するEECは、1つ以上の細胞透過性タンパク質(CCP、細胞透過性ペプチドとも称す)をコードするものであってもよい。CCPとは、細胞による分子の取り込みや吸収を促進し得るタンパク質を意味する。一般に、細胞透過性ペプチドとは、細胞膜を介してさまざまなカーゴ分子を運び、それにより様々な分子の積み荷(ナノサイズの粒子から小さな化学分子、DNAの大きな断片などまで)の細胞の取り込みを促進することができる(短い)ペプチドである。典型的には、積み荷とペプチドの会合は、共有結合を介した化学的連結や非共有結合的な相互作用を介したものである。細胞透過性ペプチドは、そのサイズ、アミノ酸配列、そして電荷について多様であるが、全てのCCPは、原形質膜を透過し、細胞の細胞質や細胞小器官へのさまざまな分子積み荷の送達を促進する能力を共通して有する。現在、CPPの細胞内移行の理論によれば、細胞内移行には、主に、細胞膜の直接的な透過、エンドサイトーシスが媒介した進入、および一過性の構造の形成を介した移行という3つの機構があるとしている(Jafari S, Solmaz MD, Khosro A, 201 5, Bioimpacts 5(2): 103-1 1 1 ; Madani F, Lindberg S, Langel LI, Futaki S, Graslund A, 201 1 , J Biophys: 414729)。
CCPの例としては、ペネトラチン(Derossi, D.,ら, J Biol Chem, 1 994. 269(14): p. 1 0444-50);タンパク質の形質導入に必要なTATの最小ドメイン(Vives, E., P. Brodin, および B. Lebleu, J Biol Chem, 1997. 272(25): p. 1 6010-7); ウイルスタンパク質(例えば、VP22 (Elliott, C. および P. O'Hare, Cell, 1 997. 88(2): p. 223-33) およびZEBRA (Rothe, R.ら, J Biol Chem, 2010. 285(26): p. 20224-33));毒由来のもの(例えば、メリチン(Dempsey, C.E., Biochim Biophys Acta, 1 990. 1031 (2): p. 143-61), マストパラン(Konno, K.ら, Toxicon, 2000. 38(11): p. 1 505-1 5), マウロカルシン(Esteve, E.ら, J Biol Chem, 2005. 280(13): p. 12833-9), クロタミン(Nascimento, F.D.ら, J Biol Chem, 2007. 282(29): p. 21 349-60)または、ブホリン (Kobayashi, S.ら, Biochemistry, 2004. 43(49): p. 1 561 0-6)); または、合成CPP(例えば、ポリアルギニン(R8、R9、R10およびR12)(Futaki, S.ら, J Biol Chem, 2001. 276(8): p. 5836-40)またはトランスポータン(Pooga, M.ら, FASEB J, 1 998. 1 2(1): p. 67-77))などが挙げられる。
CPPは、1つ以上の検出可能な標識を含んでいてもよい。そのようなタンパク質は、一部のみ標識されていても、全体的に標識されていてもよい。EECは、検出可能な標識を完全に、または部分的にコードするものであってもよく、または、まったくコードしないものであってもよい。また、細胞透過性ペプチドは、シグナル配列を含んでいてもよい。本明細書において、「シグナル配列」とは、タンパク質の翻訳時において新生タンパク質のアミノ末端に結合しているアミノ酸残基の配列を意味する。シグナル配列は、細胞透過性ポリペプチドの分泌のシグナル伝達をするために用いられるものであってもよい。
EECによりコードされたCPPは、翻訳後に複合体を形成するものであってもよい。この複合体は、細胞透過性ポリペプチドに連結された荷電タンパク質を含む構成であってもよい。
特定の実施形態において、CPPは、第1ドメインと第2ドメインを有する構成であってもよい。第1ドメインは、過荷電したポリペプチドを含む構成であってもよい。第2ドメインは、タンパク質結合パートナーを含む構成であってもよい。ここでは、「タンパク質結合パートナー」とは、抗体やその機能的断片、足場タンパク質、またはペプチドなどである。CPPは、タンパク質結合パートナーに対する細胞内結合パートナーをさらに含む構成であってもよい。CPPは、EECが導入された細胞から分泌可能なものであってもよい。また、CPPは、EECが導入された細胞に侵入可能なものであってもよい。
その他の一実施形態において、CPPは、第2細胞に侵入可能なものである。第2細胞は、第1細胞と同じ部位からのものであってもよく、異なる部位からのものであってもよい。この部位の例としては、組織や臓器などが挙げられる。また、第2細胞は、第1細胞と近位であっても、遠位であってもよい。
特定の実施形態において、また、EECは、融合タンパク質をコードするものであってもよい。融合タンパク質は、自然に発生するタンパク質において共存しない少なくとも2つのドメインを有する。ドメインは直接融合していてもよく、介在するリンカー配列を介して接続されていてもよい。特定の例では、融合タンパク質は、治療用タンパク質に連結した荷電タンパク質を含む。「荷電タンパク質」とは、正、負、または全体的には中性に荷電したタンパク質を意味する。治療用タンパク質は、融合タンパク質の形成において荷電タンパク質に共有結合している構成であることが好ましい。表面電荷のアミノ酸全体または表面アミノ酸に対する割合は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9であってもよい。融合タンパク質の他の例としては、二重特異性抗体、キメラ抗原受容体、組換えT細胞受容体(TCR)などが挙げられる。
分泌タンパク質
ヒトおよびその他の真核生物細胞は、膜により区画化され、機能が異なる多数の区画に分けられている。膜により包まれた各区画、つまり各細胞小器官は、その細胞小器官の機能において必須のさまざまなタンパク質を含んでいる。細胞は、タンパク質内に位置するアミノ酸モチーフである「ソーティングシグナル」を用いて、タンパク質を特定の細胞小器官にターゲティングする。
シグナル配列やシグナルペプチド、またはリーダー配列と称されるソーティングシグナルの一種に、あるクラスのタンパク質を小胞体(ER)と呼ばれる細胞小器官に導くものがある。シグナル配列によりERにターゲティングされるタンパク質は、分泌タンパク質として細胞外領域に放出できる。同様に、細胞膜に存在するタンパク質も、細胞膜にタンパク質を保持している「リンカー」のタンパク質分解開裂により細胞外領域に分泌できる。
いくつかの実施形態において、EECは、ヒト遺伝子産物を大量生産するために使用することができる。
いくつかの実施形態において、EECは、原形質膜のタンパク質を発現するために使用することができる。
いくつかの実施形態において、EECは、細胞質タンパク質または細胞骨格タンパク質を発現するために使用することができる。
いくつかの実施形態において、EECは、細胞内膜結合タンパク質を発現するために使用することができる。
いくつかの実施形態において、EECは、核タンパク質を発現するために使用することができる。
いくつかの実施形態において、EECは、ヒト疾病に関連するタンパク質を発現するために使用することができる。
いくつかの実施形態において、EECは、現時点で非公知の治療機能を有するタンパク質を発現するために使用することができる。
いくつかの例において、EECは、現在市販されている、または開発中である1つ以上のタンパク質をコードするものである。現在市販されている、または開発中であるタンパク質をコードするポリ核酸をEECに導入することで、本明細書に開示するようにタンパク質の発現を向上することが可能である。
EECは、自己切断ペプチドのコード配列をそのコード配列に含むか、リボソームスキッピングエレメントを含むことで、1つ以上のタンパク質をコードすることができる。
EECがコードしたタンパク質は、血液科、循環器科、CNS、中毒(抗毒素など)、皮膚科、内分泌科、消化器科、医療画像、筋骨格系、腫瘍科、免疫科、呼吸器科、感覚器科、および抗感染など多くの治療分野において症状や疾病を治療するために使用されてもよい。
対象の治療に使用される場合、EECは、投与のために製剤化されてもよい。
EECの製剤の調製は、薬理学の分野において公知または今後開発される任意の方法により行うことができる。一般に、そのような調製方法は、EECを賦形剤および/または1つ以上の他の副材料と混合する工程と、その後、必要な場合および/または望ましい場合は、製剤を所望の1回または複数回投与用単位に分割、成形、および/または包装する工程を有する。
本開示による製剤におけるEEC、薬学的に許容可能な賦形剤および/または他のあらゆる副材料の相対量は、対象の属性、身体の大きさ、および/または状態により異なり、さらに、製剤が投与される経路によって異なる。例えば、製剤は活性成分を0.1%から100%の範囲で含有したもの、例えば、0.5%から50%、1%から30%、5%から80%、少なくとも80%(w/w)含有したものであってもよい。
EEC製剤は、1つ以上の賦形剤を含むことで:(1)安定性の向上;(2)細胞トランスフェクションの向上;(3)(例えば、デポー製剤からの)放出の持続や遅延;(4)生体内分布の変更(例えば、特定の組織または特定の細胞タイプをターゲットにする変更);および/または(5)コードしたタンパク質の放出プロファイルのインビボでの変更を行うことができる。ありとあらゆる溶媒、分散媒体、希釈剤、またはその他の液体担体、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤もしくは乳化剤、防腐剤などの従来の賦形剤の他に、賦形剤の例としてはリピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コア-シェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、EECでトランスフェクションされた細胞(例えば、対象に対する移植用)、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣体、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
EECのインビトロ合成
mRNA産生プロセスは、インビトロ転写、cDNAテンプレートの除去、およびRNAクリーンアップ、およびmRNAキャッピング、および/またはテーリング反応を有する構成であってもよい。
インビトロ転写において、所望の構築物からのcDNAがこの分野において公知の方法により産生される。このような任意のcDNAを、インビトロ転写(IVT)システムを用いて転写してもよい。このようなIVTにより、開示のEECのmRNAをインビトロ合成したものを得ることが可能である。このシステムは、典型的には、転写バッファー、ヌクレオチド三リン酸(NTP)、リボヌクレアーゼ(RNAse)阻害剤、およびポリメラーゼを有する。NTPは、内作してもよいし、サプライヤーの製品から選択したものであってもよいし、または、本分野で公知の方法で合成したものであってもよい。NTPは自然に発生するNTPから選択される。ポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼおよび、修飾核酸を導入することが可能なポリメラーゼなどの変異ポリメラーゼから選択されたものであってもよい。
哺乳類細胞へのEECのトランスフェクション
本明細書に記載するように設計され、合成されたEECは、さまざまな細胞タイプにトランスフェクションすることが可能であり、そのオープンリーディングフレーム内のコード化されたタンパク質を所望のタンパク質に翻訳することができる。トランスフェクションは、例えば、エレクトロポレーションやリポフェクションなどの本分野で公知の任意の方法を用いて行ってもよい。細胞タイプの例としては、本分野で公知である、または今後公知となったあらゆる哺乳類細胞が挙げられる。利用可能な哺乳類細胞の例としては、Jurkat細胞、Raji細胞、HEK293、初代線維芽細胞、初代血液細胞(各種白血球細胞など)、初代腎細胞、初代肝細胞、初代膵臓細胞、および初代神経細胞などが挙げられる。
本開示は、哺乳類細胞における翻訳のために、オープンリーディングフレーム内にコード配列を含むインビトロ合成されたRNAを含むEECを提供する。このタンパク質は、細胞質に存在するものや、細胞小器官に移送されるもの、分泌されるものなどを含む広範囲のタンパク質から選択することができる。このようなEECは、配列CAUACUCA、配列番号2、配列番号3、配列番号38、または配列番号39のいずれかを含む5’UTR、または配列番号4、5、6または7を含む3’UTRを備えた構成であってもよい。また、この5’UTRは、T7ポリメラーゼプロモーター、ミニエンハンサー配列(CAUACUCA)、またはコザック配列を含んでいてもよい。さらに、このバクテリオファージT7プロモーターは、遺伝子組換え配列におけるT7クラスIIIプロモーター(配列番号2)から選択されてもよい。
また、本開示は、哺乳類細胞における翻訳のために、オープンリーディングフレーム内にコード配列を含むインビトロ合成RNAのためのEECを提供し、さらに、該EECは、いずれかの終止コドン(UAA/UAG/UGA)と共に配列番号4、5、6、または7を含む3’UTRを含んでいる構成であってもよい。さらに、該インビトロ合成mRNAは、a)CCUCおよびGAGG、またはb)GAGGおよびCCUCを含む3’UTRも含んでいてもよい。3’UTR配列のa)CCUCおよびGAGG、またはb)GAGGおよびCCUCの配列セットのそれぞれは7個以上のヌクレオチドにより介在されていてもよく、または7個を超えるヌクレオチドであってもよい。3’UTR配列のヌクレオチドの総数は、50個のヌクレオチド以下であることが好ましい。
本開示は、組換えインビトロ合成mRNAのEECおよび方法を提供するものであり、該組換えインビトロ合成mRNAは、ミニエンハンサー配列(CAUACUCA)、配列番号2、配列番号3、配列番号38、および配列番号39のいずれかひとつを含む5’UTRと、配列番号4、5、6、または7のいずれかひとつを含む3’UTRとを含む構成であってもよい。さらに、該組換えインビトロ合成mRNAは、ミニエンハンサー配列(CAUACUCA)、配列番号2、配列番号3、配列番号38、または配列番号39を含む5’UTRと、配列番号4、5、6、または7のいずれかひとつを含む3’UTRとを含む構成であってもよい。また、該組換えインビトロ合成mRNAは、ミニエンハンサー配列(CAUACUCA)、配列番号2、配列番号3、配列番号38、または配列番号39のいずれかひとつと、配列番号4、5、6、または7のいずれかひとつとを含む構成であってもよい。さらに、本開示のEECは、緑色蛍光タンパク質 GFP)、インターロイキン2(IL-2)、およびヒトPOU5F1(つまりOCT3/4)のうちいずれかひとつをコードするコード配列を有する組換えmRNAを含む構成であってもよい。また、本開示は、インビトロ合成RNAが、コードされるタンパク質の発現量を向上させるEECを提供する。さらに、ある実施例では、本開示のEECは、修飾ヌクレオチドを含まず、および/またはマイクロRNA結合部位を含まない。その他の実施例では、本開示のEECは、修飾ヌクレオチドを含まず、マイクロRNA結合部位を含まず、免疫回避因子を含まない。
本明細書に記載のように、EECはタンパク質の発現を向上する。この向上は、タンパク質の自然の発現量に対してのもの、5’UTRに本ミニエンハンサー配列を含まないコード配列と比較してのもの、3’UTRに本ステムループ配列を含まないコード配列と比較してのもの、5’UTRに本ミニエンハンサー配列を含まず、3’UTRに本ステムループ配列を含まないコード配列と比較してのもの、修飾ヌクレオチドを含むが、本明細書に開示するEECを含まないコード配列と比較してのもの、および/または過去にまたは従来タンパク質が発現された程度に対してのものであってもよい。いくつかの実施例では、向上したタンパク質発現は、関連する対照システムまたは対照状態と比較して、少なくとも10%向上したタンパク質発現、少なくとも20%向上したタンパク質発現、少なくとも30%向上したタンパク質発現、少なくとも40%向上したタンパク質発現、少なくとも50%向上したタンパク質発現、少なくとも60%向上したタンパク質発現、少なくとも70%向上したタンパク質発現、少なくとも80%向上したタンパク質発現、少なくとも90%向上したタンパク質発現、少なくとも100%向上したタンパク質発現、少なくとも200%向上したタンパク質発現、少なくとも300%向上したタンパク質発現であってもよい。
本開示の特定の実施形態を例示するために、例示的な実施形態および実施例を示す。当業者は、本明細書に開示する実施例に対して多くの変更を加えることが可能であり、それでも本開示の主旨と範囲から逸脱せずに類似または同様の結果を得ることができることを、本開示を参照して理解するであろう。
例示的な実施形態
1.コード配列に作動可能に連結した5’非翻訳領域(UTR)を有する組換え発現構築物(EEC)であって、該5’UTRが最小プロモーターとコザック配列との間にCAUACUCAとして示される配列を有する、EEC。
2.前記最小プロモーターがT7プロモーターである、実施形態1に記載のEEC。
3.前記T7プロモーターがGGGAGAとして示される配列を有する、実施形態2に記載のEEC。
4.前記コザック配列が、GCCRCCAUGとして示される配列を有し、式中RはAまたはGである、実施形態1ないし3のいずれかに記載のEEC。
5.前記5’UTRが、
(i) 開始コドンに作動可能に連結した配列番号2に記載の配列、または
(ii) 開始コドンに作動可能に連結した配列番号3に記載の配列を有する、実施形態1ないし4のいずれかに記載のEEC。
6.前記開始コドンに作動可能に連結した配列番号2に記載の配列が、配列番号38に記載の配列を有する、実施形態5に記載のEEC。
7.前記開始コドンに作動可能に連結した配列番号3に記載の配列が、配列番号39に記載の配列を有する、実施形態5に記載のEEC。
8.前記5’UTRが、ヌクレオチドの数が30個未満である、実施形態1ないし7のいずれかに記載のEEC。
9.3’UTRをさらに含む、実施形態1ないし8のいずれかに記載のEEC。
10.前記3’UTRが、終止コドンに作動可能に連結しているスペーサーおよびステムループ構造を含む、実施形態9に記載のEEC。
11.前記終止コドンが、配列UAA、UGA、またはUAGを有する、実施形態10に記載のEEC。
12.前記スペーサーが、配列[N1-3]AUAまたは[N1-3]AAAを有する、実施形態10または11に記載のEEC。
13.前記スペーサーが、配列UGCAUAまたはUGCAAAを有する、実施形態10または11に記載のEEC。
14.前記ステムループ構造が、CCUCおよびGAGGとして示されるハイブリダイゼーション配列を有する、実施形態10ないし13のいずれかに記載のEEC。
15.前記ステムループ構造が、AAACCUCおよびGAGGとして示される、または、AAAGAGGおよびCCUCとして示されるハイブリダイゼーション配列を有する、実施形態10ないし13のいずれかに記載のEEC。
16.前記ステムループ構造が、少なくとも7個のヌクレオチドを有するループセグメントを有する、実施形態10ないし15のいずれかに記載のEEC。
17.前記ステムループ構造が、ヌクレオチドを7個から15個有するループセグメントを有する、実施形態10ないし16のいずれかに記載のEEC。
18.前記ステムループ構造が、UAACGGUCUU(配列番号34)として示される配列を有するループセグメントを有する、実施形態10ないし17のいずれかに記載のEEC。
19.前記3’UTRが、ヌクレオチドの数が30個未満である、実施形態9ないし18のいずれかに記載のEEC。
20.前記3’UTRが、さらにポリアデニン(ポリA)テールを含む、実施形態9ないし19のいずれかに記載のEEC。
21.前記ポリAテールが、60個以下の残基を有する、実施形態20に記載のEEC。
22.前記ポリAテールが、40個の残基を有する、実施形態20または21に記載のEEC。
23.前記3’UTRが、配列番号4、5、6、7、8、または9に記載の配列を有する、実施形態9ないし22のいずれかに記載のEEC。
24.前記3’UTRが、配列番号10、11、または12に記載の配列を有する、実施形態9ないし22のいずれかに記載のEEC。
25.前記3’UTRが、配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、または21に記載の配列を有する、実施形態9ないし24のいずれかに記載のEEC。
26.インビトロ合成メッセンジャーRNA(mRNA)を含む、実施形態1ないし25のいずれかに記載のEEC。
27.前記コード配列が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒトインターロイキン2(IL-2)、またはヒトPOU5F1(つまりOCT3/4)をコードする、実施形態1ないし26のいずれかに記載のEEC。
28.配列番号56、58、または60に記載の配列を有する、実施形態1ないし27のいずれかに記載のEEC。
29.前記コード配列が、治療用タンパク質をコードする、実施形態1ないし26のいずれかに記載のEEC。
30.前記治療用タンパク質が、抗体またはその結合断片を含む、実施形態29に記載のEEC。
31.前記抗体またはその結合断片が、抗SARS-Cov2抗体またはその結合断片、抗SARS抗体またはその結合断片、抗RSV抗体またはその結合断片、抗HIV抗体またはその結合断片、抗デングウイルス抗体またはその結合断片、抗百日咳菌抗体またはその結合断片、抗C型肝炎抗体またはその結合断片、抗インフルエンザウイルス抗体またはその結合断片、抗パラインフルエンザウイルス抗体またはその結合断片、抗メタニューモウイルス(MPV)抗体またはその結合断片、抗サイトメガロウイルス抗体またはその結合断片、抗エプスタイン・バールウイルス抗体、抗単純ヘルペスウイルス抗体またはその結合断片、抗クロストリジウム・ディフィシル菌毒素抗体またはその結合断片、または腫瘍壊死因子(TNF)抗体またはその結合断片を含む、実施形態30に記載のEEC。
32.前記コード配列が、ワクチン抗原をコードする、実施形態1ないし26のいずれかに記載のEEC。
33.前記ワクチン抗原が、SARS-CoV-02ワクチン抗原、CMVワクチン抗原、EBVワクチン抗原、肝炎ワクチン抗原、単純ヘルペスウイルスワクチン抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ワクチン抗原、ヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルス抗原、インフルエンザワクチン抗原、日本脳炎ワクチン抗原、マラリアワクチン抗原、麻疹ワクチン抗原、狂犬病ワクチン抗原、RSワクチン抗原、ロタウイルスワクチン抗原、水痘帯状疱疹ワクチン抗原、またはジカ熱ワクチン抗原を含む、実施形態32に記載のEEC。
34.前記コード配列がサイトカインをコードする、実施形態1ないし26のいずれかに記載のEEC。
35.前記コード配列が細胞透過性タンパク質をコードする、実施形態1ないし26のいずれかに記載のEEC。
36.前記細胞透過性タンパク質が、ペネトラチン、TATの最小ドメイン、VP22、ZEBRA、メリチン、マストパラン、マウロカルシン、クロタミン、ブホリン、ポリアルギニン、またはトランスポータンを含む、実施形態35に記載のEEC。
37.修飾ヌクレオチドを含まない、実施形態1ないし36のいずれかに記載のEEC。
38.マイクロRNA結合部位を含まない、実施形態1ないし37のいずれかに記載のEEC。
39.前記コード配列が免疫回避因子をコードする、実施形態1ないし38のいずれかに記載のEEC。
40.前記免疫回避因子がB18R、E3、K3、NS1、またはORF8を含む、実施形態40に記載のEEC。
41.免疫回避因子を含まない、実施形態1ないし38のいずれかに記載のEEC。
42.対象への投与のために製剤化されている、実施形態1ないし41のいずれかに記載のEEC。
43.配列番号38に記載の配列を含む5’非翻訳領域(UTR)と、配列番号13、14、または15に記載の配列を含む3’UTRとに作動可能に連結したコード配列を有する、組換え発現構築物(EEC)。
44.CAUACUCAとして示される配列を含むエンハンサー配列。
45.CAUACUCAとして示される配列を、1、2、3、4、または5コピー有する、組換え発現(EEC)構築物。
46.前記エンハンサー配列がプロモーターに作動可能に連結されている、実施形態44に記載のEEC。
47.前記プロモーターが最小プロモーターである、実施形態46に記載のEEC。
48.哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム内にコード配列を含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物であって、前記インビトロ合成RNAが、CAUACUCAを含む5’非翻訳領域および、配列番号4、5、6、または7のいずれかを含む3’非翻訳領域のひとつをさらに含む構成である、組換え発現構築物。
49.哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム内にコード配列を含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物であって、前記インビトロ合成RNAが、配列番号2または配列番号3を含む5’非翻訳領域および、配列番号4、5、6、または7を含む3’非翻訳領域のいずれかをさらに含む構成である、組換え発現構築物。
50.哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物であって、前記インビトロ合成RNAが、T7ポリメラーゼプロモーターと、CAUACUCAとして示される配列と、コザック配列とを含む5’非翻訳領域をさらに含む構成である、組換え発現構築物。
51.前記T7プロモーターが、T7クラスIIIプロモーターから選択されたものである、実施形態1ないし42のいずれかに記載の組換え発現構築物。
52.哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物であって、前記インビトロ合成RNAが、配列番号4、5、6、または7と、終止コドンとを含む3’非翻訳領域を含む構成である、組換え発現構築物。
53.前記終止コドンが、UAA、UAG、またはUGAである、実施形態52に記載の組換え発現構築物。
54.哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物であって、前記インビトロ合成RNAが、a)CCUCおよびGAGG、または、b)GAGGおよびCCUCのいずれかを含む3’非翻訳領域を含み、前記3’非翻訳領域の配列の組における各配列の間は7個以上のヌクレオチドが介在している構成である組換え発現構築物。
55.哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物(EEC)であって、前記インビトロ合成RNAが、a)AAACCUCおよびGAGG、または、b)AAAGAGGおよびCCUCのいずれかを含む3’非翻訳領域を含み、前記3’非翻訳領域の配列の組における各配列の間は7個以上のヌクレオチドが介在している構成であるEEC。
56.最小プロモーターとコザック配列との間に位置するCAUACUCAとして示される配列を含む、5’非翻訳領域(UTR)。
57.前記最小プロモーターがT7プロモーターである、実施形態56に記載の5’UTR。
58.前記T7プロモーターが、GGGAGAとして示される配列を有する、実施形態57に記載の5’UTR。
59.前記コザック配列が、GCCRCCAUGとして示される配列(式中、Rはアデノシンまたはグアニン)を有する、実施形態56ないし58のいずれかに記載の5’UTR。
60.開始コドンに作動可能に連結した配列番号2に記載の配列を含む、実施形態56ないし59のいずれかに記載の5’UTR。
61.開始コドンに作動可能に連結した配列番号3に記載の配列を含む、実施形態56ないし60のいずれかに記載の5’UTR。
62.前記開始コドンに作動可能に連結した配列番号2に記載の配列が、配列番号38に記載の配列を有する、実施形態60に記載の5’UTR。
63.前記開始コドンに作動可能に連結した配列番号3に記載の配列が、配列番号39に記載の配列を有する、実施形態61に記載の5’UTR。
64.前記5’UTRが、ヌクレオチドの数が30個未満である、実施形態56ないし63のいずれかに記載の5’UTR。
65.終止コドンに作動可能に連結しているスペーサーおよびステムループ構造を含む3’UTRであって、前記終止コドンが、配列UAA、UGA、またはUAGを有し、前記スペーサーが、配列[N1-3]AUAまたは[N1-3]AAAを有する構成である3’UTR。
66.前記スペーサーが、配列UGCAUAまたはUGCAAAを有する、実施形態65に記載の3’UTR。
67.前記ステムループ構造が、CCUCおよびGAGGとして示されるハイブリダイゼーション配列を含む、実施形態65または66に記載の3’UTR。
68.前記ステムループ構造が、AAACCUCおよびGAGGとして示される、またはAAAGAGGおよびCCUCとして示されるハイブリダイゼーション配列を含む、実施形態65ないし67のいずれかに記載の3’UTR。
69.前記ステムループ構造が、少なくとも7個のヌクレオチドを有するループセグメントを有する、実施形態65ないし68のいずれかに記載の3’UTR。
70.前記ステムループ構造が、7個から15個のヌクレオチドを有するループセグメントを有する、実施形態65ないし69のいずれかに記載の3’UTR。
71.前記ステムループ構造が、UAACGGUCUU(配列番号34)として示される配列を有するループセグメントを有する、実施形態65ないし70のいずれかに記載の3’UTR。
72.ヌクレオチドの数が30個未満である、実施形態65ないし71のいずれかに記載の3’UTR。
73.さらにポリアデニン(ポリA)テールを含む、実施形態65ないし72のいずれかに記載の3’UTR。
74.前記ポリAテールが、60個以下の残基を有する、実施形態73に記載の3’UTR。
75.前記ポリAテールが、40個の残基を有する、実施形態73または74に記載の3’UTR。
76.配列番号4、5、6、7、8、または9に記載の配列を有する、実施形態65ないし75のいずれかに記載の3’UTR。
77.配列番号10、11、または12に記載の配列を有する、実施形態65ないし75のいずれかに記載の3’UTR。
78.配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、または21に記載の配列を有する、実施形態65ないし77のいずれかに記載の3’UTR。
79.コード配列に作動可能に連結している、実施形態65ないし78のいずれかに記載の3’UTR。
80.前記コード配列が、治療用タンパク質、ワクチン抗原、サイトカイン、または蛍光タンパク質をコードする、実施形態79に記載の3’UTR。
81.前記コード配列が、免疫回避因子をコードする、実施形態79または80に記載の3’UTR。
82.前記免疫回避因子が、B18R、E3、K3、NS1、またはORF8を含む、実施形態81に記載の3’UTR。
83.前記コード配列が、免疫回避因子を含まない、実施形態79ないし80のいずれかに記載の3’UTR。
84.前記コード配列が、細胞透過性タンパク質をコードする、実施形態79ないし83のいずれかに記載の3’UTR。
85.前記細胞透過性タンパク質が、ペネトラチン、TATの最小ドメイン、VP22、ZEBRA、メリチン、マストパラン、マウロカルシン、クロタミン、ブホリン、ポリアルギニン、またはトランスポータンを含む、実施形態84に記載の3’UTR。
86.本明細書に開示の5’UTRおよび/または3’UTR配列。
87.コード配列に作動可能に連結した、本明細書に開示の5’UTRおよび/または3’UTR配列。
実験による実施例
実施例1:材料および方法
UTRの設計と構造予測
それぞれ4個から10個のヌクレオチド長である最小の転写エレメントおよび翻訳エレメント(例えば、それぞれ本明細書に開示されている本願の5’UTRエンハンサー、T7ヘキサマー、およびコザック配列)は、本開示のUTRを構築するようにアセンブリングされる。上記ステムループの特徴に基づいて、試験用の合成3’配列をアセンブリングした。二次構造予測ウェブサーバ(rna.urmc.rochester.edu/RNAstructureWeb/)をデフォルトパラメータと共に使用して、さまざまなUTR配列から形成されるステムループ二次構造の可能性を検証した。
Figure 2024509123000004
mRNA合成
Integrated DNA Technologies Inc.(IDT)社より入手したDNA断片を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、T7プロモーター、UTR、およびポリアデノシン(40個のアデノシン)配列を表1に記載のオリゴヌクレオチドにより構築した。これらのテンプレートを用い、T7 RNAポリメラーゼおよびアンチリバースキャップアナログ(ARCA)を使って転写反応を行い、mRNAを合成した(HiScribeTM T7 ARCA mRNA Kit, NEB)。DNase Iで処理した後、mRNAを定量し、適宜保存した。
細胞培養
HEK293(ATCC(登録商標) CRL-1573TM)細胞、Jurkat細胞、クローンE6-1(ATCC TIB-152TM)細胞、およびRaji(ATCC CCL-86TM)細胞をアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)より入手した。それぞれの細胞を37℃、5% CO2下で維持した。HEK293の培地は、10%ウシ胎児血清(FBS)を添加したイーグル最小必須培地(EMEM)(ATCC 30-2003TM)を含むものである。Jurkat細胞およびRaji細胞は、10%FBSを添加したRPMI-1640培地(ATCC 30-2001TM)にて維持した。Expi293TM発現システムキット(ThermoFisher社)を製造元の指示に従って使用した。
トランスフェクションおよびエレクトロポレーション
最適なトランスフェクションパラメータを求めるために、全長UTRを含む漸増量のEECで細胞をトランスフェクションした。対照実験として、HEK293細胞をメッセンジャーマックス リポフェクタミン(MessengerMax lipofectamine)(Thermo Fisher Scientific社)を添加した0.4から1pmolのmRNAでトランスフェクションした。Jurkat細胞とRaji細胞を、ジェットメッセンジャー(jetMessenger (PolyPlus社))を添加した0から16 pmolのGFPコードEECでトランスフェクションした。エレクトロポレーションについては、ネオントランスフェクションシステム(Neon Transfection System)(Thermo Fisher Scientific社)を製造元のマニュアルに従って使用した。データベースを参照して最適なエレクトロポレーションパラメータ(電圧、時間、およびパルス数)を求めた。
フローサイトメトリー
細胞を4%パラホルムアルデヒドで30分から60分処理して固定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に保存した。hOCT3/4染色のために、細胞を透過処理し、抗体(BioLegend社)と共に培養し、PBSで2回洗浄した後、使用までPBS中に保存した。細胞の分析は、FACSCaliburフローサイトメーター(BD社)およびCytoFlexフローサイトメーター(Beckman Coulter)にて行い、FlowJoソフトウェアで分析した。
ELISA
トランスフェクションから24時間後に、適宜細胞培地を回収し、遠心分離処理し、希釈した。ヒトIL2 ELISA(BioLegend社)を使用して、製造元のプロトコルに従って発現量を定量した。簡単に説明すると、プレート(Costar社)を、捕捉抗体でコーティングし、その後上記希釈した細胞培地、検出抗体、およびアビジンHRPと共に培養した。吸光度(450nm)を測定し、分析した。
実施例2:本明細書に開示する本願の5’UTR配列を含むEECによる、5’UTR配列がない場合と比較したときのタンパク質発現の向上
EEC配列が有するタンパク質発現向上能力についてテストするために、上記修飾5’UTRや3’UTR配列を含み、GFPをレポータータンパク質とするEECをEXPI293浮遊細胞(Thermo Fisher Scientific社)にトランスフェクションした。HEK293細胞株由来のEXPI293浮遊細胞は高タンパク質発現のために設計されているので、これをまず使用した。実験で採用するmRNAの適量を求めるために、EXPI293細胞に、0から2pmol(0から500ng)の範囲の漸増量のGFPコードEECを、EXPIフェクタミン(EXPIfectamine)トランスフェクション試薬を用いて、トランスフェクションした。24時間後、上記のように細胞のフローサイトメトリーを行った。本実験において、GFP蛍光シグナルは細胞におけるタンパク質量に比例するものとする。図2に示すように、フローサイトメトリーデータによれば、GFPメジアン強度は細胞数6.0×105個に対してmRNAの量が0.4pmol(100ng)の時に飽和する。
次に、細胞を、様々な5’UTRを有する等モルのmRNAでトランスフェクションし、トランスフェクション後、3時間後と24時間後の時点においてGFP発現を分析した。前記様々な5’UTR配列は、コザック配列(M3)を有する(M1)(T7プロモーター));(M1、M2((CAUACUCA)、およびM3)、または、5’メチルキャップとT7ヘキサマーの先にその他の5’UTRを有さないものであった。なお、各構築物は5’メチルキャップとT7ヘキサマーを含んでいる。図3Aおよび3Bに、本実験の結果を示す。ここで、図3Aおよび3Bは、GFPコードEECの5’UTR変異体におけるトランスフェクションから3時間後(図3A)およびトランスフェクションから24時間後(図3B)のGFP強度(FL1-H)をx軸に、細胞数をy軸に示すフローサイトメトリーグラフ、およびそのデータを示す棒グラフを示す。予測されたように、UTRを含まない転写物(T7ヘキサマーGGGAGAのみを含む構築物)でトランスフェクションされた細胞が示したGFPシグナルのメジアン強度は、トランスフェクション後の全ての時点で最も低いものであった(図3A、3B)。R位置にAを有するコザックコンセンサス配列を追加すると、タンパク質発現が200%向上したが、さらに本願の翻訳エンハンサー(CAUACUCA)を追加すると、5’UTR転写物で処理していない細胞で検知されたGFPシグナルと比較して、3時間後の時点と24時間後の時点でGFP発現がそれぞれ635%および240%向上した。
よって、本実験により、本願の遺伝子組換え5’UTR、特に、本願の翻訳エンハンサーを有する5’UTRがタンパク質発現を顕著に向上する上で重要であることが示された。
実施例3:様々な5’UTR配列を有するEECに本願の3’UTR配列を含めることによるタンパク質発現の向上
次に、本願の3’UTRを追加することのGFP発現に対する効果を検証した。本実験の結果を図4Aおよび図4Bに示す。図4Aおよび図4Bは、GFPをコードするEECの5’UTRや3’UTR変異体におけるトランスフェクションから3時間後(図4A)およびトランスフェクションから24時間後(図4B)のGFP強度(FL1-H)をx軸に、細胞数をy軸に示すフローサイトメトリーグラフ、およびそのデータを示す棒グラフを示す。EXPI293細胞のトランスフェクションを、等モル量の、RNAなし(陰性対照)、3’UTRのみのmRNA(5’UTRなし)、5’UTRと追加で3’UTRを有するM3のみ、および5’UTRと追加で3’UTRを有するM1、M2、およびM3などのGFPをコードするEECの5’UTRや3’UTR変異体にて行った。図4Aおよび4Bに示すように、3’UTRのみを含む転写物でトランスフェクションした細胞は、全ての測定時点において低いGFP発現量を示した。3’UTRと共にコザックコンセンサス配列を追加すると、GFPメジアン強度は若干向上した。しかし、全長の5’UTR(配列番号2)を3’UTR(配列番号10)と共に追加すると、GFP発現が3時間後および24時間後の時点でそれぞれ660%および925%向上した。全長の5’UTR(配列番号2)のみを含む転写物で処理した細胞と比較すると、3’UTR(配列番号10)を追加することによりGFPシグナルがさらに137%向上した。特に、全長の5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)を有するmRNAで処理した細胞が最も高いGFP強度を示した。
よって、本実験により、本発明の3’ステムループをmRNAに含めることが、所望される場合にタンパク質発現量をさらに向上させる上で重要であることが示された。
実施例4:本願の5’UTR配列および3’UTR配列を有するEECによる、様々なタンパク質タイプにおけるタンパク質発現の向上
様々なタンパク質の発現の向上に本遺伝子組換えUTRが有用であることを確認するため、異なる性質の複数のタンパク質のコーディングにおける優位性を実証した。図5は、本明細書に開示するEECについて試験した3種類の異なるタイプのタンパク質、つまり、細胞質(GFP)、細胞小器官(核コンパートメント、本実施例ではヒトPOU5F1またはOCT3/4)および、細胞外コンパートメント(分泌タンパク質、本実施例ではIL2)におけるタンパク質の標的発現を図示したものである。本願の5’UTR配列および3’UTR配列が細胞質タンパク質(GFP)の発現に対する影響に関する実験については、実施例2および3と、図3A~図4Bを参照されたい。
幹細胞のリプログラミングにおける主要な核転写因子であるヒトPOU5F1またはOCT3/4(本実施例ではhOCT4)(Yuら, Induced pluripotent stem cell lines derived from human somatic cells. Science(80).(2007), doi:10.1126/science.1151526)を使用して、細胞小器官に結合したタンパク質の発現に対する本発明のUTRの効果を検証した。GFPと同様に、HEK293を漸増量(0~4.8pmol)のhOCT4コードmRNAで処理すると、24時間後に細胞内においてタンパク質量が上昇した(図11Aおよび図11C)。hOCT4陽性細胞のパーセンテージは、2.0×105個においてmRNAが1.2 pmolのときに最大(75%)に達した。HEK293細胞を、5’や3’変異体を有する等量のhOCT4転写物でトランスフェクションすると、全長の5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)を有するもののみが、hOCT4陽性細胞の顕著なパーセンテージを示した(40%)。さらに、メジアン(実験数=2)hOCT4強度は、全長の5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)を有するhOCT4 mRNAで処理した細胞において、4倍高くなった(図11Aおよび11B)。
最後に、分泌タンパク質であるヒトインターロイキン-2(hIL2)の発現に対する本発明のUTRの効果を検証した。hIL2は、Tリンパ球を活性化するものであり、現在、自己免疫疾患やがんの治療におけるターゲットとされている(Spolski, Li, & Leonard, Biology and regulation of IL-2: from molecular mechanisms to human therapy. Nat. Rev. Immunol. (2018), doi:10.1038/s41577-018-0046-y)。上記実験と同様に、HEK293を、漸増量のhIL2コードmRNA(全長の5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)を含む)でトランスフェクションした。トランスフェクションから24時間後の時点のELISAではhIL2タンパク質量が比例的に増えているのが観察された(図11A)。さらに、UTR変異体でhIL2 mRNAをトランスフェクションすると、全長の5’UTR(配列番号2)と3’UTR(配列番号10)の両方が存在する場合に最も高い発現量でhIL2タンパク質の発現が観察された(図11B)。
よって、本実験により、本発明の組換えUTRを両方とも有するmRNAが様々なタンパク質タイプを使ったタンパク質発現の向上において有用であることが示された。
実施例5:本発明の5’UTR配列および3’UTR配列を有するEECによる、様々なタンパク質タイプにおけるタンパク質発現の向上
他の細胞タイプにおいてタンパク質発現の向上が再現されるかどうかを検証するために、以下の細胞株にて上記実験を再度行った:HEK293(ATCC CRL1573TM)リンパ球、Jurkat(クローンE6-1;ATCC TIB-152)リンパ球、およびRaji(ATCC CCL-86)リンパ球。接着性のHEK293細胞は、アデノウイルス5型のDNAのせん断された断片により形質転換されたヒト胚性腎臓細胞由来である(Grahamら、Characteristics of a human cell line transformed by DNA from human adenovirus type 5. J. Gen. Virol. (1977), doi:10.1099/0022-1317-36-1-59)。播種したHEK293細胞を、5’UTR(配列番号2)と3’UTR(配列番号10)とを含むGFPコードEECの新しいロットの漸増量で処理した。この実験では、実施例1に記載のように、メッセンジャーマックスリポフェクタミン(MessengerMax Lipofectamine)試薬(ThermoFisher社)を用いたmRNAトランスフェクションを行った。図6A、図6B、および図6Cに示すように、約90%の細胞が、GFPコードEECが1pmol(250ng)の時にシグナル飽和するGFPシグナルを示した。細胞を処理するmRNAの量を増やしても、GFP陽性細胞のパーセンテージは若干向上するのみであった。タンパク質発現量を示すメジアンGFP強度は、2pmol(500ng)時に飽和に達した。
続いて、HEK293細胞を、本願で開示する5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)を含む0.4から1pmol量の様々なEECで処理した(図7Aおよび図7B)。全てのmRAN変異体が、60%から80%の細胞でGFPの発現を生じたが、全長UTRで処理した細胞のみが、その他と比較して5倍のGFPメジアン強度を示した(図7C)。メジアン強度は実験を2回行って算出した。
次に、上記実験をリンパ球株であるJurkat細胞およびRaji細胞で行った。Jurkat細胞は、急性T細胞白血病の14歳の少年の末梢血から確立されたTリンパ球である(Schneider, Schwenk, & Bornkamm, Characterization of EBV‐genome negative “null” and “T” cell lines derived from children with acute lymphoblastic leukemia and leukemic transformed non‐Hodgkin lymphoma. Int. J. Cancer (1977), doi:10.1002/ijc.2910190505)。Raji細胞は、バーキットリンパ腫の11歳の男性患者から確立されたBリンパ球である(Osunkoya, The preservation of burkitt tumour cells at moderately low temperature. Br. J. Cancer (1965), doi:10.1038/bjc.1965.87; Pulvertaft, A Study of Malignant Tumours In Nigeria by Short-Term Tissue Culture. J. Clin. Pathol. (1965), doi:10.1136/jcp.18.3.261)。この実験では、ジェットメッセンジャー(jetMessenger)試薬(Polyplus-transfection(登録商標))を用いてmRNAトランスフェクションを行った。トランスフェクション効率が90%であったHEK293細胞(つまり、GFP陽性細胞)と違い、Jurkat細胞では、10%のみがmRNA量が最大(16pmol)の時にGFPシグナルを示した(図7A)。さらに、等モル量の様々な構築物で処理した細胞が若干のGFPシグナルを示した一方で、全長の5’UTR(配列番号2)と3’UTR(配列番号10)を含む転写物でトランスフェクションしたものは、最大数のGFP陽性細胞を示した(14%、図7B)。同様の結果がRaji細胞でも観察される(データは図示せず)。
よって、この実験により、本発明の組換えUTRが様々な細胞タイプにおけるタンパク質発現の向上において有用であることが示された。
実施例6:本明細書に開示するEECのタンパク質発現向上効果において、トランスフェクションの方法の重要性は低い
トランスフェクションの方法が本明細書に開示するEECにより示される発現向上効果において重要であるか否かを検証するために、Jurkat細胞を、GFPをコードするコード配列を有する漸増量のEECでエレクトロポレーションした。
エレクトロポレーションは、リンパ球株への核酸の導入を向上させることが分かっている(Ohtaniら、Electroporation: Application to human lympboid cell lines for stable introduction of a transactivator gene of human T-cell leukemia virus type I. Nucleic Acids Res.(1989), doi:10.1093/nar/17.4.1589)。まず、本実験で使用するmRNAの最適量を求めるために、実施例1に示すように、ネオンエレクトロポレーションシステム(Thermo Fisher Scientific社)を用い、漸増量のGFPコードEECでJurkat細胞のエレクトロポレーションを行った。結果としてGFPシグナルが比例して増加した。次に、Jurkat細胞のエレクトロポレーションを、UTR変異体を有するGFPコードEECを4pmolおよび8pmol用いて行った。6から8×105個の細胞につきGFPコードEECが4pmol(1μg)の時に細胞の最大10%がGFP陽性を示し、全長の5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)を有するmRNAで処理した細胞がGFP陽性細胞の最も高いパーセンテージを示した(図9A)。8pmol(2μg)の時に約90%のJurkat細胞がGFP陽性であり、全長の5’UTR(配列番号2)および3’UTR(配列番号10)を有するmRNAで処理した細胞が最も高いメジアンGFP強度を示した(図9Bおよび図9C)。Raji細胞を使用した場合にも、使用されたmRNA量が最大の時にGFP陽性細胞の数が減少した以外は、同様の結果が得られた(図10A、図10B、および図10C)。
本願の遺伝子組換えEECを用いた実施例7でも、実施例2、3、4の結果と同様のタンパク質量が観察されたので、トランスフェクションの方法は、本EECの効果に対して影響しない。
実施例7:3’UTRのステムループの配列を逆にしても、タンパク質発現量の向上に対する影響なし
タンパク質発現に対する3’UTR配列の構成の影響について、ステムループのペアイングを維持して検証するために、元の3’UTR配列(図13A、3’UTR-A)を編集して、CCUCをGAGGにて置き換えた(図13A、3’UTR-B)。GFPコードEECを3’UTR-Aまたは3’UTR-Bのいずれかを含むように構築し、HEK293細胞におけるGFP発現について(メッセンジャーマックスリポフェクタミン(MessengerMax lipofectamine)でトランスフェクションして)試験した。1から2pmolを使用したところ、60から70%の細胞がGFP発現を示し(実験数=2から3回)、いずれかの3’UTRを有する構築物間に違いは見られなかった(図13B)。また、GFPメジアン強度(実験数=2~3回)も、いずれかの3’UTRを有するEEC間は同様であった(図13C)。また、3’UTR-BにおけるGGAGの前方にある-2位置において1個のヌクレオチドが置換されている(UからA)ものである他の3’UTRを有するEECを使ってGFP発現を試験した(図13A、3’UTR-C)。この配列は、ステムループ結合タンパク質(SLBP)および翻訳と関連するmRNAにとって重要なアデノシン鎖がステム領域に先行しているヒストンステムループに類似している(Battle & Doudna, The stem-loop binding protein forms a highly stable and specific complex with the 3′ stem-loop of histone mRNAs. RNA (2001), doi:10.1017/S1355838201001820; William & Marzluff, The sequence of the stem and flanking sequences at the 3′ end of histone mRNA are critical determinants for the binding of the stem-loop binding protein. Nucleic Acids Res. (1995), doi:10.1093/nar/23.4.654)。3’UTR-Cを追加しても上記3’UTRほどにはGFP陽性細胞のパーセンテージは増加しなかったが、トランスフェクションされた細胞におけるGFPメジアン強度が60%上昇した(図13Bおよび図13C)。
よって、上記実施例で観察されたように、本願のフランキング配列を有するステムループを含む組換え3’UTRは、ヒト細胞におけるGFP発現を向上する。
実施例8:線維芽細胞へのトランスフェクションにおいて、本願の5’UTR配列を含む組換えmRNAは、修飾ヌクレオチドを用いたmRNAと比較してタンパク質発現を向上する
開示する組換えmRNAから産生されたタンパク質量を修飾ヌクレオチドを用いたmRNA(N1-メチルシュードウリジン)によるタンパク質量と比較するために、非修飾mRNA Oct4(UO)、非修飾mRNA MyoD-Oct4(UMD)、修飾mRNA Oct4(PUO)、および修飾mRNA MyoD-Oct4(PUMD)などのいくつかのOct4発現mRNA構築物をヒト包皮線維芽細胞にトランスフェクションした。図14に示すように、OCT4発現は、非修飾mRNA(UO)を使った時に最も高かった。800ngのmRNAを用いた非修飾の組換え転写物では、50.7%においてOCT4陽性細胞のパーセンテージは最も高くなった。また、図14に示すように、本願に開示する組換えmRNAと比較して、修飾ヌクレオチドシュードウリジンを用いた場合(PUOおよびPUMD)にOCT4陽性細胞のパーセンテージは顕著に低いものとなった(50.7%に対して36.9%)。これらの結果により、N1-メチルシュードウリジンなどの修飾ヌクレオチドにより得られた転写物と比較して、本明細書に開示する5’UTRおよび3’UTRは、より高いタンパク質発現が得られることが示された。
各実験例において使用された配列については、図15を参照されたい。
結語
本明細書に開示する各実施形態は、当業者には明らかなように、本書に記載した特定の要素、工程、材料、または成分を含む、実質的にそれらからなる、または、それらからなる(comprising, consist essentially ofまたはconsist of)構成であってもよい。よって、「含む」または「含んでいる」(includeまたはincluding)という用語は、「含む、からなる、または、実質的にそれらからなる」(comprising, consist essentially of または consist of)を意味すると解釈されるべきものである。本願において、特許請求項における移行部の用語である「含む」または「含んでいる」(comprise or comprises)は、その請求項では特定されていない要素、工程、材料または成分を、場合により大量に、含み得ることを意味し、含む場合も、含まない場合もあることを意味する。移行部の表現である「からなる」(consisting of)は、その請求項では特定されていない要素、工程、材料または成分を含んでいないことを意味する。移行部の表現である「実質的にそれらからなる」(consisting essentially of)は、その実施形態の範囲を、その請求項で特定されている要素、工程、材料または成分と、その実施形態に重要な影響を及ぼさないものとに限定することを意味する。本明細書において、重要な影響とは、5’UTRに配列番号2を含み、3’UTRに配列番号10を含むEECを使用することにより観察されるタンパク質発現の向上において、統計学的に顕著な低減を及ぼし得る影響を意味する。
別途記載がない限り、本願明細書および本特許請求の範囲において使用される全ての数値は、全ての場合において、「約」という用語により修飾されていると、解釈されるべきものである。よって、別途記載がない限り、本願明細書および添付の本特許請求の範囲において記載されている数値的パラメータは、本発明により実現しようとする所望の性質により変化しうる近似値である。少なくとも、そして、本願の請求項の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値的パラメータの解釈は、少なくとも、記載の有効桁数の数字を鑑み、そして通常の四捨五入を適用して行われるべきものである。さらなる明確性が求められる場合は、「約」という用語は、記載の数値または数値的範囲と共に使用されたときに、当業者により合理的にその意味とされる意味を有するものとする。すなわち、「約」という用語は、記載の値または範囲よりある程度大きいもの、またはある程度小さいものを示し、記載の値の±20%、記載の値の±19%、記載の値の±18%、記載の値の±17%、記載の値の±16%、記載の値の±15%、記載の値の±14%、記載の値の±13%、記載の値の±12%、記載の値の±11%、記載の値の±10%、記載の値の±9%、記載の値の±8%、記載の値の±7%、記載の値の±6%、記載の値の±5%、記載の値の±4%、記載の値の±3%、記載の値の±2%、または記載の値の±1%の範囲内のものを示すものである。
本発明の広い範囲を規定する数値範囲とパラメータは近似値であるが、具体的な実施例に規定されている数値は、可能な限り精確に記載されているものである。しかし、どのような数値にも、その実験の測定における標準偏差の結果、必然的にある程度の誤差が内在している。
また、本願明細書において開示するタンパク質と(5’UTRおよび3’UTRを含む)EECの変異体とは、参照配列に対して、少なくとも、70%の配列同一性、80%の配列同一性、85%の配列同一性、90%の配列同一性、95%の配列同一性、96%の配列同一性、97%の配列同一性、98%の配列同一性、または99%の配列同一性を有する配列を有するものである。
「%の配列同一性」とは、配列同士を比較することで求められた2つ以上の配列間の関係を示すものである。また、本技術分野において、「同一性」とは、タンパク質、核酸、または遺伝子配列間の、その配列の並びがどれだけ一致しているかにより求められた配列の関係性の度合いを意味する。「同一性」(しばしば「類似性」とも称される)は、Computational Molecular Biology (Lesk, A. M., ed.) Oxford University Press, NY (1988); Biocomputing: Informatics and Genome Projects (Smith, D. W., ed.) Academic Press, NY (1994); Computer Analysis of Sequence Data, Part I (Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds.) Humana Press, NJ (1994); Sequence Analysis in Molecular Biology (Von Heijne, G., ed.) Academic Press (1987); and Sequence Analysis Primer (Gribskov, M. and Devereux, J., eds.) Oxford University Press, NY (1992)などの文献に記載されているものなどの公知の方法により、容易に算出することができる。同一性を求める方法としては、試験対象の配列間の一致性を最もよく示すように設計されたものが好ましい。同一性や類似性を求める方法は、市販のコンピュータプログラムとしてコード化されている。シーケンスアライメントおよび同一性のパーセントの算出は、LASERGENE bioinformatics computing suite (DNASTAR, Inc., Madison, Wisconsin)のMegalignプログラムを用いて行ってもよい。また、配列のマルチプルアライメントは、デフォルトパラメータ(GAP PENALTY=10, GAP LENGTH PENALTY=10)を用いてアライメントのクラスタル法(Higgins and Sharp CABIOS, 5, 151-153(1989)で行うこともできる。また、関連するプログラムの例としては、GCGプログラムセット(GCG suite of programs(Wisconsin Package Version 9.0, Genetics Computer Group (GCG), Madison, Wisconsin)や、BLASTP、BLASTN、およびBLASTX(Altschul, ら, J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)、DNASTAR(DNASTAR, Inc., Madison, Wisconsin)、およびSmith-Watermanアルゴリズムを含むFASTAプログラム(Pearson, Comput. Methods Genome Res., [Proc. Int. Symp.] (1994),会合日 1992, 111-20. 編集者: Suhai, Sandor. 発行者: Plenum, New York, N.Y.)などが挙げられる。本開示の内容において、配列分析ソフトウェアが分析に使用された場合、分析の結果は、参照されたプログラムの「デフォルト値」に基づいたものであることは、理解されよう。本明細書において、「デフォルト値」とは、最初に初期化された時にソフトウェアがロードする任意の元の値やパラメータを意味するものである。
本発明を説明する文章(特に以下に示す請求項の文章)において使用されている「a」、「an」、「the」、および同様の参照語は、本書において別途記載がない限り、または、文脈と明らかに矛盾する場合を除き、単数の場合も複数の場合も同様に含めるものと解釈されるべきものである。本明細書において記載される値の範囲の記載は、その範囲内にある各値について個別に参照する簡便な方法として用いられているに過ぎない。別途記載がない限り、個々の値はそれぞれ個別に本願明細書に記載されているものとして本願明細書に含まれている。本明細書において記載されている全ての方法は、本明細書において別途記載がない限り、または、文脈と明らかに矛盾する場合を除き、任意の好適な順番で実施可能である。本明細書において記載されている全てのあらゆる例示や例示的表現(例えば、「など」)は、本発明をより理解しやすく例解するために使用されているに過ぎず、本特許請求の範囲において別途特許請求されている本発明の範囲を限定するものではない。本願明細書に記載の文言は、本特許請求の範囲には記載されていないが本発明の実施に対して必須の何らかの要素を示すものとして解釈されるべきものではない。
本明細書の開示における本発明のお互いに代替可能な要素や実施形態の組み合わせは、限定として解釈されるものではない。組み合わせ中の各要素は、個別に参照や特許請求されてもよく、当該組み合わせの中の他の要素や本明細書に記載の他の要素と任意に組み合わせて参照や特許請求されてもよい。ある組み合わせにおける1つ以上の要素を、説明を容易にするため、および/または特許性のために別の組み合わせにおいて包含または省略してもよいことは理解されよう。何らかの包含や省略を伴って実施された場合でも、本願明細書はそのように改変された組み合わせを含むものとして見なされるものであり、よって、添付の特許請求の範囲において使用される全てのマーカッシュの群に対する記載の要件を満足する。
本発明のいくつかの実施形態は、本発明者らが知る限り本発明の実施におけるベストモードであるものを含んで、本明細書に記載されている。当然のことながら、これら記載されている実施形態に対する変更は、当業者にとっては、上記記載を読めば明らかになるであろう。本発明者は、当業者がそのような変更を適宜行うであろうことも予想しており、また、本発明者らは本発明が、本明細書において具体的に記載されているものとは違う形で実施されることも意図している。すなわち、本発明は、適用法により許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載されている事項に対するあらゆる改変や均等物をも包含するものである。また、上記した要素の組み合わせは、その可能な全てのバリエーションは、本明細書に別途記載がない限り、または、文脈と明らかに矛盾する場合を除き、本発明の範囲に含まれるものである。
さらに、本願明細書において、多数の出版物、特許および/または特許出願(総じて「参照文献」と称す)を参照している。各参照文献は、特に引用したその教示について、参照により本明細書にそれぞれ含まれている。
最後に、本明細書に開示する本発明の実施形態は、本発明の原理について例解するものであると理解するべきものである。その他の実施可能な変形例も本発明の範囲に含まれるものである。よって、非限定的な例示として、本発明の代替の構成を本明細書の教示に従って用いることもできる。すなわち、本発明は、本明細書において示し、説明をした通りのものに限定されるものではない。
本明細書に示した具体的な構成は、例示のためのものであり、本発明の好ましい実施形態を例解するためだけのもので、本発明の様々な実施形態の原理や概念的な態様を説明する上でもっとも有用で、理解しやすいものであると思われたものを提供するために提示されているにすぎない。この点について、図面および/または例を参照して上記説明を読めば、本発明のいくつかの形態がどのように実施されるかについて当業者には明らかであるので、本発明の構成の詳細については、本発明を基本的に理解する上で必要とされる以上に詳細には説明していない。
本開示において使用されている定義や説明は、将来における解釈を規定することを意味し、その意図でなされたものであるが、特定の例において明確かつ一義的に変更されている場合、または、その意味の適用が解釈を無意味または実質的に無意味にしてしまう場合はこの限りではない。用語を解釈するとそれが無意味または実質的に無意味になってしまう場合は、ウェブスター辞典第3版、もしくは、生化学および分子生物学のオックスフォード辞典(Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Ed. Anthony Smith, Oxford University Press, Oxford, 2004)などの当業者に知られている辞典に記載の定義を採用するものとする。

Claims (85)

  1. 配列番号38に示す配列からなる5’非翻訳領域(UTR)と、配列番号13、14、または15に示す配列からなる3’UTRとに作動可能に連結したコード配列を有する、組換え発現構築物(EEC)。
  2. コード配列に作動可能に連結した5’非翻訳領域(UTR)を有する組換え発現構築物(EEC)であって、該5’UTRが最小プロモーターとコザック配列との間にCAUACUCAとして示される配列を有する、EEC。
  3. 前記最小プロモーターがT7プロモーターである、請求項2に記載のEEC。
  4. 前記T7プロモーターがGGGAGAとして示される配列を有する、請求項3に記載のEEC。
  5. 前記コザック配列が、GCCRCCAUGとして示される配列を有し、式中RはAまたはGである、請求項2に記載のEEC。
  6. 前記5’UTRが、
    (i) 開始コドンに作動可能に連結した配列番号2に記載の配列、または
    (ii) 開始コドンに作動可能に連結した配列番号3に記載の配列を有する、請求項2に記載のEEC。
  7. 前記開始コドンに作動可能に連結した配列番号2に記載の配列が、配列番号38に記載の配列を有する、請求項6に記載のEEC。
  8. 前記開始コドンに作動可能に連結した配列番号3に記載の配列が、配列番号39に記載の配列を有する、請求項6に記載のEEC。
  9. 前記5’UTRが、ヌクレオチドの数が30個未満である、請求項2に記載のEEC。
  10. 3’UTRをさらに含む、請求項2に記載のEEC。
  11. 前記3’UTRが、終止コドンに作動可能に連結しているスペーサーおよびステムループ構造を含む、請求項10に記載のEEC。
  12. 前記終止コドンが、配列UAA、UGA、またはUAGを有する、請求項11に記載のEEC。
  13. 前記スペーサーが、配列[N1-3]AUAまたは[N1-3]AAAを有する、請求項11に記載のEEC。
  14. 前記スペーサーが、配列UGCAUAまたはUGCAAAを有する、請求項11に記載のEEC。
  15. 前記ステムループ構造が、CCUCおよびGAGGとして示されるハイブリダイゼーション配列を有する、請求項11に記載のEEC。
  16. 前記ステムループ構造が、AAACCUCおよびGAGGとして示される、または、AAAGAGGおよびCCUCとして示されるハイブリダイゼーション配列を有する、請求項11に記載のEEC。
  17. 前記ステムループ構造が、少なくとも7個のヌクレオチドを有するループセグメントを有する、請求項11に記載のEEC。
  18. 前記ステムループ構造が、ヌクレオチドを7個から15個有するループセグメントを有する、請求項11に記載のEEC。
  19. 前記ステムループ構造が、UAACGGUCUU(配列番号34)として示される配列を有するループセグメントを有する、請求項11に記載のEEC。
  20. 前記3’UTRが、ヌクレオチドの数が30個未満である、請求項10に記載のEEC。
  21. 前記3’UTRが、さらにポリアデニン(ポリA)テールを含む、請求項10に記載のEEC。
  22. 前記ポリAテールが、60個以下の残基を有する、請求項21に記載のEEC。
  23. 前記ポリAテールが、40個の残基を有する、請求項21に記載のEEC。
  24. 前記3’UTRが、配列番号4、5、6、7、8、または9に記載の配列を有する、請求項10に記載のEEC。
  25. 前記3’UTRが、配列番号10、11、または12に記載の配列を有する、請求項10に記載のEEC。
  26. 前記3’UTRが、配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、または21に記載の配列を有する、請求項10に記載のEEC。
  27. インビトロ合成メッセンジャーRNA(mRNA)を含む、請求項2に記載のEEC。
  28. 前記コード配列が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒトインターロイキン2(IL-2)、またはヒトPOU5F1(つまりOCT3/4)をコードする、請求項2に記載のEEC。
  29. 配列番号56、58、または60に記載の配列を有する、請求項2に記載のEEC。
  30. 前記コード配列が、治療用タンパク質をコードする、請求項2に記載のEEC。
  31. 前記治療用タンパク質が、抗体またはその結合断片を含む、請求項30に記載のEEC。
  32. 前記抗体またはその結合断片が、抗SARS-Cov2抗体またはその結合断片、抗SARS抗体またはその結合断片、抗RSV抗体またはその結合断片、抗HIV抗体またはその結合断片、抗デングウイルス抗体またはその結合断片、抗百日咳菌抗体またはその結合断片、抗C型肝炎抗体またはその結合断片、抗インフルエンザウイルス抗体またはその結合断片、抗パラインフルエンザウイルス抗体またはその結合断片、抗メタニューモウイルス(MPV)抗体またはその結合断片、抗サイトメガロウイルス抗体またはその結合断片、抗エプスタイン・バールウイルス抗体、抗単純ヘルペスウイルス抗体またはその結合断片、抗クロストリジウム・ディフィシル菌毒素抗体またはその結合断片、または腫瘍壊死因子(TNF)抗体またはその結合断片を含む、請求項31に記載のEEC。
  33. 前記コード配列が、ワクチン抗原をコードする、請求項2に記載のEEC。
  34. 前記ワクチン抗原が、SARS-CoV-02ワクチン抗原、CMVワクチン抗原、EBVワクチン抗原、肝炎ワクチン抗原、単純ヘルペスウイルスワクチン抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ワクチン抗原、ヒトパピローマウイルス(HPV)ウイルス抗原、インフルエンザワクチン抗原、日本脳炎ワクチン抗原、マラリアワクチン抗原、麻疹ワクチン抗原、狂犬病ワクチン抗原、RSワクチン抗原、ロタウイルスワクチン抗原、水痘帯状疱疹ワクチン抗原、またはジカ熱ワクチン抗原を含む、請求項33に記載のEEC。
  35. 前記コード配列がサイトカインをコードする、請求項2に記載のEEC。
  36. 前記コード配列が細胞透過性タンパク質をコードする、請求項2に記載のEEC。
  37. 前記細胞透過性タンパク質が、ペネトラチン、TATの最小ドメイン、VP22、ZEBRA、メリチン、マストパラン、マウロカルシン、クロタミン、ブホリン、ポリアルギニン、またはトランスポータンを含む、請求項36に記載のEEC。
  38. 修飾ヌクレオチドを含まない、請求項2に記載のEEC。
  39. マイクロRNA結合部位を含まない、請求項2に記載のEEC。
  40. 前記コード配列が免疫回避因子をコードする、請求項2に記載のEEC。
  41. 前記免疫回避因子がB18R、E3、K3、NS1、またはORF8を含む、請求項41に記載のEEC。
  42. 免疫回避因子を含まない、請求項2に記載のEEC。
  43. 対象への投与のために製剤化されている、請求項2に記載のEEC。
  44. CAUACUCAとして示される配列からなるエンハンサー配列。
  45. CAUACUCAとして示される配列を、1、2、3、4、または5コピー有する、組換え発現(EEC)構築物。
  46. 前記エンハンサー配列がプロモーターに作動可能に連結されている、請求項44に記載のEEC。
  47. 前記プロモーターが最小プロモーターである、請求項46に記載のEEC。
  48. 哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム内にコード配列を含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物であって、前記インビトロ合成RNAが、CAUACUCAを含む5’非翻訳領域と、配列番号4、5、6、または7のいずれかを含む3’非翻訳領域のひとつとをさらに含む構成である、組換え発現構築物。
  49. 哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム内にコード配列を含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物であって、前記インビトロ合成RNAが、配列番号2または配列番号3を含む5’非翻訳領域と、配列番号4、5、6、または7を含む3’非翻訳領域とのいずれかをさらに含む構成である、組換え発現構築物。
  50. 哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物であって、前記インビトロ合成RNAが、T7ポリメラーゼプロモーターと、CAUACUCAとして示される配列と、コザック配列とを含む5’非翻訳領域をさらに含む構成である、組換え発現構築物。
  51. 前記T7プロモーターが、T7クラスIIIプロモーターから選択されたものである、請求項2に記載の組換え発現構築物。
  52. 哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物であって、前記インビトロ合成RNAが、配列番号4、5、6、または7と、終止コドンとを含む3’非翻訳領域を含む構成である、組換え発現構築物。
  53. 前記終止コドンが、UAA、UAG、またはUGAである、請求項52に記載の組換え発現構築物。
  54. 哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物であって、前記インビトロ合成RNAが、a)CCUCおよびGAGG、または、b)GAGGおよびCCUCのいずれかを含む3’非翻訳領域を含み、前記3’非翻訳領域の配列の組における各配列の間は7個以上のヌクレオチドが介在している構成である組換え発現構築物。
  55. 哺乳類細胞において翻訳されるタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むインビトロ合成RNAを含む組換え発現構築物(EEC)であって、前記インビトロ合成RNAが、a)AAACCUCおよびGAGG、または、b)AAAGAGGおよびCCUCのいずれかを含む3’非翻訳領域を含み、前記3’非翻訳領域の配列の組における各配列の間は7個以上のヌクレオチドが介在している構成であるEEC。
  56. 最小プロモーターとコザック配列との間に位置するCAUACUCAとして示される配列を含む、5’非翻訳領域(UTR)。
  57. 前記最小プロモーターがT7プロモーターである、請求項56に記載の5’UTR。
  58. 前記T7プロモーターが、GGGAGAとして示される配列を有する、請求項57に記載の記載の5’UTR。
  59. 前記コザック配列が、GCCRCCAUGとして示される配列(式中、Rはアデノシンまたはグアニン)を有する、請求項56に記載の5’UTR。
  60. 開始コドンに作動可能に連結した配列番号2に記載の配列を含む、請求項56に記載の5’UTR。
  61. 開始コドンに作動可能に連結した配列番号3に記載の配列を含む、請求項56に記載の5’UTR。
  62. 前記開始コドンに作動可能に連結した配列番号2に記載の配列が、配列番号38に記載の配列を有する、請求項60に記載の5’UTR。
  63. 前記開始コドンに作動可能に連結した配列番号3に記載の配列が、配列番号39に記載の配列を有する、請求項61に記載の5’UTR。
  64. 前記5’UTRが、ヌクレオチドの数が30個未満である、請求項56に記載の5’UTR。
  65. 終止コドンに作動可能に連結しているスペーサーおよびステムループ構造を含む3’UTRであって、前記終止コドンが、配列UAA、UGA、またはUAGを有し、前記スペーサーは、配列[N1-3]AUAまたは[N1-3]AAAを有する構成である3’UTR。
  66. 前記スペーサーが、配列UGCAUAまたはUGCAAAを有する、請求項65に記載の3’UTR。
  67. 前記ステムループ構造が、CCUCおよびGAGGとして示されるハイブリダイゼーション配列を含む、請求項65に記載の3’UTR。
  68. 前記ステムループ構造が、AAACCUCおよびGAGGとして示される、またはAAAGAGGおよびCCUCとして示されるハイブリダイゼーション配列を含む、請求項65に記載の3’UTR。
  69. 前記ステムループ構造が、少なくとも7個のヌクレオチドを有するループセグメントを有する、請求項65に記載の3’UTR。
  70. 前記ステムループ構造が、7個から15個のヌクレオチドを有するループセグメントを有する、請求項65に記載の3’UTR。
  71. 前記ステムループ構造が、UAACGGUCUU(配列番号34)として示される配列を有するループセグメントを有する、請求項65に記載の3’UTR。
  72. ヌクレオチドの数が30個未満である、請求項65に記載の3’UTR。
  73. さらにポリアデニン(ポリA)テールを含む、請求項65に記載の3’UTR。
  74. 前記ポリAテールが、60個以下の残基を有する、請求項73に記載の3’UTR。
  75. 前記ポリAテールが、40個の残基を有する、請求項73に記載の3’UTR。
  76. 配列番号4、5、6、7、8、または9に記載の配列を有する、請求項65に記載の3’UTR。
  77. 配列番号10、11、または12に記載の配列を有する、請求項65に記載の3’UTR。
  78. 配列番号13、14、15、16、17、18、19、20、または21に記載の配列を有する、請求項65に記載の3’UTR。
  79. コード配列に作動可能に連結している、請求項65に記載の3’UTR。
  80. 前記コード配列が、治療用タンパク質、ワクチン抗原、サイトカイン、または蛍光タンパク質をコードする、請求項79に記載の3’UTR。
  81. 前記コード配列が、免疫回避因子をコードする、請求項79に記載の3’UTR。
  82. 前記免疫回避因子が、B18R、E3、K3、NS1、またはORF8を含む、請求項81に記載の3’UTR。
  83. 前記コード配列が、免疫回避因子を含まない、請求項79に記載の3’UTR。
  84. 前記コード配列が、細胞透過性タンパク質をコードする、請求項79に記載の3’UTR。
  85. 前記細胞透過性タンパク質が、ペネトラチン、TATの最小ドメイン、VP22、ZEBRA、メリチン、マストパラン、マウロカルシン、クロタミン、ブホリン、ポリアルギニン、またはトランスポータンを含む、請求項84に記載の3’UTR。
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