JP2024507328A - アルツハイマー病のステージおよび進行に伴うcsfタウ種を検出する方法、およびその使用 - Google Patents

アルツハイマー病のステージおよび進行に伴うcsfタウ種を検出する方法、およびその使用 Download PDF

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Abstract

本開示は、アルツハイマー病による認知症に至るまでの期間を決定すること、認知症発症からの時間を決定すること、アルツハイマー病をステージ分類すること、処置決定を導くこと、および、ある特定の治療介入の臨床効果を評価することを含む、様々なCSFタウ種を定量および分析するための方法、ならびにタウオパチーの病理学的特徴および/または臨床症状を測定するためのその使用を提供する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、それらの出願のそれぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2021年1月21日に出願された米国仮出願第63/140,230号、2021年2月18日に出願された米国仮出願第63/151,051号、2021年4月2日に出願された米国仮出願第63/170,185号、2021年4月28日に出願された米国仮出願第63/180,915号、2021年5月12日に出願された米国仮出願第63/187,697号、および2021年6月21日に出願された米国仮出願第63/213,006号の優先権を主張するものである。
政府支援
本発明は、National Institutes of Healthより授与されたAG046363およびAG032438の下で政府の資金提供を受けて行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
配列表の参照
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表を含有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年1月20日に生成されたASCIIコピーは、「715616_ST25.txt」と名付けられ、サイズは8,936バイトである。
本開示は、様々なCSFタウ種を定量および分析するための方法、ならびに原発性タウオパチー(例えば、MAPT、PSP、CBD)および二次性タウオパチー(例えば、AβアミロイドーシスによるAD)を含むタウオパチーの病理学的特徴および/または臨床症状を測定するためのその使用を包含する。
微小管関連タンパク質タウ(MAPTまたはタウ)は、ニューロンの形態学および生理学に必須の役割を果たす。タウは、6つの異なる全長タンパク質のアイソフォームを有し、アセチル化、グリコシル化およびリン酸化を含む多数の潜在的翻訳後修飾を受ける。
脳内の不溶性凝集体としてのタウタンパク質の蓄積は、アルツハイマー病およびタウオパチーと呼ばれる他の神経変性疾患の特質の1つである。大脳皮質における細胞内タングルは、アルツハイマー病(AD)の決定的な病理学的特徴であり、細胞外アミロイドβ(Aβ)プラークの出現から長期間たった後に臨床症状が発症することと相関しており、細胞外アミロイドβ(Aβ)プラークは、症状発症の最長20年前から発現し始める。タウ病変は脳領域全体に伝播し、特定の病理学的タウ種がプリオン様手段で細胞から細胞へ伝播することによって広がるようであるが、これらの種(すなわち、単量体、オリゴマー、およびフィブリル種)の性質および広がりのプロセスは不明である。
ADにおいて、可溶性p-タウおよび非リン酸化タウが、脳脊髄液中で2倍増加する。これらの変化は、タウおよびNFTをCSFに受動的に放出するニューロン死(神経変性)の影響を反映していると提唱されている。しかし、重大なNFT病変および神経変性を伴う他のタウオパチー(例えば、進行性核上性麻痺、前頭側頭葉変性タウ)では、CSFの可溶性p-タウおよび総タウのレベルは増加しない。これらの観察は、AβがAD特有のタウオパチーにつながるプロセスを引き起こす場合があることを示唆しており、この考えは細胞モデルおよび動物モデルによって裏付けられている。この概念は、ヒトにおけるアミロイドプラークの存在下での可溶性タウの活発な産生の増加によってさらに裏付けられている。
いくつかの質量分析(MS)研究では、AD脳においてタウの微小管結合領域(MTBR)が凝集体に富んでいることが示唆されている。さらに、一連の極低温電子顕微鏡(Cryo-EM)研究により、タウ凝集体のコア構造がMTBRドメインのサブセグメントからなり、特定の立体配座がタウオパチーに依存することが実証された。しかし、これらの研究では死後の脳組織が使用されており、CSFなどの生物学的試料中の対応する細胞外MTBR含有タウ種の病態生理学についてはほとんど知られていない。
タウは、AD病変の特質を構成し、凝集形態または可溶性形態で測定され得るが、この重要な神経細胞タンパク質の翻訳後修飾およびアイソフォームが、ヒトにおけるNFTおよび神経変性の発症にどのようにつながるかについての我々の理解には、大きなギャップが残っている。例えば、ADの前臨床ステージおよび臨床ステージにおいてタウにどのような病態生理学的変化が起こるかは不明である。そのため、タウを使用して、ADに関連する症状の発症前に対象をステージ分類して、処置決定を導くことができる場合、それがどの程度であるかは不明である。
一態様では、本開示は、(ai)対象から得られた血液試料またはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜MTBR-タウ212、残基T217におけるリン酸化占有率 MTBR-タウ243、MTBR-タウ3R、もしくはそれらの組合せを測定すること、または(aii)対象から得られた血液試料もしくはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、残基T217におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびMTBR-タウ212を測定すること、ならびに(b)(ai)もしくは(aii)の測定値を使用して、認知症発症までの時間を計算することであって、認知症発症までの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価までの年数である、計算することによって対象における認知症発症までの時間を測定する方法を包含する。
別の態様では、本開示は、アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を伴わない対象において認知症発症までの時間を測定する方法を包含し、この方法は、一般に、(a)対象からの血液試料またはCSF試料を処理してタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得し、次いで、枯渇試料を処理してタウ種の第2の集団を取得することであって、タウ種の第1の集団にはN末端タウおよび/またはmidドメインタウが濃縮されており、濃縮されたタウ種の第2の集団にはMTBR-タウが濃縮されている、取得すること;(bi)タウ種の第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、ならびに適宜、タウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること、または
(bii)タウ種の第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第1の集団における残基T217におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、ならびにタウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること;ならびに
(c)(bi)もしくは(bii)の測定値を使用して認知症発症までの時間を計算することであって、認知症発症までの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価までの年数である、計算すること
を含む。
一部の実施形態では、対象からの血液試料またはCSF試料を処理して、濃縮されたタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得することは、血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または血液試料もしくはCSF試料を、タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合する第1のエピトープ結合剤およびタウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合する第2のエピトープ結合剤と接触させることであって、第1および第2のエピトープ結合剤を順次にまたは同時に使用する、接触させることを含み;タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ8.5、もしくはHJ8.5と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく、タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、タウ1、またはタウ1と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよい。
一部の実施形態では、枯渇試料を処理して、濃縮されたタウ種の第2の集団を取得することは、MTBR-タウ種を濃縮するための化学抽出工程を実行することであって、化学抽出工程は、酸を混合して枯渇試料のタンパク質を沈殿させることであって、酸は過塩素酸であってもよく、沈殿したタンパク質の除去後の上清中にMTBR-タウ種が存在している、沈殿させることを含んでもよい、実行すること;あるいは、枯渇試料を、タウのMTBR内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させることであって、エピトープ結合剤は、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載の77G7、RD3、RD4、UCB1017、もしくはPT76、またはRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載の7G6、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6の抗原結合フラグメント、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤であってもよい、接触させることを含む。
一部の実施形態では、対象からの血液試料またはCSF試料を処理して、濃縮されたタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得することは、血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または血液試料もしくはCSF試料を、タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合する第1のエピトープ結合剤およびタウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合する第2のエピトープ結合剤と接触させることであって、第1および第2のエピトープ結合剤を順次にもしくは同時に使用する、接触させることを含み、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ8.5、もしくはHJ8.5と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく、タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、タウ1、もしくはタウ1と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく;ならびに枯渇試料を処理して、濃縮されたタウ種の第2の集団を取得することは、MTBR-タウ種を濃縮するための化学抽出工程を、実行することであって、化学抽出工程は、酸を混合して枯渇試料のタンパク質を沈殿させることであって、酸は過塩素酸であってもよく、沈殿したタンパク質の除去後の上清中にMTBR-タウ種が存在している、沈殿させることを含んでもよい、実行すること;あるいは、枯渇試料を、タウのMTBR内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させることであって、エピトープ結合剤は、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載の77G7、RD3、RD4、UCB1017、もしくはPT76、またはRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載の7G6、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6の抗原結合フラグメント、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤であってもよい、接触させることを含む。
上記の態様のそれぞれにおいて、対象は、CDRがゼロであり得る。
一部の実施形態では、認知症発症までの計算された時間の測定値を使用して、対象の疾患の進行をステージ分類すること、対象の脳の病変をステージ分類すること、または対象のための治療剤もしくは診断剤を選択することができる。
さらに別の態様では、本開示は、治療剤または診断薬を対象に投与することによって、アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を伴わない対象を処置するための方法であって、治療剤は、Aβ産生を低減させるか、Aβ凝集を防止するかもしくはそれに拮抗するか、または脳のAβクリアランスを増大させ、治療剤は、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、受動免疫療法(限定されるものではないが、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、もしくは抗ApoE抗体を含む)、または能動免疫療法であってもよく、あるいは治療剤は、タウの凝集を防止するかまたはそれに拮抗し、神経原線維変化クリアランスを増大させ、タウのリン酸化パターンを変化させ、治療剤は、タウタンパク質凝集阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、受動免疫療法(限定されるものではないが、抗タウ抗体を含む)、または能動免疫療法であってもよい、方法を提供する。
別の態様では、本開示は、(ai)対象から得られた血液試料またはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜MTBR-タウ212、残基T217におけるリン酸化占有率 MTBR-タウ243、MTBR-タウ3R、もしくはそれらの組合せを測定すること、または(aii)対象から得られた血液試料もしくはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、タウの残基T217におけるリン酸化占有率を測定すること、およびMTBR-タウ212を測定すること、ならびに(b)(ai)もしくは(aii)の測定値を使用して、認知症発症からの時間を計算することであって、認知症発症からの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価からの年数である、計算することによって、アルツハイマー病の認知症状または行動症状を有する対象において認知症発症からの時間を測定するための方法を提供する。
さらに別の態様では、本開示は、(a)対象からの血液試料またはCSF試料を処理してタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得し、次いで、枯渇試料を処理してタウ種の第2の集団を取得することであって、タウ種の第1の集団にはN末端タウおよび/またはmidドメインタウが濃縮されており、濃縮されたタウ種の第2の集団にはMTBR-タウが濃縮されている、取得すること;(bi)タウ種の第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、ならびに適宜、タウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること、または(bii)タウ種の第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第1の集団における残基T217におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、ならびにタウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること;ならびに(c)(bi)もしくは(bii)の測定値を使用して認知症発症からの時間を計算することであって、認知症発症からの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価からの年数である、計算することによって、アルツハイマー病の認知症状または行動症状を有する対象において認知症発症からの時間を測定するための方法を提供する。
一部の実施形態では、対象からの血液試料またはCSF試料を処理して、濃縮されたタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得することは、血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または血液試料もしくはCSF試料を、タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合する第1のエピトープ結合剤およびタウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合する第2のエピトープ結合剤と接触させることであって、第1および第2のエピトープ結合剤を順次にまたは同時に使用する、接触させることを含み;タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ8.5、もしくはHJ8.5と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく、タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、タウ1、またはタウ1と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよい。
一部の実施形態では、枯渇試料を処理して、濃縮されたタウ種の第2の集団を取得することは、
MTBR-タウ種を濃縮するための化学抽出工程を実行することであって、
化学抽出工程は、酸を混合して枯渇試料のタンパク質を沈殿させることであって、酸は過塩素酸であってもよく、沈殿したタンパク質の除去後の上清中にMTBR-タウ種が存在している、沈殿させることを含んでもよい、実行すること;あるいは、
枯渇試料を、タウのMTBR内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させることであって、
エピトープ結合剤は、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載の77G7、RD3、RD4、UCB1017、もしくはPT76、またはRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載の7G6、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6の抗原結合フラグメント、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤であってもよい、接触させること
を含む。
対象からの血液試料またはCSF試料を処理して、濃縮されたタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得することが、
血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または
血液試料もしくはCSF試料を、タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または
血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合する第1のエピトープ結合剤およびタウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合する第2のエピトープ結合剤と接触させることであって、第1および第2のエピトープ結合剤を順次にもしくは同時に使用する、接触させること
を含み
タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ8.5、もしくはHJ8.5と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく、タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、タウ1、もしくはタウ1と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく;ならびに枯渇試料を処理して、濃縮されたタウ種の第2の集団を取得することは、MTBR-タウ種を濃縮するための化学抽出工程を、実行することであって、化学抽出工程は、酸を混合して枯渇試料のタンパク質を沈殿させることであって、酸は過塩素酸であってもよく、沈殿したタンパク質の除去後の上清中にMTBR-タウ種が存在している、沈殿させることを含んでもよい、実行すること;あるいは、枯渇試料を、タウのMTBR内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させることであって、エピトープ結合剤は、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載の77G7、RD3、RD4、UCB1017、もしくはPT76、またはRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載の7G6、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6の抗原結合フラグメント、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤であってもよい、接触させることを含む、請求項18に記載の方法。
一部の実施形態では、認知症発症までの計算された時間の測定値を使用して、対象の疾患の進行をステージ分類すること、対象の脳の病変をステージ分類すること、または対象のための治療剤もしくは診断剤を選択することができる。
したがって、本開示は、アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を伴わない対象を処置するための方法であって、対象に治療剤または診断剤を投与することを含む方法を提供する。
別の態様では、本開示は、対象における認知の変化を測定するための方法であって、(a)対象から得た血液試料またはCSF試料中のT111、T153、T181、T217およびT231から選択される1つまたは複数の残基におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、および対象から得た血液試料またはCSF試料中のMTBR-タウ275、MTBR-タウ299、およびMTBR-3Rのうちの少なくとも1つを測定すること、および適宜、対象から得た血液試料またはCSF試料中の総タウを測定すること;ならびに(b)(a)の測定値を使用して認知における変化を計算することであって、この認知における変化は、国際ショッピングリスト試験(the International Shopping List Test)による遅延想起スコア、ウェクスラー記憶検査法(Wechsler Memory Scale-Revised)による論理記憶遅延再生スコア、ウェクスラー成人知能検査法( Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised)による数字記号コード化試験(Digit Symbol Coding test)総スコア、およびMMSE総スコア、からなる認知複合スコアによって測定される認知における変化と同等である、計算することを含む方法を提供する。
一部の実施形態では、認知における変化の測定を使用して、治療剤の有効性を評価する。
本開示の他の態様および反復を、以下により十分に説明する。
出願ファイルは、少なくとも1つのカラーで作成された写真を含有する。カラー写真を有するこの特許出願公開のコピーは、要求および必要な料金の支払いに応じて事務局が提供することとなる。
図1は、最長のヒトタウアイソフォーム(2N4R)の概略図である。N末端(N末端)、midドメイン、MTBRおよびC末端(C末端)が、このアイソフォームについて同定され、他のタウアイソフォーム(例えば2N3R、1NR4、1N3R、0N4Rおよび0N3R)については予測可能な形で変動するであろう。
図2Aは、本開示のいくつかの方法を示す概略図である。1つの方法は、青色ボックス内で詳しく説明されている方法(右-タウ化学抽出法)である。別の方法は、赤色ボックス(左- N末端タウおよびmidドメインタウのIP)ならびに青色ボックス(右- タウ化学抽出法)の組合せである。図2Bは、本開示のいくつかの方法を示す概略図である。1つの方法は、青色ボックス内で詳しく説明されている方法(右-タウ化学抽出法)である。別の方法は、赤色ボックス(左- N末端タウおよびmidドメインタウのIP)ならびに青色ボックス(右- タウ化学抽出法)の組合せである。 同上。
図3は、本開示の方法を示す概略図である。
図4は、本開示の方法を示す概略図である。
図5は、タウ病変が、アルツハイマー病において、別個のフェーズを通して発展することを示す例証である。決定的なアルツハイマー病突然変異を有する参加者群において、4種の異なる可溶性タウ種および不溶性タウを測定し、発明者らは、35年間(x-軸)にわたってタウ関連変化が展開し(y-軸)、疾患のステージおよび他の測定可能なバイオマーカーに基づいて異なることを示す。217位(紫色)および181位(青色)において、原繊維性アミロイド病変のリン酸化の発生でスタートし、増加し始める。神経細胞(neuronal)機能不全(代謝変化に基づく)の増加と共に、可溶性タウ(橙色)と一緒に205位(緑色)でのリン酸化が増加し始める。最後に、神経変性(脳萎縮および認知低下に基づく)の発症と共に、タウPETタングル(赤色)が発生し始める一方、217および181のリン酸化が減少し始める。まとめると、これは、疾患の間の、可溶性および凝集タウの動的かつ多岐のパターン、ならびにアミロイド病変との密接な関係を強調する。
図6Aおよび図6Bは、CSFのMTBR-タウ299、MTBR-タウ306、およびMTBR-タウ354が、アルツハイマー病の連続体全体において別個の特徴を呈し、タングル状態を反映していることを示す。図6Aは、E2814結合の領域を示す4Rおよび3Rタウの図である。図6Bは、症状発症までの推定年数と関連したMTBR-タウ299、MTBR-タウ306、およびMTBR-タウ-354の濃度を示す。赤色の点:有症状突然変異保持者(MC);オレンジ色の点:無症状突然変異保持者:青色の点:非保持者(NC);赤色の曲線” MCについてのLOESS曲線;青色の曲線:NCについてのLOESS曲線。
アルツハイマー病の臨床ステージにわたる脳タウ凝集体からのCSFへのMTBR-タウ種の分泌を示す図である。ADの前臨床ステージでは、脳のタウ凝集体は未熟であるため、3つのMTBR-タウ種(MTBR-タウ-243、MTBR-タウ-299、およびMTBR-タウ-354)が等しい濃度でCSF中に分泌される。しかし、疾患進行と共にタウ凝集体が成熟し、MTBR-タウ-354(R4ドメイン)の堅いコアを形成するにつれて、CSF中のMTBR-タウ-354種が安定化する。MTBR-タウ-299(R2~R3ドメイン)種は、後期症状ステージで堅いコア構造に結合するが、MTBR-タウ-243種(R1ドメインの上流)は露出したままであり、これによりプロテアーゼ消化およびCSFへの放出が可能になる。最終的に、CSF中のこれら3つの種の不均衡は、脳タウ凝集体形成の反映として観察される。
図8A、図8B、および図8Cは、アミロイドPET状態を分類する際のpタウ種のROCおよびAUCを示す。図8Aは、突然変異保持者のpT111、pT153、pS208、およびpT231を示す。図8Bは、突然変異保持者および非保持者両方のpT111、pT153、pS208、およびpT231を示す。図8Cは、群の曲線下面積および95%信頼区間を示す。
図9A、図9B、および図9Cは、アミロイドPET状態を分類する際のMTBR-タウ種のROCおよびAUCを示す。図9Aは、突然変異保持者のMTBR-タウ212、MTBR-タウ243、MTBR-タウ260、およびMTBR-タウ275を示す。図9Bは、突然変異保持者および非保持者両方のMTBR-タウ212、MTBR-タウ243、MTBR-タウ260、およびMTBR-タウ275を示す。図9Cは、群の曲線下面積および95%信頼区間を示す。
図10A、図10B、および図10Cは、アミロイドPET状態を分類する際のMTBR-タウ種のROCおよびAUCを示す。図10Aは、突然変異保持者のMTBR-タウ282、MTBR-タウ299、MTBR-タウ306、およびMTBR-タウ354を示す。図10Bは、突然変異保持者および非保持者両方のMTBR-タウ282、MTBR-タウ299、MTBR-タウ306、およびMTBR-タウ354を示す。図10Cは、群の曲線下面積および95%信頼区間を示す。
図11A、図11B、および図11Cは、アミロイドPET状態を分類する際のMTBR-タウ種のROCおよびAUCを示す。図11Aは、突然変異保持者のMTBR-タウ386、MTBR-タウ396、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比、およびMTBR-タウ299/MTBR-タウ282比を示す。図11Bは、突然変異保持者および非保持者両方のMTBR-タウ386、MTBR-タウ396、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比、およびMTBR-タウ299/MTBR-タウ282比を示す。図11Cは、群の曲線下面積および95%信頼区間を示す。
図12A、図12B、図12C、図12D、図12E、および図12Fは、突然変異保持者におけるpT111、pT153、およびpS208のボックスプロットを示す。図12Aは、リン酸化比pT111/T111の元の値がPiB 四分位ごとに増加することを示す(Q1についてはn=47、Q2については46、Q3については46、およびQ4については47)。図12Bは、リン酸化比pT153/T153の元の値がPiB 四分位ごとに増加することを示す(Q1についてはn=47、Q2については46、Q3については46、およびQ4については47)。図12Cは、リン酸化比pS208/S208の元の値がPiB 四分位ごとに増加することを示す(Q1についてはn=47、Q2については46、Q3については46、およびQ4については47)。図12Dは、リン酸化比pT111/T111の標準値がPiB 四分位ごとに増加することを示す(Q1についてはn=47、Q2については46、Q3については46、およびQ4については47)。図12Eは、リン酸化比pT153/T153の標準値がPiB 四分位ごとに増加することを示す(Q1についてはn=47、Q2については46、Q3については46、およびQ4については47)。図12Fは、リン酸化比pS208/S208の標準値がPiB 四分位ごとに増加することを示す(Q1についてはn=47、Q2については46、Q3については46、およびQ4については47)。P値はWilcoxon順位和検定からのものである。 同上。
図13A、図13B、図13C、図13D、図13E、図13F、図13G、図13H、図13I、図13J、図13K、図13L、図13M、図13N、図13O、図13P、図13Q、図13Rおよび図13Sは、症状発症までの推定年数と関連した様々なタウ種の濃度を示す。図13Aは、pT111/T111を示す;図13Bは、pT153/T153を示す;図13Cは、pS208/S208を示す;図13Dは、pT231/T231を示す;図13EはpT153を示す;図13FはpS208を示す;図13GはpT231を示す;図13Hは、pT231/T231を示す;図13Iは、MTBR-タウ212を示す;図13Jは、MTBR-タウ243を示す;図13Kは、MTBR-タウ260を示す;図13Lは、MTBR-タウ275を示す;図13Mは、MTBR-タウ282を示す;図13Nは、MTBR-タウ299を示す;図13Oは、MTBR-タウ3Rを示す;図13Pは、MTBR-タウ354を示す;図13Qは、MTBR-タウ386を示す;図13Rは、MTBR-タウ396を示す;図13Sは、MTBR-タウ299/MTBR-タウ282を示す;図13Tは、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を示す。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。
図14A、図14B、図14C、図14D、図14E、図14F、図14G、図14H、図14I、図14J、図14K、図14L 図14M、図14N、図14O、および図14Pは、DIAN EYOによるpタウおよびMTBRの年次変化を示す(年次変化は線形混合効果モデルから推定した)。断面積データのEYOカットオフ:pT111/T111では-19、pT153/T153では-22、pS208/S208では-22;変化率のEYOカットオフ:pT111/T111およびpT153/T153では-25、pS208/S208ではカットオフなし。すべての長期的な分析は、対数変換されたpT111/T111およびpS208/S208、および平方根変換されたpT153/T153に基づいていた。図14Aは、pT111/T111を示す;図14Bは、pT153/T153を示す;図14Cは、pS208/S208を示す;図14Dは、pT231/T231を示す;図14Eは、MTBR-タウ212を示す;図14Fは、MTBR-タウ243を示す;図14Gは、MTBR-タウ260を示す;図14Hは、MTBR-タウ275を示す;図14Iは、MTBR-タウ282を示す;図14Jは、MTBR-タウ299を示す;図14Kは、MTBR-タウ3Rを示す;図14Lは、MTBR-タウ299/MTBR-タウ282を示す;図14Mは、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354を示す;図14Nは、MTBR-タウ354を示す;図14Oは、MTBR-タウ386を示す;図13Pは、MTBR-タウ396を示す。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。
図15は、認知複合のベースラインバイオマーカーと長期的変化率との間の関連性を示す。 図16A、図16B、図16C、図16D、図16E、図16F、図16G、図16H、図16I、図16J、図16K、図16L、図16M、図16N、図16O、および図16Pは、様々なタウ種と全体的な認知との間の年次変化における関連性を示す。図16Aは、pT111/T111を示す;図16Bは、pT153/T153を示す;図16Cは、pS208/S208を示す;図16Dは、pT231/T231を示す;図16Eは、MTBR-タウ212を示す;図16Fは、MTBR-タウ243を示す;図16Gは、MTBR-タウ260を示す;図16Hは、MTBR-タウ275を示す;図16Iは、MTBR-タウ282を示す;図16Jは、MTBR-タウ299を示す;図16Kは、MTBR-タウ3Rを示す;図16Lは、MTBR-タウ299/MTBR-タウ282を示す;図16Mは、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354を示す;図16Nは、MTBR-タウ354を示す;図16Oは、MTBR-タウ386を示す;図16Pは、MTBR-タウ396を示す。pT153/T153およびMTBR3Rは、他のタウ種よりも年次変化において高い相関関係を有する。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。
図7Aおよび図17Bは、ベースラインおよび年次変化における突然変異保持者(無症状および有症状)のタウリン酸化の様々な部位におけるリン酸化占有率の相関を示す。図17Aは、pT111/T111、pT153/T153およびpS208/208とpT217/217との相関を示す。図17Bは、pT111/T111、pT153/T153およびpS208/208とpT205/205との相関を示す。 同上。
図18A、図18B、図18C、図18D、図18E、図18F、図18G、図18H、図18I、図18J、および図18Kは、突然変異保持者(有症状および無症状)および非保持者のベースラインおよび年間変化率における相関のヒートマップを示す。図18Aは、MCのベースラインにおける相関のヒートマップを示す。すべてのMTBR種および総タウが一緒にクラスター化されている(いくつかの小さなクラスター)。MTBRデータセットからの比率は、MTBRのタウ種ではなく、他のタウ種でクラスター化される。pS202/S202は他のタウ種、すなわちTPPSS(総タウの領域を指定)とは関連しない。図18Bは、すべてのMCを使用したベースラインにおける相関のヒートマップを示す。図18Cは、無症状MCを使用したベースラインにおける相関のヒートマップを示す。図18Dは、有症状MCを使用したベースラインにおける相関のヒートマップを示す。図18Eは、非保持者を使用したベースラインにおける相関のヒートマップを示す。図18Fは、突然変異保有者に関する2つのマーカーの年間変化率間の相関を色で表すヒートマップを示す。図18Gは、無症状突然変異保有者に関する2つのマーカーの年間変化率間の相関を色で表すヒートマップを示す。図18Hは、有症状突然変異保有者に関する2つのマーカーの年間変化率間の相関を色で表すヒートマップを示す。図18Iは、突然変異保有者に関する2つのマーカーの年間変化率間の相関の絶対値を色で表すヒートマップを示す。図18Jは、無症状突然変異保有者に関する2つのマーカーの年間変化率間の相関の絶対値を色で表すヒートマップを示す。図18Kは、有症状突然変異保有者に関する2つのマーカーの年間変化率間の相関の絶対値を色で表すヒートマップを示す。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。
図19A、図19B、および図19Cは、すべての突然変異保持者、無症状突然変異保持者、および有症状突然変異保持者におけるDIAN EYOの予測を示す。半部分R2乗は、VAR1がモデルに含まれている場合、モデルのR2乗がxによって加えられることを示す。半偏相関の2乗は、R2乗の増分値の尺度となるため、変数重要度を示す。従属変数の合計変動も独立変数間の相関関係に起因する部分を構成するため、半部分R2乗は合計でR2乗にはならない。図19Aは、すべての突然変異保持者におけるpT205/T205、MTBR-タウ212、およびMTBR-タウ299/MTBR-タウ354についてのDIAN EYOの予測を示す。図19Bは、無症状突然変異保持者におけるpT205/T205、pT217/T217およびMTBR-タウ212のDIAN EYOの予測を示す。図19Cは、有症状突然変異保持者におけるpT205/T205のDIAN EYOの予測を示す。
図20Aおよび図20Bは、5EYO間隔ごとのタウ種異常率を示す。NCの各バイオマーカーの95パーセンタイルを、MCの各バイオマーカーを正常および異常として定義するための閾値として使用した。図20Aは、5EYO間隔ごとのタウ種異常率を示す。図20Bは、5EYO間隔ごとのタウ種異常率を示す折れ線グラフである。
図21Aは、年間変化率(平均対標準偏差比-MSR)の効果量の比較を示す。図21Bは、年間変化率(平均対標準偏差比-MSR)の効果量の比較を示す。aMCおよびベースラインEYO≧-25。 同上。
図22Aおよび図22Bは、MTBR-タウ299およびMTBR-タウ354の変化がAD発症時(CDR=1)に影響されることを示す。図22Aは、MTBR-タウ299を示す。図22Bは、MTBR-タウ534を示す。
図23は、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比によってADステージ分類の区別力が高まることを示す。
図24Aおよび図24Bは、AD連続体全体における認知スコアを予測するためのCSFMTBR-299/354比の性能を示す。図24Aは、MTBR-299/354およびCDR-SBを示す。図24Bは、MTBR-299/354およびMMSEを示す。
図25は、MTBR-タウ対認知スコアの要約表を示す。
図26Aは、MTBR-タウ299/354比とpT217%占有率との間の相関を示す。図26Bは、pT217%が、「初期ステージのタウ病変」を要約するE2814関連MTBR-タウ299/354とよく相関していることを示している→pT217%は、E2814臨床試験の代理の有効性マーカーとして使用することができる。
図27Aは、図27Bおよび図27Cで定量され議論されたタウ由来のトリプチペプチド(灰色の棒)の概略図である。図27Bおよび図27Cは、MTBRタウ-243、299および354を含む脳MTBRタウ種が、対照脳抽出物と比較して凝集したアルツハイマー病脳不溶性抽出物に富んでいることを示すグラフであり、MTBRタウが、アルツハイマー病脳において特異的に沈着していることが確認される。グラフは、(図18B)対照およびアルツハイマー病の脳(n=2、発見コホートにおける6~8の脳領域試料/群)からのタウペプチドの濃縮プロファイルを示し、(図18C)対照(アミロイド陰性、n=8)、非常に軽度~中等度アルツハイマー病(AD)(アミロイド陽性、CDR=0.5~2、n=5)、重度AD脳(アミロイド陽性、CDR=3、n=7)(検証コホートでは合計n=20)を示す。内部正規化のために、タウペプチドの相対存在量をmidドメイン(残基181~190)ペプチドと比較して定量した。微小管結合領域(MTBR)ドメインの上流領域(残基243~254、MTBRタウ-243)およびリピート領域2(R2)~R3およびR4(それぞれ、残基299~317、MTBRタウ-299および354~369、MTBRタウ-354)を含有する種には、対照と比較してアルツハイマー病脳の不溶性画分が高度に濃縮されており、CDRによって測定される疾患進行の臨床ステージによって特に濃縮されていた。MTBRタウ-299およびMTBRタウ-354はフィラメントコアの内側に位置しているが、MTBRタウ-243はアルツハイマー病凝集体のコアの外側に位置している(Fitzpatrick et al., 2017)。注目すべきは、アルツハイマー病の脳では残基195~209が減少していたが、これは高度なリン酸化が原因である可能性がある。データは、中央値、四分位区間、最小値、最大値、および外れ値の個々の点を記述するTukey法を使用した箱ひげ図として表す。統計検定における有意性:****p<0.001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。 同上。
図28Aは、実施例3で定量され、図19Bおよび図19Cでさらに議論されるタウ由来のトリプシンペプチド(灰色の棒)、ならびに抗体HJ8.5およびタウ1の一般結合部位の概略図である。図28Bは、対照ヒトCSFにおけるタウプロファイルを示すグラフである。アミロイド陰性およびCDR=0患者(n=30)の断面コホートからの対照ヒトCSF中のタウペプチドを、N末端~midドメインのタウに焦点を合わせたタウ1/HJ8.5免疫沈降によって定量した。微小管結合領域(MTBR)およびC末端領域を含有する種を定量するために、免疫沈降後のCSF試料を化学的に抽出し、順次に分析した。タウ1/HJ8.5免疫沈降法(青丸)を使用すると、残基222以降、ペプチド回収率が劇的に低下し;したがって、この方法では、N末端~midドメインのタウ(残基6~23~243~254)ペプチドのみを定量した(Sato et al., 2018)。対照的に、免疫沈降後のCSFの化学抽出法(赤色の正方形)では、0.4~7ng/mLの間の濃度でMTBR~C末端領域を含むタウの全領域の定量が可能であった。データは平均値として表す。 同上。
図29A、図29B、および図29Cは、CSF MTBR-タウ-243、299、および354種が、アルツハイマー病連続体全体において別個の特徴を呈し、タングル状態を反映していることを示す。図29AはMTBR-タウ-243濃度、図29BはMTBR-タウ-299濃度、および図29CはMTBR-タウ-354濃度。アミロイド陰性CDR=0(n=30)、アミロイド陽性CDR=0(n=18)、アミロイド陽性CDR=0.5(n=28)、アミロイド陽性CDR≧1(n=12)、およびアミロイド陰性CDR≧0.5(n=12)。MTBR-タウ-243は、すべての臨床ステージを通じてAD進行と共に継続的な増加を示した。MTBR-タウ-299および354濃度は、非常に軽度のADステージ(アミロイド陽性およびCDR=0.5)まで同様に増加したが、その後、CDR≧1で飽和する(MTBR-タウ-299)か、または低下する(MTBR-タウ-354)。****p<0.001、***p<0.001、**p<0.01、*p<0.05。NS=有意ではない。 同上。 同上。
図30A、図30B、図30C、図30C、および図30Dは、CSF MTBR-タウ-243が、p-タウ217を含むすべてのタウ種においてタウPET測定値と最も高度に相関していることを示し、CSF MTBR-タウ-243がタウ病変を再現するための最も有望なバイオマーカーであることを示唆している。タウPET(AV-1451)SUVRと図30A MTBR-タウ-243、図30B MTBR-タウ-299、図30C p-タウ217濃度との間の相関、および図30Dは、CSF中のp-タウ217リン酸化占有率(タウPETコホートからの対照n=15およびアルツハイマー病(AD)n=20)。白丸:対照、黒正方形:AD。MTBR-タウ-243はタウPET SUVRと最も有意な相関を示した(Spearman r=0.7588、p<0.0001)。一方、MTBR-タウ-299、p-タウ217濃度およびp-タウ217リン酸化占有率は中等度の相関を示し(それぞれSpearman r=0.4584、0.5478、および0.5555)、飽和は高タウPET測定試料で観察された。 同上。
図31は、「タウ1/HJ8.1-IP後の」化学抽出によるMTBR-タウ243対MTBR-タウ212を示し、ここで、MTBR-タウ212については、CXはステージに沿った増加をもたらすが、E2814-IPはそうではない。
図32は、「タウ1/HJ8.1-IP後の」化学抽出によるMTBR-タウ243対MTBR-タウ212を示し、ここで、MTBR-タウ212については、CXはステージに沿った増加をもたらすが、E2814-IPはそうではない。
中枢神経系中の神経原線維変化中へのタウタンパク質凝集は、アルツハイマー病(AD)を含むある特定の神経変性障害の病因となる。タウ不安定化の機構はなお完全に理解されていないが、タウタンパク質はタウ凝集体中で高リン酸化されることが判明した。さらに、AD脳ではタウの微小管結合領域(MTBR)の凝集体が豊富であることが示唆されている。しかし、ADの進行全体にわたる、対応する細胞外pタウおよびMTBR含有タウ種の病態生理学についてはほとんど知られていない。血液およびCSF中には複数のタウペプチドが存在するが、これらのポリペプチドの存在量が非常に少ないため、これらの生物学的試料中のタウ種の検出および定量は妨げられてきた。
出願人らは、タウを定量化する特定の方法(例えば、特定のアミノ酸残基におけるリン酸化および/またはMTBRタウ)を使用して、前臨床の無症状ステージから有症状ステージにわたるADの過程を追跡することができることを発見した。タウアイソフォーム、翻訳後修飾、存在量および溶解度の変動が非常に大きいことを考慮すると、アルツハイマー病に関連する症状の発症前に、対照をステージ分類し、処置決定を導くためにタウ種を使用することは困難であった。しかし、出願人は、ADによる認知症の発症からある特定の病態生理学的変化の発症までの年数を特定するのに特に有用なタウ種の特定の組合せを定量する方法を特定した。
本明細書に開示される方法は、生物学的試料を様々なタウ種の定量に好適な試料に変換する処理工程の独特の組合せを利用する。例えば、本開示の一部の方法では、処理工程は、複数のタウタンパク質を濃縮しながらある特定のタンパク質を枯渇させる。本開示の他の方法では、処理工程は、複数のMTBRタウタンパク質を濃縮しながらある特定のタンパク質を枯渇させる。本明細書に開示されるある特定の方法は、midドメイン非依存性MTBRタウ種を定量するのに特に好適である。また、タウオパチーの臨床徴候および症状を測定し、タウオパチーを診断し、タウオパチーを直接処置するための、midドメイン非依存性MTBRタウ種およびある特定のアミノ酸残基におけるタウリン酸化の使用も本明細書に記載される。本発明のこれらおよび他の態様ならびに反復を、以下により十分に説明する。
I.定義
本発明がより容易に理解されるように、ある特定の用語を最初に定義する。別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の実施形態が関係する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において記載されているものと類似するか、それを修正するか、またはそれと等価な多数の方法および材料を、本発明の実施形態の実践において不必要な実験を伴うことなく使用することができ、好ましい材料および方法は本明細書において記載されている。本発明の実施形態を説明し特許請求するにあたって、下記に記載する定義に従って以下の用語を使用する。
「約」という用語は、本明細書において使用される場合、例えば典型的な測定技術および器具を通して発生することのある、限定されるものではないが質量、容量、時間、距離および量を含む任意の定量可能な変数に関する数量の変動を指す。さらに、実際に使用される固体および液体の操作手順を考慮すると、組成物を作製するかまたは方法を実行するため等に使用される成分の製造、供給源または純度の差異を通して起こる可能性のある、一定数の不慮の誤差および変動が存在する。「約」という用語は、最大±5%であり得るが、±4%、3%、2%、1%等でもあり得る、これらの変動も包含する。「約」という用語による修飾の有無を問わず、特許請求の範囲は量についての等価物を含む。
本明細書において使用される場合、抗体は、当該技術分野において理解されるような完全な抗体、すなわち2つの重鎖および2つの軽鎖からなるものを指すか、または抗原結合領域を有し、限定されるものではないが、フラグメント、例えばFab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、Fvおよび一本鎖抗体Fvを含む、任意の抗体様の分子を指す。抗体という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体も指す。様々な抗体ベースのコンストラクトおよびフラグメントを調製および使用するための技術は、当該技術分野において公知である。抗体を調製および特徴付けるための手段も、当該技術分野において公知である(例えばAntibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
本明細書において使用される場合、「アプタマー」という用語は、生化学的活性、分子の認識または結合特性に関して有用な生物学的活性を有するポリヌクレオチド、一般的にはRNAまたはDNAを指す。通常、アプタマーは分子活性を有し、例えば特定のエピトープ(領域)における標的分子へ結合する。アプタマーはポリペプチドと結合する点で特異的であり、インビトロ進化法(in vitro evolution method)により、合成および/または同定できることが一般的に認められている。アプタマーを調製および特徴付ける手段は、インビトロ進化法を含め、当該技術分野において公知である。例えば、その全体を参照により本明細書に組み込まれる、US7,939,313を参照されたい。
「Aβ」という用語は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)と呼ばれるより大きなタンパク質のカルボキシ末端中の領域に由来するペプチドを指す。APPをコードする遺伝子は、第21染色体に位置する。毒性を有し得る異なる多数の形態のAβが存在し、Aβペプチドは典型的に37~43アミノ酸配列長であるが、これらは全体のサイズを変化させる短縮化および修飾を有し得る。これらは、可溶性および不溶性の区画中、モノマー、オリゴマーおよび凝集体形態で、細胞内または細胞外で見出すことができ、他のタンパク質または分子と複合体形成し得る。Aβの有害効果または毒性効果は、上記の形態のいずれかまたはすべて、ならびに具体的に記載されていないその他の点に起因し得る。例えば、2つのそのようなAβアイソフォームにはAβ40およびAβ42が挙げられ、Aβ42アイソフォームは特に原線維形成的または不溶性であり、疾患状態に関連する。「Aβ」という用語は、典型的に、個別のAβ種間の区別なしに、複数のAβ種を指す。特定のAβ種は、ペプチドのサイズにより、例えばAβ42、Aβ40、Aβ38等と同定される。
本明細書において使用される場合、「Aβ42/Aβ40値」という用語は、対象から得られた試料中のAβ42の量の、同じ試料中のAβ40の量と比較した比を意味する。
「Aβアミロイドーシス」は、脳内の臨床的に異常なAβ沈着として定義される。Aβアミロイドーシスを有すると決定される対象は、本明細書において「アミロイド陽性」と称され、一方でAβアミロイドーシスを有しないと決定される対象は、本明細書において「アミロイド陰性」と称される。Aβアミロイドーシスの承認済みの指標が当該技術分野において存在する。本開示の時点では、Aβアミロイドーシスは、典型的に、アミロイド画像化(例えばPiB PET、fluorbetapirもしくは当該技術分野において公知の他の画像化方法)により直接測定されるか、または脳脊髄液(CSF)Aβ42の低減もしくはCSF Aβ42/40比の低減により、間接的に測定される。平均皮質結合能(mean cortical binding potential)スコア>0.18を有する[11C]PIB-PET画像は、Aβアミロイドーシスの指標であり、免疫沈降および質量分析(IP/MS)による約1ng/mlの脳脊髄液(CSF)Aβ42濃度も同様である。あるいは、PIB-PETによって決定されるアミロイド陽性の予測精度を最大化するCSF Aβ42/40のカットオフ比を使用することもできる。これらのような、または当該技術分野において公知のおよび/または実施例で使用される他の値は、Aβアミロイドーシスを臨床的に確認するために、単独でまたは組合せで使用することができる。例えば、各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、Klunk W E et al. Ann Neurol 55(3) 2004, Fagan A M et al. Ann Neurol, 2006, 59(3), Patterson et. al, Annals of Neurology, 2015, 78(3): 439-453、またはJohnson et al., J. Nuc. Med., 2013, 54(7): 1011-1013を参照されたい。Aβアミロイドーシスを有する対象は、症候性であることもあればそうでないこともあり、症候性の対象は、Aβアミロイドーシスに関連する疾患についての臨床基準を満たすこともあれば満たさないこともある。Aβアミロイドーシスに関連する症状の非限定的な例には、認知機能障害、挙動変化、言語機能異常、情動調節不全、発作、認知症および神経系構造または機能の障害を挙げることができる。Aβアミロイドーシスに関連する疾患には、限定されるものではないが、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)、レビー小体型認知症および封入体筋炎が挙げられる。Aβアミロイドーシスを有する対象は、Aβアミロイドーシスに関連する疾患を発症する増大したリスクを有する。
「Aβアミロイドーシスの臨床徴候」は、当該技術分野において公知のAβ沈着の尺度を指す。Aβアミロイドーシスの臨床徴候には、限定されるものではないが、アミロイド画像化(例えばPiB PET、fluorbetapirまたは当該技術分野において公知の他の画像化方法)により、または脳脊髄液(CSF)Aβ42もしくはAβ42/40比の低減により同定される、Aβ沈着を挙げることができる。例えば、各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、Klunk WE et al. Ann Neurol 55(3) 2004、およびFagan AM et al. Ann Neurol 59(3) 2006を参照されたい。各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第14/366,831号、第14/523,148号および第14/747,453号に記載されているように、Aβアミロイドーシスの臨床徴候には、Aβの代謝の測定、特に、単独での、または他のAβ突然変異体(例えばAβ37、Aβ38、Aβ39、Aβ40および/または総Aβ)の代謝の測定と比較した、Aβ42代謝の測定も挙げることができる。さらなる方法は、各々がその全体を参照により本明細書に組み込まれる、Albert et al. Alzheimer's & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 170-179; McKhann et al., Alzheimer's & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 263-269;およびSperling et al. Alzheimer's & Dementia 2007 Vol. 7, pp. 280-292に記載されている。重要なことに、Aβアミロイドーシスの臨床徴候を有する対象は、Aβ沈着に関連する症状を有することもあれば有しないこともある。また、Aβアミロイドーシスの臨床徴候を有する対象には、Aβアミロイドーシスに関連する疾患を発症する増大したリスクがある。
「アミロイド画像化の候補」は、臨床医によりアミロイド画像化が臨床的に保証される個体として特定された対象を指す。非限定的な例として、アミロイド画像化の候補は、1つもしくは複数のAβアミロイドーシスの臨床徴候、1つもしくは複数のAβプラークに関連する症状、1つもしくは複数のCAAに関連する症状、またはそれらの組合せを有する対象であり得る。臨床医は、彼らの臨床的ケアを指示するために、そのような対象についてのアミロイド画像化を推奨してもよい。別の非限定的な例として、アミロイド画像化の候補は、Aβアミロイドーシスに関連する疾患についての臨床試験における潜在的な参加者(対照対象または試験対象のいずれか)であり得る。
「Aβプラークに関連する症状」または「CAAに関連する症状」は、それぞれ、アミロイド線維と呼ばれる規則的に配列された線維の凝集体から構成されるアミロイドプラークまたはCAAの形成により引き起こされるかまたはそれに関連する、任意の症状を指す。代表的なAβプラークに関連する症状には、限定されるものではないが、ニューロン変性、認知機能障害、記憶障害、挙動変化、情動調節不全、発作、神経系構造または機能の障害、およびアルツハイマー病またはCAAの発症または悪化の増大したリスクを挙げることができる。ニューロン変性には、ニューロンの構造の変化(分子の変化、例えば毒性タンパク質の細胞内蓄積、タンパク質凝集等、およびマクロレベルの変化、例えば軸索または樹状突起の形状または長さの変化、ミエリン鞘組成の変化、ミエリン鞘の喪失等を含む)、ニューロンの機能の変化、ニューロンの機能の喪失、ニューロン死、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。認知機能障害には、限定されるものではないが、記憶、注意、集中、言語、論理的思考、創造性、実行機能、計画および系統化の困難さを挙げることができる。挙動変化には、限定されるものではないが、身体的または言語的な攻撃、衝動性、抑制の低下、無感動、自発性の低下、人格の変化、アルコール、タバコまたは薬物の乱用、および他の依存症関連の行動を挙げることができる。情動調節不全には、限定されるものではないが、うつ病、不安、躁病、興奮性および情動失禁を挙げることができる。発作には、限定されるものではないが、全身性強直性間代性発作、複雑部分発作、および非てんかん性の心因性発作を挙げることができる。神経系構造または機能の障害には、限定されるものではないが、水頭症、パーキンソニズム、睡眠障害、精神病、姿勢および共調運動の障害を挙げることができる。これには、運動障害、例えば単不全麻痺、片側不全麻痺、四肢不全麻痺、運動失調、バリスムスおよび振戦を挙げることができる。これには、嗅覚、触覚、味覚、視覚、聴覚を含む感覚喪失または機能障害も挙げることができる。さらに、これには、自律神経系障害、例えば腸および膀胱の機能障害、性機能障害、血圧および体温の調節不全を挙げることができる。最後に、これには、視床下部および下垂体の機能障害に起因するホルモン障害、例えば成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、プロラクチンおよび無数の他のホルモンおよび調節因子の欠乏および調節不全を挙げることができる。
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。哺乳動物には、限定されるものではないが、ヒト、霊長類、家畜、げっ歯類および愛玩動物が挙げられる。対象は、医学的ケアもしくは処置の待機中であってもよく、医学的ケアもしくは処置を受けていてもよく、または医学的ケアもしくは処置を受けたことがあってもよい。
本明細書において使用される場合、「対照集団」、「正常集団」、もしくは「健康な」対象からの試料という用語は、タウオパチーもしくはAβアミロイドーシスを有さないと臨床的に決定された対象もしくは対象の群、または定性的もしくは定量的試験結果に基づく、Aβアミロイドーシス(アルツハイマー病を含むがこれに限定されない)に関連する臨床疾患を指す。「正常な」対象は、通常、評価される個体とほぼ同じ年齢であり、限定されるものではないが、同じ年齢の対象および5~10年の範囲内の対象を含む。
本明細書において使用される場合、「血液試料」という用語は、血液、好ましくは末梢(または循環)血に由来する生物学的試料を指す。血液試料は全血、血漿または血清であることができるが、血漿が典型的に好ましい。
「アイソフォーム」という用語は、本明細書において使用される場合、タンパク質をコードするmRNAの選択的スプライシング、タンパク質の翻訳後修飾、タンパク質のタンパク分解処理、遺伝的変異および体細胞組換えに起因して生じる、同じタンパク質変異体のいくつかの異なる形態のいずれかを指す。「アイソフォーム」および「変異体」という用語は、互換的に使用される。
「タウ」という用語は、遺伝子MAPT(またはそのホモログ)によってコードされる複数のアイソフォーム、ならびにインビボでC末端が切断される種、インビボでN末端が切断される種、インビボで翻訳後修飾される種、またはそれらの任意の組合せを指す。本明細書において使用される場合、「タウ」、「タウタンパク質」、および「タウ種」という用語は、互換的に使用され得る。限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、魚類、ウシ、カエル、ヤギおよびニワトリを含む多数の動物では、タウは遺伝子MAPTによりコードされる。遺伝子がMAPTとして同定されていない動物では、ホモログが当該技術分野において周知の方法で同定され得る。
ヒトでは、MAPTのエクソン2、3および10の選択的スプライシングにより生成される、タウの6つのアイソフォームが存在する。これらのアイソフォームは、352~441アミノ酸長の範囲にわたる。エクソン2および3は、N末端に各々29個のアミノ酸インサートをコードし(Nと呼ばれる)、全長ヒトタウアイソフォームは、両方のインサート(2N)、1つのインサート(1N)を有するか、またはインサートを有しない(0N)ことがある。すべての全長ヒトタウアイソフォームは、微小管結合ドメイン(Rと呼ばれる)の3つの繰り返しも有する。C末端のエクソン10を含むことで、エクソン10によりコードされる第4の微小管結合ドメインを含むこととなる。したがって、全長ヒトタウアイソフォームは、微小管結合ドメインの4つの繰り返し(エクソン10を含む:R1、R2、R3およびR4)、または微小管結合ドメインの3つの繰り返し(エクソン10を除く:R1、R3およびR4)から構成され得る。ヒトタウは、翻訳後修飾されることもあればされないこともある。例えば、タウがリン酸化、ユビキチン化、グリコシル化および糖化されることがあることは、当該技術分野において公知である。ヒトタウはまた、インビボでC末端、N末端、またはC末端およびN末端でタンパク質分解的に処理しても、しなくてもよい。したがって、「ヒトタウ」という用語は、2N3R、2N4R、1N3R、1N4R、0N3R、および0N4Rアイソフォーム、ならびにインビボでC末端が切断される種、インビボでN末端が切断される種、インビボで翻訳後修飾される種、またはそれらの任意の組合せを包含する。タウをコードする遺伝子の選択的スプライシングは他の動物において同様に発生する。
本明細書において使用される場合、「タウ-441」という用語は、長さが441アミノ酸である最長のヒトタウアイソフォーム(2N4R)を指す。タウ-441のアミノ酸配列は、配列番号1として提供される。このアイソフォームのN末端(N末端)、midドメイン、MTBR、およびC末端(C末端)が、図1に同定されている。これらの領域は、他のタウアイソフォーム(例えば、2N3R、1NR4、1N3R、0N4R、および0N3R)では予測可能な方法で変化する。したがって、アミノ酸の位置がタウ-441と比較して同定されると、当業者は、他のアイソフォームの対応するアミノ酸の位置を決定することができるであろう。特に指示がない限り、本開示で使用されるアミノ酸残基の付番は、タウ-441に基づく(例えば、T217はタウ-441の217位のスレオニン残基である)。
本明細書において使用される場合、「N末端タウ」という用語は、タウのN末端の2つ以上のアミノ酸(例えば、タウ-441のアミノ酸1~103など)を含むタウタンパク質、または複数のタウタンパク質を指す。
本明細書において使用される場合、「midドメインタウ」という用語は、タウのmidドメインの2つ以上のアミノ酸(例えば、タウ-441のアミノ酸104~243など)を含むタウタンパク質、または複数のタウタンパク質を指す。
本明細書において使用される場合、「MTBRタウ」という用語は、タウの微小管結合領域(MTBR)の2つ以上のアミノ酸(例えば、タウ-441のアミノ酸244~368など)を含むタウタンパク質、または複数のタウタンパク質を指す。
本明細書において使用される場合、「C末端タウ」という用語は、タウのC末端の2つ以上のアミノ酸(例えば、タウ-441のアミノ酸369~441など)を含むタウタンパク質、または複数のタウタンパク質を指す。
「タウのタンパク質分解ペプチド」とは、インビトロタンパク質分解切断によって産生されるタウタンパク質のペプチドフラグメントを指す。「タウのタトリプシンペプチド」とは、トリプシンによるインビトロ切断によって産生されるタウタンパク質のペプチドフラグメントを指す。タウのトリプシンペプチドは、本明細書では最初の4つのアミノ酸によって称され得る。例えば、「LQTA」(配列番号3の最初の4つのアミノ酸)は、トリプシンペプチドLQTAPVPMPDLK(配列番号3)を指す。最初の4つのアミノ酸によって同定される他のトリプシンペプチドの非限定的な例には、IGST(配列番号2)、VQII(配列番号4)、LDLS(配列番号5)、HVPG(配列番号6)、IGSL(配列番号7)、VQIV(配列番号9)、およびTPPS(配列番号10)が挙げられる。
脳内のタウ沈着に関連する疾患は、本明細書では「タウオパチー」と称される。「タウ沈着」という用語は、限定されるものではないが、神経原線維変化、神経網糸状体、およびジストロフィー性神経突起におけるタウ凝集体を含む、あらゆる形態の病変タウ沈着を含む。当該技術分野において公知のタウオパチーには、限定されるものではないが、進行性核上性麻痺、拳闘家認知症、慢性外傷性脳症、第17番染色体に関連する前頭側頭型認知症およびパーキンソニズム、リティコ-ボディグ病、グアムのパーキンソン病認知症、神経原線維変化型老年期認知症、神経節腫および神経細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラフォルデン-シュパッツ病、リポフスチン症、ピック病、皮質基底核変性症(CBD)、嗜銀顆粒症(argyrophilic grain disease)(AGD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭型認知症(FTD)が挙げられる。
タウオパチーは、病理学的タウ沈着物中に見出されるタウアイソフォームの優勢によって分類される。3つのMTBRを有するタウで優勢に構成されるタウ沈着を伴うタウオパチーは、「3Rタウオパチー」と称される。ピック病は、3Rタウオパチーの非限定的な例である。明確にするために、一部の3Rタウオパチーの病理学的タウ沈着は、3Rおよび4Rタウアイソフォームの混合であり得、3Rアイソフォームが優勢である場合がある。アルツハイマー病患者の脳内の細胞内神経原線維変化(すなわち、タウ沈着)には、一般にほぼ同量の3Rおよび4Rアイソフォームが含まれていると考えられている。4つのMTBRを有するタウで優勢に構成されるタウ沈着を伴うタウオパチーは、「4Rタウオパチー」と称される。PSP、CBD、およびAGDは、FTLDの一部の形態と同様に、4Rタウオパチーの非限定的な例である。特に、一部のV334MおよびR406W突然変異保持者など、遺伝的に確認されたFTLD症例を有する一部の対象の脳内の病理学的タウ沈着は、3Rおよび4Rアイソフォームの混合を示す。
タウオパチーの臨床徴候は、限定されるものではないが神経原線維変化を含む、脳内のタウの凝集体であり得る。脳内のタウ凝集体を検出および定量するための方法は、当該技術分野において公知である(例えばタウ特異的リガンド、例えばTHK5317、THK5351、AV1451、PBB3、MK-6240、RO-948、PI-2620、GTP1、PM-PBB3およびJNJ64349311、JNJ-067)等を使用するタウPET)。
「処置する」、「処置すること」または「処置」という用語は、本明細書において使用される場合、訓練を受け免許を受けた専門家による、それを必要とする対象への医学的ケアの提供を指す。医学的ケアは、診断試験、治療処置、および/または予防もしくは防止手段であってもよい。治療および予防的処置の目的は、所望されない生理学的変化または疾患/障害を防止するかまたは緩慢化する(和らげる)ことである。治療または予防的処置の有益なまたは所望の臨床結果には、限定されるものではないが、検出可能かまたは検出不可能かにかかわらず、症状の緩和、疾患の程度の減弱、安定化した(すなわち、悪化しない)病態、疾患進行の遅延または緩慢化、病態の改善または軽減、および寛解(部分または完全のいずれか)が挙げられる。「処置」は、処置を受けない場合に予測される生存期間と比較して生存期間を延長することも意味することができる。処置を必要とする者には、疾患、状態もしくは障害を既に有する者、ならびに疾患、状態もしくは障害を有する傾向にある者、または疾患、状態もしくは障害を防止する予定の者が挙げられる。したがって、処置を必要とする対象は、疾患の症状または臨床徴候を有している場合もあれば、有していない場合もある。
「タウ治療」という句は、集合的に、タウオパチーを発症するリスクのある対象、またはタウオパチーを有すると臨床的に診断された対象のために企図される、または彼らと共に使用する、任意の造影剤、治療処置、および/または予防的(prophylactic)または予防(preventative)措置を指す。造影剤の非限定的な例には、機能的造影剤(functional imaging agent)(例えば、フルオロデオキシグルコース等)および分子造影剤(例えばPittsburgh化合物B、フロルベタベン、フロルベタピル、フルテメタモル、放射性標識タウ特異的リガンド、放射性核種標識抗体等)が挙げられる。治療剤の非限定的な例には、コリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、抗うつ剤(例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤、非定型抗うつ剤、アミノケトン、選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ剤等)、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、抗Aβ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、抗タウ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、幹細胞、栄養補助食品(例えばリチウム水、リポ酸を有するオメガ3脂肪酸、長鎖トリグリセリド、ゲニステイン、レスベラトロール、クルクミンおよびグレープシード抽出物等)、セロトニン受容体6のアンタゴニスト、p38アルファMAPK阻害剤、組換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、受動免疫療法、活性ワクチン(例えばCAD106、AF20513等)、タウタンパク質凝集阻害剤(例えばTRx0237、塩化メチルチオニミウム等)、血糖管理を改善するための治療(例えばインスリン、エキセナチド、リラグルチドピオグリタゾン等)、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ9A阻害剤、シグマ1受容体アゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、ホスファターゼ阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、CB1および/またはCB2エンドカンナビノイド受容体部分アゴニスト、β-2アドレナリン受容体アゴニスト、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、5-HT2A逆アゴニスト、アルファ-2cアドレナリン受容体アンタゴニスト、5-HT1Aおよび1D受容体アゴニスト、グルタミニル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ阻害剤、APP産生の選択的阻害剤、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、神経成長因子興奮剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、神経栄養剤(neurotrophic agent)、ムスカリン性M1受容体アゴニスト、GABA受容体調節因子、PPAR-ガンマアゴニスト、微小管タンパク質調節因子、カルシウムチャネル遮断薬、抗高血圧薬、スタチン、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。
「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値を指す(すなわち、正常な対象または正常な集団からのタウ種の平均レベル)。
「Aβおよびタウ治療」という句は、集合的に、AβアミロイドーシスもしくはADを発症するリスクのある対象、Aβアミロイドーシスを有すると診断された対象、タウオパチーを有すると診断された対象、またはADを有すると診断された対象に対して企図される、または彼らと共に使用する、任意の造影剤または治療剤を指す。
II.タウの測定方法
本開示は、質量分析により生物学的試料中のタウを測定する方法を提供する。一般的に言えば、生物学的試料中のタウを測定するための本開示の方法は、生物学的試料を用意すること、1つまたは複数のタンパク質を枯渇させて、その後タウを精製することによって生物学的試料を処理することと、精製タウをプロテアーゼで切断して、その後、適宜、得られた切断産物を固相抽出により脱塩して、タウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を取得することと、タウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を用いて液体クロマトグラフィー-質量分析を実行して、少なくとも1つのタウのタンパク質分解ペプチドの濃度(相対的または絶対的)を検出および測定することとを含む。したがって、実際には、開示された方法では、タウの少なくとも1つのタンパク質分解ペプチドを使用して、生物学的試料中に存在するタウの量を検出および測定する。
一例では、本開示の方法は、(a)血液試料またはCSF試料から選択される生物学的試料を用意すること;(b)タンパク質沈殿によって沈殿したタンパク質を分離して、生物学的試料からタンパク質を除去して、上清を得ること;(c)固相抽出により上清からタウを精製すること;(d)精製タウをプロテアーゼで切断し、その後、適宜、得られた切断産物を固相抽出により脱塩して、タウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を取得すること;および(e)タウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を用いて液体クロマトグラフィー-質量分析を実行して、少なくとも1つのタウのタンパク質分解ペプチドの濃度を検出および測定することを含む。
別の例では、本開示の方法は、(a)親和性枯渇による生物学的試料中のN末端タウ、midドメインタウ、またはN末端タウおよびmidドメインタウを低減させることであって、生物学的試料は、血液試料またはCSF試料である、低減させること;(b)親和性枯渇後に残り、N末端非依存性タウおよび/またはmidドメイン非依存性タウと称することができるタウを、(i)タンパク質沈殿および沈殿タンパク質の分離によって生物学的試料から追加のタンパク質を除去して上清を取得し、次いで固相抽出によって上清からタウを精製すること、または(ii)MTBRタウをアフィニティ精製し、それにより(i)もしくは(ii)濃縮タウを生成することを含む方法によって濃縮すること;(c)濃縮タウをプロテアーゼで切断し、その後、適宜、得られた切断産物を固相抽出により脱塩して、タウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を取得すること;および(d)タウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を用いて液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)を実行して、少なくとも1つのタウのタンパク質分解ペプチドの濃度を検出および測定することを含む。
別の例では、本開示の方法は、(a)親和性枯渇による生物学的試料中のN末端タウ、midドメインタウ、またはN末端タウおよびmidドメインタウを低減させることであって、生物学的試料は、血液試料またはCSF試料である、低減させること;(b)タンパク質沈殿によって沈殿したタンパク質を分離して親和性枯渇試料から追加のタンパク質を除去して、上清を得ること;(c)固相抽出により上清からタウを精製すること;(d)精製タウをプロテアーゼで切断し、その後、適宜、得られた切断産物を固相抽出により脱塩して、タウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を取得すること;および(e)タウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を用いて液体クロマトグラフィー-質量分析を実行して、少なくとも1つのタウのタンパク質分解ペプチドの濃度を検出および測定することを含む。
別の例では、本開示の方法は、(a)親和性枯渇による生物学的試料中のN末端タウ、midドメインタウ、またはN末端タウおよびmidドメインタウを低減させることであって、生物学的試料は、血液試料またはCSF試料である、低減させること;(b)親和性枯渇試料からMTBRタウをアフィニティ精製すること;(c)精製されたMTBRタウをプロテアーゼで切断し、その後、適宜、得られた切断産物を固相抽出により脱塩して、MTBRタウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を取得すること;および(d)MTBRタウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を用いて液体クロマトグラフィー-質量分析を実行して、少なくとも1つのMTBRタウのタンパク質分解ペプチドの濃度を検出および測定することを含む。
別の例では、本開示の方法は、(a)生物学的試料からMTBRタウをアフィニティ精製することであって、生物学的試料は、血液試料またはCSF試料である、アフィニティ精製すること;(b)精製されたMTBRタウをプロテアーゼで切断し、その後、適宜、得られた切断産物を固相抽出により脱塩して、MTBRタウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を取得すること;および(c)MTBRタウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を用いて液体クロマトグラフィー-質量分析を実行して、少なくとも1つのMTBRタウのタンパク質分解ペプチドの濃度を検出および測定することを含む。
本開示は、上記の方法のそれぞれにおいて、1つまたは複数の残基におけるタウのリン酸化占有率を測定することをさらに企図する。リン酸化占有率は、リン酸化の化学量論とも称され、もう1残基でのタウのリン酸化を定量することによって測定する。説明のために残基T217を使用すると、リン酸化占有率は、典型的にはpT217/T217で表され、ここで、分子「pT217」はリン酸化残基T217の量(相対的または絶対的)であり、分母「T217」は、残基T217の量(相対的または絶対的)である。タウの2つ以上の残基におけるリン酸化を測定する場合、この方法は、値の間の比または別の数学的関係を計算することをさらに含み得る。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T111、S113、T181、S199、S202、S208、T153、T175、T205、S214、T217、およびT231から選択される1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T111、T181、S208、T153、T175、T205、S214、T217、およびT231から選択される1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T111、T153、T181、T205、S208、T217、およびT231から選択される1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T111、T153、T181、T205、T217、およびT231から選択される1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T111、T153、T181、T217、およびT231から選択される1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T111、T153、T181、T205、S208、およびT217から選択される1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T181、T205、およびT217から選択される1つまたは複数の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T205でのタウリン酸化を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T205、および適宜T111、T181、S208、T153、T175、S214、T217、およびT231から選択される1つまたは複数の追加の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T205、および適宜T111、T153、T181、S208、およびT217から選択される1つまたは複数の追加の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書の方法は、T205、および適宜T181、およびT217から選択される1つまたは複数の追加の残基におけるタウリン酸化を測定することを含む。
一般に言えば、1つまたは複数の残基におけるタウのリン酸化占有率は、タウを含む任意の試料を使用して測定することができる。しかし、アミノ酸残基は、どの試料を使用するべきかに影響を与える場合がある。例えば、T111でのタウリン酸化の測定が所望される場合、抗体タウ1またはC末端をT111に結合する他のアフィニティ精製試薬を使用して、血液またはCSF試料からmidドメインタウを親和性枯渇させ、pT111/T111の測定にはアフィニティ精製試薬に結合したタウを使用するべきである。ある特定の実施形態では、リン酸化占有率の測定には、midドメインタウが濃縮された(またはN末端およびmidドメインタウが濃縮された)試料を使用することができる。
本開示は、タウの部位特異的リン酸化を定量的に評価するための任意の1つの特定の方法に限定されない。好適な方法は、単一のアミノ酸のリン酸化状態のみが異なるタウアイソフォームを区別し、異なるアミノ酸でリン酸化されたp-タウアイソフォームを区別し、総タウの全体的変化から独立して特定の部位で起こるリン酸化の変化を定量するべきである。総タウの全体的な変化とは独立して特異的部位で発生するリン酸化化学量論の変化は、以下の3つのアプローチのいずれかで定量することができる:1)同じ配列を共有する各リン酸化ペプチドの相対的存在量を推定するために使用することのできる、リン酸化ペプチド異性体間の相対的比較、2)参照としてのタウタンパク質からの任意のペプチドを用いた、リン酸化ペプチドの標準化、および3)標識した合成内部標準(internal synthetic labeled standards)を使用した、各リン酸化および非リン酸化ペプチドについての絶対量定量、ここで各リン酸化ペプチドについての絶対量定量値は、タウタンパク質からの任意のペプチドについて得られた任意の絶対量定量値を用いて標準化される。すべての3つの手法は、各部位についての相対的なリン酸化の変化の比較のために、内部標準化を使用する。当該技術分野において公知の他の方法も使用してもよい。絶対的定量に内部合成標識標準を使用する場合、可溶性タウを濃縮するために試料を処理する前に、標識標準を試料にスパイクすることが好ましい。
例示的な実施形態では、タウの部位特異的リン酸化は、高分解能質量分析により測定される。好適な種類の質量分析が当該技術分野において公知である。これらには、限定されるものではないが、四重極型、飛行時間型、イオントラップおよびOrbitrap、ならびに異なる種類の質量分析計を1つの構成に組み合わせたハイブリッド型質量分析計(例えばThermoFisher ScientificからのOrbitrap Fusion(商標)Tribrid(商標)質量分析計)が挙げられる。タウは典型的に、MS分析の前にタンパク分解により消化される。好適なプロテアーゼには、限定されるものではないが、トリプシン、Lys-N、Lys-CおよびArg-Nが挙げられる。アフィニティ精製/枯渇を使用してタウ試料を生成する場合、固定化リガンドからタウを溶出した後、またはタウが固定化リガンドに結合している間に消化が発生する場合がある。アフィニティ精製/枯渇については、第II(c)節で詳細に説明する。1つまたは複数の浄化ステップに続き、消化されたタウペプチドは、高分解能質量分析計と適合する液体クロマトグラフィーシステムにより分離されてもよい。クロマトグラフィーシステムは、所望のLC-MSパターンを生成するために、慣習的な実験により最適化されてもよい。多様なLC-MS技術を、部位特異的タウリン酸化を定量的に分析するために使用してもよい。非限定的な例には、選択反応モニタリング、並列反応モニタリング、選択イオンモニタリングおよびデータ非依存型解析法(data-independent acquisition)が挙げられる。上記で述べたように、部位特異的タウリン酸化のすべての定量分析は、総タウの全体的変化を考慮するべきである。例示的な実施形態では、実施例において概説される質量分析プロトコールが使用される。
本開示は、上記の方法のそれぞれにおいて、総タウを測定することをさらに企図する。タウは、可溶性および不溶性の区画中、モノマーおよび凝集体形態で、規則的なまたは不規則な構造で、細胞内または細胞外で見出され、他のタンパク質または分子と複合体形成し得る。したがって、生物学的試料の供給源(例えば脳組織、CSF、血液等)および生物学的試料の任意の下流処理は、所与の試料中のタウアイソフォームの全体量に影響を与えることとなる。総タウ測定は、質量分析により行うことができる。あるいは、総タウは、イムノアッセイまたはタウ濃度を定量する他の方法により測定することができる。ある特定の実施形態では、総タウは、TPSL(配列番号18の最初の4つのアミノ酸)トリプシンペプチド(すなわち、TPSLPTPPTR(配列番号18))またはTPPS(配列番号10の最初の4つのアミノ酸)トリプシンペプチド(すなわち、TPPSSGEPPK(配列番号10))を定量することによる質量分析によって測定することができる。ある特定の実施形態では、総タウの測定には、midドメインタウが濃縮された(またはN末端およびmidドメインタウが濃縮された)試料を使用することができる。
なおさらなる実施形態では、本開示は、上記方法のそれぞれにおいて、生物学的試料中の1つもしくは複数のタンパク質の存在/非存在を決定すること、および/または生物学的試料中の1つもしくは複数の追加のタンパク質の濃度を測定することを企図する。一部の実施形態では、1つまたは複数のタンパク質は、タウの精製前に生物学的試料から枯渇させたタンパク質であり得る。例えば、ある特定の実施形態では、N末端タウ種および/またはmidドメインタウ種は、本明細書に開示される方法によって定量されるタウ種(例えば、MTBRタウ、C末端タウ)とは別々に同定および/または定量することができる。代わりに、または加えて、Aβ、ApoE、またはその他の目的のタンパク質は、生物学的試料の一部を並行して処理することによって、本明細書に開示される方法で利用する前に、生物学的試料から目的のタンパク質を枯渇させることによって、または本明細書に開示される試料処理工程中に生物学的試料から目的のタンパク質を枯渇させることによって、同定および/または定量することができる。
生物学的試料、好適な内部標準、および1つまたは複数のタンパク質を枯渇させる工程、タウを精製する工程、プロテアーゼによる精製タウを切断する工程、および質量分析の工程を以下でより詳細に説明する。
(a)生物学的試料
好適な生物学的試料には、対象から得られた血液試料または脳脊髄液(CSF)試料が含まれる。一部の実施形態では、対象はヒトである。ヒト対象は、医療もしくは処置を待っている場合があるか、または医療もしくは処置を受けている場合があるか、または医療もしくは処置を受けたことがある場合がある。様々な実施形態では、ヒト対象は、健康な対象、神経変性疾患を発症するリスクのある対象、神経変性疾患の徴候および/または症状を有する対象、または神経変性疾患と診断された対象であり得る。さらなる実施形態では、神経変性疾患はタウオパチーであり得る。特定の例では、タウオパチーは、アルツハイマー病(AD)、進行性核上性麻痺(PSP)、皮質基底核変性症(CBD)、または前頭側頭葉変性症(FTLD)であり得る。他の実施形態では、対象は実験動物である。さらなる実施形態では、対象は、ヒトタウおよび適宜1つまたは複数の追加のヒトタンパク質(例えば、ヒトAβ、ヒトApoEなど)を発現するように遺伝子操作された実験動物である。
CSFは、留置CSFカテーテルの有無を問わない、腰椎穿刺によって得てもよい。対象から同時に収集された複数の血液またはCSF試料は、プールされてもよい。血液は、静脈内カテーテルの有無を問わない静脈穿刺によるか、またはフィンガースティック(またはその等価物)により収集してもよい。収集したら、血液試料またはCSF試料を、当該技術分野において公知の方法(例えば、全細胞および細胞残屑を除去するための遠心分離;分析試験の前に標本を安定化および保存するように設計された添加剤の使用等)に従って処理してもよい。血液試料またはCSF試料は、即時に使用されてもよく、または冷凍し無期限に保管されてもよい。本明細書に開示される方法で使用する前に、生物学的試料は、必要または所望であれば、プロテアーゼ阻害剤、同位体標識内部標準、界面活性剤およびカオトロピック剤を含むように、および/または他の分析物(例えば、タンパク質、ペプチド、代謝物など)を枯渇させるために修飾されていてもよい。
使用される試料のサイズは、試料の種類、試料が得られた対象の健康状態、および分析されるべき分析物(タウに加えて)に応じて変動することができ、または変動することになる。CSF試料の体積は、約0.01mL~約5mL、または約0.05mL~約5mLであってもよい。特定の例において、試料のサイズは、約0.05mL~約1mLのCSFであってもよい。血漿試料の量は、約0.01mL~約20mLであってもよい。
(b)同位体標識タウ内部標準物質
同位体標識タウは、試料処理全体の変動を考慮し、適宜絶対濃度を計算するための内部標準として使用することができる。一般に、同位体標識タウ内部標準を、重要な試料処理の前に添加するが、必要であれば複数回添加することができる。例えば、図2~4に示される方法を参照されたい。
複数の同位体標識タウ内部標準が本明細書に記載されている。すべて、少なくとも1つのアミノ酸残基に重同位体標識が組み込まれている。1つまたは複数の完全長アイソフォームを使用してもよい。あるいは、または加えて、当該技術分野で公知のように、翻訳後修飾を有するタウアイソフォームおよび/またはタウのペプチドフラグメントも使用することができる。一般的に言えば、組み込まれる標識アミノ酸残基は、その化学的特性に影響を与えることなくペプチドの質量を増加させる必要があり、同位体標識の存在によって生じる質量シフトは、質量分析法で内部標準(IS)と内因性タウ分析物のシグナルを区別できるようにする程度に十分でなければならない。本明細書に示すように、好適な重同位体標識としには、限定されるものではないが、H、13C、および15Nが挙げられる。典型的には、約1~10ngの内部標準で通常十分である。
(c)1つまたは複数のタンパク質を枯渇させること
本開示の方法は、1つまたは複数のタンパク質を試料から枯渇させる工程を含む。「枯渇する」という用語は、量または数が減少することを意味する。したがって、タンパク質の枯渇試料は、元の試料中の量よりも測定可能なほど少ない任意の量のタンパク質を有する場合があり、これにはタンパク質の量が存在しない場合も含まれる。
タンパク質は、1つまたは複数のタンパク質を特異的に標的とする方法、例えば、親和性枯渇、固相抽出、または当該技術分野で公知の他の方法によって、試料から枯渇させることができる。タンパク質または複数のタンパク質の標的枯渇は、そのタンパク質の下流分析が所望される状況(例えば、同定、定量、翻訳後修飾の分析など)で使用してもよい。例えば、Aβペプチドは、好適なエピトープ結合剤によるAβの親和性枯渇後に、当該技術分野で公知の方法によって同定および定量することができる。別の非限定的な例として、アポリポタンパク質E(ApoE)の状態は、ApoEの親和性枯渇およびApoEアイソフォームの同定に続いて、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。標的枯渇を使用して、その後の分析のために他のタンパク質、例えば、限定されるものではないが、アポリポプロテインJ、シヌクレイン、可溶性アミロイド前駆体タンパク質、α-2マクログロブリン、S100B、ミエリン塩基性タンパク質、インターロイキン、TNF、TREM-2、TDP-43、YKL-40、VILIP-1、NFL、プリオンタンパク質、pNFH、およびDJ-1を単離することもできる。ある特定のタウタンパク質の標的枯渇は、他のタウタンパク質を濃縮するため、および/または質量分析を混乱させる(cofound)タンパク質を除去するためにも本明細書で使用される。例えば、本開示のある特定の実施形態では、N末端タウタンパク質および/またはmidドメインタウタンパク質は、質量分析による分析のためのさらなる試料処理の前に試料から枯渇させる。枯渇タウタンパク質の下流分析を、行ってもよく、または行わなくてもよいが、両方の選択肢が本開示の方法によって企図される。
一部の実施形態では、標的枯渇は、親和性枯渇によって発生し得る。親和性枯渇とは、分子に対するその特異的結合特性を利用して、試料から目的のタンパク質を枯渇させる方法を指す。典型的には、分子は、固体支持体、例えばビーズ、樹脂、組織培養プレートなどに接着したリガンドである(固定化リガンドと称される)。リガンドの固体支持体への固定化は、リガンドとタンパク質の相互作用が発生した後に行ってもよい。好適なリガンドには、抗体、アプタマー、および他のエピトープ結合剤が挙げられる。この分子は、目的のタンパク質を選択的に吸収するポリマーまたは他の材料であってもよい。非限定的な例として、脂肪オキソエチル化アルコールで置換されたポリヒドロキシメチレン(例えば、PHM-L LIPOSORB、Sigma Aldrich)を使用して、血清からリポタンパク質(ApoEを含む)を選択的に吸収することができる。2つ以上の親和性枯渇剤を組み合わせて、複数のタンパク質を順次にまたは同時に枯渇させることができる。
一部の実施形態では、本開示の方法は、タウ-441の、両端を含むアミノ酸1~243内、(または0Nまたは1Nアイソフォームについては同様に定義された領域内)のエピトープに特異的に結合する少なくとも1つのエピトープ結合剤を使用して、試料から1つまたは複数のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。様々な実施形態では、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のエピトープ結合剤を使用することができる。2つ以上のエピトープ結合剤を使用する場合、それらは順次にまたは同時に使用することができる。
一部の実施形態では、本開示の方法は、タウのN末端内のエピトープ(例えば、両端を含む、タウ-441のアミノ酸1~103)に特異的に結合するエピトープ結合剤、およびタウのmidドメイン内のエピトープ(例えば、両端を含む、タウ-441のアミノ酸104~243)に特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、試料から1つまたは複数のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、順次にまたは同時に使用することができる。
一部の実施形態では、本開示の方法は、両端を含む、タウ-441のアミノ酸1~35内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、および両端を含む、タウ-441のアミノ酸104~243内(または0Nまたは1Nアイソフォームについては同様に定義された領域内)のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、試料から1つまたは複数のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、順次にまたは同時に使用することができる。
一部の実施形態では、本開示の方法は、両端を含む、タウ-441のアミノ酸1~103内(または0Nまたは1Nアイソフォームについては同様に定義された領域内)のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤;両端を含む、タウ-441のアミノ酸104~243内(または0Nまたは1Nアイソフォームについては同様に定義された領域内)のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤;およびアミロイドベータのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、試料から1つまたは複数のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、順次にまたは同時に使用することができる。
一部の実施形態では、本開示の方法は、両端を含む、タウ-441のアミノ酸1~35内(または0Nまたは1Nアイソフォームについては同様に定義された領域内)のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤;両端を含む、タウ-441のアミノ酸104~243内(または0Nまたは1Nアイソフォームについては同様に定義された領域内)のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤;およびアミロイドベータのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、試料から1つまたは複数のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、順次にまたは同時に使用することができる。
一部の実施形態では、本開示の方法は、両端を含む、タウ-441のアミノ酸1~103内(または0Nまたは1Nアイソフォームについては同様に定義された領域内)のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤;およびアミロイドベータのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、試料から1つまたは複数のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、順次にまたは同時に使用することができる。
一部の実施形態では、本開示の方法は、両端を含む、タウ-441のアミノ酸1~35内(または0Nまたは1Nアイソフォームについては同様に定義された領域内)のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤;およびアミロイドベータのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、試料から1つまたは複数のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、順次にまたは同時に使用することができる。
一部の実施形態では、本開示の方法は、両端を含む、タウ-441のアミノ酸104~243内(または0Nまたは1Nアイソフォームについては同様に定義された領域内)のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤;およびアミロイドベータのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用して、試料から1つまたは複数のタンパク質を親和性枯渇させることを含む。エピトープ結合剤は、順次にまたは同時に使用することができる。
上記の実施形態のそれぞれにおいて、エピトープ結合剤は、抗体またはアプタマーを含み得る。一部の実施形態では、アミロイドベータに特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ5.1であるか、またはHJ5.1と同じエピトープに結合する、および/またはHJ5.1を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。一部の実施形態では、両端を含む、タウ-441のアミノ酸1~103内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ8.5であるか、または、HJ8.5と同じエピトープに結合する、および/またはHJ8.5を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。一部の実施形態では、両端を含む、タウ-441のアミノ酸104~221内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、タウ1であるか、または、タウ1と同じエピトープに結合する、および/またはタウ1を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。抗体が特異的に結合するエピトープを同定する方法、および2つの抗体間の競合阻害を評価するアッセイは、当該技術分野で公知である。
あるいは、より一般的な方法、例えば限外濾過、または酸、有機溶媒もしくは塩を用いたタンパク質沈殿によって、試料からタンパク質を枯渇させることができる。一般に、これらの方法は、高存在量および高分子量のタンパク質を確実に減少させるために使用され、その結果、低分子量および/または低存在量のタンパク質およびペプチド(例えば、タウ、Aβなど)が濃縮される。
一部の実施形態では、タンパク質は、沈殿によって試料から枯渇させることができる。簡潔には、沈殿は、試料に沈殿剤を添加して完全に混合すること、試料を沈殿剤と共にインキュベートしてタンパク質を沈殿させること、および沈殿したタンパク質を遠心分離または濾過により分離することを含む。得られた上清はその後、下流用途で使用することができる。必要な試薬の量は、当該技術分野で公知の方法によって実験的に決定することができる。好適な沈殿剤には、過塩素酸、トリクロロ酢酸、アセトニトリル、メタノールなどが挙げられる。例示的な実施形態では、タンパク質は酸沈殿によって試料から枯渇させる。さらなる実施形態では、タンパク質は、過塩素酸を使用する酸沈殿によって試料から枯渇させる。
非限定的な例として、過塩素酸を使用する酸沈殿によって、試料からタンパク質を枯渇させることができる。本明細書で使用される場合、「過塩素酸」は、特に指示がない限り、70%過塩素酸を指す。一部の実施形態では、過塩素酸は、約1%v/v~約15%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約1%v/v~約10%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約1%v/v~約5%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約3%v/v~約15%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約3%v/v~約10%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約3%v/v~約5%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、3.5%v/v~約15%v/v、3.5%v/v~約10%v/v、または3.5%v/v~約5%v/vの最終濃度で添加される。他の実施形態では、過塩素酸は、約3.5%v/vの最終濃度で添加される。過塩素酸の添加に続けて、試料は十分に混合され(例えばボルテックスミキサーにより)、沈殿を促進するために、低温で典型的に約10分またはそれよりも長く保持される。例えば、試料は、約10分~約60分、約20分~約60分、または約30分~約60分保持されてもよい。他の例では、試料は、約15分~約45分、または約30分~約45分保持されてもよい。他の例では、試料は、約15分~約30分、または約20分~約40分保持されてもよい。他の例では、試料は、約30分保持される。試料は次に、沈殿したタンパク質をペレットにするために低温で遠心分離にかけられ、可溶性タウを含む上清(すなわち、酸可溶性画分)は、新たな容器に移される。上記の文脈において使用される場合、「低温」は10℃以下の温度を指す。例えば、低温は約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃または約10℃であってもよい。一部の実施形態では、より狭い温度範囲、例えば約3℃~約5℃、またさらには約4℃が好ましいものであり得る。ある特定の実施形態では、低温は、試料を氷上に置くことにより達成されてもよい。
上記アプローチの一方または両方からの2つ以上の方法を組み合わせて、複数のタンパク質を順次にまたは同時に枯渇させることができる。例えば、1つまたは複数のタンパク質を選択的に枯渇させ(標的枯渇)、続いて高存在量/分子量のタンパク質を枯渇させることができる。あるいは、高存在量/分子量のタンパク質を最初に枯渇させ、続いて1つまたは複数のタンパク質の標的枯渇を行うことができる。さらに別の代替法では、高存在量/分子量のタンパク質を最初に枯渇させ、続いて1つまたは複数のタンパク質の第1のラウンドの標的枯渇を行い、その後、第1のラウンド標的とは異なる1つまたは複数の異なるタンパク質の第2ラウンドの標的枯渇を行ってもよい。他の反復は、当業者には容易に明らかであろう。
(d)タウを精製すること
本明細書に開示される方法の別の工程は、タウ、特にMTBRタウを精製することを含む。一部の例では、MTBRタウは、N末端非依存性および/またはmidドメイン非依存性MTBRタウである。精製タウは、部分的に精製されていても完全に精製されていてもよい。
一部の実施形態では、本開示の方法は、固相抽出によってタウを精製することを含む。固相抽出によるタウの精製は、タウを吸着する吸着剤を含む固相とタウを含む試料を接触させること、1つまたは複数の洗浄工程、および吸着剤からのタウの溶出を含む。好適な吸着剤には、逆相吸着剤が含まれる。好適な逆相吸着剤は、当該技術分野で公知であり、限定されるものではないが、アルキル結合シリカ、アリール結合シリカ、スチレン/ジビニルベンゼン材料、N-ビニルピロリドン/ジビニルベンゼン材料が挙げられる。例示的な実施形態では、逆相材料は、N-ビニルピロリドンおよびジビニルベンゼンを含むポリマー、またはスチレンおよびジビニルベンゼンを含むポリマーである。例示的な実施形態では、吸着剤は、Oasis HLB(Waters)である。タウを含む上清と接触させる前に、吸着剤は典型的に、製造者の使用説明書に従って、または当技術分野において公知のように、予め調整される(例えば、水混和性有機溶媒、および次に移動相を含む緩衝液を用いる)。加えて、一部の逆相材料は他のものよりも強くイオン化された分析物を保持するため、上清を酸性化してもよい。移動相中の、および溶出のための揮発性成分の使用は、試料の乾燥を促進するため、好ましい。例示的な実施形態では、洗浄工程は、約0.05%v/vトリフルオロ酢酸(TFA)~約1%v/v TFAを含む液体相、またはその等価物を含む液相の使用を含み得る。一部の例では、洗浄は、約0.05%v/v~約0.5%v/v TFAまたは約0.05%v/v~約0.1%v/v TFAを含む液体相を用いてもよい。一部の例では、洗浄は、約0.1%v/v~約1.0%v/v TFAまたは約0.1%v/v~約0.5%v/v TFAを含む液体相を用いてもよい。結合したタウは、次に約20%v/v~約50%v/vアセトニトリル(ACN)を含む液体相、またはその等価物を用いて溶出される。一部の例では、タウは約20%v/v~約40%v/v ACNまたは約20%v/v~約30%v/v ACNを含む液体相を用いて溶出されてもよい。一部の例では、タウは約30%v/v~約50%v/v ACNまたは約30%v/v~約40%v/v ACNを含む液体相を用いて溶出されてもよい。溶出液は、当該技術分野において公知の方法(例えば真空乾燥(例えばspeed-vac)、凍結乾燥、窒素気流下での蒸発等)により乾燥されてもよい。
一部の実施形態では、本開示の方法は、アフィニティ精製によってMTBRタウを精製する工程を含む。アフィニティ精製とは、分子に対するその特異的結合特性を利用して、目的のタンパク質を濃縮する方法を指す。典型的には、分子は、固体支持体、例えばビーズ、樹脂、組織培養プレートなどに接着したリガンドである(固定化リガンドと称される)。リガンドの固体支持体への固定化は、リガンドとタンパク質の相互作用が発生した後に行ってもよい。好適なリガンドには、抗体、アプタマー、および他のエピトープ結合剤が挙げられる。アフィニティ精製によるMTBRタウの精製は、タウを含む試料を好適な固定化リガンドと接触させること、1つまたは複数の洗浄工程、および固定化リガンドからのMTBRタウの溶出を含む。
一部の実施形態では、本開示の方法は、タウ-441の、両端を含むアミノ酸235~368内、またはタウ-441の、両端を含むアミノ酸244~368内(または他の完全長アイソフォームの同様に定義された領域内)のエピトープに特異的に結合する少なくとも1つのエピトープ結合剤を使用するアフィニティ精製によって、MTBRタウを精製する工程を含む。様々な実施形態では、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のエピトープ結合剤を使用することができる。2つ以上のエピトープ結合剤を使用する場合、それらは順次にまたは同時に使用することができる。好適なエピトープ結合剤の非限定的な例には、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載の77G7、RD3、RD4、UCB1017、およびPT76、ならびにRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載の抗体E2814および7G6、ならびにそれらの抗体と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤が挙げられる。さらなる実施形態では、本開示の方法は、MTBRタウのR1内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR2内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR3内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR4内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、3Rタウに特有のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、4Rタウに特有のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR1およびR2にまたがるエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR2およびR3にまたがるエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、MTBRタウのR3およびR4にまたがるエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤、またはそれらの任意の組合せを使用するアフィニティ精製によってMTBRタウを精製することを含む。特定の例において、本開示の方法は、タウ-441のアミノ酸316~355(または他の完全長アイソフォームの同じ領域)を含むエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤を使用するアフィニティ精製によって、MTBRタウを精製することを含む。様々な実施形態では、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のエピトープ結合剤を使用することができる。2つ以上のエピトープ結合剤を使用する場合、それらは順次にまたは同時に使用することができる。
上記の実施形態のそれぞれにおいて、エピトープ結合剤は、抗体またはアプタマーを含み得る。一部の実施形態では、MTBRタウのR3およびR4内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、77G7であるか、または77G7と同じエピトープに結合する、および/または77G7を競合的に阻害するエピトープ結合剤である(BioLegend)。一部の実施形態では、3Rタウに特有のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、RD3であるか(de Silva et al., Neuropathology and Applied Neurobiology, 2003, 29: 288-302)、またはRD3と同じエピトープに結合する、および/またはRD3を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。一部の実施形態では、4Rタウに特有のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、RD4であるか(de Silva et al., Neuropathology and Applied Neurobiology, 2003, 29: 288-302)、またはRD4と同じエピトープに結合する、および/またはRD4を競合的に阻害するエピトープ結合剤である。
(e)精製タウをプロテアーゼで切断すること
本明細書に開示される方法の別の工程は、精製タウをプロテアーゼで切断することを含む。プロテアーゼによる精製タウの切断は、タウを消化するのに好適な条件下で、精製タウを含む試料をプロテアーゼと接触させることを含む。アフィニティ精製を使用する場合、固定化リガンドからタウを溶出した後、またはタウが結合している間に消化が発生する場合がある。好適なプロテアーゼには、限定されるものではないが、トリプシン、Lys-N、Lys-CおよびArg-Nが挙げられる。好ましい実施形態では、プロテアーゼはトリプシンである。得られた切断産物は、タウのタンパク質分解ペプチドを含む組成物である。プロテアーゼがトリプシンである場合、得られる切断生成物はタウのトリプシンペプチドを含む。タンパク質分解的切断に続いて、得られた切断生成物を、典型的には固相抽出によって脱塩する。
(f)LC-MS
本明細書に開示される方法の別の工程は、タウのタンパク質分解ペプチドを含む試料を用いて液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)を実行して、少なくとも1つのタウのタンパク質分解ペプチドの濃度を検出および測定することを含む。したがって、実際には、開示された方法では、タウの1つまたは複数のタンパク質分解ペプチドを使用して、生物学的試料中に存在するタウタンパク質の量を検出および測定する。
トリプシンがプロテアーゼである実施形態では、MTBRタウの存在を示すタウのタンパク質分解ペプチドには、限定されるものではないが、表Aに列挙されるペプチドが含まれる。消化に代替酵素を使用する場合、得られるタンパク質分解ペプチドはわずかに異なる場合があるが、当業者は容易に決定することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、同じ種類の2つの生物学的試料間のトリプシンペプチドの量の変動は、それらの生物学的試料を構成するMTBRタウ種の違いを反映すると考えられている。本明細書に開示されるように、MTBRタウのある特定のタンパク質分解ペプチドの量、ならびにMTBRタウのある特定のタンパク質分解ペプチドの比率によって、処置決定の指針となる臨床的に意味のある情報が提供されることがある。したがって、MTBRタウのトリプシンペプチドの検出および定量が可能になる方法は、多くの神経変性疾患の診断および処置に有用である。
タウのタンパク質分解ペプチドは、高分解能質量分析計と適合する液体クロマトグラフィーシステムによって分離することができる。好適なLC-MSシステムは、ID<1.0mmカラムを備え、流速約100μl/分未満を使用することができる。好ましい実施形態では、ナノフローLC-MSシステムを使用する(例えば、ID約50~100μmのカラムおよび流速<1μL/分、好ましくは約100~800nL/分、より好ましくは約200~600nL/分)。例示的な実施形態では、LC-MSシステムはID0.05mMカラムを備え、流量約400nL/分を使用することができる。
当該技術分野で公知のように、タンデム質量分析を使用して分解能を向上させることができ、または技術を改善して、単一の質量分析器でタンデム質量分析の分解能を達成することができる。好適な種類の質量分析計は、当該技術分野において公知である。これらには、限定されるものではないが、四重極型、飛行時間型、イオントラップおよびOrbitrap、ならびに異なる種類の質量分析計を1つの構成に組み合わせたハイブリッド型質量分析計(例えば、それぞれThermoFisher Scientificからの、Orbitrap Fusion(商標)Tribrid(商標)質量分析計、Orbitrap Fusion(商標)Lumos(商標)質量分析計、Orbitrap Tribrid(商標)Eclipse(商標)質量分析計、Q Exactive質量分析計)が挙げられる。例示的な実施形態では、LC-MSシステムは、Orbitrap Fusion(商標)Tribrid(商標)質量分析計、Orbitrap Fusion(商標)Lumos(商標)質量分析計、Orbitrap Tribrid(商標)Eclipse(商標)質量分析計、または四重極型での同様のもしくは改良された集束性およびイオン透過性を有する質量分析計から選択される質量分析計を備えることができる。好適な質量分析プロトコールは、分析前に収集されるイオンの数(例えば、orbitrapを使用したAGC設定)および/または注入時間を最適化することによって開発することができる。例示的な実施形態では、実施例において概説される質量分析プロトコールが使用される。
III.対象をステージ分類すること
一態様では、本開示は、アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を伴わない対象において認知症発症までの時間を測定する方法であって、(a)対象から得られた血液試料またはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜MTBR-タウ212、残基T217におけるリン酸化占有率 MTBR-タウ243、および/またはMTBR-タウ3Rを測定すること、または(aii)対象から得られた血液試料もしくはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、残基T217におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびMTBR-タウ212を測定すること、ならびに(b)(a)もしくは(aii)の測定値を使用して、認知症発症までの時間を計算することであって、認知症発症までの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価(CDR)までの年数である、計算することを含む方法を提供する。例示的な実施形態では、アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を伴わない対象は、CDRがゼロである。
別の態様では、本開示は、アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を伴わない対象において認知症発症までの時間を測定する方法であって、(a)対象からの血液試料またはCSF試料を処理してタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得し、次いで、枯渇試料を処理してタウ種の第2の集団を取得することであって、タウ種の第1の集団にはN末端タウおよび/またはmidドメインタウが濃縮されており、濃縮されたタウ種の第2の集団にはMTBR-タウが濃縮されている、取得すること;(b)タウ種の第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜、タウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること、または(bii)タウ種の第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第1の集団における残基T217におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること;ならびに(c)(b)もしくは(bii)の測定値を使用して認知症発症までの時間を計算することであって、認知症発症までの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価までの年数である、計算することを含む方法を提供する。例示的な実施形態では、アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を有する対象は、CDRがゼロより大きい、0.5以上、または1以上である。非限定的な例として、アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を有する対象は、CDRが0.5、1、1.5、または2であり得る。
別の態様では、本開示は、アルツハイマー病の認知症状または行動症状を有する対象において認知症発症からの時間を測定するための方法であって、(a)対象から得られた血液試料またはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜MTBR-タウ212、残基T217におけるリン酸化占有率 MTBR-タウ243、および/またはMTBR-タウ3Rを測定すること、または(aii)対象から得られた血液試料もしくはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、残基T217におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびMTBR-タウ212を測定すること、ならびに(b)(a)もしくは(aii)の測定値を使用して、認知症発症からの時間を計算することであって、認知症発症からの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価からの年数である、計算することを含む方法を提供する。
別の態様では、本開示は、アルツハイマー病の認知症状または行動症状を有する対象において認知症発症からの時間を測定するための方法であって、(a)対象からの血液試料またはCSF試料を処理してタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得し、次いで、枯渇試料を処理してタウ種の第2の集団を取得することであって、タウ種の第1の集団にはN末端タウおよび/またはmidドメインタウが濃縮されており、濃縮されたタウ種の第2の集団にはMTBR-タウが濃縮されている、取得すること;(b)タウ種の第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜、タウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること、または(bii)タウ種の第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第1の集団におけるタウの残基T217におけるリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること;ならびに(c)(b)もしくは(bii)の測定値を使用して認知症発症からの時間を計算することであって、認知症発症からの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価からの年数である、計算することを含む方法を提供する。
別の態様では、本開示は、アルツハイマー病の認知症状または行動症状を有する対象において認知症発症からの時間を測定するための方法であって、(a)残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、MTBR-タウ(例えば、MTBR-タウ299)の変化率を測定すること、および適宜、対象から得た血液試料またはCSF試料中のMTBR-タウ212を測定することと、(b)(a)もしくは(aii)の測定値を使用して、認知症発症からの時間を計算することであって、認知症発症からの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価からの年数である、計算することを含む方法を提供する。
別の態様では、本開示は、対象における認知の変化を測定するための方法であって、(a)対象から得た血液試料またはCSF試料中のT111、T153、T181、T217およびT231から選択される1つまたは複数の残基におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、および対象から得た血液試料またはCSF試料中のMTBR-タウ275、MTBR-タウ299、およびMTBR-タウ3R(MTBR-タウ306)のうちの少なくとも1つを測定することと、適宜、対象から得た血液試料またはCSF試料中の総タウを測定すること;ならびに(b)(a)の測定値を使用して認知における変化を計算することを含む方法を提供する。
上記の実施形態のいくつかでは、認知症発症までの時間を計算することは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定されたタウ種レベルの平均からの有意な逸脱量を決定することを含む。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を指す。閾値(例えば、平均を少なくとも1標準偏差を上回るもしくは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るもしくは下回る変化の程度、または経時的な変化率を使用して対象の認知症発症まで時間を計算することができる。
生物学的試料は、無症状であってもまたは無症状でなくてもよい対象から得ることができる。「無症候性の対象」は、ADのいかなる徴候も症状も示さない対象を指す。しかし、対象は、ADの徴候または症状(例えば記憶喪失、物を置き忘れること、気分または挙動の変化等)を呈し得るが、軽度認知障害または認知症の臨床診断についての十分な認知障害も機能障害も示さない。さらなる一実施形態では、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異のうちの1つを有し得る。代わりの一実施形態では、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異を有し得ない。特定の家族的な関連を有しないアルツハイマー病は、散発性アルツハイマー病と称される。
本開示の別の態様は、対象のアルツハイマー病のステージを診断するための方法を包含する。様々な実施形態では、「ADのステージ」は、ADに起因する認知症の発症から経過した時間の量(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12カ月等)として定義されてもよい。ADの臨床診断についての基準は存在するが、臨床現場では、所与の対象についての症状発症の時期が不明であるか、または認知症もしくはADのいずれかの診断が疑わしいことが多い。そのため、対象のADのステージを客観的に診断する試験が、当該技術分野において必要とされている。
部位特異的タウリン酸化、MTBR-タウ種の測定、および適宜総タウの測定を使用する代わりに、またはそれに加えて、上記の実施形態のいずれかにおいて、測定されたリン酸化レベルおよび/またはMTBR-タウレベルから計算された比、あるいは測定されたリン酸化レベルおよび/またはMTBR-タウレベルと総タウから計算された比を使用することができる。両方の手法を、実施例において詳述する。比以外の数学演算も使用してもよい。例えば、実施例では、様々な統計学的モデル(例えば線形回帰、LME曲線、LOESS曲線など)における部位特異的タウリン酸化値および/またはMTBRタウ値を、他の公知のバイオマーカー(例えばAPOEε4状態、年齢、性別、認知試験スコア、機能試験スコア等)と併せて使用する。測定の選択および数学演算の選択は、方法の特異性を最大化するために最適化されてもよい。例えば、診断の精度は、ROC曲線下面積により評価されてもよく、一部の実施形態では、0.7以上のROC AUC値(例えば0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95等)が閾値として設定される。
ヒトにおける脳のアミロイドプラークは、慣習的に、アミロイド陽電子放射断層撮影(PET)により測定される。例えば、皮質Aβプラークの11C-Pittsburgh化合物B(PiB)PET画像化は、Aβプラーク病態を検出するために一般的に使用される。皮質PiB-PETの標準取込値比(standard uptake value ratio)(SUVR)は、有意な皮質Aβプラークを確実に同定し、対象を PIB陽性(SUVR≧1.25)または陰性(SUVR<1.25)と分類するために使用される。したがって、上記の実施形態では、PET画像化により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団は、皮質PiB-PET SUVR<1.25を有する対象の集団を指すことがある。PiB結合の他の値(例えば平均皮質結合能)または皮質領域以外の目的の領域の分析も、対象をPIB陽性または陰性と分類するために使用されてもよい。他のPET造影剤も使用されてもよい。
CSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団は、Patterson et al, Annals of Neurology, 2015に記載されるように、質量分析により測定される場合、<0.12のAβ42/40測定を有する対象の集団を指すことがある。
図5および6は、ADによる認知症発症までの年数との関係における、単離タウ試料におけるタウリン酸化およびMTBR-タウレベルの動的パターンを示す。図20は、5EYO間隔ごとの様々なタウ種異常率を示す。平均から大きく逸脱するT217のリン酸化レベルは、ADによる認知症の発症の約21年前に初めて発生する。R2におけるMTBR-タウ299の変化は発症の約22年前に発生し、p-タウ217占有率の変化が最初に検出されたのに近い。R4におけるMTBR-タウ354の増加は、潜在的に脳タングルへの沈着が原因で、臨床ステージ後期には飽和する。特に、タウの病態生理を再現するMTBR-タウ299/354の比は、pT217占有率(すなわち、ADによる認知症発症の約21年前から)と高度に相関している。MTBR-タウ3Rの変化率は、ADによる認知症発症の約20年前から増加し始め、AD進行と高い相関がある。MTBR-タウ243の変化率は、ADによる認知症発症の約15年前から増加し始める。TBR-タウ212レベルの変化は、AD進行と高度に相関している。平均から大きく逸脱するT205のリン酸化レベルは、ADによる認知症の発症の約13年前に初めて発生する。
一例において、本開示の方法は、対象から得られた生物学的試料を用意すること、ならびに(ai)対象から得られた血液試料またはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜MTBR-タウ212、残基T217におけるリン酸化占有率 MTBR-タウ243、および/またはMTBR-タウ3Rを測定すること、または(aii)対象から得られた血液試料もしくはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、タウの残基T217におけるリン酸化占有率を測定すること、およびMTBR-タウ212を測定すること;(b)(ai)もしくは(aii)の測定値を使用して認知症発症までの時間を計算することであって、認知症発症までの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価までの年数である、計算すること;ならびに(c)T217におけるタウリン酸化および/またはMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比が平均より約1.5σ以上であり、T205でのタウのリン酸化が平均より約1.5σ未満高い場合、対象を、ADによる認知症の発症から約10年~約25年、または約10年~約20年であると決定することを含み、ここで、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205におけるタウリン酸化、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比およびMTBR-タウ212の正規分布により定義される標準偏差である。様々な実施形態では、T217におけるタウリン酸化および/またはMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比は、対照集団の平均を約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2σまたは2σ超ほど上回ってもよい。他の実施形態では、T217におけるタウリン酸化および/またはMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比は、対照集団の平均を約1.85σ、約1.9σ、約1.95σ、約2σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σまたは2.5σ超ほど上回ってもよい。上記の実施形態のそれぞれにおいて、T205におけるタウのリン酸化は、平均であるか対照集団の平均を約1.3σ、約1.35σ、約1.4σ、約1.45σ、約1.5σ、約1.51σ、約1.55σ、約1.6σ、約1.7σ、約1.8σ、約1.9σ、約2.0σ未満ほど上回ってもよい。あるいは、T205におけるタウのリン酸化は、対照集団の平均を約2.0σ、約2.05σ、約2.1σ、約2.2σ、約2.3σ、約2.4σ、約2.5σ、または2.5σ未満ほど上回っていてもよい。さらなる例では、T217におけるタウリン酸化および/またはMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比は、対照集団の平均を約2σ以上上回っていてもよく、T205におけるタウリン酸化は、対照集団の平均を約2σまたはそれ以下未満ほど上回っていてもよい。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る絶対値の変化の程度、または経時的な変化率を使用して対象を分類するために使用してもよい。なおさらなる実施形態では、T205および/またはT217におけるタウリン酸化の測定レベル、ならびにMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比値および/またはMTBR-タウ212値は、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
別の例では、本開示の方法は、(a)対象から得られた第1および第2の生物学的試料を用意することであって、「第1の」および「第2の」は、試料が収集された順序を指すこと、ならびに上記のようにタウ種を測定すること;(b)測定された各残基における部位特異的リン酸化の変化、およびMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比値および適宜MTBR-タウ212値の変化を計算することと;(c)リン酸化レベルT217および/またはMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比が低減するかまたは同じままであり、T205におけるリン酸化レベルが増大する場合、対象のADのステージを診断することとを含む。第1のおよび第2の単離されたタウ試料は、数日、数週または数カ月の間隔で収集されてもよい。典型的に、(a)(i)、(a)(ii)または(a)(iii)に列挙される特異的部位におけるタウリン酸化も、両方の試料について約1.5σ以上となり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で測定された、T217およびT205、T181およびT205またはT181、T205およびT217におけるタウリン酸化の正規分布により定義される標準偏差である。なおさらなる実施形態では、特異的部位におけるタウリン酸化の測定レベルおよび(a)(i)、(a)(ii)に記載のMTBR-タウ種の値は、各々それ自身と比較して予測力を改善するために、様々な数学演算において使用されてもよい。例えば、比は、測定されたリン酸化レベルから算出されてもよい。比以外の数学演算も使用してもよい。
タウリン酸化およびMTBR-タウを測定する方法は第II節に記載されており、参照によりこの節に組み込まれる。しかし、当業者は、絶対値が、絶対量定量に使用されるプロトコールおよび内部標準の供給源/規格に依存して変動し得ることを諒解するであろう。
上記の一部の実施形態では、対象からの血液試料またはCSF試料を処理して、濃縮されたタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得することは、血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または血液試料もしくはCSF試料を、タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合する第1のエピトープ結合剤およびタウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合する第2のエピトープ結合剤と接触させることを含んでもよい。第1および第2のエピトープ結合剤は、順次にまたは組み合わせて使用することができる。一部の例では、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ8.5、またはHJ8.5と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤である。一部の例では、タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、タウ1、またはタウ1と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤である。
上記の他の実施形態では、枯渇試料を処理して、濃縮されたタウ種の第2の集団を取得することは、MTBR-タウ種を濃縮するための化学抽出工程を、実行することを含んでもよい。ある特定の実施形態では、化学抽出工程は、酸を混合して枯渇試料のタンパク質を沈殿させることであって、酸は過塩素酸であってもよく、沈殿したタンパク質の除去後の上清中にMTBR-タウ種が存在している、沈殿させることを含んでもよい。あるいは、枯渇試料を処理して、濃縮されたタウ種の第2の集団を取得することは、枯渇試料を、タウのMTBR内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させることを含んでもよい。ある特定の実施形態では、エピトープ結合剤は、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載の77G7、RD3、RD4、UCB1017、もしくはPT76、またはRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載のE2814もしくは7G6、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76、E2814もしくは7G6の抗原結合フラグメント、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76、E2814もしくは7G6と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤であってもよい、接触させることを含む。
上記のさらに他の実施形態では、対象からの血液試料またはCSF試料を処理して、濃縮されたタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得することは、血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または血液試料もしくはCSF試料を、タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または血液試料もしくはCSF試料を、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合する第1のエピトープ結合剤およびタウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合する第2のエピトープ結合剤と接触させることを含んでもよく;ならびに枯渇試料を処理して、濃縮されたタウ種の第2の集団を取得することは、MTBR-タウ種を濃縮するための化学抽出工程を、実行すること、または枯渇試料を、タウのMTBR内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させることを含む。第1および第2のエピトープ結合剤は、順次にまたは組み合わせて使用することができる。ある特定の例では、タウのN末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、HJ8.5、またはHJ8.5と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であり;タウのmidドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、タウ1、またはタウ1と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤である。化学抽出工程は、酸を混合して枯渇試料のタンパク質を沈殿させることであって、酸は過塩素酸であってもよく、沈殿したタンパク質の除去後の上清中にMTBR-タウ種が存在している、沈殿させることを含んでもよい。タウのMTBR内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤は、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載の77G7、RD3、RD4、UCB1017、もしくはPT76、またはRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載のE2814もしくは7G6、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76、E2814もしくは7G6の抗原結合フラグメント、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76、E2814もしくは7G6と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤であってもよい。
IV.処置方法
本開示はまた、対象の疾患進行をステージ分類するための;対象の脳の病変をステージ分類するための;対象のための診断剤を選択するための;ならびに対象の疾患ステージおよび根底にある疾患病変に合わせた、対象のための治療剤もしくは治療剤のクラスを選択するための;本明細書に記載される認知症発症までの時間の測定値の使用を包含する。したがって、本開示の別の態様は、対象を処置するための方法であって、対象の認知症発症までの時間の測定を考慮して対象のために選択された治療剤または診断剤を対象に投与することを含む方法である。
「処置する」、「処置すること」または「処置」という用語は、本明細書において使用される場合、訓練を受け免許を受けた専門家による、それを必要とする対象への医学的ケアの提供を指す。医療は、診断検査、治療的処置、および/または予防的(prophylactic)または予防(preventative)措置であり得る。治療および予防的処置の目的は、所望されない生理学的変化または疾患/障害を防止するかまたは緩慢化する(和らげる)ことである。治療または予防的処置の有益なまたは所望の臨床結果には、限定されるものではないが、検出可能かまたは検出不可能かにかかわらず、症状の緩和、疾患の程度の減弱、安定化した(すなわち、悪化しない)病態、疾患進行の遅延または緩慢化、病態の改善または軽減、および寛解(部分または完全のいずれか)が挙げられる。「処置」は、処置を受けない場合に予測される生存期間と比較して生存期間を延長することも意味することができる。処置を必要とする者には、疾患、状態もしくは障害を既に有する者、ならびに疾患、状態もしくは障害を有する傾向にある者、または疾患、状態もしくは障害を防止する予定の者が挙げられる。一部の実施形態では、処置を受けている対象は無症候性である。「無症候性の対象」は、本明細書において使用される場合、ADのいかなる徴候も症状も示さない対象を指す。別の実施形態では、対象は、ADの徴候または症状(例えば記憶喪失、物を置き忘れること、気分または挙動の変化等)を呈し得るが、アルツハイマー病に起因する認知症の臨床診断についての十分な認知障害も機能障害も示さない。症候性または無症候性の対象はAβアミロイドーシスを有し得るが、Aβアミロイドーシスの事前知識は、処置のための必要条件ではない。なおさらなる実施形態では、対象はADを有すると診断されてもよい。上述の実施形態のいずれかでは、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異のうちの1つを有し得る。代わりの一実施形態では、対象は、優性遺伝性アルツハイマー病を引き起こすことが公知の遺伝子突然変異を有し得ない。
一実施形態では、上記のように対象を処置するための方法は、対象から得られた生物学的試料を用意すること、ならびに(ai)対象から得られた血液試料またはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜MTBR-タウ212、残基T217におけるリン酸化占有率 MTBR-タウ243、および/またはMTBR-タウ3Rを測定すること、または(aii)残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、残基T217におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびMTBR-タウ212を測定すること;ならびに(b)PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に、測定レベルが、脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で平均値から著しく逸脱している場合に、医薬組成物を対象に投与することを含んでもよい。
別の実施形態では、上記のように対象を処置するための方法は、(a)対象から得られた第1および第2の生物学的試料を用意し、各試料において測定すること、(ai)対象から得られた血液試料またはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜MTBR-タウ212、残基T217におけるリン酸化占有率 MTBR-タウ243、および/またはMTBR-タウ3Rを測定すること、または(aii)残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、タウの残基T217におけるリン酸化占有率を測定すること、およびMTBR-タウ212を測定すること;(b)(ai)もしくは(aii)の測定値もしくは測定値の変化を使用して認知症発症までの時間を計算することであって、認知症発症までの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価までの年数である、計算すること;ならびに(C)PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に、計算された測定値または変化が、脳のアミロイドプラークを有しない対照集団中で平均値から著しく逸脱している場合に、医薬組成物を対象に投与することを含んでもよい。「平均から有意に逸脱する」は、少なくとも1標準偏差、好ましくは少なくとも1.3標準偏差、より好ましくは少なくとも1.5標準偏差、またはさらにより好ましくは少なくとも2標準偏差、平均を上回るかまたは下回る値(すなわち、それぞれ1σ、1.3σ、1.5σまたは1.5σであり、σは、PET画像化および/またはCSF中のAβ42/40測定により測定される場合に脳のアミロイドプラークを有しない対照集団において測定された正規分布により定義される標準偏差である)を指す。閾値(例えば、少なくとも1標準偏差、平均を上回るかまたは下回る)を使用することに加えて、一部の実施形態では、平均を上回るかまたは下回る変化の程度を、対象を処置するための基準として使用してもよい。
部位特異的タウリン酸化の測定を使用する代わりに、またはそれに加えて、上記の実施形態のいずれかにおいて、MTBR-タウ種の測定レベルから計算される比を使用することができる。比以外の数学演算も使用してもよい。例えば、実施例では、様々な統計学的モデル(例えば線形回帰、LME曲線、LOESS曲線等)における部位特異的タウリン酸化値を、他の公知のバイオマーカー(例えばAPOEε4状態、年齢、性別、認知試験スコア、機能試験スコア等)と併せて使用する。
AβアミロイドーシスもしくはADを発症するリスクのある対象、Aβアミロイドーシスを有すると診断された対象、タウオパチーを有すると診断された対象、またはADを有すると診断された対象に対して企図される、または彼らと共に使用される多数の造影剤および治療剤は、特定の病態生理の変化を標的とする。例えば、Aβ標的療法は、一般的に、Aβ産生を低減するか、Aβ凝集に拮抗するか、または脳のAβクリアランスを増大させるように設計され、タウ標的療法は、一般的にタウリン酸化パターンを変化させるか、タウ凝集に拮抗するか、またはNFTクリアランスを増大させるように設計され、様々な療法は、CNS炎症または脳のインスリン耐性を減少するように設計される、等である。これらの様々な薬剤の有効性は、本明細書に開示される方法によってステージ分類された対象に薬剤を投与することによって改善することができる。
例示的な実施形態では、AβアミロイドーシスまたはADを発症するリスクのある対象、Aβアミロイドーシスを有すると診断された対象、タウオパチーを有すると診断された対象、またはADを有すると診断された対象(集合的に、本明細書において「Aβおよびタウ療法」と称する)に対して企図される、または共に使用される造影剤および治療剤の有効性は、T205および/またはT217におけるある特定のタウリン酸化レベル、および/またはMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を有する対象に、Aβもしくはタウ療法を投与すること、ならびに適宜、本明細書に開示され、図および実施例に示される方法によって測定されるMTBR-タウ212および/またはMTBR-タウ3Rおよび/またはMTBR-243を測定することによって改善することができる。
例えば、認知症発症までの時間の測定値が約20年、約25年、または約30年以上である実施形態では、好適な治療法は、病理学的アミロイド沈着(すなわち、対象の年齢から予想されるよりも大きいアミロイド沈着)を防止する一次予防療法であってもよい。非限定的な例には、Aβ産生を低減させるか、Aβ凝集を防止するもしくはそれに拮抗させるか、または脳のAβクリアランスを増大させる治療剤、例として、限定されるものではないが、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、受動免疫療法(限定されるものではないが、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、もしくは抗ApoE抗体を含む)、能動免疫療法が挙げられる。
認知症発症までの時間の測定値が約25年~約15年、または約20年~約15年である実施形態では、好適な治療法は、さらなる病理学的アミロイドベータ沈着を防止するか、または対象の既存のアミロイドベータプラーク負荷を減少させる二次予防療法であってもよい。非限定的な例には、Aβ産生を低減させるか、Aβ凝集を防止するもしくはそれに拮抗させるか、または脳のAβクリアランスを増大させる治療剤、例として、限定されるものではないが、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、および受動免疫療法(限定されるものではないが、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、もしくは抗ApoE抗体を含む)が挙げられる。
認知症発症までの時間の測定値が約15年以下である実施形態では、好適な治療法は、さらなる病理学的アミロイドベータ沈着を防止するか、または対象の既存のアミロイドベータプラーク負荷を減少させる治療法に加えて、タウ凝集を防止するかもしくはタウ凝集に拮抗する、または神経原線維変化を標的とする二次予防療法であってもよい。非限定的な例には、タウ凝集を防止するもしくはそれに拮抗させるか、または神経原線維変化を標的とする治療剤が含まれ、タウタンパク質凝集阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、受動免疫療法(抗タウ抗体を含むがこれらに限定されない)が挙げられる。
抗Aβ抗体の非限定的な例には、ソラネズマブ(LY2062430;Eli Lilly)、アデュカヌマブ(BI-IB037;Biogen)、クレネズマブ(MABT102A、RG7412、GenentechおよびRoche)、ガンテネルマブ(RO4909832、RG14502;Roche)、バピネウズマブ(bapinezumab)(JanssenおよびPfizer)、BAN2401(Eisai)、LY3002813(Lilly)、RO7126209(Roche)、AAB-003、およびGK933776が挙げられる。
抗タウ抗体の非限定的な例には、セモリネマブ(AC ImmuneおよびGenentech)、ABBV-8E12(Abbvie)、BIIB092(Biogen)、BIIB076(Biogen)、LY3303560(Lilly)、RO7105705(Roche/Genentech)、JNJ-63733657(Janssen)、Lu AF87908(Lundbeck)が挙げられる。
抗ApoE抗体の非限定的な例には、HJ6.3、HAE-4(WUSTL、Denali Therapeutics)が挙げられる。
治療剤の非限定的な例には、コリンエステラーゼ阻害剤、N-メチルD-アスパルテート(NMDA)アンタゴニスト、抗うつ剤(例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤、非定型抗うつ剤、アミノケトン、選択的セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤、三環系抗うつ剤等)、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、抗Aβ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、抗タウ抗体(抗原結合フラグメント、その変異体または誘導体を含む)、抗TREM2抗体(その抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を含む)、TREM2アゴニスト、幹細胞、栄養補助食品(例えばリチウム水、リポ酸を有するオメガ3脂肪酸、長鎖トリグリセリド、ゲニステイン、レスベラトロール、クルクミンおよびグレープシード抽出物等)、セロトニン受容体6のアンタゴニスト、p38アルファMAPK阻害剤、組換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、受動免疫療法、活性ワクチン(例えばCAD106、AF20513等)、タウタンパク質凝集阻害剤(例えばTRx0237、塩化メチルチオニミウム等)、血糖管理を改善するための治療(例えばインスリン、エキセナチド、リラグルチドピオグリタゾン等)、抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ9A阻害剤、シグマ1受容体アゴニスト、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、ホスファターゼ阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、CB1および/またはCB2エンドカンナビノイド受容体部分アゴニスト、β-2アドレナリン受容体アゴニスト、ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニスト、5-HT2A逆アゴニスト、アルファ-2cアドレナリン受容体アンタゴニスト、5-HT1Aおよび1D受容体アゴニスト、グルタミニル-ペプチドシクロトランスフェラーゼ阻害剤、APP産生の選択的阻害剤、モノアミンオキシダーゼB阻害剤、グルタミン酸受容体アンタゴニスト、AMPA受容体アゴニスト、神経成長因子興奮剤、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、神経栄養剤(neurotrophic agent)、ムスカリン性M1受容体アゴニスト、GABA受容体調節因子、PPAR-ガンマアゴニスト、微小管タンパク質調節因子、カルシウムチャネル遮断薬、抗高血圧薬、スタチン、ならびにそれらの任意の組合せが挙げられる。例示的な実施形態では、医薬組成物は、キナーゼ阻害剤を含んでもよい。好適なキナーゼ阻害剤は、thousand-and-oneアミノ酸キナーゼ(TAOK)、CDK、GSK-3β、MARK、CDK5またはFynを阻害し得る。別の例示的な実施形態では、医薬組成物は、ホスファターゼ活性化剤を含んでもよい。非限定的な例として、ホスファターゼ活性化剤は、プロテインホスファターゼ2Aの活性を増大させ得る。一部の実施形態では、処置は、限定されるものではないが、タウリン酸化パターンを変化させるか、タウ凝集に拮抗するか、または病理学的タウアイソフォームおよび/または凝集体のクリアランスを増大させる活性医薬成分を含む、タウ標的療法を含む医薬組成物である。一部の実施形態では、処置は、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、抗TREM2抗体、TREM2アゴニスト、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、ワクチン、またはタウタンパク質凝集阻害剤である。
治療剤のクラスの非限定的な例および特定の例もまた、以下の表に提示される。
例えば、T217におけるタウリン酸化およびMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比値が、対照集団の平均を約1.5σ以上上回っており、T205におけるタウリン酸化は、平均に近いか対照集団の平均を約1.5σ以上未満ほど上回っている場合、好ましい治療剤には、対象がアミロイド陽性になるのを防止するように設計されたもの(例えば、Aβ産生を減少させる、Aβ凝集に拮抗させるなどのように設計されたアミロイド標的療法)を挙げることができる。別の例として、T217におけるタウリン酸化およびMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比値が、対照集団の平均を約1.5σ以上上回っており、T205におけるタウリン酸化は、対照集団の平均を約1.5σ以上ほど上回っている場合、好ましい治療剤には、アミロイド沈着によって対象の既存のプラーク負荷が増加または減少するのを防止するように設計されたものを挙げることができる。別の例として、T217におけるタウリン酸化およびMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比値、およびT205が、対照集団の平均を約1.5σ以上上回っている場合、好ましい治療剤には、アミロイド沈着によって対象の既存のプラーク負荷が増加、減少するのを防止するように、タウの凝集を防止するように、またはNFTを標的にするように設計されたものを挙げることができる。別の例として、T217におけるタウリン酸化およびMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比値、およびT205が、対照集団の平均を約1.5σ以上上回っており、T217でのタウリン酸化およびMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比の値がプラトーとなるかまたは低下しており、T205での総タウおよび/またはタウリン酸化が増大している場合、好ましい治療剤には、アミロイド沈着によって対象の既存のプラーク負荷が増加、減少するのを防止するように、タウの凝集を防止するように、またはNFTを標的にするように設計されたもの、ならびにAD患者に特異的なものを挙げることができる。本明細書に開示される詳細は、限定されるものではないが、前述の段落で特定されたものを含む、他の標的(例えば、CNS炎症、ApoEなど)用に設計された治療剤を投与するために、同様に使用することができる。
以下の実施例は、本発明の様々な反復を例証する。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において良好に機能するように本発明者らによって発見された技術を表すことが、当業者には理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態における変更を行うことができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似した結果をなお得られることを理解するべきである。したがって、添付の図面において記載されるかまたは示されるすべての事柄は、例示的なものとして解釈されることとなり、意味を限定するものではない。
[実施例1]
いくつかの試料処理法- Sato et al., 2018に記載のN末端タウおよびmidドメインタウの免疫沈降法(IP);化学抽出法(CX);およびIP法とCX法を組み合わせてMTBRタウを濃縮するプロセス(PostIP-CX)が開発された。CXおよびPostIP-CX法は、MTBRタウを検出および定量するために特別に開発された。これらの方法の概要を図2に示す。
簡潔には、CSF(約475μL)を、内部標準として15Nタウ-441(2N4R)均一標識を含有する溶液(100pg/μLのおよそ10μL溶液、または200pg/μLのおよそ5μL溶液)と混合した。N末端タウおよび中間ドメインタウ種をタウ1およびHJ8.5抗体で免疫沈降し、その後、以前に記載されているように(Sato et al., 2018)処理してトリプシン消化させた。
CX法については、CSF(約475μL)を、内部標準として15Nタウ-441(2N4R)均一標識を含有する溶液(100pg/μLのおよそ10μL溶液、または200pg/μLのおよそ5μL溶液)と混合した。次に、タウを化学的に抽出した。25μLの過塩素酸を使用して、非常に豊富なCSFタンパク質を沈殿させた。混合し、氷上で15分間インキュベートした後、混合物を4℃、20,000gで15分間遠心分離し、Oasis HLB 96-ウェルμElutionプレート(Waters)を使用して、以下の工程に従って上清をさらに精製した。プレートを300μLのメタノールで1回洗浄し、500μLの0.1%FA水溶液で1回平衡化した。上清を、Oasis HLB 96-ウェルμElutionプレートに加え、固相に吸着させた。次に、固相を、500μLの0.1%FA水溶液で1回洗浄した。溶出緩衝液(100μL;水中35%アセトニトリルおよび0.1%FA)を添加し、溶出液をSpeed-vacによって乾燥させた。乾燥試料を、50mM TEABC中の50μLのトリプシン溶液(10ng/μL)によって溶解し、37℃で20時間インキュベートした。
PostIP-CX法については、免疫沈降後のCSF(すなわち、上記のIP法の後に残る上清)を、CX法に記載したように処理した。
トリプシン消化後、すべての試料をC18 TopTipでの固相抽出によって精製した。この精製プロセスでは、差分定量のために、残基354~369(MTBRタウ-354)および354~368(タウ368)のAQUA内部標準ペプチド5fmolずつをスパイクした。試料を溶出する前に、水中の3%過酸化水素および3%FAをビーズに添加し、続いて4℃で終夜インキュベートして、メチオニンを含有するペプチドを酸化させた。溶出液を凍結乾燥させ、PRMモードで動作するOrbitrap Fusion Lumos TribridまたはOrbitrap Tribrid Eclipse質量分析計(Thermo Scientific)に連結したnanoAcquity UPLCシステムでMS分析を行う前に、27.5μLの水中2%アセトニトリルおよび0.1%FAに再懸濁した。
CX法およびPostIP-CX法によって、質量分析法によって検出可能および定量可能なMTBRタウを含む試料を生成した。MTBRタウの定量可能なシグナルは、IP法では得られなかった。実証されていないが、同様の感度を有するMTBRタウを検出および定量するための代替方法もまた使用することができると考えられている。
[実施例2]
MSによるCSFタウ分析:CSF(455μL)を、内部標準として15Nタウ-441(2N4R)均一標識(100pg/μL)を含有する10μLの溶液と混合した。主にN末端~midドメイン領域で構成されるタウ種を、タウ1およびHJ8.5抗体により免疫沈降した。免疫沈降したタウ種を、以前に記載されているように(Sato et al., 2018)処理し、消化させた。続いて、20μLの15N-タウ内部標準(100pg/μL)を免疫沈降後のCSFにスパイクした。次に、以前に報告されたように(Barthelemy et al., 2016b)、いくつかの変更を加えてタウを化学的に抽出した。25μLの過塩素酸を使用して、非常に豊富なCSFタンパク質を沈殿させた。混合し、氷上で15分間インキュベートした後、混合物を4℃、20,000gで15分間遠心分離し、Oasis HLB 96-ウェルμElutionプレート(Waters)を使用して、以下の工程に従って上清をさらに精製した。プレートを300μLのメタノールで1回洗浄し、500μLの0.1%FA水溶液で1回平衡化した。上清を、Oasis HLB 96-ウェルμElutionプレートに加え、固相に吸着させた。次に、固相を、500μLの0.1%FA水溶液で1回洗浄した。溶出緩衝液(100μL;水中35%アセトニトリルおよび0.1%FA)を添加し、溶出液をSpeed-vacによって乾燥させた。乾燥試料を、50mM TEABC中の50μLのトリプシン溶液(10ng/μL)によって溶解し、37℃で20時間インキュベートした。
免疫沈降試料と化学抽出試料の両方をインキュベートした後、各トリプシン消化物をC18 TopTipでの固相抽出によって精製した。この精製プロセスでは、差分定量のために、残基354~369(MTBRタウ-354)および354~368(タウ368)のAQUA内部標準ペプチド5fmolずつをスパイクした。試料を溶出する前に、水中の3%過酸化水素および3%FAをビーズに添加し、続いて4℃で終夜インキュベートして、メチオニンを含有するペプチドを酸化させた。溶出液を凍結乾燥させ、PRMモードで動作するOrbitrap Fusion Lumos TribridまたはOrbitrap Tribrid Eclipse質量分析計(Thermo Scientific)に連結したnanoAcquity UPLCシステムでMS分析を行う前に、27.5μLの水中2%アセトニトリルおよび0.1%FAに再懸濁した。19個のCSFタウペプチドを定量した(表1)。CSFタウ分析の概略手順を、図2Aに記載する。
統計分析:特に指定がない限り、バイオマーカー値の差異を一元配置ANOVAで評価した。両側p<0.05は統計的に有意と考えられ、Benjamini-Hochberg偽発見率(FDR)法(BenjaminiおよびHochberg, 1995)を使用して、FDRを5%に設定して、多重比較のために補正した。Spearman相関を使用して、タウバイオマーカーと認知試験測定値およびタウPET SUVRの間の関連性を評価した。
[実施例3]
「PostIP-IP」と称される追加の試料処理方法を開発して、実施例1および2に記載のPostIP-CX方法と比較した。PostIP-IP法の例示的なワークフローを、図3および図4に提供する。
実施例2に記載のLOAD100コホートから得られたCSF試料を、PostIP-CX法(実施例1)またはPostIP-IP法(本実施例)によって処理し、次いで、実施例2に一般に記載したようにLC-MSによって分析した。
[実施例4]
血漿および脳脊髄液(CSF)から増加している可溶性タウ種を同定および定量するための方法の進歩により、アルツハイマー病(AD)におけるタウ関連病変の役割をよりよく理解する機会が提供される。優性遺伝性および散発性アルツハイマー病に関する最近の研究では、タウタンパク質の特定の位置における過剰リン酸化、N末端フラグメントおよび微小管結合領域(MTBR)が、アルツハイマー病カスケードの様々な態様に関連していることが実証されている。しかし、様々な可溶性タウ種によって提供される潜在的な特有の情報を評価する必要がある。優性遺伝アルツハイマーネットワーク(Dominantly Inherited AD Network)(DIAN)研究は、複数の可溶性タウ種と疾患進行ならびにアミロイドおよび神経変性の複数のバイオマーカーとの関連を調査する機会を提供する。
この実施例では、12種を超えるCSFリン酸化タウ(p-タウ)および短縮化MTBR種を、DIANに登録された227名の突然変異保持者(MC)(152名の無症状MC、77名の有症状MC)および141名の非保有者から定量した。症状発症までの推定年数(EYO)を予測するためのp-タウとMTBR種の最適な組合せを、段階的選択による線形回帰を使用して評価した。相関ヒートマップおよび階層的クラスタリングを使用して、タウ/p-タウ種および他のバイオマーカー間のベースラインレベルおよび長期的変化率の関連パターンを調査した。
DIANは、APP、PSEN1、またはPSEN2遺伝子におけるADの原因となる既知の突然変異を有する親の生物学的な成人した子供である個人(突然変異保持者および非保持者、無症状および有症状)の国際的多施設レジストリーであり、DIANでは、個人を、標準的な機器を使用して、参加時におよびその後長期的に均一な手段で評価する。標準的な手段には以下のものが含まれる:(1)統一データセット(UDS)の臨床および認知バッテリー、ならびに追加の神経心理学的測定および性格測定;(2)アルツハイマー病ニューロイメージングイニシアチブ(ADNI)構造的画像化(磁気共鳴画像法、すなわちMRI、機能的画像化(18フルオロデオキシグルコース陽電子放出断層撮影法、すなわちFDG PET)、およびアミロイド画像法(ピッツバーグコンパウンドB(Pittsburgh Compound-B)、すなわちPIB)PETプロトコール);(3)ADNIプロトコールに従って、DNA分析およびADの推定バイオマーカーのアッセイのための体液(血液、CSF)の収集、ならびに(4)検死される個人の脳組織の均一な組織病理学的検査。DIANでは、有症状個人とは、臨床認知症評価がゼロより大きい(CDR>0)個人である。臨床認知症評価は、認知症の症状の重症度を定量するために使用される周知の尺度である。DIANにおける症状リスクは、EYOによって定義される。ここでのEYOは、認知症と診断された親の年齢から参加者の現在の年齢を差し引いたものと定義される。ベースラインで有症状であった参加者については、CDR>0で評価し、報告された実際の症状発症時の年齢を各臨床評価時の年齢から差し引いてEYOを定義した。
リン酸化タウの検出および定量化:試料処理
ヒトCSFを、アミロイド陰性および認知に関して正常な(CDR=0)対照(n=47、年齢60+)ならびにアミロイド陽性およびCDR>0 AD患者(n=33、年齢60+)を含む参加者80名のコホートからプールした。対照およびAD群から、それぞれ500μL CSFアリコートの5つおよび7つのプールを生成した。最初の収集時に、CSFを1,000×gで10分間スピンダウンして、細胞デブリを除去し、-80℃にて直ちに冷凍した。プロテアーゼ阻害剤カクテルを実験中に添加した。タウを、一部変更を加えて、以前に説明されているように(Sato et al., 2018)、免疫沈降させ、脱塩した。簡潔には、CNBr-活性化セファロースビーズ(GE Healthcare 17-0430-01)を、ビーズグラム当たり3mg抗体の濃度で、抗体タウ1およびHJ8.5に別々に架橋した。試料に、試料1マイクロリットル当たり目的の各配列について10fmolのリン酸化タウおよび100fmolの非リン酸化タウの量になるように、AQUAペプチド(ThermoFisher Scientific)をスパイクした。タウおよびp-タウ濃度は、これらの内部標準を使用して計算する。可溶性タウは、洗剤(1%NP-40)、カオトロピック試薬(5mMグアニジン)およびプロテアーゼ阻害剤(Roche Complete Protease Inhibitor Cocktail)中で免疫沈降させた。セファロースビーズにコンジュゲートした抗タウ1およびHJ8.5抗体は、不活化したセファロースビーズ中でそれぞれ10倍および5倍希釈し、30μLの抗体ビーズの50%スラリーを、溶液と共に室温にて90分間回転させた。ビーズを25mM重炭酸トリエチルアンモニウム緩衝剤(TEABC、Fluka 17902)中で3回洗浄した。結合したタウを、400ng MSグレードトリプシン(Promega、V5111)を用いて、37℃にて16時間ビーズ上で消化した。消化物をTopTip C18(Glygen、TT2C18.96)上にロードし、脱塩し、製造者の使用説明書に従って溶出させた。溶出させたペプチドを真空遠心分離(CentriVap Concentrator Labconco)により乾燥させ、2%アセトニトリルおよびMSグレード水中0.1%ギ酸の25μLの溶液中で再懸濁した。
ヒトの血液を、上記と実質的に同じ手段で処理するが、より大量の血液(例えば、約500μL~約10mL)を使用してもよい。
追加の詳細は、PCT/米国特許出願公開第2019/030725号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
MTBR-タウの検出および定量:試料処理
MTBRタウ種の検出および定量のために、CSFを図4に示すように処理した。タウ1およびHJ8.5による免疫沈降は、上で一般に説明したとおりであった。E2814は、抗タウ抗体(Eisai)である。例えば、Roberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8(1): 13を参照されたい。TopTip C18を使用したトリプシン消化および脱塩を、上で一般に説明したとおりに実行した。ヒトの血液を、実質的に同じ手段で処理するが、より大量の血液(例えば、約0.5mL~約10mL)を使用してもよい。
リン酸化タウおよびMTBRタウの検出および定量:質量分析
ペプチド再懸濁液の5μLアリコートを、MS分析のためにnano-Acquity LCに注入した。nano-Acquity LC(Waters Corporation、Milford、MA)に、HSS T3 75μm×100μm、1.8μmカラムを取り付け、流速0.5μL/分の溶液AおよびBのグラジエントを使用して、ペプチドを分離した。溶液Aを、MSグレード水中0.1%ギ酸で構成し、溶液Bを、アセトニトリル中0.1%ギ酸で構成した。ペプチドは、2%から20%の溶液Bで28分、次いで20%から40%の溶液Bでさらに13分、その後85%の溶液Bまでさらに3分上昇させるグラジエントでカラムから溶出させて、カラムを清掃した。Orbitrap Fusion Lumosは、Nanospray Flexエレクトロスプレーイオン源(Thermo Fisher Scientific、San Jose、CA)を備えていた。10μm SilicaTipエミッター(New Objective、Woburn、Ma)からイオン源中へとスプレーされたペプチドイオンは、四重極子を標的化し、四重極子において単離された。これらをHCDによりフラグメント化し、Orbitrapでイオンフラグメントを検出した(分解能30,000または60,000、質量範囲150~1200m/z)。ペプチドプロファイリングのための親水性ペプチド(SSRcalc<9、すべてロイシンなし)のモニタリングを、HSS T3 300μm×100μm、1.8mmカラム、4μl/分の流速で行い、2%から12%の溶液Bのグラジエントで溶出を発生させ、スプレーを30mm SilicaTipエミッター上で作動させた。
一部のMS遷移のリストを以下に示す。ペプチドは左の列に列挙する。命名法「K.IATPR.G」は、トリプシンペプチドがIATPR(配列番号16)であることを示す。「K.IATPR.G」における「.」は、切断部位をマークするためにソフトウェアプログラムによって使用される。
結果
EYOを予測する場合、タウバイオマーカーの最良の組合せは、すべての突然変異保持者(MC)についてのT205におけるリン酸化占有率(pT205/T205)、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比、およびMTBR-タウ212であった(r=0.6)。pT205/T205、pT217/T217、およびMTBR-タウ212は無症状MCに対して最良の組合せであり(r=0.47)、pT205/T205単独は有症状MCに対して最も予測的であった(r=0.12)。ベースラインリン酸化占有率(pT217/T217、pT181/T181、pT153/T153、pT111/T111、pT205/T205、pS208/S208)および2つのMTBR比(MTBR-タウ299/MTBR-タウ354、MTBR-タウ299/MTBR-タウ282))は、アミロイド病変(PiB PET、CSF Aβ42/Aβ40比)と共にクラスター化されているが、一方、MTBR-タウは総タウおよび神経損傷/神経炎症バイオマーカー(YKL40、NGRN、VILIP1、SNAP25)とより関連していた。pT153/T153の年次変化は、PiB PET(-0.43)およびCSF Aβ42/Aβ40(0.67)の年次変化と最も高い相関を有し;一方、pT217/T217、pT181/T181、総タウ、pT153/T153、MTBR-3R、pT111/T111、pT231/T231、MTBR-タウ275、およびMTBR-タウ299の年次変化は、認知複合の年次変化と高い相関があった(r>0.5)。
この研究は、AD進行に伴って起こる可溶性タウ関連変化の多様性をさらに強調している。重要なことに、この研究は、疾患進行および特定の非タウバイオマーカーの変化を追跡するタウ関連の病理学的変化の進行には明確な段階があることを示唆している。これらの知見は、ADにおけるタウの役割および治療試験の結果を理解するのに役立つ可能性がある。これらの知見は、ADの診断、予後、および処置にも活用される。非限定的な例として、これらの知見は、対象が追加の診断試験を受けるべきかどうか、および/または適切な試験(例えば、アミロイドベースのPET、タウベースのPETなど)を選択するべきかどうかを決定するために使用することができる。別の非限定的な例として、これらの知見は、対象の疾患ステージおよび根底にある疾患病変(タウバイオマーカーによって測定される)に合わせた、対象のための治療剤もしくは治療剤のクラスを選択するために使用することができる。
[実施例5]
背景:脳タウ凝集は、アルツハイマー病(AD)の病理学的特質であり、タウ微小管結合領域(MTBR)は、ADタウタングルのコアである。近年、R1におけるタウ残基243~254(MTBR-タウ243)、R2における299~317(MTBR-タウ299)、およびR4における354~369(MTBR-タウ354)が、散発性AD脳タングルに特異的に富んでいると同定された。CSF中の対応する可溶性MTBR種は、タウ-PETによって測定される臨床進行およびタウ病変と高い相関を伴って増加した。細胞外MTBR-タウは近年ヒトADで発見されたため、MTBR-タウはこの領域を標的とする抗体の優先標的となっている。この研究では、これらのMTBR-タウの変化がいつ発生したか、およびDIANの臨床的変化、認知的変化およびバイオマーカーの変化との関係を決定しようとした。
方法:CSF中の12を超えるタウ種を定量するための高精度方法を開発した。MTBR-タウをプロファイリングするために、R2およびR4に対して二重エピトープである抗MTBR、抗体E2814および潜在的なタウ薬剤を使用して免疫沈降を実行した。DIAN観察コホートに登録された227名の突然変異保持者(MC)(無症状152名、有症状77名)および非保持者141名からのCSFを分析した。
結果:CSFMTBR-タウは、MCにおいて特異的に増加し、異なる時点で変化した。R2におけるMTBR-タウ299の変化は、推定症状発症年(EYO)-22で発生し、p-タウ217占有率の変化が最初に検出された(EYO-21)のに近かった。R4におけるMTBR-タウ354の増加は、潜在的に脳タングルへの沈着が原因で、臨床ステージ後期には飽和した。特に、タウの病態生理を再現するMTBR-タウ299/354の比は、特に無症状MCにおいて、初期アミロイドマーカーであるp-タウ217占有率と高度に相関しており(r=0.82)、これは、タウ-PET陰性集団における抗MTBR療法を評価するためのバイオマーカーとしてのMTBR-タウおよびp-タウ217を示している。
結論:発明者らは、症状発症の何年も前から変化があり、症状ステージまで継続するタウタングルの可溶性尺度であるMTBR種を同定し、E2814などの抗MTBR-タウ抗体を用いて早期介入を実施し得ることを示唆した。最後に、発明者らは、これらの結果を利用して、無症状および有症状保持者の独立したコホートにおける可溶性MTBR-タウを標的とする、DIAN試験ユニット(DIAN-TU)E2814薬物におけるタウ次世代プラットフォームを設計した。散発性ADおよびDIADでは、CSFの「E2814関連」MTBRが、ADにおいて特異的に増加した。AD連続体全体におけるE2814関連MTBR-タウプロファイルは、sADとDIADの間で類似しているように見える。sADおよびDIADの初期ステージ(前臨床ステージ)(-20EYO)での増加。E2814関連MTBRのレベルは、AD発症後に低下する(CDR>1、EYO>0)。MTBR-260(後期R1)、270(初期R2)、282(中期R2)、および299(R2~R3)では、E2814関連MTBR-タウレベルはCXレベルとよく相関している。MTBR-243(R1上流)および354(R4)では、E2814関連MTBRタウレベルとCXレベルの相関は低く、これは潜在的にMTBR切断および脳内のタウ凝集への動員が原因である。E2814-IP研究により、CSFMTBR-タウには複数の切断部位、例えば254(R1上流)~260(初期R1)および354(R4)~386(C末端)が存在することが明らかになった。長期的評価により、MTBR-タウ299および354がAD発症前に増加するが、一方、AD発症後に減少する特異的軌跡が明らかになった(→脳タウ凝集体の反映)。MTBR-299/354の比を考慮する場合、CSF中の「E2814関連MTBR-タウ」はADにおける認知尺度を予測することができる。CSF中の「E2814関連MTBR-タウ」は、MTBR-299/354の比を考慮する場合、「初期ステージAD」のみにおけるタウ病変(タウ-PET)を再現する。

Claims (39)

  1. アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を伴わない対象において認知症発症までの時間を測定する方法であって、
    (a)前記対象から得られた血液試料またはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜MTBR-タウ212、残基T217におけるリン酸化占有率 MTBR-タウ243、MTBR-タウ3R、もしくはそれらの組合せを測定すること、または
    (aii)前記対象から得られた血液試料もしくはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、残基T217におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびMTBR-タウ212を測定すること;ならびに
    (b)(a)もしくは(aii)の前記測定値を使用して、認知症発症までの時間を計算することであって、認知症発症までの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価までの年数である、計算すること
    を含む方法。
  2. アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を伴わない対象において認知症発症までの時間を測定する方法であって、
    (a)前記対象からの血液試料またはCSF試料を処理してタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得し、次いで、枯渇試料を処理してタウ種の第2の集団を取得することであって、
    タウ種の前記第1の集団にはN末端タウおよび/またはmidドメインタウが濃縮されており、
    濃縮されたタウ種の前記第2の集団にはMTBR-タウが濃縮されている、取得すること;
    (b)タウ種の前記第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の前記第2の集団におけるMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜、タウ種の前記第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること、または
    (bii)タウ種の前記第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第1の集団における残基T217におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の前記第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること;ならびに
    (c)(b)もしくは(bii)の前記測定値を使用して認知症発症までの時間を計算することであって、認知症発症までの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価までの年数である、計算すること
    を含む方法。
  3. 前記対象からの血液試料またはCSF試料を処理して、濃縮されたタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得することが、
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合する第1のエピトープ結合剤およびタウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合する第2のエピトープ結合剤と接触させることであって、前記第1および第2のエピトープ結合剤を順次にまたは同時に使用する、接触させること
    を含み;
    タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合する前記エピトープ結合剤は、HJ8.5、またはHJ8.5と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく、タウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合する前記エピトープ結合剤は、タウ1、またはタウ1と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよい、請求項2に記載の方法。
  4. 前記枯渇試料を処理して、濃縮されたタウ種の第2の集団を取得することは、
    MTBR-タウ種を濃縮するための化学抽出工程を実行することであって、
    前記化学抽出工程は、酸を混合して前記枯渇試料のタンパク質を沈殿させることであって、前記酸は過塩素酸であってもよく、前記沈殿したタンパク質の除去後の上清中に前記MTBR-タウ種が存在している、沈殿させることを含んでもよい、実行すること;あるいは、
    前記枯渇試料を、タウの前記MTBR内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させることであって、
    前記エピトープ結合剤は、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載の77G7、RD3、RD4、UCB1017、もしくはPT76、またはRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載の7G6、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6の抗原結合フラグメント、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤であってもよい、接触させること
    を含む、請求項2に記載の方法。
  5. 前記対象からの血液試料またはCSF試料を処理して、濃縮されたタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得することが、
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合する第1のエピトープ結合剤およびタウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合する第2のエピトープ結合剤と接触させることであって、前記第1および第2のエピトープ結合剤を順次にもしくは同時に使用する、接触させること
    を含み
    タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合する前記エピトープ結合剤は、HJ8.5、もしくはHJ8.5と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく、タウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合する前記エピトープ結合剤は、タウ1、もしくはタウ1と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく;ならびに
    前記枯渇試料を処理して、濃縮されたタウ種の第2の集団を取得することは、
    MTBR-タウ種を濃縮するための化学抽出工程を実行することであって、
    前記化学抽出工程は、酸を混合して枯渇試料のタンパク質を沈殿させることであって、前記酸は過塩素酸であってもよく、沈殿したタンパク質の除去後の上清中に前記MTBR-タウ種が存在している、沈殿させることを含んでもよい、実行すること;あるいは、
    前記枯渇試料を、タウの前記MTBR内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させることであって、
    前記エピトープ結合剤は、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載の77G7、RD3、RD4、UCB1017、もしくはPT76、またはRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載の7G6、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6の抗原結合フラグメント、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤であってもよい、接触させること
    を含む、請求項2に記載の方法。
  6. 前記対象は、CDRがゼロである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 対象の疾患進行をステージ分類するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の認知症発症までの時間の測定値の使用。
  8. 対象の脳病変をステージ分類するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の認知症発症までの時間の測定値の使用。
  9. 対象に対する治療剤または診断剤を選択するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の認知症発症までの時間の測定値の使用。
  10. アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を伴わない対象を処置するための方法であって、前記対象に請求項9に記載の治療剤または診断剤を投与することを含む方法。
  11. 前記診断剤がタウPETトレーサーであり、前記タウPETトレーサーが、フロルタウシピル(Lilly)、MK-6240(Cerveau)、PI-2620(Life Molecular Imaging)、RO-948(Roche)、GPT1(Genentech)、JNJ-067(Janssen)、JNJ-64349311(Janssen)、APN-1607、SNFT-1(Tokohu University)、PM-PBB3、AV1451、THK5351、およびTHK5317、からなる群から選択されていてもよい、請求項9に記載の使用または請求項10に記載の方法。
  12. 前記診断剤がAβPETトレーサーであり、前記AβPETトレーサーが、FDDNP、AV-45、GE067、BAY94-9172、PI、GDF、NaF、p5+14、フロルベタピル、フロルベタベン、およびフルテメタモール、からなる群から選択される、請求項9に記載の使用または請求項10に記載の方法。
  13. 前記治療剤が、Aβ産生を低減させるか、Aβ凝集を防止するかもしくはそれに拮抗させるか、または脳のAβクリアランスを増大させ、前記治療剤が、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、受動免疫療法(限定されるものではないが、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、もしくは抗ApoE抗体を含む)、または能動免疫療法であってもよい、請求項9に記載の使用または請求項10に記載の方法。
  14. 前記治療剤が、タウの凝集を防止するかまたはそれに拮抗し、神経原線維変化クリアランスを増大させ、タウのリン酸化パターンを変化させ、前記治療剤が、タウタンパク質凝集阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、受動免疫療法(限定されるものではないが、抗タウ抗体を含む)、または能動免疫療法であってもよい、請求項9に記載の使用または請求項10に記載の方法。
  15. 前記治療剤が、ガンマセクレターゼ阻害剤またはベータセクレターゼ阻害剤である、請求項9に記載の使用または請求項10に記載の方法。
  16. 前記治療剤が、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、または抗ApoE抗体である、請求項9に記載の使用または請求項10に記載の方法。
  17. アルツハイマー病の認知症状または行動症状を有する対象において認知症発症からの時間を測定するための方法であって、
    (a)前記対象から得られた血液試料またはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、MTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜MTBR-タウ212、残基T217におけるリン酸化占有率 MTBR-タウ243、MTBR-タウ3R、もしくはそれらの組合せを測定すること、または
    (aii)前記対象から得られた血液試料もしくはCSF試料中の残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、タウの残基T217におけるリン酸化占有率を測定すること、およびMTBR-タウ212を測定すること;ならびに
    (b)(a)もしくは(aii)の前記測定値を使用して、認知症発症からの時間を計算することであって、認知症発症からの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価からの年数である、計算すること
    を含む方法。
  18. アルツハイマー病の認知症状または行動症状を有する対象において認知症発症からの時間を測定するための方法であって、
    (a)前記対象からの血液試料またはCSF試料を処理してタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得し、次いで、前記枯渇試料を処理してタウ種の第2の集団を取得することであって、
    タウ種の前記第1の集団にはN末端タウおよび/またはmidドメインタウが濃縮されており、
    濃縮されたタウ種の前記第2の集団にはMTBR-タウが濃縮されている、取得すること;
    (b)タウ種の前記第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の前記第2の集団におけるMTBR-タウ299/MTBR-タウ354比を測定すること、および適宜、タウ種の前記第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること、または
    (bii)タウ種の前記第1の集団における残基T205におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の第1の集団におけるタウの残基T217におけるリン酸化占有率を測定すること、およびタウ種の前記第2の集団におけるMTBR-タウ212を測定すること;ならびに
    (c)(b)もしくは(bii)の測定値を使用して認知症発症からの時間を計算することであって、認知症発症からの時間は、ゼロより大きい臨床認知症評価からの年数である、計算すること
    を含む方法。
  19. 前記対象からの血液試料またはCSF試料を処理して、濃縮されたタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得することが、
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合する第1のエピトープ結合剤およびタウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合する第2のエピトープ結合剤と接触させることであって、前記第1および第2のエピトープ結合剤を順次にまたは同時に使用する、接触させること
    を含み;
    タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合する前記エピトープ結合剤は、HJ8.5、またはHJ8.5と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく、タウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合する前記エピトープ結合剤は、タウ1、またはタウ1と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよい、請求項18に記載の方法。
  20. 前記枯渇試料を処理して、濃縮されたタウ種の第2の集団を取得することは、
    MTBR-タウ種を濃縮するための化学抽出工程を実行することであって、
    前記化学抽出工程は、酸を混合して前記枯渇試料のタンパク質を沈殿させることであって、前記酸は過塩素酸であってもよく、前記沈殿したタンパク質の除去後の上清中に前記MTBR-タウ種が存在している、沈殿させることを含んでもよい、実行すること;あるいは、
    前記枯渇試料を、タウの前記MTBR内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させることであって、
    前記エピトープ結合剤は、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載の77G7、RD3、RD4、UCB1017、もしくはPT76、またはRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載の7G6、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6の抗原結合フラグメント、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤であってもよい、接触させること
    を含む、請求項18に記載の方法。
  21. 前記対象からの血液試料またはCSF試料を処理して、濃縮されたタウ種の第1の集団および枯渇試料を取得することが、
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させること、または
    前記血液試料もしくは前記CSF試料を、タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合する第1のエピトープ結合剤およびタウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合する第2のエピトープ結合剤と接触させることであって、前記第1および第2のエピトープ結合剤を順次にもしくは同時に使用する接触させること
    を含み、
    タウの前記N末端内のエピトープに特異的に結合する前記エピトープ結合剤は、HJ8.5、もしくはHJ8.5と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく、タウの前記midドメイン内のエピトープに特異的に結合する前記エピトープ結合剤は、タウ1、もしくはタウ1と同じエピトープに特異的に結合する別のエピトープ結合剤であってもよく、ならびに
    前記枯渇試料を処理して、濃縮されたタウ種の第2の集団を取得することは、
    MTBR-タウ種を濃縮するための化学抽出工程を実行することであって、
    前記化学抽出工程は、酸を混合して枯渇試料のタンパク質を沈殿させることであって、前記酸は過塩素酸であってもよく、前記沈殿したタンパク質の除去後の上清中にMTBR-タウ種が存在している、沈殿させることを含んでもよい、実行すること;あるいは、
    前記枯渇試料を、タウの前記MTBR内の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するエピトープ結合剤と接触させることであって、
    前記エピトープ結合剤は、Vandermeeren et al., J Alzheimers Dis, 2018, 65:265-281に記載の77G7、RD3、RD4、UCB1017、もしくはPT76、またはRoberts et al., Acta Neuropathol Commun, 2020, 8: 13に記載の7G6、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6の抗原結合フラグメント、または77G7、RD3、RD4、UCB1017、PT76もしくは7G6と同じエピトープに特異的に結合する他のエピトープ結合剤であってもよい、接触させること
    を含む、請求項18に記載の方法。
  22. 前記対象は、CDRが0.5以上、CDRが1以上、またはCDRが2以上である、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 対象の疾患進行をステージ分類するための、請求項17から22のいずれか一項に記載の認知症発症までの時間の測定値の使用。
  24. 対象の脳病変をステージ分類するための、請求項17から22のいずれか一項に記載の認知症発症までの時間の測定値の使用。
  25. 対象に対する治療剤または診断剤を選択するための、請求項17から22のいずれか一項に記載の認知症発症までの時間の測定値の使用。
  26. アルツハイマー病の認知症状または挙動症状を伴わない対象を処置するための方法であって、前記対象に請求項25に記載の治療剤または診断剤を投与することを含む方法。
  27. 前記診断剤がタウPETトレーサーであり、前記タウPETトレーサーが、フロルタウシピル(Lilly)、MK-6240(Cerveau)、PI-2620(Life Molecular Imaging)、RO-948(Roche)、GPT1(Genentech)、JNJ-067(Janssen)、JNJ-64349311(Janssen)、APN-1607、SNFT-1(Tokohu University)、PM-PBB3、AV1451、THK5351、およびTHK5317、からなる群から選択されていてもよい、請求項25に記載の使用または請求項26に記載の方法。
  28. 前記診断剤がAβPETトレーサーであり、前記AβPETトレーサーが、からなる群から選択される、請求項25に記載の使用または請求項26に記載の方法。
  29. 前記治療剤が、Aβ産生を低減させるか、Aβ凝集を防止するかもしくはそれに拮抗させるか、または脳のAβクリアランスを増大させ、前記治療剤が、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ベータ-セクレターゼ阻害剤、受動免疫療法(限定されるものではないが、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、もしくは抗ApoE抗体を含む)、または能動免疫療法であってもよい、請求項25に記載の使用または請求項26に記載の方法。
  30. 前記治療剤が、タウの凝集を防止するかまたはそれに拮抗し、神経原線維変化クリアランスを増大させ、タウのリン酸化パターンを変化させ、前記治療剤が、タウタンパク質凝集阻害剤、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ活性化剤、受動免疫療法(限定されるものではないが、抗タウ抗体を含む)、または能動免疫療法であってもよい、請求項25に記載の使用または請求項26に記載の方法。
  31. 前記治療剤が、ガンマセクレターゼ阻害剤またはベータ-セクレターゼ阻害剤である、請求項25に記載の使用または請求項26に記載の方法。
  32. 前記治療剤が、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、または抗ApoE抗体である、請求項25に記載の使用または請求項26に記載の方法。
  33. 前記治療剤が、抗Aβ抗体、抗タウ抗体、または抗ApoE抗体である、請求項25に記載の使用または請求項26に記載の方法。
  34. 前記治療剤が、コリンエステラーゼ阻害剤、NMDA受容体アンタゴニスト、または抗炎症剤である、請求項25に記載の使用または請求項26に記載の方法。
  35. 対象における認知の変化を測定するための方法であって、
    (a)対象から得た血液試料またはCSF試料中のT111、T153、T181、T217およびT231から選択される1つまたは複数の残基におけるタウのリン酸化占有率を測定すること、および
    前記対象から得た血液試料またはCSF試料中のMTBR-タウ275、MTBR-タウ299、およびMTBR-3Rのうちの少なくとも1つを測定すること、および
    適宜、前記対象から得た血液試料またはCSF試料中の総タウを測定すること;ならびに
    (b)(a)の測定値を使用して認知における変化を計算すること
    を含む方法。
  36. 前記認知における変化が、国際ショッピングリスト試験(the International Shopping List Test)による遅延想起スコア、ウェクスラー記憶検査法(Wechsler Memory Scale-Revised)による論理記憶遅延再生スコア、ウェクスラー成人知能検査法(Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised)による数字記号コード化試験(Digit Symbol Coding test)総スコア、およびMMSE総スコア、からなる認知複合スコアによって測定される認知における変化と同等である、請求項35に記載の方法。
  37. 前記対象はCDRがゼロである、請求項34または請求項35に記載の方法。
  38. 前記対象はCDRが0.5以上である、請求項35または請求項35に記載の方法。
  39. 治療剤の有効性を評価するための、請求項34から38のいずれか一項に記載の認知における変化の測定値の使用。
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