JP2024506070A - 新規her2結合ポリペプチド - Google Patents

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Abstract

配列番号1のアミノ酸配列を含むHER2結合ポリペプチドが提供される。また、HER2結合ポリペプチドと放射性核種との放射性キレートからなる放射性標識ポリペプチドも提供される。例えばHER2の過剰発現を特徴とする癌に関連する、治療、診断及び予後用途においてポリペプチドを利用する方法及び使用も提供される。

Description

本開示は、ヒト上皮成長因子受容体2(Human Epidermal Growth Factor Receptor 2、以下、HER2と呼ぶ)に結合する新規ポリペプチドに関する。本開示はまた、診断薬、予後薬及び/又は医薬としての、そのようなHER2結合ポリペプチドの使用、より詳細には、HER2の過剰発現を特徴とする癌の形態の診断、予後及び/又は治療における該ポリペプチドの使用に関する。
HER2は、受容体チロシンキナーゼスーパーファミリーに属する膜貫通型受容体である。HER2は、乳癌、胃食道癌及び卵巣癌のかなりの割合において過剰発現され、HER2発現の上昇は予後不良に関連する。HER2が高発現している腫瘍は特異的標的治療薬に反応するため、患者のHER2発現レベルに関する情報は疾患管理にとって重要である。HER2発現状態を求めるために現在実施されている方法としては、生検材料の分析が挙げられるが、これは侵襲的かつ複雑であり、複数回の採取を必要とし、HER2の不均一な発現又は治療に反応したHER2発現の変化を解明することが困難である。
一方、放射性核種分子イメージングは、標本誤差に由来する偽陰性結果を生じることなく、原発腫瘍及び転移の両方におけるHER2を非侵襲的に検出することが期待できる。このアプローチを証明する最初の臨床試験は、単光子放射体インジウム-111で標識されたモノクローナル抗体トラスツズマブを用いて行われた。長寿命の陽電子放射体であるジルコニウム-89の使用、及び陽電子放出断層撮影(PET)の利用によって、抗体ベースのプローブの使用における更なる進歩が達成され、感度及び分解能が向上した。それでも、治療用抗体をベースとするイメージングプローブは、血液からの消失速度が遅い。このため、(注射後4~5日後でも)画像コントラストが低く、線量負担が大きい。より小さいイメージングプローブ、例えば、設計足場タンパク質をベースとするプローブを使用することにより、最適なイメージング時間を注射後数時間に短縮することが可能になり、画像コントラストが増大し、ひいては感度が向上する。
例えば放射性核種イメージングの目的で、HER2結合分子を生成するのに有用な足場タンパク質の1つに、ブドウ球菌タンパク質AのドメインBのタンパク質Z誘導体がある。Zバリアントは、58アミノ酸のシステインを含まない足場をベースとし、化学的に合成されてもよく、又は組換えDNA技術によって細菌中で産生されてもよい。Zバリアントは、サイズが小さく熱安定性が高いこと、部位特異的な放射性標識が可能であること、標的親和性が非常に高い可能性があることを更に特徴とする。異なる世代のHER2結合Zバリアントが、国際公開第2005/003156号、国際公開第2009/080810号及び国際公開第2015/028550号に開示されている。
第一世代のHER2結合Zバリアント(国際公開第2005/003156号参照)は、前臨床試験(Orlova et al(2006),Cancer Res 66:4339-4348;Ahlgren et al(2009)J Nucl Med 50:781-789)及び臨床試験(Baum et al(2010),J Nucl Med 51(6):892-897)において、HER2発現腫瘍をイメージングする優れた能力を示した。第二世代では、Zバリアント足場は広範囲に再設計され、非結合部分における45種のアミノ酸のうち11種が置換された(国際公開第2009/080810号、Feldwisch et al(2010)J Mol Biol 398:232-247)。これらの置換により、Zバリアント分子のペプチド合成収率及び保存安定性が向上した。IgG及びIgMへの残余の結合(Residual binding)は、血液クリアランスを促進するために本質的に排除され、アラニンのセリンによる置換によって、水にさらされる表面の親水性が高められた。
この第二世代のHER2結合Zバリアントは、DOTAコンジュゲート68Ga標識放射性トレーサー分子の形態でPETイメージングに使用されている。該トレーサーは、乳癌患者におけるHER2発現転移の検出において優れた感度及び特異性を示している(Sorensen et al(2016),Theranostics 6(2):262-271)。このトレーサーを使用する典型的な臨床試験では、実効線量は5~6mSvの範囲であり、これは抗体試薬を用いたPETイメージングに典型的な線量(14~22 mSv)と比較してかなり低い。PETイメージングは、北アメリカ及び西欧では比較的利用しやすいが、南アメリカ、アジア、アフリカ、及び一部のヨーロッパ諸国では利用しにくい。ここでは、SPECTの使用がより一般的である。111Inを標識として使用し、同じイメージング分子がSPECTについても試験されている(Sorensen et al(2014),J Nucl Med 55(5):730-735)が、この核種は高価であり、中程度のエネルギーのコリメータを必要とするため、分解能と感度が低下する。
臨床的観点からは、99mTc(T1/2=6時間)の使用がはるかに魅力的である。該核種はジェネレーターで製造されるため、安価で入手が容易である。99mTcの壊変図式は、半減期が最適であること、線量が穏やかであること、低エネルギーの高分解能コリメータを使用することができ、イメージング感度が向上することから、放射性医薬品の標識にほぼ理想的である。99mTcによる第一世代Zバリアントの標識は、特にペプチドベースのキレーターを使用して十分に調査された。そのようなキレーターの組成及びZバリアント分子におけるキレーターの位置により、99mTc標識分子の生体内分布及びその排泄経路が大幅に変更される可能性があることが示された(Hofstrom et al(2013),J Med Chem 56:4966-4974)。更に、Zバリアント配列のC末端にシステイン残基を配置すること(したがって、C末端配列-KVDC、配列番号4を生成すること)により、99mTcの安定したカップリングに有用なNSキレーターが形成されることが示された(Ahlgren et al(2009),J Nucl Med 50:781-789)。Ahlgren et al(2009, supra)の99mTc標識HER2結合分子ZHER2:2395は、マウスモデルにおけるHER2発現のイメージングにおいて、標的特異性の向上と高いコントラストを示した(腫瘍対血液比121±24、注射4時間後)。しかしながら、ZHER2:2395は、腎取り込みが高く(140~190%ID/g、注射4時間後)、イメージングには望ましくない。
188Reもこれに関連して試験されている。188Reは、高エネルギーの、ベータ線を放出する放射性同位元素で、半減期が短く(16.98時間)、悪性腫瘍の診断や治療のための放射性医薬品の生成が可能である。半減期が短いため、患者、スタッフ及び環境にとってより安全である。188Reからの放射線にはベータ線とガンマ線の両方が含まれる。高いベータ線放出(784keV)は高い治療効果を保証し、低いガンマ線放出(155keV)により、オペレータが従来のガンマカメラで視覚情報を得ることが可能になる。更に、レニウムジェネレーターを臨床現場に容易に提供することができる。
ペプチドベースのキレーターにおけるアミノ酸組成とアミノ酸残基の順序の両方が、生体内分布及び標的化特性に影響を与えることが判明している(Wallberg et al(2011),J Nucl Med 52:461-469;Altai et al(2012),Amino Acids 5:1975-1985)。C末端-GGGCキレート配列(配列番号5)を含有する第一世代のHER2結合Zバリアント99mTc-ZHER2:V2によって、最も良好な画像コントラストが示された。[99mTc](Tc=O)-GGGC錯体が非残留化標識として作用することが示されている。腎臓で再吸収され速やかに内在化した放射能量(activity)は速やかに排泄された。Zバリアント分子の内在化が遅い腫瘍では、細胞膜上のHER2に対するZバリアントの親和性が高いため、放射能量は長時間保持された(Wallberg et al(2011),supra)。これにより、良好な画像作成(construct)と、99mTc-ZHER2:V2の低い腎取り込みとの組み合わせが得られた。
これらの結果に基づいて、-GGGCキレーターは、第二世代のHER2結合Zバリアントにおいても標識の候補と考えられる。しかし、足場配列中のアミノ酸を再配置することは、電子供与性側鎖を有するアミノ酸がクラスター化することによって追加のキレートポケット(chelating pocket)が生成するリスクがある。このような側鎖がテクネチウムの錯化に関与する可能性が示唆されている(Cyr et al(2007),J Labelled Comp Radiopharm 50(suppl 1):S9)。錯化により標識部位特異性が失われ、コンジュゲートの安定性や薬物動態が変化する。例えば、ZHER2:V2のN末端へHEHEHEタグ(配列番号6)を導入すると、得られた構築物の生体内分布が顕著に変化し、特に腎の取り込みが非常に高くなった(Lindberg et al(2012),Tumour Biol 33(3):641-651)。また、99mTc-ZHER2:V2N末端精製タグを導入するわずかな変更を加えるだけでも、この場合は医療現場において、標識に有害な影響を及ぼすことが示されている(Cai et al(2020),Iran J Radiol e96419,published online on 20 January 2020)。更に、別のZバリアントであるEGFR結合分子ZEGFR:2377の結合部位組成は、-GGGCキレーターと競合してその使用を不可能にするキレートポケットを含有する(Oroujeni et al(2018),Amino Acids 50:981-994)。
結論として、再設計されたHER2特異的Zバリアントが、足場に-GGGCキレート配列を使用する99mTcによる安定な標識に適合するとは到底言えない。
本発明の開示
本開示の目的は、HER2への特異的結合を特徴とするポリペプチドの提供を通じて、HER2に対する親和性を有する薬剤の継続的な提供という要件を満たすことである。
本開示の関連する目的は、非特異的結合をほとんど又は全く示さないHER2結合ポリペプチドである。
本開示の別の目的は、融合ポリペプチド中の部分として容易に使用することができるHER2結合ポリペプチドを提供することである。
別の目的は、既存の抗体試薬で経験されている公知の問題の1つ以上を解決する、HER2結合ポリペプチドの提供である。
本開示の更なる目的は、治療用途に使用可能なHER2結合ポリペプチドを提供することである。
本開示の更なる目的は、診断用途に使用可能なHER2結合ポリペプチドを提供することである。
本開示の更なる目的は、予後用途に使用可能なHER2結合ポリペプチドを提供することである。
関連する目的は、HER2タンパク質の過剰発現を特徴とする癌疾患の、医療現場における治療、阻害及び/又は標的化のための新しい形態を見出すことである。
本開示の別の目的は、組換えタンパク質発現を使用して産生され得るか、又は化学的ペプチド合成によって合成され得るHER2結合ポリペプチドを提供することである。
関連する目的は、ポリペプチドにキレート基をコンジュゲートさせる任意の工程を追加することなく、生成されたままの放射性核種で標識することができるHER2結合ポリペプチドを提供することである。
別の目的は、公知のHER2結合剤と比較して改善された安定性を示し、任意選択で保存時の貯蔵寿命の延長ももたらすHER2結合ポリペプチドを見出すことである。
本開示の更に別の目的は、哺乳動物においてインビボで使用された場合に低い抗原性及び/又は免疫原性を示すHER2結合ポリペプチドを得ることである。
本開示の別の目的は、哺乳動物への投与時に有益な生体内分布をするHER2結合ポリペプチドを提供することである。
これらの目的及び他の目的は、本開示の様々な態様によって達成される。したがって、第1の態様において、本開示は、HER2結合ポリペプチドであって、該ポリペプチドのアミノ酸配列が、
AEAKYAKEMR NAYWEIALLP NLTNQQKRAF IRKLYDDPSQ SSELLSEAKK LSESQGGGC(配列番号1)を含む、HER2結合ポリペプチドを提供する。
これに従って、本発明者らは、配列番号1を含むHER2結合ポリペプチドが、例えば、以下にH2BPP2と示される、配列番号2を有する、Wallberg et al(2011,supra)において以前に開示されたHER2結合ポリペプチドZHER2:V2、及び以下にH2BPP3と示される、配列番号3を有する、Ahlgren et al(2009,supra)のZHER2:2395と比較して、驚くべき利点を示すことを見出した。本開示の本態様によるポリペプチドの1つ以上の実施形態によってそれぞれ個々に示され得るそのような利点の非限定的な例は、以下の通りである。
・開示されるポリペプチドに含まれる、アスパラギン及びアスパラギン酸などの、ポリペプチド配列の化学合成において低い収率及び成功率などの問題を引き起こし得るアミノ酸残基が少ない。
・開示されるポリペプチドは、表面疎水性を付与するアミノ酸残基が少なく、したがって、以前に記載された関連するHER2結合ポリペプチドよりも親水性のプロファイルを有する。これは、低溶解性及び凝集の問題がより少ないことを意味する。理論に束縛されることを望むものではないが、より親水性の特性は、宿主に投与された際のポリペプチドの生体内分布を、肝胆道経路(肝臓を介した排泄)から、より望ましい腎経路(腎臓を介した排泄)へとシフトさせる作用があるとも現在考えられている。
・開示されるポリペプチドに含まれる、アスパラギン、アスパラギン酸、ジペプチドのアスパラギン-プロリンなどの、ポリペプチドの安定性の問題に関連するアミノ酸残基が少ない。アスパラギンは脱アミド化されやすく、アスパラギン酸は異性化されやすく、アスパラギン-プロリン結合は切断されやすいため、最終生成物の非均一性の一因となる。
・開示されるポリペプチドには、類似の配列状況において、VH3由来の重鎖可変ドメインを含有する免疫グロブリンとの相互作用を増加させることが見出されているアミノ酸残基(Silverman G.J.,Int.Rev.Immunol.1992;9(1):57-78)がない。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明によるポリペプチドにおけるこのようなアミノ酸残基の置き換えは、宿主へのポリペプチドの投与時にポリペプチドの抗原性を低下させると現在考えられている。
・開示されるポリペプチドは、以下の実施例4に示されるように、先に知られているHER2結合Zバリアントよりも少ない潜在的T細胞エピトープを含み、したがって、免疫原性が低いと考えられる。
本開示の本態様によるポリペプチドは、多様な用途において、HER2結合抗体及び公知のHER2結合Zバリアントの代替物として使用することができる。非限定的な例として、該ポリペプチドは、HER2過剰発現を特徴とする癌の治療において、細胞表面上のHER2に結合することによる細胞シグナル伝達の阻害において、HER2過剰発現を特徴とする癌のインビボ及びインビトロの両方での診断及び/又は予後において、HER2を過剰発現する細胞への他の治療薬、診断薬又は予後薬の標的化において、HER2の検出のための組織化学的方法において、分離の方法及び他の用途において有用である。本態様によるポリペプチドは、試薬のHER2に対する親和性に依存する任意の方法において有用であると証明することができる。したがって、該ポリペプチドは、このような方法における検出試薬、捕捉試薬若しくは分離試薬として、インビボ若しくはインビトロにおける診断及び/若しくは予後のための診断薬及び/若しくは予後薬として、又はそれ自体で治療薬として、又は他の治療薬若しくは診断薬をHER2タンパク質に標的化するための手段として使用することができる。本開示の本態様によるポリペプチドをインビトロで利用する方法は、マイクロタイタープレート、タンパク質アレイ、バイオセンサー表面、組織切片上などの様々な形式で行うことができる。
本教示の範囲から逸脱することなく、意図される特定の用途にポリペプチドを適合させるために、本開示の本態様によるポリペプチドの様々な修飾、及び/又はポリペプチドへの付加を行うことができる。そのような修飾及び付加は、以下においてより詳細に記載され、同じポリペプチド鎖に含まれる更なるアミノ酸、又は本開示の本態様によるポリペプチドに化学的にコンジュゲートされるか、若しくは他の方法で結合される標識及び/若しくは治療薬を含んでもよい。
本明細書で使用される「HER2結合」及び「HER2に対する結合親和性」という用語は、例えばELISA又は表面プラズモン共鳴(SPR)技術の使用によって試験され得るポリペプチドの特性を指す。
例えば、以下の実施例に記載されているように、HER2結合親和性は、HER2又はそのフラグメントを表面プラズモン共鳴(SPR)装置のセンサーチップ上に固定化し、試験するポリペプチドを含有する試料にチップ上を通過させる実験で試験することができる。あるいは、試験するポリペプチドを装置のセンサーチップ上に固定化し、HER2又はそのフラグメントを含有する試料にチップ上を通過させる。次いで当業者は、このような実験によって得られた結果を解釈して、ポリペプチドのHER2に対する結合親和性の少なくとも定性的な測定を確立することができる。例えば、相互作用のK値を求めるために定量的測定が所望される場合も、表面プラズモン共鳴法を使用することができる。結合値は、例えば、Biacore T200装置(Cytiva)又はProteOn XPR 36(Bio-Rad)装置を使用して定義することができる。HER2は、好適には、装置のセンサーチップ上に固定化され、親和性を求めるポリペプチドの試料は連続希釈によって調製され、ランダムな順序で注入される。次いで、例えば、BIAevaluation 4.1ソフトウェアの1:1ラングミュア結合モデル、又は装置製造業者によって提供される他の好適なソフトウェアを使用して、結果からK値を計算することができる。
本開示の本態様はまた、上記のHER2結合ポリペプチドが、いずれかの末端、特にN末端に更なるアミノ酸残基が付加されたHER2結合ドメインとして存在するポリペプチドを包含する。これらの更なるアミノ酸残基は、ポリペプチドのHER2に対する結合において役割を果たし得るが、例えば、ポリペプチドの産生、精製、安定化、カップリング又は検出のうちの1つ以上に関連する他の目的にも役立つことがある。このような更なるアミノ酸残基は、化学的カップリングの目的で付加された1つ以上のアミノ酸残基を含んでもよい。このような更なるアミノ酸残基はまた、ポリペプチドの精製又は検出のための「タグ」、例えば、ヘキサヒスチジル(H)タグ、又は「myc」タグ若しくは「FLAG」タグを含んでもよい。このようなタグにより、例えば、タグに特異的な抗体との相互作用、又は場合によっては固定化金属アフィニティークロマトグラフィ(IMAC)が可能になる。当業者は、他の代替案を認識している。
上記の「更なるアミノ酸残基」はまた、任意の所望の機能、例えば、第1のHER2結合ドメインと同じ結合機能、又は別の結合機能、又は酵素機能、又は蛍光機能、又はそれらの組み合わせを備える1つ以上のポリペプチドドメインを構成し得る。
したがって、本開示は、配列番号1を含むポリペプチドの多量体を包含する。例えば、癌の診断若しくは治療に、又はHER2の精製方法において本発明によるポリペプチドを使用する場合、本発明による1つのポリペプチドを用いて可能であるよりも更に強力なHER2の結合を得ることが重要であり得る。この場合、ポリペプチドの多量体、例えば、二量体、三量体又は四量体の提供により、必要なアビディティー効果(avidity effect)がもたらされ得る。多量体は、好適な数の本発明によるポリペプチドからなってもよい。本発明による多量体中の連結されたポリペプチド「単位」は、公知の有機化学的方法を使用して共有結合によって結合されてもよく、ポリペプチドの組換え発現のための系において1つ以上の融合ポリペプチドとして発現されてもよく、直接又はリンカー、例えばアミノ酸リンカーを介して、他の任意の様式で結合されてもよい。
更に、配列番号1を含むポリペプチドが第1のドメイン、又は第1の部分を構成し、第2の及び更なる部分がHER2に結合する以外の機能を有する「異種」融合ポリペプチドもまた企図され、本開示の範囲内にある。このような融合ポリペプチドの第2の及び更なる部分(複数可)は、HER2とは別の標的に対する親和性を有する結合ドメインを含んでもよい。このような第2の及び更なる部分(複数可)の標的の非限定的な例は、CD3、CD137(4-1BB)、CTLA-4、EGFR、HER3、VEGF、PD1、PD-L1及びcMetからなる群から選択されてもよい。その結果、少なくとも1つのHER2結合ドメインと、前記他の標的分子に親和性のある少なくとも1つのドメインを有する融合ポリペプチドが得られる。これにより、治療薬及び/又は診断薬及び/又は予後薬として、あるいは捕捉、検出又は分離のための試薬として使用されるなど、いくつかの用途に使用され得る多重特異性試薬の作製が可能になる。少なくとも1つのポリペプチドドメインが配列番号1を含む、ポリペプチドのこのような多重特異性多量体の調製は、いくつかのHER2結合「単位」の多量体について上記の通りに行うことができる。
第2の又は更なる部分(複数可)は、黄色ブドウ球菌のタンパク質Aに由来するドメインのバリアント、例えばZバリアントであってもよく、又は標的に対する結合親和性を有する無関係の天然若しくは組換えタンパク質(又は天然若しくは組換えタンパク質の結合能力を保持するそのフラグメント)を含んでもよい。
ヒト血清アルブミンに対する親和性を有し、本発明によるポリペプチドとの融合パートナーとして使用することができる、このような結合タンパク質の別の例は、レンサ球菌株G148のタンパク質G(Nygren P-Å et al(1988)Mol Recogn 1:69-74)のアルブミン結合ドメインの1つ、例えば、GA1、GA2又はGA3ドメインである。タンパク質GのGA3ドメインはABD、すなわちアルブミン結合ドメイン(albumin binding domain)とも呼ばれる。タンパク質Gの野生型GA3ドメインと比較して改善された特性を有するABDの誘導体は、例えば、国際公開第2009/016043号、国際公開第2012/004384号及び国際公開第2014/048977号に開示されている。したがって、配列番号1を含むHER2結合ポリペプチドとレンサ球菌タンパク質Gのアルブミン結合ドメインとの融合ポリペプチドもまた、本開示の範囲内にある。開示されるポリペプチドが診断薬、予後薬、治療薬として、又は標的化薬としてヒト対象に投与される場合、該ポリペプチドの、血清アルブミンと結合する部分との融合は、そのような融合タンパク質のインビボでの半減期が、HER2結合部分単独の半減期と比較して長くなる可能性が高いという点で、有益であると証明することができる(この原理は、例えば国際公開第91/01743号に記載されている)。
融合ポリペプチドの作製のための他の可能性も企図される。したがって、本開示の第1の態様によるポリペプチドは、標的結合に加えて、又は標的結合の代わりに他の機能を示す、第2の又は更なる部分(複数可)と共有結合してもよい。1つの例は、配列番号1を含む1つ以上のポリペプチドと、レポーター又はエフェクター部分として機能する酵素的に活性なポリペプチドとの融合である。融合タンパク質を形成するために配列番号1を含むポリペプチドに結合され得るレポーター酵素の例は、当業者に公知であり、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、カルボキシペプチダーゼなどの酵素が含まれる。本発明による融合ポリペプチドの第2の及び更なる部分(複数可)の他の選択肢としては、蛍光ポリペプチド、例えば緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ及びそれらのバリアントが挙げられる。
本発明による融合ポリペプチドの第2の及び更なる部分(複数可)についての他の選択肢には、治療用途のための部分(複数可)が含まれる。治療用途において、他の分子もまた、他の手段によって本発明のポリペプチドに共有結合又は非共有結合されてもよい。非限定的な例としては、エフェクター酵素の指向性のために本発明によるポリペプチドを使用するADEPT(antibody-directed enzyme prodrug therapy、抗体指向性酵素プロドラッグ療法)用途のための酵素(例えば、カルボキシペプチダーゼ);エフェクター細胞及び免疫系の他の成分を動員するためのタンパク質;サイトカイン、例えばIL-2、IL-12、IFNγ、TNF、IP-10、GM-CSF;凝固促進因子、例えば組織因子、フォン・ヴィレブランド因子;毒素、例えば、リシンA、シュードモナス外毒素、カリケアマイシン、メイタンシノイド;毒性小分子、例えばアウリスタチン類似体、ドキソルビシンが挙げられる。
本発明によるHER2結合ポリペプチドを組み込んだ融合タンパク質の上記の説明に関して、第1の、第2の及び更なる部分という呼称は、一方のHER2結合部分(複数可)と、他方の他の機能を示す部分とを区別するために、明確性の理由からなされたことに留意されたい。これらの呼称は、融合タンパク質のポリペプチド鎖における異なるドメインの実際の順序を指すことを意図していない。したがって、例えば、前記第1の部分は、制限なく、融合タンパク質のN末端、中央、又はC末端に出現し得る。
本開示における第1の態様の一実施形態において、HER2結合ポリペプチドは配列番号1からなる。
本開示は更に、上記のHER2結合ポリペプチドが、例えばポリペプチドの検出を目的として、少なくとも1つのフルオロフォア、ビオチン又は放射性同位元素などの標識基を備えるポリペプチドを包含する。
特に、本開示の第2の態様は、第1の態様によるHER2結合ポリペプチドと放射性核種との放射性キレートからなる放射性標識ポリペプチドに関する。
放射性核種の大部分は金属的性質を有する。金属は、典型的には、タンパク質及びペプチドに含まれる元素と安定な共有結合を形成することができないため、放射性金属による標的タンパク質の標識は、キレーター、すなわち金属とキレートと呼ばれる非共有結合化合物を形成する多座配位子を使用して行われることが多い。本発明によるポリペプチドにおいて、放射性核種の組み込みは、キレート化環境(chelating environment)を提供することによって可能になり、該キレート化環境を介して放射性核種はポリペプチドに配位、キレート化又は錯化され得る。
第1の態様のポリペプチドは、NSキレーターとして特徴付けられる四座キレート環境を含む。NSという用語が示すように、このようなキレーターの4つの結合基は、3個の窒素原子及び1個の硫黄原子から形成される。NSキレーターにおいて、N及びS原子は、放射性金属の錯化又は結合のための好適な「ポケット」を提供するように空間的に配置される。本開示によるポリペプチドにおいて、NSキレーターは、配列番号1のC末端アミノ酸残基として-GGGCを選択することによってもたらされる。
したがって、3つの連続するペプチド結合の窒素原子及びポリペプチドのC末端のシステイン残基によってもたらされる、NSキレーターとして特徴付けられる四座キレート環境を含む第1の態様によるポリペプチドは、HER2結合ポリペプチドと放射性核種との放射性キレートからなる、第2の態様による放射性標識ポリペプチドを提供するために使用することができる。
一実施形態において、前記放射性核種は医用イメージングに適している。より詳細な実施形態において、放射性核種は、99mTc、51Mn、52mMn、52Mn、186Re及び188Reからなる群から選択される。特定の実施形態において、医用イメージングに適した放射性核種は99mTcである。
別の実施形態において、前記放射性核種は治療に適している。より詳細な実施形態において、放射性核種は、186Re及び188Reからなる群から選択される。特定の実施形態において、治療に適した放射性核種は188Reである。
第2の態様による放射性標識ポリペプチドのこれらの実施形態において、放射性核種は、C末端-GGGC配列によってもたらされるキレート化環境を介してHER2結合ポリペプチドと錯化される。
本開示はまた、第1の態様によるポリペプチド又は第2の態様による放射性標識ポリペプチドを含む組成物を包含する。
本開示の第3の態様は、第1の態様のHER2結合ポリペプチドと、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む組成物を提供する。前記組成物は、好適には、保存、輸送、凍結乾燥、濃縮、又はそれらの任意の組み合わせから選択される目的のために製剤化されてもよい。特定の実施形態において、本態様による組成物は、更なる操作なしで、医薬、インビボでの診断薬又はインビボでの予後薬として使用するのに適している。別の実施形態において、前記組成物は凍結乾燥に適している。この実施形態による組成物の凍結乾燥により、前記ポリペプチドの凍結乾燥粉末が得られる。ポリペプチドの前記凍結乾燥粉末は、本開示の更なる第4の態様を構成し、ポリペプチドが医薬として、又はインビボでの診断薬若しくは予後薬として使用されることが意図される場合、ポリペプチドの輸送、保存、取り扱い、及び放射性標識の点で利点をもたらし得る。
本開示の第5の態様は、第3の態様の放射性標識ポリペプチドと、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む組成物を提供する。好適には、前記少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤又は担体は、治療又はイメージングされる対象への放射性標識ポリペプチドの投与が可能になるか又は増強されるように選択される。
医薬組成物及び製剤の技術分野の当業者であれば、HER2結合ポリペプチド又は放射性標識ポリペプチドにおける所与の用途のために適切な賦形剤又は担体を選択し、過度の実験を行うことなく、第3又は第5の態様による組成物を作製することができる。
本開示はまた、放射性標識されているか否かにかかわらず、上記のHER2結合ポリペプチド及び組成物を使用する様々な態様を包含する。本開示はまた、本ポリペプチドがその結合特性により有用である、治療、診断及び予後のための種々の方法も包含する。これらの使用及び方法に関する以下の説明において「HER2結合ポリペプチド」に言及する場合、この用語は、HER2結合ポリペプチド単独だけでなく、例えば融合タンパク質中の部分としてHER2結合ポリペプチドを組み込んだ、並びに/又は標識、キレーター、治療薬及び/若しくは診断薬にコンジュゲートした、並びに/又はタグとして若しくは他の目的のために更なるアミノ酸残基を備える、上記のポリペプチドをベースとする全ての分子も包含することが意図される。上記で説明したように、このような融合タンパク質、誘導体などは、本開示の一部を形成する。「HER2結合ポリペプチド」はまた、上記の第3、第4及び第5の態様によるポリペプチド又は放射性標識ポリペプチドの組成物及び粉末を包含することが意図される。
したがって、第6の態様において、本発明は、HER2の過剰発現を特徴とする癌を有するか又は有することが疑われる、ヒトを含む哺乳動物対象の体におけるインビボイメージングの方法であって、該方法が、
-医用イメージングに適した放射性核種を含む、第2の態様による放射性標識ポリペプチドを、哺乳動物対象の体内に投与すること、及び
-医用イメージング装置を使用して対象の体の少なくとも一部の画像を得ること、の工程を含み、前記画像が、前記体内における放射性核種の存在を示す、方法を提供する。一実施形態において、画像は、放射性標識ポリペプチドを体内に投与してから1~72時間以内、例えば1~24時間以内に得られる。投与から画像取得までの時間は、使用する放射性核種の半減期に依存する。画像を得る工程を2回、3回又はそれ以上繰り返すことが可能であり、それによって一連の画像が得られる。これは、標的化薬の生体内分布を経時的に追跡しようとする場合に有用であり、薬物動態試験が可能になる。当業者は、そのような試験において必要な程度の時間分解能を達成するために、任意の数の画像を得ることができることを理解する。
本態様によるイメージング方法の一実施形態において、前記投与は静脈内投与である。
本態様によるイメージング方法の一実施形態において、本方法は、投与工程の前に、第2の態様による放射性標識ポリペプチドを調製する調製工程を含み、該工程は、第1の態様によるポリペプチドを医用イメージングに適した放射性核種と混合することを含む。
本態様によるイメージング方法のより詳細な実施形態において、本方法は、投与工程の前に、i)アミノ酸配列が配列番号1を含むか、又は配列番号1からなるポリペプチドと、ii)99mTcとの放射性標識ポリペプチドを調製する調製工程を含み、該工程は、適切な緩衝液中、適切な還元剤、例えば塩化第一スズ、アスコルビン酸又はゲンチシン酸の存在下で、ポリペプチドを99mTc-過テクネチウム酸と混合することを含む。調製工程はまた、中間体の弱いキレーター(例えば、酒石酸塩、又はクエン酸塩若しくはグルコン酸塩)の存在下で行ってもよい。
ポリペプチドが第4の態様による凍結乾燥粉末状で存在する場合、調製工程は、好適には、放射性標識及び投与のために好適な緩衝液中で粉末を溶解(reconstitute)する第1の工程も含む。
関連する第7の態様において、本開示は、HER2の過剰発現を特徴とする癌を診断する方法であって、
-第6の態様によるインビボイメージングの方法を実施すること、
-得られた画像に基づいて前記診断を確立することを含む、方法を提供する。
別の関連する第8の態様において、本開示は、HER2の過剰発現を特徴とする癌の予後を確立する方法であって、
-第6の態様によるインビボイメージングの方法を実施すること、
-得られた画像に基づいて前記予後を確立することを含む、方法を提供する。
更に、本開示は、第9の態様において、HER2の過剰発現を特徴とする癌を有するヒトを含む哺乳動物対象を治療する方法であって、治療に適した放射性核種を含む、治療における有効量の、第2の態様による放射性標識ポリペプチドを前記対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
本態様による治療方法の一実施形態において、前記投与は静脈内投与である。
本態様による治療方法の一実施形態において、本方法は、投与工程の前に、第2の態様による放射性標識ポリペプチドを調製する調製工程を含み、該工程は、第1の態様によるポリペプチドを治療に適した放射性核種と混合することを含む。
本態様による治療方法のより詳細な実施形態において、前記調製工程は、
-適切な還元剤の存在下、適切な緩衝液中で、第1の態様によるポリペプチドを過レニウム酸塩と混合すること(この混合は、中間体の弱いキレーター、例えば酒石酸塩、又はクエン酸塩若しくはグルコン酸塩の存在下で行ってもよい)、
又は
-第1の態様によるポリペプチドを、レニウムの反応性中間体、例えばトリカルボニル錯体と混合することを含む。
本態様による治療方法の更に詳細な実施形態において、前記調製工程本方法は、前記投与工程の前に、i)アミノ酸配列が配列番号1を含むか、又は配列番号1からなるポリペプチドと、ii)188Reとの放射性標識ポリペプチドを調製する調製工程を含み、該工程は、適切な緩衝液中、適切な還元剤、例えば塩化第一スズ、アスコルビン酸又はゲンチシン酸の存在下でポリペプチドを過レニウム酸188Reと混合することを含む。調製工程はまた、中間体の弱いキレーター(例えば、酒石酸塩、又はクエン酸塩若しくはグルコン酸塩)の存在下で行ってもよい。
ポリペプチドが第4の態様による凍結乾燥粉末状で存在する場合、調製工程は、好適には、放射性標識及び投与のために好適な緩衝液中で粉末を溶解する第1の工程も含む。
本発明のこれらの診断、予後及び治療態様のいくつかの実施形態において、前記癌は、乳癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膀胱癌、唾液腺癌、肺癌(特に非小細胞肺癌)及び食道の癌(特に胃及び胃食道接合部癌)から選択される。特定の実施形態において、前記癌は乳癌である。
本開示は、これらの癌種に由来するが、対象の体の他の部分に局在するHER2陽性転移巣に対する結合及び標的化も包含する。これに関して特に企図されるのは、脳におけるHER2陽性転移巣である。
本開示は更に、第6、第7、第8及び第9の態様による方法のいずれかにおいて、インビボでの診断薬として、又はインビボでの予後薬として、又は医薬として使用するための、第1の態様によるポリペプチド、第2の態様による放射性標識ポリペプチド、第3の態様による組成物、第4の態様による凍結乾燥粉末、又は第5の態様による組成物を提供する。
本開示の更なる、プロセスに関連する態様は、これまで実用的又は効率的であると考えられていた温度よりも低い温度で、本明細書に開示されるポリペプチドの放射性標識を行うことが可能であるという驚くべき発見に基づく。これに関連して、このような低温での放射性標識は、反応の望ましくない副生成物の生成がより少ないことが観察されている。本開示は、第1の態様によるポリペプチドを放射性標識する方法であって、60~85℃、例えば65~80℃、例えば65~75℃、特に約70℃、例えば70℃の温度で放射性標識する工程を含む、方法を包含する。当業者は、本態様による放射性標識の方法が、上記のイメージング及び治療方法のいくつかの実施形態に含まれる放射性標識の調製工程に組み込まれてもよいことを理解する。
本開示の別の態様は、第1の態様によるポリペプチドをコードする配列を含む核酸分子に関する。
本開示の更なる態様は、前記態様の核酸分子、及び核酸分子の発現によるポリペプチドの産生を可能にする他の核酸要素を含む発現ベクターに関する。
本開示の更に別の態様は、前記態様の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
本発明の後者3つの態様は、本発明によるポリペプチドを産生するためのツールであり、当業者は、発現されるべきポリペプチドに関する本明細書中の情報及びタンパク質の組換え発現の技術分野における現在の技術レベルを考慮すれば、過度の負担なく、該ツールを得て、実用化することができるであろう。
本開示によるポリペプチドはまた、化学合成、又は植物及びトランスジェニック動物を含む様々な原核生物宿主若しくは真核生物宿主における発現を含む、他の公知の手段によって産生されてもよい。
ここで、本開示の様々な態様を、各態様に従って行われた実験の説明を通して詳細に説明する。以下の実施例は限定的に解釈されるものではない。実施例においては、添付の図を参照されたい。
C末端GGGCキレーターを含有する新規HER2結合ポリペプチド(H2BPP1、配列番号1)、C末端GGGCキレーターを含有するHER2結合参照ポリペプチド(H2BPP2、配列番号2)、及びC末端KVDCキレーターを含有するHER2結合参照ポリペプチド(H2BPP3、配列番号3)のアミノ酸配列のリストである。
可変温度測定(VTM)の前(実線)及び後(破線)に20℃で収集された(A)H2BPP1及び(B)H2BPP2の円二色性スペクトルを示す図である。
90℃で60分間の熱処理後のH2BPP1のRP-UPLC-MSトータルイオンクロマトグラム(TIC)を示す(黒線)図である。未処理の参照試料(灰色線)のクロマトグラムが比較のために含まれている。 図3Aの拡大クロマトグラムである。未処理の参照試料(灰色線)のクロマトグラムが比較のために含まれている。 90℃で60分間の熱処理後のH2BPP2のRP-UPLC-MSトータルイオンクロマトグラム(TIC)を示す(黒線)図である。未処理の参照試料(灰色線)のクロマトグラムが比較のために含まれている。 図3Cの拡大クロマトグラムである。未処理の参照試料(灰色線)のクロマトグラムが比較のために含まれている。
灰色の垂直線によって示される時点において、0.3及び3nMの濃度で連続的に注入された(A)ヒトHER2及び(B)カニクイザルHER2に対するH2BPP1の結合を示すシングルサイクルカイネティクス(SCK)SPRセンサーグラム(黒線)を示す図である。
灰色の垂直線によって示される時点において連続的に注入され、指定濃度で分析されたヒト(A)HER1、(B)HER3及び(C)HER4に対するH2BPP1の結合がないことを示すSCK SPRセンサーグラム(黒線)を示す図である。
99mTc標識ポリペプチドである(1)99mTc-H2BPP1、(2)99mTc-H2BPP2、及び(3)99mTc-H2BPP3のSDS-PAGE分析をそれぞれ示す図である。シグナル(4)は、99mTcO に対応する。シグナルはデジタルライト単位(DLU)として測定され、SDS-PAGEゲル中のレーンの所定点における放射能に比例する。
HER2発現SKOV-3(A、B、C)及びBT-474(D、E、F)細胞株に対する、(A、D)99mTc-H2BPP1、(B、E)99mTc-H2BPP2及び(C、F)99mTc-H2BPP3のインビトロ結合特異性を示す図である。HER2の事前飽和のために、500倍モル過剰の非放射性標識ポリペプチドを添加した。データは平均値(n=3)±SDとして示される。
HER2発現SKOV-3(A、B、C)及びBT-474(D、E、F)細胞株に対する(A、D)99mTc-H2BPP1、(B、E)99mTc-H2BPP2及び(C、F)99mTc-H2BPP3の正規化された細胞保持率を示す図である。データは平均値(n=3)±SDとして示される。エラーバーが見られない場合、エラーバーは各点記号よりも小さい。
注射4時間後の雌NMRIマウスの血液における99mTc標識新規ポリペプチドH2BPP1、並びに参照ポリペプチドH2BPP2及びH2BPP3のそれぞれの取り込みを示す図である。標識ポリペプチド1μg(60kBq、PBS中100μl)を尾静脈に注射した。 注射4時間後の雌NMRIマウスの肺における99mTc標識新規ポリペプチドH2BPP1、並びに参照ポリペプチドH2BPP2及びH2BPP3のそれぞれの取り込みを示す図である。標識ポリペプチド1μg(60kBq、PBS中100μl)を尾静脈に注射した。 注射4時間後の雌NMRIマウスの肝臓における99mTc標識新規ポリペプチドH2BPP1、並びに参照ポリペプチドH2BPP2及びH2BPP3のそれぞれの取り込みを示す図である。 注射4時間後の雌NMRIマウスの脾臓における99mTc標識新規ポリペプチドH2BPP1、並びに参照ポリペプチドH2BPP2及びH2BPP3のそれぞれの取り込みを示す図である。標識ポリペプチド1μg(60kBq、PBS中100μl)を尾静脈に注射した。 注射4時間後の雌NMRIマウスの胃における99mTc標識新規ポリペプチドH2BPP1、並びに参照ポリペプチドH2BPP2及びH2BPP3のそれぞれの取り込みを示す図である。標識ポリペプチド1μg(60kBq、PBS中100μl)を尾静脈に注射した。 注射4時間後の雌NMRIマウスの腎臓における99mTc標識新規ポリペプチドH2BPP1、並びに参照ポリペプチドH2BPP2及びH2BPP3のそれぞれの取り込みを示す図である。標識ポリペプチド1μg(60kBq、PBS中100μl)を尾静脈に注射した。 注射4時間後の雌NMRIマウスの筋肉における99mTc標識新規ポリペプチドH2BPP1、並びに参照ポリペプチドH2BPP2及びH2BPP3のそれぞれの取り込みを示す図である。標識ポリペプチド1μg(60kBq、PBS中100μl)を尾静脈に注射した。 注射4時間後の雌NMRIマウスの骨における99mTc標識新規ポリペプチドH2BPP1、並びに参照ポリペプチドH2BPP2及びH2BPP3のそれぞれの取り込みを示す図である。標識ポリペプチド1μg(60kBq、PBS中100μl)を尾静脈に注射した。
注射後4時間後のHER2陰性Ramos異種移植片及びHER2陽性SKOV-3異種移植片における99mTc-H2BPP1のインビボ特異性を示す図である。データは平均値(n=4)±SDとして示される。
HER2発現SKOV-3異種移植片を有するBALB/C nu/nuマウスにおける注射の4時間後の、示されている99mTc-H2BPP1及び99mTc-H2BPP2の(A)生体内分布及び(B)腫瘍対臓器比を示す図である。データは平均値(n=4)±SDとして表される。
99mTc-H2BPP1を使用した、BALB/C nu/nuマウスにおけるHER2陽性SKOV-3異種移植片(右マウス)及びHER2陰性Ramos異種移植片(左マウス)のイメージングを示す図である。
70℃で標識した後の188Re-H2BPP1のRP-HPLC分析によるクロマトグラムを示す図である。
HER2発現(A)SKOV-3及び(B)SK-BR-3細胞株に対する188Re-H2BPP1のインビトロ結合特異性を示す図である。HER2の事前飽和のために、400倍モル過剰の非放射性標識ポリペプチドを対照ディッシュに添加した(「遮断」)。データは平均値(n=3)±SDとして示される。
非担癌マウスにおけるイメージングリガンドの生体内分布を示す図である。(A)NMRIマウスの唾液腺におけるNa/I共輸送体の飽和の結果。1群のマウス(「遮断」)への飲料水にNaIを添加したことにより、唾液腺における放射能量取り込みが有意に(p<0.0013)減少した。データは平均値(n=4)±SDとして示される。アスタリスクは有意差(対応のないt検定でp<0.05)を示す。 非担癌マウスにおけるイメージングリガンドの生体内分布を示す図である。(B)注射4時間後のNMRIマウスにおける188Re-H2BPP1及び99mTc-H2BPP1の生体内分布の比較。データは平均値(n=4)±SDとして示される。アスタリスクは有意差(対応のないt検定でp<0.05)を示す。
188Re-H2BPP1の注射1時間後及び4時間後のBALB/C nu/nuマウスにおけるHER2陽性SKOV-3異種移植片のイメージングを示す図である。矢印は腫瘍(T)及び腎臓(K)を指す。
(A)HER2発現SKOV-3及びHER2陰性Ramos異種移植片を有するBALB/C nu/nuマウスにおける188Re-H2BPP1の比較(データは平均値(n=4)±SDとして示される)を示す図である。 (B)188Re-H2BPP1を注射されたBALB/C nu/nuマウスにおけるHER2陽性SKOV-3異種移植片(左マウス)及びHER2陰性Ramos異種移植片(右マウス)のイメージング(矢印は腫瘍(T)を指す)を示す図である。
(A)188Re-H2BPP1(10%エタノール水溶液に溶解、5μg、16MBqで3回)で処置したマウスにおける個々の腫瘍の増殖を示す図である。 (B)ビヒクル(10%エタノール水溶液で3回)で処置したマウスにおける個々の腫瘍の増殖を示す図である。 (C)非標識H2BPP1(10%エタノール水溶液に溶解、5μgで3回)で処置したマウスにおける個々の腫瘍の増殖を示す図である。
188Re-H2BPP1(10%エタノール水溶液に溶解、5μg、16MBqで3回)、ビヒクル(10%エタノール水溶液で3回)、又は非標識H2BPP1(10%エタノール水溶液に溶解、5μgで3回)で処置したマウスの(A)生存率を示す図である。 188Re-H2BPP1(10%エタノール水溶液に溶解、5μg、16MBqで3回)、ビヒクル(10%エタノール水溶液で3回)、又は非標識H2BPP1(10%エタノール水溶液に溶解、5μgで3回)で処置したマウスの(B)平均体重を示す図である。
以下の実施例は、C末端にシステイン含有ペプチドベースのキレーター(GGGC、配列番号5)を有するよう設計された新規HER2標的ポリペプチドであるH2BPP1(配列番号1)の生成及び特性評価を開示する。H2BPP1のインビトロ及びインビボ特性を、以前に試験された2種のHER2結合ポリペプチド:同様にC末端GGGCキレーターを含有するH2BPP2(配列番号2)、及びC末端KVDCキレーター(配列番号4)を含有するH2BPP3(配列番号3)(Wallberg et al(2011),J Nucl Med 52:461-469;Ahlgren et al(2010),J Nucl Med 50:781-789)の特性と比較した。HER2と相互作用するアミノ酸残基に関しては、3種全てのポリペプチドにおいて同一であるが、新規ポリペプチドH2BPP1は、H2BPP2及びH2BPP3と比較して足場残基が異なる。ここで、後者の2つは、C末端のキレート残基を除いて同一である(図1)。足場の変化は、特性の望ましくない変化、例えば放射性標識の部位特異性の喪失並びに生体内分布及びイメージング特性の変化を伴う可能性があるため、新規放射性トレーサーの臨床応用には、新たな前臨床評価が必要である。このような評価を目的として、ここではTc-99mを用いて放射性標識を行った。以下の実施例に記載される試験は、驚くべきことに、H2BPP2及びH2BPP3と比較して、H2BPP1の足場におけるいくつかのアミノ酸の変化にもかかわらず、標識効率及び腎取り込みの有益な低減が保持されたことを示した。結論として、この新規ポリペプチドを診断及び治療用途における使用に適したものとする好ましいインビトロ及びインビボ特性、例えばHER2結合、免疫原性プロファイル、生体内分布及び腫瘍標的化が、H2BPP1について実証された。
実施例1
HER2結合ポリペプチドの作製及び純度分析
方法
ポリペプチドの化学合成:両方ともC末端にGGGCキレート配列を含む新規HER2結合ポリペプチドH2BPP1(配列番号1)及び参照ポリペプチドH2BPP2(配列番号2)を、Almac(Edinburgh、UK)で特注した。ポリペプチドは化学合成によって作製され、RP-HPLCで精製され、酢酸含有緩衝液に交換され、凍結乾燥製品として届られた。特性評価及び放射性標識の前に、凍結乾燥したポリペプチドを-20℃で保存した。
組換え産生:参照ポリペプチドH2BPP3(配列番号3)を、前述の通り産生した(Ahlgren et al(2008),Bioconjugate Chem 19:235-243)。
SE-HPLC及びRP-UPLC-MS分析:H2BPP1及びH2BPP2の純度を、サイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SE-HPLC)及び逆相超高速クロマトグラフィ質量分析(RP-UPLC-MS)によって分析した。凍結乾燥したポリペプチドを、PBS(KCl 2.68mM、KHPO 1.47mM、NaCl 136.9mM、NaHPO 8.1mM、pH7.4)に溶解し、EDTA 2mMを添加し、時々かき混ぜながら2時間インキュベートした。SE-HPLC分析は、Agilent 1100 HPLCシステム(Agilent Technologies)に接続されたSuperdexペプチドGL 10/300カラム(Cytiva)において、流量0.3mL/minで、ランニング緩衝液としてPBSを使用して行った。RP-UPLC-MS分析は、API-ES及び6130シングル四重極MSDを備えたAgilent 1290 UPLCシステム(Agilent Technologies)に接続されたAcquity UPLC CSH-C18、1.7μm、2.1×150mmカラム(Waters)で行った。溶出は、流量0.2mL/minで24分間、0.1%TFA中アセトニトリル10~60%のリニアグラジエントによって行った。
結果
ペプチド合成、精製及び凍結乾燥は、H2BPP1及びH2BPP2の両方において良好に行われた。両ポリペプチドの純度は、SE-HPLCによって99%超、RP-UPLCによって92%超であると求められた。RP-HPLC-MS分析は、220nmシグナルの積分に基づき、表1に示したフラクションで、それぞれ単量体ポリペプチド及びCys-Cys媒介二量体ポリペプチドに対応する予想質量を特定した。結論として、2種のポリペプチドそれぞれの純度は同等であり、更なるインビトロ及びインビボ分析のために十分であるとみなされた。
実施例2
非標識HER2結合ポリペプチドの安定性試験
方法
円二色性分光法:新規ポリペプチドH2BPP1(配列番号1)及び参照ポリペプチドH2BPP2(配列番号2)について、熱安定性及び熱変性後のリフォールディングを、円偏光二色性分光法を用いて測定した。凍結乾燥したポリペプチドをPBSに溶解し、2時間のインキュベーション後、0.22μmのMillex-GVシリンジフィルタ(Millipore)で滅菌濾過し、最終濃度が2mMになるまでEDTAを添加した。ポリペプチド試料をPBSで0.5mg/mLに希釈した。1mmの光路長を有するセルを用いて、Jasco J-810分光偏光計(Jasco Scandinavia AB)で測定を行った。各ポリペプチドについて、250~195nmの楕円率を測定する第1のCDスペクトルを20℃で記録した。熱安定性は、可変温度測定(VTM、20℃から90℃まで5℃/min)の間、221nmの楕円率を記録することによって求めた。20℃まで冷却後、250nm~195nmの第2のCDスペクトルを記録した。
長期安定性評価:それぞれ凍結乾燥され、-20℃で保存された、又はPBS+2mM EDTAに溶解され、-80℃及び5℃で保存された、H2BPP1(配列番号1)及びH2BPP2(配列番号2)のそれぞれの安定性を、6ヶ月後までモニターした。実施例1に記載される通りに実施したRP-UPLC及びSE-HPLC分析を評価に使用した。
高温安定性評価:H2BPP1(配列番号1)及びH2BPP2(配列番号2)をそれぞれPBSに溶解した。ポリペプチド各100μgに、SnCl 56μg、NaEDTA 75μg及びグルコン酸Na 2.8mgを添加した。90℃で60分間の放射性標識条件で処理した後のポリペプチドの安定性を、質量分析計(Vion-Q-Tof、Waters)と直列接続したRP-UPLCを用いて評価した。分析は、Acquity UPLC CSH-C18、1.7μm、2.1×100mmカラム(Waters)を用いて、流量0.2mL/minで、0.1%ギ酸中アセトニトリル10~50%のリニアグラジエントによる溶出で24分間行った。
結果
円二色性分光法:円二色性分光法を使用した可変温度測定から求めた融解温度Tmは、H2BPP1で62℃、H2BPP2で68℃であった。これは、Zバリアントポリペプチドにしては高いと考えられた。更に、熱誘導変性の前及び後に測定したCDスペクトルは、両方のポリペプチドにおいて完全なリフォールディング及び典型的なαヘリックス構造を示した(図2)。
長期安定性評価:-20℃で凍結乾燥して保存した場合、又はPBS+2mM EDTAに溶解して-80℃又は5℃で6ヶ月後まで保存した場合、H2BPP1とH2BPP2との間で安定性の差は見られなかった。表2は、RP-UPLCの結果の概要を示す。
高温安定性評価:RP-UPLC-MSトータルイオンクロマトグラム(TIC)は、H2BPP2についてより多くのポストピークバリアントが生じたという事実から結論付けられるように(図3Bと図3Dとを比較)、新規ポリペプチドH2BPP1は、好ましい標識条件(90℃、60分間)での熱処理後、参照ポリペプチドH2BPP2よりも安定であることを示している。これらのバリアントは、脱アミド化ポリペプチドバリアントである可能性が最も高い。
PBS(pH7.4)+2mM EDTAに溶解
実施例3
非標識HER2結合ポリペプチドの結合分析
本実施例では、HER2に対する結合親和性及び特異性を評価するために、新規ポリペプチドH2BPP1(配列番号1)を用いて行われたSPR結合試験を示す。ヒト、カニクイザル、ラット、及びマウスHER2に対する結合をそれぞれ分析することによって、異種間相互作用を調べた。H2BPP1のHER2結合特異性を確認するために、近縁の受容体チロシンキナーゼHER1(上皮成長因子受容体、EGFRとしても知られる)、HER3及びHER4に対する結合を評価した。
方法
SPR異種間結合分析:第1の実験では、ヒト、カニクイザル、ラット及びマウスHER2を有するFcキメラタンパク質に対するH2BPP1の結合親和性を、Biacore 8K装置(Cytiva)を使用して測定した。組換えヒトErbB2/HER2-Fc(Sino Biological、カタログ番号10004-H02H)、カニクイザルErbB2/HER2-Fc(Sino Biological、カタログ番号90295-C02H)、ラットErbB2/HER2-Fc(Sino Biological、カタログ番号80079-R02H)及びマウスErbB2/HER2-Fc(Sino Biological、カタログ番号50714-M02H)をそれぞれ、固定化緩衝液(10mM酢酸ナトリウム、pH4.5)で10μg/mLに希釈し、アミンカップリングキットタイプ2(Cytiva)を使用するEDC/NHSカップリング化学により、製造業者の指示に従ってCM5センサーチップ(Cytiva)上に固定化した。センサーチップ固定化の結果はそれぞれ、ヒトHER2 Fcキメラタンパク質は2342RU、カニクイザルHER2 Fcキメラタンパク質は2066RU、ラットHER2 Fcキメラタンパク質は2385RU、マウスHER2 Fcキメラタンパク質は1674RUであった。チップ表面上へのH2BPP1の注入には、間に再生を伴わずに1サイクルで一連の分析物注入が可能であるシングルサイクルカイネティクス(SCK)法を使用した。背景差分のため、各分析物サイクルの前に、HBS-EP+(HEPES 10mM、NaCl 150mM、EDTA 3mM、界面活性剤P-20 0.05%、pH7.4)を用いたブランクサイクルを行った。H2BPP1を0.3及び3nMの濃度で240秒間連続的に注入した後、解離時間を900秒間とした。流量は50μl/minであり、HBS-EP+をランニング緩衝液として使用した。再生緩衝液(25mM HCl)を30秒間、1回注入することにより、表面を再生した。Biacore 8K Insight Evaluationソフトウェアの1:1結合モデルを使用して、結合速度定数(k)、解離速度定数(k)及び解離平衡定数(K)を計算した。
SPR特異性分析:第2の実験では、ErbB受容体ファミリーの他のメンバーに対する結合を分析することにより、H2BPP1の特異性を調査した。組換えヒトEGFR/Her1-Fc(R&D Systems、カタログ番号344-ER)、ErbB2/HER2-Fc(R&D Systems、カタログ番号1129-ER)、ErbB3/Her3-Fc(R&D Systems、カタログ番号348-RB)及びErbB4/Her4-Fc(R&D Systems、カタログ番号1131-ER)の固定化及び試料分析を、1)H2BPP1をそれぞれ0.19、0.38及び0.75 nMの濃度で連続的に注入したこと、及び2)解離時間が1200秒であったことを除いて、異種間結合分析について記載した通りに行った。ヒトHER Fcキメラタンパク質のセンサーチップ固定化の結果、HER1は1592RU、HER2は1704RU、HER3は2942RU、HER4は2056RUであった。
結果
HER2に対する新規H2BPP1の結合親和性及び特異性を、表面プラズモン共鳴測定によって評価した。
SPR異種結合分析:第1の分析において、H2BPP1を、固定化ヒト、カニクイザル、ラット及びマウスHER2 Fcキメラタンパク質をそれぞれ含有する4つのBiacoreセンサーチップチャネル上に、SCK濃度系列(0.3及び3nM)で注入した。H2BPP1は、ヒト及びカニクイザルHER2に対する結合を示したが(図4)、ラット又はマウスHER2に対する結合は示さなかった(図示せず)。ヒト及びカニクイザルHER2-Fcに対するH2BPP1の結合についての結合速度定数(k)、解離速度定数(k)及び解離平衡定数(K)をそれぞれ表3にまとめた。
SPR特異性分析:第2のSPR分析では、H2BPP1のHER2結合特異性を、ErbB受容体ファミリーの他のメンバーであるHER1、HER3及びHER4に対する結合をそれぞれ分析することによって調査した。ヒトHER2についての結合動態は、表3に示されるデータと一致し、Kは100pMと求められたが、HER1、HER3又はHER4に対する結合は検出されなかった(図5)。
実施例4
インシリコ免疫原性評価
本実施例では、HLA結合予測のためのウェブベースのツールを使用した、新規HER2結合ポリペプチドH2BPP1及び参照ポリペプチドH2BPP2の、それぞれのアミノ酸配列のインシリコ免疫原性評価を記載する。ヒト試験における使用のためには、最も免疫原性の低いポリペプチドが非常に好ましい。
方法
Immune Epitope Data Base(IEDB、National Institute of Allergy and Infectious Disease,NIHによる:http://tools.iedb.org/mhcii/)からのウェブベースのMHC II結合予測ツールを使用して、新規ポリペプチドH2BPP1(配列番号1)及び参照ポリペプチドH2BPP2(配列番号2)のインシリコ予測分析を行った。このツールは、選択されたHLA対立遺伝子に対するペプチド(デフォルトでは15量体)の結合親和性を予測し、親和性はペプチドの参照セットとの関係でランク付けされる。パーセンタイルランクを使用して、免疫原性である可能性が高い、高親和性結合エピトープを同定することができる。IEDBツールの背景及び更なる詳細については、Vita et al(2019),Nucleic Acids Res 47:339-343を参照されたい。使用したクエリパラメータは、IEDBデフォルトパラメータ(方法:「IEDB推奨2.22」、HLAセット:完全HLA参照セット(27対立遺伝子)、ペプチド長:15量体)であった。データをパーセンタイルランク(≦1%、1~2%、2~3%、及び3~10%)に基づいてグループ分けし、閾値群及びクエリ配列当たりのユニークコアエピトープ(9アミノ酸)及び対立遺伝子の数を集計した。10%を超えるスコアのペプチドは重要でないと分類された。
結果
2種のペプチドにおける免疫原性エピトープの潜在的な存在を、IEDBウェブベースのMHC II結合予測ツールを使用してインシリコで評価した。新規ポリペプチドH2BPP1と参照ポリペプチドH2BPP2において、それぞれ予測された別個のコアエピトープの数を表4に示す。異なる対立遺伝子に対する親和性が異なる閾値内に入る任意の単一のエピトープは、複数回(各閾値につき1回)数えた。更に、各配列及び閾値について、別個のHLA対立遺伝子の数を数え、集計した(表5)。評価に使用した対立遺伝子の数は27であり、したがって最大スコアは27となった。
H2BPP1内の予測エピトープをH2BPP2内の予測エピトープと比較すると、主な差異は、参照ポリペプチドH2BPP2のアミノ酸残基40~48位に存在するが、新規ポリペプチドH2BPP1には存在しないと予測される1つの1~2%閾値エピトープであることが明らかになる。更に、3~10%閾値エピトープとの差異は、参照ポリペプチドH2BPP2において予測されているが、新規ポリペプチドH2BPP1においては予測されていない、5~13位における1つの更なるエピトープ及び30~52位における1つの更なるエピトープ(足場残基は、これら2種のポリペプチド間において最も異なっている)である。結論として、新規ポリペプチドH2BPP1では、参照ポリペプチドH2BPP2と比較して、潜在的に免疫原性のエピトープの数が少なく、このことから、H2BPP1は、ヒトにおける使用のための開発において好ましい。
実施例5
HER2結合ポリペプチドの放射性標識
本実施例では、新規ポリペプチドH2BPP1(配列番号1)並びに2つの参照ポリペプチドH2BPP2(配列番号2)及びH2BPP3(配列番号3)の、テクネチウム-99(99mTc)の準安定核異性体による放射性標識を記載する。放射化学的収率、純度及び安定性を評価するために実施した分析も示す。
方法
ジスルフィド結合の還元:標識の前に、各ポリペプチドをジチオスレイトール(DTT、Merck)で処理し、システイン残基間に形成されたジスルフィド結合を還元した。この目的のために、DTT溶液(15μl、脱気Milli-Q水中1M)をポリペプチド(500μl、脱気PBS中2mg/mL)と混合した。混合物を37℃で2時間インキュベートした。還元されたポリペプチドを、PBSで平衡化し、溶出するNAP-5カラム(Cytiva)を使用して精製した。溶出した各ポリペプチドを分注(aliquot)し(50μl中50μg)、その後使用するまで-80℃で保存した。
99mTcによる標識:塩化スズ(II)二水和物75μg(Fluka Chemika)、グルコン酸ナトリウム塩5mg(Celsus Laboratories)及びエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(EDTANa)100μg(Sigma-Aldrich)を含有する凍結乾燥標識キットを、前述の通り調製した(Ahlgren et al(2010),Nucl Med Biol 37:539-546)。Ultra TechneKowジェネレーター(Mallinckrodt)を滅菌0.9%塩化ナトリウム(Mallinckrodt)で溶出することによって、99mTcを過テクネチウム酸塩として得た。脱気PBS100μlに溶解した凍結乾燥キットの内容物をポリペプチド50μgに添加することによって、各ポリペプチドの放射性標識を行った。反応混合物に、ジェネレーター溶出99mTc-過テクネチウム酸塩100μl(150~250MBq)を添加し、バイアルを脱気して混合物を酸化から保護した。反応バイアルを十分にボルテックスで混合し、90℃で1時間インキュベートした。
放射性標識の評価:各ポリペプチドの放射化学的収率を、ITLC-SGストリップ(Agilent Technologies)を用いて、PBSで展開するインスタント薄層クロマトグラフィにより分析した(ポリペプチド:保持因子(Rf)=0.0、99mTcの他の形態:Rf=1.0)。生成物中の還元加水分解テクネチウムコロイド(RHT)レベルを、移動相としてピリジン:酢酸:水(5:3:1.5)を用いて測定した(99mTcコロイド:Rf=0.0、99mTcの他の形態及び放射性標識ポリペプチド:Rf=1.0)。放射化学的収率は全てのコンジュゲートにおいて95%超であったため、更なる精製は行わなかった。ITLC測定の結果を、MES緩衝液中のNuPAGE 4~12%Bis-Trisゲル(いずれもInvitrogen製)を使用するSDS-PAGEによって検証した。ITLCストリップ及び電気泳動ゲルの両方における放射能分布の定量的測定には、Cyclone Storage Phosphorシステム(Perkin-Elmer)を使用した。
放射性ITLCデータを更に交差検証するために、RP-HPLCを、直列に連結されたL-2130ポンプ、UV検出器(L-2400)及び放射線(radiation flow)検出器(Bioscan)を備えたLaChrom Elite(登録商標)システム(VWR-Hitachi)で行った。99mTc標識化合物の純度分析は、分析カラム(Luna(登録商標)5μm C18、100Å、150×4.6mmカラム、Phenomenex)を用いて行った。RP-HPLC条件は以下の通りであった。溶媒A:Milli-Q水中10mM TFA、溶媒B:アセトニトリル中10mM TFA、220nmでのUV検出、グラジエント溶出:B5~70%で0~15分、B70~95%で15~18分、B5%で19~20分、流量1.0mL/min。
放射性標識コンジュゲートのインビトロ安定性を評価するために、新たに標識されたポリペプチドの各フラクション(10μl、0.4μg)を過剰量のPBS(40μl)と共に37℃で1時間及び4時間インキュベートした。試験はtriplicateで行った。99mTcの放出を、上記の通りITLCによってモニターした。
結果
3つ全てのポリペプチドバリアントは、99mTcで首尾よく標識され、放射性標識収率及び放射化学的純度の両方が95%を超えた。全てのコンジュゲートは、過剰のPBS存在下、37℃で4時間のインキュベーション中において安定であった。99mTcの3%未満の放出が観察された。放射性標識及びインビトロ安定性試験の結果を表6にまとめた。
ITLCデータの交差検証のため、SDS-PAGE、RP-HPLC及び分析を行った。SDS-PAGE分析(図6)では、高分子量又は低分子量の放射能バンドが観察されなかったため、凝集、分解、放射性核種の放出の兆候は認められなかった。放射性RP-HPLC分析では、全てのポリペプチドの保持時間は約8.6~9.2分であり、標識ポリペプチドの保持時間(放射能検出器により測定)は、非標識ポリペプチドの保持時間(UV検出器により測定)と同じであった。このことから、標識ペプチドの真正性が確認された。
実施例6
放射性標識HER2結合ポリペプチドのインビトロ特性評価
本実施例では、実施例5に記載される通りに調製された3つの99mTc標識ポリペプチドの、インビトロ細胞ベースのアッセイを使用した特性評価について記載する。
材料
細胞培養:American Type Culture Collection(ATCC)から入手したHER2発現卵巣癌SKOV-3及び乳癌BT-474細胞株を使用した。10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、並びに100IU/mLペニシリン及び100mg/mLストレプトマイシンで構成されるPESTを添加したRPMI培地(Flow Irvine)(以下、「完全培地」と呼ぶ)中で細胞を培養した。細胞を、10cells/dishの密度で細胞培養ディッシュに播種した。結合特異性、細胞保持率及び細胞プロセシングのインビトロ試験における各データポイントに、3つのディッシュのセットを使用した。
インビトロ結合特異性:対照ディッシュでは、SKOV-3及びBT-474細胞を500倍過剰の非標識H2BPP3で15分間予め飽和させた。0.5nMの各標識ポリペプチド99mTc-H2BPP1(新規)、99mTc-H2BPP2(参照)及び99mTc-H2BPP3(参照)をそれぞれ試験ディッシュ及び対照ディッシュに添加し、細胞を加湿インキュベーター(5%CO、37℃)中で1時間インキュベートした。培地を捨て、細胞を冷たい無血清培地で洗浄した後、トリプシン-EDTA溶液(ディッシュ当たり0.5mL)を添加し、細胞を更に10分間インキュベートした。剥離した細胞を完全培地0.5mLで希釈し、再懸濁し、フラクションチューブに移した。細胞の放射能を、NaI(TI)検出器を備えた自動ガンマカウンター(1480 Wizard、Wallac)を使用して測定し、細胞結合放射能を計算した。
インビトロ結合親和性:99mTc標識ポリペプチドH2BPP1(新規)、H2BPP2(参照)及びH2BPP3(参照)のHER2受容体に対する結合動態を、LigandTracer Yellow装置(Ridgeview Instruments)を使用して測定した。SKOV-3細胞を、細胞培養ディッシュ(Nunclon(商標)、サイズ100620、NUNC A/S)の局所領域に播種した。測定は、内在化を防ぐために室温(RT)で行った。99mTc標識ポリペプチド0.33、1及び3nMで取り込み曲線を記録し、その後、放射性培地を取り除き、新しい非放射性培地を添加して、解離曲線を記録した。データを、Interaction Mapソフトウェア(Ridgeview Diagnostics)を使用して分析して、結合速度、解離速度及び平衡解離定数(K)を計算した。分析はduplicateで行った。
細胞プロセシング試験:以前に記載され、検証された方法を使用して、細胞プロセシングを調べた(Wallberg and Orlova(2008),Cancer Biother Radiopharm 23:435-442)。簡単に説明すると、SKOV-3及びBT-474細胞(1×10cells/dish)を標識H2BPP1(新規)、H2BPP2(参照)及びH2BPP3(参照)各0.5nMと共に室温で1時間インキュベートした。その後、培地を除去し、細胞を洗浄し、新しい培地を添加し、細胞を37℃の加湿インキュベーターに入れた。インキュベーションの0、1、2、4及び6時間後に、内在化されたフラクションを酸洗浄法によって求めた。氷上で5分間、0.1Mグリシン緩衝液(pH2.5)中4M尿素溶液で処理することによって、膜結合ポリペプチドを細胞から除去した。内在化されたコンジュゲートを含有する細胞残屑を、1M NaOHで処理することによって剥離した。細胞の放射能を、NaI(TI)検出器を備えた自動ガンマカウンター(1480 Wizard、Wallac)を使用して測定し、膜結合放射能及び内在化放射能の割合を計算した。
結果
インビトロ結合特異性:H2BPP1(新規)、H2BPP2(参照)及びH2BPP3(参照)ポリペプチドのHER2結合特異性を、飽和実験を使用して評価した。細胞を非標識H2BPP3で予め飽和させた場合、結合は有意に減少し(p<5×10-6)(図7)、新規及び参照ポリペプチドの両方の結合がHER2媒介性であることが確認された。
インビトロ結合親和性:LigandTracerを使用して測定した、99mTc標識ポリペプチドH2BPP1(新規)、H2BPP2(参照)及びH2BPP3(参照)のそれぞれの、SKOV-3細胞のHER2受容体に対する結合動態を表7にまとめた。全てのコンジュゲートの、SKOV-3細胞株に対する結合の最良適合は、1:1モデルを使用して達成された。相互作用マップ計算では、全てのコンジュゲートについて、急速な結合とそれに続く非常に遅い解離が示され、その結果、ピコモルの平衡解離定数(K)が得られた。
細胞プロセシング試験:細胞保持率及び内在化実験の結果では、全てのポリペプチドの内在化が遅いことが示された(図8)。参照ポリペプチド99mTc-H2BPP3は、6時間のインキュベーション後に、GGGCキレーターを含有するポリペプチド、すなわち新規ポリペプチド99mTc-H2BPP1(SKOV-3及びBT-474についてそれぞれ65.8±2.1及び81.5±2.3%)及び参照ポリペプチド99mTc-H2BPP2(SKOV-3及びBT-474についてそれぞれ76.8±4.0及び86.9±1.2%)よりも高い保持率(SKOV-3及びBT-474細胞についてそれぞれ87.6±3.5及び87.3±3.5%)を示す傾向がわずかに見られた。
結論:新規ポリペプチド99mTc-H2BPP1は、58±2pMの親和性(K)でHER2発現細胞に特異的に結合することが示された。これは、遅い内在化速度にもかかわらず、腫瘍における放射能量の保持に好ましい。
実施例7
インビボ生体内分布試験
方法
動物の取り扱い:動物実験は、実験動物を用いた作業に関する国内法に従って行った。UppsalaのEthical Committee for Animal Researchによって承認が与えられた。これらの実験では、1データポイント当たり4匹のマウス群を使用した。
非担癌マウスにおける生体内分布:新規ポリペプチド99mTc-H2BPP1の足場再設計が該ポリペプチドのインビボ挙動に対して強い有害作用を及ぼさないことを確認するため、注射4時間後の雌NMRIマウスにおける生体内分布を、参照ポリペプチド99mTc-H2BPP2及び99mTc-H2BPP3の生体内分布と比較した。非担癌マウス(体重:25.5±2.4g)に、各99mTc標識ポリペプチド1μg(60kBq、PBS中100μl)を尾静脈注射した。4時間後、麻酔(Rompun/Ketalar)の過剰投与によってマウスを安楽死させ、続いて心臓穿刺を行い、血液試料を採取した。臓器及び組織試料を採取し、秤量した。臓器の放射能を、NaI(TI)検出器を備えたガンマスペクトロメータ(1480 Wizard、Wallac)を使用して測定し、臓器の取り込み値を、組織1グラム当たりの投与量(injected dose)に対する割合(%ID/g)として計算した。
担癌マウスにおける生体内分布:HER2陽性SKOV-3異種移植片を有するBALB/C nu/nuマウスにおいて、生体内分布及び標的化特性を評価した。異種移植片を構築するために、10個のSKOV-3細胞を雌BALB/c nu/nuマウスの右後肢に皮下注射した。特異性対照として、HER2陰性Ramos異種移植片を使用した。5×10個のRamos細胞(ATCC)を、5匹の雌BALB/c nu/nuマウスの左後肢に皮下移植した。実験は、細胞移植の2週間後に行った。動物の平均体重は18.2±0.7gであった。平均腫瘍重量は、SKOV-3及びRamos異種移植片について、それぞれ0.06±0.02及び0.03±0.01gであった。SKOV-3異種移植片を有するマウスにおける注射の1、4、8及び24時間後に、99mTc-H2BPP1の生体内分布を測定した。3群の担癌マウスに、99mTc-H2BPP1 4μg(80kBq、PBS中100μl)を尾静脈注射した。注射24時間後の生体内分布を測定するために、1群のマウスに640kBqを注射したが、注射されたタンパク質質量は同じ4μgであった。腫瘍における99mTc-H2BPP1蓄積のHER2特異性を評価するために、HER2陰性Ramos異種移植片を有する1群の動物(マウスの平均体重は17.6±1.2gであった)に99mTc-H2BPP1 4μg(80kBq、PBS中100μl)を注射し、注射4時間後に生体内分布を測定した。比較のため、1群のマウスに参照ポリペプチド99mTc-H2BPP2(99mTc-H2BPP1と同じ放射能量及び投与量)を注射し、注射4時間後に生体内分布を測定した。担癌マウスにおける生体内分布の測定は、NMRIマウスについて上述した通りに行った。
インビボイメージング:生体内分布結果を確認するために、小動物用SPECT/CTイメージングを実施した。SKOV-3異種移植マウス1匹及びRamos異種移植マウス1匹に、20MBq/4μgの99mTc-H2BPP1を静脈内注射した。注射4時間後に、nanoScan SPECT/CTスキャナ(Mediso Medical Imaging Systems)を使用してマウスをイメージングした。マウスを、カメラに入れる直前にCO窒息によって安楽死させた。コンピュータ断層撮影(CT)取得を以下のパラメータで行った:エネルギーピーク50kV、670μA、投影480回、取得時間2.29分。SPECT取得を以下のパラメータで行った:99mTcエネルギーピーク140keV、ウィンドウ幅20%、マトリックス256×256、取得時間1時間。Nucline 2.03ソフトウェア(Mediso Medical Imaging Systems)を使用してCT画像をリアルタイムで再構成した。Tera-Tomo(商標)3D SPECT再構成技術を使用して、SPECTの生データを再構成した。
結果
非担癌マウスにおける生体内分布:注射4時間後のNMRIマウスにおける、新規ポリペプチド99mTc-H2BPP1並びに2つの参照ポリペプチド99mTc-H2BPP2及び99mTc-H2BPP3の生体内分布の比較を図9に示す。99mTc-H2BPP2及び99mTc-H2BPP3の生体内分布データは、これらの参照ポリペプチドについて以前に得られたデータと非常によく一致していた(Wallberg et al(2011),supra;Ahlgren et al(2010), supra)。GGGC含有ポリペプチド99mTc-H2BPP1(5.9±2.1%ID/g)及び99mTc-H2BPP2(7.9±2.1%ID/g)の腎取り込みは、99mTc-H2BPP3(183.8±27.3%ID/g)よりも有意に低かった(p<0.0005)。言い換えれば、99mTc-H2BPP1及び99mTc-H2BPP2の腎取り込みは、99mTc-H2BPP3の腎取り込みと比較して1/25~1/30であった。更に、99mTc-H2BPP1及び99mTc-H2BPP2は、肺、肝臓、脾臓、胃、筋肉及び骨での取り込みが、99mTc-H2BPP3よりも有意に(p<0.05)低かった。肝臓における99mTc-H2BPP1及び99mTc-H2BPP2の取り込みは、99mTc-H2BPP3の取り込みと比較して、ほぼ1/4であった。このように取り込みが低いことは、乳癌において多く見られる肝転移のイメージングにおける背景放射能量の低下をもたらすため、好ましい特徴である。新規ポリペプチド99mTc-H2BPP1はまた、99mTc-H2BPP3よりも有意に低い血中濃度も示した。
担癌マウスマウスにおける生体内分布:ヒト癌異種移植片を有するヌードマウスで行われた実験は、注射4時間後に、HER2発現SKOV-3異種移植片における99mTc-H2BPP1の取り込みが、HER2陰性Ramos異種移植片よりも175倍高いことを実証した(p<0.0005)(図10)。これにより、腫瘍蓄積がHER2特異的であることが確認された。注射の1、4、8及び24時間後の新規ポリペプチド99mTc-H2BPP1の生体内分布データを表8に示す。99mTc-H2BPP1は、腫瘍取り込みが注射1時間後において既に24±7%ID/gであったことから、効率的な標的化を示した。[99mTc](Tc=O)-GGGC錯体が非残留性(non-residualizing)標識として作用することが示されているという事実にもかかわらず、腫瘍における経時的な放射能量の保持は良好であった。理論に束縛されることを望むものではないが、HER2に対する結合ポリペプチドの親和性が非常に高いことが、このような有益な特性の根拠となっている。注射1時間後及び8時間後における腫瘍取り込みに有意差はなく、腫瘍取り込みは注射24時間後までに1/2しか減少しなかった。対照的に、正常組織からのクリアランスは急速であった。腎臓に関する放射能量は、経時的に非常に急速に低下した(注射24時間後の5.3±0.3%ID/gと比較して、注射1時間後では40±1%ID/g)。このような生体内分布パターンにより、注射4時間後において既に、99mTc-H2BPP1の腫瘍対臓器比は有利に高くなっている(表9)。
注射4時間後のヒトSKOV-3異種移植片を有するヌードマウスの同じバッチにおける99mTc-H2BPP1及び99mTc-H2BPP2の生体内分布の直接比較(図11)は、これらのポリペプチドの生体内分布が非常に類似していること、すなわち、新規ポリペプチドにおける足場の変化が生体内分布に対していかなる負の影響も及ぼさないことを実証した。更に、腫瘍対骨比を除いて、2つのコンジュゲートの腫瘍対臓器比に有意差はなかった。腫瘍対腎臓比は、両コンジュゲートともほぼ同じレベルであった(99mTc-H2BPP1及び99mTc-H2BPP2について、それぞれ2.2±0.5及び1.9±0.2)。
インビボイメージング:microSPECT/CTイメージングの結果(図12)は、99mTc-H2BPP1を使用したHER2陽性腫瘍におけるHER2発現の高コントラスト可視化が可能であることを実証した。右後肢のSKOV-3腫瘍は、注射4時間後に明確かつ高コントラストで可視化された。生体内分布データと一致して、腫瘍における放射能取り込みは腎臓よりもかなり高かった。予想通り、HER2陰性Ramos異種移植片における放射能取り込みは、HER2陽性SKOV-3異種移植片よりもはるかに低かった。
結論
新規ポリペプチドH2BPP1の足場を広範囲に再設計しても、該ポリペプチドのC末端内に設計されたGGGCキレーターを使用して99mTcで標識した該ポリペプチドのイメージング特性は損なわれなかった。この新規プローブ、99mTc-H2BPP1は、これまでの文献に記載されている単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)用のHER2イメージングプローブと比較しても、優れた腫瘍対血液比をもたらした。本発明者らは、99mTc-H2BPP1が、高い腫瘍対臓器比及び低い腎取り込みを提供することから、更なる臨床応用試験のための有望な候補であると結論付ける。
実施例8
ヒトにおける使用のための線量評価
方法
新規ポリペプチド99mTc-H2BPP1のヒトにおける線量評価を行うために、マウスにおける取り込み値を、確立された「パーセントkg/g法(percent kg/g method)」(Stabin(2008),Fundamentals of Nuclear Medicine Dosimetry,New York,NY:Springer;p 83-86)を使用し、以下:
(%IA/organ)human=[(%IA/g)animal×(kgTBweightanimal×(gorgan/(kgTBweighthuman
(ここで、「%IA」は投与放射能%を表し、「TBweight」は総体重を表す)に従って計算した。
ヒトの臓器取り込みは、標準の成人女性の臓器重量(Report of the Task Group on Reference Man,ICRP Publication 23(1975).Pergamon Press,Oxford)を使用して計算した。滞留時間は、ヒトの時間-放射能曲線に対する指数関数フィットの曲線下面積として計算した。残りの体内滞留時間は、屠体中の放射能に基づいている。OLINDA/EXM 1.0ソフトウェアを使用して吸収線量を推定した。
結果
ヒトにおける新規ポリペプチド99mTc-H2BPP1の推定吸収線量を表10に示す。OLINDA/EXM 1.0を使用した計算によれば、実効線量は0.00066mSv/MBq(実効線量当量:0.00116mSv/MBq)となるはずである。
実施例9
188ReによるH2BPP1の放射性標識
方法
188Reによるポリペプチドの標識:188Reは、滅菌0.9%塩化ナトリウム4mLによる188W/188Reジェネレーターの溶出(いずれもOncoBeta GmbH製、Germany)によって、過レニウム酸塩として得られた。放射性標識は、1)低溶出液量(1500μl以下)又は2)高溶出液量(4000μl)の2通りの方法で行った。
低溶出液量での標識:1.25M酢酸ナトリウム、pH4.2に溶解した、塩化スズ(II)二水和物1mg、グルコン酸ナトリウム塩5mg及びEDTANa 100μgを含有する1つの凍結乾燥キットの内容物を、H2BPP1 200μgに添加して総体積100μlとした。反応液に188Re含有ジェネレーター溶出液を最大で1500μl (最大で300MBq)添加した。混合物を70℃で60分間インキュベートし、次いで室温で5分間冷却した。実施例5に記載される通りに、サイズ排除NAP-5カラムを使用して標識188Re-H2BPP1の精製を行った。
高溶出液量での標識:1.25M酢酸ナトリウム、pH4.2に溶解した、塩化スズ(II)二水和物2mg、グルコン酸ナトリウム塩50mg及びEDTANa 200μgを含有する1つの凍結乾燥キットの内容物を、H2BPP1 200μgに添加して総体積100μlとした。反応液に188Re含有ジェネレーター溶出液4000μlを添加した。アスコルビン酸440μg(1.25M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)中2mg/mL)を反応バイアルに添加し、混合物を70℃で60分間インキュベートし、次いで室温で5分間冷却した。その後、5mg/mLアスコルビン酸PBS溶液を使用して、反応バイアル中のアスコルビン酸の総量を1mgに調整した。精製はOasis HLB 6cc Vac Cartridge(Waters)を使用して行った。50%エタノール水溶液5mLを通すことによってカートリッジを活性化し、水5mLを通すことによって不活性化した。反応混合物をカートリッジに通し、続いて水20mlを通した。カートリッジを25%エタノール水溶液500μlで更に洗浄し、50%エタノール水溶液1mLで精製された188Re-H2BPP1を溶出した。その後の使用のために、188Re-H2BPP1を水で希釈して、最終エタノール濃度を5~10%とした。精製したサンプルを、実施例5に記載される通りにITLC及びRP-HPLCによって分析した。
結果
低溶出液量による標識により、98.6±0.5%の放射化学的収率が得られた。生成物の放射化学的純度は98%超であった。この188Re-H2BPP1を、実施例10~11に記載される特性評価、生体内分布及びイメージング試験において使用した。
高溶出液量による標識により、85±10%の放射化学的収率が得られた。生成物の放射化学的純度は97%超であった。この188Re-H2BPP1を、実施例12に記載される実験的治療試験において使用した。
実施例10
188Re-H2BPP1 HER2結合ポリペプチドのインビトロ特性評価
本実施例では、実施例9に記載される通りに調製された188Re-H2BPP1の、インビトロでの細胞ベースのアッセイを使用した特性評価を記載する。
方法
細胞培養:HER2発現卵巣癌SKOV-3及び乳癌SK-BR-3細胞株(ATCC)を使用した。細胞は完全培地(実施例6参照)で培養し、細胞培養ディッシュに10cells/dishの密度で播種した。インビトロ結合特異性試験の各データポイントに、3つのディッシュのセットを使用した。
インビトロ結合特異性:対照ディッシュでは、SKOV-3及びSK-BR-3細胞を、400倍モル過剰の非標識H2BPP1(200nM)と共に15分間インキュベートすることによって予め飽和させた。その後、0.5nMの標識ポリペプチド188Re-H2BPP1を試験ディッシュ及び対照ディッシュの両方に添加し、細胞を加湿インキュベーター(5%CO、37℃)中で1時間インキュベートした。培地を捨て、細胞を冷たい無血清培地で洗浄した後、トリプシン-EDTA溶液(ディッシュ当たり0.5mL)を添加し、細胞を更に10分間インキュベートした。剥離した細胞を完全培地0.5mLで希釈し、再懸濁し、フラクションチューブに移した。細胞の放射能を、NaI(TI)検出器を備えた自動ガンマカウンター(1480 Wizard、Wallac)を使用して測定し、細胞結合放射能を計算した。
インビトロ結合親和性:188Re-H2BPP1のHER2受容体に対する結合動態を、実施例6に記載される通りにLigandTracer Yellow装置(Ridgeview Instruments)を使用して測定した。
結果
インビトロ結合特異性:飽和実験を使用して、188Re-H2BPP1のHER2結合特異性を評価した。細胞を非標識H2BPP1で予め飽和させた場合、結合は有意に減少し(p<5×10-5)(図14)、188Re-H2BPP1の結合がHER2媒介性であることが確認された。
インビトロ結合親和性:LigandTracerを使用して測定した188Re-H2BPP1の、SKOV-3細胞のHER2受容体に対する結合動態を表11にまとめた。全てのコンジュゲートについて、SKOV-3細胞に対する結合の最良適合は、1:2モデルを使用して達成された。相互作用マップ計算では、188Re-H2BPP1の優勢な相互作用について、急速な結合とそれに続く非常に遅い解離が示され、その結果、平衡解離定数(K)の低い値、すなわち非常に高い親和性が得られた。
結論
新規ポリペプチド188Re-H2BPP1は、5±3pMの優勢な親和性(K)でHER2発現細胞に特異的に結合することが示された。これは、腫瘍における放射能量の保持に好ましい。
実施例11
インビボ生体内分布及びイメージング試験
方法
動物の取り扱い:動物実験は、実験動物を用いた作業に関する国内法に従って行った。UppsalaのEthical Committee for Animal Researchによって承認が与えられた。
非担癌マウスにおける生体内分布:188Re-H2BPP1の腎異化の間に放射性過レニウム酸塩が放出されるかどうかを求め、ヒトにおける線量推定のためのデータを得るために、生体内分布試験を実施した(実施例13)。NMRIマウスを無作為に4匹ずつの群に分けた。実験時の動物の平均体重は29.6±3.4gであった。各マウスに、0.9%滅菌生理食塩水100μl中188Re-H2BPP1 5μg(210kBq)を静脈内注射した。第1の実験において、マウスの1群には、唾液腺のNa/I共輸送体を飽和させるために、実験の24時間前に飲料水中5%ヨウ化ナトリウム(NaI)を投与し、別の1群には無添加の飲料水を投与した。注射4時間後に生体内分布を測定した。更なる実験では、全ての群に、実験の24時間前に飲料水中NaIを投与した。注射の0.5、1、4、24及び48時間後の時点で、実施例7に記載される通りに188Re-H2BPP1の生体内分布を測定した。注射4時間後に得られた結果を、99mTc-H2BPP1について実施例7で得られた同じ時点での結果と比較し、生体内分布に対する標識の任意の効果を評価した。
担癌マウスにおける生体内分布:HER2陽性SKOV-3異種移植片を有するBALB/C nu/nuマウスにおいて、生体内分布及び標的化特性を評価した。異種移植片を構築するために、10個のSKOV-3細胞を雌BALB/c nu/nuマウスの右後肢に皮下注射した。特異性対照として、HER2陰性Ramos異種移植片を使用した。5×10個のRamos細胞(ATCC)を、5匹の雌BALB/c nu/nuマウスの左後肢に皮下移植した。実験は、細胞移植の2週間後に行った。動物の平均体重は18.0±1.0gであった。平均腫瘍重量は、SKOV-3及びRamos異種移植片について、それぞれ0.160±0.120及び0.7±0.3gであった。SKOV-3異種移植片を有するマウスにおける注射の1、4、8及び24時間後に188Re-H2BPP1の生体内分布を測定した。3群の担癌マウスに、188Re-H2BPP1 10μg(263kBq、PBS中100μl)を尾静脈注射した。注射の24時間後及び48時間後の生体内分布を測定するために、2群のマウスに470kBqを注射したが、注射されたタンパク質質量は同じ10μgであった。腫瘍における188Re-H2BPP1蓄積のHER2特異性を評価するために、HER2陰性Ramos異種移植片を有する1群の動物(マウスの平均体重は19.8±0.6gであった)に188Re-H2BPP1 10μg(265kBq、PBS中100μl)を注射し、注射4時間後に生体内分布を測定した。担癌マウスにおける生体内分布の測定は、NMRIマウスについて上述した通りに行った。
インビボイメージング:生体内分布結果を確認するために、小動物用SPECT/CTイメージングを実施した。SKOV-3異種移植マウス1匹及びRamos異種移植マウス1匹に、2.4MBq/10μgの188Re-H2BPP1を静脈内注射した。nanoScan SPECT/CTスキャナ(Mediso Medical Imaging Systems)を使用して、セボフルラン麻酔下で注射の1時間後及び4時間後に、SKOV-3異種移植片を有するマウスをイメージングした。その後、それぞれSKOV-3及びRamos異種移植片を有するマウスを、カメラに入れる直前にCO窒息によって安楽死させ、同時に並べてイメージングした。コンピュータ断層撮影(CT)取得を以下のパラメータで行った:エネルギーピーク50kV、670μA、投影480回、取得時間2.29分。SPECT取得を以下のパラメータで行った:188Reエネルギーピーク150keV、ウィンドウ幅20%、マトリックス256×256、取得時間20分。Nucline 2.03ソフトウェア(Mediso Medical Imaging Systems)を使用してCT画像をリアルタイムで再構成した。Tera-Tomo(商標)3D SPECT再構成技術を使用して、SPECTの生データを再構成した。
結果
非担癌マウスにおける生体内分布:NMRIマウスにおけるNa/I共輸送体の遮断を評価する第1の実験の結果を図15Aに示す。遮断の結果、唾液腺における放射能量取り込みが有意に減少した(p<0.0013)。遊離放射性過レニウム酸塩(188ReO )は、Na/I共輸送体によって唾液腺に取り込まれるため、冷ヨウ化物による共輸送体の遮断は、188Re-H2BPP1の異化中に放射性過レニウム酸塩の放出があることを示す。遊離放射性過レニウム酸塩は、正常組織で吸収される線量を増加させることがある。これを回避するために、臨床では、放射性核種治療中にヨウ化ナトリウム、牛乳中ヨウ素又はルゴールヨウ素の形態のヨウ素を患者に投与することによって、Na/I共輸送体を遮断する。このアプローチは、188Re-H2BPP1による治療にも使用することができる。そこで、飲料水にNaIを添加した後のマウスで更なる実験を行った。
テクネチウム及びレニウムは化学類似体であるが、その化学特性には差異があり、その結果、99mTc及び188Reで標識された放射性医薬品は異なる生物学的挙動を示す。そのような差異が188Re-H2BPP1及び99mTc-H2BPP1の生体内分布に望ましくない影響を引き起こさないことを確認するために、注射4時間後にNMRIマウスにおいて得られた結果を比較した(図15B)。188Re-H2BPP1の取り込みは、血液、肺、肝臓及び骨で高いことがわかった。予想外なことに、腎臓における188Reの保持率は99mTcの保持率よりも低く、これは腎臓における吸収線量の低さに結びつくはずである。腎臓は放射性核種治療において重要な臓器であるため、188Re-H2BPP1のこの特徴は、H2BPP1の治療への応用に好ましい。正常マウスにおける188Re-H2BPP1の生体内分布試験のデータを表12に示す。生体内分布の特徴は、血液並びに他の器官及び組織からの188Re-H2BPP1の速やかなクリアランスであった。腸内容物への蓄積量が少ないことから、肝胆道系排泄経路が、体からの188Re-H2BPP1の排出においていかなる実質的な役割も果たさなかったことが示唆される。非常に重要なことは、188Re-H2BPP1の腎取り込みが急速に減少したことである。
データは、内容物を有する試料全体の%IDとして示される。
**データは、試料全体について示される。
担癌マウスにおける生体内分布:HER2発現SKOV-3異種移植片を有するBALB/C nu/nuマウスにおける188Re-H2BPP1の生体内分布試験のデータを、図16~17及び表13に示す。正常なNMRIマウスにおける生体内分布データと一致して、188Re-H2BPP1は、血液及び腎臓を含む正常組織から速やかに消失した。腫瘍への取り込みは高く、注射1時間後において既に31±4%ID/gであった(表13)。この時点までに、腫瘍取り込みは、大部分の臓器における取り込みよりも高く、腎取り込みと同程度であった。しかし、腫瘍取り込みは経時的に高いままであったが、腎臓における放射能量は急速に低下した。注射4時間後において既に、腫瘍取り込みは腎取り込みの8倍超であった。このことは、放射性核種治療のための好ましい前提条件を作り出した。microSPECT/CTを用いた実験的イメージングにより、生体内分布データが確認された(図16)。
188Re-H2BPP1を使用した腫瘍標的化のHER2特異性を確認するために、注射4時間後にHER2陽性SKOV-3及びHER2陰性Ramosリンパ腫異種移植片における取り込みを比較した(図17)。HER2陽性異種移植片における取り込みは、HER2陰性異種移植片の245倍であった。このことは、188Re-H2BPP1の腫瘍取り込みがHER2媒介性であることを明確に実証している。
データは、内容物を有する試料全体の%IDとして示される。
**データは、試料全体について示される。
実施例12
HER2陽性異種移植片の放射線治療
方法
動物の取り扱い:動物実験は、実験動物を用いた作業に関する国内法に従って行った。UppsalaのEthical Committee for Animal Researchによって承認が与えられた。
異種移植片の実験的放射性核種治療:SKOV-3細胞を使用して、高レベルのHER2発現を有する異種移植片に対するH2BPP1の効果を調べた。BALB/c nu/nuマウスの腹部に、10個のSKOV-3細胞を皮下移植した。7日後、3群のマウス(群当たりn=10)を以下のように処置した。A群:188Re標識H2BPP1(5μg、16MBq、10%エタノール水溶液150μl中に溶解)、B群:ビヒクル(10%エタノール水溶液150μl、対照群)、C群:非標識H2BPP1(5μg、10%エタノール水溶液150μlに溶解。タンパク質自体での処置が腫瘍増殖に対して任意の効果を及ぼすかどうかを評価するための対照群)。各群について、48時間間隔で3回の投与を行った。倫理的許可に従い、試験は最初の薬剤投与から90日間行った。腫瘍の存在及びサイズを、スライドキャリパーを用いて週に2回評価した。体重減少が1週間の間に10%若しくは処置開始後15%を超えた場合、又は腫瘍が1mLより大きくなった場合若しくは潰瘍化した場合、マウスを安楽死させた。処置開始時、腫瘍体積は以下の通りであった:A群:101±28mm、B群:85±43mm、C群:86±25mm。群間の腫瘍サイズの差は有意ではなかった(p>0.05、多重比較のためのボンフェローニ補正を伴う一元配置分散分析)。
結果
異種移植片の実験的放射性核種治療の結果を図18~19に示す。図18は、各群における個々の腫瘍の増殖を示す。対照群における腫瘍の増殖は急速であった。腫瘍体積倍加時間は、B群(ビヒクルで処置)で12±7日、C群(非標識H2BPP1で処置)で9±2日であった。これらの2群間で腫瘍倍加時間に有意差はなく(p>0.05、対応のないt検定)、このことは、非標識H2BPP1による処置には抗腫瘍効果がないことを示唆する。腫瘍体積限界に達したため、又は腫瘍潰瘍形成のために、B群の全ての動物が51日目までに屠殺された。C群では、最後の動物が37日目までに屠殺された。A群における腫瘍増殖のパターンは異なっていた。治療開始後19日目から腫瘍体積の減少が観察された(図18A)。この時点で、平均腫瘍体積は、2つの対照群における腫瘍体積よりも有意に小さかった(p<0.05、多重比較のためのボンフェローニ補正を伴う一元配置分散分析)。若干遅れて、いくつかの腫瘍は増殖を再開した。しかし、試験終了時(90日目)には3匹の動物が生存していた。
投与群(A)の生存期間中央値は68日であり、これは対照群よりも有意に長かった(log-rank Mantel-Cox検定において<0.0001)(B群:29日、C群:27.5日、図19A)。ビヒクル(B群)及び非標識H2BPP1(C群)でそれぞれ処置したマウスの生存期間に差はなかった(log-rank Mantel-Cox検定においてp>0.05)。
治療の忍容性は良好であった。投与群におけるマウスの挙動及び外観は、対照群における動物の挙動及び外観と変わらなかった。治療群と対照群の間で動物の平均体重に有意差はなかった(図19B)。
結論
実験的前臨床治療は、188Re-H2BPP1による処置が、HER2発現腫瘍異種移植片の増殖を遅延させ、そのような異種移植片を有するマウスの生存期間を有意に延長し、動物に対する有害作用を伴わないことを実証した。
実施例13
ヒトにおける使用のための線量評価
方法
非担癌マウスにおける生体内分布データ(実施例11)に基づいて、ヒト患者に対する188Re-H2BPP1の線量評価のアップスケーリングを、実施例8に記載される通りに行った。
結果
ヒトにおける新規ポリペプチド188Re-H2BPP1の推定吸収線量を表14に示す。OLINDA/EXM 1.0を使用した計算によれば、実効線量は0.0683mSv/MBq(実効線量当量:0.0683mSv/MBq)となるはずである。
実施形態の項目別リスト
1.アミノ酸配列がAEAKYAKEMR NAYWEIALLP NLTNQQKRAF IRKLYDDPSQ SSELLSEAKK LSESQGGGC(配列番号1)を含む、HER2結合ポリペプチド。
2.アミノ酸配列が配列番号1からなる、項目1に記載のHER2結合ポリペプチド。
3.項目1又は2に記載のHER2結合ポリペプチドと放射性核種との放射性キレートからなる放射性標識ポリペプチド。
4.前記放射性核種が医用イメージングに適している、項目3に記載の放射性標識ポリペプチド。
5.前記放射性核種が、99mTc、51Mn、52mMn、52Mn、186Re及び188Reからなる群から選択される、項目4に記載の放射性標識ポリペプチド。
6.前記放射性核種が99mTcである、項目5に記載の放射性標識ポリペプチド。
7.前記放射性核種が治療に適している、項目3に記載の放射性標識ポリペプチド。
8.前記放射性核種が186Re及び188Reからなる群から選択される、項目7に記載の放射性標識ポリペプチド。
9.前記放射性核種が188Reである、項目8に記載の放射性標識ポリペプチド。
10.項目1又は2に記載のHER2結合ポリペプチド又は項目3~9のいずれか一項に記載の放射性標識ポリペプチドと、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む組成物。
11.HER2の過剰発現を特徴とする癌を有するか又は有することが疑われる、ヒトを含む哺乳動物対象の体におけるインビボイメージングの方法であって、前記方法が、
-項目10に記載の組成物に任意選択で含まれる、項目4~6のいずれか一項に記載の放射性標識ポリペプチドを、哺乳動物対象の体内に投与すること、及び
-医用イメージング装置を使用して対象の体の少なくとも一部の画像を1枚以上得ること、の工程を含み、前記画像が、前記体内における放射性核種の存在を示す、方法。
12.項目11に記載の方法であって、前記投与工程の前に、項目4~6のいずれか一項に記載の放射性標識ポリペプチドを調製する工程を含み、該工程が、項目1又は2に記載のポリペプチドを医用イメージングに適した放射性核種と混合することを含む、方法。
13.HER2の過剰発現を特徴とする癌を診断する方法であって、
-項目11又は12に記載のインビボイメージングの方法を実施すること、
-得られた画像に基づいて前記診断を確立することを含む、方法。
14.HER2の過剰発現を特徴とする癌の予後を確立する方法であって、
-項目11又は12に記載のインビボイメージングの方法を実施すること、
-得られた画像に基づいて前記予後を確立することを含む、方法。
15.前記癌が、乳癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膀胱癌、唾液腺癌、肺癌及び食道癌から選択される、項目11~14のいずれか一項に記載の方法。
16.前記癌が乳癌である、項目15に記載の方法。
17.HER2の過剰発現を特徴とする癌を有する、ヒトを含む哺乳動物対象を治療する方法であって、項目10に記載の組成物中に任意選択で含まれる、治療における有効量の、項目7~9のいずれか一項に記載の放射性標識ポリペプチドを前記対象に投与する工程を含む、方法。
18.項目17に記載の方法であって、前記投与工程の前に、項目7~9のいずれか一項に記載の放射性標識ポリペプチドを調製する工程を含み、該工程が、項目1又は2に記載のポリペプチドを治療に適した放射性核種と混合することを含む、方法。
19.前記癌が、乳癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膀胱癌、唾液腺癌、肺癌及び食道癌から選択される、項目17又は18に記載の方法。
20.前記癌が乳癌である、項目19に記載の方法。
21.医薬として使用するための、項目1又は2に記載のHER2結合ポリペプチド。
22.前記使用が、項目17~20のいずれか一項に記載の方法における使用である、項目21に記載の使用のためのHER2結合ポリペプチド。
23.インビボでの診断薬として使用するための、項目1又は2に記載のHER2結合ポリペプチド。
24.前記使用が、項目13及び15~16のいずれか一項に記載の方法における使用である、項目23に記載の使用のためのHER2結合ポリペプチド。
25.インビボでの予後薬として使用するための、項目1又は2に記載のHER2結合ポリペプチド。
26.前記使用が、項目14~16のいずれか一項に記載の方法における使用である、項目23に記載の使用のためのHER2結合ポリペプチド。
27.インビボでの診断薬として使用するための、項目3~6のいずれか一項に記載の放射性標識ポリペプチド。
28.前記使用が、項目13及び15~16のいずれか一項に記載の方法における使用である、項目25に記載の使用のための放射性標識ポリペプチド。
29.インビボでの予後薬として使用するための、項目3~6のいずれか1つに記載の放射性標識ポリペプチド。
30.前記使用が、項目14~16のいずれか一項に記載の方法における使用である、項目29に記載の使用のための放射性標識ポリペプチド。
31.医薬として使用するための、項目3及び7~9のいずれか一項に記載の放射性標識ポリペプチド。
32.前記使用が、項目17~20のいずれか一項に記載の方法における使用である、項目31に記載の使用のための放射性標識ポリペプチド。
33.インビボでの診断薬として使用するための、項目10に記載の組成物。
34.前記使用が、項目13及び15~16のいずれか一項に記載の方法における使用である、項目33に記載の使用のための組成物。
35.インビボでの予後薬として使用するための、項目10に記載の組成物。
36.前記使用が、項目14~16のいずれか一項に記載の方法における使用である、項目35に記載の使用のための組成物。
37.医薬として使用するための、項目10に記載の組成物。
38.前記使用が、項目17~20のいずれか一項に記載の方法における使用である、項目37に記載の使用のための組成物。
39.項目1又は2に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
40.項目39に記載の核酸を含む、発現ベクター。
41.項目40に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。

Claims (14)

  1. アミノ酸配列がAEAKYAKEMR NAYWEIALLP NLTNQQKRAF IRKLYDDPSQ SSELLSEAKK LSESQGGGC(配列番号1)を含む、HER2結合ポリペプチド。
  2. アミノ酸配列が配列番号1からなる、請求項1に記載のHER2結合ポリペプチド。
  3. 請求項1又は2に記載のHER2結合ポリペプチドと放射性核種との放射性キレートからなる放射性標識ポリペプチド。
  4. 前記放射性核種が医用イメージングに適しており、例えば99mTc、51Mn、52mMn、52Mn、186Re及び188Reからなる群から選択され、例えば99mTcである、請求項3に記載の放射性標識ポリペプチド。
  5. 前記放射性核種が治療に適しており、例えば186Re及び188Reからなる群から選択され、例えば188Reである、請求項3に記載の放射性標識ポリペプチド。
  6. 請求項1又は2に記載のHER2結合ポリペプチド又は請求項3~5のいずれか一項に記載の放射性標識ポリペプチドと、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む組成物。
  7. 医薬として、インビボでの診断薬として、又はインビボでの予後薬として使用するための、請求項1又は2に記載のHER2結合ポリペプチド。
  8. インビボでの診断薬として使用するための、請求項3又は4に記載の放射性標識ポリペプチド。
  9. 前記使用が、HER2の過剰発現を特徴とする癌を診断する方法であって、
    i)HER2の過剰発現を特徴とする癌を有するか又は有することが疑われる、ヒトを含む哺乳動物対象の体におけるインビボイメージングの方法であり、
    -請求項6に記載の組成物に任意選択で含まれる、請求項3又は4に記載の放射性標識ポリペプチドを、哺乳動物対象の体内に投与すること、及び
    -医用イメージング装置を使用して対象の体の少なくとも一部の画像を1枚以上得ること、の工程を含み、前記画像が、前記体内における放射性核種の存在を示す、方法を行うこと、並びに
    ii)得られた前記画像に基づいて前記診断を確立することを含む、方法における使用である、請求項8に記載の使用のための放射性標識ポリペプチド。
  10. インビボでの予後薬として使用するための、請求項3又は4に記載の放射性標識ポリペプチド。
  11. 前記使用が、HER2の過剰発現を特徴とする癌の予後を確立する方法であって、
    i)HER2の過剰発現を特徴とする癌を有するか又は有することが疑われる、ヒトを含む哺乳動物対象の体におけるインビボイメージングの方法であり、
    -請求項6に記載の組成物に任意選択で含まれる、請求項3又は4に記載の放射性標識ポリペプチドを、哺乳動物対象の体内に投与すること、及び
    -医用イメージング装置を使用して対象の体の少なくとも一部の画像を1枚以上得ること、の工程を含み、前記画像が、前記体内における放射性核種の存在を示す、方法を行うこと、並びに
    ii)得られた前記画像に基づいて前記予後を確立することを含む、方法における使用である、請求項10に記載の使用のための放射性標識ポリペプチド。
  12. 医薬として使用するための、請求項3~5のいずれか一項に記載の放射性標識ポリペプチド。
  13. 前記使用が、HER2の過剰発現を特徴とする癌を有する、ヒトを含む哺乳動物対象を治療する方法であって、請求項6に記載の組成物中に任意選択で含まれる、治療における有効量の、請求項3~5のいずれか一項に記載の放射性標識ポリペプチドを前記対象に投与する工程を含む、方法における使用である、請求項12に記載の使用のための放射性標識ポリペプチド。
  14. 請求項1又は2に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
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