JP2024505227A - 疼痛の持続的治療のための組成物および方法 - Google Patents

疼痛の持続的治療のための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本明細書は、手術後疼痛を治療するための組成物であって、水性担体と;麻酔剤を含む脂質相とを含み、脂質相が水性担体中に分散されている組成物を開示する。ある特定の態様では、水性担体は、チラミン置換ヒアルロン酸から構成されるヒドロゲルである。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ジ-チラミン架橋によって形成される。ある特定の実施形態では、ヒアルロン酸のヒドロキシル基のチラミン置換度は、約0.5%から約3%である。さらなる態様では、脂質相は複数の脂質微粒子から構成される。ある特定の実施形態によれば、複数の脂質微粒子によって結合されていない麻酔剤の塩形態が、水性担体に溶解している。【選択図】図1

Description

関連出願の相互参照
[001]本出願は、2021年1月29日に出願された「Compositions and Methods for Sustained Treatment of Pain」と題された米国仮特許出願第63/143,542号に対する米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張するものであり、この仮特許出願は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
[002]術後疼痛の管理は、顕著な課題であり、アヘン剤医薬の使用は、副作用、耐容性、および長期依存のリスクを伴う。当技術分野では、アヘン剤系医薬を使用することなく持続的な術後疼痛緩和を提供するのに有効な組成物および方法が必要とされている。
[003]本明細書は、手術後疼痛を治療するための組成物であって、水性担体と;麻酔剤を含む脂質相とを含み、脂質相が水性担体中に分散されている組成物を開示する。ある特定の態様では、水性担体は、チラミン置換ヒアルロン酸から構成されるヒドロゲルである。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ジ-チラミン架橋によって形成される。ある特定の実施形態では、ヒアルロン酸のヒドロキシル基のチラミン置換度は、約0.5%から約3%である。
[004]ある特定の態様では、脂質相が水性担体中に乳化している。
[005]さらなる態様では、脂質相は複数の脂質微粒子から構成される。ある特定の実施形態によれば、複数の脂質微粒子によって結合されていない麻酔剤の塩形態が、水性担体に溶解している。例示的な実施態様では、水性担体と脂質微粒子との間の体積比が、約70~80の水性担体:30~20の脂質微粒子である。
[006]ある特定の態様では、脂質微粒子が、偶数の炭素を有する1つまたは複数の脂肪酸を含む。さらなる態様では、脂質微粒子が、奇数の炭素を有する1つまたは複数の脂肪酸を含む。ある特定の実施形態によれば、1つまたは複数の脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、および前述の混合物から選択される。ある特定の実施態様では、脂質微粒子の融点は37℃超である。さらなる実施態様では、脂質微粒子の融点は37℃未満である。
[007]ある特定の実施形態によれば、1つまたは複数の脂肪酸は、ステリン酸(steric acid)およびオレイン酸の混合物を含み、ステリン酸対オレイン酸の比が約90:10である。さらなる実施形態では、脂質微粒子は、約12%ミリスチン酸、約32%パルミチン酸、約10%ステアリン酸、および約10%オレイン酸を含む。その上さらなる実施形態では、脂質微粒子は、ラウリン酸ならびにカプリル酸、カプロン酸、および/またはオレイン酸の混合物を含む。またさらなる実施形態では、脂質微粒子は、パラフィン、トリグリセリド、および/またはロウを含む。これらの実施形態の例示的な実施態様では、脂質微粒子は、カルナウバロウならびにカプリル酸、カプロン酸、および/またはオレイン酸の混合物を含む。
[008]ある特定の実施形態によれば、複数の脂質微粒子は、第1の複数の脂質微粒子および第2の複数の脂質微粒子を含み、第1の複数の脂質微粒子が、約37℃で固体であり、第2の複数の脂質微粒子が、37℃で液体である。
[009]ある特定の実施形態では、脂質微粒子は、リポソームではない。
[010]ある特定の実施形態では、脂質微粒子の大きさは、約1μmから約20μmの範囲である。例示的な実施態様では、脂質微粒子の大きさは、約4μmから約8μmの範囲である。
[011]ある特定の実施形態によれば、麻酔剤はロピバカインを含む。ある特定の実施態様では、ロピバカインは、約1から約25重量%の量で脂質微粒子中に存在する。
[012]さらに、本明細書は、手術後疼痛を治療するための組成物であって、水性担体と;麻酔剤を含む複数の脂質微粒子を含む、水性担体中に分散されている第1の脂質相と;1つまたは複数の脂質に溶解している麻酔剤を含む、水相中に乳化している第2の脂質相とを含む、組成物を開示する。ある特定の実施態様では、第1の脂質相にも第2の脂質相にも存在しない麻酔剤の塩形態は、水性担体に溶解している。
[013]ある特定の実施形態によれば、第2の脂質相の1つまたは複数の脂質は、1つまたは複数の脂肪酸であり、第2の脂質相は、水相中に乳化している。例示的な実施態様では、第2の脂質相の1つまたは複数の脂肪酸は、ステアリン酸およびオレイン酸の混合物である。
[014]ある特定の実施形態によれば、第1の脂質相と第2の脂質相との体積比は約66:34である。
[015]さらに、本明細書は、それを必要とする対象の術後疼痛の治療方法であって、非混和性担体相と、麻酔剤を含む、非混和性担体相中に分散している複数の脂質微粒子とを含む組成物の有効量を対象に投与するステップを備える、方法を開示する。ある特定の実施形態では、非混和性担体相が、ヒドロゲル、粘稠液体、安定なエマルジョン、またはクリームである。さらなる実施形態では、非混和性担体相がヒドロゲルである。例示的な実施態様では、ヒドロゲルはチラミン置換ヒアルロン酸から構成され、麻酔剤はロピバカインである。ある特定の実施形態によれば、組成物は対象に投与され、組成物は約72時間疼痛緩和をもたらす。
[016]ある特定の実施形態によれば、組成物は、対象の神経または神経束の近傍に送達され、神経または神経束は、対象の外科的切開領域を神経支配する。
[017]さらに、本明細書は、ヒドロゲルと;APIを含む、ヒドロゲル中に分散されている複数の脂質微粒子とを含む、医薬品有効成分(API)の持続放出のための組成物を開示する。ある特定の実施形態では、APIは、化学療法組成物である。さらなる実施形態では、APIは乗り物酔い薬である。例示的な実施態様では、乗り物酔い薬はメクリジンまたはジメンヒドリナートである。さらなる実施態様では、APIは、NSAIDS、ステロイド、生物製剤、例えば、抗体、ホルモンから選択される。
[018]複数の実施形態が開示されるが、本開示のさらなる他の実施形態は、当業者には、開示する機器、システム、および方法の例示的な実施形態を示し、説明する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。理解されるように、開示する機器、システムおよび方法は、全て本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な明白な態様において改変できる。したがって、図面および詳細な説明は、本質的に例示的なものとみなされ、限定的なものとはみなされない。
[019]ある特定の実施形態による、様々なイオン濃度での開示するヒドロゲル組成物の代表的な画像を示す図である。 [020]ある特定の実施形態による、開示するヒドロゲルの代表的な画像を示す図である。 [021]ある特定の実施形態による、開示するヒドロゲルの代表的な画像を示す図である。 [022]ある特定の実施形態による、開示するヒドロゲルの代表的な画像を示す図である。 [023]ある特定の実施形態による、APIの持続放出を示す動物試験からのデータを示す図である。 [024]水性担体相中の200mg相当ロピバカインHClおよび脂質薬物リザーバ相中のロピバカイン塩基の3つの異なる負荷での試験からのデータを、Naropin(ロピバカインHClの注入剤)およびExparel(ブピバカイン持続放出剤)対照と比較して示す図である。 [025]水性担体相中にロピバカインHClを含まない製剤と比較した、ロピバカインHClの初期バーストを含む製剤の比較を示す図である。 [026]多様な水相のロピバカインHCl濃度の比較を示す図である。 [027]脂質相の体積パーセントに基づく製剤の比較を示す図である。 [028]脂質相の体積パーセントに基づく低負荷薬物リザーバの比較を示す図である。 [029]脂質相リザーバ中の中程度のロピバカイン濃度の比較を示す図である。 [030]脂質相リザーバ中の中程度のロピバカイン濃度の比較を示す図である。 [031]固体脂質相薬物リザーバのエマルジョン相薬物リザーバに対する比較を示す図である。 [032]固体相薬物リザーバ、エマルジョン相薬物リザーバおよび組み合わせ薬物リザーバ製剤の間の比較を示す図である。 [033]エマルジョン相薬物リザーバ製剤における薬物負荷レベルの比較を示す図である。 [034]溶出速度に関する様々な固体相対エマルジョン相薬物リザーバの比の比較を示す図である。 [035]サンプル9LLの20mL用量と30mL用量との比較を示す図である。 [036]ラウリン酸系製剤の20mL用量と30mL用量との比較を示す図である。 [037]カルナウバロウ製剤の20mL用量と30mL用量との比較を示す図である。 [038]高濃度対低濃度の製剤の比較を示す図である。
[039]本発明の化合物、組成物、物品、システム、道具、および/または方法は、開示および説明する前に、特に明記されない限り特定の合成方法または特定の試薬に限定されないため、当然変わり得ることを理解されたい。本明細書で使用する用語は、特定の態様のみを記載することを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。本明細書に記載の方法および物質と同様または同等の任意のものを本発明の実施または試験に使用できるが、例示的な方法および物質をここで記載する。
[040]本明細書では、範囲は、「約」(1つの特定の値)から、および/または「約」(別の特定の値)までと表現できる。かかる範囲を表現する場合、さらなる態様には、(1つの特定の値)から、および/または(他の特定の値)までが含まれる。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として表現される場合、特定の値がさらなる態様を形成することが理解されよう。さらに、各範囲の端点は、他の端点との関係においても、また、他の端点と独立しても重要であることが理解されよう。また、本明細書に開示する値は多数あるが、各値はまた、値自体と共に「約」(その特定の値)として本明細書に開示されていることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合には、「約10」もまた開示される。また、2つの特定のユニットの間の各ユニットもまた開示されることも理解される。例えば、10および15が開示される場合には、11、12、13、および14もまた開示される。
[041]本明細書で使用する場合、単語「置換される」は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが企図される。幅広い態様では、許容される置換基は、有機化合物の非環式および環式、分枝および非分枝、炭素環式および複素環式、ならびに芳香族および非芳香族の置換基を含む。例示的な置換基としては、例えば、以下に記載されるものが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に対して、1つまたは複数であり得、また、同じでも異なっていてもよい。本開示の目的のために、ヘテロ原子、例えば、窒素は、水素置換基を有し、および/またはヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有することができる。本開示は、いかなる形であっても有機化合物の許容される置換基によって限定されることを意図するものではない。また、単語「置換」または「によって置換される」は、かかる置換が置換原子および置換基の許容される原子価に従うという暗黙の条件と、該置換が安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離などによる変換が自然におこらない化合物をもたらすという暗黙の条件とを含む。また、ある特定の態様では、明確に反対の指示がない限り、個々の置換基は、さらに任意で置換され得る(すなわち、さらに置換されるか、または置換されない)ことも企図される。
[042]本明細書に開示するある特定の物質、化合物、組成物、および成分は、商業的に入手し得るか、または当業者に一般的に公知の手法を使用して容易に合成され得る。例えば、開示される化合物および組成物を調製するのに使用される出発物質および試薬は、商業供給者、例えば、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、Wis.)、Acros Organics(Morris Plains、N.J.)、Fisher Scientific(Pittsburgh、Pa.)、またはSigma(St.Louis、Mo.)から入手でき、または参考文献、例えば、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、1~17巻(John Wiley and Sons、1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds、1~5巻および補遺(Elsevier Science Publishers、1989);Organic Reactions、1~40巻(John Wiley and Sons、1991);March’s Advanced Organic Chemistry(John Wiley and Sons、第4版);およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.、1989)に記載されている手順に従って当業者に公知の方法によって調製する。
[043]本発明の組成物を調製するのに使用される成分、および本明細書に開示する方法で使用される組成物自体が開示される。これらおよび他の物質は本明細書に開示され、これらの物質の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどを開示するとき、これらの化合物の、それぞれの様々な個々のおよび集合的な組み合わせおよび順列への具体的な言及を明示的に開示することはできないが、各々は、具体的に企図され、本明細書に記載されることが理解される。例えば、特定の化合物が開示および論考され、該化合物を含む多数の分子に対して行い得る多数の改変が論考される場合、特に反対のことが示されない限り、化合物のあらゆる組み合わせおよび順列、ならびに可能な改変が具体的に企図される。したがって、分子A、B、およびCのクラスが開示され、分子D、E、およびFのクラスが開示され、分子A-Dの組み合わせの例が開示される場合、各々は、個々に列挙されていなくても、個別的かつ集合的に、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fの組み合わせが開示されているとみなされることを意味することが企図される。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、およびC-Eのサブグループは開示されているとみなされる。この概念は、本発明の組成物の製造方法および使用方法におけるステップを含むが、これらに限定されない本出願の全ての態様に適用される。したがって、実施可能な様々な追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップはそれぞれ、本発明の方法の実施形態の任意の特定の実施形態または組み合わせで実施可能であることが理解される。
[044]本明細書で使用する場合、単語「対象」は、投与標的、例えば、投与対象を指す。したがって、本明細書に開示する方法の対象は、脊椎動物、例えば、哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類であり得る。あるいは、本明細書に開示する方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類であってもよい。単語は、特定の年齢または性別を示すものではない。したがって、雌雄を問わず、成人および新生児対象、ならびに胎児を対象とすることが意図される。一態様では、対象は、哺乳類である。患者は、疾患または障害に罹患している対象を指す。単語「患者」は、ヒトおよび獣医学的対象を含む。
[045]本明細書で使用する場合、単語「治療する」、および「予防する」ならびにそれらから派生する語は、必ずしも100%または完全な治療または予防を意味しない。むしろ、当業者が潜在的な利益または治療効果を有すると認識する様々な程度の治療または予防が存在する。この点で、本発明の方法は、哺乳類における疾患または医学的状態を、任意の量で任意のレベルにて治療または予防できる。さらに、本方法によって提供する治療または予防は、疾患または医学的状態の1つまたは複数の病態または症状を治療または予防することを含み得る。例えば、疼痛の治療方法に関して、いくつかの実施形態における方法は、対象における疼痛の減少または除去を達成する。また、本明細書の目的において、「予防」は、疾患の発症、またはその症状もしくは病態を遅延させることを包含し得る。単語「治療する」は、特定の障害もしくは病態の防止、または特定の障害もしくは病態に関連する症状の緩和、および/または上記症状の予防もしくは除去を含む。例えば、本明細書で使用する場合、単語「術後疼痛」は、手術からの回復に関連する疼痛を減少または緩和することに一般に関係する。
[046]本明細書で使用する場合、単語「実質的に」は、完全またはほぼ完全な範囲または程度の作用、特質、特性、状態、構造、項目、または結果を指す。例えば、「実質的に」囲まれている物体は、物体が、完全に囲まれているか、またはほぼ完全に囲まれていることを意味する。絶対的な完全性からの逸脱の正確な許容度は、場合によっては、特定の文脈に依存することがある。しかし、一般的に言えば、完全な状態に近づくと、あたかも絶対的で全くの完全な状態が得られたかのように、同じ全体的な結果が得られるようになる。「実質的に」の使用は、作用、特質、特性、状態、構造、項目、または結果を完全またはほぼ完全に欠くことを指す否定的な意味合いで使用する場合にも同様に適用可能である。例えば、「実質的に粒子を含まない」組成物は、粒子を完全に欠くか、または粒子をほぼ完全に欠いているので、効果が粒子を完全に欠いているのと同じとなるかのいずれかである。言い換えれば、「実質的に成分または要素を含まない」組成物は、かかる項目を、その測定可能な効果がない限り、依然として実際には含む可能性がある。
[047]本明細書で使用する場合、単語「医薬品有効成分」、すなわちAPIは、それを必要とする対象における異常状態を治療するのに適合した分子実体を指す。
[048]単語「麻酔剤」または「局所麻酔剤」(本明細書では非教示的に使用される)は、ヒトまたは他の哺乳類において意識の喪失を伴うかまたは伴わず感覚消失を引き起こす薬剤を指す。より詳細には、単語「局所麻酔剤」は、末梢神経の興奮および/または伝導の可逆的な阻害によって局所麻酔を誘導する麻酔剤を指す。本発明に使用するのに適した局所麻酔剤としては、エステル系麻酔剤、アミド系麻酔剤、アミド系麻酔剤のエステル類似体、および他の麻酔剤のエステル類似体が挙げられるが、これらに限定されない。エステル系麻酔剤としては、コカイン、プロカイン、2-クロロプロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、アメトカイン、クロロカイン、ブタムベン、およびジブカインなどが挙げられるが、これらに限定されない。アミド系麻酔剤としては、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、ロピバカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、およびブピバカインなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に使用するのに適した他の麻酔剤としては、アコニチン、ジクロニン、ケタミン、プラモキシン、サフロール、およびサリチルアルコールのエステル類似体が挙げられるが、これらに限定されない。かかるエステル類似体は、エステル基をその構造のどこかに含み得る。
[049]本明細書で使用する場合、単語「有効量」および「有効な量」は、望ましい結果を達成するのに十分である量、または望ましくない状態に対して効果を有するのに十分である量を指す。例えば、「治療的有効量」は、望ましい治療結果を達成するのに十分である量、または望ましくない症状に対して効果を有するのに十分であるが、しかし、一般に、有害な副作用を引き起こすには不足している量を指す。任意の特定の患者専用の治療的有効用量レベルは、以下を含む様々な要因に依存する:治療する障害および障害の重症度;用いる特定の組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;投与の時間;投与経路;用いる特定の化合物の排出速度;治療期間;用いる特定の化合物と併用または同時に使用する薬物ならびに医療分野で周知の同様の要因。例えば、化合物の用量を、望ましい治療効果を達成するのに必要なレベルより低いレベルから開始し、投与量を、望ましい効果が達成されるまで徐々に増加することは十分に当技術分野の技量の範囲内である。所望により、有効1日用量は、投与目的に応じて複数用量に分けることができる。したがって、単一用量組成物は、1日用量を構成するための、かかる量またはその約数を含むことができる。投与量は、禁忌がある場合には、個々の医師によって調整できる。投与量は様々であり、1日1回または複数回の用量で1日または数日間投与できる。所定のクラスの医薬製品の適切な投与量については、ガイダンスを印刷物に見出すことができる。さらなる様々な態様では、調製物を、「防止有効量」、すなわち、疾患または病態の予防に有効な量で投与できる。
[050]有効投与量は、最初にインビトロアッセイから推定できる。例えば、動物に使用するための初期投与量は、インビトロアッセイで測定された特定の化合物のIC50以上の活性化合物の循環血中濃度または血清中濃度を達成するために処方され得る。特定の活性薬剤のバイオアベイラビリティを考慮して、かかる循環血中濃度または血清中濃度を達成するための投与量を計算することは、十分に当業者の能力の範囲内である。ガイダンスとして、Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics、1章、1~46ページ、最新版、Pergamagon Press中のFingl & Woodbury、「General Principles」を参照されたい(その全体およびそこに引用されている参考文献が参照により本明細書に組み込まれる)。
[051]本明細書で使用する場合、「薬物リザーバ」は、担体相とは別に溶解されるAPIを溶解した相を意味する。
[052]本明細書で使用する場合、単語「好ましい」および「好ましくは」は、ある特定の状況下である特定の利点を与え得る本発明の実施形態を指す。しかし、他の実施形態もまた、同じまたは他の状況下では好ましい場合がある。さらに、1つまたは複数の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを示すものではなく、また、本発明の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものではない。
[053]本明細書は、対象の体内でAPI(特に、疎水性API)の制御放出および/または持続放出を提供するための組成物を開示する。ある特定の態様では、本明細書は、ヒドロゲルと、麻酔剤を含む、ヒドロゲル中に分散した複数の脂質微粒子とを含む、手術後疼痛を治療するための組成物を開示する。
[054]ある特定の実施態様によれば、開示する組成物は、担体相と、API(例えば、麻酔剤)を含む薬物リザーバ相とを含み、APIは、目標とする治療期間、生体系に放出される。これに関連して、担体相の主たる機能は、薬物リザーバ粒子(薬物担持成分)を分散して安定な均一な塊を作製し、ある用量を、送達道具、例えば、シリンジを使用して容器から吸い上げて、標的組織に送達すること、すなわち、非経口注入、血管内注入、創傷への注入、創傷パッキングまたは組織表面の塊形成もしくはコーティングを可能とすることである。ある特定の実施形態では、薬物リザーバは、担体相に含まれるが、しかし、担体相と区別できないわけではない、別の物理相、粒子の集合体である。リザーバ相は、リザーバ物質に溶解している活性医薬剤を含み、不飽和、飽和、過飽和、または純粋な製薬用相物質(低分子では結晶)で飽和された状態であってもよい。いくつかの形態では、担体はまた、リザーバとは異なる形態、例えば、水性担体中のAPI塩、および脂質リザーバ中の塩基形態APIでAPIも含み得る。システムは、水相/疎水性相のみに設定されるのではなく、反対または別の物理相(ポリマー)であってもよい。
[055]ある特定の実施形態では、担体相がヒドロゲルである。単語「ヒドロゲル」は、本明細書で使用する場合、大量の水を取り込むことができる3次元の親水性または両親媒性のポリマーネットワークを指す。ネットワークは、ホモポリマーまたはコポリマー(本明細書ではポリマー骨格と呼ぶこともある)から構成され、共有結合性の化学的または物理的(イオン性、疎水性相互作用、からみあい)架橋の存在によって不溶性である。架橋は、網目構造および物理的完全性を提供する。ヒドロゲルは、水との熱力学的相溶性を示し、これにより水性媒体中で膨潤できる。
[056]ある特定の実施態様では、ヒドロゲルは、ジ-チラミン連結によって架橋されたチラミン置換ヒアルロン酸(THA)から構成される。THAの調製は米国特許第6,982,298号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。チラミン置換度は、得られるヒドロゲルの特性に顕著な影響を及ぼす。本開示全体を通じて、チラミン置換度は、チラミンによって置換された全HAカルボキシル基のパーセンテージを指す。例えば、2%置換THAでは、全HAカルボキシル基の2%がチラミンによって置換されている。各THA調製物中のチラミン置換パーセントは、以下を測定することによって計算される:1)275nmでのチラミンの固有のUV吸収特性に基づいて分光光度法で定量された調製物に存在するチラミンの濃度;および2)標準的なヘキスロン酸アッセイによって分光光度法で定量されたHA調製物中の全カルボキシル基の濃度。
[057]以下にさらに記載するように、ヒドロゲルは、特定の浸透圧、物理的特性、API溶出速度または組織応答を有するように、チラミン置換ポリマー骨格の濃度、ポリマー骨格上のチラミンの置換度、ポリマー骨格の分子量、ポリマー骨格の疎水性、ポリマー骨格の種類、およびヒドロゲル中に含まれる標的分子、塩、バッファーまたは薬物デポ(リザーバ)粒子の濃度を調整することによって調節できる。
[058]ヒドロゲル物理的特性は、チラミン置換ポリマー骨格の濃度を変化することによって調整できる。ある特定の実施形態では、液体様ヒドロゲルは、チラミン置換ポリマー骨格を、1.5%置換ゲルのための水性担体相の0.35%未満に維持することによって作製する。液体様ヒドロゲルは、血管内注入、くも膜下注入、あるいは血管または組織構造の閉塞または塞がりを許容できない他の組織部位により適している。高密度ヒドロゲル粒子は、ポリマー骨格上のチラミン置換を増加することにより形成し得る。5%以上の置換度では、低濃度で固体様ヒドロゲル粒子を形成し、7%以上の濃度で非常に高密度な粒子を形成する。高密度な粒子は、創傷部位への注入により適している。ある特定の実施態様では、高密度ヒドロゲル粒子は、生体分子および極性APIを送達するために使用される。対照的に、APIが疎水性である実施態様では、脂質微粒子が適している。
[059]ヒドロゲル物理的特性はまた、ポリマー骨格の種類を変化することによって調整できる。例えば、コラーゲンは、ポリマー骨格として使用できるが、糖類系ポリマー骨格よりも親水性がはるかに低い。コラーゲンゲルは、多糖ゲルと同じようには膨張せず、分子量および濃度がはるかに低い。ポリマー骨格を変化させて単一ポリマーの物理的および化学的特質を利用できること、またはいくつかの種類を、ゲルの物理的および化学的特性を変化させ、身体がゲルと相互作用するように、コポリマーまたはブロックコポリマーへと組み合わせることができることが想定され得る。いくつかのポリマーは、APIに対する親和性の度合いが高く、APIに対する結合親和性が高いポリマーまたはポリマーの一部を選択した場合、API溶出速度に影響を与える。また、APIの骨格ポリマーに対する結合親和性がpHまたは温度に依存しているポリマー/APIの組み合わせを使用することにより、ゲル製剤は、T=0での結合を最大化し、その後、標的組織に曝露された後に、pHおよび温度が生理的条件に近づくに従ってより多くのAPIを放出するように調整され得ることも想定される。さらなる実施態様では、APIの拡散速度は、液体-液体界面(脂質微粒子の融解時に達成される)拡散流が固体-液体界面のものより高いことで、拡散の増強を達成できるため、脂質微粒子の融点の変化(以下でさらに説明する)によって影響を受ける。
[060]ヒドロゲルの浸透圧はまた、チラミン置換度、および濃度によっても調節され得る。濃縮高置換ヒドロゲルはそれ自体では水を排出するか、または離漿するが、しかし、ヒアルロン酸の例ではポリマー骨格の濃度を増加することによって、または塩、バッファーおよび/またはAPI物質を製剤に添加することによって、ゲルを浸透圧的に中立とするか、またはわずかに膨潤させることができる。例えば、5.5%置換ゲルは、骨格ポリマー濃度を1.5%に設定すると膨張するものを作製できる。ゲルは、浸透圧がバッファー、塩およびAPI成分を添加することによって増加するにつれてさらに膨潤するものを作製できることが想定される。ある特定の態様では、ヒドロゲルはチラミン置換ヒアルロン酸から構成される。ある特定の実施態様によれば、ヒドロゲルは、ジ-チラミン架橋によって形成される。
[061]骨格ポリマー濃度および置換度を制御する利点は、生物学的応答を引き出すのに使用することもできる。1.5%の置換度および0.5%の濃度を有するゲルを使用すると、ヒドロゲルインプラントの周囲の組織からの体液が吸収される。毛細血管床は、収縮し、外傷性創傷部位などのいくつかの場合では、創傷面の出血を減少または止血したりする。埋入物の近傍の組織における血流が減少すると、埋め込み部位からの溶出APIの除去も遅れる。灌流が減少することで損傷を受ける可能性のある組織、例えば、軟骨または関節腔は、浸透圧的に中立となるように調節したヒドロゲルを用いて、灌流が減少することによる負の影響を避けることができる。肝臓などの血管の多い出血面からの出血を止めることが望ましい臨床適用では、乾燥しているか、またはほとんど乾燥しているように見える高濃縮ヒドロゲルは、血清および滲出液を非常に迅速に吸収し、創傷部位を脱水させる。凝血促進剤、例えば、フィブリン、トラネキサム酸、アミノカプロン酸またはフィブリンなどを用いる場合では、ヒドロゲルは、2つの経路、毛細血管床の収縮および血液凝固を用いて創傷部位での凝固を促進できる。
[062]ヒドロゲルの密度を使用して、ゲルから標的組織へのAPIの溶出速度を制御できる。1%ヒドロゲルは、72hrs超の間、APIを溶出するが、しかし、10%ゲルは、溶出時間を100hrs超に延長する。APIまたは生体物質の大きさ、およびヒドロゲル成分に対する親和性に応じて、溶出速度は、ヒドロゲルが薬物リザーバとして数日間機能できる望ましい溶出速度に調節できる。
[063]ある特定の態様では、ヒアルロン酸のヒドロキシル基のチラミン置換度は、約0.25%から約8%の範囲である。さらなる態様では、ヒアルロン酸のヒドロキシル基のチラミン置換度は、約0.5%から約3%である。
[064]またさらなる態様では、チラミン置換ヒアルロン酸は、約0.1%から約4%で水相中に存在する。
[065]ある特定の実施態様では、チラミン置換ヒアルロン酸は、約0.1%から約1%で水相中に存在する。さらなる実施態様では、チラミン置換ヒアルロン酸は、約0.25%で水相中に存在する。
脂質微粒子
[066]ある特定の実施形態によれば、開示する組成物の脂質微粒子は、1つまたは複数の脂肪酸から構成される。ある特定の実施態様では、1つまたは複数の脂肪酸は、偶数の炭素を有する。ある特定の実施態様では、脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、および前述の混合物から選択される。
[067]ある特定の例示的な実施態様では、脂肪酸微粒子が、脂肪酸の混合物から構成される場合、脂肪酸は、特定の比で存在する。例えば、ある特定の実施態様では、脂肪酸の混合物は、ステリン酸対オレイン酸の比90:10を含む。
[068]様々な炭素長の脂肪酸は、生物界に広く存在しており、細胞膜の一部として、エネルギー貯蔵庫として、また、熱調節のために動物に利用されている。脂肪酸は、脂肪族炭素鎖に結合したカルボキシル酸から構成される。一般に、脂肪酸は、水に溶けないが、しかし、炭素鎖長が短くなるにつれて酸性度が増加する。脂肪酸は、飽和の場合もあれば、または炭素-炭素二重結合を含まない場合もある。あるいは、脂肪酸は、脂肪族炭素鎖に1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を含み、不飽和の場合もある。哺乳類生物は、偶数炭素鎖を有する脂肪酸を処理し、作製することができる。奇数脂肪酸は、一部の細菌によって産生され、また、反芻動物の乳に見出されるが、しかし、ほとんどの場合、2つの炭素を一度に鎖に付加する代謝過程により偶数となる。表1には、植物および動物で典型的に見出される脂肪酸が列挙されている。脂質番号には、脂肪族鎖の炭素数、続けて二重結合の数が記載されている。いくつかの一覧表では、二重結合の位置が、脂質番号に含まれている。ほとんどの場合、脂肪酸は、通常、最大3つの同じまたは異なる炭素長の脂肪酸を含み得るトリグリセリド分子の一部である。
[069]ある特定の実施態様では、偶数炭素脂肪酸が選択される。脂肪酸の混合物を、微粒子の融点を調整するために作ることができる。ある特定の実施態様では、90%ステアリン酸の10%オレイン酸との混合物が使用される。これにより、35℃(95°F)で融解する微粒子が作製される。同様の融点は、12%ミリスチン酸、32%パルミチン酸、10%ステアリン酸、および10%オレイン酸を混合することにより達成される。さらなる実施形態によれば、脂肪酸微粒子は、ラウリン酸、カプリル酸、およびカプロン酸の混合物から形成される。微粒子製剤を選択するときの重要な要因は、融点および主成分の脂肪酸へのAPI溶解度である。融点は、生理学的体温に近い粒子が液体または柔らかい半固体となり、拡散速度(液体-液体界面を横切る)が増加するという点で重要である。これは、特定の用途によって望ましい場合もあれば、または望ましくない場合もある。ある特定の実施形態では、低融点および高融点微粒子(例えば、37℃未満および37℃超)の組み合わせが組み合わされる。API溶解度は、脂肪酸鎖長および微粒子の配合により変化し、API濃度、および主要な微粒子脂肪酸成分に対する親和性を調整することが望ましい場合もある。いくつかの製剤では、脂肪酸の分子量および鎖長を増加すると、部分的に極性なAPIの溶解度が反直感的に変化する。ある特定の実施形態では、脂肪酸微粒子中の麻酔剤の濃度は、約1~25重量%である。
[070]ある特定の代替の実施形態によれば、奇数脂肪酸は、製剤における代替の脂肪酸として使用される。モノ不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸は、同様に、単独で、または他の脂肪酸と組み合わせて使用することができる。ある特定の実施態様では、ポリ不飽和脂肪酸は、使用可能であるが、しかしながら、容易に酸化され、配合によっては重合する場合があるため、好ましくない。シス配置であるモノ不飽和脂肪酸(ほとんどの植物由来)が好ましい。
[071]ある特定の代替の実施形態によれば、脂質微粒子は、1つまたは複数のトリグリセリドまたはトリグリセリドの混合物を含み、脂質微粒子は、1つまたは複数のトリグリセリドまたはトリグリセリドの混合物を含む。さらなる代替の実施形態では、脂質微粒子は、パラフィン、および/またはロウを含む。
[072]ある特定の実施形態では、ポリ不飽和脂肪酸は、単独でまたは他の脂肪酸との混合物として微粒子を作製するのに使用される。多価不飽和脂肪は、典型的には、同等の炭素数の飽和脂肪酸類似体よりも低い融点を有する。2つの必須脂肪酸の例は、リノール酸(C18:2)およびα-リノール酸(C18:3)である。人体は、これらの脂肪酸を作ることができないが、しかし、これらを必要とし、食事から得る必要がある。人体は、これらを代謝できるため、微粒子薬物リザーバを作成するのに使用することができるが、しかし、これらは、容易に酸化する二重結合を複数有し、一部のAPIと反応する可能性がある。
[073]共役脂肪酸はまた、単独で、または他の脂肪酸との混合物で使用して、望ましいAPI溶解度/親和性および物理的特性を有する微粒子薬物リザーバを作製することもできる。
[074]薬物リザーバ微粒子はまた、動物エステルロウ、例えば、ミツロウ、植物ロウ、ラノリンおよび誘導体から作製することもできる。動物エステルロウは、典型的には、トリアコンタニルパリテート(palitate)、およびパルチミン酸エステル、パルミトレイン酸エステル、オレイン酸エステル、トリグリセリドおよび脂肪族アルコールの混合物を含む。添加剤、例えば、コレステロール、トリグリセリドおよび脂肪族アルコールは、微粒子の物理的特性、APIの溶解度および微粒子に対する親和性を変化させ、APIが微粒子から拡散するのを助ける担体分子として機能するために添加され得る。
[075]鉱ロウ、鉱油およびラノリン誘導体は、薬物リザーバ粒子の物理的および化学的特性を変化させるために添加することができる。
[076]植物由来ロウを使用して微粒子の一次相を作製することもできる。植物ロウは、環境条件を制御するのが容易であり、同じ生物(ヤシまたは植物)であるためバッチ間の変動が少ないという動物ロウに優る利点がある。好適な動物および植物ロウを、表8に示す。ある特定の実施形態では、脂肪酸微粒子は、カルナウバロウから構成される。さらなる実施形態では、脂肪酸微粒子は、カルナウバロウおよび脂肪酸の組み合わせから構成される。例示的な実施態様では、混合物は、カルナウバロウならびにオレイン酸、カプロン酸、カプリル酸、および/または前述したものの混合物である。
[077]トリグリセリドは、純粋な脂肪酸の代替品となる。これらは、純粋な対応物と同様な物理的特性および同様な麻酔剤の溶解度を有する。トリグリセリドは、全身に見出され、脂質を吸収および代謝する代謝経路が存在するため、より良好な耐容性を示す。表9には、脂質薬物リザーバ粒子として脂肪酸を置換し得るトリグリセリドが列挙されている。一般に、偶数脂肪酸成分が選択されるのは、偶数脂肪酸が組織により多く存在するためである。体内で利用されるいくつかの奇数脂肪酸トリグリセリド、例えば、乳に見出されるトリヘプタノインが存在し、これらも適している。不飽和脂肪酸系トリグリセリド、例えば、トリオレインは、脂質粒子を柔らかくしたり、または多相製剤が望ましい場合は、エマルジョン液滴を作製したりするのに使用できる。不飽和トリグリセリド、例えば、哺乳類の脂肪の主成分であるトリパルミトレインは、全身に見出される。既に体内で見出されるトリグリセリドを利用することで、耐容能が向上し、および/または有害反応の可能性が減少する。ある特定の実施形態では、トリグリセリド微粒子中の麻酔剤の濃度は、約1~16重量%である。
[078]ある特定の実施形態では、ヒドロゲル組成物は、脂質組成物、大きさ、および/またはAPI濃度に関して様々な特質を有する複数の脂質微粒子を含む。これらの実施態様では、脂質微粒子の混合物は、薬物の溶出速度を改善するのに使用され、粒子からの安定した一次放出をもたらすように溶出を調節するのに使用される。粒子体積対担体相体積の比を調整することで、APIの放出時間が延長される。
[079]例示的な実施態様では、脂質微粒子は、リポソームではない。
[080]ある特定の実施形態では、脂質微粒子は、対象に埋め込むときに固体であるように製剤化される(例えば、約37℃の温度)。さらなる実施形態では、脂質微粒子は、対象に埋め込むときに液体であるように製剤化され、その効果として、かかる液体微粒子からの溶出速度が、同様の濃度の麻酔剤を有する固体微粒子と比較して増加する。またさらなる実施形態では、組成物は、前述の微粒子の両方を含むので、対象へ埋め込むと、微粒子の一部は固体のままであるが、一部は液体となる。2種類の微粒子の相対的なバランスは、望ましい溶出特質を達成するように調整できる。
[081]脂質微粒子の大きさは、ある特定の実施態様では、約1μmから約20μmの大きさの範囲である。さらなる実施形態では、脂質微粒子の大きさは、約5μmから約15μmの範囲である。ある特定の例示の実施形態では、脂質微粒子は、約7μmである。
[082]ある特定の実施態様では、開示する組成物の溶出特性は、組成物中の水相対脂質相の体積比によって影響される。ある特定の実施形態によれば、水相対脂質相の比は、約50体積%~80体積%水相対約20体積%~50体積%脂質相である。さらなる実施形態によれば、水相対脂質相の比は、約60体積%~80体積%水相対約20体積%~40体積%脂質相である。またさらなる実施形態によれば、水相対脂質相の比は、約70体積%水相対約30体積%脂質相である。
[083]ある特定のさらなる実施形態によれば、組成物は、水性担体相中に2つ以上の脂質相を含む。これらの実施形態のある特定の実施態様では、水相中に分布するのは、先に記載した脂質微粒子相、および水相中のエマルジョンまたは複数の脂質微粒子の形態を取り得る二次脂質相であり、二次脂質相からは、APIが一次脂質微粒子相よりも速い速度で溶出する。水相の効果は、微粒子および二次脂質相を担持すること、および製剤全体でこれらの成分を均一に保つことである。これは、正確な用量を望ましい組織部位に送達できるようにボリュームをもたらし、麻酔剤(例えば、ロピバカイン)の塩形態を含み得る。麻酔剤の塩形態は、同様な用量の麻酔剤の生理食塩水形態に相当する薬物の初期バーストを送達する。一次脂質相、または薬物リザーバ微粒子は、塩基形態で最大量の麻酔剤を含み、初期バーストが薬品から周辺組織へと溶出した後に、緩やかに水相中に薬物成分を溶出する。物質移動は、水性担体相における塩基形態の溶解度および微粒子の親水性親油性バランス(HLB)比により限界が存在する。塩基形態は、脂質相に対する高い親和性を有し、薬物の脂質相に対する親和性のために、いくらかの麻酔剤は溶出が完了した後も脂質相に常に存在する。麻酔剤は、二次脂質相、またはエマルジョン相(一部の製剤では、これは第2の種類の固体粒子である場合がある)が、固体相微粒子よりも速い速度で送達し、それらが一緒になって中間相での溶出速度を高める。目標とする期間が達成されると、溶出速度は、ゼロに減少し、薬学的有効用量を下回る。ある特定の実施形態では、組成物は、上記のようなエマルジョン相を含むが、しかし複数の固体微粒子は含まない。
[084]第2の脂質エマルジョン相に適した脂質は、37℃で液体である任意の脂質または脂質の混合物である。例としては、ステアリン酸、オレイン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、セロチン酸が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、ステアリン酸およびオレイン酸の混合物は、脂質エマルジョン相中の脂質である。さらなる実施形態では、トリグリセリド(例えば、トリオレイン酸エステルまたはトリパルチミンおよびトリオレイン酸エステル)は、第2の脂質エマルジョン相を形成する。ある特定の実施形態によれば、乳化剤は、エマルジョンを安定化するのに使用される。乳化剤、例えば、TWEEN(登録商標)または当技術分野で公知の他の乳化剤が適している。
[085]ある特定の実施態様では、開示する組成物の麻酔剤溶出特性は、2つ以上の脂質相の体積比によって影響される。ある特定の実施形態によれば、固体微粒子脂質相対エマルジョン脂質相の比は、約50体積%~75体積%固体相対約25体積%~50体積%エマルジョン相である。ある特定の実施形態によれば、固体微粒子脂質相対エマルジョン脂質相の比は、約66体積%固体相対約34体積%エマルジョン相である。
脂質微粒子のヒドロゲル組成物の製剤化方法
[086]ある特定の実施形態によれば、脂質微粒子は、APIを含む脂肪酸相の溶液をはるかに体積の大きな水相中で撹拌することによって作成される。好ましい水相対脂質相の比は、95%~99.5%水相対0.5%~5%脂質相である。水相は、脂質相中に存在するAPIで飽和されていることが好ましい。ある特定の実施形態では、25mmol超の濃度の塩は、水相中に、好ましくは25と150mmolとの間、より好ましくは45と65mmolとの間で存在する。チラミン置換ヒアルロン酸は、水相中に、0.1%から4%、好ましくは0.1から1%の間、特に0.5%の濃度で存在する。2相混合物は、撹拌し、微粒子が作成されるまで冷却する。粒子は、遠心分離機、フィルターまたは沈降槽を使用して濃縮し、水相をデカンテーションして、微粒子を後に残す。遊離した粒子は、30%脂質相対70%水相の体積比で、チラミン置換ヒアルロン酸および西洋ワサビペルオキシダーゼを含む追加の水相を添加し、この溶液中で懸濁する。ヒドロゲルは、過酸化水素の添加により形成される。ヒドロゲルは、粒子の分離を維持し、シリンジ経由での容易な送達を可能とする。
[087]ある特定の実施形態によれば、2つ以上の脂質相(例えば、脂質微粒子およびエマルジョン)を有する製剤は、先行する段落と同様に調製することができるが、ただし、微粒子の水相への添加の前に、麻酔剤は、液体脂質相(ある特定の実施形態では、ステアリン酸およびオレイン酸の混合物)に溶解し、エマルジョンが形成されるまで水相と激しく混合する。エマルジョン形成後、脂質微粒子は先に記載したように添加する。
[088]理論に束縛されることを望むものではないが、ゼータ電位が塩(例えば、NaCl)を水相に添加することによって増加して、表面電荷が増加し、粒子を互いに反発させ、より小径の粒子の形成を可能とし、凝固の前に粒子が合一してより大きな粒子を形成するのを防止すると考えられる。ある特定の実施態様では、ヒドロゲルは、10mMと約70mMとの間の塩を含む。さらなる実施態様では、塩濃度は、約25mM塩と約50mM塩との間である。さらなる実施態様では、ヒドロゲルは、少なくとも約50mMの塩を含む。ある特定の態様では、塩はNaClである。当業者には理解されるように、他の塩でもよい。
[089]開示する組成物のある特定の実施態様では、麻酔剤は、ロピバカインを含む。例示の態様では、ロピバカインは、約1から約25%の量で脂質微粒子中に存在する。さらなる実施形態では、脂質微粒子はトリグリセリドから構成される。
[090]ある特定の代替の実施形態によれば、複数の脂質微粒子によって結合されていない麻酔剤は、ヒドロゲル全体に分散している。これらの実施形態によれば、ヒドロゲル全体に分散しているAPIは即時バースト用量を提供し、一方、脂質微粒子中に結合したAPIは長期的持続放出を提供する。
[091]ある特定の実施態様では、組成物は放射線不透過性造影剤をさらに含む。
[092]さらに、本明細書は、それを必要とする対象の術後疼痛の治療方法であって、非混和性担体相と、麻酔剤を含む、非混和性担体相中に分散している複数の脂質微粒子とを含む組成物の有効量を対象に投与するステップを備える、方法を開示する。ある特定の実施態様では、非混和性担体相が、ヒドロゲル、粘稠液体、安定なエマルジョン、またはクリームである。
[093]例示的な実施態様では、非混和性担体相は、ヒドロゲル(例えば、ヒドロゲルはチラミン置換ヒアルロン酸から構成される)である。
[094]ある特定の実施形態では、麻酔剤は、以下から選択される:アンブカイン、アモラノン、アミルカイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタムベン、ブタニリカイン、ブテタミン、ブトキシカイン、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジクロニン、エコゴニジン(ecogonidine)、エコゴニン(ecogonine)、ユープロシン、フェナルコミン、ホルモカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテテラカイン(hydroxyteteracaine)、p-アミノ安息香酸イソブチル、ロイシノカイン、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、塩化メチル、ミルテカイン、ネーパイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセサゼイン、パレントキシカイン(parenthoxycaine)、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン(piridocaine)、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン(propipocaine)、プロポキシカイン、シュードコカイン、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、もしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物。ある特定の実施態様では、麻酔剤は、ロピバカインである。ある特定の代替の実施形態では、麻酔剤は、ブピバカインである。
[095]開示する方法のある特定の実施態様では、組成物は、対象に投与され、対象の神経または神経束の近傍に送達される。例示の実施形態では、神経または神経束は、対象の外科的切開領域を神経支配する。組成物は、シリンジまたは皮下注射器、当技術分野で公知の他の送達方法によって送達され得る。開示する方法の例示的な実施態様では、本明細書に記載の組成物の投与は、約72時間以上の疼痛緩和をもたらす。
[096]本明細書はまた、開示される化合物または組成物を含む医薬製剤のキットを提供する。キットは、単一の製剤または製剤の組み合わせを示すように構成され得る。組成物は、適切な量の化合物を含むように細分してもよい。単位投与量は、包装された組成物、例えば、分包散剤、バイアル、アンプル、充填済みシリンジまたは液体を含むサッシェとすることができる。
[097]本明細書に記載の化合物または組成物は、単一用量であってもよく、または連続または定期的な不連続投与用であってもよい。連続投与の場合、キットは、各投与量単位で化合物を含み得る。定期的な中止の場合、キットは、化合物が送達されない期間、プラセボを含み得る。組成物の濃度、組成物の成分、または組成物中の化合物もしくは他の薬剤の相対比を、経時的に変えることが望ましい場合、キットは、一連の投与量単位を含み得る。
[098]キットは、望ましい送達経路用に製剤化された化合物を有する包装または容器を含み得る。キットはまた、投与説明書、化合物に関連した添付文書、化合物の循環レベルをモニターするための説明書、またはこれらの組み合わせを含み得る。化合物の使用を実施するためのものが、さらに含まれていてもよく、これらには、試薬、ウェルプレート、容器、およびマーカーまたはラベルなどが挙げられるが、これらに限定されない。かかるキットは、所望の適応症の治療に適した方法で包装される。当業者には、かかるキットに含まれる他の好適な成分は、所望の適応症および送達経路を考慮すれば容易に明らかであろう。キットはまた、対象の体内に化合物を注入/投与または配置するのを補助する器具も含み得るか、またはこれと同梱され得る。かかる器具には、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器または任意のかかる医学的に承認された送達手段が挙げられるが、これらに限定されない。他の器具としては、インビトロでの反応の読み取りまたはモニタリングを可能にする道具を挙げることができる。
[099]これらのキットの化合物または組成物はまた、乾燥、凍結乾燥、または液体形態で提供され得る。試薬または成分が乾燥形態として提供される場合、再構成は一般に溶媒の添加によって行われる。溶媒は、別の包装手段で提供されてもよく、当業者によって選択され得る。
[0100]医薬剤を分注するための多くのパッケージまたはキットが当業者に公知である。一実施形態では、パッケージは、ラベル付きブリスターパッケージ、ダイヤル式分注器パッケージ、またはボトルである。
[0101]さらに、本明細書は、ヒドロゲルと;APIを含む、ヒドロゲル中に分散されている複数の脂質微粒子とを含む、医薬品有効成分(API)の持続放出のための組成物を開示する。ある特定の実施形態では、APIは、化学療法組成物である。さらなる実施形態では、APIは乗り物酔い薬である。例示的な実施態様では、乗り物酔い薬はメクリジンまたはジメンヒドリナートである。さらなる実施態様では、APIは、NSAIDS、ステロイド、生物製剤、例えば、抗体、ホルモンから選択される。
[0102]さらに、本明細書は、少なくとも以下の組成物が開示される。
[0103]組成物1は、手術後疼痛を治療するための組成物であって、水性担体と;麻酔剤を含む脂質相とを含み、脂質相が水性担体中に分散されている組成物である。
[0104]2.水性担体が、チラミン置換ヒアルロン酸から構成されるヒドロゲルであり、ヒドロゲルが、ジ-チラミン架橋によって形成され、ヒアルロン酸のヒドロキシル基のチラミン置換度が約0.5%から約3%である、組成物1の組成物。
[0105]3.脂質相が複数の脂質微粒子を含む、組成物1の組成物。
[0106]4.脂質相が水性担体中に乳化している、組成物1の組成物。
[0107]5.複数の脂質微粒子によって結合されていない麻酔剤の塩形態が、水性担体に溶解している、組成物3の組成物。
[0108]6.水性担体と脂質微粒子との間の体積比が、約70~80の水性担体対約30~20の脂質微粒子である、請求項5の組成物。
[0109]7.脂質微粒子が、偶数の炭素を有する1つまたは複数の脂肪酸を含む、組成物3~6のいずれかの組成物。
[0110]8.脂質微粒子が、奇数の炭素を有する1つまたは複数の脂肪酸を含む、組成物3~7のいずれかの組成物。
[0111]9.1つまたは複数の脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、および前述の混合物から選択され、脂質微粒子の融点が37℃超である、組成物3~8のいずれかの組成物。
[0112]10.1つまたは複数の脂肪酸が、ステリン酸およびオレイン酸の混合物を含み、ステリン酸対オレイン酸の比が約90:10である、組成物3~9のいずれかの組成物。
[0113]11.脂質微粒子が、約12%ミリスチン酸、約32%パルミチン酸、約10%ステアリン酸、および約10%オレイン酸を含む、組成物7の組成物。
[0114]12.脂質微粒子が、ラウリン酸ならびにカプリル酸、カプロン酸、および/またはオレイン酸の混合物を含む、組成物の組成物。
[0115]13.脂質微粒子が、パラフィン、トリグリセリド、および/またはロウを含む、組成物3の組成物。
[0116]14.脂質微粒子が、カルナウバロウならびにカプリル酸、カプロン酸、および/またはオレイン酸の混合物を含む、組成物13の組成物。
[0117]15.複数の脂質微粒子が、第1の複数の脂質微粒子および第2の複数の脂質微粒子を含み、第1の複数の脂質微粒子が、約37℃で固体であり、第2の複数の脂質微粒子が、37℃で液体である、組成物3~14の組成物。
[0118]16.脂質微粒子がリポソームではない、任意の先行する組成物の組成物。
[0119]17.脂質微粒子の大きさが、約1μmから約20μmの範囲である、任意の先行する組成物の組成物。
[0120]18.脂質微粒子の大きさが、約4μmから約8μmの範囲である、任意の先行する組成物の組成物。
[0121]19.麻酔剤がロピバカインを含む、任意の先行する組成物の組成物。
[0122]20.ロピバカインが、約1から約25重量%の量で脂質微粒子中に存在する、任意の先行する組成物の組成物。
[0123]21.手術後疼痛を治療するための組成物であって、
水性担体と;
麻酔剤を含む複数の脂質微粒子を含み、水性担体中に分散されている第1の脂質相と;
1つまたは複数の脂質に溶解している麻酔剤を含み、水相中に乳化している第2の脂質相とを含む、組成物。
[0124]22.第1の脂質相にも第2の脂質相にも存在しない麻酔剤の塩形態が、水性担体に溶解している、組成物21の組成物。
[0125]23.第2の脂質相の1つまたは複数の脂質が、1つまたは複数の脂肪酸であり、第2の脂質相が、水相中に乳化している、組成物21~22の組成物。
[0126]24.第2の脂質相の1つまたは複数の脂肪酸が、ステアリン酸およびオレイン酸の混合物である、組成物21~23の組成物。
[0127]25.第1の脂質相と第2の脂質相との体積比が約66:34である、組成物21~24の組成物。
[0128]26.脂質微粒子が、偶数の炭素を有する1つまたは複数の脂肪酸を含む、組成物21~25のいずれかの組成物。
[0129]27.脂質微粒子が、奇数の炭素を有する1つまたは複数の脂肪酸を含む、組成物21~25のいずれかの組成物。
[0130]28.1つまたは複数の脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、および前述の混合物から選択され、脂質微粒子の融点が37℃超である、組成物21~27のいずれかの組成物。
[0131]29.1つまたは複数の脂肪酸が、ステリン酸およびオレイン酸の混合物を含み、ステリン酸対オレイン酸の比が約90:10である、組成物21~28のいずれかの組成物。
[0132]30.脂質微粒子が、約12%ミリスチン酸、約32%パルミチン酸、約10%ステアリン酸、および約10%オレイン酸を含む、組成物21~29の組成物。
[0133]31.脂質微粒子が、ラウリン酸ならびにカプリル酸、カプロン酸、および/またはオレイン酸の混合物を含む、組成物21~30の組成物。
[0134]32.脂質微粒子が、パラフィン、トリグリセリド、および/またはロウを含む、組成物21~31の組成物。
[0135]33.脂質微粒子が、カルナウバロウならびにカプリル酸、カプロン酸、および/またはオレイン酸の混合物を含む、組成物32の組成物。
[0136]34.複数の脂質微粒子が、第1の複数の脂質微粒子および第2の複数の脂質微粒子を含み、第1の複数の脂質微粒子が、約37℃で固体であり、第2の複数の脂質微粒子が、37℃で液体である、組成物21~33の組成物。
[0137]35.ヒドロゲルと;APIを含む、ヒドロゲル中に分散されている複数の脂質微粒子とを含む、医薬品有効成分(API)の持続放出のための組成物。
[0138]36.APIが化学療法組成物である、組成物35の組成物。
[0139]37.APIが乗り物酔い薬である、組成物35の組成物。
[0140]38.乗り物酔い薬がメクリジンまたはジメンヒドリナートである、組成物35の組成物。
[0141]39.APIが、NSAIDS、ステロイド、生物製剤、例えば、抗体、ホルモンから選択される、組成物35の組成物。
[0142]以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、道具および/または方法がどのように作成および評価されるかを完全に開示および説明するために記載され、本発明の純粋に例示的なものであることが意図されており、本発明者らが本発明とみなしているものの範囲を限定することを意図するものではない。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態に多くの変更を加えることができ、それでもなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、同等または同様の結果を得ることができることを理解する。
実施例1:水相の塩濃度の脂質微粒子サイズへの効果
[0143]脂質微粒子は、APIが溶解して含まれている液体脂肪酸相を、同じ温度の生理食塩水水相と混合すること、次に、急冷して、粒径を固定し、脂肪酸液滴がより大きな粒子へと合一するのを防ぐことで調製した。水相のイオン含有量の粒子サイズへの効果を評価するため、サンプルを、様々なイオン濃度で調製した。図1に示すように、イオン種が溶液に存在しないと、大量の脂肪酸は、大きな小球へと合一し、微粒子はほとんど生成されなかった。10mMのNaClでは、より多くの微粒子、およびいくつかのより小さなマクロ粒子が生成され、いくつかの大きな粒子がバイアル中で合一した。50mMのNaClは、最初の脂肪酸体積から生成される微粒子の数、および微粒子の体積を増加させる。これは、NaClを添加することで、粒子が合一して大きな粒子を形成することを防ぐことを示している。イオン種を溶液に添加することで、粒径も10μm未満に減少する。NaClの濃度を125mMに増加させても、微粒子の数は増加しないが、マクロ粒子の数は増加した。
実施例2:ロピバカイン脂質微粒子のヒドロゲル組成物の調製
[0144]ロピバカイン脂質微粒子のヒドロゲル組成物のサンプルを、以下の手順に従って調製した。開いた容器または容器間の移動を必要とする全ての操作は、洗浄および滅菌(10%漂白洗浄液)された隔離フード内で行われた。ロピバカイン塩基を、75℃で、滅菌密封管内で、93.5mg/1mL脂質相の濃度でステアリン酸に溶解した。脂質によりロピバカインが完全に溶解したら、液体脂質相を、75℃で予熱した0.2μmシリンジフィルターを通して滅菌ろ過し、予熱した滅菌遠心管に移し、ここで、75℃で予熱した水性ヒドロゲル相と混合する準備ができるまで75℃に維持した。THA粉末(0.25%)および50mM塩化ナトリウムは、滅菌ろ過RO水に溶解し、THA粉末が完全に溶解するまで最大6時間放置した。この最終溶液は、二重滅菌ろ過して新規滅菌遠心管に入れ、次に75℃に加熱した。次に、脂質相および水相を、合わせ、密封し、激しく振って、約5μmの脂質粒子がTHA溶液中に懸濁している均一な懸濁液を作製した。得られた懸濁液は、滅菌0.2マイクロンセルロースろ過材を通してろ過して、微粒子を収集した。得られたろ液は、使用せず、後で分析するために保存した。微粒子は、隔離フード内で12時間乾燥させ、次に、滅菌管に移し、最終製剤ができるまで密封した。担体相HRPバッファーを、管に加え、0.25%THAおよび14.28mg/mLロピバカインHClと混合した。溶液を、THA成分が完全に溶解するまで、冷蔵で12時間放置した。最終溶液は、隔離フード内で滅菌ろ過して最終製剤管に入れた。14.28mg/mLロピバカインHClを含む、3.5102gのHRP/THAバッファーは、1.5495gの微粒子を添加し、0.1640gの3%Hで架橋した。ゲルの塊は、滅菌10mLシリンジに移し、1mLシリンジに充填した。
[0145]図2~4は、ロピバカイン脂質微粒子のヒドロゲル組成物の代表的な画像を示しており、主要な特徴が矢印で示されている。
[0146]開示する組成物の効果をインビボで試験するために、動物試験を実施した。簡単に述べると、Sprague-Dawleyラット(処置群あたりn=6)に、目的の組成物を坐骨神経の近位で注入した。血液サンプルは、留置している頸静脈カテーテルによって採取し、関連する麻酔剤の血漿中濃度を求めるために分析した。これらの試験の結果を以下の例に示す。
[0147]図5に、血清API濃度を比較したラットの試験の結果を示すが、この試験は、ロピバカイン脂質微粒子のヒドロゲル組成物の2つの製剤(INSB200-AおよびINSB200B)、ロピバカインHCl、および市販のブピバカイン持続放出製剤(Exparel)を投与した個体におけるものであった。製剤INSB200-Aは、30体積%脂質微粒子(6mL脂質相、14mL水相)である。脂質微粒子は、70mg/mLロピバカイン塩基を含むステアリン酸であり、14.2mg/mLロピバカインHClが水性担体中にある。
[0148]製剤INSB200-Bは、30体積%脂質微粒子の粒子である。2つの脂質微粒子集団が存在し、110mg/mLロピバカイン塩基を含む90/10ステアリン酸/オレイン酸と、110mg/mLロピバカイン塩基を含むステアリン酸脂質微粒子とが、34:66の比で存在している。水性担体相は、14.2mg/mLロピバカインHClを含む。
[0149]個体は、INSB200-AおよびINSB200-Bの両方を投与され、匹敵する用量のExparelによって達成されるよりも優れた血漿APIレベルの上昇および持続が認められた。
実施例3
[0150]評価されたシステムのうちの1つは、脂質ベースの薬物リザーバを有する水性担体相である。INSB200の場合、APIは非極性アミド麻酔剤ロピバカインである。効果的な製品は、標準的な神経ブロックに相当するAPIの初期バーストを送達し、麻酔剤の追加の注入なしで短時間にて強力な神経ブロックをもたらす。麻酔剤は、手術後24~36時間後に溶出する速度が遅くなって運動機能が回復するが、依然として、手術後疼痛を低減または除去するのに有効な用量で溶出し続ける。2相システムは、水性担体相中のロピバカインHClによって初期バーストを送達し、次に、溶出速度が定常状態に達するまで減少するが、定常状態では、疼痛を効果的に治療または最小化するAPIの局所濃度が維持される。
[0151]3つの製剤を、水相中のロピバカインが200mg Naropinブロック相当用量になるように調製した。ロピバカイン塩基を、75℃で、滅菌密封管内で、110mg/1g脂質相の標的濃度で液体ステアリン酸に溶解した。バッチ1は、0.1524gロピバカイン塩基を1.4423gステアリン酸中に含み、バッチ2は、0.1540gロピバカイン塩基を1.4941gステアリン酸中に含んでいた。次に、両方のバッチは、混合物を75℃に加熱した。液体脂質バッチは、ロピバカインがステアリン酸中に完全に溶解するまで頻繁に撹拌した。ロピバカインが完全に溶解したら、液体脂質相を、75℃で予熱した0.2μmシリンジフィルターを通して滅菌ろ過し、予熱した滅菌遠心管に移し、ここで、75℃で予熱した水性ヒドロゲル相と混合する準備ができるまで75℃に維持した。微粒子バッファー溶液は、THA粉末(全バッファーの0.25重量%)を滅菌の50mM塩化ナトリウム逆浸透水溶液に添加すること、およびTHA粉末が完全に溶解するまで最大6時間混合させることによって、予め調製した。微粒子生理食塩水は、0.5595gロピバカイン塩基、0.25gTHA、2.922gNaClおよび1L滅菌水を含んでいた。THAが完全に溶解したら、微粒子生理食塩水を滅菌ろ過して新規滅菌管に入れた。微粒子のバッチを2つ作製したが、バッチ1は、1.5947gステアリン酸/ロピバカイン塩基を48.4747gTHA MP生理食塩水に添加し、バッチ2は、1.6494gのステアリン酸/ロピバカイン塩基脂質を48.5275g生理食塩水に添加した。次に、脂質相および水相を、迅速に合わせ、密封し、室温まで冷却しながら激しく撹拌して、THA溶液中に懸濁している約0~100μmの脂質粒子の均一な懸濁液を作製した。得られた懸濁液は、滅菌0.2マイクロンセルロースろ過材を通してろ過して、微粒子を収集し、生理食塩水ろ液を廃棄した。微粒子は、滅菌隔離フード内で12時間乾燥させ、次に、滅菌管に移し、最終製剤ができるまで密封した。45.0010gのHRPバッファー(1L水中の53mg西洋ワサビペルオキシダーゼ)を、管に加え、0.1130gTHAおよび0.6447gロピバカインHClと混合した。溶液を、THA成分が完全に溶解するまで、冷蔵で12時間放置した。次に、担体相最終溶液は、隔離フード内で滅菌ろ過して最終製剤管に入れた。14.31mg/mLロピバカインHClを含む、3.5902gのHRP/THAバッファーは、1.5643gの微粒子を添加し、0.1753gの3%Hで架橋した。得られたゲルの塊は、滅菌10mLシリンジに移し、1mLシリンジに充填した。
[0152]図6に示すように、全ての製剤は、最初の半時間で迅速にNaropinの200mg注入Cmax濃度に相当するようになり、その後、麻酔剤の速度は、少なくとも72hrsの間横ばいとなる。2つの対照を製剤の有効性を測定するのに使用した。第1の陽性対照は、0.5%Naropinであり、これは、製剤が最初の0.5~1時間で同様な用量のロピバカインを送達する必要がある用量を示すためのものであった。全ての3つの製剤は、Naropin対照に相当する初期用量を送達した。第2の陽性対照は、リポソーム型ブピバカイン持続放出麻酔剤であるExparelであった。3つの製剤は、24hrs後も、Exparelよりも高い量のロピバカインを送達し続ける。ブピバカインおよびロピバカインは、同様な化学構造および特性を有するが、メチル基が1つ異なる。
[0153]3つの製剤は全て、同様な量のロピバカインを72時間送達するが、このことは、これら全てが、担体相を72時間飽和させ続けるのに十分なロピバカインを含んでいることを示唆している。脂質相は、ある程度の薬物を保持し、これらの製剤は、ほぼ同時にこの平衡濃度に達する。このことから、脂質リザーバ粒子においては、70~110mgロピバカイン/1gリザーバの範囲では、濃度をより高くしてもCmaxにも溶出速度全般にも寄与しないことが分かる。
[0154]持続放出末梢神経ブロック製品は、速やかに発現する強力な神経ブロックをもたらす必要があるが、溶出速度は、標的四肢に運動機能が戻るが、依然として、標的四肢への良好な鎮痛作用を維持するのに十分な位高い程度まで減少する。鎮痛作用は、少なくとも72時間持続する必要がある。
[0155]図6に示すように、水性担体相中の200mg相当用量および脂肪酸系脂質微粒子を有する2相システムは、初期バースト、および既存の製品よりも高い投与速度の持続放出を提供する。
実施例4
[0156]図7は、水相のロピバカイン塩を除去した場合の効果を比較し、溶出速度が、93mg超/1gリザーバのロピバカイン塩基を含む製剤と同様であることを示す。初期バースト相は、ロピバカインHClが迅速に放出されるため、6時間後に、製剤は、ロピバカインHClを含まない製剤の溶出速度に相当するようになる。担体相中にロピバカインHClを含まない93mg未満/1gリザーバを有する製剤は、外れ値であり、溶出速度が迅速に低下する。脂質微粒子には、70mg/gをわずかに下回る平衡レベルがあり、このレベルでは、液相に対するロピバカインの親和性が高すぎるため、ロピバカインがリザーバから放出されない。これは、溶出の下限であり、これより下では、微粒子がAPIを放出しない。製剤は、APIの効果的な持続放出を提供するために、この下限より多くのロピバカインを含む必要がある。担体相中にロピバカインHClを有する70mg/1gリザーバの製剤は、担体相がロピバカインで予め飽和していたため、より高濃度の製剤と同様な溶出速度を有することができたという理由で溶出を抑制できたようである。このことは、70mg/リザーバ1gのロピバカインが下限に近いことを示唆している。ロピバカイン水溶液を伴うより高濃度の脂質相は、より低濃度のものより良好な初期バーストを示す。
[0157]図8は、水相のロピバカインHCl濃度の増加が、どのようにして、Cmaxを増加させる一方で、溶出曲線全体を顕著には変化させないのかを示す。このことにより、水相中のロピバカインHClが脂質相成分とは独立して溶出することが示唆される。
[0158]好ましい脂質相対水相の比は、30体積%未満かつ20体積%超の脂質相である。脂質相の濃度を増加させると、一部の製剤では溶出速度が実際に減少する。
実施例5
[0159]図9および10は、脂質相の体積が異なる製剤の比較を示す。低負荷の薬物リザーバ製剤は、同様に機能したが、ただし、20パーセント製剤であるサンプル6Lは、ロピバカインの溶出がより高負荷の製剤よりも顕著に低い速度であった。これは、3つの製剤の全てが溶出を可能とする最小濃度に近いという事実と、20体積%では、他の2つの製剤より前に利用可能なロピバカインがなくなり、迅速に低下したという事実とによるものと思われる。
実施例6
[0160]図11は、脂質薬物リザーバ中の中程度のロピバカインの負荷の比較を示す。この設定では、40体積%脂質相の製剤は、他の製剤よりも機能しなかった。
実施例7
[0161]図12では、脂質相体積パーセントに基づいて、脂質相リザーバ中の高負荷のロピバカイン濃度を互いに比較している。この場合もやはり、30体積%脂質の製剤は、他の体積パーセントの製剤よりも良好に機能する。このことから、30体積%脂質が持続放出製剤には好ましいことが示唆される。これらの製剤は、低用量の薬物または速い放出が必要である他の用途に適している可能性があるが、しかし、アミド麻酔剤では、30体積%脂質の薬物リザーバ製剤が好ましい。
実施例8
[0162]図13は、エマルジョン相薬物リザーバ製剤対固体相薬物リザーバ製剤の溶出速度を比較する。ロピバカイン塩基を、75℃で、滅菌密封管内で、110mg/1g脂質相の標的濃度で液体ステアリン酸に溶解した。微粒子脂質相は、0.2032gロピバカイン塩基を1.8664gステアリン酸中に含み、エマルジョン相の脂質相は、0.1014gロピバカイン塩基を0.0960gステアリン酸および0.8393gオレイン酸中に含んでいた。次に、両方のバッチを、75℃に加熱した。液体脂質バッチは、ロピバカインが脂質相中に完全に溶解するまで頻繁に撹拌した。ロピバカインが完全に溶解したら、液体脂質相を、75℃で予熱した0.2μmシリンジフィルターを通して滅菌ろ過し、予熱した滅菌遠心管に移し、ここで、75℃で予熱した水性ヒドロゲル相と混合する準備ができるまで75℃に維持した。微粒子バッファー溶液は、THA粉末(全バッファーの0.25重量%)を滅菌の50mM塩化ナトリウム逆浸透水溶液に添加すること、およびTHA粉末が完全に溶解するまで最大6時間混合させることによって、予め調製した。微粒子生理食塩水は、0.5595gロピバカイン塩基、0.25gTHA、2.922gNaClおよび1L滅菌水を含んでいた(3および4と同じバッチ)。THAが完全に溶解したら、微粒子生理食塩水を滅菌ろ過して新規滅菌管に入れた。2.0696gステアリン酸/ロピバカイン塩基を48.5626gTHA MP生理食塩水に添加した微粒子のバッチの1つが、作製された。次に、微粒子脂質相および水相を、迅速に合わせ、密封し、室温まで冷却しながら激しく撹拌して、THA溶液中に懸濁している約0~100μmの脂質粒子の均一な懸濁液を作製した。得られた懸濁液は、滅菌0.2マイクロンセルロースろ過材を通してろ過して、微粒子を収集し、生理食塩水ろ液を廃棄した。微粒子は、滅菌隔離フード内で12時間乾燥させ、次に、滅菌管に移し、最終製剤ができるまで密封した。45.0010gのHRPバッファー(1L水中の53mg西洋ワサビペルオキシダーゼ)を、管に加え、0.1130gTHAおよび0.6447gロピバカインHClと混合した。溶液を、THA成分が完全に溶解するまで、冷蔵で12時間放置した。次に、担体相最終溶液は、隔離フード内で滅菌ろ過して最終製剤管に入れた。0.5148gの二次脂質相(エマルジョン相)は、3.6100gのHRP/THAバッファーに添加し、激しく撹拌してエマルジョンを形成させた。ここでエマルジョンとなっているバッファーは、0.1757gの3%Hを含み、これで架橋するが、1.0424gの微粒子が添加された。得られたゲルの塊は、滅菌10mLシリンジに移し、1mLシリンジに充填した。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、エマルジョン相は、液体中の拡散は固体中より速いため、ロピバカインをより速く放出するはずであると考えられる。実際、この例では、溶出速度は、最初の24時間はより速く、そこで、曲線が分かれ、固体相の溶出速度がより速くなることが示されている。2つの種類のリザーバを組み合わせることで、薬品の全体的な機能が向上する。
[0163]図14は、どのように製剤が、66%固体相リザーバおよび34%エマルジョン相リザーバの2つの製剤を組み合わせることにより改善されるかを示す。薬物リザーバの種類を組み合わせることにより、溶出速度は、強力な末梢神経ブロックのために必要なロピバカインの初期バーストを維持することおよびその後の48時間と96時間との間、溶出速度を上昇させることによって改善される。
[0164]図15は、エマルジョン相中のロピバカイン負荷を変化させても72hrsでの溶出速度はほとんど改善されないことを示す。
[0165]図16は、溶出速度に関する様々な固体相対エマルジョン相薬物リザーバの比を比較する。最良の溶出速度プロファイルは、66:34固体相:エマルジョン相製剤によって示された。この製剤は、Naropin対照に相当する堅牢な初期用量をもたらし、その後、72時間経過後も麻酔用量でロピバカインを送達し続ける。50:50製剤は、麻酔剤がより強力で、72時間でのより速い低下が望ましい一部の手術応用により適している可能性がある。
実施例9
[0166]図17は、サンプル9LL製剤の用量を20mL合計送達用量から30mL合計送達用量に増加させた場合の影響を示す。製剤は、72時間付近のピークを除いて同様に機能したが、これは、用量の増加に起因してMPの量が多かったことによるものであった。
実施例10
[0167]ここまでの製剤は、ステアリン酸/オレイン酸システムを使用して作製されてきたが、しかしながら、この機能を他の脂肪酸を用いて模擬することが可能である。図18は、ラウリン酸、カプリン酸製剤のステアリン酸およびオレイン酸製剤との比較を示す。図19は、カルナウバロウ/オレイン酸製剤の対照との比較を示す。脂肪酸系薬品システムは、複数の脂肪酸を使用することができる。ラウリン酸は、オレイン酸、カプロン酸、およびカプリル酸と組み合わせて、同様に機能する製剤を形成することができる。カプロン酸は、48hrs後により高い速度で溶出できることが示された。
実施例12
[0168]図20は、固体相脂肪酸微粒子と液体(エマルジョン)相薬物リザーバとの間の比較を示す。この例では、両方の薬物リザーバ相は、リザーバ相中に90mg/gロピバカインを含む。固体相は、最初の24hrsではロピバカインの放出はさほどではないが、24hrs超ではロピバカインの放出は安定する。2相を一緒に添加して、初期バースト、および24hrs超でより高い溶出速度を有する新規の製剤を作製することが想定される。
[0169]本開示は、好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、当業者は、開示する機器、システムおよび方法の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細に変更がなされ得ることを認識するであろう。

Claims (31)

  1. 手術後疼痛を治療するための組成物であって、
    水性担体と;
    麻酔剤を含む脂質相とを含み、
    該脂質相が水性担体中に分散されている組成物。
  2. 水性担体が、チラミン置換ヒアルロン酸から構成されるヒドロゲルであり、該ヒドロゲルが、ジ-チラミン架橋によって形成され、ヒアルロン酸のヒドロキシル基のチラミン置換度が約0.5%から約3%である、請求項1に記載の組成物。
  3. 脂質相が複数の脂質微粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
  4. 脂質相が水性担体中に乳化している、請求項1に記載の組成物。
  5. 複数の脂質微粒子によって結合されていない麻酔剤の塩形態が、水性担体に溶解している、請求項3に記載の組成物。
  6. 水性担体と脂質微粒子との間の体積比が、約70~80の水性担体対約30~20の脂質微粒子である、請求項5に記載の組成物。
  7. 脂質微粒子が、偶数の炭素を有する1つまたは複数の脂肪酸を含む、請求項3に記載の組成物。
  8. 脂質微粒子が、奇数の炭素を有する1つまたは複数の脂肪酸を含む、請求項3に記載の組成物。
  9. 1つまたは複数の脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、および前述の混合物から選択され、脂質微粒子の融点が37℃超である、請求項7に記載の組成物。
  10. 1つまたは複数の脂肪酸が、ステリン酸およびオレイン酸の混合物を含み、ステリン酸対オレイン酸の比が約90:10である、請求項9に記載の組成物。
  11. 脂質微粒子が、約12%ミリスチン酸、約32%パルミチン酸、約10%ステアリン酸、および約10%オレイン酸を含む、請求項7に記載の組成物。
  12. 脂質微粒子が、ラウリン酸ならびにカプリル酸、カプロン酸、および/またはオレイン酸の混合物を含む、請求項9に記載の組成物。
  13. 脂質微粒子が、パラフィン、トリグリセリド、および/またはロウを含む、請求項3に記載の組成物。
  14. 脂質微粒子が、カルナウバロウならびにカプリル酸、カプロン酸、および/またはオレイン酸の混合物を含む、請求項13に記載の組成物。
  15. 複数の脂質微粒子が、第1の複数の脂質微粒子および第2の複数の脂質微粒子を含み、該第1の複数の脂質微粒子が、約37℃で固体であり、該第2の複数の脂質微粒子が、37℃で液体である、請求項3に記載の組成物。
  16. 脂質微粒子がリポソームではない、請求項3に記載の組成物。
  17. 脂質微粒子の大きさが、約1μmから約20μmの範囲である、請求項3に記載の組成物。
  18. 脂質微粒子の大きさが、約4μmから約8μmの範囲である、請求項17に記載の組成物。
  19. 麻酔剤がロピバカインを含む、請求項3に記載の組成物。
  20. ロピバカインが、約1から約25重量%の量で脂質微粒子中に存在する、請求項19に記載の組成物。
  21. 手術後疼痛を治療するための組成物であって、
    水性担体と;
    麻酔剤を含む複数の脂質微粒子を含み、水性担体中に分散されている第1の脂質相と;
    1つまたは複数の脂質に溶解している麻酔剤を含み、水相中に乳化している第2の脂質相
    とを含む、組成物。
  22. 第1の脂質相にも第2の脂質相にも存在しない麻酔剤の塩形態が、水性担体に溶解している、請求項21に記載の組成物。
  23. 第2の脂質相の1つまたは複数の脂質が、1つまたは複数の脂肪酸であり、該第2の脂質相が、水相中に乳化している、請求項22に記載の組成物。
  24. 第2の脂質相の1つまたは複数の脂肪酸が、ステアリン酸およびオレイン酸の混合物である、請求項23に記載の組成物。
  25. 第1の脂質相と第2の脂質相との体積比が約66:34である、請求項21に記載の組成物。
  26. それを必要とする対象の術後疼痛の治療方法であって、
    非混和性担体相と;
    麻酔剤を含む、非混和性担体相中に分散している複数の脂質微粒子
    とを含む組成物の有効量を対象に投与するステップを含む、方法。
  27. 非混和性担体相が、ヒドロゲル、粘稠液体、安定なエマルジョン、またはクリームである、請求項26に記載の方法。
  28. 非混和性担体相がヒドロゲルである、請求項27に記載の方法。
  29. ヒドロゲルがチラミン置換ヒアルロン酸から構成され、麻酔剤がロピバカインである、請求項28に記載の方法。
  30. 約20mLの組成物が対象に投与され、組成物が約72時間疼痛緩和をもたらす、請求項29に記載の方法。
  31. 組成物が、対象の神経または神経束の近傍に送達され、該神経または神経束が、対象の外科的切開領域を神経支配する、請求項29に記載の方法。
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