JP2024504822A - 出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を処置または予防する方法 - Google Patents

出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を処置または予防する方法 Download PDF

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Abstract

本開示は、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)中への放出を伴う出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防する方法であって、ヘモペキシン(Hx)が無細胞ヘムと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、それを必要としている対象のCSFを治療有効量のHxに曝露する工程、および場合により、ハプトグロビン(Hp)が無細胞Hbと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、対象のCSFを治療有効量のHpに曝露する工程を含む方法と一般的に関連する。

Description

本発明は、脳脊髄液(CSF)コンパートメント中への出血性脳卒中後、特にクモ膜下出血(SAH)後の対象における、有害な二次神経学的転帰を処置および/または予防するための方法および組成物と一般的に関連する。
本明細書で引用されたすべての参照は、あらゆる特許または特許出願を含め、本発明の完全なる理解を可能にするために、参照によって本明細書により組み入れる。それにもかかわらず、そのような参照は、それらの文書のいずれかが、オーストラリアまたは任意のその他の国において、当技術分野における共通一般的知識の一部を形成する、という承認を構成するものと読み取られるものではない。
出血性脳卒中は、周辺組織中への出血を伴う、脳内またはその表面における血管の破裂と関係する。出血性脳卒中の例として、i)脳内血管の破裂と関係する脳内出血(本明細書ではICHと呼ばれる);ii)脳室系中への出血である脳室内出血(本明細書ではIVHと呼ばれる);およびiii)脳と脳を覆う組織との間の腔(クモ膜下腔として知られている)における出血と関係するクモ膜下出血(本明細書ではSAHと呼ばれる)が挙げられる。最も高頻度のSAHは、動脈瘤破裂(本明細書ではaSAHと呼ばれる)により引き起こされる。SAHのその他の原因として、頭部傷害、出血障害、および血液希釈剤の使用が挙げられる。
動脈瘤性クモ膜下出血(aSAH)は、SAHの最も一般的な原因であり、また最高死亡率および長期神経学的身体障害と関連している。動脈瘤修復および神経集中医療における進歩にもかかわらず、欧州における院内致死率中央値は、44.4%であり、また米国では32.2%である。生存者の35%が、出血イベントから1年後に、全体的な生活の質の不良を報告しており、83~94%が仕事に復帰することができない。米国内の頭蓋内動脈瘤破裂に起因するaSAHの推定発生率は、10,000人当たり1症例であり、毎年およそ27,000件の新規症例が生ずる。
さらに、aSAHは、男性よりも女性において一般的である(2:1);発生率のピークは55~60歳である。
最初の72時間以内の初期脳損傷(Sehbaら、2012年)に加え、aSAH後の患者転帰は、動脈瘤破裂の後の4~10日目の間に生ずる遅発性二次脳損傷により決定される(Macdonald、2014年)。遅発性二次脳損傷は、脳の大血管および微小血管機能障害、神経炎、ニューロンアポトーシス、および病理学的電気活動度が関係する多因子性と考えられる(Macdonald、2014)。aSAH後の患者の3分の2が大脳動脈の血管造影血管攣縮(aVSP)を発症する(DorschおよびKing、1994年)。虚血性脳領域の放射線学的境界を有する遅発性脳虚血(DCI)および臨床的に明白な遅発性虚血性神経障害(DIND)が患者の3分の1において見出されている(Rowlandら、2012年)。これら二次的症状のうちの少なくとも1つが発生すれば、クモ膜下出血に関連する二次脳損傷(SAH-SBI)と定義される。
動脈瘤破裂とSAH-SBIの発現との間のラグタイムは、予防的および治療的介入のための絶好の機会を提供し、SAH-SBIに対して高リスクに晒されている患者、ならびに新規薬物標的を特定するための未だ対処されていない必要性を定義する。これまで、aSAH後の神経学的転帰を中程度に改善することが明らかにされている唯一の予防介入は、経口ニモジピンである(クラスI、レベルA)(Diringerら、2011年;Connollyら、2012年)。症候性の患者において、治療オプションは、現在のところ全身的動脈高血圧の誘発によるレスキュー療法、また選択された患者においては、aVSPを消散させるための機械的または化学的血管形成術に限定される(Diringerら、2011年;Connollyら、2012年)。したがって、aSAH後の患者を対象とした、SAH-SBIを処置および/または予防するための特別な療法に対する緊急かつ未だ対処されていない必要性が存在する。
多大な研究努力にもかかわらず、SAH-SBIを信頼性をもってモニタリングするための臨床的に確立されたバイオマーカーはなおも存在しない。幅広く使用されているものの、臨床スコア(HuntおよびHess、1968年;Teasdaleら、1988年)、放射線学スコア(Fisherら、1980年;Fronteraら、2006年;Wilsonら、2012年)、および経頭蓋ドップラー超音波検査法(transcranial doppler sonography;TCD)による日常アセスメント(Diringerら、2011;Connollyら、2012)は、リスクに晒されている患者の検出において限定された正確性しか示さない(de Rooijら、2013年)。
無細胞ヘモグロビン(Hb)は患者CSF内に蓄積し、そしてSAH-SBIの上流に位置する駆動因子とみなされてきた(Plutaら、2009年;Hugelshoferら、2019年;Buehlerら、2020年)。患者18例を対象とする、毎日のCSF分光光度測定を用いた小規模パイロット試験から得られたデータより、動脈瘤破裂後に2週間にわたり、高度に累積したCSF-Hbに曝露された患者では、SAH-SBI発症に対するリスクが増加し得ることが示唆された(Hugelshoferら、2018年)。しかしながら、これまでのところ、患者CSF内の無細胞Hbの濃度(CSF-Hb)とクモ膜下出血に関連する二次脳損傷(SAH-SBI)の発生との間の相関関係は臨床的に実証されていない。特に、SAH-SBIの関連するバイオマーカーとして使用し得る臨床的に重要なCSF-Hb濃度は不明である。
全体として、SAH-SBIを予測およびモニターするための診断ツール、ならびにSAH-SBIを予防および処置するための標的を定めた治療アプローチに対する喫緊の臨床的必要性が存在する。
本発明者らは、aSAHを有する患者コホートを対象にプロスペクティブ試験を行い、そしてこの患者のCSF内無細胞Hb(CSF-Hb)の濃度とクモ膜下出血(SAH-SBI)に関連する二次脳損傷の発生との間に有意な相関性を思いがけず見出した。CSF-HbとSAH-SBIとの相関性の診断正確性が、臨床的に重要なCSF-Hb濃度の狭い範囲内において特定され、そしてそれはaSAHのその他の生理学的および生化学的バイオマーカー、ならびに放射線学スコアおよび臨床スコアを顕著に凌駕することが判明した。注目すべきことに、SAH-SBIの3つの症状;すなわち大脳動脈の血管造影血管攣縮(aVSP)、遅発性脳虚血(DCI)、および遅発性虚血性神経障害(DIND)のすべてについて、CSF-HbとSAH-SBIの発生率との間に有意な相関性が観察された。本発明者らは、詳細なCSFプロテオミクス分析、ならびにCSF-Hbを病態生理学的駆動因子および治療標的として特定するex vivo機能的アッセイも行った。
本発明者らは、ヘモペキシン(Hx)は、機能的および放射線学的神経学的障害を含む、無細胞ヘム媒介式の有害な二次神経学的転帰(例えば、酸化性組織傷害、神経炎)を低下させ、さもなければ防止することができることも、驚くべきことに見出した。CSF-Hbが本明細書において特定された臨床的に重要な濃度範囲内にあるとき、Hxは患者CSF-Hbの脂質酸化活性を選択的に中和する能力を有することが判明した。本発明者らは、ハプトグロビン(Hp)は、本明細書において特定された臨床的に重要なCSF-Hb濃度範囲内で、その抗血管攣縮効果および抗酸化効果を発揮することをさらに驚くべきことに見出した。それに加えて、本発明者らは、ハプトグロビン(Hp)およびヘモペキシン(Hx)は、その保護的機能を相乗的に発揮し得ることをさらに驚くべきことに見出した。
したがって、本発明の1つの態様では、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)中への放出を伴う出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防する方法であって、ヘモペキシン(Hx)が無細胞ヘムと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、それを必要としている対象のCSFを治療有効量のHxに曝露する工程を含む方法が提供される。一実施形態では、方法は、ハプトグロビン(Hp)が無細胞Hbと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、対象のCSFを治療有効量のHpに曝露する工程をさらに含む。
本明細書で開示される別の態様では、本明細書に記載される方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防するための医薬組成物であって、治療有効量のヘモペキシン(Hx)および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、組成物は治療有効量のハプトグロビン(Hp)をさらに含む。
本明細書で開示される別の態様では、本明細書に記載される方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防する際に使用するための医薬組成物であって、治療有効量のヘモペキシン(Hx)および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。一実施形態では、組成物は治療有効量のハプトグロビン(Hp)をさらに含む。
本明細書で開示される別の態様では、本明細書に記載される方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防するための医薬を製造する際の、治療有効量のヘモペキシン(Hx)の使用が提供される。一実施形態では、治療有効量のHxは、治療有効量のハプトグロビン(Hp)と併用投与するために製剤化される。
本明細書で開示される別の態様では、本明細書に記載する方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防する際に使用するための治療有効量のヘモペキシン(Hx)が提供される。一実施形態では、治療有効量のHxは、治療有効量のハプトグロビン(Hp)と併用投与するために製剤化される。
本明細書で開示される別の態様では、本明細書に記載されるように、Hx、および場合によりHpを含む人工CSFが提供される。本開示は、本明細書に記載されるような人工CSFまたは組成物を含むキットにも拡張される。
本明細書で開示される別の態様では、対象は、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)中への放出を伴う出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するかどうか判定する方法であって、(i)出血脳卒中後の対象に由来するCSFサンプルを取得する工程;(ii)工程(i)で得られたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を測定する工程;および(iii)工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を参照値と比較する工程を含み、対象の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクは、工程(iii)における比較に基づき決定される方法が提供される。
いくつかの実施形態では、方法は、有害な二次神経学的転帰のリスクを有するものと判定された対象を処置する工程であって、前記処置が、対象のCSFを、(i)本明細書に記載されるように、ヘモペキシン(Hx)が無細胞ヘムと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、治療有効量のHxに曝露すること;および/または(ii)本明細書に記載されるように、Hpが無細胞Hbと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、治療有効量のハプトグロビン(Hp)に曝露することを含む工程をさらに含む。したがって、本明細書で開示される別の態様では、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)中への放出を伴う出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰の処置に対して対象を階層化する方法であって、(a)本明細書に記載されるように、対象が有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するかどうか判定する工程、および(b)本明細書に記載される方法に基づき、有害な二次神経学的転帰のリスクを有するものと判定された対象を処置する工程を含む方法が提供される。
動脈瘤性クモ膜下出血後の脳脊髄液プロテオームの変化を示す図である;A.脳脊髄液(CSF)オキシヘモグロビン(oxyHb)、ビリルビン、ビリベルジン、およびメトヘモグロビン(metHb)の時間的プロファイル。A.LC-MS/MSによる、aSAH後のCSFにおいて同定されたタンパク質のk平均クラスタリング。B.全体的な倍率変化およびCSFプロテオームにおける組合せp値を含むVolcanoプロット。色はクラスターを表し、そしてドットのサイズはタンパク質の生の平均強度を表す(非標準化)。C.aSAH後のCSFプロテオームのGSEAにおいて特定された負に富化されたトップホールマーク遺伝子セット(凝固)の富化プロット。D.aSAH後のCSFにおけるハプトグロビン(HP)、ハプトグロビン関連タンパク質(HPR)、ヘモペキシン(HPX)、およびアルブミン(ALB)の標準化されたタンパク質強度の時間的経過。E.aSAH後のCSFプロテオームのGSEAにおいて特定された正に富化されたトップホールマーク遺伝子セット(解糖)の富化プロット。F.aSAHの後のCSFプロテオームのGSEAにおいて特定されたホールマーク遺伝子セット(ヘム代謝)の富化プロット。G.CSF内カルボアンヒドラーゼ1(CA1)、カルボアンヒドラーゼ2(CA2)、カタラーゼ(CAT)、およびアルドラーゼA(ALDOA)の標準化されたタンパク質強度の時間的経過。H.CSFにおけるCD163、コロニー刺激因子1受容体(CSF1R)、CD14、およびメタロプロテイナーゼ阻害剤1(TIMP)の標準化されたタンパク質強度の時間的経過。 図1-1の続き。 図1-2の続き。 図1-3の続き。 図1-4の続き。 図1-5の続き。 CSF-Hbの決定因子を示す図である。A.3D表現のクモ膜下血腫の例。B.一般加法モデル基づく、動脈瘤サイズ、動脈瘤の場所、血腫容積、脳室内出血(IVH)の存在、およびaSAH後の日数に対するCSF Hbレベルの部分的依存性。C.IVHの存在について階層化されたaSAH後のCSFヘモグロビンの時間的経過。D.IVHが存在しない状況(青色の挿入図)または存在する状況(赤色の挿入図)を比較しながら、前交通動脈の動脈瘤の破裂に由来するクモ膜下出血を示す概略図。 図2-1の続き。 図2-2の続き。 図2-3の続き。 図2-4の続き。 脳脊髄液ヘモグロビンと動脈瘤性クモ膜下出血後の二次的脳障害との関連性を示す図である;A.血管造影血管攣縮(aVSP)、遅発性脳虚血(DCI)、遅発性虚血性神経障害(DIND)、および複合転帰である1日当たりの二次脳損傷(SAH-SBI))により階層化された動脈瘤性クモ膜下出血後の患者における脳脊髄液ヘモグロビン(Hb)。B.一般加法モデルに基づく、CSF-Hb(対数スケール)およびaSAH後の日数に対するSAH-SBIの部分的依存性。C.DIND、DCI、およびaVSPが存在する場合のHbの受信者動作特性(ROC)曲線および曲線下面積(AUC)(左側)。SAH-SBIの発生について各値を含むHbのROC曲線。D.3ヶ月フォローアップ時点におけるGOSEにより階層化されたCSF Hbの時間的経過(良好/不良)。 図3-1の続き。 図3-2の続き。 図3-3の続き。 ヘモグロビンの血管収縮能力および酸化能力を示す図である;A.ヘモグロビン(Hb)に対する血管張力用量応答性。B.患者において測定された経頭蓋ドップラー(TCD)速度(最大TCDでスケール化)はCSF Hbレベルと相関関係を有した。aVSPの存在はカラーオーバーレイとして示す。C.TBARSアッセイにおいてHbの異なる濃度に応答して生じたマロンジアルデヒドの形成。D.二次脳損傷(SBI)の発生に対するCSF内Hb測定濃度の相関性。 血管性および酸化性Hb効果に対するハプトグロビンの保護効果を示す図である;A.Hpアフィニティーカラムを使用したCSFのHb枯渇。B.Hb枯渇CSFおよびHb含有CSF中に浸漬した血管から得られた血管張力。C.ハプトグロビン(Hp)有り(図4Aのデータ)またはHb無しに対する用量応答性。D.チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)アッセイ法を用いてマロンジアルデヒドにより評価した、Hpまたはヘモペキシン(Hpx)添加有り/無しの場合の、aSAH後患者CSFの酸化能力の時間的経過。 動脈瘤性クモ膜下出血後の脳脊髄液ヘモグロビンおよびヘム代謝物の病態生理学を示す図である;A.動脈瘤性クモ膜下出血後のクモ膜下微環境における病態生理プロセスの概略図。赤血球貪食ならびにヘモグロビン変性およびヘム代謝の連続した細胞内プロセスを下部に示す。ビリベルジンレダクターゼおよび赤血球貪食の飽和を赤色のバーで示す。クモ膜下CSF腔内での溶血を概略図上部に示す。放出されたオキシヘモグロビンがメトヘモグロビンに酸化された後、ヘムが放出される。B.経時的なHb、ビリルビン、ビリベルジン、およびmetHbのCSF濃度。ビリベルジンレダクターゼおよび貪食が飽和した推定時刻を縦方向のバーで示す。 図7Aは臨床観察試験のフロー図を示す図である。図7Bは、EVDによる毎日のCSFサンプリング、CSFの遠心分離、ならびに光学分光法およびLC-MS/MSを使用する上清のプロテオーム分析の概略図を示す図である。図7Cは容量分析のためのクモ膜下出血セグメンテーションの各工程を示す図である。図7Dはタンパク質クラスターの最適数を決定するためのエルボープロットを示す図である。図7Eは神経血管機能実験装置の概略図を示す図である。図7Fは、記録された血管張力を各血管の個々のNO予備容量に対して標準化する方法を示す図である。図7Gは、TBARSアッセイ法における各工程の概略図を示す図である。 図7-1の続き。 図7-2の続き。 図7-3の続き。 図7-4の続き。 CSF-Hbおよびヘム代謝物の個々のプロファイルを示す図である;A.オキシヘモグロビン(oxyHb)の個々の時間的プロファイル。B.ビリルビンの個々の時間的プロファイル。C.ビリベルジンの個々の時間的プロファイル。D.メトヘモグロビン(metHb)の個々の時間的プロファイル。 図8-1の続き。 血管造影血管攣縮(aVSP)、遅発性脳虚血(DCI)、および遅発性虚血性神経障害(DIND)により階層化されたオキシヘモグロビンの時間的プロファイルを示す図である;A.aVSPにより階層化されたオキシヘモグロビン(oxyHb)の時間的経過。B.DCIにより階層化されたoxyHbの時間的経過。C.DINDにより階層化されたoxyHbの時間的経過。 脳脊髄液ヘモグロビン、臨床スコアおよび放射線学スコアと動脈瘤性クモ膜下出血後の二次脳損傷との関連性を示す図である;A~C.各値を含む、血管造影血管攣縮(aVSP、A)、遅発性虚血性神経障害(DIND、B)、および遅発性虚血性神経障害(DIND、C)の発生に関するCSF-Hbの受信者動作特性(ROC)曲線および曲線下面積(AUC)。最適なYouden-Indexおよびその95%信頼区間を赤色で示す。D.高リスク期間(4~14日目)に限定されたデータを含む、aVSP、DCI、DIND、およびSAH-SBIの発生に関するCSF-HbのROC曲線およびAUC。E~G.aVSP、DCI、DIND、およびSAH-SBIの発生に関する、CSF-ビリルビン(E)、CSF-ビリベルジン(F)、およびCSF-メトヘモグロビン(metHb)(G)のROC曲線およびAUC。H~K.aVSP、DCI、DIND、およびSAH-SBIの発生に関する、WFNS(H)、HuntおよびHess(I)、BNI(J)、およびFisher(K)グレードのROC曲線およびAUC。L.3ヶ月フォローアップ時点における修正ランキンスケール(mRS)によりC階層化されたCSF-Hbの時間的経過(良好/不良)。 図10-1の続き。 図10-2の続き。 図10-3の続き。 患者CSFサンプル中のヘモグロビンおよびヘムスカベンジャータンパク質の定量を示す図である。上段パネルは、左から右の順で、週単位で表す各収集時点において得られた患者CSF内の無細胞Hb、ハプトグロビン、ヘモペキシン、およびアルブミンの定量を、健常対照者サンプル(ctrl)と比較して示す。下段パネルは、左から右の順で、ヘモグロビンと複合体化した(Hb:Hp複合体)、またはヘムと複合体化した(ヘム:ヘモペキシンまたはヘム結合タンパク質;ヘムタンパク質)スカベンジャータンパク質を示す。データを、個々のデータポイントを含む(重ねてプロット)、平均値±最小値~最大値を表す箱ひげ図として示す。破線は対応するアッセイ法の定量下限(LLOQ)を示す。 図11-1の続き。 図11-2の続き。 ハプトグロビン、ヘム、またはヘム:ヘモペキシンの線条体内注射から24時間後の神経学的機能を示す図である。ハプトグロビン(5mMのHp、タンパク質コントロール)(黒色)、1mMのヘム(暗灰色)、または1mMのヘム:1Hx(明灰色)それぞれ10μLを注射した後のオープンフィールドテスト(A)、ロータロッドテスト(B)、およびビーム歩行テスト(C)のスコアリング(1群当たりn=6)。ヘム:Hxではなくヘムを注射した後のマウスは、24時間後に神経行動学的機能障害を示す。 図12-1の続き。 図12-2の続き。 ヘムまたはヘム:ヘモペキシンの線条体内注射から24時間後の放射線学的変化を示す図である。ヘム(A)またはヘム:Hpx(B)をそれぞれ線条体内注射してから24時間後に認められた放射線学的変化に関する例証的事例。ヘムの注射後に、T2強調シーケンスにおいて(左)病変周囲の浮腫が指摘されるが、これにはADCマップ(中央)における拡散制限、および動脈スピンラベル標識(arterial spin labelling;ASL)画像上の限局性潅流障害(右)が随伴する。ヘム:Hpxを注射した後には、軽微な放射線学的変化のみが、3つすべてのシーケンスにおいて認められる。 ヘムまたはヘム:ヘモペキシンの線条体内注射から24、48、および72時間後の浮腫サイズおよび潅流の定量を示す図である。(A)ヘム(黒色)およびヘム:Hpx(暗灰色)それぞれを注射してから24、48、および72時間後のT2強調画像上での浮腫サイズの半自動化された定量。ns:p>0.05;*:p≦0.05、**:p≦0.01;***:p≦0.001、****:p≦0.0001。(B)ヘム(〇)およびヘム:Hpx(■)の注射から24、48、および72時間後の動脈スピンラベル標識画像上での標準化後の潅流(1群当たりn=4)。ヘムの線条体内注射は、脳浮腫の形成および潅流の局所的減少(ヘム:Hpxを注射した後には存在しない)と関連する。
本明細書全体を通じて、文脈から別途必要とされない限り、言葉「~を含む(comprise)」、または「~を含む(comprises)」もしくは「~を含むこと(comprising)」のような変化形は、記載された要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群の組入れを意味するが、しかし任意のその他の要素もしくは整数、または要素もしくは整数の群を除外しないものと理解される。
本明細書において、任意の先行する公開資料(またはそれに由来する情報)、または公知である任意の事案を参照したからといって、先行する公開資料(もしくはそれに由来する情報)または公知の事案が、本明細書と関連する試みの範囲(field of endeavour)における共通一般知識の一部分を形成するという容認もしくは承認、またはその任意の形態の示唆と受け取られるものではなく、またそうすべきでない。
対象とする明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈より別途明確に指示されない限り、複数形の側面を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば「ある薬剤(an agent)」という場合、それは単一の樹脂、ならびに2つまたはそれより多くの薬剤を含む;「その組成物(the composition)」という場合、それは単一の組成物、ならびに2つまたはそれより多くの組成物を含む;以下同様。
相反する何らかの示唆が存在しない場合、「%」含有量というのは、本明細書全体を通じて、%w/w(重量/重量)を意味するものと解釈される。例えば、総タンパク質の少なくとも80%を占めるハプトグロビン含有量を含む溶液は、総タンパク質の少なくとも80%w/wを占めるハプトグロビン含有量を含む組成物を意味するものと解釈される。
本発明は、ヘモペキシン(Hx)は無細胞ヘム媒介式の有害な二次神経学的転帰、例えば脳血管攣縮等をin vivoで低下させるか、さもなければ防止することができるという、本発明者らの驚くべき発見に少なくとも一部基づく。したがって、本明細書で開示される1つの態様では、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)内への放出を伴う出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防する方法であって、それを必要としている対象のCSFを、Hxが無細胞ヘムと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、治療有効量のヘモペキシン(Hx)に曝露する工程を含む方法が提供される。
出血性脳卒中
出血性脳卒中またはCSFコンパートメント中への出血は、本明細書では、脳内出血、脳溢血、または頭蓋内出血とも交換可能に呼ばれる。そのような出血は、局所的出血を引き起こす脳内の血管破裂により一般的に特徴づけられる。出血の場所は変化し得る。例えば、CSFコンパートメント中への出血は、脳室内出血、実質内出血、および/またはクモ膜下出血に起因し得る。
出血性脳卒中は、当業者にとってなじみ深いように、異なる自然経過、評価、およびマネジメントを伴う一連の病理学からなる。出血性脳卒中は、病因論に応じて一次または二次として一般的に分類される。
一実施形態では、出血性脳卒中は、脳室内出血(IVH)またはクモ膜下出血(SAH)である。一実施形態では、血性脳卒中は、動脈瘤性クモ膜下出血(aSAH)である。
対象における出血性脳卒中、特にSAHを診断する方法は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、脳血管造影法、コンピューター断層撮影法(CT)、ならびに対象のCSF内oxyHbおよびビリルビンの分光光度分析が挙げられる(例えば、Cruickshank AM.,2001,ACP Best Practice No 166,J.Clin.Path.,54(11):827-830を参照)。
出血性脳卒中は、天然に生じる出血(例えば、動脈瘤破裂の結果としての)または外傷性出血(例えば、頭部に対する外傷の結果としての)であり得るものと当業者により理解される。一実施形態では、出血性脳卒中は、非外傷性出血としても知られている天然に生じる出血である。一実施形態では、出血性脳卒中は外傷性出血である。
用語「脳脊髄液」またはCSFは、脳室、ならびに頭蓋および脊髄クモ膜下腔内の液体を意味するものと理解される。脳室、頭蓋および脊髄クモ膜下腔は、本明細書では、まとめて「CSFコンパートメント」と呼ばれる。したがって、本明細書で開示される一実施形態では、方法は、それを必要としている対象のCSFコンパートメントを治療有効量のHpに曝露する工程を含む。
CSFは、主として、ただしこれに限らず脈絡叢により分泌されるが、脈絡叢は、脳室腔(ventricular lumen)中に突き出た髄膜の粒状突起から構成され、その上皮表面は脳室上皮に連なる。試験より、脳間質液、脳室上皮、および毛細血管は、CSF分泌においてもやはり役割を演じ得ることが示唆されている。CSF容積は、ヒト成人において約150mLであると見積もられ、個人間で顕著に異なるものの、頭蓋と脊髄クモ膜下腔内に125mLおよび脳室内に25mLというように、両者間において一般的に分布している。ヒト成人におけるCSF分泌量は、1日当たり400~600mLの間で変化し得、CSFの約60~75%は、側脳室の脈絡叢、ならびに第三および第四脳室の脈絡膜により生成される。CSFの脈絡膜分泌は、2つの工程:(i)圧力勾配による、脈絡膜毛細血管から脈絡膜間質コンパートメントへの血漿の受動的濾過、ならびに(ii)カルボニックアンヒドラーゼおよび膜イオンキャリアタンパク質(membrane ion carrier protein)が関与する、脈絡膜上皮を横断する間質コンパートメントから脳室腔への能動輸送を一般的に含む。CSFは、電解質バランスの制御、活性分子の循環、およびカタボライトの除去により、脳間質液およびニューロン環境のホメオスタシスにおいて必要不可欠な役割を演ずる。CSFは、脈絡叢分泌生成物をその作用部位に移送し、そうすることで含浸による脳の特定領域の活性を調節する一方、シナプス伝達は、より迅速な活性変化を生み出す。脳代謝の老廃物である過酸化生成物およびグリコシル化されたタンパク質は、加齢に関連するCSFターンオーバーの減少と共に蓄積する(Sakka et al.,2011,European Annals of Otorhinolaryngology,Head and Neck Diseases,128(6):309-316)。
クモ膜下出血関連の二次脳損傷(SAH-SBI)
最初の72時間以内に生ずる初期の脳損傷に加えて、aSAHの患者転帰は、動脈瘤破裂後の4~10日目の間に一般的に生ずる遅発性二次脳損傷により決定されることがある。遅発性二次脳損傷は、大血管および微小血管機能障害、神経炎、ニューロンアポトーシス、および脳の病理学的電気活動を含む多因子性であると推定される。aSAH後の患者の約3分の2は、大脳動脈の血管造影血管攣縮(aVSP)を発症する。虚血性脳領域の放射線学的境界を有する遅発性脳虚血(DCI)、および臨床的に明白な遅発性虚血性神経障害(DIND)は、aSAH後の患者の約3分の1において多くの場合見出される。これらの二次的症状の少なくとも1つの発生が、本明細書に記載される試験におけるクモ膜下出血関連の二次脳損傷を定義する(SAH-SBI)。
有害な二次神経学的転帰
SAHのような出血性脳卒中から生き延びても、そのような患者は、1つまたはそれ以上の有害な二次神経学的転帰または合併症を発症する有意なリスクに晒されている。用語「有害な二次神経学的転帰」とは、本明細書で使用される場合、出血性脳卒中に後続する有害な神経学的イベント(脳組織に対する二次傷害)を指す。出血性脳卒中後の二次傷害は、一次傷害(例えば、質量効果および物理的破綻)により、血腫に対する生理学的応答(例えば、炎症)により、ならびに/または血液および血液成分の放出により開始されるイベントのカスケードにより引き起こされると考えられる。有害な二次神経学的転帰は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、遅発性虚血性神経障害(DIND)、遅発性脳虚血(DCI)、神経毒性、アポトーシス、炎症、一酸化窒素枯渇、酸化性組織傷害、脳血管攣縮、脳血管反応性、浮腫、および広汎性脱分極(spreading depolarisation)が挙げられる(例えば、Al-Tamimi et al.,World Neurosurgery,73(6):654-667(2010);Macdonald et al.,Neurocrit.Care,13:416-424(2010);およびMacdonald et al.,J.Neurosurg.99:644-652(2003)を参照)。
用語「~を処置すること(treating)」、「処置(treatment)」、「~を処置する(treat)」などは、本明細書に記載されるように、有害な二次神経学的転帰(1つまたはそれ以上のその症状を含む)を緩和し、最小限に抑え、低下させ、軽減、改善し、さもなければ阻害することを意味するように、本明細書では交換可能に使用される。用語「~を処置すること」、「処置」などは、有害な二次神経学的転帰を発症しやすい、またはそのリスクを有するおそれがあるが、しかしそれを有するとはまだ診断されていない対象において、有害な二次神経学的転帰が生ずるのを阻止し、または有害な二次神経学的転帰の発現もしくは後続する進行を遅延させることを意味するように、本明細書においてやはり交換可能に使用される。その文脈において、用語「~を処置すること」、「処置」などは、「予防(prophylaxis)」、「予防上(prophylactic)」、および「予防的(preventative)」のような用語と交換可能に使用される。しかしながら、本明細書に開示される方法は、有害な二次神経学的転帰が処置される対象において生ずるのを完全に防止する必要はないものと理解される。本明細書に開示される方法は、処置が存在しない場合に観察されるはずであった有害な二次神経学的転帰よりもその数が少なくなり、その重症度が低くなりさえすれば、対象内の有害な二次神経学的転帰を単に緩和し、低下させ、軽減、改善し、さもなければ阻害するだけで十分であり得る。したがって、明細書に記載される方法は、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰の数および/または重症度を低下させることができる。
本明細書で対象と呼ぶ場合、それは対象が出血性脳卒中を有したことがあることを意図するものではなく、出血性脳卒中のリスクを有する対象も含まれるものと理解される。一実施形態では、対象は、出血性脳卒中またはその症状を有する(すなわち、経験している)。別の実施形態では、対象は、処置時に出血性脳卒中をすでに有するものではないが、しかし出血性脳卒中のリスクを有する。例証的事例として、対象は、まだ破裂していないが、しかし破裂のリスクを有する動脈瘤を有する。この事例において、対象は、動脈瘤が破裂するリスクを最小限に抑えるために、外科的介入(例えば、クリッピング術または血管内コイリング(endovascular coiling)により)を受ける可能性がある。したがって、外科的介入の前、その期間中または後に動脈瘤が破裂するような場合には、本明細書に記載される方法が、有害な二次神経学的転帰を最小限に抑え、低下させ、無効にし、さもなければ阻害するために、対象に対して予防上の措置として好適に指定される可能性がある。その文脈において、本明細書に記載される方法は外科的介入の前、その期間中または後に行われる予防上の措置として採用される場合もある。
本明細書に開示される方法が、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰の数および/または重症度において、主観的、定性的、および/または定量的な低下をもたらす程度は、CSFを治療有効量のHpに曝露する前の有害な二次神経学的転帰の数および/または重症度と比較したとき、例えば少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、好ましくは約40%~約50%、好ましくは約45%~約55%、好ましくは約50%~約60%、好ましくは約55%~約65%、好ましくは約60%~約70%、好ましくは約65%~約75%、好ましくは約70%~約80%、好ましくは約75%~約85%、好ましくは約80%~約90%、好ましくは約85%~約95%、または最も好ましくは約90%~100%の低下として表すことができる。
有害な二次神経学的転帰の数および/または重症度において、出血性脳卒中後に、主観的、定性的、および/または定量的低下が測定可能である好適な方法は、当業者にとってなじみ深く、また測定される有害な二次神経学的転帰の性質に概ね依存する。例証的事例は本明細書に別途記載される。
一実施形態では、有害な二次神経学的転帰は、遅発性虚血性神経障害(DIND)、遅発性脳虚血(DCI)、神経毒性、炎症、一酸化窒素枯渇、酸化性組織傷害、脳血管攣縮、脳血管反応性低下、浮腫、および広汎性脱分極からなる群から選択される。
一実施形態では、有害な二次神経学的転帰は、遅発性虚血性神経障害(DIND)である。SAH後のDINDは、頭痛、髄膜症の増悪、および/または体温上昇により特徴づけられ、その後に意識の変動性の衰退および限局的神経学的症状の出現が一般的に後続する脳虚血の重篤な症候群であり、その理解は十分でない。DINDは、出血性発作後、少なくとも3~4日に認められる神経学的機能の劣化として特徴的に定義される。DINDは、臨床的/症候性血管攣縮とも呼ばれる。DINDは、初期出血からの生存者における疾病率および死亡率の主要原因として存続する。DINDの報告された有病率は約20%~35%であるが、血液負荷がより高い者であっても、有病率は高くて40%であり得る。DINDは、患者のおよそ20%において脳梗塞に、またaSAH後に生じたすべての死亡および身体障害のうちの約13%にその原因がある。DINDを判定する、適する方法は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、Dreier et al.,Brain,2006;129(12):3224-3237に記載されており、その内容は、参照によって本明細書にそのまま組み入れる。一実施形態では、DINDは、例えば、皮質脳波検査法による広汎性陰性低速電圧変化(spreading negative slow voltage variation)によって証明されるように、広汎性マス脱分極(spreading mass depolarization)により判定される。一実施形態では、DINDは、少なくとも2GCSレベルの遅発性意識低下および/または新たな限局的神経障害と関連する。
一実施形態では、有害な二次神経学的転帰は脳血管攣縮である。脳血管攣縮またはCV(「血管造影脳血管攣縮」とも呼ばれる)は、出血性脳卒中後の限局性虚血の最も一般的な原因の1つであり、またSAH関連の身体障害および死亡の最大約23%を占める可能性がある。CVは、クモ膜下腔中への出血性脳卒中後の、特に脳の基底部にある大キャパシタンス動脈(large capacitance artery)(すなわち、大脳動脈)における持続的血管収縮により引き起こされる血管の狭窄により一般的に特徴づけられる。用語「血管攣縮」は、したがって、血管造影的に決定される動脈の狭窄との関連で一般的に使用される。血管の持続的収縮は、遠位脳領域の潅流を低下させ、そして脳血管抵抗を高める。未処置のまま放置すると、CVは、脳組織に対する血液供給量が限定されることに主に起因して、脳虚血および脳梗塞の形態の神経毒性(脳細胞損傷)を最終的に引き起こすおそれがある。CVは、当業者にとって公知の任意の適する手段により検出可能であり、その例証的事例として、デジタルサブトラクション血管造影法(DSA)、コンピューター断層撮影(CT)血管造影法(CTA)、磁気共鳴(MR)血管造影法(MRA)、経頭蓋ドップラー超音波法、およびカテーテル(脳)血管造影法(CA)が挙げられる。一実施形態では、CVはデジタルサブトラクション血管造影法(DSA)により検出される。理論または特定の適用様式に拘泥するものではないが、大脳動脈の血管攣縮は、SAH後の約3日目に一般的に開始し、約7~8日間後にピークに達し、そして約14日目までに消散するが(例えば、Weir et al.,J.Neurosurg.,48:173-178(1978)を参照)、ただしSAH後4~12日において血管造影を有する患者の少なくとも2/3に、ある程度の血管造影狭窄が生ずる。
CVの発生率は、SAH後の時間に依存する。本明細書において別途指摘するように、発生率のピークは、SAH後の約7~8日(3~12日の範囲)に一般的に生ずる。SAH後の時間に付加して、血管攣縮の有病率に影響を及ぼすその他の主要因子は、クモ膜下血液の容積、密度、時間的持続性、および分布である。CVに対する予後因子として、CTスキャン上でのクモ膜下血液の量、高血圧症、解剖学的および全身的要因、臨床グレード、および患者に対する抗線維素溶解薬投与の有無を挙げることができる。
CVの症状は、亜急性的に発現するのが一般的であり、また変動する可能性があり、そして過剰の眠気、傾眠、昏睡、片側不全麻痺または片麻痺、意志欠乏、言語障害、視野欠損、視線障害(gaze impairment)、および脳神経麻痺を挙げることができる。いくつかの症状は局所的であるものの、何らかの特定の病理学的プロセスの診断には役立たないのが一般的である。脳血管造影法が、大脳動脈を可視化および試験するためのゴールドスタンダードとして一般的に利用されるが、ただし経頭蓋ドップラー超音波法も使用可能である。
一実施形態では、有害な二次神経学的転帰は、遅発性脳虚血(DCI)である。DCIは、aSAHを有する患者の約1/3において一般的に生じ、そしてこの患者の半数において死または永久的な身体障害を引き起こす(Dorsch and King,Journal of Clinical Neuroscience,1:19-26(1994))。DCIは、aSAHを有する患者における、その他の特定可能な理由(例えば、手術後の介入)を有さない、放射線学的に検出された脳の梗塞として一般的に定義される。
Vergouwenらにより報告されたように(Stroke.2010;41:2391-2395)、「遅発性脳虚血により引き起こされた臨床的退行」および「脳梗塞」を統一的に定義することで、その病因について仮説を設けずに、形態学的および臨床的特性に関して最も意義のある要素が把握されるはずである。CT/MRI上の脳梗塞は、SAHから3ヶ月後の機能的転帰と強い相関関係を有するので、またそれ(CT/MRI上の脳梗塞)は観察者間で合意形成される割合が高いと期待されること、鎮静化され昏睡状態にある患者においてDCIを検出できること、およびDCIの結果を客観的に定量化できることを前提とすれば、ニューロイメージングにおける脳梗塞の方が、DCI単独で引き起こされた臨床的退行よりも良好な転帰指標であると思われる。DCIのこれまでの定義では、DCIの臨床特性と、血管造影法/経頭蓋ドップラー法の所見、またはニューロイメージングもしくは検死における脳梗塞とが多くの場合統合されたが、著者らは、これらは個別に報告されるべきであることを提案する。著者らは、観察者間での合意形成の割合が低いと疑われることから、DCIにより引き起こされた臨床的退行を、転帰の二次的指標以上に重視すべきでないことも提案する。Vergouwenらによれば、DCIにより引き起こされた臨床的退行の提案された定義は、「限局性の神経学的障害(例えば、片側不全麻痺、失語症、失行症、半盲、または等閑など)の発生、またはグラスゴーコーマスケールにおける少なくとも2ポイントの減少(総スコアまたはその個別のコンポーネント[眼、いずれかの側の動き、言葉]のうちの1つにおける)」である。これは、少なくとも1時間継続するはずであり、動脈瘤閉塞直後には出現せず、また臨床的評価、脳のCTまたはMRIスキャニング、および該当する検査室試験によってその他の原因に帰属させることはできない。
SAHを含む、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰は、免疫細胞活性化、および/またはCSFコンパートメント中への浸潤、および炎症性サイトカインの放出を含め、炎症と関連することが明らかにされた。Millerら(Biomed Res Int.2014;2014:384342)が考察するように、試験から、炎症はSAH後の神経学的傷害の直接的なメディエーターであり、またSAH後血管攣縮の原因因子であることが明らかとなった。SAHの病態生理学と関わる主要な炎症性分子は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、セレクチン(L-セレクチンおよびP-セレクチン)、インテグリン(例えば、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)およびMac-1インテグリン(CD11b/CD18))、TNFα、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、細胞間接着分子1(ICAM-1)、炎症促進性インターロイキン(例えば、IL-1、IL-6、IL-1B、IL-8)、およびエンドセリン1(ET-1)が挙げられる。本明細書で開示される一実施形態では、有害な二次神経学的転帰は、セレクチン(例えば、L-セレクチンおよびP-セレクチン)、インテグリン(例えば、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)およびMac-1インテグリン(CD11b/CD18))、TNFα、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、細胞間接着分子1(ICAM-1)、炎症促進性インターロイキン、およびエンドセリン1(ET-1)からなる群から選択される1つまたはそれ以上の炎症マーカーの差次的発現と関連する。一実施形態では、炎症促進性インターロイキンは、IL-1、IL-6、IL-1B、およびIL-8からなる群から選択される。
Nissenらは、DINDを有する患者におけるP-セレクチンの血清濃度は、DINDを有さない患者と比較したとき、それよりも有意に高いことをこれまでに明らかにした(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2001;71:329-333)。また著者らは、DINDを有する患者におけるL-セレクチンの血清濃度が、DINDを有さない患者と比較したとき、それよりも有意に低いことも明らかにした。したがって、一実施形態では、本明細書に記載される方法が出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰の数および/または重症度を低下させる程度は、処置前の対象におけるP-セレクチンの濃度と比較したとき、対象の血清またはCSF中のP-セレクチン濃度における、例えば少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、好ましくは約40%~約50%、好ましくは約45%~約55%、好ましくは約50%~約60%、好ましくは約55%~約65%、好ましくは約60%~約70%、好ましくは約65%~約75%、好ましくは約70%~約80%、好ましくは約75%~約85%、好ましくは約80%~約90%、好ましくは約85%~約95%、または最も好ましくは約90%~100%の低下により決定される。別の実施形態では、本明細書に記載される方法が、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰の数および/または重症度を低下させる程度は、処置前の対象におけるL-セレクチンの濃度と比較したとき、対象の血清またはCSF中のL-セレクチン濃度における、例えば少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、好ましくは約40%~約50%、好ましくは約45%~約55%、好ましくは約50%~約60%、好ましくは約55%~約65%、好ましくは約60%~約70%、好ましくは約65%~約75%、好ましくは約70%~約80%、好ましくは約75%~約85%、好ましくは約80%~約90%、好ましくは約85%~約95%、または最も好ましくは約90%~100%の増加により決定される。P-セレクチンおよびL-セレクチンの濃度が測定可能である方法は、当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、Nissenら(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2001;71:329-333)に記載されており、その内容は参照によって本明細書においてそのまま組み入れる。
炎症促進性サイトカインIL-1B、IL-6、IL-8、TNFα、およびMCP-1、ならびにエンドセリン-1のレベルもまた、SAH後の患者において上昇していることが明らかにされた(Miller et al.Biomed Res Int.2014;2014:384342)。したがって、本明細書で開示される一実施形態では、本明細書に記載される方法が、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰の数および/または重症度を低下させる程度は、処置前の対象における炎症促進性サイトカインの濃度と比較したとき、対象の血清またはCSF中の炎症促進性サイトカインの濃度における、例えば少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、好ましくは約40%~約50%、好ましくは約45%~約55%、好ましくは約50%~約60%、好ましくは約55%~約65%、好ましくは約60%~約70%、好ましくは約65%~約75%、好ましくは約70%~約80%、好ましくは約75%~約85%、好ましくは約80%~約90%、好ましくは約85%~約95%、または最も好ましくは約90%~100%の低下により決定されるが、ただし炎症促進性分子は、IL-1B、IL-6、IL-8、TNFα、MCP-1、およびエンドセリン-1からなる群から選択される。炎症性メディエーターの濃度が測定可能である方法は、本明細書に記載されるように、当業者にとってなじみ深い。
CSFにおける一酸化窒素(NO)枯渇が、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰の病因に寄与することも明らかにされている(Pluta et al.JAMA.2005;293(12):1477-1484を参照)。NOレベルは、(1)動脈の外膜における、ニューロン型一酸化窒素シンターゼ(neuronal nitric oxide synthase)(NOS)を含有するニューロンに対するオキシヘモグロビンの毒性;(2)内皮NOSの内因性阻害;および(3)クモ膜下の血塊から放出されたオキシヘモグロビンによる一酸化窒素の除去に起因して、SAH後のCSFにおいて減少している。したがって、本明細書で開示される一実施形態では、本明細書に記載される方法が、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰の数および/または重症度を低下させる程度は、処置前の対象のCSF中のNOの濃度と比較したとき、対象のCSFにおけるNOの濃度における、例えば少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、好ましくは約40%~約50%、好ましくは約45%~約55%、好ましくは約50%~約60%、好ましくは約55%~約65%、好ましくは約60%~約70%、好ましくは約65%~約75%、好ましくは約70%~約80%、好ましくは約75%~約85%、好ましくは約80%~約90%、好ましくは約85%~約95%、または最も好ましくは約90%~100%の増加により決定される。CSF中のNO濃度が測定可能である方法は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、Plutaらの(JAMA.2005;293(12):1477-1484)に記載されており、その内容は参照によって本明細書にそのまま組み入れる。
一実施形態では、有害な二次神経学的転帰は酸化性組織傷害である。本明細書において別途指摘するように、本発明者らは、治療有効量のHxはCSF内無細胞ヘムの酸化能力を低下させることができることを初めて明らかにした。したがって、一実施形態では、それを必要としている対象のCSFをHxに曝露する工程は、本明細書に記載されるように、酸化性組織傷害を低下させる。酸化性組織傷害を決定するための好適な方法は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、脂質過酸化の最終生成物であるマロンジアルデヒド(MDA)のレベル測定を含め、Katerjiら(2019年;Oxid.Med.Cell Longey;1279250)に記載されている。一実施形態では、それを必要としている対象のCSFをHxに曝露する工程は、本明細書に記載されるように、脂質過酸化を低下させる。
いくつかの実施形態では、治療的Hxは、無細胞ヘムがCSFコンパートメントから脳の間質腔内に浸透するのを防止し、これにより大脳血管系および脳実質に対する無細胞ヘムの毒性効果を阻害し得る。したがって、一実施形態では、有害な二次神経学的転帰は、脳実質内の有害な二次神経学的転帰である。
ヘモペキシン
ヘモペキシンは、2つの4枚羽根β-プロペラドメイン(90°の角度で共に固定され、そしてドメイン間リンカーペプチドにより結びついた2枚の肥厚ディスクに類似する)により形成される、アミノ酸長さが439個の単鎖ペプチド鎖から構成される61kDa血漿β-1B-糖タンパク質である。血管内および血管外溶血の結果として血液中に放出されるヘムは、ドメイン間リンカーペプチドにより形成されたポケット内の2つの4枚羽根β-プロペラドメイン間に結合する。残基His213およびHis266はヘム鉄原子の位置を決定し、ヘモグロビンと同様に安定なビス-ヒスチジル複合体をもたらす。
ヘモペキシンは、シアル酸、マンノース、ガラクトース、およびグルコサミンを含む炭水化物を約20%含有する。12個のシステイン残基がタンパク質配列内に見出され、おそらくは6個のジスルフィド架橋に該当する。ヘモペキシンは、高い親和性(Kd<1pM)を有してヘムに結合し、また血流から肝臓へのヘム特異的担体として機能するその能力により、ヘム毒性に対する第一防御線を代表する。ヘモペキシンは等モル比でヘムに結合するが、しかしヘムがタンパク質と共有結合する証拠は存在しない。
ヘム結合に付加して、ヘモペキシン調製物は、セリンプロテアーゼ活性(Lin et.al.,2016年;Molecular Medicine 22:22-31)、ならびにいくつかのその他の機能、例えば抗炎症活性および炎症促進活性の発揮、細胞接着およびある特定の2価金属イオン結合の阻害等を保持することも報告されている。
内因性ヘモペキシンは、生理学的定常状態において遊離ヘムの副作用をコントロールすることができるが、病態生理学的な条件下での定常的ヘムレベルの維持において効果(例えば溶血と関連する効果等)をほとんど有さず、高レベルのヘムは内因性ヘモペキシンの枯渇を引き起こし、ヘム媒介式の酸化性組織障害の原因となる。
無細胞ヘムと複合体を形成し、これにより無細胞ヘムの生物学的活性を中和する能力を有する限り、Hxの天然に存在する形態および組換え型が、本明細書に記載される方法に適するものと理解される。Hxの天然に存在する形態のうち好適な形態は当業者にとって公知であり、その例証的事例は、UniProtKB P02790.Kochら(2002,Clin.Chem.48:1377-1382)、およびTakahashiら(PNAS、1985、82(1):73-77)に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み入れる。
一実施形態では、Hxは、血漿由来のHxを含み、それから構成または実質的に構成される。一実施形態では、HxはヒトHxである。ヒトHxの例証的事例は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例はUniProtKB P02790に記載されており、下記に再現する:
MARVLGAPVA LGLWSLCWSL AIATPLPPTS AHGNVAEGET
KPDPDVTERC SDGWSFDATT LDDNGTMLFF KGEFVWKSHK
WDRELISERW KNFPSPVDAA FRQGHNSVFL IKGDKVWVYP
PEKKEKGYPK LLQDEFPGIP SPLDAAVECH RGECQAEGVL
FFQGDREWFW DLATGTMKER SWPAVGNCSS ALRWLGRYYC
FQGNQFLRFD PVRGEVPPRY PRDVRDYFMP CPGRGHGHRN
GTGHGNSTHH GPEYMRCSPH LVLSALTSDN HGATYAFSGT
HYWRLDTSRD GWHSWPIAHQ WPQGPSAVDA AFSWEEKLYL
VQGTQVYVFL TKGGYTLVSG YPKRLEKEVG TPHGIILDSV
DAAFICPGSS RLHIMAGRRL WWLDLKSGAQ ATWTELPWPH
EKVDGALCME KSLGPNSCSA NGPGLYLIHG PNLYCYSDVE
KLNAAKALPQ PQNVTSLLGC TH
一実施形態では、Hxは、これまでに記載したようなヒトHxの配列を含み、それから構成または実質的に構成される。
Hxの天然起源(例えば、血漿)からHxを単離するための様々なプロトコールが当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は国際公開第2014/055552号および国際公開第2019/030262号に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み入れる。
用語「ヘモペキシン」(Hx)は、本明細書で使用される場合、Hxのすべての表現型(すべてのアイソフォームを含め)を含むものと理解される。Hxは、均質(同一アイソフォームのHxから実質的に構成される場合)、または不均質(Hxのヒトおよびヒト以外のアイソフォームを含む、異なるHxアイソフォームの組合せを含む場合)であり得る。単離物中に存在するHxアイソフォームを決定するための適する方法は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例には、高性能粒径排除クロマトグラフィー(HPLC-SECアッセイ)およびHx ELISAが含まれる。
Hxは天然に存在するHx(例えば、血漿由来)である場合もあれば、また組換えタンパク質として生成される場合もある。一実施形態では、Hxは血漿由来である。一実施形態では、Hxは、組換えHxを含み、それから構成または実質的に構成される。
別途記載しない限り、用語Hxには、本明細書で使用される場合、天然の、または天然に存在するHxの機能的類似体が含まれる。用語「機能的類似体」とは、天然に存在する(天然型の)Hxの生物学的活性と実質的に同一の生物学的活性を共有する物質(ただし、生物学的活性が、少なくとも無細胞ヘムと複合体を形成し、これによりその生物学的活性を中和する類似体の能力である限りにおいて)を意味するものと理解される。「実質的に同一の生物学的活性」とは、機能的類似体が、天然に存在するHxアイソフォーム(例えば、ヒトおよび/またはヒト以外のHxのアイソフォーム)を含む、天然に存在するHxの結合親和性の少なくとも40%(例えば、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%等)である結合親和性を、無細胞ヘムに対して有することを一般的に意味する。物質がHxの機能的類似体であるか決定するための適する方法は、当業者にとってなじみ深く、その例証的事例(例えば、無細胞ヘム誘発性の脳血管攣縮を低下させる機能的類似体の能力)は本明細書に別途記載される。
本明細書で開示される一実施形態では、Hxの機能的類似体は、天然型Hxの機能的断片である。天然型Hxの機能的断片は、断片が無細胞ヘムと複合体を形成する能力を保持し、これによりその生物学的活性を中和する限り、任意の適する長さであり得る。
別の実施形態では、機能的類似体は、天然に存在する(天然型の)Hx分子とは異なるアミノ酸配列を有するペプチド(すなわち、コンパレーター)である。機能的類似体は、1つまたはそれ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個、またはそれより多くの)アミノ酸置換により、天然型Hxのα鎖および/またはβ鎖のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する分子を含み得るが、ただし、前記差異は、類似体が無細胞ヘムと複合体を形成し、これによりその生物学的活性を中和する能力を無効化しない、または完全には無効化しない。いくつかの実施形態では、機能的類似体は、天然型Hxと比較して、類似体が無細胞ヘムと複合体を形成する能力を強化するアミノ酸置換を含む。一実施形態では、機能的類似体は、1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換により、天然型Hpのα鎖および/またはβ鎖のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する。本明細書で使用される場合、用語「保存的アミノ酸置換」とは、所与の位置において、アミノ酸の同一性を変化させて、それをほぼ等価なサイズ、電荷、および/または極性のアミノ酸に置き換えることを指す。アミノ酸の天然の保存的置換の例として、下記の8つの置換群(慣習的な1文字コードで表す):(1)M、I、L、V;(2)F、Y、W;(3)K、R、(4)A、G;(5)S、T;(6)Q、N;(7)、D;および(8)C、Sが挙げられる。
一実施形態では、機能的類似体は、天然型Hxのα鎖および/またはβ鎖のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。「少なくとも85%」という場合、それには、例えば、最適なアライメントまたは最良適合分析を行った後の、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性または類似性が含まれる。したがって、一実施形態では、配列は、例えば最適なアライメントまたは最良適合分析を行った後に、本明細書において識別された配列と、少なくとも85%、好ましくは少なくとも86%、好ましくは少なくとも87%、好ましくは少なくとも88%、好ましくは少なくとも89%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、好ましくは少なくとも92%、好ましくは少なくとも93%、好ましくは少なくとも94%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、または好ましくは100%の配列同一性または配列相同性を有する。
用語「同一性」、「類似性」、「配列同一性」、「配列類似性」、「相同性」、「配列相同性」などは、本明細書で使用される場合、アライメント済みの配列内の任意の特定のアミノ酸残基位置において、アミノ酸残基が、アライメント後の配列の間で同一であることを意味する。用語「類似性」または「配列類似性」は、本明細書で使用される場合、アライメント済みの配列内の任意の特定の位置において、アミノ酸残基のタイプが配列間で類似することを表す。例えば、ロイシンは、イソロイシンまたはバリン残基について置換することができる。本明細書において別途指摘するように、これは保存的置換と呼ばれる場合もある。一実施形態では、アミノ酸配列は、改変が、非改変(天然型)Hxポリペプチドと比較したとき、改変後のポリペプチドの結合特異性または機能的活性に対して影響を及ぼさないように、その中に含まれるアミノ酸残基のいずれかを保存的に置換することによって改変され得る。
いくつかの実施形態では、ペプチド配列における配列同一性は、相同性の割合(%)が最大となるように、ただし配列同一性の一環として保存的置換を一切考慮しないで配列をアライメントし、そして必要な場合にはギャップを導入した後、対応するペプチド配列の残基と同一である、候補配列内のアミノ酸残基の割合(%)と関係する。NまたはC末端延長部も、また挿入も、配列同一性または相同性を低下させるものとみなしてはならない。2つまたはそれより多くのアミノ酸配列のアライメントを実施し、そしてその配列同一性または相同性を決定するための方法およびコンピュータープログラムは、当業者に周知されている。例えば、2つのアミノ酸配列の同一性または類似性の割合(%)は、アルゴリズム、例えばBLAST、FASTA、またはSmith-Watermanアルゴリズムを使用して容易に計算できる。
アミノ酸配列の「類似性」を決定するための技術は当業者に周知されている。一般的に、「類似性」とは、アミノ酸が同一である、または類似した化学および/もしくは物理特性(電荷もしくは疎水性などのような)を有する、2つもしくはそれより多くのペプチド配列の、または好適な場所におけるアミノ酸対アミノ酸の正確な比較を意味する。いわゆる「類似性の割合(%)」が、次に比較されるペプチド配列の間で決定可能である。一般的に、「同一性」とは、2つのペプチド配列のアミノ酸対アミノ酸の正確な対応を指す。
2つまたはそれより多くのペプチド配列は、その「同一性の割合(%)」を決定することによっても比較可能である。2つの配列の同一性の割合(%)は、2つのアライメントされた配列間の正確な一致数を、より短い配列の長さで割り算して100倍することとして記載することができる。核酸配列に対する近似的アライメント法が、SmithおよびWaterman、Advances in Applied Mathematics 2:482-489(1981)のローカルホモロジーアルゴリズムにより提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff(Atlas of Protein Sequences and Structure,M.O.Dayhoff ed.,5 suppl.3:353-358,National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USA)により開発されたスコアリングマトリックスを使用して、ペプチド配列についても使用されるように拡張することができ、またGribskov(Nucl.Acids Res.14(6):6745-6763,1986)により標準化される。配列間の同一性または類似性の割合(%)を計算するための好適なプログラムは、当技術分野において一般的に公知である。
比較ウィンドウをアライメントするための最適配列アライメント法が、アルゴリズムのコンピューターによる導入(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0に含まれるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA,Genetics Computer Group,575 Science Drive Madison,WI、米国)、または選択された様々な方法のいずれかにより生み出された検査法および最良アライメント法(すなわち、比較ウィンドウにおいて相同性の割合(%)が最高となる)により実施することができる。例えば、Altschulら(1997,Nucl.Acids Res.25:3389)により開示されるようなBLASTプログラムファミリーについても参考にすることができる。配列分析の詳細な考察は、Ausubelら(“Current Protocols in Molecular Biology”,John Wiley & Sons Inc,1994-1998,Chapter 15)のユニット19.3に見出すことが可能である。
一実施形態では、機能的類似体は、類似体の安定性を増加させ、または類似体の溶解度を増加させるために、天然型Hxと比較して、アミノ酸置換および/またはその他の改変を含む。
機能的類似体は、天然に存在する化合物/ペプチドであり得る、または当業者にとって公知の方法を使用して、化学合成により合成的に製造することができる。
Hxは、単離可能、そして所望の場合にはさらに精製可能である組換えタンパク質として、微生物内で好適に生成されることがある。組換えHxを生成するための適する微生物は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例には、細菌、酵母菌、または菌類、真核細胞(例えば、哺乳動物または昆虫の細胞)が含まれ、または組換えウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、セムリキ森林ウイルス、バキュロウイルス、バクテリオファージ、シンドビスウイルス、またはセンダイウイルス)の形態である。組換えペプチドを製造するための適する細菌は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例には、大腸菌(E.coli)、B.サブチリス(B.subtilis)、またはペプチド配列を発現する能力を有する任意のその他のバクテリアが含まれる。組換えペプチドを製造するための適する酵母菌種の例証的事例には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ属(Candida)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、またはペプチドを発現する能力を有する任意のその他の酵母菌が含まれる。対応する方法は当技術分野において周知されている。組換えにより生成したペプチド配列を単離および精製するための方法も当技術分野において周知されており、例えば、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが含まれる。
組換えHxの単離を円滑化するために、本明細書に記載されるように、融合ポリペプチド(Hxまたはその機能的類似体のペプチド配列が、アフィニティークロマトグラフィーによる単離を可能にする異種ポリペプチドに翻訳において融合している(共有結合的にリンクしている))が作製されることがある。適する異種ポリペプチドの例証的事例は、His-タグ(例えば、(His)-6個のヒスチジン残基)、GST-タグ(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)等である。
組換えHxを調製する場合、例えば、コンビナトリアルケミストリーによって製造されるか、または最も多様な構造についてはハイスループットスクリーニング技術により取得されるファージライブラリーおよび/またはペプチドライブラリーもやはり適する(例えば、Display:A Laboratory Manual by Carlos F.Barbas(Editor),et al.;およびWillats WG Phage display:practicalities and prospects.Plant Mol.Biol.2002 December;50(6):837-54を参照)。
組換えHxの例証的事例として、受託番号NP_005134(Morishitaら、2018,Clin.Chim.Acta 487,84-89により記載される)、および受託番号P00738を有するペプチドが挙げられる。
Hxは、融合タンパク質の一部として、1つまたはそれ以上の異種部分に融合、カップリング、さもなければ連結し得る。1つまたはそれ以上の異種部分は、Hxの活性または安定性を改善、強化し、さもなければ拡張し得る。一実施形態では、Hxは、本明細書に記載されるように、Hxのin vivo半減期を延長するために、異種部分に好適に連結する。好適な半減期延長性の異種部分は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、ポリエチレングリコール(PEG化)、グリコシル化PEG、ヒドロキシルエチルスターチ(HES化)、ポリシアル酸、エラスチン様ポリペプチド、ヘパロサンポリマー、およびヒアルロン酸が挙げられる。したがって、本明細書で開示される一実施形態では、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG化)、グリコシル化PEG、ヒドロキシルエチルスターチ(HES化)、ポリシアル酸、エラスチン様ポリペプチド、ヘパロサンポリマー、およびヒアルロン酸からなる群から選択される。その他の実施形態では、異種部分は、Hxに融合した異種アミノ酸配列であり得る。
代替的または付加的に、異種部分は、Hxに化学的にコンジュゲートする場合があり、例えば共有結であり得る。半減期延長性の異種部分は、当業者にとって公知の任意の適する手段により、Hxに融合、コンジュゲート、さもなければ連結可能であり、その例証的事例は化学的リンカーによる。このコンジュゲーション技術の原理は、Conjuchem LLC(例えば、米国特許第7、256、253号を参照)により事例的に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み入れる。
その他の実施形態では、異種部分は、半減期強化タンパク質(HLEP)である。好適な半減期強化タンパク質は、当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、アルブミンまたはその断片が挙げられる。したがって、一実施形態では、HLEPはアルブミンまたはその断片である。アルブミンまたはその断片のN末端は、Hxのα鎖および/またはβ鎖のC末端に融合し得る。代替的または付加的に、アルブミンまたはその断片のC末端は、Hxのα鎖および/またはβ鎖のN末端に融合し得る。1つまたはそれ以上のHLEPは、そのようなHLEPが無細胞ヘムに対するHxの結合を無効化しないことを前提として、Hxのα鎖および/またはβ鎖のNまたはC末端部分(複数可)に融合し得る。しかしながら、融合タンパク質のHxコンポーネントが無細胞ヘムと複合体を形成し、これによりそれを中和する能力をなおも有する限り、無細胞ヘムに対するHxの結合性の若干の低下は許容することができるものと理解される。
融合タンパク質は、Hxと異種部分の間に配置された化学結合またはリンカー配列をさらに含み得る。リンカー配列は、1つまたはそれ以上のアミノ酸、特に1~50個、好ましくは1~30個、好ましくは1~20個、好ましくは1~15個、好ましくは1~10個、好ましくは1~5個、またはより好ましくは1~3個(例えば、1、2、または3個)のアミノ酸からなるペプチドリンカーであり得るが、ただしリンカー配列は、相互に等しい場合もあれば、また異なる場合もある。好ましくは、リンカー配列は、野生型Hx内の対応する位置に存在しない。前記リンカー配列中に存在する好ましいアミノ酸はGlyおよびSerを含む。好ましい実施形態では、リンカー配列は、本明細書に開示される方法に基づき処置される対象に対して実質的に非免疫原性である。実質的に非免疫原性とは、リンカー配列が、それが投与される対象において、リンカー配列に対する検出可能な抗体応答を生じさせないことを意味する。好ましいリンカーは、グリシンおよびセリン残基の交互反復から構成されると考えられる。好適なリンカーは当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は国際公開第2007/090584号に記載されている。一実施形態では、Hxと異種部分の間のペプチドリンカーは、ヒトタンパク質において天然のドメイン間リンカーとして働くペプチド配列を含み、それから構成または実質的に構成される。そのようなペプチド配列は、その天然の環境において、タンパク質表面に接近して位置し得るが、またこの配列に対する天然の忍容性が想定可能なように、免疫系に対してアクセス可能である。例証的事例は、国際公開第2007/090584号に提示されている。好適な切断可能リンカー配列は、例えば国際公開第2013/120939A1号に記載されている。
好適なHLEP配列の例証的事例は下記記載されている。各HLEPのまさに「N末端アミノ酸」、もしくはまさに「C末端アミノ酸」に対する融合、または各HLEPの「N末端部分」もしくは「C末端部分」に対する融合が本明細書において同様に開示され、これにはHLEPの1つまたはそれ以上のアミノ酸のN末端欠損が含まれる。融合タンパク質は、2つ以上のHLEP配列、例えば2または3つのHLEP配列を含み得る。これらの複数のHLEP配列は、Hpのα鎖および/またはβ鎖のC末端部分に、タンデムに、例えば連続的な反復しとして融合し得る。
一実施形態では、異種部分は半減期延長性ポリペプチドである。一実施形態では、半減期延長性ポリペプチドは、アルブミン、アルブミンファミリーのメンバーもしくはその断片、流体力学的容積が大きい溶媒和したランダム鎖(例えば、XTEN(Schellenberger et al.2009;Nature Biotechnol.27:1186-1190を参照)、ホモアミノ酸リピート(HAP)、またはプロリン-アラニン-セリンリピート(PAS)、アファミン、αフェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、トランスフェリンもしくはそのバリアントもしくは断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピン-βサブユニットのカルボキシル末端ペプチド(CTP)、新生児型Fc受容体(FcRn)に結合する能力を有するポリペプチド、特に免疫グロブリン定常領域およびその一部分、例えばFc断片、生理的条件下でアルブミンに対して、アルブミンファミリーのメンバーもしくはその断片に対して、または免疫グロブリン定常領域もしくはその一部分に対して結合する能力を有するポリペプチドもしくは脂質からなる群から選択される。免疫グロブリン定常領域またはその一部分は、好ましくは免疫グロブリンG1(IgG1)のFc断片、免疫グロブリンG2(IgG2)のFc断片、または免疫グロブリンA(IgA)のFc断片である。半減期強化ポリペプチドは、本明細書で使用される場合、Hxの治療活性または生物学的活性を安定化または延長する能力、特にHpのin vivoでの半減期を増加させる能力を有する完全長半減期強化タンパク質、または1つもしくはそれ以上のその断片であり得る。HLEPが存在しない各Hxと比較して、HLEP断片が、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、またはより好ましくは少なくとも25%の機能的な半減期延長をもたらす限り、そのような断片は、長さが10個もしくはそれより多くのアミノ酸であり得、またはHLEP配列に由来する少なくとも約15個、好ましくは少なくとも約20個、好ましくは少なくとも約25個、好ましくは少なくとも約30個、好ましくは少なくとも約50個、もしくはより好ましくは少なくとも約100個、もしくはそれより多くの近接したアミノ酸を含み得る、または各HLEPの特定のドメインの一部もしくは全部を含み得る。異種部分が機能的な半減期延長を(in vivoまたはin vitroで)Hxに対してもたらすか判定する方法は、当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は本明細書において別途記載される。
融合タンパク質のHLEP部分は、本明細書に記載されるように、野生型HELPのバリアントであり得る。用語「バリアント」には、挿入、欠損および/または置換(保存的また非保存的を問わない)が含まれるが、そのような変化は、Hxが無細胞ヘムと複合体を形成し、これによりそれを中和する能力を実質的に変化させない。HLEPは、好適には、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物、例えばヒト、サル、ウシ、ヒツジ、またはブタに由来する可能性がある。非哺乳動物のHLEPとしてメンドリおよびサケが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
融合タンパク質は、本明細書に記載されるように、HxおよびHLEPなどのような異種部分をコードする少なくとも2つのDNA配列をインフレーム接合により作り出すことができる。当業者は、融合タンパク質DNA配列が翻訳されると、単一のタンパク質配列がもたらされることを理解する。本明細書で開示される一実施形態に従い、ペプチドリンカーをコードするDNA配列をインフレーム挿入した結果として、Hp、好適なリンカー、および異種部分を含む融合タンパク質が取得可能である。
本明細書で開示される一実施形態では、Hxは異種部分に融合している。一実施形態では、異種部分は、アルブミンまたはその断片、トランスフェリンまたはその断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド、XTEN配列、ホモアミノ酸リピート(HAP)、プロリン-アラニン-セリンリピート(PAS)、アファミン、αフェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、生理的条件下で、アルブミンに対して、または免疫グロブリン定常領域に対して結合する能力を有するポリペプチド、新生児型Fc受容体(FcRn)に結合する能力を有するポリペプチド、特に免疫グロブリン定常領域およびその一部分、好ましくは免疫グロブリンのFc部分、および上記のいずれかの組合せからなる群から選択されるポリペプチドを含み、それから構成または実質的に構成される。別の実施形態では、異種部分は、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸(PSA)、エラスチン様ポリペプチド、ヘパロサンポリマー、ヒアルロン酸およびアルブミン結合リガンド、例えば脂肪酸鎖、および上記のいずれかの組合せからなる群から選択される。
用語「ヒト血清アルブミン」(HSA)および「ヒトアルブミン」(HA)および「アルブミン」(ALB)は、本明細書では交換可能に使用される。用語「アルブミン」および「血清アルブミン」はより広範囲にわたり、またヒト血清アルブミン(ならびにその断片およびバリアント)、ならびにその他の種に由来するアルブミン(ならびにその断片およびバリアント)を包含する。
本明細書で使用される場合、「アルブミン」とは、アルブミンの1つまたはそれ以上の機能的活性(例えば、生物学的活性)を有するアルブミンポリペプチドもしくはアミノ酸配列、またはアルブミン断片もしくはバリアントをまとめて指す。特に、「アルブミン」とは、ヒトアルブミンもしくはその他の脊椎動物由来のアルブミンの成熟した形態、もしくはその断片、またはこのような分子もしくはその断片の類似体もしくはバリアントを含む、ヒトアルブミンまたはその断片を指す。本明細書で開示されるいくつかの実施形態では、代替的用語「FP」は、HLEPを特定するため、特にHLEPとしてアルブミンを定義するために使用される。
本明細書に記載される融合タンパク質は、ヒトアルブミンおよび/またはヒトアルブミンの断片の天然に存在する多型変異体を好適に含む場合もある。一般的に言うと、アルブミン断片またはバリアントは、長さが少なくとも10個、好ましくは少なくとも40個、または最も好ましくは70個を超えるアミノ酸である。
一実施形態では、HLEPは、FcRn受容体に対する結合性が強化されたアルブミンバリアントである。そのようなアルブミンバリアントは、野生型アルブミンに融合したHxまたはその機能的断片と比較して、Hxまたはその機能的類似体に対してより長い血漿半減期をもたらす可能性がある。本明細書に記載される融合タンパク質のアルブミン部分は、ヒトアルブミンの少なくとも1つのサブドメインもしくはドメイン、またはその保存的な改変を好適に含む可能性がある。
一実施形態では、異種部分は、免疫グロブリン分子またはその機能的断片である。免疫グロブリンG(IgG)定常領域(Fc)は、治療用タンパク質の半減期を増加させることが当技術分野において公知である(例えば、Dumont J A et al.2006.BioDrugs 20:151-160を参照)。重鎖のIgG定常領域は、3つのドメイン(CH1~CH3)およびヒンジ領域からなる。免疫グロブリン配列は、任意の哺乳動物、またはサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のそれぞれに由来し得る。抗原結合ドメインを有さないIgGおよびIgG断片も、HLEPを含め、異種部分として使用することができる。Hpまたはその機能的類似体は、抗体のヒンジ領域またはペプチドリンカー(切断可能であってもよい)を介してIgGまたはIgG断片と好適に接続してもよい。いくつかの特許および特許出願が、治療用タンパク質のin vivoでの半減期を強化するために、治療用タンパク質を免疫グロブリン定常領域と融合させることを記載する。例えば、米国特許第2004/0087778号および国際公開第2005/001025号は、Fcドメインまたは免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分と、生物学的に活性なペプチド(ペプチドの半減期を増加させ、さもなければin vivoで迅速に取り除かれる)からなる融合タンパク質について記載する。生物学的活性の強化、循環半減期の延長、および溶解度の向上を実現したFc-IFN-β融合タンパク質が記載された(国際公開第2006/000448A2号)。血清半減期が延長され、そしてin vivoでの効力が高まったFc-EPOタンパク質(国際公開第2005/063808A1号)、ならびにG-CSF(国際公開第2003/076567A2号)、グルカゴン様ペプチド-1(国際公開第2005/000892A2号)、凝固因子(国際公開第2004/101740A2号)、およびインターロイキン-10(米国特許第6、403、077号)(いずれも半減期強化特性を有する)とのFc融合体が開示された。
本発明に基づき使用可能である好適なHLEPの例証的事例は、国際公開第2013/120939A1号においても記載されており、その内容は参照によって本明細書にそのまま組み入れる。
用語「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、HxがCSF中に存在する無細胞ヘムと結合し、そしてそれと複合体を形成し、これにより無細胞ヘムのそうでなければ有害な生物学的効果を中和することを可能にするのに十分な、CSF内のHxの量または濃度を意味する。治療有効量のペプチドは、いくつかの因子に依存して変化し得ることが当業者により理解されるが、その例証的事例として、Hxが対象に直接投与されるか、その投与法(例えば、髄腔内、頭蓋内、または脳室内)、処置される対象の健康および身体状態、処置される対象の分類群、出血の重症度(例えば、出血の範囲)、投与経路、CSFコンパートメント内の無細胞ヘムの濃度および/または量、ならびに上記のいずれかの組合せが挙げられる。
Hxの治療有効量は、当業者により決定可能な比較的幅広い範囲に及ぶ。Hxの好適な治療有効量の例証的事例として、約2μM~約1mM、好ましくは約2μM~約400mM、好ましくは約5μM~約400μM、好ましくは約5μM~約200μM、またはより好ましくは約10μM~約200μMが挙げられる。
一実施形態では、Hxの治療有効量は約2μM~約1mMである。一実施形態では、Hxの治療有効量は、約2μM~約400μMである。一実施形態では、Hxの治療有効量は、約5μM~約200mMである。一実施形態では、Hxの治療有効量は、約10μM~約200μMである。
一実施形態では、Hxの治療有効量は、出血後の対象のCSF内無細胞ヘム濃度に対して、少なくとも等モル量である。別の実施形態では、Hxの治療有効量は、約3μM~約1,200μMのCSF内の無細胞Hbと複合体形成するのに十分な量である。一実施形態では、Hxの治療有効量は、出血後の対象のCSF内に存在する無細胞ヘモグロビン(Hb)の量の少なくとも4倍である。CSF中の無細胞Hbおよびヘムの濃度を測定する好適な方法は当業者にとって公知であり、その例証的事例は、Nyakundiら(2020,Oxid Med Cell Longev,2020,8929020)、Righyら(2018,Rev Bras Ter Intestiva,30(1):21-27)、Cruickshank AM.(2001,ACP Best Practice No 166,J.Clin.Path.,54(11):827-830)、Hugelshofer M.ら(2018.World Neurosurg.;120:e660-e666)、およびHugelshofer M.ら(J Clin Invest.2019;129(12):5219-5235)に記載されており、それらの内容は参照によって本明細書にそのまま組み入れる。
治療有効量のHxの実現は、本明細書に記載されるように、Hxまたはその機能的類似体が曝露されるCSFの最終容積に依存し得るものと理解される。例えば、Hxが成人ヒト対象に投与される(例えば、髄腔内に)場合、成人ヒト対象におけるCSFの平均容積が約150mLであることを考慮すると、約310μMのHx溶液、5mLを対象に投与することで、約10μMのHxの治療有効量が実現可能である。別の例証的事例では、本明細書に記載される方法は、50mLの対象由来のCSFを除去すること、および約30μMのHxを含む50mLの人工CSFを用いてそれと置換し、これにより対象のCSFコンパートメントにおいて約10μMのHxの治療有効量を実現することを含む。
Hxの投与量は、最適な治療応答を実現するように調整される場合もある。例えば、いくつかの分割された用量が、毎日、毎週、またはその他の適する時間間隔で投与される場合があり、または投与量は、状況の緊急性の示唆に従い、比例的に減じられる可能性がある。
用語「~を曝露すること(exposing)」は、本明細書で使用される場合、HxがCSF中に存在する無細胞ヘムと結合し、そしてそれと複合体を形成し、これによりヘム:Hx複合体の形成が、無細胞ヘムの脳組織に対する、そうでなければ有害な生物学的効果を実質的に中和することが可能となるように、CSFをHxと接触させることを意味する。「実質的に中和する」とは、治療的Hxが存在しない場合に無細胞ヘムが脳組織に及ぼす生物学的効果と比較して、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%を含む、少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、好ましくは約40%~約50%、好ましくは約45%~約55%、好ましくは約50%~約60%、好ましくは約55%~約65%、好ましくは約60%~約70%、好ましくは約65%~約75%、好ましくは約70%~約80%、好ましくは約75%~約85%、好ましくは約80%~約90%、好ましくは約85%~約95%、または最も好ましくは約90%~100%の低下として主観的または定性的に表されるような、無細胞ヘムが脳組織に及ぼす有害な生物学的効果の低下を意味する。無細胞Hxの有害な生物学的効果の低下が測定可能または決定可能である(定性的または定量的に)方法は、当業者によってなじみ深く、その例証的事例は本明細書において別途記載される。
本明細書においてやはり明記されるように、本発明者らは、治療有効量のHxを、チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)アッセイ法を用いたマロンジアルデヒドにより評価したときに、それがCSF内の無細胞ヘムの酸化能力を阻止し、低下させることができることも初めて明らかにした。
それを必要としている対象のCSFが、本明細書に記載されるように、治療有効量のHxに曝露される方式は、例えば、前記曝露が、それを必要としている対象のCSFコンパートメントにおいて実施されるか(すなわち、in vivo)、または対象から得られたCSFにおいて体外的に実施されるか(すなわち、ex vivo)に応じて変化し得るものと理解される。前記曝露が、それを必要としている対象のCSFコンパートメントにおいて実施される場合(すなわち、in vivo)、Hxの投与経路は、CSFコンパートメント内でHxが無細胞ヘムと接触するのが可能となるように選択される。好適な投与経路は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、髄腔内、頭蓋骨内、および脳室内が挙げられる。一実施形態では、治療有効量のHxは、例えば、出血性脳卒中後の対象内に、CSFを一時的に流出させ、そして頭蓋内圧を下げるために配置される外部脳室ドレイン経由で投与される。
一実施形態では、Hxは対象に対して頭蓋内投与される。
一実施形態では、Hxは、対象に対して髄腔内投与される。
一実施形態では、Hxは、脊椎管中に髄腔内投与される。
一実施形態では、Hxは、クモ膜下腔中に髄腔内投与される。
一実施形態では、Hxは、対象に対して脳室内投与される。
一実施形態では、方法は、治療有効量のHxを、対象に対して髄腔内投与する工程を含む。一実施形態では、方法は、治療有効量のHxを、対象に対して、その脊椎管中に髄腔内投与する工程を含む。一実施形態では、方法は、治療有効量のHxを、対象に対して、そのクモ膜下腔中に髄腔内投与する工程を含む。一実施形態では、方法は、治療有効量のHxを、対象に対して脳室内投与する工程を含む。
代替的にまたは付加的に、本明細書に記載される方法は、それを必要としている対象からCSFを取り出す工程、CSF内でHxが無細胞ヘムと複合体を形成し、これにより無細胞ヘムの中和を可能にするのに十分な期間、CSFを治療有効量のHxに曝露する工程、CSF内に形成されたヘム:Hx複合体を除去してヘム減少CSFを生成する工程、およびヘム減少CSFを対象に投与する工程(例えば、髄腔内または脳室内)を含む。CSFをCSFコンパートメントから除去しても、CSFのまったく存在しないCSFコンパートメントが一般的にもたらされるわけではないものと理解され、少なくとも若干のCSFがCSFコンパートメント内に存続することに留意されたい。場合により、CSFコンパートメント内に存在し得る少なくとも若干量の残留Hxを取り除くために、CSFが取り出されたら、CSFコンパートメントを、薬学的に許容される洗浄溶液でリンスすることができる。さらに複合体を形成させ、これによりCSFコンパートメント内に存在し得る少なくとも若干量の残留無細胞ヘムを中和するために、洗浄溶液は、場合によりHxを含み得る。一実施形態では、洗浄溶液は、本明細書において別途記載されるような人工CSFである。
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、それを必要としている対象のCSFコンパートメントからCSFのサンプルを取り出す工程、HxをCSFサンプルに添加して、Hx富化CSFサンプルを取得する工程、Hx富化CSFサンプルを対象のCSFコンパートメントに投与する工程、それによって、CSFコンパートメントを、治療有効量のHxに、ある期間(Hxが無細胞ヘムと複合体を形成し、これにより対象のCSFにおいて無細胞ヘムを中和することを可能にするのに十分な期間)曝露する工程、および場合により、上記工程を反復する工程を含む。好ましくは、CSFサンプルに添加されるHxの量は、対象に投与すると、対象のCSF内に治療有効量のHxをもたらすように決定される。したがって、CSFサンプル内に添加されるHxの量は、取り出され、そして対象に再投与されるCSFサンプルの容積に依存する。
一実施形態では、方法は:
(i)出血後の対象のCSFコンパートメントからCSFサンプルを取得する工程;
(ii)工程(i)のCSFサンプルにHxを添加して、Hx富化CSFサンプルを取得する工程;
(iii)Hx富化CSFサンプルを対象に投与し、これにより、対象のCSFコンパートメントにおいてHxが無細胞ヘムと複合体を形成することを可能にするのに十分な期間、対象のCSFコンパートメントを、治療有効量のHxに曝露する工程;および
(iv)場合により、工程(i)~(iii)を反復する工程
を含む。
取り出され、そして対象に再投与されるCSFの容積は、実質的に同一であるのが望ましい。例えば、50mLのCSFサンプルが対象のCSFコンパートメントから取り出される場合、Hxを含むCSFの全50mLの容積が対象に再投与される。しかしながら、容積に違いが生じたとしても、そのいずれもが有意な有害臨床転帰を惹起しない限り、容積は異なってもよいものと理解される。いくつかの実施形態では、対象に再投与されるCSFの容積は、対象から取り出されたCSFの容積よりも少ない。その他の実施形態では、対象に再投与されるCSFの容積は、Hxを単独で、または任意のその他の治療薬と組み合わせて添加することで余分の容積が生まれることから、対象から除去されたCSFの容積を上回る。
別の実施形態では、本明細書に記載される方法は、それを必要としている対象のCSFコンパートメントからある容積のCSFを取り出す工程、対象から取り出されたCSFの容積を、Hxを含むある容積の人工CSFと置換する工程、これによりHxが無細胞ヘムと複合体を形成し、これにより対象のCSF内の無細胞ヘムを中和することを可能にするのに十分な期間、対象のCSFを治療有効量のHxに曝露する工程を含む。好ましくは、人工CSF内のHxの量は、対象に投与されたら、対象のCSF内に治療有効量のHxをもたらすように決定される。したがって、人工CSFに添加されるHxの量は、対象に投与される人工CSFの容積に依存する。
一実施形態では、方法は:
(i)出血後の対象のCSFコンパートメントからある容積のCSFを取り出す工程;
(ii)Hxを含む人工CSFを提供する工程;
(iii)(ii)の人工CSFを対象に投与し、これにより対象のCSFコンパートメントにおいて、Hxが無細胞ヘムと複合体を形成することを可能にするのに十分な期間、対象のCSFコンパートメントを治療有効量のHxに曝露する工程;および
(iv)場合により、工程(i)~(iii)を反復する工程
を含む。
対象に投与される人工CSFの容積は、対象から取り出されるCSFの容積と実質的に同一であるのが望ましい。例えば、50mLのCSFサンプルが対象のCSFコンパートメントから取り出される場合、治療有効量のHxを含む、約50mLの容積の人工CSFが、取り出されたCSFの容積と置換するのに使用される。しかしながら、容積に違いが生じたとしても、そのいずれもが有意な有害臨床転帰を惹起しない限り、容積は異なってもよいものと理解される。いくつかの実施形態では、対象に投与される人工CSFの容積は、対象から取り出されたCSFの容積よりも少ない。その他の実施形態では、対象に投与される人口CSFの容積は、対象から取り出されたCSFの容積を上回る。
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、CSFを、出血性脳卒中後の約21日以内にHxに曝露する工程を含む。本明細書で開示される別の実施形態では、方法は、CSFを、出血性脳卒中後、約2日間~約4日間、Hxに曝露する工程を含む。なおも別の実施形態では、方法は、CSFを、出血性脳卒中後、約5日間~約14日間、Hxに曝露する工程を含む。
本発明者らは、クモ膜下腔内の無細胞ヘムを、治療有効量のHxに、少なくとも約2分間曝露することが、CSFにおいて検出可能なヘム:Hx複合体を形成するのに十分であることを驚くべきことに明らかにした。したがって、一実施形態では、CSFが治療有効量のHxに曝露される期間は、少なくとも約2分(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14分など)である。一実施形態では、CSFが治療有効量のHxに曝露される期間は、少なくとも約4分である。別の実施形態では、CSFが治療有効量のHxに曝露される期間は、少なくとも約5分である。なおも別の実施形態では、CSFが治療有効量のHxに曝露される期間は、少なくとも約10分である。一実施形態では、CSFが治療有効量のHxに曝露される期間は、約2分~約45分、好ましくは約2分~約20分、またはより好ましくは約4分~約10分である。
用語「対象」とは、本明細書で使用される場合、処置または予防が望まれる哺乳動物の対象を指す。好適な対象の例証的事例として、霊長類、特にヒト、ネコやイヌなどのようなコンパニオン動物、ウマ、ロバなどのような使役動物、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタなどのような家畜動物、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどのような研究テスト用動物、および動物園や野生動物公園内の動物、シカ、ディンゴなどのような野生捕獲動物が挙げられる。一実施形態では、対象はヒトである。さらなる実施形態では、対象は、(i)出生~約2歳、(ii)約2~約12歳、または(iii)約12~約21歳の小児患者である。
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、CSFを治療有効量のHxに体外的に曝露する工程を含む。
CSFがHxに体外的に(ex vivo)曝露される場合、治療有効量は、Hxに曝露されるCSFの容積に依存すると考えられ、CSFが、溶液の状態にあるまたは基材上に固定化されたHx(例えば、アフィニティークロマトグラフィー)、および上記のいずれかの組合せに曝露されるかを問わない。例えば、無細胞ヘムと複合体を形成させ、そしてアフィニティークロマトグラフィーにより無細胞ヘムを除去するために、CSFがHxに曝露される場合、基材上に固定化されるHxの量は、初回通過期間中に無細胞ヘムの完全な複合体形成を引き起こす必要はなく、複合体を形成させるために基材上を複数回通過させることが必要となり得、これにより実質的にすべての無細胞ヘムがCSFから取り除かれるものと考えられる。
一実施形態では、方法は、(i)出血性脳卒中後およびCSFをHxに曝露する前の対象に由来するCSFサンプルを取得する工程;(ii)工程(i)で得られたCSFサンプル中の無細胞Hbまたは無細胞ヘムの量を測定する工程;および(iii)工程(ii)から得られた無細胞Hbまたは無細胞ヘムの濃度に基づき、Hxの少なくとも等モル量を決定する工程を含む。CSFサンプル中の無細胞Hbおよび無細胞ヘムの量を測定する好適な方法は当業者にとって公知であり、その例証的事例は本明細書に別途記載されている。
本明細書において別途指摘するように、CSF内での無細胞ヘムとHxとの複合体形成は、脳組織上において、無細胞ヘムのそうでなければ有害な生物学的活性を中和する。本明細書に開示される方法に基づき形成された無細胞ヘム:Hx複合体を抽出するか、または取り除くことは一般的に不要であるが、いくつかの事例では、前記複合体を取り除くことが望ましい場合もある。例えば、本明細書に記載される方法が、対象に由来するCSFを取り出し、そしてその後CSFをHxに体外的に曝露する工程を含む場合、CSF内で形成された無細胞ヘム:Hx複合体を、CSFを対象に再投与するに前に取り除くことが望ましい場合もある。したがって、いくつかの実施形態では、方法は、CSF内に形成されたHx:無細胞ヘム複合体を取り除く工程を含む。
一実施形態では、方法は:
(i)出血後の対象に由来するCSFを取得する工程;
(ii)CSF内でHxが無細胞ヘムと複合体を形成することを可能にする条件下で、工程(i)から得られたCSFをHxに曝露する工程;
(iii)工程(ii)の後に、CSFからHx:無細胞ヘム複合体を抽出して、工程(i)から得られたCSFと比較したときに、それより低い量の無細胞ヘムを有するヘム減少CSFを取得する工程;
(iv)場合により、工程(ii)および(iii)を反復して、無細胞ヘムを実質的に含まないヘム減少CSFを取得する工程;ならびに
(v)工程(iii)または工程(iv)から得られたヘム減少CSFを、対象のCSFコンパートメントに投与する工程
を含む。
本明細書で使用される場合、「ヘム減少CSF」とは、工程(iii)の前の無細胞ヘムの量と比較したときに、CSFがそれよりも低い量の無細胞ヘム有するように、ある量の無細胞ヘムが除去されているCSFを意味する。用語「ヘム減少CSF」は、無細胞ヘムのすべてが、CSFから除去されていることを示唆するように意図するものではなく、したがって少なくとも若干の無細胞ヘムが存在する実施形態を含むものと理解される。一実施形態では、ヘム減少CSFは、CSFからHx:無細胞ヘム複合体を抽出する前の、対象から得られたCSF中の無細胞ヘムの量と比較したとき、それよりも少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約45%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約55%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、またはより好ましくは少なくとも約95%少ない無細胞ヘムを含む。一実施形態では、ヘム減少CSFは、CSFからHx:無細胞ヘム複合体を抽出する前の、対象から得られたCSF中の無細胞ヘムの量と比較したとき、それよりも約5%~約10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約40%~約50%、好ましくは約50%~約60%、好ましくは約60%~約70%、好ましくは約70%~約80%、好ましくは約80%~約90%、またはより好ましくは約90%~約99%少ない無細胞ヘムを含む。
本明細書に別途記載されるように、ヘム減少CSFは、場合により、CSFから追加の無細胞ヘムを取り除くために、好ましくは無細胞ヘムを実質的に含まないヘム減少CSFを取得するために、工程(ii)および(iii)を反復することによりさらに処置されることがある。「無細胞ヘムを実質的に含まない」とは、Hb減少CSFが、CSFからHx:無細胞ヘム複合体を抽出する前の対象から得られたCSF内無細胞ヘムの量と比較したとき、それよりも約70%~約80%、好ましくは約80%~約90%、またはより好ましくは約90%~約99%少ない無細胞ヘムを含むことを意味する。
一実施形態では、方法は、工程(ii)および(iii)を少なくとも1回(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11回など)反復する工程を含む。一実施形態では、方法は、無細胞ヘムを実質的に含まないHb減少CSFを取得するために、必要に応じて、工程(ii)および(iii)を少なくとも1回、好ましくは2回、好ましくは3回、好ましくは4回、好ましくは5回、好ましくは6回、好ましくは7回、好ましくは8回、好ましくは9回、またはより好ましくは10回反復する工程を含む。
無細胞ヘムを実質的に含まないヘム減少CSFを取得するために、工程(ii)および(iii)が反復される必要がある回数は、対象に由来するCSF中の無細胞ヘムの濃度、採用されるヘムの濃度、抽出方法等を含む(ただしこれらに限定されない)いくつかの因子に依存し得るものと理解される。いくつかの事例では、特に工程(ii)および(iii)の反復が、CSFを細菌、酵母菌、菌類、およびウイルスなどのような汚染物質に曝露させてしまうおそれがある場合、工程(ii)および(iii)を1回のみ実施するのが望ましい場合もある。
Hx:無細胞ヘム複合体をCSFから抽出する好適な方法は当業者にとって公知であり、その例証的事例として、粒径排除クロマトグラフィーおよび/またはアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。粒径排除クロマトグラフィーは、遊離ヘムおよびHxに対して複合体のサイズが相対的に大きいことから、Hx:無細胞ヘム複合体の同定、およびCSFにおけるその他のコンポーネントからの分離を可能にする。アフィニティークロマトグラフィーは、ヘム:Hx複合体と特異的に結合し、遊離ヘムとの結合は無視し得る結合剤を使用することにより、Hx:無細胞ヘム複合体の同定、およびCSFにおけるその他のコンポーネントからの分離を可能にする。好適な結合剤として、当業者にとってなじみ深いように、抗体またはその抗結合性断片が挙げられる。
一実施形態では、工程(ii)は、工程(i)から得られたCSFをHxが固定された基材上を通過させる工程を含む。これは、有利には、CSF中の無細胞ヘムがHxと結合し、これにより無細胞ヘムを基材に固定化し、そしてヘム減少CSFが基材から好都合に溶出するのを可能にする。したがって、一実施形態では、工程(ii)におけるHxは基材上に固定されている。好適な基材は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、粒径排除クロマトグラフィー樹脂、アフィニティークロマトグラフィー樹脂、フィルター、またはメンブレンが挙げられる。一実施形態では、基材は、粒径排除クロマトグラフィー樹脂、アフィニティークロマトグラフィー樹脂、フィルター、およびメンブレンからなる群から選択される。
一実施形態では、工程(ii)は、工程(i)から得られたCSFを、CSF中の無細胞ヘムが樹脂と結合するのを可能にする条件下で、アフィニティークロマトグラフィー樹脂に通過させる工程を含む;その場合、工程(iii)は、工程(ii)を経た樹脂からCSFを溶出させる工程を含む;およびその場合、工程(iv)は、溶出したCSFを回収する工程を含む。
工程(vi)において、工程(iii)または工程(iv)から得られたヘム減少CSFを、対象のCSFコンパートメントに投与する前に、本明細書に別途記載されるように、対象のCSFコンパートメント内に存在し有害な二次神経学的転帰を惹起するおそれのある残留無細胞Hbを除去するために、ヘム減少CSFに治療有効量のHpを添加するのが望ましい場合もある。したがって、一実施形態では、方法は、本明細書に別途記載されるように、工程(v)の前のヘム減少CSFに対して治療有効量のHxを添加する工程を含む。
CSFが出血性脳卒中後の対象のCSFコンパートメントから除去されたとしても、CSFコンパートメント内に残留無細胞Hbが存在し得ることを、当業者は理解する。したがって、少なくとも若干の残留無細胞Hbを取り除くために、CSFコンパートメントをリンスし(CSFが上記工程(i)に基づき取り出されたら)、これにより、そのような残留無細胞ヘムが惹起し得る有害な二次神経学的転帰を取り除き、さもなければ低下させるのが望ましい場合もある。したがって、一実施形態では、方法は、工程(i)の後に、洗浄溶液を用いてCSFコンパートメントを洗浄する工程をさらに含む。
好適な洗浄溶液は当業者にとってなじみ深い。一実施形態では、洗浄溶液は人工CSFである。
人工脳脊髄液(aCSF)は、塩含有量を含め、一般的に天然のCSFを模倣する液体である。CSFの好適な組成は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、米国特許第20060057065号、およびMatznellerら(Pharmacology,2016;97(5-6):233-44)に記載されており、その内容は参照によって本明細書にそのまま組み入れる。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度と類似した濃度でNaClを含み得るが、また天然のCSF中のNaClの濃度の約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度と類似した濃度でNaHCOを含み得るが、また天然のCSF中のNaHCOの濃度の約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度と類似した濃度でKClを含み得るが、また天然のCSF中のKClの濃度の約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度と類似した濃度でNaHPOを含み得るが、また天然のCSF中のNaHPOの濃度の約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度と類似した濃度でMgClを含み得るが、また天然のCSF中のMgClの濃度の約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度と類似した濃度でグルコースを含み得るが、また天然のCSF中のグルコースの濃度の約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。あるいは、人工CSFは、aCSFを対象に投与するのに使用される任意のカテーテル内で細菌が増殖する可能性を低減するために、グルコースを省略する場合もある。
一実施形態では、人工CSF/洗浄溶液は、NaCl、KCl、KHPO、NaHCO、MgCl・HO、CaCl・HO、およびグルコースを含む。
一実施形態では、洗浄溶液はHxを含む。
一実施形態では、洗浄溶液は、約2μM~約80mMのHxを含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約2μM~約20mMのHxを含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約100μM~約20mMのHxを含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約2μM~約1,200μMのHxを含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約5μM~約200μMのHxを含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約10μM~約120μMのHxを含む。
一実施形態では、洗浄溶液は、出血後の対象のCFS中の無細胞ヘムの濃度に対して少なくとも等モル量のHxを含む。別の実施形態では、洗浄溶液は約3μM~約1,200μMのHxを含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、対象のCSFから無細胞ヘムを体外的に取り出す工程をなくし、むしろ本明細書に別途記載されるように、対象のCSFを人工CSFと置換するのが望ましい場合もある。したがって、一実施形態では、方法は:
(i)出血後の対象に由来するCSFを取り出す工程;
(ii)工程(i)の後に、対象のCSFコンパートメントを治療有効量のHxを含む洗浄溶液を用いてリンスする工程;
(iii)場合により、工程(ii)を反復する工程;および
(iv)工程(ii)または工程(iii)の後に、対象のCSFコンパートメントに人工CSFを投与する工程
を含む。
治療有効量のHxを洗浄溶液中に組み込むことにより、CSFコンパートメント内の残留無細胞ヘムは、Hxと複合体形成し、これにより脳組織に対する無細胞ヘムの有害な生物学的効果を中和し得る。
一実施形態では、人工CSFは、NaCl、KCl、KHPO、NaHCO、MgCl・HO、CaCl・HO、およびグルコースを含む。一実施形態では、人工CSFはHxを含む。
一実施形態では、人工CSFは、約2μM~約80mMのHxを含む。一実施形態では、人工CSFは、約2μM~約20mMのHxを含む。一実施形態では、人工CSFは、約100μM~約20mMのHxを含む。一実施形態では、人工CSFは、約2μM~約1,200μMのHxを含む。一実施形態では、人工CSFは、約5μM~約200μMのHxを含む。一実施形態では、人工CSFは、約10μM~約120μMのHxを含む。
一実施形態では、人工CSFは、出血後の対象のCFS中の無細胞ヘムの濃度に対して少なくとも等モル量のHxを含む。別の実施形態では、人工CSFは約3μM~約1,300μMのHxを含む。
補助療法
出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防する方法は、本明細書に記載されるように、出血性脳卒中後の対象における1つまたはそれ以上の有害な二次神経学的転帰を低下させ、阻害、防止し、さもなければ軽減するように設計された、1つまたはそれ以上の別の処置戦略と共に、連続して、またはそれと組み合わせて(例えば、同時に)好適に実施される可能性がある。したがって、一実施形態では、方法は、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を処置または予防するための第2の薬剤を対象に対して投与する工程をさらに含む。出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を処置または予防するための好適なその他の処置戦略または第2の薬剤は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として:
(i)凝固障害の是正-例えば、ビタミンKアンタゴニスト(VKA)、新規の経口抗凝固剤(ダビガトラン、リバーロキサバン、およびアピキサバンなどのようなNOAC)、第VIII因子インヒビターバイパス活性(FEIBA)および活性化組換え第VII因子(rFVIIa)、プロトロンビン複合体濃縮物、活性炭、抗血小板療法(APT)、およびアスピリン単剤療法を使用する;
(ii)血圧降下-例えば抗高血圧剤、その例証的事例として、(i)クロルタリドン、クロルチアジド、ジクロロフェナミド(dichlorophenamide)、ヒドロフルメチアジド、インダパミド、およびヒドロクロロチアジドを含むチアジド化合物のような利尿薬;ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、およびトルセミドなどのようなループ利尿薬;アミロライドおよびトリアムテレンなどのようなカリウム保持性利尿剤;ならびにスピロノラクトン、エピレノン(epirenone)などのようなアルドステロンアンタゴニスト;(ii)アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、エスモロール、インデノロール、メタプロロール(metaprolol)、ナドロール、ネビボロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロパノロール、ソタロール、テルタトロール、チリソロール、およびチモロールなどのようなβ-アドレナリン受容体遮断薬;(iii)アムロジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、ベプリジル、シナルジピン(cinaldipine)、クレビジピン、ジルチアゼム、エホニジピン、フェロジピン、ガロパミル、イスラジピン、ラシジピン、レミルジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモデピン(nimodepine)、ニソルジピン、ニトレンジピン、マニジピン、プラニジピン、およびベラパミルなどのようなカルシウムチャネル遮断薬;(iv)ベナゼプリル;カプトプリル;シラザプリル;デラプリル;エナラプリル;ホシノプリル;イミダプリル;ロシノプリル(losinopril);モエキシプリル;キナプリル;キナプリラート;ラミプリル;ペリンドプリル;ペリンドロプリル(perindropril);クアニプリル(quanipril);スピラプリル;テノカプリル(tenocapril);トランドラプリル、およびゾフェノプリルなどのようなアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;(v)オマパトリラート、カドキサトリル(cadoxatril)、およびエカドトリル、フォシドトリル(fosidotril)、サンパトリラット、AVE7688、ER4030などのような中性エンドペプチダーゼ阻害剤;(vi)テゾセンタン、A308165、およびYM62899などのようなエンドセリンアンタゴニスト;(vii)ヒドララジン、クロニジン、ミノキシジル、およびニコチニルアルコールなどのような血管拡張薬;(viii)カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、プラトサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、およびEXP-3137、FI6828K、およびRNH6270などのようなアンジオテンシンII受容体アンタゴニスト;(ix)ニプラジロール、アロチノロール、およびアモスラロールなどのようなα/βアドレナリン受容体遮断薬;(x)テラゾシン、ウラピジル、プラゾシン、ブナゾシン、トリマゾシン、ドキサゾシン、ナフトピジル、インドラミン、WHIP164、およびXENOIOのようなα1遮断薬;ならびに(xi)ロフェキシジン、チアメニジン、モクソニジン、リルメニジン、およびグアノベンズ(guanobenz)などのようなα2アゴニストが挙げられる。
(ii-b)血管拡張薬-例えば、ヒドララジン(アプレゾリン)、クロニジン(カタプレス)、ミノキシジル(ロニテン)、ニコチニルアルコール(ロニアコール)、シドノン、およびニトロプルシドナトリウム。
(iii)発作、グルコース、および体温の管理-例えば、抗てんかん薬、血中グルコースレベルを制御するためのインスリン輸注、正常体温の維持および治療的冷却;
(iv)外科的処置-例えば、血腫除去(外科的血栓除去)、減圧開頭術(DC)、低侵襲手術(MIS;基底核出血の針穿刺吸引などのような)、組換え組織型プラスミノーゲンアクチベーター(rtPA)を用いたMIS;
(v)手術の時期-例えば、症状発現後の4~96時間;
(vi)トロンビン阻害-例えば、ヒルジン、アルガトロバン、セリンプロテアーゼ阻害剤(例えば、メシル酸ナファモスタット);
(vii)ヘムおよび鉄毒性の予防-例えば、スズ-メソポルフィリンなどのような非特異的ヘムオキシゲナーゼ(HO)阻害剤、デフェロキサミンなどのような鉄キレート剤;
(viii)PPARgアンタゴニストおよびアゴニスト-例えば、ロシグリタゾン、15d-PGJ2、およびピオグリタゾン;
(ix)ミクログリア活性化の阻害-例えば、タフトシン断片1~3(ミクログリア/マクロファージ阻害因子)またはミノサイクリン(テトラサイクリンクラス抗生物質);
(x)NF赤血球2関連因子2(Nrf2)の上方制御;
(xi)シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害-例えば、セレコキシブ(選択的COX2阻害剤);
(xii)マトリックスメタロプロテイナーゼ;
(xiii)TNFαモジュレーター-例えば、CGS21680などのようなアデノシン受容体アゴニスト、ORF4-PEなどのようなTNFα特異的アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド;
(xiv)血圧上昇-例えば、カテコールアミン;ならびに
(xv)TLR4シグナル伝達の阻害剤-例えば、抗体Mts510およびTAK-242(シクロヘキセン誘導体);
が挙げられる。
一実施形態では、第2の薬剤は血管拡張薬である。好適な血管拡張薬は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、シドノンやニトロプルシドナトリウムが挙げられる。したがって、本明細書で開示される一実施形態では、第2の薬剤は、シドノンおよびニトロプルシドナトリウムからなる群から選択される。
第2の薬剤はハプトグロビン(Hp)を含み得る。本明細書に別途記載されるように、本発明者らは、外因性ハプトグロビンは、臨床的に重要なCSF-Hb濃度範囲内において、抗血管攣縮および抗酸化効果を提供するのに使用可能であることを実証したが、これにより、aSAHの文脈において、ハプトグロビンおよびヘモペキシンを治療併用することで、無細胞Hbおよび無細胞ヘムの血管攣縮および酸化効果に対する相乗的保護の実現が可能となると仮説を立てる。したがって、一実施形態では、本明細書に記載される方法は、対象のCSFを、ハプトグロビン(Hp)が無細胞Hbと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、治療有効量のHpに曝露する工程をさらに含む。
本明細書において別途指摘するように、本発明者らは、Hpは、無細胞Hb媒介式のCVをin vivoで低下させ、さもなければ防止することができることを見出した。本明細書に開示される方法がヘム媒介式のCVを低下させ、さもなければ防止する程度は、いくつかの因子、例えば出血性脳卒中後の無細胞Hbにより誘発される血管収縮(血管の狭小化)の程度、出血性脳卒中後の対象のCSF内無細胞Hb濃度、CSFがHpに曝露される期間、および何らかの持続性出血の有無等に依存し得るものと理解される。本明細書に開示の方法が対象におけるCVを低下させ、さもなければ防止したか評価する手段は、当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、デジタルサブトラクション血管造影法(DSA)、コンピューター断層撮影(CT)血管造影法(CTA)、磁気共鳴(MR)血管造影法(MRA)、およびカテーテル血管造影法(CA)が挙げられる。
一実施形態では、それを必要とする対象のCSFをHpに曝露する工程は、本明細書に記載されるように、DSAにより決定される場合、60分間の曝露後に、収縮した脳血管の管腔の平均直径を、少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、またはより好ましくは約40%~約50%回復させる。
一実施形態では、それを必要とする対象のCSFをHpに曝露する工程は、本明細書に記載されるように、DSAにより決定される場合、60分間の曝露後に、収縮した前大脳動脈の管腔の平均直径を、少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、またはより好ましくは約40%~約50%回復させる。
一実施形態では、それを必要とする対象のCSFをHpに曝露する工程は、本明細書に記載されるように、DSAにより決定される場合、60分間の曝露後に、収縮した内頸動脈の管腔の平均直径を、少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、またはより好ましくは約40%~約50%回復させる。
一実施形態では、それを必要とする対象のCSFをHpに曝露する工程は、本明細書に記載されるように、DSAにより決定される場合、60分間の曝露後に、収縮した中大脳動脈の管腔の平均直径を、少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、またはより好ましくは約40%~約50%回復させる。
一実施形態では、それを必要とする対象のCSFをHpに曝露する工程は、本明細書に記載されるように、DSAにより決定される場合、60分間の曝露後に、収縮した脳底動脈の管腔の平均直径を、少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、またはより好ましくは約40%~約50%回復させる。
一実施形態では、それを必要とする対象のCSFをHpに曝露する工程は、本明細書に記載されるように、in vivoでの潅流画像化法(例えば、MRI灌流法、CT灌流法)により決定される場合、60分間の曝露後に、収縮した細い実質管腔(small parenchymal vessel)(例えば、脳細動脈)の管腔の平均直径を、少なくとも10%、好ましくは約20%、好ましくは約25%、好ましくは約30%、好ましくは約35%、好ましくは約40%、好ましくは約45%、好ましくは約55%、好ましくは約60%、好ましくは約65%、好ましくは約70%、好ましくは約75%、またはより好ましくは約80%増加させる。一実施形態では、細い実質管腔は脳細動脈である。一実施形態では、それを必要とする対象のCSFをHpに曝露する工程は、本明細書に記載されるように、in vivoでの潅流画像化法(例えば、MRI灌流法、CT灌流法)により決定される場合、60分間の曝露後に、細い実質管腔の収縮を防止することにより、脳微小潅流を、少なくとも10%、好ましくは約20%、好ましくは約25%、好ましくは約30%、好ましくは約35%、好ましくは約40%、好ましくは約45%、好ましくは約55%、好ましくは約60%、好ましくは約65%、好ましくは約70%、好ましくは約75%、またはより好ましくは約80%回復させる。一実施形態では、細い実質管腔は脳細動脈である。
本明細書において別途指摘するように、本発明者らは、治療有効量のHpはCSF内無細胞Hbの酸化能力を低下させることができることを初めて明らかにした。したがって、一実施形態では、それを必要としている対象のCSFをHpに曝露すれば、本明細書に記載されるように、酸化性組織傷害が低下する。酸化性組織傷害を決定するための好適な方法は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、脂質過酸化の最終生成物であるマロンジアルデヒド(MDA)のレベルを測定することを含め、Katerjiら(2019;Oxid.Med.Cell Longey;1279250)に記載されている。したがって、一実施形態では、それを必要としている対象のCSFをHpに曝露すれば、本明細書に記載されるように、脂質過酸化が低下する。
ハプトグロビン
ハプトグロビン(Hp)は、ジスルフィド結合によりリンクした2本のα鎖および2本のβ鎖を含む四量体構造を有する。β鎖(アミノ酸245個)は約40kDa(そのおよそ30%w/wは炭水化物である)の質量を有し、そしてすべての表現型により共有されている。α鎖は、少なくとも2つの形態:α1(アミノ酸83個、9kDa)およびα2(アミノ酸142個、17.3kDa)で存在する。したがって、HpはHp1-1、Hp2-1、およびHp2-2と呼ばれる3つの表現型として生ずる。Hp1-1は2つのα1鎖を含有し、Hp2-2は2つのα2鎖を含有し、ならびにHp2-1は1つのα1鎖および1つのα2鎖を含有する。Hp1-1は100kDa、またはHbと複合体化したときには165kDaの分子質量を有する。Hp1-1は単一のアイソフォームとして存在し、そしてHpダイマーとも呼ばれる。Hp2-1は平均分子質量220kDaを有し、そして線状ポリマーを形成する。Hp2-2は平均分子質量400kDaを有し、そして環状ポリマーを形成する。異なる各ポリマー形態は、異なるアイソフォームである。PCR法が、Hp多型を研究するために考案された(Koch et al.2002,Clin.Chem.48:1377-1382)。
2つ重要な対立遺伝子、Hp1およびHp2が、第16染色体上に見出されるHp遺伝子について存在する。2つの対立遺伝子が、構造的多型:ホモ接合型(1-1または2-2)およびヘテロ接合型2-1といった、考え得る3つの異なる遺伝子型に関与している。欧米の集団において、Hp1-1の分布は約16%であり、Hp2-1は約48%であり、そしてHp2-2は約36%であると見積もられている。Hpは、2つサブユニットα鎖およびβ鎖(ジスルフィド結合により結びついている)に切断される。両対立遺伝子は同一のβ鎖を共有する。β鎖はHbとの結合に関わり、したがって両遺伝子型は類似したHb結合親和性を有する。
無細胞Hbと複合体を形成し、これにより無細胞Hbの生物学的活性を中和する能力を有する限り、天然に存在する、および組換え型Hpが、本明細書に記載される方法に適するものと理解される。Hpの適する天然に存在する形態は当業者にとって公知であり、その例証的事例は、Kochら(2002,Clin.Chem.48:1377-1382)、およびKasvosveら(2010,Chapter 2-Haptoglobin Polymorphism and Infection;Advances in Clinical Chemistry,50:23-46)に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み入れる。
一実施形態では、Hpは、血漿由来のHpを含み、それから構成または実質的に構成される。Hpは好ましくはヒトHpである。天然起源のHp(例えば、血漿)からHpを単離するための様々なプロトコールは当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、米国特許第4、061、735号および同第4、137、307号(Funakoshiら)、ならびに米国特許公報第20140094411号(Brinkman)に記載されており、その全内容は参照によって本明細書に組み入れる。天然起源のHpからHpを単離するためのその他の適する方法は、KatnikおよびJadach(1993,Arch.Immunol.Ther.Exp.(Warz)41:303-308)、Tsengら(2004,Protein Expr Purif 33:265-273)、Katnikら(1995,Eur J.Clin.Chem.Clin.Biochem.33:727-732)、YangおよびMao(1999,J.Chromatogr.B.Biomed.Sci.Appl.,731:395-402)、ならびにBaslerおよびBurrel(1983 Inflammation 7(4):387-400)に記載されている。
用語「ハプトグロビン」は、本明細書で使用される場合、Hpのすべての表現型を含む(すべてのアイソフォームを含む)ものと理解される。Hpは、均質(同一アイソフォームのHpから実質的に構成される場合)、または不均質(Hp1-1、Hp1-2、およびHp2-2を含む、異なるHpアイソフォームの組合せを含む場合)であり得る。Hpの組成は、元となるHpの表現型に最終的に依存するものと理解される。例えば、プールされた血漿サンプルがHpを抽出/精製するのに使用される場合には、Hpの2つ以上のアイソフォームが単離される可能性がある。単離物中に存在するHpアイソフォームを決定するための適する方法は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、Shihら(2014,Hematology,89(4):443-447)で議論されており、その全内容は参照によって本明細書に組み入れる。単離物中に存在するHpアイソフォームを決定するその他の適する方法として、高性能粒径排除クロマトグラフィー(HPLC-SECアッセイ)、Hp ELISA、および比濁測定法(turbimetric reading)が挙げられ、Hpの異なるアイソフォームが異なるアッセイにおいて異なるシグナルを一般的にもたらす。
一実施形態では、Hpは、Hp1-1ホモ二量体、Hp1-2多量体、Hp2-2多量体、および上記のいずれかの組合せからなる群から選択される。好ましい実施形態では、Hpは、Hp1-1ホモ二量体を含み、それから構成または実質的に構成される。Hpは天然に存在するHp(例えば、血漿由来)であり得るか、または組換えタンパク質として生成し得るが、その例証的事例は本明細書に別途記載されている。一実施形態では、血漿由来のHpは、Hp1-1ホモ二量体を含み、それから構成または実質的に構成される。一実施形態では、Hpは、組換えHpを含み、それから構成または実質的に構成される。
別途記載しない限り、用語Hpには、本明細書で使用される場合、天然の、または天然に存在するHpの機能的類似体が含まれる。用語「機能的類似体」とは、天然に存在する(天然型の)Hpの生物学的活性と実質的に同一の生物学的活性を共有する物質(ただし生物学的活性が、少なくとも無細胞Hbと複合体を形成し、これによりその生物学的活性を中和する類似体の能力である限りにおいて)を意味するものと理解される。「実質的に同一の生物学的活性」とは、機能的類似体は、天然に存在するHpアイソフォーム(例えば、Hp1-1、Hp1-2、およびHp2-2)を含む、天然に存在するHpの結合親和性の少なくとも40%(例えば、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%等)である結合親和性を、無細胞Hbに対して有することを一般的に意味する。物質がHpの機能的類似体であるか決定するための適する方法は、当業者にとってなじみ深く、その例証的事例(例えば、無細胞Hb誘発性の脳血管攣縮を低下させる機能的類似体の能力)は本明細書に別途記載される。
本明細書で開示される一実施形態では、Hpの機能的類似体は、天然型Hpの機能的断片である。天然型Hpの機能的断片は、断片が無細胞Hbと複合体を形成する能力を保持し、これによりその生物学的活性を中和する限り、任意の適する長さであり得る。
別の実施形態では、機能的類似体は、天然に存在する(天然型の)Hp分子とは異なるアミノ酸配列を有するペプチド(すなわち、コンパレーター)である。機能的類似体は、1つまたはそれ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9個、またはそれより多くの)アミノ酸置換により、天然型Hpのα鎖および/またはβ鎖のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する分子を含み得るが、ただし、前記差異は、類似体が無細胞Hbと複合体を形成し、これによりその生物学的活性を中和する能力を無効化しない、または完全には無効化しない。いくつかの実施形態では、機能的類似体は、天然型Hpと比較して、類似体が無細胞Hbと複合体を形成する能力を強化するアミノ酸置換を含む。一実施形態では、機能的類似体は、1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換により、天然型Hpのα鎖および/またはβ鎖のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する。本明細書で使用される場合、用語「保存的アミノ酸置換」とは、所与の位置において、アミノ酸の同一性を変化させて、それをほぼ等価なサイズ、電荷、および/または極性のアミノ酸に置き換えることを指す。アミノ酸の天然の保存的置換の例として、下記の8つの置換群(慣習的な1文字コードで表す):(1)M、I、L、V;(2)F、Y、W;(3)K、R、(4)A、G;(5)S、T;(6)Q、N;(7)E、D;および(8)C、Sが挙げられる。
一実施形態では、機能的類似体は、天然型Hpのα鎖および/またはβ鎖のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。「少なくとも85%」という場合、それには、例えば、最適なアライメントまたは最良適合分析を行った後の、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性または類似性が含まれる。したがって、一実施形態では、配列は、例えば最適なアライメントまたは最良適合分析を行った後に、本明細書において識別された配列と、少なくとも85%、好ましくは少なくとも86%、好ましくは少なくとも87%、好ましくは少なくとも88%、好ましくは少なくとも89%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、好ましくは少なくとも92%、好ましくは少なくとも93%、好ましくは少なくとも94%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、または好ましくは100%の配列同一性または配列相同性を有する。
用語「同一性」、「類似性」、「配列同一性」、「配列類似性」、「相同性」、「配列相同性」などは、本明細書で使用される場合、本明細書において別途記載されるように、アライメント済みの配列内の任意の特定のアミノ酸残基位置において、アミノ酸残基が、アライメント後の配列の間で同一であることを意味する。用語「類似性」または「配列類似性」は、本明細書で使用される場合、本明細書において別途記載されるように、アライメント済みの配列内の任意の特定の位置において、アミノ酸残基のタイプが配列間で類似することを表す。一実施形態では、アミノ酸配列は、改変が、非改変(天然型)Hpポリペプチドと比較したとき、改変後のポリペプチドの結合特異性または機能的活性に対して影響を及ぼさないように、その中に含まれるアミノ酸残基のいずれかを保存的に置換することによって改変される。
一実施形態では、機能的類似体は、類似体の安定性を増加させるか、または類似体の溶解度を増加させるために、天然型Hpと比較して、アミノ酸置換および/またはその他の改変を含む。機能的類似体は、天然に存在する化合物/ペプチドであり得るか、または当業者にとって公知の方法を使用して、化学合成により合成的に製造することができる。
Hpは、微生物内で、組換えタンパク質として好適に生成される場合もあり、それは単離可能、および所望の場合にはさらに精製可能である。組換えHpを産生させるための好適な微生物は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、細菌、酵母菌、もしくは菌類、真核細胞(例えば、哺乳動物細胞または昆虫細胞)、または組換えウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、セムリキ森林ウイルス、バキュロウイルス、バクテリオファージ、シンドビスウイルス、またはセンダイウイルス)が挙げられる。組換えペプチドを生成するための好適な細菌は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、大腸菌(E.coli)、B.サブチリス(B.subtilis)、またはペプチド配列を発現する能力を有する任意のその他のバクテリアが挙げられる。組換えペプチドを生成するための好適な酵母菌タイプの例証的事例として、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ属、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、またはペプチドを発現する能力を有する任意のその他の酵母菌が挙げられる。対応する方法は、当技術分野において周知されている。組換えにより生成されたペプチド配列を単離および精製するための方法も当技術分野において周知されており、例えばゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。
本明細書に記載されるように、組換えHpの単離を促進するために、融合ポリペプチドを作製することができ、その場合、Hpのペプチド配列またはその機能的類似体は、アフィニティークロマトグラフィーによる単離を可能にする異種ポリペプチドと翻訳において融合している(共有結合的にリンクする)。好適な異種ポリペプチドの例証的事例は、His-Tag(例えば、His。6個のヒスチジン残基)、GST-Tag(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)などである。
組換えHpを製造する場合、例えばコンビナトリアル化学の手段により製造するのに、またはきわめて変動性の構造についてハイスループットスクリーニング技術によって取得するのに、ファージライブラリーおよび/またはペプチドライブラリーも適する(例えば、Display:A Laboratory Manual by Carlos F.Barbas(Editor),et al.;およびWillats WG Phage display:practicalities and prospects.Plant Mol.Biol.2002 December;50(6):837-54を参照)。
組換えHpの例証的事例として、受託番号NP_005134(Morishitaら、2018,Clin.Chim.Acta 487,84-89により記載される)、および受託番号P00738を有するペプチドが挙げられる。
Hpは、融合タンパク質の一部として、Hxの文脈において本明細書に別途記載されるものを含む、1つまたはそれ以上の異種部分に融合、カップリング、さもなければ連結し得る。
Hpの文脈において、用語「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、それを必要としている対象に投与されたとき、Hpが、対象のCSF中に存在する無細胞Hbと結合し、そしてそれと複合体を形成し、これにより無細胞Hbのそうでなければ有害な生物学的効果を中和することを可能にするのに十分であるHpの量または濃度を意味する。治療有効量のペプチドは、いくつかの因子に依存して変化し得ることが当業者により理解されるが、その例証的事例として、Hpが対象に直接投与されるか、その投与法(例えば、髄腔内、頭蓋内、または脳室内)、処置される対象の健康および身体状態、処置される対象の分類群、出血の重症度(例えば、出血の範囲)、投与経路、CSFコンパートメント内の無細胞Hbの濃度および/または量、ならびに上記のいずれかの組合せが挙げられる。
Hpの治療有効量は、当業者により決定可能な比較的幅広い範囲に及ぶ。Hpの好適な治療有効量の例証的事例として、約2μM~約20mM、好ましくは約2μM~約5mM、好ましくは約100μM~約5mM、好ましくは約2μM~約300μM、好ましくは約5μM~約100μM、好ましくは約5μM~約50μM、またはより好ましくは約10μM~約30μMが挙げられる。
一実施形態では、Hpの治療有効量は、約2μM~約20mMである。一実施形態では、Hpの治療有効量は、約2μM~約5mMである。一実施形態では、Hpの治療有効量は、約100μM~約5mMである。一実施形態では、Hpの治療有効量は、約2μM~約300μMである。一実施形態では、Hpの治療有効量は、約5μM~約50μMである。一実施形態では、Hpの治療有効量は、約10μM~約30μMである。
一実施形態では、Hpの治療有効量は、出血後の対象のCSF内の無細胞Hb濃度に対して、少なくとも等モル量である。別の実施形態では、Hpの治療有効量は、約3μM~約300μMのCSF内無細胞Hbと複合体形成するのに十分な量である。CSF内無細胞Hbの濃度を測定する好適な方法は当業者にとって公知であり、その例証的事例は、Cruickshank AM.,2001,ACP Best Practice No166,J.Clin.Path.,54(11):827-830)、およびHugelshofer M.et al.,2018.World Neurosurg.;120:e660-e666)に記載されており、その内容は参照によって本明細書にそのまま組み入れる。
治療有効量のHpの実現は、本明細書に記載されるように、Hpまたはその機能的類似体が曝露されるCSFの最終容積に依存し得るものと理解される。例えば、Hpが成人ヒト対象に投与される(例えば、髄腔内に)場合、成人ヒト対象におけるCSFの平均容積が約150mLであることを考慮すると、約310μMのHp溶液、5mLを対象に投与することで、約10μMのHpの治療有効量が実現可能である。別の例証的事例では、本明細書に記載される方法は、50mLの対象由来のCSFを除去すること、および約30μMのHpを含む50mLの人工CSFを用いてそれと置換し、これにより対象のCSFコンパートメントにおいて約10μMのHpの治療有効量を実現することを含む。
Hpの投与量は、最適な治療応答を実現するように調整される場合もある。例えば、いくつかの分割された用量が、毎日、毎週、またはその他の適する時間間隔で投与される場合があり、または投与量は、状況の緊急性の示唆に従い比例的に減じられることがある。
Hpの文脈において、用語「治療有効量」は、それを必要としている対象に投与されるとき、対象のCSF中に存在するすべての無細胞Hbと複合体を形成し、そしてそれを中和するHpの量または濃度を意味するものではないものと理解される。いくつかの実施形態では、治療有効量のHpが、それを必要としている対象に投与されたときに、対象のCSF中への出血性脳卒中後に無細胞Hbにより媒介される、対象内の有害な二次神経学的転帰を最小限に抑え、無効にするか、さもなければ低下させるように、対象のCSF中に存在する十分量の無細胞Hbと複合体を形成し、そしてそれを中和することで十分である。対象のCSF中への出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を最小限に抑え、それを無効にするか、さもなければ低下させるのに必要とされる、処置後の対象のCSFにおける無細胞Hb濃度の低下は、本明細書に記載されるように、当業者にとってなじみ深い。一実施形態では、治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内無細胞Hbの量を、約8μM以下、好ましくは約7μM以下、好ましくは約6μM以下、好ましくは約5μM以下、好ましくは約4μM以下、好ましくは約3μM以下、好ましくは約2μM以下、またはより好ましくは約1μM以下のレベルまで低下させるのに十分である。一実施形態では、治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内無細胞Hbの量を、約7μM以下のレベルまで低下させるのに十分である。一実施形態では、治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内無細胞Hbの量を、約6μM以下のレベルまで低下させるのに十分である。
Hpの文脈において、用語「~を曝露すること(exposing)」とは、本明細書で使用される場合、HpがCSF中に存在する無細胞Hb(その主要な形態はoxyHbである)と結合し、そしてそれと複合体を形成し、これによりHb:Hp複合体の形成が、無細胞Hbの脳組織に対する、そうでなければ有害な生物学的効果を実質的に中和することが可能となるように、CSFをHpと接触させることを意味する。「実質的に中和する」とは、治療的Hpが存在しない場合に無細胞Hbが脳組織に及ぼす生物学的効果と比較して、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%を含む、少なくとも10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約15%~約25%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約25%~約35%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約35%~約45%、好ましくは約40%~約50%、好ましくは約45%~約55%、好ましくは約50%~約60%、好ましくは約55%~約65%、好ましくは約60%~約70%、好ましくは約65%~約75%、好ましくは約70%~約80%、好ましくは約75%~約85%、好ましくは約80%~約90%、好ましくは約85%~約95%、または最も好ましくは約90%~100%の低下として主観的または定性的に表されるような、無細胞Hbが脳組織に及ぼす有害な生物学的効果の低下を意味する。無細胞Hbの有害な生物学的効果の低下が測定可能または決定可能である(定性的または定量的に)方法は、当業者によってなじみ深く、その例証的事例は本明細書において別途記載される。
それを必要としている対象のCSFが治療有効量のHpに曝露される方式は、本明細書に記載されるように、例えば、前記曝露がそれを必要としている対象のCSFコンパートメント内で実施されるか(すなわち、in vivo)、または対象から得られたCSFにおいて体外的に実施されるか(すなわち、ex vivo)に応じて変化し得るものと理解される。前記曝露が、それを必要としている対象のCSFコンパートメント内で実施される(すなわち、in vivo)場合、Hpの投与経路は、CSFコンパートメント内でHpが無細胞Hbと接触するのが可能となるように選択される。好適な投与経路は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、髄腔内、頭蓋骨内、および脳室内が挙げられる。一実施形態では、治療有効量のHpは、例えば、出血性脳卒中後の対象内に、CSFを一時的に流出させ、そして頭蓋内圧を下げるために配置される外部脳室ドレイン経由で投与される。
一実施形態では、方法は、治療有効量のHpを対象に頭蓋内投与する工程を含む。
一実施形態では、方法は、治療有効量のHpを、対象に対して、髄腔内投与する工程を含む。一実施形態では、方法は、治療有効量のHpを、対象に対して、その脊椎管中に髄腔内投与する工程を含む。一実施形態では、方法は、治療有効量のHpを、対象に対して、そのクモ膜下腔中に髄腔内投与する工程を含む。一実施形態では、方法は、治療有効量のHpを、対象に対して、脳室内投与する工程を含む。
代替的にまたは付加的に、本明細書に記載される方法は、それを必要としている対象からCSFを取り出す工程、CSF内でHpが無細胞Hbと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、CSFを治療有効量のHpに曝露する工程、CSF内に形成されたHb:Hp複合体を除去してHb減少CSFを生成する工程、およびHb減少CSFを対象に投与する工程(例えば、髄腔内または脳室内)を含む。CSFをCSFコンパートメントから除去しても、CSFのまったく存在しないCSFコンパートメントが一般的にもたらされるわけではないものと理解され、少なくとも若干のCSFがCSFコンパートメント内に存続することに留意されたい。場合により、CSFコンパートメント内に存在し得る少なくとも若干量の残留Hbを取り除くために、CSFが取り出されたら、CSFコンパートメントを、薬学的に許容される洗浄溶液でリンスすることができる。さらに複合体形成させ、これによりCSFコンパートメント内に存在し得る少なくとも若干量の残留無細胞Hbを中和するために、洗浄溶液は、場合によりHpを含み得る。一実施形態では、洗浄溶液は、本明細書において別途記載されるような人工CSFである。
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、それを必要としている対象のCSFコンパートメントからCSFのサンプルを取り出す工程、HpをCSFサンプルに添加して、Hp富化CSFサンプルを取得する工程、Hp富化CSFサンプルを対象のCSFコンパートメントに投与し、これによって、Hpが対象のCSF内の無細胞Hbと複合体を形成し、これにより対象のCSF内の無細胞Hbを中和することを可能にするのに十分な期間、CSFコンパートメントを治療有効量のHpに曝露する工程、および場合により、上記工程を反復する工程を含む。好ましくは、CSFサンプルに添加されるHpの量は、対象に投与すると、対象のCSF内に治療有効量のHpをもたらすように決定される。したがって、CSFサンプル中に添加されるHpの量は、取り出され、そして対象に再投与されるCSFサンプルの容積に依存する。
一実施形態では、方法は:
(i)出血後の対象のCSFコンパートメントからCSFサンプルを取得する工程;
(ii)工程(i)のCSFサンプルにHpを添加して、Hp富化CSFサンプルを取得する工程;
(iii)Hp富化CSFサンプルを対象に投与し、これにより、対象のCSFコンパートメントにおいてHpが無細胞Hbと複合体を形成することを可能にするのに十分な期間、対象のCSFコンパートメントを治療有効量のHpに曝露する工程;および
(iv)場合により、工程(i)~(iii)を反復する工程
を含む。
取り出され、そして対象に再投与されるCSFの容積は、実質的に同一であるのが望ましい。例えば、50mLのCSFサンプルが対象のCSFコンパートメントから取り出される場合、Hpを含むCSFの全50mLの容積が対象に再投与される。しかしながら、容積に違いが生じたとしても、そのいずれもが有意な有害臨床転帰を惹起しない限り、容積は異なってもよいものと理解される。いくつかの実施形態では、対象に再投与されるCSFの容積は、対象から取り出されたCSFの容積よりも少ない。その他の実施形態では、対象に再投与されるCSFの容積は、Hpを単独で、または任意のその他の治療薬と組み合わせて添加することで余分の容積が生まれることから、対象から除去されたCSFの容積を上回る。
別の実施形態では、本明細書に記載される方法は、それを必要としている対象のCSFコンパートメントからある容積のCSFを取り出す工程、対象から取り出されたCSFの容積を、Hpを含むある容積の人工CSFと置換し、これにより、Hpが対象のCSF内の無細胞Hbと複合体を形成し、これにより対象のCSF内の無細胞Hbを中和することを可能にするのに十分な期間、対象のCSFを治療有効量のHpに曝露する工程を含む。好ましくは、人工CSF内のHpの量は、対象に投与されたら、対象のCSF内に治療有効量のHpをもたらすように決定される。したがって、人工CSFに添加されるHpの量は、対象に投与される人工CSFの容積に依存する。
一実施形態では、方法は:
(i)出血後の対象のCSFコンパートメントからある容積のCSFを取り出す工程;
(ii)Hpを含む人工CSFを提供する工程;
(iii)(ii)の人工CSFを対象に投与し、これにより対象のCSFコンパートメントにおいて、Hpが無細胞Hbと複合体を形成することを可能にするのに十分な期間、対象のCSFコンパートメントを治療有効量のHpに曝露する工程;および
(iv)場合により、工程(i)~(iii)を反復する工程
を含む。
対象に投与される人工CSFの容積は、対象から取り出されるCSFの容積と実質的に同一であるのが望ましい。例えば、50mLのCSFサンプルが対象のCSFコンパートメントから取り出される場合、治療有効量のHpを含む、約50mLの容積の人工CSFが、取り出されたCSFの容積と置換するのに使用される。しかしながら、容積に違いが生じたとしても、そのいずれもが有意な有害臨床転帰を惹起しない限り、容積は異なってもよいものと理解される。いくつかの実施形態では、対象に投与される人工CSFの容積は、対象から取り出されたCSFの容積よりも少ない。その他の実施形態では、対象に投与される人工CSFの容積は、対象から取り出されたCSFの容積を上回る。
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、CSFを、出血性脳卒中後の約21日以内にHpに曝露する工程を含む。本明細書で開示される別の実施形態では、方法は、CSFを、出血性脳卒中後、約2日間~約4日間、Hpに曝露する工程を含む。なおも別の実施形態では、方法は、CSFを、出血性脳卒中後、約5日間~約14日間、Hpに曝露する工程を含む。
一実施形態では、CSFが治療有効量のHpに曝露される期間は、少なくとも約2分(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14分など)である。一実施形態では、CSFが治療有効量のHpに曝露される期間は、少なくとも約4分である。別の実施形態では、CSFが治療有効量のHpに曝露される期間は、少なくとも約5分である。なおも別の実施形態では、CSFが治療有効量のHpに曝露される期間は、少なくとも約10分である。一実施形態では、CSFが治療有効量のHpに曝露される期間は、約2分~約45分、好ましくは約2分~約20分、またはより好ましくは約4分~約10分である。
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、CSFを治療有効量のHpに体外的に曝露する工程をさらに含む。
CSFがHpに体外的に(ex vivo)曝露される場合、治療有効量は、Hpに曝露されるCSFの容積に依存すると考えられ、CSFが、溶液の状態にあるかまたは基材上に固定化されたHp(例えば、アフィニティークロマトグラフィー)、および上記のいずれかの組合せに曝露されるかを問わない。例えば、無細胞Hbと複合体を形成させ、そしてアフィニティークロマトグラフィーにより無細胞Hbを除去するために、CSFがHpに曝露される場合、基材上に固定化されるHpの量は、初回通過期間中に無細胞Hbの完全な複合体形成を引き起こす必要はなく、複合体を形成させるために基材上を複数回通過させることが必要となり得、これにより実質的にすべての無細胞HbがCSFから取り除かれるものと考えられる。
一実施形態では、方法は、(i)出血性脳卒中後およびCSFをHpに曝露する前の、対象に由来するCSFサンプルを取得する工程;(ii)工程(i)で得られたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を測定する工程;および(iii)工程(ii)から得られた無細胞Hbの濃度に基づき、Hpの少なくとも等モル量を決定する工程を含む。CSFサンプル中の無細胞Hbの量を測定する好適な方法は、当業者にとって公知であり、その例証的事例は、Ohら(2016,Redox Biology,9:167-177)により記載されており、その内容は参照によって本明細書にそのまま組み入れる。
本明細書において別途指摘するように、CSF内でのHbと無細胞Hbとの複合体形成は、脳組織上において、無細胞Hbのそうでなければ有害な生物学的活性を中和する。本明細書に開示される方法に基づき形成された無細胞Hb:Hp複合体を抽出し、または取り除くことは一般的に不必要であるが、いくつかの事例では、前記複合体を取り除くことが望ましい場合もある。例えば、本明細書に記載される方法が、対象に由来するCSFを取り出し、そしてその後CSFをHpに体外的に曝露する工程を含む場合、CSF内で形成された無細胞Hb:Hp複合体を、CSFを対象に再投与するに前に取り除くことが望ましい場合もある。したがって、いくつかの実施形態では、方法は、CSF内に形成されたHp:無細胞Hb複合体を取り除く工程を含む。
一実施形態では、方法は:
(i)出血後の対象に由来するCSFを取得する工程;
(ii)CSFにおいて、Hpが無細胞Hbと複合体を形成するのを可能にする条件下で、工程(i)から得られたCSFをHpに曝露する工程;
(iii)Hp:無細胞Hb複合体を、工程(ii)の後のCSFから抽出して、工程(i)から得られたCSFと比較したときに、それより少ない量の無細胞Hbを有するHb減少CSFを取得する工程;
(iv)場合により、工程(ii)および(iii)を反復して、無細胞Hbを実質的に含まないHb減少CSFを取得する工程;ならびに
(v)工程(iii)または工程(iv)から得られたHb減少CSFを、対象のCSFコンパートメントに投与する工程
をさらに含む。
本明細書で使用される場合、「Hb減少CSF」とは、工程(iii)の前の無細胞Hbの量と比較したときに、CSFがそれよりも低い量の無細胞Hb有するように、ある量の無細胞Hbが除去されているCSFを意味する。用語「Hb減少CSF」は、無細胞Hbのすべてが、CSFから除去されていることを示唆するように意図するものではなく、したがって少なくとも若干の無細胞Hbが存在する実施形態を含むものと理解される。一実施形態では、Hb減少CSFは、対象から得られたCSF中の無細胞Hbの量と比較したとき、少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約45%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約55%、好ましくは少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、またはより好ましくは少なくとも約95%少ない無細胞Hbを含む。一実施形態では、Hb減少CSFは、対象から得られたCSF中の無細胞Hbの量と比較したとき、約5%~約10%、好ましくは約10%~約20%、好ましくは約20%~約30%、好ましくは約30%~約40%、好ましくは約40%~約50%、好ましくは約50%~約60%、好ましくは約60%~約70%、好ましくは約70%~約80%、好ましくは約80%~約90%、またはより好ましくは約90%~約99%少ない無細胞Hbを含む。
本明細書に別途記載されるように、Hb減少CSFは、場合により、CSFから追加の無細胞Hbを取り除くために、好ましくは無細胞Hbを実質的に含まないHb減少CSFを取得するために、工程(ii)および(iii)を反復する工程によりさらに処置されてもよい。「無細胞Hbを実質的に含まない」とは、Hb減少CSFが、対象から得られたCSF中の無細胞Hbの量と比較したときに、約70%~約80%、好ましくは約80%~約90%、またはより好ましくは約90%~約99%少ない無細胞Hbを含むことを意味する。
一実施形態では、方法は、工程(ii)および(iii)を少なくとも1回(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11回など)反復する工程を含む。一実施形態では、方法は、無細胞Hbを実質的に含まないHb減少CSFを取得するために、必要に応じて、工程(ii)および(iii)を少なくとも1回、好ましくは2回、好ましくは3回、好ましくは4回、好ましくは5回、好ましくは6回、好ましくは7回、好ましくは8回、好ましくは9回、またはより好ましくは10回反復する工程を含む。
無細胞Hbを実質的に含まないHb減少CSFを取得するために、工程(ii)および(iii)が反復される必要がある回数は、対象に由来するCSF中の無細胞Hbの濃度、採用されるHbの濃度、抽出方法などを含む(ただしこれらに限定されない)いくつかの因子に依存し得るものと理解される。いくつかの事例では、特に工程(ii)および(iii)の反復が、CSFを細菌、酵母菌、菌類、およびウイルスなどのような汚染物質に曝露させてしまうおそれがある場合、工程(ii)および(iii)を1回のみ実施するのが望ましい場合もある。
Hp:無細胞Hb複合体をCSFから抽出する好適な方法は当業者にとって公知であり、その例証的事例として、粒径排除クロマトグラフィーおよび/またはアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。粒径排除クロマトグラフィーは、遊離HbおよびHpに対して複合体のサイズが相対的に大きいことから、Hp:無細胞Hb複合体の同定、およびCSFにおけるその他のコンポーネントからの分離を可能にする。アフィニティークロマトグラフィーは、Hb:Hp複合体と特異的に結合し、遊離Hbとの結合は無視し得る結合剤を使用することにより、Hp:無細胞Hb複合体の同定、およびCSFにおけるその他のコンポーネントからの分離を可能にする。好適な結合剤として、当業者にとってなじみ深いように、抗体またはその抗結合性断片が挙げられる。
一実施形態では、工程(ii)は、工程(i)から得られたCSFをHpが固定化された基材上を通過させる工程を含む。これは、有利には、CSF中の無細胞HbがHpと結合し、これにより無細胞Hbを基材に固定化し、そしてHb減少CSFが基材から好都合に溶出するのを可能にする。したがって、一実施形態では、工程(ii)におけるHpは基材上に固定化されている。好適な基材は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例として、粒径排除クロマトグラフィー樹脂およびアフィニティークロマトグラフィー樹脂が挙げられる。一実施形態では、基材はアフィニティークロマトグラフィー樹脂である。
一実施形態では、工程(ii)は、CSF中の無細胞Hbが樹脂と結合するのを可能にする条件下で、工程(i)から得られたCSFをアフィニティークロマトグラフィー樹脂に通過させる工程を含み、工程(iii)は、工程(ii)後に樹脂からCSFを溶出させる工程を含み、および工程(iv)は、溶出したCSFを回収する工程を含む。
工程(vi)において、工程(iii)または工程(iv)から得られたHb減少CSFを、対象のCSFコンパートメントに投与する前に、本明細書に別途記載されるように、対象のCSFコンパートメント内に存在し、有害な二次神経学的転帰を惹起するおそれのある残留無細胞Hbを除去するために、Hb減少CSFに治療有効量のHpを添加するのが望ましい場合もある。したがって、一実施形態では、方法は、本明細書に別途記載されるように、工程(v)の前のHb減少CSFに対して治療有効量のHpを添加する工程を含む。
CSFが出血性脳卒中後の対象のCSFコンパートメントから除去されたとしても、CSFコンパートメント内に残留無細胞Hbが存在し得ることを、当業者は理解する。したがって、少なくとも若干の残留無細胞Hbを取り除くために、CSFコンパートメントをリンスし(CSFが上記工程(i)に基づき取り出されたら)、これにより、そのような残留無細胞Hbが惹起し得る有害な二次神経学的転帰を取り除き、さもなければ低下させるのが望ましい場合もある。したがって、一実施形態では、方法は、工程(i)の後に、洗浄溶液を用いてCSFコンパートメントを洗浄する工程をさらに含む。
好適な洗浄溶液は当業者にとってなじみ深い。一実施形態では、洗浄溶液は、本明細書に別途記載されるように人工CSFである。
一実施形態では、洗浄溶液はHpをさらに含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約2μM~約20mMのHpを含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約2μM~約5mMのHpを含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約100μM~約5mMのHpを含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約2μM~約300μMのHpを含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約5μM~約50μMのHpを含む。一実施形態では、洗浄溶液は、約10μM~約30μMのHpを含む。
一実施形態では、洗浄溶液は、出血後の対象のCSF内の無細胞Hbの濃度に対して少なくとも等モル量のHpを含む。別の実施形態では、洗浄溶液は約3μM~約300μMのHpを含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、対象のCSFから無細胞Hbを体外的に取り出す工程をなくし、むしろ本明細書に別途記載されるように、対象のCSFを人工CSFと置換するのが望ましい場合もある。したがって、一実施形態では、方法は:
(i)出血後の対象に由来するCSFを取り出す工程;
(ii)工程(i)の後に、対象のCSFコンパートメントを治療有効量のHpを含む洗浄溶液を用いてリンスする工程;
(iii)場合により、工程(ii)を反復する工程;および
(iv)工程(ii)または工程(iii)の後に、対象のCSFコンパートメントに人工CSFを投与する工程
を含む。
治療有効量のHpを洗浄溶液中に組み込むことにより、CSFコンパートメント内の残留無細胞Hbは、Hpと複合体形成し、これにより脳組織に対する無細胞Hbの有害な生物学的効果を中和し得る。
人工CSF
本明細書で開示される別の態様では、本明細書に記載されるように、Hxを含む人工脳脊髄液(CSF)が提供される。
人工脳脊髄液(aCSF)は、一般的に、塩含有物を含めることにより天然のCSFを模倣する液体である。aCSFの好適な組成物は当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、米国特許第20060057065号、およびMatznellerら(Pharmacology,2016;97(5-6):233-44、その内容は参照によって本明細書にそのまま組み入れる)に記載されている。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度に類似した濃度でNaClを含み得、そして天然のCSF内のNaClの濃度から約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度に類似した濃度でNaHCOを含み得、そして天然のCSF内のNaHCOの濃度から約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度に類似した濃度でKClを含み得、そして天然のCSF内のKClの濃度から約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度に類似した濃度でNaHPOを含み得、そして天然のCSF内のNaHPOの濃度から約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度に類似した濃度でMgClを含み得、そして天然のCSF内のMgClの濃度から約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。aCSFは、当業者にとってなじみ深いように、天然のCSFに見出される濃度に類似した濃度でグルコースを含み得、そして天然のCSF内のグルコースの濃度から約15%以内、より好ましくは約10%以内の濃度を一般的に含む。代替的に、人工CSFは、aCSFを対象に投与するのに使用される任意のカテーテル内でバクテリアが増殖する可能性を低下させるためにグルコースを省略することができる。
一実施形態では、人工CSFは、約2μM~約80mMのHxを含む。一実施形態では、人工CSFは、約2μM~約20mMのHxを含む。一実施形態では、人工CSFは、約100μM~約20mMのHxを含む。一実施形態では、人工CSFは、約2μM~約1,200μMのHxを含む。一実施形態では、人工CSFは、約5μM~約200μMのHxを含む。一実施形態では、人工CSFは、約10μM~約120μMのHxを含む。
一実施形態では、人工CSFは、出血後の対象のCFS内の無細胞ヘムの濃度に対して、少なくとも等モル量のHxを含む。別の実施形態では、人工CSFは、約3μM~約1,200μMのHxを含む。
一実施形態では、人工CSFは、Hpをさらに含む。一実施形態では、人工CSFは、約2μM~約20mMのHpを含む。一実施形態では、人工CSFは、約2μM~約5mMのHpを含む。一実施形態では、人工CSFは、約100μM~約5mMのHpを含む。一実施形態では、人工CSFは、約2μM~約300μMのHpを含む。一実施形態では、人工CSFは、約5μM~約50μMのHpを含む。一実施形態では、人工CSFは、約10μM~約30μMのHpを含む。
一実施形態では、人工CSFは、出血後の対象のCSF内の無細胞Hpの濃度に対して、少なくとも等モル量のHpを含む。別の実施形態では、人工CSFは、約3μM~約300μMのHpを含む。
一実施形態では、人工的CSFは、約2μM~約80mMのHx、および約2μM~約20mMのHpを含む。一実施形態では、人工的CSFは、約2μM~約20mMのHx、および約2μM~約5mMのHpを含む。一実施形態では、人工的CSFは、約100μM~約20mMのHx、および約2μM~約5mMのHpを含む。一実施形態では、人工的CSFは、約2μM~約1,200μMのHx、および約2μM~約300mMのHpを含む。一実施形態では、人工的CSFは、約5μM~約200μMのHx、および約2μM~約50mMのHpを含む。一実施形態では、人工的CSFは、約10μM~約120μMのHx、および約2μM~約30mMのHpを含む。
医薬組成物
本明細書で開示される別の態様では、本明細書に記載される方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防するための医薬組成物であって、本明細書に記載されるような治療有効量のHxおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
本明細書で開示される別の態様では、本明細書に記載される方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防する際に使用される医薬組成物であって、本明細書に記載されるような治療有効量のHxおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
一実施形態では、組成物は、約2μM~約80mMのHxを含む。一実施形態では、組成物は、約2μM~約20mMのHxを含む。一実施形態では、組成物は、約100μM~約20mMのHx、またはその機能的類似体を含む。一実施形態では、組成物は、約2μM~約1,200μMのHxを含む。一実施形態では、組成物は、約5μM~約200μMのHxを含む。一実施形態では、組成物は、約10μM~約120μMのHxを含む。
一実施形態では、組成物は、出血後の対象のCSF内の無細胞ヘムの濃度に対して、少なくとも等モル量のHxを含む。別の実施形態では、組成物は、約3μM~約1,200μMのHxを含む。
一実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるように、治療有効量のHpをさらに含む。
一実施形態では、組成物は、約2μM~約20mMのHpを含む。一実施形態では、組成物は、約2μM~約5mMのHpを含む。一実施形態では、組成物は、約100μM~約5mMのHpを含む。一実施形態では、組成物は、約2μM~約300μMのHpを含む。一実施形態では、組成物は、約5μM~約50μMのHpを含む。一実施形態では、組成物は、約10μM~約30μMのHpを含む。
一実施形態では、組成物は、出血後の対象のCSF内の無細胞Hbの濃度に対して少なくとも等モル量のHpを含む。別の実施形態では、組成物は、約3μM~約300μMのHpを含む。
一実施形態では、組成物は、約2μM~約80mMのHx、および約2μM~約20mMのHpを含む。一実施形態では、組成物は、約2μM~約20mMのHx、および約2μM~約5mMのHpを含む。一実施形態では、組成物は、約100μM~約20mMのHx、および約2μM~約5mMのHpを含む。一実施形態では、組成物は、約2μM~約1,200μMのHx、および約2μM~約300mMのHpを含む。一実施形態では、組成物は、約5μM~約200μMのHx、および約2μM~約50mMのHpを含む。一実施形態では、組成物は、約10μM~約120μMのHx、および約2μM~約30mMのHpを含む。
本明細書で開示される別の態様では、本明細書に記載される方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防するための医薬の製造における、本明細書に記載されるような治療有効量のHxの使用が提供される。
一実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、髄腔内投与用として製剤化される。好適な髄腔内送達システムは当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、Kilburnら(2013,Intrathecal Administration.In:Rudek M.,Chau C.,Figg W.,McLeod H.(eds)Handbook of Anticancer Pharmacokinetics and Pharmacodynamics.Cancer Drug Discovery and Development.Springer,New York,NY)により記載されており、その内容は参照によって本明細書にそのまま組み入れる。
別の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、頭蓋内投与用として製剤化される。好適な髄腔内送達システムは当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、Upadhyayら(2014,PNAS,111(45):16071-16076)により記載されており、その内容は参照によって本明細書にそのまま組み入れる。
別の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、脳室内投与用として製剤化される。好適な髄腔内送達システムは当業者にとってなじみ深く、その例証的事例は、Cookら(2009,Pharmacotherapy.29(7):832-845)により記載されており、その内容は参照によって本明細書にそのまま組み入れる。
好適な医薬組成物およびその単位投与剤形は、追加の活性化合物もしくは原理を伴い、または伴わずに従来の成分を従来の割合で含み得るが、またそのような単位投与剤形は、意図される1日の投薬量について、その採用された範囲と釣り合った任意の好適な有効量の有効成分を含有し得る。
キット
本明細書で開示される別の態様では、本明細書に記載されるような人工CSF、または本明細書に記載されるような医薬組成物を含むキットが提供される。本明細書に記載されるような活性な薬剤(Hxおよび場合によりHpを含む)は、活性な薬剤の同時、個別、または連続投与を可能にするために考案された、いくつかのコンポーネントからなるキットの形態で存在し得る。各担体、希釈剤、アジュバント、および/または賦形剤は、組成物のその他成分と適合性を有し、そして対象により生理学的に忍容されるように、「薬学的に許容され」なければならない。組成物は、単位投与剤形で好都合に提供され、そして薬学の分野において周知の方法により製造することができる。そのような方法は、有効成分を担体(1つまたはそれ以上のアクセサリー成分を構成する)と関連付ける工程を含む。一般的に、組成物は、有効成分を、液体の担体、希釈剤、アジュバント、および/もしくは賦形剤、または細かく分割された固体担体、またはその両方と均一かつ緊密に関連付け、次に必要な場合には生成物を成形することにより製造される。
診断方法
本明細書に別途記載されるように、本発明者らは、脳室CSF-Hbの濃度は、対象が出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するかどうか判定するのに使用可能であることを驚くべきことに見出した。
したがって、本明細書で開示される別の態様では、対象が、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)中への放出を伴う出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するかどうか判定する方法であって、
(i)出血性脳卒中後の対象に由来するCSFサンプルを取得する工程;
(ii)工程(i)で得られたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を測定する工程;および
(iii)工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を参照値と比較する工程
を含み、対象の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクが、工程(iii)における比較に基づき決定される、方法が提供される。
CSFサンプル中の無細胞Hbの量を測定する好適な方法は当業者にとって公知であり、その例証的事例は本明細書に別途記載されている。
一実施形態では、「参照値」は、健康な対象または健康な対象の集団のCSF内無細胞Hbの量を表す値である。この文脈において、試験対象由来のCSFサンプル内無細胞Hbの量が参照値を上回れば、対象は出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有することが示唆される。反対に、試験対象由来のCSFサンプル内無細胞Hbの量が参照値に等しいかそれよりも低ければ、対象は出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有さないことが示唆される。
一実施形態では、「参照値」は、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を有した対象または対象の集団のCSF内無細胞Hbの量を表す値である。この文脈において、試験対象由来のCSFサンプル内無細胞Hbの量が参照値と同等かまたはそれを上回れば、対象は出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有することが示唆される。反対に、試験対象由来のCSFサンプル内無細胞Hbの量が参照値よりも低ければ、対象は出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有さないことが示唆される。
一実施形態では、参照値は実質的にゼロであり、CSF内に検出可能な生理学的無細胞Hbが存在しないことを意味する。別の実施形態では、参照値は、出血性脳卒中を有するが、しかし有害な神経学的転帰を有さない1人またはそれ以上の患者のCSF内無細胞Hbのレベルを表す。この文脈において、いくつかの事例では、有害な神経学的転帰をもたらすことのない、許容し得るCSF内無細胞Hbの閾値レベルが存在し得るものと理解される。
一実施形態では、対象は、工程(ii)において決定されたCSFサンプル内無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判断される。
一実施形態では、有害な二次神経学的転帰は血管造影血管攣縮であり、そして対象は、工程(ii)において決定されたCSFサンプル内無細胞Hbの量が少なくとも約3μMである場合、血管造影血管攣縮を発症するリスクを有するものと判定される。
一実施形態では、有害な二次神経学的転帰は遅発性脳虚血であり、そして対象は、工程(ii)において決定されたCSFサンプル内無細胞Hbの量が少なくとも約5μMである場合、遅発性脳虚血を発症するリスクを有するものと判定される。
一実施形態では、有害な二次神経学的転帰は遅発性虚血性神経障害であり、そして工程(ii)において決定されたCSFサンプル内無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は遅発性虚血性神経障害を発症するリスクを有するものと判定される。
「少なくとも約7μM」とは、少なくとも約7μM、少なくとも約8μM、少なくとも約9μM、少なくとも約10μM、少なくとも約15μM、少なくとも約20μM、少なくとも約25μM、少なくとも約30μM、少なくとも約35μM、少なくとも約40μM、少なくとも約45μM、少なくとも約50μM等を含む。一実施形態では、工程(ii)において決定されたCSFサンプル内無細胞Hbの量が、少なくとも約7μM、好ましくは少なくとも約8μM、好ましくは少なくとも約9μM、好ましくは少なくとも約10μM、好ましくは少なくとも約15μM、好ましくは少なくとも約20μM、好ましくは少なくとも約25μM、好ましくは少なくとも約30μM、好ましくは少なくとも約35μM、好ましくは少なくとも約40μM、好ましくは少なくとも約45μM、またはより好ましくは少なくとも約50μMである場合、対象は出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される。
同様に、「少なくとも約3μM」とは、少なくとも約3μM、少なくとも約4μM、少なくとも約5μM、少なくとも約6μM、少なくとも約7μM、少なくとも約8μM、少なくとも約9μM、少なくとも約10μM、少なくとも約15μM、少なくとも約20μM、少なくとも約25μM、少なくとも約30μM、少なくとも約35μM、少なくとも約40μM、少なくとも約45μM、少なくとも約50μMなどを含む。一実施形態では、工程(ii)において決定されたCSFサンプル内無細胞Hbの量が、少なくとも約3μM、少なくとも約4μM、少なくとも約5μM、少なくとも約6μM、少なくとも約7μM、好ましくは少なくとも約8μM、好ましくは少なくとも約9μM、好ましくは少なくとも約10μM、好ましくは少なくとも約15μM、好ましくは少なくとも約20μM、好ましくは少なくとも約25μM、好ましくは少なくとも約30μM、好ましくは少なくとも約35μM、好ましくは少なくとも約40μM、好ましくは少なくとも約45μM、またはより好ましくは少なくとも約50μMである場合、対象は出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される。
本明細書に記載されるような出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを決定する方法は、有利には、対象が、その決定されたリスクを考慮しながら、該当する処置レジメンに対して階層化されるのを可能にする。例えば、対象が出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される場合には、対象は本明細書に記載される処置方法に対して階層化される。反対に、対象は、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有さないものと判定される場合には、対象は、無処置、または代替的かつそれほど侵襲的でない処置レジメンに対して階層化される可能性がある。
リスクを決定する方法は、好適には、受信者動作特性(ROC)曲線(例えば、ROCRパッケージ(v1.0-11)(Singら、2005年)、plotROCパッケージ(v2.2.1)(Sachs、2017年))、対応するブートストラップ曲線下面積(AUC)(pROCパッケージ(v1.16.2)(Robinら、2011年))、および/または最適なYouden index(ROCitパッケージ(v1.1.1)(Md Riaz Ahmed、2019年))を使用する工程を含み得る。出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを決定する方法の例証的事例についても、本明細書に別途記載される。
一実施形態では、方法は、有害な二次神経学的転帰のリスクを有するものと判定された対象を処置する工程をさらに含み、前記処置は、対象のCSFを、(i)本明細書に記載されるように、Hxが無細胞ヘムと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、治療有効量のヘモペキシン(Hx)に;および/または(ii)本明細書に記載されるように、ハプトグロビン(Hp)が無細胞Hbと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、治療有効量のHpに曝露する工程を含む。
本明細書で開示される別の態様では、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)中への放出を伴う出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰に対応する処置に対して対象を階層化する方法であって、(a)本明細書に記載されるように、対象が有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するかどうか判定する工程、および(b)本明細書に記載される方法に基づき、有害な二次神経学的転帰のリスクを有するものと判定された対象を処置する工程を含む方法が提供される。
当業者は、本明細書に記載される本発明は、特に記載されている形態以外の変形形態および改変形態を採りやすい傾向にあることを認識する。本発明は、精神および範囲に収まるすべてのそのような変形形態および改変形態を含むものと理解される。本発明には、本明細書において参照または表示される工程、特性、組成物、および化合物のすべても個別にまたは全体として含まれ、ならびに前記工程または特性の任意の2つまたはそれより多くのあらゆるすべての組合せもやはり含まれる。
例証目的に限定されるように意図されており、そして本明細書にこれまでに記載された一般性を制限するように意図するものではない下記の実施例を参照しながら、本発明の特定の実施形態をここで記載する。
SAH-SBIのバイオマーカーとしての脳室CSF Hb
この試験は開始前に倫理上の承認を受けた。インフォームドコンセントをすべての患者またはその法定代理人から得た。すべての実験を、生物安全性規則を順守しつつ、適する作業条件において実施した。結果はSTROBE宣言(von Elmら、2007年)に基づき報告される。
治験集団
臨床データおよびCSFサンプルを、3年間にわたり(2017年4月~2020年3月)、学術的三次医療センターの神経集中医療ユニットに入院した、aSAHを有するプロスペクティブな連続する患者コホートから取得した。適格性基準には:(i)年齢>18歳;(ii)クモ膜下出血の放射線学的診断;(iii)非動脈瘤性クモ膜下出血(例えば、外傷、中脳周囲クモ膜下出血)の除外;(iv)標準的な医療の一環としての外部脳室ドレイン(EVD)の挿入が含まれた。
臨床データの取得
患者データ収集を、CSFサンプリングとは独立に、またそれに対して盲検化して実施した。人口統計学の特徴(年齢、性別)、臨床スコアおよび指標(WFNSグレード、Hunt & Hessグレード、初期グラスゴーコーマスケール(GCS))、および放射線学的アセスメント(動脈瘤の場所、最大動脈瘤直径、血腫容積(下記参照)、脳室内出血(IVH)の存在、Fisherグレーディング、BNIグレーディング)を含むベースライン構成を診断時に評価した(図7A)。臨床データを、神経集中医療ユニットにおいて行われた標準化マルチモーダルモニタリングに基づき、SAH-SBIについて、14日間ハイリスク期において、および3ヶ月フォローアップの一環としてプロスペクティブに収集した(図7A)。一般的な患者管理は現行の国際ガイドラインに適合した(Diringerら、2011年;Connollyら、2012年)。DIND、DCI、またはaVSPの存在を毎日評価した。DINDは、新規限局性神経学的障害、または任意のその他の特定可能な原因、例えば水頭症、てんかん発作、または全身的要因等に起因しない、少なくとも2時間、少なくとも2ポイントにおけるGCSの減少として定義した。患者を臨床的に評価できなかった場合(例えば、鎮静状態)には、臨床データを入手不可(non-available;NA)として分類した。DCIは、外科的介入に帰属できない、CT/CTPまたはMRIにおける新規虚血または新規梗塞として定義した。aVSPの定義には、デジタルサブトラクション血管造影法(DSA)、磁気共鳴血管造影法(MRA)のコンピューター6断層撮影血管造影(CTA)に基づく大脳動脈の新規狭小化が含まれた。各日において適する画像化手順が存在しなかった場合、これをNAとして付記した。SAH-SBIは、DIND、DCI、およびaVSPの複合転帰として定義した。それに加えて、中大脳動脈、前および後大脳動脈の両方の流速を、TCDを使用して毎日評価した。
合併症(髄膜脳炎、中枢性塩類喪失、尿崩症、肺炎、たこつぼ型心筋症、非痙攣性てんかん重積状態、慢性水頭症、死亡)、および機能状態(拡張グラスゴー転帰尺度(GOSE)および修正ランキンスケール(mRS))を、3ヶ月フォローアップまで評価した。
クモ膜下血腫セグメンテーションおよび容量分析
初回CTスキャンに基づき、クモ膜下血腫の容積を、3DSlicerを使用しながら手作業により輪郭描写した(Kikinisら、2014年)。これを対象47例のうち46例(1例は初回MRIしか受けず、したがってこの分析から除外された)において実施した。輪郭描写前の前処理は脳抽出から構成された。200HUの閾値が設定されたスカルマスクから得られた最大キャビティーを抽出した(Weidertら、2020年)。したがって、ブレーンマスクに、オリジナルのCTスキャンを掛け算し、5×5×3カーネルを用いてメディアンフィルター処理した(図7B)。出血の容積を、ボクセルサイズにセグメント化されたボクセルの数を掛け算することにより決定した(図2C)。
CSFサンプリング
CSFサンプルを、動脈瘤修復後から開始してEVDから毎日収集した。第1日目(出血後の当日)と第14日目との間にサンプリング期間を設けるようにした。CSF収集を、臨床データに対して盲検化して実施した。サンプル収集直後に、CSFを1500Gで15分間遠心分離し(Capricorn CEP 2000 Benchtop centrifuge、Capricorn labs社、英国)、そして上清をさらなる分析用として-80℃で保管した。
CSF Hbおよびヘム代謝物の分光光度測定
全CSFサンプルの350~650nm間の視覚範囲内の吸収スペクトルを、Shimadzu UV-1800分光光度計(Shimadzu社、日本)上で測定した。異なるHb種およびその代謝物(oxyHb、metHb、ビリルビン、ビリベルジン)の定量を、スペクトラルデコンボリューションを使用して実施した。したがって、これまでの記載に従い、非負の最小二乗アルゴリズムを使用して、濃度既知の個々の物質の減滅曲線をCSFの減滅曲線に当て嵌めた(Deuelら、2015年)。
LC-MSMS CSFプロテオーム分析
ラベルフリープロテオミクス定量アプローチ(label-free proteomics quantification approach)を使用して、患者18例のCSFプロテオームの特徴づけを、観察期間(aSAH後の0、0.5、1、1.5、および2週目)に沿って5つの連続した時点において行った(図7C)。一般化可能性を改善するために、サンプルを2バッチにおいて処理したが、標準化後に分析する場合、それらを統合した(全85サンプル-バッチ1において48、バッチ2において37)。Hbは赤血球溶解後のCSF中に豊富に存在するが、イオン抑制を回避し、そして感度を増加させるために、分析前にハプトグロビンアフィニティーカラムを使用してそれを選択除去した(Hugelshoferら、2019年)。
トリプシンを用いたHb枯渇CSFサンプルの消化後に、マススペクトロメトリー分析を、Digital PicoViewソース(New Objective社)を備え、およびM-Class UPLC(Waters社)に接続したQ Exactive HFマススペクトロメーター(Thermo Scientific社)上で実施した。
A.サンプル調製
Qubit(登録商標)Protein Assay Kit(Life technologies社、Zurich、スイス)を使用して総タンパク質濃度を推定した。サンプルを、次にプロトコールのバージョンが最新の市販iST Kit(PreOmics Phoenix社、ドイツ)を使用して調製した。要するに、タンパク質、20μgを「溶解」バッファー中で可溶化し、95℃で10分間沸騰させ、そして超音波強度を85%に設定しながらHIFUを用いて30秒間処理した。その後、サンプルをカートリッジに移し、そして「消化」溶液、50μlを添加することにより消化した。37℃でインキュベートしてから60分後に、停止溶液、100μlを用いて消化を停止した。カートリッジ内の溶液を3800gでの遠心分離により除去した一方、iST-フィルターによりペプチドを保持した。最後に、ペプチドを洗浄、溶出、乾燥し、そしてLC-MS分析用としてバッファー(3%アセトニトリル、0.1%ギ酸)、20μL中で再可溶化した。
B.液体クロマトグラフィー-マススペクトロメトリー分析
マススペクトロメトリー分析を、Digital PicoViewソース(New Objective社)を備え、およびM-Class UPLC(Waters社)に接続したOrbitrap Fusion Lumos(Thermo Scientific社)上で実施した。2つのチャンネルにおける溶媒組成物は、チャンネルAについて0.1%ギ酸、およびチャンネルBについて0.1%ギ酸、99.9%アセトニトリルであった。サンプル毎に、希釈済みのペプチド、1μLを、市販のMZ Symmetry C18 Trap Column(100Å、5μm、180μm×20mm、Waters社)、それに後続してnanoEase MZ C18 HSS T3 Column(100Å、1.8μm、75μm×250mm、Waters社)にロードした。77分内で~22%B、10分内で32%B、そして10分かけて95%Bとするグラジエントにより、300nL/分の流速でペプチドを溶出させた。ランダムな順番でサンプルを取得した。マススペクトロメーターを、500’000の目標値まで蓄積した後に、200m/zにおいて120’000の分解能でフルスキャンMSスペクトル(300~1’500m/z)を取得するデータ依存モード(DDA)で稼働させた。データ依存MS/MSを、0.8Daのウィンドウによる四重極単離および35%断片化エネルギーを用いたHCDの断片化を使用しながら、線形イオントラップ内で記録した。イオントラップを、目標値10’000および最大インジェクションタイム50msによる高速スキャンモードで稼働させた。5’000を上回る強度を有する前駆体のみをMS/MS用として選択し、また最大サイクルタイムを3秒に設定した。荷電状態スクリーニングを可能にした。一重で、アサイメントされず、かつ7価よりも高い荷電状態を棄却した。MS/MS測定用としてこれまでに選択された前駆体質量を20秒間のさらなる選択から除外し、そして除外ウィンドウを10ppmに設定した。内部ロック質量較正を使用して、m/z371.1012および445.1200においてサンプルを取得した。ローカルラボラトリー情報マネジメントシステム(LIMS)を使用して、マススペクトロメトリープロテオミクスデータを取り扱った(Turkerら、2010年)。
C.タンパク質の同定およびラベルフリータンパク質の定量
取得された生のMSデータをMaxQuant(バージョン1.6.2.3)により処理し、一体型Andromeda検索エンジンを使用するタンパク質の同定がそれに後続した(CoxおよびMann、2008年)。スペクトルを、Swissprotホモサピエンス(Homo sapiens)参照プロテオーム(taxonmy 9606、2019年7月9日以降のバージョン)に対して検索し、その反転デコイ化fastaデータベース(reversed decoyed fasta database)および一般的なタンパク質汚染物質に連結した。システインのカルバミドメチル化を固定された修飾として設定した一方、メチオニン酸化およびN末端タンパク質アセチル化を変数として設定した。酵素特異性をトリプシン/Pに設定し、アミノ酸7個の最短ペプチド長および最大2個の切断失敗を許容した。MaxQuant Orbitrapのデフォルト検索設定を使用した。最大の偽陽性率(FDR)を、ペプチドについて0.01、およびタンパク質について0.05に設定した。ラベルフリー定量を可能にし、そして実行間の一致(match between runs)について2分ウィンドウを適用した。MaxQuant実験デザインテンプレートでは、個々の定量的値を取得するために、各ファイルは実験デザイン内で個別に保持される。MaxQuant結果をScaffold(Proteome Software Inc.社)にロードし、ペプチドおよびタンパク質の同定について妥当性確認した。少なくとも2つのペプチドを用いて同定されたタンパク質のみを、フォローアップ分析用として検討した。
タンパク質の個々のタンパク質強度を、ベースライン時(週0)における各タンパク質の平均強度に対して標準化し、そしてlog2変換した。全体的な倍率変化を、全タイムコースにわたりタンパク質毎に対数比の合計として計算した。さらに、時点毎に、標準化後のタンパク質強度を、ウィルコクソン順位和検定を使用してベースライン(週0)と比較し、そしてp値は、metapパッケージを使用して、すべての時点にわたり統合した(Dewey、2020年)。k平均分析を使用して、CSFプロテオームの時間的変化をクラスター化し、それによって最適なクラスターの数を、Factoextraパッケージ(v1.0.7)を使用しながらエルボー図(図7D)を用いて視覚的に決定した(KassambaraおよびMundt、2020年)。
ヘモグロビン、ハプトグロビン、ヘモペキシン、およびrLP
これまでに記載されたように、ex vivo実験で使用したHbは、期限切れのヒト血液濃縮物から精製した(Elmerら、2009年)。上記したように、スペクトラルデコンボリューションによりHb濃度を決定し、そして全ヘムのモル濃度として表す(1MのHb四量体は4Mのヘムと同等である)。Hxを、テストサンプルにおいて測定されたヘムの濃度に対して等モル濃度で使用した。これらの試験で使用したすべてのHbについて、第一鉄oxyHb(HbFe2+)の割合は、分光光度法により決定した場合、常に98%を上回った。ヒト血漿由来の精製済みハプトグロビン(表現型1-1)およびヘモペキシンを、CSL Behring社から取得した。
神経血管機能
血管機能アッセイ(図7E)を、現地屠殺場から得た新鮮なブタ脳底動脈を使用して実施した(n=12)。これまでに公表されたように、最適な受動的プレ張力(passive pretension)である8に達するまで血管を事前に引き伸ばした(Hugelshoferら、2020年)。次に、10μMのプロスタグランジンF2α(PGF2α;Sigma社、Buchs、スイス)を、プレ収縮剤として使用した。内因性NO非存在下で最大可能張力を決定するために、10μMの濃度のL-N5-(1-イミノエチル)オルニチンヒドロクロリド(L-NIO;Sigma-Aldrich社、Saint Louis、US-MO)を、実験終了時に添加した。記録した張力を各血管の個々のNO予備容量、すなわちPGF2α添加後のベースライン(0%)および実験終了時にL-NIOを添加した後の張力(100%)に対して標準化した(図7F)。実験期間において張力が連続的に失われ、その結果PGF2α最大値/L-NIO最大値の比が0.7未満の損傷血管を分析から除外した(図7F)。第1シリーズの実験を、aSAH後のSAH-SBIに関して高リスク期にある患者CSFの血管収縮能を評価し、およびこのプロセスにおけるoxyHbの特別な役割を評価するために実施した。この目的のために、高リスク期(4~14日目の間)由来の患者CSFを、ハプトグロビンアフィニティーカラムを使用して、Hbについて選択的に枯渇させた。実験の初期段階において、血管をHb枯渇CSF内中に浸漬した。その後、Hbについて、血管張力に対するその特異的効果を明確にするために予め枯渇させた量だけ正確にCSFに添加した。第2シリーズの実験においては、Hbへの曝露を増加させたときの血管張力に対する影響を評価した。クレブス-ヘンゼライトバッファー内での半log10 Hb希釈系列(10-4M~10-8M)を作製し、そしてHb濃度を漸増させながら血管を浸漬した。ハプトグロビン効果の評価では、第3シリーズの実験を、同一のHb用量漸増(ただし、ハプトグロビンの等モル添加を除く)を用いて実施した。
TBARS
CSFサンプルの酸化能力を、十分定義された再構成リポタンパク質と共にインキュベートした後に、最終的な脂質過酸化産物として生ずるマロンジアルデヒド(MDA)の形成を測定することにより定量した(rLP、CSL Behring社から取得、Bern、スイス)(図7G)。96ウェルプレートを使用して、CSF、25μLを、rLP、5μL(3mg/mL)と混合し、そして37℃で24時間インキュベートした。その後、チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)アッセイ法を使用して、MDAの濃度を測定した。要するに、750mMのトリクロル酢酸、125μLを含む1MのHClをサンプルに添加し、短時間ボルテックス処理した後、後続する25mMの2-チオバルビツール酸を含む1MのNaOH、100μLの添加がそれに後続した。
80℃、60分のインキュベーション期間の後、上清中のTBARSを定量した。MDAの絶対的定量では、532nmにおける吸収から600nmにおける吸収を差し引き、そしてモル吸光係数0.156mM-1・cm-1を用いて濃度を計算した。より高感度であるが、相対的定量を実現するために、励起波長として510nmを使用しながら、550nmにおける蛍光発光を測定した。
統計分析
統計分析を、R3.6.3(R Core Team、2020年)を使用して実施した。カテゴリーデータは絶対数(n)および割合(%)として、連続データは平均値と標準偏差(SD)として提供される。因子実験については、ezパッケージ(v4.4-0)を使用して反復測定ANOVAを実施した(Lawrence、2016年)。混合線形モデル分析を、lme4パッケージ(v1.1-23)を用いて実施した(Batesら、2015年)。遺伝子セット富化分析では、Broad Instituteから入手した遺伝子セット富化分析GSEAソフトウェア(Subramanianら、2005年)、およびMolecular Signature Database(MSigDB)のホールマーク遺伝子セット(Liberzonら、2015年)を使用した。インプットとして、同定されたタンパク質のランク化されたリストを使用し、ランクスコアはタンパク質の-log10(p値)および合計(対数比)の積として計算した。ベースライン測定(動脈瘤の場所、動脈瘤サイズ、血腫容積、IVHの存在)とCSF-Hbとの間、ならびにCSF-HbとSAH-SBIとの間の関連性を、mgcvパッケージ(v1.8-31)を使用して、aSAH後の日数と患者IDに対するランダム効果についてスプライン近似しながら、一般加法モデル(GAM)を使用して分析した(Wood、2017年)。SAH-SBIに対するCSF oxyHbの感度および特異性を、受信者動作特性(ROC)曲線(ROCRパッケージ(v1.0-11)(Singら、2005年)、plotROCパッケージ(v2.2.1)(Sachs、2017年)、対応するブートストラップ曲線下面積(AUC)(pROCパッケージ(v1.16.2)(Robinら、2011年)、および最適なYouden Index(ROCitパッケージ(v1.1.1)(Md Riaz Ahmed、2019年)を使用して分析した。TCD流速を、その臨床的アセスメント(病理学的または非病理学的)(感度および特異性を決定する役目を果たす)に従い最初にカテゴリー的に使用した。第2に、TCDのスケール化では、測定されたCSF Hbと病態生理学的に関連付けるために、TCD流速を連続的に使用し、各値をコホートの対応する血管(前、中、または後大脳動脈)上を流れる平均流量に対してスケール化した。最大スケール化TCDは、毎日測定された値をスケール化した後の最大値を表した。試験の探索的特徴に起因して、統計的有意性のレベルは定義せず、その代わりに結果をエビデンスのレベルに基づき解釈した:p<0.001:非常に強いエビデンス;p<0.01:強いエビデンス;p<0.05:エビデンス;p<0.1:弱いエビデンス;p>0.1:エビデンス無し(Bland、2015年)。
結果
A.治験集団
適格性基準を満たす連続的にスクリーニングされた患者52例のうち、47例が含まれた。
患者5例、またはその法定代理人がインフォームドコンセントを拒絶した。表1は患者コホートのベースライン構成を要約する。
Figure 2024504822000001
B.CSF-Hbおよびヘム代謝物の分光光度測定
スペクトラルデコンボリューションを用いた分光光度測定を、無細胞oxyHb(第一鉄型HbFe2+)、およびその下流代謝物であるビリベルジンおよびビリルビン、ならびに主要なHb酸化生成物であるmetHb(第二鉄型HbFe3+)を定量化するのに使用した。oxyHbの個々の時間的プロファイルおよびピーク濃度(0.6μM~242.2μM)は、きわめて変動的であった(図8)。ほとんどの患者において、aSAH後の最初の2~3日間、oxyHbは非常に低いままであったが、その後有意に増加し、9~12日の間でプラトーとなり、そしてその後減少した(図1A)。ビリルビンは1日目にすでに上昇し、最初の3~5日間において最も有意な増加を示した後、プラトーに達した(図1A)。このタイムコースは、クモ膜下腔内でのマクロファージによるファゴサイトーシスおよびヘム代謝を反映する。中間代謝物であるビリベルジンは、4日目以降顕著に上昇を開始し、そして12日目にそのピークに達する(図1A)。やはり、metHbも遅延性の増加に従い、aSAHから11日後にピークを有し、CSF内での無細胞oxyHbのゆっくりとした自動酸化と整合する(図1A)。
C.LC-MSMS CSFプロテオーム分析
定量的LC-MS/MS分析を、出血後の5時点において収集された、患者18例に由来するCSFサンプル85件において実施した。図1Bは、k平均クラスタリングにより4群に割り振られたCSFタンパク質、757個の時間的経過について例証する。図1Cは、患者毎に全サンプルにわたり合計した、標準化後シグナル強度のVolcanoプロットを示し、出血後2週間以内のタンパク質の蓄積または枯渇に関する全体像を提供する。クラスター1(緑色)は、経時的に不変のままであったタンパク質が含まれた。クラスター4(黄色)は、経時的に強度が減少したタンパク質を表す。これらは、主に、初回出血によりクモ膜下腔に進入し、そしてその後CSFから排出された血漿タンパク質であった。分子シグネチャーデータベース(Molecular Signature Database;MSigDB)のホールマーク遺伝子セットを使用して、ランク化されたタンパク質を遺伝子セット富化分析(GSEA)し(Liberzonら、2015年)、トップネガティブ富化を凝固に割り振った(ES=-0.66、FDR=0.007、図1D)。図1Eは、4つの選択された血漿タンパク質(HP、HPR、HPX、およびALB)の時間的経過を示す。クラスター2(紫色)には、経時的に顕著に蓄積した12例を含むタンパク質、そしてクラスター3(青色)には中程度に増加したタンパク質が含まれた。
GSEAにより、解糖(ES=0.78、FDR=0.016、図1F)およびヘム代謝(ES=0.74、FDR=0.096、図1H)が、細胞質タンパク質の放出を伴う赤血球(RBC)の溶解およびマクロファージによるHbの分解をそれぞれ表すトップ富化ホールマークとして特定された。図1Gは、RBCタンパク質であるカルボアンヒドラーゼ1(CA1)および2(CA2)、カタラーゼ(CAT)、ならびにアルドラーゼA(ALDOA)のタイムコースを示す。図1Iは、マクロファージタンパク質CD163、CSF1R、CD14、およびTIMP-1を示す。これらのタンパク質の蓄積は、出血後の最初の数日内にクモ膜下腔内にマクロファージが顕著に流入したことを指し示す。全体として、aSAH後の患者CSF内のプロテオーム動力学により、溶血ならびに適応性マクロファージ応答は、aSAH後にCSF腔内で生ずる2つの支配的プロセスであるということが裏付けられた。
D.CSF-Hbレベルの決定因子
CSF-Hb濃度の決定因子を推定するために、aSAH後の日数および患者IDに対するランダム効果についてスプライン近似を用いながら、一般加法モデル(GAM)を適用した。部分的依存性プロットを図2Bに示す。動脈瘤のサイズは、CSF-Hbの経過と関連するようには見えなかった。異なるいくつかの動脈瘤の場所のなかでも、中大脳動脈動脈瘤のみがHbレベルと負の関連性を有した(p=0.0018)。血腫の容積がCSF-Hbレベルとの強い関連性を示した。aSAH後の日数は、最初の3~5日間において負の関連性を有するが、その後弱い正の関連性が後続する日に認められた。この関連性は、クモ膜下腔内での溶血およびCSF-Hb生成の遅発的発現を反映する可能性がきわめて高い。IVHの存在はより高いレベルのCSF-Hbと関連した(p<0.0001)。IVHが存在する場合、CSF-Hbは初期の増加からプラトーを示した一方、IVHの非存在下では、増加はより遅発的かつ漸増的であるが、しかしおよそ第12日目には匹敵するピーク濃度で平準化する(図2C)。これは、CSFコンパートメント効果の可能性がきわめて高い(図2D)。
E.CSF-Hbの増加は二次脳損傷と関連する
3ヶ月フォローアップ時のSAH-SBI、レスキュー療法、合併症、死亡率、および機能的状態を代表するコホート転帰パラメーター(患者毎および日毎)を表3にまとめる。SAH-SBIにより階層化されたCSF-Hbレベルを、図3Aおよび図9に示す。aSAH後の日数および患者IDに対するランダム効果についてスプライン近似を用いたGAMに基づき、SAH-SBIの発生とCSF-Hb濃度との間の関連性について非常に強いエビデンス(p=0.00045)が見出された。図3Bは、CSF-HbおよびSAH後の日数に対するSAH-SBIの部分的依存性を示す。SAH-SBIに対するモニタリングマーカーとしての毎日測定CSF-Hbの検出力を推定するために、各受信者動作特性(ROC)曲線および対応するROC曲線下面積(AUC)を、DIND、DCI、aVSP(図9A~図9C、表2)および複合転帰SAH-SBI(図3C、表2)について計算した。データを高リスク期間(4~14日目)に限定し、出血後の最初の数日においてHbレベルが一般的に低いことにより導入される潜在的バイアスを回避することで、再計算したモデルにおいて高い診断正確性が不変のままに保たれた(図9D)。ビリルビン、ビリベルジン、およびメトヘモグロビンは、oxyHbよりも低い診断正確性を有した(図9E~図9G)。最適なYouden Indexを演算することにより、SAH-SBIに対してCSF-Hb、7.1μMの値が得られた(図3C)。aVSP、DCI、およびDINDの個々の転帰について、最適なYouden Indexは、それぞれ3.4、5.5、および7.1μMであった(図9A~図9C)。
Figure 2024504822000002
Figure 2024504822000003
臨床診療におけるその高頻度の使用を前提とすれば(Diringerら、2011年;Connollyら、2012年)、患者コホートにおける臨床および放射線学スコアならびに毎日のTCD測定の診断正確性を評価した。臨床および放射線学スコアは予測品質不良を示した(表2、図9H~図9K)。TCD測定は、SAH-SBI、aVSP、DCI、およびDINDに対して高い特異性を示した。しかしながら、TCDの感度は最低限度であった(表2)。
高CSF-Hbレベルも、3ヶ月フォローアップにおけるGOSEスコア(p=0.0056、図3D)およびmRSスコア(p=0.0016、図9L)により表現される臨床転帰の不良に関連した。
F.脳底動脈血管収縮および脂質過酸化は患者CSF-Hbの濃度範囲内で生ずる
データは、無細胞HbはSAH-SBIの上流メディエーターであることを示唆する。この関連性の妥当性を裏付けるために、患者コホート内のCSF-Hb濃度範囲に一致するHbへの曝露を用いて、ex vivo血管収縮および脂質過酸化を調べた。PGF2αにより事前収縮させたブタ脳底動脈を用いた新規血管機能モデルを確立し、そして実験終了時に内在する内皮NOS(eNOS)応答により拡張させた。この構成は、内因性NO予備容量に対するHbの効果について調査を可能にした。補充的NOドナーは使用しなかった。
図4Aは、10-6.5~10-6MのoxyHbにおいて血管張力の急激な増加を伴い、そして10-5MのoxyHbにおいて最大収縮に到達するシグモイド用量応答曲線を示す。CSF-Hbのカテゴリー対して最大スケール化患者TCD値をプロットしたとき、ほぼ同一の曲線が取得された(図4B)。Ex vivo血管収縮アッセイで使用された濃度ステップに一致するようにCSF-Hbカテゴリーを選択した。aVSPを有する患者(赤色のドット)は、概ね10-5M以上のCSF-Hbを有した。oxyHbと、不飽和ホスファチジルコリン(in vivoでのHb過酸化反応に対する主要な生理学的脂質基質と考えられる)を含有する再構成されたリポタンパク質とからなる混合物内でのTBARSの生成についても測定した(Deuelら、2015年)。図4Cに示す用量反応性実験は、MDA形成における最も急激な増加が、一連の異なる反応インキュベーション時間にわたり、10-5.5~10-5MのoxyHbにおいてやはり生じたことを実証する。図4Dは、本発明者らの患者のCSF-Hb濃度を、上記パラメーターの値をプロットしたx軸と同一のx軸にプロットする。図4Dは、SAH-SBIを有する患者とSAH-SBIを有さない患者とを区別する、CSF-Hbに対する計算後のカットオフ濃度(最適なYouden Index)は、ほぼ最大の脳底動脈血管収縮、TCD値、およびTBARSの生成と一致することを示す。
全体として、血管機能および脂質過酸化試験は、SAH-SBIを有する患者における関連するCSF-Hb濃度と重複する臨界変曲点を示唆する。
G.CSF-Hbの枯渇および中和は病理学的血管収縮および脂質過酸化を緩和する。
患者内のCSF-HbをSAH-SBI関連の病態生理学と機構的にリンクさせるために、一連のHb枯渇および中和実験を実施した。ハプトグロビンカラムによりCSF-Hbが枯渇したCSFに浸漬されたブタ脳底動脈セグメント(図5A)は、高度に精製されたHbがオリジナルのCSF-Hb濃度まで補充された同一CSFサンプルに浸漬されたセグメントよりも有意に低い収縮力を有した(図5B)。この実験構成は、ハプトグロビンカラムにより血管作用物質の潜在的非特異的除去についてコントロールする。可溶性ハプトグロビン1-1(Hp1-1)の抗血管攣縮効果を確認するためにHb用量応答実験も反復した。Hb濃度範囲全般において、Hp1-1は脳底動脈の収縮力を有意に減弱させた(反復測定分散分析、p<0.001)(図5C)。
aSAH後の患者から得たCSFサンプルの酸化能力についても定量した。ベースラインCSF(0日目)と比較して、リポタンパク質を高リスク期に収集されたCSFサンプルに曝露した後、MDA生成物の可変性の増加が判明した(0.5~2週;図5D)。Hp1-1をCSF-Hbに対して等モル濃度で添加すると、MDA形成を効果的に減弱した。特に、ヘモペキシンを等モル濃度で添加すると、MDA形成のなおもより強い減弱を示した。
患者CSFサンプルにおけるヘモグロビンおよびヘムスカベンジャータンパク質の定量的評価
A.CSFサンプルにおけるヒトHp、Hpx、およびアルブミンの定量
CSFサンプル、10マイクロリッターを清浄なエッペンドルフチューブ内に配置し、その後、タンパク質を沈殿させるためにMeOH、80μLを添加した。メタノールを遠心分離後に除去し、そしてペレットを風乾し、その後、重同位元素標識ペプチド(ヒトハプトグロビン、ヘモペキシン、およびアルブミンに対して特異的であり、また内部標準として使用される)を含有する50mMのNHHCO/0.16%のproteaseMAX中に再懸濁した。56℃/550rpmで45分間インキュベートした後、0.5MのDTTを添加することによりサンプルを還元した(56℃/550rpm、20分間)。次に、0.5MのIAAを添加し、そして遮光、RTで20分間インキュベートすることによりサンプルをアルキル化した。トリプシン消化を37℃/550rpmで実施し、そしてギ酸添加により3時間後に停止した。遠心分離後、サンプルをC18カラム上で速やかに分離した(AdvanceBio Peptide Mapping、2.1×150mM)。Agilent1290 Infinity II-6550 iFunnel QTOF LC-MSシステムを使用して測定を実施した。
データを、Agilent MassHunter Quantソフトウェアを使用しながら、アナライトおよび内部標準のピーク面積を計算することにより分析した。各標準サンプルについて、内部標準に対するアナライトの平均応答比を濃度に対してプロットすることにより、標準曲線をAgilent MassHunter Quantにおいてタンパク質毎に作成した。CSFサンプル中のアナライト濃度を、標準曲線式を使用して逆算した。
B.CSFにおける遊離ヘモグロビンおよびハプトグロビン結合ヘモグロビンの決定
Hb(無細胞Hb)のHp結合および未結合分画を、LPG-3400SDクォータナリーポンプおよびフォトダイオードアレイ検出器(DAD)に連結したUltimate3000SD HPLC(ThermoFisher社)を使用しながら、SEC-高性能液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)により決定した。CSFサンプルおよびHb標準を、Diol-120(3μm、300×8.0mm)カラム(YMC CO Ltd.社)上、移動相としてPBS、pH7.4(Bichsel社)を用いながら、1mL/分の流速で分離した。すべてのサンプルについて、2つの波長を記録した(λ=280nmおよびλ=414nm)。CSF内の結合および未結合Hbを、両ピークのピーク面積を計算することにより決定した(Hb:Hpの場合、Hp表現型に応じてリテンションタイム7~8分;無細胞Hbの場合、リテンションタイム10分)。CSFサンプルから得られた値を、濃度に対してプロットしたピーク面積に基づく標準曲線を生成することにより内挿した。
C.CSF内ヘム結合型ヘムタンパク質の決定
ヘム結合型ヘムタンパク質を、LPG-3400SDクォータナリーポンプおよびフォトダイオードアレイ検出器(DAD)に連結したUltimate 3000SD HPLC(ThermoFisher社)を使用しながら、SEC-高性能液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)により決定した。CSFサンプルおよびヘム標準を、Diol-120(3μm、300×8.0mm)カラム(YMC CO Ltd.社)上、移動相としてPBS、pH7.4(Bichsel社)を用いながら、1mL/分の流速で分離した。すべてのサンプルについて、2つの波長を記録した(λ=280nmおよびλ=414nm)。CSF内のヘムタンパク質を、両ピークのピーク面積を計算することにより決定した(ヘム結合型ヘムタンパク質の場合、リテンションタイム9分;無細胞Hbの場合リテンションタイム10分)。CSFサンプルから得られた値を、濃度に対してプロットしたピーク面積に基づく標準曲線を生成することにより内挿した。
D.ヒトCSFサンプル内ヘモペキシン:ヘム複合体の検出
CSFサンプル、50マイクロリッターを、清浄なエッペンドルフチューブ内に配置し、その後、バッファーA(Multiple Affinity Removal Systems、Agilent社)、150μLを添加した。第1のクロマトグラフィー工程では、存在量が非常に大きいヒトタンパク質を枯渇させたが、それを2つのLPG-3400SDクォータナリーポンプおよびフォトダイオードアレイ検出器(DAD)に連結したUltimate 3000SD HPLC(ThermoFisher社)上、製造業者のプロトコールに従い実施した。要するに、希釈した血漿サンプルを、ヒトアルブミンおよびIgGを枯渇させる多重親和性除去カラムに注入し(ヒトIgG/HSA、4.6×50mM、Agilent社)、そしてバッファーA(Multiple Affinity Removal Systems、Agilent社)を移動相として用いながら、0.25mL/分の流速で分離した。枯渇したCSFを新鮮なHPLCバイアル内に収集し、再注入し、そしてDiol-300(3μm、300×8.0mm)カラム(YMC CO Ltd.社)上、移動相としてPBS、pH7.4(Bichsel社)を用いながら、1mL/分の流速で分離した。すべてのサンプルについて、2つの波長を記録した(λ=280nmおよびλ=414nm)。ヘモペキシン:ヘム複合体の量を、複合体のピーク面積を計算することにより決定した(リテンションタイム9分)。枯渇したCSFサンプルから得られた値を、濃度に対してプロットしたピーク面積に基づく標準曲線を生成することにより内挿した。
結果
14日間にわたり収集されたaSAH患者28例から得られたCSFサンプルにおいて、無細胞ヘモグロビンを評価した(図11)。CSFサンプル中の無細胞Hbを定量する方法論は、上記実施例1に記載されるコホートに適用された方法とは異なる(コホートは同一)ものの、結果は完全に一致する(相関係数(r)=0.96)。再度、データは、無細胞Hbレベルは経時的に増加し、そしておよそ10日目(1.5週目)にピークに達することを実証した。対照的に、血液がCSF中に浸入することに起因して、ハプトグロビンおよびヘモペキシン濃度は、健常対照者と比較して非常に早い時点において増加した。両スカベンジャータンパク質は、ヘモグロビンレベルに対して逆動力学を示し、溶血の遷延に起因する枯渇が示唆される。アルブミン濃度はタイムコース全体を通じて同程度にとどまったが、しかし健常対照者CSFサンプルと比較した場合、有意に増加した。
次のステップでは、スカベンジャータンパク質であるハプトグロビンおよびヘモペキシンを、ヘモグロビンまたはヘムとの複合体としてのその存在に関して調査した。全体的に、両タンパク質の動力学に基づき予測されるように、値は非常に低く、また大部分のデータポイントは標準曲線外に内挿された。無細胞Hbデータと総合すれば、患者CSF内で両タンパク質が明確に検出される早期の時点においては、標的はまだ存在せず、またHbレベルが増加している後期の時点においては、両スカベンジャーはすでに枯渇しており、CSFから排出されていることが示唆される。したがって、これらのデータは、天然Hb解毒経路は完全に飽和しており、スカベンジャータンパク質は枯渇していることを示唆する。中間ヘム保管タンパク質であるアルブミンが、試験全体を通じて上昇することが判明したが、また無細胞HbまたはHp結合型Hb以外のヘム結合タンパク質であるヘムタンパク質の追加調査から、CSF内の総アルブミンと類似したパターンが明らかとなった。ヘモペキシンに結合したヘムは非常に低いか、または存在さえしないものと同定されたので、これらのデータは、検出されたヘムタンパク質の大部分は実際にはアルブミンに結合したヘムであることを示唆する。ヘモペキシンとは対照的に、アルブミンに結合したヘムは、鉄媒介式の毒性になおも関与することができ、したがってaSAH患者における二次脳損傷の主要な寄与因子の1つと考えられる。これらのデータより、aSAH患者におけるヘム媒介式の酸化的障害をさらに低下させるためにヘモペキシンを使用することが支持される。
ヘム毒性/ヘモペキシン保護
A.線条体内注射モデル
野生型オスC57BL/6Jマウス(10~12週齢)をCharles River社(Sulzfeld、ドイツ)から入手し、University of Zurich(LASC)の動物施設において維持し、そしてスイス連邦家畜局(Swiss Federal Veterinary Office)のガイドラインに基づき処置した。
マウスを、100%の酸素中で気化されたイソフルラン(誘発の場合4~5%、維持の場合1~2%;Baxter Healthcare Co.社、Deerfield、IL、米国)で麻酔した。外科手技全体を通じて、体温を直腸プローブを用いてモニタリングし、そして電子サーモスタットコントロール式の加温ブランケットを使用しながら一定に維持した。麻酔したマウスをモーター付き定位固定フレーム(Stoelting社、Dublin、Ireland)内に配置し、そして長さ1cmの正中線皮膚切開を行った。頭蓋骨を覆う軟組織を除去した後、ブレグマにフレームを合わせ、そして小さな頭蓋穿孔を標的に対する進入ポイント上部にドリル穿孔した。次に33G針を、線条体(ブレグマ座標:2mm ML、0.5mm AP、3.5mm DV)内にゆっくりと前進させ(0.1mm/秒)、それに後続して、ヘム-アルブミン(1mM)、ハプトグロビン(5mM)(タンパク質コントロール群)、またはヘム-ヘモペキシン(1mM)、10μLを、輸液速度100nl/秒で注射した。針をその場に5分間留置し、次にゆっくりと取り出し、そして皮膚切開部を、縫合糸を用いて閉鎖した。外科手技の後、動物を加温した覚醒ボックス内に配置し、そして動物が完全に回復し、そしてそのホームケージ(homecage)に戻すことが可能になるまでモニタリングした。
B.行動試験
オープンフィールド探索試験を、拡散照明(アリーナの中央部において測定した場合、およそ35lx)の下、試験室内に位置する不透明アクリルガラスからなる4つの等しい四角形アリーナ(40×40×35cm(高さ))内で実施した。デジタルカメラを、4つのアリーナの上部に直接取り付けた。画像を5Hzの速度で捕捉し、そしてEthovision(Noldus社、オランダ)トラッキングシステムが稼働するPCに伝送した。基礎的な歩行活動を測定する場合、動物をアリーナ中央部に静かに配置し、そして15分間探索できるようにした。5分間の環境順化期後に開始して、10分間に移動した総距離(cm表示)を測定した。
ロータロッド行動試験では、マウスを回転シリンダー上に配置し、したがって強制的に歩行させる。これは、強制的歩行活動の評価を可能にする。シリンダーの回転を、300秒の期間おいて、1分間当たり5回転(開始時)から最大40回転(終了時)まで加速させる。マウスがシリンダーから落下するまでの時間を測定する。
個々の神経学的障害に関して、マウスにビーム歩行試験を施した。その場合、マウスは挙上させたビームを横断して安全な場所(小型シェルター)に到達しなければならない。ビームは、長さ100cmおよび幅13mmを有する。アセスメント期間中、運動機能を、処置に対して盲検化された治験責任医師2名によりスコア化した。
C.MRIプロトコール
マウスを、100%の酸素中で気化されたイソフルラン(誘発の場合4~5%、維持の場合1~2%;Baxter Healthcare Co.社、Deerfield、IL、米国)で麻酔した。画像化手順全体を通じて、体温を直腸プローブを用いてモニタリングし、そして加温ブランケットを使用しながら一定に維持し、そして呼吸数をプレチスモグラフィーにより記録した。マウスを、7T小型動物用MRIスキャナー(Brucker社、ドイツ)内に配置した。T2、ASL、およびDWI画像を、標準化されたプロトコールに従い記録した。
結果
図12に示すように、オープンフィールド試験(図12A)、ロータロッド試験(図12B)、およびビーム歩行試験(図12C)の低下により証明されるように、ヘムは、線条体内注射から24時間後のマウスにおける神経学的機能に障害を及ぼした。対照的に、ヘム:Hx複合体を線条体内注射されたマウスは、同一時点(24時間)における神経行動学的活動において障害を示さなかった。神経学的機能の障害は、ヘムを線条体内注射されたマウスの放射線学的変化と関連し、病変周囲の浮腫、ADCマップにおける拡散制限、および動脈スピンラベル標識(ASL)画像上の限局性潅流障害(図13)が含まれた。ヘム:Hpxを線条体内注射されたマウスでは、軽微な放射線学的変化のみが認められた。図14に示すように、放射線学的変化を定量化することにより、ヘムの線条体内注射は、大脳浮腫の形成および潅流の局部的低下(ヘム:Hpxを注射されたマウス内には存在しない)と関連することが確認された。
考察
本発明者らはSAH-SBIに対するバイオマーカーとして脳室CSF-Hbを同定したが、それは他の確立された方法の診断正確性を驚異的に凌駕する。臨床的に重要な濃度範囲内において、CSF-Hbは血管収縮を誘発し、そして不飽和脂質をex vivoで酸化することから、CSF-Hbは、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)内への放出を伴う出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰の上流メディエーターとしての役割を演ずることが示唆される。高CSF-Hbと有害な臨床転帰との強い関連性、基本的な病態生理学的根拠、ならびにヘモペキシンおよびハプトグロビンの好ましい効果より、CSF-Hbは、適するバイオマーカーとして、およびSAH-SBI対するリスクに晒されている患者における標的として位置付けられる。
出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰、例えばDIND、DCI、およびaVSP等に対するその高い診断正確性に加えて、CSF-Hbの追加の長所は、その単純かつ信頼性のある分析論にある。精密なCSF-Hb値は、単純な2工程手順(CSFから細胞およびデブリを取り除くための遠心分離工程、ならびに後続する自動化されたスペクトラルデコンボリューションを用いた分光光度測定から構成される)で、ICUにおいて決定可能である。さらに、分光光度測定の基礎となる物理法則は、標準曲線または較正サンプルのパラレル測定を行わずしてCSF-Hbの絶対的な定量を可能にする。全体として、この手順は、分析コストおよび稼働時間を有意に低下させ、そして広範囲に及ぶ適用可能性および受け入れ可能性を増強し得る。
本発明者らは、CSF-Hbは患者CSFにおける主要な血管収縮物質であることも明らかにした。さらに、ex vivoでの血管攣縮モデルにおけるHb濃度のアクティブダイナミックレンジは、大脳動脈内のTCD流動速度および本発明者らの患者コホートにおけるSAH-SBDの有無を判定する臨界変曲点とオーバーラップする。同一の臨床的に重要な濃度範囲内において、CSF-Hbは脂質酸化剤としてきわめて活性であることが判明し、酸化性のHb毒性は、非虚血性神経傷害に寄与することが示唆される。患者CSFにおける脂質酸化活性は、下流Hb代謝物であるヘムに少なくとも一部起因した。ヘモペキシンによるその選択的中和は、MDAの形成を実質的にブロックした一方、ハプトグロビンは部分的な阻害をもたらした。
本明細書で開示されるデータは、CSF-Hbは、SAH-SBIを予防および処置するための好適な薬物標的であることを実証する。これは、CSF-Hbと有害な臨床転帰との強い関連性、合理的病態生理学、ならびに臨床的に重要な毒性範囲においてヘモペキシンおよびハプトグロビンを用いたCSF-Hb中和の好ましい機能的効果により支持される。今日まで、aSAH後のSAH-SBIの発生を低下させる唯一の薬物は、カルシウムチャネル遮断薬ニモジピン(クラスI、レベルA)である。ニモジピンは臨床転帰に対してプラスの効果を有するものの、aVSPの発生を防止しない。様々な薬物、CSFドレナージ、クモ膜下ラバージュ、終板開窓術、または頭部振盪の予防効果に関するこれまでの試験は、SAH-SBIのリスクに対する有意な効果をいまだ示していない。すでに症候性の患者では、治療オプションは、局所的脳血流を改善するための非因果的レスキュー療法に限定される。
本明細書に記載されるCSF分析において、内因性ハプトグロビンは、aSAH後の最初の数日以内に、無細胞Hbが関連して生成する前にCSFから排出されることが明らかとなった。したがって、内因性ハプトグロビンの保護機能は無視し得ると思われる一方、外因性ハプトグロビンは、臨床的に重要なCSF-Hb濃度範囲内において抗血管攣縮的および抗酸化的効果を提供する。思いがけず、ヘムスカベンジャータンパク質であるヘモペキシンはハプトグロビンの酸化防止機能を凌駕したが、そうしたことは、酸化または分解されたCSF-Hbからヘムの一部がすでに放出され、低親和性ヘム結合タンパク質と会合したまま存続する酸化性遊離ヘムのプールを形成している可能性があることを示唆する。これらのデータは、aSAHの文脈においてハプトグロビンおよびヘモペキシンを治療的に併用すれば、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰に対する相乗的保護を提供するものと期待されることを示唆する。
本発明者らは、ヘモペキシンは、線条体内注射後に生ずる、神経学的機能のヘム媒介式の障害を無害化することも明らかにした。この効果は放射線学的変化と相関関係を有し、ヘムを線条体内注射されたマウスは、病変周囲の浮腫、ADCマップにおける拡散制限、および動脈スピンラベル標識(ASL)画像上の限局性潅流障害を示した一方、ヘム:Hpx複合体を線条体内注射されたマウスでは、これらの有害な放射線学的変化は概ね存在しなかったことに留意されたい。
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Claims (138)

  1. 血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)中への放出を伴う出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防する方法であって、ヘモペキシン(Hx)が無細胞ヘムと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、それを必要としている対象のCSFを治療有効量のHxに曝露する工程を含む方法。
  2. 出血性脳卒中は、天然に生じる出血または外傷性出血である、請求項1に記載の方法。
  3. 出血性脳卒中は、脳室内出血またはクモ膜下出血である、請求項1または請求項2に記載の方法。
  4. クモ膜下出血は、動脈瘤性クモ膜下出血である、請求項3に記載の方法。
  5. 有害な二次神経学的転帰は、遅発性虚血性神経障害(DIND)、遅発性脳虚血(DCI)、神経毒性、炎症、一酸化窒素枯渇、酸化性組織傷害、脳血管攣縮、脳血管反応性、および浮腫からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 有害な二次神経学的転帰は、脳血管攣縮である、請求項5に記載の方法。
  7. 有害な二次神経学的転帰は、酸化性組織傷害である、請求項5に記載の方法。
  8. 有害な二次神経学的転帰は、遅発性虚血性神経障害である、請求項5に記載の方法。
  9. 有害な二次神経学的転帰は、遅発性脳虚血である、請求項5に記載の方法。
  10. 有害な二次神経学的転帰は、脳実質内の有害な二次神経学的転帰である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 出血の発現後約21日以内に、CSFをHxに曝露する工程を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 出血の発現後約2日間~約14日間、CSFをHxに曝露する工程を含む、請求項11に記載の方法。
  13. Hxは、対象に対して頭蓋内投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
  14. Hxは、対象に対して髄腔内投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
  15. Hxは、脊椎管中に髄腔内投与される、請求項14に記載の方法。
  16. Hxは、クモ膜下腔中に髄腔内投与される、請求項14に記載の方法。
  17. Hxは、対象に対して脳室内投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
  18. Hxは、対象に対して外部脳室ドレイン経由で脳室内投与される、請求項17に記載の方法。
  19. CSFが治療有効量のHxに曝露される期間は、少なくとも約2分である、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 治療有効量のHxは、出血後の対象のCSFにおいて測定される場合、無細胞ヘム、またはヘム当量として表される無細胞Hbの濃度に対して、少なくとも等モル量である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
  21. (i)出血後およびCSFをHxに曝露する前の対象に由来するCSFサンプルを取得する工程;
    (ii)工程(i)で得られたCSFサンプル中の無細胞Hbまたは無細胞ヘムの量を測定する工程;および
    (iii)工程(ii)から得られた、ヘム当量として表される無細胞Hb、または無細胞ヘムの濃度に基づき、Hxの少なくとも等モル量を決定する工程
    をさらに含む、請求項20に記載の方法。
  22. Hxの治療有効量は、約2μM~約1mMである、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
  23. Hxの治療有効量は、約2μM~約400μMである、請求項22に記載の方法。
  24. Hxの治療有効量は、約5μM~約200μMである、請求項22に記載の方法。
  25. Hxの治療有効量は、約10μM~約200μMである、請求項22に記載の方法。
  26. CSF内で形成されたHx:無細胞ヘム複合体を除去する工程をさらに含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
  27. CSFを、治療有効量のHxに体外的に曝露する工程を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
  28. (i)出血後の対象のCSFコンパートメントからCSFのサンプルを取得する工程;
    (ii)工程(i)のCSFサンプルにHxを添加して、Hx富化CSFサンプルを取得する工程;
    (iii)Hx富化CSFサンプルを対象に投与し、これによりHxが対象のCSFコンパートメントにおいて無細胞ヘムと複合体を形成することを可能にするのに十分な期間、対象のCSFコンパートメントを治療有効量のHxに曝露する工程;および
    (iv)場合により、工程(i)~(iii)を反復する工程
    を含む、請求項27に記載の方法。
  29. (i)出血後の対象のCSFコンパートメントからある容積のCSFを取り出す工程;
    (ii)Hxを含む人工CSFを提供する工程;
    (iii)(ii)の人工CSFを対象に投与し、これにより、対象のCSFコンパートメントにおいて、Hxが無細胞ヘムと複合体を形成することを可能にするのに十分な期間、対象のCSFコンパートメントを治療有効量のHxに曝露する工程;および
    (iv)場合により、工程(i)~(iii)を反復する工程
    を含む、請求項27に記載の方法。
  30. (i)出血後の対象に由来するCSFを取得する工程;
    (ii)CSFにおいて、Hxまたはその機能的類似体が無細胞ヘムと複合体を形成するのを可能にする条件下で、工程(i)から得られたCSFをHxに曝露する工程;
    (iii)Hx:無細胞ヘム複合体を、工程(ii)の後のCSFから抽出して、工程(i)から得られたCSFと比較したときに、それより少ない量の無細胞ヘムを有するヘム減少CSFを取得する工程;
    (iv)場合により、工程(ii)および(iii)を反復して、無細胞ヘムを実質的に含まないヘム減少CSFを取得する工程;ならびに
    (v)工程(iii)または工程(iv)から得られたヘム減少CSFを、対象のCSFコンパートメントに投与する工程
    を含む、請求項27に記載の方法。
  31. 工程(vi)の前に、ヘム減少CSFに対して治療有効量のHxを添加する工程をさらに含む、請求項30に記載の方法。
  32. Hxは、基材上に固定されている、請求項30または請求項31に記載の方法。
  33. Hxが固定化された基材は、粒径排除クロマトグラフィー樹脂、アフィニティークロマトグラフィー樹脂、フィルター、およびメンブレンからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
  34. 工程(ii)は、CSF中の無細胞ヘムが樹脂と結合するのを可能にする条件下で、工程(i)から得られたCSFをアフィニティークロマトグラフィー樹脂に通過させる工程を含み、工程(iii)は、工程(ii)後に樹脂からCSFを溶出させる工程を含み、および工程(iv)は、溶出したCSFを回収する工程を含む、請求項33に記載の方法。
  35. 場合により、工程(i)後のCSFコンパートメントを、洗浄溶液を用いて洗浄する工程を含む、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
  36. 洗浄溶液は、人工CSFである、請求項35に記載の方法。
  37. 人工CSFは、NaCl、KCl、KHPO、NaHCO、MgCl・HO、CaCl・HO、およびグルコースを含む、請求項29または請求項36に記載の方法。
  38. 洗浄溶液は、Hxを含む、請求項35~37のいずれか1項に記載の方法。
  39. 洗浄溶液は、約2μM~約80mMのHxを含む、請求項38に記載の方法。
  40. 洗浄溶液は、約2μM~約1,200μMのHxを含む、請求項39に記載の方法。
  41. (i)出血後の対象に由来するCSFを取り出す工程;
    (ii)工程(i)後の対象のCSFコンパートメントを、治療有効量のHxを含む洗浄溶液を用いてリンスする工程;
    (iii)場合により、工程(ii)を反復する工程;および
    (iv)工程(ii)または工程(iii)後の対象のCSFコンパートメントに人工CSFを投与する工程
    を含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
  42. 人工CSFは、NaCl、KCl、KHPO、NaHCO、MgCl・HO、CaCl・HO、およびグルコースを含む、請求項41に記載の方法。
  43. 人工CSFは、Hxを含む、請求項41または請求項42に記載の方法。
  44. 人工CSFは、約2μM~約80mMのHxを含む、請求項43に記載の方法。
  45. 人工CSFは、約2μM~約1,200μMのHxを含む、請求項44に記載の方法。
  46. Hxは、組換えタンパク質である、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
  47. Hxは、血漿由来である、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
  48. ハプトグロビン(Hp)が無細胞Hbと複合体を形成し、これによりその中和を可能にするのに十分な期間、対象のCSFを治療有効量のHpに曝露する工程をさらに含む、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
  49. 出血の発現後約21日以内に、CSFをHpに曝露する工程を含む、請求項48に記載の方法。
  50. 出血の発現後約2日間~約14日間、CSFをHpに曝露する工程を含む、請求項48に記載の方法。
  51. Hpは、対象に対して頭蓋内投与される、請求項48~50のいずれか1項に記載の方法。
  52. Hpは、対象に対して髄腔内投与される、請求項の48~50いずれか1項に記載の方法。
  53. Hpは、脊椎管中に髄腔内投与される、請求項52に記載の方法。
  54. Hpは、クモ膜下腔中に髄腔内投与される、請求項52に記載の方法。
  55. Hpは、対象に対して脳室内投与される、請求項48~50のいずれか1項に記載の方法。
  56. CSFがHpに曝露される期間は、少なくとも約2分である、請求項48~55のいずれか1項に記載の方法。
  57. 治療有効量のHpは、出血後の対象のCSF内の無細胞Hbの濃度に対して少なくとも等モル量である、請求項48~56のいずれか1項に記載の方法。
  58. (i)出血後およびCSFをHpに曝露する前の対象に由来するCSFサンプルを取得する工程;
    (ii)工程(i)で得られたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を測定する工程;および
    (iii)工程(ii)から得られた無細胞Hbの濃度に基づき、Hpの少なくとも等モル量を決定する工程
    をさらに含む、請求項57に記載の方法。
  59. 治療有効量のHpは、約2μM~約20mMである、請求項48~58のいずれか1項に記載の方法。
  60. 治療有効量のHpは、約2μM~約300μMである、請求項59に記載の方法。
  61. 治療有効量のHpは、約5μM~約50μMである、請求項59に記載の方法。
  62. 治療有効量のHpは、約10μM~約30μMである、請求項59に記載の方法。
  63. CSF内で形成されたHp:無細胞Hb複合体を除去する工程をさらに含む、請求項48~62のいずれか1項に記載の方法。
  64. CSFを、治療有効量のHpに体外的に曝露する工程を含む、請求項48~50のいずれか1項に記載の方法。
  65. (j)出血後の対象のCSFコンパートメントからCSFのサンプルを取得する工程;
    (ii)工程(i)のCSFサンプルにHpを添加して、Hp富化CSFサンプルを取得する工程;
    (iii)Hp富化CSFサンプルを対象に投与し、これによりHpが対象のCSFコンパートメントにおいて、無細胞Hbと複合体を形成することを可能にするのに十分な期間、対象のCSFコンパートメントを治療有効量のHpに曝露する工程;および
    (iv)場合により、工程(i)~(iii)を反復する工程
    を含む、請求項64に記載の方法。
  66. (j)出血後の対象のCSFコンパートメントからある容積のCSFを取り出す工程;
    (ii)Hpを含む人工CSFを提供する工程;
    (iii)(ii)の人工CSFを対象に投与し、これによりHpが対象のCSFコンパートメントにおいて、無細胞Hbと複合体を形成することを可能にするのに十分な期間、対象のCSFコンパートメントを治療有効量のHpに曝露する工程;および
    (iv)場合により、工程(i)~(iii)を反復する工程
    を含む、請求項64に記載の方法。
  67. (i)出血後の対象に由来するCSFを取得する工程;
    (ii)CSFにおいて、Hpまたはその機能的類似体が無細胞Hbと複合体を形成するのを可能にする条件下で、工程(i)から得られたCSFをHpに曝露する工程;
    (iii)Hp:無細胞Hb複合体を、工程(ii)の後のCSFから抽出して、工程(i)から得られたCSFと比較したときに、それより少ない量の無細胞Hbを有するHb減少CSFを取得する工程;
    (iv)場合により、工程(ii)および(iii)を反復して、無細胞Hbを実質的に含まないHb減少CSFを取得する工程;ならびに
    (vi)工程(iii)または工程(iv)から得られたHb減少CSFを、対象のCSFコンパートメントに投与する工程
    を含む、請求項64に記載の方法。
  68. 工程(vi)の前に、Hb減少CSFに対して治療有効量のHpを添加する工程をさらに含む、請求項67に記載の方法。
  69. Hpは、基材上に固定化されている、請求項67または請求項68に記載の方法。
  70. 基材は、アフィニティークロマトグラフィー樹脂である、請求項69に記載の方法。
  71. 工程(ii)は、CSF中の無細胞Hbが樹脂と結合するのを可能にする条件下で、工程(i)から得られたCSFをアフィニティークロマトグラフィー樹脂に通過させる工程を含み;工程(iii)は、工程(ii)の後の樹脂からCSFを溶出させる工程を含み;および工程(iv)は、溶出したCSFを回収する工程を含む、請求項70に記載の方法。
  72. 場合により、工程(i)後のCSFコンパートメントを、洗浄溶液を用いて洗浄する工程を含む、請求項65~71のいずれか1項に記載の方法。
  73. 洗浄溶液は、人工CSFである、請求項72に記載の方法。
  74. 人工CSFは、NaCl、KCl、KHPO、NaHCO、MgCl・HO、CaCl・HO、およびグルコースを含む、請求項66または請求項73に記載の方法。
  75. 洗浄溶液は、Hpを含む、請求項72~74のいずれか1項に記載の方法。
  76. 洗浄溶液は、約2μM~約20mMのHpを含む、請求項75に記載の方法。
  77. 洗浄溶液は、約2μM~約300μMのHpを含む、請求項76に記載の方法。
  78. (i)出血後の対象に由来するCSFを取り出す工程;
    (ii)工程(i)後の対象のCSFコンパートメントを、治療有効量のHpを含む洗浄溶液を用いてリンスする工程;
    (iii)場合により、工程(ii)を反復する工程;および
    (iv)工程(ii)または工程(iii)の後の対象のCSFコンパートメントに、人工CSFを投与する工程
    を含む、請求項48~77のいずれか1項に記載の方法。
  79. 人工CSFは、NaCl、KCl、KHPO、NaHCO、MgCl・HO、CaCl・HO、およびグルコース含む、請求項78に記載の方法。
  80. 人工CSFは、Hpを含む、請求項78または請求項79に記載の方法。
  81. 人工CSFは、約2μM~約20mMのHpを含む、請求項80に記載の方法。
  82. 人工CSFは、約2μM~約300μMのHpを含む、請求項81に記載の方法。
  83. Hpは、Hp1-1ホモ二量体、Hp1-2多量体、Hp2-2多量体、および上記のいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項48~82のいずれか1項に記載の方法。
  84. Hpは、Hp1-1ホモ二量体を含む、請求項83に記載の方法。
  85. Hxは、組換えタンパク質である、請求項48~84のいずれか1項に記載の方法。
  86. Hpは、血漿由来である、請求項48~84のいずれか1項に記載の方法。
  87. 治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約8μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項48~86のいずれか1項に記載の方法。
  88. 治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約7μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項87に記載の方法。
  89. 治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約6μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項87に記載の方法。
  90. 対象に、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を処置または予防するための第2の薬剤を投与する工程をさらに含む、請求項1~89のいずれか1項に記載の方法。
  91. 第2の薬剤は、血管拡張薬である、請求項90に記載の方法。
  92. 第2の薬剤は、シドノンおよびニトロプルシドナトリウムからなる群から選択される、請求項90または請求項91に記載の方法。
  93. 請求項1~92のいずれか1項に記載の方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防する際に使用するための医薬組成物であって、治療有効量のHxおよび薬学的に許容される担体を含む前記医薬組成物。
  94. 請求項48~89のいずれか1項に記載の方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防する際に使用するための医薬組成物であって、治療有効量のHpおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
  95. 治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約8μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項94に記載の使用のための組成物。
  96. 治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約7μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項95に記載の使用のための組成物。
  97. 治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約6μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項95に記載の使用のための組成物。
  98. 請求項1~92のいずれか1項に記載の方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防するための医薬の製造における、治療有効量のヘモペキシン(Hx)の使用。
  99. 請求項48~88のいずれか1項に記載の方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防するための医薬の製造における、治療有効量のハプトグロビン(Hp)の使用。
  100. 治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約8μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項99に記載の使用。
  101. 治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約7μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項100に記載の使用。
  102. 治療有効量のHpは、処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約6μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項100に記載の使用。
  103. 請求項1~92のいずれか1項に記載の方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰を処置または予防する際に使用するための治療有効量のヘモペキシン(Hx)。
  104. 請求項48~89のいずれか1項に記載の方法に基づき、出血性脳卒中後の対象における有害な二次神経学的転帰の処置または予防で使用するための治療有効量のハプトグロビン(Hp)。
  105. 処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約8μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項104に記載の使用のための治療有効量のHp。
  106. 処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約7μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項105に記載の使用のための治療有効量のHp。
  107. 処置期間中に、対象のCSF内の無細胞Hbの量を、約6μM以下のレベルまで低下させるのに十分である、請求項105に記載の使用のための治療有効量のHp。
  108. 対象は、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)中への放出を伴う出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するかどうか判定する方法であって、
    (i)出血性脳卒中後の対象に由来するCSFサンプルを取得する工程;
    (ii)工程(i)で得られたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を測定する工程;および
    (iii)工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を参照値と比較する工程
    を含み、対象の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクは、工程(iii)における比較に基づき決定される、方法。
  109. 工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される、請求項108に記載の方法。
  110. 有害な二次神経学的転帰は血管造影血管攣縮であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は血管造影血管攣縮を発症するリスクを有するものと判定される、請求項108に記載の方法。
  111. 有害な二次神経学的転帰は血管造影血管攣縮であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は血管造影血管攣縮を発症するリスクを有するものと判定される、請求項108に記載の方法。
  112. 有害な二次神経学的転帰は遅発性脳虚血であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約3μMである場合、対象は遅発性脳虚血を発症するリスクを有するものと判定される、請求項108に記載の方法。
  113. 有害な二次神経学的転帰は遅発性虚血性神経障害であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は遅発性虚血性神経障害を発症するリスクを有するものと判定される、請求項108に記載の方法。
  114. 請求項1~92のいずれか1項に記載の方法に基づき、出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定された対象を処置する工程をさらに含む、請求項108~113のいずれか1項に記載の方法。
  115. (i)出血性脳卒中後の対象に由来するCSFサンプルを取得する工程;
    (ii)工程(i)で得られたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を測定する工程;および
    (iii)工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を参照値と比較する工程
    を含み、対象の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクは工程(iii)における比較に基づき判定される方法により、対象は、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)中への放出を伴う出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される、請求項1~92のいずれか1項に記載の方法。
  116. 工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される、請求項115に記載の方法。
  117. 有害な二次神経学的転帰は、血管造影血管攣縮であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は血管造影血管攣縮を発症するリスクを有するものと判定される、請求項115に記載の方法。
  118. 有害な二次神経学的転帰は、血管造影血管攣縮であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は血管造影血管攣縮を発症するリスクを有するものと判定される、請求項115に記載の方法。
  119. 有害な二次神経学的転帰は、遅発性脳虚血であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約3μMである場合、対象は遅発性脳虚血を発症するリスクを有するものと判定される、請求項115に記載の方法。
  120. 有害な二次神経学的転帰は、遅発性虚血性神経障害であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は遅発性虚血性神経障害を発症するリスクを有するものと判定される、請求項115に記載の方法。
  121. (i)出血性脳卒中後の対象に由来するCSFサンプルを取得する工程;
    (ii)工程(i)で得られたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を測定する工程;および
    (iii)工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を参照値と比較する工程
    を含み、対象の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクは工程(iii)における比較に基づき判定される方法により、対象は、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞ヘモグロビン(Hb)の脳脊髄液(CSF)中への放出を伴う出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される、請求項93~97のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
  122. 工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される、請求項121に記載の使用のための組成物。
  123. 有害な二次神経学的転帰は、血管造影血管攣縮であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は血管造影血管攣縮を発症するリスクを有するものと判定される、請求項121に記載の使用のための組成物。
  124. 有害な二次神経学的転帰は、血管造影血管攣縮であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は血管造影血管攣縮を発症するリスクを有するものと判定される、請求項121に記載の使用のための組成物。
  125. 有害な二次神経学的転帰は遅発性脳虚血であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約3μMである場合、対象は遅発性脳虚血を発症するリスクを有するものと判定される、請求項121に記載の使用のための組成物。
  126. 有害な二次神経学的転帰は遅発性虚血性神経障害であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は遅発性虚血性神経障害を発症するリスクを有するものと判定される、請求項121に記載の使用のための組成物。
  127. (i)出血性脳卒中後の対象に由来する脳脊髄液(CSF)サンプルを取得する工程;
    (ii)工程(i)で得られたCSFサンプル中の無細胞ヘモグロビン(Hb)の量を測定する工程;および
    (iii)工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を参照値と比較する工程
    を含み、対象の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクは工程(iii)における比較に基づき判定される方法により、対象は、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/またはHbのCSF中への放出を伴う出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される、請求項98~102のいずれか1項に記載の使用。
  128. 工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される、請求項127に記載の使用。
  129. 有害な二次神経学的転帰は血管造影血管攣縮であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は血管造影血管攣縮を発症するリスクを有するものと判定される、請求項127に記載の使用。
  130. 有害な二次神経学的転帰は血管造影血管攣縮であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は血管造影血管攣縮を発症するリスクを有するものと判定される、請求項127に記載の使用。
  131. 有害な二次神経学的転帰は遅発性脳虚血であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約3μMである場合、対象は遅発性脳虚血を発症するリスクを有するものと判定される、請求項127に記載の使用。
  132. 有害な二次神経学的転帰は遅発性虚血性神経障害であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は遅発性虚血性神経障害を発症するリスクを有するものと判定される、請求項127に記載の使用。
  133. (i)出血性脳卒中後の対象に由来する脳脊髄液(CSF)サンプルを取得する工程;
    (ii)工程(i)で得られたCSFサンプル中の無細胞ヘモグロビン(Hb)の量を測定する工程;および
    (iii)工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量を参照値と比較する工程
    を含み、対象の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクは工程(iii)における比較に基づき判定される方法により、対象は、血管外溶血、ならびに無細胞ヘムおよび/または無細胞HbのCSF中への放出を伴う出血性脳卒中後の有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される、請求項104~107のいずれか1項に記載の使用のための治療有効量のHp。
  134. 工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は有害な二次神経学的転帰を発症するリスクを有するものと判定される、請求項133に記載の使用のための治療有効量のHp。
  135. 有害な二次神経学的転帰は血管造影血管攣縮であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は血管造影血管攣縮を発症するリスクを有するものと判定される、請求項133に記載の使用のための治療有効量のHp。
  136. 有害な二次神経学的転帰は血管造影血管攣縮であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は血管造影血管攣縮を発症するリスクを有するものと判定される、請求項133に記載の使用のための治療有効量のHp。
  137. 有害な二次神経学的転帰は遅発性脳虚血であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約3μMである場合、対象は遅発性脳虚血を発症するリスクを有するものと判定される、請求項133に記載の使用のための治療有効量のHp。
  138. 有害な二次神経学的転帰は遅発性虚血性神経障害であり、および工程(ii)において決定されたCSFサンプル中の無細胞Hbの量が少なくとも約7μMである場合、対象は遅発性虚血性神経障害を発症するリスクを有するものと判定される、請求項133に記載の使用のための治療有効量のHp。
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