JP2024125052A - ポリフェニレンエーテル、熱硬化性組成物、プリプレグ、及び積層体 - Google Patents

ポリフェニレンエーテル、熱硬化性組成物、プリプレグ、及び積層体 Download PDF

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裕介 野田
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Abstract

【課題】本発明の目的は、溶剤溶解性を維持しつつ、電気特性及び耐熱性に優れたポリフェニレンエーテルを提供することにある。
【解決手段】本発明のポリフェニレンエーテルは、30℃における0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定した還元粘度(ηsp/c)が0.10~0.80dL/gであり、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対して、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位1~79mol%と、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位21~99mol%とを含み、ガラス転移温度が180~230℃であることを特徴としている。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリフェニレンエーテル、熱硬化性組成物、プリプレグ、及び積層体に関する。
ポリフェニレンエーテル(以下、「PPE」ともいう。)は、優れた高周波特性、難燃性、耐熱性を有するため、電気・電子分野、自動車分野、食品・包装分野の製品・部品用材料、その他の各種工業材料分野の材料として幅広く用いられている。特に、近年、その低誘電特性や耐熱性を活かし、基板材料等の電気電子用途を含む様々な用途における改質剤としての応用が進められている。
しかしながら、一般的に、2,6-ジメチルフェノールに代表される1価フェノールから誘導される繰返し単位を有する高分子量のポリフェニレンエーテルは、クロロホルム等の非常に毒性が高い溶媒には溶解するものの、良溶媒として知られているトルエン等の芳香族系溶媒にも室温では高濃度では溶けにくく、またメチルエチルケトン等のケトン系溶媒には不溶であるという問題があった。そのため、例えば配線板材料として用いる際には、トルエンやメチルエチルケトン等の樹脂ワニス溶液での取り扱いが困難となる。
特許文献1には、ポリフェニレンエーテル部分を分子構造内に有し、かつ、この分子末端に、p-エテニルベンジル基やm-エテニルベンジル基等を少なくとも1つ以上有してなる低分子量ポリフェニレンエーテルと、架橋型硬化剤とを含む樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、分子末端にメタクリル基を有する二官能性ポリフェニレンエーテルと、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂と、反応性液体モノマーと、相溶化剤とを含む硬化性組成物が開示されている。
特許第4211784号公報 特許第5635973号公報
上述の通り、特許文献1、2には、ポリフェニレンエーテルの溶剤溶解性を改善するため低分子化したポリフェニレンエーテルと、架橋剤等とを含む樹脂組成物の製造方法が開示されているが、ポリフェニレンエーテルを低分子量化したことにより、ポリフェニレンエーテル骨格由来の誘電特性や耐熱性が不十分となりうるという課題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、溶剤溶解性を維持しつつ、電気特性及び耐熱性に優れたポリフェニレンエーテル、その製造方法、及びそれを含む熱硬化性組成物を提供することを目的とする。また、該ポリフェニレンエーテルを含むプリプレグ、及び積層体を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
30℃における0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定した還元粘度(ηsp/c)が0.10~0.80dL/gであり、
下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対して、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位1~79mol%と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位21~99mol%とを含み、
ガラス転移温度が180~230℃であるポリフェニレンエーテル。
(式(1)中、R11は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、R12は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子である。)
{式(2)中、R22は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の飽和若しくは不飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、2つのR22は、両方が水素原子でなく、R21は、下記式(3)で表される部分構造である。
(式(3)中、R31は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は2つのR31が結合した炭素数1~8の環状アルキル構造であり、R32は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは、各々独立に、0又は1であり、R33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基である。)}
[2]
前記式(3)で表される部分構造がtert-ブチル基、シクロヘキシル基、またはイソプロピル基である、[1]に記載のポリフェニレンエーテル。
[3]
前記式(1)のフェノール、及び前記式(2)のフェノールの酸化重合を行う酸化重合工程を含む、[1]または[2]に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
[4]
前記酸化重合工程が、酸化重合開始時の重合液に含まれるモノマー成分100質量%に対して前記式(2)のフェノールを80質量%以上含む開始時重合液を重合槽へ仕込み酸化重合を開始する工程と、その後に前記式(1)のフェノールを含む重合原料を前記重合槽へ添加してさらに酸化重合する工程と、を含む、[3]に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
[5]
[1]または[2]に記載のポリフェニレンエーテルと、ケトン系溶媒とを含む、ポリフェニレンエーテル溶液。
[6]
[1]または[2]に記載のポリフェニレンエーテルを含む、熱硬化性組成物。
[7]
基材と、[6]に記載の熱硬化性組成物とを含む、プリプレグ。
[8]
前記基材がガラスクロスである、[7]に記載のプリプレグ。
[9]
[7]又は[8]に記載のプリプレグの硬化物と、金属箔とを含む、積層体。
本発明によれば、溶剤溶解性を維持しつつ、電気特性及び耐熱性が優れるポリフェニレンエーテル、その製造方法を提供することができる。また、該ポリフェニレンエーテルを含むポリフェニレンエーテル溶液、熱硬化性組成物、プリプレグ、及び積層体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、この本実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本実施形態において、ポリフェニレンエーテルが含有する一部又は全部の水酸基が変性されたポリフェニレンエーテルを、単に「ポリフェニレンエーテル」と表現する場合がある。従って、「ポリフェニレンエーテル」と表現された場合には、特に矛盾が生じない限り、未変性のポリフェニレンエーテル及び変性されたポリフェニレンエーテルの両方を含む。
なお、本明細書において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。また、本明細書において、置換基とは、例えば、炭素数1~10の飽和又は不飽和炭化水素基、炭素数6~10のアリール基、ハロゲン原子等をいう。
<ポリフェニレンエーテル>
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、30℃における0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定した還元粘度(ηsp/c)が0.10~0.80dL/gであり、好ましくは0.12~0.70dL/gであり、より好ましくは0.13~0.60dL/gである。
30℃における0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定した還元粘度(ηsp/c)が0.10dL/g以上であることにより、ポリフェニレンエーテル構造由来の高い耐熱性や優れた誘電特性が得られ、0.80dL/g以下であることにより、トルエンやメチルエチルケトン等の溶剤への溶解性が確保できる。
還元粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、ОH基数を20~600μmоl/g有し、好ましくは20~550μmol/g有し、より好ましくは20~470μmоl/g有する。
OH基数が20μmоl/g以上であることにより、銅箔との接着性が向上し、またエポキシ基、メタクリル基、ビニルベンジル基等の硬化性官能基を導入した場合には硬化物のガラス転移温度を向上できる。OH基数が600μmоl/g以下であることにより、本実施形態のポリフェニレンエーテルを含む基板の耐熱性、誘電特性が向上する。
ポリフェニレンエーテルのOH基数は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、ガラス転移温度が180~230℃を有し、好ましくは185~230℃を有し、より好ましくは190~230℃を有する。
ガラス転移温度が180℃以上であることにより、基板とした際の電気特性及び耐熱性を向上できる。ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含む。さらに、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位以外の他の単位を含んでいてもよい。また、本実施形態のポリフェニレンエーテルは、繰り返し単位が式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位及び式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位のみからなっていてもよい。本実施形態のポリフェニレンエーテルは、全繰り返し単位100質量%に対する式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位及び式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位の合計質量割合が、60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対して、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位1~79mol%と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位21~99mol%とを含むことが好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位とを、上記の割合で含むことにより、基板の耐熱性、誘電特性が向上する。
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対して、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位を、20~75mol%と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を、25~80mol%とを含むことがより好ましく、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位を、25~72mol%と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を、28~75mol%とを含むことがさらに好ましい。
(式(1)中、R11は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、R12は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子である。)
{式(2)中、R22は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の飽和若しくは不飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、2つのR22は、両方がともに水素原子でなく、R21は、下記式(3)で表される部分構造である。
(式(3)中、R31は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は2つのR31が結合した炭素数1~8の環状アルキル構造であり、R32は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは、各々独立に、0又は1であり、R33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基のいずれかである。)}
上記式(1)中、R11は、各々独立に、炭素数1~6の飽和炭化水素基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、より好ましくはメチル基又はフェニル基さらに好ましくはメチル基である。式(1)中、2つのR11は、共に同じ構造であることが好ましい。
上記式(1)中、R12は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基である。式(1)中、2つのR12は、異なることが好ましく、一方が水素原子、他方が炭素数1~6の炭化水素基(好ましくはメチル基)であることがより好ましい。また、2つのR12は、ともに水素原子であってよい。
上記式(2)中、R22は、各々独立に、水素原子、炭素数1~15の飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基であることがより好ましく、さらに好ましくは水素原子又はメチル基である。式(2)中、2つのR22は、異なることが好ましく、一方が水素原子、他方が炭素数1~6の炭化水素基(好ましくはメチル基)であることがより好ましい。
上記式(3)で表される部分構造としては、好ましくは、2級及び/又は3級炭素を含む基であり、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-アミル基、2,2-ジメチルプロピル基、シクロヘキシル基や、これらの末端にフェニル基を有する構造等が挙げられ、より好ましくは、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基であり、さらに好ましくはtert-ブチル基、シクロヘキシル基である。
本実施形態に含まれる上記式(3)で表される部分構造において、嵩高さがより小さい程、より高分子体が得られ易く、ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度を高めることが容易となる。例えば、シクロヘキシル基の方がtert-ブチル基よりも嵩高さが小さい。
この反応機構について本発明者らは以下のように推定している。すなわち、上記式(2)で表される一価のフェノール化合物はオルト位に水素原子を有するため、上記式(3)で表される部分構造の嵩高さがより小さい場合には、酸化重合時に上記式(2)で表される一価のフェノール化合物、及び上記式(2)で表される一価のフェノール化合物から誘導される繰り返し単位を含むポリフェニレンエーテルの分子間反応が促進され、より高分子量かつ高ガラス転移温度なポリフェニレンエーテルが最終的に得られる。
ただし、上記式(3)で表される部分構造が本実施形態に示した構造以外のさらに小さい置換基の場合(例えばメチル基)には、激しく分岐が進行してしまい、容易にゲル化が進行してしまうため分子量制御が困難となる。
本実施形態において、ポリフェニレンエーテルをNMR、質量分析等の手法で解析することによりその構造を同定できる。ポリフェニレンエーテルの構造を同定する具体的方法としては、フラグメンテーションを起こしにくいことが知られている電界脱離質量分析法(FD-MS)を実施し、検出されるイオンの間隔により繰り返しユニットを推定することが可能である。更に電子イオン化法(EI)でフラグメントイオンのピーク解析やNMRによる構造解析と組み合わせることでポリフェニレンエーテルの構造を推定する方法が挙げられる。
式(1)のフェノールは未置換のオルト位を有さないため(即ち、ヒドロキシル基が結合する炭素原子の2つのオルト位の炭素原子には水素原子が結合しないため)、フェノール性ヒドロキシル基とパラ位の炭素原子だけにおいて別のフェノール性モノマーと反応できる。従って、式(1)から誘導された繰り返し単位は、下記式(5)の構造を有する繰り返し単位を含む。
(式(5)中、R11とR12は式(1)と同様である。)
式(2)のフェノールは、フェノール性ヒドロキシル基に加えて、フェノールのオルト位又はパラ位のいずれかで別のフェノール性モノマーと反応可能である。従って、式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位は、下記式(6)、下記式(7)の構造あるいはこれらの組み合わせを有する。
(式(6)、式(7)中のR21、R22は、式(2)と同様である。)
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、下記式(4)のフェノールから誘導された構造単位を含むことができる。
(式(4)中、Xは、a価の任意の連結基であり、aは、2~6の整数であり、Rは、炭素数1~8の直鎖状アルキル基及び上記式(3)で表される部分構造のいずれかであり、-O-が結合するベンゼン環の炭素原子を1位として、2位又は6位の少なくとも一方の炭素原子を含む炭素原子に結合しており、kは、各々独立に1~4の整数である。)
上記式(4)中、Rは、各々独立に、メチル基、エチル基、n-プロピル基等の炭素数1~8の直鎖状アルキル基及び上記式(3)で表される部分構造のいずれかであり、メチル基又は上記式(3)の構造であることが好ましい。a個の各部分構造は、同じ構造であってもよく、異なっていてもよい。中でも、溶媒への溶解性に一層優れ、硬化後のガラス転移温度が一層高いポリフェニレンエーテルとなる観点から、a個の各部分構造は同じ構造であることが好ましい。
上記式(4)中、kは、1~4の整数であり、好ましくは2~4の整数である。
は、-O-が結合するベンゼン環の炭素原子を1位として、2位及び6位の少なくとも一方の炭素原子を含む炭素原子に結合しており、2位及び/又は6位に結合したRが炭素数1~8の直鎖状アルキル基である場合、2位及び6位の両方に結合していることが好ましく、2位及び/又は6位に結合したRが式(3)で表される部分構造である場合、2位又は6位どちらか一方のみに結合していることが好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、上記式(4)から誘導された繰り返し単位、並びに上記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位及び上記記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位を含むこともできる。この際に、上記式(2)のR21と上記式(4)のRがいずれも式(3)で表される部分構造(官能基)である場合(上記式(2)で表されるフェノール化合物と上記式(4)で表されるフェノール化合物両方に上記式(3)で表される部分構造(官能基)が置換している場合)、それぞれの式(3)で表される部分構造(官能基)の構造は同一でも異なっていても良い。
上記式(4)中、Xは、a価の任意の連結基であり、特に制限されないが、例えば、鎖式炭化水素、環式炭化水素等の炭化水素基;窒素、リン、ケイ素及び酸素から選ばれる一つ又は複数の原子を含有する炭化水素基;窒素、リン、ケイ素等の原子;又はこれらを組み合わせた基;等が挙げられる。Xは、単結合を除く連結基であってよい。Xは、a個の部分構造を互いに連結する連結基であってよい。
上記Xとしては、単結合又はエステル結合等を介して、Rが結合しているベンゼン環に結合するa価のアルキル骨格、単結合又はエステル結合等を介して、Rが結合しているベンゼン環に結合するa価のアリール骨格、単結合又はエステル結合等を介して、Rが結合しているベンゼン環に結合するa価の複素環骨格等が挙げられる。
ここで、アルキル骨格としては、特に制限されないが、例えば、炭素数2~6の少なくともa個に分岐した鎖式炭化水素(例えば、鎖式飽和炭化水素)の分岐末端が部分構造のベンゼン環に直接結合する骨格(a個の分岐末端にベンゼン環が結合していればよく、ベンゼン環が結合しない分岐末端があってもよい。)等が挙げられる。また、アリール骨格としては、特に制限されないが、例えば、ベンゼン環、メシチレン基、又は2-ヒドロキシ-5-メチル-1,3-フェニレン基が、単結合又はアルキル鎖を介して、Rが結合しているベンゼン環に結合する骨格等が挙げられる。更に、複素環骨格としては、特に制限されないが、例えば、トリアジン環が単結合又はアルキル鎖を介して、Rが結合しているベンゼン環に結合する骨格等が挙げられる。
上記式(4)中、aは、2~6の整数であり、好ましくは2~4の整数である。
式(4)のフェノールが未置換のオルト位を有さない場合、式(4)のフェノールから誘導された構造単位は、下記式(8)の構造を有し、式(4)のフェノールが未置換のオルト位を有する場合、式(4)のフェノールから誘導された構造単位は、下記式(8)の構造、下記式(9)の構造あるいはこれらの組合せを有する。
(式(8)、式(9)中のR、k、X、aは、式(4)と同様である。)
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルに含まれる水酸基が官能基(例えば、不飽和炭素結合を含む官能基等)へ変性された変性ポリフェニレンエーテルであっても良い。
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは下記式(10)、式(11)、式(12)、及び式(13)からなる群から選ばれる少なくとも一つの部分構造を有しても良い。
(式(12)中、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の炭化水素基であり、上記飽和若しくは不飽和の炭化水素はRの合計炭素数が1~10個となる範囲内で置換基を有していてもよい。)
(式(13)中、Rは、炭素数1~10の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基であり、上記飽和又は不飽和の2価の炭化水素はRの合計炭素数が1~10個となる範囲内で置換基を有していてもよく、Rは、水素原子又は炭素数1~10の飽和若しくは不飽和の炭化水素基であり、該飽和又は不飽和の炭化水素はRの合計炭素数が1~10個となる範囲内で置換基を有していてもよい。)
なお、上記式(10)、式(11)、式(12)、式(13)からなる群から選ばれる少なくとも一つで表される部分構造は、ポリフェニレンエーテルに含まれる水酸基と直接結合してよい。
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルは、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールを含んでも良い。なお、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する上記1価フェノールは、上記式(1)のフェノール、又は上記式(2)のフェノールとは異なる1価のフェノールをいう。
不飽和炭化水素基としては、炭素数3~10の不飽和の炭化水素基であることが好ましく、炭素数3~5の不飽和の炭化水素基であることが好ましい。このような不飽和炭化水素基としては、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1-プロピニル、2-プロピニル等)等が挙げられる。
上記不飽和炭化水素は炭素数3~10の条件を満たす限度で置換基を有していてもよい。
フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールの導入率としては、硬化性官能基数の調整のため適宜調整してよいが、式(1)のフェノールとフェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールとの合計に対して、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールは0.1~30mol%であることが好ましく、0.1~25mol%であることがさらに好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテル中の、式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールから誘導された繰り返し単位との合計に対する、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する上記1価フェノールから誘導された繰り返し単位のモル割合としては、0.1~40mol%であることが好ましく、より好ましくは0.1~10mol%である。
<ポリフェニレンエーテルの製造方法>
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、例えば、上記式(1)、式(2)で表される一価のフェノール化合物の酸化重合、または上記式(1)、式(4)で表される一価、多価のフェノール化合物の酸化重合を行う工程を少なくとも含む方法により得られる。上記酸化重合を行う工程は、上記式(1)のフェノール及び式(2)のフェノール、もしくは上記式(1)のフェノール及び式(4)のフェノールを少なくとも含む原料を酸化重合することが好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法は、上記式(1)のフェノール及び上記式(2)のフェノールの酸化重合を少なくとも含む酸化重合工程を含むことが好ましい。上記酸化重合工程は、上記式(1)のフェノール及び上記式(2)のフェノールの酸化重合以外の酸化重合を含んでいてもよいし、上記式(1)のフェノール及び上記式(2)のフェノールの酸化重合のみであってもよい。
上記式(1)で表される一価のフェノール化合物としては、例えば、2,6-ジメチルフェノール、2-メチル-6-エチルフェノール、2,6-ジエチルフェノール、2-エチル-6-n-プロピルフェノール、2-メチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-ブロモフェノール、2-メチル-6-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-n-プロピルフェノール、2-エチル-6-クロルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2-メチル-6-トリルフェノール、2,6-ジトリルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,3-ジエチル-6-n―プロピルフェノール、2,3,6-トリブチルフェノール、2,6-ジ-n-ブチル-3-メチルフェノール、2,6-ジメチル-3-n-ブチルフェノール、2,6-ジメチル-3-tert-ブチルフェノール等が挙げられる。中でも、特に、安価であり入手が容易であるため、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,6-ジフェニルフェノールが好ましい。
上記式(1)で表される一価のフェノール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
上記式(2)で表される一価のフェノール化合物としては、例えば、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2-イソブチル-5-メチルフェノール等が挙げられる。多分岐化抑制、ゲル化抑制の観点より嵩高い置換基である2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、2-シクロヘキシル-5-メチルフェノールがより好ましい。
上記式(2)で表される一価のフェノール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
上記式(4)で表される多価のフェノール化合物のうち、分子内に2つのフェノールユニットを有するフェノール化合物としては、例えば、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。中でも、特に安価であり入手が容易であるため、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンが好ましい。
更に、上記式(4)で表される多価のフェノール化合物のうち、分子内に3つ以上のフェノールユニットを有するフェノール化合物としては、例えば、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(2-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシ-3-エトキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルエチルフェノール)、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、2,2’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(3,5,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[4-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]-ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エチル]-4-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-エチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-6-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)メチル]-6-メチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,4-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、3,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,2-ベンゼンジオール、4,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,4,6-トリス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,4,6-トリス[(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,2’-メチレンビス[6-[(4/2-ヒドロキシ-2,5/3,6-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4/2-ヒドロキシ-2,3,5/3,4,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-6-メチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、6,6’-メチレンビス[4-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,2,3-ベンゼントリオール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(4-ヒドロキシ-2-メチル-5-シクロヘキシルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メチル]フェノール]、4,4’,4’’,4’’’-(1,2-エタンジイリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’,4’’,4’’’-(1,4-フェニレンジメチリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。中でも、特に安価であり入手が容易であるため、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタンが好ましい。
上記式(4)で表される多価のフェノール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
上記式(4)で表される多価のフェノール化合物におけるフェノール性水酸基の数は2~6個であれば特に制限はないが、熱硬化速度の制御をより容易とする観点から、好ましくは2~4個である。
上記酸化重合を行う工程は、例えば、上記式(1)のフェノール及び式(2)のフェノールに加え、フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールを含む原料の酸化重合であってよい。
フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する1価フェノールとしては、上記オルト位の炭素原子に少なくとも一つの(好ましくは一つの)不飽和炭化水素基が結合し、メタ位及びパラ位の炭素原子には水素原子が結合する1価のフェノールであることが好ましく、より好ましくは2-アリルフェノール、2-アリル-6-メチルフェノール、さらに好ましくは2-アリルフェノールである。
フェノールのヒドロキシル基が結合する炭素原子のオルト位の炭素原子に少なくとも一つの不飽和炭化水素基を有する上記1価フェノールは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
通常、オルト位に水素原子を有するフェノールの酸化重合(例えば、2-メチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2-フェニルフェノール)はオルト位においてもエーテル結合が形成され得るため、酸化重合時のフェノール化合物の結合位置の制御が困難となり、平均水酸基数が3.5個/分子以上の分岐状に重合された高分子量なポリマーが得られ、最終的には溶剤に不溶なゲル成分が発生する。
一方、上記式(2)で表されるフェノールの片側のオルト位に嵩高い置換基を有する場合には、反対側のオルト位に水素原子を有するにも関わらず、酸化重合時のフェノール化合物の結合位置の制御が可能となり、平均水酸基が3.0個/分子未満のポリフェニレンエーテルを得ることが出来る。
さらには、上記式(2)で表されるフェノールの片側のオルト位に嵩高い置換基を有する場合には、第3成分としてフェノールの酸素原子のオルト位に嵩高くない置換基(例えば、水素原子、アリル基、メチル基、エチル基、メトキシ基等)を有する1価フェノールを用いた場合にもゲル化せず、平均水酸基が3.0個/分子未満のポリフェニレンエーテルを得ることが出来る。
本実施形態におけるポリフェニレンエーテルの分子量は、例えば、上記式(1)から誘導される繰り返し単位と上記式(2)から誘導される繰り返し単位との合計に対する、上記式(2)から誘導される繰り返し単位のモル割合、もしくは上記式(1)から誘導される繰り返し単位と上記式(4)から誘導される繰り返し単位との合計に対する、上記式(4)から誘導される繰り返し単位のモル割合等により調整することが可能である。すなわち、上記式(2)または上記式(4)から誘導される繰り返し単位のモル割合が高い場合には、到達する分子量(還元粘度)を下げることでき、上記式(2)または上記式(4)から誘導される繰り返し単位のモル割合が低い場合には、分子量(還元粘度)が高く調整可能である。
(酸化重合工程)
ここで、ポリフェニレンエーテルの製造方法では、酸化重合工程において、重合溶剤としてポリフェニレンエーテルの良溶剤である芳香族系溶剤を用いることができる。
ここで、ポリフェニレンエーテルの良溶剤とは、ポリフェニレンエーテルを溶解させることができる溶剤であり、このような溶剤を例示すると、ベンゼン、トルエン、キシレン(o-、m-、p-の各異性体を含む)、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素やクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼンのようなニトロ化合物;等が挙げられる。
より高いガラス転移温度のポリフェニレンエーテルを製造する観点より、酸化重合工程におけるモノマー濃度は、重合液の全量を基準として、12~30質量%が好ましく、13~27質量%がより好ましく、14~25質量%がさらに好ましい。
なお、酸化重合工程におけるモノマー濃度とは、酸化重合工程で添加する全成分の合計100質量%に対する、酸化重合工程で添加するモノマーの合計質量の割合をいう。
一層高いガラス転移温度のポリフェニレンエーテルが得られる観点から、酸化重合工程で添加するモノマーの合計質量に対する、式(1)で表されるフェノールと式(2)で表されるフェノールとの合計質量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量以上、特に好ましくは100質量%である。
酸化重合工程におけるモノマー濃度が濃い場合に、より高分子量なポリフェニレンエーテルが製造可能であることについて本発明者らは以下のように推定している。すなわち、上記式(2)で表される一価のフェノール化合物はオルト位に水素原子を有するため、酸化重合工程におけるモノマー濃度が濃い場合には、上記式(2)で表される一価のフェノール化合物、及び上記式(2)で表される一価のフェノール化合物から誘導された繰り返し単位を含むポリフェニレンエーテルの分子間反応が促進され、より高分子量かつ高ガラス転移温度なポリフェニレンエーテルが最終的に得られる。
上記酸化重合工程は、式(1)で表されるフェノール及び式(2)で表されるフェノールの酸化重合を行う工程を含むことが好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法においては、上記式(2)で表される一価のフェノール化合物の割合が高いモノマー成分(例えば、上記式(2)で表される一価のフェノール化合物のみであるモノマー成分)を重合槽へ仕込み酸化重合を開始し、その後、上記式(1)で表される一価のフェノール化合物等を徐々に添加することによって、より高分子量かつ高ガラス転移温度なポリフェニレンエーテルを製造することができる。
この理由として本発明者らは以下のように推定している。すなわち、上記式(2)で表される一価のフェノール化合物はオルト位に水素原子を有するため、重合初期の上記式(1)で表される一価のフェノール化合物が不足した状態では、上記式(2)で表される一価のフェノール化合物、及び上記式(2)で表される一価のフェノール化合物から誘導された繰り返し単位を含むポリフェニレンエーテルの分子間反応が促進され、複雑な多官能フェノールが生成し、より高分子量かつ高ガラス転移温度なポリフェニレンエーテルが最終的に得られる。
上記式(1)で表される一価のフェノール化合物等を重合槽へ添加については、重合開始直後でも良いし、先に上記式(2)で表される一価のフェノール化合物のみを所望時間重合した後に添加しても良い。
上記酸化重合工程は、高分子量かつ高ガラス転移温度なポリフェニレンエーテルが得られる観点から、モノマー成分が式(2)で表されるフェノールのみからなる開始時重合液を重合槽へ仕込み、酸化重合を開始する工程と、その後に式(1)で表されるフェノールを含む添加重合原料を上記重合槽へ添加してさらに酸化重合する工程と、を含むことが好ましい。
上記開始時重合液中のモノマー成分100質量%に対する式(2)で表されるフェノールの質量割合は、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。また、上記開始時重合液に含まれるモノマー成分100質量%に対する上記式(1)で表されるフェノールの質量割合は、10質量%以下であることが好ましく、ガラス転移温度が高いポリフェニレンエーテルが得られる観点から、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。上記開始時重合液中のモノマー成分は、式(2)で表されるフェノールのみであることが好ましく、さらに他のモノマーを含んでいてもよい。
上記添加重合原料中に含まれるモノマー成分は、式(1)で表されるフェノールのみであることが好ましく、さらに他のモノマーを含んでいてもよい。上記添加重合原料に含まれるモノマー成分100質量%に対する式(1)で表されるフェノールの質量割合は、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。また、上記添加重合原料に含まれるモノマー成分100質量%に対する式(2)で表されるフェノールの質量割合は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
また、開始時重合液に添加重合原料(上記式(1)で表されるフェノールを含む後添加重合原料)を添加する速度としては、開始時重合液に含まれる式(2)で表されるフェノール100gに対する、1分当たりの式(1)で表されるフェノールの添加量(g/分)が、0.01~100g/分/100gであることが好ましく、より好ましくは0.05~50g/分/100g、さらに好ましくは0.1~30g/分/100gである。
上記開始時重合液と上記添加重合原料とに含まれるモノマー成分は、本実施形態の製造方法で添加されるモノマー成分の全量であってよい。
本実施形態で用いられる重合触媒としては、一般的にポリフェニレンエーテルの製造に用いることが可能な公知の触媒系を使用できる。一般的に知られている触媒系としては、酸化還元能を有する遷移金属イオンと当該遷移金属イオンと錯形成可能なアミン化合物からなるものが知られており、例えば、銅化合物とアミン化合物からなる触媒系、マンガン化合物とアミン化合物からなる触媒系、コバルト化合物とアミン化合物からなる触媒系、等である。重合反応は若干のアルカリ性条件下で効率よく進行するため、ここに若干のアルカリもしくは更なるアミン化合物を加えることもある。
本実施形態で好適に使用される重合触媒は、触媒の構成成分として銅化合物、ハロゲン化合物並びにアミン化合物からなる触媒であり、より好ましくは、アミン化合物として下記式(14)で表されるジアミン化合物を含む触媒である。
(式(14)中、R14、R15、R16、R17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1から6の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、全てが同時に水素原子ではない。R18は、炭素数2から5の直鎖状又はメチル分岐を持つアルキレン基である。)
ここで述べられた触媒成分の銅化合物の例を列挙する。好適な銅化合物としては、第一銅化合物、第二銅化合物又はそれらの混合物を使用することができる。第二銅化合物としては、例えば、塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅等を例示することができる。また、第一銅化合物としては、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅等を例示することができる。これらの中で特に好ましい金属化合物は、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅である。またこれらの銅塩は、酸化物(例えば酸化第一銅)、炭酸塩、水酸化物等と対応するハロゲン又は酸から使用時に合成しても良い。しばしば用いられる方法は、先に例示の酸化第一銅とハロゲン化水素(又はハロゲン化水素の溶液)を混合して作製する方法である。
ハロゲン化合物としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム等である。また、これらは、水溶液や適当な溶剤を用いた溶液として使用できる。これらのハロゲン化合物は、成分として単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。好ましいハロゲン化合物は、塩化水素の水溶液、臭化水素の水溶液である。
これらの化合物の使用量は、特に限定されないが、重合反応に添加するフェノール化合物100モルに対して好ましい銅原子の使用量としては0.02モルから1.0モルの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.30モルから0.80モルの範囲であり、さらに好ましくは0.35モルから0.70モルの範囲である。重合反応に添加するフェノール化合物100モルに対する添加量が多い程、より高分子量かつ高ガラス転移温度なポリフェニレンエーテルが得られ易い。また、銅原子のモル量に対してハロゲン原子のモル量は、2倍以上20倍以下が好ましい。
次に触媒成分のジアミン化合物の例を列挙する。例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’-トリエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-N’-エチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-N-エチルエチレンジアミン、N-n-プロピルエチレンジアミン、N,N’-n-プロピルエチレンジアミン、N-i-プロピルエチレンジアミン、N,N’-i-プロピルエチレンジアミン、N-n-ブチルエチレンジアミン、N,N’-n-ブチルエチレンジアミン、N-i-ブチルエチレンジアミン、N,N’-i-ブチルエチレンジアミン、N-tert-ブチルエチレンジアミン、N,N’-tert-ブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’-トリメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノ-1-メチルプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノ-2-メチルプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,5-ジアミノペンタン等が挙げられる。本実施形態にとって好ましいジアミン化合物は、2つの窒素原子をつなぐアルキレン基の炭素数が2又は3のものである。これらのジアミン化合物の使用量は、重合反応に添加するフェノール化合物100モルに対して0.10モルから10モルの範囲が好ましく、0.30モルから5モルがより好ましく、0.40モルから3モルがさらに好ましい。重合反応に添加するフェノール化合物100モルに対する添加量が多い程、より高分子量かつ高ガラス転移温度なポリフェニレンエーテルが得られ易い。
本実施形態においては、重合触媒の構成成分として、第1級アミン及び第2級モノアミンを含むことができる。第2級モノアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-i-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-i-ブチルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジペンチルアミン類、ジヘキシルアミン類、ジオクチルアミン類、ジデシルアミン類、ジベンジルアミン類、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、シクロヘキシルアミン、N-フェニルメタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、N-フェニルプロパノールアミン、N-(m-メチルフェニル)エタノールアミン、N-(p-メチルフェニル)エタノールアミン、N-(2’,6’-ジメチルフェニル)エタノールアミン、N-(p-クロロフェニル)エタノールアミン、N-エチルアニリン、N-ブチルアニリン、N-メチル-2-メチルアニリン、N-メチル-2,6-ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
本実施形態における重合触媒の構成成分として、第3級モノアミン化合物を含むこともできる。第3級モノアミン化合物とは、脂環式第3級アミンを含めた脂肪族第3級アミンである。例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル-n-ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの第3級モノアミンは、単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。これらの使用量は、特に限定されないが、重合反応に添加するフェノール化合物100モルに対して15モル以下の範囲が好ましい。
本実施形態では、従来より重合活性に向上効果を有することが知られている界面活性剤を添加することについて、何ら制限されない。そのような界面活性剤として、例えば、Aliquat336やCapriquatの商品名で知られるトリオクチルメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
本実施形態の重合における酸素含有ガスとしては、純酸素の他、酸素と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの、空気、更には空気と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの等が使用できる。重合反応中の系内圧力は、常圧で充分であるが、必要に応じて減圧でも加圧でも使用できる。
重合の温度は、特に限定されないが、低すぎると反応が進行しにくく、また高すぎると反応選択性の低下やゲルが生成するおそれがあるので、0~60℃、好ましくは10~40℃の範囲である。
ポリフェニレンエーテルの製造方法では、アルコール等の貧溶剤中で重合を行うことも出来る。
(銅抽出及び副生成物除去工程)
本実施形態において、重合反応終了後の後処理方法については、特に制限はない。通常、塩酸や酢酸等の酸、又はエチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を反応液に加えて、触媒を失活させる。また、ポリフェニレンエーテルの重合により生じる二価フェノール体の副生成物を除去処理する方法も、従来既知の方法を用いて行うことができる。上記の様に触媒である金属イオンが実質的に失活されている状態であれば、該混合物を加熱するだけで脱色される。また既知の還元剤を必要量添加する方法でも可能である。既知の還元剤としては、ハイドロキノン、亜二チオン酸ナトリウム等が挙げられる。
(液液分離工程)
ポリフェニレンエーテルの製造方法においては、銅触媒を失活させた化合物を抽出するため水を添加し、有機相と水相に液液分離を行った後、水相を除去することで有機相から銅触媒を除去してよい。この液液分離工程は、特に限定しないが、静置分離、遠心分離機による分離等の方法が挙げられる。上記液液分離を促進させるためには、公知の界面活性剤等を用いてもよい。
(濃縮・乾燥工程)
続いて、本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法においては、液液分離後の上記ポリフェニレンエーテルが含まれた有機相を、溶剤を揮発させることで濃縮・乾燥させてよい。
上記有機相に含まれる溶剤を揮発させる方法としては、特に限定はしないが、有機相を高温の濃縮槽に移し溶剤を留去させて濃縮する方法やロータリーエバポレーター等の機器を用いてトルエンを留去させて濃縮する方法等が挙げられる。
乾燥工程における乾燥処理の温度としては、少なくとも60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましく、140℃以上が最も好ましい。ポリフェニレンエーテルの乾燥を60℃以上の温度で行うと、ポリフェニレンエーテル粉体中の高沸点揮発成分の含有量を効率よく低減できる。
ポリフェニレンエーテルを高効率で得るためには、乾燥温度を上昇させる方法、乾燥雰囲気中の真空度を上昇させる方法、乾燥中に撹拌を行う方法等が有効であるが、特に、乾燥温度を上昇させる方法が製造効率の観点から好ましい。乾燥工程は、混合機能を備えた乾燥機を使用することが好ましい。混合機能としては、撹拌式、転動式の乾燥機等が挙げられる。これにより処理量を多くすることができ、生産性を高く維持できる。
(変性反応工程)
未変性ポリフェニレンエーテルの水酸基へ官能基を導入する方法に限定はなく、例えば、未変性ポリフェニレンエーテルの水酸基と、炭素-炭素2重結合を有するカルボン酸(以下カルボン酸)とのエステル結合の形成反応により得られる。エステル結合の形成法は、公知の様々な方法を利用することが出来る。たとえば、a.カルボン酸ハロゲン化物とポリマー末端の水酸基との反応、b.カルボン酸無水物との反応によるエステル結合の形成、c.カルボン酸との直接反応、d.エステル交換反応による方法、等があげられる。aのカルボン酸ハロゲン化物との反応は、最も一般的な方法の一つである。カルボン酸ハロゲン化物としては、塩化物、臭化物が一般的に用いられるが、他のハロゲンを利用してもかまわない。反応は、水酸基との直接反応、水酸基のアルカリ金属塩との反応いずれでも構わない。カルボン酸ハロゲン化物と水酸基との直接反応ではハロゲン化水素等の酸が発生するため、酸をトラップする目的で、アミン等の弱塩基を共存させてもよい。bのカルボン酸無水物との反応やcのカルボン酸との直接反応では、反応点を活性化し、反応を促進するために、例えばカルボジイミド類やジメチルアミノピリジン等の化合物を共存させてもかまわない。dのエステル交換反応の場合は、必要に応じて、生成したアルコール類の除去を行うことが望ましい。また、反応を促進させるために公知の金属触媒類を共存させてもかまわない。反応後は、アミン塩等の副生物等を除くために、水、酸性、又はアルカリ性の水溶液で洗浄してもかまわないし、ポリマー溶液をアルコール類のような貧溶媒中に滴下し、再沈殿により、目的物を回収してもかまわない。またポリマー溶液を洗浄後、減圧下に溶媒を留去し、ポリマーを回収してもかまわない。
本実施形態の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法は、上述の本実施形態の変性ポリフェニレンエーテルの製造方法に限定されることなく、上述の、酸化重合工程、銅抽出及び副生成物除去工程、液液分離工程、濃縮・乾燥工程の順序や回数等を適宜調整してよい。
<ポリフェニレンエーテル溶液>
本実施形態のポリフェニレンエーテル溶液は、上述の本実施形態のポリフェニレンエーテルを含む。さらにケトン系溶媒を含んでいることが好ましい。上記ポリフェニレンエーテル溶液は、上記ポリフェニレンエーテル、上記ケトン系溶媒以外の他の成分を含んでいてもよい。
上記ケトン系溶媒としては、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。さらに他の溶媒を含んでいてもよい。
上記ポリフェニレンエーテル溶液100質量%に対する上記ポリフェニレンエーテルの質量割合は、0.1~70質量%であることが好ましく、より好ましくは1~65質量%、さらに好ましくは1~60質量%である。
<熱硬化性組成物>
本実施形態の熱硬化性組成物は、上述の本実施形態のポリフェニレンエーテルを含む。さらに、架橋剤と、有機過酸化物とを含むことが好ましく、所望により、熱可塑性樹脂、難燃剤、その他の添加剤、溶剤などをさらに含むことができる。本実施形態に係る熱硬化性組成物の構成要素について以下に説明する。
本実施形態の熱硬化性組成物100質量%に対する上述の本実施形態のポリフェニレンエーテルの質量割合としては、1~80質量%であることが好ましく、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~40質量%である。
<架橋剤>
本実施形態の熱硬化性組成物では、架橋反応を起こすか、又は促進する能力を有する任意の架橋剤を使用することができる。架橋剤は、数平均分子量が4,000以下であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が4,000以下であると、熱硬化性組成物の粘度の増大を抑制でき、また加熱成形時の良好な樹脂流動性が得られる。数平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定した値としてよく、具体的には、GPCを用いて測定した値等が挙げられる。
架橋剤は、架橋反応の観点から、炭素-炭素不飽和二重結合を1分子中に平均2個以上有することが好ましい。架橋剤は、1種類の化合物で構成されてもよく、2種類以上の化合物で構成されてもよい。本明細書にいう「炭素-炭素不飽和二重結合」とは、架橋剤がポリマー又はオリゴマーである場合、主鎖より分岐した末端に位置する二重結合をいう。炭素-炭素不飽和二重結合としては、例えば、ポリブタジエンにおける1,2-ビニル結合が挙げられる。
架橋剤の数平均分子量が600未満である場合、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、2~4であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が600以上1,500未満の場合には、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、4~26であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が1,500以上4,000未満の場合には、架橋剤の1分子当たりの炭素-炭素不飽和二重結合の数(平均値)は、26~60であることが好ましい。架橋剤の数平均分子量が上記範囲内にある場合に、炭素-炭素不飽和二重結合の数が上記特定値以上であることにより、本実施形態の熱硬化性組成物は、架橋剤の反応性が一層高まり、熱硬化性組成物の硬化物の架橋密度が一層向上し、その結果、一層優れた耐熱性を付与できる。一方で、架橋剤の数平均分子量が上記範囲内にある場合に、炭素-炭素不飽和二重結合の数が、上記特定値以下であることにより、加熱成形時に一層優れた樹脂流動性を付与できる。
架橋剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、トリアリルシアヌレート(TAC)等のトリアルケニルシアヌレート化合物、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、ポリブタジエン等の分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物、分子中にビニルベンジル基を有するジビニルベンゼン等のビニルベンジル化合物、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン等の分子中にマレイミド基を2個以上有する多官能マレイミド化合物、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等の分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート等の分子中にアクリル基やメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤は、これらの中でも、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート及びポリブタジエンから成る群より選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。架橋剤が、上記で説明された少なくとも1種以上の化合物を含むことにより、熱硬化性組成物は、架橋剤とポリフェニレンエーテルとの相溶性及び塗工性に一層優れ、そして電子回路基板に実装されると基板特性に一層優れる傾向にある。
ポリフェニレンエーテルと架橋剤との質量比(ポリフェニレンエーテル:架橋剤)は、架橋剤と変性ポリフェニレンエーテルとの相溶性、熱硬化性組成物の塗工性、及び実装された電子回路基板の特性に一層優れるという観点から、25:75~95:5であることが好ましく、より好ましくは、32:68~85:15である。
<有機過酸化物>
本実施形態では、ポリフェニレンエーテル及び架橋剤を含む熱硬化性組成物の重合反応を促進する能力を有する任意の有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキシイソフタレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(tert-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。なお、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も熱硬化性組成物のための反応開始剤として使用することができる。中でも、得られる耐熱性及び機械特性に優れ、更に低い誘電正接(さらに誘電率も低いことが好ましい)を有する硬化物を提供することができるという観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
有機過酸化物の1分間半減期温度は、好ましくは155~185℃であり、より好ましくは160~180℃、さらに好ましくは165~175℃である。本明細書において、1分間半減期温度とは、有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が半分になる時間が1分間となる温度である。1分間半減期温度は、ラジカルに対して不活性な溶剤、例えばベンゼン等に有機過酸化物を0.05~0.1mol/Lの濃度となるように溶解させ、有機過酸化物溶液を窒素雰囲気化で熱分解させる方法で確認される値である。
有機過酸化物の1分間半減期温度が155℃以上であることにより、熱硬化性組成物を加熱加圧成形に供す際、ポリフェニレンエーテルを十分に溶融させてから架橋剤との反応が開始されることになるので、成形性に優れる傾向にある。一方、有機過酸化物の1分間半減期温度が185℃以下であることにより、通常の加熱加圧成形条件(例えば最高到達温度200℃)での有機過酸化物の分解速度が十分であるため、架橋剤との架橋反応を効率的かつ緩やかに進めることができるので、良好な電気特性(特に誘電正接)を有する硬化物を形成可能である。
1分間半減期温度が155~185℃の範囲内にある有機過酸化物としては、例えば、tert-へキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(155.0℃)、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート(166.0℃)、tert-ブチルペルオキシラウレート(159.4℃)、tert-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(158.8℃)、tert-ブチルペルオキシ2-エチルへキシルモノカーボネート(161.4℃)、tert-へキシルパーオキシベンゾエート(160.3℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(158.2℃)、tert-ブチルペルオキシアセテート(159.9℃)、2,2-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ブタン(159.9℃)、tert-ブチルパーオキシベンゾエート(166.8℃)、n-ブチル4,4-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)バレラート(172.5℃)、ジ(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(175.4℃)、ジクミルパーオキサイド(175.2℃)、ジ-tert-へキシルパーオキサイド(176.7℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン(179.8℃)、及びtert-ブチルクミルパーオキサイド(173.3℃)等が挙げられる。
有機過酸化物の含有量は、ポリフェニレンエーテルと架橋剤との合計100質量部を基準として、反応率を高くすることができるという観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上又は1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑えることができるという観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。また、有機過酸化物の含有量は、同様の観点から、ポリフェニレンエーテルと架橋剤との合計100質量部を基準として、好ましくは0.05質量部以上かつ10質量部以下、より好ましくは、0.5質量部以上かつ5質量部以下、さらに好ましくは、1質量部以上かつ4.5質量部以下、又は1.5質量部以上かつ4.5質量部以下である。
<熱可塑性樹脂>
熱硬化性組成物は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂は、ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物(ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体)、並びにビニル芳香族化合物の単独重合体から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記ブロック共重合体又はその水素添加物のビニル芳香族化合物由来の単位の含有率は、20質量%以上であることが好ましく、22質量%以上であることがより好ましく、99質量%以下であることができる。上記ブロック共重合体又はその水素添加物のビニル芳香族化合物由来の単位の含有率が20質量%以上であることにより、ポリフェニレンエーテルとの相溶性が一層向上し、金属箔との密着強度が一層向上する傾向にある。
ビニル芳香族化合物としては、分子内に芳香環及びビニル基を有すればよく、例えば、スチレン等が挙げられる。オレフィン系アルケン化合物としては、分子内に直鎖若しくは分岐構造を有するアルケンであればよく、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ブタジエン、及びイソプレン等が挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンエーテルとの相溶性に一層優れる観点から、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-エチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエン-ブチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-イソプレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレンの単独重合体(ポリスチレン)から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、及びポリスチレンからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
上記水素添加物における水素添加率は、特に限定されず、オレフィン系アルケン化合物由来の炭素-炭素不飽和二重結合が一部残存していてもよい。
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~300,000、より好ましくは20,000~290,000、さらに好ましくは30,000~280,000である。重量平均分子量が10,000以上であることにより、本実施形態の熱硬化性組成物は、硬化した際に耐熱性に一層優れる傾向にある。重量平均分子量が300,000以下であることにより、本実施形態の熱硬化性組成物は、加熱成形時に一層良好な樹脂流動性を有する傾向にある。重量平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
熱可塑性樹脂の含有量は、ポリフェニレンエーテルと架橋剤との合計100質量部を基準として、2~20質量部であることが好ましく、3~19質量部であることがより好ましく、4~18質量部であることがさらに好ましく、5~17質量部であることが特に好ましい。この含有量が2質量部以上であることにより、本実施形態の熱硬化性組成物は、硬化した際に低誘電率性、低誘電正接性及び金属箔との密着性に一層優れる傾向にある。含有量が20質量部以下であることにより、本実施形態の熱硬化性組成物は、加熱成形時に一層優れた樹脂流動性を有する傾向にある。また、熱可塑性樹脂の含有量は、同様の観点から、ポリフェニレンエーテルと架橋剤との合計100質量部を基準として、好ましくは2質量部~20質量部、より好ましくは3質量部~19質量部である。
なお、本実施形態の熱硬化性組成物は、上記で説明された種類及び重量平均分子量を有する熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むこともできる。
<難燃剤>
本実施形態の熱硬化性組成物は、難燃剤を含むことが好ましい。難燃剤としては、耐熱性を向上できる観点から、熱硬化性組成物の硬化後に熱硬化性組成物中の他の含有成分と相溶しないものであれば特に制限されない。好ましくは、難燃剤は、熱硬化性組成物の硬化後に熱硬化性組成物中のポリフェニレンエーテル及び/又は架橋剤と相溶しない。難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物;レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート等のリン系難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、難燃剤は、難燃剤と変性ポリフェニレンエーテルとの相溶性、熱硬化性組成物の塗工性、実装された電子回路基板の特性に一層優れる観点から、デカブロモジフェニルエタンであることが好ましい。
難燃剤の含有量は、特に限定されないが、UL規格94のV-0レベルの難燃性を維持するという観点から、ポリフェニレンエーテル樹脂と架橋剤との合計100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。また、得られる硬化物の誘電正接を低く維持できる観点から(好ましくはさらに誘電率も低く維持できる観点から)、難燃剤の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
<シリカフィラー>
本実施形態の熱硬化性組成物は、シリカフィラーを含有してもよい。シリカフィラーとしては、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、及び中空シリカ等が挙げられる。シリカフィラーの含有量は、ポリフェニレンエーテルと架橋剤との合計100質量部に対して、10~100質量部であることができる。また、シリカフィラーは、その表面にシランカップリング剤等を用いて表面処理をされたものであってもよい。
本実施形態の熱硬化性組成物は、難燃剤及びシリカフィラー以外に、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤等の添加剤、溶剤等を更に含んでもよい。本実施形態の熱硬化性組成物は、溶剤を含む場合には、熱硬化性組成物中の固形成分が溶剤に溶解又は分散したワニスの形態であることが可能である。
<溶剤>
本実施形態の熱硬化性組成物は、溶剤を含有していてもよい。溶剤としては、溶解性の観点から、トルエン、キシレン等の芳香族系化合物、メチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びクロロホルム等が好ましい。これらの溶剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<プリプレグ>
本実施形態のプリプレグは、基材と、本実施形態の熱硬化性組成物との複合体であり、本実施形態の熱硬化性組成物は、当該基材に含浸又は塗布されていてよい。プリプレグの製造方法は特に限定されないが、例えば、溶媒を含む熱硬化性組成物(ワニス)に基材を含浸させた後、熱風乾燥機等で溶剤分を乾燥除去することにより得られる。
基材としては、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラスクロス;アスベスト布、金属繊維布、及びその他の合成若しくは天然の無機繊維布;全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布;カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙-ガラス混繊糸から得られる布等の天然セルロース系基材;ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム;等が挙げられる。中でもガラスクロスが好ましい。これらの基材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
プリプレグ中の本実施形態の熱硬化性組成物固形分(熱硬化性組成物の溶剤以外の成分)の割合は、30~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましい。上記割合が30質量%以上であることにより、プリプレグを電子基板用等に用いた場合に絶縁信頼性に一層優れる傾向にある。上記割合が80質量%以下であることにより、電子基板等の用途において、曲げ弾性率等の機械特性に一層優れる傾向にある。
<積層体>
本実施形態の積層体は、本実施形態の熱硬化性組成物又は本実施形態のプリプレグと、金属箔とを積層して硬化して得られる。積層体は、プリプレグの硬化物(以下、「硬化物複合体」ともいう。)と金属箔とが積層して密着している形態を有することが好ましく、電子基板用材料として好適に用いられる。金属箔としては、例えば、アルミ箔及び銅箔が挙げられ、これらの中でも、銅箔は電気抵抗が低いため好ましい。金属箔と組合せる硬化物複合体は、1枚でも複数枚でもよく、用途に応じて複合体の片面又は両面に金属箔を重ねて積層板に加工する。
積層体の製造方法としては、例えば、熱硬化性組成物と基材とから構成される複合体(例えば、上述のプリプレグ)を形成し、これを金属箔と重ねた後、熱硬化性組成物を硬化させることにより、硬化物と金属箔とが積層されている積層体を得る方法が挙げられる。上記積層体の特に好ましい用途の1つはプリント配線板である。プリント配線板は、積層体から金属箔の少なくとも一部が除去されていることが好ましい。
<プリント配線板>
上記プリント配線板は、積層体から金属箔の一部が除去されている。上記プリント配線板は、典型的には、上述した本実施形態のプリプレグを用いて、加圧加熱成形する方法で形成できる。基材としてはプリプレグに関して上述したのと同様のものが挙げられる。上記プリント配線板は、本実施形態の熱硬化性組成物を含むことにより、優れた耐熱性及び電気特性(低誘電率及び低誘電正接)を有し、更には環境変動に伴う電気特性の変動を抑制可能であり、更には優れた絶縁信頼性及び機械特性を有する。
以下、実施例に基づいて本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
まず、下記に各物性及び評価の測定方法及び評価基準について述べる。
<ポリフェニレンエーテルの分析>
(1)ポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c)
ポリフェニレンエーテルの0.5g/dLのクロロホルム溶液を調製し、ウベローデ粘度管を用いて30℃における還元粘度(ηsp/c)(dL/g)を求めた。
(2)ポリフェニレンエーテルのОH基数
ポリフェニレンエーテルを5.0mg秤量した。そして、この秤量したポリフェニレンエーテルを、25mLの塩化メチレンに溶解させた。調製した溶液2.0mLに対して、2質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)のエタノール溶液を150μL添加した後、UV分光光度計(日立製作所:U-3210型)を用いて、318nmの吸光度(Abs)を測定した(セル長1cmの吸光度測定用セルを使用)。そして、その測定結果に基づき、吸光度から得られるОH基数を、下記数式(1)により求めた。
OH基数(μmol/g)=[(25×Abs)/(ε×5)]×10 ・・・数式(1)
(ここで、εは、吸光係数を示し、4700L/mol・cmである。)
(3)ガラス転移温度の測定
ポリフェニレンエーテルのガラス転移温度は、示差走査熱量計DSC(PerkinElmer製-Pyrisl)を用いて測定した。窒素雰囲気中、毎分20℃の昇温速度で室温から250℃まで加熱後、50℃まで毎分20℃で降温し、その後、毎分20℃の昇温速度でガラス転移温度を測定した。
(4)メチルエチルケトンとトルエンの混合溶媒に対する長期溶解性
ガラス製の透明スクリュー管にポリフェニレンエーテルを2.0g、トルエン2.3g、メチルエチルケトン2.3gを秤量し、固形分濃度30質量%の溶液を調合した。次いで、25℃において攪拌子とマグネチックスターラーを用い混合した。完全溶解を確認後、溶液を1日静置した後、目視により溶解性を評価した。
〇(良好):溶液が透明性を保っている。
△(やや劣る):若干溶け残りが存在する。
×(劣る):明らかに溶解していない又は不溶分が多く存在する。
(実施例1)
ポリフェニレンエーテル1(PPE1)の合成
重合槽底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合槽に、46.3L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、3.6gの酸化第二銅、27.1gの47質量%臭化水素水溶液、8.7gのジ-tert-ブチルエチレンジアミン、42.0gのジ-n-ブチルアミン、128.0gのブチルジメチルアミン、14.6kgのトルエン、2.0gのトリオクチルメチルアンモニウムクロリド(R=C-C10)、789.8gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールを入れ、均一溶液とした。次に、ポンプを用い、2210.2gの2,6-ジメチルフェノールと2.21kgのトルエンの滴下用溶液を重合槽へ35分かけて滴下を開始すると同時に、重合槽底部より、重合溶液へ31.5L/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入し始め、重合を開始した。乾燥空気を240分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合中は内温が40℃になるようコントロールした。重合終結時の重合混合物(重合液)は均一な溶液状態であった。
乾燥空気の通気を停止し、重合混合物に38.73gのエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)を2kgの水溶液として添加した。70℃で240分間、重合混合物を撹拌し、その後20分静置し、液-液分離により有機相と水相とを分離した。上記有機相をロータリーエバポレーターによりポリマー濃度が30質量%になるまで濃縮した。
上記溶液を、ポリマー溶液に対するメタノールの質量比が4となるメタノールを混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの質量比が4となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記洗浄操作を三回行った。その後、湿潤ポリフェニレンエーテルを、140℃、1mmHgで120分保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。
得られたポリフェニレンエーテルについて上述した方法により各測定を行った。各分析結果を表1に示す。
(実施例2)
ポリフェニレンエーテル2(PPE2)の合成
重合槽底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合槽に、46.3L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、7.0gの酸化第二銅、52.7gの47質量%臭化水素水溶液、16.9gのジ-tert-ブチルエチレンジアミン、81.7gのジ-n-ブチルアミン、248.7gのブチルジメチルアミン、14.7kgのトルエン、2.0gのトリオクチルメチルアンモニウムクロリド(R=C-C10)、1096.6gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールを入れ、均一溶液とした。次に、ポンプを用い、1903.4gの2,6-ジメチルフェノールと1.90kgのトルエンの滴下用溶液を重合槽へ35分かけて滴下を開始すると同時に、重合槽底部より、重合溶液へ31.5L/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入し始め、重合を開始した。乾燥空気を240分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合中は内温が40℃になるようコントロールした。重合終結時の重合混合物(重合液)は均一な溶液状態であった。
乾燥空気の通気を停止し、重合混合物に75.3gのエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)を2kgの水溶液として添加した。70℃で240分間、重合混合物を撹拌し、その後20分静置し、液-液分離により有機相と水相とを分離した。上記有機相をロータリーエバポレーターによりポリマー濃度が30質量%になるまで濃縮した。
上記溶液を、ポリマー溶液に対するメタノールの質量比が4となるメタノールを混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの質量比が4となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記洗浄操作を三回行った。その後、湿潤ポリフェニレンエーテルを、140℃、1mmHgで120分保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。
得られたポリフェニレンエーテルについて上述した方法により各測定を行った。各分析結果を表1に示す。
(実施例3)
ポリフェニレンエーテル3(PPE3)の合成
1096.6gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールを用い、1903.4gの2,6-ジメチルフェノールと1.90kgのトルエンの滴下用溶液を用いる他は、実施例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
(実施例4)
ポリフェニレンエーテル4(PPE4)の合成
1720.3gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノールを用い、1279.7gの2,6-ジメチルフェノールと1279.7gのトルエンの滴下用溶液を用いる他は、実施例2と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
(実施例5)
ポリフェニレンエーテル5(PPE5)の合成
重合槽底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合槽に、46.3L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、3.3gの酸化第二銅、24.9gの47質量%臭化水素水溶液、8.0gのジ-tert-ブチルエチレンジアミン、38.6gのジ-n-ブチルアミン、117.5gのブチルジメチルアミン、13.8kgのトルエン、2.0gのトリオクチルメチルアンモニウムクロリド(R=C-C10)を入れ、均一溶液とした。次に、ポンプを用い、1200.8gの2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール、1799.2gの2,6-ジメチルフェノール、3.0kgのトルエンを事前に混合した滴下用溶液を重合槽へ40分かけて滴下を開始すると同時に、重合槽底部より、重合溶液へ31.5L/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入し始め、重合を開始した。乾燥空気を140分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合中は内温が40℃になるようコントロールした。重合終結時の重合混合物(重合液)は均一な溶液状態であった。
乾燥空気の通気を停止し、重合混合物に38.9gのエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)を2kgの水溶液として添加した。70℃で240分間、重合混合物を撹拌し、その後20分静置し、液-液分離により有機相と水相とを分離した。上記有機相をロータリーエバポレーターによりポリマー濃度が30質量%になるまで濃縮した。
上記溶液を、ポリマー溶液に対するメタノールの質量比が4となるメタノールを混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの質量比が4となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記洗浄操作を三回行った。その後、湿潤ポリフェニレンエーテルを、140℃、1mmHgで120分保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。
得られたポリフェニレンエーテルについて上述した方法により各測定を行った。各分析結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリフェニレンエーテル6(PPE6)の合成
重合槽底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合槽に、30.9L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、2.8gの酸化第二銅、21.1gの47質量%臭化水素水溶液、6.8gのジ-tert-ブチルエチレンジアミン、32.6gのジ-n-ブチルアミン、99.5gのブチルジメチルアミン、731.1gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、1268.9gの2,6-ジメチルフェノール、17.8kgのトルエン、2.0gのトリオクチルメチルアンモニウムクロリド(R=C-C10)を入れ、均一溶液とした。重合槽底部より、重合溶液へ21.0L/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入し始め、重合を開始した。乾燥空気を120分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合中は内温が40℃になるようコントロールした。重合終結時の重合混合物(重合液)は均一な溶液状態であった。
乾燥空気の通気を停止し、重合混合物に30.1gのエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)を2kgの水溶液として添加した。70℃で150分間、重合混合物を撹拌し、その後20分静置し、液-液分離により有機相と水相とを分離した。上記有機相をロータリーエバポレーターによりポリマー濃度が30質量%になるまで濃縮した。
上記溶液を、ポリマー溶液に対するメタノールの質量比が4となるメタノールを混合し、ポリマーの析出を行った。ガラスフィルターを用いた減圧濾過により湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。さらに湿潤ポリフェニレンエーテルに対するメタノールの質量比が4となる量のメタノールにより湿潤ポリフェニレンエーテルを洗浄した。上記洗浄操作を三回行った。その後、湿潤ポリフェニレンエーテルを、140℃、1mmHgで120分保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテルを得た。
得られたポリフェニレンエーテルについて上述した方法により各測定を行った。各分析結果を表1に示す。
(比較例2)
ポリフェニレンエーテル7(PPE7)の合成
1146.9gの2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、853.1gの2,6-ジメチルフェノールを用いる他は、比較例1と同様の方法で操作を実施した。
各分析結果を表1に示す。
Figure 2024125052000018
<熱硬化性組成物及びその硬化物の形成に使用される材料>
(ポリフェニレンエーテル)
・上記製造例で得られたポリフェニレンエーテル1~6(PPE1~6)
(架橋剤)
・トリアリルシアヌレート(製品名:TAIC、東京化成工業株式会社製、数平均分子量:249.3、分子内不飽和二重結合数:3個)
(有機過酸化物)
・ビス(1-tert-ブチルペルオキシ-1-メチルエチル)ベンゼン(製品名パーブチルP、日本油脂株式会社製、1分間半減期温度:175.4℃)
(熱可塑性樹脂)
・水添スチレン系熱可塑性樹脂(SEBS)(製品名:タフテックH1041、旭化成株式会社製、重量平均分子量:約90,000、スチレン単位含有率:32質量%)
(難燃剤)
・デカブロモジフェニルエタン(製品名:SAYTEX8010、アルベマール社製)
(充填剤)
・球状シリカ(龍森社製)
<熱硬化性組成物の評価方法>
(1)熱硬化性組成物の硬化物の誘電率及び誘電正接
実施例及び比較例で製造された熱硬化性組成物の硬化物の10GHzでの誘電率及び誘電正接を、スプリットシリンダ法にて測定した。測定装置として、ネットワークアナライザー(N5227B、KEYSIGHTTECHNOLOGIES社製)、及びスプリットシリンダ共振器(CR-710、EMラボ株式会社製)を用いた。
後述の方法で作製した熱硬化性組成物の硬化物を、幅50mm、長さ50mm、厚さ約0.5mmの板状に切り出した。次に、120℃±3℃のオーブンに入れ1時間乾燥させた後、23℃相対湿度50±2%の環境下に24±2時間静置した。その後、23℃、相対湿度50±2%の環境下で上記測定装置を用いることにより、誘電率・誘電正接の測定を行った。
(2)熱硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度(耐熱性)
積層板の動的粘弾性を測定し、tanδが最大となる温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。測定装置として動的粘弾性装置(TAインスツルメント社製、ARES-G2)を用いた。後述の方法で作製した厚さ約0.7mmの熱硬化性組成物の硬化物を、長さ50mm、幅約10mmに切り出して、試験片とし、引張モード、周波数:10rad/sの条件で測定を行った。
以下、各実施例及び比較例のポリフェニレンエーテルの製造方法を説明する。
(実施例6)
表2に示される組成に従って、トルエン205質量部に対し、熱可塑性樹脂を添加し、攪拌、溶解させ、次いで、難燃剤、球状シリカ、及び実施例1で合成したPPE1をそれぞれ添加し、PPE1が溶解するまで攪拌を継続した。次いで、溶解物へ架橋剤及び有機過酸化物をそれぞれ添加し、十分に攪拌して、ワニスを得た。このワニスに、Lガラスクロスを含浸させた後、所定のスリットに通すことにより余分なワニスを掻き落とし、130℃の乾燥オーブンにて所定時間乾燥させ、トルエンを除去することにより、プリプレグを得た。このプリプレグを所定サイズに切り出し、所定枚数重ね、更にその重ね合わせたプリプレグの両面に銅箔(古川電気工業株式会社製、厚み18μm、FZ-WS箔)を重ね合わせた状態で、真空プレスを行うことにより、銅張積層板を得た。この真空プレスの工程では、先ず、室温から昇温速度2℃/分で加熱しながら圧力40kg/cm2の条件を採用し、温度が200℃に達した後に、温度を200℃に維持したまま圧力40kg/cm、及び時間60分間の条件を採用した。次に、上記銅張積層板から、エッチングにより銅箔を除去することにより積層板を得た。
(実施例7~10、比較例3)
樹脂組成を表2に示すとおりに変更したこと以外は実施例6と同じ方法に従って、熱硬化性組成物、ワニス及びプリプレグをそれぞれ得て、評価した。
Figure 2024125052000019
表1、表2に示すとおり、比較例に比べ、実施例に示した溶解性を維持しつつ、高いガラス温度を有し耐熱性に優れたポリフェニレンエーテルを用いることで、硬化物の電気特性及び耐熱性が優れる熱硬化性組成物を得ることができた。
本発明のポリフェニレンエーテルを含む熱硬化性組成物は、電気特性および耐熱性に優れるため、電子材料用途及び改質剤用途として産業上の利用価値がある。

Claims (9)

  1. 30℃における0.5g/dLの濃度のクロロホルム溶液で測定した還元粘度(ηsp/c)が0.10~0.80dL/gであり、
    下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位との合計100mol%に対して、下記式(1)のフェノールから誘導された繰り返し単位1~79mol%と、下記式(2)のフェノールから誘導された繰り返し単位21~99mol%とを含み、
    ガラス転移温度が180~230℃であるポリフェニレンエーテル。
    (式(1)中、R11は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~6の飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、R12は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子である。)
    {式(2)中、R22は、各々独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~20の飽和若しくは不飽和炭化水素基、置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基、又はハロゲン原子であり、2つのR22は、両方が水素原子でなく、R21は、下記式(3)で表される部分構造である。
    (式(3)中、R31は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は2つのR31が結合した炭素数1~8の環状アルキル構造であり、R32は、各々独立に、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキレン基であり、bは、各々独立に、0又は1であり、R33は、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基又は置換されていてもよいフェニル基である。)}
  2. 前記式(3)で表される部分構造がtert-ブチル基、シクロヘキシル基、またはイソプロピル基である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル。
  3. 前記式(1)のフェノール、及び前記式(2)のフェノールの酸化重合を行う酸化重合工程を含む、請求項1または2に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
  4. 前記酸化重合工程が、酸化重合開始時の重合液に含まれるモノマー成分100質量%に対して前記式(2)のフェノールを80質量%以上含む開始時重合液を重合槽へ仕込み酸化重合を開始する工程と、その後に前記式(1)のフェノールを含む重合原料を前記重合槽へ添加してさらに酸化重合する工程と、を含む、請求項3に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
  5. 請求項1または2に記載のポリフェニレンエーテルと、ケトン系溶媒とを含む、ポリフェニレンエーテル溶液。
  6. 請求項1または2に記載のポリフェニレンエーテルを含む、熱硬化性組成物。
  7. 基材と、請求項6に記載の熱硬化性組成物とを含む、プリプレグ。
  8. 前記基材がガラスクロスである、請求項7に記載のプリプレグ。
  9. 請求項7又は8に記載のプリプレグの硬化物と、金属箔とを含む、積層体。
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