JP2024091010A - 歯科医療機器用細菌付着抑制剤及び歯科補綴物用細菌付着抑制剤 - Google Patents

歯科医療機器用細菌付着抑制剤及び歯科補綴物用細菌付着抑制剤 Download PDF

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Abstract

【課題】高い耐久性と高い細菌付着抑制能を併せ持つコーティング層を形成できる歯科医療機器用細菌付着抑制剤、歯科補綴物用細菌付着抑制剤、及び前記コーティング層を備える歯科用剛製器具を提供する。
【解決手段】本発明は、下記一般式〔1〕で表される共重合体を含んでなる歯科医療機器用細菌付着抑制剤、歯科補綴物用細菌付着抑制剤及び下記一般式〔1〕で表される共重合体を含む膜が形成された歯科用剛製器具である。
【化1】

(式中、R1及びR2は同一又は異なる基であって、水素原子若しくはメチル基を示し、R3、R4、及びR5はそれぞれ独立しており、水素原子、メチル基若しくはエチル基を示す。mとnはモル比であり、m:nは99~50:1~50である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、歯科医療機器用細菌付着抑制剤及び歯科補綴物用細菌付着抑制剤に関する。
従来、歯の欠損や喪失を補う人工物として、歯科補綴物が用いられている。この歯科補綴物は、長期間口腔内に装着される。また、歯の欠損及び喪失原因としては、破折、う蝕、及び歯周病等が挙げられる。このような欠損歯や喪失歯の増加は、咀嚼、及び発語の機能低下を引き起こし、ひいては体調悪化や病臥する原因となり得るため歯科補綴物は、歯の欠損や喪失の治療に不可欠である。
一方、歯科補綴物を使用する際は、装着前の殺菌やメンテナンスが重要となる。例えば、義歯は隙間ができやすいことから義歯床下にプラークが生成しやすいことが知られている(例えば、非特許文献1参照)。一般にプラークは、Streptococcus Mutans等の早期定着細菌が対象に付着、増殖した後、ここに後期定着細菌が蓄積、凝集することで形成される。このプラークが、歯、歯肉及び歯科補綴物等に形成されると、う蝕、歯周疾患、及び粘膜異常の原因となる。このため、Streptococcus Mutans等の早期定着細菌の付着抑制は、歯科補綴物のメンテナンスにおいて重要である。
また、歯科補綴物としてインプラントを使用する場合、インプラント歯根部にプラークが形成されると天然歯と比較し、インプラント歯周炎を引き起こすリスクが高まることも知られている(例えば、非特許文献2参照)。歯科補綴物(インプラント)に形成されたプラークは、容易に周囲の健康歯にも伝播するため、歯科補綴物のメンテナンスを怠ると天然歯の喪失を促す原因になり得る。
特に歯科補綴物として、使用者自身が取り外し可能な義歯は、セラミック等の人工歯とレジン樹脂等の義歯床から構成されるものもある。そのため、使用者が日々のメンテナンスを実施することになるが、義歯用洗浄剤を用いたメンテナンスのみではプラーク除去効果が不十分になりやすく、専用ブラシでのブラッシングによるメンテナンスが推奨されている。しかしながら、義歯使用者の中には誤ったブラッシングにより義歯床にキズをつけてしまい、その傷がプラーク形成の温床となり口腔疾患を惹起する場合がある。
このような問題を解決するため、補綴物及び義歯へのプラーク付着を抑制するコーティング剤として、特許文献1~3に記載のコーティング剤が知られている。例えば、特許文献1及び2には、コーティング組成物として、フッ素含有ポリマーからなるコーティング組成物が開示され、特許文献3には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体からなるコーティング組成物が開示されている。
特開平10-139614号公報 国際公開第2006/016649号 特開2004-194874号公報
二川浩樹ら,「口腔カンジダの付着及びバイオフィルム形成」,日本医真菌学会雑誌,第46巻 川渕泰政ら,「インプラント周囲のポケット内細菌叢の観察-植立部分の歯の喪失原因による比較-」,日本口腔インプラント学会誌,第16巻,第4号,pp.507-512,2003年
しかしながら、特許文献1~3におけるコーティング組成物は基材に物理吸着することにより膜を形成することから、比較的耐久性が低く、使用期間の経過に伴い細菌付着抑制能が低下する問題が生じる。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、歯科医療機器の基材表面に対して、簡便な操作によって化学結合を形成することで、高い耐久性と細菌付着抑制能とを併せ持つコーティング層を形成できる歯科医療機器用細菌付着抑制剤、歯科補綴物用細菌付着抑制剤、金属製歯科補綴物用細菌付着抑制剤、並びに前記コーティング層が形成された歯科用剛製器具及び歯科医療機器を提案することにある。
本発明者らは、歯科医療機器等の基盤表面に対して、簡便な操作によって高い耐久性と高い細菌付着抑制能を併せ持つコーティング層を形成できる化合物およびコーティング方法を鋭意検討した結果、一般式〔1〕で示されるホスホリルコリン基を有する基を側鎖に有する共重合体が目的の性能を有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]下記一般式〔1〕で表される共重合体を含んでなる歯科医療機器用細菌付着抑制剤。

(式中、R及びRは同一又は異なる基であって、水素原子若しくはメチル基を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立しており、水素原子、メチル基若しくはエチル基を示す。mとnはモル比であり、m:nは99~50:1~50である。)
[2]前記一般式〔1〕で表される共重合体を含んでなる歯科補綴物用細菌付着抑制剤。
[3]前記歯科補綴物が金属製である、前記[2]に記載の歯科補綴物用細菌付着抑制剤。
[4]前記一般式〔1〕で表される共重合体を含む膜が形成された歯科用剛製器具。
本発明によれば、高い耐久性と高い細菌付着抑制能を併せ持つコーティング層を形成できる歯科医療機器用細菌付着抑制剤、歯科補綴物用細菌付着抑制剤、及び前記コーティング層を備える歯科用剛製器具を提供することができる。
本発明の歯科医療機器用細菌付着抑制剤、歯科補綴物用細菌付着抑制剤、金属製歯科補綴物用細菌付着抑制剤、歯科用剛製器具及び歯科医療機器に用いる細菌付着抑制剤について以下で説明する。
本発明の歯科医療機器用細菌付着抑制剤は、以下説明する細菌付着抑制剤を歯科医療機器用に用いるものである。本発明の歯科補綴物用細菌付着抑制剤は、以下説明する細菌付着抑制剤を歯科補綴物用に用いるものである。
また、本発明の歯科用剛製器具は、以下説明する細菌付着抑制剤により膜が形成された歯科用剛製器具である。
[細菌付着抑制剤]
本発明の細菌付着抑制剤は、一般式[1]で表される共重合体を含む。
一般式〔1〕の共重合体は、ホスホリルコリン基含有モノマーとシリル基含有モノマーで構成されており、以下の構造を有する。

(式中、R及びRは同一又は異なる基であって、水素原子若しくはメチル基を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立しており、水素原子、メチル基若しくはエチル基を示す。mとnはモル比であり、m:nは99~50:1~50である。)
上記一般式〔1〕の構成単位であるホスホリルコリン基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-トリメチルアンモニオエチルホスフェートが挙げることができ、下記式〔2〕で表されるMPC(2-メタクリロイルオキシエチル-2-トリメチルアンモニオエチルホスフェート)が好ましい。
上記一般式〔1〕の構成単位であるシリル基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリロイルプロピルトリアルコキシシランが挙げられ、下記一般式〔3〕で表される3-メタクリロイルプロピルトリアルコキシシランが好ましい。
(R、R、及びRはそれぞれ独立しており、水素原子、メチル基若しくはエチル基を示す。)
上記一般式〔1〕で表される共重合体は、重量平均分子量が10,000以上1,000,000以下であることが好ましく、10,000以上500,000以下であることがより好ましく、10,000以上200,000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。
当該共重合体の種類には特に制限はなく、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、ランダム共重合体が好ましい。
前記一般式〔1〕における、ホスホリルコリン基含有モノマーとシリル基含有モノマーのモル比(m:n)は、99~50:1~50である。細菌付着抑制能を向上させる観点から、前記モル比(m:n)は、好ましくは97~65:3~35であり、より好ましくは95~75:5~25である。さらに好ましくは95~85:5~15である。
前記一般式〔1〕において、R、R、及びRはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基若しくはエチル基を示す。中でも、R、R、及びRはそれぞれ独立して、メチル基若しくはエチル基であることが好ましい。
本発明の細菌付着抑制剤中に含まれる一般式〔1〕で表される共重合体の配合量は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上6質量%以下であることがより好ましい。
本発明の細菌付着抑制剤は溶剤を含んでいてもよい。細菌付着抑制剤の組成物の溶剤として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノールなどのアルコール類等の有機溶媒、及び水が好ましい。
細菌付着抑制剤における溶剤の含有量は、特に制限されないが、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
上記した細菌付着抑制剤を用いて、歯科医療機器、歯科補綴物、金属製歯科補綴物、又は歯科用剛製器具に対して、細菌付着を抑制することができる。具体的には、本発明の細菌付着抑制剤により、一般式〔1〕で表される共重合体を含む膜を、歯科医療機器、歯科補綴物、金属製歯科補綴物、歯科用剛製器具又は歯科医療機器に形成することで、細菌付着を抑制することができる。
歯科医療機器としては、歯科の診断又は治療に用いる設備、機器等であれば特に制限されないが、例えば、歯科診療用チェアユニット、歯科用ドリル等が挙げられる。
歯科補綴物としては、例えば、インレー、ブリッジ、クラウン、義歯、インプラント等が挙げられる。また、金属製の歯科補綴物としては、例えば、上記した歯科補綴物において、金属製のものが挙げられる。
歯科用剛製器具としては、例えば、デンタルミラー、エキスプローラー、ピンセット等が挙げられる。
一般式〔1〕で表される共重合体によって膜形成される歯科医療機器、歯科補綴物、金属製歯科補綴物、歯科用剛製器具及び歯科医療機器の基材は、例えば金属製の基材では、チタン、銅、アルミニウム、プラチナ、パラジウム、タンタル、コバルトクローム、ステンレス鋼などが挙げられ、セラミックス製及び金属含有セラミックス製の基材では、ポーセレン、ジルコニア、イーマックス、メタルボンド、レジン、ハイブリッドセラミックなどが挙げられるが、特に限定されない。
本発明において用いる基材の表面層については特に限定されないが、酸処理や酸素プラズマ処理を行うことで表面層に水酸基を配向させることが好ましい。
一般式〔1〕で表される共重合体中のR、RおよびRの少なくとも一つがメチル基若しくはエチル基を表す場合、アルコキシシランを加水分解して、生じたシラノール基を、歯科医療機器等の表面層に存在する水酸基、又は共重合体同士のシラノール基と脱水縮合させる。このとき、アルコキシシランを加水分解する触媒としては、酸性触媒;塩酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液、リン酸水溶液、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸を有する化合物の水溶液、塩基性触媒;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンなどが好ましい。また、触媒の添加後の最終濃度は、1×10-6M(mol/L)以上1×10-1M以下が好ましい。
一般式〔1〕中の、加水分解されて生じたシラノール基を、酸処理された歯科医療機器等の表面層に存在する水酸基と脱水縮合させる際の温度および時間は、とくに限定されないが、細菌付着抑制剤の溶剤が完全に揮発する温度および時間であることが好ましい。
一般式〔1〕で表される共重合体のモル比であるnが比較的大きい場合または分子量が大きい場合、アルコキシシランを加水分解して生じたシラノール基を、酸処理された歯科医療機器等の表面層に存在する水酸基と脱水縮合させるが、表面に未活性のアルコキシシランが配向し、細菌付着抑制能にムラが発生する場合がある。この場合、脱水縮合をして膜を形成した後に、被膜表面のアルコキシシランを加水分解しシラノールとすることにより均一な細菌付着抑制能を示す膜を形成することができる。アルコキシシランを加水分解する触媒としては、酸性触媒;塩酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液、リン酸水溶液、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸を有する化合物の水溶液、塩基性触媒;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンなどが好ましい。とくに、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
[一般式[1]で表される共重合体の製造方法]
一般式〔1〕で表される共重合体は、例えば上記式〔2〕で表されるホスホリル基含有モノマーをモル比で50以上99以下、上記式〔3〕で表されるシリル基含有モノマーをモル比で1以上50以下に含む単量体組成物を重合することで得られる。
上記単量体組成物の重合反応は、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガスで反応系内を置換して、または当該雰囲気にして、ラジカル重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の公知の方法により行うことができる。得られる重合体の精製等の観点から、溶液重合が好ましい。この重合反応により、本発明の共重合体が得られる。
これらの共重合体を精製する場合、その精製は、再沈殿法、透析法、限外濾過法等の一般的な精製方法により行うことができる。
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系ラジカル重合開始剤、有機過酸化物、過硫酸化物が挙げられる。
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2-アゾビス(2-アミノプロピル)二塩酸塩、2,2-アゾビス(2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)二塩酸塩、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2-アゾビスイソブチルアミド二水和物、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、1-((1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ)ホルムアミド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミヂン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)ジハイドレート、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル)等が挙げられる。
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、コハク酸ペルオキシド(=サクシニルペルオキシド)、グルタルペルオキシド、サクシニルペルオキシグルタレート、t-ブチルペルオキシマレート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジ-2-エトキシエチルペルオキシカーボネート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルペルオキシピバレート等が挙げられる。過硫酸化物としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
これらのラジカル重合開始剤は、単独で用いても混合物で用いてもよい。重合開始剤の使用量は、単量体組成物100質量%に対して通常0.001質量%以上10質量%以下であり、0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましい。
上記単量体組成物の重合反応は、溶媒の存在下で行うことができる。該溶媒としては、単量体組成物を溶解し、単量体組成物と重合開始剤添加前に反応しないものが使用できる。例えば、水、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、含窒素系溶媒が挙げられる。アルコール系溶媒としてはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等、エーテル系溶媒としてはエチルセロソルブ、テトラヒドロフラン等、含窒素系溶媒としてはアセトニトリル、ニトロメタン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。好ましくは、水、アルコールまたはそれらの混合溶媒が挙げられる。
重合反応時の温度は、使用する重合開始剤や溶媒の種類によって、また所望の分子量によって適宜適した温度を選択すればよく限定されないが、40℃以上100℃以下の範囲が好ましい。
以下、本発明を実施例、比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例で使用した共重合体は、2-メタクリロイルオキシエチル-2-トリメチルアンモニオエチルホスフェート(MPC単量体)と下記モノマーから合成したランダム共重合体である。
(共重合体1)
重量平均分子量;50×10、MPC単量体に基づく構成単位数と3-メタクリロイルプロピルトリメトキシシランに基づく構成単位数の比;90:10
(共重合体2)
重量平均分子量;48×10、MPC単量体に基づく構成単位数と3-メタクリロイルプロピルトリメトキシシランに基づく構成単位数の比;70:30
(共重合体3)
重量平均分子量;45×10、MPC単量体に基づく構成単位数と3-メタクリロイルプロピルトリメトキシシランに基づく構成単位数の比;60:40
(共重合体4)
重量平均分子量;120×10、MPC単量体に基づく構成単位数と3-メタクリロイルプロピルトリメトキシシランに基づく構成単位数の比;90:10
(共重合体5)
重量平均分子量;600×10、MPC単量体に基づく構成単位数と3-メタクリロイルプロピルトリエトキシシランに基づく構成単位数の比;90:10
(共重合体6)
重量平均分子量;510×10、MPC単量体に基づく構成単位数と3-メタクリロイルプロピルトリエトキシシランに基づく構成単位数の比;70:30
<重量平均分子量の測定方法>
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された、PMMA(ポリメチルメタクリレート)換算の値を意味し、詳細な測定条件は以下の通りである。
(測定条件)
GPCシステム:高速GPC装置HLC-8320(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel SuperAW4000、5000、6000を連結(東ソー株式会社製)
展開溶媒:トリフルオロ酢酸を20 mMとなるように調製したトリフルオロエタノール
検出器:示差屈折率検出器
流速:0.3mL/分 注入量:100μL
カラム温度:40℃
サンプル:共重合体を終濃度0.1重量%となるよう展開溶媒で希釈する。
歯科医療機器用細菌付着抑制剤、歯科補綴物用細菌付着抑制剤、金属製歯科補綴物用細菌付着抑制剤、歯科用剛製器具及び歯科医療機器に対する基材は限定しないが、本実施例では酸処理したチタン板(Yamauchi Matex社製)を基材として用いた。
(実施例1)
共重合体1を0.4g秤量し、EtOHを19.4g加え、混合溶解し、細菌付着抑制剤を得た。溶解を確認後、細菌付着抑制剤を攪拌しながら、250mMの塩酸水溶液を0.2g添加した。チタン板を細菌付着抑制剤に浸漬し、転倒混和ののち、細菌付着抑制剤から取り出し、110℃で30分間加熱処理した。放冷したのちに水で表面と未反応である重合体を洗浄し、コーティング完了とした。
(実施例2)
実施例1において、共重合体1の代わりに共重合体2を用いた。他は同様に実施した。
(実施例3)
実施例1において、共重合体1の代わりに共重合体3を用いた。他は同様に実施した。
(実施例4)
実施例1において、共重合体1の代わりに共重合体4を用いた。他は同様に実施した。
(実施例5)
実施例1において、共重合体1の代わりに共重合体5を用いた。他は同様に実施した。
(実施例6)
実施例1において、共重合体1の代わりに共重合体6を用いた。他は同様に実施した。
(実施例7)
共重合体1を0.4g秤量し、EtOHを19.4g加え、混合溶解し、細菌付着抑制剤を得た。溶解を確認後、細菌付着抑制剤を攪拌しながら、250mMの塩酸水溶液を0.2g添加した。チタン板を細菌付着抑制剤に浸漬し、転倒混和ののち、110℃で30分間加熱処理した。放冷したのちに0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液に1分間浸漬し、水で洗浄しコーティング完了とした。
(実施例8)
実施例7において、共重合体1の代わりに共重合体2を用いた。他は同様に実施した。
(実施例9)
実施例7において、共重合体1の代わりに共重合体3を用いた。他は同様に実施した。
(実施例10)
実施例7において、共重合体1の代わりに共重合体4を用いた。他は同様に実施した。
(比較例1)
チタン板をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、乾燥した。
[評価方法]
各実施例及び比較例で作製した試料について、以下のとおり評価した。
(細菌について)
評価する細菌は、約1.0×10CFU/mLのPorphyromonas gingivalis (P.g.)、約1.0×10 CFU/mLのFusobacterium nucleatum (F.n.)、約1.0×1010 CFU/mLのStreptococcus mutans(S.m.)を用いた。
(細菌付着抑制剤をコーティングしたチタン板に対する細菌付着抑制能の評価)
細菌付着抑制剤を用いて膜を形成したチタン板を、各種菌液に浸漬し、24時間静置した。チタン板をPBSで洗浄後、発光基質(Promega社製,CellTiter-GloR Luminescent Cell Viability Assay)に15分間浸漬してプレートリーダー(Infinite 200PRO, Tecan社)にて発光強度を測定した。細菌が付着していない場合には発光強度が小さくなるため、細菌付着抑制能の評価としては、細菌付着抑制剤でコーティングをしていない、未処理の発光強度および相当する細菌吸着量を100%とし(比較例1)、細菌吸着量が40%以下の場合には優良「◎」、41%以上60%以下の場合には良「〇」、61%以上80%以下の場合には可「△」、81%以上の場合には不可「×」と評価した。
(細菌付着抑制剤をコーティングしたチタン板の細菌付着抑制能の耐久性評価)
上記の細菌付着抑制能の評価において、各種菌液に浸漬する前に細菌付着抑制剤でコーティングしたチタン板を、水で濡らした不織布で軽く払拭し、評価を行った。耐久性の評価としては、細菌付着抑制剤でコーティングをしていない、未処理の発光強度および相当する細菌吸着量を100%とし(比較例1)、不織布での払拭による細菌吸着量の増加が5%以下の場合には優良「◎」、6%以上10%以下の場合には良「〇」、11%以上20%以下の場合には可「△」、21%以上の場合には不可「×」と評価した。
Porphyromonas gingivalis (P.g.)の吸着試験の結果を表1に示す。実施例1~10および比較例1について、細菌付着抑制剤をコーティングしたチタン板への細菌付着量の評価が良「〇」または可「△」であることから、一般式〔1〕で表される共重合体は、細菌付着を抑制することのできる化合物である。
Fusobacterium nucleatum (F.n.)の吸着試験の結果を表1に示す。実施例1~10および比較例1について、細菌付着抑制剤をコーティングしたチタン板への細菌付着量の評価が、優良「◎」または良「〇」であることから、一般式〔1〕で表される共重合体は、細菌付着を抑制することのできる化合物である。
Streptococcus mutans(S.m.)の吸着試験の結果を表1に示す。実施例1~10および比較例1について、細菌付着抑制剤をコーティングしたチタン板への細菌付着量の評価が、優良「◎」または良「〇」であることから、一般式〔1〕で表される共重合体は、細菌付着を抑制することのできる化合物である。
実施例1~10について、細菌付着抑制剤の耐久性の評価が、いずれの菌種においても優良「◎」であることから、一般式〔1〕で表される共重合体は、高い耐久性を有している化合物である。
以上の実施例より、高い耐久性と高い細菌付着抑制能を併せ持つコーティング層を形成できる細菌付着抑制剤を提供することができた。
よって、本発明によれば、高い耐久性と高い細菌付着抑制能を併せ持つコーティング層を形成できる歯科医療機器用細菌付着抑制剤、歯科補綴物用細菌付着抑制剤、及び前記コーティング層を備える歯科用剛製器具を提供することができる。

Claims (4)

  1. 下記一般式〔1〕で表される共重合体を含んでなる歯科医療機器用細菌付着抑制剤。

    (式中、R及びRは同一又は異なる基であって、水素原子若しくはメチル基を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立しており、水素原子、メチル基若しくはエチル基を示す。mとnはモル比であり、m:nは99~50:1~50である。)
  2. 前記一般式〔1〕で表される共重合体を含んでなる歯科補綴物用細菌付着抑制剤。
  3. 前記歯科補綴物が金属製である、請求項2に記載の歯科補綴物用細菌付着抑制剤。
  4. 前記一般式〔1〕で表される共重合体を含む膜が形成された歯科用剛製器具。

JP2022207257A 2022-12-23 歯科医療機器用細菌付着抑制剤及び歯科補綴物用細菌付着抑制剤 Pending JP2024091010A (ja)

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