JP2024078264A - 引上装置の制御方法、制御プログラム、制御装置、単結晶シリコンインゴットの製造方法、及び単結晶シリコンインゴット - Google Patents

引上装置の制御方法、制御プログラム、制御装置、単結晶シリコンインゴットの製造方法、及び単結晶シリコンインゴット Download PDF

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Abstract

【課題】単結晶シリコンインゴットの品質を向上できる引上装置の制御方法、制御プログラム、制御装置、単結晶シリコンインゴットの製造方法、及び単結晶シリコンインゴットを提供する。【解決手段】単結晶シリコンインゴットIの引上装置100を制御する制御方法は、引上装置100で製造した単結晶シリコンインゴットIの酸素濃度の測定値と、製造したときの引上装置100の操作量とを関連づけた実績データを取得するステップと、実績データに基づいて、引上装置100で製造する単結晶シリコンインゴットIの酸素濃度を推定する推定モデルを生成するステップと、推定モデルによる単結晶シリコンインゴットIの酸素濃度の推定値が目標濃度になるように、推定モデルに入力する操作量を調整するステップと、調整した操作量を、引上装置100の次バッチで単結晶シリコンインゴットIを製造するときの操作量として決定するステップとを含む。【選択図】図1

Description

本開示は、引上装置の制御方法、制御プログラム、制御装置、単結晶シリコンインゴットの製造方法、及び単結晶シリコンインゴットに関する。
従来、シリコンインゴットの酸素濃度を予測して制御するシステムが知られている(特許文献1等参照)。
特開2005-162558号公報
単結晶シリコンインゴットの品質の向上が求められる。
そこで、本開示の目的は、単結晶シリコンインゴットの品質を向上できる、引上装置の制御方法、制御プログラム、制御装置、単結晶シリコンインゴットの製造方法、及び単結晶シリコンインゴットを提供することにある。
上記課題を解決する本開示の一実施形態は、以下のとおりである。
[1]単結晶シリコンインゴットの引上装置の制御方法であって、
前記引上装置で製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定値と、製造したときの前記引上装置の操作量とを関連づけた実績データを取得するステップと、
前記実績データに基づいて、前記引上装置で製造する単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を推定する推定モデルを生成するステップと、
前記推定モデルによる単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の推定値が目標濃度になるように、前記推定モデルに入力する操作量を調整するステップと、
調整した操作量を、前記引上装置の次バッチで単結晶シリコンインゴットを製造するときの操作量として決定するステップと
を含む、引上装置の制御方法。
[2]前記推定モデルを生成するステップにおいて、前記引上装置の操作量の少なくとも一部の操作量を選択し、選択した操作量の影響度を係数とする回帰式を、前記推定モデルとして生成する、上記[1]に記載の引上装置の制御方法。
[3]前記推定モデルを生成するステップにおいて、前記引上装置の操作量に順位を付し、前記順位に基づいて前記引上装置の操作量を選択する、上記[2]に記載の引上装置の制御方法。
[4]前記実績データを取得するステップにおいて、前記引上装置の2回のバッチのそれぞれの実績データを1組又は2組以上取得し、
前記推定モデルを生成するステップにおいて、前記1組又は2組以上の実績データのうちの少なくとも1組の実績データについて2回のバッチのそれぞれの実績データの差分データを生成し、前記少なくとも1組の差分データに基づいて前記引上装置の操作量の差分を算出する回帰式を前記推定モデルとして生成する、上記[1]から[3]までのいずれか1つに記載の引上装置の制御方法。
[5]前記実績データを取得するステップにおいて、前記単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定値として、前記単結晶シリコンインゴットの結晶軸方向の複数の区分のそれぞれにおける酸素濃度の測定値を取得する、上記[1]から[4]までのいずれか1つに記載の引上装置の制御方法。
[6]前記推定モデルを生成するステップにおいて、前記単結晶シリコンインゴットの結晶軸方向の各区分に対応する区分推定モデルを生成する、上記[5]に記載の引上装置の制御方法。
[7]前記操作量を調整するステップにおいて、前記区分推定モデルに基づいて前記単結晶シリコンインゴットの各区分が引き上げられるときの操作量を調整する、上記[6]に記載の引上装置の制御方法。
[8]前記実績データを取得するステップにおいて、前記単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を第1の手法で測定した第1測定データと前記単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を第2の手法で測定した第2測定データとを取得し、前記第1測定データを前記第2測定データで補間したデータを前記単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定値として取得する、上記[1]から[7]までのいずれか1つに記載の引上装置の制御方法。
[9]上記[1]から[8]までのいずれか1つに記載の引上装置の制御方法をプロセッサに実行させる制御プログラム。
[10]上記[1]から[8]までのいずれか1つに記載の引上装置の制御方法を実行する制御部を備える制御装置。
[11]上記[1]から[8]までのいずれか1つに記載の引上装置の制御方法を実行することによって制御した引上装置で単結晶シリコンインゴットを製造するステップを含む、単結晶シリコンインゴットの製造方法。
[12]上記[1]から[8]までのいずれか1つに記載の引上装置の制御方法を実行することによって制御した引上装置で製造した単結晶シリコンインゴット。
本開示に係る引上装置の制御方法、制御プログラム、制御装置、単結晶シリコンインゴットの製造方法、及び単結晶シリコンインゴットによれば、単結晶シリコンインゴットの品質が向上され得る。
本開示の一実施形態に係る製造システムの構成例を示すブロック図である。 引上軸に沿った断面における引上装置の構成例を示す断面図である。 単結晶シリコンインゴットの部位を説明する模式図である。 本開示の一実施形態に係る制御方法の手順例を示すフローチャートである。 比較例に係る制御方法によって評価対象装置に条件を設定して製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度のヒストグラムを示す図である。 本開示の一実施形態に係る制御方法によって評価対象装置に条件を設定して製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度のヒストグラムの一例を示す図である。 比較例に係る制御方法によって他の評価対象装置に条件を設定して製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度のヒストグラムを示す図である。 本開示の一実施形態に係る制御方法によって他の評価対象装置に条件を設定して製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度のヒストグラムの一例を示す図である。 単結晶シリコンインゴットの各部位における酸素濃度の実績データの一例を示すグラフである。
(単結晶シリコンインゴットの製造システム1の構成例)
図1に示されるように、本開示の一実施形態に係る単結晶シリコンインゴットの製造システム1は、単結晶シリコンインゴットの引上装置100と、制御装置50と、データサーバ60とを備える。製造システム1において、データサーバ60は、引上装置100の過去の製造実績データを格納する。制御装置50は、データサーバ60に格納されているデータに基づいて、引上装置100で製造する単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を目標濃度に制御するように、引上装置100の操作量を決定する。以下、製造システム1の構成例が説明される。製造システム1が備える引上装置100の数は、3台に限られず、4台以上であってもよいし2台以下であってもよい。製造システム1が備える制御装置50又はデータサーバ60の数は、それぞれ1台に限られず2台以上であってもよい。
<制御装置50>
制御装置50は、制御部52と記憶部54とを備える。制御部52は、少なくとも1つのプロセッサを含んで構成されてよい。プロセッサは、制御部52の種々の機能を実現するプログラムを実行し得る。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)とも称される。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。
記憶部54は、引上装置100から取得したデータ若しくは引上装置100に設定するデータ等の各種情報、又は、制御部52で実行されるプログラム等を格納する。記憶部54は、磁気ディスク等の電磁記憶媒体を含んで構成されてよいし、半導体メモリ又は磁気メモリ等のメモリを含んで構成されてもよい。記憶部54は、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体を含んで構成されてよい。記憶部54は、制御部52のワークメモリとして機能してよい。記憶部54の少なくとも一部は、制御部52に含まれてよい。記憶部54の少なくとも一部は、制御装置50と別体の記憶装置として構成されてもよい。
制御装置50は、引上装置100又はデータサーバ60との間でデータを送受信する通信部を更に備えてもよい。通信部は、引上装置100又はデータサーバ60と通信可能に接続される。通信部は、引上装置100又はデータサーバ60とネットワークを介して通信可能に接続されてよい。通信部は、引上装置100又はデータサーバ60と有線又は無線で通信可能に接続されてよい。通信部は、ネットワーク又は引上装置100若しくはデータサーバ60と接続する通信モジュールを備えてよい。通信モジュールは、LAN(Local Area Network)等の通信インタフェースを備えてよい。通信モジュールは、4G又は5G等の種々の通信方式による通信を実現してもよい。通信部が実行する通信方式は、上述の例に限られず、他の種々の方式を含んでもよい。通信部の少なくとも一部は、制御部52に含まれてよい。
制御装置50は、画像又は文字若しくは図形等の視覚情報を出力する表示デバイスを更に備えてよい。表示デバイスは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ若しくは無機ELディスプレイ、又は、PDP(Plasma Display Panel)等を含んで構成されてよい。表示デバイスは、これらのディスプレイに限られず、他の種々の方式のディスプレイを含んで構成されてよい。表示デバイスは、LED(Light Emitting Diode)又はLD(Laser Diode)等の発光デバイスを含んで構成されてよい。表示デバイスは、これらに限られず他の種々のデバイスを含んで構成されてよい。
<データサーバ60>
データサーバ60は、上述したように、引上装置100の過去の製造実績データを格納し、格納したデータを制御装置50に出力する。データサーバ60は、磁気ディスク等の電磁記憶媒体を含んで構成されてよいし、半導体メモリ又は磁気メモリ等のメモリを含んで構成されてもよい。データサーバ60は、データを格納したり出力したりするプロセッサを備えてよい。データサーバ60は、引上装置100又は制御装置50との間でデータを送受信する通信部を備えてよい。データサーバ60は、制御装置50と別体として構成されてもよい。データサーバ60の少なくとも一部は、制御装置50と一体に構成されてもよい。
<引上装置100>
図2に示されるように、単結晶シリコンインゴットの引上装置100は、メインチャンバ10、プルチャンバ11、ルツボ16、シャフト18、シャフト駆動機構20、筒状の熱遮蔽体22、筒状のヒータ24、筒状の断熱体26、シードチャック28、引上ワイヤ30、ワイヤ昇降機構32、及び一対の電磁石34を備える。
メインチャンバ10は、内部にルツボ16が収容されるように構成される。メインチャンバ10の形状は、有底円筒形状であるとする。プルチャンバ11は、メインチャンバ10と同一の中心軸を有し、メインチャンバ10の上方に設けられる。プルチャンバ11の形状は、メインチャンバ10よりも小径の円筒形状であるとする。メインチャンバ10とプルチャンバ11との間にはゲートバルブ12が設けられる。ゲートバルブ12が開くことによって、メインチャンバ10内の空間とプルチャンバ11内の空間とが互いに連通する。ゲートバルブ12が閉じることによって、メインチャンバ10内の空間とプルチャンバ11内の空間とが互いに遮断される。プルチャンバ11の上部には、Ar(アルゴン)ガスなどの不活性ガスをメインチャンバ10内に導入するガス導入口13が設けられる。また、メインチャンバ10の底部には、真空ポンプの駆動によってメインチャンバ10内の気体を吸引して排出するガス排出口14が設けられる。
ルツボ16は、メインチャンバ10の中心部に配置され、シリコン融液Mを収容する。ルツボ16は、石英ルツボ16Aと黒鉛ルツボ16Bとの二重構造を有する。石英ルツボ16Aは、シリコン融液Mを内面で直接支持する。黒鉛ルツボ16Bは、石英ルツボ16Aの外側で石英ルツボ16Aを支持する。石英ルツボ16Aの上端は、黒鉛ルツボ16Bの上端よりも高くなっているとする。すなわち、石英ルツボ16Aの上端部は、黒鉛ルツボ16Bの上端から突出しているとする。
シャフト18は、メインチャンバ10の底部を鉛直方向に貫通して、ルツボ16を上端で支持する。シャフト駆動機構20は、シャフト18を介してルツボ16を回転させつつ昇降させる。
熱遮蔽体22は、ルツボ16の上方に、シリコン融液Mから引き上げられる単結晶シリコンインゴットIを囲むように設けられる。具体的には、熱遮蔽体22は、逆円錐台形状のシールド本体22Aと、このシールド本体22Aの下端部から引上軸X側(内側)に向かって水平方向に延設された内側フランジ部22Bと、シールド本体22Aの上端部からチャンバ側(外側)に向かって水平方向に延設された外側フランジ部22Cとを備える。外側フランジ部22Cは、断熱体26に固定されている。熱遮蔽体22は、育成中のインゴットIに対する、シリコン融液M、ヒータ24、及びルツボ16の側壁からの高温の輻射熱の入射量を調整したり、結晶成長界面近傍の熱の拡散量を調整したりする。熱遮蔽体22は、単結晶シリコンインゴットIの中心部および外周部における引上軸X方向の温度勾配を制御する役割を担っている。
筒状のヒータ24は、メインチャンバ10内でルツボ16を囲うように位置する。ヒータ24は、カーボンを素材とする抵抗加熱式ヒータであり、ルツボ16内に投入されるシリコン原料を溶融してシリコン融液Mを形成し、さらに、形成したシリコン融液Mを維持するための加熱を行う。
筒状の断熱体26は、熱遮蔽体22の上端よりも下方で、ヒータ24の外周面とは離間して、メインチャンバ10の内側面に沿って設けられる。断熱体26は、メインチャンバ10内の特に熱遮蔽体22よりも下方の領域に保熱効果を付与し、ルツボ16内のシリコン融液Mを維持しやすくする機能を有する。
ルツボ16の上方には、種結晶Sを保持するシードチャック28を下端で保持する引上ワイヤ30がシャフト18と同軸上に配置され、ワイヤ昇降機構32が、引上ワイヤ30をシャフト18と逆方向または同一方向に所定の速度で回転させつつ昇降させる。
一対の電磁石34は、メインチャンバ10の外側でルツボ16を包含する高さ範囲に、引上軸Xに対して左右対称に位置する。この一対の電磁石34のコイルに電流を流すことによって、シリコン融液Mに対して水平の磁場分布を形成する水平磁場を発生させることができる。なお、磁場強度はコイルに流す電流の大きさによって制御できる。
図2において、水平磁場を発生させる一対の電磁石34が配置されている。これに代えて、シリコン融液Mに対してカスプ型の磁場分布を形成するカスプ磁場を発生させるように電磁石34が配置されてもよい。カスプ磁場を発生させる電磁石34の配置は、定法による。また、結晶育成の際にシリコン融液Mに対して磁場を印加させない場合、電磁石34が配置されなくてよい。
引上装置100の各構成部は、製造する単結晶シリコンインゴットの仕様に応じて適宜異なった形状に調整され得る。つまり、引上装置100は、それぞれ異なる仕様で設計され得る。引上装置100は、それぞれの仕様に基づいて所定のグループに分類されてもよい。引上装置100は、各引上装置100で製造される単結晶シリコンインゴットの製品仕様又は製造仕様に基づいて、グループに分類されてもよい。製品仕様は、例えば、結晶径、電気伝導型、電気抵抗率、又は酸素濃度等を含んでよい。製造仕様は、例えば、引上げ速度、結晶回転数、ルツボ回転数、Arガス流量、炉内圧、又は磁場強度等を含んでよい。また、単結晶シリコンインゴットを製造する引上装置100の仕様に基づいて、引上装置100がグループに分類されてもよい。引上装置100の仕様は、例えば、チャンバー形状を含んでよいし、他にも、チャンバー内に格納される、カーボン部材の形状若しくは構成、ルツボ形状、ヒータ形状、又は冷却体の有無等を含んでよい。
<<引上装置100による単結晶シリコンインゴットの製造工程>>
引上装置100は、以下に説明する工程を実行することによって単結晶シリコンインゴットを製造できる。
[原料充填工程]
まず、メインチャンバ10内に位置する石英ルツボ16A内に多結晶シリコンナゲットなどのシリコン原料が充填される。この時、ゲートバルブ12が開の状態に制御される。メインチャンバ10内及びプルチャンバ11内は、減圧下でArガス等の不活性ガス雰囲気に維持される。また、ルツボ16は、シリコン原料が熱遮蔽体22に接触しないようにメインチャンバ10内の下方に位置する。
[原料溶融工程]
次に、ルツボ16内のシリコン原料が溶融するようにヒータ24で加熱される。シリコン原料が溶融することによって、石英ルツボ16A内にシリコン融液Mが形成される。その後、ルツボ16が引き上げ開始位置まで上昇する。この「原料溶融工程」は、ヒータ24による加熱を開始した時点からルツボ16の上昇が完了した時点までの期間であるとする。
[着液工程]
次いで、ワイヤ昇降機構32によって引上ワイヤ30が下降することによって、種結晶Sがシリコン融液Mに着液する。
[結晶育成工程]
次に、シリコン融液Mから単結晶シリコンインゴットIが引き上げられる。具体的には、ルツボ16および引上ワイヤ30を所定の方向に回転させながら引上ワイヤ30を上方に引き上げることによって、種結晶Sの下方に単結晶シリコンインゴットIが育成される。インゴットIの育成が進行するにつれて、シリコン融液Mの量は減少する。そこで、ルツボ16を上昇させることによって、融液面のレベルが維持される。本明細書において「結晶育成工程」は、引上ワイヤ30の上昇を開始した時点からインゴットIの育成が完了した時点(インゴットIをシリコン融液Mから切り離す時点)までの期間であるとする。
図3を参照して、結晶育成工程において、まず単結晶を無転位化するためダッシュ法によるシード絞り(ネッキング)を行うことによって、ネック部Iが形成される。次に、単結晶シリコンインゴットの直径が結晶成長方向に沿って漸増するショルダー部Iが育成される(第1工程)。その後、単結晶シリコンインゴットが所望の直径に達したところで、直径を一定にして直胴部Iが育成される(第2工程)。直胴部Iを所定の長さまで育成した後、テール絞りを行うことによって、単結晶シリコンインゴットの直径が結晶成長方向に沿って漸減するテール部Iが形成される(第3工程)。
[インゴット取出し工程]
次に、引き上げた単結晶シリコンインゴットIがシリコン融液Mから切り離される。単結晶シリコンインゴットIは、メインチャンバ10内を上昇し、メインチャンバ10の上方のプルチャンバ11に収容される。単結晶シリコンインゴットIがプルチャンバ11に収容された後、ゲートバルブ12が閉の状態に制御される。単結晶シリコンインゴットIは、ゲートバルブ12が閉となったプルチャンバ11内で、例えば500℃以下の取出し温度になるまで放置され、冷却される。最後に、冷却した単結晶シリコンインゴットIがプルチャンバ11内から取り出される。具体的には、ゲートバルブ12が閉の状態に制御されたままでプルチャンバ11が昇降旋回することによって、単結晶シリコンインゴットIは、プルチャンバ11内を下降し、搬送台車に積載される。
以上の工程を経て、1本の単結晶シリコンインゴットIが製造される。
(引上装置100の操作量の決定の動作例)
本実施形態に係る製造システム1において、制御装置50は、上述したように、引上装置100が製造する単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を目標濃度に制御できるように、引上装置100の操作量を決定する。以下、制御装置50の動作例が具体的に説明される。
<実績データの取得>
引上装置100で製造される単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は、引上装置100に設定される操作量に応じて制御され得る。酸素濃度を制御するために引上装置100の操作量として設定可能な項目は、引上情報とも総称される。引上情報は、例えば、引上速度、結晶回転数、ルツボ回転数、Arガス流量、炉内圧、ヒータ電力、ヒータ温度、融液温度、磁場強度、ルツボ位置、ギャップ、又はヒータ24をオンにする時間等を含んでよい。融液温度は、結晶育成工程前の液温を調整するディップ工程における融液温度を含んでよい。融液温度は、種結晶が着液した際に導入される転位を除去するネック工程における融液温度を含んでよい。融液温度は、結晶育成工程の初期段階である結晶の直径を拡大するショルダー工程における融液温度を含んでよい。
引上装置100で製造される単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は、引上装置100の各部の形状若しくは寸法等の仕様、又は、引上装置100の各部のメンテナンス後の使用時間等の影響を受け得る。引上装置100の操作量として設定できないものの酸素濃度に影響を及ぼす因子は、資材情報とも総称される。資材情報は、例えば、炉内の部品の使用時間、又は、石英ルツボ16Aの寸法及び重量等を含んでよい。
引上装置100で次のバッチで製造される単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は、引上装置100に設定する引上情報と、引上装置100の現在の資材情報とに基づいて定まる。つまり、引上情報及び資材情報は、次のバッチで製造する単結晶シリコンインゴットの酸素濃度に影響を及ぼす因子である。
制御装置50の制御部52は、過去のバッチで製造された単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定データと、その単結晶シリコンインゴットを製造した時の引上情報及び資材情報との関係に基づいて、次のバッチで製造する単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を推定し得る。過去のバッチで製造された単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定データと、その単結晶シリコンインゴットを製造した時の引上情報及び資材情報との関係を表すデータは、実績データとも称される。
制御部52は、実績データを取得してデータサーバ60に格納してよい。制御部52は、過去のバッチで単結晶シリコンインゴットを製造した時の引上情報及び資材情報を、引上装置100から取得してよい。制御部52は、過去のバッチで単結晶シリコンインゴットを製造した時の引上情報及び資材情報を、引上装置100を操作する作業者によって入力された情報として取得してもよい。制御部52は、過去のバッチで製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定データを、単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定装置から取得してよいし、測定を実施した作業者によって入力された情報として取得してもよい。単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定装置は、例えば、FRS(Full Rod Spectroscopy)法又はFTIR(Fourier Transform Infra-red Spectroscopy)法等の種々の方法に基づいて酸素濃度を測定する装置として構成されてよい。FRS法は、円筒研削された単結晶シリコンインゴットに対して、横方向(径方向)から赤外線を入射し、その吸収強度からインゴットの径方向の平均酸素濃度を測定する手法である。FRS法は、横方向(径方向)から入射する赤外線を単結晶シリコンインゴットの成長軸方向にスキャンして成長軸方向の各点における赤外線の吸収強度を測定することによって、インゴットの成長軸方向の酸素濃度分布を測定できる。
制御部52は、所定の単結晶シリコンインゴットを製造した時の引上情報及び資材情報と、所定の単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定データとを関連づけたデータを実績データとしてデータサーバ60に格納してよい。製造システム1が複数の引上装置100を備える場合、制御部52は、引上装置100毎に実績データを分けて格納してよい。制御部52は、引上装置100の仕様で分類される引上装置100の実績データを、引上装置100の仕様毎に分けて格納してよい。制御部52は、製造した単結晶シリコンインゴットの品目毎に実績データを分けて格納してよい。制御部52は、データサーバ60に格納した実績データに、引上装置100、引上装置100の仕様、又は品目等を特定するラベルを対応づけてよい。
<推定モデルの生成>
制御装置50の制御部52は、引上装置100が製造する単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を目標濃度に制御するための操作量を推定するモデルを生成する。操作量を推定するモデルは、推定モデルとも称される。
制御部52は、実績データの重回帰分析を実行することによって、単結晶シリコンインゴットの酸素濃度に大きく影響を及ぼす因子を抽出してよい。
<<実績データの取得>>
制御部52は、実績データを取得する。制御部52は、例えば、次バッチの操作量を推定する対象とする引上装置100と、その引上装置100の実績データが格納されているデータサーバ60又はデータサーバ60内のアドレス等を指定してよい。
制御部52は、取得するデータから除外するデータを指定してもよい。つまり、制御部52は、取得しないデータを指定してもよい。例えば、制御部52は、Bヒータ、CCMルツボ、Lヒータ、ロアーリング、外筒、又はスピルトレイ等のパーツの使用回数が1回目である場合の実績データを除外するデータとして指定し、解析から除外してよい。
<<前処理>>
制御部52は、重回帰分析を実行する前に、実績データの前処理を実行してよい。制御部52は、前処理として、例えば、以下の手順を実行してよい。制御部52は、所定のバッチで製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定データと、次のバッチで製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定データとの差分を算出してよい。制御部52は、所定のバッチで単結晶シリコンインゴットを製造した時の引上情報及び資材情報と、次のバッチで単結晶シリコンインゴットを製造した時の引上情報及び資材情報との差分を算出してよい。制御部52は、所定のバッチと次のバッチとの単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定データの差分と、所定のバッチと次のバッチとの引上情報及び資材情報の差分とを関連づけた差分データを生成してよい。
制御部52は、連続する2回のバッチの差分に限られず、任意の2つのバッチの差分を算出して差分データを生成してもよい。
制御部52は、2つのバッチの組み合わせの差分データを、複数の組み合わせについて生成してよい。具体的に、制御部52は、以下説明するように差分データを生成するための2つのバッチのデータを取得してよい。
1バッチの製造において、1つの石英ルツボ16Aから単結晶シリコンインゴットを1本だけ引き上げる場合、例えば、制御部52は、1番目のバッチの単結晶シリコンインゴットの測定データと2番目のバッチの単結晶シリコンインゴットの測定データとの差分データを生成してよい。制御部52は、3番目のバッチの単結晶シリコンインゴットの測定データと4番目のバッチの単結晶シリコンインゴットの測定データとの差分データを生成してよい。制御部52は、5番目のバッチの単結晶シリコンインゴットの測定データと6番目のバッチの単結晶シリコンインゴットの測定データとの差分データを生成してよい。制御部52は、連続する2回のバッチの単結晶シリコンインゴットの測定データの差分データを生成することが好ましい。
1バッチの製造において、1つの石英ルツボ16Aから複数の単結晶シリコンインゴットが引き上げられる、いわゆるマルチプリング法の場合、制御部52は、1つのバッチの中のそれぞれの単結晶シリコンインゴットの測定データと、他のバッチの中のそれぞれの単結晶シリコンインゴットの測定データとの差分データを生成してよい。例えば、1バッチの製造において1つの石英ルツボ16Aから3本の単結晶シリコンインゴットが引き上げられる場合、制御部52は、1番目のバッチの1本目の単結晶シリコンインゴットの測定データと2番目のバッチの1本目の単結晶シリコンインゴットの測定データとの差分データを生成してよい。制御部52は、1番目のバッチの2本目の単結晶シリコンインゴットの測定データと2番目のバッチの2本目の単結晶シリコンインゴットの測定データとの差分データを生成してよい。制御部52は、1番目のバッチの3本目の単結晶シリコンインゴットの測定データと2番目のバッチの3本目の単結晶シリコンインゴットの測定データとの差分データを生成してよい。
続いて、制御部52は、3番目のバッチの1本目、2本目及び3本目のそれぞれの単結晶シリコンインゴットの測定データと、4番目のバッチの1本目、2本目及び3本目のそれぞれの単結晶シリコンインゴットの測定データとの差分データを生成してよい。制御部52は、5番目のバッチの1本目、2本目及び3本目のそれぞれの単結晶シリコンインゴットの測定データと、6番目のバッチの1本目、2本目及び3本目のそれぞれの単結晶シリコンインゴットの測定データとの差分データを生成してよい。制御部52は、連続する2回のバッチの単結晶シリコンインゴットの測定データの差分データを生成することが好ましい。
以上、例として1バッチの製造において1つの石英ルツボ16Aから3本の単結晶シリコンインゴットが引き上げられる場合について説明された。1つの石英ルツボ16Aから引き上げられるシリコンインゴットの数は、3本に限られず、2本又は4本以上であってもよい。
制御部52は、複数の組み合わせのそれぞれについて生成した差分データを、後述する多変量解析にそのまま適用してよい。制御部52は、後述する多変量解析に適用するデータとして、複数の組み合わせについて生成した差分データを引上装置100毎にマージした差分データを生成してよい。制御部52は、後述する多変量解析に適用するデータとして、複数の組み合わせについて生成した差分データを引上装置100の仕様毎にマージした差分データを生成してよい。制御部52は、後述する多変量解析に適用するデータとして、複数の組み合わせについて生成した差分データを品目毎にマージした差分データを生成してよい。
制御部52は、生成した差分データにおいて、操作量の変化が除外閾値以下である場合に、操作量の変化を0に設定してよい。制御部52は、例えば、ルツボ回転数の変化量が0.001rpm以下である場合、差分データにおけるルツボ回転数の変化量を0に設定してよい。制御部52は、例えば、Arガス流量の変化量が1L/min以下である場合に、差分データにおけるArガス流量の変化量を0に設定してよい。制御部52は、例えば、炉内圧の変化量が0.1torr以下である場合、差分データにおける炉内圧の変化量を0に設定してよい。
制御部52は、生成した差分データにおいて、酸素濃度の変化量(ΔOi)が範囲外である場合に、その差分データを除外してよい。制御部52は、例えば、酸素濃度の変化量(ΔOi)の絶対値が1×1017atoms/cm以上となった差分データを除外してよい。
<<モデリング>>
制御部52は、実績データに対して前処理を実行することによって生成した差分データを用いて、単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を推定する推定モデルを生成する。推定モデルを生成する工程はモデリングとも称される。以下、制御部52がモデリングを実行する動作例が説明される。製造システム1が複数の引上装置100を備える場合、制御部52は、複数の引上装置100のそれぞれについてモデリングを実行し、複数の引上装置100のそれぞれに適用する推定モデルを生成してよい。制御部52は、複数の引上装置100をグループに分けて各グループについてモデリングを実行し、各グループに属する引上装置100に適用する推定モデルを生成してよい。引上装置100は、各引上装置100で製造される単結晶シリコンインゴットの製品仕様又は製造仕様に基づいて、グループに分類されてもよい。製品仕様は、例えば、結晶径、電気伝導型、電気抵抗率、又は酸素濃度等を含んでよい。製造仕様は、例えば、引上げ速度、結晶回転数、ルツボ回転数、Arガス流量、炉内圧、又は磁場強度等を含んでよい。また、単結晶シリコンインゴットを製造する引上装置100の仕様に基づいて、引上装置100がグループに分類されてもよい。引上装置100の仕様は、例えば、チャンバー形状を含んでもよいし、他にも、チャンバー内に格納される、カーボン部材の形状若しくは構成、ルツボ形状、ヒータ形状、又は冷却体の有無等を含んでもよい。
制御部52は、実績データに対して前処理を実行することによって生成した、差分データ、又は、マージした差分データに対して多変量解析を実行する。制御部52は、実績データに対して前処理を実行していない場合、実績データに対して多変量解析を実行する。本実施形態において、制御部52は、多変量解析として重回帰分析を実行する。制御部52は、多変量解析として、重回帰分析に限られず他の種々の手法を実行してもよい。
制御部52は、差分データ、マージした差分データ、又は実績データに対して重回帰分析を実行することによって、目的変数に対する説明変数の影響度を算出し、影響度を係数とする線形又は非線形の回帰式を生成する。目的変数は、単結晶シリコンインゴットの酸素濃度である。説明変数は、引上情報又は資材情報の各項目を含んでよく、例えば、Arガス流量、炉内圧、又はルツボ回転数等を含んでよい。影響度は、説明変数の値の変化量に対する目的変数の値の変化量の割合として表され得る。
制御部52は、引上情報及び資材情報の全ての項目を説明変数として回帰式を生成してよい。制御部52は、引上情報及び資材情報の各項目の中から説明変数を選択して回帰式を生成してもよい。制御部52は、好ましくは、少なくとも3つの説明変数を選択して回帰式を生成してよい。制御部52は、説明変数を選択する基準として、例えば、重回帰分析を実行して得られた各説明変数の影響度に基づいて各説明変数に優先順位を付して、高い順位が付された説明変数から順番に選択してよい。制御部52は、説明変数のうち引上装置100の操作量として制御可能な説明変数の高い順位を付してよい。制御部52は、引上装置100のプロセスエンジニア、作業者又は管理者等から入力された情報に基づいて各説明変数に優先順位を付してもよい。つまり、説明変数の優先順位は、引上装置100のプロセスエンジニア、作業者又は管理者等の知見に基づいて付されてもよい。また、説明変数の優先順位は、引上装置100のプロセスエンジニア、作業者又は管理者等の過去の経験を考慮して付されてもよい。また、実際の単結晶シリコンインゴットの製造における種々の制約によって、説明変数の値が変化する範囲は限られている。説明変数の優先順位は、説明変数の値が変化し得る範囲の広さを考慮して付されてもよい。例えば、説明変数の値が変化し得る範囲が広いほど、その説明変数に高い順位が付されてよい。
制御部52は、選択した説明変数で生成した回帰式を用いて、実績データに含まれる所定のバッチの酸素濃度を推定する。制御部52は、所定のバッチの酸素濃度の推定値と、所定のバッチの酸素濃度の測定値との差が判定閾値未満である場合、生成した回帰式が妥当であると判定して、生成した回帰式を推定モデルとして用いることを決定する。つまり、制御部52は、単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を目的変数として生成した回帰式を、単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を推定する推定モデルとして用いることを決定する。
制御部52は、所定のバッチの酸素濃度の推定値と、所定のバッチの酸素濃度の測定値との差が判定閾値以上である場合、説明変数の少なくとも一部を別の項目に変更して回帰式の生成をやり直す。制御部52は、説明変数に付した順位に基づいて説明変数を変更してよいし、引上装置100のプロセスエンジニア等から入力された情報に基づいて説明変数を変更してもよい。制御部52は、生成した回帰式を用いて算出した所定のバッチの酸素濃度の推定値と所定のバッチの酸素濃度の測定値との差が判定閾値未満になるまで、説明変数の変更と回帰式の生成とを繰り返す。
引上装置100の説明変数の酸素濃度に対する影響度は、引上装置100の炉毎に異なり得る。また、影響度は、熱遮蔽体22の種類毎に異なり得る。制御部52は、説明変数に付す順位を、炉毎に変更してよいし、熱遮蔽体22の種類毎に変更してよい。このようにすることで、推定モデルのパラメータの精度が向上され得る。
<<推定モデルの生成の小括>>
以上述べてきたように、制御部52は、推定モデルを生成できる。生成した回帰式を実績データで検証することによって、推定モデルによる酸素濃度の推定精度が高められ得る。また、引上装置100のプロセスエンジニア等から入力された情報に基づいて説明変数が選択されることによって、プロセスエンジニア等の知見が推定モデルに反映され得る。知見が反映された推定モデルを用いることによって、誰が操作しても同じ推定結果を得ることが可能になる。つまり、推定の属人性が低減され得る。
制御部52は、引上装置100の2回のバッチのそれぞれの実績データを1組又は2組以上取得してよい。制御部52は、1組又は2組以上の実績データのうちの少なくとも1組の実績データについて2回のバッチのそれぞれの実績データの差分データを生成してよい。制御部52は、生成した少なくとも1組の差分データに基づいて引上装置100の操作量の差分を算出する回帰式を推定モデルとして生成してよい。2回のバッチの複数の組み合わせについて算出した差分データに基づいて回帰式を生成することによって、推定精度が向上し得る。
単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は、部位によって異なり得る。例えば、ショルダー部Iの酸素濃度と、直胴部Iの酸素濃度と、テール部Iの酸素濃度とは、それぞれ異なり得る。また、直胴部Iの中でも、ショルダー部Iに近い側の酸素濃度と、テール部Iに近い側の酸素濃度とが異なり得る。また、直胴部Iの結晶軸方向の各部位の酸素濃度は、ショルダー部Iからの距離に応じて変化し得る。直胴部Iの結晶軸方向の各部位は、ショルダー部Iと直胴部Iとの境界からの距離によって特定されてよい。単結晶シリコンインゴットの各部位の酸素濃度は、各部位を引き上げているときの操作量に応じて制御され得る。
制御部52は、単結晶シリコンインゴットの直胴部Iを、ショルダー部Iと直胴部Iとの境界からの距離に基づいて、結晶軸方向に複数の区分に分類してよい。制御部52は、各区分の酸素濃度を目標濃度に制御するための、各区分を引き上げているときの操作量を推定するモデルを生成してよい。つまり、制御部52は、各区分に対応する推定モデルを生成してよい。この場合、制御部52は、各区分について、実績データ又は差分データと、酸素濃度の測定値とを取得してよい。各区分に対応する推定モデルは、区分推定モデルとも称される。
<次バッチの操作量の推定>
制御部52は、決定した推定モデルを用いて、引上装置100の次バッチで製造する単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を推定する。制御部52は、次バッチで製造する単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の推定値が目標濃度になるように、推定モデルに含まれる説明変数の値を調整する。目標濃度は、例えば次バッチで製造する品目の酸素濃度の規格の中心値であってよい。制御部52は、酸素濃度の推定値が目標濃度になるように調整した説明変数の値を、引上装置100の次バッチの操作量の推奨値として決定する。制御部52は、例えば説明変数として、Arガス流量、炉内圧及びルツボ回転数を選択した場合、推定モデルを用いて、引上装置100の次バッチのArガス流量、炉内圧及びルツボ回転数の推奨値を決定してよい。
制御部52は、単結晶シリコンインゴットの直胴部Iの結晶軸方向の各区分において酸素濃度の推定値が目標濃度になるように、操作量の推奨値を決定してよい。引上装置100の操作量は、単結晶シリコンインゴットを引き上げている間に変更され得る。制御部52は、区分推定モデルに基づいて単結晶シリコンインゴットの結晶軸方向の各区分が引き上げられるときの操作量を調整し、各区分における操作量の推定値を決定してよい。
制御部52は、決定した操作量の推奨値を、引上装置100の作業者等に通知してよい。この場合、作業者が引上装置100の操作量を推奨値に設定してよい。制御部52は、決定した操作量の推奨値を引上装置100に出力して推奨値をそのまま操作量として設定してもよい。
<制御方法の手順例>
制御部52は、引上装置100の操作量を推定するために、図4に例示されるフローチャートの手順を含む制御方法を実行してよい。制御方法は、制御部52に実行させる制御プログラムとして実現されてもよい。
制御部52は、データの前処理を実行する(ステップS1)。制御部52は、前処理したデータに基づいて、引上装置100に設定する適切な操作量を推定するための推定モデルを生成する(ステップS2)。制御部52は、引上装置100で製造する単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を目標濃度に制御できるように、推定モデルを用いて引上装置100の操作量を算出する(ステップS3)。制御部52は、ステップS3の手順の実行後、図4のフローチャートの手順の実行を終了してよい。
制御部52は、ステップS3の手順で算出した操作量を、引上装置100に出力して引上装置100に操作量を設定し、引上装置100による単結晶シリコンインゴットの製造を開始してよい。制御部52は、ステップS3の手順で算出した操作量を、引上装置100を操作する作業者に通知してよい。作業者は、通知された操作量を引上装置100に設定して引上装置100による単結晶シリコンインゴットの製造を開始してよい。
(小括)
以上述べてきたように、本開示の一実施形態に係る製造システム1において、制御装置50の制御部52は、推定モデルを生成し、推定モデルを用いて引上装置100の次バッチの操作量を推定できる。このようにすることで、引上装置100の操作量の推定がシステム化され得る。操作量の推定のシステム化によって、酸素濃度に影響を与えるパラメータの実績として考慮する項目を容易に増やすことができる。また、属人性が低減され得る。考慮する項目の増加又は属人性の低減によって、酸素濃度が高精度で制御され得る。また、酸素濃度のバラツキの低減、及び、工程能力の改善が実現され得る。その結果、引上装置100で製造される単結晶シリコンインゴットの品質が向上され得る。
比較例として、チョクラルスキー法(以下、CZ法)によるシリコン単結晶の製造方法において、過去の引き上げ実績(酸素濃度、資材情報及び引上情報)に基づいて、設定基準及び人による経験則から次バッチのパラメータが予測されている。この場合、パラメータの予測に個人差が生じ得る。また、酸素濃度に影響を及ぼす因子の管理が煩雑になり得る。その結果、酸素濃度のバラツキが増大し得る。
一方で、本開示の一実施形態に係る製造システム1において、制御装置50の制御部52は、重回帰分析より予測した推定モデルを用いて、次バッチの引き上げパラメータ値を最適化できる。また、引き上げパラメータ値の決定をシステム化することで個人差が排除され得る。また、酸素濃度に影響を及ぼす因子が容易に管理され得る。その結果、酸素濃度のバラツキが低減され得る。
ここで、第1の評価対象装置の操作量を比較例に係る方法で決定して単結晶シリコンインゴットを製造した場合、第1の評価対象装置で製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は、図5Aにヒストグラムとして示されるように分布した。図5Aの縦軸は酸素濃度の区分を表す。縦軸に付されたOi_Tは目標濃度を表す。縦軸に付されたOi_Uは酸素濃度の規格上限値又は管理上限値を表す。縦軸に付されたOi_Lは酸素濃度の規格下限値又は管理下限値を表す。横軸は各区分の頻度を表す。図5Aの酸素濃度の分布について算出された工程能力指数(Cpk)の値は、0.93であった。
一方で、第1の評価対象装置の操作量を本実施形態に係る制御方法で決定して単結晶シリコンインゴットを製造した場合、第1の評価対象装置で製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は、図5Bにヒストグラムとして示されるように分布した。図5Bの縦軸及び横軸は図5Aの縦軸及び横軸と同様である。図5Bの酸素濃度の分布について算出された工程能力指数(Cpk)の値は、0.97であった。
また、第2の評価対象装置の操作量を比較例に係る方法で決定して単結晶シリコンインゴットを製造した場合、第2の評価対象装置で製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は、図6Aにヒストグラムとして示されるように分布した。図6Aの縦軸及び横軸は図5Aの縦軸及び横軸と同様である。図6Aの酸素濃度の分布について算出された工程能力指数(Cpk)の値は、0.83であった。
一方で、第2の評価対象装置の操作量を本実施形態に係る制御方法で決定して単結晶シリコンインゴットを製造した場合、第2の評価対象装置で製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は、図6Bにヒストグラムとして示されるように分布した。図6Bの縦軸及び横軸は図5Aの縦軸及び横軸と同様である。図6Bの酸素濃度の分布について算出された工程能力指数(Cpk)の値は、0.94であった。
以上説明されたように、本実施形態に係る制御方法で評価対象装置の操作量を決定する場合、比較例として述べた人の経験則に基づいて操作量を予測する場合と比較して、評価対象装置で製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の工程能力指数(Cpk)が向上し得る。つまり、本実施形態に係る制御方法によれば、引上装置100で製造される単結晶シリコンインゴットの品質が向上され得る。
(他の実施形態)
以下、他の実施形態が説明される。
<酸素濃度の補間>
単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は、FRS(Full Rod Spectroscopy)法を用いることによって、単結晶シリコンインゴットを切断することなく狭い間隔で測定され得る。FRS法は、円筒研削された単結晶シリコンインゴットに対して、横方向(径方向)から赤外線を入射し、その吸収強度からインゴットの径方向の平均酸素濃度を測定する手法である。FRS法は、横方向(径方向)から入射する赤外線を単結晶シリコンインゴットの成長軸方向にスキャンして成長軸方向の各点における赤外線の吸収強度を測定することによって、インゴットの成長軸方向の酸素濃度分布を測定できる。また、単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は、FTIR(Fourier Transform Infra-red Spectroscopy:フーリエ変換赤外吸収分光)法を用いることによって、単結晶シリコンインゴットから切り出したサンプルについて高精度に測定され得る。単結晶シリコンインゴットの酸素濃度は、例示したFRS法又はFTIR法に限られず、他の種々の手法で測定され得る。
制御部52は、実績データとして過去に製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度のデータとして、FRS法で狭い間隔で測定したデータと、FTIR法で広い間隔を高精度で測定したデータとを取得してよい。制御部52は、FRS法で測定したデータを、FTIR法で高精度に測定したデータによって補正してよい。言い換えれば、制御部52は、FTIR法で広い間隔で高精度に測定した酸素濃度のデータを、FRS法で狭い間隔で測定した酸素濃度のデータの傾向に基づいて補間することによって、狭い間隔で高精度に測定した酸素濃度のデータを生成できる。
例えば、図7に示されるように、制御部52は、FRS法及びFTIR法で測定した単結晶シリコンインゴットの各部位の酸素濃度の測定値を取得する。図7のグラフの横軸は単結晶シリコンインゴットの部位を結晶軸方向の位置として表す。縦軸は酸素濃度の測定値を表す。縦軸に付されたOi_Tは目標濃度を表す。縦軸に付されたOi_Uは酸素濃度の規格上限値又は管理上限値を表す。縦軸に付されたOi_Lは酸素濃度の規格下限値又は管理下限値を表す。FRS法で測定した酸素濃度の測定値は、「FRS実績」として示される実線で表される。FTIR法で測定した酸素濃度の測定値は「FTIR実績」として示されるX印で表される。
制御部52は、FRS実績による各部位の酸素濃度の測定値の傾向をそのままとして、FTIR実績による各部位の酸素濃度の測定値に合わせてよい。具体的に、制御部52は、FRS実績による酸素濃度の測定値のグラフを、FTIR実績による酸素濃度の測定値に基づいてシフトさせてよい。シフトした酸素濃度は、「シフト後」として示される一点鎖線で表される。制御部52は、シフトした酸素濃度を、引上情報及び資材情報と関連づけて実績データを生成してよい。このようにすることで、推定モデルの精度が向上され得る。
FRS法を適用して単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を測定する手法は、第1の手法とも称される。FTIR法を適用して単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を測定する手法は、第2の手法とも称される。制御部52は、単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を第1の手法で測定した第1測定データと、単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を第2の手法で測定した第2測定データとを取得してよい。制御部52は、第1測定データを第2測定データで補間し、補間したデータを単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定値として取得してよい。第1及び第2の手法として、他の種々の測定手法が適用されてよい。
<単結晶シリコンインゴットの製造方法及び単結晶シリコンインゴット>
本実施形態に係る製造システム1において、制御装置50が引上装置100を制御することによって、引上装置100によって単結晶シリコンインゴットが製造される。したがって、制御装置50が制御方法を実行することによって制御された引上装置100で単結晶シリコンインゴットを引き上げるステップを含む単結晶シリコンインゴットの製造方法が実現される。また、制御装置50が制御方法を実行することによって制御された引上装置100で製造された単結晶シリコンインゴットが実現される。
<装置構成例>
製造システム1において、制御装置50は、引上装置100の一部に含まれてよい。制御装置50は、引上装置100と互いに別体で構成されてよい。データサーバ60は、制御装置50又は引上装置100の一部に含まれてよい。データサーバ60は、制御装置50及び引上装置100と互いに別体で構成されてよい。
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態について装置を中心に説明してきたが、本開示に係る実施形態は装置の各構成部が実行するステップを含む方法としても実現し得るものである。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行される方法、プログラム、又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
本開示に含まれるグラフは、模式的なものである。スケールなどは、現実のものと必ずしも一致しない。
本開示に係る実施形態によれば、単結晶シリコンインゴットの品質が向上され得る。
1 製造システム
50 監視装置(52:制御部、54:記憶部)
60 データサーバ
100 引上装置(10:メインチャンバ、11:プルチャンバ、12:ゲートバルブ、13:ガス導入口、14:ガス排出口、16:ルツボ、16A:石英ルツボ、16B:黒鉛ルツボ、18:シャフト、20:シャフト駆動機構、22:熱遮蔽体、22A:シールド本体、22B:内側フランジ部、22C:外側フランジ部、24:ヒータ、26:断熱体、28:シードチャック、30:引上ワイヤ、32:ワイヤ昇降機構、34:電磁石、S:種結晶、M:シリコン融液、X:引上軸)
I 単結晶シリコンインゴット(I:ネック部、I:ショルダー部、I:直胴部、Ib1:第1直胴部、Ib2:第2直胴部、I:テール部)

Claims (12)

  1. 単結晶シリコンインゴットの引上装置の制御方法であって、
    前記引上装置で製造した単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定値と、製造したときの前記引上装置の操作量とを関連づけた実績データを取得するステップと、
    前記実績データに基づいて、前記引上装置で製造する単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を推定する推定モデルを生成するステップと、
    前記推定モデルによる単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の推定値が目標濃度になるように、前記推定モデルに入力する操作量を調整するステップと、
    調整した操作量を、前記引上装置の次バッチで単結晶シリコンインゴットを製造するときの操作量として決定するステップと
    を含む、引上装置の制御方法。
  2. 前記推定モデルを生成するステップにおいて、前記引上装置の操作量の少なくとも一部の操作量を選択し、選択した操作量の影響度を係数とする回帰式を、前記推定モデルとして生成する、請求項1に記載の引上装置の制御方法。
  3. 前記推定モデルを生成するステップにおいて、前記引上装置の操作量に順位を付し、前記順位に基づいて前記引上装置の操作量を選択する、請求項2に記載の引上装置の制御方法。
  4. 前記実績データを取得するステップにおいて、前記引上装置の2回のバッチのそれぞれの実績データを1組又は2組以上取得し、
    前記推定モデルを生成するステップにおいて、前記1組又は2組以上の実績データのうちの少なくとも1組の実績データについて2回のバッチのそれぞれの実績データの差分データを生成し、前記少なくとも1組の差分データに基づいて前記引上装置の操作量の差分を算出する回帰式を前記推定モデルとして生成する、請求項1に記載の引上装置の制御方法。
  5. 前記実績データを取得するステップにおいて、前記単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定値として、前記単結晶シリコンインゴットの結晶軸方向の複数の区分のそれぞれにおける酸素濃度の測定値を取得する、請求項1に記載の引上装置の制御方法。
  6. 前記推定モデルを生成するステップにおいて、前記単結晶シリコンインゴットの結晶軸方向の各区分に対応する区分推定モデルを生成する、請求項5に記載の引上装置の制御方法。
  7. 前記操作量を調整するステップにおいて、前記区分推定モデルに基づいて前記単結晶シリコンインゴットの各区分が引き上げられるときの操作量を調整する、請求項6に記載の引上装置の制御方法。
  8. 前記実績データを取得するステップにおいて、前記単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を第1の手法で測定した第1測定データと前記単結晶シリコンインゴットの酸素濃度を第2の手法で測定した第2測定データとを取得し、前記第1測定データを前記第2測定データで補間したデータを前記単結晶シリコンインゴットの酸素濃度の測定値として取得する、請求項1に記載の引上装置の制御方法。
  9. 請求項1から8までのいずれか一項に記載の引上装置の制御方法をプロセッサに実行させる制御プログラム。
  10. 請求項1から8までのいずれか一項に記載の引上装置の制御方法を実行する制御部を備える制御装置。
  11. 請求項1から8までのいずれか一項に記載の引上装置の制御方法を実行することによって制御した引上装置で単結晶シリコンインゴットを製造するステップを含む、単結晶シリコンインゴットの製造方法。
  12. 請求項1から8までのいずれか一項に記載の引上装置の制御方法を実行することによって制御した引上装置で製造した単結晶シリコンインゴット。
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