JP2024076105A - 測距装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】スキャン部の動作状態の異常を適切に検出可能な測距装置を提供する。【解決手段】測距装置1は、スキャン部20と、エンコーダ40と、制御部50と、を備える。スキャン部20は、送信波を反射させるミラー21、および、送信波が走査範囲を走査するようにミラー21を揺動駆動する揺動モータ30を有する。エンコーダ40は、ミラー21の回転に応じた角度信号を出力する。制御部50は、位置演算部51、駆動制御部53、および、異常診断部55を有する。位置演算部51は、走査された光ビームを反射した物体の位置を演算する。駆動制御部53は、揺動モータ30の駆動を制御する。異常診断部55は、エンコーダ40から出力される信号に基づき、スキャン部20の動作状態に係る異常診断を行う。【選択図】 図1
Description
本発明は、測距装置に関する。
従来、送信波を照射し、照射した送信波の物体からの反射波を検出することで物体までの距離等を検出する測距装置が知られている。測距装置には送信波の照射方向を変化させるスキャン部が搭載されており、例えば特許文献1では、スキャン部において揺動駆動されるミラーを用いている。
特許文献1では、インクリメンタルエンコーダで位置検出することで、ミラーの回転位置を制御している。しかしながら特許文献1では、スキャン部の異常検出の詳細については言及されていない。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、スキャン部の動作状態の異常を適切に検出可能な測距装置を提供することにある。
本発明の測距装置は、スキャン部(20)と、エンコーダ(40)と、制御部(50)と、を備える。スキャン部(20)は、送信波を反射させるミラー(21)、および、送信波が走査範囲を走査するようにミラーを揺動駆動するアクチュエータ(30)を有する。エンコーダは、ミラーの回転位置に応じた角度信号を出力する。
制御部は、位置演算部(51)、駆動制御部(53)、および、異常診断部(55)を有する。位置演算部は、走査された送信波を反射した物体の位置を演算する。駆動制御部は、アクチュエータの駆動を制御する。異常診断部は、エンコーダから出力される信号に基づき、スキャン部の動作状態に係る異常診断を行う。これにより、スキャン部の動作状態の異常を適切に検出可能である。
(一実施形態)
以下、本発明による測距装置を図面に基づいて説明する。一実施形態を図1~図23に示す。図1および図2に示すように、測距装置1は、光を照射し、光が照射された物体からの反射光を検出することにより、物体との距離を測定するライダ(LiDAR:Light Detection and Ranging)装置である。測距装置1は、例えば車両に搭載され、車両前方に存在する物体の検出に用いられる。
以下、本発明による測距装置を図面に基づいて説明する。一実施形態を図1~図23に示す。図1および図2に示すように、測距装置1は、光を照射し、光が照射された物体からの反射光を検出することにより、物体との距離を測定するライダ(LiDAR:Light Detection and Ranging)装置である。測距装置1は、例えば車両に搭載され、車両前方に存在する物体の検出に用いられる。
測距装置1は、測定部5と、制御部50と、を備える。測定部5は、発光部10と、受光部15と、スキャン部20と、エンコーダ40と、を備える。図2に示すように、測定部5は、筐体6に収容されている。筐体6は、例えば樹脂で形成される直方体状であって、1つの側面が開口している。開口部には、開口全体を覆うように、光が透過する透明の光学窓7が設けられている。
筐体6内において、発光部10が上方側、受光部15が下方側に収容されている。発光部10は、光ビームBを間欠的に出力する。受光部15は、光ビームBが照射された物体からの反射光Rを受光し、電気信号に変換する。
スキャン部20は、揺動駆動されるミラー21、および、ミラー21を揺動駆動する揺動モータ30(図3参照)を備える。スキャン部20は、発光部10から出力された光ビームBをミラー21で反射させ、ミラー21の回転位置に応じた方向に光ビームBを光学窓7から外部に出射することで、予め設定された走査範囲内への光ビームBの走査を行う。
図3に示すように、ミラー21は、光を反射する反射面を有する平板状の部材であって、揺動軸22と一体となって動くように、揺動軸22に取り付けられている。揺動軸22は、鉛直方向に延びて形成されており、ミラー21は、反射面と反対側の面において、揺動軸22が当該面の鉛直方向の中心線に沿うように、揺動軸22に固定されている。
揺動モータ30は、ミラー21の鉛直方向下側に配置され、揺動軸22を駆動することで、揺動軸22周りにミラー21を揺動駆動する。これにより、発光部10から出力された光ビームBが、所定の走査範囲に走査される。
図4に示すように、揺動モータ30は、回転磁石31、一対の固定磁石32、電磁コイル33、および、回転軸35を有し、ケース38に収容されている。回転磁石31は、中心位置に軸孔が設けられた円板状の磁石である。回転磁石31の軸孔には、回転軸35が圧入等により固定されている。回転軸35は、ケース38に回転可能に支持されている。回転磁石31は、両極の配置される方向が、軸方向に垂直になるように設けられている。
一対の固定磁石32は、それぞれ、両極の配置される方向が回転軸35の軸方向に垂直(すなわち図4の紙面上下方向)となるように、ケース38に固定されている。固定磁石32は、図4の例では紙面上側がS極、下側がN極となるように設けられている。
回転磁石31の磁場と一対の固定磁石32の磁場とが作用しあうことで、回転磁石31は、磁極が固定磁石32の磁極と逆方向となる位置である静止位置にて静止する。図4は、回転磁石31が静止位置にて静止している状態を示しており、図4の例では、回転磁石31は紙面上側がN極、下側がS極となる。換言すると、回転磁石31は、固定磁石32の磁力により、静止位置に戻るように付勢されている、と捉えることもできる。
電磁コイル33は、ケース38の外周において、図4の紙面上下方向に巻き付けられており、通電により、回転磁石31および固定磁石32との間に生じる磁力線に対して垂直成分を持つ磁力線を発生させる。電磁コイル33は、交流電源、または、パルス発振電源に接続されている。
回転磁石31は、無通電時において、図4に示す静止位置に静止している。電磁コイル33の通電時には、回転磁石31と固定磁石32との間に生じる磁力線に対して垂直成分を持つ磁力線が発生し、回転磁石31が静止位置を中心に揺動する。
揺動とは、360°未満の所定の角度範囲内で、回転運動を順回転と逆回転とで周期反復する運動である。回転磁石31は、静止位置から所定の角度まで順回転した後、逆回転に切り替わり、静止位置まで戻った後、静止位置から所定の角度まで逆回転する。その後、再び順回転に切り替わり、静止位置まで戻った後、上記の動作を繰り返す。本実施形態では、静止位置から順回転する角度範囲と、逆回転する角度範囲とは等しいが、順回転方向の角度範囲と逆回転方向の角度範囲とは異なっていてもよい。電磁コイル33への通電を切ると、回転磁石31は、静止位置に戻って静止する。
静止位置から離れるほど、回転磁石31と固定磁石32との反発力が大きくなる。そのため、一定の位置で保持するためには、静止位置からの回転角度が大きいほど、反力に打ち勝つトルクが必要になる。
本実施形態では、図4の時計回りの回転を順回転、反時計回りの回転を逆回転とする。なお、図4における回転方向は、測距装置1を車両に搭載した状態にて、鉛直方向上側から見た回転方向と一致するものとする。
揺動軸22は、回転磁石31と一体となって動くように設けられている。すなわち、揺動軸22は、揺動モータ30の無通電時には静止位置にて停止しており、通電時には静止位置を中心に揺動する。
ミラー21は、揺動軸22が静止位置にあるとき、走査範囲の略中心方向に光ビームBを反射可能な基準位置となるように、揺動軸22に取り付けられている。ミラー21は、揺動軸22の回転に伴い、基準位置を含む所定の角度範囲で揺動する。揺動モータ30への通電を切ると、揺動軸が静止位置に戻るため、ミラー21は基準位置に戻って静止する。すなわち、ミラー21は、固定磁石32の磁力により、基準位置へ戻る方向へ付勢されている。
図5に示すように、エンコーダ40は、ミラー21の回転角度を検出するものであって、本実施形態では、三相出力形のインクリメンタルエンコーダである。エンコーダ40は、回転盤41、固定スリット42、発光素子43、および、受光素子44等を有する。
回転盤41は、円盤状に形成されている。回転盤41には、外周に形成される複数の外周スリット411、および、外周スリット411よりも内周側に1つ形成される原点位置を示す原点スリット413が形成されている。回転盤41の回転軸415は、揺動軸22に固定されている。これにより、回転盤41は、矢印Eで示すように、揺動軸22と一体となって回転する。
固定スリット42には、出力信号を複数相にするため、A相スリット421、B相スリット422、および、Z相スリット423の3種類のスリットが形成されている。A相スリット421およびB相スリット422は、回転盤41の外周スリット411と対向する位置に、A相の出力信号とB相の出力信号の位相差が90°となるように形成されている。Z相スリット423は、原点スリット413と対向する位置に形成されている。
発光素子43は、例えば発光ダイオードであって、回転盤41に向けて光を投光する。発光素子43および受光素子44は、回転盤41および固定スリット42を挟んで対向するように設けられている。受光素子44は、例えばフォトトランジスタであって、回転盤41および固定スリット42のスリットを通過した光を受光し、A相、B相およびZ相のパルス信号を出力する。エンコーダ40は、A相信号およびB相信号のエッジを検出し、カウンタを積算する。また、Z相の立ち上がりエッジが検出された場合、カウンタをリセットする。
図6は、ミラー21を揺動軸22に直交する平面で切った断面を示す模式図である。図6では、紙面中央にミラー21が基準位置にある状態を示しており、紙面左方向から右方向に動く状態が順回転、紙面右方向から左方向に動く状態が逆回転に対応する。
エンコーダ40は、ミラー21が基準位置にあるとき、Z相信号が出力されるように、揺動モータ30に設置される。すなわち、揺動軸22が静止位置にあるときにZ相信号が出力されるように、回転盤41の回転軸415が揺動軸22に固定される。基準位置において、ミラー21と発光部10から出力される光ビームBとのなす角をX°(本実施形態では45°)とすると、X°のときZ相信号が出力される。
図7に示すように、ミラー21が順回転した場合、A相信号に対して90°遅れでB相信号が出力される。ミラー21が逆回転した場合、B相信号に対して90°遅れでA相信号が出力される。これにより、エンコーダ40は、Z相信号が検出されてからのA相信号およびB相信号の波形に基づき、ミラー21の基準位置に対する回転角度であるミラー角度θを検出することができる。
図1に示すように、制御部50は、マイコン等を主体として構成され、内部にはいずれも図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。制御部50における各処理は、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
制御部50は、機能ブロックとして、位置演算部51、駆動制御部53、および、異常診断部55等を有する。位置演算部51は、光ビームBを反射した物体との距離を演算する。具体的には、位置演算部51は、受光部15から出力された電気信号の波形に基づいて反射光を受光したタイミングを特定し、光ビームを出力したタイミングとの差分から、物体との距離を演算する。また、位置演算部51は、光ビームを反射した物体の位置する方位等の位置情報を演算可能である。駆動制御部53は、ミラー21を駆動する揺動モータ30の駆動を制御する。異常診断部55は、スキャン部20の異常判定を行う。スキャン部20の異常が検出された場合、例えば距離計測を中止する。
駆動制御部53は、走査制御に先立ち、位置合わせ制御を行う。位置合わせ制御では、エンコーダ40の検出値を用いないオープンループ制御により、所定の電圧値で揺動モータ30を駆動する。位置合わせ制御により原点探索を行い、Z相信号が検出された位置をミラー角度θ=0°とする。また、無通電時のミラー位置との角度差分を補正値として記憶しておく。なお、揺動モータ30は、基準位置に戻る方向に付勢されているため、位置合わせ制御での揺動範囲は、走査制御時と同じ揺動幅で揺動させる必要はなく、比較的狭い範囲でよい。
駆動制御部53は、位置合わせ制御の後、ミラー21を基準位置から所定の角度範囲内で揺動させて光ビームの走査を行うように揺動モータ30を駆動する走査制御を行う。走査制御は、エンコーダ40の検出値に基づくフィードバック制御である。
本実施形態の走査制御を図8のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、位置合わせ制御の後、制御部50にて所定の周期で実行される。以下、ステップS101等の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。
S101では、制御部50は、エンコーダ40の検出値に基づき、現在のミラー角度θ、および、角速度ωを取得する。S102では、駆動制御部53は、走査制御開始からの経過時間に基づき、目標ミラー角度θ*を演算する。本実施形態では、一定周期でミラー21が揺動されるように、時間に応じて目標ミラー角度θ*が設定される。
S103では、駆動制御部53は、目標ミラー角度θ*と現在のミラー角度θとの差分Δθから、目標角速度ω*を演算する。S104では、駆動制御部53は、目標角速度ω*と現在の角速度ωとの差分Δωから、PWM制御における目標デューティ比D*を演算する。S105では、駆動制御部53は、目標デューティ比D*にて、揺動モータ30への通電を行う。
本実施形態の走査制御を図9のタイムチャートに基づいて説明する。図9では、共通時間軸を横軸とし、上段から、ミラー角度θ、角速度ω、モータ電流、A相信号、B相信号、Z相信号を示す。
ミラー角度θは、ミラー21が基準位置にあるときを0°とし、A相信号およびB相信号のエッジを検出してカウンタ積算することで演算される。また、Z相信号のエッジ検出によりカウンタをリセットすることで、検出ずれ等をリセット可能である。角速度ωは、ミラー角度θの時間微分により演算される。また、逆転時にZ相パルスが検出されてから、次に逆転時にZ相パルスが検出されるまでを走査制御における1周期とする。また、走査制御の1周期を、適宜「測距周期」とする。
走査制御では、基準位置の一方側から他方側へ一定速度で駆動する正転期間と、他方側から一方側へ戻す正転期間より相対的に短い逆転期間とを交互に行うことで、ミラー21を揺動させる。また、正転期間にミラー21が一定速度で回転しているとき、LiDARによる距離計測を行う。
ところで、角速度ωやエンコーダ40の検出値等に異常があった場合、対象物までの距離計測の精度が低下、または、正常な距離計測が不可能となる。そこで本実施形態では、異常診断部55は、エンコーダ40から出力される信号に基づき、異常判定を行う。
本実施形態の振幅異常診断を図10および図11に基づいて説明する。図10は、簡略化したタイムチャートであり、基準線等は適宜省略した。また、異常時の挙動を一点鎖線の丸印で示した。図12等、後述の各種異常診断を説明するタイムチャートについても同様である。
図10に示すように、振幅異常が生じていない場合、ミラー角度θが正常範囲内にて、回転方向が反転する。一方、振幅異常が生じている場合、一点鎖線の丸印で示すように、正常範囲に到達する前に回転方向が反転されており、ミラー角度θの振幅は正常時より狭くなっている。ミラー角度θの振幅は、LiDARの視野と対応しており、ミラー角度θの振幅が小さい場合、走査制御における視野が狭くなっている、といえる。LiDAR視野欠損が生じると、障害物等を見落とす可能性があるため、異常と判定する。
振幅異常診断処理を図11のフローチャートに基づいて説明する。S201では、異常診断部55は、測距制御が安定しているか否か判断する。例えば作動開始時にて、原点位置や補正値がリセットされている場合、狙った角度に制御できないため、異常診断は行わないようにする。ここでは、原点探索後であって、補正値による補正処理を実施可能である場合、肯定判断する。測距制御が安定していないと判断された場合(S201:NO)、S202以降の処理をスキップする。
S202では、異常診断部55は、走査制御の1周期が完了したか否か判断する。1周期が完了していないと判断された場合(S202:NO)、この判断処理を繰り返す。1周期が完了したと判断された場合(S202:YES)、S203へ移行し、1周期中におけるミラー角度θの最大値θmaxおよび最小値θminを取得する。
S204では、異常診断部55は、最大値θmaxおよび最小値θminの少なくとも一方が正常範囲外か否か判断する。最大値θmaxおよび最小値θminが正常範囲内であると判断された場合(S204:NO)、S205以降の処理をスキップする。最大値θmaxおよび最小値θminの少なくとも一方が正常範囲外であると判断された場合(S204:YES)、S205へ移行する。
S205では、異常診断部55は、最大値θmaxおよび最小値θminの少なくとも一方が正常範囲外である状態がn周期連続か否か判断する。nは、任意の自然数(例えばn=2)に設定可能である。後述の実施形態においても同様である。最大値θmaxおよび最小値θminの少なくとも一方が正常範囲外である状態が連続n周期未満であると判断された場合(S205:NO)、S206の処理をスキップする。最大値θmaxおよび最小値θminの少なくとも一方が正常範囲外である状態が連続n周期連続であると判断された場合(S205:YES)、S206へ移行し、振幅異常として検出する。
本実施形態の角速度異常診断を図12および図13に基づいて説明する。図12は、共通時間軸を横軸とし、上段から、ミラー角度θ、角速度ω、角速度異常カウンタCωを示している。
図12に示すように、正転時は、LiDAR計測のため、角速度ωが一定となるようにフィードバック制御を行っている。正転時の角速度ωが正常範囲外となる角速度異常が生じている場合、LiDARの角度精度が低下する。正常範囲の上限値はCPUの演算能力で規定され、下限値はLiDARの計測周期から規定される。角速度ωが正常範囲外となると、処理能力超過による視野欠損や周期遅れが生じ、正確な位置検出ができなくなるため、異常と判定する。
角速度異常診断処理を図13のフローチャートに基づいて説明する。S301では、異常診断部55は、測距制御が安定しており、かつ、正転方向に動作中か否か判断する。測距制御が安定していない、または、逆転方向に動作中であると判断された場合(S301:NO)、S302以降の処理をスキップする。測距制御が安定しており、かつ、正転方向に動作中であると判断された場合(S301:YES)、角速度異常診断を行う。S301にて肯定判断されて移行するS302では、現在の角速度ωを取得する。
S303では、異常診断部55は、角速度ωが正常範囲外か否か判断する。角速度ωが正常範囲内であると判断された場合(S303:NO)、S304以降の処理をスキップする。角速度ωが正常範囲外であると判断された場合(S303:YES)、S304へ移行し、角速度異常カウンタCωをインクリメントする。なお、角速度異常カウンタCωは、1周期終了時にリセットされるものとする。
S305では、異常診断部55は、角速度異常カウンタCωが異常判定閾値THωより大きいか否か判断する。角速度異常カウンタCωが異常判定閾値THω以下であると判断された場合(S305:NO)、S306以降の処理をスキップする。角速度異常カウンタCωが異常判定閾値THωより大きいと判断された場合(S305:YES)、S306へ移行する。
S306では、異常診断部55は、角速度異常カウンタCωが異常判定閾値THωより大きい状態がn周期連続か否か判断する。角速度異常カウンタCωが異常判定閾値THωより大きい状態がn周期未満であると判断された場合(S306:NO)、S307の処理をスキップする。角速度異常カウンタCωが異常判定閾値THωより大きい状態がn周期連続であると判断された場合(S306:YES)、S307へ移行し、角速度異常として検出する。なお、異常検出に係る周期数は、検出する異常により同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
角度信号異常診断を図14および図15に基づいて説明する。図14は、共通時間軸を横軸とし、上段から、ミラー角度、A相信号およびB相信号、パルス間隔を示している。図14では、A相信号およびB相信号をまとめて「AB相」と記載した。後述の図19および図22も同様である。パルス間隔は、エッジ間の間隔であって、エッジが検出されてからの時間をカウントし、次にエッジが検出されるまでの時間である。エッジが検出されると、時間カウントがリセットされ、再度カウントが開始される。
図14に示すように、上述の通り、正転時は、LiDAR計測のため、角速度ωが一定となるように制御している。そのため、正転時において、正常であれば角度信号であるA相信号およびB相信号のパルス検出間隔は、略一定となる。一方、パルス欠損やノイズ等でパルスが増加した場合、パルス検出間隔が崩れる。パルス間隔が崩れると、演算される角度が、実際のミラー位置と異なるため、正確な位置検出ができなくなるため、異常と判定する。
角度信号異常診断処理を図15のフローチャートに基づいて説明する。S401の処理は、図13中のS301の処理と同様である。S401にて肯定判断された場合、角度信号異常診断を行う。S402では、異常診断部55は、A相信号およびB相信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジを検出し、エッジ間の時間間隔からパルス間隔を取得する。
S403では、異常診断部55は、パルス間隔が正常範囲外か否か判断する。パルス間隔が正常範囲内であると判断された場合(S403:NO)、S404の処理をスキップする。パルス間隔が正常範囲外であると判断された場合(S403:YES)、S404へ移行し、角度信号異常として検出する。
基準信号異常診断を図16および図17に基づいて説明する。図16は、共通時間軸を横軸とし、上段から、ミラー角度θ、Z相信号、エッジ検出回数を示している。図16に示すように、測距制御を行っているとき、1周期中に原点を2回跨ぐため、正常時、Z相信号は立ち上がりエッジ、立ち下がりエッジ合わせて4回エッジが検出される。一方、パルス欠損やノイズ等でパルスが増加すると、エッジ検出回数が4以外となる。Z相信号が異常である場合、基準位置がずれ、正確な位置検出ができなくなるため、異常と判定する。
基準信号異常診断処理を図17のフローチャートに基づいて説明する。S501、S502の処理は、図11中のS201、S202の処理と同様である。なお、1周期の期間は、Z相信号のエッジ検出がしやすいように、例えば図16に示すように、逆転開始から正転終了までを1周期とする、といった具合に、図9と異なっていてもよい。
S503では、異常診断部55は、1周期中におけるZ相信号のパルスエッジ数を取得する。S504では、異常診断部55は、Z相信号のパルスエッジ数が正常範囲外か否か判断する。Z相信号のパルスエッジ数が正常範囲内であると判断された場合(S504:NO)、すなわちZ相信号のパルスエッジ数が4であった場合、S505以降の処理をスキップする。Z相信号のパルスエッジ数が正常範囲外であると判断された場合(S504:YES)、すなわちZ相信号のパルスエッジ数が4以外であった場合、S505へ移行する。
S505では、異常診断部55は、Z相信号のパルスエッジ数が正常範囲外である状態がn周期連続か否か判断する。Z相信号のパルスエッジ数が正常範囲外である状態が連続n周期未満であると判断された場合(S505:NO)、S506の処理をスキップする。Z相信号のパルスエッジ数が正常範囲外である状態がn周期連続であると判断された場合(S506:YES)、S506へ移行し、基準信号異常として検出する。
ここで、測距装置1の動作方法は、適応されるモビリティに応じて変更される可能性がある。本実施形態では、正常範囲を変化させることで、適応されるモビリティに応じた異常判定が可能である。
図18(a)は測距周期が相対的に長い場合、図18(b)は測距周期が相対的に短い場合を示している。測距周期が短い場合、測距周期が比較的長い場合よりも角速度ωが大きくなる。このような場合、正常範囲をシフトすることで、異常判定が可能である。
図19(a)は測距周期が相対的に長い場合、図19(b)は測距周期が相対的に短い場合を示している。測距周期が短い場合、測距周期が長い場合よりも、A相信号およびB相信号のパルス間隔が小さくなる。このような場合、正常範囲をシフトすることで、異常判定が可能である。
図20(a)は測距範囲が相対的に広い場合、図20(b)は測距範囲が相対的に狭い場合を示している。測距範囲が狭い場合、測距範囲が広い場合よりも、ミラー角度θの振幅が小さくなる。このような場合、正常範囲をシフトすることで、異常判定が可能である。
図21(a)は測距範囲が相対的に広い場合、図21(b)は測距範囲が相対的に狭い場合であって、測距周期は等しいものとする。測距周期が等しく、測距範囲が狭い場合、角速度ωが小さくなる。このような場合、正常範囲をシフトすることで、異常判定が可能である。
図22(a)は測距範囲が相対的に広い場合、図22(b)は測距範囲が相対的に狭い場合であって、測距周期は等しいものとする。図21(a)および図21(b)にて説明したように、測距周期が等しく、測距範囲が狭い場合、角速度ωが小さくなるので、A相信号およびB相信号のパルス間隔は大きくなる。このような場合、正常範囲をシフトすることで、異常判定が可能である。
図23(a)は正転時に距離計測を行う場合、図23(b)は逆転時に距離計測を行う場合を示している。逆転時に距離計測を行う場合、逆転時に異常診断を行うものとし、診断時の角速度ωは負側の値となる。このような場合、正常範囲をシフトすることで、異常判定が可能である。なお、周期、振幅が同じであれば、図23(a)における正常範囲の符号の正負を変えればよい。
以上説明したように、本実施形態の測距装置1は、スキャン部20と、エンコーダ40と、制御部50と、を備える。スキャン部20は、ミラー21、および、揺動モータ30を有する。ミラー21は、発光部10から出力される送信波である光ビームを反射させる。揺動モータ30は、光ビームが走査範囲を走査するようにミラー21を揺動駆動する。エンコーダ40は、ミラー21の回転に応じた角度信号を出力する。
制御部50は、位置演算部51、駆動制御部53、および、異常診断部55を有する。位置演算部51は、走査された光ビームを反射した物体の位置を演算する。駆動制御部53は、揺動モータ30の駆動を制御する。異常診断部55は、エンコーダ40から出力される信号に基づき、スキャン部20の動作状態に係る異常診断を行う。これにより、エンコーダ40からの信号に基づき、スキャン部20の動作異常を適切に検出することができる。
異常診断部55は、走査制御の1周期において、角度信号に基づいて演算されるミラー角度θの最大値および最小値の少なくとも一方が正常範囲外である場合、揺動振幅異常であると判定する。これにより、振幅異常を適切に検出可能であって、例えば揺動モータ30の故障や負荷増加などによる振幅不足等により、測距範囲が欠落していることを検出することができる。
異常診断部55は、距離測定実施可能範囲において、角度信号に基づいて演算されるミラー21の角速度ωが正常範囲外である場合、角速度異常であると判定する。本実施形態では、主に、正転時が「距離測定実施可能範囲」に対応し、角速度ωに係る異常診断を実施するが、例えば回転方向の反転前後の所定範囲を除いた範囲を「距離測定実施可能範囲」とし、当該範囲にて異常診断を実施してもよい。なお、図23(b)については、逆転時が「距離測定実施可能範囲」に対応し、同様に、例えば回転方向の反転前後の所定範囲を除いた範囲を「距離測定実施可能範囲」としてもよい。角度信号の異常診断も同様である。これにより、角速度異常による測距精度の低下を検出することができる。
エンコーダ40は、角度信号として複数のパルス信号であるA相信号およびB相信号を出力するものである。異常診断部55は、距離測定実施可能範囲におけるA相信号およびB相信号のエッジ間隔が正常範囲外である場合、角度信号の出力異常であると判定する。これにより、エンコーダ40の出力異常により、演算されるミラー角度θが実際とは異なることを検出可能である。
エンコーダ40は、角度信号に加え、基準信号としてパルス信号であるZ相信号を出力するものである。異常診断部55は、走査制御の1周期において、基準信号のエッジ検出回数が正常範囲外である場合、基準信号の異常であると判定する。これにより、ミラー21の基準位置が認識できていないことを検出可能である。
なお、エンコーダ40の角度信号であるA相信号、B相信号、基準信号であるZ相信号の異常が生じると、ミラー21の揺動を適切に制御できなくなるため、A相信号、B相信号およびZ相信号の異常を診断することは、「動作状態に係る異常診断」の概念に含まれるものとする。また、実施形態では、揺動モータ30が「アクチュエータ」に対応する。
(他の実施形態)
上記実施形態では、ミラーは、磁力により基準位置に戻るように付勢されている。他の実施形態では、ミラー、例えばばね等の弾性部材により基準位置に戻るように付勢されていてもよい。また、スキャン部の構成や測距制御の詳細は、上記実施形態と異なっていてもよい。
上記実施形態では、ミラーは、磁力により基準位置に戻るように付勢されている。他の実施形態では、ミラー、例えばばね等の弾性部材により基準位置に戻るように付勢されていてもよい。また、スキャン部の構成や測距制御の詳細は、上記実施形態と異なっていてもよい。
上記実施形態では、エンコーダは、角度信号としてA相信号およびB相信号の2相の信号を出力する。他の実施形態では、エンコーダは、角度信号として3相以上の信号を出力するものであってもよい。また、基準信号が省略されていてもよい。
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
1・・・測距装置
5・・・計測部
20・・・スキャン部
21・・・ミラー
30・・・揺動モータ(アクチュエータ)
40・・・エンコーダ
50・・・制御部
51・・・位置演算部
53・・・駆動制御部
55・・・異常診断部
5・・・計測部
20・・・スキャン部
21・・・ミラー
30・・・揺動モータ(アクチュエータ)
40・・・エンコーダ
50・・・制御部
51・・・位置演算部
53・・・駆動制御部
55・・・異常診断部
Claims (5)
- 送信波を反射させるミラー(21)、および、前記送信波が走査範囲を走査するように前記ミラーを揺動駆動するアクチュエータ(30)を有するスキャン部(20)と、
前記ミラーの回転に応じた角度信号を出力するエンコーダ(40)と、
走査された前記送信波を反射した物体の位置を演算する位置演算部(51)、前記アクチュエータの駆動を制御する駆動制御部(53)、および、前記エンコーダから出力される信号に基づき、前記スキャン部の動作状態に係る異常診断を行う異常診断部(55)を有する制御部(50)と、
を備える測距装置。 - 前記異常診断部は、走査制御の1周期において、前記角度信号に基づいて演算されるミラー角度の最大値および最小値の少なくとも一方が正常範囲外である場合、揺動振幅異常であると判定する請求項1に記載の測距装置。
- 前記異常診断部は、距離測定実施可能範囲において、前記角度信号に基づいて演算される前記ミラーの角速度が正常範囲外である場合、角速度異常であると判定する請求項1に記載の測距装置。
- 前記エンコーダは、前記角度信号として複数のパルス信号を出力するものであって、
前記異常診断部は、距離測定実施可能範囲における前記パルス信号のエッジ間隔が正常範囲外である場合、前記角度信号の出力異常であると判定する請求項1に記載の測距装置。 - 前記エンコーダは、前記角度信号に加え、基準信号としてパルス信号を出力するものであって、
前記異常診断部は、走査制御の1周期において、前記基準信号のエッジ検出回数が正常範囲外である場合、前記基準信号の異常であると判定する請求項1に記載の測距装置。
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