JP2024075820A - 海水電解用又は電気防食用電極及び触媒、並びに電極の製造方法 - Google Patents

海水電解用又は電気防食用電極及び触媒、並びに電極の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、海水電解及び電気防食の用途に適した、副反応である塩化物イオンの酸化を抑制でき、十分な電流密度を得ることができる触媒担持電極を提供することである。【解決手段】導電性基材の表面にマンガンの塩の熱分解生成物であるγ型二酸化マンガンが担持された海水電解用又は電気防食用電極。導電性基材の表面においてマンガンの塩を200~350℃で熱分解することにより、γ型二酸化マンガンを前記導電性基材の表面に付着させる海水電解用又は電気防食用電極の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、塩化物イオンの酸化を抑制できる海水電解用又は電気防食用電極及び触媒、並びに電極の製造方法に関する。
現在世界の水素の95%は化石燃料(メタン等)から製造されている。再生可能エネルギー由来の電力による水の電気分解はすべての工程でCOを排出しない理想の水素製造プロセスである。電解条件によらず、水の電気分解のボトルネックは陰極での水素生成ではなく、その対極(陽極)での酸素生成であり、高効率な陽極触媒の開発が望まれている。水電解における既存技術はアルカリ水電解とプロトン交換膜(PEM)型水電解である。前者はアルカリと純水、後者は膜材料と純水が必要である。地球上の水資源の97%が海水であることを考えると海水を直接電解して水素を製造するプロセスは魅力的である。特に、淡水へのアクセスが困難、かつエネルギーを得やすい沿岸地域や砂漠地域では有効である。海水を逆浸透膜(RO)法で淡水化し、既存の方法で電解するという手もあるが、不純物除去の困難さや、スペースの問題が残る。例えば、洋上風力発電とのコンビネーションや移動システム(船舶も含む)では直接海水電解が好ましい。海水電解における技術的な課題は、(a)副反応である塩化物イオン(Cl)の酸化を抑制すること、(b)小さな過電圧で十分な水素発生量(=電流密度)を得ることである。
一方、外部電源方式による電気防食においても海水電解と同じ問題・課題がある。外部電源方式の電気防食では、防食対象(鉄鋼等)にマイナス電位を印加し、防食対象の電位をその腐食電位よりも卑にすることによって防食する。このとき、対極(アノード)では酸化反応が起こることで電子のループができる(防食できる)。海水処理施設、港湾設備、沿岸地域の埋設配管の電気防食では水の酸化よりもClの酸化(2Cl→Cl+2e)が優先し、塩素ガス発生による腐食、稲枯れという問題があった。水の酸化による酸素発生反応(OER)は、塩化物イオン(Cl)の酸化による塩素及び次亜塩素酸の生成反応(CER)よりも熱力学的に有利だが、実際に市販の陽極触媒(IrO、RuO等)を使ってNaClを電気分解するとCERが優先する。これはOERが4電子移動を含む遅い反応であるのに対し、CERが2電子のみの移動を伴う速い反応であるという速度論的要件による。海水電解における(a)、(b)の課題に対して、従来は海水に(i)アルカリを添加する方法、(ii)触媒上に塩化物イオンをブロックする層を被覆する方法、(iii)本質的に酸素選択性をもつ触媒を用いる方法が用いられてきた。しかしながら、(i)では海水電解の意味が薄く、カルシウムやマグネシウムの水酸化物が沈殿する、(ii)ではOER選択性が得られる一方で、電流密度が小さい、という問題があった。また、電気防食では(i)は不可能であり、耐久性という点からも(ii)よりも(iii)の方が好ましい。
これらの問題点を解決するために、海水電解用電極及び電気防食用電極として、電析法で得られたマンガン酸化物を触媒として使用する方法が提案されている。この方法としては、マンガン酸化物の層が複数積層され、該マンガン酸化物の層どうしの間に、マンガンイオン以外のカチオン及び水分子が存在する層状マンガン酸化物の膜を電析法により導電性基材の表面に形成し、これを加熱して非晶質構造のマンガン酸化物を導電性基材の表面に固着させる方法がある(特許文献1参照)。一方で、海水電解用電極及び電気防食用電極として、熱分解法で得られたマンガン酸化物を触媒として使用する方法が提案されている。この方法としては、Mnの塩に加えて、Wの塩およびMoの塩の一方または両方を溶解または分散させた液を導電性材料の基体上に塗布し、乾燥の後、400~500℃で加熱して塩を分解することにより、導電性基体上にWの酸化物およびMoの酸化物の一方または両方を含むMn酸化物被覆を形成する方法(特許文献2参照)、基体の表面に硝酸マンガンのアルコール溶液の熱分解によってβ型二酸化マンガンを化学附着させる方法(特許文献3参照)等が挙げられる。しかしながら、電析法で得られた層状マンガン酸化物の膜では、膜の厚み、すなわち導電性基材上のマンガン酸化物の量を増やすことが難しく電流密度が小さいという問題点があり、従来の熱分解法で得られたマンガン酸化物では、マンガン酸化物の下に貴金属の下地層が必要となるという問題点があった。
特開2021-107307号公報 特開平9-256181号公報 特開昭52-86979号公報
本発明の課題は、海水電解及び電気防食の用途に適した、副反応である塩化物イオンの酸化を抑制でき、十分な電流密度を得ることができる触媒担持電極を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために、触媒としての酸素発生選択性を有すると考えられるマンガン酸化物を利用して検討を開始した。検討を進めたところマンガンの塩を特定の温度で熱処理することにより得られたγ型二酸化マンガンを触媒として使用すると、海水の電気分解において陽極からの塩素の発生を抑制でき、酸素の発生効率を非常に高くできることを見いだした。また、この触媒を使用すると過電圧が小さくても十分な電流密度が得られ、十分な水素発生量が得られることを見いだした。特許文献1に記載されたように、電析法によってδ型二酸化マンガンを生成させることができるが、電析法により生成されたδ型二酸化マンガンは触媒として不活性であり、海水電解用途や電気防食用途に適するものではなかった。しかし、本発明者らは熱分解によりγ型二酸化マンガンを生成させることにより、触媒としての活性の高いγ型二酸化マンガンが得られることを見いだした。この触媒活性は、熱分解により生成されたγ型二酸化マンガンには、加熱により酸素欠陥が導入されているためだと考えられる。さらに、熱分解を利用することにより、電析法に比べて多くの量の二酸化マンガン(触媒)を導電性基材上に担持させることができた。また、熱分解法により得られた従来のβ型二酸化マンガンのように塩素発生と酸素発生に対して良触媒である貴金属の下地層を必要とすることなく、優れた活性を有する海水電解用電極や電気防食用電極を作製することができた。本発明は、こうして完成したものである。
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)導電性基材の表面にマンガンの塩の熱分解生成物であるγ型二酸化マンガンが担持された海水電解用又は電気防食用電極。
(2)γ型二酸化マンガンの担持量が15~200mg/cmであることを特徴とする上記(1)の海水電解用又は電気防食用電極。
(3)マンガンの塩の熱分解生成物である海水電解用又は電気防食用γ型二酸化マンガン触媒。
(4)導電性基材の表面においてマンガンの塩を200~350℃で熱分解することにより、γ型二酸化マンガンを前記導電性基材の表面に付着させる海水電解用又は電気防食用電極の製造方法。
本発明の海水電解用又は電気防食用電極は、副反応である塩化物イオンの酸化を抑制でき、十分な電流密度を得ることができる。本発明の製造方法は、前記海水電解用又は電気防食用電極を好適に製造することができる。
図1は、実施例1~3及び比較例1で得られた触媒被覆チタン電極のLSVの結果を示す図である。 図2は、実施例1~3及び比較例1と同様の方法で作製した触媒粉末のXRDパターンを示す図である。 図3は、実施例4~7で得られた触媒被覆チタン電極及び比較例2の電極のLSVの結果を示す図である。 図4は、実施例8~10で得られた触媒被覆チタン電極のLSVの結果を示す図である。 図5は、実施例2、5及び6で得られた触媒被覆チタン電極を用いたときの電極電位(vs.RHE)と電解時間の関係を示す図である。 図6は、実施例2で得られた触媒被覆チタン電極を用いた長期耐久性試験結果を示す図である。
本発明の海水電解用電極は、導電性基材の表面にマンガンの塩の熱分解生成物であるγ型二酸化マンガンが担持されたことを特徴とする。また、本発明の電気防食用電極は、導電性基材の表面にマンガンの塩の熱分解生成物であるγ型二酸化マンガンが担持されたことを特徴とする。本発明における導電性基材としては、不活性電極となる基材であれば特に制限されないが、その材質としては、例えば、チタン、ジルコニウム、タングステン等の金属、FTOガラス等の導電性ガラス、炭素繊維、グラファイト、人造黒鉛等の炭素系材料などを挙げることができる。なかでも、工業的に一般に使用され、耐腐食性が高いことから、チタン及びチタン合金が導電性基材の材質として好ましい。チタン合金としては、例えば、チタンとジルコニウム、ニオブ、タンタル等の合金、チタンとパラジウムの合金などを挙げることができる。本発明における導電性基材の形状としては、特に制限されるものではないが、例えば、平板状、曲板状、棒状、メッシュ状、ラス状等を挙げることができる。
本発明におけるマンガンの塩としては、熱分解されてγ型二酸化マンガンが生成されるものであれば特に制限されないが、例えば、硝酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸マンガン、塩化マンガン等を挙げることができる。本発明の海水電解用電極又は電気防食用電極におけるγ型二酸化マンガンの担持量は適宜決定することができるが、触媒性能を発揮するのに十分な量があり、水、塩化物イオン等の反応基質の拡散や電子移動を阻害しない厚みであるという観点から15~200mg/cmであることが好ましく、70~150mg/cmであることが好ましい。本発明において、γ型二酸化マンガンが担持されたとは、導電性基材の表面にγ型二酸化マンガンが付着していればよく、担持の形態は特に制限されず、例えば、粒子状のγ型二酸化マンガンが付着した形態、膜状のγ型二酸化マンガンが付着した形態等を挙げることができる。γ型二酸化マンガンは導電性基材の表面に直接付着していること、すなわちγ型二酸化マンガンは導電性基材の表面に直接担持されていることが好ましいが、本発明には、導電性基材の表面とγ型二酸化マンガンの間に他の材料からなる中間層を有し、γ型二酸化マンガンが中間層に付着している、すなわちγ型二酸化マンガンが中間層を介して導電性基材の表面に担持されている場合も含む。本発明においてγ型二酸化マンガンが担持されたとは、担持された二酸化マンガンにおけるγ型二酸化マンガンの割合が5割以上であることをいう。また、担持された二酸化マンガンにおけるγ型二酸化マンガンの割合は7割(質量比)以上であることが好ましい。二酸化マンガンにおけるγ型二酸化マンガンの割合は、測定対象試料のX線回折パターンと、γ型二酸化マンガンと別の結晶構造の二酸化マンガンを所定の割合で混合した試料のX線回折パターンを測定し、両者のγ型に特徴的な回折ピーク強度(例えば25°付近のピーク)を比較することにより測定することができる。本発明において海水とは、海の水のことであり地域は限定されない。海水は塩水(塩化ナトリウム水溶液)とは異なり、塩化物イオンと共に各種の金属イオン等を含む、そしてpHも塩水の6~7程度に対して海水は8程度と異なる。しかし、本発明の電極を用いると、各種のイオンの存在及び海水のpH下であっても、塩化物イオンの酸化を抑制して電解を行うことができる。また、本発明において海水とは採取した海水そのものだけでなく、採取した海水を淡水等で薄めたり、濃縮したり、一部脱イオンしたものも含む。
本発明の海水電解用電極は、導電性基材の表面においてマンガンの塩を200~350℃で熱分解することにより、γ型二酸化マンガンを導電性基材の表面に付着させて製造することができる。また、本発明の電気防食用電極は、導電性基材の表面においてマンガンの塩を200~350℃で熱分解することにより、γ型二酸化マンガンを導電性基材の表面に付着させて製造することができる。導電性基材の表面においてマンガンの塩を200~350℃で熱分解する方法としては特に制限されないが、例えば、マンガンの塩を溶解した水溶液を導電性基材の表面に塗布し、乾燥させた後、200~350℃で保持して熱分解する方法等を挙げることができる。乾燥工程と熱分解工程を別々に行ってもよいが、マンガン塩水溶液を電気炉等の加熱装置内に配置し、徐々に昇温することにより乾燥及び熱処理を行い200~350℃で一定時間保持することにより熱分解してもよい。昇温速度及び保持時間は適宜決定することができるが、昇温速度としては、例えば、1~30℃/分、8~25℃/分等を挙げることができ、保持時間としては、例えば、0.5~5時間、1~3時間等を挙げることができる。導電性基材表面へのマンガン塩水溶液の塗布量としては、二酸化マンガン換算で本発明の海水電解用電極又は電気防食用電極での上記好ましい担持量となるような塗布量が好ましい。適切な塗布量となるように厚く塗布するするために、塗布する領域を枠で囲み、枠の内側にマンガン塩水溶液を溜めるようにして塗布してもよい。また、マンガン塩水溶液の粘度を調整してもよい。熱分解する温度としては、280~320℃がより好ましい。熱分解で生成されるγ型二酸化マンガンが導電性基材の表面に付着しやすいように、使用する導電性基材に対して、予めブラスト処理等の粗面化処理などをしてもよい。本発明の電極を製造することにより、導電性基材表面に本発明の触媒を製造することができる。
本発明においては、マンガンの塩を導電性基材の表面において熱分解することにより、γ型二酸化マンガンを導電性基材の表面に付着させるだけでなく、熱分解した生成物であるγ型二酸化マンガンを取り出して海水電解用又は電気防食用γ型二酸化マンガン触媒として使用することができる。マンガンの塩の熱分解生成物である海水電解用又は電気防食用γ型二酸化マンガン触媒の製造方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、耐熱基材上にマンガンの塩の水溶液を滴下する、耐熱容器中にマンガンの塩の水溶液を入れる等した後、加熱して200~350℃で熱分解させ、生成したγ型二酸化マンガンを回収することにより製造することができる。本発明のγ型二酸化マンガン触媒の使用方法としては、海水電解用途及び電気防食用途への使用であれば特に制限されず、例えば、粉体状のγ型二酸化マンガン触媒を導電性基材上に付着させる、γ型二酸化マンガン触媒の成形体を作製して導電部材と接触させる等を挙げることができ、必要に応じて他の触媒、導電剤、バインダー等の添加成分と混合して使用してもよい。
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[実施例1~3]
ブラスト処理済みのチタン板(縦2.5cm×横1.0cm×厚み0.07cm)を沸騰した10%シュウ酸水溶液に20分浸漬した。その後、十分水洗いした。硝酸マンガン(Mn(NO、98%、富士フィルム和光純薬)を水に溶解して、Mn(NOの濃度が10.5mol/Lの硝酸マンガン水溶液を調整した。調整した硝酸マンガン水溶液をピペッターで測り取り、チタン板片面の1.5cm×1.0cmの領域に、120μL/cmの担持量となるように滴下した。なお、硝酸マンガン水溶液120μL/cmは、MnOに換算すると109.5mg/cmとなる。これを電気炉に入れ、室温から昇温速度10℃/分で昇温して熱処理した。実施例1では熱処理温度を200℃、実施例2では熱処理温度300℃、実施例3では熱処理温度400℃とし、実施例1~3での各温度での保持時間を1時間とした。こうして、触媒被覆チタン電極を得た。
[比較例1]
熱処理温度を500℃とした以外は、実施例2と同様にチタン板を処理した。
(電気化学特性評価:リニアースィープボルタンメトリー)
3電極セルを使用してリニアースィープボルタンメトリー(LSV)を行った。実施例1~3及び比較例1で得られた触媒被覆チタン電極を作用極に使用し、対極には白金メッシュ、参照極にはAg/AgCl/KCl(飽和)を使用し、NaClO(0.5mol/L)とリン酸ナトリウムバッファー(0.1mol/L)の混合水溶液(pH6.8)を電解液として使用した。掃引速度は1mV/sであった。自然電位で20分保持した後、1stスキャンを記録した。交流インピーダンス法によりRを測定し、フィードバック率60%でiR補正した。電位は、E(対RHE)=E(対Ag/AgCl)+0.199+0.059×pH(6.8)の式を用いてRHE基準に書き換えた。リニアースィープボルタンメトリーの結果を図1に示す。図1中の矢印で示した数値は、熱処理温度である。ClO はこれ以上酸化されないので、観察された酸化電流はOERによる。もっとも電流を生じ易い電極を作製するための熱処理温度は300℃であった。熱処理温度500℃では、ほとんど酸化電流は観測されなかった。
チタン板を使用せずに、実施例1~3及び比較例1と同様の方法で作製した触媒粉末のX線回折(XRD)パターンを測定した。測定結果を図2に示す。200℃と300℃ではγ型MnO相が観察された。400℃ではγ型に特有の25°付近のピークが消失しており、β型に変換されたことが示されγ型MnO相ではなくβ型MnO相が観察された。500℃ではMn相が顕著となりβ型MnO相とMn相が観察された。
[実施例4~7]
硝酸マンガン水溶液のキャスト量を20μL/cm(実施例4)、40μL/cm(実施例5)、80μL/cm(実施例6)、160μL/cm(実施例7)とした以外は、実施例2と同様にチタン板を処理して触媒被覆チタン電極を得た。そして、得られた触媒被覆チタン電極を使用して、実施例2と同様にリニアースィープボルタンメトリーを行った。結果を実施例2と共に図3に示す。図3中の矢印で示した数値は、硝酸マンガン水溶液の平方センチメートル(cm)あたりのキャスト量である。なお、各キャスト量のMnO換算量は、18.3mg/cm(実施例4)、36.5mg/cm(実施例5)、73.0mg/cm(実施例6)、146.0mg/cm(実施例7)である。
[比較例2]
硝酸マンガン水溶液で処理しないチタン板を作用極に使用して、実施例2と同様にリニアースィープボルタンメトリーを行った。その結果を図3に示す。硝酸マンガン水溶液で処理しないチタン板では、ほとんど酸化電流は観測されなかった。
[実施例8~10]
昇温速度を1℃/分(実施例8)、5℃/分(実施例9)、20℃/分(実施例10)とした以外は、実施例2と同様にチタン板を処理して触媒被覆チタン電極を得た。得られた触媒被覆チタン電極を作用極に使用して、実施例2と同様にリニアースィープボルタンメトリーを行った。その結果を、実施例2の結果と共に図4に示す。図4中の矢印で示した数値は、昇温速度である。
(電気化学特性評価:定電流電解試験)
リニアースィープボルタンメトリーと同様に3電極セルを使用して、電解液として模擬海水を使用し、表1に示す実施例及び比較例で得られた電極を作用極として用いて、模擬海水を電流密度10mA/cmで67分間定電流電解した。表1に、実施例2、5及び6並びに比較例1~3で得られた電極を用いたときの過電圧と塩素発生量から決定した塩素発生反応のファラデー効率(CER効率)を示す。なお、比較例3としては、市販の酸化イリジウム/チタン電極(i-RODE TYPE-2、株式会社アスカエンジニアリング)を使用した。図5には、実施例2、5及び6で得られた電極を用いたときの電極電位(vs.RHE)を電解時間の関数として表す。使用した模擬海水のpHは8.3であり、模擬海水に含まれる成分はNaCl(0.47mol/L)、MgCl(0.035mol/L)、MgSO(0.018mol/L)、CaSO(0.010mol/L)、KCl(0.010mol/L)、NaHCO(2.0mmol/L)、NaSO(0.10mmol/L)及びHBO(0.42mmol/L)であった。CER効率(%)は、以下の式で求めた。また、100からCER効率(%)を引いた値がOER効率(%)となる。以下の式における残留塩素種の濃度(表示値[CLO](mg/L))は、模擬海水の一部を抜き取りジエチルパラフェニレンジアミン法(DPD法)により決定した。
Figure 2024075820000002
Figure 2024075820000003
表1の結果から、比較例2のチタン板単独の場合は電圧が大きくなり過ぎて測定が不可能であった。比較例1の500℃で熱処理した電極の過電圧は2V以上であり、CER効率も25%になった。これに対して実施例で得られたMnOのCERは5%以下であり、CaやMgといった2価イオンや、バッファーとして働く炭酸イオン等が含まれた海水中においても、塩化物イオンの酸化を抑制でき、塩素及び次亜塩素酸の発生量の少ない電極が得られた。これらの電極は酸素の発生効率に非常に優れるものであった。また、これらの電極は、電位(=過電圧)が小さくても電流密度10mA/cmの電流を供給できることが分かった。
(長期耐久性試験)
上記定電流電解試験と同様の3電極セルを使用し、実施例2で得られた触媒被覆チタン電極を陽極、白金メッシュを陰極として、上記定電流電解試験と同じ模擬海水を使用し、24時間でセル内の模擬海水の全量である5Lの模擬海水が入れ替わるようにフローしながら、電流密度2mA/cmで定電流電解を7日間行った。24時間に1回DPD法により残留塩素濃度を測定し、OER/CER効率の算出を行った。その結果を図6に示す。図6(a)は、電解時間(日数)と電位の関係を表し、図6(b)は、電解時間(日数)とOER/CER効率の関係を表す。図6(b)において、棒グラフの上の部分がCER効率を表し(右側の縦軸)、棒グラフの下の部分がOER効率を表す(左側の縦軸)。図6(a)及び(b)から分かるように、電解時間が経過によって電位はほとんど変化せず、また1%以下という低いCER効率が維持された。このように、本発明の電極は長期耐久性にも優れるものであった。
本発明の電極及び触媒は、電解や電気防食において、塩素の発生を抑制した酸素発生電極及び触媒として使用できるため、本発明の海水電解用電極及び触媒は、塩化物イオンを含有する水溶液である海水の電解の陽極に好適に利用でき、本発明の電気防食用電極及び触媒は、製塩プラントの電気防食、洋上風力発電、港湾設備の電気防食等の陽極に好適に利用できる。また、本発明の電気防食用電極は、外部電源方式の電気防食における電気防食用電極として好適に使用できる。

Claims (4)

  1. 導電性基材の表面にマンガンの塩の熱分解生成物であるγ型二酸化マンガンが担持された海水電解用又は電気防食用電極。
  2. γ型二酸化マンガンの担持量が15~200mg/cmであることを特徴とする請求項1記載の海水電解用又は電気防食用電極。
  3. マンガンの塩の熱分解生成物である海水電解用又は電気防食用γ型二酸化マンガン触媒。
  4. 導電性基材の表面においてマンガンの塩を200~350℃で熱分解することにより、γ型二酸化マンガンを前記導電性基材の表面に付着させる海水電解用又は電気防食用電極の製造方法。
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