JP2024075098A - 自覚的運動強度低下効果の有効性検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】個々人に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性を検出する方法、及びそのためのマーカーを提供する。【解決手段】 被験者から採取された試料について、DEFB4A、SPRR2F、SERPINB4、PTK2及びKRTAP16-1から選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定する工程を含む、当該被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性の検出方法。【選択図】なし

Description

本発明は、個々人に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性を検出する方法、及びそのためのマーカーに関する。
人間の体は本来適度な運動を繰り返すことによりその機能を発達させ、維持できるものであり、運動が不足することにより、その機能は衰退する。また継続的で十分な運動習慣は各種疾患リスクを低減する。したがって、健康を維持するためには、日常の生活において積極的、継続的に運動を行い、全身持久性や柔軟性、筋力・筋持久力を高める必要がある。そのためには、安全でかつ継続意向を保てる中で、これらを高めるのに十分な強度、量、頻度での運動が効果的である。しかし、特に運動が習慣化されていない者や、習慣化されてはいるものの、さらなる身体機能の向上を目指すものにおいては、十分な運動に際し、運動時の自覚的な強度、つまり辛さが障害となり、これを取り除くことは重要である。
また、スポーツ選手にとっては、安全でかつ回復を計画出来る中で、できるだけ身体の限界に近い強度、量、頻度で、効果的でかつ満足感を得られるトレーニングを行うことは、競技力の向上にとって重要な事項である。しかし、トップレベルの選手であっても、十分なトレーにイングを継続して実施する際には、運動時の自覚的な強度、つまり辛さがしばしば障害となり、これを取り除くことは重要である。
従来、運動中の主観的な辛さを把握する指標として、自覚的運動強度(Rating of perceived exertion:RPE)が知られている。RPEは、運動を行う対象者の運動時の主観的な負担度を数字で表したものであり、例えばボルグスケールによれば、疲労困憊の段階を20点とし、“非常につらい”を19点、“かなりつらい”を17点、“つらい”を15点、“ややつらい”を13点、“楽である”を11点、“かなり楽である”を9点、そして“非常に楽である”を7点、安静時状態を6点として対応させている。身体が発揮している運動に対し、これに対する自覚的な負担度はその運動をどの程度許容・継続できるかに大きく関わる。
このような状況下、カテキン類とオルニチンとを組み合わせて摂取すると、アンモニア代謝が促進され、血糖値及び筋肉グリコーゲンの低下が抑えられ、かつ運動により低下した血糖値の回復が促進されること、さらには持久力の向上や筋持久力の向上、及び抗疲労効果が得られることが見出されている(特許文献1)。また、最近では、カテキン類とオルニチンの併用投与が、中~高強度1時間の自転車運動中の自覚的運動強度を低下、すなわち運動中の主観的な運動強度(辛さ、負担感、疲労感)を軽減することが認められ(非特許文献1)、カテキン類とオルニチンの併用投与は、健康を維持するためのより効果的な運動の実践、或いはスポーツ選手等におけるより効果的なトレーニングの実践に貢献できると考えられている。
一方、生体試料中のDNAやRNA等の核酸の解析によりヒトの生体内の現在、さらには将来の生理状態を調べる技術が開発されている。生体由来の核酸は、血液等の組織、退役、分泌物などから抽出することができ、特許文献7には皮膚表上脂質(SSL)から被験者の皮膚細胞に由来するRNA等の核酸を分離し、生体の解析用の試料として用いることが記載されている。
従来、疲労や持久力の向上に関連するとされている遺伝子は多数報告されているが、自覚的運動強度に関連して、その発現が変動する遺伝子については何ら報告されていない。
特開2019-62914号公報 国際特許公開第2018/008319号
永山 千尋、「茶カテキン及びオルニチンの摂取が疲労及び運動パフォーマンスに与える影響」、P-3-22 080、第77回日本体力医学会大会
本発明は、個々人に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性を検出する方法、及びそのためのマーカーを提供することに関する。
本発明者らは、カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に発揮されるヒト(有効群)と有効に発揮されないヒト(非有効群)に分け、それぞれの皮膚からSSLを採取し、SSL中に含まれるRNAの発現状態をシーケンス情報として網羅的に解析した結果、特定の遺伝子の発現レベルが両群間で有意に異なり、これを指標として被験者がカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に発揮される否かを検出できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)~3)に係るものである。
1)被験者から採取された試料について、DEFB4A、SPRR2F、SERPINB4、PTK2及びKRTAP16-1から選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定する工程を含む、当該被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性の検出方法。
2)試料の採取及び保存に必要な用具及び試薬、並びに試料から前記遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定するための試薬を含有する、1)の方法に用いられるカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性検出用キット。
3)DEFB4A、SPRR2F、SERPINB4、PTK2及びKRTAP16-1から選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物からなる、被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性検出マーカー。
本発明によれば、個々人に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性を、該カテキン類及びオルニチンを実際に用いることなく予測することができる。本発明により、消費者は、カテキン類及びオルニチンを実際に服用せずとも、それが自身にとって有効かどうかを予測することができる。すなわち、本発明によれば、個々人がカテキン類及びオルニチンの併用投与の自覚的運動強度低下効果を予測するための指針が提供され、自身に適した適切な素材を選択するための時間、コスト、労力等の使用者の負担が低減されるだけでなく、使用者の不安による効果の低下を抑えることで、該素材の効果の向上に繋がり得る。
本明細書中で引用されたすべての特許文献、非特許文献、及びその他の刊行物は、その全体が本明細書中において参考として援用される。
本発明において、「核酸」又は「ポリヌクレオチド」と云う用語は、DNA又はRNAを意味する。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれ、「RNA」には、total RNA、mRNA、rRNA、tRNA、non-coding RNA及び合成のRNAのいずれもが含まれる。
本発明において「遺伝子」とは、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNAの他、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)、当該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、及びこれらの断片を包含するものであって、DNAを構成する塩基の配列情報の中に、何らかの生物学的情報が含まれているものを意味する。
また、当該「遺伝子」は特定の塩基配列で表される「遺伝子」だけではなく、これらの同族体(すなわち、ホモログもしくはオーソログ)、遺伝子多型等の変異体、及び誘導体をコードする核酸が包含される。
本発明において、遺伝子の名称は、NCBI([www.ncbi.nlm.nih.gov/])に記載のあるOfficial Symbolに従う。
本発明において、遺伝子の「発現産物」とは、遺伝子の転写産物及び翻訳産物を包含する概念である。「転写産物」とは、遺伝子(DNA)から転写されて生じるRNAであり、「翻訳産物」とは、RNAに基づき翻訳合成される、遺伝子にコードされたタンパク質を意味する。
本発明において、「カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果」とは、カテキン類及びオルニチンの併用投与によって自覚的運動強度が低下することを指す。自覚的運動強度(Rate of Perceived Exertion:RPE)とは、運動時の主観的負担度を意味し、運動中の人がその活動がどの程度困難である(つらい)と感じるかを示す指標であり、ボルグスケール(Borg Scale)がその代表的である。
ボルグスケールとしては、0-10の10スケールのものも存在するが、代表的には下記表1に示す6-20スケールが広く用いられている。
6~20スケールでは6が最も低いレベル、20が最も高いレベルを表し、その数字の10倍したものと、その時の実際の心拍数との間には高い相関関係があることが確認されている。
Figure 2024075098000001
カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果は、カテキン類及びオルニチンを併用投与せずに一定の運動をした場合の自覚的運動強度に対する、カテキン類及びオルニチンを併用投与して一定の運動をした場合の自覚的運動強度の低下を以て評価することができ、代表的には、カテキン類及びオルニチンを併用投与せずに一定の運動負荷試験、例えばエルゴメーターを用いた漸増負荷運動を行った場合のボルグスケールに対してカテキン類及びオルニチンを併用投与して同運動を行った場合のボルグスケールが低下することにより評価することができる。
そして、当該ボルグスケールが、カテキン類及びオルニチンを併用投与しない場合と比べて、2レベル以上減少した場合にカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果があると評価でき、不変か増加した場合にはカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果がないと評価できる。
カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果は、運動中の主観的な運動強度(辛さ、負担感、疲労感)を軽減することを意味することから、これによって健康を維持するためのより効果的な運動の実践、或いはスポーツ選手等におけるより効果的なトレーニングの実践が可能となる。ひいては、被験者の健康の維持、筋肉労作を伴う労働における持続性向上や疲労軽減、運動の際の持久力又は筋持久力の向上、競技力の向上に繋がる。
本発明において、「カテキン類及びオルニチンの併用投与」とは、カテキン類とオルニチンを組み合わせてヒトに投与又は摂取することを指し、それらが生体内で協働できる限りにおいて、1組成物として同時に投与されてもよく、又はそれぞれが別個に投与される態様でもよい。また、カテキン類及びオルニチンの投与形態は、医薬品、医薬部外品又は食品(機能性食品、病者用食品、特定保健用食品、サプリメント等を含む)の何れの製剤であってもよく、製剤形態も固形、半固形又は液状のいずれでも良い。カテキン類の製剤形態とオルニチンの製剤形態が異なっていても良い。
ここで、カテキン類としては、カテキン、カテキンガレート、ガロカテキン及びガロカテキンガレート等の非エピ体;エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン及びエピガロカテキンガレート等のエピ体が挙げられる。ここで、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートはガレート体、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン及びエピガロカテキンは非ガレート体と称する。カテキン類は、上記に挙げた非重合体カテキン類のいずれか1種又は2種以上の組み合わせであり得る。カテキン類は上記8種を含むのが好ましい。なお、本発明において、カテキン類の含有量は上記8種の合計量に基づいて定義される。
カテキン類は、自覚的運動強度低下効果の点から、カテキン類中のエピ体の割合が、好ましくは35~95質量%、より好ましくは45~92質量%、更に好ましくは50~90質量%である。また、カテキン類は、カテキン類中のガレート体の割合が、好ましくは5~95質量%、より好ましくは10~85質量%、更に好ましくは25~60質量%、更に好ましくは35~53質量%である。
カテキン類の分析は、通常知られている非重合体カテキン類の分析法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することができる。
カテキン類は、一般的には茶葉(煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜入り茶等の緑茶;総称して烏龍茶と呼ばれる鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶などの半発酵茶;紅茶と呼ばれるダージリン、ウバ、キーマン等の発酵茶)から抽出した茶抽出物、その濃縮物又はそれらの精製物(以下、これらを包括的に「茶抽出物等」とも称する)に含まれているため、これらの形態で使用されるのが好ましく、より好ましくは緑茶抽出物の濃縮物又は精製物の形態で使用される。
食品におけるカテキン類の含有量は、その使用形態により異なるが、飲料の形態では、通常0.0001~10質量%であり、好ましくは0.0001~5質量%、より好ましくは0.001~1質量%である。
医薬又は医薬部外品におけるカテキン類の含有量は、一般的に、0.0001~20質量%であり、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
錠剤や加工食品等の固形食品の形態では、カテキン類の含有量は、好ましくは5~15質量%であり、より好ましくは6~14.5質量%であり、より好ましくは7~14質量%であり、より好ましくは10.3~13.5質量%である。
オルニチンは、遊離体又はその塩の形態で使用することができる。
オルニチンは、L-体、D-体、DL-体、及びそれらの混合物のいずれであってもよいが、好ましくはL-体である。
オルニチンの塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が挙げられる。当該酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、及び酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α-ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩が挙げられる。当該金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。このうち、ナトリウム塩、又は塩酸塩が好ましい例として挙げられる。
食品におけるオルニチンの含有量は、その使用形態により異なるが、オルニチン遊離体換算で、通常、好ましくは0.15~30質量%、より好ましくは0.3~20質量%、より好ましくは3~15質量%である。
医薬又は医薬部外品におけるオルニチンの含有量は、その使用形態により異なるが、オルニチン遊離体換算で、通常0.3~60質量%であり、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~20質量%である。
本発明において、カテキン類及びオルニチンの投与量は、経口投与の場合、1人1日当たり、カテキン類は、好ましくは100~3000mg/60kg体重、より好ましくは250~2000mg/60kg体重、さらに好ましくは250~1000mg/60kg体重、さらに好ましくは250~600mg/60kg体重であり、オルニチン(遊離体換算)は、好ましくは100~5000mg/60kg体重、より好ましくは250~3000mg/60kg体重、さらに好ましくは400~2000mg/60kg体重、さらに好ましくは500~2000mg/60kg体重であり、1日1回、又は1日2回もしくは3回以上に分けて投与することができる。
本発明において、被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性の「検出」とは、被験者がカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用する者か否かを明らかにする意味であり、検査、測定、判定、評価支援又は予測などの用語で言い換えることもできる。本発明において、被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性の「検出」、「予測」、「検査」、「測定」、「判定」又は「評価」という用語は、医師による診断を含むものではない。
後述の実施例に示すとおり、被験者に対してカテキン類及びオルニチンを併用投与した後、運動負荷試験において自覚的運動強度を聴取してその指数の変動を調べ、該併用投与によって自覚的運動強度の低下が認められる被験者群(有効群)とそうでない被験者群(非有効群)に分けた。そして、被験者から検出された全てのSSL由来のRNAの発現量のデータについて、DESeq2(Love MI et al. Genome Biol. 2014)を用いて補正されたカウント値(Normalized count値)を用いて、有効群と非有効群において、2群間のFDR(FDR discovery rate)を制御した(FDR <0.25)調整済みp値(閾値 <0.05)を元に発現差異遺伝子を抽出したところ、非有効群に対して有効群で発現が有意に上昇する遺伝子5種(DEFB4A、SPRR2F、SERPINB4、PTK2及びKRTAP16-1)が同定された。
したがって、DEFB4A、SPRR2F、SERPINB4、PTK2及びKRTAP16-1から選択される遺伝子又はその発現産物は、被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性を検出するためのマーカーとなり得る。
これらの5種の遺伝子は、これまでに自覚的運動強度との関係が報告されていない遺伝子であり、これら遺伝子群より選択される遺伝子又はその発現産物は、カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性を検出するための新規な検出マーカーである。
該遺伝子又はその発現産物を指標に、カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度効果の個々の被験者に対する有効性を予測することや、カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度の低下に適した被験者を選択することが可能になる。
上記DEFB4A、SPRR2F、SERPINB4、PTK2及びKRTAP16-1に示す5種の遺伝子は、それぞれ単独で、カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性を検出するための検出マーカーとなり得るが、このうち、精度向上の観点から、数種を組み合わせて使用してもよい。
なお、上記のカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の被験者に対する有効性検出マーカーとなり得る遺伝子(以下、「標的遺伝子」とも称す)には、カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の被験者に対する有効性を検出するためのバイオマーカーとなり得る限り、当該遺伝子を構成するDNAの塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有する遺伝子も包含される。ここで、実質的に同一の塩基配列とは、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLASTを用い、期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3の条件にて検索をした場合、当該遺伝子を構成するDNAの塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらにより好ましく98%以上の同一性があることを意味する。
本発明のカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の被験者に対する有効性の検出方法は、被験者から採取された生体試料について、上記標的遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定する工程を含む。
本発明における被験者の例としては、カテキン類及びオルニチンの併用投与によって、自覚的運動強度の低下を所望する者、主観的疲労の軽減を所望する者、筋肉労作を伴う労働における持続性向上や運動の際の持久力又は筋持久力を向上するためにより効果的な運動実践を所望する者、スポーツ能力を高めるためにより効果的なトレーニングの実践を所望する者、などが挙げられる。
生体試料は、例えば、細胞、体液(血液等)、尿、分泌物(唾液、SSL等)であり得るが、SSLを用いるのが好ましい。
ここで、「皮膚表上脂質(SSL)」とは、皮膚の表上に存在する脂溶性画分をいい、皮脂と呼ばれることもある。一般に、SSLは、皮膚にある皮脂腺等の外分泌腺から分泌された分泌物を主に含み、皮膚表面を覆う薄い層の形で皮膚表上に存在している。SSLは、皮膚細胞で発現したRNAを含む(前記特許文献1,2参照)。また、「皮膚」とは、特に限定しない限り、角層、表皮、真皮、毛包、ならびに汗腺、皮脂腺及びその他の腺等の組織を含む領域の総称である。SSLが採取される皮膚の部位としては、頭、顔、首、体幹、手足等の身体の任意の部位の皮膚が挙げられ、皮脂の分泌が多い部位、例えば顔の皮膚が好ましい。
被験者の皮膚からのSSLの採取には、皮膚からのSSLの回収又は除去に用いられているあらゆる手段を採用することができる。好ましくは、後述するSSL吸収性素材、SSL接着性素材、又は皮膚からSSLをこすり落とす器具を使用することができる。SSL吸収性素材又はSSL接着性素材としては、SSLに親和性を有する素材であれば特に限定されず、例えばポリプロピレン、パルプ等が挙げられる。皮膚からのSSLの採取手順のより詳細な例としては、あぶら取り紙、あぶら取りフィルム等のシート状素材へSSLを吸収させる方法、ガラス板、テープ等へSSLを接着させる方法、スパーテル、スクレイパー等によりSSLをこすり落として回収する方法、などが挙げられる。SSLの吸着性を向上させるため、脂溶性の高い溶媒を予め含ませたSSL吸収性素材を用いてもよい。一方、SSL吸収性素材は、水溶性の高い溶媒や水分を含んでいるとSSLの吸着が阻害されるため、水溶性の高い溶媒や水分の含有量が少ないことが好ましい。SSL吸収性素材は、乾燥した状態で用いることが好ましい。
採取されたSSLは、直ちに後述の核酸又はタンパク質の抽出工程に用いられてもよく、又は、該核酸又はタンパク質抽出工程に用いるまで保存されてもよい。保存する場合、SSLは、好ましくは低温条件で保存される。SSLの保存の温度条件は、0℃以下であればよく、好ましくは-20±20℃~-80±20℃、より好ましくは-20±10℃~-80±10℃、さらに好ましくは-20±20℃~-40±20℃、さらに好ましくは-20±10℃~-40±10℃、さらに好ましくは-20±10℃、さらに好ましくは-20±5℃である。SSLの保存の期間は、特に限定されないが、好ましくは12か月以下、例えば6時間以上12ヶ月以下、より好ましくは6ヶ月以下、例えば1日間以上6ヶ月以下、さらに好ましくは3ヶ月以下、例えば3日間以上3ヶ月以下である。
本発明において、標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルの測定対象としては、RNA、そのRNAをエンコードするDNA、そのRNAにコードされるタンパク質、該タンパク質と相互作用をする分子、そのRNAと相互作用する分子、又はそのDNAと相互作用する分子等が挙げられ、RNAが好ましく、より好ましくはmRNAである。ここで、RNA、DNA又はタンパク質と相互作用する分子としては、DNA、RNA、タンパク質、多糖、オリゴ糖、単糖、脂質、脂肪酸、及びこれらのリン酸化物、アルキル化物、糖付加物等、及び上記いずれかの複合体が挙げられる。また、発現レベルとは、当該遺伝子又は発現産物の発現量や活性を包括的に意味する。
本発明の方法においては、RNAを標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルの測定対象とする場合、RNAの発現レベルが解析されてもよいが、好ましくはRNAを逆転写によりcDNAに変換した後、該cDNA又はその増幅産物が測定される。
SSLからのRNAの抽出には、生体試料からのRNAの抽出又は精製に通常使用される方法、例えば、フェノール/クロロホルム法、AGPC(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法、又はTRIzol(登録商標)、RNeasy(登録商標)、QIAzol(登録商標)等のカラムを用いた方法、シリカをコーティングした特殊な磁性体粒子を用いる方法、Solid Phase Reversible Immobilization磁性体粒子を用いる方法、ISOGEN等の市販のRNA抽出試薬による抽出等を用いることができる。
該逆転写には、解析したい特定のRNAを標的としたプライマーを用いてもよいが、より包括的な核酸の保存及び解析のためにはランダムプライマーを用いることが好ましい。該逆転写には、一般的な逆転写酵素又は逆転写試薬キットを使用することができる。好適には、正確性及び効率性の高い逆転写酵素又は逆転写試薬キットが用いられ、その例としては、M-MLV Reverse Transcriptase及びその改変体、あるいは市販の逆転写酵素又は逆転写試薬キット、例えばPrimeScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(タカラバイオ社)、SuperScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(Thermo Scientific社)等が挙げられる。SuperScript(登録商標)III Reverse Transcriptase、SuperScript(登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(いずれもThermo Scientific社)等が好ましく用いられる。
該逆転写における伸長反応は、温度を好ましくは42℃±1℃、より好ましくは42℃±0.5℃、さらに好ましくは42℃±0.25℃に調整し、一方、反応時間を好ましくは60分間以上、より好ましくは80~120分間に調整するのが好ましい。
発現レベルを測定する方法は、RNA、cDNA又はDNAを対象とする場合、これらにハイブリダイズするDNAをプライマーとしたPCR法、リアルタイムRT-PCR法、マルチプレックスPCR、SmartAmp法、LAMP法等に代表される核酸増幅法、これらにハイブリダイズする核酸をプローブとして用いるハイブリダイゼーション法(DNAチップ、DNAマイクロアレイ、ドットブロットハイブリダイゼーション、スロットブロットハイブリダイゼーション、ノーザンブロットハイブリダイゼーション等)、塩基配列を決定する方法(シーケンシング)、又はこれらを組み合わせた方法から選ぶことができる。
PCRでは、解析したい特定のDNAを標的としたプライマーペアを用いて該特定の1種のDNAのみを増幅してもよいが、複数のプライマーペアを用いて同時に複数の特定のDNAを増幅してもよい。好ましくは、該PCRはマルチプレックスPCRである。マルチプレックスPCRは、PCR反応系に複数のプライマー対を同時に使用することで、複数の遺伝子領域を同時に増幅する方法である。マルチプレックスPCRは、市販のキット(例えば、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit;ライフテクノロジーズジャパン株式会社等)を用いて実施することができる。
該PCRにおけるアニーリング及び伸長反応の温度は、使用するプライマーに依存するため一概には言えないが、上記のマルチプレックスPCRキットは用いる場合、好ましくは62℃±1℃、より好ましくは62℃±0.5℃、さらに好ましくは62℃±0.25℃である。したがって、該PCRでは、好ましくはアニーリング及び伸長反応が1ステップで行われる。該アニーリング及び伸長反応のステップの時間は、増幅すべきDNAのサイズ等に依存して調整され得るが、好ましくは14~18分間である。該PCRにおける変性反応の条件は、増幅すべきDNAに依存して調整され得るが、好ましくは95~99℃で10~60秒間である。上記のような温度及び時間での逆転写及びPCRは、一般的にPCRに使用されるサーマルサイクラーを用いて実行することができる。
当該PCRで得られた反応産物の精製は、反応産物のサイズ分離によって行われることが好ましい。サイズ分離により、目的のPCR反応産物を、PCR反応液中に含まれるプライマーやその他の不純物から分離することができる。DNAのサイズ分離は、例えば、サイズ分離カラムや、サイズ分離チップ、サイズ分離に利用可能な磁気ビーズ等によって行うことができる。サイズ分離に利用可能な磁気ビーズの好ましい例としては、Ampure XP等のSolid Phase Reversible Immobilization(SPRI)磁性ビーズが挙げられる。
精製したPCR反応産物に対して、その後の定量解析を行うために必要なさらなる処理を施してもよい。例えば、DNAのシーケンシングのために、精製したPCR反応産物を、適切なバッファー溶液へと調製したり、PCR増幅されたDNAに含まれるPCRプライマー領域を切断したり、増幅されたDNAにアダプター配列をさらに付加したりしてもよい。例えば、精製したPCR反応産物をバッファー溶液へと調製し、増幅DNAに対してPCRプライマー配列の除去及びアダプターライゲーションを行い、得られた反応産物を、必要に応じて増幅して、定量解析のためのライブラリーを調製することができる。これらの操作は、例えば、SuperScript(登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×VILO RT Reaction Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×Ion AmpliSeq HiFi Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Core Panelを用いて、各キット付属のプロトコルに従って行うことができる。
ノーザンブロットハイブリダイゼーション法を利用して標的遺伝子又はそれに由来する核酸の発現量を測定する場合は、例えば、まずプローブDNAを放射性同位元素、蛍光物質等で標識し、次いで、得られた標識DNAを、常法に従ってナイロンメンブレン等にトランスファーした生体試料由来のRNAとハイブリダイズさせる。その後、形成された標識DNAとRNAとの二重鎖を、標識物に由来するシグナルを検出することにより測定する方法が挙げられる。
RT-PCR法を用いて標的遺伝子又はそれに由来する核酸の発現量を測定する場合は、例えば、まず生体試料由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製し、これを鋳型として本発明の標的遺伝子が増幅できるように調製した一対のプライマー(上記cDNA(-鎖)に結合する正鎖、+鎖に結合する逆鎖)をこれとハイブリダイズさせる。その後、常法に従ってPCR法を行い、得られた増幅二本鎖DNAを検出する。増幅された二本鎖DNAの検出には、予めRI、蛍光物質等で標識しておいたプライマーを用いて上記PCRを行うことによって産生される標識二本鎖DNAを検出する方法等を用いることができる。
DNAマイクロアレイを用いて標的遺伝子又はそれに由来する核酸の発現量を測定する場合は、例えば、支持体に本発明の標的遺伝子由来の核酸(cDNA又はDNA)の少なくとも1種を固定化したアレイを用い、mRNAから調製した標識化cDNA又はcRNAをマイクロアレイ上に結合させ、マイクロアレイ上の標識を検出することによって、mRNAの発現量を測定することができる。
前記アレイに固定化される核酸としては、ストリンジェントな条件下に特異的(すなわち、実質的に目的の核酸のみに)にハイブリダイズする核酸であればよく、例えば、本発明の標的遺伝子の全配列を有する核酸であってもよく、部分配列からなる核酸であってもよい。ここで、「部分配列」とは、少なくとも15~25塩基からなる核酸が挙げられる。ここでストリンジェントな条件は、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の洗浄条件を挙げることができ、より厳しいハイブリダイズ条件としては「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件としては「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の条件を挙げることができる。ハイブリダイズ条件は、J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)等に記載されている。
シーケンシングによって標的遺伝子又はそれに由来する核酸の発現量を測定する場合は、例えば、次世代シーケンサー(例えばIon S5/XLシステム、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)が用いて解析することが挙げられる。シーケンシングで作成されたリードの数(リードカウント)に基づいて、RNA発現を定量することができる。
上記の測定に用いられるプローブ又はプライマー、すなわち、本発明の標的遺伝子又はそれに由来する核酸を特異的に認識し増幅するためのプライマー、又は該RNA又はそれに由来する核酸を特異的に検出するためのプローブがこれに該当するが、これらは、当該標的遺伝子を構成する塩基配列に基づいて設計することができる。ここで「特異的に認識する」とは、例えばノーザンブロット法において、実質的に本発明の標的遺伝子又はそれに由来する核酸のみを検出できること、また例えばRT-PCR法において、実質的に当該核酸のみが増幅される如く、当該検出物又は生成物が当該遺伝子又はそれに由来する核酸であると判断できることを意味する。
具体的には、本発明の標的遺伝子を構成する塩基配列からなるDNA又はその相補鎖に相補的な一定数のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを利用することができる。ここで「相補鎖」とは、A:T(RNAの場合はU)、G:Cの塩基対からなる2本鎖DNAの一方の鎖に対する他方の鎖を指す。また、「相補的」とは、当該一定数の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、よりさらに好ましくは99%以上の塩基配列上の同一性を有すればよい。塩基配列の同一性は、前記BLAST等のアルゴリズムにより決定することができる。
斯かるオリゴヌクレオチドは、プライマーとして用いる場合には、特異的なアニーリング及び鎖伸長ができればよく、通常、例えば10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは20塩基以上、かつ例えば100塩基以下、好ましくは50塩基以下、より好ましくは35塩基以下の鎖長を有するものが挙げられる。また、プローブとして用いる場合には、特異的なハイブリダイゼーションができればよく、本発明の標的遺伝子を構成する塩基配列からなるDNA(又はその相補鎖)の少なくとも一部若しくは全部の配列を有し、例えば10塩基以上、好ましくは15塩基以上、かつ例えば100塩基以下、好ましくは50塩基以下、より好ましくは25塩基以下の鎖長のものが用いられる。
なお、ここで、「オリゴヌクレオチド」は、DNAあるいはRNAであることができ、合成されたものでも天然のものでもよい。又はハイブリダイゼーションに用いるプローブは、通常標識したものが用いられる。
また、本発明の標的遺伝子の翻訳産物(タンパク質)、当該タンパク質と相互作用する分子、RNAと相互作用する分子、又はDNAと相互作用する分子を測定する場合は、プロテインチップ解析、免疫測定法(例えば、ELISA等)、質量分析(例えば、LC-MS/MS、MALDI-TOF/MS)、1-ハイブリッド法(PNAS 100, 12271-12276(2003))や2-ハイブリッド法(Biol. Reprod. 58, 302-311 (1998))のような方法を用いることができ、対象に応じて適宜選択できる。
例えば、測定対象としてタンパク質が用いられる場合は、本発明の発現産物に対する抗体を生体試料と接触させ、当該抗体に結合した試料中のタンパク質を検出し、そのレベルを測定することによって実施される。例えば、ウェスタンブロット法によれば、一次抗体として上記の抗体を用いた後、二次抗体として放射性同位元素、蛍光物質又は酵素等で標識した一次抗体に結合する抗体を用いて、その一次抗体を標識し、これら標識物質由来のシグナルを放射線測定器、蛍光検出器等で測定することが行われる。
尚、上記翻訳産物に対する抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。これらの抗体は、公知の方法に従って製造することができる。具体的には、ポリクローナル抗体は、常法に従って大腸菌等で発現し精製したタンパク質を用いて、あるいは常法に従って当該タンパク質の部分ポリペプチドを合成して、家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法に従って得ることが可能である。
一方、モノクローナル抗体は、常法に従って大腸菌等で発現し精製したタンパク質又は該タンパク質の部分ポリペプチドをマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞から得ることができる。また、モノクローナル抗体は、ファージディスプレイを用いて作製してもよい(Griffiths, A.D.; Duncan, A.R., Current Opinion in Biotechnology, Volume 9, Number 1, February 1998 , pp. 102-108(7))。
斯くして、被験者から採取された生体試料中の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルが測定され、当該発現レベルに基づいて被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性が検出される。
シーケンシングにより複数の標的遺伝子の発現レベルの解析を行う場合は、発現量のデータであるリードカウント値、該リードカウント値をサンプル間の総リード数の違いを補正したRPM値、当該RPM値を底2の対数値に変換した値(LogRPM値)又は整数1を加算した底2の対数値(Log(RPM+1)値)、あるいはDESeq2を用いて補正されたカウント値(Normalized count値)又は整数1を加算した底2の対数値(Log(count+1)値)を指標として用いるのが好ましい。また、RNA-seqの定量値として一般的な、fragments per kilobase of exon per million reads mapped (FPKM)、reads per kilobase of exon per million reads mapped (RPKM)、transcripts per million (TPM)などによって算出される値であってもよい。また、マイクロアレイ法によって得られるシグナル値、及びその補正値であってもよい。また、RT-PCRなどにより特定の標的遺伝子のみ発現レベルの解析を行う場合には、対象遺伝子の発現量をハウスキーピング遺伝子の発現量を基準とする相対的な発現量に変換(相対定量)して解析する方法、又は標的遺伝子の領域を含むプラスミドを用いて絶対的なコピー数を定量(絶対定量)して解析する方法が好ましい。デジタルPCR法によって得られるコピー数であってもよい。
本発明の被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性の検出は、本発明の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを、各遺伝子又はその発現産物の参照値(カットオフ値)と比較することにより行われる。参照値としては、例えば、予めカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用する者(有効群)における当該標的遺伝子又はその発現産物の発現レベル、又はカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用しない者(非有効群)における当該標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを基準データとして取得しておき、それに基づく発現レベルの平均値や標準偏差等の統計的数値に基づき、適宜決定すれば良い。
被験者由来の当該標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルと参照値との比較は、両者が統計学的に有意に異なるか否か等によって評価することができる。
例えば、本発明の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルがカットオフ値(参照値)よりも高い場合、被験者はカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用する者と検出され得、そうでない場合、被験者はカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用しない者と検出され得る。
例えば、被験者における標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルがカットオフ値(参照値)と比べて統計学的に有意に高ければ、該被験者はカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用する者と検出され得、そうでない場合、被験者はカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用しない者と検出され得る。
また例えば、被験者における標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルがカットオフ値(参照値)に対して、好ましくは110%以上、より好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上であれば、該被験者はカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用する者と検出され得、そうでない場合、被験者はカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用しない者と検出され得る。
また、標的遺伝子又はその発現産物として複数の標的遺伝子又はその発現産物を用いる場合には、それらの標的遺伝子又はその発現産物の一定割合、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%が上述した発現レベルの基準を満たすか否かに基づいて、該被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性を検出することができる。
さらに、カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用する個体(有効群)由来の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルと、カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用しない個体(非有効群)由来の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルの測定値(発現プロファイル)を利用して、カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用する者か否かを分ける判別式(予測モデル)を構築し、当該判別式を利用して、カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の被験者に対する有効性を検出することができる。
すなわち、教師サンプル集団(例えば、有効群、非有効群を含む集団)の各人から取得した1つ以上の標的遺伝子又はその発現産物の発現レベル(特徴量)を説明変数とし、該集団の各人におけるカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性についてのデータを目的変数とした機械学習により、有効群と非有効群を分ける判別式(予測モデル)を構築し、当該判別式に基づいて被験者がカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用する者か否かを判別する参照値(カットオフ値)を求める。なお、判別式の作成においては、主成分分析(PCA)により次元圧縮を行ない、主要成分を説明変数とすることができる。
次いで、カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性を調べたい被験者由来の標的遺伝子又はその発現産物のレベル(特徴量)を同様に測定し、得られた測定値を当該判別式に代入し、当該判別式から得られた結果を参照値と比較することによって、被験者に対してカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効か否かが判別される。
判別式の構築するための特徴量の選択には、判別する2群間の統計学的に有意な差異、例えば、発現レベルが2群間で有意に変動する標的遺伝子(発現変動遺伝子)又はその発現産物の発現レベルを用いることができる。また、機械学習に用いるアルゴリズムなどの公知のものを利用して特徴量となる標的遺伝子を抽出し、その発現レベルを用いたりすることができる。例えば、下記に示すランダムフォレストにおける変数重要度の高い標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを用いたり、R言語の“Boruta”パッケージ、Python言語の“Eli5”及び“SHAP”などを用いて標的遺伝子を抽出し、その発現レベルを用いたりすることができる。
判別式の構築におけるアルゴリズムは、機械学習に用いるアルゴリズムなどの公知のものを利用することができる。機械学習アルゴリズムとしては、特に限定されず、例えば、線形回帰モデル(Linear model)、ラッソ回帰(Lasso)、ランダムフォレスト(Random Forest)、ニューラルネットワーク(Neural net)、線形カーネルのサポートベクターマシン(SVM(linear))、rbfカーネルのサポートベクターマシン(SVM(rbf))などのアルゴリズムが挙げられ、このうちランダムフォレスト及び線形カーネルのサポートベクターマシンが好ましい。
構築した予測モデルに検証用のデータを入力して予測値を算出し、該予測値が実測値と最も適合するモデル、例えば正解率(Accuracy)が最も大きいモデル又は該予測値と実測値の差の二乗平均平方根誤差(RMSE)が最も小さいモデルを、最適な予測モデルとして選抜することができる。
カテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性の検出キットは、本発明によるカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性の検出方法に従って、被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性を検出するためのキットである。
本発明のキットは、SSL等の生体試料の採取及び保存に必要な用具及び試薬、標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定するための試薬を含有する。
例えばSSLの採取及び保存に必要な用具及び試薬としては、例えば、SSLを採取するための脂取りフィルム、採取したSSLを保存するための試薬、保存用の容器等が挙げられる。
標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定するための試薬としては、例えば採取したSSLからRNAを抽出・精製するための試薬、標的遺伝子に由来する核酸と特異的に結合(ハイブリダイズ)するオリゴヌクレオチド(例えば、PCR用のプライマー、シーケンシング用アダプター配列等)を含む、核酸増幅又はハイブリダイゼーションのための試薬、遺伝子発現産物(タンパク質)を認識する抗体を含む免疫学的測定のための試薬の他、標識試薬、緩衝液、発色基質、二次抗体、ブロッキング剤、ポジティブコントロールやネガティブコントロールとして使用するコントロール試薬、試験に必要な器具の他、標的遺伝子又はその発現産物の発現レベルを検出するための指標又はガイダンス等が包含される。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
1)試験概要
20-65歳の健常男性14名を被験者としてプラセボ対照2重盲検クロスオーバー試験を行った。カテキン類及びオルニチン(600mg茶カテキンを含む粉末飲料、及び800mgオルニチンを含むサプリメント)、若しくは、プラセボ(それぞれを含まない粉末飲料、及びサプリメント)を2週間摂取し、最終日に運動負荷試験を行う、1週間以上のウォッシュアウトを挟んだクロスオーバー試験を行った。
2)運動負荷試験
昼食の約3時間後に屋内(気温24±1℃制御)でエルゴメーター:エアロバイク(登録商標)75X(コナミスポーツ(旧コンビ))を用いた漸増負荷運動を課した。当日の朝食、昼食は指定のものを提供することで内容を試行間で固定した。被験者は心拍計、呼気マスクを装着した状態で、エアロバイク(登録商標)のオリジナルモード(プログラムモード)にて、事前検査で予め最大心拍数の80%に到達することが確認された強度まで負荷増加する、5-20分間の漸増運動負荷(15w/分)を行った(2試行での運動プログラム(負荷運動量)は被験者内で同一である)。運動中は運動生理学研究で広く用いられている「ボルグスケール」にて、2分おきに自覚的運動強度を聴取した。
Figure 2024075098000002
3)介入の有効性判定(自覚的運動強度低下)
2試行において計2回の運動負荷試験にて正常に自覚的運動強度を聴取でき、かつ、プラセボ試行時の最大自覚的運動強度に対し、カテキン類及びオルニチン試行のそれが2以上減少した4名を有効群、不変か増加した4名を非有効群とし、この計8名での解析を行った。
4)SSL採取
介入に前もって行った運動強度を決定するための事前運動試験の運動前安静時に、各被験者の全顔からあぶら取りフィルム(5×8cm、ポリプロピレン製、3M社)を用いてSSLを回収後、該あぶら取りフィルムをバイアルに移し、RNA抽出に使用するまで-80℃にて保存した。
5)RNA調製及びシーケンシング
上記5)のあぶら取りフィルムを適当な大きさに切断し、QIAzol LysisReagent(Qiagen)を用いて、付属のプロトコルに準じてRNAを抽出した。抽出されたRNAを元に、SuperScript VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて42℃、90分間逆転写を行いcDNAの合成を行った。逆転写反応のプライマーには、キットに付属しているランダムプライマーを使用した。得られたcDNAから、マルチプレックスPCRにより20802遺伝子に由来するDNAを含むライブラリーを調製した。マルチプレックスPCRは、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて、[99℃、2分→(99℃、15秒→62℃、16分)×20サイクル→4℃、Hold]の条件で行った。得られたPCR産物は、Ampure XP(ベックマン・コールター株式会社)で精製した後に、バッファーの再構成、プライマー配列の消化、アダプターライゲーションと精製、増幅を行い、ライブラリーを調製した。調製したライブラリーをIon 540 Chipにローディングし、Ion S5/XLシステム(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いてシーケンシングした。シーケンシングで得られた各リード配列をヒトゲノムのリファレンス配列であるhg19 AmpliSeq Tran scriptome ERCC v1を用いて遺伝子マッピングすることで各リード配列の由来する遺伝子を決定した。
6)データ解析
得られた各被験者のSSL由来RNAの発現量データ(リードカウント値)において、DESeq2法を用いて補正した。但し、全被験者の発現量データのうち90%以上の被験者で欠損値ではない発現量データが得られている遺伝子のみ以下の解析に使用した。解析には、DESeq2法を用いて補正されたカウント値(Normalized count値)を用いた。
7)RNA発現解析
解析該当の各被験者(8名)のSSL由来のRNA発現量(Normalized count値)を基に、非有効群及び有効群間のFDR(FDR discovery rate)を制御した(FDR <0.25)調整済みp値(閾値 <0.05)を元に発現差異遺伝子を抽出した。
8)結果(自覚的運動強度低下有効性)
非有効群に対し、有効群でDEFB4A、SPRR2F、SERPINB4、PTK2及びKRTAP16-1の遺伝子発現が有意に高かった。

Claims (6)

  1. 被験者から採取された試料について、DEFB4A、SPRR2F、SERPINB4、PTK2及びKRTAP16-1から選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定する工程を含む、当該被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性の検出方法。
  2. 発現レベルの測定値を前記各遺伝子又はその発現産物の参照値と比較し、当該被験者がカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果が有効に作用する者であるか否かを評価する、請求項1記載の方法。
  3. 遺伝子又はその発現産物の発現レベルが皮膚表上脂質から採取されたmRNAの発現量の測定である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記カテキン類が緑茶抽出物の濃縮物又は精製物を含有する飲料である、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
  5. 試料の採取及び保存に必要な用具及び試薬、並びに試料から前記遺伝子又はその発現産物の発現レベルを測定するための試薬を含有する、請求項1~4のいずれか1項記載の方法に用いられるカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性検出用キット。
  6. DEFB4A、SPRR2F、SERPINB4、PTK2及びKRTAP16-1から選択される少なくとも1つの遺伝子又はその発現産物からなる、被験者に対するカテキン類及びオルニチンの併用投与による自覚的運動強度低下効果の有効性検出マーカー。
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