JP2024074345A - ガスエンジンシステム - Google Patents
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Abstract
Description
本開示は、ガスエンジンシステムに関する。
従来から、天然ガスや水素ガスなどを燃料とするレシプロエンジンを含むガスエンジンシステムが知られている。例えば、特許文献1には、水素ガスを燃料とするレシプロエンジンを含むガスエンジンシステムが開示されている。また、特許文献1のガスエンジンシステムでは、NOxの排出を抑制するために、EGR(Exhaust Gas Recirculation)により排気の一部が空気と混合されてレシプロエンジンへ供給される。
上記のEGRは、NOxの排出の抑制だけでなく、過早着火、逆火、ノッキングなどの異常燃焼の抑制にも有効である。しかしながら、EGRには専用のブロアやスクラバなどを用いることがあり、スペースおよびコストが問題となることがある。
そこで、本開示は、EGRを用いることなく異常燃焼を抑制することができるガスエンジンシステムを提供することを目的とする。
本開示は、液化ガスが気化したガスを燃料とする、給気路を通じて空気が供給されるレシプロエンジンと、前記液化ガスが気化するときの冷熱を利用して液体空気を製造する液体空気製造機と、前記液体空気中の液体窒素が気化した窒素ガスを前記給気路に供給する窒素ガス供給路と、を備える、ガスエンジンシステムを提供する。
本開示によれば、EGRを用いることなく異常燃焼を抑制することができるガスエンジンシステムが提供される。
図1,2に、一実施形態に係るガスエンジンシステム1を示す。このガスエンジンシステム1は、液化ガスが気化したガスを燃料とするレシプロエンジン2と、レシプロエンジン2へ燃料を供給する燃料供給機4と、液化ガスが気化するときの冷熱を利用して液体空気を製造する液体空気製造機5を含む。
液化ガスはタンク15に貯留される。本実施形態では液化ガスが液化水素であり、燃料が水素ガスである。すなわち、タンク15内の液化ガスの温度は-253℃である。ただし、燃料の元となる液化ガスとしては、液化水素以外の種々の液化ガスが採用可能である。
レシプロエンジン2には給気路11を通じて空気が供給され、レシプロエンジン2からは排気路12を通じて排気が排出される。本実施形態では、給気路11および排気路12に、過給機3の圧縮機31およびタービン32がそれぞれ設けられている。また、給気路11には、圧縮機31の下流側にエアクーラ13が設けられている。エアクーラ13は、圧縮機31で圧縮されて温度上昇した給気を冷却する。例えば、エアクーラ13は、給気と大気や水などの熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器である。
本実施形態では、レシプロエンジン2が4ストロークエンジンである。ただし、レシプロエンジン2は2ストロークエンジンであってもよい。
レシプロエンジン2は、クランクシャフトの軸方向に並ぶ複数(図1では代表として1つのみを図示)のシリンダ21と、各シリンダ21に取り付けられたシリンダヘッド22を含む。各シリンダ21内にはピストン23が配置されており、ピストン23とシリンダヘッド22の間には燃焼室20が形成されている。
シリンダヘッド22には、給気ポート2aおよび排気ポート2bが形成されている。また、シリンダヘッド22には、給気ポート2aの燃焼室20に対する開口を開閉する給気弁24と、排気ポート2bの燃焼室20に対する開口を開閉する排気弁25が設けられている。
さらに、シリンダヘッド22には、給気ポート2a内または燃焼室20内で燃料を噴射する燃料噴射弁26と、燃焼室20内で給気と燃料の混合気に点火する点火装置27が設けられている。なお、燃料噴射弁26は必ずしもシリンダヘッド22に設けられる必要はなく、給気路11に設けられてもよい。
点火装置27は、点火プラグであってもよいし、噴孔を介して燃焼室20と連通する副室を含む副室式のものであってもよい。あるいは、点火装置27は、燃焼室20内にパイロット油を噴射してパイロット油を自着火させるものであってもよい。
燃料供給機4は、タンク15と燃料噴射弁26とを接続する燃料供給路41を含む。燃料供給路41には、上流側から順に、流量調整弁42、主熱交換器61、副熱交換器43、バッファタンク44および流量調整弁45が設けられている。
流量調整弁42は、タンク15から主熱交換器61に流入する液化ガス(本実施形態では液化水素)の流量を調整する。主熱交換器61は、液化ガスと空気との間で熱交換を行うことにより、液化ガスを気化させる。副熱交換器43は、主熱交換器61から流出する気化ガス(本実施形態では水素ガス)をレシプロエンジン2の要求温度まで加熱する。例えば、副熱交換器43は、気化ガスと大気や水などの熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器である。副熱交換器43で冷却された熱媒体は上述したエアクーラ13で冷熱源として使用されてもよいし、副熱交換器43自体がエアクーラ13として使用されてもよい。バッファタンク44は、気化ガスを一時的に貯留する。流量調整弁45は、バッファタンク44から燃料噴射弁26へ供給される気化ガスの流量を調整する。
液体空気製造機5は、一端が大気中で開口し、他端が精留塔62に接続された空気路51を含む。空気路51には、上流側から順に、フィルタ52、ブロア53、水分・二酸化炭素分離機54、第1副熱交換器55、第2副熱交換器56、主熱交換器61およびポンプ57が設けられている。すなわち、主熱交換器61は、燃料供給機4と液体空気製造機5とに共有される。
ブロア53は空気路51の一端から主熱交換器61まで空気を送り出す手段であり、フィルタ52は大気中から取り込まれる空気中の異物を除去する。水分・二酸化炭素分離機54は、フィルタ52を通過した空気から水分および二酸化炭素を除去する。水分および二酸化炭素が除去された空気は、第1副熱交換器55および第2副熱交換器56で予備的に冷却された後に、主熱交換器61において液化ガス(本実施形態では液化水素)との間で熱交換が行われることにより窒素の沸点よりも低い温度となって液化される。主熱交換器61から流出する液化空気は、ポンプ57によって精留塔62へ供給される。
精留塔62では、塔内を上昇する蒸気と、塔内を流下する還流液とが接触する。このため、精留塔62の下部からは液体酸素が取り出され、精留塔62の上部からは窒素ガスが取り出され、精留塔62の中間部からは液体アルゴンが取り出される。なお、精留塔62の中間部からは液体窒素を取り出すことも可能である。
精留塔62の下部から取り出された液体酸素は酸素供給路81を通じて上述した第1副熱交換器55へ導かれ、主熱交換器61の上流側で空気を冷却するための冷熱源として利用される。第1副熱交換器55で気化した酸素ガスは大気中に放出される。なお、酸素供給路81には、液体酸素の取り出し量を調整する流量調整弁82が設けられている。
精留塔62の上部から取り出された窒素ガス、換言すれば液体空気製造機5によって製造された液体空気中の液体窒素が気化した窒素ガスは、窒素ガス供給路71を通じて給気路11へ供給される。本実施形態では、窒素ガス供給路71が圧縮機31の上流側で給気路11に合流しているが、窒素ガス供給路71は圧縮機31の下流側で給気路11に合流してもよい。
窒素ガス供給路71には、上流側から順に、流量調整弁72、熱交換器73、バッファタンク74および流量調整弁75が設けられている。流量調整弁72は、精留塔62の上部から取り出される窒素ガスの流量を調整する。熱交換器73は、窒素ガスを大気温程度まで加熱する。例えば、熱交換器73は、窒素ガスと大気や水などの熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器である。熱交換器73で冷却された熱媒体は上述したエアクーラ13で冷熱源として使用されてもよいし、熱交換器73自体がエアクーラ13として使用されてもよい。バッファタンク74は、窒素ガスを一時的に貯留する。流量調整弁75は、バッファタンク74から給気路11へ供給される窒素ガスの流量を調整する。
さらに、本実施形態では、窒素ガス供給路71に、熱交換器73をバイパスするようにバイパス路76が接続されている。より詳しくは、本実施形態では流量調整弁72が三方弁であり、この流量調整弁72にバイパス路76の上流端が接続されている。バイパス路76の下流端は熱交換器73の下流側で窒素ガス供給路71に接続されている。
バイパス路76は液体空気製造機5の第2副熱交換器56を経由しており、流量調整弁72は、精留塔62から取り出された窒素ガスを熱交換器73と第2副熱交換器56のどちらへ導くかを切り換える役割も果たす。窒素ガスが第2副熱交換器56へ導かれると、主熱交換器61の上流側で空気を冷却するための冷熱源として利用される。
上述した流量調整弁42,45,72,75,82は、コントローラ9により制御される。なお、図1,2では、図面の簡略化のために一部の信号線の作図を省略する。
コントローラ9に関し、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウエアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウエアである。ハードウエアは、本明細書に開示されているハードウエアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウエアであってもよい。ハードウエアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウエアとソフトウエアの組み合わせであり、ソフトウエアはハードウエアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
特に、流量調整弁45の制御に関しては、コントローラ9は、クランクシャフトの回転角およびレシプロエンジン2に対する要求出力に基づいて、流量調整弁45を制御する。
また、コントローラ9は、酸素濃度計91および圧力センサ92と電気的に接続されている。酸素濃度計91は、給気路11における窒素ガス供給路71の合流点よりも下流側の酸素濃度を検出し、圧力センサ92は、燃焼室20内の圧力を検出する。コントローラ9は、酸素濃度計91で検出される酸素濃度および圧力センサ92で検出される圧力に応じて流量調整弁75を制御する。例えば、コントローラ9は、酸素濃度計91で検出される酸素濃度が目標酸素濃度となるように流量調整弁75を制御する。また、コントローラ9は、圧力センサ92で検出される圧力に基づいて過早着火、逆火、ノッキングなどの異常燃焼の発生の有無を判定し、異常燃焼が発生したときに流量調整弁75の開度を大きくする。
以上説明した構成のガスエンジンシステム1では、給気と燃料の混合気中の窒素濃度が上昇するので、混合気に火炎伝播を発生させるために必要な最小点火エネルギーである最小着火エネルギーが大きくなる。このため、過早着火や逆火などの異常燃焼が抑制される。さらには、混合気中の窒素濃度の上昇により、混合気をある温度に保持してから着火するまでの時間である着火遅れが長くなるため、ノッキングも抑制される。従って、EGRを用いることなく異常燃焼を抑制することができる。また、混合気中の窒素濃度が上昇することで断熱火炎温度が低下するため、NOxも抑制することができる。しかも、燃料の元となる液化ガスが気化するときの冷熱を利用して窒素ガスが生成されるので、窒素ガスの生成にそれほど大きなエネルギーは必要ない。
特に、本実施形態のように燃料が水素ガスである場合、水素はメタンと比べて着火遅れが短いだけでなく最小着火エネルギーも小さいため、過早着火を抑制するという観点から混合気中の窒素濃度を上昇させる重要性が高い。
(変形例)
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、図3に示す変形例のガスエンジンシステム1Aのように、タンク15に貯留される液化ガスがLNGであり、LNGが気化した天然ガスがレシプロエンジン2の燃料であってもよい。この場合、タンク15内の液化ガスの温度は-162℃である。
このガスエンジンシステム1Aでは、前記実施形態の液体空気製造機5に対して、主熱交換器61の位置が水分・二酸化炭素分離機54と第1副熱交換器55の間に変更されるとともに、ブロア53およびポンプ57の代わりに圧縮機58および膨張タービン59が用いられた液体空気製造機5Aが採用されている。空気路51を流れる空気は膨張タービン59までは気体であり、膨張タービン59で膨張されることで液化される。すなわち、膨張タービン59から精留塔62へは、液化酸素および液化窒素を含む液化空気(例えば、-200℃)が供給される。
図3に示すように液化ガスがLNGである場合には、大気圧でのLNGの温度が窒素の沸点よりも高いので、液体空気を製造する際に空気に対する圧縮動力が必要になる。これに対し、前記実施形態のように液化ガスが液化水素であれば、大気圧での液化水素の温度が窒素の沸点よりも低いので、そのような圧縮動力が不要である。
なお、ガスエンジンシステム1Aでは、精留塔62と流量調整弁72の間で窒素ガス供給路71に、窒素ガスの送り出し手段としてブロア77が設けられている。
(まとめ)
第1の態様として、本開示は、液化ガスが気化したガスを燃料とする、給気路を通じて空気が供給されるレシプロエンジンと、前記液化ガスが気化するときの冷熱を利用して液体空気を製造する液体空気製造機と、前記液体空気中の液体窒素が気化した窒素ガスを前記給気路に供給する窒素ガス供給路と、を備える、ガスエンジンシステムを提供する。
第1の態様として、本開示は、液化ガスが気化したガスを燃料とする、給気路を通じて空気が供給されるレシプロエンジンと、前記液化ガスが気化するときの冷熱を利用して液体空気を製造する液体空気製造機と、前記液体空気中の液体窒素が気化した窒素ガスを前記給気路に供給する窒素ガス供給路と、を備える、ガスエンジンシステムを提供する。
上記の構成によれば、給気と燃料の混合気中の窒素濃度が上昇するので、混合気に火炎伝播を発生させるために必要な最小点火エネルギーである最小着火エネルギーが大きくなる。このため、過早着火や逆火などの異常燃焼が抑制される。さらには、混合気中の窒素濃度の上昇により、混合気をある温度に保持してから着火するまでの時間である着火遅れが長くなるため、ノッキングも抑制される。従って、EGRを用いることなく異常燃焼を抑制することができる。また、混合気中の窒素濃度が上昇することで断熱火炎温度が低下するため、NOxも抑制することができる。しかも、燃料の元となる液化ガスが気化するときの冷熱を利用して窒素ガスが生成されるので、窒素ガスの生成にそれほど大きなエネルギーは必要ない。
第2の態様として、第1の態様において、前記液化ガスは液化水素であってもよい。液化ガスがLNGである場合には、大気圧でのLNGの温度が窒素の沸点よりも高いので、液体空気を製造する際に空気に対する圧縮動力が必要になる。これに対し、液化ガスが液化水素であれば、大気圧での液化水素の温度が窒素の沸点よりも低いので、そのような圧縮動力が不要である。
第3の態様として、第1または第2の態様において、例えば、前記液体空気製造機は、水分および二酸化炭素が除去された空気と前記液化ガスとの間で熱交換を行う熱交換器を含んでもよい。
第4の態様として、第1乃至第3の態様の何れかにおいて、例えば、上記のガスエンジンシステムは、前記窒素ガス供給路に設けられた流量調整弁と、前記給気路における前記窒素ガス供給路の合流点よりも下流側の酸素濃度に応じて前記流量調整弁を制御するコントローラと、さらに備えてもよい。
1,1A ガスエンジンシステム
11 給気路
2 レシプロエンジン
4 燃料供給機
5 液体空気製造機
61 主熱交換器
71 窒素ガス供給路
75 流量調整弁
9 コントローラ
11 給気路
2 レシプロエンジン
4 燃料供給機
5 液体空気製造機
61 主熱交換器
71 窒素ガス供給路
75 流量調整弁
9 コントローラ
Claims (4)
- 液化ガスが気化したガスを燃料とする、給気路を通じて空気が供給されるレシプロエンジンと、
前記液化ガスが気化するときの冷熱を利用して液体空気を製造する液体空気製造機と、
前記液体空気中の液体窒素が気化した窒素ガスを前記給気路に供給する窒素ガス供給路と、
を備える、ガスエンジンシステム。 - 前記液化ガスは液化水素である、請求項1に記載のガスエンジンシステム。
- 前記液体空気製造機は、水分および二酸化炭素が除去された空気と前記液化ガスとの間で熱交換を行う熱交換器を含む、請求項1または2に記載のガスエンジンシステム。
- 前記窒素ガス供給路に設けられた流量調整弁と、
前記給気路における前記窒素ガス供給路の合流点よりも下流側の酸素濃度に応じて前記流量調整弁を制御するコントローラと、さらに備える、請求項1または2に記載のガスエンジン。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
PCT/JP2023/027579 WO2024111168A1 (ja) | 2022-11-21 | 2023-07-27 | ガスエンジンシステム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2024074345A true JP2024074345A (ja) | 2024-05-31 |
Family
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