JP2024072225A - 電解用電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】 イオン交換膜法食塩電解や海水電解のような塩素発生用の陽極において、極めて低い陽極電位を有し、しかも陽極反応の副反応である塩素中の酸素を極めて低くなるように抑えるとともに、実用電極として、長期間安定に電解できる電解用陽極を得る。【解決手段】あらかじめ作製した、白金とパラジウムからなる金属合金微粉末とルテニウム及び/又はイリジウムとチタン及び/又はスズからなる酸化物の混合物コーティング層をチタン又はチタン合金からなる基材表面にコーティングした、主反応が塩素発生である電解用陽極。【選択図】なし

Description

本発明は、イオン交換膜法食塩電解や海水電解、希薄塩水電解など塩素発生反応を主反応とする陽極として使用する不溶性金属陽極であって、非常に低い塩素発生電位と非常に低い塩素中酸素濃度を有し、しかも長寿命で、長期間にわたりその特性を保持することが出来る電解用陽極である。
食塩水を電気分解して陽極から塩素を、陰極から苛性ソーダを得る、いわゆるクロルアルカリ電解プロセスは今や陽イオン交換膜を隔膜として陽極/陰極共にこの陽イオン交換膜に密着させて電極間距離を最小として電解を行ういわゆるゼロギャップ方式のイオン交換膜法電解が主流になっている。 これによると、電極部分以外ではイオン交換膜自身の電気抵抗とその前後のわずかな電解液による電気抵抗が電気抵抗分であり、電気分解の特性は、そのほとんどが電極にかかっている。従って、クロルアルカリ電解では、電極の性能そのものが他のプロセスにもまして極めて重要である。特に陽極では電圧を決めることになる陽極過電圧と、陽極反応である主反応としての塩素発生反応と副反応としての酸素発生反応との選択性の問題があり、そこでは当然のことながら極めて低い陽極過電圧を有し、しかも、酸素発生反応を最小にすることが必要である。
これらのことは、イオン交換膜法食塩電解のみではなく、条件は異なるが、電解における陽極反応としては同じ主反応が塩素発生であり、副反応として酸素発生を行う、海水電解や希薄塩水電解用の陽極でも同じであり、特に無隔膜電解で行う希薄塩水電解では陰極還元の影響があるが、陽極自身の電解反応の選択性つまり、電流効率が、到達可能な次亜塩素酸塩濃度に関係することから陽極の特性がきわめて重要である。
いわゆるDSA(Dimensionally Stable Anode)と称される皮膜形成金属基材表面に白金族金属酸化物を含む電極物質を熱分解法によって形成する金属電極では,電極物質を比較的自由に選択できることから種々の電極物質が使用できる。食塩水を電解する塩素発生用陽極としては電極物質として主として白金,イリジウム及びルテニウムが使用され、これらの組み合わせと、安定化物質/補助電極物質として、チタンや、スズ、或いはジルコニウムなどを加えた主として酸化物、複合酸化物からなる電極であり、広く使用されている。
実際には、電極物質として、電解反応に直接寄与するのは、ほぼ、ルテニウムとイリジウムに限られ、これに安定化物質として、又特性の調整用としてチタン(酸化チタン)、スズ(酸化スズ)を加えた複合酸化物として使用されることが多い。
これらの電極では、ルテニウム成分は塩素発生に対する過電圧を小さくすることが出来るが、電解反応の選択性、つまり生成塩素中の副反応としての酸素発生が比較的大きくいわゆる電流効率が若干低くなるとされる。一方、イリジウム成分は電極寿命を極めて長くすること、副反応である塩素中の酸素を少なくするという特徴があるが、塩素発生電位が若干高いと言う問題点を有する。実際の商業用電極においてはこれらを微妙に調整して使用している。特に、現在のイオン交換膜法電解では、電流密度が0.6A/cm2から0.8A/cm2と当初の2倍以上と高くなっており、しかも電極寿命10年以上の長寿命を要求するケースが多いので、ルテニウムとイリジウムの組み合わせが必須であり、またその条件を最適化することが大きな課題である。
現在、多くの商業用電解槽ではこのような電極を使用しているが、それにイリジウムやルテニウムの価格によっては許せる範囲で特性をある程度調整しながら、電極物質の組成を変えることも行われている。ただ特性には一義的なところがあり、イリジウム成分を増やすと電極消耗は減るが、電位が高くなること、又ルテニウムを増やすとその逆である事、また、寿命が短くなることは上述の通りである。
このような電極は基材である、チタンやチタン合金からなる、板や多孔体の表面にこれらのイリジウム及び/又はルテニウム成分を含むコーティング液を塗布し、空気中で熱分解法を行い、酸化物被覆とするが、熱分解温度を低くすると電位は低下し、活性化するが、電極消耗が大きくなること、つまり寿命が短くなることが経験的にわかっている。又生成塩素中の酸素が増加するという問題点がある。また熱分解温度を高くするとこの逆となり、寿命は長くなるが、電位が高くなり、ひいては電解電圧が高くなるという問題を有する。
本願発明者らの検討ではこれらに白金を加えると、初期には塩素発生電位を極めて低く保持し、又塩素中の酸素濃度を極めて低くすることが出来ることを見いだしている。しかしながらこの特性は、通常の電極作製条件で電極を作製すると、電解開始後数十時間で失われてしまい、その後は白金を含まないのと同じ特性になると言う問題点がある。但し、ここでは、白金が消耗しているわけではないので、陽分極時の白金の特徴である白金表面の不働体化が起こるためであると考えられる。
一方、添加剤として、白金と類似、或いはより優れた電気化学特性を与える電極物質としてパラジウムが知られている。パラジウムは酸化物或いは金属として、上記の様な電極に加えると、活性な白金と同じく、又は、より塩素発生過電圧を低くでき、副反応である塩素中の酸素を極めて小さく出来るという特徴がある。しかしながらパラジウム成分は電気分解を続けると短時間に消耗してしまい、工業的には実用性の無いことがわかっている。これはパラジウムについて、酸化物型コーティングの基本特許である、特公昭48-3954号公報特許請求範囲1では、公開公報にはあったパラジウムが特許公報では、除かれていることでも明らかである。
ただ、パラジウムの優れた働きは古くから知られており、その実用化について、過去には、あらかじめ、安定化した酸化パラジウム(PdO)粉末としてコーティング液に加え、それを使って酸化物からなる電極を作製することによって、パラジウム成分の消耗を防ぐといういくつの特許出願がなされている。 但しそのようにしてもなおかつ不安定であるためか、実用電極として使用されているものは殆どないようである。このように白金とパラジウムは可能性を有するが、実用化の条件がなかなか見いだせていないという問題点が残されていた。
特公昭45-11014公報並びに特公昭45-11015公報では白金・パラジウム合金電極について白金とパラジウムからなる合金を熱処理して食塩電解用陽極として使用する事が示されている。ここでは、白金に比較して優れていること、又これらに示されているグラフなどからは、極めて低い塩素過電圧を有する事が記載されている。但し、そこでは基材上への被覆に関する記載が無く、唯一見られるのがクラッドとの表示である。これはあらかじめ合金の塊を何らかの方法で作製してその板を基材上にクラッドしたものと思われる。ただ合金が白金より安定であろう事がこれらの記載からは類推できるが、このような電極では高価な白金とパラジウムが多量に必要であり、実用と言えるものではない。いわゆるコーティングとしての記述がなく、又本質である、更に長期安定電解の基本となるイリジウムやルテニウムとの組み合わせはなく、又その可能性の記述も全く見られない。
特公昭62-7276号公報に記載の特許ではパラジウム成分が希薄塩水電解で極めて優れた性能を示す一方、その安定化が問題であるとして、あらかじめ安定な酸化パラジウムを他の組成物前駆体液に混ぜ合わせ、それを被覆液として熱分解法により被覆する事が示されている。又同時に熱分解で作製するとパラジウム成分は安定ではなく、すぐに消耗してしまうことが示されている。
特公昭48-3954公報 特公昭45-11014公報 特公昭45-11015公報 特公昭62-7276公報
イオン交換膜法食塩電解や海水電解のような塩素発生用の陽極において、極めて低い陽極電位を有し、しかも陽極反応の副反応である塩素中の酸素を極めて低くなるように抑えるとともに、実用電極として、長期間安定に電解できる電解用陽極を得る。
本発明は、あらかじめ作製した、白金とパラジウムからなる金属合金微粉末とルテニウム及び/又はイリジウムとチタン及び/又はスズからなる酸化物の混合物コーティング層をチタン又はチタン合金からなる基材表面にコーティングした、主反応が塩素発生である電解用陽極である。
白金とパラジウムをあらかじめ白金・パラジウムの金属合金にしておき、その合金を熱分解による酸化物コーティングに加えて、白金とパラジウムの合金はそのままで、酸化物コーティングとの複合物として、電極コーティング内に保持させ、それによって長期にわたり安定に低い電位と、優れた反応選択性を示す陽極とすることが出来ることを見いだした。一方熱分解法を使用してコーティングを作製するコーティング液中に白金塩とパラジウム塩を加えて通常の方法で空気中での熱分解を行うと、白金は金属白金となり、パラジウムは酸化パラジウム(PdO)になってしまい合金化しない。又白金塩とパラジウム塩の混合溶液のみを電極基材上に塗布して熱分解を行っても、同じで白金は金属、パラジウムは酸化パラジウム(PdO)となってしまう。また白金と酸化パラジウムを含む電極では短時間にパラジウムは消耗してしまい、又たとえ白金は残留していても、白金を含まない電極の特性とほぼ同じとなってしまうと言う問題点を有する。
本発明では、あらかじめ白金とパラジウムの合金の微粉末を作製する。作製に当たっては、これらの金属を溶解して合金化する事ができるが、温度条件、雰囲気条件などが厳しいこと、又生成する合金は通常はブロック状となり、微粉末化が困難となる。又化学的に白金とイリジウムを共沈させ、それを洗浄してから濾過し、還元雰囲気で熱処理して合金粉末を得る方法があるが、それでは、微粉末ではなく、ある程度成長した合金塊になってしまうと言う問題点がある。従って、ここでは電極製造と同様に基材上にコーティング液を塗布し、還元雰囲気となる様に火炎雰囲気で熱分解を行い、合金の微粉末を作製する。なおコーティング用の基材としては金属との整合性が悪く、コーティングをしても容易に剥離する物質が望ましい。
つまり、基材として石英ガラスなど耐熱性で被覆を引きはがしやすい素材を用い、白金塩、たとえば塩化白金酸とパラジウム塩、たとえば塩化パラジウムをエチルアルコールやプロピルアルコールなどのアルコールに溶解し、更に有機還元剤となる、ラベンダーオイルやテレビンオイルを加えてコーティング液とし、石英ガラス板基材に塗り、ガスバーナーの火炎で熱分解する。火炎による還元雰囲気と、更にコーティング液中の還元剤とによって白金、パラジウム共に金属として析出する。ここでは、元々同じ白金族金属であり、周期律の上下の関係であるので均一な合金となる。この合金は基材である石英ガラスからは容易に剥がれる。剥がれた薄片はコーティング量によるが、通常は厚みが1ミクロン又それ以下である事、又それを乳鉢で粉砕すれば容易にいわゆる超微粉に属するような微粉末とすることが出来る。
白金とパラジウムの原材料として、塩化白金酸や塩化パラジウムの他にジニトロジアンミン白金やジニトロジアンミンパラジウムを使用することも出来る。これらをイソプロパノールアミンと純水及びアルコールに溶解して均一な液にしたものも使用できる。これによる液を石英ガラス板に厚めに塗布し、火炎熱分解によって還元処理をすると金属光沢の微粉末が得られやすく、又石英ガラスからの剥離も容易である。なお経験からは、ここに示したジニトロジアンミン系化合物の方が微粉砕しやすい様であり、本目的にはより適合しているように思われる。
白金とパラジウムの組成比であるが、パラジウム成分が白金表面の不働体生成を防げば良いこと、更に、パラジウムが白金中に合金化して初めて安定化することを考慮すると、パラジウムの含有量は10モル%以上、50モル%未満が望ましいことが考えられた。またこのことは実施例によっても確認された。
なお合金の作成に当たっては、ここでは石英ガラス上に白金とパラジウムの含有液を塗布して火炎熱分解によって作成したが, ここのように超微粉末に近い微粉末の合金が得られるのであれば特に本手法に固執する必要はなく、その他の方法でも良いことは当然である。たとえば上記白金塩とパラジウム塩を含むコーティング液を磁性るつぼに入れ、ふたをしてバーナーで外から加熱熱分解を行うことによっても得られる。つまり、ふたをしていればほぼ空気は入らないこと、また白金もパラジウムも白金族金属で有り、比較的酸化しにくいこと、るつぼ中では液成分が揮散しながら合金化が起こるので、金属分は塊にならず微粉状になる。
酸化物コーティングの方は、主として電極反応をになう電極コーティングであり、たとえばイリジウムとルテニウム、及びチタンをモル組成1:2:5とするような、通常の食塩電解用の陽極と同じ組成でも良く、又、よりイリジウム成分が多く、電位は高くなるが、極めて長寿命となる様な電極組成であっても使用できる。
基本となる白金パラジウム合金を含まないコーティング液はたとえば塩化イリジウム、塩化ルテニウム並びに四塩化チタン水溶液を指定の組成割合となるように塩酸水溶液に加えて十分に攪拌溶解したものを用意する。これに上記で作製した白金パラジウム合金の微粉末を所定の量を加える。なお微粉末の粒径は平均粒径5ミクロン以下が良く、特に望ましくは2ミクロン以下の粒径として液中に分散したときに、分散が保持される様な状態になっている事が望ましい。なお微粉末は微細であっても固体である事から液とは分離しやすく、常に液攪拌をしながら使用することが望まれるが、それを和らげるために、キサンタンガムなどの増粘剤を液中にわずかに加える事も可能である。
このようにして作製した酸化物コーティングを製造するコーティング液に上記白金パラジウム合金粉末を所定量混合して十分に攪拌し均一に分散した液をあらかじめ前処理を行ったチタン基材に塗布する。その後は通常の熱分解法で良く、40℃から120℃で乾燥後、所定の温度で熱分解により酸化物化する。
熱分解条件は白金パラジウム合金を含まない時と同じ条件での処理で良い。たとえば上記の液であれば熱分解温度は流通空気中で、460℃から520℃で10分間程度である。この塗布・熱分解を5回から10回程度繰り返して電極コーティングとする。
コーティング液の塗布手法は特には指定されないが、白金パラジウム合金が十分に微細であれば液中に分散したままコロイド溶液と同じと考える事が出来るので、静電スプレー法での塗布でもよく、増粘剤を使用したケースでは、ローラーコーティング法、或いは刷毛塗りによるコーティングが使用可能である。このようにしても熱分解温度は同じでよく、熱分解条件は白金パラジウム合金粉末を含まない時のコーティングと同じとして良い。
本発明に於ける陽極は基材としてチタンまたはチタン合金からなり、用途によって、板状或いはエクスパンドメタル、パンチ板などの多孔板等としたものについて、その表面をブラスト、エッチングなどの前処理を行ったものを使用する。
白金パラジウム合金は白金塩とパラジウム塩を組成比に従って、溶媒であるアルコールやアルコール水溶液に溶解し十分に攪拌し、混合した後に火炎による熱分解を行って、白金とパラジウムの金属合金を作製し、それを更に必要に応じて粉砕して微粉末とする。
このようにして準備した白金とパラジウム合金の微粉末を所定量、酸化物コーティング用のコーティング液に加え、十分に攪拌して均一に分散させた分散液を本目的用のコーティング液としてコーティングに用いる。なおこのコーティング液中の微粉末の分散をより良くするために、増粘剤を加えて、液の粘性をわずかに高くすることも出来る。なお、あくまでも合金は白金パラジウム合金は固体であり、分散状態を保持するためには、使用時は常に液攪拌を行うことが望ましい。
コーティングはこのようにして白金パラジウム合金を分散したコーティング液を前処理を行った基材に塗布し、乾燥後に流通空気中で熱分解を行うことによる。これによって、白金パラジウム金属合金と酸化物からなるコーティング被覆を形成するが、通常は これらの塗布、乾燥、熱分解を複数回繰り返して目的とする厚みの電極コーティングとする。
なおこの後に安定化のために酸化雰囲気で熱分解温度あるいは、それより高い温度で後処理加熱を行う事ができる。
以下実施例によって説明するが、これらに限定されないことは言うまでも無い。
白金塩としてジニトロジアンミン白金、パラジウム塩としてジニトロジアンミンパラジウムをイソプロパノールアミンと純水の混合液に白金:パラジウム=2:1(モル比)となる様に溶解して白金パラジウム液を作製した。これに更にnープロピルアルコールを加えて合金作成液(ガラス基材への塗布液)とした。この液を40℃のホットプレート上に石英ガラス板をおき、その上から刷毛で塗布した。 塗布は乾燥するたびに5回ほど繰り返した。 乾燥後この石英ガラス表面をガスバーナーで加熱熱分解を行った。最初黒色になり、その後白色となった。更に加熱したところ金属光沢になると共に薄片状に部分的に剥離してきた。冷却後にプラスチック製スパチュラでガラス表面から剥離を行った。これによって、極めて薄く微細な金属箔が得られた。このものを瑪瑙乳鉢に入れ、それに少量のエチルアルコールを加えて湿式として、粉砕を行った。部分的には凝集が認められたが全体としては極めて微細な粉末とすることが出来た。
イリジウム、ルテニウム並びにチタンからなる酸化物形成用のコーティング液を以下の方法によって作製した。つまり、塩化イリジウム(IrCl3nH2O)と塩化ルテニウム(RuCl3nH2O)と 四塩化チタン水溶液(TiCl4nH2O)をそれぞれの金属成分のモル比でイリジウム:ルテニウム:チタン=1:1:2となる様に秤量して10%HCl水溶液に溶解し、更に上記白金とパラジウムからなる合金をイリジウム+ルテニウム+チタンの金属としての質量和に対して5質量%となる量を微粉末状態で加え、これに更にキサンタンガムを白金パラジウム合金と同じ質量分秤取し、加えて攪拌して均一の液とした。この液についてはコーティング中も液の攪拌を継続した。なおキサンタンガムを加えたのは液の粘性をあげて合金粉末の均一な混合状態を保持するためである。
このようにして作製したコーティング液を指定量秤取り、あらかじめブラスト並びにエッチング加工した厚さ1mmの純チタン製のエクスパンドメタルに刷毛にて塗布した。液の塗布はエクスパンドメタルの両面から行い、40℃で10分間乾燥した。乾燥後,空気を流しながら500℃に保持したマッフル炉に入れて10分間保持し熱分解を行った。この塗布、乾燥、熱分解の操作を10回繰り返してイリジウムとルテニウムの合量で、金属質量換算8g/m2-投影面である電極を作製した。又対比例として白金パラジウム合金粉末を入れなかった以外全く同じに作製した電極を用意した。
この様にして作製した陽極試料について、試験用のゼロギャップイオン交換膜法食塩電解槽の陽極として組み込み、温度80℃、電流密度0.8A/cm2 にて500時間予備電解を行った後に0.4A/cm2の電流密度における電位と塩素中の酸
Figure 2024072225000001
その結果、以下の結果が得られた。
本実施例 電位 1.08V vs.Ag/AgCl O2/Cl2 0.12vol%
対比例 電位 1.12V vs.Ag/AgCl O2/Cl2 0.34vol%
なお計測後、 電極の消耗を計測したが、白金、パラジウムの消耗や変化は全く見られなかった。
白金パラジウム合金の作製は、n-プロピルアルコールとテレビン油を体積で10:1の割合で混合した溶媒として、その溶媒に、原料として塩化白金酸と塩化パラジウムを所定の割合に混合したものを溶解して十分に攪拌混合した液を使用し、実施例1と同様に石英ガラス上に刷毛にて塗布した後に、石英ガラスのガラス面側から加熱乾燥をした。液の塗布、乾燥を5回繰り返した後に金属面側からガスバーナーの火炎により熱分解を行った。これによって、金属光沢を有する薄片状の金属が得られた。このものを実施例1と同じ方法で剥離し瑪瑙乳鉢で湿式粉砕して合金微粉末を得た。なおこれらにより得た金属微粉末は蛍光X線法で組成を測定したところ、ほぼ金属成分の揮散は起こっていないことがわかった。
酸化物コーティング液を以下によって準備した。 つまり塩化イリジウム(IrCl3nH2O)、塩化ルテニウム(RuCl3nH2O)、及び四塩化チタン(TiCl4nH2O)を金属モル比でIr:Ru:Ti=1:2:7 とし10%塩酸水溶液に溶解し、それに体積で10%のイソプロピルアルコールを加えることによった。このコーティング液に上記によって作製した白金パラジウム合金の微粉末を加えた。微粉末の添加はコーティング液の金属分に対して10質量パーセントとなる様に加え、十分に攪拌し均一化した。これを実施例1と同様にして準備したチタンエクスパンドメタルに塗布し温風で10分間乾燥後520℃に設定した空気を流通したマッフル炉で熱分解を行った。塗布、乾燥、熱分解を10回繰り返してイリジウム+ルテニウムでチタン投影面当たり8g/m2である電極コーティングを作製した。
このものについて白金とパラジウムの安定性を確認するために、pH=1.8、
Figure 2024072225000002
時間の予備電解を行った。ここでは予備電解の前後で白金とパラジウムについて蛍光X線法により、コーティング量の計測を行った。その後、実施例1と同じくイオン交換膜法の試験電解槽で電位の計測と塩素ガス中の酸素濃度の計測を行った。電流密度は0.4A/cm2であり、陽極は通常のイオン交換膜法と同じく陽極にイオン交換膜を密着した状態で測定した。
表に計測結果を示した。
Figure 2024072225000003
表から見るように
▲1▼1000時間の予備電解で、上記番号(7),(8)では既にパラジウム成分が大きく減っており、合目的ではない。従ってここでは対比例とした。
▲2▼番号(0)は参考ではあるが、パラジウムを入れないことで、おそらく白金は不働体化したものと思われ、電位が高くなってしまっている。
▲3▼番号(1)はパラジウムの添加効果が不十分なために部分的に白金が不働体化しているものと思われパラジウムの割合が量的に不十分であろうことが推定された。
これらから本願特許請求範囲を規定した。
基材として厚さ1mmのJIS1種純チタン板を用いその表面に電極コーティングを作製した。基材の前処理として、スチールグリットによってブラスト処理を行なって粗面化した後に100℃、20%塩酸中で10分間エッチングを行った。この基材表面に以下により準備をしたコーティング液を塗布し、120℃で10分間乾燥した後流通空気中460℃で10分間熱分解を行った。コーティング液の塗布、乾燥、加熱熱分解の操作を10回繰り返して、ルテニウムについてチタン面当たり7g-Ru/m2-Tiである電極を作製した。
なおコーティング液は次のようにして作製した。 白金パラジウム合金しては実施例2で準備した白金パラジウム合金、組成比白金:パラジウム=70 :30の合金を用いた。酸化物形成用のコーティング液として、塩化ルテニウムと塩化第一スズ及びチタンブトキシドをn-ブタノールと10質量パーセント塩酸水溶液を体積比1:1の割合で混合した液に溶解したものを用い、これにルテニウムに対して白金パラジウム合金を白金とパラジウムの合量で15モルパーセントとなる様に白金パラジウム合金微粉末を混合した。更に液質量に対して1%量のキサンタンガムを加えて液の粘性をあげて白金パラジウム合金微粉末の分散を保持する様にして被覆液とした。
このようにして作製した電極について、対比用として白金パラジウム合金を加えなかったこと以外全く同じにして作製した電極を用意し、電解評価を行っ
Figure 2024072225000004
を行いながら、無隔膜電解を行い、到達可能な活性塩素濃度を測定した。なお陰極としては陽極と同じ大きさの純チタン板を陽極―陰極間距離10mmとして固定して用いた。電流密度0.15A/cmで連続電解を行い、初期には活性塩素濃度が上昇し、飽和値に達したところでその活性塩素濃度を計測した。 白金パラジウム合金粉末を含む陽極では12500~13000ppmまで上昇したのに対して白金パラジウム合金を含まない対比例では9500ppmであり、明らかに白金パラジウム合金が有効に働くことわかった。
本発明の電解用陽極は特にイオン交換膜法食塩電解用の陽極として、従来から電解中の電極消耗が極めて小さく、それ故電極寿命が極めて長く、広く使用されているイリジウム、ルテニウム、チタン酸化物コーティングからなる陽極で、従来問題であった電解電位が高い事、又電極反応の選択性、つまり発生塩素ガス中の酸素濃度の問題を解決し、極めて小さい電極消耗速度を保持しながら、非常に低い電解電位を有し、しかも極めて低い発生塩素ガス中の酸素含有量を有することが可能となった。更に塩素イオン濃度が低い電解液である、希薄食塩水電解や海水電解においては、分解率を高く高濃度の次亜塩素酸塩を得ることが出来、活性塩素濃度を高く保持することが出来る様になった。

Claims (10)

  1. あらかじめ作製した、白金とパラジウムからなる金属合金微粉末とルテニウム及び/又はイリジウムとチタン及び/又はスズからなる酸化物の混合物コーティング層をチタン又はチタン合金からなる基材表面にコーティングした、主反応が塩素発生である電解用陽極。
  2. 前記白金とパラジウムからなる金属合金微粉が前記被覆層中に3から20質量%含まれてなることを特徴とする請求項1の電解用陽極。
  3. 白金とパラジウムからなる金属合金の微粉末をあらかじめ作製し、該微粉末をルテニウム及び/又はイリジウムとチタン及び/又はスズを含む液中に分散させたコーティング液をチタン又はチタン合金基材表面に塗布し、空気中で熱分解法によりコーティングすることを特徴とする請求項1又は2の電解用陽極。
  4. 白金とパラジウム合金微粉末の組成がパラジウム10モル%以上、50モル%以下であり、残部が白金であることを特徴とする請求項1から3のいずれかの電解用陽極。
  5. 前記酸化物がイリジウムとルテニウム及びチタンからなる複合酸化物であり、イリジウムが0から30モル%、ルテニウムが20から40モルパーセントからなり、残部がチタンである事を特徴とする請求項1から4のいずれかの電解用陽極。
  6. 前記酸化物がルテニウムとスズ及びチタンからなる複合酸化物でありルテニウムが10から30モル%、スズが10から30モル%及びチタンが40から70モル%であることを特徴とする請求項1から4のいずれかの電解用陽極。
  7. あらかじめ作製した白金とパラジウムからなる合金の微粉末をルテニウム塩及び/又はイリジウム塩とチタン塩及び/又はスズ塩を含有する液中に分散した後、該分散液をチタン又はチタン合金多孔体基材表面に塗布して空気中で熱分解を行うことによって表面コーティング層を形成したことを特徴とする請求項1の電解用陽極。
  8. 白金とパラジウムからなる合金の微粉末を白金塩とパラジウム塩を溶解した混合溶液を作製し、該溶液を乾燥した後に火炎にて加熱熱分解して合金薄片とし、必要に応じて微粉砕することによって作製することを特徴とする請求項7に記載の電解用陽極。
  9. 前記、分散液を前記基材に塗布し、空気中で熱分解を行うことを複数回繰り返して、所望の厚みのコーティング層を得ることを特徴とする請求項7の電解用陽極。
  10. 前記熱分解を空気中460℃以上の温度で行うことを特徴とする請求項7又は9の電解用陽極。
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