JP2024070037A - 複合材料製パネル構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プレス成形時の連続繊維の変形を促し、成形品にしわやうねりが発生することを抑止した複合材料製パネル構造体の製造方法を提供する。【解決手段】連続繊維およびマトリクス樹脂を含む複数のシート材Sであって、成形体領域SAと前記成形体領域の外側に配置される成形体外部領域SBとを含む寸法を有する複数のシート材Sを準備し、少なくとも一つのシート材Sの成形体外部領域SBに複数のスリットTを形成し、複数のシート材Sを積層して積層体10を形成し、積層体10をプレス成形して成形体を形成したのち、当該成形体から成形体外部領域SBに対応する部分を取り除いてパネル構造体100を成形する。【選択図】図1
Description
本開示は、複合材料製パネル構造体の製造方法に関する。
近年、軽く強度の高い特性を有する複合材料は金属に代わる軽量化材料として、航空機、自動車をはじめとする各種の産業分野での利用が期待されている。このような複合材料の適用が進む中で、高い生産性と低コストでの製造が可能なプレス成形法が注目されている。
特許文献1には、連続繊維を含む複数のプリプレグを積層して積層体を形成し、当該積層体をプレス成形することで、パネル構造体を製造する技術が開示されている。
上記のように連続繊維を含む積層体をプレス成形することで製造されるパネル構造体は、プレス成形時の積層体の変形に連続繊維が充分追従できないことから、成形品にしわやうねりが発生しやすいという問題があった。
本開示の目的は、プレス成形時の連続繊維の変形を促し、成形品にしわやうねりが発生することを抑止した複合材料製パネル構造体の製造方法を提供することにある。
本開示の一の局面に係る複合材料製パネル構造体の製造方法は、強化繊維およびマトリクス樹脂を含有する複合材料製パネル構造体の製造方法である。当該製造方法は、前記強化繊維として連続繊維を含む複数のシート材であって、成形体領域と前記成形体領域の外側に配置される成形体外部領域とを含む寸法を有する複数のシート材を準備することと、前記複数のシート材のうちの少なくとも一つのシート材の前記成形体外部領域に複数のスリットを形成することと、前記複数のシート材を積層して積層体を形成することと、前記積層体をプレス成形して前記積層体から成形体を形成したのち、当該成形体から前記成形体外部領域に対応する部分を取り除いて前記パネル構造体を成形することと、を備える。
本開示によれば、プレス成形時の連続繊維の変形を促し、成形品にしわやうねりが発生することを抑止した複合材料製パネル構造体の製造方法を提供することができる。
以下、図面に基づいて、本開示の一実施形態を詳細に説明する。以下の説明では、複合材料製パネル構造体を単にパネル構造体と称する。当該パネル構造体は、強化繊維およびマトリクス樹脂を含有する。具体的に、当該パネル構造体は、複数のシート材を積層し、プレス成形することで製造される。一例として、前記シート材は、強化繊維として連続繊維を含むプリプレグである。
なお、上記のプリプレグについて、パネル構造体の複合材料層を構成する強化繊維および樹脂組成物の具体的な種類は特に限定されるものではない。強化繊維は、パネル構造体が適用される部品において良好な物性を実現できるものであれば、その具体的な種類は特に限定されないが、例えば、炭素繊維、ポリエステル繊維、PBO繊維すなわちポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、炭化ケイ素繊維、ナイロン繊維、等を挙げることができる。これら強化繊維は、1種類のみが用いられてもよいし2種類以上が適宜組み合わせて用いられてもよい。本実施形態では、強化繊維として炭素繊維が好適に用いられる。また、強化繊維の形態は特に限定されないが、代表的には、組物、織物、編物、不織布等で構成された基材を用いることができる。
また、強化繊維に含浸される樹脂組成物は、基材を支持するマトリクス材、すなわち母材として使用可能な樹脂材料を含有していればよい。具体的な樹脂材料としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とが挙げられる。本実施形態では、熱可塑性樹脂が用いられる。
熱可塑性樹脂の具体的な種類も特に限定されないが、PPSすなわちポリフェニレンスルフィド、PEEKすなわちポリエーテルエーテルケトン、PEIすなわちポリエーテルイミド等のエンジニアリングプラスチックが好適に用いられる。これら熱可塑性樹脂もより具体的な化学構造は特に限定されず、公知の種々のモノマーが重合されたポリマーであってもよいし、複数のモノマーが重合されたコポリマーであってもよい。また、平均分子量、主鎖および側鎖の構造等についても特に限定されない。
なお、マトリクス材は、上記の熱可塑性樹脂のみで構成されてもよい。すなわちマトリクス材は、公知の樹脂材料のみであってもよい。一方、マトリクス材は、公知の硬化剤、硬化促進剤、繊維基材以外の補強材または充填材、その他公知の添加剤を含んでいてもよい。硬化剤、硬化促進剤等の添加剤の具体的な種類、組成等についても特に限定されず、公知の種類または組成のものを好適に用いることができる。
図1は、本開示に係る複合材料製パネル構造体の製造方法の工程図である。当該製造方法は、平板の成形工程と、プレス成形工程に大別される。平板の成形工程は、複数のシート材の各々にスリットを形成するS1工程と、複数のシート材を積層して、積層体を形成するS2工程と、積層体を加熱、加圧するS3工程とを含み、前記加熱、加圧を終えると、スリット入りの平板が完成する。
図2Aは、本実施形態に係る複合材料製パネル構造体の製造方法において使用するスリット形成具の模式的な斜視図である。図2Bは、図2Aのスリット形成具を用いて複合材料製のシート材Sにスリットを形成する様子を示す模式的な斜視図である。
図1のS1工程では、プリプレグであるシート材Sに対して、図2Aのトムソン型5をスリット形成具として用いてスリットTを形成する。トムソン型5は、型本体50と、複数のトムソン刃51とを有する。型本体50は、直方体形状を有し、複数のトムソン刃51は、型本体50の一面上に千鳥状に配置されている。なお、複数のトムソン刃51の配置は千鳥状に限定されるものではない。
図2Bに示される治具6は、台座60と、支持部61とを有する。支持部61は、台座60の上方に間隔をおいて配置される。支持部61は、図2Aの複数のトムソン刃51がシート材Sに対向するように、トムソン型5を支持している。台座60上にシート材Sが載置された状態で支持部61が下降されると、図2Bに示すようにシート材S上に複数のスリットTが形成される。
図3は、本実施形態に係るパネル構造体100のプレス成形前の積層体10の模式的な平面図である。図3では、パネル構造体100のうち最も上方に配置されるシート材Sが現れている。各シート材Sは、成形体領域SAと、成形体領域SAの外側に配置される成形体外部領域SBとを含む寸法を有している。成形体領域SAは、プレス成形後にパネル構造体100となる領域である。成形体外部領域SBはプレス成形後に切除される領域である。
成形体外部領域SBのうち成形体領域SAに近い領域には、図2Bの複数のスリットTを含むスリット領域TAが形成されている。スリット領域TAは、成形体領域SAの周囲を囲むように配置されている。なお、図3では、図2A、図2Bと異なり、後記の図4AのスリットパターンでスリットTが形成された態様を示している。また、図2Bでは、帯状のシート材Sに複数のスリットTが形成される態様にて説明したが、図3に示されるシート材Sのスリット領域TA内に複数のスリットTを同時に形成可能な大きなトムソン型5が用いられても良い。
図4Aおよび図4Bは、複合材料製のシート材Sに形成されるスリットパターンの例を示す図である。本実施形態では、シート材Sに含まれる連続繊維の繊維方向に対して、スリットTの方向が交差するように設定されている。一例として、連続繊維の繊維長は5mm以上200mm以下、スリット角度は連続繊維の繊維方向に対して0°よりも大きくかつ90度以下の範囲に設定され、スリットTの幅は1mm以上50mm以下に設定される。図4Aでは、スリットTの方向が各列で異なるように設定されており、スリットTの間隔が10mm、スリットTの長さが5mm、繊維方向とスリットTとが30度で交わる例を示している。また、図4Bでは、複数のスリットTが同じ方向に延びるように設定されており、スリットTの間隔が10mm、スリットTの長さが5mm、繊維方向とスリットTとが90度で交わる例を示している。なお、図4A、図4のいずれにおいても、複数のスリットTが千鳥状に形成されることで、高い密度でスリットTを配置することができる。なお、このようなスリットTの数および配置は、後記の加熱工程において、積層体10が大きく変形しないように設定されている。
上記のように、各シート材Sの成形体外部領域SBに複数のスリットTが形成されると、図1のS2工程において複数のシート材Sが積層され、積層体10が形成される。なお、積層体10の機能、構造などに応じて、各シート材Sに形成されるスリットTの方向および位置は異なるように設定されてもよい。一のシート材Sと当該一のシート材Sの直上に位置する他のシート材Sとの間でスリットTの方向および位置が同じである場合、スリットT同士が繋がって大きな開口に成長する可能性があるため、隣接するシート材S間では上記のスリットTの方向および位置のうちの少なくとも一方が異なるように設定されることが望ましい。S2工程において積層体10が形成されると、当該積層体10が予熱装置に搬入される。その後、S3工程において積層体10が融点以上に加熱、加圧され、スリット入りの平板が完成する。
平板の成形工程後、図1に示すプレス成形工程では、スリット入りの平板がS4工程で予熱された後、S5工程において所定のプレス型でプレス加工される。この結果、成形品、すなわちパネル構造体100が完成する。
図5Aは、本実施形態に係るパネル構造体100の成形体の模式的な拡大図である。図5Bは、パネル構造体100と比較される他のパネル構造体100Zの成形体の模式的な拡大図である。図6Aは、図5Aのパネル構造体100に対応する積層体10のプレス成形時に、層間すべりが発生した様子を示す模式図である。図6Bは、図5Bのパネル構造体100Zに対応する積層体10Zのプレス成形時に、うねりやよれが発生した様子を示す模式図である。
図5Bのパネル構造体100Zおよび図6Bのプレス成形前の積層体10Zは、前述の複数のスリットTを有していない点で、図5Aのパネル構造体100および図6Aの積層体10と相違する。複数のスリットTが形成されていない場合、図6Bに示すように、プレス型による積層体10Zの変形に各シート材SZ内の連続繊維が充分追従できないことから、うねり、よれが発生しやすい。この結果、図5Bに示すように、パネル構造体100Zの表面にも、しわWが発生する。
一方、本実施形態に係るパネル構造体100および積層体10では、プレス成形前の積層体10の成形体外部領域SBに複数のスリットTが形成されている。当該複数のスリットTが、プレス成形時における複数のシート材Sの相対的な変形を吸収することによって、図6Aに示すように複数のシート材Sの層間すべりが促進され、図6Bのような連続繊維のうねりやよれの発生を低減することができる。したがって、プレス成形後に図5Aの成形体から成形体外部領域SBを取り除くことで、しわWの発生が防止されたパネル構造体100を得ることができる。また、複数のスリットTは成形体領域SAに形成されていないため、最終的なパネル構造体100の表面などにスリットTの痕跡が現れることも防止される。
更に、本実施形態では、図5Aに示すように、パネル構造体100が基板部100Aと、当該基板部100Aから立設された立壁部100Bとを有している。換言すれば、パネル構造体100は、基板部100Aと立壁部100Bとの間に曲部Rを有する。このような、複雑な形状を有する構造体では、図6Bのしわ、よれなどに起因して図5BのしわWが発生しやすい。したがって、本実施形態のように複数のスリットTを形成することによって、しわWの発生を安定して抑制することができる。
また、本実施形態では、シート材Sにおいて複数のスリットTが成形体領域SAの周囲全体を囲むようにスリット領域TAに形成されている。このため、パネル構造体100が複雑な形状を有する場合であっても、連続繊維のうねりやしわを安定して低減することができる。また、複数のスリットTを形成することによって、積層体10の賦形性の向上、すなわち、プレス型に応じた積層体10の変形を促進する機能と、成形時に積層体10全体に適度な引っ張り力を維持する機能とを両立することができる。
また、本実施形態では、積層体10の成形に先行してシート材SにスリットTが形成されるため、パネル構造体100の形状に応じた位置および層にスリットTを配置し、プレス成形時の複数のシート材Sの変形を安定して吸収することができる。
なお、前述のように、シート材Sに形成されるスリットTの方向は、当該シート材Sに含まれる連続繊維の繊維方向と交差するように設定されることが望ましい。この場合、スリットTが連続繊維の繊維方向と平行に形成される場合と比較して、連続繊維が繊維方向に沿って相対移動できる。より詳しくは、スリットTにおいて連続繊維が分断されるため、当該連続繊維の分断された各領域は互いに異なる方向に移動することができる。したがって、複数のシート材Sにおける層間すべりが更に促進され、連続繊維のうねりやよれの発生を一層低減することができる。
複数のシート材Sの各々にスリットTを形成する場合には、各シート材Sに形成されるスリットTの方向が異なるように設定されることが望ましい。この場合、隣接するシート材S間で互いのスリットTが連なって大きな開口部が形成されパネル構造体100の一部が欠損することを防止できる。また、各シート材SのスリットTの方向を適宜調整することで、パネル構造体100の異方性を考慮した設計、製造を行うことができる。
また、上記のように複数のシート材SにスリットTを形成する場合も、スリットTの形成後に各シート材Sを積層して積層体10を成形することが望ましい。この場合、積層体10を形成したのちにスリットTを形成する場合と比較して、各層に独自のスリットTを形成できるため、プレス成型時の複数のシート材Sの動きを細かくコントロールすることができる。
更に、本実施形態では、複数のシート材Sとして熱可塑性のマトリクス樹脂を含むものを用いるとともに、プレス成形前に積層体10に予熱処理を施している。このように、積層体10に予熱処理を施したのちにプレス成形を行うことで、シート材Sに含まれる熱可塑性樹脂が軟化し、複雑な形状であっても安定してパネル構造体100を成形することができる。一方、このような予熱処理を施すと熱変形によってスリットTが開きやすくなるが、積層体10に一括で大きなスリットTを形成するのではなく、各シート材Sに小さな複数のスリットTを形成しているため、当該スリットTが大きく開くことを抑制することができる。
以上、本開示に係るパネル構造体100の製造方法について説明したが、本開示は上掲の実施形態に何ら限定されない。例えば、上述のパネル構造体100の製造方法などについて、次のような変形実施形態を取ることができる。
上記の実施形態では、強化繊維に含浸され基材を支持するマトリクス材が熱可塑性樹脂である態様にて説明したが、マトリクス材は熱硬化性樹脂でもよい。
熱硬化性樹脂の具体的な種類は特に限定されないが、代表的には、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これら熱硬化性樹脂は単独種で用いられてもよいし、複数種が組み合わせられて用いられもよい。また、これら熱硬化性樹脂のより具体的な化学構造も特に限定されず、公知の種々のモノマーが重合されたポリマーであってもよいし、複数のモノマーが重合されたコポリマーであってもよい。また、平均分子量、主鎖および側鎖の構造等についても特に限定されない。
また、この場合も、マトリクス材は、上記の熱硬化性樹脂のみで構成されてもよいし、公知の硬化剤、硬化促進剤、繊維基材以外の補強材または充填材、その他公知の添加剤を含んでいてもよい。
すなわち、本開示において、マトリクス材は、熱硬化性樹脂および他の成分を含有する熱硬化性樹脂組成物、あるいは、熱可塑性樹脂および他の成分を含有する熱可塑性樹脂組成物であってもよい。したがって、本開示における複合材料は、強化繊維と熱硬化性樹脂または熱硬化性樹脂組成物とで構成される「熱硬化型」であってもよいし、強化繊維と熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物とで構成される「熱可塑型」であってもよい。
また、上記の実施形態では、シート材SにスリットTを形成した後に各シート材Sを積層して積層体10を成形する態様にて説明したが、積層体10を成形した後に当該積層体10に複数のスリットTを入れる態様でもよい。この場合も、成形体外部領域SBに複数のスリットTを形成することで、パネル構造体100の構造、機能に影響を与えることなく、しわなどの発生を防止することができる。
更に、複数のスリットTは成形体領域SAの周囲を囲むようにスリット領域TA全体に形成されるものに限定されない。パネル構造体100の形状から特にしわなどの発生が顕著な領域が把握できる場合には、成形体領域SAの一部に対向するように成形体外部領域SBの一部に複数のスリットTが形成されてもよい。
また、スリットTが形成されるシート材Sは、積層される複数のシート材Sのうちの少なくとも一つに形成されてもよい。また、スリットTが形成されたシート材Sと形成されていないシート材Sとが交互に積層されるものでもよいし、その他の順序で積層されるものでもよい。
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
本開示の第1の局面に係る複合材料製パネル構造体の製造方法は、曲部を有し強化繊維およびマトリクス樹脂を含有する複合材料製パネル構造体の製造方法である。当該製造方法は、前記強化繊維としての連続繊維および前記マトリクス樹脂を含む複数のシート材であって、成形体領域と前記成形体領域の外側に配置される成形体外部領域とを含む寸法を有する複数のシート材を準備することと、前記複数のシート材のうちの少なくとも一つのシート材の前記成形体外部領域に複数のスリットを形成することと、前記複数のシート材を積層して積層体を形成することと、前記積層体をプレス成形して前記積層体から成形体を形成したのち、当該成形体から前記成形体外部領域に対応する部分を取り除いて前記パネル構造体を成形することと、を備える。
本方法によれば、積層体を構成する複数のシート材のうちの少なくとも一つのシート材の成形体外部領域に複数のスリットが形成される。当該複数のスリットが、プレス成形時における複数のシート材の相対的な変形を吸収することによって、成形体に含まれる連続繊維のうねりやしわを低減することができる。
本開示の第2の局面に係る複合材料製パネル構造体の製造方法は、第1の局面に係る製造方法において、前記少なくとも一つのシート材において前記複数のスリットが前記成形体領域の周囲を囲むように又は前記成形体領域の一部に対向するように、前記成形体外部領域に前記複数のスリットを形成することを更に備える。
本方法によれば、パネル構造体が複雑な形状を有する場合であっても、成形体に含まれる連続繊維のうねりやしわを安定して低減することができる。
本開示の第3の局面に係る複合材料製パネル構造体の製造方法は、第1の局面に係る製造方法において、前記少なくとも一つのシート材に前記スリットを形成したのちに、前記複数のシート材を積層して前記積層体を形成することを更に備える。
本方法によれば、積層体の成形に先行してシート材にスリットが形成されるため、パネル構造体の形状に応じた位置または層にスリットを配置して、複数のシート材の変形を安定して吸収することができる。
本開示の第4の局面に係る複合材料製パネル構造体の製造方法は、第1の局面に係る製造方法において、前記少なくとも一つのシート材に形成される前記スリットの方向を、当該シート材に含まれる前記連続繊維の繊維方向と交差するように設定することを更に備える。
本方法によれば、スリットが連続繊維の繊維方向と平行に形成される場合と比較して、連続繊維の繊維方向における相対移動が可能になり、複数のシート材における層間すべりが促進されることで成形体に含まれる連続繊維のうねりやしわの発生を低減することができる。
本開示の第5の局面に係る複合材料製パネル構造体の製造方法は、第1の局面に係る製造方法において、前記複数のシート材のうちの第1のシート材および前記第1のシート材とは異なる第2のシート材の各々に前記スリットを形成することと、前記第1のシート材に形成する前記スリットの方向と前記第2のシート材に形成する前記スリットの方向とが異なるように前記スリットを形成することと、を更に備える。
本方法によれば、第1のシート材および第2のシート材に形成されるスリットの方向が異なる為、互いのスリットが広がって大きな開口部が形成されることを防止できる。また、各シート材のスリットの方向を調整することで、パネル構造体の異方性を考慮した設計、製造を行うことができる。
本開示の第6の局面に係る複合材料製パネル構造体の製造方法は、第5の局面に係る製造方法において、前記第1のシート材および前記第2のシート材の各々に前記スリットを形成したのちに、前記複数のシート材を積層して前記積層体を形成することを更に備える。
本方法によれば、積層体を形成したのちにスリットを形成する場合と比較して、各層に独自のスリットを形成することが可能となり、プレス成型時の複数のシート材の動きを細かくコントロールすることができる。
本開示の第7の局面に係る複合材料製パネル構造体の製造方法は、第1から第6の局面に係る製造方法において、前記複数のシート材として熱可塑性の前記マトリクス樹脂を含むものを用いることと、プレス成形前に積層体に予熱処理を施すこととを更に備える。
本方法によれば、積層体に予熱処理を施したのちにプレス成形を行うことで、シート材に含まれる熱可塑性樹脂が軟化し、複雑な形状であっても安定してパネル構造体を成形することができる。一方、このような予熱処理を施すと熱変形によってスリットが開きやすくなるが、積層体に一括で大きなスリットを形成するのではなく、各シート材にスリットを形成しているため、スリットが開くことを抑制することができる。
10 積層体
100 パネル構造体
5 トムソン型
50 型本体
51 トムソン刃
6 治具
60 台座
61 支持部
S シート材
SA 成形体領域
SB 成形体外部領域
T スリット
TA スリット領域
W しわ
100 パネル構造体
5 トムソン型
50 型本体
51 トムソン刃
6 治具
60 台座
61 支持部
S シート材
SA 成形体領域
SB 成形体外部領域
T スリット
TA スリット領域
W しわ
Claims (7)
- 強化繊維およびマトリクス樹脂を含有する複合材料製パネル構造体の製造方法であって、
前記強化繊維として連続繊維を含む複数のシート材であって、成形体領域と前記成形体領域の外側に配置される成形体外部領域とを含む寸法を有する複数のシート材を準備することと、
前記複数のシート材のうちの少なくとも一つのシート材の前記成形体外部領域に複数のスリットを形成することと、
前記複数のシート材を積層して積層体を形成することと、
前記積層体をプレス成形して前記積層体から成形体を形成したのち、当該成形体から前記成形体外部領域に対応する部分を取り除いて前記パネル構造体を成形することと、
を備える、複合材料製パネル構造体の製造方法。 - 前記少なくとも一つのシート材において前記複数のスリットが前記成形体領域の周囲を囲むように又は前記成形体領域の一部に対向するように、前記成形体外部領域に前記複数のスリットを形成することを更に備える、請求項1に記載の複合材料製パネル構造体の製造方法。
- 前記少なくとも一つのシート材に前記スリットを形成したのちに、前記複数のシート材を積層して前記積層体を形成することを更に備える、請求項1に記載の複合材料製パネル構造体の製造方法。
- 前記少なくとも一つのシート材に形成される前記スリットの方向を、当該シート材に含まれる前記連続繊維の繊維方向と交差するように設定することを更に備える、請求項1に記載の複合材料製パネル構造体の製造方法。
- 前記複数のシート材のうちの第1のシート材および前記第1のシート材とは異なる第2のシート材の各々に前記スリットを形成することと、
前記第1のシート材に形成する前記スリットの方向と前記第2のシート材に形成する前記スリットの方向とが異なるように前記スリットを形成することと、
を更に備える、請求項1に記載の複合材料製パネル構造体の製造方法。 - 前記第1のシート材および前記第2のシート材の各々に前記スリットを形成したのちに、前記複数のシート材を積層して前記積層体を形成することを更に備える、請求項5に記載の複合材料製パネル構造体の製造方法。
- 前記複数のシート材として熱可塑性の前記マトリクス樹脂を含むものを用いることと、
プレス成形前に積層体に予熱処理を施すことと、
を更に備える、請求項1に記載の複合材料製パネル構造体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022180386A JP2024070037A (ja) | 2022-11-10 | 2022-11-10 | 複合材料製パネル構造体の製造方法 |
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JP2022180386A JP2024070037A (ja) | 2022-11-10 | 2022-11-10 | 複合材料製パネル構造体の製造方法 |
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---|---|
JP2024070037A true JP2024070037A (ja) | 2024-05-22 |
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ID=91121902
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2022180386A Pending JP2024070037A (ja) | 2022-11-10 | 2022-11-10 | 複合材料製パネル構造体の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2024070037A (ja) |
-
2022
- 2022-11-10 JP JP2022180386A patent/JP2024070037A/ja active Pending
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