JP2024066428A - 粘着性ハイドロゲル及び粘着性ハイドロゲル製造用組成物 - Google Patents

粘着性ハイドロゲル及び粘着性ハイドロゲル製造用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明が解決すべき課題は、従来の粘着性ハイドロゲルよりも粘着力の高い粘着性ハイドロゲルを提供することにある。【解決手段】高分子マトリックス、水、多価アルコールを含む粘着性ハイドロゲルであって、前記高分子マトリックスが、共有結合及び/又は金属イオンで架橋されたポリマーからなり、前記多価アルコールが分岐構造を有するポリグリセリンを含む、粘着性ハイドロゲル。【選択図】なし

Description

本発明は、粘着性ハイドロゲル及び粘着性ハイドロゲル製造用組成物に関する。
ハイドロゲルは、皮膚に対して低刺激性であり、また蒸れを低減できるため、人肌に優しい素材である。さらに、粘着性・導電性が付与できるため、生体に貼付する心電図用電極や創傷被覆材等の幅広い分野で利用されている。ハイドロゲルを粘着剤として使用する場合、使用時に剥離することがないような粘着力が求められている。皮膚に対して用いる場合には、様々な屈曲部に柔軟に対応し、複雑な動作に追従できるだけの粘着力が要求される。
例えば、特許文献1には、親水性高分子とアクリルアミド系高分子のマトリックス中に多価アルコールと水を含有してなる粘着性ゲル(粘着性を有するハイドロゲル)が開示されている。この粘着性ゲルは、含水量が低下した場合にも、粘着性を維持して生体表面に好適に貼付でき、かつ低皮膚刺激性、柔軟性を有するという特性をもつ。
また、特許文献2には、重合性単量体としてのアクリルアミドと、架橋性単量体としてのN,N’-メチレンビスアクリルアミドとを共重合させた高分子マトリックス内に、40,000~150,000の重量平均分子量の非架橋の水溶性高分子と水とが保持された粘着性ゲルが開示されている。この粘着性ゲルは、低皮膚刺激性を有し、また、電解質塩の含有により導電性を有し得る。また、この粘着性ゲルは、被着体からの剥離時に粘着力の低下がなく、繰り返し粘着力に優れる。
特許文献3には、非イオン性重合性単量体と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックス、水、多価アルコール及びアクリル酸とメタクリル酸との共重合体を含むハイドロゲルであって、該アクリル酸とメタクリル酸との共重合体が、前記非イオン性重合性単量体100重量部に対して、0.15~15重量部含まれることを特徴とする粘着性ハイドロゲルが開示されている。
しかしながら、このようなゲルをもってしても、粘着力が不十分な場合があった。
特開2012-107120号公報 特開2003-096431号公報 特開2007-112972号公報
本発明が解決すべき課題は、従来の粘着性ハイドロゲルよりも粘着力の高い粘着性ハイドロゲルを提供することにある。
本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
[項1]
高分子マトリックス、水、多価アルコールを含む粘着性ハイドロゲルであって、
前記高分子マトリックスが、共有結合及び/又は金属イオンで架橋されたポリマーからなり、
前記多価アルコールが分岐構造を有するポリグリセリンを含む、粘着性ハイドロゲル。
[項2]
前記高分子マトリックスが、単官能単量体と架橋性単量体との共重合体からなり 、
前記単官能単量体が(メタ)アクリルアミド系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸又はその塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
[項3]
前記分岐構造を有するポリグリセリンの重合度が10以上である、項1又は2に記載の粘着性ハイドロゲル。
[項4]
電解質をさらに含み、
前記電解質の含有量が、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して0.05~10質量部である、項1~3のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲル。
[項5]
前記分岐構造を有するポリグリセリンの含有量が、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して20~80質量部である、項1~4のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲル。
[項6]
ポリフェノール化合物をさらに含む、項1~5のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲル。
[項7]
0.1~10mmの厚みを有するシートである項1~6のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲル。
[項8]
項1~7のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルを含むゲルシート。
[項9]
項1~7のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルを含む生体用電極。
[項10]
支持体と、支持体の少なくとも片面に設けられた項1~7のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルとを備えた医療用外用材。
[項11]
単官能単量体、架橋性単量体、水、多価アルコールを含み、前記多価アルコールが分岐構造を有するポリグリセリンを含む、粘着性ハイドロゲル製造用組成物。
[項12]単官能単量体、架橋性単量体、水、多価アルコール、ポリフェノール化合物を含み、前記多価アルコールが分岐構造を有するポリグリセリンを含む、粘着性ハイドロゲル製造用組成物。
本発明によれば、従来の粘着性ハイドロゲルと比較して高い粘着力を有する粘着性ハイドロゲルを得ることができる。
ゲルシートの略断面図。 皮膚に貼付された医療用外用剤の略断面図。 分岐構造を有するポリグリセリンを含む粘着性ハイドロゲルと直鎖状ポリグリセリンを含む粘着性ハイドロゲルの粘着力の比較。 分岐構造を有するポリグリセリンを含む粘着性ハイドロゲルの粘着力。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を指す。「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを指す。「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを指す。
本明細書において、「シート」は、200μm以上の厚さの層状体を指し、「フィルム」は200μm未満の厚さの層状体を指す。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。更に、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
<粘着性ハイドロゲル>
本発明の一態様によれば、高分子マトリックス、水、多価アルコールを含む粘着性ハイドロゲルであって、前記多価アルコールが分岐構造を有するポリグリセリンを含む、粘着性ハイドロゲルが提供される。
(高分子マトリックス)
まず、高分子マトリックスについて説明する。高分子マトリックスは、共有結合及び/又は金属イオンで架橋されたポリマーからなり、少なくとも水を含んでゲルを形成することができるものであれば特に限定されない。皮膚への貼布が許容される合成高分子が適用可能である。共有結合で架橋されたポリマーとは、高分子鎖同士が共有結合で化学的に架橋されたポリマーである。また、金属イオンで架橋されたポリマーとは、高分子鎖同士がイオン結合で物理的に架橋されたポリマーである。共有結合で架橋されたポリマーからなる高分子マトリックスの好適な例として、単官能単量体と架橋性単量体との共重合体を挙げることができる。
上記単官能単量体としては、1つのエチレン性不飽和基を有する単官能単量体であり、特に限定されないが、(メタ)アクリルアミド系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸又はその塩等が好ましく用いられる。これらの単官能単量体は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
(メタ)アクリルアミド系単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有のカチオン性アクリルアミド系化合物;4-アクリロイルモルフォリン、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸基含有アニオン性単官能単量体又はその塩;及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等のアルコキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の(ヒドロキシアルキル基にエーテル結合を介してアリール基が結合していてもよい)(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;モノ(メタ)アクリル酸グリセリン;モノ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体等のモノ(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール;(メタ)アクリル酸ベンジル等の芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
(メタ)アクリル酸又はその塩としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム等が挙げられる。これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明の粘着性ハイドロゲルにおける単官能単量体に由来する構造単位の含有量は、特に限定されないが、粘着性ハイドロゲルの保形性及び柔軟性の観点から、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して、10~50質量部の範囲内であることが好ましく、15~45質量部の範囲内であることがより好ましい。含有量が10質量部以上であると、粘着性ハイドロゲルが保形性を十分に有するため好ましい。また、含有量が50質量部以下であると、粘着性ハイドロゲルの柔軟性が損なわれる恐れが生じ難い。
上記架橋性単量体としては、特に限定されないが、分子内に重合性を有する炭素-炭素二重結合を2つ以上有する化合物が好ましく、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルジフェニル、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明の粘着性ハイドロゲルにおける架橋性単量体に由来する構造単位の含有量は、特に限定されず、使用する単官能単量体及び架橋性単量体の種類によって異なるが、粘着性ハイドロゲルの形状安定性及び柔軟性の観点から、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して、0.01~0.5質量部の範囲内であることが好ましく、0.01~0.1質量部の範囲内であることがより好ましい。含有量が0.01質量部以上であると、架橋密度が低いことによる形状安定性の低下の懸念が生じ難い。また、含有量が0.5質量部以下であると、硬くて脆いゲルとなり難い。
(水)
本発明の粘着性ハイドロゲルにおける水の含有量は、特に限定されないが、好適な粘着特性や電気特性を確保するためには、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して、10~60質量部の範囲内であることが好ましく、15~50質量部の範囲内であることがより好ましい。水の含有量が10質量部以上であると、粘着性ハイドロゲルの平衡水分量に対する含水量が低くなりすぎず、粘着性ハイドロゲルの吸湿性に由来する変質の恐れが生じ難い。また、水の含有量が60質量部以下であると、粘着性ハイドロゲルの平衡水分量に対する含水量が多くなりすぎず、粘着性ハイドロゲルの乾燥に由来する変質(例えば、収縮、物性変化等)の恐れが生じ難い。
(多価アルコール)
多価アルコールは、粘着性ハイドロゲルに保湿力を付与し、水分の蒸散を抑え、ゲルの柔軟性を保つものである。本発明の粘着性ハイドロゲルに含まれる多価アルコールは、分岐構造を有するポリグリセリンを含む。
本明細書において、「分岐構造を有するポリグリセリン」とは、グリシドールの重付加反応により製造することができるポリグリセリンを意味する。分岐構造を有するポリグリセリンの例として、例えば下記式(I)で示される分岐構造を有するポリグリセリンが挙げられる。直鎖状ポリグリセリンや直鎖状ポリグリセリンの変性物(例えば、ポリエーテル付加(ポリ)グリセリン等)は、「分岐構造を有するポリグリセリン」には含まない。
分岐構造を有するポリグリセリンは、ポリグリセリン全体のヒドロキシル基の50%以上であることが好ましい。なお、特定の化合物に含まれる全水酸基の占める1級水酸基の割合は、炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定する方法を用いて測定される。
例えば、ポリグリセリンの炭素原子に対するNMRスペクトルは、以下のようにして測定することができる。
ポリグリセリン500mgを重水2.8mLに溶解し、ろ過後、ゲートつきデカップリングにより13C-NMR(125MHz)スペクトルを得る。なお、ピーク強度は炭素数に比例する第1級水酸基と第2級水酸基の存在を示す13C化学シフトはそれぞれメチレン炭素(CHOH)が63ppm付近、メチン炭素(CHOH)が71ppm付近であり、これらのシグナル強度を分析することにより、1級水酸基と2級水酸基の存在比を算出する。但し、2級水酸基を示すメチン炭素(CHOH)は、1級水酸基を示すメチレン炭素に結合するメチン炭素にさらに隣接するメチレン炭素ピークと重なるため、それ自体の積分値を得られない。そのため、メチン炭素(CHOH)と隣り合うメチレン炭素(CH)の74ppm付近のシグナル強度により積分値を算出する。
分岐構造を有するポリグリセリンの重合度は、3以上が好ましく、6以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、15以上が特に好ましい。重合度が3以上であると、粘着力向上効果が良好となるため好ましい。また、重合度の上限は特に限定されないが、30以下が好ましく、25以下がより好ましい。
分岐構造を有するポリグリセリンの平均分子量は200~5,000g/molが好ましく、230~3,000g/molがより好ましい。
分岐構造を有するポリグリセリンの粘度(40℃)は5000~50,000mPa・sが好ましく、8,000~30,000mPa・sがより好ましい。
分岐構造を有するポリグリセリンの水酸基価は500~2,000KOHmg/gが好ましく、800~1,200KOHmg/gがより好ましい。なお、水酸基価は、第9版食品添加物公定書「油脂類試験法」又は基準油脂分析試験法に準じて算出することができる。
分岐構造を有するポリグリセリンは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
分岐構造を有するポリグリセリンとしては、株式会社ダイセルから販売されている以下のものを使用することができる。なお、粘度は、E型粘度計を用いて、40℃で、粘度に応じ1~5rpmの回転数により測定されたものである。
商品名PGL03P:平均分子量=240g/mol、粘度(40℃)=8,300mPa・s、水酸基価=1,100~1,200KOHmg/g
商品名PGL06:平均分子量=460g/mol、粘度(40℃)=23,000mPa・s、水酸基価=900~1,000KOHmg/g
商品名PGL10:平均分子量=660g/mol、粘度(40℃)=27,900mPa・s、水酸基価=800~900KOHmg/g
商品名PGL10PSW:平均分子量=780g/mol、粘度(40℃)=16,800mPa・s、水酸基価=805~855KOHmg/g
商品名PGL20PW:平均分子量=1,500g/mol、粘度(40℃)=9,260mPa・s、水酸基価=695~755KOHmg/g
商品名PGLX:平均分子量=3,000g/mol、粘度(40℃)=8,500mPa・s、水酸基価=675~715KOHmg/g
商品名PGLXPW:平均分子量=3,000g/mol、粘度(40℃)=19,800mPa・s、水酸基価=650~750KOHmg/g
本発明の粘着性ハイドロゲルにおける分岐構造を有するポリグリセリンの含有量は、特に限定されないが、粘着力の観点から、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して、20~80質量部の範囲内であることが好ましく、25~75質量部の範囲内であることがより好ましい。分岐構造を有するポリグリセリンの含有量が20質量部以上であると、粘着性ハイドロゲルに高い粘着力が付与できるため好ましい。また、含有量が80質量部以下であると、粘着性ハイドロゲル組成物の粘性が比較的低く取扱いしやすいため好ましい。
また、多価アルコールとして、分岐構造を有するポリグリセリンに加えて、直鎖状のポリグリセリンを含むことができる。本明細書において、「直鎖状のポリグリセリン」とは、グリセリンの脱水縮合反応や、エピクロロヒドリンの重付加反応によって製造することができるポリグリセリンを意味する。直鎖状のポリグリセリンの例として、例えば下記式(II)で表されるポリグリセリンである。
(nは1以上の整数である。)
直鎖状のポリグリセリンの重合度は、特に限定されないが、1~20が好ましく、1~10がより好ましい。
直鎖状のポリグリセリンの平均分子量は200~5,000g/molが好ましく、230~3,000g/molがより好ましい。
直鎖状のポリグリセリンの粘度(40℃)は5000~50,000mPa・sが好ましく、8,000~30,000mPa・sがより好ましい。
直鎖状のポリグリセリンの水酸基価は500~2000KOHmg/gが好ましく、800~1,200KOHmg/gがより好ましい。
直鎖状のポリグリセリンとしては、阪本薬品工業株式会社から販売されている商品名ポリグリセリン#310、#500、#750等を使用することができる。
直鎖状のポリグリセリンは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明の粘着性ハイドロゲルにおける直鎖状のポリグリセリンの含有量は、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して、20~80質量部の範囲内であることが好ましく、25~75質量部の範囲内であることがより好ましい。直鎖状のポリグリセリンの含有量が25質量部以上であると、粘着性ハイドロゲルに高い粘着力が付与できるであるため好ましい。また、含有量が80質量部以下であると、粘着性ハイドロゲル組成物の粘性が比較的低く取扱いしやすいため好ましい。
また、多価アルコールとして、上記に加えて、さらに他の多価アルコールを含むこともできる。他の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールの他、グリセリン、ぺンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変性体等が使用可能である。これらの多価アルコールは、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明の粘着性ハイドロゲルにおける多価アルコールの合計含有量(分岐構造を有するポリグリセリン、直鎖状ポリグリセリン、及び他の多価アルコールの合計含有量)は、特に限定されるものではないが、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して、30~80質量部の範囲内であることが好ましく、40~75質量部の範囲内であることがより好ましい。多価アルコールの含有量が30質量部であると、ゲルが乾燥しがたく、ゲルの経時安定性、柔軟性が良好となり好ましい。また、含有量が80質量部以下であると、ゲルからの多価アルコールのブリードアウトが抑制されるため好ましい。
(水溶性高分子)
本発明の粘着性ハイドロゲルには、必要に応じて、水溶性高分子が含有されていても良い。水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ビニルピロリドンの単独重合体(ポリビニルピロリドン);ビニルアルコールとビニルピロリドンの共重合体、エーテル変性されたビニルアルコールとビニルピロリドンの共重合体、ビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体等のビニルピロリドン共重合体;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、デキストラン等が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
水溶性高分子の中でも、特に、ポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸ナトリウムは、上記ハイドロゲルに粘着性を付与する効果に優れる。本発明の粘着性ハイドロゲルにポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸ナトリウムを含有させる場合において、ポリアクリル酸及び/又はポリアクリル酸ナトリウムの含有量(両方を含有させる場合はその合計量)は、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲内であることが好ましい。水溶性高分子の含有量が5質量部以内であると、系全体の粘性が上昇しすぎず、ハンドリング性が良好になる。
(電解質)
本発明の粘着性ハイドロゲルには、必要に応じて、電解質が含有されていても良い。粘着性ハイドロゲルに電解質を配合することにより、導電性のゲルが得られる。導電性が付与された粘着性ハイドロゲルは、心電図測定用電極、低周波治療器用電極、各種アース電極等の生体電極用ハイドロゲルとして好適に用いることができる。このような生体電極用ハイドロゲルとして用いる場合、電解質が含まれる粘着性ハイドロゲルの比抵抗は、0.01~100kΩ・cmの範囲内であることが好ましい。
電解質としては特に限定されず、例えば、ハロゲン化ナトリウム(例えば塩化ナトリウム)、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属;ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等のハロゲン化アルカリ土類金属;その他の金属ハロゲン化物;各種金属の、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、燐酸塩;アンモニウム塩、各種錯塩等の無機塩類;酢酸、安息香酸、乳酸等の一価有機カルボン酸の塩;酒石酸等の多価有機カルボン酸の塩;フタル酸、コハク酸、アジピン酸、クエン酸等の多価カルボン酸の一価又は二価以上の塩;スルホン酸、アミノ酸等の有機酸の金属塩;有機アンモニウム塩;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリtert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンとの高分子電解質の塩;等が挙げられる。
また、上記電解質としては、粘着性ハイドロゲルの配合時には不溶性であり、配合液調製中には分散した形態であっても、時間とともに粘着性ハイドロゲル中に溶解する特性を有する物質を使用しても良い。このような電解質として、ケイ酸塩、アルミン酸塩、金属酸化物、水酸化物等を挙げることができる。これら電解質は1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明の粘着性ハイドロゲルに導電性を付与する場合において、粘着性ハイドロゲルにおける電解質の含有量は、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して、0.05~10質量部の範囲内であることが好ましく、0.1~5質量部の範囲内であることがより好ましい。水分を含んだ粘着性ハイドロゲルは、元来誘電体としての特性を有し、電極素子と複合させて電極を作成した場合は、ゲルの厚さや電極素子面積に応じた電気容量を有する。しかし、電極のインピーダンス(Z)は、特に1kHz未満の低周波領域では、電解質濃度に大きく影響される。粘着性ハイドロゲルにおける電解質の含有量が0.001質量部以上であると、インピーダンスを低くすることができ、導電性用途に好適である。また、10質量部以下であると、電解質を粘着性ハイドロゲルへ均一に溶解させることができ、ゲル内部で結晶の析出が生じたり、他の成分の溶解を阻害したりするということが生じ難い。
上記電解質は、粘着性ハイドロゲルに導電性を付与する目的以外で用いられていても良い。例えば、粘着性ハイドロゲルのpHを調整する目的で、酸性塩、塩基性塩、多官能塩や、水酸化ナトリウム等の塩基が添加されていても良い。また、粘着性ハイドロゲルの保湿性能の向上や抗菌性を持たせる目的で、上記電解質が添加されていても良い。
(ポリフェノール化合物)
本発明の粘着性ハイドロゲルには、必要に応じて、ポリフェノール化合物が含有されていても良い。粘着性ハイドロゲルにポリフェノール化合物を配合することにより、粘着性をより向上させることができる。
ポリフェノール化合物は、例えば下記式(A1)~(A6)に示すように、少なくとも1つの芳香環において2以上の水酸基が隣接して結合している化合物であることが好ましい(式(A1)、(A2):ポリフェノール化合物、式(A3):カテコール、式(A4):没食子酸、式(A5):タンニン酸、式(A6):縮合型タンニン)。なお、本明細書においては、ポリフェノール自体もポリフェノール化合物の1つとみなす。
(式中、R~Rは、同一又は異なり、水素原子又は有機基を示す。)
ポリフェノール化合物としては、例えば、カテコール、没食子酸、没食子酸エステル、タンニン酸、ドーパミン、ジヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシフェニルアラニン等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
ポリフェノール化合物は、1つの芳香環において2以上の水酸基が隣接して結合している化合物であることが好ましく、カテコール、カテコール誘導体、没食子酸、没食子酸エステル及びタンニン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることがより好ましく、タンニン酸であることが特に好ましい。
ここで、タンニンは、植物に多く含まれる天然のフェノール化合物であり、タンパク質等の生体高分子を凝集させる性質である収斂作用を有するため、古くから、皮なめしに使用される鞣皮剤、下痢止め剤等として使用されてきた。また、老化や癌等を抑制する抗酸化性、精神安定性、接着(向上)性、物質を吸着させる吸着性等の作用・性質を有し、化学構造や物性が類似する人工物(合成物)であるフェノール樹脂にない優れた種々の作用・性質を有しているため有用である。
タンニンは、複数の水酸基を有する糖等の多価アルコールに没食子酸等の多価フェノール酸がエステル結合した加水分解性タンニンと、複数のフラボノイドが炭素-炭素単結合で結合した縮合型タンニンとに大別できるが、本発明ではいずれを用いてもよい。縮合型タンニンは、プロアントシアニジンと呼ばれることもあり、縮合型タンニンの例として、例えば上記式(A6)で表される物質が挙げられる。材料コスト及び材料入手容易性の観点からは、加水分解型タンニンが好ましく、例えば式(A5)で表されるタンニン酸を主成分とするものを挙げることができる。
タンニン酸としては、特に限定されないが、例えばハマメリタンニン、カキタンニン、チャタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランタンニン、ジビジビタンニン、アルガロビラタンニン、バロニアタンニン、カテキンタンニン等が挙げられる。これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
タンニン酸の市販品としては、例えば「タンニン酸」(富士フイルム和光純薬社製)、「タンニン酸エキスA」、「B タンニン酸」、「N タンニン酸」、「工用タンニン酸」、「精製タンニン酸」、「Hi タンニン酸」、「Fタンニン酸」、「局タンニン酸」( 以上、日本製薬社製) 、「タンニン酸: AL」(以上、富士化学工業社製) 、「G タンニン酸」、「F タンニン酸」、「Hi タンニン酸」(以上、DSP五協フード&ケミカル社製)等が挙げられる。
本発明の粘着性ハイドロゲルにおけるポリフェノール化合物の含有量は、目的に応じて選択すればよく、特に限定されないが、ハイドロゲルの粘着性の観点からは、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して、0.01~10質量部の範囲内であることが好ましく、0.01~5質量部の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であると、ポリフェノール化合物の重合阻害作用の影響を受け難く、強固なマトリックスが構築され、粘着力が良好となる。
(その他添加剤)
粘着性ハイドロゲルは、任意選択で、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤、薬効成分(例えば、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤等)等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの添加剤は、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して、0.01~10質量部の範囲内で用いることができる。
(物性等)
本発明の粘着性ハイドロゲルの厚みは、特に限定されるものではないが、0.1~10mmの厚みを有するシート状であっても良い。厚みは0.3~5mmとすることがより好ましい。このような0.1~10mmの厚みを有するシート状の粘着性ハイドロゲルは、柔軟性に優れると共に、生体皮膚表面への追従性に優れる。
いくつかの実施形態において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における本発明の粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力をA(N)とし、当該粘着性ハイドロゲル中における分岐構造を有するポリグリセリンを、当該ポリグリセリンと同等の重合度を有する直鎖状のポリグリセリンに置き換えた構成のハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力をB(N)とすると、A/Bが1.01以上、1.02以上、1.05以上、1.1以上、1.2以上、又は1.3以上である。このため、本発明の粘着性ハイドロゲルは、従来の直鎖状ポリグリセリンを用い、分岐構造を有するポリグリセリンを含まない構成のハイドロゲルと比較して、皮膚表面からの脱落を防ぐのに十分な粘着力を有する。なお、本明細書において、JIS Z 0237;2009に準じて測定した23℃における粘着性ハイドロゲルのステンレス板に対する引張角度90°における粘着力は、実施例に記載した測定方法に従って測定される。
<粘着性ハイドロゲルの製造方法>
本発明の粘着性ハイドロゲルは、高分子マトリックスが単官能単量体及び架橋性単量体から構成される場合には、単官能単量体、架橋性単量体、水、多価アルコールを含み、多価アルコールが分岐構造を有するポリグリセリンを含む、粘着性ハイドロゲル製造用組成物を用い、当該粘着性ハイドロゲル製造用組成物中の単官能単量体と架橋性単量体とを共重合させる製造方法によって容易に製造することができる。粘着性ハイドロゲル製造用組成物は、必要に応じて、上述の水溶性高分子、電解質、ポリフェノール化合物、及び/又は各種の添加物を含むことができる。特に、粘着性ハイドロゲルの粘着力向上の観点から、ポリフェノール化合物を含むことが好ましい。
また、本発明の粘着性ハイドロゲルは、予め単官能単量体と架橋性単量体とを重合させること等によって形成された高分子マトリックスに、水、及び分岐構造を有するポリグリセリンを含む多価アルコール、並びに、必要に応じて、上述の水溶性高分子、電解質、ポリフェノール化合物、及び/又は各種の添加物を含浸させる製造方法によっても製造可能である。
単官能単量体と架橋性単量体との重合は、重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物に重合開始剤を含有させることが好ましい。重合開始剤としては、特に限定されず、熱重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられる。
上記熱重合開始剤としては、熱により開裂して、ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスアミジノプロパン二塩酸塩等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの熱重合開始剤は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、必要に応じて、硫酸第一鉄やピロ亜硫酸塩等の還元剤と過酸化水素、チオ硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸塩等の過酸化物とからなるレドックス開始剤を熱重合開始剤と併用しても良い。
上記光重合開始剤としては、紫外線又は可視光線で開裂してラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、2,2’-アゾビス-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミドや2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)ジハイドロクロリド等のアゾ系重合開始剤、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルホスフィンオキサイド、メタロセン等が挙げられ、より具体的には、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン(製品名:Omnirad(登録商標)2959、IGM Resins B.V.社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(製品名:Omnirad(登録商標)1173、IGM Resins B.V.社製)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(製品名:Omnirad(登録商標)184、IGM Resins B.V.社製)、2-メチル-1-[(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(製品名:Omnirad(登録商標)907、IGM Resins B.V.社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン(製品名:Omnirad(登録商標)369、IGM Resins B.V.社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
重合開始剤の使用量は、粘着性ハイドロゲル製造用組成物の全量(得られる粘着性ハイドロゲルの全量)100質量部に対して、0.01~1.0質量部であることが好ましく、0.05~0.5質量部であることがより好ましい。0.01質量部以上であると、重合反応が十分に進み、得られる粘着性ハイドロゲル中に残存する単官能単量体及び架橋性単量体の量を低減させることができる。また、1.0質量部以下であると、得られる粘着性ハイドロゲル中に残存する重合開始剤による変色(黄変)や臭気を防止することができる。
単官能単量体と架橋性単量体とを重合させる方法としては、特に限定されず、例えば、単官能単量体及び架橋性単量体等を含む混合物(上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物等)に対して加熱、光照射、又は放射線照射を行う方法等が挙げられる。具体的には、上記混合物に、重合開始剤として熱重合開始剤を含有させ、加熱により前記混合物中の単官能単量体と架橋性単量体とを重合させる方法;上記混合物に、重合開始剤として光重合開始剤を含有させ、光照射(紫外線又は可視光線照射)により上記混合物中の単官能単量体と架橋性単量体とを重合させる方法;上記混合物に、重合開始剤として熱重合開始剤と光重合開始剤とを含有させ、光照射と加熱を同時に行うことにより、上記混合物中の単官能単量体と架橋性単量体とを重合させる方法;上記混合物に、電子線やガンマ線等の放射線を照射することにより、上記混合物中の単官能単量体と架橋性単量体とを重合させる方法等を挙げることができる。なお、熱重合開始剤として、レドックス開始剤を併用する場合、加熱をしなくても反応を行うことが可能であるが、残存モノマーの低減又は反応時間の短縮のため、レドックス開始剤を併用した場合であっても、加熱を行うことが好ましい。また、上述のとおり、上記混合物に対して放射線照射を行い、上記混合物中の単官能単量体と架橋性単量体とを重合させることも可能ではあるが、放射線照射のための特殊な設備を要するため、上記混合物中の単官能単量体と架橋性単量体とを重合させる方法としては、上記混合物に対して、加熱又は光照射を行う方法が好ましく、安定した物性のゲルを得ることができるという観点から、上記混合物に対して、光照射を行う方法がより好ましい。
上記混合物に光重合開始剤を含有させて、紫外線照射により重合を行う場合には、紫外線の積算照射量は、1000mJ/cm以上であることがより好ましい。
なお、本発明の粘着性ハイドロゲルを製造する場合、粘着性ハイドロゲルの製造に使用する成分(例えば、単官能単量体、架橋性単量体、多価アルコール、水、水溶性高分子、電解質、ポリフェノール化合物、その他添加剤等)の総質量(あるいは、粘着性ハイドロゲル製造用組成物の総質量)に対する、単官能単量体及び架橋性単量体以外の成分(例えば、多価アルコール、水、水溶性高分子、電解質、ポリフェノール化合物、その他添加剤等)の含有量は、本発明の粘着性ハイドロゲルにおける単官能単量体及び架橋性単量体に由来する構造単位以外の成分の含有量に等しい。また、粘着性ハイドロゲルの製造に使用する成分の総質量(あるいは、粘着性ハイドロゲル製造用組成物の総質量)に対する、単官能単量体及び架橋性単量体の含有量は、本発明の粘着性ハイドロゲルにおける単官能単量体及び架橋性単量体に由来する構造単位の含有量に等しい。例えば、上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物中における単官能単量体の含有量は、本発明の粘着性ハイドロゲルにおける単官能単量体に由来する構造単位の含有量に等しい。また、上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物中における架橋性単量体の含有量は、本発明のハイドロゲルにおける架橋性単量体に由来する構造単位の含有量に等しい。さらに、上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物中における単官能単量体及び架橋性単量体の含有量の合計は、本発明の粘着性ハイドロゲルにおける高分子マトリックスの含有量に等しい。
<粘着性ハイドロゲルシート>
本発明の粘着性ハイドロゲルは、例えば液状の粘着性ハイドロゲル製造用組成物を重合架橋してゲル化させたものであるため、用途に合わせて適宜成形することが可能である。
図1に、本発明に係る粘着性ハイドロゲルを含むゲルシートの一実施形態の断面を示す。本実施形態のゲルシート1は、シート状の粘着性ハイドロゲル2の両面に、粘着性ハイドロゲル2を保護するためのベースフィルム3及びトップフィルム4が積層されている。粘着性ハイドロゲル2の厚みは、ゲルシート1の用途に応じて適宜設定することができるが、例えば、ゲルシート1を生体に貼着して使用する場合には、粘着性ハイドロゲル2の厚みを0.01mm~2.0mmの範囲内とすることが好ましい。
ベースフィルム3としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)、ポリスチレン、ポリウレタン等の樹脂からなる樹脂フィルム、紙、樹脂フィルムをラミネートした紙等を使用することができる。これらベースフィルム3の粘着性ハイドロゲル2と接する面は、シリコーンコーティング等の離型処理がなされていることが好ましい。すなわち、上記ベースフィルム3を離型紙として使用する場合は、樹脂(例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン等)からなる樹脂フィルム、紙、前記樹脂フィルムをラミネートした紙等のフィルムの表面に離型処理を施したものをベースフィルム3として好適に用いることができる。二軸延伸したPETフィルム、二軸延伸したポリプロピレン(OPP)フィルム等が、離型処理が施される上記ベースフィルムとして特に好ましい。離型処理の方法としては、シリコーンコーティングが挙げられ、特に、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。
トップフィルム4としては、基本的にベースフィルム3と同じ材質のものを使用することも可能であるが、光重合を妨げないために、光を遮断しない材質のフィルムを選択することが好ましい。また、バッキング材(裏打材)に用いるフィルムは、トップフィルム4として使用しない方が好ましい。特に、バッキング材に用いるフィルムが紫外線等の照射により劣化する可能性がある場合には、バッキング材に用いるフィルムをトップフィルム4として使用すると、バッキング材に用いるフィルムが直接紫外線を照射される側に位置することになるため、好ましくない。
また、本実施形態においては、粘着性ハイドロゲル2の引裂強度と取扱い性を向上させることを目的として、粘着性ハイドロゲル2の面方向に沿って、織布又は不織布からなる中間基材5が埋め込まれている。不織布及び織布の材質は、セルロース、絹、麻等の天然繊維や、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、又はそれらの混紡が使用可能であり、必要に応じて、バインダーを用いても良く、さらに、必要に応じて着色しても良い。
上記不織布の製造方法は特に限定されないが、乾式法や湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法が挙げられる。目付や材質に応じた製法を採用し、目付ムラがないことが中間基材40の位置制御のためにより好ましい。織布についても、平織やトリコット、ラッセル等、特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
また、上記織布又は不織布の目付は、中間基材5としての所定の物性を得ることができる目付であれば特に限定されないが、例えば、10~40g/mの範囲内であることが好ましく、10~28g/mであることがより好ましい。目付が10g/m以上であると、粘着性ハイドロゲル2の補強等を十分に行うことができ、また目付ムラが抑えられるため、粘着性ハイドロゲル2の製造時における液の浸透が均一になり、中間基材5の位置変動が抑制されるため好ましい。目付が40g/m以下であると、中間基材5が硬くなりすぎず、粘着性ハイドロゲル2の皮膚への追従性が良好となるため好ましい。
中間基材5の厚みは、好ましくは0.05~2.0mmの範囲内である。また、0.05~0.5mmであることがより好ましく、0.08~0.3mm であることが特に好ましい。0.05mm以上であると、粘着性ハイドロゲル2の補強等を十分に行うことができ、また目付ムラが抑えられるため、粘着性ハイドロゲル2の製造時における液の浸透が均一になり、中間基材5の位置変動が抑制されるため好ましい。2.0mm以下であると、液の浸透性が良好となるため好ましい。
ゲルシート1の製造方法としては、粘着性ハイドロゲル2の組成、中間基材5の材質、厚み等によって条件が異なり、特に限定されるものではない。例えば、ベースフィルム3の上側に、中間基材5に対し一定のテンションをかけた状態で中間基材5を保持し、その中間基材5の上側及び下側に、各成分を混合したゲル組成物を流し込み、トップフィルム4を被せて光照射及び/又は熱により粘着性ハイドロゲル2を架橋・硬化させてゲルシート1を得る方法、表面が平滑な粘着性ハイドロゲルを2つ作製した後、一定のテンションをかけた状態で保持している中間基材5をこれらの粘着性ハイドロゲルで挟持し、さらに両側にベースフィルム3及びトップフィルム4を積層してゲルシート1を得る方法等を適宜採用することができる。
<粘着性ハイドロゲルの用途>
以上のような本発明の粘着性ハイドロゲルは、外部からの水分の侵入による膨潤が抑制され、高湿環境下においても初期の高い粘着力を維持することができる。そのため、汗等に対する耐性を有し、生体用電極における生体表面に貼着するゲル部材や、各種粘着テープ、創傷被覆材等といった生体に貼着して用いる医療用外用材の粘着性ハイドロゲルとして好適に用いることができる。
(生体用電極)
本発明の一態様によれば、上記粘着性ハイドロゲルを含む生体用電極が提供される。
生体用電極は、上記粘着性ハイドロゲルと、導電材料から構成される電極とが積層された電極であってよい。電極は、導電性材料を含んでいればよい。そのような材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、白金、銀、銀-塩化銀の複合体、金、錫、チタン、ニッケル、モリブデン等の金属、カーボンブラックやグラファイト等の導電性炭素材料、これらの混合物等が挙げられる。
本態様の生体用電極は、心電図、脳波、眼振、筋電等に使用する生体電位測定用電極や、経皮的電気刺激療法(TENS)、低周波治療等に使用する電気刺激用電極、電気メス用対極板やイオントフォレシス用電極等の医療用電極として用いることができる。
(医療用外用材)
本発明の一態様によれば、支持体と、支持体の少なくとも片面に設けられた上記粘着性ハイドロゲルとを備えた医療用外用材が提供される。
本態様の医療用外用材は、(i)支持体の片面又は両面に、上記粘着性ハイドロゲル製造用組成物を塗布し、重合及び架橋させるか、(ii)上記粘着性ハイドロゲルを直接支持体の片面又は両面に貼合わせるか、(iii)離型紙上に粘着性ハイドロゲル製造用組成物を塗布し、重合及び架橋させたものを支持体に貼合わせるか、(iv)離型紙上に貼合わせた粘着性ハイドロゲルを、支持体に貼合わせることにより、作成される。粘着性ハイドロゲルはシート状であってよい。
支持体は、粘着性ハイドロゲルを保持し得るものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、例えば絆創膏、粘着包帯、又はパップ剤等に用いられるフィルム状或いはシート状のものが挙げられるのであり、これらは多孔質であると無孔であるとを問わない。
支持体の原料には、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、無可塑軟質ポリ塩化ビニル(例えば内部共重合体又はブレンド系)、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、シリコーンゴム、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン、発泡エチレン-酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂、アルミ及び銅等の金属類等がフィルムもしくはシート状に成形されたものが用いられる。このほか、天然繊維又は合成繊維(例えば、再生セルロース(例えばレーヨン)、セルロースエステル等)からなる紙、不織布、織布、網布等も利用され、目的に応じて、通気性のある基材又は通気性をもたない基材が適宜選択される。また、上記フィルム、金属フィルム又はシート、織布等を適宜組み合わせて重接合(ラミネート)し、ラミネートの支持体とすることも可能である。例えばラミネート体の支持体の例としては、ポリエチレン-レーヨンラミネート加工紙、PETとアルミのラミネート、ポリウレタンとレーヨンのラミネート等が挙げられるが、これらに限定されない。
フィルムもしくはシートである支持体の厚み(ラミネートの場合は合計厚み)は特に限定されないが、例えば5~300μm、好ましくは10μm~100μmとすることができる。
支持体と粘着性ハイドロゲルの接着性を高める目的で支持体と粘着性ハイドロゲルの間に表面処理層を設けても良い。表面処理層の具体的な例としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、火炎処理等の物理的表面処理や、シランカップリング処理、アンカーコート、プライマーコート等の塗工剤による表面処理又はこれらの組合せが用いられる。
支持体の表面に表面処理を施し、生じた表面処理層の上に粘着性ハイドロゲル製造用組成物を直接塗工及び重合することにより、支持体と粘着性ハイドロゲルが強固に接着する。
医療用外用材に支持体を設けることで、医療用外用材をサージカルテープとして使用可能である。
図2に医療用外用材の例を示す。医療用外用材6は、支持体7と、支持体7の片面に接触して設けられた粘着性ハイドロゲル8とを備えている。粘着性ハイドロゲル8の支持体7と接触する面とは反対側が医療用外用材6の使用者の皮膚9に貼付される。上述したように、支持体7と粘着性ハイドロゲル8の間には表面処理層を設けてもよい。
上記態様の粘着性ハイドロゲル及び医療用外用材は、生体に貼付するサージカルテープ、カテーテルや点滴用のチューブ/心電図電極/その他センサー類の固定用テープ、湿布剤、創傷被覆剤、人工肛門等の固定用テープ、電気治療器用導子/磁気治療器の固定用粘着材、経皮吸収剤の担体兼粘着材等の生体に貼付して用いる粘着材、もしくは建材/電子材料等の工業用粘着材として好適に使用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(使用材料)
・DMAA:N,N’-ジメチルアクリルアミド
・AAm:アクリル酸メチル
・GAA:アクリル酸、純分80%
・MBAA:N,N’ -メチレンビスアクリルアミド
・PGL 06:分岐構造を有するポリグリセリン、株式会社ダイセル製、重合度6、純分100%
・PGL 10PSW R:分岐構造を有するポリグリセリン、株式会社ダイセル製、重合度10、純分95%
・PGL 20PW R:分岐構造を有するポリグリセリン、株式会社ダイセル製、重合度20、純分90%
・PGL X:分岐構造を有するポリグリセリン、株式会社ダイセル製、重合度40、純分90%
・濃グリセリン:グリセリン、純分100%
・ユニグリG-6:直鎖状のポリグリセリン、日油株式会社製、重合度6、純分90%
・ポリグリ#750:直鎖状のポリグリセリン、ポリグリセリン#750、阪本薬品工業社製、重合度10、純分90%
・Omnirad2959:光重合開始剤、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン、IGM Resins B.V.社製
・タンニン酸:加水分解性タンニン、富士フイルム和光純薬社製
・カテコール:ピロカテコール、富士フイルム和光純薬社製
・没食子酸エチル:富士フイルム和光純薬社製
物性等の測定は、以下の方法により実施した。
(90°粘着力測定)
粘着シートを幅20mm×長さ100mmの短冊状に切り出した後、片面の保護フィルムを剥がしピーチコート紙を貼り付けした。その後、もう一方の面の保護フィルムを剥がし、厚さ2mm、長さ125mm、幅25mmの板のステンレス板に貼り付けし、2kgのローラーで1往復させた後、テクスチャーアナライザー(英弘精機株式会社製、装置名:テクス チャーアナライザーTA.XT Plus)にセットした。この後、JIS Z 0237:2009に準じて、300mm/分の速度でサンプルの長さ方向を0°とした場合に90°方向に剥離させた際の剥離力を90°粘着力として測定した。
(イオン電導性(比抵抗))
実施例3,5,11,14の粘着性ハイドロゲルを20mm×20mmに切り出した後、ステンレス板(SUS)で挟み込み、LCRメーター(GW Instek社製;LCR-916) を用いて、1kHzにおけるインピーダンスを測定した。得られたインピーダンス(I)と、試験片の面積(S)及び厚み(d)から以下の式により、比抵抗を算出した。
比抵抗(Ω・cm)=I(Ω)÷d(cm)×S(cm
(実施例1)
非イオン性単官能単量体としてN,N’-ジメチルアクリルアミドを100質量部、架橋性単量体としてN,N’-メチレンビスアクリルアミドを0.2質量部、多価アルコールとして分岐構造を有するポリグリセリン(株式会社ダイセル製、製品名「PGL 06」、グリセリンの6量体)325質量部、溶媒として水を75質量部混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル製造用組成物を得た。
次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン(IGM Resins B.V.社製商品名Omnirad2959)を0.325質量部加え更に攪拌溶解した。
次に、ガラス上に置いたシリコーン処理を施した厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上のシリコーン製型枠(130mm×130mm、厚さ1.0mm)に組成物を流し込み、更に型枠上にシリコン処理を施した38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを気泡が入らないように置き、石英ガラスを乗せて厚みを制御したものを製作した。これをピーク強度95mW/cmの紫外線ランプで紫外線を60秒照射して取りだし、型枠より切り出してサンプルとした。評価結果を表1に示す。
(実施例2~10、比較例1~7)
組成を表1に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
(実施例11)
非イオン性単官能単量体としてアクリルアミドを100質量部、架橋性単量体としてN,N’-メチレンビスアクリルアミドを0.2質量部、多価アルコールとして分岐構造を有するポリグリセリン(株式会社ダイセル製、製品名「PGL 06」、グリセリンの6量体)325質量部、溶媒として水を75質量部、電解質としてNaClを20質量部、ポリフェノール化合物としてタンニン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、製品名「タンニン酸」、品番201-06332)を5質量部混合し、溶解攪拌して粘着性ハイドロゲル製造用組成物を得た。
次に、その配合液に対して、光重合開始剤として1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン(IGM Resins B.V.社製商品名Omnirad2959)を0.325質量部加え更に攪拌溶解した。
次に、ガラス上に置いたシリコン処理を施した厚さ100μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上のシリコーン製型枠(130mm×130mm、厚さ1.0mm)に組成物を流し込み、更に型枠上にシリコン処理を施した38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを気泡が入らないように置き、石英ガラスを乗せて厚みを制御したものを製作した。これをピーク強度95mW/cmの紫外線ランプで紫外線を60秒照射して取りだし、型枠より切り出してサンプルとした。評価結果を表2に示す。
(実施例12~23)
組成を表2に示す条件に変更した以外は、実施例11と同様に行った。評価結果を表2に示す。
実施例1と比較例1の粘着性ハイドロゲル、実施例2と比較例2の粘着性ハイドロゲルをそれぞれ比較すると、多価アルコールとして分岐構造を有するポリグリセリンを用いた粘着性ハイドロゲルの場合、同じ重合度の直鎖状のポリグリセリンを用いた粘着性ハイドロゲルと比較して、粘着力が向上した(図3)。また、実施例1~4の結果から、分岐構造を有するポリグリセリンの重合度は粘着力に影響を及ぼすことが明らかとなった(図4)。また、実施例3と実施例5の粘着性ハイドロゲルを比較すると、粘着性ハイドロゲルに電解質を加えた場合、高い粘着力を保ちつつ、インピーダンスを低くできた。
また、実施例1~8の粘着性ハイドロゲルは高分子マトリックスを構成する単官能単量体がアクリルアミド誘導体からなるものであり、実施例9~10の粘着性ハイドロゲルは高分子マトリックスを構成する単官能単量体がアクリル酸誘導体である。実施例9,10の粘着性ハイドロゲルと比較例6,7の粘着性ハイドロゲルを比較すると、高分子マトリックスがアクリル酸誘導体の場合にも、分岐構造を有するポリグリセリンを用いた粘着性ハイドロゲルでは粘着力が向上した。
さらに、実施例6と比較例3の粘着性ハイドロゲル、実施例8と比較例5の粘着性ハイドロゲル、実施例10と比較例7の粘着性ハイドロゲルをそれぞれ比較すると、多価アルコールとして分岐構造を有するポリグリセリンと直鎖状のポリグリセリンを混合して用いた場合にも、直鎖状のポリグリセリンのみを用いた粘着性ハイドロゲルと比較して、粘着力が向上した。
さらにまた、実施例7と実施例11の粘着性ハイドロゲルをそれぞれ比較すると、ポリフェノール化合物を含む粘着性ハイドロゲルの場合、粘着力が大幅に向上した。また、実施例11,14の結果から、電解質を入れても、高粘着力を保ちつつ、インピーダンスを低くできることが明らかとなった。実施例12~17の結果から、ポリフェノール化合物の添加量の増加に伴い粘着性も向上するが、一定の量を超えると効果が失われ、粘着性が低下する傾向にあることが明らかとなった。
1…ゲルシート
2…粘着性ハイドロゲル
3…ベースフィルム
4…トップフィルム
5…中間基材
6…医療用外用材
7…支持体
8…粘着用ハイドロゲル
9…皮膚

Claims (11)

  1. 高分子マトリックス、水、多価アルコールを含む粘着性ハイドロゲルであって、
    前記高分子マトリックスが、共有結合及び/又は金属イオンで架橋されたポリマーからなり、
    前記多価アルコールが分岐構造を有するポリグリセリンを含む、粘着性ハイドロゲル。
  2. 前記高分子マトリックスが、単官能単量体と架橋性単量体との共重合体からなり、
    前記単官能単量体が(メタ)アクリルアミド系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸又はその塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
  3. 前記分岐構造を有するポリグリセリンの重合度が10以上である、請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
  4. 電解質をさらに含み、
    前記電解質の含有量が、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して0.05~10質量部である、請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
  5. 前記分岐構造を有するポリグリセリンの含有量が、高分子マトリックス、水、及び多価アルコールの合計100質量部に対して20~80質量部である、請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
  6. ポリフェノール化合物をさらに含む、請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
  7. 0.1~10mmの厚みを有するシートである請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルを含むゲルシート。
  9. 請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルを含む生体用電極。
  10. 支持体と、支持体の少なくとも片面に設けられた請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着性ハイドロゲルとを備えた医療用外用材。
  11. 単官能単量体、架橋性単量体、水、多価アルコールを含み、前記多価アルコールが分岐構造を有するポリグリセリンを含む、粘着性ハイドロゲル製造用組成物。
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