JP2024059655A - アンモニア水の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製品アンモニア及びアンモニア水を少ないエネルギーで効率的に生成できるアンモニアの製造方法及びアンモニア水の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】原料に水素と窒素を用いて、アンモニアを製造する方法であって、アンモニア合成触媒とアンモニア分離膜とを用いた膜型反応器により、前記原料からアンモニアを合成する反応分離工程と、前記アンモニア分離膜を透過した透過ガス中に含まれるアンモニアを冷却し、凝縮した液化アンモニアを回収する回収工程と、未反応の原料ガスを含むガスをリサイクルするリサイクル工程と、を備える、アンモニアの製造方法。【選択図】図2

Description

本発明は、アンモニア合成触媒と、水素/窒素/アンモニアの混合ガスからアンモニアガスを選択的に分離するアンモニア分離膜と、を反応器内に設置し、触媒により生成したアンモニアガスをアンモニア分離膜にて分離することでアンモニアの逆反応を抑制し、平衡反応よりも高い転化率でアンモニアを生成することが可能な膜型反応器、を含むアンモニアの製造方法、及びアンモニア水の製造方法、に関する。
工業的に重要なプロセスの一つとして知られているハーバー・ボッシュ法によるアンモニア製造は、アンモニア生成反応が平衡反応であり、熱力学的には高圧、低温条件下での反応が好ましいとされる。しかし実際は触媒の反応速度を確保する必要があり、一般に400~600℃の高温、かつ10~20MPaの高圧条件を必要とされている。
従来、ハーバー・ボッシュ法は、鉄を主成分とする触媒が使用されてきたが、上述のような過酷な反応条件を緩和するために、高活性な触媒を開発する研究が報告されており、近年ではRu系の触媒開発が盛んにおこなわれている(非特許文献1)。
従来のアンモニア合成プロセスを図1に示す。
アンモニアの原料ガスである水素と窒素の混合ガスを、触媒反応工程のアンモニア合成反応器において反応させて、得られた生成ガスに含まれるアンモニアガスをアンモニア回収工程において液化し、液化アンモニアとして回収している。生成ガス中には、製品となるアンモニア以外にも、未反応の原料である水素と窒素が含まれ、これらを分離するためには、高圧かつ低温下においてアンモニアを液化して分離する必要がある。そのため、通常は生成ガスを-20℃~-5℃程度に冷却し、アンモニアを凝縮分離している(非特許文献2)。
特に、触媒反応工程でアンモニアを生成した生成ガスは、アンモニア生成反応の平衡制約により未反応の水素や窒素ガスを多く含むことから、アンモニア回収工程では冷却効率が悪く、大量のエネルギーを消費する特徴がある。また本プロセスでは、原料ロスを抑える観点から、生成ガスから水素ガスと窒素ガスとを分離し、原料ガスとしてアンモニア合成反応器にリサイクルする必要があり、冷却によりアンモニアと分離した未反応の水素と窒素を含むリサイクルガスは、再度反応温度まで昇温するため、更にエネルギーを消費しているのが実情である。
従って、アンモニアの製造プロセスは加圧や冷却に伴うエネルギーを大量に消費することから、省エネルギーかつ環境に優しいプロセスの構築が求められていた。
このようなエネルギー多消費型のプロセスを回避するために、生成ガスからアンモニアを冷却凝縮分離により回収する方法を、無機分離膜を用いた分離方法に代替して、効率的に高濃度のアンモニアガスを回収するプロセスが提案されている(特許文献1)。
水素ガス、窒素ガスおよびアンモニアガスの混合ガスから高濃度のアンモニアガスを含有する混合ガスを分離する方法としては、1)分離膜を用いて、該混合ガスから水素ガス及び/又は窒素ガスを選択的に透過させる方法、2)分離膜を用いて、該混合ガスからアンモニアガスを選択的に透過させる方法、が挙げられる。
前者の水素ガス及び/又は窒素ガスを選択的に透過させる方法を用いた場合、アンモニアを分離回収するには多段階のシステムでアンモニアを生成している。一方、後者の分離膜を用いる方法では、例えばゼオライト膜を用いることで水素ガス、窒素ガス及びアンモニアガスの混合ガスからアンモニアガスを選択的に透過させる方法を開発している(特許
文献2、3)。ゼオライトの持つ酸性点とアンモニアの塩基性による吸着を用いることで、アンモニアの選択的な分離を可能としており、更に高温条件下でも安定してアンモニアを選択的に分離できることを見出している。
特許文献4では、電気分解法と、膜分離又はPSAのアンモニア濃縮技術と、を組み合わせたプロセスにより設備やエネルギーに負荷を下げたアンモニア製造方法について報告されている。分離膜又はPSA単独でアンモニア側への窒素等のイナート成分のリークが20%程度あるような場合でも動力削減効果が得られることを特徴としている。
特許文献5では、アンモニアを選択的に吸着する吸着剤を反応器に用いることで、アンモニア合成触媒により生成したアンモニアを吸着剤に吸着させることで平衡反応を生成側に反応させて、より効率的にアンモニアを生成する反応システムについて提案している。
特開2008-247654号公報 特開2014-58433号公報 国際公開第2018/230737号 国際公開第2017/149718 米国特許出願公開第2006/0039847号明細書
Nat. Chem. 2012, 4(11): 934-940. 日本化学会編、第7版 化学便覧 応用化学編I、丸善株式会社(2014)、p641
しかしながら、ハーバー・ボッシュ法を始めとした従来のアンモニア合成プロセスでは、平衡制約により生成ガス中に製品となるアンモニアの他に原料となる水素と窒素が大量に含まれることから、これらを分離するためにアンモニアを液化あるいは分離膜により分離し、分離後も水素ガスや窒素ガスをリサイクルするためのエネルギーが必要である。
特許文献1のようにアンモニア分離膜を用いたプロセスでは、1段目の分離膜により透過したアンモニアガスを含有する高濃度の水素混合ガス、及び透過しなかった窒素ガスとアンモニアガスの混合ガスからアンモニアガスを分離する工程が必須となる。すなわち、この方法は、水素ガス、窒素ガス及びアンモニアガスの混合ガスからアンモニアガスを、少なくとも2段で分離する煩雑なプロセスとなり、更に1段目で透過された混合ガス及び非透過の混合ガスのいずれからもアンモニアを回収する工程が必要となることから、煩雑なプロセスとなる。これらの課題を本質的に解決するためには、相対的に高い濃度の水素ガスならびに窒素ガスを含む混合ガス及び/又は相対的に低い濃度のアンモニアガスを含有する混合ガスから水素ガス及び窒素ガスを分離する必要が生じることになるが、このようなプロセスでは生産的なアンモニア製造プロセスは成り得ず、現実的ではない。
特許文献3ではアンモニアを選択的に分離可能なゼオライト膜を用いることで、未反応の水素ガスと窒素ガスを含む生成混合ガスから高濃度のアンモニアを含むガスを分離する事を可能としている。しかしながら、ゼオライト膜を透過した透過ガスからアンモニアを凝縮分離するには再度加圧する必要があり、またハーバー・ボッシュ法と同様に大量の未反応の水素ガスと窒素ガスをリサイクルする事から消費エネルギーの削減は限定的であった。
特許文献4では、水と窒素から電気分解法を用いてアンモニアを合成する新たなプロセス構築により動力は削減できるとしているが、実用化に向けては耐食性構造材料の開発といった長期安定性に課題を有している。
特許文献5では、吸着剤を用いることで平衡転化率よりも高い収率でアンモニアを製造する反応分離型の反応器を用いたプロセスとしているが、吸着したアンモニアを吸着剤から分離する工程が必要となるため、複雑なシステムの反応器が組まれており、実用的には難しい。
本発明は、上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、製品アンモニア及びアンモニア水を少ないエネルギーで効率的に生成できるアンモニアの製造方法及びアンモニア水の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、反応の平衡制約により生成混合ガス中に未反応の水素ガスや窒素ガスが多く含まれる従来のハーバー・ボッシュ法とは異なり、反応系からアンモニアを選択的に分離する分離膜を組み合わせた膜型反応器を用い、分離膜を透過した高濃度のアンモニアを含むガスからアンモニアを回収し、更に未反応の原料ガスをリサイクル又は系外にパージすることで、エネルギー消費量の少ないアンモニア製造プロセスを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の膜型反応器を用いたアンモニア製造プロセスでは、アンモニア生成反応は平衡反応であるため、アンモニア合成触媒にアンモニアを選択的に分離するアンモニア分離膜を組み合わせることでアンモニアの逆反応を抑制することを可能にする。その結果、通常の平衡制約のある反応よりも高い転化率でアンモニアを得ることができる。また、アンモニア生成反応は発熱反応であることから、反応転化率が高くなるほど生成する熱量が増え、この熱を回収し、エネルギーとして利用することで省エネの効果が得られる。更に、未反応ガスのリサイクル量も減る事から、未反応ガスのリサイクルにかかるエネルギーも削減することが可能になる。
本発明の実施形態はこのような知見に基づいて達成されたものであり、下記を提供する。
[1]原料に水素と窒素を用いて、アンモニアを製造する方法であって、
アンモニア合成触媒とアンモニア分離膜と、を用いた膜型反応器により、前記原料からアンモニアを合成する反応分離工程と、
前記アンモニア分離膜を透過した透過ガス中に含まれるアンモニアを冷却し、凝縮した液化アンモニアを回収するアンモニア回収工程と、
未反応の原料ガスをリサイクルするリサイクル工程と、
を備える、アンモニアの製造方法。
[2]原料に水素と窒素を用いて、アンモニアを製造する方法であって、
アンモニア合成触媒とアンモニア分離膜と、を用いた膜型反応器により、前記原料からアンモニアを合成する反応分離工程と、
前記アンモニア分離膜を透過した透過ガス中に含まれるアンモニアを冷却し、凝縮した液化アンモニアを回収するアンモニア回収工程と、
未反応の原料ガスを系外にパージするパージ工程と、
を備える、アンモニアの製造方法。
[3]前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜を透過した透過ガス中のアンモニア濃度が50vol%以上である、[1]または[2]に記載のアンモニアの製造方法。
[4]前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜におけるガス供給側の圧力が0.1MPa以上、10MPa以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のアンモニアの製造方法。
[5]前記反応分離工程において、膜型反応器のアンモニア分離膜におけるガス供給側と透過側の圧力差が0.1MPa以上、10MPa以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のアンモニアの製造方法。
[6]前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜のアンモニア/水素の透過係数比が20以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のアンモニアの製造方法。
[7]前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜のアンモニア/窒素の透過係数比が20以上である、[1]~[6]のいずれかに記載のアンモニアの製造方法。
[8]前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜がゼオライト膜である、[1]~[7]のいずれかに記載のアンモニアの製造方法。
[9]原料に水素と窒素を用いて、アンモニア水を製造する方法であって、
アンモニア合成触媒と、水素/窒素/アンモニアの混合ガスからアンモニアを選択的に分離するアンモニア分離膜と、を用いた膜型反応器により、前記原料からアンモニアを合成する反応分離工程と、
前記アンモニア分離膜を透過した透過ガスに水を供給してアンモニア水とし、該アンモニア水を回収するアンモニア吸収工程と、
未反応の原料ガスをリサイクルするリサイクル工程と、を備える、アンモニア水の製造方法。
[10]原料に水素と窒素を用いて、アンモニア水を製造する方法であって、
アンモニア合成触媒と、水素/窒素/アンモニアの混合ガスからアンモニアを選択的に分離するアンモニア分離膜と、を備えた膜型反応器により、前記原料からアンモニアを合成する反応分離工程と、
前記アンモニア分離膜を透過した透過ガスに水を供給してアンモニア水とし、該アンモニア水を回収するアンモニア吸収工程と、
未反応の原料ガスを系外にパージするパージ工程と、を備えるアンモニア水の製造方法。
[11]前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜を透過した透過ガス中のアンモニア濃度が30vol%以上である、[9]または[10]に記載のアンモニア水の製造方法。
[12]前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜におけるガス供給側の圧力が0.1MPa以上、10MPa以下である、[9]~[11]のいずれかに記載のアンモニア水の製造方法。
[13]前記反応分離工程において、膜型反応器のアンモニア分離膜におけるガス供給側と透過側の圧力差が0.1MPa以上、10MPa以下である、[9]~[12]のいずれかに記載のアンモニア水の製造方法。
[14]前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜のアンモニア/水素の透過係数比が10以上である、[9]~[13]のいずれかに記載のアンモニア水の製造方法。[15]前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜のアンモニア/窒素の透過係数比が10以上である、[9]~[14]のいずれかに記載のアンモニア水の製造方法。[16]前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜がゼオライト膜である、[9]~[15]のいずれかに記載のアンモニア水の製造方法。
本発明によれば、反応分離工程においてアンモニアを選択的に分離するアンモニア分離膜を採用した膜型反応器によりアンモニアを合成することで、平衡反応における転化率よりも高い転化率を得られることから、膜型反応器における膜内を透過したガスは高濃度のアンモニアを含み、消費エネルギーの少ないプロセスを構築することが可能である。
さらに、本発明によるプロセス構成はリサイクルガス量が少なく、昇圧器や反応器等の機器サイズを小さくすることができ、プロセスをコンパクト化する事が可能になる。すなわち、未反応ガスの多くをリサイクルするハーバー・ボッシュ法では難しい小型プロセスによるアンモニア製造を可能にし、必要な量を必要な場所で製造できるオンサイト型のアンモニア製造プロセスの提供が可能となるため、利用価値は非常に高い。
従来技術に係る液化アンモニア製造プロセスを示すフロー図である。 アンモニア回収工程で未液化ガスをリサイクルする液化アンモニア製造プロセスを示すフロー図である。 アンモニア回収工程で未液化ガスをパージする液化アンモニア製造プロセスを示すフロー図である。 膜型反応器の非透過側をリサイクル、アンモニア回収工程で未液化ガスをリサイクルする液化アンモニア製造プロセスを示すフロー図である。 アンモニア回収工程で未液化ガスをパージする液化アンモニア製造プロセスを示すフロー図である。 従来技術に係るアンモニア水製造プロセスを示すフロー図である。 アンモニア吸収工程で未回収ガスをリサイクルするアンモニア水製造プロセスを示すフロー図である。 アンモニア吸収工程で未回収ガスをリサイクルするアンモニア水製造プロセスを示すフロー図である。 膜型反応器の非透過側をリサイクル、アンモニア吸収工程で未回収ガスをリサイクルするアンモニア水製造プロセスを示すフロー図である。 膜型反応器の非透過側をリサイクル、アンモニア吸収工程で未回収ガスをリサイクルするアンモニア水製造プロセスを示すフロー図である。 アンモニア水製造プロセスにおけるアンモニア吸収工程を示すフロー図である。
本発明の一形態は、原料に水素と窒素を用いて、アンモニアを製造する方法であって、前記原料からアンモニア合成触媒を用いたアンモニア合成反応器により、アンモニアを合成する触媒反応工程と、アンモニア合成反応器により得られたアンモニアを含む反応ガスを原料から、アンモニア合成触媒とアンモニア分離膜とを用いた膜型反応器により、アンモニアを合成する反応分離工程と、前記アンモニア分離膜を透過した透過ガス中に含まれるアンモニアを冷却し、凝縮した液化アンモニアを回収するアンモニア回収工程と、未反応の原料ガスをリサイクルするリサイクル工程と、を備える、アンモニアの製造方法である。
また、本発明の別の形態は、原料に水素と窒素を用いて、アンモニアを製造する方法であって、前記原料からアンモニア合成触媒を用いたアンモニア合成反応器により、アンモニアを合成する触媒反応工程と、アンモニア合成反応器により得られたアンモニアを含む反応ガスを原料から、アンモニア合成触媒とアンモニア分離膜とを用いた膜型反応器により、アンモニアを合成する反応分離工程と、前記アンモニア分離膜を透過した透過ガス中に含まれるアンモニアを冷却し、凝縮した液化アンモニアを回収するアンモニア回収工程と、未反応の原料ガスを系外にパージするパージ工程と、を備える、アンモニアの製造方法である。
本発明に用いるアンモニア合成反応器とは、アンモニア分離膜は用いず、アンモニア合成触媒を備えた反応器である。また、膜型反応器とは、アンモニア合成触媒とアンモニア分離膜を備えた反応器である。
本発明に用いる触媒反応工程とは、アンモニア合成反応器を有する工程であり、反応分
離工程とは膜型反応器を有する工程である。
本発明に用いる膜型反応器とは、選択透過膜型反応器(メンブレンリアクター:Membrane Reactor)と称される。選択透過膜型反応器は例えば、特開2005-58823号公
報を参照することができ、化学反応を促進させるための触媒と、特定の成分に対する選択的透過能を有する選択透過膜とを備え、触媒作用と選択的透過能とを併有する反応器である。
本発明のアンモニア製造プロセスにおける反応分離工程において、分離ガス中に含まれるアンモニア濃度は、膜型反応器に用いるアンモニア分離膜の分離性能はアンモニア濃度が高い方がアンモニアを分離しやすくなる観点から、1vol%以上であることが好ましい。そのため、反応分離工程における膜型反応器はアンモニア分離膜で分離するガス中のアンモニア濃度が1vol%以上になるように、通常は触媒反応工程の後に反応分離工程を経るプロセスを組むが、例えばアンモニア合成反応器と膜型反応器を一体型にして、アンモニア分離膜よりも上流にアンモニア合成触媒を配置し、膜により分離するガスに含まれるアンモニア濃度が1vol%以上になるように設計した反応器を用いてもよい。
反応分離工程は、アンモニア合成触媒とアンモニア分離膜とを備えた膜型反応器によりアンモニアを合成する工程である。膜型反応器は、アンモニア合成触媒とアンモニア分離膜とを備えていれば特に限定されないが、特許文献3(国際公開第2018/230737号)に開示された反応器を例示することができる。
アンモニア合成反応は水素と窒素を原料として以下の式で表され、発熱反応である。従って、反応が進むと発生した熱をエネルギーとして回収する事が出来る。
(アンモニア合成反応)
+ 3H ←→ 2NH ΔH=-91.44 KJ/mol
膜型反応器を用いた反応分離工程では、アンモニア生成反応の逆反応を抑制することが可能であり、膜型反応器での転化率は反応平衡における転化率よりも高くなる。従って、アンモニアを生成する際に発生する発熱量が従来のハーバー・ボッシュ法のプロセスよりも多くなり、また、未反応のガスが少ない事から、後述するアンモニア回収工程における冷却・圧縮エネルギーやリサイクルにかかるエネルギーが少ないという特徴を有している。
(液化アンモニア製造プロセス)
触媒反応工程では、原料として水素と窒素を反応させて、アンモニアを合成する。
1)原料
原料として使用する窒素は、原料の段階でなるべく窒素濃度が高い窒素含有ガスを使用することが好ましく、具体的には、窒素が90~100モル%、好ましくは95~100モル%、より好ましくは98~100モル%、更に好ましくは99~100モル%、特に好ましくは99.5~100モル%で含まれている窒素含有ガスを使用することが好ましい。
窒素以外に含まれているガスとしては反応に不活性、かつ触媒活性に影響のないガスであれば何れのガスであってもよく、たとえば水素、メタン、アルゴン、二酸化炭素などである。
空気から窒素濃度を高めた窒素含有ガスを得る手段として、動力及び設置コストの面で、並列に並んだ複数の吸着塔を使用して、圧力、温度あるいは圧力・温度を変動(スイング)させることにより、窒素を分離・回収する圧力スイング吸着法(PSA)、温度スイング吸着法(TSA)、圧力温度スイング吸着法(PTSA)のいずれかを用いることが
望ましい。中でも、圧力スイング吸着法(PSA)が最適である。これらの分離方式では、窒素に空気中のアルゴンが微量に含まれる事があるが、アルゴンについては、アンモニア製造プロセスにおけるパージなどにより濃縮を避けることができる。
超高純度の窒素ガスを得る手段としては、深冷分離式の空気分離装置を利用することもできる。深冷分離式の空気分離装置ではアルゴンを含まない窒素を得ることが可能である。
原料として使用する水素は、原料の段階でなるべく水素濃度が高い水素含有ガスを使用することが好ましく、具体的には、水素が90~100モル%、好ましくは95~100モル%、より好ましくは98~100モル%、更に好ましくは99~100モル%、特に好ましくは99.5~100モル%で含まれている水素含有ガスを使用することが好ましい。
水素以外に含まれているガスとしては反応に不活性、かつ触媒活性に影響のないガスであれば何れのガスであってもよく、たとえばアルゴン、二酸化炭素、メタンなどである。
これらの不純物については、アンモニア製造プロセスにおけるパージなどにより濃縮を避けることができる。
超高純度の水素ガスを得る手段としては、水の電気分解装置や水の光分解装置を利用することもできる。
アンモニア合成触媒を用いたアンモニア合成反応としては、十分に反応速度が担保できる温度、圧力、触媒量、空間速度、線速度、原料ガス組成等の条件で反応を行えばよい。
アンモニア合成反応器に用いる反応原料は、上述の水素と窒素原料に未反応のリサイクルガスを加えてアンモニア合成反応を行ってもよい。この場合、リサイクルガスにはアンモニアが含まれてもよい。
2)触媒反応工程
触媒反応工程におけるアンモニア合成反応器の反応条件として、反応速度を確保するためには圧力の高い条件が好ましく、0.5MPa以上が好ましく、1MPa以上がより好ましく、2MPa以上が更に好ましく、3MPa以上が特に好ましく、4MPa以上がとりわけ好ましく、5MPa以上が最も好ましい。一方、圧力を高くするには昇圧エネルギーを必要とするため消費エネルギーが増えるため、20MPa以下が好ましく、15MPa以下がより好ましく、12MPa以下が更に好ましく、10MPa以下が特に好ましく、8MPa以下がとりわけ好ましく、6MPa以下が最も好ましい。
アンモニア合成反応器の反応温度としては、低温の方がエネルギー消費量を抑え、かつアンモニア生成反応により高アンモニア濃度のガスを得る事が出来るため、600℃以下が好ましく、500℃以下がより好ましく、450℃以下が特に好ましく、400℃以下が最も好ましい。一方、反応速度を早めるためにはより高温条件の方が良く、100℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、300℃以上が更に好ましく、350℃以上が特に好ましい。
原料ガス組成としては、特に制限はなく、触媒の反応速度式の次数を考慮して反応速度が有利になる条件で反応させればよいが、後段に配置される反応分離工程の膜型反応器におけるアンモニア分離膜においては、通常、アンモニアと水素の分離の方がアンモニアと窒素の分離よりも難しいため、水素濃度は少ないガスの方がアンモニア分離膜を透過したガス中のアンモニア濃度が高くなる。そのため、通常は原料ガス組成における水素/窒素のモル比は3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下がさらにより
好ましく、1.5以下が特に好ましく、1.25以下が最も好ましい。
一方、水素/窒素モル比は高いほうが平衡状態におけるアンモニア濃度が高くなる事から、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上が特に好ましく、0.8以上がとりわけ好ましく、1.0以上が最も好ましい。
アンモニア合成反応器に用いるアンモニア合成触媒は、ハーバー・ボッシュ法で用いられる鉄系触媒、あるいはRuを担持した触媒等、アンモニアを合成する触媒であれば特に制限はないが、Ruを含む触媒が好ましい。
またアンモニア合成反応器は、膜型反応器の上流に組み合わせても良く、1段でもよいし、複数段に分けてもよい。膜型反応器上流に組み合わせる場合は、アンモニア合成反応器と膜型反応器を一体型にしてもよい。
アンモニア合成反応器出口ガス中に含まれるアンモニア濃度は、後段の膜型反応器におけるアンモニア分離膜の分離性能をよくする点から、1vol%以上が好ましく、3vol%以上がより好ましく、6vol%以上が更に好ましく、10vol%以上が特に好ましく、15vol%以上がとりわけ好ましく、20vol%以上が最も好ましい。
アンモニア合成反応器においてアンモニアを生成する際に発生した熱は、アンモニア合成反応器内に熱回収システムを組み除熱してもよいし、アンモニア合成反応器後段に熱交換機を設置して熱を回収してもよい。
3)反応分離工程
反応分離工程における膜型反応器では、触媒反応工程におけるアンモニア合成反応器で合成された、アンモニアガスを含む未反応の水素と窒素ガスを原料としてアンモニアガスを合成する。
膜型反応器におけるアンモニア合成反応としては、十分に反応速度が担保できる温度、圧力、触媒量、空間速度、線速度等の条件と、アンモニア分離膜においてアンモニアを透過、分離しやすい温度、圧力、触媒量、膜面積、空間速度、線速度等の条件との両方を兼ね備えた条件で行えばよい。
膜型反応器におけるアンモニア分離膜のガス供給側の圧力条件は、触媒の反応速度を確保するために、通常圧力は高い条件が好ましく、0.5MPa以上が好ましく、1MPa以上がより好ましく、2MPa以上が更に好ましく、3MPa以上が特に好ましく、4MPa以上がとりわけ好ましく、5MPa以上が最も好ましい。一方、圧力を高くするには昇圧機により昇圧する必要があり、エネルギーを消費する。従って、通常は20MPa以下が好ましく、15MPa以下がより好ましく、12MPa以下が更に好ましく、10MPa以下が特に好ましく、8MPa以下がとりわけ好ましく、6MPa以下が最も好ましい。
膜型反応器のアンモニア分離膜のガス供給側と透過側の圧力差は、触媒の反応速度を確保するために通常圧力は高い条件が好ましく、0.5MPa以上が好ましく、1MPa以上がより好ましく、2MPa以上が更に好ましく、3MPa以上が特に好ましく、4MPa以上がとりわけ好ましく、5MPa以上が最も好ましい。一方、圧力を高くするには前述の通り昇圧エネルギーを必要とするためエネルギーコストが高くなる。従って、通常20MPa以下が好ましく、15MPa以下がより好ましく、12MPa以下が更に好ましく、10MPa以下が特に好ましく、8MPa以下がとりわけ好ましく、6MPa以下が最も好ましい。
膜型反応器のアンモニア分離膜の透過側にかかる圧力は、後段のアンモニア回収工程においてアンモニアを凝縮する際に必要な圧力分を残してもよい。この場合、アンモニア分
離膜の透過側にかかる圧力は、5MPa以下が好ましく、4MPa以下がより好ましく、3MPa以下が更に好ましく、2MPa以下が特に好ましい。一方、アンモニア分離膜の透過側にかかる圧力が高いほうがアンモニアを冷却により凝縮しやすくなるため、通常は0.1MPa以上が好ましく、0.3MPa以上がより好ましく、0.5MPa以上が更に好ましく、1MPa以上が特に好ましい。
膜型反応器の温度は、低温の方が消費エネルギーを抑える事が出来、かつ高アンモニア濃度のガスを生成す事が出来るため、600℃以下が好ましく、500℃以下がより好ましく、450℃以下が特に好ましく、400℃以下が最も好ましい。一方、反応速度を早めるためにはより高温条件の方が良く、100℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、300℃以上が更に好ましく、350℃以上が特に好ましい。
反応分離工程における膜型反応器に用いる触媒は、ハーバー・ボッシュ法で用いられる鉄系触媒、あるいはRuを担持した触媒等、アンモニアを合成する触媒であれば特に制限はないが、Ruを含む触媒が好ましい。
膜型反応器に用いるアンモニア分離膜としては、アンモニアを分離する膜であれば何でもよく、例えば合成樹脂からなる分離膜、炭素分離膜、多孔質シリカ膜や炭素膜等を挙げることができる。膜型反応器は高温条件下で膜を使用する事から耐熱性があり、更に水素/窒素/アンモニアの混合ガスからアンモニアを選択的に分離する事が可能であるゼオライト膜が好ましい。例えば、特許文献3に記載のゼオライト膜が例に挙げられる。
ゼオライト膜はアルミノ珪酸塩のゼオライトを含む。好ましくはゼオライト膜を構成するゼオライトはアルミノ珪酸塩である。アルミノ珪酸塩は、SiとAlの酸化物を主成分とするものであるが、それ以外の元素が含まれていてもよい。アルミノ珪酸塩のSiO/Alモル比は特に限定されないが、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは10以上である。上限は、通常Alが不純物程度の量であり、SiO/Alモル比としては、通常500以下、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは60以下、特に好ましくは40以下、最も好ましくは30以下である。ゼオライト膜は、高温でも高い分離性能を持つMFI型ゼオライト膜、RHO型ゼオライト膜が好ましく、より好ましくはRHO型ゼオライト膜である。
ゼオライト膜は、X線光電子分光法により下記測定条件により求められるAl原子に対する窒素原子のモル比が0.01以上、4以下であることが好ましい。また、Al原子に対するSi原子のモル比が2.0以上、10以下であることが好ましい。更にAl原子に対するアルカリ金属原子のモル比が0.01以上、0.070以下であることが好ましい。
(測定条件)
測定の際のX線源:単色化Al-Kα線、出力16kV-34W
定量計算の際のバックグラウンドの決定法:Shirley法
ゼオライト膜が上記要件を満たすことで、高効率でアンモニアガスを分離できる。
また、ゼオライト膜複合体を用いたアンモニアガスの分離について更に検討を進めたところ、ゼオライト膜は既存のシリカ膜よりも高選択的に効率よくアンモニアガスを分離できるものの、30℃に対する200℃ならびに300℃の熱収縮率の変化率が、0.13%、0.30%(c軸方向)と単調に変化すること、CHA型ゼオライトを成膜化したゼ
オライト膜複合体を使用した場合、特に200℃を超える温度領域では、アンモニアガスの分離性能が低下し、改善の余地があること、を見出した。これは、ゼオライトの熱収縮によりゼオライト粒界に亀裂が発生し、その亀裂を通してガスが透過するためと推察されるが、これに対して、RHO型ゼオライトのように、30℃に対する200℃の熱収縮率
の変化率が1.55%とCHA型ゼオライトに比べて著しく収縮し、温度に対して非線形的な熱膨張/収縮の挙動を示すゼオライトであっても、300℃の熱膨張率の変化率が0.02%程度であれば、200℃を超える高温条件下において、アンモニアを高選択的に効率よく分離出来る。
そのため、ゼオライト膜は、30℃における熱膨張率に対する300℃における熱膨張率の変化率が±0.25%以内であり、30℃における熱膨張率に対する400℃における熱膨張率の変化率が±0.35%以内である、ことが好ましい。また、30℃における熱膨張率に対する300℃における該熱膨張率の変化率に対する、30℃における熱膨張率に対する400℃における該熱膨張率の変化率が、±120%以内であることがより好ましい。
アンモニア分離膜の分離性能としては、アンモニア/窒素又はアンモニア/水素の透過係数比は高い方が、未反応の水素や窒素が膜を透過しにくいので好ましい。具体的には、アンモニア/窒素透過係数比は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、25以上がより好ましく、30以上がとりわけ好ましく、40以上が最も好ましいが、分離性能が良くなるほど高濃度のアンモニアが得られるようになることから、その上限は特に設定されない。同様に、アンモニア/水素の透過係数比は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、25以上がより好ましく、30以上がとりわけ好ましく、40以上が最も好ましいが、分離性能が良くなるほど高濃度のアンモニアが得られるようになることから、その上限は特に設定されない。
また、通常は、水素よりも窒素の方が分離しやすいことから、アンモニア/窒素及びアンモニア/水素の透過係数比は同じである必要はなく、一般的にはアンモニア/窒素の透過係数比の方がアンモニア/水素の透過係数比よりも高くなる。
膜型反応器に用いるアンモニア分離膜がアンモニアを分離する性能を発現するためには、アンモニア分離膜にて分離するガス中に含まれるアンモニア濃度は1vol%以上が好ましく、3vol%以上がより好ましく、6vol%以上が更に好ましく、10vol%以上が特に好ましく、15vol%以上がとりわけ好ましく、20vol%以上が最も好ましい。一方、アンモニアの濃度を高くするためにはアンモニア合成触媒を増やす必要がある事から触媒コストによる経済性が悪くなる。従って、アンモニア分離膜にて分離するガス中に含まれるアンモニア濃度は50vol%以下が好ましく、40vol%以下がより好ましく、35vol%以下が更に好ましく、30vol%以下が特に好ましく、28vol%以下がとりわけ好ましく、25vol%以下が最も好ましい。
膜型反応器出口のアンモニア濃度、即ちアンモニア分離膜を透過した透過ガスに含まれるアンモニア濃度が高ければ高いほどアンモニアを冷却により凝縮しやすくなる。従って、アンモニア分離膜を透過した透過ガスに含まれるアンモニア濃度としては通常30vol%以上であることが好ましく、50vol%以上であることがより好ましく、60vol%以上であることが更に好ましく、65vol%以上であることが特に好ましく、70vol%以上であることがとりわけ好ましく、80vol%以上であることが最も好ましい。アンモニア濃度が100vol%であることが最も冷却効率が高い。
膜型反応器から排出されるガスは、膜を透過したガスだけでもよく、膜を透過したガスと非透過側のガスの両方でもよい。非透過側のガスを排出する場合、非透過側のガスを系外にパージしてもよく、膜型反応器の入口にリサイクルしてもよい。また、膜型反応器の膜を透過したガスに合流して生成ガスとしてもよい。
膜型反応器の非透過側を膜型反応器にリサイクルするプロセスにおいて、アンモニア合成に用いる原料に不純物が含まれる場合は不純物の濃縮を避けるために、一部を系外からパージにより除去してもよい。一方、非透過側のガスは、膜のガス透過性が悪い部分の膜
表面積を減らすためにパージしてもよいし、あるいは膜を透過したガスに合流して生成ガスとしてもよい。
膜型反応器に用いるアンモニア分離膜は、1種類でもよいし複数種類を組み合わせてもよい。
膜型反応器は1段でもよいし、複数段にわけてもよい。膜型反応器を多段にする場合は、それぞれの膜型反応器に用いるアンモニア合成触媒とアンモニア分離膜は同一でもよいし、異なってもよい。
通常は、触媒反応工程の後に、反応分離工程を行うが、この触媒反応工程と反応分離工程は複数回繰り返した後、アンモニア回収工程を行ってもよい。
反応分離工程においてアンモニアが生成する際に発生する熱は、膜型反応器内に熱回収システムを組み回収してもよいし、膜型反応器後段に熱交換機を設置して回収してもよい。
4)アンモニア回収工程
触媒反応工程における膜型反応器により生成した高濃度アンモニアは、アンモニア回収工程で冷却凝縮して液化アンモニアとして回収する。
アンモニア回収工程では、回収工程に入る前のガスのアンモニア濃度が高いほどアンモニアを凝縮しやすくなり、冷却エネルギーを削減する事が出来る。従って、回収工程において冷却する前のガスに含まれるアンモニア濃度としては50vol%以上であることが好ましく、60vol%以上であることがより好ましく、65vol%以上であることが更に好ましく、70vol%以上であることが特に好ましく、80vol%以上であることが最も好ましい。そしてアンモニア濃度は100vol%であることが最も好ましい。
アンモニア回収工程では、膜型反応器で生成したガスを昇圧する。その際の圧力は、液化アンモニアの回収率と昇圧エネルギーにより決まる。つまり、昇圧エネルギーを抑えるために圧力を下げると回収率が低下し、パージ量(リサイクルプロセスではリサイクル量)が増えるため、経済性が悪くなる。そのため通常は、1MPa以上が好ましく、2MPa以上がより好ましく、3MPa以上が更に好ましく、4MPa以上が特に好ましく、5MPa以上が最も好ましい。一方、アンモニアの回収率を高めるために圧力を上げると昇圧エネルギーが多くなる。そのため、通常は20MPa以下が好ましく、15MPa以下がより好ましく、10MPa以下が更に好ましく、8MPa以下が特に好ましく、6MPa以下が最も好ましい。
また、温度についても上述と同様にアンモニア回収率と冷却エネルギーを考慮しながら適当な条件を決めればよいが、通常は、20℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましく、0℃以下が更に好ましく、-10℃以下が特に好ましく、-20℃以下が最も好ましい。下限値としては-50℃以上が好ましく、-40℃以上がより好ましく、-30℃以上が特に好ましく、-25℃以上が最も好ましい。
アンモニアを液化する条件はアンモニア濃度、温度、圧力によって決まるため、上記影響を鑑みて最もエネルギー効率の良いプロセスとなる条件を設定すればよい。
また、一形態では、未液化ガス、即ち未反応の原料ガスを含むガスは、リサイクルしてアンモニア合成反応器の原料としてもよい。リサイクルする場合は、不純物の濃縮を抑制するため、一部を系外にパージしても良い。膜型反応器での反応転化率が高く未反応ガス量が少ない場合は、リサイクルせずにパージしてもよい。
本発明の別の形態は、原料に水素と窒素を用いて、アンモニア水を製造する方法であっ
て、 前記原料からアンモニア合成触媒を用いたアンモニア合成反応器により、アンモニアを合成する触媒反応工程と、アンモニア合成反応器により得られた水素/窒素/アンモニアの混合ガスに、アンモニア合成触媒とアンモニアを選択的に分離するアンモニア分離膜と、を用いた膜型反応器によりアンモニアを合成する反応分離工程と、前記アンモニア分離膜を透過した透過ガスに水を供給してアンモニア水とし、該アンモニア水を回収するアンモニア吸収工程と、未反応の原料ガスをリサイクルするリサイクル工程と、を備える、アンモニア水の製造方法である。
また、本発明の更に別の形態は、原料に水素と窒素を用いて、アンモニア水を製造する方法であって、前記原料からアンモニア合成触媒を用いたアンモニア合成反応器により、アンモニアを合成する触媒反応工程と、アンモニア合成反応器により得られた水素/窒素/アンモニアの混合ガスに、アンモニア合成触媒とアンモニアを選択的に分離するアンモニア分離膜と、を用いた膜型反応器によりアンモニアを合成する反応分離工程と、前記アンモニア分離膜を透過した透過ガスに水を供給してアンモニア水とし、該アンモニア水を回収するアンモニア吸収工程と、未反応の原料ガスを系外にパージするパージ工程と、を備えるアンモニア水の製造方法である。
5)アンモニア吸収工程
アンモニア水の製造方法において、触媒反応工程は、アンモニアの製造方法の説明と同様である。
アンモニア吸収工程は、前記アンモニア分離膜を透過した透過ガスに水を供給してアンモニア水とし、該アンモニア水を回収する工程であり、通常、吸収塔において透過ガス中のアンモニアを水で吸収する。吸収塔は特に限定されるものではなく、既知の吸収塔を用いることができる。
アンモニアを水で吸収する吸収塔では、アンモニアが水に溶解する際に発生する溶解熱により塔内の温度が上がりアンモニアの回収効率が低下することがある。このような場合、未回収のアンモニア量が増えるため、吸収塔を2塔以上に分けて、1塔段目で未回収のアンモニアを2塔目以降の吸収塔でアンモニア水として回収してもよい。
吸収塔の温度は、温度が低いほうがアンモニアを吸収しやすい。従って、60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下が更に好ましく、30℃以下が特に好ましく、25℃以下がとりわけ好ましく、20℃以下が最も好ましい。一方、温度を下げようとすると冷却エネルギーが必要になる事から、-20℃以上が好ましく、-15℃以上がより好ましく、-10℃以上が更に好ましく、-5℃以上が特に好ましく、0℃以上が最も好ましい。
吸収塔で生成するアンモニア水の濃度は、1vol%以上が好ましく、5vol%以上より好ましく、10vol%以上更に好ましく、15vol%以上特に好ましく、18vol%以上とりわけ好ましく、20vol%以上最も好ましい。
吸収塔において未回収ガスに含まれるアンモニア濃度は低い方がリサイクルプロセスにおけるリサイクル量や、パージプロセスにおける未回収アンモニアのロスを削減できる。従って、未回収ガスに含まれるアンモニア濃度は5vol%以下が好ましく、4vol%以下がより好ましく、3vol%以下が更に好ましく、2vol%以下が特に好ましく、1vol%以下がとりわけ好ましく、0.5vol%以下が最も好ましい。
また一形態では、未回収のガスは、原料として再利用するリサイクル工程を有する。リサイクル工程を有することで原料ロスを低減し、プロセスの効率が更に向上する。
また別の一形態では、未反応の原料ガスはパージして系外に排出するパージ工程を有する。リサイクル工程では、不純物の濃縮を抑制するため、未反応ガスの一部をパージしてもよい。
吸収塔で水と接触することによって水を含んだ未回収ガスは、そのままリサイクルしても構わないし、その後の工程において水が影響する場合は脱水工程を設けて、リサイクルガスから水を脱水してから触媒反応工程に戻してもよい。脱水工程は公知の方法を用いる事ができ、水を吸着剤により脱水する場合は吸着剤は特に限定されるものではなく、公知の吸着剤を用いる事が出来る。
(実施例)
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
反応分離工程における膜型反応器の非透過側のガスのパージやアンモニア回収工程における未液化ガスをリサイクルする場合のリサイクル工程におけるパージは、アンモニア合成原料である水素や窒素に不純物が含まれる場合に濃縮を抑制するために行うものであるが、そのパージ量は原料不純物濃度によって異なる。従って、本計算においては原料中の不純物は無しとして、不純物を除去するために必要なパージは実施せずにエネルギー計算を実施した。
<実施例1~5、比較例1~3>
図2、3に本発明における代表的なプロセス構成を示す。図2では、水素と窒素を原料にアンモニア合成触媒を配置したアンモニア合成反応器を有する触媒反応工程と、アンモニア合成触媒とアンモニア分離膜とを配置した膜型反応器を有する反応分離工程においてアンモニアを合成する。なお、明細書中では、図中の触媒反応工程と反応分離工程を含めて、アンモニア合成工程と称している。膜を透過した高濃度のアンモニアを含む生成ガスは、その後、昇圧器で圧縮、その後冷凍機で冷却し、液化したアンモニアを回収する。未反応の水素と窒素を含む未液化ガスはリサイクルされ、原料と混ぜてアンモニア合成工程に導入する。
図3では、図2における未反応の水素と窒素を含む未液化ガスをリサイクルせずにパージする。
図4では、図2における反応分離工程における膜型反応器の非透過側のガスを膜型反応器にリサイクルする、図2の応用例である。
図5では、図3において反応分離工程における膜型反応器の非透過側のガスを膜型反応器にリサイクルする、図3の応用例である。
実施例1にかかるプロセス構成にて計算されるエネルギーは下記のとおりである。
(A)触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセス(比較例1のプロセス)
消費エネルギー:原料ガスの加熱(40℃→400℃)、加圧(0.1MPa→5MPa)、アンモニア合成反応器出口ガスの冷凍(40℃→-22℃)、リサイクルする場合のみリサイクルガスの加熱(-22℃→40℃)、
回収エネルギー:アンモニア合成反応器の反応熱、アンモニア合成反応器出口ガスの冷却による熱回収(400℃→40℃)、
(B)触媒反応工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセス(実施例1~5のプロセス、比較例2~3)
消費エネルギー:原料ガスの加熱(40℃→400℃)、加圧(0.1MPa→5MPa)、膜型反応器の膜を透過したガスの加圧(0.1MPa→5MPa)、冷凍(40℃→-22℃)、リサイクルする場合のみリサイクルガスの加熱(-22℃→40℃)
回収エネルギー:アンモニア合成反応器および膜型反応器の反応熱、アンモニア合成反応器出口ガスの冷却による熱回収(400℃→40℃)、
表1における(i)水素・窒素量の比率、(ii)リサイクル量の比率は下記によって算出した。
(i)水素・窒素量の比率
「触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセスにおける原料水素と窒素の合計量」に対する「触媒反応工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセスにおける原料水素と窒素の合計量」の比率
(ii)リサイクル量の比率
「触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセスにおけるリサイクル量」に対する「触媒反応工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセスにおけるリサイクル量」の比率
表1におけるエネルギーの比較は、下記によって算出した。
(a)アンモニア1kgあたりを製造するために必要な消費エネルギーの比較
「(A)触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセスに記載の消費エネルギーの合計」に対する「(B)触媒反応工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセスに記載の消費エネルギーの合計」の比率
(b)アンモニア1kgあたりを製造する際に得られるか回収エネルギーの比較
「(A)触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセスに記載の回収ネルギーの合計」に対する「(B)触媒反応工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセスに記載の回収エネルギーの合計」の比率
(c)アンモニア1kgあたりを製造するために必要なエネルギーの比較
「(A)触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセスに記載の消費エネルギーの合計から回収ネルギーの合計を引いたエネルギー」に対する「(B)触媒反応工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセスに記載の消費エネルギーの合計から回収ネルギーの合計を引いたエネルギー」の比率
本プロセスにおけるエネルギーの計算には、プロセスシミュレーターであるAspen
Tech社の製品であるAspen Plus Version.11を用いて算出した。
実施例及び/又は比較例のプロセスにおけるエネルギーを計算するための条件として、(1)触媒反応工程におけるアンモニア合成反応器の反応条件、(2)反応分離工程における膜型反応器の反応条件、(3)アンモニア回収工程におけるアンモニア液化条件は下記のとおりである。
(1)アンモニア合成反応器の反応条件:原料ガスの組成比 水素/窒素=3、400℃
、5MPa
(2)膜型反応器の反応条件:400℃、5MPa(ガス供給側と透過側の圧力差)
(3)アンモニア回収工程におけるアンモニア液化条件:5MPa、-22℃
また、実施例及び比較例アンモニア合成反応器におけるアンモニア合成反応は、上記反応条件によって決まる反応の平衡値とした。
実施例及び比較例にかかるプロセス構成の消費エネルギーを算出するために、Top.
Cat., 1944, 1, 233 のtable1に記載されている触媒活性評価データをもとに、下記の反応速度式を算出した。
(反応速度式)
R=4.56563Exp(-51/RT)×[N]/INH-2.31978Exp(+7)×Exp(-76.46/RT)×[H-3[NH/INHINH=1+0.0307Exp(-80/RT)×[H-1.5[NH
表1に実施例及び比較例にかかるプロセスでのアンモニア製造に関する対比した表を示す。
Figure 2024059655000002
実施例1では、図2のプロセスにおいて膜型反応器にNH/N、NH/Hの透過係数比がいずれも40のアンモニア分離膜を用いてエネルギー計算を実施した。この場合、膜型反応器におけるアンモニア分離膜を透過した生成ガスに含まれるアンモニア濃度は62%であり、また、水素転化率が向上したことでリサイクル量は大きく低減した。その結果、アンモニア1kgあたりを製造するために必要な消費エネルギーは比較例1に比べて37%削減したが、一方で、リサイクルにより循環するガス量が減り膜型反応器出口ガスの冷却により回収する熱量が減る影響により、アンモニア1kgあたりを製造する際に得られる回収エネルギーは40%減少した。しかし、消費エネルギー削減の効果が大きく、本プロセスにおいては、アンモニア1kgあたりを製造するために必要なエネルギーは、比較例1に比べて約10%削減可能なプロセスであることが分かった。
実施例2では図3のプロセスにおいて膜型反応器にNH/N、NH/Hの透過係数比がいずれも40のアンモニア分離膜を用いてエネルギー計算を実施した。膜型反応器における水素転化率が向上し、アンモニア分離膜を透過した生成ガスに含まれるアンモニア濃度は62%だった。本プロセスではアンモニア回収工程において未反応ガスのパージにより原料がロスするため、水素・窒素原料は比較例1よりも増やす必要がある。しかし、リサイクルしないことによる効果が大きく、アンモニア1kgあたりを製造するために必要な消費エネルギーは比較例1に比べて36%削減できた。一方、リサイクルにより循環するガスがないため膜型反応器出口ガスにおいて冷却により回収される熱量は減り、アンモニア1kgあたりを製造する際に得られる回収エネルギーは38%減少した。その結果、消費エネルギー削減の効果が大きく、本プロセスはアンモニア1kgあたりを製造するために必要なエネルギーは、比較例1に比べて7%削減可能なプロセスであることが分かった。
実施例3では、図2のプロセスにおいて膜型反応器にNH/N、NH/Hの透過係数比がいずれも100のアンモニア分離膜を用いてエネルギー計算を実施した。この場合、膜の分離性能が高くなることで膜型反応器におけるアンモニア分離膜を透過した生成ガスに含まれるアンモニア濃度と水素転化率は実施例1よりもさらに高くなった。従って、実施例1と同様の効果をさらに得る事が出来るため、本プロセスはアンモニア1kgあたりを製造するために必要なエネルギーは、比較例1に比べて90%削減可能なプロセスであることが分かった。
実施例4では、図3のプロセスにおいて膜型反応器にNH/N、NH/Hの透過係数比がいずれも100のアンモニア分離膜を用いてエネルギー計算を実施した。この場合も、膜の分離性能が高くなることで膜型反応器におけるアンモニア分離膜を透過した生成ガスに含まれるアンモニア濃度と水素転化率はさらに高くなった。実施例2と同様の
効果をさらに得る事が出来るため、本プロセスはアンモニア1kgあたりを製造するために必要なエネルギーが、比較例1に比べて95%削減可能であることが分かった。
実施例5では、図3のプロセスにおいて膜型反応器にNH/N、NH/Hの透過係数比がいずれも10000のアンモニア分離膜を用いてエネルギー計算を実施した。この場合は、膜型反応器におけるアンモニア分離膜を透過した生成ガスに含まれるアンモニア濃度は99.5%とほとんど未反応の窒素、水素を含んでおらず、リサイクルする必要はない。また、アンモニア1kgあたりを製造するために必要な消費エネルギーの削減効果が大きく、アンモニア1kgあたりを製造するために必要な消費エネルギーよりもアンモニア1kgあたりを製造する際に得られるか回収エネルギーが上回り、本プロセスではアンモニアとともにエネルギーを生成する事が分かった。
一方、比較例2、3では、膜型反応器にNH/N、NH/Hの透過係数比がいずれも5のアンモニア分離膜を用いた。この場合、膜型反応器におけるアンモニア分離膜を透過した生成ガスに含まれるアンモニア濃度は18%と比較例1に比べてほとんど変わらないが、膜内を透過したことによる圧力が低下するため、再度昇圧するためのエネルギーが必要となりエネルギーが増大する。その結果、アンモニア1kgあたりを製造するために必要なエネルギーは比較例1に比べて約18倍に増え、本プロセスは大量のエネルギーを消費するプロセスであることが分かった。
(アンモニア水製造プロセス)
本発明の膜型反応器を用いたアンモニア製造方法では、液化アンモニアを製造する際は膜型反応器において膜を透過することにより圧力が低下するため、膜型反応器出口の生成ガスは再度加圧して冷却する事でアンモニアを凝縮分離している。一方、アンモニア水を製造する場合は、膜型反応器出口のガスを加圧することなく吸収塔にて水で吸収することができるため、加圧する必要が無い。従って、アンモニア水を製造する際に必要なエネルギーは、液化アンモニアを製造する場合と比べて、更にエネルギー消費量の少ないプロセスを提供することが可能である。
<実施例6~12、比較例4>
図6に比較例のアンモニア水製造プロセス、図7、8に本発明における代表的なプロセス構成を示す。図7では、水素と窒素を原料にアンモニア合成触媒を配置したアンモニア合成反応器を有する触媒反応工程と、アンモニア合成触媒とアンモニア分離膜とを配置した膜型反応器を有する反応分離工程においてアンモニアを合成する。なお、明細書中では、図中の触媒反応合成工程と反応分離工程を含めて、アンモニア合成工程と称している。
膜を透過した高濃度のアンモニアを含む生成ガスは、その後、アンモニア吸収工程においてアンモニア吸収塔で水に吸収してアンモニア水として回収し、水に吸収されない未反応の水素と窒素を含む未液化原料ガスはリサイクルする。
図8では、図7における未反応の水素と窒素を含む未液化ガスをリサイクルせずにパージする。
図9では、図7における反応分離工程における膜型反応器の非透過側のガスを膜型反応器にリサイクルする、図7の応用例である。
図10では、図8において反応分離工程における膜型反応器の非透過側のガスを膜型反応器にリサイクルする、図8の応用例である。
反応分離工程における膜型反応器の非透過側のガスのパージやアンモニア吸収工程における未液化ガスをリサイクルする場合のリサイクル工程におけるパージは、アンモニア合成原料である水素や窒素に不純物が含まれる場合に濃縮を抑制するために行うものであるが、そのパージ量は原料不純物濃度次第であり変化する。従って、本計算においては原料中の不純物は無しとして、不純物を除去するために必要なパージは実施せずに計算を行っ
た。
実施例及び比較例にかかるプロセス構成にて計算されるエネルギーは下記のとおりである。
(C)触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセス(比較例4):
消費エネルギー:原料ガスの加熱(40℃→400℃)、加圧(0.1MPa→5MPa)、アンモニア吸収塔での冷凍(40℃→0℃)、リサイクルする場合はリサイクルガスの加熱(0℃→40℃)、加圧(0.1MPa→5MPa)
回収エネルギー:アンモニア合成反応器および膜型反応器における反応熱、アンモニア合成反応器出口ガスの冷却による熱回収(400℃→40℃)
(D)触媒工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセス(実施例6~12のプロセス):
消費エネルギー:原料ガスの昇温(40℃→400℃)、加圧(0.1MPa→5MPa)、アンモニア吸収塔の2塔目の冷凍(40℃→0℃)、リサイクルする場合のみリサイクルガスの加熱(0℃→40℃)、加圧(0.1MPa→5MPa)
回収エネルギー:アンモニア合成反応器および膜型反応器の反応熱、アンモニア合成反応器出口ガスの冷却による熱回収(400℃→40℃)
表2における(iii)水素・窒素量の比率、(iv)リサイクル量の比率は下記によって算出した。
(iii)水素・窒素量の比率
「触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセスにおける原料水素と窒素の合計量」に対する「触媒工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセスにおける原料水素と窒素の合計量」の比率
(iv)リサイクル量の比率
「触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセスにおけるリサイクル量」に対する「膜触媒工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセスにおけるリサイクル量」の比率
表2におけるエネルギーの比較は、下記によって算出した。
(d)アンモニア1kgあたりを製造するために必要な消費エネルギーの比較
「(C)触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセスに記載の消費エネルギーの合計」に対する「(D)触媒工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセスに記載の消費エネルギーの合計」の比率
(e)アンモニア1kgあたりを製造する際に得られるか回収エネルギーの比較
「(C)触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセスに記載の回収ネルギーの合計」に対する「(D)触媒工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセスに記載の回収エネルギーの合計」の比率
(f)アンモニア1kgあたりを製造するために必要なエネルギーの比較
「(C)触媒反応工程のみでアンモニアを合成するプロセスに記載の消費エネルギーの合計から回収ネルギーの合計を引いたエネルギー」に対する「(D)触媒工程と反応分離工程でアンモニアを合成するプロセスに記載の消費エネルギーの合計から回収ネルギーの合計を引いたエネルギー」の比率
また、本プロセスにおけるエネルギーの計算には、プロセスシミュレーターであるAspen Tech社の製品であるAspen Plus Version.11を用いて算出した。
実施例及び比較例にかかるプロセスにおけるエネルギーを計算するための条件として、
(1)アンモニア合成反応器の反応条件、(2)膜型反応器の反応条件、(3)アンモニア水吸収工程におけるアンモニア吸収条件は下記のとおりである。
(1)アンモニア合成反応器の反応条件:原料ガスの組成比 水素/窒素=3、400℃
、5MPa
(2)膜型反応器の反応条件:400℃、5MPa(ガス供給側と透過側の圧力差)(3)アンモニア吸収塔:1塔目は40℃、2塔目は0℃(吸収塔の配置は図11参照)
また、実施例及び比較例のアンモニア合成反応器におけるアンモニア合成反応は、上記反応条件によって決まる平衡値とした。
実施例及び比較例にかかるプロセス構成の消費エネルギーを算出するために、Top.
Cat., 1944, 1, 233 のtable1に記載されている触媒活性評価データをもとに、下記の反応速度式を算出した。
(反応速度式)R=4.56563Exp(-51/RT)×[N]/INH-2.31978Exp(+7)×Exp(-76.46/RT)×[H-3[NH/INHINH=1+0.0307Exp(-80/RT)×[H-1.5[NH
表2に実施例6~12及び比較例4にかかるプロセス構成で合成したアンモニア水に関する対比した表を示す。
Figure 2024059655000003
実施例6では、図7のプロセスにおいて膜型反応器にNH/N、NH/Hの透過係数比がいずれも10のアンモニア分離膜を用いてエネルギー計算を実施した。この場合、膜型反応器におけるアンモニア分離膜を透過した生成ガスに含まれるアンモニア濃度は35%であり、水素転化率が向上したことでリサイクル量は大きく低減した。その結果、アンモニア1kgあたりを製造するために必要な消費エネルギーは62%削減できた。一方、アンモニア1kgあたりを製造する際に得られる回収エネルギーは23%減少したが、消費エネルギー削減の効果が大きく、本プロセスにおいては、アンモニア1kgあたりを製造するために必要なエネルギーは、比較例4に比べて約77%削減可能なプロセスであることが分かった。
実施例7では、図8のプロセスにおいて膜型反応器にNH/N、NH/Hの透過係数比がいずれも10のアンモニア分離膜を用いてエネルギー計算を実施した。膜型反応器における水素転化率が向上し、また、アンモニア分離膜を透過した生成ガスに含まれるアンモニア濃度は35%だった。本プロセスではアンモニア吸収工程において未反応ガスのパージにより原料がロスするため、水素・窒素原料は比較例4よりも増やす必要がある。しかし、リサイクルしないことによる効果が大きく、アンモニア1kgあたりを製造するために必要な消費エネルギーは比較例4に比べて52%削減できた。更に、転化率の向上により膜型反応器において回収可能な反応熱量も増えることで、アンモニア1kgあたりを製造する際に得られる回収エネルギーは53%増加した。その結果、本プロセスは
アンモニア1kgあたりを製造するために必要なエネルギーは、比較例4に比べて94%削減可能なプロセスであることが分かった。
実施例8では、図7のプロセスにおいて膜型反応器にNH/N、NH/Hの透過係数比がいずれも40のアンモニア分離膜を用いてエネルギー計算を実施した。この場合、膜の分離性能が高くなることで膜型反応器におけるアンモニア分離膜を透過した生成ガスに含まれるアンモニア濃度と水素転化率は実施例6よりもさらに高くなった。従って、実施例6と同様の効果をさらに得る事が出来るため、本プロセスではアンモニア1kgあたりを製造するために必要な消費エネルギーよりもアンモニア1kgあたりを製造する際に得られるか回収エネルギーが上回り、本プロセスではアンモニアとともにエネルギーを生成する事が分かった。
実施例9では、図8のプロセスにおいて膜型反応器にNH/N、NH/Hの透過係数比がいずれも40のアンモニア分離膜を用いてエネルギー計算を実施した。この場合、膜の分離性能が高くなることで膜型反応器におけるアンモニア分離膜を透過した生成ガスに含まれるアンモニア濃度と水素転化率は実施例7よりもさらに高くなった。従って、実施例6と同様の効果をさらに得る事が出来るため、本プロセスではアンモニア1kgあたりを製造するために必要な消費エネルギーよりもアンモニア1kgあたりを製造する際に得られるか回収エネルギーが上回り、本プロセスではアンモニアとともにエネルギーを生成する事が分かった。
実施例10、11、12では、更に高い分離性能を有する膜を用いており、上述の効果をより得る事が出来ため、よりエネルギー削減効果も得ることが可能である。
本発明に係るアンモニア1kgあたりの消費エネルギー量の少ないプロセスにより、CO排出量の少ない環境適合型のアンモニア製造プロセスを提供する事が出来る。また、未反応の水素や窒素が少ない事からリサイクル量の低減により各機器のサイズを小さくすることも可能となり、オンサイト型の小型プロセスとしての提供も可能である。
特に本発明の膜型反応器を含むアンモニア製造方法では、好ましくはNH/H、及び/又はNH/Nの透過係数比が20以上のアンモニア分離膜を膜型反応器に用いることにより、アンモニア生成反応の平衡制約よりも高い転化率を達成し、アンモニア生成により発生する熱の回収量が増え、更に、アンモニア回収工程におけるアンモニアを分離するために必要なエネルギーや、未反応原料のリサイクルにかかるエネルギーを削減し、従来技術のアンモニア製造にかかるエネルギーよりも少ないエネルギーでアンモニアを製造する事が出来るという効果を得た。また、NH/H、及び/又はNH/Nが高くなると、アンモニア回収工程において未反応ガスをパージしても原料ロスの観点からも経済性の高いプロセスを構築することが可能である。
また、アンモニア水として製造する場合には、加圧・冷却による工程が不要なため、NH/H、及び/又はNH/Nの透過係数比が好ましくは10以上、より好ましくは両方とも10以上のアンモニア分離膜を使用することでも、十分に経済性の高いプロセスを構築することができる。

Claims (8)

  1. 原料に水素と窒素を用いて、アンモニア水を製造する方法であって、
    アンモニア合成触媒と、水素/窒素/アンモニアの混合ガスからアンモニアを選択的に分離するアンモニア分離膜と、を用いた膜型反応器により、前記原料からアンモニアを合成する反応分離工程と、
    前記アンモニア分離膜を透過した透過ガスに水を供給してアンモニア水とし、該アンモニア水を回収するアンモニア吸収工程と、
    未反応の原料ガスをリサイクルするリサイクル工程と、
    を備える、アンモニア水の製造方法。
  2. 原料に水素と窒素を用いて、アンモニア水を製造する方法であって、
    アンモニア合成触媒と、水素/窒素/アンモニアの混合ガスからアンモニアを選択的に分離するアンモニア分離膜と、を備えた膜型反応器により、前記原料からアンモニアを合成する反応分離工程と、
    前記アンモニア分離膜を透過した透過ガスに水を供給してアンモニア水とし、該アンモニア水を回収するアンモニア吸収工程と、
    未反応の原料ガスを系外にパージするパージ工程と、
    を備えるアンモニア水の製造方法。
  3. 前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜を透過した透過ガス中のアンモニア濃度が30vol%以上である、請求項1または2に記載のアンモニア水の製造方法。
  4. 前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜におけるガス供給側の圧力が0.1MPa以上、10MPa以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンモニア水の製造方法。
  5. 前記反応分離工程において、膜型反応器のアンモニア分離膜におけるガス供給側と透過側の圧力差が0.1MPa以上、10MPa以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンモニア水の製造方法。
  6. 前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜のアンモニア/水素の透過係数比が10以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のアンモニア水の製造方法。
  7. 前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜のアンモニア/窒素の透過係数比が10以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のアンモニア水の製造方法。
  8. 前記反応分離工程において、前記アンモニア分離膜がゼオライト膜である、請求項1~7のいずれか1項に記載のアンモニア水の製造方法。
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