JP2024055035A - 反射防止フィルムおよび反射防止フィルムの製造方法 - Google Patents

反射防止フィルムおよび反射防止フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い反射防止性、優れた耐擦傷性を備える反射防止フィルム、およびそのような反射防止フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成されたハードコート層14と、ハードコート層14の面上に形成された高屈折率層16と、高屈折率層16の面上に形成された低屈折率層18と、を有し、高屈折率層16は、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物と、(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子と、を含有する電離放射線硬化性組成物の硬化物より構成され、酸化チタン粒子の体積基準の累積粒度分布における平均粒子径D50は20nm以上であり、体積基準の累積粒度分布における90%粒子径D90は120nm以下である、反射防止フィルム10とする。【選択図】図1

Description

本発明は、反射防止フィルムおよび反射防止フィルムの製造方法に関し、さらに詳しくは、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、スマートホンなどのタッチパネル等のディスプレイ表面に好適に用いられる反射防止フィルム、およびそのような反射防止フィルムの製造方法に関するものである。
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、スマートホンなどのタッチパネル等のディスプレイ表面には、画面への外光の映り込みを防止するなどのために、反射防止フィルムを配置することがある。例えば、特許文献1には、基材フィルム上に、中屈折率層、高屈折率層、および低屈折率層を有する反射防止フィルムが開示されている。高屈折率層を構成する組成物としては、酸化チタンとウレタンアクリレートの混合物が挙げられている。
特開2015-55659号公報
近年、スマートホンやカーナビゲーションシステムなど、屋外でのタッチ操作を想定したディスプレイの普及に伴い、高度な反射防止性を有しつつ、タッチ操作を繰り返しても傷のつきにくい、反射防止フィルムの需要が高まっている。しかしながら特許文献1の反射防止フィルムは、反射防止性に優れるものの、モバイル端末等のディスプレイ表面用途では耐擦傷性が十分と言えず、さらに高い耐擦傷性が求められる。
本発明が解決しようとする課題は、高い反射防止性、優れた耐擦傷性を備える反射防止フィルム、およびそのような反射防止フィルムの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る反射防止フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の面上に形成された高屈折率層と、前記高屈折率層の面上に形成された低屈折率層と、を有し、前記高屈折率層は、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物と、前記(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子と、を含有する電離放射線硬化性組成物の硬化物より構成され、前記酸化チタン粒子の体積基準の累積粒度分布における平均粒子径D50は20nm以上であり、体積基準の累積粒度分布における90%粒子径D90は120nm以下であることを特徴とする。
ここで、前記高屈折率層の波長550nmにおける屈折率は、1.83以上、2.00以下であり、前記低屈折率層の波長550nmにおける屈折率は、1.35以上、1.49以下であるとよい。また、前記反射防止フィルムは、前記ハードコート層と、前記高屈折率層との間に、波長550nmにおける屈折率が前記ハードコート層の屈折率より高く前記高屈折率層の屈折率より低い、中屈折率層を有するとよい。
本発明に係る反射防止フィルムの製造方法は、基材フィルムの面上にハードコート層を形成し、前記ハードコート層の面上に、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物と、前記(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子を溶剤に分散させた粒子分散体と、を含有する電離放射線硬化性組成物を塗布して高屈折率層を形成し、前記高屈折率層の面上に低屈折率層を形成する、反射防止フィルムの製造方法であって、前記粒子分散体において、固形分の合計100質量%に対するチタン原子の含有量は、40質量%以上、80質量%以下である。
本発明に係る反射防止フィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の面上に形成された高屈折率層と、前記高屈折率層の面上に形成された低屈折率層と、を有し、前記高屈折率層が、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物と、前記(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子と、を含有する電離放射線硬化性組成物の硬化物より構成され、前記酸化チタン粒子の体積基準の累積粒度分布における平均粒子径D50が20nm以上であり、体積基準の累積粒度分布における90%粒子径D90が120nm以下であることから、高い反射防止性、優れた耐擦傷性を備える。高屈折率層に含有される酸化チタン粒子が(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理されていること、またD50およびD90が上記所定の範囲をとることが、反射防止性と耐擦傷性の両立に、高い効果をもたらす。
ここで、前記高屈折率層の波長550nmにおける屈折率が、1.83以上、2.00以下であり、前記低屈折率層の波長550nmにおける屈折率が、1.35以上、1.49以下である場合には、反射防止フィルムにおいて、耐擦傷性の向上と低反射率化を高度に両立することができる。
また、前記反射防止フィルムが、前記ハードコート層と、前記高屈折率層との間に、波長550nmにおける屈折率が前記ハードコート層の屈折率より高く前記高屈折率層の屈折率より低い、中屈折率層を有する場合には、反射防止フィルムの反射防止性をさらに高めることができる。
本発明に係る反射防止フィルムの製造方法は、基材フィルムの面上にハードコート層を形成し、前記ハードコート層の面上に、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物と、前記(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子を溶剤に分散させた粒子分散体と、を含有する電離放射線硬化性組成物を塗布して高屈折率層を形成し、前記高屈折率層の面上に低屈折率層を形成する、反射防止フィルムの製造方法であって、前記粒子分散体において、固形分の合計100質量%に対するチタン原子の含有量が、40質量%以上、80質量%以下であることにより、高い反射防止性、優れた耐擦傷性を備えた反射防止フィルムを製造することができる。ここで、粒子分散体におけるチタン原子の含有量を上記範囲とすることで、屈折率が高く、高い耐擦傷性を有する良質な高屈折率層を好適に作製することができる。
本発明の第一実施形態に係る反射防止フィルムの断面図である。 本発明の第二実施形態に係る反射防止フィルムの断面図である。 本発明の第三実施形態に係る反射防止フィルムの断面図である。 本発明の第四実施形態に係る反射防止フィルムの断面図である。
以下、本発明について詳細に説明する。本明細書において、各種物性は、特記しない限り、室温、大気中における値を指すものとする。
<第一実施形態の反射防止フィルム>
図1は、本発明の第一実施形態に係る反射防止フィルムの断面図である。図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る反射防止フィルム10は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成されたハードコート層14と、ハードコート層14の面上に形成された高屈折率層16と、高屈折率層16の面状に形成された低屈折率層18と、を有する。反射防止フィルム10は、基材フィルム12、ハードコート層14、高屈折率層16、低屈折率層18をこの順に有する。好ましくは、基材フィルム12とハードコート層14が、他の層を介さず直接接触しているとよい。また、高屈折率層16と低屈折率層18が、他の層を介さずに直接接触しているとよい。本実施形態においては、ハードコート層14と高屈折率層16も、他の層を介さずに直接接触している。
(基材フィルム)
基材フィルム12は、透明性を有していれば、特に限定されるものではない。基材フィルム12としては、透明高分子フィルム、ガラスフィルムなどが挙げられる。透明性とは、可視光波長領域における全光線透過率が50%以上であることをいい、全光線透過率は、より好ましくは85%以上である。上記全光線透過率は、JIS K7361-1(1997)に準拠して測定することができる。基材フィルム12の厚みは、特に限定されるものではないが、取り扱い性に優れるなどの観点から、2μm以上500μm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは2μm以上200μm以下の範囲内である。なお、「フィルム」とは、一般に厚さが0.25mm未満のものをいうが、厚さが0.25mm以上のものであってもロール状に巻くことが可能であれば、厚さが0.25mm以上のものであっても「フィルム」に含まれるものとする。
基材フィルム12の高分子材料としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂,ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリプロピレン樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリシクロオレフィン樹脂,シクロオレフィンコポリマー樹脂などのポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂,ジアセチルセルロース樹脂などのセルロース系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。基材フィルム12の高分子材料は、これらのうちの1種のみで構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせで構成されていてもよい。これらのうちでは、光学特性や耐久性などの観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シクロオレフィンコポリマー樹脂、トリアセチルセルロース樹脂がより好ましい。
基材フィルム12は、上記高分子材料の1種または2種以上を含む層からなる単層で構成されていてもよいし、上記高分子材料の1種または2種以上を含む層と、この層とは異なる高分子材料の1種または2種以上を含む層など、2層以上の層で構成されていてもよい。
(ハードコート層)
ハードコート層14は、反射防止フィルム10の耐擦傷性の向上に寄与する。ハードコート層14は、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物を含む電離放射線硬化性組成物の硬化物より構成されている。電離放射線とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味する。電離放射線としては、紫外線(UV)、X線、γ線等の電磁波、電子線(EB)、α線、イオン線等の荷電粒子線などが挙げられる。これらのうちでは、生産性の観点から、紫外線(UV)が特に好ましい。以下、電離放射線硬化性組成物を、単に、硬化性組成物と称する場合がある。また、本明細書において「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイルおよびメタクリロイルの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリレート化合物」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマー、プレポリマーなどが挙げられる。以下、(メタ)アクリレート化合物を単に(メタ)アクリレートと称する場合がある。
(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレートであっても、多官能(メタ)アクリレートであってもよい。あるいは、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの組み合わせで構成されていてもよい。硬化性組成物は、(メタ)アクリレートとして、硬化性の向上等の観点から、多官能(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
(メタ)アクリレートとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうちでは、ウレタン(メタ)アクリレート、特にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ポリイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物と、必要に応じてポリオール化合物とを反応させて得られるものが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、およびこれらのヌレート変性体、アダクト変性体、ビウレット変性体などが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、およびこれらのポリオキシアルキレン変性体、ポリラクトン変性体などが挙げられる。ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロプレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビフェノール、ビスフェノール等が挙げられる。ハードコート層14を形成するための硬化性組成物が紫外線硬化性樹脂としてウレタン(メタ)アクリレートを含む場合には、ハードコート層14が適度な柔軟性を有するため、反射防止フィルム10の耐屈曲性が高くなり、フォルダブルディスプレイやローラブルディスプレイ等の繰り返し屈曲されるフレキシブルディスプレイに好適に用いることができる。また、例えば基材フィルム12がポリシクロオレフィンやシクロオレフィンコポリマーなどから形成され、比較的割れやすいものでも、基材フィルム12の割れを抑えやすい。
硬化性組成物を構成する(メタ)アクリレートとしてさらに、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート化合物が含有されることが好ましい。ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。特に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが硬化性組成物に含有されることが好ましい。
ハードコート層14を形成する硬化性組成物には、紫外線硬化性樹脂に加え、非紫外線硬化性樹脂が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。また、ハードコート層14を形成する硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれていてもよい。また、必要に応じ、硬化性組成物に一般に添加可能な添加剤などが含まれていてもよい。添加剤としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、防汚剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤、帯電防止剤、無機粒子、樹脂粒子などが挙げられる。また、必要に応じ、溶剤が含まれていてもよい。
非紫外線硬化性樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
光重合開始剤としては、アルキルフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系などの光重合開始剤が挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジルメチル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチルー6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾールー3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)などが挙げられる。光重合開始剤は、これらの1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされて用いられてもよい。
光重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の固形分全量基準で、0.1質量%以上10質量%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは1質量%以上であり、また5質量%以下である。
無機粒子および樹脂粒子は、例えばハードコート層14のブロッキングを防止する、ハードコート層14の屈折率を調整する、などの目的でハードコート層14に添加される。添加する無機粒子や樹脂粒子により、ハードコート層14に微細な表面凹凸を形成することで、高屈折率層16を形成する前の、基材フィルム12およびハードコート層14からなるハードコートフィルムを、ロール状に巻き付けた際に、表面と裏面が接着するブロッキングを抑えやすい。
ハードコート層14の屈折率を調整可能な無機粒子としては、チタン,ジルコニウム,スズ,亜鉛,ケイ素,ニオブ,アルミニウム,クロム,マグネシウム,ゲルマニウム,ガリウム,アンチモン,白金などの金属の酸化物からなる金属酸化物粒子が挙げられる。これらは、光学調整可能な無機粒子として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。これらのうちでは、高屈折率と透明性の両立に優れるなどの観点から、チタン酸化物,ジルコニウム酸化物が特に好ましい。また、樹脂粒子としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、セルロースなどの樹脂からなる樹脂粒子が挙げられる。これらは、樹脂粒子として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
ハードコート層14の厚みは、特に限定されるものではないが、十分な硬度を有するなどの観点から、0.5μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.75μm以上である。また、基材フィルム12との熱収縮差に起因するカールが抑えられやすいなどの観点から、20μm以下であることが好ましい。より好ましくは10μm以下である。ハードコート層14の厚みは、厚み方向において無機粒子や樹脂粒子に起因する凹凸のない部分における比較的平滑な部分の厚みである。
ハードコート層14の屈折率は、透明基材フィルム12とハードコート層14の屈折率差から生じる干渉ムラを抑制する観点から、1.49以上1.56以下の範囲内が好ましい。
ハードコート層14の表面凹凸が形成されている表面の算術平均粗さRaは、ブロッキング抑制などの観点から、0.3nm以上20nm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.5nm以上であり、また10nm以下である。
ハードコート層14を形成する硬化性組成物において用いられる溶剤としては、エタノール,イソプロピルアルコール(IPA),n-ブチルアルコール(NBA),エチレングリコールモノメチルエーテル(EGM),エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(IPG),プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM),ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール系溶剤や、メチルエチルケトン(MEK),メチルイソブチルケトン(MIBK),シクロヘキサノン,アセトンなどのケトン系溶剤、トルエン,キシレンなどの芳香族系溶剤、酢酸エチル(EtAc),酢酸プロピル,酢酸イソプロピル,酢酸ブチル(BuAc)などのエステル系溶剤、N-メチルピロリドン,アセトアミド,ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、溶剤として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
硬化性組成物の固形分濃度(溶剤以外の成分の濃度)は、塗工性、膜厚などを考慮して適宜定めればよい。例えば、1質量%以上90質量%以下、1.5質量%以上80質量%以下、2質量%以上70質量%以下などとすればよい。
(高屈折率層)
本実施形態に係る反射防止フィルム10において、ハードコート層14の面上には、高屈折率層16が設けられている。高屈折率層16をハードコート層14と低屈折率層18の間に設けることによって、反射防止フィルム10に、より高い反射防止効果を発現させる。高屈折率層16は、ハードコート層14および低屈折率層18よりも高い屈折率を有する層である。
高屈折率層16は、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物と、(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子と、を含有する電離放射線硬化性組成物の硬化物より構成される。上記でハードコート層について説明したとおり、電離放射線には、種々の電磁波および荷電粒子線が含まれるが、紫外線(UV)が特に好ましい。そして、(メタ)アクリレート化合物およびシランカップリング剤に含有される反応性基は、紫外線反応性であることが好ましい。
反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリレート化合物は、反応性基として、(メタ)アクリロイル基のみを有するものであっても、(メタ)アクリロイル基に加えて、別の反応性基を有するものであってもよい。
(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレートのみで構成されていてもよいし、多官能(メタ)アクリレートで構成されていてもよいし、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの組み合わせで構成されていてもよい。(メタ)アクリレートとしては、多官能(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、2-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート、四官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。より具体的には、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
反応性基を有する(メタ)アクリレートは1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。
多官能(メタ)アクリレートは、二量体を含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの二量体は硬化速度に優れ、硬化性組成物の硬化率を容易に上げることができるため、より耐擦傷性を向上させることができる。なかでも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの二量体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの二量体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
上記二量体の含有量は、耐擦傷性や透明性、溶剤への溶解性の観点から、(メタ)アクリレート化合物の固形分全量基準で、25質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは30質量%以上であり、また40質量%以下である。
酸化チタン粒子は、高屈折率層16の屈折率を高くするために用いられる。
酸化チタンの結晶構造としてはルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型などが知られているが、屈折率が高い、光触媒活性が低いなどの観点から、ルチル型が好ましい。光触媒活性が低い酸化チタン粒子を用いることで、光反応による高屈折率層16の変性を抑制することができる。
酸化チタン粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球状、針状、鱗片状、棒状、繊維状、不定形などであってもよい。酸化チタン粒子は、中実体であることが好ましい。
酸化チタン粒子は、(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理されている。シランカップリング剤で表面処理することで、酸化チタン粒子の光触媒活性をより効果的に抑えることができる。さらに、シランカップリング剤が、(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有することで、酸化チタン粒子が高屈折率層16に含まれる(メタ)アクリレートと強固に結合し、反射防止フィルムの耐擦傷性が向上する。シランカップリング剤は、一般に、ケイ素原子に結合されて、分子中に加水分解性基とそれ以外の官能基を有する。ここで、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応および/または縮合反応によってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基が挙げられる。加水分解性基が炭素原子を有する場合、その炭素数は6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。特に、炭素数4以下のアルコキシ基または炭素数4以下のアルケニルオキシ基が好ましい。加水分解性基が加水分解を受け、酸化チタン粒子の表面の酸素原子との間に結合を形成することで、酸化チタン粒子が表面処理される。
ここで用いられるシランカップリング剤は、上記加水分解性基以外に、(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を含むものである。反応性基としては、(メタ)アクリロイル基,ビニル基,スチリル基,アリル基などの炭素-炭素不飽和二重結合性基、エポキシ基,オキセタニル基等の開環重合性基等が挙げられる。これらの反応性基は、紫外線反応性を有する。反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物と反応性基を有するシランカップリング剤によって表面処理された酸化チタン粒子とを含有する高屈折率層16において、(メタ)アクリレート化合物の反応性基とシランカップリング剤の反応性基とが反応し、結合を形成する。
反応性基として炭素-炭素不飽和二重結合性基を有するシランカップリング剤としては、例えば、p-スチリルトリメトキシシラン、2―(アリルオキシメチル)アクリル酸(トリメトキシシリル)プロピル、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、7-オクテニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
反応性基として開環重合性基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらのうちでは、(メタ)アクリレート化合物との反応性の観点から、炭素-炭素不飽和二重結合性基が好ましく、中でも、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等、エチレン性炭素-炭素二重結合性基を有するシランカップリング剤が特に好ましい。
シランカップリング剤の含有量は、酸化チタン粒子100質量部に対し、1質量部以上40質量部以下の範囲とすることが好ましい。すると、シランカップリング剤による表面処理による効果を高められるとともに、高屈折率層16の耐擦傷性および屈折率を高く維持することができる。より好ましくは5質量部以上であり、また30質量部以下である。高屈折率層16中には、酸化チタン粒子に結合されていないシランカップリング剤が残存してもよく、ここに記載した好ましい含有量範囲は、それら酸化チタン粒子に結合されていないシランカップリング剤も含めて、シランカップリング剤全体としての含有量を指す。
また酸化チタン粒子においては、光触媒活性をより効果的に抑えるために、その粒子表面をシランカップリング剤以外の無機化合物で被覆したうえでシランカップリング剤による表面処理を行ったり、酸化チタンの結晶内部に異種金属を固溶させてもよい。被覆する無機化合物としては、例えば、亜鉛、セリウム、鉄、ケイ素、ジルコニウム、アルミニウムの酸化物または水酸化物などが挙げられる。結晶内部に固溶させる異種金属としては、例えば、スズ、コバルト、バナジウム、クロム、マンガン、銅、アンチモン、タングステン、白金、水銀、鉛、ビスマスなどが挙げられる。これらのうちでは、酸化チタン粒子の表面にアルミニウムの酸化物または水酸化物を被覆するのが好ましい。
高屈折率層16は、分散剤を含んでいてもよい。分散剤は、高屈折率層形成用組成物中で、酸化チタン粒子を分散した状態を維持(安定化)するのに寄与する。そして、高屈折率層16形成後の表面を平滑にして、反射防止フィルムの耐擦傷性や透明性を良好なものとすることができる。
分散剤の種類は特に限定されず、例えば、シラン系、チタネート系、ジルコアルミネート系等のカップリング剤、および金属キレート化物、金属アルコキシド等の有機金属化合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステル酸塩等の界面活性剤、あるいは市販の樹脂型分散剤等を添加しても良い。
分散剤の含有量は、シランカップリング剤100質量部に対し、15質量部以上75質量部以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは20質量部以上であり、また70質量部以下である。
シランカップリング剤と分散剤の合計量は、酸化チタン粒子100質量部に対し、10質量部以上40質量部の範囲とすることが好ましい。シランカップリング剤と分散剤との合計含有量が10質量部以上であると、上述のシランカップリング剤および分散剤の添加によってもたらされる効果を良好にすることができる。一方、その含有量を40質量部以下に抑えておくことで、高屈折率層16の耐擦傷性が低下したり、屈折率が低下して良好な反射防止効果を得にくくなる事態を抑制できる。この観点から、その含有量は、より好ましくは15質量部以上35質量部以下、さらに好ましくは15質量部以上30質量部以下の範囲である。
酸化チタン粒子の体積基準の平均粒子径(D50)は、20nm以上である。D50が20nm未満であると、高屈折率層16における粒子の分散性が悪くなる。すると、酸化チタン粒子の分散性向上のために、例えば多量の分散剤を組成物に添加する必要が生じる。その結果、高屈折率層16中の酸化チタン含有量を十分なものとすることができなくなり、高屈折率層16の耐擦傷性が低下したり、屈折率が低下して良好な反射防止効果を得にくくなったりする。この現象を抑制する観点から、D50は、20nm以上とされ、好ましくは25nm以上、より好ましくは30nm以上、特に好ましくは34nm以上である。なお、本明細書において、D10、D50、D90等、粒子径に関するパラメータは、体積基準の累積粒度分布における値を示すものとする。体積基準の累積粒度分布は、動的光散乱法により、取得することができる。また、粒径には、一次粒子径だけではなく、粒子の凝集体である二次粒子径も含む。
酸化チタン粒子の体積基準の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、100nm以下であることが好ましい。すると、後述する体積基準の累積90%粒子径(D90)を120nm以下としやすくなり、その結果、粒子径が高屈折率層16の膜厚より過度に大きくなることで表面の平滑性が低下し、反射防止フィルムの耐擦傷性や透明性が低下する事態を、抑制しやすくなる。この観点からD50は、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下である。
酸化チタン粒子の体積基準の累積90%粒子径(D90)は、120nm以下である。D90が120nmを超えると、粒子径の大きな酸化チタン粒子が高屈折率層16の表面に凹凸を形成することで平滑性が低下し、反射防止フィルムの耐擦傷性や透明性が低下するおそれがある。この現象を抑制する観点から、D90は、120nm以下とされ、好ましくは110nm以下、より好ましくは100nm以下である。
一方、酸化チタン粒子の体積基準の累積90%粒子径(D90)は、特に限定されないが、50nm以上であることが好ましい。D90が50nm以上であれば、D50を20nm以上に制御しやすくなり、高屈折率層16の耐擦傷性や反射防止性を良好なものとしやすい。この観点からD90は、より好ましくは55nm以上、さらに好ましくは60nm以上である。
酸化チタン粒子の体積基準の累積10%粒子径(D10)は、特に限定されないが、10nm以上40nm以下の範囲であることが好ましい。D10がこの範囲であれば、極小さな粒子が比較的少ないことから、酸化チタン粒子の分散性が高くなる。すると、酸化チタン粒子を多量の分散剤を必要とせずに分散させやすくなり、高屈折率層16中の酸化チタン含有量を十分なものとし、良好な耐擦傷性や反射防止性を得やすくなる。この観点からD10は、より好ましくは12nm以上、さらに好ましくは15nm以上であり、またより好ましくは35nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。
酸化チタン粒子の粒子径分布幅を表すPDIは、4.0以下であることが好ましい。ここで、PDIは(D90-D10)/D50で表される多分散性指数であり、この値が小さいほど粒子径が揃っていることを表す。PDIが4.0以下であると、酸化チタンの粒子径が揃っていることから、高屈折率層16の表面において平滑性が得やすくなる。この観点からPDIは、好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。PDIの下限は特に制限はないが、通常は1.5以上、あるいは2.0以上である。
高屈折率層16は、酸化チタン粒子に加え、酸化チタン以外の無機酸化物粒子を含んでいてもよい。
酸化チタン以外の無機酸化物粒子としては、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウム、カルシウム、鉄、銅、亜鉛、イットリウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、スズ、タンタル、タングステン、鉛、ビスマス、セリウム、アンチモンなどの金属の酸化物からなる金属酸化物粒子が挙げられる。これらの中では高屈折率や着色防止の観点から、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化スズ、酸化タングステン、酸化アンチモン粒子が好ましい。これらは、無機酸化物粒子として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。酸化チタン以外の無機酸化物粒子が、高屈折率化や耐擦傷性向上等、酸化チタン粒子が高屈折率層16において発揮する特性を著しく損なうことがないよう、酸化チタン以外の無機酸化物粒子は、上に酸化チタン粒子について好ましいものとして挙げたのと同様の粒度分布(D50、D90、D10、PDI)を有し、かつ高屈折率層16における含有量が酸化チタン粒子よりも少なく抑えられていることが好ましい。酸化チタン以外の無機酸化物粒子も、シランカップリング剤によって表面処理されていてもよい。
高屈折率層16の形成用組成物にシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子を添加するに際し、それら表面処理された酸化チタン粒子を溶剤中に分散させた粒子分散体としてから、高屈折率層形成用組成物に配合することが好ましい。この場合、粒子分散体には、シランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子のほか、酸化チタン粒子に結合していないシランカップリング剤、無機化合物、分散剤、その他の無機酸化物粒子を含んでいてもよい。表面処理された酸化チタン粒子を、(メタ)アクリレート化合物と配合する前に予め粒子分散体としておくことで、高屈折率層形成用組成物において、より効率的に、表面処理された酸化チタン粒子を分散させることができる。
高屈折率層形成用組成物に配合する粒子分散体において、固形分の合計100質量%に対するチタン原子の含有量は、35質量%以上であることが好ましい。チタン原子の含有量が35質量%以上であれば、高屈折率層16に含まれる酸化チタンの量を多くすることができ、高屈折率層16の屈折率を高くすることができる。この観点からチタン原子の含有量は、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上である。一方で、固形分の合計100質量%に対するチタン原子の含有量は、80質量%以下であることが好ましい。チタン原子の含有量が80質量%以下であれば、シランカップリング剤や分散剤の含有量を十分にすることができ、良好な粒子分散体を得ることができる。この観点からチタン原子の含有量は、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。また、チタン原子の含有量がここに挙げた範囲にある粒子分散体を用いれば、高屈折率層16全体における酸化チタン粒子の含有量を、下に述べる好適な範囲に収めやすい。粒子分散体において、固形分に占めるチタン原子の含有量は、エネルギー分散型X線分析装置を用いて元素含有量を測定することで、評価することができる。
粒子分散体において、酸化チタン粒子を分散させる分散媒として用いる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル(EGM)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(EGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのグリコールエステル系溶剤、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、アセトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、N-メチルピロリドン、アセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、溶剤として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
高屈折率層16全体における酸化チタン粒子の含有量は、高屈折率層16の固形分100質量%に対し45質量%以上80質量%以下であることが好ましい。高屈折率層16における酸化チタン粒子の含有量が、高屈折率層16の固形分100質量%に対し45質量%以上であると、高屈折率層16の屈折率を高めて反射防止性を良好なものとすることができる。また、この観点から、高屈折率層16における酸化チタン粒子の含有量は、高屈折率層16の固形分100質量%に対し、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。そして、高屈折率層16における酸化チタン粒子の含有量が、高屈折率層16の固形分100質量%に対し80質量%以下であると、耐擦傷性の低下が抑えられる。また、この観点から、高屈折率層16における酸化チタン粒子の含有量は高屈折率層16の固形分100質量%に対し、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは72質量%以下である。なお、ここでいう高屈折率層16の固形分とは、高屈折率層16において固定化されていない、常温において液状の成分を除く成分である。高屈折率層16の固形分としては、酸化チタン粒子、(メタ)アクリレート化合物、シランカップリング剤、分散剤、酸化チタン以外の無機酸化物粒子などが含まれる。溶剤などは含まれない。
高屈折率層16の屈折率は、ハードコート層14および低屈折率層18よりも高い限りにおいて、特に限定されないが、好ましくは波長550nmにおいて、1.83以上、2.00以下である。屈折率が1.83以上であると、後述する低屈折率層18の屈折率を極端に下げることなく反射防止フィルム10を低反射にすることができる。すると、低屈折率層18の組成を、屈折率が極端に低くはないが高い耐擦傷性を示すものとすることにより、反射防止フィルム10を良好な耐擦傷性を有するものとできる。高屈折率層16の屈折率は、より好ましくは1.85以上であり、さらに好ましくは1.87以上である。一方、高屈折率層16の屈折率が2.00以下であると、酸化チタン粒子を高屈折率層16に多量に含有させる必要がなくなることで、酸化チタン粒子の高屈折率層16からの脱落を抑制し、良好な耐擦傷性を得ることができる。上記観点から高屈折率層16の屈折率は、より好ましくは1.98以下であり、さらに好ましくは1.95以下である。本明細書において、特記しない限り、物質や物質層の屈折率は、波長550nmにおける値とする。
高屈折率層16の厚みは、好ましくは40nm以上120nm以下の範囲内である。この範囲内であると、他の層との界面で生じる光干渉効果から良好な低い視感度反射率を得ることができ、光の反射を軽減することができる。この観点から、高屈折率層16の厚みは、好ましくは50nm以上であり、さらに好ましくは60nm以上である。また、好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは80nm以下である。
高屈折率層16の表面における算術平均粗さSaは、耐擦傷性の観点から、好ましくは0.3nm以上10nm以下である。より好ましくは、Saは0.4nm以上であり、さらに好ましくは0.5nm以上である。また、より好ましくは、Saは7nm以下であり、さらに好ましくは3nm以下である。
高屈折率層16は、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物、反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子を含む組成物を用いて形成することができる。上記のとおり、表面処理された酸化チタン粒子は粒子分散体の形で組成物に添加することが好ましい。高屈折率層16において、電離放射線照射を経て、(メタ)アクリレート化合物どうし、表面処理された酸化チタン粒子どうし、また(メタ)アクリレート化合物と表面処理された酸化チタン粒子との間に、反応性基を介して結合が形成されることで、高屈折率層16が、高い耐擦傷性を有するものとなる。上記のとおり、(メタ)アクリレート化合物およびシランカップリング剤に含まれる反応性基は、紫外線反応性であることが好ましい。(メタ)アクリレート化合物および酸化チタン粒子が紫外線反応性の反応性基を有すると、(メタ)アクリレート化合物および表面処理された酸化チタン粒子を含む組成物より形成した高屈折率層16に対して紫外線照射を行うことで、高屈折率層16の耐擦傷性が向上し、反射防止フィルム10の耐擦傷性が向上する。
高屈折率層16には、必要に応じて、添加剤などが含まれていてもよい。このような添加剤としては、防汚剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤、屈折率調整剤などが挙げられる。
また、高屈折率層16の形成用組成物は、(メタ)アクリレート化合物が紫外線反応性の反応性基を有するものを含む場合(紫外線硬化性樹脂である場合)、光重合開始剤を含むことが好ましい。さらに高屈折率層16の形成用組成物は、必要に応じ、溶剤(酸化チタン粒子の粒子分散体において分散媒として用いられる溶剤とは別に添加される溶剤)を含んでいてもよい。高屈折率層16の(メタ)アクリレート化合物は、紫外線硬化性樹脂で構成されていてもよいし、非紫外線硬化性樹脂で構成されていてもよいし、紫外線硬化性樹脂と非紫外線硬化性樹脂の組み合わせで構成されていてもよい。
非紫外線硬化性樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
光重合開始剤としては、アルキルフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系などの光重合開始剤が挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジルメチル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチルー6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾールー3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)などが挙げられる。光重合開始剤は、これらの1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされて用いられてもよい。
光重合開始剤の含有量は、高屈折率層16の形成用組成物の固形分全量基準で、0.1質量%以上10質量%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは1質量%以上である、また5質量%以下である。
高屈折率層16の形成用組成物において用いられる溶剤としては、上に挙げた酸化チタン粒子の粒子分散体において分散媒として用いられる溶剤と同様のものを使用することができ、エチレングリコールモノメチルエーテル(EGM)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール系溶剤や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、アセトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、N-メチルピロリドン、アセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、溶剤として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
(低屈折率層)
本実施形態に係る反射防止フィルム10において、ハードコート層14の面上には、反射防止層として、低屈折率層18が設けられている。低屈折率層18は、ハードコート層14および高屈折率層16よりも低い屈折率を有するものであって、ハードコート層14および高屈折率層16との有意な屈折率差により反射防止効果を発現させる。
低屈折率層18は、その組成を特に限定されるものではないが、無機酸化物粒子、中空シリカ粒子、含フッ素化合物、バインダー樹脂を含有するものとすることが好ましい。低屈折率層18としては、例えば国際公開第2021/020504号に記載されているものを好適に適用することができる。
バインダー樹脂としては、低屈折率層18の耐擦傷性向上などの観点から、熱硬化性化合物の硬化物や紫外線硬化性化合物の硬化物などが好ましい。また、生産性などの観点から、紫外線硬化性化合物の硬化物がより好ましい。
紫外線硬化性樹脂としては、紫外線反応性の反応性基を有するモノマー,オリゴマー,プレポリマーなどが挙げられる。紫外線反応性の反応性基としては、アクリロイル基,メタクリロイル基,アリル基,ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合型の反応性基やオキセタニル基などのカチオン重合型の反応性基などが挙げられる。これらのうちでは、アクリロイル基,メタクリロイル基,オキセタニル基がより好ましく、アクリロイル基,メタクリロイル基が特に好ましい。すなわち、(メタ)アクリレートを用いることが特に好ましい。
(メタ)アクリレートとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリレートは、単官能(メタ)アクリレートのみで構成されていてもよいし、多官能(メタ)アクリレートで構成されていてもよいし、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの組み合わせで構成されていてもよい。(メタ)アクリレートとしては、多官能(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、2-ナフチルメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、二官能(メタ)アクリレート、三官能(メタ)アクリレート、四官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。より具体的には、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
紫外線硬化性樹脂は、上記する(メタ)アクリレートの1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。紫外線硬化性樹脂は、耐擦傷性の向上の観点から、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、また、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有率を大きくすることが好ましい。
また、多官能(メタ)アクリレートは、二量体を含むことが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの二量体は硬化速度に優れ、硬化性組成物の硬化率を容易に上げることができるため、より耐擦傷性を向上させることができる。なかでも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの二量体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、および、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの二量体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
上記二量体の含有量は、耐擦傷性や透明性、溶剤への溶解性の観点から、多官能(メタ)アクリレートの固形分全量基準で、25質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは30質量%以上であり、また40質量%以下である。
無機酸化物粒子は、低屈折率層18に含まれることで、低屈折率層18の表面に凸部を形成するものである。無機酸化物粒子によって低屈折率層18の表面に凸部が形成されることで、低屈折率層18は良好な耐擦傷性を有することができる。
無機酸化物粒子は、中実粒子であってもよいし、中空粒子であってもよい。無機酸化物粒子は、中実粒子であることが好ましい。中実粒子とは、粒子の内部に実質的に空洞を有していない粒子であり、空洞の割合が中実粒子の体積の5%未満である粒子をいう。中空粒子は、粒子の内部に空洞を有している粒子であり、空洞の割合が中空粒子の体積の5%以上である粒子をいう。無機酸化物粒子が中実粒子であると、低屈折率層18の耐擦傷性が向上し、反射防止フィルム10の耐擦傷性が向上する。無機酸化物粒子が中空粒子であると、低屈折率層18の屈折率を低くして、光の反射を低減することができる。中空粒子において、空洞の割合は、中空粒子の体積の10%以上80%以下であることが好ましい。空洞の割合が10%以上であると、屈折率を低くして光の反射を低減することができる。より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。一方、空洞の割合が80%以下であると、無機酸化物粒子の分散性の低下を抑えることができる。より好ましくは60%以下である。
無機酸化物粒子としては、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウム、カルシウムなどの金属の酸化物からなる金属酸化物粒子が挙げられる。これらは、無機酸化物粒子として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。これらのうちでは、屈折率が低く透明性に優れる、硬度が高いなどの観点から、シリカ粒子、アルミナ粒子が好ましく、アルミナ粒子が特に好ましい。
無機酸化物粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球状、針状、鱗片状、棒状、繊維状、不定形などであってもよい。これらのうちでは、球状であることが好ましい。
無機酸化物粒子は、低屈折率層18の表面に凸部を形成し、良好な耐擦傷性を得るために、無機酸化物粒子の平均粒子径rと低屈折率層18の平均厚みdの差(r-d)が、10nm以上であるとよい。差(r-d)は、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは18nm以上である。一方、形成される凸部の高さを抑えて透明性を維持するなどの観点から、差(r-d)は、300nm以下である。より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
無機酸化物粒子の平均粒子径rは、低屈折率層18の平均厚みdにもよるが、60nm以上400nm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは70nm以上、さらに好ましくは90nm以上である。また、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。無機酸化物粒子の平均粒子径rは、JIS Z8825に従うレーザー回折・散乱法により得られる体積基準の平均算術値であって、一次粒子径だけではなく、粒子の凝集体である二次粒子径も含む。
低屈折率層18における無機酸化物粒子の含有量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し0.1質量%以上4.0質量%以下であるとよい。低屈折率層18における無機酸化物粒子の含有量が低屈折率層18の固形分100質量%に対し0.1質量%以上であると、優れた耐擦傷性を得ることができる。また、この観点から、低屈折率層18における無機酸化物粒子の含有量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上である。そして、低屈折率層18における無機酸化物粒子の含有量が低屈折率層18の固形分100質量%に対し4.0質量%以下であると、高い透明性を得ることができる。また、この観点から、低屈折率層18における無機酸化物粒子の含有量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し、より好ましくは3.5質量%以下、さらに好ましくは3.2質量%以下である。なお、ここでいう低屈折率層18の固形分とは、低屈折率層18においてバインダー樹脂に固定化されていない、常温において液状の成分を除く成分である。低屈折率層18の固形分としては、無機酸化物粒子、中空シリカ粒子、バインダー樹脂、バインダー樹脂に固定化された含フッ素化合物などが含まれる。添加剤としてのオイル成分やバインダー樹脂に固定化されていない界面活性剤などは含まれない。
中空シリカ粒子は、低屈折率層18の平均厚さよりも平均粒子径の小さい粒子である。中空シリカ粒子は、低屈折率層18の表面に凸部を形成する無機酸化物粒子よりも平均粒子径の小さい粒子であるとよい。中空シリカ粒子は、低屈折率層18の表面凹凸の形成に実質的に寄与しない粒子である。中空シリカ粒子は、粒子の内部に空洞を有している粒子であり、空洞の割合が体積の5%以上である粒子をいう。中空とは、外殻とその内部の空洞からなるシェル構造のものや、多数の空洞を有する多孔質構造のものなどをいう。中空シリカ粒子は、中空構造であることで、低屈折率層18の屈折率を低くして、光の反射を低減させることができる。中空シリカ粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状、紡錘状、卵状、平板状、立方体状、不定形などが好ましい。これらのうちでは、球状、平板状、立方体状などが特に好ましい。
中空シリカ粒子において、空洞の割合は、体積の10%以上80%以下であることが好ましい。空洞の割合が体積の10%以上であると、屈折率を低くして光の反射を低減することができる。より好ましくは体積の20%以上、さらに好ましくは体積の30%以上である。一方、空洞の割合が体積の80%以下であると、中空シリカ粒子の分散性の低下を抑えることができる。より好ましくは体積の60%以下である。
中空シリカ粒子の平均粒子径は、低屈折率層18の平均厚みにもよるが、5nm以上100nm以下であることが好ましい。より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは40nm以上である。また、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは70nm以下である。中空シリカ粒子の平均粒子径がこれら好ましい範囲内であると、低屈折率層18の優れた反射防止効果と透明性を得ることができる。平均粒子径は、JIS Z8825に従うレーザー回折・散乱法により得られる体積基準の平均算術値である。一次粒子径だけではなく、粒子の凝集体である二次粒子径も含む。
中空シリカ粒子の屈折率は、1.01以上1.45以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.15以上1.38以下の範囲内、さらに好ましくは1.15以上1.35以下の範囲内である。中空シリカ粒子の屈折率がこの範囲内であると、優れた反射防止効果が得られる。
低屈折率層18における中空シリカ粒子の含有量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し6.0質量%以上49.9質量%以下であるとよい。低屈折率層18における中空シリカ粒子の含有量が低屈折率層18の固形分100質量%に対し6.0質量%であると、優れた反射防止性を得ることができる。また、この観点から、低屈折率層18における中空シリカ粒子の含有量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。そして、低屈折率層18における中空シリカ粒子の含有量が低屈折率層18の固形分100質量%に対し49.9質量%以下であると、耐擦傷性の低下が抑えられる。また、この観点から、低屈折率層18における中空シリカ粒子の含有量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
そして、低屈折率層18における無機酸化物粒子と中空シリカ粒子の合計量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し10質量%以上50質量%以下であるとよい。低屈折率層18における無機酸化物粒子と中空シリカ粒子の合計量が低屈折率層18の固形分100質量%に対し10質量%以上であると、優れた耐擦傷性を得ることができる。また、この観点から、低屈折率層18における無機酸化物粒子と中空シリカ粒子の合計量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。一方、低屈折率層18における無機酸化物粒子と中空シリカ粒子の合計量が低屈折率層18の固形分100質量%に対し50質量%以下であると、低屈折率層18に無機酸化物粒子と中空シリカ粒子を十分に保持することができるため、優れた耐擦傷性を得ることができる。また、この観点から、低屈折率層18における無機酸化物粒子と中空シリカ粒子の合計量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し、より好ましくは48質量%以下、さらに好ましくは46質量%以下、特に好ましくは43質量%以下である。
含フッ素化合物は、防汚剤として機能することができる。また、低屈折率層18の表面の滑り性が向上するため、耐擦傷性の向上に寄与することができる。含フッ素化合物としては、パーフルオロアルキル基を含有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。このような化合物としては、信越化学工業製「KY-1203」、DIC製「メガファックRS-75」、ダイキン工業製「オプツールDAC-HP」、ネオス製「フタージェント601AD」などが挙げられる。このような含フッ素化合物により、汚れや指紋の付着を抑え、汚れや指紋の除去を容易にすることができる。
低屈折率層18における含フッ素化合物の含有量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し1.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。低屈折率層18における含フッ素化合物の含有量が低屈折率層18の固形分100質量%に対し1.0質量%以上であると、低屈折率層18の表面の滑り性が向上し、耐擦傷性が向上する。また、防汚性が向上する。そして、この観点から、低屈折率層18における含フッ素化合物の含有量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上である。そして、低屈折率層18における含フッ素化合物の含有量が低屈折率層18の固形分100質量%に対し15.0質量%以下であると、耐擦傷性の低下が抑えられる。また、この観点から、低屈折率層18における含フッ素化合物の含有量は、低屈折率層18の固形分100質量%に対し、より好ましくは13.0質量%以下、さらに好ましくは10.0質量%以下、特に好ましくは5.0質量%以下である。
低屈折率層18の屈折率は、ハードコート層14および高屈折率層16より低い限りにおいて特に限定されないが、好ましくは1.35以上、1.49以下である。屈折率が1.35以上であると、低屈折率層18の強度を十分なものとすることができ、良好な耐擦傷性を得ることができる。一方、屈折率が1.49以下であると、反射防止フィルムをより低反射率化することができる。上記観点から低屈折率層18の屈折率は、より好ましくは1.38以上、1.46以下であり、さらに好ましくは1.40以上、1.44以下である。
低屈折率層18の厚みは、好ましくは80nm以上110nm以下の範囲内である。より好ましくは85nm以上、さらに好ましくは90nm以上である。また、より好ましくは105nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。この範囲内であると、良好な低い視感度反射率を得ることができ、光の反射を軽減することができる。
低屈折率層18は、無機酸化物粒子、中空シリカ粒子、含フッ素化合物、バインダー樹脂を含む組成物を用いて形成することができる。含フッ素化合物およびバインダー樹脂は、紫外線反応性の反応性基を有することが好ましい。紫外線反応性の反応性基としては、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。含フッ素化合物およびバインダー樹脂が紫外線反応性の反応性基を有すると、低屈折率層18の耐擦傷性が向上し、反射防止フィルム10の耐擦傷性が向上する。低屈折率層18の形成用組成物は、バインダー樹脂が紫外線反応性の反応性基を有するもの(紫外線硬化性樹脂)を含む場合、光重合開始剤を含むことが好ましい。低屈折率層18の形成用組成物には、必要に応じ、溶剤が含まれていてもよい。低屈折率層18のバインダー樹脂は、紫外線硬化性樹脂で構成されていてもよいし、非紫外線硬化性樹脂で構成されていてもよいし、紫外線硬化性樹脂と非紫外線硬化性樹脂の組み合わせで構成されていてもよい。
非紫外線硬化性樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
光重合開始剤としては、アルキルフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系などの光重合開始剤が挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジルメチル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチルー6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾールー3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)などが挙げられる。光重合開始剤は、これらの1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わされて用いられてもよい。
光重合開始剤の含有量は、低屈折率層18の形成用組成物の固形分全量基準で、0.1質量%以上10質量%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは1質量%以上であり、また5質量%以下である。
低屈折率層18の形成用組成物において用いられる溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(EGM)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール系溶剤や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、アセトンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、N-メチルピロリドン、アセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤などが挙げられる。これらは、溶剤として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
他に、低屈折率層18には、必要に応じて、添加剤などが含まれていてもよい。このような添加剤としては、防汚剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、搖変剤、抗菌剤、難燃剤、スリップ剤、屈折率調整剤などが挙げられる。
(反射防止フィルムの製造方法)
反射防止フィルム10を製造するには、まず、基材フィルム12の面上にハードコート層14を形成する組成物を塗工し、必要に応じて乾燥後、紫外線等の電離放射線照射により硬化させて、基材フィルム12の面上にハードコート層14を形成する。その後、ハードコート層14の面上に高屈折率層16を形成する組成物を塗工し、必要に応じて乾燥後、紫外線等の電離放射線線照射により硬化させて、ハードコート層14の面上に高屈折率層16を形成する。さらに高屈折率層16の面上に低屈折率層18を形成する組成物を塗工し、必要に応じて乾燥後、紫外線等の電離放射線照射により硬化させて、高屈折率層16の面上に低屈折率層18を形成する。これらの工程を経ることにより、反射防止フィルム10を製造することができる。
基材フィルム12の面上にハードコート層14を形成する際、基材フィルム12とハードコート層14の密着性を向上させるために、基材フィルム12の表面には、塗工前に表面処理が施されてもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理などが挙げられる。
ハードコート層14を形成する組成物、高屈折率層16を形成する組成物、低屈折率層18を形成する組成物の塗工には、例えば、リバースグラビアコート法,ダイレクトグラビアコート法,ダイコート法,バーコート法,ワイヤーバーコート法,ロールコート法,スピンコート法,ディップコート法,スプレーコート法,ナイフコート法,キスコート法などの各種コーティング法や、インクジェット法、オフセット印刷,スクリーン印刷,フレキソ印刷などの各種印刷法を用いて行うことができる。
各層に対する乾燥工程は、塗工液に用いた溶剤等を除去できれば特に限定されるものではないが、50~150℃の温度で10秒~180秒程度行うことが好ましい。
各層に対する紫外線照射には、高圧水銀ランプ、無電極(マイクロ波方式)ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、その他任意の紫外線照射装置を用いることができる。紫外線照射は、必要に応じて、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。紫外線照射量は、特に限定されるものではないが、50~800mJ/cmが好ましく、100~300mJ/cmがより好ましい。
(反射防止フィルムの特性)
反射防止フィルム10の表面、つまり低屈折率層18の表面における算術平均粗さSaは、良好な指滑り性と耐擦傷性の観点から、好ましくは1.0nm以上20nm以下である。より好ましくは3.0nm以上、さらに好ましくは5.0nm以上である。また、より好ましくは15nm以下、さらに好ましくは10nmである。
反射防止フィルム10におけるヘイズは、良好な透明性などの観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下である。
反射防止フィルム10における視感度反射率は、低いほど好ましいが、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.4%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。
以上の構成の反射防止フィルム10は、基材フィルム12と、前記基材フィルム12の面上に形成されたハードコート層14と、前記ハードコート層14の面上に形成された高屈折率層16と、前記高屈折率層16の面上に形成された低屈折率層18と、を有し、前記高屈折率層16は、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物と、反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子と、を含有する電離放射線硬化性組成物の硬化物より構成され、前記酸化チタン粒子の体積基準の平均粒子径(D50)は20nm以上であり、体積基準の累積90%粒子径(D90)は120nm以下であることから、高い反射防止性、優れた耐擦傷性を備える。高屈折率層16に含有される酸化チタン粒子が、上記のとおり表面修飾されているとともに、所定の粒度分布を有することが、反射防止フィルム10における反射防止性および耐擦傷性の向上に寄与する。なお、特許文献1でも、高屈折率層16に酸化チタン微粒子が含有されているが、その酸化チタン微粒子における表面修飾の有無や粒度分布は明らかではない。
<他の形態の反射防止フィルム>
本発明に係る反射防止フィルムは、上記のとおり、基材フィルム10の面上に、ハードコート層14と、所定の組成を有する高屈折率層16と、低屈折率層18がこの順に積層されたものであれば、上記第一実施形態に係る反射防止フィルム10の構成に限定されるものではない。以下に、本発明に係る反射防止フィルムの他の実施形態について例示する。
(第二実施形態)
図2には、第二実施形態に係る反射防止フィルム20を示している。第二実施形態に係る反射防止フィルム20は、基材フィルム12と、基材フィルム12の面上に形成されたハードコート層14と、ハードコート層14の面上に形成された中屈折率層15と、中屈折率層15の面上に形成された高屈折率層16と、高屈折率層16の面上に形成された低屈折率層18と、を有する。反射防止フィルム20は、基材フィルム12側から順に、基材フィルム12、ハードコート層14、中屈折率層15、高屈折率層16、低屈折率層18を有している。
第二実施形態に係る反射防止フィルム20は、第一実施形態に係る反射防止フィルム10と比較して、ハードコート層14と高屈折率層16の間に中屈折率層15を有している点が相違し、これ以外については第一実施形態に係る反射防止フィルム10と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
中屈折率層15は、高屈折率層16との有意な屈折率差、および低屈折率層との有意な屈折率差により、より高い反射防止効果を発現させるための層である。中屈折率層15の屈折率は、ハードコート層14よりも高く、かつ、高屈折率層16よりも低い。さらに、低屈折率層18よりも高いことが好ましい。
中屈折率層15の屈折率は、波長550nmにおいて、好ましくは1.56以上1.85以下の範囲内である。より好ましくは1.60以上、さらに好ましくは1.65以上である。また、より好ましくは1.80以下、さらに好ましくは1.75以下である。中屈折率層15の屈折率が上記範囲内であると、中屈折率層15と他の層との屈折率差から生じる干渉のバランスを適したものとすることができ、より高い反射防止効果を得ることができる。
中屈折率層15の厚みは、好ましくは30nm以上120nm以下の範囲内である。より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは70nm以上である。また、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。中屈折率層15の厚みを上記範囲とすることで、反射防止機能をさらに高めることができる。
中屈折率層15の構成材料は特に制限されず、所定の屈折率が得られるように、従来より反射防止フィルム等に用いられる公知のものを用いればよい。例えば、ハードコート層14において使用可能な材料として上記で説明した材料から適宜選択すればよい。また、高屈折率層16において使用可能な材料として上記で説明した材料から適宜選択してもよい。中屈折率層15の屈折率は、バインダー樹脂、無機酸化物粒子、樹脂粒子の選択、配合量などにより調整することができる。例えば、酸化チタン粒子等の無機酸化物粒子の含有量を高屈折率層16よりも少なくすることで、高屈折率層16よりも屈折率の低い中屈折率層15を形成することができる。
(第三実施形態)
図3には、第三実施形態に係る反射防止フィルム30を示している。第三実施形態に係る反射防止フィルム30は、基材フィルム12と、基材フィルム12の一方の面上に形成されたハードコート層14と、ハードコート層14の面上に形成された高屈折率層16と、高屈折率層16の面上に形成された低屈折率層18と、を有する。また、基材フィルム12の他方の面上に透明粘着層22を有する。透明粘着層22の面上には、必要に応じて離型フィルム24が配置される。離型フィルム24は、反射防止フィルム30の使用前に透明粘着層22の保護層として機能し、反射防止フィルム30の使用時には、透明粘着層22から剥がされる。
第三実施形態に係る反射防止フィルム30は、第一実施形態に係る反射防止フィルム10と比較して、基材フィルム12の他方の面上に透明粘着層22を有する点が相違し、これ以外については第一実施形態に係る反射防止フィルム10と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
透明粘着層22は、反射防止フィルム30をディスプレイ等の表面に密着性良く貼り付けるためのものである。また、反射防止フィルム30は、透明粘着層22を有することで、ディスプレイ等のガラスの飛散を防止する効果を有する。すなわち、反射防止フィルム30は、飛散防止フィルムとしての機能も有する。
透明粘着層22を形成する粘着剤組成物は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などの公知の粘着性樹脂を含有することができる。中でも、光学的な透明性や耐熱性の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤組成物は、透明粘着層22の凝集力を高めるために、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤などが挙げられる。
粘着剤組成物は、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、可塑剤、シランカップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、充填剤、硬化促進剤、硬化遅延剤などの公知の添加剤が挙げられる。また、生産性などの観点から、有機溶剤を使用して希釈してもよい。
透明粘着層22の厚みは、特に限定されるものではないが、5μm以上100μm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは10μm以上であり、また50μm以下である。
透明粘着層22は、基材フィルム12の他方の面上に粘着剤組成物を直接塗布して形成する方法、離型フィルム24の面上に粘着剤組成物を塗布して形成した後、基材フィルム12の他方の面上に転写する方法、第一の離型フィルムの面上に粘着剤組成物を塗布して形成した後、第二の離型フィルムを貼り合わせ、いずれか一方の離型フィルムを剥離して基材フィルム12の他方の面上に転写する方法などにより形成することができる。
透明粘着層22は、ガラスの飛散防止効果の観点から、ガラスに対する粘着力が、4N/25mm以上であることが好ましい。より好ましくは6N/25mm以上、さらに好ましくは10N/25mm以上である。
(第四実施形態)
図4には、第四実施形態に係る反射防止フィルム40を示している。第四実施形態に係る反射防止フィルム40は、基材フィルム12と、基材フィルム12の一方の面上に形成されたハードコート層14とハードコート層14の面上に形成された高屈折率層16と、高屈折率層16の面上に形成された低屈折率層18と、低屈折率層18の面上に粘着剤層26を介して配置された保護フィルム28と、を有する。
第四実施形態に係る反射防止フィルム40は、第一実施形態に係る反射防止フィルム10と比較して、低屈折率層18の面上に粘着剤層26を介して保護フィルム28を有する点が相違し、これ以外については第一実施形態に係る反射防止フィルム10と同様であり、同様の構成についてはその説明を省略する。
保護フィルム28は、例えばロールプロセスなどで連続加工したりディスプレイ等に貼り合わせられたりするなどの取扱い時において、低屈折率層18の表面に傷が付くのを抑えることができるものである。保護フィルム28は、粘着剤層26を介して低屈折率層18の面に貼り付けられている。保護フィルム28は、加工後などにおいては、粘着剤層26とともに低屈折率層18の面から剥がされる。このため、粘着剤層26は、低屈折率層18と粘着剤層26の間の接着力よりも保護フィルム28と粘着剤層26の間の接着力のほうが強く、低屈折率層18と粘着剤層26の間で界面剥離可能な接着力に調整される。
保護フィルム28を構成する材料は、基材フィルム12を構成する材料として例示したものなどを適宜選択することができる。保護フィルム28の厚みは、特に限定されるものではないが、2μm以上500μm以下の範囲内、2μm以上200μm以下の範囲内とすることができる。
粘着剤層26を形成する粘着剤は、特に限定されるものではなく、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などを好適に用いることができる。特に、アクリル系粘着剤は、透明性や耐熱性に優れるため、好適である。アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル重合体および架橋剤を含む粘着剤組成物から形成されることが好ましい。
(メタ)アクリル重合体は、(メタ)アクリルモノマーの単独重合体もしくは共重合体である。(メタ)アクリルモノマーとしては、アルキル基含有(メタ)アクリルモノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーなどが挙げられる。
アルキル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、炭素数2~30のアルキル基を有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。炭素数2~30のアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいし、環状であってもよい。アルキル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、より具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチルなどが挙げられる。
カルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチルなどが挙げられる。カルボキシル基は、アルキル鎖の末端に位置していてもよいし、アルキル鎖の中間に位置していてもよい。
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどが挙げられる。水酸基は、アルキル鎖の末端に位置していてもよいし、アルキル鎖の中間に位置していてもよい。
(メタ)アクリル重合体を形成する(メタ)アクリルモノマーは、上記のいずれか1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤などが挙げられる。架橋剤は、これらの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤組成物には、(メタ)アクリル重合体、架橋剤以外に、その他添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、架橋促進剤、架橋遅延剤、粘着性付与樹脂(タッキファイヤー)、帯電防止剤、シランカップリング剤、可塑剤、剥離助剤、顔料、染料、湿潤剤、増粘剤、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、金属不活性剤、アルキル化剤、難燃剤などが挙げられる。これらは粘着剤の用途や使用目的に応じて、適宜選択して使用される。
粘着剤層26の厚みは、特に限定されるものではないが、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは2μm以上であり、また7μm以下である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
例えば上記実施形態では、基材フィルム12の表面に表面処理を施してもよい記載をしているが、表面処理に代えて、基材フィルム12の表面に、易接着層を設ける構成であってもよい。
他に、上記各実施形態において、低屈折率層18の表面には、防汚性をさらに高めるために、防汚層を形成してもよい。
反射防止フィルム20の表面に防汚層を設ける場合は、界面での反射を低減する観点から、低屈折率層18と防汚層との屈折率差が小さいことが好ましい。防汚層の屈折率は、1.6以下が好ましく、1.55以下がより好ましい。防汚層の材料としては、フッ素基含有のシラン系化合物や、フッ素基含有の有機化合物等が好ましい。防汚層は、リバースコート法、ダイコート法、グラビアコート法等のウエット法や、真空蒸着法、CVD法等のドライプロセスにより形成できる。防汚層の厚みは、通常、1nm以上50nm以下程度であり、好ましくは2nm以上30nm以下、より好ましくは3nm以上20nm以下である。また、防汚層を形成する前に、表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線処理などが挙げられる。
そして、上記第三実施形態における透明粘着層22および離型フィルム24は、図3に示すように、図1に示す第一実施形態の反射防止フィルム10に追加する形で示しているが、図2に示す第二実施形態の反射防止フィルム20に追加する形であってもよい。また、上記第四実施形態における粘着剤層26および保護フィルム28は、図4に示すように、図1に示す第一実施形態の反射防止フィルム10に追加する形で示しているが、図2に示す第二実施形態の反射防止フィルム20や、図3に示す第三実施形態の反射防止フィルム30に追加する形であってもよい。
そして、基材フィルム12の表面には、各層を形成する前に、ガスバリア性向上層、帯電防止層、オリゴマーブロック層などの各種機能層を予め設けてもよい。
帯電防止層は、剥離帯電や摩擦帯電による周囲のゴミ等の付着を軽減する等の目的で設けられる。帯電防止層は、帯電防止剤を含有する帯電防止層形成用組成物からなる層であることが好ましい。
帯電防止剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩,ピリジウム塩等のカチオン性帯電防止剤、スルホン酸,リン酸,カルボン酸等のアルカリ金属塩等のアニオン性帯電防止剤、アミノ酸系,アミノ酸硫酸エステル系等の両性帯電防止剤、アミノアルコール系,グリセリン系,ポリエチレングリコール系等のノニオン性帯電防止剤、イオン性化合物、ポリアセチレン系,ポリチオフェン系等の導電性ポリマー、金属酸化物粒子やカーボンナノチューブ等の導電性粒子、導電性繊維等が挙げられる。これらの中でも、湿度依存性が少ない、帯電防止層からのブリードアウトを防止する等の観点から、ポリアセチレン、ポリチオフェン等の導電性ポリマーにドーパントを組み合わせた帯電防止剤、金属粒子、金属酸化物粒子が好ましい。
帯電防止剤を構成する上記導電性ポリマーとしては、具体的には、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(1,6-ヘプタジイン)、ポリビフェニレン(ポリパラフェニレン)、ポリパラフィニレンスルフィド、ポリフェニルアセチレン、ポリ(2,5-チエニレン)、又は、これらの誘導体等の導電性高分子が挙げられ、好ましくは、ポリチオフェン系の導電性有機ポリマー(例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等)が挙げられる。これらは帯電防止剤として1種単独で用いられてもよいし、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
帯電防止剤の含有量は、帯電防止層形成用組成物の固形分全量基準で、1質量%以上50質量%以下の範囲とすることが好ましい。含有量が1質量%以上であれば、良好なな帯電防止性を付与することができる。より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。一方、その含有量が50質量%以下であれば、全光線透過率が良好な高透明の膜を得ることができる。より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
帯電防止層は、バインダー樹脂を含んでいてもよい。バインダー樹脂としては、帯電防止剤と相溶又は混合分散可能であれば、特に限定されず、硬化性樹脂でも、熱可塑性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、又は、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド樹脂、又は、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド樹脂、又は、ポリフッ化ビニリデン、又は、アクリル樹脂、又は、ポリビニルアルコール等のビニル樹脂、又は、ウレタン樹脂などを挙げることができる。
硬化性樹脂としては、ハードコート層14を形成する際にに用いる材料と同様の材料を用いることができる。
帯電防止層の厚みは、帯電を防止する観点から、好ましくは1nm以上5μm以下である。より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは30nm以上である。また、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは300nm以下である。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。以下、特記しない限り、試料の作製および評価は、室温、大気中において行っている。
<ハードコート層形成用組成物の調製>
紫外線硬化性組成物「ルクシディアESS-620」(DIC製、ウレタンアクリレート樹脂、溶剤:酢酸エチル、固形分濃度:79質量%)に、光重合開始剤「Omnirad127」(IGM Resins B.V.製、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)を、ハードコート層形成用組成物全量に対し3質量%となるように加え、さらに、固形分濃度が45質量%となるように酢酸エチルを加えて、ハードコート層形成用組成物を調製した。
<中屈折率層形成用組成物の調製>
全固形分中の濃度で、紫外線硬化性樹脂46質量%、酸化チタン粒子分散体55質量%、光重合開始剤4質量%となるように、各成分を配合し、溶剤(PGM)を用いて固形分濃度3.9質量%に調整することにより、中屈折率層形成用組成物を調製した。
中屈折率層形成用組成物の構成成分として用いた材料は以下の通りである。
・紫外線硬化性樹脂-東亞合成製「アロニックスMT-3041」、多官能アクリレート、固形分濃度:100質量%
・酸化チタン粒子分散体1-石原産業製「LDB-102-45」、メタクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子および分散剤を含有、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、固形分濃度:45質量%
・光重合開始剤-上記「Omnirad127」
<高屈折率層形成用組成物の調製>
表2に記載の配合組成(単位:全固形分中の質量%)となるように各成分を配合し、さらに、表2に記載の固形分濃度となるようにPGMを加えて、高屈折率層形成用組成物を調製した。
高屈折率層形成用組成物の構成成分として用いた材料は以下の通りである。
酸化チタン粒子はいずれもルチル型である。
・紫外線硬化性樹脂-上記「アロニックスMT-3041」
・酸化チタン粒子分散体1-上記「LDB-102-45」
・酸化チタン粒子分散体2-石原産業製「LDB-102H-35」、メタクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子および分散剤を含有、溶剤:PGM、固形分濃度:35質量%
・酸化チタン粒子分散体3-石原産業製「LDB-014」、メタクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子および分散剤を含有、溶剤:PGM、固形分濃度:20質量%
・酸化チタン粒子分散体4-CIKナノテック製「RTTPGM20WT%-H30」、酸化チタン粒子および添加剤を含有、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、固形分濃度:20質量%
・酸化チタン粒子分散体5-日揮触媒化成製「ELCOM TGX-21A」、メタクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子、酸化スズ粒子、酸化ジルコニウム粒子を含有、溶剤:PGM、固形分濃度:20質量%
・酸化チタン粒子分散体6-テイカ製「NS446」、酸化チタン粒子、酸化スズ粒子、酸化ジルコニウム粒子、アミンを含有、溶剤:PGMEA、固形分濃度:36質量%
・酸化チタン粒子分散体7-下記酸化チタン粒子分散体8と、上記酸化チタン粒子分散体1とを、質量比1:74で混合したもの、固形分濃度:45質量%。
酸化チタン粒子分散体8は、酸化チタン粒子「SA-100」(テイカ製)と、2種の分散剤を含有する。分散剤としては、「SNディスパーサント9228」(サンノプコ製、多価アルコール型非イオン性界面活性剤)、および「SNスパース70」(サンノプコ製、非イオン性界面活性剤、脂肪族アミド系界面活性剤、ジエタノールアミン)を、SA-100の100質量部に対しそれぞれ1質量部添加し、さらに、溶剤(PGM)を用いて固形分濃度37質量%に調整して、ホモジナイザーを用いて分散処理(1000rpm、10分)した。
・光重合開始剤-上記「Omnirad127」
酸化チタン粒子分散体1~7の、反応性基含有シランカップリング剤(SCA)による表面修飾の有無、粒子径、および各成分の含有量(単位:質量%)については、評価を行っている。それらの評価方法および評価結果について、後にまとめて示す。
<低屈折率層形成用組成物の調製>
全固形分中の質量%で、紫外線硬化性樹脂47.1質量%、アルミナゾル3.5質量%、含フッ素化合物8.2質量%、中空シリカ粒子35.8質量%、光重合開始剤5.3質量%となるように、各成分を配合し、さらに、溶剤(MEK/PGM=1/3)を用いて固形分濃度3質量%に調整することにより、低屈折率層形成用組成物を調製した。
低屈折率層形成用組成物の構成成分として用いた材料は以下の通りである。
・紫外線硬化性樹脂-上記「アロニックスMT-3041」
・アルミナゾル-トーヨーケム製「リオデュラスKT-110AL」、アルミナ粒子(平均粒子径:110nm)25質量%、感光性モノマーおよび樹脂15質量%、溶剤(MEK、シクロヘキサノン、脂肪族系溶剤)
・含フッ素化合物-信越化学工業製「KY-1203」、パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート、溶剤:MIBK、固形分濃度:20質量%
・中空シリカ粒子-日揮触媒化成工業製「スルーリア4320」、平均粒子径:60nm、溶剤:MIBK、固形分濃度:20質量%
・光重合開始剤-上記「Omnirad127」
<ハードコート層の作製>
実施例1~3および比較例1~5のそれぞれについて、基材フィルム(東レ製「ルミラー#50-U403」、ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み50μm)に、#4のワイヤーバーを用いて、ハードコート層形成用組成物を塗布した。80℃×3分で乾燥後、無電極(マイクロ波式)ランプを用いて光量80mJ/cmの紫外線を照射してハードコート層を形成した。
<中屈折率層の作製>
実施例1~3および比較例1~5のそれぞれについて、ハードコート層の面上に、中屈折率層形成用組成物を、#4のワイヤーバーを用いて塗布し、80℃×60秒で乾燥後、無電極(マイクロ波式)ランプを用いて光量150mJ/cmの紫外線を照射して中屈折率層を形成した。
<高屈折率層の作製>
実施例1~3および比較例1~5のそれぞれについて、中屈折率層の面上に、高屈折率層形成用組成物を、#4のワイヤーバーを用いて塗布し、80℃×60秒で乾燥後、無電極(マイクロ波式)ランプを用いて光量150mJ/cmの紫外線を照射して高屈折率層を形成した。
<低屈折率層の作製>
実施例1~3および比較例1~5のそれぞれについて、高屈折率層の面上に、低屈折率層形成用組成物を、#4のワイヤーバーを用いて塗布し、80℃×60秒で乾燥後、無電極(マイクロ波式)ランプを用いて光量150mJ/cmの紫外線を照射して低屈折率層を形成した。
以上により、反射防止フィルムを作製した。
<評価方法>
(酸化チタン粒子の粒子径)
酸化チタン粒子分散体1~7を、それぞれ固形分濃度が10質量%となるようにPGMを加えて濃度調整し、ナノ粒子径測定システム(大塚電子製「nanoSAQLA」)を使用して、動的光散乱法によって、体積基準の平均粒子径(D50)、体積基準の累積90%粒子径(D90)、および体積基準の累積10%粒子径(D10)を測定した。また、下記式(1)に従って、酸化チタン粒子の多分散性指数(PDI)を算出した。
PDI=(D90-D10)/D50 (1)
(酸化チタン粒子分散体の組成)
酸化チタン粒子分散体1~7を、それぞれアルミシャーレ上に1g採取し、100℃の恒温槽に1時間投入して揮発成分を揮発させた。得られた酸化チタン粒子膜の表面に対して、走査電子顕微鏡(日本電子製「JCM-7000」)を用いて、エネルギー分散型X線分光法で、含まれる元素の重量比を測定した。
(各層の厚みおよび屈折率)
ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の各厚みおよび屈折率を評価した。この際、各層を形成するごとに、顕微分光膜厚計(大塚電子製「OPTM-F1」)を用いて得られた波長領域380~780nmの反射分光スペクトルと、フレネルの式に基づいて導出される理論スペクトルとを、最小二乗法によりカーブフィッティングすることにより、各層の厚みおよび波長550nmにおける屈折率を算出した。
(耐擦傷性)
平面摩耗試験機(大栄科学精機製作所製「DAS-400」)を使用し、20mm×20mmの平面摩擦子に固定したスチールウール#0000(日本スチールウール株式会社製)を、反射防止フィルムの低屈折率層表面に載せて往復させた。試験台のストローク長は50mm、試験台往復速度は60往復/分とし、荷重1.0kgで1500回往復動させた。試験後の反射防止フィルムを目視観察し、以下の基準に従って評価した。
A:傷が全く見られず、耐擦傷性は非常に高い
B:長さ10mm未満の傷はあるが長さ10mm以上の傷はなく、実用上問題ない耐擦傷性を有する
C:長さ10mm以上の傷が1~9本あり、耐擦傷性は低い
D:長さ10mm以上の傷が10本以上あり、耐擦傷性は非常に低い
(ヘイズ(Hz))
日本電色工業製「Haze Meter NDH7000」を用い、JIS-K7136の方法で、反射防止フィルム全体のヘイズ(Hz)を測定した。ヘイズが2.0以下であれば、透明性が高いと評価することができる。
(視感度反射率)
作製した反射防止フィルムの裏面(低屈折率層とは反対側の面)を#400のサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶし、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製「UV-3600」)を用いて、波長380nm~780nmにおける低屈折率層の表面の5°正反射率を測定し、この測定値に比視感度値を乗じて視感度反射率を算出した。視感度反射率が0.5%以下であれば、反射防止性が十分であるとみなすことができる。
<評価結果>
表1に、高屈折率層の形成に用いた酸化チタン粒子分散体1~7の構成を評価した結果を示す。また、表2に、実施例1~3および比較例1~5について、高屈折率層の成分組成および各層の厚みとともに、各評価結果を示す。表2において、「酸化チタン含有率(対固形分)」は、表1の酸化チタン粒子分散体の組成におけるTiの含有量と、各分散体の固形分濃度、表2の高屈折率層の組成に基づいて計算した量である。
Figure 2024055035000002
Figure 2024055035000003
高屈折率層を構成する硬化性組成物において、酸化チタン粒子が反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理されていない比較例1,2では、耐擦傷性が悪くなっている。
比較例3,4は、高屈折率層の酸化チタン粒子のD50が20nmに満たない。これらの試料においては、視感度反射率が0.5%を超えている。高屈折率層において、酸化チタン粒子のD50が小さすぎることで、酸化チタン粒子分散体において酸化チタンを高含有量で分散させることができず(表1の組成のTi含有量参照)、高屈折率層中に含まれる酸化チタン粒子を十分な濃度とすることができなかったため(表2の酸化チタン含有率参照)、高屈折率層の屈折率が不足しているものと解釈される。さらに、比較例4は、高屈折率層を構成する硬化性組成物において、酸化チタン粒子が反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理されていないため、耐擦傷性も悪くなっている。
比較例5は、高屈折率層の酸化チタン粒子のD90が120nmを超えることと対応して、透明性の低さを表すヘイズの値が大きくなっている。
これら各比較例とは異なり、実施例1~3では、高屈折率層を構成する硬化性組成物に含まれる酸化チタン粒子が、反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理され、かつ20nm以上のD50と120nm以下のD90を有している。そのことと対応して、実施例1~3ではいずれも、Aと評価される高い耐擦傷性が得られている。また、0.5%以下の視感度反射率に示される高い反射防止性と、2.0以下のヘイズに示される高い透明性も得られている。
以上に示されるとおり、基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の面上に形成された高屈折率層と、前記高屈折率層の面上に形成された低屈折率層と、を有し、前記高屈折率層は、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物と、前記(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子と、を含有する電離放射線硬化性組成物の硬化物より構成され、前記酸化チタン粒子の体積基準の平均粒子径(D50)は20nm以上であり、体積基準の累積90%粒子径(D90)は120nm以下であることから、高屈折率層の寄与により、高い反射防止性、優れた耐擦傷性を備える反射防止フィルムとなる。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
10,20,30,40 反射防止フィルム
12 基材フィルム
14 ハードコート層
15 中屈折率層
16 高屈折率層
18 低屈折率層
22 透明粘着層
24 離型フィルム
26 粘着剤層
28 保護フィルム

Claims (4)

  1. 基材フィルムと、前記基材フィルムの面上に形成されたハードコート層と、前記ハードコート層の面上に形成された高屈折率層と、前記高屈折率層の面上に形成された低屈折率層と、を有し、
    前記高屈折率層は、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物と、前記(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子と、を含有する電離放射線硬化性組成物の硬化物より構成され、
    前記酸化チタン粒子の体積基準の累積粒度分布における平均粒子径D50は20nm以上であり、体積基準の累積粒度分布における90%粒子径D90は120nm以下である、反射防止フィルム。
  2. 前記高屈折率層の波長550nmにおける屈折率は、1.83以上、2.00以下であり、
    前記低屈折率層の波長550nmにおける屈折率は、1.35以上、1.49以下である、請求項1に記載の反射防止フィルム。
  3. 前記ハードコート層と、前記高屈折率層との間に、波長550nmにおける屈折率が前記ハードコート層の屈折率より高く前記高屈折率層の屈折率より低い、中屈折率層を有する、請求項1または請求項2に記載の反射防止フィルム。
  4. 基材フィルムの面上にハードコート層を形成し、
    前記ハードコート層の面上に、反応性基を有する(メタ)アクリレート化合物と、前記(メタ)アクリレート化合物と結合形成可能な反応性基を有するシランカップリング剤で表面処理された酸化チタン粒子を溶剤に分散させた粒子分散体と、を含有する電離放射線硬化性組成物を塗布して高屈折率層を形成し、
    前記高屈折率層の面上に低屈折率層を形成する、反射防止フィルムの製造方法であって、
    前記粒子分散体において、固形分の合計100質量%に対するチタン原子の含有量は、40質量%以上、80質量%以下である、反射防止フィルムの製造方法。
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