JP2024051732A - 脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体およびその製造方法 - Google Patents

脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2024051732A
JP2024051732A JP2022158044A JP2022158044A JP2024051732A JP 2024051732 A JP2024051732 A JP 2024051732A JP 2022158044 A JP2022158044 A JP 2022158044A JP 2022158044 A JP2022158044 A JP 2022158044A JP 2024051732 A JP2024051732 A JP 2024051732A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polycarbonate resin
aliphatic polycarbonate
formula
adhesive
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022158044A
Other languages
English (en)
Inventor
恵子 味野
Keiko Ajino
紗英 橋本
Sae HASHIMOTO
孝至 森岡
Takashi Morioka
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Lintec Corp
Original Assignee
Lintec Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Lintec Corp filed Critical Lintec Corp
Priority to JP2022158044A priority Critical patent/JP2024051732A/ja
Priority to PCT/JP2023/033858 priority patent/WO2024070798A1/ja
Publication of JP2024051732A publication Critical patent/JP2024051732A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)
  • Macromonomer-Based Addition Polymer (AREA)

Abstract

【課題】二酸化炭素を製造原料とする、ガラス転移温度(Tg)の低い新規な脂肪族ポリカーボネート樹脂および脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体、ならびに二酸化炭素を製造原料とする、ガラス転移温度(Tg)の低い新規な脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体の製造方法を提供する。【解決手段】主鎖にエーテル構造を有し、側鎖に炭素数4以上の炭化水素基を有するエチレンカーボネート単位、側鎖に炭素数4以上の炭化水素基を有するエチレンオキサイド単位、側鎖に架橋性官能基を有するエチレンカーボネート単位、および側鎖に架橋性官能基を有するエチレンオキサイド単位をランダムに共重合した構造を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂。【選択図】なし

Description

本発明は、新規な脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体、および脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体の製造方法に関するものである。
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、サステナビリティを有する炭素原料として、二酸化炭素、メタン、一酸化炭素などのガスが注目されている。例えば、二酸化炭素とエポキシドとの共重合により、主鎖に脂肪族(非芳香族)基のみを有する脂肪族ポリカーボネートを製造できることが報告されており、二酸化炭素等のガスを原料として利用した化学品やその製造技術に関心が寄せられている。
二酸化炭素は地球温暖化の原因とされているため、各種の材料を作る過程で工場から排出される二酸化炭素の有効利用は、環境保護に役立つものである。
特許文献1は、不均一触媒の存在下で、エポキシド化合物、エポキシ基およびアクリレート構造を有する化合物、ならびに二酸化炭素を共重合して得られる、3種の繰り返し単位を含むポリアルキレンカーボネート樹脂を提案している。
特表2015-533920号公報
特許文献1に記載の発明は、熱的安定性を示し、より大きい分子量および改善された強度などの機械的物性を示すことのできるポリアルキレンカーボネート樹脂を提供することを課題とするものである。このポリアルキレンカーボネート樹脂を含め、従来のポリカーボネート樹脂は、そのポリカーボネート構造の剛直性から、ガラス転移温度(Tg)が高かった。そのため、柔軟性が要求される分野には不適なものであった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素を製造原料とする、ガラス転移温度(Tg)の低い新規な脂肪族ポリカーボネート樹脂および脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体、ならびに二酸化炭素を製造原料とする、ガラス転移温度(Tg)の低い新規な脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1に本発明は、主鎖にエーテル構造を有し、下記式(Ia)で示される繰り返し単位、下記式(Ib)で示される繰り返し単位、下記式(Ic)で示される繰り返し単位、および下記式(Id)で示される繰り返し単位をランダムに共重合した構造を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂を提供する(発明1)。
Figure 2024051732000001

(式(Ia)及び式(Ib)中、R及びRは炭素数4以上の炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。式(Ic)及び式(Id)中、R及びRは架橋性官能基を有する炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
上記発明(発明1)に係る脂肪族ポリカーボネート樹脂においては、上記R及びRが炭素数4以上の炭化水素基であり、側鎖の炭化水素基が比較的長いことで、ガラス転移温度(Tg)が低くなり、柔軟性が要求される分野に好適なものとなる。また、側鎖の炭化水素基が比較的長いことで、タック性を発現し、特に粘着剤として好適なものとなる。さらに、上記R及びRが架橋性官能基を有する炭化水素基であるため、当該架橋性官能基を介して架橋(好ましくは自己架橋)することで、良好な凝集力を発揮することができ、粘着剤としてより好適なものとなる。さらにまた、上記脂肪族ポリカーボネート樹脂は、二酸化炭素を製造原料として製造することができるため、二酸化炭素の有効利用を図ることができる。
上記発明(発明1)においては、前記架橋性官能基が、(メタ)アクリロイル基またはアリル基であることが好ましい(発明2)。
上記発明(発明1,2)においては、前記R又は前記Rが、アルキル鎖を有することが好ましい(発明3)。
上記発明(発明1~3)においては、前記R又は前記Rが、エーテル構造を有することが好ましい(発明4)。
上記発明(発明1~4)においては、前記R又は前記Rが、下記式(II)で示される構造を含むことが好ましい(発明5)。
CH=CH-C(=O)-O-X-O- ・・・(II)
(式(II)中、Xはアルキル鎖である。)
上記発明(発明1~5)においては、前記架橋性官能基を0.01mol%以上、10mol%以下含むことが好ましい(発明6)。
上記発明(発明1~6)においては、主鎖における前記エーテル構造の単位を0.1質量%以上、99質量%以下含むことが好ましい(発明7)。
上記発明(発明1~7)においては、二酸化炭素とエポキシドとの重合反応物であることが好ましい(発明8)。
上記発明(発明1~8)においては、ガラス転移温度(Tg)が、5℃以下であることが好ましい(発明9)。
第2に本発明は、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂(発明1~9)を架橋してなる脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体を提供する(発明10)。
上記発明(発明10)においては、ゲル分率が、15%以上、85%以下であることが好ましい(発明11)。
上記発明(発明10,11)においては、5%重量減少温度が、200℃以上、450℃以下であることが好ましい(発明12)。
第3に本発明は、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂(発明1~9)に対し活性エネルギー線を照射して、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂を架橋する、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体の製造方法を提供する(発明13)。
本発明によれば、二酸化炭素を製造原料とし、ガラス転移温度(Tg)の低い新規な脂肪族ポリカーボネート樹脂および脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体を提供することができる。また、本発明に係る製造方法によれば、二酸化炭素を製造原料とし、ガラス転移温度(Tg)の低い新規な脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体を製造することができる。
実施例1で製造したポリマーのH-NMRの測定結果を示すチャートである。 比較例1で製造したポリマーのH-NMRの測定結果を示すチャートである。
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔脂肪族ポリカーボネート樹脂〕
本発明の一実施形態に係る脂肪族ポリカーボネート樹脂(以下「脂肪族ポリカーボネート樹脂A」という場合がある。)は、主鎖にエーテル構造を有し、下記式(Ia)で示される繰り返し単位、下記式(Ib)で示される繰り返し単位、下記式(Ic)で示される繰り返し単位、および下記式(Id)で示される繰り返し単位をランダムに共重合した構造(以下「構造SA」という場合がある。)を有するものである。
Figure 2024051732000002

(式(Ia)及び式(Ib)中、R及びRは炭素数4以上の炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。式(Ic)及び式(Id)中、R及びRは架橋性官能基を有する炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、上記構造SAにおけるR及びRが炭素数4以上の炭化水素基であり、側鎖の炭化水素基が比較的長いことで、ガラス転移温度(Tg)が低くなる。これにより、柔軟性が要求される分野に好適なものとなり、例えば、粘着剤、接着剤、コート剤等に使用することができる。また、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、側鎖の炭化水素基が比較的長いことでタック性を発現するため、粘着剤として好適なものである。さらに、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、上記構造SAにおけるR及びRが架橋性官能基を有する炭化水素基であるため、当該架橋性官能基を介して架橋(好ましくは自己架橋)することで、良好な凝集力を発揮することができ、粘着剤としてより好適なものとなる。
また、後述するように、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、二酸化炭素を製造原料として製造することができる。したがって、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、その製造にあたって、二酸化炭素の有効利用を図ることができる。
式(Ia)及び式(Ib)中のR及びRは、上記の通り、炭素数4以上の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基、フェニル基等のアリール基などが挙げられ、中でもアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数が4~20のものが好ましく、5~18のものがより好ましく、特に6~10のものが好ましく、さらには6~9のものが好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状のものでも、分岐鎖状のものでも、環状構造を有するものであってもよいが、直鎖状または分岐鎖状のものが好ましい。直鎖状の好ましいアルキル基としては、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられ、分岐鎖状の好ましいアルキル基としては、2-エチルヘキシル基、2-メチルペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、ガラス転移温度(Tg)の低さおよびタック性の発現の観点から、n-オクチル基、n-デシル基またはn-ドデシル基が好ましく、特にn-オクチル基またはn-デシル基が好ましく、さらにはn-オクチル基が好ましい。なお、上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aには、2種以上のRが含まれていてもよいし、2種以上のRが含まれていてもよい。また、上記の通り、R及びRは、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
式(Ic)及び式(Id)中のR及びRは、上記の通り、架橋性官能基を有する炭化水素基である。架橋性官能基としては、(メタ)アクリロイル基;アリル基、ビニル基等のアルケニル基;アルキニル基;アルコキシ基、オキシ(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。中でも、自己架橋性の観点から、(メタ)アクリロイル基またはアリル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
上記R又はRは、アルキル鎖を有することが好ましく、特に直鎖状のアルキル鎖を有することが好ましい。これにより、架橋後にも柔軟性を確保することができ、粘着剤としてより好適なものとなる。かかる効果の観点から、アルキル鎖の炭素数は、1~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましく、特に3~10であることが好ましく、さらには4~8であることが好ましい。なお、上記アルキル鎖は、置換基を有していてもよい。
上記R又はRは、エーテル構造を有することが好ましい。これにより、得られる脂肪族ポリカーボネート樹脂Aに対し、柔軟性を付与することができる。
上記R又はRは、具体的には、下記式(II)または式(III)で示される構造を含むことが好ましい。これにより、側鎖のアルキル基鎖長に依らず、効率的に架橋性官能基の反応が進行する。
CH=CH-C(=O)-O-X-O- ・・・(II)
(式(II)中、Xはアルキル鎖である。)
CH=CH-CH-Y-O- ・・・(III)
(式(III)中、Yは単結合又はアルキル鎖である。)
また、上記R又はRは、具体的には、下記式(IV)または式(V)で示される構造であることが特に好ましい。
CH=CH-C(=O)-O-X-O-CH- ・・・(IV)
(式(IV)中、Xはアルキル鎖である。)
CH=CH-CH-Y-O-CH- ・・・(V)
(式(V)中、Yは単結合又はアルキル鎖である。)
上記式(II)および式(IV)中のアルキル鎖(X)の炭素数は、1~10であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、特に3~6であることが好ましく、さらには4~5であることが好ましい。また、上記式(III)および式(V)中のアルキル鎖(Y)の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、特に2~6であることが好ましく、さらには2~4であることが好ましい。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aには、2種以上のRが含まれていてもよいし、2種以上のRが含まれていてもよい。また、上記の通り、R及びRは、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、上記架橋性官能基(R及びRが有する架橋性官能基)を0.01mol%以上含むことが好ましく、0.05mol%以上含むことがより好ましく、特に0.1mol%以上含むことが好ましく、さらには0.3mol%以上含むことが好ましい。また、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、当該架橋性官能基を10mol%以下含むことが好ましく、5mol%以下含むことがより好ましく、特に3mol%以下含むことが好ましく、さらには1mol%以下含むことが好ましい。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、上記の量で架橋性官能基を含むことにより、良好な架橋構造を形成し、粘着剤として好適な凝集力を発揮することができる。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、主鎖におけるエーテル構造の単位(式(Ib)で示される繰り返し単位および式(Id)で示される繰り返し単位)を0.1mol%以上含むことが好ましく、0.5mol%以上含むことがより好ましく、特に0.8mol%以上含むことが好ましく、さらには1mol%以上含むことが好ましい。また、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、エーテル構造の単位を99mol%以下含むことが好ましく、50mol%以下含むことがより好ましく、特に20mol%以下含むことが好ましく、さらには10mol%以下含むことが好ましい。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、上記の量でエーテル構造の単位を含むことにより、ガラス転移温度(Tg)が効果的に低くなり、また、タック性がより良好に発揮される。なお、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aにおけるエーテル構造単位の含有比率が大きくなると、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aのガラス転移温度(Tg)がより低下し、粘着剤のタックが増加する傾向にある。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの数平均分子量は、1.5万以上であることが好ましく、2万以上であることがより好ましく、特に5万以上であることが好ましく、さらには8万以上であることが好ましい。また、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの数平均分子量は、200万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましく、特に50万以下であることが好ましく、さらには30万以下であることが好ましい。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの数平均分子量が上記の範囲にあることにより、タック性がより良好なものとなり、また架橋後の凝集力も良好なものとなる。なお、本明細書における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は、5℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましく、特に-20℃以下であることが好ましく、さらには-25℃以下であることが好ましい。これにより、柔軟性に優れ、タック性がより良好なものとなる。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、上述した構造を有することにより、上記のように低いガラス転移温度(Tg)を達成することができる。
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は、-60℃以上であることが好ましく、-55℃以上であることがより好ましく、特に-45℃以上であることが好ましく、さらには-40℃以上であることが好ましい。これにより、架橋後の凝集力が良好なものとなる。なお、本明細書におけるガラス転移温度(Tg)の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aのゲル分率は、1~30%であることが好ましく、特に2~20%であることが好ましく、さらには4~10%であることが好ましい。これにより、架橋後のゲル分率が、後述する好ましい範囲に入り易くなる。なお、本明細書におけるゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの5%重量減少温度は、210~450℃であることが好ましく、特に220~400℃であることが好ましく、さらには230~350℃であることが好ましい。これにより、架橋後の5%重量減少温度が、後述する好ましい範囲に入り易くなる。なお、本明細書における5%重量減少温度の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、二酸化炭素とエポキシドとの重合反応物であることが好ましい。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、好ましくは、二酸化炭素(CO)と、前述した式(Ia)及び式(Ib)中のR・Rを有するエポキシド(以下「エポキシドE1」という場合がある。)と、前述した式(Ic)及び式(Id)中のR・Rを有するエポキシド(以下「エポキシドE2」という場合がある。)とを、重合触媒の存在下で、必要に応じて水分含有量を所定量以下に制御して、重合反応させる工程を有する製造方法で製造することができる(例えば、「国際公開第2011/142259号」参照)。ここで適切な重合触媒を選択することにより、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの主鎖中にエーテル構造を導入することができる。脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、二酸化炭素を製造原料とすることができるため、二酸化炭素の有効利用を図ることができる。
上記エポキシドE1としては、上記の重合反応によって、前述した構造SAにおいて、式(Ia)で示される繰り返し単位および式(Ib)で示される繰り返し単位を構成できるものであれば特に限定されないが、好ましくは、下記式(VI)で示される化合物または当該化合物の誘導体である。なお、本明細書において「誘導体」とは、元の化合物の1個以上の水素原子が水素原子以外の基(置換基)で置換されている化合物を意味する。
Figure 2024051732000003

(式(VI)中、pは3以上の整数である。)
式(VI)中のpは、3~15であることが好ましく、4~13であることがより好ましく、特に5~11であることが好ましく、さらには6~9であることが好ましい。
上記エポキシドE1としては、具体的には、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシウンデカン、1,2-エポキシドデカン等が挙げられる。これらの中でも、ガラス転移温度(Tg)の低さおよびタック性の発現の観点から、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン等が好ましく、特に1,2-エポキシオクタンまたは1,2-エポキシデカンが好ましく、さらには1,2-エポキシデカンが好ましい。なお、上記列挙したエポキシドは、置換基を有していてもよい。
上記エポキシドE2としては、上記の重合反応によって、前述した構造SAにおいて、式(Ic)で示される繰り返し単位および式(Id)で示される繰り返し単位を構成できるものであれば特に限定されないが、好ましくは、下記式(VII)または式(VIII)で示される化合物または当該化合物の誘導体である。
Figure 2024051732000004
Figure 2024051732000005
式(VII)および式(VIII)中のCLは、架橋性官能基である。架橋性官能基としては、前述した式(Ic)及び式(Id)中のR及びRが有する架橋性官能基と同様である。中でも、式(VII)中のCLは、(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、式(VIII)中のCLは、アリル基であることが好ましい。
式(VII)中のXは、アルキル鎖である。当該アルキル鎖の炭素数は、前述した式(II)および式(IV)中のアルキル鎖(X)の炭素数と同様である。また、式(VIII)中のYは、単結合またはアルキル鎖である。当該アルキル鎖の炭素数は、前述した式(III)および式(V)中のアルキル鎖(Y)の炭素数と同様である。
上記エポキシドE2としては、具体的には、4-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等の4-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテル;アリルメチルグリシジルエーテル等のアリルアルキルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、架橋後の柔軟性、ひいては粘着剤としての適格性の観点から、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルが好ましく、特に4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルが好ましい。なお、上記列挙したエポキシドは、置換基を有していてもよい。
重合反応させる工程で用いる上記エポキシドE1およびエポキシドE2は、それぞれ1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節すればよい。
重合反応させる工程で用いる上記エポキシドE1およびエポキシドE2の比率は、モル比で、99.99:0.01~90:10であることが好ましく、99.95:0.05~95:5であることがより好ましく、特に99.9:0.1~99:1であることが好ましく、さらには99.7:0.3~99.5:0.5であることが好ましい。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの製造に用いる重合触媒としては、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの主鎖中にエーテル構造を導入することができるものであれば特に限定されないが、具体的には、複合金属シアン化物錯体触媒(Double Metal Cyanide Complex触媒;「DMC触媒」と称される。)が好ましい。DMC触媒における金属としては、コバルトおよび亜鉛の組み合わせ、コバルトおよびニッケル、亜鉛およびニッケルの組み合わせ等が好ましく、中でもコバルトおよび亜鉛の組み合わせが特に好ましい。DMC触媒としては、Zn(Co[CN]、Co(Ni[CN])、Zn(Ni(CN))等が好ましく、中でもZn(Co[CN]が特に好ましい。
上述した通り、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの重合反応は、圧力容器内で行うことが好ましい。この重合反応における重合触媒の使用量、二酸化炭素の圧力、重合温度、重合時間等を変えることによって、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aにおけるエーテル構造単位の含有比率や、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの分子量を調整することができる。
重合触媒の使用量は、例えばDMC触媒の場合には、エポキシモノマー1gに対して、0.1~15mgであることが好ましく、特に0.1~10mgであることが好ましく、さらには0.1~2mgであることが好ましい。重合触媒の使用量を少なくすると、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの分子量が大きくなる傾向がある。
二酸化炭素の圧力は、0.1~10MPaであることが好ましく、0.3~7.5MPaであることがより好ましく、特に0.5~6MPaであることが好ましく、さらには0.7~5MPaであることが好ましい。二酸化炭素の圧力を高くすると、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aにおけるカーボネート構造単位の含有比率が大きくなる傾向がある。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aに導入される二酸化炭素量(CO導入率導入率)は、10質量%以上であることが好ましく、特に15質量%以上であることが好ましく、さらには20質量%以上であることが好ましい。なお、このCO導入率導入率の算出方法は、後述する試験例に示す通りである。
重合温度は、-15~95℃であることが好ましく、特に0~75℃であることが好ましく、更には25~70℃であることが好ましい。重合温度を高くすると、エーテル構造単位の含有比率を高くすることができるとともに、重合時間を短縮することができる。
重合時間は、1~48時間であることが好ましく、特に2~30時間であることが好ましく、更には5~24時間であることが好ましい。この範囲内で重合時間を長くすると、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの分子量が大きくなる傾向がある。
重合方法は、溶液重合および塊状重合のいずれであってもよい。溶液重合を行う場合の溶剤(重合溶媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネート系、エチルセロソルブ等のセロソルブ系の溶剤などが用いられる。
以上説明した脂肪族ポリカーボネート樹脂Aは、粘着剤として好ましく使用することができる。当該粘着剤は、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aのみからなってもよいし、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを含有するとともに、脂肪族ポリカーボネート樹脂A以外の成分を含有してもよい。
上記粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:25μm)を有する粘着シートのステンレススチール(SUS304,360番研磨)に対する粘着力は、下限値として、1N/25mm以上であることが好ましく、5N/25mm以上であることがより好ましく、特に7N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましい。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、45N/25mm以下であることが好ましく、特に40N/25mm以下であることが好ましく、さらには30N/25mm以下であることが好ましい。
上記粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:25μm)を有する粘着シートのポリカーボネートに対する粘着力は、下限値として、3N/25mm以上であることが好ましく、5N/25mm以上であることがより好ましく、特に7N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましい。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、40N/25mm以下であることが好ましく、特に30N/25mm以下であることが好ましく、さらには25N/25mm以下であることが好ましい。
上記粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:25μm)を有する粘着シートのポリプロピレンに対する粘着力は、下限値として、0.1N/25mm以上であることが好ましく、1N/25mm以上であることがより好ましく、特に3N/25mm以上であることが好ましく、さらには5N/25mm以上であることが好ましい。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、25N/25mm以下であることが好ましく、特に20N/25mm以下であることが好ましく、さらには15N/25mm以下であることが好ましい。
なお、本明細書における粘着力の具体的な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
上記粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:25μm)を有する粘着シートのJIS Z0237:2009に準拠した保持力(被着体をステンレススチール(SUS304,360番研磨)とし、貼り付け面積を25mm×25mmとし、試験時の温度を40℃とし、9.8Nの荷重をかけて、粘着シートが落下するまでの時間(最大70000秒))(秒)は、1000秒以上であることが好ましく、2000秒以上であることがより好ましく、特に3000秒以上であることが好ましく、さらには4000秒以上であることが好ましい。なお、本明細書における保持力の具体的な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
〔脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体〕
本発明の一実施形態に係る脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体(以下「脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体B」という場合がある。)は、前述した実施形態に係る脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを架橋したものである。脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aと同様に低いガラス転移温度(Tg)を維持して柔軟性やタック性を発現する一方、その架橋構造により凝集力が高くなり、粘着剤としてより好適なものなる。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの架橋は、所望の架橋剤を使用した架橋であってもよいが、自己架橋であることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの側鎖が有する架橋性官能基(式(Ic)及び式(Id)中のR及びRが有する架橋性官能基)同士を反応させ、当該架橋性官能基を介して複数の脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを架橋したものであることが好ましい。
脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aに対して活性エネルギー線を照射することにより、好ましく製造することができる。当該活性エネルギー線の照射により、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aの側鎖が有する架橋性官能基同士が反応し、架橋構造が形成される。
ここで、活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、LEDランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm程度であることが好ましい。また、光量は、50~10000mJ/cmであることが好ましく、80~5000mJ/cmであることがより好ましく、200~2000mJ/cmであることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを架橋させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aに対して光重合開始剤を配合することが好ましい。このように光重合開始剤を配合することにより、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを効率良く架橋させることができ、また架橋時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
このような光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、リチウムフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の配合量は、脂肪族ポリカーボネート樹脂A100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、特に1質量部以上であることが好ましく、さらには1.3質量部以上であることが好ましい。また、光重合開始剤の上記配合量は、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには3質量部以下であることが好ましい。
脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bのゲル分率は、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、特に30%以上であることが好ましく、さらには40%以上であることが好ましい。これにより、粘着剤として優れた凝集力を発揮する。また、上記ゲル分率は、85%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、特に75%以下であることが好ましく、さらには70%以下であることが好ましい。これにより、柔軟性が確保され、良好な粘着力が維持される。
脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bのガラス転移温度(Tg)は、5℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましく、特に-20℃以下であることが好ましく、さらには-30℃以下であることが好ましい。これにより、柔軟性に優れ、タック性がより良好なものとなる。脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、前述した構造を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂Aを架橋した構造を有することにより、上記のように低いガラス転移温度(Tg)を達成することができる。
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bのガラス転移温度(Tg)は、-60℃以上であることが好ましく、-55℃以上であることがより好ましく、特に-50℃以上であることが好ましく、さらには-45℃以上であることが好ましい。これにより、凝集力がより良好なものとなる。
脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bの5%重量減少温度は、200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、特に220℃以上であることが好ましく、さらには230℃以上であることが好ましい。これにより、当該脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは耐熱性に優れ、高温下で使用される粘着剤としても好適なものとなる。脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bの5%重量減少温度の上限値は特に限定されないが、通常、450℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましく、特に350℃以下であることが好ましく、さらには300℃以下であることが好ましい。
以上説明した脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、粘着剤として好ましく使用することができる。当該粘着剤は、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bのみからなってもよいし、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bを含有するとともに、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体B以外の成分を含有してもよい。また、当該粘着剤は、光重合開始剤またはその分解物を含有してもよい。
上記粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:25μm)を有する粘着シートのステンレススチール(SUS304,360番研磨)に対する粘着力は、下限値として、1N/25mm以上であることが好ましく、3N/25mm以上であることがより好ましく、特に5N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましい。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、30N/25mm以下であることが好ましく、特に25N/25mm以下であることが好ましく、さらには20N/25mm以下であることが好ましい。
上記粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:25μm)を有する粘着シートのポリカーボネートに対する粘着力は、下限値として、1N/25mm以上であることが好ましく、2N/25mm以上であることがより好ましく、特に5N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましい。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、35N/25mm以下であることが好ましく、特に30N/25mm以下であることが好ましく、さらには25N/25mm以下であることが好ましい。
上記粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:25μm)を有する粘着シートのポリプロピレンに対する粘着力は、下限値として、1N/25mm以上であることが好ましく、3N/25mm以上であることがより好ましく、特に5N/25mm以上であることが好ましく、さらには7N/25mm以上であることが好ましい。一方、上記粘着力の上限値は特に限定されないが、リワーク性が必要になる場合のことも考慮すると、25N/25mm以下であることが好ましく、特に20N/25mm以下であることが好ましく、さらには15N/25mm以下であることが好ましい。
上記粘着剤からなる粘着剤層(厚さ:25μm)を有する粘着シートのJIS Z0237:2009に準拠した保持力(被着体をステンレススチール(SUS304,360番研磨)とし、貼り付け面積を25mm×25mmとし、試験時の温度を40℃とし、9.8Nの荷重をかけて、粘着シートが落下するまでの時間(最大70000秒))(秒)は、8000秒以上であることが好ましく、10000秒以上であることがより好ましく、特に30000秒以上であることが好ましく、さらには70000秒以上であることが好ましい。
以上説明した脂肪族ポリカーボネート樹脂Aおよび脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、そのガラス転移温度(Tg)の低さに起因する柔軟性から、粘着剤、接着剤、コート剤等に使用することができる。また、脂肪族ポリカーボネート樹脂Aおよび脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体Bは、タックを発揮することから、特に粘着剤として好適に使用することができる。例えば、各種容器、日用品、電気・電子機器、各種機械、医療器具等におけるラベル貼付、部材同士の貼合等に使用することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)重合触媒の合成
ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム(K[Co(CN)];富士フイルム和光純薬株式会社製)1.33gを20mLの脱イオン水に溶解し、激しく撹拌した50℃の塩化亜鉛溶液(ZnCl11.42gを60mLの脱イオン水と30mLのt-ブチルアルコールとの混合溶液中に溶解したもの)に45分かけて滴下した。その後、混合物を60分間激しく撹拌した。得られた白色懸濁液を5000rpmで遠心分離し、白色固体を単離した。単離した白色固体を、t-ブチルアルコールおよび脱イオン水の溶液(体積比で、t-ブチルアルコール:脱イオン水=5:5)中で激しく30分間撹拌しながら再懸濁した。その後、水に対してt-ブチルアルコール量を徐々に増加させつつ(t-ブチルアルコール:脱イオン水を、体積比で6:4から7:3、8:2、9:1と変化させる)、遠心分離による単離および再懸濁を数回繰り返した。最後に、白色固体をt-ブチルアルコール中に再懸濁した後に、遠心分離によって単離した。その後、所定の質量になるまで50℃、真空下で乾燥させることによって、DMC触媒であるZn(Cо[CN]を得た。
(2)ポリマーの合成
原料モノマーとして、エポキシドE1としての1,2-エポキシデカン(Edec;1,2-デシレンオキシド)、およびエポキシドE2としての4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE;三菱ケミカル株式会社製)を用意した。そして、1,2-エポキシデカンおよび4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルを99:1の割合(モル比)で配合し、重合溶媒として50質量部のトルエン(脱水トルエン(関東化学株式会社製,GCで確認した純度が99.5%以上))で希釈した。
上記(1)で得られたDMC触媒1mgに対し、上記原料モノマー(合計、溶媒は除く)1gとなる割合で、両成分を圧力容器内に加えた。また、重合禁止剤として、フェノチアジン(東京化成工業株式会社製,GCで確認した純度が99.5%以上)を200ppmとなるよう添加した。そして、アルゴン雰囲気下にて撹拌した。
続いて、圧力容器内をCOでパージした後、送液ポンプによりCOを圧力容器内に導入し、圧力容器内の圧力を4MPaにした。そして、60℃で18時間撹拌し、重合反応を行った。
反応終了後、耐圧容器内の内容物にトルエンを加えて溶液とし、1M塩酸を加えたメタノール中に上記溶液を滴下して、再沈殿精製を行った。得られた沈殿物をろ紙により回収し、クロロホルムに溶解させた後に、メンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社製,孔径3.00μm)で不純物を取り除いた。その後、テフロン(登録商標)シャーレに溶液を流し込み、乾燥オーブンで50℃、20時間乾燥し、ポリマーを得た。
得られたポリマー(脂肪族ポリカーボネート樹脂)の構造を、H-NMR(装置:Bruker社製,製品名「Biospin Avance 500」)にて確認した。このときのチャートを図1に示す。なお、得られた脂肪族ポリカーボネート樹脂における、前述した式(Ia)~式(Id)中のR及びRは、-C17であり、R及びRは、-C-O-(CH-O-C(=O)-CH=CHであった。
上記の結果に基づいて、エーテル構造単位とカーボネート単位との比を、それぞれに対応するメチレン水素の積分比から見積もった。その結果、得られた脂肪族ポリカーボネート樹脂中におけるエーテル構造単位の比率(含有量)は1.6%、カーボネート比率(含有量)は98.4%であった。なお、エーテル構造単位の比率は、チャート中のα、β、γに基づいて、以下の式から算出される。
エーテル構造単位比率[%]={γ/(α+β+γ)}×100
(3)粘着シートの製造
上記で得られた脂肪族ポリカーボネート樹脂を酢酸エチルで溶解させ、当該脂肪族ポリカーボネート樹脂100質量部(固形分換算値;以下同じ)に対し、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを1.5質量部配合し、十分に撹拌して、これを粘着剤の塗布液とした。
上記粘着剤の塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック株式会社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離処理面に、コーターで塗布した。そして、塗布層を100℃で1分間加熱し、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。次いで、剥離シート上の粘着剤層と、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製,製品名「コスモシャイン A4360」,厚さ50μm)とを貼合し、これを粘着シート(UV前)とした。
なお、上記粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(株式会社テクロック製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
次に、上記粘着シートに対し、剥離シート越しに、下記の条件で活性エネルギー線を照射し、粘着剤層を架橋させた。なお、当該架橋後の粘着剤層は、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体からなる。架橋後の粘着剤層を有する当該粘着シートを、粘着シート(UV後)という。
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm,光量1800mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス株式会社製「UVPF-A1」を使用
〔実施例2~6〕
1,2-エポキシデカンと4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルとの配合割合(モル比)を、99.5:0.5(実施例2)、99.7:0.3(実施例3)、99.9:0.1(実施例4)、99.5:0.5(重合溶媒を使用せず塊状重合,CO圧力:1MPa)(実施例5)、99.5:0.5(CO圧力:1MPa)(実施例6)に変更する以外、実施例1と同様にしてポリマーおよび粘着シートを製造した。
得られたポリマー(脂肪族ポリカーボネート樹脂)の構造を、H-NMR(装置:Bruker社製,製品名「Biospin Avance 500」)にて確認した。当該脂肪族ポリカーボネート樹脂中におけるエーテル構造単位の比率およびカーボネート比率を表1に示す。
〔実施例7~10〕
原料モノマーとして、エポキシドE1としての1,2-エポキシオクタン(Eoct;1,2-オクチレンオキシド)、およびエポキシドE2としての4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE;三菱ケミカル社製)を用意した。そして、1,2-エポキシオクタンおよび4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルを99.9:0.1(実施例7)、99.7:0.3(実施例8)、99.5:0.5(実施例9)、99:1(実施例10)の割合(モル比)で配合した。
上記原料モノマーを使用し、重合溶媒を使用せず塊状重合とする以外、実施例1と同様にしてポリマーおよび粘着シートを製造した。得られたポリマー(脂肪族ポリカーボネート樹脂)の構造を、H-NMR(装置:Bruker社製,製品名「Biospin Avance 500」)にて確認した。当該脂肪族ポリカーボネート樹脂中におけるエーテル構造単位の比率およびカーボネート比率を表1に示す。
〔実施例11,12〕
原料モノマーとして、エポキシドE1としての1,2-エポキシオクタン(Eoct;1,2-オクチレンオキシド)、およびエポキシドE2としてのアリルグリシジルエーテル(AGE)を用意した。そして、1,2-エポキシオクタンおよびアリルグリシジルエーテルを99:1(実施例11)、90:10(実施例12)の割合(モル比)で配合した。
上記原料モノマーを使用し、重合溶剤を使用せず塊状重合とする以外、実施例1と同様にしてポリマーおよび粘着シートを製造した。得られたポリマー(脂肪族ポリカーボネート樹脂)の構造を、H-NMR(装置:Bruker社製,製品名「Biospin Avance 500」)にて確認した。当該脂肪族ポリカーボネート樹脂中におけるエーテル構造単位の比率およびカーボネート比率を表1に示す。
〔実施例13〕
原料モノマーとして、エポキシドE1としての1,2-エポキシデカン(Edec;1,2-デシレンオキシド)、およびエポキシドE2としてのアリルグリシジルエーテル(AGE)を用意した。そして、1,2-エポキシオクタンおよびアリルグリシジルエーテルを99:10の割合(モル比)で配合した。
上記原料モノマーを使用し、重合溶剤を使用せず塊状重合とする以外、実施例1と同様にしてポリマーおよび粘着シートを製造した。得られたポリマー(脂肪族ポリカーボネート樹脂)の構造を、H-NMR(装置:Bruker社製,製品名「Biospin Avance 500」)にて確認した。当該脂肪族ポリカーボネート樹脂中におけるエーテル構造単位の比率およびカーボネート比率を表1に示す。
〔比較例1〕
(1)重合触媒の合成
(R,R)-N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1,2-ジアミノシクロヘキサンコバルト(II)(シグマアルドリッチジャパン合同会社製,製品名「(R,R)-salcyCoII」)と、ペンタフルオロ安息香酸(東京化成工業株式会社製)とをモル比で1:1.1になるように秤量してフラスコに入れ、そこに脱水トルエンを加えた。そして、当該フラスコをアルミホイルで遮光し、室温で20時間反応させた。反応終了後、減圧下で溶媒を除去し、過剰量のヘキサンで数回洗浄した。その後、室温で真空乾燥を行い、コバルトサレン錯体を得た。
(2)ポリマーの合成
エポキシモノマーである1,2-エポキシプロパン(プロピレンオキシド;PO)(便宜的にエポキシドE1に分類する)と、重合触媒として上記(1)で得られたコバルトサレン錯体と、助触媒としてビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)とを、モル比で、エポキシモノマー:重合触媒:助触媒=2000:1:1になるよう秤量し、圧力容器内で撹拌した。これらの作業はすべて、圧力容器内をアルゴン雰囲気に置換して行った。なお、この重合工程では、重合溶剤を使用せず塊状重合とした。
続いて、圧力容器内をCOでパージした後、送液ポンプによりCOを圧力容器内に導入し、圧力容器内の圧力を1.5MPaにした。そして、23℃で5時間撹拌し、重合反応を行った。
反応終了後、圧力容器の内容物にクロロホルムを加えてクロロホルム溶液を調製し、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した。濃縮後の溶液を撹拌している1M塩酸を加えたメタノール中に滴下し、生成物を沈殿させた。その後、生成物を、ダイアフラムポンプを用いて減圧濾過により回収した。回収後の生成物を再びクロロホルムに溶解させ、メンブレンフィルター(アドバンテック東洋株式会社製,孔径3.00μm)で不純物を取り除いた。その後、テフロン(登録商標)シャーレに溶液を流し込み、乾燥オーブンで50℃、20時間乾燥し、ポリマーを得た。このポリマー(脂肪族ポリカーボネート樹脂;側鎖炭素数1)の構造を、H-NMR(装置:Bruker社製,製品名「Biospin Avance 500」)にて確認した。得られたチャートを図2に示す。
上記の結果に基づいて、カーボネート単位とエーテル構造単位との比を、それぞれに対応するメチレン水素の積分比から見積もった。その結果、γのピークが見られなかったため、得られた脂肪族ポリカーボネート樹脂中におけるエーテル構造単位の比率(含有量;質量基準)は、0.0%であった。
(3)粘着シートの製造
上記で得られた脂肪族ポリカーボネート樹脂を使用し、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。得られた粘着シートにおいては、粘着剤層にタック性がなく、粘着力および保持力の測定ができなかった。
〔比較例2〕
原料モノマーとして、1,2-エポキシプロパン(プロピレンオキシド;PO)(便宜的にエポキシドE1に分類する)、およびエポキシドE2としての4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE;三菱ケミカル社製)を用意した。そして、1,2-エポキシプロパンおよび4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルを90:10の割合(質量比)で配合した。
上記原料モノマーを使用し、重合溶媒を使用せず塊状重合とする以外、実施例1と同様のポリマー調製の操作を行った。しかしながら、ゲル化し、物性測定可能なポリマーを得ることはできなかった。
〔試験例1〕<数平均分子量(Mn)の測定>
実施例および比較例で調製した脂肪族ポリカーボネート樹脂の数平均分子量(Mn)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)し、標準ポリスチレン換算した。結果を表1に示す。
[測定条件]
・GPC測定装置:東ソー株式会社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー株式会社製
TSK guard column SuperH-H
TSK gel SuperHM-H
TSK gel SuperHM-H
TSK gel SuperH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
〔試験例2〕<ガラス転移温度(Tg)の測定>
実施例および比較例で調製した脂肪族ポリカーボネート樹脂(UV前)ならびに実施例で製造した粘着シート(UV後)の粘着剤層を構成する脂肪族ポリカーボネート架橋体(UV後)ついて、示差走査熱量測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製,製品名「DSC Q2000」)によって測定を行い、ガラス転移温度(Tg)を求めた。具体的には、ポリマーの測定試料を4mg採り、アルミパンに入れた後に蓋をして密閉した。乾燥窒素雰囲気下、-70℃から70℃までの範囲で、昇温・降温速度10℃/分にて測定試料を加熱・冷却して測定を行った。得られたデータのうち、2nd heating時のデータを用いて、DSC曲線を作成した。得られたDSC曲線の低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になる点で引いた接線との交点の温度を、ガラス転移温度(Tg)とした。結果を表1に示す。
〔試験例3〕<ゲル分率の測定>
実施例および比較例で製造した粘着シート(UV前)および粘着シート(UV後)を80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに72時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。これにより、各粘着剤(脂肪族ポリカーボネート樹脂(UV前)および脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体(UV後))のゲル分率(%)を導出した。結果を表1に示す。
〔試験例4〕<5%重量減少温度の測定>
実施例および比較例で調製した脂肪族ポリカーボネート樹脂(UV前)、ならびに実施例で製造した粘着シート(UV後)の粘着剤層を構成する脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体(UV後)について、示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所製,製品名「DTG-60」)を用い、流入ガスを窒素として、ガス流入速度100ml/min、昇温速度20℃/minで、40℃から550℃まで昇温させて熱重量測定を行った(JIS K7120「プラスチックの熱重量測定方法」に準拠)。得られた熱重量曲線に基づいて、温度100℃での質量に対して質量が5%減少する温度(5%重量減少温度)を求めた。結果を表1に示す。
〔試験例5〕<粘着力の測定>
実施例および比較例で製造した粘着シート(UV前)および粘着シート(UV後)を、25mm幅、300mm長に裁断した。23℃、50%RHの環境下にて、上記粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を下記3種の被着体に貼付した。貼付に際しては、重さ2kgのローラーを1往復させて、粘着シートを被着体に圧着した。その後、23℃、50%RHの環境下で24時間放置したものを、粘着力測定用サンプルとした。
次に、23℃、50%RHの環境下にて、引張試験機(株式会社オリエンテック製、製品名「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、粘着力測定用サンプルにおける基材フィルムと粘着剤層との積層体を被着体から剥離したときの粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2000に準拠して測定を行った。結果を表1に示す。なお、実施例1の粘着シート(UV前)における被着体ポリプロピレン(PP)板においては、ジッピングが生じたため、粘着力に幅があった。そのため、粘着力の値としては、極大値平均および極小値平均を読み取った。
<被着体>
・ステンレススチール(SUS)板(SUS304,360番研磨)
・ポリカーボネート(PC)板(株式会社ユーコウ商会製,製品名「PC(PC-1600)」,厚さ:2mm)
・ポリプロピレン(PP)板(株式会社ユーコウ商会製,製品名「PP(PP-N-BN)」,厚さ:2mm)
なお、表1の「粘着力」の欄における「G」、「Cf」及び「Zip」は、それぞれ以下の意味である。
G:被着体表面に薄く跡が残った。
Cf:粘着剤層の凝集破壊が見られた。
Zip:ジッピングが生じた。
〔試験例6〕<保持力の測定>
実施例および比較例で製造した粘着シート(UV前)および粘着シート(UV後)の粘着剤層を、被着体としてのステンレススチール(SUS)板(SUS304,360番研磨)に貼付した。このとき、粘着剤層のステンレススチール板への貼付領域が25mm×25mmの大きさとなるようにした。このように、粘着シートを貼付したステンレススチール板を、23℃、50%RHの環境下で15分静置した後、クリープ試験機にセットし、この状態でさらに15分間静置した。次いで、40℃の環境下で粘着シートに9.8Nの荷重を加え、JIS Z0237:2009の保持力の測定法に従って、粘着シートが落下するまでの時間(最大70000秒)を測定し、粘着剤層の保持力(秒)とした。結果を表1に示す。
なお、表1の「保持力」の欄における「N.C.」及び「Cf」は、それぞれ以下の意味である。
N.C.:保持力の測定時に70000秒を超えても、粘着シートが落下しなかっただけでなく、粘着シートの被着体への貼付位置にずれが生じていなかった。
Cf:粘着剤層の凝集破壊が見られた。
〔試験例7〕<CO導入率の算出>
実施例および比較例で調製した脂肪族ポリカーボネート樹脂(ポリマー)におけるCO導入率(質量%)を、以下の式に基づいて算出した。このCO導入率の値が大きいほど、二酸化炭素をより有効に利用しているということができる。結果を表1に示す。
CO導入率[質量%]=(ポリマー中CO量[g]/ポリマー量[g])×100
ポリマー中CO量[g]=44×(カーボネート比率[%])
ポリマー量[g]={(ポリマー中カーボネート部位の単位分子量)×(カーボネート比率[%])}+{(ポリマー中エーテル部位の単位分子量)×(エーテル構造単位比率[%])}
カーボネート比率[%]=100-エーテル構造単位比率[%]
Figure 2024051732000006
表1から分かるように、実施例の脂肪族ポリカーボネート樹脂(UV前)は、二酸化炭素を製造原料とし、ガラス転移温度(Tg)が低く、粘着剤として使用可能なものであった。また、実施例の脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体(UV後)は、二酸化炭素を製造原料とし、ガラス転移温度(Tg)が低く、粘着剤として好適なものであった。
本発明に係る脂肪族ポリカーボネート樹脂および脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体は、粘着剤などに好適に使用することができる。

Claims (13)

  1. 主鎖にエーテル構造を有し、下記式(Ia)で示される繰り返し単位、下記式(Ib)で示される繰り返し単位、下記式(Ic)で示される繰り返し単位、および下記式(Id)で示される繰り返し単位をランダムに共重合した構造を有する脂肪族ポリカーボネート樹脂。
    Figure 2024051732000007

    (式(Ia)及び式(Ib)中、R及びRは炭素数4以上の炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。式(Ic)及び式(Id)中、R及びRは架橋性官能基を有する炭化水素基であり、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
  2. 前記架橋性官能基が、(メタ)アクリロイル基またはアリル基であることを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂。
  3. 前記R又は前記Rが、アルキル鎖を有することを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂。
  4. 前記R又は前記Rが、エーテル構造を有することを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂。
  5. 前記R又は前記Rが、下記式(II)で示される構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂。
    CH=CH-C(=O)-O-X-O- ・・・(II)
    (式(II)中、Xはアルキル鎖である。)
  6. 前記架橋性官能基を0.01mol%以上、10mol%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂。
  7. 主鎖における前記エーテル構造の単位を0.1質量%以上、99質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂。
  8. 二酸化炭素とエポキシドとの重合反応物であることを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂。
  9. ガラス転移温度(Tg)が、5℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂を架橋してなる脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体。
  11. ゲル分率が、15%以上、85%以下であることを特徴とする請求項10に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体。
  12. 5%重量減少温度が、200℃以上、450℃以下であることを特徴とする請求項10に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体。
  13. 請求項1~9のいずれか一項に記載の脂肪族ポリカーボネート樹脂に対し活性エネルギー線を照射して、前記脂肪族ポリカーボネート樹脂を架橋する、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体の製造方法。
JP2022158044A 2022-09-30 2022-09-30 脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体およびその製造方法 Pending JP2024051732A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022158044A JP2024051732A (ja) 2022-09-30 2022-09-30 脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体およびその製造方法
PCT/JP2023/033858 WO2024070798A1 (ja) 2022-09-30 2023-09-19 脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体およびその製造方法、ならびに粘着シート

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022158044A JP2024051732A (ja) 2022-09-30 2022-09-30 脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2024051732A true JP2024051732A (ja) 2024-04-11

Family

ID=90623005

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022158044A Pending JP2024051732A (ja) 2022-09-30 2022-09-30 脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2024051732A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN102952503B (zh) 耐高温压敏胶组合物和耐高温压敏胶带
CN104893626B (zh) 用于压敏粘合剂的阳离子的可uv交联的丙烯酸聚合物
ES2882573T3 (es) Adhesivos sensibles a la presión termofusibles endurecibles por UV
CN103596992B (zh) 具有*-环氧树脂交联系统的压敏粘合剂
EP2036929A1 (en) Hyperbranched polymer and method for producing the same
TWI673289B (zh) 可紫外線固化丙烯酸共聚物
JP2016153504A (ja) アクリル系粘着テープ及びその製造方法
JPH06166857A (ja) 感圧接着剤とその接着シ―ト類
CN1900198A (zh) 粘合剂组合物、双面粘合片、粘合方法和便携式电子器件
JP2019521118A (ja) 多官能オキセタン系化合物およびその製造方法
CN107033793A (zh) 粘合片和带剥离薄膜的粘合片
KR20160148457A (ko) 점착제 조성물
JPWO2017104314A1 (ja) 粘着剤組成物、及び、粘着テープ
US20040054081A1 (en) Method for cross-linking polycrylates
JP2024051732A (ja) 脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体およびその製造方法
JP4667195B2 (ja) 接着剤組成物および接着部材
WO2024070798A1 (ja) 脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂架橋体およびその製造方法、ならびに粘着シート
CN113072900B (zh) 可紫外光固化的压敏胶组合物及可紫外光固化的压敏胶带
JP6799186B1 (ja) 硬化性粘着剤組成物、粘着テープ、半導体ウエハの処理方法、及び、半導体デバイスの製造方法
JP2000290610A (ja) 長鎖アルキル系剥離剤とその製造方法ならびにセパレ―タおよび背面剥離処理された粘着シ―ト類
JP2024051733A (ja) 粘着シート
TW201231604A (en) Process for the preparation of radiation curable compositions
US20200299553A1 (en) Curable adhesive composition as well as adhesive tapes and products produced therefrom
JPH03237181A (ja) アクリル系粘着剤組成物及び粘着テープ、粘着ラベル又は粘着シート
JP2873352B2 (ja) 感圧接着剤