JP2024051499A - 放射線撮影装置および放射線撮影システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 グリッド縞の発生を効果的に抑える放射線撮影装置を提供する。【解決手段】 放射線を可視光に変換するための蛍光体と、光電変換素子をそれぞれ有する複数の画素と、を有し、散乱線を除去するグリッドを用いて画像を取得する放射線撮影装置であって、光電変換素子は、光電変換層およびそれを挟み込むように配置された2つの電極層からなり、光電変換素子の開口部には、グリッドの縞と直交した方向に射影したプロファイルが開口部内で1つまたは複数の極小値をもつように、前記蛍光体からの可視光に対する不感領域を設けるために開口部を覆う遮光部を配置する。遮光部は、光電変換素子から得られる信号において所定の空間周波数におけるアパーチャMTFが所定の値以下となるように、画素におけるバイアス配線が配された領域と、他層との接続用ホールとして機能する領域と、を合計した領域より広い領域に拡張されて設けられていることを特徴とする。【選択図】 図9A
Description
本開示は、放射線撮影装置および放射線撮影システムに関する。
近年、X線などの放射線を検出するための検出部を備えた放射線撮影装置が産業や医療などの分野で広く用いられている。特に、X線を可視光に変換する蛍光体等の材料や、アモルファスシリコン等で構成される光電変換素子などを用いて放射線画像を得るデジタル放射線撮影(DR:Digital Radiography)装置が広く普及している。このような放射線撮影装置は、被写体を透過した放射線の信号の大小をデジタル値に変換し、放射線画像として利用することができるようになっている。
ここで得られる放射線画像には、放射線源から被写体内を直進する一次放射線による信号成分のほかに、被写体内で放射線が散乱して発生する散乱線による信号成分が含まれる。このような散乱線による信号成分は、被写体像のコントラストを低下させるおそれがある。そのため、被写体と検出部との間に散乱線除去グリッド(以下グリッドと呼称する)を配置することが一般的である。
グリッドは、鉛等の放射線遮蔽物質と、アルミニウムやカーボン等の放射線透過物質とを、所定の幅で交互に並べて構成することで散乱線を除去することができる。その一方で、画像上に周期的な信号(以下、グリッド縞と呼称する)を発生させるので、観察者の邪魔になる場合がある。そこで、特許文献1では、発生したグリッド縞を画像処理的に除去する方法が開示されている。
しかしながら、前述の従来技術には、以下のような課題が生じる場合がある。
特許文献1では、グリッド縞の周期信号を選択的に除去するものである。しかし、放射線撮影装置のサンプリングピッチとグリッド密度の関係によっては、例えば、グリッド縞のピーク周波数が極めて低周波の領域に発生するケースがある。この場合、被写体信号とグリッド縞の信号の区別が難しく、被写体信号に影響を与えてしまうことがあった。
特に、例えば、グリッド縞の周波数ピークが放射線撮影装置のサンプリングピッチで定まるナイキスト周波数を超えた領域に存在する場合、グリッド縞が画像中に折り返し雑音として現れる。そのため、ピークが低周波の領域に発生し、例えば画像中にモアレ様に見える現象が発生しやすい。
ここで、上記のグリッド縞の発生量は、蛍光体のプリサンプリングMTF(Modulated Transfer Function)に影響されることが知られている。プリサンプリングMTFは、蛍光体そのものが有するアナログなMTF(以下、アナログMTFと呼称する)と、放射線撮影装置が有する画素の開口形状に従って形成されるアパーチャMTFとの積で表されるものである。
放射線撮影装置で一般に用いられるヨウ化セシウム(CsI)や酸硫化ガドリニウム(GOS)からなる蛍光体は、空間周波数が高周波になるにつれアナログMTFが減衰する。しかし、放射線撮影装置のナイキスト周波数以上の周波数領域においてもアナログMTFは0にはならず、一定の値を持つことが知られている。一方で、アパーチャMTFについては、画素の開口形状によってナイキスト周波数を超える成分の特性が大きく変化することが知られている。
以上の性質により、画素の開口形状によっては、例えば、画像中に折り返し雑音として発生するグリッド縞の発生量が大きくなってしまう場合があった。
上記の課題は、放射線を可視光に変換するための蛍光体と、光電変換素子をそれぞれ有する複数の画素と、を有し、散乱線を除去するグリッドを用いて画像を取得する放射線撮影装置であって、前記光電変換素子は、光電変換層およびそれを挟み込むように配置された2つの電極層からなり、前記光電変換素子の開口部には、前記グリッドの縞と直交した方向に射影したプロファイルが開口部内で1つまたは複数の極小値をもつように、前記蛍光体からの可視光に対する不感領域を設けるために前記開口部を覆う遮光部を配置し、前記遮光部は、前記光電変換素子から得られる信号において所定の空間周波数におけるアパーチャMTFが所定の値以下となるように、前記画素におけるバイアス配線が配された領域と、他層との接続用ホールとして機能する領域と、を合計した領域より広い領域に拡張されて設けられていることを特徴とする放射線撮影装置により解決される。
本開示の一実施態様によれば、グリッド縞の発生を効果的に抑える放射線撮影装置および放射線撮影システムを提供することが可能となる。
以下、例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、図面において、同一であるか又は機能的に類似している要素を示すために図面間で同じ参照符号を用いる。
なお、以下に記載する本開示の実施形態において、放射線とは、一般的に用いられるX線に限るものではない。例えば、放射性崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギーを有するビーム、例えば粒子線や宇宙線なども含まれるものとする。以下の説明においては、放射線としてX線を用いる場合を例にとって説明する。
まず、図1を用いて、本実施形態の放射線撮影システムの構成例について述べる。図1は、本実施形態における放射線撮影システムの基本的な構成の例を示すブロック図である。
放射線撮影システム100は、被写体102を撮影の対象として放射線撮影を行うシステムである。放射線撮影システム100は、放射線発生装置101、被写体102を透過した放射線に応じた画像データを出力する放射線撮影装置104、放射線撮影装置104に装着されるグリッド103を有する。
また、放射線撮影システム100は、放射線発生装置101の放射線発生と放射線撮影装置104の撮影動作タイミングの同期や、放射線発生装置101の発生条件の制御を行う動作管理部107を有する。また、放射線撮影システム100は、放射線撮影装置104の動作を制御する制御部105と、放射線撮影装置104から出力される各種デジタルデータを収集するデータ収集部106を有する。また、放射線撮影システム100は、ユーザーの指示に従って画像処理や機器全体の制御を行う情報処理部108を有する。
放射線撮影装置104、制御部105、データ収集部106、動作管理部107、および情報処理部108は、各々が有線または無線で接続されている。制御部105、データ収集部106、および動作管理部107の機能は、個別に設けられた装置が担うようにしてもよいし、これらの機能の一部または全部を放射線撮影装置104または情報処理部108が担うようにしてもよい。また、グリッド103は、撮影の用途に応じて取り外しが可能となっている。
情報処理部108は、画像処理部109、CPU111、メモリ112、操作パネル113、記憶部114、および表示部115と有する。これらはCPUバス110を介して電気的に接続されている。また、メモリ112はCPU111での処理に必要な各種のデータなどが記憶されるものであるとともに、CPU111の作業用ワークメモリを含む。また、CPU111は、メモリ112を用いて操作パネル113に入力されるユーザーの指示に従い、装置全体の動作制御等を行うようになっている。
放射線撮影システム100は、操作パネル113を介したユーザーの指示に従って被写体102の撮影シーケンスを開始する。放射線発生装置101から所定の条件のX線が照射され、被写体102を通過したX線が放射線撮影装置104に照射される。ここで、動作管理部107は放射線発生装置101に対して、電圧や電流、照射時間などのX線発生条件や、放射線撮影装置104の動作との同期を制御し、所定の撮影条件のX線を適切なタイミングで発生できるようになっている。
被写体102を透過し、被写体情報を含んだX線の情報は、制御部105によって制御された放射線撮影装置104で電気信号に変換され、データ収集部106によってデジタルの画像データとして収集される。
データ収集部106によって収集された画像データは、動作管理部107を介して情報処理部108に転送され、CPU111の制御によりCPUバス110を介してメモリ112に転送される。画像処理部109によって、メモリ112に格納された画像データに対してグリッド縞低減処理を含む各種の画像処理が適用され、診断に適した画像の作成が行われる。作成された画像は、記憶部114への保存、および表示部115への表示がなされるようになっている。
次に、図2を用いて、放射線撮影装置104の構成例について説明する。図2は、図1の放射線撮影装置104の構成例を示す図である。画素部201は、行列状に複数配置された画素200を有する。図2では、画素部201に画素200がm×n個二次元配置されている例を模式的に示している。画素部201に設けられる画素200の数は、例えば2688×2688pixelなど、1辺あたり数千を超える数の画素200からなることが多い。
各々の画素200は、蛍光体(図2では不図示)からの光を電荷に変換する複数の光電変換素子202と、変換された電荷に基づく電気信号をそれぞれ複数の信号線Sig1~Signに行単位で出力する複数のスイッチ素子203とを有する。
本実施形態では、光電変換素子として、ガラス基板等の絶縁性基板上に配置されたアモルファスシリコンを主材料とするPINフォトダイオード、蛍光体としてヨウ化セシウム(CsI)からなる材料を用いた例を示す。
スイッチ素子203としては、例えば薄膜トランジスタ(以下、TFTと呼称する)などの制御端子と2つの主端子を有するトランジスタが好適に用いられる。光電変換素子202の一方の電極(第1の電極)はスイッチ素子203の2つの主端子の一方に電気的に接続され、他方の電極(第2の電極)は共通のバイアス配線Vsを介してバイアス電源部204と電気的に接続される。
バイアス配線Vsは、バイアス電源部204からのバイアス電圧をすべての光電変換素子202に供給する。m行目の複数のスイッチ素子Tm1~Tmnは、それらの制御端子がm行目の駆動線Vgmに共通に電気的に接続されており、駆動制御部205からスイッチ素子Tm1~Tmnの導通状態を制御する駆動信号が駆動線Vgmを介して行単位で与えられる。
駆動制御部205は、制御部105から入力された制御信号に応じて、スイッチ素子T11~Tmnを導通状態にする導通電圧と、非導通状態にする非導通電圧とを有する駆動信号を各駆動線Vg1~gmに出力する。これにより、駆動制御部205は、スイッチ素子T11~Tmnの導通状態及び非導通状態を制御し、画素部201を駆動する。
n列目の複数のスイッチ素子T1n~Tmnは、他方の主端子がn列目の信号線Signに電気的に接続されている。スイッチ素子T1n~Tmnが導通状態である間に、変換素子S1n~Smnの電荷に応じた電気信号は、信号線Signを介して読出制御部206に出力される。列方向に複数配列された信号線Sig1~Signは、複数の画素200から出力された電気信号を並列に読出制御部206に出力する。読出制御部206は、複数の信号線Sig1~Signの信号を読み出すようになっている。
読出制御部206は、画素部201から並列に出力された電気信号を増幅する増幅部207を信号線Sig1~Sign毎に対応して設けられている。また、各増幅部207は、出力された電気信号を増幅する積分増幅器208と、増幅された電気信号をサンプルホールドするサンプルホールド部213と、バッファアンプ215とを含む。
積分増幅器208は、読み出された電気信号を増幅して出力する演算増幅器210と、コンデンサ211と、リセットスイッチ212とを有する。なお、積分増幅器208は、演算増幅器210の反転入力端子と出力端子に配置されたコンデンサ211の容量を変えることで増幅率を変更することが可能である。
演算増幅器210の反転入力端子にはそれぞれ信号線Sig1~Signの電気信号が入力される。また、正転入力端子には基準電源部209によって生成される基準電位Vrefが入力され、出力端子から増幅された電気信号が出力されるようになっている。増幅された電気信号は、サンプルホールド部213を介し、マルチプレクサ214に送信される。
マルチプレクサ214は、各増幅部207から並列に読み出された電気信号を順次出力して直列信号の画像信号として出力し、画像信号をインピーダンス変換して出力するバッファアンプ215に送信される。バッファアンプ215から出力されたアナログ電気信号である画像信号は、A/D(アナログ/デジタル)変換器216によって例えば14ビットや、16ビットなど、所定の階調数のデジタル画像データに変換され、データ収集部106へ出力される。
なお、バイアス電源部204と基準電源部209に与える電圧と、積分容量、駆動制御部205の動作クロック等の制御設定値は、制御部105によって変更できるようになっている。
次に、図3を用いて、画素200の詳細な構造について説明する。図3Aは、画素200の詳細構造を示した平面図である。図には記載しないが、上部に蛍光体が配置されており、X線を可視光に変換することができる。その下部に、光電変換素子34やTFT36を含む各種配線が配置されている。
光電変換素子34は、TFT36を介して信号配線31と電気的に接続されている。また、光電変換素子34の上部電極はバイアス配線33と電気的に接続されており、光電変換素子34に一定のバイアス電圧を印加することができる。
以上のような構造により、光電変換素子34は、画素200にX線が到達した際、蛍光体から発した可視光を受光した際に発生した電気信号を、TFT36を介して信号配線31に転送できるようになっており、画像信号を形成することが可能となっている。また、光電変換素子34の上部の任意の位置に遮光部37を配置することができる。
図3Bは、図3Aにおける線分A-A’での断面図を示したものである。左部には光電変換素子34、右部にはTFT36が構成されている。その他、平坦化層313と、画素200の構造の全体を保護する第二の保護層314を有する構造となっている。
バイアス配線33は、光電変換素子34の上部に構成されている。バイアス配線33を金属層で構成して、光電変換素子34に対して実質的に遮光部37として機能させてもよい。
光電変換素子34は個別電極307、第二の不純物半導体層308、第二の半導体層309、第三の不純物半導体層310、共通電極311、光電変換素子34を保護する第一の保護層312を含む。ドレイン電極303は接続用ホール35により個別電極307に接続されている。共通電極311は接続用ホール35によりバイアス配線33に接続されている。
光電変換素子34に不感領域を配置する場合は、共通電極311より上の層に金属などで構成される任意の遮光部を追加してもよい。この遮光部は、バイアス配線33と、接続用ホール35として機能する領域と、を合計した領域より広い領域まで拡張されていてもよい。
TFT36はゲート電極301、ソース電極302、ドレイン電極303、絶縁層304、第一の半導体層305、第一の不純物半導体層306を含む。なお、TFT36のゲート電極301は制御配線32の一部をなしている。また、ソース電極302は信号配線31の一部をなしており、制御配線32による制御で、TFT36がオンになることにより、光電変換素子34の電荷は電気信号として信号配線31に転送することができる。
また、光電変換素子34およびTFT36の上部に金属などで構成される任意の遮光部37を追加することも可能である。遮光部37はバイアス配線33と同じく金属層で構成することができ、また、遮光部37とバイアス配線33が繋がっていてもよい。
また、遮光部37を配置するのではなく、光電変換素子34のうち、第二の半導体層309と第三の不純物半導体層310とで構成される半導体層、および共通電極311、のうちいずれかを設けない領域を作り、可視光に対する不感領域を形成してもよい。
光電変換素子34を遮光することで、画素200の開口部の開口形状を変化させることができ、アパーチャMTFを調整することができる。遮光部37の詳細な配置については後述する。また、TFT36を遮光することにより、放射線および、可視光の照射によるスイッチ動作への影響を軽減することができる。
なお、光電変換素子34を構成する半導体としては、例えば第二の不純物半導体層308をn型半導体層、第二の半導体層309をi型半導体層、第三の不純物半導体層310をp型半導体層とし、PIN型の光電変換素子とすると好適である。ただし、光電変換素子34の構成は上記に制約されるものではなく、例えばn型半導体層とp型半導体層が入れ替わる構成を取ってもよいし、絶縁層、i型半導体層、n型半導体層からなるMIS型の光電変換素子を用いても構わない。
また、図3Bでは、光電変換素子34とTFT36が同じ平面に構成されている例を示したが、これらは同一平面上にある必要はなく、両者を積層するような構成であってもよい。
図3Cは、図3Aの画素200における開口形状と、X方向、Y方向に開口形状を平均したもの(サンプリングプロファイルと呼称する)を示した図である。
開口部316は、光電変換素子34の領域において、信号配線31、制御配線32、バイアス配線33やTFT36、遮光部37などの光電変換素子34へ入射する光を遮光する構造群によって形成される遮光領域317を除いた領域となる。なお、図3以下の図において、開口部は白色、遮光領域は黒色で表すこととする。
グリッドをグリッド縞が縦向きに配置される場合、X方向のサンプリングプロファイル318でアパーチャMTFが規定される。同様に、グリッド縞が横向きに配置される場合、Y方向のサンプリングプロファイル319でアパーチャMTFが規定されることとなる。
次に、グリッドを用いて放射線画像を撮影したときに発生するグリッド縞の特徴について図4を用いて説明する。
図4Aは、放射線撮影装置104にグリッドを配置した場合の断面を示した模式図である。グリッド40が配置され、その下に放射線撮影装置104として、蛍光体41と、画素部42が配置されている様子が示されている。蛍光体41から発した可視光は、画素部42に照射され、集光のためのマイクロレンズや、ローパスフィルタは設けないことが一般的である。
グリッド40は、アルミニウムやカーボン等などのX線を透過しやすい中間物質401と、X線を吸収しやすい鉛などの吸収物質402が一定の間隔で交互に配置されている。これにより、放射線源から被写体内を直進する一次放射線による信号成分を透過し、被写体内で放射線が散乱して発生する散乱線による信号成分を遮断することで、被写体像のコントラストを向上することができる。
まず、仮にグリッド40にX線を照射した場合を考える。図4Bはグリッド40にX線を照射した際の信号量(透過後のX線信号量)の信号プロファイルと、その周波数特性を示した図である。
グリッド40は上記の構造により、中間物質と吸収物質のX線透過率の差によって、図4Bにあるように矩形の信号プロファイル403を形成する。いま、グリッド密度をD[本/cm]とすると、グリッド縞のピーク周波数(基本波)fg[lp/mm](line pair/ミリメートル)は、下記の数1に示す式にて表すことができる。
ここで、αは拡大率を示している。図4Aに示すように、グリッド40は、必ずしも画素部42の直上に配置されるわけではなく、蛍光体41や、放射線撮影装置104の筐体や、グリッド40を装着するための各種アタッチメントなど、適宜の構造が間に配置されることが考えられる。その場合は、放射線発生装置101と放射線撮影装置104の位置関係によって、グリッド縞の幅がわずかに拡大されることとなり、画像に現れるグリッド縞は、グリッド密度Dに拡大率をかけたピーク周波数を持つこととなる。また、放射線撮影システム100が使用される代表的な条件からαを定めてもよい。
すなわち、fgは、グリッド40のグリッド本数と、グリッド40、光電変換素子202、および放射線発生装置の位置関係によって発生する拡大率と、の少なくとも一つによって決定される。
また、信号プロファイル403が矩形であることから、周波数特性としては、基本波の他に、fg[lp/mm]にピークを持つ基本波404に加え、N倍の倍高調波を有することが特徴である(Nは正の整数)。
放射線撮影装置においては、グリッド40を通過したX線は蛍光体41において可視光に変換されるプロセスをたどる。図4Cは蛍光体41に入射したX線が可視光に変換された際の可視光の信号プロファイルと、その周波数特性を示した模式図である。
蛍光体41が有するアナログMTF406によって、グリッド40の信号は変調され、信号プロファイルは405のように、高周波が減衰した形となる。グリッド縞の周波数特性としては、アナログMTF406による変調により、グリッド縞ピークのパワーの減衰が発生する。
図4Cでは、アナログMTF406は、3×fg以降ではほぼ0に減衰しており、3倍以降の高調波はおよそ解像しない例を示している。fgとアナログMTF406の関係によって、取り扱う必要のある高調波は変化する。なお、ここまではアナログ的なプロセスであり、信号は全て連続値として捉えることができる。
最後に、蛍光体41において変換された可視光は、画素部42においてデジタル信号に変換されることとなる。連続値を取るアナログ信号を、一定の画素サイズによって積分し、デジタル信号に変換する際に、サンプリング定理にしたがって様々な影響が表れる。
画素部42のサンプリングピッチをS[mm]とすれば、ナイキスト周波数fs[lp/mm]は以下の数2で示す式にて表すことができる。
ここで、ナイキスト周波数fs以上の信号については、サンプリング定理に従い、画像中に折り返し雑音として現れることとなる。
図4Dは、画素部42の開口形状と、特定方向における1次元のサンプリングのプロファイルと、アパーチャMTFの例を示したものである。
仮に、開口率が100%である画素408の例を考えると、特定の方向(例えばX方向)のサンプリングプロファイル409は幅S[mm]の矩形となる。いま、アパーチャMTFをMTFap、サンプリング矩形の幅をU[mm]とすると、アパーチャMTFはその空間周波数成分を示したものとなり、以下の数3で示す式のようにsinc関数の絶対値となる。
アパーチャMTF410は、ナイキスト周波数fs以上の周波数においても特性が大きく変動することが特徴である。
sinc関数の特徴より、アパーチャMTFは、空間周波数x=k/U[lp/mm](k=1,2,・・・)の場合に略0となる。画素408の場合、U=Sであることから、x=k×2×fsの場合に略0となる性質を持つ。
実際には、図3で説明したように、画素200には光電変換素子以外にも様々な構成要素があるため、開口は必ずしも100%とできるわけではない。例えば、画素411のように開口率が低下すると、プロファイル412で示されるように、サンプリングプロファイルにおける矩形の幅UがサンプリングピッチSより小さくなる。よって、アパーチャMTF413が略0となる空間周波数は、画素408の場合より高くなる。
また、例えば画素414のように開口率が十分小さい場合を考えると、サンプリングプロファイル415はインパルス様になり、アパーチャMTF416は、全周波数で略1となってサンプリングによる変調の影響を受けなくなる形となる。このように、画素の開口形状によってアパーチャMTFの特性は大きく変化する特徴を持つ。
ここまで説明したように、グリッド縞を含む被写体の信号は画素部42によってデジタル信号に変換されるまでに、アナログMTF406とアパーチャMTFによって変調される。このアナログMTF406とアパーチャMTFを合わせたものはプリサンプリングMTFと呼ばれる。グリッド縞の信号は、一般的にナイキスト周波数fsより大きい周波数にピークを持ち、画像中に折り返し雑音として現れる。
図4Eの例に示すように、ナイキスト周波数fsを超える空間周波数にピークを持ち、かつプリサンプリングMTF417によって解像がなされるグリッド縞ピークをfgMとする(本図の例では倍高調波成分が該当する)。このようなグリッド縞ピークは、以下の数4に示す式で表される周波数fg’に、折り返し雑音によるグリッド縞を発生させる原因となる。
折り返し雑音によって発生するグリッド縞ピークは、グリッド本数とサンプリングピッチの関係によっては、低周波領域に位置することがあり、画像処理での除去が困難となる場合があるため問題となる。そのため、ナイキスト周波数を超える領域でのプリサンプリングMTFの特性と、グリッド縞ピークとの関係は非常に重要となる。特に、アパーチャMTFは画素200の開口形状によってその特性が大きく変動する。よって、グリッド縞の発生をコントロールする上では、画素200の開口形状が重要となる。
なお、被写体信号が持つ最高周波数成分は被写体によるため、前記の低周波領域については、その空間周波数については正確に規定できるものではない。しかしながら、特許文献1において、サンプリング周波数1/Sの30%以下に画像の主成分が集中することが報告されており、当該領域におけるグリッド縞を画像処理的に除去しようとすると、画像の主成分に影響を与える可能性が指摘されている。一例として、上記条件を低周波領域と取り扱うことができる。
後述するように、画素200の開口形状をコントロールすることで、問題となるグリッド縞ピークfgMにおけるアパーチャMTFを減衰させて当該のグリッド縞の解像を抑えるようにすることが可能となる。なお、ナイキスト周波数以下のアパーチャMTFを大きく変動させると、被写体信号の解像に悪影響を与える可能性があるため、対象となるグリッド縞ピークfgMはナイキスト周波数以上を対象とすることが望ましい。
次に、図5を用いて、アパーチャMTFを調整してグリッド縞の発生をコントロールするための画素200の形状について説明する。
放射線撮影装置104のグリッド103を用いた撮影においては、各種のグリッドが用いられる。代表的なものとしては、34本、40本、52本、60本、70本、80本などのグリッド密度のものが使用される。また、放射線撮影装置104の画素200のサンプリングピッチに関しても、装置によって0.050[mm]~0.2[mm]程度のものが用いられる。
グリッド103は、放射線撮影装置104の画素200のサンプリングピッチに応じて適切なグリッド密度となるような組み合わせが選択されるが、ユースケースによってはこの限りではない。例えば、あるサンプリングピッチにおいて複数のグリッド密度に対応する場合もある。この場合、後述するように、低周波領域にグリッド縞ピークが発生する可能性がある。
一例として、サンプリングピッチが0.125mmである場合に、40本グリッドを使用し、式1における拡大率α=1とした場合について説明する。ここで、アナログMTFによって解像されるグリッド縞は基本波4[lp/mm]と倍高調波8[lp/mm]である場合を考える。ナイキスト周波数fs=4[lp/mm]となり、4[lp/mm]にピークを持つ基本波と、fgM=8[lp/mm]に発生する40本グリッドの2倍高調波の折り返し雑音が、画像の0[lp/mm]付近に発生する。
この場合、前者の基本波は適宜の画像処理によって好適に除去可能であるが、後者の折り返し雑音は、低周波のモアレとして視認され、画像処理による除去も難しいため問題となる。なお、80本グリッドを用いた場合も、基本波が8[lp/mm]となるため、基本波について同様の問題が発生する。このようなケースは、グリッド縞のピーク周波数がサンプリング周波数1/S付近にある状態で、発生するグリッド縞が0[lp/mm]付近に来るもので、最も画像への影響が懸念されるケースである。
図4Dに示すように、開口率が100%の場合、8[lp/mm]においてアパーチャMTFは極小値をとり、応答は略0となる。そのため、プリサンプリングMTFの応答は十分に減衰される。そのため、8[lp/mm]に発生する40本グリッドの2倍高調波は解像せず、グリッド縞の画像への影響を抑えることが可能となる。
しかしながら、実際には、図3で説明したように、画素200には光電変換素子以外にも各種の配線やTFTなど、様々な構成要素がある。そのため、開口を完全に100%とすることは難しく、fgM=8[lp/mm]におけるプリサンプリングMTFは一定の値を持つこととなる。
図4で説明した通り、矩形サンプリングを行う場合には、開口率を下げると、アパーチャMTFが極小値をとる周波数は高くなる。結果としてfgM=8[lp/mm]におけるアパーチャMTFは高い値を持つこととなり、当該の空間周波数の信号を解像することになる。したがって、この場合、開口率を下げつつ、アパーチャMTFが極小値をとる周波数を低くするような画素200の開口を実現し、結果としてfgM=8[lp/mm]におけるアパーチャMTFを十分減衰した状態にする必要がある。
図5は、開口部の一例である。画素200の開口形状として、画素200の光電変換素子の中央部分付近に遮光領域を設け、開口部を501と502に分離した形状になっている。このとき、X方向のサンプリングプロファイル503において、中央部分付近のプロファイルの値が下がった領域があり、極小値を取っている(以後、このようなプロファイル形状のことを凹型と呼称する)。
なお、図5では、説明を簡単にするため、開口部501と502で同じ形状の矩形プロファイルとなる開口を例示しているが、その限りではない。この他の構成として、例えば後述する他の構成であってもよい。
開口部501および502単体から構成されるアパーチャMTFは、いずれもそれぞれ504となる。しかし、サンプリングプロファイルにフーリエ変換やZ変換などによる周波数空間への変換を行い、虚数空間を含めた両者の空間周波数特性を考えると、それぞれ506、507の特性となり、各々位相が異なるものとなっている。開口部502と503を合わせた開口から作られるサンプリングプロファイル503の空間周波数特性は、506と507を合計した508となり、その絶対値から算出されるアパーチャMTFは505となる。
ここで、減衰する周波数が大きいが位相が異なる2つの矩形プロファイルを組み合わせて干渉させることで、単体の矩形プロファイルよりも、より小さい空間周波数においてアパーチャMTFの極小値を持たせることが可能となることに注意されたい。このように、アパーチャMTF505は、全体の開口率を減らしつつも、対象となるfgM=8[lp/mm]の応答を大幅に減衰する特性を実現していることが分かる。
ここでは、fgMにおけるアパーチャMTFの応答が極小値かつ、略0をとる例について示している。なお、極小値がfgMと等しくなる必要はなく、fgMにおける応答が十分に低い所定の値となればよい。所定の値の詳細については後述する。
以上説明した通り、サンプリングプロファイル503のように、凹型の形状を取ることで、開口率を下げつつ、任意の空間周波数におけるアパーチャMTFの特性を減衰させるような画素200の開口を実現することができる。
図6は、開口部の別の例である。画素200を機能させるために各種の配線やTFTなどが必要であり、それらの構造を考慮すると、サンプリングプロファイルは単純な矩形とすることは難しい。例えば図6Aのように、信号配線61、制御配線62、バイアス配線63、光電変換素子64、TFT65、遮光部66を配置する構成を取り、図6Bのように中央部分に遮光領域を配置した開口部601となるようにする。
これにより、X方向のサンプリングプロファイル606を、図6Cのように凹型となるように構成することが可能である。ここでは、バイアス配線63は、金属配線によって構成され、遮光部として機能するようになっている。また、バイアス配線63の太さと配置については、図6Dに示すアパーチャMTFを取るように決定する。
また、遮光部66は、X線照射によるTFT65の誤作動を防ぐために、TFT65の上部に配置されている。ここでは、バイアス配線63を遮光部とする構成としたが、この構成に限定されるものではなく、バイアス配線に設計上の制限がある場合は、適宜別途の遮光部を配置するようにしてもよい。
ここで、図6Cに示されるサンプリングプロファイル606にフーリエ変換やZ変換などによる周波数空間への変換を行い、その絶対値を計算するとアパーチャMTF607を算出することができる。すると、アパーチャMTF607は、対象となるfgM=8[lp/mm]付近で極小値をとり、fgMにおける応答を略0に減衰する特性を持っていることが分かる。これにより、X方向にグリッド縞を配置したときに、画像の0[lp/mm]付近に発生するグリッド縞ピークを抑制することが可能となる。
なお、遮光領域の配置は、例えば以下のようにして決定することができる。
サンプリングプロファイル606は、602~605の複数の矩形が合成された形となっている。それぞれの矩形ブロックについて周波数空間への変換を行い、虚数空間を含めた両者の空間周波数特性を考えると、図6Eに示すように、602~605にそれぞれ対応する6021~6051の特性を得ることができる。
アパーチャMTF606は、6021~6051の特性を加算することで求まることから、ターゲットとなるfgM=8[lp/mm]の特性が減衰するようにサンプリングプロファイル形状を決定すればよい。そして、サンプリングプロファイル形状を実現するように画素200の各要素を配置することにより、最適な遮光領域の配置を決定することが可能となる。
以上のように、画素200に必要な配線類を配置した場合のアパーチャMTFについて、極小値をとる空間周波数がfgMよりも高い場合は、凹型サンプリングの形状となるように遮光部を設けることで、好適に調整することができる。なお、ここでは、グリッドが40本、拡大率α=1、fgM=8[lp/mm]のケースについて例示しており、開口が100%の矩形サンプリングでない場合は、アパーチャMTFの極小値の空間周波数はfgMより高くなる。
図7は、開口部の別の例である。
図7Aのように、信号配線71、制御配線72、バイアス配線73、光電変換素子74、TFT75、遮光部76を配置する構成を取り、図7Bのように中央部分に遮光領域を配置した開口部701となるようにする。
これにより、Y方向のサンプリングプロファイル702を、図7Cのように凹型となるように構成することが可能である。このとき、図7Dに示すように、アパーチャMTF703は対象となるfgM=8[lp/mm]において極小値をとり、略0に減衰する特性を持つ。
図7Aに示すように、遮光部76の一部に開口領域を設けることも可能である。
これにより、Y方向にグリッド縞を配置したときに、画像の0[lp/mm]付近に発生するグリッド縞ピークを抑制することが可能となる。
以上、図6、図7に例示した画素200によって、X方向、Y方向のどちらかにグリッド縞を配置した場合に画像への影響を抑えることが可能となるが、以下図8のように、どちらの方向においても好適なアパーチャMTFを持つ構成も考えられる。
図8は、開口部のさらに別の例である。
図8Aのように、信号配線81、制御配線82、バイアス配線83、光電変換素子84、TFT85、遮光部86を配置する構成を取り、図8Bのように中央部分に遮光領域を配置した開口部801となるようにする。それにより、図8Cのように、X方向のサンプリングプロファイル802、Y方向のサンプリングプロファイル803を得ることができる。
これらはX方向、Y方向ともに中央部分に感度が下がった領域のある凹型となるように構成されている。図8Dには、X方向のサンプリングプロファイルから得られるアパーチャMTF804、Y方向のサンプリングプロファイルから得られるアパーチャMTF805を示している。
図8Dが示すアパーチャMTF804および805は、いずれも対象となるfgM=8[lp/mm]において極小値をとり、応答を略0に減衰する特性を持つ。なお、ここでは、バイアス配線83と遮光部86を別々に用意する構成の例を示したが、バイアス配線83の一部を遮光部として用いることも可能である。
これにより、X方向、Y方向どちらにグリッド縞を配置したときであっても、画像の0[lp/mm]付近に発生するグリッド縞ピークを抑制することが可能となる。
なお、以上の説明においては対象となるfgMにおいてアパーチャMTFが極小値をとり、応答を略0に減衰する構成について例示した。
しかしながら、極小値がfgMと等しくなる必要はなく、fgMにおける応答が十分に低い所定の値となればよいものとする。所定の値としては、折り返し雑音によって画像に発生するグリッド縞が使用上問題にならない程度に低減できる値であるものとする。前述したように、折り返し雑音によって画像に発生するグリッド縞の視認性は、当該周波数のプリサンプリングMTF(アナログMTFとアパーチャMTFの積)によって影響される。
図9のように、アパーチャMTFの極小値をfgMに近づけることで、fgMにおけるアパーチャMTFを十分低くするような構成も考えられる。この場合、アパーチャMTFの極小値をfgMと等しくする必要がないため、遮光部の配置の自由度が上がり、遮光部の面積を小さくして、開口率を向上することが可能となる。
図9は、開口部のさらに別の例である。図9Aのように、信号配線91、制御配線92、バイアス配線93、光電変換素子94、TFT95、遮光部96、接続用ホール97を配置する構成を取り、図9Bのように中央部分に遮光領域を配置した開口部901となるようにする。それにより、図9Cのように、X方向のサンプリングプロファイル902、Y方向のサンプリングプロファイル903を得ることができる。
これらはX方向、Y方向ともに中央部分に感度が下がった領域のある凹型となるように構成されている。図9Dには、X方向のサンプリングプロファイルから得られるアパーチャMTF904、Y方向のサンプリングプロファイルから得られるアパーチャMTF905を示している。図9Dが示すアパーチャMTF904および905は、いずれも対象となるfgM=8[lp/mm]より大きい9[lp/mm]付近において極小値をとっているが、fgM=8[lp/mm]における応答が十分に減衰する特性を持つ。なお、ここでは、バイアス配線93と接続用ホール97の機能確保領域の周りの領域まで遮光部96を拡張した構成の例を示している。
これにより、図8に例示した画素200よりも遮光部の面積を小さくして、開口率を向上させながら、X方向、Y方向どちらにグリッド縞を配置したときであっても、画像の0[lp/mm]付近に発生するグリッド縞ピークを抑制することが可能となる。
発明者の検討により、該当の周波数におけるプリサンプリングMTFが5%以下となる場合は、折り返し雑音によるグリッド縞のモアレをほぼ視認できなくなることを見出した。fgMにおけるアナログMTFをMTFana(fgM)、アパーチャMTFをMTFap(fgM)とすると、以下の数5に示す式に従うようにすればよい。遮光部86の位置・面積を調整することで、アパーチャMTFの減衰量を調整できる。
開口部901においては、MTFap(fgM)は略0(詳細には0.10程度)である。よって、ここではMTFana(fgM)=0.5以下となるような蛍光体を用いればよい。放射線撮影装置で一般に用いられるヨウ化セシウム(CsI)や酸硫化ガドリニウム(GOS)からなる蛍光体においては、一般に高周波になるにつれアナログMTFは減衰する特性を持つため、十分に数5を満たすことが可能である。
以上、一例として、サンプリングピッチが0.125mm、40本グリッドを使用したときの場合における画素200とアパーチャMTFの構成について説明したが、この構成に限るものではなく、あらゆるサンプリングピッチとグリッドの組に関して適用可能である。
別の例として、サンプリングピッチが0.1[mm]、52本グリッドを使用した場合について説明する。この場合においても、同様の構成によって実現が可能である。
このとき、アナログMTFによって解像されるグリッド縞は基本波5.2[lp/mm]と倍高調波10.4[lp/mm]である。またナイキスト周波数fs=5[lp/mm]となる。折り返し雑音によって4.8[lp/mm]にピークを持つ基本波と、fgM=10.4[lp/mm]に発生する52本グリッドの2倍高調波の折り返し雑音が、式4に従って画像の0.4[lp/mm]付近に発生する。
前者の基本波は適宜の画像処理によって好適に除去可能であるが、後者の折り返し雑音は、低周波のモアレとして視認され、画像処理による除去も難しいため問題となる。この場合においても、サンプリングピッチ0.1mmの画素200において図8A様の画素構成を取り、凹型のサンプリングプロファイルを構成することで、10.4[lp/mm]におけるアパーチャMTFを減衰することが可能となる。
一般的に、折り返し雑音が低周波領域に現れる場合のグリッド縞のピーク周波数は、サンプリング周波数1/S近辺となる場合がほとんどであるが、本特許はそれ以外の場合においても適用が可能である。
例えば、サンプリングピッチが0.14[mm]で、60本グリッドを使用した場合の例を考える。このとき、ナイキスト周波数fs=3.57[lp/mm]となり、グリッド縞の基本波6[lp/mm]は折り返し雑音によって1.14[lp/mm]にグリッド縞を発生させる。
いま、fgM=6[lp/mm]とすると、図10Aに示すように、開口形状1001とし、サンプリングプロファイル1002のように凹型のサンプリングとなる。このようにすることで、アパーチャMTF1003のように、fgM付近で極小値をとり、応答を略0とする特性を構成することが可能である。このとき、開口形状1001によるアパーチャMTF1003は、開口率を下げつつも、開口率が100%の画素におけるアパーチャMTF1004よりも、アパーチャMTFが極小値をとる空間周波数が低くなっていることがわかる。
また、さらに別の例として、サンプリングピッチが0.14[mm]で、80本グリッドを使用した場合を考える。このとき、ナイキスト周波数fs=3.57[lp/mm]となり、グリッド縞の基本波8[lp/mm]は折り返し雑音によって2.71[lp/mm]にグリッド縞を発生させる。
この場合は特許文献1に記載の画像処理でグリッド縞を除去することも可能であるが、上記のようにアパーチャMTFを調整することでグリッド縞の解像を防ぐことも可能である。
いま、fgM=8[lp/mm]とすると、図9Bに示すように、開口形状1005とし、サンプリングプロファイル1006のように凹型のサンプリングとなる。このようにすることで、アパーチャMTF1007のように、fgM付近で極小値をとり、応答を略0とする特性を構成することが可能である。このとき、開口形状1005によるアパーチャMTF1007は、開口率が100%の画素におけるアパーチャMTF1008よりも、アパーチャMTFが極小値をとる空間周波数を高くなるようコントロールできていることがわかる。
なお、図4Dで説明したように、アパーチャMTFが極小値をとる空間周波数を高くするには、矩形サンプリングで開口率を下げる形態を取ることも可能だが、設計上の制約を強く受け、必要な配線などのスペースが確保するのが難しい場合も多い。対して、開口形状1005のように凹型のプロファイルを取ることで、より設計の自由度を保ちながら、アパーチャMTFが略0に減衰する空間周波数を高くすることが可能となっている。
以上説明したような構成を取ることにより、問題となるグリッド縞ピークfgMにおけるアパーチャMTFを減衰させて当該のグリッド縞の解像を抑制することが可能となり、グリッド縞の発生を効果的に抑える放射線撮影装置を提供できる。
以上、実施形態および変形例について説明したが、これらの実施形態および変形例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
(付記1)
放射線を可視光に変換するための蛍光体と、光電変換素子をそれぞれ有する複数の画素と、を有し、散乱線を除去するグリッドを用いて画像を取得する放射線撮影装置であって、
前記光電変換素子は、光電変換層およびそれを挟み込むように配置された2つの電極層からなり、
前記光電変換素子の開口部には、前記グリッドの縞と直交した方向に射影したプロファイルが開口部内で1つまたは複数の極小値をもつように、前記蛍光体からの可視光に対する不感領域を設けるために前記開口部を覆う遮光部を配置し、
前記遮光部は、前記光電変換素子から得られる信号において所定の空間周波数におけるアパーチャMTFが所定の値以下となるように、前記画素におけるバイアス配線が配された領域と、他層との接続用ホールとして機能する領域と、を合計した領域より広い領域に拡張されて設けられていること
を特徴とする放射線撮影装置。
放射線を可視光に変換するための蛍光体と、光電変換素子をそれぞれ有する複数の画素と、を有し、散乱線を除去するグリッドを用いて画像を取得する放射線撮影装置であって、
前記光電変換素子は、光電変換層およびそれを挟み込むように配置された2つの電極層からなり、
前記光電変換素子の開口部には、前記グリッドの縞と直交した方向に射影したプロファイルが開口部内で1つまたは複数の極小値をもつように、前記蛍光体からの可視光に対する不感領域を設けるために前記開口部を覆う遮光部を配置し、
前記遮光部は、前記光電変換素子から得られる信号において所定の空間周波数におけるアパーチャMTFが所定の値以下となるように、前記画素におけるバイアス配線が配された領域と、他層との接続用ホールとして機能する領域と、を合計した領域より広い領域に拡張されて設けられていること
を特徴とする放射線撮影装置。
(付記2)
前記所定の空間周波数は、前記グリッドを用いて前記放射線撮影装置による撮影を行って画像を取得した際の前記画像に発生するグリッド縞の複数の空間周波数のうち、折り返し雑音として前記画像の低周波領域に現れる前記画像のナイキスト周波数以上の空間周波数であってもよい。
前記所定の空間周波数は、前記グリッドを用いて前記放射線撮影装置による撮影を行って画像を取得した際の前記画像に発生するグリッド縞の複数の空間周波数のうち、折り返し雑音として前記画像の低周波領域に現れる前記画像のナイキスト周波数以上の空間周波数であってもよい。
(付記3)
前記所定の空間周波数は、前記グリッドのグリッド本数と、前記グリッド、前記光電変換素子、および前記放射線撮影装置に放射線を照射する放射線発生装置の位置関係によって発生する拡大率と、の少なくとも一つによって決定されてもよい。
前記所定の空間周波数は、前記グリッドのグリッド本数と、前記グリッド、前記光電変換素子、および前記放射線撮影装置に放射線を照射する放射線発生装置の位置関係によって発生する拡大率と、の少なくとも一つによって決定されてもよい。
(付記4)
前記遮光部は、縦方向および横方向の少なくとも一方のアパーチャMTFの極小値を、前記所定の空間周波数に近づけるように設けられていてもよい。
前記遮光部は、縦方向および横方向の少なくとも一方のアパーチャMTFの極小値を、前記所定の空間周波数に近づけるように設けられていてもよい。
(付記5)
前記遮光部は、光電変換層および上下に配置された電極層のいずれかが設けられていない領域であってもよい。
前記遮光部は、光電変換層および上下に配置された電極層のいずれかが設けられていない領域であってもよい。
(付記6)
付記1乃至5のいずれか一項に記載の放射線撮影装置と、
前記放射線撮影装置に放射線を照射する放射線発生装置と、
前記放射線撮影装置に入射する散乱線を除去するグリッドと、を有すること
を特徴とする放射線撮影システム。
付記1乃至5のいずれか一項に記載の放射線撮影装置と、
前記放射線撮影装置に放射線を照射する放射線発生装置と、
前記放射線撮影装置に入射する散乱線を除去するグリッドと、を有すること
を特徴とする放射線撮影システム。
37 遮光部
104 放射線撮影装置
202 光電変換素子
200 画素
316 開口部
104 放射線撮影装置
202 光電変換素子
200 画素
316 開口部
Claims (6)
- 放射線を可視光に変換するための蛍光体と、光電変換素子をそれぞれ有する複数の画素と、を有し、散乱線を除去するグリッドを用いて画像を取得する放射線撮影装置であって、
前記光電変換素子は、光電変換層およびそれを挟み込むように配置された2つの電極層からなり、
前記光電変換素子の開口部には、前記グリッドの縞と直交した方向に射影したプロファイルが開口部内で1つまたは複数の極小値をもつように、前記蛍光体からの可視光に対する不感領域を設けるために前記開口部を覆う遮光部を配置し、
前記遮光部は、前記光電変換素子から得られる信号において所定の空間周波数におけるアパーチャMTFが所定の値以下となるように、前記画素におけるバイアス配線が配された領域と、他層との接続用ホールとして機能する領域と、を合計した領域より広い領域に拡張されて設けられていること
を特徴とする放射線撮影装置。 - 前記所定の空間周波数は、前記グリッドを用いて前記放射線撮影装置による撮影を行って画像を取得した際の前記画像に発生するグリッド縞の複数の空間周波数のうち、折り返し雑音として前記画像の低周波領域に現れる前記画像のナイキスト周波数以上の空間周波数であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
- 前記所定の空間周波数は、前記グリッドのグリッド本数と、前記グリッド、前記光電変換素子、および前記放射線撮影装置に放射線を照射する放射線発生装置の位置関係によって発生する拡大率と、の少なくとも一つによって決定されることを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影装置。
- 前記遮光部は、縦方向および横方向の少なくとも一方のアパーチャMTFの極小値を、前記所定の空間周波数に近づけるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
- 前記遮光部は、光電変換層および上下に配置された電極層のいずれかが設けられていない領域であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
- 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の放射線撮影装置と、
前記放射線撮影装置に放射線を照射する放射線発生装置と、
前記放射線撮影装置に入射する散乱線を除去するグリッドと、を有すること
を特徴とする放射線撮影システム。
Priority Applications (2)
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JP2022157705A JP2024051499A (ja) | 2022-09-30 | 2022-09-30 | 放射線撮影装置および放射線撮影システム |
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Family Applications (1)
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2022
- 2022-09-30 JP JP2022157705A patent/JP2024051499A/ja active Pending
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