JP2024050154A - 発汗サーマルマネキンと、その運転方法 - Google Patents

発汗サーマルマネキンと、その運転方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2024050154A
JP2024050154A JP2022156826A JP2022156826A JP2024050154A JP 2024050154 A JP2024050154 A JP 2024050154A JP 2022156826 A JP2022156826 A JP 2022156826A JP 2022156826 A JP2022156826 A JP 2022156826A JP 2024050154 A JP2024050154 A JP 2024050154A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hollow fiber
temperature
mannequin
fiber membrane
sweating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022156826A
Other languages
English (en)
Inventor
薫 橘高
Kaoru Kikko
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP2022156826A priority Critical patent/JP2024050154A/ja
Publication of JP2024050154A publication Critical patent/JP2024050154A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Measuring And Recording Apparatus For Diagnosis (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、発汗サーマルマネキンと、それを用いた運転方法に関するもので、発汗状態における測定が適切に行われるようにすることを目的とするものである。【解決手段】中空のマネキンボディ1と、このマネキンボディ1の表面側温度を高めるための皮膚温用ヒーター2と、マネキンボディ1における、皮膚温用ヒーター2の外側に配置され、このマネキンボディ1の表面側温度を測定するための測温抵抗線4と、マネキンボディ1の表面側における、測温抵抗線4の外側、または内側において、マネキンボディ1の表面方向に、所定間隔をおいて、並走状態で配置した中空糸膜6と、この中空糸膜6の外側を覆った模擬皮膚用生地7とを備え、測温抵抗線4と、並走状態で配置された中空糸膜6とは、マネキンボディ1の外面視において、複数点で、交差する状態で配置している。【選択図】図1

Description

本発明は、衣料の快適性や、空調用衣料の空調能力などを測定するときに使用する発汗サーマルマネキンと、その運転方法に関するものである。
この種の発汗サーマルマネキンとして知られている先行文献としては、特開2009-249800号公報(特許文献1)が存在する。
この先行文献では、擬似人体31の体壁310を貫通した147個程度の注水穴を設け、この注水穴を介して体壁310に水を供給する構成としている。
また、擬似人体31の体壁310の外側には保水材(例えば布)311が張設され、上記注水穴から流出した水は保水材311に浸透し、一旦保持され、体温や運動量に応じた量の汗として外部に排出されることになる。
さらに、擬似人体31の体壁310の内側あるいは、体壁の厚み内には加温手段312が設けられ、加温制御手段50によって、擬似人体の表面温度を調整できるようになっている。
この(特許文献1)の課題は、擬似人体31の体壁310を貫通した147個程度の注水穴を介して体壁310に水を供給する構成となっていることである。
すなわち、擬似人体31面積の大きさに対して、注水穴の個数が少ないので、そこから流出した水を保水材311に浸透させるようにしても、注水穴直近と、その周りでは水濡れ状態に大きな差が出てしまう。
水濡れ状態は、温度変動に大きな影響を与えるので、温度検出手段(この特許文献1には開示されていない)で、擬似人体31の表面側温度を検出しようとした場合、温度検出手段の配置場所によっては、適切な温度測定が出来ず、適切な実験判定もできなくなる。
一方、保水材に対して中空糸膜から水を供給する技術は、例えば特開平8-193992号公報(特許文献2)や、特開2002-201522号公報(特許文献3)で知られているので、上記(特許文献1)において中空糸膜から水を供給することも考えられる。
特開2009-249800号公報 特開平8-193992号公報 特開2002-201522号公報
中空糸膜は、無数の水流出孔を有するので、この中空糸膜を、(特許文献1)の擬似人体31に、(特許文献2)、(特許文献3)のようにジグザク状に配置すると、擬似人体31表面における水流出バラツキを抑制することが出来る。
しかしながら、(特許文献2)、(特許文献3)にも、中空糸膜に対して温度検出手段を、どの様な関係で配置するのか、と言う点については開示されていない。
温度検出手段による温度検出は、温度検出手段を設置した場所の水濡れ状態に大きく影響されるので、中空糸膜に対して、温度検出手段を適切に配置することが必要となる。
そこで、本発明は、中空糸膜に対して温度検出手段を適切に配置することで、発汗状態(液体で濡れた状態)における測定が適切に行われるようにすることを目的とするものである。
そして、この目的を達成するために本発明の発汗サーマルマネキンは、中空のマネキンボディと、このマネキンボディの表面側温度を高めるための皮膚温用ヒーターと、前記マネキンボディにおける、前記皮膚温用ヒーターの外側に配置され、このマネキンボディの表面側温度を測定するための測温抵抗線と、前記マネキンボディの表面側における、前記測温抵抗線の外側、または内側において、前記マネキンボディの表面方向に、所定間隔をおいて、並走状態で配置した中空糸膜と、この中空糸膜の外側を覆った模擬皮膚材とを備え、前記測温抵抗線と、前記並走状態で配置された中空糸膜とは、前記マネキンボディの外面視において、複数点で、交差する状態で配置された構成とした。
また、本発明の発汗サーマルマネキンにおける中空糸膜の並走状態は、1本の中空糸膜を折り返し配線、あるいは複数本の中空糸膜を並走配線させることにより形成した。
さらに、本発明の発汗サーマルマネキンにおける皮膚温用ヒーターはヒーター線で構成し、このヒーター線と、前記中空糸膜は、前記マネキンボディの外面視において、並走状態で配置し、前記測温抵抗線は、前記マネキンボディの外面視において、前記並走状態で配置された中空糸膜とヒーター線に対して、複数点で交差する状態で配置された構成とした。
また、本発明の発汗サーマルマネキンは、マネキンボディの中空内部に、前記中空糸膜に供給する液体の加熱手段を設けた。
さらに、本発明の発汗サーマルマネキンにおいて、中空糸膜に液体を供給する液体供給手段は、液体容器と、この液体容器から前記加熱手段部分を介して前記中空糸膜に至る第1の液体供給路と、この第1の液体供給路の前記加熱手段部分から中空糸膜までの間に介在させた第1のポンプと、前記第1の液体供給路における前記加熱手段から第1のポンプまでの間から分岐し、殺菌用容器に連結される第2の液体供給路と、この第2の液体供給路に介在させた第2のポンプと、を備えた構成とした。
また、本発明の発汗サーマルマネキンは、発汗試験モード後の殺菌モード時には、第1のポンプを第1の所定時間逆転駆動して、前記中空糸膜に供給されていた液体を、前記液体容器側に排出し、次に、第2のポンプを第2の所定時間逆転駆動して、前記殺菌用容器内の殺菌剤を、前記第2の液体供給路を介して第1の液体供給路に供給し、その後、前記第1の第1のポンプを正転駆動して、前記中空糸膜内に殺菌剤を供給する構成とした。
さらに、本発明の発汗サーマルマネキンの運転方法は、
(1)人体の体温よりも低い一定の環境温度Xで、前記中空糸膜への液体供給を停止した状態で、測定する衣服着用時に前記皮膚温用ヒーターに供給する加温電力Yを測定する。
(2)次に環境温度X=(前記測温抵抗線で検出する人体皮膚温度)となる時、加温電力Y=0として、Y=aX+bの係数a、bを求める。
(3)任意の環境温度における発汗状態での加温電力をY2とし、
無効気化熱QをQ=環境温度Xにおける加温電力Y+発汗による気化熱-加温電力Y2の式で求めることを特徴とする発汗サーマルマネキンの運転方法である。
以上の様に本発明は、中空のマネキンボディと、このマネキンボディの表面側温度を高めるための皮膚温用ヒーターと、前記マネキンボディにおける、前記皮膚温用ヒーターの外側に配置され、このマネキンボディの表面側温度を測定するための測温抵抗線と、前記マネキンボディの表面側における、前記測温抵抗線の外側、または内側において、前記マネキンボディの表面方向に、所定間隔をおいて、並走状態で配置した中空糸膜と、この中空糸膜の外側を覆った模擬皮膚材とを備え、前記測温抵抗線と、前記並走状態で配置された中空糸膜とは、前記マネキンボディの外面視において、複数点で、交差する状態で配置された構成としたので、発汗状態(液体で濡れた状態)における測定が適切に行われるようになる。
すなわち、本発明においては、無数の液体流出孔を有する中空糸膜を、マネキンボディの表面方向に、所定間隔をおいて、並走状態で配置したので、模擬皮膚用生地の濡れ状態のばらつきが抑制され、自然の発汗状態に近い状況を現出することが出来る。
また、マネキンボディの表面側温度を測定するための測温抵抗線を、マネキンボディの表面方向に、所定間隔をおいて、並走状態で配置された中空糸膜に対して、前記マネキンボディの外面視において、複数点で交差する状態で配置された構成としたので、発汗状態(液体で濡れた状態)における測定が適切に行われるようになる。
すなわち、測温抵抗線を、マネキンボディの表面方向に、所定間隔をおいて、並走状態で配置された中空糸膜に対して、前記マネキンボディの外面視において、複数点で交差する状態で配置すると、例え、測温抵抗線と中空糸膜の配置ずれが発生しても、測温抵抗線と中空糸膜の交差数は変わらず、つまり、測温抵抗線と中空糸膜の位置関係は変わらず、その結果として、発汗状態(液体で濡れた状態)における測定が適切に行われるようになる。
これに対して、測温抵抗線と中空糸膜を並走状態で配置すると、両者間の距離の影響が、長い距離において発生し、大きな測定ばらつきが発生し、測定が適切に行われ無くなる。
本発明の一実施形態にかかる発汗サーマルマネキンの正面図 同発汗サーマルマネキンの背面図 同発汗サーマルマネキンの一部正面図 同発汗サーマルマネキンの一部断面図 同発汗サーマルマネキンにおける皮膚温用ヒーターの配置状態を示す正面図 同発汗サーマルマネキンにおける測温抵抗線の配置状態を示す正面図 同発汗サーマルマネキンにおける中空糸膜の配置状態を示す正面図 同発汗サーマルマネキンにおける内部構造を示す断面図 同発汗サーマルマネキンにおける液体供給路を示す図 同発汗サーマルマネキンにおけるポンプの平面構造図 同発汗サーマルマネキンにおけるポンプの正面構造図 同発汗サーマルマネキンにおける制御ブロック図 同発汗サーマルマネキンにおける動作フローチャート 同発汗サーマルマネキンにおけるパソコンの操作画面を示す図 同発汗サーマルマネキンの効果を説明するための図 同発汗サーマルマネキンの動的温度特性を説明するための図 本発明の他の実施形態にかかる発汗サーマルマネキンの断面図
(実施の形態)
図1、図2において、1は厚さ約3mmのプラスチックで構成された中空のマネキンボディである。
このマネキンボディ1は、身体の各部位の表面積が、ほぼ等しくなるように、例えば上半身は、胸、腹、背中、腰、左腕、右腕、頭部のブロックに、下半身は大腿部前側、臀部、左太もも、右太もも、左脛、右脛のブロックに分割し、各ブロックを独立して制御するものとしている。
なお、図1、図2には、胸と腹と背中と腰部分のブロックのみを図示しているが、他のブロックも、基本的な構成は以下の図3~図7と同じものとしている。
まず、上記各ブロックにおいては、図3~図5に示すよう、中空のマネキンボディ1の内面側に皮膚温用ヒーター(ニクロム線)2を配置している。
具体的には、各ブロックの中空のマネキンボディ1の内面側には、図5に示すように2系統の皮膚温用ヒーター(ニクロム線)2を、マネキンボディ1の外面視で上下方向に折り返し配線している。
なお、皮膚温用ヒーター2は、図5に示すように1ブロックを左右2系統に分割し、上下方向に+極と-極の行きと帰りを交互に配置して不要輻射の発生を抑えるように配慮した。このように皮膚温用ヒーター2を配置すると、直流でも交流でも、皮膚温用ヒーター2からの電波的な不要輻射の低減を図ることが出来る。
このようにマネキンボディ1の内面側に皮膚温用ヒーター2を配置したのちに、マネキンボディ1の内面側には、図4のように、皮膚温用ヒーター2を覆うように断熱材3を配置している。
一方、マネキンボディ1の外側(表面側)には、図3、図4、図6に示すように、マネキンボディ1の表面側温度を測定するための測温抵抗線4を配置している。
この測温抵抗線4は、温度変化に抵抗値が比例して変化する白金線もしくはニッケル線が適している。
この測温抵抗線4は、図6に示すように、各ブロックにおいて、左右方向に折り返すようにマネキンボディ1の外側(表面側)に密着して配置されている。
次に、図4に示すように、マネキンボディ1の外側(表面側)においては、測温抵抗線4の表面側(外側)を覆うように、絶縁フィルム5が配置されている。
次に、図3、図4、図7に示すように、絶縁フィルム5の外側(表面側)には、各ブロックに、外径φ0.8mm、孔径0.1μmの中空糸膜6が左右2系統で配置されている。絶縁フィルム5の役割は、測温抵抗線4が中空糸膜6から流出する液体(水道水)に対して濡れないようにするためで、この役割は、測温抵抗線4の外周に、薄い絶縁膜を設けることでも担うことができる。
中空糸膜6の配置は、図7に示すように、複数本の中空糸膜6の上端開口部を集結した状態で、そこから下方に、所定間隔を置いて引き下ろし、その後、下方から上方に折り返した状態としている。
つまり、各中空糸膜6は、上方から下方に引き下げられ、その後、折り返して、上方に引き上げられた状態となっており、左右方向(マネキンボディ1の表面に沿った方向)においては、複数の中空糸膜6が、所定間隔をおいて並走状態で配置された状態となっている。なお、中空糸膜6の並走状態は、1本の中空糸膜6を図7のごとく折り返し配線、あるいは複数の中空糸膜6を並走配線させることにより形成することができる。
この実施形態では、左右の中空糸膜6の間隔は、1~3cmとしている。また、各ブロックの中空糸膜6は左右対称とせず、1本おきに上昇と降下を配置することにより送水ムラを極力少なくした。
次に、中空糸膜6を覆うように、マネキンボディ1の外側(表面側)には、図4に示すように模擬皮膚材と一例として模擬皮膚用生地7が、中空糸膜6、マネキンボディ1の外側(表面側)に密着状態で配置されている。
なお、模擬皮膚用生地7としては、吸水速乾の生地が適している。また、模擬皮膚材としてスポンジを活用することもできる。さらに、マネキンボディ1の表面に、試験用の衣服を密着して装着し、この衣服を、模擬皮膚材として活用することも考えられる。
以上のような構成とすれば、図3で理解されるように、図6のごとく、左右方向に配置(配線)された測温抵抗線4と、図7のごとく、上下方向で、かつ左右方向で隣接するものとは並走状態で配置された中空糸膜6とは、前記マネキンボディ1の外面視において、複数点で交差する状態(本実施形態では略直交状態で交差)で配置された状態となる。
また、図5に示す皮膚温用ヒーター2と、図7に示す中空糸膜6は、図3に示すようにマネキンボディ1の外面視において、並走状態で配置された状態となっており、これにより、前記測温抵抗線4は、前記マネキンボディ1の外面視において、前記並走状態で配置された中空糸膜6と皮膚温用ヒーター2に対して、複数点で交差する状態で配置された状態となる。
以上の構成において、中空糸膜6の上端側開口部は、図1、図2、図7のように集結され、この部分にニップル8が装着され、後述のように、このニップル8を介して液体(この実施形態では水道水)が供給されるようになっている。
ニップル8から供給された液体は、各中空糸膜6内に供給され、その外面に無数形成された液体流出孔から流出し、次に、模擬皮膚用生地7に浸入し、この模擬皮膚用生地7を左右、上下方向へと滲み拡がることになる。
本実施形態では、隣接する中空糸膜6を、間隔1~3センチで並走状態としているので、模擬皮膚用生地7の濡れ状態は略一様にすることができる。つまり、身体前面から汗が出ている状態を再現した状態とすることができる。
そして、この状況において、並走状態で配置された中空糸膜6と測温抵抗線4とは、マネキンボディ1の外面視において、複数点で交差する状態(本実施形態では略直交状態)で配置された状態となるので、発汗状態(液体で濡れた状態)における測定が適切に行われるようになる。
すなわち、図3のごとく、測温抵抗線4を、並走状態で配置された中空糸膜6に対して、前記マネキンボディ1の外面視において、交差する状態で配置すると、例え、測温抵抗線4と中空糸膜6の配置ずれが発生しても、測温抵抗線4と中空糸膜6の交差数は変わらず、つまり、測温抵抗線4と中空糸膜6の位置関係は変わらず、その結果として、発汗状態(液体で濡れた状態)における測定が適切に行われるようになる。
この点を、さらに説明すると、上述のように、中空糸膜6を所定間隔で並走させても、中空糸膜6から模擬皮膚用生地7に対して液体が流出する構成にすれば、僅かながらでも、中空糸膜6に近い模擬皮膚用生地7部分の方が、中空糸膜6から遠い模擬皮膚用生地7部分よりも液体に対する濡れ状態は大きくなる。
したがって、図15に示すように、測温抵抗線4を、中空糸膜6に対して並走状態で配置すると、測温抵抗線4と中空糸膜6の距離の違いが、測温抵抗線4と中空糸膜6の長手方向において大きく影響を受けた測定となり、これにより、測定ばらつきが大きくなる虞がある。
図15のA、Bは、中空糸膜6に対して並走状態で配置された中空糸膜6に対して、測温抵抗線4を並走状態とした例を示して、静的な温度特性について説明する。
測温抵抗線4が中空糸膜6に近い状態(B)は、中空糸膜6から流出する液体の気化の影響を受けやすくなるので、下部(b)のように低い温度を検出するが、測温抵抗線4が中空糸膜6に遠い状態(A)は、中空糸膜6から流出する液体の気化の影響を受けにくく、下部(a)のように高い温度を検出することになり、測温抵抗線4と中空糸膜6の配置による温度検出ばらつきが大きくなる。
これに対して、本実施形態では、図3のごとく、測温抵抗線4を、並走状態で配置された中空糸膜6に対して、前記マネキンボディ1の外面視において、複数点で交差する状態で配置している。
この状態で、測温抵抗線4と中空糸膜6の配置に位置ずれが発生しても、そのずれとは、例えば、図3において、測温抵抗線4が上下方向にずれた状態となるだけで、測温抵抗線4における測定環境にずれは生じない。
すなわち、測温抵抗線4と中空糸膜6の配置に位置ずれが発生しても、そのずれとは、例えば、図15において、測温抵抗線4が上下方向にずれた状態(C、またはD)となるだけで、測温抵抗線4と中空糸膜6の交差数は変わらず、つまり、測温抵抗線4と中空糸膜6の温度検出位置関係は変わらず、その結果として、発汗状態(液体で濡れた状態)における測定が適切に行われるようになるのである。
図15の上部(C)の位置でも、(D)の位置でも、測温抵抗線4と中空糸膜6の交差数は変わらず、つまり、測温抵抗線4と中空糸膜6の温度検出位置関係は変わらず、測温抵抗線4は中空糸膜6に近い位置(交点部分)から遠い部分の平均を検出することになるので、下部(c、d)のように、温度検出は同じようなもので、温度検出にばらつきが起きにくくなる。
図16の発汗開始時における中空糸膜6と測温抵抗線4の位置関係と温度グラフを使用して、動的な温度特性について説明する。
発汗開始時は模擬皮膚用生地7の斜線部の、ごく一部分しか濡れていない状態である。測温抵抗線4を(A)または(B)の位置に配置すると、測定温度(a)または測定温度(b)は、全く反応していないことがわかる。これに対し、測温抵抗線4を中空糸膜6と交差する(C)または(D)の位置に配置すると、測定温度(c、d)は敏感に反応して、しかも温度分布の平均値を示している。発汗による温度制御においては発汗を敏感に検出できることと、検出した皮膚表面温度が、発汗量に比例して変動することが、きわめて重要である。測温抵抗線4を、(A)または(B)の位置に配置すると、感度が悪く、目標温度になるまで発汗を継続するため、結果的に大量に発汗する。大量発汗は、遅延して皮膚表面温度を必要以上に下げる。また発汗を停止しても皮膚表面温度が下がり過ぎた状態が継続し、不安定で大きな変動を伴う温度制御となる。その点、測温抵抗線4を(C)または(D)の中空糸膜と交差する位置へ配置すると、皮膚表面温度に対応した適切な発汗制御により温度が安定し、変動の少ない理想的な温度制御が可能になる。
図8~図11は、中空糸膜6への液体供給路を説明するものである。
中空糸膜6への液体供給手段は、マネキンボディ1外に設けた液体容器9を有する。
この液体容器9は、精密秤10上に載せられ、各ブロックの中空糸膜6への全液体供給量は、精密秤10で計測できる。また、この精密秤10は第1のポンプ13の流量校正にも使用する。事前に第1のポンプ13を個別に、例えば1分間連続駆動した時の流量を測定した結果から、単位時間当たりの流量を校正する。一般的なチューブポンプは±10%程度の流量誤差を生じるが、校正をおこなうと±2%以内の流量誤差に収まる。計測された第1のポンプ13の校正値と駆動時間から個別の部位の発汗量を求めることができる。個別の部位の発汗量は±2%以内の誤差を生じるので、個別部位(各ブロック)の発汗量の計算には第1のポンプ13の流量を使用し、最も重要なマネキン全体の発汗量は精密秤10の計測値を使用するのが合理的である。
液体容器9内には、この液体容器9から、マネキンボディ1内に設けた加熱手段11部分を介して前記ニップル8、中空糸膜6に至る第1の液体供給路12の一端開口部が挿入されている。
加熱手段11は、液体容器9から供給された液体を、身体の深部温度に加熱するもので、容器11a内に水を入れ、それをヒータ(図示せず)で加熱し、また、容器11a内の水をポンプ11bで放熱路11cを循環させることで、容器11a内の水を例えば37℃に保っている。
前記第1の液体供給路12は容器11aの外周を複数回、巻回した状態とされており、これにより中空糸膜6に供給される液体の温度を、例えば37℃の一定にするように構成されている。
第1の液体供給路12と、各ブロックのニップル8間には、それぞれ、第1のポンプ13が介在させられている。
また、前記第1の液体供給路12の、前記加熱手段11の容器11a部分から第1のポンプ13までの間からは、第2の液体供給路14が分岐され、この第2の液体供給路14には第2のポンプ15を介して殺菌用容器16が連結されるようになっている。
殺菌用容器16には、エタノール、次亜塩素酸水、界面活性剤等の殺菌剤が収納されている。
図10、図11は第1のポンプ13の構造を示すものである。
図10、図11に示すように、第1のポンプ13には上、下に、可撓性のある2本の第1の液体供給路12を配置し、それを、3個のローラー17の正転駆動で扱くことによって、液体を中空糸膜6側に供給するものである。逆に、3個のローラー17を逆転駆動で扱くことによって、中空糸膜6側に供給された液体を、第1の液体供給路12側に戻すことができるものである。
つまり、各ブロックには図7のごとく左右2系統の中空糸膜6配列が存在する構成としているので、各系統に液体の供給、回収をさせるようにしているのである。
比較例として、第1のポンプ13に、1本の第1の液体供給路12を配置し、その下流で2系統に分岐した場合には、各ブロックに配置した左右のニップル8の高さによって、液体の供給量、回収量に差異が出てしまう。具体的には、この場合には、低いニップル8に多くの液体が供給され、また、回収時には低いニップル8からの回収量が多くなる。
それに対して、本実施形態のように、第1のポンプ13には上、下に、可撓性のある2本の第1の液体供給路12を配置し、それを、3個のローラー17の正転駆動で扱くことによって、液体を中空糸膜6側に供給し、逆に、3個のローラー17を逆転駆動で扱くことによって、中空糸膜6側に供給された液体を、第1の液体供給路12側に戻すようにすれば、例え、左右2系統のニップル8の高さに差異が生じていても、左右2系統の中空糸膜6配列間の、液体供給量、液体回収量に、大きな差異は発生せず、安定した動作を保証することができる。
図12は制御ブロック図を示している。なお、この図12は、代表例として胸の1ブロックを示しているが、実際には身体を分割したブロックの数だけ、制御回路が必要になる。
測温抵抗線4には安価で温度変化による抵抗値の変化が比較的大きい純ニッケル線を採用した。測温抵抗線4の両端をホイートストンブリッジ回路18の1つの抵抗器に置き換えて、オペアンプ19にて増幅し、ADコンバーター20にて制御部21に温度のデジタル値を取り込む。ホイートストンブリッジ回路18への供給電力は、基準電圧回路22を使用して温度や元電源の変動に対して、一定の電圧を保つように配慮した。
加温制御には皮膚温用ヒーター(ニクロム線)2を使用し、制御部21の出力信号をドライバ23とソリッドステートリレー(SSR)24を介して電源部25から交流電源もしくは直流電源を供給し、また通電制御を行う。発汗制御には、チューブポンプよりなる第1のポンプ13を採用し、制御部21の出力信号はドライバ26を介して第1のポンプ13を駆動し、中空糸膜6への流量制御を行う。
また、チューブポンプよりなる第2のポンプ15はドライバ27を介して制御部21で制御を行う。
制御部21は、USB28を介して、マネキンボディ1外部のパソコン29と通信することができる。
パソコン29に搭載した専用アプリから、皮膚目標温度、加温制御の上限値と下限値、発汗制御の上限値と下限値などを制御部21に転送する。
制御部21は、受信した条件に基づいて自動制御をおこない、一定時間ごとにパソコン29に対し、マネキンボディ1側からの温度や制御量の情報を出力できる。パソコン29のアプリにはリアルタイムで数値やグラフ表示する機能を備え、使い勝手の良い仕様となっている(図14参照)。
図13に制御のフローチャートを示す。
まず、最初に温度の制御量の最低値を設定する(図13のS1)。例えば安静時を想定すると、成人男性の基礎代謝は一般に1500kcal/日と言われている。
これをW(ワット)換算すると72.6W/hとなるので、マネキンボディ1の最低発熱量を72.6W/hに設定する。
被験者の運動を想定する場合は、運動強度に応じて発熱量を例えば200W/hに設定することもできる。
次にマネキンボディ1の最低発汗量を設定する。
書籍「体温II」によると、成人では、安静時でも1日あたり200~400mlの発汗がある。
1時間あたりでは8.3~16.7ml/hとなる。これを10秒間あたりに換算すると0.023~0.046ml/10secとなる。この値を最低発汗量に設定するのが合理的と考えられる。
最低発汗量では、すぐに気化するため気相(不感蒸泄)発汗と考えられる。
次に、最大発汗量を設定する。
人体は最大で1リットル/h程度の発汗能力があるといわれているので、この値を採用するか、もしくは老人を想定して0.5リットル/hを設定するなど任意の最大発汗量を設定できる。つまり気相発汗から液相発汗まで連続的に変化させることができる。
温度制御は一般的なPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)で、各ブロックを独立して10秒間隔で制御をおこなう方式とした(図13のS2~S8)。そして、温度記録と制御量記録をメモリ30に記録させる(図13のS9)。
皮膚表面温度が35℃以下の場合は加温制御、皮膚表面温度が37℃以上の場合は冷却制御とした。この閾値は任意に設定することもできる。
人体の体温調節においても、皮膚表面温度が35~37℃の間は、積極的な温度制御を行っていない。これは快適ゾーンにおいて無駄なエネルギーの消費を抑える人体に備わった能力と考えられる。
マネキンボディ1の制御においては、加温制御と冷却制御の閾値が接近し過ぎると、加温制御と冷却制御が互いに干渉して振動現象を発生する虞れがあるので、制御しない温度領域を持たせることが重要であり、人体の体温調節とも整合性が取れて好都合である。
10秒間隔でのPID制御により、加温制御は±0.1℃、冷却制御は±0.3℃程度の精度にて温度制御が可能になった。
その後、制御部21に接続されたメモリ30に、温度情報と、制御量情報が記録される(図13のS9)。
これらの皮膚表面温度や運動量、発汗量の設定には専門知識が必要で、従来の発汗サーマルマネキンは、素人には扱いにくい欠点があった。
そこで、パソコン29のアプリに安静、軽作業、重作業、クロー値測定など用途に応じた操作モードをあらかじめ設定し、ユーザーはプルダウンメニューから選ぶだけで簡単に設定できる仕様とした。
また、専門知識を持ったユーザー向けとして、任意のキメ細かい設定ができるようにカスタムモードも設定した。カスタムモードは、CSV(Comma Separated Value)形式のファイルをユーザーが編集後にパソコン29のアプリから発汗サーマルマネキンに通信して制御に反映させる方式とした。
次に、本実施形態における特徴点について、個別に説明する。
(無効発汗の測定)
発汗サーマルマネキンは、ただ発汗すれば良いということでは無く、発汗量の何%が身体の冷却に寄与し、何%が無駄に消費されたかを測定できることが重要である。
したがって身体の冷却に寄与する発汗を有効発汗、身体の冷却に寄与しない発汗を無効発汗として切り分ける必要がある。
全発汗量=有効発汗+無効発汗の式より、全発汗量と有効発汗量が測定できれば、無効発汗量を求める事ができる。有効発汗量を測定するには、発汗サーマルマネキンの皮膚表面温度を一定に保つように発汗量を制御する必要がある。
従来の発汗サーマルマネキンでは、発汗による温度制御ができず、あらかじめ発汗量を一定に設定して実験をおこなうのが一般的で、そのため、有効発汗と無効発汗を正確に切り分けすることが不可能であった。
次に、発汗による適切な温度制御を可能にする、本実施形態の具体的手段を説明する。
(1)均一な発汗と気化の促進
中空糸膜6の配置を密にして、素早く模擬皮膚用生地7に拡散させ、皮膚表面に水分のムラを作らず、密度を均一にして気化を促進する。汗が気化しやすくなれば、温度のレスポンスが良くなり、発汗による温度制御が容易になる。つまり、本実施形態において、隣接する中空糸膜6を、間隔1~3センチで並走状態とし、模擬皮膚用生地7の濡れ状態は略一様にすることは、身体前面から汗が出ている状態を再現した状態とすることができるという点で、極めて重要な事である。
(2)マネキンボディ1の材質
一般に、発汗しないサーマルマネキンは温度制御のレスポンスが良いアルミボディを採用する例が多い。マネキンボディ1に金属ボディを採用すると、加温制御はレスポンスが良いという事にはなる。しかしながら、発汗による冷却制御は、気化のタイムラグによりレスポンスが悪いため、その差が大きく、制御のアルゴリズムが複雑になる。そのため、本実施形態では、マネキンボディ1をプラスチック製とし、加温のレスポンスを下げ、冷却のレスポンスに近づけ、制御のアルゴリズムを単純化、扱いやすい状態になるように配慮した。
(3)制御の間隔
加温制御、発汗制御ともに実績のあるフィードバック制御で一般的なPID制御を採用した。
温度制御におけるPID制御は、1秒間に1回のサイクルで制御をおこなうのが一般的である。加温制御においては、温度変化のレスポンスが良く、精度の良い温度制御が可能である。しかし発汗による冷却制御においては、温度変化のレスポンスが極めて悪い。理由は、中空糸膜6から発汗した後、模擬皮膚用生地7に拡散し、気化して温度が低下するまでに約5分のタイムラグがあるためである。
PID制御は、今回制御量と、前回制御量と、前々回制御量の3回分のデータを使用して温度制御するものである。一般的な1秒間隔の温度制御では3秒間のデータを基に5分後の状態を予測して制御をおこなうことになり、精度が悪く±3℃程度の制御が限界であった。本実施形態では、制御の間隔を加温制御、冷却制御ともに10秒間隔に設定した。10秒間隔のPID制御であれば、30秒間の温度変化から5分後の状態を予測し、±0.3℃程度の精度で発汗による温度制御が可能になった。
以上の構成とすれば、熱中症を簡易的に再現する機能を有する。
すなわち発汗量が規定量を超えると発汗を停止させる。例えば発汗量が、ペットボトル1本に相当する500ccを超えると発汗を停止させる。これは人体における脱水症状に相当する。
そして前記加熱手段11を構成する容器11a内の水道水の温度を深部体温に見立てて、加温制御を行い、発汗停止して冷却手段を失った皮膚表面温度の上昇と、深部体温の上昇を連動させて、深部体温が39℃に達すると痙攣を発症したと表示し、40℃で意識朦朧、41℃に達すると意識を喪失、42℃を超えると死亡判定をパソコン画面上に表示する。このように熱中症のメカニズムを再現し、脱水症状から熱中症を発症し、死亡する過程を数値でわかりやすく再現し、教育用として活用することができる。
次に、実験手順について説明する。
(事前準備)
温度と湿度を一定に設定できる環境試験室内に、マネキンボディ1と殺菌用容器16を設置する(液体容器9は環境試験室外)。
なお、殺菌用容器16内には、エタノールを約10ml入れる。
また、マネキンボディ1に接続された電源コード、第1の液体供給路12の一部、USB28を環境試験室外に引き出す。
汗の元となる新鮮な水道水を液体容器9に入れる。
液体容器9は2リットル程度のペットボトルが最適である。液体容器9を精密秤10に乗せ、第1の液体供給路12の一端開口部を挿入する。精密秤10を使用する理由は、精度の良い発汗量の計測をおこなうためである。第1のポンプ13は、あらかじめ流量を校正しても発汗量に±2%程度の誤差を生じる特性がある。
液体容器9を精密秤10は、マネキンボディ1の深部ボトルよりも高い台の上に設置すると、第1の液体供給路12の内部が負圧になることを防ぎ、第1の液体供給路12表面からの空気混入を防止できる。
電源コードはAC100Vに接続し、USB28のケーブルをパソコン29に接続する。
マネキンボディ1には、被測定対象となる衣服を着用させる。
(熱交換の測定)
環境試験室を、例えば温度30℃、湿度50%に設定し、パソコン29のアプリを起動して、操作画面(図14)のプルダウンメニュー(図中「動作モードの選択」)からウォームアップ(ドライ)を選択して送信ボタンを押す。
ウォームアップ(ドライ)モードとは、深部温を37℃、皮膚温を35℃に維持するモードで、発汗動作は行わない。
環境試験室の室内温度を30℃に設定すると、周囲温度とマネキンボディ1の皮膚表面温度35℃には5℃の温度差がある。
環境試験室内の気流と温度差によりマネキンボディ1の表面から周囲の大気へ熱交換(放熱状態)がおきる。熱交換が行われるとマネキンの皮膚温が低下するので、皮膚表面温を一定に維持するように皮膚温用ヒーター2への制御が働き、加温電力が上昇する。
マネキンボディ1の各部温度が安定した状態では、加温電力と熱交換が釣り合い、熱交換をW(ワット)表現した場合に、熱交換のW数は、加温電力のW数に等しくなる。
つぎに、環境試験室の室内温度を35℃に設定したと仮定すると、周囲温度はマネキンボディ1の皮膚表面温35℃(測温抵抗線4で検出される人体皮膚温度)と等しくなり、気流の有無にかかわらず、理論上は熱交換が行われなくなる。したがって、熱交換(=加温電力)はゼロになる。
この2つの条件から周囲温度と熱交換の実験式を作る事ができる。
熱交換は、温度差と気流速度に比例関係にあり、1次関数の実験式で表すことができる。
下記グラフ上に30℃時の熱交換(=加温電力量)と、35℃時に熱交換=0の直線を引き、Y=aX+bの係数a、bを求める。
(Y:加温電力(W)すなわち熱交換(W)、X:周囲温度(℃))
この式から任意の周囲温度における熱交換(W表現)を算出することができる。なお、周囲温度(環境温度)が皮膚表面温度よりも低い場合、熱交換はプラスの値となるが、周囲温度が皮膚表面温度よりも高い場合、熱交換はマイナスの値となる。
なお、皮膚表面温度が35℃以外の場合は、前記熱交換のグラフを補正して使用する必要がある。補正式は次のとおりである。
Y=a(X-(皮膚表面温度-35))+b
つまり、熱交換測定時の皮膚温35℃と発汗時の皮膚温37℃では、グラフを2℃分平行移動して補正することになる。
この実験式は、裸体やシャツなどのみならず、ファン付きジャケットにも適用できる。
より正確な測定には、環境試験室内の輻射熱を極力遮断することが望ましい。
Figure 2024050154000002
(注水および運動量の設定)
図14の操作画面のプルダウンメニュー(図中「動作モードの選択」)から注水を選択して送信ボタンを押すと、注水が行われる。
汗の代わりとなる水道水を、液体容器9から、第1の液体供給路12を通してマネキンボディ1の中空糸膜6に供給する。
全長5m程度の長い第1の液体供給路12を通してマネキンボディ1内部の加熱手段11を構成する容器11aにより、上記第1の液体供給路12を流れる水道水を、人体の深部体温と等しい37℃に加温した後に、第1のポンプ13により各部の中空糸膜6へ供給する。
次に、給水時の第1のポンプ13、第2のポンプ15の動きを説明する。
第1のポンプ13の流量は微小のため、実験開始時に第1のポンプ13だけで液体容器9から水道水を中空糸膜6に、くみ上げるには10分以上の時間がかかる。
そこで、第1のポンプ13の10倍以上の流量の第2のポンプ15を設置し、実験開始時には第1のポンプ13、第2のポンプ15の両方を、正転駆動して図9のAの位置付近に水道水が到達するタイミングで第2のポンプ15を停止し、第1のポンプ13のみを継続して正転駆動し、中空糸膜6まで水道水(冷却水)を送る。
この時、殺菌用容器16内のエタノールに第1の液体供給路12、第2の液体供給路14内の空気が混入するが、水道水(冷却水)が混ざる事は無い。
このように、第2のポンプ15を併用することで、中空糸膜6への給水時間を1~2分程度に短縮できる。
中空糸膜6への給水が完了すると、プログラムにより自動的にウォームアップ(ウェット)モードに移行する。このモードは、最低発汗量を維持しつつ、深部温37℃、皮膚温35℃を維持するモードである。
(発汗状態での測定)
操作画面のプルダウンメニュー(図中「動作モードの選択」)から安静時、軽作業、重作業またはユーザーが任意に設定したカスタムモードを送信する。これらのモードは、例えば安静時は人体の基礎代謝に相当する72Wの熱量や、作業状態を想定した100W、150Wなど、最低の加温W数を設定するモードである。発汗状態での加温電力を加温電力Y2とする。
マネキンボディ1の各ブロックの温度が安定した状態では、加温電力Y2と冷却能力が釣り合っていると考えられる。冷却能力には、汗による気化熱の他に、事前に測定した熱交換がある。実験で消費した汗が全て気化すると、全気化熱=0.68W/mlの冷却能力に換算できる(発汗量×0.68W/ml=発汗による気化熱)。
したがって、理論上は、加温電力Y2=熱交換+全気化熱の関係式となるはずである。
しかし、実際に試験をおこなうと、加温電力Y2<(熱交換+全気化熱)となる。原因は汗がしたたり落ちたり、ファン付きジャケットにより気化熱による冷気が100%有効利用できずに周囲に発散したりするためと考えられる。
したがって、全発汗量を、冷却に作用した発汗=有効発汗と、冷却に作用しなかった発汗=無効発汗とに、切り分ける必要がある。
また有効発汗で生じた冷却を有効気化熱、無効発汗で生じた冷却を無効気化熱Qとする。
理論式を、正しく改めると、加温電力Y2=熱交換+有効気化熱となる。
無効気化熱Qを求めるには、次の実験式が導き出される。
加温電力Y2=熱交換+全気化熱-無効気化熱Qより、
無効気化熱Q=(熱交換+全気化熱)-加温電力Y2
この実験式は、マネキン全体のみならず、個別の部位の無効気化熱Qの算出にも利用できる。
Figure 2024050154000003
実験では、汗が垂れるような状況は確認できなかったので、ファンの風により全気化熱が全て有効利用されずに、外気に発散されたと考えられる(今回は、マネキンボディ1には、ファン付き冷却衣服を装着した)。
このようにして、従来は不可能であった無効発汗による無効気化熱Qを精度良く測定できれば、人体の冷却メカニズムの解析や、機能性衣服の開発に役立つと考えられる。例えば、ある着衣における周囲温度と無効気化熱の関係グラフを取得し、無効気化熱が急激に増えるポイントを熱中症リスクの注意温度とすることにより、着衣による熱中症リスクの解析などにも活用できる。
(冷却衣服の性能評価)
冷却衣服には、冷水を循環させる方式、保冷剤を使用する方式、ペルチェ素子を使用する方式など、色々な方式が考案されている。これらを発汗サーマルマネキンに着用して計測すると、次の関係式が成り立つ。
加温電力Y2=熱交換+有効気化熱+冷却衣服の効果
熱交換と有効気化熱は、すでに求められているので、
冷却衣服の効果=加温電力Y2-熱交換-有効気化熱の式で冷却衣服の効果を求めることができる。冷却衣服の効果は、身体を冷却するのに有効に作用した熱量である。例えば保冷剤を使用するタイプであれば、保冷剤の比熱、総重量、温度等から全熱量を計算し、全熱量=冷却衣服の効果+無効熱量(失われた熱量)に切り分けることもできる。
(排水動作と殺菌機能)
実験終了後に、マネキンボディ1内部に残留する水道水(冷却水)の排水を行う。
その理由は、次回実験までの、長期間の保管中に発汗システム内部の残留する水分から雑菌が繁殖するリスクがあるからである。
雑菌の一種であるバクテリアが中空糸膜6に付着すると、コロニー(ぬめり)を形成して中空糸膜6を閉塞させ、本来の機能を発揮できなくなる。このため発汗サーマルマネキンを使用後に、エタノール、次亜塩素酸水、界面活性剤等による殺菌が望ましい。しかし、使用後にマネキンボディ1を分解して殺菌するのは現実的では無い。
そこで、全自動で消毒液による殺菌が可能なシステムを構築した。
実験終了後の排水およびエタノール殺菌時の第1のポンプ13、第2のポンプ15の動きを説明する。
第2のポンプ15を停止した状態で、第1のポンプ13のみ逆転駆動し、中空糸膜6内の水道水(冷却水)の先端が図9のB付近の位置に到達したタイミングで第1のポンプ13を停止する。
次に第2のポンプ15を逆転駆動し、エタノールを吸い上げてエタノール後端が図9のAの位置に到達した時点で第2のポンプ15を停止する。
この時冷却水の先端は図9のC付近の位置まで押し戻される。
次に第1のポンプ13を正転駆動してエタノールを中空糸膜6に送水し、バクテリアを殺菌する。殺菌完了後に第1のポンプ13および第2のポンプ15を逆転し、残ったエタノールと水道水(冷却水)を全て液体容器9に戻してから第1のポンプ13、第2のポンプ15を停止する。
排水時も第2のポンプ15を併用することにより短時間で排水工程を完了できる。
第1の液体供給路12の長さを例えば5mに一定にしておけば、一連の動作は、第1のポンプ13および第2のポンプ15の流量特性に再現性があり、特殊なセンサーを必要とせず、全てタイマーによる制御で実施可能である。
なお、本実施形態において皮膚温用ヒーター2は線状のものを用いたが、皮膚温用ヒーター2は面状のものを用いても良い。
また、模擬皮膚材と一例として模擬皮膚用生地7を用いたが、模擬皮膚材としてはスポンジ状のものを使用することもできる。
(実施の形態2)
図17は、本発明の他の本実施形態を示す。
本実施形態では、マネキンボディ1の表面側(外面側)に中空糸膜6を収納する溝1aを掘り、中空糸膜6を埋没するように配置する。
次に、中空糸膜6に対して交差(例えば略直交交差)に交差するように測温抵抗線4を配置し、その後、中空糸膜6、溝1a、測温抵抗線4を覆うように、その上に模擬皮膚用生地7を配置する。測温抵抗線4の外周は、絶縁層5aで覆ったものを使用した。
本実施形態では、測温抵抗線4の内側に中空糸膜6が存在する構成となっている。つまり、マネキンボディ1の表面側において、中空糸膜6、測温抵抗線4、模擬皮膚用生地7の順番になっている。
このような構成にすると、発汗サーマルマネキン表面をフラットにできるメリットがある。また、模擬皮膚用生地7をマネキンボディ1に装着せず、マネキンボディ1に市販の下着を着せて汗を拡散させることもでき、マネキンボディ1から模擬皮膚用生地7を省略する仕様とすることもできる。
また、本実施形態においても、皮膚温用ヒーター2を線状のものから、面状のものに変更することが可能である。
また、模擬皮膚材と一例として模擬皮膚用生地7を用いたが、模擬皮膚材としてはスポンジ状のものを使用することもできる。
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
1 マネキンボディ
2 皮膚温用ヒーター
3 断熱材
4 測温抵抗線
5 絶縁フィルム
5a 絶縁層
6 中空糸膜
7 模擬皮膚用生地
8 ニップル
9 液体容器
10 精密秤
11 加熱手段
11a 容器
11b ポンプ
11c 放熱路
12 第1の液体供給路
13 第1のポンプ
14 第2の液体供給路
15 第2のポンプ
16 殺菌用容器
17 ローラー
18 ホイートストンブリッジ回路
19 オペアンプ
20 ADコンバーター
21 制御部
22 基準電圧回路
23 ドライバ
24 ソリッドステートリレー(SSR)
25 電源部
26 ドライバ
27 ドライバ
28 USB
29 パソコン
30 メモリ

Claims (7)

  1. 中空のマネキンボディと、
    このマネキンボディの表面側温度を高めるための皮膚温用ヒーターと、
    前記マネキンボディにおける、前記皮膚温用ヒーターの外側に配置され、このマネキンボディの表面側温度を測定するための測温抵抗線と、
    前記マネキンボディの表面側における、前記測温抵抗線の外側または内側において、前記マネキンボディの表面方向に、所定間隔をおいて、並走状態で配置した中空糸膜と、
    この中空糸膜の外側を覆った模擬皮膚材と、を備え、
    前記測温抵抗線と、並走状態で配置された前記中空糸膜とは、前記マネキンボディの外面視において、複数点で、交差する状態で配置された発汗サーマルマネキン。
  2. 前記中空糸膜の並走状態は、1本の前記中空糸膜を折り返し配線、あるいは複数本の前記中空糸膜を並走配線させることにより形成した請求項1に記載の発汗サーマルマネキン。
  3. 前記皮膚温用ヒーターはヒーター線で構成し、このヒーター線と、前記中空糸膜は、前記マネキンボディの外面視において、並走状態で配置し、前記測温抵抗線は、前記マネキンボディの外面視において、前記並走状態で配置された中空糸膜と前記ヒーター線に対して、複数点で交差する状態で配置された請求項2に記載の発汗サーマルマネキン。
  4. 前記マネキンボディの中空内部に、前記中空糸膜に供給する液体の加熱手段を設けた請求項1から3のいずれか一つに記載の発汗サーマルマネキン。
  5. 前記中空糸膜に液体を供給する液体供給手段は、
    液体容器と、
    この液体容器から前記加熱手段部分を介して前記中空糸膜に至る第1の液体供給路と、
    この第1の液体供給路の前記加熱手段部分から前記中空糸膜までの間に介在させた第1のポンプと、
    前記第1の液体供給路における前記加熱手段から前記第1のポンプまでの間から分岐し、殺菌用容器に連結される第2の液体供給路と、
    この第2の液体供給路に介在させた第2のポンプと、を備えた請求項4に記載の発汗サーマルマネキン。
  6. 発汗試験モード後の殺菌モード時には、前記第1のポンプを第1の所定時間逆転駆動して、前記中空糸膜に供給されていた液体を、前記液体容器側に排出し、次に、前記第2のポンプを第2の所定時間逆転駆動して、前記殺菌用容器内の殺菌剤を、前記第2の液体供給路を介して前記第1の液体供給路に供給し、その後、前記第1のポンプを正転駆動して、前記中空糸膜内に殺菌剤を供給する構成とした請求項5に記載の発汗サーマルマネキン。
  7. 請求項1から3のいずれか一つに記載の発汗サーマルマネキンの運転方法であって、
    (1)人体の体温よりも低い一定の環境温度Xで、前記中空糸膜への液体供給を停止した状態で、測定する衣服着用時に前記皮膚温用ヒーターに供給する加温電力Yを測定し、
    (2)環境温度X=(前記測温抵抗線で検出する人体皮膚温度)となる時の加温電力Yをゼロとし、
    (3)Y=aX+bの係数a、bを、(1)及び(2)から求め、
    (4)任意の環境温度における発汗状態での加温電力をY2とし、
    無効気化熱Qを、Q=(3)の式から求めた加温電力Y+発汗による気化熱-加温電力Y2の式で求めることを特徴とする発汗サーマルマネキンの運転方法。
JP2022156826A 2022-09-29 2022-09-29 発汗サーマルマネキンと、その運転方法 Pending JP2024050154A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022156826A JP2024050154A (ja) 2022-09-29 2022-09-29 発汗サーマルマネキンと、その運転方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022156826A JP2024050154A (ja) 2022-09-29 2022-09-29 発汗サーマルマネキンと、その運転方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2024050154A true JP2024050154A (ja) 2024-04-10

Family

ID=90621775

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022156826A Pending JP2024050154A (ja) 2022-09-29 2022-09-29 発汗サーマルマネキンと、その運転方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2024050154A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6543657B2 (en) Thermal manikin
US7469572B2 (en) Measurement of moisture vapor transfer rate
JP6059712B2 (ja) 温度制御された複数ゾーンマットレス式支持体
JP4304015B2 (ja) 靴の通気度および快適度の測定装置
CN107811453A (zh) 一种智能床垫
US4058254A (en) Temperature-monitoring and control system
Jia et al. Transient thermal comfort and physiological responses following a step change in activity status under summer indoor environments
JP4198152B2 (ja) 模擬皮膚装置およびそれを用いた特性評価方法
JP4582134B2 (ja) 換気放熱性計測方法
JP2024050154A (ja) 発汗サーマルマネキンと、その運転方法
US6996490B2 (en) Thermal comfort sensor device and an anthropomorphic dummy for simulating heat exchange which includes a plurality of such devices
CN210604470U (zh) 用于服装舒适度测试的装置及系统
JP4171932B2 (ja) 換気放熱性計測装置及び計測方法
JP3780513B2 (ja) 人工発汗装置
KR100204234B1 (ko) 에어콘의 쾌적운전을 위한 체감센서와 쾌적운전 제어방법
JP2003049311A (ja) 衣服内気候シミュレーション装置及び方法
JPH05228043A (ja) ベッド温湿制御システム
Kang et al. A study on the development of an infant-sized movable sweating thermal manikin
JP2003167510A (ja) 発汗装置、該発汗装置を使用した快適性評価方法
JPH05228044A (ja) 寝室温湿制御システム
JP2548325Y2 (ja) ヒーティングパワー経皮酸素分圧測定装置
TWI384977B (zh) 用於水蒸氣轉移率測量的系統與方法
WO2016185565A1 (ja) 送風量制御装置
Song et al. Evaluating a novel portable semiconductor liquid cooling garment for reducing heat stress of healthcare workers in a hot-humid environment
WO1999043238A1 (fr) Literie ventilee et vetements ventiles