JP2024049118A - 表面改質組成物、表面改質層、表面改質シート、積層体、表面改質部材、塗装物、表面改質部材の製造方法、塗装物の製造方法、機能層付部材、及び機能層付部材の製造方法 - Google Patents

表面改質組成物、表面改質層、表面改質シート、積層体、表面改質部材、塗装物、表面改質部材の製造方法、塗装物の製造方法、機能層付部材、及び機能層付部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂部材との高い結合性を有し、安定性が向上した表面改質層又は表面改質組成物を提供する。【解決手段】 ポリマー成分を含有する表面改質組成物であって、前記ポリマー成分が、少なくともモノマー(A)及び1以上の反応性部位を有するモノマー(B)の部分重合物、重合物又は共重合体を含み、前記モノマー(B)に由来するモノマーユニット(b)は、前記部分重合物、前記重合物又は前記共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の前記反応性部位の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、前記ポリマー成分における、最大値Bを有し、前記モノマー(A)に由来するモノマーユニット(a)は、前記部分重合物、前記重合物又は前記共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、前記モノマーユニット(b)以外の前記ポリマー成分における、最大値Aを有し、B-A≧0を満たす、表面改質組成物。【選択図】図1

Description

表面改質組成物、表面改質層、表面改質シート、積層体、表面改質部材、塗装物、表面改質部材の製造方法、塗装物の製造方法、機能層付部材、及び機能層付部材の製造方法に関する。
近年、鉄道車両、航空機、船舶、自動車等の輸送機器、電子機器、住宅設備等の部材には、軽量かつ対衝撃性に優れた樹脂が用いられ、その表面には種々の材質の被着体が接合されている。また、樹脂部材には種々の機能を有する塗膜が形成されている。例えば、熱硬化性樹脂の一種である不飽和ポリエステル樹脂をマトリクス樹脂とした樹脂部材は、浴槽や自動車外装用途に使用され、特に自動車外装用途に使用される場合、塗料からなる塗膜が形成された不飽和ポリエステル樹脂部材などが用いられている。
樹脂部材を金属や他の樹脂と接合する際には、十分に接着させる必要がある。このような接着剤としては、従来、ゴムエポキシ系の硬化性樹脂組成物が知られている。しかしながら、樹脂部材は、接着剤となじみにくく従来の接着剤や接着シートを用いても十分な接着強度が得られない。また、繊維複合材料等の強度に優れた樹脂部材は、高い水準の接着強度が求められる。
このため、樹脂部材の接着にはプライマー溶液の塗布や、プライマー溶液の塗布に先立ち、下処理としてサンドブラスト処理、コロナ処理、プラズマ処理などの各種表面処理が必要となる。このような表面処理方法は、製造工程の増加につながり、生産性が低下するためコスト面にも問題がある。また、作業環境ならびに外部環境への負荷を増加させる。
樹脂部材に易接着処理をして十分な接着強度を付与するための手段の一つとして、シート状にした表面改質組成物を用いる技術がある。通常、前述のような表面処理は成形加工後のサンプルに対して行われるが、例えば特許文献1には、熱可塑性樹脂に十分な接着強度を付与し得る表面改質シートといった成形時に表面処理を同時に行う技術が記載されている。さらに、熱硬化性エラストマーといった熱硬化性樹脂に十分な接着強度を付与し得る表面改質シートが特許文献2に記載されている。
特開2017-128722号公報 特開2019-194015号公報
特許文献1及び2に記載の技術がその効果を発揮するためには、表面改質組成物に含まれる不飽和炭化水素基と樹脂部材との間で化学結合を形成する必要がある。不飽和炭化水素基はその性質上、熱や光といった外部刺激によって反応、消費されるため、特性の経時変化の原因となりえ、ひいては表面改質組成物の安定性を損なうという一面をも有する。
本発明者らは、表面改質組成物中に含まれる、反応性部位を有する側鎖の原子数を長くすることによって、表面改質組成物の反応性部位と樹脂部材中の不飽和炭化水素基が化学結合を形成することを見出した。本発明は、表面改質組成物、表面改質層、表面改質シート、積層体、表面改質部材、及び表面改質部材の製造方法を提供する。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]
ポリマー成分を含有する表面改質組成物であって、
前記ポリマー成分が、少なくともモノマー(A)及び1以上の反応性部位を有するモノマー(B)の部分重合物、重合物又は共重合体を含み、 前記モノマー(B)に由来するモノマーユニット(b)は、前記部分重合物、前記重合物又は前記共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の前記反応性部位の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、前記ポリマー成分における、最大値Bを有し、
前記モノマー(A)に由来するモノマーユニット(a)は、前記部分重合物、前記重合物又は前記共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、前記モノマーユニット(b)以外の前記ポリマー成分における、最大値Aを有し、
下記式(1)を満たす、表面改質組成物。
B-A≧0・・・式(1)
[2]
前記表面改質組成物の全質量に対する、前記モノマー(A)を含む部分重合物、重合物又は共重合体の含有量が25質量%以上である、[1]に記載の表面改質組成物。
[3]
前記ポリマー成分が、(メタ)アクリル系モノマーの部分重合物、又は共重合体を含む、[1]に記載の表面改質組成物。
[4]
前記(メタ)アクリル系モノマーが、メタクリル酸アルキルエステルである、[3]に記載の表面改質組成物。
[5]
前記ポリマー成分が、水酸基を含む、[2]に記載の表面改質組成物。
[6]
前記ポリマー成分が、不飽和炭化水素基を含まない、[5]に記載の表面改質組成物。
[7]
[1]~[6]のいずれか1に記載の表面改質組成物により形成される表面改質層。
[8]
[7]に記載の表面改質層を有する表面改質シート。
[9]
[7]に記載の表面改質層と、離型シートとを備えた表面改質シート。
[10]
[7]に記載の表面改質層が、樹脂材料の表面の少なくとも一部に積層された積層体。
[11]
[7]に記載の表面改質層が、樹脂部材の表面の少なくとも一部に積層され、
前記樹脂部材と前記表面改質層とが化学反応により共有結合した表面改質部材。
[12]
前記樹脂部材が不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂を含む[11]に記載の表面改質部材。
[13]
前記不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂である[12]に記載の表面改質部材。
[14]
[7]に記載の表面改質層を用いた表面改質部材の製造方法であって、
前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層する積層工程を含む、表面改質部材の製造方法。
[15]
前記樹脂部材が不飽和ポリエステル樹脂を含む[11]に記載の表面改質部材の製造方法。
[16]
[8]に記載の表面改質シートを用いた表面改質部材の製造方法。
[17]
[7]に記載の表面改質層を用いた塗装物の製造方法であって、
前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層して表面改質部材を製造する工程と、前記表面改質部材の前記表面改質層側に塗膜を形成する工程とを含む、塗装物の製造方法。
[18]
前記樹脂部材が不飽和ポリエステル樹脂を含む[17]に記載の塗装物の製造方法。
[19]
[8]に記載の表面改質シートを用いた塗装物の製造方法。
[20]
[11]に記載の表面改質部材における前記表面改質層側の表面の少なくとも一部に機能層を備える機能層付部材。
[21]
[20]に記載の機能層付部材の製造方法であって、
前記表面改質層を加熱成形により前記樹脂部材に積層して表面改質部材を製造する工程と、前記表面改質部材の前記表面改質層側に前記機能層を形成する工程とを含む、機能層付部材の製造方法。
[22]
[7]に記載の表面改質層を用いた機能層付部材の製造方法であって、
前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層して表面改質部材を製造する工程と、前記表面改質部材の前記表面改質層側に機能層を形成する工程とを含む、機能層付部材の製造方法。
[23]
前記樹脂部材が不飽和ポリエステル樹脂を含む[22]に記載の機能層付部材の製造方法。
[24]
[8]に記載の表面改質シートを用いた機能層付部材の製造方法。
本発明では、表面改質組成物中に含まれる反応性部位を、樹脂部材との化学結合に利用することによって、従来公知技術と同程度の密着力を発現し、ひいてはその安定性を向上させた表面改質組成物、表面改質層、表面改質シートを提供する。
図1は、表面改質部材の一例を示す概略断面図である。 図2は、表面改質部材の他の一例を示す概略断面図である。 図3は、表面改質部材の他の一例を示す概略断面図である。 図4は、表面改質部材と樹脂部材の積層体の一例を示す概略断面図である。 図5は、表面改質シートの一例を示す概略断面図である。 図6は、離型シートと表面改質層の積層体である表面改質シートの表面改質層側を樹脂材料の表面の少なくとも一部に載置する形態を示す概略断面図である。 図7は、塗装物の一例を示す概略断面図である。 図8は、機能層付表面改質部材の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際の装置等のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
[表面改質組成物]
本発明の実施形態に係る表面改質組成物は、
前記ポリマー成分が、少なくともモノマー(A)及び1以上の反応性部位を有するモノマー(B)の部分重合物、重合物又は共重合体を含み、
前記モノマー(B)に由来するモノマーユニット(b)は、前記部分重合物、前記重合物又は前記共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の前記反応性部位の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、前記ポリマー成分における、最大値Bを有し、
前記モノマー(A)に由来するモノマーユニット(a)は、前記部分重合物、前記重合物又は前記共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、前記モノマーユニット(b)以外の前記ポリマー成分における、最大値Aを有し、
下記式(1)を満たす。
B-A≧0・・・式(1)
モノマー(B)に由来するモノマーユニット(b)における、部分重合物、重合物又は共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の反応性部位の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数(以下、「モノマーユニット(b)の側鎖の反応性部位の末端までの原子数」とも称する。)Bと、モノマー(A)に由来するモノマーユニット(a)における、部分重合物、重合物又は共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数(以下、「モノマーユニット(a)の側鎖の末端までの原子数」とも称する。)Aとが、B-A≧0である。モノマーユニット(b)の側鎖は連結基と反応性部位とを含むことが好ましく、特に限定されないが、反応性部位が側鎖の末端に結合していてもよい。これにより、表面改質組成物中のモノマーユニット(b)の反応性部位と、樹脂部材中の不飽和炭化水素基とが、水素引き抜き反応によって化学結合を形成しやすくなると推測される。
(モノマー(A)及びモノマー(B))
上記ポリマー成分は、少なくともモノマー(A)及び1以上の反応性部位を有するモノマー(B)の部分重合物、重合物又は共重合体を含む。
すなわち、上記ポリマー成分は、モノマーユニット(a)及びモノマーユニット(b)を含む部分重合物、重合物又は共重合体、モノマーユニット(a)を含む部分重合物、重合物又は共重合体、若しくはモノマーユニット(b)を含む部分重合物、重合物又は共重合体を包含しうる。
モノマーユニット(a)は、部分重合物、重合物又は共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、モノマーユニット(b)以外の前記ポリマー成分における、最大値Aを有する。
「部分重合物、重合物又は共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数」とは、主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの原子の数を意味し、枝分かれしている原子の数は含まない。例えば側鎖がメチレン基を含む場合、メチレン基の水素原子は、該原子の数には含まれない。また、上述の側鎖とは、部分重合物、重合物又は共重合体の側鎖を意味する。
ポリマー成分が複数通りのモノマーユニットを有する場合には、ポリマー成分において、主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数は1通り以上が考えられるが、モノマーユニット(b)以外のポリマー成分における該原子の数の最大値Aを有するモノマーユニットが、モノマーユニット(a)である。
すなわち、ポリマー成分において、モノマーユニット(b)以外のモノマーユニットが複数種類存在するケースを検討する。このケースにおいて、部分重合物、重合物又は共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数を、モノマーユニット(b)以外の複数種類のモノマーユニットにおいて、比較する。その結果、該原子の数が最も大きいモノマーユニットを、モノマーユニット(a)として採用する。
モノマーユニット(a)において、主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の最大値が、モノマーユニット(a)の主鎖に結合する原子から側鎖の末端までの原子数Aである。
モノマーユニット(a)は、直鎖構造、分岐構造、又は環状構造のいずれを有していてもよい。
例えば、モノマー(A)がアクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)である場合、モノマーユニット(a)の主鎖に結合する原子から側鎖の末端までの原子数Aは8である。
Figure 2024049118000002
モノマー(A)が環状構造を有しており、主鎖に結合する原子から側鎖の特定の末端の原子の数までの骨格構造を構成する原子の数の算出方法が複数通りある場合には、最も少ない原子数となる方法を採用する。
例えば、モノマー(A)がN-ビニル-2-ピロリドン(NVP)である場合を考える。
NVPを部分重合物、重合物又は共重合体としたときに、NVPの以下の化学式において、部分重合物、重合物又は共重合体の主鎖に結合する窒素原子から丸で囲んだ水素原子までの骨格構造として、点線で示したように左回りを採用すると、主鎖に結合する窒素原子から丸で囲んだ水素原子までの骨格構造を構成する原子の数は4である。一方、主鎖に結合する窒素原子から丸で囲んだ水素原子までの骨格構造として右回りを採用すると、主鎖に結合する窒素原子から丸で囲んだ水素原子までの骨格構造を構成する原子の数は5である。このような場合、1番目の窒素原子から丸で囲んだ水素原子までの骨格構造を構成する原子の数は、上述のように最も少ない原子数を採用して、4である。
すなわち、モノマーユニット(a)がN-ビニル-2-ピロリドン(NVP)に由来する構造を有する場合、モノマーユニット(a)の主鎖に結合する原子から側鎖の末端までの原子数Aは4である。
Figure 2024049118000003
モノマーユニット(b)は、部分重合物、重合物又は共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の反応性部位の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、ポリマー成分における、最大値Bを有する。
「部分重合物、重合物又は共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の反応性部位の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数」とは、主鎖に結合する原子から側鎖の反応性部位の末端の原子までの原子の数を意味し、枝分かれしている原子の数は含まない。例えば側鎖がメチレン基を含む場合、メチレン基の水素原子は、該原子の数には含まれない。また、上述の側鎖とは、部分重合物、重合物又は共重合体の側鎖を意味する。
ポリマー成分が複数通りのモノマーユニットを有する場合には、ポリマー成分において、主鎖に結合する原子から側鎖の反応性部位の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数は1通り以上が考えられるが、ポリマー成分における該原子の数の最大値を有するモノマーユニットが、モノマーユニット(b)である。
すなわち、ポリマー成分において、1以上の反応性部位を有するモノマーユニットが複数種類存在するケースを検討する。このケースにおいて、部分重合物、重合物又は共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の反応性部位の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数を、複数種類の、1以上の反応性部位を有するモノマーユニットにおいて、比較する。その結果、該原子の数が最も大きいモノマーユニットを、モノマーユニット(b)として採用する。
モノマーユニット(b)が反応性部位の末端の原子を複数有する場合、主鎖に結合する原子から側鎖の反応性部位の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の最大値が、モノマーユニット(b)の側鎖の反応性部位の末端までの原子数Bである。
モノマーユニット(b)は、直鎖構造、分岐構造、又は環状構造のいずれを有していてもよい。
モノマーユニット(b)が環状構造を有しており、主鎖に結合する原子から側鎖の反応性部位の末端の特定の原子の数までの骨格構造を構成する原子の数の算出方法が複数通りある場合には、最も少ない原子数となる方法を採用する。
モノマーユニット(a)において、主鎖に結合する原子から側鎖の末端までの原子数Aは、モノマー(B)に用いるモノマー種の選定およびモノマー(B)への付加反応などを利用した鎖長の延長が可能であるため、特に限定されず、モノマーユニット(b)の有する原子数B以下であればよい。例えば原子数Aは1以上であってもよく、2以上であってもよく、3以上であってもよく、4以上であってもよく、5以上であってもよく、6以上であってもよく、7以上であってもよく、8以上であってもよく、9以上であってもよく、10以上であってもよく、11以上であってもよく、12以上であってもよく、13以上であってもよく、14以上であってもよく、15以上であってもよく、16以上であってもよく、17以上であってもよく、18以上であってもよく、19以上であってもよく、20以上であってもよい。また、原子数Aの上限は特に限定されないが、30以下であってもよい。すなわち、上記原子数Bは、1以上30以下であってもよい。原子数Aが原子数Bより大きい場合は、立体障害が増大するため、モノマー(B)の反応点、すなわち反応性部位に、樹脂部材中の不飽和炭化水素基といった反応物が接近することが難しくなり、反応の効率を損なう結果となり、ひいては表面改質組成物と樹脂との密着性が低下する傾向になる。
モノマーユニット(b)において、主鎖に結合する原子から側鎖の反応性部位の末端までの原子数Bは、用いるモノマー種の選定およびモノマー(B)への付加反応などを利用した鎖長の延長が可能であるため、特に限定されず、モノマーユニット(a)の有する原子数A以上の値であればよい。例えば原子数Bは1以上であってもよく、2以上であってもよく、3以上であってもよく、4以上であってもよく、5以上であってもよく、6以上であってもよく、7以上であってもよく、8以上であってもよく、9以上であってもよく、10以上であってもよく、11以上であってもよく、12以上であってもよく、13以上であってもよく、14以上であってもよく、15以上であってもよく、16以上であってもよく、17以上であってもよく、18以上であってもよく、19以上であってもよく、20以上であってもよい。また、原子数Bの上限は特に限定されないが、30以下であってもよい。原子数Bが30を上回ると、側鎖の結晶化によって塗工や弾性率調整が困難となる可能性がある。すなわち、上記原子数Bは、1以上30以下であってもよい。上述のように原子数Bは、原子数Aとの相対関係において、原子数A以上という条件を満たせば、樹脂部材との化学結合および密着性を発現可能である。表面改質組成物および表面改質層のその他の特性、例えば弾性率の調整などを目的として、モノマー(A)及びモノマー(B)の鎖長は、任意に選択乃至公知の手段において調節しうる。
モノマーユニット(b)が有する反応性部位の数は、特に限定されず、表面改質組成物の所望の特性に応じて選択しうる。反応性部位の数は例えば1以上であってよく、2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよく、5以上であってよい。また、モノマーユニット(b)が有する反応性部位の位置は、特に限定されず、表面改質組成物の所望の特性に応じて選択しうる。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物において、モノマー(A)の含有量は、特に限定されず、表面改質組成物の所望の特性に応じて選択しうる。一例として、モノマー(A)の含有量は、全モノマー成分100モル部中、25モル部以上であってもよく、50モル部以上であってもよく、60モル部以上であってもよく、70モル部以上であってもよく、75モル部以上であってもよく、80モル部以上であってもよく、85モル部以上であってもよく、90モル部以上であってもよく、95モル部以上であってもよく、99モル部以上であってもよい。モノマー(A)の含有量の上限は特に限定されないが、全モノマー成分100モル部中、99.9モル部以下であってよく、99.5モル部以下であって良い。すなわち、モノマー(A)の含有量は、全モノマー成分100モル部中、25モル部以上99.9モル部以下であってもよい。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物において、モノマー(A)を含む部分重合物、重合物又は共重合体の含有量は、特に限定されず、表面改質組成物の所望の特性に応じて選択しうる。一例として、モノマー(A)の含有量は、表面改質組成物全量(全質量、100質量%)に対して25質量%以上~99.9質量%であることが好ましく、50質量%以上~99.5質量%であることが好ましく、60質量%以上~99.0質量%であることが好ましく、70質量%以上~95.0質量%であることが好ましく、80質量%以上~92.5質量%であることが好ましく、85質量%以上~92.5質量%であることが好ましく、90.0質量%以上~92.0質量%であることがより好ましい。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物において、モノマー(B)の含有量は、特に限定されず、表面改質組成物の所望の特性に応じて選択しうる。一例として、モノマー(B)の含有量は、全モノマー成分100モル部中、0.01モル部以上であってもよく、0.1モル部以上であってもよく、0.5モル部以上であってもよく、1モル部以上であってもよく、2モル部以上であってもよく、3モル部以上であってもよく、4モル部以上であってもよく、5モル部以上であってもよく、6モル部以上であってもよく、7モル部以上であってもよく、8モル部以上であってもよく、9モル部以上であってもよく、10モル部以上であってもよく、11モル部以上であってもよく、12モル部以上であってもよく、13モル部以上であってもよく、14モル部以上であってもよく、15モル部以上であってもよく、16モル部以上であってもよく、17モル部以上であってもよく、18モル部以上であってもよく、19モル部以上であってもよく、20モル部以上であってもよく、25モル部以上であってもよく、30モル部以上であってもよく、40モル部以上であってもよく、50モル部以上であってもよい。モノマー(B)の含有量の含有量の上限は特に限定されないが、全モノマー成分100モル部中、75モル部以下であってよく、60モル部以下であって良い。すなわち、モノマー(B)の含有量は、全モノマー成分100モル部中、0.01モル部以上75モル部以下であってもよい。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物において、モノマー(B)を含む部分重合物、重合物又は共重合体の含有量は、特に限定されず、表面改質組成物の所望の特性に応じて選択しうる。一例として、モノマー(B)の含有量は、表面改質組成物全量(全質量、100質量%)に対して0.01質量%以上~75質量%であることが好ましく、0.01質量%以上~75質量%であることが好ましく、0.1質量%以上~50質量%であることが好ましく、0.5質量%以上~40質量%であることが好ましく、1質量%以上~30質量%であることが好ましく、5質量%以上~20質量%であることが好ましく、10質量%以上~15質量%であることがより好ましい。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物において、モノマー(A)及びモノマー(B)の合計の含有量は、特に限定されず、表面改質組成物の所望の特性に応じて選択しうる。一例として、モノマー(A)及びモノマー(B)の合計の含有量は、全モノマー成分100モル部中、25.01モル部~100モル部であってもよく、50モル部~99モル部であることが好ましく、60モル部~97.5モル部であることが好ましく、70モル部~95モル部であることが好ましく、80モル部~92.5モル部であることが好ましく、85モル部~90モル部であることがより好ましい。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物のポリマー成分は、モノマー(A)及びモノマー(B)に加え、その他のモノマーを用いて得たポリマー成分であってもよい。その他のモノマーとして好ましくは、後述の好ましいモノマーである。
モノマー(B)の反応性部位は、他の化合物が接近し、反応しうる部位であれば特に限定されず、官能基を含んでいても、不飽和結合などの活性種を生じうるものを含んでいてもよい。ここで、活性種はラジカルなどであり、特に限定されず、別途加えた外部刺激によって誘起されるものであってもよい。
モノマー(B)の反応性部位は、好ましくは官能基、不飽和基、水酸基、水素引き抜き反応を生じうる官能基等、化学結合を形成する成分を適宜含んでいてもよい。モノマー(B)の反応性部位として、水素引き抜き反応を生じうる官能基と連結部位の組み合わせは好ましく用いることができ、例えば水酸基と、これに隣接したアルキル基などが挙げられる。すなわち、モノマー(B)の反応性部位は、電子吸引性あるいは電子供与性の官能基と、これに隣接し、周辺の官能と比べて局所電荷が異なる連結部位の組み合わせが好ましい。または、モノマー(B)の反応性部位は、芳香族性を示す官能基と、これに隣接し、反応中間物のエネルギー状態が共鳴安定化されるために化学反応が促進される連結部位であってもよい。モノマー(B)の反応性部位は電荷を有していてもよく、有していなくてもよい。
モノマー(B)は1以上の反応性部位を有していればよく、特に限定されない。モノマー(B)として好ましくは、後述の表面改質組成物の含有するポリマー成分の説明において記載したモノマーのうち、反応性部位を有するモノマーが好ましく、例えば、後述の水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、エポキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー、グリシジル基含有(メタ)アクリル系モノマー、アルコキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー等であり、特に好ましくは水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーである。モノマー(B)の具体的なモノマーとして好ましくは、後述の水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、エポキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー、グリシジル基含有(メタ)アクリル系モノマー、アルコキシ基含有(メタ)アクリル系モノマー等における、後述の好ましいモノマーと同じである。
また、モノマー(A)等の、モノマー(B)以外のモノマーとして好ましくは、特に限定されないが、後述の表面改質組成物の含有するポリマー成分の説明において記載したモノマーが好ましく、後述の(メタ)アクリル系モノマーのうち、部分重合物、重合物又は共重合体としたときに側鎖の原子数が1~7となるモノマーがより好ましく、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、又はN-(メタ)アクリロイルモルホリンが特に好ましい。
(ポリマー成分)
表面改質組成物はポリマー成分を含有する。
ポリマー成分としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、フッ素系ポリマーなど公知一般に用いられるポリマーが挙げられる。中でも、透明性、耐候性等の点より、(メタ)アクリル系ポリマーが好ましい。これらのポリマー成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
すなわち、本発明の実施形態に係る表面改質組成物(表面改質層であってもよい)に含まれるポリマー成分は、(メタ)アクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
なお、本発明における(メタ)アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマーおよび/またはメタクリル系ポリマーをいい、また(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。
ポリマー成分は、ポリマー成分に対応するモノマー成分の部分重合物、重合物又は共重合体を含んでいてもよい。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物(表面改質層であってもよい)に含まれるポリマー成分は、(メタ)アクリル系ポリマーを含有することが好ましく、(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリレート系モノマーの混合物、重合物、部分重合物、重合物又は共重合体を含むことが好ましい。
また、本発明の実施形態に係る表面改質組成物には、モノマー成分を含んでいてもよい。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物は、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分とするアクリル系表面改質組成物であることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの具体的な含有量は、特に限定されないが、実施形態に係る表面改質組成物全量(全質量、100質量%)に対して25質量%以上(例えば25~99.9質量%)であることが好ましく、50質量%以上(例えば50~99.9質量%)であることが好ましく、60質量%以上(例えば60~99.9質量%)であることが好ましく、70質量%以上(例えば70~99.9質量%)であることが好ましく、75質量%以上(例えば75~99.9質量%)であることが好ましく、80質量%以上(例えば80~99.9質量%)であることが好ましく、85質量%以上(例えば85~99.9質量%)であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上(例えば90~99.9質量%)である。
(メタ)アクリル系ポリマーとしては、特に限定されないが、メタクリル系ポリマーを好適に用いることができる。ポリマー成分(部分重合物、共重合物、重合物の全てを含む)中のメタクリル系成分の割合を多くするとより好適に用いることができる。ポリマーを形成する全モノマー成分に対するメタクリル系モノマーの割合は特に限定されないが、99%以下でよく、95%以下でよく、90%以下でよく、80%以下でよく、70%以下でよく、60%以下でよく、50%以下でよく、40%以下でよく、30%以下でよい。下限は特に限定されないが、1%以上でよく、5%以上でよく、10%以上でよく、15%以上でよく、20%以上でよく、25%以上でよい。
(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば、(メタ)アクリル系モノマー成分を重合することによって得られる。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、その組成は特に限定されないが、一例として、水酸基非含有(メタ)アクリル系モノマー、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー等を挙げることができる。
(メタ)アクリル系ポリマーは、特に限定されないが、塗料がイソシアネート基を含む場合などは、例えば、水酸基非含有(メタ)アクリル系モノマー、又は水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー成分により形成することが好ましく、水酸基非含有(メタ)アクリル系モノマー及び水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマー成分により形成することがより好ましい。上記の組成は一例であり、塗料の組成や樹脂の組成に応じて調整されうる。
水酸基非含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、イソシアネート基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、ヘテロ原子として窒素原子のみを有するヘテロ環を有するヘテロ環含有モノマー、ヘテロ原子として窒素原子及び酸素原子を有するヘテロ環を有するヘテロ環含有モノマー、ヘテロ原子として窒素原子及び硫黄原子を含有するヘテロ環を有するヘテロ環含有モノマー、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、炭素数6以上の炭化水素基が脂環含有基であるメタクリレート化合物、炭素数6以上の炭化水素基が芳香環含有基である(メタ)アクリレート化合物、水酸基を有する架橋性官能基含有(メタ)アクリレート化合物、ヘテロ環含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、炭素数が5以下のアルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、主鎖の繰り返し単位の全ての炭素が側鎖を有する置換メチレン化合物、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等)、芳香族ビニル化合物(スチレン、ビニルトルエン等)、オレフィン類又はジエン類(エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等)、ビニルエーテル類(ビニルアルキルエーテル等)、塩化ビニル、ビニルアルコール、重量平均分子量30,000以下のマクロモノマー、2以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーおよび、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル等を挙げることができ、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アミド基含有モノマー、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸をいうものとする。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。そのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸イソトリドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、および(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸6-(1,1’-ビフェニル-4-イルオキシ)ヘキシル等が挙げられる。
密着性向上の観点からは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、特に限定されないが、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-イソシアナートエチル等が挙げられる。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、および(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルが挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ニトリル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;水酸基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;アルコキシ基とアミド基とを有するモノマー、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;その他、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
また、(メタ)アクリルアミド類には、例えば、各種のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドも含まれ、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ヘテロ原子として窒素原子のみを有するヘテロ環を有するヘテロ環含有モノマーとしては、例えば、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルピラゾール等が挙げられる。
ヘテロ原子として窒素原子及び酸素原子を有するヘテロ環を有するヘテロ環含有モノマーとしては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルへキシルイタコンイミド、N-シクロへキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等が挙げられる。
ヘテロ原子として窒素原子及び硫黄原子を含有するヘテロ環を有するヘテロ環含有モノマーとしては、例えば、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾール等が挙げられる。
炭素数6以上の炭化水素基が脂環含有基である(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、シクロアルカン環(シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等)を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、二環式炭化水素環(ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン等)を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び、三環以上の脂肪族炭化水素環(ジシクロペンタン環、ジシクロペンテン環、アダマンタン環、トリシクロペンタン環、トリシクロペンテン環等)を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル等が挙げられる。
二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル等が挙げられる。
炭素数6以上の炭化水素基が芳香環含有基である(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、芳香族性炭素環(例えば、ベンゼン環等の単環炭素環や、ナフタレン環等の縮合炭素環等)を有する化合物が挙げられ、具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸6-(1,1’-ビフェニル-4-イルオキシ)ヘキシル等が挙げられる。
ヘテロ環含有モノマーは、ヘテロ原子として窒素原子のみを有するヘテロ環(ピロリジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピリジン、ピリミジン、ピロリン、ピペラジン、ピラジン等)、窒素原子及び酸素原子を有するヘテロ環(ピロリドン、オキサゾール、イソオキサゾール、モルホリン、モルホリノン、ピペリドン、ラクタム、オキサジン、モルホリンジオン、スクシンイミド、イタコンイミド等)、窒素原子及び硫黄原子を有するヘテロ環(チアゾール、イソチアゾール、チアジン)、酸素原子を有するヘテロ環(ラクトン、テトラヒドロフラン、フラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、等)、硫黄原子を有するヘテロ環(テトラヒドロチオフェン、チオフェン、テトラヒドロチオピラン、チオピラン等)等のヘテロ環を有する共重合性モノマーである。
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられる。また、上記カルボキシル基含有モノマーには、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマーも含まれるものとする。また、例えばイタコン酸等とエステル結合させた、誘導体であってもよい。
炭素数が5以下のアルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4-エトキシブチル等が挙げられる。
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
マクロモノマーは、上記モノマー成分が複数重合した高分子量モノマーである。マクロモノマーを用いた場合、ベースポリマーの中で、マクロモノマーを構成するモノマー成分に由来する構成単位がある程度連続して存在することとなる。このため、マクロモノマーを用いることで、ベースポリマー中にマクロモノマーに由来する高次構造を導入することができ、表面改質剤として求められる特性(接着力や凝集力、光学特性、流動性、段差追従性など)を容易に調整することができる。上記マクロモノマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは3000~35000、より好ましくは4000~30000、さらに好ましくは5000~25000、さらにより好ましくは6000~20000である。
上記2以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。多官能性モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水酸基非含有(メタ)アクリル系モノマーは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
また、本発明の実施形態に係る表面改質組成物において、ポリマー成分は、水酸基を含むことが好ましい。ポリマー成分は、水酸基を含み、さらに不飽和炭化水素基を含んでいてもよい。本発明の実施形態に係る表面改質組成物は、水酸基を有する、あるいは水酸基と不飽和炭化水素基とを有するポリマー成分を含むことにより、塗膜あるいは樹脂あるいは樹脂と塗膜双方との密着性がより優れた表面改質層を形成することができる。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物において、水酸基と不飽和炭化水素基とを有するポリマー成分は、水酸基含有モノマーに由来するユニットを有するプレポリマーと、不飽和炭化水素基含有化合物との付加反応物を含んでいてもよい。
すなわち、ポリマー成分は、構成モノマー成分として、水酸基含有モノマーを含むことが好ましく、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーを含むことがより好ましい。水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーの中でも、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物に係るポリマー成分は、水酸基非含有(メタ)アクリル系モノマーに由来するユニットと水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーに由来するユニットとを有するポリマー、又は該ポリマーと、不飽和炭化水素基含有化合物との付加反応物を含むことがより好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、水酸基を有する架橋性官能基含有(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。
水酸基を有する架橋性官能基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、これ以外に、付加反応などを利用し(メタ)アクリロイル基に水酸基を付加して用いてもよい。したがって、主鎖から側鎖末端に位置する水酸基までの鎖長は任意に調節しうる。
水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で用いられてもよいし、二種類以上が併用されてもよい。
水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、好ましくは(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、および(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルからなる群より選択される少なくとも一種である。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物において、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の水酸基含有モノマーの含有量は、全モノマー成分100モル部中、好ましくは1モル部以上、2モル部以上、3モル部以上、4モル部以上、5モル部以上、10モル部以上であり、15モル部以上であってよい。また、好ましくは50モル部以下、より好ましくは40モル部以下、30モル部以下、20モル部以下である。水酸基含有モノマーが1モル部以上であれば、塗料と相互作用するのに適した水酸基量が得られ、塗料との密着性が良好となる。また、水酸基含有モノマーが50モル部以下であれば、ポリマーの重合プロセスでゲル化が起こり製造困難となるのを防ぐことができる。
モノマー成分は、上記の水酸基非含有(メタ)アクリル系モノマー、水酸基含有モノマーの他に、これらと共重合可能な一種または二種以上の他のモノマー(共重合性モノマー)を含んでもよい。
共重合性モノマーとしては、例えば、窒素原子含有環を有するモノマー、スルホン酸基含有モノマー、芳香族ビニル化合物、および、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
窒素原子含有環を有するモノマーとしては、例えば、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルモルホリン、およびN-ビニルイソチアゾールが挙げられる。
スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、およびビニルトルエンが挙げられる。
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、およびベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェノール(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート等の、炭素芳香環含有(メタ)アクリレート;2-(4,6-ジブロモ-2-s-ブチルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(4,6-ジブロモ-2-イソプロピルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-s-ブチルフェノキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-イソプロピルフェノキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ノニルフェニルアクリレート、2,6-ジブロモ-4-ドデシルフェニルアクリレート等の、臭素置換芳香環含有(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート(例えば、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート)、チオフェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート(別名:1-ナフタレンメチル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン、(メタ)アクリロイル基含有ジナフトチオフェン、(メタ)アリルオキシジナフトチオフェン、(メタ)アクリロイル基含有ジベンゾチオフェン、ビニル基含有ジベンゾチオフェンが挙げられる。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物において、モノマー成分中に上記共重合性モノマーを含む場合、共重合性モノマーの含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル100モル部に対して、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの合計量として、好ましくは1モル部以上、2モル部以上、3モル部以上、4モル部以上、5モル部以上、6モル部以上、7モル部以上、8モル部以上、9モル部以上、10モル部以上、15モル部以上、20モル部以上、25モル部以上であり、また、好ましくは50モル部以下、より好ましくは40モル部以下、30モル部以下である。
(メタ)アクリル系ポリマーは、上述のモノマー成分を混合、あるいは公知乃至慣用の重合方法により重合させることによって得ることができる。重合手法としては、特に限定されないが、例えば溶液重合、塊状重合、活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)および乳化重合が挙げられ、中でも、表面改質組成物の透明性、コスト等の点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましい。
溶液重合では、例えば、モノマー成分と重合開始剤とを溶媒に配合して反応溶液を調製した後、その反応溶液を加熱する。そして、反応溶液中でのモノマー成分の重合反応を経ることによって、ポリマー溶液を得ることができる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、熱重合開始剤および光重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、モノマー成分100質量部に対して、0.001~10.0質量部が好ましく、より好ましくは0.01~5.0質量部である。
上記活性エネルギー線重合(光重合)に際して照射される活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や、紫外線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法等は特に限定されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、および、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩が、挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、および2,2’-アゾス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライドが挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルマレエート、レドックス系重合開始剤、および過酸化ラウロイルが挙げられる。中でも、特開2002-69411号公報に開示されたアゾ系重合開始剤が好ましい。
上記熱重合開始剤の使用量は、例えば、上記アゾ系重合開始剤の場合、上記ポリマー成分の全構成単位100質量部に対して、0.05~0.5質量部が好ましく、より好ましくは0.1~0.3質量部である。
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、および、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記光重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、上記ポリマー成分の全構成単位100質量部に対して、0.001~10.0質量部が好ましく、より好ましくは0.01~5.0質量部である。
(不飽和炭化水素基)
本発明の実施形態に係る表面改質組成物に含まれるポリマー成分には、不飽和炭化水素基を導入してもよい。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物に含まれるポリマー成分は、水酸基と不飽和炭化水素基とを有するポリマーを含んでいてもよい。
上述したとおり、本発明の実施形態に係る表面改質組成物に含まれるポリマー成分は、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーに由来するユニットを有するポリマーと、不飽和炭化水素基含有化合物との付加反応物を含んでいてもよい。また、本発明の実施形態に係る表面改質組成物に係るポリマー成分は、水酸基非含有(メタ)アクリル系モノマーに由来するユニットと水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーに由来するユニットとを有するポリマーと、不飽和炭化水素基含有化合物との付加反応物であることがより好ましい。
不飽和炭化水素基含有化合物は、水酸基と反応を生じて結合しうる所定の官能基を有し、ポリマー中の水酸基と、不飽和炭化水素基含有化合物中の該官能基とが反応する。それにより、不飽和炭化水素基含有化合物に由来する不飽和炭化水素基を含む側鎖がポリマーに導入され、水酸基と不飽和炭化水素基とを有するポリマーを得ることができる。
不飽和炭化水素基含有化合物中に含まれる上記官能基としては、イソシアネート基が好ましい。すなわち、不飽和炭化水素基含有化合物は、不飽和炭化水素基含有イソシアネート化合物であることが好ましい。
不飽和炭化水素基含有イソシアネート化合物としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、及びイソシアン酸3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジル等が挙げられる。ポリマー側鎖への不飽和炭化水素基の導入のしやすさの観点からは、不飽和炭化水素基含有イソシアネート化合物は、好ましくはMOIである。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物は、ポリマー成分がポリマーと不飽和炭化水素基含有化合物との付加反応物を含む場合、付加反応物は、ポリマーにおける水酸基と、不飽和炭化水素基含有化合物における官能基とが所定の割合となるような、ポリマーおよび不飽和炭化水素基含有化合物の配合量で、これらを付加反応させることにより得ることが好ましい。
上記付加反応において、反応温度は例えば40℃~60℃であり、反応時間は例えば4~10時間である。また、当該反応には、付加反応触媒を用いてもよい。不飽和炭化水素基含有化合物中の官能基がイソシアネート基である場合、付加反応触媒としては、例えばジラウリン酸ジブチルスズを用いることができる。付加反応触媒の使用量は、不飽和炭化水素基含有化合物100質量部に対して例えば0.3~0.6質量部である。
ポリマー成分は、例えば上述のポリマーを含むポリマー溶液に不飽和炭化水素基含有化合物と付加反応触媒とを添加した反応溶液を調製し、反応溶液中で上記付加反応を経ることによって、水酸基と不飽和炭化水素基とを有するポリマーを含むポリマー溶液として得ることができる。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物に含まれるポリマー成分において、ポリマー合成に用いられる上記水酸基含有モノマーに対する不飽和炭化水素基含有化合物のモル比率(不飽和炭化水素基含有化合物/水酸基含有モノマー)は、0.01以上0.5未満であることが好ましい。
上記比率が0.01未満であると、ポリマー成分中に不飽和炭化水素基が十分に導入されず、表面改質組成物により形成された表面改質層と樹脂部材との密着性向上効果が得られにくい。また、モル比率が0.5以上であると、プレポリマーにおける水酸基が付加反応で過剰に消費され、ポリマー成分中の水酸基量が不十分となり、表面改質組成物により形成された表面改質層と塗膜との密着性向上効果が得られにくい。本発明の実施形態おいては、水酸基含有モノマーに対する不飽和炭化水素基含有化合物のモル比率を上記範囲とすることにより、樹脂部材と表面改質層との密着性、表面改質層と塗膜との密着性のいずれもが良好となる。
上記比率は、樹脂部材との密着性の観点から0.02以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることがより好ましい。また、塗料との密着性の観点から0.48以下であることが好ましく、0.45以下であることがより好ましく、0.4以下であることがさらに好ましい。
なお、上記比率は、ポリマー合成に用いられる水酸基含有モノマーに対する不飽和炭化水素基含有化合物のモル比率であり、ポリマー成分中に含まれる水酸基に対する不飽和炭化水素基のモル比率ではない。
水酸基含有モノマーをXモル部、不飽和炭化水素基含有化合物をYモル部用いた場合、水酸基含有モノマーに対する不飽和炭化水素基含有化合物のモル比率はY/Xであり、得られるポリマー成分における水酸基に対する不飽和炭化水素基のモル比率は、Y/(X-Y)となる。
水酸基含有モノマーに対する不飽和炭化水素基含有化合物のモル比率Y/Xが0.5未満である場合、ポリマー成分における水酸基に対する不飽和炭化水素基のモル比率Y/(X-Y)は1.0未満と算出される。
上記のとおり、ポリマー成分における水酸基に対する不飽和炭化水素基のモル比率は、重合に用いる水酸基含有モノマーの量と、不飽和炭化水素基含有化合物の量から計算値として算出できる。そして、この計算値と測定値は近い値となる。
測定値は、ポリマー成分の分子量および組成比率をGPC、FT-IR、FT-NMR等を用いて分析することにより得ることができる。
なお、本発明の実施形態に係る表面改質組成物に含まれるポリマー成分は、不飽和炭化水素基を含まなくてもよい。本発明の実施形態に係る表面改質組成物に含まれるポリマー成分が不飽和炭化水素基を含まない場合にも、本発明の実施形態に係る表面改質組成物中の反応性部位と、樹脂部材中の不飽和炭化水素基とが、水素引き抜き反応によって化学結合を形成しうるため、樹脂部材と表面改質組成物の密着性が良好となる。
例えば、下記のサンプル試料について、下記の方法によりポリマー成分の分子量および組成比率を測定した結果、モノマーの組成比と、モノマーに由来する構成単位の組成比がほぼ一致した。この結果から、重合に用いるモノマーの仕込み組成比(モル比率)から、ポリマー成分におけるモノマー由来の構成単位の組成比が算出可能であると言える。すなわち、得られるポリマー成分における水酸基に対する不飽和炭化水素基のモル比率は、水酸基含有モノマーの量と、不飽和炭化水素基含有化合物の量から算出できると言える。
(ポリマー成分の分子量及び組成比率の測定方法)
1-1)セパラブルカバーと、分液ロートと、温度計と、窒素導入管と、リービッヒ冷却器と、バキュームシールと、撹拌装置とを備える反応容器に、メタクリル酸メチル(MMA)100モル部と、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)10モル部の混合物、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチルをモノマー成分が70重量%になるように投入し、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを流し、撹拌しながら約1時間の窒素置換を行った。その後、反応容器を72℃±1℃に加熱し、5時間反応させた。更に、反応容器を80℃±1℃に加熱し、2時間反応させた。これにより、水酸基含有メタクリルポリマー(ポリマー成分)を含有するポリマー溶液(表面改質組成物)を調製した。なお、重合途中に、重合中の温度制御のため、モノマー側鎖の極性基等による水素結合に起因する急激な粘度上昇を防止するために、酢酸エチルを適宜滴下した。
1-2)上記ポリマー溶液を試料溶液として1.0gをスクリュー瓶に取り分け、60℃で3時間窒素パージを行い、溶媒である酢酸エチルを除去し、風乾した試料を得た。
2)風乾した試料の1.0g/LTHF溶液を調製して、一晩静置した後、この溶液を0.45μmメンブレンフィルターで濾過して得られたろ液のGPC測定を行った。その結果、数平均分子量(Mw)は、8.45×10であった。
(GPC測定条件)
カラム : TSKgel GMH-H(S)×2
カラムサイズ : 7.8mmI.D.×300mm
溶離液 : THF
流量 : 0.5mL/min
検出器 : RI
カラム温度 : 40℃
注入量 : 100 μL
*分子量はポリスチレン換算で算出した。
3)試料溶液をプリズムの上にのせ、その直後にFT-IR測定を行った。
(FT-IR測定条件)
測定手法 : 1回反射型ATR法(Smart iTR,Dia45°)
分解能 :4cm-1
検出器 : DTGS
積算回数 : 64回
4)風乾した試料8.62mgを0.6mLのCDClに溶解させ、H-NMR測定を行った。
(FT-NMR測定条件)
観測周波数 : 600MHz
測定溶媒 : CDCl
測定温度 : 室温
化学シフト基準 : 7.25ppm(測定溶媒)
仕込みのモノマーとして、MMA(メタクリル酸メチル)モノマー(100モル部):水酸基含有モノマー(4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル)(Xモル部)=100:10で重合を実施した。そこに不飽和炭化水素基含有モノマー(MOI)(Yモル部)=Xモル部に対して0.2当量となるように配合および付加反応を実施し、上記ポリマー成分を得た場合、ポリマー成分においては、MMAに由来する構成単位(100モル部):水酸基の量(X-Yモル部):不飽和炭化水素基の量(Yモル部)=100:9.8:0.2(モル部)になると算出される。
上記の測定により、得られた上記ポリマー成分について測定したところ、MMAに由来する構成単位:水酸基の量:不飽和炭化水素基の量=100:9.7:0.2(モル部)との結果が得られ、計算値と測定値は近い値となった。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物において、ポリマー成分の数平均分子量は、20,000以上であることが好ましい。なお、ポリマー成分が、水酸基と不飽和炭化水素基とを有するポリマーを含む場合においては、不飽和炭化水素基を導入する前のポリマーの数平均分子量をポリマー成分の数平均分子量とする。
表面改質組成物(表面改質層であってもよい)は、ポリマー成分とともに、必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、pH調整剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、粘度調整剤(増粘剤等)、レベリング剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料および染料等)、界面活性剤、帯電防止剤、防腐剤、老化防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、防錆剤、有機微粒子、無機微粒子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、および光安定剤等の公知の添加剤等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋反応をより効果的に進行させるために、架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒の例としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート等の金属系架橋触媒等が挙げられる。なかでも、ジオクチルスズジラウレート等のスズ系架橋触媒が好ましい。架橋触媒の使用量は特に制限されない。ポリマー成分を構成する全構成単位100質量部に対する架橋触媒の使用量は、架橋反応速度の速さと表面改質組成物のポットライフの長さとのバランスを考慮して、例えば凡そ0.0001質量部以上1重量部以下の範囲とすることができ、0.001質量部以上0.5質量部以下の範囲とすることが好ましい。
表面改質組成物には、架橋遅延剤として、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を含有させることができる。これにより、表面改質組成物のポットライフを延長する効果が実現され得る。例えば、イソシアネート系架橋剤を含む表面改質組成物において、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を好ましく利用し得る。ケト-エノール互変異性を生じる化合物としては、各種のβ-ジカルボニル化合物を用いることができる。例えば、β-ジケトン類(アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン等)やアセト酢酸エステル類(アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等)を好ましく採用し得る。ケト-エノール互変異性を生じる化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ケト-エノール互変異性を生じる化合物の使用量は、ポリマー成分を構成する全構成単位100質量部に対して、例えば0.1質量部以上20質量部以下とすることができ、0.5質量部以上10質量部以下としてもよく、1質量部以上5質量部以下としてもよい。
上記架橋遅延剤及び架橋触媒を用いることにより架橋反応の調整が可能である。
(架橋剤)
表面改質組成物(表面改質層であってもよい)は、架橋剤を含有していてもよい。表面改質組成物(表面改質層であってもよい)が当該架橋剤により架橋構造を有することにより、成形加工中の表面改質層の流動が抑制されるため、樹脂表面に表面改質層が保持されやすくなり、ひいては樹脂と表面改質層の接触に有利となり、良好な密着性を担保しやすくなる。架橋剤としては、特に限定されないが、ポリマー成分を構成する全構成単位の共重合性架橋剤(光硬化性架橋剤)たる多官能(メタ)アクリレートや熱硬化性架橋剤が挙げられる。表面改質組成物(表面改質層であってもよい)は、多官能(メタ)アクリレートのみに由来する架橋構造を有していてもよく、熱硬化性架橋剤のみに由来する架橋構造を有していてもよく、多官能(メタ)アクリレートと熱硬化性架橋剤の両方に由来する架橋構造を有していてもよい。
共重合性架橋剤(光硬化性架橋剤)たる多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、およびビニル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル系ポリマーのための多官能(メタ)アクリレートとしては、一種類の多官能(メタ)アクリレートを用いてもよいし、二種類以上の多官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。本実施形態では、(メタ)アクリル系ポリマーのための多官能(メタ)アクリレートとして、好ましくは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、およびポリプロピレングリコールジアクリレートからなる群より選択される少なくとも一種が用いられる。
前記ポリマー成分を構成する全構成単位における、多官能(メタ)アクリレートの使用量は、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して好ましくは0.001質量%~5質量%の範囲とすることができる。より好ましくは0.01質量%~1質量%、いくつかの態様において、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対する架橋剤の使用量は、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下であり、1.0質量部以下でもよく、0.5質量部以下でもよく、0.2質量部以下でもよい。また、架橋剤の使用効果を適切に発揮する観点から、いくつかの態様において、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対する架橋剤の使用量は、例えば0.005質量部以上であってよく、0.01質量部以上であってもよく、0.05質量部以上でもよく、0.08質量部以上でもよく、0.1質量部以上でもよく、0.2質量部以上でもよく、0.4質量部以上でもよい。多官能(メタ)アクリレートの割合に関するこれら構成は、当該(メタ)アクリル系ポリマーを含む表面改質組成物(表面改質層であってもよい)において、成形加工中の表面改質層の流動が抑制されるため、樹脂表面に表面改質層が保持されやすくなり、ひいては樹脂と表面改質層の接触に有利となり、良好な密着性を担保しやすくなる
熱硬化性架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、およびアミン系架橋剤が挙げられる。架橋剤の他の例として、1分子内に2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、すなわち多官能性モノマーが挙げられる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジオール(メタ)アクリレート、ヘキシルジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、架橋剤の少なくとも一部が、1分子当たり2個の架橋反応性基(例えばイソシアネート基)を有する2官能架橋剤が用いられる。2官能架橋剤を使用することにより、柔軟な架橋構造を形成しやすい。2官能架橋剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、2官能架橋剤は、3官能以上の架橋剤と併用してもよい。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、低級脂肪族ポリイソシアネート類、脂環式ポリイソシアネート類、および芳香族ポリイソシアネート類が挙げられる。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2官能以上のイソシアネート化合物を用いることができ、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-エチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、および水素添加キシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族イソシアネート類;上記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合等により変性したポリイソシネート変性体(例えばHDIのイソシアヌレート体、HDIのアロファネート体等);等が挙げられる。市販品の例としては、商品名タケネート300S、タケネート500、タケネート600、タケネートD165N、タケネートD178N、タケネートD178NL、タケネートD-110N(以上、三井化学社製)、スミジュールT80、スミジュールL、デスモジュールN3400(以上、住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR、ミリオネートMT、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートL」,日本ポリウレタン工業株式会社製)、日本ポリウレタン工業株式会社製)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物(商品名「コロネートHL」,日本ポリウレタン工業株式会社製)、コロネートHX、コロネート2770(以上、東ソー社製)、商品名デュラネートA201H(以上、旭化成社製)等が挙げられる。
イソシアネート化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用してもよい。
エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンおよび1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。また、エポキシ系架橋剤としては、エポキシ基を二つ以上有するエポキシ系樹脂も挙げられる。加えて、エポキシ系架橋剤としては、商品名「テトラッドC」(三菱ガス化学株式会社製)等の市販品も挙げられる。
これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(フィラー)
表面改質組成物(表面改質層であってもよい)は、フィラーを含有していてもよい。フィラーとしては、その種類および添加量は特に限定されない。
表面改質組成物(表面改質層であってもよい)がフィラーを有すると、表面改質層の弾性率を任意に調節しやすくなるため、表面改質部材における表面改質層と樹脂層との弾性率の差を調節しやすくなり、ひいては外部応力に対して表面改質部材中における応力集中が生じにくくなり、良好な密着性を担保しやすくなる。
表面改質組成物(表面改質層であってもよい)におけるフィラーの割合は、特に限定されず、表面改質組成物の弾性率調製のため、任意に添加できる。表面改質組成物100質量部に対して、好ましくは0.1質量%~50質量%、0.5質量%~40質量%、より好ましくは1質量%~30質量%、より好ましくは5質量%~21質量%、より好ましくは10質量%~20質量%である。当該含有量が50質量部を超えると、表面改質層の形成が困難になる。
フィラーは、特に限定されず、繊維状、束状、板状、層状、針状、スパイク状、不定形等の非粒子状、微粒子、微粒子の二次粒子(凝集体)、中実粒子、中空粒子であってもよい。有機微粒子あるいは無機微粒子であってもよく、限定されない。
((無機微粒子))
本発明の表面改質組成物に配合できる無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物;ホウ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム等の金属塩、マイカ等の鉱物、中空ナノシリカ等の中空構造を有する無機微粒子等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
((有機微粒子))
本発明の表面改質組成物に配合できる有機微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル-スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、スチレン-共役ジエン系樹脂、アクリル-共役ジエン系樹脂、オレフィン系樹脂、フッ素系樹脂等のポリマー、又はこれらポリマーの架橋体により構成された微粒子、さらにはこれらのポリマー・ポリマー架橋体により中空構造を有するよう構成された微粒子等が挙げられる。これららは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機微粒子は、表面改質組成物中の分散性の点から、表面処理が施されたものであってもよい。表面処理剤としては、公知乃至慣用のものを制限なく使用することができ、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機酸、ポリオール、シリコーン等が挙げられ、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ビニル-トリス(2-メトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシ-プロピルメチルジメトキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、メチルジエトキシフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン等が挙げられる。
また、フィラーの表面は特に限定されない。一例として、未処理であっても、表面処理を行ったものであってもよいが、フィラーの表面が未処理であるか、又はフィラーの表面の官能基がシラノール基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、イソシアネート基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。
フィラーとしては、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降シリカ等のシリカ粒子、シリカゲル、シリカエアロゲル、石英ガラス、ガラスファイバー等のシリカ系フィラーが挙げられる。これらの中でも、簡便に表面改質組成物に混合できる観点から、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカが好ましい。
フィラーの平均1次粒子径は、好ましくは1nm~1μmであり、より好ましくは5nm~500nmであり、7nm~100nmであり、10nm~50nmであり、さらに好ましくは10nm~22nmである。平均1次粒子径は、例えば、SEM(走査電子顕微鏡)、TEM(透過電子顕微鏡)、DLS(動的光散乱)、静的光散乱等により測定することができる。
表面改質組成物としては、表面改質層の形成材料を、水又は有機溶剤に溶解した溶液が挙げられる。
有機溶剤としては、溶媒として用いられる有機化合物であればよく、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。上記有機溶剤は、2種以上の有機溶剤を含む混合溶剤であってもよい。
表面改質組成物としては、ポリマー成分の合成において得られるポリマー成分を含むポリマー溶液をそのまま用いてもよい。
表面改質組成物における固形分濃度は、目的に応じて適宜設定し得る。表面改質層の厚み精度の観点から、質量割合として、好ましくは1質量%~60質量%であり、より好ましくは10質量%~50質量%であり、さらに好ましくは15質量%~40質量%であり、さらに好ましくは20質量%~35質量%であり、さらに好ましくは25質量%~30質量%である。
表面改質組成物には、必要に応じて、上述のポリマー成分とともに表面改質層に含みうる他の成分を含有してもよい。
例えば、着色剤を添加することにより表面改質層が可視化し、樹脂部材の表面を既に改質したかどうかが判別し易くなり工程管理の面でメリットがある。また、塗装の発色を改善するための下地としての機能も果たす。
着色剤としては、例えば、染料、又は顔料が挙げられる。また、着色剤としては、ブラックライトで視認できる蛍光材料であってもよい。
〔表面改質層及び表面改質シート〕
本発明の実施形態に係る表面改質層は、本発明の実施形態に係る表面改質組成物により形成される。
本発明の実施形態に係る表面改質シートは、表面改質層を有する。
表面改質シートは、離型シートを含んでいてもよく、離型シートを含まない形態の表面改質シートであってもよい。すなわち、本発明の実施形態に係る表面改質シートは、表面改質層のみからなるものであってもよく、表面改質層と、離型シートとを備えるものであってもよい。
本発明の実施形態に係る表面改質層が含むポリマー成分としては、表面改質組成物におけるポリマー成分の説明をそのまま援用し得る。
なお、表面改質層の状態は、下記の非架橋、未架橋及び架橋のうち、いずれの状態であってもよい。
非架橋:表面改質層中や添加成分が、架橋しうる成分を有しない。
未架橋:表面改質層中や添加成分中に、架橋しうる成分はあるが、架橋していない。
架橋:架橋されている。
本発明の実施形態に係る表面改質層が含むポリマー成分としては、表面改質組成物におけるポリマー成分の説明をそのまま援用し得る。
本発明の実施形態に係る表面改質シートは、表面改質層がシート状であるため樹脂部材の表面に塗設するのではなく、樹脂材料に載積して加熱処理することで一体成形ができる。そのため、ハジキ発生等によるむらの発生を防ぎ、樹脂部材の表面に均一な厚みで表面改質層を形成することができる。また、樹脂部材の表面の一部に表面改質層を設ける際には、はみだし等により歩留りが低下するのを抑制できる。
また、本発明の実施形態に係る表面改質シートは、表面改質層のみからなるものであってもよい。このため、表面改質層(表面改質シート)は、樹脂部材の表面の少なくとも一部に表面改質組成物を、例えば塗布等により形成したものであってもよい。樹脂部材の表面の少なくとも一部に塗布した表面改質組成物を、例えば、乾燥等により表面改質層としてもよく、形成した表面改質層は、例えば離型シート等により保護し、成形に供してもよい。この場合、樹脂材料に表面改質層と、離型シートとを備えた表面改質シートを載積して加熱処理する場合と同様に一体成形が可能となる。
また、後述するように、本発明の実施形態に係る表面改質シートは、不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂を含む樹脂部材を用いた表面改質部材の製造に好適に用いられるものである。
さらに、ポリマー成分が例えば水酸基を含み、表面改質層上に設けられる塗膜にウレタン系塗料など、水酸基と反応又は相互作用し得る官能基を有する塗料を含む場合には、表面改質層と塗膜の界面において、ポリマー成分中の水酸基と塗料中の官能基とが化学結合を形成、又は分子間相互作用することによって、表面改質層と塗膜との接着強度を向上し得る。
化学結合としては、共有結合、イオン結合、金属結合が挙げられる。分子間相互作用としては、水素結合、酸/塩基相互作用、静電的相互作用、芳香環相互作用、ファンデルワールスカ等が挙げられる。結合力の強さとしては、共有結合>イオン結合>金属結合>分子間相互作用であり、表面改質層と塗膜との密着性向上の観点から、表面改質層と塗膜の界面で共有結合を形成することが好ましい。
表面改質層の厚みは、特に制限は無く、0.01μm~2000μmであり、より好ましくは0.1μm~1000μmであり、さらに好ましくは0.5μm~200μmであり、特に好ましくは1μm~100μmである。
表面改質層の厚みはダイヤルシックネスゲージ(例えば、ピーコックGC-9)により表面改質シートの厚みを測定し、その箇所の表面改質層を除去した離型シートの厚みを測定し、その差を表面改質層の厚みとして測定できる。
表面改質層の平均厚みとは10点を測定した平均値である。
表面改質層は成形前の樹脂材料の表面の少なくとも一部に表面改質組成物を塗布等により形成してもよい。
また、離型シート上に表面改質組成物を塗布等により形成してもよい。
(離型シート)
離型シートとしては、特に限定されないが、耐熱性が100℃以上であることが好ましく、100℃における引張弾性率が1GPa以下であることが好ましい。
離型シートとしては、慣用の剥離紙等を使用でき、特に限定されない。例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材等が挙げられる。
上記剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。
上記フッ素ポリマーからなる低接着性基材におけるフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン-フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)等が挙げられ、ポリエステル系基材(ポリエチレンテレフタレート系基材、ポリエチレンナフタレート系基材、ポリブチレンテレフタレート系基材等)等も用いられる。
表面改質シートに使用できる離型シートとしてより具体的には、例えば、未延伸ポリアミド6、未延伸ポリアミド66、二軸延伸ポリアミド6、二軸延伸ポリアミド66、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート、易成形ポリエチレンテレフタレート、キャスト成形ポリテトラフルオロエチレン、未延伸押出成形テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)、未延伸押出成形テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、未延伸押出成形テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共同合体(FEP)、これらを主層とした積層品などが挙げられる。
なお、離型シートは公知乃至慣用の方法により形成することができる。
離型シートは市販品を用いてもよく、例えば、フッ素系の樹脂シートフィルム(日東電工株式会社製、ニトフロン)、ポリエステル系の樹脂シート、ポリメチルペンテン系の樹脂シート(三井化学東セロ製、オピュラン(登録商標))、ポリスチレン系の樹脂シート(クラボウ製、オイディス(登録商標))、ポリアミド系の樹脂シート、ポリオレフィン系の樹脂シートなどが挙げられる。
離型シートの厚みは、特に限定されないが、形状追従性の観点から、好ましくは1μm~1000μmであり、より好ましくは10μm~500μmであり、さらに好ましくは20μm~300μmであり、特に好ましくは30μm~100μmである。
また、必要に応じて、離型シートの表面改質層側の面あるいは両面にシリコーンなど適宜な離型処理剤による離型処理を施してもよい。
〔表面改質シートの製造〕
表面改質シートは、任意の適切な方法によって製造し得る。例えば、表面改質層の材料と溶剤を含む溶液(表面改質組成物)への離型シートのディッピングの後に必要に応じて乾燥する方法、離型シートの表面への表面改質層の材料と溶剤を含む溶液の刷毛塗りの後に必要に応じて乾燥する方法、離型シートの表面への表面改質層の材料と溶剤を含む溶液の各種コーターによる塗布の後に必要に応じて乾燥する方法、離型シートの表面への表面改質層の材料と溶剤を含む溶液のスプレー塗布の後に必要に応じて乾燥する方法などが挙げられる。
〔積層体〕
本発明の実施形態に係る積層体は、前記表面改質層が、樹脂材料の表面の少なくとも一部に積層された積層体である。
本発明の実施形態における表面改質層付き樹脂材料である積層体は、成形前の樹脂材料の表面の少なくとも一部に表面改質シートの表面改質層側を積層することにより製造することができる。成形前の樹脂材料の表面の少なくとも一部に表面改質組成物を塗布等により表面改質層することにより製造してもよい。
樹脂材料に含まれる樹脂は、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、PP(ポリプロピレン)、PA(ポリアミド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルサルファイド)、EP(エポキシ)などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、本発明の効果を有利に発現し得る熱可塑性樹脂としては、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PA(ポリアミド)、PES(ポリエーテルサルファイド)、EP(エポキシ)が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)を採用し得る。
繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)としては、例えば、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂(GFRTP)などが挙げられる。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)としては、例えば、PPS系炭素繊維強化熱可塑性樹脂、PA系炭素繊維強化熱可塑性樹脂、PES系炭素繊維強化熱可塑性樹脂、EP系炭素繊維強化熱可塑性樹脂、PP系炭素繊維強化熱可塑性樹脂などが挙げられる。
ガラス繊維強化熱可塑性樹脂(GFRTP)としては、例えば、PPS系ガラス繊維強化熱可塑性樹脂、PA系ガラス繊維強化熱可塑性樹脂、PP系ガラス繊維強化熱可塑性樹脂などが挙げられる。
樹脂材料に含まれる樹脂は、熱硬化性樹脂であることが好ましく、樹脂部材と表面改質組成物あるいは表面改質層との密着性向上の観点から、不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂であることが好ましい。
不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等を挙げることができ、好ましくは不飽和ポリエステル樹脂である。
なお、樹脂材料に含まれる不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂は、少なくとも一部の未硬化状態の不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂を含むものとする。
樹脂材料は繊維強化樹脂を含んでいてもよく、熱硬化性樹脂が、繊維強化熱硬化性樹脂であってもよい。
繊維強化熱硬化性樹脂としては、例えば、炭素繊維強化熱硬化性樹脂、ガラス繊維強化熱硬化性樹脂などが挙げられる。
樹脂材料は不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂の他、さらに反応性モノマー及び硬化剤、ガラス繊維を含むことが好ましい。不飽和ポリエステル樹脂等の不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂は、硬化剤の存在下で、熱硬化性樹脂中の不飽和炭化水素基と反応性モノマーとのラジカル重合により高分子化(三次元架橋)し、硬化物が得られる。
樹脂材料に含まれる樹脂が不飽和ポリエステル樹脂である場合、反応性モノマーとしては例えばスチレンが好ましく用いられ、硬化剤としては例えば過酸化ベンゾイル(BPO)が好ましく用いられる。
樹脂材料の形状としては、特に限定されないが、例えば、平面を有する板状、曲面を有する板状、凹凸を有する板状、シート状、フィルム状などが挙げられる。
樹脂材料の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.001mm~30mmである。
「樹脂材料の表面の少なくとも一部」とは、樹脂材料が有する全ての表面の中の少なくとも一部を意味する。例えば、樹脂材料が板状やシート状やフィルム状の場合は、その少なくとも一方の表面の一部や、その少なくとも一方の表面の全部などを意味する。
表面改質シート、表面改質層としては、上述の説明をそのまま援用し得る。
〔表面改質部材〕
本発明の実施形態に係る表面改質部材は、本発明の実施形態に係る表面改質層が、樹脂部材の表面の少なくとも一部に積層されたものであり、前記樹脂部材と前記表面改質層とが化学反応により共有結合している。樹脂部材と表面改質層とが共有結合を形成しているため、樹脂部材と表面改質層との接着強度に優れる。
表面改質層は樹脂部材の表面の少なくとも一部に塗設してもよく、シート状の表面改質シートを用いて形成してもよい。
表面改質層、及び樹脂材料としては、上述の説明をそのまま援用し得る。樹脂部材は、樹脂材料を成形することにより得られ、樹脂部材の好ましい形状及び厚みについては樹脂材料と同様である。
なお、「樹脂部材の表面の少なくとも一部」とは、樹脂部材が有する全ての表面の中の少なくとも一部を意味する。例えば、樹脂部材が板状やシート状やフィルム状の場合は、その少なくとも一方の表面の一部や、その少なくとも一方の表面の全部などを意味する。
本発明の実施形態に係る表面改質部材において、表面改質層10は単層であっても複数層であってもよい。表面改質部材が複数の表面改質層10を有する場合、それぞれの表面改質層10は同じものであっても異なるものであってもよい。
例えば、図1に示すように、樹脂部材100の一方の表面に表面改質層10が設けられた表面改質部材であってもよく、図2に示すように、樹脂部材100の両面に表面改質層10表面改質層11とが設けられた表面改質部材であってもよい。
また、図3に示すように、樹脂部材100の一方の表面に複数の表面改質層10、11が設けられた表面改質部材であってもよい。
表面改質部材が表面改質層を複数有する場合、少なくとも一層の表面改質層と樹脂部材100とが化学反応により共有結合していればよい。また、それぞれの表面改質層は同じものであっても異なるものであってもよい。例えば、図3に示す樹脂部材においては、表面改質層11は樹脂部材100との密着性を高くし、表面改質層10は流動性を抑制することで樹脂部材100の被覆率を高くする等、用途に応じてそれぞれの表面改質層の組成や物性、添加物、架橋形態、処理方法を変えてもよい。
本発明の実施形態に係る表面改質部材は、一例として、樹脂部材が不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂は不飽和ポリエステル樹脂であることが好ましい。
すなわち、本発明の実施形態に係る表面改質部材は、樹脂部材中の不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂と表面改質層中のポリマー成分とが共有結合していることが好ましい。
なお、樹脂部材中に含まれる不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂は、硬化状態の不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂、すなわち不飽和炭化水素基が消費された樹脂を含むものとする。
樹脂部材の成形は、加熱成形が好ましい。加熱成形は、樹脂材料と表面改質シートとの積層と同時に行ってもよいし、表面改質シートを樹脂材料に積層した後に行ってもよい。あるいは、樹脂材料の表面に表面改質組成物を塗布し、表面改質層を形成した後に行ってもよい。
このような方法で樹脂部材の表面処理を行うことにより、樹脂部材に十分な接着強度を付与することができ、表面改質部材を高い生産性と低コストで製造することができる。表面改質部材の製造方法は、樹脂部材の表面を処理する方法(樹脂の表面処理方法)でもあり得る。
本発明の実施形態に係る表面改質部材は、樹脂部材の表面の少なくとも一部を好適に被覆可能であり、樹脂部材に十分な接着強度を付与することができるため、樹脂部材同士を優れた接着強度で接着することもできる。例えば、図4に示すように、表面改質部材における表面改質層10を介して、樹脂部材100と101を接着することができる。図4は、表面改質部材と樹脂部材の積層体の一例を示す概略断面図である。
図4に示す積層体は、例えば、樹脂材料100/表面改質層10/樹脂材料101を積層した後に加熱成形して表面改質部材を形成してもよく、樹脂材料100と表面改質層10とにより形成した表面改質部材の表面改質層側に樹脂部材101を積層し、加熱成形して表面改質部材としてもよい。すなわち、加熱成形は、樹脂材料100と表面改質シート10と樹脂材料101の積層と同時に行ってもよいし、表面改質シートを樹脂材料のいずれか一方に積層した後に行ってもよい。
このような方法で樹脂部材の表面処理を行うことにより、樹脂部材に十分な接着強度を付与することができ、表面改質部材を高い生産性と低コストで製造することができる。表面改質部材の製造方法は、樹脂部材の表面を処理する方法(樹脂の表面処理方法)でもあり得る。
〔表面改質部材の製造方法〕
本発明の実施形態に係る表面改質部材の製造方法に特に制限はないが、例えば、樹脂材料の表面の少なくとも一部に、離型シートと表面改質層の積層体である表面改質シートの該表面改質層側を載置し、加熱成形を行うことにより表面改質部材を製造することができる。その他、樹脂材料の表面の少なくとも一部に、表面改質組成物を塗布し、加熱成形を行うことにより表面改質部材を製造しうる。
加熱成形により表面改質層と樹脂材料の界面が接触し、表面改質層中に含まれるポリマー成分が、樹脂材料が含有する樹脂と化学反応することで、樹脂部材と表面改質層とが共有結合した表面改質部材を形成することができる。特に、表面改質層中に含まれるモノマーユニット(b)の反応性部位と、樹脂部材中の不飽和炭化水素基とが、水素引き抜き反応によって化学結合を形成しうる。
加熱成形は、表面改質シートの載置と同時に行ってもよいし、表面改質シートを載置した後に行ってもよい。
樹脂材料と化学反応する成分は、表面改質層を形成した表面改質組成物のポリマー成分に含有されていることが好ましいが、特に限定されず、ポリマー成分と別に添加した成分であってもよい。
このような方法で樹脂部材の表面処理を行うことにより、樹脂部材に十分な接着強度を付与することができ、表面改質部材を高い生産性と低コストで製造することができる。表面改質部材の製造方法は、樹脂部材の表面を処理する方法(樹脂部材の表面処理方法)でもあり得る。
樹脂部材、表面改質シート、離型シート、及び表面改質層としては、上述の説明をそのまま援用し得る。
表面改質部材の製造においては、特に限定されないが、樹脂部材が含有する熱硬化性樹脂の硬化温度をT℃としたとき、該熱硬化性樹脂を含む樹脂材料の表面の少なくとも一部に表面改質層を設け、T℃以上の温度で加熱成形を行うことが好ましい。
加熱成形温度は、特に限定されないが、好ましくはT℃~T℃であり、より好ましくは(T+10)℃~(T-10)℃であり、さらに好ましくは(T+20)℃~(T-20)℃である。
なお、硬化温度やT~Tは、未硬化の熱硬化性樹脂をTM―DSC(温度変調示差走査熱量測定)にて測定したヒートフロー曲線の不可逆成分から取得される。TM―DSCは大気下、遮光条件において昇温速度2℃/min、モジュレイション条件±0.3℃、60s周期として取得される。Tは未硬化の熱硬化性樹脂をTM―DSCにて測定した際の発熱が始まる温度(℃)であり、ヒートフロー曲線の不可逆成分のベースラインの延長線と吸熱ピークの最大傾斜の接線の交点である。Tは吸熱ピーク温度である。Tは発熱が終わる温度(℃)であり、ヒートフロー曲線の不可逆成分のベースラインの延長線と吸熱ピークの最大傾斜の接線の交点である。
加熱成形温度を上記範囲内として、上記のような方法で樹脂部材の表面処理を行うことにより、表面改質層と樹脂部材の界面が接触して化学反応によって共有結合を形成し、樹脂部材に塗膜との接着強度に優れた表面改質層を付与することができる。そして、このような付与を高い生産性と低コストで行うことができる。
本発明の実施形態に係る表面改質部材の製造方法は、上述の表面改質層を用いた表面改質部材の製造方法であって、前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層する積層工程を含んでいてもよい。
前記樹脂部材は不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、不飽和ポリエステル樹脂を含むことがより好ましい。
本発明の実施形態に係る表面改質部材の製造方法は、上述の表面改質シートを用いた表面改質部材の製造方法であってもよい。
加熱成形の方法としては、例えば、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形などが挙げられ、樹脂成形によって行われることが好ましく、より好ましくは圧縮成形である。熱硬化性樹脂が、繊維強化熱硬化性樹脂の場合、成形方法として、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、フィラメントワインディング法、引抜き成形法、シートモールドコンパウンド法、バルクモールドコンパウンド法、レジントランスファ法、バキュームアシストレジントランスファ法などが挙げられる。
圧縮成形としては、例えば、成形加工機(例えば、プレス機など)内で、樹脂部材の表面の少なくとも一部に表面改質シートの表面改質層側を載置し、加熱を伴う成形加工(例えば、加熱プレスによる一体成形)を行う態様である。このような態様によれば、樹脂部材の表面処理とともに、樹脂部材の成形加工も同時に行うことができるため、高い生産性と低コストを提供できる。圧縮成形の際の成形圧は、特に限定されないが、好ましくは金型により成形品を変形させる観点から1MPa以上であることが好ましく、2MPa以上であることがより好ましく、3MPa以上であることがより好ましく、5MPa以上であることがより好ましく、10MPa以上であることがさらに好ましい。また、成形品の樹脂量保持の観点から30MPa以下であることが好ましく、25MPa以下であることがより好ましく、20MPa以下であることがより好ましく、15MPa以下であることがさらに好ましい。
樹脂部材の成形加工としては、射出成形であってもよい。
射出成形は、例えば、可動側金型及び固定側金型を備えた射出成形機を用いることができる。例えば、表面改質シートを可動側金型のキャビティの凹部に離型シートが対向するように収容し、可動側金型及び固定側金型を型締めする。そして、キャビティに溶融された樹脂を射出する。
そして、樹脂を金型内で冷却固化させた後、可動側金型と固定側金型とを離間させる。このようにして、表面改質シートと樹脂部材とが一体化された表面改質部材が得られる。
また、表面改質部材から離型シートを剥離することにより、表面改質層を表面に備えた表面改質部材が得られる。離型シートの剥離は、手で剥離する、専用の剥離設備を用いて剥離する等、特に限定されない。離型シートは塗装の直前まで設置しておくことができる。このことによって、表面改質層の表面の汚染を防止することができる。
離型シートと表面改質層の積層体である表面改質シートの表面改質層側を樹脂部材(樹脂材料であってもよい)の表面の少なくとも一部に載置し、加熱成形した後、好ましくは、離型シートが除去される。このように離型シートが除去されることにより、樹脂部材の表面に表面改質層が転写され、表面改質部材(樹脂部材と表面改質層の積層部材と称することもある)が得られる。
なお、前述したように、好ましくは、樹脂部材と表面改質層との層間に該樹脂と該表面改質層のポリマー成分とが共有結合している。
上記の製造方法により、図1に示すように、樹脂部材100の表面に表面改質層10が設けられ、表面改質部材が得られる。
離型シートと表面改質層の積層体である表面改質シートは、図5に示すように、離型シート20と表面改質層10の積層体である表面改質シート200である。
本発明の実施形態に係る表面改質部材の製造方法において、離型シートと表面改質層の積層体である表面改質シートの該表面改質層側を樹脂材料の表面の少なくとも一部に載置する形態は、図6に示すように、該表面改質シート200の表面改質層10側が樹脂材料400の表面側になるように該表面改質シート200を該樹脂材料400の表面に載置させた形態である。
〔塗装物及び塗装物の製造方法〕
本発明の実施形態に係る塗装物は、表面改質部材の少なくとも一部に塗膜を備えたものであり、表面改質部材の表面改質層側の表面の少なくとも一部に塗膜を備えたものであることが好ましい。
本発明の実施形態に係る塗装物の一例として、図7に樹脂部材100の表面に表面改質層10が設けられた表面改質部材の、表面改質層側の表面に塗膜30を備えた塗装物300を示す。
塗膜は、特に限定されないが、例えば、塗層、印刷層、蒸着層、スパッタ層、原子層堆積(ALD)層、CVD(化学気層成長)層、スピンコート層、ディップコート層、交互積層層、ラングミュアブロジェット層、及びめっき層より選択される少なくとも1種であってもよい。
本発明の表面改質シートを適用することによる密着性向上効果の観点からは、塗膜は塗料を含むことが好ましく、水酸基と化学結合を形成、又は分子間相互作用する官能基を有する塗料を含むことがより好ましい。
密着性向上の観点から、該官能基は水酸基と共有結合する官能基であることが好ましく、イソシアネート基、アミノ基であることが好ましい。
塗膜に含まれる塗料はウレタン系塗料やアクリル・ウレタン塗料等のウレタン系塗料、アクリル塗料、エポキシ塗料、シリコーン塗料、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系塗料又はフッ素塗料が好ましく、ウレタン系塗料がより好ましい。
ウレタン系塗料は、主剤として複数の水酸基を持つ樹脂(ポリオール)と硬化剤としてのポリイソシアネートを組み合わせた塗料の総称である。ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の芳香族のもの、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族のもの、イソホロンジイソシアネート等の脂環族のもの、その単量体及びそのビュレットタイプ、ヌレートタイプ、アダクトタイプ、アロファネートタイプ等の多量体等を挙げることができる。
表面改質層は部材の表面に塗設するのではなくシート状の表面改質シートを用いて形成する場合は、ハジキ発生等によるむらの発生をより好適に防ぐことができる。そのため、表面改質層が樹脂部材の表面に均一な厚みで形成することができ、塗膜を均一な膜厚で塗設することができる。
また、溶融状態又は軟化状態の樹脂部材の表面に表面改質層を設けることにより、樹脂部材の表面の熱によって表面改質層と樹脂部材が化学結合し、表面改質層と樹脂部材との接着強度が高くなるため、密着性に優れた塗膜が形成できる。加えて、表面改質層に含まれるポリマー成分中の水酸基と、塗膜に含まれる塗料中の上記官能基が化学結合を形成、又は分子間相互作用することにより、表面改質層と塗膜との接着強度も高くなり、密着性に非常に優れた塗膜が形成可能となる。
さらに、塗装物の形成に際して、表面改質層と樹脂部材との一体成形が可能であるため、塗膜を形成する前に離型剤を除去するための有機溶剤を用いた洗浄処理工程や研磨処理工程、外観不良部を補修する工程が必要なく安全性に優れ環境負荷や作業負荷が軽減できる。
塗膜の厚みは、特に制限は無く、0.001~10000μmであり、0.01~5000μmであり、より好ましくは0.1~1000μmであり、さらに好ましくは0.5~500μmであり、特に好ましくは1~200μmである。
本発明の実施形態に係る塗装物の製造方法は、上述の表面改質組成物又は表面改質層を用いた塗装物の製造方法であって、
前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層して表面改質部材を製造する工程と、
前記表面改質部材の前記表面改質層側に塗膜を形成する工程とを含む。
本発明の実施形態に係る塗装物の製造方法は、上述の表面改質シートを用いた塗装物の製造方法であってもよい。
前記樹脂部材は不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、不飽和ポリエステル樹脂を含むことがより好ましい。
前記塗膜は水酸基と化学結合を形成、又は分子間相互作用する官能基を有する塗料を含むことが好ましい。
表面改質組成物、樹脂部材、表面改質シート、表面改質層、及び表面改質部材としては、上述の説明をそのまま援用し得る。また、表面改質部材を形成する工程については、上述の〔表面改質部材の製造方法〕における説明をそのまま援用し得る。
塗膜の塗装方法に特に制限は無く、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、各種コーター塗装などの公知の方法を用いることができ、その塗布量は特に限定されるものではない。また、塗膜を加熱する時間や温度、周辺環境の圧力、活性エネルギー線の照射の有無、ガス雰囲気等も、用いる塗料、塗布量等によって適宜決定することができる。
〔機能層付部材及び機能層付部材の製造方法〕
本発明の実施形態に係る機能層付部材は、前記表面改質部材における前記表面改質層側の表面の少なくとも一部に機能層を備える。
本発明の実施形態に係る機能層付部材の一例として、図8に樹脂部材100の表面に表面改質層10が設けられた表面改質部材の表面改質層側の表面に、機能層40を備えた機能層付部材500を示す。
本発明の実施形態に係る機能層付部材における機能層としては、例えば、ハードコート層、光学調整層、凹凸面付与層、平滑性付与層、反射防止層、導電層、除電層、蓄電層、発電層、太陽光発電層、伝熱層、蓄熱層、放熱層、吸湿層、透湿層、気体透過性調整層、多孔層、金属層、半導体層、誘電体層、複合材料層、メタマテリアル層、弾性率調整層、意匠層、装飾層、表面保護層、対摺動層、衝撃吸収層、突き刺し強度調整層、防汚層、生体適合層、クロミック層、耐候性調整層、防雪層、摩擦力調整層、粘接着層、徐放成分保持層、油・水吸収層、防指紋層、防錆層、表示装置層、入力装置層、タッチセンサー層等を挙げることができる。機能層の種類及び機能層付部材の用途や目的に応じて選択し得る。
密着性向上効果の観点からは、機能層は水酸基と化学結合を形成、又は分子間相互作用する官能基を有する層であることが好ましい。密着性向上の観点から、該官能基は水酸基と共有結合する官能基であることが好ましく、イソシアネート基、又はアミノ基であることが好ましい。
表面改質層は部材の表面に塗設するのではなくシート状の表面改質シートを用いて形成する場合は、ハジキ発生等によるむらの発生を防ぐことができる。そのため、表面改質層が樹脂部材の表面に均一な厚みで形成することができ、機能層を均一な膜厚で塗設することができる。
また、溶融状態又は軟化状態の樹脂部材の表面に表面改質層を設けることにより、樹脂部材の表面の熱によって表面改質層と樹脂部材が化学結合し、表面改質層と樹脂部材との接着強度が高くなるため、密着性に優れた機能層が形成できる。加えて、表面改質層に含まれるポリマー成分中の水酸基と、機能層に含まれる成分の上記官能基が化学結合を形成、又は分子間相互作用することにより、表面改質層と機能層との接着強度も高くなり、密着性に非常に優れた機能層が接合乃至形成可能となる。
さらに、機能層付部材の形成に際して、表面改質層と樹脂部材との一体成形が可能であるため、機能層を形成する前に離型剤を除去するための有機溶剤を用いた洗浄処理工程や研磨処理工程が必要なく安全性に優れ環境負荷や作業負荷が軽減できる。
機能層の厚みは、特に制限は無く、0.001~10000μmであり、0.01~5000μmであり、より好ましくは0.1~1000μmであり、さらに好ましくは0.5~500μmであり、特に好ましくは1~200μmである。
本発明の実施形態に係る機能層付部材の製造方法は、上述の表面改質層を用いた機能層付部材の製造方法であって、
前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層して表面改質部材を製造する工程と、
前記表面改質部材の前記表面改質層側に機能層を形成する工程とを含む。
本発明の実施形態に係る機能層付部材の製造方法は、上述の表面改質シートを用いた機能層付部材物の製造方法であってもよい。
樹脂部材、表面改質シート、表面改質層、及び表面改質部材としては、上述の説明をそのまま援用し得る。また、表面改質部材を形成する工程については、上述の〔表面改質部材の製造方法〕における説明をそのまま援用し得る。
機能層の形成方法に特に制限は無く、接合、貼付、塗設、蒸着、印刷、融着、超音波接着、超音波融着、活性エネルギー線照射、圧縮、などの公知の方法を用いることができる。
〔工程管理方法〕
本発明の実施形態に係る表面改質シートの製造、表面改質部材の製造、塗装物の製造、及び機能層付部材の製造に際し、例えば、表面改質組成物、又は表面改質層に着色剤(染料、顔料)又は結晶性物質等の添加剤を含有させることで、表面改質層が可視化し、製造工程を管理しやすくなる。例えば、表面改質層により樹脂部材が均一に被覆できたか否かを可視化し、上述したように被覆率として簡便に数値化することができる。
表面改質組成物、表面改質シート、塗装物、及び添加剤としては、上述の説明をそのまま援用し得る。
工程管理方法としては、例えば、表面処理して着色した部分を目視で確認する、または、カメラで撮影した画像を認識して判別する、表面あるいは断面を公知の分析手法を用いて識別する方法が挙げられる。特に限定されないが、例えば、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いた実空間における観察、X線反射率法などの逆空間を利用した手法、赤外およびラマン分光をはじめとする分光学的手法、接触角法や原子間力顕微鏡、ナノインデンテーション法、X線光電子分光法やTOF-SIMSや和周波発生分光法といった表面分析法などが挙げられる。これらの手法は単独であっても、複数を複合して用いてもよい。
以上説明したように、本明細書には次の事項が開示されている。
[1]
ポリマー成分を含有する表面改質組成物であって、
前記ポリマー成分が、少なくともモノマー(A)及び1以上の反応性部位を有するモノマー(B)の部分重合物、重合物又は共重合体を含み、 前記モノマー(B)に由来するモノマーユニット(b)は、前記部分重合物、前記重合物又は前記共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の前記反応性部位の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、前記ポリマー成分における、最大値Bを有し、
前記モノマー(A)に由来するモノマーユニット(a)は、前記部分重合物、前記重合物又は前記共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、前記モノマーユニット(b)以外の前記ポリマー成分における、最大値Aを有し、
下記式(1)を満たす、表面改質組成物。
B-A≧0・・・式(1)
[2]
前記表面改質組成物の全質量に対する、前記モノマー(A)を含む部分重合物、重合物又は共重合体の含有量が25質量%以上である、[1]に記載の表面改質組成物。
[3]
前記ポリマー成分が、(メタ)アクリル系モノマーの部分重合物、又は共重合体を含む、[2]に記載の表面改質組成物。
[4]
前記(メタ)アクリル系モノマーが、メタクリル酸アルキルエステルである、[3]に記載の表面改質組成物。
[5]
前記ポリマー成分が、水酸基を含む、[1]~[4]のいずれか1に記載の表面改質組成物。
[6]
前記ポリマー成分が、不飽和炭化水素基を含まない、[1]~[5]のいずれか1に記載の表面改質組成物。
[7]
[1]~[6]のいずれか1に記載の表面改質組成物により形成される表面改質層。
[8]
[7]に記載の表面改質層を有する表面改質シート。
[9]
[7]に記載の表面改質層と、離型シートとを備えた表面改質シート。
[10]
[7]に記載の表面改質層が、樹脂材料の表面の少なくとも一部に積層された積層体。
[11]
[7]に記載の表面改質層が、樹脂部材の表面の少なくとも一部に積層され、
前記樹脂部材と前記表面改質層とが化学反応により共有結合した表面改質部材。
[12]
前記樹脂部材が不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂を含む[11]に記載の表面改質部材。
[13]
前記不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂である[12]に記載の表面改質部材。
[14]
[7]に記載の表面改質層を用いた表面改質部材の製造方法であって、
前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層する積層工程を含む、表面改質部材の製造方法。
[15]
前記樹脂部材が不飽和ポリエステル樹脂を含む[11]~[13]のいずれか1に記載の表面改質部材の製造方法。
[16]
[8]又は[9]に記載の表面改質シートを用いた表面改質部材の製造方法。
[17]
[7]に記載の表面改質層を用いた塗装物の製造方法であって、
前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層して表面改質部材を製造する工程と、前記表面改質部材の前記表面改質層側に塗膜を形成する工程とを含む、塗装物の製造方法。
[18]
前記樹脂部材が不飽和ポリエステル樹脂を含む[17]に記載の塗装物の製造方法。
[19]
[8]又は[9]に記載の表面改質シートを用いた塗装物の製造方法。
[20]
[11]に記載の表面改質部材における前記表面改質層側の表面の少なくとも一部に機能層を備える機能層付部材。
[21]
[20]に記載の機能層付部材の製造方法であって、
前記表面改質層を加熱成形により前記樹脂部材に積層して表面改質部材を製造する工程と、前記表面改質部材の前記表面改質層側に前記機能層を形成する工程とを含む、機能層付部材の製造方法。
[22]
[7]に記載の表面改質層を用いた機能層付部材の製造方法であって、
前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層して表面改質部材を製造する工程と、前記表面改質部材の前記表面改質層側に機能層を形成する工程とを含む、機能層付部材の製造方法。
[23]
前記樹脂部材が不飽和ポリエステル樹脂を含む[22]に記載の機能層付部材の製造方法。
[24]
[8]又は[9]に記載の表面改質シートを用いた機能層付部材の製造方法。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
[実施例1]
(ポリマー成分の合成)
セパラブルカバーと、分液ロートと、温度計と、窒素導入管と、リービッヒ冷却器と、バキュームシールと、撹拌装置とを備える反応容器に、アクリル酸エチル(EA)100モル部と、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)20モル部の混合物、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチルをモノマー成分が25重量%になるように投入し、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを流し、撹拌しながら約1時間の窒素置換を行った。その後、反応容器を60℃±1℃に加熱し、5時間反応させた。更に、反応容器を75℃±1℃に加熱し、2時間反応させ、アクリル系ポリマーP1の溶液を調製した。なお、重合途中に、重合中の温度制御のため、モノマー側鎖の極性基等による水素結合に起因する急激な粘度上昇を防止するために、酢酸エチルを適宜滴下した。
(表面改質シート(1)の作製)
作製したポリマー溶液(表面改質組成物)1を目開き188μmのナイロンメッシュでろ過した後、ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ(商品名「MRF38」、三菱ケミカル(株)製)上に最終的な厚み(表面改質層の厚み)が25μmとなるようにアプリケーターにて塗工し、恒温乾燥器にて80℃×2分間乾燥させ、さらに、上記塗布層上に、PETセパレータ(商品名「MRE38」、三菱ケミカル(株)製)を設け、表面改質層を備えた離型シートである表面改質シート(1)を作製した。
(表面改質部材(1)の作製)
上記で作製した表面改質シート(1)の軽セパレータであるMRF38を剥がし、表面改質層の面を不飽和ポリエステル樹脂含有樹脂シート(京セラ株式会社製、京セラプリミックスAP212SK2)(厚み1mm)の上に重ね、プレス機による圧縮成形(成形圧10MPa、上型145℃、下型135℃、4分間)にて表面改質部材(1)を作製した。下型の寸法は幅150mm×長さ120mmであり、下型の面積に対して50%の面積比(金型チャージ率)となるように不飽和ポリエステル樹脂含有樹脂シートを成形に供した。表面改質シートの金型チャージ率は100%とした 。この時、下型には不飽和ポリエステル樹脂含有樹脂シートが接触しており、表面改質シートは上型側に配置されている。上記加熱加圧は、不飽和ポリエステル樹脂含有樹脂シート及び表面改質シートが下型に接触してから30s以内に開始した。また、不飽和ポリエステル樹脂含有樹脂シートと表面改質シートが積層されてから2min以内で加熱加圧した。上記操作は全て大気下で行い、加熱加圧操作の前には活性エネルギー線の照射や予備加熱などは行わない。
[実施例2~7及び9、比較例1]
ポリマー成分の合成において、モノマーの種類及び配合量を、表1に記載した量に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~7及び9並びに比較例1のポリマー溶液(表面改質組成物)2~7及びr1を得た。ポリマー溶液1をポリマー溶液(表面改質組成物)2~7及びr1にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、表面改質シート(2)~(7)及び(r1)及び表面改質部材(2)~(7)及び(r1)を作製した。
[実施例8]
(ポリマー成分の合成)
セパラブルカバーと、分液ロートと、温度計と、窒素導入管と、リービッヒ冷却器と、バキュームシールと、撹拌装置とを備える反応容器に、メタクリル酸メチル(MMA)100部と、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)10モル部の混合物、熱重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2重量部、及び重合溶媒として酢酸エチルをモノマー成分が70重量%になるように投入し、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを流し、撹拌しながら約1時間の窒素置換を行った。その後、反応容器を72℃±1℃に加熱し、5時間反応させた。更に、反応容器を80℃±1℃に加熱し、2時間反応させ、アクリル系ポリマーP8の溶液を調製した。なお、重合途中に、重合中の温度制御のため、モノマー側鎖の極性基等による水素結合に起因する急激な粘度上昇を防止するために、酢酸エチルを適宜滴下した。
(表面改質シート(8)の作製)
作製したポリマー溶液(表面改質組成物)4を目開き188μmのナイロンメッシュでろ過した後、ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ(商品名「MRF38」、三菱ケミカル(株)製)上に最終的な厚み(表面改質層の厚み)が25μmとなるようにアプリケーターにて塗工し、恒温乾燥器にて80℃×2分間乾燥させ、さらに、上記塗布層上に、PETセパレータ(商品名「MRE38」、三菱ケミカル(株)製)を設け、表面改質層を備えた離型シートである表面改質シート(8)を作製した。
(表面改質部材(8)の作製)
上記で作製した表面改質シート(8)の軽セパレータであるMRF38を剥がし、表面改質層側の面を不飽和ポリエステル樹脂含有樹脂シート(京セラ株式会社製、京セラプリミックスAP212SK2)(厚み1mm)の上に重ね、プレス機による圧縮成形(成形圧10MPa、上型145℃、下型135℃、4分間)にて表面改質部材(8)を作製した。下型の寸法は幅150mm×長さ120mmであり、下型の面積に対して50%の面積比(金型チャージ率)となるように不飽和ポリエステル樹脂含有樹脂シートを成形に供した。表面改質シートの金型チャージ率は100%とした。この時、下型には不飽和ポリエステル樹脂含有樹脂シートが接触しており、表面改質シートは上型側に配置されている。上記加熱加圧は、不飽和ポリエステル樹脂含有樹脂シート及び表面改質シートが下型に接触してから30s以内に開始した。また、不飽和ポリエステル樹脂含有樹脂シートと表面改質シートが積層されてから2min以内で加熱加圧した。上記操作は全て大気下で行い、加熱加圧操作の前には活性エネルギー線の照射や予備加熱などは行わない。
[実施例10~13]
ポリマー成分の合成において、モノマーの種類及び配合量を、表1に記載した量に変更した以外は実施例8と同様にして、実施例2~7及び9並びに比較例1のポリマー溶液(表面改質組成物)2~7及びr1を得た。ポリマー溶液1をポリマー溶液(表面改質組成物)2~7及びr1にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、表面改質シート(2)~(7)及び(r1)及び表面改質部材(2)~(7)及び(r1)を作製した。
〔評価〕
<密着性>
実施例及び比較例で作製した表面改質部材の離型シートを剥離し、JIS K5600-5-6記載のクロスカット法にてクロスカット評価(碁盤目剥離)を実施し、剥がれていない表面改質層の枚数(付いている数)をカウントし、表1に記載した。剥がれていない表面改質層の枚数が100枚中50枚以上の時、樹脂部材と表面改質層との密着性が良好(○)であり、49枚以下の時、不良(×)であると判断できる。
・カットの間隔:2mm
・クロスカット個数:100マス
・剥離テープ:(ニチバン)セロハンテープ(登録商標)24mm幅
実施例および比較例について、モノマーユニット(a)の側鎖の末端までの原子数A、モノマーユニット(b)の側鎖の反応性部位の末端までの原子数B、B-Aの値、および密着性試験の結果を以下の表に示す。
Figure 2024049118000004
表1中に記載の材料は下記のとおりである。
(水酸基非含有(メタ)アクリル系モノマー)
MA:アクリル酸メチル
MMA:メタクリル酸メチル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
ACMO:N-(メタ)アクリロイルモルホリン
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
BA:アクリル酸ブチル
EA:アクリル酸エチル
NVP:N-ビニル-2-ピロリドン
(水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー)
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
本発明の実施形態に係る表面改質シートを用いた表面改質部材は、樹脂部材と表面改質層との密着性が良好であった。一方、比較例1の表面改質部材は、モノマーユニット(a)の側鎖の末端までの原子数が、モノマーユニット(b)の側鎖の反応性部位の末端までの原子数よりも多く、密着性に劣る結果となった。
本発明の実施形態に係る表面改質組成物は、本発明の実施形態に係る表面改質層を形成することができる。本発明の実施形態に係る表面改質層は、樹脂部材との密着性に優れた表面改質部材を形成することができる。
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
10、11 表面改質層
20 離型シート
30 塗膜
100、101 樹脂部材
200 表面改質シート
300 塗装物
400 樹脂材料
500 機能層付表面改質部材

Claims (24)

  1. ポリマー成分を含有する表面改質組成物であって、
    前記ポリマー成分が、少なくともモノマー(A)及び1以上の反応性部位を有するモノマー(B)の部分重合物、重合物又は共重合体を含み、
    前記モノマー(B)に由来するモノマーユニット(b)は、前記部分重合物、前記重合物又は前記共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の前記反応性部位の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、前記ポリマー成分における、最大値Bを有し、
    前記モノマー(A)に由来するモノマーユニット(a)は、前記部分重合物、前記重合物又は前記共重合体の主鎖に結合する原子から側鎖の末端の原子までの骨格構造を構成する原子の数の、前記モノマーユニット(b)以外の前記ポリマー成分における、最大値Aを有し、
    下記式(1)を満たす、表面改質組成物。
    B-A≧0・・・式(1)
  2. 前記表面改質組成物の全質量に対する、前記モノマー(A)を含む部分重合物、重合物又は共重合体の含有量が25質量%以上である、請求項1に記載の表面改質組成物。
  3. 前記ポリマー成分が、(メタ)アクリル系モノマーの部分重合物、又は共重合体を含む、請求項1に記載の表面改質組成物。
  4. 前記(メタ)アクリル系モノマーが、メタクリル酸アルキルエステルである、請求項3に記載の表面改質組成物。
  5. 前記ポリマー成分が、水酸基を含む、請求項1に記載の表面改質組成物。
  6. 前記ポリマー成分が、不飽和炭化水素基を含まない、請求項5に記載の表面改質組成物。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の表面改質組成物により形成される表面改質層。
  8. 請求項7に記載の表面改質層を有する表面改質シート。
  9. 請求項7に記載の表面改質層と、離型シートとを備えた表面改質シート。
  10. 請求項7に記載の表面改質層が、樹脂材料の表面の少なくとも一部に積層された積層体。
  11. 請求項7に記載の表面改質層が、樹脂部材の表面の少なくとも一部に積層され、
    前記樹脂部材と前記表面改質層とが化学反応により共有結合した表面改質部材。
  12. 前記樹脂部材が不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂を含む請求項11に記載の表面改質部材。
  13. 前記不飽和炭化水素基含有熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂である請求項12に記載の表面改質部材。
  14. 請求項7に記載の表面改質層を用いた表面改質部材の製造方法であって、
    前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層する積層工程を含む、表面改質部材の製造方法。
  15. 前記樹脂部材が不飽和ポリエステル樹脂を含む請求項11に記載の表面改質部材の製造方法。
  16. 請求項8に記載の表面改質シートを用いた表面改質部材の製造方法。
  17. 請求項7に記載の表面改質層を用いた塗装物の製造方法であって、
    前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層して表面改質部材を製造する工程と、前記表面改質部材の前記表面改質層側に塗膜を形成する工程とを含む、塗装物の製造方法。
  18. 前記樹脂部材が不飽和ポリエステル樹脂を含む請求項17に記載の塗装物の製造方法。
  19. 請求項8に記載の表面改質シートを用いた塗装物の製造方法。
  20. 請求項11に記載の表面改質部材における前記表面改質層側の表面の少なくとも一部に機能層を備える機能層付部材。
  21. 請求項20に記載の機能層付部材の製造方法であって、
    前記表面改質層を加熱成形により前記樹脂部材に積層して表面改質部材を製造する工程と、前記表面改質部材の前記表面改質層側に前記機能層を形成する工程とを含む、機能層付部材の製造方法。
  22. 請求項7に記載の表面改質層を用いた機能層付部材の製造方法であって、
    前記表面改質層を加熱成形により樹脂部材に積層して表面改質部材を製造する工程と、前記表面改質部材の前記表面改質層側に機能層を形成する工程とを含む、機能層付部材の製造方法。
  23. 前記樹脂部材が不飽和ポリエステル樹脂を含む請求項22に記載の機能層付部材の製造方法。
  24. 請求項8に記載の表面改質シートを用いた機能層付部材の製造方法。
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