JP2024044218A - 定着装置の摺動部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】ベルト部材との摺動面に長期にわたり潤滑油を保持させ、ベルト部材の回転トルクの経時的な上昇を抑えることができる定着装置の摺動部材を提供する。【解決手段】摺動部材5は、加圧ローラ2と、加圧ローラ2とともに回転する定着ベルト3と、定着ベルト3を介して加圧ローラ2との間でニップ部6を形成するニップ形成部材4とを有し、ニップ部6に用紙7を通過させる定着装置1において、定着ベルト3とニップ形成部材4との間に介在させる摺動部材5であって、定着ベルト3との摺動面に、フッ素樹脂を含有する樹脂層が形成されており、樹脂層の表面にパーフルオロポリエーテルオイルを滴下させた際の接触角が30°以上50°以下である。【選択図】図1

Description

本発明は定着装置の摺動部材に関し、詳細には、ベルトニップ方式の定着装置において、ベルト部材とニップ形成部材との間で該ベルト部材の回転に伴う摺動抵抗を低減するために使用される摺動部材に関する。
複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真装置では、用紙に形成された未定着トナー像を定着装置によって定着して画像形成している。この定着装置としては、加熱ローラと、この加熱ローラに接触して配置されたベルト部材である加圧ベルトとを備えた構成や、定着ベルト(ベルト部材)と、この定着ベルトに接触して配置された加圧ローラとを備えた構成などのベルトニップ方式と呼ばれる定着装置が知られている。例えば、後者のベルトニップ方式の定着装置では、ベルト部材の内側にニップ形成部材が配置され、加圧ローラがニップ形成部材に対して押圧することで、加圧ローラとベルト部材との間にニップ部が形成される。また、当該ベルト部材とニップ形成部材の間には、ベルト部材の回転に伴う摺動抵抗を低減する目的で摺動部材が介在している。また、ベルト部材の内周面と摺動部材の摺動面との摩擦をより低減するため、ベルト部材の内周面には潤滑剤として潤滑油やグリースが塗布・供給されている。
この摺動部材としては、特許文献1のようなものが知られている。特許文献1には、内周面に内周樹脂層を有するベルト部材と、該ベルト部材の内周面に対して摺動する樹脂の塗膜層を有する摺動部材とを備える定着装置が記載されている。内周樹脂層および塗膜層は、例えば、ポリアミドイミド(PAI)樹脂とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂の混合物をスプレー工法により被覆することで形成されている。この特許文献1には、上記ベルト部材の内周面の表面硬度をHs1、上記摺動部材の摺動面の表面硬度をHs2としたとき、回転トルクの経時的な上昇を抑える点において、Hs1<Hs2であることが有効であると記載されている。
特開2020-204670号公報
上記のように、特許文献1に記載された定着装置では、摺動部材の摺動面およびベルト部材の内周面に対してスプレー工法による樹脂被覆などが必要であり、いずれか一方の部材(例えば摺動部材)に所定の樹脂被覆を行う場合に比べて、加工工数が増加するなどして、定着装置部材の生産性の低下が懸念される。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ベルト部材との摺動面に長期にわたり潤滑油を保持させ、ベルト部材の回転トルクの経時的な上昇を抑えることができる定着装置の摺動部材を提供することを目的とする。
本発明の定着装置の摺動部材は、回転部材と、上記回転部材とともに回転するベルト部材と、上記ベルト部材を介して上記回転部材との間でニップ部を形成するニップ形成部材とを有し、上記ニップ部に用紙を通過させる定着装置において、上記ベルト部材と上記ニップ形成部材との間に介在させる摺動部材であって、上記摺動部材は、上記ベルト部材との摺動面に、フッ素樹脂を含有する樹脂層が形成されており、上記樹脂層の表面にパーフルオロポリエーテルオイルを滴下させた際の接触角が30°以上50°以下であることを特徴とする。
上記樹脂層の表面において、エネルギー分散型X線分析により計測されるフッ素分布濃度が20%~45%であることを特徴とする。
上記樹脂層に含まれるフッ素樹脂の配合量が25質量%~70質量%であることを特徴とする。
上記樹脂層に含まれるフッ素樹脂の平均粒子径は3μm~20μmであることを特徴とする。
上記樹脂層は、PAI樹脂とPTFE樹脂からなることを特徴とする。
上記樹脂層の厚みは10μm~30μmであることを特徴とする。
上記摺動部材はアルミニウム系基材を有し、上記ニップ形成部材に担持されるものであり、上記アルミニウム系基材の表面に上記樹脂層が形成されていることを特徴とする。
上記摺動部材は、上記ベルト部材との間にフッ素グリースを介在させて摺動することを特徴とする。
本発明の定着装置の摺動部材は、ベルト部材とニップ形成部材との間に介在させる摺動部材であって、ベルト部材との摺動面に、フッ素樹脂を含有する樹脂層が形成されており、樹脂層の表面にパーフルオロポリエーテルオイルを滴下させた際の接触角が30°以上50°以下であるので、潤滑剤としてフッ素系潤滑剤(例えばフッ素グリース)が用いられる場合において、該フッ素系潤滑剤に対して適度な濡れ性を保つことができ、摺動部材とベルト部材との間に介在するフッ素系潤滑剤が、ベルト部材の端部から排出することを抑制できる。その結果、ベルト部材に対する摺動部材の摺動性が維持され、摺動部材の経時的な摩擦係数の変化が抑制され、ベルト部材の回転トルクの経時的な上昇を抑えることができる。
また、長時間の摺動によってベルト部材の端部からフッ素系潤滑剤が排出されるとしても、ベルト部材と相性の良いフッ素樹脂が樹脂層に適量配合(例えば、樹脂層全体に対して25質量%~70質量%配合)されているので、樹脂層自身の摩耗およびベルト部材の摩耗を極力抑えることができ、ひいては定着装置の寿命向上に寄与することができる。
ベルトニップ方式の定着装置の概要を示す図である。 摺動部材の拡大断面図である。 ローラ・オン・ディスク試験の概要を示す図である。
本発明の定着装置の摺動部材は、電子写真装置におけるベルトニップ方式の定着装置に用いるものである。この定着装置は、(1)定着部材である加熱ローラ(回転部材)と、この加熱ローラに接触して配置される加圧ベルト(ベルト部材)とを備えた構成、(2)定着部材である定着ベルト(ベルト部材)と、この定着ベルトに接触して配置された加圧ローラ(回転部材)とを備えた構成、などがある。(2)の定着装置では、加圧ローラがベルト部材の内側のニップ形成部材に対して押圧するように配置される。本発明の定着装置の摺動部材は、上記のような定着装置におけるベルト部材とニップ形成部材との間に介在する部材である。また、上記摺動部材は、定着ベルト(ベルト部材)と加圧ベルト(回転部材)を組み合わせた、ベルト-ベルト形式にも適用できる。
定着装置の一例を図1に基づき具体的に説明する。図1は、上記(2)の構成の定着装置の概要図である。定着装置1は、加圧ローラ(回転部材)2と、この加圧ローラに接触して配置され、加圧ローラ2の回転とともに回転するベルト部材である定着ベルト3とを備えている。定着ベルト3の内部には、加熱手段8が内蔵されている。定着ベルト3は、中空回転体(エンドレスベルト)である。図1において、加圧ローラ2は駆動手段により駆動され、定着ベルト3はこれに従動する。定着ベルト3の内側には、ニップ形成部材4が配置され、ニップ形成部材4は定着ベルト3を介して加圧ローラ2によって押圧されている。定着装置1は、加圧ローラ2と定着ベルト3との間に形成されるニップ部6で、未定着のトナー像を担持した用紙7を一方向から通過させ、加熱・加圧してこのトナー像を定着させている。
定着装置1において、定着ベルト3とニップ形成部材4との間に、摺動部材5が設けられている。摺動部材5は、ニップ形成部材4に担持され、固定されている。摺動部材5において、定着ベルト3の内周面と摺動する摺動面には樹脂層が形成されている。具体的には、図2に示すように、摺動部材5は基材5aを有し、基材5aの表面にフッ素樹脂を含有する樹脂層5bが形成されている。この樹脂層5bの表面が定着ベルトの内周面と摺動する。
図1の定着装置1において、定着ベルト3の内周面には潤滑油やグリースなどの潤滑剤が塗布・供給され、摺動部材5と定着ベルト3との間を潤滑している。グリースとしては、フッ素化油を基油としフッ素樹脂粉末を増ちょう剤とするフッ素グリースや、シリコーングリースが使用されているが、多くの場合は、耐熱性に優れるフッ素グリースが使用されている。本発明では、これに鑑みて、フッ素グリースと類似した構造であるパーフルオロポリエーテルオイルを樹脂層の表面に滴下させた際の接触角により、フッ素グリースの保持性を定性判定できるとして当該接触角を規定している。
すなわち、本発明では、樹脂層の表面にパーフルオロポリエーテルオイルを滴下させた際の接触角が30°以上50°以下であることを特徴としている。これにより、例えばフッ素グリースが使用される際に、フッ素グリースの濡れ性向上により長期使用における摺動面へのグリース保持、それに伴い回転トルクの長期安定と、摺動部材5および定着装置1としての寿命向上が期待できる。併せて、長期使用においてグリース枯渇が発生した場合においても、樹脂層自身の自己潤滑性から樹脂層自身の摩耗を抑制し、定着装置1としての寿命向上が期待できる。本発明において、樹脂層における上記接触角は、30°以上45°以下が好ましく、30°以上40°以下であってもよい。なお、接触角は、後述の実施例に示す方法で測定される。
また、本発明では、パーフルオロポリエーテルオイルとしては、20℃における動粘度が53cStのものを使用する。
樹脂層の表面において、エネルギー分散型X線分析(EDX)により計測されるフッ素分布濃度は20%~45%であることが好ましい。このように摺動部材5の表面に適切なフッ素分布濃度を実現することで、定着ベルト3の摩耗を抑制しやすくなる。一般に定着ベルト3の内周面はポリイミド(PI)樹脂で形成されることが多く、PI樹脂が摩耗することでグリース内に摩耗粉が混入することとなり、定着ベルト3の回転トルクが向上するおそれがある。定着ベルト3の摩耗を抑制するためにも、使用時において定着ベルト3と摺動部材5の間にはグリースが保持されることが必要である。
樹脂層の表面におけるフッ素分布濃度は、エネルギー分散型X線分析により計測することができる。走査型電子顕微鏡にて分析倍率および分析検体と検出器の距離を設定し、印加電圧15kVとしてフッ素分布濃度を検出することができる。ここで、後述の実施例より、樹脂層中のフッ素樹脂の配合比率が大きいほど、樹脂層の表面のフッ素分布濃度が高くなる傾向が確認された。また、フッ素樹脂の平均粒子径との相関も見られ、樹脂層に含まれるフッ素樹脂の平均粒子径が小さいほど、表面のフッ素分布濃度が高くなる傾向が確認された。
樹脂層の表面におけるフッ素分布濃度が低いほど、フッ素樹脂特有の非粘着性効果が低下する。非粘着性効果が低いということは、便宜的には他物質が樹脂層の表面に留まりやすいということを意味する。これは、フッ素グリースが摺動面から排出されにくくなる、すなわち長時間使用においてフッ素グリースを摺動面に保持しやすくなることを意味する。一方で、加圧ローラ2からの局部的な加圧が想定以上に負荷された場合、定着ベルト3からの物理的な押し付けにより摺動面のフッ素グリースが漏れ出し、グリースが保持されにくくなる。その場合、回転トルクの上昇と併せて、樹脂層の摩耗や定着ベルト3の摩耗が発生するおそれがある。一見、フッ素分布濃度が低いほど本機構において有利であると考えられるが、局部的な加圧によるグリース漏れも考慮した場合、そうではない。
なお、上記樹脂層は、例えばスプレーコーティング法により摺動部材の表面に被覆されるが、フッ素分布濃度が低い(つまりフッ素樹脂の配合比率が少ない)場合は、スプレーコーティングの加工生産性が悪くなりやすい。例えば、PTFE樹脂がPAIワニスに対して十分に少ない場合は、コーティング液としての粘性が低くなる傾向があり、スプレーコーティング直後の被膜厚みの確保が困難となり、その結果、コーティングおよび乾燥を数回繰り返すことが要求される場合がある。
一方、樹脂層の表面におけるフッ素分布濃度が高い場合は、フッ素樹脂特有の非粘着性効果がより発揮され、フッ素グリースが摺動面から排出されやすくなる、すなわち長時間使用においてフッ素グリースを摺動面に保持しにくくなる。一見、回転トルクの上昇の抑制などには不利であると考えられるが、加圧ローラ2からの局部的な加圧が想定以上に負荷され、摺動面のフッ素グリースが漏れ出した場合においては有利に働く。すなわち、当該樹脂層は高い自己潤滑性を保有することから、グリース枯渇環境においても、回転トルクの上昇が起きにくく、併せて樹脂層の摩耗や定着ベルト3の摩耗が発生する可能性を軽減することができる。
上記を鑑みて、本発明の摺動部材における樹脂層は、その表面にパーフルオロポリエーテルオイルを滴下させた際の接触角が30°以上50°以下であり、更に、その表面において、エネルギー分散型X線分析により計測されるフッ素分布濃度が20%~45%であることが好ましい。
本発明の摺動部材の樹脂層はフッ素樹脂を含有している。フッ素樹脂は、特に限定されないが、例えば、PTFE樹脂、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)樹脂などが挙げられる。これらは単独で、または2種以上を用いることができる。これらの中でも、PTFE樹脂を用いることが好ましい。
樹脂層において、フッ素樹脂の配合量は樹脂層全体に対して25質量%~70質量%であることが好ましい。フッ素樹脂の配合量については、例えば、樹脂層における上記接触角を小さくする観点では、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。また、樹脂層自体の自己潤滑性を大きくする観点では、45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。また、25質量%未満の少量の場合および70質量%を超える多量の場合はいずれも樹脂層の摩耗が大きくなるおそれがある。
樹脂層に含まれるPTFE樹脂などのフッ素樹脂の平均粒子径は、特に限定されないが、3μm~20μmが好ましい。平均粒子径が3μm未満の場合、フッ素樹脂の分散性が低下しやすく、また、平均粒子径が20μmを超えると、樹脂層の表面の平滑性を損なうおそれがある。また、フッ素樹脂の平均粒子径は5μm~15μmがより好ましい。この範囲内であると、例えば平均粒子径が3μmの場合に比べて、樹脂層の硬度および耐摩耗性をより良好にしやすく、また、平均粒子径が20μmの場合に比べて、表面のフッ素分布濃度がより高められ、グリース枯渇環境においても回転トルクの上昇を抑制しやすくなる。
なお、PTFE樹脂などのフッ素樹脂の平均粒子径は、粒子径分布を累積分布としたとき、累積値が50%となる点の粒子径であり、レーザー光散乱法を利用した粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
また、上記樹脂層はフッ素樹脂以外の樹脂(マトリックス樹脂とも言う)を含有していてもよい。他の樹脂としては、基材との密着性に優れるとともに、摺動部材の使用時に熱劣化することのない耐熱性を有する耐熱性樹脂であれば使用できる。具体的には、PAI樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、PI樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐摩耗性、および、基材との密着性に優れることから、PAI樹脂を用いることが好ましい。
他の樹脂を含む形態において、他の樹脂とフッ素樹脂の配合比率(質量比)は、特に限定されないが、30:70~70:30が好ましい。この配合比率については、例えば、樹脂層における上記接触角を小さくする観点では、他の樹脂の配合比率を大きくすることが好ましく、例えば50:50~70:30とすることができる。また、樹脂層自体の自己潤滑性を大きくする観点では、フッ素樹脂の配合比率を大きくすることが好ましく、例えば30:70~50:50とすることができる。
また、樹脂層は、フッ素樹脂、他の樹脂以外に、本発明の摺動部材の必要特性を著しく低下させない範囲であれば、他の添加剤を含有していてもよい。例えば、黒鉛などを含有していてもよい。
樹脂層の好ましい形態として、樹脂層は、フッ素樹脂としてPTFE樹脂を含み、他の樹脂としてPAI樹脂を含む。さらに、樹脂層は、PAI樹脂とPTFE樹脂からなることが好ましく、PAI樹脂とPTFE樹脂の配合比率は30:70~70:30であることがより好ましい。
樹脂層の厚みは10μm~30μmであることが好ましい。10μmを下回る場合は、樹脂層の摩耗に対する耐久性の面から懸念がある。一方で、30μmを超える場合は、スプレーコーティングと乾燥の繰り返し工程が必要となり、生産性の面で劣る傾向がある。生産性の面からは、樹脂層の厚みを極力薄くすることが効果的であることから、耐久性を考慮して10μm~30μmの厚みとすることが好ましい。
樹脂層の表面硬度は、JIS K5400に準拠した鉛筆硬度試験の硬度で2B~4Hが好ましく、2B~Fであってもよい。例えば、樹脂層の表面硬度は、ベルト部材の内周面の表面硬度よりも小さくなっている。
図2に示すように、摺動部材5は、基材5aの表面に樹脂層5b(以下、樹脂被膜と言う場合がある)を有する。基材5aは、主に金属が採用される。材質としては、例えば、鉄鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などを採用することで、所望の耐荷重性などを確保できる。これにより、定着ベルトから受ける圧力による摺動面の形状変化が起こりにくくなり、受圧面の変化が抑制される。鉄鋼としてはステンレス鋼(SUS304、SUS316など)、軟鋼(SPCC、SPCEなど)、一般構造用炭素鋼(SS400など)などが挙げられる。また、これらに亜鉛、ニッケル、銅などのめっきを予め施してもよい。アルミニウムとしてはA1100、A1050、アルミニウム合金としてはA2017、A5052(アルマイト処理品も含む)、銅としてはC1100、銅合金としてはC2700、C2801などがそれぞれ挙げられる。この中でも、熱伝導性に優れるA1100、A1050がより好ましい。
また、基材5aの表面(樹脂層5bの形成面)は、樹脂被膜との密着性を向上させるために、ショットブラスト、タンブラー、機械加工などにより凹凸形状に荒らす、または、化学表面処理を施して微細凹凸形状を形成してもよい。
基材5aの表面に樹脂層5bを形成するための樹脂塗料を塗布した後に乾燥し、焼成して硬化させることで樹脂層5bが形成される。樹脂塗料は、例えば、固形分となるマトリックス樹脂とフッ素樹脂を、溶剤類に分散または溶解させることにより得られる。なお、焼成は、マトリックス樹脂に応じた焼成温度で所定時間行なう。
樹脂塗料のマトリックス樹脂としては、上述したように、耐熱性、耐摩耗性、密着性に優れるPAI樹脂を用いることが好ましい。また、PAI樹脂と、PPS樹脂、PEEK樹脂、PI樹脂、PA樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの耐熱性樹脂とを併用してもよい。ただし、PAI樹脂よりも低温で焼成固化、または成形できる樹脂であることが好ましい。
これらマトリックス樹脂などを分散する溶剤類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルクロロホルム、トリクロロエチレン、トリクロロトリフルオロエタンなどの有機ハロゲン化化合物類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、メチルイソピロリドン(MIP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)などの非プロトン系極性溶剤類などを使用することが例示できる。これらの溶剤類は、単独または混合物として使用することができる。樹脂塗料の塗布方法にあわせ、溶剤の種類、液粘度を調整すればよい。
樹脂塗料を基材表面に塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、スプレーコーティングなどの方法を採用できる。樹脂塗料は、基材の少なくともベルト部材と摺動する摺動面に塗布すればよい。
次に、上述した実施形態に相当する実施例および比較例について記載する。定着装置と類似の運動形態を単体試験にて模擬した。すなわち、試験機は図3に示すようなローラ・オン・ディスク方式とし、アルミニウム系基材の表面に樹脂コーティングを施し、膜厚20μmの樹脂層を有するローラ試験片11を準備した。一方で、摺動部材と摺動する定着ベルトと同一材質であるPIフィルム12aをディスク板12の上面に取り付けた。その後、ローラ試験片11の側面の樹脂層とPIフィルム12aが接触するよう、ローラ試験片11を上部、PIフィルム12aを下部にそれぞれ取り付け、ローラ試験片11を試験片ホルダー13および位置決めピン14で固定し、PIフィルム12aを回転させる方式で、定着装置と類似の運動形態を再現した。
ローラ・オン・ディスク方式での摺動試験は、2種類の条件にて行った。1つは、ニップ部において摺動部材と局部的な偏当たりが発生し、グリースが枯渇した状態を想定した条件であり、速度0.3m/s、面圧6MPa、時間40h、試験部温度200℃、グリース潤滑なし、相手材は東レ・デュポン社製PIフィルム(鉛筆硬度9H以上)とした。これをドライ試験条件とした。もう1つは、定常運転を想定した条件であり、速度0.3m/s、面圧2.5MPa、時間200h、試験部温度200℃、フッ素グリース微量塗布、相手材はドライ試験条件と同一である。これをグリース塗布試験条件とした。なお、時間200h、速度0.3m/sの場合、定着装置の走行距離は216kmに相当する。
次に、アルミニウム系平板表面に膜厚20μmの樹脂層を形成した試験片を用いて、樹脂層の密着性を鉛筆硬度試験にて判定した。規格はJIS K5400に準拠した。
更に、上記試験片を用いて、23℃、湿度50%の雰囲気下で、フッ素グリースの基油成分であるパーフルオロポリエーテルオイル(20℃における動粘度53cSt)を滴下し、液滴の接触角を測定した。接触角計は協和界面科学製DM500を使用し、使用針は15Gを使用し、接触角の画像取り込みは、プローブ液体滴下直後とした。
更に、上記試験片を用いて、エネルギー分散型X線分析により樹脂層の表面のフッ素分布濃度を測定した。走査型電子顕微鏡にて分析倍率(300倍)および分析検体と検出器の距離(10mm)を設定し、印加電圧15kVとしてフッ素分布濃度を測定した。
実施例1~8、比較例1~3の樹脂層の配合比率、各評価試験の結果および分析結果を表1に示す。
Figure 2024044218000002
また、表1の判定の基準を下記に示す。
<判定基準>
A:ドライ摺動試験、グリース塗布摺動試験のどちらも、樹脂層の摩耗量が10μm未満の場合
B:ドライ摺動試験、グリース塗布摺動試験の一方が、樹脂層の摩耗量が10μm未満の場合、他方が10μm以上の場合
C:ドライ摺動試験、グリース塗布摺動試験のどちらも、樹脂層の摩耗量が10μm以上の場合
表1に示すように、実施例1~実施例8は、ドライ試験条件、グリース塗布試験条件のいずれにおいても、樹脂層の摩耗量が10μm未満であった。比較例1~比較例2は、ドライ試験条件において樹脂層の摩耗量が10μm以上であり、比較例3は、ドライ試験条件、グリース塗布試験条件のいずれにおいても、樹脂層の摩耗量が10μm以上であった。
フッ素樹脂(PTFE樹脂)の配合量が多いほど、樹脂層の表面のフッ素分布濃度が高くなり、パーフルオロポリエーテルオイル滴下時の接触角が大きくなる傾向であった。また、フッ素樹脂の配合量が同量であれば、フッ素樹脂の平均粒子径が小さいほど、樹脂層の表面のフッ素分布濃度が高くなり、パーフルオロポリエーテルオイル滴下時の接触角が大きくなる傾向であった。
グリース塗布試験条件では、接触角が22°~48°において摩擦摩耗特性が良好であり、樹脂層自身の摩耗とPIフィルムの摩耗を抑えることができた。特に、接触角が小さい方が樹脂層自身の摩耗を好適に抑えることができる傾向があり、摺動面においてフッ素グリースを保持しやすくなったと考えられる。
ドライ試験条件では、フッ素樹脂(PTFE樹脂)の配合量が多いほど、動摩擦係数が低く、樹脂層自身の摩耗とPIフィルムの摩耗が少なくなる傾向が見られた。しかし、パーフルオロポリエーテルオイル滴下時の接触角が50°を超える比較例3は、ドライ試験条件、グリース塗布試験条件のいずれの場合も樹脂層自身の摩耗が増加した。また、比較例1~比較例2のように、パーフルオロポリエーテルオイル滴下時の接触角が30°未満の場合には、特に、ドライ試験条件において樹脂層の摩耗が増加した。
上記のように、実施例1~実施例8は、いずれの試験条件でも良好な結果を示した。すなわち、樹脂層の接触角が30°以上50°以下であることから、定常運転を想定したグリース塗布試験条件では潤滑油を保持しやすく、良好な摩擦摩耗特性を示すとともに、グリースが枯渇した状態を想定したドライ試験条件であっても、高い自己潤滑性から良好な摩擦摩耗特性を示した。
本発明の定着装置の摺動部材は、ベルト部材との摺動面に長期にわたり潤滑油を保持させ、ベルト部材の回転トルクの経時的な上昇を抑えることができるので、定着装置の寿命向上に繋がり、ベルトニップ方式の定着装置に用いる摺動部材として好適である。また、本発明では、摺動部材のみに所定の樹脂コーティングを施すことで上述の効果を発揮させるものであり、ベルト部材および摺動部材に所定の樹脂コーティングを行う場合に比べて生産性が良く、汎用性に優れる。
1 定着装置
2 加圧ローラ(回転部材)
3 定着ベルト(ベルト部材)
4 ニップ形成部材
5 摺動部材
5a 基材
5b 樹脂層
6 ニップ部
7 用紙
8 加熱手段
11 ローラ試験片
12 ディスク
12a PIフィルム
13 試験片ホルダー
14 位置決めピン

Claims (8)

  1. 回転部材と、前記回転部材とともに回転するベルト部材と、前記ベルト部材を介して前記回転部材との間でニップ部を形成するニップ形成部材とを有し、前記ニップ部に用紙を通過させる定着装置において、前記ベルト部材と前記ニップ形成部材との間に介在させる摺動部材であって、
    前記摺動部材は、前記ベルト部材との摺動面に、フッ素樹脂を含有する樹脂層が形成されており、
    前記樹脂層の表面にパーフルオロポリエーテルオイルを滴下させた際の接触角が30°以上50°以下であることを特徴とする定着装置の摺動部材。
  2. 前記樹脂層の表面において、エネルギー分散型X線分析により計測されるフッ素分布濃度が20%~45%であることを特徴とする請求項1記載の定着装置の摺動部材。
  3. 前記樹脂層に含まれるフッ素樹脂の配合量が25質量%~70質量%であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の定着装置の摺動部材。
  4. 前記樹脂層に含まれるフッ素樹脂の平均粒子径は3μm~20μmであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の定着装置の摺動部材。
  5. 前記樹脂層は、ポリアミドイミド樹脂とポリテトラフルオロエチレン樹脂からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の定着装置の摺動部材。
  6. 前記樹脂層の厚みは10μm~30μmであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の定着装置の摺動部材。
  7. 前記摺動部材はアルミニウム系基材を有し、前記ニップ形成部材に担持されるものであり、前記アルミニウム系基材の表面に前記樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の定着装置の摺動部材。
  8. 前記摺動部材は、前記ベルト部材との間にフッ素グリースを介在させて摺動することを特徴とする請求項1または請求項2記載の定着装置の摺動部材。
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