JP2024043525A - 調光シート、および、調光シートの製造方法 - Google Patents

調光シート、および、調光シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】調光層の形成に要する反応の円滑な進行が可能な調光シート、および、調光シートの製造方法を提供する。【解決手段】調光シート10は、調光層20と一対の透明電極層31,32とを備える。調光層20は、複数のドメインを有する透明高分子層と、ドメインを埋める液晶組成物であって、液晶化合物および二色性色素を含む液晶組成物とを含む。透明高分子層および液晶組成物のうちの液晶化合物の割合は、40質量%以上70質量%以下である。透明高分子層は、分子構造の末端にオキシムエステル化合物の分子内解離基を含む高分子化合物を含む。【選択図】図1

Description

本開示は、調光シート、および、調光シートの製造方法に関する。
調光シートは、高分子材料中に液晶組成物が分散されている調光層と、調光層を挟む一対の透明電極層とを備えており、一対の透明電極層間に駆動電圧が印加される。駆動電圧の印加の有無に応じて液晶分子の配向状態が変わることから、調光層を光が透過する透明状態と、調光層で光が散乱する不透明状態とを切り替えることが可能である。
一般に、透明状態の調光シートは無色透明であり、不透明状態の調光シートは白く濁って見える。一方で、使用環境に応じた意匠性の観点から、不透明状態の調光シートが、白色とは異なる有色であることが好まれる場合がある。そこで、液晶組成物に二色性色素を添加することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。二色性色素は、分子の長軸方向と短軸方向とで異なる吸光度を示し、液晶分子に従って配向される。二色性色素の添加によって、不透明状態の調光シートは、二色性色素由来の有色を示す。
特開2020-016710号公報
調光シートの製造工程では、液晶組成物と光重合性化合物と光重合開始剤とを含む塗液から調光層となる塗膜が形成され、塗膜に対する光の照射によって塗膜中で光重合性化合物の重合反応が進められる。これにより、高分子構造が形成されるとともに、液晶組成物の相分離が生じて、調光層が形成される。
液晶組成物に二色性色素が添加されている場合、塗膜に与えられた光エネルギーの一部が二色性色素に吸収されることから、重合反応が進みにくくなり、相分離が誘起されにくくなるという問題がある。塗膜が含む光重合開始剤の量を増やせば、こうした問題の改善が可能ではあるが、調光層が含有する未反応の光重合開始剤や反応後の光重合開始剤の残留物が増えるため、調光層における光学特性等の性能の低下を招く虞がある。
それゆえ、液晶組成物が二色性色素を含む場合において、調光層の形成に要する反応の円滑な進行のために、調光層の材料についての更なる改良が望まれている。
上記課題を解決するための調光シートおよび調光シートの製造方法の各態様を記載する。
[態様1]複数のドメインを有する透明高分子層と、前記ドメインを埋める液晶組成物であって、液晶化合物および二色性色素を含む前記液晶組成物とを含む調光層と、前記調光層を挟む一対の透明電極層と、を備え、前記一対の透明電極層間の電位差の変化に応じて前記液晶化合物および前記二色性色素の配向を変え、これによって透明状態から有色の不透明状態に切り換わる調光シートであって、前記透明高分子層および前記液晶組成物のうちの前記液晶化合物の割合は、40質量%以上70質量%以下であり、前記透明高分子層は、分子構造の末端にオキシムエステル化合物の分子内解離基を含む高分子化合物を含む、調光シート。
上記構成によれば、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物が用いられているため、調光層の形成に際して重合反応と液晶組成物の相分離との好適な進行が可能である。それゆえ、調光シートの光学特性や駆動可能な温度範囲といった性能の低下を抑えることができる。
[態様2]前記高分子化合物は、(メタ)アクリレート由来の骨格を有する、[態様1]に記載の調光シート。
上記構成によれば、透明高分子層の的確な形成が可能であり、また、透明高分子層の形成に要する材料の入手が容易である。
[態様3]前記透明高分子層および前記液晶組成物のうちの前記透明高分子層の割合は、30質量%以上60質量%以下であり、前記透明高分子層および前記液晶組成物のうちの前記二色性色素の割合は、0.5質量%以上10質量%以下である、[態様1]または[態様2]に記載の調光シート。
上記構成によれば、透明高分子層の割合が30質量%以上60質量%以下であることにより、透明高分子層にてドメインの大きさが適度に確保され、高分子分散型液晶の構造が好適に形成される。これにより、良好な光学特性が得られる。また、二色性色素の割合が0.5質量%以上であることにより、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いることによる重合の促進の程度が好適となり、また、透明状態と不透明状態との調光シートの色の違いが明瞭に認識されやすくなる。また、二色性色素の割合が10質量%以下であることにより、二色性色素が凝集した粒子の析出を抑制できる。
[態様4]前記不透明状態における全光線透過率が30%以下である、[態様1]~[態様3]のいずれか1つに記載の調光シート。
上記構成によれば、不透明状態において可視光を十分に遮ることが可能である。
[態様5]前記調光層は、前記不透明状態において前記二色性色素が呈する色と同色を呈するスペーサをさらに含む、[態様1]~[態様4]のいずれか1つに記載の調光シート。
上記構成によれば、スペーサが目立つことを抑えることができる。
[態様6]液晶化合物と二色性色素とを含む液晶組成物、光重合性化合物、および、光重合開始剤を含む塗液を生成することと、第1透明支持層上に第1透明電極層が形成された第1シートと、第2透明支持層上に第2透明電極層が形成された第2シートとの透明電極層間に、前記塗液からなる塗膜を形成することと、前記塗膜に光を照射して前記光重合性化合物の重合反応を進行させることによって、複数のドメインを有する透明高分子層と、前記ドメインを埋める前記液晶組成物とを有する調光層を形成することと、を含み、前記光重合開始剤はオキシムエステル化合物を含み、前記塗液におけるアイソトロピック相の下限温度は、0℃以上30℃未満である、調光シートの製造方法。
上記製法によれば、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物が用いられているため、調光層の形成に際して重合反応と液晶組成物の相分離との好適な進行が可能である。それゆえ、調光シートの光学特性や駆動可能な温度範囲といった性能の低下を抑えることができる。また、塗液が等方性液体もしくはそれに近い性質を示すため、均一な塗膜が得られやすい。
[態様7]前記液晶化合物の割合は40質量%以上70質量%以下であり、前記光重合性化合物の割合は30質量%以上60質量%以下であり、前記二色性色素の割合は0.5質量%以上10質量%以下であり、前記光重合開始剤の割合は0.1質量%以上5質量%以下である、[態様6]に記載の調光シートの製造方法。
上記製法によれば、透明高分子層にてドメインの大きさが適度に確保され、高分子分散型液晶の構造の好適な形成が可能である。また、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いることによる重合の促進の程度が好適となる。
本開示によれば、液晶組成物が二色性色素を含む調光シートにおいて、調光層の形成に要する反応の円滑な進行ができる。
図1は、第1実施形態の調光シートの積層構造を示す断面図である。 図2は、第1実施形態の調光層の構成を示す模式図である。
(第1実施形態)
図面を参照して、調光シート、および、調光シートの製造方法の第1実施形態を説明する。
[調光シートの構成]
図1を参照して、調光シートの全体構成を説明する。
図1に示すように、調光シート10は、調光層20、第1透明電極層31、第2透明電極層32、第1透明支持層41、および、第2透明支持層42を備えている。調光層20は、第1透明電極層31と第2透明電極層32とに挟まれ、これらの透明電極層31,32に接している。第1透明支持層41は、第1透明電極層31に対して調光層20と反対側で第1透明電極層31を支持し、第2透明支持層42は、第2透明電極層32に対して調光層20と反対側で第2透明電極層32を支持している。
調光層20は、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)の構造を有する。すなわち、調光層20は、独立した多数の空隙を有する透明高分子層と、上記空隙に保持された液晶組成物とを含む。
第1透明電極層31および第2透明電極層32の各々は、導電性を有し、可視領域の光に対して透明である。透明電極層31、32の材料は、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)等である。
第1透明支持層41および第2透明支持層42の各々は、可視領域の光に対して透明な基材である。透明支持層41,42の材料は、例えば、合成樹脂や無機化合物である。合成樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン等である。無機化合物は、例えば、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等である。
第1透明電極層31および第2透明電極層32の各々は、配線を介して、制御部50に接続されている。制御部50は、調光シート10の駆動のための電圧を生成し、生成した電圧を透明電極層31,32に配線を通じて印加する。電圧の印加の有無の制御および印加する電圧の大きさの制御を通じて、制御部50は、透明電極層31,32間の電位差を制御する。調光シート10と制御部50とから調光装置が構成される。
なお、調光シート10は、取付対象物である透明基材に貼り付けられる。透明基材は、ガラス基板や樹脂基板である。透明基材の例は、車両や航空機等の移動体が搭載する窓ガラス、建物に設置された窓ガラス、車内や屋内に配置された間仕切りである。調光シート10が貼り付けられる面は、平面状あるいは曲面状である。また、調光シート10は、2つの透明基材によって挟まれてもよい。
図2を参照して、調光層20の詳細構成を説明する。図2は、調光シート10の断面構造のうち、調光層20と透明電極層31,32との積層部分を、調光層20の構成を強調して模式的に示す図である。
調光層20は、透明高分子層21、液晶組成物22、および、スペーサ23を含む。透明高分子層21は、光重合性化合物の硬化体である。透明高分子層21は、その内部に、孤立した多数のドメイン21Dを区画している。ドメイン21Dは、言い換えれば、空隙である。ドメイン21Dの大きさは2種類以上であり、ドメイン21Dの形状は、例えば、略球形状や略楕円体状である。ドメイン21Dは、液晶組成物22によって埋められている。すなわち、調光層20は、液晶のドロップレットが高分子材料中に分散した構造を有している。
透明高分子層21および液晶組成物22のうちの透明高分子層21の割合は、30質量%以上60質量%以下であることが好ましく、40質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。透明高分子層21の割合が上記範囲内であると、ドメイン21Dの大きさが適度に確保され、高分子分散型液晶の構造が好適に形成される。上記範囲内において、透明高分子層21の割合が大きいほど、透明高分子層21の機械的な強度を高めることが可能であり、透明高分子層21の割合が小さいほど、調光シート10の駆動電圧を低下させることが可能である。
透明高分子層21の材料の光重合性化合物は、例えば、紫外線硬化性化合物である。光重合性化合物は、液晶組成物22と相溶性を有する。光重合性化合物が紫外線硬化性化合物であると、ドメイン21Dの寸法の制御性が高められる。光重合性化合物は、1種の重合性化合物であってもよいし、2種以上の重合性化合物の組み合わせであってもよい。
紫外線硬化性化合物の一例は、分子構造の末端に重合性不飽和結合を含む。紫外線硬化性化合物の他の例は、分子構造の末端以外に重合性の不飽和結合を含む。紫外線硬化性化合物は、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、チオール化合物、スチレン化合物、および、これらの各化合物のオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種である。アクリレート化合物は、ジアクリレート化合物、トリアクリレート化合物、テトラアクリレート化合物を含む。アクリレート化合物の例は、ブチルエチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートである。メタクリレート化合物は、ジメタクリレート化合物、トリメタクリレート化合物、テトラメタクリレート化合物を含む。メタクリレート化合物の例は、N,N‐ジメチルアミノエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートである。チオール化合物の例は、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオールである。スチレン化合物の例は、スチレン、メチルスチレンである。
透明高分子層21は、光重合開始剤を用いて光重合性化合物の重合が進められることにより形成される。光重合開始剤には、オキシムエステル化合物が含まれる。オキシムエステル化合物は、紫外領域の光の吸収により励起されて開裂反応を起こし、これによって生じたラジカルが光重合性化合物と反応することで重合が開始される。それゆえ、透明高分子層21を構成する高分子化合物には、分子構造の末端にオキシムエステル化合物の分子内解離基を含む高分子化合物が含まれる。例えば、光重合性化合物が(メタ)アクリレート化合物である場合、透明高分子層21は、(メタ)アクリレート由来の骨格を有し、分子構造の末端にオキシムエステル化合物の分子内解離基を有する高分子化合物を含む。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを含む。なお、透明高分子層21には、分子構造の末端以外にオキシムエステル化合物の分子内解離基を含む高分子化合物が含まれてもよい。
オキシムエステル化合物は、例えば、カルバゾール骨格、ジフェニルスルフィド骨格、および、フルオレン骨格のいずれかを有する。オキシムエステル化合物の具体例は、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、メタノン,[8-[[(アセチルオキシ)イミノ][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル]-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-5-イル]-,(2,4,6-トリメチルフェニル)、エタノン,1-[9-エチル-6-(1,3-ジオキソラン,4-(2-メトキシフェノキシ)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、メタノン,(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ-2-メチルフェニル]-,o-アセチルオキシム等である。
オキシムエステル化合物の市販品としては、例えば、Irgacure OXE01(BASFジャパン社製)、Irgacure OXE02(BASFジャパン社製)、Irgacure OXE03(BASFジャパン社製)、Irgacure OXE04(BASFジャパン社製)、アデカアークルズ N-1919T(ADEKA社製)、アデカアークルズ NCI-831E(ADEKA社製)、アデカアークルズ NCI-930(ADEKA社製)、アデカアークルズ NCI-730(ADEKA社製)等を用いることができる。
液晶組成物22は、液晶化合物22Lおよび二色性色素22Pを含む。なお、液晶組成物22は、さらに、粘度低下剤、消泡剤、酸化防止剤、耐候剤等を含有してもよい。耐候剤の例は、紫外線吸収剤や光安定剤である。
液晶化合物22Lは、非重合性の化合物である。液晶化合物22Lの長軸方向の誘電率は、液晶化合物22Lの短軸方向の誘電率よりも高い。すなわち、液晶化合物22Lは、正の誘電異方性を有する。
液晶化合物22Lは、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、ピリダジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ジシアノベンゼン系、ナフタレン系、ジオキサン系からなる群から選択される少なくとも1種である。液晶化合物22Lは、1種の液晶化合物であってもよいし、2種以上の液晶化合物の組み合わせであってもよい。
液晶化合物22Lの一例は、下記一般式(1)で示す化合物である。
11-A11-Z11-A12-Z12-A13-Z13-A14-R12 ・・・(1)
上記一般式(1)において、R11は、水素原子、または、炭素数1以上20以下のアルキル基である。アルキル基であるR11に含まれる1または隣接しない2以上のメチレン結合は、酸素原子、エチレン結合、エステル結合、および、ジエーテル結合からなる群から選択されるいずれかに置換可能である。R12は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、および、炭素数1以上15以下のアルキル基からなる群から選択されるいずれかである。アルキル基であるR12に含まれる1または隣接しない2以上のメチレン結合は、酸素原子、エチレン結合、エステル結合、および、ジエーテル結合からなる群から選択されるいずれかに置換可能である。
11、A12、A13、A14は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、または、2,6-ナフチレン基である。上記1,4-フェニレン基および2,6-ナフチレン基における1または2以上の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、および、トリフルオロメトキシ基からなる群から選択されるいずれかに置換可能である。あるいは、A11、A12、A13、A14は、それぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン基、3,6-シクロヘキセニレン基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、および、ピリジン-2,5-ジイル基からなる群から選択されるいずれかでもよい。また、A13、A14は、それぞれ独立して、単結合でもよい。
11、Z12、Z13は、それぞれ独立して、単結合、エステル結合、ジエーテル結合、エチレン結合、フルオロエチレン結合、および、カルボニル結合からなる群から選択されるいずれかである。
透明高分子層21および液晶組成物22のうちの液晶化合物22Lの割合は、40質量%以上70質量%以下であることが好ましく、50質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。液晶化合物22Lの割合が上記範囲内であると、ドメイン21Dの大きさが適度に確保され、高分子分散型液晶の構造が好適に形成される。
二色性色素22Pは、細長い分子形状を有し、分子の長軸方向における可視領域の吸光度が短軸方向における吸光度よりも大きい。二色性色素22Pは、光の入射方向に対して長軸方向が略直交する状態において、所定の色を示す。二色性色素22Pは、液晶化合物22Lをホストとしたゲストホスト型式によって駆動されて呈色する。
二色性色素22Pは、ポリヨウ素、アゾ化合物、アントラキノン化合物、ナフトキノン化合物、アゾメチン化合物、テトラジン化合物、キノフタロン化合物、メロシアニン化合物、ペリレン化合物、ジオキサジン化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。二色性色素22Pは、1種の色素であってもよいし、2種以上の色素の組み合わせであってもよい。耐光性および二色比を高める観点では、二色性色素22Pは、アゾ化合物およびアントラキノン化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、アゾ化合物であることがより好ましい。
二色性色素22Pが呈する色は、例えば、黒色または黒色に近い色である。例えば、二色性色素22Pとして、不透明状態の調光層20のCIE1976(L)表色系における色度aが-15以上15以下、色度bが-15以上15以下であることを成立させる色素が用いられる。CIE1976(L)表色系における色度a、色度bは、JIS Z 8781-4(ISO 11664-4)に規定されるCIE1976(L)色空間の色座標を計算する方法に準拠して特定される。
透明高分子層21および液晶組成物22のうちの二色性色素22Pの割合は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。二色性色素22Pの割合が0.5質量%以上であることにより、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いることによる重合の促進の程度が好適となり、また、透明状態と不透明状態との調光シート10の色の違いが明瞭に認識されやすくなる。二色性色素22Pの割合が10質量%以下であることにより、二色性色素22Pが凝集した粒子の析出を抑制できる。
スペーサ23は、透明高分子層21の全体に渡って分散されている。スペーサ23は、スペーサ23の周辺において調光層20の厚さを定めることにより、調光層20の厚さを均一化する。スペーサ23は、ビーズスペーサでもよいし、フォトレジストの露光および現像によって形成されるフォトスペーサでもよい。スペーサ23は、透光性を有していれば、無色透明でもよいし、有色透明でもよい。有色透明のスペーサ23が呈する色は、二色性色素22Pが呈する色と同色であることが好ましい。
調光層20の厚さはスペーサ23の大きさとおおよそ一致することから、スペーサ23の平均粒径を変えることで調光層20の厚さを制御することができる。スペーサ23の平均粒径は、例えば、メジアン径D50で10μm以上30μm以下である。この場合、調光層20の厚さは、10μm以上30μm以下である。
第1透明電極層31および第2透明電極層32には、制御部50の制御に基づき、液晶化合物22Lおよび二色性色素22Pの配向状態を変えるための電圧である駆動電圧が印加される。液晶組成物22の配向状態の変化に基づいて、調光シート10は、透明状態と不透明状態とのうちの一方から他方へ切り替わる。不透明状態では、調光シート10は有色であり、透明状態では、調光シート10は無色または無色に近い透明である。不透明状態では、調光シート10の全光線透過率は透明状態よりも低くなり、調光シート10のヘイズは透明状態よりも高くなる。
駆動電圧が印加されていないとき、液晶化合物22Lおよび二色性色素22Pの長軸方向の向きは無秩序である。そのため、液晶化合物22Lの複屈折性に因る液晶化合物22Lと透明高分子層21との屈折率差などに起因して、調光シート10に入射した光は、調光層20において様々な方向に散乱される。また、二色性色素22Pの長軸方向の向きが無秩序であることから、二色性色素22Pの少なくとも一部は呈色する。したがって、駆動電圧が印加されていないときに、調光シート10は不透明状態となり、有色に見える。
不透明状態における調光シート10の全光線透過率は、30%以下であることが好ましい。これにより、不透明状態において可視光を十分に遮ることが可能である。なお、全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997(ISO 1468-1)に準拠した測定方法を用いて得られる値である。
不透明状態における調光シート10の全光線透過率は、調光層20における二色性色素22Pの含有率や調光層20の厚さを変えることで変更できる。具体的には、調光層20における二色性色素22Pの割合を大きくすることで、不透明状態における全光線透過率を低下させることができる。また、調光層20の厚さを大きくすることで、不透明状態における全光線透過率を低下させることができる。
駆動電圧が印加されると、液晶化合物22Lおよび二色性色素22Pは、その長軸方向が電界方向に沿う向きに配向される。すなわち、調光層20の厚さ方向に長軸方向が沿うように、液晶化合物22Lおよび二色性色素22Pの向きが変わる。その結果、調光層20での光の散乱および二色性色素22Pの呈色が抑えられ、調光シート10を光が透過しやすくなる。したがって、駆動電圧が印加されているときに、調光シート10は透明状態となる。
以上のように、駆動電圧の印加とその解除とが切り換えられることにより、調光シート10の不透明状態と透明状態とが切り換えられる。
[調光シートの製造方法]
調光シート10の製造方法について説明する。まず、第1透明支持層41上に第1透明電極層31が形成された第1シートと、第2透明支持層42上に第2透明電極層32が形成された第2シートとを準備する。第1透明電極層31および第2透明電極層32は、スパッタリングや真空蒸着等の公知の薄膜形成方法によって形成される。
次に、調光層20の形成のための塗液を生成し、第1シートと第2シートとの透明電極層31,32間に、調光層20となる塗膜を、上記塗液の塗布によって形成する。
塗液は、上述した光重合性化合物、液晶化合物22L、二色性色素22P、および、光重合開始剤を含む。塗液における光重合性化合物の割合は、30質量%以上60質量%以下であることが好ましく、40質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。塗液における液晶化合物22Lの割合は、40質量%以上70質量%以下であることが好ましく、50質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。光重合性化合物および液晶化合物22Lの割合が上記範囲内であれば、形成される透明高分子層21にてドメイン21Dの大きさが適度に確保され、高分子分散型液晶の構造が好適に形成される。これにより、調光層20において良好な光学特性が得られる。
塗液における二色性色素22Pの割合は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。二色性色素22Pの割合が0.5質量%以上であることにより、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いることによる重合の促進の程度が好適となり、また、透明状態と不透明状態との調光シート10の色の違いが明瞭に認識されやすくなる。二色性色素22Pの割合が10質量%以下であることにより、二色性色素22Pが凝集した粒子の析出を抑制できる。
塗液における光重合開始剤の割合は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。光重合開始剤の割合が0.1質量%以上であることにより、重合反応の好適な進行が可能である。光重合開始剤の割合が5質量%以下であることにより、重合反応の過度な促進が抑えられ、また、調光層20に未反応の光重合開始剤が残留して光学特性が低下することが抑えられる。
なお、光重合開始剤には、オキシムエステル化合物に加えて、オキシムエステル化合物とは異なる化合物が含まれてもよい。オキシムエステル化合物以外の光重合開始剤は、例えば、ジケトン化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサンソン化合物等である。オキシムエステル化合物以外の光重合開始剤の具体例は、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、シクロヘキシルフェニルケトン等である。
塗液におけるアイソトロピック相の下限温度は、0℃以上30℃未満である。アイソトロピック相の下限温度は、すなわち、塗液がネマティック相からアイソトロピック相に転移する温度である。
アイソトロピック相の下限温度は、液晶化合物22Lの種類および含有率によって調整することができる。特に、塗液における液晶化合物22Lの割合を、40質量%以上70質量%以下とすることで、アイソトロピック相の下限温度を0℃以上30℃未満とすることが容易である。
アイソトロピック相の下限温度が上記範囲内であれば、室温において、塗液は、等方性液体であるか、もしくは、等方性液体に近い性質を示す。したがって、塗膜における液晶成分の析出が抑えられることから、均一な塗膜の形成が可能である。
なお、高分子分散型液晶と比較される構造として、互いに連通した多数の空隙を高分子層中に有する高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)が挙げられるが、高分子分散型液晶と比べて、高分子ネットワーク型液晶の形成のための塗液は、液晶化合物を多く含み、アイソトロピック相の下限温度が高い。それゆえ、高分子ネットワーク型液晶の形成のための塗液は、室温において異方性液体、すなわち液晶状態であり、本実施形態とは塗液の性状が大きく異なる。
塗膜の形成工程では、第1シートおよび第2シートの一方の透明電極層上に塗液を塗布して塗膜を形成し、第1シートおよび第2シートの他方を塗膜上に重ねることにより、第1シートと第2シートとの間に塗膜が挟まれた積層体が形成される。
塗液の塗布方法は、例えば、ドロップキャスト法、インクジェット法、グラビアコーティング法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、フレキソコーティング法、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法等の公知の塗布方法が利用できる。
なお、スペーサ23は、塗膜の形成後に塗膜に対して分散されてもよいし、塗液に混合されることにより塗膜中に分散されてもよい。塗液にスペーサ23が混合される場合、塗液におけるスペーサ23の割合は、例えば、1質量%程度である。
続いて、第1シートと第2シートと塗膜との積層体に、重合反応を進行させる特定波長の光線が照射される。上記特定波長の光線は、例えば、紫外線である。光線は、第1シートに向けて照射されてもよいし、第2シートに向けて照射されてもよいし、第1シートおよび第2シートの両方に向けて照射されてもよい。これにより、塗膜中で光重合性化合物の重合反応が進行し、液滴状の液晶組成物22の相分離が生じて、調光層20が形成される。
以上により、調光層20、透明電極層31,32、透明支持層41,42を備える積層体が形成され、この積層体に対して必要に応じて外形の成形等が行われることにより、調光シート10が形成される。
本実施形態では、塗膜に、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物が含まれる。オキシムエステル化合物は、光重合開始剤として一般に用いられる他の化合物と比較して光に対する感度が高く、すなわち、開裂反応に要する光エネルギーが小さい。したがって、積層体に照射された光のエネルギーの一部が二色性色素22Pに吸収されても、オキシムエステル化合物に起因した光重合化合物の重合反応が好適に誘起される。それゆえ、光重合開始剤の量を増やさずとも、また、二色性色素22Pの含有量が多い場合でも、光重合化合物の重合および液晶組成物22の相分離の好適な進行が可能である。
具体的には、重合反応の好適な進行により、形成された調光層20において、液晶組成物22に含まれる未反応の光重合性化合物が増加すること、言い換えれば、液晶組成物22における不純物の量が増加することを抑えることができる。これにより、液晶組成物22のNI温度(Nematic-Isotropic転移温度)の低下が抑えられるため、調光シート10を駆動可能な温度範囲が狭くなることを抑えることができる。
また、重合反応の好適な進行により、透明高分子層21中のドメイン21Dが過度に大きくなって不透明状態での光の散乱性が低下することが抑えられる。したがって、二色性色素に吸収される光の成分の減少が抑えられるため、不透明状態での調光シート10の全光線透過率等の光学特性の低下が抑えられる。
以上、第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)光重合開始剤としてオキシムエステル化合物が用いられているため、調光層20の形成に際して重合反応と液晶組成物の相分離との好適な進行が可能である。それゆえ、調光シート10の光学特性や駆動可能な温度範囲といった性能の低下を抑えることができる。
(2)調光層20の形成のための塗液において、アイソトロピック相の下限温度が、0℃以上30℃未満である。これにより、塗液が等方性液体もしくはそれに近い性質を示すため、均一な塗膜が得られやすく、高分子分散型液晶の構造の好適な形成が可能である。
(3)調光層20の形成のための塗液において、液晶化合物の割合は40質量%以上70質量%以下であり、光重合性化合物の割合は30質量%以上60質量%以下である。また、調光層20において、透明高分子層21および液晶組成物22のうちの液晶化合物22Lの割合は40質量%以上70質量%以下であり、透明高分子層21の割合は30質量%以上60質量%以下である。上記構成によれば、透明高分子層21にてドメイン21Dの大きさが適度に確保され、高分子分散型液晶の構造の好適な形成が可能である。これにより、調光シート10において、良好な光学特性が得られる。すなわち、ドメイン21Dが大きくなりすぎて、不透明状態での光の散乱性が低下し、二色性色素22Pに吸収される光の成分が減少することや、ドメイン21Dが小さくなりすぎて、印加電圧に応じた液晶化合物22Lの動きの自由度が低下することを抑えることができる。
(4)調光層20の形成のための塗液において、二色性色素22Pの割合は0.5質量%以上10質量%以下である。また、調光層20において、透明高分子層21および液晶組成物22のうちの二色性色素22Pの割合は0.5質量%以上10質量%以下である。二色性色素22Pの割合が0.5質量%以上であることにより、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いることによる重合の促進の程度が好適となり、また、透明状態と不透明状態との調光シート10の色の違いが明瞭に認識されやすくなる。また、二色性色素22Pの割合が10質量%以下であることにより、二色性色素22Pが凝集した粒子の析出を抑制できる。
(5)調光層20の形成のための塗液において、光重合開始剤の割合は0.1質量%以上5質量%以下である。光重合開始剤の割合が0.1質量%以上であることにより、重合反応の好適な進行が可能である。光重合開始剤の割合が5質量%以下であることにより、重合反応の過度な促進が抑えられ、また、調光層20に未反応の光重合開始剤が残留して光学特性が低下することが抑えられる。
(6)調光シート10の不透明状態における全光線透過率が30%以下であることにより、不透明状態において可視光を十分に遮ることが可能である。
(7)スペーサ23が、不透明状態において二色性色素22Pが呈する色と同色を呈することにより、スペーサ23が目立つことを抑えることが可能である。また、不透明状態における全光線透過率を低下させることも可能である。
[変形例]
第1実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・調光シート10は、調光層20と透明電極層31,32との間で調光層20を挟む一対の配向層を備えていてもよい。配向層は、液晶組成物22の配向を制御する層であり、駆動電圧が印加されていないとき、液晶化合物22Lおよび二色性色素22Pを所定の方向に配向させる。配向層の材料は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物等の有機化合物、シリコン酸化物、酸化ジルコニウム等の無機化合物、シリコーン等である。
例えば、配向層は垂直配向膜であり、液晶化合物22Lおよび二色性色素22Pを、配向層に対して垂直に配向させる。この場合、液晶化合物22Lとして負の誘電異方性を有する化合物を用いることで、透明電極層31,32に駆動電圧が印加されているとき、液晶化合物22Lおよび二色性色素22Pが透明電極層31,32に対して平行に配向される。これにより、透明電極層31,32に駆動電圧が印加されていないとき、調光シート10は透明状態となり、透明電極層31,32に駆動電圧が印加されているとき、調光シート10は不透明状態となる。
なお、液晶化合物22Lの誘電異方性は、配向層による配向規制力の働く方向に応じて適宜選択されればよい。また、駆動電圧の印加時に調光シート10が透明状態となるか不透明状態となるかは、配向層の有無、配向層による配向規制力の働く方向、液晶化合物22Lにおける誘電率異方性の正負等によって変えることができる。
・調光シート10は、上記実施形態および変形例で挙げた層の他に、調光シート10の用途等に応じた機能を有する機能層を備えていてもよい。機能層は、例えば、紫外線カット機能を有する層等のように、調光層20や透明電極層31,32を保護するための層や、調光シート10における光の透過性の制御に寄与する層や、調光シート10の強度や耐熱性等の特性を高める層などである。
(第2実施形態)
調光シート、および、調光シートの製造方法の第2実施形態を説明する。
二色性色素を含む調光シートにて、透明状態と不透明状態との違いを明瞭とするためには、透明状態と不透明状態との全光線透過率の比が大きいことが望ましい。例えば、透明電極層と調光層との間に水平配向膜が設けられた調光シートであれば、駆動電圧の非印加時には、液晶分子および二色性色素が透明電極層に対して水平に配向される。すなわち、多くの二色性色素が、光の入射方向に対して長軸方向が略直交する向きに配向される。それゆえ、不透明状態にて二色性色素の呈色が強くなることから、透明状態と不透明状態との全光線透過率の比を大きくすることができる。
一方で、水平配向膜等の配向膜が設けられていない、すなわち、不透明状態にて液晶分子および二色性色素の向きが不規則である調光シートにおいて、透明状態と不透明状態との全光線透過率の比を大きくするための構成には、未だ改良の余地が残されている。
第2実施形態は、調光シートにおいて、透明状態と不透明状態との全光線透過率の比を大きくすることを課題とする。第2実施形態の調光シートは、第1実施形態の調光シートの構成に加えて、ドメイン径を規定することにより、この課題を解決する。以下では、第2実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
第2実施形態において、調光層20が含むドメイン21Dの大きさの指標であるドメイン径は、0.3μm以上0.7μm以下である。ドメイン径は、ドメイン21Dの平均径であり、調光層20の厚さ方向の断面、言い換えれば、調光層20が広がる平面に対して直交する断面に含まれるドメイン21Dにて特定される。すなわち、上記断面に含まれる各ドメイン21Dについて、ドメイン21Dの面積と同一の面積を有する円の直径が、当該ドメイン21Dのドメイン径として定義され、上記断面に含まれるドメイン21Dのドメイン径の平均が、当該調光層20のドメイン径とされる。
ここで、本実施形態では、調光層20が含むドメイン21Dの大きさが従来よりも小さい。それゆえ、不透明状態にて、透明高分子層21と液晶組成物22との界面、すなわち、ドメイン21Dと液晶組成物22との境界での光の散乱が大きくなる。その結果、調光層20内での散乱光が増加して二色性色素22Pによる光の吸収が大きくなり、二色性色素22Pの呈色が強くなることから、不透明状態での調光シート10の全光線透過率が低下する。したがって、配向膜を用いずとも、透明状態と不透明状態との全光線透過率の違いを大きくすることができる。具体的には、ドメイン径が0.7μm以下であることにより、透明状態と不透明状態との全光線透過率の比が、十分に大きくなる。一方、ドメイン径が0.3μm以上であれば、ドメイン21Dが過度に小さくならないため、液晶化合物の動きの自由度の低下が抑えられる。
不透明状態の全光線透過率TTbに対する透明状態の全光線透過率TTaの比(TTa/TTb)は、8.0以上であることが好ましい。上記比が8.0以上であれば、不透明状態と透明状態との透過率の違いが、目視によって明瞭に認識されやすくなる。なお、全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997(ISO 1468-1)に準拠して測定される。
調光層20におけるドメイン径は、重合開始剤の光に対する感度、光重合性化合物に照射される光の強度や照射時間、光重合性化合物の重合時の処理温度等によって制御することができる。特に、第1実施形態に記載したように、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いれば、光に対し高い感度で重合反応が進行することから、ドメイン径を小さく抑えやすい。
さらに、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いることにより、他の種類の重合開始剤を用いる場合と比較して、調光シートが黄味を帯びることを抑えることができる。例えば、アシルホスフィンオキシド化合物は、オキシムエステル化合物よりは劣るものの、一般に広く用いられているアルキルフェノン化合物よりも高い感度を有する。一方で、アシルホスフィンオキシド化合物を用いると、当該化合物の色味に起因して調光シートが黄味を帯びやすい。
調光層20の製造工程において、光重合開始剤の色味は、通常はフォトブリーチング反応によって消失する。しかし、液晶組成物22が二色性色素22Pを含む場合には、光エネルギーの一部が二色性色素22Pに吸収されることから、感度が十分でない光重合開始剤は未反応の状態で調光層20内に残りやすい。また、相分離した液晶組成物22に光重合開始剤が混じると、光重合開始剤が反応し難くなる。それゆえ、光重合開始剤の色味が調光シートに残りやすくなると考えられる。
本実施形態の調光シートは二色性色素22Pを含んでいることから、二色性色素22Pが呈色する不透明状態においては、調光シートが黄味を帯びていたとしても、こうした色付きが視認されることは抑えられる。特に、二色性色素22Pが黒色または黒色に近い色を呈する場合に、この効果は顕著である。しかしながら、透明状態の調光シートの色付きは、調光シートの外観品質の向上の観点から問題である。
光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いれば、透明状態の調光シートが無彩色と言える程度に、調光シートの黄味を抑えることが可能である。
調光シートの色を、JIS Z 8781-4に準拠するCIE1976(L)表色系を用いて表したとき、透明状態において、調光シートの色度aおよび色度bは、-6≦a≦6、かつ、-6≦b≦6を満たすことが好ましく、-3≦a≦3、かつ、-3≦b≦3を満たすことがより好ましい。これにより、透明状態にて調光シートが無色透明に見えやすくなる。特に、色度bが6以下、好ましくは3以下であることにより、透明状態にて調光シートの黄味が好適に抑えられていると言える。
また、二色性色素22Pが黒色または黒色に近い色を呈する場合において、不透明状態の調光シートの色度aおよび色度bは、-8≦a≦8、かつ、-8≦b≦8を満たすことが好ましく、-7≦a≦7、かつ、-7≦b≦7を満たすことがより好ましい。これにより、不透明状態の調光シートが、黒色とは異なる色に色付いて見えることが抑えられる。
以上、第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(8)調光シート10において、ドメイン径が0.7μm以下であることにより、透明状態と不透明状態との全光線透過率の比を大きくすることが可能である。そして、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いることにより、ドメイン径を小さく抑えやすく、また、二色性色素22Pの呈色とは異なる色に調光シート10が色付くことを抑えることができる。
(9)不透明状態に対する透明状態の全光線透過率の比が、8.0以上である。これにより、透明状態と不透明状態とのコントラストが良好に得られる。それゆえ、不透明状態において可視光を十分に遮ることが可能であり、また、透明状態での透明度が高められる。
(10)透明状態における調光シートが、色度bについて、-6≦b≦6を満たす。これにより、透明状態の調光シートが無彩色に見えやすくなる。
(11)不透明状態における調光シートが、色度bについて、-8≦b≦8を満たす。これにより、不透明状態の調光シートが無彩色に見えやすくなる。
(実施例)
上述した調光シートについて、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
<光重合開始剤の種類および塗液の性状と調光シートの特性との関連の解析>
[塗液の調製]
液晶化合物、二色性色素、光重合性化合物、および、光重合開始剤を混合して、調光層の形成のための塗液を生成した。材料の詳細は下記である。
・液晶化合物:シアノビフェニル化合物
・二色性色素:黒色二色性色素(YH-428,三井化学ファイン社製)
・光重合性化合物(紫外線硬化性化合物):イソボニルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ウレタンアクリレートの混合
・光重合開始剤:下記8種類のうちの1種類以上
光重合開始剤I1:オキシムエステル化合物(1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム))(IrgacureOXE01,BASFジャパン社製)
光重合開始剤I2:オキシムエステル化合物((E)-(8-{[(アセチルオキシ)イミノ][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル}-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-5-イル)(2,4,6-トリメチルフェニル)メタノンと、(Z)-(8-{[(アセチルオキシ)イミノ][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル}-11
-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-5-イル)(2,4,6-トリメチルフェニル)メタノンとの混合物)(IrgacureOXE03,BASFジャパン社製)
光重合開始剤I3:オキシムエステル化合物(IrgacureOXE04,BASFジャパン社製)
光重合開始剤I4:α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)(Irgacure 184,BASFジャパン社製)
光重合開始剤I5:アシルホスフィンオキシド化合物(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)(IrgacureTPO,BASFジャパン社製)
光重合開始剤I6:α-アミノアルキルフェノン化合物(2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン)(Irgacure907,BASFジャパン社製)
光重合開始剤I7:ベンジルケタール化合物(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン)(Irgacure 651,BASFジャパン社製)
光重合開始剤I8:α-ヒドロキシアセトフェノン化合物(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン)(Irgacure 1173,BASFジャパン社製)
[調光シートの製造]
第1透明支持層上に第1透明電極層をスパッタリングによって形成することにより、第1透明支持層と第1透明電極層との積層体である第1シートを作製した。同様に、第2透明支持層上に第2透明電極層をスパッタリングによって形成することにより、第2透明支持層と第2透明電極層との積層体である第2シートを作製した。第1透明支持層および第2透明支持層の各々について、材料はポリエチレンテレフタレートであり、厚さは125μmである。第1透明電極層および第2透明電極層の各々について、材料は酸化インジウムスズであり、厚さは30nmである。
上記塗液を、ドロップキャスト法を用いて第1シートに塗布することにより、第1透明電極層上に塗膜を形成し、さらに、スペーサを塗膜中に散布した。塗膜の厚さは25μmである。スペーサとしては、ポリメチルメタクリレート製の真球状粒子を用いた。スペーサの粒径は、20μmである。そして、ラミネート加工によって、塗膜が形成された第1シートに第2シートを貼り合わせ、第1シートと塗膜と第2シートとの積層体を得た。
続いて、上記積層体の第1透明支持層に向けて365nmの紫外光線を照射することによって、調光層を形成し、調光シートを得た。紫外光線の強度は12mW/cmであり、紫外光線の照射時間は120秒である。
[実施例、比較例の構成]
上述の材料および製法を用い、塗液における液晶化合物、二色性色素、光重合性化合物、および、光重合開始剤の配合比を変更することによって、実施例1~12および比較例1~11を得た。また、実施例1~6,8~12,比較例1~11では、黒色のスペーサを用い、実施例7では、白色透明のスペーサを用いた。なお、実施例9~12および比較例6~11では、紫外光線の強度および紫外光線の照射時間の少なくとも一方を変更した。実施例および比較例における塗液の配合比およびスペーサの色を表1,2に示す。
Figure 2024043525000002
Figure 2024043525000003
[特性評価]
各実施例および各比較例の塗液および調光シートについて、下記の特性の測定および評価を実施した。
・塗液のアイソトロピック相の下限温度
各実施例および各比較例の塗液を、アイソトロピック相を示す温度から徐々に冷却し、液晶成分が析出し始める温度を測定して、当該温度をアイソトロピック相の下限温度(ISO温度)とした。各実施例および各比較例についてのISO温度を、表1,2に示す。
・透明状態のヘイズ
各実施例および各比較例の調光シートに、駆動電圧として100Vの交流電圧を印加して透明状態とし、ヘーズメータ(NDH2000,日本電色社製)を用いて透明状態でのヘイズを測定した。ヘイズの測定は、JIS K 7136に準拠して実施した。
透明状態でのヘイズの評価結果を表1,2に示す。評価においては、ヘイズが10%以下である場合を「○」、ヘイズが10%を超える場合を「×」とした。
・不透明状態の全光線透過率
各実施例および各比較例について、駆動電圧が印加されていない不透明状態の調光シートにおける全光線透過率を、JIS K 7361-1に準拠した方法で測定した。測定結果を、表1,2に示す。
・塗膜ムラ
各実施例および各比較例について、調光シートの製造過程において、塗膜の表面におけるスジ状のムラの有無を目視により観察した。このムラは、塗膜表面への液晶成分の析出に起因して生じる。観察結果を、ムラが生じていない場合を「○」、ムラが生じていた場合を「×」として、表1,2に示す。
・NI温度
各実施例および各比較例について、形成後の調光層を構成する液晶組成物のNI温度を測定した。測定された液晶組成物のNI温度を、液晶化合物単独でのNI温度と比較し、その差(NI温度差)を算出した。NI温度の評価結果を表1,2に示す。評価においては、NI温度差が20℃以内である場合を「○」、NI温度差が20℃を超え25℃以内である場合を「△」、NI温度差が25℃を超える場合を「×」とした。
[評価結果]
表1,2に示すように、光重合開始剤にオキシムエステル化合物を含まない比較例1,2,5~11では、調光層を構成する液晶組成物のNI温度が、液晶化合物単独でのNI温度よりも大幅に低く、その差が25℃を超えていた。比較例1,2,5~11では、オキシムエステル化合物を含まないために重合反応が進みにくく、調光層の液晶組成物における未反応の光重合性化合物が増加した結果、液晶組成物のNI温度が大きく低下したと考えられる。
これに対し、光重合開始剤にオキシムエステル化合物を含む実施例1~12では、調光層を構成する液晶組成物のNI温度と、液晶化合物単独でのNI温度との差が25℃以内であった。すなわち、オキシムエステル化合物を光重合開始剤として用いることで、光エネルギーに対し高い感度で重合反応が開始され、調光層の液晶組成物における未反応の光重合性化合物の残留が低減された結果、NI温度の低下が抑制されていると示唆される。
また、比較例1,2,5~11では、実施例と比べて、不透明状態での全光線透過率が大きくなる傾向が確認される。比較例1,2,5~11では、オキシムエステル化合物を含まないために重合反応が進みにくくなることから、透明高分子層において区画されるドメインが大きくなりやすく、その結果、不透明状態での光の散乱性が低下して二色性色素に吸収される光の成分が減少したと考えられる。
比較例3は、塗液における液晶化合物の割合が70質量%を超えており、塗液のアイソトロピック相の下限温度が40℃を超えている。すなわち、比較例3の塗液は、塗膜の形成時において異方性液体であり、塗膜表面に液晶成分が析出しやすい。それゆえ、塗膜表面にムラが生じて均一な調光層の表面が得られ難くなっていると考えられる。また、液晶化合物の割合が大きいことから、透明高分子層において区画されるドメインが大きくなりやすく、これに起因して、比較例3においても不透明状態での全光線透過率がやや大きくなっていると考えられる。
比較例4は、塗液における液晶化合物の割合が40質量%未満であり、塗液のアイソトロピック相の下限温度が0℃未満である。比較例4では、透明状態でのヘイズおよび不透明状態での全光線透過率といった光学特性が低くなっている。比較例4では、液晶化合物の割合が小さいことから、透明高分子層において区画されるドメインが小さくなりやすく、その結果、印加電圧に応じた液晶化合物の動きの自由度が低下するために、NI温度が低下するとともに光学特性が低くなったと考えられる。
比較例3,4に対し、実施例1~12では、塗液における液晶化合物の配合比が40質量%以上70質量%以下であり、塗液のアイソトロピック相の下限温度が0℃以上30℃未満である。それゆえ、実施例1~12では、塗膜の形成時において塗膜が等方性液体であるため、塗膜表面のムラが抑えられている。また、透明高分子層において適度な大きさにドメインが形成されるため、良好な光学特性が得られている。
実施例1~3を比較すると、液晶化合物の割合が大きいほど、塗液のアイソトロピック相の下限温度が大きくなり、また、不透明状態での全光線透過率が大きくなる傾向が確認される。また、実施例1,5,6を比較すると、二色性色素の割合が大きいほど、不透明状態での全光線透過率が小さくなる傾向が確認される。また、実施例1,7を比較すると、二色性色素と同色である黒色のスペーサを用いた方が、不透明状態での全光線透過率が小さくなることがわかる。
また、実施例8では、実施例1~7と比べて、調光層を構成する液晶組成物のNI温度と、液晶化合物単独でのNI温度との差がやや大きくなっている。実施例8では、二色性色素の割合が0.5質量%未満であり、すなわち、二色性色素の含有量が他の実施例よりも顕著に少ないため、重合工程における二色性色素による光エネルギーの吸収が小さい。それゆえ、オキシムエステル化合物である光重合開始剤の感度が過剰となって重合反応が過度に進行しやすくなることから、透明高分子層において区画されるドメインが小さくなりやすく、その結果、NI温度が低下したと考えられる。
このように、オキシムエステル化合物の光重合開始剤としての感度は、液晶組成物が二色性色素を含まない、あるいは、液晶組成物における二色性色素の含有が小さい場合には過剰になりやすい。二色性色素の割合が0.5質量%以上であれば、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いることによる重合反応と液晶組成物の相分離の好適な進行という効果が良好に得られやすい。
<ドメイン径および光重合開始剤の種類と調光シートの特性との関連の解析>
上記実施例9~12および上記比較例6~11の調光シートについて、下記の特性の測定および評価を実施した。
・ドメイン径の測定
各実施例および各比較例について、調光シートの厚さ方向に沿った断面画像を、走査型電子顕微鏡を用いて取得した。画像処理ソフトImageJを用いて、上記断面画像に含まれる各ドメインについて、ドメインの面積を算出し、このドメインの面積と同面積の円の直径を当該ドメインのドメイン径とした。そして、調光シートごとの上記断面画像に含まれるドメインのドメイン径の平均値を、当該調光シートのドメイン径とした。
・全光線透過率の測定
各実施例および各比較例について、不透明状態と透明状態との各々における調光シートの全光線透過率を、JIS K 7361-1に準拠した方法で測定した。
・色度の測定
各実施例および各比較例について、不透明状態と透明状態との各々における調光シートの色度aおよび色度bを、JIS Z 8781-4に準拠した方法で測定した。
・目視評価
各実施例および各比較例について、不透明状態と透明状態との透過率比および色味を、目視にて評価した。
透過率比の評価では、不透明状態と透明状態との調光シートの透明度のコントラストを三段階で評価し、コントラストが良好である場合を「○」、「○」よりもコントラストが悪いが許容できる程度である場合を「△」、コントラストが許容できない程度に不良である場合を「×」とした。
色味の評価では、不透明状態と透明状態とのいずれについても、調光シートに白から黒までの無彩色以外の色味が確認されない場合を「○」、不透明状態と透明状態と少なくとも一方について、調光シートに無彩色以外の色味が確認される場合を「×」とした。
[評価結果]
表3に、各実施例および各比較例について、ドメイン径、不透明状態における全光線透過率TTbと色度a,色度b、透明状態における全光線透過率TTaと色度a,色度b、TTbに対するTTaの比、透過率比および色味の目視評価の結果を示す。駆動電圧が印加されていない状態が不透明状態であり、駆動電圧として100Vの交流電圧が印加されている状態が透明状態である。
Figure 2024043525000004
表3に示すように、全光線透過率について、ドメイン径が0.7μm以下である実施例9~12,比較例6では、TTbに対するTTaの比が8.0以上であり、目視評価も良好である。特に、比較例7~11と比べて、不透明状態の全光線透過率TTbが低下していることが確認できる。実施例9~12および比較例6~11の全光線透過率を参照すると、ドメイン径が小さくなるにつれ、TTbに対するTTaの比が大きくなる傾向が確認され、特に、1μm程度のドメイン径を境に、TTbに対するTTaの比が急激に変化している。したがって、ドメイン径が0.7μm以下であれば、不透明状態と透明状態とについて特に良好なコントラストが得られると言える。
なお、実施例9,10は、光重合性開始剤の種類および添加量が同一であるが、実施例9では製造工程での紫外光線の強度が実施例10よりも大きくされている。これにより、実施例9では、実施例10よりも小さいドメイン径が得られている。実施例10~12,比較例6~11における紫外光線の強度および照射時間は一定である。
また、色味について、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いた実施例9~12では、透明状態において、-3≦a≦3、かつ、-3≦b≦3が満たされており、無彩色以外の色味が顕著に抑えられている。比較例6~11を参照すると、光重合開始剤にアシルホスフィンオキシド化合物を含む比較例6,7では、光重合開始剤としてアルキルフェノン化合物のみを用いた比較例8~11と比べて、ドメイン径が小さくなっており、比較例6のようにドメイン径を0.7μm以下とすることも可能ではある。しかし、比較例6,7では、透明状態のbが明らかに大きくなっている。したがって、光重合開始剤としてオキシムエステル化合物を用いることにより、ドメイン径を小さくしつつ、透明状態での黄味を好適に抑えることが可能であることが確認された。
また、実施例9~12では、不透明状態において、-8≦a≦8、かつ、-8≦b≦8が満たされている。そして、目視評価においても、不透明状態と透明状態とのいずれでも、調光シートに無彩色以外の色味が確認されなかった。したがって、実施例9~12では、調光シートが、色付いて見えることが好適に抑えられていると言える。
10…調光シート
20…調光層
21…透明高分子層
21D…ドメイン
22…液晶組成物
22L…液晶化合物
22P…二色性色素
23…スペーサ
31,32…透明電極層
41,42…透明支持層
50…制御部

Claims (7)

  1. 複数のドメインを有する透明高分子層と、前記ドメインを埋める液晶組成物であって、液晶化合物および二色性色素を含む前記液晶組成物とを含む調光層と、
    前記調光層を挟む一対の透明電極層と、を備え、
    前記一対の透明電極層間の電位差の変化に応じて前記液晶化合物および前記二色性色素の配向を変え、これによって透明状態から有色の不透明状態に切り換わる調光シートであって、
    前記透明高分子層および前記液晶組成物のうちの前記液晶化合物の割合は、40質量%以上70質量%以下であり、
    前記透明高分子層は、分子構造の末端にオキシムエステル化合物の分子内解離基を含む高分子化合物を含む
    調光シート。
  2. 前記高分子化合物は、(メタ)アクリレート由来の骨格を有する
    請求項1に記載の調光シート。
  3. 前記透明高分子層および前記液晶組成物のうちの前記透明高分子層の割合は、30質量%以上60質量%以下であり、
    前記透明高分子層および前記液晶組成物のうちの前記二色性色素の割合は、0.5質量%以上10質量%以下である
    請求項1に記載の調光シート。
  4. 前記不透明状態における全光線透過率が30%以下である
    請求項1に記載の調光シート。
  5. 前記調光層は、前記不透明状態において前記二色性色素が呈する色と同色を呈するスペーサをさらに含む
    請求項1に記載の調光シート。
  6. 液晶化合物と二色性色素とを含む液晶組成物、光重合性化合物、および、光重合開始剤を含む塗液を生成することと、
    第1透明支持層上に第1透明電極層が形成された第1シートと、第2透明支持層上に第2透明電極層が形成された第2シートとの透明電極層間に、前記塗液からなる塗膜を形成することと、
    前記塗膜に光を照射して前記光重合性化合物の重合反応を進行させることによって、複数のドメインを有する透明高分子層と、前記ドメインを埋める前記液晶組成物とを有する調光層を形成することと、を含み、
    前記光重合開始剤はオキシムエステル化合物を含み、
    前記塗液におけるアイソトロピック相の下限温度は、0℃以上30℃未満である
    調光シートの製造方法。
  7. 前記塗液において、前記液晶化合物の割合は40質量%以上70質量%以下であり、前記光重合性化合物の割合は30質量%以上60質量%以下であり、前記二色性色素の割合は0.5質量%以上10質量%以下であり、前記光重合開始剤の割合は0.1質量%以上5質量%以下である
    請求項6に記載の調光シートの製造方法。
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