JP2024040644A - 抵抗スポット溶接継手の製造方法、及び自動車部品の製造方法 - Google Patents

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Seiji Furusako
裕史 堀川
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Abstract

【課題】板厚比が4.5以上であり表面に最も薄い金属板が配される板組において、散り発生頻度を増大させることなく接合不良を回避可能な抵抗スポット溶接継手の製造方法及び自動車部品の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係る抵抗スポット溶接継手の製造方法は、加圧力をP1とする第一の加圧時間と、P2とする第二の加圧時間と、P3とする第三の加圧時間と、を順に設け、P1、P2、及びP3が、P2≦0.95×P1、P2<P3、及び0.80×P1≦P3を満たし、通電の開始の時点D1から終了の時点D4までの電流の時間積分値S、D1から第二の加圧時間の開始の時点D2までの電流の時間積分値S1、及びD1から第二の加圧時間の終了の時点D3までの電流の時間積分値S2が、0.20×S≦S1及びS2≦0.80×Sを満たし、第二の加圧時間の長さが20~200msecである。【選択図】図1

Description

本発明は、抵抗スポット溶接継手の製造方法、及び自動車部品の製造方法に関する。
自動車の骨格部品、例えばセンターピラー等には、比較的板厚の厚い高強度鋼板が採用される場合がある。これは、車体の衝突安全性確保や部品統合による軽量化を達成するためである。一方、自動車の最も外側には、例えば0.6~0.8mmの薄い鋼板を用いて成形された、意匠性の高いサイドメンバといった部品が配置される。自動車の外側の薄鋼板は、加工性を確保するために軟鋼とされることが多い。
上述の理由により、自動車部品の組み立てにおいては、厚い鋼板と薄い鋼板とから構成される板組がスポット溶接される場合がある。また、スポット溶接される板組が、例えば薄鋼板-厚鋼板-厚鋼板といった、3枚重ねの構成となる場合もある。このような板組の板厚比は、例えば4.5以上となる場合がある。ここで板厚比とは、最も薄い鋼板、即ち最薄鋼板の板厚をtmin(mm)とし、板組に含まれる鋼板の総板厚をtsum(mm)としたときに、tsum/tminと定義される値である。
しかし、板厚比が4.5以上であり、さらに最薄鋼板が表面に配される板組をスポット溶接する場合、接合不良が生じやすい。板組の内部に形成されるナゲット(本来、溶融凝固した部分を指すが、本明細書では、溶融部と、溶融凝固した部分との両方をナゲットと呼称する)が、板組の最表面に配された最薄鋼板まで成長せず、これにより、最薄鋼板とこれに接する隣接する鋼板との間で接合不良が生じる。
上述のような板組において、ナゲットが最薄鋼板まで成長しない理由の一つは、最薄鋼板がスポット溶接用の電極に接していることである。スポット溶接用の電極は、内部に冷媒が流通する構成を有しており、鋼板を冷却する。従って、電極に接する最薄鋼板の温度は、板組内部の鋼板の温度よりも上昇しづらい。
ナゲットが最薄鋼板まで成長しないもう一つの理由は、温度上昇が板組の中央から開始することである。板組の中央から離れた位置ほど、温度が上昇しづらい。
さらに、最薄鋼板が軟鋼である場合、ナゲットが最薄鋼板まで成長することが一層妨げられる。何故なら、薄い軟鋼が変形しやすいからである。板組表面に薄い軟鋼が配される場合は、加圧・通電により軟鋼が容易に変形し、軟鋼と、これに隣接する鋼板との間の接触面積が大きくなりやすい。接触面積が大きいほど、電流経路の断面積が大きくなり、電流密度が低くなる。加えて、軟鋼と電極との接触面積が大きいほど、軟鋼から電極への抜熱が著しくなる。
以上の理由により、板組表面の最薄鋼板は温度が上昇し難く、従って最薄鋼板では溶融凝固が生じにくい。ナゲットが最薄鋼板まで成長しない場合、継手強度が確保できない。
このことが、板厚が大きい高強度鋼板を自動車骨格部品へ採用することを妨げたり、板組を構成する鋼板の板厚の選択の余地を狭めたりする。従って、このような問題を解決可能なスポット溶接技術が待望されている。
特許文献1には、複数枚の金属板を重ね合わせた板組みを抵抗スポット溶接により溶接接合し抵抗スポット溶接継手を製造するにあたり、前記抵抗スポット溶接を第一段および第二段の二段階からなる溶接とし、該第二段の溶接が前記第一段の溶接に比べ、高加圧力、低電流又は同じ電流、長通電時間又は同じ通電時間の溶接とすることを特徴とする抵抗スポット溶接継手の製造方法が開示されている。
特許文献2には、予備通電、第一通電、第二通電、第三通電の各工程を有するスポット溶接方法が開示されている。ここでは、予備通電で鋼板間の接触面のなじみを改善し、第一通電で一定の溶接電流を通電し、鋼板間の電気的な接触抵抗による発熱でナゲットを生成させ、第二通電で第一通電より低い電流にし、中散りを抑制しつつ、ナゲットを径方向に成長させ、第三通電で第二通電より高い電流にし、径方向だけでなく、主に板厚方向へナゲットを成長させ、スポット溶接電極による加圧力を減少させる通電方法か用いられる。
特許文献3には、重ね合わせた2枚以上の厚板の少なくとも一方に薄板を重ね合わせた板厚比:3超の板組みを、一対の電極によって挟み、加圧しながら通電して接合する、本溶接工程をそなえ、上記本溶接工程では、通電・加圧パターンを2段以上の多段ステップに分割して、溶接を行うものとし、その際、第一ステップの加圧力:F1と第二ステップの加圧力:F2とが、F1>F2の関係を満足する、抵抗スポット溶接方法が開示されている。
特開2005-262259号公報 特開2018-30178号公報 国際公開第2016/088319号
スポット溶接の際には、散りを抑制することも求められる。散りとは、母材が局部的に加熱されて溶融飛散する現象またはその金属のことである。散りは、抵抗スポット溶接継手の表面性状を損なう。また、散りが著しく発生すると、溶融金属が飛散することによってナゲット径が小さくなり、接合強度が損なわれる。散りの抑制のための手段の一つとして、溶接電流値を低下させることがある。しかしながら、溶接電流値を低下させると、ナゲットの成長が阻害される。従って、散り発生を抑制しながらナゲット径を確保する方法が待望されている。
特許文献1の技術によれば、板厚比が5を超えるような大きな板組みにおいても、余計な工程を付加することなく、また散りを発生することなく、必要サイズのナゲットを有する抵抗スポット溶接継手を容易に作製できるとされている。しかしながら、特許文献1の技術では、第一段の溶接が低加圧力及び高電流で実施される。この第一段の溶接において、散りが発生しやすいと考えられる。
特許文献2の技術では、スポット溶接を4つの工程に分けて、それぞれの工程における電流値を最適化し、且つ、溶接の終盤において加圧力を低下させている。しかしながら、この溶接の終盤において、散りが発生しやすいと考えられる。
特許文献3の技術では、スポット溶接を多段ステップに分割して、第二ステップの加圧力を低下させている。しかしながら、この第二ステップにおいて、散りが発生しやすいと考えられる。
以上の事情に鑑みて、本発明は、板厚比が4.5以上であり、さらに表面に最も薄い金属板が配される板組において、散り発生頻度を増大させることなく接合不良を回避することができる抵抗スポット溶接継手の製造方法、及び自動車部品の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係る抵抗スポット溶接継手の製造方法は、2枚以上の金属板を重ねて構成した板組を、一対の電極で挟んで通電することにより、前記板組を接合するナゲットを形成する工程を備え、前記板組の少なくとも一方の表面に、最も薄い金属板が配置され、前記最も薄い前記金属板の板厚tmin(mm)、及び前記板組に含まれる前記金属板の総板厚tsum(mm)に基づいて算出される、前記板組の板厚比tsum/tminが4.5以上であり、前記ナゲットを形成する工程において、一対の前記電極の加圧力をP1(kN)とする第一の加圧時間と、一対の前記電極の前記加圧力をP2(kN)とする第二の加圧時間と、一対の前記電極の前記加圧力をP3(kN)とする第三の加圧時間と、を順に設け、P1、P2、及びP3が、(1)式、及び(2)式、及び(3)式を満たし、
P2≦0.95×P1・・・(1)
P2<P3・・・(2)
0.80×P1≦P3・・・(3)
前記ナゲットを形成する工程の前記通電の開始の時点D1から終了の時点D4までの期間における電流の時間積分値S、前記時点D1から前記第二の加圧時間の開始の時点D2までの期間における前記電流の時間積分値S1、及び前記時点D1から前記第二の加圧時間の終了の時点D3までの期間における前記電流の時間積分値S2が、(4)式及び(5)式を満たし、
0.20×S≦S1・・・(4)
S2≦0.80×S・・・(5)
前記第二の加圧時間の長さが20~200msecである。
(2)上記(1)に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法は、好ましくは、前記ナゲットを形成する工程の後、一対の前記電極の前記加圧力を保持したまま、前記板組に後通電することにより、前記ナゲットを改質する工程をさらに備える。
(3)上記(2)に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法は、好ましくは、前記ナゲットを形成する工程と、前記ナゲットを改質する工程との間に、一対の前記電極の前記加圧力を保持したまま、前記板組への通電を停止することにより前記板組を冷却する工程をさらに備える。
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法では、好ましくは、P2≧0.50×P1である。
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法では、好ましくは、P1が2.5kN以上8.0kN以下である。
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法では、好ましくは、前記ナゲットを形成する工程における溶接電流が4kA以上12kA以下である。
(7)本発明の別の態様に係る自動車部品の製造方法は、上記(1)~(6)のいずれか一項に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法を備える。
本発明によれば、板厚比が4.5以上であり、さらに表面に最も薄い金属板が配される板組において、散り発生頻度を増大させることなく接合不良を回避することができる抵抗スポット溶接継手の製造方法、及び自動車部品の製造方法を提供することができる。
本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手の製造方法における、加圧力及び電流値の経時変化の模式図である。 本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手の製造方法における、加圧力とナゲットのサイズとの関係を示す模式図である。 従来の抵抗スポット溶接継手の製造方法における、加圧力とナゲットのサイズとの関係を示す模式図である。 本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手の製造方法によって得られたナゲットの断面図である。 従来の抵抗スポット溶接継手の製造方法によって得られたナゲットの断面図である。 ナゲットを改質する工程を含む抵抗スポット溶接継手の製造方法における、加圧力及び電流値の経時変化の模式図である。 ナゲットを冷却する工程及びナゲットを改質する工程を含む抵抗スポット溶接継手の製造方法における、加圧力及び電流値の経時変化の模式図である。
本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手の製造方法は、2枚以上の金属板111を重ねて構成した板組11を、一対の電極Eで挟んで通電することにより、板組11を接合するナゲット12を形成する工程を備え、板組11の少なくとも一方の表面に、最も薄い金属板111Sが配置され、最も薄い金属板の板厚tmin(mm)、及び板組に含まれる金属板の総板厚tsum(mm)に基づいて算出される、板組11の板厚比tsum/tminが4.5以上であり、ナゲット12を形成する工程において、一対の電極Eの加圧力をP1(kN)とする第一の加圧時間と、一対の電極Eの加圧力をP2(kN)とする第二の加圧時間と、一対の電極Eの加圧力をP3(kN)とする第三の加圧時間と、を順に設け、P1、P2、及びP3が、(1)式、及び(2)式、及び(3)式を満たし、ナゲットを形成する工程の通電の開始の時点D1から終了の時点D4までの期間における電流の時間積分値S、時点D1から第二の加圧時間の開始の時点D2までの期間における電流の時間積分値S1、及び時点D1から第二の加圧時間の終了の時点D3までの期間における電流の時間積分値S2が、(4)式及び(5)式を満たし、第二の加圧時間の長さが20~200msecである。
P2≦0.95×P1・・・(1)
P2<P3・・・(2)
0.80×P1≦P3・・・(3)
0.20×S≦S1・・・(4)
S2≦0.80×S・・・(5)
(ナゲット形成工程)
本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1の製造方法は、2枚以上の金属板111を重ねて構成した板組11をスポット溶接する工程を有する。スポット溶接は、板組11をスポット溶接用の一対の電極Eで挟んで通電することにより行われる。通電により、電極Eによって挟まれた部分に抵抗加熱が生じ、金属板111が溶融し、金属板111を接合するナゲット12が形成される。この際、通電を安定させ、散り発生を抑制するために、一対の電極Eは板組11を加圧する。
(電極E)
一対の電極Eは、スポット溶接用の電極である。スポット溶接用の電極Eは、板組に直接接触して溶接電流を通じるとともに加圧力を伝える作用をする棒状電極である。また、スポット溶接用の電極Eは、スポット溶接の際に、水などの冷媒によって冷却されている。従って、スポット溶接用の電極Eが板組11に接する間には、板組11から電極Eへと熱が移動している。加圧力を維持したまま通電を停止すると、板組11は電極Eによって冷却される。
(板組11における最も薄い金属板111の配置)
板組11の少なくとも一方の表面に、最も薄い金属板111Sが配置される。最も薄い金属板111Sが表面に配置された板組11の典型例は、(1)最も薄い金属板111Sと厚い金属板111とが重ねられた板組11、(2)重ねられた複数の厚い金属板111に、最も薄い金属板111Sをさらに重ねられた板組11、(3)同じ厚さの最も薄い2枚の金属板111によって厚い金属板111が挟まれた板組11、などである。
最も薄い金属板111Sを板組11の表面に配した場合、最も薄い金属板111Sの接合不良が生じやすい。しかしながら、最も薄い金属板111Sは、機械部品の外装部材として利用されることが多い。例えば一部の自動車部品では、最も薄い金属板111Sが外装部材として用いられ、厚い金属板111が骨格部材として用いられる。このような部品においては、最も薄い金属板111Sが板組11の表面に配される必要がある。
(板組11の板厚比)
板組11の板厚比は4.5以上とされる。板厚比とは、板組に含まれる金属板の総板厚tsum(mm)を、最も薄い金属板の板厚tmin(mm)で割って得られる値tsum/tminのことである。板組11の板厚比は4.8以上、5.0以上、又は5.2以上であってもよい。板組11の板厚比の上限値は特に限定されないが、例えば板厚比を10以下、9.5以下、又は9.0以下としてもよい。
板厚比が大きいほど、板組11の表面に配された最も薄い金属板111Sの接合不良が生じやすい。しかしながら、板厚比の増大は、機械部品の性能の向上をもたらしうる。例えば一部の自動車部品は、骨格部材として用いられる厚鋼板と、外装部材として用いられる薄鋼板とを接合して構成される。このような部品においては、骨格部材の板厚を増加させて強度を確保したり、外装部材の板厚を減少させて部品を軽量化したりすることが望まれる。従って、高い板厚比の板組11を接合可能な技術が待望されている。
(第一、第二、及び第三の加圧時間)
ナゲット12を形成する工程には、図1に示されるように、一対の電極Eの加圧力をP1(kN)とする第一の加圧時間と、一対の電極Eの加圧力をP2(kN)とする第二の加圧時間と、一対の電極Eの加圧力をP3(kN)とする第三の加圧時間と、が順に設けられる。加圧力P1、P2、及びP3は、(1)式、及び(2)式、及び(3)式を満たす。
P2≦0.95×P1・・・(1)
P2<P3・・・(2)
0.80×P1≦P3・・・(3)
即ち、本実施形態に係る製造方法では、ナゲット12を形成する工程の中盤において、加圧力を低くする時間が設けられる。また、本実施形態に係る製造方法では、ナゲット12を形成する工程の終盤における加圧力は、中盤における加圧力よりも高められる。なお、(1)式におけるP1の係数を0.90、0.85、又は0.80に置き替えてもよい。(3)式におけるP1の係数を0.85、0.90、又は0.95に置き替えてもよい。
本実施形態に係る製造方法ではさらに、第二の加圧時間の始期、終期、及び長さが規定される。
(第二の加圧時間の始期及び終期)
第二の加圧時間は、電極Eを用いた板組11の加熱及び溶融が進展してから開始する。一方、第二の加圧時間は、ナゲット12の形成が完了する前に終了させる。本実施形態に係る製造方法では、通電電流の時間積分値を用いて、第二の加圧時間の始期及び終期を規定する。通電電流の時間積分値は、ナゲット形成作業の進展度合いの指標となる。
具体的には、本実施形態に係る製造方法では、(4)式及び(5)式が満たされる。
0.20×S≦S1・・・(4)
S2≦0.80×S・・・(5)
Sは、ナゲットを形成する工程の通電の開始の時点D1から終了の時点D4までの期間における電流の時間積分値である。Sは、ナゲット12の形成のために板組11に投入される全ての熱量の指標値である。
S1は、時点D1から第二の加圧時間の開始の時点D2までの期間における電流の時間積分値である。S1は、第二の加圧時間の開始の時点D2までに板組11に投入された熱量の指標値である。
S2は、時点D1から第二の加圧時間の終了の時点D3までの期間における電流の時間積分値である。S2は、第二の加圧時間の終了の時点D3までに板組11に投入された熱量の指標値である。
なお、後述する後通電は、「ナゲット12を形成する工程の通電」に含まれないので、S、S1、及びS2の算出の際に考慮されない。一方、後述する予熱通電は、「ナゲット12を形成する工程の通電」に含まれるので、S、S1、及びS2の算出の際に考慮される。
(4)式を満たす条件でスポット溶接が実施された場合、第二の加圧時間の始期は、ナゲット12の形成が約20%進展した時点以降とされる。(5)式を満たす条件でスポット溶接が実施された場合、第二の加圧時間の終期は、ナゲット12の形成が約80%進展した時点以前とされる。(4)式におけるSの係数「0.20」を、0.22、0.25、又は0.30と置き換えてもよい。(5)式におけるSの係数「0.80」を、0.75、0.70、又は0.60と置き換えてもよい。
(第二の加圧時間の長さ)
第二の加圧時間の長さは、20~200msecの範囲内とする。第二の加圧時間の長さを、30msec以上、50msec以上、又は80msec以上としてもよい。第二の加圧時間の長さを、180msec以下、150msec以下、又は120msec以下としてもよい。
(作用効果)
本実施形態に係る製造方法では、ナゲット12を形成する際に多段階の加圧時間が設けられている。通電を開始する時点での加圧力はP1とされ、通電の途中で加圧力をP2に低下させ、所定時間の経過後に加圧力をP3に上昇させる。本発明者らは、このような多段階の加圧時間をスポット溶接に適用することにより、板組11の表面に配された最も薄い金属板111Sと、これに接する金属板111との界面を安定的に溶融させられることを知見した。その理由は以下の通りであると推定されている。
電極Eに通電をする際には、電極Eを用いて板組11を加圧する必要がある。加圧力が不足する場合、溶接が不安定になり、散りが発生したり、溶接欠陥が発生したりする。散りとは、母材が局部的に加熱されて溶融飛散する現象またはその金属のことである。
しかしながら図3に模式的に示されるように、加圧力を増大させると、板組11から電極Eへの熱移動が促進される。何故なら、加圧力の増大によって、板組11と電極Eとの接触面積が増大するからである。従ってスポット溶接の際には、板組11の厚さ方向中央部においては温度が上昇して母材が溶融する一方で、板組11の表層部においては温度が十分に上昇しない。このことが、板組11の表面に配された最も薄い金属板111Sと、これに接する金属板111との界面の溶融を妨げる。その結果、ナゲット12が最も薄い金属板111Sまで成長せず、接合不良が生じる。
そこで本実施形態に係る製造方法では、図2に模式的に示されるように、スポット溶接の中盤において加圧力を低下させる。これにより、板組11から電極Eへの熱移動が抑制される。また、このときに、板組11において一層高温の領域である中央部から、板組11の表層部への熱移動が継続される。そのため、板組11の表層部が加熱される。この現象は復熱と称される。その結果、板組11の表層部における母材の溶融が促進される。その結果、ナゲット12が板厚方向に沿って成長し、最も薄い金属板111Sに達する。そして、接合不良が抑制される。
さらに本実施形態に係る製造方法では、図1に示されるように、第一の加圧時間における加圧力P1及び第三の加圧時間における加圧力P3は高く保たれる。その結果、本実施形態に係る製造方法では、散り発生を抑制することができる。
ただし、上述の効果を得るためには、加圧力P1~P3が、上述の(1)式~(3)式を満たす必要がある。
加圧力P1は特に限定されず、通常のスポット溶接において用いられる条件を適宜採用することができる。
加圧力P2は、(1)式を満たす必要がある。即ちP2は、P1の95%以下とする必要がある。P2がP1の95%超であった場合、板組11の溶融を促進する効果が得られない。
加圧力P3は、(2)式及び(3)を満たす必要がある。即ちP3は、P2より大きく、且つ、P1の80%以上とする必要がある。P3が(2)式及び(3)式を満たさなかった場合、スポット溶接の終盤において散りの発生率が高まり、溶接不良率が高まるおそれがある。
加えて、第二の加圧時間の始期、終期、及び長さを上述の範囲内とする必要がある。
第二の加圧時間の開始が早すぎた場合、即ち(4)式が満たされなかった場合、散りの発生率が高まり、溶接不良率が高まるおそれがある。また、第二の加圧時間の開始が遅すぎた場合、即ち(5)式が満たされなかった場合も、復熱効果が小さく板組11の表層部の母材の溶融が困難になる。さらに、散りの発生率が高まり、即ち溶接不良率が高まるおそれがある。スポット溶接の序盤及び終盤は、通電が安定しておらず、散りが発生しやすいからである。
散りの発生を回避するために、第二の加圧時間の開始を遅らせたり、第二の加圧時間の終了を早めたりしてもよい。ただし、第二の加圧時間の長さは20msec以上とする必要がある。第二の加圧時間が短すぎる場合には、板組11の表層部における母材の溶融が妨げられて、接合不良が生じる。従って、第二の加圧時間の始期及び終期は、第二の加圧時間を20msec以上とすることが可能な範囲内で選択される。なお、第二の加圧時間が長すぎても、溶接安定性が損なわれる恐れがある。そのため、第二の加圧時間の長さは200msec以下とする。
本実施形態に係る製造方法の作用効果を示す実験結果を、図4A及び図4Bに示す。図4Aは、上述の条件を満たすように第二の加圧時間が設けられた製造方法によって得られた、ナゲット12の断面図である。図4Bは、第二の加圧時間が設けられなかったが、加圧力、溶接電流値、及び通電時間を図4Aと同一とした製造方法によって得られた、ナゲット12の断面図である。第二の加圧時間が設けられた図4Aのナゲット12は、第二の加圧時間が設けられなかった図4Bのナゲット12よりも深く、板組11の表面の最も薄い金属板111Sに溶け込んでいた。
(ナゲット12の改質)
本実施形態に係る製造方法は、図5に示されるように、ナゲット12を形成する工程の後、一対の電極Eの加圧力を保持したまま板組11に後通電することにより、ナゲット12を改質する工程をさらに有してもよい。後通電とは、後熱電流を一対の電極Eの間に通電させることである。後熱電流とは、溶接によって硬化する材料の抵抗溶接において、溶接を行った後、硬化した溶接部に対して焼戻し又は焼なましを行う目的で流す電流のことである。ナゲット12を改質することにより、抵抗スポット溶接継手1の接合強度を一層高めることができる。金属板111が亜鉛系めっき鋼板である場合は、後通電によって、コロナボンドの内部や端部で発生するLMEを抑制することもできる。
後通電における電流値、及び通電時間は特に限定されず、板組の材質に応じた値を適宜採用することができる。例えば電流値が溶接電流と同水準であったとしても、通電時間を短くすることにより、ナゲットの溶融を防ぐことができる。電流値及び通電時間を自由に組み合わせることができる。
なお、ナゲットを形成する工程の通電の開始の時点D1から終了の時点D4までの期間における電流の時間積分値Sの算出にあたって、後通電は考慮されない。Sは、第二の加圧時間の始期及び終期を定めるために用いられる値である。一方、後通電はナゲット12の改質のために行われるので、板組11を溶融させない。後通電はナゲット12の大きさに影響せず、且つ、散りを発生させない。従って、第二の加圧時間の始期及び終期を定めるにあたり、後通電の存在を考慮する必要はない。図5に示されるように、ナゲット12を形成するための通電(本通電と称される場合がある)と、ナゲット12を改質するための通電とが連続的に行われる場合、電流値が低下し始める時点を、ナゲットを形成する工程の通電の終了の時点D4とみなす。
(ナゲット12の改質前の冷却)
本実施形態に係る製造方法では、図5に示されるように、ナゲット12を形成する工程とナゲット12を改質する工程とが連続的に実施されてもよい。一方、図6に示されるように、ナゲット12を形成する工程と、ナゲット12を改質する工程との間に、一対の電極Eの加圧力を保持したまま、板組11への通電を停止することにより板組11を冷却する工程をさらに有してもよい。冷却する工程は、板組11を構成する金属板111の材質に応じて、適宜設けることができる。なお、冷却における加圧力は特に限定されない。例えば、第三の加圧時間における加圧力P3を維持したまま通電を終了することにより、冷却を行ってもよい。一方、通電終了後に加圧力をP3から変化させてもよい。
(P1の上下限値)
第一の加圧時間における加圧力P1は、散り発生を抑制しうる範囲内で適宜選択することができる。また、加圧力P1は、板組11の材質、及び板組に含まれる金属板の総板厚tsum等に基づいて最適化することができる。例えば、P1を2.5kN以上8.0kN以下の範囲内としてもよい。P1を3.0kN以上、3.5kN以上、又は4.0kN以上としてもよい。P1を6.5kN以下、6.0kN以下、又は5.0kN以下としてもよい。
(P2の下限値)
第二の加圧時間における加圧力P2の下限値は特に限定されないが、例えばP1の50%以上としてもよい。即ち、P2≧0.50×P1であってもよい。これにより、第二の加圧時間における散りの発生を一層抑制することができる。P2が、P1の60%以上、65%以上、又は70%以上であってもよい。
(P3の下限値)
P3の下限値は、(2)式及び(3)式によって規定された範囲内の任意の値とすることができる。一方で、P3を、P2の1.1倍以上、1.2倍以上、又は1.3倍以上と限定してもよい。これにより、第三の加圧時間における散り発生を一層確実に抑制することができる。
(電流値)
ナゲット12を形成する工程における溶接電流の値も特に限定されない。ここで溶接電流とは、母材を溶融させて溶接部を形成するために流す電流であり、本電流とも呼ばれる。本電流の通電を、本通電と称する場合もある。これに対して、母材を溶融させない範囲内で母材を予熱する電流は、予熱電流と称される。ナゲット12を形成する工程における「通電」とは、溶接電流の通電(本通電)、及び予熱電流の通電(予熱通電)の両方を含む概念である。
溶接電流が大きいほど、散りが発生しやすくなる。その一方で、溶接電流が大きいほど、ナゲット12のサイズが大きくなり接合不良が抑制される。溶接電流は、板組11の材質、及び板組に含まれる金属板の総板厚tsum等に基づいて最適化することができる。例えば、溶接電流を4kA以上12kA以下としてもよい。溶接電流を5kA以上、6kA以上、又は7kA以上としてもよい。溶接電流を10kA以下、9kA以下、又は8kA以下としてもよい。なお、ナゲット12を形成する工程においては、図1等に示されるように電流値を一定にしてもよいし、ナゲット12の成長の度合いに応じて電流値を適宜変更してもよい。
(自動車部品の製造方法)
本発明の別の態様に係る自動車部品の製造方法は、本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1の製造方法を備える。これにより、散りを発生させることなく、板厚比が高く且つ接合不良が抑制された自動車部品を製造することができる。自動車部品とは、例えばセンターピラーである。これにより、板厚比が4.5以上であり、さらに表面に最も薄い金属板111Sが配置されていながら、接合不良が抑制された自動車部品を簡便に製造することができる。自動車部品の製造にあたっては、外装材として用いられる薄板と、構造材として用いられる厚板とを接合する場合が多い。従って、板厚比が大きい抵抗スポット溶接継手1を有する自動車部品の製造にあたり、本実施形態に係る自動車部品の製造方法は極めて好適である。
もっとも、上述された本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手の製造方法の用途は特に限定されない。例えば、家電製品の製造に、本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手の製造方法を適用してもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
(予熱通電)
ナゲット12を形成する工程において、溶接電流を通電する前に予熱電流を通電してもよい。予熱電流とは、溶接の前に溶接部を予熱するために流す電流である。予熱電流の通電を、予熱通電と称する場合もある。予熱通電により、本通電の序盤における溶接安定性を一層高めることができる。
なお、ナゲットを形成する工程の通電の開始の時点D1から終了の時点D4までの期間における溶接電流の時間積分値Sの算出にあたって、予熱通電は考慮される。予熱通電において投入された熱量は、本通電におけるナゲット12の生成に影響するからである。予熱通電が行われる場合、ナゲットを形成する工程の通電の開始の時点D1とは、予備通電の開始の時点である。
(電極E)
抵抗スポット溶接用の電極Eの種類は特に限定されない。例えばJIS C 9304:1999に規定された種々のスポット溶接用電極Eを、本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1の製造方法において採用することができる。また、板厚の薄い側の鋼板を加圧する電極の先端径を、反対側の鋼板を加圧する電極の先端径よりも小さくしても良い。これにより、板厚の薄い側の鋼板において、電流密度が高くなると共に、電極による冷却効果が低下する。そして、板厚が薄い側の鋼板の加熱が促進され、上述した加圧工程の復熱効果が重畳し、表層部の母材の溶融が確実となる。
(板組11の構成)
tsum/tminが4.5以上であれば、板組11に含まれる金属板111の枚数は、2枚以上の任意の値とすることができる。本実施形態に係る製造方法の作用効果は、金属板111の枚数にかかわらず発揮される。通常、金属板111の枚数が3枚以上である場合、板組11の表面に配された最も薄い金属板111Sを他の金属板111と接合するためには、大きな入熱が必要となる。これにより、溶接中に散りが生じやすくなる。しかしながら、本実施形態に係る製造方法によれば、3枚以上の金属板111から構成される板組11において、散り及び接合不良の両方を抑制可能である。
板厚が最小の金属板111の枚数は2枚以上であってもよい。従って、板厚が最小の金属板111は、板組11の両方の表面に配されてもよい。一方、板厚が最小の金属板111の枚数は2枚以上の場合に、1枚の板厚が最小の金属板111を板組11の表面に配し、他の板厚が最小の金属板111を、板組11の内部に配置してもよい。
板組11を構成する金属板111の枚数が2~4枚である場合は、当然ながら、これら金属板の板厚tminは互いに相違する必要がある。同じ板厚の金属板111を2枚、3枚、又は4枚重ねた場合の板厚比はそれぞれ2、3、又は4であり、本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1の製造方法が溶接対象とする板厚比の下限値「4.5」を下回るからである。一方、板組11に含まれる金属板111の枚数が5枚以上である場合、これら金属板の板厚が同一であってもよい。この場合、全ての金属板111を、最も薄い金属板111Sとみなす。板厚が同一値tである5枚の金属板111から構成される板組11の板厚比は5であり、本実施形態に係る製造方法が対象とする板組11の要件を満たす。このような板組11に含まれる全ての金属板111を、通常の抵抗スポット溶接によって接合することは困難である。しかし本実施形態に係る製造方法によれば、ナゲット12の成長を促進して、全ての金属板111を接合することができる。
(金属板111の種類)
金属板111の種類は特に限定されない。本実施形態に係る製造方法の作用効果は、金属板111の種類にかかわらず発揮される。金属板111の例として、鋼板、アルミ板、ステンレス板、及びチタン板などが挙げられる。
金属板111が鋼板である場合、鋼板の引張強さは、例えば980MPa以上とすることが好ましい。複数の鋼板のうち1枚以上を、引張強さ980MPa以上の高強度鋼板とすることにより、抵抗スポット溶接継手1の剛性を高めることができる。一方、鋼板を引張強さ980MPa未満の軟鋼としてもよい。例えば抵抗スポット溶接継手1を自動車部品とする場合、板組11の表面に配される最も薄い金属板111Sを軟鋼とし、それ以外の鋼板を高強度鋼板としてもよい
複数の金属板111のうち1枚以上がめっきを有してもよい。金属板111が鋼板である場合、鋼板の表面に設けられるめっきの例として、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっき、及びアルミめっき等を挙げることができる。
板組に含まれる金属板の総板厚tsumは特に限定されないが、例えば2.0mm~6.0mmの範囲内とすることが好ましい。これにより、抵抗スポット溶接継手1の剛性を確保しながら、スポット溶接における散り発生を一層効果的に抑制することができる。また、板組11の表面に配される最も薄い金属板の板厚tminは、例えば0.3mm~1.5mmの範囲内とすることが好ましい。
(溶接条件)
第一の加圧時間の終期(即ち、第二の加圧時間の始期)は(4)式によって規定される。一方、第一の加圧時間の始期、及び長さは特に限定されない。スポット溶接の安定性を考慮すると、ナゲット12の形成のための通電を始める前に加圧を開始しておくことが好ましい。
第三の加圧時間の始期(即ち、第二の加圧時間の終期)は(5)式によって規定される。一方、第三の加圧時間の終期、及び長さは特に限定されない。スポット溶接の安定性を考慮すると、ナゲット12の形成のための通電が終了してから電極Eを開放し、加圧を終了することが好ましい。
ナゲット12を冷却する工程、及びナゲット12を改質する工程の条件も特に限定されず、板組11に応じた加圧条件及び通電条件を適宜採用することができる。冷却及び後通電は、金属板111及びナゲット12を溶融させない。冷却及び後通電は、散りを生じさせず、ナゲット12のサイズにも影響しない。従って、これらの工程は接合不良を促進することも抑制することもないと考えられる。一方、これらの工程は、ナゲット12の靭性等の機械特性を改善して、抵抗スポット溶接継手1の接合強度を高めるために有益である。
実施例により本発明の一態様の効果を更に具体的に説明する。ただし、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例に過ぎない。本発明は、この一条件例に限定されない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限り、種々の条件を採用し得る。
3枚又は4枚の鋼板から構成される、以下の3種類の板組を準備した。
Figure 2024040644000002
これらの板組に対して、以下の条件で種々のスポット溶接を行った。一部の例では、スポット溶接の後に冷却及び後通電を行った。
・溶接機:サーボ加圧定置式溶接機 単相交流(周波数50kHz)。
・電極:ドームラジアス(DR)Cr-Cu。
・電極先端の形状:φ6mm R40mm。
・溶接条件:表2及び表3に記載の通り。
なお、表2及び表3に記載の用語の定義を、図6に記載の符号D1~D7を用いて説明する。D1~D7は以下の通り定義される。
・D1:ナゲットを形成する工程の通電の開始の時点。
・D2:第二の加圧時間の開始の時点。
・D3:第二の加圧時間の終了の時点。
・D4:ナゲットを形成する工程の通電の終了の時点。
・D5:ナゲットを改質する工程の通電、即ち後通電の開始の時点。
・D6:後通電の終了の時点。
・D7:電極の開放を開始した時点。
表2に記載の用語は、以下の通り定義される。
●ナゲット形成工程(本通電):D1~D4の期間。
・電流値I1:D1~D4における電流値。
・通電時間TI1:D1~D4の長さ。
●第一の加圧時間:D1~D2の期間。
・加圧力P1:D1~D2における加圧力。
・加圧時間TP1:D1~D2の長さ。
●第二の加圧時間:D2~D3の期間。
・加圧力P2:D2~D3における加圧力。
・加圧時間TP2:D2~D3の長さ。
●第三の加圧時間:D3~D4の期間。
・加圧力P3:D3~D4における加圧力。
・加圧時間TP3:D3~D4の長さ。
●電流の時間積分値
・S1/S:積分値Sに対する積分値S1の比
・S2/S:積分値Sに対する積分値S2の比
●冷却工程(第四の加圧時間):D4~D5の期間。
・加圧力CP1:D4~D5における加圧力。
・加圧時間TCP1:D4~D5の長さ。
●ナゲット改質工程(後通電、第五の加圧時間):D5~D6の期間。
・電流値AI1:D5~D6における電流値。
・通電時間TAI1:D5~D6の長さ。
・加圧力AP1:D5~D6における加圧力。
・加圧時間TAP1:D5~D6の長さ。
●保持工程(第六の加圧時間):D6~D7の期間。
・加圧力CP1:D6~D7における加圧力。
・加圧時間TCP1:D6~D7の長さ。
なお、種々の工程又は時間における加圧力及び電流値は、これらが適用された期間の全体にわたり、表に記載の値で一定とした。
一部の例においては、上に列記した工程及び時間の一部が省略された。例えば冷却工程及びナゲット改質工程は含まれない試験条件1では、第三の加圧時間の終了に次いで第六の加圧時間が開始された。第三の加圧時間、冷却工程、及びナゲット改質工程が含まれない試験条件4では、第二の加圧時間が終了に次いで第6の加圧時間が開始された。省略された工程又は時間の条件は、符号「-」で表記した。
なお、表2及び表3で用いられている用語の定義は、製造条件を一層明確に表記するための便宜的なものにすぎない。例えば本実施形態に係る製造方法において、第一の加圧時間における加圧は、D1より前から開始されていてもよいのであるが、表2及び表3ではD1より以前における加圧の表記を省略した。また、本実施形態に係る製造方法においては、第三の加圧時間における加圧をD4以降に継続してもよい。従って、表に記載の第4の加圧時間や第六の加圧時間は、第三の加圧時間の一部であるとみなすこともできる。しかし、実施例に適用された製造条件の一層の明確化のために、表2及び表3では、D4以前と以後とで加圧時間を分割して表記した。従って、表2では、ナゲット形成工程の通電時間TI1は、第一の加圧時間TP1と第二の加圧時間TP2と第三の加圧時間TP3の合計と等しくなる。
Figure 2024040644000003
Figure 2024040644000004
上述の手順で製造された抵抗スポット溶接継手のナゲット径を、以下の手順で測定した。まず、ナゲットの中心を通り且つ鋼板表面に垂直な面で切断した。断面を調製し、光学顕微鏡で観察した。そして、板組の表面の最も薄い鋼板とその鋼板に隣接する鋼板との合わせ面に沿った、ナゲット径を確認した。ナゲットが、板組の表面の最も薄い鋼板まで成長していない場合は、ナゲット径を0mmとみなした。そして、以下の基準に沿ってナゲット径を評価し、表4に記載した。ただし、溶接を各条件に関して5回ずつ行い、そのうち最もナゲット径が小さい抵抗スポット溶接継手について、以下の基準に沿ってナゲット径の評価をした。
ナゲット径が4√t(=3.1mm)以上:◎
ナゲット径が3√t(=2.3mm)以上4√t未満:〇
ナゲット径が3√t(=2.3mm)未満:×
なお、tとは、板組の表面に配された最も薄い鋼板の厚さである。全ての例において、tは0.6mmであった。ナゲット径が3√t未満の抵抗スポット溶接継手は、接合不良が生じていると判断された。
また、製造の際に電極先端付近を観察し、散り発生頻度を目視で測定した。溶接を各条件に関して5回ずつ行った。そして、2回以上の散りが発生した試験条件では、散り抑制が不十分であったと判断された。
Figure 2024040644000005
試験条件2では、第二の加圧時間の始期が早すぎて、S1/Sが不足した。そのため、試験条件2では、散り発生頻度が高かった。
試験条件3では、第二の加圧時間の終期が遅すぎて、S2/Sが過剰であった。そのため、試験条件3では、散り発生頻度が高かった。
試験条件4では、第三の加圧時間が設けられず、S2/Sが1.0となった。そのため、試験条件4では、散り発生頻度が高かった。加えて、過剰な量の散りが飛散したため、試験条件4ではナゲット径も不足した。
試験条件5では、第二の加圧時間における加圧力P2が大きすぎた。そのため、試験条件5ではナゲットの成長が促進されず、ナゲット径が不足した。
試験条件6では、第二の加圧時間の長さが短すぎた。そのため、試験条件6ではナゲットの成長が促進されず、ナゲット径が不足した。
試験条件7では、第二の加圧時間の長さが長すぎた。そのため、試験条件7では、散り発生頻度が高かった。加えて、過剰な量の散りが飛散したため、試験条件7ではナゲット径も不足した。
一方、試験条件1、及び8~12は、第二の加圧時間における加圧力P2、並びに第二の加圧時間の始期、終期、及び長さが全て適切であった。そのため、これらの試験条件では、散り発生頻度及び接合不良の両方を抑制することができた。
1 抵抗スポット溶接継手
11 板組
111 金属板
111S 最も薄い金属板
12 ナゲット
E 電極
tmin 最も薄い金属板の板厚
tsum 板組に含まれる金属板の総板厚
P1 第一の加圧時間の加圧力
P2 第二の加圧時間の加圧力
P3 第三の加圧時間の加圧力
D1 ナゲットを形成する工程の通電の開始の時点
D2 第二の加圧時間の開始の時点
D3 第二の加圧時間の終了の時点
D4 ナゲットを形成する工程の通電の終了の時点
D5 ナゲットを改質する工程の通電の開始の時点
D6 ナゲットを改質する工程の通電の終了の時点
D7 電極の開放を開始した時点
S D1からD4までの期間における電流の時間積分値
S1 D1からD2までの期間における電流の時間積分値
S2 D1からD3までの期間における電流の時間積分値

Claims (7)

  1. 抵抗スポット溶接継手の製造方法であって、
    2枚以上の金属板を重ねて構成した板組を、一対の電極で挟んで通電することにより、前記板組を接合するナゲットを形成する工程を備え、
    前記板組の少なくとも一方の表面に、最も薄い金属板が配置され、
    前記最も薄い前記金属板の板厚tmin(mm)、及び前記板組に含まれる前記金属板の総板厚tsum(mm)に基づいて算出される、前記板組の板厚比tsum/tminが4.5以上であり、
    前記ナゲットを形成する工程において、
    一対の前記電極の加圧力をP1(kN)とする第一の加圧時間と、
    一対の前記電極の前記加圧力をP2(kN)とする第二の加圧時間と、
    一対の前記電極の前記加圧力をP3(kN)とする第三の加圧時間と、
    を順に設け、
    P1、P2、及びP3が、(1)式、及び(2)式、及び(3)式を満たし、
    P2≦0.95×P1・・・(1)
    P2<P3・・・(2)
    0.80×P1≦P3・・・(3)
    前記ナゲットを形成する工程の前記通電の開始の時点D1から終了の時点D4までの期間における電流の時間積分値S、前記時点D1から前記第二の加圧時間の開始の時点D2までの期間における前記電流の時間積分値S1、及び前記時点D1から前記第二の加圧時間の終了の時点D3までの期間における前記電流の時間積分値S2が、(4)式及び(5)式を満たし、
    0.20×S≦S1・・・(4)
    S2≦0.80×S・・・(5)
    前記第二の加圧時間の長さが20~200msecである
    抵抗スポット溶接継手の製造方法。
  2. 前記ナゲットを形成する工程の後、一対の前記電極の前記加圧力を保持したまま、前記板組に後通電することにより、前記ナゲットを改質する工程をさらに備える請求項1に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法。
  3. 前記ナゲットを形成する工程と、前記ナゲットを改質する工程との間に、一対の前記電極の前記加圧力を保持したまま、前記板組への通電を停止することにより前記板組を冷却する工程をさらに備える請求項2に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法。
  4. P2≧0.50×P1であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法。
  5. P1が2.5kN以上8.0kN以下であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法。
  6. 前記ナゲットを形成する工程における溶接電流が4kA以上12kA以下であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法を備える自動車部品の製造方法。
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