JP2024039823A - 空気入りタイヤの製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】タイヤに形成されるシーラント層に隙間が発生することを低減可能な空気入りタイヤの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】空気入りタイヤの製造方法は、タイヤ内面の形状を測定することと、タイヤ内面に向けたノズルをタイヤの軸心回りに相対的に回転させながら、ノズルの吐出口から吐出される帯状のシーラント材をタイヤ内面に塗布してタイヤ内面にシーラント層を形成すること、を含む。タイヤの子午線断面におけるタイヤ内面の傾きに応じてノズルのタイヤ径方向に対する角度を変化させて、ノズルの吐出口から吐出したシーラント材をタイヤ内面に塗布する。
【選択図】図13
【解決手段】空気入りタイヤの製造方法は、タイヤ内面の形状を測定することと、タイヤ内面に向けたノズルをタイヤの軸心回りに相対的に回転させながら、ノズルの吐出口から吐出される帯状のシーラント材をタイヤ内面に塗布してタイヤ内面にシーラント層を形成すること、を含む。タイヤの子午線断面におけるタイヤ内面の傾きに応じてノズルのタイヤ径方向に対する角度を変化させて、ノズルの吐出口から吐出したシーラント材をタイヤ内面に塗布する。
【選択図】図13
Description
本開示は、空気入りタイヤの製造方法及び製造装置に関する。
パンク防止機能を備えた空気入りタイヤとして、タイヤ内面にノズルからシーラント材を塗布してなるシーラント層を備えた空気入りタイヤ(シーラントタイヤとも称される)が知られている。シーラントタイヤでは、パンク時に形成される貫通孔がシーラント材によって自動的に塞がれて、タイヤからの空気の漏れが防止可能となる。
特許文献1には、タイヤの内面とノズル先端との間の距離を変位センサで計測し、タイヤの内面とノズル先端との間の距離を所定距離に制御する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1のように、タイヤの内面とノズル先端との間の距離を制御するだけでは、トレッドのタイヤ軸方向外側部分ではタイヤの内面の湾曲がタイヤ軸方向中央部分に比べて大きく、互いにタイヤ軸方向に隣接する帯状のシーラント材の間に隙間が生じてしまう場合がある。
本開示は、タイヤに形成されるシーラント層に隙間が発生することを低減可能な空気入りタイヤの製造方法及び製造装置を提供する。
本開示の空気入りタイヤの製造方法は、タイヤ内面の形状を測定することと、タイヤ内面に向けたノズルをタイヤの軸心回りに相対的に回転させながら、前記ノズルの吐出口から吐出される帯状のシーラント材を前記タイヤ内面に塗布して前記タイヤ内面にシーラント層を形成すること、を含み、前記タイヤの子午線断面における前記タイヤ内面の傾きに応じて前記ノズルのタイヤ径方向に対する角度を変化させて、前記ノズルの吐出口から吐出した前記シーラント材を前記タイヤ内面に塗布する。
本開示の空気入りタイヤの製造装置は、タイヤを支持する支持装置と、帯状のシーラント材を吐出口から吐出可能なノズルと、形状を測定可能なセンサと、を備え、タイヤ内面に向けたノズルを前記タイヤの軸心回りに相対的に回転させながら、前記ノズルの吐出口から吐出される帯状のシーラント材を前記タイヤ内面に塗布することが可能に構成されており、前記センサは、前記タイヤ内面の形状を測定し、前記タイヤの子午線断面における前記タイヤ内面の傾きに応じて前記ノズルのタイヤ径方向に対する角度を変化させて、前記ノズルの吐出口から吐出した前記シーラント材を前記タイヤ内面に塗布する。
以下、本開示の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ内面1Aに帯状のシーラント材11をタイヤ周方向CDに沿って塗布してなるシーラント層10を備えるシーラントタイヤである。タイヤ1は、いわゆるチューブレスタイヤであり、内部に空気等の気体が充填された状態で使用される。
図1は、タイヤ1を示すタイヤ子午線断面図である。タイヤ1は、路面に接地する環状のトレッド2と、トレッド2のタイヤ径方向RDの内側に位置する左右一対のビード部3,3と、トレッド2とビード部3,3の間に位置する左右一対のサイドウォール4,4とを備える。タイヤ1は、ビード部3に埋設されたビードコア5と、左右のビード部3,3間にトロイダル状に延びるカーカスプライ6と、トレッド2におけるカーカスプライ6の外周側に設けられたベルト7及びトレッドゴム8と、カーカスプライ6のタイヤ内面側に設けられたインナーライナー9と、インナーライナー9のタイヤ内面側に設けられたシーラント層10とを備える。
シーラント層10は、タイヤ内面1A、詳細にはインナーライナー9の内側に重ねて設けられている。この例では、シーラント層10は、トレッド2におけるタイヤ内面1Aにおいて、タイヤ軸方向ADの一方側の端部から他方側に端部にかけて設けられている。このようにシーラント層10は、トレッド2の内面の全体にわたって設けられることが好ましく、トレッド2の内面のみに設けてもよいが、トレッド2の内面を含むより広い範囲で設けてもよい。すなわち、シーラント層10は、トレッド2の内面を含むタイヤ内面1Aに設けられることが好ましい。
ここで、タイヤ径方向RDとは、タイヤ回転軸に垂直な方向を示し、タイヤ径方向RDの内側とはタイヤ回転軸に近づく方向をいい、タイヤ径方向RDの外側とはタイヤ回転軸から離れる方向をいう。タイヤ軸方向ADとは、タイヤ幅方向とも称され、タイヤ回転軸に平行な方向である。タイヤ周方向CD(図4参照)とは、タイヤ回転軸を中心とした円周上の方向である。
第1実施形態のタイヤ製造方法では、加硫済のタイヤ内面1Aに、帯状のシーラント材11(図4参照)をタイヤ軸方向ADの一方側から他方側に変位させつつタイヤ周方向CDに沿って連続的に塗布することによりシーラント層10を形成して、シーラント層10を備えるタイヤ1を製造する。
加硫済のタイヤを製造する方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。すなわち、ビードコア5やカーカスプライ6、ベルト7とともにトレッドゴム8などのタイヤ構成部材を用いてグリーンタイヤ(未加硫タイヤ)を作製し、得られたグリーンタイヤを加硫成型することにより、加硫済のタイヤが得られる。そして、グリーンタイヤの加硫成型後に、シーラント材11を用いてシーラント層10を形成する。
シーラント材11としては、特に限定されず、公知のシーラント材11を用いることができる。一般にシーラント材11としては、粘着性のあるゴム材料が用いられる。詳細には、例えば、ブチル系ゴム及び/又はエチレンプロピレンジエンゴムをゴム成分とし、これに液状ゴム、可塑剤、充填材、架橋剤(有機過酸化物)及び架橋助剤(加硫促進剤)などを配合したゴム組成物を用いることができるが、これに限定されるものではない。ブチル系ゴムとしては、ブチルゴムの他、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴムなどのハロゲン化ブチルゴムが挙げられる。
図2は、シーラント層10を形成してシーラントタイヤを製造するためのタイヤ製造装置20の構成図であり、タイヤ1を切断して示している。タイヤ製造装置20は、タイヤ1を支持する支持装置30と、シーラント材11を吐出する吐出機40と、支持装置30と吐出機40によるシーラント層10の形成動作を制御する不図示の制御部と、形状を計測可能なセンサ50(図2では図示せず)と、を備える。
支持装置30は、この例では、タイヤ回転軸を水平にした状態でタイヤ1の外周を支持する外周支持部31と、支持したタイヤ1をタイヤ回転軸周りに回転させる駆動装置32とを備える。但し、これに限定されるものではなく、例えば、外周支持部31は、タイヤ回転軸を水平方向に対して傾斜させてタイヤ1の外周を支持するものであってもよい。
吐出機40は、シーラント材11を吐出するノズル41と、ノズル41にシーラント材11を供給する供給装置42と、ノズル41を移動させる移動装置43とを備える。
供給装置42は、加熱されたシーラント材11を、供給管44を介してノズル41に供給する装置であり、例えばギアポンプのような定容量式ポンプを用いて構成することができる。
ノズル41は、供給装置42から供給されたシーラント材11を吐出する部材であり、図3に示すように、ノズル41の先端にシーラント材11を吐出する吐出口45を有する。ノズル41は、シーラント材11を所定の断面形状に吐出するダイ(口金)であり、吐出口45がノズル41に形成された開口部である。吐出口45は、図示しないが、スロット状に開口し、細長い矩形状の開口部としてもよい。この場合、吐出口45は、その長辺側に沿う長手方向と、長手方向に直交する幅方向とを有するとしてもよい。吐出口45の長手方向における寸法は、特に限定されず、例えば10~20mmでもよい。吐出口45の幅方向における寸法も、特に限定されず、例えば2~5mmでもよい。なお、吐出口45の形状は種々変更可能である。
移動装置43は、この例では少なくとも3軸の自由度を有する多軸ロボットで構成されており、そのアーム43Aの先端にノズル41が取り付けられている。移動装置43により、ノズル41はタイヤ1内に配置されて、ノズル41の吐出口45が下方に向けて配置される。
第1実施形態では、吐出口45とタイヤ内面1Aとの距離D1は、吐出口45の幅方向における寸法以下に設定されている。移動装置43は、図3に示すように吐出口45、即ちノズル41の底面をタイヤ内面1Aに対向配置させた状態で、ノズル41をタイヤ1内で移動させる。これにより、後述するように回転する吐出口45の姿勢にかかわらず、吐出口45から吐出されるシーラント材11の厚みを、吐出口45とタイヤ内面1Aとの間隙により規定することが容易になり、上記距離D1に相当する厚みを持つ帯状のシーラント材11をタイヤ内面1A上に形成することができる。
このように上記距離D1に相当する厚みを持つシーラント材11をタイヤ内面1Aに形成する場合、例えばギアポンプによりノズル41からの吐出量を制御することが好ましい。詳細には、タイヤ内面1A上に形成されるシーラント材11の厚みは上記距離D1に、当該シーラント材11の幅は吐出口45の長手方向の寸法にそれぞれ対応するので、「距離D1(mm)」と「吐出口45の長手方向の寸法(mm)」と「ノズル41に対するタイヤ内面1Aの回転速度(即ち、両者の相対速度)(mm/秒)」との積が「単位時間当たりの吐出量(mm3/秒)」となるように、ギアポンプを制御することが好ましい。
ノズル41は、移動装置43により、タイヤ軸方向ADとタイヤ径方向RDに移動する。また、ノズル41は、移動装置43により、タイヤ径方向RDに対する角度が変更可能である。これにより、ノズル41は、トレッド2における湾曲するタイヤ内面1Aに対して吐出口45を対向配置させかつ一定の距離D1を保ちながら、タイヤ軸方向ADに移動可能である。
移動装置43には、ノズル41を回転させるノズル回転装置46が設けられている。ノズル回転装置46はアーム43Aの先端に設けられており、ノズル回転装置46を介してノズル41がアーム43Aに取り付けられている。ノズル41を回転させることで、その先端の吐出口45が回転するように構成されている。
タイヤ製造装置20を用いてタイヤ1を製造する際には、加硫済のタイヤ1を支持装置30に配置し、吐出機40のノズル41をタイヤ1内に移動させて吐出口45をタイヤ内面1Aに対向配置させる。その際、この例では、シーラント層10をトレッド2の内面において、タイヤ軸方向ADの一方側の端部から他方側に端部にかけて設けるため、ノズル41を当該一方側の端部におけるタイヤ内面1Aに対向させて配置させる。
次いで、駆動装置32によりタイヤ1を回転させて、ノズル41をタイヤ周方向CDに沿って相対的に移動させながら、供給装置42によりシーラント材11をノズル41に供給し、ノズル41の吐出口45からシーラント材11を吐出して、タイヤ内面1Aに帯状のシーラント材11をタイヤ周方向CDに沿って塗布する。より詳細には、図3に示すように、タイヤ内面1Aとこれに対向するノズル41の底面との間隙を通ってタイヤ内面1A上に帯状のシーラント材11が形成される。
このようにシーラント材11をタイヤ周方向CDに沿って塗布しながら、移動装置43によりノズル41をタイヤ軸方向ADに次第に移動させる。これにより、吐出口45から吐出されるシーラント材11は、タイヤ軸方向ADの一方側から他方側に変位しつつ、タイヤ周方向CDに沿って連続的に塗布され、タイヤ軸方向ADにおいて隣接するシーラント材11,11間において隙間なく貼り付けられて、シーラント層10が形成される。
その際、ノズル41をタイヤ軸方向ADに一定速度で移動させることにより、帯状のシーラント材11をタイヤ周方向CDに対してわずかに傾斜した姿勢で螺旋状に配置されるように塗布(螺旋塗布)してもよい。
好ましい実施形態では、図4に示すように、帯状のシーラント材11をタイヤ周方向CDに平行に塗布し、1周塗布する毎に、タイヤ周方向CDの所定の領域Gにおいて、シーラント材11の幅寸法(吐出口45の長手方向における寸法と略同一)に相当するピッチの送りを与えるようにタイヤ周方向CDに対して傾斜させて塗布することで、平行塗布部12と傾斜塗布部13とを有するように塗布してもよい。この塗布構成をステップ塗布という。
図4に示す例では、トレッド2のタイヤ内面1Aにおけるタイヤ軸方向ADの一方側の端部2Aを左側とし、他方側の端部2Bを右側として、当該一方側の端部2Aから他方側の端部2Bにかけて、帯状のシーラント材11をステップ塗布している。該一方側の端部2Aにおけるタイヤ周方向CDの一箇所を塗布開始位置として、シーラント材11の塗り始め端部14を形成し、そこからタイヤ周方向CDに平行に塗布して1周目の平行塗布部12Aを形成し、一周塗布した後、タイヤ軸方向ADの他方側にノズル41を1ピッチ分移動させて1つ目の傾斜塗布部13Aを形成する。次いで2周目の平行塗布部12Bを形成した後、2つ目の傾斜塗布部13Bを形成し、以下これを繰り返して他方側の端部2Bまで至る。そして、他方側の端部2Bにおいて最後の平行塗布部12Yを形成し、直前の傾斜塗布部13Xと合致する位置でシーラント材11の塗り終わり端部15を形成して終端させる。
なお、図4では帯状のシーラント材11の巻き数、即ち平行塗布部12の周回数が7周であるが、シーラント材11の巻き数は、シーラント材11の塗布幅やシーラント層10の形成幅に応じて適宜設定することができる。上記では、螺旋塗布及びステップ塗布を説明したが、これに限定されず、種々の塗布方法が採用可能である。
図5は、タイヤ1の赤道面CLから片側のみを示すタイヤ子午線断面図である。図6は、タイヤ1の軸方向を通る面に沿ってタイヤ1を切断した様子を示す図である。図7は、タイヤ1の赤道面CLでタイヤ1を切断した様子を示す図である。図5に示すように、タイヤ内面1Aの形状は、トレッド2のタイヤ軸方向ADの中央部がタイヤ軸方向ADに対する傾斜が小さく、トレッド2のタイヤ軸方向AD外側部分(いわゆるバットレス)がタイヤ軸方向ADに対する傾斜が大きくなる形状である。また、タイヤ1は、加硫時にタイヤ内部に位置するブラダが膨らんでタイヤ1を金型に向けて押し付ける動作を行う。ブラダの表面には空気を逃がすための線状突起がある。ブラダの線状突起により、図6及び図7に示すように、タイヤ内面1Aに線状の凸部16(グルーブラインとも呼ばれる)が形成される。グルーブラインである凸部16は、タイヤ内面1Aにおいてタイヤ軸方向AD及びタイヤ周方向CDの双方に傾斜し、所定のピッチで形成されていることが多い。なお、グルーブラインである凸部16によって凹部17が形成される。
図5に示すように、センサ50は、タイヤ内面1Aの形状を計測する。本実施形態のセンサ50は、レーザ変位計であり、タイヤ軸方向ADに移動させながら、タイヤ内面1Aの形状を測定する。
図8は、センサ50が検出したタイヤ内面1Aの形状を表す複数の計測点に関する説明図である。図8は、上段にレーザ変位計(センサ50)で得られる計測点群のデータを示し、下段に実測定のタイヤ内面1Aの形状を示している。同図に示す実測定のタイヤ内面1Aの形状は、複数の計測点を近似した近似曲線又は近似直線で得ることができるが、ここでは理解を容易にするために参考として記載している。図8に示すように、センサ50をタイヤ軸方向ADにスイーブして得られるデータは無数の計測点群となる。図の上下方向がタイヤ径方向RDであり、図の左右方向がタイヤ軸方向ADである。タイヤ軸方向座標は、センサ50のタイヤ軸方向ADの移動速度と、センサ50のサンプリング周波数とで定まる。各々の計測点は、タイヤ軸方向座標とタイヤ径方向座標とを示し、複数の計測点がタイヤ内面1Aの形状を表す。ただし、複数の計測点のうちの一部の計測点は、外れ値や飛び値等のノイズである計測点が含まれる場合があるが、ここには記載しない一般的なデータ処理によって除去している。
図9は、ノズル41、ノズル41の送りピッチP1及びタイヤ内面1Aの形状の位置関係を示す図である。図9において、矢印Y1はノズル41の走査方向を示している。同図に示すように、ノズル41の送りピッチP1は、シーラント材11が隙間なく塗布できるように設定されており、送りピッチP1は、吐出口45のタイヤ軸方向ADに沿った寸法と同一又は略同一とすることが好ましい。これにより、タイヤ軸方向ADにおいてノズル41の位置が既知となる。タイヤ内面1Aの形状を特定するために、ノズル41の吐出口45のタイヤ軸方向ADの中央部に対応する範囲(微小領域Ar1)を設定する。この範囲(微小領域Ar1)のタイヤ軸方向ADの寸法は、任意に設定可能であるが、本実施形態では、2~5mmに設定している。微小領域Ar1は、ノズル41の吐出口45のタイヤ軸方向ADの中心線41cを中心とする領域であり、複数の計測点を含む大きさであればよい。
次に、図10に示すように、複数の計測点群データから、設定した微小領域Ar1に含まれる複数の計測点を抽出する。図10は、図8に示す複数の計測点群データのうち、微小領域Ar1内に存在する複数の計測点を抽出する様子を示す図である。微小領域Ar1内に存在する複数の計測点を丸印で示している。タイヤ内面1Aの形状は、参考として図示している。抽出した複数の計測点群について、公知の方法で外れ値や飛び値等のノイズを除去することが好ましい。
次に、微小領域Ar1内に存在する抽出した複数の計測点を近似して得られる近似線をタイヤ内面1Aの形状とする。本実施形態では、最小二乗法等を用いて直線で近似しているが、これに限定されない。例えば、曲線で近似してもよい。図12に示すように、得られた近似線(L1)に基づいてタイヤ内面1Aの法線L3をノズル41の向きとして特定する。本実施形態では、直線近似なので直線の法線L3がノズル41の向きとなる。近似線が曲線である場合には、近似曲線のうちノズル41の中心線41cの交点における近似曲線の法線L3を求めればよい。こうすれば、図9に示すノズル41の各々のタイヤ軸方向ADの位置におけるノズル41の向き(タイヤ径方向RDに対する角度)が決定可能となる。そして、図9に示すノズル41の各々のタイヤ軸方向ADの位置において、決定した向きにノズル41の向きを制御することで、タイヤ1の子午線断面におけるタイヤ内面1Aの傾きに応じてノズル41のタイヤ径方向RDに対する角度を変化させることが可能となる。
ところで、タイヤ内面1Aには、図5~8に示すようにグルーブラインである凸部16が複数形成されており、微小領域Ar1が凸部16により形成される凹凸部分に設定されると、好ましいノズル41の角度が得られない場合がある。また、例えば、タイヤ内面1Aとノズル41の先端の距離D1を一定にするノズル41の制御を実行する場合には、凸部16の形状を拾ってしまうために、図9に示す矢印Y1のように、走査線である矢印Y1がうねってしまい、ノズル41の制御が不安定になる場合がある。そこで、グルーブラインを考慮して本来のタイヤ内面1Aの形状を得られるように、次のようにしている。
図11は、互いに異なる2つのタイヤ周方向位置(CD1、CD2)におけるタイヤ子午線断面におけるタイヤ内面1Aの形状を示す図である。グルーブラインである凸部16はタイヤ周方向CDに螺旋状に延びるため、タイヤ周方向位置(位相)をずらしてタイヤ内面1Aの形状を計測すれば、グルーブラインに相当する凸部16により形成される凹部17を、グルーブラインに相当する凸部16に変換可能となる。具体的には、図11に示すように、第1のタイヤ周方向位置CD1におけるタイヤ内面1Aの形状を示す第1データDA1が破線で表され、第2のタイヤ周方向位置CD2におけるタイヤ内面1Aの形状を示す第2データDA2が実線で表されている。図11に示す微小領域Ar1は、第1のタイヤ周方向位置CD1における凹部17となっているが、第2のタイヤ周方向位置CD2における同じタイヤ軸方向位置においては、グルーブラインがある凸部16となっている。そこで、第1のタイヤ周方向位置CD1におけるタイヤ内面1Aの形状のうちの評価対象部位(微小領域Ar1)が周囲と比べて凹部17となるか否かを判定する。比較する周囲は、評価対象部位(微小領域Ar1)のタイヤ周方向CDの両側でもよい。評価対象部位(微小領域Ar1)が周囲と比べて凹部17であると判定した場合には、評価対象部位(微小領域Ar1)のタイヤ内面1Aの形状を、第2のタイヤ周方向位置CD2のタイヤ内面1Aの形状を用いて補正する。具体的には、図11に示す微小領域Ar1における複数の計測点のデータを、第1のタイヤ周方向位置CD1の第1データDA1ではなく、第2のタイヤ周方向位置CD2の第2データDA2に置き換えることが挙げられる。
図12は、データを置換したタイヤ内面1Aの計測データに基づいて特定したタイヤ内面1Aを表す近似線(L1)に関する説明図である。置換したタイヤ内面1Aを示すデータ(計測点群)は、全ての箇所に凹部17が無い形状のデータとなる。これらのデータを用いて、図12に示すように、平滑化処理して1つのタイヤ内面曲線L1(実線で示す)を生成し、ノズル41の中心線41cに対応する位置の接線L2(一点鎖線で示す)を求め、接線L2に直交する法線L3(一点鎖線で示す)を求めてもよい。
また、1つのタイヤ内面曲線L1を生成せず、各々の微小領域Ar1に含まれる複数の計測点に対して直線近似して近似直線(L2)を求め、近似直線(L2)に直交する法線L3(一点鎖線で示す)を求めてもよい。
また、1つのタイヤ内面曲線L1を生成せず、各々の微小領域Ar1に含まれる複数の計測点に対して直線近似して近似直線(L2)を求め、近似直線(L2)に直交する法線L3(一点鎖線で示す)を求めてもよい。
図13は、ノズル41の動作に関する説明図である。図13に示すように、各々の微小領域Ar1で特定したタイヤ内面1Aの形状(図12に示す曲線L1又は接線L2)からタイヤ径方向RDの内側へ所定距離離れた位置をノズル41のタイヤ径方向RDの位置(高さ)とし、ノズル41の位置を決定する。ノズル41の向きは、各々の微小領域Ar1で定めた法線L3と平行である。図13は、計測データ(複数の計測点)からタイヤ断面の形状を、平滑な線として復元し、その上をなぞる走査線Y2を得る様子を模式的に示している。復元したタイヤ内面1Aの形状は平滑であるため、ノズル41の走査線Y2も円滑となり、ノズル41の動作制御に適している。図13に示すように、ノズル41のタイヤ径方向RDに対する角度がタイヤ内面1Aの形状(傾き)に応じて変化するようになり、シーラント材11を適切に塗布可能となる。
[変形例]
(A)上記実施形態では、タイヤ内面1Aからタイヤ径方向RDの離間距離が一定になるようにノズル41を制御しているが、これに限定されない。例えば、タイヤ内面1Aからのタイヤ径方向RDの離間距離を一定にする制御をしなくてもよい。
(A)上記実施形態では、タイヤ内面1Aからタイヤ径方向RDの離間距離が一定になるようにノズル41を制御しているが、これに限定されない。例えば、タイヤ内面1Aからのタイヤ径方向RDの離間距離を一定にする制御をしなくてもよい。
[1]
以上のように、空気入りタイヤの製造方法は、タイヤ内面1Aの形状を測定することと、タイヤ内面1Aに向けたノズル41をタイヤ1の軸心回りに相対的に回転させながら、ノズル41の吐出口45から吐出される帯状のシーラント材11をタイヤ内面1Aに塗布してタイヤ内面1Aにシーラント層10を形成すること、を含み、タイヤ1の子午線断面におけるタイヤ内面1Aの傾きに応じてノズル41のタイヤ径方向RDに対する角度を変化させて、ノズル41の吐出口45から吐出したシーラント材11をタイヤ内面1Aに塗布する、としてもよい。
以上のように、空気入りタイヤの製造方法は、タイヤ内面1Aの形状を測定することと、タイヤ内面1Aに向けたノズル41をタイヤ1の軸心回りに相対的に回転させながら、ノズル41の吐出口45から吐出される帯状のシーラント材11をタイヤ内面1Aに塗布してタイヤ内面1Aにシーラント層10を形成すること、を含み、タイヤ1の子午線断面におけるタイヤ内面1Aの傾きに応じてノズル41のタイヤ径方向RDに対する角度を変化させて、ノズル41の吐出口45から吐出したシーラント材11をタイヤ内面1Aに塗布する、としてもよい。
このように、タイヤの子午線断面においてタイヤ内面1Aの傾きに応じてノズル41の角度を変化させるので、タイヤ内面1Aの湾曲形状に合わせてシーラント材11を塗布でき、シーラント材11の幅方向の両端部それぞれのタイヤ内面1Aに対する距離D1が均一化され、シーラント材11の幅方向の両端部のうちの少なくとも一方とタイヤ内面1Aとの間に隙間が生じることを抑制可能となる。
[2]
上記[1]に記載の空気入りタイヤの製造方法において、タイヤ内面1Aの形状は、タイヤ軸方向座標とタイヤ径方向座標とを示す複数の計測点で表されており、複数の計測点のうち、ノズル41の吐出口45のタイヤ軸方向ADの中央部に対応する範囲内に存在する複数の計測点を抽出することと、抽出された複数の計測点を近似して得られる近似線の法線L3に基づく角度をノズル41の角度に決定することと、決定した角度にノズル41を制御することと、を含む、としてもよい。
このように、複数の計測点を近似した近似直線の法線L3に基づく角度を用いるので、複数の計測点によりノイズを低減した角度が得られ、適切なノズル41の移動を制御可能となる。
上記[1]に記載の空気入りタイヤの製造方法において、タイヤ内面1Aの形状は、タイヤ軸方向座標とタイヤ径方向座標とを示す複数の計測点で表されており、複数の計測点のうち、ノズル41の吐出口45のタイヤ軸方向ADの中央部に対応する範囲内に存在する複数の計測点を抽出することと、抽出された複数の計測点を近似して得られる近似線の法線L3に基づく角度をノズル41の角度に決定することと、決定した角度にノズル41を制御することと、を含む、としてもよい。
このように、複数の計測点を近似した近似直線の法線L3に基づく角度を用いるので、複数の計測点によりノイズを低減した角度が得られ、適切なノズル41の移動を制御可能となる。
[3]
上記[1]又は[2]に記載の空気入りタイヤの製造方法において、第1のタイヤ周方向位置CD1及び第2のタイヤ周方向位置CD2を含む複数のタイヤ周方向位置におけるタイヤ子午線断面に沿った前記タイヤ内面1Aの形状を測定することと、第1のタイヤ周方向位置CD1におけるタイヤ内面1Aの形状のうちの評価対象部位が周囲と比べて凹部17となるか否かを判定することと、評価対象部位が周囲と比べて凹部17となると判定した場合に、凹形状が無くなるように、評価対象部位のタイヤ内面1Aの形状を第2のタイヤ周方向位置CD2のタイヤ内面1Aの形状を用いて補正することと、を含む、としてもよい。
タイヤ内面1Aの形状には、グルーブラインである凸部16が等間隔で形成されており、凸部16により凹部17が形成されている。この構成によれば、評価対象部位が周囲に比べて凹部17となると判定される場合には、凹部17の無い第2のタイヤ周方向位置CD2のタイヤ内面1Aの形状を用いて修正する。よって、ノズル41の角度を決定する際に用いるタイヤ内面1Aの形状からグルーブラインによる凹凸形状が削除されるので、グルーブラインによる凹凸形状の特異な傾きが採用されることを回避可能となる。
上記[1]又は[2]に記載の空気入りタイヤの製造方法において、第1のタイヤ周方向位置CD1及び第2のタイヤ周方向位置CD2を含む複数のタイヤ周方向位置におけるタイヤ子午線断面に沿った前記タイヤ内面1Aの形状を測定することと、第1のタイヤ周方向位置CD1におけるタイヤ内面1Aの形状のうちの評価対象部位が周囲と比べて凹部17となるか否かを判定することと、評価対象部位が周囲と比べて凹部17となると判定した場合に、凹形状が無くなるように、評価対象部位のタイヤ内面1Aの形状を第2のタイヤ周方向位置CD2のタイヤ内面1Aの形状を用いて補正することと、を含む、としてもよい。
タイヤ内面1Aの形状には、グルーブラインである凸部16が等間隔で形成されており、凸部16により凹部17が形成されている。この構成によれば、評価対象部位が周囲に比べて凹部17となると判定される場合には、凹部17の無い第2のタイヤ周方向位置CD2のタイヤ内面1Aの形状を用いて修正する。よって、ノズル41の角度を決定する際に用いるタイヤ内面1Aの形状からグルーブラインによる凹凸形状が削除されるので、グルーブラインによる凹凸形状の特異な傾きが採用されることを回避可能となる。
[4]
空気入りタイヤの製造装置は、タイヤを支持する支持装置30と、帯状のシーラント材11を吐出口45から吐出可能なノズル41と、形状を測定可能なセンサ50と、を備え、タイヤ内面1Aに向けたノズル41をタイヤ1の軸心回りに相対的に回転させながら、ノズル41の吐出口45から吐出される帯状のシーラント材11をタイヤ内面1Aに塗布することが可能に構成されており、センサ50は、タイヤ内面1Aの形状を測定し、タイヤ1の子午線断面におけるタイヤ内面1Aの傾きに応じてノズル41のタイヤ径方向RDに対する角度を変化させて、ノズル41の吐出口45から吐出したシーラント材11をタイヤ内面1Aに塗布する、としてもよい。
空気入りタイヤの製造装置は、タイヤを支持する支持装置30と、帯状のシーラント材11を吐出口45から吐出可能なノズル41と、形状を測定可能なセンサ50と、を備え、タイヤ内面1Aに向けたノズル41をタイヤ1の軸心回りに相対的に回転させながら、ノズル41の吐出口45から吐出される帯状のシーラント材11をタイヤ内面1Aに塗布することが可能に構成されており、センサ50は、タイヤ内面1Aの形状を測定し、タイヤ1の子午線断面におけるタイヤ内面1Aの傾きに応じてノズル41のタイヤ径方向RDに対する角度を変化させて、ノズル41の吐出口45から吐出したシーラント材11をタイヤ内面1Aに塗布する、としてもよい。
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
例えば、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現できる。特許請求の範囲、明細書、および図面中のフローに関して、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
1…タイヤ、1A…タイヤ内面、10…シーラント層、11…シーラント材、17…凹部、20…タイヤ製造装置、30…支持装置、41…ノズル、45…吐出口、50…センサ、AD…タイヤ軸方向、CD…タイヤ周方向、CD1…第1のタイヤ周方向位置、CD2…第2のタイヤ周方向位置、L3…法線、RD…タイヤ径方向。
Claims (4)
- タイヤ内面の形状を測定することと、
タイヤ内面に向けたノズルをタイヤの軸心回りに相対的に回転させながら、前記ノズルの吐出口から吐出される帯状のシーラント材を前記タイヤ内面に塗布して前記タイヤ内面にシーラント層を形成すること、
を含み、
前記タイヤの子午線断面における前記タイヤ内面の傾きに応じて前記ノズルのタイヤ径方向に対する角度を変化させて、前記ノズルの吐出口から吐出した前記シーラント材を前記タイヤ内面に塗布する、空気入りタイヤの製造方法。 - 前記タイヤ内面の形状は、タイヤ軸方向座標とタイヤ径方向座標とを示す複数の計測点で表されており、
前記複数の計測点のうち、前記ノズルの吐出口の前記タイヤ軸方向の中央部に対応する範囲内に存在する複数の計測点を抽出することと、
抽出された前記複数の計測点を近似して得られる近似線の法線に基づく角度を前記ノズルの角度に決定することと、
決定した角度に前記ノズルを制御することと、を含む、請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。 - 第1のタイヤ周方向位置及び第2のタイヤ周方向位置を含む複数のタイヤ周方向位置におけるタイヤ子午線断面に沿った前記タイヤ内面の形状を測定することと、
前記第1のタイヤ周方向位置における前記タイヤ内面の形状のうちの評価対象部位が周囲と比べて凹部となるか否かを判定することと、
前記評価対象部位が周囲と比べて凹部となると判定した場合に、凹形状が無くなるように、前記評価対象部位のタイヤ内面の形状を前記第2のタイヤ周方向位置の前記タイヤ内面の形状を用いて補正することと、を含む、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法。 - タイヤを支持する支持装置と、
帯状のシーラント材を吐出口から吐出可能なノズルと、
形状を測定可能なセンサと、を備え、
タイヤ内面に向けたノズルを前記タイヤの軸心回りに相対的に回転させながら、前記ノズルの吐出口から吐出される帯状のシーラント材を前記タイヤ内面に塗布することが可能に構成されており、
前記センサは、前記タイヤ内面の形状を測定し、
前記タイヤの子午線断面における前記タイヤ内面の傾きに応じて前記ノズルのタイヤ径方向に対する角度を変化させて、前記ノズルの吐出口から吐出した前記シーラント材を前記タイヤ内面に塗布する、空気入りタイヤの製造装置。
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EP23192438.2A EP4335632A1 (en) | 2022-09-12 | 2023-08-21 | Pneumatic tire manufacturing method and pneumatic tire manufacturing apparatus |
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US12070919B2 (en) * | 2017-12-20 | 2024-08-27 | Bridgestone Europe Nv/Sa | Method and system for applying a sealing agent to the surface of an internal cavity of a pneumatic tyre |
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2022
- 2022-09-12 JP JP2022144472A patent/JP2024039823A/ja active Pending
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