JP2024038600A - 糸巻取機 - Google Patents
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Abstract
【課題】パッケージの軸方向の一部が厚くなる現象を十分に抑制可能な糸巻取機を提供する。【解決手段】糸巻取機は、ボビンホルダと、接触ローラと、トラバースガイドと、制御装置と、を備える。ボビンホルダは、ボビンを保持する。接触ローラは、パッケージと接触して回転する。トラバースガイドは、糸走行方向において接触ローラの上流側に配置され、ボビンに巻き取られる糸に接触して当該糸をトラバースする。制御装置は、設定された動作パターンに応じてフリーレングスを周期的に変化させる。動作パターンにはフリーレングスの設定長が設定されており、動作パターンは、設定長に到達するまでフリーレングスを増減させて当該設定長に到達した後にフリーレングスを維持するか又はフリーレングスの変化速度を変えるパターンである。動作パターンの1周期には、0より大きい設定長が3つ以上含まれる。【選択図】図7
Description
本発明は、主として、糸のフリーレングスを調整可能な糸巻取機に関する。
特許文献1は、糸のフリーレングスを変化させることにより、パッケージの軸方向の一部が厚くなる現象を抑制する糸巻取機を開示する。具体的には、特許文献1の糸巻取機は、コンタクトローラをボビンから離間することで糸のフリーレングスがL1又はL2になるように制御した後に、コンタクトローラをボビンに接触させることで糸のフリーレングスが0になるように制御する。また、コンタクトローラをボビンに離間させる時間は、コンタクトローラをボビンに接触させる時間よりも短い。
特許文献2は、糸のフリーレングスを変化させる制御として、制御例(a)と制御例(b)を開示する。制御例(a)は、糸のフリーレングスを最小値から最大値まで等速で漸次増加させた後に、再び等速で最小値まで戻す。これにより、糸のフリーレングスを不連続に変化させる制御例(c)と比較して、糸の巻幅の急激な変化を抑制できる。制御例(b)は、糸のフリーレングスを最小値から最大値まで増加させる際に、フリーレングスが大きくなるに従って増加速度が大きくなるように制御する。同様に、糸のフリーレングスを最大値から最小値まで減少させる際に、フリーレングスが小さくなるに従って減少速度が小さくなるように制御する。制御例(b)を行う理由は、糸のフリーレングスが増加していくと巻幅は減少するが、このフリーレングスが大きくなるにつれて、フリーレングスの単位長さの増加あたりの巻幅減少の度合いが小さくなるからである。
特許文献1の方法では、糸のフリーレングスが0になる時間が長くなること等に起因して、パッケージの軸方向の一部が厚くなる現象を十分に抑制できない可能性がある。特許文献2の方法では、糸のフリーレングスの長さが2段階しか設定されていないので、一部の領域に糸が集中し易くなるため、パッケージの軸方向の一部が厚くなる現象を十分に抑制できない可能性がある。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、パッケージの軸方向の一部が厚くなる現象を十分に抑制可能な糸巻取機を提供することにある。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、糸巻取機は、糸をボビンに巻き取ってパッケージを製造する。糸巻取機は、ボビンホルダと、接触ローラと、トラバースガイドと、調整部と、を備える。前記ボビンホルダは、前記ボビンを保持する。前記接触ローラは、前記パッケージと接触して回転する。前記トラバースガイドは、糸走行方向において前記接触ローラの上流側に配置され、前記ボビンに巻き取られる糸に接触して当該糸をトラバースする。前記調整部は、前記トラバースガイドから前記パッケージまでの糸のフリーレングスを変化させる。前記調整部は、設定された動作パターンに応じてフリーレングスを周期的に変化させる。前記動作パターンにはフリーレングスの設定長が設定されており、前記動作パターンは、設定長に到達するまでフリーレングスを増減させて当該設定長に到達した後にフリーレングスを維持するか又はフリーレングスの変化速度を変えるパターンである。前記動作パターンの1周期には、0より大きい前記設定長が3つ以上含まれる。
これにより、従来技術と比較して、パッケージの軸方向の一部が厚くなる現象を一層抑制できる。
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記動作パターンには、少なくとも、第1設定長、第2設定長、及び第3設定長があり、3つの設定長のうち前記第1設定長が最も短い。前記調整部は、前記第1設定長から前記第2設定長まで第1速度でフリーレングスを変化させ、前記第2設定長に到達した後に第1速度よりも絶対値が小さい速度でフリーレングスを変化させるか、フリーレングスを当該第2設定長で維持する。
第1設定長から第2設定長まで高速でフリーレングスを変化させることができるので、パッケージの軸方向の一部が厚くなる現象を効果的に抑制できる。
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記動作パターンには、少なくとも、第1設定長、第2設定長、及び第3設定長があり、3つの設定長のうち前記第1設定長が最も短い。前記第1設定長から前記第2設定長まで第1速度でフリーレングスを変化させた後に、前記第2設定長から前記第3設定長まで第2速度でフリーレングスを変化させる。前記第2速度の絶対値が、前記第1速度の絶対値よりも小さい。
第2設定長から第3設定長に到達するまでにフリーレングスを連続的に変化させながらパッケージを製造できるので、パッケージの軸方向の一部が厚くなる現象が効果的に抑制される。
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記調整部は、前記第2設定長から前記第3設定長までフリーレングスを変化させた後に、前記第3設定長から前記第1設定長まで第3速度でフリーレングスを変化させる。前記第1設定長でフリーレングスを所定時間維持する。前記第2速度の絶対値が、前記第3速度の絶対値よりも小さい。
これにより、第3速度が第2速度よりも高速なので、フリーレングスが第1設定長の近傍で長時間維持されにくくなるので、パッケージの軸方向の一部が厚くなる現象をより確実に抑制できる。
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記動作パターンには、少なくとも、第1設定長、第2設定長、及び第3設定長がある。前記調整部は、前記第1設定長でフリーレングスを所定時間維持する処理、前記第2設定長でフリーレングスを所定時間維持する処理、及び前記第3設定長でフリーレングスを所定時間維持する処理を行う。
これにより、少なくとも3段階のフリーレングスでパッケージが製造されるので、パッケージの軸方向の一部が厚くなる現象を抑制できる。
前記の糸巻取機においては、前記調整部は、前記接触ローラに対する前記トラバースガイドの位置を変化させることにより、前記フリーレングスを変化させることが好ましい。
簡単な処理でフリーレングスを変化させることができる。
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る糸巻取機1の正面図である。図2は、糸巻取機1の側面図である。図3は、糸巻取機1のブロック図である。以下の説明では、糸の走行方向の上流又は下流を単に上流又は下流と称することがある。
図1に示す糸巻取機1の上流には、図略の紡糸機が配置されている。紡糸機は、糸93を製造して糸巻取機1に供給する。糸巻取機1は、ボビンホルダ41にセットされたボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する。糸93は、例えば、スパンデックス等の弾性糸、又は、ナイロン又はポリエステル等の合繊糸である。ただし、糸93の種類はこれらに限定されない。
また、図2に示すように、糸巻取機1には、ボビンホルダ41の軸方向に並ぶ複数の糸93が供給される。また、ボビン91は、ボビンホルダ41の軸方向に並べて複数設けられている。糸巻取機1は、複数の糸93をそれぞれボビン91に巻き取って、複数のパッケージ94を製造する。
以下、糸巻取機1の詳細について説明する。図1に示すように、糸巻取機1は、フレーム11と、第1ハウジング20と、第2ハウジング30と、ターレット板(ボビンホルダ移動機構)40と、を備える。
フレーム11は、糸巻取機1が備える各部を保持する部材である。フレーム11には、第1ハウジング20及び第2ハウジング30が取り付けられている。
第1ハウジング20には、トラバース装置21が取り付けられている。トラバース装置21は、後述するトラバースガイド23が糸93と係合した状態で巻幅方向(ボビンホルダ41の軸方向)に往復動することにより、下流側に送られる糸93をトラバースさせる。この糸93のトラバース動作によりボビン91に糸層が形成される。図3に示すように、トラバース装置21は、トラバースカム22と、トラバースガイド23と、を備える。
トラバースカム22は、ボビンホルダ41と平行に配置されたローラ状の部材である。トラバースカム22の外周面には、螺旋状のカム溝が形成されている。トラバースカム22は、トラバースモータ51により回転駆動される。
トラバースモータ51は、制御装置50によって制御される。複数のトラバースガイド23は、複数の糸93とそれぞれ係合する。トラバースガイド23の先端は例えば略U字状のガイド部を有しており、糸93を巻幅方向で挟み込むようにして、糸93と係合する。トラバースガイド23の基端はトラバースカム22のカム溝に位置している。この構成により、トラバースカム22が回転駆動されることにより、トラバースガイド23を巻幅方向に往復動させることができる。
制御装置(調整部)50は公知のコンピュータとして構成されており、CPU、RAM、SSD等を備える。CPUは、プロセッサの一種である。SSDには、糸巻取機1を制御するためのプログラム及びデータが予め記憶されている。以上により、制御装置50は、SSDに記憶されたプログラムをRAMに読み出してCPUが実行することにより、糸巻取機1に対する様々な制御を行うことができる。なお、SSDに代えて、HDD又はフラッシュメモリ等の他の記憶装置を用いることもできる。
第2ハウジング30には、接触ローラ31が回転可能に取り付けられている。接触ローラ31は、接触ローラモータ52により回転駆動される。接触ローラ31は、図略のアームを介して第2ハウジング30に取り付けられている。このアームが搖動することにより、接触ローラ31は、第2ハウジング30に対して鉛直方向に相対移動可能である。本実施形態の接触ローラ31は自重で下方に移動するが、シリンダ等のアクチュエータにより上下に駆動されてもよい。
接触ローラ31はトラバースガイド23よりも糸走行方向の下流側に配置されている。接触ローラ31は、糸93の巻取り時にパッケージ94の糸層に所定の圧力で接触しながら回転することにより、トラバースガイド23からの糸93をパッケージ94の糸層に送るとともにパッケージ94の糸層形状を整える。なお、接触ローラモータ52を省略して、接触ローラ31をパッケージ94に対して従動回転させてもよい。
第2ハウジング30には、操作パネル32が設けられている。操作パネル32は、オペレータによって操作される装置である。オペレータは、操作パネル32を操作することにより、糸巻取機1に対して指示を行う。オペレータが行う指示としては、例えば、巻取りの開始、巻取りの停止、巻取条件の変更等である。
ターレット板40は、円板状の部材である。ターレット板40は、フレーム11に回転可能に取り付けられている。ターレット板40の回転軸は、ターレット板40の円の中心位置である。ターレット板40は、図3に示すターレットモータ53により回転駆動される。ターレットモータ53は、制御装置50により制御される。
ターレット板40のうち、円の中心位置を挟んで対向する2箇所には、それぞれボビンホルダ41が設けられている。それぞれのボビンホルダ41には、軸方向に並びて複数のボビン91を装着可能である。ターレット板40を回転させることにより、2つのボビンホルダ41の位置を変更することができる。図1に示すように、ボビンホルダ41の位置として、巻取位置と待機位置とが存在する。糸巻取機1は、巻取位置にあるボビンホルダ41に装着されたボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する。なお、2つのボビンホルダ41の位置を変更可能であれば、ターレット板40に代えて別の装置を用いてもよい。
2つのボビンホルダ41は、ボビンホルダ41の軸位置を回転中心として、ターレット板40に対して回転可能に取り付けられている。図3に示すように、2つのボビンホルダ41には、それぞれボビンホルダモータ54が取り付けられている。ボビンホルダ41は、ボビンホルダモータ54により回転駆動される。ボビンホルダモータ54は、制御装置50により制御される。
また、巻取位置にあるボビンホルダ41に装着されたボビン91に所定量の糸93を巻き取って、パッケージ94が満巻となった場合、ターレット板40が回転することにより、ボビンホルダ41の位置が切り替わる。その後、満巻となって待機位置にあるボビンホルダ41のパッケージ94が回収され、巻取位置にあるボビンホルダ41のボビン91に対して糸93が巻き取られる。パッケージ94が回収されたボビンホルダ41には、新たにボビン91が装着される。
図3に示すように、糸巻取機1は、昇降装置60を備える。昇降装置60は、第1ハウジング20及び第2ハウジング30を一体的に昇降させる。これにより、巻取位置にあるボビンホルダ41から、トラバース装置21及び接触ローラ31までの距離を変化させることができる。第1ハウジング20及び第2ハウジング30は、図略の昇降部材に取り付けられている。この昇降部材には、ボールナット61が取り付けられている。また、フレーム11にはネジ棒62が取り付けられている。昇降モータ63を用いてネジ棒62を回転させることにより、第1ハウジング20及び第2ハウジング30を昇降させることができる。昇降モータ63は、制御装置50により制御される。なお、昇降装置60は、ボールネジ以外の構成を用いて第1ハウジング20又は第2ハウジング30を昇降させてもよい。例えば、ボールネジに代えてシリンダを用いて第1ハウジング20又は第2ハウジング30を昇降させてもよい。
次に、パッケージ94の軸方向の一部が厚くなる現象(耳高)について説明する。
上述したように、糸93はトラバース装置21によりトラバースされながらボビン91に巻き取られる。トラバース幅の両端ではトラバース方向が反転するため、糸93のトラバース速度が徐々に減少して0になり、その後にトラバース速度が増大する。そのため、トラバース幅の両端及びその近傍に糸93が位置する時間が長くなり、その結果、パッケージ94の軸方向の両端の糸層が厚くなり易い。特に、糸93が弾性糸である場合は、糸93の摩擦係数が高いため、糸93の滞留がパッケージ94の形状に反映され易い。その結果、パッケージ94の両端の糸層が顕著に厚くなる可能性がある。この種のパッケージ94は後工程でスムーズに糸93を解舒できない可能性があるため、糸層の厚さを均一に近づけることが好ましい。
パッケージ94の糸層の厚さを均一にするためには、トラバース幅を一時的に短くすることが好ましい。これにより、パッケージ94の両端に巻かれる糸93が少なくなるため、パッケージ94の糸層の厚さを均一に近づけることができる。
糸巻取機1は、糸93のフリーレングスを変化させることにより、トラバース幅を調整する。フリーレングスとは、トラバースガイド23からパッケージ94までの糸93のうち、何らかの部材に保持されていない部分の糸93の長さ(又はこの糸93の長さを軸方向に垂直な平面に射影した長さ)である。従って、本実施形態では、トラバースガイド23から接触ローラ31までの糸93の長さがフリーレングスである。
上述した昇降装置60を用いることにより、ボビンホルダ41からトラバースガイド23までの距離を変化させることができる。また、上述したように接触ローラ31は上下に揺動可能であるため、第2ハウジング30が上昇したとしても、接触ローラ31はパッケージ94との接触を維持できる。従って、昇降装置60を用いることにより、トラバースガイド23から接触ローラ31までの距離を変化させることができる。図4に示すように、トラバースガイド23から接触ローラ31までの距離を長くした場合、糸93のフリーレングスが長くなる(図4のFL1からFL2になる)。これにより、トラバース遅れが長くなり(図4のD1からD2になる)、トラバース幅が短くなる。その結果、パッケージ94の両端に巻かれる糸93が少なくなるため、パッケージ94の糸層の厚さを均一に近づけることができる。
本実施形態では、トラバースガイド23によりトラバースされた糸93は、接触ローラ31によってパッケージ94に案内される。糸巻取機1は、この構成に限られず、図5に示すように、糸93をパッケージ94に案内するための糸送りローラ35を備えていてもよい。詳細には、糸送りローラ35はパッケージ94から離間するように配置される。トラバースガイド23によりトラバースされた糸93は、糸送りローラ35に案内される。糸送りローラ35は図略のモータにより回転駆動されており、糸送りローラ35が糸93をパッケージ94に案内する。この構成では、トラバースガイド23から糸送りローラ35までの糸93の長さ(図5のFLa)と、糸送りローラ35からパッケージ94までの糸93の長さ(図5のFLb)と、の和がフリーレングスに相当する。また、この構成では、トラバースガイド23と糸送りローラ35の少なくとも一方の位置を変化させることにより、トラバースガイド23から糸送りローラ35までの距離を変化させて、フリーレングス(図5のFLa)を変化させることができる。例えば上述した昇降装置60を用いることにより、トラバースガイド23の位置を変化させることができる。あるいは、昇降装置60と同種の装置を糸送りローラ35に適用することにより、糸送りローラ35の位置を変化させることもできる。また、糸送りローラ35とパッケージ94の少なくとも一方の位置を変化させることにより、糸送りローラ35からパッケージ94までの距離を変化させて、フリーレングス(図5のFLb)を変化させることもできる。例えばターレット板40を用いてボビンホルダ41の位置を変化させることにより、パッケージ94の位置を変化させることができる。
次に、フリーレングスの変化とパッケージ94の形状との関係、特に本実施形態でどのようにフリーレングスを変化させるかについて説明する。
図6には、フリーレングスを変化させる比較例としての動作パターン1から動作パターン3が示されている。比較例とは、本実施形態と比較するために例示する技術であり、従来例とは限らない。図7には、本実施形態の動作パターンA及び動作パターンBが示されている。動作パターンとは、フリーレングスをどのように変化させるかを定めたものである。動作パターンは周期的であり、糸巻取機1は、同じ動作パターンを繰り返し適用してフリーレングスを変化させる。
動作パターンには、1又は複数の設定長が設定される。設定長とは、フリーレングスを変化させる制御において、フリーレングスの変化速度(単位時間あたりのフリーレングスの変化長さ)を切り替える際のフリーレングスの長さである。つまり、フリーレングスを変化させて設定長に達したタイミングで、フリーレングスの変化速度を切り替える(変化速度を0に切り替えることを含む)。なお、この制御では、実際にフリーレングスを計測して制御を行う必要はなく、フリーレングスに対応する別のパラメータに基づいて制御を行ってもよい。別のパラメータとは、例えば、制御装置50が昇降装置60に出力する指令値又は昇降装置60に設けられたエンコーダの計測値等である。即ち、実質的にフリーレングスの長さに基づいてフリーレングスを変化させる制御が行われていればよい。
比較例の動作パターン1では、フリーレングスが常に第1設定長である。フリーレングスが変化しないため、上述した理由により、パッケージ94の軸方向の両端の糸層が厚くなる(鎖線円で示す箇所)。
比較例の動作パターン2では、第1設定長と第2設定長が設定されている。動作パターン2は、特許文献2に開示された制御例(a)に相当する。第2設定長は、第1設定長よりもフリーレングスが長い(トラバース幅が短い)。動作パターン2では、フリーレングスを第1設定長から第2設定長まで変化させて、第2設定長に到達したら即座に第1設定長まで変化させる。その後、フリーレングスを第1設定長で所定時間維持する。動作パターン2では、第1設定長から第2設定長まで変化させて戻す間においてトラバース幅が狭くなるため、動作パターン1よりはパッケージ94の軸方向の両端の糸層の厚さを抑えることができる。しかし、1周期のうちフリーレングスが第1設定長及びその近傍にある時間が長いため、パッケージ94の軸方向の両端の糸層の厚さを十分に抑えることは困難である。
比較例の動作パターン3では、第1設定長と第2設定長が設定されている。第2設定長は、第1設定長よりもフリーレングスが長い(トラバース幅が短い)。動作パターン3では、フリーレングスを第1設定長から第2設定長まで変化させて、フリーレングスを第2設定長で所定時間維持する。その後、フリーレングスを第1設定長まで変化させて、フリーレングスを第1設定長で所定時間維持する。動作パターン2と比較して、フリーレングスが第1設定長から離れる時間が長いため、パッケージ94の軸方向の両端の糸層の厚さを更に抑えることができる。しかし、動作パターン3では、フリーレングスを第2設定長で所定時間維持するため、それに伴い、パッケージ94の軸方向の中途部の特定の箇所において糸層が厚くなり易い(二重の鎖線円で示す箇所)。そのため、パッケージ94の糸層の厚さが不均一になるため、改善の余地がある。なお、第1設定長で維持する時間が長くなるほど軸方向の両端の糸層が厚くなり、第2設定長で維持する時間が長くなるほど中途部の特定の箇所の糸層が厚くなる。そのため、動作パターン3のパラメータを変化させても改善は困難である。
次に、本実施形態の動作パターンA及び動作パターンBについて説明する。本実施形態では、制御装置50の制御により、フリーレングスが変化させられる。以下の説明では、説明を簡潔にするために、「制御装置50がフリーレングスを変化させる」と簡単に記載するが、実際には、制御装置50は、所定のフリーレングスを実現するように昇降装置60の昇降モータ63を制御してフリーレングスを変化させる。昇降モータ63は電動モータであるため、予め定めた任意の回転回数(即ち、任意の昇降量、任意のフリーレングスの長さ)で回転を停止させることができる。従って、電動モータは、様々な動作パターンに容易に適用可能なアクチュエータである。ただし、昇降モータ63に代えて上述したシリンダを用いた場合であっても、シリンダロッドをストローク途中で停止させる構成等を用いることにより、同種の制御を実現可能である。
本実施形態の動作パターンAでは、第1設定長と第2設定長と第3設定長が設定されている。最も短い設定長は第1設定長である。第2設定長は第3設定長よりも長い。制御装置50は、フリーレングスを第1速度で第1設定長から第2設定長まで変化させる。第1速度とは、フリーレングスを変化させる速度である。次に、制御装置50は、フリーレングスを第2速度で第2設定長から第3設定長まで変化させる。第2速度の絶対値は、0以外の値であり、かつ、第1速度の絶対値よりも小さい。本実施形態の第2速度はフリーレングスが小さくなるように変化させるが、フリーレングス大きくなるように変化させてもよい。その後、制御装置50は、フリーレングスを第3速度で第3設定長から第1設定長まで変化させ、フリーレングスを第1設定長で所定時間維持する。
動作パターンAでは、3つの設定長が設定されている点において、比較例と異なる。これにより、1周期におけるフリーレングスが特定の値にあまり集中せず、フリーレングスが様々な値を取るように分散できるので、パッケージ94の糸層の厚さが均一になり易い。特に、第2速度が0ではないので、フリーレングスが第2設定長又はその近傍にある時間を短くすることができるため、動作パターン3と比較しても、良好な形状のパッケージ94を製造できる。
なお、本実施形態では、第1速度と第3速度の絶対値は同じであるが、異なっていてもよい。ただし、第2速度の絶対値は、第3速度の絶対値よりも小さいことが好ましい。これにより、フリーレングスが第1設定長の近傍にある時間を短くすることができる。動作パターンAでは、3つの設定長が設定されるが4つ以上の設定長が設定されてもよい。また、本実施形態では、ある設定長から別の設定長まで等速でフリーレングスを変化させるが、非等速でフリーレングスを変化させてもよい。
本実施形態の動作パターンBでは、第1設定長と第2設定長と第3設定長と第4設定長とが設定されている。最も短い設定長は第1設定長である。第2設定長は第3設定長よりも長く、第3設定長は第4設定長よりも長い。制御装置50は、フリーレングスを第1速度で第1設定長から第2設定長まで変化させる。その後、制御装置50は、フリーレングスを第2設定長で所定時間維持する。次に、制御装置50は、フリーレングスを第3速度で第2設定長から第1設定長まで変化させる。その後、制御装置50は、フリーレングスを第1設定長で所定時間維持する。次に、制御装置50は、同様の処理を第3設定長及び第4設定長について行う。フリーレングスの変化速度や変化態様は、第2設定長の場合と同じである。
このように、動作パターンBでは、フリーレングスを第N設定長で維持する処理(N=1,2,3,4)が含まれる。そして、動作パターンBでは、3つ以上の設定長が設定されている。これにより、1周期におけるフリーレングスが特定の値にあまり集中せず、フリーレングスが様々な値を取るように分散できるので、パッケージ94の糸層の厚さが均一になり易い。
なお、本実施形態では、第1速度と第3速度の絶対値は同じであるが、異なっていてもよい。また、第2設定長、第3設定長、第4設定長から、第1設定長に戻さずに別の設定長までフリーレングスを変化させてもよい。例えば、第1設定長、第2設定長、第3設定長、第4設定長の順に設定長を変化させてもよい。動作パターンBでは、4つの設定長が設定されるが3つの設定長が設定されてもよいし、5つ以上の設定長が設定されてもよい。また、本実施形態では、ある設定長から別の設定長まで等速でフリーレングスを変化させるが、非等速でフリーレングスを変化させてもよい。
以上に説明したように、本実施形態の糸巻取機1は、糸93をボビン91に巻き取ってパッケージ94を製造する。糸巻取機1は、ボビンホルダ41と、接触ローラ31と、トラバースガイド23と、制御装置50と、を備える。ボビンホルダ41は、ボビン91を保持する。接触ローラ31は、パッケージ94と接触して回転する。トラバースガイド23は、糸走行方向において接触ローラ31の上流側に配置され、ボビン91に巻き取られる糸93に接触して糸93をトラバースする。制御装置50は、トラバースガイド23からパッケージ94までの糸93のフリーレングスを変化させる。制御装置50は、設定された動作パターンに応じてフリーレングスを周期的に変化させる。前記動作パターンにはフリーレングスの設定長が設定されており、前記動作パターンは、設定長に到達するまでフリーレングスを増減させて設定長に到達した後にフリーレングスを維持するか又はフリーレングスの変化速度を変えるパターンである。前記動作パターンの1周期には、0より大きい設定長が3つ以上含まれる。
これにより、従来技術と比較して、パッケージ94の軸方向の一部が厚くなる現象を一層抑制できる。
本実施形態の糸巻取機1において、動作パターンA,Bには、少なくとも、第1設定長、第2設定長、及び第3設定長があり、3つの設定長のうち第1設定長が最も短い。制御装置50は、第1設定長から第2設定長まで第1速度でフリーレングスを変化させ、第2設定長に到達した後に第1速度よりも絶対値が小さい速度でフリーレングスを変化させるか(動作パターンA)、フリーレングスを第2設定長で維持する(動作パターンB)。
第2設定長に到達した後では、フリーレングスが第1速度よりも低速で変化するか、フリーレングスが一時的に変化しない。それと比較すれば、第1設定長から第2設定長までは比較的高速でフリーレングスが変化することになる。そのため、第1設定長及びその付近でフリーレングスが維持される時間を短くできるので、パッケージ94の軸方向の一部が厚くなる現象を効果的に抑制できる。
本実施形態の糸巻取機1において、動作パターンAには、少なくとも、第1設定長、第2設定長、及び第3設定長があり、3つの設定長のうち第1設定長が最も短い。制御装置50は、第1設定長から第2設定長まで第1速度でフリーレングスを変化させた後に、第2設定長から第3設定長まで第2速度でフリーレングスを変化させる。第2速度の絶対値が、第1速度の絶対値よりも小さい。
第2設定長から第3設定長に到達するまでにフリーレングスを連続的に変化させながらパッケージ94を製造できるので、パッケージ94の軸方向の一部が厚くなる現象が効果的に抑制される。
本実施形態の糸巻取機1において、動作パターンAでは、第2設定長から第3設定長までフリーレングスを変化させた後に、第3設定長から第1設定長まで第3速度でフリーレングスを変化させる。第1設定長でフリーレングスを所定時間維持する。第2速度の絶対値が、第3速度の絶対値よりも小さい。
これにより、第3速度が第2速度よりも高速なので、フリーレングスが第1設定長の近傍で長時間維持されにくくなるので、パッケージ94の軸方向の一部が厚くなる現象をより確実に抑制できる。
本実施形態の糸巻取機1において、動作パターンBには、少なくとも、第1設定長、第2設定長、及び第3設定長がある。制御装置50は、第1設定長でフリーレングスを所定時間維持する処理、第2設定長でフリーレングスを所定時間維持する処理、及び第3設定長でフリーレングスを所定時間維持する処理を行う。
これにより、少なくとも3段階のフリーレングスでパッケージ94が製造されるので、パッケージ94の軸方向の一部が厚くなる現象を抑制できる。
本実施形態の糸巻取機1において、制御装置50は、接触ローラ31に対するトラバースガイド23の位置を変化させることにより、フリーレングスを変化させる。
簡単な処理でフリーレングスを変化させることができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上述したフリーレングスの変化方法は一例であり、トラバースガイド23の位置を固定して接触ローラ31の位置を変化させてもよい。また、トラバースガイド23と接触ローラ31の両方の位置を変化させてもよい。また、パッケージ94と接触ローラ31の距離を変化させてもよい。
上記実施形態では、糸巻取機1の全体的な制御を行う制御装置50がフリーレングスを変更する制御を行うが、フリーレングスを変更する制御を行う専用の制御装置を設けてもよい。
上記実施形態のトラバース装置21はカムドラム式であるが、トラバースガイド23を巻幅方向に往復動させることが可能であれば異なる構成であってもよい。例えば、トラバース装置21に代えて、ベルト式のトラバース装置を用いることもできる。
上記実施形態では、紡糸機が製造した糸を巻き取る糸巻取機に本発明を適用する例を説明したが、この糸巻取機に代えて、仮撚加工機又は巻返し機にも本発明を適用できる。
1 糸巻取機
21 トラバース装置
23 トラバースガイド
31 接触ローラ
41 ボビンホルダ
50 制御装置(調整部)
91 ボビン
93 糸
94 パッケージ
21 トラバース装置
23 トラバースガイド
31 接触ローラ
41 ボビンホルダ
50 制御装置(調整部)
91 ボビン
93 糸
94 パッケージ
Claims (6)
- 糸をボビンに巻き取ってパッケージを製造する糸巻取機において、
前記ボビンを保持するボビンホルダと、
前記パッケージと接触して回転する接触ローラと、
糸走行方向において前記接触ローラの上流側に配置され、前記ボビンに巻き取られる糸に接触して当該糸をトラバースするトラバースガイドと、
前記トラバースガイドから前記パッケージまでの糸のフリーレングスを変化させる調整部と、
を備え、
前記調整部は、設定された動作パターンに応じてフリーレングスを周期的に変化させ、
前記動作パターンにはフリーレングスの設定長が設定されており、前記動作パターンは、設定長に到達するまでフリーレングスを増減させて当該設定長に到達した後にフリーレングスを維持するか又はフリーレングスの変化速度を変えるパターンであり、
前記動作パターンの1周期には、0より大きい前記設定長が3つ以上含まれることを特徴とする糸巻取機。 - 請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記動作パターンには、少なくとも、第1設定長、第2設定長、及び第3設定長があり、3つの設定長のうち前記第1設定長が最も短く、
前記調整部は、前記第1設定長から前記第2設定長まで第1速度でフリーレングスを変化させ、前記第2設定長に到達した後に第1速度よりも絶対値が小さい速度でフリーレングスを変化させるか、フリーレングスを当該第2設定長で維持することを特徴とする糸巻取機。 - 請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記動作パターンには、少なくとも、第1設定長、第2設定長、及び第3設定長があり、3つの設定長のうち前記第1設定長が最も短く、
前記調整部は、
前記第1設定長から前記第2設定長まで第1速度でフリーレングスを変化させた後に、
前記第2設定長から前記第3設定長まで第2速度でフリーレングスを変化させ、
前記第2速度の絶対値が、前記第1速度の絶対値よりも小さいことを特徴とする糸巻取機。 - 請求項3に記載の糸巻取機であって、
前記調整部は、
前記第2設定長から前記第3設定長までフリーレングスを変化させた後に、前記第3設定長から前記第1設定長まで第3速度でフリーレングスを変化させ、
前記第1設定長でフリーレングスを所定時間維持し、
前記第2速度の絶対値が、前記第3速度の絶対値よりも小さいことを特徴とする糸巻取機。 - 請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記動作パターンには、少なくとも、第1設定長、第2設定長、及び第3設定長があり、
前記調整部は、
前記第1設定長でフリーレングスを所定時間維持する処理、
前記第2設定長でフリーレングスを所定時間維持する処理、及び
前記第3設定長でフリーレングスを所定時間維持する処理を行うことを特徴とする糸巻取機。 - 請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記調整部は、前記接触ローラに対する前記トラバースガイドの位置を変化させることにより、前記フリーレングスを変化させることを特徴とする糸巻取機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022142719A JP2024038600A (ja) | 2022-09-08 | 2022-09-08 | 糸巻取機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022142719A JP2024038600A (ja) | 2022-09-08 | 2022-09-08 | 糸巻取機 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2024038600A true JP2024038600A (ja) | 2024-03-21 |
Family
ID=90309019
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022142719A Pending JP2024038600A (ja) | 2022-09-08 | 2022-09-08 | 糸巻取機 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2024038600A (ja) |
-
2022
- 2022-09-08 JP JP2022142719A patent/JP2024038600A/ja active Pending
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