JP2024036801A - 自動列車運転装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】運転士が乗車しない場合であっても安全確保のための処理が遅れてしまうことを防止することができる自動列車運転装置を提供する。【解決手段】駅を出発してから次駅までの列車の走行状態を走行パターンに従って制御する自動列車運転装置としての車上制御装置14は、前記列車の加減速度を検出する加減速度検出部143と、前記列車の走行状態に応じた正常判定閾値と検出された前記列車の加減速度を比較して列車走行制御の正常判定を行う正常判定部144と、前記列車走行制御が正常であると判定されない場合に前記列車走行制御に応じた非正常時処理を実施する処理部145と、を含む。【選択図】図2
Description
本発明は、駅を出発してから次駅までの列車の走行状態を走行パターンに従って制御するように構成された自動列車運転装置に関する。
自動列車運転装置の一例として、特許文献1に記載された列車運転制御装置が知られている。特許文献1に記載された列車運転制御装置は、列車の走行する線路の所定の線区情報を記憶する、地上装置に設けられた線区情報記憶手段と、前記地上装置に記憶されている所定の線区情報を車上に向けて送信する送信手段と、送信されてきた所定の線区情報に基づいて所定の運転パターンを作成する、前記線路を走行する列車に搭載された車上装置に設けられた運転パターン作成手段と、作成された所定の運転パターンに基づいて列車を加減速制御する制御手段と、を有している。
列車の自動運転が普及すれば運転士の要員確保や養成に関する費用削減を図ることができる。しかし、踏切などがある線区においては、異常時の安全確保の観点などから列車の運転を完全に自動化(無人化)することは難しい。そのため、前方監視などを行うための係員(運転士免許を持たない添乗員)を乗車させるGoA2.5レベルの自動運転(添乗員付き自動運転)が検討されている。
列車に異常が発生した場合には安全確保のための処理が必要である。例えば、列車が脱線するおそれのあるような重大な異常が発生した場合には、非常ブレーキによって列車を直ちに停止させる必要がある。列車の運転士は、自身の運転操作と列車の挙動から異常の予兆や異常の発生などの正常でない状態に気づくことができる。したがって、運転士が乗車している列車においては、安全確保のための処理が速やかに実施され得る。しかし、GoA2.5レベルの自動運転が行われる列車には運転士が乗車しないため、安全確保のための処理が遅れてしまうおそれがある。
そこで、本発明は、運転士が乗車しない場合であっても安全確保のための処理が遅れてしまうことを防止することができる自動列車運転装置を提供することを目的とする。
本発明の一側面によると、駅を出発してから次駅までの列車の走行状態を走行パターンに従って制御する自動列車運転装置は、前記列車の加減速度を検出する検出部と、前記列車の走行状態に応じた正常判定閾値と検出された前記列車の加減速度を比較して列車走行制御の正常判定を行う判定部と、前記列車走行制御が正常であると判定されない場合に前記列車走行制御に応じた非正常時処理を実施する処理部と、を含む。
本発明によれば、運転士が乗車しない場合であっても安全確保のための処理が遅れてしまうことを防止することができる自動列車運転装置を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る自動列車運転装置が適用された列車制御システムの一例の概略構成を示す図である。図1に示された列車制御システムにおいて、複数の駅(図1にはそのうちの1つの駅Sのみが示されている)を経由する列車走行路Rには、地上側設備として複数の地上子が設置されている。列車走行路Rを走行する列車Tには、車上側設備として車上子11、速度発電機12、車上データベース13及び自動列車運転装置としての車上制御装置14が搭載されている。なお、特に限定されないが、本実施形態においては、GoA2.5レベルの自動運転が行われ、列車Tには前方監視などを行うための係員が乗車しているが、運転士は乗車していないものとする。
[地上側設備]
前記地上側設備としての複数の地上子は、列車走行路Rにおける互いに異なる位置に設置されている。前記複数の地上子のそれぞれは、自身の上方を通過する列車Tの車上子11に対して自身の識別情報(以下「地上子ID」という)や各種の情報などを地上子情報として発信するように構成されている。本実施形態において、前記複数の地上子は、2つの定位置停止制御地上子(以下「TASC地上子」という)21、22を含む。2つのTASC地上子21、22は、主に各駅(ここでは駅S)における列車停止位置(以下「駅停止位置」という)Xに列車Tを停止させるために利用される。また、前記複数の地上子は、各駅(ここでは駅S)の出口側に設置された出発信号機30に連動する4つの地上子31~34と、各駅(ここでは駅S)の入口側に設置された場内信号機40に連動する4つの地上子41~44と、を含む。
前記地上側設備としての複数の地上子は、列車走行路Rにおける互いに異なる位置に設置されている。前記複数の地上子のそれぞれは、自身の上方を通過する列車Tの車上子11に対して自身の識別情報(以下「地上子ID」という)や各種の情報などを地上子情報として発信するように構成されている。本実施形態において、前記複数の地上子は、2つの定位置停止制御地上子(以下「TASC地上子」という)21、22を含む。2つのTASC地上子21、22は、主に各駅(ここでは駅S)における列車停止位置(以下「駅停止位置」という)Xに列車Tを停止させるために利用される。また、前記複数の地上子は、各駅(ここでは駅S)の出口側に設置された出発信号機30に連動する4つの地上子31~34と、各駅(ここでは駅S)の入口側に設置された場内信号機40に連動する4つの地上子41~44と、を含む。
2つのTASC地上子21、22は、駅Sに向かう列車Tから見て、駅Sの駅停止位置Xの手前に設置されている。以下、2つのTASC地上子21、22のうち、駅Sの駅停止位置Xから離れている方の地上子21を「第1TASC地上子21」といい、駅Sの駅停止位置Xに近い方の地上子22を「第2TASC地上子22」という。
第1TASC地上子21は、駅Sに向かう列車Tから見て駅Sの手前であって、且つ駅Sに近い位置に設置されている。第2TASC地上子22は、駅S内において駅停止位置Xの手前数十メートル(例えば、30m)の位置に設置されている。第1TASC地上子21及び第2TASC地上子22は、自身の地上子ID及び駅Sの駅停止位置Xまでの距離情報を前記地上子情報として発信する。
出発信号機30に連動する4つの地上子31~34は、出発信号機30に向かう列車Tから見て出発信号機30の手前に設置されている。以下、出発信号機30に連動する4つの地上子31~34のうち、最も手前に設置された地上子31を「第1ロング地上子31」といい、残りの3つの地上子32~34を「第1直下地上子32」、「第1冒進防護地上子33」及び「第1予備直下地上子34」という。
第1ロング地上子31は、出発信号機30から最も離れた位置に設置されている。第1ロング地上子31は、列車Tの車上子11に対して出発信号機30の現示情報を最初に発信する地上子である。第1ロング地上子31は、駅Sに向かう列車Tから見て第1TASC地上子21よりも手前に設置されている。第1ロング地上子31は、出発信号機30が進行現示の場合、自身の地上子ID及び出発信号機30が進行現示であることを示す情報(以下「出発信号機30の進行現示情報」という)を前記地上子情報として発信する。また、第1ロング地上子31は、出発信号機30が停止現示の場合、自身の地上子ID及び出発信号機30が停止現示であることを示す情報(以下「出発信号機30の停止現示情報」という)を前記地上子情報として発信する。
第1直下地上子32、第1冒進防護地上子33及び第1予備直下地上子34は、駅Sにおける駅停止位置Xと出発信号機30との間に、つまり、駅Sの出口近傍に列車Tの走行方向にこの順序で設置されている。
第1直下地上子32は、駅Sにおける駅停止位置Xに近い位置に設置されている。第1直下地上子32は、出発信号機30が進行現示の場合、自身の地上子ID及び出発信号機30の進行現示情報を前記地上子情報として発信する。また、第1直下地上子32は、出発信号機30が停止現示の場合、自身の地上子ID及び列車Tに非常ブレーキを作動させる(つまり、列車Tを緊急停止させる)即時停止情報を前記地上子情報として発信する。
第1冒進防護地上子33は、第1直下地上子32の内方、すなわち、第1直下地上子32よりも出発信号機30に近い位置に設置されている。第1予備直下地上子34は、第1冒進防護地上子33の内方、すなわち、第1冒進防護地上子33よりもさらに出発信号機30に近い位置(出発信号機30の直前)に設置されている。第1冒進防護地上子33及び第1予備直下地上子34は、第1直下地上子32と同様、出発信号機30が進行現示の場合には自身の地上子ID及び出発信号機30の進行現示情報を前記地上子情報として発信し、出発信号機30が停止現示の場合には自身の地上子ID及び前記即時停止情報を前記地上子情報として発信する。
場内信号機40に連動する4つの地上子41~44は、場内信号機40に向かう列車Tから見て場内信号機40の手前に設置されている。以下、場内信号機40に連動する4つの地上子41~44のうち、最も手前に設置された地上子41を「第2ロング地上子41」といい、残りの3つの地上子42~44を「第2直下地上子42」、「第2冒進防護地上子43」及び「第2予備直下地上子44」という。
第2ロング地上子41は、場内信号機40から最も離れた位置に設置されている。第2ロング地上子41は、列車Tの車上子11に対して場内信号機40の現示情報を最初に発信する地上子である。第2ロング地上子41は、場内信号機40の手前数百メートル(例えば、600m)の位置に設置されている。第2ロング地上子41は、場内信号機40が進行現示の場合、自身の地上子ID及び場内信号機40が進行現示であることを示す情報(以下「場内信号機40の進行現示情報」という)を前記地上子情報として発信する。また、第2ロング地上子41は、場内信号機40が停止現示の場合、自身の地上子ID及び場内信号機40が停止現示であることを示す情報(以下「場内信号機40の停止現示情報」という)を前記地上子情報として発信する。
第2直下地上子42、第2冒進防護地上子43及び第2予備直下地上子44は、場内信号機40が停止現示のときに列車Tを停止させる列車停止位置(以下「信号停止位置」という)Yと場内信号機40との間に、列車Tの走行方向にこの順序で設置されている。本実施形態において、信号停止位置Yは、場内信号機40の手前数十メートル(例えば、80m)の位置に設定される。
第2直下地上子42は、信号停止位置Yに近い位置に設置されている。第2直下地上子42は、場内信号機40が進行現示の場合、自身の地上子ID及び場内信号機40の進行現示情報を前記地上子情報として発信する。また、第2直下地上子42は、場内信号機40が停止現示の場合、自身の地上子ID及び前記即時停止情報を前記地上子情報として発信する。
第2冒進防護地上子43は、第2直下地上子42の内方、すなわち、第2直下地上子42よりも場内信号機40に近い位置に設置されている。第2予備直下地上子44は、第2冒進防護地上子43の内方、すなわち、第2冒進防護地上子43よりもさらに場内信号機40に近い位置(場内信号機40の直前)に設置されている。第2冒進防護地上子43及び第2予備直下地上子44は、第2直下地上子42と同様、場内信号機40が進行現示の場合には自身の地上子ID及び場内信号機40の進行現示情報を前記地上子情報として発信し、場内信号機40が停止現示の場合には自身の地上子ID及び前記即時停止情報を地上子情報として発信する。
[車上側設備]
車上子11は、列車Tの下部(好ましくは前側下部)に取り付けられている。車上子11は、列車Tが列車走行路Rに設置された各地上子の上方を通過する際に各地上子から発信された前記地上子情報を受信する。車上子11によって受信された前記地上子情報は、車上制御装置14へと送られる。
車上子11は、列車Tの下部(好ましくは前側下部)に取り付けられている。車上子11は、列車Tが列車走行路Rに設置された各地上子の上方を通過する際に各地上子から発信された前記地上子情報を受信する。車上子11によって受信された前記地上子情報は、車上制御装置14へと送られる。
速度発電機12は、列車Tの車軸に取り付けられている。速度発電機12は、列車Tの車軸の回転数に応じた信号を出力する。速度発電機12の出力信号は、車上制御装置14へと送られる。
車上データベース13には、列車走行路Rに関する情報や各地上子に関する情報が格納されている。列車走行路Rに関する情報は、列車走行路Rにおける最高速度情報(線区最高速度や駅間最高速度)、信号機に関する情報、及び列車走行路Rにおける速度制限区間に関する情報(速度制限区間の位置、長さ及び制限速度など)を含む。前記速度制限区間は、列車走行路Rの分岐部による分岐速度制限区間及び列車走行路Rの曲線部による曲線速度制限区間を含む。前記地上子に関する情報は、列車走行路Rに設置された各地上子の位置情報(例えば地上子IDと対応付けられた位置情報)を含む。
車上制御装置14は、図2に示されるように、速度・距離検出部141と、走行制御部142と、を有する。
速度・距離検出部141は、速度発電機12の出力信号に基づいて列車Tの速度及び走行距離を検出(算出)する。
走行制御部142は、列車Tの走行状態を制御する。本実施形態において、走行制御部142は、力行ノッチ指令を出力することにより、列車Tの駆動装置15の動力(駆動力)を列車Tの車軸に与えて列車Tを加速走行させる(加速制御)。また、走行制御部142は、前記力行ノッチ指令の出力を停止することにより、列車Tを惰行させる(惰行制御)。さらに、走行制御部142は、ブレーキノッチ指令を出力することにより、列車Tの常用ブレーキ装置16の制動力を列車Tの車軸又は車輪に与えて列車Tを減速走行させる(減速制御)。以下、走行制御部142による列車Tの走行状態の制御について具体的に説明する。
[駅出発及び再発進]
列車Tが駅Sの駅停止位置Xに停止しているときに、出発信号機30が進行現示になって列車Tの係員が走行開始操作を行うと、車上制御装置14の走行制御部142は、列車Tを駅Sの駅停止位置Xから出発させる(駅出発)。また、走行制御部142は、列車Tが信号停止位置Yで停止しているときに、場内信号機40が進行現示になって列車Tの係員が走行開始操作を行うと、列車Tを信号停止位置Yから発進させる(再発進)。具体的には、走行制御部142は、ブレーキ解除指令を出力して常用ブレーキ装置16を解除し、及び、前記力行ノッチ指令を出力することにより、列車Tを出発(発進)させる。
列車Tが駅Sの駅停止位置Xに停止しているときに、出発信号機30が進行現示になって列車Tの係員が走行開始操作を行うと、車上制御装置14の走行制御部142は、列車Tを駅Sの駅停止位置Xから出発させる(駅出発)。また、走行制御部142は、列車Tが信号停止位置Yで停止しているときに、場内信号機40が進行現示になって列車Tの係員が走行開始操作を行うと、列車Tを信号停止位置Yから発進させる(再発進)。具体的には、走行制御部142は、ブレーキ解除指令を出力して常用ブレーキ装置16を解除し、及び、前記力行ノッチ指令を出力することにより、列車Tを出発(発進)させる。
[駅間走行]
走行制御部142は、列車Tを駅Sから出発させると列車Tを所定速度(例えば15km/h)以下の低速で走行させる。同様に、走行制御部142は、駅間で停止した列車Tを発進させると(すなわち、列車Tを再発進させると)列車Tを前記所定速度以下の低速で走行させる。そして、走行制御部142は、地上子の位置情報を取得すると、列車走行路Rに関する情報及び取得された地上子の位置情報に基づいて、速度照査パターンP1及び運転パターンP2を発生させる。
走行制御部142は、列車Tを駅Sから出発させると列車Tを所定速度(例えば15km/h)以下の低速で走行させる。同様に、走行制御部142は、駅間で停止した列車Tを発進させると(すなわち、列車Tを再発進させると)列車Tを前記所定速度以下の低速で走行させる。そして、走行制御部142は、地上子の位置情報を取得すると、列車走行路Rに関する情報及び取得された地上子の位置情報に基づいて、速度照査パターンP1及び運転パターンP2を発生させる。
ここで、走行制御部142は、列車Tが走行を開始してから所定距離だけ走行しても地上子の位置情報を取得しない場合には列車Tを停止させる。前記所定距離は、列車停止位置(駅停止位置Xや信号停止位置Y)と、列車Tの走行方向において前記列車停止位置の先にあり且つ前記列車停止位置に最も近い地上子(第1直下地上子32や第2直下地上子42)との距離よりも大きく設定される。
本実施形態において、速度照査パターンP1は、列車走行路Rにおける各区間(駅間区間等)の許容最高速度情報に基づく最高速度パターンと、前記速度制限区間に対する速度制限パターンと、信号機に対する信号機冒進防護パターンと、を含む。
前記最高速度パターンは、列車Tが許容最高速度を超える速度で走行することを防止するためのパターンである。前記速度制限パターンは、列車Tが前記速度制限区間をその制限速度を超える速度で走行することを防止するためのパターンである。前記速度制限パターンは、前記分岐速度制限区間に対する分岐速度制限パターン及び前記曲線速度制限区間に対する曲線速度制限パターンを含む。前記信号機に対する信号機冒進防護パターンは、列車Tが対象信号機を冒進することを防止するためのパターンである。本実施形態において、前記対象信号機は、列車Tから見て一つ先の信号機、つまり、走行方向直近の信号機の次の信号機である。
運転パターンP2は、パターン上の各速度が速度照査パターンP1上の対応速度よりも所定速度(例えば10~15km/h)だけ低い速度に設定されたパターンであり得る。運転パターンP2は、前記最高速度パターンに対応する運転パターンと、前記速度制限パターン(前記分岐速度制限パターン、前記曲線速度制限パターン)に対応する運転パターンと、前記信号機冒進防護パターンに対応する運転パターンとを含む。前記速度制限パターンに対応する運転パターンは、前記速度制限区間にその制限速度以下の速度で列車Tを進入させ且つ前記速度制限区間をその制限速度以下の速度で列車Tを走行させるための運転パターンである。前記信号機冒進防護パターンに対応する運転パターンは、列車Tを対象信号機の手前の信号停止位置Yで停止させるため運転パターンである。
なお、以下の説明においては、前記最高速度パターンに対応する運転パターンを「通常運転パターン」といい、前記分岐速度制限パターンに対応する運転パターンを「分岐運転パターン」といい、前記曲線速度制限パターンに対応する運転パターンを「曲線運転パターン」といい、前記信号機冒進防護パターンに対応する運転パターンを「信号停止パターン」という。
走行制御部142は、速度照査パターンP1及び運転パターンP2を発生させると、運転パターンP2に従って列車Tの走行状態を制御する。すなわち、走行制御部142は、運転パターンP2に追随するように、列車Tを加速走行させ、惰行走行させ、及び/又は減速走行させる。より具体的には、走行制御部142は、運転パターンP2(通常運転パターン、分岐運転パターン、曲線運転パターン及び信号停止パターン)のうち、列車Tの位置に応じて、列車Tにとってパターン上の速度が最も低いパターンを選択し、選択されたパターンに従って列車Tの走行状態を制御する。
また、走行制御部142は、列車Tの速度が速度照査パターンP1(上の対応速度)を超過すると、非常ブレーキ装置17により列車Tを停止させるように構成されている。
[駅停車]
走行制御部142は、列車Tが駅Sに接近して、車上子11を介して第1TASC地上子21から駅Sの駅停止位置Xまでの距離情報を受信すると、列車Tを駅Sの駅停止位置Xの少し手前に停止させるための駅停車パターンP3を発生させる。そして、走行制御部142は、駅停車パターンP3を発生させると、駅停車パターンP3に従って列車Tの走行状態を制御する。すなわち、走行制御部142は、駅停車パターンに追随するように列車Tを減速させる。その際、走行制御部142は、車上子11を介して第2TASC地上子22から受信される駅Sの駅停止位置Xまでの距離情報に基づいて列車Tの減速状態を調整し、最終的に列車Tを駅停止位置Xに停止させる。
走行制御部142は、列車Tが駅Sに接近して、車上子11を介して第1TASC地上子21から駅Sの駅停止位置Xまでの距離情報を受信すると、列車Tを駅Sの駅停止位置Xの少し手前に停止させるための駅停車パターンP3を発生させる。そして、走行制御部142は、駅停車パターンP3を発生させると、駅停車パターンP3に従って列車Tの走行状態を制御する。すなわち、走行制御部142は、駅停車パターンに追随するように列車Tを減速させる。その際、走行制御部142は、車上子11を介して第2TASC地上子22から受信される駅Sの駅停止位置Xまでの距離情報に基づいて列車Tの減速状態を調整し、最終的に列車Tを駅停止位置Xに停止させる。
次に、図3~図15を参照して列車TがA駅を出発してからB駅に到着するまでの間に走行制御部142(すなわち、自動列車運転装置としての車上制御装置14)が行う列車Tの走行状態の制御の概要を説明する。なお、ここでは、列車走行路RにおけるA駅とB駅との間に前記速度制限区間としての分岐速度制限区間及び曲線速度制限区間がこの順序で設けられているものとする。また、図3~図15において、破線は、速度照査パターンP1を示し、実線は、運転パターンP2及び駅停車パターンP3(すなわち、走行パターン)を示し、二重線は、列車Tの走行軌跡(速度及び位置)を示している。さらに、図3~図15において、前記地上側設備に関し、A駅に関連する設備については符号の末尾に「A」が付加されており、B駅に関連する設備については符号の末尾に「B」が付加されている。
図3は、列車TがA駅の駅停止位置XAから出発した直後の様子を示している。走行制御部142は、列車Tを出発させると、列車Tを前記所定速度の近傍まで加速させ、その後、列車Tを惰行又は定速走行させる(図3の二重線を参照)。つまり、走行制御部142は、駅を出発した直後においては前記所定速度以下の低速で列車Tを走行させる。
ここで、A駅の出発信号機30Aが進行現示であるので、第1直下地上子32A、第1冒進防護地上子33A及び第1予備直下地上子34Aは前記即時停止情報を発信しない。したがって、列車Tは、第1直下地上子32A、第1冒進防護地上子33A及び第1予備直下地上子34Aを通過することになる。
図4は、列車TがA駅の出発信号機30Aに連動する第1直下地上子32Aに到達したときの様子を示している。列車Tが第1直下地上子32Aに到達すると、走行制御部142は、車上子11を介して第1直下地上子32Aから第1直下地上子32Aの地上子ID及び出発信号機30の進行現示情報を受信する。すると、走行制御部142は、車上データベース13にアクセスして第1直下地上子32Aの位置情報を取得する。これにより、走行制御部142は、列車Tの位置を把握する。そして、以降、走行制御部142は、把握された列車Tの位置及び速度・距離検出部141によって検出される列車Tの走行距離に基づいて列車Tの位置を検出するようになる。
また、走行制御部142は、列車Tの位置を把握すると、車上データベース13にアクセスし、列車走行路Rの対応区間(ここではA駅-B駅間)の情報を参照して速度照査パターンP1を発生させる。速度照査パターンP1は、許容最高速度情報に基づく最高速度パターンと、分岐速度制限区間に対する分岐速度制限パターンと、曲線速度制限区間に対する曲線速度制限パターンと、B駅の場内信号機40Bに対する信号機冒進防護パターン(以下「第1信号機冒進防護パターン」という)と、を含む(図4の破線を参照)。ここで、B駅の場内信号機40Bは、列車Tから見て一つ先の信号機(走行方向直近の信号機であるA駅の出発信号機30Aの次の信号機)である。
さらに、走行制御部142は、パターン上の各速度が速度照査パターンP1上の対応速度よりも前記所定速度だけ低い速度に設定された運転パターンP2を発生させる。運転パターンP2は、前記最高速度パターンに対応する通常運転パターンと、前記分岐速度制限パターンに対応する分岐運転パターンと、前記曲線速度制限パターンに対応する曲線運転パターンと、第1信号機冒進防護パターンに対応する第1信号停止パターンと、を含む(図4の実線を参照)。
図5は、列車Tが前記分岐速度制限区間の直前まで走行したときの様子を示している。本実施形態において、第1直下地上子32Aの上方を通過した列車Tにとっては運転パターンP2のうち前記分岐運転パターン上の速度が最も低い。そのため、走行制御部142は、前記分岐運転パターンに従って列車Tの走行状態を制御する。具体的には、走行制御部142は、前記分岐運転パターンに追随するように、列車Tを加速走行させ、惰行走行させ、及び/又は減速走行させる。これにより、走行制御部142は、乗り心地の低下を抑制しつつ、列車Tをできるだけ早く前記分岐速度制限区間へと移動させ、且つ、前記分岐速度制限区間の制限速度以下の速度で列車Tを前記分岐速度制限区間に進入させる(図5の二重線を参照)。
列車Tが前記分岐速度制限区間に進入すると、走行制御部142は、列車Tが前記分岐速度制限区間から進出するまでの間、列車Tを前記分岐速度制限区間の制限速度以下の速度で走行させる。
図6は、列車Tが前記分岐速度制限区間を通過した後の様子を示している。本実施形態において、前記分岐速度制限区間を通過した列車Tにとっては運転パターンP2のうち前記曲線運転パターン上の速度が最も低くなる。そのため、走行制御部142は、前記曲線運転パターンに従って列車Tの走行状態を制御する。すなわち、走行制御部142は、前記曲線運転パターンに追随するように、列車Tを加速走行させ、惰行走行させ、及び/又は減速走行させる。なお、図6には、列車Tを前記曲線速度制限区間に向かって加速走行させている状態が示されている(図6の二重線を参照)。
ここで、本実施形態において、列車走行路Rにおける前記分岐速度制限区間と前記曲線速度制限区間との間にはB駅の場内信号機40Bに連動する第2ロング地上子41Bが設置されている。このため、列車Tは、前記曲線速度制限区間に到達する前に第2ロング地上子41Bに到達する。
図7は、B駅の場内信号機40Bが進行現示であるときに、列車TがB駅の場内信号機40Bに連動する第2ロング地上子41Bに到達したときの様子を示している。列車Tが第2ロング地上子41Bに到達すると、走行制御部142は、車上子11を介して第2ロング地上子41Bから第2ロング地上子41Bの地上子ID及び場内信号機40の進行現示情報を受信する。すると、走行制御部142は、車上データベース13にアクセスして第2ロング地上子41Bの位置情報を取得する。そして、走行制御部142は、取得された第2ロング地上子41Bの位置情報に基づいて列車Tの位置を更新(補正)し、以降、更新(補正)された列車Tの位置及び速度・距離検出部141によって検出される列車Tの走行距離に基づいて列車Tの位置を検出するようになる。
また、走行制御部142は、場内信号機40Bの進行現示情報を受信したことにより、前記第1信号機冒進防護パターン及び前記第1信号停止パターンを消去する。そして、走行制御部142は、B駅の出発信号機30Bに対する信号機冒進防護パターン(以下「第2信号機冒進防護パターン」という)を速度照査パターンP1として発生させ、及び前記第2信号機冒進防護パターンに対応する第2信号停止パターンを運転パターンP2として発生させる。なお、B駅の出発信号機30Bは、列車Tから見て一つ先の信号機(走行方向直近の信号機であるB駅の場内信号機40Bの次の信号機)である。
図8は、列車Tが前記曲線速度制限区間の直前まで走行したときの様子を示している。本実施形態において、第2ロング地上子41Bを通過した列車Tにとっては依然として運転パターンP2のうち前記曲線運転パターン上の速度が最も低い。そのため、走行制御部142は、引き続き前記曲線運転パターンに従って列車Tの走行状態を制御する。すなわち、走行制御部142は、前記曲線運転パターンに追随するように、列車Tを加速走行させ、惰行走行させ、及び/又は減速走行させる。これにより、走行制御部142は、乗り心地の低下を抑制しつつ、列車Tをできるだけ早く前記曲線速度制限区間へと移動させ、且つ、前記曲線速度制限区間の制限速度以下の速度で列車Tを前記曲線制限区間に進入させる(図8の二重線を参照)。
列車Tが前記曲線速度制限区間に進入すると、走行制御部142は、列車Tが前記曲線速度制限区間から進出するまでの間、列車Tを前記曲線速度制限区間の制限速度以下の速度で走行させる。
図9は、列車Tが前記曲線速度制限区間を通過した後の様子を示している。本実施形態において、B駅の場内信号機40Bが進行現示であるとき、前記曲線速度制限区間を通過した直後の列車Tにとっての運転パターンP2は、前記通常運転パターンになる。そのため、走行制御部142は、前記通常運転パターンに従って列車Tの走行状態を制御する。基本的には、走行制御部142は、前記通常運転パターンに追随するように、列車Tを加速走行させ、その後、列車Tを惰行走行させる。
ここで、本実施形態において、前記曲線速度制限区間とB駅との間、さらに言えば、前記曲線速度制限区間とB駅の駅停止位置XBに列車Tを停止させるための第1TASC地上子21Bとの間にはB駅の出発信号機30Bに連動する第1ロング地上子31Bが設置されている。このため、列車Tは、B駅に接近する前に第1ロング地上子31Bに到達する。
図10は、B駅の出発信号機30Bが進行現示であるときに、列車TがB駅の出発信号機30Bに連動する第1ロング地上子31Bに到達したときの様子を示している。列車Tが第1ロング地上子31Bに到達すると、走行制御部142は、車上子11を介して第1ロング地上子31Bから第1ロング地上子31Bの地上子ID及び出発信号機30Bの進行現示情報を受信する。すると、走行制御部142は、車上データベース13にアクセスして第1ロング地上子31Bの位置情報を取得する。そして、走行制御部142は、取得された第1ロング地上子31Bの位置情報に基づいて列車Tの位置を更新(補正)し、以降、更新(補正)された列車Tの位置及び速度・距離検出部141によって検出される列車Tの走行距離に基づいて列車Tの位置を検出するようになる。
また、走行制御部142は、出発信号機30Bの進行現示情報を受信したことにより、前記第2信号機冒進防護パターン及び前記第2信号停止パターンを消去する。そして、走行制御部142は、B駅の次の駅であるC駅の場内信号機に対する第3信号機冒進防護パターン(図示省略)を速度照査パターンP1として発生させると共に、前記第3信号機冒進防護パターンに対応する第3信号停止パターン(図示省略)を発生させる。なお、C駅の場内信号機は、列車Tから見て一つ先の信号機(走行方向直近の信号機であるB駅の出発信号機30Bの次の信号機)である。
本実施形態において、第1ロング地上子31Bに到達した列車Tにとっての運転パターンP2は依然として前記通常運転パターンである。そのため、走行制御部142は、引き続き前記通常運転パターンに従って列車Tの走行状態を制御する。
ここで、本実施形態において、第1ロング地上子31BとB駅との間には第1TASC地上子21Bが設置されている。このため、列車Tは、第1ロング地上子31Bの次に第1TASC地上子21Bに到達する。
図11は、第1TASC地上子21Bに到達したときの様子を示している。列車Tが第1TASC地上子21Bに到達すると、走行制御部142は、車上子11を介して第1TASC地上子21Bの地上子ID及び第1TASC地上子21BからB駅の駅停止位置XBまでの距離情報を受信する。すると、走行制御部142は、受信されたB駅の駅停止位置XBまでの距離情報に基づいて列車Tを駅停止位置XBの手前に停止させるための駅停車パターンP3を発生させる。
図12は、駅停車パターンP3の発生後の様子を示している。走行制御部142は、駅停車パターンP3に従って列車Tの走行状態を制御する。具体的には、走行制御部142は、駅停車パターンP3に追随するように列車Tを減速走行させる。その際、走行制御部142は、車上子11を介して第2TASC地上子22から受信するB駅の駅停止位置Xまでの距離情報に基づいて列車Tの減速状態を調整する。これにより、列車TがB駅の駅停止位置XBに精度よく停止する(図12の二重線を参照)。
図13~図15は、B駅の場内信号機40Bが停止現示であるときに、列車Tが第2ロング地上子41Bに到達した場合を示している。この場合、列車Tが第2ロング地上子41Bに到達すると、走行制御部142は、車上子11を介して第2ロング地上子41Bから第2ロング地上子41Bの地上子ID及び場内信号機40の停止現示情報を受信する。走行制御部142は、場内信号機40Bの停止現示情報を受信すると、前記第1信号機冒進防護パターン及び前記第1信号停止パターンを維持する(図13参照)。
この場合においても、B駅の場内信号機40Bが進行現示であるときと同様、第2ロング地上子41Bを通過した列車Tにとっては依然として運転パターンP2のうち前記曲線運転パターン上の速度が最も低い。そのため、走行制御部142は、引き続き前記曲線運転パターンに従って列車Tの走行状態を制御し、前記曲線速度制限区間の制限速度以下の速度で列車Tを前記曲線制限区間に進入させる(図14の二重線を参照)。
列車Tが前記曲線速度制限区間に進入すると、列車Tにとって、運転パターンP2のうち前記第1信号停止パターン上の速度が最も低くなる。そのため、走行制御部142は、前記第1信号停止パターンに従って列車Tの走行状態を制御する。具体的には、走行制御部142は、前記第1信号停止パターンに追随するように列車Tを減速走行させ、列車TをB駅の場内信号機40Bの信号停止位置YBで停止させる(図15の二重線を参照)。
その後、B駅の場内信号機40Bが進行現示になり且つ列車Tの係員が前記所定の走行開始操作を行うと、走行制御部142は、列車Tを信号停止位置YBから発進させる。そして、列車TがB駅の場内信号機40Bに連動する第2直下地上子42Bに到達すると、走行制御部142は、車上子11を介して第2直下地上子42Bから第2直下地上子42Bの地上子ID及び場内信号機40の進行現示情報を受信する。すると、走行制御部142は、車上データベース13にアクセスして第2直下地上子42Bの位置情報を取得し、取得された第2直下地上子42Bの位置情報に基づいて列車Tの位置を把握する。
また、走行制御部142は、場内信号機40Bの進行現示情報を受信したことにより、前記第1信号機冒進防護パターンを消去し、前記第2信号機冒進防護パターンを速度照査パターンP1として発生させると共に、前記第2信号停止パターンを運転パターンP2として発生させる(図7参照)。その後については、B駅の場内信号機40Bが進行現示であるときに列車Tが第2ロング地上子41Bに到達した場合と同様である。
このように、走行制御部142(すなわち、自動列車運転装置としての車上制御装置14)は、A駅を出発してからB駅までの列車Tの走行状態を走行パターン(運転パターンP2及び駅停車パターンP3)に従って制御するように構成されている。
ところで、上述のように、本実施形態においては、GoA2.5レベルの自動運転が行われており、列車Tには運転士が乗車しない。そのため、列車Tに運転士が乗車している場合に比べて、異常の予兆や異常の発生などの正常でない状態に対する安全確保のための処理が遅れてしまうことが懸念される。そこで、車上制御装置14は、安全確保のための処理が遅れてしまうことを防止して列車Tのより安全な走行を確保するため、加減速度検出部143、正常判定部144及び処理部145をさらに有している(図2参照)。
加減速度検出部143は、速度発電機12の出力信号に基づき、単位時間あたりの列車Tの速度の変化率を列車Tの加減速度(km/h/s)として検出(算出)する。列車Tが加速走行している場合、列車Tの加減速度は正の値として検出(算出)され、列車Tが減速走行している場合、列車Tの加減速度は負の値として検出(算出)される。
正常判定部144は、列車Tの走行制御(列車走行制御)の正常判定を行うように構成されている。以下、具体的に説明する。
まず、正常判定部144は、列車Tの走行制御状態を判断する。列車Tの走行制御状態は、列車Tを加速走行させる加速制御、列車Tを惰行走行させる惰行制御、及び列車Tを減速走行させる減速制御を含む。本実施形態において、正常判定部144は、走行制御部142からの情報に基づいて列車Tの走行制御状態を判断する。特に限定されないが、例えば、走行制御部142からの情報は、走行制御部142が出力した前記力行ノッチ指令又は前記ブレーキノッチ指令を含む。正常判定部144は、走行制御部142からの情報の前記力行ノッチ指令が含まれている場合には列車Tが加速制御されていると判断する。また、正常判定部144は、走行制御部142からの情報に前記力行ノッチ指令が含まれなくなり且つ前記ブレーキノッチ指令も含まれない場合には列車Tが惰行制御されていると判断する。さらに、正常判定部144は、走行制御部142からの情報に前記ブレーキノッチ指令が含まれている場合には列車Tが減速制御されていると判断する。
また、正常判定部144は、列車Tの走行状態に応じた正常判定閾値を記憶している。前記正常判定閾値は、加速走行用の正常判定閾値(以下「加速判定閾値」という)と、惰行走行用の正常判定閾値(以下「惰行判定閾値」という)と、減速走行用の正常判定閾値(以下「減速判定閾値」という)とを含む。
さらに、正常判定部144は、列車Tの走行中、加減速度検出部143で検出される列車Tの加減速度を常時入力している。
そして、正常判定部144は、列車Tの走行制御状態(加速制御、惰行制御、減速制御)に基づき、列車Tの走行状態に応じた正常判定閾値(加速判定閾値、惰行判定閾、減速判定閾値)と、加減速度検出部143で検出された列車Tの加減速度とを比較することにより、列車Tの走行制御(加速制御、惰行制御、減速制御)の正常判定を行う。
図16及び図17は、正常判定部144が行う処理を示すフローチャートである。
ステップS1において、正常判定部144は、列車Tの走行制御状態を判断する。この判断は、上述のように、走行制御部142からの情報に基づいて行われる。そして、正常判定部144は、列車Tが加速制御されている場合にはステップS2の処理に進み、列車Tが惰行制御されている場合にはステップS6の処理に進み、列車Tが減速制御されている場合にはステップS10の処理に進む。
ステップS2において、正常判定部144は、加減速度検出部143で検出される列車Tの加減速度が前記加速判定閾値以上であるか否かを判定する。前記加速判定閾値は、A(≧0)[km/h/s]に設定され得る。そして、正常判定部144は、列車Tの加減速度が前記加速判定閾値以上である場合にはステップS3の処理に進み、列車Tの加速度が前記加速判定閾値未満である場合にはステップS4の処理に進む。
ステップS3において、正常判定部144は、列車Tの加速制御(列車走行制御)が正常であると判定する(加速制御の正常判定)。
ステップS4において、正常判定部144は、列車Tの加減速度が前記加速判定閾値未満の状態が所定時間以上継続しているか否かを判定する。そして、正常判定部144は、列車Tの加減速度が前記加速判定閾値未満の状態が所定時間以上継続している場合にはステップS5の処理に進み、そうでない場合にはステップS1の処理に戻る。
ステップS5において、正常判定部144は、列車Tの加速制御が正常でないことを示す第1警告信号を処理部145に出力する。
ステップS6において、正常判定部144は、加減速度検出部143で検出される列車Tの加減速度が前記惰行判定閾値以下であるか否かを判定する。前記惰行判定閾値は、B(<0)[km/h/s]に設定され得る。そして、正常判定部144は、列車Tの加減速度が前記惰行判定閾値以下である場合にはステップS7の処理に進み、列車Tの加減速度が前記惰行判定閾値を超えている場合にはステップS8の処理に進む。
ステップS7において、正常判定部144は、列車Tの惰行制御(列車走行制御)が正常であると判定する(惰行制御の正常判定)。
ステップS8において、正常判定部144は、列車Tの加減速度が前記惰行判定閾値を超えている状態が所定時間以上継続しているか否かを判定する。そして、正常判定部144は、列車Tの加減速度が前記惰行判定閾値を超えている状態が所定時間以上継続している場合にはステップS9の処理に進み、そうでない場合にはステップS1の処理に戻る。
ステップS9において、正常判定部144は、列車Tの惰行制御が正常でないことを示す第2警告信号を処理部145に出力する。
ステップS10において、正常判定部144は、加減速度検出部143で検出された列車Tの加減速度が前記減速判定閾値以下であるか否かを判定する。前記減速判定閾値は、C(<B)[km/h/s]に設定され得る。そして、正常判定部144は、列車Tの加減速度が前記減速判定閾値以下である場合にはステップS11の処理に進み、列車Tの加減速度が前記減速判定閾値を超えている場合にはステップS12の処理に進む。
ステップS11において、正常判定部144は、列車Tの減速制御が正常であると判定する(減速制御の正常判定)。
ステップS12において、正常判定部144は、列車Tの加減速度が前記減速判定閾値を超えている状態が所定時間以上継続しているか否かを判定する。そして、正常判定部144は、列車Tの加減速度が前記減速判定閾値を超えている状態が所定時間以上継続している場合にはステップS13の処理に進み、そうでない場合にはステップS1の処理に戻る。
ステップS13において、正常判定部144は、列車Tの減速制御が正常でないことを示す第3警告信号を処理部145に出力する。
処理部145、正常判定部144によって列車Tの走行制御が正常であると判定されない場合、換言すれば、正常判定部144から第1~第3警告信号のいずれかを入力した場合、列車Tの走行制御状態に応じた非正常時処理を実施する。
図18は、処理部145が行う処理を示すフローチャートである。
ステップS21において、処理部145は、前記第1警告信号を入力したか否かを判定する。そして、処理部145は、前記第1警告信号を入力した場合にはステップS22の処理に進み、そうでない場合にはステップS23の処理に進む。
ステップS22において、処理部145は、ノッチ出力停止指令を走行制御部142に出力する。これにより、走行制御部142は、前記力行ノッチ指令の出力を停止する。これにより、列車Tの走行制御状態は、加速制御から惰行制御に移行する。
ステップS23において、処理部145は、前記第2警告信号を入力したか否かを判定する。そして、処理部145は、前記第2警告信号を入力した場合にはステップS24の処理に進み、そうでない場合にはステップS25の処理に進む。
ステップS24において、処理部145は、非常ブレーキ指令を列車Tの非常ブレーキ装置17に出力し、非常ブレーキ装置17を動作させて列車Tを停止させる。
ステップS25において、処理部145は、前記第3警告信号を入力したか否かを判定する。そして、処理部145は、前記第3警告信号を入力した場合にはステップS26の処理に進み、そうでない場合、すなわち、前記第1警告信号、前記第2警告信号及び前記第3警告信号のいずれも入力しない場合には、特に処理を行うことなく本フローを一旦終了する。
ステップS26において、処理部145は、非常ブレーキ指令を列車Tの非常ブレーキ装置17に出力し、非常ブレーキ装置17を動作させて列車Tを停止させる。
以上説明したように、本実施形態において、自動列車運転装置としての車上制御装置14は、走行制御部142と、加減速度検出部143と、正常判定部144と、処理部145とを含む。
走行制御部142は、駅を出発してから次駅までの列車Tの走行状態を走行パターン(運転パターンP2及び駅停車パターンP3)に従って制御するように構成されている。すなわち、走行制御部142は、前記走行パターンに追随するように、列車Tを加速走行させ(加速制御)、列車Tを惰行走行させ(惰行制御)、及び列車Tを減速走行させる(減速制御)ように構成されている。
加減速度検出部143は、列車Tの加減速度を検出する。正常判定部144は、加減速度検出部143によって検出される列車Tの加減速度を常時入力すると共に、走行制御部142からの情報に基づいて列車Tの走行制御状態を判断する。また、正常判定部144は、列車Tの走行制御状態に基づき、列車Tの走行状態(加速走行、惰行走行、減速走行)に応じた正常判定閾値と検出された列車Tの加減速度を比較して走行制御部142による列車走行制御の正常判定を行うように構成されている。そして、処理部145は、前記列車走行制御が正常であると判定されない場合、前記列車走行制御(換言すれば、列車Tの走行制御状態)に応じた非正常時処理を実施する処理するように構成されている。
具体的には、列車Tの加速制御が正常であると判定されない場合、処理部145は、走行制御部142による前記力行ノッチの出力を停止させる。これにより、走行制御部142は、列車Tの加速制御を中止し、列車Tを惰行制御することになる。換言すれば、処理部145は、加速走行していた列車Tを惰行走行させる。また、列車Tの惰行制御が正常であると判定されない場合や列車Tの減速制御が正常であると判定されない場合、処理部145は、非常ブレーキ装置17によって列車Tを停止させる(緊急停止させる)。
そのため、運転士が乗車しない場合であっても安全確保のための処理(加速制御の中止や列車Tの停止など)が遅れてしまうことが防止される。また、適切に制御されていない状態で列車Tが走行することが防止されるため、列車保安装置などとの協働によって、列車のより安全な運行を確保することが可能となる。
なお、上述の実施形態において、正常判定部144は、列車Tが加速制御されているとき、列車Tの加減速度が前記加速判定閾値未満の状態が所定時間継続した場合に前記第1警告信号を処理部145に出力している。しかし、これに限られるものではない。前記加速判定閾値が下限及び上限を含み、正常判定部144は、列車Tの加減速度が前記加速判定閾値の下限未満の状態が所定時間継続した場合や前記加速判定閾値の上限を超える状態が所定時間継続した場合に前記第1警告信号を処理部145に出力してもよい。
また、正常判定部144は、前記力行ノッチ指令のノッチ段(力行ノッチ段)毎の加速走行用の正常判定閾値を記憶していてもよい。前記力行ノッチ指令のノッチ段は、例えば列車Tの駆動装置15の出力(駆動力)を設定するために使用され得るものである。この場合、正常判定部144は、走行制御部142が出力した前記力行ノッチ指令のノッチ段に応じた加速走行用の正常判定閾値と列車Tの加減速度を比較することにより、列車Tの加速制御の正常判定を行うように構成され得る。
同様に、正常判定部144は、前記ブレーキノッチ指令のノッチ段(ブレーキノッチ段)毎の減速走行用の正常判定閾値を記憶していてもよい。前記ブレーキノッチ指令のノッチ段は、例えば列車Tの常用ブレーキ装置16の制動力を設定するために使用され得るものである。この場合、正常判定部144は、走行制御部142が出力した前記ブレーキノッチ指令のノッチ段に応じた減速走行用の正常判定閾値と列車Tの加減速度を比較することにより、列車Tの減速制御の正常判定を行うように構成され得る。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形及び変更が可能であることはもちろんである。
1…列車制御システム、11…車上子、12…速度発電機、13…車上データベース、14…車上制御装置(自動列車運転装置)、15…駆動装置、16…常用ブレーキ装置、17…非常ブレーキ装置、30…出発信号機、40…場内信号機、141…速度・距離検出部、142…走行制御部、143…加減速度検出部、144…正常判定部、145…処理部、R…列車走行路、S…駅、T…列車
Claims (9)
- 駅を出発してから次駅までの列車の走行状態を走行パターンに従って制御する自動列車運転装置であって、
前記列車の加減速度を検出する検出部と、
前記列車の走行状態に応じた正常判定閾値と検出された前記列車の加減速度を比較して列車走行制御の正常判定を行う判定部と、
前記列車走行制御が正常であると判定されない場合に前記列車走行制御に応じた非正常時処理を実施する処理部と、
を含む、自動列車運転装置。 - 前記列車走行制御は、前記列車を加速走行させる加速制御、前記列車を惰行走行させる惰行制御、及び、前記列車を減速走行させる減速制御を含む、請求項1に記載の自動列車運転装置。
- 前記判定部は、前記列車走行制御が正常であると判定されない状態が所定時間以上継続すると警告信号を前記処理部に出力するように構成され、
前記処理部は、前記警告信号を入力した場合に前記非正常時処理を実施するように構成されている、
請求項1に記載の自動列車運転装置。 - 力行ノッチ指令を出力することで前記列車を加速走行させる走行制御部を含み、
前記走行制御部が前記力行ノッチ指令を出力している場合、
前記判定部は、加速走行用の正常判定閾値と前記列車の加減速度を比較して前記列車の加速制御の正常判定を行うように構成され、
前記処理部は、前記判定部で前記列車の加速制御が正常であると判定されない場合、前記走行制御部による前記力行ノッチ指令の出力を停止させるように構成されている、
請求項1に記載の自動列車運転装置。 - 前記力行ノッチ指令は、前記列車の駆動装置の出力を設定するノッチ段を含み、
前記判定部は、前記加速走行用の正常判定閾値として前記力行ノッチ指令のノッチ段に応じた正常判定閾値を用いる、
請求項4に記載の自動列車運転装置。 - 前記力行ノッチ指令の出力を停止することで前記列車を惰行走行させる走行制御部を含み、
前記走行制御部が前記力行ノッチ指令の出力を停止した場合、
前記判定部は、惰行走行用の正常判定閾値と前記列車の加減速度とを比較して前記列車の惰行制御の正常判定を行うように構成され、
前記処理部は、前記判定部で前記列車の惰行制御が正常であると判定されない場合、非常ブレーキ装置を動作させて前記列車を停止させるように構成されている、
請求項1に記載の自動列車運転装置。 - ブレーキノッチ指令を出力することで前記列車を減速走行させる走行制御部を含み、
前記走行制御部が前記ブレーキノッチ指令を出力している場合、
前記判定部は、減速走行用の正常判定閾値と前記列車の加減速度を比較して前記列車の減速制御の正常判定を行うように構成され、
前記処理部は、前記判定部で前記列車の減速制御が正常であると判定されない場合、非常ブレーキ装置を動作させて前記列車を停止させるように構成されている、
請求項1に記載の自動列車運転装置。 - 前記ブレーキノッチ指令は、前記列車の常用ブレーキ装置の制動力を設定するノッチ段を含み、
前記判定部は、前記減速走行用の正常判定閾値として前記ブレーキノッチ指令のノッチ段に応じた正常判定閾値を用いる、
請求項7に記載の自動列車運転装置。 - 駅の出発信号機の手前に設置された地上子の位置情報を取得することで前記走行パターンとしての運転パターンを発生させるように構成され、
前記運転パターンは、前記駅と前記次駅との間に設けられた速度制限区間に当該速度制限区間の制限速度以下の速度で前記列車を進入させ且つ当該速度制限区間を走行させるための運転パターンと、前記次駅の場内信号機の手前の位置で停止させるための運転パターンとを含む、
請求項1~8のいずれか一つの記載の自動列車運転装置。
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