JP2024034434A - 高感度かつ定量的な遺伝子検査方法 - Google Patents

高感度かつ定量的な遺伝子検査方法 Download PDF

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Abstract

【課題】より定性検出能が向上し、定量範囲が拡張され、かつ定量性が向上した遺伝子検査方法を提供すること。【解決手段】PCRによって1種又は2種以上の遺伝子領域に混在する異なる遺伝子配列を検査する方法であって、前記異なる遺伝子配列を2組以上のプライマーセットを用い、前記2組以上のプライマーセットの量比を変えて同時に増幅し、PCRのサイクル毎にHRM解析を行い、当該HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)を計算し、スタンダードの量的数値とCiとの間で回帰式を算出し、サンプルのCi値を代入することでサンプルの標的遺伝子配列の量的数値を求めることを特徴とする、サンプル中の異なる遺伝子配列の存在を定量的に検査する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、PCRを用いて遺伝子増幅する際、混在する異なる配列のDNAを同時に高感度に検出するのみならず、定量的に測定するAllele Specific PCRに関する。
がんの早期発見・早期診断には、現状ではPET等の画像診断が最も普及している手段の一つである。しかし1cm程度の大きさに成長しないと発見できないことや高額である等、早期発見には不十分であり、拘束時間が長く集団検診には適していない。それらの短所を解決しうる手法の一つにリキッドバイオプシーがあるが、早期発見を想定する場合、がん細胞が画像診断で検出できない程度の微小な段階で液性検体から検出する必要がある。液性検体の代表的検体である血漿や尿においては正常細胞由来のせん断されたゲノムDNAが存在するが、がん患者にはがん細胞由来のせん断されたDNA(circulating tumor DNA:ctDNA)が混在し、その量は、がんのステージに左右される。そのため極初期のがんを検出するには大量の検体からDNAを抽出して検出する必要があり、そこには正常細胞由来DNAが大過剰に存在することになる。そのため早期発見や微小残存病変の検出にはctDNAを、0.01%を超える超高感度で解析する必要があるとされる(非特許文献1)。一般の遺伝子検査室に普及している機器を用い、蛍光プローブ等の高額な試薬を使用せずにそのような高感度で定量的な手法としては、本発明者が報告した特許文献1記載のHighly Quantitative Allele Specific PCR(HiQASP)がある。
なお、従来のリキッドバイオプシーの検体として最も一般的な血漿に全血中のすべてのctDNAが存在するとは限らない。白血球にctDNAが濃縮されているという報告(非特許文献2)や細胞外小胞がctDNA局在に重要であるとの報告(非特許文献3)がある。つまり血漿分離後に廃棄していた血球画分にctDNAがかなり残存している可能性が高い。ctDNAを漏れなく解析するには血漿以外の画分をすべて含んだ全血検体からDNAを抽出して解析する必要があるが、そこにはctDNA解析を妨害する正常DNAが大量に混在することになり、さらに超高感度な解析がより重要となる。
国際公開第2019/045016号明細書
Panadopoulos N.,Tumor Liquid Biopsy,2020 PMID: 29971917 PMID: 34595842
特許文献1記載のHiQASPは、融解曲線解析を利用した従来の高解像度融解曲線解析=High Resolution Melt(HRM)解析に対して、(1)各アレルの増幅プライマーにTm値を上昇させるタグを付加してピーク分離を向上させることで定量性を改善し、(2)各アレル検出用プライマーセットの比を変化させることで検出・定量範囲を調整でき、ctDNAなどの微量の変異遺伝子を高感度で検出・定量できる方法である。しかし、一度の解析での定量性を示す範囲に制限がある点や、従来の方法と同様に極微量域での詳細な定量性が困難であること、ゲノムDNA量を増やすと中間ピークを生じる例が増加し、定量性が困難になる現象があった。またHRM解析一般的に、混在するPCR産物の量比はサイクル毎に変動しうるが、従来のHRM解析では解析したPCRサイクル以外のサイクル時点の情報を得ることが不可能であった。
従って、本発明の課題は、より定量範囲が拡張され、かつ定量性が向上した超高感度遺伝子検査方法を提供することにある。
そこで、本発明者は、前記HiQASPと一般的なHRM技術をさらに改良すべく種々検討した結果、PCRによって1種又は2種以上の遺伝子領域に混在する異なる遺伝子配列を検査するにあたり、前記異なる遺伝子配列を2組以上のプライマーセットを用い、前記2組以上のプライマーセットの量比を変えて同時に増幅し、PCRのサイクル毎にHRM解析を行うことで当該HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)を算出し、それがスタンダードの量的数値と良好な相関を示すことを発見し、そこで算出した近似式を回帰式としてサンプルのCi値を代入することで検体の標的遺伝子配列の量的数値を求めるという新たなアルゴリズムを開発し、より定量範囲が拡張され、かつ定量性が向上し、全血から抽出されたDNAを用いた場合であっても、ctDNAなどの微量の遺伝子を超高感度で検出・定量できることを見出し、本発明を完成した。なお、メチル化DNAと非メチル化DNAを検出という時は、検体中のDNAをバイサルファイト処理した後に変換されたDNA配列をPCR増幅可能なプライマーを用いて検出することをいう。
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[16]を提供するものである。
[1]PCRによって1種又は2種以上の遺伝子領域に混在する異なる遺伝子配列を検査する方法であって、前記異なる遺伝子配列を2組以上のプライマーセットを用い、前記2組以上のプライマーセットについて超高感度を得られるよう量比を変えて同時に増幅し、PCRのサイクル毎にHRM解析を行い、当該HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)を計算し、スタンダードの量的数値とCiとの間で回帰式を算出し、そこにサンプルのCiを代入することでサンプルの標的遺伝子配列の量的数値を求めることを特徴とする、サンプル中の異なる遺伝子配列の存在を定量的に検査する方法。
[2]前記HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)の計算が、サイクル毎のHRM解析におけるピーク比率(Y)とサイクル数(X)から、ThresholdラインをY軸=0上に置き、INTERCEPT関数を用いてY切片(Y値=0)のX軸値(Ci)を算出する[1]記載の検査方法。
[3]前記スタンダードのHRM解析におけるスタンダードの量的数値とCiとの散布図から近似式と決定係数を算出し、最も決定係数の高い近似式を採用してサンプル定量用の回帰式として使用するものである[1]又は[2]記載の検査方法。
[4]前記2組以上のプライマーセットの1組のプライマーセットの一方又は両方にタグを付与する[1]~[3]のいずれかに記載の検査方法。
[5]前記タグが、DNA、RNA、PNA又はLNAである[4]記載の検査方法。
[6]前記タグが、PCR産物のTm値の差を大きくするために付与するものである[4]又は[5]記載の検査方法。
[7]前記タグが、PCR産物のTm値を少なくとも2℃上昇させるタグである[6]記載の検査方法。
[8]検査対象サンプルが、全血、血漿、血清、尿、大便、唾液、手術組織、生検組織、鼻粘膜液及び脳脊髄液から選ばれる体液サンプル、並びに食品、環境水から選ばれるサンプルである[1]~[7]のいずれかに記載の検査方法。
[9]検査対象遺伝子が、正常遺伝子と異常遺伝子が混在するサンプル中の少量の異常遺伝子である[1]~[8]のいずれかに記載の検査方法。
[10]異常遺伝子が、がん遺伝子、がん細胞特有の遺伝子異常配列、ウイルス由来遺伝子、エピゲノム異常、法医学上の重要配列、及び食品又は環境水中の特定の遺伝子配列から選ばれる遺伝子である[9]記載の検査方法。
[11]前記プライマーセットが、メチル化DNAと非メチル化DNAを検出するプライマーセット、又は野生型遺伝子と変異型遺伝子を検出するプライマーセットである[1]~[10]のいずれかに記載の検査方法。
[12]前記プライマーセットがDNAメチル化異常を検出するプライマーセットであり、CDKN2A、MGMT、TFPI2、NDRG4、SDC2、BMP3、PRIMA1、SFRP2、VIM、CDH1、CUX2、REG1A、CCND2、PLAU、SOCS1、THBS、VHL、RASSF1、ZNF154、BNC1、SST1、MLH1、BRCA1、SEPT9、MYO1G及びTSPYL5から選ばれる遺伝子のDNAメチル化異常を定量的に検出するものである[1]~[11]のいずれかに記載の検査方法。
[13]サーマルサイクラー、分光蛍光光度計及び融解曲線解析ソフトを具備するリアルタイムPCR装置であって、増幅サイクル毎に融解プロファイルが作動して増幅サイクル毎のHRM解析を可能とし、得られる融解曲線にピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)を計算する計算部を有することを特徴とする、リアルタイムPCR装置。
[14]前記計算部には、スタンダードの量的数値と前記Ciとの間で回帰式を算出し、そこにサンプルのCiを代入することでサンプルの標的遺伝子配列の量的数値を求める計算部が含まれている[13]記載のリアルタイムPCR装置。
[15]前記HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)の計算が、サイクル毎の融解曲線におけるピーク比率(Y)とサイクル数(X)から、ThresholdラインをY軸=0上に置き、INTERCEPT関数を用いてY切片(Y値=0)のX軸値(Ci)を算出する手段である[13]又は[14]記載のリアルタイムPCR装置。
[16]CDKN2A、MGMT、TFPI2、NDRG4、SDC2、BMP3、PRIMA1、SFRP2、VIM、CDH1、CUX2、REG1A、CCND2、PLAU、SOCS1、THBS、VHL、RASSF1、ZNF154、BNC1、SST1、MLH1、BRCA1、SEPT9、MYO1G及びTSPYL5から選ばれる遺伝子のDNAメチル化異常を定量的に検出するためのプライマーセットを含有するDNAメチル化異常検出用キットであって、全血、尿、手術組織及び生検組織から選ばれる検体を用いてPCRにより超高感度定量可能なキット。
本発明方法によれば、遺伝子配列の違いやエピゲノム異常をより高感度で定量的に解析することが可能となる。特に、がん組織やリキッドバイオプシーサンプルに、正常な遺伝子と共に微量に混在する遺伝子変異やエピゲノム異常をより定量的に高感度に検出することができる。
SEPT9のRT-HRM解析用プライマー配列の位置を示す。FRMの配列上にないグレーの線はターゲット遺伝子配列とは相補性のないタグを示す。 MYO1GのRT-HRM解析用プライマー配列の位置を示す。FRMの配列上にないグレー線はターゲット遺伝子配列とは相補性のないタグを示す。 SEPT9及びMYO1GのRT-HRM解析の実施例の各サイクル毎のHRM解析のwell毎のパネルを示す。中央の数字がサイクル数。 SEPT9のRT-HRM解析の実施例のサイクル毎の%Mの集計表を示す。最右列はCi値。 MYO1GのRT-HRM解析の実施例のサイクル毎の%Mの集計表を示す。最右列はCi値。 SEPT9のメチル化DNA定量の実施例の結果を示す。左上:スタンダードのwell位置、S3R Unitと前頁のCi値、同一サンプルのCi平均値(Av Ci)、そしてS3R unitとCiから得られた検量線。下の50サイクル目のHRM解析パネル(Melting Curve Panel)とLayoutにおける濃いグレー位置は、HRM解析でTm値の異なる非特異反応が認められ、解析不可としたWell位置。薄いグレーはMアレルピークの存在が確認できず、Ci値算出不可のWell位置。右上の検体定量は左上の検量線の内、平均値で得られた回帰式に検体のCi値を代入してS3R Unitを算出したもの。CEA列は、各症例のCEA腫瘍マーカーの数値。N/Aはデータがないもの。 MYO1Gのメチル化DNA定量の実施例の結果を示す。左上:スタンダードのwell位置、M2 Unitと前頁のCi値、同一サンプルのCi平均値(Av Ci)、そしてM2 unitとCiから得られた検量線。下の50サイクル目のHRM解析パネル(Melting Curve Panel)とLayoutにおける薄いグレーはMアレルピークの存在が確認できず、Ci値算出不可のWell位置。右上の検体定量は左上の検量線の内、平均値で得られた回帰式に検体のCi値を代入してM2 Unitを算出したもの。CEA列は、各症例のCEA腫瘍マーカーの数値。N/Aはデータがないもの。
本発明の一態様は、PCRによって1種又は2種以上の遺伝子領域に混在する異なる遺伝子配列を検査する方法であって、前記の異なる遺伝子配列を2組以上のプライマーセットを用い、前記2組以上のプライマーセットの量比を変えて同時に増幅し、PCRのサイクル毎にHRM解析を行い、当該HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)を計算し、スタンダードの量的数値とCiとの間で回帰式を算出し、サンプルのCi値を代入することでサンプルの標的遺伝子配列の量的数値を求めることを特徴とする、サンプル中の異なる遺伝子配列の存在を定量的に検査する方法である。
本発明方法は、PCRによって1種又は2種以上の遺伝子領域に混在する異なる遺伝子配列を検査する方法であり、当該検出対象となる1種又は2種以上の遺伝子領域に混在する異なる遺伝子配列としては、下記DNAメチル化異常の外、がん細胞における塩基の挿入欠失変異(indel)、点突然変異、SNPsなどの一塩基の遺伝子多型なども挙げられる。また、種々のDNA鑑定、農業分野での遺伝子改変作物やアレルゲンの検査など、配列の異なる遺伝子が混在しているサンプルにおいて、定量的かつ高感度に遺伝子の検出を行うことができる。なお、DNAメチル化異常とは、通常のメチル化状態のDNAが異常を生じた結果、メチル化(ハイパーメチレーション)もしくは非メチル化(ハイポメチレーション)した状態をいう。本発明でそれらを検出するには、対象のDNAをバイサルファイト処理して塩基配列の変換を行い、その変換された配列を増幅するプライマーセットを用いる。
例えば、正常遺伝子と異常遺伝子が混在するサンプル中の少量の異常遺伝子を検出する場合が挙げられ、異常遺伝子としては、がん遺伝子、がん細胞由来の遺伝子異常配列、ウイルス由来遺伝子、エピゲノム異常、法医学上の重要配列、及び食品中の特定の遺伝子配列から選ばれる遺伝子などが挙げられる。
具体的な異常遺伝子としては、遺伝子組換え食品検出について、P-35S、T-NOS、Bt Cry1Ab/Acなどが挙げられる。イネの品種について、Microsatellite marker (RM1、RM72、RM206、RM241、RM287、BADEX7-5)などが挙げられる。リステリア菌(食中毒菌)の同定について、ssrA gene、rRNAなどが挙げられる。法医学でHRM解析例のある遺伝子リストとしては、精液同定;DACT1、毛髪などの解析難検体からのDNA型判定(個人鑑別);ABO、年齢推定; ELOVL2、FHL2などが挙げられる。DNA高分解検体で使用されるDNA型判定(個人鑑別);miniSTR (D1S1171、D2S1242、D3S1545、D4S2366、D12S391、D16S3253、D20S161、D21S1437)などが挙げられる。
がんにおいてDNAメチル化異常が報告されている遺伝子としては、MethHC(A database of Methylation and gene expression in Human Cancer、http://methhc.mbc.nctu.edu.tw/php/index.php)に挙げられている遺伝子など、多数の遺伝子が報告されている。
さらに、SEPT9は、大腸がんに特異的にメチレーションが報告されており、血液中のSEPT9DNAのメチレーションを検出する診断薬が販売されている。また、TAC1、EYA4、TMEFF2、NGFR、ADAMTS2、ADAMTS16、TSPYL5、MYO1Gなどの遺伝子も、大腸がんでメチル化されているとの報告がある。これらの遺伝子でも、メチレーションを検出することにより、大腸がんを特異的に検出することが可能となる。
また、EGFRのチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)など分子標的薬によって治療に抵抗性を有する変異が生じた場合の検出にも応用することができる。
さらに、CDKN2A、MGMT、TFPI2、NDRG4、SDC2、BMP3、PRIMA1、SFRP2、VIM、CDH1、CUX2、REG1A、CCND2、PLAU、SOCS1、THBS、VHL、RASSF1、ZNF154、BNC1、SST1、MLH1及びBRCA1等から選ばれる遺伝子のメチル化DNAの検出・定量にも応用することができる。
本発明の検査は、リアルタイムPCR装置を用いて行われる。リアルタイムPCR法は、PCRの増幅量をリアルタイムでモニターし解析する方法である。この方法にはサーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化したリアルタイムPCR装置が用いられる。一般的なリアルタイムPCRでは、段階希釈した既知量のDNAをスタンダードとしてPCRを行い、これをもとに、増幅が指数関数的に起こる領域で一定の増幅産物量になるサイクル数(threshold cycle;Ct値)を横軸に、初発のDNA量を縦軸にプロットし、検量線を作成する。未知濃度のサンプルについても、同じ条件下で反応を行い、Ct値を求める。この値と検量線から、サンプル中の目的のDNA量を測定する。通常、リアルタイムPCRのモニターには蛍光試薬が用いられるが、本発明においては、蛍光試薬としてインターカレーター試薬を用いるのが好ましい。
本発明に用いられるプライマーセットとしては、一組のPCRプライマーセットの片方又は両方のプライマーにタグを付与したプライマーセットが好ましい。
塩基組成や鎖長が異なるPCR産物は、Tm値が異なる産物として増幅し、HRM解析により定量することができる。このTm値の差をより広げるために、各一組のPCRプライマーセットの両方のプライマーにタグを付与するのが好ましい。
Tm値(Melting Temperateure)とは、二重鎖核酸が加熱により融解する際、50%が乖離する温度として定義される。増幅したPCR産物のTm値が異なればHRM解析によって、PCR産物を定量的に解析することができる。したがって、HRM解析を行うことのできるPCR機器であればどのような機器を用いてもよい。例えば、リアルタイムPCR機器に付属している融解曲線解析ソフトを利用し、そこから得られたデータよりピーク高や面積を算出することで増幅されたPCR産物を定量することができる。リアルタイムPCR機器に付属している融解曲線解析ソフトであればどのようなソフトを使用してもよい。本発明方法では、得られたPCR産物を複数回HRM解析するだけでよく、その後に電気泳動、シークエンスなどによる解析を必要としないため、簡便であるだけではなく、コンタミネーションのリスクがないという長所がある。
前記のように、本発明において、各一組のプライマーセットの片方又は両方のプライマーにタグを付与するのは、増幅する2組のPCR産物のTm値の差をより広げるためである。すなわちタグは、Forwardプライマー及びReverseプライマーの片方又は両方に付与する。
付与するタグは、Tm値に差が生じればよく、標的核酸とのハイブリダイズを阻害しなければどのようなものを用いてもよい。具体的には、DNA、RNA、PNA(ペプチド核酸)、ヌクレオチドアナログを使用したLNA(Locked nucleic acids)などを用いることができる。また、増幅される2種のPCR産物の配列のTm値が大きく異なり、HRM解析によって分離することが可能であれば、タグを付与せずにプライマーを設計することもできる。
増幅するPCR産物のTm値は、HRM解析においてピーク分離が可能であることが必須であるが、少なくとも2℃以上、好ましくは3℃以上、より好ましくは5℃以上の差があることが好ましい。また、HRM解析でのピーク形状や必要な感度によっては、6℃以上、より好ましくは7℃以上の差があることが好ましい。
本発明方法では、異なる遺伝子配列を2組以上の当該両側タグ付きプライマーセットを用いて同時に増幅させる。この時、2組以上のプライマーセットのプライマー比を変えてPCRを行うことにより、至適な定量範囲を調節することが可能となる。したがって、異なる遺伝子配列間に極端な量的な差があっても検出・定量することができる。ダイナミックレンジが広く、大きな違いを広い範囲で定量できるリアルタイム定量PCR法と比較すると小さな差であっても検出・定量することが可能となる。また、従来の競合PCR法と比較すると、高感度領域で定量性をもたらすことができる。なお、この2組以上のプライマーセットの比を変えてPCRを行う手段は、スタンダードにおいても、実際の検査を行う場合も、採用される。
通常、HRM解析は、必要なPCRサイクルの増幅終了後に1回のみ行うが、本発明では、複数のPCRのサイクル毎にHRM解析を行うことにより、より詳細な定性的データを得られるのみならず、Ci値を求めて標準曲線を作成して定量を行うことで、ダイナミックレンジの広い定量解析を行うことができる。
HRM解析のためのPCR機器には、ここではQuant Studio 3(商標)(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)を使用しているが、同様の機器であればどのような機器を用いても解析することができる。そのような機器として、例えば、StepOne&StepOnePlus(商標)リアルタイムPCRシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)、LightCycler(商標)480システム(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)、Thermal Cycler Dice(商標)Real Time System III(タカラバイオ株式会社)、CFX96 Touch(商標)Real-Time PCR Detection System(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社)がある。すでに広く普及している機器を使用することができることは、本検査方法のメリットである。
PCR増幅に用いる試薬としては、一般に使用されるPCR試薬の他に、MeltDoctor(商標)HRM Master Mix、Fast SYBR(商標)Green Master Mix、PowerUpSYBR(商標)Green Master Mix、Luminaris Color HRM Master Mix(以上、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)、KAPA HRM FAST PCR Kit(KAPABIOSYSTEMS社)、SsoFast EvaGreen Supermix(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社)等を使用することができる。HRMとしてはEvaGreen、SYTO 9、LC GreenやMeltDoctorなどのSaturation Dyeインターカレーター試薬の使用が必要となる。
本発明においては、PCRのサイクル毎にHRM解析を行い、当該HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)を計算し、スタンダードの量的数値とCiとの間で回帰式を算出し、サンプルのCi値を代入することでサンプルの標的遺伝子配列の量的数値を求める。
ここで、前記HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)の計算は、例えばサイクル毎の融解曲線におけるピーク比率(Y)とサイクル数(X)から、ThresholdラインをY軸=0上に置き、INTERCEPT関数を用いてY切片(Y値=0)のX軸値(Ci)を算出することができる。
INTERCEPT関数とは、単純線形回帰における回帰直線の切片を取得する方法であり、表計算ソフトエクセルに付属しているものを使用することができる。
前記スタンダードの融解曲線におけるCiとサンプルの融解曲線におけるCiとの間での回帰式の算出は、HRM解析におけるピーク高又はピーク比率とサイクル数の散布図から決定係数を算出し、最も決定係数の高い近似式を算出することにより行うことができる。ここで、回帰式は、エクセルの散布図作成機能を使用し、最も決定係数(相関係数の2乗)の高い式を使用すればよい。
一般的なリアルタイムPCR(qPCR)の場合、スタンダードを用いた定量にはCt値を算出して、スタンダートの数値とCt値が相関することを利用して回帰曲線=近似曲線の関数を元に算出することが一般的である(X軸にサイクル数、Y軸に蛍光値)。本発明においては、前記のCi値を用いた前記の回帰式を採用することにより、検体由来の混在PCR産物の定量値を算出することが可能となった。これにより症例の経時的数値変動を追跡することが可能となった。例えば、ターゲットを腫瘍特異的DNAマーカーにしてリキッドバイオプシーを行えば、現在使用されているCEAやCA19-9等の腫瘍マーカーを、感度、特異度で上回ることができる。
また、インターナルプローブを用いたqPCR法やデジタルPCR法は、定量的かつ高感度な解析方法ではあるものの、同じ反応液中に目的外の非特異PCR産物が発生しても検知することができない。超高感度なPCR条件では非特異反応が発生し易いが、目的のPCR産物の増幅に悪影響を及ぼしやすく、間違った結論を導かないよう除外することが望ましいにも関わらず、それらの解析方法では不可能である。本発明では、Tm値の異なる非特異PCR産物の発生を検知してデータを除外することが可能であるため、それらのインターナルプローブを用いた解析方法より精度の高い結果を得ることが可能となる。また、高価なインターナルプローブを用いる必要がないことから、付加的にコストの必要がないという利点がある。
通常のリアルタイムPCR装置は、前述のようにサーマルサイクラーと分光蛍光光度計を一体化したリアルタイムPCR装置であり、本発明ではこれに融解曲線解析ソフトを具備するリアルタイムPCR装置が用いられる。しかし、このようなPCR装置において融解曲線解析は、必要な回数の増幅終了後に実施できるように設定されており、増幅サイクル毎に実施できるようには設定されていない。本発明方法を実施するには、増幅サイクル毎に融解曲線解析機能を作動でき、前記Ciを算出できるリアルタイムPCR装置を用いるのが好ましい。
従って、本発明の別の一態様は、サーマルサイクラー、分光蛍光光度計及び融解曲線解析ソフトを具備するリアルタイムPCR装置であって、増幅サイクル毎に融解プロファイルが作動して増幅サイクル毎のHRM解析を可能とし、得られる融解曲線にピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)を計算する計算部を有することを特徴とする、リアルタイムPCR装置である。
前記計算部には、スタンダードの量的数値と前記Ciとの間で回帰式を算出し、そこにサンプルのCiを代入することでサンプルの標的遺伝子配列の量的数値を求める計算部が含まれているのが好ましい。
前記HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)の計算は、サイクル毎の融解曲線におけるピーク比率(Y)とサイクル数(X)から、ThresholdラインをY軸=0上に置き、INTERCEPT関数を用いてY切片(Y値=0)のX軸値(Ci)を算出する手段が好ましい。
本発明方法に供するサンプルは、血液、組織などの臨床検体、農産物等あらゆるものから抽出した核酸を対象とすることができる。特にサンプルが、全血、血漿、血清、尿、大便、唾液、手術組織、生検組織、鼻粘膜液及び脳脊髄液から選ばれる体液サンプルである場合に好ましく用いられる。
以下に、血液サンプルによるリキッドバイオプシーを想定したDNA抽出法を記載するが、生検組織サンプル、他の試料であってもこれに準じて精製し解析を行うことができる。
新鮮なEDTA採血検体をQIAamp DNA Blood Maxi Kit(キアゲン社)を使用して、末梢血DNAを抽出・精製した。なおNucleoSnap(商標)DNA Plasma キット(マッハライ・ナーゲル社)、EZ1 ccfDNA キット(キアゲン株式会社)、MagMAX Cell-Free DNA Isolation キット(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)を使用して、末梢血循環DNA(Cell free DNA;cfDNA)を抽出・精製してもよい。なお、上記キットは例示であり、同様のキットであればどのようなキットを使用してもよい。
次にDNAのメチル化異常を検出する本発明方法の一実施態様について説明する。
DNAのメチル化異常をPCRで検出するためには、DNAをバイサルファイト(亜硫酸水素ナトリウム)処理して塩基置換を利用する方法を用いるのがよい。バイサルファイト処理を行うと、DNAでは、一般にシトシン塩基(C)がウラシル塩基(U)に変換されるが、5位の炭素のメチル化修飾されたシトシン塩基は変換されないため、正常と異常のメチル化DNAでは遺伝子配列に違いを生じる。
バイサルファイト処理は、精製後のDNAを、EpiTect Bisulfite キット(キアゲン株式会社)、EZ DNA Methylationキット(ZYMO RESEARCH 社)、MethylEasy(商標)Xceed Rapid DNA Bisulphite Modification キット(Human Genetic Signatures社)等を使用してCのバイサルファイト変換を行う。DNA配列内のCがメチル化されていなければ脱アミノ化によりウラシル(U)塩基に変換され、Cの5位がメチル化されていれば、Uへの変換が生じない。この後のPCRにより、Uの位置はチミン塩基(T)に置き換わるため、CからTへの変換が観察される。
DNAメチル化異常はCpG配列の存在する広範な領域で生じることが多い。したがって、通常周辺のCpG配列が同時に異常をきたすため、Forward、Reverseの双方のプライマーをDNAメチル化異常が生じている配列上に設定することができる。その結果、0.01%以下で混在する異常メチル化DNAを検出することが可能である。したがって、DNAメチル化異常は点突然変異などの遺伝子変異と比較して、非常に感度良く定量することができる。一般に、プライマーの3'側から1~数塩基の位置に、塩基配列の異なる部分が含まれるようにプライマーを設計すると感度良く異なる配列を検出することができる。
本発明では、特許文献1のHiQASPで使用していたTm値を上昇させるためのPrimerに付加するTagは通常、ctDNA(メチル化アレル)用プライマーセットの片方のみでよいが両方のPrimerに付加することで、付加しない正常DNA(非メチル化アレル)由来PCR産物とのTm値の差が一層増大した。想定できうるこの現象に加え、PCR産物間の競合性が薄れている現象が観察された。さらに、PCR産物のHRM解析をPCRのサイクル毎に行うと、スタンダードのピークレシオがサイクル毎に変化する現象が観察された。ここで前記Ciによる回帰式を用いて解析する新アルゴリズムを適用して極微量の標的配列の定量解析が可能となった。この現象を利用すると1セットのスタンダードを1 runで解析するだけで、マイナーピークの現れる範囲(メジャーピークとの合計値に対する%が算出可能)を広くすることが可能となった。
一般にPCR実験系を新たに構築する際に、至適なサイクル数は経験的に何度か試験することが多い。特に高感度な解析を行いたい場合はサイクル数を最大にしたいところ、サイクル数が多すぎると時間がかかるのみならず、非特異増幅が出易くなり間違った結果を得やすくなる。そこで非特異増幅が出ていないか定性的に確認する一般的な手法にHRM解析がある。これに対し、本発明方法であれば、一般的なPCRにおいても至適なサイクル数を1度の実験で幅広いサイクル数で確認できるため、PCRプログラムに組み込まれれば多くの研究者に有用な手法となる。
また、Covid-19等の下水中の感染症原因ウイルスのVariant解析においては、多数のVariantが予想されるところ、後期のサイクルのみでは多数あるが増幅効率の悪いVarinatが増幅の良い少数のVariantに隠されて見られなくなる現象が想定される。これに対し、本発明方法であれば、早期サイクルでそれが確認できると考えられる。
現在より早期のがんの診断や微小残存病変(Minimal Residual Desease:MRD)の診断が可能になれば、これまで以上に早期の治療が可能となり、治療成績の向上が期待できる。COVID-19パンデミックで世界に普及した安価なリアルタイムPCR装置を利用してのがん検診が可能となるため、がん患者の早期治療によるがん死亡率の低減が世界的にもたらされることが期待できる。
本発明方法によれば、サンプルとして全血を用いた場合であっても、前記メチル化DNAのような極微量の遺伝子を高感度で検出できるようになった。従って、本発明の別の一態様は、CDKN2A、MGMT、TFPI2、NDRG4、SDC2、BMP3、PRIMA1、SFRP2、VIM、CDH1、CUX2、REG1A、CCND2、PLAU、SOCS1、THBS、VHL、RASSF1、ZNF154、BNC1、SST1、MLH1、BRCA1、SEPT9、MYO1G及びTSPYL5等から選ばれる遺伝子のメチル化DNAを定量的に検出するためのプライマーセットを含有するRT-HRM解析用キットであって、全血、尿、手術組織及び生検組織から選ばれる検体を用いてPCRにより超高感度定量可能なキットである。
本発明のキットには、全血を用いてメチル化DNAが検出できることを記載したプロトコールが含まれることが好ましい。また、プロトコールには、本発明検査方法で検査することが記載されているのがより好ましい。
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]大腸がん症例の末梢血DNA中のがん由来DNAのメチル化DNAマーカー(SEPT9、MYO1G)による定量
本発明方法により、大腸がん患者の全血DNAを用い、SEPT9、MYO1Gのメチレーションを検出することができるか検討した。用いた試料は大腸がん症例(J19, J22, J23)及び比較として市販の健常人末梢血由来DNA(ProM)を用いた。各症例の採血時期は、B1が手術直前、B2が術後1週間、B3が術後1か月である。
下記に使用したオリゴDNA配列を示す。なお、小文字配列はターゲット遺伝子配列とは相補性のないタグを示す。なお、ここでのメチル化アレル(Mアレル)とはPCR増幅領域におけるCpGサイトのC(シトシン)の5'がメチル化されているエピアレルとし、非メチル化アレル(Uアレル)とはそれがメチル化されていないものとする。
SEPT9遺伝子用(S3R):
Uアレル用Forward Primer “S3R_Uf1” 5'-AGTTTAGTATTTATTTTTGAAGTTT(配列番号1)
Uアレル用Reverse Primer “S3R_Ur3” 5'-CCATCATATCAAACCCCACA(配列番号2)
Mアレル用Forward Primer “S3R_S15Mf1” 5'-gccgccgccgccgccTTTAGTATTTATTTTCGAAGTTC(配列番号3)
Mアレル用Reverse Primer “S3R_S15Mr7” 5'-gctggtctggctggcCATATCGAACCCCGCG(配列番号4)
Uアレル用スタンダードオリゴDNA “S3RStd_Unmet” 5'-AAGCGTGTCAATTCTTAGCGGTTAGGTTTATTTGTAGGGTTTTTTTTAGTATGTTTGTGGTTGTAGTAGTTAGTTTAGTATTTATTTTTGAAGTTTGAAATGATTTTATTTAGTTGTGTGTTGATTGTGGGGTTTGATATGATGGTTGGTGGGTAGTGGGTTGTGTGGAGGGTAGTGGTGAGGATGTTAAGGTTTAGATGTTTTTGTGTAGGAGGGATGATGATTTTTTTTATGTTTTTGTGGTTTTAATTTGGTGTTTTGTTATTTTTGATTTGGTGAATATATTTTAGAGAAGTTAAAATGGTTGTTATGAAGAGGTTTTTTTGGTAGGCCCACAAGACTTTT(配列番号5)
Mアレル用スタンダードオリゴDNA “S3RStd_Met” 5'-GTTAGGTTTATTCGTAGGGTTTTTTTTAGTACGTTCGCGGTCGTAGTAGTTAGTTTAGTATTTATTTTCGAAGTTCGAAATGATTTTATTTAGTTGCGCGTTGATCGCGGGGTTCGATATGATGGTTGGTGGGTAGCGGGTCGCGCGGAGGGTAGCGGCGAGGACGTTAAGGTTTAGACGTTTTCGTGTAGGAGGGACGACGATTTTTTTTACGTTTTCGTGGTTTTAATTCGGCGTTTTGTTATTTTTGATTCGGTGAATATATTTTAGAGAAGTTAAAATGGTCGTTACGAAGAGGTTTTTTT(配列番号6)
MYO1G遺伝子用(M2):
Uアレル用Forward Primer “M2_Uf3” 5'-TTTTTAAAGTGGGGAGGATTTAGTATTT(配列番号7)
Uアレル用Reverse Primer “M2_Ur1”
5'-TAACCCATTTACACACCAAAAACA(配列番号8)
Mアレル用Forward Primer “M2_S15Mf3” 5'-ccgccccccccccccAAAGCGGGGAGGATTTAGTATTC(配列番号9)
Mアレル用Reverse Primer “M2_S15Mr1” 5'-cggccggcgcgcctcCCGTTTACACGCCAAAAACG(配列番号10)
Uアレル用スタンダードオリゴDNA “M2Std_Unmet” 5'-TGTGTTGTTAGGGTTGGAAGTTAATTTATGGAGTTTTGTTTTTTGTTTGTGGGTGGAGGGGAGTTTTTGAAGGAGGTTAGTGAAGAATTTTTTAAAGTGGGGAGGATTTAGTATTTGGTTTTTTGTTTTTGGTGTGTAAATGGGTTAGATTGTTAGGTATAGTTTTTTTGTGGGGTGTAGGGATAGGAAGTAGGGTTTAG(配列番号11)
Mアレル用スタンダードオリゴDNA “M2Std_Met” 5'-CGTGTTGTTAGGGTTGGAAGTTAATTTACGGAGTTTTGTTTTTTGTTTGTGGGTGGAGGGGAGTTTTCGAAGGAGGTTAGCGAAGAATTTTTTAAAGCGGGGAGGATTTAGTATTCGGTTTTTCGTTTTTGGCGTGTAAACGGGTTAGATCGTTAGGTATAGTTTTTTTGTGGGGCGTAGGGATAGGAAGTAGGGTTTAG(配列番号12)
Uアレル用Forward Primer+Uアレル用Reverse Primer=各5μM:FR-U
Mアレル用Forward Primer+Mアレル用Reverse Primer=各5μM:FR-M
予めFR-UとFR-Mを調整しておき、PCR時にFR-U:FR-M比をSEPT9では1.75:1、MYO1Gでは1:2.5で使用した(今回のデータを得る際に使用した比率であり、必ずしも固定したものではない。通常は各アッセイ構築の際に各種比率での検討を行い、高感度定量に関して至適な比率を使用する)。
説明と同意を得た大腸がん患者末梢血検体は、リキッドバイオプシー用採血管「PAXgeneTM ccfDNA採血管10mL」(BD社)にて、採血して、「QIAamp DNA Blood Maxi Kit」(キアゲン社)にてDNAを抽出精製した。その後「EZ DNA Methylation-Lightning kit」(ZymoResearch社)によりバイサルファイト処理し、解析試料とした。
1ウェルあたりの鋳型DNA量は、検体の解析には元のゲノムDNA量約100ngを出発材料としたバイサルファイト処理試料を用い、スタンダードオリゴDNAについてはUアレル用スタンダードオリゴDNAがすべて30,300コピー相当(ヒトゲノム100ng当たりのコピー数)、Mアレル用スタンダードオリゴDNAは各々のwellレイアウト記載の数値を使用した(三重測定)。SEPT9とMYOG1のPCR増幅領域は正常DNAではUアレル、大腸がんではMアレルであるため全血由来DNAから微量ctDNAを定量するために、Mアレル用スタンダードオリゴは320コピー相当を最大量として2倍毎の希釈段階を使用した(単位は、それぞれのオリゴDNA濃度をコピー数換算したもので、SEPT9についてはS3R Unit、MYO1GについてはM2 Unitと表記)。スタンダードオリゴの希釈には、1μg/ml of Carrier RNA(Qiagen社)in IDT buffer (IDT社)を使用した。市販の健常人末梢血由来DNAはプロメガ社のHuman Genomic DNA (G1471)を使用した。
PCR反応液の組成を以下に記載する。ただし本発明方法(Real―Time-HRM=RT-HRM)を実施するにあたりPCR機器とPCR試薬等、濃度や量比、温度は下記に限定されるものではなく、一般的なPCRに準じる。濃度はPCR反応液中の最終濃度を示す。なお以下の記載以外はメーカーの取り扱い説明書に従った。
PCR試薬;EpiTaqTM HS(Takara-bio社)。
MgCl2濃度:2.5μM
ddNTP濃度:200μM each
各Primerの合計濃度:1.4μM
蛍光試薬;20xEvaGreenTM(Biotium, Inc)濃度:1x
蛍光リアルタイムPCR装置にはQuant Studio 3を、解析ソフトには機器付属のQuantStudioTM Design&Analysis Software v.1.4.3を使用した。PCRは、最初の30サイクルは通常のHRM解析とし、その後のサイクルでサイクル毎のHRMデータ取得を行い、取得したデータを集計して、本発明方法によるRT-HRM解析を行った。以下にPCRとRT-HRM解析条件を示す。
Denature:95℃ for 2 min ->PCR:(95℃ for 5 sec-TAE for 15 sec)30 cycles->Mc:68℃-92℃ at 0.1℃/sec-TAE for 20 sec->Data export for 30 cycles
次に、本発明方法(RT-HRM)の特徴であるサイクル毎のHRMデータ取得は以下を行い、データのエキスポートをマニュアルでサイクル毎に繰り返し実施した。
Mc:68℃-92℃ at 0.1℃/sec-TAE for 20 sec->Data export
AE:Anealing/Extension temperature:58℃ for SEPT9,64℃ for MYO1G
なお、複数サイクル毎の本発明方法(RT-HRM)データ取得は最初のXサイクルのPCR、Mc後、以下のサイクル数=Yを調整して、データのエキスポートを繰り返すことで実施可能である。
PCR:(95℃ for 5 sec-TAE for 15 sec) Y cycles->Mc:68℃-92℃ at 0.1℃/sec-TAE for 20 sec->Data export:この場合X+1+Yサイクルのデータが取得される。この工程は必要回数実施可能で、Y部は用途に応じて可変。また、Mc部の0.1℃/secも可変である。
マニュアルでのデータ取得と後述するデータ解析については、機器内のソフトをプログラミングして組み込めば手間のかからない解析となる。
図1に、SEPT9 メチル化DNA(大腸がんにおけるctDNA)RT-HRM解析用プライマー配列の位置を示す。図2に、MYO1G メチル化DNA(大腸がんにおけるctDNA)RT-HRM解析用プライマー配列の位置を示す。
図3はSEPT9及びMYO1Gについてサイクル毎のHRMグラフを示す。中央の数字がサイクル数を示す。1マスが1 WellのHRMパターンであり、x軸が温度、y軸は-dRFU/dt(温度上昇に対する蛍光シグナル減少変化の負の微分値)。サイクル毎の各アレルの存在比が変化する様子が確認でき、Endpointサイクルのみの従来のHRMでは試料内の正確な定性的、定量的情報を得られていないことが理解できる。またサイクル毎の変化が定量的であることは、段階的な融解曲線のみならず、次に示す新たに考案したCi(Intercept Cycle)値とスタンダードによる検量線で明確に確認できる。
サイクル毎にExportしたMelt Curve Derivative データを集計して、UアレルPCR産物とMアレルPCR産物のTm値(PCR産物の融解温度;-dRFU/dt値が最大値を取る温度)に対して、サイクル毎に-dRFU/dt値のピーク高の数値を算出した。その際、バックグラウンドは各ピークの中間域の温度の数値を使用して各ピーク数値から差し引いた。ピークの比率はピーク数値の和を100%として求めた。Mアレルの比率=%Mをサイクル毎にプロットして、%Mが最初に0%でなくなるサイクルの数値と次のサイクルの数値とでエクセルのINTERCEPT関数を使用し、サイクルをY、%MをXとしてY切片を求めCi値とした(図4及び図5)。このCi値により検量線を作成したものが、図6及び図7であり、HRM解析により非特異シグナルと判定したwellのデータを除いた検量線において、決定係数0.9以上の良好な相関を示した。ゆえに新たに開発したCiを用いたRT-HRM解析の定量アルゴリズムは良好に機能することを示した。同一ロットのスタンダードを使用して本手法を実施すれば検体採取時期の異なる検体の経時的な解析により、数値変動の追跡が可能となるため、新たな腫瘍マーカー解析手法として有用と考えられる。
ここで示すSEPT9とMYO1Gのデータにおいて、上記のTm値のピークは、Uアレル由来のピークとMアレル由来のピークの2種類を対象とし、その2種類以外のピークは非特異PCR産物として当該wellのデータを除外対象とした(非特異シグナルを判別できるHRM解析ならではの利点)。図6のパネルにはMアレル由来ピークに外れTmが認められるwell(濃いグレーwell)があり、また図6と図7でMアレル由来ピークが認められないwell(薄いグレーwell)があり、それらのデータは上記のように定量解析から除外した。
なおSEPT9のUアレル由来ピークのTm分布は73.2℃-74.3℃、Mアレル由来ピークのTm分布は84.0℃-85.0℃で、MYO1GのUアレル由来ピークのTm分布は73.1℃-74.2℃、Mアレル由来ピークのTm分布は86.6℃-87.3℃であった。

Claims (16)

  1. PCRによって1種又は2種以上の遺伝子領域に混在する異なる遺伝子配列を検査する方法であって、前記異なる遺伝子配列を2組以上のプライマーセットを用い、前記2組以上のプライマーセットの量比を変えて同時に増幅し、PCRのサイクル毎にHRM解析を行い、当該HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)を計算し、スタンダードの量的数値とCiとの間で回帰式を算出し、サンプルのCi値を代入することでサンプルの標的遺伝子配列の量的数値を求めることを特徴とする、サンプル中の異なる遺伝子配列の存在を定量的に検査する方法。
  2. 前記HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)の計算が、サイクル毎のHRM解析におけるピーク比率(Y)とサイクル数(X)から、ThresholdラインをY軸=0上に置き、INTERCEPT関数を用いてY切片(Y値=0)のX軸値(Ci)を算出する請求項1記載の検査方法。
  3. 前記スタンダードのHRM解析におけるスタンダードの量的数値とCiとの散布図から近似式と決定係数を算出し、最も決定係数の高い近似式を採用してサンプル定量用の回帰式として使用するものである請求項1又は2記載の検査方法。
  4. 前記2組以上のプライマーセットの1組のプライマーセットの一方又は両方にタグを付与する請求項1~3のいずれか1項記載の検査方法。
  5. 前記タグが、DNA、RNA、PNA又はLNAである請求項4記載の検査方法。
  6. 前記タグが、PCR産物のTm値の差を大きくするために付与するものである請求項4又は5記載の検査方法。
  7. 前記タグが、PCR産物のTm値を少なくとも2℃上昇させるタグである請求項6記載の検査方法。
  8. 検査対象サンプルが、全血、血漿、血清、尿、大便、唾液、手術組織、生検組織、鼻粘膜液及び脳脊髄液から選ばれる体液サンプルである請求項1~7のいずれか1項記載の検査方法。
  9. 検査対象遺伝子が、正常遺伝子と異常遺伝子が混在するサンプル中の少量の異常遺伝子である請求項1~8のいずれか1項記載の検査方法。
  10. 異常遺伝子が、がん遺伝子、がん細胞特有の遺伝子異常配列、ウイルス由来遺伝子、エピゲノム異常、法医学上の重要配列、及び食品又は環境水中の特定の遺伝子配列から選ばれる遺伝子である請求項9記載の検査方法。
  11. 前記プライマーセットが、メチル化DNAと非メチル化DNAを検出するプライマーセット、又は野生型遺伝子と変異型遺伝子を検出するプライマーセットである請求項1~10のいずれか1項記載の検査方法。
  12. 前記プライマーセットがDNAメチル化異常を検出するプライマーセットであり、CDKN2A、MGMT、TFPI2、NDRG4、SDC2、BMP3、PRIMA1、SFRP2、VIM、CDH1、CUX2、REG1A、CCND2、PLAU、SOCS1、THBS、VHL、RASSF1、ZNF154、BNC1、SST1、MLH1、BRCA1、SEPT9、MYO1G及びTSPYL5から選ばれる遺伝子のDNAメチル化異常を定量的に検出するものである請求項1~11のいずれか1項記載の検査方法。
  13. サーマルサイクラー、分光蛍光光度計及び融解曲線解析ソフトを具備するリアルタイムPCR装置であって、増幅サイクル毎に融解プロファイルが作動して増幅サイクル毎のHRM解析を可能とし、得られる融解曲線にピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)を計算する計算部を有することを特徴とする、リアルタイムPCR装置。
  14. 前記計算部には、スタンダードの量的数値と前記Ciとの間で回帰式を算出し、そこにサンプルのCiを代入することでサンプルの標的遺伝子配列の量的数値を求める計算部が含まれている請求項13記載のリアルタイムPCR装置。
  15. 前記HRM解析においてピークが生じ始める直前のサイクル数換算値(Ci)の計算が、サイクル毎の融解曲線におけるピーク比率(Y)とサイクル数(X)から、ThresholdラインをY軸=0上に置き、INTERCEPT関数を用いてY切片(Y値=0)のX軸値(Ci)を算出する手段である請求項13又は14記載のリアルタイムPCR装置。
  16. CDKN2A、MGMT、TFPI2、NDRG4、SDC2、BMP3、PRIMA1、SFRP2、VIM、CDH1、CUX2、REG1A、CCND2、PLAU、SOCS1、THBS、VHL、RASSF1、ZNF154、BNC1、SST1、MLH1、BRCA1、SEPT9、MYO1G及びTSPYL5から選ばれる遺伝子のDNAメチル化異常を定量的に検出するためのプライマーセットを含有するDNAメチル化異常検出用キットであって、全血、尿、手術組織及び生検組織から選ばれる検体を用いてPCRにより超高感度定量可能なキット。
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