JP2024033450A - 熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱硬化性樹脂の成形プロセスに起因する不良要因の解析方法において、短期間で簡便に、線硬化収縮ひずみと線膨張ひずみのいずれが主要因であるかを評価するための情報を出力する熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法を提供する。【解決手段】熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法において、熱硬化性樹脂の反応率の変化に基づいて前記熱硬化性樹脂の線硬化収縮ひずみε1を算出する第1の算出工程と、熱硬化性樹脂の温度の変化に基づいて前記熱硬化性樹脂の線膨張ひずみε2を算出する第2の算出工程と、前記熱硬化性樹脂の線膨張ひずみε2と他の部品の線膨張ひずみとの間の線膨張ひずみ差Δε2を算出する第3の算出工程と、前記線硬化収縮ひずみε1と前記線膨張ひずみ差Δε2とを出力する第1の出力工程と、を有することを特徴とする。【選択図】 図3

Description

本発明は、熱硬化性樹脂の成形プロセスに起因する不良要因の解析方法に係り、特に、高信頼性が要求されるパワー半導体モジュールのモールド樹脂の剥離及びクラックの要因特定に適用して有効な技術に関する。
溶融した樹脂を金型内のキャビティに充填し硬化させるトランスファーモールドは、生産性に優れており、従来から半導体などの電子部品の樹脂封止に広く用いられている。
金型内に充填された熱硬化性樹脂は、金型からの伝熱と樹脂の自己発熱によって樹脂温度が変化し、液体から固体へと相変化する。この樹脂温度変化と相変化によって樹脂の収縮ひずみが生じる。樹脂の収縮ひずみが大きい場合には、金型からの離型後に反り変形が発生したり、樹脂と部品を一体化して成形する際には、樹脂の収縮によって樹脂と部品間に剥離が発生したり、樹脂や部品が割れるクラックなどの問題が生じる。
液体から固体への相変化に伴う収縮は、樹脂の発熱変化に伴う反応率を含む関数で表され、樹脂温度の変化に伴う収縮は、線膨張係数と樹脂温度変化を含む関数で表される。樹脂材料及び樹脂材料と一体成形した部品の反り変形、剥離や割れを防止するには、金型からの伝熱と樹脂の発熱反応による樹脂温度の変化、樹脂の熱履歴による反応率の変化を考慮した樹脂材料の収縮ひずみの評価により、収縮ひずみの値を低減することが必要となる。
熱硬化性樹脂材料の流動と収縮ひずみの計算方法に関する従来技術として、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1は、流体計算において、熱硬化性樹脂の収縮ひずみの変化を、熱応力解析の境界条件として利用し、収縮ひずみに伴う応力の計算を処理させることを特徴とする解析プログラムの発明である。
特開2012-101448号公報
熱硬化性樹脂は、樹脂の発熱反応によって、分子同士の3次元的な架橋が生じる。このため、温度に対して状態が不可逆であり、樹脂の発熱反応が終了すると、温度を高くしても液体の状態には戻らない。つまり、発熱反応に伴う収縮ひずみである線硬化収縮ひずみは、樹脂の発熱反応が終了するまでの製造プロセスにおいてのみ変化する。一方、材料の線膨張係数に起因する線膨張ひずみは、温度変化が生じる製造プロセスと製品環境で変化する。
熱硬化性樹脂の製造プロセスにおける収縮ひずみによって生じる応力を評価するには、上記特許文献1のように、流体解析で算出した反応率によって生じる線硬化収縮ひずみを熱応力解析の境界条件として利用している。
しかし、流体解析で算出したデータを熱応力解析の境界条件として変換することは、市販ソフトを使用する場合にはソフト同士のバージョンによって変換内容を変える必要があるなど作業負荷が高いことに加えて、変換と解析に時間が掛かる問題があった。
よって、熱応力解析へのデータ変換を行わずに流体解析だけで、線硬化収縮ひずみに加えて、樹脂と樹脂に接触する部品の線膨張ひずみの差を出力し、剥離などの不良が発生する場合に線硬化収縮ひずみと線膨張ひずみのどちらが主原因になっているかを簡便に評価し、短期間で製品形状や使用する樹脂材料などを決定することが求められている。
さらに、流体解析だけで樹脂と部品との剥離の有無を評価することも求められている。
そこで、本発明の目的は、熱硬化性樹脂の成形プロセスに起因する不良要因の解析方法において、短期間で簡便に、線硬化収縮ひずみと線膨張ひずみのいずれが主要因であるかを評価するための情報を出力する熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法において、熱硬化性樹脂の反応率の変化に基づいて前記熱硬化性樹脂の線硬化収縮ひずみε1を算出する第1の算出工程と、熱硬化性樹脂の温度の変化に基づいて前記熱硬化性樹脂の線膨張ひずみε2を算出する第2の算出工程と、前記熱硬化性樹脂の線膨張ひずみε2と他の部品の線膨張ひずみとの間の線膨張ひずみ差Δε2を算出する第3の算出工程と、前記線硬化収縮ひずみε1と前記線膨張ひずみ差Δε2とを出力する第1の出力工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、熱硬化性樹脂の成形プロセスに起因する不良要因の解析方法において、短期間で簡便に、線硬化収縮ひずみと線膨張ひずみのいずれが主要因であるかを評価するための情報を出力する熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法を実現することができる。
これにより、封止樹脂の剥離やクラックが生じないよう設計方法及び製造方法を最適化することができ、パワー半導体モジュールの信頼性向上に寄与できる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂の成形プロセスにおける樹脂充填前の様子を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂の成形プロセスにおける樹脂離型後の様子を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る解析システムの概略構成を示す図である。 本発明の一実施形態に係る解析方法を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂の解析モデルを示す図である。 図4の評価点における解析結果を示す図である。 図4の評価点における解析結果を示す図である。 図4の評価点における解析結果を示す図である。
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
図1Aから図7を参照して、本発明の実施例1に係る熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法について説明する。
先ず、図1A及び図1Bを用いて、本発明の対象となる熱硬化性樹脂の成形プロセスを説明する。図1A及び図1Bは、いずれも熱硬化性樹脂の成形プロセスにおける工程の一部を示す断面図であり、それぞれ金型への樹脂充填前、樹脂離型後の様子を示している。
図1Aに示すように、金型1内の空間(キャビティ)4に部品5,6が予め配置されており、空間4に熱硬化性樹脂材料2を樹脂の流入口であるゲート3から充填し、部品5,6を熱硬化性樹脂材料2で一体化して成形する。このとき、熱硬化性樹脂材料2は、金型1から伝熱され、反応率の上昇に伴う線硬化収縮ひずみによって収縮する。
ここで、部品5は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体チップであり、部品6は、例えば部品5が実装された回路基板などである。また、熱硬化性樹脂材料2には、例えばエポキシやフェノールなどの熱硬化性樹脂を用いる。
図1Bに示すように、空間4に充填された熱硬化性樹脂材料2を発熱反応で固化させた後、上下方向に金型1を分割して、熱硬化性樹脂材料2で封止された部品5,6からなる製品(成形品)を離型する。このとき、熱硬化性樹脂材料2と部品5,6は金型1の高い温度から室温まで冷却されるため、各材料の線膨張係数に応じた線膨張ひずみによって収縮する。
上記の線硬化収縮ひずみと線膨張ひずみは、熱硬化性樹脂材料2のクラックや、熱硬化性樹脂材料2と部品5,6との剥離など不良の要因となる。このため、これらの不良要因の解析に基づいて、製品形状、金型形状、使用する樹脂材料、金型温度などの成形プロセス条件を決めることが、コスト低減、開発期間短縮を実現する上で必要となる。
次に、図2を用いて、収縮ひずみの解析を実施するための解析システムについて説明する。図2は、本実施例の解析システムの概略構成を示す図である。
本実施例の解析システムは、図2に示すハードウェア構成で、後述する図3に示すフローチャートの動作を行うための解析プログラムなどのソフトウェアが実行されることにより機能する。
図2に示すように、本実施例の解析システムは、HDD(ハード・ディスク・ドライブ)やSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)などの記憶装置10、及びCDやDVD,ブルーレイなどの光ディスクを備えた計算装置7から構成されている。
計算装置7は、表示装置9を備えており、複数の計算装置を繋ぐLAN8に接続されている。
別の計算装置11で作成したCADデータを、LAN8を介して計算装置7に転送するように構成しても良い。計算装置7に転送されたCADデータを、記憶装置10に記録して利用することもできる。
計算装置7は、後述する図3で示すフローチャートに従って熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析を実行し、結果を記憶装置10に記録した後、表示装置9に結果を表示する。
なお、図示していないが、計算装置7及び計算装置11は、キーボードやマウス等の入力装置を備えている。
次に、図3を用いて、本実施例の収縮ひずみの解析方法について説明する。図3は、本実施例の解析方法を示すフローチャートであり、図2に示す計算装置7上で、解析プログラムなどが実行されることでその処理が行われる。
ステップS100において、解析処理が開始すると、先ず、ステップS101において、入力装置を介してオペレータによって入力された情報に基づいて、特定された解析対象モデル、つまり、熱硬化性樹脂材料2が充填される金型1内の空間4の形状、部品5,6の形状、金型1の形状のデータを記憶装置10から読み出す。
次に、ステップS102において、ステップS112で物性DB(データ・ベース)に入力した熱硬化性樹脂材料毎の密度、比熱、熱伝導率などの物性データを記憶装置10から読み出す。
次に、ステップS103において、オペレータが温度や速度などの熱硬化性樹脂の成形に必要な成形条件のデータを入力装置から入力する。
次に、ステップS104において、ステップS101で読み込んだ製品形状及び金型形状のデータを複数の特定空間(3次元ソリッドの有限要素)に分解し、有限要素の形状データを作成する。
次に、ステップS105~ステップS109において、流体計算により熱硬化性樹脂材料の反応率や温度変化に伴う樹脂ひずみの算出を行う。
ステップS105においては、以下の式(1)~式(3)に示す流体解析の基礎式である連続の式、ナビエストークスの式、エネルギ保存式を用いて熱硬化性樹脂の速度、圧力、温度などの計算を行う。
Figure 2024033450000002
Figure 2024033450000003
Figure 2024033450000004
ここで、ρ:密度,t:時間,P:圧力,u:流速,C:比熱,g:重力加速度,γ:せん断速度,T:温度,λ:熱伝導率,η:粘度(せん断),dQ/dt:発熱速度を示す。
式(3)で示した熱硬化性樹脂の温度は、式(4)~式(8)で示す熱硬化性樹脂の発熱反応によって変化する。
Figure 2024033450000005
Figure 2024033450000006
Figure 2024033450000007
Figure 2024033450000008
Figure 2024033450000009
ここで、A:反応率,t:時間,T:温度,dA/dt:反応速度,K1,K2:温度の関数となる係数,[N,M,Ka,Ea,Kb,Eb]:材料固有の係数,Q:任意時刻までの発熱量,dQ/dt:発熱反応速度、Q0:反応終了時までの総発熱量を示す。
また、熱硬化性樹脂の粘度ηは、以下の式(9)~式(11)に示す温度,せん断速度,樹脂反応率を含む関数によって変化する。
Figure 2024033450000010
Figure 2024033450000011
Figure 2024033450000012
ここで、η:粘度,Agel:ゲル化時の反応率,η0:初期粘度,γ:せん断速度,[τ,D,E,n,F,G]:材料固有の係数を示す。
熱硬化性樹脂のひずみの第1の算出工程として、ステップS106において、以上で算出した内容により、式(12)を用いて熱硬化性樹脂の線硬化収縮ひずみε1を算出する。
Figure 2024033450000013
ここで、ψ:線硬化収縮係数を表す。
なお、ここで示すようにε1の式は、線硬化収縮係数と反応率差を含む式とし、この式に圧力や温度が含まれていても良いものとする。
熱硬化性樹脂のひずみの第2の算出工程として、ステップS107において、以上で算出した内容により、式(13)を用いて熱硬化性樹脂の線膨張係数と温度変化による線膨張ひずみε2を算出する。
Figure 2024033450000014
さらに、熱硬化性樹脂のひずみの第3の算出工程として、ステップS108において、線膨張ひずみ差Δε2として、式(14)を用いて成形プロセスにおける熱硬化性樹脂の線膨張ひずみε2と熱硬化性樹脂と一体化して成形する部品5,6の線膨張ひずみの差を算出する。
Figure 2024033450000015
ここで、αR:熱硬化性樹脂の線膨張係数、αC:熱硬化性樹脂と一体成形される部品の線膨張係数を表す。線膨張係数は温度依存性の式としても良い。
なお、熱硬化性樹脂と接して一体成形される部品が複数ある場合には、複数部品それぞれの線膨張係数で個別に評価したり、複数部品の接触面積による荷重平均の線膨張係数や複数部品の平均の線膨張係数を用いて評価することができる。
次に、熱硬化性樹脂のひずみの第4の算出工程として、ステップS109において、ε1とΔε2との和、差、比の何れかを算出する。
以上で示した式(1)~式(14)の係数は、ステップS102で選択する熱硬化性樹脂材料と関連してステップS112の物性DBに保存されたデータから入力されるものとし、オペレータが係数を入力しても良いものとする。
次に、ステップS110において、以上のフローで算出した任意の結果を出力する。この結果出力には、線硬化収縮ひずみε1と線膨張ひずみ差Δε2とを出力する第1の出力工程、線硬化収縮ひずみε1と線膨張ひずみ差Δε2とを並べて表示する第2の出力工程、ε1とΔε2との和、差、比の何れかを出力する第3の出力工程を含むものとする。
次に、ステップS111において、ステップS105~ステップS109で算出され、ステップS110で出力された結果出力の内容に基づいて評価・判定を行う。これは、第4の算出工程(ステップS109)の結果に基づいて、線硬化収縮ひずみε1と線膨張ひずみ差Δε2とのうち何れが熱硬化性樹脂と他の部品との間の剥離またはクラックの主要因であるかを評価する第1の評価工程、またはステップS112の物性DBに予め入力した熱硬化性樹脂の剥離発生ひずみと、第4の算出工程(ステップS109)で算出された結果に基づいて、熱硬化性樹脂と他の部品との間の剥離の発生を評価する第2の評価工程を含むものとする。
ステップS111において、上記の第1の評価工程または第2の評価工程の評価・判定を実行できた場合(YES)、ステップS113に進み、解析処理を終了する。一方、第1の評価工程または第2の評価工程の評価・判定を実行できない場合(NO)は、ステップS101~ステップS103に戻り、ステップS101~ステップS103以降の処理を繰り返す。
以上の評価工程によって、製品形状、樹脂充填位置(ゲート位置)などの金型形状、使用する熱硬化性樹脂材料、金型温度、初期の樹脂温度などの成形プロセス条件を決定したり、適正化する解析方法を実現することができる。さらに、この解析方法を用いた製品設計方法・製造方法を実現することができる。
なお、熱硬化性樹脂の発熱反応を示す発熱式は、式(4)~式(8)に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂材料2の反応率を含む任意の関数を用いることができる。
また、熱硬化性樹脂の粘度を示す粘度式は、式(9)~式(11)に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂材料2の温度または反応率を含む任意の関数を用いることができる。
また、熱硬化性樹脂の収縮ひずみを算出する式(12)~式(14)は、熱硬化性樹脂材料2の圧力と温度を含む任意の式を用いることができるものとする。
また、3次元の解析だけではなく、2次元の解析もできるものとする。
なお、以上の計算は、有限要素法または有限体積法または有限差分法を用いた流体解析で計算を行えるものとする。
次に、図4から図7を用いて、本実施例の熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法を用いた樹脂ひずみの解析事例について説明する。
図4は、樹脂ひずみ解析に用いた熱硬化性樹脂の解析モデルを示す図である。図4には、肉厚方向の情報としてA-A’断面についても示している。部品5の寸法は、X,Y,Z方向において24mm×24mm×1mm、部品6の寸法は、X,Y,Z方向において72mm×72mm×0.5mm、熱硬化性樹脂材料2の寸法は、X,Y,Z方向において72mm×72mm×3mmである。これは、図1A及び図1Bに示した金型1内に、部品5,6を予め設置し、熱硬化性樹脂材料2の注入口であるゲート3から熱硬化性樹脂材料2を金型1の空間4へ充填して製造された成形品である。なお、ゲート3は、成形品の熱硬化性樹脂材料2のXマイナス方向に肉厚0.5mmで設置した。
成形条件として、ゲート3から充填する熱硬化性樹脂材料2の初期温度は140℃、金型1の温度は175℃で一定、部品5,6の初期温度は175℃とする。また、熱硬化性樹脂材料2の金型1への充填時間は10s、充填後の金型1における熱硬化性樹脂材料2のキュア時間(保持時間)は90sとし、その後、図1Bに示したように、金型1から成形品を離型し、空冷で室温まで冷却する条件とした。
解析に用いた熱硬化性樹脂材料2は、エポキシ樹脂であり、シリカなどのフィラーを充填することができる材料とする。式(4)~式(8)の係数を表1に、式(9)~式(11)の係数を表2に示す。
Figure 2024033450000016
Figure 2024033450000017
また、式(12)の線硬化収縮係数ψ=-4.68とした。式(12),式(13)の線膨張係数について、熱硬化性樹脂材料2は、線膨張係数αR=10E-6(1/K)、部品5,6は同一物性値とし、線膨張係数αC=7E-6(1/K)とした。また、熱硬化性樹脂材料2は、密度1900 kg/m3、比熱1000 J/(kg・K)、熱伝導率0.9 W/(m・K)とし、部品5,6は、密度3400 kg/m3、比熱720 J/(kg・K)、熱伝導率150 W/(m・K)とした。
ここで、図4のA-A’断面におけるX方向の中央、熱硬化性樹脂材料2の肉厚方向の中央における評価点において、樹脂反応率、樹脂温度の変化に伴う樹脂のひずみを結果として出力した。
図5は、図4に示した評価点における出力として、熱硬化性樹脂材料2の樹脂温度と樹脂ひずみ(線硬化収縮ひずみε1、線膨張ひずみε2)の時間変化を示す。金型1内に充填された熱硬化性樹脂材料2は、金型1からの伝熱と樹脂の自己発熱により、金型温度の175℃まで昇温され、金型1内で100sまでキュア(保持)される。
このキュア工程で、樹脂の反応が進み、式(12)により算出する線硬化収縮ひずみε1の値が減少(樹脂収縮量が増加)する。このキュア工程においては、樹脂温度は175℃で一定であるので、式(13)により算出する線膨張ひずみε2は変化せず一定となる。
100sにおいて、図1Bに示したように金型1から成形品を離型して室温まで冷却する。このとき、金型1から熱硬化性樹脂材料2への伝熱が無くなるので、線硬化収縮ひずみε1はほぼ変化しない。一方、線膨張ひずみε2は、熱硬化性樹脂材料2の冷却に伴う温度の低下により、樹脂ひずみが減少(樹脂収縮量が増加)する。
図6は、図4に示した評価点における第1、第2の出力工程として、熱硬化性樹脂材料2の樹脂反応率と線硬化収縮ひずみε1、熱硬化性樹脂材料2と部品5,6との線膨張ひずみ差Δε2の時間変化を示す。ここで、式(13)により算出する線膨張ひずみε2は、熱硬化性樹脂材料2と部品5,6の線膨張係数の差が大きいときに、界面に発生する応力が大きくなる。この熱硬化性樹脂材料2と部品5,6の線膨張係数の差を評価するために、式(14)により線膨張ひずみ差Δε2を算出するものとする。
金型1内に充填された熱硬化性樹脂材料2は、金型1からの伝熱と樹脂の自己発熱により、金型温度の175℃に昇温され、金型1内で100sまでキュア(保持)される。このキュア工程で、樹脂の反応率が大きくなり、式(12)により算出する線硬化収縮ひずみε1の値が減少(樹脂収縮量が増加)する。このキュア工程においては、樹脂温度は175℃で一定であるので、式(13)により算出する線膨張ひずみε2、及び式(14)により算出する線膨張ひずみ差Δε2は変化せず一定となる。
100sにおいて、図1Bに示したように金型1から成形品を離型して室温まで冷却する。このとき、金型1から熱硬化性樹脂材料2への伝熱が無くなり、反応率がほぼ一定となるので、線硬化収縮ひずみε1はほぼ変化しない。
一方、熱硬化性樹脂材料2の線膨張ひずみε2については、離型後の室温までの温度低下により樹脂ひずみが減少(樹脂収縮量が増加)する。このとき、上記したように、線膨張係数は熱硬化性樹脂材料2が部品5,6よりも大きい設定値を用いているので、離型後の温度低下に伴う線膨張ひずみ差Δε2はマイナス方向(樹脂側に反り変形を生じる方向)に生じる。
ここでは、線硬化収縮ひずみε1と線膨張ひずみ差Δε2をグラフ上で並べて出力する例を示したが、ε1とΔε2を別々に出力することもできるものとする。また、解析結果として、任意時間におけるε1とΔε2の3次元結果や2次元の断面の結果を出力することもできるものとする。
図7は、線硬化収縮ひずみε1と線膨張ひずみ差Δε2との和、差、比の何れかを算出し出力する第3の出力工程の一例として、ε1とΔε2との和と差の時間変化を示す。
ここで示したε1とΔε2との差や、図示していないがε1とΔε2との比の出力により、線硬化収縮ひずみε1と線膨張ひずみ差Δε2のどちらが剥離やクラック発生の主要因になる可能性があるかを評価することができる(第1の評価工程)。
また、解析結果として、任意時間におけるε1とΔε2の和、差、比について3次元結果や2次元の断面の結果を出力することもできるものとする。
ここで、ε1とΔε2の和は、樹脂に加わるひずみの総量を示す。つまり、ε1とΔε2の和の出力を、前記した図3のステップS112の物性DBに入力した剥離発生ひずみの値と比較することにより、剥離の有無を評価することができる(第二の評価工程)。
これらの評価により、熱硬化性樹脂材料2の線硬化収縮ひずみε1と線膨張ひずみ差Δε2の和が大きい部分と部品5,6の接触面積を小さくしたりすることで製品形状を決めたり、金型1内に熱硬化性樹脂材料2を注入するゲート3の位置などの金型形状を決めたりすることができる。
また、ε1とΔε2との和を低減できるように金型温度、樹脂の初期温度などの成形条件を決めたり、ε1とΔε2との和を低減できるように線膨張係数や線硬化収縮係数の値によって熱硬化性樹脂材料2を決めたりすることができる。
また、解析によってε1とΔε2との和が剥離発生ひずみを超えないように製品形状や金型形状の設計方法を決めたり、金型温度などの製造方法を決めたりすることができる。
以上説明したように、本発明の熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法によれば、熱応力解析へのデータ変換を行わずに、流体解析だけで線硬化収縮ひずみに加えて、樹脂と樹脂に接触する部品の線膨張ひずみの差や和を出力し、剥離などの不良が発生する場合に線硬化収縮ひずみと線膨張ひずみのどちらが主要因になっているかを簡便に評価し、短期間で製品形状や使用する樹脂材料などを決定することができる。
また、実験的に求めた剥離が発生する樹脂ひずみを物性DBに入力しておき、流体解析だけで樹脂と部品との剥離の有無を評価することによって、製品形状、樹脂充填位置(ゲート位置)などの金型形状、使用する樹脂材料、金型温度、初期の樹脂温度などの成形プロセス条件を適正化することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…金型、2…熱硬化性樹脂材料、3…ゲート、4…空間(キャビティ)、5,6…部品、7,11…計算装置、8…LAN、9…表示装置、10…記憶装置。

Claims (8)

  1. 熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法において、
    熱硬化性樹脂の反応率の変化に基づいて前記熱硬化性樹脂の線硬化収縮ひずみε1を算出する第1の算出工程と、
    熱硬化性樹脂の温度の変化に基づいて前記熱硬化性樹脂の線膨張ひずみε2を算出する第2の算出工程と、
    前記熱硬化性樹脂の線膨張ひずみε2と他の部品の線膨張ひずみとの間の線膨張ひずみ差Δε2を算出する第3の算出工程と、
    前記線硬化収縮ひずみε1と前記線膨張ひずみ差Δε2とを出力する第1の出力工程と、
    を有することを特徴とする熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法。
  2. 請求項1に記載の熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法において、
    前記線硬化収縮ひずみε1と前記線膨張ひずみ差Δε2とを並べて表示する第2の出力工程を有することを特徴とする熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法。
  3. 請求項2に記載の熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法において、
    前記線硬化収縮ひずみε1と前記線膨張ひずみ差Δε2との和、差、比の何れかを算出する第4の算出工程と、
    前記第4の算出工程で算出された結果を出力する第3の出力工程と、
    を有することを特徴とする熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法。
  4. 請求項3に記載の熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法において、
    前記第4の算出工程で算出された結果に基づいて、前記線硬化収縮ひずみε1と前記線膨張ひずみ差Δε2のうち何れが前記熱硬化性樹脂と前記他の部品との間の剥離またはクラックの主要因であるかを評価する第1の評価工程を有することを特徴とする熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法。
  5. 請求項4に記載の熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法において、
    データベースに予め入力した熱硬化性樹脂の剥離発生ひずみと、前記第4の算出工程で算出された結果とに基づいて、前記熱硬化性樹脂と前記他の部品との間の剥離の発生を評価する第2の評価工程を有することを特徴とする熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法。
  6. 請求項4に記載の熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法において、
    前記第1の評価工程での評価結果に基づいて、成形品の形状、前記成形プロセスで使用する金型形状、前記熱硬化性樹脂の樹脂材料、成形プロセス条件の少なくともいずれかを決定することを特徴とする熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法。
  7. 請求項5に記載の熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法において、
    前記第2の評価工程での評価結果に基づいて、成形品の形状、前記成形プロセスで使用する金型形状、前記熱硬化性樹脂の樹脂材料、成形プロセス条件の少なくともいずれかを決定することを特徴とする熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法において、
    前記熱硬化性樹脂は、パワー半導体モジュールのモールド樹脂であることを特徴とする熱硬化性樹脂の成形プロセスの解析方法。
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