JP2024028553A - Dpep-1結合剤および使用の方法 - Google Patents

Dpep-1結合剤および使用の方法 Download PDF

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Abstract

【課題】対象において炎症を低減させるため、白血球動員を遮断するため、腫瘍転移を阻害するため、敗血症を処置するためおよび急性腎臓傷害を予防/低減させるための、医薬組成物およびそれらの使用の方法を提供すること。【解決手段】DPEP-1結合組成物(例えば、ペプチド)ならびにそれを含む医薬組成物が、本明細書で開示される。かかるDPEP-1組成物を使用および作製する方法、ならびにDPEP-1結合組成物についてスクリーニングするための方法もまた開示される。【選択図】なし

Description

関連出願への相互参照
本出願は、2018年11月30日出願の米国仮特許出願第62/773,733号に基づく優先権を主張し、この仮特許出願はその全体が本明細書に援用される。
分野
DPEP-1結合組成物(例えば、ペプチド)およびそれを含む医薬組成物が、本明細書で開示される。かかるペプチドおよび医薬組成物を使用および製造するための方法、ならびにDPEP-1結合組成物についてスクリーニングするための方法もまた開示される。
炎症は、有害な刺激に対する宿主防御反応である。急性炎症は、発赤、熱、腫脹および疼痛によって特徴付けられる。炎症の主な目的は、刺激物を限局化し根絶すること、ならびに周囲の組織の修復を促進することである。ほとんどの場合には、炎症は、必要かつ有益なプロセスである。
炎症応答には、3つの主要な段階が関与する:第1に、血液の流れを増加させる細動脈の拡張;第2に、微小血管の構造的変化および血流からの血漿タンパク質の漏れ;ならびに第3に、内皮を介した白血球血管外移動および傷害の部位における蓄積。白血球経内皮遊走(TEM)は、炎症、傷害および免疫反応の部位へのそれらの動員における重要なステップである。炎症の部位への好中球の遊出は、細胞間接着を必要とすると考えられる。
炎症は、急性または慢性であり得る。急性炎症を促す有害な刺激を解消できないと、慢性炎症がもたらされ得、一部の刺激は、急慢性(immediate chronic)炎症を促す可能性が高い。一部の例では、炎症は、二次的または慢性の損傷を生じる。腫瘍微小環境における炎症は、がん加速および腫瘍転移にも関与している(Wu et al., Cell Cycle. 2009 Oct 15;8(20):3267-73、Geng et al., PLoS One. 2013;8(1):e54959)。炎症促進性分子の存在により、悪性がん細胞は内皮壁に接着できるようになり、転移をもたらす。炎症促進性サイトカインは、がん細胞の増殖および凝集を誘導し、他のがん細胞がより多くのサイトカインを分泌するように誘発して、ポジティブフィードバックループを生じる。急性および慢性炎症における接着分子の役割は、内皮への白血球接着をモジュレートまたは遮断することによって炎症を制御するための方法の開発に必要な研究領域である。
抗炎症剤は、炎症応答の遮断剤、抑制剤またはモジュレーターとして機能する。炎症の組織特異的制御が、他の組織における応答を維持しつつ、1つの組織において炎症をモジュレートするために望ましい場合がある。抗炎症剤は、種々の急性および慢性状態を処置するために使用される。ほとんどの人は、これらの薬剤を摂取することに何の問題もないが、一部の人は、重篤であり得る副作用を発症する。一部の群では、これらの薬は、代替法がない場合にのみ、必要な最低用量および持続時間で、注意して処方される。
パターン認識受容体による非自己分子パターンの認識は、自然免疫の基盤である。自然免疫系の研究は、炎症応答を活性化する感覚およびシグナル伝達のためのジヌクレオチド受容体の存在も明らかにしている(Cai et al., 2014)。ジヌクレオチド受容体STINGは、I型IFNを誘導するために使用される(Ishikawa 2009)。これらの系は、哺乳動物および他の動物において広がっている。ジヌクレオチド受容体が存在する場合、類似の様式で機能するジペプチド受容体が存在する可能性が高い。炎症促進性ジペプチド受容体細胞シグナル伝達系は、炎症をモジュレートし、急性および慢性の炎症媒介性疾患を処置するための別の治療アプローチを提供する。
天然タンパク質の配列のバリエーションは、中立変異(タンパク質の変更された構造も機能ももたらさない変異)、構造的変異(タンパク質の変更された構造をもたらすが、変更された機能を必ずしももたらさない変異)または機能的変異(タンパク質の機能喪失または機能獲得をもたらす変異)として特徴付けられ得る。かかるバリエーションは、集団内の差異を生じ得および/または疾患を生じ得、したがって、進化的解析、および疾患の根本原因の医学的解析のために有用な情報を提供する。さらに、構造および機能の両方に関して相同および類似の変異を識別することによって、より正確な進化的解析が可能になる。どの変異が中立、構造的または機能的であるかを理解することは、より正確な診断法を可能にし、より有効な処置の設計を助けるであろう。
特に、現行のアプローチの多くは、炎症のより極端な症例の一部を適切に処置できないので、最新の治療薬として、炎症を低減または遮断するためのさらなる治療的化合物が依然として必要とされている。したがって、炎症応答の遮断剤、抑制剤またはモジュレーターとして機能する新たな組成物が必要とされている。新規標的、およびこれらの標的を介して炎症をモジュレートする方法もまた、必要とされている。
Wu et al., Cell Cycle. 2009 Oct 15;8(20):3267-73 Geng et al., PLoS One. 2013;8(1):e54959
要旨
DPEP-1結合組成物(例えば、ペプチド)ならびにそれを含む医薬組成物が、本明細書で開示される。かかるDPEP-1組成物を使用および作製する方法、ならびにDPEP-1結合組成物についてスクリーニングするための方法もまた開示される。
第1の態様では、有効量のDPEP-1結合ペプチドを含む組成物であって、DPEP-1結合ペプチドが、(i)LSALTを含むアミノ酸配列ならびに(ii)N末端および/またはC末端に、1つまたは複数のグリシン残基を含む、組成物が開示される。
一実施形態では、ペプチドは、N末端に、2つまたはそれよりも多くのグリシン残基を含む。
一実施形態では、ペプチドは、N末端に、3つまたはそれよりも多くのグリシン残基を含む。
特定の実施形態では、(i)のアミノ酸配列は、LSALTPSPSWLKYKAL(配列番号1)を含む。
特定の実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、GLSALTPSPSWLKYKAL(配列番号2)、GGLSALTPSPSWLKYKAL(配列番号3)、GGGLSALTPSPSWLKYKAL(配列番号4)およびGGGLSALTPSPSWLKYKAL(配列番号4)からなる群から選択される。
代替的な実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、LSALTペプチド配列のN末端および/またはC末端から、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基が除去されている。
特定の実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、アミノ酸配列LTPSPSWLKYKAL(配列番号5)を含む。
特定の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
第2の態様では、KHMHWHPPALNT(配列番号6、「ネオゲニン模倣性ペプチド」)を含むアミノ酸配列を含むDPEP-1結合ペプチドが、本明細書で開示される。一実施形態では、アミノ酸配列は、N末端またはC末端に、1つまたは複数の追加のアミノ酸残基をさらに含む。
第3の態様では、IPKXPXXXP(配列番号7)モチーフを含むアミノ酸配列を含むDPEP-1結合阻害性ペプチドが、本明細書で開示される。
一実施形態では、アミノ酸配列は、N末端またはC末端に、1つまたは複数の追加のアミノ酸残基をさらに含む。
第4の態様では、HIPKSPIQIPII(配列番号8)を含むアミノ酸配列を含むDPEP-1結合阻害性ペプチドが、本明細書で開示される。
一実施形態では、アミノ酸配列は、N末端またはC末端に、1つまたは複数の追加のアミノ酸残基をさらに含む。
必要に応じて、DPEP-1結合ペプチドは、1つまたは複数の改変を有し得る。一実施形態では、1つまたは複数のペプチド改変は、内部改変、N末端改変またはC末端改変からなる群から選択される。
一実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、1つまたは複数のD-アミノ酸、改変されたアミノ酸、アミノ酸アナログまたはそれらの組合せを含む。
一実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、β-アラニン、ノルバリン、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、オルニチン(orithine)、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、シクロヘキシルアラニン、2-アミノイソ酪酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、フェニルグリシン、o-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジンからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸アナログを含む。
ある特定の実施形態では、DPEP-1ペプチドは、メチル化、アミド化、アセチル化、アセチル化、プレニル化、PEG化またはそれらの組合せによって改変される。
第5の態様では、炎症をin vivoで低減させるための方法であって、(i)本明細書で開示される組成物を細胞に投与し、それによって、炎症を低減させるステップを含む方法が、開示される。
一実施形態では、炎症は、IL-12、IP-10、IL-1β、IL-5、GM-CSF、IFNγまたはIL-1αから選択される炎症マーカーのプロファイルによって特徴付けられる。特定の実施形態では、方法は、炎症マーカーのうち1つまたは複数のレベルにおける改変を生じる。
第6の態様では、必要な対象において疾患または障害を処置するための方法であって、(i)本明細書で開示される組成物を対象に投与し、それによって、疾患または障害を処置するステップを含む方法が、開示される。
一実施形態では、疾患または障害は、白血球動員、炎症またはそれらの組合せと関連する。
特定の実施形態では、疾患または障害は、急性腎臓傷害である。
特定の実施形態では、疾患または障害は、敗血症である。
特定の実施形態では、疾患または障害は、腫瘍転移である。
一実施形態では、疾患または障害は、虚血-再灌流傷害関連障害である。特定の実施形態では、必要な対象は、臓器ドナーまたは臓器レシピエントである。
一実施形態では、方法は、診断試験を実施することによって、処置を必要とする対象を識別するステップをさらに含む。
第7の態様では、DPEP-1に結合する組成物(例えば、ペプチド)についてスクリーニングするための方法であって、(a)試験化合物(例えば、ペプチド)のライブラリーを、DPEP-1に結合するそれらの能力についてスクリーニングするステップ、および(b)DPEP-1に対する選択的結合親和性を示す化合物を選択するステップを含む方法が、本明細書で開示される。
一実施形態では、方法は、(c)DPEP-1に対する選択的結合親和性を示す化合物を試験して、炎症低減活性を有する化合物をin vivoで識別するステップ、および(d)炎症低減活性を示す化合物をin vivoで選択するステップをさらに含む。
第8の実施形態では、本明細書で開示される組成物を含むキットが、本明細書で開示される。一実施形態では、キットは、薬学的に許容される担体をさらに含む。
本発明のこれらおよび他の目的および特色は、本発明の以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読んだ場合に、より完全に明らかになるであろう。
図1Aは、ヒト腎臓腎摘出術から単離および培養し、DPEP-1およびZO-1(TEC表面マーカー)で標識した腎尿細管上皮細胞(TEC)の代表的な顕微鏡写真を提供する。図1Bは、DPEP-1抗体で染色し、免疫ペルオキシダーゼを使用して可視化したマウス腎臓組織の代表的な顕微鏡写真を提供する。矢印は、暗色の染色によって示される、DPEP-1について陽性の尿細管を示す。図1Cは、トランスフェクトされていないCOS-7細胞、DPEP-1を過剰発現するCOS-7細胞、ヒト腎臓組織およびマウス腎臓組織から調製した総タンパク質溶解物のDPEP-1酵素活性を示すグラフを提供する。 同上。
図2は、8~10週齢のC57/BL6動物から摘出した臓器(肺、肝臓、脾臓および腎臓)から単離した総タンパク質溶解物のDPEP-1酵素活性を示すグラフを提供する。
図3は、DPEP-1発現を評価するためにDAB法を使用してDPEP-1特異的抗体(暗色(Abcam)]で染色したマウス腎臓および肺切片の代表的な顕微鏡写真を提供する。
図4Aは、示されるような、野生型ヒトDPEP1または変異したヒトDPEP1でトランスフェクトしたCos1細胞への蛍光標識されたペプチド結合の代表的な顕微鏡写真を提供する。LSALTペプチドは、Metablokとも呼ばれる。GFE-1は、DPEP1に結合し、したがって、陽性対照として作用することが公知の、Ruoslahti et al.によって発見された陽性対照ペプチドである。陰性対照ペプチド(対照P)は、DAPI核対比染色の蛍光のみを示す。シラスタチンまたはペニシラミンの存在下または非存在下での野生型および変異体(E>D、H>K)DPEP1構築物の各々の酵素活性は、図4Bにグラフで示される。Cos1細胞におけるトランスフェクトされたタンパク質の発現を確認するためのウエスタンブロットの写真は、図4Cに示される。 同上。
図5A~Dは、ラット(図5A)、ヒト(図5B)またはイヌDPEP-1(図5C)遺伝子に対応する膜ジペプチダーゼ(DPEP-1)cDNAで一過的にトランスフェクトされたCos-1細胞への蛍光標識されたペプチド結合の代表的な顕微鏡写真を提供する。対照ペプチドは、DAPI核対比染色の蛍光のみを示す。トランスフェクトされたCos1細胞におけるDPEP1発現を確認するウエスタンブロットの写真は、図5Dに提供される。LSALTペプチドが、移行可能なビオチンに連結され、細胞結合したDPEP1と相互作用できるようになり、次いで、UV光による活性化によってビオチンをDPEP1に移行させる、ビオチン移行法の概略図。次いで、ビオチン化されたDPEP1は、ニュートラアビジンビーズを使用して親和性沈殿され得る。ビーズ上のタンパク質は、DPEP1についてのウエスタンブロットによって解析され、LSALT(およびGFE-1ではあるが、KGAL対照ペプチドではない)が、図5Eに提供されるように、DPEP1と相互作用することが実際にできたことが確認される。 同上。 同上。
図6Aは、ヒトDPEP-1、DPEP-2またはDPEP-3遺伝子で一過的にトランスフェクトされたCos-1細胞への蛍光標識されたMetablok(LSALT)またはGFE-1(陽性対照ペプチド)の代表的な顕微鏡写真を提供する。蛍光ペプチド結合は、DPEP1トランスフェクションのみで見られる;全ての他のイメージは、DAPI核対比染色の蛍光のみを示す。DPEP-1、DPEP2およびDPEP3トランスフェクトされた細胞からのタンパク質を単離した。タンパク質発現を確認するウエスタンブロットの写真は、図6Bに示される。
図7AおよびBは、LSALTが、LPSの存在下での肝類洞における好中球接着を阻害することを示すイメージおよびグラフを提供する。Metablokは、LSALTペプチドと同義である。KGALは、対照ペプチドである。
図8は、DPEP-1の発現が、Cos-7細胞における蛍光標識されたLSALTの結合を増強したことを示す顕微鏡写真を提供する。Metablokは、LSALTペプチドである。GFE-1は、陽性対照として使用した別のDPEP-1結合ペプチドである。
図9は、DPEP-1の発現が、Cos-7細胞へのLSALTの結合を増強したことを示す、単一パラメーターフローサイトメトリーヒストグラムを提供する。
図10Aは、ヒト、ラットまたはマウスDPEP1の酵素活性が、これらの遺伝子の各々でCos1細胞をトランスフェクトした後に測定され得ることを実証している。L2000は、Cos1細胞が、Lipofectamine 2000ビヒクルのみでモックトランスフェクトされたことを示している。図10Bは、ヒトまたはマウスDPEP1の酵素活性が、シラスタチン(CL)またはペニシラミン(Pen)によって阻害され得ることを示している。図10Cは、LSALTおよびGFE-1が膜ジペプチダーゼ酵素活性を阻害しないことを示すグラフを提供する。Metablokは、LSALTペプチドである。GFE-1は、対照として使用した別のDPEP-1結合ペプチドである。
図11Aは、生体顕微鏡によって測定した、腎臓への白血球動員に対するLPS投与の影響を実証している。図11B、Cは、炎症用量の全身LPS後の、腎臓への好中球動員に対するLSALTペプチドまたはシラスタチンの効果を実証している。シラスタチンは、ジペプチダーゼ-1阻害剤であり、対照として使用される。 同上。
図12Aは、虚血-再灌流傷害(IRI)に応答した腎臓への白血球動員を実証している。
図13Aは、IRI後の腎臓への白血球動員の低減に対する、LSALTペプチド、GFE-1ペプチドおよびシラスタチンの効果を実証している。
図13AおよびBは、図12AおよびBからのイメージングデータをグラフ形態で示す。
図14Aは、LSALTペプチドの存在下または非存在下での、マウスにおける、LPSによって誘導される炎症性メディエーターにおける低減を示すグラフを提供する。図14Bは、マウスにおけるLPSチャレンジの間のLSALTペプチドによって誘導されるIL-10における増加を示すグラフを提供する。 同上。
図15A~Cは、グリシンスペーサーがDPEP1へのLSALTの結合を増強することを示す表およびグラフを提供する。ヒトDPEP1を安定に過剰発現するHEK細胞またはヒト尿細管上皮細胞(hTEC)を、種々の改変(グリシンリンカーおよび/またはアミド化)を有するビオチン化されたLSALTペプチド(50μM)と共に、1時間インキュベートした。ペプチドを、二次ストレプトアビジン蛍光抗体を介して検出した。ペプチド結合を、フローサイトメトリーを介して評価および定量化した。ペプチド結合のパーセンテージを、陰性対照と比較した(n=3/群)。図15Bは、図15A中のペプチド結合データのグラフ表示である。図15Cは、グリシンスペーサーで改変されたLSALTが、内毒血症誘導性の腎臓炎症を阻害できることを実証するグラフを提供する。腎臓中の炎症を、尿量枯渇(volume depleted)LysM(gfp/gfp)マウス中へのLPS(O111:B4、5mg/kg)の静脈内注射によって誘導した。マウスを、LPS処置の5分前に、対照ペプチド(スクランブルLSALT)またはトリ-グリシンLSALT(G2)のいずれかであらかじめ処置した。腎臓を、LPS処置の4時間後に、炎症について評価した。炎症を、単一の顕微鏡視野中の単球接着の手動計数によって定量化した(n=3~6視野/群;:p=0.02)。 同上。
図16A~Bは、LSALT中のアラニン置換が結合親和性に影響を与えることを示す。図16Aは、どのアミノ酸残基がDPEP1への結合に影響を与えるかを決定するためにLSALTが各アミノ酸位置においてアラニン置換でどのように改変されたかの表を提供する。図16Bは、DPEP1発現細胞への、アラニン置換で改変されたLSALTの結合を定量化する。ヒトDPEP1を安定に過剰発現するHEK細胞を、ビオチン化された改変されたLSALTペプチド(50μM)と共に1時間インキュベートした。ペプチド結合を、フローサイトメトリーを介して評価および定量化した。ペプチド結合のパーセンテージを、陰性対照と比較した。 同上。
図17A~Cは、血液中の代謝されたLSALTがDPEP1になおも結合できることを示す。図17Aは、LSALTペプチドが全血中のより小さい断片へと、全血中で代謝されることを実証している。LSALTペプチド(50μg/mL)を、最大で120分までの種々の時点にわたりヒト全血(クエン酸塩またはK2 EDTA処置した)中でインキュベートした。血漿を各試料について分離し、リン酸を添加して、各時点においてペプチドを安定化した。試料を、LC/MSを使用して、LSALTおよびその代謝物について評価した。LSALT代謝物を、LSALTおよびヒトプロテオームに対するPEAKS Xおよびデータベース検索を使用して識別した。図17Bは、DPEP1発現細胞へのLSALT断片の結合を定量化する。LSALT断片結合を、フローサイトメトリーを介して評価および定量化した。ペプチド結合のパーセンテージを、陰性対照と比較した。図17Cは、代謝されたLSALT断片が内毒血症誘導性の腎臓炎症を阻害できることを実証するグラフを提供する。腎臓中の炎症を、尿量枯渇LysM(gfp/gfp)マウス中へのLPS(O111:B4、5mg/kg)の静脈内注射によって誘導した。マウスを、LPS処置の5分前に、対照ペプチド(スクランブルLSALT)または種々のLSALT断片(標識は図17Aに対応する)のいずれかであらかじめ処置した。腎臓を、LPS処置の4時間後に、炎症について評価した。炎症を、単一の顕微鏡視野中の単球接着の手動計数によって定量化した(n=3~6視野/群;***:p=0.004)。 同上。 同上。
図18Aは、レトロインベルソ(RI)D-アミノ酸LSALTペプチドが内毒血症誘導性の腎臓炎症を阻害できることを示す。腎臓中の炎症を、尿量枯渇LysM(gfp/gfp)マウス中へのLPS(O111:B4、5mg/kg)の静脈内注射によって誘導した。マウスを、LPS処置の5分前に、レトロインベルソLSALT(RI LSALT)であらかじめ処置した。腎臓を、LPS処置の4時間後に、炎症について評価した。炎症を、単一の顕微鏡視野中の単球接着の手動計数によって定量化した(n=6~10視野/群;**:p=0.0034)。
図19A~Cは、新規DPEP-1結合ペプチドを示す。ニッケルコーティングされたアガロースビーズに結合させた市販の組換えヒトDPEP1(Creative Biomart、Hisタグ化)を使用して、hDPEP1を、PhD12ファージディスプレイライブラリーを使用してバイオパニングした。図19Aは、ネオゲニン模倣性ペプチドを含むいくつかの候補ヒットを用いて配列決定した48個のプラークを示す。図19Bは、DPEP1結合について試験したファージヒットのイメージを提供する。DPEP1およびDPEP2トランスフェクトされたCos1細胞を使用して、ファージヒットを、結合特異性について戻しスクリーニングした。KHMHWHPPALNTは、DPEP1トランスフェクトされた細胞への最も明るい結合を示した。 図19Cは、ネオゲニン模倣性ペプチドの阻害が好中球の接着を防止することを実証している。ネオゲニン模倣性ペプチドの機能的活性を、組換えhDPEP1への静的好中球接着アッセイを使用して試験し、Cos機能的活性を、組換えhDPEP1、Cos1トランスフェクトされた細胞およびLPS活性化された内皮細胞(HLMVEC)への静的好中球接着アッセイを使用して試験した(図19C)。ネオゲニン模倣性ペプチドファージヒット配列の合成的に生成されたペプチド(NeoH)および正確なネオゲニン模倣性配列配列を有するペプチド(NeoEx)の両方が、3つ全ての系において好中球接着を阻害することができた。さらに、抗ネオゲニン抗体もまた、内皮細胞への好中球接着を阻害することができた。 同上。 同上。
図20A~Cは、LSALTが結合する配列を識別する。図20Aは、バイオパニング後に配列決定したプラーク中の繰り返し出現するIPKモチーフを示す。LSALTペプチドを、アガロースビーズに固定し、PhD12ファージディスプレイライブラリーを使用してそれに対してバイオパニングした。モチーフIPKxPxxxPは、29個の配列決定したプラークのうち9個において見出された。図20Bは、ヒトおよびマウスDPEP1中のIPKモチーフを示す。ペプチドアラインメント解析は、IPKモチーフが、ヒトおよびマウスのDPEP1中にのみ存在し、DPEP2中にもDPEP3中にも存在しないことを実証した。図20Cは、IPK阻害が好中球接着を防止することを実証するグラフを提供する。IPKファージヒットのうち1つ(HIPKSPIQIPII)は、LPS刺激されたヒト内皮細胞において好中球接着を阻害することができた。IPKペプチドは、DPEP1と相互作用する好中球リガンドに結合することによって、DPEP1媒介性白血球接着を妨害し得る。 同上。 同上。
図21A~Cは、LSALTが、DPEP1発現COS1単層への転移性がん細胞の結合をin vitroで減少させることを実証している。図21Aは、ヒト黒色腫細胞(70W)がDPEP1に特異的に結合することを実証している。COS-1細胞を、ビヒクル処置したか(対照)、またはDPEP1、DPEP2もしくはDPEP3でトランスフェクトした。ヒト黒色腫細胞を、トランスフェクトされた細胞と共に共培養し、定量化した。図21B~Cは、LSALTが、DPEP1へのマウスがん細胞の結合を阻害することを示している。COS-1細胞を、ビヒクルトランスフェクトしたか(対照)、またはDPEP1トランスフェクトし、LSALT(50μM)の非存在下または存在下で、マウス黒色腫細胞(B16-F10)またはマウス乳房がん細胞(E0771.LMB)のいずれかと共に共培養した。トランスフェクトされたCOS-1細胞に結合したマウスがん細胞を、共培養後に定量化した。 同上。 同上。
図22A~Bは、LSALTが、活性化された肺内皮細胞への転移性がん細胞の結合を減少させることを示すグラフを提供する。LSALT(50μM)は、活性化された(TNFαおよびIL1β処置した)ヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)への、マウス黒色腫細胞(B16-F10)またはマウス肉腫細胞(Tao-1)のいずれかの結合を減少させた。未処置のHLMVECを対照として使用した。 同上。
図23A~Iは、LSALTが、転移性がん細胞を注射した動物の肝臓および肺において腫瘍負荷を低減させることを実証している。図23Aは、LSALTが、転移性がん細胞を注射した動物の肝臓において腫瘍負荷を低減させることを実証するグラフを提供する。対照ペプチド(1mM)またはLSALTペプチド(1mM)の存在下での、4T1マウス乳房がん細胞を注射した動物における肝臓転移性病変の数を定量化した。図23Bは、ヒト黒色腫細胞を注射した動物における腫瘍負荷の代表的な顕微鏡写真を提供する。腫瘍負荷を、対照ペプチド(1mM)またはLSALTペプチド(1mM)の存在下での、ルシフェラーゼ発現70Wヒト黒色腫細胞を注射した動物の生物発光イメージングによって解析した。図23Cは、図23B中のイメージのグラフ表示データを提供する。図23Dは、ヒト骨肉腫細胞を注射した動物における腫瘍負荷の代表的な顕微鏡写真を提供する。腫瘍負荷を、対照ペプチド(1mM)またはLSALTペプチド(1mM)の存在下での、ルシフェラーゼ発現143Bヒト骨肉腫細胞を注射した動物の生物発光イメージングによって解析した。図23Eは、図23D中のイメージのグラフ表示データを提供する。図23Fは、対照ペプチド(1mM)またはLSALTペプチド(1mM)の存在下での、B16-F10マウス黒色腫細胞を注射した動物からの肺試料の代表的なH&Eイメージを提供する。図23Gは、図23FからのB16-F10マウス黒色腫細胞を注射した動物の肺中に存在する転移性病変の定量化を示すグラフを提供する。図23Hは、対照ペプチド(1mM)またはLSALTペプチド(1mM)の存在下での、E0771.LMBマウス乳房がん細胞を注射した動物からの肺試料の代表的なH&Eイメージを提供する。図23Iは、図23HからのE0771.LMBマウス乳房がん細胞を注射した動物の肺中に存在する転移性病変面積の定量化を示すグラフを提供する。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。
図24A~Cは、ヒト黒色腫細胞がヒトDPEP1に結合することを実証している。図24Aは、DPEP1トランスフェクトされたCOS-1細胞へのヒト黒色腫細胞(70W)の定量化を示すグラフを提供する。Cos-1細胞を、Lipofectamine 2000を使用して、ヒトDPEP1で一過的にトランスフェクトした。GFP発現70Wヒト黒色腫細胞を、DPEP1発現Cos-1細胞単層の上に4時間播種した。次いで、細胞を、洗浄および固定した。DPEP1発現Cos-1細胞単層に接着した70W黒色腫細胞を、蛍光顕微鏡を使用して10×の倍率下で計数した。示される値は、3つの独立した実験からのものである;アスタリスク(***)は、モックトランスフェクトされた細胞と比較してP<0.001を示す。図24Bは、比較のための陽性対照(DPEP1)でトランスフェクトされたCOS-1細胞におけるDPEP1の発現を確認するイムノブロットのイメージを提供する。図24Cは、トランスフェクトされたCOS-1細胞のDPEP1酵素活性の定量化を示すグラフを提供する。DPEP1酵素活性に特異的な蛍光定量的アッセイを、以前に記載されたように実施した(Heywood and Hooper, 1995に従って)。DPEP1活性は、ヒトDPEP1タンパク質の酵素活性を確認し、シラスタチン(Cila)およびペニシラミン(L-Pen)は、この活性を阻害した。
詳細な説明
I.定義
用語が単数形で提供される場合、本発明者らは、その用語の複数形によって記載される本発明の態様もまた企図する。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が他を明確に示さない限り、複数形の言及を含み、例えば、「1つの(a)ペプチド」は、複数のペプチドを含む。したがって、例えば、「1つの(a)方法」に対する言及は、本明細書に記載されるおよび/または本開示を読んだ当業者に明らかとなる、1つもしくは複数の方法および/またはその型のステップを含む。
用語「投与する」、「投与すること」または「投与された」は、生理学的系(例えば、対象またはin vivo、in vitroもしくはex vivoの細胞、組織および臓器)に薬剤または治療的処置を与える行為を意味する。
用語「親和性」は、本明細書で使用される場合、ある分子の単一の結合部位とその結合パートナーとの間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。他に示さない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって示され得る。親和性は、当該分野で公知の一般的方法によって測定され得る。
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸、ならびに天然に存在しないまたは非標準的アミノ酸、例えば、アミノ酸アナログ、合成アミノ酸およびアミノ酸模倣物を指す。これらのアミノ酸は、L-もしくはD-(異性体)立体配置であり得、または両方の右旋性形態を含み得る。ペプチド中に取り込まれたアミノ酸は、「残基」と呼ばれる。アミノ酸は、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される一般に公知の3文字記号または1文字記号のいずれかによって、本明細書で言及され得る。以下のアミノ酸定義が、本明細書を通じて使用される:アラニン:Ala(A)アルギニン:Arg(R)アスパラギン:Asn(N)アスパラギン酸:Asp(D)システイン:Cys(C)グルタミン:Gln(O)グルタミン酸:Glu(E)グリシン:Gly(G)ヒスチジン:His(H)イソロイシン:Ile(I)ロイシン:Leu(L)リシン:Lys(K)メチオニン:Met(M)フェニルアラニン:Phe(F)プロリン:Pro(P)セリン:Ser(S)スレオニン:Thr(T)トリプトファン:Trp(W)チロシン:Tyr(Y)バリン:Val(V)。
用語「結合剤」は、本明細書で使用される場合、受容体と複合体を形成するリガンド(例えば、ペプチド)を指す。リガンドは、選択的または非選択的であり得る。リガンドは、アゴニスト(部分または完全)、アンタゴニスト(即ち、アゴニストの作用を遮断する)、インバースアゴニスト(即ち、アゴニストの反対の作用を発揮する)またはアロステリックモジュレーターであり得る。アンタゴニストは、競合的(即ち、アゴニストと同じ部位に結合する)または非競合的アンタゴニスト(即ち、アゴニストと同じ部位に恒久的に結合する、またはアロステリック部位 - 活性部位以外の部位 - に結合する)であり得る。
用語「診断された」、「診断(的)」または「診断された」は、病理的状態の存在または性質を識別することを意味する。診断方法は、観察およびアッセイを含み、それらの感度および特異度が異なる。診断的観察またはアッセイの「感度」は、試験陽性の疾患個体のパーセンテージ(「真陽性」のパーセント)である。観察またはアッセイによって検出されない疾患個体は、「偽陰性」である。疾患でなく、観察またはアッセイにおいて試験陰性の対象は、「真陰性」と呼ばれる。診断的観察またはアッセイの「特異度」は、1マイナス偽陽性率であり、「偽陽性」率は、試験陽性の、疾患を有さない者の割合として定義される。特定の診断方法は、状態の確定診断を提供しない場合があるが、方法が診断を助ける陽性の指標を提供するのであれば、それで十分である。
本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な、治療(例えば、予防剤または治療剤)の量を指す。有効量は、1つまたは複数の投与で投与され得る。
本明細書で使用される場合、用語「炎症性疾患」は、a.白血球の動員、接着または活性化、および好中球、単球、リンパ球またはマクロファージが関与する他の障害、b.炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α、インターロイキン(IL)-lβ、IL-2、IL-6)の病理学的産生が関与する疾患、c.炎症性サイトカインをコードする遺伝子の転写を促進する核因子の活性化が含まれるがこれらに限定されない疾患(本明細書に記載される化合物で処置可能または予防可能)を指す。これらの核転写因子の例には、以下が含まれるがこれらに限定されない:核因子-κB(NFκB)、活性化タンパク質-1(AP-1)、活性化されたT細胞の核因子(NFAT)。
用語「虚血再灌流傷害」は、本明細書で使用される場合、組織への血液供給の制限(虚血)とその後の血液の再供給(再灌流)によって最初に引き起こされる損傷を指し、フリーラジカルの付随的な生成、炎症および細胞死が、臓器傷害および機能不全を生じる。移植シナリオでは、虚血再灌流傷害は、同種移植片機能に負の影響を与える。
用語「単離された」は、本明細書で使用される場合、その元の環境(例えば、それが天然に存在する場合には、天然環境)から取り出された材料を指す。例えば、生きた動物中に存在する天然に存在するペプチドは、単離されていないが、天然の系において共存する材料の一部または全てから分離された同じポリヌクレオチドペプチドは、単離されている。
用語「薬学的に許容される担体」は、特定の投与様式に適切であることが当業者に公知の任意のかかる担体を指す。例えば、用語「薬学的に許容される担体」には、薬学的に許容される物質のための媒体として使用され得る、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。さらに、活性材料はまた、所望の作用を損なわない他の活性材料と、または所望の作用を補うもしくは別の作用を有する材料と、混合され得る。
用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書で使用される場合、非毒性であることが公知であり、医薬品文献において一般に使用される塩を指す。かかる塩を形成するために使用される典型的な無機酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸などが含まれる。有機酸、例えば、脂肪族モノおよびジカルボン酸、フェニル置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸およびヒドロキシアルカンジオン酸(hydroxyalkandioic acid)、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸に由来する塩もまた使用され得る。かかる薬学的に許容される塩には、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン-2-安息香酸塩、臭化物、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、ベータ-ヒドロキシ酪酸塩、塩化物、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-ブロモフェニルスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩(tartarate)などが含まれる。
用語「予防する」または等価物、例えば、「予防」もしくは「予防すること」は、未処置の対照試料と比較して、処置された試料における障害もしくは状態の発生を低減させること、あるいは未処置の対照試料と比較して、障害もしくは状態の1つもしくは複数の症状の開始を遅延させることまたはその重症度を低減させることを指す。本明細書で使用される場合、虚血-再灌流傷害を予防することは、酸化的損傷を予防しまたはミトコンドリア膜透過性遷移を予防し、それによって、影響を受けた臓器への血液の流れの喪失および引き続く回復の有害な影響を予防することもしくは寛解させることを含む。予防することは、対象が、以後の人生でその状態を決して発症しないことを意味するわけではない -
発生の可能性が低減されるだけである。
本明細書の疾患または状態の文脈において、用語「低減させること」、「低減させる」または「低減」は、疾患または状態の原因、症状または影響における減少を指す。したがって、開示された方法では、「低減させること」は、再灌流に起因する傷害の量における、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%の減少、またはそれらの間の任意の値もしくは範囲を指し得る。
用語「対象」もしくは「患者」またはその同義語は、本明細書で使用される場合、動物界の全てのメンバー、特に、ヒトを含む哺乳動物を含む。対象または患者は、適切には、ヒトである。
用語「移植」は、細胞、組織または臓器がドナー対象からレシピエント対象に移行される、または同じ対象中の身体の1つの部分から別の部分に移行される、外科的手順を意味する。「ドナー対象」または「ドナー」は、輸血または臓器移植によって、血液、細胞、組織または臓器を別の対象に与える対象である。ドナー対象は、ヒトまたは別の哺乳動物である。「レシピエント対象」または「レシピエント」は、輸血または臓器移植によって、別の対象からの血液、細胞、組織または臓器を受ける対象である。
本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置」および「処置すること」は、任意の状態または疾患の少なくとも1つの病理学および/または症状の進行、重症度および/または持続時間の予防、低減または寛解を指す。用語「処置」または「処置すること」は、本明細書で開示される化合物の任意の投与を指し、以下を含む:(i)疾患もしくは疾患状態の病理学もしくは症候学を経験しているもしくは示している個体において、疾患もしくは疾患状態を阻害すること(即ち、病理学および/もしくは症候学のさらなる展開を止めること)または(ii)疾患もしくは疾患状態の病理学もしくは症候学を経験しているもしくは示している個体において、疾患を寛解させること(即ち、病理学および/もしくは症候学を逆転させること)。用語「制御すること」は、疾患または疾患状態の症状を予防すること、処置すること、根絶すること、寛解すること、またはその重症度を他の方法で低減させることを含む。
がんに関して、用語「処置する」、「処置」および「処置すること」は、1つまたは複数の治療(例えば、1つまたは複数の予防剤および/または治療剤)の投与から生じる、がん、特に固形腫瘍、またはその1つもしくは複数の症状の進行、重症度および/または持続時間の低減または寛解を指す。例示的な実施形態では、固形腫瘍の処置は、以下のうち1つまたは複数を指す:(i)がん細胞の数を低減させること;(ii)腫瘍細胞アポトーシスを増加させること;(iii)腫瘍サイズを低減させること;(iv)腫瘍体積を低減させること;(v)末梢臓器中へのがん細胞浸潤をある程度まで阻害すること、遅らせること、緩徐化すること、および好ましくは停止させること;(vi)腫瘍転移を阻害すること(例えば、ある程度まで緩徐化すること、および好ましくは停止させること);(vii)腫瘍成長を阻害すること;(viii)腫瘍の発生および/もしくは再発を予防することもしくは遅延させること;(ix)がんの存在と関連するがんマーカーの低減;ならびに/または(ix)がんと関連する症状のうち1つもしくは複数をある程度まで軽減すること。「処置」は、処置を受けていない場合に期待される生存と比較して、生存を延長させることも意味し得る。標準的な方法、例えば、精製された酵素を用いたin
vitroアッセイ、細胞に基づくアッセイ、動物モデルまたはヒト試験が、この効果の大きさを測定するために使用され得る。例えば、患者のがん腫瘍の免疫組織化学的解析は、本明細書で開示される組成物が患者に投与される場合に、腫瘍細胞アポトーシスにおける顕著な増加を示し得る。固形腫瘍として通常は現れるがんの型を指す場合、「臨床的に検出可能な」腫瘍は、例えば、CATスキャン、MRイメージング、X線、超音波もしくは触診などの手順によって、腫瘍量に基づいて検出可能な腫瘍、および/または患者から得ることができる試料中の1つもしくは複数のがん特異的抗原の発現に起因して検出可能な腫瘍である。
II.DPEP-1
腎ジペプチダーゼ、ミクロソームジペプチダーゼまたはデヒドロペプチダーゼ-1としても公知であり、現在EC3.4.13.19と分類されている(以前にはEC3.4.13.11であった)DPEP-1は、原形質膜のグリコシルホスファチジルイノシトールアンカリングされた糖タンパク質である(参照により本明細書に組み込まれるKeynan et al., Hooper (Ed.) Zinc Metalloproteases in Health and Disease Taylor and Francis, London pages 285-309 (1996))。肺および腎臓刷子縁において主に発現されるこの亜鉛メタロプロテアーゼは、グルタチオンの腎代謝およびペプチジルロイコトリエンの肺代謝にin vivoで関与する。さらに、DPEP-1は、哺乳動物ベータ-ラクタマーゼの唯一の公知の例であり、グルタチオンおよびそのコンジュゲートならびにロイコトリエンD4の代謝にも関与する。DPEP-1は、ジスルフィド連結されたホモダイマーを形成し、モノマーの分子量は、起源の種に依存して約48~59kDaの範囲である(参照により本明細書に組み込まれるKeynan et al., Biochem. 35:12511-12517 (1996);実施例IVBもまた参照のこと)。
ジペプチダーゼ発現は、いくつかの組織で検出されているが、これは、肺および腎臓において主に発現される。肝臓、脾臓、小腸および脳からの総抽出物において、低レベルのDPEP-1活性が報告されているが、他は、これらの臓器において検出可能な活性が見出されていない。マウスでは、4つの別個のDPEP-1 mRNAが存在し、それらは、いくつかの臓器において差次的に発現される(Habib et al., J. Biol. Chem. 271:16273-16280 (1996))。ブタDPEP-1のN結合型グリコシル化の性質および程度における臓器特異的差異も報告されている(Hooper et al., Biochem. J. 324:151-157
(1997))。
腎臓では、DPEP-1発現は、近位尿細管の刷子縁領域中の上皮細胞および尿細管周囲毛細血管の内皮細胞に制限される。肺では、DPEP-1発現は、誘導気道(conducting airway)、肺胞管、毛細血管の内皮細胞および上皮細胞を含む多くの細胞型、ならびに肺胞および終末細気管支の基底膜において検出されている(Habib et al., supra, 1996);Inamura et al., Prostaglandins Leukotrienes and Essential
Fatty Acids 50:85-92 (1994))。DPEP-1発現は、ヒト気管中の粘膜下微小血管の内皮細胞上でも観察されている(Yamaya et al., Resp. Physiol. 111:101-109 (1998))。DPEP-1活性のレベルは、肺において最も高い(Hirota et al., Eur. J. Biochem. 160:521-525 (1986);Habib et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:4859-4863 (1998))。この発現パターンは、GFE-1などの分子の強い肺ホーミングと相関する。
特定の理論に束縛されないが、DPEP-1受容体は、血管内皮、または他の実質細胞、例えば、腎臓尿細管上皮上で発現される白血球接着分子または腫瘍細胞接着分子として機能すると考えられている(Choudhury et al. 2019, Cell
178, 1205-1221)。接着分子は、動員プロセスに関与し、白血球および/または内皮細胞上で発現される表面結合した糖タンパク質分子である。白血球動員における重要なステップは、内皮の表面上での白血球の堅固な接着であり、これは、炎症した部位に対してその効果を発揮するために接着および活性化事象の配列を介して血管壁中に遊走するように、白血球を位置付ける。DPEP-1は、臓器傷害または感染の間に、ペプチド検出系としても機能し得る。1つのかかるペプチド検出系は、侵入してくる病原体の重要な分子シグネチャー、即ち、病原体関連分子パターン(PAMP)または内因性損傷関連分子パターン(DAMP)を検出し、それによって、自然免疫系を誘発する、いわゆるパターン認識受容体(PRR)である(Janeway, C, et al., Annu. Rev. Immunol, 20 (2002), pp. 197-216)。PRRの例は、(toll様受容体)TLRであり、これは、細菌またはウイルス産物、例えば、LPS(TLR4)またはペプチドグリカン(TLR2)を検出する(Bell, J.K. et al., Trends Immunol, 24 (2003), pp. 528-533)。
TLRは、リガンド結合および自己調節に関与するそれらの細胞外ドメイン中のロイシンリッチリピート(LRR)を介して病原体関連分子パターン(PAMP)を認識する膜貫通受容体である(Kawai et al, Cell Death Differ.
13, 816-825, 2006)。TLRは、宿主防御応答の最初期に微生物構造を認識し、多くの免疫および炎症遺伝子の発現を誘導し、それらの産物は、侵入してくる病原体を排除するために必要な免疫機構を駆動するように調整される。TLRは、損傷関連分子パターン(DAMP)の認識にも関与しており、腫瘍促進性炎症の調節因子および腫瘍生存シグナルの促進因子としてますます認識されるようになっている。かかる細胞経路の他の活性化因子は、病原体および損傷関連細胞炎症を処置するための有効な治療標的を提供し得る。
本明細書で使用される場合、用語「ジペプチダーゼ」および「膜ジペプチダーゼ」は、「DPEP-1」と同義であり、現在EC3.4.13.19と分類されている(以前にはEC3.4.13.11であった)酵素を指し、腎もしくはミクロソームジペプチダーゼまたはデヒドロペプチダーゼ-1としても公知である。
用語「選択的に阻害する」は、DPEP-1酵素活性に言及して本明細書で使用される場合、結合剤が、関連はするが異なる酵素、例えば、他のプロテアーゼと比較して、DPEP-1酵素に選択的な様式でDPEP-1活性を減少させることを意味する。したがって、DPEP-1結合剤は、例えば、亜鉛メタロプロテアーゼの非特異的阻害剤とは別個である。したがって、DPEP-1結合剤は、例えば、ジペプチジルペプチダーゼIVの活性に対して影響をほとんどまたは全く有さずに、DPEP-1活性を選択的に減少させ得る。一実施形態では、結合剤は、DPEP-1への結合を防止する競合的阻害剤である。
用語「選択的に結合する」は、DPEP-1結合剤に言及して本明細書で使用される場合、結合剤が、関連はするが異なる受容体と比較して、DPEP-1受容体に選択的な様式でDPEP-1媒介性白血球動員を減少させることを意味する。DPEP-1結合剤は、DPEP-1媒介性白血球動員を減少させることも指し、ここで、DPEP-1は、その酵素活性とは無関係に、白血球または腫瘍細胞に対する接着分子として作用する。したがって、DPEP-1結合剤は、例えば、ジペプチジルペプチダーゼIVの活性に対して影響をほとんどまたは全く有さずに、DPEP-1媒介性白血球動員を選択的に減少させ得る。一実施形態では、結合剤は、DPEP-1への結合を防止する競合的または非競合的阻害剤である。
一実施形態では、本明細書で開示されるDPEP-1結合剤は、DPEP受容のアンタゴニストである、即ち、相互作用を破壊し、アゴニストまたはインバースアゴニストの機能を阻害するように、受容体に結合しそれを遮断することによって、生物学的応答を遮断するまたは弱める。特定の実施形態では、DPEP-1結合剤は、競合的アンタゴニストである、即ち、活性部位についてアゴニストと競合する。別の特定の実施形態では、DPEP-1結合剤は、非競合的アンタゴニストである、即ち、活性部位以外の部位で結合する。
特異的結合という用語は、本明細書で使用される場合、低親和性および高親和性の両方の特異的結合を含む。特異的結合は、例えば、膜ジペプチダーゼに対して約10-4M~約10-7MのKdを有する低親和性DPEP-1結合分子によって示され得る。特異的結合は、高親和性DPEP-1結合分子、例えば、膜ジペプチダーゼに対して少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、少なくとも約10-10M、または少なくとも約10-11Mもしくは10-12Mあるいはそれよりも大きいKdを有するDPEP-1結合分子によっても示され得る。式中、XおよびXが各々、1~10個の独立して選択されるアミノ酸である、LSALTペプチドを含むDPEP-1結合ペプチドは、例えば、膜ジペプチダーゼに対して約2×10-5M~10-7MのKd、例えば、約10-6~10-7MのKdを有し得る。肺または腎臓内皮に選択的に結合する低親和性および高親和性の両方のDPEP-1結合分子は、本明細書に記載される方法において有用であり得る。
III.DPEP-1結合組成物
DPEP-1に結合することまたはDPEP-1を遮断することは、例えば、敗血症または急性腎臓傷害の間に、肺および腎臓における炎症媒介性疾患を低減させる有用性を有する。DPEP-1に結合することまたはDPEP-1を遮断することは、腫瘍転移を低減させる有用性もまた有する。ペプチドが含まれるがこれに限定されない、DPEP-1に結合するまたはDPEP-1を遮断する組成物が、本明細書で開示される。
A.DPEP-1結合ペプチド
DPEP-1に結合するペプチドが、本明細書で開示される。これらの方法において使用されることが可能なこれらの結合ペプチドのバリアントおよび改変された実施形態もまた提供される。一実施形態では、ペプチドは、DPEP-1の活性をモジュレートし、より詳細には、DPEP-1の活性を、競合的または非競合的に阻害する。
偏りなしのコンビナトリアルファージin vivoバイオパニングアプローチを使用して、炎症促進性刺激で処置された動物の肝臓および肺に局在化し、白血球動員を遮断する特異的ペプチドディスプレイファージが単離された。このファージおよびその対応するディスプレイされたペプチド(LSALTまたはMetablokと呼ばれるN-LSALTPSPSWLKYKAL)(配列番号1)は、腫瘍細胞系を注射した動物の肝臓または肺において、腫瘍負荷を劇的に低減させることもまた見出された。LSALTは、DPEP-1に結合し、組織の炎症プロファイルを低減させることが可能であり、それによって、いくつかの治療的に有用な作用を提供する。ペプチドはまた、敗血症のマウスモデルにおいて、肝臓への好中球動員を低減させた。LSALTペプチド(LSALTまたはMetablokと呼ばれる;配列番号1)、ならびにそのバリアントおよび改変されたバージョンは、米国特許第9,464,114号に記載されている。
一部の実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、プロテアーゼ耐性、血清安定性および/またはバイオアベイラビリティを増加させるために、1つまたは複数の改変を含む。一部の実施形態では、改変は、PEG化、アセチル化、グリコシル化、ビオチン化、プレニル化、またはD-アミノ酸および/もしくは非天然アミノ酸による置換、ならびに/またはペプチドの環化から選択される。
ある特定の実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、1つまたは複数のL-アミノ酸、D-アミノ酸および/または非標準的アミノ酸を含む。
種々の実施形態では、DEP-1結合ペプチドは、C末端、N末端、またはC末端およびN末端の両方に、1つまたは複数のアミノ酸残基またはアナログをさらに含む。好ましくは、ペプチドの活性保有配列は、これらの追加のアミノ酸(複数可)の付加によって、感知できるほどには影響されない。
別の実施形態では、DEP-1結合ペプチドは、ペプチド配列のN末端に、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基をさらに含む。
種々の実施形態では、ペプチドは、X-ペプチド、XX-ペプチド、XXX-ペプチド、XXXX-ペプチドまたはXXXXX-ペプチドから選択され、式中、Xは、任意の天然に存在するアミノ酸であるか、またはXは、本明細書に記載されかつ当業者に公知の、非慣習的なアミノ酸もしくはアミノ酸アナログである。
別の実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、LSALTPSPSWLKYKAL(配列番号1)配列のC末端に、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基をさらに含み、ペプチド-X、ペプチド-XX、ペプチド-XXX、ペプチド-XXXXまたはペプチド-XXXXXから選択され、式中、Xは、任意の天然に存在するアミノ酸であるか、またはXは、本明細書に記載されかつ当業者に公知の、非慣習的なアミノ酸もしくはアミノ酸アナログである。
一実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、ペプチドのN末端およびC末端に、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基をさらに含み、X-ペプチド-X、X-ペプチド-XX、X-ペプチド-XXX、X-ペプチド-XXXX、X-ペプチド-XXXXX、XX-ペプチド-X、XX-ペプチド-XX、XX-ペプチド-XXX、XX-ペプチド-XXXX、XX-ペプチド-XXXXX、XXX-ペプチド-X、XXX-ペプチド-XX、XXX-ペプチド-XXX、XXX-ペプチド-XXXX、XXX-ペプチド-XXXXX、XXXX-ペプチド-X、XXXX-ペプチド-XX、XXXX-ペプチド-XXX、XXXX-ペプチド-XXXX、XXXX-ペプチド-XXXXX、XXXXX-ペプチド-X、XXXXX-ペプチド-XX、XXXXX-ペプチド-XXX、XXXXX-ペプチド-XXXXまたはXXXXX-ペプチド-XXXXXから選択され、式中、Xは、任意の天然に存在するアミノ酸であるか、またはXは、本明細書に記載されかつ当業者に公知の、非慣習的なアミノ酸もしくはアミノ酸アナログである。
有効量のDPEP-1結合ペプチドを含む組成物であって、DPEP-1結合ペプチドが、LSALTペプチドまたはその誘導体もしくは断片であり得る組成物が、本明細書で開示される。
一実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、アミノ酸配列LSALTPSPSWLKYKAL(配列番号1)を含む。一実施形態では、ペプチドは、ペプチド配列のN末端および/またはC末端に、追加の1、2、3、4または5個のアミノ酸残基を含む。具体的な実施形態では、ペプチドは、N末端に、追加の1、2、3、4または5個のアミノ酸残基を含む。一実施形態では、ペプチドは、LSALTペプチド(配列番号1)のN末端に、追加のグリシン残基を含む。別の実施形態では、少なくとも1つのグリシン残基が、LSALTペプチドのN末端にある。別の実施形態では、少なくとも2つのグリシン残基が、LSALTペプチドのN末端にある。さらなる実施形態では、少なくとも3つのグリシン残基が、LSALTペプチドのN末端にある。特定の実施形態では、ペプチドは、GLSALTPSPSWLKYKAL(配列番号2)、GGLSALTPSPSWLKYKAL(配列番号3)、またはGGGLSALTPSPSWLKYKAL(配列番号4)から選択される。具体的な実施形態では、ペプチドは、GGGLSALTPSPSWLKYKAL(配列番号4)である。
さらなる実施形態では、ペプチドは、LSALTPSPSWLKYKAL(配列番号1)を含み、ペプチドは、1つまたは複数のD-アミノ酸またはL-アミノ酸で置換されている。別の実施形態では、ペプチドは、改変されたアミノ酸、アミノ酸アナログまたはそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の改変を含む。
他の実施形態では、本明細書で提供されるDPEP-1結合ペプチドは、LSALTペプチド配列のN末端および/またはC末端から、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基が除去されている。これらのペプチドは、以下の配列のいずれかを有し得る:SALTPSPSWLKYKAL(配列番号9)、ALTPSPSWLKYKAL(配列番号10)、TPSPSWLKYKAL(配列番号11)、SPSWLKYKAL(配列番号12)、TPSPSWLKYK(配列番号13)および/またはSWLKYKAL(配列番号14)。
特定の実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、LSALTペプチド配列のN末端および/またはC末端から、3個のアミノ酸残基が除去されている。特定の実施形態では、ペプチドは、LTPSPSWLKYKAL(配列番号5)である。
有効量のDPEP-1結合ペプチドを含む組成物であって、DPEP-1結合ペプチドがネオゲニン模倣性ペプチドまたはその誘導体を含む組成物が、提供される。一実施形態では、ネオゲニン模倣性ペプチドは、配列番号6である。ネオゲニン模倣性ペプチドは、ネオゲニンタンパク質の一部分と類似している。
ネオゲニンは、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する多機能性膜貫通受容体である。ネオゲニンは、ネトリンによって惹起されるシグナルを伝達することができる。これらのネオゲニン-ネトリン相互作用は、組織形態形成、血管新生、筋芽細胞分化および最も最近では軸索ガイダンスに関与している。ネオゲニンは、神経分化、アポトーシスおよび反発的軸索ガイダンスに関与するグリコシルホスファチジルイノシトール連結されたタンパク質である反発的ガイダンス分子に対する受容体でもある。ネオゲニンのin vivo機能、ならびに発生および恒常性の複数の局面におけるその役割を解明するために、多数の研究が開始されている(Wilson & Key, International Journal of Biochemistry and Call Biology, Volume 39, Issue 5, 2007, Pages 874-878)。さらなる実施形態では、ペプチドは、置換されたネオゲニン模倣性ペプチド(配列番号6)を含み、ネオゲニン模倣性ペプチドは、1つまたは複数のD-アミノ酸またはL-アミノ酸で置換されている。
一実施形態では、ネオゲニン模倣性ペプチドは、アミノ酸配列KHMHWHPPALNT(配列番号6)を含む。一実施形態では、ネオゲニン模倣性ペプチドは、ペプチド配列のN末端および/またはC末端に、追加の1、2、3、4または5個のアミノ酸残基を含む。別の実施形態では、ペプチドは、ネオゲニン模倣性ペプチド配列のN末端および/またはC末端から、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基が除去されている。さらなる実施形態では、ペプチドは、置換されたネオゲニン模倣性ペプチド(配列番号6)を含み、ペプチドは、1つまたは複数のD-アミノ酸またはL-アミノ酸で置換されている。別の実施形態では、ペプチドは、改変されたアミノ酸、アミノ酸アナログまたはそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の改変を含む。
特定の実施形態では、ネオゲニン模倣性ペプチド配列は、アミノ酸配列KHMHWHPPALNT(配列番号6)から本質的になる。一実施形態では、ネオゲニン模倣性ペプチドは、KHMHWHPPALNTならびにペプチド配列のN末端および/またはC末端の追加の1、2、3、4または5個のアミノ酸残基から本質的になる。別の実施形態では、ペプチドは、ネオゲニン模倣性ペプチド配列のN末端および/またはC末端から、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基が除去されている。さらなる実施形態では、ネオゲニン模倣性ペプチドは、置換されたネオゲニン模倣性ペプチド(配列番号6)から本質的になり、ネオゲニン模倣性ペプチドは、1つまたは複数のD-アミノ酸またはL-アミノ酸で置換されている。別の実施形態では、ペプチドは、改変されたアミノ酸、アミノ酸アナログまたはそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の改変を含む。
さらなる態様では、有効量のDPEP-1結合阻害性ペプチドを含む組成物であって、DPEP-1結合ペプチドがIPKペプチドまたはその誘導体を含む組成物が、提供される。
一実施形態では、IPKペプチド配列は、IPKXPXXXP(配列番号7)であり得、式中、Xは、任意の天然に存在するアミノ酸であるか、またはXは、本明細書に記載されかつ当業者に公知の、非慣習的なアミノ酸もしくはアミノ酸アナログである。具体的な実施形態では、IPKペプチド配列は、HIPKSPIQIPII(配列番号8)であり得る。
他の実施形態では、IPKペプチドは、ペプチド配列のN末端および/またはC末端に、追加の1、2、3、4または5個のアミノ酸残基を含み得る。別の実施形態では、ペプチドは、IPKペプチド配列のN末端および/またはC末端から、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基が除去されている。さらなる実施形態では、ペプチドは、置換されたIPKペプチドを含み、ペプチドは、1つまたは複数のD-アミノ酸またはL-アミノ酸で置換されている。別の実施形態では、ペプチドは、改変されたアミノ酸、アミノ酸アナログまたはそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の改変を含む。
LSALTが結合する配列を識別するために、LSALTペプチドに対するファージディスプレイバイオパニングを、本明細書で開示されるように実施した。モチーフIPKXPXXXPを含む2つのペプチドを識別した。IPKファージヒットのうち1つ(HIPKSPIQIPII)は、LPS刺激されたヒト内皮細胞において好中球接着を阻害することができた(図20)。IPKモチーフは、好中球リガンド相互作用のためのDPEP-1上の結合部位を提示し得る。IPKペプチドは、DPEP1と相互作用する好中球リガンドに結合することによって、DPEP1媒介性白血球接着を妨害し得、したがって、本明細書で開示されるIPKペプチドは、DPEP-1結合阻害性ペプチドとして記載される。一実施形態では、本明細書で開示されるIPKペプチドは、DPEP-1への結合を防止する非競合的阻害剤である。
B.改変されたペプチドおよびペプチドアナログ
種々の実施形態では、ペプチドは、ペプチド中のカルボキシ末端および/もしくはアミノ末端アミノ酸を含むアミノ酸を含み、またはその活性に有害な影響を与えることなしにペプチドの循環半減期を変化させ得るPEG化、メチル化、アミド化、アセチル化、プレニル化および/もしくは他の化学基による置換によって改変され得る。非慣習的なまたは非天然アミノ酸の例には、シトルリン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、4-(E)-ブテニル-4(R)-メチル-N-メチルスレオニン(MeBmt)、N-メチル-ロイシン(MeLeu)、アミノイソ酪酸、スタチン(statine)およびN-メチル-アラニン(MeAla)が含まれるがこれらに限定されない。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与し得る。ある特定の実施形態では、アミノ酸は、一般構造HN-C(H)(R)-COOHを有する。ある特定の実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。ある特定の実施形態では、アミノ酸は、合成または非天然アミノ酸(例えば、α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸)である;一部の実施形態では、アミノ酸は、D-アミノ酸である;ある特定の実施形態では、アミノ酸は、L-アミノ酸である。
C.DPEP-1結合ペプチドの合理的設計および構造-機能解析
異なる技術が、タンパク質構造についての異なる補完的な情報を与える。一次構造は、タンパク質からのアミノ酸配列の直接的決定によって、または対応する遺伝子もしくはcDNAのヌクレオチド配列から、生化学的方法によって得られる。大きいタンパク質または凝集体の四次構造は、電子顕微鏡によっても決定され得る。タンパク質内の原子の配置についての詳細な情報を必要とする二次および三次構造を得るために、x線結晶解析が一般に使用される。ペプチドの構造および機能を評価するための他の構造的テクノロジーには、水素重水素交換質量分析、bio-NMRおよびcryo-EMが含まれる。
x線結晶解析によってタンパク質の三次元構造を解析するための第1の要件は、x線を強く回折する秩序立った結晶である。結晶学的方法は、個々の分子の構造がそこから読み出され得るパターンでx線がそこから回折されるように、多くの同一の分子の規則的な反復アレイ上に、x線のビームを方向付ける。球状タンパク質分子の秩序立った結晶は大きく、不規則な表面を有する球形または楕円体の物体およびその結晶は、個々の分子間に形成される大きい穴またはチャネルを含む。結晶の体積の半分よりも多くを通常占めるこれらのチャネルは、無秩序な溶媒分子で満たされる。タンパク質分子は、いくつかの小さい領域のみにおいて、互いに接触している。これは、x線結晶解析によって決定されたタンパク質の構造が、溶液中のタンパク質の構造と一般に同じである1つの理由である。
x線結晶解析は、標的生体分子に結合するそれらの能力について、標的生体分子の公知のリガンドではない化合物をスクリーニングするために使用され得る。方法は、標的生体分子の結晶を得るステップ;標的生体分子結晶を1つまたは複数の試験試料に曝露させるステップ;およびX線結晶回折パターンを得て、リガンド/受容体複合体が形成されているかどうかを決定するステップ、を含む。
DPEP-1受容体は、1つもしくは複数の試験試料の存在下で生体分子を共結晶化すること、または1つもしくは複数の試験試料の溶液中に生体分子結晶を浸すことによって、試験ペプチドに曝露される。別の実施形態では、リガンド/受容体複合体からの構造的情報は、より緊密に結合する、より特異的に結合する、より良い生物活性を有する、またはより良い安全性プロファイルを有するリガンドを設計するために使用される。これらには、小分子または他の生物療法薬、例えば抗体が含まれ得る。
本明細書に記載されるペプチドは、質量分析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびアミノ酸解析(AAA)を使用して、完全に特徴付けられ得る。
質量分析は、タンパク質の構造を決定する際に使用される、タンパク質のアミノ酸残基間の距離拘束を得るために使用される。
いずれの特定の機構にも束縛されないが、三次構造を安定化するペプチド構造および任意の改変は、DPEP-1への結合を増強すると考えられる。
一実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、アルファ-ヘリックスを形成する。
種々の実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、ラクタム架橋またはグリシンスペーサーを含む。かかる構造は、ペプチドを安定化し、DPEP-1への結合の堅牢性を改善するために使用される。
種々の実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、DPEP-1結合ペプチドの外側に、疎水性を増加させる改変を含む。かかる改変は、DPEP-1への結合を増加させるために使用される。
一実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、エクソン3上のIPKモチーフにおいてDPEP-1受容体に結合する。IPKモチーフは、ヒトおよびマウスの両方のDPEP-1中に存在するが、ヒトおよびマウス由来のDPEP-2にもDPEP-3にも存在しない。
一実施形態では、DPEP-1のIPKモチーフにリガンドが結合するのを妨害するペプチドは、HIPKSPIQIPIIである。
他に定義しない限り、本明細書で使用される科学的および技術的な用語および術語体系は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、細胞培養、感染、分子生物学の方法などの手順は、当該分野で使用される一般的な方法である。かかる標準的な技術は、例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001;およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., 2001などの参照マニュアル中に見出すことができる。
ペプチドは、生物活性をin vitroで惹起するのに有効であり得るが、それらのin vivo有効性は、プロテアーゼの存在によって低減され得る。血清プロテアーゼは、特異的基質要求を有する。基質は、切断のためにL-アミノ酸およびペプチド結合の両方を有さなければならない。さらに、血清中のプロテアーゼ活性の最も突出した構成成分を占めるエキソペプチダーゼは、通常、ペプチドの最初のペプチド結合に対して作用し、遊離N末端を必要とする(Powell et al., Pharm. Res. 10:1268-1273 (1993))。これを考慮すると、改変されたバージョンのペプチドを使用することが有利である場合が多い。改変されたペプチドは、LSALTの所望の生物活性を付与するが、有利には、プロテアーゼおよび/またはエキソペプチダーゼによる切断に対して容易には感受性でない、元のL-アミノ酸ペプチドの構造的特徴を保持する。
コンセンサス配列の1つまたは複数のアミノ酸の、同じ型のD-アミノ酸による体系的置換(例えば、L-リシンの代わりにD-リシン)は、より安定なペプチドを生成するために使用され得る。したがって、本明細書で開示されるペプチド誘導体またはペプチド模倣薬(peptidomimetic)は、フォワードまたはリバース順序のいずれかの、全てL、全てDまたは混合D,Lペプチドであり得る。N末端またはC末端D-アミノ酸の存在は、ペプチドのin vivo安定性を増加させるが、それは、ペプチダーゼがD-アミノ酸を基質として利用できないからである(Powell et al., Pharm. Res. 10:1268-1273 (1993))。リバース-Dペプチドは、L-アミノ酸を含むペプチドと比較して、リバース配列で配置されたD-アミノ酸を含むペプチドである。したがって、L-アミノ酸ペプチドのC末端残基は、D-アミノ酸ペプチドについてはN末端になる、などである。レトロインベルソD-アミノ酸ペプチドは、L-アミノ酸ペプチドと同じ二次コンフォメーションおよびしたがって類似の活性を保持するが、in vitroおよびin vivoでの酵素的分解に対してより耐性が高く、したがって、元のペプチドよりも高い治療的有効性を有し得る(Brady and Dodson, Nature 368:692-693 (1994); Jameson et al., Nature 368:744-746 (1994))。同様に、リバース-Lペプチドは、親ペプチドのC末端がリバース-LペプチドのN末端の代わりになる、標準的な方法を使用して生成され得る。顕著な二次構造を有さないL-アミノ酸ペプチドのリバースL-ペプチド(例えば、短いペプチド)は、L-アミノ酸ペプチドの側鎖と同じスペーシングおよびコンフォメーションを保持し、したがって、元のL-アミノ酸ペプチドと類似の活性を有する場合が多いことが企図される。さらに、リバースペプチドは、L-アミノ酸およびD-アミノ酸の組合せを含み得る。アミノ酸間のスペーシングおよび側鎖のコンフォメーションは保持され得、元のL-アミノ酸ペプチドと類似の活性を生じる。
一実施形態では、ペプチドは、改変されたペプチドがもはやペプチダーゼの基質でなくなるように、ペプチド末端に化学基を付加することによって、ペプチドのN末端またはC末端残基に対して作用するペプチダーゼに対する耐性を付与するように、化学的に改変される。一実施形態では、1つのかかる化学的改変は、いずれかの末端または両方の末端でのペプチドのグリコシル化である。他の実施形態では、血清安定性を増強する化学的改変には、1~20炭素の低級アルキルからなるN末端アルキル基、例えば、アセチル基の付加、および/またはC末端アミドもしくは置換アミド基の付加が含まれるがこれらに限定されない。特に、本明細書で開示される組成物は、N末端アセチル基および/またはC末端アミド基を保有するペプチドからなる改変されたペプチドを含む。
一実施形態では、ペプチド中の、ある特定の天然に存在するアミノ酸の非天然アミノ酸への置換は、タンパク質分解に対する耐性を付与する。かかる置換は、例えば、生物活性に影響を与えることなしに、N末端に対して作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対する耐性を付与し得る。天然に存在しないアミノ酸の例には、α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、C-α-メチルアミノ酸、β-アミノ酸およびβ-メチルアミノ酸が含まれる。本発明において有用なアミノ酸アナログには、β-アラニン、ノルバリン、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、オルニチン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、シクロヘキシルアラニン、2-アミノイソ酪酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、フェニルグリシン、o-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジンおよび他の非慣習的なアミノ酸が含まれ得るがこれらに限定されない。さらに、天然に存在しないアミノ酸を有するペプチドの合成は、当該分野で公知である。
ペプチドアナログは、鋳型ペプチドの特性と類似の特性を有する非ペプチド薬物として、医薬品産業において一般に使用される。非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣物」またはペプチド模倣薬と呼ばれる(Fauchere et al., Infect. Immun. 54:283-287 (1986);Evans et al., J.
Med. Chem. 30:1229-1239 (1987))。ペプチド模倣物は、治療的に有用なペプチドと構造的に関連しており、等価物を産生するためまたは増強された治療効果もしくは予防効果を生じるために使用され得る。一般に、ペプチド模倣薬は、パラダイムポリペプチド(即ち、生物活性または薬理学的活性を有するポリペプチド)、例えば、天然に存在する受容体結合ポリペプチドと構造的に類似しているが、当該分野で周知の方法によって、連結、例えば、-CHNH-、-CHS-、-CH-、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-CHSO-、-CH(OH)CH-、-COCH-などによって必要に応じて置き換えられた1つまたは複数のペプチド連結を有する(Spatola, Peptide Backbone Modifications, Vega Data, 1(3):267 (1983);Spatola et al. Life Sci. 38:1243-1249 (1986);Hudson et al. Int. J. Pept. Res. 14:177-185
(1979);およびWeinstein. B., 1983, Chemistry and Biochemistry, of Amino Acids, Peptides and Proteins, Weinstein eds, Marcel
Dekker, New-York,)。かかるペプチド模倣物は、より経済的な産生、より高い化学的安定性、増強された薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効力、効率など)、低減された抗原性などを含む、天然に存在するポリペプチドを超える顕著な利点を有し得る。
薬学的に許容される塩は、毒性副作用を伴わずに、親ペプチドの所望の生物活性を保持する。
一実施形態では、プロテオミクスおよび他の構造生物学の方法は、LSALTペプチド上の重要なアミノ酸残基を決定し、またはDPEP1は、DPEP1と類似の阻害特性および結合特性を示す新規ペプチド配列、ペプチド模倣薬もしくは小分子を設計するために使用され得る。
一実施形態では、LSALTペプチドに結合する重要なDPEP1エピトープを決定することは、DPEP1、白血球接着およびがん転移を標的化する治療的抗体を開発するためにも使用され得る。かかる方法の例には、LSALTに結合したDPEP1の結晶化およびX線回折による解析が含まれるがこれらに限定されない。別の実施形態では、DPEP1に結合したLSALTの光化学的架橋とその後のプロテアーゼ消化および質量分析(Ngai et al, J Biol Chem 1994)が、相互作用に関与する重要なLSALTアミノ酸およびDPEP1ドメインを識別するために使用される。別の実施形態では、組換えDPEP-1タンパク質が、宿主を免疫化し、DPEP1特異的抗体のライブラリーを生成するために、哺乳動物に注射される。種々の実施形態では、in
silicoモデリングが、新規医薬組成物を開発するために実施される。
IV.医薬製剤および医薬
別の態様では、本明細書に記載される化合物または薬剤、ならびにそのバリアントおよび改変は、治療的使用のための医薬組成物として提供される。一実施形態では、医薬製剤は、表1に列挙される配列を含む単離されたペプチドを含む。別の実施形態では、医薬製剤は、ファージウイルス中に挿入物として含まれる単離されたペプチドを含み、ならびに/またはペプチド配列のN末端および/もしくはC末端に、1、2、3、4、5個の追加のアミノ酸残基をさらに含み得る。
代表的な送達レジメンには、経口、非経口(皮下、筋肉内および静脈内注射を含む)、直腸、頬側(舌下を含む)、経皮、吸入、眼および鼻腔内が含まれる。一実施形態では、化合物の送達は、注射可能な制御放出製剤の皮下注射を必然的に伴う。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、皮下、鼻腔内および吸入投与のために有用である。
正確な用量および組成物ならびに最も適切な送達レジメンの選択は、とりわけ、選択されたペプチドの薬理学的特性、処置されている状態の性質および重症度、ならびにレシピエントの肉体的状態および精神的鋭敏さによって影響されるであろう。さらに、投与経路は、差次的な量の吸収された材料を生じるであろう。異なる経路を介した化合物の投与についてのバイオアベイラビリティは、特に変わりやすく、1%未満から100%近傍までの量が見られる。典型的には、静脈内、腹腔内または皮下注射以外の経路からのバイオアベイラビリティは、50%またはそれ未満である。
本発明の医薬組成物または製剤は、医薬組成物を調製するために、生理学的に許容される担体または賦形剤を用いて製剤化され得る。担体および組成物は、無菌であり得る。製剤は、投与様式、例えば、静脈内または皮下投与に適するべきである。組成物を製剤化する方法は、当該分野で公知である(例えば、Remington’s Pharmaceuticals Sciences, 17th Edition, Mack Publishing Co., (Alfonso R. Gennaro, editor)(1989)を参照のこと)。
適切な薬学的に許容される担体には、水、塩溶液(例えば、NaCl)、食塩水、緩衝食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物、例えば、ラクトース、アミロースもしくはデンプン、糖、例えば、マンニトール、スクロースなど、デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど、ならびにそれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない。医薬調製物は、所望により、活性化合物と有害に反応しないまたはそれらの活性を妨害しない補助剤(例えば、滑沢剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、緩衝剤、着色物質および/または芳香物質など)と混合され得る。好ましい実施形態では、静脈内投与に適切な水溶性担体が使用される。
組成物または医薬は、所望により、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝化剤も含み得る。組成物は、液体溶液、懸濁物、エマルション、持続放出製剤または粉末であり得る。組成物はまた、坐剤として、従来のバインダーおよび担体、例えば、トリグリセリドを用いて製剤化され得る。
組成物または医薬は、ヒトへの投与に適応させた医薬組成物として、慣用的な手順に従って製剤化され得る。例えば、好ましい実施形態では、静脈内投与のための組成物は、典型的には、無菌等張水性緩衝剤中の溶液である。必要に応じて、組成物は、注射の部位における疼痛を和らげるために、可溶化剤および局所麻酔薬もまた含み得る。一般に、成分は、活性薬剤の量を示す密閉シールされているコンテナ、例えば、アンプルまたはサシェ(sachette)中に、単位投薬形態で、例えば、乾燥した凍結乾燥粉末または水なし濃縮物として、別々にまたは一緒に混合されて供給される。組成物が注入によって投与される場合、組成物は、無菌の医薬品グレードの水、食塩水またはデキストロース/水を含む注入ボトルを用いて分配され得る。組成物が注射によって投与される場合、成分が投与前に混合され得るような、注射用無菌水または食塩水のアンプルが提供され得る。
一部の実施形態では、医薬組成物は、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンクス溶液、他の水性の生理学的平衡溶液、油、エステルおよびグリコールなどであるがこれらに限定されない液体担体を含む。
本明細書に記載される化合物は、中性または塩形態として製剤化され得る。上述のように、薬学的に許容される塩には、遊離アミノ基と形成される塩、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する塩、および遊離カルボキシル基と形成される塩、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する塩が含まれる。
本発明の医薬製剤は、周知の方法および医薬組成物に従って、賦形剤と混合され得る、賦形剤によって希釈され得るまたは担体内に封入され得るペプチドを含み、カプセル、サシェ、ペーパーまたは他のコンテナの形態であり得る。組成物は、非経口、静脈内、皮下または筋肉内投与を含む、ペプチド投与に適切な任意の経路によって投与され得る。典型的には、ペプチドは、0.5~2mlまたはそれ未満の必要な用量を提供するのに十分な濃度で、無菌の注射可能な溶液中に溶解または懸濁される。非経口投与に適切な本発明の医薬組成物は、1つもしくは複数の薬学的に許容される無菌の等張の水性もしくは非水性の溶液、分散物、懸濁物もしくはエマルション、または使用の直前に無菌の注射可能な溶液もしくは分散物へと再構成され得る無菌粉末と組み合わせて、本発明の1つまたは複数の化合物を含み、抗酸化剤、緩衝剤、製剤を意図したレシピエントの血液と等張にする溶質または懸濁剤もしくは増粘剤を含み得る。
注射可能なデポー形態は、生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド-ポリグリコリド中に、薬物のマイクロカプセル化されたマトリックスを形成することによって作製される。薬物のポリマーに対する比、および使用される特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。注射可能なデポー製剤は、身体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルション中に薬物を捕捉することによっても調製される。注射可能な材料は、例えば、細菌保持フィルターを介した濾過によって、無菌化され得る。
医薬組成物は、単位用量または多用量のシールされているコンテナ、例えば、アンプルおよびバイアル中で提示され得、使用の直前に、無菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で貯蔵され得る。即時注射溶液および懸濁物は、上記した型の無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。
V.処置の方法
処置の方法は、特に、炎症が組織または臓器に対する虚血/再灌流傷害によって引き起こされる疾患および状態を含む、炎症と関連する疾患および状態について企図される。臓器における虚血とその後の再灌流は、その臓器の組織中などに、構造的および機能的異常を生じる。好中球浸潤、出血、浮腫および壊死は全て、虚血/再灌流傷害後の組織において観察される。DPEP-1標的は、炎症によって媒介される疾患および状態を処置または予防するために使用される、本明細書に記載されるものなどのジペプチダーゼ阻害剤への機会を開く、以前には記載されていなかった炎症の経路を提示する。
炎症と直接的に関連する一般的な疾患および医学的問題の非限定的なリストは、関節炎、腎不全、ループス、喘息、乾癬、膵炎、アレルギー、線維症、外科的合併症、貧血および線維筋痛症を含む。慢性炎症と関連する他の疾患には、慢性炎症によって引き起こされるがん;慢性炎症が冠状動脈アテローム性硬化症に寄与する心臓発作;慢性炎症が脳細胞を破壊するアルツハイマー病;慢性炎症が心臓の筋消耗を引き起こすうっ血性心不全;慢性炎症が血栓塞栓性事象を促進する脳卒中;および慢性炎症が心臓弁を損傷する大動脈弁狭窄症が含まれる。動脈硬化症、骨粗鬆症、パーキンソン病、感染(敗血症)、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、ならびに多発性硬化症。
特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、敗血症誘導性の傷害、急性臓器傷害(例えば、低血圧の状況下での急性腎臓傷害)などであるがこれらに限定されない状態と関連する損傷から組織および臓器を保護するために有用である。
他の実施形態では、本明細書に記載される方法は、敗血症誘導性の状態、例えば、急性呼吸促迫症候群、脳症、敗血症誘導性の肝不全、敗血症誘導性の腎不全または敗血症誘導性の心不全と関連する損傷から組織および臓器を保護するために有用である。
他の実施形態では、本明細書に記載される方法は、例えば、周術期手順、心不全、肝不全、脳卒中、心筋梗塞、ショック肝、脊髄傷害、脳傷害などであるがこれらに限定されない虚血-再灌流傷害と関連する損傷から組織および臓器を保護するために有用である。これらの組成物は、高リスク患者において虚血-再灌流傷害を予防または処置するためにも使用され得る。
他の実施形態では、方法は、血管形成術もしくは血栓溶解治療の前、または手術、血管形成術もしくは血栓溶解治療後の虚血性臓器の移植もしくは再灌流の後にも有用である。
外科的手順およびこれらの手順の間の虚血再灌流傷害のリスクがある臓器の他の例には、頸動脈手術、脳血管手術ならびに心臓および大動脈の手術の間の脳傷害;脳、脊髄、腸および腎臓の傷害;血栓塞栓除去または肺および心臓の手術の間の心肺バイパスの使用後の肺傷害;血行再建(冠状動脈バイパスグラフト手術)後の心臓傷害;腸間膜動脈に対する手術後の腸傷害;ならびに皮膚グラフトの摘出後の皮膚傷害が含まれるがこれらに限定されない。
この方法が有用な追加の外科的手順には、移植のためのドナー臓器を摘出することが含まれる。他の実施形態では、方法は、ドナー調達、ex vivo取り扱いおよび移植レシピエント中へのインプランテーションの間の、同種移植片臓器の保護のためにも有用である。本発明の組成物は、虚血が予期される外科的手順の前またはその間に移植されるドナー臓器を摘出する前、その間またはその後に、投与され得る。
したがって、本発明は、対象において虚血再灌流傷害を予防、制限または処置するための方法であって、虚血性事象を受けたまたは虚血性事象が切迫しているまたは虚血性事象を有するリスクがある対象を識別するステップ、および治療有効量または予防有効量の本明細書に記載される組成物を投与するステップを含む方法に関する。
一実施形態では、ドナーから臓器を抽出するための方法であって、本明細書で開示されるDPEP-1に結合する組成物を、臓器の抽出前にドナーに投与するステップを含む方法が開示される。必要に応じて、移植臓器のレシピエントのための方法であって、DPEP1に結合する組成物を、臓器インプランテーションの前に投与するステップを含む方法が開示される。方法は、1つまたは複数のマーカーが抽出前に、指定されたレベルを下回っているかどうかを決定するため、即ち、臓器が所定のマーカープロファイルを満たすかどうかを決定するために、1つまたは複数の炎症マーカーのレベルをモニタリングするステップをさらに含み得る。
特定の実施形態では、臓器は、心臓、肝臓、腎臓、脳、腸(大腸または小腸)、膵臓、肺、胃、膀胱、脾臓、卵巣、精巣、骨格筋およびそれらの組合せからなる群から選択される。
特定の実施形態では、ドナーは、マージナルドナーである。一実施形態では、マージナルドナーは、複合生体ドナー、心停止ドナー(NHBD)または心機能低下ドナーからなる群から選択される。
特定の実施形態では、複合生体ドナーは、例えば、約60歳を上回る、約65歳を上回るまたは約70歳を上回る高齢のドナーである。
別の特定の実施形態では、複合生体ドナーは、肥満、高血圧、糖尿病、腎結石症(腎臓結石)、伝染性の感染性疾患(例えば、ウイルス感染)、またはそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数のリスク因子を有する。
一実施形態では、方法は、臓器を貯蔵するステップをさらに含む。必要に応じて、1つまたは複数の炎症マーカーのレベルが、臓器の貯蔵の間に1または複数回測定され得る。
別の実施形態では、方法は、(iv)例えば、移植によって、レシピエントに臓器を提供するステップをさらに含む。必要に応じて、1つまたは複数の炎症マーカーのレベルが、臓器が提供された後、例えば、再灌流直後の期間の間に測定され得る。
特定の実施形態では、1つまたは複数の炎症マーカーは、IL-12、IP-10、IL-1β、IL-5、GM-CSF、IFNγまたはIL-1αからなる群から選択される。
必要に応じて、1つまたは複数の追加の薬剤(例えば、抗酸化剤)が、臓器の抽出前にドナーに投与され得る。1つまたは複数の追加の薬剤(例えば、抗酸化剤)は、臓器のインプランテーション前にレシピエントに投与され得る。1つまたは複数の追加の薬剤は、DPEP-1に結合する組成物の投与の前に、それと同時期に、またはその後に、投与され得る。薬剤は、例えば、小分子、生物剤または治療的ガスであり得る。
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法は、改善されたグラフト機能、低減されたグラフト機能不全、改善されたグラフト生存(長期生存を含む)、低減されたグラフト劣化、臓器移植後臓器機能障害(DGF)の発生率の低減などが含まれるがこれらに限定されない、1つまたは複数の有益な効果を生じ得る。
一実施形態では、方法は、DPEP-1に結合する組成物が抽出またはインプランテーションの前に投与されていないグラフトの生存と比較して、グラフト生存における増加を生じる。グラフト生存は、例えば、移植の6ヶ月後、1年後または3年後に測定され得る。特定の実施形態では、グラフト生存は、約5%、約10%、約15%、約20%もしくは約25%またはそれよりも大きく増加される。
一実施形態では、臓器を保存する方法であって、貯蔵された臓器(即ち、移植を待っている抽出された臓器)を、本明細書で開示されるDPEP-1に結合する組成物に曝露させるステップを含む方法が開示される。必要に応じて、方法は、それらが指定されたレベルを下回るかどうかを決定するために、炎症マーカーのレベルを1または複数回モニタリングするステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、臓器は、臓器移植溶液中に貯蔵される。ある特定の実施形態では、臓器は、約0℃と4℃との間の温度で貯蔵される。別の実施形態では、臓器は、約37℃の温度で、即ち、非熱条件下で貯蔵される。ある特定の実施形態では、貯蔵された臓器は、臓器灌流システムに接続されるまたはそれと関連される。
特定の実施形態では、本明細書で開示される臓器を保存する方法は、機能障害なしに、例えば、臓器移植後臓器機能障害(DGF)における増加なしに、特定の臓器のための最大冷虚血時間における増加を可能にする。ある特定の実施形態では、増加は、約5%と約50%との間、より詳細には、約5%と約25%との間、あるいは約5%、約10%、約15%、約20%、約25%もしくは約30%またはそれよりも大きい。
別の実施形態では、臓器移植患者において虚血-再灌流関連傷害を予防する方法であって、臓器を患者に提供する前に、それと同時に、またはその後に、本明細書で開示されるDPEP-1に結合する組成物を投与するステップを含む方法が提供される。
別の実施形態では、本明細書で開示されるDPEP-1に結合する組成物を含む臓器摘出キットが開示される。必要に応じて、臓器摘出キットは、1つまたは複数の追加の薬剤を含み得る。
いずれの特定の機構にも束縛されないが、本明細書で提供される組成物の保護効果は、DPEP-1標的における結合、ならびにDPEP-1調節される白血球動員、炎症および腫瘍細胞接着における直接的低減を介して媒介される。炎症媒介性疾患および腫瘍転移に対する、本明細書に記載されるこれらの効果は、DPEP-1ジペプチダーゼ活性、または尿細管輸送を調節する際のその役割とは無関係に生じる。以前の研究は、細菌感染を処置するために、抗生物質化合物の半減期を延長させるためのDPEP-1アンタゴニストの組合せを必要としていた。他の研究は、化学療法剤または他の腎毒性薬剤の腎尿細管取り込みを予防することによって臓器損傷を予防または処置するために、DPEP-1アンタゴニストシラスタチンを使用している(Humanes et al., Kidney Intl, 82:652-553 (2012);Koller et al., Biochem Biophys Res Comm 131(2):974-979 (1985))。DPEP-1アンタゴニストを使用することによる、DPEP-1調節される炎症、炎症媒介性疾患または腫瘍転移の直接的処置は、以前には識別されていなかった。
このように、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、毒性化合物、例えば、腎毒性化合物または化学療法剤によって直接的に誘導される組織損傷を処置または低減させるためには使用されない。他の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ベータ-ラクタム抗生物質化合物と組み合わせては投与されない。他の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、カルバペネム抗生物質化合物と組み合わせては投与されない。
本発明は、炎症を低減またはモジュレートするための方法であって、有効量の、DPEP-1に結合する組成物を投与して、炎症を低減またはモジュレートするステップを含む方法を提供する。
一実施形態では、炎症は、IL-12、IP-10、IL-1β、IL-5、GM-CSF、IFNγまたはIL-1αから選択される炎症マーカーのプロファイルによって特徴付けられる。
一実施形態では、組成物は、ペプチド、ペプチド模倣性遮断抗体または小分子化合物を含む。
一実施形態では、炎症は、胃炎、痛風、痛風性関節炎、関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、潰瘍、慢性気管支炎、喘息、アレルギー、急性肺傷害、肺炎症、気道反応性亢進、血管炎、敗血症性ショック、炎症性皮膚障害、乾癬、アトピー性皮膚炎および湿疹からなる群から選択される炎症性障害と関連する。
本発明は、対象の白血球動員を遮断するための方法であって、有効量の、DPEP-1に結合する組成物を投与して、白血球動員を遮断するステップを含む方法を提供する。
一実施形態では、方法は、炎症における低減を必要とすることについての診断試験によって、処置を必要とする対象を識別するステップをさらに含む。処置の適応症には、(手術前に、または静脈内造影剤を投与する前に)急性腎臓傷害のリスクがある任意の患者における、または尿排出量の減少もしくは血清クレアチニンの増加を有する任意の患者における、例えば、全身感染もしくは低血圧を有する患者における、臨床的徴候および症状が含まれるがこれらに限定されない。
本発明は、対象において腫瘍転移を低減または予防するための方法であって、有効量の、DPEP-1に結合する組成物を投与し、それによって、腫瘍転移を低減または予防するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、DPEP-1は、その酵素活性とは無関係に、白血球または腫瘍細胞に対する接着分子として作用し得、本明細書に記載される選択的DPEP-1結合剤によるDPEP-1の結合は、腫瘍転移を低減または予防し得る。別の実施形態では、DPEP-1は、腫瘍転移を促進する炎症に寄与し、選択的DPEP-1結合剤によるDPEP-1の結合は、腫瘍転移を低減または予防する。
ある特定の実施形態では、腫瘍は、転移の潜在性があるまたは現在転移が可能であるがんを引き起こすことが公知の腫瘍から選択される。例えば、がんは、膵がん、腎臓がん、例えば、腎細胞癌(RCC)、泌尿生殖器がん、例えば、膀胱、腎臓、骨盤および尿管における尿路上皮癌、黒色腫、前立腺癌、肺癌(非小細胞癌、小細胞癌、神経内分泌癌およびカルチノイド腫瘍)、乳房癌(乳管癌、小葉癌ならびに混合乳管および小葉癌)、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、濾胞性癌および髄様癌)、脳がん(髄膜腫、星細胞腫、神経膠芽腫、小脳腫瘍、髄芽腫)、卵巣癌(漿液性、粘液性および類内膜型)、子宮頸がん(扁平上皮癌in situ、浸潤性扁平上皮癌および子宮頸管内腺癌)、子宮内膜癌(類内膜、漿液性および粘液性型)、原発性腹膜癌、中皮腫(胸膜および腹膜)、眼がん(網膜芽細胞腫)、筋肉(横紋筋肉腫(rhabdosarcoma)および平滑筋肉腫)、リンパ腫、食道がん(腺癌および扁平上皮癌)、胃がん(胃腺癌および消化管間質腫瘍)、肝臓がん(肝細胞癌および胆管がん)、小腸腫瘍(小腸間質腫瘍およびカルチノイド腫瘍)、結腸がん(結腸の腺癌、結腸高悪性度異形成および結腸カルチノイド腫瘍)、精巣がん、皮膚がん(黒色腫および扁平上皮癌)および副腎癌であり得る。
一実施形態では、方法は、患者の腫瘍上のDPEP-1結合分子の存在を決定することによって、腫瘍転移の低減または予防の必要を決定する診断試験を介して、処置を必要とする対象を識別するステップをさらに含む。
本発明は、対象において敗血症の間の白血球動員および炎症を低減または予防するための方法であって、有効量の、DPEP-1に結合する組成物を投与し、それによって、敗血症の臓器合併症を低減または予防するステップを含む方法を提供する。
一実施形態では、方法は、虚血-再灌流傷害の低減または予防の必要を決定する診断試験を介して、処置を必要とする対象を識別するステップをさらに含む。処置の適応症には、虚血-再灌流傷害の臨床的徴候および症状、または高リスクの虚血-再灌流傷害を伴う外科的手順を受けていることが含まれるがこれらに限定されない。
本発明は、患者において虚血-再灌流傷害の症状を処置する方法であって、薬学的有効量の、DPEP-1に結合しそれを阻害する組成物を患者に投与するステップを含む方法を含む。
一実施形態では、組成物は、虚血-再灌流傷害の症状が低減または寛解されるまで投与される。
一実施形態では、単離されたペプチドまたはそのバリアントは、約0.01mg/kg~100mg/kgの間の投薬量で投与される。
本発明は、対象において虚血-再灌流傷害関連障害を低減または予防するための方法であって、有効量の、DPEP-1に結合する組成物を投与し、それによって、虚血-再灌流傷害を低減または予防するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、方法は、虚血-再灌流傷害と関連する白血球動員および炎症を低減または予防する。
一実施形態では、虚血-再灌流傷害関連障害は、臓器および組織における虚血性および虚血後事象と関連し、障害は、血栓性脳卒中;心筋梗塞;狭心症;塞栓性血管閉塞;末梢血行障害;内臓動脈閉塞;血栓または塞栓症による動脈閉塞、低い腸間膜流または敗血症後などの非閉塞性プロセスによる動脈閉塞;腸間膜動脈閉塞;腸間膜静脈閉塞;腸間膜微小循環に対する虚血-再灌流傷害;虚血性急性腎不全;大脳組織に対する虚血-再灌流傷害;腸重積症;血行動態ショック;組織機能不全;臓器不全(心不全、肝不全、腎不全などを含む);再狭窄;アテローム性動脈硬化症;血栓症;血小板凝集;ショック肝;脊髄傷害;周術期手順、心臓手術などの手順からなるリストから選択される脳傷害またはその後の状態;臓器手術;臓器移植;血管造影術;心肺および大脳蘇生からなる群から選択される。
一実施形態では、虚血-再灌流傷害は、移植のためのドナー臓器を摘出することと関連する。
一実施形態では、虚血-再灌流傷害は、ドナー調達、ex vivo取り扱いまたは移植レシピエント中へのインプランテーションの間に、同種移植片臓器に対して生じる。
種々の実施形態では、組成物は、(i)移植されるドナー臓器の摘出の前、その間もしくはその後、または(ii)虚血が予期される外科的手順の前もしくはその間に、投与され得る。
本発明は、対象において急性腎臓傷害を低減または予防するための方法であって、有効量の、DPEP-1に結合する組成物を投与し、それによって、急性腎臓傷害を低減または予防するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、方法は、急性腎臓傷害と関連する白血球動員および炎症を低減または予防する。
一実施形態では、方法は、急性腎臓傷害の低減または予防の必要を決定する診断試験を介して、処置を必要とする対象を識別するステップを含む。
一実施形態では、急性腎臓傷害は、敗血症の結果である。
一実施形態では、急性腎臓傷害は、虚血再灌流の結果である。
一実施形態では、急性腎臓傷害は、毒素誘導性の腎臓傷害である。
一実施形態では、急性腎臓傷害は、造影剤誘導性の腎臓傷害である。
ある特定の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の追加の治療剤と組み合わせて投与され得る。共投与には、別々の組成物での同時投与(同時発生的投与とも呼ばれる)、別々の組成物での異なる時間における投与、または両方の薬剤が存在する組成物での投与が含まれる。別々の組成物での同時投与および両方の薬剤が存在する組成物での投与が好ましい。
一実施形態では、少なくとも1つの追加の治療剤は、化学療法剤または抗増殖剤、抗ウイルス薬、抗生物質、抗ヒスタミン薬、皮膚軟化薬、全身光線療法、ソラレン光化学療法、レーザー治療、ホルモン補充治療、抗炎症剤、免疫調節剤または免疫抑制剤、神経栄養因子、心血管疾患を処置するための薬剤、糖尿病を処置するための薬剤、免疫不全障害を処置するための薬剤、および免疫チェックポイント阻害剤からなる群から選択される。
VI.投与経路
本明細書に記載されるDPEP-1に結合する組成物は、任意の適切な経路によって投与され得る。一部の実施形態では、DPEP-1結合ペプチドは、非経口投与される。一部の実施形態では、非経口投与は、静脈内、皮内、吸入、経皮(外用)、眼内、筋肉内、皮下、筋肉内および/または経粘膜投与から選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるDPEP-1結合ペプチドは、皮下投与される。本明細書で使用される場合、用語「皮下組織」は、皮膚のすぐ下の緩い不規則な結合組織の層として定義される。例えば、皮下投与は、大腿領域、腹部領域、臀部領域または肩甲骨領域が含まれるがこれらに限定されない領域に組成物を注射することによって実施され得る。一部の実施形態では、本明細書に記載されるDPEP-1に結合する組成物は、静脈内投与される。他の実施形態では、本明細書に記載されるDPEP-1に結合する組成物は、標的組織、例えば、心臓または筋肉(例えば、筋肉内)、腫瘍(腫瘍内)、神経系(例えば、脳への直接的注射;脳室内;くも膜下腔内)への直接的投与によって投与される。あるいは、本明細書に記載されるDPEP-1に結合する組成物(または本明細書に記載されるDPEP-1結合ペプチドを含む組成物もしくは医薬)は、吸入、非経口、皮内、経皮または経粘膜(例えば、経口もしくは経鼻)で投与され得る。1つよりも多くの経路が、所望に応じて、同時発生的に使用され得る。
一部の実施形態では、本明細書に記載されるDPEP-1に結合する組成物は、経口投与される。一部の実施形態では、本発明は、(a)DPEP-1結合ペプチド、(b)少なくとも1つの薬学的に許容されるpH低下剤、(c)DPEP-1結合ペプチドのバイオアベイラビリティを促進するのに有効な少なくとも1つの吸収増強因子、および(d)保護的ビヒクルを含む、経口投与のための本明細書に記載されるDPEP-1結合ペプチドの固体投薬形態を提供する。一部の実施形態では、固体投薬形態は、カプセルまたは錠剤である。
VII.投薬
有効量の、目的のDPEP-1に結合する組成物が、処置において使用される。本発明に従って使用されるペプチドの投薬量は、ペプチドおよび処置されている状態に依存して変動する。選択される投薬量に影響を与える因子の中では、例えば、レシピエント患者の年齢、体重および臨床状態;ならびに治療を投与する臨床医または実務者の経験および判断である。他の因子には、投与経路、患者、患者の病歴、疾患プロセスの重症度、および特定のペプチドの効力が含まれる。用量は、患者に対して許容されない毒性を生じることなしに、処置される疾患の症状または徴候を寛解させるのに十分でなければならない。一般に、ペプチドの有効量は、症状の主観的救済または臨床医もしくは他の有資格の観察者によって留意される客観的に識別可能な改善のいずれかを提供する量である。
種々の実施形態は、異なる投薬レジメンを含み得る。一部の実施形態では、DPEP-1結合組成物は、持続的注入を介して投与される。一部の実施形態では、持続的注入は、静脈内である。他の実施形態では、持続的注入は、皮下である。あるいはまたはさらに、一部の実施形態では、DPEP-1に結合する組成物は、2ヶ月に1回、月に1回、月に2回、3週間に1回、2週間に1回、週に1回、週に2回、週に3回、1日1回、1日2回、または別の臨床的に望ましい投薬スケジュールで投与される。単一の対象のための投薬レジメンは、固定された間隔である必要はないが、対象の必要に依存して経時的に変動され得る。
一実施形態では、局所投薬量が、治療結果が達成されるまで、1日に少なくとも1回投与される。投薬量は、1日2回投与され得るが、より頻繁なまたはより頻度の低い投薬が、臨床医によって推奨され得る。治療結果が達成されると、ペプチドは、徐々に減らされ得るまたは中断され得る。時折、副作用が、治療の中断を正当化する。有効量の目的のペプチドが、処置において使用される。本発明に従って使用されるペプチドの投薬量は、化合物および処置されている状態に依存して変動する。選択される投薬量に影響を与える因子の中では、レシピエント患者の年齢、除脂肪体重、総体重、体表面積および臨床状態;ならびに治療を投与する臨床医または実務者の経験および判断である。他の因子には、投与経路、患者、患者の病歴、疾患プロセスの重症度、および特定の化合物の効力が含まれる。用量は、患者に対して許容されない毒性を生じることなしに、処置される疾患の症状または徴候を寛解させるのに十分でなければならない。
医薬品として使用される場合、本発明のペプチドは、医薬組成物の形態で投与され、これらの医薬組成物は、本発明のさらなる実施形態を示す。これらのペプチドは、経口、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内および鼻腔内を含む種々の経路によって、または気管内滴下もしくはエアロゾル吸入を介して、投与され得る。
DPEP-1に結合する組成物は、炎症を低減させる際に、または組織、例えば肝臓の炎症プロファイルを改変する際に有用である。投与様式は、化合物の適用によって規定され、最適な用量を見出すための臨床試験の慣用的な方法によって決定され得る。
一実施形態では、投薬量は、約0.01mg/kg~約100mg/kgの間の活性ペプチド、約0.01mg/kg~約50mg/kgの間または約0.01mg/kg~約25mg/kgの間である。
他の実施形態では、投薬量は、約0.1mg/kg~約100mg/kgの間、約0.1mg/kg~約50mg/kgの間、約0.1mg/kg~約25mg/kgの間または約0.1mg/kg~約10mg/kgの間である。
他の実施形態では、投薬量は、約0.5mg/kg~約100mg/kg、約0.5mg/kg~約50mg/kg、約0.5mg/kg~約25mg/kgまたは約0.5mg/kg~約10.0mg/kgの間である。
他の実施形態では、投薬量は、約1.0mg/kg~約25mg/kgの間、約1.0mg/kg~約50mg/kgの間、約1.0mg/kg~約70mg/kgの間、約1.0mg/kg~約100mg/kgの間、約5.0mg/kg~約25mg/kgの間、約5.0mg/kg~約50mg/kgの間、約5.0mg/kg~約70mg/kgの間、約5.0mg/kg~約100mg/kgの間、約10.0mg/kg~約25mg/kgの間、約10.0mg/kg~約50mg/kgの間、約10.0mg/kg~約70mg/kgの間または約10.0mg/kg~約100mg/kgの間である。
別の実施形態では、投薬量は、約50μMと約500μMとの間である。
しかし、実際に投与されるDPEP-1結合組成物の量は、処置される状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の症状の重症度などを含む、適切な状況の観点から、医師によって決定されることが理解されよう。
種々の実施形態では、本明細書に記載される組成物またはその塩は、1日当たり約0.001mg/kg体重と約20mg/kg体重との間、1日当たり約0.01mg/kg体重と約10mg/kg体重との間、1日当たり約0.1μg/kg体重と約1000μg/kg体重との間または1日当たり約0.1μg/kg体重と約100μg/kg体重との間の量で投与される。投与経路は変動する。例えば、本明細書に記載されるペプチドまたはその塩は、1日当たり約0.1μg/kg体重と約1000μg/kg体重の間または1日当たり約0.1μg/kg体重~約100μg/kg体重の間の量で、皮下注射によって投与される。例として、50kgのヒト雌性対象について、活性成分の1日用量は、皮下注射によって、約5~約5000μgまたは約5~約5000μgである。投与経路、ペプチド効力、観察された薬物動態学的プロファイルおよび適用可能なバイオアベイラビリティ、ならびに活性薬剤および処置されている疾患に依存して、異なる用量が必要とされるであろう。投与が吸入によるものである代替の実施形態では、1日用量は、1日2回、1000~約20,000μgである。他の哺乳動物、例えば、ウマ、イヌおよびウシでは、より高い用量が必要とされ得る。この投薬量は、最も有効な結果を達成するために必要に応じて、単一の投与によって、複数の適用によって、または制御放出を介して、慣習的な医薬組成物で送達され得る。
VIII.キット
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載されるDPEP-1結合ペプチドまたは医薬組成物、ならびにその再構成(凍結乾燥されている場合)および/または使用のための使用説明書を含むキットまたは他の製造物品を、さらに提供する。キットまたは他の製造物品は、投与(例えば、皮下、吸入による)において有用なコンテナ、シリンジ、バイアルおよび任意の他の物品、デバイスまたは装置を含み得る。適切なコンテナには、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ(例えば、あらかじめ充填されたシリンジ)、アンプル、カートリッジ、リザーバーまたはlyo-jectが含まれる。コンテナは、種々の材料、例えば、ガラスまたはプラスチックから形成され得る。一部の実施形態では、コンテナは、あらかじめ充填されたシリンジである。適切なあらかじめ充填されたシリンジには、ベイクドシリコーンコーティングを有するホウケイ酸ガラスシリンジ、シリコーンが噴霧されたホウケイ酸ガラスシリンジ、またはシリコーンなしのプラスチック樹脂シリンジが含まれるがこれらに限定されない。
典型的には、コンテナは、製剤、ならびにコンテナ上のまたはコンテナと関連した、再構成および/または使用のための指示を示し得るラベルを保持し得る。例えば、ラベルは、製剤が上記の濃度に再構成されることを示し得る。ラベルは、製剤が、例えば皮下投与のために有用であるまたはそのために意図されることをさらに示し得る。一部の実施形態では、コンテナは、単一の用量の、DPEP-1結合ペプチドを含む安定な製剤を含み得る。種々の実施形態では、安定な製剤の単一の用量は、約15ml、約10ml、約5.0ml、約4.0ml、約3.5ml、約3.0ml、約2.5ml、約2.0ml、約1.5ml、約1.0mlまたは約0.5ml未満の体積中に存在する。あるいは、製剤を保持するコンテナは、製剤の反復投与(例えば、2~6回の投与)を可能にする、多使用バイアルであり得る。キットまたは他の製造物品は、適切な希釈剤(例えば、BWFI、食塩水、緩衝食塩水)を含む第2のコンテナをさらに含み得る。希釈剤および製剤の混合の際に、再構成された製剤中の最終タンパク質濃度は、一般に、少なくとも約1mg/ml(例えば、少なくとも約5mg/ml、少なくとも約10mg/ml、少なくとも約20mg/ml、少なくとも約30mg/ml、少なくとも約40mg/ml、少なくとも約50mg/ml、少なくとも約75mg/ml、少なくとも約100mg/ml)になるであろう。キットまたは他の製造物品は、使用のための使用説明書と共に、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジおよび添付文書を含む、商業的およびユーザーの立場から望ましい他の材料をさらに含み得る。一部の実施形態では、キットまたは他の製造物品は、自己投与のための使用説明書を含み得る。
IX.スクリーニング方法
DPEP-1に結合する組成物(例えば、ペプチド)についてスクリーニングするための方法が、本明細書で開示される。
一実施形態では、方法は、a)試験ペプチドのライブラリーを、組織中のDPEP-1に結合するそれらの能力についてスクリーニングするステップ;および(b)選択的結合親和性を示すペプチドを識別するステップを含む。ある特定の実施形態では、識別されたペプチドは、1つまたは複数の追加の試験方法に供される。
一実施形態では、スクリーニング方法は、(a)試験ペプチドのライブラリーを、組織中のDPEP-1に結合するそれらの能力についてスクリーニングするステップ;(b)選択的結合親和性を示す候補試験ペプチドを選択するステップ;(c)炎症低減活性について候補ペプチドを試験するステップ、および(d)それが炎症を減少させる場合、候補ペプチドを選択し、それによって、炎症を減少させるのに有効なペプチドを提供するステップを含む、患者の組織において炎症を減少させるのに有効なペプチドを識別するステップを含む。
ライブラリー中の、標的ペプチドのうち1つに対する選択的結合親和性、例えば、結合親和性における、ランダム配列ペプチドを超える少なくとも10~100倍の増加を示すライブラリー化合物について、化合物は、以下に詳述される方法に従って、組織において炎症を低減させるその能力についてさらに試験される。次いで、組織において炎症を低減させることが示された試験化合物は、さらなる化合物試験および開発のためのリード化合物として識別される。
一実施形態では、組織は、肺組織または肝臓組織である。
一実施形態では、患者の脈管構造において白血球動員を遮断するのに有効なペプチドを識別するための方法が提供される。
一実施形態では、本発明は、患者の組織において炎症を低減させるのに有効なペプチドを識別する方法であって、(a)試験ペプチドのライブラリーを、DPEP-1に結合するそれらの能力についてスクリーニングするステップ;(b)選択的結合親和性を示すペプチドを選択するステップ;(c)白血球動員阻害活性についてペプチドを試験するステップ、および(d)それが組織において炎症を減少させる場合に、そのペプチドを選択するステップを含む方法を提供する。
一実施形態では、組織は、肺組織または肝臓組織である。
一実施形態では、方法は、(e)固形腫瘍を保有する動物において白血球動員を遮断するその能力についてペプチドをさらに試験するステップ;および(f)それがステップ(e)において白血球動員を遮断する場合に、そのペプチドを選択するステップをさらに含む。
一実施形態では、方法は、(e)固形腫瘍を保有する動物において腫瘍転移を阻害するその能力についてペプチドをさらに試験するステップ;および(f)それがステップ(e)において腫瘍転移を阻害する場合に、そのペプチドを選択するステップをさらに含む。
一実施形態では、方法は、(e)肺または肝臓に転移することが公知の固形腫瘍を保有する動物中の肺および肝臓への腫瘍転移を阻害するその能力についてペプチドをさらに試験するステップ;および(f)それがステップ(e)において腫瘍転移を阻害する場合に、そのペプチドを選択するステップをさらに含む。
一実施形態では、方法は、(e)患者において敗血症を処置するその能力についてペプチドをさらに試験するステップ;および(f)それがステップ(e)において敗血症を処置する場合に、そのペプチドを選択するステップをさらに含む。
一実施形態では、方法は、(e)患者において細菌敗血症を処置するその能力についてペプチドをさらに試験するステップ;および(f)それがステップ(e)において敗血症を処置する場合に、そのペプチドを選択するステップをさらに含む。
一実施形態では、方法は、(e)患者において急性腎臓損傷を処置するその能力についてペプチドをさらに試験するステップ;および(f)それがステップ(e)において急性腎臓損傷を処置する場合に、そのペプチドを選択するステップをさらに含む。
一実施形態では、方法中のステップ(a)は、試験ペプチドのライブラリーを、DPEP-1に結合するそれらの能力についてスクリーニングするステップを含む。
一実施形態では、方法は、タンパク質マイクロアレイにおいてLSALTペプチドを使用することによって、補因子、共受容体、循環因子およびアクセサリータンパク質を含む、炎症に関与する他の二次標的を識別するステップをさらに含む。
本明細書で言及される全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が、参照により具体的かつ個々に組み込まれると示されるのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
(実施例1)
腎臓における腎ジペプチダーゼ(DPEP-1)の特徴付け
腎尿細管上皮細胞(TEC)を、ヒト腎臓腎摘出術から単離および培養した。次いで、細胞を、DPEP-1およびZO-1(TEC表面マーカー)抗体で標識し、共焦点顕微鏡を使用してイメージングした。イメージを、60×の倍率で撮影した。代表的な顕微鏡写真は、図1Aに示される。マウス腎臓組織を、DPEP-1抗体で染色し、免疫ペルオキシダーゼを使用して可視化した。矢印は、暗褐色の染色によって示される、DPEP-1について陽性の尿細管を示す。代表的な顕微鏡写真は、図1Bに示される。総タンパク質溶解物を、トランスフェクトされていないCOS-7細胞、DPEP-1を過剰発現するCOS-7細胞、ヒト腎臓組織およびマウス腎臓組織から調製した。次いで、溶解物を、DPEP-1のジペプチド基質であるグリシン-デヒドロ-フェニルアラニン(Gly-D-Phe)の分解の蛍光定量的検出を介して、DPEP-1酵素活性について試験した。これらの結果は、図1Cにグラフで示される。
(実施例2)
in vivoの内因性DPEP-1活性
臓器(肺、肝臓、脾臓および腎臓)を、8~10週齢のC57/BL6動物(Charles River)から摘出した。タンパク質を、組織ホモジナイザーを使用して、プロテアーゼ阻害剤カクテルの非存在下でRIPA/オクチル-グルコシドを使用して、組織から単離した。各条件/臓器からの10μlのタンパク質溶解物を使用して、DPEP-1酵素活性アッセイを実施した。これらの結果は、図2にグラフで示される。
(実施例3)
DPEP-1の肺発現
臓器(肺および腎臓)を、8~10週齢のC57/BL6動物(Charles River)から摘出し、組織を、組織学のためにパラフィン包埋した。腎臓および肺切片を、DPEP-1発現を評価するためにDAB法を使用してDPEP-1特異的抗体(暗色(Abcam))で染色した。代表的な顕微鏡写真は、図3に示される。
(実施例4)
DPEP-1の触媒活性は、in vitroでの結合に必要とされない
Cos-1細胞を、lipofectamine 2000(Invitrogen)試薬を使用して、ヒトDPEP-1遺伝子に対応する3μgの野生型膜ジペプチダーゼ(DPEP-1)の触媒的に不活性な変異体(E>D)または変異体対照(H>K)のいずれかで、一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、DPEP-1発現細胞を、24ウェルのコラーゲンコーティングされた(中和された)プレート上に再播種し、37℃で24時間成長させた。播種の24時間後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄した。細胞を、氷上で30分間、PBS中のFBS/NBSA/Tween(登録商標)で遮断した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、氷上で30分間、Alexa-488(緑色)コンジュゲートされたLSALT、GFE-1、対照ペプチドまたはDPEP-1抗体(1/100)(Sigma)と共にインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、氷上で4分間、DAPIで染色した。細胞をPBSで再度洗浄し、4%パラホルムアルデヒドを使用して固定し、免疫蛍光顕微鏡を実施して、結合を評価した。各実験条件の代表的な顕微鏡写真は、図4Aに示される(n=3)。ヒトDPEP-1トランスフェクトされた細胞からのタンパク質を、プロテアーゼ阻害剤の非存在下で、オクチル-グルコシド/RIPAを使用して48時間後に単離した。膜ジペプチダーゼ活性アッセイおよびD-Pheの蛍光定量的検出を、Heywood and Hooper (1995)によって元々確立された原理に従って、以前に記載されたとおりに正確に実施した。これらの結果は、図4Bにグラフで示される。示される値は、6つの独立した実験からの平均±s.e.m.である;アスタリスク(***)は、DPEP-1トランスフェクトされた細胞と比較してP<0.001を示す(Neuman-Keuls事後テストを用いた一元配置ANOVA)(n=5)。トランスフェクトされた細胞からのタンパク質を、オクチル-グルコシド/RIPA溶解緩衝剤を使用して48時間後に単離し、ウエスタンブロット解析を、DPEP-1抗体(Sigma)を使用して実施して、DPEP-1発現を評価した。ウエスタンブロット解析の写真は、図4Cに示される。
(実施例5)
LSALTは、RACINEおよびヒトDPEP-1に結合する
Cos-1細胞を、OptiMEM培地中のLipofectamine 2000(Invitrogen)試薬を使用して、ラット(図5Aに示される)、ヒト(図5Bに示される)またはイヌ(図5Eに示される)DPEP-1遺伝子に対応する3または5μgのいずれかの膜ジペプチダーゼ(DPEP-1)cDNAで、一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、DPEP-1発現細胞を、24ウェルプレート中の、コラーゲンコーティングされた(中和された)ウェル上に再播種し、37℃で24時間成長させた。播種の24時間後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄した。細胞を、氷上で30分間、PBS中のFBS/NBSA/Tween(登録商標)で遮断した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、氷上で30分間、Alexa-488(緑色)コンジュゲートされたLSALT、GFE-1、対照ペプチドまたはDPEP-1抗体(1/100)(Sigma)と共にインキュベートした。DPEP-1抗体インキュベートした細胞をPBSで洗浄し、氷上で30分間、蛍光コンジュゲートされた抗ウサギ二次抗体(PBS中1/500)と共にインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、氷上で5分間、DAPIで染色した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドを使用して固定し、免疫蛍光顕微鏡を実施して、結合を評価した。各実験条件の代表的な顕微鏡写真が示される(n=5)。ヒトDPEP-1トランスフェクトされた細胞からのタンパク質を、オクチル-グルコシド/RIPA溶解緩衝剤を使用して48時間後に単離し、ウエスタンブロット解析を、DPEP-1特異的抗体(Sigma)を使用して実施して、DPEP-1発現を評価した。ウエスタンブロットの写真は、図5Dに提供される。Cos-1細胞を、3μgの、ヒトDPEP-1をコードするDPEP-1遺伝子で、一過的にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、OptiMEM培地中で2時間血清飢餓させ、メチル-ベータ-シクロデキストリンで30分間処置した。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、10mg/mlのビオチン移行ペプチド(LSALT、GFE-1または対照ペプチド(KGAL)]で10分間処置した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、ビオチン移行を、363nmで15分間のアリールアジド基のUV活性化によって可能にした。残留流体を除去し、単層を、オクチル-グルコシド/RIPAまたは8M尿素のいずれかで溶解させた。単離された上清を、50μlのニュートラアビジンアガロースビーズと共に4℃で24時間回転させた。ビーズを、対応する緩衝剤で洗浄し、Laemmli緩衝剤中で煮沸し、DPEP-1特異的抗体(Proteintech)を使用するウエスタンブロットによって解析した。この手順の概略図および得られたウエスタンブロットの写真は、図5Eに提供される。
(実施例6)
LSALTペプチドは、in vitroでヒトDPEP2およびDPEP3に結合しない
Cos-1細胞を、OptiMEM培地中のLipofectamine 2000(Invitrogen)試薬を使用して、3μgのヒトDPEP-1、DPEP2またはDPEP3遺伝子のいずれかで一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、DPEP-1、DPEP2またはDPEP3発現細胞を、24ウェルプレート中のコラーゲンコーティングされた(中和された)ウェル上に再播種し、37℃で24時間成長させた。播種の24時間後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄した。細胞を、氷上で30分間、PBS中のFBS/NBSA/Tween(登録商標)で遮断した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、Alexa-488(緑色)とコンジュゲートさせたLSALTまたはGFE-1と共にインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで洗浄し、氷上で5分間、DAPIで染色した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドを使用して固定し、免疫蛍光顕微鏡を実施して、結合を評価した。各実験条件についての代表的な顕微鏡写真は、図6Aに示される(n=3)。DPEP-1、DPEP2およびDPEP3トランスフェクトされた細胞からのタンパク質を、オクチル-グルコシド/RIPA溶解緩衝剤を使用して48時間後に単離し、ウエスタンブロット解析を、特異的抗体;DPEP-1抗体(Sigma)、DPEP2(Abcam)およびDPEP3(Santacruz)を使用して実施して、DPEP-1、DPEP2およびDPEP3タンパク質発現を評価した。ブロットを剥がし、抗β-アクチンで再プローブした。ウエスタンブロットの写真は、図6Bに示される。
(実施例7)
LSALTは、LPSの存在下での肝類洞における好中球接着を阻害する:
6~10週齢のLysM(gfp)マウスに、0.5mg/kgのリポポリサッカリドの注射(腹腔内)の5分後に、1mM用量のLSALTまたは1KGAL(対照)(静脈内)を注射した。3時間後、動物にケタミンおよびキシラジンを注射して、全身麻酔を提供した。次いで、蛍光コンジュゲートされたF4/80およびPECAM-1抗体を、頸静脈カニューレ挿入を介して投与し、生体内スピニングディスク共焦点顕微鏡を実施した。肝臓を1時間イメージングし、好中球の数を異なる時点で計数した。肝臓類洞中で30秒以上静止していた好中球を、接着細胞として計数した。データは、3つの独立した実験の代表である。対応のない両側スチューデントt検定を実施して、LPS処置群に対してLSALT、GFE-1または対照処置群を比較した(p<0.05)。結果は、図7に示される。
(実施例8)
DPEP-1の発現は、COS-7細胞におけるLSALTおよびGFE-1の結合を増強した
Cos-7細胞を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)試薬を使用して、5μgの腎ラット膜ジペプチダーゼ(DPEP-1)プラスミドで一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄した。細胞を、氷上で30分間、Alexa-488(緑色)とコンジュゲートさせたLSALTもしくはGFE-1、またはAlexa-488(緑色)とコンジュゲートさせた対照ペプチドと共にインキュベートした。細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒドを使用して固定し、免疫蛍光顕微鏡を実施して、結合を評価した。各実験条件の代表的な顕微鏡写真が示される(n=2)。結果は、図8に示される。
(実施例9)
DPEP-1の発現は、COS-7細胞へのLSALTの結合を増強した
Cos-7細胞を、lipofectamine2000(Invitrogen)試薬を使用して、5μgの腎ラット膜ジペプチダーゼ(DPEP-1)プラスミドで一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を、氷上で30分間、Alexa-488(緑色)にコンジュゲートさせたLSALTと共にインキュベートした。細胞を洗浄し、フローサイトメトリーを実施して、結合を評価した。各実験条件についての単一パラメーターヒストグラムが示される(n=2)。結果は、図9に示される。
(実施例10)
LSALTは、膜ジペプチダーゼ(DPEP-1)酵素活性を阻害しない
Cos-1細胞を、lipofectamine 2000(Invitrogen)試薬を使用して、3μgのヒト膜ジペプチダーゼ(DPEP-1)プラスミドで一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄した。タンパク質を、プロテアーゼ阻害剤の非存在下で、オクチルグルコシドを使用して単離した。膜ジペプチダーゼアッセイおよびD-Pheの蛍光定量的検出を、Heywood and Hooperによって以前に記載されたとおりに正確に実施した。簡潔に述べると、タンパク質を、LSALTまたはGFE-1ペプチドの存在下または非存在下のいずれかで、膜ジペプチダーゼ基質Gly-D-Pheと共に37℃で3時間最初にインキュベートした。D-アミノ酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼの存在下でのD-Pheの6,69-ジヒドロキシ-(1,19-ビフェニル)-3,39-二酢酸への変換から生成された蛍光シグナルを、蛍光プレートリーダーを使用して測定した。結果は、図10A~Cに示される。
(実施例11)
敗血症の間の腎ジペプチダーゼの阻害は、炎症を低減させる
LysM(gfp)マウスを、5mg/kgの用量でのリポポリサッカリド(LPS、O111:B4)の静脈内注射を介した内毒血症に供した。腎臓を、30分毎に最大で90分まで、多光子顕微鏡を使用してイメージングした。ジペプチダーゼの阻害剤を静脈内で使用して、LPS注射の10分前にマウスをあらかじめ処置した。顕微鏡写真は、図11Aに示される。図11Bは、種々の阻害剤を伴ったLPSの前(NT)および後(90分)の腎臓の顕微鏡写真イメージを提供する。接着好中球が、IRI後に間質腔において見られた。好中球を、種々のDPEP-1阻害剤を伴ったLPS注射後90分間の時間経過にわたって定量化した。n=2~3/群、:p<0.05。これらの結果は、図11Cにグラフで示される。
(実施例12)
腎虚血再灌流傷害の間のジペプチダーゼの阻害は、炎症を低減させる
LysM(gfp)マウスを、血管クランプを介した37℃で30分間の一側性腎虚血および120分間の再灌流に供し、影響を受けた腎臓を、多光子顕微鏡を使用してイメージングした。代表的な顕微鏡写真は、図12Aに示される。ジペプチダーゼの阻害剤を使用して、虚血の10分前にマウスをあらかじめ処置した。標識化抗体を、イメージング前に静脈内注射した。種々の阻害剤を伴ったIRIの前(NT)および後(120分)の腎臓のイメージは、図12Bに提供される。接着好中球が、IRI後に間質腔において見られた。好中球を、120分間の時間経過にわたって定量化し、図13Aにグラフで示した(n=3/群、***:p<0.01)。好中球を、種々の阻害剤を伴ったIRIの後(120分)に定量化し、図13Bにグラフで示した(n=3~5/群、***:p<0.001)。
(実施例14)
DPEP-1結合による炎症性メディエーターの阻害
以下の実験を実施して、LSALTペプチドによるDPEP-1結合が、LPSに応答した特定の血清サイトカインのレベルに対して影響を有したかどうかを評価した。6~8週齢のSCIDマウスに、LSALTペプチドまたは対照ペプチドの静脈内注射の5分前に、LPS(0.5mg/kg)の腹腔内注射を与えた。LPSの注射の4時間後、血液を心穿刺によって収集し、血漿サイトカインレベルにおける変化を、Luminex Cytokine Arrayを使用して評価した。棒グラフは、LSALTペプチドおよび対照ペプチドの存在下または非存在下での、血漿中に放出された異なる炎症性メディエーターのレベルを示している(図14A)。LSALTペプチドは、いくつかの異なる血清サイトカインのレベルを減弱させる。
6~8週齢のSCIDマウスに、LSALTペプチドまたは対照ペプチドの静脈内注射の5分前に、LPS(0.5mg/kg)の腹腔内注射を与えた。LPSの注射の4時間後、血液を心穿刺によって収集し、血漿サイトカインレベルにおける変化を、Luminex Cytokine Arrayを使用して評価した。棒グラフは、2つの独立した実験における、LSALTペプチドまたは対照ペプチドでの、血漿中に放出された抗炎症性サイトカインIL-10のレベルを示している(図14Hおよび図14I)。LSALTペプチドは、LPSに応答して、抗炎症性メディエーターIL-10の産生を増加させる。
(実施例15)
70Wヒト黒色腫細胞は、DPEP-1発現COS-1単層にin vitroで結合する
Cos-1細胞を、3μgのヒトDPEP-1 cDNAでトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、12または24ウェルプレート上に、24時間後に再播種した。48時間後、安定なGFP-ルシフェラーゼを発現する70W黒色腫細胞を、Puck’s EDTAを使用して収集し、10×10細胞を、DPEP-1発現Cos-1単層の上に播種した。細胞を、37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を、PBSで2回激しく洗浄した。次いで、細胞を、パラホルムアルデヒド(4%)を使用して固定した。結合/接着した70W黒色腫細胞の数を、倒立蛍光顕微鏡を使用して、10の異なる視野にわたって10×の倍率下で計数した(図24A)。対応のない両側スチューデントt検定を実施して比較した(図24A)。対応のない両側スチューデントt検定を実施して、モックトランスフェクトされた細胞の対照に対して、DPEP-1トランスフェクトされた細胞への70W黒色腫細胞の結合を比較した。示される値は、3つの独立した実験からのものである;アスタリスク(***)は、モックトランスフェクトされた細胞と比較してP<0.001を示す。
DPEP-1トランスフェクトされた細胞からのタンパク質を、オクチル-グルコシド/RIPA溶解緩衝剤を使用して48時間後に単離し、DPEP-1特異的抗体(Proteintech)を使用してウエスタンブロット解析を実施して、DPEP-1発現を評価した(図24B)。膜ジペプチダーゼ活性アッセイおよびD-Pheの蛍光定量的検出を、Heywood and Hooper (1995)によって記載されたとおりに正確に実施した(図24C)。
(実施例16)
トランスフェクトされたHEK293細胞への、LSALTアラニン置換合成ペプチドの結合
公知の生理活性ペプチドの場合、好ましい治療的特性を有するペプチドリガンドの合理的設計が完成され得る。かかるアプローチでは、ペプチド配列を段階的に変化させ、ペプチドの生理活性または予測的な生物物理学的特性(例えば、溶液構造)に対する置換の影響を決定する。本明細書で以下、これらの技術を、「合理的設計」と集合的に呼ぶ。1つのかかる技術では、単一の残基を一度にアラニンで置き換える、一連のペプチドを作製する。この技術は、「アラニンウォーク」または「アラニンスキャン」と一般に呼ばれる。2つの残基(連続するまたは間隔をあけた)が置き換えられる場合、これは、「二重アラニンウォーク」と呼ばれる。得られたアミノ酸置換は、単独でまたは組み合わせて使用されて、好ましい治療的特性を有する新たなペプチド実体を生じ得る。
HEK29細胞を、アッセイの2日前に、DPEP1またはDPEP2でトランスフェクトし、1日前に、コラーゲンコーティングされたカバーガラス上にプレートした。次いで、PBS中3.7%のホルムアルデヒドで10分間固定し、PBS中で3回洗浄し、各々5uMのアラニン置換された試験ペプチドと共に室温で1時間インキュベートし、PBSで穏やかに2回洗浄し、PBS中1/50のAlexa 568-ストレプトアビジン(straptavadin)と共に室温で1時間インキュベートし、PBSで穏やかに2回洗浄し、DAPIを添加し、DAKO Fluorescentマウント培地を用いてマウントし、蛍光顕微鏡下で結合について評価した。
表1:アラニンウォークの結合活性および配列

(実施例17)
LSALTペプチドの円二色性解析
タンパク質治療薬の物理的および化学的特性は、製造、開発および臨床的使用の容易さに影響する重要な因子である。LSALTペプチドを、種々の生物物理学的方法を使用して、その溶解度、凝集状態および安定性に関して評価した。タンパク質の二次構造を、円二色性(CD)分光法によって決定した:水性緩衝剤中でのLSALTの遠UVスペクトルは、α-ヘリックスコンフォメーションに特徴的な、222nmにおける最小値を示す。
CD(円二色性)解析を、LSALTペプチドおよび種々のアナログに対して実施して、ペプチドがアルファ-ヘリックスを形成する傾向を実証した。

特に、1、5、10および12位(これらの変異体は、免疫蛍光によって、DPEP-1への減少および増加した結合を示した)は全て、推定アルファ-ヘリックスLSALTと同じ面上にクラスタリングし、ヘリックスの一方の側上に、連続するクラスターを構成し、これらの残基がDPEP-1と相互作用することの根拠を示す。
円二色性分光法では、222nmにおける楕円率値が、α-ヘリックス含量の尺度である。50%トリフルオロエタノールは、疎水性溶媒であり、構造が誘導され得る場合にはα-ヘリックス構造を誘導する。試験した全てのペプチドが、α-ヘリックス構造を取るように誘導され得る。ペプチドは、穏和な条件(非変性)では、ランダムコイルである。緩衝剤条件は、水性リン酸、pH7.0であった。ネイティブペプチドは、遊離α-アミノ基を有し、この基をビオチンで遮断することは、誘導可能なα-ヘリックス構造のための明らかな利点である(ネイティブ 対 ビオチン-ネイティブの比較)。
同様に、C末端アミド基を有することは、誘導可能なα-ヘリックス構造(ペプチドA16/A17とA18/A19との比較、ここで、%誘導可能なヘリックス構造は、約32% 対 51%である)にとって有利である。A1 対 A2の比較は、Ser残基をAla残基で置換することが、予想されるように、誘導可能なα-ヘリックス構造を有意に増強することを示している(Alaは、Serと比較して、強いヘリックス形成性残基である)(α-ヘリックス傾向スケールについては、J. Peptide Science, 1, 319-329 (1995))。

穏和な緩衝剤(100mM KCl、50mM NaHPO/NaHPO、pH7.0)
(実施例18)
グリシンスペーサーは、DPEP1へのLSALTの結合を増強する
HEK293T細胞を、製造業者のプロトコールに従って、Lipofectamine 2000を介して、ヒトDPEP1を含むpcDNAベクターでトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、ジェネティシン耐性を使用してポジティブ選択し、サブクローニングして、安定にトランスフェクトされたDPEP1クローンを生成した。ヒト腎尿細管上皮細胞(hTEC)を、ヒト腎臓腎摘出術から単離および培養した。免疫細胞化学のために、細胞を、コラーゲンコーティングされたガラスカバーガラス上で培養し、4%パラホルムアルデヒドによって固定した。固定された細胞を、PBS洗浄前に37℃で1時間、種々の改変(グリシンリンカーおよび/またはアミド化)を有するビオチン化されたLSALTペプチド(50μM)と共にインキュベートした。結合したビオチン化されたペプチドを、二次ストレプトアビジン蛍光コンジュゲート(37℃で30分間のインキュベーション)を介して検出し、PBSで洗浄した。図15Aは、グリシンリンカーおよびアミド化改変を有するLSALTの結合を、フローサイトメトリーを介して評価および定量化したことを示している。安定にトランスフェクトされたDPEP1 HEK細胞を再懸濁し、PBS洗浄前に37℃で1時間、ビオチン化されたペプチド(50μM)と共にインキュベートした。結合したビオチン化されたペプチドを、二次ストレプトアビジン蛍光コンジュゲート(37℃で30分間のインキュベーション)を介して検出し、PBSで洗浄した。ペプチド結合を、フローサイトメーターを介して解析した。ペプチド結合のパーセンテージを、陰性対照と比較した(n=3/群)。図15Cは、グリシン連結されたLSALTによる炎症の機能的阻害を、内毒血症誘導性の急性腎臓傷害のモデルにおいて試験したことを示している。LysM(gfp)マウスを、5mg/kgの用量でのリポポリサッカリド(LPS、O111:B4)の静脈内注射を介した内毒血症に供した。腎臓を、注射の4時間後に、多光子顕微鏡を使用してイメージングした。トリ-グリシン連結されたLSALT(G2)を静脈内で使用して、LPS注射の10分前にマウスをあらかじめ処置した。炎症を、単一の顕微鏡視野中の単球接着の手動計数によって定量化した(n=3~6視野/群;:p=0.02)。
(実施例19)
LSALTにおけるアラニン置換は、結合親和性に影響を与える。
図16Aは、LSALTを、各アミノ酸位置においてアラニン置換で改変して、どのアミノ酸残基がDPEP1への結合に影響を与えるかを決定したことを示している。図16Bは、HEK293T細胞を、製造業者のプロトコールに従って、Lipofectamine 2000を介して、ヒトDPEP1を含むpcDNAベクターでトランスフェクトしたことを示している。トランスフェクトされた細胞を、ジェネティシン耐性を使用してポジティブ選択し、サブクローニングして、安定にトランスフェクトされたDPEP1クローンを生成した。安定にトランスフェクトされたDPEP1 HEK細胞を再懸濁し、PBS洗浄前に37℃で1時間、ビオチン化されたペプチド(50μM)と共にインキュベートした。結合したビオチン化されたペプチドを、二次ストレプトアビジン蛍光コンジュゲート(37℃で30分間のインキュベーション)を介して検出し、PBSで洗浄した。ペプチド結合を、フローサイトメーターを介して解析した。ペプチド結合のパーセンテージを、陰性対照と比較した。減少したペプチド結合は、LSALT-DPEP1結合相互作用にとって潜在的に重要なアミノ酸残基を示した。
(実施例21)
血液中の代謝されたLSALT断片は、DPEP1になおも結合できる。
図17Aは、LSALTペプチド(50μg/mL)を、最大で120分までの種々の時点にわたりヒト全血(クエン酸塩またはK2EDTA処置した)中でインキュベートしたことを示している。血漿を各試料について分離し、リン酸を添加して、各時点においてペプチドを安定化した。試料を、LC/MSを使用して、LSALTおよびその代謝物について評価した。LSALT代謝物を、LSALTおよびヒトプロテオームに対するPEAKS Xおよびデータベース検索を使用して識別した。図17Bは、HEK293T細胞を、製造業者のプロトコールに従って、Lipofectamine 2000を介して、ヒトDPEP1を含むpcDNAベクターでトランスフェクトしたことを示している。トランスフェクトされた細胞を、ジェネティシン耐性を使用してポジティブ選択し、サブクローニングして、安定にトランスフェクトされたDPEP1クローンを生成した。安定にトランスフェクトされたDPEP1 HEK細胞を再懸濁し、PBS洗浄前に37℃で1時間、ビオチン化されたLSALT断片ペプチド(50μM)と共にインキュベートした。結合したビオチン化されたペプチドを、二次ストレプトアビジン蛍光コンジュゲート(37℃で30分間のインキュベーション)を介して検出し、PBSで洗浄した。ペプチド結合を、フローサイトメーターを介して解析した。ペプチド結合のパーセンテージを、陰性対照と比較した。図17Cは、LSALT断片による炎症の機能的阻害(図17Aを参照)を、内毒血症誘導性の急性腎臓傷害のモデルにおいて試験したことを示している。LysM(gfp)マウスを、5mg/kgの用量でのリポポリサッカリド(LPS、O111:B4)の静脈内注射を介した内毒血症に供した。腎臓を、注射の4時間後に、多光子顕微鏡を使用してイメージングした。種々のLSALT断片を静脈内で使用して、LPS注射の10分前にマウスをあらかじめ処置した。炎症を、単一の顕微鏡視野中の単球接着の手動計数によって定量化した(LPS 対 断片C;n=3~6視野/群;***:p=0.004)。
図18Aは、改変されたLSALTが、内毒血症誘導性の腎臓炎症を阻害できることを示している。腎臓中の炎症を、尿量枯渇LysM(gfp)マウス中へのLPS(O111:B4、5mg/kg)の静脈内注射によって誘導した。腎臓を、注射の4時間後に、多光子顕微鏡を使用してイメージングした。マウスを、LPS処置の10分前に、レトロインベルソLSALT(RI LSALT)であらかじめ処置した。腎臓を、LPS処置の4時間後に、炎症について評価した。炎症を、単一の視野中の単球接着の手動計数によって定量化した(n=6~10視野/群;**:p=0.0034)。
(実施例22)
新規DPEP-1結合ペプチド
図19Aでは、ヒト組換えDPEP1(Creative Biomart;DPEP1-77H、アミノ6×Hisタグ化)を、アガロースビーズ(Thermo HisPur Ni-NTA Resin;88221 - 15uLのNi-NTA樹脂を15ug DPEP1、30uLの総体積のPBSと混合し、使用前に5%BSA/PBS中で1時間遮断したもの)に連結させ、ファージディスプレイされたペプチド配列についてバイオパニングするために使用した(New England Biolabs Ph.D.-12 Phage Display Library;E8110S)。Ph.D.-12ライブラリーを、アガロースビーズに連結したDPEP2(Creative Biomart;DPEP2-8611H)に対して最初に3回サブトラクトし(100uLのLuriaブロス中10uLのDPEP-アガロース、および4.5×10pfuのPh.D.-12ライブラリー)、上清中に残存するファージを保持し、サブトラクションビーズに付着したファージを廃棄した。第2に、ライブラリーを、DPEP1-アガロースビーズに対して選択し、上清中に残存するファージを廃棄し、DPEP1-アガロースペレットに結合するファージを保持した。ペレットをPBS中で3回洗浄し、次いで、ファージ宿主細菌培養物(ER 2738)に移して、結合したファージを増幅し、これを次いで、製造業者のプロトコールに従って沈殿させた。次いで、回収したファージを使用して、サブトラクションおよび選択のステップを反復した。選択された最終ライブラリーを、細菌菌叢上にプレートして、個々の青色のプラークの選択を可能にした;各プラークは、個々のファージ粒子からのクローン性増幅から形成され、したがって、単一の独自のディスプレイされたペプチドを含む。各プラークを、液体細菌宿主培養物中で別々に増幅した。各クローン性培養物からのDNAを、Omega Bio-tek E.Z.N.A.M13 DNA Mini Kitを使用して回収し、ディスプレイされたペプチドに対応する挿入物を含む領域の配列決定に送った。DNA挿入物を、予想されるタンパク質に翻訳し、選別して、反復配列の数を評価した。特異的に見えるものを、NIH
BLASTデータベース上で検索して、可能なマッチする同一性を見出したところ、表面タンパク質が優先的に選択された。
図19Bでは、Cos1細胞を、コラーゲンコーティングされた(PureCol;ウシの腱由来のI型コラーゲン)カバーガラス上にプレートする24時間前に、ヒトDPEP1またはDPEP2に対応するプラスミドで一過的にトランスフェクトした(Lipofectamine 2000)。1日後、細胞を、10pfuの試験ファージと共にインキュベートし、これを次いで、抗ウサギAlexa 568二次と共に抗M13ウサギ血清(社内)によって検出した。固定し、DAPIを用いて対比染色した後、カバーガラスを蛍光イメージングした。ネオゲニンに対応すると暫定的に識別されたファージペプチドは、最良の結合を有したので、その対応するペプチド挿入物を、合成的に作製した。
図19Cは、ネオゲニン模倣性ペプチドの阻害が好中球接着DPEP1を防止することを実証している。上のパネルでは、96ウェルのニッケルコーティングされたプレートを、何でもコーティングせずまたはhisタグ化組換えヒトDPEP1(PBS中9pmol/ウェル、室温で1時間インキュベートした)でコーティングし、PBS+0.05%Tween(登録商標) 20で3回洗浄し、細胞培養培地(Cell Applications Inc.カタログ番号111-500)を用いて室温で1時間遮断した。新たに単離したヒト好中球を、0.45uMの示されたペプチドと共に、5×10/mL、100uL体積でウェルに添加した。37℃で30分間の後、ウェルをPBSで3回洗浄し、PBS中3.7%のホルムアルデヒドで固定した。2つの視野を、4×の倍率で撮影し、計数された全ての細胞を、三連で実施した各ウェルについて記録した。中央のパネルでは、Cos1細胞を、2日前に、空のベクター(モック)または野生型ヒトDPEP1をコードするベクターでトランスフェクトした。1日前に、トランスフェクトされた細胞を、24ウェルプレート中に、ほぼコンフルエンシーでプレートした。実験当日に、新たに単離したヒト好中球を、100uMの示されたペプチドと共に、1×10/mL、0.5mL体積でウェルに添加した。37℃で30分間の後、ウェルを、培養培地で3回洗浄し、次いで、PBS中3.7%のホルムアルデヒドで固定した。5つの視野を、20×の倍率で撮影し、三連で実施した各ウェルについて平均した。下のパネルでは、2日前に、24ウェルプレートを、Attachment Factor Solution(Cell Applications Inc.カタログ番号123-500)でコーティングした。1日前に、Human Lung Microvascular Endothelial Cell(HLMVEC、Cell Applications Inc.カタログ番号540-05a)を、ほぼコンフルエンシーでプレートした。実験当日に、HLMVECを4時間、何でも刺激せず、または1ug/mLのLPSで刺激した。新たに単離したヒト好中球を、100uMの示されたペプチドと共に、または13ug/mLのネオゲニン遮断抗体(RnDカタログ番号AF1079)と共に、1×10/mL、0.5mL体積でウェルに添加した。37℃で30分間の後、ウェルを、培養培地で3回洗浄し、次いで、PBS中3.7%のホルムアルデヒドで固定した。5つの視野を、20×の倍率で撮影し、三連で実施した各ウェルについて平均した。グラフにした各ドットは、3つの技術的複製の平均と等しい。
(実施例23)
LSALTに結合する配列の識別
図20Aは、LSALTペプチドに対するファージディスプレイバイオパニングからのペプチド配列を示している。合成LSALTペプチドを、製造業者の使用説明書に従って、NHS Activated Agarose(Thermoカタログ番号26196)に共有結合させた。50uLのLSALT-Agaroseを、2.25×1010pfuのPh.D.-12ファージライブラリーと共に1mLのPBSに添加し、ローテーター上で4℃で1時間インキュベートした。アガロースビーズをPBSで3回洗浄し、結合したファージを、細菌宿主との一晩培養によって回収し、LSALT-Agaroseに対するさらに2回のラウンドの選択に供した。選択された最終ライブラリーを、細菌菌叢上にプレートして、個々の青色のプラークの選択を可能にした;各プラークは、個々のファージ粒子からのクローン性増幅から形成され、したがって、単一の独自のディスプレイされたペプチドを含む。各プラークを、液体細菌宿主培養物中で別々に増幅した。各クローン性培養物からのDNAを、Omega Bio-tek E.Z.N.A.M13
DNA Mini Kitを使用して回収し、ディスプレイされたペプチドに対応する挿入物を含む領域の配列決定に送った。DNA挿入物を、予想されるタンパク質に翻訳し、選別して、反復配列の数を評価した。モチーフIPKXPXXXPを含む2つのペプチドを識別した。IPKファージヒットのうち1つ(HIPKSPIQIPII)は、LPS刺激されたヒト内皮細胞において好中球接着を阻害することができた(図20C)。IPKモチーフは、DPEP1と相互作用する好中球側受容体を提示し得る。
図20Bは、NIHデータベースから得たヒトDPEP1、DPEP2およびDPEP3のタンパク質配列のアラインメント比較を示している。コードするエクソンが示され、IPK配列は、DPEP1のエクソン2のみにおいて見出された。IPKがLSALTペプチドに対するファージバイオパニングにおいて見出されたことを考慮すると、これは、LSALTが、DPEP1のエクソン2に少なくとも優先的に結合することを示唆している。
図20Cは、IPKペプチドが、LPS活性化された内皮細胞への好中球接着を阻害することを示している。実験の2日前に、24ウェルプレートを、Attachment Factor Solution(Cell Applications Inc.カタログ番号123-500)でコーティングした。1日前に、Human Lung Microvascular Endothelial Cell(HLMVEC、Cell
Applications Inc.カタログ番号540-05a)を、ほぼコンフルエンシーでプレートした。実験当日に、HLMVECを4時間、何でも刺激せず、または1ug/mLのLPSで刺激した。新たに単離したヒト好中球を、100uMの示されたペプチドと共に、1×10/mL、0.5mL体積でウェルに添加した。37℃で30分間の後、ウェルを、培養培地で3回洗浄し、次いで、PBS中3.7%のホルムアルデヒドで固定した。5つの視野を、20×の倍率で撮影し、三連で実施した各ウェルについて平均した。グラフにした各ドットは、3つの技術的複製の平均と等しい。
(実施例24)
転移性がん細胞は、DPEP1発現COS1単層にin vitroで結合する
LSALTは、DPEP1発現COS1単層への転移性がん細胞の結合をin vitroで減少させる。図21Aは、COS1(対照)、DPEP1、DPEP2またはDPEP3トランスフェクトされたCOS1細胞に結合するヒト黒色腫70Wの定量化を示している。図21B~Cは、LSALT(50μM)の非存在下または存在下での、COS1(対照)またはDPEP1 COS1に結合するマウス黒色腫B16-F10(B)またはマウス乳房がんE0771.LMB(C)細胞の定量化を示している。
(実施例25)
LSALTは、活性化された肺内皮細胞への転移性がん細胞の結合を減少させる
LSALTは、TNFαおよびIL1βによって活性化されたヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)への転移性がん細胞の結合を減少させる。図22Aは、LSALTまたはスクランブルしたペプチドの存在下および非存在下での、HLMVECへのB16-F10細胞(マウス黒色腫)結合を示している。図22Bは、LSALTまたはスクランブルしたペプチド(50μM)の存在下および非存在下での、HLMVECへのTao-1細胞(マウス肉腫)結合を示している。
(実施例26)
LSALTは、転移性がん細胞を注射した動物の肝臓および肺において腫瘍負荷を低減させる。
マウスにおける転移モデルを、Mohanty et al.に記載されるように実施した。図23Aは、対照またはLSALTペプチド(1mM)の存在下での、4T1マウス乳房がん細胞を注射した動物における肝臓転移性病変の数を示している。図23Bは、対照またはLSALTペプチドの存在下での、ルシフェラーゼ発現70Wヒト黒色腫細胞を注射した動物の生物発光イメージングを示している。図23Cは、70W処置した動物におけるルシフェラーゼ活性の定量化を示している。図23Dは、対照またはLSALTペプチド(1mM)の存在下での、ルシフェラーゼ発現143Bヒト骨肉腫細胞を注射した動物の生物発光イメージングを示している。図23Eは、143B処置した動物におけるルシフェラーゼ活性の定量化を示している。図23Fは、対照またはLSALTペプチド(1mM)の存在下での、B16-F10マウス黒色腫細胞を注射した動物からの肺試料の代表的なH&Eイメージを示している。図23Gは、図23F中の動物の肺中に存在する転移性病変の定量化を示している。図23Hは、対照またはLSALTペプチド(1mM)の存在下での、E0771.LMBマウス乳房がん細胞を注射した動物からの肺試料の代表的なH&Eイメージを示している。図23Iは、図23H中の動物の肺中の腫瘍面積の定量化を示している。
種々の変化および改変が、本発明から逸脱することなしにどのようになされ得るかは、理解されるであろう。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)LSALTを含むアミノ酸配列および(b)N末端に、少なくとも1つの追加のグリシン残基を含む単離されたDPEP-1結合ペプチド。
(項目2)
(a)の前記アミノ酸配列が、LSALTPSPSWLKYKAL(配列番号1)である、項目1に記載の単離されたDPEP-1結合ペプチド。
(項目3)
配列番号2、配列番号3および配列番号4からなる群から選択される、項目1に記載の単離されたDPEP-1結合ペプチド。
(項目4)
PEG化、アセチル化、グリコシル化、ビオチン化、プレニル化または環化によって改変されている、項目1に記載の単離されたDPEP-1結合ペプチド。
(項目5)
D-アミノ酸、改変されたアミノ酸、アミノ酸アナログまたはそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸を含む、項目1に記載の単離されたDPEP-1結合ペプチド。
(項目6)
改変されたアミノ酸が、メチル化、アミド化、アセチル化、および/または他の化学基による置換からなる群から選択される改変を含む、項目1に記載の単離されたDPEP-1結合ペプチド。
(項目7)
項目1に記載の単離されたDPEP-1結合ペプチドおよび少なくとも1つの医薬担体を含む医薬組成物。
(項目8)
必要なヒト対象において障害を処置または予防する方法であって、有効量の項目1に記載の単離されたDPEP-1結合ペプチドを前記対象に投与するステップを含む、方法。(項目9)
前記障害が、急性腎臓傷害、敗血症および腫瘍転移からなる群から選択される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記障害が、炎症および虚血-再灌流傷害からなる群から選択される、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記虚血-再灌流傷害が、移植のためのドナー臓器を摘出することと関連する、項目10に記載の方法。
(項目12)
配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8から選択される配列を含む単離されたペプチド。
(項目13)
前記配列が、配列番号5または^から選択され、前記ペプチドが、DPEP-1に結合する、項目12に記載の単離されたペプチド。
(項目14)
前記配列が、配列番号7または配列番号8から選択され、前記ペプチドが、DPEP-1への結合を阻害する、項目12に記載の単離されたペプチド。
(項目15)
N末端に、少なくとも1、2、3、4または5個のアミノ酸残基をさらに含む、項目12に記載の単離されたペプチド。
(項目16)
D-アミノ酸、改変されたアミノ酸、アミノ酸アナログまたはそれらの組合せからなる
群から選択される1つまたは複数のアミノ酸を含む、項目12に記載の単離されたペプチド。
(項目17)
改変されたアミノ酸が、メチル化、アミド化、アセチル化からなる群から選択される改変を含む、項目15に記載の単離されたペプチド。
(項目18)
項目12に記載の単離されたペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
(項目19)
必要な対象において疾患または障害を処置する方法であって、有効量の項目12に記載の単離されたペプチドを前記対象に投与するステップを含む、方法。
(項目20)
前記疾患または障害が、急性腎臓傷害、敗血症および腫瘍転移からなる群から選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記障害が、炎症および虚血-再灌流傷害からなる群から選択される、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記虚血-再灌流傷害が、移植のためのドナー臓器を摘出することと関連する、項目21に記載の方法。

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  1. 明細書に記載の発明。
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