JP2024028003A - 管状体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 管状体の製造方法等を提供する。【解決手段】 管状体の製造方法であって、繊維2と樹脂3とを含む少なくとも1枚のプリプレグシートから、略管状の1次加工部材11を得る第1工程と、1次加工部材11の複数を積層してプリプレグ積層体を得る第2工程と、プリプレグ積層体を加熱成形することにより管状体を得る第3工程とを含む。1次加工部材11は、略管状の軸心方向に沿って延びる第1エッジ11a及び第2エッジ11bを備える。第1エッジ11a及び第2エッジ11bがそれぞれ自由端とされている。【選択図】 図5
Description
本発明は、管状体の製造方法等に関する。
近年、比強度の高い繊維強化樹脂製の管状体は、例えば、ゴルフクラブシャフト、ラケット、釣り竿、自転車フレーム等に採用されている。この種の管状体を製造する方法としては、例えば、ラッピング法及び内圧法がある(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
ラッピング法では、まず、鉄製のマンドレルに繊維強化樹脂のプリプレグシートが所望の層数で巻き付けられて管状の積層体が形成される。次に、管状の積層体の上に、張力を掛けながら樹脂製のラッピングテープが螺旋状に巻きつけられ、その後、硬化炉で加熱成形される。これにより、プリプレグシートの樹脂材料が硬化した繊維強化樹脂製の管状体が製造される。
一方、内圧法では、まず、耐熱性の樹脂製チューブの外周面の側にプリプレグシートが所望の層数で巻き付けられて管状の積層体が形成される。次に、前記積層体が前記チューブと一緒に、金型内に配置される。そして、金型を加熱するとともに、前記チューブを膨張させることにより、前記積層体を前記金型の成形面へと押し付けて加熱成形される。その後、成形物を冷却することで、繊維強化樹脂製の管状体が製造される。
近年、管状体のさらなる軽量化を図るために、樹脂の含浸量を減らしたプリプレグシートが種々実用化されている。しかしながら、この種のプリプレグシートは、通常、タック性が著しく低いことから、マンドレルやチューブの上に筒状の積層体を成形することが困難である。
また、熱可塑性樹脂を用いたプリプレグシートは、タック性が低いことに加え、室温において高い曲げ剛性を有する。このため、この種のプリプレグシートは、マンドレルやチューブに沿って巻きつけるための適度な柔軟性(以下、「ドレープ性」ともいう。)を欠く。したがって、熱可塑性樹脂を用いたプリプレグシートも、筒状の積層体を成形することが困難である。
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、タック性及び/又はドレープ性が低いプリプレグシートを用いた場合でも、容易に筒状の積層物を成形して管状体を製造することができる、管状体の製造方法を提供することを主たる目的としている。
本発明は、管状体の製造方法であって、繊維と樹脂とを含む少なくとも1枚のプリプレグシートから、略管状の1次加工部材を得る第1工程と、前記1次加工部材の複数を積層してプリプレグ積層体を得る第2工程と、前記プリプレグ積層体を加熱成形することにより管状体を得る第3工程とを含み、前記1次加工部材は、略管状の軸心方向に延びる第1エッジ及び第2エッジを備え、前記第1エッジ及び前記第2エッジがそれぞれ自由端とされている、管状体の製造方法である。
本発明の管状体の製造方法では、上記の工程を採用することにより、タック性及び/又はドレープ性が低いプリプレグシートを用いた場合でも、容易に筒状の積層物を成形して管状体を製造することができる。
以下、本発明のいくつかの実施形態が説明される。以下に開示される代表的な実施形態は、いかなる方法においても本発明を限定することを意図するものではない。また、以下の実施形態は、単独で又は様々な組み合わせで使用することができる。さらに、以下の実施形態において、同一又は共通する要素については、同じ参照符号が付されており、重複する説明が省略されている。
図1は、本実施形態の製造方法によって得られた繊維強化樹脂製の管状体1の正面図である。図2は、そのII-II線断面図である。本発明で製造される管状体1は、例えば、ゴルフクラブシャフト、ラケット、釣り竿、自転車フレーム、各種構造用管等の様々な用途に適用可能である。
図1及び2に示されるように、管状体1は、繊維2と、硬化した樹脂3との複合体である。本実施形態の管状体1は、例えば、円管状に形成されている。管状体1は、円管状に限定されるものではなく、多角形状の管であっても良い。
図3は、本実施形態の管状体1の製造方法の具体的な手順を示すフローチャートである。本実施形態において、管状体1の製造方法は、第1工程S1、第2工程S2、及び、第3工程S3を含む。
[第1工程]
本実施形態において、第1工程S1は、図4に示されるような少なくとも1枚のプリプレグシート10から、図5又は図6に示されるような略管状の1次加工部材11を得る工程である。
本実施形態において、第1工程S1は、図4に示されるような少なくとも1枚のプリプレグシート10から、図5又は図6に示されるような略管状の1次加工部材11を得る工程である。
プリプレグシート10は、繊維2と、未硬化の樹脂3とを複合させたシート状の中間材料である。
繊維2としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維(ボロン、チタン、タングステン、ステンレス等)、アラミド繊維等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられても良い。本実施形態の繊維2は、実質的に一方向に配向されている。他の形態では、繊維2は、織成されたものでも良い。
樹脂3としては、例えば、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられても良い。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いられても良い。
本実施形態のプリプレグシート10は、熱可塑性樹脂が用いられている。この種のプリプレグシート10は、通常、室温(25℃)でのタック性及びドレープ性が低い傾向があり、本発明の製造方法に適する。ただし、本発明は、熱硬化性樹脂を用いたプリプレグシート10を用いて行われても良い。このようなプリプレグも、樹脂含有率が低くなるにつれ、タック性が著しく低下するからである。
図5は、本実施形態の1つの例の1次加工部材11の斜視図である。1次加工部材11は、プリプレグシート10を、略管状に成形することで得られる。1次加工部材11は、室温において、図5に示したような形状を保持する。
1次加工部材11は、軸心方向CLに延びる第1エッジ11a及び第2エッジ11bを備える。これらの第1エッジ11a及び第2エッジ11bは、1次加工部材11の円周方向の端縁を画定する。第1エッジ11a及び第2エッジ11bは、それぞれ自由端とされている。したがって、1次加工部材11は、全体としては管状にカールしているが、周方向に完全に閉じた管ではない。本明細書及び特許請求の範囲において、「略管状」とは、このような1次加工部材11の形状を表現する用語として理解される。
図5に示される1次加工部材11は、第1エッジ11aから第2エッジ11bまでの円周方向の角度が360度を超える略円管状の第1の1次加工部材11Aとされている。このような第1の1次加工部材11Aは、第1エッジ11a側の端部と、第2エッジ11b側の端部とが1次加工部材11の径方向で重なるラップ部11cを備える。
また、図6に示されるように、1次加工部材11は、第1エッジ11aから第2エッジ11bまでの円周方向の角度が360度未満である略円管状の第2の1次加工部材11Bを含んでも良い。このような第2の1次加工部材11Bは、第1エッジ11aと、第2エッジ11bとの間に円周方向の隙間であるギャップ部11dを備える。第2の1次加工部材11Bにおいて、第1エッジ11aから第2エッジ11bまでの円周方向の角度は、例えば180度よりも大きく、好ましくは225度以上、より好ましくは270度以上とされる。
次に、上述のような1次加工部材11を得るための第1工程S1の具体的な手順の一例が図7に基づき説明される。図7は、第1工程S1の具体的な手順を示すフローチャートである。
図7に示されるように、第1工程S1では、少なくとも1回の1次加工工程S100が行われる。1次加工工程S100は、工程S11~S13を含む。
1次加工工程S100の工程S11では、図8(A)に示されるように、型21の中にプリプレグシート10が配置される。
本実施形態において、型21は、円弧状に湾曲した成形面20を有する。本実施形態の型21は、成形面20が円筒形である管形状を備える。曲率半径(内径)R1は、型21の軸心方向に一定とされている。ただし、型21の形状は、上記のような管形状に限定されるものではない。
図8(A)は、型21の軸心方向と直交する断面を示している。図8(A)の断面において、プリプレグシート10の幅W(すなわち、型21の径方向の長さ)は、型21への挿入時、プリプレグシート10に過度に曲げが生じないような大きさに適宜調整され得る。好ましい例では、プリプレグシート10の幅Wは、例えば、型21の内径Dの90%~110%以下程度が望ましい。
次に、本実施形態の第1工程S1の工程S12では、型21とともに、プリプレグシート10が加熱される。これにより、プリプレグシート10は、軟化し、型21の成形面20に沿うように変形する。この工程S12では、プリプレグシート10のマンドレル等への巻き付け性を向上させるために、プリプレグシート10を予め湾曲させることが意図されている。したがって、この工程S12では、プリプレグシート10を最終製品形状に変形、硬化させることは意図されていない。
工程S12でのプリプレグシート10の加熱温度は、プリプレグシート10が軟化して湾曲可能になる温度範囲で適宜定めれば良く、例えば、その範囲の中でより低い温度とされる。プリプレグシート10の樹脂3が熱可塑性の場合、工程S12での加熱温度は、前記樹脂3の融点よりも低い温度とされても良い。また、プリプレグシート10の樹脂3が熱硬化性の場合、工程S12での加熱温度は、樹脂3の重合反応温度よりも低い温度とされる。いずれの場合でも、加熱時間は、例えば、3~10分であり、3~5分程度がより望ましい。
図8(B)は、工程S12を経たプリプレグシート10の状態が示される。プリプレグシート10は、加熱されることで軟化し、成形面20に沿うように円弧状に湾曲する。このような変形は、例えば、プリプレグシート10の自重を利用して行われる。他の例では、軟化したプリプレグシート10の変形を促進させるために、プリプレグシート10が治具等を用いて、成形面20に押圧されても良い。
次に、本実施形態の第1工程S1の工程S13では、変形したプリプレグシート10が冷却し、その後、型21から取り出される。プリプレグシート10の冷却温度は、プリプレグシート10が、外力が作用しない自由状態において、成形面20に沿った湾曲形状を自ら保持できる程度に樹脂3が硬化する温度とされる。したがって、型21から取り出されたプリプレグシート10は、自由状態において、成形面20に沿ってカールした形状を保持する。
以上の3つの工程S11、S12及びS13が、1次加工工程S100の詳細である。1次加工工程S100は、1回のみ行われても良いし、複数回繰り返されても良い。後者の場合、1次加工工程S100は、図9及び図10に示されるように、型21の成形面20の曲率半径をR2、R3というように徐々に小さくしながら、複数回繰り返されるのが望ましい(工程S14)。
型21の曲率半径をR1、R2、R3…と、徐々に小さくする場合、次工程の型21の曲率半径は、その直前の工程で使用された型21の曲率半径の80%以上であることが望ましい。型21の曲率半径を急激に小さくすると、プリプレグシート10を型21に挿入する際などに、プリプレグシート10に大きな曲げ変形が生じ、繊維2の折れ等が生じるおそれがある。
図11及び図12は、第1工程S1で得られた様々な1次加工部材11の断面形状を模式的に示す。図11は、様々な曲率半径でカールした第1の1次加工部材11Aを示し、図12は、第2の1次加工部材11Bを示す。なお、第1の1次加工部材11Aを成形する場合、プリプレグシート10は、その表面を、フッ素樹脂等からなる離型シートや離型剤で覆った後、型21に配置されるのが望ましい。これは、ラップ部11cにおいて、第1エッジ11aと第2エッジ11bとが互いに固着するのを防止するのに役立つ。
[第2工程]
図3に戻ると、本実施形態の製造方法は、第1工程S1の後、第2工程S2が行われる。第2工程S2は、図13に模式的に示されるように、1次加工部材11の複数を積層してプリプレグ積層体30を得る。本実施形態の第2工程S2では、芯材40の外側に、1次加工部材11の複数(この例では6個)が積層される。芯材40は、例えば、膨張可能であれば良く、本実施形態では耐熱性の樹脂製チューブが用いられる。なお、図13では、1次加工部材11の第1エッジ11a及び第2エッジ11bの位置を理解しやすくするために、黒丸印が付されている。
図3に戻ると、本実施形態の製造方法は、第1工程S1の後、第2工程S2が行われる。第2工程S2は、図13に模式的に示されるように、1次加工部材11の複数を積層してプリプレグ積層体30を得る。本実施形態の第2工程S2では、芯材40の外側に、1次加工部材11の複数(この例では6個)が積層される。芯材40は、例えば、膨張可能であれば良く、本実施形態では耐熱性の樹脂製チューブが用いられる。なお、図13では、1次加工部材11の第1エッジ11a及び第2エッジ11bの位置を理解しやすくするために、黒丸印が付されている。
1次加工部材11は、第1工程S1において、予め略管状に成形されているため、タック性やドレープ性が低くても、芯材40に巻きつけて積層することが可能である。また、1次加工部材11は、第1エッジ11a及び第2エッジ11bが自由端とされているため、ラップ部11c及び/又はギャップ部11dの長さを変えることで巻径を種々変化させることができる。したがって、1次加工部材11は、容易に、芯材40の径に沿うように積層することが可能である。さらに、1次加工部材11を用いることにより、第2工程S2は、例えば、室温環境下で行うことが可能である。
好ましい態様では、第2工程S2において、複数の1次加工部材11の第1エッジ11a及び第2エッジ11bは、円周方向において互いに異なる位置となるようにプリプレグ積層体30を形成する。これにより、複数の1次加工部材11のラップ部11c(又はギャップ部11d)が、円周方向に分散して配置され、ひいては、円周方向において繊維2及び樹脂3の分布が均一化される点で好ましい。
[第3工程]
次に、本実施形態の製造方法では、第2工程S2の後に、第3工程S3が行われる。第3工程S3は、プリプレグ積層体30を加熱成形することにより、最終的に樹脂3を硬化させて管状体1を得る。
次に、本実施形態の製造方法では、第2工程S2の後に、第3工程S3が行われる。第3工程S3は、プリプレグ積層体30を加熱成形することにより、最終的に樹脂3を硬化させて管状体1を得る。
図14に示されるように、第3工程S3は、例えば、内圧法で行うことができる。具体的には、第3工程S3では、まず、プリプレグ積層体30が、芯材40とともに金型50のキャビティ内に配置される。金型50は、例えば、分離可能な上型50Aと下型50Bとを含む。キャビティは、上型50A及び下型50Bの成形面50iで画定されている。
次に、金型50が加熱される。また、芯材40(チューブ)に高圧流体が供給される。これにより、芯材40が膨張し、プリプレグ積層体30の内部側が加圧される。熱と内側からの圧力とを受けたプリプレグ積層体30は、径方向に拡張し、金型50の成形面50iに押圧される。プリプレグ積層体30の各1次加工部材11は、第1エッジ11a及び第2エッジ11bが自由端とされているから、円周方向に僅かに滑りながら径方向へ容易に拡張できる。芯材40は、必ずしもチューブである必要はなく、各種の機械的な治具などを用いて、プリプレグ積層体30の内部側が加圧されても良い。
第3工程S3では、プリプレグ積層体30を最終形状へと成形することが意図されている。このため、第3工程S3での加熱成形の温度及び時間は、それぞれ、1次加工部材11の樹脂3を可塑化し、かつ、所定の形状へと成形できる温度及び時間とされる。したがって、例えば、1次加工部材11の樹脂3が熱可塑性である場合、1次加工部材11は、その樹脂3の融点以上の温度にまで加熱される。これにより、樹脂3が流動化する。また、そのような状態で、プリプレグ積層体30は内部側から加圧されることで、1次加工部材11間の空気が外部へと排出され、1次加工部材11同士が互いに密着しながら、所望の形状に変化する。なお、プリプレグシート10の樹脂3が熱硬化性である場合、プリプレグシート10は、その樹脂3の重合反応温度以上に加熱される。これにより、樹脂3に硬化反応が生じる。
本実施形態では、プリプレグシート10の樹脂3が熱可塑性であるため、第3工程S3での加熱成形が終わると、冷却工程が行われる。冷却工程では、成形物を、例えば、室温まで冷却させる。
以上の工程を経て、複数の1次加工部材11の積層体の硬化物である管状体1が成形される。その後、上型50A及び下型50Bを開いて、管状体1が金型50のキャビティから取り出される。
以上のように、本実施形態の管状体1の製造方法では、タック性及び/又はドレープ性が低いプリプレグシートを用いた場合であっても、容易に円筒状の積層物を成形し、ひいては管状体を製造することができる。
[プリプレグシートの変形例]
図15及び図16は、第1工程S1の他の例を示す。図15に示されるように、この例では、1次加工部材11を得るための少なくとも1枚のプリプレグシートが、複数のプリプレグシートを重ねた積層プリプレグシートからなる。好ましい例では、複数のプリプレグシートは、繊維2の配向角度が互いに異なる複数枚のプリプレグシート10A及び10Bが用いられる。例えば、プリプレグシート10Aは、軸心方向CLに対して、第1の角度を有する繊維2を有し、プリプレグシート10Bは、軸心方向CLに対して、前記第1の角度とは異なる第2の角度を有する繊維2を有する。これらの角度の差は、例えば90°が望ましい。
図15及び図16は、第1工程S1の他の例を示す。図15に示されるように、この例では、1次加工部材11を得るための少なくとも1枚のプリプレグシートが、複数のプリプレグシートを重ねた積層プリプレグシートからなる。好ましい例では、複数のプリプレグシートは、繊維2の配向角度が互いに異なる複数枚のプリプレグシート10A及び10Bが用いられる。例えば、プリプレグシート10Aは、軸心方向CLに対して、第1の角度を有する繊維2を有し、プリプレグシート10Bは、軸心方向CLに対して、前記第1の角度とは異なる第2の角度を有する繊維2を有する。これらの角度の差は、例えば90°が望ましい。
また、この例では、フッ素樹脂等からなる離型シート60の上にプリプレグシート10A及び10Bが順次重ねられ、その後、図16に示されるように、プリプレグシート10A及び10Bの両者が離型シート60で被覆される。
繊維強化樹脂性の管状体1は、通常、複数枚のプリプレグシートが積層されて製造される。したがって、複数のプリプレグシート10A、10Bを予め重ねて一体化された1つの1次加工部材11として成形することにより、管状体1の生産性が向上する。
また、繊維2が軸心方向CLに対して傾斜しているプリプレグシートは、曲げ剛性に関して異方性を有することから、第1工程S1中の工程S12において、プリプレグシート10が意図しない方向に湾曲するおそれがある。この例のように、繊維2の配向角度が互いに異なる複数枚のプリプレグシート10A及び10Bを重ねて成形することで、プリプレグシートの異方性が緩和され、能率よく目的とする形状に湾曲した1次加工部材11を得るのに役立つ点で望ましい。
[1次加工部材の成形用型の変形例]
図17は、第1工程S1で用いられる型の他の例を示す斜視図である。上で説明された実施形態では、図8ないし11に示したように、成形面20の曲率半径が異なる複数種類の型21が用いられた。このような方法に変えて、図17に示されるような型21Aが用いられても良い。
図17は、第1工程S1で用いられる型の他の例を示す斜視図である。上で説明された実施形態では、図8ないし11に示したように、成形面20の曲率半径が異なる複数種類の型21が用いられた。このような方法に変えて、図17に示されるような型21Aが用いられても良い。
この型21Aは、成形面20の曲率半径が軸心方向の一方側に向かって漸減する第1部分211を含む。また、型21Aは、例えば、第1部分211と、成形面20の曲率半径が軸心方向に一定である第2部分212とを含んでも良い。第2部分212は、第1部分211の小径側に接続されており、それぞれの成形面20は型21Aの内部で軸心方向に連続している。
この型21Aを用いて1次加工部材11を成形する場合、まず、第1部分211の軸心方向の長さと同程度かそれよりも短いプリプレグシート10が準備されて、第1部分211に配置される。第1部分211でプリプレグシート10は加熱され、また軟化することで、第1部分211の成形面20に沿って成形される(テーパー状の略管状)。次に、この成形されたプリプレグシート10を第2部分212に徐々に移動させて、冷却することで、一つの型で、プリプレグシート10を実質的に一定かつ小さい外径に湾曲させることができる。
なお、図17に示した型21Aは、第2部分212を有するものが示されたが、型21Aは、第1部分211だけで形成されても良い。この場合、テーパー状の1次加工部材11が成形され得る。
以上、本発明のいくつかの実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。また、本発明は、その均等物を含む。
次に、本発明のより具体的、かつ、非限定的な実施例が説明される。
まず、表1の仕様に基づいて12枚のプリプレグシートs1~s12が準備された。
まず、表1の仕様に基づいて12枚のプリプレグシートs1~s12が準備された。
この例では、プリプレグシートは、炭素繊維を未硬化の熱可塑性樹脂(フェノキシ樹脂)に含浸させたものである。このプリプレグシートは、室温において、タック性がなく、かつ、円弧状に湾曲させることができない低ドレープ性を有する。プリプレグシートの寸法は、幅約50mm×軸心方向の長さ約400mmの矩形状とされた。表1において、炭素繊維の配向角度は、管状体の軸心方向に対する角度を示す。
次に、表1において、隣接する2枚のプリプレグシート(例えば、s1及びs2のセット)をそれぞれ重ねた後、離型シートで被覆した積層プリプレグシートが準備された。
次に、積層プリプレグシートが内径55mmの管形状の型内に挿入され、200℃で3分間加熱された。この加熱により、積層プリプレグシートは軟化し、自重により型の成形面に沿うように変形した。その後、積層プリプレグシートを室温まで冷却させた。冷却後、型から積層プリプレグシートを取り出したところ、積層プリプレグシートは、自由状態において、湾曲した形状を保持していた。
次に、湾曲した積層プリプレグシートは、内径45mmの管形状の型内に挿入され、再び、200℃で3分間加熱された。この加熱により、積層プリプレグシートは再び軟化し、自重により型の成形面に沿うように変形した。その後、積層プリプレグシートは室温まで冷却された。冷却後、型から積層プリプレグシートを取り出したところ、積層プリプレグシートは、自由状態において、湾曲した形状を保持していた。
以上の工程が、型の内径を38mm、32mm、28mm、25mm、22mm、20mm、18mm及び16mmと徐々に小さくしながら繰り返された。これにより、2枚のプリプレグシートs1及びs2が一体化した第1の1次加工部材が得られた。また、上記と同様の工程が、全ての積層プリプレグシートのセットs3+s4、s5+s6、s7+s8、s9+s10、s11+s12についても行われた。これにより、合計6つの1次加工部材が得られた。
次に、6つの1次加工部材全てをPFA性のチューブの外側に装着して、プリプレグ積層体を得た。この際、それぞれの1次加工部材のラップ部が、円周方向で互いに異なる位置になるように装着された。
次に、プリプレグ積層体が、チューブとともに金型内に配置され、260℃で30分間加熱された。金型の内径は、15.75mmであった。また、チューブを膨張させ、プリプレグ積層体の外表面を金型の成形面に押し付けた。30分間の加熱後、プリプレグ積層体を室温まで冷却し、金型から管状体が取り出された。
図18は、製造された管状体の横断面を示す。図18から明らかなように、本実施例の管状体の製造方法によれば、タック性及び/又はドレープ性が低いプリプレグシートを用いつつ、容易に円筒状の積層物を成形でき、かつ、内部にボイド等がない管状体を製造することができた。
[付記]
本発明は、以下の態様を含む。
[本発明1]
管状体の製造方法であって、
繊維と樹脂とを含む少なくとも1枚のプリプレグシートから、略管状の1次加工部材を得る第1工程と、
前記1次加工部材の複数を積層してプリプレグ積層体を得る第2工程と、
前記プリプレグ積層体を加熱成形することにより管状体を得る第3工程とを含み、
前記1次加工部材は、略管状の軸心方向に延びる第1エッジ及び第2エッジを備え、
前記第1エッジ及び前記第2エッジがそれぞれ自由端とされている、
管状体の製造方法。
[本発明2]
前記樹脂は、熱可塑性樹脂である、本発明1に記載の管状体の製造方法。
[本発明3]
前記1次加工部材は、略円管状であり、
前記1次加工部材は、前記第1エッジから前記第2エッジまでの円周方向の角度が360度を超える第1の1次加工部材を含む、本発明1又は2に記載の管状体の製造方法。
[本発明4]
前記1次加工部材は、略円管状であり、
前記1次加工部材は、前記第1エッジから前記第2エッジまでの円周方向の角度が360度未満である第2の1次加工部材を含む、本発明1又は2に記載の管状体の製造方法。
[本発明5]
前記第1工程は、1次加工工程を含み、
前記1次加工工程は、
円弧状に湾曲した成形面を有する型の中に前記プリプレグシートを配置する工程と、
前記プリプレグシートを加熱により軟化させて、前記成形面に沿うように変形させる工程と、
変形した前記プリプレグシートを冷却した後、前記型から取り出す工程とを含む、本発明1に記載の管状体の製造方法。
[本発明6]
前記1次加工工程は、前記成形面の曲率半径を小さくしながら、複数回繰り返される、本発明5に記載の管状体の製造方法。
[本発明7]
前記型は、前記成形面が円筒形をなす中空パイプ形状を備える、本発明5又は6に記載の管状体の製造方法。
[本発明8]
前記成形面は、曲率半径が前記軸心方向に一定である部分を含む、本発明7に記載の管状体の製造方法。
[本発明9]
前記成形面は、曲率半径が前記軸心方向の一方側に向かって漸減する部分を含む、本発明7に記載の管状体の製造方法。
[本発明10]
前記少なくとも1枚のプリプレグシートは、前記繊維の配向角度が異なる複数枚のプリプレグシートを重ねた積層プリプレグシートを含む、本発明1又は2に記載の管状体の製造方法。
[本発明11]
前記第2工程は、複数の前記1次加工部材の前記第1エッジ及び前記第2エッジが、円周方向において互いに異なる位置となるように前記プリプレグ積層体を形成する、本発明1又は2に記載の管状体の製造方法。
[本発明12]
前記第3工程は、前記プリプレグ積層体の内部側を加圧し、前記プリプレグ積層体の外表面を金型の成形面に押圧する工程を含む、本発明1又は2に記載の管状体の製造方法。
[本発明13]
管状体であって、
繊維と熱可塑性樹脂とを含む少なくとも1枚のプリプレグシートが略管状に成形された複数の1次加工部材の積層体の硬化物からなる、管状体。
本発明は、以下の態様を含む。
[本発明1]
管状体の製造方法であって、
繊維と樹脂とを含む少なくとも1枚のプリプレグシートから、略管状の1次加工部材を得る第1工程と、
前記1次加工部材の複数を積層してプリプレグ積層体を得る第2工程と、
前記プリプレグ積層体を加熱成形することにより管状体を得る第3工程とを含み、
前記1次加工部材は、略管状の軸心方向に延びる第1エッジ及び第2エッジを備え、
前記第1エッジ及び前記第2エッジがそれぞれ自由端とされている、
管状体の製造方法。
[本発明2]
前記樹脂は、熱可塑性樹脂である、本発明1に記載の管状体の製造方法。
[本発明3]
前記1次加工部材は、略円管状であり、
前記1次加工部材は、前記第1エッジから前記第2エッジまでの円周方向の角度が360度を超える第1の1次加工部材を含む、本発明1又は2に記載の管状体の製造方法。
[本発明4]
前記1次加工部材は、略円管状であり、
前記1次加工部材は、前記第1エッジから前記第2エッジまでの円周方向の角度が360度未満である第2の1次加工部材を含む、本発明1又は2に記載の管状体の製造方法。
[本発明5]
前記第1工程は、1次加工工程を含み、
前記1次加工工程は、
円弧状に湾曲した成形面を有する型の中に前記プリプレグシートを配置する工程と、
前記プリプレグシートを加熱により軟化させて、前記成形面に沿うように変形させる工程と、
変形した前記プリプレグシートを冷却した後、前記型から取り出す工程とを含む、本発明1に記載の管状体の製造方法。
[本発明6]
前記1次加工工程は、前記成形面の曲率半径を小さくしながら、複数回繰り返される、本発明5に記載の管状体の製造方法。
[本発明7]
前記型は、前記成形面が円筒形をなす中空パイプ形状を備える、本発明5又は6に記載の管状体の製造方法。
[本発明8]
前記成形面は、曲率半径が前記軸心方向に一定である部分を含む、本発明7に記載の管状体の製造方法。
[本発明9]
前記成形面は、曲率半径が前記軸心方向の一方側に向かって漸減する部分を含む、本発明7に記載の管状体の製造方法。
[本発明10]
前記少なくとも1枚のプリプレグシートは、前記繊維の配向角度が異なる複数枚のプリプレグシートを重ねた積層プリプレグシートを含む、本発明1又は2に記載の管状体の製造方法。
[本発明11]
前記第2工程は、複数の前記1次加工部材の前記第1エッジ及び前記第2エッジが、円周方向において互いに異なる位置となるように前記プリプレグ積層体を形成する、本発明1又は2に記載の管状体の製造方法。
[本発明12]
前記第3工程は、前記プリプレグ積層体の内部側を加圧し、前記プリプレグ積層体の外表面を金型の成形面に押圧する工程を含む、本発明1又は2に記載の管状体の製造方法。
[本発明13]
管状体であって、
繊維と熱可塑性樹脂とを含む少なくとも1枚のプリプレグシートが略管状に成形された複数の1次加工部材の積層体の硬化物からなる、管状体。
1 管状体
2 繊維
10 プリプレグシート
10A プリプレグシート
10B プリプレグシート
11 1次加工部材
11A 第1の1次加工部材
11B 第2の1次加工部材
11a 第1エッジ
11b 第2エッジ
20 成形面
21、21A 型
30 プリプレグ積層体
50 金型
2 繊維
10 プリプレグシート
10A プリプレグシート
10B プリプレグシート
11 1次加工部材
11A 第1の1次加工部材
11B 第2の1次加工部材
11a 第1エッジ
11b 第2エッジ
20 成形面
21、21A 型
30 プリプレグ積層体
50 金型
Claims (13)
- 管状体の製造方法であって、
繊維と樹脂とを含む少なくとも1枚のプリプレグシートから、略管状の1次加工部材を得る第1工程と、
前記1次加工部材の複数を積層してプリプレグ積層体を得る第2工程と、
前記プリプレグ積層体を加熱成形することにより管状体を得る第3工程とを含み、
前記1次加工部材は、略管状の軸心方向に延びる第1エッジ及び第2エッジを備え、
前記第1エッジ及び前記第2エッジがそれぞれ自由端とされている、
管状体の製造方法。 - 前記樹脂は、熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の管状体の製造方法。
- 前記1次加工部材は、略円管状であり、
前記1次加工部材は、前記第1エッジから前記第2エッジまでの円周方向の角度が360度を超える第1の1次加工部材を含む、請求項1又は2に記載の管状体の製造方法。 - 前記1次加工部材は、略円管状であり、
前記1次加工部材は、前記第1エッジから前記第2エッジまでの円周方向の角度が360度未満である第2の1次加工部材を含む、請求項1又は2に記載の管状体の製造方法。 - 前記第1工程は、1次加工工程を含み、
前記1次加工工程は、
円弧状に湾曲した成形面を有する型の中に前記プリプレグシートを配置する工程と、
前記プリプレグシートを加熱により軟化させて、前記成形面に沿うように変形させる工程と、
変形した前記プリプレグシートを冷却した後、前記型から取り出す工程とを含む、請求項1に記載の管状体の製造方法。 - 前記1次加工工程は、前記成形面の曲率半径を小さくしながら、複数回繰り返される、請求項5に記載の管状体の製造方法。
- 前記型は、前記成形面が円筒形をなす管形状を備える、請求項5又は6に記載の管状体の製造方法。
- 前記成形面は、曲率半径が前記軸心方向に一定である部分を含む、請求項7に記載の管状体の製造方法。
- 前記成形面は、曲率半径が前記軸心方向の一方側に向かって漸減する部分を含む、請求項7に記載の管状体の製造方法。
- 前記少なくとも1枚のプリプレグシートは、前記繊維の配向角度が異なる複数枚のプリプレグシートを重ねた積層プリプレグシートを含む、請求項1又は2に記載の管状体の製造方法。
- 前記第2工程は、複数の前記1次加工部材の前記第1エッジ及び前記第2エッジが、円周方向において互いに異なる位置となるように前記プリプレグ積層体を形成する、請求項1又は2に記載の管状体の製造方法。
- 前記第3工程は、前記プリプレグ積層体の内部側を加圧し、前記プリプレグ積層体の外表面を金型の成形面に押圧する工程を含む、請求項1又は2に記載の管状体の製造方法。
- 管状体であって、
繊維と熱可塑性樹脂とを含む少なくとも1枚のプリプレグシートが略管状に成形された複数の1次加工部材の積層体の硬化物からなる、管状体。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022131296A JP2024028003A (ja) | 2022-08-19 | 2022-08-19 | 管状体の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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-
2022
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