JP2024027812A - 再生自然素材 - Google Patents

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Abstract

【課題】強度や耐水性を損なうことなく、切削加工性に優れ、環境に対して負荷が少なく、容易に製造することができ、しかも、資源枯渇の課題解決効果に寄与する再生木材などの再生自然素材を提供する。【解決手段】本発明の再生自然素材は、粒子径2mm以下となるバイオマス資源由来の少なくとも1種の粉体からなる体質材と、融点が40℃以上である熱可塑性固体からなる切削向上材と、結合材とを少なくとも含み、体質材/切削向上材/結合材=20~65/15~55/10~50の質量比率で構成され、所定の形状、例えば、棒状、板状、管状、ブロック形状、シート状などに成形されたことを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、成形性および成形後の切削加工性に優れると共に、資源枯渇の課題解決効果に寄与する再生木材などの再生自然素材に関する。
従来より、木材の代替物として、樹脂等の成形の容易な素材と粘土鉱物粉等の体質材とを混練したものなどが提案されている。
例えば、1)樹脂の特性に由来するドローダウンや不均一流動性、あるいは成形体の表面肌荒れを改良し、押出成形に好適な複合材料として、特定物性のポリエチレン(A)とセルロース系粉末(B)と特定のワックス(C)からなる組成物であって、その重量比率が(A)/(B)/(C)=25~89/10~70/0.5~17.5の範疇(合計100重量部)である複合材料(例えば、特許文献1参照)、2)成形性、強度、耐水性を向上させ、均質でより良質の木質系成形体を提供するために、木質系材料を水蒸気存在下で加熱および加圧後急激に減圧して爆砕し乾燥した粉末状の爆砕材料に水を添加し、少なくとも、流動状態の樹脂と、粉末状の木質系材料と、前記水を添加した爆砕材料と、を混合して成形することにより得られる木質系成形体(例えば、特許文献2参照)、3)溶融粘度が低く、成形性に優れるとともに、天然木材等に近い良好な外観を付与することが可能で、しかも成形時の変色(焼けこげ)が抑制され、物性に優れる成形品を得ることができる木質樹脂ペレットとして、木粉70~91重量部と、融点を40~100℃の間に持つワックス材料1~15重量部とからなる木質樹脂ペレット(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
上記特許文献1~3に開示の複合材料、木質系成形体や木質樹脂ペレットなどは、成形のしやすさの他、成形時の焦げ防止及び天然木材に近い外観を得ることを目的に作られており、切りやすさ、削りやすさといった成形後の加工しやすさなどについては配慮されたものではなく、更なる改善、改良などが切望されているのが現状であった。また、石油由来材料を使用している場合には、資源枯渇の課題解決効果に劣るものとなっていた。
特開2000-103915号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2006-272696号公報(特許請求の範囲、実施例等) 特開2011-236410号公報(特許請求の範囲、実施例等)
本発明は、上記従来の課題等について解消しようとするものであり、強度や耐水性を損なうことなく、切削加工性に優れ、環境に対して負荷が少なく、容易に製造することができ、資源枯渇の課題解決効果に寄与する再生木材などの再生自然素材を提供することを目的とする。
本発明者は、上記従来の課題等について鋭意検討した結果、少なくとも、粒子径が特定値以下のバイオマス資源由来の粉体からなる体質材と、特定物性の熱可塑性固体からなる切削向上材と、結合材とから、所定の比率で構成され、所定の形状に成形することなどにより、上記目的の再生自然素材が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明の再生自然素材は、少なくとも、粒子径2mm以下となるバイオマス資源由来の少なくとも1種の粉体からなる体質材と、融点が40℃以上である熱可塑性固体からなる切削向上材と、結合材とを少なくとも含み、体質材/切削向上材/結合材=20~65/15~55/10~50の比率で構成され、所定の形状に成形されたことを特徴とする。
前記切削向上材が、ISO16128で定義される自然由来指数が50%以上であることが好ましい。
前記結合材が、セルロース又はセルロース誘導体であることが好ましい。
前記セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロースアンモニウムであることが好ましい。
前記再生自然素材を棒状に成形して棒状再生自然素材とすることが好ましく、また、この棒状再生自然素材を更に加工して筆記具又は鉛筆軸用の軸木とすることが好ましい。
本発明によれば、強度や耐水性を損なうことなく、切削加工性に優れ、環境に対して負荷が少なく、容易に製造することができ、しかも、資源枯渇の課題解決効果に寄与する再生木材などの再生自然素材を提供することができる。
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるものである。上述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は下記で詳述する実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。また、本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識(設計事項、自明事項を含む)に基づいて実施することができる。
本発明の再生自然素材は、少なくとも、粒子径2mm以下となるバイオマス資源由来の少なくとも1種の粉体からなる体質材と、融点が40℃以上である熱可塑性固体からなる切削向上材と、結合材とを少なくとも含み、体質材/切削向上材/結合材=20~65/15~55/10~50の比率で構成され、所定の形状に成形されたことを特徴とするものである。
本発明に用いる体質材は、粒子径2mm以下となるバイオマス資源由来のものから選ばれる少なくとも1種の粉体からなるものである。
本発明におけるバイオマス資源としては、例えば、NEDO再生可能エネルギー技術白書などに記載され、分類されてなる、廃棄物系資源、未利用資源、生産系資源からのいずれも用いられ、特に限定されないが、使用用途が限られ、活用することの利点が大きいことから、廃棄物系資源および未利用資源からものが好適に用いられる。廃棄物系資源および未利用資源においては、粉体の入手もしくは粉砕加工の容易さから、木質系バイオマスや食品廃棄物、農業残渣系バイオマスからのものが好ましい。
上記木質系バイオマスとしては、製材工場残材や建設発生木材、森林の林地残材や間伐材、未利用樹といった、樹木や竹が用いられる。
上記樹木としては、例えば、広葉樹や針葉樹などの自然由来の樹木が用いられ、特に限定されない。具体的な樹木としては、例えば、スギ、マツ、カラマツ、アカマツ、トドマツ、ヒノキ、ブナ、トチ、コナラ、ミズナラ、ナラ、シナノキ、カンバ、ハルニレ、ラワン、ベイツガ等が挙げられる。これらの樹木の中から選ばれる材料では、入手が容易であることから、特に、スギ、ヒノキ、ブナ、トチ、ミズナラなどが好適に用いられる。
また、上記竹としては、自然由来のマダケ、モウソウチク、ハチク、ホテイチク、キッコウチク、ホウライチク、ナリヒラダケ、チシマザサ、トウチク、シホウチク、カンチク、ヤダケ、メダケなどが挙げられる。蓄積量が多く、入手が容易であることから、モウソウチクなどが好適に用いられる。
上記食品廃棄物としては、例えば、食品の原材料の選別や製造工程で発生するもの、厨芥などが用いられ、特に限定されないが、可食部、不可食部の別では、汎用性の乏しさから不可食部を用いることが好ましい。具体的な食品廃棄物の不可食部としては、茶がら、コーヒーかす、桃殻、クルミ殻、とうもろこしの穂軸、野菜の皮または種または芯等が挙げられる。
上記農業残渣系バイオマスとしては、稲わらや麦わら、籾殻、バガス、カカオ殻等が用いられる。
本発明に用いる体質材において、上記バイオマス資源由来の複数の粉体を混合した粉体も使用することができるものであり、粒子径2mm以下となるものであればよい。なお、本発明における粒子径は、任意の目開きである篩またはメッシュを通過することで得られる値とすることができる。
この粒子径2mm超過のものでは、成形した再生自然材料の表面に凹凸が生じ、外観を損ね、成形後の乾燥時に割れを生じる原因となり、好ましくない。
用いる粒子径2mm以下の上記バイオマス資源由来のものから選ばれる少なくとも1種の粉体としては、上記廃棄物系資源および未利用資源の由来の、木質系バイオマスや食品廃棄物、農業残渣系バイオマスのおが屑、端材や廃材などから得られる木粉、任意の装着等により粉砕および分級を行った粉末などを挙げることができる。
これらの粒子径2mm以下の上記の各バイオマス資源由来のものから選ばれる少なくとも1種の粉体(混合した粉体を含む)は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、環境に対する負荷の点から、ISO 16128で定義される自然由来指数(水を含まない)が0.5以上、更に好ましくは、0.7以上とすることにより、更に、環境に対して負荷がきわめて少なく、資源枯渇の課題解決効果に寄与することできることとなる。
これらのバイオマス資源由来の粉体の含有量は、二酸化炭素排出量を主とした環境負荷の低減、及び再生自然材料の寸法精度や強度の点から、再生自然素材全量に対して、20~65質量%であり、更に好ましくは、30~65質量%、特に好ましくは、35~55質量%とすることが望ましい。
これらの含有量が、20質量%未満であると、乾燥時の収縮が大きく、再生自然材料の寸法精度が劣ること、及び環境負荷が大きくなることがあり、一方、65質量%を超えると、再生自然材料の強度が不足することがある。
本発明に用いる切削向上材は、少なくとも、融点が40℃以上である熱可塑性固体の少なくとも1種から選ばれたものである。
本発明に用いる熱可塑性固体からなる切削向上材は、融点が40℃以上となるワックスまたは脂肪酸またはその誘導体または熱可塑性樹脂であれば特に限定されずに用いることができる。
融点が40℃以上となるワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モクロウ、ホホバ油などの植物系ワックス、ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンなどの鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス・ペトロラタムなどの石油ワックス、フイッシャ-トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、アミドワックスなどの合成炭化水素、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体などの変性ワックス、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体、硬化パーム油などの水素化ワックスなどが挙げられる。
なお、カルナバワックスは、カルナバヤシの葉から抽出精製されたワックスであり、従来より、若葉から採取された淡黄色のものを1号、古葉から採取された淡褐色のものを2号(または3号)とグレードが分類されている。
また、融点が40℃以上となる脂肪酸またはその誘導体としては、例えば、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの脂肪酸や、それら脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩である脂肪酸塩、ステアリン酸ステアリル、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ポリエチレングリコールジステアレートなどの脂肪酸エステル、ステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド等を挙げることができる。
さらに、融点が40℃以上となる熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。
これらの熱可塑性固体からなる切削向上材は、各単独で、または2種以上混合して(以下、「少なくとも1種」という)使用することができ、また、市販品があれば、それらを使用することができる。
用いる熱可塑性固体からなる切削向上材の融点は、バイオマス資源由来の粉体との複合化の容易さの点、再生自然材料の強度が優れる点から、好ましくは、60℃以上150℃以下である熱可塑性固体、更に好ましくは、75℃以上120℃以下のワックスまたは油脂の使用が望ましい。
好ましく用いることができる熱可塑性固体からなる切削向上材としては、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、硬化ひまし油、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレートなどが望ましい。
なお、用いるワックスや油脂などの熱可塑性固体の融点が40℃未満のものであると、再生自然材料の使用時に環境や摩擦など外部要因による温度で軟化し、強度が低下するため、好ましくない。
これらの融点が40℃以上となる熱可塑性固体からなる切削向上材は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、環境に対する負荷の点から、ISO 16128で定義される自然由来指数(水を含まない)が0.5以上であることが好ましい。
本発明(後述する実施例を含む)における「自然由来指数(水を含まない)」とは、ISO 16128に係る指数表示をいい、この自然由来指数(水を含まない)が0.5以上、更に好ましくは、0.8以上とすることにより、更に、環境に対して負荷がきわめて少なく、資源枯渇の課題解決効果に寄与することできることとなる。
また、上記熱可塑性固体からなる切削向上材は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、特に強度を向上する点から、針入度(25℃)が50以下であることが好ましい。
本発明における針入度(25℃)は、JIS K2235 5.4で定義され、50以下、更に好ましくは、10以下とすることにより、切削性を維持しつつ、高強度の再生自然材料が得られることとなる。この点から、上記熱可塑性固体からなる切削向上材としては、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、硬化ひまし油などが好適に用いられる。
これらの熱可塑性固体からなる切削向上材の合計含有量としては、再生自然材料の寸法精度の点及び切削加工性の点から、再生自然素材全量に対して、15~55質量%であり、更に好ましくは、15~50質量%、特に好ましくは、15~40質量%とすることが望ましい。
これらの含有量が、15質量%未満であると、成形後の乾燥時に収縮が大きく、寸法精度が低下する可能性がある、及び再生自然材料の切削加工性が十分でなくなることがあり、一方、55質量%を超えると、体質材や結合材の粉末との混合時に凝集し、成分の偏在を引き起こすことがあるため、好ましくない。
本発明に用いる結合材としては、水溶性ないしは親水性のものが好ましく、例えば、セルロース繊維(ナノファイバー含む)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリアクリルアミド、マレイン酸共重合樹脂などの、少なくとも1種を用いることができる。上記各カルボキシメチルセルロース(CMC)の塩としては、ナトリウム、アンモニウムなどを挙げられる。
これらの結合材は自然由来であることが好ましく、更には耐水性を付与する点から、カルボキシメチルセルロース(CMC)アンモニウムであることが好ましい。
これらの結合材は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、環境に対する負荷の点から、ISO 16128で定義される自然由来指数(水を含まない)が0.5以上であることが好ましく、更に好ましくは、0.7以上とすることにより、更に、環境に対して負荷がきわめて少なく、資源枯渇の課題解決効果に寄与することできることとなる。
これらの結合材の含有量は、再生自然素材全量に対して、10~50質量%であり、更に好ましくは、20~50質量%、特に好ましくは、30~45質量%とすることが望ましい。
これらの結合材の含有量が、10質量%未満であると、成形性が悪く、乾燥時に形状を保持できないこと、及び再生自然材料の強度が不十分となることがあり、一方、50質量%を超えると、再生自然材料が硬くなり、切削加工性が不足することがある。
本発明における再生自然素材には、上記粒子径2mm以下となる上記バイオマス資源由来のものから選ばれる少なくとも1種の粉体(混合粉体を含む)からなる体質材と、融点が40℃以上である熱可塑性固体からなる切削向上材とを含み、上述の如く、体質材/切削向上材/結合材の全量中の含有比率が質量基準(質量%)で、20~65/15~55/10~50の比率、好ましくは、30~65/15~50/20~50の比率、更に好ましくは、35~65/15~40/30~45の比率で構成される他、本発明の効果を更に発揮せしめる点、耐水性を付与する点から、前記結合材を架橋する架橋剤などを更に含有することができる。
前記結合材を架橋する架橋剤としては、結合材をエステル架橋するカルボン酸基を有するものが好ましく、具体的には、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、ポリアクリル酸などを挙げられる。
これらの架橋剤の含有量は、再生自然素材全量に対して、耐水性発現の点、吸湿による強度低下を抑制する点、材料の変色を抑制する点から、好ましくは、0.1~5質量%、更に好ましくは、0.5~2質量%とすることが望ましい。
更に、本発明の再生自然素材には、上記粒子径2mm以下となる上記バイオマス資源由来のものから選ばれる少なくとも1種の粉体(混合粉体を含む)からなる体質材と、融点が40℃以上である熱可塑性固体からなる切削向上材と、結合材、架橋剤の他、必要に応じて、再生自然素材を着色するための着色材(染料、無機顔料、有機顔料)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラック、天然色素などを適宜含有することができる。
これらの再生自然素材は、本発明の効果を更に発揮せしめる点、環境に対する負荷の点から、自然由来指数(水を含まない)0.5以上であることが好ましい。
この再生自然素材の自然由来指数(水を含まない)を0.75以上、更に好ましくは、0.85以上とすることにより、更に、環境に対して負荷がきわめて少ない、再生自然素材が得られることとなる。
この再生自然素材の自然由来指数(水を含まない)を0.75以上とすることは、前述した融点が40℃以上である熱可塑性固体、結合材を自然由来ものを適宜選択して達成することができる。
本発明の再生自然素材は、粒子径2mm以下となる上記バイオマス資源由来のものから選ばれる少なくとも1種の粉体(混合粉体を含む)からなる体質材と、融点が40℃以上である熱可塑性固体からなる切削向上材と、結合材とを上記の各比率となるように混合した後、撹拌しながら加水を行い、成形前駆体として、所定の形状に成形後、乾燥を行うことにより目的の再生木材などの再生自然素材を得ることができるものであり、例えば、ヘンシェルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーなどの混練機などを用いて、粒子径2mm以下となる上記バイオマス資源由来のものから選ばれる少なくとも1種の粉体(混合粉体を含む)からなる体質材と、融点が40℃以上である熱可塑性固体からなる切削向上材と、結合材とを混合した後、撹拌しながら水分率が40~80%となるように水(精製水、蒸溜水など)加える加水を行い、成形前駆体とし、次いで、所定の形状、例えば、棒状、板状、管状、ブロック形状、シート状に形成し、乾燥を行うことにより目的の再生自然素材を製造することができる。
また、上記各混練物を押出成形機などを用いて所定径のダイス、もしくはTダイなどを用いて、棒状、丸棒、板状もしくはシート状に成形し、乾燥することで得る所定形状の成形体を作製したりすることができる。
更に、押出成形などの際のプレス圧力、含水率、バイオマス資源由来の各粉体(木粉等)からなる体質材と、天然由来の熱可塑性固体からなる切削向上材及び結合材などを好適に組み合わせることにより、幅広く再生自然素材の物性(気孔率含む)を制御できるため、求める再生自然素材の質感、強度、成形性などを満足できるものが得られることとなる。
本発明において、上記再生自然素材の形態、用途などは、特に限定されず、例えば、上記再生自然素材を棒状に成形したものでは、更に加工して筆記具又は鉛筆軸用の軸木としてもよく、更に、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウなどの化粧具の軸木、各種容器、音響機器の振動板や筐体、自動車内装部品などの用途に用いられる各再生自然素材が挙げられる。
このように構成される本発明の再生自然素材は、強度や耐水性を損なうことなく、切削加工性に優れ、環境に対して負荷が少なく、容易に製造することができ、しかも、資源枯渇の課題解決効果に寄与する再生木材などの再生自然素材及びその製造方法が得られることとなる。
また、再生自然素材を棒状に成形し、更に加工して筆記具又は鉛筆軸用の軸木としたものでは、従来の木軸と同様の易削り性や落下耐性、耐水性を有し、環境に対して負荷が少なく、従来の鉛筆、筆記具(木軸の化粧具含む)の成形の際に用いている成形機などを改良することなく使用することができるので、容易に製造することができる筆記具又は鉛筆軸用の軸木が得られることとなる。
以下に本発明を実施例、比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ヘンシェルミキサーに、バイオマス資源として、製材工場残材から得た粒子径2mm以下のヒノキ木粉と、切削向上材である熱可塑性固体として等量のカルナバワックス2号(融点82℃、針入度(25℃):1未満、トーヨーケム社製、以下同様)の粉末と、結合材として、木粉と等量のカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム(日本製紙社製、以下同様)を、ヘンシェルミキサーにより乾式混合後、内容量と等量の精製水を撹拌しながら加えることで、成形前駆体を得た。
この成形前駆体を押出成形機により、φ8mm、長さ180mmの棒状に成形後、50℃にて乾燥することで、φ7mmの棒状再生木材を得た。
(実施例2)
上記実施例1に記載のCMCナトリウムの代わりに、カルボキシメチルセルロースアンモニウム(CMCアンモニウム)(ニチリン化学社製、以下同様)を使用し、乾燥後に150℃で1時間加熱した点以外は上記実施例1と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例3)
上記実施例1に記載のCMCナトリウムの代わりに、ポリビニルアルコール(PVA)(クラレ社製)を使用した点以外は上記実施例1と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例4)
上記実施例2に記載のヒノキ木粉の代わりに、バイオマス資源として、製材工場残材から得た粒子径1mm以下のヒノキ木粉を使用した点以外は、上記実施例2と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例5)
上記実施例4に記載のCMCアンモニウムの半量をセルロース繊維(CF)(日本製紙社製)で置き換えた点以外は、上記実施例3と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例6)
上記実施例2に記載のヒノキ木粉の代わりに、バイオマス資源として、間伐材から得た粒子径0.6mm以下のスギ木粉を使用した点以外は、上記実施例2と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例7)
上記実施例2に記載のヒノキ木粉の代わりに、バイオマス資源として、間伐材から得た粒子径0.3mm以下のスギ木粉を使用した点以外は、上記実施例2と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例8)
上記実施例7に記載のカルナバワックス2号の量を、木粉の3分の2倍量とした点以外は、上記実施例7と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例9)
上記実施例7に記載のカルナバワックス2号の量を、木粉の半量とした点以外は、上記実施例7と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例10)
上記実施例7に記載のカルナバワックス2号の量を、木粉の3分の4倍量とした点以外は、上記実施例7と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例11)
上記実施例7に記載のCMCアンモニウムの量を、木粉の3分の4倍量とした点以外は、上記実施例7と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例12)
上記実施例7に記載のCMCアンモニウムの量を、木粉の3分の2倍量とした点以外は、上記実施例7と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例13)
上記実施例7に記載のカルナバワックス2号の量を、木粉の3分の1倍量とし、CMCアンモニウムの量を木粉の3分の2倍量とした点以外は、上記実施例7と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例14)
上記実施例2に記載のヒノキ木粉の代わりに、バイオマス資源として、未利用樹から得た粒子径0.1mm以下のタケ粉を使用した点以外は、上記実施例2と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例15)
上記実施例14に記載のカルナバワックス2号を、半量とした点以外は、上記実施例14と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例16)
上記実施例2に記載のヒノキ木粉の代わりに、バイオマス資源として、農業残渣から得た粒子径0.6mm以下のカカオ殻粉砕粉を使用した点以外は、上記実施例2と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例17)
上記実施例4に記載のカルナバワックス2号の代わりに、ライスワックス(融点79℃、針入度(25℃):5、ボーソー油脂社製)を使用した点以外は、上記実施例4と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例18)
上記実施例4に記載のカルナバワックス2号の代わりに、フイッシャ-トロプシュワックス(融点113℃、針入度(25℃):1、日本精蝋社製)を使用した点以外は、上記実施例4と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例19)
上記実施例4に記載のカルナバワックス2号の代わりに、グリセリンモノ・ジステアレート(融点63℃、針入度(25℃):20、理研ビタミン社製)を使用した点以外は、実施例4と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例20)
上記実施例4に記載のカルナバワックス2号の代わりに、ソルビタントリステアレート(融点54℃、針入度(25℃):5、花王社製)を使用した点以外は、実施例4と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例21)
上記実施例4に記載のカルナバワックス2号の代わりに、ステアリン酸アミド(融点102℃、針入度(25℃):12、三菱ケミカル社製)を使用した点以外は、実施例4と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例22)
上記実施例4に記載のカルナバワックス2号の代わりに、ステアリン酸(融点66℃、針入度(25℃):18、日油社製)を使用した点以外は、実施例4と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(実施例23)
上記実施例4に記載のカルナバワックス2号の代わりに、高密度ポリエチレン(融点126℃、針入度(25℃):1未満、日本ポリエチレン社製)を使用した点以外は、実施例4と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(比較例1)
ヘンシェルミキサーに、上記実施例4と同様の粒子径1mm以下のヒノキ木粉と、等量となる上記実施例1と同様のCMCナトリウムを投入し乾式混合後、内容量と等量の精製水を撹拌しながら加えることで、成形前駆体を得た。
この成形前駆体を押出成形機により、φ8.5mmの棒状に成形後、50℃にて乾燥することで、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(比較例2)
上記比較例1に記載のCMCナトリウムの代わりに、CMCアンモニウムを使用し、乾燥後に150℃で1時間加熱した点以外は、上記実施例2と同様に実施し、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(比較例3)
上記比較例2において、木粉に対して半量のCMCアンモニウムを使用した点以外は、上記比較例2と同様に実施した、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
(比較例4)
上記比較例3において、木粉に対して4分の1倍量のCMCアンモニウムを使用した点以外は、上記比較例3と同様に実施した、φ7mm、長さ180mmの棒状再生木材を得た。
上記で得られた実施例1~23及び比較例1~4の各棒状再生木材等について、下記より自然由来指数を算出し、また、下記測定方法で、折損強度、切削加工性、耐水性について評価した。
これらの評価結果などを下記表1に示す。また、下記表2に実施例1~23及び比較例1~4に用いた体質材、切削向上材、結合材の各配合比率(表2中の16.7%、33.3%、66.7%はそれぞれ1/6、1/3、2/3を表す)、自然由来指数を示す。
(自然由来指数)
実施例1~23及び比較例1~4の得られた各棒状木材等の自然由来指数(水を含まない)は棒状木材に配合した原料の重量比より、ISO 16128に定義された、自然原料および自然由来原料中の自然由来部分の、水を含まない重量を用いて組成比を百分率で算出することにより求められる。この値が高いほど、動物や植物由来の材料比率が高く、石油由来材料の使用量が少ないことから、環境への負荷が小さいと示すことができる。
(折損強度の評価方法)
得られた各棒状木材等を固定した位置から80mmの位置に90℃方向に荷重をかけ、折損した際の最大荷重を計測し、折損強度(N)の評価とした。
(切削トルクの評価方法)
得られた各棒状木材等を、鉛筆削りを利用して先端を直径2mmに整えた後、回転モーメント測定装置に連結した固定治具に設置された鉛筆削りを使用して、鉛筆削りと反対側を機械で回転させ、木材が尖るまで切削を行った。この間の回転モーメントのピーク値(N・mm)を測定し、切削トルクの評価とした。
(切削加工性判定)
上記折損強度および切削トルクの結果から、切削加工時に必要となる、強度と切削性のバランスを下記指標に基づき判定を行った。
評価指標:
良:折損強度が12N以上かつ切削トルクが100N・mm未満
硬:切削トルクが100N・mm以上
弱:折損強度が12N未満
(耐水性の評価方法)
得られた各棒状木材等を水に浸漬し、24時間後に形状を維持しているか否かにより、耐水性有無の評価を行った。
Figure 2024027812000001
Figure 2024027812000002
上記表1及び表2の評価結果などを考察すると、本発明の範囲内である実施例は、比較例に較べ、高い自然由来指数を維持しながら、高い折損強度、低い切削トルクを高度に両立し、切削加工性に優れるものであり、また、結合材としてセルロース誘導体(CMCアンモニウム)を用いたものでは、十分な耐水性を発揮できることを確認した。
強度や耐水性を損なうことなく、切削加工性に優れ、環境に対して負荷が少なく、容易に製造することができ、しかも、資源枯渇の課題解決効果に寄与する再生木材などの再生自然素材が得られ、棒状の再生自然素材を更に加工すれば、鉛筆軸(色鉛筆芯を含む)、筆記具の軸木(軸体)や、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウなどの棒状化粧料などの化粧料の軸木(軸体)などが得られる。

Claims (6)

  1. 粒子径2mm以下となるバイオマス資源由来の少なくとも1種の粉体からなる体質材と、融点が40℃以上である熱可塑性固体からなる切削向上材と、結合材とを少なくとも含み、体質材/切削向上材/結合材=20~65/15~55/10~50の質量比率で構成され、所定の形状に成形されたことを特徴とする再生自然素材。
  2. 前記切削向上材が、ISO16128で定義される自然由来指数が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の再生自然素材。
  3. 前記結合材が、セルロース又はセルロース誘導体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の再生自然素材。
  4. 前記セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロースアンモニウムであることを特徴とする請求項3に記載の再生自然素材。
  5. 請求項1又は2に記載の再生自然素材を棒状に成形したことを特徴とする棒状再生自然素材。
  6. 請求項5の棒状再生自然素材を更に加工したことを特徴とする筆記具又は鉛筆軸用の軸木。
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