JP2024027551A - 異常警告装置及び異常警告方法 - Google Patents

異常警告装置及び異常警告方法 Download PDF

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大輔 俵道
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Abstract

【課題】異常を早期に検知して周囲への影響も考慮した高精度な異常の警告を行うことのできる異常警告装置及びその方法を提供する。【解決手段】異常警告装置43は、センサデータに基づいて異常検知対象部位の異常を検出して異常検出結果を出力し、センサが設置されていない所定の部位のセンサデータを学習済みモデルで推定し、推定された推定センサデータに基づいて所定の部位が異常であるか否かを判定して異常判定結果を出力し、センサで過去に取得したセンサデータとセンサで現在取得したセンサデータとを比較して、異常検知対象部位の異常を推定して異常推定結果を出力し、異常検出結果と異常判定結果と異常推定結果とを表示装置7の同一画面上に表示して車両の異常を警告する。【選択図】図1

Description

本発明は、異常警告装置及び異常警告方法に関する。
従来では、車両に発生している可能性の高い故障パターンを推定する故障パターン推定方法が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された故障パターン推定方法では、故障車両から故障コードを取得し、取得した故障コードに基づいて、故障車両で発生している確率の高い故障パターンを推定していた。
特開2009-145298号公報
上述した従来の故障パターン推定方法では、故障コードに基づいて故障パターンを推定しているので、異常が発生している部位については異常を推定して警告することができる。しかしながら、故障コードに基づいた異常の警告だけでは、異常を早期に検知して周囲への影響も考慮した異常の警告を行うことはできないという問題点があった。
そこで、本発明は上記実情に鑑みて提案されたものであり、異常を早期に検知して周囲への影響も考慮した高精度な異常の警告を行うことのできる異常警告装置及びその方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る異常警告装置及びその方法は、センサデータに基づいて異常検知対象部位の異常を検出して異常検出結果を出力する。また、センサが設置されていない所定の部位のセンサデータを学習済みモデルで推定し、推定された推定センサデータに基づいて所定の部位が異常であるか否かを判定して異常判定結果を出力する。そして、センサで過去に取得したセンサデータとセンサで現在取得したセンサデータとを比較して異常検知対象部位の異常を推定して異常推定結果を出力し、異常検出結果と異常判定結果と異常推定結果とを表示装置の同一画面上に表示して車両の異常を警告する。
本発明によれば、異常を早期に検知して周囲への影響も考慮した高精度な異常の警告を行うことができる。
図1は、一実施形態に係る異常警告装置を備えた異常警告システムの構成を示すブロック図である。 図2は、一実施形態に係る異常警告装置によってセンサデータを推定する場合の車両内の構成を示す図である。 図3は、一実施形態に係る異常警告装置で使用される異常診断情報の一例を示す図である。 図4は、一実施形態に係る異常警告装置によって表示される異常警告画面の一例を示す図である。 図5は、一実施形態に係る異常警告装置によって表示されるセンサデータの時系列変化を示す表示画面の一例を示す図である。 図6は、一実施形態に係る異常警告装置によって表示されるセンサデータの表示画面の一例を示す図である。 図7は、一実施形態に係る異常警告装置による異常警告処理の処理手順を示すフローチャートである。 図8は、一実施形態に係る異常警告装置による異常検出処理の処理手順を示すフローチャートである。 図9は、一実施形態に係る異常警告装置による異常判定処理の処理手順を示すフローチャートである。 図10は、一実施形態に係る異常警告装置による異常の原因解析の方法を説明するための図である。 図11は、一実施形態に係る異常警告装置による異常推定処理の処理手順を示すフローチャートである。 図12は、一実施形態に係る異常警告装置による異常判定方法を説明するための図である。
以下、本発明を適用した一実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
[異常警告システムの構成]
図1は、本実施形態に係る異常警告装置を備えた異常警告システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、異常警告システム1は、車両3と、サーバ5と、表示装置7から構成され、それぞれ無線又は有線のネットワークで接続されている。
車両3は、異常診断の対象となる車両である。車両3に搭載されたECU(Electronic Control Unit)には、車両3に設置されているセンサで検出されたセンサデータが記録されている。例えば、図2に示すように、エンジン21の吸気側には、エアフィルタ23と、スロットルバルブ25と、吸気マニホールド27が設けられており、センサとしては、大気圧センサ29と、エアフロメータ31と、圧力センサ33が設置されている。そのため、センサデータとしては、大気圧と空気吸入量と吸入圧力が検出される。この他にも、図示していないセンサによって、スロットルバルブ開度、噴射燃料量、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブ開度、大気温度、水温、油温、O2センサ値、空燃比などのセンサデータが検出されている。
サーバ5は、車両3のECUからセンサデータを受信して蓄積し、車両3の異常を診断して警告を出力する。センサデータは、車両3のECUから直接受信してもよいし、故障コード(DTC:Diagnostic Trouble Code)と共に、整備工場やディーラーに設置された端末から受信してもよい。整備工場やディーラーでは、故障コードを読み取るためのスキャンツールを車両の診断器用コネクタに接続し、ECUと通信して故障コードを読み取っている。そして、読み取られた故障コードは、整備工場やディーラーの端末からサーバ5に送信されるので、このとき同時にセンサデータを送信してもよい。
故障コードとは、車両の故障に関する規格で定義されたものであり、車載式故障診断装置(OBD:On-Board Diagnostics)によって故障診断を行った結果、不具合が生じていると判定された場合にECUに保存されるコードである。センサデータは故障コードを表示するために収集されているので、車両の故障に関する規格に準拠したデータである。
サーバ5は、図1に示すように、データベース41と、異常警告装置43を備えている。データベース41は、車両3の異常を警告するために必要となるデータを格納している。例えば、車両3のECUから受信したセンサデータや学習モデルを学習させるための教師データなどが記憶されている。さらに、データベース41は、車両3に発生している異常を診断するための異常診断情報を記憶している。異常診断情報の詳細は後述する。
異常警告装置43は、車両3内のセンサが設置された異常検知対象部位からセンサデータを取得して車両3の異常を警告する。異常警告装置43は、異常検出部51と、異常判定部53と、異常推定部55と、異常診断部57と、出力部59を備えている。
異常検出部51は、センサデータに基づいて異常検知対象部位の異常を検出して異常検出結果を出力する。異常検知対象部位は、車両3のセンサが設置された部位であり、例えば、図2ではエアフロメータ31が設置されたスロットルバルブ25などである。具体的に、異常検出部51は、異常検知対象部位で検出されたセンサデータを取得し、取得したセンサデータを所定の閾値と比較することによって、異常検知対象部位の異常を検出して異常検出結果を出力する。
異常判定部53は、センサが設置されていない所定の部位のセンサデータを学習済みモデルで推定し、推定された推定センサデータに基づいて所定の部位が異常であるか否かを判定して異常判定結果を出力する。所定の部位は、車両3の異常検知対象部位以外の部位であり、センサが設置されていない部位である。例えば、図2ではセンサが設置されていないエアフィルタ23である。
また、推定センサデータは、センサが設置されていない所定の部位のセンサデータを学習済みモデルで推定したセンサデータである。例えば、図2に示すように、エアフィルタ23の劣化度を判定しようとする場合、エアフィルタ23を通過する前後の圧力を検出する必要があるが、そのような圧力を検出するセンサは通常の車両には設置されていない。図2では、エアフィルタ23の入口側と出口側にそれぞれ圧力センサ35、37を点線で示しているが、このような圧力センサは通常の車両には設置されていない。そこで、異常判定部53は、学習済みモデルを用いて、センサが設置されていないエアフィルタ23のセンサデータとして、エアフィルタ23を通過する前の圧力と、エアフィルタ23を通過した後の圧力を推定する。
異常判定部53は、AI(Artificial Intelligence)学習モデルを予め学習させた学習済みモデルを備えている。この学習済みモデルは、車両3に設置されているセンサにより検出されたセンサデータを用いて、センサが設置されていない所定の部位にセンサが設置されていた場合に検出されるセンサデータを推定して、推定センサデータとして出力するように学習されている。具体的な学習済みモデルの生成方法については後述する。
例えば、図2の場合、学習済みモデルは、車両3に設置されている圧力センサ33等で検出されたセンサデータを用いて、センサが設置されていないエアフィルタ23にセンサが設置されていた場合に検出されるセンサデータを推定するように学習されている。その結果、図2の場合に、学習済みモデルは、エアフィルタ23を通過する前の圧力と、エアフィルタ23を通過した後の圧力を推定する。そして、学習済みモデルで推定されたセンサデータは、推定センサデータとして出力される。
異常判定部53は、推定センサデータに基づいて、車両3のセンサが設置されていない所定の部位が異常であるか否かを判定する。例えば、図2のエアフィルタ23の劣化度を判定する場合に、異常判定部53は、推定センサデータとして出力されたエアフィルタ23を通過する前の圧力と、エアフィルタ23を通過した後の圧力を用いて劣化度を算出する。具体的に、エアフィルタ23を通過した後の圧力を、エアフィルタ23を通過する前の圧力で除算することによって、劣化度を算出することができる。この劣化度が所定の閾値以下である場合に、異常判定部53は、エアフィルタ23が異常であると判定し、異常判定結果として出力する。
異常推定部55は、異常検知対象部位に設置されたセンサで過去に取得したセンサデータと、異常検知対象部位に設置されたセンサで現在取得したセンサデータとを比較して、異常検知対象部位の異常を推定して異常推定結果を出力する。異常推定部55は、データベース41に蓄積されている過去のセンサデータと現在のセンサデータとを取得して、それらのセンサデータを比較する。
ここで、異常推定部55は、過去に取得したセンサデータから統計値を算出し、同様に現在取得したセンサデータからも統計値を算出する。算出される統計値は、平均値や分散値である。また、過去に取得したセンサデータとして、正常時のセンサデータのみを用いるようにすれば、より正確に異常を推定することができる。そして、異常推定部55は、過去に取得したセンサデータの統計値と、現在取得したセンサデータの統計値とを比較して、異常検知対象部位の異常を推定する。
異常診断部57は、異常診断情報に基づいて車両3に発生している異常を診断する。異常診断情報は、異常検出結果と異常判定結果と異常推定結果との間の関係から車両3に発生している異常を診断するための情報である。異常診断部57は、異常検出結果と異常判定結果と異常推定結果が出力されると、異常診断情報に基づいてこれらの結果を組み合わせて車両3に発生している異常を診断する。
異常診断情報は、異常検出結果と異常判定結果と異常推定結果との間の関係を記録しており、それらの異常の組み合わせによって発生していると考えられる異常が記録されている。異常診断情報の具体例を図3に示す。図3では、車両3に発生している異常の一例として、失火について説明している。
図3に示すように、車両3に失火100が発生している場合に検出される異常としては、排気温度センサ異常102、吸入バルブ異常104、吸入空気センサ異常106、噴射燃料量異常108、噴射燃料センサ異常110がある。また、失火の誤検知112の場合も考えられる。このうち、排気温度センサ異常102は、異常検出部51による閾値との比較によって検出され、例えば排気温度が1000℃を超えている場合に異常が検出される。また、吸入バルブ異常104、吸入空気センサ異常106、噴射燃料量異常108、噴射燃料センサ異常110については、異常判定部53が学習済みモデルで判定してもよいし、異常推定部55が過去と現在のセンサデータを比較して推定してもよい。失火の誤検知112についても、異常判定部53または異常推定部55のいずれかで判定または推定される。
さらに、排気温度センサ異常102には、排気温度センサ故障114の場合も考えられ、排気温度センサ故障114には、電圧異常116、素子被毒118、素子破壊120、故障誤検知122の場合がある。これらの故障及び異常についても異常判定部53または異常推定部55によって判定または推定される。
異常診断情報には、失火100が原因で同時に起こる別の異常についても記録されている。火災が発生している場合に同時に起こる異常としては、エンジンのトルク変動の拡大124がある。トルク変動が拡大する場合には、失火の散発126が発生している場合があり、トルク変動が拡大する場合に検知される異常としては、クランク角センサ異常128、スロットルバルブ異常130がある。これらの故障及び異常についても異常判定部53または異常推定部55によって判定または推定される。
このように、図3に示す異常診断情報では、異常検出結果で検出された異常と異常判定結果で判定された異常と異常推定結果で推定された異常との間の関係を記録しており、失火100が発生している場合の異常の組み合わせが記録されている。
このような異常診断情報を利用して、異常診断部57が失火100を診断する場合の一例を説明する。例えば、異常検出部51によって異常検出結果として排気温度センサ異常102が検出され、異常判定部53によって異常判定結果として吸入バルブ異常104が判定され、異常推定部55によって異常推定結果として噴射燃料量異常108が推定される。これらの結果が同時に出力された場合に、異常診断部57は、これらの結果を組み合わせて車両3に火災が発生していると診断する。このように、特定の異常の組み合わせが発生した場合に失火100が発生していると診断してもよいし、図3に示す異常のうち、特定の数、例えば3つ以上の異常が同時に発生している場合に、失火100が発生していると診断してもよい。
尚、異常検出部51と異常判定部53と異常推定部55は、常に異常を監視しており、結果を出力する順番に決まりはなく、優先順位もない。例えば、異常検出部51は異常を直接検出できるものの、センサデータの生データを監視しているので、誤検知する可能性がある。そのため、異常検出部51の異常検出結果を特に優先することもない。
出力部59は、異常検出部51から出力された異常検出結果と、異常判定部53から出力された異常判定結果と、異常推定部55から出力された異常推定結果とを表示装置7に出力して、表示装置7の同一画面上に表示する。さらに、出力部59は、異常診断部57から出力された異常診断結果についても表示装置7に出力して、表示装置7の同一画面上に表示する。
具体的に、出力部59は、図4に示す警告表示画面を表示装置7に出力することによって車両3の異常を警告する。図4に示すように、警告表示画面には、異常検出部51の異常検出結果61と、異常判定部53の異常判定結果62と、異常推定部55の異常推定結果63がそれぞれ表示されている。各結果には、現在の状態に「Alarm」が表示され、異常箇所、異常と正常の判定結果、アラームID、開始及び終了時刻がそれぞれ表示されている。
また、図4に示す警告表示画面には、Playボタン64とDataボタン65が各結果にそれぞれ用意され、異常判定結果62には解析ボタン66も用意されている。Playボタン64を押下すると、図5に示すように、センサデータの時系列変化を示す画像が、表示装置7の表示画面上に表示される。図5に示す画像は、異常検知対象部位で異常が検出された前後10秒程度の間のセンサデータの時系列変化を示しており、強調表示された範囲Aはセンサデータが閾値を超えて異常が検出された箇所である。
また、Dataボタン65を押下すると、図6に示すように、異常が検出された部位や異常が検出された部位の周囲にある部位のセンサデータを表示する。また、異常が検出された部位に関連する部位のセンサデータを表示してもよい。さらに、解析ボタン66を押下すると、異常判定結果として出力された異常の原因を解析する。原因解析の詳細については、後述する。
表示装置7は、異常警告装置43から出力された出力画面を表示する。例えば、図4に示すような警告表示画面や、図5、6に示すようなセンサデータを示す画面を表示する。また、異常診断結果として図3に示す失火の診断があった場合には、火災を知らせる警報画面を表示する。表示装置7は、管理者が操作する端末の表示画面であってもよいし、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末の表示画面であってもよい。
尚、異常警告装置43は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPUを含む汎用の電子回路と、メモリ等の周辺機器から構成されたコントローラである。異常警告装置43は、異常警告処理を実行するためのコンピュータプログラムがインストールされている。異常警告装置43の各機能は、1または複数の処理回路によって実装することができる。処理回路は、例えば電気回路を含むプログラムされた処理装置を含んでおり、また実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含んでいてもよい。
[学習済みモデルの生成]
次に、異常判定部53の学習済みモデルの生成方法を説明する。まず、学習済みモデルを生成するために、データ取得用車両を用意する。例えば、通常の車両にはエアフィルタ23にセンサは設置されていないので、図2に示すように、エアフィルタ23の入口側と出口側にそれぞれ圧力センサ35、37を設置したデータ取得用車両を特別に用意する。このデータ取得用車両を実際に走行させ、通常の車両に設置されているセンサでセンサデータを検出するとともに、圧力センサ35、37によって、エアフィルタ23を通過する前の圧力と、エアフィルタ23を通過した後の圧力をそれぞれ検出する。検出されたセンサデータは、サーバ5のデータベース41に蓄積される。
こうしてデータ取得用車両によって、センサデータが検出されると、異常判定部53は、通常の車両に設置されているセンサによって検出されたセンサデータを取得する。例えば、図2に示すように、通常の車両には、大気圧センサ29やエアフロメータ31、圧力センサ33が設置されているので、センサデータとして、大気圧や空気吸入量、吸入圧力を取得する。この他にも、図示していないセンサで検出されたスロットルバルブ開度、噴射燃料量、EGRバルブ開度、大気温度などのセンサデータも取得する。これらのセンサデータは、データ取得用車両から取得されたものであり、サーバ5のデータベース41から取得する。
次に、異常判定部53は、センサが設置されていない所定の部位にセンサが設置されていた場合に検出されるセンサデータを取得する。例えば、通常の車両にはエアフィルタ23にセンサは設置されていないので、図2に示すように、データ取得用車両のエアフィルタ23の入口側と出口側にそれぞれ設置された圧力センサ35、37で検出されたセンサデータを取得する。図2の場合、異常判定部53は、センサが設置されていない所定の部位のセンサデータとして、エアフィルタ23を通過する前の圧力と、エアフィルタ23を通過した後の圧力を、データベース41から取得する。
こうしてセンサデータを取得すると、異常判定部53は、取得したセンサデータを教師データとしてAI学習モデルに入力して学習させ、学習済みモデルを生成する。学習済みモデルは、ニューラルネットワークを利用した学習モデルであり、教師データを用いて機械学習を行って生成されている。学習モデルは、例えばサロゲートモデルである。また、学習済みモデルは、ディープラーニングを用いて生成された学習モデルでもよい。
具体的に、車両に設置されているセンサで検出したセンサデータを入力データ(xデータ)とし、センサが設置されていない部位のセンサデータを正解データ(yデータ)とした教師データを用意する。そして、この教師データをAI学習モデルに入力して学習させ、学習済みモデルを生成する。
この結果、例えば、車両に設置されている大気圧センサ29やエアフロメータ31のセンサデータを学習済みモデルに入力すると、学習済みモデルは、エアフィルタ23を通過する前後の圧力を推定して、推定センサデータとして出力する。このようにして学習済みモデルが生成される。図2では、エアフィルタ23の前後の圧力を推定する場合について説明したが、車両3のセンサが設置されていないその他の部位についても、同様に学習済みモデルを生成する。
[異常警告処理]
次に、本実施形態に係る異常警告装置43による異常警告処理を説明する。図7は、異常警告装置43による異常警告処理の処理手順を示すフローチャートである。図7に示すように、ステップS101において異常検出処理を実行し、ステップS103において異常判定処理を実行し、ステップS105において異常推定処理を実行する。以下、各処理を説明する。
[異常検出処理]
まず、ステップS101における異常検出処理を説明する。図8は、異常検出部51による異常検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、ステップS201において、異常検出部51は、車両3の異常検知対象部位のセンサデータを取得する。取得するセンサデータは、車両3に設置されたセンサから取得したデータであり、具体的に、水温、油温、エアフロメータ値、吸入圧力、O2センサ値などである。異常検出部51は、これらのセンサデータを、車両3のECUから取得してもよいし、サーバ5のデータベース41から取得してもよい。
ステップS203において、異常検出部51は、ステップS201で取得したセンサデータを所定の閾値と比較して、異常が発生しているか否かを判定する。そして、異常が発生していると判定した場合にはステップS205へ進み、異常が発生していないと判定した場合には異常検出処理を終了する。
ステップS205において、異常検出部51は、異常検出結果を出力する。異常検出結果には、異常検知対象部位毎に異常の有無が記録されている。こうして異常検知対象部位の異常が判定されると、異常検出部51による異常検出処理は終了する。このような異常検出処理により、異常の発生後直ちに異常を検出できるので、車両に甚大な故障が発生することを未然に防ぐことができ、運転者の安全を最大限確保することができる。
[異常判定処理]
次に、ステップS103における異常判定処理を説明する。図9は、異常判定部53による異常判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図9に示すように、ステップS301において、異常判定部53は、車両3の異常検知対象部位のセンサデータを取得する。取得するセンサデータは、車両3に設置されたセンサから取得したデータであり、具体的に、大気圧、吸入圧力、スロットバルブ開度、噴射燃料量、EGRバルブ開度、大気温度などである。異常判定部53は、これらのセンサデータを、車両3のECUから取得してもよいし、サーバ5のデータベース41から取得してもよい。
ステップS303において、異常判定部53は、ステップS301で取得したセンサデータを学習済みモデルに入力して、センサが設置されていない所定の部位のセンサデータを推定した推定センサデータを学習済みモデルに出力させる。例えば、車両3に設置されている大気圧センサ29やエアフロメータ31で検出されたセンサデータを、学習済みモデルに入力する。その結果、学習済みモデルは、センサが設置されていないエアフィルタ23を通過する前後の圧力を推定して、推定センサデータとして出力する。
そして、異常判定部53は、学習済みモデルから出力された推定センサデータを所定の閾値と比較して、センサが設置されていない所定の部位の異常を判定する。例えば、図2のエアフィルタ23の劣化度を判定する場合には、推定センサデータとして出力されたエアフィルタ23を通過する前の圧力と、エアフィルタ23を通過した後の圧力を用いて劣化度を算出する。そして、この劣化度が所定の閾値以下である場合に、異常判定部53は、エアフィルタ23が異常であると判定する。そして、異常が発生していると判定した場合にはステップS305へ進み、異常が発生していないと判定した場合には異常判定処理を終了する。
ステップS305において、異常判定部53は、ステップS303で判定された異常の原因を解析する。具体的に、異常判定部53は、学習済みモデルを逆解析することによって、ステップS303で判定された異常の原因を解析する。例えば、図10に示すように、y=f(xi)の学習済みモデルから推定センサデータとしてy1が出力されて異常であると判定された場合に、このy1に基づいて逆問題を解く。すると、図10に示すように、逆解析の結果として、x1、x2、x3、x4が算出される。すなわち、y1の異常の原因の候補は、x1、x2、x3、x4となる。例えば、異常y1が吸入バルブ異常である場合に、その原因の候補として、エアフロメータ故障(x1)、燃料システム故障(x2)、イグニッションコイル故障(x3)、噴射燃料量異常(x4)が求められる。
ステップS307において、異常判定部53は、異常判定結果を出力する。異常判定結果には、所定の部位における異常の有無に加えて、解析された異常の原因も記録されている。こうして所定の部位の異常が判定されると、異常判定部53による異常判定処理は終了する。このような異常判定処理では、既知の異常から学習済みモデルを構築しているので、主となる原因を迅速に特定することができる。また、原因が特定できれば、故障した車両をディーラーに入庫した後すぐに修理作業に取り掛かれるので、修理から車両の返却までに要する時間を短縮することができる。さらに、交換部品が揃っているディーラーへ優先して入庫案内をすれば、修理開始までの時間も短縮することができる。
[異常推定処理]
次に、ステップS105における異常推定処理を説明する。図11は、異常推定部55による異常推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
図11に示すように、ステップS401において、異常推定部55は、車両3の異常検知対象部位のセンサデータを取得する。取得するセンサデータは、過去に取得したセンサデータと現在取得したセンサデータであり、具体的に、エンジン回転数、大気圧、吸入圧力、スロットバルブ開度、噴射燃料量、EGRバルブ開度、大気温度などである。異常推定部55は、これらのセンサデータを、車両3のECUから取得してもよいし、サーバ5のデータベース41から取得してもよい。
ステップS403において、異常推定部55は、ステップS401で取得したセンサデータからサンプルデータを抽出する。例えば、エンジン回転数がアイドリング時や定速走行時のように、定常状態のデータをサンプルデータとして抽出する。
ステップS405において、異常推定部55は、ステップS403で抽出したサンプルデータを統計モデルに入力して、異常検知対象部位のセンサ値を算出する。統計モデルは、定常状態をモデル化したものである。
ステップS407において、異常推定部55は、ステップS405で算出されたセンサ値を用いて統計量を計算する。具体的に計算される統計量は平均値と分散値であり、正規分布曲線も算出する。
ステップS409において、異常推定部55は、過去に取得したセンサデータと、現在取得したセンサデータとを比較して、異常検知対象部位が異常であるか否かを推定する。具体的に、異常推定部55は、ステップS407で算出された過去に取得したセンサデータの統計値と、ステップS407で算出された現在取得したセンサデータの統計値とを比較して、異常検知対象部位の異常を推定する。例えば、図12に示すように、過去に取得したセンサデータの正規分布曲線90と、現在取得したセンサデータの正規分布曲線92とを比較して、所定の閾値以上異なる場合に異常であると推定する。すなわち、現在のセンサデータの定常モデルが、過去のセンサデータの定常モデルから乖離している場合には、何らかの異常があると推定する。そして、異常があると推定された場合にはステップS411へ進み、異常であると推定されなかった場合には異常推定処理を終了する。
ステップS411において、異常推定部55は、異常推定結果を出力する。異常推定結果には、異常があると推定された異常検知対象部位が記録されている。こうして異常検知対象部位の異常が推定されると、異常推定部55による異常推定処理は終了する。このような異常推定処理は、1つのセンサでは判定が困難な複合的な要因によって発生する異常に対して有用である。また、未知の不具合であっても、物理的に接続されている系上のセンサからの情報で異常を発見することが可能になる。
このようにステップS101~105の処理が実行されて各結果が出力されると、図7に戻り、ステップS107において、異常診断部57は、異常診断情報に基づいて車両3に発生している異常を診断する。例えば、図3に示すように、異常検出結果として排気温度センサ異常102が検出され、異常判定結果として吸入バルブ異常104が判定され、異常推定結果として噴射燃料量異常108が推定された場合には、車両3に火災が発生していると診断する。
ステップS109において、出力部59は、ステップS101で出力された異常検出結果と、ステップS103で出力された異常判定結果と、ステップS105で出力された異常推定結果とを、表示装置7に出力して表示装置7の同一画面上に表示させる。例えば、図4に示すような警告表示画面を表示装置7に表示する。また、異常診断部57で、図3の失火100のような異常が診断されている場合には、診断された異常についても表示装置7に出力して、表示装置7の画面上に表示する。こうして表示装置7に警告が表示されると、本実施形態に係る異常警告処理は終了する。
[変形例]
上述した実施形態では、異常警告装置43がサーバ5に設置されている場合について説明しているが、異常警告装置43を車両3に設置して車両3で異常警告処理を実行するようにしてもよい。
[実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る異常警告装置43は、センサデータに基づいて異常検知対象部位の異常を検出して異常検出結果を出力する。また、センサが設置されていない所定の部位のセンサデータを学習済みモデルで推定し、推定された推定センサデータに基づいて所定の部位が異常であるか否かを判定して異常判定結果を出力する。そして、センサで過去に取得したセンサデータと、センサで現在取得したセンサデータとを比較して異常検知対象部位の異常を推定して異常推定結果を出力し、異常検出結果と異常判定結果と異常推定結果とを表示装置の同一画面上に表示して車両の異常を警告する。これにより、異常の検出結果だけでなく、学習済みモデルを利用した異常の判定と、過去のセンサデータとの比較による異常の推定とを組み合わせて異常を警告できるので、異常を早期に検知して周囲への影響も考慮した高精度な異常の警告を行うことができる。
また、本実施形態に係る異常警告装置43の学習済みモデルは、センサデータを用いて、センサが設置されていない所定の部位にセンサが設置されていた場合に検出されるセンサデータを推定して、推定センサデータとして出力するように学習されている。これにより、センサが設置されていない車両内の所定の部位の状態を学習済みモデルで推定することができるので、センサが設置されていない所定の部位の状態も考慮して異常の警告を行うことができる。
さらに、本実施形態に係る異常警告装置43は、異常検出結果と異常判定結果と異常推定結果との間の関係から車両に発生している異常を診断するための情報を記録した異常診断情報を記憶している。そして、異常検出結果と異常判定結果と異常推定結果が出力されると、異常診断情報に基づいて車両に発生している異常を診断する。これにより、異常の検出結果だけでなく、学習済みモデルを利用した異常の判定と、過去のセンサデータとの比較による異常の推定とを組み合わせて、より重要な異常を診断することができる。
また、本実施形態に係る異常警告装置43では、異常検出結果として排気温度の異常が検出され、異常判定結果として吸入バルブの異常が判定され、異常推定結果として噴射燃料量の異常が推定された場合に、車両に火災が発生していることを診断する。これにより、異常の検出結果だけでなく、学習済みモデルを利用した異常の判定と、過去のセンサデータとの比較による異常の推定とを組み合わせて、より重要な車両の火災を診断することができる。
さらに、本実施形態に係る異常警告装置43は、センサデータを所定の閾値と比較することによって異常検出結果を出力する。これにより、異常が発生すると直ちに異常を検出できるので、車両に甚大な故障が発生することを未然に防ぐことができ、運転者の安全を最大限確保することができる。
また、本実施形態に係る異常警告装置43では、センサデータが車両の故障に関する規格に準拠したデータである。これにより、規格に準拠した汎用的なデータを利用するので、センサデータを容易に収集することができる。
さらに、本実施形態に係る異常警告装置43では、学習済みモデルを逆解析することによって所定の部位の異常の原因を解析し、解析された異常の原因が異常判定結果に含まれている。これにより、異常の原因を考慮した高精度な異常の警告を行うことができる。
また、本実施形態に係る異常警告装置43では、学習済みモデルがニューラルネットワークを利用した学習モデルである。これにより、ニューラルネットワークはセンサの時系列データの推測精度が高いので、学習済みモデルによるセンサデータの推定精度を向上させることができる。
さらに、本実施形態に係る異常警告装置43では、学習モデルがサロゲートモデルである。これにより、数値シミュレーションを行うことなく、高速にセンサデータを推定することができる。
また、本実施形態に係る異常警告装置43では、過去に取得したセンサデータが、正常時のセンサデータである。これにより、異常時のセンサデータが含まれていないので、データのばらつきがなくなり、より正確に異常を推定することができる。
さらに、本実施形態に係る異常警告装置43では、過去に取得したセンサデータの統計値と、現在取得したセンサデータの統計値とを比較して異常検知対象部位の異常を推定する。これにより、統計値を利用することができるので、より安定した異常推定結果を出力することができる。
また、本実施形態に係る異常警告装置43では、異常検知対象部位で異常が検出された前後のセンサデータの時系列変化を示す画像を表示装置の画面上に表示する。これにより、異常が検出された前後のセンサデータの変化を把握できるので、検出された異常の状態や原因を推測することができる。
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
1 異常警告システム
3 車両
5 サーバ
7 表示装置
21 エンジン
23 エアフィルタ
25 スロットルバルブ
27 吸気マニホールド
29 大気圧センサ
31 エアフロメータ
33、35、37 圧力センサ
41 データベース
43 異常警告装置
51 異常検出部
53 異常判定部
55 異常推定部
57 異常診断部
59 出力部

Claims (13)

  1. 車両内のセンサが設置された異常検知対象部位からセンサデータを取得して前記車両の異常を警告するコントローラを備えた異常警告装置であって、
    前記コントローラは、
    前記センサデータに基づいて前記異常検知対象部位の異常を検出して異常検出結果を出力し、
    前記センサが設置されていない所定の部位のセンサデータを学習済みモデルで推定し、推定された推定センサデータに基づいて前記所定の部位が異常であるか否かを判定して異常判定結果を出力し、
    前記センサで過去に取得したセンサデータと、前記センサで現在取得したセンサデータとを比較して、前記異常検知対象部位の異常を推定して異常推定結果を出力し、
    前記異常検出結果と前記異常判定結果と前記異常推定結果とを表示装置の同一画面上に表示して前記車両の異常を警告する異常警告装置。
  2. 前記学習済みモデルは、前記センサのセンサデータを用いて、前記所定の部位にセンサが設置されていた場合に検出されるセンサデータを推定して、前記推定センサデータとして出力するように学習されている請求項1に記載の異常警告装置。
  3. 前記異常検出結果と前記異常判定結果と前記異常推定結果との間の関係から前記車両に発生している異常を診断するための情報を記録した異常診断情報を記憶しておき、
    前記コントローラは、前記異常検出結果と前記異常判定結果と前記異常推定結果が出力されると、前記異常診断情報に基づいて前記車両に発生している異常を診断する請求項1または2に記載の異常警告装置。
  4. 前記異常検出結果として排気温度の異常が検出され、前記異常判定結果として吸入バルブの異常が判定され、前記異常推定結果として噴射燃料量の異常が推定された場合に、
    前記コントローラは、前記異常診断情報に基づいて前記車両に火災が発生していると診断する請求項3に記載の異常警告装置。
  5. 前記コントローラは、前記センサデータを所定の閾値と比較することによって、前記異常検出結果を出力する請求項1に記載の異常警告装置。
  6. 前記センサデータは、車両の故障に関する規格に準拠したデータである請求項1に記載の異常警告装置。
  7. 前記コントローラは、前記学習済みモデルを逆解析することによって前記所定の部位の異常の原因を解析し、解析された前記異常の原因を前記異常判定結果に含めている請求項1に記載の異常警告装置。
  8. 前記学習済みモデルは、ニューラルネットワークを利用した学習モデルである請求項1または2に記載の異常警告装置。
  9. 前記学習モデルは、サロゲートモデルである請求項8に記載の異常警告装置。
  10. 前記過去に取得したセンサデータは、正常時のセンサデータである請求項1に記載の異常警告装置。
  11. 前記コントローラは、前記過去に取得したセンサデータの統計値と、前記現在取得したセンサデータの統計値とを比較して、前記異常検知対象部位の異常を推定する請求項1に記載の異常警告装置。
  12. 前記コントローラは、前記異常検知対象部位で異常が検出された前後の前記センサデータの時系列変化を示す画像を、前記表示装置の画面上に表示する請求項1に記載の異常警告装置。
  13. 車両内のセンサが設置された異常検知対象部位からセンサデータを取得して前記車両の異常を警告する異常警告方法であって、
    前記センサデータに基づいて前記異常検知対象部位の異常を検出して異常検出結果を出力し、
    前記センサが設置されていない所定の部位のセンサデータを学習済みモデルで推定し、推定された推定センサデータに基づいて前記所定の部位が異常であるか否かを判定して異常判定結果を出力し、
    前記センサで過去に取得したセンサデータと、前記センサで現在取得したセンサデータとを比較して、前記異常検知対象部位の異常を推定して異常推定結果を出力し、
    前記異常検出結果と前記異常判定結果と前記異常推定結果とを表示装置の同一画面上に表示して前記車両の異常を警告する異常警告方法。
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