JP2024027419A - 繊維マット、該繊維マットで構成された繊維強化樹脂材及び該繊維強化樹脂材を用いた管状ライニング材 - Google Patents
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Abstract
【課題】老朽化した既設構造物の形状にフィットさせることができ、強度を向上することが可能なライニング材を構成する繊維マット、該繊維マットで構成された繊維強化樹脂材及び該繊維強化樹脂材を用いた管状ライニング材を提供すること。【解決手段】繊維マット20は、該繊維マット20の長さ方向に長く伸長するように、同方向に伸長する複数の所定長さの短強化繊維24aを該繊維の長さ方向に重ねつつ並べて成る第1層24と、該第1層24に積層され、該積層状態で、前記第1層24の前記短強化繊維24aと45°~90°の角度で交差するように、同方向に伸長する複数の所定長さの短強化繊維26aを長さ方向に重ねつつ並べて成る第2層26と、を含む。【選択図】図1
Description
本発明は、繊維マット、繊維強化樹脂材及び管状ライニング材に関し、特に、既設構造物を補修する際に既設構造物の内面の被覆に用いられるライニング材を構成する繊維マット、該繊維マットで構成された繊維強化樹脂材及び該繊維強化樹脂材を用いた管状ライニング材に関する。
下水管等の既設管は、長年の使用により劣化し、その耐用年数は一般に約50年とされている。近年、耐用年数を超える下水管が増加しており、老朽化した下水管は、管路に生じた亀裂等から下水管周囲の地下水や土砂が管路内に流入することがあり、これによって地中に空洞が生じると地面陥没の原因となる。また、下水管は地震等の地盤変動による影響を受けやすい等、種々の事情から所定の時期に何らかの補修が必要となる。
老朽化した既設管の補修方法として、既設管の内面を硬化した管状のライニング材で被覆する方法が知られている。例えば、特許文献1には、ガラス繊維等の繊維材に硬化性樹脂組成物を含浸した繊維強化樹脂材を管状に形成した管状ライニング材を用いた下水管の補修方法が記載されている。この方法では、管状繊維強化樹脂材を未硬化状態で下水管内に導入した後、管状ライニング材の両端部を閉塞して形成された密閉空間に圧縮空気を供給し、管状ライニング材を下水管の内面に押付ける。この状態で、管状ライニング材を熱や光を用いて硬化させることにより、下水管の内側に硬化した管状ライニング材で被覆する。
この方法で用いられる管状ライニング材は、例えば特許文献2に記載されているように、ガラス繊維等の繊維で形成された帯状の繊維マットに硬化性樹脂組成物を含浸し、この帯状の繊維強化樹脂材を筒体に螺旋状に巻回して管状体に形成することで製造される。製造された管状ライニング材は、その外径が補修対象となる既設管の内径よりもやや小さく形成されており、上記の圧縮空気の導入により、管状ライニング材の径を拡大させることにより、既設管の内面に対して管状ライニング材の外表面が密着するようにしている。
老朽化した既設管の内面は、内面に凹凸があり不均一な面となっているため、管状ライニング材の拡径割合が小さいとライニング材の密着性が低くなる。特許文献2では、管状ライニング材において繊維マットを構成している繊維の長さを2cm~20cmとし、さらに、繊維の伸長方向を一方向に揃えることで、管状ライニング材を圧縮空気により拡径させる際に、繊維同士を離間しやすくして、管状ライニング材が拡径する割合を高くし、既設管に対する密着性を高めている。
しかしながら、特許文献2に記載の管状ライニング材では、繊維長さを短くしているため、繊維の長さ方向の強度が、長繊維で構成された管状ライニング材に比べるとやや低下するという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、老朽化した既設構造物の形状にフィットさせることができ、強度を向上することが可能なライニング材を構成する繊維マット、該繊維マットで構成された繊維強化樹脂材及び該繊維強化樹脂材を用いた管状ライニング材を提供することにある。
上記目的を達成するために請求項1に記載の繊維マットは、
該繊維マットの長さ方向に長く伸長するように、同方向に伸長する複数の所定長さの短強化繊維を該繊維の長さ方向に重ねつつ並べて成る第1層と、
該第1層に積層され、該積層状態で、前記第1層の前記短強化繊維と45°~90°の角度で交差するように、同方向に伸長する複数の所定長さの短強化繊維を長さ方向に重ねつつ並べて成る第2層と、を含むことを特徴とする。
該繊維マットの長さ方向に長く伸長するように、同方向に伸長する複数の所定長さの短強化繊維を該繊維の長さ方向に重ねつつ並べて成る第1層と、
該第1層に積層され、該積層状態で、前記第1層の前記短強化繊維と45°~90°の角度で交差するように、同方向に伸長する複数の所定長さの短強化繊維を長さ方向に重ねつつ並べて成る第2層と、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、繊維マットでライニング材を構成した場合に、繊維マットの第2層を構成している各強化繊維が、第1層を構成している複数の短強化繊維と45°~90°の角度で交差する方向で繊維強化樹脂材の厚さ方向で重なっている。これにより、第2層を構成している各強化繊維が第1層の複数の短強化繊維のジョイント材の役割を果たすことから、ライニング材における第1層の短強化繊維同士の接着性が向上する。これにより、既設構造物の補修に用いられるライニング材にその基材として用いられた際には、第1層の短強化繊維の伸長方向の強度を向上させることができる。また、繊維マットの第1層及び第2層の繊維は、それぞれ、伸長方向が一方向に揃えられた短強化繊維であるため、繊維マットに硬化性樹脂組成物を含浸させたライニング材を既設構造物に押付けて硬化させる際に、第1層及び第2層内のそれぞれの繊維同士はそれらの伸長方向には離間し易い状態となっており、したがって、曲げ易く、既設構造物の表面形状に良好にフィットさせることができる。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の繊維マットにおいて、
前記第1層と前記第2層との間に、繊維配向が不規則な繊維で構成された第3層を含むことを特徴とする。
前記第1層と前記第2層との間に、繊維配向が不規則な繊維で構成された第3層を含むことを特徴とする。
この構成によれば、繊維が交差する方向に伸長している第1層と第2層との間に、これらと繊維配向が不規則な第3層を配置することで、各層間で繊維が絡みやすくなって各層間の接着強度が向上する。また、第3層は繊維配向が不規則であるため、繊維マットでライニング材を構成して硬化性樹脂組成物を硬化させる際に繊維同士が離間しやすく、既設構造物の表面形状に良好にフィットさせることができる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の繊維マットにおいて、
前記第1層にて前記第3層が積層される表面と反対側の表面に隣接して配置され、繊維配向が不規則な繊維で構成された第4層を有することを特徴とする。
前記第1層にて前記第3層が積層される表面と反対側の表面に隣接して配置され、繊維配向が不規則な繊維で構成された第4層を有することを特徴とする。
この構成によれば、繊維マットを複数積層して使用する際に、第1層と第2層との間には、第3層又は第4層が配置されることとなるが、第3層及び第4層は、それぞれ、繊維配向が不規則な繊維で構成されているため、各層間で繊維が絡みやすくなって各層間の接着強度を向上させることができる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の繊維マットにおいて、
前記第3層と前記第4層とは、繊維構成が等しいことを特徴とする。
前記第3層と前記第4層とは、繊維構成が等しいことを特徴とする。
この構成によれば、繊維マットを複数積層して使用する際に、第1層と第2層との間には、第3層又は第4層が配置されることとなり、この第3層及び第4層は、繊維構成が等しいため、厚さ方向に複数積層される第1層と第2層との間の接着性を均一にすることができる。
また、上記目的を達成するために請求項5に記載の繊維強化樹脂材は、請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維マットに硬化性樹脂組成物が含浸されてなることを特徴とする。
この構成によれば、第2層を構成している各短強化繊維が、第1層を構成している複数の短強化繊維と繊維強化樹脂材の厚さ方向で重なって、第1層の複数の短強化繊維のジョイント材の役割を果たすため、第1層の短強化繊維同士の接着性が向上する。これにより、繊維強化樹脂材にて第1層の短強化繊維の伸長方向の強度を向上させることができる。
また第1層及び第2層の繊維は、それぞれ、伸長方向が一方向に揃えられた短強化繊維であるため、硬化性樹脂組成物を硬化させる際に、各層において、繊維同士が離間しやすくなり、既設構造物の内面形状に良好にフィットさせることができる。
また第1層及び第2層の繊維は、それぞれ、伸長方向が一方向に揃えられた短強化繊維であるため、硬化性樹脂組成物を硬化させる際に、各層において、繊維同士が離間しやすくなり、既設構造物の内面形状に良好にフィットさせることができる。
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の繊維強化樹脂材において、
前記第1層及び前記第2層の前記短強化繊維は、それぞれ、長さが10cm~50cmであることを特徴とする。
前記第1層及び前記第2層の前記短強化繊維は、それぞれ、長さが10cm~50cmであることを特徴とする。
この構成によれば、繊維強化樹脂材を既設構造物に密着させて拡径させる際に、各層における繊維が長さ方向に移動する離間性能を良好にすることができる。
また、請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の繊維強化樹脂材において、
前記第1層と前記第2層とは、前記短繊維の質量比が、5:1~6:1に設定されたことを特徴とする。
前記第1層と前記第2層とは、前記短繊維の質量比が、5:1~6:1に設定されたことを特徴とする。
この構成によれば、第1層の短強化繊維と第2層の短強化繊維との質量比が5:1~6:1とすることで、第1層の短強化繊維の伸長方向の強度を、第2層を有していない繊維強化樹脂材に比べて約10%向上させることができ、かつ、繊維強化樹脂材の厚さの増加を抑えることができる。
また、請求項8に記載の発明は、既設管の補修に用いられる管状ライニング材であって、
請求項5に記載の繊維強化樹脂材を厚さ方向に複数積層して管状に形成されたことを特徴とする。
請求項5に記載の繊維強化樹脂材を厚さ方向に複数積層して管状に形成されたことを特徴とする。
この構成によれば、下水管等の既設管の補修に用いられる管状ライニング材の一定の厚みを確保しつつ、管状ライニング材を構成している繊維の離間性能を高く保持することができる。また、第2層の各短強化繊維が第1層の短強化繊維同士の接着力を高めるジョイント材の役割を果たすことで、管状ライニング材を硬化させた更生管において、第1層の短強化繊維の伸長方向における強度を向上させることができる。また、既設管内に未硬化状態の管状ライニング材を導入し、これを圧縮空気により既設管の内面に押付けた場合に、各層の短強化繊維同士が離間し易くなっているので伸長方向の良好な変形性が確保され、管状ライニング材を既設管の内面に密着させることができる。これにより、変形した既設管に対して管状ライニング材をフィットさせて、シワの少ない高品質な更生管を形成することができる。
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の管状ライニング材において、
前記管状ライニング材は、内周面を被覆する平滑な薄膜体を有することを特徴とする。
前記管状ライニング材は、内周面を被覆する平滑な薄膜体を有することを特徴とする。
この構成によれば、管状ライニング材を硬化させた更生管の内面を滑らかに仕上げることができる。
また、請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の管状ライニング材において、
前記第1層の前記短強化繊維の伸長方向は、前記管状ライニング材の軸方向に対して65°~90°傾斜していることを特徴とする。
前記第1層の前記短強化繊維の伸長方向は、前記管状ライニング材の軸方向に対して65°~90°傾斜していることを特徴とする。
この構成によれば、第1層の短強化繊維の伸長方向に対する曲げ強度が、第2層の短強化繊維の伸長方向に対する曲げ強度よりも高くなっており、さらに、第1層の短強化繊維の伸長方向は、管状ライニング材の軸方向(すなわち補修後の更生管の軸方向)に対して65°~90°傾斜している、すなわち軸方向よりも周方向に沿って伸長していることから、更生管の径方向の圧縮に対する強度が高くなる。これにり、更生管に常時作用する径方向の外力に対して強度の高い構造とすることができる。
本発明に係る繊維マット、該繊維マットで構成された繊維強化樹脂材及び該繊維強化樹脂材を用いた管状ライニング材によれば、第2層を構成している各短強化繊維が、第1層を構成している短強化繊維の接着力を高めるジョイント材の役割を果たすため、第1層の短強化繊維同士の接着性が向上する。これにより、繊維マットで構成された繊維強化樹脂材にて第1層の短強化繊維の伸長方向の強度を向上させることができる。また第1層及び第2層の繊維は、それぞれ、伸長方向が一方向に揃えられた短強化繊維であるため、硬化性樹脂組成物を硬化させる際に、各層において、繊維同士が離間しやすくなり、既設構造物の内面形状に良好にフィットさせることができる。
図1は、本発明の一実施形態である繊維強化樹脂材10の断面図である。繊維強化樹脂材10は、老朽化した既設構造物の補修や更生に用いられ、既設構造物の形状にフィットさせることが可能な材料である。
繊維強化樹脂材10は、基材繊維層12と、第1の短強化繊維層(第1層)14と、不規則繊維層(第3層)15と、第2の短強化繊維層(第2層)16とを備えている。基材繊維層12、第1の短強化繊維層14、不規則繊維層15及び第2の短強化繊維層16には、硬化性樹脂組成物19が含浸されている。各繊維層12、14,15,16は、それぞれ繊維を含む層であり、本実施形態では、図2に示すように、これらの層を形成する繊維によって帯状の繊維マット20が形成し、その後、繊維マット20に硬化性樹脂組成物19を含浸している。なお、繊維マット20の形状は帯状に限られず、補修に用いられる既設構造物の形状に合わせて任意の形状に形成することができる。
次に、繊維強化樹脂材10の各繊維層12,14,15,16を構成する繊維について説明する。図2は、繊維マット20において各繊維層12,14,15,16を構成している繊維を模式的に示した説明図である。以下の説明では、繊維マット20において、基材繊維層12、第1の短強化繊維層14、不規則繊維層15及び第2の短強化繊維層16のそれぞれに対応する層を、基材層22(繊維マットの第4層)、第1の一方向配向層(繊維マットの第1層)24、不規則配向層25(繊維マットの第3層)及び第2の一方向配向層26(繊維マットの第2層)と称する。
図2に示すように、基材繊維層12を構成する基材層22は、繊維配向が不規則な繊維22aで構成されている。本実施形態では、所定長さの複数本の繊維(例えば数百から数千本の繊維)を束ねた繊維配向が不規則な繊維ストランドを用いている。繊維マット20の基材層22は、繊維22aを図示していない布の上に配置して薄いヴェール状にすることで形成することができる。
第1の短強化繊維層14を構成する第1の一方向配向層24及び第2の短強化繊維層16を構成する第2の一方向配向層24は、それぞれ、所定長さに設定された複数の短強化繊維24a,26aで構成されている。第1及び第2の短強化繊維層14,16を構成する短強化繊維24a,26aは、それぞれ、繊維配向が一方向に揃えられており、第2の短強化繊維層16の短強化繊維26aは、第1の短強化繊維層14の短強化繊維24aと45°~90°の範囲で交差するように配向されている。
次に、短強化繊維によって第1及び第2の一方向配向層24,26を形成する方法の一例について説明する。各一方向配向層24,26は、複数本の長強化繊維(例えば数百から数千本)を束ねた長強化繊維のストランド又はロービングを所定の長さで切断して並べることで形成することができる。例えば、長強化繊維のストランド又はロービングを短強化繊維となるように所定の長さで切断し、切断された各短強化繊維を長さ方向に重なりつつ同方向に伸長するように並べる。並べられた各短強化繊維は、例えば接着剤等のバインダ材を用いて分離しないように接合することが可能である。なお、繊維マットの幅が短い場合(例えば50cm以下)、第2の一方向配向層26の短強化繊維26a(すなわち、繊維マット20の幅方向に伸長する短強化繊維26a)は、長強化繊維からなるストランド又はロービングを、繊維マット20の幅方向の長さに合わせて切断したものであってもよい。かかる場合であっても、寸法の短い繊維マット20の幅方向の長さに強化繊維の長さが揃えられるため、第2の一方向配向層24の繊維長を短く設定することができる。図3は、第1の一方向配向層24を構成する短強化繊維24aを示す図である。図3に示すように、短強化繊維24aは、同方向に伸長しており、少なくとも一部が、長さ方向と直交する方向にて隣接する短強化繊維と重なるように配置されている。なお、第2の一方向配向層26を構成する短強化繊維26aも、図3に示す例と同様の配置とすることができる。
本実施形態では、第1の一方向配向層24において、短強化繊維24aが繊維マット20の長さ方向に平行に伸長するように配置されている。これにより、短強化繊維24aが繊維マット20の長さ方向に伸長する第1の一方向配向層24が形成される。なお、短強化繊維24aの伸長方向は、これに限られず、繊維マット20の長さ方向に対して傾斜していてもよいが、繊維マット20の幅方向よりも長さ方向に長く延びるように配置される。
第2の一方向配向層26は、不規則配向層25を介して第1の一方向配向層24に積層され、積層状態で、短強化繊維26aが第1の短強化繊維層14の短強化繊維24aに対して少なくとも45度の角度で交差するように配置され、この交差角度は85度から90度の範囲であることがより好ましい。本実施形態では、第2の一方向配向層26において、短強化繊維26aを繊維マット20の幅方向に伸長するように配置している。これにより、短強化繊維26aが第1の一方向配向層24の短強化繊維24aとほぼ直角に交差する第2の一方向配向層26が形成される。なお、第1及び第2の一方向配向層24,26における短強化繊維24a,26aの交差角度は90度(直交)に限られず、適宜設定することができる。
第1の短強化繊維層14と第2の短強化繊維層16との間に配置される不規則繊維層15は、繊維配向が不規則(すなわちランダム配向)な繊維で構成されている。不規則繊維層15を構成する繊維は、短繊維であっても比較的長い長繊維であってもよく、長繊維の場合、繊維は、不規則に曲がっていることが好ましい。本実施形態では、不規則繊維層15が、第1及び第2の短強化繊維層14,16を構成する短強化繊維24a,26aよりも長さが短く繊維配向が不規則な短繊維25aで構成されている。不規則繊維層15を構成している不規則配向層25において、短繊維25aは、複数本の短繊維を束ねた短繊維ストランドを用いることができる。
各層22,24,25,26を有する繊維マット20は、以下の手順で製造することができる。まず、布の上に、基材繊維層12を形成する繊維22aを配置する。その上に、第1の短強化繊維層14を形成する短強化繊維24aを配置する。次に、短強化繊維24aの上に、不規則繊維層15を構成する短繊維25aを散布する。次に、短繊維25aの上に、第2の短強化繊維層16を形成する短強化繊維26aを配置する。各短強化繊維26aは、第1の短強化繊維層14を形成する短強化繊維24aと交差するように、平行に並べて配置される。なお、繊維マット20は、必要に応じて、各層22,24,25,26を貫通する糸で縫い合わされて一体化されてもよい。縫い合わせに使用される糸は、伸縮性又は非伸縮性の糸とすることができる。形成された帯状の繊維マット20は、ロール状にされて保管される。
繊維マット20において、基材繊維層12は、不規則繊維層15と等しい繊維構成、すなわち、不規則繊維層15と同様に不規則な繊維配向であって、不規則繊維層15とほぼ等しい繊維長さの繊維層であることが好ましい。さらに、基材繊維層12と、不規則繊維層15とは、単位面積当たりの繊維の質量がほぼ等しくなるように設定することが好ましい。なお、上述した繊維マット20の製造の手順では、基材繊維層12を形成する繊維22aや、不規則繊維層15を構成する短繊維25aを散布して、各層12,15を形成しているが、基材繊維層12及び/又は不規則繊維層15は、一枚の繊維配向が不規則な繊維マットで構成されており、この繊維マットの上に第1の短強化繊維層14を形成する短強化繊維24aや第2の短強化繊維層16を形成する短強化繊維26aを配置してもよい。基材繊維層12及び/又は不規則繊維層15を構成する繊維マットは、例えば、所定長さに切断したストランドをランダム方向に分散させて均一な厚みに積層し、結合剤におりマット状にしたガラスチョップドストランドマット(CM)、連続したガラス繊維を渦巻状に積み重ねて結合剤によりマット状にしたガラスコンティニュアスストランドマット(CSM)等とすることができる。
図4は、繊維マット20に硬化性樹脂組成物19を含浸する工程の説明図である。芯棒50に巻き付けられたロール状の繊維マット20は、一端側が引っ張られて、回転する別の芯棒58に巻き付けられる。この2つの芯棒50,58の間で帯状の繊維マット20に、硬化性樹脂組成物19が含浸される。硬化性樹脂組成物19はタンク19に貯留されており、タンク19に接続された配管53を通って配管53の先端部に形成された複数のノズル口54から繊維マット20に向かって吐出される。ノズル口54の下流側には、断面が下流側に向かって狭くなる楔状となるように配置された対を成す挟持板56-1,56-2が配置されており、この挟持板56-1,56-2間を繊維マット20が通過することで、繊維マット20内に硬化性樹脂組成物19が含浸される。また、余剰分の硬化性樹脂組成物19は、挟持板56-1,56-2を通過する際に下方に設置された容器57内へ落とされる。これにより、図1に示す繊維強化樹脂材10を形成することができる。
繊維マット20に含浸される硬化性樹脂組成物19は、光で硬化する樹脂組成物でも熱で硬化する樹脂組成物でもよい。いずれの硬化性樹脂組成物19でも、ビニルエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の重合性樹脂をスチレン等の溶媒に溶かしたものを使用することができ、光硬化性樹脂組成物の場合はアゾ化合物等の光重合開始剤が配合され、熱硬化性樹脂組成物の場合は熱に反応する有機過酸化物が配合される。
繊維強化樹脂材10において、各繊維層12,14,15,16を構成する繊維のうち、少なくとも第1及び第2の短強化繊維層14,16を構成する繊維は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維及びアラミド繊維からなる群から選択される少なくとも1種である。これら繊維は強度が高いため、繊維強化樹脂材10で形成される更生構造物の強度を十分に高くすることができる。各繊維層12,14,15,16において、上記繊維は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、基材繊維層12及び不規則繊維層15を構成する繊維は、第1及び第2の短強化繊維層14,16を構成する短強化繊維24a,26aよりも強度の弱い繊維とすることができる。
第1及び第2の短強化繊維層14,16において、短強化繊維24a,26aの長さは、例えば、10cm~50cm、好ましくは15cm~40cm、より好ましくは20cm~30cmである。繊維の太さは特に限定されないが、例えば、10μm~40μmとすることができる。本実施形態では、第2の短強化繊維層16の短強化繊維26aの長さが、第1の短強化繊維層14の短強化繊維24aの長さよりも短くなっている。なお、第1及び第2の短強化繊維層14,16の短強化繊維24a,26aの長さは、同じであってもよく、第1の短強化繊維層14の方が長くてもよい。繊維マット20を既設管の補修に用いる管状ライニング材の材料として用いる場合、第1及び第2の短強化繊維層14,16の短強化繊維24a,26aの長さは、補修対象となり既設管の内周の周長の1/2以下の長さであることが好ましく、内周の周長の1/3以下の長さであることがより好ましい。
基材繊維層12と不規則繊維層15とは繊維構成が等しいことが好ましい。これらの層12,15を構成する繊維は、例えば、渦巻き状に積み重ねた連続した繊維、不規則な方向を向く複数の略直線状の短繊維、又は、ランダムに曲がった短繊維、などとすることができる。基材繊維層12や不規則繊維層15が短繊維で形成されることにより、繊維強化樹脂材10を押圧して硬化性樹脂組成物19を硬化させる際の繊維同士の離間性能をより良好に保つことができる。基材繊維層12や不規則繊維層15を構成する短繊維の長さは、第1及び第2の短強化繊維層14,16を構成する短強化繊維よりも短いことが好ましい。
本実施形態では、第1の短強化繊維層14及び第2の短強化繊維層16における短強化繊維の質量は、第2の短強化繊維層16よりも第1の短強化繊維層14の方が大きくなっている。第1の短強化繊維層14と第2の短強化繊維層16とにおいて短強化繊維の質量比は、5:1~6:1の範囲であることが好ましい。このような質量比にすることで、第2の短強化繊維層16を有しておらず且つ短強化繊維の質量が等しい繊維強化樹脂材10と比較した場合に、第1の短強化繊維層14の短強化繊維の伸長方向における繊維強化樹脂材10の強度を10%程度大きくすることができる。
本実施形態では、第1及び第2の短強化繊維層14,16のそれぞれにおいて、短強化繊維と硬化性樹脂組成物19との質量比(短強化繊維:硬化性樹脂組成物)が、約50:50に設定されている。このような質量比にすることで、各短強化繊維層14,16において、短強化繊維間に硬化性樹脂組成物19を十分に浸透させつつ、硬化性樹脂組成物19の量を抑えることができる。
本実施形態の繊維強化樹脂材10では、上記のとおり、第1の短強化繊維層14の方が第2の短強化繊維層16よりも短強化繊維及び硬化性樹脂組成物19の質量が大きくなっている。また、各繊維層12,14,15,16における繊維の質量は、第1の短強化繊維層14が最も大きく、次に、第2の短強化繊維層16、不規則繊維層15、基材繊維層12の順で質量が小さくなるように設定されることが好ましく、不規則繊維層15と基材繊維層12の質量は等しく設定されることがより好ましい。一例として、各層の繊維の質量は、基材繊維層12が30g/m2、第1の短強化繊維層14が560g/m2、不規則繊維層15が30g/m2、第2の短強化繊維層16が100g/m2とすることができる。
また、本実施形態の繊維強化樹脂材10では、図1に示すように、基材繊維層12の厚さd1、第1の短強化繊維層14の厚さd2、不規則繊維層15の厚さd3及び第2の短強化繊維層16の厚さd4が、d2>d4>d3≧d1となっている。
なお、繊維強化樹脂材10は、樹脂が含浸された第1の短強化繊維層14及び第2の短強化繊維層16を少なくとも1つ有する構成であればよく、例えば、不規則繊維層15を有しておらず、第1の短強化繊維層14と第2の短強化繊維層16とが隣接する構成であってもよい。本実施形態のように、第1及び第2の短強化繊維層14,16の間に不規則繊維層15を設けることで、各繊維層14,15,16間で繊維が絡みやすくなり、各繊維層14,15,16間の接着強度が向上する。また、繊維強化樹脂材10は、第1の短強化繊維層14及び/又は第2の短強化繊維層16を2つ以上有する構成であってもよい。また、第1及び第2の短強化繊維層14,16が積層される順番は、上述したものに限られず、例えば基材繊維層12に隣接して第2の短強化繊維層16を積層する等、任意に設定することができる。
次に、繊維強化樹脂材10を用いた管状ライニング材40について説明する。図5は、管状ライニング材40の一部破断斜視図であり、図6は、環状ライニング材40の厚さ方向の断面図である。管状ライニング材40は、下水管等の既設管の補修に用いられ、内面側から外面側に向かって順に、インナーフィルム41、第1の薄膜体42、繊維強化樹脂材10、第2の薄膜体44及びアウターフィルム46を備えている。管状ライニング材40は、繊維強化樹脂材10が厚さ方向に複数積層された状態で管状に形成されている。図6では、管状ライニング材40が6層の繊維強化樹脂材10-1,10-2,10-3,10-4,10-5,10-6を備えた例を示しているが、繊維強化樹脂材10の積層数はこれに限られず、2層以上とすることができる。
次に、繊維強化樹脂材10によって既設管の補修に用いる管状ライニング材40を製造する方法について説明する。図7は、管状ライニング材40を製造する過程の一例を示す概略図である。
管状ライニング材40の製造には、円柱状に形成された巻回用のマンドレル60が使用される。マンドレル60には、予め、筒状のインナーフィルム28が装着されている。インナーフィルム12は必要に応じて用いられるものであり、製造される管状ライニング材40の内面を保護する役割を有する。
マンドレル60にインナーフィルム41が装着された状態で、帯状に形成された第1の薄膜体41をインナーフィルム412の外周上に螺旋状に巻回する。これにより、インナーフィルム41の外周面が筒状の第1の薄膜体41で覆われる。
次に、帯状に形成された繊維強化樹脂材10を第1の薄膜体41の外周面上に螺旋状に巻回する。これにより、第1の薄膜体41の外周面が筒状の繊維強化樹脂材10で覆われる。本実施形態では、ロール状の繊維強化樹脂材10-1,10-2が、マンドレル60の周りに2つ配置されており、それぞれのロールから繊維強化樹脂材10が繰り出されて第1の薄膜体41の外周上に巻回される。そして、各繊維強化樹脂材10-1,10-2が交互に巻回されて、順次重ねられていく。図示した例では、マンドレル60を基準として、2つの繊維強化樹脂材10-1,10-2のロールを相対する位置に配置した例を示しているが、繊維強化樹脂材10のロールは1つでもよいし、マンドレル60に対して3つ以上配置してもよい。すなわち、ロールは1つでも複数個でもよい。
繊維強化樹脂材10は、上述した第1の短強化繊維層14を構成する短強化繊維の伸長方向が、管状ライニング材40の軸方向を基準として65~90°なるように角度調整されて巻回される。
本実施形態のように、第1の短強化繊維層14の短強化繊維の伸長方向が、帯状の繊維強化樹脂材10の長さ方向と同方向である場合、繊維強化樹脂材10を螺旋状に巻回する際の螺旋角度が65~85°とされていることが好ましい。螺旋角度とは、図8において角度αで示されるものである。図8(a)は管状ライニング材40を示し、図8(b)は、管状ライニング材40内の第1の短強化繊維層14の短強化繊維24aと第2の短強化繊維層16の短強化繊維26aの配向状態を示している。図8(b)において、角度αを形成する直線Bは、管状ライニング材40の軸方向に延びる直線であり、直線Aは、第1の短強化繊維層14の短強化繊維24aの伸長方向に延びる直線である。
次に、帯状に形成された第2の薄膜体44を筒状に形成された繊維強化樹脂材10の外周面上に螺旋状に巻回する。これにより、繊維強化樹脂材10の外周面が筒状の第2の薄膜体44で覆われ、内面側から順に、第1の薄膜体42、繊維強化樹脂材10及び第2の薄膜体44の層を有する管状体45が形成される。
第1の薄膜体42及び第2の薄膜体44は、それぞれ、繊維強化樹脂材10の表面よりも平滑な薄厚のシートである。各薄膜体42,44は、例えば、ポリエステル等の樹脂製の不織布や、この不織布に僅かに樹脂を含浸させたものとすることができる。平滑な薄膜体42,44で繊維強化樹脂材10の表面を覆うことで、管状ライニング材40の表面を平滑にすることができ、管状ライニング材40を硬化させた更生管の表面を滑らかに仕上げることができる。
その後、管状体45の外周上には、アウターフィルム46-1、46-2が設けられる。図7に示す例では、2つの帯状のアウターフィルム46-1、46-2が管状体45を挟んで対向するように配置されている。そして、2つの帯状のアウターフィルム46-1、46-2の幅方向端部を熱圧着装置62において熱圧着して互いに融着する。これにより、一体となったアウターフィルム46-1、46-2に、インナーフィルム41、管状体45が内包される。アウターフィルム46-1、46-2の幅は、これらを合計した長さが、管状体45の周長よりも長ければよい。
このように製造された管状ライニング材40は、図5に示すように、内面側から順に、インナーフィルム41、第1の薄膜体42、繊維強化樹脂材10、第2の薄膜体44及びアウターフィルム46を備えている。インナーフィルム41及びアウターフィルム46は従来から管状ライニング材40の製造に用いられているものでよく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどを用いることができる。硬化性樹脂組成物19が光硬化性樹脂組成物の場合、インナーフィルム41は照射する光に対して透過性を有するものを用いる。製造された管状ライニング材40は、保管及び運搬のために、押し潰されて折り畳まれた状態となる。図7では、折り畳まれた管状ライニング材40が収容箱64に収容されている。
次に、管状ライニング材40を用いた既設管の補修方法について説明する。図9は、管状ライニング材を用いた既設管の補修方法の説明図である。本実施形態において、既設管補修方法は、管状ライニング材40を既設管80内に導入する導入工程と、導入された管状ライニング材40を拡径し、既設管80の内面に管状ライニング材40を押圧して密着させる拡径工程と、拡径された状態の管状ライニング材40を硬化する硬化工程と、を含む。本実施形態では、既設管80の一例として地中に埋設された下水管(下水道本管)を記載している。
補修対象となる既設管80は、2つのマンホール82-1,82-2の間に配設され、これらを連通している。補修作業において、マンホール82-1,82-2を介して既設管80の上流側及び下流側に設置された既設管81-1,82-2には、下水の流れを堰き止めるための止水部材70-1,70-2が設置される。止水部材70-1,70-2としては、内部に空気等の流体を供給することにより膨張するゴム製のパッカーを用いることができる。
管状ライニング材40は、一方のマンホール82-1から既設管80内に導入する(導入工程)。導入後、管状ライニング材40の両端を閉塞部材74-1,74-2によって閉塞する。この状態で、地上の作業車両76に搭載された圧縮空気供給手段であるコンプレッサ76Aから、ホース77を介して管状ライニング材40の閉塞空間88内に圧縮空気を導入する。閉塞空間88内に導入された圧縮空気により、管状ライニング材40が拡径されて既設管80の内周面に押し当てられる。これにより、既設管80の内周面に管状ライニング材40の外周面が密着する(拡径工程)。管状ライニング材40の一方の端部から導入された空気は、他方の端部に接続されたホース79を介して排出される。排出された空気は、地上に配置された作業車両78に搭載された脱臭装置78Aへ送られ、臭気原因物質が除去される。
その後、管状ライニング材40の内部に導入した光照射装置72により、管状ライニング材40の内部から光を照射する。これにより、管状ライニング材40の硬化性樹脂組成物19が硬化し、既設管80の内側に樹脂製の更生管が形成される(硬化工程)。光照射装置72は、牽引装置(図示せず)の牽引ロープ73に連結されており、牽引ロープ73を牽引することで管状ライニング材40内を移動させることができる。管状ライニング材40が硬化した後、インナーフィルム41は必要に応じて引き剥がされる。図9では、硬化性樹脂組成物19として光硬化性樹脂組成物を使用した管状ライニング材40を用いた例を示しているが、熱硬化性樹脂組成物を使用した管状ライニング材40の場合は、光照射の代わりに蒸気等によって、管状ライニング材40を加熱する。
本実施形態の繊維強化樹脂材10を用いた管状ライニング材40では、図8に示すように、第2の短強化繊維層16を構成している各短強化繊維26aが、第1の短強化繊維層14を構成している複数の短強化繊維24aと繊維強化樹脂材の厚さ方向で重なっている。これにより、第2の短強化繊維層16の短強化繊維26aは、第1の短強化繊維層14の複数の短強化繊維24aの接合強度を向上させるジョイント材の役割を果たすこととなり、第1の短強化繊維層14の短強化繊維24a同士の接着性が向上する。一方向に配向された短強化繊維からなる繊維強化樹脂材では、繊維長の長い長強化繊維を用いたものに比べて、繊維の伸長方向における強度が低下するが、本実施形態のように、第2の短強化繊維層16を設けることで、第1の短強化繊維層14の短強化繊維24aの伸長方向の強度を向上させることができる。
また、本実施形態では、第2の短強化繊維層16を構成している短強化繊維26aが、第1の短強化繊維層14の短強化繊維24aの伸長方向と直交する方向に伸長しているため、第2の短強化繊維層16の短強化繊維26aが第1層の短強化繊維24aと重なる繊維の本数を多くすることができる。これにより、第1の短強化繊維層14の短強化繊維24aの伸長方向の強度をより向上させることができる。また、第1の短強化繊維層14と第2の短強化繊維層16との間に、不規則繊維層15を配置したことで、各層14,15,16間の接着強度が向上されている。また、繊維強化樹脂材10を複数積層して管状ライニング材40を構成する場合、第2の短強化繊維層16と、これに積層される別の繊維強化樹脂材10の第1の短強化繊維層16との間に基材繊維層12が配置されることとなるが、基材繊維層12と不規則繊維層15の繊維構成が等しいものでは、管状ライニング材40の厚さ方向において、第1の短強化繊維層16と第2の短強化繊維層16との間の接着性がほぼ均一になるようにすることができる。
また、第1及び第2の短強化繊維層14,16は、それぞれ、伸長方向が一方向に揃えられた長さが10cm~50cmの短強化繊維24a,26aで構成されているため、管状ライニング材40を拡径して既設管80に密着させる際に、各層14,16において、短強化繊維同士が離間しやすくなり、既設管80の内面形状に良好にフィットさせることができる。このように、繊維強化樹脂材10を用いた管状ライニング材40では、拡径度合いを大きくできるため、拡径前の管状ライニング材40の径を小さくして作業性を向上させることができる。また、老朽化して凹凸や変形が生じた既設管80を補修する場合に、その箇所に応じた拡径度合いとさせることができ、凹凸や変形等の形状に追従したシワ等の少ない品質の良好な更生管を形成することができる。
さらに、本実施形態では、管状ライニング材40を硬化させた更生管の内周面が平滑な第1の薄膜体42で覆われているため、更生管の内周面を滑らかに仕上げることができる。
また、管状ライニング材40では、短強化繊維の質量が、第2の短強化繊維層16よりも第1の短強化繊維層14の方が大きくなっており、第1の短強化繊維層14の短強化繊維24aの伸長方向に対する曲げ強度が、第2の短強化繊維層16の短強化繊維26aの伸長方向に対する曲げ強度よりも高くなっている。図8に示すように、第1の短強化繊維層14の短強化繊維24aの伸長方向は、管状ライニング材40の軸方向(すなわち補修後の更生管の軸方向)に対して65°~90°傾斜しており(図8の角度α参照)、更生管の軸方向よりも周方向に沿って伸長しているため、更生管の径方向の圧縮に対する強度が高くなる。これにり、更生管に常時作用する径方向の外力に対して強度の高い構造とすることができる。
次に、繊維強化樹脂材10の他の実施形態について説明する。図10は、繊維強化樹脂材10の他の実施形態を示す断面図である。本実施形態の繊維強化樹脂材10は、外表面が第1の被膜層11と、第2の被膜層18とで被覆されており、繊維強化樹脂材10が、第1の薄膜層11と、基材繊維層12と、第1の短強化繊維層(第1層)14と、不規則繊維層(第3層)15と、第2の短強化繊維層(第2層)16と、第2の薄膜層18とを備えている。第1の薄膜層11及び第2の薄膜層18は、上述した第1の薄膜体42及び第2の薄膜体44と同様の薄膜体で形成することができる。
図10に示す繊維強化樹脂材10は、繊維マット20に硬化性樹脂組成物19が含浸された樹脂含浸繊維マットを形成した後、この樹脂含浸繊維マットの基材繊維層12の外表面を第1の薄膜層11で被覆し、第2の短強化繊維層16の外表面を4第2の薄膜層18で被覆することで製造することができる。このように、繊維強化樹脂材10の外表面が平滑な薄膜層11,18で覆われることで、繊維強化樹脂材10を硬化させて形成した更正構造物の表面を滑らかに仕上げることができる。なお、繊維強化樹脂材10は、一方の表面にのみ薄膜層11又は18を有する構成であってもよい。
なお、本発明は上述した各実施形態や変形例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、本発明の繊維強化樹脂材10は、少なくとも第1の短強化繊維層14及び第2の短強化繊維層16を備えた構成であればよい。
また、例えば、繊維強化樹脂材10は、繊維マット20を構成する第1の一方向配向層24、不規則配向層25及び第2の一方向配向層26を個別に形成し、各層24,25,26に別個に硬化性樹脂組成物19を含浸した後、樹脂が含浸された各層24,25,26を積層して形成してもよい。
10 繊維強化樹脂材
11 第1の被膜層
12 基材繊維層(第4層)
14 第1の短強化繊維層(第1層)
15 不規則繊維層(第3層)
16 第2の短強化繊維層(第2層)
18 第2の被膜層
19 硬化性樹脂組成物
20 繊維マット
22 基材層
22a 繊維
24 第1の一方向配向層
24a,26a,32 強化繊維
25 不規則配向層
25a 短繊維
26 第2の一方向配向層
30 ロービング材
34 バインダ
40 管状ライニング材
41 インナーフィルム
42 第1の薄膜体
44 第2の薄膜体
46 アウターフィルム
72 光照射装置
76A コンプレッサ
80 下水管(既設管)
82 マンホール
11 第1の被膜層
12 基材繊維層(第4層)
14 第1の短強化繊維層(第1層)
15 不規則繊維層(第3層)
16 第2の短強化繊維層(第2層)
18 第2の被膜層
19 硬化性樹脂組成物
20 繊維マット
22 基材層
22a 繊維
24 第1の一方向配向層
24a,26a,32 強化繊維
25 不規則配向層
25a 短繊維
26 第2の一方向配向層
30 ロービング材
34 バインダ
40 管状ライニング材
41 インナーフィルム
42 第1の薄膜体
44 第2の薄膜体
46 アウターフィルム
72 光照射装置
76A コンプレッサ
80 下水管(既設管)
82 マンホール
Claims (10)
- 該繊維マットの長さ方向に長く伸長するように、同方向に伸長する複数の所定長さの短強化繊維を該繊維の長さ方向に重ねつつ並べて成る第1層と、
該第1層に積層され、該積層状態で、前記第1層の前記短強化繊維と45°~90°の角度で交差するように、同方向に伸長する複数の所定長さの短強化繊維を長さ方向に重ねつつ並べて成る第2層と、を含むことを特徴とする繊維マット。 - 前記第1層と前記第2層との間に、繊維配向が不規則な繊維で構成された第3層を含むことを特徴とする請求項1に記載の繊維マット。
- 前記第1層にて前記第3層が積層される表面と反対側の表面に隣接して配置され、繊維配向が不規則な繊維で構成された第4層を有することを特徴とする請求項2に記載の繊維マット。
- 前記第3層と前記第4層とは、繊維構成が等しいことを特徴とする請求項3に記載の繊維マット。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維マットに硬化性樹脂組成物が含浸されてなることを特徴とする繊維強化樹脂材。
- 前記第1層及び前記第2層の前記短強化繊維は、それぞれ、長さが10cm~50cmであることを特徴とする請求項5に記載の繊維強化樹脂材。
- 前記第1層と前記第2層とは、前記短強化繊維の質量比が、5:1~6:1に設定されたことを特徴とする請求項5に記載の繊維強化樹脂材。
- 既設管の補修に用いられる管状ライニング材であって、
請求項5に記載の繊維強化樹脂材を厚さ方向に複数積層して管状に形成されたことを特徴とする管状ライニング材。 - 前記管状体の内周面を被覆する平滑な薄膜体を有することを特徴とする請求項8に記載の管状ライニング材。
- 前記第1層の前記短強化繊維の伸長方向は、前記管状ライニング材の軸方向に対して65°~90°傾斜していることを特徴とする請求項8に記載の管状ライニング材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022130199A JP2024027419A (ja) | 2022-08-17 | 2022-08-17 | 繊維マット、該繊維マットで構成された繊維強化樹脂材及び該繊維強化樹脂材を用いた管状ライニング材 |
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JP2022130199A JP2024027419A (ja) | 2022-08-17 | 2022-08-17 | 繊維マット、該繊維マットで構成された繊維強化樹脂材及び該繊維強化樹脂材を用いた管状ライニング材 |
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2022
- 2022-08-17 JP JP2022130199A patent/JP2024027419A/ja active Pending
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