JP2024024200A - 液体吐出ヘッド、液体吐出装置、および液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

液体吐出ヘッド、液体吐出装置、および液体吐出ヘッドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】圧電体による振動板の変位量の低下を抑制し、吐出特性に優れる液体吐出ヘッドを提供する。【解決手段】液体吐出ヘッドは、ノズル基板、圧力室基板、振動板および圧電素子がこの順で積層方向に積層されており、圧力室基板と振動板との界面を含む平面を基準面とし、圧力室と振動板との界面において、当該積層方向で基準面から最も離れた位置をたわみ位置とし、圧力室に液体を収容せずに圧電素子を駆動しない状態における基準面とたわみ位置との間の距離をたわみ量としたとき、たわみ量は、たわみ位置が基準面に対してノズル基板に向かう方向に位置する場合、正の値として表され、たわみ位置が基準面に対してノズル基板に向かう方向とは反対方向に位置する場合、負の値として表され、たわみ量は、160nm以下である。【選択図】図6

Description

本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、および液体吐出ヘッドの製造方法に関する。
ピエゾ方式のインクジェットプリンターに代表される液体吐出装置に用いる液体吐出ヘッドは、例えば、特許文献1に開示されるように、圧電素子と、圧電素子の駆動により振動する振動板と、を有する。圧電素子は、下電極と圧電体膜と上電極とがこの順に積層された構成を有する。
特開2018-85403号公報
特許文献1に記載の液体吐出ヘッドでは、疲労現象による圧電体膜の変位量の低下に伴って吐出性能が低下しやすいという問題がある。
以上の課題を解決するために、本発明に係る液体吐出ヘッドの一態様は、第1電極と圧電体と第2電極とを含む圧電素子と、液体を収容する圧力室を区画する隔壁を有する圧力室基板と、前記圧電体の駆動により振動することにより、前記圧力室の液体に圧力を付与する振動板と、前記圧力室に連通するノズルを有するノズル基板と、を有し、前記ノズル基板、前記圧力室基板、前記振動板および前記圧電素子がこの順で積層方向に積層されており、前記圧力室基板と前記振動板との界面を含む平面を基準面とし、前記圧力室と前記振動板との界面において、前記積層方向で前記基準面から最も離れた位置をたわみ位置とし、前記圧力室に液体を収容せず、かつ、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加しない状態における前記基準面と前記たわみ位置との間の距離をたわみ量としたとき、
前記たわみ量は、前記たわみ位置が前記基準面に対して前記ノズル基板に向かう方向に位置する場合、正の値として表され、前記たわみ位置が前記基準面に対して前記ノズル基板に向かう方向とは反対方向に位置する場合、負の値として表され、前記たわみ量は、160nm以下である。
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、前述の態様の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの駆動を制御する制御部と、を備える。
本発明に係る液体吐出ヘッドの製造方法の一態様は、第1電極と圧電体と第2電極とを含む圧電素子と、液体を収容する圧力室を区画する隔壁を有する圧力室基板と、前記圧電体の駆動により振動することにより、前記圧力室の液体に圧力を付与する振動板と、前記圧力室に連通するノズルを有するノズル基板と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記ノズル基板、前記圧力室基板、前記振動板および前記圧電素子を形成する形成工程と、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することにより前記圧電体に分極処理を施す分極処理工程と、をこの順で含み、前記ノズル基板、前記圧力室基板、前記振動板および前記圧電素子がこの順で積層方向に積層されており、前記圧力室基板と前記振動板との界面を含む平面を基準面とし、前記圧力室と前記振動板との界面において、前記積層方向で前記基準面から最も離れた位置をたわみ位置とし、前記圧力室に液体を収容せず、かつ、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加しない状態における前記基準面と前記たわみ位置との間の距離をたわみ量とし、前記形成工程後、かつ、前記分極処理工程よりも前の前記たわみ量を第1たわみ量とし、前記分極処理工程後の前記たわみ量を第2たわみ量としたとき、前記第2たわみ量に対する前記第1たわみ量の割合は、10%以下である。
第1実施形態に係る液体吐出装置を模式的に示す構成図である。 第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの分解斜視図である。 図2中のA-A線断面図である。 第1実施形態における液体吐出ヘッドの一部を示す平面図である。 図4中のB-B線断面図である。 振動板のたわみ位置およびたわみ量を説明するための模式図である。 圧電素子の駆動回数と振動板の変位量の低下率との関係を示すグラフである。 振動板の初期たわみ率と耐久による変位量の低下率との関係を示すグラフである。 振動板の初期たわみ率と駆動による変位量との関係を示すグラフである。 第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示すフローチャートである。 第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの断面図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
なお、以下の説明は、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。また、Z軸に沿う方向でみることを「平面視」という場合がある。
ここで、典型的には、Z軸が鉛直軸であり、Z2方向が鉛直下方に相当する。ただし、Z軸は、鉛直軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
1.第1実施形態
1-1.液体吐出装置の全体構成
図1は、第1実施形態に係る液体吐出装置100を模式的に示す構成図である。液体吐出装置100は、液体の一例であるインクを液滴として媒体Mに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体Mは、典型的には印刷用紙である。なお、媒体Mは、印刷用紙に限定されず、例えば、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象でもよい。
図1に示すように、液体吐出装置100は、液体容器10と、「制御部」の一例である制御ユニット20と、搬送機構30と、移動機構40と、液体吐出ヘッド50と、を有する。
液体容器10は、インクを貯留する容器である。液体容器10の具体的な態様としては、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、および、インクを補充可能なインクタンクが挙げられる。なお、液体容器10に貯留されるインクの種類は任意である。
制御ユニット20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、液体吐出装置100の各要素の動作を制御する。ここで、制御ユニット20は、液体吐出ヘッド50の駆動を制御する。
搬送機構30は、制御ユニット20による制御のもとで、媒体MをY2方向に搬送する。移動機構40は、制御ユニット20による制御のもとで、液体吐出ヘッド50をX1方向とX2方向とに往復させる。図1に示す例では、移動機構40は、液体吐出ヘッド50を収容する略箱型のキャリッジ41と、キャリッジ41が固定される搬送ベルト42と、を有する。なお、キャリッジ41に搭載される液体吐出ヘッド50の数は、1個に限定されず、複数個でもよい。また、キャリッジ41には、液体吐出ヘッド50のほかに、前述の液体容器10が搭載されてもよい。
液体吐出ヘッド50は、制御ユニット20による制御のもとで、液体容器10から供給されるインクを複数のノズルのそれぞれからZ2方向に媒体Mに吐出する。この吐出が搬送機構30による媒体Mの搬送と移動機構40による液体吐出ヘッド50の往復移動とに並行して行われることにより、媒体Mの表面にインクによる画像が形成される。なお、液体吐出ヘッド50の構成および製造方法については、後に詳述する。
1-2.液体吐出ヘッドの全体構成
図2は、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド50の分解斜視図である。図3は、図2中のA-A線断面図である。図2および図3に示すように、液体吐出ヘッド50は、流路基板51と圧力室基板52とノズル基板53と吸振体54と振動板55と複数の圧電素子56と封止板57とケース58と配線基板59とを有する。
ここで、流路基板51よりもZ1方向に位置する領域には、圧力室基板52と振動板55と複数の圧電素子56とケース58と封止板57とが設置される。他方、流路基板51よりもZ2方向に位置する領域には、ノズル基板53と吸振体54とが設置される。液体吐出ヘッド50の各要素は、概略的にはY軸に沿う方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤により互いに接合される。
図2に示すように、ノズル基板53は、Y軸に沿う方向に配列される複数のノズルNが設けられる板状部材である。各ノズルNは、インクを通過させる貫通孔である。ノズル基板53は、例えば、ドライエッチングまたはウェットエッチング等の加工技術を用いる半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、ノズル基板53の製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
流路基板51は、インクの流路を形成するための板状部材である。図2および図3に示すように、流路基板51には、開口部R1と複数の供給流路Raと複数の連通流路Naとが設けられる。開口部R1は、複数のノズルNにわたり連続するように、Z軸に沿う方向でみた平面視で、Y軸に沿う方向に延びる長尺状の貫通孔である。他方、供給流路Raおよび連通流路Naそれぞれは、ノズルNごとに個別に設けられる貫通孔である。複数の供給流路Raのそれぞれは、開口部R1に連通する。流路基板51は、前述のノズル基板53と同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、流路基板51の製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
圧力室基板52は、複数のノズルNに対応する複数の圧力室Cが形成される板状部材である。圧力室Cは、流路基板51と振動板55との間に位置し、当該圧力室C内に充填されるインクに圧力を付与するためのキャビティと称される空間である。複数の圧力室Cは、Y軸に沿う方向に配列される。各圧力室Cは、圧力室基板52の両面に開口する孔52aで構成されており、X軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。各圧力室CのX2方向での端は、対応する供給流路Raに連通する。一方、各圧力室CのX1方向での端は、対応する連通流路Naに連通する。圧力室基板52は、前述のノズル基板53と同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、圧力室基板52のそれぞれの製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
圧力室基板52のZ1方向を向く面には、振動板55が配置される。振動板55は、弾性的に変形可能な板状部材である。なお、振動板55の詳細については、後に図5に基づいて説明する。
振動板55のZ1方向を向く面には、互いに異なるノズルNまたは圧力室Cに対応する複数の圧電素子56が配置される。各圧電素子56は、駆動信号の供給により変形する受動素子であり、X軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。複数の圧電素子56は、複数の圧力室Cに対応するようにY軸に沿う方向に配列される。圧電素子56の変形に連動して振動板55が振動すると、圧力室C内の圧力が変動することにより、インクがノズルNから吐出される。なお、圧電素子56の詳細については、後に図4および図5に基づいて説明する。
ケース58は、複数の圧力室Cに供給されるインクを貯留するためのケースであり、流路基板51のZ1方向を向く面に接着剤等により接合される。ケース58は、例えば、樹脂材料で構成されており、射出成形により製造される。ケース58には、収容部R2と導入口IHとが設けられる。収容部R2は、流路基板51の開口部R1に対応する外形の凹部である。導入口IHは、収容部R2に連通する貫通孔である。開口部R1および収容部R2による空間は、インクを貯留するリザーバーである液体貯留室Rとして機能する。液体貯留室Rには、液体容器10からのインクが導入口IHを介して供給される。
吸振体54は、液体貯留室R内の圧力変動を吸収するための要素である。吸振体54は、例えば、弾性変形可能な可撓性のシート部材であるコンプライアンス基板である。ここで、吸振体54は、流路基板51の開口部R1と複数の供給流路Raとを閉塞して液体貯留室Rの底面を構成するように、流路基板51のZ2方向を向く面に配置される。
封止板57は、複数の圧電素子56を保護するとともに圧力室基板52および振動板55の機械的な強度を補強する構造体である。封止板57は、振動板55の表面に例えば接着剤により接合される。封止板57には、複数の圧電素子56を収容する凹部が設けられる。
圧力室基板52または振動板55のZ1方向を向く面には、配線基板59が接合される。配線基板59は、制御ユニット20と液体吐出ヘッド50とを電気的に接続するための複数の配線が形成される実装部品である。配線基板59は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)またはFFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板である。配線基板59には、圧電素子56を駆動するための駆動回路60が搭載される。駆動回路60は、各圧電素子56を駆動するための駆動信号を配線基板59を介して各圧電素子56に選択的に供給する。
1-3.振動板および圧電素子の詳細
図4は、第1実施形態における液体吐出ヘッド50の一部を示す平面図である。図5は、図4中のB-B線断面図である。液体吐出ヘッド50では、図4および図5に示すように、圧力室基板52、振動板55および複数の圧電素子56がこの順で積層方向としてのZ1方向に積層される。なお、図5では、説明の便宜上、後述の初期たわみの図示が省略される。初期たわみについては、後に図6に基づいて説明する。
図5に示すように、圧力室基板52には、圧力室Cを構成する孔52aが設けられる。これに伴い、圧力室基板52には、互いに隣り合う2つの孔52aの間に、X軸に沿う方向に延びる壁状の隔壁52bが設けられる。図4では、面方位(110)のシリコン単結晶基板に異方性エッチングにより形成した場合の孔52aの平面視形状が破線で示される。なお、孔52aの平面視形状は、図4に示す例に限定されず、任意である。
図4に示すように、圧電素子56は、平面視で圧力室Cに重なる。図5に示すように、圧電素子56は、第1電極56aと圧電体56bと第2電極56cとを有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。なお、圧電素子56は、電極と圧電体層が交互に多層に積層され、振動板55に向けて伸縮する構成でもよい。また、圧電素子56の層間、または圧電素子56と振動板55との間には、密着性を高めるための層等の他の層が適宜介在してもよい。
第1電極56aは、圧電素子56ごとに互いに離間して配置される個別電極である。具体的には、X軸に沿う方向に延びる複数の第1電極56aが、互いに間隔をあけてY軸に沿う方向に配列される。各圧電素子56の第1電極56aには、配線61を介して駆動回路60が電気的に接続される。
第1電極56aは、例えば、イリジウム(Ir)で構成される層と、チタン(Ti)で構成される層と、を有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。ここで、イリジウムは、導電性に優れた電極材料である。このため、第1電極56aの構成材料にイリジウムを用いることにより、第1電極56aの低抵抗化を図ることができる。また、チタンで構成される層は、圧電体56bを形成する際に、島状のTiが結晶核となって圧電体56bの配向を制御して、圧電体56bの結晶性または配向性を高める。なお、イリジウムで構成される層に代えて、または、当該層に加えて、他の金属材料で構成される層が設けられてもよい。当該他の金属材料としては、例えば、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銅(Cu)等の金属材料が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、第1電極56aを構成する材料は、金属材料に限定されず、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)およびIZO(Indium Zinc Oxide)等の導電性の金属酸化物であってもよい。
図4および図5に示す例では、圧電体56bは、複数の圧電素子56にわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状をなす。
圧電体56bは、一般組成式ABOで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する圧電材料で構成される。当該圧電材料としては、例えば、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O)、ニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O)、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O)等が挙げられる。中でも、圧電体56bの構成材料には、チタン酸ジルコン酸鉛が好適に用いられる。
第2電極56cは、複数の圧電素子56にわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状の共通電極である。第2電極56cには、所定の基準電圧が印加される。
第2電極56cは、例えば、イリジウム(Ir)で構成される。なお、第2電極56cの構成材料は、イリジウムに限定されず、例えば、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、金(Au)または銅(Cu)等の金属材料でもよい。また、第2電極56cは、これらの金属材料のうち、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を積層等の形態で組み合わせて用いてもよい。なお、第2電極56cを構成する材料は、金属材料に限定されず、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)およびIZO(Indium Zinc Oxide)等の導電性の金属酸化物であってもよい。
以上のように、液体吐出ヘッド50は、圧電体56bと、圧電体56bの駆動により振動する振動板55と、液体の一例であるインクに振動板55の振動により圧力を付与する圧力室Cが設けられる圧力室基板52と、を有する。また、圧力室基板52、振動板55および圧電体56bは、この順で積層される。
図5に示すように、振動板55は、第1層55aと第2層55bと第3層55cとを有し、これらがこの順でZ1方向に積層される。すなわち、振動板55は、第1層55aと、第1層55aと圧電体56bとの間に配置される第2層55bと、第2層55bと圧電体56bとの間に配置される第3層55cと、を有する。ここで、第1層55aは、圧力室基板52に接合される。第3層55cは、複数の圧電素子56に接合される。第2層55bは、第1層55aと第3層55cとの層間に介在する。なお、図5では、説明の便宜上、振動板55を構成する層同士の界面が明確に図示されるが、当該界面が明確でなくともよく、例えば、互いに隣り合う2つの層の界面付近において当該2つの層の構成材料同士が混在してもよい。
第1層55aは、構成元素としてケイ素(Si)を含む層である。より具体的には、第1層55aは、例えば、酸化シリコン(SiO)で構成される弾性膜である。ここで、第1層55aには、酸化シリコンおよびその構成元素のほか、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、クロム(Cr)またはハフニウム(Hf)等の元素が不純物として少量含まれてもよい。このような不純物は、酸化シリコン(SiO)を柔らかくする効果をもたらす。
このように、第1層55aは、例えば、酸化シリコンを含む。このような第1層55aは、シリコン単結晶基板の熱酸化により、スパッタ法により形成する場合に比べて生産性よく形成することができる。
なお、第1層55a中のケイ素は、酸化物の状態で存在するほか、単体、窒化物または酸窒化物等の状態で存在してもよい。また、第1層55a中の不純物は、第1層55aの形成の際に不可避的に混入される元素でもよいし、意図的に第1層55aに混入される元素でもよい。
第1層55aの厚さt1は、振動板55の厚さtおよび幅等に応じて決められ、特に限定されないが、100nm以上2000nm以下の範囲内であることが好ましく、500nm以上1500nm以下の範囲内であると更に好ましい。
第3層55cは、構成元素としてジルコニウム(Zr)を含む層である。より具体的には、第3層55cは、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)で構成される絶縁膜である。ここで、第3層55cには、酸化ジルコニウムおよびその構成元素のほか、チタン(Ti)、鉄(Fe)、クロム(Cr)またはハフニウム(Hf)等の元素が不純物として少量含まれてもよい。このような不純物は、酸化ジルコニウム(ZrO)を柔らかくする効果をもたらす。
このように、第3層55cは、例えば、酸化ジルコニウムを含む。このような第3層55cは、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム単体の層を形成した後に、当該層を熱酸化することにより得られる。このため、第3層55cを形成する際、所望厚さの第3層55cを容易に得ることができる。また、酸化ジルコニウムが優れた電気絶縁性、機械的強度および靭性を有するので、第3層55cが酸化ジルコニウムを含むことにより、振動板55の特性を高めることができる。また、例えば、圧電体56bがチタン酸ジルコン酸鉛で構成される場合、第3層55cが酸化ジルコニウムを含むことにより、圧電体56bを形成する際、高配向率で(100)配向した圧電体56bを得やすいという利点もある。
なお、第3層55c中のジルコニウムは、酸化物の状態で存在するほか、単体、窒化物または酸窒化物等の状態で存在してもよい。また、第3層55c中の不純物は、第3層55cの形成の際に不可避的に混入される元素でもよいし、意図的に第3層55cに混入される元素でもよい。例えば、当該不純物は、第3層55cをスパッタ法で形成する際に用いるジルコニウムターゲット中に含まれる不純物である。
第3層55cの厚さt3は、振動板55の厚さtおよび幅等に応じて決められ、特に限定されないが、例えば、100nm以上2000nm以下の範囲内である。
以上の第1層55aと第3層55cとの間には、第2層55bが介在する。このため、第1層55aと第3層55cとの接触が防止される。このため、第1層55aと第3層55cとが接触する構成に比べて、第1層55a中のシリコン酸化物が第3層55c中のジルコニウムにより還元されることが低減される。
第2層55bは、構成元素としてジルコニウム以外の金属元素を含む層である。より具体的には、第2層55bは、構成元素としてジルコニウムよりも酸化され難い金属元素を含む層であり、例えば、当該金属元素の酸化物で構成される。当該金属元素は、典型的には、後述のように、アルミニウム、チタン、クロムがあるが、これに限定されず、例えば、マンガン、バナジウム、タングステン、鉄、銅等の元素でもよい。
このように、第2層55bは、ジルコニウムよりも酸化され難い金属元素を含む。言い換えると、第2層55bは、ジルコニウムよりも酸化物生成自由エネルギーの大きい金属元素を含む。第2層55bは、構成元素としてクロム、チタンおよびアルミニウムのうちのいずれかの金属元素を含むことが好ましい。なお、酸化物生成自由エネルギーの大小関係は、例えば、公知のエリンガムダイアグラムに基づいて評価することが可能である。
第2層55bに含まれる金属元素がジルコニウムよりも酸化され難い。言い換えると、第2層に含まれる金属元素の酸化物生成自由エネルギーは、ジルコニウムの酸化物生成自由エネルギーよりも大きい。これにより、第2層55bに含まれる金属元素がジルコニウムよりも酸化されやすい構成に比べて、第1層55aに含まれるシリコン酸化物の還元を低減することができる。このため、当該還元により生成するケイ素単体が第1層55aから第2層55bに拡散することが低減されるので、第1層55aと第3層55cとの間における当該拡散に起因する空隙の発生を低減することができる。この結果、第2層55bを用いない構成に比べて、第1層55aと第3層55cとの間の密着力を高めることができる。
クロムは、ケイ素よりも酸化され難い。言い換えると、クロムの酸化物生成自由エネルギーは、ケイ素の酸化物生成自由エネルギーよりも大きい。このため、第2層55bに金属元素としてクロムが含まれる場合、ケイ素よりも酸化され難い金属元素が第2層55bに含まれない場合に比べて、第1層55aに含まれるシリコン酸化物の還元を低減することができる。
また、チタンまたはアルミニウムの酸化物は、熱により移動しやすい。このため、第2層55bに金属元素としてチタンまたはアルミニウムが含まれる場合、当該金属元素の酸化物によるアンカー効果または化学結合により第1層55aおよび第3層55cのそれぞれと第2層55bとの層間での密着力を高めることができる。
しかも、チタンは、ケイ素またはジルコニウムとともに酸化物を形成しやすい。このため、第2層55bに金属元素としてチタンが含まれる場合、チタンがケイ素とともに酸化物を形成することにより、第1層55aと第2層55bとの密着力を高めたり、チタンがジルコニウムとともに酸化物を形成することにより、第1層55aと第3層55cとの密着力を高めたりすることもできる。
また、第2層55bは、クロムを含む場合、例えば、クロムが酸化物を構成しており、酸化クロムを含む。このような第2層55bは、スパッタ法等によりクロム単体の層を形成した後に、当該層を熱酸化することにより得られる。このため、第2層55bを形成する際、所望厚さの第2層55bを容易に得ることができる。
ここで、第2層55bに含まれる酸化クロムは、多結晶、アモルファスまたは単結晶のいずれの状態でもよい。ただし、第2層55bに含まれる酸化クロムがアモルファス状態であるアモルファス構造を有する場合、第2層55bに含まれる酸化クロムが多結晶または単結晶の状態である場合に比べて、第2層55bに生じる圧縮応力を低減することができる。この結果、第1層55aまたは第3層55cと第2層55bとの界面に生じる歪みを低減することができる。
また、第2層55bは、チタンを含む場合、例えば、チタンが酸化物を構成しており、酸化チタンを含む。このような第2層55bは、スパッタ法等によりチタン単体の層を形成した後に、当該層を熱酸化することにより得られる。このため、第2層55bを形成する際、所望厚さの第2層55bを容易に得ることができる。
ここで、第2層55bに含まれる酸化チタンは、多結晶、アモルファスまたは単結晶のいずれの状態でもよい。ただし、第2層55bに含まれる酸化チタンは、多結晶または単結晶の状態であることが好ましく、特に、結晶構造としてルチル構造を有することが好ましい。酸化チタンがとり得る結晶構造の中でも、ルチル構造は、最も安定であり、熱により移動してもアナターゼまたはブロッカイト等の多形に変化し難い。したがって、第2層55bに含まれる酸化チタンがルチル構造を有することにより、第2層55bに含まれる酸化チタンの結晶構造が他の結晶構造である場合に比べて、第2層55bの熱安定性を高めることができる。
また、第2層55bは、アルミニウムを含む場合、例えば、アルミニウムが酸化物を構成しており、酸化アルミニウムを含む。このような第2層55bは、スパッタ法等によりアルミニウム単体の層を形成した後に、当該層を熱酸化することにより得られる。このため、第2層55bを形成する際、所望厚さの第2層55bを容易に得ることができる。
ここで、第2層55bに含まれる酸化アルミニウムは、多結晶、アモルファスまたは単結晶のいずれの状態でもよく、多結晶または単結晶の状態である場合、結晶構造として三方晶系構造を有する。
また、第2層55bには、前述の金属元素のほか、チタン(Ti)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、クロム(Cr)またはハフニウム(Hf)等の元素が不純物として少量含まれてもよい。例えば、当該不純物は、第1層55aまたは第3層55cに含まれる元素である。当該不純物は、例えば、第2層55b中に当該金属元素とともに酸化物の状態で存在する。このような不純物は、第1層55aから第2層55bへのケイ素の拡散を低減するか、または、第1層55aから第2層55bへケイ素が拡散しても、当該ケイ素が第3層55cへ拡散するのを低減する効果をもたらす。
このような観点から、第2層55bおよび第3層55cのそれぞれは、不純物を含むことが好ましい。この場合、そうでない場合に比べて、第2層55bおよび第3層55cのそれぞれを柔らかくすることにより、振動板55のクラック等のリスクを低減することができる。
ここで、第2層55bにおける不純物の含有率は、第3層55cにおける不純物の含有率よりも高いことが好ましい。言い換えると、第2層55bおよび第3層55cからなる積層体における厚さ方向での不純物の濃度ピークが第2層55bに位置することが好ましい。この場合、第2層55bと第3層55cとの界面または第3層55c中に隙間が形成されることが防止または低減される。これに対し、当該濃度ピークが第3層55cに位置すると、第3層55c中の結晶構造が不純物により歪んでしまう。このため、第2層55bと第3層55cとの界面または第3層55c中に隙間されてしまい、この結果、振動板55のクラック等のリスクが高まる場合がある。
以上の第2層55b中の金属元素は、酸化物の状態で存在するほか、単体、窒化物または酸窒化物等の状態で存在してもよい。また、第2層55b中の不純物は、第2層55bの形成の際に不可避的に混入される元素でもよいし、意図的に第2層55bに混入される元素でもよい。
また、第2層55bの厚さt2は、振動板55の厚さtおよび幅に応じて決められ、特に限定されないが、第1層55aの厚さt1および第3層55cの厚さt3のそれぞれよりも薄いことが好ましい。この場合、振動板55の特性を最適化しやすいという利点がある。
具体的な第2層55bの厚さt2は、第2層55bに含まれる金属元素がチタンの場合、20nm以上50nm以下の範囲内にあることが好ましく、25nm以上40nm以下の範囲内にあることがより好ましい。また、第2層55bに含まれる金属元素がアルミニウムの場合、20nm以上50nm以下の範囲内にあることが好ましく、20nm以上35nm以下の範囲内にあることが特に好ましい。また、第2層55bに含まれる金属元素がクロムの場合、1nm以上50nm以下の範囲内にあることが好ましく、2nm以上30nm以下の範囲内にあることがより好ましい。ここから、第2層55bに含まれる金属元素がチタン、アルミニウム、クロムのいずれである場合であっても、第2層55bの厚さt2が20nm以上50nm以下の範囲内に含まれていれば、好ましい条件を満足することがわかる。厚さt2がこのような範囲内にあることにより、第1層55aと第3層55cとの間の密着力を第2層55bにより高める効果を好適に発揮させることができる。
これに対し、厚さt2が薄すぎると、第2層55bに含まれる金属元素の種類等によっては、第1層55aからのケイ素単体の拡散を第2層55bにより低減する効果が低下する傾向を示す。例えば、第2層55bが酸化チタンで構成される場合、厚さt2が薄すぎると、製造時の熱処理の条件等によっては、第1層55aから第2層55bに拡散したケイ素単体が第3層55cに到達してしまう場合がある。一方、厚さt2が厚すぎると、第2層55bの製造時の熱処理を十分に行うことができなかったり、当該熱酸化に長時間を要する結果、他の層に悪影響を与えたりする場合がある。
以上の圧電素子56では、第1電極56aと第2電極56cとの間に電圧が印加されることにより、圧電体56bが逆圧電効果により変形する。この変形に伴って、振動板55の振動領域PVが変形する。振動領域PVは、平面視で圧力室Cに重なる振動板55の部分である。なお、平面視で圧力室Cに重ならない振動板55の部分、すなわち、平面視で隔壁52bに重なる部分は、固定領域RE3である。
振動領域PVは、能動領域RE1と非能動領域RE2とに区分される。能動領域RE1は、平面視で圧力室Cと第1電極56aと圧電体56bと第2電極56cとに重なる振動板55の部分である。非能動領域RE2は、平面視で、圧力室Cに重なり、かつ、能動領域RE1とは異なる振動板55の部分である。
図5に示す例では、圧電体56bが能動領域RE1、非能動領域RE2および固定領域RE3にわたり連続して設けられる。このため、非能動領域RE2で圧電体56bが欠損した構成に比べて、後述の初期たわみを好適に低減することができる。
なお、圧力室Cの壁面上には、当該壁面をインクから保護する保護膜が配置されてもよい。この場合、振動領域PVに接合される当該保護膜の部分は、振動領域PVとともに振動する。当該保護膜は、圧力室C内のインクに対する耐性が振動板55よりも高い。当該保護膜の構成材料としては、圧力室C内のインクに対する耐性を有する材料であればよく、特に限定されないが、例えば、酸化シリコン(SiO)等のシリコン酸化物、酸化タンタル(TaO)および酸化ジルコニウム(ZrO)等の金属酸化物、ニッケル(Ni)およびクロム(Cr)等の金属等が挙げられる。当該保護膜は、単一材料の単層で構成されてもよいし、互いに異なる材料の複数層の積層体で構成されてもよい。当該保護膜の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。
1-4.振動板の初期たわみ
図6は、振動板55のたわみ位置P0、P1、P2およびたわみ量L0、L1、L2を説明するための模式図である。図6では、説明の便宜上、圧電素子56の図示が省略されるとともに、振動板55が模式的に示される。
液体吐出ヘッド50では、圧電素子56が駆動しなくても、振動板55および圧電素子56を含む積層体内の残留応力に起因して、図6中実線で示すように、振動板55のたわみが生じる場合がある。以下、このたわみを「初期たわみ」という場合がある。
振動板55に初期たわみが生じない場合、振動板55と圧力室Cとの界面BDBは、圧力室基板52と振動板55との界面を含む仮想的な平面として規定される基準面BDAに一致する。界面BDBは、前述の図5に示す振動領域PVのZ2方向を向く面に相当する。
図6に示す例では、振動板55の初期たわみが基準面BDAに対してZ2方向に位置する。ここで、振動板55の初期たわみであるたわみ量L0は、たわみ位置P0と基準面BDAとの間の距離である。たわみ位置P0は、圧力室Cにインクを収容せず、かつ、第1電極56aと第2電極56cとの間に電圧を印加しない状態で、圧力室Cと振動板55との界面BDBがZ軸に沿う方向で基準面BDAから最も離れた位置である。
なお、たわみ量L0は、たわみ位置P0が基準面BDAに対してノズル基板53に向かう方向に位置する場合、正の値として表され、たわみ位置P0が基準面BDAに対してノズル基板53に向かう方向とは反対方向に位置する場合、負の値として表される。
ノズルNから液滴を吐出させる場合、圧電素子56の駆動により、圧力室Cを収縮させる必要がある。図6では、ノズルNから液滴を吐出させるのに必要な振動板55のたわみ量L1となる界面BDBが二点鎖線で示される。たわみ量L1は、たわみ位置P0とたわみ位置P1と間の距離である。たわみ位置P1は、圧力室Cにインクを収容し、かつ、ノズルNから液滴が吐出されるように第1電極56aと第2電極56cとの間に電圧を印加した状態で、圧力室Cと振動板55との界面BDBがZ2方向で基準面BDAから最も離れた位置である。たわみ位置P2は、圧力室Cにインクを収容した状態において、界面BDBがたわみ位置P2に移動した後の反動によって、界面BDBがZ1方向で基準面BDAから最も離れた位置である。
このように圧電素子56の駆動により振動板55がたわむと、その後、圧力室Cを含む流路内のインクの振動により、振動板55は、圧力室Cが膨張する方向にたわみ量L2でたわみ変形する。このとき、圧電体56bの圧電効果による起電力が第1電極56aと第2電極56cとの間に生じる。当該起電力は、前述の圧電素子56の駆動時の電圧とは逆極性であり、「逆バイアス」とも呼ばれ、圧電体56bの焼損の原因となる。
このような逆バイアスの大きさは、たわみ量L2が大きくなるほど大きくなる。そこで、圧電体56bの焼損を低減する観点から、たわみ量L0を小さくする必要がある。具体的には、たわみ量L0が160nm以下である。なお、たわみ量L1とたわみ量L2との合計である振幅L3は、たわみ量L0の大きさによらず、ほぼ一定である。
図7は、圧電素子56の耐久試験の結果であり、駆動回数と振動板55の変位量の低下率との関係を示すグラフである。ここで、変位量とは、図6における振幅L3に相当する。図7中、横軸は、圧電体56bの分極処理直後からの圧電素子56の駆動回数[億回]であり、耐久試験として260億回の駆動を実行した。縦軸は、振動板55の変位量の低下率[%]である。当該低下率は、圧電体56bの分極処理直後における振動板55の変位量を100%とした場合の振動板55の変位量の低下の割合である。
図7では、サンプル1~4について、圧電素子56の駆動回数と振動板55の変位量の低下率との関係が示される。サンプル1では、分極処理後であって耐久試験前における振動板55の初期たわみであるたわみ量L0が625nmである。サンプル2では、分極処理後であって耐久試験前における振動板55の初期たわみであるたわみ量L0が132nmである。サンプル3では、分極処理後であって耐久試験前の初期たわみであるたわみ量L0が157nmである。サンプル4では、分極処理後であって耐久試験前の初期たわみであるたわみ量L0が130nmである。
図7に示すように、サンプル2~4では、圧電素子56の駆動回数が250億回を超えても、振動板55の変位量の低下率の絶対値を10%以下に抑えることができる。これに対し、サンプル1では、圧電素子56の駆動回数が30億回程度であっても、振動板55の変位量の低下率の絶対値が10%を超えてしまう。
このように、分極処理後であって耐久試験前の初期たわみであるたわみ量L0が160nm以下である場合、振動板55の変位量の低下率の絶対値を長期にわたり低減することができる。つまり、液体吐出ヘッドの出荷時において、圧電素子を駆動しない状態における初期たわみを160nm以下とすることが好ましい。
図8は、振動板55の初期たわみ率と耐久による変位量の低下率との関係を示すグラフである。図8中、横軸は、振動板55の初期たわみ率[%]であり、縦軸は、耐久による変位量の低化率[%]である。振動板55の初期たわみ率は、圧電体56bの分極処理後(より好ましくはエイジング処理後)の振動板55のたわみ量L0である第1たわみ量に対する圧電体56bの分極処理前(より好ましくは後述の形成工程S10の直後)の振動板55のたわみ量L0である第2たわみ量の割合である。耐久による変位量の低下率は、260億回駆動した場合の振動板55の変位量の低下率である。
図8に示すように、サンプル2~4では、サンプル1に比べて、耐久による変位量の低下率を少なくすることができる。このように、初期たわみ率が10%以下であることにより、耐久による変位量の低下率を少なくすることができる。
なお、サンプル1、2では、図8中「上に凸」で示すように、圧電体56bの分極処理前の振動板55の初期たわみが圧力室Cに向かう方向とは反対方向にたわむように負の値で表される。これに対し、サンプル3、4では、図8中「下に凸」で示すように、圧電体56bの分極処理前の振動板55の初期たわみが圧力室Cに向かう方向にたわむように正の値で表される。
図9は、振動板55の初期たわみ率と駆動による変位量との関係を示すグラフである。図9中、横軸は、振動板55の初期たわみ率[%]であり、縦軸は、駆動による変位量[nm]であり。振動板55の初期たわみ率は、図8と同様である。駆動による変位量は、圧電素子56を駆動した場合の振動板55の変位量である。
図9に示すように、サンプル2~4のうち、サンプル1、2は、サンプル3に比べて、駆動による変位量を大きくすることができる。このように、初期たわみ率が10%以下であっても、初期たわみ率を0%以下とすることにより、駆動による変位量を大きくすることができる。
1-5.圧電デバイスの製造方法
図10は、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド50の製造方法を示すフローチャートである。液体吐出ヘッド50の製造方法は、図10に示すように、形成工程S10と分極処理工程S20とエイジング処理工程S30とをこの順で含む。以下、各工程を順次説明する。
形成工程S10は、ノズル基板53、圧力室基板52、振動板55および圧電素子56を形成する。
ノズル基板53は、例えば、ドライエッチングまたはウェットエッチング等の加工技術を用いる半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。圧力室基板52は、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。振動板55は、圧力室基板52を形成するためのシリコン単結晶基板上に第1層55a、第2層55bおよび第3層55cをこの順で成膜することにより形成される。第1層55aは、例えば、当該シリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化することにより形成される。第2層55bは、例えば、第1層55a上に、スパッタ法によりクロム、チタンまたはアルミニウムの層を形成し、当該層を熱酸化することにより形成される。第3層55cは、例えば、第2層55b上に、スパッタ法によりジルコニウムの層を形成し、当該層を熱酸化することにより形成される。圧電素子56は、例えば、第3層55c上に、第1電極56a、圧電体56bおよび第2電極56cをこの順で成膜することにより形成される。第1電極56aおよび第2電極56cのそれぞれは、例えば、スパッタ法等の公知の成膜技術、およびフォトリソグラフィおよびエッチング等を用いる公知の加工技術により形成される。圧電体56bは、例えば、ゾルゲル法により圧電体の前駆体層を形成し、その前駆体層を焼成して結晶化することにより形成される。
ここで、圧力室Cの形成は、圧電素子56の形成後に行われる。圧力室Cの形成は、例えば、圧電素子56の形成後のシリコン単結晶基板の両面のうち圧電素子56が形成される面とは異なる面を異方性エッチングすることにより行われる。このとき、当該異方性エッチングのエッチング液として、例えば、水酸化カリウム水溶液(KOH)等が用いられる。また、このとき、第1層55aは、当該異方性エッチングを停止させる停止層として機能する。以上の圧力室Cの形成後、圧力室基板52に流路基板51等が接着剤により接合される。
なお、第2層55bの形成は、熱酸化を用いる方法に限定されず、例えば、CVD法または原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用いてもよい。また、第2層55bおよび第3層55cを形成するための熱酸化は、一括して行ってもよい。また、圧電素子56の形成後には、必要に応じて、その形成後の基板の両面のうち圧電素子56が形成される面とは異なる面がCMP(chemical mechanical polishing)等により研削され、当該面の平坦化または当該基板の厚さ調整が行われる。
分極処理工程S20は、第1電極56aと第2電極56cとの間に電圧を印加することにより圧電体56bに分極処理を施す。分極処理とは、圧電素子56の製造時に結晶の分極方向が任意の方向を向いている圧電体56bに対して、圧電体56bの一方向に電界を印加することにより、分極モーメントのc軸方向の成分の方向を揃えることをいう。ここで、分極処理時の電界の方向は、液体吐出ヘッド50の使用時に圧電体56bに印加する電界と同じ方向である。また、分極処理時の電界の大きさは、液体吐出ヘッド50の使用時に圧電体56bに印加する電界の絶対値よりも大きい。
エイジング処理工程S30は、第1電極56aと第2電極56cとの間に電圧を印加することにより圧電体56bにエイジング処理を施す。エイジング処理では、例えば、液体吐出ヘッド50の使用時に圧電体56bに印加する電界と同じ電界が圧電体56bに印加される。また、エイジング処理での圧電素子56の駆動回数は、例えば、30億回程度である。これにより、前述の図7に示すように、エイジング処理後の振動板55の変位低下率の変化を小さくすることができる。なお、エイジング処理工程S30は、分極処理工程S20と連続的または一括して行われてもよい。
以上のように、液体吐出ヘッド50は、圧電素子56と圧力室基板52と振動板55とノズル基板53と、を有する。ノズル基板53、圧力室基板52、振動板55および圧電素子56がこの順で積層方向に積層される。圧電素子56は、第1電極56aと圧電体56bと第2電極56cとを含む。圧力室基板52は、「液体」の一例であるインクを収容する圧力室Cを区画する隔壁52bを有する。振動板55は、圧電体56bの駆動により振動することにより、圧力室Cのインクに圧力を付与する。ノズル基板53は、圧力室Cに連通するノズルNを有する。
そのうえで、圧力室基板52と振動板55との界面を含む平面を基準面BDAとし、圧力室Cと振動板55との界面BDBにおいて、当該積層方向で基準面BDAから最も離れた位置をたわみ位置とし、圧力室Cにインクを収容せず、かつ、第1電極56aと第2電極56cとの間に電圧を印加しない状態における基準面BDAとたわみ位置P0との間の距離をたわみ量L0としたとき、たわみ量L0は、160nm以下である。なお、たわみ量L0は、たわみ位置P0が基準面BDAに対してノズル基板53に向かう方向に位置する場合、正の値として表され、たわみ位置P0が基準面BDAに対してノズル基板53に向かう方向とは反対方向に位置する場合、負の値として表される。
以上の液体吐出ヘッド50では、たわみ量L0を160nm以下とすることにより、圧電体56bの駆動後の圧電効果による起電力に起因する焼損を低減することができる。この結果、長期にわたり使用しても、圧電体56bによる振動板55の変位量の低下を抑制することができる。以上により、吐出特性に優れる液体吐出ヘッド50を提供することができる。
また、前述のように、圧電体56bは、能動領域RE1、非能動領域RE2および固定領域RE3にわたり連続して設けられる。ここで、能動領域RE1は、振動板55において、当該積層方向にみて、圧力室Cと第1電極56aと圧電体56bと第2電極56cとに重なる部分である。非能動領域RE2は、振動板55において、当該積層方向にみて、圧力室Cに重なり、かつ、能動領域RE1とは異なる部分である。固定領域RE3は、振動板55において、当該積層方向にみて、隔壁52bに重なる部分である。このような構成の圧電体56bでは、圧電体56bの膜応力が振動板55に好適に作用するので、たわみ量を160mm以下としやすいという利点がある。
さらに、前述のように、振動板55は、第1層55aと第2層55bと第3層55cとを含む。ここで、第1層55aは、構成元素としてケイ素を含む。第2層55bは、第1層55aと圧電体56bとの間に配置され、構成元素としてジルコニウム以外の金属元素を含む。第3層55cは、第2層55bと圧電体56bとの間に配置され、構成元素としてジルコニウムを含む。このような層構成の振動板55では、第2層55bにより第1層55aと第3層55cとの密着力を高めることができる。この結果、第1層55aと第3層55cとの間への水分の侵入を低減することができる。このように、第2層55bが第1層55aと第3層55cとの間への水分の侵入を防止する水分防止層として機能する。
また、前述のように、第2層55bは、構成元素としてジルコニウムよりも酸化され難い金属元素を含む。このため、第2層55bに含まれる金属元素がジルコニウムよりも酸化されやすい構成に比べて、第1層55aに含まれるシリコン酸化物の還元を低減することができる。したがって、当該還元により生成するケイ素単体が第1層55aから第2層55bに拡散することが低減されるので、第1層55aと第3層55cとの間における当該拡散に起因する空隙の発生を低減することができる。この結果、第2層55bを用いない構成に比べて、第1層55aと第3層55cとの間の密着力を高めることができる。
さらに、前述のように、第1電極56aと第2電極56cとの間に電圧を印加することにより圧電体56bに分極処理を施す前のたわみ量L0を第1たわみ量とし、当該分極処理後のたわみ量L0を第2たわみ量としたとき、第2たわみ量に対する第1たわみ量の割合は、10%以下であることが好ましい。この場合、第2たわみ量を160nm以下とすることができ、この結果、長期にわたり圧電体56bによる振動板55の変位量の低下を抑制する効果が顕著に得られる。
ここで、液体吐出ヘッド50の製造方法は、前述のように、形成工程S10と分極処理工程S20とをこの順で含む。形成工程S10は、ノズル基板53、圧力室基板52、振動板55および圧電素子56を形成する。分極処理工程S20は、第1電極56aと第2電極56cとの間に電圧を印加することにより圧電体56bに分極処理を施す。
また、前述のように、第2たわみ量に対する第1たわみ量の割合は、0%以下、つまり、形成工程S10の直後においては振動板55が上に凸であって、分極処理工程S20もしくはエイジング処理工程S30の後においては振動板55が下に凸であることが好ましい。この場合、第2たわみ量を160nm以下としつつ、当該割合が0%よりも大きい場合に比べて、圧電体56bによる振動板55の変位量の絶対値を大きくすることができる。
さらに、前述のように、第1電極56a、圧電体56bおよび第2電極56cがこの順で当該積層方向に積層される。そして、第2電極56cは、当該積層方向にみて圧力室Cおよび隔壁52bにわたり連続して設けられる。この場合、圧電体56bが複数の圧力室Cにわたり連続して設けられても、圧力室Cごとに駆動可能な圧電素子56が実現される。
以上の液体吐出ヘッド50は、液体吐出装置100に用いられる。液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド50と、「制御部」の一例である制御ユニット20と、を備える。制御ユニット20は、液体吐出ヘッド50の駆動を制御する。以上の液体吐出装置100では、前述のように液体吐出ヘッド50の吐出特性が優れるので、長期にわたり画質低下を抑制することができる。
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図11は、第2実施形態に係る液体吐出ヘッド50Aの断面図である。液体吐出ヘッド50Aは、圧電素子56に代えて圧電素子56Aを有する以外は、前述の第1実施形態の液体吐出ヘッド50と同様である。圧電素子56Aは、第1電極56aおよび第2電極56cに代えて第1電極56dおよび第2電極56eを有する以外は、前述の第1実施形態の圧電素子56と同様である。
第1電極56dは、複数の圧電素子56Aにわたり連続するようにY軸に沿う方向に延びる帯状の共通電極である以外は、前述の第1実施形態の第1電極56aと同様に構成される。第2電極56eは、圧電素子56Aごとに互いに離間して配置される個別電極である以外は、前述の第1実施形態の第2電極56cと同様に構成される。
以上の圧電素子56Aでは、第1電極56dと第2電極56eとの間に電圧が印加されることにより、圧電体56bが逆圧電効果により変形する。この変形に伴って、振動板55の振動領域PVが変形する。振動領域PVは、前述のように、能動領域RE1と非能動領域RE2とに区分される。ここで、能動領域RE1は、平面視で圧力室Cと第1電極56dと圧電体56bと第2電極56eとに重なる振動板55の部分である。非能動領域RE2は、平面視で、圧力室Cに重なり、かつ、能動領域RE1とは異なる振動板55の部分である。
図11に示す例においても、圧電体56bが能動領域RE1、非能動領域RE2および固定領域RE3にわたり連続して設けられる。このため、非能動領域RE2で圧電体56bが欠損した構成に比べて、後述の初期たわみを好適に低減することができる。
以上の第2実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、長期にわたり使用しても、圧電体56bによる振動板55の変位量の低下を抑制することができる。本実施形態では、前述のように、第1電極56d、圧電体56bおよび第2電極56eがこの順で積層方向に積層されており、第1電極56dは、当該積層方向にみて圧力室Cおよび隔壁52bにわたり連続して設けられる。このため、圧電体56bが複数の圧力室Cにわたり連続して設けられても、圧力室Cごとに駆動可能な圧電素子56Aが実現される。
3.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
3-1.変形例1
液体吐出ヘッドは、圧電体および振動板を有する構成であればよく、前述の実施形態の構成に限定されない。また、前述の実施形態では、圧電デバイスの一例として液体吐出ヘッドを説明したが、これに限定されない。圧電デバイスは、液体吐出ヘッドのほか、例えば、圧電体および振動板を有する圧電アクチュエーター等の駆動デバイスでもよく、圧電体および振動板を有する圧力センサー等の検出デバイス等でもよい。
3-2.変形例2
前述の各形態では、圧電体56bが複数の圧力室Cに共通に設けられるが、これに限定されず、圧力室Cごとに圧電体56bが分割されてもよい。また、第1電極56aおよび第2電極56cの双方を個別電極としてもよい。
3-3.変形例3
前述の各形態では、液体吐出ヘッド50を搭載するキャリッジ41を往復させるシリアル方式の液体吐出装置100を例示するが、複数のノズルNが媒体Mの全幅にわたり分布するライン方式の液体吐出装置にも本発明を適用することが可能である。
3-4.変形例4
前述の各形態で例示する液体吐出装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。
10…液体容器、20…制御ユニット、30…搬送機構、40…移動機構、41…キャリッジ、42…搬送ベルト、50…液体吐出ヘッド、50A…液体吐出ヘッド、51…流路基板、52…圧力室基板、52a…孔、52b…隔壁、53…ノズル基板、54…吸振体、55…振動板、55a…第1層、55b…第2層、55c…第3層、56…圧電素子、56A…圧電素子、56a…第1電極、56b…圧電体、56c…第2電極、56d…第1電極、56e…第2電極、57…封止板、58…ケース、59…配線基板、60…駆動回路、61…配線、100…液体吐出装置、BDA…基準面、BDB…界面、C…圧力室、IH…導入口、L0…量、L1…量、L2…量、L3…振幅、M…媒体、N…ノズル、Na…連通流路、P0…位置、P1…位置、P2…位置、PV…振動領域、R…液体貯留室、R1…開口部、R2…収容部、RE1…能動領域、RE2…非能動領域、RE3…固定領域、Ra…供給流路、S10…形成工程、S20…分極処理工程、S30…エイジング処理工程、t…厚さ、t1…厚さ、t2…厚さ、t3…厚さ。

Claims (10)

  1. 第1電極と圧電体と第2電極とを含む圧電素子と、
    液体を収容する圧力室を区画する隔壁を有する圧力室基板と、
    前記圧電体の駆動により振動することにより、前記圧力室の液体に圧力を付与する振動板と、
    前記圧力室に連通するノズルを有するノズル基板と、を有し、
    前記ノズル基板、前記圧力室基板、前記振動板および前記圧電素子がこの順で積層方向に積層されており、
    前記圧力室基板と前記振動板との界面を含む平面を基準面とし、
    前記圧力室と前記振動板との界面において、前記積層方向で前記基準面から最も離れた位置をたわみ位置とし、
    前記圧力室に液体を収容せず、かつ、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加しない状態における前記基準面と前記たわみ位置との間の距離をたわみ量としたとき、
    前記たわみ量は、前記たわみ位置が前記基準面に対して前記ノズル基板に向かう方向に位置する場合、正の値として表され、前記たわみ位置が前記基準面に対して前記ノズル基板に向かう方向とは反対方向に位置する場合、負の値として表され、
    前記たわみ量は、160nm以下である、
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  2. 前記振動板において、前記積層方向にみて、前記圧力室と前記第1電極と前記圧電体と前記第2電極とに重なる部分を能動領域とし、
    前記振動板において、前記積層方向にみて、前記圧力室に重なり、かつ、前記能動領域とは異なる部分を非能動領域とし、
    前記振動板において、前記積層方向にみて、前記隔壁に重なる部分を固定領域としたとき、
    前記能動領域、前記非能動領域および前記固定領域にわたり、前記圧電体が連続して設けられる、
    ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  3. 前記振動板は、
    構成元素としてケイ素を含む第1層と、
    前記第1層と前記圧電体との間に配置され、構成元素としてジルコニウム以外の金属元素を含む第2層と、
    前記第2層と前記圧電体との間に配置され、構成元素としてジルコニウムを含む第3層と、を含む、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
  4. 前記第2層は、構成元素としてジルコニウムよりも酸化され難い金属元素を含む、
    ことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
  5. 前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することにより前記圧電体に分極処理を施す前の前記たわみ量を第1たわみ量とし、前記分極処理後の前記たわみ量を第2たわみ量としたとき、
    前記第2たわみ量に対する前記第1たわみ量の割合は、10%以下である、
    ことを特徴とした請求項1または2の液体吐出ヘッド。
  6. 前記第2たわみ量に対する前記第1たわみ量の割合は、0%以下である、
    ことを特徴とした請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
  7. 前記第1電極、前記圧電体および前記第2電極がこの順で前記積層方向に積層されており、
    前記第2電極は、前記積層方向にみて前記圧力室および前記隔壁にわたり連続して設けられる、
    ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  8. 前記第1電極、前記圧電体および前記第2電極がこの順で前記積層方向に積層されており、
    前記第1電極は、前記積層方向にみて前記圧力室および前記隔壁にわたり連続して設けられる、
    ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  9. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドと、
    前記液体吐出ヘッドの駆動を制御する制御部と、を備える、
    ことを特徴とする液体吐出装置。
  10. 第1電極と圧電体と第2電極とを含む圧電素子と、
    液体を収容する圧力室を区画する隔壁を有する圧力室基板と、
    前記圧電体の駆動により振動することにより、前記圧力室の液体に圧力を付与する振動板と、
    前記圧力室に連通するノズルを有するノズル基板と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    前記ノズル基板、前記圧力室基板、前記振動板および前記圧電素子を形成する形成工程と、
    前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することにより前記圧電体に分極処理を施す分極処理工程と、をこの順で含み、
    前記ノズル基板、前記圧力室基板、前記振動板および前記圧電素子がこの順で積層方向に積層されており、
    前記圧力室基板と前記振動板との界面を含む平面を基準面とし、
    前記圧力室と前記振動板との界面において、前記積層方向で前記基準面から最も離れた位置をたわみ位置とし、
    前記圧力室に液体を収容せず、かつ、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加しない状態における前記基準面と前記たわみ位置との間の距離をたわみ量とし、
    前記形成工程後、かつ、前記分極処理工程よりも前の前記たわみ量を第1たわみ量とし、
    前記分極処理工程後の前記たわみ量を第2たわみ量としたとき、
    前記第2たわみ量に対する前記第1たわみ量の割合は、10%以下である、
    ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
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