JP2024023326A - 砂積層造形機および砂積層造形方法 - Google Patents

砂積層造形機および砂積層造形方法 Download PDF

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孝明 曽根
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Abstract

【課題】レジンを硬化させるレーザ光をレジンコーテッドサンドの層に照射する砂積層造形機に関し、安価でありながら成形精度が高められた砂積層造形機を提供する。【解決手段】レジンコーテッドサンドrsを収納した収納部30と、収納部30に収納されているレジンコーテッドサンドrsの層SL形成する層形成手段20と、レジンを硬化させるレーザ光を層SLに照射する照射部40,50,60とを備え、照射部40,50,60が照射するレーザ光の出力をP[W]、レーザ光の走査速度をv[mm/s]、レーザ光の走査ピッチをw[mm]とし、層形成手段20における積層ピッチをh[mm]とし、P/(vwh)[ws/mm3]=E[J/mm3]としてエネルギー密度Eを表した場合にレーザ光の出力が10W以上80W以下の条件下で、レーザ光のエネルギー密度Eが1.3J/mm3以上である。【選択図】図2

Description

本発明は、レジンを硬化させるレーザ光をレジンコーテッドサンドの層に照射する砂積層造形機および砂積層造形方法に関する。
鋳造用の鋳型は、主型と中子から構成され、主型は砂型や金型で作られるが、中子は有機粘結材(バインダー)で強度を維持した砂型で作られるのが一般的である。中子は、鋳物の中空部を形成するためのものであり、鋳造後に中空を形成していた中子はバインダーの燃焼も生じるため、容易に鋳物から分離できる。特に複雑な形状品や細溝形状などの場合には熱硬化性樹脂であるフェノールレジンをバインダーにして砂にコーティングした「コーテッドサンド」を用いて、加熱金型に吹き込んで成型する「シェルモールド法」が多用される。また鋳物内部に細穴形状を形成する中子の場合には樹脂から発生するガス圧によるガス欠陥が発生し、その対策として中空中子にすることで中子の通気性を確保してガスを排出してガス欠陥を回避できることが知られている。一方、非熱硬化性バインダーの場合は硬化剤添加やガス硬化反応で固めるため、常温での成型が可能であり、金型でなくても成型が可能であり、金型の加熱も必要がない反面、中空形状の中子成型ができないため、ガス逃げが不十分でガス欠陥が生じやすい。
シェルモールド法では金型に吹き込んで表面層が熱硬化した時点で金型反転により、中子内部の未硬化部分を排出(反転排砂)することで中空中子を成型できる利点がある。しかし普及している汎用機でなく、専用の成型機が必要になり、また、より効率よく鋳造時の中子発生ガスを逃がすための細穴や、中空部を中子各部に配置したい場合には中空形状に限界があり、砂は吹込口からしか排砂を行うことができず、複雑な中空形状は困難である。さらに、試作品や非量産品の場合には金型が高価なため、中子成形が困難であったり、複数の金型を用いて中子の形状を検討することが資金的に難しい等の問題もある。
これらの問題を解決するために、近年、積層造形技術を用いて鋳型を造型することが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。この特許文献1に記載された積層造形技術では、コーテッドサンドの層を形成し、その層に選択的に硬化剤を散布することで、硬化剤が散布された部分が硬化部になる。硬化剤の散布が完了すると、硬化部が設けられた層の上に新たなコーテッドサンドの層を形成し、硬化剤を再び選択的に散布して、新たなコーテッドサンドの層に硬化部を設ける。以降も、層形成と硬化剤の選択的な散布とを繰り返し、硬化部が積層された三次元的な鋳型を得ることができる。
しかしながら、特許文献1に記載された、硬化剤を用いた積層造形技術を実現しようとうすると、非常に高額な投資が必要になる。
ところで、積層造形技術を用いれば、鋳型に限らず様々な三次元的な造形物を得ることができる。上述した硬化剤を用いた積層造形技術の他、レーザ光を用いた積層造形技術も開発されている(例えば、特許文献2等参照)。特許文献2に記載された積層造形技術では、レジンを硬化させるレーザ光をレジンコーテッドサンドの層に照射し、レジンコーテッドサンドの層のうちレーザ光が照射された部分が硬化部になる。レーザ光の照射が完了すると、硬化部が設けられた層の上に新たなレジンコーテッドサンドの層を形成し、レーザ光を再び照射して、新たなレジンコーテッドサンドの層に硬化部を設ける。以降も、層形成とレーザ光の照射とを繰り返し、硬化部が積層された三次元的な造形物を得ることができる。
国際公開第2015/29935号 特開2005-169434号公報
しかしながら、特許文献2に記載された、レーザ光を用いた積層造形技術では、5kWといった高出力なレーザ光を照射するものであるため、必然的に装置のコストが上昇してしまう。また、高出力なレーザ光を用いると、硬化部に隣接する、外側の領域や下層の領域までレーザ光の熱が伝わってしまい、出来上がった造形物の形状や寸法精度が設計通りにならない場合がある。
本発明は上記事情に鑑み、安価でありながら成形精度が高められた砂積層造形機および造形コストを抑えながら成形精度が高められた砂積層造形方法を提供することを目的とする。
上記目的を解決する砂積層造形機は、
レジンコーテッドサンドを収納した収納部と、
前記収納部に収納されているレジンコーテッドサンドの層を形成する層形成手段と、
レジンを硬化させるレーザ光を前記層に照射する照射部とを備え、
前記層形成手段が、前記層への前記レーザ光の照射が完了すると、該層の上に新たなレジンコーテッドサンドの層を形成するものであり、
前記収納部は、砂粒子の表面がオルソ率が55%以上75%以下のレジンで被覆されたレジンコーテッドサンドを収納したものであり、
前記照射部が、10W以上80W以下の出力でレーザ光を照射するものであって、
前記照射部が照射するレーザ光の出力をP[W]、該レーザ光の走査速度をv[mm/s]、該レーザ光の走査ピッチをw[mm]とし、前記層形成手段における積層ピッチをh[mm]とし、P/(vwh)[ws/mm]=E[J/mm]としてエネルギー密度Eを表した場合にレーザ光の出力が10W以上80W以下の条件下で、該レーザ光のエネルギー密度Eが1.3J/mm以上であることを特徴とする。
また、
前記照射部が、10W以上30W以下の出力でレーザ光を照射するものであって、
レーザ光の出力が10W以上30W以下の条件下で、該レーザ光のエネルギー密度Eが1.3J/mm以上であることを特徴としてもよい。
ここで、前記層は基台の上に積層され、前記基台は、前記層への前記レーザ光の照射が完了すると、所定のピッチで下降するものであり、前記層形成手段は、前記基台が前記所定のピッチで下降した後、新たなレジンコーテッドサンドの層を形成するものであってもよい。加えて、前記基台を所定のピッチで昇降させる昇降手段を備えていてもよい。あるいは、前記層は枠内に配置された基台の上に積層され、前記枠は、前記層への前記レーザ光の照射が完了すると、所定のピッチで上昇するものであり、前記層形成手段は、前記枠が前記所定のピッチで上昇した後、新たなレジンコーテッドサンドの層を形成するものであってもよい。加えて、前記枠を所定のピッチで昇降させる昇降手段を備えていてもよい。
また、前記層は基台の上に積層され、前記層形成手段は、前記層への前記レーザ光の照射が完了すると、所定のピッチで上昇するものであって、該所定のピッチで上昇した後、新たなレジンコーテッドサンドの層を形成するものであってもよい。さらに、前記層形成手段を所定のピッチで上昇させる昇降手段を備えていてもよい。
また、前記収納部に収納されているレジンコーテッドサンドを前記基台の上に供給する供給手段を備えていてもよいし、前記層形成手段が、前記収納部に収納されているレジンコーテッドサンドを前記基台の上に供給しながら前記層を前記基台の上に形成するものであってもよい。
上記砂積層造形機によれば、オルソ結合している割合を表すオルソ率が55%以上75%以下のレジン(以下、ハイオルソレジンと称する。)によって表面が被覆されている砂粒子を用いる。強度を重視した一般的なレジンであれば、250℃前後まで加熱することではじめて極めて高い強度を得ることができるが、ハイオルソレジンでは、150℃程度まで加熱される間に硬化が進み、ある程度の強度が確保される。前記照射部は、10W以上80W以下のレーザ光しか出力することができないようにすることで、装置の低価格が実現される。そして、このような低出力であっても、上述のごとく、ハイオルソレジンは150℃程度まで加熱される間に硬化が進み、ある程度の強度が確保されるため、レーザ光が照射されて硬化が進んだ硬化部が積層された三次元的な造形物は、砂積層造形機から取り出すことができる程度の強度を少なくとも有することになる。さらに、レーザ光の出力を低出力に抑えることで、硬化部に隣接する、外側の領域や下層の領域までレーザ光の熱が伝わることが低減され、成形精度が高められる。
また、前記収納部は、収納しているレジンコーテッドサンドの砂粒子が、セラミック系の人工砂であるものであってもよい。すなわち、セラミック系の人工砂が100質量%であってもよい。セラミック系の人工砂は、一般的に使用される珪砂よりも熱伝導率が低く、レーザ光の熱が外側の領域や下層の領域へ拡散してしまうことがより低減され、成形精度がさらに高められる。
また、上記砂積層造形機において、
前記照射部が、走査することによって所望の形状全体にレーザ光を照射した後、該形状の輪郭をなぞるようにレーザ光を照射するものであることを特徴としてもよい。
また、上記砂積層造形機において、
前記照射部が、前記形状全体にレーザ光を照射するときのレーザ光の出力と、該形状の輪郭をなぞるときのレーザ光の出力は同じ出力であることを特徴としてもよい。
また、前記照射部が、前記形状の輪郭をなぞるときのレーザ光の出力を、該形状全体にレーザ光を照射するときのレーザ光の出力よりも下げてレーザ光を照射するものであることを特徴としてもよい。
また、上記砂積層造形機において、
前記照射部が、走査することによって所望の形状全体にレーザ光を照射した後、該形状の輪郭に接した、該輪郭よりも外側の最外周縁をなぞるようにレーザ光を照射するものであることを特徴としてもよい。
また、上記砂積層造形機において、
前記照射部が、積層された複数のレジンコーテッドサンドの層にわたってレーザ光を照射することで、上部ほど細くなる複数の支持部を分散した位置で硬化させた後、該複数の支持部の上に積層された複数のレジンコーテッドサンドの層にわたってレーザ光を照射することで、該複数の支持部それぞれに接続した製品部を硬化させるものであることを特徴とする態様であってもよい。
ここにいう分散とは、前記製品部が曲がらないように複数箇所で支持することをいう。
上記態様によれば、前記製品部の変形が抑えられる。また、前記製品部を、この砂積層造形機から取り出す際に、前記支持部が上部ほど細くなっているため、該製品部と該支持部との境目で折れやすく、該製品部を容易に取り出すことができる。
なお、前記支持部は、中実のものである場合には、上端面の直径が2mm以上7mm以下のものであってもよい。2mm未満であると、前記製品部を支持することが困難になり、該製品部が変形してしまう場合がある。一方、前記製品部と前記支持部との境目付近(前記上端面付近)で折った後の前記製品部の仕上げ面積が、7mmを超えると大きくなりすぎて作業が大変になるばかりか、仕上げ作業によって寸法精度が狂ってしまう恐れがある。また、前記支持部は、中空のものであってもよく、この場合には、外径と内径の差である厚みが0.5mm以上3.5mm以下であって、上端の外径は、下限値は中実のものである場合と同じく2mmであるのに対して、上限値は7mmを超えて20mmになる。
また、上記砂積層造形機において、
前記収納部に収納されていたレジンコーテッドサンドが供給され、該レジンコーテッドサンドを塊状に一時貯留する貯留部を備え、
前記層形成手段が、前記貯留部に一時貯留されているレジンコーテッドサンドの塊を層状に掻き拡げ該レジンコーテッドサンドの層を形成するものであることを特徴としてもよい。
こうすることで、簡単な構造で均一な厚さの層を形成することができる。
なお、前記層が積層される基台を備え、前記貯留部が、前記基台に設けられたものであってもよいし、該基台よりも上流側に設けられたものであってもよく、前記層形成手段が、前記貯留部に一時貯留されているレジンコーテッドサンドの塊を前記基台上に掻き拡げるものであってもよい。
上記目的を解決する砂積層造形方法は、
砂粒子の表面がオルソ率が55%以上75%以下のレジンで被覆されたレジンコーテッドサンドの層を形成する層形成と、レジンを硬化させるレーザ光を該層に10W以上80W以下の出力で照射し該層が硬化した硬化層を得るレーザ光照射とを交互に繰り返し、該硬化層を積層していく砂積層造形方法であって、
前記層形成と前記レーザ光照射とを交互に繰り返しベース板を造形する第1工程と、
前記ベース板における分散した箇所に上部ほど細くなる複数の支持部を、前記層形成と
前記レーザ光照射とを交互に繰り返し造形する第2工程と、
前記複数の支持部の上に、前記層形成と前記レーザ光照射とを交互に繰り返し、該複数の支持部それぞれに接続した製品部を造形する第3工程とを有することを特徴とする。
本発明の砂積層造形機によれば、安価でありながら成形精度が高められており、本発明の砂積層造形方法によれば、造形コストを抑えながら成形精度が高められている。
本発明の一実施形態である砂積層造形機の断面図である。 図1に示す砂積層造形機においてレーザ光を照射している様子を示す断面図 である。 レジンコーテッドサンドにレーザ光が照射された様子を模式的に示す図であ る。 コンピュータ上の断面パターンと実際の照射領域との関係の一例を示す図で ある。 コンピュータ上の断面パターンと実際の照射領域との関係の別の例を示す図 である。 本実施形態の砂積層造形機で成形された造形物の一例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態である砂積層造形機の断面図である。
図1に示す砂積層造形機1は、造形枠10と、ならし部材20と、供給装置30を有する。造形枠10は矩形の枠部材であり、内側には積層プレート11と、昇降機構12が設けられている。積層プレート11は、昇降機構12によって昇降される。昇降機構12には、降下ピッチの値を設定することができ、積層プレート11は、昇降機構12に設定された降下ピッチごとに段階的に降下していく。本実施形態では、降下ピッチは、0.1mm以上0.7mm以下の範囲で設定可能であるが、後述するレジンコーテッドサンドの粒径の1倍より大きく3倍未満の長さに設定することが好ましい。積層プレート11の初期状態は、積層プレート11の表面11aの高さ位置が、造形枠10の上縁10tの高さ位置に一致した状態である。造形枠10の一端側(図1では左側)と、反対側の他端側(図1では右側)それぞれにはフランジ部101,102が設けられており、一端側のフランジ部101の上方には、供給装置30が配置されている。
ならし部材20は、造形枠10の幅方向(図1では紙面に対して垂直な方向)に延在したブレードであり、初期位置は、造形枠10の一端側のフランジ部101上の位置になる。ならし部材20は、下端20bの位置を造形枠10の上縁10tの高さ位置に合わせて、供給装置30が配置された一端側から反対側の他端側に向かって走行する(図1(b)に示す白抜きの矢印参照)。
供給装置30は、レジンコーテッドサンドrsを収納しておくとともに、供給口301から一定量のレジンコーテッドサンドrsを造形枠10の一端側のフランジ部101上に供給する。供給口301は、造形枠10の幅方向(図1では紙面に対して垂直な方向)に延在したスリット状の開口であり、一端側のフランジ部101には、造形枠10の幅方向にわたってレジンコーテッドサンドrsの塊が一時貯留される。供給装置30は、収納部の一例に相当し、一端側のフランジ部101は、貯留部の一例に相当する。
供給装置30に収納されているレジンコーテッドサンドrsは、セラミック系の人工球形砂の表面を、オルソ率が55%以上75%以下のレジンで被覆したものである。
ここにいうセラミック系とは、ムライトの結晶構造を有するもののことであったり、アルミナ、カオリン、シリカ等の一又は複数を主成分とするもののことをいう。また、人工球形砂は、焼結法や溶融法で製造され、真球度が高く、粒度分布の最大ピークが0.05mm以上0.45mm以下の範囲に入るものであり、0.1mm以上0.25mm以下の範囲に入るものがより好ましい。真球度は、凹凸度合いを表す値として、(砂粒子の周囲長)2÷(4π×砂粒子の投影面積)の式より求めた値を基準に判断される。この凹凸度合いを表す値が1であれば真円であり、値が大きくなるほど凹凸度合いも大きいことになる。人工球形砂は、この凹凸度合いを表す値が1.15以下である。凹凸度合いを表す値が1.15以下であると、レジンコーテッドサンドrsの充填率が高まり、レジンコーテッドサンドrs同士の接触面積が広くなって結合力が強まる。なお、砂として、珪砂、あるいはジルコンサンド、クロマイトサンド等の天然砂を配合してもよいが、熱伝導率が天然砂よりもセラミック系の人工砂の方が低いことから、レーザ光の熱の不必要な拡散を抑えるには、セラミック系の人工砂のみを用いる方が好ましい。ただし、レーザ光の出力をできる限り低く設定する場合には、熱伝導率が高い天然砂(例えば、珪砂)をあえて多く配合し(例えば、50%以上)、少ない熱エネルギーを効率よく伝達させることを優先させてもよい。
本実施形態におけるレジンは、ハイオルソノボラック型フェノール樹脂であり、フェノールとホルムアルデヒドを反応させるにあたり、ホルムアルデヒドに対してフェノールを過剰にし、2価金属塩を触媒に用いることで、フェノールがオルト位でメチレンによって結合した以下の式(1)で表される熱硬化性樹脂である。
ハイオルソノボラック型フェノール樹脂は、pHが4以上5以下、オルソ率が55%以上75%以下であって、パラ位が多く空いており、速硬化性といった性質を有する。
図1(a)に示す積層プレート11は、一段下げられた状態であり、造形枠10の上縁10tの高さ位置よりも上記降下ピッチの厚さ分の積層空間sp(図1(a)参照)が設けられている。フランジ部101上に供給されたレジンコーテッドサンドrsは、他端側に向かって走行するならし部材20によってならされ、積層空間spは、一端側からレジンコーテッドサンドrsによって埋められていく。すなわち、一端側のフランジ部101に、造形枠10の幅方向にわたって一時貯留されたレジンコーテッドサンドrsの塊を、ならし部材20が積層空間spに層状に掻き拡げ、積層空間spには、レジンコーテッドサンドrsの、降下ピッチの厚さ分の層が形成されていく。ならし部材20は、層形成手段の一例に相当する。図1では、積層プレート11の表面11aに複数の層SLが形成されており、同図(b)では、それら複数の層SLの上で、一端側から他端側までのうち、半分を超えたところまでならし部材20が移動しており、さらに新たな層形成が行われている。本実施形態の砂積層造形機1によれば、簡単な構造で均一な厚さの層SLを形成することができる。また、供給口301は、レジンコーテッドサンドrsによって摩耗し、開口面積が大きくなる場合がある。開口面積が大きくなると、一端側のフランジ部101に一時貯留させるレジンコーテッドサンドrsの量が多くなる。しかしながら、本実施形態の砂積層造形機1によれば、レジンコーテッドサンドrsの塊を層状に掻き拡げるならし部材20の高さ位置によって層SLの厚さは決まるため、一時貯留させるレジンコーテッドサンドrsの量が多くなったとしても、層SLの厚さが厚くなることはない。また、ならし部材20がレジンコーテッドサンドrsによって摩耗したとしても、ならし部材20の交換は、供給装置30の交換に比べて遙かに容易である。
図2は、図1に示す砂積層造形機においてレーザ光を照射している様子を示す断面図である。この図2では、図1(b)に示す、半分を超えたところまで形成されていた層SLが、造形枠10内側の全面(積層プレート11の全面)に形成されている。
砂積層造形機1は、レーザ発振器40とスキャナ50と制御部60も有する。レーザ発振器40は、半導体レーザ光を発振するものであり、出力値は10W以上80W以下の範囲で設定可能である。10W未満ではレーザ光から供給される熱エネルギーが不足して、レジンコーテッドサンドの温度が十分に上がらず、熱硬化しにくくなり、80Wに抑えることで装置の低価格が実現される。さらに、出力値を25W以上50W以下の範囲で設定可能なレーザ発振器を用いることがより好ましい。25W以上の出力値になると、造形時間が短くなり、造形効率が向上し、50Wに抑えることで装置がより一段と低価格になる。
スキャナ50には、レーザ発振器40で発振されたレーザ光を集光する集光レンズ501と、レーザ光の照射角を連続して変更する回転ミラー502が備えられている。図2では、レーザ光が灰色の矢印線で示されている。
この砂積層造形機1で所望の三次元構造の造形物を形成するには、まず、形成したい造形物をコンピュータ上で三次元的に表し、その造形物を上記降下ピッチで複数層に平行にスライスした場合の各層ごとの断面パターンを表すデータを予め作成しておく。そして、このデータを、制御部60に入力する。制御部60は、入力されたデータに基づいて、レーザ発振器40でレーザ光を発振させたり、回転ミラー502を回転させる。すなわち、制御部60は、断面パターンに相当する部位にはレーザ光が照射され、断面パターンに相当しない部位にはレーザ光が照射されないように、レーザ発振器40および回転ミラー502を制御する。
各層SLのうち、レーザ光が照射された領域では、レジンコーテッドサンドrsのレジンが150℃程度までに加熱されることで溶融して硬化反応し、隣り合うレジンコーテッドサンドrsの人工球形砂どうしが硬化したレジンを介して結着し、硬化部になる。図1及び2では、各層SLのうち、黒い部分が硬化部になる。図2では、一番上の層SLにおいて硬化部が形成されている途中である。
図3は、レジンコーテッドサンドにレーザ光が照射された様子を模式的に示す図である。この例では、レジンコーテッドサンドの一粒子の直径は、粒度分布の最大ピークが0.1mmとなるものであり、この図3では、いずれのレジンコーテッドサンドの粒子も、直径0.1mmで表している。また、降下ピッチは0.2mmである。したがって、レジンコーテッドサンドの層SLの一層分の厚さは0.2mmとなり、レジンコーテッドサンドの2粒子分に相当し、一層は2列構成であり、図3では、3つの層SLが示されている。以下、これら3つの層を区別する場合には、下層SL1と中層SL2と上層SL3と称することにする。また、未硬化のレジンコーテッドサンドrspでは、人工球形砂csと、その表面を覆うハイオルソノボラック型フェノール樹脂hofとが区別して示されている。一方、ハイオルソノボラック型フェノール樹脂hofが溶融して硬化した硬化済レジンコーテッドサンドは、その区別がなされておらず、rshの符号が付されている。
図3(a)は、5kWのレーザ光B5kをレジンコーテッドサンドの層SLに照射した様子を模式的に示す図である。
5kWのレーザ光B5kは、出力が高いことから、上層SL3を通過しその下の中層SL2にまで達している。また、5kWのレーザ光B5kから供給される熱エネルギーは大きいことから、硬化済レジンコーテッドサンドrshが大きく拡がって存在している。さらに、この図3(a)では、前回のレーザ光照射で硬化が完了した中層SL2を構成する未硬化のレジンコーテッドサンドの一部までもが、上層SL3に照射されたレーザ光B5kによって硬化済レジンコーテッドサンドrshになってしまっている。
図3(b)は、本実施形態の例であって、25Wのレーザ光B25をレジンコーテッドサンドrsの層SLに照射した様子を模式的に示す図である。
25Wのレーザ光B25は、出力が相対的に低いことから、上層SL3内で止まり、その下の中層SL2までは達していない。すなわち、図3(b)に示す上層SL3を構成する上の列までレーザ光B25が照射されている。より具体的には、上層SL3を構成する上の列のレジンコーテッドサンドの、全てではなく、上から5/6程度まで照射されている。また、25Wのレーザ光B25から供給される熱エネルギーは相対的に小さいことから、硬化済レジンコーテッドサンドrshは、図3(a)に示すほど横方向に大きく拡がっておらず、下方向も上層SL3内に留まっている。すなわち、上述のごとくレーザ光B25は、上層SL3を構成する上の列のレジンコーテッドサンドの上から5/6程度までしか照射されていないが、熱伝導によって、上層SL3を構成する下の列のレジンコーテッドサンドまで硬化済レジンコーテッドサンドrshになっている。なお、中層SL2を構成するレジンコーテッドサンドまで硬化済レジンコーテッドサンドrshにはなっていない。したがって、図3(b)に示す本実施形態の例では、出来上がった造形物の形状や寸法精度が設計通りになり、高い成形精度が保証される。
図3(b)に示した硬化済レジンコーテッドサンドrshは、150℃程度まで加熱された結果、溶融して硬化反応し、曲げ強さで300N/cm2程度の強度が確保されている。
図4は、コンピュータ上の断面パターンと実際の照射領域との関係の一例を示す図である。
この図4では、実際の照射領域を真上から見た図であり、図中の2点鎖線の矩形はコンピュータ上の断面パターンの外縁(輪郭)を表すものである。図4(a)に示すように、矩形の断面パターンは、左側縁p1と右側縁p2と手前側縁p3と奥側縁p4とからなっている。また、図4(a)に示すX方向は、図1や図2では左右方向になり、Y方向は、造形枠10の幅方向(図1や図2では紙面に対して垂直な方向)になる。
また、図4では、照射された領域は黒色で表す。ここで、本実施形態のレーザスポット径は直径0.1mmであり、Y方向の走査に対するX方向の間隔であるレーザ走査ピッチは0.15mmである。このため、隣り合うY方向の走査線におけるレーザ照射領域どうしは重なっておらず、0.5mmの隙間が生じていることになり、厳密には図4では白色で表されることになるが、図示省略され、黒色で表されている。
図4(b)は、走査を開始して少し時間が経過した段階であり、X方向への走査が5回完了し、6回目におけるY方向への走査中の様子を示す図である。1回目のY方向への走査では、コンピュータ上の断面パターンの右側縁p2を断面パターンの手前側縁p3から奥側縁p4まで走査している。
図4(c)は、X方向への走査が全て完了し、最後のY方向への走査中の様子を示す図であり、図4(d)は、最後のY方向への走査が終了した様子を示す図である。最後のY方向への走査では、コンピュータ上の断面パターンの左側縁p1を断面パターンの手前側縁p3から奥側縁p4まで走査している。この図4(d)に示すように、この例では、コンピュータ上の断面パターンの全域にわたってレーザ光を照射する。
その上で、コンピュータ上の断面パターンの外周縁(輪郭)にレーザ光を再度照射する。すなわち、断面パターンの輪郭をなぞるようにレーザ光を照射する。図4(e)および同図(f)では、断面パターンの外周縁(p1~p4)に照射したレーザ光を灰色で示している。図4(e)に示す例は、断面パターンの外周縁に再度照射するレーザ光の出力を、断面パターンの全域にわたって照射したときのレーザ光の出力(例えば、50W)と同じ出力にした例である。この図4(e)に示す例では、同図(d)に示す例に比べて、造形物の外表面がよりしっかりと結着し、表面安定性が向上する。一方、図4(f)に示す例は、断面パターンの外周縁に再度照射するレーザ光の出力を、断面パターンの全域にわたって照射したときのレーザ光の出力よりも弱い出力(例えば、30W)に落とした例である。照射したレーザ光を示す灰色の線は、レーザ光の出力が弱ければ細く示され、図4(e)における灰色の線よりも、同図(f)における灰色の線の方が細く示されている。この図4(f)に示す例では、同図(e)に示す例に比べて、表面安定性がやや劣る場合があるかもしれないが、成形精度は高いレベルに維持される。すなわち、図4(e)に示す例では、レジンコーテッドサンドに、先の照射による熱エネルギーが残っている場合には、再照射により先の照射と同じ量の熱エネルギーが加算され、硬化済レジンコーテッドサンドの領域が同図(d)に示す状態に比べて拡大することがあるのに対し、この図4(f)に示す例では、レーザ光の出力を下げることにより、再照射による熱エネルギーの加算を抑え、表面安定性と成形精度の両方を高いレベルでバランスさせることに期待することができる。
図5は、コンピュータ上の断面パターンと実際の照射領域との関係の別の例を示す図である。以下、図4に示す例との相違点を中心に説明する。
この図5でも、図4と同じように、実際の照射領域を真上から見た図であり、図中の2点鎖線の矩形はコンピュータ上の断面パターンの外縁(輪郭)を表すものである。また、図5でも、照射された領域は黒色で表す。なお、この図5でも、図4と同様に、Y方向の走査線における照射領域の間は厳密には白色で表されることになるが、図示省略され、黒色で表されている。
図5(a)は、図4(a)と同じく、走査を開始して少し時間が経過した段階であり、X方向への走査が5回完了し、6回目におけるY方向への走査中の様子を示す図である。図5(a)に示す例では、1回目のY方向への走査では、コンピュータ上の断面パターンの右側縁p2からX方向内側に1走査分空けて、断面パターンの手前側縁p3からY方向内側にレーザスポット径分空けた位置から断面パターンの奥側縁p4からY方向内側に同じくレーザスポット径分空けた位置までY方向に走査している。
図5(b)は、X方向への走査が全て完了し、コンピュータ上の断面パターンの左側縁p1からX方向内側に1走査分空けて、最後のY方向への走査中の様子を示す図であり、図5(c)は、最後のY方向への走査が終了した様子を示す図である。最後のY方向への走査では、コンピュータ上の断面パターンの左側縁p1からX方向内側に1走査分空けて、断面パターンの手前側縁p3からY方向内側にレーザスポット径分空けた位置から断面パターンの奥側縁p4からY方向内側に同じくレーザスポット径分空けた位置までY方向に走査している。この図5(c)に示すように、この例では、コンピュータ上の断面パターンよりも一回り小さな領域にレーザ光を照射する。すなわち、この後、図5(d)に示すように、コンピュータ上の断面パターンの外周縁上を1周走査するため、その1周分を空けて内側の全領域にわたってレーザ光を照射する。図5(d)では、コンピュータ上の断面パターンの外周縁(輪郭)にレーザ光を照射する。すなわち、断面パターンの輪郭をなぞるようにレーザ光を照射する。言い換えれば、所望の形状全体(ここではコンピュータ上の断面パターンよりも一回り小さな矩形状の領域全体)にレーザ光を照射した後、その形状の輪郭に接した、その輪郭よりも外側の最外周縁(ここでは、断面パターンの外周縁)をなぞるようにレーザ光を照射する。図5(d)でも、断面パターンの外周縁(p1~p4)に照射したレーザ光を灰色で示している。この図5(d)に示す例は、断面パターンの外周縁に照射するレーザ光の出力を、断面パターンよりも一回り小さな領域に照射したときのレーザ光の出力(例えば、50W)と同じ出力にした例である。ただし、断面パターンよりも小さな領域の大きさを少し大きくしておくことで、断面パターンの外周縁に照射するレーザ光の出力を低く(例えば、30W)設定することもできる。以上説明した図5に示す例は、Y方向への走査をX方向に沿って繰り返すことでコンピュータ上の断面パターンよりも小さな領域にレーザ光を照射した後、その領域の輪郭に接した、その輪郭よりも外側の最外周縁にレーザ光を照射することで、コンピュータ上の断面パターンの全域にレーザ光を照射する例である。
図6は、本実施形態の砂積層造形機で成形された造形物の一例を示す図である。
図6に示す造形物は、ベース板Bから立設した複数の支持部Fに支持された中空中子Cである。図1及び図2には、図6に示す造形物が造形されている途中の様子が示されている。中空中子Cは、製品部に相当する。ベース板Bは、積層プレート11の表面11aに成形されたものであり、中空中子Cの投影面積よりも大きな面積を有する。支持部Fは、ベース板Bに分散配置されており、上部にいくほど細くなり、上端面は中空中子Cに接続している。すなわち、支持部Fは、ベース板Bと中空中子Cを連結するものである。ベース板Bは、その面積と厚みから自身が反ることが抑えられ、支持部Fは、中空中子Cが反ったり歪んだりしないように複数箇所で中空中子Cを支持するものである。本実施形態の砂積層造形機1によれば、複数の支持部Fを分散した位置で硬化させた後、これら複数の支持部Fの上に積層された複数のレジンコーテッドサンドの層SLにわたってレーザ光を照射することで、複数の支持部Fそれぞれに接続した中空中子Cを硬化させる。
中空中子Cを、砂積層造形機1から取り出す際に、支持部Fが上部にいくほど細くなっているため、中空中子Cと支持部Fとの境目で折れやすく、中空中子Cを容易に取り出すことができる。支持部Fは、上端面の直径が2mm以上15mm以下のものである。2mm未満であると、中空中子Cを支持することが困難になり、中空中子Cが変形してしまう場合がある。一方、中空中子Cと支持部Fとの境目付近(上端面付近)で折った後の中空中子Cの仕上げ面積が、15mmを超えると大きくなりすぎて作業が大変になるばかりか、仕上げ作業によって寸法精度が狂ってしまう恐れがある。
以上説明したように、本実施形態の砂積層造形機1によれば、低出力のレーザ光しか出力することができないようにすることで、装置の低価格を実現している。そして、低出力であっても、ハイオルソノボラック型フェノール樹脂は150℃程度まで加熱される間に硬化が進み、ある程度の強度が確保されるため、レーザ光が照射されて硬化が進んだ硬化部が積層された中空中子Cは、砂積層造形機1から取り出すことができる程度の強度を少なくとも有することになる。
砂積層造形機1から取り出された中空中子Cは、支持部Fの付け根部分の仕上げを行った後、二次焼成を行う。この二次焼成では、中空中子Cの周囲に粒子を充填した状態で加熱する。例えば、オーブンレンジによって250℃で6時間ほど加熱する。二次焼成で充填される粒子は、中空中子Cの変形防止のためのもの、すなわち形状維持部材であり、表面がレンジで被覆されていない、例えば、ガラスビーズや黒鉛の粒子やアルミナの粒子やシリカの粒子が用いられる。
本発明は、上述の実施の形態に限られることはなく、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、積層プレート11の上に形成(積層)されたレジンコーテッドサンドの層SLへのレーザ光の照射が完了すると、積層プレート11は所定のピッチで上昇するものであり、ならし部材20は、積層プレート11が所定のピッチで上昇した後、新たなレジンコーテッドサンドの層SLを積層プレート11の上に形成(積層)するものであってもよい。
また、積層プレート11が昇降するのではなく、ならし部材20が昇降する態様であってもよく、積層プレート11の昇降とならし部材20の昇降を組み合わせた態様であってもよい。
さらに、ならし部材20は、供給装置30に収納されているレジンコーテッドサンドrs、あるいは一端側のフランジ部101に一時貯留されたレジンコーテッドサンドrsを積層プレート11の上に供給する供給手段を兼ねているが、供給装置30が、ならし部材20のように一端側から他端側に向かって移動しながら、レジンコーテッドサンドrsを積層プレート11の上に供給するものであってもよい。
また、レジンコーテッドサンドrsの塊を、一端側のフランジ部101に一時貯留させる代わりに、積層プレート11の上に一時貯留させ、本実施形態と同様に、ならし部材20で掻き拡げてもよい。
続いて、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、以下に説明する実施例によって何ら限定されることはない。各実施例および比較例では、造形物として図6に示す形状の中空な中子を造形した。
(実施例1)
人工球形砂として、伊藤忠セラテック株式会社製のセラビーズ(登録商標)#1450を使用した。粒度分布は単一ピークであり、その最大ピークは0.106mmである。
レジンとしては、速硬化タイプのハイオルソノボラック型フェノール樹脂(オルソ率が55%以上75%以下)を使用した。なお、オルソ率は、赤外分光光度計を用いてKBr法により吸光度を測定し、次式により算出することができる。
オルソ率(%)=D760÷(D760+1.44×D820)×100
ここで、D760とは760cm-1の吸光度をいい、D820とは820cm-1の吸光度をいう。
降下ピッチ(積層ピッチ)は0.30mmとした。また、レーザ出力は25W、レーザスポット径は直径0.1mm、レーザ走査速度は300mm/秒、レーザ走査ピッチを0.15mmとした。レーザ走査ピッチとは、図4及び図5に示すY方向の走査に対するX方向の間隔であり、実施例1では、直径0.1mmのレーザスポット径であることから、隣り合うY方向の走査線におけるレーザ照射領域どうしは重なっておらず、0.5mmの隙間が生じていることになる。
レーザ光の出力をP[W]、レーザ走査速度をv[mm/s]、レーザ走査ピッチをw[mm]とし、積層ピッチをh[mm]とした場合に、P/(vwh)[ws/mm3]=E[J/mm3]としてエネルギー密度(E[J/mm3])を求めると、実施例1の場合には、エネルギー密度は1.85J/mm3になる。
2次焼成前の実施例1における中子の曲げ強さは、300N/cm2であった。
各条件およびエネルギー密度と曲げ強さを表1に示す。
この表1には、実施例2以降の実施例および比較例それぞれの、各条件およびエネルギー密度と曲げ強さも示す。
(実施例2)
レーザ出力を30Wにした以外は、実施例1と同じ条件で行った。この実施例2のエネルギー密度は2.22J/mm3になる。2次焼成前の実施例2における中子の曲げ強さは、639N/cm2であった。
(実施例3)
レーザ出力を50Wにし、レーザ走査速度を500mm/秒にした以外は、実施例1と同じ条件で行った。この実施例3のエネルギー密度は2.22J/mm3になる。2次焼成前の実施例3における中子の曲げ強さは、684N/cm2であった。
(実施例4)
レーザ走査速度を750mm/秒にした以外は、実施例3と同じ条件で行った。この実施例4のエネルギー密度は1.48J/mm3になる。2次焼成前の実施例4における中子の曲げ強さは、234N/cm2であった。
(実施例5)
降下ピッチ(積層ピッチ)を0.35mmにした以外は、実施例3と同じ条件で行った。この実施例5のエネルギー密度は1.90J/mm3になる。2次焼成前の実施例5における中子の曲げ強さは、720N/cm2であった。
(実施例6)
積層ピッチを0.40mmにした以外は、実施例3と同じ条件で行った。この実施例6のエネルギー密度は1.67J/mm3になる。2次焼成前の実施例6における中子の曲げ強さは、700N/cm2であった。
(実施例7)
積層ピッチを0.45mmにした以外は、実施例3と同じ条件で行った。この実施例7のエネルギー密度は1.48J/mm3になる。2次焼成前の実施例7における中子の曲げ強さは、733N/cm2であった。
(実施例8)
積層ピッチを0.50mmにした以外は、実施例3と同じ条件で行った。この実施例8のエネルギー密度は1.33J/mm3になる。2次焼成前の実施例8における中子の曲げ強さは、597N/cm2であった。
(実施例9)
レーザ走査ピッチを0.16mmにした以外は、実施例3と同じ条件で行った。この実施例9のエネルギー密度は2.08J/mm3になる。2次焼成前の実施例9における中子の曲げ強さは、642N/cm2であった。
(実施例10)
レーザ走査ピッチを0.17mmにした以外は、実施例3と同じ条件で行った。この実施例10のエネルギー密度は1.96J/mm3になる。2次焼成前の実施例10における中子の曲げ強さは、728N/cm2であった。
(実施例11)
レーザ走査ピッチを0.18mmにした以外は、実施例3と同じ条件で行った。この実施例11のエネルギー密度は1.85J/mm3になる。2次焼成前の実施例11における中子の曲げ強さは、609N/cm2であった。
(実施例12)
レーザ走査ピッチを0.19mmにした以外は、実施例3と同じ条件で行った。この実施例12のエネルギー密度は1.75J/mm3になる。2次焼成前の実施例12における中子の曲げ強さは、600N/cm2であった。
(実施例13)
レーザ走査ピッチを0.20mmにした以外は、実施例3と同じ条件で行った。この実施例13のエネルギー密度は1.67J/mm3になる。2次焼成前の実施例13における中子の曲げ強さは、374N/cm2であった。
(比較例)
人工球形砂の表面を被覆するレジンとして、ランダムノボラック型フェノール樹脂を使用した以外は、実施例1と同じ条件で行った。ランダムノボラック型フェノール樹脂は、オルソ率が40%以上50%以下であって、pHは1以下である。
比較例では、中子(製品部)を砂積層造形機から取り出す際に、中子が壊れてしまった。壊れた中子の破片を用いて曲げ強さを測定したところ、83N/cm2しかなかった。
実施例4でも、中子(製品部)を砂積層造形機から取り出す際に、壊さずに取り出せたが、中子が壊れそうになった。一方、実施例1では、中子(製品部)を砂積層造形機から全く問題なく取り出すことができた。これらの結果から、2次焼成前となる製品部を砂積層造形機から取り出す際に、その製品部が形崩れせずに形状を維持するためには、曲げ強さが250N/cm2以上あると安心であると推測する。
砂積層造形機から取り出された、各実施例おける中子には、図6に示す支持部はついておらず、支持部は、レジンコーテッドサンドに埋もれたまま造形枠の内側に残っていた。
砂積層造形機から取り出された、各実施例における中子は、支持部の付け根部分の仕上げを行った後、二次焼成を行った。二次焼成では、中子の周囲にガラスビーズを充填した状態で、オーブンレンジによって250℃で6時間加熱した。また、比較例における壊れた中子の破片も、同じく、オーブンレンジによって250℃で6時間加熱した。
各実施例における二次焼成後の中子の曲げ強さは、1000N/cm2以上1500N/cm2以下であり、二次焼成前に比べ曲げ強さが大幅に向上した。一方、比較例における二次焼成後の破片の曲げ強さは、1750N/cm2であり、二次焼成前に比べ曲げ強さが各実施例よりも飛躍的に向上した。
各実施例における二次焼成後の中子の曲げ強さは、一般的に使用されているシェル中子の曲げ強さ以上であり、シェル中子に代えて使用することができることが確認された。
また、実際の鋳造において中子が壊れずに機能する曲げ強さは600N/cm2あれば良いことを突き止めた。従来のシェル中子では、オーバースペックであるとも言え、鋳造後の中子の崩壊性を考慮すると、曲げ強さは1750N/cm2も必要はなく、実施例2、3、5~7、9~12では、砂積層造形機から取り出したままの中子を、二次焼成を行わずに鋳造に使用することができる。
さらに、実施例1~13では、エネルギー密度は1.3J/mm3以上であることがわかる。また、実施例2と実施例3を比較すると、エネルギー密度は同じであり、ともに曲げ強さは600N/cm2を超えている。中子の造形条件としては、レーザ走査速度が速いほど造形時間が短くなるため、実施例2よりも実施例3の方が好ましいといえる。しかも、実施例2よりも実施例3の方が曲げ強さの値は高い。
また、積層ピッチについてみると、レーザ出力を50Wに揃えた、積層ピッチが0.30mmの実施例3、0.35mmの実施例5、0.40mmの実施例6、0.45mmの実施例7ではいずれも、曲げ強さは600N/cm2を遙かに超えているが、積層ピッチを0.50mmに拡げた実施例8では、曲げ強さが600N/cm2を下回っている。人工球形砂の粒度分布では最大ピークが0.106mmであることから、積層ピッチ、すわちレジンコーテッドサンドの一層分の厚さは、その最大ピークの、実施例3では2~3倍、実施例5では約3倍、実施例6では3~4倍、実施例7では約4倍、実施例8では4~5倍であるといえる。レーザ出力が50Wであれば、積層ピッチ(レジンコーテッドサンドの一層分の厚さ)は、用いる砂粒子の粒度分布における最大ピークの5倍未満であることが好ましいことになる。5倍以上であると、レーザ光から供給される熱エネルギーが不足して、レジンコーテッドサンドの一つの層のうちの下部のレジンコーテッドサンドの温度が十分に上がらず、熱硬化しにくくなって、曲げ強さが低下する。なお、レーザ出力が25Wの場合についても調査した結果、この場合には、積層ピッチ(レジンコーテッドサンドの一層分の厚さ)は、用いる砂粒子の粒度分布における最大ピークの3倍未満であることが好ましいことがわかった。これらをまとめると、積層ピッチは、レジンコーテッドサンドの粒径の1倍より大きく3倍未満の長さに設定することが好ましい。1倍では、加熱効率が悪く、積層回数が多くなって造形時間が長引いてしまう。一方、3倍では、レーザ光の熱が下まで完全に伝わらず、硬化不足や結着不足が問題になる場合がある。
また、レーザ走査ピッチについてみると、レーザ出力を50Wに揃えた、レーザ走査ピッチが0.16mmの実施例9、0.17mmの実施例10、0.18mmの実施例11、0.19mmの実施例12ではいずれも、曲げ強さは600N/cm2以上であるが、レーザ走査ピッチを0.20mmに拡げた実施例13では、曲げ強さが600N/cm2を大きく下回っている。レーザスポット径が直径0.1mmであることから、隣り合うY方向の走査線におけるレーザ照射領域の間には、レーザ走査ピッチを0.20mmに拡げた実施例13では、0.1mmの隙間が生じていることなる。ここで、人工球形砂の粒度分布における最大ピークが0.106mmであることから、隣り合う走査線におけるレーザ照射領域の間隔は、レーザ出力が50Wの場合には、およそ砂粒子の粒径以下であることが好ましいことになる。なお、レーザ出力が25Wの場合についても調査した結果、隣り合う走査線におけるレーザ照射領域の間隔は、この場合には、およそ砂粒子の粒径の1/2以下であることが好ましいことがわかった。また、レーザ出力が、50Wの場合であっても25Wの場合であっても、隣り合う走査線におけるレーザ照射領域が重なってしまうと、重なった部分では熱エネルギーが大きくなりすぎてしまうため、重ならないことが好ましい。
1 砂積層造形機
10 造形枠
11 積層プレート
12 昇降機構
20 ならし部材
30 供給装置
40 レーザ発振器
50 スキャナ
60 制御部
cs 人工球形砂
hof ハイオルソノボラック型フェノール樹脂
rs レジンコーテッドサンド
sp 積層空間
SL 層
B ベース板
C 中空中子
F 支持部

Claims (3)

  1. レジンコーテッドサンドを収納した収納部と、
    前記収納部に収納されているレジンコーテッドサンドの層を形成する層形成手段と、
    レジンを硬化させるレーザ光を前記層に照射する照射部とを備え、
    前記層形成手段が、前記層への前記レーザ光の照射が完了すると、該層の上に新たなレジンコーテッドサンドの層を形成するものであり、
    前記収納部は、砂粒子の表面がオルソ率が55%以上75%以下のレジンで被覆されたレジンコーテッドサンドを収納したものであり、
    前記照射部が、10W以上80W以下の出力でレーザ光を照射するものであって、
    前記照射部が照射するレーザ光の出力をP[W]、該レーザ光の走査速度をv[mm/s]、該レーザ光の走査ピッチをw[mm]とし、前記層形成手段における積層ピッチをh[mm]とし、P/(vwh)[ws/mm]=E[J/mm]としてエネルギー密度Eを表した場合にレーザ光の出力が10W以上80W以下の条件下で、該レーザ光のエネルギー密度Eが1.3J/mm以上であることを特徴とする砂積層造形機。
  2. 前記照射部が、10W以上30W以下の出力でレーザ光を照射するものであって、
    レーザ光の出力が10W以上30W以下の条件下で、該レーザ光のエネルギー密度Eが1.3J/mm以上であることを特徴とする請求項1記載の砂積層造形機。
  3. 砂粒子の表面がオルソ率が55%以上75%以下のレジンで被覆されたレジンコーテッドサンドの層を形成する層形成と、レジンを硬化させるレーザ光を該層に10W以上80W以下の出力で照射し該層が硬化した硬化層を得るレーザ光照射とを交互に繰り返し、該硬化層を積層していく砂積層造形方法であって、
    前記層形成と前記レーザ光照射とを交互に繰り返しベース板を造形する第1工程と、
    前記ベース板における分散した箇所に上部ほど細くなる複数の支持部を、前記層形成と前記レーザ光照射とを交互に繰り返し造形する第2工程と、
    前記複数の支持部の上に、前記層形成と前記レーザ光照射とを交互に繰り返し、該複数の支持部それぞれに接続した製品部を造形する第3工程とを有することを特徴とする砂積層造形方法。
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