JP2024019264A - ビールテイスト飲料の製造方法 - Google Patents

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篤史 谷川
Atsushi Tanigawa
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Abstract

【課題】エグ味、酸味、刺々しさが低減しているとともに飲み易さが増強しているビールテイスト飲料の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法は、下面ビール酵母を使用し、発酵液温度を15℃以上として発酵を行い、発酵終了時の発酵液の酵母濃度を3000万個/mL以上とする発酵工程を含む。本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法は、ビールテイスト飲料のピルビン酸の含有量を50ppm以下とするのが好ましい。本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法は、麦芽比率を50%未満とするのが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、ビールテイスト飲料の製造方法に関する。
飲用者の多様な嗜好に応えるべく、多くの種類のビールテイスト飲料やその製造方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、少なくとも穀物原料と水とを含む混合物を糖化して得られた糖化液、又は、発酵原料として糖質原料のみを含む糖溶液を煮沸し、発酵原料液を調製する仕込工程と、前記仕込工程により得られた発酵原料液に下面ビール酵母を接種し、12~15℃で発酵を行う発酵工程と、を少なくとも有し、酵母を接種する前の発酵原料液のpHが5.5~5.8であることを特徴とする、ビール様発泡性発酵飲料中のピルビン酸含有量を高める方法が記載されている。
特許第5855579号公報
現在、お酒に強い消費者や、手軽に酔いたいと考える消費者等から、「アルコール度数の高い飲料」に対するニーズが存在するため、本発明者は、当該ニーズに応えるべく、アルコール度数の高いビールテイスト飲料の創出を検討した。
その結果、ビールテイスト飲料のアルコール度数を単純に高めた場合、香味の面において様々な問題が発生することを確認した。
具体的には、ビールテイスト飲料のアルコール度数を高くすると、エグ味、酸味、刺々しさがかなり強く感じられるとともに、アルコールに由来する甘味が強く感じられ、その結果、ビールテイスト飲料の香味が非常に飲み難い香味になってしまうことを確認した。
そして、本発明者がさらに詳細な検討を行った結果、これらの問題は、ビールテイスト飲料を高いアルコール度数とした場合であって、かつ、特許文献1において着目されているピルビン酸の含有量が多くなる場合に発現することが確認できた。
つまり、ビールテイスト飲料において、「高いアルコール度数」と「多い含有量のピルビン酸」との組合せによって、前記した問題(エグ味、酸味、刺々しさの増強、飲み易さの低減)が顕在化してしまうことがわかった。
そこで、本発明は、エグ味、酸味、刺々しさが低減しているとともに飲み易さが増強しているビールテイスト飲料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、高いアルコール度数のビールテイスト飲料について、前記した課題を解決すべく検討を行った。その結果、ピルビン酸の含有量を高めることを目的とする特許文献1とは全く逆の技術的思想、つまり、ピルビン酸の含有量を従来の含有量よりも低減させるという技術的思想に基づき、ビールテイスト飲料のアルコール度数を高めても、前記した課題を解決できることを見出し、本発明を創出した。
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)アルコール度数が7.0%以上であるビールテイスト飲料の製造方法であって、下面ビール酵母を使用し、発酵液温度を15℃以上として発酵を行い、発酵終了時の発酵液の酵母濃度を3000万個/mL以上とする発酵工程を含むビールテイスト飲料の製造方法。
本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法によると、エグ味、酸味、刺々しさが低減しているとともに飲み易さが増強しているビールテイスト飲料を製造することができる。
以下、本発明に係るビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
[ビールテイスト飲料]
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が所定値以上であり、ピルビン酸の含有量が所定値以下である飲料である。
ここで、ビールテイスト飲料とは、ビール様(風)飲料とも呼ばれ、ビールのような味わいを奏する、つまり、ビールを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料である。
(アルコール)
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、所定値以上である。
このアルコール度数を所定値以上とすることによって、現在の市場の「アルコール度数の高い飲料」に対するニーズにマッチするとともに、本発明の課題(エグ味、酸味、刺々しさの増強、飲み易さの低減)がより明確となる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、7.0%(v/v%)以上が好ましく、7.5%以上、8.0%以上、8.5%以上、8.7%、9.0%以上がより好ましい。ビールテイスト飲料のアルコール度数が所定値以上であることによって、現在の市場のニーズにマッチするとともに、本発明の課題がより明確となる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数の上限は特に限定されないものの、20%以下が好ましく、17%以下、15%以下、13%以下、10%以下がより好ましい。ビールテイスト飲料のアルコール度数が所定値以下であることによって、よりバランスのとれた香味とすることができる。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。そして、ビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコールは、麦芽又は麦を原料の一部に使用して発酵させて得られたアルコール(つまり、発酵由来のアルコール)のみから構成されているのが好ましいが、蒸留アルコールを添加して構成されていてもよいし、蒸留アルコールの添加のみで構成されていてもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料において、発酵由来のアルコールに基づくアルコール度数の下限は特に限定されないものの、例えば、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、8.1%以上、8.3%以上、8.5%以上、8.7%以上、9.0%以上である。発酵由来成分(発酵由来のアルコール)をより多く含むことで、よりバランスのとれた香味とすることができる。また、発酵由来のアルコールに基づくアルコール度数の上限は特に限定されないものの、例えば、20%以下、17%以下、15%以下、13%以下、10%以下である。
また、本実施形態に係るビールテイスト飲料において、添加された蒸留アルコールに基づくアルコール度数の上限は特に限定されないものの、例えば、5%以下、3%以下、2%以下、1%以下である。
蒸留アルコールとしては、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー、麦スピリッツ(例えば、大麦スピリッツ、小麦スピリッツ)等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられる。蒸留アルコールは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において「スピリッツ」とは、蒸留酒であるスピリッツを指し、酒税法上のスピリッツとは異なる場合もある。
(ピルビン酸)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、ピルビン酸(pyruvic acid)を含有する。そして、ピルビン酸は、有機酸の1種であり、2-オキソプロパン酸とも呼ばれる。
このピルビン酸は、アルコール度数の高いビールテイスト飲料に多く含まれてしまうと、エグ味、酸味、刺々しさがかなり強くなるとともに、高アルコールに由来する甘味がピルビン酸の存在下において非常に強く感じられ、その結果として、ビールテイスト飲料の香味が非常に飲み難いものになってしまう。
このピルビン酸の含有量を所定値以下とすることによって、ビールテイスト飲料のアルコール度数を低下させることなく、前記した香味の各問題を解決することができる、言い換えると、エグ味、酸味、刺々しさを低減し、さらに、アルコール由来の甘味を低減することによって、ビールテイスト飲料を飲み易くするという効果を発揮することができる。
なお、アルコール度数の低いビールテイスト飲料は、そもそも、前記したような問題は確認できなかったため、エグ味、酸味、刺々しさの低減、飲み易さの増強といった効果は発揮し得ない。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のピルビン酸の含有量は、50ppm(mg/L)以下が好ましく、45ppm以下、40ppm以下、38ppm以下、35ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下がより好ましい。ピルビン酸の含有量が所定値以下であることによって、エグ味、酸味、刺々しさを低減できるとともに、アルコールに由来する甘味も低減され、ビールテイスト飲料の香味を飲み易い香味とすることができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のピルビン酸の含有量の下限は特に限定されないものの、1ppm以上が好ましく、2ppm以上、3ppm以上、4ppm以上、5ppm以上がより好ましい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のピルビン酸の含有量は、例えば、後記する発酵工程での発酵温度、発酵終了時の発酵液の酵母濃度等によって調製することができる。
そして、ビールテイスト飲料のピルビン酸の含有量は、例えば、分析カラムとしてShodexRSpak KC-811を用いたHPLCで測定することができる。また、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.24 有機酸」に記載されている方法によっても測定することができる。
(麦芽比率:原料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料の麦芽比率は、所定値未満(又は以下)である。
ここで、「麦芽比率」とは、詳細には、ビールテイスト飲料の製造に用いられる原料のうち水及びホップ以外のものの全重量に占める麦芽の重量の比率である。なお、麦芽とは、麦を発芽させ焙燥した後に根を除いたものである。また、麦とは、大麦、小麦、ライ麦、燕麦等であるが、大麦が好ましい。
この麦芽比率が所定値未満の場合に、エグ味、酸味、刺々しさといった香味が感じられ易くなるため、課題がより明確化する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の麦芽比率は、50%(重量%)未満が好ましく、40%以下、30%以下、25%未満がより好ましい。ビールテイスト飲料の麦芽比率が所定値以下(又は未満)であることによって、課題がより明確化する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の麦芽比率の下限は特に限定されないものの、1%以上が好ましく、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上がより好ましい。ビールテイスト飲料の麦芽比率が所定値以上であることによって、よりビール様の香味とすることができる。
(麦:原料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料に麦を含んでいてもよい。麦とは、発芽させていない状態の麦であり、前記と同様、大麦、小麦、ライ麦、燕麦等であるが、大麦が好ましい。
なお、本実施形態に係るビールテイスト飲料において、原料中における麦(特に、大麦)の含有比率は特に限定されないものの、例えば、1%(重量%)以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上であり、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下であればよい。
(糖類:原料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料に糖類(糖質原料)を含んでいてもよい。糖類(糖質原料)とは、平成11年6月25日付けの酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達第3条において規定される糖類であれば特に制限されない。また、糖類は、単糖類、二糖類及び三糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよく、更に四糖以上の糖類を含んでいてもよい。単糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、キシロース、アラビノース、タガトース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、ショ糖、ラクトース、麦芽糖、イソマルトース、トレハロース、セロビオース等が挙げられる。三糖類としては、例えば、マルトトリオース、イソマルトトリオース、ラフィノース等が挙げられる。四糖以上の糖類としては、例えば、スタキオース、マルトテトラオース等が挙げられる。糖類の形態は、例えば、粉末状、顆粒状、ペースト状、液状等であってもよい。液状の糖類としては、例えば、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖等の液糖であってもよい。糖類はグラニュー糖又は上白糖であってもよい。
なお、本実施形態に係るビールテイスト飲料において、原料中における糖類の含有比率は特に限定されないものの、例えば、1%(重量%)以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上であり、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下であればよい。
(苦味価)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、苦味価(Bitterness Unit:BU)が所定範囲であればよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価は、特に限定されないものの、例えば、1以上、10以上、15以上、20以上であり、50以下、40以下、30以下、25以下である。
なお、ビールテイスト飲料の苦味価は、例えば改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。
(発泡性)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であるのが好ましい。
そして、本実施形態に係るビールテイスト飲料の20℃におけるガス圧は、特に限定されないものの、例えば、2.0kg/cm以上、2.2kg/cm以上、2.3kg/cm以上、2.4kg/cm以上であり、5.0kg/cm以下、4.0kg/cm以下、3.0kg/cm以下である。
(リナロール)
本実施形態に係るビールテイスト飲料のリナロールの含有量は特に限定されないものの、例えば、50ppb以下、40ppb以下、30ppb以下、20ppb以下、10ppb以下、5ppb以下、2ppb以下である。リナロールはエグ味等のマスキングの効果を奏すると考えるが、本実施形態に係るビールテイスト飲料はリナロールの含有量が所定値以下であっても、所望の効果(エグ味、酸味、刺々しさの低減、飲み易さの増強)を発揮することができる。
なお、ビールテイスト飲料のリナロールの含有量は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ-質量分析法(SPME-GC-MS法)によって測定することができる。
(その他)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、酢酸、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
(容器詰めビールテイスト飲料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にビールテイスト飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が所定値以上であり、ピルビン酸の含有量が所定値以下であることから、エグ味、酸味、刺々しさが低減しているとともに飲み易さが増強している。
[ビールテイスト飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法について説明する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、アルコール度数が所定値以上であるビールテイスト飲料の製造方法であって、下面ビール酵母を使用し、発酵液温度を所定値以上として発酵を行い、発酵終了時の発酵液の酵母濃度を所定値以上とする発酵工程を含み、発酵前工程と、発酵工程と、発酵後工程と、を含む。
(発酵前工程)
発酵前工程では、前記した麦芽、必要に応じて、麦、糖類、酵素、各種添加剤を混合して原料を糖化し、糖化液を得る。そして、糖化液を適宜ろ過して得られた麦汁に、必要に応じて、ホップの添加、煮沸、冷却等を行って発酵前液を調製する。
発酵前工程において調製される発酵前液は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源となる麦由来原料(麦芽や麦)を含む溶液であれば特に限られない。窒素源及び炭素源は、酵母が資化可能なものであれば特に限られない。酵母が資化可能な窒素源とは、例えば、麦由来原料に含まれるアミノ酸及びペプチドのうちの少なくとも一つである。酵母が資化可能な炭素源とは、例えば、前記した糖類や麦由来原料に含まれる糖類である。
発酵前工程で使用するホップは、特に限定されず、例えば、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが挙げられるとともに、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
(発酵工程)
発酵工程は、発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程である。本実施形態においては、例えば、予め温度が所定の範囲内(例えば、0~40℃の範囲)に調製された発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製し、発酵を行う。
なお、酵母の添加量については、後記する発酵終了時の発酵液の酵母濃度が所定値以上となるように設定すればよいが、例えば、発酵開始時の酵母数は、1000万個/mL以上、3000万個/mL以上である。
(発酵工程:酵母)
発酵工程で使用する酵母は、下面ビール酵母である。そして、下面ビール酵母は、通常、比較的低温の5~10℃程度の発酵温度で発酵を行う酵母である。また、下面ビール酵母は、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)に分類される酵母であると認識されている。
(発酵工程:発酵液温度)
発酵工程における発酵液温度は、15℃以上が好ましく、15℃超え、15.5℃以上、16℃以上、16.5℃以上、17℃以上がより好ましい。発酵液温度が所定値以上であるとともに、後記する発酵終了時の発酵液の酵母濃度が所定値以上であることによって、ビールテイスト飲料のピルビン酸の含有量を所定値以下とすることができる。一方、発酵液温度の上限については特に限定されないものの、例えば、25℃以下、22℃以下、20℃以下、19℃以下である。
なお、発酵液温度とは、詳細には、発酵前液に酵母を添加し発酵液とした後に、発酵液の温度を略一定として5~10日間(好ましくは6~8日間程度)の発酵を行うが、この温度を略一定とした状態(定常状態)における発酵液の温度(平均温度)である。
(発酵工程:発酵終了時の発酵液の酵母濃度)
発酵工程における発酵終了時の発酵液の酵母濃度は、3000万個/mL以上が好ましく、3200万個/mL以上、3500万個/mL以上、3800万個/mL以上、4000万個/mL以上がより好ましい。発酵終了時の発酵液の酵母濃度が所定値以上であるとともに、前記した発酵液温度が所定値以上であることによって、ビールテイスト飲料のピルビン酸の含有量を所定値以下とすることができる。一方、発酵終了時の発酵液の酵母濃度の上限については特に限定されないものの、例えば、7000万個/mL以下、6000万個/mL以下、5800万個/mL以下である。
なお、発酵終了時の発酵液の酵母濃度とは、詳細には、発酵終了時(下ろし時)における発酵液中に浮遊する浮遊酵母の濃度であって、沈殿している酵母は対象から除外している。そして、発酵終了時の発酵液の酵母濃度は、下ろし時のタンクの上下方向中央部から発酵液(発酵後液)を所定量だけ抜きとり、例えば、吸光度計又は光学顕微鏡を用いて測定すればよい。
発酵工程においては、さらに熟成(後発酵、貯酒ともいう)を行うこととしてもよい。熟成は、上述のような発酵後の発酵液をさらに所定の温度(例えば、-2~5℃)で所定の時間(例えば、5~60日間)だけ維持することにより行う。この熟成により、発酵液中の不溶物を沈殿させて濁りを取り除き、また、香味を向上させることができる。
こうして発酵工程においては、酵母により生成されたエタノール及び各種成分を含有する発酵後液を得ることができる。発酵後液に含まれるエタノールの濃度(アルコール度数)は、例えば、1~20%とすることができる。
(発酵後工程)
発酵後工程は、発酵後液に所定の処理を施して最終的にビールテイスト飲料を得る工程である。発酵後工程としては、例えば、発酵工程により得られた発酵後液のろ過(いわゆる一次ろ過)が挙げられる。この一次ろ過により、発酵後液から不溶性の固形分や酵母を除去することができる。また、発酵後工程においては、さらに発酵後液の精密ろ過(いわゆる二次ろ過)を行ってもよい。二次ろ過により、発酵後液から雑菌や、残存する酵母を除去することができる。なお、精密ろ過に代えて、発酵後液を加熱することにより殺菌することとしてもよい。発酵後工程における一次ろ過、二次ろ過、加熱は、ビールテイスト飲料を製造する際に使用される一般的な設備で行うことができる。
なお、発酵後工程には、前記した容器に充填する工程も含まれる。
発酵後工程によって得られたビールテイスト飲料のアルコール度数、ピルビン酸の含有量等が前記した所定値以上又は所定値以下となるように製造されていればよい。例えば、各工程のいずれかにおいて、蒸留アルコールを添加してもよいし、発酵後工程において、アルコール度数が所定値以上になっていない場合は、適宜、蒸留アルコール等を添加してもよい。
なお、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発酵工程を経ないで製造することもできる。つまり、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、非発酵飲料として製造されてもよい。
この場合、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、混合タンクに、水、ピルビン酸、添加剤、麦芽エキス、蒸留アルコールなどの原料を適宜投入する調合工程(混合工程)と、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を行う後処理工程と、を含むこととなる。
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、下面ビール酵母を使用し、発酵液温度を所定値以上として発酵を行い、発酵終了時の発酵液の酵母濃度を所定値以上とする発酵工程を含むことから、エグ味、酸味、刺々しさが低減しているとともに飲み易さが増強しているビールテイスト飲料を製造することができる。
[ビールテイスト飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、アルコール度数が所定値以上であるビールテイスト飲料のエグ味、酸味、刺々しさを低減するとともに、飲み易さを増強する香味向上方法であって、ビールテイスト飲料のピルビン酸の含有量を所定値以下とする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「ビールテイスト飲料」において説明した値と同じである。
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、アルコール度数が所定値以上のビールテイスト飲料について、ピルビン酸の含有量を所定値以下とすることから、ビールテイスト飲料のエグ味、酸味、刺々しさを低減するとともに飲み易さを増強することができる。
[実施例1]
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
[サンプルの準備]
麦芽比率が約25%となるように麦芽(粉砕した大麦麦芽)、大麦、糖類(液糖)、並びに、水を仕込槽に投入し、常法にしたがって糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。
得られた発酵前液(冷麦汁)に下面ビール酵母を添加し、発酵温度を約17℃として7日間発酵(発酵終了時の発酵液の酵母濃度は4100万個/mL)させて、ビールテイスト飲料(サンプル1)を得た。
サンプル2、3については、サンプル1に対してピルビン酸を表の値となるように添加して製造した。
なお、サンプル4、5は、其々、成分等が表に示す値である市販品を準備した。
[試験内容]
前記の方法により製造した各サンプルについて、選抜された識別能力のあるパネル4名が下記評価基準に則って「エグ味」、「酸味」、「刺々しさ」、「飲み易さ」について、1~5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
(エグ味:評価基準)
エグ味の評価については、「エグ味が非常に強い」場合を1点、「エグ味が非常に弱い」場合を5点として5段階で評価した。そして、エグ味の評価については、点数が高いほどエグ味が低減されており、好ましいと判断できる。
なお、エグ味については、サンプル5(1点)を基準として評価した。
(酸味:評価基準)
酸味の評価については、「酸味が非常に強い」場合を1点、「酸味が非常に弱い」場合を5点として5段階で評価した。そして、酸味の評価については、点数が高いほど酸味が低減されており、好ましいと判断できる。
なお、酸味については、サンプル5(1点)を基準として評価した。
(刺々しさ:評価基準)
刺々しさの評価については、「刺々しさが非常に強い」場合を1点、「刺々しさが非常に弱い」場合を5点として5段階で評価した。そして、刺々しさの評価については、点数が高いほど刺々しさが低減されており、好ましいと判断できる。
なお、刺々しさについては、サンプル5(1点)を基準として評価した。
(飲み易さ:評価基準)
飲み易さの評価については、「非常に飲み難い」場合を1点、「非常に飲み易い」場合を5点として5段階で評価した。そして、飲み易さの評価については、点数が高いほど飲み易さが増強(向上)されており、好ましいと判断できる。
詳細には、「飲み易さ」は、エグ味、酸味、刺々しさ、高アルコールに由来する甘味を総合的に判断して評価を実施しており、エグ味、酸味、刺々しさ、高アルコールに由来する甘味が低減されている場合に飲み易いと判断した。
なお、飲み易さについては、サンプル5(1点)を基準として評価した。
表1に、各サンプルの各評価結果を示す。なお、表における「アルコール度数」、「ピルビン酸」は、最終製品の指標や含有量である。
また、表1に示す各サンプルのBUは20~25であった。
Figure 2024019264000001
(結果の検討)
サンプル1~5の結果から、アルコール度数が所定値以上であっても、ピルビン酸が所定値以下であると、エグ味、酸味、刺々しさが低減し、飲み易さが増強(向上)することが確認できた。
また、サンプル1の結果から、発酵液温度が所定値以上であって、発酵終了時の発酵液の酵母濃度が所定値以上の場合にピルビン酸の含有量を非常に少なくすることができ、その結果、エグ味、酸味、刺々しさが低減し、飲み易さが増強(向上)することが確認できた。
なお、市販品であるサンプル4、5は、ピルビン酸の含有量が所定値以上であったため、サンプル1、2と比較して、各評価が非常に悪い結果となった。
なお、サンプル1のリナロールの含有量は、89.0ppbであり、サンプル2のリナロールの含有量は、89.0ppbであり、サンプル3のリナロールの含有量は、89.0ppbであり、サンプル4のリナロールの含有量は、12.7ppbであり、サンプル5のリナロールの含有量は、9.0ppbであった。
[実施例2]
次に、蒸留アルコールを添加する場合に関し、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
[サンプルの準備]
麦芽比率が約25%となるように麦芽(粉砕した大麦麦芽)、糖類(液糖)、並びに、水を仕込槽に投入し、常法にしたがって糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。
得られた発酵前液(冷麦汁)に下面ビール酵母を添加し、7日間発酵させた。その後、アルコール度数が2.5v/v%となるように希釈した後、蒸留アルコールを添加して、アルコール度数を9v/v%として、ビールテイスト飲料(サンプル6)を得た。さらに、サンプル6に対して、ピルビン酸を表の値となるように添加してビールテイスト飲料(サンプル7)を得た。
[試験内容]
試験内容は、パネル3名とした点以外は、実施例1と同じであった。
表2に、各サンプルの各評価結果を示す。なお、表における「アルコール度数」、「ピルビン酸」は、最終製品の指標や含有量である。
Figure 2024019264000002
(結果の検討)
サンプル6、7の結果から、蒸留アルコールを添加した場合であっても、各効果について実施例1と同様の傾向がみられることが確認できた。
つまり、蒸留アルコールを添加せずに製造した場合(実施例1)であろうと、蒸留アルコールを添加して製造した場合(実施例2)であろうと、アルコール度数が高いビールテイスト飲料についてピルビン酸の含有量を所定値以下とすれば、エグ味、酸味、刺々しさが低減し、飲み易さが増強(向上)することが確認できた。
なお、サンプル6のリナロールの含有量は、1.4ppbであり、サンプル7のリナロールの含有量は、1.4ppbであった。
[付記]
本発明は、特願2019-084344号に記載したような以下の「課題」、「構成」、「効果」も挙げることができる。
(付記:課題)
本発明は、エグ味、酸味、刺々しさが低減しているとともに飲み易さが増強しているビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法を提供することを目的とする。
(付記:構成)
(1)
ピルビン酸の含有量が50ppm以下であり、
アルコール度数が7.0%以上であるビールテイスト飲料。
(2)
麦芽比率が50%未満である前記1に記載のビールテイスト飲料。
(3)
リナロールの含有量が50ppb以下である前記1又は前記2に記載のビールテイスト飲料。
(4)
アルコール度数が7.0%以上であるビールテイスト飲料の製造方法であって、
下面ビール酵母を使用し、発酵液温度を15℃以上として発酵を行い、発酵終了時の発酵液の酵母濃度を3000万個/mL以上とする発酵工程を含むビールテイスト飲料の製造方法。
(5)
ビールテイスト飲料のピルビン酸の含有量を50ppm以下とする請求項4に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
(6)
アルコール度数が7.0%以上であるビールテイスト飲料のエグ味、酸味、刺々しさを低減するとともに、飲み易さを増強する香味向上方法であって、
前記ビールテイスト飲料のピルビン酸の含有量を50ppm以下とするビールテイスト飲料の香味向上方法。
(付記:効果)
本発明に係るビールテイスト飲料によると、エグ味、酸味、刺々しさが低減しているとともに飲み易さが増強している。
本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法によると、エグ味、酸味、刺々しさが低減しているとともに飲み易さが増強しているビールテイスト飲料を製造することができる。
本発明に係るビールテイスト飲料の香味向上方法によると、ビールテイスト飲料のエグ味、酸味、刺々しさを低減するとともに飲み易さを増強することができる。

Claims (11)

  1. アルコール度数が7.0%以上であるビールテイスト飲料の製造方法であって、
    下面ビール酵母を使用し、発酵液温度を15℃以上として発酵を行い、発酵終了時の発酵液の酵母濃度を3000万個/mL以上とする発酵工程を含むビールテイスト飲料の製造方法。
  2. ビールテイスト飲料のピルビン酸の含有量を50ppm以下とする請求項1に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
  3. 麦芽比率を50%未満とする請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
  4. リナロールの含有量を50ppb以下とする請求項1から3のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
  5. 前記発酵工程が5~10日間である請求項1から4のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
  6. 前記アルコール度数を17%以下とする請求項1から5のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
  7. 発酵由来のアルコールに基づくアルコール度数を9.0%以上とする請求項1から6のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
  8. 原料に大麦又は糖類を含む請求項1から7のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
  9. 原料に糖類を含み、前記原料における前記糖類の含有比率が30%以上である請求項1から7のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
  10. 前記発酵終了時の発酵液の酵母濃度を7000万個/mL以下とする請求項1から9のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
  11. さらに熟成を行い、前記熟成は、前記発酵液を-2~5℃で5~60日間、維持する請求項1から10のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料の製造方法。
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