JP2024018571A - 細胞培養装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】蓋を開閉する細胞培養装置において気密保持を容易にする。【解決手段】細胞培養装置1は、開口を有する複数の貯留部21を備える培養容器2と、培養容器2に着脱可能に装着され、複数の貯留部21の開口を覆う蓋3と、培養容器2及び蓋3のいずれか一方に接続された空圧配管4と、培養容器2と蓋3との間に配置され、培養容器2と蓋3との間の気密を確保するラバーシート5と、を備え、培養容器2及び蓋3のいずれか一方に、複数の貯留部21の開口を囲い、ラバーシート5に向かって突出する線状のシール突起60が設けられている。【選択図】図2
Description
本発明は、細胞培養装置に関するものである。
下記特許文献1には、細胞培養装置が開示されている。この細胞培養装置は、貯留槽と、加圧ポンプと、を備えている。貯留槽は、容器状の槽本体と、蓋部と、を備えている。蓋部は、槽本体の開口を開閉自在かつ気密に閉止可能である。詳しくは、蓋部は、槽本体の第1培養液貯留室および第2培養液貯留室の上部開口をそれぞれ気密に閉止可能である。蓋部は、上部開口のそれぞれを包囲するように与えられたパッキンを介して槽本体の上面に当接している。
上記のような細胞培養装置を用いて細胞を培養する際には、定期的な培養液の交換が必要となる。培養液の交換を行う際には、細胞培養装置の蓋を開閉するが、この際に、上記パッキン等のシール材が脱落する虞がある。また、従来のシール材は、複数の貯留部のそれぞれの上部開口を包囲するように多数配置されており、部品点数が多く、組み立てが煩雑である。さらに、培養容器と蓋との寸法誤差が大きいと、個々のシール材の弾性変形でその寸法誤差を吸収できない場合があり、気密の保持に問題が生じることがある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、蓋を開閉する細胞培養装置において気密保持を容易にすることを目的とする。
本発明の一態様に係る細胞培養装置は、開口を有する複数の貯留部を備える培養容器と、前記培養容器に着脱可能に装着され、前記複数の貯留部の開口を覆う蓋と、前記培養容器及び前記蓋のいずれか一方に接続された空圧配管と、前記培養容器と前記蓋との間に配置され、前記培養容器と前記蓋との間の気密を確保するラバーシートと、を備え、前記培養容器及び前記蓋のいずれか一方に、前記複数の貯留部の開口を囲い、前記ラバーシートに向かって突出する線状のシール突起が設けられている。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記シール突起は、前記培養容器に設けられていてもよい。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記蓋は、前記ラバーシートが密着する平滑面を有してもよい。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記蓋は、前記ラバーシートを前記平滑面に位置決めする複数の位置決め凸部を有してもよい。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記複数の位置決め凸部は、前記ラバーシートの短手方向の両側と、前記ラバーシートの長手方向の片側に設けられていてもよい。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記培養容器は、前記複数の位置決め凸部が挿入される複数の位置決め凹部を備えてもよい。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記空圧配管は、前記蓋に接続されていてもよい。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記蓋は、前記空圧配管と連通する複数の溝部を備え、前記ラバーシートは、前記複数の溝部と前記複数の貯留部とを連通させる複数の連通孔を備えてもよい。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記シール突起は、前記複数の貯留部のそれぞれの開口縁に沿って設けられていてもよい。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記複数の貯留部のうち、互いに隣接する貯留部の開口縁に沿って設けられる前記シール突起の少なくとも一部は、共通化されていてもよい。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記シール突起の高さ/幅の比率が、0.5~10の範囲内であってもよい。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記ラバーシートは、シリコーンゴム製であってもよい。
また、本発明の一態様に係る細胞培養装置において、前記ラバーシートのデュロメータ硬さは、50以下であってもよい。
上記本発明の一態様によれば、蓋を開閉する細胞培養装置において気密保持を容易にすることができる。
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。なお、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る細胞培養装置1の斜視図である。図2は、図1に示す細胞培養装置1の分解斜視図である。図3は、図1に示す細胞培養装置1が備える蓋側の分解斜視図である。図4は、図2に示す領域Aの拡大図である。図5は、図1に示す矢視V-V断面図である。
図1及び図2に示すように、細胞培養装置1は、培養容器2と、蓋3と、空圧配管4と、ラバーシート5と、を備えている。
図1は、第1実施形態に係る細胞培養装置1の斜視図である。図2は、図1に示す細胞培養装置1の分解斜視図である。図3は、図1に示す細胞培養装置1が備える蓋側の分解斜視図である。図4は、図2に示す領域Aの拡大図である。図5は、図1に示す矢視V-V断面図である。
図1及び図2に示すように、細胞培養装置1は、培養容器2と、蓋3と、空圧配管4と、ラバーシート5と、を備えている。
なお、以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各構成の位置関係について説明することがある。第1実施形態のX軸方向は、第1の水平方向であって、細胞培養装置1の短手方向である。第1実施形態のY軸方向は、第1の水平方向と直交する第2の水平方向であって、細胞培養装置1の長手方向である。第1実施形態のZ軸方向は、第1の水平方向及び第2の水平方向と直交する鉛直方向であって、細胞培養装置1の高さ方向(厚み方向)である。
培養容器2は、図2に示すように、複数の貯留部21を備えている。貯留部21には、液体として、例えば細胞を培養する培養液が貯留される。貯留部21は、培養容器2の上面20Aに開口している。貯留部21は、X軸方向を短手方向、Y軸方向を長手方向とする、平面視で略長方形状を有する。貯留部21は、X-Y平面において、4行×4列で設けられている。なお、貯留部21の形状、個数及び配置は、これに限定されない。
培養容器2は、図1に示すように、アッパープレート2aと、ボトムプレート2bと、を備えている。アッパープレート2aは、例えばポリカーボネートの切削加工によって製造することができる。また、ボトムプレート2bは、例えばステンレスの切削加工により製造することができる。なお、アッパープレート2aおよびボトムプレート2bは、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂の射出成型によって製造することもできる。ボトムプレート2bのX軸方向両側には、ボトムプレート2bの上部にアッパープレート2aを固定する第1の固定部6が設けられている。第1の固定部6は、Y軸方向に延びる略C字状を有し、その両端がボトムプレート2bに対しY軸方向に延びる軸回りに回転自在に固定されている。
アッパープレート2aのX軸方向両側には、第1の固定部6がZ軸方向で係止する第1の係止部8が設けられている。第1の固定部6がY軸回りに回転し、上方に位置する第1の係止部8に係止することで、アッパープレート2aとボトムプレート2bとが固定される。第1の係止部8は、Y軸方向に間隔をあけて一対で設けられている。一対の第1の係止部8の間には、蓋3の下縁に手先を入れることができる隙間9が形成されている。これにより、蓋3の取り外し、及び、細胞培養装置1の搬送が容易になる。
また、ボトムプレート2bのX軸方向両側には、アッパープレート2aの上部に蓋3を固定する第2の固定部7が設けられている。第2の固定部7は、Y軸方向に延びる略C字状を有し、その両端がボトムプレート2bに対しY軸方向に延びる軸回りに回転自在に固定されている。第2の固定部7は、第1の固定部6よりも一回り大きい。
蓋3のX軸方向両側には、第2の固定部7がZ軸方向で係止する第2の係止部10が設けられている。第2の固定部7がY軸回りに回転し、上方に位置する第2の係止部10に係止することで、蓋3とボトムプレート2b(培養容器2)とが固定される。なお、培養容器2から蓋3を取り外すときは、一対の第2の固定部7をX軸方向両側に開くように回動させる。
図5に示すように、アッパープレート2aとボトムプレート2bとの間には、流路プレート2cと、透明プレート2dと、が挟持されている。流路プレート2cは、例えばシリコーン樹脂のレプリカモールディングやポリスチレンの射出成型等によって製造することができる。流路プレート2cは、アッパープレート2aの下に配置され、透明プレート2dは、流路プレート2cの下に配置されている。流路プレート2cには、貫通孔14と、排出流路15と、導入流路16と、が形成されている。透明プレート2dは、ガラス板や、アクリル板、ポリスチレン板、シリコーン樹脂板等の透明な板材である。
貫通孔14は、アッパープレート2aに形成された貯留部21の底面に対応する位置に配置されている。貫通孔14の下端は、透明プレート2dによって閉塞されている。ボトムプレート2bには、貫通孔14に対応する位置に窓部13(開口部)が形成されている。これにより、細胞培養装置1の底面側から、窓部13、透明プレート2d、貫通孔14を介して、貯留部21の内部の様子を観察することができる。
排出流路15は、貫通孔14の近傍であって、貯留部21の底面に連通している。一方、導入流路16は、貯留部21の底面よりも高い段差部分に連通している。図2に示すように、X軸方向で並ぶ貯留部21a~21dのうち、いずれか一つの貯留部21に設けられた排出流路15は、他の貯留部21の導入流路16に連通している。例えば、貯留部21a~21dが2組ずつ連通してもよいし。貯留部21a~21dの全てが一巡に連通してもよい。
空圧配管4は、貯留部21a~21dに空圧をかける空圧配管4a~4dを備えている。空圧配管4a~4dから貯留部21a~21dに選択的に空圧をかけることで、貯留部21間に空圧差を生じさせ、貯留部21に貯留された液体を他の貯留部21に供給し、その液体を循環(灌流)させることができる。なお、排出流路15の近傍には、流路断面積が0.1[mm2]以下の細いラプラス弁151が設けられており、なおかつ、導入流路16は、貯留部21の底面よりも一段高い開口部70に連通しているため、空圧をかけたときに、液体の逆流を防止できる。
蓋3は、図1に示すように、蓋本体3aと、カバー3bと、を備えている。カバー3bは、ガラス板や、アクリル板等の透明な板材である。カバー3bは、蓋本体3aの上部に複数のボルト11を介して固定されている。ボルト11は、カバー3bに形成された複数の貫通孔12のいずれか一つを通って蓋本体3aに螺合する。この例では、ボルト11の数よりも、貫通孔12の数の方が多いが、同数であってもよい。なお、貫通孔12の下端は、蓋本体3aに形成された図示しない有底のねじ孔に連通している。
図3に示すように、蓋本体3aの長手方向の片側(+Y側)の側面には、空圧配管4が接続される接続孔30aが形成されている。蓋本体3aは、空圧配管4と連通する複数の溝部31を備えている。溝部31は、蓋本体3aの下面の平滑面30Bに開口している。なお、溝部31の蓋本体3aの上面30A側は、カバー3bによって閉塞されている。なお、蓋本体3aとカバー3bとの間には気密保持のため、図5に示すように、後述するラバーシート5と同様のラバーシート3cが挟持されている。
溝部31は、図3に示すように、X軸方向を短手方向、Y軸方向を長手方向とする、底面視で略長方形状を有する。溝部31は、X-Y平面において、貯留部21と同数の4行×4列で設けられている。なお、溝部31の形状、個数及び配置は、貯留部21の形状、個数及び配置に対応していれば、これに限定されない。複数の溝部31のうち、蓋本体3aの長手方向(Y軸方向)で隣り合う溝部31同士は、蓋本体3aに形成された貫通孔32によって互いに連通している。貫通孔32は、Y軸方向で隣り合う溝部31の側壁をY軸方向に貫通している。つまり、空圧配管4a~4dは、溝部31a~31dの列ごとに空圧をかけることができるようになっている。
ラバーシート5は、図2に示すように、培養容器2と蓋3との間に介在し、培養容器2と蓋3との間の気密を確保する。ラバーシート5は、X軸方向を短手方向、Y軸方向を長手方向とする、平面視で長方形状を有する。ラバーシート5の上面50A及び下面50Bは、それぞれ平滑面となっている。ラバーシート5の上面50Aは、図3に示す蓋3の平滑面30Bに密着する。つまり、ラバーシート5は、ファンデルワールス力により蓋3側に密着する。
ラバーシート5は、例えば、シリコーンゴムから形成されている。なお、ラバーシート5は、シリコーンゴム以外のゴムであってもよい。ラバーシート5のデュロメータ硬さは、50以下であるとよい。ここで、ラバーシート5のデュロメータ硬さとは、JIS規格のK6253のデュロメータータイプAに準拠する。ラバーシート5の厚みT(図2参照)は、後述するシール突起60の高さH(図4参照)より大きいとよい。一方、ラバーシート5の厚みTが大きすぎると細胞培養装置の操作性を損なってしまう。具体的に、ラバーシート5の厚みTは、1~10[mm]の範囲内が好ましい。
ラバーシート5は、蓋3に設けられた複数の溝部31と、培養容器2に設けられた複数の貯留部21と、を連通させる複数の連通孔51を備えている。連通孔51は、ラバーシート5をZ軸方向に貫通している。連通孔51は、X軸方向を短手方向、Y軸方向を長手方向とする、平面視で略長方形状を有する。連通孔51は、X-Y平面において、溝部31及び貯留部21と同数の4行×4列で設けられている。なお、連通孔51の形状、個数及び配置は、溝部31及び貯留部21の形状、個数及び配置に対応していれば、これに限定されない。
図3に示すように、蓋3は、ラバーシート5を平滑面30Bに位置決めする複数の位置決め凸部33を有する。これにより、溝部31a~31dと連通孔51a~51dとを位置合わせできる。位置決め凸部33は、ラバーシート5の短手方向(X軸方向)の両側と、ラバーシート5の長手方向の片側(+Y側)の合計で3箇所に設けられている。蓋3にラバーシート5を配置する際に、ラバーシート5の外形に対して、位置決め凸部33が短手方向(X軸方向)の両側と長手方向の片側(+Y側)に隣接する形でラバーシート5を配置することで、ラバーシート5のXY平面上の配置を決定できる。位置決め凸部33は、平滑面30Bから下方に向けて突出している。平滑面30Bから位置決め凸部33の下端までの長さは、ラバーシート5の厚みTより大きい。
図2に示すように、培養容器2は、複数の位置決め凸部33が挿入される複数の位置決め凹部22を備える。位置決め凹部22は、培養容器2の短手方向(X軸方向)の両側と、培養容器2の長手方向の片側(+Y側)の合計で3箇所に設けられている。蓋3の下部に設けられた3つの位置決め凸部33を、培養容器2の上部に設けられた3つの位置決め凹部22に挿入することで、培養容器2に対する蓋3の逆組み(例えばY軸方向における空圧配管4の向きが逆となった組み付け)を防止することができる。
図4に示すように、培養容器2には、複数の貯留部21の開口を囲い、上面20Aからラバーシート5に向かって突出する線状のシール突起60が設けられている。シール突起60は、複数の貯留部21のそれぞれの開口縁に沿って設けられている。シール突起60は、X軸方向を短手方向、Y軸方向を長手方向とする、平面視で、貯留部21よりも一回り大きな略長方形の環形状を有する。具体的に、シール突起60は、X軸方向に平行に延びる一対の短辺61と、Y軸方向に平行に延びる一対の長辺62と、一対の短辺61の端部と一対の長辺62の端部とを接続する4つの角部63と、を備えている。角部63は、平面視で、円弧状に湾曲している。
シール突起60の先端は、平面状に形成されている。なお、シール突起60の先端は、上方に凸状の断面視で略半円形状に形成されていてもよい。複数の貯留部21のうち、互いに隣接する貯留部21の開口縁に沿って設けられるシール突起60の少なくとも一部は、共通化されている。具体的に、図4中、培養容器2の角に位置する貯留部21dのシール突起60は、+Y側の短辺61と、-X側の長辺62とが、隣り合う貯留部21のシール突起60の短辺61または長辺62と共通化されている。
シール突起60の高さ/幅の比率は、0.5~10の範囲内であるとよい。具体的に、シール突起60の幅Wが1.0[mm]の場合、シール突起60の高さHは0.5~10[mm]の範囲内であるとよい。なお、シール突起60の高さ/幅の比率は、共通化部分でも同じであるとよい。これにより、各貯留部21においてラバーシート5の弾性変形量が均一になり気密性が高まる。また、培養容器2には、隣り合う4つの貯留部21のシール突起60の角部63に囲まれた略菱形の空間64が形成されている。空間64は、4つの角部63におけるラバーシート5の、互いに隣接する4つの環状のシール突起60の各々の内側領域と外側領域の弾性変形量が同じになるような空間容積を有する。
上記構成の細胞培養装置1では、複数の貯留部21を備える培養容器2について、複数の貯留部21の気密を同時に確保するため、培養容器2と当該培養容器2を被覆する蓋3とを備え、培養容器2と蓋3の間にラバーシート5を配置して複数の貯留部21の気密を確保している。この際に、培養容器2の上面に線状のシール突起60を備えることで、ラバーシート5を弾性変形させ、当該シール突起60に沿った部位での気密を確保できる。このラバーシート5によれば、一つの部材で複数の貯留部21の気密を確保できるため、組み立てが容易、且つ、ラバーシート5の厚みTやシール突起60の高さHを調整することで、培養容器2や蓋3の寸法誤差を吸収して気密を容易に確保できる。
このように、上述した本実施形態に係る細胞培養装置1は、開口を有する複数の貯留部21を備える培養容器2と、培養容器2に着脱可能に装着され、複数の貯留部21の開口を覆う蓋3と、培養容器2及び蓋3のいずれか一方(本実施形態では蓋3)に接続された空圧配管4と、培養容器2と蓋3との間に配置され、培養容器2と蓋3との間の気密を確保するラバーシート5と、を備え、培養容器2及び蓋3のいずれか一方に、複数の貯留部21の開口を囲い、ラバーシート5に向かって突出する線状のシール突起60が設けられている。この構成によれば、蓋3を開閉する細胞培養装置1において気密保持を容易にすることができる。
また、本実施形態では、シール突起60は培養容器2に設けられており、蓋3はラバーシート5が密着する平滑面30Bを有する。この構成によれば、蓋3を開いた際にラバーシート5が培養容器2ではなく蓋3側に密着する。これにより、蓋3と共にラバーシート5を取り外すことができ、また、蓋3との密着によりラバーシート5の脱落を防止することができる。なお、蓋3を取り外した後、液体を貯留部21に補充する際に、ラバーシート5が培養容器2の上面20Aに密着していると、仮に、液体がラバーシート5と培養容器2の隙間に入り込むと、汚染の原因となりうるため好ましくない。また、隙間に入り込んだ液体が劣化して、細胞の培養に影響を及ぼす場合がある。この構成によれば、上記懸念を排除することができる。
また、本実施形態では、蓋3は、ラバーシート5を平滑面30Bに位置決めする複数の位置決め凸部33を有する。この構成によれば、蓋3の平滑面30Bにラバーシート5を位置決めすることが容易になる。
また、本実施形態では、複数の位置決め凸部33は、ラバーシート5の短手方向の両側と、ラバーシート5の長手方向の片側に設けられている。また、培養容器2は、複数の位置決め凸部33が挿入される複数の位置決め凹部22を備えている。この構成によれば、ラバーシート5の位置決め構造を利用して、培養容器2に対する蓋3の逆組み(例えばY軸方向における空圧配管4の向きが逆となった組み付け)を防止することができる。これにより、所定の条件で設計通りに貯留部21に空圧をかけることができる。
また、本実施形態では、空圧配管4は、蓋3に接続されている。また、蓋3は、空圧配管4と連通する複数の溝部31を備え、ラバーシート5は、複数の溝部31と複数の貯留部21とを連通させる複数の連通孔51を備える。この構成によれば、空圧配管4が貯留部21よりも高い位置に配置されるため、仮に、培養液の循環(灌流)の際に気泡が混入して貯留部21の液体が泡立ったとしても、当該泡が空圧配管4に侵入することを抑制できる。これにより、所定の条件で設計通りに貯留部21に空圧をかけることができる。なお、貯留部21を深くすれば、空圧配管4を培養容器2に接続してもよい。
また、本実施形態では、シール突起60は、複数の貯留部21のそれぞれの開口縁に沿って設けられている。また、複数の貯留部21のうち、互いに隣接する貯留部21の開口縁に沿って設けられるシール突起60の少なくとも一部は、共通化されている。この構成によれば、培養容器2に省スペースで貯留部21を配置しつつ、各貯留部21における気密性を均一に確保することができる。
また、本実施形態では、シール突起60の高さ/幅の比率が、0.5~10の範囲内である。この構成によれば、気密確保とラバーシート5の脱落防止効果が高く、シール突起の十分な物理的強度を確保できる。特に、シール突起60の高さHが0.3[mm]以上とすると、蓋3や培養容器2の寸法誤差を吸収してより気密を確保できる。さらに、シール突起60の幅Wを2.0[mm]以下とすると、気密確保とラバーシートの脱落防止効果が高い。また、ラバーシート5は、シリコーンゴム製であり、そのデュロメータ硬さが、50以下であると、気密確保とラバーシートの脱落防止効果がより高くなる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図6は、第2実施形態に係る細胞培養装置1の斜視図である。図7は、図6に示す細胞培養装置1の分解斜視図である。図8は、図7に示す細胞培養装置1が備える培養容器2の平面図である。図9は、図8に示す矢視IX-IX断面図である。
第2実施形態の細胞培養装置1は、培養容器2の一対の貯留部21a,21bの間に、ハイドロゲルチャンバー110が設けられている点で、上記実施形態と異なる。
第2実施形態の細胞培養装置1は、培養容器2の一対の貯留部21a,21bの間に、ハイドロゲルチャンバー110が設けられている点で、上記実施形態と異なる。
なお、以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各構成の位置関係について説明することがある。X軸方向は、貯留部21a、ハイドロゲルチャンバー110、及び貯留部21bが並ぶ第1の水平方向である。Y軸方向は、X軸方向と直交する第2の水平方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と直交する鉛直方向である。
なお、図6においては、細胞培養装置1の内部構造の視認性を向上させるため、培養容器2、蓋3及びラバーシート5の外形を二点鎖線で示し、その内部構造を透視させている。培養容器2及び蓋3は、細胞の観察等のために、透光性の高い透明材料等で形成されることが好ましいが、透光性の低い若しくは透光性の無い材料で形成されてもよい。その場合、細胞を視認できる位置にガラス窓等を設けてもよい。第2実施形態の細胞培養装置1は、例えばポリスチレンの射出成型と熱融着により製造することができる。
ハイドロゲルチャンバー110は、図6に示すように、扁平状の内部空間を有している。ハイドロゲル101の内部空間の高さ(Z軸方向の寸法)は、例えば100[μm]~500[μm]の範囲内である。ハイドロゲルチャンバー110の内部空間には、ハイドロゲル101が充填されている。ハイドロゲル101は、高分子の三次元網目構造を有して水分を保持すると共に、細胞を包埋もしくは接着し、細胞を培養する。
ハイドロゲルチャンバー110は、平面視で六角形に形成されている。なお、ハイドロゲルチャンバー110の平面視形状は特に限定されないが、貯留部21a及び貯留部21bと隣接する長さ(Y軸方向の寸法)は、幅(X軸方向の寸法)よりも大きいとよい。ハイドロゲルチャンバー110のY軸方向の寸法は、例えば1[mm]~20[mm]の範囲内である。ハイドロゲルチャンバー110のX軸方向の寸法は、例えば0.5[mm]~10[mm]の範囲内である。
ハイドロゲルチャンバー110は、貯留部21aに連通する第1面と、貯留部21bに連通する第2面と、を有している。第1面及び第2面は、X軸方向で対向し、Y軸方向に互いに平行に延びている。ハイドロゲルチャンバー110のY軸方向の両端部は、導入孔114と連通している。ハイドロゲルチャンバー110の直上部には、ハイドロゲル101を導入するハイドロゲル貯留槽116が形成されている。
導入孔114は、ハイドロゲルチャンバー110のY軸方向の両端と、ハイドロゲル貯留槽116の底面とを連通させている。2つの導入孔114により、ハイドロゲルチャンバー110から空気を抜き、ハイドロゲル貯留槽116からハイドロゲルチャンバー110にハイドロゲル101を充填し易くなる。
貯留部21aは、培養液102を貯留する。貯留部21aは、平面視でY軸方向に延びる長孔状ないし楕円状に形成されている。なお、貯留部21aの平面視形状は特に限定されない。貯留部21aは、ハイドロゲルチャンバー110よりも内部空間(容積)が大きいとよい。貯留部21aの底部のハイドロゲルチャンバー110側(+X側)の側面は、ハイドロゲルチャンバー110に連通している。
貯留部21bは、培養液102を貯留する。貯留部21bは、平面視でY軸方向に延びる長孔状ないし楕円状に形成されている。なお、貯留部21bの平面形状は特に限定されない。貯留部21bも、ハイドロゲルチャンバー110よりも内部空間(容積)が大きいとよい。貯留部21bの底部のハイドロゲルチャンバー110側(-X側)の側面は、ハイドロゲルチャンバー110に連通している。
培養容器2は、貯留部21a,21bに圧力差を生じさせた状態でも、ハイドロゲルチャンバー110にハイドロゲル101を保持させる機構として、支柱列122,132を備えている。支柱列122は、ハイドロゲルチャンバー110と貯留部21aと連通させるマイクロサイズの流体チャネルを形成する。また、支柱列132は、ハイドロゲルチャンバー110と貯留部21bと連通させるマイクロサイズの流体チャネルを形成する。
蓋3の平滑面30B(下面)には、貯留部21a,21bに連通する上方に向かって凹状の溝部31a,31bが形成されている。なお、ハイドロゲル貯留槽116の上部は、蓋3の平滑面30Bによって閉塞されている。蓋3には、貯留部21a,21bに連通するように空圧配管4a,4bが接続されている。なお、蓋3に対する空圧配管4a,4bの接続方向は、Y軸方向に限らず、X軸方向であっても、Z軸方向であってもよい。
ラバーシート5は、図6及び図7に示すように、培養容器2と蓋3との間に介在し、培養容器2と蓋3との間の気密を確保する。ラバーシート5は、X軸方向を短手方向、Y軸方向を長手方向とする、平面視で長方形状を有する。ラバーシート5の上面50A及び下面50Bは、それぞれ平滑面となっている。ラバーシート5の上面50Aは、蓋3の平滑面30Bに密着する。つまり、ラバーシート5は、ファンデルワールス力により蓋3側に密着する。
ラバーシート5は、蓋3に設けられた溝部31a,31bと、培養容器2に設けられた貯留部21a,21bと、を連通させる連通孔51a,51bを備えている。なお、ラバーシート5は、連通孔51a,51bの間に、ハイドロゲル貯留槽116に連通する第2の連通孔53を備えている。
図7及び図8に示すように、培養容器2には、複数の貯留部21の開口を囲い、上面20Aからラバーシート5に向かって突出する線状のシール突起60が設けられている。シール突起60は、貯留部21a,21b及びハイドロゲル貯留槽116のそれぞれの開口縁に沿って設けられている。貯留部21a,21b及びハイドロゲル貯留槽116の隣り合うシール突起60の少なくとも一部は、共通化されている。
上記構成の細胞培養装置1では、貯留部21a,21bを備える培養容器2について、貯留部21a,21bの気密を同時に確保するため、培養容器2と当該培養容器2を被覆する蓋3とを備え、培養容器2と蓋3の間にラバーシート5を配置して複数の貯留部21の気密を確保する。この際に、培養容器2の上面20Aに線状のシール突起60を備えることで、ラバーシート5を弾性変形させ、当該シール突起60に沿った部位での気密を確保できる。このラバーシート5によれば、一つの部材で複数の貯留部21の気密を確保できるため、組み立てが容易、且つ、ラバーシート5の厚みTやシール突起60の高さHを調整することで、培養容器2や蓋3の寸法誤差を吸収して気密を容易に確保できる。
また、上記構成の第2実施形態によれば、ハイドロゲルチャンバー110に隣接した貯留部21a及び貯留部21bに培養液102を貯留し、貯留された培養液102に対して空圧をかけることで、ハイドロゲル101に培養液102を浸透させて細胞を培養できる。このように、培養容器2に空圧配管4を接続された蓋3を固定し、空圧によってハイドロゲル101に培養液102を浸透させながら細胞(例えば血管内皮細胞)を培養することで、ハイドロゲル101中での細胞組織の形成を促進させることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
1…細胞培養装置
2…培養容器
2a…アッパープレート
2b…ボトムプレート
2c…流路プレート
2d…透明プレート
3…蓋
3a…蓋本体
3b…カバー
3c…ラバーシート
4…空圧配管
4a~4d…空圧配管
5…ラバーシート
6…第1の固定部
7…第2の固定部
8…第1の係止部
9…隙間
10…第2の係止部
11…ボルト
12…貫通孔
13…窓部
14…貫通孔
15…排出流路
16…導入流路
20A…上面
21…貯留部
21a~21d…貯留部
22…位置決め凹部
30a…接続孔
30A…上面
30B…平滑面
31…溝部
31a~31d…溝部
32…貫通孔
33…位置決め凸部
50A…上面
50B…下面
51…連通孔
51a~51d…連通孔
53…第2の連通孔
60…シール突起
61…短辺
62…長辺
63…角部
64…空間
70…開口部
101…ハイドロゲル
102…培養液
110…ハイドロゲルチャンバー
114…導入孔
116…ハイドロゲル貯留槽
122…支柱列
132…支柱列
151…ラプラス弁
2…培養容器
2a…アッパープレート
2b…ボトムプレート
2c…流路プレート
2d…透明プレート
3…蓋
3a…蓋本体
3b…カバー
3c…ラバーシート
4…空圧配管
4a~4d…空圧配管
5…ラバーシート
6…第1の固定部
7…第2の固定部
8…第1の係止部
9…隙間
10…第2の係止部
11…ボルト
12…貫通孔
13…窓部
14…貫通孔
15…排出流路
16…導入流路
20A…上面
21…貯留部
21a~21d…貯留部
22…位置決め凹部
30a…接続孔
30A…上面
30B…平滑面
31…溝部
31a~31d…溝部
32…貫通孔
33…位置決め凸部
50A…上面
50B…下面
51…連通孔
51a~51d…連通孔
53…第2の連通孔
60…シール突起
61…短辺
62…長辺
63…角部
64…空間
70…開口部
101…ハイドロゲル
102…培養液
110…ハイドロゲルチャンバー
114…導入孔
116…ハイドロゲル貯留槽
122…支柱列
132…支柱列
151…ラプラス弁
Claims (13)
- 開口を有する複数の貯留部を備える培養容器と、
前記培養容器に着脱可能に装着され、前記複数の貯留部の開口を覆う蓋と、
前記培養容器及び前記蓋のいずれか一方に接続された空圧配管と、
前記培養容器と前記蓋との間に配置され、前記培養容器と前記蓋との間の気密を確保するラバーシートと、を備え、
前記培養容器及び前記蓋のいずれか一方に、前記複数の貯留部の開口を囲い、前記ラバーシートに向かって突出する線状のシール突起が設けられている、
細胞培養装置。 - 前記シール突起は、前記培養容器に設けられている、
請求項1に記載の細胞培養装置。 - 前記蓋は、前記ラバーシートが密着する平滑面を有する、
請求項2に記載の細胞培養装置。 - 前記蓋は、前記ラバーシートを前記平滑面に位置決めする複数の位置決め凸部を有する、
請求項3に記載の細胞培養装置。 - 前記複数の位置決め凸部は、前記ラバーシートの短手方向の両側と、前記ラバーシートの長手方向の片側に設けられている、
請求項4に記載の細胞培養装置。 - 前記培養容器は、前記複数の位置決め凸部が挿入される複数の位置決め凹部を備える、
請求項4または5に記載の細胞培養装置。 - 前記空圧配管は、前記蓋に接続されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞培養装置。 - 前記蓋は、前記空圧配管と連通する複数の溝部を備え、
前記ラバーシートは、前記複数の溝部と前記複数の貯留部とを連通させる複数の連通孔を備える、
請求項7に記載の細胞培養装置。 - 前記シール突起は、前記複数の貯留部のそれぞれの開口縁に沿って設けられている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞培養装置。 - 前記複数の貯留部のうち、互いに隣接する貯留部の開口縁に沿って設けられる前記シール突起の少なくとも一部は、共通化されている、
請求項9に記載の細胞培養装置。 - 前記シール突起の高さ/幅の比率が、0.5~10の範囲内である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞培養装置。 - 前記ラバーシートは、シリコーンゴム製である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞培養装置。 - 前記ラバーシートのデュロメータ硬さは、50以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞培養装置。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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PCT/JP2023/023014 WO2024024345A1 (ja) | 2022-07-29 | 2023-06-21 | 細胞培養装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022121990A JP2024018571A (ja) | 2022-07-29 | 2022-07-29 | 細胞培養装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022121990A Pending JP2024018571A (ja) | 2022-07-29 | 2022-07-29 | 細胞培養装置 |
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WO (1) | WO2024024345A1 (ja) |
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2022
- 2022-07-29 JP JP2022121990A patent/JP2024018571A/ja active Pending
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2023
- 2023-06-21 WO PCT/JP2023/023014 patent/WO2024024345A1/ja unknown
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