JP2024016644A - 樹脂組成物および成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】導電性と柔軟性とが両立し、成形体の生産性にも優れる組成物を提供する。【解決手段】オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と炭素系フィラー(B)とを、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と炭素系フィラー(B)との総質量100質量部に対して炭素系フィラー(B)を1~10質量部を含み、かつ、下記要件(a)および(b)を満たす、樹脂組成物。要件(a):体積抵抗率が1×108Ω・cm以下要件(b):デュロメータA硬度が80以下【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物および成形体に関し、詳しくは炭素系フィラーを含む樹脂組成物およびこれを用いて成形された成形体に関する。
本発明は、さらに詳しくは、導電性と柔軟性が両立し、成形体の生産性にも優れた樹脂組成物、およびそれを用いて成形された成形体に関する。
エラストマーに導電性フィラーを配合した導電材料は、コンピュータや医用機器などにおいて、電磁波シールドやセンサ、アクチュエータ用途として広く用いられている。これらの用途では、導電性と柔軟性が求められることがある。例えば、医療用の生体センサでは、電位を正確に測定するための高い導電性と装着者の動きに対しての追従性を高め、負担を軽減するための柔軟性が必要である。
導電材料において、一般に高い導電性を得るためには、マトリクスへ導電性フィラーを多く添加する必要がある。しかし、多量のフィラーを添加すると、粘度が上昇するなどして成形加工性が低下する。このため、たとえば下記特許文献1~4に示されるように、高導電性と成形加工性を両立する工夫がなされている。
特許文献1には、重量平均分子量が35,000~150,000、分子量分布が3以下、軟化点が80~130℃を満たすプロピレン系重合体と熱可塑性樹脂からなるマトリクスにカーボンナノチューブを高添加・高分散することで高い導電性を有すると共に、機械的強度および変形性にも優れる組成物を製造できることが記載されている。なお、特許文献1は、双極板や燃料電池用セパレータなどの用途に、厚みを薄くしても高い機械的強度と多少の変形によっても破損が生じない変形性を有する樹脂組成物を提供すること目的としている。このため電極などの本体への柔軟性については、全く検討されていない。また、熱可塑性樹脂にエラストマーを用いた場合、フィラーを高添加しているため、柔軟性は大きく損なわれる。
また、特許文献2では、カーボンナノチューブとエラストマーとからなる複合膜の製造方法として、炭素系フィラーを有機溶剤中で分散させ、基板上に塗布し、溶媒を乾燥させることで、少ない炭素系フィラー添加で高い導電性を付与できるため、導電性と平坦性を両立しているが、分散や溶媒乾燥工程に多くの時間を要するため生産性が低く、除去溶媒の処理も必要となり、作業環境にも影響する。また、特許文献2の記載では、エラストマーとして、フッ素ゴムが好ましいと記載され、実施例での評価もフッ素ゴムのみである。
一方、特許文献3は、電極材自体が皮膚とのなじみや感触性にすぐれた導電性ミラブルウレタンゴム電極を、有機溶剤を用いた分散工程を必要としない方法で製造しているが、マトリクスにウレタン系熱硬化性エラストマーを使用しており、架橋工程が必要になるため、生産性が低くなり、架橋後は再成形ができないため、リサイクル性も低い。
特許文献4においては、スチレン系熱可塑性エラストマーとカーボンブラックの組成物からなるシート状柔軟電極を射出または押出成形によって製造することが記載されている。特許文献4の実施例において、厚さ150μmのシートが記載されているが、押出成形して製造した厚さ500μmのシートを熱プレスして製造したものである。
特許第6780835号公報 特許第6917642号公報 特許第2100738号公報 特許第6975365号公報
特許文献1~3には、柔軟性という観点で全く検討されたものではなく、性能、生産性などの点で、不十分であった。
特許文献4はシート状の柔軟電極であるものの、使用されるスチレン系熱可塑性エラストマーは炭素系フィラーを添加した際の増粘が、オレフィン系エラストマーなどと比べて大きく、成形加工性が悪化しやすい。このため、直接、薄いシートの製造は難しいと考えられ、特許文献4では、いったん製造した厚膜シートを、熱プレスでシートを薄膜化している。このため、薄いシートの連続生産に適していない。また、実施例で評価されたデュロメータA硬度が最低でも81であり、柔軟性が乏しく、硬いシートである。
このため本発明は、導電性と柔軟性とが両立し、成形体の生産性にも優れる組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記状況を鑑み、鋭意研究した結果、以下の構成を採用することで本発明を完成するに至った。
[1]オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と炭素系フィラー(B)とを、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と炭素系フィラー(B)との総質量100質量部に対して炭素系フィラー(B)を1~10質量部の量で含み、かつ、下記要件(a)および(b)を満たす樹脂組成物;
要件(a):体積抵抗率が1×108Ω・cm以下;
要件(b):デュロメータA硬度が80以下。
[2]さらに下記要件(c)を満たす、[1]の樹脂組成物;
要件(c):230℃、せん断速度1.5×10 -1におけるせん断粘度が4000Pa・s以下。
[3]オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)がエチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマーおよび1-ブテン系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む、[1]または[2]の樹脂組成物。
[4]炭素系フィラー(B)がカーボンナノチューブである、[1]~[3]の樹脂組成物。
[5][1]~[4]の樹脂組成物を含む成形体。
[6]押出成形体またはTダイ押出成形体である、[5]の成形体。
[7]シートまたはフィルムである、[5]または[6]の成形体。
本発明で使用されるオレフィン系熱可塑性エラストマーは炭素系フィラーの分散性が高く、少量の炭素系フィラーであっても、高い導電性を発揮することができる。またオレフィン系熱可塑性エラストマーをマトリクスとしているため柔軟性が高く、かつリサイクル性も高い。また、炭素系フィラーの添加量が少なくできるので、エラストマー本来の柔軟性も損なわれにくい。
このため、本発明によれば、導電性と柔軟性が両立し、成形体の生産性にも優れた樹脂組成物を得ることができる。
さらに組成物は、せん断粘度が低く、流動性が高いので、成形加工性にも優れ、煩雑な工程を経ることなく、薄膜のシートないしフィルム状成形体を得ることができる。
以下、本発明の樹脂組成物および成形体の実施形態について説明する。
本発明に係る樹脂組成物は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と炭素系フィラー(B)とを含む。
[オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)]
本願明細書で、熱可塑性エラストマーとは、使用温度ではゴム弾性を有し、加熱により流動性を示す材料をいう。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、モノマー組成として脂肪族炭化水素モノマーであるα-オレフィンを主とする熱可塑性エラストマーをいう。オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。オレフィン系熱可塑性エラストマーを構成するα-オレフィンの例には、炭素原子数2~20であるα-オレフィンが含まれ、具体的にはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン等が含まれる。
本発明で使用されるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、オレフィン系共重合体ゴムを含有する熱可塑性エラストマーであれば、特に限定されるものではないが、結晶性ポリオレフィンと、オレフィン系共重合体ゴムを含有する組成物であってもよい。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群より選ばれる1種と、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、エチレン・ブテン共重合体からなる群より選ばれる1種との混合物である。さらに、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、エチレン・ブテン共重合体は、部分的もしくは完全に架橋されていてもよい。
本発明で使用されるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、エチレン系熱可塑性エラストマー、プロピレン系熱可塑性エラストマー、および、1-ブテン系熱可塑性エラストマーが好ましい。なお、エチレン系熱可塑性エラストマーとは、モノマー組成として、エチレンを含有するエラストマーであり、プロピレン系熱可塑性エラストマーとは、モノマー組成として、プロピレンを含有するエラストマーであり、1-ブテン系熱可塑性エラストマーとは、モノマー組成として、1-ブテンを含有するエラストマーである。
エラストマーの柔軟性と、炭素系フィラーの分散性などの点で、プロピレン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)としては、市販品を使用することもできる。例えば、三井化学(株)製ミラストマー(登録商標)、タフマー(登録商標)、住友化学(株)製エスポレックスTPEシリーズ(登録商標)、三菱ケミカル(株)製サーモラン(登録商標)、トレックスプレーン(登録商標)、ExxonMobilChemical社製Santoprene(登録商標)、Vistamaxx(登録商標)などが挙げられる。
本発明において、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、未変性のオレフィン系熱可塑性エラストマーであってもよく、あるいは、オレフィン系熱可塑性エラストマーを酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で変性される変性オレフィン系熱可塑性エラストマーであってもよい。
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)のMFR(MeltFlowRate)(ASTMD1238にて230℃で2.16kgの荷重にて測定))は、好ましくは2g/10min以上60g/10min以下、より好ましくは3g/10min 以上55g/10min以下、さらに好ましくは10g/10min以上50g/10min以下であることが望ましい。前記範囲内のMFRであると、炭素系フィラー(B)が良好に分散する。一方、前記範囲を外れて60g/10minより大きくなると成形性が悪化するため好ましくない。
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、柔軟性の観点からデュロメータA硬度は好ましくは80以下、より好ましくは40~79、さらに好ましくは45~77である。前記範囲であれば、柔軟性が高い組成物を得ることができる。
なお、これらの測定方法は後述する。
[炭素系フィラー(B)]
炭素系フィラー(B)は、導電性を有する材料である。その一例として、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ(CNT)が挙げられる。炭素系フィラー(B)としては導電性を有するこれらの材料であれば特に制限されないが、これらの中でも、成形体の体積抵抗率を下げる効果に優れていることから、カーボンナノチューブが好ましい。
カーボンナノチューブは、炭素からなる円筒状の中空繊維状物質であり、多層カーボンナノチューブおよび単層カーボンナノチューブのいずれでもよい。
カーボンナノチューブの平均直径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは7nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。また、カーボンナノチューブの平均長さは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.6μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
平均直径が前記範囲にあれば混練時に切れにくくすることができ、導電性を高めることができる傾向にある。また、平均長さが前記範囲にあれば導電性を高めることができ、混練時の粘度上昇を抑制し、混練および成形をしやすくすることができる傾向にある。
カーボンナノチューブの平均直径および平均長さは、カーボンナノチューブを電子顕微鏡(SEM、TEM)で観察し、算術平均することにより求めることができる。
カーボンナノチューブは、例えば、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法によって製造することができる。カーボンナノチューブの市販品を用いてもよい。
カーボンナノチューブは、例えばカーボンブラックに比べて、比較的少量で高い導電性を示す傾向にあるが、高価であるためより少量で使用できればコスト面の観点から有利である。
黒鉛としては、一般的な粉末黒鉛、膨張化黒鉛、薄片化黒鉛などが使用できる。
炭素系フィラー(B)は1種または2種以上用いることができる。本発明では、所望の柔軟性および導電性を実現できれば、当該炭素系フィラーとともに、導電性を付与する他の材料を有してもよい。例えば、銀、金、銅、白金、ニッケルなどの金属材料が挙げられる。
[樹脂組成物]
樹脂組成物はオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と炭素系フィラー(B)との総質量100質量部に対して炭素系フィラー(B)を1~10質量部を含む。炭素系フィラー(B)の含有割合は、好ましくは2~8質量部である。前記範囲にあると、導電性と柔軟性が両立し、成形体の生産性にも優れた樹脂組成物を得ることができる。
なお、炭素系フィラー(B)が少なすぎると、目的とする体積抵抗率が得られないことがあり、多すぎても硬度が高くなり、増粘により成形加工性が低下することがある。
本発明の樹脂組成物は、要件(a)および(b)を満足する。
要件(a):体積抵抗率
組成物から作成した試験片の絶縁抵抗が106Ω以上のものでJISK6911:1995準拠して測定される体積抵抗率および組成物から作成した試験片の絶縁抵抗が106Ωを下回ったものでJISK7194:1994に準拠して測定される体積抵抗率が、1×108Ω・cm以下、好ましくは1×10-1Ω・cm~1×107Ω・cm、より好ましくは1×100Ω・cm~1×104Ω・cmである。体積抵抗率は目的に応じて適宜選択され、帯電防止材などの用途で好適な導電性を有する観点であれば、1×108Ω・cm以下であり、生体センサや電磁波シールド材などの用途で好適な導電性を有する観点であれば好ましくは1×104Ω・cm以下である。
要件(b):デュロメータA硬度
柔軟性の観点からASTM D 2240に準拠して測定されるデュロメータA硬度が80以下、好ましくは40~79、より好ましくは45~77である。前記範囲であれば、柔軟性が高く、生体センサなどの用途に使用される際に、装着者の動きへの追従性を高めることが可能となる。
体積抵抗率を低くしようとすると、炭素系フィラー添加量を多くする必要があり、デュロメータA硬度を低くしようとすると、炭素系フィラー添加量を少量にする必要があり、目的の体積抵抗率やデュロメータA硬度を調整しながら、前記した組成量比内で、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と炭素系フィラー(B)の量を調整する。
本発明の樹脂組成物は、所定の要件(a)および(b)を満足するので、導電性と柔軟性がバランスよく両立している。
さらに、本発明の樹脂組成物は、以下の要件(c)を満足することが好ましい。
要件(c):せん断粘度
要件(c):230℃、せん断速度1.5×10 -1におけるせん断粘度が4000 Pa・s以下。
組成物中に炭素系フィラーを良好に分散させる観点から、230℃、せん断速度1.5×10 s-1におけるせん断粘度は4000Pa・s以下、好ましくは3500Pa・s以下、45Pa・s以上であり、より好ましくは3200Pa・s以下、100 Pa・s以上であることが望ましい。前記せん断粘度であれば、組成物中に、炭素系フィラーが良好に分散する。一方、せん断粘度が低すぎる、もしくは高すぎると成形性が悪化する。
本発明の樹脂組成物は、硬度の観点から、融解熱の総和が、好ましくは20J/g以下、より好ましくは10J/g以下から融解熱が観測されないものが望ましい。
融解熱(ΔH)は、示差走査熱量計(DSC)測定を行い、昇温速度10℃/minで室温から230℃まで昇温し、完全融解させるために、230℃で5分間保持し、次いで、降温速度10℃/minで-80℃まで冷却してから昇温速度10℃/minで230℃まで昇温したときのDSC曲線をJIS K7121を参考に解析して求める。前記融解熱の総和以下であれば、炭素系フィラーの分散性が高く、柔軟性の付与効果を高くできる。
<その他の成分>
上記樹脂組成物は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と炭素系フィラー(B)以外に、その他の重合体成分や、各種樹脂用添加剤をさらに含有することができる。
<<その他の重合体>>
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記オレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー(A)に該当しないその他の重合体(以下「その他の重合体」)をさらに含んでいてもよい。
「その他の重合体」の例として、従来公知である、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン等に代表される樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの樹脂の配合量は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して好ましくは0~25質量部、より好ましくは0.1~20質量部、特に好ましくは0.3~10質量部である。ここで、樹脂組成物を製造する際には、これらの樹脂は後述する添加剤を含む組成物の形態で用いられてもよいが、その場合の樹脂の配合量は、この組成物の質量から添加剤の質量を差し引いてなる質量が基準となる。
また、「その他の重合体」は、未変性の重合体に限られず、変性重合体であっても良い。このことから、本発明の樹脂組成物は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)に高い含有率の炭素系フィラー(B)を混練するのを容易にする為に変性ポリオレフィン系ワックスを含んでもよい。この変性ポリオレフィン系ワックスを用いることにより、熱可塑性樹脂(A)中での炭素系フィラー(B)の凝集が抑制されるので混練するのが容易になると考えられる。
変性ポリオレフィン系ワックスの種類は特に限定されないが、変性ポリエチレン系ワックス、変性ポリプロピレン系ワックスが好ましく変性ポリエチレン系ワックスがより好ましい。
<<添加剤>>
上記樹脂組成物は、必要に応じて、公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、耐候性安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、有機ないし無機充填剤、および軟化剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの添加剤は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
<樹脂組成物の製造>
上記樹脂組成物は、例えば、オレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー(A)と炭素系フィラー(B)と任意に加えられる他の成分とをドライブレンドし、続いて一軸または二軸押出機またはバンバリーミキサーまたは加圧ニーダーで溶融混練し、ストランド状に押出しペレットに造粒することにより得ることができる。なお、炭素系フィラー(B)やその他成分は、オレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー(A)等の樹脂成分と予め混合してマスターバッチの形態で用いてもよい。
[成形体]
本実施形態の成形体は、上記樹脂組成物を含む。成形方法としては、具体的には、従来公知の成形方法、例えば、押出成形、Tダイ押出成形、射出成形、フィルム成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等の公知の熱成形方法が挙げられる。
上記成形体は、上記樹脂組成物から形成された成形体であってもよく、また、上記樹脂組成物から形成された部分、例えば表層、を有する成形体であってもよい。
好ましくは押出成形またはTダイ押出成形によって、上記樹脂組成物を加工して得られた押出成形体またはTダイ押出成形体である。本発明では、上記樹脂組成物を使用しているので、成形加工性が高く、押出成形またはTダイ押出成形で直接、所定の厚みの成形体を製造することが可能である。
成形体の用途は例えば、家電材料部品、通信機器部品、電気部品、電子部品、船舶、航空機材料、機械機構部品、電動工具部品、フィルム、シート、繊維,玩具等が挙げられる。
このうち、成形体は、シートまたはフィルムが好ましい。また組成物が、所定の要件 要件(a):体積抵抗率、要件(b):デュロメータA硬度を満足しているので、シートまたはフィルム状の成形体を、シート状柔軟電極として使用することができる。
シート状柔軟電極の厚さは、50μm以上500μm以下である。シート状柔軟電極は、一様な平面状を呈していても、開口部を有する網目形状を呈していてもよい。
シート状柔軟電極の用途は特に限定されないが、例えば圧電センサ、静電容量センサなどの電極として好適である。例えば、前者の場合、エラストマーおよび圧電粒子などを有する圧電層を挟んで本発明のシート状柔軟電極を配置すればよい。後者の場合、エラストマーなどを有する絶縁層を挟んで本発明のシート状柔軟電極を配置すればよい。静電容量センサとしては、絶縁層を挟んで配置される二つの電極間の静電容量を検出するセンサでもよく、一方が検出電極、他方が検出電極に対するノイズを遮蔽するシールド電極であり、検出電極と検出対象物との間に生じた静電容量を検出するセンサでもよい。
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔使用原料〕
1-1.オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)
・vistamaxx 6202:Exxonmobil社製(プロピレン・エチレン共重合体、デュロメータA硬度 67、MFR(230℃、2.16kgf) 20 g/10min)
・vistamaxx 6102:Exxonmobil社製(プロピレン・エチレン共重合体、デュロメータA硬度 67、MFR(230℃、2.16kgf) 3 g/10min)
・タフマーPN20300:三井化学(株)製(デュロメータA硬度 82、MFR(230℃、2.16kgf) 30 g/10min)
・タフマーPN2060:三井化学(株)製(デュロメータA硬度 83、MFR (230℃、2.16kgf) 6 g/10min)
1-2.ポリプロピレン樹脂(比較例に該当、非エラストマー)
F704NP:プライムポリマー(株)製(デュロメータA硬度 測定限界の90以上、MFR(230℃、2.16kgf) 7 g/10min)
(2-1)カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブ 「NC7000」:Nanocyl社製(平均直径9.5nm、平均長さ1.5μm)
樹脂組成物および試験片の作製方法
二軸押出機((株)プラスチック工学研究所製 プラボーBT-30)のホッパー部に実施例または比較例に記載の材料を各配合量で投入し、230℃、200rpmで溶融混練し、樹脂組成物ペレットを作製した。
その後、樹脂組成物をフィルム成形機((株)東洋精機製作所製 D2028)にて温度230℃、回転速度50rpmでTダイ押出成形して、幅250mm、厚さ200μmの体積抵抗率評価用の試験片を作製した。
また、上記樹脂組成物ペレットを用いて、230℃に設定した30トン真空プレス成形機(関西ロール(株)製)を用いて、厚さ2mmの硬度評価用の試験片を作製した。
せん断粘度の測定
作製した樹脂組成物のせん断粘度を、キャピラリーレオメーター((株)東洋精機製作所製 キャピログラフ1D PMD-C)を用いて、JIS7199:1999に準拠してせん断速度1.5×10s-1にて測定した。
硬度の測定
熱プレスで作製した試験片のデュロメータA硬度を、硬度計(高分子計器(株)製 ASKER CLE150)を用いて、室温23℃、湿度50%の条件下、ASTM D 2240に準拠して測定した。測定は、厚さ2mmの試験片を3枚重ねて行い、押針と試験片とが接触した直後の値を採用した。デュロメータA硬度90以上を測定不可とした。
体積抵抗率の測定
Tダイ押出成形で作製した厚さ200μmのシート試験片の体積抵抗率をデジタル超高抵抗/微少電流計((株)エーディーシー社製 8340A型)を用いて、二重リング法により室温23℃、湿度50%の条件下、印加電圧10V、印加時間60秒の条件において測定した。
上記で1×106Ωを下回ったものについては4探針法で測定した。
4探針法は、抵抗率計((株)日東精工アナリテック製 ロレスターGX MCP-T700、ASP型プローブ)を用いて、室温23℃、湿度50%の条件下、JIS K7194 : 1994に準拠して測定した。
成形加工性
Tダイ押出成形で厚さ200μmのシートを1m以上連続成形可能であったものを成形可能(実施例の表中 〇)、成形できなかったものを成形不可(実施例の表中 ×)と評価した。
[実施例1]
実施例1では、表1に示すように、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)を97質量%、炭素系フィラー(B)を3質量%で混合した。
次に、前記方法にて樹脂組成物ペレットおよび物性測定用試験片を作製した。
[実施例2~7、比較例1および2]
実施例2~7、比較例1および2では、表1に示すように、各材料の配合量や種類を適宜変更した以外は、実施例1と同様に、組成物を調製し、試験片を作成した。
結果を合わせて表1に示す。
Figure 2024016644000001

Claims (7)

  1. オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と炭素系フィラー(B)とを、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と炭素系フィラー(B)との総質量100質量部に対して炭素系フィラー(B)を1~10質量部の量で含み、かつ、下記要件(a)および(b)を満たす樹脂組成物;
    要件(a):体積抵抗率が1×108Ω・cm以下;
    要件(b):デュロメータA硬度が80以下。
  2. さらに下記要件(c)を満たす請求項1に記載の樹脂組成物;
    要件(c):230℃、せん断速度1.5×10 -1におけるせん断粘度が4000Pa・s以下。
  3. オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)がエチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマーおよび1-ブテン系エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む請求項1に記載の樹脂組成物。
  4. 炭素系フィラー(B)がカーボンナノチューブである請求項1に記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
  6. 押出成形体またはTダイ押出成形体である請求項5に記載の成形体。
  7. シートまたはフィルムである請求項5に記載の成形体。
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