JP2024013094A - チェンジング効果を有する表示体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 製造に大掛かりな設備を必要とせず、偽造品を明確に判断できるセキュリティ機能を有し、オンデマンドのカラー印刷が可能であり、鮮明なチェンジング画像を表示できる、表示体を提供すること。【解決手段】 表示体は、透明カードと、透明カードの第1の面に印刷された、複数の画像を含む第1の万線と、透明カードの第1の面に対向する第2の面に印刷された、複数の画像を表示するためのマスク用の第2の万線とを備え、第2の万線は、表示体の所有者の個別情報が含まれるように、所有者毎に個別に形成されたことを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、IDカード、各種証明証、パスポートのデータページなどに適用されることが可能な、チェンジング効果を有する表示体に関する。
従来、IDカード、各種証明証、パスポートのデータページなどに適用される個人認証用媒体のような表示体では、偽変造を防止できることに加えて、目視で真贋判定可能な方式として、画像のチェンジング表現が有効であることが知られている。
チェンジング表現を実現する技術としては、近年、MLI(Multiple Laser Image)/CLI(Changeable Laser Image)タイプのものが増加している。
MLI/CLIは、傾けることによって画像がチェンジングする技術である。MLI/CLIでは、ポリカーボネート基材の表面にレンチキュラーレンズが形成され、その下にレーザー描画によって2種類以上の画像が記録される。これら画像は、レンチキュラーレンズが固定パターンで、絵柄がオンデマンドで形成されモノクロとなる。
また、チェンジング表現を実現する別のタイプの技術としては、万線パターンを利用した技術がある。この技術では、透明基材の片方に、デザインの万線パターンを、透明基材の他方に、マスク用の万線パターンを印刷することで、チェンジング表現を実現できる。
万線パターンを利用した技術では、基本的に固定柄であるが、カラー印刷が可能である。
このような従来技術では、以下のような問題がある。
すなわち、前述した既存のチェンジング効果を有する技術は、IDカード用のセキュリティとして使用可能である。しかしながら、チェンジング表現の基本的な原理は公知であり、外観を似せた偽造品を作ることが可能である。すなわち、顔写真がチェンジングするというだけでは偽造品と真正品とを明確に判別することができず、セキュリティ機能としては不十分である。
また特にMLI/CLIでは、レーザー描画によって画像が形成されるので、耐久性や改ざんに対しては優れているが、画像はモノクロのみとなり、カラーの顔写真を表現できない。
また、レンチキュラーレンズを成形するには大掛かりな熱圧加工設備が必要となり、少量発行ではコスト高となるために、相応の費用対効果を得るには、パターンの場所やサイズなどのデザインを決めて大量に製造することが必要となるので、例えば個人ごとに異なるデザインをするといったような柔軟な対応には適していない。
また万線パターンを利用した技術では、一般に、万線パターンの線幅が大きい(1mm~5mm)ため、微細なデザインを表現することができず、偽造も容易である。このためIDカードなどのセキュリティ要素には使えない。
また、線幅を狭くすれば印刷自体が困難になるうえ、表裏の平行や位置合わせも高い精度が求められる。例えば、オフセット印刷では精度良くカラー印刷できるが、オンデマンド印刷できないので顔写真付きのIDカードを発行することができない。昇華染料印刷やインクジェット印刷を採用すれば、カラーの顔写真をオンデマンドで印刷できるが、この場合、印刷した万線のエッジが鮮明ではないため綺麗にチェンジングしない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、製造に大掛かりな設備を必要とせず、偽造品を明確に判断できるセキュリティ機能を有し、オンデマンドのカラー印刷が可能であり、鮮明なチェンジング画像を表示できる、表示体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
すなわち、本発明の第1の態様の表示体は、チェンジング効果を有する表示体であって、透明カードと、透明カードの第1の面に印刷された、複数の画像を含む第1の万線と、透明カードの第1の面に対向する第2の面に印刷された、複数の画像を表示するためのマスク用の第2の万線とを備え、第2の万線は、表示体の所有者の個別情報が含まれるように、所有者毎に個別に形成されたことを特徴とする。
本発明の第2の態様の表示体は、第2の万線を撮像して得られる撮像結果が、機械による真贋判定のために利用可能であることを特徴とする、第1の態様の表示体である。
本発明の第3の態様の表示体は、第1の万線が、所有者の2種類以上の個別情報を含むことを特徴とする、第1または第2の態様の表示体である。
本発明の第4の態様の表示体は、第2の万線が、所有者の1種類以上の個別情報を含むことを特徴とする、第1または第2の態様の表示体である。
本発明の第5の態様の表示体は、第1の万線と第2の万線とが、透明カードを介して重なるように配置された、第1または第2の態様の表示体である。
本発明の第6の態様の表示体は、傾けられると、第1の万線に含まれる2種類以上の個別情報が、切り替わって表示されることによって、チェンジング効果を実現する、第3の態様の表示体である。
本発明の第7の態様の表示体は、第2の万線に含まれる情報が、目視による観察、拡大しての観察、および画像処理後の観察の何れも可能である、第4の態様の表示体である。
本発明の第8の態様の表示体は、印刷を、顔料溶融転写方式で行うことによって、チェンジング効果を、カラーで鮮明に実現する、第1の態様の表示体である。
本発明によれば、製造に大掛かりな設備を必要とせず、偽造品を明確に判断できるセキュリティ機能を有し、顔写真用途にオンデマンドのカラー印刷が可能であり、鮮明なチェンジング画像を表示できる、表示体を提供することが可能となる。
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る表示体の構成例を示す側断面図である。
本実施形態に係る表示体10は、チェンジング効果を有する表示体10であって、透明カード12と、透明カード12の表面13に印刷された、複数の画像Gを含む、表示画像用の万線14と、透明カード12の表面13に対向する裏面15に印刷された、複数の画像Gを表示するためのマスク用の万線16とを備える。
万線14は、表示体10の所有者の2種類以上の個別情報(以下、「ID情報」とも称する)を含むことができる。図1では、一例として、2種類のID情報を含めるために印刷された、2種類の万線14a、14bを示している。
ID情報とは、所有者の氏名、生年月日、ID番号等に加え、顔写真、直筆サインなどの画像データや、さらには指紋などの画像情報の特徴点をデータ化したもの等を含む。
万線14は、これら2種類以上のID情報をそれぞれ画像化し、さらにそれぞれを万線パターンに変換した上で合成して生成できる。
図2は、2種類のID情報をそれぞれ画像化し、それぞれを万線パターンに変換した上で合成して万線を生成する例を示す図である。
図2に示す例では、ID情報は、顔写真と氏名との2種類である。顔写真の画像Fが、パターン1にしたがって万線パターンF’に変換される。同様に、手書きされた氏名の画像Nが、パターン2にしたがって万線パターンN’に変換される。さらに、万線パターンF’と万線パターンN’とが合成されて、万線14が生成される。
画像F、Nともに、カラー画像でもモノクロ画像でもよい。また、画像F、Nがカラー画像である場合、カラーの万線パターンF’、N’に変換することも、モノクロ変換によって、モノクロの万線パターンF’、N’に変換することもできる。
万線16は、表示体10の所有者の1種類以上のID情報を含む(例えば、埋め込む)ことができる。万線16に含まれる情報は、目視による観察、拡大しての観察、および画像処理後の観察の何れも可能である。万線16は、後に詳述するように、所有者毎に個別に、オンデマンドで印刷される。
万線14と万線16とは、透明カード12を介して重なるように配置される。
表示体10は、傾けられると、万線14に含まれる2種類以上のID情報の画像G(例えば、後述する図3に示す画像G1,G2)が、切り替わって表示される。これによって、チェンジング効果を実現する。
チェンジング効果の原理を、図3を用いて説明する。
図3は、チェンジング効果の原理を説明するための図である。
図3(a)は、観察者Kが、表示体10の裏面15を、図中真上側から見た状態を示す。この状態では、観察者Kには、図3(b)に示すように、万線14aが表示されることによって、「op」という画像G1が見える。
図3(c)は、観察者Kが、表示体10を図3(a)の状態から傾けて、表示体10の裏面15を、図中斜め上側から見た状態を示す。この状態では、観察者Kには、図3(d)に示すように、万線14bが表示されることによって、「12」という画像G2が見える。
このように、表示体10を傾けて、観察角度が変わると、万線14aによって表示される画像G1と、万線14bによって表示される画像G2とが切り替わり、チェンジング効果が得られる。
なお上記では、チェンジング効果の原理を、図3を用いて表示体10の裏面側から見た場合を例に説明したが、チェンジング効果は、表示体10の表面側から見た場合も、同様に得られる。
このようなチェンジング効果を利用した具体例を以下に説明する。
図4は、本実施形態に係る表示体10が適用されたIDカード10Aの例を示す平面図である。
IDカード10Aの表面の一部にある表示部20には、図2に示す手順で顔画像に氏名が合成された図4(a)に示すような万線14が印刷され、IDカード10Aの裏面には、マスク用の万線16(図示せず)が印刷されている。
観察者KがIDカード10Aを傾けると、観察者Kは、図4(b)に示すように、表示部20から、氏名が消えて顔画像が表示されることを視認し、IDカード10Aをさらに傾けると、図4(c)に示すように、表示部20から、顔写真が消えて氏名が表示されることを視認する。つまり、IDカード10Aは、観察者Kに対して、表示部20から、顔写真と氏名とを交互に表示する。
図5は、本実施形態に係る表示体10が適用されたIDカード10Bの例を示す平面図である。
IDカード10Bの表面の一部にある表示部20には、図2に示す手順で顔画像に氏名および生年月日が合成された図5(a)に示すような万線14が印刷され、IDカード10Bの裏面には、マスク用の万線16(図示せず)が印刷されている。
観察者KがIDカード10Bを傾けると、観察者Kは、図5(b)に示すように、表示部20から、顔画像が表示されることを視認し、IDカード10Bをさらに傾けると、図4(c)に示すように、表示部20から、顔写真が消えて生年月日が表示されることを視認し、IDカード10Bをさらに傾けると、図4(d)に示すように、表示部20から、生年月日が消えて氏名が表示されることを視認する。
つまり、IDカード10Aは、観察者Kに対して、表示部20から顔写真、生年月日、および氏名を交互に表示する。
観察者Kは、このようなチェンジング効果を観察することによって、表示体10の真贋判定を目視により実施することができる。このように、表示体10は、目視による真贋判定が可能である。
また、マスク用である万線16を、スマートフォン等で撮影して画像処理することで、埋め込まれたID情報を読み出すことができるので、表示体10は、機械による真贋判定も可能である。
なお、図5(a)では、顔写真の下に生年月日を、さらに生年月日の下に氏名を合成した万線14の例を示しているが、本発明はこれには限定されず、複数色のID情報(例えば、生年月日および氏名)を重ねて合成した万線を用いることも可能である。その例を、図6を用いて説明する。
図6は、複数色のID情報を重ねて合成した表示画像用の万線の例を示す図である。
図6に示す表示画像用の万線14aは、万線14の一例であって、青色で描かれた生年月日「14 Nov 1995」のための万線と、赤色で描かれた氏名「Hanako」のための万線とが、重ねて合成されている。
このような万線14aを、表示部20に印刷した表示体(図示せず)を、観察者Kが、傾けると、表示部20から、青色で描かれた生年月日「14 Nov 1995」が表示され、さらに傾けると、青色で描かれた生年月日「14 Nov 1995」が消えて、赤色で描かれた氏名「Hanako」が表示されるという具合に、青色で描かれた生年月日「14 Nov 1995」と、赤色で描かれた氏名「Hanako」とを交互に表示するチェンジング効果を奏することができる。
また、ID情報の内容はそのままで、表示体を傾けることで色だけを変化させるチェンジング効果を奏することもできる。
図7は、2種類、2色の文字情報の万線化により実現されるチェンジング効果の一例を説明するための図である。
図7(a)には、複数のID情報の例として、氏名および番号が、複数色のドットで形成された2行の万線14bが例示されている。1行目には、赤色で描かれた氏名「Toppan」と、青色で描かれた番号「012345」と、赤色で描かれた番号「012345」とが印刷されている。2行目には、赤色で描かれた氏名「Toppan」と、赤色で描かれた番号「012345」と、青色で描かれた氏名「Toppan」とが印刷されている。各行とも、複数の色のドットを僅かにずらして印刷することにより形成される。
このような万線14bを、表示部20に印刷した表示体(図示せず)を、観察者Kが傾けると、表示部20からは、図7(b)に例示されるように、赤色で描かれた氏名「Toppan」が2行に表示される。観察者Kが表示体をさらに傾けると、図7(c)に例示されるように、1行目に青色で描かれた番号「012345」が表示され、2行目に赤色で描かれた番号「012345」が表示される。観察者Kが表示体をさらに傾けると、図7(d)に例示されるように、1行目に青色で表示されていた番号「012345」が、赤色で表示されるようになり、2行目には、緑色で描かれた番号「012345」が表示される。このように、ID情報や色を、交互に変化させるチェンジング効果を奏することができる。
また、3種類以上のID情報を重ね合わせて合成した万線によるチェンジング効果について説明する。
図8は、多色の文字情報の万線化により実現されるチェンジング効果の一例を説明するための図である。
図8(a)には、3種類のID情報の例として、カナ氏名「トッパン」、ローマ字氏名「Toppan」、および番号「012345」が、複数色のドットで形成された2行の万線14cが例示されている。1行目には、黄色で描かれた番号「012345」と、青色で描かれたカナ氏名「トッパン」と、紫色で描かれたローマ字氏名「Toppan」とが印刷されている。2行目には、青色で描かれたカナ氏名「トッパン」と、赤色で描かれたローマ字氏名「Toppan」と、緑色で描かれた番号「012345」とが印刷されている。各行とも、複数の色のドットを僅かにずらして印刷することにより形成される。
このような万線14cを、表示部20に印刷した表示体(図示せず)を、観察者Kが傾けると、表示部20からは、図8(b)に例示されるように、1行目に、黄色で描かれた番号「012345」が、2行目に、青色で描かれたカナ氏名「トッパン」が表示される。さらに表示体を傾けると、表示部20からは、図8(c)に例示されるように、1行目に、青色で描かれたカナ氏名「トッパン」が、2行目に、赤色で描かれたローマ字氏名「Toppan」が表示される。さらに表示体を傾けると、1行目から、紫色で描かれたローマ字氏名「Toppan」が、2行目に、緑色で描かれた番号「012345」が表示される。このようなチェンジング効果を奏することができる。
なお、表示される画像は、目視確認できる画像に限定されず、各種データを、QRコード(登録商標)等に変換した画像でも良い。さらに、QRコードは、例えば専用の読取用アプリケーションソフトウェアを搭載したスマートフォンで読み取り可能なQRコードであることが好ましい。
次に、マスク用の万線16のオンデマンド印刷について詳述する。
表示画像用の万線14は情報に応じてパターンが異なるのに対し、マスク用の万線16は、従来技術では、所定の幅の印刷線(ライン)を所定の空隙(スペース)を設けて繰り返して印刷した同一パターンが使用されている。しかしながら、本実施形態では、マスク用の万線16を、可変情報としてオンデマンド印刷することにより、この万線16に、1種類以上の情報を埋め込むことを可能としている。以下に情報の埋め込み方法の例を示す。
情報の埋め込み方法の第1の例は、万線16の形成範囲を可変にすることである。
一般に、マスク用の万線16は、表示画像用の万線14よりも大きくする必要がある。従来技術では、万線14が、オンデマンド印刷で形成されて様々な大きさを持つ場合には、万線16はそれらすべてのパターンよりも大きくする必要があった。このため顔写真のように複雑な形状の場合には印刷領域全体を覆うようなマスクを形成するため、マスクの存在が目立つという問題があった。
これに対し、本実施形態では、万線14の範囲に正確に合わせて、万線16をオンデマンドで形成することによってこの問題を解消することができる。これを、図9を例に説明する。
図9は、本実施形態において採用される表示画像用の万線14と、マスク用の万線16との大きさの関係を、従来技術と比較して例示する図である。
従来技術では、氏名等の文字列のための万線14に対応するマスク用の万線16はすべての線幅を、最大幅に合わせる必要があった。顔写真のための万線14に対応するマスク用の万線16も同様に、最大幅に合わせる必要があった。
従って、図9(a)に例示するように、文字列のための万線14として、「TARO」の万線14(#1)と「HANAKO」の万線14(#2)との2つがある場合、マスク用の万線16の幅は、最大幅を有する「HANAKO」の万線14(#2)のための万線16(#2)の幅に合わせられる。つまり、幅の短い方の万線14である「TARO」の万線14(#1)のマスク用の万線16(#1a)であっても、幅の長い方の万線であるマスク用の万線16(#2a)と同じ線幅を有することになる。また、顔写真のような表示画像用の万線14(#3)の場合、顔写真の領域すべてをカバーする矩形領域に、マスク用の万線16(#3a)が配置される。
一方、本実施形態では、マスク用の万線16の線幅を、各文字列の幅に合わせて形成するので、図9(b)に例示するように、「TARO」の万線14(#1)、「HANAKO」の万線14(#2)に応じた線幅を有するマスク用の万線16(#1b)、万線16(#2b)をそれぞれ形成する。
顔写真14(#3)のマスク用にも、顔写真の輪郭とまったく同じサイズか、若干大きいサイズの万線16(#3b)を形成する。したがって、一見してマスク用の万線16の存在が分からなくなる利点があり、セキュリティ性が向上する。同様に、文字やロゴマーク等の輪郭に合わせた、マスク用の万線16を形成することも可能となる。またマスク用の万線16のエッジ領域を破線にしてぼかすことにより、マスクパターンのデザイン性を向上させることもできる。
情報の埋め込み方法の第2の例は、万線16の太さをオンデマンドにすることである。
従来技術では、マスク用の万線16は、すべての部分の線幅が一定である。一方、本実施形態では、万線16の線幅を部分的に変動させることによって、万線16に画像やデータを埋め込むことを可能としている。これを、図10を用いて説明する。
図10は、マスク用の万線16の線幅を変動させる例を説明する図である。
図10(a)のような入力画像の濃度に応じて、図10(b)のように線幅を増減させることによって、万線16に画像を埋め込むことができる。図10(c)は、図10(b)の一部を拡大した図である。図10(b)に示すような画像を実現するために、万線16の線幅が増減されている。
このような線幅変動による画像の埋め込みは、線幅の変動量が大きければ目視で確認でき、小さければ拡大観察で確認できるので、使用される環境や検証方法に応じて適宜調整できる。
さらに万線16の一部を破線にすることにより全体の画像濃度を同程度にすることで、埋め込んだ画像をより目立たなくして、潜像として使用することもできる。これを、図11を用いて説明する。
図11は、マスク用の万線16の一部を破線にすることにより潜像を埋め込む例を説明する図である。
図11(a)は、図10(b)と同一のものであり、図11(b)は、図11(a)の全体の画像濃度が同程度となるように、万線16の一部を破線とすることで実現された潜像である。図11(c)は、図11(b)の一部を拡大した図である。図11(b)および図11(c)に示すような潜像は、マスク用の万線16の画像と同じピッチの万線フィルタを重ねたり、撮影した画像をデジタル処理したりすることによっても確認することができる。
また、マスク用の万線16の一部を破線にすることで、潜像のみならず、他の情報を埋め込むこともできる。以下では、万線16の一部を破線にすることで、符号情報を埋め込む場合の例について図面を用いて説明する。
図12は、マスク用の万線16の一部を破線にすることで、符号情報を埋め込むことを説明するための図である。
図12(a)は、一定の領域に直線が等間隔で並んでいる一般的なマスク用の万線16を示している。しかしながら、図12(b)~(d)に示すように、この直線が途中で途切れたり破線になったりしていても、マスク用の万線16としての機能は得られる。
この機能を利用して、マスク用の万線16において、万線16を構成する直線の一部を破線にすることで、情報を埋め込むこともできる。情報の埋め込み方は様々な方法があるが、図12(b)に示すように、一本の直線の中にモールス符号を埋め込んだり、図12(c)~(d)に示すように、バイナリデータを埋め込むことができる。
図12(b)に示すようなモールス符号は、目視で人が読み取れるものの、データの埋め込み方法としては非効率である。また図12(c)に示すように、バイナリデータで「1」を実線、「0」を破断部とみなした破線では、「0」が続くと線の破断部分が大きくなりすぎ、万線16として成り立たなくなる。このため、例えば図12(d)に示すバイナリ(改)のように「1」は「0」の2倍の長さの実線としたものなど、独自方式でデータを破線に変換することが望ましい。
このようにして作成されたマスク用の万線16は、スマートフォンのカメラや、専用の検証機で拡大撮影し、復号用のアルゴリズムに入力されることによって、埋め込まれたデータが読み出される。
埋め込むデータとしては、例えば氏名、生年月日、ID番号、生体情報等の個人に紐づいたID情報が望ましいが、出生地や発行年度など簡易な情報でも良い。また万線フィルタを重ねることによって簡易検証が可能なように設計したり、図13に例示するモールス符号のように、拡大観察によって目視で内容を読み取れるようにしても良い。
図13は、モールス符号で形成されたマスク用の万線の例を示す図である。
次に、マスク用の万線16のピッチの増減を利用して、万線16にデータを埋め込む例について説明する。
マスク用の万線16のピッチ(直線と直線の間隔)は、一般には一定であるが、本実施形態では、部分的にピッチを増減させることで、データを埋め込むことを可能としている。この場合、ピッチを変動させることによってデータを埋め込んだマスク用の万線16の一部の領域と、それに対応する表示画像用の万線14の領域を重ねたことによって生じるモアレパターンによって真贋を判定したりデータを読み出したりすることができる。
図14は、文字部におけるマスク用の万線16のピッチを、背景部のマスク用の万線16のピッチより小さくした万線パターンの例を示す図である。
このようなデータ埋め込み領域がマスク領域の全面に大きく入るとマスクとしての機能が損なわれるが、例えば、データ埋め込み領域を、上端や下端などで表示画像領域と重ならない部分に設けることで、マスク機能とデータ埋め込み機能とを両立できる。
また、本実施形態では、表示画像用の万線14のピッチを、領域によって変動させ、それに対応するマスク用の万線16の領域のピッチもそれに応じて変動させることにより、偽変造を困難にすることができる。
例えば、表示画像用の万線14としてID情報の文字列を万線化する場合、個別の文字ごとに異なるピッチで万線パターンを作成する。さらにそれに対応する領域ごとに万線ピッチをあわせてマスク用の万線16を生成する。得られたそれぞれの万線画像を透明基材の表裏に印刷して表示体を形成する。この表示体を傾けると、ID情報のチェンジング表示が可能となり、偽変造防止効果を得ることができる。
図15は、それぞれの文字の表示画像用の万線14のピッチを変動させ、それに対応して準備されたマスク用の万線16の例を示す図である。
それぞれの文字の組み合わせにつき、あらかじめ表示画像用の万線14のピッチを設定しておくことで、ID情報を表示する万線14と、それに対応したマスク用の万線16とを自動的に生成することができる。これによって、ID情報の保有者全員に対し、固有のマスクパターンを与えることができ、偽変造が極めて困難になる。
このような万線14、16を形成するために、限定される訳ではないが、例えば、印刷やレーザー描画など様々な方法を利用でき、特に、鮮明な効果を得るためには、顔料溶融転写方式を利用することが好ましい。また顔料溶融転写方式を用いると、墨以外の色の万線を用いた情報の埋め込みができるため、例えば、万線の一部にカラーで情報を埋め込むようなことも可能となる。
顔料溶融転写方式とは、インクリボンの顔料インキ層をサーマルヘッドの熱によって基材に直接あるいは中間転写フィルムを介して印刷する技術である。
図16は、顔料溶融転写方式で印刷された画像を、他の方式で印刷された画像と比較して示す図である。
図16(a)に例示されるような顔料溶融転写方式によって印刷された画像は、他のデジタル画像によって得られた画像である例えば、図16(b)に例示されるインクジェットによって印刷された画像や、図16(c)に例示される昇華染料によって印刷された画像に比べて、万線を極めて鮮明に印刷できる。他の方式では万線のエッジがぼんやりするので、高精細な万線を形成できず、画像を傾けた時のチェンジング効果の実現には適さない。
顔料溶融転写方式が適用されたプリンタ製品としては、例えば凸版印刷株式会社製の小型カードプリンタCP500や、パスポートプリンタep600がある。CP500では、装置内部で自動的にカードを反転させて両面印刷するため、表裏の位置合わせが正確であり、特に、カードの長辺方向の印刷角度が正確なので、印刷ズレによるモアレが生じることはない。
図17、図18、図19は、マスク用の万線の一部にカラーで情報を埋め込む例を説明する図である。
マスク用の万線16には一般的に黒色(墨)が用いられるが、本実施形態では、例えば万線16を形成する直線の一部を別の色にすることで、情報を容易に埋め込むことが可能である。
例えば、図17に例示するように、文字列「HANAKO」をバイナリデータに変換し、さらに「0」を赤、「1」を墨で表すことで、ID用の情報を、マスク用の万線16に埋め込むことができる。
また、図18に例示するように、混色墨インキ(CMYブラック)を用いて、マスク用の万線16に情報を埋め込むこともできる。この場合、目視ではすべて同じ黒に見えるため、通常の万線のようにマスクとして機能するが、赤外光を照射して可視光カットフィルターを備えたカメラ等で撮影すると、混色墨インキ部が見えなくなるため、埋め込まれた情報を読み取ることができる。
同様に、図19に例示するように、UV蛍光インキを用いて、マスク用の万線16に情報を埋め込むこともできる。この場合も目視では通常の万線16のように見え、UV光を照射することで埋め込まれた情報を読み取ることができる。埋め込む情報はデジタルデータでも、文字列のような画像データとすることができる。
本実施形態に係る表示体10の用途としては、IDカードが好適であるが、IDカード用途以外にも、例えば、ブランドプロテクション(BP)ラベルのために適用することができる。
この場合、透明カード12の裏面側にはメーカーのロゴと商品名とがチェンジングするように表示画像用の万線14を印刷し、表面側には商品のシリアル番号に応じて生成されたマスク用の万線16を印刷する。そして、このBPラベルを目視で観察すると、企業ロゴと商品名とが、観察角度に応じてチェンジング表示され、ラベル部分をスマートフォンのカメラ機能で撮影して画像処理することにより、万線16に埋め込まれたシリアル番号を読み出すことができる。
このようにして、目視による簡易な真贋判定と、機械読み取りによる高度な真贋判定を同時に設けることができ、偽造品の流通を抑止することができる。
次に、本実施形態に係る表示体の製造方法について説明する。
表示体10は、以下の手順ステップ1~4に従って、透明カード12の両面に、万線14および万線16を印刷するように両面印刷することで製造される。印刷には、顔料インクリボンタイプのカードプリンタ(例えば、CP500(凸版印刷株式会社製))を使用することが好適であるが、これに限定される訳ではなく、染料インクリボンやインクジェットを使用するプリンタや、レーザー描画等によって製造することも可能である。これによって、後述するチェンジング効果を、カラーで鮮明に実現することが可能となる。
(ステップ1)2種類以上の表示用画像データと、1種類以上のID情報データとを準備する。表示用画像とは顔写真やサイン等の画像情報である。
(ステップ2)予め準備された表示画像用万線生成アルゴリズムに、ステップ1で準備された2種類以上の表示用画像データと、必要なパラメータとを入力して、表示画像用の万線14を生成する。
(ステップ3)予め準備されたマスク用万線生成アルゴリズムに、ステップ1で準備された1種類以上のID情報データと、必要なパラメータとを入力して、マスク用の万線16を生成する。
(ステップ4)透明カード12の表裏それぞれに、万線14と万線16とを印刷する。これら印刷は、顔料溶融転写方式で行うことができる。
これによって、表示体10が作成される。作成された表示体10を、角度を変えて観察すると、チェンジング表示される複数種類の画像を、目視で確認できるようになる。
このようにして製造された本実施形態に係る表示体10によれば、上述したように、セキュリティ性を向上させることができるので、IDカードやパスポート等のように、セキュリティ性が求められるID表示体のために好適に使用することが可能となる。
また、透明カード12の表裏の万線(すなわち、万線14および万線16)を、オンデマンドで印刷することで、表示体10を傾けることによって、2種類以上のID情報(顔写真や氏名の文字列など)がチェンジング表示されることによって、目視で容易に真贋を判定できる機能や、マスク用の万線16に情報を埋め込み、スマートフォン等で撮影した画像を用いて自動的に真贋判定できる機械認証機能といった、複数の真贋判定機能を同時に設けることが可能となる。
また、表示体10を、特に顔料溶融転写型のプリンタを用いて印刷することにより、微細な印刷や、精密な表裏位置合わせを行うことも可能となり、これによって、偽変造をより困難にすることができるのみならず、チェンジング効果をカラー表現することも可能となるので、他の方式に比べてエッジが明瞭な万線を形成できるなど、より鮮明に表示されるチェンジング効果の実現、およびデータの埋め込みのさらなる容易化を図ることが可能となる。
しかも、このような印刷は、小型のプリンタを用いて実施することができる。
このように、本実施形態によれば、製造に大掛かりな設備を必要とせず、偽造品を明確に判断できるセキュリティ機能を有し、顔写真用途にオンデマンドのカラー印刷が可能であり、鮮明なチェンジング画像を表示できる、表示体を提供することが可能となる。
次に、上述した表示体10を、小型カードプリンタであるCP500(凸版印刷株式会社製)を用いて印刷して作成する実施例について説明する。
(データ準備)
先ず、表示画像用の万線14のためのデータとして、顔写真、氏名、生年月日の画像データを準備した。また埋め込み用のデータとして氏名の文字列を準備した。
(表示画像用の万線14の作成)
次に、本発明のために開発された画像処理用プログラムに顔写真の画像データを入力し、表示画像用の万線14のために、600dpiのモノクロデータを作成した。このモノクロデータの万線14のピッチは、6ピクセル、ライン幅は3ピクセル、スペース幅は3ピクセルとした。
先ず、表示画像用の万線14のためのデータとして、顔写真、氏名、生年月日の画像データを準備した。また埋め込み用のデータとして氏名の文字列を準備した。
(表示画像用の万線14の作成)
次に、本発明のために開発された画像処理用プログラムに顔写真の画像データを入力し、表示画像用の万線14のために、600dpiのモノクロデータを作成した。このモノクロデータの万線14のピッチは、6ピクセル、ライン幅は3ピクセル、スペース幅は3ピクセルとした。
そして、氏名を赤色で、生年月日を青色で描画した画像を準備し、画像処理用プログラムに入力して、万線14のための600dpiのカラーデータを作成した。ライン幅等はモノクロデータのものと同様とした。なお、本実施例では、氏名と生年月日の2つの文字列を並べて配置し、これら2つの文字列に対応する万線14の位相はずらした。これによりマスク用の万線16を重ねた際に一方の文字列が表示されると、他方は消えるようになる。
(マスク用の万線16の作成)
次に、マスク生成用プログラムに、マスク用の画像データと氏名の文字列データを入力して、マスク用の万線16の画像のためのマスクデータを作成した。マスクデータの万線16のピッチは6ピクセル、ライン幅は4ピクセル、スペース幅は2ピクセルとした。
次に、マスク生成用プログラムに、マスク用の画像データと氏名の文字列データを入力して、マスク用の万線16の画像のためのマスクデータを作成した。マスクデータの万線16のピッチは6ピクセル、ライン幅は4ピクセル、スペース幅は2ピクセルとした。
マスク用の画像データとは、顔写真から背景を取り除き、文字列の表示領域を加えたものである。これにより、顔写真と文字列部分との輪郭を有する万線パターンを作成した。
図20は、マスク用の万線16の作成を説明するための図である。
図20に示すように、入力した氏名「HANAKO」の文字列データを、万線16の一部を破線にして埋め込んだ。まず氏名「HANAKO」の文字列を8ビットのバイナリデータに変換し、次にデータの「0」を3ピクセル、「1」を6ピクセルの幅とみなし、2ピクセルの隙間を空けて線幅4ピクセルの破線を作成した。このようにして作成した破線を、万線16の直線と置換することで氏名のデータを万線16に埋め込んだ。このデータ埋め込みを、複数の直線に対して行うことで読み取り時の冗長性を持たせた。
(透過領域を有する透明カードの作成)
次に、透明カード12を作成した。
次に、透明カード12を作成した。
図21は、透明カード12の構成例を示す側断面図である。
図21に示すように、カード30に対して隠蔽用の白インキ31をスクリーン印刷し、一部に透過領域を有する透明カード(窓あきカード)12を作成した。カード30には、塩ビ、PET、PETG、ポリカーボネートなど様々な素材を使用できる。
図22は、透明カードの別の構成例を示す側断面図である。
図22に示すように、透明ポリカーボネートシート33と一部を打ち抜いた不透明ポリカーボネートシート32を適宜組み合わせてラミネートすることによっても、透明カード12を作成することができる。
(印刷)
次に、透明カード12に、小型カードプリンタであるCP500(凸版印刷株式会社製)を用いて印刷することによって、表示体10を作成した。
次に、透明カード12に、小型カードプリンタであるCP500(凸版印刷株式会社製)を用いて印刷することによって、表示体10を作成した。
図23は、表示体10の印刷を説明するための図である。
図23に例示するように、まず、表面用の印刷データとして、前述したモノクロデータMOおよびカラーデータCOを、CP500に入力した。モノクロデータMOは墨リボン(Kリボン)、カラーデータCOはCMYリボンで印画される。
次に、裏面用の印刷データとして、前述したマスクデータMKを入力した。マスクデータMKは墨リボンで印刷される。
次に、CP500によって、透明カード12に対して印刷を実行した。
図24は、印刷された表示体10の側断面図とその仕様とを合わせて示す図である。
透明カード12の厚さは700μmであり、印刷は、600dpiで行い、表示画像用の万線14としては、モノクロデータMOによって印画された万線14a、およびカラーデータCOによって印画された万線14bともに線幅は127μm、スペースは127μmとした。また、マスク用の万線16の線幅は169μm、スペースは85μmとした。万線ピッチは、万線14a、14b、16ともに254μmとした。
CP500の場合、表裏の印刷位置の誤差は、上下左右方向において0.5mm以内、万線の角度は0.05度以内である。この程度の角度ずれであれば同一の万線が重なることによるモアレ現象は生じない。
CP500は、600dpiのサーマルヘッドを使用しているため1ドットは約42.3μmである。このため理論上、線幅は約1~42μm、スペースは約42~1μmの万線を形成できるはずだが、微小ドットでは顔料インクリボンの転写が安定しないため、実際には、理論上の精度で万線を形成することは不可能である。そこで、これまでの検証の結果に基づき、安定した品質を有する表示体を発行するために、表示画像用の万線14の線幅を3ドット(127μm)とし、チェンジング効果を明瞭にするためにマスク用の万線16の線幅を4ドット(169μm)とした。
(検証結果)
次に、図24のように得られた表示体10を目視で観察した。
次に、図24のように得られた表示体10を目視で観察した。
図25は、表示体10を、観察角度を変えて目視で観察した結果を示す図である。
表示体10を、観察角度を変えて目視した結果、図25(a)および図25(b)に示すように、表示部20内の表示が、2種類に変化することが確認された。
図25(a)は、表示体10を観察角度1で目視したときに観察される画像である。この場合、表示部20から、顔写真と生年月日とを視認することが可能である。
一方、図25(b)は、表示体10を観察角度1とは異なる神作角度2で目視したときに観察される画像である。この場合、表示部20から、顔写真および生年月日が消えて、氏名が視認可能となる。
また、図26に例示するように、表示体10の裏面を、スマートフォン40のカメラで撮影し、得られた撮影データを画像処理したところ、読み取ったバイナリデータから、氏名の情報を復元することができた。
以上説明したように、実施例によれば、レンチキュラーレンズなどの特殊な基材を用いることなく、一般的な透明カード12を、例えばCP500のような既存のプリンタで印刷することにより、チェンジン効果を実現する表示体10を製造できることが証明された。
また、一般的にチェンジング効果として用いられているMLC/CLIは、固定の万線(レンチキュラーレンズ)であり、また、レーザー描画によるモノクロ画像であるのに対し、実施例によれば、カラーで印刷して同様のチェンジング効果を実現できることも証明された。
また、万線のピッチは、万線の線幅とスペース幅とを合わせた数値であり、ピッチが小さいほど目視では万線と認識されにくく、データが埋め込んであることも分かりにくいため、セキュリティ性を高めることができる。実験によれば、ピッチがおおよそ200μm程度以下であれば、目視で万線と判断することは困難であり、ピッチが500μm程度以上であれば、明らかに万線であると判断できるとの結果が得られた。なお、この数値は、個人の視力や観察環境によるところも大きいため、あくまで一例であることに留意されたい。
チェンジング効果の実現のためには、万線のピッチと基材(透明カード12)の透過部の厚みとの関係も重要である。基材が薄ければ万線のピッチも小さくする必要がある。基材厚みと万線ピッチとの最適な関係については、使用される状況によっても異なるが、一例として万線ピッチ:基材厚み=4:3であればチェンジング効果が得やすいことが知られている(特許文献8)。
表示体10として、ISOで規定されたIDサイズのカードとする場合、基材の厚みは760μmとなり、この厚みに対してチェンジング効果を得やすいピッチは1000μm程度となる。ただし、上記のとおり万線のピッチは小さい方がセキュリティ性が高まるため、万線のピッチは、チェンジング効果の視認性とのトレードオフとなる。
上述した実施例では、透明カード12の厚みを700μm、万線ピッチを254μmとしたため、傾ける角度が小さくても絵柄が切り替わってしまい、チェンジング効果の視認性は良くない。その代わり目視では万線として認識することは難しいためデザイン性が良く、偽変造も困難である。
また、万線を形成する直線のエッジ形状によっても視認容易性やチェンジング効果の程度は異なり、顔料印画のようにエッジが鮮明であればチェンジング効果は明確であるものの、万線も認識され易くなる一方、染料印画のようにエッジが不鮮明であれば、万線としては認識されづらくなるものの、チェンジング効果の明確性は低下する。
レーザー描画で万線を形成する場合も同様にレーザーパワーや焦点の絞り方によってエッジの明瞭さが大きく異なる。
したがって、万線のピッチはなるべく小さくした方が、偽造抑止の観点からは望ましいが、印刷方法、基材の厚み、求めるチェンジング効果、埋め込んだデータの読み取り精度などを考慮し、総合的に判断して、万線のピッチを決定する。
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明の表示体は、セキュリティ用途のみならず、ブランドプロテクション用途への利用も可能である。
10・・表示体、
10A、10B・・カード、
12・・透明カード、
13・・表面、
14、14a、14b、14c・・表示画像用の万線、
15・・裏面、
16・・マスク用の万線、
20・・表示部、
30・・カード、
31・・白インキ、
32・・不透明ポリカーボネートシート、
33・・透明ポリカーボネートシート、
40・・スマートフォン
10A、10B・・カード、
12・・透明カード、
13・・表面、
14、14a、14b、14c・・表示画像用の万線、
15・・裏面、
16・・マスク用の万線、
20・・表示部、
30・・カード、
31・・白インキ、
32・・不透明ポリカーボネートシート、
33・・透明ポリカーボネートシート、
40・・スマートフォン
Claims (8)
- チェンジング効果を有する表示体であって、
透明カードと、
前記透明カードの第1の面に印刷された、複数の画像を含む第1の万線と、
前記透明カードの前記第1の面に対向する第2の面に印刷された、前記複数の画像を表示するためのマスク用の第2の万線とを備え、
前記第2の万線は、前記表示体の所有者の個別情報が含まれるように、前記所有者毎に個別に形成されたことを特徴とする、表示体。 - 前記第2の万線を撮像して得られる撮像結果は、機械による真贋判定のために利用可能であることを特徴とする、請求項1に記載の表示体。
- 前記第1の万線は、前記所有者の2種類以上の個別情報を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の表示体。
- 前記第2の万線は、前記所有者の1種類以上の個別情報を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の表示体。
- 前記第1の万線と前記第2の万線とは、前記透明カードを介して重なるように配置された、請求項1または2に記載の表示体。
- 傾けられると、前記第1の万線に含まれる2種類以上の個別情報が、切り替わって表示されることによって、前記チェンジング効果を実現する、請求項3に記載の表示体。
- 前記第2の万線に含まれる情報は、目視による観察、拡大しての観察、および画像処理後の観察の何れも可能である、請求項4に記載の表示体。
- 前記印刷を、顔料溶融転写方式で行うことによって、前記チェンジング効果を、カラーで鮮明に実現する、請求項1に記載の表示体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022115028A JP2024013094A (ja) | 2022-07-19 | 2022-07-19 | チェンジング効果を有する表示体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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Publications (1)
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---|---|
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Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2022115028A Pending JP2024013094A (ja) | 2022-07-19 | 2022-07-19 | チェンジング効果を有する表示体 |
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-
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