JP2024012105A - ポリフェニレンスルフィド樹脂成形材料、および成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形性と優れた特性を両立するPPS樹脂成形品を得る。【解決手段】連続したガラス繊維束1~50重量%の周囲を被覆するように、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物99~50重量%が配置されている、長さ3.0~50mmの芯鞘構造を有し、該PPS樹脂組成物は、(A)PPS樹脂100重量部に対して、(B)エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物を0.1~5.0重量部配合してなり、該連続したガラス繊維束は、エポキシ化合物で表面処理されていることを特徴とするPPS樹脂成形材料。【選択図】なし

Description

本発明は、優れた特性を有するポリフェニレンスルフィド樹脂成形材料、および成形品に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略すことがある)樹脂は優れた耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気特性を有するエンジニアリングプラスチックであり、自動車部品、水廻り部品、電気電子部品を中心に使用されている。
PPSはガラス繊維等の無機フィラーを配合して剛性を向上させて使用されることが多いが、他のエンジニアリングプラスチックに比べて耐衝撃性や靱性に劣る課題がある。
この課題に対して、連続した強化繊維束にPPS樹脂を含浸させた長繊維強化PPS樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このような含浸法によって得られる樹脂組成物の成形品は、繊維長が長い強化繊維が残存するため耐衝撃性の向上に有効である。
一方、PPS樹脂を強化繊維束に十分含浸させなければ、成形加工、特に射出成形において強化繊維の分散不良が生じてしまうため、低粘度のPPS樹脂を用いて、高温で加工する必要がある。そのため、PPS樹脂組成物の設計自由度が低く、高粘度のPPS樹脂を用いて靱性を高めることや、PPS以外の熱可塑性樹脂を配合して様々な特性を付与することや、PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂をPPS樹脂中に微分散化させることは困難であった。そこで、連続した強化繊維束に対して、PPS樹脂と特定の構造を有する熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物を含浸した長繊維強化PPS樹脂成形品が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、連続した強化繊維束と特定の分子量分布を有するPPSからなる芯構造に対して、熱可塑性樹脂を被覆した芯鞘構造の成形材料が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
国際公開第2017/159706号 特開2016-183316号公報 特開2008-231292号公報
しかしながら、特許文献2に記載された長繊維強化PPS樹脂組成物は、ブロー成形性に優れるものの、射出成形時のガラス繊維の分散は不十分であった。
また、特許文献3に記載されたPPS成形材料は、低分子量のPPSが配合されるため、得られた成形品の靱性が低下する課題があった。また特定のアルコキシシラン化合物やPPS樹脂の連続相に熱可塑性樹脂を分散させることについて開示はない。
そこで本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、連続した特定のガラス繊維束の芯構造に対して、特定のアルコキシシラン化合物を含むPPS樹脂組成物を被覆した芯鞘構造の成形材料により、上記課題が解消されることを見出した。
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
1.連続したガラス繊維束1~50重量%の周囲を被覆するように、ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」ということがある)樹脂組成物99~50重量%が配置されてなる、長さ3.0~50mmの芯鞘構造を有し、該PPS樹脂組成物は、(A)PPS樹脂100重量部に対して、(B)エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物0.1~5.0重量部配合してなり、該連続したガラス繊維束は、エポキシ化合物で表面処理されていることを特徴とするPPS樹脂成形材料、
2.前記PPS樹脂組成物が、キャピラリーレオメーターを用いて温度310℃、せん断速度1216/sの条件で求めた溶融粘度が50~400Pa・sである1項に記載のPPS樹脂成形材料、
3.前記連続したガラス繊維束が、JIS R3420(2013)に従い測定した強熱減量が0.3~25重量%である1または2項に記載のPPS樹脂成形材料、
4.前記PPS樹脂組成物が、(A)PPS樹脂100重量部に対して、さらに(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂を1~200重量部配合してなるPPS樹脂組成物であって、(A)PPS樹脂が連続相を形成し、(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂が分散相を形成することを特徴とする1~3項のいずれかに記載のPPS樹脂成形材料、
5.前記PPS樹脂組成物の(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂からなる分散相の数平均分散粒子径が1000nm以下であることを特徴とする4項に記載のPPS樹脂成形材料、
6.前記(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂が、オレフィン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、およびフッ素系樹脂から選択されるいずれかである4または5項に記載のPPS樹脂成形材料、
7.1~6項のいずれかに記載のPPS樹脂成形材料を成形してなる成形品、
8.成形品のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)が300μm以上2000μm以下であることを特徴とする7項に記載の成形品、
9.成形品のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.30以上、4.00以下であることを特徴とする7または8項に記載の成形品。
本発明によれば、射出成形用途等の広範な分野で適用が可能であり、機械特性や靱性に加えて様々な機能が付与されたPPS樹脂組成物の成形材料や成形品が得られる。
以下、(A)PPS樹脂、(B)エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物(以下、(B)アルコキシシラン化合物と略すことがある)、(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、(C)熱可塑性樹脂と略すことがある)、PPS樹脂組成物、連続したガラス繊維束、PPS樹脂成形材料、成形品について順に詳細に説明する。
本発明で用いられる(A)PPS樹脂とは、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体である。
Figure 2024012105000001
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。また(A)PPS樹脂は、その繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記式で表される繰り返し単位の内の少なくとも1種で構成されていてもよい。
Figure 2024012105000002
本発明で用いられる(A)PPS樹脂の重量平均分子量は、ガラス繊維の分散性と樹脂強度を両立するために、20000~100000であることが好ましい。ガラス繊維の折損を抑制するためには80000以下が好ましく、60000以下がより好ましい。このような重量平均分子量のPPS樹脂は、後記するポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤のモル比を調整することや、重合助剤の添加量を調整することで得られる。なお、ここでの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した値である。
本発明で用いられる(A)PPS樹脂のカルボキシル基含有量は、PPS樹脂とガラス繊維との結合を形成し、ガラス繊維の分散性を高める観点で20~400μmol/gであることが好ましい。20μmol/g以上である場合、ガラス繊維が分散し優れた外観の成形品が得られやすい。400μmol/g以下である場合、溶融混練時のガスの発生を抑制し、成形品内のボイド混入も抑制でき、好ましい。ガラス繊維との結合をより形成させ、靱性を得る観点で40μmol/g以上が好ましく、60μmol/g以上がより好ましい。さらに、耐熱性や耐薬品性を向上させる観点で、100μmol/g以上がさらに好ましく、150μmol/g以上が特に好ましい。成形品内にボイドが混入し機械特性を低下することを抑制するために、上限は、350μmol/g以下が好ましく、300μmol/g以下がより好ましい。このようなカルボキシル基含有量のPPS樹脂は、後記するポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤と重合安定剤のモル比を調整することや、カルボキシル基を含有するポリハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物を共重合することで得られる。なお、本発明におけるカルボキシル基含有量は、赤外分光光度計(FT-IR)により、ベンゼン環由来の1,900cm-1付近における吸収に対する、カルボキシル基由来の1,730cm-1付近における吸収を比較して算出した値である。
本発明で用いられる(A)PPS樹脂はこれらの特徴を有するのであれば、複数のPPS樹脂を併用してもよい。
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、有機極性溶媒中でポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤を用いて脱塩重縮合する方法やジヨードベンゼンと硫黄を用いて溶融条件下で合成する方法など、公知の方法で得られるPPS樹脂を使用することができる。以下に原料およびPPS樹脂の後処理工程について詳細を説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する芳香族化合物をいう。具体例としては、p-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロ-p-キシレン、1,4-ジブロモベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼンなどのジハロ芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp-ジクロロベンゼンが用いられる。
ポリハロゲン化芳香族化合物の添加量は、適切な重量平均分子量のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9~2.0モル、好ましくは0.95~1.5モル、更に好ましくは1.005~1.2モルの範囲が例示できる。
[モノハロゲン化化合物]
モノハロゲン化化合物は、1分子中にハロゲン原子を1個有する化合物をいう。生成するPPS樹脂の分子量の制御や、末端に反応性官能基を形成させるために、ポリハロゲン化芳香族化合物と併用して用いてもよい。
このようなモノハロゲン化化合物の具体例としては、2-クロロ安息香酸、3-クロロ安息香酸、4-クロロ安息香酸、2-アミノ-4-クロロ安息香酸、4-クロロ-3-ニトロ安息香酸、4-クロロベンゾフェノン-2-カルボン酸、2-クロロアニリン、3-クロロアニリン、4-クロロアニリン、2-クロロフェノール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノールなどのモノハロゲン化化合物を挙げることができる。これらのなかでも重合時の反応性や汎用性などの観点から4-クロロ安息香酸がより好ましく例示できる。また、これらのモノハロゲン化化合物は1種類単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても問題ない。
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物が挙げられる。アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
[重合助剤]
比較的高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために、重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは、得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)(式中、Rは、炭素数1~20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1~3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p-トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル~2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1モル~0.6モルの範囲が好ましく、0.2モル~0.5モルの範囲がより好ましい。
[PPS樹脂の後処理工程]
特定量のカルボキシル基含有量を有するPPS樹脂を得るために、重合後、酸処理による洗浄が施されることが好ましい。
PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられる。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の水溶液を80℃~200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpHは4以上、例えばpH4~8程度となってもよい。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
本発明のPPS樹脂成形材料は、(B)エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物が必要である。(B)アルコキシシラン化合物は、(A)PPS樹脂および連続したガラス繊維束との結合を形成することにより、PPS樹脂成形材料を成形し得られた成形品中のガラス繊維の分散を向上させる効果がある。その結果、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の設計自由度を高めることができる。更に(C)熱可塑性樹脂が(A)PPS樹脂中に微分散化することを補助する働きもある。上記効果を発現するために、(B)アルコキシシラン化合物は、(A)PPS樹脂100重量部に対して0.1~5.0重量部配合することが必要である。また、アルコキシラン化合物の配合量は、(A)PPS樹脂の種類によるため一概には言えないが、ガラス繊維の分散性をより向上させる観点から、0.3重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましく、1.0重量部以上がさらに好ましい。PPS樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎないために、3.0重量部以下が好ましい。
(B)エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物の官能基種は、各種成形の過程で速やかにガラス繊維をPPS樹脂中に分散させると共に、PPS樹脂組成物の溶融粘度が上がりすぎないように反応性を制御する観点で、アミノ基およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。
本発明のPPS樹脂成形材料は、所望の機能を付与するために、(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合することが好ましい。(C)熱可塑性樹脂の例として、オレフィン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、これらを2種以上併用することも可能である。
PPS樹脂成形材料に、優れた靱性や、低温靱性や、応力緩和によるヒートサイクル耐性、耐水圧破壊強度を付与するために、オレフィン系共重合体を配合することが好ましい。オレフィン系共重合体の例としては、PPS樹脂との相溶性を高めることができるエポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、水酸基およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有するオレフィン系共重合体や、靱性を飛躍的に向上させることができる未変性のオレフィン系共重合体が挙げられ、それらの併用も有効である。
PPS樹脂成形材料に、優れた靱性や流動性を付与するために、ポリアミド樹脂を配合することが好ましい(例えば、国際公開第2006/30577号に記載の樹脂組成物が開示される)。また優れた靱性、低ガス、および高温剛性を付与するためには、ポリエーテルイミド樹脂、およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂を配合することが好ましい(例えば、国際公開第2007/108384号に記載の樹脂組成物が開示される)。また、優れた靱性、電気特性を付与するためには、フッ素系樹脂を配合することが好ましい(例えば、国際公開第2017/131028号に記載の樹脂組成物が開示される)。また、優れた靱性や、柔軟性を付与するためには、オレフィン系共重合体およびポリアミド樹脂を組み合わせて配合することが好ましい(例えば、国際公開第2018/3700号に記載の樹脂組成物が開示される)。
(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂は、PPS樹脂100重量部に対して、1~200重量部配合することが好ましい。また、(C)熱可塑性樹脂の種類によるため一概には言えないが、優れた特性を付与する観点から、その下限は5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましく、様々な機能を付与する観点から、20重量部以上がさらに好ましく、40重量部以上が特に好ましい。PPS樹脂の耐熱性や耐薬品性を両立する観点から、その上限は150重量部以下が好ましく、100重量部以下がより好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物の溶融粘度は、PPS樹脂成形材料を成形して得た成形品の、ガラス繊維の分散性および靱性の両立を図る観点で、50~400Pa・sであることが好ましい。優れた靱性を得る観点から100Pa・s以上が好ましく、150Pa・s以上がより好ましい。また、射出成形時のガラス繊維の分散性を向上させる観点で、350Pa・s以下が好ましく、300Pa・s以下がより好ましい。
なお、本発明におけるPPS樹脂組成物の溶融粘度は、試験温度310℃で5分間滞留させた後に、せん断速度1216/sの条件下で、キャピラリーレオメーター(例えば、東洋精機製キャピログラフ(登録商標))を用いて測定した値である。
このような溶融粘度を有するPPS樹脂組成物を得るためには、(A)PPS樹脂や(C)熱可塑性樹脂の重量平均分子量や溶融粘度を変更すること、(B)アルコキシシラン化合物の種類や量を変更して高分子反応を調整することが好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物が(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合する場合は、PPS樹脂の耐熱性や耐薬品性を発現させる観点で、その樹脂組成物ペレットを透過型電子顕微鏡により観察したモルフォロジーにおいて、(A)PPS樹脂が連続相を形成し、(C)熱可塑性樹脂が分散相を形成することが好ましい。また、優れた靱性を得る観点で(C)熱可塑性樹脂の分散相の数平均分散粒子径は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが特に好ましい。分散相の数平均分散粒子径の下限は10nm以上が好ましい。
このような数平均分散粒子径を得るためには、(A)PPS樹脂と(C)熱可塑性樹脂を適切に反応させて相溶化剤を生成させることで、両成分間の界面張力を低下させることが有効であり、(B)エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物を介した反応が好ましい。適切な反応の設計は、(C)熱可塑性樹脂の種類により異なるが、(C)熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を選定する場合には、例えば、国際公開第2006/30577号に記載の設計が例示され、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂を選定する場合には、例えば、国際公開第2007/108384号に記載の設計が例示され、フッ素系樹脂を選定する場合には、例えば、国際公開第2017/131028号に記載の設計が例示され、オレフィン系共重合体およびポリアミド樹脂を組み合わせる場合は、例えば、国際公開第2018/3700号に記載の設計が例示される。
なお、数平均分散粒子径は、以下の方法により求められる。PPS樹脂組成物のペレットから、ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出し、その超薄切片について、無染色のサンプルを、透過型電子顕微鏡にて5000~10000倍の倍率にて観察する。得られた画像から任意の異なる分散相を10個選び、それぞれの分散相について長径および短径を求めて平均値を取り、分散相の平均粒子径を求め、それらの平均値の数平均値を分散相の数平均分散粒子径として算出することができる。分散相を構成する成分の同定は、無染色のサンプルにおける相のコントラスト差で決定することができる。
本発明のPPS樹脂組成物の製造方法については、特に制限は無く、単軸、二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、およびミキシングロールなど公知の溶融混練機に原料を供給し、樹脂温度が(A)PPS樹脂の融解ピーク温度+5℃~100℃になるように溶融混練する方法などを代表例として挙げることができる。中でも二軸押出機による溶融混練が好ましい。なお、ここでの樹脂温度は、押出機から吐出される樹脂の温度を直接測定した値である。
本発明のPPS樹脂組成物は、繊維状充填材として、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカー、ならびにアラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、および金属繊維等といった無機フィラーを配合してもよく、非繊維充填材として、フラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などが配合されていてもよく、これらの無機フィラーは中空であってもよく、さらに2種類以上併用することも可能である。また、これらの無機フィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でも水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムやシリカ、カーボンブラックが、電気特性、防食材、滑材、導電性付与の効果の点から好ましい。このような添加剤は、本発明の特性を損なわない範囲で(A)PPS樹脂100重量部に対して、0.01~20重量部配合することが好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物は、フェノール系酸化防止剤や、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、その他、水、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。このような添加剤は(A)PPS樹脂100重量部に対して、0.01~5重量部配合することが好ましい。
本発明における連続したガラス繊維束は、ガラス繊維の表面をエポキシ化合物で表面処理したものが好ましく、ガラス繊維の分散性が向上する。エポキシ化合物としては、例えば、ビフェニル型2官能エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮合ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮合ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、などが挙げられる。これらは、一種単独で使用、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明における連続したガラス繊維束は、PPS樹脂組成物の(B)アルコキシシラン化合物との作用により、ガラス繊維の分散性を高める観点から、アルコキシシラン化合物で表面処理されていることも好ましく、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、クロルシラン、メルカプトシラン、ウレイドシラン、などが挙げられる。ここでエポキシシランは、上記エポキシ化合物にも該当するため好ましい。
本発明における連続したガラス繊維束は、部分的にイソシアネート系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物等のカップリング剤で予備処理することも、分散性や界面の密着性向上の観点から好ましい。
連続したガラス繊維束の表面処理とは、ガラス繊維の製造工程において、ガラス繊維のモノフィラメントに上記の化合物を含む溶媒を塗布した後、加熱により溶媒を蒸発させて皮膜を形成させる方法、ガラス繊維のモノフィラメントを結束してガラス繊維束を得たあと、二次処理として上記の化合物を含む溶媒を塗布する方法、上記の化合物を直接塗布して付着させる方法など、いずれの方法でもよい。
本発明における連続したガラス繊維束の強熱減量は、0.3~25重量%が好ましい。強熱減量は、ガラス繊維束に付着した有機化合物量の指標であるが、強熱減量を上記範囲とすることで、一般的にガラス繊維の分散性が劣る芯鞘構造のような樹脂成形材料であっても、成形時にガラス繊維の分散性を高め、優れた外観の成形品が得られる。その下限は0.5重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましく、PPS樹脂とガラス繊維の界面接着性を高める観点で、3.0重量%以上がさらに好ましく、5.0重量%以上が特に好ましい。樹脂成形材料の成形時のガス量を低減する観点から、その上限は、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。なお、ここでの強熱減量は、JIS R3420(2013)に従い測定して求められる値である。
本発明で用いる連続したガラス繊維束を構成するガラス繊維のガラス繊維径は1~50μmが好ましく、3~30μmが更に好ましく、5~20μmがより好ましい。ガラス繊維径が小さいほど、引張強度や曲げ強度の向上効果を得ることができ、繊維径が大きいほど、成形時にガラス繊維が折れにくく、衝撃強度の向上効果を得ることができると共に、繊維間の空隙が増えることで樹脂の含浸性が向上する傾向がある。繊維径を上記範囲内とすることで、機械強度と含浸性を両立でき好ましい。
本発明におけるPPS樹脂成形材料とは、連続したガラス繊維束1~50重量%の周囲を被覆するように、PPS樹脂組成物99~50重量%が配置されている芯鞘構造を有する。PPS樹脂組成物からなる鞘の強度を確保する観点で、PPS樹脂組成物は、55重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、ガラス繊維の分散性を高める観点で65重量%以上が更に好ましく、70重量%以上が特に好ましい。また、ガラス繊維束による強度向上を得る観点でその上限は、90重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましい。
本発明におけるPPS樹脂成形材料は、上記芯鞘構造とすることで、例えば、国際公開第2017/159706号に開示されているような、連続したガラス繊維束に樹脂を十分含浸させる方法に比べてPPS樹脂組成物の設計の自由度が高まり、(A)PPS樹脂を高分子量化することで靱性を高めたり、(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合して様々な機能を付与することができる。一般的にこのように電線被覆の要領で製造された芯鞘構造は、連続繊維の分散性が悪いために、各種成形によって得られた成形品に繊維の分散不良が認められることが多いが、本発明では、連続した特定のガラス繊維束の芯構造に対して、特定のアルコキシシラン化合物を含むPPS樹脂組成物を被覆することで、上記課題が解消されることを見出した。
本発明におけるPPS樹脂成形材料はペレット形状を有する。また、PPS樹脂成形材料は芯鞘構造であるため、ペレットの長さ方向は繊維の配向方向に等しく、ペレットの長さは実質的にガラス繊維束の繊維長と等しい。ペレットの長さは、強度向上効果と取り扱い性の観点から、3.0~50mmが必要で、成形機への投入性から20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
本発明のPPS樹脂成形材料は、成形時におけるガラス繊維の分散性に優れるため、様々な成形方法に適用可能であり、例えば押出成形、射出成形、中空成形、カレンダ成形、圧縮成形、真空成形、発泡成形、ブロー成形、回転成形等が挙げられ、特に射出成形に好適である。
本発明のPPS樹脂成形材料を成形し、成形品を得る場合、適宜、成形品の特性や繊維長を調整するために、PPS樹脂成形材料とガラス短繊維強化PPS樹脂組成物を混合してから成形することも好ましい。
本発明のPPS樹脂成形材料を成形して得られる成形品のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)は、優れた機械特性と流動性確保の観点から300~2000μmであることが好ましい。優れた機械特性を得る観点から400μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましく、金属代替用途に用いる観点から600μm以上がさらに好ましい。優れた流動性を得る観点から1600μm以下が好ましく、1300μm以下がより好ましく、1000μm以下が特に好ましい。
本発明のPPS樹脂成形材料を成形して得られる成形品のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比である繊維長分布(Lw/Ln)は1.30以上、4.00以下であることが好ましい。このような範囲にあることで、短いガラス繊維由来の流動性と、長いガラス繊維由来の強度を発現しやすい他、ガラス繊維の配向を好ましく変化させることが可能となる。その下限は、機械特性と流動性を両立させる観点で1.40以上が好ましく、1.50以上がより好ましい。成形品の品質安定性の観点で、Lw/Lnは2.50以下が好ましく、2.00以下がより好ましい。Lw/Lnは、例えば、成形時にPPS樹脂成形材料とガラス短繊維強化PPS樹脂組成物を混合することで、調整が可能となる。
ここで、ガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)および数平均繊維長(Ln)は、樹脂組成物ペレットを射出成形して得たISO(1A)成形品を焼成して得たガラス繊維を、光学顕微鏡にて50~100倍に拡大した画像を観察し、無作為に選んだ1000本のガラス繊維の長さを測定し、その測定値(μm)を用いて以下の式に基づき計算した値である。
数平均繊維長(Ln)=Σ(Li×ni)/Σni
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Li×ni)/Σ(Li×ni)
Li:ガラス繊維の繊維長
ni:繊維長Liのガラス繊維の本数
本発明のPPS樹脂成形材料を成形して得られる成形品は、(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂が配合されている場合は、前記PPS樹脂組成物と同様に、PPSの耐熱性や耐薬品性を発現させる観点で、その成形品を透過型電子顕微鏡により観察したモルフォロジーにおいて、(A)PPS樹脂が連続相を形成し、(C)熱可塑性樹脂が分散相を形成することが好ましい。また、優れた靱性を得る観点で(C)熱可塑性樹脂の分散相の数平均分散粒子径は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが特に好ましい。分散相の数平均分散粒子径の下限は10nm以上が好ましい。PPS樹脂組成物が上記分散構造および数平均分散粒子径を有する場合は、それを用いたPPS樹脂成形材料を成形して得られる成形品もまた同様の相構造が得られやすい。
本発明のPPS樹脂成形材料を成形して得られる成形品は、組成比や原料種によるため一概には言えないが、ISO178(2010)に従い測定した曲げ強度が150MPa以上、400MPa以下であることが好ましい。より優れた機械特性を得る観点から200MPa以上が好ましく、230MPa以上がより好ましく、金属代替用途に用いる観点から250MPa以上がさらに好ましく、270MPa以上が特に好ましい。また、より優れた流動性を得る観点から350MPa以下が好ましい。曲げ強度は、樹脂靱性を高めることや、ガラス繊維の配合量を増やすことや、繊維長の長いガラス繊維を残存させることで増加させることが可能である。
本発明のPPS樹脂成形材料を成形して得られる成形品は、組成比や原料種によるため一概には言えないが、ISO178(2010)に従い測定した曲げ弾性率が5.0GPa以上、30GPa以下であることが好ましい。より優れた機械特性を得る観点から6.0GPa以上が好ましく、7.0GPa以上がより好ましく、金属代替用途に用いる観点から8.0GPa以上がさらに好ましく、9.0GPa以上が特に好ましい。また、より優れた流動性を得る観点から25GPa以下が好ましい。曲げ弾性率は、(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合することや、ガラス繊維の配合量を調整することや、成形中のガラス繊維長を調整することで、調整することが可能である。
本発明のPPS樹脂成形材料を成形して得られる成形品は、組成比や原料種によるため一概には言えないが、ISO527-1、-2(2012)に従い測定した引張強度が100MPa以上、350MPa以下であることが好ましい。より優れた機械特性を得る観点から150MPa以上が好ましく、160MPa以上がより好ましく、金属代替用途に用いる観点から180MPa以上がさらに好ましく、200MPa以上が特に好ましい。また、より優れた流動性を得る観点から300MPa以下が好ましい。引張強度は、樹脂靱性を高めることや、ガラス繊維の配合量を増やすことや、繊維長の長いガラス繊維を残存させることや、PPS樹脂とガラス繊維の結合を形成させて界面接着性を上げることで増加させることが可能である。一方、ガラス繊維の分散性が悪く、成形品中に粗大な繊維が残存すると粗大繊維を起点に破断してしまうため、強度は低下してしまう。
本発明のPPS樹脂成形材料を成形して得られる成形品は、組成比や原料種によるため一概には言えないが、優れた機械特性と流動性確保の観点から、ISO179(2010)に従い、シャルピー衝撃強さ(ノッチあり)が3kJ/m以上、40kJ/m以下であることが好ましい。より優れた機械特性を得る観点から10kJ/m以上が好ましく、15kJ/m以上がより好ましく、金属代替用途に用いる観点から17kJ/m以上が特に好ましく、20kJ/m以上が殊更に好ましい。また、より優れた流動性を得る観点から35kJ/m以下が好ましい。シャルピー衝撃強さ(ノッチあり)はガラス繊維の配合量を増やすことや、繊維長の長いガラス繊維を残存させることや、(C)PPS以外の熱可塑性樹脂を配合することで増加させることが可能である。
本発明のPPS樹脂成形材料を成形して得られる成形品は、優れた耐熱性、耐薬品性および機械特性を有するため、PPS樹脂組成物に関する多くの特許に見られる公知の用途へ適用可能である。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各実施例および比較例における評価は、次の方法により行った。
(1)重量平均分子量の分析
PPS樹脂の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)を測定した。GPC測定条件を以下に記す。
装置 : (株)センシュー科学製SSC-7110
カラム名 : Shodex UT806M×2
溶離液 : 1-クロロナフタレン
検出器 : 示差屈折率検出器
カラム温度 : 210℃
検出器温度 : 210℃
流量 : 1.0mL/min。
(2)カルボキシル基含有量の分析
PPS樹脂のカルボキシル基量はPPS樹脂の非晶フィルムを以下の条件で作成し、FT-IR(日本分光(株)製IR-810型赤外分光光度計)測定し、ベンゼン環由来の1,900cm-1付近における吸収に対する、カルボキシル基由来の1,730cm-1付近における吸収を比較することにより見積もった。
非晶フィルムの作製条件を下記する。
(a)試料をポリイミドフィルムで挟み、340℃に加熱したプレスの金型に挟む。
(b)1分間滞留させた後10kgf加圧し、3分間滞留させた後40kgf加圧する。
(c)ポリイミドフィルムごと取出して水で急冷し、厚みが約50~300μmの非晶フィルムを得る。
(3)溶融粘度測定
各実施例および比較例により得られたPPS樹脂組成物について、東洋精機製キャピログラフ(登録商標)を用いて温度310℃で5分滞留後、温度310℃、せん断速度1216/s、キャピラリー長10mm、キャピラリー径1mmの条件下で溶融粘度を測定した。
(4)強熱減量測定
JIS R3420(2013) ガラス繊維一般試験方法 7.3水分率及び強熱減量に準拠して、ガラス繊維束の強熱減量を測定した。
(5)表面外観
各実施例および比較例により得られたPPS樹脂成形材料について、鞘を構成するPPS樹脂組成物の外観を目視で観察し、ブツが認められない場合をgood、ブツが認められる場合をbadと判定した。
(6)射出成形による試験片作成
各実施例および比較例により得られたPPS樹脂成形材料について、130℃熱風乾燥機中で3時間乾燥し、住友重機械製射出成形機SE75-DUZを用い、シリンダー温度310℃、金型温度140℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、ISO(1A)ダンベル試験片を射出成形した。
(7)ガラス繊維の分散性試験
上記(6)項で得られたISO(1A)ダンベル試験片を目視で評価し、1cm以上のガラス繊維束の分散不良が認められた試験片の本数に応じて、以下の3段階で評価した。
best:試験片50本の内0本
good:試験片50本の内1~3本。
bad:試験片50本の内4本以上。
(8)機械特性
上記(6)項で得たISO(1A)ダンベル試験片について、23℃条件下、オートグラフAG-Xplus20kN試験機を用い、ISO527-1,-2(2012)に従い、支点間距離114mm、引張速度5mm/minの条件で引張特性を評価した。
次いで、ISO178(2010)に従い、支点間距離64mm、速度2mm/minの条件で曲げ特性を評価した。
次いで、上記(6)項で得たISO(1A)ダンベルを切削して得た試験片で、ISO179(2010)に従い、-40℃および23℃でシャルピー衝撃強さ(ノッチあり)を評価した。
(9)ガラス繊維長分析
上記(6)項で得たISO(1A)ダンベル試験片を切削して中心部から1cm角片を取り出し、サンプルとして秤量後、ルツボに入れ550℃に設定した電気炉内で3時間焼成することにより、ガラス繊維の残渣を得た。その残渣を光学顕微鏡にて50~100倍に拡大した画像を観察し、無作為に選んだ1000本のガラス繊維の長さを測定し、その測定値(μm)を用いて以下の式に基づき計算した。
数平均繊維長(Ln)=Σ(Li×ni)/Σni
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Li×ni)/Σ(Li×ni)
Li:繊維状充填材の繊維長
ni:繊維長Liの繊維状充填材の本数。
(10)数平均分散粒子径の分析
各実施例で得られたPPS樹脂組成物、および上記(6)項で得られたISO(1A)ダンベル試験片の中央部を樹脂の流れ方向に対して垂直方向に切断し、その断面の中心部から、温度-20℃の条件下で厚さ0.1μm以下の薄片を、ウルトラミクロトームを用いて切削した。日立製作所製H-7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50~60万倍)を用いて、これらのサンプルの任意の異なる10箇所を1000~10000倍に拡大して写真撮影を行った。Scion Corporation製画像解析ソフト「Scion Image」を用いて、電子顕微鏡写真中に存在する分散粒子について、任意の異なる分散粒子を10個選び、それぞれの分散粒子について長径および短径を求めて平均値を取ったものをその分散粒子の粒子径とし、それらの分散粒子10個の粒子径の数平均値を数平均分散粒子径とした。なお、分散相を構成する成分の同定は、無染色のサンプルにおける相のコントラストで決定した。
(11)比重測定
各参考例、実施例および比較例により得られたPPS樹脂組成物を用いて、ISO1183(2019)に準じて求めた(単位:g/cm)。
(12)ウェルド強度
各実施例および比較例により得られたPPS樹脂成形材料について、130℃熱風乾燥機中で3時間乾燥し、住友重機械製射出成形機SE75-DUZを用い、シリンダー温度310℃、金型温度140℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、両端にゲートを有し、試験片中央部付近にウェルドラインを有するISO(1A)ダンベル試験片を射出成形した。得られた試験片について、23℃条件下、オートグラフAG-Xplus20kN試験機を用い、ISO527-1,-2(2012)に従い、支点間距離114mm、引張速度5mm/minの条件で引張特性を評価した。
各実施例および比較例に用いた原材料について、以下に示す。
[参考例1](A-1)ポリフェニレンスルフィド樹脂
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム0.513kg(6.25モル)、及びイオン交換水3.82kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水8.09kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p-ジクロロベンゼン10.34kg(70.32モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.67kg(148.4モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し内容物を取り出した。
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。
得られたPPS樹脂(A-1)は重量平均分子量が40000、カルボキシル基含有量が40μmol/gであった。
[参考例2](A-2)ポリフェニレンスルフィド樹脂
用いる酢酸ナトリウムを2.24kg(27.3モル)としたこと以外は参考例1と同様にしてPPS樹脂を得た。
得られたPPS樹脂(A-2)は重量平均分子量が75000、カルボキシル基含有量が30μmol/gであった。
[参考例3](A-3)ポリフェニレンスルフィド樹脂
酢酸ナトリウムを加えなかったこと以外は参考例1と同様にしてPPS樹脂を得た。
得られたPPS樹脂(A-3)は重量平均分子量が20000、カルボキシル基含有量が50μmol/gであった。
(B-1)エポキシ基を含有するアルコキシシラン化合物:2-(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを用いた(信越シリコーン製:KBM303)
(B-2)アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物:3―アミノプロピルトリエトキシシランを用いた(信越シリコーン製:KBE903)
(B-3)イソシアネート基を含有するアルコキシシラン化合物:3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランを用いた(信越シリコーン製:KBE9007)
(C-1)エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体:エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体を用いた(住友化学製“ボンドファースト”E)
(C-2)未変性オレフィン系共重合体:エチレン・1-ブテン共重合体を用いた(三井化学製“タフマー”A4085)。
(C-3)ポリアミド610樹脂を用いた(東レ製“アミラン”CM2001)
(C-4)ポリエーテルイミド樹脂を用いた(sabicイノベーティブプラスチックス社製“Ultem”1000)
(C-5)エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体を用いた(旭硝子社製AH2000)。
(X-1)ガラス繊維束:平均ガラス繊維径が17μmで、エポキシ系化合物で表面処理され、強熱減量が0.5重量%のロービングガラスを用いた。
(X-2)ガラス繊維束:平均ガラス繊維径が17μmで、エポキシ系化合物の表面処理量を増やして、強熱減量が3.0重量%のロービングガラスを用いた。
(X-3)ガラス繊維束:平均ガラス繊維径が17μmで、エポキシ系化合物の表面処理された後、(B-1)エポキシ基を含有するアルコキシシラン化合物を塗布して、強熱減量が5.0重量%のロービングガラスを用いた。
(Y-1)ガラス繊維:平均ガラス繊維径が10.5μmで、エポキシ系化合物で表面処理されたチョップドガラスを用いた。
[実施例1~12、比較例1]
PPS樹脂組成物を得るために、各原料を表1および表2に示す割合でドライブレンドして、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部3箇所)を用い、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、PPS樹脂組成物のペレットを得て、溶融粘度および数平均分散粒子径を測定した。次いで得られたペレットを、300℃で単軸押出機にて溶融混練して溶融状態とし、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、表1および表2に示す連続したガラス繊維束をクロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、電線被覆法の要領で、PPS樹脂成形材料におけるガラス繊維束の重量%が、表1および表2に示す値となるように、ガラス繊維束の単位長さあたりにPPS樹脂組成物をガラス繊維束の周囲に被覆し、該被覆ストランドを水冷バスで冷却して7mmの長さに切断することで芯鞘構造のPPS樹脂成形材料を得た。次いで得られたPPS樹脂成形材料を上記(5)項の方法で表面外観を評価し、上記(6)項に記載の条件で射出成形し、ISO(1A)ダンベル試験片を得た。得られたISO(1A)ダンベル試験片について、ガラス繊維の分散性試験、ガラス繊維長分析、相構造の数平均分散粒子径の分析および機械特性を測定した。なお、ガラス繊維の分散性試験がbad評価であった場合は、評価に値しないものとして評価を中断した。
[比較例2~3]
各原料を表1および表2に示す割合で、実施例1と同様に、PPS樹脂組成物のペレットを得て、溶融粘度および数平均分散粒子径を測定した。次いで得られたペレットを320℃で単軸押出機にて溶融混練して、溶融状態とし、これを押出機の先端に取り付けた含浸槽に供給した。さらに、ガラス繊維束(X-1)を連続的に引き取り、前記含浸槽内を通過させることで、PPS樹脂成形材料におけるガラス繊維束の重量%が、表1および表2に示す値となるように、ガラス繊維束の単位長さあたりに一定量のPPS樹脂を含浸させた含浸ストランドを得た。前記含浸ストランドを、水冷バスで冷却して7mmの長さに切断することでPPS樹脂成形材料を得た。次いで得られたPPS樹脂成形材料を実施例1と同様に評価を行った。
[比較例4]
PPS樹脂組成物のペレットを単軸押出機で溶融混練する際の加工温度を360℃としたこと以外は比較例3と同様の方法でPPS樹脂成形材料を得て、比較例2~3と同様の評価を行った。
Figure 2024012105000003
Figure 2024012105000004
上記表1および表2の実施例と比較例の比較により以下が明らかである。
実施例1と比較例1の比較により、(B)アルコキシシラン化合物の配合により、PPS樹脂成形材料を成形してなる成形品のガラス繊維の分散性が向上することがわかる。実施例2と比較例2の比較により、溶融粘度が高いPPS樹脂組成物をガラス繊維束に含浸させることは難しく、芯鞘構造の優位性が明らかである。実施例2~4の比較によりガラス繊維束の強熱減量、すなわち有機化合物の皮膜及び付着量が多い程、成形品のガラス繊維の分散性が向上し、特に引張強度に優れる成形品が得られることがわかる。
実施例6~12により、(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂として、オレフィン系共重合体を配合したとしても、芯鞘構造のPPS樹脂成形材料にすることで、成形品のガラス繊維の分散性に優れ、また(C)オレフィン系共重合体の数平均分散粒子径も小さく優れた物性が得られることがわかる。また、(B)アルコキシシラン化合物の官能基としてアミノ基やイソシアネート基を選定することで、(B)アルコキシシラン化合物の配合量を増やしてガラス繊維の分散性向上を図ったとしても、PPS樹脂組成物の溶融粘度が過度に増加することを抑制でき、その結果、更なるガラス繊維の分散性向上や、ガラス繊維長を長くすることができ、機械特性に優れる成形品が得られることがわかる。
また、実施例8と比較例2の比較により、溶融粘度が高いPPS樹脂組成物をガラス繊維束に含浸させることは難しく、芯鞘構造の優位性が明らかである。比較例4は含浸温度を高めて、PPS樹脂組成物をガラス繊維束に含浸させているが、加工温度が高すぎるため、オレフィン系共重合体がゲル化して数平均分散粒子径が粗大化すると共に成形品の機械特性も低下することがわかる。
[比較例5]
各原料を表3に示す割合としたこと以外は、比較例2~3と同様の方法でPPS樹脂成形材料を得た。次いで得られたPPS樹脂成形材料について、上記(5)~(12)項に記載の評価を行った。
Figure 2024012105000005
上記表3の実施例と比較例の比較により以下が明らかである。
比較例5は、低分子量で溶融粘度が低いPPS樹脂組成物を用いたことで、ガラス繊維束に樹脂がよく含浸し、成形品のガラス繊維の分散性に優れた含浸構造の樹脂成形材料が得られた。一方、実施例6と同じシャルピー衝撃強さを得るために、ガラス繊維束の含有量を50%としたため、実施例6と比較して比重が増加した。また、低分子量のPPS樹脂を用いたことで、樹脂由来の靱性が低下し、実施例6と比較してウェルド強度が劣った。また、オレフィン系共重合体を含まないため実施例6と比較して低温のシャルピー衝撃強さが劣った。このようにオレフィン系共重合体を含む芯鞘構造が優位であることがわかる。
[実施例13~15]
各原料を表4に示す割合としたこと以外は、実施例6と同様の方法でPPS樹脂成形材料を得た。次いで得られたPPS樹脂成形材料について、実施例6で得られたPPS樹脂成形材料と共に上記(5)~(12)項に記載の評価を行った。
Figure 2024012105000006
上記表4の実施例と比較例の比較により以下が明らかである。
(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂として、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂を配合したとしても、芯鞘構造のPPS樹脂成形材料にすることで、成形品のガラス繊維の分散性に優れ、また(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂の数平均分散粒子径も小さく優れた物性が得られることがわかる。
[実施例6](P-1)PPS樹脂成形材料
実施例6に記載した、上記の方法で得られた芯鞘構造のPPS樹脂成形材料を(P-1)PPS樹脂成形材料とした。得られた(P-1)PPS樹脂成形材料は、重量平均繊維長と数平均繊維長がペレット長と同じである7mmであった。
[参考例4](P-2)ガラス短繊維強化PPS樹脂組成物
(A-1)PPS樹脂100重量部に対して、(C-1)エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体を3.2重量部、(C-2)未変性オレフィン系共重合体を4.3重量部、(Y-1)チョップドガラス繊維を45重量部、(B-1)エポキシ基を含有するアルコキシシラン化合物:0.3重量部を、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部3箇所)を用い、ガラス繊維はサイドフィードで投入して、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、PPS樹脂組成物(P-2)を得た。
得られた(P-2)ガラス短繊維強化PPS樹脂組成物は、重量平均繊維長が340μm、数平均繊維長が280μmであった。
[参考例5](P-3)ガラス短繊維強化PPS樹脂組成物
(P-2)ガラス短繊維強化PPS樹脂組成物を130℃熱風乾燥機中で3時間乾燥し、住友重機械製射出成形機SE75-DUZを用い、シリンダー温度310℃、金型温度140℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、ISO(1A)ダンベル試験片を射出成形した。その際に発生したスプルー/ランナーを長軸寸法が10mm以下になるように破砕機で破砕して得た成形品破砕物を、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部1箇所)を用いて、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ガラス繊維が折損した(P-3)ガラス短繊維強化PPS樹脂組成物を得た。
得られた(P-3)ガラス短繊維強化PPS樹脂組成物は、重量平均繊維長が210μm、数平均繊維長が180μmであった。
[実施例16~17、比較例6~7]
各原料を表5に示す割合でドライブレンドした。次いで得られた樹脂組成物を上記(6)、(8)、(9)項の評価に供して、各特性を測定した。
Figure 2024012105000007
上記表5の実施例と比較例の比較により以下が明らかである。
PPS樹脂成形材料とガラス短繊維強化PPS樹脂組成物の平均繊維長は大きく異なることから、これらを混合して成形することで繊維長分布が大きい成形品が得られる。成形品のガラス繊維の分散性に優れ、優れた物性が得られることがわかる。

Claims (9)

  1. 連続したガラス繊維束1~50重量%の周囲を被覆するように、ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」ということがある)樹脂組成物99~50重量%が配置されてなる、長さ3.0~50mmの芯鞘構造を有し、該PPS樹脂組成物は、(A)PPS樹脂100重量部に対して、(B)エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシラン化合物0.1~5.0重量部配合してなり、該連続したガラス繊維束は、エポキシ化合物で表面処理されていることを特徴とするPPS樹脂成形材料。
  2. 前記PPS樹脂組成物が、キャピラリーレオメーターを用いて温度310℃、せん断速度1216/sの条件で求めた溶融粘度が50~400Pa・sである請求項1に記載のPPS樹脂成形材料。
  3. 前記連続したガラス繊維束が、JIS R3420(2013)に従い測定した強熱減量が0.3~25重量%である請求項1に記載のPPS樹脂成形材料。
  4. 前記PPS樹脂組成物が、(A)PPS樹脂100重量部に対して、さらに(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂を1~200重量部配合してなるPPS樹脂組成物であって、(A)PPS樹脂が連続相を形成し、(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂が分散相を形成することを特徴とする請求項1に記載のPPS樹脂成形材料。
  5. 前記PPS樹脂組成物の(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂からなる分散相の数平均分散粒子径が1000nm以下であることを特徴とする請求項4に記載のPPS樹脂成形材料。
  6. 前記(C)PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂が、オレフィン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、およびフッ素系樹脂から選択されるいずれかである請求項5に記載のPPS樹脂成形材料。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載のPPS樹脂成形材料を成形してなる成形品。
  8. 成形品のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)が300μm以上2000μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の成形品。
  9. 成形品のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.30以上、4.00以下であることを特徴とする請求項7に記載の成形品。
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